古村治彦の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、以下のアドレスをご覧ください。http://soejimaronbun.sakura.ne.jp/goaisatsu.html 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:TPP

 古村治彦です。

 

 アメリカのネオコンの拠点の1つである、戦略国際問題研究所(CSIS)が毎年発表しているグローバル予測の最新版から、所長のジョン・ハムレとジャパン・ハンドラーズの1人マイケル・グリーンの論稿をそれぞれ紹介します。ネオコン派がどのように考えているかが分かるものとなっています。

 

=====

 

2016年グローバル予測(2016 GLOBAL FORECAST

 

クレイグ・コーエン(CRAIG COHEN)、メリッサ・G・ダルトン(MELISSA G. DALTON)編

 

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS

http://csis.org/files/publication/151116_Cohen_GlobalForecast2016_Web.pdf

 

 

アジアへの再接続(Reconnecting of Asia

 

ジョン・J・ハムレ(JOHN J. HAMRE)筆

 

400年前、人類史上初めての純粋に国際的な国家間システムが出現した。この時以前、中国の各王朝と近隣諸王国との相互交流のような地域的な地政学システムはいくつか存在した。しかし、純粋に国際菜的な国家間システムは存在しなかった。国民国家が出現した際のウェストファリア体制は極めて斬新なものを生み出した。個人の忠誠心は王に対する忠節から国民としての意識と国家への同一化へと変化した。この時期、制限責任企業のような組織に関する新しい概念が生まれた。制限責任企業は幅広く資本を集め、対象となる商業的な冒険的試みに大量の資本を投入できるようになった。

 

 これらのヨーロッパの国民国家は、大都市の発展を支えた大富豪を生み出すための世界規模の帝国を創設しようとして相争った。ヨーロッパを中心とする国際的な地政学的システムが生み出された。このシステムは、操作法則として力の均衡(balance of power)を基礎とし、商業主義的な諸原理によって動くものであった。

 

 しかし、この発展には副作用も伴った。ヨーロッパの各帝国は世界各地に商業拠点を獲得しようと躍起になった。この世界システムの経済的ダイナミズムによって、アジアとアフリカの沿岸部にヨーロッパから企業家精神に溢れた人々が押し寄せるようになった。海上輸送が世界的な商業の基礎となった。アジア各地の沿岸部と主要航路沿いに巨大な都市が次々と誕生した。それから400年間、アジアにおいて地政学的に重要であったのは沿岸部であった。

 

 それ以前、アジアにおける商業と地政学の点で重要であったのはユーラシア大陸内陸部であった。国家間の商業活動は、いわゆる「シルクルート(silk routes、シルクロード)」に沿って行われていた。

 

 400年間にわたりアジアにおいては沿岸部に地政学的な中心が置かれてきたが、その状況は変化しつつある。巨大なユーラシア大陸が内陸部で再接続されつつある。ロシアは、極東とヨーロッパを結ぶ鉄道ネットワークを構築するという野心的な計画を明らかにしている。中国は「一帯一路(One Belt, One RoadOBOR)」構想に基づいて様々なもっと野心的な計画を発表している。この計画は、中央アジアと西アジアを貫く形で輸送ネットワークを劇的に拡大するというものだ。中国はその他にもアジアインフラ投資銀行(AIIB)やシルクルート基金のようなより衝撃的で野心的な計画を実行しようとしている。数十の社会資本建設・整備計画が既に発表され、この計画の方向性はすでに示されている。

 

 一帯一路構想は、様々な議論を引き起こした。懐疑論を唱える専門家たちは、この計画は成長が遅れている中国内陸部の開発を促進するための試みだと述べている。また、個の計画は中国国内で建設ラッシュが一段落している建設業者たちに機会を与えるための経済刺激策だと主張する人たちもいる。更には、中央アジア諸国の中国に対する忠誠心を獲得し、属国関係として固定化するための地政学的な設計図に基づいて行われていると主張する専門家たちもいる。

 

一帯一路構想はアメリカにとってどのような意味があるものなのだろうか?これからの数十年間、中国はこの計画にエネルギーを使い、結果として東南アジアに対する圧力が弱まることになるのだろうか?それとも、巨大なアジア大陸全体に中国の覇権を及ぼすという究極的な目標を反映したものなのだろうか?一帯一路構想はアメリカにとって良いものなのだろうか、それともアメリカの国益にとって脅威となるのだろうか?

 

 新しいシルクルートという話はこれまで長い間流布されてきたものだ。インターネットで、「シルクロード」というキーワードを入れて調べてみると、ヒットするものの半数以上はトルコ発のもので、トルコの商業に関するものである。一帯一路構想が地政学的な側面を持っていることは疑いようのないところだが、その根底にある商業的な大きな動きを見逃すと、分析を間違うことになる。アジアの製造業をヨーロッパの市場に結び付けるための最も効率の良い方法は、海上輸送であると思われてきた。しかし、長距離鉄道網を使えば輸送時間を2倍から3倍も短縮することはたやすい。輸送時間を劇的に短縮することで、投資する資本が何も生み出さない時間を減少させることによって、必要な資本を減らすことが出来るのだ。

 

 アメリカ政府はこの巨大な展開を評価するための能力に欠けている。官僚たちは世界を分割してそれぞれ担当しているが、それによってより明確なビジョンを掴むことが出来ないようになっている。米国務省は世界を4つの地域に分けてそれぞれに、東アジア・太平洋担当、ヨーロッパ・ユーラシア担当、近東担当、南アジア・中央アジア担当という担当部局を置いている。国防総省は太平洋司令部を置いており、中国はそこの担当になっている。しかし、その他のアジアは、中央司令部とヨーロッパ司令部の担当になっている。

 

 官僚主義的な機関は創造的な思考には不向きだ。世界を4つに分割し、それぞれの中で見ていれば、この巨大な流れを見逃すことになる。新しい大きな流れの特徴を古い歴史的なフィルターを通じてみてしまうことになる。

 

 ユーラシアの再接続の重要性を見過ごすことは大きな過ちとなる。そして、この動きをアメリカの脅威としてしまうことは危険なことでもある。この巨大な展開においてアメリカの果たすことが出来る役割は限られている。しかし、それは私たち自身がそのようにしてしまっているためなのだ。私たちはこの大きな新しい流れを客観的に評価し、判断しなくてはならず、それには時間が必要だ。一帯一路構想に対処することは次の大統領の政策課題ということになるだろう。

 

(終わり)

 

=====

 

私たちが生きる現代にとって正しい戦略を追い求めて(Seeking the Right Strategy for Our Time

 

マイケル・J・グリーン(MICHAEL J. GREEN)筆

 

 アメリカは現在世界のいたるところで守勢に回っているように見える。中国は南シナ海において侵略的な土地埋め立てと島の要塞化計画を進めている。また、アメリカの同盟諸国への影響力を強めることになる、新しいユーラシア秩序の構築を求めている。ロシアはウクライナとシリアに軍隊を派遣することでNATOを侮蔑している。イランはアメリカとの間で内容の乏しい核開発合意を締結したが、中東各地の代理となる諸勢力に武器を与え、衰えることの野心を見せ、宗教的な統一という目標のために動いている。イスラミック・ステイトは暴力的で抑圧的なカリフ制度を求めて活動している。その活動力は落ちているが、規模を縮小させるまでには至っていない。更には、気候変動に関する国際的な協力は、2015年12月にパリで開催されたCOP21の開催前に既に失敗していた。これは、オバマ政権の成立当初からの目的の達成失敗ということになる。

 

 アメリカにとっての大戦略が必要な時期はこれまでほとんどなかったが、今はまさにそのタイミングだ。しかし、現在のアメリカが大戦略を構築し、それを実行することは可能だろうか?大戦略には様々な脅威と障害についての明確な定義が必要だ。努力を向ける目的の優先順位をつけることと、目的の達成のために外交、情報、軍事、経済といった分野の力を統合することが必要である。トクヴィルが明らかにしたように、アメリカの民主政治制度は、そのような意思決定と権威を一つの政府機関に集権化することを阻害するように設計されている。

 

 民主政治体制は、様々な障害が存在するが、何とかして、重要な事業の詳細を規制し、固定化された設計を保ち、その実行を行っている。民主政治体制では秘密で様々な手段を実行することはできないし、長い時間、忍耐を持って結果を待つこともできない。

 

 それにもかかわらず、アメリカは、共和国としての歴史の中で、これまで何度も大戦略を成功させてきた。アメリカ建国の父たちはヨーロッパ型の機構と策謀に大きな疑念を持ちそれをアメリカのシステムに反映させたが、それでも大戦略が成功したことがたびたびあった。アメリカ政府は、19世紀末までに西半球において自分たちに都合の良い国境を策定することができた。19世紀から20世紀に移行する次期、アメリカは太平洋における主要な大国としての地位を獲得した。第二次世界大戦後、ヨーロッパとアジアの民主諸国家との間で同盟関係を固めることができた。そして、25年前にソヴィエト主導の共産主義体制を流血の惨事を引き起こすことなく打ち倒すことが出来た。これらの大戦略が一人の人物によって実行されたことは少ない。それでもセオドア・ルーズヴェルトとヘンリー・キッシンジャーはそれに成功した。しかし、たいていの場合、アメリカの大戦略は、「目的と手段を効率的ではなく、効果的に結びつける巨大なプロセス」から生み出されたのである。ジョン・アイケンベリーが述べているように、戦後に海外で成功したアメリカの戦略は、アメリカ国内における公開性と諸政治機関の競争性によって生み出された。それらによってアメリカ主導の国際秩序において利害関係を持つ参加者たちの力を増大させ、安心感を与えることが出来たのだ。トクヴィルが致命的な弱点だと考えたものが、実際には大きな長所となった。

 

 しかしながら、現在では、アメリカの民主政治体制の政治過程が、同盟諸国やパートナーに対して、安心感ではなく、より厳しいものとなり、警戒感を与えることになっている。また、アメリカの政治指導者たちが、「アメリカは国際的な諸問題で世界を指導できる能力を持っているのか」という疑念を起こさせている。第一次世界大戦とヴェトナム戦争の後、アメリカは大きく傷ついた。アメリカ国民はこれらの時期、世界に対してアメリカが関与していくことを基礎とする地政学を求める指導者を選んだ。イラク戦争後、アメリカの全体的なムードも同じような流れになった。アメリカの外交政策戦略の主要なテーマが「アメリカの世界的な評価を回復する」ということになった。アメリカ政府は地政学ではなく、国際的な脅威に関心を払うようになった。「戦争」か「関与」かの単純な二者択一で政策を行うようになっている。また、「バカなことはやらない」という考えに基づいて受け身的な事なかれ主義になっている。

 

 イラク戦争後のこうした流れによって、伝統的な国民国家、勢力均衡、アジア、東欧、中東に出現しつつある地域的な秩序に関する競争の重要性は減退した。中国、ロシア、イランは、アメリカの影響力を小さくし、アメリカの同盟諸国の力を小さくするための強制的な戦略を用いることで、戦争と関与との間にある「グレーゾーン」を埋めている。同じようなことは南米についても言える。しかし、南米で現在の国際システムに異議を唱えている国々の国際的な秩序に与える脅威はより小さいものと言える。アメリカとの間で相互利益がある地域における ロシア、中国、イランの関与はそれぞれの国益にかなうものであるが、この関与を「大戦略」と呼んでしまうと、オバマ政権が「これまでの国際秩序を作り変えようとする諸大国に地域的な秩序作りを任せてしまっている」という印象を世界中に与えることになってしまっている。一方、これらの大国に対して純粋に競争的な戦略を採用すべきと主張しているリアリストたちは、アメリカの同盟諸国やパートナーの置かれている複雑な立場を分かっていない。これらの国々のほとんどは、特にロシアと中国に対して、冷戦期のような立場をはっきりさせるような戦略を採れないような状況にある。アメリカの大戦略は国家間関係の根本的な理解のために地政学を復活させねばならない。しかし、同時に国際社会で指導的な立場に立つには、信頼されるに足るだけの外交的、経済的、軍事的、価値観に基づいた選択肢を提供する必要があることもアメリカは認識しなければならない。世界の国々に近隣の新興大国、既存の国際システムに異議を唱える大国関係を持たないようにさせようとしても無駄である。

 

 言うまでもないことだが、海外で指導的な役割を果たすためには、国内での経済成長を維持することは欠かせない。しかし、それがアメリカの縮小のための言い訳になってはいけない。アメリカは、これから数年の間、競争が激しい世界秩序から撤退し、世界がボロボロになった後に戻ってくる、などということをやってはいけない。実際、多くの国際協定が締結間近であるが、これらは海外におけるアメリカの影響力を強化するだろうが、アメリカの国内経済を大きく動かすことにもなる。環太平洋経済協力協定(TPP)と環大西洋貿易投資協定(TTIP)によって、アメリカの貿易を促進され、ヨーロッパと太平洋地域をアメリカとより緊密に結びつけることになる新しいルールを構築されることになる。より良い統治の促進、女性の地位向上、法の支配、市民社会が強調されることで、諸外国ではより正義に基づいた、安定した、そして繁栄した社会が生み出されることになる。消費は促進され、知的財産権はしっかり保護されることになる。違法行為を終わらせ、保障関係のパートナーシップを強化することで、各企業はよりまともな戦略を立てることが出来、同盟諸国やパートナー諸国との間で新しいシステムと技術に関してより生産的な発展を進めることが出来る。多くの国々がアメリカとの間の更なる経済的、軍事的な協力関係を望んでいるのだ。実際のところ、近現代史を通じて、現在ほどアメリカとの協力が求められている時期はないのだ。ここで大きな問題となるのは、アメリカ政府は、この新しい流れを利用して、経済、規範、軍事の関与に関するあらゆる手段に優先順位をつけ、それらを統合することが出来るのかどうか、ということである。

 

 この問題に関しては、アメリカ国民の考え方ひとつだ。この問題に関して、歴史は大きな示唆を与えてくれる。1920年代初めに行われたギャロップ社の世論調査では、アメリカ国民の大多数が、第一次世界大戦に参戦したことは間違いであったと答えた。1930年代、連邦議会は国防予算を減額し、保護主義的な関税を導入した。1930年代末、日本とドイツがヨーロッパと太平洋の既存の秩序に脅威を与えるようになった。この時期、ギャロップ社の調査で、数字が逆転し、大多数のアメリカ国民が第一次世界大戦にアメリカが参戦したことは正しかったと答えた。フランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領は、互恵通商法を成立させ、海軍の再増強に乗り出した。1970年代半ば、アメリカ国民はヴェトナム戦争に反対するようになった。この時、連邦議会は防衛予算を減らし、大統領の外交政策遂行に制限を加えた。それから10年もしないうちに、ソ連が第三世界に対してそれまでにない拡張主義で臨むようになると、アメリカ国民は国防予算を増額し、ソ連の進出を阻止し、冷戦の終結につながる動きを促進する政策を支持した。

 

 最近の世論調査の結果は、アメリカ人の中に国際主義が再び復活しつつあることを示している。国家安全保障は共和党支持者たちにとって最も重要な問題となっている。一方、ピュー・リサーチセンターの世論調査では、大多数のアメリカ国民がTPPを支持している。問題解決は指導者の力量にかかっている。民主、共和両党の大統領候補者予備選挙の始まりの段階では、むちゃくちゃなポピュリズムの旋風が起きている。それでも、国際的な関与を主張する候補者が最終邸には勝利を得られるだろうと考えるだけの理由は存在するのだ。

 

(終わり)

メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31




このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 

 古村治彦です。

 

 金銭スキャンダルで経済再生担当大臣を辞任した甘利明衆議院議員(神奈川13区選出、甘利グループ)の退任のあいさつ全文を自民党の“機関紙”である産経新聞が掲載しました。「自分のせいではない秘書のやったことに対して、潔く辞任して安倍政権を支えようとする、素晴らしい政治家である甘利明」を宣伝しようという意図が透けて見えます。

 

 あいさつの全文を読むと、ところどころでお笑い用語で言う突っ込みを入れたくなります。

 

 以下の2つの記事が今回の甘利氏の金銭スキャンダルを理解するのに役立ちます。

 

①「安倍政権史上、最大の政治スキャンダル!甘利大臣は「シロ」か「クロ」か - 山本洋一」

→ http://blogos.com/article/156231/

②「甘利大臣が辞任を表明「閣僚・甘利明にとっては誠に耐え難い事態」」

→ http://blogos.com/article/157437/

 

 ①の記事の著者、山本洋一氏は日本経済新聞の記者として長く政治の世界の取材をしてきたヴェテランだそうです。山本氏によると、今回の甘利氏のスキャンダルの問題点は2つあって、1つ目は、甘利氏が、問題の建設会社(S社と表記)のお願いを受けて、国土交通省の所管である都市再生機構(UR)に口利きをして、S社の利益となるような結果を導き出して、その結果としてお礼としてお金を受け取った、つまり賄賂を受け取ったのかどうか、ということだそうです。国会議員が口利きなどをしてその見返りで金品を受け取ると「あっせん利得処罰法」違反ということになります。

 

 昔であれば、職務権限の有無、が問われたので、「自分の職務とは関係ない」という言い逃れもできたそうですが、現在は、職務権限は問われないようになっているそうです。

 

 政治資金として適正に処理してあれば問題は言い訳は立つのだそうですが、そこがいい加減だと処罰される可能性が高くなるということです。このスキャンダルを報じた『週刊文春』誌の記事の内容では、秘書が個人的に使ってしまったと可能性が高いということになります。

 

2つ目の問題点は、S社からもらったお金を政治資金収支報告書にきちんと記載したかどうかという点になるそうです。

 

週刊文春の記事によると、「最初に事務所に持参した500万円のうち、200万円分は政党支部への献金として処理されているが、残り300万円はどこにも記載がない」ということだそうです。

 

「甘利事務所は記事中で、甘利氏に渡された50万円やその他の現金について「パーティー券で処理している」などと答えている」のだそうですが、S社側は否定しているのだそうです。お金を出したS社が否定しているのに、甘利事務所側がパーティー券を買ったことにして政治資金収支報告書に記載すると、これは虚偽記載(嘘の内容を政治資金収支報告書に記載した)ということになります。

 

 賄賂を貰ったのかどうか、政治資金収支報告書にきちんと記載したのかどうか、という点が問題になっています。「賄賂としてもらった訳ではない、政治資金としてもらったのだが、秘書が一部を個人的な目的のために使ってしまった」という説明を甘利氏はし、監督責任を取り、安倍政権へのダメージを食い止めるというということで大臣を辞任しました。

 

 それについて、甘利氏は「やせ我慢」だとか「美学」だとかそういう大仰な言葉を使いました。数百万円のお金を受け取っておいての「やせ我慢」というのは何ともおかしな話ですし、「美学」というと、なんだかとても崇高なもののために自分を犠牲にするという響きがありますが、こちらもなんだかおかしな感じがします。

 

こうしたおかしな日本語の使い方の裏には、「自分は罪なくして(冤罪で)大臣の座を去らねばならない。しかし、それについて言い訳も恨み言も言わない」というある種のヒロイズム、悲劇のヒーロー気取りがあります。しかし、実際にはあっせん利得処罰法や政治資金規正法に違反している可能性があることをすっかり忘れてしまっています。

 

 今回のスキャンダルでは甘利氏と秘書がそれぞれお金を受け取って、甘利氏は自分が受け取ったお金は政治資金としてきちんと処理したと述べていますが、そもそも政治資金収支報告書に虚偽の記載をした可能性(受け取った分を全額記載しなかったこと、お金を渡した側が否定しているのにパーティー券の購入代金として記載したこと)があります。

 

 「やせ我慢」や「美学」という言葉を使い、政治活動を一からやり直すということならば、中途半端なことはせずに議員辞職をして一からやり直すのが筋ではないかと思います。政治家の出処進退はその人だけが決めることですから、甘利氏がどのような決断をするのかは甘利氏の良心に従った決定を尊重すべきですが、「やせ我慢」だの「美学」だのと大見得を切ったのに、他の政治家と変わらない大臣だけの辞任ということになると、大見得を切った分だけ出処進退の「潔さ」の度合いは小さくなりますし、そもそも「やせ我慢の美学」がある人は、大見得を切ることなく、出処進退を静かにするものではないかと思います。

 

 大臣退任のあいさつで、「日本の官僚は世界一」という歯の浮くようなお世辞を残しました。官僚が「世界一」だから、今のほとんどの政治家たちのような「世界一」の質ではない、政治家を稼業にしているだけの二世、三世の人物たちが代議士になり、大臣をやっても国が何とかやっていけているのだろうという憎まれ口を叩きたくなります。

 

 また、今残っている問題を全て解決するまで安倍政権が存続すべきだという発言も気にかかります。安倍政権の閣僚だった人ですから、安倍政権の存続を願うのは当然でしょうが、いま日本が抱えている問題を全て解決するのに必要な時間はどれくらいのものでしょうか。1年、2年で済むものはないでしょう。たとえば、安倍晋三総理大臣が前回の首相在任時に「消えた年金」問題について、「私の政権で最後のおひとりまで救う」と選挙運動で述べたことがありましたが、これは解決しているでしょうか。財政赤字も問題とするのならば、それがここ1、2年で解消するものでしょうか。

 

甘利氏の退任のあいさつで気になったのは、「本当に身命を賭して突っ込んで」という表現です。もちろん物理的に、具体的に命を差し出すということではないのは分かっています。しかし、後半の安倍政権が今存在する問題をすべて解決するまで続くべきだという主張と併せて考えると、とても「狂信的な」感じを受けます。宗教的な熱狂と言ってよいかもしれません。「沖仲士の哲学者」と呼ばれた、アメリカの社会思想家エリック・ホッファーは主著『大衆運動』で、大衆運動の中心的な役割を果たす人々を「トゥルー・ビリーヴァーズ(True Believers)」と呼びました。この人々は大義や正義のためには命もいらないと考える人々ですが、こうした存在のために社会運動が得てして先鋭化してしまい、支持を失っていくということはこれまでも散々繰り返されてきました。冷静さを欠く、ある意味の熱狂が安倍政権の中にあるということになるとすると、安倍政権は穏健な保守政権というよりは、急進的な右翼反動的政権ということになります。甘利氏の発言からはそのようなことが読み取れると私は考えます。



 一つの内閣で問題が1つでも2つでも解決出来たらそれはそれで大したものですし、長期政権となるとどうしても緊張感がなくなり、弛緩してしまう部分が出てきます。特に今の自民党の体質では長期政権になると、緊張感を持続させることは難しいでしょう。

 

 今回の甘利氏のスキャンダルに関しては、「はめられた」とか「ゲスの極み」といった感想や批判が自民党の幹部から出ています。甘利氏を失脚させる「陰謀」があったということを言いたいのでしょうが、問題は誰がその「陰謀」を成就させるためにシナリオを書いたかということです。そこのところをはっきりさせねば、スキャンダルの発生を止めることはできません。しかし、自民党自体がこうしたスキャンダルの仕掛け人とか発生源とかに対して対処したという話は聞きません。

 

 今回はこれ以上は書きませんが、それはこうしたスキャンダルを仕掛ける「陰謀」の仕掛け人が海の向こうの意向を受けているということだからではないかと私は推察しています。簡単に言ってしまえば、「属国の悲哀」ということになるでしょうか。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

甘利氏退任あいさつ全文「私なりのやせ我慢の美学」「安倍内閣と一緒に使命を果たして」

 

産経新聞 129()132分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160129-00000540-san-pol

 

 

 自らの金銭授受問題の責任を取り辞任した甘利明前経済再生担当相は29日、内閣府で職員に退任のあいさつを行った。あいさつの全文は以下の通り。

 

           ◇

 

 「このたびは私どもの不祥事により、世間をお騒がせし、皆さんに大変なご迷惑をおかけして、本当に申し訳なく思っています。責任の取り方に対し、私なりのやせ我慢の美学を通させていただきました」

 

 「この3年余りの間、いろんな仕事をさせていただきました。日本経済全体の指揮をとるという大役をお任せいただきました。この3年間を通じて、痛感したことは、やっぱり日本の官僚は世界一だということでした」

 

 「ただ、今までその官僚の力を思う存分発揮できなかったのは、政権が毎年、毎年、代わる。政権が代われば指示が変わる。働くものは下された指示を、本当に身命を賭(と)して突っ込んでいっていいのか、不安になる。それが素晴らしいポテンシャルを、宝を持ちながら、必ずしも十二分に発揮ができなかったことだと思いました」

 

 「安倍内閣はまだまだ続きますし、続けさせなければならないと思います。そしてその間に、日本が解決しなければならない課題はすべて、全部解決をすると。そのつもりで総理は邁進(まいしん)されています。それを信じて、一片の疑いもなく、その使命を安倍内閣と一緒に果たしていただきたいと思います」

 

 「重ねて、ご迷惑をおかけいたしたことをおわびします。本当に申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました」

 

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)



 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 少し古い話題となりますが、安倍首相の訪米に関する記事をご紹介します。著者はヘリテージ財団のブルース・クリングナーとブルッキングス研究所のミレヤ・ソレスです。それぞれ共和党系、民主党系で、専門が安全保障・軍事と経済ですので、記事の内容もそれぞれの特徴を反映したものになっています。

 

==========

 

安倍晋三首相の訪米は綱渡り(Shinzo Abe’s High-Wire U.S. Visit

 

ブルース・クリングナー筆

2015年4月30日

ヘリテージ財団

http://www.heritage.org/research/commentary/2015/4/shinzo-abes-high-wire-us-visit

 

2015年4月29日、新たな歴史が作られるだろう。日本の指導者が初めてアメリカ連邦上下両院合同の場で演説を行うのだ。アジアにおけるアメリカにとっての重要な同盟国に対するこのような厚遇は長い年月を要してようやく実現した。日本は戦争による破壊から不死鳥のように立ち上がった。このことは日本の政治家と国民にとって安倍首相の訪米と議会演説はその復興を実感する出来事となる。日本は活気ある民主制国家となり、世界第3位の経済規模を誇るまでになった。しかし、安倍首相訪米の興奮の裏で、安倍首相は現在もまだ論争が続いている歴史を巡る諸問題にどの程度うまく対処できるかという懸念も存在する。

 

 安倍首相は議会演説においてよって立つ事実の基盤が存在する。これまでの70年間、日本は責任ある国家の代表例のような存在であった。20世紀に巨大な破壊をもたらした暴力的な軍国主義を避けるために、日本政府は受け身的な外交政策と安全保障政策を採ってきた。日米二国間の同盟は、平和と安定というアジアにおけるアメリカの国益の基盤となってきた。しかし、日本は国防に関してアメリカにより深く依存してきた。

 

 アメリカ政府は長年にわたり日本政府に対して、自国の防衛に関してより大きな役割を果たし、地域や世界の安全保障の懸念に関してより積極的になるように主張してきた。安倍首相は、長年にわたり実行すると約束されてきた日本の安全保障の姿勢に対する見直しを実行することで日本の国全体としての不活発さを乗り越えてきた。

 

 実際のところ、安倍首相の訪米に合わせて、1997年以来初めての同盟ガイドラインの見直しも発表される予定になっている。この見直しの基盤となっているのは、日本がこれまで積み重ねてきた良い行動と日本が安全保障に関する能力を改善されていることだ。

 

 1つの重要な主張は、日本が「集団的自衛権」の実行がある。これは、日本を防衛している、もしくは国連の平和維持活動に関与している諸国の防衛を援助できる能力のことである。アメリカはこうした変化を歓迎している。日本の防衛を担うパートナーであるアメリカとより緊密に動くことが出来る能力を日本が獲得することは、日米両国とアジア太平洋地域にとって利益となる。

 

 しかしながら、日本はトラブルの多い過去を抱えている。近隣諸国は日本の自衛隊のいかなる変化に対しても懸念を持つ。日本政府とアメリカ政府は、アメリカとの同盟に基盤を持ち、日本に駐留する米軍との協調による日本の安全保障上の変化が地域にとって脅威となるものではないということを説明してきた。歴史に根を持つ多くの誤解を解くためにも、より広範な広報外交が必要だ。

 

 演説はアメリカの連邦議員たちに向けて行われるが、聴衆はかなり多いだろう。日本の近隣諸国は注意深く聞くことだろう。従って、安倍首相は近隣諸国の疑念と敵意を緩和する必要がある。彼らは日本が「逆戻りしている」と考えている。彼らは日本が戦時中の行為に対して十分な保証を行っていないと考えている。日本と中韓との緊張関係は堂々巡りであって、時には敵対関係が燃え上がる時期もこれまであったが、最近の状況は悪化してばかりである。

 

 安倍首相の「真の意図」について様々な疑問が出ている。安倍首相は歴代政権が発表してきた日本の戦時中の侵略と女性たちに性的な奴隷労働を強制したこと(婉曲的に「慰安婦」と表現される)を反省する声明を承認している。しかし、安倍首相と政治家たちは、これらの声明の基礎となった証拠に関して疑念を表明している。

 

 しかし、安倍首相はアメリカのお膳立ての中でこれらの問題について言及することはないだろう。そうなのだ。アメリカで彼の演説を聞く人々は過去を認めることを歓迎し、二国間同盟とアメリカが行う日本の防衛を賞賛するだろう。 アメリカ国民は、安倍首相自身が生まれる前に日本が行ったことに関して更なる謝罪を期待しないだろう。実際のところ、彼が更なる謝罪をすることで古い傷を再び開いてしまうことになると見られるだろう。

 

 しかし、日本の近隣諸国、特に韓国と中国は、安倍首相が過去についての修正主義的な考えを反映して訪米中に日中、日韓それぞれの抱える歴史問題に言及しないだろうと考えている。このような解釈は継続中の地域内の緊張を増すだろうし、アメリカの安全保障上の国益を複雑化させるだろう。安倍首相はきわどい状況に直面している。彼の演説は、彼が言ったことと言わなかったことに切り分けられ、詳しく分析されることだろう。

 

 安倍首相は演説の中で戦後70年の日本の積み上げてきた歴史と将来の安全保障上起きるであろう諸問題に対してより大きな役割を担うという日本の意志を強調するであろう。これは適切なことである。しかし、安倍首相はこの機会を捉えて、過去に対する日本の償いを肯定するようにもすべきだ。

 

 安倍首相は、日本の近隣諸国との和解と日本の世界における役割の拡大を望むならば、村山談話や河野談話からのいくつかキーワードを演説の中に含めるべきだ。昨年7月、安倍首相はオーストラリア議会で演説を行った。これがアメリカ連邦議会での演説のモデルとなる。キャンベラの議事堂において、安倍首相は第二次世界大戦中のオーストラリアにとっての痛みを伴う出来事について言及したが、これは賞賛を受け、日豪関係を更に強化することになった。

 

 アメリカは、北東アジアの重要な諸同盟国間の懸念についてうまくバランスを取ろうとしてジレンマに陥っている。昨年のアジア歴訪の旅の中で、バラク・オバマ大統領は日本の戦時中の女性に対する強制的な性的奴隷労働(婉曲的に慰安婦と呼ばれる)を厳しく非難し、アメリカ政府はこれまで日本に対して過去に対する償いを行うように主張してきた。にもかかわらず、韓国のマスコミの中には、アメリカ政府が「日本政府の歴史についての考えを認めている」と糾弾している。

 

 ひとたびは激しい敵意を持つ敵同士であった日本とアメリカの和解は、より困難なそして苦痛の多い違いをつなぐことが出来る希望に満ちた具体例となる。さあ、日本の安倍晋三首相は議会演説を使って過去について語り、将来の協調に関する考えを明らかにすることに期待を持って待とう。

 

(終わり)

 

=====

 

安倍・オバマ会談:真に世界的な日米同盟を目指して(Abe-Obama summit: The search for a truly global U.S.-Japanese alliance

 

ミレヤ・ソレス筆

2015年4月27日

ブルッキングス研究所

http://www.brookings.edu/blogs/order-from-chaos/posts/2015/04/27-obama-abe-summit-solis

 

 日米首脳会談に関して言うと、今週の安倍晋三首相のワシントン公式訪問はここ最近の日米関係の歴史の中で最も重大な出来事の1つとなるだろう。安全保障、貿易、歴史に関する和解の分野における実質的なまた象徴的な首脳会談が行われることになる。日米両国は、2つの重要な柱、新防衛ガイドラインと環太平洋経済協力協定(TPP)を通じてのより緊密な経済統合を拡大することで日米同盟を深化させようとしている。より広範に言えば、日米両国は地政学の復活に合わせて、そして国際的な経済システムの風景の変化と気候変動のような国境を越えた挑戦に対処するために、日米同盟を国際化する責任を共有している。

 

 安全保障の面で言えば、安倍首相の訪米に合わせて、作られて以降18年経つが初めて、防衛ガイドラインの見直しが行われる。力の均衡の変化、サイバー上の安全保障のような新しい脅威、日本の安全が脅威に晒されている場合に攻撃を受けている同盟国を助けるための集団的自衛権行使に関する最近の再解釈といった要素が見直しにおいて考慮される。その目的は、日米両国の軍隊がより深い共同運用性を持つことで完全に一致した防衛協力ができるように促進することであり、日本が近隣地域やそれ以外の地域で兵站部分での支援ができる機会を拡大することである。

 

 経済の面で言えば、日米両国は貿易に関するほとんどの障壁を排除することでこれまでにない協力関係の構築を目指している。日米両国の間には二国間の自由貿易協定は存在しない。また、世界で最も活発な経済活動が行われている地域をカヴァーする貿易と投資に関する最新のルールを、更に10カ国を加えて構築することで協力関係を構築しようとしている。その究極的な目標は1980年代の「貿易摩擦」時代に定義された市場アクセスに関して「市場を守らねばならない」とする防衛的な懸念を解消し、より重要なプロジェクトを日米共通で行うことである。そのプロジェクトとは、アジア太平洋地域にとっての野心的な枠組みの創設と経済統合である。

 

 歴史についての和解の面で言えば、第二次世界大戦終結70周年をもうすぐ迎えるこの時期にアメリカ連邦上下両院合同の場で日本の指導者が歴史上初めて演説を行うことになった。演説では、日米両国の関係が憎しみ合う敵から緊密な同盟者へと大きな転換を遂げたことに言及するものと予想される。しかし、戦時中のアジアにおける日本の行為に対する言及は日本の責任感と反省を再確認することになり、それをアメリカ国内と海外の聴衆が認識するだろう。また、日本の積極的平和主義政策にとっての利益となるだろう。

 

今回の日米首脳会談はより深化した日米パートナーシップを構築するために重要だ。日米同盟は、世界情勢が流動的で、伝統的な地政学では間に合わず、国際的な経済統治において機構的な革新が必要な時代に国際的な課題を解決できるようにならねばならない。日米首脳会談によってより重要な進展が生み出されることになるだろう。

 

 そこにはただ1つの問題が存在する。

 

 今回の日米首脳会談がある重要な問題について議論しない可能性が高い。それは、TPPの成功にとって不可欠な日米両国間の市場アクセス交渉について決定的な打開である。これまで、TPP交渉に関しては連邦議会の動きの悪さがネックになっているように思われてきた。しかし、先週、連邦議会が貿易権限促進法(TPA)の可決に向けて大きく前進したが、アメリカと日本の交渉担当者たちは、もっと交渉時間が必要だと述べた。交渉を終え、TPPを妥結するためには、安倍・オバマ会談の後も一定の時間が必要だと述べた。しかし、時間はいくらあっても足りない。TPPの成功はアメリカ大統領選挙の日程に競い合うかのようになっている。

 

 このシナリオは、両国が克服しようとして来たこれまでのパターンを強化するという不幸な結果を生み出す危険がある。アメリカと日本両国は貿易に関する合意を行うよりも防衛協力を強化することの方が楽だということを認識してきた。米と自動車に関するいつも起きる疑念はより深化した経済協力の可能性を狭めてしまう。

 

 このような結果によって、日米両国が、中国の台頭についてより効果的に対処できるようにするための国際的な経済マネイジメントを行うための国際的な同盟を作り上げることが出来ないということになるだろう。アジア投資インフラ銀行(AIIB)が失敗した後、アメリカの海外経済戦略は再出発にとって必要になる。そこには2つの弱点があると指摘されている。1つは国内の機能不全(連邦議会はIMFの統治システム改革を諦め、TPA法案についても動きが遅い。これらがその具体例だ)、もう1つは中国の守勢である。

 

 成功の第一歩目として、メッセージを変える必要がある。オバマ大統領の「もし私たちが貿易に関するルールを書かねば、中国が書くだろう」からTPPは重要なのだ、という発言はよく引用される。この発言内容は正しい。しかし、不完全だ。私たちはTPPの価値を評価に関して本当のことをもっと大きな声で訴える必要がある。TPPは中国やその他のAIPAC加盟諸国を参加させる排他的ではない貿易制度となるとまず公に約束している。また、TPPの締結によって、他の巨大な貿易合意も促進されるだろう。これによって競争を維持するためにより高質のルールが設定されることになる。日本はこうした制度の城の利益を共有しているし、TPPが失敗すればその損失はより大きなものとなる。アメリカにとって皮肉なことは、経済力を刷新せねばならない時期にその指導力に疑問符がついていることだ。日本にとってTPPへの挑戦はより根源的な問題を抱えている。日本経済の復活はTPPの未来とつながっていると見られているからだ。

 

 冷戦後の世界の効果的な国際的な経済戦略にとってアメリカと日本の存在は必要不可欠なものとなるだろう。両国の存在によって、多くの国々がシステムに参加できるようになるし、と様々な面で最高のシステムの構築を促進することができるだろう。そのためには、再出発が必要であり、そのためにはTPPが成功しなければならない。私たちが必要としているのは、簡潔なそして力強い両国の指導者からの声明だ。その声明では「日米両国は貿易に関する両国の違いを既に乗り越えつつある」と発表すべきだ。日米首脳会談の間にそのような声明が出されないとすると、首脳会談はよく言って部分的な成功しか収めなかったということになるだろう。

 

(終わり)









 
このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 オバマ大統領の最重要政策であるTPPの妥結に向けての貿易合意促進権限(TPA)法案

に対して、オバマ大統領の属する民主党から反対論が出ています。TPA法案は連邦上院を通過し、連邦下院で最終的な採決が待たれる状況です。現在のところ、オバマ大統領と共和党がTPPの妥結に向けて協力しているという奇妙な感じになっています。

 

 TPPを促進するために、大統領に大きな権限を与える(連邦議会の権限を制限する)内容のTPA法案に対する批判は、TPPの内容と言うよりも、その手続き、民主的ではない手続きに問題があるという考えに基づいています。

 

 これは日本にいてTPPに不安を持っている人たちにとり重要な視点であると考えます。

 

==========

 

ナンシー・ペロシから日本へ:米民主党はTPPに関してオバマ大統領を支援したいと考えている(Pelosi to Japan: Dems want to back Obama on trade

 

ヴィッキー・ニーダム筆

2015年4月3日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/finance/237849-pelosi-to-japan-dems-want-to-back-obama-on-trade

 

 連邦下院の民主党最高幹部ナンシー・ペロシは金曜日、日本の首相に対して民主党所属の連邦下院議員たちはオバマ政権のTPP政策について支援したいと望んでいると語った。

 

 民主党[少数党]連邦下院院内総務(House Minority Leader)のナンシー・ペロシ(カリフォルニア州選出)は東京で安倍晋三首相と会談した際、連邦下院の民主党議員たちの中にはいくつかの懸念は存在するが、環太平洋経済協定(Trans-Pacific Partnership TPP)に対する支持を拡大するために努力していると述べた。

nancypelosiabeshinzo001
安倍晋三首相(左)とナンシー・ペロシ議員

 

ペロシは次のように語った。「私たちは全員、“イエス”と言いたいのですが、いくつかの懸念も残っているのです。私たちは“イエス”に進む道を見つけたいのです。その道にはいくつかの凸凹があるでしょう」。

 

 アメリカと日本の交渉担当者たちは、4月末の安倍首相のワシントン訪問前までに出来るだけ交渉を進めようと努力している。

 

 安倍首相は4月29日に連邦上院・下院合同会場で演説を行う予定だ。これは日本の首相では初めてのことだ。

 

 連邦議会は貿易促進権限について審議をしている。貿易促進権限は急速な貿易協定成立に関する法律と呼ばれ、これは、いかなる内容の貿易協定が連邦議会に送付された場合に議員たちが賛否の投票を行うようにさせるものである。

 

 連邦議会の2週間の春休みが終わった後、法案の内容が公開されると予想されている。

 

民主党はオバマ大統領に権限を与えるかどうかで分裂している。

 

 連邦下院の民主党議員10名と共和党議員1名はアジア5カ国歴訪の旅に出ている。その中にはTPPに参加予定の日本とヴェトナムが含まれている。

 

 推進派の人々は、TPPはアメリカと日本との間の安全保障と経済関係を強めることになり、アジア太平洋地域に対するアメリカの関与を長期にわたって保証することになると主張している。

 

 一方、民主党リベラル派と労働組合は、アメリカ国内で雇用が減少することに対する懸念から貿易促進権限とTPPに対して激しい反対運動を展開している。

 

 金曜日、連邦上院財政委員会委員長オリン・ハッチ連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)は新聞の論説ページに寄稿し、その中で、「連邦議会の共和党議員たちはオバマ大統領と一緒にTPP交渉が成功するように手助けをする準備が既にできている」と書いた。

orrinhatch001
オリン・ハッチ議員

 

 ハッチ上院議員は「オバマ大統領は、民主党所属の連邦議員たちを説得して、重要な経済的利益を達成するためのTPPを成立させることができる」と書いている。

 

(終わり)

 

=====

 

ペロシがオバマの推進する貿易関連法案を批判(Pelosi criticizes Obama-backed trade bill

 

マイク・リリス筆

2015年4月23日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/finance/239859-pelosi-criticizes-obama-backed-trade-bill

 

 民主党連邦下院院内総務ナンシー・ペロシ(カリフォルニア州選出、民主党)は木曜日、オバマ大統領の貿易協定締結権限を拡大するための超党派議員による法案提出は、アメリカの労働者たちに対して害を及ぼす、アメリカにとって利益とならない貿易協定を推進するものだと述べた。

 

 先週、連邦議会に貿易促進権限(trade promotion authorityTPA)法案が提出され審議されている。それを受けて、ペロシ議員はTPPにはアメリカの労働者を守るためのセーフガード機能が欠如しており、世界規模での労働者の諸権利、食品の安全性、そして環境を改善するための歴史的な機会を無駄にしてしまうことになると述べた。

 

 ペロシは、連邦下院議員サンディ・レヴィン(ミシガン州選出、民主党)が提出している代替法案を支持している。ペロシは、この代替法案はこれらの問題をはっきりさせ、オバマ大統領二期目において最も重要な政策であるTPPを推進するための「イエスへ続く道」

に民主党を立たせるものだと述べた。

 

 ペロシは連邦議事堂において記者たちに対して次のように語った。「私たちはTPPに向かう道にいくつかの凸凹があることを認識しています。しかし、共和党がやっていること、連邦上院と連邦下院歳入委員会委員長ポール・ライアン(Paul Ryan、1970年―)連邦下院議員をやっていることはその道のりにある凸凹ではありません。落とし穴なのです。私たちの方がうまくやれます」。

 

 TPAが現在のままの内容で、連邦下院で採決される時に反対票を投じるとは明言しなかった。ペロシは「私はまだ投票されるかどうか決まっていないものについて、私がどういう投票をするかを言うことはありません」と述べた。しかし、連邦議会から影響力を奪ってしまうような内容の法案を批判した。

 

 ペロシは次のように語った。「私たち連邦議会に大きな権限を持つ貿易に関して言うと、TPA法案はその権限の大部分を放棄するものです。私たちがこの法案をどのように改善するかを是非ご覧になっていてください。現状維持は良くありません。いくつかの点で、この法案は現状維持を肯定するもので、それは後退を意味するものです」。

 

 連邦上院議員オリン・ハッチ(ユタ州選出、共和党)とロン・ワイデン(ウィスコンシン州選出、共和党)が共同提出したTPA法案は、連邦議会がTPPのような貿易合意について承認の投票はできるが、修正まではできないという内容で、貿易合意を促進するものとなる。

 

 水曜日、連邦上院財政委員会はTPA法案を可決した。そして、木曜日、連邦下院歳入委員会はTPA法案を可決すると見られている。

 

 しかし、本会議での採決は厳しい、特に連邦下院での可決は厳しい。連邦下院では民主党議員たちがTPA法案に対して反対の姿勢を示している。オバマ大統領は彼らの考えを変えようとロビー活動を展開している。

 

 連邦下院議長ジョン・ベイナー(オハイオ州選出、共和党)と共和党幹部たちはTPAを巡る戦いでオバマ大統領を支持しているが、保守派議員の中にはこれに反対している人たちもいる。彼らは自分たちが信頼できない大統領に新たに貿易協定を結ぶ権限を与えることに躊躇している。これが意味するところは、TPAを下院で通過させるには218の賛成票が必要であり、共和党側は民主党議員の一部の協力を必要とするということだ。

 

 木曜日、ベイナー議長はTPAの下院通過に必要な民主党議員を見つけ出すことの責任をオバマ大統領に押し付けた。

 

 ベイナー議長は記者団に対して次のように語った。「私たちはTPAを下院で通過させることが出来ると自信を持っている。しかし、この目標を達成するためには、超党派の支持が必要だ。この法案について連邦下院共和党は強力に支持している。私たちは自分たちのやるべきことはきちんとやる。しかし、大統領も自分のやるべきことはきちんとやるべきだ」。

 

 ペロシはまた民主党はTPPに関する議論に対して影響力を持っていると認識している。そして、影響力を使って、環境、食品の安全、外国の労働者の諸権利、そして何よりも重要なアメリカ国内での雇用といったリベラル派の懸念を晴らすための修正を施したいとしている。

 

 ペロシは「法案の本質は何かと言うと、アメリカの労働者の給料に対してどういう影響を与えるかということです」と述べた。

 

 ペロシは次のように語った。「私たちが影響力を持っているのに、誰もより良い結果を得ようとしないミステリーが起きている理由が私には分かりません。連邦下院を通過するためには218の賛成票を獲得しなければなりません。そうなると私たちにもチャンスがあります。つまり、私たちは団結して、アメリカが世界貿易にさらに関与することでアメリカの労働者の給料を引き上げ、貿易合意のために敗北者にしないようにすることが出来る可能性は残されています」。

 

(終わり)

 

=====

 

ウォーレンからオバマへ:「虚偽」の貿易協定を結ぶな(Warren to Obama: Stop making 'untrue' trade claims

 

ピーター・シュローダー筆

2015年4月25日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/finance/240068-warren-to-obama-stop-making-untrue-trade-claims

 

 マサチューセッツ州選出の民主党所属連邦上院議員エリザベス・ウォーレン(Elizabeth Warren、1949年―)は土曜日、オバマ大統領に対して、彼女自身を含む反対派に対して「虚偽の」主張を行っていると語った。

elizabethwarren001
エリザベス・ウォーレン議員

 

 オバマ大統領と左派のウォーレン議員との間に起きた争いは土曜日まで続いた。ウォーレン議員とオハイオ州選出の民主党所属連邦上院議員シェロッド・ブラウンは、現在進捗が止まっている、TPPと呼ばれる複数の国家が参加する貿易合意の条件に関する交渉について情報を即座に公開するようにオバマ大統領に要求した。

 

 貿易交渉が合意にまで達するのを手助けすることになるTPA法案を推進するために、オバマ大統領は左派からの批判を退けた。彼は「批判者たちは間違っており、彼らは自分たちが何を話しているのかを全く分かっていない」と述べた。

 

リベラル派はTPPを批判している。彼らは条件が公開されていないと批判している。巨大企業からの影響を受けた他国によって秘密合意がなされていると彼らは主張している。

 

オバマケアについての議論が沸騰している間に盛んに叫ばれた「死の審議会」というスローガンを今回のTPPに関する議論にも当てはめた。オバマ大統領は連邦議員たちの多くがTPPに対する批判を行っていることについて深刻に受け止めないようにさせようとしている。

 

 オバマ大統領は木曜日、次のように述べた。「“死の審議会”のようなスローガンを叫ぶような人々が言っていることは真実ではなかった。今回の場合も同様だ。事実に目を向けて欲しい。そこから目を背けないで欲しい」。

 

 こうした反論に対して、ウォーレンとブラウンはオバマ大統領に対して、交渉の内容を公開するように求めた。連邦議員たちは交渉の文書を見ることはできるが、その内容を公開することや特定の内容を議論することは法律違反になる。

 

 オバマ大統領が述べているように、貿易合意が労働階級にとって良い条件を得るように努力しているのだから、最終的な合意に達する前にその条件を公開するための理由は存在しないのだが、実際はそうではないとウォーレンとブランは主張している。

 

 ウォーレンとブラウンは次のように書いている。「アメリカ国民は自分たちにとってそれが良い合意なのかどうかを自分たち自身で確認できるようにすべきなのだ」。

 

 2人は更に次のように続けている。「貿易に関する諸問題で透明性を求めている労働組合、ジャーナリスト、連邦議員たちに対して“不誠実”だと述べるのは、真実に反しているし、アメリカ国民の利益にはならないのである」。

 

 ウォーレンとブラウンは続けて、オバマ政権は貿易合意を促進したい大企業に過大な影響力を持たせていると主張している。2人はTPPに関する28の貿易諮問委員会には合計で566名の委員がおり、そのうちの480名が「大企業の幹部や産業界のロビイストたち」であると指摘している。

 

 「促進」法案は貿易合意を修正する連邦議会の権限を制限するものである。この法案は現在、連邦上下両院の採決を待っている状況にある。この法案は共和党の支持を得ている。しかし、ウォーレンとブラウンはまた現在のTPPだけではなく、2021年まで貿易合意に関して、連邦議会の力を制限し、大統領の力を強めるものであると批判している。

 

 ウォーレンとブラウンは「私たちが議員を辞めた後、誰がこの権限を使うことになるのか誰にも分からない」と述べた。

 

(終わり)

このページのトップヘ