古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

タグ:USAID

 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権の閣僚(cabinet members)人事で重要なのは、国務長官や財務長官といった重要閣僚の人事ではない。私が注目しているのは気候変動問題担当大統領特使(U.S. Special Presidential Envoy for Climate)ジョン・ケリー(John Kerry、1943年-、77歳)とアメリカ国際開発庁(USAID)長官(administrator)のサマンサ・パワー(Samantha Power、1970年-、50
歳)だ。今回はサマンサ・パワーを取り上げる。
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バイデン(左)とサマンサ・パワー

 私は著書『アメリカ政治の秘密』の中で、サマンサ・パワーを取り上げた。彼女は2008年の大統領選挙でオバマ選対に入り、民主党予備選挙でヒラリー・クリントン陣営と激しい戦いをする中で、イギリス・スコットランド地方の新聞のインタヴューを受けた際に、ヒラリーを「彼女は怪物よ、もちろんこれはオフレコでお願いね(She is a monster, too—that is off the record)」と発言したことが、そのまま掲載されたために、選対を離れることになった。オバマ政権では国家安全保障会議のスタッフになり、オバマ政権二期目には、閣僚級の米国国連大使に任命された。

 パワーは1990年代に、20代でジャーナリストとなり、民族紛争が激化していた当時のバルカン半島を取材した。そして、2002年に最初の著作『集団人間破壊の時代(A Problem from Hell": America and the Age of Genocide)』を出版した。これが2003年にピューリッツァー賞 一般ノンフィクション部門を受賞する。そこで高い知名度を得た。

 USAIDの予算規模は2016年の時点で272億ドル(約2兆9000億円)、人員は約4000名だ。「庁(Agency)」となっているが、「省(Department)」クラスの規模だ。ここに人道的介入主義者(humanitarian interventionist)のサマンサ・パワーを長官に持ってくる。その意味は重たい。

更に言えば、バイデン政権から、USAID長官も国家安全保障会議(National Security Council、NSC)にも出席できるようにする、ということになった。ここが重要ポイントだ。国家安全保障会議は縦割りの弊害をなくし、大統領の許で、外交や国家安全保障政策を一元化するための会議であり、アメリカにとっても世界にとっても最重要の会議である。議長は大統領であるが、実際の差配は国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)が引き受ける。もっと細かいことは国家安全保障問題担当次席大統領補佐官(Deputy National Security Advisor)が行う。国務長官や国防長官、財務長官などは出席する。これまでの正式な出席メンバーは以下の通りだ。

(貼り付けはじめ)

●議長:大統領、●法的参加者:副大統領、国務長官、国防長官、エネルギー長官、●軍事アドバイザー:統合参謀本部 (JCS) 議長、●情報関係アドバイザー:国家情報長官、●定期的参加者:国家安全保障問題担当大統領補佐官、首席補佐官、国家安全保障問題担当次席大統領補佐官、●追加参加者:財務長官、司法長官、国土安全保障長官、ホワイトハウス法律顧問、アメリカ合衆国国家経済会議委員長、米国国連大使、アメリカ合衆国行政管理予算局局長

(貼り付け終わり)

省の長官(Secretary)でも出席できないものが殆どであるのに、国務省の傘下にあるUSAIDの長官(administrator)が出席できるようになった。これは、「アメリカの海外援助を国家安全保障政策や外交政策と同格に扱う」ということ、歴代政権もぼやかしてきたことを、初めて明確にしたのである。私たちは海外援助と言えば、井戸を掘ったり、農業技術の支援をしたり、学校や道路、橋を建設したり、ということをイメージする。困っている人たちを助ける、ということを想像する。

 しかし、アメリカの海外援助はそうではない。そんなただでお金をくれてやる、そんな無駄なことはしない。海外援助を「ターゲットにした国の体制転換(regime change)のために」使うということなのである。私はその実態を『』の中で書いている。そのために、人道的介入主義派(humanitarian interventionism)のリーダーである、サマンサ・パワーをUSAID長官に持ってきた。更に、サマンサ・パワーがホワイトハウスでの国家安全保障会議に出席できるようにした。バイデン政権は海外介入をやる気満々だ。

現在、新型コロナウイルス感染拡大が問題になっている。バイデン政権は感染症対策のために、このUSAIDの海外援助を利用しようとしている。中国が世界各国に対して支援を行っているが、アメリカもそれに遅れてはならじ、ということであろう。しかし、新型コロナウイルス感染拡大が一番深刻なのはアメリカである。まずは自国のことからしっかりやれよ、そのためにUSAIDの予算を削減して国内対策に回せ、と私は考える。

 人道的介入主義とネオコンは同根である。「アメリカの理想や価値観を世界中に広めて、それで統一すれば戦争は起きない、平和な世界になる」という何とも思い上がった思想を共有している。そのためにターゲットにされる国にとっては災難であり、厄災である。バイデン政権誕生を喜んでいる人間は何ともおめでたい人たち、なのだ。

(貼り付けはじめ)

バイデンは元米国国連大使をUSAIDのトップに指名し、アジア担当スタッフを強化(Biden Names Former U.N. Envoy to Head USAID, Beefs Up Asia Staff

-元米国国連大使サマンサ・パワー(Samantha Power)はトラブルを抱えた政府機関を立て直すことになるだろう。一方、オバマ政権に参加したヴェテラン、カート・キャンベル(Kurt Campbell)とイーライ・ラトナー(Ely Ratner)をアジア担当のトップの地位に就く

ジャック・デッツ、アイミー・マキノン筆

2021年1月13日

『ザ・ヒル』誌

https://foreignpolicy.com/2021/01/13/biden-names-former-u-n-envoy-to-head-usaid-beefs-up-asia-staff/

大統領選挙当選者ジョー・バイデンは元米国国連大使サマンサ・パワーを米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)に指名している。著名なジャーナリストだったパワーを外国向け支援担当政府機関の責任者にすることになる。USAIDは過去4年間に予算削減と運営管理の失敗によって動きが取れなくなってしまっている。

パワーがUSAID長官に指名されるという報道を初めて行ったのは、NBCニュースであった。アイルランドからの移民であったパワーの名前が最初に世間に知られるようになったのは、大虐殺に対するアメリカの反応についての研究でピューリッツァー賞を受賞したことがきっかけだった。パワーのUSAID長官への指名を政権移行ティームが事実だと認めた。今回の人事は、新型コロナウイルス感染拡大への対応で、外国への支援が重要だと、来るべきバイデン政権が考えていることを示している。バイデン政権はUSADI長官を国家安全保障会議の参加メンバーに引き上げる。

バイデンは国家安全保障会議(NSC)に、調整役ポジションを新たに作った。このポジションは世界のより広範な地域や重要な地域を担当することになる。これらの地位はすぐに埋まった。バイデンはキャンベルとラトナーを指名したが、この人事は中国との戦略的競争に集中することを示している。

水曜日、『フィナンシャル・タイムズ』紙は次のように報じた。オバマ政権下で国務省において幹部を務めたカート・キャンベルをインド太平洋担当コーディネイターに指名した。キャンベルはオバマ政権下でアメリカは太平洋地域に集中すべきだと主張した人物である。また、ブルッキングス研究所の研究員ラッシュ・ドシーを中国担当部長に指名したフィナンシャル・タイムズ紙はまた、バイデンの副大統領時代に次席国家安全保障担当副大統領補佐官だったイーライ・ラトナーがインド太平洋問題担当国防次官補(assistant secretary)に就任すると報じた。インド太平洋問題担当国防次官補は、国防省の職位の中で、アジアに関して、連邦上院の人事同意を必要とする、最も高い地位である。

 こうした人事を発表する中で、バイデンはパワーを「世界的な賞賛を受けている、両親と道徳的明確性を主張する声のような存在」と称賛している。そして、パワーは尊厳と人間性のために立ち上がる人物だと評している。

バイデンは声明の中で次のように述べている。「パワーは、彼女自身が提起した、原理に基づいたアメリカの関与に対して、比類のない知識と疲れを知らない努力を行っていることを知っている。USAIDの世界の舞台でのリーダーという役割を再び果たすようになるためには、パワーの専門性と考えが必要不可欠である」。

国連大使として、パワーは国連において、シリアにおける化学兵器による攻撃、ロシアによるクリミア侵攻、エボラ出血熱危機などの諸問題に対するアメリカの対応を主導した。パワーは理想主義者を自称しているが、1990年代のバルカン半島においてジャーナリストとしての取材経験が大きな影響を彼女自身に与えている。バルカン半島において最初にプレスパスを得る際には、若いパワーは本誌『フォーリン・ポリシー』誌の推薦状を得た。この推薦状はカーネギー国際平和財団を通じてもたらされたものだが、当時、パワーは同財団でインターンをしていた。

オバマ政権で、パワーはシリアとリビアで起きている人道上の危機の深刻化を止めるためにはアメリカの力が必要だと声高に主張した。2019年に出版した回顧録『ある理想主義者の教育(The Education of an Idealist)』の中で、パワーは、2013年にホワイトハウスのシチュエーションルームで激しいやり取りがあったと書いている。オバマ大統領は、パワーに向かって、「サマンサ、私たちは皆、君の本を読んでいるんだよ」と述べた。

USAIDはトランプ政権下で脇にどかされ、士気が下がっていた。パワーはそのUSAIDを率いることになる。USAID長官に政治任用された人物が就任することになり、USAIDの士気は上がるだろう。2020年の大統領選挙の翌日、ホワイトハウスは、連邦上院の人事承認が必要なUSAID副長官ボニー・グリックを解任した。その日は、USAIDの臨時長官ジョン・バルサの任期の最終日(連邦欠員法の定めによる)であった。そして、バルサはグリックの後任として副長官になり、USAIDのトップの地位を維持した。

1月6日の連邦議事堂進入事件の後、USAIDのホワイトハウス担当キャサリン・オニールはトランプ政権で登用された人物だが、事件をきっかけにしてUSAIDの幹部職員たちが次々と辞任していくことを批判した。

バラク・オバマ元大統領が連邦上院議員時代にサマンサ・パワーの文章に注目した。バイデンはトランプ政権と連邦議会によって予算を削られ続けたUSAIDに、知名度の高いパワーをもってきた。トランプ政権は繰り返し海外援助予算を削減しようとし、昨年にはUSAIDの予算を22%削減することを提案した。しかし、小の動きは連邦議会によって阻止された。トランプ政権は、イラクのような緊急性の高い場所でのフルタイムの援助担当職員の数を減らし、最低限の帰還要因だけを残すようにした。

パワーはバイデン、そして国務長官内定者アントニー・ブリンケンと直接の関係を持ち、人権問題に対して熱心に発言してきたという記録は残っているが、国際開発の分野におけるバックグラウンドは持っていない。パワーのUSAID長官指名に到達するまでに、バイデン・ハリス政権以降ティームは、国連世界食糧計画の責任者を務めたエルサリン・カズンやオバマ政権下でUSAIDの幹部職員を務めたジェレミー・コインディアックも候補に挙がった。コインディアックはツイッターなどを通じてトランプ政権の新型コロナウイルス感染拡大への対処を激しく批判したことで有名だ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

amerikaseijinohimitsu019
アメリカ政治の秘密
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ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側
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 古村治彦です。

 

 アメリカでは喜ばしいことに、国務省とUSAIDの予算削減をトランプ大統領は提案していますが、予算を決める連邦議会では削減を止めさせようという動きもあります。この動きは民主、共和両党にあります。また、元米軍の司令官クラスの人々も予算削減に反対し、懸念を表明しました。

 

 国務省、USAID、米軍は「世界中にアメリカと同盟諸国に対する様々な脅威が存在する」ということを理由にして多額の予算を分捕ってきました。そして、世界各国の政治に介入し、それらの国々を不幸にしてきました。日本もその中に入っています。日本の場合は、それに加えてお金の貢がされ係をやらされています。米国債の購入と為替市場への介入を通じて日本のお金をアメリカに貢いでいます。

 

 国務省の予算に関しては各国にある大使館や政府機関の出先の保護のために4割以上が割かれ、外交に使われているのが55%だということです。大使館の警備はアメリカ海兵隊が行っていますが、警備に対する予算が増えるということは海兵隊の仕事と予算が増えるということです。ですから、国務省の予算が減らされ、対外活動が減らされると海兵隊の食い扶持が減るということになります。

 

 米軍の大将クラスだった人々が連名で国務省とUSAIDの予算削減に反対しているのは、こうしたこともあってのことでしょう。また、アメリカが対外活動を行えば衝突や摩擦が起き、それを解決するために米軍が出るということになります。従ってアメリカの対外活動が減れば、米軍が今のような巨大な組織である必要もなくなる訳ですが、そうなれば、米軍の食い扶持や予算は減らされるということになります。国務省と米軍は一蓮托生な訳です。

 

 ですが、アメリカは既に力を失いつつあります。いつまでも膨大な数の米軍を外国に置いておくことはできませんし、米軍にかかる莫大な予算を支えられなくなっています。こうして帝国は衰退していくのでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

国務省とUSAIDは大幅な予算削減に直面(State Department, USAID Face Drastic Budget Cut

-民主、共和両党が政府予算における妥協が成立し、政府機関の閉鎖は終わった。しかし、アメリカの外交と国際開発プログラムの予算は削減されることになる。

 

ダン・デルース、ロビー・グラマー筆

2018年2月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/02/12/state-department-usaid-face-drastic-budget-cut-congress-military-generals-admirals-warn-against-slashing-diplomacy-budget/

 

国務省と米国国際開発庁(U.S. Agency for International Development、USAID)は先週民主、共和両党の間で成立した予算をめぐる合意を受けて、大幅な予算カットに直面している。先週の合意によって政府機関の閉鎖は終了した。連邦議会議員たちは税収不足を埋める更なる財源を探して苦闘している最中だ。

 

約88億ドルの税収不足を補うために、アメリカの外交団と国際開発プログラムに対して、1990年代以降で最大の予算削減が課されることになるだろう。与作削減によって国務省の士気の低下が起こり、外交官たちは「ドナルド・トランプ大統領は外交に対して熱心ではないのだ」と認識するようになっている。

 

民主、共和両党の連邦議会議員たちは国務省に予算をつけようと必死になっている。一方、トランプ政権の幹部たちは国務省の予算に関する議論には参加していない、と連邦議会関係者は語っている。

 

国務省と米国国際開発庁(USAID)の予算不足は2018年度、更には2019年度の各事業に影響を及ぼす。連邦議会の指導者たちとホワイトハウスとの間で先週に成立した予算に関する合意によって政府機関の閉鎖の長期化を避けることが出来た。合意は2018年度と2019年度の支出レヴェルを設定することで締結された。しかし、予算に関する合意によって米軍予算は増加したが、海外緊急活動作戦(Overseas Contingency Operations)における非防衛関連予算は削減された。海外緊急対応作戦予算の3分の1はこれまで国務省とUSAIDの予算として供給されてきた。

 

その結果、2018年の政府予算における国務省予算を増額させる方法を探すのに数週間残っていないという状態になった。2019年の予算に関しても同様のことが起きるであろう。

 

一方、トランプ政権は月曜日、2019年の連邦政府予算要求を提出することになる。2019年の予算に関して、ホワイトハウスは国務省の予算を削減するのかどうかは明確になっていない。

 

2018年の外交関係予算が削減される可能性が高いという観測を受けて、151名の退役した将官クラスの高級軍人たちが共同して懸念を表明した。この中には陸軍、海軍、空軍、海兵隊、特殊部隊の司令官クラスだった人物たちが多数含まれている。彼らは、「アメリカの国家安全保障に対する世界規模での脅威が高まっている中で、このような予算削減を行うとアメリカの世界に対する影響力が落ちてしまう」という警告を発した。

 

元将官たちが連邦議会の指導者たちに宛てた書簡の中には、「私たちは現在のような不安定な時代において世界をリードする能力を減退させることはすべきではない」という文言もある。この書簡は「USグローバル・リーダー・シップ・コアリション」という組織によって出された。この組織は、軍部、ビジネス、宗教各界に、国務省とUSAIDを支持することを求めるために活動している。

 

高級将官であった人々は、重要な外交職の多くが空席になっていることに懸念を表明し、また、「アメリカの安全を維持するために国防と共に外交と開発援助を強化することが重要だという確信」を持っていることを表明した。

 

イスラム国が戦場で敗北を喫している状況下で、イラクとシリアにおけるアメリカの外交と両国の再建支援は特に重要度を増している、と元将官クラスの人々は主張している。彼らは次のように書いている。「ISISに対して軍事的に優勢になっているが、疑問なのは戦場で勝ち得た勝利を守る準備が出来ているのか、悪者たちが空白に這いこまなうように防げるかどうかということだ」。

 

国務省の予算を2017年並みに戻すために、連邦議員たちはこれから難しい決断をしなければならないだろう。彼らは国内の他の優先問題と折り合いをつけねばならない。連邦議会両院の予算委員会は、2018年の予算において630億ドルの一任された予算を分割することになるだろう。しかし、約210億ドルは医療研究、対麻薬研究、退役兵士やその他に分野に投じられることになる。

 

連邦上院外交委員会の民主党側幹部委員であるボブ・メネンデス連邦議員(ニュージャージー州選出)は、金曜日書簡を発表した。書簡の中で、メレンデス議員は同僚議員たちに向けて、国務省とUSAIDの予算を現在のレヴェルに回復させるように予算を見直すことを求めた。

 

メネンデス議員は次のように書いている。「アメリカは世界各地で複雑化した多くの問題に直面している。この世界はアメリカの確固とした指導力を必要としている。国際問題に関連する予算はこうした必要に応えるものとならねばならない」。

 

本誌が入手した書簡は、リンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とパトリック・リーリー連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)宛であった。2人は、国務省の予算を監視する連邦上院歳出小委員会の委員長と民主党側幹部委員だ。

 

予算に関する議論をフォローしているあるロビイストは次のように語っている。「安全保障支援から伝染病や飢饉対策までアメリカは関わっている。これらに関する予算が大幅に削減されるとアメリカの外交と国際援助プログラムに大きな影響が出るだろう」。

 

国務省の報道官は本誌の取材に対して次のように述べた。「国務省は2018年度の超党派の予算案について特定のコメントをする立場にない。私たちは、決定者たちが政府に対する予算の配分をするであろうと認識している」。

 

国務省の予算の中で実際に外交に使われている金額について正確に伝えられていない。世界各地の米国大使館の警護にかかる経費は増大し続けている。この経費は国務省全体の予算の中で割合を大きくしている。司法省、国土安全保障省、その他の連邦政府機関が世界各国にある米国大使館で業務を行っているのがその理由となっている。そして、国務省はこれらの帰還の保護のために予算を使わねばならなくなっている。

 

アメリカ外交協議会のデータによると、2008年、国務省は「外交と領事プログラム」関連予算の17パーセントを警備に使っていた。2018年の予算請求の中で、警備関連予算は「外交と領事プログラム」予算の45パーセントを占めるまでになっている。「外交と領事プログラム」の予算の55パーセントだけが実際の外交に使われることになる。

 

USグローバル・リーダー・シップ・コアリションの会長兼最高経営責任者リズ・シュレイヤーは「アメリカと同盟諸国は様々な脅威に直面している。アメリカ政府は世界から撤退することはできない」と語っている。

 

1年前、トランプ政権は国際問題に関連する予算の30パーセント減額を提案し、元高級外交官や軍人たちから激しく批判された。民主、共和両党の連邦議員たちはこの提案を退けた。

 

シュレイヤーは、連邦議会が今回の大きな予算カットに対して同様の反応をしてほしいと望んでいる。シュレイヤーは本誌の取材に対して、「私は、今度も前回と同様の大きなそして明確な反対の声が上がり、国務省とUSAIDに対して超党派の支持があるものと考えている」と述べた。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ政権が国家予算を発表し、国務省とUSAIDの予算を大幅に削減し(30%の削減)、国防費を540億ドル増加させました。これについては、批判の声が多く挙がっています。しかし、私はこれを当然のことで、大変喜ばしいことだと考えています。

 

 2011年のアラブの春から始まった中東の不安定な状況は、ムアンマール・カダフィ大佐の殺害、ベンガジ事件へと発展し、シリア内戦、シリアとイラク国内でのISの勃興というところまで悪化しています。また、ウクライナを巡る西欧とロシアの対立ですが、これはウクライナ国内の歴史的に複雑な問題とも相まって、こじれてしまいました。アメリカはロシアを非難し、制裁を課していますが、トランプ大統領は選挙戦期間中から、ロシアのウラジミール・プーティン大統領を賞賛し、ロシアとの関係改善を主張しています。また、中国に対しては厳しい言葉遣いをしていますが、貿易戦争をやる気はなく、また、北朝鮮は中国の問題だとしています。

 

現在の世界の不安定要因が発生した原因は、端的に言って、アメリカの対外政策の失敗が理由です。特に、共和党のネオコン、民主党の人道的介入派がアメリカ外交を牛耳ってきた結果、現在の状況にまでなってしまいました。こうしたことは拙著『アメリカ政治の秘密』で明らかにしましたので、是非お読みください。
 

 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカの政府機関である米国国際開発庁(USAID)についての記事をご紹介します。USAIDについては、拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)で詳しく書きましたが、アメリカの外国介入の尖兵です。


 今回の記事の主張は、
USAIDの目的をはっきりさせろ、それは、外国に行って、政府機関を作ったり、改善したりすることだ、というものです。USAIDは現在、衛生や教育、人権などの改善のために、世界100カ国近くで活動しています。しかし、そうしたものは、他の省庁や機関に任せて、USAIDは、世界各国の政府機関の創設や改善に特化しろと言うのです。

 この主張は、ヒラリー・クリントンが大統領になったら、実際に行われることになるでしょう。現在でも国務省やUSAID内部には、人道的介入主義派がたくさんいるのですから。

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USAIDの本部 

 
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 これは恐ろしいことです。1930年代の日本と満洲国の関係を考えてみてください。満洲国は、清帝国最後の皇帝であった溥儀を執政(後に皇帝)にして誕生しました。独立国ですが、政府機関は日本が作り、日本の官僚たちが実権を握りました。また、関東軍司令官が駐満日本大使を兼務し、定期的に溥儀と面会し、日本の意向を伝え、強制しました。これは「内面指導」と呼ばれます。満洲国の事例を考えると、論稿の著者たちがUSAIDにやれ、と言っているのは、この内面指導のような形の「外国支配」の基礎を作れ、というものです。これは、実際に政府機関をアメリカに作られる方からしてみれば、大変なことで、アメリカは憎悪の対象になることも起きるでしょう。

 

 また、興味深いのは、国家機関創設の専門家がいないので、最近のイラクやアフガニスタンでその分野の経験がある陸軍の将校たちを雇用しろと言っている点です。アメリカ軍は、膨大な予算を食いつぶす機関であり、その縮小がオバマ政権下で進められました。縮小となると、人員も整理されます。つまり、解雇になったり、これ以上いても昇進はないと言われたりすることになります。そうなると、不満が溜まる訳ですが、「経験を活かして、引き続き、公務員として働ける(しかも表向きは世界に貢献できる仕事ということで)」となれば、不満もある程度は解消されます。

 論稿の著者たちは、USAIDが衛生や教育の分野は別の組織や団体に任せるべきだと書いています。「トイレを作るような事業は平和部隊に任せろ」と。私はここで、自衛隊のアメリカ軍による下請け化が進んでいる中で、日本の海外援助組織のUSAIDによる下請け化が進むのではないかと思います。7月1日、バングラデシュのダッカで痛ましい事件が起きました。JICAがUSAIDと連動して動くというようなことになると、残念ながらこうした事件がこれからも起きてしまうかもしれません。

 

 こうやって読むと、なかなか危険な論稿であることが分かっていただけると思います。それではお読みください。

 

=====

 

米国国際開発庁は「海外の国家機関創設省」となるべきだ(USAID Should Become the Department of Nation-Building

―ワシントンにある海外の発展途上国の発展に関わる政府機関は、無秩序状態に陥った外国に民主政治体制ではなく、まずは政府を樹立することに集中する必要がある

 

マックス・ブート、マイケル・ミクラウシック筆

2016年6月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/06/22/usaid-should-become-the-department-of-nation-building/#_ftn1

 

 外国の国家機関創設(nation-building)は、アメリカ政治においては痛みを思い出させる言葉となっている。この言葉を聞くと、アフガニスタンとイラクにおける長きにわたる、人的、物理的に消耗の激しかった戦争を思い出す人々が多い。バラク・オバマ大統領とドナルド・トランプとの間に一致する点はほとんどないが、外国の国家機関建設への反対では両者は一致している。歴代の大統領も「国家機関の創設(問題の解決)はまず国内から」と言っていたが、オバマ大統領とトランプもまたこの考えを持っている。

 

 しかしながら、アメリカの指導者たちは国家機関創設に対する反対を唱えながらも、破綻国家(failed states)がアメリカの国益にとって深刻な脅威となっていることを認めている。オバマ大統領は2016年の一般教書演説の中で、「たとえ、イスラム国が存在しない場合でも、不安定はこれから世界の多くの場所で増大していくだろう。中東で、アフガニスタンで、パキスタンの一部で、中央アメリカの一部で、アフリカで、そしてアジアで。これらの場所の中には、テロリスト・ネットワークの避難場所となるところも出てくるだろう。その他の場所では、民族紛争、飢餓、新たな難民を生み出すことだろう。世界は、私たちにこうした問題の解決のための手助けをしてくれるように求めているのだ」と述べている。

 

 しかし、アメリカは、軍事力の使用のみで世界の不安定さに対処することはできないのだ。アメリカ国民は、大義がないイラクやアフガニスタンで行った大規模な介入を支持しないだろう。一方、ドローンによる空襲や特殊部隊による急襲のような小規模な軍事的手段は、アメリカの安全保障を守る上で適切な手段とはなっていない。「活発な」攻撃でタリバンのムラー・マンスールやアルカイーダのオサマ・ビン・ラディンのようなテロ組織の指導者を殺害することは可能だが、確立されたテロ組織自体を壊滅することはほぼ不可能だ。そして、法と秩序の維持を実行できる自生的な政府機関を構築することは不可能だ。

 

 アメリカには、無秩序に陥った国々で、より良く機能する政府機関を作り上げる、いわゆる政府機関創設能力を持つ文民側の行政機関が必要だ。国務省や農務省といった様々な連邦政府の省庁はそれぞれが政府機関創設プロジェクトを行っているが、それを主要な目的にしている訳ではない。政府機関創設準備の失敗が明らかになったのは、2003年のイラク侵攻の時だ。当時のブッシュ政権は、サダム・フセイン政府から引き継ぐために、機能不全に陥った連合国暫定当局を創設したが、悲劇的な結果になった。この結果は予測されていた。現在、国家機関創設事業は、アメリカ軍に押し付けられている。アメリカ軍は他にも多くの任務をこなさねばならない。アメリカ軍は急ごしらえで国家機関創設を行える能力を持ってはいるが、しっかりと計画を立て確実に実行するまでの能力は備えていない。

 

 アメリカは、国家機関創設を目的とする政府機関を必要としている。軍事占領をせずに、つまり、アメリカ軍の駐屯を必要とせずに自国の領土を守れるようにするために、アメリカの同盟諸国の助けを借りながら、国家機関を作ることにまい進する連邦政府の機関が必要なのだ。幸運なことに、アメリカ政府には既にこの目的にうってつけの機関が既に存在している。それがアメリカ国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)だ。しかし、外国の国家機関創設という目的を達成するためには、USAID自体を変革する必要がある。USAIDは少ない労力で最大の成果を上げるような組織にならねばならない。USAIDは、戦略的に重要な国々での中核的な機能を強化するような事業を行うべきだ。世界各地の全ての貧困国で活動することで組織自体を拡大すべきではない。

 

 USAIDの2016年度予算は、223億ドル(約2兆4000億円)である。その中で、107億ドル(約1兆500億円)は、USAIDが直接管理し、運用できる中核的予算である。その中で、外国の国家機関創設に使われる予算は、24億ドル(約2700億円)のみだと考えられている。その他の予算は、貧困解消、世界各国の健康状態の改善、女性の地位向上、教育、衛生、経済発展、農業改良に使われている。これらの事業は素晴らしいものだ。しかし、USAIDは、これらの事業に関して、これらの分野で活動する国連や世界銀行のような国際機関とオックスファムとアフリケアのような非政府組織と比較して、優れた成果を上げているとまでは言えない。従って、USAIDは、これらの分野を国際機関や民間組織に任せるべきだ。そのために、これらの分野で活動するNGOへの支援を削減すべきだ。

 

 USAIDと擁護者たちは、USAIDが行うことは全て、外国の国家機関創設に貢献するためのものだと主張するだろう。USAIDは外国で衛生、電気、環境保護のような公共財の支援を行っている。成功している国々というのは、こうした公共財の国民への提供を行っている国々のことだと考えられている。USAIDのウェブサイトには次のように書かれている。「国民への衛生、安全、福祉の提供を確保できる政府や機関が存在する時のみ、進歩は継続される」。これは正しい。しかし、これらの国々が公共財を国民に供給するから、これらの国々は成功していると言われているのではない。これらの国々は国家機関創設に成功しているから、公共財を供給しているのだ。USAIDは、公衆衛生や教育、その他の分野で一時的に成果を上げるよりも、支援している国々がそれぞれの抱える問題に対処できるように国家機関を創設し、その能力を引き上げることに力を注ぐべきだ。そうした事業がたとえ、USAIDの理想からかけ離れたものであったとしても、そうすべきだ。

 

 発展途上諸国では、民主政治体制がぜいたく品となっている場合が多い。しかし、USAIDの外国の国家機関創設に関するプログラムは、「民主政治体制・人権・統治」プログラムと名付けられている。最も重要な問題である「統治」が最後にきている。これは、USAIDが、政府機関を一から作り上げ、育て上げるという仕事よりも、選挙、政党、市民社会の組織の育成に力を入れていることを示している。しかし、非民主的な国々が責任ある行動を取る限りにおいて、アメリカはそれらと共存できる。ヨルダンとシンガポールはアメリカにとって緊密な関係にある同盟国だ。韓国、チリ、インドネシアのような現在の同盟諸国の多くは元々非民主的であったが、今は民主国家になっている。アメリカは、エジプトやヴェトナムのような戦略的に重要な国々の人権侵害を見て見ぬふりをする傾向にある。これには批判的な人も多い。

 

 無政府状態の場所が世界各地にある状態で、アメリカは生きていくことが出来ない。なぜなら、それらの土地は、テロ組織、犯罪組織、伝染病、難民、その他の諸問題を生み出し、世界中に送り出すからだ。代議制の機関を育て上げることは、全米民主政治体制のための基金(National Endowment for DemocracyNED)にとってはふさわしい仕事である。しかし、USAIDは、民主的な統治よりも実際に成果が上がる統治の方に主眼を置くべきだ。

 

 電気から自由な選挙まで、誰からも歓迎されるが緊急的に必要とは言えないサーヴィスばかりをやるのではなくて、USAIDは安定した国家にとっと必要不可欠な事業に集中すべきなのだ。そうした事業として、暴力の正当な使用を独占できる軍隊や警察などの訓練、正義を実行することが出来る裁判所の支援、根深い腐敗に負けない職業意識の高い公務員の育成と支援、透明性を確保しながら税収を確保することが出来る財政システムの構築が挙げられる。現在のUSAIDはこうした事業を行うだけの能力を持っていない。これらの事業を適切に行うための政府機関はアメリカ国内に存在していない。たとえば、アメリカ軍は外国の軍隊を支援している。しかし、肝心の外国の警察と裁判所を支援するという仕事は、国務省と司法省に任せる。国務省と司法省は、価値観が疑わしい契約業者にこれらの事業を丸投げしてしまう。USAIDは、あまり重要ではない事業から手を引き、機能を起用化する方向に進むべきだ。言い換えるなら、USAIDは、モザンビークでトイレを作る仕事は、平和部隊(Peace Corps)に任せるべきなのだ。

 

 USAIDは現在100を超える国々で活動している。そのうちの約半数の国々で、「民主政治体制・人権・統治」に関するプログラムを実行している。このように手広く事業を展開すると、一つ一つの事業の内容が薄くなってしまう。現在の職員の数と予算から考えて、30から40までに事業対象国を絞らないと成果を上げることはできない。アメリカにとって重要な外国における国家機関創設という目的を達成するために何も今以上の予算を付ける必要もない。

 

 USAIDは、アメリカの戦略にとって極めて重要な、効果をあげられる国々に努力を傾注すべきだ。アメリカにとってイスラム教徒によるテロ攻撃は脅威となっている。この状況下では、イスラム教徒の人口が多い国々を優先すべきだ。こうした国々は、西アフリカから東南アジアまでの「不安定の弧」に位置している。リビア、ソマリア、シリア、イエメンのような国々では、中央政府は存在しないか、とても弱体化している。

 

 トルコやペルシア湾岸の君主国のように比較的富裕な国々、そしてスーダンやイランのようにアメリカに敵対的な国々は除外する。パキスタンやパレスティナ政府のような名目上の同盟国に対して支援を行うかどうかを判断することは大変難しい。それは、これらの国々の政府はテロを支援しているからだ。USAIDが成果を上げられないなら(政府機関がその基本的な機能を果たす能力を上げることができないなら)、USAIDは関わるべきではない。

 

 USAIDは、イスラム過激主義の拡散を止めるために、各国の地方政府の統治能力を確立する仕事をしている。しかし、それよりも、他国に従属させられる危険に直面している戦略的重要な国々の国家機関創設事業に集中すべきだ。ロシアからの進攻の危険があるウクライナとグルジア、中国からの進攻の危険があるモンゴルとミャンマー、巨大な麻薬密売組織の卿に晒さられている南米諸国、特にコロンビア、エルサルヴァドル、グアテマラ、ホンデュラス、メキシコといった国々に集中すべきだ。USAIDはこれらの国々には既に進出している。しかし、曖昧な目標と手を広げ過ぎた事業のために、基本的な政府機能の確立を重要としている、破綻国家になりかねない国々に予算と人材を重要な事業に集中させることが出来ていないのだ。

 

 こうした事業は重要である。そして、現在、USAIDが活動している国のうち、半分の国では必要ではない事業である。USAIDは、レソトやマダガスカルのような戦略的に重要ではない国々や中国のようなアメリカに友好的ではない国々、インドのような発展著しい国々に対して、基本的に不足している予算を投入すべきではない。予算と人材は、地政学的に見返りが大きい国々に投入すべきだ。

 

 外国の国家機関創設をより効果的に行うために、USAIDはその方法を変える必要がある。そのためには、USAIDはアメリカ軍から学ぶべきだ。最近の外国の国家機関創設の経験から教訓を学び取り、外部の専門家たちに事業の成果を精査し、評価してもらうのだ。USAIDが使っている契約業者や職員が事業の成果を評価するべきではない。取り敢えず予算が消化されたからその事業は成功したと言うのではなく、失敗したなら失敗したとはっきりさせるべきだ。

 

 USAIDは内部の官僚機構を合理化すべきだ。現在、USAID内部には、14の局と11の独立した事務局が存在するが、これほど多くの部局は必要ではない。USAIDには管理局が存在するが、それなのに他に、人的資本・才能管理事務局が存在する必要があるだろうか?中間管理者たちに、大きな出来事が起きた際には、部局の垣根を越えて、予算や人材の配分を変更するための責任と権限を与えるべきだ。ロビイスト、弁護士、補助金行政の専門家たちを使って、複雑な契約をして、補助金をがっぽりと稼ぐ、ワシントンに本社を置く決まった契約業者ばかりを使うべきではない。例えば、2010年に発生したハイチの大地震の後、USAIDは、アメリカ連邦議会に承認されて、36億ドル(約4000億円)を支出した。AP通信の報道によると、全支出のうち、ハイチの企業に流れたのは、1.6%しかなかった。USAIDの援助予算の最大の受け手は、ワシントンに本社を置く、USAIDからの補助金を特に受けているケモニクス・インターナショナルであった。

 

 USAIDが契約業者への依存を減らすためには、職員たちを変革する必要がある。USAIDの職員たちは、才能はあるのだが、国家機関創設にとって必要な知識を持つ専門家ではない。土木工学、都市管理、公務システム開発、治安維持、開発経済の専門家はほとんどいない。職員の多くは、国際関係論の修士課程を修了したばかりで、政府機関やビジネスの警官が乏しい。USIADは、巨大組織の運営や外国文化の中での勤務の経験豊富な中途採用の専門家をより多く採用すべきだ。そうした人材の供給源として、アメリカ陸軍が考えられる。アメリカ陸軍では現在、国家機関創設の経験を持つ将校たちが多く除隊させられている。

 

 これまでに提案してきたいくつもの変革案はどれを行うにしても、既得権益を持つ勢力によって激しい抵抗に遭うだろう。USAIDのプログラムが撤退する国々からは不平不満が出るだろう。USAIDの職員や契約業者で仕事や補助金を失う人々もまた不平不満を訴えるだろう。USAIDの変革を成功させるには、次期政権がUSAIDの変革を重要政策に位置付けるしかない。

 

 もちろん、USAIDを再編しても、全てのケース、もしくはほとんどのケースで国家機関創設に成功する保証はない。国家機関創設は大変な困難の伴う事業なのだ。しかし、アメリカには、コロンビア、東ティモール、エルサルヴァドル、ドイツ、イタリア、日本、コソヴォ、フィリピン、韓国と言った共通点のない様々な国々の国家機関創設に貢献してきた歴史がある。USAIDはこうしたケースで一定の役割を果たしてきた。USAIDがこれからどれくらい成功を収めることが出来るかを予測することはできないが、政府の基準から見て比較的適当な投資でいくつかの成功が収められたら投資に見合っていると言える。アメリカが際限のない軍事介入を避けて破綻国家の問題に対処したいと望むなら、国家機関創設以上の選択肢はない。アメリカ政府が外国の国家機関創設で成功しようという場合には、再編されたUSAIDが主導的な立場に立たねばならない。

 

(終わり)





 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 アメリカ外交こぼれ話を皆様にご紹介します。USAIDについては、拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)、2つ目の記事に出てくるヴィクトリア・ヌーランドについては副島先生の『日本に恐ろしい大きな戦争が迫り来る』(講談社、2015年)をお読みください。

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オバマは側近ゲイル・スミスを
USAIDの運営のために送る(Obama Taps Insider Gayle Smith to Lead USAID

 

デイヴィッド・フランシス筆

2015年4月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/04/30/obama-taps-insider-gayle-smith-to-lead-usaid/?utm_content=buffer5a164&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 バラク・オバマ大統領はヴェテランのアフリカ専門家で、側近でもある人物に米国国際開発庁(USAID)の運営を任せると発表した。この動きは、スキャンダルにまみれた支援専門の政府機関をホワイトハウスに近づけようとするものだ。

 

 ゲイル・スミスは現在、国家安全保障会議(NSC)開発問題担当上級部長であり、長年にわたり大統領国家安全保障問題担当補佐官スーザン・ライスと一緒に仕事をしてきた。元ジャーナリストのスミスはビル・クリントン元大統領とも深い関係があり、クリントン政権では国家安全保障会議のアフリカ担当上級部長とUSAID顧問を務めた。

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ゲイル・スミス

 

 連邦上院の承認を受けた後、スミスは、ここ数年スキャンダルが頻発している、予算総額220億ドルの巨大政府機関を運営することになる。また、USAIDは世界規模の災害に対してうまく対応できなくなっている。

 

 昨年、USAIDは、ソーシャル・メディアのアカウントを使ってキューバの若者たちに向かってカストロ政権を転覆するように訴えたと批判されている。同時期、オバマ政権はキューバとの外交関係を再構築しようとしていた。その数カ月後、USAIDのラジヴ・シャー長官はアメリカとキューバとの間の歴史的な展開が発表される数時間前に辞任した。この際、辞任理由は発表されなかった。シャーは5年にわたりUSAID長官を務めた。

 

 2013年、複数の捜査の結果、2006年から2012年までの間にUSAIDによってアフリカに送られたマラリア薬の20%(6000万ドル分)が裏市場に流れたことが明らかになった。

 

 しかし、医者でもあるシャーは実績も残した。彼は昨年アフリカで猛威を振るったエボラ出血熱に対する対応に成功した。その際にいくつかの医療上の新展開も起きた。その中には医療従事者向けの新たな防御スーツも含まれている。現在、USAIDは世界中に展開しており、チベットの大地震からシリアの難民問題など様々な危機に対処している。

 

 木曜日に発表された声明の中で、オバマ大統領は、スミスの「エネルギーと情熱はアメリカの国際開発政策を主導する力となってきた」と述べた。ジョン・ケリー国務長官はスミスの「責任感は変革の時期に必要なものであり、変革を起こすために必要なものだ」と述べた。

 

 各支援団体はスミスのUSAID長官の指名を歓迎している。スミスは連邦上院の承認を受けられると確実視されている。USグローバル・リーダーシップ・コアリションのリズ・シュレイヤー会長は、「共同体、アメリカ政府、世界各国と彼女は良好な関係を持ち、尊敬を集めている。それによって、USAID指導部はスムーズに交替し、うまく運営していくことが出来るだろう」と述べた。オックスファム・アメリカ政策とキャンペーン担当副会長ポール・オブライエンもスミスの指名を賞賛した。

 

 スミスはアフリカの専門家であり、彼女の専門性はUSAIDの新たな展開にとって必要なものだ。オバマ政権は二期目のスタート当初、予算70億ドルを割いてパワー・アフリカ・イニシアティヴを始めると発表した。パワー・アフリカ・イニシアティヴはアフリカ大陸全体で電気使用を拡大させようとする計画であるが、完全な成功を収めてはいない。

 

(終わり)

 

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米国務省幹部外交官はトルコの政府官僚たちとの間で「アホなブロンド」事件を起こした(Senior U.S. Diplomat Raises ‘Dumb Blonde’ Incident with Turkish Officials

 

ジョン・ハドソン

2015年5月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2015/05/01/victoria-nuland-raises-dumb-blonde-incident-with-turkish-officials/?utm_content=buffer11424&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

トルコの首都アンマンの市長は、警察の暴力について選択的に批判を行った米国務省報道官マリー・ハーフを「馬鹿なブロンド」と呼んだ。これに対して米国務省は非難とユーモアの混ざった対応を行った。

 

 悪役を買って出たのはヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補ヴィクトリア・ヌーランドだった。金曜日、ワシントンDCフォギー・ボトムにある米国務省の報道官はヌーランドが「トルコの政府高官たちについて不適切なコメントをした」と述べた。

 

 好漢、より正確には道化役を演じたのが駐トルコ米大使ジョン・バスだ。バスはSNSのインスタグラムに加工した写真を掲載した。その写真はバスが金髪になった写真でその下に「アメリカの外交官:私たちは全員金髪です」とキャプションが付けられていた。

 

 バスの連帯を示すための滑稽な行動に対して、アンカラ市長メリウ・ゴチェックは今週初めにソーシャル・メディアを使って、米国務省に対してボルティモアでの警察の暴力に関する偽善を批判した。

 

ハーフと米国務省の幹部たちは2013年にイスタンブールで起きた抗議活動に対するトルコ政府の厳しい弾圧を批判した。フレディ・グレイの死に対して抗議活動が今週ボルティモアで発生した。これを受けてトルコの与党である「正義と発展」党の幹部であるゴチェックはツィッターで、トルコの政府系新聞が掲載したハーフの写真と記事のタイトルを掲載した。そのタイトルは「トルコの警察が過大な暴力を行使していると述べたアホなブロンド女はどこにいる?」というものであった。

 

ゴチェックは英語で次のようなコメントを付けた。「ブロンド女よ、今すぐ答えろ」。

 

 今回の事件について木曜日に定例記者会見で質問された時に、ハーフは、「私は何か反応を示すことで、彼らの行為を際立たせるようなことはしたくないのです」と述べた。

 

(終わり)









 
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