古村治彦です。
2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行いたしました。アメリカ政治についても分析を行っています。是非手に取ってお読みください。
日本では、ベビーブーム世代、団塊の世代、新人類、団塊ジュニア、ゆとり世代、さとり世代といった言葉で、年齢層で人々をグループ分けすることがある。アメリカでも同じようなことがあり、戦後生まれのベビーブーム世代、X世代(1960-1979年に生まれた人たち)、Y世代(1980-1995年に生まれた人たち、ミレニアル世代とも呼ばれる)、Z世代(1995-2010年に生まれた人たち)ということになっている。X世代は既に中年期に入り、Y世代とZ世代は若者世代ということになる。それぞれに特徴づけがされているが、アメリカの若者世代の共通認識は、「自分たちは親やその上の世代よりも良い目を見ることはない」というものだ。
今回ご紹介する記事では、20代の政治進出とアメリカ政治の高齢化に焦点が当てられている。日本でもよく似た議論がなされるが、日本では「老害」という言葉が良く使われる。アメリカでは、ジョー・バイデン大統領が史上最高齢、81歳で世界で最も激職とも言われるアメリカ大統領を務めていて、更に次の任期を目指そうとしている。しかし、これは誰にでもあることで仕方がないが、衰えは隠せない。そうした中で、バイデン大統領の健康や年齢に対する懸念は高まっている。これは最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)でも詳しくご紹介した。
そうした中で、若者たちが政治に参加しようとしている、実際に20代で、連邦議員になった人物、今年の選挙に立候補している人物たちがいる。2019年に、ニューヨーク市の選挙区で、有力議員を破ったアレクサンドリア・オカシオ・コルテス(AOC)連邦下院議員は、20代で政治家となったが、この時はY世代が政治参加しつつあるということを言われた。それから数年経ち、彼女よりも若い、Z世代の人たちが政治を目指し始めている。
人間は生老病死、順番である。今の70代、80代の人も若者だったし、今の20代、30代も老人となっていく。一概に世代や年齢で語るというのはあまり良いことではないと思う。「老壮青」という言葉があるが、このバランスが取れていること、そして、若者たちが政治参加しやすい環境が重要だと考える。アメリカや日本の政界の状況を見ると、高齢化しているということは否めない。ここに若い力が参加する、そのための健全な競争があることが何よりも重要だが、そのためには有権者の考えや意識も重要だ。
(貼り付けはじめ)
アメリカ連邦議会においてZ世代が地位を上げようとしている(Gen Z seeks to grow ranks in Congress)
ジュリア・ムラー筆
2024年1月1日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/4370027-gen-z-congress-maxwell-frost/
政治家の高齢化に対して不満が高まる中、今年もまたZ世代の立候補者が増えている。
マクスウェル・フロスト連邦下院議員(フロリダ州選出、民主党)は、2022年の中間選挙後、Z世代(1997年以降に生まれた年齢層)に属する最初の連邦議員となった。
Rep. Maxwell Frost (D-Fla.) became
Congress’s first member belonging to Gen Z — the age bracket considered to
begin with people born in 1997 or later — after 2022’s midterms.
現在、少なくとも2名のZ世代に属する民主党員が、連邦下院において、自分たちの世代の存在感を高めるために、今年の選挙でフロストの同僚になろうとしている。連邦下院議員の中央値は約58歳である。
カリフォルニア州第45選挙区に立候補している26歳の民主党員で、弁護士のシャイアン・ハントは、「若者たちは、私たちが政治に関わるようになって、私たちが受け継いでいる政府の現状、そして、私たちがこの仕事を真に受け止め、ばらばらになっているピースを元に戻す努力をしなければならないことに、率直に言って打ちのめされている」と語った。
ハントは、気候危機、民主政治体制、女性の権利に関する懸念を、権力を握っている上の世代が、若いアメリカ人が感じているような切迫感を持って取り組んでいないとして、これが「実存的脅威(existential threats)」であると述べている。
シャイアン・ハント
ハントは「若者たちはこの状況を深刻に受け止めており、待ったなしの状況だと分かっているので、かつてない勢いで政治に飛び込んできている」と述べた。
ハントは、2022年の中間選挙で、わずか数ポイント差で再選を果たした現職の共和党議員ミシェル・スティール(共和党)と対決することになりそうだ。もし勝てば、ハントは初のZ世代に属する女性議員となる。
そして、選挙運動をする中で「若い女性の政治進出に対する無数の障壁(a myriad
of barriers to young women in politics)」にぶつかったハントは、自分と同年代の女性がこの分野に飛び込んでこないことに驚きはないと語っている。
「何事においても、最初の、そして唯一の存在になろうとすることは常に、本当に難しい経験だ。率直に言って、本当にイライラさせられました」とハントは語り、選挙運動で目にしたジェンダー・バイアス(性別による偏向)を引き合いに出した。彼女は「私を支持することに躊躇する人たちを見たし、その大きな部分が内部化された性差別(internalized sexism)であることを露呈するような会話もした」と述べた。
動画共有アプリTikTokで9万3000人以上のフォロワーを誇るハントは、政治において人口動態を真剣に考えることに抵抗がある人もいる中、若者に対する思い込みを打ち破ろうとしているとも語った。
ハントは「若い女性であっても、ソーシャルメディアを持っていれば、単なるインフルエンサー以上の存在になれるのです」と述べた。
カリフォルニア州とは反対にある、メリーランド州では、州議会議員ジョー・ヴォーゲル(民主党)が、Z世代初のLGBTQを公言する連邦下院議員となるべく、出馬している。ジョー・ヴォーゲル(民主党)は、Z世代初のLGBTQ公認議員となるべく立候補している。
ヴォーゲルは、2012年にコネチカット州サンディフック小学校で銃乱射事件が起きた後、政治の世界に足を踏み入れたが、その理由は、近年多くのアメリカの若者の学校生活に直接影響を与えている銃暴力などの問題に対する「無策に不満(frustrated by the inaction)」だったからだと語った。
ジョー・ヴォーゲル
フロスト同じ26歳のヴォ―ゲルは、「私たちの世代全体が、そのエネルギーを、その緊急性を、問題に関してより多くの政治的代表を持つことに注ぎ込む瞬間を迎えているのだと考えている」と語った。
ヴォーゲルは、メリーランド州議会初のZ世代議員の1人として州議会議員に選出され、話題になった。彼は現在、連邦上院議員選挙に立候補しているデビッド・トローン連邦下院議員(メリーランド州選出、民主党)の後継者として連邦下院議員を目指している。
もし当選すれば、ヴォーゲルは連邦上下両院で14人目のLGBTQを公言した議員となる。
ヴォーゲルは、選挙で選ばれた公職において若い視点が重要であると主張し、2050年頃までに起こる可能性のある壊滅的な気候影響の予測を指摘した。
ヴォ―ゲルは「2050年になっても、私は平均的な議員よりもまだ若くなるだろう。ですから、このような視点が連邦議会の場ではどうしても必要なのだ」と述べた。
ハントとヴォーゲルはともに、連邦下院議員の年齢が25歳以上でなければならないという憲法上の規定ギリギリに達している。
ピュー・リサーチによると、ここ数回の議会で下院は若干若返ったものの、ベビーブーム世代(baby
boomers)と1964年より前に生まれたサイレント世代(Silent Generation)が依然として全体の約半数を占めている。
最低年齢が30歳となっている連邦上院では、ベビーブーム世代とサイレント世代が連邦上院議員のほぼ4分の3を占めている。
ピューリサーチセンターのデータによれば、ミレニアル世代は連邦下院議員の12%程度を占めるに過ぎず、Z世代はフロストだけである。
しかし、連邦議会で働くには最低年齢が定められているが、上限はない。この事実は、議員や他の指導者の年齢や健康状態に関する言説の中で、批判の的になっている。
高齢や健康に関する問題は、81歳のミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務(ケンタッキー州選出)に対する懸念の高まりや、30年間連邦上院議員を務めたダイアン・ファインスタイン連邦上院議員(カリフォルニア州選出、民主党)の90歳での死去によって、ここ数カ月の間、大きな話題となってきた。
各種世論調査では、75歳以上の政治家に対する精神能力テスト(mental
competency test)や、大統領選挙候補者の年齢制限のアイデアを、ほとんどのアメリカ人が支持している。
進歩主義的な候補者の発掘に力を入れている進歩主義的団体「ラン・フォー・サムシング」の全国本部報道担当フアン・ラミロ・サルミエントは「アメリカ政府は老人たちによって運営されており、若い人たちの存在感が圧倒的に不足している」と語っている。
現在の経済的・社会的緊張の下で、若者たちは年配者たちとは「まったく異なる(vastly
different)」アメリカを経験しているとサルミエントは語った。
「私たちは、より問題に近接している、詳しい人々を必要としている。そして、若者たちの政治参加は解決策となるものだ」。
バイデン大統領は2024年の選挙で再選を目指しているが、ホワイトハウスで更に4年を過ごそうとする彼の年齢への懸念に悩まされている。81歳のバイデンは史上最高齢の現職大統領であり、共和党の最有力候補である77歳のトランプ前大統領も彼に遠く及ばない。
しかし、ヴォーゲルはバイデンの擁護に回り、2024年に若い有権者の価値観を代弁するには現職のバイデンが最良の選択肢だと主張した。
ヴォ―ゲルは、「バイデン大統領の経験と若者のための実績を見て欲しい。彼が再選されるのを見るのが楽しみだ。それは、ドナルド・トランプの再選という選択肢は、私たちの世代にとって本当に破滅的なシナリオだからだ」と述べている。
フロスト議員は昨年9月にホワイトハウスで、バイデンは「若者の力を理解する大統領になりたいと望んでいるし、実際にそれができている」と述べた。
政治的に活動的な人々は最近のサイクルで民主党の要とみなされており、「AP VoteCast」によると、2020年には若い有権者がバイデン氏の勝利に貢献し、30歳未満の有権者グループの約10人のうち6人がバイデンに投票した。
しかし、アメリカの若者にとって重要な問題に対して行動を起こすよう権力者に働きかけるだけでなく、多くの人々が自分たちの世代を代表する候補者となって選挙に立候補している。
タフツ大学の市民学習・参加に関する情報・研究センターの広報担当者であるアルベルト・メディナは、「私たちは、若者の立候補への関心が高まっていることを目の当たりにしている」と語っている。
しかし、経済的および社会的参入障壁は、年長の候補者よりも、選挙運動を考えているZ世代やミレニアル世代のほうに、より大きな影響を与える可能性があるとメディナは指摘している。また、人種的および性別的不平等が立候補への抵抗感を増幅させている可能性があると指摘した。
しかし、気候変動や妊娠中絶といった問題は、アメリカの若者が政治に参加する「原動力になっている(really the driving force)」ともメディナは述べている。
2022年のタフツ大学の調査によると、選挙に出馬を希望する若者の割合は過去10年間で上昇し、出馬を検討すると答えた若者の割合は20%を超えている。
11月下旬のタフツの調査によれば、アメリカの若年層が政党離れを起こしているというデータもある中で、18歳から34歳のアメリカ人の57%が、今年投票する可能性が「非常に高い」と答えている。
投票する可能性が極めて高い人のうち、51%が民主党候補を支持すると答えている。
ヴォーゲルは「人々は新しい人物の登場を求めている。あらゆる世代の人々が新世代のリーダーを求めているが、それは若いというだけではなく、新しいスタイルの政治を提供しているからだ」と語った。
ヴォーゲルは続けて「結局のところ、年齢は関係ないのだ。現状維持を求める気持ちによって誰もが足を引っ張られている」と述べた。
(貼り付け負わり)
(終わり)
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