古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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 古村治彦です。

 最近のブログで、ドナルド・トランプの後継者はJD・ヴァンス副大統領だということを書いている。もちろん、2028年には大統領選挙があり、選挙で勝利しなければ、後継の大統領にはなれないのではあるが。少なくとも、現職副大統領として、共和党の大統領選挙候補に指名は確実だろう。民主党は、カマラ・ハリス前副大統領、ギャヴィン・ニューサム・カリフォルニア州知事、ピート・ブティジェッジ前運輸長官の人気は高いが、ハリスとニューサムはカリフォルニア州を地盤としており、選挙戦で重要な五大湖周辺激戦州での勝利はおぼつかないだろう。ヴァンスは激戦州の1つのオハイオ州の出身である。

 話が大きく逸れてしまった。それでは、世界のもう一つの超大国である中国の最高指導者についてはどうであろうか。胡錦涛の後継者として中国共産党中央委員会総書記・国家主席・中国共産党中央軍事委員会主席・中国中央軍事委員会主席を務めている。鄧小平以降、中国最高指導部は2期10年、68歳引退(七上八下)が不文律となっていた。しかし、習近平は3期目以降も最高指導者の地位にとどまっている。2027年が任期最終年となるが、4期目に入るのかどうかという点に関心が集まっている。習近平の年齢は現在72歳であり、4期目まで全うするとなると最終的には80歳まではいかないが、70代後半になる。2032年がギリギリ限界ということになる(中国の歴代最高指導部層がいくら長寿だと言っても)。

 習近平の後継者については全く情報がない。側近とされる人物たちの名前は出てくるが、彼らは能吏、有能な官僚タイプが多く、指導者タイプではない。2022年に、現在は国務院総理を務める李強の後任として、上海市党委員会書記に就任した陳吉寧は1964年生まれで、今年は62歳の年である。来年に後継者となれば2期10年を務めることはできる。ネックとなるのは中央政府での経験の少なさとなる。

 習近平は側近や最高指導者層であっても、自身の意向に適わない人物たちは粛清まで行っている。閥やグループを作らせず、厳しく管理をしているようだ。そして、簡単に自身の意向を漏らさず、その結果として、後継者に誰を指名するかということも分からないようだ。そして、ナンバー2の存在さえも抑え込んで、政権運営を行っている。ストロングマン政治のスタイルということになる。しかし、人間である以上、いつかは引退の日が来る。そのための準備をしているだろうが、それが見えてこないというのは何とも不気味である。

(貼り付けはじめ)

誰が習近平の本当のナンバー2なのか?(Who Is Xi’s Real No. 2?

-中国の指導者は誰にも権力を譲るつもりはない。

デン・イーウェン筆

2026年5月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/07/china-cai-qi-li-qiang-leadership/

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中国の習近平国家主席(右)と蔡奇が北京の人民大会堂で拍手をしている(2025年3月28日)

中国共産党第20回全国代表大会以降、習近平(Xi Jinping)国家主席のナンバー2は誰なのかという議論は絶え間なく続いている。70歳の蔡奇(Cai Qi)の役割が拡大するにつれ、多くの識者が彼を「ナンバー2No. 2)」と見なすようになった。『エコノミスト』誌の最近の記事もまさにこの見解を示しており、政治局常務委員、中国共産党中央書記局第一位、そして中国共産党中央弁公室主任を務める蔡奇は、長年にわたり重要な行事で習主席に同行し、最高指導者のスケジュール、文書、会議、情報伝達、そして警備体制を管理してきたと主張している。

確かに蔡奇は、今日の中国政治において習主席に最も近い人物の1人である。しかし、最高権力に近いことと、権力を握っていることとは全く異なる。蔡奇はもちろん重要な人物ではあるが、中国の事実上のナンバー2ではない。習近平のように権力分担に異常なほど執着する指導者の下では、そのような人物は実際には存在しない。

極めて個人化された権力システムにおいては、門番のような役割がしばしば非常に大きな権力を握る。古代中国の宦官たち(great eunuchs)は、正式な制度上の地位を持っていたからではなく、皇帝と外廷との間の連絡ルートを独占していたからこそ、真の権力を握っていたのだ。彼らは、皇帝がどの上奏文を読み、誰と会い、何を聞いて、外廷が皇帝の意思をどのように理解するかを左右する門番だった。彼らは皇帝の権力に依存していたが、それによって絶大な影響力を持っていた。

しかし、この基準で見ても、蔡奇は事実上のナンバー2ではない。彼は習近平と党、政府、軍、その他の組織との間の連絡ルートを独占しておらず、独立した権力ブロックも形成していない。おそらく、彼がそうしたくないのではなく、そうできないのだろう。

習近平は蔡奇によって完全に遮断された皇帝ではなく、外部情報へのアクセスも彼を通してのみ可能というものでもない。軍、国家安全保障、規律検査、組織人事機構、経済行政、政府行政はそれぞれ独自のシステムを持っている。蔡奇は習近平に近いが、だからといって習近平に通じる全てのルートを掌握しているわけではない。

これが、蔡奇と、ナンバー2の地位に上り詰めた宦官(great eunuch)や寵臣(favorite minister)との違いである。宦官や寵臣は、諺にあるように「一人之下、万人之上(beneath one person and above 10,000)」(トップの地位にある一人を除いて、それ以外のすべての人より地位が高い)存在になり得た。なぜなら、彼らは皇帝の代理を務めると同時に、皇帝の名を利用して自らの政治的意思を操ることができたからだ。

蔡奇が示してきた権力は、主に実行、伝達、調整、監督(execution, transmission, coordination, and supervision)といったものだ。彼は習近平の意思を増幅させることはできるが、その意思に取って代わる兆候はない。彼は政策の実施を推進することはできるが、政策の優先順位を独自に変更する兆候はない。蔡奇の強みは、習の権力機構における歯車の1つであることにある。

最高指導者との近さが唯一の権力の源泉ではない。より厳しい基準も考慮する必要がある。例えば、ある最高幹部が重要なシステムを掌握しているか、最高指導者不在時に中央を代表して問題を解決できるか、主要党綱領において他の常務委員よりも上位に位置づけられているか、そして資源、幹部、資金、治安、地方の実施体制を動員できるか、といった点である。これらの基準からすると、蔡奇を事実上のナンバー2と表現するのは難しい。

最も単純な例は、「国内の監視役(keeps watch at home)」を誰が担うかという疑問だ。中国共産党には制度的なルールがあり、最高指導者が海外に長期滞在する場合、代理総書記として国政・軍事の重要事項を処理し、最高指導部の日常業務を維持する臨時責任者を指名しなければならない。その責任者は、蔡奇ではなく、中国の李強(Li Qiang)首相以外にはあり得ない。

李強首相は常務委員会で2位、国務院総理であり、政府・経済制度の継承と発展を担う責任者だ。中国共産党の複数の中核委員会や、部門横断的な党全体の会議において、李首相の役割は蔡奇よりも重要だ。

中央国家安全委員会、中央総合深化改革委員会、中央財政経済委員会といった中国共産党の中核機関は、習近平政権下における最も重要な党の審議・調整の場となっている。蔡奇が本当に事実上のナンバー2であるならば、少なくとも李強よりも高い責任を示すような地位をこれらの委員会で占めているはずだ。しかし、李強はこれらのほとんどの場で蔡奇より上位に位置している。

特に中央財政経済委員会では、李強は副委員長であるのに対し、蔡奇は単なる委員に過ぎない。改革開放以降、財政経済業務は事実上、ほとんどの場合、中国共産党にとって最も重要な業務であり、財政経済委員会は党が経済業務を指導する中核的なプラットフォームである。

重要な党会議における議長と閉会演説の役割も、この点をよく示している。省級および閣僚級幹部による勉強会は、習近平が主導する典型的なハイレヴェル党会議であり、国務院会議や通常の行政会議とは異なる。その手順は、習近平が重要な演説を行い、李強が議長を務めるというものだ。中央経済工作会議ではさらに明確で、習近平が演説し、李強が議長を務め閉会演説を行い、蔡奇は単に両方の会議に出席するだけである。

こうした取り決めは、儀礼的な細かな問題ではない。中国共産党の会議における政治において、「出席」「議長を務める」「閉会演説を行う」「実施の展開」は、それぞれ異なる政治的役割を意味する。蔡奇の出席は、彼が中核グループに属していることを示し、李強が議長を務め閉会演説を行うことは、彼が習近平の下で全体的な責任を担っていることを示している。

李強は政府の事務を、蔡奇は党の事務をそれぞれ担当しており、中国共産党の体制では党が政府よりも上位にあると主張する人もいるだろう。原則的には正しい。しかし、実際の権力となると、そう簡単に断言することはできない。党務自体が多層構造になっている。党務の最も重要な部分は、組織と人事、規律検査、政治法務、安全保障、そしてイデオロギーだ。

蔡奇が真に掌握しているのは、中央弁公室、書記局の日常的な調整、中央・国家機関工作委員会、そして習近平の意向を中心とした文書作成、会議、研究会、実施、監督である。これらはもちろん重要ではあるが、蔡奇自身の権力を行使するというよりは、習近平の意向を実行するためのものだ。

さらに、党務における最も重要な組織権力は蔡奇の手にはない。党内における昇進や人事を統括する中央組織部の責任者は石泰峰(Shi Taifeng)であり、組織システムは習近平を中心に運営されている。幹部の任命、査察、昇進、異動は、中国共産党の権力が生み出される中核的な要素である。蔡奇は書記局レヴェルで組織運営に関する政治的要求を提起したり、組織システムの重要な会議に出席したりすることはできるが、これは彼が中央組織部を直接支配していることを意味するものではない。言い換えれば、蔡奇が党務において持つのは、既に決定された事項を調整する権限であり、最も中核的な組織権力ではない。

対照的に、李強は政府および経済システムを統括している。政府業務は原則として党務ほど重要視されていないが、国家統治においてはより具体的な役割を果たしている。財政支援の方法、地方債務の解決方法、不動産セクターの運営方法、消費刺激策、産業政策の推進方法、外国投資の安定化、地方政府の運営方法、雇用圧力の緩和策、これらは全て国家機構が抱える難題である。蔡奇は実施を監督できるが、李強は実行しなければならない。李強が負うプレッシャーと責任は、通常の党務よりもはるかに大きく、重要である。

『エコノミスト』誌の判断が最も誤りやすいのはまさにこの点だ。エコノミスト誌は蔡奇の立場を習近平の側近と捉えているが、中国共産党の権力構造の分断の本性(the segmented nature of the CCP’s power structure)を過小評価している。習近平時代は確かに高度に個人化された中央集権化(centralization)の時代だが、だからといって全ての権力が蔡奇一人に委ねられている訳ではない。

むしろ、習近平の手法は権力を複数の人物に分散させ、信頼する側近に様々な権力ブロックを掌握させることにある。蔡奇はこれらのシステムを繋ぐ重要なハブではあるが、それらを完全に支配しているわけではない。

前述の通り、真のナンバー2は、指導者がいる時だけでなく、指導者が不在の時にも事態を収拾できる能力を備えていなければならない。蔡奇の権力は習近平の存在に大きく依存している。習近平の権力が強大であればあるほど、蔡奇の重要性は増し、習近平の存在感が高ければ高いほど、蔡奇の有用性も高まる。しかし、習近平が不在となった場合、一時的に全体的な統治を担う可能性が最も高いのは依然として李強であり、蔡奇ではない。

したがって、蔡奇を評価する際には、2つの極端な見方を避ける必要がある。彼を単なる秘書とみなすのは、当然ながら過小評価である。彼は普通の秘書ではなく、常務委員会レヴェルの中央執行者、いわば「内廷の太守(grand steward of the inner court)」である。蔡奇が掌握する情報、情報伝達経路、そして監督能力は、彼を習近平体制における最も重要な人物の1人とすることには十分である。しかし、彼を中国で事実上のナンバー2とみなすのは、過大評価である。

実際、習近平体制の本質は、蔡奇が李強に代わって新たなナンバー2になったことではなく、習近平が真の意味での完全なナンバー2を意図的に排除したことにある。誰もが権力の一部を担うが、習近平の直下であっても、誰も独自の権力中枢を形成することは許されない。蔡奇は習近平に最も近い人物、つまり習近平の権力機構における最も重要な側近に過ぎない。

蔡奇の存在感の高まりは、外部の人々に習近平が彼にますます依存しているという印象を与える。しかし、これは彼が第二の権力中枢になったからではない。真のナンバー2が存在しない体制においては、指導者に最も近い人物がナンバー2と誤解されやすいからである。

※デン・イーウェン:中国人作家・学者

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習近平がなぜ自らの側近を次々と排除するのか(Why Xi Is Kneecapping His Own Top Men

―指導部の中枢を標的にすることは誰も安全ではないことを示している。

デン・イーウェン筆

2026年4月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/15/ma-xingrui-xi-china-purges-xinjiang/

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新疆ウイグル自治区党委員会書記馬興瑞が北京で開催された第14回全国人民代表大会期間中の新疆ウイグル自治区代表団会議で演説を行った(2024年3月7日)

9カ月にわたる予想の末、かつて中国共産党(CCP)の重鎮だった馬興瑞の運命がついに明らかになった。4月3日、中国政府当局は、政治局員で中央農村工作指導グループ副主任を務めていた馬興瑞が、重大な規律違反と法律違反の疑いで中央規律検査委員会と国家監察委員会の調査を受けていると発表した。

昨年7月、馬興瑞が新疆ウイグル自治区党委員会書記の職を解任された際、公式発表は「別の任務に就いた」というものにとどまり、新たな役職は発表されず、説明も一切なかった。今振り返ってみると、この長期間の停職自体が何らかの兆候だったと言えるだろう。中国共産党上層部の事情に詳しい者にとって、馬の件で最も重要なことは、単にまた一人高官が失脚したという事実だけではない。それは、これまで漠然と存在しながらも明確に越えられることのなかった境界線を、ついに破ったということだ。すなわち、現職の政治局員、つまり中国で2番目に高い指導部(常務委員会に次ぐ24人からなる)を標的にしたのである。

厳密に言えば、この暗黙のルールは、昨年、軍指導者の何衛東と張又侠が失脚した時点で既に破られていた。しかし、軍の支配権を党が掌握する必要性というデリケートな問題があるため、軍権力はしばしば例外となる。しかし、一般の文民である党・国家政治局員である馬興瑞を標的にするのは、全く異なる意味を持つ。

馬興瑞失脚の理由は汚職とされているが、真の罪は別のところにあったのかもしれない。公式声明や党メディアの報道姿勢から判断すると、何衛東、張又侠、そして馬興瑞の真の罪は、習近平の絶対的な権威を侵害したことにある可能性が高い。軍による粛清は党の支配力の優位性を主張する動きと並行して行われたが、馬興瑞の場合は、彼自身の汚職ネットワークに対する規律の欠如が原因だった。

馬興瑞の妻が夫のコネクションを利用して、香港などのオフショア地域で多くの高官の妻や子供たちに数千万元相当の保険証券を発行していたという噂が広く流れている。関与したとされる人物の規模とネットワークの広がりは、驚くべきものだと言われている。もしこれらの主張が真実であれば、馬興瑞はそれを知っていたはずだ。そして、それを黙認することで、多くの高官の家族を自分に取り込もうとし、政治的な保護層となる利害同盟を築こうとしていた可能性が高い。

第20期政治局は、概して習近平の側近で構成されている。しかし、習近平陣営内にも中核と周辺という区別があり、両者の競争は激しい。馬興瑞は周辺に属し、習近平の妻で山東省出身の彭麗媛が率いるとされる、いわゆる山東派(the Shandong clique)の有力者と一般的に見なされていた。

馬興瑞のキャリアは、習近平の直接的な庇護ではなく、彭麗媛(Peng Liyuan)の庇護によって支えられていた。そのため、彼は来年の第21回党大会で最高位である政治局常務委員に上り詰めるには、いわば部外者だった。つまり、保険詐欺のような、習近平の歓心を買うための別の手段を講じる必要があった。

しかし、習近平は部下が自分の知らないところで小細工をしたり、緩やかな派閥を形成したりすることを極度に嫌う。習近平が馬興瑞の権力掌握の企みを見抜き始めた時、馬は失脚したのかもしれない。彭麗媛のような極めて影響力の大きい人物が関与していたことが、馬の失脚に比較的長い時間がかかった理由を説明するだろう。事件が9カ月も長引いたことは、習近平の躊躇を示唆している。

高官が公然と処罰されるかどうかを決定づけるのは、もはや彼がどれだけの金銭を受け取ったかではなく、汚職を利用して人脈、利害関係の連鎖、そして幾重にも重なる保護体制を構築したかどうか、つまり、最高権力層の支配からある程度逃れられるような、エリート層内部の水平的な繋がりを築いたかどうかである。言い換えれば、汚職はあくまでも入り口に過ぎない。問題は最終的に政治へと行き着くのだ。

習近平がエリート層、特に自身の側近たちに、生き残りのルールが変わったこと、つまり、たとえ彼に忠誠を誓っても政治的な安全は保証されず、粛清される可能性があることを理解させたいのであれば、最も効果的な方法は、身内の一人を見せしめにすることだ。この3つの事例の中で、馬興瑞の事例は、何衛東と張又侠の事例よりも効果的だ。後者2人は軍人出身であるため、たとえ自分たちも派閥を形成したとしても、習近平が必ずしも公然と彼らを攻撃するとは限らないという幻想を抱いている人物もいるかもしれない。

馬興瑞は事情が異なる。彼が厳しく処罰されれば、習近平の側近たち、特に彼の陣営の周辺にいる者たちへの衝撃ははるかに大きいだろう。彼らにとって、彭麗媛の存在や、習近平の側近と見なされていることさえ、安全を保証するものではない。どれほど地位が高く、どれほど人脈があろうとも、習近平が定める一線を越えれば、誰でも失脚する可能性がある。

以前であれば、最高層にまで上り詰めれば、ある程度の安全は確保されるという前提があった。しかし、その論理はもはや通用しなくなっている。習近平の側近たちもまた、階層化(stratified)が進むだろう。ごく少数の側近は依然として安全かもしれないが、外側の側近たちは、ますます脆弱で、替えがきく存在だと感じるようになるだろう。

政治的な安全を確保するため、各人は他の要人との利害関係のネットワークを同時に構築するのではなく、習近平本人への忠誠心という単一の道筋にますます頼らざるを得なくなるだろう。これは習近平の権威をさらに強化するだろう。しかし同時に、エリート層が有意義な集団統治を形成することはますます困難になり、最高レヴェルの政治はこれまで以上に硬直化(rigid)し、脆弱(fragile)なものとなるだろう。

※デン・イーウェン:中国人作家・学者

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 現在、アメリカ政治を語るキーワードとして、「福音派(Evangelicals)」という言葉が使われる。「福音派」は、アメリカのプロテスタントの一つの大きな勢力であり、アメリカの人口の20~25%を占めると言われている。中西部から南部にかけて居住し、アメリカの保守の地盤となっている。南部は「バイブル・ベルト(Bible Belt)」と呼ばれるように、熱心なキリスト教徒が多く住む。聖書を無誤謬の「神の言葉」と信じ、回心主義(Born Again、ボーン・アゲイン)を重視する。「回心」とはこれまでと生き方を捨て、神に帰依する生き方へと大きく変化させることで、「内面的な劇的変化」を指す。「改心(反省し、悔い改めること)」とは異なる。ジョージ・W・ブッシュ元大統領も若いときにはアルコールに依存していたが、そこから脱却するのに信仰の力があったというのは有名な話だ。回心してからはお酒を飲まず、早寝早起きの健康な生活になったという。形だけでの信仰ではなく、大きな変化を経ての敬虔な信仰を重視する。社会的な主張としては、妊娠中絶の制限、同性婚反対、従来の家族観の維持など保守的な主張をする。福音派は1980年の選挙で共和党のロナルド・レーガンを支援し、同じ福音派ではあるが穏健なリベラルの民主党現職のジミー・カーターを破ってから、政治的な影響力を強めてきた。

福音派の中には、聖書に書かれている「世界最終戦争(Armageddon、ハルマゲドン)」が起きて、キリストが再臨して信者は救われると強く確信している。そして、イスラエルが主要な役割を果たして、中東地域で起きる戦争がハルマゲドンとなると考える人たちもいる。彼らはイスラエルを強く支持する。これがハルマゲドン招来につながると考えるからだ。2026年2月28日に始まったイラン戦争も福音派の影響が強いという説も出ている。

 福音派は学校現場での宗教教育、特にキリスト教プロテスタント教育を実施するように求めている。アメリカはプロテスタントが建国した国であり、プロテスタントの教義が国是という時代もあったが、現在は宗教の面でも多様化が進んでおり、プロテスタントも多数派の地位を維持することが難しい状況になっている。そもそもが宗教自体の存在感も薄くなっているが。

 ここで重要なのは、アメリカの建国の父たち(Founding Fathers)がアメリカの政治システムに「政教分離(Separation of Church and State)」を組み込んでいたことだ。これは、「いかなる宗教も国教とはせず、いかなる宗教も国家が優遇しない」ということだ。それは、建国の父たちがヨーロッパの悲惨な宗教戦争から学んだ教訓である。宗教戦争は同じキリスト教徒たちがカトリックとプロテスタントに分かれて戦った。異教徒(paganheathen)に対してよりも、異端者(heretic)に対する方が敵意は高まる。アメリカの建国の父たちは、国家権力を使ってある宗教型の宗教を弾圧し、宗教戦争まで発展しないように設計したということになる。アメリカの教育現場に宗教教育を持ち込もうというのは、こうした建国の父たちの知恵を踏みにじる主張ということになる(私立学校で宗教教育を行うことはあてはまらないが)。しかし、アメリカ国内でそのような声が大きくなっているのも事実だ。アメリカは建国250周年を迎えるが、常に緊張をはらんで進んでいるように外側からは見える。

(貼り付けはじめ)

キリスト教ナショナリズム対実際のキリスト教(Christian nationalism versus actual Christianity

ジョス・ジョセフ筆

2026年4月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5816789-christian-nationalism-fragile-unity/

オハイオ州立大学で学部生だった頃、ルームメイト数人が福音派キリスト教団体(the evangelical Christian group)「キャンパス・クルセード・フォ・クライスト」に所属していた。ある日、モルモン教の宣教師2人が私たちの家を訪問した。ルームメイトたちは彼らを歓迎し、聖書を取り出して、モルモン教が「間違っている」「真のキリスト教ではない」理由について1時間にも及ぶ議論を始めた。ルームメイトの1人が彼らを「異端者(heretics)」と呼んだ後、モルモン教徒たちは怒って出て行ってしまった。

政治的キリスト教(Political Christianity)はこの国において強力な勢力だ。その定義は驚くほど容易で、共和党は政治的キリスト教を巧みに利用してきた。私はキリスト教徒だ。彼もキリスト教徒だ。彼女もキリスト教徒だ。私たちはキリスト教徒だ。彼らはキリスト教徒ではない。私たちにはキリスト教的価値観があり、彼らにはない。私たちにはユダヤ・キリスト教的価値観があり、彼らにはない。キリスト教を「私たち対彼ら」の戦いと定義づけることで、キリスト教右派は選挙に勝利し、支持基盤を拡大し、勢力を拡大し続けている。

共和党は政治的キリスト教を受け入れた一方で、自分たちの約束には限界があることも認識していた。「クリスマス戦争(war on Christmas)」に勝利し、「学校での祈りを復活させ(bringing back prayer to school)」、「アメリカを再びキリスト教国にする(making America a Christian country again)」といった公約を掲げた。問題は、中絶規制から学校での祈りまで、宗教右派(the religious right)が実際にこれらの全てを望んでいたことだ。共和党が約束を果たさなかったため、彼らはそれを実現してくれるポピュリストたちに投票し始めた。

そこに、キリスト教ナショナリストたちが登場する。

私たちは、政教分離(the separation of church and state)は維持されるべきだと主張する。なぜなら、政府はユダヤ教、イスラム教、ヒンドゥー教、無神論、あるいは悪魔崇拝(Satanism)といった宗教よりもキリスト教を優遇することはできないからだ。そして、彼らの主張は正しいと言えるだろう。

しかし、キリスト教ナショナリストに問うべきは、次の点だ。あなたはどのキリスト教を支持したいのか? どの聖書を教えるべきか? カトリック聖書か、それともプロテスタント聖書か? キリスト教とは、JD・ヴァンス副大統領が説く、聖母マリアに祈り、聖人を崇敬するカトリック信仰のことか? それとも、マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)が説く、神との個人的な関係こそが救いの全てだとするプロテスタント信仰のことか? 私たちは子供たちに宗派についてどのように教えるべきか? どれが正しく、なぜ他は間違っているのだろうか?

教師たちは生徒にキリスト教の信仰を伝えることを許されるべきだろうか? キリスト教ナショナリストは「イエス」と答えるかもしれない。しかし、もしその教師たちがモルモン教徒だったらどうだろうか? 自分の子供たちに、モルモン書が神の言葉だと教えたいと思うだろうか?

だからこそ、建国の父たちは私たちが思っている以上にずっと賢かった。彼らは政教分離(the separation of church and state)を確立したのは、キリスト教徒ではないアメリカ人を守るためだけではなかった。彼らはキリスト教徒同士の争いからキリスト教徒を守りたかったのだ。

彼らは宗教、歴史、哲学、政治を学んだ教養ある人々だった。啓蒙時代(the Age of Enlightenment)の申し子と言えるだろう。そして彼らは、建国間もないこの国(アメリカ)が、ヨーロッパ諸国の政府と同じ過ちを繰り返さないようにしたいと願っていた。私たちは、宗教紛争は常に中東地域に限られていたかのように振る舞い、ヨーロッパの宗教戦争のような出来事を無視しがちだ。

ヨーロッパでは、プロテスタントとカトリックの対立によって何百万人もの命が失われた。戦争が起こり、人々は故郷を追われ、現代ではジェノサイドと呼ばれるような虐殺が行われた。三十年戦争、清教徒革命、フランス宗教戦争について調べてみれば分かるだろう。ヨーロッパでは信教の自由があまりにも脆弱だったため、人々は船に乗って世界の反対側、つまりアメリカへと渡った。

建国の父たちはこれらの戦争から学び、「私たちは決してこのようなことをこの国では繰り返さない」と決意した。彼らが政教分離を確立したのは、国民全員がキリスト教徒である国でキリスト教を国教とすれば、誰もが自分なりのキリスト教を押し付けようとするため、宗教紛争が必ず発生することを知っていたからだ。そして、それは功を奏した。確かに、モルモン教徒の追放のような宗教的暴力事件はあったが、概してこの国では宗派間の暴力が蔓延することはなかった。ヨーロッパ諸国もこれに気づき、追随した。

キリスト教ナショナリズムの反対者たちは、「私たち対彼ら」という構図を利用して運動を抑え込もうと苦心してきた。しかし、彼らは政治家たちにキリスト教信仰の定義を問い、その信仰を法律に明文化する意思があるのか​​どうかを問うべきかもしれない。そして、キリスト教ナショナリズムの反対者たちは、キリスト教ナショナリストの結束がいかに脆いかを露呈させるために、あえて政治的に不適切な発言をする必要があるだろう。

トランプ大統領とその政権に対し、ポピュリズム的な発言を繰り返すのではなく、どのキリスト教宗派を支持すべきかを問うべきだ。

そうすれば、キリスト教ナショナリストは「私たち対彼ら」という構図の優位性を失うだろう。なぜなら、彼らはどちらが正しいかを巡って互いに争い始めるからだ。それは、建国の父たちが国を世俗国家に保ち、政教分離を確立しようとした理由を証明するだけだろう。

※ジョス・ジョセフ:「ベスト・コメンタリー・オピニオン」軍関係記者編集者賞受賞者。ハーヴァード大学とオハイオ州立大学の卒業生で、アメリカ海兵隊に所属し、イランに派遣された経験を持つ。現在はカリフォルニア州アナハイム在住。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 「有事の金」、「有事の円」という言葉を聞いたことがある人は多いだろう。戦争や大災害が起きた際に、金や円を買う動きが起きる、それは金や円が安全な資産だからだという説明がされる。正確にはされてきた。しかし、どうもそのようなことが起きないようになっている。具体的には、イラン戦争という中東地域、そして世界に大規模な影響を与える戦争が起きて、金や円の価格や価値が上昇するかと思っていたが、そうではなかった。
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金価格の推移
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円とドルの為替の推移

 円の価値は下落している。これは最近に始まったことではない。実質実効為替レートのグラフを見れば明らかであるが、第二次安倍晋三政権が始まった2010年代に円の価値は下落している(円安になっている)。これは現在も続いている。そして、1960年代の水準にまで下がっている。1960年代からは日本は経済成長を続け、円の価値は大きく上昇したが、現在の円の価値は日本の衰退を示す象徴となっている。海外旅行もなかなか行きにくい時代になっているし、以前のような大名旅行のようなことはできなくなっている(富裕層は別だがこれまでの日本は中流層でそれができていた)。
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 金価格についてであるが、2026年1月に急上昇し、その後、低下しているが、それでも、2025年末に比べて高値が続いている。イラン戦争後に金価格が上昇するという予想もあったが、金価格は上昇しなかった。「有事の金」で、大きな事件が起きたら金の価格が上がるのに、と落胆した人たちも多いだろう。金の価格は他の物品と同じく、売り買いのバランスで決まる。売る人が買う人よりも多ければ安くなるし、その逆となれば高くなる。

ここで重要なのは、「有事の金」にはもう一つの側面、「どうしても現金が必要になった時には売られる」ということを認識することだ。今回のイラン戦争とその後の不安定な状況で、世界各国は現金(ドル)を確保するために、保有する資産の中でも流動性が高い(売り買いがしやすい)金を売った。そのために金の価格が安くなった。昨年までに金を貯めこんでいた各国政府が金を売っても、買った値段よりも高く売ることができただろう。そのようにして、現金を確保したということになる。

 これは私たち個人にも言えることだ。人生において重大な、重要な出来事がどうしても起きる。家を建てる、もしくは購入する、大きな病気が見つかったが治療法が保険適用ではなくて高額になる、脱サラをして一念発起で新規事業を立ち上げる、などの重大な出来事、これらも個人レヴェルでは「有事」だ。こういう時のために金を保有しておくということが重要だ。円の実力が弱まっている中で、金を保有しておくこともリスクヘッジになると考えられる。

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中東情勢の混乱で「安全資産」とされる金価格が下落しているのはなぜか

Forbes JAPAN 5/7() 11:00配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/37cbf23fa8190b5c4cee31d4a8093d3fef551b47?source=rss

中東情勢が悪化して以降、金(ゴールド)価格は11%下落している。金は通常、危機時に投資家が殺到する資産とされるため、これは異例の動きだ。だが、米証券会社の最新の報告書によると、この売り圧力は金への信頼の低下というより、むしろ現金を必要としている金の大口保有者の存在を示しているという──

中東情勢が混乱すれば、金は投資家にとっての避難先となるはずだった。ところが、228日に米国がイランへの攻撃を開始して以降、金価格は11%下落しており、「安全資産」としての評価に疑問が投げかけられている。

この結果は逆説的に思える。世界情勢が不安定になると、安全資産の価格は上昇するのが通例だ。しかし、顧客資産23000億ドル(約359兆円)を擁する米国最大級の独立系証券会社LPLフィナンシャルが公表した最新の報告書によると、今回の売り圧力は失敗の兆候ではないという。

LPLでマクロ戦略を統括するクリスチャン・カーは、金は単に避難先として機能しているのではなく、現在は別の役割を果たしていると説明している。金は商品、準備資産、そしてストレスがかかる時期にはドルの代替資産として機能しているのだ。

アラブ首長国連邦(UAE)をはじめとするペルシャ湾岸諸国は、ホルムズ海峡の封鎖により石油輸出が制限されたことで、ドル資金の調達に支障を来している。石油輸出はドルを生み出す。輸出量が減れば、ドルの流入も減る。支払期日が到来すれば、各国政府は価値の保存手段より流動性を必要とする。

トルコは、その現実を示す好例と言えるだろう。エネルギー危機を受けて通貨リラへの圧力が高まる中、同国の中央銀行は3月、市場の安定化を図るため、わずか1週間で30億ドル(約4700億円)相当の金準備を売却した。

これが、金価格の異例の下落を説明する1つの要因となっている。通常、地政学的な不安が高まると、投資家は金に殺到する。だが、政府や中央銀行が現金を必要とする場合、金は資金調達源になるのだ。

カーは、金の売り圧力はまだ終わっていない可能性があると警告している。大規模なエネルギー供給の混乱に見舞われた政府は通常、まず燃料供給の回復、財政の安定化、外貨準備の補充に注力するが、これにはすべてドルが必要となる。

最近の金価格の下落は、投資家が金への信頼を失ったことを意味するのではなく、世界最大級の金保有者の一部が、資産保全より現金を必要としていることを示している。そして、危機の際に財務上の柔軟性を提供する資産として期待されている金が、いわば本来の役割を果たしていることを意味する。

Brandon Kochkodin

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金と銀が1カ月ぶりの安値、イラン攻撃でも「安全資産」が上がらない理由

Conor Murray | Forbes Staff
Forbes JAPAN

2026年3月19日

https://forbesjapan.com/articles/detail/94073

米国時間318日に揃って値を下げた金と銀の価格は、約1カ月ぶりの安値水準にある。世界的な紛争時には貴金属価格が急騰するという従来の常識に反し、イラン攻撃が原油価格と米ドルの価格を押し上げたことで、貴金属には下落圧力がかかっている。

18日午後1230分時点の金価格は約2.5%安の1オンスあたり約4886.70ドルをつけた。銀も同時点で約3%下落し、約77.40ドルとなっている。

金と銀はともに1カ月ぶりの安値を記録した。金が4900ドル、銀が76ドルを下回ったのは、218日が最後だった。

貴金属価格は2月下旬に始まったイラン攻撃以来、一貫して下落している。米国とイスラエルがイランへの攻撃を開始する前日の227日には、金は5400ドル、銀は93ドルを突破していた。

金は6営業日連続で続落した。ブルームバーグの報道によれば、これは2024年以来で最長の続落記録だ。金は、記録的な価格上昇を経て1月には過去最高値を更新していた。

■なぜ、イラン攻撃では貴金属価格が上昇しないのか

通常、金と銀の価格は国際的な紛争下では上昇するとされるが、3週間にわたるイラン攻撃の間、いずれの金属も上昇していない。サクデン・フィナンシャルのアナリストは18日、原油やエネルギー価格が急騰する中で、貴金属は「原油と負の相関関係」にあると指摘した。同社のアナリストらは、貴金属価格は「不安定な推移が続く」可能性が高いとした上で、「地政学的な不透明感から地金がいくらかの下支えを得る可能性はあるが、原油が主要な安全資産としての買いを吸収し続ける限り、その上昇は限定的だろう」と付け加えた。

■利下げ期待の後退が貴金属価格を抑え込んでいる

原油価格はここ数週間で急騰しており、国際原油指標の北海ブレント先物は18日に5%急騰して109ドルを突破した。イラン攻撃の開始以来、40%以上の値上がりを記録している。ハイ・リッジ・フューチャーズの貴金属取引ディレクターを務めるデビッド・メガーが18日にロイターに語ったところによると、エネルギー価格の上昇はインフレ懸念を煽り、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待を後退させている。通常、利下げは金や銀の上昇要因であり、その期待の後退が貴金属価格を抑え込んでいるという。メガーは、金と銀には依然として安全資産としての需要があるものの、それを上回る他の下落圧力が価格の上昇を阻んでいると分析した。また、米ドルも強含んでおり、これも通常は貴金属に下落圧力をかける要因となる。

■地政学的緊張と安全資産

過去には、戦争や国際的緊張によって金や銀が急騰した事例がある。2022年にロシアがウクライナに侵攻した後、金の価格は1年ぶりの高値まで跳ね上がった。今年初め、アナリストらは貴金属の歴史的な急騰の背景として、さまざまな世界的緊張を挙げた。1月に発生したベネズエラのニコラス・マドゥロ拘束、ドナルド・トランプ大統領による関税の導入、さらにトランプがグリーンランド併合への意欲を表明したことによる欧州と米国との摩擦などがその例だ。

金と銀の価格は、数カ月にわたる上昇を経て1月に過去最高値を記録した。そのピーク時には金は5600ドル、銀は120ドルを突破している。しかし、トランプが利下げに消極的と見なされるケビン・ウォーシュを次期FRB議長に指名すると発表した後、1月下旬に貴金属価格は暴落した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 第二次世界大戦から冷戦、ポスト冷戦期まで、アメリカは世界超大国として、国際社会で極めて大きな役割を果たした。日独伊の枢軸諸国との戦争においては、ヨーロッパと太平洋の二正面で日独を撃破し、同時に連合諸国側の兵器庫・工廠(工場)として、食料や武器の支援を行った。冷戦期は、自由主義陣営を率いて、ソ連と社会主義陣営と戦った。結果として、ソ連崩壊によって冷戦に勝利して、ポスト冷戦期は世界唯一の超大国として、安全保障や経済面で世界をリードしてきた。

 世界の歴史にはこれまで帝国(empire)と呼ばれる巨大な存在が出てきた。古くはローマ帝国、モンゴル帝国、大英帝国、そして、現在のアメリカもそれらに匹敵する存在である。世界帝国は世界から収奪することで富を築く。しかし、そのとみのしゅうだつのシステムを維持するためのコストのために衰退し、滅亡する。最も重荷になるのは軍事費だ。世界を支配するためにはどうしても巨大な軍隊を保有しなければならない。大英帝国はこの点で、巨大な陸軍ではなく強力な海軍を保有していたのではあるが。第二次世界大戦後のアメリカ軍は2つの大きな戦争と1つの小さな戦争を同時に戦えるだけの規模を維持してきたが、アメリカの国力低下はそれを許さない状況になっている。同盟諸国への責任の分担はそれを示唆している。

 アメリカが世界の支配者であることの恩恵は富裕層にしかないということを、アメリカの中流以下の一般国民が認識している。それなのに、実際に軍隊に行って死傷するのは自分たちということで、ますます怒りが高まっている。そのような怒りが、「アメリカ・ファースト」を唱えるトランプ大統領を誕生させた。しかし、トランプ大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の洗脳に近い「誘導」によって、イラン攻撃を行い、目論見が外れ、イラン攻撃は失敗に終わってしまった。このことはアメリカ中心の国際社会の構造の大きな変化を私たちの明確に示している。ウクライナ戦争の停戦が進まないことも同様である。「アメリカの終わりの始まり」を迎えた今、アメリカの属国である日本も一緒に沈んでいくか、少しずつ自立していくかを選択しなければならない時期を迎えている。

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イランにおけるアメリカの帝国主義的罠(America’s Imperial Trap in Iran

―トランプ大統領の中東地域復帰の決断はかつてイギリスを破滅に導いた戦略的愚行(strategic folly)を彷彿とさせる。

ファリード・ザカリア筆

2026年3月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/13/united-states-iran-war-middle-east-imperialism-british-empire/

約15年間、当時の3人の大統領を含む多くのアメリカの指導者たちは、アメリカが中東地域の社会構造改革に深く関与し過ぎていると考えていた。彼らは、より喫緊の課題はアメリカの産業基盤の再建と中国の台頭への対応だと考えていた。しかし今、アメリカは再び、大中東地域における社会構造改革のための戦争を戦っている。そしてイラク、アフガニスタン、リビアと同様に、この戦争も支持者たちが期待するような結果にはならないだろう。

なぜこのようなことが繰り返され続けているのか?

現状を理解するには、過去、つまり近代史においてアメリカに匹敵する世界的な影響力を持っていた唯一の国に目を向ける必要がある。20世紀初頭のイギリスは、世界唯一の超大国だった。1870年における大英帝国の世界総生産(GDP)に占める割合は約25%で、これは今日のアメリカとほぼ同じである。そしてロンドンは世界の金融の中心地だった。クリミア戦争期間中、イギリスはナポレオンのヨーロッパ大陸支配の試みとロシアの南東ヨーロッパへの勢力拡大の試みを阻止した。広大な帝国を統治し、今日のワシントンと同様に国際情勢(international life)の方向性を決定づけたのだ。

1880年代から1920年代にかけての数十年間、イギリスはアジアとアフリカ各地で不安定(instability)、悪質な政権(nasty regimes)、そして力の空白(power vacuums)といった問題への対応に追われた。スーダン、ソマリア、イラク、ヨルダンといった地域に軍隊を派遣し、コントロールを確保した。これらの任務は当時としてはどれも重要に見えたが、結果としてロンドンは世界の辺境地域(peripheral parts of the world)で次々と発生する局地的な危機に翻弄され、多大な犠牲を払うことになった。1920年のイラク反乱鎮圧には10万人を超えるイギリス軍とインド軍、そして数千万ポンドもの費用が要した。当時のイギリスの教育予算総額は、このイラクへの「遠征(excursion)」費用とほぼ同額だった。

イギリスの指導者たちはメソポタミアにおける戦略について熱心に議論を交わしたが、彼らが直面していた真の経済的、技術的な課題を根本的に見過ごしていた。イギリスが中東地域やアフリカの部族と戦っていた頃、大西洋を挟んだアメリカは、世界史上最も先進的な工業経済を静かに築き上げていた。第一次世界大戦後のヨーロッパでは、敗戦国ドイツが着実に産業と高度に機械化された軍事機構を再建した。混沌とした周辺地域に気を取られていたイギリスは、その中核において組織的に追い抜かれていった。時を経て、イギリスは世界の覇権国としての地位を失墜した。

今日のアメリカは、かつての帝国主義の誘惑に再び屈しつつある。中東における真の危機に対応し、その対応に政治的、軍事的、そして道徳的な論理を見出している。しかし、究極的に言えば、大戦略(grand strategy)とは限られた資源の優先順位をつけることである。アメリカは無限の政治資本、時間的余裕、軍事力、そして経済的回復力を持っている訳ではない。テヘランへの空爆、ペルシア湾上空で発射された対ドローン迎撃ミサイル、そして政権当局者がイランの政治的継承の微妙な点について議論する時間は、21世紀を特徴づける真の地殻変動的な課題からエネルギーを逸らすことを意味する。

アメリカにとって最も重要かつ不可欠な役割は、北京とモスクワの修正主義的な野望に対抗し、国際システムを安定させることである。中国は中東地域の泥沼に足を踏み入れるどころか、人工知能、量子コンピューティング、太陽光発電、風力発電、バッテリー、ロボットなどの、世界の勢力均衡を決定づける技術に容赦なく投資している。ロシアは、探知が困難で、撃退が極めて困難なハイブリッド型の政治・軍事戦争を通じて、ヨーロッパの安全保障を混乱させ、西側民主政体を弱体化させることに依然として固執している。モスクワと北京がアメリカの世界秩序の根幹を揺るがす一方で、ワシントンは再び中東地域の治安維持と、その一国の指導者の選出に、血と財産を費やそうとしている。

歴史は、大国が「小規模戦争(small wars)」の魅力に屈することが多いことを示唆している。それは、小規模戦争が、迅速で政治的、道徳的な勝利という幻想を与えてくれるからだ。残念ながら、こうした戦術的な成功は戦略的な利益につながることは稀であり、むしろ長期的な疲弊への第一歩となることが多い。

イランへの介入が成功したとしても、アメリカはイランの運命に深く関与せざるを得なくなるだろう。果たして、今後10年間、アメリカの時間とエネルギーを最も有効に投入すべき分野はイランなのだろうか? イギリスの役割から得られる教訓は明白だ。大国は通常、外国軍に征服されるから滅びるのではない。周辺地域に過剰に手を広げ、中核地域を軽視するからこそ滅びるのである(They fall because they overextend themselves on the periphery while neglecting the core)。

※ファリード・ザカリア:CNN番組「ファリード・ザカリアGPS」司会者、著述家。最新作に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週に一度コラムを掲載し、『フォーリン・ポリシー』誌に転載されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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大英帝国がグアドループではなくカナダをどのようにして選んだか(How the British Empire Chose Canada Over Guadeloupe

-ロンドンはフランスとの戦争の戦利品を獲得したが、アメリカ合衆国を失った。

ダンカン・ウェルドン(イギリスのジャーナリスト・歴史家)筆

2026年2月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/06/british-empire-france-americas-history/

戦争は費用がかさむ事業だ。大同盟戦争(九年戦争、War of the Grand AllianceNine Years’ War)(1688~1697年)の終結までに、イングランドの国家債務は国民所得(national income)の約20%に達した。これは今日の基準からすれば低い数字だが、当時としては憂慮すべき高水準だった。しかし、住宅ローンやその他のローンを組んだ経験のある人なら誰でも知っているように、重要なのは借入の総額(the quantum of the borrowing)だけでなく、そのコストだ。

イングランド(そして1707年のスコットランド合同法以降はグレートブリテン)が支払いを滞納しないことを確約し、議会が必要に応じて税収を増額する能力を示したことで、課税金利は低下し始めた。1750年代の七年戦争(Seven Years’ War)の時期には、イギリス政府はわずか3%の金利で借入を行うことができた。理論上、国家債務(national debt)は「完済(pay off)」するという計画が常に存在した。

18世紀を通じて、財政部門の政府高官たちはしばしば、議会が例えば8%の借入を前提に課税を認めているものの、実際のコストはそれよりも低く、おそらく4%か、5%程度であり、その差額を元金の返済に充てることができると指摘した。1710年代後半、楽観的な当局者は22年以内に全額返済できると考えていた。しかし、この安心感を与える計算は、イギリスとフランスとの長きにわたる断続的な戦争という現実を無視していた。スペイン継承戦争(War of the Spanish Succession)とオーストリア継承戦争(War of the Austrian Succession)の末、七年戦争(1756~1763年)が始まる頃には、政府債務はGDPの約100%に達した。

しかし、イギリスに奉仕するコストは極めて抑えられるものだった。

多額の債務と高金利を抱え、さらなる借入を余儀なくされた国は、一般的に軍事力の低下を招く。しかしながら、18世紀のイギリスは、フランス革命の引き金となった債務よりも高額な債務を抱えていたかもしれない。しかし、制度的な信頼性に基づく低金利(the low interest rates, based on institutional credibility)が、当時のイギリスの債務を決定的に異なるものにしていた。

1750年代におけるイギリスの世界戦争への成功を支えたのは、まさにこの財政的枠組み(financial framework)だった。イギリスは最高クラスの海軍を維持し、財政的に逼迫しているヨーロッパ大陸の同盟諸国に補助金を支給することで、フランスと戦う軍隊を戦場に維持することが可能となった。

イギリスにとって、特に戦争後半においては、七年戦争は真に世界規模の紛争となった。ここで、「イギリス流の戦争術(“British way of warfare)」という、時に物議を醸す概念の起源を探ることは重要だ。九年戦争では、元はオランダ人であったイギリス王オラニエ公ウィリアムは、オランダ共和国が南のより大きな隣国に侵略される可能性を当然ながら懸念し、大陸で直接戦うためにフランドルに大規模なイギリス軍を維持していた。

1700年から1714年にかけて戦われたスペイン継承戦争でも、同様の大陸への関与が見られ、マールバラ公爵はヨーロッパで有名な勝利を収めた。しかし、これはイギリスで必ずしも好評だった訳ではない。海軍の存在を正当化するのは容易だった。それは、海軍は島国を侵略から守るだけでなく、成長するイギリスの権益と海外貿易の保護・拡大にも貢献したからだ。

この問題は、アン女王(ウィリアムとメアリーの後継者)が1714年に子供を残さずに亡くなったことでさらに分極化した。プロテスタントによる王位継承の必要性から、ハノーヴァー公ジョージ1世がイギリス国王に即位し、ドイツにおける元々の領地も維持した。ハノーヴァー朝の最初の数十年間、イギリス議会の議員の一部は、イギリス軍がヨーロッパ大陸におけるハノーヴァー家の権益に奉仕しているように見えることに抵抗感を抱いていた。 1756年から1761年まで内閣の一員であり、実質的にイギリスの戦時戦略の管理者であったウィリアム・ピット(父)に代表されるイギリスの戦争方法は、大規模な軍隊の必要性を軽視し、ヨーロッパにイギリス軍を派遣することに懐疑的であり、その代わりに同盟諸国への財政支援、強力な海軍の維持、敵国の植民地や海外領土の支配権の獲得の重要性を強調した。

この戦略の支持者たちは、イギリスの強み、すなわち海軍力の比較優位(a comparative advantage in naval power)と、同盟諸国を経済的に支援できる財政力(the financial strength to support allies economically)を生み出す海洋文化(a maritime culture)を活用できると主張した。結局のところ、フランスはイギリスよりもはるかに大きな国であり、陸軍に関しては常に優位に立っていた。こうした行動の副産物の一つは、海外のフランス植民地を掃討する機会をもたらした。

これはまさに1750年代のイギリスが辿った道である。ウィリアム・メイクピース・サッカレーの小説『バリー・リンドンの幸運』に描かれているように、小規模なイギリス軍はドイツで戦い、ミンデンの戦いで大きな称賛を得たが、イギリスの戦争活動の大半はヨーロッパ外に集中していた。インドとケベックでの勝利に加え、カリブ海に浮かぶフランス領の島々も占領され、戦争末期にはスペインに宣戦布告し、フィリピンとキューバを併合した。

しかし、これらの獲得物全てを永久に保持することが意図された訳ではなかった。18世紀の政治家たちは、和平交渉(peace talks)はギヴ・アンド・テイクを伴う交渉プロセスであることを認識していた。実際、当時の和平条約の特徴の一つは、しばしば通商条項を含んでいたことだ。勝者は植民地の一部を奪取するだけでなく、かつての敵国が支配する市場において、自国の輸出品に対する有利なアクセスを要求することもあった。

戦争終盤におけるイギリスの目標は、避けられない和平交渉に向けて十分な選択肢を持つために、可能な限り多くの土地を奪取することだった。しかし、スペインとの紛争においては、これは計画通りには進みなかった。18世紀の通信手段は限られていたため、マニラを攻撃したイギリス軍は、戦争の知らせがフィリピンに届く前に攻撃を開始し、その知らせがヨーロッパに届く頃には、既に条約は締結されていた。

しかし、フランスとの避けられない交渉が始まる前に、イギリスでも和平と引き換えにどの戦利品を保持し、どの戦利品を返還すべきかについて、多くの交渉が行われた。1760年から1763年にかけて、現代の私たちからすれば、かなり突飛に聞こえる激しい議論が繰り広げられた。イギリスはカナダを保持するべきか、それともグアドループを保持するべきか? ベンジャミン・フランクリンからカーライル司教に至るまで、様々な人物が書いたパンフレットがこの問いに意見を述べている。

この議論は、見た目ほど奇妙なものではなかった。

カナダは地理的にはるかに広大で人口もはるかに多かったものの、すぐに得られる経済的利益は少なかったように思われる。ビーバーの毛皮貿易は確かに魅力的だったが、グアドループは砂糖の島であり、砂糖は18世紀のヨーロッパで非常に需要の高い高価値商品だった。しかし、グアドループからすぐに得られる経済的利益は、カナダにとっての明確な安全保障上の理由と対比させる必要があった。イギリス自身の北アメリカ13植民地のすぐ北に位置するフランスの植民地を撤去すれば、イギリスの立場が安定するだけでなく、駐屯地運営費用が減って最終的には財政的な節約にもつながると期待された。

議論は時折、激しさを増した。終戦時に政府を率いたビュート伯爵は、『ノース・ブリトン』紙でビーバーの毛皮の魅力を理解していないと非難され、「もし人工的な暖かさを求めるほど親切な女性がいるなら、私たちにはそのための猫や犬がいる。・・・その上、実に愉快な荒々しさで」と皮肉られた。

最終的に、イギリスは砂糖の島がもたらす利益よりも、北アメリカ植民地の安全保障を優先した。しかし、パンフレット戦争において洞察力のある一部の評論家が認識していたように、これは長期的にははるかに逆の結果をもたらすことになる。近代カナダにおける大規模なフランス植民地の存在は、少なくとも、これらの植民地が安全保障をイギリスに頼る明確な理由となっていた。

1760年代のあるイギリス人植民者はこう記している。「畏敬の念を抱かせてくれる隣国が、必ずしも最悪の隣国とは限らない」。フランスの脅威がなくなったことで、植民者たちの動機は変化した。パリ条約以前は、大英帝国の一部であることは多少の負担を強いられたかもしれないが、同時にフランスからの保護という明確な利益も伴っていた。

パリ条約締結後も、イギリスが植民地に帝国統治の重荷を負わせようとしたため、コストは依然として残り、むしろ増加し始めた。しかし、その利益ははるかに疑わしいものだった。グアドループをカナダと交換したことは、結局のところ、イギリスにとって北アメリカを失ったことにつながったかもしれない。イギリスの制度は世界大戦に勝利することを可能にしたが、インセンティヴを理解していなかったため、その勝利は空虚なものとなった。

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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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 古村治彦です。

 アメリカの政治・外交・安全保障専門高級誌として有名な『フォーリン・アフェアーズ』誌に「日本、ドイツ、カナダという“模範的な”アメリカの同盟諸国に核兵器を持たせることでアメリカの安全保障は改善される」という内容の論考が掲載された。2025年11月19日のことである。「核拡散(nuclear proliferation)」という言葉を聞いたことがある人は多いと思う。アメリカが核兵器開発を成功させ、1945年に連続して、日本の広島と長崎に対して使用し、数十万人の民間人を殺傷して以来、核兵器開発は進み、保有する国の数も増えている。国連安保理常任理事国である米ソ(現在は露)英仏中の5カ国は「核不拡散(nonproliferation)」を進める「NPT(核不拡散)条約体制」を構築し、核兵器の拡散を防ごうとしてきたが、実際には、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮といった国々で核兵器の開発・保有が実施されている。

 アメリカが一極支配を維持できない状況の中で、「同盟諸国の一部に核兵器を持たせて、アメリカの負担を軽くする」という議論が出ている。「選択的核拡散(selective proliferation )」という言葉を使っているが、「アメリカが選んだ同盟諸国に核兵器保有を認める」という主張である。下記論稿の筆者たちはその同盟諸国として、ドイツ、日本、カナダの名前を挙げている。これらの“模範的な”同盟諸国は、管理面や技術面から核兵器を保有しても大丈夫ということになる。そして、重要なことは、ドイツ、日本、カナダに核兵器を持たせることで、中国とロシアを牽制し、封じ込めることができるという主張だ。

 このような主張は、日本やドイツを独立国として扱い、世界における役割を尊重しているかのように見える。しかし、実際には、あくまで日本やドイツを「手駒」として利用し、核攻撃の危険をドイツや日本に分散して、アメリカを守ろうという主張である。中国とロシアにより近い場所に核兵器を配備することで、中国とロシアを抑え込もうということであり、実際に核攻撃が始まれば、アメリカではなく、核兵器を持つドイツや日本が至近の標的となることで、アメリカへの攻撃を防ぐという「弾除け」の役割を果たさせようということだ。

 核兵器を持たねば一流の国ではない、独立国ではないという情緒的な、根拠薄弱な主張に与することはできない。そして、そのような主張を「餌」にして、日本の核保有の機運を高めようという勢力こそは日本の将来を毀損する売国勢力であるということをここに宣言しておく。

(貼り付けはじめ)

アメリカの同盟諸国は核保有するべきだ(America’s Allies Should Go Nuclear

-選択的核拡散(selective proliferation)は国際秩序(the global order)を終焉させるのではなく、強化するだろう。

モリッツ・S・グレーフラス、マーク・A・レイモンド(Moritz S. Graefrath and Mark A. Raymond)筆

2025年11月19日

『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/canada/americas-allies-should-go-nuclear

※モリッツ・S・グレーフラス(MORITZ S. GRAEFRATH)は、オクラホマ大学ウィック・キャリー国際安全保障助教授であり、ユーラシア・グループの国際問題研究所の非常勤研究員である。

※マーク・A・レイモンド(MARK A. RAYMOND)は、オクラホマ大学ウィック・キャリー国際関係学准教授であり、オクラホマ航空宇宙防衛イノベーション研究所国際安全保障政策担当副所長を務めている。

核拡散(nuclear proliferation)の見通しほど、専門家と政策立案者たちを恐ろしがらせるシナリオはほとんどない。ロシアがウクライナ侵攻において戦術核兵器(tactical nuclear weapons)の使用をちらつかせていること、ドナルド・トランプ米大統領の核実験に対する曖昧な姿勢、そしてロシアとアメリカの核兵器保有量を制限する2010年の新戦略兵器削減条約(新START)の期限切れが間近に迫っていることは、核兵器の根強い破壊力を世界に改めて認識させ、その使用に対する恐怖を再燃させている。アメリカの指導者たちは、核兵器の拡大(the spread of nuclear weapons)はアメリカの戦略的利益を著しく損ない、既に脆弱な国際秩序をさらに不安定化させると確信している。ここ数カ月、彼らは核拡散防止への取り組みを改めて強調しており、6月のイラン核施設への攻撃は、ワシントンが核兵器保有国を増やすことを阻止するために武力を行使する覚悟があることを示している。

数十年にわたり、アメリカは核不拡散(nonproliferation)を基盤とした核秩序に投資を続けてきた。弾道ミサイル迎撃条約(ABMT)のような冷戦時代の軍縮協定が失効した後も、その姿勢は変わらなかった。信頼できない国家や敵対国による核兵器の拡大に反対することは理にかなっているが、核兵器のさらなる拡散に全面的に反対することは、核兵器がもたらす重大な恩恵を覆い隠してしまう(Opposing proliferation among unreliable states and adversaries makes sense, but a blanket opposition to the further spread of nuclear weapons obscures the significant benefits they can bestow)。アメリカは核不拡散への厳格な固執を見直し、カナダ、ドイツ、日本といった少数の同盟国に核保有を促すべきだろう(The United States would do well to reconsider its strict adherence to nonproliferation and encourage a small set of allies—namely Canada, Germany, and Japan—to go nuclear)。ワシントンにとって、選択的核拡散(selective proliferation)は、これらのパートナー国が地域防衛(regional defense)においてより大きな役割を担い、アメリカへの軍事的依存度(military dependence on the United States)を低下させることを可能にする。一方、これらの同盟国にとって、核兵器の保有は、中国やロシアといった地域的な敵対国、そして従来の同盟関係への関与が弱まるアメリカからの脅威に対する、最も確実な防衛手段となる(For these allies, in turn, acquiring nuclear weapons provides the most dependable protection against the threats of regional foes, such as China and Russia, as well as a United States less committed to its traditional alliances)。

核兵器保有国が増加する世界という構想に懐疑論者や核兵器悲観論者は眉をひそめるかもしれないが、核拡散が選択的に進められるならば、そうした懸念はあまり根拠のないものとなる。カナダ、ドイツ、日本は、合理的な政策決定と国内の安定について、確かな実績があり、核事故や制御不能なエスカレーションの連鎖が起こる可能性は極めて低い。また、慎重に管理されれば、これらの国々における核拡散が、他国による核兵器開発の広範な動きにつながることはないだろうと考える十分な根拠がある。

選択的核拡散は、国際的な不安定化という恐ろしい新時代(a frightening new era of global instability)を到来させるのではなく、第二次世界大戦後の秩序を維持すること(uphold the post–World War II order)の一助となる。カナダ、ドイツ、日本が核兵器を保有すれば、世界の軍事力バランスは、ルールに基づく国際秩序に関与し、その主要規範、特に領土保全の侵害を阻止することに尽力する国家連合に有利な方向に再調整されることになるだろう(Were Canada, Germany, and Japan to acquire nuclear weapons, they would rebalance global military capabilities in favor of a coalition of states committed to the rules-based system and to stopping the erosion of its key norms, especially territorial integrity)。選択的核拡散は、アメリカとその同盟諸国に多大な恩恵をもたらしてきた1945年以降の、ますます脆弱になりつつある国際秩序を活性化させるだろう。

●ウィン・ウィン関係(A WIN-WIN

アメリカの高官たちは、大陸防衛の負担をヨーロッパの同盟諸国に移し、アメリカへの軍事的依存度を低下させる必要性を繰り返し強調してきた。東アジアにおける中国の台頭という地政学的課題に直面し、国内問題への対応に資源を割く必要に迫られているワシントンは、ヨーロッパのフリーライダー状態を終わらせることを最優先の戦略課題と捉えるようになった。今日、ヨーロッパが自国の安全保障を確保する能力を阻害し、ひいてはアメリカの大幅な撤退を阻んでいるのは、ドイツの核戦力の欠如(the lack of German nuclear forces)である。冷戦中、アメリカの指導者たちはヨーロッパからのアメリカ軍撤退を望んでいたが、ドイツが核抑止力(a nuclear deterrent)を獲得しない限り、ヨーロッパは自国の安全保障を確保できないと判断した。歴史家のマーク・トラクテンバーグが指摘するように、アメリカはイギリスとフランスの核戦力では、ヨーロッパがソ連とその膨大な核兵器を抑止できるという「必要な安心感を与えることはできない(could not provide the necessary degree of reassurance)」と正しく判断した。今日でも、同じ障害が依然として存在している。ドイツが独自の核兵器開発を進めるよう促すことは、最終的にアメリカの離脱(exit)を可能にするような、自立したヨーロッパの実現につながるだろう。

ドイツの指導者と国民は、アメリカへの軍事的依存が、自国をワシントンの気まぐれ(Washington’s whims)に翻弄される脆弱な状態に陥らせていることを認識している。2025年2月の首相就任直後、フリードリヒ・メルツ首相はアメリカからの「独立を達成する(achieve independence)」時が来たと宣言し、以来、実質的な再軍備(substantial rearmament)を声高に主張してきた。しかし、ドイツの通常戦力増強には長い年月を要するだろう。ベルリンは、メルツ首相をはじめとする欧州首脳が6月のNATO首脳会議で合意した、対GDP比5%という野心的な国防費目標をどのように達成するかについて、いまだ明確なヴィジョンを示していない。ウクライナへの軍需物資供与というドイツの継続的な義務と、国民の兵役への抵抗感は、迅速な通常戦力増強を阻害している。独立した核戦力を開発することは、アメリカが突然ヨーロッパから撤退する可能性からドイツを守ると同時に、5%の核兵器保有義務を果たすための実現可能で意義のある方法を提供するだろう。

日本の核拡散は、東アジアにおけるアメリカの主要目標、すなわち強力な地域同盟(strong local alliances)を通じた中国の封じ込め(the containment of China)という目標の達成に大きく貢献するだろう。ワシントンの視点からすると、北京がもたらす第一の脅威は、地域支配(regional dominance)を確立し、例えば半導体サプライチェインの混乱や東アジア、さらにはその周辺地域への前方基地(forward bases)の設置などによって、アメリカとその国益を深刻に脅かす軍事力を開発する可能性があることだ。このような中国の地域覇権(regional hegemony)は、アメリカにとって大きな脅威となるだろう。

日本は既に、海によって敵対国から隔てられた島国(an archipelago country)という地理的優位性を享受している。これに独自の核能力が加われば、外部からの脅威に対する日本の安全保障は事実上保証され、中国の支配下に置かれることもなくなるだろう(it does not fall under Chinese control)。自国の防衛力強化に加え、核武装した日本は、アメリカが提供できるよりも信頼性が高く、即効性のある拡大抑止力を東アジアにもたらすことになる。中国は東アジア情勢をめぐってワシントンが核戦争のリスクを冒す意思があるのか​​どうかを疑うかもしれないが、日本は地理的に近く、地域安定に直接的な利害関係を持っているため、その関与ははるかに信頼性が高い。

核武装した日本は、危機エスカレーションシナリオに新たな選択肢を加え、アメリカを直接巻き込むことなく、中国の侵略に効果的に対応することを可能にする。中国は日本への攻撃を検討する際、アメリカからの追加支援の有無にかかわらず、日本の報復がもたらす莫大なコストを考慮せざるを得なくなるだろう。核兵器を保有することで、日本、そしておそらく東アジア全体が、ワシントンの安全保障への関与の急激な変化に対応できるようになる。ドナルド・トランプ政権の最新の「国家防衛戦略(National Defense Strategy)」は、中国とロシアからの脅威よりも、アメリカ本土と西半球の防衛(the defense of the U.S. homeland and the Western Hemisphere)を優先しており、これは潜在的に大きな方向転換を示唆している。

北アメリカにおいて、カナダの核兵器保有はアメリカの国土安全保障を強化するだろう。NATOにおけるカナダ軍とアメリカ軍の統合、そして二国間防空システム「NORAD」の存在を鑑みれば、米加両国はほぼあらゆる想定される半球防衛シナリオにおいて共に戦うことになる。カナダはロシアや中国から領土保全に対する差し迫った脅威に直面していないものの、中露両国との関係は過去10年間で著しく悪化している。カナダの核抑止力は、アメリカが大陸の隣国であるカナダの防衛に介入する必要性を低下させ、アメリカの防衛能力を事実上解放し、潜在的な地政学的侵略の道筋を一つ排除する。また、カナダの核抑止力に対するアメリカの支持は、両国関係が緊張状態にある今、大陸防衛に対するワシントンの関与を示す重要な安心材料(crucial reassurance)となるだろう。

一方、カナダにとって、核兵器保有は、大陸防衛に対する共有された責任(shared responsibility)を受け入れていること、そしてオタワはアメリカの支援なしに潜在的な侵略者を抑止できることをアメリカに示すシグナルとなる。カナダのマーク・カーニー首相が3月に述べたように、カナダとアメリカの「古い関係」は「終わった」(Canada’s “old relationship” with the United States is “over”)。核保有は、大陸同盟を再構築し、カナダが単独で行動するための準備を整えることで、オタワをこの新たな世界へと導くことになるだろう。さらに、NATOの5%国防費目標達成という課題は、ドイツよりもカナダにとってより深刻であると言える。控えめな核抑止力は、この課題に対する解決策となるだけでなく、カナダの兵器庫における重要な戦略的資産にもなる。

カナダ、ドイツ、日本はそれぞれ、核兵器を独自に開発できる科学技術力と産業力(the scientific and industrial capacity)を有している。例えば、カナダは核分裂性物質の主要供給国(a major supplier of fissile material)としての役割を担っており、これはこれらの新たな核能力を実現するための共同努力の基盤となる。これら3つの同盟国が必要としているのは、そしてアメリカが提供できる、また提供すべきなのは、核保有国への移行に対する国民の支持と外交的支援、そして強固な指揮統制保障措置を確保するための技術的・教義的指導である(What the three allies would need—and what the United States can and should provide—is public support and diplomatic cover for their transition to becoming nuclear-armed states, as well as technical and doctrinal guidance to ensure robust command-and-control safeguards)。

●核問題の解決策(NUCLEAR FIX

伝統的に、核拡散は国際秩序の安定に対するリスクとして理解されてきた。国家が核能力を獲得すると、地域的および世界的な勢力均衡の変化(regional and global balances of power shift)が発生し、既存の安全保障体制に疑問が生じる。核抑止力を持つ国家は、抑制の試みから隔離されるため、略奪的な行動を取る可能性がある、というのが従来の考え方である。しかし、この従来の見方は誤りである―少なくとも単純化しすぎている―。なぜなら、全ての核拡散国が同じように行動すると仮定しているからだ。国際的なルールと規範を守ることに尽力する国家が核能力を獲得する場合、実際には、核拡散は国際秩序の安定性と強固さを高める(When states committed to defending international rules and norms acquire nuclear capabilities, proliferation, in fact, increases the stability and strength of the global order)。

カナダ、ドイツ、日本は、ルールに基づく国際秩序に尽力する主要国である。これら3カ国は、外交政策、ひいては国家アイデンティティを、良き国際市民としての役割という観点から構築している。これらの国々における選択的な核拡散は、軍事力の均衡を再構築し、潜在的な現状変更勢力を阻止することに尽力する核保有国による統一的な連合を形成するだろう。このような連合は、1945年以降の国際秩序のルール、規範、制度、そして征服禁止の規範のさらなる崩壊を防ぐのに役立つだろう。選択的核拡散は、物質的な安定をもたらすだけでなく、国際秩序に不可欠な規範的な安定の源泉を強化することになる。

したがって、選択的核拡散は、国際秩序の活性化への投資として捉え、理解されるべきである。事実上、カナダ、ドイツ、日本は、ロシアが修正主義に有利な状況を見出すに至った、そして、中国が同様の判断を下す可能性を示唆する空白を埋めることに貢献することになるだろう。

●恐れるな(BE NOT AFRAID

核拡散反対派が提起する典型的な懸念の多くは、アメリカの同盟諸国による選択的核拡散には当てはまらない。例えば、カナダ、ドイツ、日本の核兵器がならず者国家(rogue states)やテロ組織の手に渡ることを恐れる理由はない。これら3カ国はいずれも責任感、国家能力、国内の安定性において模範的な国(paragons)である。また、これらの国の合理性についても心配する必要はない。北朝鮮の金正恩委員長が核兵器に関して慎重かつ用心深く行動できるのであれば、オタワ、ベルリン、東京の指導者たちも同様の行動をとると合理的に期待できる。

もう一つの懸念は、少数の国が核能力を追求すれば、他の多くの国も同様の動きに出るということだ。しかし、この主張は説得力に欠ける。連鎖的な核拡散(knock-on proliferation)は、通常、既存の対立の結果であり、地理的な近接性に大きく左右される。例えば、インドの核拡散に対抗してパキスタンが核兵器開発を進めたことがその典型例である。カナダの核拡散が、例えばメキシコに核兵器開発を促す可能性は低い。ドイツの核拡散に対抗する最大の動機を持つと考えらえるヨーロッパ諸国、すなわちイギリスとフランスは、既に独自の核戦力を保有している。ポーランドのような他の潜在的な核拡散国は、多国間または二国間の核共有協定によって、独自の核兵器開発計画を断念するよう説得されるかもしれない。東アジアでは、日本が核兵器を取得すれば、韓国が長年抱いてきた核開発の野望を実行に移す可能性もあるが、ソウルがアメリカの安全保障体制に組み込まれていることで、その動機は大幅に低下している。日本の地理的優位性と、(韓国が核武装した北朝鮮との)膠着状態(a frozen conflict)に陥っていないという事実は、選択的核拡散において韓国よりも魅力的な候補国となっている。確かに、ソウルが核兵器開発に踏み切った場合、安全かつ信頼できる核兵器保有国となるだろう。台湾も理論的には同様の動きを望むかもしれないが、中国との地政学的な立場が不安定なため、この願望を実行に移す現実的な道筋はない。

 

 

核兵器による事故の可能性は、依然として妥当な懸念事項である。核兵器の拡大は、技術的には偶発的な核戦争の可能性を高めることは事実だが、そのリスクは極めて小さく、国際的な安定と安全保障に対する具体的な利益によって相殺される可能性が高い。冷戦の最盛期、すなわち戦略的・イデオロギー的な対立が激しかった時代でさえ、2つの超大国は核戦争を回避することに成功した。選択的核拡散の利点の1つは、カナダ、ドイツ、日本が、追加的なリスクを最小限に抑えるための体制を最も整えている国の1つであるという点である。これらの国々はいずれも高度に専門的な軍隊、軍隊に対する強固な文民統制、そして平和的な紛争解決に長けた外務省を有している。

その他の反対意見は、精査に耐えうるものではない。例えば、アメリカ専門家の中には、核拡散がアメリカの同盟諸国、特にドイツと日本に対するアメリカの影響力を弱めるという理由で、アメリカの核拡散に反対している。この主張は、戦略的手段(strategic instruments)と目的(objects)を混同している。ワシントンがヨーロッパと東アジアにおいて掲げる根本的な目標は、いずれの地域においても単一国家による支配を阻止することにある。同盟諸国に対するアメリカの影響力は、地域覇権国の台頭(the rise of a regional hegemon)を防ぐための間接的かつ不確実な道筋を提供するものの、ドイツと日本が核兵器を保有すれば、事実上その結果を招くことになる。言い換えれば、選択的核拡散はアメリカの影響力をいくらか犠牲にするが、それはあくまでも当初の目的達成と引き換えに過ぎない。

最も理解しやすい、そしておそらく最も克服困難な障害は、核拡散に対する国民の反対である。広島と長崎への原爆投下という日本の経験は、今なお国民の記憶に深く刻まれている。1945年以降の平和主義と原子力エネルギーに対する一般的な懐疑心は、多くのドイツ国民に核兵器保有に反対する傾向を強めている。そしてカナダは、自国領土への核兵器配備はおろか、核兵器保有にさえ長年抵抗してきた。この懸念を払拭するのは、疑う余地のないほどに困難であり、各国は懐疑的な市民に対し、核兵器の取得は彼らの安全を高めるだけでなく、ルールに基づく国際秩序全体の健全性を向上させることにもつながると説得しなければならないだろう。

●慎重に進める(PROCEED WITH CAUTION

選択的核拡散の実施は容易ではなくリスクも伴う。まず、カナダ、ドイツ、日本は核不拡散条約(NPT)から脱退する必要がある。NPTにおいて、各国は核兵器を開発しないことを約束している。国際法に基づき、適切な手続きを経てNPTから脱退することは、国際秩序を弱体化させるのではなく、国際安全保障を強化しようとする意思を示すことになる。可能な限り、NPTからの脱退については、主要な同盟諸国に事前に慎重に打診し、懸念を最小限に抑えるべきだ。全ての国が脱退を受け入れることを期待するのは非現実的だが、責任ある透明性のある方法で核拡散を進めることは、各国の善意を示すことになる。ここで、アメリカの外交的支援が特に重要になる。フランスやイギリスと連携し、新たな核保有国が国連安全保障理事会の制裁措置の対象とならないようにすることが重要だ。

懐疑的な国々に最大限の安心感を与えるため、核拡散国3カ国は、少なくともアメリカの核の傘下にある間は、「先制不使用(no first use)」政策の採用を検討すべきだ。NATOは冷戦時代にはそのような政策に踏み切ることをためらったが、カナダ、ドイツ、日本は少なくとも現時点ではそれほど厳しい安全保障上の課題に直面しておらず、現状維持(maintaining the status quo)への関与を示すためにこの措置を検討できるだろう。

選択的核拡散は、その潜在能力を最大限に発揮するためには慎重な管理を必要とするが、真の楽観主義に対する真の根拠(genuine ground for optimism)を提供する。その是非は今でも議論されているが、どの国が核兵器を保有するかは極めて重要である。もし核拡散国が同盟関係にあり、安定した政権を持ち、国際社会の責任ある一員であるならば、核兵器の増加はむしろ良いことかもしれない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
 第二次ドナルド・トランプ政権内で影響力を増しているJD・ヴァンス副大統領はこれから慎重に、バランスを取りながら、トランプから嫌われないようにしながら、2028年に自身の大統領選挙での勝利に向けて決断と行動をしなければならないという難しい状況になる。そこで重要になってくるのはヴァンスの後ろ盾となっているピーター・ティールの存在だ。露骨に書けば、ヴァンスはティールの課したいくつかの課題をすべてクリアしたことで、現在の地位にある。それはつまり、ティールが「こいつを大統領にする」という試験に合格しているということである。第一次トランプ政権誕生においても重要役割を果たし、「影の大統領」と呼ばれたティールは、イーロン・マスクとも「ペイパル・マフィア」としてつながりを持ち、トランプとマスクを結び付ける役割を果たした。ティールが「次の大統領にはヴァンスを」ということになれば、マスクも進んで支援するだろう。これは、拙著『』(ビジネス社)で取り上げた、新・軍産複合体がヴァンスを大統領にするという動きでもある。

 ヴァンスを支える政治組織として、ロックブリッジ・ネットワークというものがあることは、先日、このブログでもご紹介した。その記事は以下の通りだ。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」:2026年5月7日付記事「JD・ヴァンス副大統領を支える「ロックブリッジ・ネットワーク」について紹介する」↓

https://suinikki.blog.jp/archives/90471185.html

 以下で、ロックブリッジ・ネットワークについての記事をご紹介している。私はロックブリッジ・ネットワークについて調べていく中で、ヴァンスとティールは、大統領の座を目指すために、この組織を作った、そして、ドナルド・トランプの後継者として2028年の大統領選挙での勝利を目指しているという感触を持った。それは、ロックブリッジ・ネットワークには資金源となる財界人も入っているが、トランプ政権にとって極めて重要な人物で、ホワイトハウスを取り仕切るスージー・ワイルズ大統領首席補佐官、そして、トランプの長男であり、トランプ一家にとって重要な存在であるドナルド・トランプ・ジュニアをネットワークに入れていることからも分かる。トランプ・ジュニアは、2028年大統領選挙の候補者としても名前が挙がっているが、ヴァンスが圧倒的な支持率を誇っている。重要なことは、トランプ・ジュニアがヴァンスを支持するとなれば、ライヴァルたちはもう追いつけないということになる。そのために、トランプ・ジュニアに、ネットワークに入れて、ある程度の金儲けをさせているということになる。ワイルズはトランプの信頼が厚い人物であり、ワイルズの口添えがあれば、ヴァンスの先行きは明るいということになる。ヴァンスとティールは少しずつ2028年に向けて根回しをしているだろう。これからさらに注目していかねばならない。
(貼り付けはじめ)
台頭するMAGA支持者たちの秘密会合の舞台裏(Behind the Scenes at a Secretive Gathering of Rising MAGA Donors

―ウィンクルヴォス双子兄弟、レベカ・マーサー、イーロン・マスクの盟友たち、ドナルド・トランプ・ジュニア、そしてトランプ陣営の幹部たちが最近、突如として権力を手にした右派系献金者たちの会合に参加した。

セオドア・シーファー筆

2024年11月20日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2024/11/20/us/politics/rockbridge-trump-vance-wiles.html

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ラスヴェガスで開催された今年のロックブリッジ・ネットワークの会合には、共和党の大口献金者であるレベカ・マーサー、ドナルド・J・トランプ次期大統領の大統領首席補佐官を務めるスージー・ワイルズ、そしてドナルド・トランプ・ジュニア(左から)が出席した

次期ホワイトハウス大統領首席補佐官に指名されてからわずか4日後、スージー・ワイルズはラスヴェガスの五つ星ホテルでエスプレッソを辛抱強く待っていた。

一夜にして、スージー・ワイルズはアメリカで最も影響力のある人物の一人となった。大統領移行期において、彼女の1分1秒の価値はかつてないほど高まっている。共和党の野心家たちは、彼女に魅力的なポストを要求し、一方、マール・ア・ラーゴでは、次期大統領ドナルド・J・トランプが人事を巡って物議を醸し続けている。

しかし、彼女は数千マイル離れた場所で、警備員一人を伴って、フォーシーズンズホテルのコーヒーショップに一人で並んでいた。彼女は、選挙対策本部長クリス・ラシヴィタ、世論調査担当トニー・ファブリツィオ、資金調達責任者メレディス・オロークといったトランプ陣営の幹部たちとの昼食を終えたばかりだった。「みんなただのんびりしているだけなんだ」と、ホテル内を歩いているところを近くにいた『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者に目撃されたと知らされたトランプ一行の一人が驚いた様子で冗談めかして言った。

キャリアの中でも最も重要な時期に、トランプ陣営の面々が何日も滞在する必要があったのはなぜだろうか? それは、共和党の献金者層の中で急速に台頭してきた、裕福なテクノロジー企業の幹部とその支持者たちによる秘密結社ロックブリッジ・ネットワーク(the Rockbridge Network)の秋の会合のためだった。

JD・ヴァンスが5年前に共同設立したこの団体は、非公式な夕食会から発展し、共和党の有力献金者による強力な連合体へと成長した。この団体のある関係者によると、2019年以降、ロックブリッジのプロジェクトに1億ドル以上を寄付し、シリコンヴァレーの右傾化を牽引してきたという。ロックブリッジにとって、ヴァンスの副大統領選出はまさに快挙であり、新たな国家的影響力を行使する絶好の機会となった。

しかし、ロックブリッジ・ネットワークは、コーク・ネットワーク(Koch Network)のような富裕層の保守派団体が、リベラル派の批判者や共和党支持者から攻撃を受けていることを念頭に置き、活動を極秘裏に進めてきた。

先週、黒塗りのSUVの車列が億万長者たちをプライヴェートジェットからホテルへと送り届ける中、ロックブリッジ・ネットワークのメンバーがホテル周辺で目撃された。共和党有数の献金者一族の令嬢であるレベカ・マーサーは、ロビーで祝福に駆けつけた人々に挨拶をしていた。ホテルのバーでハッピーアワーを楽しんでいたのは、イーロン・マスクの親友であるケン・ハウリーとルーク・ノセックの2人。彼らはマスクと共にペイパル(PayPal)で働き、巨万の富を築いた。

そして、映画「ソーシャル・ネットワーク」で有名になった、身長196センチの仮想通貨投資家でハーヴァード大学ではボートクルーだったタイラーとキャメロンのウィンクルヴォス双子兄弟の姿も見逃すことはできなかった。

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2021年のタイラー・ウィンクルボスとキャメロン・ウィンクルボス。彼らは最近、他の裕福なテクノロジー企業の経営者やその仲間たちと共にロックブリッジで開催された会合に参加した

白と赤のギフトバッグとストラップを身につけた出席者たちは、ホテル関係者や、非公開のこの会合に招待されていない『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者に話しかけられても、口を閉ざすよう心得ていた。しかし、出席者によると、議事録には、アンドゥリルの共同創業者であるパルマー・ラッキーやヴェンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンなど、複数のテクノロジー界の大富豪による講演が記載されていた。アンドリーセンは、テクノロジー規制緩和への支持や、トランプへの支持表明に対するシリコンヴァレーの賛否両論について語ったという。

テクノロジー業界の新進気鋭の人物もいた。ドナルド・トランプ・ジュニアは、歓迎夕食会でヴェンチャーキャピタル業界への参入を発表した。そして、次期大統領がロバート・F・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官に指名する数日前、ケネディは自身の公衆衛生に関する取り組みについて詳しく語り、聴衆からスタンディングオヴェーションを受けた。ワイルズはまた、「2024年選挙分析(2024 Election Analysis)」と題したセッションを主導し、トランプの大統領就任後の最初の数日間を概観した。

「これはアメリカ国内版『砂漠のダヴォス会議(Davos in the desert)』だ」とロックブリッジ・ネットワークの支援者であり、ドナルド・トランプ・ジュニアの新たなビジネスパートナーでもあるオミード・マリクは、リヤドで開催される年次ビジネス会議に言及しながら語った。

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2023年にドナルド・トランプ・ジュニアと共にニューヨーク証券取引所に出席した金融家オミード・マリクはロックブリッジ・ネットワークの中核メンバーとなり、トランプ一家の友人となった

●小規模な夕食会からリッツ・カールトンへ(From small dinners to the Ritz-Carlton

ロックブリッジ・ネットワークは、より謙虚な形で始まった。2019年、当時『ヒルビリー・エレジー』の著者として知られていたヴァンスと、保守系メディア関係者のクリス・バスカークは、ヴァンスの政治キャリアの基盤を築き、最終的にはコーク・ネットワークに対抗するトランプ派の組織を構築することを目指し、非公式に小規模な夕食会を何度か開催し始めた。初期の会合の一つは、ヴァンスがオハイオ州ロックブリッジのリゾートで寄付者や活動家を集めて開催したもので、そこで「ロックブリッジ」という名前が誕生した。

このグループは、マーサーとヴェンチャーキャピタリストのピーター・ティールから最初の資金提供を受け、やがてドナルド・J・トランプの目に留まり、トランプはいくつかの会合で講演を行った。

秋と春にそれぞれ一度ずつ、ロックブリッジはフロリダ州パームビーチのフォーシーズンズやダラスのリッツ・カールトンといった場所で、3日間にわたる政治パネルディスカッションとビジネス交流会を開催するようになった。講演者には、タッカー・カールソン、ティールの弟子であるブレイク・マスターズ、カジノ王のスティーヴ・ウィン、投資家のデイヴィッド・サックス、そしてニューヨーク・ジェッツのオーナーである億万長者のウッディ・ジョンソンなどが名を連ねた。

参加者全員が政治に関心を持っている訳ではない。中には、ロックブリッジをエリート層向けのサンヴァレー会議の保守的なヴァージョンと捉え、ビジネスに強い関心を持つ人もいる。

かつて『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄稿していた論説委員で、2016年にトランプ支持の出版物「アメリカン・グレートネス(American Greatness)」を創刊したバスカークは、政治に直接携わった経験は限られていた。しかし、彼は「ニューライト(the New Right)」と呼ばれる運動、保守系ビジネス界、そしてトランプの周辺との人脈を活かし、共和党の献金者を組織し、ロックブリッジ・ネットワークを築き上げた。彼はこの記事へのコメントを拒否した。

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クリス・バスカークはJD・ヴァンスと共にロックブリッジ・ネットワークを設立し、政治に直接携わった経験は限られているものの、徐々に組織を拡大し、保守系のプロジェクトに資金を提供してきた

ロックブリッジ・ネットワークは、今年献金者に配布された資料によると、「永続的な政治基盤を構築(builds lasting political infrastructure)」し、「共和党の衰退の一因となっているシンクタンク、メディア組織、活動家グループといった現在の共和党のエコシステムに取って代わることを目指している」としている。その野心は明白だが、長年の参加者の中には、ロックブリッジがこれらの目標達成にどれほど近づいているのか疑問視する声もある。

ヴァンスが2022年のオハイオ州選出連邦上院議員選挙で勝利し、今年大統領選挙で副大統領候補に選出されたことは、ロックブリッジとバスカークにとって強力な正当性の証明となった。バスカークは現在もヴァンスの側近として活動している。バスカークはロックブリッジ社の資金を活用し、今回の選挙サイクルでトランプの草の根運動を強化するため、迅速にスーパーPACを立ち上げた。また、かつては共和党の資金調達において二流と見なされていたロックブリッジは、一部の主流派共和党員でさえラスヴェガスまで足を運ぶほどの影響力を持つようになった。

ロックブリッジが実際にどれだけの資金を運用しているのかについては、依然として懐疑的な見方がある。ロックブリッジ・ネットワークへの寄付者は若年層が多く、起業家出身者で、資産の流動性が低い傾向にある。フォーシーズンズホテルのロビーには、スタートアップ企業のTシャツを着た人々とMAGA帽やカウボーイブーツを履いた人々が混在し、シリコンヴァレー、オースティン、マイアミといったテクノロジーの中心地から人々が集まっていた。

●1億ドルを政治に静かに流し込む(Quietly funneling $100 million into politics

選挙直後にこの秋の会合を開催したことで、サミットがまるで葬儀のような雰囲気になってしまう危険性もあった。しかし、実際は正反対だった。

イヴェントが正式に始まる前から、ワイルズはラスヴェガスに滞在し、ロックブリッジの寄付者や友人約30人を招いて、ステーキハウスで土曜日の屋外ディナーを主催していた。賑やかなオープンバーや音楽が流れる宴会場で、参加者たちはトランプ政権でどのような役職に就けるかについて率直に意見を交わし、マスクが世界で最も影響力のある人物かどうかについて議論を交わしていた。

「ロックブリッジ・ネットワークの参加者は皆、技術者と政治家が再び直接協力し合い、互いに公然と敵対しなくなったことを非常に喜んでいた」と出席したソイレントの共同創業者ジョン・クーガンは語った。彼は続けて次のように述べた。「もはやテクノロジーが未来を牽引するかどうかではなく、その影響をいかに導くかが問われている。だからこそ、テクノロジー界の大富豪と政界のエリートたちが共にパーティーを開くのは当然のことなのだ」。

ヴァンスは出席しなかった。これは異例のことで、一部の支持者にとっては残念なことだった。しかし、ヴァンスの勝利によってロックブリッジ・ネットアークは一躍人気となり、直前になって参加申し込みが殺到した。以前は5000ドルで参加できたこともあったロックブリッジ・ネットワークは、最低参加費を2万5000ドルに引き上げた(ただし、一部の参加者はもっと安く参加できたと内緒話をしていた)。

ニューヨーク・タイムズ紙が入手した目論見書によると、ロックブリッジの会員資格の費用は、「リミテッド・パートナー」の10万ドルから、「プリンシパル・パートナー」の100万ドルまでとなっている。

この資金は、ロックブリッジが運営する8つの組織に充てられる。これには、4つの非公開資金を扱う501(c)()団体、2つのスーパーPAC、非営利活動のための寄付者指定型501(c)()基金、そしてロックブリッジ・ネットワークという傘下組織(有限責任会社)が含まれる。バスカーク氏が主宰するスーパーPAC「ターンアウト・フォー・アメリカ」は、今年少なくとも2500万ドルを調達している。

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次期副大統領のJD・ヴァンスはロックブリッジの共同創設者。ロックブリッジは、ヴァンスが2022年のオハイオ州選出連邦上院議員選挙で勝利した後、影響力を増し、現在、さらに大きな影響力を行使しようとしている

ロックブリッジ傘下の8つのグループは、主に投票促進活動を行っている。そのうちの1つ、「フェイスフル・イン・アクション(Faithful in Action)」は、16万人の会員を擁し、週2回、小規模教会にフィールドチームを組織している。このグループは、公的な活動は一切行っていない。

ロックブリッジ傘下のグループは、トランプに対する訴訟を追及する検察官を調査するドキュメンタリーも制作している。目論見書によると、ロックブリッジは2020年以降、「提携メディアに無料で提供される」世論調査に資金を提供してきた。また、提携メディアが掲載する「地方および全国規模の調査」にも資金援助を行っている。

●新たなタイプの共和党献金者(A new breed of Republican donors
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ヴァンスの新たな職務は、ロックブリッジとその150人の会員をトランプ政権の政策推進において影響力のある存在にする可能性が高い。

その理由の一つは、トランプがリバータリアン系のコーク・ネットワークや、よりタカ派的なアメリカン・オポチュニティ・アライアンス(American Opportunity Alliance)といった伝統的な共和党献金者グループと、時に冷え込んだ関係を築いてきたことにある。対照的に、ロックブリッジはトランプ時代に設立され、ライヴァル団体ほどの財力はないものの、トランプ氏と同様の過激な姿勢を共有している。

「保守系の大口献金者たちは、ここで決断を迫られている」とヴァンスの側近で、こうした大口献金者たちと親しい影響力のある保守派経済学者オレン・キャスは語る。「2024年の選挙までは、トランプが成功しないかもしれないという、少なくともそれなりの根拠があった」。

しかし、キャスによれば、もはやその根拠は存在しない。「古い船の貨物室に閉じ込められて沈没しようとしているのは誰なのか、そして保守主義の未来にとって真に重要な存在でありたいと願っているのは誰なのか?」と彼は問いかけた。

バスカークはラスヴェガスの献金者たちに対し、選挙期間中、ロックブリッジは約3000人を現場でトランプのために活動させていたと語った。そして、共和党の勝利後、ロックブリッジのプロジェクトはさらに規模を拡大する時が来たとバスカークは述べた。

セオドア・シュライファーは、選挙資金とアメリカ政治における億万長者の影響力を取材する『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者である。

=====

所属政党に不満を抱く裕福な共和党献金者たちが秘密の連合を形成する(Dissatisfied With Their Party, Wealthy Republican Donors Form Secret Coalitions

―いわゆる「闇資金グループ(dark money group)」における民主党の優位性を相殺しようと、ピーター・ティールのようなトランプ支持派の裕福な保守派は、従来の党組織の枠外でより大きな影響力を行使しようと画策している。

シェイン・ゴールドマチャー、ライアン・マック筆

2022年4月6日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2022/04/06/us/politics/republican-donors-rockbridge-network-trump.html

「共和党の政策を混乱させつつも推進する(disrupt but advance the Republican agenda)」ことを目指すと表明する、裕福な保守派支援者による新たな連合が今週、フロリダ州南部で非公開のサミットを開催した。文書や関係者へのインタヴューによると、このサミットではドナルド・J・トランプ前大統領と、トランプと連携する連邦上院議員候補が、トランプの所有するマール・ア・ラーゴ・クラブで非公開の演説を行った。

ロックブリッジ・ネットワークと呼ばれるこの連合には、ピーター・ティールやレベカ・マーサーなど、トランプの最大の献金者も含まれており、保守系メディア、法律、政策、有権者登録などのプロジェクトに3000万ドル以上を投じ、アメリカの右派勢力を再構築するという野心的な目標を掲げている。

これまでその存在が報じられていなかったロックブリッジの出現は、保守派の大口献金者たちが、党の正式な組織機構の外で、そして多くの場合ほとんど情報公開をせずに、2022年の中間選挙と共和党の将来を左右しようと、激しい駆け引きを繰り広げている中で起こった。

2月には、これまで報道されていなかった別の寄付者連合、トランプと親しいロビイスト、マット・シュラップが組織したチェスナット・ストリート・カウンシルが会合を開き、保守運動への新たな資金調達モデルについて説明を受けた。

こうした新興連合が勢いを増せば、トランプに懐疑的あるいは中立的な立場を取ってきた既存の寄付者ネットワークと、保守派の間で影響力を巡って競合することになるだろう。

億万長者の実業家チャールズ・G・コークとデイヴィッド・H・コークが設立したある連合は、2020年に2億5000万ドル以上を支出した。また、ニューヨークのヘッジファンドの億万長者ポール・シンガーが主導する別の連合は、2月に共和党の有力政治家を招いて会合を開いた。

秘密裏に行われる資金調達の急増はそれだけにとどまらない。トランプへの忠誠度の異なる複数の非営利団体も、右派への献金の主要な分配者となるべく競い合っている。

こうした駆け引きは、共和党を取り巻く政治構造、そして場合によっては党の政治家に対する右派の不満、さらにトランプが次期大統領選出馬を示唆する中での党の方向性に関する意見の相違を浮き彫りにしている。

共和党の最も裕福な活動家たちの資金力を活用しようとする動きは、今年の中間選挙、そして場合によっては2024年の大統領選に向けて、共和党にとって有利な選挙環境を活かすのに役立つ可能性がある。逆に、富裕層が競合する候補者、団体、戦術に資金を投入すれば、共和党の見通しは暗くなるだろう。

寄付者が自ら組織化しようとする姿勢は、寄付者の身元開示が義務付けられている各政党の公式機関から、開示義務がほとんどない外部団体へと権力と資金が流出していることを浮き彫りにしている。これはまた、各政党の候補者や政策を支援する非営利団体に関して、政治的右派が不利な立場に置かれているという、一部の有力共和党員の懸念を反映している。

『ニューヨーク・タイムズ』紙の分析によると、民主党と概ね連携する政治活動が最も活発な非営利団体15団体は、2020年に寄付者の身元が非公開の資金で15億ドル以上を支出した。これに対し、共和党と連携する同規模の15団体が支出した、いわゆる「闇資金(dark money)」は約9億ドルにとどまっている。

この格差を縮め、右派の政治基盤を支える政治コンサルティングやテクノロジー分野で優位に立つための取り組みは、これらの連合体の間で主要な議論の的となっている。

ロックブリッジ・ネットワークのパンフレットには「将来の選挙で勝利する可能性を少しでも高めるためには、私たちの陣営が組織化されており、必要な組織的ノウハウと資金的支援を備えていることを示す必要がある」と記されている。

今年、共和党の資金関係者の間で出回ったパンフレットは、ロックブリッジを「一種の政治的ヴェンチャーキャピタル企業(a kind of political venture capital firm)」と称し、「(投資家の資金を適切な政治的専門知識で活用(leverage our investors’ capital with the right political expertise)」することで、「党の衰退の一因となっている現在の共和党のシンクタンク、メディア組織、活動家グループといったエコシステムを、より行動志向で、より効果的な、勝利に焦点を当てた人材と組織に置き換える(replace the current Republican ecosystem of think tanks, media organizations and activist groups that have contributed to the Party’s decline with better action-oriented, more effective people and institutions that are focused on winning)」としている。

ロックブリッジのパンフレットに記載されている取り組みの中には、広報、メッセージ発信、世論調査、「インフルエンサー・プログラム(influencer programs)」、調査報道など、メディア関連の機能が含まれており、総予算は800万ドルに上る。

375万ドルの費用が見込まれる「法廷闘争と戦略的訴訟(lawfare and strategic litigation)」は、裁判所を利用して「メディアを含む悪質な行為者に責任を負わせる(to hold bad actors, including the media, accountable)」ことを目的としている。300万ドルの費用が見込まれる「政権移行プロジェクト(transition project)」は、政策専門家を集め、「次期共和党政権のスタッフ(government-in-waiting to staff the next Republican administration)」を編成することを目的としている。

「レッドステート・プロジェクト(red state project)」とは、左派が先駆的に開発したモデルを模倣したもので、戦略家たちが様々な運動団体の活動を調整し、互いに補完し合い、重複を避けるという手法である。このプロジェクトは州ごとに600万ドルから800万ドルの費用がかかると見込まれており、当初は激戦州であるアリゾナ州、ネヴァダ州、ミシガン州に重点が置かれている。

ロックブリッジに詳しい関係者によると、これらのプロジェクトとその資金調達目標は野心的なもので、ロックブリッジ・ネットワークはこれまで新たな団体を設立するのではなく、既存の団体に寄付金を配分して目標を達成することに重点を置いてきたという。

関係者によると、この連合は昨年、有権者登録イニシアティヴを含むいくつかの計画をアリゾナ州で試験的に実施したという。アリゾナ州はパンフレットの中で事例研究として紹介されている。

アリゾナ州は、昨年開催されたロックブリッジ初のサミットの開催地だった。サミットでは、億万長者のテクノロジー投資家であるティールが講演を行った。ティールと、ヘッジファンドの大物ロバート・マーサーの娘であるレベカ・マーサーは、2016年のトランプへの最大の献金者の一人であり、トランプの政権移行チームで緊密に協力した。

それ以来、ティールは重要なキングメイカーとして台頭し、連邦上院議員と連邦下院議員の候補者16人を支援してきた。その中には、レベカ・マーサーも支援している候補者もいる。これらの候補者の多くは、トランプが2020年の大統領選に勝利したという虚偽の主張を鵜呑みにしている。

1つ目は、ティールの元従業員でアリゾナ州選出連邦上院議員選に出馬しているブレイク・マスターズだ。マスターズは火曜日夜、トランプに先立ち、マール・ア・ラーゴで開催されたロックブリッジの夕食会で講演を行い、ロックブリッジの活動から恩恵を受ける可能性が考えられる。

ティールは、マスターズとオハイオ州選出連邦上院議員候補のJD・ヴァンスを支援するスーパーPACにそれぞれ1000万ドルを寄付した。

ティールとレベカ・マーサーが今週のロックブリッジの会合に出席したかどうかは不明だ。この会合は、火曜日夜のマール・ア・ラーゴでの夕食会に加え、別のホテルでも会合が開かれた。マール・ア・ラーゴでの夕食会の直前には、トランプ支持者が集まる別のイヴェントが開催された。それは、フェイスブックの親会社であるメタ社のCEOマーク・ザッカーバーグが、パンデミックの中で選挙実施費用を賄うのに苦労している選挙管理委員会に2020年に助成金を提供したことを批判する映画のプレミア上映会だった。ティールはメタの取締役を務めていたが、中間選挙への影響力行使に専念するため、その職を辞任した。ロックブリッジへの関与は、ティールが非営利団体への秘密資金提供に手を広げようとしている可能性を示唆している。

ロックブリッジは、トランプ支持の雑誌「アメリカン・グレートネス」の編集長兼発行人であり、マスターズを支援するスーパーPACの顧問も務めるクリストファー・バスカークによって設立された。

ティールの広報担当者はコメントを拒否した。マーサーへ連絡する努力は成功しなかった。

15年以上前にコーク兄弟の政治活動の拡大を支援したシュラップは、2020年の選挙後、寄付者から「政治活動への資金調達の従来の方法に不満を抱いている」との声が寄せられたことが、チェスナット・ストリート・カウンシル設立のきっかけになったと述べた。

シュラップは、「こうした寄付者と協力して、より良い投資機会を見つけるのが賢明だと判断した」と述べた。

シュラップは、チェスナット・ストリート・カウンシルが投票規則をめぐる訴訟を支援する可能性を示唆した。

2月に開催されたチェスナット・ストリート・カウンシルの会合では、ヴェテラン共和党資金調達者のキャロライン・レンが寄付者に向けてプレゼンテーションを行った。

トランプの多くの政治活動、特に1月6日の連邦議事堂襲撃事件に先立つ集会の資金調達に尽力したレンは、右派は左派の献金者ネットワークや非営利団体の資金調達拠点といったシステムを模倣し、新たな団体を育成し、既存の団体間の連携を強化すべきだと述べたと、プレゼンテーションの内容を知る関係者が明らかにした。

近年、右派にも新たな資金調達拠点が出現しているものの、左派のそれほどの洗練された組織や資金規模には及ばない。

保守パートナーシップ研究所は、「保守運動のハブ(the hub of the conservative movement)」となることを目指している。保守パートナー研究所は2021年の年次報告書で、トランプの元補佐官スティーヴン・ミラーが率いるアメリカ・ファースト・リーガル、同じくトランプ政権出身のラス・ヴォートが率いるセンター・フォ・リニューイング・アメリカ、そして元住宅都市開発長官ベン・カーソンが率いるアメリカン・コーナーストーン研究所など、複数の新たな保守系非営利団体の設立に貢献したと主張している。

この団体には、選挙公正ネットワークも含まれており、そのリーダーは保守派弁護士クレタ・ミッチェルだ。ミッチェルは、当時大統領だったトランプがジョージア州当局者に対し、選挙結果を覆すのに十分な票を「見つける(find)」よう圧力をかけた1時間にわたる電話会議に同席していた。

保守パートナーシップ研究所は昨年夏、トランプの政治活動委員会(PAC)から100万ドルの資金提供を受け、昨年春にはトランプのプライヴェート・クラブであるマール・ア・ラーゴで寄付者向けの会合を開催した。

こうした団体は、選挙運動や政治活動委員会に比べて情報開示義務がはるかに少ないのが現状だ。保守パートナーシップ研究所や、司法活動家のレナード・A・レオが設立した別の非営利ネットワークのような資金提供拠点は、他の団体への助成金については開示義務があるが、資金提供者については開示義務がある。ロックブリッジ・ネットワークやチェスナット・ストリート・カウンシルのような寄付者連合も、おそらく開示義務はないだろう。

トランプをはじめとする政府関係者や大統領候補者たちが、こうした連合体との連携に積極的であることは、アメリカ政治におけるこれらの連合体の重要性が高まっていることの証左である。

シンガーの連合体であるアメリカン・オポチュニティ・アライアンスがコロラド州とフロリダ州パームビーチで最近開催した非公開会合には、マイク・ポンペオ元国務長官、フロリダ州知事ロン・デサンティス、マイク・ペンス元副大統領、ニッキー・ヘイリー元国連大使が出席した。

ミネソタ州選出のトム・エマー連邦下院議員(共和党連邦議員委員長)は、今週パームビーチで開催されるロックブリッジ・ネットワークの会合で講演する予定だった。

※シェイン・ゴールドマッハー:全国政治担当記者で、以前はメトロデスクの主任政治特派員を務めていた。『ニューヨーク・タイムズ』紙に入社する前は、『ポリティコ』誌で共和党の全国政治と2016年の大統領選挙を取材していた。

※ライアン・マック:世界のテクノロジー業界における企業の責任問題に焦点を当てたテクノロジー担当記者である。フェイスブックに関する報道で2020年にジョージ・ポーク賞を受賞した。ロサンゼルスを拠点としている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

 イラン戦争は膠着状態に陥っている。ホルムズ海峡の閉鎖が解かれなければ、世界経済の混迷は続く。石油価格の高騰や石油由来の物品の不足は続くことになる。現在、表ではパキスタン、裏では中国が米中間を取り持ち、和平の条件を整えている。アメリカとイラン両国はできるだけ自分に有利な条件でと考えているだろうが、落としどころを見つけて、一日も早く停戦合意、和平合意を達成してもらいたいところだ。アメリカはイランの核兵器開発能力の完全廃絶、イランは体制の保証、安全の保証を求めている。ここで問題になっているのは、「アメリカの信頼性の欠如」だ。より正確に言えば、「トランプのする約束の信頼性の欠如」だ。

 トランプは、前政権が行った約束を反故にするということをしてきた。たとえば、第一次政権時、バラク・オバマ政権がイランとの交渉の末締結した核開発に関する合意を放棄した。また、キューバとの間の国交正常化や経済関係正常化についても反故にする決定を行った。トランプはアメリカ政府の継続性を無視し、約束を反故にするということをしてきた。それがここにきて重荷になっている。「トランプが約束したとしてもそれが守られる保証はない」というのは非常に厳しい。しかしそれでもなお、和平交渉は再開され、和平合意は達成されなければならない。なぜなら、アメリカはこれ以上、大規模な攻撃はできないし、実行する意志もない。地上軍を派遣してイラン国内で大規模な戦闘を展開するということはもってのほかだ。

 イランはアメリカ側が音を上げるまで、嫌気がさして、「何でも言うことを聞く」というところを目指しているだろう。中国やパキスタンは「アメリカにも少しは花を持たせないと、現状が続くことはイランにとっても得策ではない」という説得を続けているだろう。そして、アメリカ側に対しては「トランプの信頼性のなさが問題だ」ということは伝えているだろう。そうなれば、「少なくとも外交に関してはJD・ヴァンス副大統領が主導権を握って進めてくれなければ困る」ということになるだろう。「いざとなれば、トランプを座敷牢に閉じ込めてでも」という決意をもって、責任をもって外交運営ができる人物はヴァンスであり、トランプ自身が後ろに引くことで、和平が進むということになる。トランプにとっては不満が募ることになるだろうが、和平がなければ中間選挙の結果もおぼつかず、そうなれば完全に無力化してしまうことになるとなれば、ここは妥協するしかないということになる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプのレッドラインは今や何の意味も持たない(Trump’s Red Lines Mean Nothing Now

―イランは、虚勢(bluff)、場当たり的な対応(improvisation)、そして服従の儀式(submission rituals)の上に築かれた大統領制の限界を露呈させている。

ファリード・ザカリア筆

2026年3月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/27/donald-trump-red-line-iran-war-barack-obama-syria-maga-foreign-policy-middle-east/

バラク・オバマ大統領の退任後、彼の外交政策における最大の誤りの一つは、シリアの「レッドライン(red line)」だったという見方が定説となった。オバマはシリアが化学兵器を使用すれば攻撃すると明言していたが、実際に化学兵器を使用した証拠が出てくると、介入(intervention)の是非を連邦議会に委ね、連邦議会は行動を起こさなかった。

当時、ドナルド・トランプはこれを「大惨事(a disaster)」と呼び、マルコ・ルビオ連邦上院議員(当時、フロリダ州選出、共和党)は「世代を超えて、そしてアメリカの評判を傷つける(generational and reputational damage)」出来事だと非難した。数年後、ピート・ヘグセスは、オバマの外交政策は「支離滅裂な迷路(an incoherent maze)」の一部だと批判した。リンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、オバマが自ら引いたレッドラインを無視したことで、世界におけるアメリカの信頼性を失墜させる危険を冒したと説明した。

オバマのレッドラインの二転三転(flip flop)は、イラン・イラク戦争以降に見られる政策決定の模範例と言えるだろう。先週、トランプ大統領はソーシャルメディアに「イランが今この瞬間から48時間以内に、脅威を与えることなくホルムズ海峡を完全に開放しない場合、アメリカ合衆国はイランの様々な発電所を攻撃し、破壊するだろう。まずは最大の発電所から攻撃を開始する」と投稿した。

その後の展開は皆さんがご存じの通りだ。イランはこの脅威に屈することなく、攻撃と海峡封鎖を継続した。トランプ大統領の対応はどうだったか? 急遽方針を転換し、エネルギーインフラに関するあらゆる措置を5日間延期すると発表した。そして、突如として、一晩にして、イランとアメリカが「中東における敵対関係の完全かつ全面的な解決(complete and total resolution of our hostilities in the Middle East)」に向けた「生産的な協議(productive conversations)」を開始したと主張した。イラン側はこうした協議が行われていることを否定した。そして今、トランプ大統領は延期期間をさらに1週間半延長すると発表している。

トランプ大統領の評価が相対評価(on a curve)で行われていることは、もはや明らかだ。関税を130%に引き上げるとか、イラン最大のガス田を爆破するとか、「戦争はほぼ終結した(the war is very complete, pretty much)」などと言っても、これらの発言にはほとんど意味がない。これらは実際のアメリカの政策かもしれないし、そうでないかもしれない。あるいは、1日か1週間だけ政策として通用し、その後変更される可能性もある。戦争はほぼ終結したと発言した直後、トランプは同じ日に「私たちはまだ十分な勝利を収めていない(we haven’t won enough)」「敵が完全に、そして決定的に敗北するまで、私たちは決して諦めない(we’ll not relent until the enemy is totally and decisively defeated)」と断言した。イランの指導者たちと交渉することに同意したものの、彼らが次々と殺されるため交渉できなくなったと述べているが、実際に殺戮を行っているのは紛れもなくトランプ自身の軍隊(そしてイスラエル軍)である。これで全て理解できるだろうか?

トランプの支持者たちは、この矛盾こそが戦略的な天才の所業であり、人々を油断させているのだと主張する。しかし、その政策は様々な理由で変化しているようだ。例えば、株価が下落したり、標的国がトランプを称賛し、金塊を贈呈したりするかもしれない。トランプの最大の強みは、瞬時に方針転換できる柔軟性(he is flexible enough to turn on a dime)と、彼が提案するものなら何でも受け入れる支持基盤(a base that will accept anything he proposes)を持っていることだ。かつては中東戦争に断固反対していたトランプのMAGA支持者の多くは、今や改宗者のような熱狂ぶり(the zeal of converts)でこの中東戦争を信じている。トランプ大統領は敵対行為を終結させたいと明言しているものの、今回の問題は関税問題とは異なり、彼自身が始めたことを止めることができない点にある。イランには投票権があり、現在イランは戦闘継続に投票している。弱体化しているとはいえ、世界経済に打撃を与え、ひいてはアメリカに痛手を与えるだけの軍事力は依然として持っていると判断している。

世界にとって、もはやアメリカの信頼性などというものは存在せず、ただ主人公が危機を巧みに回避し、昨日の発言によって引き起こされた危機を今日の発言で解決できると期待する、奇妙なリアリティ番組のようなものになっている。イランの発電所を破壊すると脅迫する前日、トランプはアメリカがイランに対する軍事作戦を「縮小(winding down)」することを検討していると主張し、ホルムズ海峡の防衛は自分の問題ではなく、海峡を通過する輸入品を扱う他国が対処できると示唆した。また別の時には、他国の助けは必要ないと述べた。かつてビジネスマンたちは政策の不確実性を理由に前政権を非難していたが、今ではトランプの混乱の祭典がほぼ毎週市場を揺るがす中、彼らはこぞってトランプを称賛している。

トランプ大統領は、アメリカの強大な力を弄び、従わない者を罰し、従う者を褒賞することに慣れきっている。そうすることで、彼は数十年にわたって築き上げてきた信頼を、短期的な利益を得るために浪費している。時には、それは彼自身の家族のビジネス上の利益にもつながっている。しかし、イランにおいては、彼は自分のルールに従わない敵対者と対峙しているように見える。

※ファリード・ザカリア:CNN番組「ファリード・ザカリアGPS」司会者、著述家。最新作に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週に一度コラムを掲載し、『フォーリン・ポリシー』誌に転載されている。Xアカウント:@FareedZakaria

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 古村治彦です。

 先日、第二次ドナルド・トランプ政権内部のネオコン派の動きや政権を実質的に取り仕切るスティーヴン・ミラーホワイトハウス大統領次席補佐官の動きについての記事を紹介した。ブログの記事は以下の通りだ。ぜひお読みいただきたい。

※「古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ」:2026年4月29日付記事「アメリカに対するイスラエルからの働き掛けの受容体となった第二次ドナルド・トランプ政権内のネオコンたちと政権を動かすスティーヴン・ミラー」

https://suinikki.blog.jp/archives/90465309.html

 この記事の中で、聞き慣れない言葉「ロックブリッジ・ネットワーク(Rockbridge Network)」が出てくる。このロックブリッジ・ネットワークは政治活動組織であり、傘下にいくつもの組織を抱えている。2019年に、JD・ヴァンスとクリス・バスカークという人物によって創設された。「ロックブリッジ」はヴァンスの地元オハイオ州にあるリゾート地で、ここで会合が開かれたことから、その名前が使われることになった。2021年には、バスカークの地元アリゾナ州で大規模な会合が開かれ、マスコミの注目を浴びることになった。バスカークについては別の記事で詳しくご紹介したい。

 ロックブリッジ・ネットワークに資金的な援助を行っているのが、ヴァンスの師匠であるピーター・ティールとレベカ・マーサーである。ティールについてはここで詳しく説明しない。拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新軍産複合体の正体』(ビジネス社)をお読みいただきたい。レベカ・マーサーは保守系、共和党系の政治組織やシンクタンクへの大口献金者として知られる。父ロバート・マーサーはIBMの技術者出身で、初期の人工知能(AI)開発に携わった人物だ。のちにルネッサンス・テクノロジーズというヘッジファンドを設立し、ウォール街で大成功を収めた。ルネッサンス・テクノロジーズはすでに売却している。数兆円に及ぶ資産を財団に編成し、レベカはその理事となり、潤沢な資産を右派の政治団体に供給し、存在感を増している。2016年の大統領選挙ではドナルド・トランプを支援し、その影響力は大きい。

 共和党系の大口献金者としては、これまで、コーク・インダストリーズのコーク一族がよく知られている。彼らは政治団体やシンクタンク、大学などに多額の献金を行い、また、様々な組織を作り上げ、「コーク・ネットワーク(Koch Network)」と呼ばれる政治活動ネットワークを作り上げている。このことについては拙訳『』(講談社)をお読みいただきたい。「ロックブリッジ・ネットワーク」はこのコーク・ネットワークをしのぐ規模になることを目指している。そして、もちろん、ヴァンスの大統領就任も目標にしている。以下の記事が長いので、紹介はこのあたりにするが、ぜひこれからヴァンス副大統領の動き、ロックブリッジ・ネットワークの動き、アメリカ政治の動きについて注目を続けていただきたい。

(貼り付けはじめ)

JD・ヴァンスと師匠に当たるピーター・ティール、あまり知られていないロックブリッジ・ネットワーク、そして2016年のキングメイカーであるレベカ・マーサーとの主要なつながりを示す図表と概要(Chart and overview of key links for J.D. Vance with mentor Peter Thiel, the little-known Rockbridge Network and 2016 kingmaker Rebekah Mercer

ウェンディ・シーグルマン筆

2024年7月29日

『ニューズトラックス』誌

https://newstracs.com/chart-and-overview-of-key-links-for-jd-vance-with-thiel-mercer-rockbridge/2024/07/29/

ドナルド・トランプがJD・ヴァンスを副大統領候補に指名して以来、ヴァンスが「子どものいない猫好き女性」を批判する女性蔑視的な発言や、子どものいないアメリカ人はより高い税率を支払うべきだといった物議を醸す見解を述べていることが報じられている。ソーシャルメディアはソファやヴァンスの奇妙さを揶揄するミームで溢れかえっている。さらに、ヴァンスと彼の師であるピーター・ティールが、2008年に「非生産的な人々はバイオディーゼル燃料に変換されるべきだ」と書いたカーティス・ヤーヴィンの思想に倣っているという、より悪質な報道もある。ヤーヴィンは後に冗談だったと釈明したが、その後、非生産的な人々を仮想現実世界に閉じ込めるという、映画「ソイレント・グリーン」や「マトリックス」を彷彿とさせる悪夢のようなシナリオを、大量虐殺の代替手段として提案した。

JD・ヴァンスがトランプ陣営に加わったことは、過激な極右のIT億万長者グループがどれほどの影響力を持っているか、そしてトランプが11月の選挙で勝利すれば、彼らの影響力がどれほど増大するかを示している。トランプが勝利しない場合、このグループがハリス政権を弱体化させるためにあらゆる手段を講じることは間違いないところだ。

JD・ヴァンスのネットワークにおける主要人物の図表Chart of some key people in J.D. Vance’s network
以下の図表と記事は、JD・ヴァンスとクリス・バスカークが共同設立したロックブリッジ・ネットワークを通じて、主要人物たちがどのように繋がっているかを示している。これはヴァンスと繋がるネットワークのごく一部だ。メディアはピーター・ティール、イーロン・マスク、その他のテクノロジー系億万長者に注目しているが、父親のロバートと共に2016年のトランプの勝利に多額の資金を提供したレベカ・マーサーを忘れてはいけない。レベカ・マーサーはこのネットワークに強い人脈を持ち、ピーター・ティールと共に再び政治的なキングメイカーとしての役割を果たそうとしている。

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●テクノロジー界の巨頭たちとレベカ・マーサー(The tech broligarchs and Rebekah Mercer

2018年、キャロル・キャドワラダーは、レベカ・マーサーとロバート・マーサーが出資するケンブリッジ・アナリティカが、数千万件ものフェイスブックのプロフィールを収集し、そのデータを利用してアメリカの有権者をターゲットにするツールを構築した経緯について、複数のスクープ記事を発表した。ケンブリッジ・アナリティカに関する報道は、極右の政治家や献金者がテクノロジーと個人データを駆使して選挙に影響を与えるリスクを浮き彫りにした。

私の最初の調査と報道は2017年に始まり、SCLグループとケンブリッジ・アナリティカの企業一覧表を作成した。以来、これらの企業について継続的に報道している。

最近、キャドワラダーは、トランプを支持するJD・ヴァンス、ピーター・ティール、イーロン・マスクといったテクノロジー界の「巨頭たち(broligarchs)」について記事を書いている。

2016年に見られた、億万長者の献金者、テクノロジー、データに関するいくつかのパターンは、2024年の選挙でも継続している。

新たな権力者として台頭する一部のテクノロジー界の巨頭たちは、メディアで大きく取り上げられている。レベカ・マーサーのような人物は、過去の経験を利用して右翼的な政策を推進しており、こうした人物もこの陰謀ネットワークに関する報道に含めるべきである。

●ピーター・ティールはいかにしてテクノロジー界の巨頭となったのか(How Peter Thiel became a tech broligarch

ピーター・ティールは、2024年の大統領選挙に向けて最も有力なキングメイカー志望者(the most prominent ‘would-be’ kingmaker)と言えるだろう。もっとも、最近トランプを支持したイーロン・マスクと、その座を争っているように見えることもある。ティールとマスクは共に、ペイパル(PayPal)の共同創業者として巨万の富を築き、テクノロジー界の巨頭となった。

1990年代後半、世界が2000年問題(Y2K)への対応に追われる中、ピーター・ティールはオンライン決済ソフトウェア会社コンフィニティ(Confinity)を設立した。コンフィニティは後にイーロン・マスクが設立したX.comと合併し、ペイパルへと社名を変更した。マスクはペイパルを短期間経営した後、2002年にeBayに売却し、その資金をスペースXSpaceX)の設立資金に充てた。

ピーター・ティールはその後、クラリウム・キャピタル(Clarium Capital)(現在は閉鎖)、ファウンダーズ・ファンド(Founders Fund)、ティール・キャピタル(Thiel Capital)、ミスリル・キャピタル(Mithril Capital)、ヴァラー・ヴェンチャーズ(Valar Ventures)など、複数のヴェンチャーキャピタル会社を設立、あるいは共同設立した。彼はフェイスブックに50万ドルを投資し、約10%の株式を取得した最初の外部投資家だった。

ヴェンチャーキャピタルや投資会社に加え、ティールはソフトウェアおよびデータ分析会社であるパランティア・テクノロジーズ(Palantir Technologies)を設立した。パランティアは、トランプ政権以前、政権中、そして政権後も、国防総省、保健福祉省などから数億ドル規模の政府契約を獲得しており、膨大な量の政府データへのアクセス権を有している。

ピーター・ティールは巨万の富を築く過程で、多くの弟子たち(proteges)を育成してきた。その多くは、ティールの極右思想に共鳴する人々だ。弟子の一人であるJD・ヴァンスとブレイク・マスターズは、偶然にも(それぞれ別々に)ロースクール在学中にティールと出会った。ヴァンスはイェール大学ロースクール在学中にティールの講演を聴講し、もう一人の将来の有望株で弁護士のブレイク・マスターズはスタンフォード大学でティールが担当した「主権、テクノロジー、グローバライゼーション(Sovereignty, Technology, and Globalization)」という授業で出会った。

JD・ヴァンスとブレイク・マスターズは、ともにピーター・ティールが設立した企業で働いた。そして、2022年の中間選挙を前に、ティールは弟子2人を連邦上院議員に当選させるために数千万ドルを投じた。

ティールは、2022年にオハイオ州で連邦上院議員選挙に出馬し当選したヴァンスを支援する政治活動委員会(PAC)に1500万ドルを寄付した。

ティールは、アリゾナ州で連邦上院議員選挙に出馬したブレイク・マスターズを支援するPACにも1350万ドルを寄付した。マスターズは、現在カマラ・ハリスの副大統領候補として検討されているマーク・ケリーに敗れた。マスターズは現在、連邦議会議員選挙に出馬しており、最近トランプ大統領の支持を得た。

JD・ヴァンスのキャリアにおける重要な節目とピーター・ティールの支援(J.D. Vance’s career milestones with support from Peter Thiel

ヴァンスと彼の師であるティールとの関係は、他のメディアでも広く取り上げられており、最近の『ワシントン・ポスト』紙の記事では、ヴァンスの経歴とティールをはじめとする複数の大手テクノロジー系寄付者からの支援について優れた概説が掲載されている。

(引用はじめ)

ティールはヴァンスを富裕層に引き上げ、MAGA支持者の間で人気を博した企業へ彼が投資できるようにした。また、ティールはヴァンスの政界進出を後押しし、他のシリコンヴァレーの寄付者とともに、2022年の連邦上院議員選挙でのヴァンスの当選を資金面で支援した。

(引用終わり)

以下は、JD・ヴァンスのキャリアと人生におけるいくつかの重要な節目となる出来事だ。

・2011年、イェール大学ロースクール在学中にピーター・ティールと出会った。

・卒業後、ヴァンスは短期間法律関係の仕事に就いた後、ティールの推薦により、サーキット・セラピューティクスのCEOであるフレデリック・モルによって同社に採用された。

2016年、ヴァンスはイェール大学ロースクールで出会ったウシャ・チルクリ・ヴァンスと結婚した。

・ヴァンスは長年にわたり、名前を何度も変えている(両親の離婚後、祖母の旧姓であるヴァンスを名乗るなど)。ジェームズ・ドナルド・ボウマン、ジェームズ・デイヴィッド・ハメル、JD・ハメル、JD・ヴァンスなど、様々な名前を使用していた。

・2016年、ヴァンスは回顧録『ヒルビリー・エレジー』を出版し、ベストセラーとなり、後に映画化された。

2016年、ヴァンスはティールが共同設立したヴェンチャーキャピタルであるミスリル・キャピタルで短期間勤務した。

・2017年、ヴァンスはアメリカ・オンライン共同創業者スティーヴ・ケースが設立したヴェンチャーキャピタル企業レヴォリューションのパートナーに就任した。

・2019年、ヴァンスはカトリックに改宗した。以前は無神論者を自称していたにもかかわらず、ティールが「キリスト教への道を歩む上での原点となるインスピレーションを与えてくれた(was an original inspiration for his path to Christianity despite previously calling himself an atheist)」と記した。

・2020年、ヴァンスはコリン・グリーンスポンと共にヴェンチャーキャピタル企業ナリヤ・キャピタルを共同設立した。グリーンスポンは以前ティールのミスリル・キャピタルに勤務しており、ヴァンスをそこで採用した人物でもある。ナリヤはピーター・ティール、元グーグルCEOのエリック・シュミット、そして億万長者のテクノロジー起業家兼投資家マーク・アンドリーセンからの資金提供を受けて設立された。(興味深いことに、ティールの企業であるヴァラー、ミスリル、パランティア、そしてヴァンスのナリヤの社名の多くは、ティールとヴァンスのお気に入りのJRR・トールキンの『指輪物語』に由来している)。

・2022年、ヴァンスはピーター・ティールからの1500万ドルの支援を受けてオハイオ州選出の連邦上院議員に当選した。

・2024年、ヴァンスはトランプによって共和党の副大統領候補に指名された。

ピーター・ティールの弟子であるJD・ヴァンスが副大統領候補に浮上した今、彼らを繋ぐネットワーク、特にあまり知られていないロックブリッジ・ネットワークについて理解しておくことは有益である。

●ロックブリッジ・ネットワークは、クリス・バスカークとJD・ヴァンスが共同設立し、ピーター・ティール、レベカ・マーサーなどから資金提供を受けている(The Rockbridge Network was co-founded by Chris Buskirk and J.D. Vance with funding from Peter Thiel, Rebekah Mercer and others

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2022年、『ニューヨーク・タイムズ』紙は、コーク兄弟(2020年に2億5000万ドル以上を支出)をはじめとする共和党の富裕層献金者によって結成された秘密連合、そして、コーク兄弟のネットワークとは別のピーター・ティールとレベカ・マーサーが出資するロックブリッジ・ネットワークに関する記事を掲載した。

チャールズ・コークとデイヴィッド・コークについては、特にジェイン・メイヤーの2016年の著書『ダークマネー』で、彼らの石油による莫大な富が、右翼イデオロギーや政策、そして彼らの巨額の富を守り、さらに増やすのに役立つ候補者を支援するために、非営利団体、シンクタンク、学術機関、政治機関からなる広範なネットワークに資金提供されていたことが明らかになって以来、大きく報道されてきた。

一方、コーク・ネットワークに対抗する、より若い世代のテクノロジー系組織として設立されたロックブリッジ・ネットワークについては、報道がはるかに少ないのが現状だ。

(引用はじめ)

ロックブリッジ・ネットワークには、ピーター・ティールやレベカ・マーサーなど、トランプの最大の献金者が名を連ねており、保守系メディア、法律、政策、有権者登録プロジェクトなどに3000万ドル以上を投じ、アメリカの右派勢力を再構築するという野心的な目標を掲げている。

(引用終わり)

2023年の『パック』誌の記事によると、ロックブリッジ・ネットワークは2019年にティールの側近2人によって共同設立された。1人は当時ベストセラー回顧録『ヒルビリー・エレジー』の著者であり、新進気鋭のヴェンチャーキャピタリストだったJD・ヴァンス、もう1人は保守系雑誌『アメリカン・グレートネス』の編集者兼発行人であるクリス・バスカークだ。

●ロックブリッジ・ネットワークの会合では、ピーター・ティール、ドナルド・トランプ、ドナルド・トランプ・ジュニア、タッカー・カールソン、デイヴィッド・サックスなどが講演を行った(Rockbridge Network meetings included speeches by Peter Thiel, Donald Trump, Donald Trump Jr., Tucker Carlson and David Sacks

JD・ヴァンスとクリス・バスカークは、シリコンヴァレーにおける若手たちの政治的な拠点としてロックブリッジ・ネットワークを設立した。年2回開催されるイヴェントでは、タッカー・カールソン、カジノ王スティーヴ・ウィン、ピーター・ティール、デイヴィッド・サックスといった著名人が講演を行った。

昨年、ロックブリッジは、ネットワークが推奨するプログラムに年間10万ドルを支出することを約束した会員が約125名いると発表した。

ロックブリッジは2021年にアリゾナ州で初のサミットを開催し、テクノロジー界の大富豪ピーター・ティールが講演を行った。

2022年、ロックブリッジ・ネットワークは「一種の政治的ヴェンチャーキャピタル」と自称するパンフレットを配布し、マール・ア・ラーゴでドナルド・トランプの講演を招いた非公開会議を開催した。

2024年にマール・ア・ラーゴで開催されたロックブリッジの会合には、口止め料裁判のためニューヨークに滞在していたドナルド・トランプが電話で参加し、息子のドン・ジュニアが講演を行った。その他の出席者には、トランプの共同選挙対策責任者であるスージー・ワイルズとクリス・ラシヴィタ、共和党の献金者であるレベカ・マーサー(以前に取り上げた)、億万長者のウッディ・ジョンソン、トランプの「法廷の口達者」レナード・レオ(以前に取り上げた)、仮想通貨起業家のエリック・ヴォーヒーズ、元ウーバー幹部のエミル・マイケルなどがいた。

●ヴァンスはシリコンヴァレーの資金調達パーティーで副大統領候補に推薦された(Vance was recommended for VP at a Silicon Valley fundraiser

2024年7月の『ニューヨーク・タイムズ』紙は記事「いかにしてテクノロジー界の億万長者ネットワークがJD・ヴァンスの権力掌握を支援したか」を掲載した。6月には、南アフリカ系アメリカ人のテクノロジー起業家兼投資家であるデイヴィッド・サックスの自宅で資金調達パーティーが開催された。

2007年、『フォーチュン』誌は「ペイパル・マフィア(The Paypal Mafia)」と題した記事を掲載し、ピーター・ティールやデイヴィッド・サックスを含むペイパルの創業者たちを紹介した。この記事で「ペイパル・マフィア」という言葉が生まれ、その後、新興テクノロジー界の有力者たちを指す言葉として頻繁に使われるようになった。

7月のイヴェントは、サックスがポッドキャスター仲間のチャマス・パリハピティヤと共同開催した。資金調達パーティー後に開かれた、テクノロジー業界や仮想通貨業界の幹部や投資家約20名が出席した非公開の夕食会で、トランプは副大統領候補について非公式な投票を行った。サックス、パリハピティヤたちは全員、JD・ヴァンス氏を選んだ。

7月の資金調達イヴェントはロックブリッジ・ネットワークとは関係がなかったが、JD・ヴァンスはピーター・ティールを通じてデイヴィッド・サックスと知り合い、シリコンヴァレーでの影響力拡大を目指したロックブリッジ・ネットワークの運営におけるヴァンスの活動が、シリコンヴァレーでの資金調達イvヴェントでヴァンスが圧倒的な支持を得た大きな理由の一つだったと考えられる。

●クリス・バスカーク、レベカ・マーサー、オミード・マリクが共同設立した1789キャピタルは2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェント後に設立された(1789 Capital co-founded by Chris Buskirk, Rebekah Mercer and Omeed Malik was formed after a Rockbridge event in 2022

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NBCニューズの記事では、2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェントで、1789キャピタルという新しいファンドの構想がどのように生まれたかが報じられている。

マリクのような人々にとって、このネットワークはアイデアの交換と創出の場としても機能している。マリクのファンドである1789キャピタルの構想が生まれたのも、2022年のロックブリッジ・ネットワークのイヴェントだった。現在、このファンドはタッカー・カールソンの新たなメディア事業を支援しており、元FOXニューズ司会者の最新事業の資金調達を主導している。

1789キャピタルは、共和党の献金者であり、ケンブリッジ・アナリティカの資金提供者でもあるレベカ・マーサー、ロックブリッジの共同創設者であるクリス・バスカーク、そして「反ウォーク(anti woke)」を掲げる実業家オミード・マリクによって共同設立された。

私は以前、オミード・マリクと、彼がレベカ・マーサー、クリス・バスカークと共に1789キャピタルで行っている活動について詳しく記事を書いた。その際、アドヴァイザーとして名を連ねる著名な人物の一人に、ピーター・ティールの弟子であるブレイク・マスターズがいることを指摘した。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、1789キャピタルがタッカー・カールソンとニール・パテルが率いるニューメディアヴェンチャーへの1500万ドルの創業資金提供を主導したと報じた。次の投資先は、ミサイル用の3Dプリント可能なロケット燃料を製造するスタートアップ企業ファイアホークだ。ファイアホークは、従来の方法よりも安全で安価だと主張している。数カ月前、ファイアホークは1789キャピタルが参加した新たな資金調達ラウンドを発表した。レベカ・マーサーに関する最近の記事では、1789キャピタルがここ数カ月で1200万ドル以上を調達したことを示す複数のSEC提出書類について詳しく解説した。

●レべカ・マーサー、JD・ヴァンスとヘリテージ財団(Rebekah Mercer, J.D. Vance and the Heritage Foundation

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ヘリテージ財団は最近、大統領移行計画「プロジェクト2025」の立案者として大きく報道されている。この計画は、トランプ支持者を政府要員に据え、保護規制緩和を大幅に進め、教育省や環境保護庁(EPA)などの機関を縮小または解体することを目的としている。

トランプは、ヘリテージ財団の過激な極右的大統領移行計画「プロジェクト2025」から距離を置こうとしてきた。

しかし、JD・ヴァンスは、プロジェクト2025の主要スポンサーであるヘリテージ財団理事長ケヴィン・ロバーツの近刊書籍に序文を寄稿しており、ヴァンスがヘリテージ財団の指導部や目標といかに密接に連携しているかが明らかになっている。

私は、ヘリテージ財団の18人の理事の一人であるレベカ・マーサーについてこの記事を書いた。マーサー・ファミリー財団は過去にヘリテージ財団に寄付を行っている。さらに、マーサーは、ヘリテージ財団傘下の非営利団体であるヘリテージ・アクション・フォー・アメリカのわずか5人の理事の一人でもある。これは、彼女がヘリテージ財団に深く関わっていることを示しており、彼女はヘリテージ財団の理事を務めると同時に、関連する2つの非営利団体の役員も務めている。

ヴァンスとマーサーがヘリテージ財団と共同で活動していたという証拠はないが、両者ともヘリテージ財団とそれぞれ強い繋がりを持っている。

●レベカ・マーサー、スティーヴン・バノン、クリス・バスカークは2017年に連合を結成した(Rebekah Mercer, Stephen Bannon and Chris Buskirk formed an alliance in 2017

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レベカ・マーサーとクリス・バスカークの関係は、バスカークがヴァンスと共にロックブリッジ・ネットワークを共同設立する数年前にまで遡る。

『ニューヨーク・タイムズ』紙は、スティーヴン・バノンとレベカ・マーサーが2017年に、アラバマ州連邦上院議員選挙で落選したロイ・ムーアなどの候補者を支援する政治連合を結成したと報じた。ピーター・ティールはバノンとマーサー夫妻に近い人物とされ、この連合で重要な役割を果たすと予想されていた。オンラインジャーナル「アメリカン・グレートネス」の発行人であるクリス・バスカークは、連合の政策方針を広める役割を担うために招集された。

注目すべきは、バスカークとヴァンスがマーサーとティールと共に連合を立ち上げる数年前に、マーサー、ティール、バスカークがこのロックブリッジ・ネットワークに関わっていたことである。 2017年の連合は、ロックブリッジの初期形態だった可能性が高い。

●マーサー家が資金提供するケンブリッジ・アナリティカと、ティール氏のデータ企業パランティア(Mercer’s Cambridge Analytica and Thiel’s data company Palantir

2018年、ケンブリッジ・アナリティカの内部告発者であるクリストファー・ワイリーは、イギリス議会で、マーサーが出資するケンブリッジ・アナリティカが、ピーター・ティールのデータ企業パランティアのスタッフと非公式に協力していたと証言した。

「パランティアとケンブリッジ・アナリティカの間には正式な契約はなかったが、パランティアのスタッフがオフィスに出入りし、そのデータを使って作業していた」とワイリーは議員たちを前にして語った。さらに、パランティアのスタッフは「私たちが取り組んでいたモデルの構築を支援してくれた」と付け加えた。

パランティアの広報担当者はこの主張を否定し、パランティアはケンブリッジ・アナリティカとは一切関係がなく、ケンブリッジ・アナリティカのデータを使ったこともないと述べた。

●ティール、ヴァンス、マーサー、そしてソーシャルメディアプラットフォームのパーラーとランブル(Thiel, Vance, Mercer and social media platforms Parler and Rumble

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JD・ヴァンスは、自身のヴェンチャーキャピタルであるナリヤ・キャピタルを経営していた当時、ソーシャルネットワーク「パーラー(Parler)」に対する投資に関してレベカ・マーサーに助言を与え、その後、保守系プラットフォーム「ランブル(Rumble)」にも投資した。

この時期、ヴァンスは、パーラーをはじめとする保守派に支持されるテクノロジー・プラットフォームへの投資に関心を持つようになった。関係者2人によると、ヴァンスはパーラーの支配株主であり、共和党の大口献金者でもあるレベカ・マーサーに助言を与え、パーラーへの投資を検討していたとのことだ。ナリヤ・キャピタルは最終的にパーラーへの投資は行わなかったが、2021年に保守派に支持されるユーチューブ(YouTube)の競合サーヴィスであるランブルにティールと共に投資した。また、ケンタッキー州に拠点を置く屋内農業企業アプハーヴェスト(AppHarvest)にも投資しており、アプハーヴェストは2020年末に上場した。アプハーヴェストは昨年破産申請を行った。

私はランブルと、トランプのトゥルース・ソーシャル(Truth Social)の親会社であるトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(Trump Media & Technology GroupTMTG)との密接な関係について、この記事を書いた。トランプのTMTGの最高情報責任者(CIO)は、マケドニアにオフィスを構えるランブルの主要パートナー企業であるコスミック・ディヴェロップメント(Cosmic Development)の最高技術責任者(CTO)も兼任している。

ランブルの主要投資家には、JD・ヴァンス、ピーター・ティール、ダレン・ブラントンなどが名を連ねている。ブラントンはマイク・フリンの仲間と共同で企業に投資し、スティーヴ・バノンのパートナーである郭文貴が経営するGTVメディアの取締役を務めていた。

2023年6月、ペイパルの共同創業者であり、トランプのシリコンヴァレーでの資金調達イヴェントを主催したデイヴィッド・サックスは、ランブルが彼のポッドキャストおよびライヴストリーミングプラットフォームであるカリン(Callin)を買収した後、ランブルの取締役に就任した。

●オミード・マリクは、ティールの弟子であるブレイク・マスターズのビジネス上の同僚(Omeed Malik is a business colleague of Thiel protege Blake Masters

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私がマリクについて書いたこの記事では、彼がマーサーとバスカークと共に1789キャピタルを共同設立した経緯、そしてマリクが既存の事業との統合を目的とした特別目的買収会社(special purpose acquisition companiesSPAC)を2社設立したことについて述べています。

マリクが設立した最初のSPACであるコロンビエ・アクイジション・コープ(Colombier Acquisition Corp.)は、アマゾンと競合する愛国的な企業や消費者向けの大手マーケットプレイスであるPSQホールディングス(PSQ Holdings)(別名パブリックスクエア[PublicSquare])と合併した。

マリクは、ヴェンチャーキャピタリストでピーター・ティールの弟子であるブレイク・マスターズ(前述の通り1789キャピタルの顧問も務めている)と共にPSQホールディングスの取締役に就任した。

マリクと共にPSQの取締役を務めるのは、マイク・ペンス副大統領の元首席補佐官ニック・エアーズ、ジョージア州選出の元連邦上院議員でトランプの主要献金者であるケリー・ロフラーなどだ。

●ロックブリッジ・ネットワークは有権者登録に注力(The Rockbridge Network is focused on voter registration

このNBCニューズの記事によると、ロックブリッジの2024年の主要プロジェクトの一つは有権者登録だ。

先週の会合に出席し、ロックブリッジの活動に詳しい情報筋によると、ロックブリッジ・ネットワークは2023年に12万5000人の有権者を登録し、2024年にはその倍増を目指しているとのことだ。ロックブリッジ・ネットワークは、新規登録者を対象とするプログラムに資金を提供しており、彼らが重視する問題に基づいてアプローチするとともに、「アンバサダー(ambassador)」と呼ばれるアウトリーチ体制を構築している。この体制では、10人の新規有権者それぞれに1人のオーガナイザーが割り当てられ、オーガナイザーが彼らと親交を深める。

最近、新たに設立されたスーパーPAC「アメリカPAC」が話題になった。『ウォールストリート・ジャーナル』紙が、イーロン・マスクがトランプ支援のためにアメリカPACに毎月4500万ドルを寄付すると報じたことが発端だ。マスクは後にこの報道を否定した。

アメリカPACについては、初期寄付者リストの詳細と、PACが出資する主要ヴェンダー2社の概要をこちらで解説した。初期寄付者は主にテクノロジー系起業家や投資家で、ピーター・ティールやイーロン・マスクと密接な関係にある人物が多く含まれている。アメリカPACの活動は、共和党支持層に期日前投票や不在者投票を促すことに重点を置いており、ヴェンダーであるラコンター・メディア(Raconteur Media)とイン・フィールド・ストラティジーズ(In Field Strategies)は、戸別訪問、現場活動、デジタルサーヴィス、テキストメッセージ、電話サービスなどを専門としている。

ロックブリッジ・ネットワークとアメリカPACの間には直接的な繋がりは報告されていないが、両者とも有権者登録やシリコンヴァレーおよびヴェンチャーキャピタルからの資金提供といった点で共通点があることから、何らかの繋がりがある可能性は否定できない。

●共和党全国委員会が公開したシリコンヴァレーの投資家たちの写真(RNC photo of various Silicon Valley investors

この記事を執筆中、リサーチャーのスリックロックウェブが、先に述べた人物を含む興味深い人脈を示す写真を提供してくれた。以下でさらに詳しく述べる人物たちは、現在トランプとヴァンスを支援しているテクノロジー系億万長者ネットワークに関係する人物の一部について、より詳細な情報を提供してくれる。

テディ・シュライファーがツイッター(X)で共有したこの写真には、左前から時計回りに右奥に向かって、ケン・ハウリー、シャーヴィン・ピシェヴァー、シェイン・コプラン、ドナルド・トランプ・ジュニア、オミード・マリク、デイヴィッド・サックスが写っている。

オミード・マリクとデイヴィッド・サックス、そしてドナルド・トランプ・ジュニアについて、JD・ヴァンス、ピーター・ティール、レベカ・マーサーとの繋がりについて書いた。

以下では、この写真に写っている他の3人、ケン・ハウリー、シャーヴィン・ピシェヴァー、シェイン・コプランについて、ティール、イーロン・マスク、そして右派テクノロジー界の頭目たちとの繋がりについて、より詳しく解説する。

ケン・ハウリーは、ピーター・ティールと共にペイパルとファウンダーズ・ファンドを共同設立した。ドナルド・トランプ大統領政権下の2019年から2021年まで駐スウェーデン米大使を務めた。私は以前、アメリカPACの初期資金提供者リストについて記事を書いたが、ケン・ハウリーは25万ドルずつ4回、合計100万ドルを寄付した寄付者の1人だ。

シャーヴィン・ピシェヴァーはヴェンチャーキャピタリストで、ウーバー(Uber)とハイパーループ(Hyperloop)の投資家だった。2013年にはイーロン・マスクと共にキューバを訪問している。ピシェヴァーは2014年にハイパーループを共同設立し、イーロン・マスクが開発した技術の商業化に取り組んだ。2016年の『モスクワ・タイムズ』紙の記事によると、ピシェヴァーはロシアを訪問し、複数のロシア政府系ファンドの責任者と会談し、ウラジーミル・プーティン大統領とも直接会談したとのことだ。彼はその後、ハイパーループがロシア直接投資基金(RDIF)から2件の投資を受けていたことが問題視され、2016年にハイパーループを去った。2017年、『ブルームバーグ』誌はピシェヴァーが複数の女性から性的不正行為で告発されたと報じた。

シェイン・コプランは、スポーツ、ポップカルチャー、そして2024年のアメリカ大統領選挙への賭けを提供することで急速に成長しているベッティングプラットフォームであるポリマーケット(Polymarket)(別名ブロックラタイズ[Blockratize])の創設者だ。ポリマーケットは2回の資金調達ラウンドで7000万ドルを調達しており、その中にはピーター・ティール率いるファウンダーズ・ファンドが主導した4500万ドルや、イーサリアム共同創設者のヴィタリック・ブテリンからの出資が含まれている。2022年、ポリマーケットは米商品先物取引委員会(CFTC)から、イヴェントベースのバイナリーオプションオンライン取引契約(いわゆる「イヴェントマーケット」)のための違法な未登録・未指定施設を運営していたとして、140万ドルの和解金を支払うよう命じられた。現在、ポリマーケットはアメリカ人によるプラットフォーム上での取引を禁止している。それにもかかわらず、このサイトは成長を続けており、7月の取引額は2億7500万ドルを超えた。ポリマーケットは最近、世論調査専門家のネイト・シルヴァーをアドヴァイザーとして迎え入れた。ウォールストリート・ジャーナルの記事では、この仮想通貨賭博プラットフォームの成長とリスクについて、「批判者たちは、選挙賭博が有権者の動機を歪め、選挙操作を助長するのではないかと懸念している」と述べている。

11月の大統領選挙に向けて、ドナルド・トランプとJD・ヴァンスを支援するネットワークを暴露し続けることが不可欠だ。11月の選挙で誰が勝つかにかかわらず、このネットワークは組織化、資金調達を続け、過激な極右アジェンダの実現に向けて突き進むだろう。そして、トランプが勝利しない場合、特に民主党が連邦上院の過半数を維持できず、連邦下院でも過半数を獲得できない場合、バラク・オバマ政権時代のティーパーティー運動に似たものがハリス大統領に対して立ち上がる可能性が高いだろう。しかし今回は、右翼のテクノロジー系仮想通貨億万長者による運動、つまりJD・ヴァンスをトランプ陣営に送り込んだネットワークが率いるテクノファシスト政党(a techno-fascist party)になるかもしれない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 戦争はどの国にとっても大きな負担となる。世界の超大国であるアメリカでもそれは変わらない。そして、イスラエルにとってもそれは同じだ。イスラエルは人口約1000万人(ユダヤ系が約74%、イスラム教が多いアラブ系が約18%、キリスト教徒やドルーズ教徒が約8%)の比較的小さな国であるが、GDPは約5400億ドル(約87兆円)で世界第20位である(日本は約4.38兆ドル、約690兆円で世界第4位)。一人当たりのGDPは約6万ドルとなり、こちらも世界第20位となっている。ちなみに、日本は約3万4000ドルで世界第24位である。出生率(約2.84)も高いが、これは超正統派ユダヤ教徒の出生率(約6.66)が大きく貢献している。超正統派ユダヤ教徒は労働に従事しない傾向があり(イスラエル国家から補助されている)、兵役も免除されている。イスラエル国内で、超正統派ユダヤ教徒の割合が増えており、そうなれば、労働をせず、兵役にも就かない人が増えることになり、イスラエル国家全体にとって大きな負担となる。

 イスラエルは現在、イランとの戦争状態にあり、さらに、ガザ地区を実行支配するハマス、レバノンのシーア派組織ヒズボラ、イエメンのシーア派組織フーシ派との戦闘も続いている。戦争にはお金がかかる。戦費はイスラエル経済に重くのしかかる。アメリカからの支援やイスラエル以外に住むユダヤ人からの支援はあるにしても、戦争が永久的に続くことはイスラエルにとっては大きな負担である。また、人口が1000万人の国家で、一定数の国民が兵役に就くが、同時に兵役が免除されている超正統派ユダヤ教徒が労働に従事しないということはイスラエル経済や社会にとっては大きな痛手だ。

 さらに、イスラエルにとってはアメリカからの支援が頼みの綱であるが、アメリカ国民、特に若年層を中心にしてイスラエルの政策に反対する割合が増加しているのは懸念材料である。アメリカからの無条件の厚遇をいつまでも期待できるということはない。

 こうして見ると、イスラエルにとって武力による制圧というのは得策ではないということになる。圧倒的な軍事力があり、戦争を続けても、最終的な勝利を得られていないという状況は、人命や資金を浪費しているということに他ならない。イスラエル国内の情勢が大きく変化し、極右勢力が退潮しなければ、イスラエルはその大きな力によって滅亡の途をすすることになりかねない。

(貼り付けはじめ)

イスラエルが戦争で払っている代償(The Price Israel Is Paying for Its Wars

―複数の戦線での戦闘はイスラエルの軍事力、経済、そしてアメリカとの関係に大きな負担をかけている。

デイヴィッド・E・ローゼンバーグ筆

2026年4月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/14/israel-war-hamas-hezbollah-iran-economy-military/

2月28日にアメリカとイスラエルによるイラン攻撃が始まった時、イスラエルはベンヤミン・ネタニヤフ首相が主張する地域大国(the regional power)、ひいては大国(the great power)そのもののように見えた。ネタニヤフの言葉を疑う理由はほとんどなかった。過去2年半の間、イスラエルは宿敵であるハマス、ヒズボラ、そしてイランを事実上打ち負かしたかに見えた。イスラエル国防軍(IDF)は長期戦を遂行できる能力を示し、ヒズボラへのポケベル攻撃のような卓越した技術力を披露し、イランやイエメンのフーシ派への攻撃を通じて地域全体にその力を誇示してきた。そして今、ネタニヤフ首相が「全ての戦争を終わらせる戦争(a war to end all wars)」と豪語した、イランの核・弾道ミサイルの脅威を排除するための最終決戦(a final blow)に乗り出そうとしていた。

6週間後、イランの軍事力は著しく低下し、経済は崩壊、主要インフラは破壊され、主要な政治・軍事指導者の多くが死亡した。しかし、ネタニヤフ首相とトランプ大統領が作戦開始時に掲げた目標は、達成には程遠い状態にある。イランの政権は依然として権力を維持し、濃縮ウランを保有し、弾道ミサイルとドローンを大量に保有していると報じられている。そして何よりも深刻なのは、イランがホルムズ海峡を封鎖できることを示したことだ。一方、ヒズボラはイスラエルの予想をはるかに上回る抵抗を見せ、武装解除の意思を全く示していない。

それでは、この戦争によってイスラエルは以前よりも弱体化したのか、それとも強くなったのか? これは極めて重要な問いである。なぜなら、ネタニヤフ首相はイラン戦争を大勝利と喧伝する一方で、戦いはまだ終わっていないとも述べているからだ。「私たちにはまだ達成すべき目標があり、合意によってか戦闘再開によってか、いずれにせよそれを達成するだろう。・・・私たちは引き金に指をかけている」とネタニヤフは先週、ドナルド・トランプ米大統領による停戦宣言を受けて述べた。

イスラエルの戦後における国力に関する問いへの答えは、イランとヒズボラにも少なからず関わっている。彼らの損失の程度、そして復興・再建能力は、おそらく時間が経つにつれて明らかになるだろう。この不確実性こそが、イスラエルの戦略的課題をより複雑にしている。一方で、イスラエルの資産と能力ははるかに評価しやすく、現状は決して楽観視できるものではない。

イスラエルの国力は主に3つの柱に支えられている。すなわち、圧倒的な軍事力、ますます費用がかさみ、長期化する戦争を支える経済力と国民力、そしてアメリカとの同盟関係である。ネタニヤフ首相はこれら3本の柱を限界まで活用し、さらにその限界を超えようとしているように見える。

軍事:純粋に戦術的なレヴェルでは、イスラエル国防軍は2023年10月7日のハマスによる攻撃以降、数々の目覚ましい成果を上げてきたが、それらは莫大な兵器、人員、そして資金の投入によって達成された。イスラエル銀行の推計によると、イランとヒズボラとの現在の戦争が始まる以前でさえ、他の戦争によってイスラエルの6600億ドル規模の経済に対し、約1160億ドルの直接的な国防費が費やされた。現在のイラン攻撃の費用については議論の余地があるが、110億ドルから180億ドルと推定されている。

たとえイランとレバノンでの作戦が間もなく終結したとしても、イスラエルの国防費は依然として高水準にとどまるだろう。イスラエル軍はガザ地区の半分とシリア南部の広範囲に部隊を配備し続けている。ヨルダン川西岸にも多数の新たな入植地を守るため、さらに多くの兵士が派遣された。ネタニヤフ首相はレバノンとの交渉に渋々応じたものの、レバノン南部にいわゆる「安全保障地帯(security zone)」を設置する構想も示しており、そのためにはさらに多くの地上部隊が必要となる。ネタニヤフ首相はどこからも撤退するつもりはなく、先月「私たちは安全保障の概念を変えた。攻撃を開始し、敵を奇襲するのは私たちだ」と述べた。

イスラエル政府は軍の資源が無限であるかのように扱い、新たな攻勢や占領の拡大を軍に求めている。しかし、それらを遂行するのに十分な人員を確保するための措置は一切講じていない。徴兵制の延長や、超正統派ユダヤ教徒に認められている徴兵免除の廃止に関する法案は未だに可決されていない。人員不足を補うため、予備役兵がほぼ不可能なほど長い期間召集されている。エヤル・ザミル参謀総長は先月、閣僚に対し、約1万5000人の兵員不足を背景に「イスラエル国防軍は崩壊寸前だ(IDF is going to collapse in on itself)」と警告したと報じられている。装備に関しては、イスラエル国防軍の備蓄量や装備の摩耗状況は厳重に秘密にされているが、特に迎撃ミサイルの供給において、問題の兆候が時折表面化している。

経済:過去20年間、イスラエル経済は度重なる戦争に直面しながらも、驚くべき回復力を見せてきた。最近の戦争も例外ではない。2023年のハマスによる攻撃後の数カ月間、そして昨年6月のイランとの12日間の戦争中、GDPは縮小した。そして、現在の戦争でもほぼ確実に再び縮小しただろう。しかし、いずれの場合も経済活動は急速に回復し、戦争によってイスラエルの国防費負担が世界最高水準にまで上昇したにもかかわらず、経済は成長を続けた。

この回復力の一因は、イスラエルの企業や労働者が戦争に慣れ、対処メカニズムを発達させてきたことにある。しかし、政府が財政を健全に保ち、比較的小幅な財政赤字にとどめ、債務(対GDP比)を削減してきたことも同様に重要である。イスラエルのハイテク産業と天然ガス生産は、数十億ドル規模の海外投資を呼び込み、経常収支の黒字を継続的に維持することを可能にしてきた。ガザ紛争勃発以来、アメリカから総額約220億ドルに上る多額の援助を受けてきたことも、経済的な負担を軽減する一因となっている。イスラエルは戦争費用を負担できる経済力を持っている。

しかし、ネタニヤフ首相の政策は、この経済力の限界を試している。膨大な戦闘費用を賄うため、イスラエル政府は概して増税や民間向け支出の削減を避けてきた。これは経済成長を維持するのに役立ってきたが、同時に、イスラエルの公的債務はガザ紛争前のGDP比60%という比較的低い水準から、2026年末には70.5%に達すると予測されるほどに急増した。この債務水準は危険なほど高いとは言えないものの、ネタニヤフ首相は軍事費への支出を止めようとはしていない。今後10年間で国防予算に1160億ドルを追加する計画であり、これはGDPの6%という巨額の国防費を国防に充てることになる。この支出水準は、債務の増加、増税、民間支出の削減などを通じて、経済に重くのしかかるだろう。アメリカ:2023年のハマスによる攻撃は、イスラエルに前例のない規模のアメリカの軍事的、財政的、外交的支援をもたらした。イランへの共同攻撃は、その支援を新たなレヴェルへと引き上げたように見える。しかし、これら全ては、実際にはアメリカ・イスラエル関係の頂点となる可能性もある。

イスラエルの国力を構成する3つの要素全てがますます脆弱になっているにもかかわらず、ネタニヤフ首相はまるで何事もなかったかのように振る舞っている。彼には他に選択肢があるのだろうか?

批判者たちは、ネタニヤフ首相はイスラエルの軍事的成果を外交的合意形成に活用すべきだと指摘する。しかし、ネタニヤフ首相は国家安全保障が絡む合意にはほとんど信頼を置いていないことを示してきた。ある程度、彼の見解は正当化される。レバノンとシリアの政府は約束を履行する力が弱く、イランとハマスはイスラエルの存在そのものにイデオロギー的に反対しており、実質的な合意交渉に応じる姿勢は見られない。

問題は、イスラエルが敵国に対して圧倒的な軍事的優位性を持っているにもかかわらず、彼らを屈服させることができていないことだ。ハマスでさえ、戦前の軍事力と指導部をほぼ全て失い、ガザ地区の半分を支配下に置いたにもかかわらず、屈服を拒否している。したがって、イスラエルは資源が枯渇し、後ろ盾であるアメリカの全面的な支援も得られない中で、終わりのない戦争(forever wars)という不確実な未来に直面する運命にあるように見える。

※デイヴィッド。E・ローゼンバーグ:『ハアレツ』紙英語版経済担当編集員兼コラムニスト。著書に『イスラエルのテクノロジー経済(Israel’s Technology Economy)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 国際社会の構造は大きく変化しつつある。これまでの約600年間、世界を支配したのは西洋諸国、ポルトガル・スペイン、オランダ、イギリス、アメリカであった。そこにはイタリア、フランス、ドイツといった諸大国も存在してきた。現在は「西側諸国(the West、ジ・ウエスト)」対「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の2つの陣営に分かれている。そのことが明確になったのが、2022年2月からのウクライナ戦争であった。

 第二次ドナルド・トランプ政権発足後から、アメリカは「ならず者国家(rogue state)」のような振る舞いに終始している。ヴェネズエラやイランを直接攻撃しただけではなく、キューバに対しては不必要な経済制裁、グリーンランド領有の野心を明らかにすることなど、相手に関係なく、「お前のものは俺のもの、俺のものは俺のもの」「気に入らないからぶん殴る」というアニメ「ドラえもん」に出てくるガキ大将のジャイアンのような態度を取り続けている。このような暴れん坊のアメリカに対して、どのような対処法があるのかについて、下記論稿の著者で、国際関係論の大物学者であるスティーヴン・M・ウォルトは6つの方法を提案している。それらは国際関係論の研究の成果でもある。それらについては下記論稿をお読みいただきたい。

 国力を衰えさせながら、野心をむき出しにして自分勝手な行動を取る、老いた超大国となるアメリカに日本はどのように対応すべきかということであるが、大前提として、日本はアメリカの属国であるという事実がある。今まではアメリカの属国として、アメリカの言う通り、アメリカの利益になり、日本の利益になる行動を取ればよかった。しかし、アメリカが変容するならば、日米関係も変容するのが当然だ。対米従属一辺倒から変化しなければならない。アメリカと一緒に泥船に乗って沈む訳にはいかない。

 日本は地理的に見てもそうだが、米中両超大国の間に位置する。経済大国であったの過去の栄光、少子高齢化の最先端を進んでいる。そうした中で、中国との関係も重要である。現在の高市早苗政権が行っている政策派のこの点で最悪と言わざるを得ない。中国との関係改善は喫緊の課題だ。しかし、中国に急接近することも難しい。日本はアメリカの属国である。したがって、重要なことは、アメリカらか少しずつ距離を取りながら、中国に少しずつ近づくということになる。現在が10対ゼロで対米従属一辺倒であるならば、そこを黄金比の1対約0.6、5対3くらいにするというのはどうだろうか。完全に二等分するのではなく、アメリカに寄りながら、中国も立てる。これが間にいる、ミドルパワー国家である日本の生き方ではないかと私は考えている。

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アメリカはならず者国家になった(The United States Has Become a Rogue State

―アメリカを除く世界ができることを挙げていく。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年3月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/26/united-states-trump-rogue-state-iran/

第二次ドナルド・トランプ政権は、私を含め多くの専門家の予想をはるかに超える混乱と損害、そして危険性をもたらしており、イランとの悲劇的なまでに無能な戦争は、その事実を如実に物語っている。その結果、世界中の国々が、ますます暴走するアメリカへの対処法を模索せざるを得ない状況に陥っている。自分に問うてみて欲しい。もしあなたがサウジアラビア、ブラジル、ドイツ、インドネシア、ナイジェリア、デンマーク、オーストラリアなどの指導者だったらどうするだろうか?

なぜこれが難しい問題なのか。アメリカは、たとえ現在、誤った重商主義(misguided mercantilism)、科学や学術界への無分別な攻撃(mindless attacks on science and academia)、あらゆる種類の移民に対する露骨な敵意(overt hostility to immigrants of all sorts)、化石燃料への依存の強化(doubling down on fossil fuel dependence)、無駄な軍事支出(wasteful military spending)、慢性的な財政赤字(chronic deficits)など、いずれはアメリカを弱体化させるだろう政策を追求しているとしても、現在のところは非常に強力な国家だ。しかし今のところ、他国は、アメリカの力が意図的であろうとなかろうと、自国に害を及ぼす可能性があると懸念せざるを得ない。

第二に、私が他の場所で詳しく論じてきたように、アメリカは今や略奪的な覇権国(a predatory hegemon)のように振る舞い、数十年にわたって築き上げてきた影響力を駆使して、同盟国も敵対国も等しく搾取している。ほぼ全ての他国との関係において、このようなゼロサム的なアプローチをとることは、ほとんどの国際機関や規範に対する根深い敵意、意図的な不安定な行動、そして他国の指導者を露骨に軽蔑しながら、そのほとんどから屈辱的な服従と忠誠(demeaning acts of submission and fealty)を期待する傾向を伴う。イラン戦争の余波が地域全体、そして世界中に広がるにつれ、政権が自らの行動が他国にどのような影響を与えるかを理解していなかったか、あるいは単に気にしていなかったかのどちらかが浮き彫りになっている。

そして、これが第三の問題につながる。アメリカの外交政策は今や、大統領をはじめとする極めて無能な官僚たちの手に委ねられている。国際的な影響力は多くの要素に左右されるが、重要な要素の一つは、他国が、自分たちが関わる相手が賢明で、情報に通じており、概して自分たちの行動を理解していると信じることである。現時点で、トランプ政権の上層部で、そのような評価に値する人物はいるだろうか? 少なくとも私には見当もつかない。外交政策の遂行は困難な仕事であり、どの政権も全てを完璧にこなせるというものではない。しかし、この政権は毎週のように自らの目標を掲げながら、自らは無誤謬である(it is infallible)と主張している。

さらに悪いことに、これらの問題点のいくつかは、たとえトランプと全く異なる見解を持つ人物が後任になったとしても、退任後に容易に是正できるものではないだろう。経験豊富な公務員(一部の上級軍人を含む)が退職または解雇され、後任が任命されないか、あるいはトランプに忠実な人物によって取って代わられることで、アメリカの外交政策機構の組織力は空洞化している。

そして、アメリカの政治体制は依然として深刻な分極化状態にあるため、他国もまた、政治の振り子が両極端の間を行ったり来たりするのではないかと懸念せざるを得ない。アメリカ国民はトランプを一度ならず二度も選出しており、再び似たような人物を選ぶ可能性もある。こうした現実を踏まえれば、ワシントンが今日、あるいは民主党大統領の下でどのような約束をしようとも、どの国もそれを信頼できるだろうか?

まとめると、世界の他の国々は、少なくとも今後3年間、おそらくはそれ以上、強力で、おそらく略奪的で​​、極めて不安定なアメリカ合衆国と向き合わなければならないということだ。そうなるとすれば、アメリカ合衆国だけが危険な略奪者(dangerous predator)ではないこと(そして一部の国にとっては、より差し迫った危険が身近にあること)を念頭に置きながら他の国々はどうすべきだろうか。

質問を繰り返す。もしあなたが他国の外交政策を担うとしたらどうするか?

私が考える主な選択肢を以下に挙げる。

(1)バランシング(Balancing

歴史を通じて、強力で危険な国家に対処する古典的な方法は、自国の努力、あるいは他国との連携(あるいはその両方)によって、それらの国家に対抗するためにバランスを取ることだ。ロシアと中国の「無制限パートナーシップ(no-limits partnership)」、北朝鮮がウクライナでロシアに提供した支援、イランが中東地域各地で支援した代理勢力のネットワーク(the network of proxies)、そしてロシアがイランに提供しているとされる情報支援(the intelligence support that Russia is reportedly giving Iran)などに、この傾向が見られる。

一部の国が採用する可能性のあるもう一つの戦略は、「ソフト・バランシング(soft balancing)」だ。これは、強力な国家の目的を阻止するために、外交行動を意識的に調整するものだ。典型的な例としては、2002年の国連安全保障理事会決議案(イラクへのアメリカ軍攻撃を承認するもの)に反対したフランス、ドイツ、ロシアの協調行動が挙げられる。この出来事はジョージ・W・ブッシュ政権に戦争を思いとどまらせるには至らなかったものの、アメリカ(およびイギリス)の孤立を露呈させ、米英両国が最終的に支払う政治的代償を増大させた。

トランプ大統領がデンマークからグリーンランドを奪取すると脅迫したことに対するヨーロッパの対応は、もう一つの明白な例である。これは、強大な国家が望ましくない行動に出るのを阻止するための協調的な外交対応(a coordinated diplomatic response)であり、軍事的要素も含まれていた。カナダのマーク・カーニー首相が1月に、世界のミドルパワー国家が結束し、信頼できない略奪的なアメリカとの協力に依存しない、互恵的な関係(mutually beneficial relations)を築くよう呼びかけた際、念頭に置いていたのは、ソフト・バランシングであったようだ。

トランプ政権は、アメリカのパワーとのバランスを図るためのハードな取り組みもソフトな取り組みも、いずれも弱く、不安定で、大きな成果をもたらさないと見込んでいる。多くの国がアメリカのパワーに対抗するために多大なコストのかかる行動を取ることに当然ながら消極的であること、そして「ソフト・バランシング」の取り組みでさえ大きな集団行動上の問題に直面することを考えると、彼らの見方は正しいかもしれない。しかし、これらの障害は克服できないものではない。特に、アメリカに迎合することが新たな要求を生むだけであったり、他国がアメリカとの緊密なパートナーシップを資産ではなく負債とみなすようになったりすれば、なおさらである。

そして、もう一つのバランシングの形を忘れてはならない。アメリカが自国を攻撃するかもしれないと懸念する国、あるいはアメリカがもはや信頼できる守護者(a reliable protector)ではないと恐れる国は、自国の核抑止力(nuclear deterrents)を獲得することで安全保障を強化しようとするだろう。アメリカの信頼性に対する懸念から、フランスは自国の抑止力をヨーロッパ全域に拡大することを提案しており、韓国や日本といった国々も再び自国の抑止力の必要性を検討している。イランとの戦争、そして比較的慎重なイラン指導者数名の排除は、北朝鮮を模倣して機会があったうちに積極的に核兵器開発に取り組まなかったことが最大の過ちだったと考える国々の立場を強化するだけだろう。

(2)バンドワゴニング(Bandwagoning

多くの現実主義的な学者は、強力な略奪国家に追随することは危険であり、したがって稀であると主張するが、一部の国はこれを最善の選択肢とみなすだろう。特に弱体で脆弱な国は、アメリカと連携して最善の結果を期待する以外に選択肢がないと結論づけるかもしれない。また、アメリカの支援を利用して自国の修正主義的な目的を推進したい国は、喜んでこの流れに乗るだろう。

イスラエル、サウジアラビア、そしてペルシア湾岸の小国は、こうした楽観主義的な行動(opportunistic behavior)の明白な例である。このカテゴリーには、ハンガリーのヴィクトル・オルバン、アルゼンチンのハビエル・ミレイ、フランスのマリーヌ・ルペン、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフといった右派指導者も含まれる。彼らはトランプを、自由主義的民主政治体制や多くの国際規範に対する嫌悪感を共有する、権威とカリスマ性を備えた人物と見なしている。これらの指導者全員(トランプも含む)が、苦戦を強いられているハンガリーのオルバンの再選運動を公然と支持していることは、何ら驚くべきことではない。

しかしながら、気まぐれで略奪的なアメリカに追随することには、それなりのリスクが伴う。例えば、イラン戦争、低迷するアメリカ経済、トランプ大統領の支持率低迷といった失態は、MAGAブランドを汚しており、外国のポピュリストにとってアメリカとの緊密な関係は必ずしも有益とは言えないだろう。

さらに言えば、これらの指導者の多くは、自らを熱烈なナショナリストとして描くことで支持を得ているが、略奪的な外国勢力への長期的な服従とは相容れない。こうした懸念が、フランスの極右政党「国民連合」の実質的な指導者であるルペンが、ここ数カ月の間にトランプ大統領からやや距離を置いている理由を説明しているのかもしれない。

(3)政治的策略(Political manipulation

アメリカとの緊密な関係を維持し、アメリカの力を利用して自国の目的を推進しようとする国々は、自国が望む方向にアメリカの外交政策を誘導するために、一層の努力を重ねるだろう。

ネタニヤフ首相とイスラエル・ロビーの主要組織は、トランプ大統領に最新の戦争開始を説得するのに一役買い、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子はトランプ大統領に地上部隊の投入を促していると報じられている。イスラエルと湾岸諸国がホワイトハウスと連邦議会に武器供給の継続を求めるロビー活動を続けることはほぼ確実であり、トランプ大統領の任期中は、より露骨な影響力行使(ジャレッド・クシュナーやトランプ・オーガナイゼーションへの新たなビジネス取引など)も続くと予想される。しかし、イラン戦争はこれらの国々にとってもリスクとなる。他国のために戦われている戦争と見なされれば見られるほど、戦争が不利な結果に終わった場合の反発リスクは高まる。

(4)分散化とリスク軽減(Diversifying and de-risking

信頼できないパートナーと取引する場合、たとえ多少コストがかかったとしても、そのパートナーへの依存度を下げるのが賢明な策となる。この傾向は、2025年4月にトランプ大統領が報復関税を発表して以来顕著に表れている。その後、アメリカの貿易相手国は、互いに自由貿易協定を締結することで、アメリカ市場への依存度を低減しようと躍起になった。カナダは中国との緊張関係を緩和し、インドネシアやインドと新たな貿易協定を締結した。ヨーロッパ連合(EU)もインドやメルコスールと同様の措置を講じている。

(5)拒絶(もしくは「ただノーという」)(Balking (or “just say no”)

親なら誰でも知っているように、時に非常に弱い立場の国は、要求に頑固に応じないことで、強い立場の国が強制的に従わせる意志や忍耐力に欠けることを期待し、自らの主張を通すことがある。例えば、トランプ大統領がホルムズ海峡の開通に協力するようNATO加盟国に要求した際、加盟国は拒否した。これは、開戦前に相談を受けていなかったこと、トランプ大統領の失策を救済する理由がほとんどないこと、そしておそらく今回の失敗がワシントンに教訓を与えることを期待していたためだ。

あるいは、各国は要求に応じるふりをしながら、実際には行動を遅らせ、予期せぬ複雑な問題を公表し、遵守状況の確認を困難にし、できる限り混乱を招くような行動をとることもできる。この戦略の魅力は明らかだ。ワシントンとの直接対決を避けられるだけでなく、要求に応じることによるあらゆるコストも回避できるからだ。

過去には、他国もアメリカに対して同様の戦術を用いてきた。NATO加盟国は国防費増額を繰り返し約束しながら、毎回目標を達成できなかった。また、イスラエルは入植地の撤去を約束しながら、可能な限りゆっくりと進め、その間に新たな入植地を建設した。トランプ政権は、中国が第一次トランプ政権に交わした経済的な約束を履行したかどうかを検証しようとしていると報じられている(おそらく履行していないだろう)。

世界は広く、忙しく、複雑な世界だ。アメリカのような強大な国でさえ、他国が過去に合意した全ての事柄を把握し、それらが約束通りに履行されているかどうかを判断することは不可能だ。

(6)アメリカの見え方を悪くする(Make the United States look bad

ハードパワー(hard power)は依然として世界政治における主要な通貨だが、強大な国家は、概ね高潔で、ある程度正直で信頼でき、少なくとも時折は世界をより良くしようと努力していると見なされることで、さらに恩恵を受ける。この資質こそ、私の亡き同僚ジョセフ・ナイが「ソフトパワー(soft power)」と呼んだものだ。国家は、他国から魅力的(appealing)で、概ね善意(benevolent)に満ちていると認識されることで、影響力を増す。

したがって、アメリカの敵対国は、アメリカを利己的で攻撃的、危険な国、そして賞賛や模倣の対象ではなく拒絶すべきモデルとして描くことで、そのイメージを傷つけようとあらゆる手段を講じるだろう。中国が長年実践してきたこの戦略の必然的な帰結は、アメリカがつまずき続けるのを傍観し、干渉しないことだ。ナポレオン・ボナパルトが言ったとされるように、「敵が過ちを犯しているときは、決して邪魔をしてはならない(never interrupt an enemy when it is making a mistake)」。

そして、トランプ政権はまさにこの戦略を容易にしているのだ! 単なる疑いだけでカリブ海で船舶を爆破したことを自慢したり、外国首脳の暗殺を支援したり、移民や観光客を虐待したり、十数カ国に渡航禁止措置を課したり、大統領を批判したという許されない罪で外国当局者に金融制裁を命じたり、力こそすべてだと豪語したり、まるで覚醒剤を打ったハムスターのように上下に揺れる関税率を課したり、行き先も定まらないまま世界経済全体に影響を及ぼす戦争を始めたり、リストはどれだけでも続く。

アメリカのイメージが、善意はあるものの時に誤った判断をする世界大国から、無関心で残酷、反射的に不誠実で、自国の利益しか考えない国へと変化するにつれ、ワシントンとビジネスをしたいと願う指導者でさえ、あまり近づきすぎることを警戒するようになるだろう。

アメリカに対抗する様々な戦略は、互いに強化し合う関係にある。強硬な手段であれ軟弱な手段であれ、バランスを取ろうとする国が増えるほど、他国もアメリカから距離を置きやすくなる。アメリカが世界において果たす役割が、広く善意に基づくものではなく、積極的に有害なものと認識されるようになればなるほど、多くの国がアメリカ側に留まることは難しくなり、外国の指導者たちはワシントンに立ち向かうことでより多くの利益を得るだろう。各国が反発すればするほど、他国もそれに追随しやすくなる。なぜなら、超大国(a superpower)であっても、全ての国の些細な反抗行為を把握し、すべてを一度に罰することはできないからだ。

ワシントンの現在の行動に対するこうした様々な対応策から、アメリカ人が学ぶべき主な教訓はここにある。強大な国家であることの大きな利点は、問題に対処する際に、大きな余裕と豊富な資源を活用できることだ。欠点は、一部の国がアメリカの力を自国の利益のために利用しようとする一方で、他の国はそれを懸念し、抑制または制限する方法を模索するということだ。

この理由から、先見の明のある大国は、自国の力を抑制的に行使し、可能な限り広く受け入れられている規範を遵守し、緊密な同盟国でさえ独自の思惑を持っていることを認識し、全ての関係者が利益を得られるような関係構築に努めるだろう。強硬な力を維持することは重要だが、それを柔らかな手袋で包み込むことも同様に重要である。アメリカは過去75年間、概ねこれをうまく実践し、大きな恩恵を受けてきたが、現在の指導者たちはその知恵を急速に捨て去りつつある。

私が20年以上前に警告したように、「もしアメリカが既存のパートナーシップの崩壊を早め、我々を封じ込めることを目的とした新たな関係を生み出すことになれば、私たちは自らを責めるしかないだろう」。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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