古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

 古村治彦です。

 国際関係において、「マッドマン(狂人)理論」という考え方がある。これは、ある国の指導者が「狂人」のように常軌を逸した行動を取ると、相手国に思わせることで、譲歩を引き出すということだ。たとえば、核兵器を保有している国の指導者で、この人物が「狂気の人物」という評価が周辺国にあったとすると、「この指導者を怒らせると核兵器による攻撃をするかもしれない」という恐怖が周辺国にあり、譲歩をしてしまうということだ。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が時に核兵器使用をちらつかせるのはこの「マッドマン理論」をつかっているということになる。そして、現在の世界で、「マッドマン(狂人)」だと思われているのはドナルド・トランプ大統領だ。同盟国であっても平気で高関税をかける、敵対国であれば武力を行使するということを行う。行動の予測ができないということが周囲の不安を掻き立てる。その結果、怖がって、トランプ大統領の言うことを聞く、妥協するということになる。

 しかし、トランプは「狂人」ではない。計算ずくで(合理的に)、行動している。そして、「都合が悪くなれば態度をころっと変えて弱腰になる」ということを周囲に見透かされている。これは「TACOTrump Always Chickens Out)」と呼ばれている。「トランプはいつも弱腰になる」ということだ。中国に対する高関税についても中国が強気な態度に出れば、すぐに引っ込める。2026年2月28日からのイラン戦争についても、「文明を消し去る」というような強気な発言をしていたが、今は譲歩を行いながら、和平交渉の最中である。イラン側からイスラエルのレバノン攻撃が交渉の障害になると言われれば、慌てて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を怒鳴りつけ、「あんたは狂っている」というようなことを言うほどだ。

 トランプは「弱腰になる」ということは見透かされている。今回のイラン戦争においても、TACOが発揮されている。イラン側がトランプ張りのマッドマンぶりを発揮することで、トランプは怖気づいている。「トランプが狂人ではない」ということになれば、世界各国は必要以上に恐れることはなくなる。そうなれば、アメリカの要求は通りにくくなるということになる。トランプ政権は外交の分野で厳しい状況が続くことになる。

(貼り付けはじめ)

マッドマン(狂人)の逆襲(The Madman Strikes Back

-リチャード・ニクソンの予測不可能性の力に関する理論(Nixon’s theory on the power of unpredictability)は現実の狂人である敵の存在を想定していなかった。

ダニエル・W・ドレズナー筆

2026年5月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/28/trump-madman-theory-iran/

donaldtrumpmadmanstrikesbackiranwarforeignpolicy001

ドナルド・トランプ米大統領が2期目に選出された際、多くの外交専門家は、彼が強圧的な交渉手段(a tool of coercive bargaining)として「狂人理論(the madman theory)」を用いる可能​​性が高いと指摘した。リチャード・ニクソン米大統領が提唱したこの理論は、まるで狂気じみた行動に出そうな指導者は、相手国を抑止し、本来なら譲歩しないであろう譲歩を引き出す可能性が高いというものだ(a leader who behaves as if he might do something crazy has a better chance of deterring and coercing actors into making concessions that they otherwise would not make)。言い換えれば、核兵器使用を厭わないほど常軌を逸した指導者の方が、そのような脅し文句を使わないほどに理性的な指導者よりも、各国は譲歩しやすいということだ(countries might be willing to acquiesce more to a leader insane enough to use nuclear weapons than a leader too rational to try such a bluff)。

トランプは大統領の1期目、この「狂人理論」を強く信奉していた。2024年の大統領選挙でもこの主張を繰り返し、『ウォールストリート・ジャーナル』紙に対し、中国の習近平国家主席は「私を尊敬しており、私がとんでもなく狂っていることを知っている(respects me and he knows I’m fucking crazy)」ため、中国に対して武力を行使する必要は決してないと語った。政権移行期において、歴史家のナイオール・ファーガソンは、トランプが型破りで予測不可能な人物(wild and unpredictable)として振る舞うため、アメリカのライヴァル諸国は彼に挑むことを躊躇するだろうと主張した。

昨年、まさにこの紙面で、私は狂人理論を検証し、その理論は一般的にも、そして特にトランプに関しては不十分であると結論づけた。実際、国際関係論の研究者にとって、「狂人理論」はホラー映画に登場する狂人キャラクターのようなものだ。ついに死んだと思われた途端、墓から蘇り、再び物語に登場してくる。この理論に説得力がないとする学術論文が数多く発表されているにもかかわらず、トランプがこの理論を用いている可能性、そしてそれが突飛な発想ゆえに効果を発揮するかもしれないという可能性は、メディアによって繰り返し取り上げられている。

例えば、アメリカとイランが4月に停戦に合意した際、トランプ大統領がイランを「石器時代に逆戻りさせる」爆撃という脅し(the threat of bombing Iran “back to the Stone Ages”)をしながら設定した期限の直前だったが、『ニューヨーク・タイムズ』紙のデビッド・サンガー記者は当初これを「土壇場での戦術的勝利(a down-to-the-wire tactical victory)」と評し、「トランプがレトリックを天文学的なレベルまでエスカレートさせる戦術は彼が何週間も探し求めていた出口を見つけるのに確かに役立った。この成功だけでも、彼がニューヨークの不動産業界で学んだ戦術古い慣習を無視し、最大限の要求をする(ignore old conventions, make maximalist demandsが地政学(geopolitics)でも通用するという信念を強めるかもしれない」と書いた。

もちろん、サンガーは停戦によってホルムズ海峡の航路が開かれると信じてこれらの言葉を書いた。しかし、それは誤りであることが明らかになった。狂人理論が実際に有効であるという証拠と同様に。実際、トランプの大統領2期目のこれまでの実績を検証すると、彼の狂人戦略は概ね失敗に終わったと結論づけざるを得ない。さらに悪いことに、狂人を演じようとした彼の試みは、この理論を完全に覆す決定的な要因、つまり、敵対国に本物の狂人を生み出してしまったのかもしれない(an actual madman for an adversary)。

狂人理論の問題点は今やよく知られている。概念的には、狂気を装うことで挑発的な脅迫の信憑性(the credibility of provocative threats)は高まるかもしれないが、同時に、その狂人が緊張を減らすための合意を履行するという信憑性(the credibility that the madman will follow through on any agreement to reduce tensions)は低下する。さらに、自分が狂人のように振る舞っていると公言することは、戦略そのものを弱体化させる。そしてトランプは、こうしたことを公言することを好むのだ。

こうした事情から、トランプが狂人を演じようとする試みが成功しそうになかったのは、彼特有の理由によるものだ。まず、1期目の試みは概ね失敗に終わった。そして、彼の注意力散漫さゆえに、極端な脅迫を実行に移すような行動をとることが難しくなっている。

それでは、この状況は過去16カ月間でどのように展開してきたのだろうか? トランプの2期目の外交政策は、確かに少々常軌を逸していると言えるだろう。米国際開発庁(the U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)の解体、包括的な関税の導入、グリーンランドとカナダの併合への野望、そして中東地域、ラテンアメリカ、そしてアメリカ国内の都市における数々の武力行使などがその例だ。専門家たちは、2期目のアメリカ外交政策はトランプ独自の嗜好の延長線上にあることを痛感している。これは、1期目には外交政策閣僚とトランプの意見が食い違うことが多かったのとは対照的だ。

それでも、トランプが実施した数々の狂人の策略(madman gambits)の成果は乏しい。確かに、トランプの威嚇が効果を発揮した例もある。例えば、パナマに対する脅迫は、中国による港湾施設の支配に関するパナマの姿勢を変えさせた。また、トランプの過激なレトリックは、コロンビアなどの国々から象徴的な譲歩を引き出した。関税措置は、その有効性が議論の的となっている経済安全保障協定をいくつか生み出した。ヴェネズエラに対するトランプの脅迫は、ニコラス・マドゥロ大統領を屈服させることはなかったが、「南部の槍作戦(Operation Southern Spear)」は事実上ニコラス・マドゥロ政権を崩壊させ、より従順な指導者が後任となることを可能にした。

しかしながら、ほとんどの場合、譲歩したり方針転換したりしたのはトランプ自身である。大統領は、2025年4月に発表した関税措置を、脅迫からわずか1週間足らずで一時停止した。その大きな理由の1つは、金融市場の変動(financial market gyrations)だった。トランプは中国との貿易戦争でも譲歩し、中国にNVIDIAの最高級チップへのアクセスを提供するという譲歩まで見せた。グリーンランド併合を公言していたにもかかわらず、市場が再び動揺すると、トランプは方針を転換した。

そのパターンは容易に見て取れるようになった。トランプは、より小さい国や弱い国を相手にする際には、徹底的に狂気じみた振る舞いを厭わない。一方で、より強力な国を相手にすると、たちまち冷静な交渉姿勢に転じる。これは、市場が彼の外交・貿易政策に否定的に反応した際に特に顕著だった。このパターンは、中国の習近平国家主席との最近の首脳会談でも説明がつく。この会談では実質的な合意は得られず、台湾問題でトランプが譲歩する意思を示した。

実際、このパターンはあまりにも早く明確になったため、2期目の就任からわずか数カ月後、『フィナンシャル・タイムズ』紙のコラムニストはこれを「TACO原則」(トランプはいつも弱腰になる[Trump Always Chickens Out])と名付けた。ヨーロッパ外交評議会のジェレミー・シャピロは、「トランプは脅迫と武力を行使するが、それはまるで校庭のいじめっ子のようだ。体格が大きく外見上は強そうに見えるが、実際には、少しでも公平な戦いになりそうな状況では武力行使を恐れている」と結論づけた。

トランプが、これほど予測可能で交渉力に乏しいという評判を得てしまったことが、彼が「狂人」を演じようとする試みを困難にしている。トランプは、過激な脅迫を実行に移せなかったために、「狂人」戦略を真の譲歩へと結びつけるのに苦労してきた。こうした評判は、戦略の実行を難しくする。なぜなら、常軌を逸した脅迫の信憑性が損なわれるからだ。

しかしながら、ヴェネズエラ侵攻とイラン戦争が示すように、トランプ大統領は必ずしも尻込みする訳ではない。実際、マドゥロ政権に対するハイリスク作戦である「南部の槍作戦」の戦術的成功は、トランプ大統領の脅威の信憑性を高めたと言えるだろう。マルコ・ルビオ国務長官は作戦直後の記者会見で、「トランプ大統領が何かをすると言ったり、問題に対処すると言ったりするときは、本気だ(When he [Trump] tells you that he’s going to do something, when he tells you he’s going to address a problem, he means it)」と強調した。

ヴェネズエラ侵攻作戦直後にトランプ大統領のグリーンランドへの関心が再燃し、イランに対する脅威もエスカレートしたことは、決して偶然ではない。そして、マドゥロ政権侵攻後、他の国々もトランプ大統領の脅威をより真剣に受け止めるようになった。デンマークはグリーンランドで積極的な防衛措置を実施した。複数の専門家は、トランプ大統領がイランに対して核兵器を使用する可能性さえあると指摘した。

注目すべきは、デンマークもイランもトランプ大統領の脅迫に屈しなかったことだ。もし屈服していたら、狂人理論は成功したと言えるだろう。しかし実際には、イランの「壮大な怒り作戦(Operation Epic Fury)」への対応は、狂人理論の大きな欠陥を露呈している。つまり、狂人のように振る舞う意思のある相手国に対してはこの理論は通用しないということだ(It does not work against another state willing to act like a madman)。

アメリカ・イスラエル共同攻撃への対応として、イランは複数の側面で戦争をエスカレートさせた。イランのロケット弾とドローンはペルシャ湾岸諸国の標的を攻撃し、その多くは民間インフラを狙ったものだった。さらに、ホルムズ海峡を商船の航行に対して閉鎖することを決定したのもイランであり、これにより世界経済に深刻な打撃を与え、グローバルサウス諸国におけるイランへの同情を冷え込ませた。通常、エスカレーションにおいて優位に立っていると考えるトランプ大統領は、さらにエスカレーションを厭わない敵に直面した。神権政治体制(the theocratic regime)の比較的極端な政治的嗜好と経済的苦痛を容認する姿勢は、イランを狂人による奇策の標的とするには特に困難なものにしている。

イランの反応は、トランプが「狂人理論」を適用することの問題点を他にも露呈させた。テヘランとの交渉は様々な理由で難航しているが、おそらく最大の理由は、交渉中に二度も爆撃を受けたことで、イランの指導者たちがトランプ政権を信用していないことだろう。狂人のように振る舞うことで威圧はもっともらしく聞こえるかもしれないが、同時に紛争解決のコストも増大させる。

トランプの2期目の初めに、私は「トランプが自分が本当に狂人だと誰にも納得させられないなら、それを証明する唯一の方法は、最も突飛な脅迫を実行に移すことだろう。もしかしたらそれでうまくいくかもしれないが、紛争が制御不能に陥る可能性もある」と警告した。イラン紛争が当初の予想よりも長引くにつれ、避けられない結論は、トランプもかつてのニクソンと同様に、「狂人理論」は、理論上はもっともらしく聞こえるが、実際にはそうではないことを学んでいるということだ。

※ダニエル・W・ドレズナー:タフツ大学フレッチャー記念大学院学術担当学院長・国際政治卓越教授。ニューズレター「ドレスナーズ・ワールド」の著者。Xアカウント:@dandrezner

(貼り付け終わり)

(終わり)



sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 日本は衰退という分野においては世界のトップランナーである。人口も経済力も直滑降で下がり続けており、それが続く。団塊ジュニアと呼ばれる1970年代前半生まれの人々を、適切な時期に救済していれば(それは2000年代であった)、まだブレーキがかかったであろうが、この時期に日本は当時の若い人々を見捨てた。現在の若い人々は非常に優遇されている。優遇された高齢世代と優遇されている若者世代の間で、中年世代は適切な対応を受けずに、「働けなくなったらいなくなればいいのに」と思われていることだろう。結婚や出産もできず、正規雇用でもなかった人が多く、退職金もない。親の世代に資産はあっても親たちが遺してくれる訳ではない。若者世代からは「甘えたつけの自己責任」と言われて助けてもらえないだろう。政府に求められるのは「団塊ジュニア処分」であろう。「お国と社会のために医療を受けずに早く死ぬことだ、それが最大の貢献だ」ということになる。戦中の若者たちと同様の扱いである。地球という規模で見れば、人間が一番残酷で、一番地球にとって害悪をもたらす存在であるので、人間という種が無駄な部分を削る先駆けということになるのかもしれない。

 日本は1945年の敗戦当時、経済力はほぼ破壊されていた。それからひと世代も経たないうちに、資本主義世界第2位の経済大国になった(1968年)。それから約60年かけて日本は衰退の途を進んだ。特に21世紀になってからは衰退のスピードは加速している。名目GDPのランキングはインドに抜かれて世界第5位になっている。一人当たりのGDPは世界第38位で、G7諸国の中では最低である。ここで私たちは、日本は衰退国家であることをまず認識しなければならない。そして、この趨勢を逆転できる方策など存在しないことを肝に銘じるべきである。日本人は貧しい国民である。私たちにとって値段の高いものが外国人にとってはお手頃な価格である。日本の通貨である円の購買力は落ちている。そのために輸入に頼る日本では物価が上昇する。

 「そんなことはない、自分は豊かな生活を送っている」という人はいるだろう。個人で見れば高所得の人はいる。しかし、大きな数字は残酷である。日本は全体で貧しいのである。国力が低下しているのである。これは1990年代後半から2000年代前半にかけての政策の失敗が理由としては大きい。しかし、それを選んだのは私たち日本国民である。

 実態と理想の乖離が大きくなっている。「日本はうつくしくて豊かで強い国!」というイメージと自分たちの日々の生活の実態の乖離は大きくなっている。それに対しての不平不満が募っている。そして、外国が気に入らない、外国人が気に入らないという排外主義がはびこり、対東アジア諸国に対する敵視が高まる。その根本原因が自分たちにあるというところから目を背けて、外国が悪い、外国人が悪いということになる。子の乖離に耐えるだけの思考力と知性が圧倒的に欠如している現在の日本人こそは世界の安定を毀損する存在ということになるだろう。この趨勢はこれから数十年続く。その後にどのようなことになっているのかということには悲観的にならざるを得ない。

(貼り付けはじめ)

●「円の実力、凋落止まらず 56年前下回る、購買力減退」

時事通信 経済部 202604251439分配信

https://www.jiji.com/jc/article?k=2026042500296&g=eco
japaneseyenrealeffectiveexchangerate19702026001

 「円」の価値が凋落(ちょうらく)し続けている。国際決済銀行(BIS)によると、通貨としての総合的な実力を示す「実質実効為替レート」は今年3月時点で66.33(2020年=100)と、統計が始まった56年前の水準を下回った。海外からモノやサービスなどを「買う力」が失われていることを意味し、食料や原油など輸入品の価格高騰を招いている。

 実質実効レートは、対ドルの円相場など特定通貨間の為替レートとは異なり、多数の通貨の中で相対的な実力を測る指標。他の国より物価上昇率が高ければ上がる特徴があり、円の実質実効レートは1995年に現在の約3倍に当たる最高値を記録した。ピーク後は日本経済や物価の長期低迷とともに低下が続いてきた。低金利でドルやユーロなどに対して円安が進んでいることも拍車を掛けた。

 集計が始まった70年のレートは75近辺だった。当時は1ドル=360円の固定相場制だったが、現在はこの水準も下回っている。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、低迷の要因について「少子高齢化を背景に進む国力の低下である可能性が高い」と分析する。

 外国為替市場では、対ドルの円相場が3月に一時160円台半ばまで下落。円の弱さはユーロや人民元など多くの通貨に対しても顕著で、実質実効レートを押し下げている。

 高市政権が発足した昨年10月時点のレートは70.81で、半年で約6%低下した。積極財政路線による財政悪化の懸念などで、円が売られたことが一因だとみられる。

 実質実効レートは、BISが約65カ国・地域の為替レートや貿易量、物価変動などを考慮して算出している。低下は輸入品価格の上昇を通じて家計や企業に負担となる一方、外国人旅行者にとっては日本のモノやサービスが割安となる。日本の輸出企業には競争力強化につながる側面もある。

=====

●「日本の人口309万人減 減少幅が過去最大、東京近郊も軒並み減」

5/29() 8:30配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/9f145d064d49432b10e3943704f0d927531a90ca

 総務省は29日、2025年国勢調査の速報値を発表した。外国人を含む日本の総人口は25101日現在、123049524人で、20年の前回調査に比べて3096575人(25%)減った。減少数、減少率とも過去最多。人口増は東京都と沖縄県のみで、45道府県で減少した。地方からの転居者で増加を続けてきた神奈川、埼玉、千葉の首都圏3県や愛知、福岡両県なども今回、減少に転じ、人口減の波が大都市部にまで及んでいることが明白になった。

【グラフで見る】都道府県別の人口増減率

 国勢調査は1920年に始まり、5年に1度実施される。総人口の減少は、2015年、20年に続き3回目。減少幅は前回の948646人(07%)減から大幅に拡大した。総務省によると、少子化による自然減が加速していることが最大の要因。前回調査はコロナ禍で、海外在住の日本人が多く一時帰国していたことも影響した。
populationdecreasemap20202025001

 前回調査では東京圏や愛知、福岡、沖縄など8都県で人口が増加したが、今回は2都県に減少。埼玉、千葉、愛知の人口減は統計開始以来初めてで、神奈川は終戦直後の1945年調査以来となる。前回は減少率01%未満でほぼ横ばいだった大阪府も08%減少し、府内人口は30年ぶりに880万人を下回った。

 都道府県別で減少率が最も大きかったのは秋田県の81%。5%以上の減少は東北地方や中国・四国地方で目立ち、青森県が79%、岩手、山形、高知の3県が70%で続いた。減少人数では、北海道が239195人で最多。次いで静岡県が164357人、兵庫県が141177人だった。
populationdecerasegraph20152025001

 全国1719市町村(東京23区は1市として集計)では、9割以上に当たる1558市町村で人口が減少した。10%以上の大幅減となった市町村は全体の277%に上り、前回調査からほぼ倍増した。

 単身世帯の増加を受け、世帯数は57124507世帯(23%増)と過去最多となった。一方、1世帯当たりの人数は過去最少の215人。

 総人口は前回調査では世界11位だったが、今回はエチオピア(約13500万人)に抜かれて12位に下落した。世界人口(82億人)に占める日本の割合は15%だった。

 25年の国勢調査の回答率は807%。確定値は9月に発表される。【原諒馬】
populationpyramids195020002050001

=====

2025年最新】世界GDPランキング 日本は5位に後退、一人あたりGDP38

都市と人々

GDPとは国内総生産を表し、各国の経済状況を示すひとつの指標だ。IMF(国際通貨基金)発表の2025年最新版「世界GDPランキング」の全順位を紹介。さらに、日本が前年の4位から5位へ後退した結果や、「一人あたりのGDPランキング」も見てみよう。

ELEMINIST Editor エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2025.09.16

https://eleminist.com/article/4294

https://eleminist.com/article/4294?page=2

GDP」とは国内総生産 各国の経済状況を示す

GDPとは、「Gross Domestic Product」の頭文字をとった言葉。日本語で「国内総生産」という。わかりやすく言うと、その国で生産されたモノやサービスの付加価値を合計したもので、さらに簡単に言えば「その国の儲け」を示す。GDPを言い換えると、各国の経済状況や景気のよさがわかる指標なのだ。

2025年最新の世界GDPランキング

2025年の世界189か国のGDPを見てみよう。以下の結果は、IMF(国際通貨基金)が発表した2025年のGDPランキングをもとに作成している(1)。

順位        国名        GDP

10US$

1位        アメリカ合衆国    30,507.22

2位        中国        19,231.71

3位        ドイツ    4,744.804

4位        インド    4,187.017

5位        日本        4,186.431

6位        イギリス                 3,839.180

7位        フランス                 3,211.292

8位        イタリア                 2,422.855

9位        カナダ    2,225.341

10       ブラジル                 2,125.958

11       ロシア連邦             2,076.396

12       スペイン                 1,799.511

13       大韓民国                 1,790.322

14       オーストラリア    1,771.681

15       メキシコ                 1,692.640

16       トルコ    1,437.406

17       インドネシア        1,429.743

18       オランダ                 1,272.011

19       サウジアラビア    1,083.749

20       ポーランド             979.960

21       スイス    947.125

22       台湾        804.889

23       ベルギー                 684.864

24       アルゼンチン        683.533

25       スウェーデン        620.297

26       アイルランド        598.840

27       イスラエル             583.361

28       シンガポール        564.774

29       アラブ首長国連邦                 548.598

30       タイ        546.224

31       オーストリア        534.301

32       ノルウェー             504.276

33       フィリピン             497.495

34       ベトナム                 490.970

35       バングラデシュ    467.218

36       デンマーク             449.940

37       マレーシア             444.984

38       コロンビア             427.766

39       香港        423.999

40       南アフリカ             410.338

41       ルーマニア             403.395

42       チェコ共和国        360.244

43       エジプト                 347.342

44       チリ        343.823

45       イラン    341,013

46       ポルトガル             331.440

47       フィンランド        303.945

48       ペルー    303.293

49       カザフスタン        300.538

50       アルジェリア        268.885

51       ギリシャ                 267.348

52       イラク    258.020

53       ニュージーランド                 248.666

54       ハンガリー             237.070

55       カタール                 222.776

56       ウクライナ             205.742

57       ナイジェリア        188.271

58       モロッコ                 165.835

59       クウェート             153.101

60       スロバキア             147.031

61       ウズベキスタン    132.484

62       ケニア    131.673

63       ドミニカ共和国    127.828

64       エクアドル             125.677

65       プエルトリコ        122.522

66       グアテマラ             121.177

67       エチオピア             117.457

68       ブルガリア             117.007

69       アンゴラ                 113.343

70       ベネズエラ             108.511

71       オマーン                 104.351

72       コスタリカ             102.591

73       クロアチア             98.951

74       ルクセンブルク    96.613

75       コートジボワール                 94.483

76       セルビア                 92.549

77       パナマ    91.675

78       リトアニア             89.192

79       トルクメニスタン                 89.054

80       ガーナ    88.332

81       タンザニア             85.977

82       ウルグアイ             79.731

83       コンゴ民主共和国                 79.119

84       アゼルバイジャン                 78.870

85       スロベニア             75.224

86       ベラルーシ             71.561

87       ミャンマー             64.944

88       ウガンダ                 64.277

89       ボリビア                 56.339

90       チュニジア             56.291

91       ヨルダン                 56.102

92       カメルーン             56.011

93       マカオ    53.354

94       カンボジア             49.799

95       バーレーン             47.829

96       リビア    47.484

97       ネパール                 46.080

98       ラトビア                 45.535

99       パラグアイ             45.465

100     エストニア             45.004

101     キプロス                 38.736

102     ホンジュラス        38.172

103     ジンバブエ             38.172

104     エルサルバドル    36.749

105     ジョージア             35.353

106     アイスランド        35.309

107     セネガル                 34.728

108     ハイチ    33.548

109     パプアニューギニア             32.835

110     スーダン                 31.506

111     ギニア    30.094

112     ザンビア                 28.910

113     ボスニア・ヘルツェゴビナ                 28.807

114     アルバニア             28.372

115     ブルキナファソ    27.056

116     トリニダード・トバゴ        26.467

117     アルメニア             26.258

118     ガイアナ                 25.822

119     モンゴル                 25.804

120     マルタ    25.750

121     モザンビーク        23.771

122     マリ        23.208

123     ベナン    22.236

124     ニジェール             21.874

125     ジャマイカ             21.411

126     ニカラグア             21.155

127     ガボン    20.391

128     キルギス共和国    19.849

129     モルドバ                 19.462

130     ボツワナ                 19.400

131     チャド    18.792

132     マダガスカル        18.708

133     北マケドニア        17.885

134     イエメン                 17.401

135     ラオス人民民主共和国        16.322

136     ブルネイ                 16.007

137     モーリシャス        15.495

138     コンゴ共和国        15.281

139     バハマ    15.178

140     タジキスタン        14.836

141     ルワンダ                 14.771

142     ナミビア                 14.214

143     マラウイ                 13.959

144     ソマリア                 12.994

145     赤道ギニア             12.684

146     モーリタニア        11.470

147     コソボ    11.274

148     トーゴ    10.023

149     モンテネグロ        8.562

150     シエラレオネ        8.386

151     バルバドス             7.552

152     モルディブ             7.480

153     ブルンジ                 6.745

154     フィジー                 6.257

155     エスワティニ        5.483

156     リベリア                 5.166

157     ジブチ    4.587

158     スリナム                 4.506

159     アルバ    4.100

160     アンドラ                 4.035

161     南スーダン共和国                 3.998

162     ベリーズ                 3.611

163     ブータン                 3.422

164     中央アフリカ共和国             2.932

165     カーボベルデ        2.786

166     ガンビア                 2.771

167     セントルシア        2.632

168     レソト    2.404

169     アンティグア・バーブーダ                 2.373

170     ギニアビサウ        2.274

171     セーシェル             2.198

172     東ティモール        2.115

173     サンマリノ             2.047

174     ソロモン諸島        1.898

175     コモロ    1.548

176     グレナダ                 1.464

177     バヌアツ                 1.267

178     セントビンセント・グレナディーン諸島        1.242

179     サモア    1.160

180     セントクリストファー・ネイビス    1.129

181     サントメ・プリンシペ        0.864

182     ドミニカ                 0.742

183     トンガ    0.568

184     ミクロネシア連邦                 0.500

185     パラオ    0.333

186     キリバス                 0.312

187     マーシャル諸島    0.297

188     ナウル    0.169

189     ツバル    0.065

2019年〜2024年のGDPランキング

■1位アメリカ、2位中国、3位ドイツは変わらず

GDPランキングで世界に大差をつけているのが、1位のアメリカで305072億ドル。2位の中国(192317億ドル)、3位のドイツ(4兆7448億ドル)に、前年から順位の変動はない。

■日本はインドに抜かれて5位

2024年のランキングで日本は4位だったが、2025年では前年に5位だったインドが、日本を追い抜いて4位の座についた。インドは4兆1870億ドル、日本は4兆1863億ドルだった。成長著しいインド経済を考えると、2026年以降のランキングでインドは日本との差をさらに広げることになりそうだ。

2025年最新 一人あたりのGDPランキング

次に一人あたりのGDPランキングの上位50か国を紹介する。一人あたりのGDPは、各国のGDPを人口で割った数値を表し、こちらも国の平均的な豊かさの指標になる。(2)

順位        国名        単位(US$

1位        ルクセンブルク    140,940

2位        アイルランド        108,919

3位        スイス    104,895

4位        シンガポール        92,932

5位        アイスランド        90,283

6位        ノルウェー             89,693

7位        アメリカ                 89,105

8位        マカオ    76,314

9位        デンマーク             74,969

10       カタール                 71,652

11       オランダ                 70,479

12       オーストラリア    64,547

13       サンマリノ             59,603

14       オーストリア        58,191

15       スウェーデン        58,100

16       ベルギー                 57,772

17       イスラエル             57,760

18       香港        56,030

19       ドイツ    55,911

20       イギリス                 54,949

21       フィンランド        54,162

22       カナダ    53,558

23       アラブ首長国連邦                 49,498

24       フランス                 46,792

25       ニュージーランド                 46,126

26       マルタ    45,734

27       アンドラ                 45,263

28       キプロス                 41,131

29       イタリア                 41,091

30       プエルトリコ        38,605

31       アルバ    37,775

32       バハマ    36,783

33       スペイン                 36,192

34       スロベニア             35,332

35       ブルネイ                 34,969

36       韓国        34,641

37       台湾        34,426

38       日本        33,955

39       チェコ    33,039

40       エストニア             32,760

41       ガイアナ                 32,326

42       リトアニア             30,835

43       サウジアラビア    30,098

44       ポルトガル             30,002

45       クエート                 29,950

46       バーレーン             28,857

47       スロバキア             27,130

48       ポーランド             26,805

49       バルバドス             25,901

50       ギリシャ                 25,756

一人あたりのGDPランキング上位国の動向

■1位はルクセンブルグ

一人あたりのGDPは、各国の国民一人あたりの本当の豊かさを表す指標とも言える。一人あたりのGDPが世界でもっとも高い国は、ルクセンブルグだ。2025年の結果は、14940ドルとなり、過去30年以上にわたり、トップの水準を維持している。

ルクセンブルグの一人あたりのGDPが高い理由として、近隣諸国からルクセンブルグに労働に来る人の数が多いことがある。その場合、ルクセンブルグのGDPは増えるが、一人あたりのGDPを計算する際はルクセンブルグの人口から計算されるため、一人あたりのGDPは高くなる傾向にある。

2位はアイルランド(108,919ドル)、3位はスイス(104,895ドル)とつづいた。

■日本経済が後退か?

2025年のランキングで、日本は世界5位、一人あたりのGDPでは38位だった。

2023年は3位、2024年は4位、2025年は5位へ

日本は、2023年のGDPランキングまでは、1位のアメリカ、2位の中国に次いで、3位の位置につけていた。だが、2024年のランキングでドイツに抜かれて4位へ、そして今回の2025年のランキングでは、インドに抜かれて5位になった。

■一人あたりのGDPG7のなかで最低水準

また一人あたりのGDPについて見てみると、主要各国と比べると日本の水準が低いことがわかるだろう。

7位        アメリカ                 89,105ドル

19       ドイツ    55,911ドル

20       イギリス                 54,949ドル

22       カナダ    53,558ドル

24       フランス                 46,792ドル

29       イタリア                 41,091ドル

38       日本        33,955ドル

G7平均  64,768ドル

EU平均 47,857ドル

■生産性の低さが指摘される

円安のため、ドル換算されるときにGDPが目減りしていることもあるが、GDPランキングの結果から、日本経済の成長に鈍化がみられ、世界における日本の存在感が薄れつつあることがうかがえる。

その理由のひとつとして指摘されているのが、生産性の低下だ。高齢化による労働人口の減少、さらにAIIT技術の導入の遅れによることもあるだろう。

実際、将来のGDPランキングについて、日本はトップ10以下になり、一人あたりのGDPの順位も下がることが予測されるケースが多い。

■本当の豊かさを考えよう

かつては日本はGDPで世界3位となり経済大国と言われた。だが、人口減少をはじめ、さまざまな要因によって、経済の成長が鈍化傾向にある。それとともに、世界の主要国と比べると、GDPにも差が見えてくるようになってきた。

GDPは経済的な指標のひとつであり、GDPが高ければ国民は幸せであるかというと、必ずしもそうとは言えないかもしれない。だが、日本では貧困家庭が増えるなど、快適なくらしを送りにくい境遇の人も存在するのが事実だ。

出生率の低下も問題視され、日本経済の先行きは不安が大きいかもしれない。しかし、SDGsの「誰一人取り残さない」の理念のように、日本でも取り残されるような人が出ないような取り組みや対策、さらに私たちの意識変化がもっと必要になるのではないだろうか。

※1 GDP, current pricesIMF

※2 GDP per capita, current pricesIMF

(貼り付け終わり)

(終わり)
thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権になって、アメリカは世界の舞台でふらふらと一貫性のない行動を取っている。高関税をかけてみたかと思えば、税率を引き下げる、中国に対して攻撃的な姿勢を取って、中国がレアアースを材料にゆさぶりをかけると、すぐに腰砕けになった。米中首脳会談は共同記者会見や共同声明は出ていないが、最低限のラインは守られ、米中両国は戦争には至らないということで合意している。ドナルド・トランプ大統領の日規則発言やイレギュラーな行動はなかった。ウクライナ戦争はいまだに停戦の兆しを見せず、それに加えて、アメリカはヴェネズエラ攻撃やイラン戦争を実施し、ヴェネズエラ攻撃は成功したが、イラン戦争は失敗であった。アメリカは圧倒的な軍事力を持っており、世界のどんな国でもひとひねりでやっつけることができるというのは幻想(illusion)だ。アメリカは弱い低を慎重に選んで攻撃し、強そうに見せていたということが明らかになりつつある。

 こうした混乱はトランプが大統領だからだと考えるのは浅薄だ。トランプはお金がない中で、一生懸命にアメリカを運営し、どうせ駄目な泥船だということは分かっていながら、何とか運営しようとしている。しかし、根本的に駄目な状態であるので、どうしようもない。どうしても、フラフラ、右往左往することになる。トランプはアメリカ帝国の「墓掘り人」として選ばれた。アメリカ帝国の後始末をつけるという大事な仕事がある。

しかし、それにしても大失敗はイラン戦争である。これで全く望んでいなかった中東地域の泥沼にはまり込んでしまった。アメリカが存在自体を公式に認めてこなかったイランの政権と真剣に外交交渉をして、しかも譲歩をしなければならない。アメリカが打倒の対象としてきた、イランの政権の体制の保証までしなければならない。これは屈辱である。イスラエルにいいように使われてこのような事態を招いた。こうしてアメリカは世界覇権国、世界帝国の地位から滑り落ちていく。

 おとなしく、余計なことは何もしないで、経済に注力してきた中国の存在感が大きくなるのは当然のことだ。5月14日から15日にかけて米中首脳会談、20日には中露首脳会談が北京で開かれたことは象徴的だ。アメリカはイラン、ロシアはウクライナという問題を抱えており、中国は日本の新型軍国主義と高市早苗政権と台湾という潜在的な問題を抱えながら、米露という20世紀の超大国の上にいるというような形で、「ヤルタ2.0」体制を構築している。米露は辞を下げて中国にいろいろと「お願い」をしに行った。これは大きなことだ。中国は世界覇権国への途を進んでいくだろう。2042年のアヘン戦争後の天津条約200周年までにどれくらいこの状況が進むか注目される。

(貼り付けはじめ)

中国の覇権が実現するかもしれない(Chinese Hegemony Might Be Happening

-それが現実になる可能性を疑う理由はこれまでいくらでもあった、今までは。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年5月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/12/china-hegemony-asia-trump-summit/

中国はアジアにおける覇権国になり得るのか? 2023年、私は中国の地域覇権(regional hegemony)への懸念は誇張されているものの、全くの空想ではないと主張するコラムを発表した。その主張をより詳細にまとめたものが、2025年春号の『インターナショナル・セキュリティ』誌に掲載された。私は、近年の地域覇権への試みのほとんどが失敗に終わっている(アメリカは例外的に有利な状況下で成功した)だけでなく、アジアにおける強力な勢力均衡連合(a strong balancing coalition in Asia)の形成は実現可能性が高いと主張した。中国の近隣諸国のほとんどは、中国が地域を支配することを望んでいない。アメリカも同様だ。主要諸国が脅威を均衡させようとする傾向があることを踏まえ、私は中国による露骨な覇権への試みは失敗に終わる可能性が高く、北京がそのような試みを行うのは賢明ではないと結論付けた。

この議論の論理は今でも説得力があると思うが、ドナルド・トランプ米大統領が、実際に証明されているように、衝動的で、見当違いで、無能な外交政策の担い手となる可能性を十分に考慮していなかった。マルコ・ルビオ国務長官やエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)といった強硬派の存在、そして連邦議会における超党派の合意によって、アメリカの国力はアジアの同盟諸国が中国を牽制するのを支援することに十分集中するだろうと想定していた。

ところが、2025年以降、トランプ大統領は、中国がアメリカに取って代わり、周辺地域で支配的な地位を確立することを意識的に望む者が行うであろうあらゆることを実行してきた。彼はアメリカの科学界の柱を攻撃し、国立科学財団(NSF)の予算を削減し、諮問委員会を粛清し、数十の政府機関で経験豊富な科学者を解雇し、アメリカの主要大学に対して破壊的な攻撃を仕掛けてきた。科学技術力が経済生産性と軍事力の鍵となる時代において、これは一方的な軍縮行為であり、中国がまさにその逆のことをしている時に行われる行為である。

関連して、トランプは太陽光発電や風力発電、先進バッテリー、電気自動車といった新興グリーンテクノロジーの分野で中国に主導権を譲り渡す一方で、化石燃料や内燃機関といった20世紀の技術に固執している。データセンターが急増し、人類の生存に必要な電力がますます増大する中で、この政権は風力発電所の建設を阻止するために税金を投入している。世界は化石燃料の使用を減らし、クリーンエネルギーへの依存度を高める必要があることを日々痛感しているにもかかわらず、トランプはその未来をアメリカではなく中国が握るようにあらゆる手段を講じている。

第三に、トランプ大統領は中国(およびその他の国々)に対して、設計が不十分で一見無作為に見える一連の関税を課したが、中国が多くの先端技術(私が今これを書いているノートパソコンも含む)の基盤となる精製レアアースの輸出を停止すると、トランプ政権は撤回した。結局、彼の関税措置は違法だったことが判明し、彼が主張していた目標(例えば、製造業の雇用をアメリカに取り戻すなど)を達成する可能性はさらに低くなった。

さらに悪いことに、彼は関税という強硬手段を用いて、アジアの最も重要なパートナー諸国を威圧し、彼らが望むか否かにかかわらず、アメリカ経済への投資を約束させた。同盟諸国の経済に打撃を与えることは、反感を招くだけでなく、アメリカが長年望んできた国防費の増額を困難にする。トランプと彼のティームは、アジア諸国との関係改善にもほとんど取り組んでいない。トランプは昨年、インドのナレンドラ・モディ首相と無意味な論争を繰り広げた。また、現在、オーストラリア、ミャンマー、カンボジア、フィジー、インドネシア、ラオス、マレーシア、マーシャル諸島、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、ヴェトナムには、米大使が誰も駐在していない。これらの国々の米大使のほとんどは、そもそも候補者すら指名されていない。

トランプとルビオは、アメリカを数十もの国際機関から脱退させた。これは、中国がますます活発かつ影響力を強めているもう一つの分野であり、国際関係の様々な側面を規定するルールや制度が策定される場にアメリカが参加できないことを意味する。もちろん、一部の国際機関はそれほど重要ではなく、強国は望む時にそれを無視できるという意見もあるだろう。しかし、こうしたフォーラムにおける外交的存在感の低下は、アメリカが他国との協力に関心がないというメッセージを世界に発信することになる。また、今後数年間、アメリカ企業は他国によって策定されたルールに基づくグローバルな規制環境に対応していかなければならないことを意味する。アメリカのような強国でさえ、これは不便で非効率的だと感じるかもしれない。

そして、イランとの戦争もある。

第一に、この紛争は大きな障害となっており、トランプの限られた集中力だけでなく、側近たちの時間とエネルギーも浪費している。ホルムズ海峡の開通方法を模索している最中に、どうやって効果的なアジア戦略を策定できるというのだろうか? トランプ大統領は、アジアにおける中国の台頭に注力すると公約して就任した4人目の米大統領だが、歴代大統領と同様、結局は中東地域で泥沼にはまり込むことになった。そして、2003年のジョージ・W・ブッシュ大統領と同様、彼には自らの責任以外に責めるべき相手はいない(そしておそらくイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は責めることができるだろうが)。

この戦争は、アジアにおけるアメリカ軍の態勢を弱体化させ、もしアジアで紛争が発生した場合、アメリカがどれほど効果的に対応できるのかという正当な疑問を起こさせる。現在、アメリカ海軍は中東地域に3つの空母打撃群を配備しているが、東アジアには1つしかない。ペルシア湾岸に展開している空母は数カ月間も配備されており、この事態が収束すれば港での休息が必要になるだろう。米国防総省はトマホークミサイルやパトリオットミサイルなどの先進兵器を急速に消費しており、アジアの同盟諸国は防衛力が低下しつつある。中国や北朝鮮がこの状況を悪用するとは考えにくいが、アジアの同盟諸国にとっては決して喜ばしいことではないだろう。

さらに言えば、この戦争の「計画(planned)」(そもそも計画という言葉が適切かどうかは別として)と実行のあらゆる過程は、長年の同盟諸国に相当な懸念を抱かせているに違いない。事前に相談を受けた国は皆無であり、政権内部の誰も、イランへの再攻撃(2025年6月に続いて)が世界中のパートナー諸国にどのような影響を与えるかについて全く考えていなかったようだ。その影響は深刻だ。フィリピン、日本、韓国などでガソリン価格が急騰し、経済成長予測も下方修正された。さらに、戦争による肥料不足や農作物の収穫量減少といった経済的・人的被害も加われば、ワシントンが軽率に戦争に踏み切ったことへの怒りは当然と言えるだろう。

以前にも述べたように、トランプ政権の混乱した戦争遂行は、アメリカの判断力と能力(judgement and competence)に対する深刻な疑念を抱かせるばかりだ。国際政治において、影響力と信頼性(influence and credibility)は、国力、共通の利益、そして決意の表明によって部分的に形成されるが、同時に、他国の指導者が自らの行動をある程度理解しているという信頼にも左右される。これまでの政権の実績を考えると、アジア(あるいは他の地域)のアメリカの同盟諸国は、彼らの助言を受け入れたり、彼らが交わす約束を信じたりするべきか? 一方、中国は自らを穏健な大国[a benign power](実際はそうではない)として、あるいは少なくとも外国を爆撃したり、指導者を暗殺したり、世界経済を混乱に陥れたりするような国ではないかのように見せかけることができる。ギャラップ社の最近の世論調査によると、中国は今や世界中でアメリカよりも人気が高いという。これは驚くべき展開であり、私たち全員が懸念すべき事態だ。

こうした状況を踏まえると、私はアメリカのアジアにおける同盟関係の安定性、そして中国の覇権を阻止できる見込みについて、楽観的すぎたのではないかと疑問に思わざるを得ない。中国に対抗するための連合は、構造的に見てかなり強固なものになるはずだが、主要な同盟国、特に同盟のリーダーと目される人物があまりにも無能であれば、崩壊する可能性は依然として存在する。ほとんどのアジア諸国はアメリカから距離を置き、中国に迎合することを望んでいないが、その可能性は私がかつて考えていたほど低いものではないかもしれない。その主な理由は、アメリカの最近の失策ということになる。

こうしたことを言うのは躊躇してしまう。なぜなら、敗北主義(defeatism)は自己成就(self-fulfilling)になりかねないからだ。また、もはや万策尽きた状態で中国の覇権が確実だと示唆したくもないからだ。今でも、私は中国が持っている手札よりもアメリカの手札の方がはるかに良いと考えている。なぜなら、ワシントンは北京よりも多くのハイカードを握っているからだ。しかし、私たちの手札を、ゲームのルールを理解し、それぞれのカードの価値を知っている人物が握ってほしいと切に願っている。

スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領が共和党のビル・キャシディ連邦上院議員(ルイジアナ州選出)と激しい言い争いになったことについてこのブログで昨日書いた。キャシディ議員は、イラン戦争停戦決議に共和党から賛成に回った4名の上院議員のうちの1人だ。キャシディ議員はトランプ大統領に対して長年にわたり批判的であり、2021年の弾劾裁判で、有罪に賛成票を投じており、トランプとは「犬猿の仲」だった。

 キャシディ議員は今年11月の中間選挙で改選となるということで、共和党予備選挙に立候補していた。トランプ大統領はルイジアナ州選出のジュリア・レットロー連邦下院議員に上院議員選挙への立候補を促し、支持を表明した。これは同時に現職のキャシディ議員を支持しないということになった。そして、ルイジアナ州選出連邦所運議員選挙の共和党予備選挙が実施され、レットロー議員が45%、ジョン・フレミング州財務長官が28%、キャシディ議員が25%の得票率となり、現職のキャシディ議員は惨敗した。共和党優勢州でのトランプ大統領の影響力のすさまじさを改めて見せつける結果となった。

 トランプ大統領はイラン戦争の失敗もあり、現在、支持率が低迷している。そのあおりを受けて、11月の中間選挙での共和党の苦戦が伝えられている。共和党の候補者になるためにはトランプ大統領の支持が必要であるが、本選挙(民主党の候補者と戦う)では、トランプの支持が足枷になる可能性もある。それでも最初から共和党が勝利を確実にしている共和党優勢州ではトランプ支持が絶大な効果を発揮する。

 下記論考では、大統領の影響力について、トランプ大統領と、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領を比較している。ルーズヴェルト大統領は社会主義に近い、リベラルな政策を実施したことで知られているが、そのために、いわゆるニューディール連合を形成しようとした。リベラルな議員たちを多く当選させようとした。しかし、民主党の地盤は南部である。南部には強固な保守イデオロギーを持つ議員たちが多くいた。ルーズヴェルト大統領は彼らをリベラル派に取り換えようと、トランプと同じような動きをしたが、ルーズヴェルト大統領はトランプ大統領ほどにはうまくいかなかった。有権者が地方政治への介入を嫌ったということが理由に挙げられているようだ。トランプ大統領は、「党内粛清力」だけならば、歴代トップ3の評価になるルーズヴェルト大統領を上回るということになる。

 ルーズヴェルト大統領の考えはその後、民主党に引き継がれ、良い評価、悪い評価それぞれあるが、リベラル政党となった。2016年にドナルド・トランプが大統領に当選し、共和党は金持ちのための政党から変質しつつある。これまで民主党を組合関連で応援していた白人労働者たちが支持するようになった。また、特に共和党優勢州で強固な支持基盤もある。これからトランプの「遺産」がどのようになるかということが検証され、評価されていくことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプはフランクリン・D・ルーズヴェルトができなかったことをやっている(Trump Is Doing What FDR Could Not

-しかし、トランプ大統領による党内粛清の成功は長期的には共和党にとって大きな代償となる可能性がある。

ジュリアン・E・ゼリザー筆

2026年6月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/08/trump-republican-party-purge-fdr/

ドナルド・トランプ大統領は苦闘している。支持率は過去最低を記録し、2024年の大統領選挙で支持基盤を構築した主要有権者層、特にラテン系有権者からの支持も急激に低下している。彼は、生活費の高騰や人工知能が中流階級の雇用に及ぼす脅威など、勤労しているアメリカ人にとって最も重要な問題に目を向けようとしない、あるいは向けることができないでいる。あらゆる指標において、トランプ政権は、来る中間選挙で共和党が連邦上院を含む連邦議会の過半数を維持できる見込みを著しく低下させている。共和党にとって、大統領以上に大きな問題となっているものはない。彼らを救う唯一の道は、選挙区の再編成、投票制限、そして都市部への連邦軍の駐留といった手段が、民主的な意思の自然な流れを覆すことだろう。

しかし、トランプは依然として極めて強力な党指導者である。彼は共和党内で確固たる支持基盤を維持し、政敵に閥を与える能力を繰り返し示してきた。近年の予備選挙では、彼に反抗したと彼が考える複数の共和党現職連邦議員を落選させることで、その強さを改めて示した。

インディアナ州では、トランプの州議会選挙への介入が、選挙区再編要求に応じなかった共和党現職議員の落選につながった。ケンタッキー州では、トランプは反対運動を組織し、トーマス・マッシー連邦下院議員の予備選敗北を確実にした。ルイジアナ州では、ビル・キャシディ連邦上院議員も敗北した。キャシディは医師であり、ロバート・F・ケネディ・ジュニアが医療承認済みのワクチンを執拗に攻撃していたにもかかわらず、ケネディを保健福祉長官の承認に賛成した。

テキサス州の共和党連邦上院予備選挙では、トランプの支持が、スキャンダルにまみれたケン・パクストン州司法長官の勝利を確実なものにした。多くの共和党員は、民主党のジェイムズ・タラリコに勝つ可能性はコーニンの方がはるかに高いと考えていたにもかかわらず、このような結果になった。

言い換えるならば、トランプは党内粛清(a primary purge)を敢行し、成功した。彼は党をしっかりと掌握しており、政治的リスクを顧みず、党を思いのままに操れることを証明した。共和党にとってのパラドックスは、党の利益を顧みず、党の政治的イメージを自らも引きずり下ろしている党の指導者に、依然として依存せざるを得ないという点にある。

トランプが党をいかに支配しているかを理解するには、1938年の中間選挙を振り返ることが有効だ。当時、アメリカ史上最も影響力のある大統領の1人であるフランクリン・D・ルーズヴェルトは、民主党の方向性を統一することに失敗した。ルーズヴェルトは、ニューディール政策を阻害する保守的な南部出身議員たち(conservative Southern legislators)を民主党から排除しようとしたが、結果的に敗北を喫し、まさに阻止しようとしていた勢力を勢いづかせてしまった。

ルーズヴェルトが、自身の政策を妨害する党内の南部出身連邦議員たちに立ち向かうことを決意した時、2期目の任期中だった。1936年以降、ルーズヴェルトは勢いに乗っていた。共和党のアルフ・ランドンを圧倒的な勝利で破り(連邦下院で334対88、上院で77対16の多数派)、ニューディール連合(New Deal coalition)を確固たるものにし、連邦政府を大幅に拡大する一連の革新的な法案を連邦議会と協力して可決させた。

しかし、こうした立法実績を築くにあたり、ルーズヴェルトは民主党内の深い分裂に常に対処しなければならなかった。民主党は扱いにくい連合体(an unwieldy coalition)だった。社会保障ネットの整備、産業別労働組合との連携、経済の行き過ぎた行為の規制を政府に求める北部リベラル派(Northern Liberals)、人種関係への干渉を防ぐためにこれらのプログラムの運営を自分たちで管理できる限り連邦政府の支援を受け入れる南部民主党員(Southern Democrats)、20世紀初頭に北部の大都市に移住してきた労働者階級や少数派移民、知識人や進歩主義者、そしてリンカーンの党から離れ始めていた黒人有権者など、様々な勢力が入り混じっていた。

南部民主党員は、1936年の勝利においてこれらの派閥が果たした影響力に動揺したものの、連邦下院と連邦上院の主要委員会を多数支配していたため、党内で不均衡な権力を握っていた。彼らはニューディール政策の多くを支持していた。貧しい白人農業コミュニティは、連邦政府の支援を最も必要とする地域の1つだったからだ。しかし、連邦政府が労働力を管理することや、地域における労働組合の結成を容認するような政策には断固として反対した。例えば、家事労働者や農業労働者が当初社会保障制度から除外されたのは、これが大きな理由の1つだった。

南部の白人民主党員は、大統領とその政策に対してますます反対の姿勢を強めていった。1937年、彼らはルーズヴェルト大統領がニューディール政策に比較的寛容な判事を最高裁判事に加えることで最高裁判所を拡大しようとする、いわゆる「裁判所詰め込み計画(court-packing plan)」に最も強く反対したグループの1つだった。産業別組合会議(the Congress of Industrial OrganizationsCIO)が南部労働者の組織化に本格的に取り組み、民主党指導部が南部の有力候補であるミシシッピ州のパット・ハリソンではなく、ケンタッキー州のアルベン・バークリーを連邦上院多数党(民主党)院内総務に選出したことで、緊張はさらに高まった。ホワイトハウスがバークリー支持を議員たちに圧力をかけた結果、ハリソンはわずか1票差で敗れた。「私たちはアメリカを巡る大いなる戦いに身を投じている。境界線は引かれた」とノースカロライナ州選出のジョサイア・ベイリー連邦上院議員は警告した。「アメリカの社会主義勢力は社会党だけに留まらない」。ルーズヴェルト大統領はヘンリー・モーゲンソー財務長官に対し、南部派が「保守民主党(Conservative Democratic Party)」の結成を目指していると伝えた。モーゲンソー長官もこれに同意し、「戦いと粛清が必要だ(There has got to be a fight and there has got to be a purge)」と述べた。

ルーズヴェルト大統領は自ら事態の解決に乗り出すことを決意した。大統領は通常、党の予備選挙には介入しないものだが、ルーズヴェルトは党が右傾化するのを防ぐために必要だと考え、介入を選んだ。1938年6月の炉辺談話(a fireside chat)で、彼はアメリカ国民に対し、多くの民主党予備選挙は「一般的にリベラルと保守に分類される2つの思想潮流(between two schools of thought, generally classified as liberal and conservative)」の衝突を中心に展開されるだろうと語った。「民主党の党首(head of the Democratic Party)」として、ルーズヴェルトは「1936年の民主党綱領に示された、明確にリベラルな原則宣言」を擁護することが自分の責任だと説明した。

ルーズヴェルトは、ジョージア州のウォルター・ジョージ、サウスカロライナ州のエリソン・“コットン・エド”・スミス、メリーランド州のミラード・タイディングス、アイオワ州のガイ・ジレットなどの民主党連邦議員に加え、連邦下院規則委員長を務めていたニューヨーク州のジョン・オコナーという、問題のある北部民主党議員を破るために選挙運動を展開した。彼は全ての保守派を攻撃した訳ではないが、数人の保守派に勝利することで、党内の保守派に対し、彼にもっと従わなければならないという強いメッセージを送ることができた。これは、彼が最高裁判事の増員をちらつかせた後、最高裁がより彼に同情的な判決を下すようになったのと同様の効果を狙ったものだった。

大統領は遠慮なく行動した。ジョージア州バーンズビルで行われた、新たな農村電化計画の開始を祝う式典で、FDRはジョージの実績を公然と批判し、もし可能であればジョージの対立候補に投票すると述べた。この式典には、5万人以上がゴードン・インスティテュート・スタジアムに詰めかけた。ジョージが怒りを隠そうと前を見つめる中、ルーズヴェルトはこう言い放った。「私の旧友であり、この州選出の連邦上院議員である彼は、私の判断では、リベラルな思想の持ち主とは到底言えない。したがって、彼が長年連邦上院議員を務めてきたという主張は、全く説得力に欠ける。」

彼は他のいくつかの州でも同様の発言をした。サウスカロライナ州への列車旅行の途中、ルーズヴェルトは「1日50セントで生活できる家族や人はいないと思う」と述べた。これは、ルーズヴェルトの最低賃金法案に反対し、その立場を説明する際に「サウスカロライナ州では1日50セントで生活できる」と述べていたスミスへの暗黙の批判だった。

ミシガン州選出の共和党連邦上院議員アーサー・ヴァンデンバーグは、「アメリカに起こったこの『粛清(purge)』は、極めて不吉な意味合いを持つ」と警告した。「政治指導者が同情的な支持者を求めるのはよくあることだが、このいまだ自由な共和国の大統領が、立憲政府の立法府と司法府を支配しようとするのは全く別の問題となる」。

スーザン・ダン著『ルーズヴェルトの粛清(Roosevelt’s Purge)』によれば、この一連の取り組みは全体的に拙劣だった。ルーズヴェルトは一貫性のない計画で場当たり的な戦いを展開し、この取り組みを監督した「粛清委員会(elimination committee)」も機能不全に陥った。さらにダンは、アメリカ国民は地方選挙への大統領の介入を望んでいなかったと指摘している。

この取り組みはルーズヴェルトにとって良い結果にはならず、彼は大統領権限の限界を痛感することになった。ルーズヴェルトが選挙戦で対抗した候補者のうち4人が当選した。大統領が唯一成功を収めたのは、ニューヨーク州のオコーナーに対する選挙戦だけだった。

オコーナーの失脚は、ルーズヴェルトが大敗したというメディアの報道を覆すには至らなかった。南部民主党は中間選挙で非常に好成績を収め、共和党も連邦下院(81議席)と連邦上院(8議席)の両方で議席を大幅に増やした。その後、保守派連合が出現した。南部民主党員と共和党員によるこの同盟は、ルーズヴェルトの国内政策への野望、そしてより広範なリベラルに対する防波堤として、1960年代を通じて機能することになる。

​​ルーズヴェルトは自身の決断を擁護し続けた。1941年の『コリアーズ』誌のインタヴューで、ルーズヴェルトは「私が最も関心を寄せていたのは、民主党と共和党が互いに単なるつまらない政党にならないようにすることだった。私は、民主党がアメリカ合衆国において、自由主義的で、未来志向的で、進歩的な政党であり続けることを何よりも望んでいた」と述べている。

トランプは党指導者として、はるかに手強い手腕を発揮してきた。もちろん、彼の成功の多くは、1970年代以降、民主、共和両党が内部的に均質化してきたという事実に基づいている。ルーズヴェルトにとって厄介な存在だった南部民主党員は、1990年代以降、大部分が共和党員となった。今日、両党には1930年代のような内部分裂は存在しない。さらに、大統領が予備選挙に影響を与えるために利用できる手段、例えば政治活動委員会(PAC)、ソーシャルメディア、高度なコンピューターデータ分析などは、88年前には存在しなかった。

しかし皮肉なことに、1938年の敗北にもかかわらず、ルーズヴェルトは最終的に、より強固な民主党連合の構築に貢献したのである。時が経つにつれ、党内のリベラル派は勢力を増し、1960年代には、投票権法の成立や1965年のメディケア創設など、いくつかの主要な問題において南部の抵抗を打ち破ることに成功した。ルーズヴェルトはアメリカ政治において深く尊敬される人物であり続けたため、民主党は彼とその遺産との結びつきによって、数十年にわたり党の地位を高めてきた。

一方、トランプは、極めて不人気な指導者と政策に党を縛り付けてしまった。共和党は今や、個々の連邦議員がトランプ大統領の支配から容易に抜け出すことができない状況に陥っている。もし抜け出そうとすれば、次の選挙での敗北はほぼ確実となる(ワイオミング州のリズ・チェイニーの例を見て欲しい)。トランプは共和党の長期的な将来をほとんど顧みず、短期的にも長期的にも党に害を及ぼすような行動を厭わない。

今日に至るまで多くの民主党員がルーズヴェルトの遺産を誇り高く主張しているのに対し、共和党員が数十年後もトランプを同じように称えることができるかどうかは全く不透明である。むしろ、彼らは、党内での地位を利用して意思決定を行い、内部抗争に巻き込まれた、並外れた影響力を持つ人物を振り返ることになるのかもしれない。その人物は、共和党が長期的なヴィジョンを持ち、広範な共和党連合の構築を目指し、永続的な足跡を残す法案に注力する指導者に運命を委ねていれば築けたであろう潜在的な優位性を損なった。ルーズヴェルトの直感は、今なお絶大な人気を誇る政策を生み出し、民主党が支持基盤を頼りにできる理由の1つとなっている。数年後、共和党も同じことをするだろうか?

※ジュリアン・E・ゼリザー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。プリンストン大学歴史学・公共問題担当教授。ニュースを多角的に捉えるニュースレター「ザ・ロング・ヴュー」の著者。彼が編集した新刊『ジョセフ・R・バイデン・ジュニア大統領:初の歴史的評価(The Presidency of Joseph R. Biden Jr.: A First Historical Assessment)』は、プリンストン大学出版局から47日に刊行された。Xアカウント:@julianzelizer

(貼り付け終わり)

(終わり)
thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカ連邦議会の上下両院で、イラン戦争停止を求める決議案が可決された。この決議案には法的拘束力はないが、アメリカ国内の民意を示すものとなった。連邦上院では現在、トランプ大統領の所属する共和党が過半数の議席を握っており、否決することもできたが、共和党から4名の上院議員が賛成に回り(民主党からは1名が反対に回った)、50対48で可決となった。連邦下院ではすでに可決されていたので、連邦上下両院での可決となった。各種世論調査では、アメリカ国民の6割がイラン戦争に反対しており、決議可決は民意を示すものとなったが、トランプ大統領にとっては痛手となった。その後、トランプと上院議員たちとの昼食会が開かれ、その場で、ビル・キャシディ連邦上院議員(ルイジアナ州選出、共和党)との激しい言い争いとなった。

 キャシディ議員は「戦争は4週間で終わると言いながら、4カ月たっても終わっていない。何が起きているかを国民に示すべきだ」と発言し、トランプ大統領は「あんたは敗者だ」と発言した。キャシディ議員は今年11月の中間選挙で改選となるので、再選を目指して、共和党予備選挙を戦っていたが、トランプ大統領が支持する候補者に敗れて、共和党の候補者になれなかった。両者は大声で言い合いを展開することになった。キャシディ議員はその後、「適切な対応ではなかった(not appropriate)」と発言し、「It’s the Irish in me」と述べた。

 「It’s the Irish in me」という言葉は「これは私の中にあるアイルランド人の血がそうさせるんだ」という意味になる。アイルランド系のイメージは、「大酒飲みで喧嘩早い」というものだ。キャシディ議員は喧嘩になってしまったのは、自分の中にあるアイルランド系の血がそうさせたのだということを述べたことになる。大酒飲みも喧嘩早いもよいことではないが、一種、これらを誇るときにも使われる表現のようだ。「自分は戦う男だ」ということを強調したかったのだろうと思う。

 ドナルド・トランプ大統領の影響力は大きい。彼が気に入らない議員には指示を与えず、対抗馬を応援することで、議席を奪うということができる。歴代でもこれほどの影響力を持った大統領はいなかっただろう。トランプ大統領は独裁的な力を持つほどになったと言われるが、アメリカは「三権分立(Separation of Powers)」の国であり、立法府、行政府、司法府がお互いに「牽制と均衡(check and balance)」を行うように設計されている。従って、トランプ大統領にフリーハンドが与えられている訳ではない。そのことは以前にこのブログの記事でも書いた。
 ※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ 2026年06月09日 ドナルド・トランプが大統領になってもアメリカの権力分立は一面ではきちんと機能している↓ https://suinikki.blog.jp/archives/90549042.html 2026年06月09日 ドナルド・トランプが大統領になってもアメリカの権力分立は一面ではきちんと機能している↓

 アメリカとトランプ大統領はイラン戦争で大きくつまずいた。和平交渉もアメリカのペースでは進まない。イラン戦争はアメリカの敗北ということになる。その尻拭いをさせられる世界は良い迷惑である。

(貼り付けはじめ)
トランプ氏、共和党議員と怒鳴り合い イラン対応批判に激怒

毎日新聞 6/25() 10:01配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/76cf37e1ce39102d14fcd11d9739d1c18cb11d53

 トランプ米大統領は24日、連邦議会議事堂であった与党・共和党議員の昼食会に出席した。米メディアによると、トランプ氏は前日に上院が可決した対イラン軍事行動からの米軍撤収を求める決議案について不満を表明し、出席した議員と怒鳴り合いの口論になったという。

 会合は非公開で行われた。報道によると、トランプ氏と口論したのはカシディ上院議員で、会合後の取材に当時の状況を説明した。カシディ氏は民主党主導の決議案に共和党から同調した4人のうちの一人。

 米議会専門紙ヒルによると、決議案への支持をなじるトランプ氏に対し、カシディ氏が立ち上がって「あなたは米国民に何が起きているのか話していない。(戦闘は)4週間のはずだったのに、4カ月も続いた」などと反論した。激怒したトランプ氏は「座れ」「お前は選挙に負けた」などと罵倒して言い争いになったという。

 トランプ氏はその後、記者団に「素晴らしい会合だった」と主張する一方、「好ましくない人たちもいる」と述べて不快感を示した。トランプ氏は会合前に投稿した自身のソーシャルメディアで、決議案を「無意味だ」と切り捨てる一方、賛成に回った共和党議員たちが「私の仕事をより難しくしている」と怒りをあらわにしていた。

 トランプ氏は11月の中間選挙に向けて南部ルイジアナ州で先月行われた共和党の上院選予備選で自身に忠実な新人候補を支援し、カシディ氏を落選に追い込んだ。カシディ氏は連邦議会襲撃事件をめぐるトランプ氏の弾劾裁判(2021年)で有罪を支持し、トランプ氏の不興を買っていた。【ワシントン金寿英】
=====

米上院、対イラン戦争停止の決議案を初可決 両院そろってトランプ政権を批判

BBC JAPAN

2026624

サリーン・ハベシアン

https://www.bbc.com/japanese/articles/c802gd4nxvdo

米連邦議会上院は23日、ドナルド・トランプ大統領に対し、イランでの戦争を停止するか、軍事行動を継続する前に議会の承認を求めるよう指示する決議案を可決した。上院は与党・共和党が過半数を占めている。

決議案は賛成50、反対48で可決された。共和党議員の数人が民主党議員に同調し賛成に回った。議会として超党派で、イランとの紛争と、4月に合意した停戦に対して懸念を示す格好となった。

ただ、この決議は象徴的な意味合いが強い。これで上下両院での可決となったが、トランプ氏に送られ検討されることはなく、法的拘束力ももたない。

米国民に不人気な紛争が5カ月目に入ろうとするなか、共和党議員らは、トランプ氏が先週イランと合意した和平計画に対し懐疑的な見方を示している。

決議は「戦争権限法」に基づくもの。同法が1973年に制定されて以降、大統領に軍事行動の終結を指示する両院一致決議案が、連邦議会の両院で承認されたのは初めて。

両院一致決議は、大統領の署名を経て法律となる立法行為と異なり、議会の意向や意思を表明するもの。2019年には、イエメン内戦における敵対行為から米軍を撤退させることを求めた両院一致決議案が可決されたが、当時1期目のトランプ大統領は拒否権を行使した。

中東アナリストのローラ・ブルーメンフェルド氏は、今回の決議について、「法的拘束力がないため、手かせをはめるというより、手首を軽くたたく程度」とBBCにコメント。ただ、「米国民の心情を反映したものではある」とした。

アメリカでは、ガソリン価格の高騰を受け、イランとの戦争に対する不支持が広がっている。この日の両院一致決議案の可決は、戦争を終わらせるようホワイトハウスに圧力を強める点で重要な意味をもつ。

同様の決議案は下院でも今月初旬、215208の賛成多数で可決された。共和党の4議員が民主党の全議員に加わって賛成した。

ホワイトハウス関係者は、イランとの間では47日に停戦で合意しており、米軍が撤退すべき敵対行為は存在しないとBBCに話した。また、決議案が上院で可決されたのは、共和党のミッチ・マコーネル、デイヴ・マコーミック両議員が欠席していたためだとした。

共和党から決議案に賛成したのは、ランド・ポール、リサ・マコウスキー、スーザン・コリンズ、ビル・キャシディの4上院議員。一方、民主党からはジョン・フェッターマン上院議員が唯一、反対に回った。

●共和党内の分裂が明らかに

今回の決議案の可決は、中間選挙を11月に控えるなか、トランプ氏を支える共和党で内部分裂があることを示す最新の事例となった。中間選挙では、共和党が両院で過半数を維持できるかが決まる。

共和党では最近、一部の議員がトランプ氏にあらがう動きを見せている。政権の意向に逆らって、「反武器化」基金の設立案に反対したり、ウクライナ支援を承認したりしている。

この日の決議案の採決は、アメリカとイランの戦争が始まって以降、戦争権限をめぐって民主党が上院で実施に持ち込んだ10回目のものだった。

同じ日、国防総省は議会に対し、約800億ドル(約13兆円)の予算を求めた。大部分はイランとの戦争費用に充てられる見通し。

連邦法の戦争権限法は、軍事行動を60日以上継続するには議会の承認が必要と定めている。アメリカとイスラエルは、イランへの空爆を228日に開始。ただしトランプ政権は、戦争期間のカウントは4月の停戦でいったんリセットされたと主張している。

政権はまた、国家安全保障を理由に、議会承認が必要になる期限を30日間延長もできる。

アメリカとイランは現在、停戦の継続で合意している。両国大統領が先週署名した覚書に基づき、敵対行為の終結に向けた協議を開始している。

覚書に基づき、両国の間では、イランの核開発計画の終了に関するより広範な合意のために60日間の交渉期間が設定されている。

(英語記事 Congress passes war powers measure for first time, rebuking Trump's war with Iran

(貼り付け終わり)

(終わり)
thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 第二次政権が始まってからのドナルド・トランプ大統領は政策において評価が下がり続けている。厳しい移民政策について趣旨は理解できるが、取り締まりの行き過ぎがあった。また、高関税政策も保護主義的な経済政策には理解できるところもあるが、突然の高関税は世界を混乱させた。また、中国との関税戦争、貿易戦争は、中国のレアアース規制などの反撃もあり、引っ込めざるを得なかった。トランプに対しては、「TACOTrump Always Chickens Out、トランプはいつも最後には逃げる)」という言葉ができた。

 外交政策に関して言えば、「ドンロー主義」を掲げ、西半球をアメリカの勢力圏にするという考えは理解できるが、そのためにヴェネズエラ攻撃を実施し、ニコラス・マドゥロ大統領夫妻を連行するという暴挙に出た。また、キューバに対して経済封鎖を行い、人々を苦しめている。さらにはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に唆(そそのか)されて、イラン攻撃を行うという愚挙を行った。イラン側は体制が崩壊することはなく、世界の石油や天然ガスの重要な供給ルートにあるホルムズ海峡が封鎖されることになり、世界は混乱に陥った。先日、アメリカとイランは停戦60日間の暫定合意を結んだが、その先行きは不透明だ。イスラエルは早速合意内容に従わない姿勢を見せて、アメリカ側を苛立たせている。

 トランプ大統領は史上最低の大統領という評価を受けることになるだろうが、唯一、歴代でも史上最高レヴェルにあるのは金儲けだ。金儲けに関しては歴代大統領の中でも群を抜いて上手であり、巨額の利益を自身や家族にもたらしている。歴代大統領は自身の立場もあり、利益相反を避けるために、在任中は株式取引や資産形成は実施しないが、トランプはお構いなしだ。トランプ一族は大統領職を利用して巨額の資産を形成している。ポピュリズムの波を利用して大統領になり、結局、金儲けだけでしたということになれば、トランプは史上最低の大統領ということになる。しかし、これはトランプ個人の資質の問題ではない。違法でなければ、常識なんてくそくらえ、金儲けができるなら何でもやってしまえという、資本主義の行き過ぎた価値観がトランプとトランプ一族の背景にある。
donaldtrumpwealthfrom2020to2025increasegraph001

 現在のアメリカの問題はイデオロギーの問題ではなく、経済格差・教育格差による「上と下」の問題である。上下の格差、資産を持つ者と持たざる者の間の格差、中間層が減少し、上位1%対99%の格差の問題である。この行き過ぎた強欲が生み出した格差の根本に「金儲けになるなら何をしても良い」、市場至上主義がある。トランプはポピュリズムを利用し、大統領の地位に就いて、アメリカの一般国民のための政策ではなく、自身の私腹を肥やす帆を選ぶという極めて典型的な政治家、そして、強欲資本主義で生きていた人間の姿を見せている。もうアメリカには手の施しようがないというのが現状であり、トランプは金儲けをするくらいしかできることがないということなのだろう。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの極めて無謀な2期目(Donald Trump’s Incredibly Reckless Second Term

-制約を剥ぎ取られ、利益追求へと転じた大統領だ。

ファリード・ザカリア筆

2026年5月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/22/trump-family-corruption-immunity-loyalty-second-term-united-states/

ドナルド・トランプ大統領の2期目について見てみると、グリーンランドとカナダの併合を強引に推し進めようとしたこと、世界のほとんどの国に対する大規模な関税引き上げ、違法かつ効果のない残酷な移民取り締まり、そして国連の承認も議会の協議も明確な戦略もないまま突然戦争を始めたことなどが思い浮かぶ。従って、[ワシントン・ポスト』紙のオーナーであり、明らかに聡明で有能な実業家であるジェフ・ベゾスが今週、「彼(トランプ)は1期目よりも成熟し、規律正しくなったと思う(I think he is a more mature, more disciplined version of himself than he was in his first term)」と述べたのを聞いて驚いた。

トランプの1期目がより規律正しかったのは、彼自身が規律正しかったからではなく、制約があったからだ。彼は、たとえ不本意ながらも、共和党主流派や国家安全保障のエリートたちにしばしば従順だった。彼の初期の立法課題は、ポール・D・ライアン連邦下院議長によって形成され、ラインス・プリーバス大統領首席補佐官によって実行された。首席経済顧問のゲイリー・コーンは、トランプが長年望んでいた世界的な関税引き上げを繰り返し思いとどまらせた。周囲の将軍たちは、イランへの慎重な対応、NATOへの支持、ウクライナへの武器供与を促した。

しかし、トランプが最初の任期から得た教訓は、専門知識が重要だということではなかった。専門家たちの忠誠心が足りないということだった。2021年1月6日のテロ攻撃後、多くの側近がトランプから距離を置き、中には彼を非難する者もいた。そのため、今回は忠誠心こそが最大の資格である人物たちで周囲を固めた。経歴が華々しくないほど良い。なぜなら、そうした人々はトランプに全てを負っているからだ。プロセスは衝動に、手続きは本能に、政府は本能に取って代わられた(Process has given way to impulse, procedure to instinct, government to gut)。

しかし、トランプ1.0とトランプ2.0の最も顕著な違いは政策ではない。それは富の蓄積、その規模、厚顔無恥さ、そして抑制に対する露骨な軽蔑(It is enrichment—its scale, its brazenness, its open contempt for restraint)である。今週初め、司法長官代行は、司法省がトランプ、その家族、そして彼の企業に対し、過去の税金関連の不正行為に関するあらゆる監査や調査から免責を与えることを発表し、その免責は「永久に(forever)」続くと主張した。

その前の週、トランプは自身の株式ポートフォリオが第1四半期だけで約3700件の取引を行ったことを明らかにした。その多くは、不審なほど都合の良いパターンに従っていた。つまり、政府の措置や声明が発表される直前に、自身に有利な銘柄を購入していた。例えば、今年1月6日、トランプのポートフォリオはエヌヴィディア(Nvidia)株を50万ドル分購入した。その1週間後、エヌヴィディア(Nvidia)はアメリカ政府からH200チップの中国への販売許可を得た。

それだけではない。今週、商務省はトランプ一族が利害関係を持つ量子コンピューティング企業への投資を発表した。さらに、トランプ一族の暗号通貨ヴェンチャーへのUAEからの5億ドルの投資、この企業のステイプルコイン(stablecoin)を使ったUAEからの20億ドルの投資、トランプ・オーガナイゼーションによる相次ぐ不動産取引、そしてトランプ一族が出資し後に国防総省との契約を獲得したドローン企業なども忘れてはならない。1つの数字が全てを物語っている。ロイター通信の計算によると、2024年上半期から2025年上半期にかけて、トランプ・オーガナイゼーションの収入は5100万ドルから8億6400万ドルに増加した。これは規律(discipline)の存在を示唆している。大統領職を金儲けに利用することに専念した、容赦ない規律だ。

トランプ・オーガナイゼーションは、トランプ本人、家族、そして組織は、特定の投資の指示や影響力を行使する役割を一切担っていないと主張している。

より根本的な問題は、なぜこれが可能なのか、そしてなぜこれほど抵抗が少ないのかということだ。汚職研究者は長らく、先進民主政治体制国家では汚職は巧妙かつ組織的なものになると想定してきた。選挙献金(campaign donations)、ロビー活動ネットワーク(lobbying networks)、コンサルティング契約(consulting contracts)などがその例だ。トランプは、先進工業国家の精緻な仕組みを、はるかに粗雑な、昔ながらの個人的な不正行為を加速させるために利用した。

一般大衆は不安を感じているかもしれない。しかし、トランプの支持基盤であるMAGA支持者たちはそうではないようだ。そして、彼らこそがトランプを抑制できる唯一の支持層だ。極度に二極化した国(a hyperpolarized country)では、汚職はもはや客観的な道徳的欠陥として判断されない。それは部族によって選別される。もし私たちの側が汚職をすれば、それはフェイクニューズ(fake news)か、巧妙な政治(clever politics)か、あるいは正当化された報復(justified revenge)のいずれかだと見なされる。

これはアメリカの制度におけるより根深い弱点を露呈している。建国の父たち(the Founding Fathers)は壮大な憲法上の枠組みを築き上げたが、それは彼らが明文化しなかった前提に基づいていた。それは、公職者が成文化されていない市民規範に対する共通の関与を維持するという前提である。ジェイムズ・マディソンの「野心は野心によって相殺されなければならない(ambition must be made to counteract ambition)」という理念は、連邦議会が行政権力に対してその権限を厳重に守ることを前提としていた。マディソンは、政党が組織としての野心を1人の人物の個人崇拝(the personality cult)に明け渡すような事態は想定していなかった。

法的な安全策は、多くのアメリカ人が認識しているよりも脆弱である。大統領は、標準的な連邦利益相反法からほぼ免除されている。上述の行為の多くは、たとえ最高位の閣僚であっても重大な法的リスクに晒すことになる。大統領の場合、最高裁判所は「公務上の行為(official acts)」に対する唯一の救済策は弾劾であり、連邦上院の3分の2の賛成票が必要であると判決を下している。しかし、党派対立が激しい現代において、これはまさに奇跡的な事態と言えるだろう。

こうした不当な行為に対する成熟した対応は、復讐(revenge)ではなく、法の支配の回復(a restoration of the rule of law)である。トランプ政権終了後、アメリカ共和国にとって喫緊の課題は、規範を成文化し、大統領の倫理的免責特権を制限し、世界最高位の公職が二度と家族経営(family business)の場とならないよう、法的手段を見出すことである。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者。近著『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント: @FareedZakaria

=====

トランプ氏が米株売買3700回 NVIDIAやボーイング、利益誘導の疑念

日本経済新聞 2026527 5:26

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2206L0S6A520C2000000/

【ニューヨーク=川上梓、ヒューストン=赤木俊介】トランプ米大統領が米国企業の株式を活発に売買している。202613月期の取引は前年同期比10倍の3700件以上で総額数億ドルにのぼった。政権と近い企業の取引も多く、利益誘導の疑念を招いている。

イラン攻撃後の3月から急増

26日までに米政府倫理局(OGE)が公開した証券取引情報で判明した。トランプ氏は現在、複数の口座で売買しており、2613月期に有価証券や地方債を約3700回以上売買した。このうち株を取得した企業(株価指数連動型上場投資信託=ETFやファンドを除く)の数は約890社だった。

前年同期の売買は374回で1年間で10倍に増えている。前年同期はほぼ全てが地方債で、今年に入り、民間企業の売買を増やしたことが判明した。

donaldtrumpwealth001

取引はイラン攻撃後の3月に急増し、1カ月の売買は2172回と1月と比べて3倍に増えた。

報告書は1000ドル以上の証券取引が対象で、米国債や不動産などの売買は含まない。同期間の取引総額は合計2億ドル〜7億ドル程度(約318億〜1110億円)に及ぶ。取引額別で売買が多いのは、15000ドル〜5万ドルの範囲で全体の7割を占めた。

巨大テック売却 半導体・SaaSは買い?

同期間の売買を業種別に分析すると13月期で巨大テックを売り越し、半導体やソフトウエア株を買い越している傾向がわかる。

donaldtrumpwealth002

この期間には米半導体大手エヌビディアやクアルコム、ソフトのアドビ、オラクルのほか、イーベイなど電子商取引(EC)、ボーイングまで幅広く購入した。

人工知能(AI)投資でメモリー需要が高まる半導体やAIによる代替懸念で安値圏で推移する「SaaS(サース)」株を買い増す傾向が見て取れる。

一方、アルファベット、メタなど巨大テック「マグニフィセント7M7)」は売り越した。日本企業ではくら寿司の米国会社「くら寿司USA」の株式も取得した。

政府と近い企業の売買、専門家「監督が必要」

トランプ氏は米政府と取引の深い企業やトランプ氏に献金を行う企業の株式も多く取得している。政権が中国へのチップ販売を承認したエヌビディア、イラン戦争で国防総省と取引のある軍事テックのパランティア・テクノロジーズや、ロッキード・マーチンなどだ。

トランプ氏と一族は暗号資産(仮想通貨)、軍事ドローンや重要鉱物、原子力など政権が支援する産業への関与や投資を進める。

米国では大統領による証券売買は合法となっているが、政府と取引の深い企業の株で購入し利益を得るのは利益誘導との懸念がぬぐえない。

donaldtrumpwealth003

タトル・キャピタル・マネジメントのマシュー・タトル氏は「政治家が幅広く取引に関与することの問題点と、監督が必要になっていることを浮き彫りにした」と指摘する。

トランプ氏の一族企業の広報担当者は問い合わせに返答しなかった。ブルームバーグ通信は同企業の広報担当の話として同氏や家族、企業は取引に一切関与しておらず、トランプ氏自身が取引について事前に通知されることもないとのコメントを報じた。

一方、提出資料にはエヌビディアやアップルなど個別銘柄の一部取引が資産アドバイザーや取引仲介会社ではなく、口座を保有する顧客本人によって売買が指示されたという記載がある。トランプ氏または側近や親族が関与していないとは言い切れない。

タトル氏は「取引件数とトランプ大統領の多忙な日程を考えると、投資アドバイザーが運営する口座である可能性が高い」と述べる。投資判断をAIなどが行い、自動的に取引を行っているとの声もある。

個別の株取引にトランプ氏がどこまで直接関与しているかはわからないが、資料にある証券取引の受益者はトランプ氏本人だ。資料には58日付の署名も確認できる。
donaldtrumpwealth004

米政府倫理局の証券取引情報は12年から開示が義務づけられた。

歴代の大統領がどれだけ取引実績があったかは明確になっていないが、米メディアによればオバマ元大統領やバイデン前大統領は任期中に有価証券の売買を行っていなかった。米ニュースサイト「アクシオス」はトランプ氏を「大統領史上最も活発な株式トレーダー」と称した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 「ストロングマン(Strongman)」と呼ばれるタイプの政治指導者が世界各国で生まれている。これは「強権的指導者」と訳すことができる。こうした指導者たちは、権力やカリスマ性、時には暴力を行使して、統治を行う。ストロングマンの中には、決断力や指導力に長けており、生活に不安や不満を持つ人々の支持を集めることができる。既存の政治に対する異議申し立て、ポピュリズムがストロングマンを生み出すことがある。アメリカのドナルド・トランプ大統領はその代表例ということになる。下記論考の著者スティーヴン・M・ウォルトは以下の通りに書いている。

「強権政治の魅力は、過去数十年にわたって主流派民主政体指導者たちが犯してきた様々な過ちに対する、ある意味当然の反応だった。アメリカは幾度となく愚かな戦争を戦い、敗北し、金融危機に見舞われたが、責任のある当事者を誰も追及せず、権力を新世代に譲ろうとしない高齢政治家たちに支配され続けた」。

 現在、世界各地でストロングマン指導者たちが出現している。ストロングマン指導者の出現には2種類のタイプがあると考えられる。発展途上諸国で見れば、経済運営や社会運営にかけた有能な政治指導者たちが出現している傾向がある。人々の支持を背景にして、強権的な手腕で、効率的な経済政策を実施し、経済発展に導き、人々の生活を向上させ、改善することでさらに支持を得るという形になっている。西側先進諸国で見れば、人々の不平不満、不安をうまく煽り、救い上げ、自身の救世主のように見せることに長けた人物たちが祭り上げられる。残念なことだが、西我が先進諸国全体で衰退の流れは大きく、逆転させる方策はない。しかし、ストロングマン指導者(に見える人々)は自身が問題を解決し、人々の生活が改善しているということを宣伝し、熱狂的な支持者たちが支持をするという形になっている。日本の高市早苗首相は完全に先進国タイプのストロングマン指導者、力を持っている、有能だと見せかけることに長けている政治家である。

 こうしたストロングマン指導者の出現には批判も大きい。それは、独裁的な政治手法が取られ、反対派に対する攻撃や弾圧が起きることがあるからだ。しかし、多くの場合、こうした政治指導者たちは人々の絶大な支持受けて誕生する。そして、既存の政治が解決できなかった諸問題を解決し、人々の不平不満に対処することで支持を拡大することになる。しかし、政治をはじめとする人間社会は振り子のように揺れ動く。ストロングマン指導者の下でもやはり様々な問題が発生する。そうした問題のために人々は不平不満を持ち、指導者たちを支持しなくなり、引きずり下ろす。こうして歴史は動いていく。「生者必滅会者定離」こそは人類の共通の真理となるだろう。

(貼り付けはじめ)

強権的指導者の時代はピークに達しつつある(The Strongman Era Has Peaked

-世界規模での権威主義的統治の時代はぜ終焉を迎えつつあるのか。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年4月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/21/strongman-era-trump-orban-putin-xi-peaked/

つい最近まで、独裁的な指導者、いわゆる「ストロングマン(strongman)」支配者たちが隆盛を極めていた。ウラジーミル・プーティン、ヴィクトル・オルバン、レジェップ・タイイップ・エルドアン、習近平、ムハンマド・ビン・サルマン、ジャイル・ボルソナーロといった指導者たちは、その存在感と権力を増し、ドナルド・トランプ米大統領のような野心的な独裁者志望者たちの羨望の的となっていた。世界中で民主政治体制と自由は後退しつつあった。アメリカでさえ、憲法に明記された権力分立の原則は時代遅れに見え、いわゆる保守派は「一体的な行政部(unitary executive)」の美徳を声高に主張していた。批評家や学者たちは、『ストロングマンの時代(The Age of the Strongman)』や『ストロングマン:ムッソリーニから現代まで(Strongmen: Mussolini to the Present)』といった書籍を執筆し、民主政治体制の死因を解説し、「黒幕たちの協奏曲(concert of kingpins)」の可能性について考察していた。

強権政治の魅力は、過去数十年にわたって主流派民主政体指導者たちが犯してきた様々な過ちに対する、ある意味当然の反応だった。アメリカは幾度となく愚かな戦争を戦い、敗北し、金融危機に見舞われたが、責任のある当事者を誰も追及せず、権力を新世代に譲ろうとしない高齢政治家たちに支配され続けた。イギリスは、コメディアンや風刺作家の格好のネタを提供すること以外に何の功績もない無能な首相が次々と交代する混乱に苦しんだ。フランスはニコラ・サルコジ大統領の時代を耐え忍び、イタリアはシルヴィオ・ベルルスコーニ首相のオペラ・ブッフのような時代を生き延びなければならず、ドイツのアンゲラ・メルケル首相のような有能な指導者でさえ、最終的にはつまずいた。経済停滞、難民や移民の増加、テロへの過剰な懸念、その他の不安が渦巻く時代において、不確かな未来から一般市民を守ると約束する「強力な指導者(strong leader)」に頼る誘惑は、多くの人々にとって抗いがたいものだった。

しかし、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相の衝撃的な選挙敗北は、「独裁的な強権指導者の需要はピークに達したのか?」という疑問を投げかける。ハンガリーは人口がニューヨーク市よりわずかに多い程度の小国であり、どの国にも独自の政治力学があるため、この出来事を孤立した事例と捉えることもできるだろう。しかし、オルバンの敗北は、彼の統治の結果に対する深い不満から生じたものであり、今日の強権指導者たち(そう、彼らは皆男性である)も、ほぼ同じ理由で、より困難な未来に直面していると考える理由がある。彼らのほとんどは統治能力に乏しく、その理由は、一人の強力な指導者に国家政策を委ねることの限界を浮き彫りにしている。

オルバンから見ていこう。彼は明らかに非常に有能な政治家で、ハンガリーの諸制度を巧みに操り、権力を維持しながら、自分自身と側近の私腹を肥やすことに長けていた。しかし、オルバンが得意としていなかった、あるいはあまり関心がなかったのは、一般のハンガリー国民の生活向上だった。そして、この失敗が最終的に彼に跳ね返ってきた。低迷する経済実績、隠しきれないほどの汚職、そして国民の感覚からかけ離れたおべっか使いの側近たちへの依存の高まりが、彼の失脚への道を開いた。もし彼が(自己利益追求ではなく)より優れた統治を行っていたら、おそらく今も首相の座に留まっていた。

それでは、ロシアのプーティン大統領について考えてみよう。オルバンと同様、プーティンは権力を維持し、莫大な富を蓄積し、潜在的な挑戦者を排除することに非常に長けていることが証明されている。それは、故アレクセイ・ナワリヌイのような改革派政治家であろうと、プーティンと対立し、不審な飛行機事故で亡くなる前にワグネル・グループを率いていたエフゲニー・プリゴジンのような反抗的な内部関係者であろうと関係ない。そして数年前まで、プーティンは弱い外交政策をうまく乗り切ってきた。西側の多くの観察者とは異なり、私は彼がNATOの拡大やその他の西側政策を深刻かつ増大する脅威と見なす正当な理由を持っていたと考えている。しかし、この状況に対する彼の対応、特に2022年2月のウクライナ侵攻という運命的な決定は、ロシア国民が今後何十年にもわたって後悔することになるだろう失策だった。ロシアにとっての代償は莫大であり、より豊かでよりダイナミックなパートナーである中国への依存度は急速に高まり、将来の権力の基盤となる科学技術分野で世界の他の国々にますます遅れるようになっている。スウェーデンとフィンランドはNATOに加盟し、ヨーロッパは再軍備(rearmament)を進めている。ウクライナに対する決定的な勝利(これは既定路線ではない)があったとしても、ロシアの列強における地位低下を覆すことはできないだろう。プーティン大統領はおそらく生涯権力を維持するだろうが、ロシアは別の指導者の下で築かれたであろう繁栄と安全保障よりも劣るだろうし、彼の残忍な統治スタイルは多くの模倣者を引きつける可能性は低い。

トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はどうだろうか? 他の強権的な指導者たちと同様に、彼は度重なる失策にもかかわらず、権力の強化と維持において卓越した手腕と冷酷さを兼ね備えている。また、トルコの地政学的な立場を巧みに利用し、トルコとの協力を望む他国から利益や譲歩を引き出すことにも長けている。とはいえ、20年以上にわたる彼の政権を成功物語と捉えるのは難しいだろう。トルコの経済実績は、汚職とエルドアン大統領の軽率な介入が主な原因で期待外れに終わり、かつて「近隣諸国との問題ゼロ(zero problems with neighbors)」を目指した外交政策は、多くの国との対立を招く結果となった。こうした実績を踏まえれば、エルドアン大統領が権力維持のためにますます強硬な手段に訴えざるを得ないのも当然と言えるだろう。

そして、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子も忘れてはならない。国内における彼の権威は揺るぎないように見えるが、サウジアラビアの事実上の指導者としての年月は、彼にとって謙虚さを強いるものとなっている。はっきり言って、王国の経済を近代化し、石油と天然ガスへの依存を減らし、宗教警察の権力を打破し、スポーツウォッシングやその他の注目度の高いイヴェントを通じて国の国際的なイメージを高めようとする試みは、理にかなっていた。しかし、この壮大なビジョンの実現は、不手際が多く、衝動的だった。イエメンへの高額な軍事介入や、レバノンの内政を支配しようとする誤った試みなど、彼の初期の外交政策は大きく裏目に出て、反体制派ジャーナリストだったジャマル・カショギの残忍な暗殺は事態をさらに悪化させた。ムハンマド・ビン・サルマンの「ビジョン2030」プロジェクトの壮大な野望何もないところから巨大な未来都市を建設することなどは、現実的かつ経済的な現実によって頓挫し、これらの取り組みに資金を提供していた政府系ファンドは最近、計画の大幅な縮小を発表した。これはまさに、指導者の判断に誰も疑問を呈したり、彼らの考えに現実味を持たせたりできない体制において予想されるような大失敗である。

次に、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相について考えてみよう。彼は公正な選挙で民主的に選出され、国内の制約(例えば、分裂しがちな連立政権の運営)に直面しているため、真の独裁者とは言える。それでも、彼は逃げ道分野の素晴らしい芸術家(a brilliant escape artist)であり、幾度となく権力の座にしがみついてきた。その一因は、アメリカが彼の行動の結果からイスラエルを守ろうとする姿勢にある。しかし、彼の長期政権の結果、イスラエルはかつてないほど深く分裂し、国際社会ではますます孤立し、アメリカ国内での支持率は急落し、度重なる残忍な爆撃作戦にもかかわらず、様々な敵対勢力を排除できていない。自国を戦争状態に維持することによってのみ権力を維持できるとしたら、それは決して指導者としての資質を示すものではない。

あるいは、中国の習近平国家主席を取り上げよう。習近平は、中国共産党が独裁体制を阻むために様々な障害を設けようとしたにもかかわらず、権力の集中化に非常に長けており、グリーンテクノロジーの急速な発展など、大きな成果を上げ、将来さらに価値を高めることになる賢明な賭けもいくつか行ってきた。また、無益な戦争に何兆ドルもの資金を浪費したり、長年のパートナー国に対して略奪的な覇権主義的な振る舞いをしたりといった、アメリカの指導者たちの過ちからも恩恵を受けてきた。しかし、習近平は中国経済の均衡を取り戻し、深刻な人口問題に対処し、台湾を支配下に置き、慢性的な若年失業の問題を​​解決できていない。そして、軍の最高司令官を含む高官の粛清が際限なく続いているように見えることは、強さの表れであると同時に弱さの表れでもあるかもしれない。彼は他の強権的な指導者たちよりはより良い成果を上げているが、独裁的指導力の優位性を証明するほどではない。

ここからトランプの話に移る。彼は本物の独裁者ではないが、そうなりたいと思っていることは疑う余地がないほどだ。考えてみて欲しい。彼は「自分だけが重要だ(only one that matters)」と考えている大統領であり、ワシントンのあらゆる建物に自分の名前を掲げたがり、側近や閣僚、外国の指導者から恥ずべき忠誠心を示すことを期待し、そして、読者の皆さんも想像できる通り、自分自身を称える巨大な凱旋門(a giant triumphal arch)を建てたがっている。民主政体の中で暮らすことを好む私たちにとって朗報なのは、トランプの2期目の業績が惨憺たるもので、世論調査の結果がそれを示していることだ。彼の経済政策は製造業を助けるどころか害を与え、インフレを煽り、連邦財政赤字を増大させた。彼の外交政策は、何の益にもならずにアメリカの伝統的な同盟諸国を疎外し、2カ月前のイラン攻撃の決定は戦略的に大失敗だった。MAGAMake America Great Again)の基盤に亀裂が生じ始めている。トランプがオルバン首相を支持したこと(副大統領のJD・ヴァンスをオルバンの応援演説に送り込んだことを含む)は、ピーター・マジャールがオルバンに勝利する一因となった可能性が高い。また、イギリスのナイジェル・ファラージやイタリアのジョルジア・メローニ首相など、トランプの他の海外の友人たちも距離を置き始めている。トランプ一人で、何千もの法律論文よりもはるかに多くの、単一行政権の危険性を浮き彫りにしたと言えるだろう。

一方で、一部の民主政治体制と指導者たちは、希望の兆しを見せている。カナダのマーク・カーニー首相は議会で圧倒的多数を獲得し、トランプ主義に代わる、明らかに理性的で、今のところ成功を収めている選択肢として地位を確立した。ニューヨーク市長ゾーラン・マムダニは、強い信念、ユーモアのセンス、ソーシャルメディアの巧みな活用、そして相手側との対話を惜しまない姿勢が、選挙で報われることを証明した。韓国とブラジルはクーデター未遂を乗り越え、責任者を迅速に追及した。これは、トランプが2020年の大統領選挙結果を覆そうとした後、アメリカができなかったことである。そしてハンガリーの有権者はオルバンの縁故主義(cronyism)と脅迫戦術(scare tactics)を断固として拒否し、次期首相に指名されたマジャールは、オルバンが築き上げた非自由主義的な政治機構を解体する計画を立てている。

この傾向を過大評価したり、楽観的すぎる見方をしたりなどしたくない。多くの国は今後も独裁的な指導者によって率いられ続けるだろうし、上で述べた強権的な指導者の中には、自ら辞任したり、他者によって排除されたりするよりも、終身権力を握る可能性の方が高い者もいるだろう。トランプやエルドアン(あるいはインドのナレンドラ・モディ)のような非自由主義的な「民主政体支持者(democrats)」が世界の舞台から消え去ることはないだろう。そして、世界有数の民主政体国家、特にアメリカ合衆国は、分極化(polarization)、膠着状態(gridlock)、過度の不平等(excess inequality)、民主的規範の衰退(the erosion of democratic norms)といった根深い問題に直面している。しかし、数年前に強権的な指導者たちが享受していた威勢の良さは薄れつつあり、彼らの政策の失敗は、一人の人間の判断に頼ることの限界を示している。彼らの失敗がより明らかになるにつれ、ウィンストン・チャーチルの有名な皮肉の言葉である「民主政体は最悪の政治形態である。過去の他の全ての政治形態を除いては(democracy is the worst form of government, except for all the others)」という言葉が改めて思い起こされる。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカとイスラエルが始めたイラン戦争によって、世界中が大迷惑をこうむっている。イランがホルムズ海峡封鎖を実施し、石油の流通が滞ることで、物資不足や物価上昇が世界各国で起きている。日本も例外ではない。高市早苗首相と日本政府は「大丈夫だ、大丈夫だ」と往年の志村けんのギャグのような発言を繰り返しているが、物資不足や物価上昇は日本国内でお発生している。石油価格は今のところ政府による補助金政策で急上昇してはいないが、輸入できる量が限定され、価格も高い中で(円安が進行している)、いつも通りの消費を続けるというのは常識的な対応ではない。

 アメリカ国内でもディーゼル燃料と肥料の価格上昇と物資不足によって、物流や建設、農業生産に影響が出ている。アメリカ国民の生活を直撃する。インフレも進行する。こうした状況が続けば、2026年11月の中間選挙で共和党は敗北を喫する。共和党優勢州(レッドステイト)はアメリカの農業が盛んな州に多い。農家は共和党の大票田であるが、その農家たちが共和党にそっぽを向けば選挙結果が厳しいものとなるのは当然だ。「強いアメリカ」を求めるということで、トランプと共和党を支持する人たちもいるだろうが、何より、今回のイラン戦争で、トランプが証明してしまったのは「アメリカ軍はイランを崩壊させることができなかった」ということだ。そして、「ペルシア湾岸諸国を中心にアメリカ軍基地が設置されていたのに、屁のツッパリにもならなかった」ということだ。アメリカ軍がいれば安全安心という神話は崩れてしまった。

 現在の世界の大きな関心は「イラン戦争がいつ終わるのか」「ホルムズ海峡はいつ以前のような状況に戻るのか」ということである。戦争が始まって3カ月が経過して、和平の見通しは明るくない。イラン側がホルムズ海峡を握っている限り、アメリカ側は自分たちの意向を通すことは難しい。譲歩をし続ける必要がある。それならば、アメリカは最強のアメリカ軍を使って、イランに大規模攻撃を仕掛けて、イランを徹底的に叩く、イランの現政権を打倒することが必要になるが、そのようなことは不可能である。「万能な(almighty)」はずのアメリカ軍にできないことがあると見せつけることはそれだけで敗北である。

 イラン戦争はドナルド・トランプ大統領とアメリカ政府にとって大失策であった。トランプとトランプを操ったイスラエル、そしてベンヤミン・ネタニヤフ首相の罪は万死に値する。イスラエルの身勝手な、自己中心的な野心のために世界は混乱に陥り、人々の生活が破壊されている。現状を改善するためには、ネタニヤフ首相の退陣、ひいてはトランプの引責辞任ということも視野に入ってくるだろう。

(貼り付けはじめ)

イラン戦争が世界経済の「主要原動力」を圧迫している(Iran War Chokes ‘Major Driver’ of Global Economy

-ホルムズ海峡危機は原油以上にディーゼル燃料に大きな打撃を与えている。

クリスティーナ・ルー、キース・ジョンソン筆

2026年5月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/11/us-iran-war-diesel-fuel-energy-economy/?tpcc=recirc_featured_horizontal051524

ドナルド・トランプ米大統領によるイラン戦争が経済の多くの分野に混乱をもたらしているが、エネルギー市場もその1つだ。その中でも特に大きな打撃を受けているのがディーゼル燃料である。

過去2カ月間でディーゼル燃料の価格は急騰し、アメリカのディーゼル価格は昨年比で60%も上昇した。これは、イランに対するアメリカの戦争によって油田、製油所、そしてエネルギーの流れが麻痺したためだ。

大型機械や重機を操作した経験がない場合、ディーゼル燃料に馴染みがないかもしれない。しかし、この燃料は世界経済の原動力であり、現在その供給量は以前よりも減少している。これは、トラクターの故障、大型トラックの停止、そしてこの燃料に依存して成り立っている世界にとって大きな痛手となる。結局のところ、私たちが購入するもの、食べるもの全てがディーゼル燃料で動いているのだ。

ロンドンに拠点を置くエネルギーコンサルタント会社エナジー・アスペクツ社の需要部門責任者であるコーエン・ウェッセルズはディーゼル燃料について「経済の主要原動力(major driver of the economy)」だと述べている。

トランプ政権と共和党にとって、原油価格の高騰は、2026年11月の重要な中間選挙を控えた時期にリスクとなり得る。それは、全米の有権者は、現在進行中の戦争による深刻な経済的影響に苦しんでいるからだ。トランプ大統領は紛争が「すぐに終わる(quickly)」と楽観的な見方を示しているものの、イランが封鎖している重要な海上交通路であるホルムズ海峡をめぐる不確実性が続いているため、海運業者や保険会社は安易に楽観視していない。

ペルシア湾岸における戦争は、1日あたり1500万バレルの原油と500万バレルの石油製品が封鎖されただけでなく、中東産の原油は中重質で硫黄分が多く、ディーゼル燃料やジェット燃料などの製造に理想的な原料であるため、特に深刻な問題となっている。

低硫黄で軽質なアメリカ産原油はガソリンの生産量が多いため、世界最大の産油国であるにもかかわらず、アメリカは依然としてメキシコ湾岸の製油所群のために重質原油を輸入している。この依存度は、特にアジア地域において顕著であり、アジアはペルシア湾岸地域産原油の最大の顧客である。

アメリカ・イラン和平合意への期待から、世界の原油価格は最近再び下落したが、世界中の製油所を悩ませているボトルネックの解消にはほとんど繋がらず、経済のほぼあらゆる分野でコストが少なくとも今後数カ月間は高止まりするだろう。これは農家、トラック運転手、海運会社、そして彼らが生産・輸送する物資を購入する人々にとって悪いニューズだ。

コンサルティング会社クリアビュー・エナジー・パートナーズ社のマネージングディレクターであるケヴィン・ブックは「貨物や商品の輸送にディーゼル燃料を依存している私たち全員にとって、これは経済全体に波及する」と述べている。

アメリカにおいては、おそらく最も大きな打撃を最も受けているのはトラック運転手だろう。彼らはこれまで国内の貨物輸送の約4分の3を担い、ディーゼル燃料の最大の購入者でもある。ラピダン・エナジー・グループ社の精製製品担当ディレクターであるリンダ・ギーゼッケによると、国内で消費されるディーゼル燃料の約3分の2はトラックによるものだという。

ディーゼル燃料価格の高騰は、すでに業界に大きな負担をかけている。アメリカ最大手のトラック運送会社であるUPSとフェデックス(正確には、顧客であるトラック運転手)は、ディーゼル燃料価格の高騰によって大きな打撃を受けている。しかし、アメリカのトラック運転手の約半数は個人事業主だとブックは指摘する。「これは彼らの経費を圧迫し、利益を大幅に減少させ、貨物輸送の請負事業で収益を上げることを困難にしている」とブックは述べた。

そして、こうした圧力はトラック輸送業界だけにとどまらないだろう。ディーゼル燃料価格の高騰は、最終的には配送料の値上げや商品価格の上昇という形で消費者に転嫁されると専門家は指摘する。

ギーゼッケは「輸送コストが単純に高くなったため、私たちが購入する全ての商品に価格が転嫁される」と述べている。

ディーゼル燃料価格の高騰による影響を受けるのは貨物輸送だけではない。農業もまた、より深刻な混乱に見舞われるだろう。戦争はすでに世界中の農家に大きな打撃を与えている。紛争とホルムズ海峡の事実上の封鎖によって、世界の農業を支えるエネルギーと貿易の流れが阻害されているのだ。

特に肥料価格は戦争の影響で急騰している。全米最大の総合農業団体である全米農業連盟(American Farm Bureau Federation)が4月に実施した調査によると、多くのアメリカの農家がもはや肥料を購入できない状況にあることが明らかになった。5700人以上の農家を対象としたこの調査で、回答者の70%が、肥料価格の高騰によって必要な資材を全て購入できないと答えている。エネルギー価格の高騰は、こうした課題をさらに深刻化させ、農業機械や農機具の動力源としてディーゼル燃料に頼っている農家を一層苦しめることになるだろう。

 

 

 

エネルギー価格の高騰は、こうした課題をさらに深刻化させ、農業機械や農機具の動力源としてディーゼル燃料に頼る農家を一層苦しめることになるだろう。

元米農務省チーフエコノミストで現在は国際食糧政策研究所に所属するジョセフ・グラウバーは次のように述べている。「農家の利益率はここ数年で大幅に低下しており、今回の価格高騰はそれにさらなる圧力をかけることになる。農産物価格がほとんど改善していない中で、これは農家が負担しなければならない新たなコストとなる」。

世界中でディーゼル価格が高騰する中、地域社会は怒りを表明するために抗議活動を行っている。アイルランドでは、抗議者たちがトラクターやトラックで街頭に繰り出し、ディーゼル価格の高騰に対する不満を表明した。ノルウェーでも同様のデモが見られた。

国民の不安を受け、各国政府は対応に乗り出した。ヴェトナム政府は一部の産業に対し燃料節約を要請し、中国は消費者を保護するため、例年のような国内燃料価格の値上げを抑制した。世界的な価格上昇にもかかわらず、インドもディーゼルとガソリンの小売価格を据え置いているが、今後は状況が変わる可能性も懸念されている。

サプライチェインの混乱は長期化する見込みだ。先週、アントニオ・グテーレス国連事務総長はXへの投稿で、ホルムズ海峡の航行制限が直ちに解除されたとしても、「サプライチェインの回復には数カ月を要し、経済生産の低迷と物価高が長期化するだろう」と警告した。

「私たちは世界的な景気後退(global recession)という脅威に直面している。それは人々の生活、経済、そして政治的・社会的安定に深刻な影響を与えるだろう」とグテーレス事務総長は述べた。

※クリスティーナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@christinalu.bsky.socialXアカウント:@christinafei

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌地経学(geoeconomics)・エネルギー担当スタッフライター。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

(貼り付け終わり)

(終わり)

thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカとイランの和平交渉で重要な条件となっているのが、ホルムズ海峡の自由航行の保証である。イラン側はホルムズ海峡の管理を主張し、通行するタンカーから「通行料」を徴収するという考えを示している。これは、アメリカとイスラエルによる攻撃でイラン国内には大きな被害が出ており、その補償や修復のために使われるとされている。アメリカとイスラエルはイランに対する賠償金支払いを拒絶しているために、イラン側としてはこのような対応するしかないということになる。アメリカとイスラエルの大規模攻撃によって死傷した民間人に対する補償、民間や社会資本(インフラ)の修繕費や再建にかかる費用をきちんと支払うことが最優先されるべきだと私は考える。しかし、そんなことをすれば、トランプ政権もネタニヤフ政権も国内での支持基盤を失い、倒れてしまうことになるだろう。それなら倒れてしまえというのが私の主張だ。トランプにはJD・ヴァンス副大統領が控えている。イスラエルは極右勢力が退場しない限り、国家としての明るい未来はない。

 ホルムズ海峡の通行料に関して、アメリカ側から、アメリカとイランで「共同管理」して、「通行料」を徴収するという案が4月上旬に出た。トランプらしい考えと提案だ。自分で攻撃をして、ホルムズ海峡封鎖という非常事態を引き起こしながら、その事態を利用して、「金儲け」をしようというのがしたたかである。さすがにこのような「みっともない」ことはできないとこの案は立ち消えとなり、トランプ大統領はそんなことは考えていないと強く否定した。しかし、そのような発言があったという事実は消えない。

アメリカは石油の純輸出国となっているので、国内の生産量で基本的には国内の需要を賄える。国際的な関係や設備の種類のこともあり、カナダや中南米諸国から石油を輸入している分もあるが、基本的には輸入量は少ない。しかし、イラン戦争開始によって、国内のガソリン価格は高騰し、戦争前は1ガロン(約3.785リットル)が平均で3ドルだったものが、戦争は4ドルを突破し、4.5ドルとなっている。アメリカでは生活費の高騰も進んでいるが(高いインフレ率となっている)、石油・ガソリン価格は押し上げ効果を持つ。トランプ大統領としては「掘れ、ひたすら掘れ」で、石油の生産量を増加させたいだろうが、そう簡単にはいかない。

 アメリカはドルを世界の基軸通貨とし、アメリカ軍を世界各地に駐屯させて、アメリカの世界覇権国の地位を確立し、維持してきた。世界各国はそれらを利用することができた。アメリカは直接的な代価を受け取ることはなかった。日本は、在日アメリカ軍に「お番犬さま」の「餌料」をお支払いしている。日本が在日アメリカ軍に支払う費用(正式名称は同盟強靭化予算)は年間で約2100億円(2022年から5年間で約1兆5500億円)となっている。しかし、多くの場合、こうした直接的な代価の支払いはなかった。それは、アメリカは世界覇権国、世界帝国であることでの巨大な利益を得ていたからだ。トランプには、そうした前提知識はない。したがって、ハーヴァード大学教授スティーヴン・M・ウォルトが「略奪的覇権国(predatory hegemon)」と呼ぶような、直接的な代価を受け取るようなことを志向する。

 アメリカが「略奪的覇権国」となるということは、世界覇権国としての末期を迎えているということになる。世界覇権国としての役割を果たすことが国力の面から厳しくなっているということを示している。これは「終わりの始まり」ということである。

(貼り付けはじめ)

アメリカの力は公海に支えられている(U.S. Power Rests on Open Seas

-ドナルド・トランプ大統領によるホルムズ海峡の金銭化発言は基本的な戦略的利益を損なう。

ファリード・ザカリア筆

2026年4月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/10/united-states-trump-iran-war-strait-hormuz-navigation-freedom-open-seas/

「美しいことだ」とドナルド・トランプ大統領は最近、ホルムズ海峡の門番役(the gatekeepers)をイランと共同で担う構想について語った。同じ日、彼はトゥルース・ソーシャルに「交通渋滞(traffic buildup)」への対応で「巨額の利益が生まれるだろう」と投稿した。

これらの発言は示唆に富む。トランプはこれまでにも数々のとんでもない発言をしてきたが、これらの発言が彼の世界観(a worldview)を凝縮しているからだ。それは、アメリカが自らの役割をどのように捉えるかという変化を示唆している。すなわち、体制の保証人ではなく、取引の参加者(a participant in a deal)としての役割である。

アメリカは歴史の大部分において、これとは異なる見解を取ってきた。航行の自由(freedom of navigation)は、売り渡すべき特権(a privilege to be sold)ではなく、守るべき権利(a right to be defended)として扱われてきた。若い共和国の最初の軍事介入(military intervention)を行ったフランスとの準戦争(the quasi-war with France)は、アメリカの船舶航行への妨害が一因となっていた。その後間もなく、アメリカはバルバリア海賊と対峙し、安全な航行のための貢納を拒否し、代わりに武力を行使して、海上貿易は自由に行われるべきであるという原則を確立した。

この取り組みは時とともに深まっていった。現代において、アメリカは世界の海洋をパトロールし、ホルムズ海峡からマラッカ海峡に至るまで、重要なチョークポイント(choke points)の安全を確保してきた。これは通行料を徴収するためではなく、グローバル・コモンズ(global commons)を維持するために多大な費用をかけて行われてきた。開かれた海は自由な貿易を支え、ひいては成長(growth)、安定(stability)、そして最終的には平和(peace)を促進する。

トランプの考え方はそうではない。彼にとってホルムズ海峡は世界の動脈(a global artery)ではなく、資産(an asset)、つまり収益化すべき対象(something to be monetized)だ。公共財(a public good)として安全保障を提供するよりも、それをビジネスチャンスに変えた方が良いのではないか? 入場料を徴収できるのに、なぜシステムを維持する必要があるのか​​

この考え方は、単なる言葉の裏に隠された、より根深いものだ。それは、国際関係を共通の秩序と価値観の管理ではなく、一連の取引と捉える、より広範な世界観を反映している。そのような世界では、あらゆる約束は交渉可能であり、あらゆる同盟は条件付きであり、あらゆる公共財は潜在的な利益源となる。

第二次世界大戦後、アメリカは地球上で最も強力な国家として台頭しただけでなく、ルール、開放性、協力に基づいた国際システムの設計者としても台頭した。ワシントンは自由貿易(free trade)を推進し、多国間機関を支援し、自国の国境をはるかに超える安全保障の傘を維持した。それは単なる利他主義(altruism)からではなく、そのようなシステムが自国の利益に資することを理解していたからである。

そして、実際にそうだった。開かれた市場と安全な海上航路のおかげで、アメリカを中心とした世界規模の商業が繁栄した。アメリカ企業は繁栄し、ドルは主要通貨となり、アメリカが外国からますます多くの資金を借り入れる一方で、国民の金利は低く抑えられた。アメリカの影響力は、強制ではなく、魅力と相互依存(attraction and interdependence)によって大陸を越えて広がった。(そして、強制を行った場合でも、その力は拡大するどころか縮小することが多かった。)

これら全てには、ある種の精神が必要だった。それは、目先の利益にとらわれず、長期的な優位性を見据えることだった。また、安全保障、制度、同盟といった分野への投資は、すぐに成果を上げないものの、数十年かけて大きな利益をもたらすことを受け入れることでもあった。そして、正当性と信頼(legitimacy and trust)が戦略的資産であることを理解することだった。

トランプのアプローチは、この論理を逆転させている。持続的なものよりも目先の利益を、無形のものよりも有形のものを優先する。同盟諸国に圧力をかけてより多くの負担を負わせることができれば、それは勝利だ。貿易相手国から譲歩を引き出すことができれば、それは成功だ。戦略的な約束を収益源に変えることができれば、なお良い。信頼性の低下、同盟関係の崩壊、信頼の喪失、システムの弱体化といったコストは、分散的で先送りされる(diffuse and deferred)。利益は即座に、そして目に見える形で得られる。

学者スティーヴン・ウォルトは、これを「略奪的覇権国(predatory hegemon)」の行動と呼んだ。実際、ほとんどの覇権国は略奪的だった。大国は交易路に課税し、貢納を徴収し、支配力を利用して直接的な利益を得てきた。ローマ帝国も、ハプスブルク家も、ナポレオン時代のフランスも、そして帝政ドイツもそうだった。自由主義的と見なされがちなイギリスでさえ、宗主国を豊かにする形で帝国を統治した。

アメリカ合衆国が他と異なっていたのは、自己利益を欠いていたからではなく、より広範な方法でそれを追求した点にある。アメリカは、幅広い利益をもたらすことで他国が参加できるシステムを構築した。力を行使しながらも、同時にその力を抑制した。言い換えれば、アメリカは啓蒙された覇権国(an enlightened hegemon)となることを選択した。つまり、支配を維持する最も確実な方法は、それを社会に受け入れられるものにすることだと理解していた。

その選択に現在、疑問が出ている。

ホルムズ海峡をグローバル・コモンズではなく、単なる通行料徴収所のように扱うことは、歴史と戦略の両方を誤解している。アメリカが最も利益を得るのは、船舶ごとに通行料を徴収することではなく、貿易が自由に流れ、ワシントンの中心的な地位が強化される世界を構築することである。短期的な利益のためにこのモデルを放棄することは、永続的な優位性を束の間の利益と引き換えにすることになる(To abandon that model for short-term extraction is to trade a durable advantage for a fleeting gain)。

アメリカが単なる別の略奪的な覇権国(predatory hegemon)になれば、歴史が長年示してきたことを思い知ることになるだろう。そのような権力は恐れられ、反感を買って(resented)、最終的には抵抗を受ける。そして、いずれは維持されることなく、覆される。

※ファリード・ザカリア:CNNの番組「ファリード・ザカリアGPS」の司会者であり、近著に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週刊コラムを執筆しており、そのコラムは『フォーリン・ポリシー』誌にも配信されている。Xアカウント:@FareedZakaria

=====

●「船舶の「ホルムズ」通航料徴収、米イラン「共同事業」案…トランプ氏「素晴らしいものになる」と実現に意欲」

読売新聞 2026/04/09 11:20

https://www.yomiuri.co.jp/world/20260409-GYT1T00160/#google_vignette

 【ワシントン=池田慶太】米国のトランプ大統領は8日、米ABCニュースのインタビューで、ホルムズ海峡を通過する船舶の通航料金徴収を米国とイランの「共同事業」とする案を検討していると述べた。

 トランプ氏は、「共同事業」が海峡の安全を確保する方法の一つだとの認識を示し、実現すれば「素晴らしいものになる」と語った。

 キャロライン・レビット大統領報道官は8日の記者会見で、共同事業案は「大統領の提案」と説明し、今後2週間で米国とイランの間で協議が行われるとの見通しを示した。「現時点での大統領の優先事項は、通航料の徴収などいかなる制限も設けずに海峡を再び開放することだ」とも指摘した。

 一方、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は8日、イランが、米国と合意した2週間の停戦期間中、ホルムズ海峡を通過する全ての石油タンカーに対し、暗号資産(仮想通貨)で通航料の支払いを求めることを検討していると報じた。海峡での支配権を維持する狙いとみられる。

 イランの石油やガスなどを輸出する業者組合の広報担当者の話として伝えた。通航料は原油1バレルあたり1ドルで、中身が空のタンカーは通航料を支払わずに通過できる。武器が移送されないように監視する目的もあるという。

 イラン国会では、ホルムズ海峡の通航料徴収に関する法整備の審議が進んでおり、3月30日に草案が委員会で承認された。通航料の額は公表されていない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 副島隆彦(そえじまたかひこ)先生の最新刊最新刊『米ドル札の消滅 それでも金の上昇は続く』(徳間書店)が、2026年6月26日に発売です。アマゾンで予約を受け付け中です。
beidorusatsunoshoumetsusoredmokinnojoushouhatsuzuku001
『米ドル札の消滅 それでも金の上昇は続く』

 以下に、まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にして、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

(貼り付けはじめ)

まえがき 副島隆彦(そえじまたかひこ)

 

●やがてドル札も1万円札も消滅する

 

 この本は、これからの金と銀の動きを追いかけて分析する。金と銀は、これからも、まだまだ上がる。この説明を、ずっとやってゆく。

 

 そしてこの本のもう一つの大きな柱は、もうあと数年で、アメリカのドルのお札(紙幣)が、どんどん無くなっていくことを書く。それに連れて日本の1万円札も消滅に向かう。このドル札の消滅 US Dollar is vanishing(ヴァニシング) は、普通の人にはとても信じられないことだ。だが、現在、急速にアメリカ政府(トランプ政権)は、ドル紙幣を実際に世の中で使われなくする動きに向かっている。それは暗号資産(あんごうしさん)なるものによって、ドル紙幣にとって代わらせようとしている動きである。だから本書の書名は『米ドル札の消滅 それでも金の上昇は続く』 Dollar Di-minishing, Gold Gaining なのだ。

 

私は、このドル札の消滅のことを前の本からも書き始めている。いよいよ、これが加速している。今では、もう×仮想通貨というコトバは使わない。暗号資産という。これを英語でcrypto assetクリプト・アセット という。そして、このクリプト・アセットがやがてお金(かね)になると、クリプト・カレンシー、暗号通貨(つうか)になる。暗号資産が強制通用力(つうようりょく)を持つ法定通貨(ほうていつうか)legal[リーガル] tender[テンダー])になることで一国で通用するお金になる。どんどん、そのようになりつつある。初めは、ただ単に送金や代金の決済(けっさい)手段として使われるように見せる。だが、やがて、この暗号通貨が、現在の米ドルの100ドル札にとって代わろうとしている。ここで大事なことは、この暗号通貨は中央銀行や政府が発行するのではなく、あくまで民間企業が発行体(たい)となって発行するものだ。それを法律が通貨(つうか)(お金[かね])として保障する。

 

この動きに日本も引きずられている。日本でも、やがて1万円札が使われなくなる。日本人は、1万円札が大好きである。私たちは自分の国のお札に大変な信用を置いている。ところがアメリカでは、100ドル札(1万6000円に相当)などのお札(さつ)が嫌われている。アメリカでは、庶民層も含めて、「現金(キャッシュ)は、持っているだけで損だ。インフレで政府が現金の価値をどんどん無くさせて、奪い取っているのだ」と考えている。だから、アメリカ国民はあまり銀行預金をしない。その代わりに、クレジットカードなどのデジタル通貨(マネー)を使っている。これに金利が5%ぐらい付いても平気でカード決済をする。日本人は少しでも金利が付くのが嫌いだ。だから1万円札の現金を何よりも大切にしている。

 

ところが、それでもやがてアメリカでも日本でもヨーロッパでも、現金のお札が消滅させられようとしている。アメリカでは、暗号資産(×仮想通貨)の王様であるビットコインではなくてどうやらイーサリアム、そしてテザーと呼ばれる暗号資産を「ステイブル・コイン」(安定した安全なお金)として、急激に通用させようとしている。

 100ドル札や1万円札が、もうすぐ無くなる、などは、とても信じられないという人が大半だろう。だが、この事態が急激に進行しているのである。例えば、中国では、もう人民元(じんみんげん)のお札(その代表が100人民元札[さつ]=人民幣[レンミンビ])が7年前から、ほとんど使われなくなっている。中国全土で、お札(さつ)が消えた。中国国民は、朝から晩まで、ほとんどスマホ決済のようなデジタル・マネーで生きている。私は7年前(2019年)に中国に行ってこの現実を知って驚いた。だから世界がこの動きになってゆく、と私が書くのだから、素直に信じなさい。

 

ここには、確かに大きな悪だくみが存在する。アメリカ政府は、自分がこれまでに抱え込んでいる巨額の財政赤字と対(たい)(がい)借金を暗号資産に取り換えることによって、大きくごまかして借金の重たい負担から、逃げようとしている。例えば、中国や日本がアメリカに対して米国債の形で持っている巨額の対(たい)(べい)債権を、「実質的にチャラにする」という恐るべき、手段に出ようとしている。このことを本書の第2章以下で、詳しく説明する。

 

アメリカは生き延びるために、半導体(セミコンダクター)企業とA(エイ)(アイ)技術の進歩でドカーンと資金を集める。ニューヨークの金融市場を潤(うるお)わせることで、お金(かね)はいくらでも有()る、という幻想を振りまく。その代表例が6月12日に新規にNASDAQ(ナスダック)に上場(リスト)する宇宙企業のSpace(スペイス) X(エックス)(イーロン・マスクがオウナー)である。I(アイ)(ピー)(オウ)(公開時価格)を1・75兆ドル(280兆円)とした。この他にOpen(オープン) AI(エイアイ)(サム・アルトマン会長)とAnthropic(アンソロピック)(ダリオ・アモデイCEO)の上場も予定される。どちらも1兆ドルは行くだろう。バブルとしか言いようがない異常な事態だ。これらの超(ちょう)巨額の資金が、どこかから降って湧いたようにするために、トランプ政権はドル札(さつ)(通貨発行量)と米国債を手()(じな)で大増刷して市場に蒔()く。これ以外に手はない。こうやってアメリカ金融資本主義は、まだまだ繁栄を続ける、という大きなインチキで生き長らえるつもりである。

 

●イラン戦争はもう停戦した

 

 今年の2月28日から始まったイランに対するアメリカからの軍事攻撃で、ずっと今の世界は動いている。6月になってもまだズルズルと戦争は続いている。この戦争はイラン戦争 Iran War と呼ばれるようになった。両国の合意で停戦(ていせん)cease[シース] fire[ファイア])したのだが、アメリカのトランプ政権の頑迷な態度で、戦争の終結への和平(わへい)交渉(ピース・トークス peace talks)がなかなかはかどらない。ホルムズ海峡を、原油や天然ガスの輸送タンカーが通りにくくなったままで、世界経済に影響が出たままである。

 

しかし停戦(ていせん)は大きくは成立している。4月7日から双方の合意で停戦している。ところが、まだ、軍事的な緊張関係が断続的に続いている。第4章でイラン戦争について詳しく論じた。私たち日本人は、停戦と和平交渉の区別がつかない。P159に国際紛争の6つの段階の図式を載せた

 

●金と銀は再び上昇を始める

 

 今年の1月29日に、金(ゴールド)と銀(シルバー)の価格が史上最高値をつけた。前の方にドル建て(世界金[きん])と日本国内(1グラム当たり)の2つのグラフを載せた。

 金は、何と国際価格(NYの先物[さきもの]市場で決める)で1オンス=5626ドルをつけた。日本国内の値段では、1グラム=3万248円(小売り)である。最高値の5600ドルと3万円という数字をまず、覚えなさい。このあと金は、少し下落して、1オンス=4500ドル、国内では、1グラム=2万5000円まで落ちた。最高値から4か月経った5月中頃から、金と銀は再び、少しずつ上昇を始めている。このあと第1章で詳しく説明する。

 

それに対して銀[ぎん](シルバー)は、世界値段で最高値で、1オンス(31・1グラム)=120ドルまで行った。国内値段(小売り)で1グラム=640円の最高値をつけた(1月29日)。このあと金の値下がりに連れて、銀も下落した。そして5月になって、ようやく回復の動きを見せている。金は再び5000ドル、銀は100ドル超えを目指して動いている。

 

金の値動きについては、過去6年間で見ると13ページに載せたグラフの通りである

 

私は自分の前著『金を握りしめたものが勝つ 銀は10倍になる』(祥伝社刊)を今年の2月に出版した。その本には間に合わなくて、その前の1月末の最高値(ピーク、頂点)の2万6000円台をつけた古い数字しか載せていない。だからこの本で、金の値段が、その後、どのようになったかをはっきりと説明してゆく。この半年間で辿(たど)った金と銀の値段の動きを、この本で詳しく見ていく。今は、本書の各所に載せた金と銀の値動きのグラフをちらりと見るだけにしておいてください。

 

●日本では金価格の動きを説明する者がいない

 

日本では、この半年間の金(きん)の価格の激しい動きを体系立てて説明する者が誰もいない。本当にいない。だから私がやるしかない。金の値動きについて、全体の流れを説明する人がいないなどということがあるのかと、疑問に思うだろう。ところが本当にいないのだ。専門家が誰もやらない。不思議な話である。人間というのは、目先のことばかり追いかけて、自分の資金が増えることばかり考えている。だからわずか半年前の値動きについてしっかりと見直すことをしない。

 いわゆる「チャート分析(英語ではテクニカル・アナリシスと言う)」の大家たちがいて、過去の株価や金融指標の値動きをずっと分析しているように思われている。だが、この投資のプロウproたちであっても、大きな流れとしての、金(きん)の動きを知らない。彼らのほとんどは、これまで株式の動きばっかりを追いかけてきた人々である。金のことはあまり知らない。それが急に金(きん)の世界に入ってきて、まるで長年の専門家のような顔をしている。

 

私、副島隆彦が、日本では金に関する評論家として第一人者である。このことは業界でも認められているはずである。それは私がこれまでの30年間に書いてきた金融本、約100冊の本で、この事実が証明されている。私がこれまでに〝金買(きんか)え評論家〟と呼ばれて、勝ち取ってきた大きな信用と信頼をバカにする者はいないだろう。

 

私のこれまでの「金を買いなさい。早めに買っておきなさい」という強い勧めに従って、金を1グラム=4000円とか8000円で10年前や5年前に買った人たちが、大きな含み利益を上げて喜んでいる。なぜなら金1グラムが3万円を超えて(1月29日)、買った時の価格から5倍、10倍の大きな値上がりをみせたからである。金を1キロの板(いた)(バー)で1枚持っていただけで、それが3000万円になったのである。小さな家や鉄筋アパートの一室を買える値段だ。日本全国に、私がこれまでに書いた本の影響で金(きん)を買って儲かった人たちが最低でも10万人、大きく言えば100万人ぐらいいるようである。彼らからの感謝の連絡が私に届いていることから、このことが分かる。

 

金が3万円(小売り)を超してその後、2万5000円にまで下落し、その後3月24日の最安値2万4777円を経て、今再び3万円に戻ろうとしている。銀も同じように1グラム=640円の最高値をつけた後、480円ぐらいでズルズルと値動きした。その後、再び500円台を回復して再上昇を始めている。

 

この半年間に一体、何が起きていたかを第1章で詳しく説明する。私はさっき「実に不思議な話だが、金(きん)の値動きについて、この半年間の値動きを説明する者がいない」と書いたが、なぜそうなるのか。それは人間は、その時その時の数字だけしか追いかけない生物だからだ。過去のことはすぐに忘れる。ちょっと目先(めさき)の、次の値動きのことで、そわそわドキドキするだけで、それ以上のことをしない生き物だ。これは、生来の博奕(ばくち)打ちの能力に恵まれている、金融投資で自分の財産を作ってきたようなプロウの投資家たちであっても同じである。

 

プロウの投資家たちはチャート(罫線[けいせん])分析で、その先の値動きを予測して自分の投資の決断を冷酷に行う。このチャート分析を毎日毎日やり続けている人は金融グラフを見慣れているから、75日移動平均線とか、ボリンジャー・バンド(帯)とか酒田(さかた)五法とか、一目均衡表(いちもくきんこうひょう)やエリオット波動で、ごく近い将来の投資予測をやっている。

 

だが私、副島隆彦は、彼ら株式や債券や為替のチャート分析を毎日やっている投資家たちを、自分の客(本の読者)にして来なかった。私は、「金や銀の値動きについて一喜一憂することなく、ゆったりと1か月に1度ぐらい値動きを見る程度でいなさい」と勧めてきた。だから私は博奕打ち(ギャンブラー)が嫌いなのだ。投資家というコトバさえ嫌いだ。投資と博奕の才能に生来(せいらい)恵まれた人たちは自分のそれを大事にしなさい。それは、その人が持って生まれた才能(タレント)であり、人生の糧(かて)になるものだ。他の多くの人々には無いものだ。だから、この天性の才能についてこれ以上あれこれ言うことはしない。

 

私、副島隆彦は、「金と銀を買いなさい」と一貫して、30年間、唱導してきた。だが、このことで「投資」というコトバを使ったことはない。私が「早いうちに金を買いなさい」と強く勧めてきたのは、投資(インヴェストメント)のためではない。普通の人々のためである。かつ、私の本を書店で見つけて、5年前、10年前、20年前から買って読んで来た、生来(せいらい)賢い知恵のある人々向けであった。あくまで自分の老後の生活の資金と、家族の経済的な余裕になるものとして「金を買っておきなさい。必ず大きく上がりますから」と書いたのである。このことを勘違いしないでもらいたい。

 

私がこれまでに書いてきた、「金は1オンス=5000ドルの倍の1万ドルになる」の通りだ。だから、このあと金は2倍になる。そのように改めて予測、予言をしておく。だから日本国内値段では1グラム=3万円を超えてさらに少しずつ上がり続け、倍の6万円にまで上がっていく。それまでに、あと2年ぐらいかかるだろう。ということは金価格は、去年の1年間と今年1月に起きた世界中を驚かせた急激な、激しい上昇は起きない。このことを分かってほしい。このあとは少し時間がかかる。2023年8月に金の小売1グラム=1万円を突破してからの2年半で、3倍の3万円になった。真に驚嘆すべきことだった。

 

ただし銀についての、今の値段である1グラム=500円(1オンス=80ドル台)というのは、依然として安すぎる。だから今の10倍の1グラム=5000円、即ち1オンス800ドルになるだろう。金貨(ゴールド・コイン)と銀貨(シルバー・コイン)に、このことを置き換えると、金は1オンス(31・1グラム)が、現在の金価格である90万円が、倍の180万円ぐらいにはなる。そのとき銀貨は、現在の1枚1万6000円が、10倍の16万円になるということだ。ただしそれにも、この後、数年かかる。このように改めてはっきりと予言しておきます。

 

この後の章で、私は金と銀の値動きをさらに詳しく説明していくが、私は、ただ単に「金融予言が当たるから、副島隆彦の言うことを信じる」という人を好まない。金価格が1月29日に暴騰してつけた最高値までの動きと、その後の半年間の下落と停滞(ていたい)によって、大きく山の形が崩れた。第1章のP33のグラフのとおりである。北アルプスの剣岳(つるぎだけ)や剣(けん)が峰(みね)のような尖(とが)った山頂が現れ、そして崩れていった過程が別のP39のグラフからも、はっきりとみてとれる。人間というのは、自分が大きな出来事、激動のさなか(最中[さいちゅう])にあって、激しい雨嵐の中にいる時には「何が何だか分からない」ものだ。愚かなまでに周囲に付和雷同して、次々に話題を変えていく。

 少し後になって嵐が過()ぎてようやくそれらを振り返り、「いったいあの激動のさなかに何が起きていて、それがどのようになり、そしてさらにどのように次の動きへと繋がっているのか」と振り返るべきなのである。少し時間が経って、過去を振り返るという余裕が生まれた時にはじめて、人間は物事(ものごと)の一連の流れ、即ち全体像を理解できる。だから私が前著の『金を握りしめたものが勝つ』(祥伝社、2026年2月)や、その前の『金融恐慌が始まるので 金は3倍になる』(祥伝社、2023年12月)で予言を的中(てきちゅう)させたように、大きな流れで物事を見ることの重要性を、この本の読者にも分かってもらいたい。

 

ズルズルと混乱が続いている(ように見せている)今のイラン戦争も、やがてみんなに飽きられる。人々の関心は、いつの間にか全く別の次の世界事件へと移っていく。あのコロナウイルス、ワクチン騒ぎの4年間(2020年1月から2023年)でも、15年前の2011年の「3・11」の大震災と原発事故でも、その時は大騒ぎしたが、やっぱり次々と過ぎ去っていった。だからこれからもこうして、人類(人間)は大騒ぎの大事件を次々に起こしながら生き延びてゆく。あるいはそのように仕組まれて動かされてゆく。この人間の所業(しょぎょう)を冷酷に見つめることで、私は金融の予測もする。100年単位で人類史(世界史)を見定(みさだ)めてその流れの一部として、すべてを概観(アウトルック)している。

 

こうやって、この本でも金と銀のこれからの動きを中心に書いていくのだが、それはお客(読者)の要望に応える必要からだ。このことは、私に与えられた責務(せきむ)として、自分が背負った運命だと分かっている。私はもっと大きく人間(人類)というものを捉(とら)えることを思考(思想)の柱としてきた。お祭りごとの大騒ぎや、政治や経済の大事件、政治を作る国家や大きな宗教勢力、戦争の恐怖、そして政治をつくる国家そのものでさえ、すべて人間という愚かな生き物が自分たちの脳(のう)(頭、思考、知能[ちのう])の中で作り上げる「共同の幻想」マス・イルージョン mass illusion の産物なのだ。人間は、この大きな共同幻想に捉(とら)われて生きていく変な生物だ。そのように私、副島隆彦は諦観(ていかん)していて、この新(しん)共同幻想論も私は現在、書き進めている。それでは第1章に向かいます。

=====

まえがき

やがてドル札も1万円札も消滅する─2

イラン戦争はもう停戦した─9

金と銀は再び上昇を始める─10

日本では金価格の動きを説明する者がいない─12

 

第1章 金と銀の激しい値動きはなぜ起きたか

イラン戦争で金価格が大きく動いた─32

アラブ各国が金を大量に売った─42

銀の値動きについて─46

銀は歴史的に金の15分の1と決まっている─49

これからも銀を買いなさい─52

銀の供給不足が露呈したら銀価格は急騰する─59

アメリカは泥沼状態に陥った─62

 

第2章 アメリカはドル紙幣を暗号資産に変えて消滅させる

金貨・銀貨は農民でもつくれるというバイメタリストの思想が大事─65

ポイントで現金が消滅させられる─73

イーサリアムとテザーという暗号資産をステイブル・コインにしてドルと交換できるトークンにする─76

ビットコインは下落するから買うな─88

ドルをデジタル通貨にすることでアメリカは巨額の負債を帳消しにする─94

100ドル札は消滅して、日本の1万円札も無くなる─98

ゆうちょ銀行も貯金をデジタル通貨にする─100

ピーター・ティールが日本に来た理由─102

NY発の金融恐慌で商品先物のCOMEXとCMEは潰れるだろう─104

ビットコインではなく、テザーやイーサリアムが暗号資産の中心になる─112

 

第3章 もうすぐドル覇権の崩壊が始まる

債券自警団(ボンド・ヴィジランテ)が、日本に上陸した─120

ベッセント財務長官は日本の長期金利上昇が米国債を直撃することが死ぬほど怖い─125

米長期金利の上昇に震えあがるトランプ─128

高市売国奴政権が日本の富をアメリカに差し出す─135

ワルの国防次官エルブリッジ・コルビーが不正選挙を仕掛けた─140

米中首脳会談で本当は何を話したのか─146

政治と経済は互いに貸借を取り合ってバランスする理論─150

1兆ドルに迫りつつあるアメリカの国債利払い費─152

新NISAの日本の資金がアメリカに流れている─155

 

第4章 トランプはなぜイラン戦争を始めたか

トランプは狂ったように世界の実物資産獲得に動いている─158

1月のベネズエラ攻撃で石油を確保─164

イランのハメネイ爆殺からシナリオが狂った─165

エプスタイン問題から目をそらす目的も─166

トランプは認知症 dementia である167

トランプに替わって副大統領のヴァンスが大統領になる─171

イラン戦争はトランプの負け。イランの勝ちである─178

イランは誇り高いペルシア帝国に戻る─183

副大統領ヴァンスの冷静な対応─188

これから10年以内にイランとイスラエルが核戦争をするだろう198

資本主義は繁栄と戦争の循環理論でできている─201

 

第5章 銀は10倍どころか20倍になる 急いで銀貨を買いなさい

なぜ金(きん)と銀(ぎん)が、これほどに高騰したのか206

(きん)と銀(ぎん)の今後の動きはどうなる?216

急いで銀貨(シルバー・コイン)を買いなさい─217

一旦下げた金(きん)と銀(ぎん)が、再び高騰していく226

米金融機関大手が銀の先物取引で大損害を出した─233

ニューヨークにもう重要鉱物の価格決定力はない─239

NY発の金融恐慌で商品先物市場=取引所のCOMEXとCMEは潰れるだろう─242

金、銀、プラチナなど重要鉱物が戦略物資に格上げされた─245

 

あとがき

=====

あとがき(そえじまたかひこ)

 

 私はこの本で、この半年間(2026年1月から)の金(きん)と銀(ぎん)の動きを徹底的に追いかけた。金と銀に一体何が起きていたのかを詳しく説明した。

 

 それと併行して、目下(もっか)起きている暗号資産(クリプト・アセット)(旧仮想通貨)を急いで新しいお金(マネー)(強制通用する通貨[カレンシー])にして、弱体化する今のドルに取って代えようとするアメリカ政府(トランプ政権)の動きを追いかけた。日本政府もこれに突き動かされている。即ち、今のドル紙幣(ビル)と日本の1万円札もやがて消滅(ヴァニッシュ)させられる。このことを冷酷な近(きん)未来予測として書いた。

AIバブルははじける

この半年間、世の中でAI(エイアイ)(人工知能)の急速な進歩のことが騒がれている。巨大(ビッグ)テック企業である〝マグニフィセント7(セブン)〟(アマゾン、アップル、マイクロソフト、グーグル=アルファベット、メタ、テスラ、そしてエヌビディア)が、絶頂のAIバブル(好景気)を作り出していると大騒ぎだ。株価がいずれも高騰している。特にNVIDIA(エヌビディア)という新興の最先端のAI(エイアイ)チップ(GPU[ジーピーユー]という)を製造する企業が、時価総額で世界最大企業(5・2兆ドル、800兆円)になってしまった。大変な金額だ。日本の頂点であるトヨタはようやくたったの4000億ドル(60兆円)である。14分の1だ。たった1社で5・2兆ドルという巨額の、これだけのアブク銭(ぜに)が一体、NY(ニューヨーク)の金融市場にどこから湧()いて溢(あふ)れ出て来るのか。

 お金(通貨量)はやろうと思えば、政府がいくらでも底なし沼で作って放出できるものである。このことはアメリカ理論経済学の最後の破(やぶ)れ目()であり、絶対口(くち)にしてはいけない禁忌(タブー)である。この悪魔の真実がここで顔を出す。だから必ずいつか天罰が落ちる。今のAI(エイアイ)バブルは遠からずはじけて(bubble[バブル] burst[バースト]と言う)崩れ落ちる。人間の知能(インテレクト)(思考力)に追いついて人間を凌駕(りょうが)する人工知能など作られることはない。今あるAI(エイアイ)というのは、大容量の情報を貯めたデータベース(database)の別名に過ぎない。AIとは「データベースの逆方向への動き」のことだ。

 前述の米の巨大テック企業たちは、今、巨大データセンター作りに血道をあげている。年間利益の5倍ぐらいの費用をかけてデータセンターを全米各地に作っている。そこで使われるGPUを、だからNVIDIAが大量に作って販売している。ところが、これらのデータセンター作りは、世界中で頓挫(とんざ)して半分以上の、工事が止まっている。それらを動かす電力の供給が滞(とどこお)っているからと言われる。

 すでにNVIDIAからのAIチップ(GPU)の供給は、過剰になっていて過剰設備、過剰生産の問題が起きている。株主たちは怒って「これ以上データセンターなんか作るな。どうせ余って破棄することになる」として、アマゾンの株価が大きく下落したりした。

 だから今のAIバブルの大騒ぎはやがて収束する。AIバブルは近いうちにはじける(バースト)。人間の知能を超える何かが生まれて、やがて人間(人類)を支配するようになる、などはまさしくSF(サイエンス・フィクション)である。毎日、チャットGPT(オープンAI社製)と話して癒(いや)されていると吹聴する人間たち、というのは一過性の熱病だ。だからAI(エイアイ)でたかが電気通信屋の巨大企業たちがボロ儲けをする時代もやがて過ぎ去る。

 マイケル・バーリ Michael Burryという、サブプライム・ローン崩れ(2007年)を予言して、逆張(ぎゃくば)りで当てた天才投資家がいる。4月10日に、「私はNVIDIA(エヌビディア)のプット・オプション(先物[さきもの]の空[から]売りショートの一種)を買った」と発表した。バーリは、「巨大テック企業たちは、すでに半導体の過剰供給、過剰設備を粉飾(ふんしょく)決算している。真実の利益はそんなに出ていない」と鋭く分析した。マイケル・バーリは映画〝Big[ビッグ] short[ショート]〟(2015年)『マネー・ショート 華麗なる大逆転』のモデルになった人物だ。この「世紀の空(から)売り ビッグショート」があった。翌年の2008年がリーマン・ショックである。あれから18年が経()つ。

 

あとがきでこんなことまで書く必要はなかったのだが、私は自分が今の時代に乗り遅れる訳(わけ)には行かないので、常に日本の言論で最先頭を走りたいから、こうしてAIのことも書いた。

 本書を書くに当たっていつもの通り徳間書店学芸編集部の力石幸一氏の伴走を得た。記して感謝します。

 

2026年6月

副島隆彦(そえじまたかひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)
thefunal202607cover001

ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ