古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。



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 古村治彦です。

 今回は、2013年1月15日に発表した政治学の一つの理論である、プリンシパル―エージェント理論(Principal-Agent Theory)を使って、日米関係と安倍総理について書いた文章です。

 この文章の妥当性が一年経ってどうなのか、是非お読みください。宜しくお願い申し上げます。

 『日本政治の経済学―政権政党の合理的選択』(マーク・ラムザイヤー+フランシス・ローゼンブルース著、加藤寛監訳、川野辺裕幸+細野助博訳、弘文堂、1995年)という本があります。この本は、日本政治研究において、大変に重要な本です。政治学に、合理的選択(ラショナル・チョイス、Rational Choice)というアプローチがあります。これは、ある政治的な行動について、「個人は利益の最大化(プロフィット・マキシマイゼーションprofit maximization)のために行動する、合理的に(rational、ラショナル)行動する」と説明するアプローチであり、現在の政治学の世界では大きな勢力になっています。



日本政治は、こうした合理的な説明ではなく、文化とか伝統、慣習、もしくは、構造から説明するものというのが通念でしたが(日本政治研究が本格化したのは第二次世界大戦後、しばらく経ってからです)、欧米の合理的選択で説明できるとしたのが、『日本政治の経済学』です。



この本で使われている理論は、プリンシパル・エージェント理論(Principal-Agent Theory)と呼ばれるものです。プリンシパルを「本人」、エージェントを「代理人」と訳すこともあります。プリンシパルと呼ばれる個人や団体は、自分の利益を最大化するために、エージェント呼ばれる人を雇います。エージェントは、プリンシパルの利益を最大化するために行動し、報酬を得ます。



このように書くと、大変難しく感じますが、日本政治を使って説明すると次のようになります。有権者(私たち)は、利益を最大化するために、政治家(例えば国会議員)を使います。この場合、有権者はプリンシパルとなり、政治家はエージェントとなります。そして、政治家、特に与党の政治家の場合は、官僚を使って、利益が最大になるようにします。この場合、政治家がプリンシパルになり、官僚がエージェントになります。プリンシパルが使う人、エージェントが使われる人ということになります。



・有権者(プリンシパル)―政治家(エージェント)

・政治家(プリンシパル)―官僚(エージェント)



 『日本政治の経済学』のなかで、ラムザイヤーとローゼンブルースは、この理論を使って、日本政治を説明しています。そして、自民党の政治家たちが官僚たちを使っているというモデルを作りました。それまでの日本政治のモデルは、官僚主導モデルというもので、日本政治を本当に動かしている、力を持っているのは官僚たちなのだというものでした。



 このプリンシパル・エージェント理論で重要なのは、エージェンシー・スラック(Agency Slack)と呼ばれる問題です。これは、プリンシパルとエージェントの間で、情報の非対称性、具体的にはエージェントは情報を持っているのに、プリンシパルが情報を持っていない場合、エージェントが自分勝手に行動し、プリンシパルが求めたものと違う結果をもたらすことです。そのために、プリンシパルは、エージェントが自分の要求通りに動くように、アメと鞭、自分の期待通りに動いたら報酬、期待通りに動かなかったら罰を与える、ということになります。ラムザイヤーとローゼンブルースは、『日本政治の経済学』のなかで、自民党官僚たちの昇進をコントロールすることで、エージェンシー・スラックを避けようとしてきたと述べています。



 これを現在の日米関係に当てはめてみます。日本はアメリカの属国(トリビュータリ―・ステイト、tributary state)ですから、プリンシパルはアメリカ、エージェントは日本の安倍晋三首相ということになります。アメリカの国益を最大化するために、安倍首相は行動します。日本の国益のために行動する訳ではありません。そして、安倍首相はプリンシパルになって、側近や官僚たちがエージェントとなります。



・アメリカ―(ジャパン・ハンドラーズ)―安倍首相―側近・官僚



 ここで、アメリカと安倍首相との間にも、エージェンシー・スラック問題があります。アメリカの意向通りに安倍首相が動かない場合、エージェンシー・スラック問題が起こります。



 以下のウェブサイト「プロジェクト・シンディケート(Project-Syndicate)」に、2012年12月27日付で、安倍首相の論文「アジアの民主国家による安全保障のダイアモンドを作る(Asia’s Democratic Security Diamond)」というタイトルの論文が掲載されています。この論文の存在は、新進気鋭の政治評論家である中田安彦氏に教えていただきました。(アドレスはこちら→

http://www.project-syndicate.org/commentary/a-strategic-alliance-for-japan-and-india-by-shinzo-abe)



 この論文のなかで、安倍首相は、日本が主導して、韓国、インド、オーストラリア、遠くはイギリスやフランスを巻き込んで対中国包囲網を形成すること、東シナ海と南シナ海の海上航行の自由を確保するために、日本が中国と対峙することを主張しています。



 この安倍氏の、対中国強硬姿勢、ジンゴイズム(Jingoism)をアメリカはどれだけ望んでいるのか疑問です。アメリカは中国から国債も買ってもらっているし、経済関係も緊密です。世界覇権国の地位を脅かされるという不安はありながら、ソ連のように、ただ敵対すればよいというものでもありません。安倍氏については、太平洋戦争中の日本軍の行動に関して、歴史を書き変えようとする歴史修正主義(リヴィジョニズム、revisionism)があり、アメリカとしては、決して、「優秀な」エージェントという訳でありません。



 安倍氏個人が「優秀な」エージェントであっても、今度は彼がプリンシパルになって使う側近や官僚たちが「優秀な」エージェントでなく、安倍氏に彼らを抑える力がなければ、安倍氏の期待通りに動かないどころか、暴走することもあります。そうすると、アメリカから見れば、安倍氏が失敗した、エージェンシー・スラックが起きたと見なされるのです。そうなると、安倍氏には罰が与えられます。それは恐らく「辞任」ということでしょう。



 このように見ていくと、安倍氏が「低姿勢(ロー・ポスチュア、low posture)」でスタートしたのは彼にとって良かったと言えますが、いつアメリカから、「暴走した、期待外れだった」ということで首を切られるか分かりません。そう考えると、日本の首相の座というのも安泰ではないし、苦しい仕事なのだろうということが分かります。



(終わり)




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 古村治彦です。今回は前年に旧版に掲載した文章を再掲します。この通りになってしまうと、大変危険だなという思いがあり、2014年になっても、その危険性は高まるばかりであると考えています。


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4月になってもまだまだ寒い日々が続きます。私は現在、福島県の山間部におりますが、春というよりも晩秋といった風情です。まだまだ雪をも降ります。



季節が進み、夏になりますと、参議院議員選挙が行われます。この参議院議員選挙の争点は、「憲法改正」という点で、各政党は一致しているようです。



その中でも、特に日本国憲法第96条の「改正」を主張している政党(米政翼賛会と私は呼んでいます)と、それに反対している政党があります。



日本国憲法第96条は以下のような条文です。



(引用はじめ)



第9章 改 正

 

第96条 この憲法の改正は、各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。



2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。



(引用終わり)



この条文は、憲法改正の手続きに関する条文です。この条文によると、憲法を改正する手続きとして、衆参両議院それぞれが所属議員3分の2以上の賛成で国民に憲法改正を提案し、国民投票で過半数の賛成があった場合に、憲法を改正することができるということになっています。複数の段階を経る、議員の3分の2というハードルの高さのために、これまで憲法改正は行われてきませんでした。また、55年体制下、野党第一党日本社会党は、憲法改正を阻止するために、しかし、与党になることは望まないという姿勢で、自民党とある種の妥協を行っていました。



今回、この日本国憲法第96条の改正を自民党と維新は目指しています。現在、衆議院は憲法改正に前向きな勢力が3分の2以上(自民と維新で348、民主党の一部も含めるともっと増える)を占めている状況です。参議院は3分の2以上となると162となりますが、憲法改正勢力はまだそれを占められないでいます。また、この夏の参議院選挙で3分の2以上を占めるためには、113議席の獲得が必要ですが、これはなかなか困難です。しかし、これは今回の参議院議員選挙だけを考えれば、です。次回2016年7月までを考慮に入れると、決して不可能な数字ではありません。また、現在の衆議院議員の任期は2016年12月15日までですから、それまでに解散がなければ、もう一度チャンスが巡ってきます。



「2016年」が大変重要であると考えます。今回の参議院議員選挙はそのための足掛かりになるということができます。



アメリカのオバマ政権も2016年まで(正式には2017年1月まで)ですから、それまでにTPPや日本の憲法改正手続きの「緩和(easing)」を進めておきたいということもあるでしょう。そして、2017年からの新しい大統領(おそらく共和党←外れたら申し訳ありません)で、「日米新時代」ということになるのではないかと考えます。自衛隊の領土領海外活動の拡大、米軍の下請け軍隊としての性格がよりはっきりとなっていくでしょう。経済、政治、そして軍事で属国化が進んでいくものと考えられます。



このシナリオが荒唐無稽で、まったく箸にも棒にもかからない笑い話で終われば良いなとは思いますが、そうならないかもしれない雰囲気も感じられるのです。



(新聞記事転載貼り付けはじめ)



●「首相と橋下氏が一致…改憲発議要件「過半数」に」



読売新聞電子版 2013年4月12日



http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20130411-OYT1T01202.htm



 安倍首相と日本維新の会の橋下共同代表が9日の会談で、憲法96条が規定する改憲手続きを巡り、衆参各院の「3分の2以上」の賛成が必要とする改憲発議要件を「過半数」に緩和

すべきだとの認識で一致していたことが11日、分かった。



 会談に同席した維新の会の松井幹事長が、大阪府庁で記者団に明らかにした。



 松井氏によると、首相は「国民が憲法改正を議論するためにも、改正の発議ができる96条を緩和する必要がある」と述べ、橋下氏らも同様の認識を示した。さらに、過半数の賛成が必要とされている国民投票の要件の厳格化を検討する必要性でも一致したという。



 これに関連し、橋下氏は11日、大阪市役所で記者団に、「改正する条項に応じて(国民投票の)要件を変えてもいいのではないか」と述べ、要件の厳格化は重要条項の改正の場合に限定すべきだとの考えを示した。



(2013年4月12日10時15分 読売新聞)



●「維新連携視野に?菅長官「改憲を参院選争点に」」



読売新聞電子版 2013年4月9日



http://www.yomiuri.co.jp/election/sangiin/news/20130408-OYT1T01183.htm



 菅官房長官が憲法改正を夏の参院選の争点とすることを目指し、活発に発信している。



 8日の記者会見では、具体的な憲法改正の論点について「必要だと思うのは、環境権などだ。環境問題は憲法ができた当時、なかった。国民生活に大きな影響を与えるものだから、『加憲』で、憲法改正に入れていくのは当然のことだ」と環境権の明記に踏み込んだ。



 環境権は、「加憲」を掲げる公明党が新しい人権として主張しているテーマで、改正争点化に慎重な意見が多い同党に配慮したものとみられる。



 7日の福岡市での講演では、憲法改正の発議要件を緩和する96条改正に最優先に取り組む考えを示し、8日の記者会見でも「96条の改正がなければ、物事が進まない」と強調した。



 憲法改正に関する積極的な発信には、改正に意欲的な日本維新の会などと連携し、憲法改正に必要な衆参両院で3分の2以上の議席を確保する狙いがある。菅氏は9日、日本維新の会の橋下共同代表、松井幹事長と首相官邸で会談する予定。憲法改正を通じて公明、維新などとの連携を強化し、民主党を孤立化させる狙いも指摘されている。



(2013年4月9日10時50分 読売新聞)



●「<憲法改正>「ポイントは環境権」菅官房長官、公明に配慮か」



毎日新聞 4月8日(月)19時38分配信



http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130408-00000054-mai-pol



 菅義偉官房長官は8日の記者会見で、憲法改正の発議要件を定めた96条の見直しに関連し、改憲のポイントとして「環境問題は憲法ができたときにはなかったから、環境権を入れるのは自然ではないか」と述べた。



 記者団が、戦争の放棄を定めた9条の改正との優先順位をただしたのに対しては「自民党としても、現在の憲法の基本路線を守りながら、まず96条を改正しないと前に進まない」とかわした。環境権などを追加する「加憲」を掲げる公明党に配慮したとみられる。【鈴木美穂】



(新聞記事転載貼り付け終わり)

(終わり)


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 古村治彦です。


 今回は、米国防総省(U.S. Department of Defense)の発表した声明をご紹介します。年末にチャック・ヘーゲル米国防長官と小野寺五典防衛大臣との間での電話会談がキャンセルになりました。しかし、年が明けてさっそく会談が行われたようです。


 国防総省としては、「沖縄駐留アメリカ軍の再編」が重要な問題であり、そのことで、一歩「前進」となる辺野古沖埋め立てをまず歓迎しているのは当然のことです。それでも、近隣諸国との関係を改善することを求めることでバランスを取っています。


 アメリカとしては、「日米で共通の目的であるアジア(東アジア)地域の平和と安定」のために、日本が更なる努力をすることを期待し、日米同盟の強化、日米防衛ガイドラインの見直しを続けるとこの声明の中で表明しています。


 この日米同盟の強化、そして防衛ガイドラインの見直しというところが重要です。アメリカが求める「アジア地域の平和と安定」のために、日本に更なる「貢献」を求めるというのは字面だけなら結構なことです。


 しかし、そのために、日本がいかなる「前進」や「変革」を求められるのか、ということが問題です。その究極的な目標は憲法改正であり、日米共同運用性(interoperability)の強化という名の自衛隊の米軍下請化であると私は考えます。


 アメリカとしては、現在の段階で日中韓の間で直接的な大規模衝突は望んでいないでしょう。しかし、この多国間関係を管理することは難しいし、「想定外」のことが起これば、直接的な衝突にまで発展することもあります。


このたとえが適切かどうかは分かりませんが、国際関係は、原子炉内の温度管理に似ていると私は考えます。平常時であれば、温度管理はうまくでき、うまく操作し電気を作ることができますで。しかし、一朝「想定外」のことが起きた場合、原子炉内の温度管理は難しく、溶解(メルトダウン)にまで事態が悪化してしまうことは、これまでの原発の事故で起きたことです。


 大きく見れば、2014年に国際関係において大きなシフトが起きることは考えにくいし、現在のままで状況はだらだら続いていくと思います。日本にはフラストレーションがたまることばかりであると思います。ここで事態を急激に変えたいとして、「短気」や「驕り」、「自暴自棄」を起こしてしまうのは得策ではありません。事態をうまく管理するためには、そして忍耐力が必要な「自重」と「対話」が得策であると思います。迂遠ではありますが、これが一番の方法であると私は考えています。


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http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=121431


ニュース


アメリカ軍報道サービス


ヘーゲル国防長官は、普天間基地移設を巡る努力に対して、日本の防衛大臣に謝意を示す

(Secretary Thanks Japan's Defense Minister for Futenma Efforts)


2014年1月4日付ワシントン発。チャック・ヘーゲル米国防長官は本日、日本の小野寺五典防衛大臣に対して、日本の沖縄にある海兵隊の普天間飛行場の移設のために、キャンプ・シュワブー辺野古の埋め立て許可申請に認可を与えるにあたり、日本政府が行った努力に謝意を示した。


両国の防衛分野の指導者2人の間で電話会談が行われた。会談の内容は要約され、国防総省の報道官であるジョン・カービー米海軍少将が声明として発表した。この声明の中で、カービー少将は、新しい施設(辺野古)について、「沖縄駐留アメリカ軍の再編において重要な、必要不可欠な要素である」と呼んだ。


カービー少将は、ヘーゲル長官が日米両国で日米地位協定に環境関連問題を追加することで交渉を進めていくことで合意に達したことの重要性を指摘した、と述べた。


加えて、カービー少将は、ヘーゲル長官と小野寺大臣は、2013年10月に発表されたイニシアティヴの実行について議論したと述べた。そのイニシアティヴには、TPY-2ミサイル防衛レーダーの日本に対する第二機配備と日米防衛ガイドラインの将来に向けての見直しが含まれていた。日米防衛ガイドラインの見直しにおいて、二国間が透明性を確保しながら交渉を行う重要性を確認した。


ヘーゲル長官は、「近隣諸国との関係を改善し、地域の平和と安定という日米共通の目的を達成するために手段を取ることが重要だと力説した。ヘーゲル長官は、21世紀における安全保障問題に対処するために日米同盟を強化するために二国間で議論を続けていくことを楽しみにしていると語った」と述べた。


(終わり)




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 古村治彦です。


 今回は、日本政治についての私の雑感を書きます。


 私は、日本政治の現実を、「米政翼賛会(U.S. Rule Assistance Association in Japan)」という言葉を使っています。この「米政翼賛会」という言葉は、私の造語です。戦前から戦中にかけて、日本に存在した政治組織「大政翼賛会(Imperial Rule Assistance Association)」をもじって作りました。


 2013年から現在にかけて、日本の政治は、アメリカの意向を反映する政治勢力しか存在しない状況にあります。政党は数多くありますが、そのほとんどはアメリカの意向を反映する政党です。こうした状況は、2012年の総選挙、2013年の参議院議員選挙を通して生み出されました。


 現在は、自民党と公明党が連立を組んで与党となっています。民主党、日本維新の会、みんなの党、共産党、生活の党、社民党、結いの党、新党大地といった政党が野党となっています。


 しかし、よく見てみると日本維新の会、みんなの党、結いの党は、与党の補完勢力になっている、半分与党(ゆ党と言うのだそうです)のような存在です。結いの党はできたばかりですから、まだ評価するのは難しいですが。


 私は、自公維み結に加えて民主党の一部が米政翼賛会を形成していると考えています。これはあまりに大雑把な考えである、と批判される方もいらっしゃると思います。しかし、2013年の政界の動きを見てみれば、自公の組み合わせがほころぶことはなく、安倍首相は日本維新の会の橋下徹代表やみんなの党の渡辺喜美代表との関係も悪くなく、特定秘密法案の採決時には協力を取り付けています。


 そして、2013年12月に江田憲司氏が率いる結いの党ができました。これは色合いとしては、ややリベラル的な感じがある政党です。この少し前に、アメリカのジョセフ・バイデン副大統領のアジア歴訪、キャロライン・ケネディ駐日米大使の着任といった出来事がありました。私は、こうした動きに合わせて、結いの党ができたと考えています。右がかった、ナショナリスティックな自維みに対するカウンター、バランスを取る存在としてアメリカが作らせたものと考えています。結いの党を作った江田氏は、日本維新の会の松野頼久代議士、民主党の細野豪志代議士らと「既得権益を打破する会」を作っています。そして、設立の会では、ローソンの新浪剛史社長が講演をしています。私はここら辺の人脈が非常に重要だと考えています。そして、このことを2014年1月21日発売の新刊『ハーヴァード大学の秘密』(古村治彦著、PHP研究所)で書いています。


 結いの党については、色々と批判や懸念があるようですが、私はアメリカの意向もあって、しばらくは堅調に(少しずつではあっても)、党勢を維持し、政界の一部の再編において中心的な存在になるのではないかと思います。日本維新の会の中に分裂があることは既に知られていますが、松野氏らが合流することも考えられます。


 民主党は2012年の州銀議員選挙、2013年の参議院議員選挙で大きく党勢を後退させました。そして、党内には、自民党に移籍した方がすっきりするような議員たちが数多く残るというような状況になっています。民主党が自公に対抗する軸とはならず、分裂もあるのではないかと私は考えています。


 ここまでごちゃごちゃと書きましたが、私が申し上げたいのは、日本の政治状況は、右がかった勢力とそうではない勢力があるが、どちらもアメリカの意向で動いているということです。アメリカの意向で動いているというところから、私は「米政翼賛会」という言葉を考えました。


 これは例えて言うと、アメリカという人形遣いがいて、両手に人形(パペット)をはめて動かしています。人形たちは互いに別個の存在で、争っているように見えますが、要は人形遣いに動かされているだけで、人形遣いの意のままに動いているだけに過ぎません。パペットマペットというお笑い芸人がいますが、その人のネタを思い出していただけると分かりやすいかと思います。



 1942年の第21回総選挙では、大政翼賛会(翼賛政治体制協議会)の推薦候補と非推薦候補 466の定数のうち、推薦候補381、非推薦候補85を獲得しました。非推薦候補の得票は合計すると約35%を得ています。現状の米政翼賛会の議席は、戦時中の大政翼賛会(翼賛政治体制協議会)の議席数よりも大きくなっています。私は現状は戦前、戦中よりも悪くなっていると考えます。


この米政翼賛会にとっての最大の目標は、日本国憲法の改正です。そのためには、衆議院と参議院で共に3分の2以上の賛成を得る必要があります。この数を確実に押さえることが米政翼賛会の目的です。


 この米政翼賛会の中で、憲法改正に直面して、一番動揺しそうなのが公明党です。憲法9条改正に関して賛成に回れるかどうか、はっきり分かりません。ですから、たとえ公明党が脱落しても3分の2以上を両院で押さえることが重要です。


 そのために2016年に衆参ダブル選挙が行われるのではないかと私は考えています。憲法改正、憲法9条改正についてはさすがに国民も慎重だと思いますが、現在の政治状況で、それに確実に反対する政党の勢力が余りにも小さ過ぎます。民主党には自民党や日本維新の会に移籍した方が良いのではないかという議員も結構いますので、確実に反対しそうなのは、共産党、社民党、生活の党、新党大地くらいのものです。これらのうち、共産党を除いて、次の選挙までに確実に存続し、党勢を拡大しているのかどうか分からないという残念な状況です。これは、ジャパン・ハンドラーズの一人、マイケル・グリーンが論文で書いたように、リベラルを存在させないための策動が働いたからです。私は、2012年の総選挙前の日本未来の党、嘉田由紀子氏や飯田哲也氏の動きは実はそうしたグリーンの意向に合わせた動きであったのではないかと今でも疑っています。


 日常として現状に慣れてしまうとそれが当たり前になってしまいます。今の政治状況が当たり前になってしまうのは大変危険であると私は考えます。それを疑い、自分で考え判断していくことが重要であると考えます。そして、かなり状況が悪くなっていても、それでも諦めずに民主政治体制の中で認められた方法で政治に関わって、状況を変えるべく努力していくことが重要なのだと私は考えています。


(終わり)



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 古村治彦です。

 米外交誌『フォーリン・ポリシー』に掲載された、安倍晋三首相の靖国神社参拝に関して掲載された論文をご紹介いたします。

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安倍晋三の靖国神社参拝はワシントンとの関係を傷つけることになるか?(Will Shinzo Abe's Yasukuni Visit Hurt Relations in Washington?)


http://blog.foreignpolicy.com/posts/2013/12/27/turkey_s_economic_enemies_corrupt_politicians_and_the_us_fed

アイザック・ストーン・フィッシュ(Isaac Stone Fish)筆

フォーリン・ポリシー誌

2013年12月28日


2013年12月26日(木)、日本の安倍晋三首相は靖国神社を参拝した。中国と韓国は安倍首相の靖国神社参拝を非難した。そして、東京にある駐日米大使館は厳しい言葉を使った声明を発表した。これは多くの人を驚かせた。米下院外交委員会のアドヴァイザーを務め、現在はSAISの米韓機構の訪問研究員を務めているデニス・ハルピンは、私に14名のA級戦犯が靖国神社に祀られていることは東アジアだけで論争を引き起こしている訳ではないことを次のように説明してくれた。


「東京にある靖国神社にはおよそ250万人の日本の天皇に命を捧げた魂が祀ってある。その中で全てのアメリカ人にとって際立った名前が一つだけある。それは東条英機である。」東条英機は日本帝国陸軍の将軍で戦時中に首相を務めた。彼は真珠湾に対する卑怯な攻撃を行うように命令を出した。この時、約2400名のアメリカ人が亡くなった。この数字は、2001年9月11日まで、アメリカ本土に対する攻撃で亡くなった数で最も大きいものだった。


 真珠湾攻撃は1941年12月7日に起きた。その翌日、フランクリン・ルーズヴェルトは衝撃を受けたアメリカ国民に向けて「今日私たちは屈辱の中で生きている」と語りかけた。その中には歴史的な出来事を忘れてしまう人たちもいるが、アメリカ人は東条英機が何を解放したかを忘れてはいないだろう。アメリカ人の中には真珠湾攻撃について

While they may be too young for Pearl Harbor, 現在を生きるアメリカ人のほとんどは、2001年9月11日の朝に起きた野蛮な攻撃とその後の国民の団結のことを覚えているはずだ。アメリカ人はオサマ・ビン・ラディンに敬意を表するのと同じことである、東条英機に敬意を表することを行う人物をアメリカ人は無視できるだろうか?

 

 「靖国神社に安倍晋三首相の前に参拝した首相は小泉純一郎だ。小泉純一郎は2006年にワシントンを訪問した時に、その代償を支払わされた。小泉はこの時のワシントン訪問の際にアメリカ議会で演説をするという計画を立てていた。私が当時仕えていた、ヘンリー・ハイド(共和党、イリノイ州選出)は米下院外交委員会の委員長を務めていた。ヘンリー・ハイド議員は、小泉がワシントン訪問の後に靖国神社参拝をする計画を持っていることを知った。ハイドは、「小泉がフランクリン・D・ルーズヴェルト大統領が“屈辱の日”演説を行った場所で小泉首相が演説を行い、東京に戻って東条英機に敬意を表することになったら、第二次世界大戦を覚えている世代の懸念を引き起こすことになるだろう」と述べた。小泉の米議会での演説は取り止めになって、小泉はそれを受け入れた。その代りとして、小泉は当時のジョージ・W・ブッシュ大統領と大統領専用機エアフォース・ワンに乗ってグレースランドを訪問した。小泉はエルヴィス・プレスリーの熱狂的なファンであった」


 安倍晋三首相は素晴らしい一年を過ごした。特に経済状況を改善させた。しかし、国際的に見て、安倍晋三首相は彼のナショナリズムで有目になってしまった。安倍首相の靖国神社参拝の決断は、アメリカにおける彼自身の立場を傷つけることになるだろうか?


(終わり)

 

 

 

 

 

 

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 古村治彦です。

 新年あけましておめでとうございます。

 旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 本年は1月に2冊目の単著『ハーヴァード大学の秘密』(PHP研究所、2014年1月21日)を刊行し、そのほかに訳書を2冊出版準備中でございます。また、フランシス・フクヤマ氏の『政治の起源』の最新作の翻訳プロジェクトにも何からの形でお手伝いさせていただくことになると思います。

 昨年は、『ハーヴァード大学の秘密』の準備に悪戦苦闘し、単著の刊行が出来なかったのが反省点として残りました。今年は昨年の反省を活かして3冊目の単著の年内出版に向けて準備を少しずつ進めているところでございます。

 本年は、昨年の準備をスプリングボードにして、積極的に本を出してまいりたいと思います。皆様のお支えをいただければ幸いです。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 ここ数年、報道にもありますが、出版業界の状況は厳しさを増しております。簡単に言えば、本や雑誌が売れないのです。確かにベストセラーになるものはありますが、全体としてパイは縮小傾向にあります。

 それでも、皆様に面白いと思っていただけるもの、役に立つと思っていただけるものは必ず手に取っていただけると確信しております。

 本年もご指導、ご鞭撻、ご叱正を賜りますようにどうぞよろしくお願い申し上げます。

 最後になりましたが、2014年が皆様にとって、平和で、実りある、健康に恵まれた、素晴らしい年となることをお祈り申し上げます。

115
2011年に伊豆で撮影した富士山です


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 古村治彦です。


 サイモン・ウィーゼンソール・センターからの安倍首相靖国参拝に関する談話が掲載されているページを教えていただき、その内容を読みました。あまり長くないので、皆さんにご紹介いたします。


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サイモン・ウィーゼンソール・センターからの談話


http://www.wiesenthal.com/site/apps/s/content.asp?c=lsKWLbPJLnF&b=4442915&ct=13553343#.UsISaKSChjo


2013年12月26日

December 26, 2013


サイモン・ウィーゼンソール・センターは人権を擁護するユダヤ人組織の主要な団体の一つであり、ナチスによるホロコーストと第二次世界大戦からの教訓を活かすことを目的にしている。サイモン・ウィーゼンソール・センターは、日本の安倍首相の靖国神社参拝を「道徳的に間違った行為」として批判した。

The Simon Wiesenthal Center, a leading Jewish human rights organization dedicated to learning the lessons from the Nazi Holocaust and WII criticized Japanese PM Abe's visit to the Yasukuni Shrine as "morally wrong".


日本を頻繁に訪問している、サイモン・ウィーゼンソール・センターの副センター長エイブラハム・クーパー師は次のように述べた。「日本の首相として、安倍氏には日本のために戦争で斃れた人々を悼み、慰霊する権利があります。しかし、戦争犯罪人についてはそれは当てはまりません。全ての人は自分の愛する人が亡くなったら、戦闘で亡くなった人も含めて、悼む権利があります。しかしながら、そのように崇敬されるべき人たちと戦争犯罪と人道に対する罪を犯すように命令し、実行したことについて責任がある人々を一緒にすることは道徳的に間違っています」

"As Prime Minister, he has the right to mourn for his nation's war—dead but not its war criminals. All people have the right to mourn the loss of their loved ones, including those who died in battle. It is morally wrong however to co-mingle such reverence with those who were responsible for ordering and carrying out war crimes and crimes against humanity," said Rabbi Abraham Cooper, the associate dean of the Wiesenthal Center and a frequent visitor to Japan.


そして、クーパー氏は次のように結論付けた。「更に言うと、今回の安倍首相の靖国参拝は、地域の平和に対して北朝鮮からの脅威が高まっている、特に微妙な時期に行われました。安倍首相の靖国参拝は、彼自身が行ってきた日米関係の強化の努力を傷つけるものであり、安全保障に関連する諸問題に対処するためにアジアの近隣諸国でより強力な統一的関係を築こうとして来た目的をも傷つけるものです」

"Further, this visit comes at a particularly sensitive time of increased threats to peace in the region from North Korea. The Prime Minister's visit to the shrine will hurt his efforts to strengthen US-Japan relations and his goal of to creating a stronger united front with Asian neighbors on issues related to security," Rabbi Cooper concluded.


※より詳しい情報が欲しい方は、サイモン・ウィーゼンソール・センターの広報部までご連絡ください(電話番号:310-553-9036)。SNSのフェイスブックのアドレスはwww.facebook.com/simonwiesenthalcenter、ツイッターアカウントは@simonwiesenthalです。これらで最新のニュースをあなたのツイッターページやモバイルにお届けします。

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※サイモン・ウィーゼンソール・センターは国際的なユダヤ人人権組織のうち最も規模の大きな団体の一つです。アメリカ国内に40万を超える家族会員を有しています。国連、ユネスコ、OSCE(ヨーロッパ安全保障協力機構)、OAS(米州機構)、ヨーロッパ会議、南米議会などと協力して活動しているNGOです。

The Simon Wiesenthal Center is one of the largest international Jewish human rights organizations with over 400,000 member families in the United States. It is an NGO at international agencies including the United Nations, UNESCO, the OSCE, the OAS, the Council of Europe and the Latin American Parliament (Parlatino).


(終わり)


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 古村治彦です。



 2013年12月26日に安倍晋三総理大臣が靖国神社に参拝しました。これに対して、中韓、EU、アメリカなどが抗議や懸念を表明しました。安倍首相が特に重視していると思われるアメリカは、国務省報道官が「失望した(disappointed)」という表現を使って、懸念を表明しました。政府関係者の中には「ここまで言われるのか」と驚いた人々がいたという報道や、アメリカ政府関係者の発言として「アメリカの意向に反した参拝であった」という報道がなされました。



 私がこのブログでご紹介した安倍首相の靖国神社参拝に関連した2つの文章について改めて考えてみたいと思います。一つは、米誌『アトランティック・マンスリー』に掲載されたジェームズ・ファローズの文章で、もう一つは駐日アメリカ大使館が発表した、安倍首相の靖国神社参拝に関する声明です。



 ファローズの文章のポイントは、「戦争犯罪人(war criminals)が祀られていること」「遊就館の説明書き」のところだと思います。戦争犯罪人云々のことは、これまでにも言われてきたことですので、私は取り上げません。ファローズのもう一つのポイントである「遊就館の説明書き」の方を取り上げたいと思います。



 靖国神社には「遊就館」という歴史資料を展示した博物館があります。この遊就館には、日本古来の武器や武具から太平洋戦争時の資料や武器が多数展示されています。館内にある展示には、「日本が太平洋戦争の戦端を開いたのは、アメリカによる圧力があり、仕方ないことであった」という説明がなされています。



 松平氏によるA級戦犯として処刑された人々の合祀(これには東京裁判の否定の意図がありました)と遊就館の展示の説明は、「アメリカが戦後に行った東京裁判は間違いである、もしくは国際法に則ったものではない」という主張が根底にあります。私はこの主張は正しいものと考えます。日本は仕方なく戦争をさせられたのでしょう。そのために動いた人物たちが日本国内にもいたことでしょう。私は海軍がそうではなかったかと疑っています。「海軍善玉・陸軍悪玉説」がありますが、私は海軍こそが悪玉であったのではないかと思います。



 しかし、アメリカの戦後世界コントロールにおいて、戦後世界の始まりともなった戦後の裁判の正当性が疑われる、もしくは全くないということは、アメリカの「建前」としては絶対に認められないものです。アメリカが構築した「戦後世界」は、アメリカが正義の味方として、悪であった「枢軸国(Axis )」である日本、ドイツ、イタリアをやっつけたことから始まり、その後、共産主義という悪と戦い、その後はテロリズムという悪と戦うということで成り立ってきました。その始まりが揺らぐ訳にはいきません。



 アメリカの「本音」としては、「戦争が終わって、復讐心もあってあのような裁判をしたけど、ソ連との冷戦が起きる前だったからそうしたけど、ソ連との対抗上、ちょっとまずかったよな。日本にはちょっとやりすぎたよな、実際」というのがあったし、今でもあると思います。実際に、1945年から1952年までアメリカは日本を占領しましたが、占領下の政策は、前半と後半では異なります。「逆コース(reverse course)」と呼ばれます。「建前」「理想主義的」なもの(Democratization・民主化、Demilitarization・非武装化、Decentralization・財閥による経済集中の排除の3Dとアメリカでは呼ばれています)から「本音」「現実主義的」なものに変更されました。



 「歴史的に見て日本は戦争をさせられた被害者なのだ」という考えとこのアメリカの「本音」とが合わされば、靖国神社に総理大臣が参拝することは何の問題もなく、アメリカは何も抗議なり、憂慮なり、失望なりする必要などない訳です。しかし、安倍首相の靖国神社参拝を支持する言論人の多くはアメリカの失望に対して曖昧な態度を取ります(中韓に対しては「中間ごときは無視せよ」という言葉遣いも見られるほどですが)。



 それは、「日本は被害者」と「アメリカの本音」は、表立っては言ってはいけないことだということが分かっているからです。これらは、アメリカが作り上げた戦後の「素晴らしい」世界、日本もその恩恵を受けた戦後世界の正当性を揺るがすことになるということが分かっているからです。



 そして、そのことを一番よく分かっている(いた)のが、今上陛下であり、昭和天皇でありました。戦後しばらくは昭和天皇も靖国神社に参拝されていたのに、松平宮司による合祀があって以降、参拝はありませんでした。今上陛下も参拝していません。それは、個人的に不快だとか、A級戦犯になった人たちを許せないからというような小さなことが理由ではないのだろうと私は考えます。日本が組み込まれてその中で生きていかねばならない戦後世界の秩序の正当性を揺るがすようなことはできないと昭和天皇は考えられて、参拝をしなくなったのでしょうし、今上陛下もそうお考えなのではなないかと考えます。大変慎重かつ細心の行動、最も安全な方策を選んだということが言えるでしょう。



 アメリカ大使館の生命を読んで、アメリカは「建前」と「本音」をうまく使い分けている、という印象を私は受けました。うまくバランスを取っていると思いました。「建前」で批判をしておいて、しかし同時に日本をうまく利用しているなという感じが見えました。



 それは、声明文の最後の2行、「私たちは、安倍首相が過去に対して悔悟の念を表し、日本が平和構築のために関与していくことを改めて表明したことを注視している。」(拙訳)から伺えます。



 戦後世界を構築したアメリカにとって、この戦後世界の秩序に挑戦する国や組織は、「平和を乱す」敵・悪と認定してきました。冷戦が終わって以降はテロリズムを敵としていますが、もう一つの脅威は中国です。中国とは経済的な関係が深いので、アメリカも敵とは言いませんが、自分たちが追い抜かれるのではないかという恐怖感は持っています。



 世界史上、覇権国はいつか衰退し、別の覇権国が出てきます。現在の状況で言えば、アメリカは覇権国ですが、いつか中国に取って代わられるのではないかという懸念を持っています。アメリカは覇権国であるから衰退から免れているという面があり(覇権国だから世界からお金が集まってくる)、できるだけ衰退のスピードを遅らせたい、覇権国の地位から転落する時期を遅らせたい、しかも低コストで、ということで現在のアメリカは行動していると思います。



安倍晋三首相は、アメリカの「本音」を知っている人ですから参拝をしましたが、その後、「建前」に背くつもりはないし、それを明らかにするために「平和構築のために関与する」という発言をしました。これは言ってみれば、言質を取られたということになります。



 アメリカは、「そうですか、それなら私たちが築いた戦後世界秩序内の平和を守るためにご尽力いただけるということなのですね、積極的な姿勢をお示しになった訳ですから、それを実行されることを望みます」と言っている訳です。



 そして、「実行されるためには、いろいろと条件整備が必要ですね。武器輸出三原則緩和とか、憲法改正とか」と続く訳です。



 安倍晋三首相の靖国神社参拝は、アメリカにとっては、「分かっているようで分かっていない」日本の指導者をひっかけて、「うまく言質を取った」ということになるのだろうと思います。昨日、そして今日とこのように考えました。



 さて、私事で恐縮ですが、年末年始はやり残した仕事を優先するために、年内のブログの更新は今日で最後といたします。年明けは1月6日からといたします。お読みいただいている皆様には本当にお世話になりました。ありがとうございます。良いお年をお迎えくださいませ。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

(終わり)



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 古村治彦です。


 安倍晋三総理大臣の靖国神社参拝について、駐日アメリカ大使館が昨日、声明を発表したことは既にご紹介しました。今日になって、アメリカの反応が次々と報道されています。


 これらの報道をまとめると、アメリカのオバマ政権は「安倍晋三首相には靖国神社に参拝して欲しくなかった」「参拝を控えるように求めていた」ということになります。


 私は、安倍氏もまさかアメリカのオバマ政権の意向(アメリカは一枚岩ではありませんから、政権内部、そして周辺には色々な考えの人たちがいます)の一部をキャッチし、「参拝してもそこまで大事にはならないだろうし、うまく収めてもらえるだろう」という感触があって参拝した、もしくは一部の人たちの後押しもあって参拝したと考えていました。


 しかし、これまでの報道を見ると、どうもそうではないようです。ヒラリー系が多い国務省の報道官が「失望」という言葉を使ったことから見て、オバマ政権内部の好感触は得ていなかったということが分かります。


 安倍首相はアメリカに幅広い人脈があると私は考えていました。ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学に留学した経験も持っています。そして、アメリカにある人脈を使って、その人脈を触診しながら行動しているのだろうと思っていました。買いかぶりだったのだろうと今は思っています。


 「やってしまえばアメリカだってそこまで厳しいことは言わないだろう」という甘えもあったのかと思いますが、安倍首相に関して言えば、何よりも「アメリカ経験がありながら、アメリカのことを分かっているようで肝心なところが分かっていない」ということになるのだろうと思います。


(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「首相、米の意向無視」


2013年12月27日(金)7時24分配信 共同通信
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2013122701000913/1.htm
 
 【ワシントン共同】米政府当局者は26日、安倍晋三首相の靖国神社参拝について、オバマ米政権が「中韓両国の反発を招き、大きな国際問題になる」として、外交ルートを通じて首相に参拝を控えるよう求めていたことを明らかにした。米側の意向が無視された格好で米政府声明も「遺憾」などではなく、より批判的なトーンの「失望」を選んだとしている。

 靖国参拝をめぐる日米間の温度差が浮き彫りになった。中韓との関係だけでなく、今後の日米関係にも影を落とすことになりそうだ。


●「米国務省も批判、首相の参拝に「失望している」」


2013年12月27日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131227-OYT1T00319.htm


 【ワシントン=今井隆】米国務省のサキ報道官は26日、安倍首相の靖国神社参拝について「日本は大切な同盟国だが、日本の指導者が近隣諸国との緊張を悪化させるような行動を取ったことに米国政府は失望している」と批判する談話を発表した。
  
 在日米大使館が発表した声明と同内容のもので、安倍首相への厳しい言及が国務省の意向であることを示した。米メディアも、首相の靖国参拝を引き続き批判的に報じている。ウォール・ストリート・ジャーナル紙(アジア版)は26日の社説で、「日本の軍国主義復活という亡霊を自らの軍事力拡張の口実に使ってきた中国指導部にとって、安倍首相の靖国参拝は贈り物になった」と指摘した。


(2013年12月27日10時33分  読売新聞)

(新聞記事転載貼り付け終わり)

(終わり)




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 古村治彦です。

 今回は、本日の安倍晋三首相の靖国参拝についての駐日アメリカ大使館のプレスリリースの内容を皆さんにご紹介します。

 この声明で使われているdisappointedという表現は大変強い調子であるといえます。「懸念を持っている」というくらいならconcernedくらいになるでしょうから。同盟国に対してこのような表現は少し異例なくらいに強い調子です。

 しかし、ちゃんと最後の二行でバランスを取っていると言えます。しかし、これも「過去を反省し、平和構築に貢献する」と言ったからには、それが行われるようにきちんと見ていますよ、という意図が透けて見えます。そして、この二行の怖いところは、アメリカが進める「平和」の構築作業に日本も参画するということの言質を取られたという点であると思います。

 非常に「バランスの取れた」、しかし、アメリカの意図が良く分かる文章であると思います。

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プレスリリース


http://japan.usembassy.gov/e/p/tp-20131226-01.html?fb_action_ids=718052764872278&fb_action_types=og.likes&fb_aggregation_id=288381481237582#.UrvTtIXDGAl.twitter


2013年12月26日の安倍首相の靖国神社参拝に関する声明(Statement on Prime Minister Abe's December 26 Visit to Yasukuni Shrine)


2013年12月26日

 日本はアメリカ合衆国にとって重要な同盟国であり、友人である。そのような良好な関係にあるが、アメリカ合衆国は日本の指導者が近隣諸国との緊張を更に高めることにつながる行動を取ったことに失望している。


 アメリカ合衆国は日本と近隣諸国が過去に由来する微妙な問題を解決し、関係を改善し、アジア地域の平和と安定という私たちが共有する目的を達成するために協力関係を促進するための建設的な方法を発見することを希望している。


 安倍首相が過去に対して悔悟の念を表し、日本が平和構築のために関与していくことを改めて表明したことを私たちは注視している。


(終わり)




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