古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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 古村治彦です。

 以前、JD・ヴァンス副大統領を支えるロックブリッジ・ネットワークについて紹介した。今回はロックブリッジ・ネットワークの創始者であり、中心人物のクリス・バスカークについての紹介記事を掲載する。

クリス・バスカークは、生まれ故郷アリゾナ州スコッツデールで父親と共に保険関連企業を創設し、大きく成長させ、最終的に売却し、巨額の資金を得た。同時期に、ドナルド・トランプが大統領選挙に出馬を表明したことで、トランプへの支援として、保守系オンラインマガジン『アメリカン・グレイトネス』を創刊した。創刊に当たり、ピーター・ティールから資金援助を受けた。さらに、ティールから当時、連邦上院議員選挙出馬の準備をしていたヴァンスを紹介された。そして、ヴァンスと共に2019年にロックブリッジ・ネットワークを立ち上げた。バスカークの経歴で重要なのは、ビジネスを立ち上げる前に、カリフォルニア州にあるクレアモント大学に在学していたことだ。クレアモント大学はアメリカ右派、トランプ支持派において重要な存在である。

レオ・シュトラウス(Leo Strauss、1899-1973年、74歳没)が重要になってくる。レオ・シュトラウスについては、そして、シュトラウスの弟子でクレアモント大学を保守派の拠点として発展させたハリー・ジャッファについては、副島隆彦著『世界覇権国アメリカを動かす政治家と知識人たち』(講談社+α文庫、1999年)の第四章「『法』をめぐる思想闘争と政治対立の構図」を読むことで理解ができる。シュトラウスとジャッファは、法思想・法哲学において、「自然法(natural law)」を信奉するグループである。「自然法」とは「人間社会には、それを成立させて、社会を社会、人間を人間たらしめている自然のきまり・おきてがある。それは人間の目には見えないが、必ずある」ということである。近代になって、自然法から自然権[natural rights](「人間は生まれながらにして固有の権利が与えられている」と考える)が分岐し、更に人権(human rights)という考えが出てきた。これらが対立しながら法思想・法哲学において存在している。アメリカの建国の理念は「自然権」から発しているものである。自然法の立場からすれば、自然権のようなものはないということになる。自然法派はアメリカの建国の理念とは相いれない、きっちりとはまらない部分がある。ヴァンスやティールが民主政体に懐疑的な暗黒啓蒙やポストリベラリズムに親和性を持つのは当然のことと言えるだろう。

 それではヴァンスやティールが現実的にアメリカの政治体制を変更して、民主政治体制を今すぐに廃止すべきだということはさすがに言えないし、そのようなことは考えていても口には出せない。そんなことをすれば、ヴァンスはアメリカ大統領選挙当選の可能性を自らで閉ざしてしまうことになる。しかし、行き過ぎたリベラリズム、人権偏重へのアンチテーゼとしての思考実験、既存の民主政治体制の改良や改善のための批判の一環として主張していくことになるだろう。

(貼り付けはじめ)

JD・ヴァンスを当選させた秘密の献金者グループは今やMAGAの未来を書き換えようとしている(The secretive donor circle that lifted JD Vance is now rewriting MAGA’s future

―クリス・バスカークは、トランプ政権下のワシントンで、テクノロジー業界のエリート層を権力の中枢に据えた。彼の主張の根底にあるのは物議を醸すある理論だ。それは、国を前進させるためには「貴族制(aristocracy)」が必要だというものだ。

エリザベス・ドゥオスキン筆

2025年11月4日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/technology/2025/11/04/chris-buskirk-maga-vance-post-trump/

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クリス・バスカークは、ドナルド・トランプの再選を支援し、現在ワシントンの権力の中枢を担うビジネス界とテクノロジー業界の献金者連合を率いている

2019年、オハイオ州ロックブリッジ郊外の人口100人ほどの町で、少数の右派献金者たちがリゾートホテルを借り切り、MAGA運動の将来を確固たるものにするためのサミットを開催した。彼らの狙いは、ドナルド・トランプ大統領という一人の候補者を、共和党の抜本的な変革(a radical transformation of the GOP)を確固たるものにする有権者、献金者、候補者のパイプラインを構築した、永続的な政治連合(an enduring political coalition)へと変貌させることだった。

シリコンヴァレーの大富豪ピーター・ティールと、当時ベストセラー回顧録を執筆した投資家JD・ヴァンスが招集したこの会合には、ヘッジファンドの相続人レベカ・マーサー、当時FOXニューズの司会者だったタッカー・カールソン、経済学者のオレン・キャスなどが参加していたと、会合を知る2人の関係者が証言している。関係者たちは匿名を条件に、これまで報道されていなかったこの非公開会合の詳細を語った。

しかし、この会合でグループの野望を確固たるものにする上で決定的な役割を果たしたのは、はるかに目立たない人物だった。アリゾナ州の保険関連事業家で保守系メディア関係者のクリス・バスカークだ。

現在、バスカークはロックブリッジ・ネットワークを率いている。この秘密組織は、先週末の会合をきっかけに誕生し、共和党政治において最も影響力のある勢力の一つとしての地位を確立した。政治ストラティジストたちは、この緊密な実業家兼献金者ネットワークが、昨年の大統領再選を後押しし、その一員であるヴァンスを副大統領に押し上げた要因だと評価している。

テクノロジー業界のリーダーたちからの多額の資金援助を受け、ロックブリッジはトランプ政権後もMAGA運動が存続できるよう準備を進めている。ロックブリッジはウェブサイトや一般向けの組織を持たないが、世論調査員、データ分析担当者、オンライン広告担当者、さらにはドキュメンタリー映画制作部門まで擁している。2026年の中間選挙と2028年の大統領選挙に向けて、その戦力を結集させようとしている。ロックブリッジのメンバーの多くは、ヴァンスが大統領候補となることを期待している。ロックブリッジに直接詳しい人物によると、ロックブリッジはアウトドア団体や教会など、政治とは無関係な団体への所属を通じて、潜在的な有権者の詳細なプロフィールをまとめたデータベースを構築しているという。

バスカークとトランプ陣営との繋がりはロックブリッジだけにとどまらない。バスカークが投資家のオミード・マリクと共同設立したヴェンチャーキャピタル企業1789キャピタルは、パートナーたちが「愛国的資本主義(“patriotic capitalism)」と呼ぶものに焦点を当てており、現在ドナルド・トランプ・ジュニアもパートナーとして名を連ねている。二人は政権関係者や友人たちと共に、最近「エグゼクティブ・ブランチ(Executive Branch)」という、トランプ支持のビジネスリーダーたちがワシントンDCで交流するための会員制クラブを立ち上げた。年会費は一人50万ドルだ。

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バスカーク・キャピタルの簡素な内装は、政治関連の記念品で埋め尽くされている

バスカークによれば、これらの組織には共通の野望がある。それは、彼が国の未来にとって不可欠だと考えるビジネスパーソンに、政府形成と永続的な政治権力を担う役割を与えることだ。

彼らの活動は、社会進歩に関する物議を醸す理論に基づいている。それは、選ばれたエリート集団こそが国を前進させるのにふさわしい人々であるという考え方だ。バスカークは、この立場はMAGAMake America Great Again)のポピュリズムに反するものではないと主張する。業界のリーダーを要職に就かせることは、商務長官ハワード・ルトニックからテクノロジー界の大物イーロン・マスクまで、トランプ大統領の政権の特徴であり、バスカークはMAGA運動が国の新たな世代の担い手を活性化させたと述べている。

バスカークと彼の側近9人へのインタヴューによると、彼の様々なプロジェクトは、右派の一部が「貴族主義的ポピュリズム(aristopopulism)」と呼ぶものを反映しており、富裕な資本家と彼らが代表しようとする労働者階級との間に橋を架けることを目的としている。具体的には、国を収益性の高い形で再産業化(reindustrializing)し、自らの利益を支持基盤の利益と結びつけようとしている。

バスカークはアリゾナ州スコッツデールのオフィスでのインタヴューで、「どの社会にも、搾取的なエリート層、寡頭制(an extractive elite — an oligarchy —)か、生産的なエリート層、貴族制(a productive elite — an aristocracy —)のどちらかが存在する」と語った。

バスカークは、歴史上の多くの革新的な時代は、こうした貴族制によって推進されてきたと主張する。この点は、2023年に出版された著書『アメリカと可能性の芸術(America and the Art of the Possible)』にも記されている。「古典ギリシャ的な意味では」この言葉は蔑称ではなく、「国を守り、国民全員が繁栄できるよう適切に統治する、真のエリート層」を意味するとバスカークは述べている。

バスカークの見解では、彼はビジネスマンのように政治市場にアプローチし、弱点を見抜き、それを埋めるために意図的な行動を起こしてきた。右派には、彼が言うところの「連携の問題(coordination problem)」があった。それは、予想外にもトランプを選出した有権者(voters who had unexpectedly elected Trump)と、進歩的な左派から疎外された新興の富裕層(a nascent group of wealthy people who had become alienated by the progressive left)という二つの勢力だ。しかし、両陣営とも組織的な基盤を欠いていた。

バスカークは自身の取り組みを「頭脳+資金+支持基盤(Brains-plus-money-plus-base)」という一言で表現している。

他の人々は、バスカークの影響力をより力強く表現している。保守系シンクタンクであるアメリカン・コンパスのチーフエコノミストであるキャスは、トランプへの支持は依然として「個人へのカルト的な崇拝(a cult of personality)」と見なされているものの、今や強力なエコシステムがMAGA運動を支えていると述べている。

「クリス(・バスカーク)はこのエコシステムの招集者(the convener)だ」とキャスは付け加えた。

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クリス・バスカークはロックブリッジ・ネットワークと1789キャピタルの共同創設者だ

クリス・バスカークはロックブリッジの設立イヴェントについてコメントを拒否した。ティールもコメントを控えた。マーサーはコメントの要請に応じなかった。

限られたビジネスリーダーや戦略家たちのサークル以外ではあまり知られていないバスカークは、かつてコーク兄弟が支配していた役割を担う異色の人物だ。コーク兄弟は、トランプ政権の多くの貿易政策に反対してきた、資金力のある共和党の大口献金者である。彼はミームを振りかざすようなMAGA支持者ではない。友人たちはバスカークを、鋭い洞察力を持つ粘り強い戦略家だと評している。バスカークのパートナーであり、1789キャピタルの共同創設者であるオミード・マリクは、「民主党に居場所を感じなくなった裕福な人々が何千人も現れるだろうと最初に認識した人物(the first mover” to recognize that there were going to be thousands of well-off people who “no longer felt at home in the Democratic Party)」だと述べている。

ヴァンスは『ワシントン・ポスト』紙への声明の中で、バスカークについて「独創的な思想家(original thinker)」であり、「誰よりも早く、適切なアイデア、組織力、資金の組み合わせが共和党の永続的な政治的成功を確実にする方法を見抜いていた(before almost anyone,” how the “right combination of ideas, organizing and funding can ensure lasting political success for the Republican Party)」と述べた。

選挙政治とは別に、バスカークのプロジェクトは、アメリカ社会に無制限の資本主義(unrestrained capitalism)を浸透させることを目指している。バスカークによれば、1789キャピタルは、国内発の技術革新(innovation、イノヴェイション)がアメリカの産業基盤を再生できるというアイデアの実験場であり、1789キャピタルのパートナーたちはウェブサイトでこれを「アメリカ例外主義の次章(the next chapter of American exceptionalism)」と謳っている。約30社に投資している1789キャピタルは、「反ウォーク(anti-woke)」的な政治やトランプ政権の経済政策に関連するスタートアップ企業に資金を提供しており、その中にはレアアース採掘企業、戦争用AI工場建設企業、ロケット燃料の3Dプリント企業などが含まれる。

バスカークのネットワークがトランプ政権と深く結びつくにつれ、このグループはワシントンの新たな権力者層のためのパーティー・ネットワークを形成している。ロックブリッジの年2回の会議は、4月にフロリダ州キービスケーンのリッツ・カールトンで開催され、「アメリカを再び健康に(Make America Healthy Again)」をテーマにした呼吸法とヨガのセッションが行われ、スコット・ベセント財務長官、トゥルシー・ギャバード国家情報長官、スティーヴ・ウィトコフ中東特使が出席した。バスカークの友人であるロバート・F・ケネディ・ジュニア保健福祉長官は、6月に高級ワインと寿司を提供するが植物油は提供しないレストラン「エグゼクティブ・ブランチ(Executive Branch)」の開店セレモニーに出席した。

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(左から)ドナルド・トランプ・ジュニア、JD・ヴァンス、オミード・マリク、クリス・バスカーク。トランプ大統領の2期目の就任式の数日前にパームビーチで会合を開いた

バスカークのネットワークに属する人々は、自分たちの影響力の拡大を、政府が社会のイノヴェーターを非難するのではなく、ようやく支援するようになった証拠と捉えている。彼らは、ジョー・バイデン政権下で抑圧されていた経済の原動力が解き放たれると考えている。

しかし、ロックブリッジや1789キャピタルといった企業には、より有害な兆候が見られると批判する声もある。それは、労働者の利益を約束したトランプ大統領の政策を阻害する、選挙で選ばれていないアメリカの寡頭支配者集団の台頭(the rise of a group of unelected American oligarchs who are undermining Trump’s promises to benefit working people)だ。トランプ政権は就任以来、AI技術の輸出規制解除や仮想通貨を促進する大統領令や法案の署名(lifting export controls on AI technology and signing executive orders and legislation promoting cryptocurrency)など​​、テクノロジー起業家に有利な一連の新政策を打ち出してきた。ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官は声明で、「トランプ大統領の第一の、そして唯一の目標は、彼を圧倒的な支持で再選してくれた労働者階級のアメリカ国民の繁栄を取り戻すことだ」と述べた。

関係者2人によると、トランプ・ジュニアが昨年11月に1789キャピタルにパートナーとして加わって以来、1789キャピタルは数億ドルを調達し、現在10億ドル以上の資産を保有している。この夏、政府はバイデン政権時代にポリマーケットに対して行っていた2件の連邦捜査を中止した。ポリマーケットは、1789キャピタルが出資しているブロックチェーンベースの賭博スタートアップ企業で、トランプ・ジュニアは現在、ポリマーケットの諮問委員会メンバーを務めている。

コーク兄弟の慈善ネットワークから資金提供を受けている右派系シンクタンクであるアメリカン・エンタープライズ研究所の経済政策研究部長マイケル・ストレインは次のように述べた。「一般的に、ビジネスにとって良いことはアメリカにとっても良いことだが、大統領を取り巻く人々はアメリカのビジネス界を代表しているとは思えない。政府の役割は国家の繁栄を促進することであり、富裕層や創業者、経営者の繁栄を促進することではない」。

バスカークにとってこうした批判は的を外している。バスカークは、たとえワシントンDCがあまり好きではないとしても、トランプをホワイトハウスに復帰させた実業家たちをワシントンに呼び戻す決意を固めている。バスカークは政治を「腐敗している(venal)」と評し、ワシントンDCのシンクタンクを「ありきたりな表現の二乗(every cliché, squared)」と表現し、文化を根本から再構築する必要があると主張する。

バスカークは次のように述べている。「したがって、ワシントンDCは時間を過ごすのに魅力的な場所ではないが、同時に非常に必要な場所でもある。自治(self-government)とは、自分がやりたくないことにも実際に関わらなければならないということだ。」

●「調整の問題」(‘A coordination problem’

バスカークに、その日どこにいるのかを尋ねれば、56歳で4人の子供の父親である彼は、7つの異なる都市の名前を挙げるかもしれない。彼は、スコッツデールにある家族経営のオフィス、1789キャピタルの本社があるフロリダ州パームビーチ、ダラス、サンフランシスコ、オースティン、そして不本意ながらワシントンDCを行き来している。彼は、起床から就寝まで電話が鳴りっぱなしで、ヴァンス副大統領のスケジュールが許せば必ず時間を作っていると言う。

しかし、バスカークの幼少期はほぼ全てアリゾナ州で過ごした。冷戦時代に父親が駐屯していたドイツの軍事基地で生まれたものの、スコッツデールで育った。週末は、州内の住宅や中小企業向けの保険を取り扱う家族経営の会社で働いていた。バスカークは、一家は「極めて愛国的(patriotic to the nth degree)」で、保守系雑誌『ナショナル・レビュー(the National Review)』の熱心な購読者だったと回想する。

若い頃、バスカークは政治理論の修士号取得を目指し、政治哲学者レオ・シュトラウスに影響を受けた右派系シンクタンクであるクレアモント研究所でインターンシップを経験した。

しかし、学問の世界はあまりにも非現実的だと考え、シンクタンクも学位も途中で諦めた。故郷のスコッツデールに戻り、保険会社を設立した。救急車販売業者など、型破りな事業の保険引受業務を行った。その後20年間で、保険関連企業を4社設立し、売却した。

バスカークの家族は政治から疎遠になっていた。バスカーク一家は2000年代半ばにナショナル・レビュー誌の購読を解約した。共和党主流派が国を誤った方向に導いたと感じ、嫌悪感を抱いていたからだ。イラク戦争は「目くらまし(smoke screen)」であり、目の前に迫る深刻な経済問題から人々の目を逸らすためのものだったとバスカークは語った。

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アリゾナ州スコッツデールにあるバスカーク・キャピタルの内装の一部

ミシガン州に住む親戚を訪ねた際、2001年にアメリカが世界貿易機関(WTO)に加盟した後、「工場全体が文字通り梱包され、40フィートコンテナに詰め込まれて中国に送られる」様子を目の当たりにしたとバスカークは語る。アメリカ人は低賃金のサーヴィス業に従事するようになり、マクドナルドの時給8ドルに対し、フォードの工場では25ドルだったという。そして、不法移民がやってきて、それらの仕事も奪っていったと彼は言う。

「特別なことをしなくても尊厳ある生活を送れる(that you don’t have to do anything extraordinary to live a dignified life)」というアメリカンドリームが、ますます難しくなっていると、バスカークは友人たちに憤慨したが、無力感(powerless)を覚えた。「私はただアリゾナに住む、ごく普通の男だった」と彼は当時を振り返る。「一体どうすればいいんだ?」。

2000年代後半にバラク・オバマ大統領が登場すると、バスカークはオバマが社会に革命を起こす様子を目の当たりにした。一方で、バスカークは共和党とその諸機関が惰性で停滞していると感じていた。

その間、バスカークは父親と共に築き上げた保険事業の最後の株を売却していた。2015年、トランプがトランプタワーの黄金のエスカレーターを降りて大統領選への出馬を表明した頃には、バスカークには時間に余裕ができていた。

アリゾナ州の実業家であるバスカークは当初、ニューヨークのリアリティ番組司会者であるトランプが大統領の座を売名行為と見なしているのではないかと懸念し、懐疑的だった。しかし、トランプの過去のインタヴューを見ると、アメリカの指導者たちがアメリカ国民を第一に考えていないという主張が繰り返し聞こえてきた。

「トランプは40年間ずっと同じことを言い続けている!」とバスカークは当時を振り返る。「その時、トランプは本気だと気づいた。彼が真剣ではないと言っている人たちは嘘をついているのだ」。

2016年7月、バスカークはオンラインマガジン「アメリカン・グレイトネス(American Greatness)」を創刊した。この雑誌は、保守主義の新たな表現が「否定しようもなく(undeniable)」必要であると訴えた。ティールから資金提供を受けた。ティールはトランプへの100万ドルの献金でリベラルなシリコンヴァレーを驚かせた人物であり、バスカークとは友人の紹介で知り合ったばかりだった。「保守運動の土壌は枯れ果てていた(The soil of the conservative movement is exhausted)」と編集者たちは創刊マニフェストに記した。「再び繁栄するためには、肥料を与え、種をまき直し、丹念な耕作が必要だ(It needs fertilization, resowing, and diligent cultivation if it is to thrive again)」。

ティールはバスカークを、彼の弟子であり『ヒルビリー・エレジー』の著者であるヴァンスに紹介した。ヴァンスとバスカークはすぐに意気投合した。

バスカークは当時を振り返り、「特に目標があった訳ではなく、ただ何かを創り出すべきだと感じていた(we should create something)」と語る。2人は1年半ほど「オタク談義に花を咲かせた(just nerding out)」という。

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ニューヨークのトランプタワーで行われたテクノロジー業界のリーダーたちとの会合で、マイク・ペンス次期副大統領(左)とペイパル創業者ピーター・ティールがドナルド・トランプ次期大統領の話に耳を傾けている(2016年)

2019年、ヴァンスとティールは、後に組織名の由来となる小さな町の郊外にあるオハイオ州の田舎の宿に十数人を集めた。参加者の中には、バスカークのように熱烈なトランプ支持者もいた。一方で、懐疑的な人物たちもいた。しかし、参加者全員が、トランプ政権下での成功は、民主党がホワイトハウスを奪還すれば、単なる偶然に終わってしまう可能性があると感じていたと、その週末にバスカークと会った投資家のブレイク・マスターズは語っている。

「私たちは左派の有効性(the effectiveness of the left)を嘆くことに多くの時間を費やしてきた」とマスターズは続けて語る。「彼らの政策はかなりひどいものだったが、・・・組織化に関しては非常に効果的だった。・・・右派は長い間現状維持に甘んじており、その組織はまさに崩壊し始めていたのだ。」

出席者の中には、MAGAMake America Great Again)運動にネットワークの問題があることに気づいた者もいた。コーク兄弟のような右派の献金者たちは長年組織を築き上げてきたが、トランプを支持する富裕層や、バスカークが代表する新たな右派思想の集団は「実際にはお互いをよく知らなかった」とバスカークは述べた。そして、トランプに投票した人々労働者階級の層も含むもまた、組織化されていなかった。

「調整もなければ、管理も計画もなかった。全てが成り行き任せだった」とバスカークは当時を振り返る。「よし、この2つの問題を解決すれば、他の全てがより良く、より効果的になる。さあ、その解決に取り掛かろうと私たちは話し合った」。

●ムーヴメントの創設(The making of a movement

サミットから活気を取り戻したバスカークは、政治組織化の研究に没頭し始めた。彼はまず基本原則から始め、1980年代に出版された影響力のある左派組織化マニュアル『ルーツ・トゥ・パワー(Roots to Power)』を読んだ。

ヴァンスと共に、バスカークは左右両派の政治組織の事例研究を始め、その失敗と成功を記録していった。中でも全米ライフル協会(NRA)は際立っていた。バスカークと彼の仲間たちは、NRAは2つの支持層のうちの1つ、つまり憲法修正第2条の擁護者を組織化することには非常に成功していたと結論づけた。しかし、もう1つの支持層である狩猟を愛するアウトドア愛好家は、それほど組織化されておらず、有権者登録をする可能性も低かった。

しかし、1960年代から民主党支持層の中心だったアウトドア愛好家たちは、トランプに投票した層とかなりの部分で重なり合っていた。

「これは埋めなければならない空白だ」とバスカークは述べ、もし「彼らが注目するに値する何か」を見つけることができれば動員できると付け加えた。

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クリス・バスカークは、政治組織運営について自ら研究することを決意した

バスカークはロックブリッジの活動について詳細を語ろうとはしないが、大まかに言えば、所属団体に基づいて人々をソーシャルメディアグループに誘い込むための、古典的なオンライン販売ファネルを考案したと述べている。対象となったのは、中小企業の経営者、アウトドア愛好家、教会の信者などだった。

これは、選挙直前に大量の広告を流し込むなど、「力ずく(brute force)」で人々を味方につけようとする政治組織のやり方とは正反対だとバスカークは言う。ロックブリッジは対照的に、より段階的なアプローチをとった。「信頼関係を築き、人々に何らかの利益を提供する。そうして初めて、彼らに何かを頼むことができるのだ」。

2022年4月、ヴァンスは初めて、当選の見込みは薄いものの、政治家への立候補を表明した。マリクはパームビーチのレストランで、ヴァンスのための小規模な資金集めパーティーを主催した。マリクは、新型コロナウイルス対策の規制や、テクノロジー企業による新型コロナウイルスに関する言論統制に反発し、民主党を離党した後、前年にニューヨーク市からパームビーチに移住していた。バスカークはドナルド・トランプ・ジュニアと共にこの会合に出席した。

一行はその後、バスカークがロックブリッジのカンファレンスを主催していたマール・ア・ラーゴへと移動した。

彼らは、オンライン検閲に対する怒りや、持続可能性や多様性といったリベラルな優先事項のために技術革新が阻害されているという感覚を共有し、一週間を共に過ごした。

マリクは、「私たちの多くはほぼ同年代だ。このグループが『世代交代(a generational shift)』の兆しを見せていると感じている」と語った。

マリクとバスカークは翌年、共同で1789キャピタルを設立した。社名は、権利章典が提案された年にちなんで名付けられた。当初、1789キャピタルはマリクが「反ウォーク企業」と呼ぶ企業に特化していた。最初の投資先は、フォックスニューズを追われたタッカー・カールソンが設立した新しいメディア・エンターテインメント企業であるラスト・カントリーだった。その後、両パートナーはオンライン銃器マーケット・プレイスのグラバガン、アスリートがパフォーマンス向上薬を服用できるエンハンスド・ゲームズ、防衛向けAI工場を開発するスタートアップのハドリアンにも投資した。(両パートナーは、イーロン・マスクの3社、スペースX、ニューラリンク、xAIにも出資している。)

ダラスを拠点とするスタートアップ企業ファイアホーク・エアロスペースのウィル・エドワーズは、ミサイル用固体ロケット燃料の3Dプリントを専門としているが、シリコンヴァレーの多くのヴェンチャーキャピタリストは、軍事専用企業への投資を望まなかったため、彼のプレゼンテーションをきっぱりと拒否したと語っている。

「クリス(・バスカーク)はそれを馬鹿げていると思った」とエドワーズは語った。

その後、ファイアホークに6000万ドルを投資する資金調達ラウンドを主導したバスカークは、特に関心を示し、ダラスまで足を運び、エドワーズの工場を視察した。バスカークによれば、そこでは大卒資格を持たない労働者でも6桁の収入を得ることができるということだ。

バスカークは、エドワーズの会社は投資家たちの政治的主張を経済的に証明するものだと考えている。アメリカが再びiPhoneやナイキの靴を製造する可能性は低いが、特に国防分野において産業基盤を活性化させ、中間層の回復に貢献できるとバスカークは述べている。

この目標は、ジョー・バイデン大統領が2022年に520億ドル規模の「チップス法」に署名した際にも達成しようとしたもので、この法律は、国内の半導体製造に対する過去最大規模の支援策として、先端製造業の雇用を国内に戻すことを目的としていた。トランプは、この補助金を無駄遣いだと批判し、一部の資金を回収した。

アメリカン・エンタープライズ研究所のエコノミストであるマイケル・ストレインは、MAGA運動の政治的レトリックは、アメリカの実際の経済状況を誤解していると述べた。製造業の雇用喪失の主な要因はアウトソーシングではなく技術革新であり、国内製造業がアメリカを再生させると主張する人々の多くは、人工知能による大規模な労働力削減を推進している投資家と同じであると指摘した。

アメリカン・コンパスのキャスは、労働者階級のコミュニティを再建するために必要な投資規模は、1789キャピタルや他の同様の投資家が投入できる額をはるかに超えていると述べた。しかし、バスカークとそのパートナーが資金提供している実験は、「先駆的な取り組み(blaze a trial)」であるため重要だとキャスは語った。

ロックブリッジとスーパーPAC2024年の選挙に与える影響は十分に理解されていない。ロックブリッジ傘下のスーパーPACであるターンアウト・フォ・アメリカは、チャーリー・カークのターニング・ポイント・アクションなど、トランプ陣営のために激戦州で戸別訪問活動を行った数少ない団体の1つだった。連邦選挙委員会(FEC)の記録によると、ターンアウト・フォ・アメリカは2024年の選挙サイクルに3450万ドルを費やしたが、これはイーロン・マスクのアメリカPACの2億6100万ドルをはるかに下回る額である。

しかし、ロックブリッジの内部データは一定の効果を示唆しており、関係者たちはこれを長年にわたる有権者プロファイリングと動員活動の成果としている。このスーパーPACは、7つの激戦州において、投票率の低い数百万人の有権者を特定し、投票を促すことでトランプ氏に投票する可能性が高いと判断した。ロックブリッジは、これらの有権者の40%を投票所へ向かわせることができれば、トランプがこれらの州で勝利できると試算した。内部統計を直接知る2人の関係者によると、最終的にロックブリッジの3000人の戸別訪問員は50%の投票率を達成したという。

今日、このグループの雰囲気は高揚感に満ちている。バスカークによると、選挙後、関心が急上昇し、新規メンバーの約半数がテクノロジー業界出身だという。メンバーの中には億万長者も複数おり、著名な投資家であるマーク・アンドリーセンとデイヴィッド・サックスも既にメンバーとなっている。

それでも、バスカークの招待でロックブリッジに加わったファイアホークの創設者エドワーズは、イヴェントは温かい雰囲気で、「お互いの会社を楽しむ親しい人たちの集まりのようだ」と語った。エドワーズは二世帯住宅に住み、トヨタ車を運転しているという。年齢層も幅広く、バスカークの息子で最近大学を卒業したクリスも所属する30歳未満の次世代メンバーグループ「ネクストジェン(NextGen)」に参加している。

ミネソタ大学の企業法教授で、ジョージ・W・ブッシュ政権で首席倫理担当法律顧問を務めたリチャード・ペインターは、ロックブリッジ、1789キャピタル、そして行政府への関心の高まりは、「金で便宜を図る(pay to play)」ネットワーク、つまり政権幹部やトランプ一家への接触を得るために金銭を支払う人々のネットワークという印象を与えると述べた。(ペインターはまた、もし自分の時代にこのような集まりがあったなら、政権幹部には出席しないよう助言するだろうとも述べている。)

バスカーク氏は、この批判についてコメントを拒否した。

海外出張中に送ったテキストメッセージの中で、バスカークはアメリカの偉大さは「高い信頼関係のもとで協力し合う、才能豊かで主体性の高い人々を意図的に育成することによってのみ達成される(by the intentional cultivation of talented, high-agency people working together in high-trust environments)」と述べた。

彼の著書には、ルネサンス期のフィレンツェ、20世紀半ばのアメリカ、そして産業革命期のイングランド、ランカシャー州など、エリートのネットワークが社会を前進させた歴史的な事例が挙げられている。スコットランド啓蒙主義(the Scottish Enlightenment)は実際には「数十人の人々による活動」であり、彼らは「セレクト・ソサエティ(the Select Society)」という私的な社交クラブで「長年にわたる友情を育んだ」と彼は指摘する。

現在について、驚くほど革新的な歴史的時代との類似点が見られ始めているが、「アメリカの潜在能力が完全に開花するという保証はない(the full flourishing of America’s latent potential” was not guaranteed)」とバスカークは述べた。

バスカークは「そうなることを祈っている。やるべきことは山積みだ」と語った。
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バンス氏は「複雑な右派の媒介者」 米思想家が語るMAGA指導者像

日本経済新聞 202649 7:32

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN08CW40Y6A400C2000000/

【ワシントン=飛田臨太郎】バンス米副大統領は共和党内で次期大統領候補の有力者と目されている。バンス氏と関係が近い保守系シンクタンク、クレアモントのフェローで政治思想家のスコット・イエノール氏に理由を聞いた。

「右派は左派よりもはるかに複雑な政治的有機体といえる。例えば、シリコンバレーのテック系右派は移民拡大を望むが、MAGA(マガ)のなかには移民制限派もいる。(科学技術によって人間の身体や精神の限界を超えようとする)トランスヒューマニズムへの賛否も衝突の火種だ」

「右派内には多くの緊張関係があり、それを仲介できる人物がリーダーとして必要だ。バンス氏はどちらにも属しており、彼を軸に双方が交われる。右派の全ての陣営が信頼を寄せられる人物が必要であり、バンス氏は間違いなくその一人だ」

「バンス氏はテック業界に深いつながりを持ち、同時にキリスト教の美徳を重視する。そしてバンス氏に近い(著名投資家の)ピーター・ティール氏やイーロン・マスク氏は同じ哲学を共有している。米国の主権や世界通貨としてのドルに与える中国の脅威認識でも一致する」

「バンス氏の偉大な貢献はシリコンバレーにいた彼らに国家と産業の関係について考えさせていることだ。シリコンバレーをグローバリズムのためでなく、米国や米国民のために奉仕するよう、より深化させていくだろう」

「ルビオ米国務長官は『バンス氏が次期大統領選に立候補したら、自分は立候補しない』と言っているようだ。私はそれを信じる。仮にバンス氏が大統領になれば、ルビオ氏は副大統領に就くか国務長官を続投するとみている」

MAGAは法の下での平等を支持する。科学を基盤として自由な探究を重視しており、このことも誰の下でも変わらない。自由や平等、米国の核心的価値観の順守は維持するべきだ」

「一方で自由貿易や、米国の国益でなく世界の利益を重視するという外交政策、つまり戦後コンセンサスといわれてきた自由主義は私たちが乗り越えなければいけないと考えている対象だ」

「リーダーがトランプ米大統領からバンス氏に変わればMAGA運動は間違いなく変化していく。あらゆる政治運動は構成要素が変われば変化する。人工知能(AI)がどう進展するか、トランプ氏のカリスマ性がMAGA運動から失われた後にどうなるのか、世界情勢はどうなっているかに左右される」

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年6月19日にスイスで、アメリカとイランによる停戦延長60日間の覚書の調印式が行われる。リモートでの電子署名にはドナルド・トランプ大統領、JD・ヴァンス副大統領が署名を行い、スイスでの調印式にはヴァンス副大統領が出席する。トランプ政権高官がメディアの求めに応えて、14項目からなる覚書の内容を発表した。電話取材に対して、読み上げたということだ。

 この内容を読むと、アメリカ側がイラン側に大きく譲歩しており、アメリカとイスラエルの敗北を認める文書である。そのようには読めないが、内容はまさにそうなっている。そして、私はさらに、この文書は実質的に、アメリカとイランの国交回復文書ではないかという印象を持った。それは第2項が「アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、互いの主権と領土保全・一体性を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する」となっているからだ。イランでイスラム革命が起きてから、アメリカとイランは国交断絶している。お互いに存在を公式には認めないということだ。もちろん、裏では交渉があり、国連には両国とも加盟している。しかし、両国が相互に「主権と領土保全を尊重し、内政干渉しない」ということを文書にして残したのはイラン革命が起きてから初めてのことである。これが国交正常化の第一歩となる。今回のアメリカとイランの交渉には中国も裏で重要な役割を果たしている。「アメリカが敗北したということが目立たないようにしながら、イランの顔を立てて、実質的にイランが利益を得られるような形」で、覚書まで進めたのは中国の影響力行使もあっただろう。

今年5月上旬にはイランのアッバス・アラグチ外相、中旬にはトランプ大統領の訪中が実施された。それから1カ月での覚書合意ということになる。2023年には中国の仲介で、サウジアラビアとイランの間での国交回復が行われている。中国による中東地域の平和と安定の推進が実行されていると私は考える。

 このブログでもすでにご紹介したが、イランの復興のための3000億ドル規模の基金も覚書の中に含まれている。この3000億ドルという数字は、イランが今回のイラン戦争で被った被害の推計額である。イランは戦争の被害の補償・賠償を求め、アメリカは支払いを拒否していた。イランがホルムズ海峡の通行料徴収を主張したのも、戦争被害の復興の資金獲得のためだ。この基金については、第6項で、「アメリカ合衆国は、地域パートナー諸国と協力し、イラン・イスラム共和国の復興および経済発展のために、少なくとも3000億ドル規模の、相互に合意した最終的な計画を策定する」と書かれている。地域パートナー諸国にはペルシア湾岸諸国と東アジア諸国が含まれるという報道があった。中国、日本、韓国などの中東地域の石油に依存している国々が出資することになる。アメリカとイスラエルという「ならず者国家」の乱暴狼藉の尻拭いをするというのはおかしな話だが、「金持ち喧嘩せず」で、支払うのも国際社会のお付き合いということになるのだろう。その代わり、アメリカには、イスラエルへの支援の減額、関税率の引き下げやトランプ関税時の交渉で決まった条件の見直しを要求するのは当然だ。

 アメリカ国内ではすでに今回の条件について「大惨事」「無残な降伏」という批判が出ている。それは当然のことだ。今回のイラン戦争については、アメリカは「(1)イラン指導部の排除(2)イランの軍事力の弱体化」を目的とし、イスラエルはこれら2つに加えて、「(3)イラン国内での反体制運動の醸成(モサドの調略もあり)(4)イランの政権転覆(体制転換)」を目的として攻撃を実施した。しかし、結果として、これらは達成されなかった。さらに、停戦のためにイランに対して譲歩を迫られる結果になった。トランプ大統領は、イランのミサイル保有も認めている。これでは何のために戦争をしたのか分からない。さらにはアメリカ軍の最強神話は崩れ去った。戦争前よりもアメリカの利益になること、状況が改善することは何もない。ただ数兆円の予算を浪費しただけということにもなる。党派を問わず、連邦議会で激しい追及が行われるだろう。アメリカに寄るイスラエルの支援の減額ということも検討されるだろう。

 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はトランプ大統領を利用して、イランを攻撃することまではできたが、見事に失敗に終わった。トランプ大統領は責任をネタニヤフに押し付けようとしている。イスラエルとネタニヤフは戦争前よりも厳しい状況に置かれることになった。イスラエルは現在、レバノンの親イラン・シーア派組織ヒズボラへの攻撃を実施しているが、覚書にある通り、レバノン攻撃を停止しなければならない。ヒズボラもイスラエルへの攻撃を停止しなければならない。しかし、イスラエルは何らかの口実をつけて(「ヒズボラが合意を破って攻撃してきた」など)、レバノン攻撃を実施するだろう。合意の枠組みが崩壊することがイスラエルの利益ということになれば、どんなことでもするだろう。覚書調印は喜ばしいが、先行きには不安もある。

 アメリカとイスラエルは今回のイラン戦争でイランに敗北した。このことを素直に認めることが状況を改善する第一歩である。トランプ大統領は彼特有の「素直さ」「率直さ」で状況を認めている。しかし、これから責任追及が実施され、中間選挙まで厳しい状況が続くだろう。嫌気がさして大統領職から退くということも十分に考えられる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領は批判の中イランとの合意を擁護:5つのポイント(Trump defends Iran deal amid criticism: 5 takeaways

ジュリア・マンチェスター、マロリー・ウィルソン、フィリプ・ティモティジャ、ラウラ・ケリー筆

2026年6月17日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5929083-trump-defends-iran-mou/

ドナルド・トランプ大統領は、フランスのエビアン・レ・バンで開催されたG7サミットでの記者会見で、水曜日に発表されたイランとの戦争終結に関する覚書(memorandum of understandingMOU)を擁護しつつも、それが「恒久的(permanent)」ではない可能性を示唆した。

トランプ大統領は、他のG7加盟国も戦争終結を支持し、紛争終結の時が来たと主張していることに言及した。

また、世界の石油供給への脅威を理由に戦争終結が必要だと述べた一方で、イランに対する新たな軍事行動の可能性も示唆した。

この合意は、イランの核開発計画に関する60日間の新たな交渉期間を設けるもので、この問題は今年初めにアメリカとイスラエルがイランを攻撃するきっかけとなった。

以下に5つのポイントを挙げる。

(1)トランプ大統領イランとの覚書は恒久的ではないと示唆する(Trump suggests the MOU with Iran isn’t permanent

トランプ大統領は記者会見で、暫定合意の恒久性(the permanence of the preliminary agreement)を軽視し、イランが合意内容を遵守しなければ合意は崩壊すると述べた。

トランプ大統領は記者団に「もし彼らが合意を守らない場合、あるいは合意書に記載されていない事項がある場合、それは覚書に過ぎないが、私たちは書面化していなくても一定の理解を持っている」と語った。

トランプ大統領は「もし彼らがそれを守らないなら、彼らが尊重するまで爆撃を再開するだろう」と大統領は続け、「爆弾の威力は驚くべきものだ」と付け加えた。

トランプ大統領の発言は、水曜日に「イランが言うことを聞かなければ爆撃する(to bomb Iran “if they don’t behave”)」と脅迫した発言と酷似している。

トランプ大統領はまた、この覚書は最終合意ではないと記者団に強調した。

「いや、最終合意ではない。これは覚書だ。もし私が気に入らなければ、再び銃撃し、爆弾を投下するだろう」とトランプ大統領は述べた。

ドナルド・トランプ大統領とJDヴァンス副大統領は日曜日、ホルムズ海峡再開に向けた暫定合意に電子署名した。大統領は水曜日、正式な対面署名は木曜日か金曜日に行われる可能性があると述べた。

(2)G7首脳が戦争終結を支持したことを強調し国際法違反を否定(Touts G7 support for ending war, dismisses violation of international law

トランプ大統領はサミットで勝利宣言を行い、G7首脳は個別の声明と共同声明で合意への支持を表明した。

世界の石油供給量の20%が通過するホルムズ海峡の再開にこの覚書がつながることに多くの首脳が安堵した様子だった。

ヨーロッパの諸大国と日本は、海峡閉鎖の結果、エネルギー価格の高騰に大きく打撃を受けている。

トランプ大統領はこれらの声明を称賛し、それらは交渉された合意の価値を反映していると主張した。

「彼らは皆、この合意を支持し、実現を望んでいるという声明を出している」とトランプ大統領は述べた。「そして、ホルムズ海峡が開かれたという事実も支持している。もし私たちが爆撃を行っていたら・・・さらに3カ月かかるかもしれない・・・何が残るだろうか? おそらく何も残らないだろう。しかし、海峡は決して開かれることはなかっただろう」。

トランプ大統領は、G7首脳がアメリカによるイランへの攻撃が国際法違反であると懸念を表明したかどうかという記者の質問を一蹴した。G7加盟国であるドイツ、イタリア、フランスの政府当局者は当初、この戦争は国際法違反(violating international law)だと批判していた。

トランプ大統領は「いや、いや、実際は正反対だ。彼らは彼ら(イラン)を非常に危険な存在だと感じていた」と答えた。

「彼らは自分たちも攻撃される可能性があるので、非常に安心していた。いや、そんなことは一度も話し合ったことはない。いや、むしろ逆だ」。

(3)トランプ大統領がイランのミサイル保有を容認したことを擁護している(Trump defends letting Iran maintain missile arsenal

大統領は、イランの弾道ミサイル保有を容認したことを擁護し、これはイランの核開発計画とは関係のない問題の1つとして、アメリカがペルシア湾岸の同盟諸国と協力して取り組む課題になると述べた。

また、イスラエルやサウジアラビアといったイランのライヴァル国がミサイルを保有している現状では、イランのミサイル保有を禁止することは不可能だっただろうと示唆した。これはイスラエルにとって深刻な懸念事項である。

トランプ大統領は水曜日、記者団に対して「つまり、他国が保有しているのだから、イランも多少は保有しなければならない。多少は必要だ」と語った。

「私は彼らの何人かを気に入っているが・・・彼らは賢いとは思わない。『大統領、彼らにミサイルを持たせるべきではありません』」と大統領は名前を明かさなかった補佐官たちについて語った。「『では、どうすればいいんだ? サウジアラビアにミサイルを持たせるが、イランに持たせないというわけにはいかないだろう?』と私が言うと、『はい、大統領』と答えたのだ」。

「そういうことはできないだろう。ミサイルは問題ではない」とトランプ大統領は述べ、ミサイルは「特定の場所に多少の被害を与えることはあっても、地球を吹き飛ばすことではない」とトランプ大統領は付け加えた。

イラン指導部は、ミサイル計画の変更は、和平合意に向けた外交交渉におけるレッドラインの1つであると述べている。イランは、このミサイル計画を用いて、イスラエルとペルシア湾のアメリカ軍基地を攻撃した。

「我々は彼らのミサイルの84~85%を破壊した。残りは地下に埋まっている。彼らはそれらを地上に出すことすらできないのだ」と、トランプ大統領は水曜日、イランがミサイル能力の一部を保持することをなぜ容認するのかという質問に対し、このように答えた。

(4)トランプ大統領がネタニヤフ首相との「対立」を強調する(Trump highlights ‘dispute’ with Netanyahu

トランプ大統領は、1時間以上にわたる記者会見で、イランとの戦争をめぐるアメリカとイスラエルの利害の相違(America’s and Israel’s divergent interests over the war with Iran)を浮き彫りにした。

トランプ大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相への批判は比較的控えめで、両者はレバノンのヒズボラがもたらす脅威をめぐって「対立(dispute)」していると述べ、イスラエル人の死傷者や甚大な被害を出さない限り、アメリカがテロ組織に指定するヒズボラへの攻撃を控えるようネタニヤフ首相に助言した。

イランは覚書においてレバノンでの停戦を優先事項とし、合意文書の冒頭にその項目を盛り込んでいる。

「レバノンを巡って、私たちは少しばかり意見の相違を抱えている」とトランプ大統領はネタニヤフ首相に言及しながら述べた。

「ビビ(ネタニヤフ首相の愛称)、もう少しソフトな対応ができるだろうと言った。ヒズボラ関係者が建物に侵入するたびに、建物を壊す必要はないだろう」と大統領は続けた。

「彼らが自衛すべきではないと言っているのではない。砂漠にドローン2機が撃ち込まれ、無害な状態で落下したのなら、ベイルートの建物を壊す必要はないと言っている」。

トランプ大統領のネタニヤフ首相に対する批判は、週初めに罵詈雑言を交えた激しい(in a profanity-laced tirade)非難を浴びせた時と比べると、穏やかなトーンだった。

トランプ大統領は、週末にイスラエル、ヒズボラ、イランの間で相次いだ報復攻撃を受けて、これらの攻撃が覚書の合意を危うく覆すところだったと述べた。

(5)トランプ大統領はガソリン備蓄が危険なほど減少していると発言した(Trump says gas reserves running dangerously low

トランプ大統領は発言の中で、海峡が再開されていなければ、石油備蓄は4週間で枯渇していたと述べた。

「備蓄は4週間ほどで枯渇する」とトランプ大統領は述べた。「世界中に備蓄はあるが、本当に枯渇してしまうだろう。そうなれば、石油を入手できなくなる時が来るだろう。」

石油が枯渇すれば「大混乱(bedlam)」になると大統領は述べた。

「この合意によって船舶が航行できるようになる」とトランプ大統領はイランとの合意について述べた。「爆撃を続ければ、船舶は航行できなくなるだろう」。

トランプ大統領がアメリカの石油在庫を指していたのか、世界の石油在庫を指していたのかは、必ずしも明確ではない。ホワイトハウスは詳細な説明を拒否し、『ザ・ヒル』誌に対し、トランプ大統領の元の発言を参照するよう求めた。

石油消費国で構成される国際エネルギー機関(IEA)は、石油備蓄量の減少について警告を発している。

IEAはまた、5月に今年の石油需要が供給を上回るとの見通しも示した。
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メモ:ドナルド・トランプ大統領がイランとの合意成立に苦心する中でタカ派はイラン情勢の「惨事」を嘆く(The Memo: Hawks lament ‘disaster’ on Iran as Trump strains to sell deal

ナイオール・スタンジ筆

2026年6月17日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5929372-trump-defends-iran-missile-rights/

ドナルド・トランプ大統領は水曜日、イランとの暫定和平合意の正当性を訴えようと試みたが、長時間の記者会見は、批判を和らげるための土壇場での特ダネ(no last-minute rabbits)など存在しないことを露呈したに過ぎなかった。

フランスで開催されたG7サミットを終え、帰国を控えたトランプ大統領の発言は、紛争終結を強く望むあまり、アメリカが当初の戦争目的(original war aims)からどれほど逸脱しているかをも明らかにした。

特に衝撃的だったのは、トランプ大統領がイランの弾道ミサイル保有権を擁護したことだ。かつてアメリカとイスラエルは、イランの弾道ミサイル能力の破壊を目標としていたにもかかわらず、認めることになった。

「他国が保有しているのだから、イランも保有しなければならない。イランも保有する必要がある」とトランプ大統領は述べ、ペルシ湾岸諸国との比較においてイランの立場に言及した。

トランプ大統領は、名前を出さないがある補佐官からイランの通常兵器を完全に排除する必要があると告げられた際、「私は『それでは、どうすればいいんだ? サウジアラビアにはミサイルを持たせておいて、彼らには持たせないのか?』と答えた」と付け加えた。

トランプ大統領は、ホルムズ海峡再開に向けた自身の取り組みを、アメリカの繁栄にとって極めて重要だと位置づけた。合意に至らなければ「経済的大惨事(economic catastrophe)」に陥ると警告し、大恐慌を悪化させたとして広く非難されているハーバート・フーヴァー元大統領のような事態は避けたいと述べた。

イランの濃縮核物質保有という核問題の核心部分について、トランプ大統領は懸念を払拭し、アメリカには「それを入手する手段がある(the equipment to get it)」し、入手できれば「心理的に(psychologically)」満足感を得られるだろうとしながらも、「実際にはそれほど価値はない。大した価値はない(it’s actually not valuable. Not a lot of value)」と述べた。

さらにトランプ大統領は、アメリカとイラン交渉団の間で合意された暫定覚書には、イランの復興費用を支援するための3000億ドルの基金設立が含まれていることを確認した。この基金はアメリカが直接資金援助するものではないものの、ワシントンは基金の計画と運営に関与し、ペルシア湾岸の同盟諸国にも拠出が期待される見込みだ。

トランプ大統領が演説していたのとほぼ同時刻、あるトランプ政権高官が記者会見を開き、覚書の全文を記者団に読み上げた。この合意は金曜日にスイスで署名される予定だ。

高官が確認した覚書の内容によると、この覚書は双方による、重要なホルムズ海峡の再開、イランによる原油輸出の即時再開、そして合意が履行される限りアメリカがイランの資産凍結を解除するという条項を含んでいる。

その見返りとして、イランは核兵器を「調達も開発もしない(procure or develop)」と約束した。トランプ大統領はこれを大きな勝利として喧伝しているが、実際にはイランが過去に何度も繰り返してきた約束を繰り返しているに過ぎない。バラク・オバマ前大統領時代に締結された包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of ActionJCPOA)にも同様の約束が含まれており、現在のトランプ大統領はこのJCPOAを厳しく批判している。

覚書には、イランが保有する高濃縮ウランは、少なくとも国際原子力機関(IAEA)の監視下で現地希釈(dilution on-site)されることが明記されている。しかし、該当箇所は曖昧で、「濃縮問題(the issue of enrichment)」に関する最終的な解決は最終合意に持ち越されるとされている。懐疑派は、これがテヘランに相当な裁量権を与えるのではないかと懸念している。

左派、右派を問わず、もしこれが戦争の解決策となるのであれば、そもそもなぜ戦争が戦われたのかと疑問を呈する声が上がっている。

特に保守強硬派の間では、強い不安が広がっている。イスラエル支持派のコメンテーターのベン・シャピロは水曜日のフォックスニューズのインタヴューで、この合意を「大惨事(disaster)」と評した。著名な保守派コメンテーターであるエリック・エリクソンもソーシャルメディアで、この合意は「アメリカの降伏(an American surrender)」だと書き込んだ。

憤慨しているのは専門家たちだけではない。

トランプ大統領が対立候補の1人を支持したことで先月の予備選挙で敗れたビル・キャシディ連邦上院議員(ルイジアナ州選出、共和党)は、この合意を「数十年来最悪の外交政策の失策(the worst foreign policy blunder in decades)」と非難した。

トランプ政権1期目に米国連大使を務め、その後2024年の大統領予備選挙でトランプと争ったニッキー・ヘイリーは、ソーシャルメディアで、イランは受け取った資金を「核開発の野望と、我々に対するテロリストの代理活動に利用するだろう(further their nuclear ambitions and on terrorist proxies against us)」と書き込んだ。

ヘイリーはさらに、「私たちが破壊したばかりの脅威を再建するために金を払うのは大きな間違いだ(It’s a huge mistake to pay to rebuild the threat we just destroyed)」と述べた。

これだけでも右派の反発を招くには十分だったが、トランプ大統領は記者会見で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とレバノンにおけるイスラエルの行動を幾度となく批判した。イスラエルによるレバノン侵攻と、ヒズボラとの戦闘の中で続く攻撃は、アメリカ・イラン和平合意に深刻な脅威を与えており、トランプ大統領はこれに強い不満を抱いている。

トランプ大統領は、最近のイスラエルによるベイルートへの攻撃は「私の見解では不必要だった(unnecessary in my book)」と述べた。

記者会見の冒頭で、トランプ大統領はレバノンにおけるイスラエルの行動は概して不均衡であると主張した。

「彼らが自衛すべきではないとは言っていない」と大統領は述べた。「砂漠にドローン2機が撃ち込まれて無害に落下したのなら、ベイルートの建物を破壊する必要はないはずだ。彼らはもっとましな行動を取るべきだし、率直に言って、もっとうまくやれるはずだ。」

インターネット上では、この発言に対し、意外な方面から大統領に穏やかな称賛が寄せられた。それは、ガザ地区とレバノンの両方でイスラエルが取ってきた行動にかねてから強い憤りを感じてきた、主に左派のコメンテーターたちからのものだった。

しかしながら、イスラエル国内でこの合意が引き起こした動揺は、すぐに明らかになった。

「一体なぜトランプ大統領はイランの弾道ミサイル計画を支持するのか?」と『イェルサレム・ポスト』紙の論説記事は一面トップで報じた。

『タイムズ・オブ・イスラエル』紙のホームページでは、創刊編集者のデイヴィッド・ホロヴィッツがトランプ大統領の合意を「壊滅的な降伏(catastrophic capitulation)」と評した。

もちろん、共和党内にもこの合意を擁護する人たちはいる。

リバータリアンで戦争批判派のランド・ポール連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)は、自身の投稿で「私は平和に関してトランプ大統領を支持する(I stand with President Trump on peace)」と述べた。

また、共和党内、そしてより広範なMAGAメディアのエコシステムには、ほぼあらゆる状況でトランプ大統領を支持すると見なせる人々が数多く存在する。

しかし、イラン合意はまさに嵐を巻き起こした。問題は、トランプ大統領とその支持者たちがどれだけ早く、そしてどれだけ効果的にこの嵐を鎮めることができるかということだ。

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関連記事:アメリカ・イラン14項目合意、戦争終結とホルムズ海峡開放(Read: 14-point US-Iran agreement to end war, open Strait of Hormuz

『ザ・ヒル』誌(TheHill.com

2026年6月17日

https://thehill.com/policy/international/5928797-us-iran-war-deal-text/

複数のトランプ政権高官は水曜日、記者団との電話会見で、イラン戦争終結とホルムズ海峡再開に向けたアメリカ・イラン合意の内容を読み上げた。

JD・ヴァンス副大統領は、金曜日にスイスで行われる覚書の正式署名式にアメリカ代表として出席する予定だが、トランプ大統領はG7サミットに出席するため既にヨーロッパ入りしているため、水曜日に出席する可能性もあると述べた。

合意内容は以下の通りだ。

●第1項

アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国、および現在の戦争における両国の同盟国は、本覚書に署名することにより、レバノンを含む全ての戦線における軍事作戦の即時かつ恒久的な終結を宣言し、今後、相互にいかなる戦争または軍事作戦も開始せず、相互に対する武力による威嚇または武力行使を控え、レバノンの領土保全・一体性と主権(sovereignty and territorial integrity)を確保することを約束する。最終合意は、レバノンを含む全戦線における戦争の恒久的終結、および本項のその他の規定を確認するものである。

●第2項

アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、互いの主権と領土保全・一体性を尊重し、互いの内政に干渉しないことを約束する。

●第3項

アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、双方の合意により延長可能な最長60日以内に最終合意の交渉および達成に尽力することを約束する。

●第4項

本覚書の署名後直ちに、アメリカ合衆国はイラン・イスラム共和国に対する海上封鎖およびあらゆる妨害行為の解除を開始し、30日以内に海上封鎖を完全に解除する。この期間中、船舶の航行量は、イラン・イスラム共和国が戦前の水準まで回復する船舶数に比例するものとする。アメリカ合衆国はさらに、最終合意後30日以内に、イラン・イスラム共和国近海から自国軍を撤退させることを約束する。

●第5項

本覚書の署名後、イラン・イスラム共和国は、ペルシア湾からオマーン湾、およびその逆方向への商船の安全な航行を、60日間限定で、無償で確保するため、最大限の努力を尽くすものとする。商船の航行は直ちに再開され、イラン・イスラム共和国による技術的・軍事的障害物の除去および機雷除去の必要性を考慮し、30日以内に再開される。イラン・イスラム共和国は、適用される国際法およびホルムズ海峡沿岸国の主権を尊重しつつ、他のペルシア湾沿岸諸国との協議を経て、オマーン・スルタン国と対話を行い、ホルムズ海峡における将来の行政および海上サーヴィスについて定める。

●第6項

アメリカ合衆国は、地域パートナー諸国と協力し、イラン・イスラム共和国の復興および経済発展のために、少なくとも3000億ドル規模の、相互に合意した最終的な計画を策定する。この計画の実施メカニズムは、60日以内に最終合意の一部として確定される。関連する金融取引に必要な全ての許可、免除、および認可は、アメリカ合衆国が付与する。

●第7項

アメリカ合衆国は、最終合意の一部として、合意されたスケジュールに従い、イラン・イスラム共和国に対するあらゆる種類の制裁措置(国連安全保障理事会決議、国際原子力機関(IAEA)理事会決議、および全てのアメリカによる一方的な制裁措置[一次制裁および二次制裁を含む])を解除することを約束する。イラン・イスラム共和国とアメリカ合衆国は、上記の制裁解除問題の重要性を認識し、これらの問題について相互合意に達するため、交渉において直ちにこれらの問題に取り組む意向を表明する。

●ポイント8

イラン・イスラム共和国は、核兵器の調達または開発を行わないことを改めて表明する。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、第7項に記載されたスケジュールに従い、相互に合意するメカニズムに基づき、備蓄されている濃縮核物質の処分について解決することに合意した。その最低限の方法論は、国際原子力機関(IAEA)の監督下での現地での希釈(down-blending on site)である。両当事者はまた、最終合意で合意される法的枠組みに基づき、濃縮問題およびイラン・イスラム共和国の核ニーズに関連するその他の相互に合意された事項について協議することに合意した。最終合意は、この項の規定を確認するものである。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、上記の核問題の極めて重要な意義を認識し、これらの問題について相互合意を達成するため、交渉において直ちにこれらの問題に取り組む意向を表明する。

●第9項

最終合意が成立するまでの間、アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は現状維持(status quo)に合意する。イラン・イスラム共和国は核開発計画の現状を維持し、アメリカ合衆国は新たな制裁措置を課さず、また地域への追加部隊の派遣も行わない。

●第10項

アメリカ合衆国は、本覚書の署名後直ちに、かつ制裁措置が解除されるまでの間、米財務省がイラン産原油、石油製品および派生製品、ならびに銀行取引、保険、輸送等を含む全ての関連サーヴィスの輸出に対する免除措置を発令することを約束する。

●第11項

アメリカ合衆国は、本覚書の実施に伴い、イラン・イスラム共和国の凍結または制限された資金および資産を全面的に利用可能にすることを約束する。アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、交渉期間中にこれらの資金の解放に関する手続きについて相互に合意する。これらの資金は、元の口座に留保されているか、または移転されているかにかかわらず、イラン・イスラム共和国中央銀行が指定する最終受益者への支払いに全面的に利用可能となる。アメリカ合衆国は、これに伴い必要な全ての許可および承認を発令することを約束する。

●第12項

アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、本覚書の成功裏の履行と最終合意の将来的な遵守を監視するための執行メカニズムを設置することに合意する。

●第13項

本覚書の署名後、本覚書の第1項、第4項、第5項、第10項および第11項の履行開始およびこれらの措置の継続的履行を条件として、アメリカ合衆国とイラン・イスラム共和国は、最終合意に関する交渉を、他の項のみについて開始する。

●ポイント14

最終合意は拘束力のある国連安全保障理事会決議(a binding U.N.S.C. resolution)によって承認される。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今週金曜日にアメリカとイランの間で署名される覚書について、その全容は明らかにされていない。60日間停戦が継続され、ホルムズ海峡が解放されるということは明らかになっている。その間にアメリカとイランの間で核開発に関する交渉が実施される。今回の各交渉では、バラク・オバマ政権時代に締結した核合意よりも譲歩を迫られる可能性があり、おうなれば、イラン戦争を開始した意味はなく、実質的には「敗北」ということになる。

 イラン側はホルムズ海峡の管理権、通行料徴収を強く主張してきたが、60日間は徴収しないということになったようだ。この期間が終了後にはどうなるかは分からない。イラン側はアメリカとイスラエルによる攻撃で受けた被害の復旧のためという理由をつけているが、これは、アメリカとイスラエルが賠償金を支払うことで解消されるが、アメリカとイスラエルは賠償金を支払うことはしないということになれば、世界各国に負担してもらうということで通行料徴収ということになるようだ。アメリカとイスラエルは世界に多大な迷惑をかける「ならず者国家」である。

 覚書にはイランの復興と経済発展(reconstruction and economic development)」のための3000億ドル規模の基金(fund)設立がふくまれているようだ。48兆円規模の基金というのは何とも大きな話である。この金額はイランがこの戦争で受けた被害の総額ということになり、この基金は実質的には戦争被害に対する「賠償・補償(compensation)」の意味合いを持つ。そして、重要なのは以下の記事にあるが「この構想は、ペルシア湾岸諸国と東アジア諸国からの民間投資を想定している」ということであり、JD・ヴァンス副大統領は「アメリカの納税者からのお金ではない」と発言している。

 今回の停戦交渉には中国が大きな役割を果たしているが、イラン側が戦争被害の補償を強く主張する一方で、アメリカとしては「敗北」を印象付けるような賠償や保証は受け入れられないということで、この点が大きな摩擦点となったと言えるだろう。そこで、「お金で解決する」という考えを基本にして、中国が主導して、基金を作ってイランの復興を支援する、アメリカは支払わなくてよいという形でまとめたことになるのだろうと考える。中国は善意でやっているのではなく、その代わりに石油の確保と海外での投資先、中国企業のイラン復興プロジェクトの優先的な受注、中国国内の失業者の雇用といったことで、資金提供を決めたと考えられる。アメリカとしては、最大の属国である日本にある程度の資金を出させて、「中国だけが復興に参加しているのではない」という形にさせようという考えもあるだろう。アメリカとイランは国交断絶して約半世紀が経過しており、アメリカにはイラン国内に何の足掛かりもない。日本は長年にわたり、イランとの友好関係を保っている。日本を利用して、中国独占という形を取らせないということになるだろう。

 イラン戦争は中国が舞台裏で仲介し、資金を提供することで停戦に進むということになりそうだ。イラン戦争はアメリカと西側諸国没落と衰退、非西洋諸国の台頭と強靭さを印象付けることになった。

(貼り付けはじめ)

スクープ:CIA長官はイランの合意意図に疑問を抱いていると情報提供者たちが語る(Scoop: CIA director doubts Iran's intentions on deal, sources say

バラク・ラヴィド筆

2026年6月15日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/2026/06/15/us-iran-deal-cia-director-ratcliffe

関係者3人によると、ジョン・ラトクリフCIA長官はドナルド・トランプ大統領をはじめとする政府高官たちに対し、米情報・諜報機関が収集した証拠は、イランが最終合意でアメリカが求める核譲歩に応じる考えがあるのか​​どうかについて深刻な疑念を抱かせるものだと述べた。

●摩擦点(Friction point):トランプ政権の側近の中で懐疑的なのはラトクリフ長官だけではない。関係者2人によると、内部協議では、マルコ・ルビオ国務長官とピート・ヘグセス国防長官が、日曜日に発表された覚書(the memorandum of understandingMOU)について懸念を表明し、疑問を呈した一方、JD・ヴァンス副大統領、スティーヴ・ウィトコフ特使、ジャレッド・クシュナー特使は覚書を支持した。

●舞台裏(Behind the scenes):日曜日の発表に先立ち、トランプ大統領と側近の間で、この合意に関する一連のハイレヴェル会合が開かれた。

・関係者2人によると、一連の会合の中で、トランプとそのティームは、アメリカの複数の情報・諜報機関が収集した情報について協議した。その情報によると、イラン当局者が内部でこの合意について話し合っている内容は、仲介者やアメリカに対して述べている内容と矛盾していたという。

・情報者2人によると、ラトクリフ長官とルビオ長官は、その情報に基づき、アメリカが求める核措置にイランが同意するとは考えにくいと述べた。

・ある関係者は、「情報によると、イランの意図は合意に基づく約束と一致していない」と述べた。

●彼らが述べていること(What they're saying):「トランプ大統領はあらゆる問題についてあらゆる意見に耳を傾けるが、最終決定権は彼にあることは誰もが理解している」とホワイトハウス当局者は本記事に関する質問に対し答えた。

「この覚書は、イランが核兵器を保有できないこと、高濃縮ウランを保有できないこと、世界のエネルギー供給を人質にできないことを保証するという、政権が長年表明してきた全てのレッドラインを満たしている」とホワイトハウス当局者は述べ、トランプ大統領は「良い(good)」最終合意にのみ同意すると付け加えた。

CIAと国務省はコメントを拒絶した。

・国防総省のショーン・パーネル報道官は記事掲載後に回答し、ヘグセス長官は「和平合意(the peace deal)とトランプ大統領の全ての目標」を支持していると述べた。

●より広い視点(Zoom out):日曜日に署名された覚書の核関連条項は、今後60日以内に当事者間でより詳細な核合意が成立するかどうかにかかっている。

ヴァンス、ウィトコフ、クシュナーは、イラン国家のモハマド・バゲル・ガリバフ議長、アッバス・アラグチ外相、そしてパキスタンとカタールの仲介者と金曜日に会談し、次の段階について協議する予定だ。

●行間を読む(Between the lines):14項目からなる初期合意の全文はまだ公表されていないが、内容に詳しい情報筋によると、イランは覚書の下で譲歩する以上に多くのものを得ることになるだろう。ただし、イランがアメリカの目標を満たす核合意に署名することに同意すれば話は別だ。

●全体像(The big picture):この合意は停戦を延長し、60日間の交渉を開始することを目的としており、交渉期間は双方の合意により延長可能である。

・これらの交渉において、イランは核兵器を決して取得または調達しないという過去の約束を改めて表明した。

・情報筋によると、覚書には、アメリカとイランが「備蓄されている濃縮物質の処分問題を解決する(resolve the disposition of stockpiled enriched material)」こと、そして「最終合意で合意される満足のいく枠組みに基づき、将来の濃縮問題およびイランの核ニーズに関連するその他の相互に合意された事項について協議する(discuss the issue of future enrichment and other mutually agreed matters related to Iran's nuclear needs based on a satisfactory framework being agreed upon in the final deal)」ことを約束すると記されている。

・覚書には、交渉が継続する限り、イランは核開発計画の現状維持(the status quo)を行うと明記されている。一方、アメリカは新たな制裁を課したり、地域に増派したりはしない。

・複数の情報者による覚書の説明によれば、最終的な核合意が成立した場合、アメリカは30日以内に戦争のために動員した部隊を撤退させ、合意されたスケジュールに従ってイランに対する全ての制裁を解除する。

●要点(Breaking it down):この合意に懐疑的な国内勢力は、イランがアメリカの条件で核合意に署名する可能性は低く、その間、覚書によってアメリカよりもイランの方が利益を得るだろうと主張している。

・しかしながら、アメリカの政府高官2人は月曜日の記者会見で、イランにとっての利益は全て、イランが具体的な措置を講じるかどうかにかかっていると主張した。

・1人の政府高官は、イランが核譲歩に真剣かどうかは2、3週間で分かると述べた。もし真剣でなければ、イランが大きな利益を得ることなく交渉は決裂する可能性がある。

・リンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は『アクシオス』誌に「イランの合意に対する見解は、アメリカの交渉ティームが主張しているものと異なっているように思えるのでやや懸念している」と語り、合意文書の即時公開を求めた。

●詳細(Zoom in):核関連事項は条件付きだが、覚書ではホルムズ海峡の早期再開が求められている。

・覚書の内容を知る情報筋によると、この覚書は「イランは最大限の努力を尽くし、60日間、商船の安全な航行を無償で確保する」と規定しており、アメリカは段階的に封鎖を解除し、30日以内に完全に解除する予定だという。

ある関係者によれば、覚書には、イランがオマーンと海峡における「将来の管理と海上サーヴィスを定める(to define future administration and maritime services)」ための対話を行い、他のペルシア湾岸諸国もこの対話に参加して、地域諸国の「適用される国際法と主権に沿った(in line with applicable international law and sovereign rights)」解決策を見出すと記されている。

イラン国営メディアは、60日間の期間終了後、通過料(transit fees)を徴収する可能性について報じている。

交渉における最も争点となった問題の1つは、イランの凍結された資金と資産の解放(the release of Iran's frozen funds and assets)だった。

関係者たちによると、覚書は「アメリカは、本覚書の履行に伴い、(資金を)完全に利用可能にする」と明記しており、解釈の余地が大きく残されている。

アメリカ政府当局者たちは、これは「成果報酬型()pay for performance」モデルになると述べている。あるアメリカ政府高官は記者団に対し、イランから前向きな「ジェスチャー(gesture)」が見られれば、アメリカは見返りとして一部の資金を解放する可能性があると語った。

また、覚書には、最終合意には、イランの「復興と経済発展(reconstruction and economic development)」のための3000億ドル規模の基金(fund)設立に関する「明確かつ相互に合意された計画(definitive and mutually agreed plan)」と、その実施メカニズムが含まれると記されていると関係者たちは述べた。

合意の支持者たちは、これは長期的な構想であり、イランが核開発計画を放棄し、大幅な国内改革を実施して初めて実現すると主張している。

=====

トランプ合意に基づきイランが受け取る可能性のある数十億ドルの内訳(Breaking down the billions Iran could receive under Trump's deal

デイヴ・ロウラー、バラク・ラヴィド筆

2026年6月16日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/2026/06/16/trump-iran-deal-billions-frozen-funds

ドナルド・トランプ大統領のイラン核合意の、いまだ秘密にされている条件は、テヘランがどれだけの経済的利益を得るのか、そしてそれがいつ実現するのかをめぐって激しい議論を巻き起こしている。

●全体像(The big picture):この合意により、イランは60日間の交渉期間中、石油を自由に販売できると見込まれている。さらに、より広範な制裁緩和(broader sanctions relief)、凍結資金へのアクセス(access to frozen funds)、そして最終的な核合意が成立すれば、最大3000億ドル規模の復興投資基金(a potential $300 billion rebuilding investment fund)への道が開かれる可能性がある。

●摩擦点(Friction point):批判者たちは、トランプ大統領が1期目に2015年の核合意を破棄した後、今回も同じ手法、つまり核譲歩と引き換えに資金凍結を解除するという手法を繰り返していると主張している。さらに、復興基金に関しては、さらに一歩踏み込んだ可能性もあるとしている。

・ホワイトハウスは、イランの「偽情報(misinformation)」によって議論が歪められているとし、「成果報酬型(pay for performance)」の仕組みこそが、可能な限り強力な合意を実現するための最善の方法だと主張している。

・しかし、アメリカ政府当局者たちは、少なくとも一部の利益はイランに前払いされることを認めている。

●現状(State of play):金曜日に正式に署名される予定の覚書は、より詳細な核合意に向けた60日間の交渉を開始することを目的としている。

・アメリカ政府当局者たちは、長期的な核合意が成立するかどうかは不確実だと認めつつも、イランの経済的利益は合意にかかっていると主張している。

・一方、覚書の内容に関する詳細がほとんど明らかにされていないため、数十億ドルが既にテヘランに流れているという憶測が飛び交っている。

・本件に関する質問に対し、あるアメリカ政府当局者は『アクシオス』誌に対し、「これは成果主義に基づく合意だ。イランは、核兵器の保有禁止、濃縮物質の無害化、ホルムズ海峡における航行の自由の阻害禁止など、合意した全ての条項を遵守した場合にのみ、覚書の恩恵を受けることができる」と述べた。

以下に、この合意における財政的インセンティヴの内訳を示す。

■イランが直ちに得るもの(What Iran gets right away

・あるアメリカ政府当局者によると、この合意には、協議が継続する限りイランが石油を販売できる一時的な制裁免除(sanctions waivers)が含まれている。これは、厳しいアメリカの海上封鎖が解除されるにつれて、莫大な収入源となる可能性がある。

・イラン国営メディアは、テヘランは署名するだけで凍結資金に即座にアクセスできるようになると主張しているが、アメリカ政府当局者たちはこれを断固として否定している。

・あるアメリカ政府高官は、イランは相互に遵守の意思を示すジェスチャーと引き換えに、制裁緩和や凍結資金へのアクセスといった「ジェスチャー(gestures)」を受け取る可能性があると述べた。

・アラブ首長国連邦(UAE)やカタールなどのペルシア湾岸諸国が、保有するイランの資金凍結を解除する裏取引(side delas)が行われているとの報道について、アメリカ政府高官は「馬鹿げている(preposterous)」と一蹴した。

・それでも、この覚書には解釈の余地が残されている。覚書の内容に詳しい情報筋によると、アメリカは「(凍結された資金を)この覚書の履行に伴い、完全に利用可能にする」と約束している。

■核合意でイランが得られるもの(What Iran gets under a nuclear deal

・最終的な核合意が成立した場合、アメリカは覚書に基づき、合意されたスケジュールに従ってイランに対する全ての制裁を解除することを約束しているとあるアメリカ政府関係者は覚書の内容を説明している。

・ホワイトハウスは、いかなる合意にも、イランの高濃縮ウランの回収、将来の濃縮の一時停止、およびそれに伴う査察体制が含まれるべきだと述べている。

・あるトランプ政権高官は、アメリカはイランが真剣に取り組むかどうかを2、3週間以内に判断できると見込んでおり、もし真剣に取り組まなければ、財政的な利益は限定的なものになるだろうと述べた。

■3000億ドルの基金(The $300 billion fund

・政治的に最も物議を醸す条項の1つは、イランのための復興基金(rebuilding fund)の可能性である。

・覚書の内容を知るある関係者によると、最終的な合意には、イランの「復興と経済発展(reconstruction and economic development)」を支援する基金に関する「明確かつ相互に合意された計画(definitive and mutually agreed plan)」が含まれるという。

・協議に詳しい複数の関係者によると、「繁栄基金(prosperity fund)」構想はカタール発案で、アメリカとイランの間で数週間にわたり協議されてきた。この構想は、ペルシア湾岸諸国と東アジア諸国からの民間投資を想定している。

JD・ヴァンス副大統領はフォックスニューズに対し、この資金はアメリカの納税者から拠出されるものではなく、イランが核開発計画を永久に放棄し、濃縮ウランを放棄し、核査察を受け入れた場合にのみ活用されると述べた。

●注目すべき点(What to watch):トランプ大統領は火曜日、覚書の本文は公表されるだろうと改めて述べたが、おそらく金曜日の正式署名までは公表されないだろう。

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 古村治彦です。

 2026年6月14日、アメリカとイランは停戦を60日間延長する覚書の内容に合意したと発表した。停戦期間中に核開発に関する交渉が継続される。ホルムズ海峡については開放されるようだが、イラン側が強く主張してきた管理権と通行料徴収については撤回されたのかどうかが明確になっていない。覚書への署名は金曜日に実施されるが、それまでにどうなるか、また、覚書で定められた60日間の間で不測の事態が発生して、停戦が破られるということも考えられる。予断を許さない状況だ。喜んでばかりもいられない。

 覚書には、全ての戦線で戦闘が停止されるとある。これにはレバノンも含まれるとなっている。イスラエルはレバノン南部への攻撃を続けている。レバノンを拠点とする親イランのシーア派組織ヒズボラを弱体化させるための攻撃であるが、レバノン国内に大きな被害が出ている。イランはイスラエルのレバノン攻撃が停止されなければ交渉は行わないという姿勢を見せてアメリカを揺さぶった。ドナルド・トランプ大統領はこの揺さぶりを受けて、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に停戦を迫った。非常に激しい、外交の場ではまず使われない言葉でネタニヤフ首相を批判した。ネタニヤフ首相は仕方なく一時停戦したが、合意直前にレバノン攻撃を再開し、それに対して、イランがイスラエルへの攻撃を準備し、和平交渉でアメリカ側は攻撃停止を求めて奔走した。結果としてはイランからのイスラエル攻撃は実施されなかったが、イスラエルが合意に悪影響を及ぼす存在であり、合意の成否のカギを握る存在になっている。

 イラン戦争はトランプの戦争ではなく、ネタニヤフの戦争であった。アメリカ側がイランに対して差し迫っての脅威を感じての攻撃ではなかった。イスラエルが中東地域で支配的な地位を確立するための戦争であった。イスラエル単独ではイランに大打撃を与えられないので、アメリカを巻き込むしかなかった。そのためには、浅慮で単純なトランプは格好の標的であった。トランプ政権ではトランプとピート・ヘグセス国防長官以外は反対したイラン戦争はトランプの決断によって開始された。そして、政権幹部たちが揃って予想していた通りに見事に失敗した。トランプはネタニヤフに騙されて、誤った戦争を開始して、イランや世界の人々に対して苦しみを与えた責任がある。ネタニヤフは自身が裁判を回避するために、イスラエルをひたすら戦争状態に置き続け、こちらも世界の人々に苦しみを与えているという責任がある。トランプはイラン戦争の責任をネタニヤフにおっかぶせようとしているが、トランプの責任がそれで消える訳ではない。

 イスラエルがアメリカとイランの停戦合意の覚書の成否のカギを握っているということになる。この戦争を終わらせるかどうかはネタニヤフにかかっているということになる。ネタニヤフにとってはアメリカがイラン戦争と中東地域への責任から抜けられないようにして、戦争が続くことが最良である。それは、世界にとっては最悪であるが。トランプは自分では終わらせることができない戦争を始めてしまった。その不明は万死に値する。1日も早い引退こそが望ましい。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプは自分ではコントロールできない戦争を始めた(Trump Started a War He Can’t Control

-トランプはイラン戦争を終わらせたい。しかし、イラン、イスラエル、そしてヒズボラはそれぞれが別の考えを持っている。

ジョン・ホルティワンガー筆

2026年6月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/08/trump-israel-lebanon-iran-netanyahu-cease-fire-peace-negotiations/

ドナルド・トランプ米大統領は、数カ月にわたる和平合意に向けた努力が失敗に終わった後も、依然として主導権を握っていると主張しているにもかかわらず、イラン戦争において傍観者のような立場に追いやられている。自分が事態を掌握しているかのように見せかけ、現場の複雑な現実を否定することで、合意はますます困難になっている。

トランプ大統領が戦争の方向性を決定づける能力が限られていることは、4月初旬に停戦が始まって以来初めてイスラエルとイランが交戦した昨夜の出来事によって明らかになった。トランプ大統領が「不満だ(not happy)」と述べた日曜日のイスラエルによるベイルート攻撃の後、イランはイスラエルに向けて弾道ミサイルを発射した。イランのミサイルは迎撃され、死傷者やインフラへの被害は報告されていない。イランのミサイル攻撃後、トランプ大統領は事態を掌握しており、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に報復攻撃を控えるよう要請すると示唆した。「私が指示を出している。私が全ての指示を出している。彼(ネタニヤフ)は指示を出していない」とトランプ大統領は『フィナンシャル・タイムズ』紙に語った。

しかし、イスラエルは最終的にイラン全土への報復攻撃(retaliatory strikes)を進めた。イスラエルのイェヒエル・ライター駐米大使はXに「イランはイスラエルに向けて11発の弾道ミサイルを発射した」と書き、「世界中のどの国もこのような攻撃を容認しないだろうし、イスラエルも容認しない。イスラエルは現在、イランの地対地ミサイル発射基地を標的にしている」と付け加えた。

月曜日、トランプ大統領はイスラエルとイランの双方に即時停戦を呼びかけ、両国は当面の間、互いに攻撃を停止した。しかし、イランはレバノン南部を含む地域での攻撃が続けば、「はるかに厳しく、壊滅的な措置(far more severe and crushing measures)」を取ると警告した。一方、イスラエルはヒズボラとの戦闘を継続すると表明している。

トランプ大統領が和平合意を急ぎ、全面戦争の再発を回避しようとする中、イランはホルムズ海峡をめぐる膠着状態(およびそれに伴うエネルギー危機)とイスラエルのレバノン侵攻を交渉における切り札として利用できることを認識しているようだ。

イスラエルのテルアビブ大学傘下のシンクタンクである国家安全保障研究所the Institute for National Security StudiesINSS)の研究員オフェル・シェラは、「テヘランは中東地域に新たな方程式(equation)を確立した。イスラエルによるヒズボラへの攻撃が、イランによるイスラエル攻撃の引き金となる可能性がある」と指摘する。

この状況は、トランプ大統領が中東地域における複雑に絡み合った難題を解決しようとする中で、今後も直面するだろう困難さを物語っている。アメリカはイスラエルの最も緊密な同盟国ではあるが、イスラエルの指導者に対するワシントンの影響力はそこまで大きくはない(Washington’s influence over Israeli leaders only goes so far)。

ホワイトハウスはレバノン紛争に関する声明の中で、イスラエルの自衛権を擁護し続けている。しかし、イランとの戦争からの脱却策を模索し続けるトランプ大統領にとって、これは依然として頭痛を与えている。イラン戦争によってトランプ大統領の支持率を急落しており、11月の中間選挙で共和党に悪影響を与える可能性もある。

トランプ政権はレバノン紛争とイラン戦争を切り離そうと努めてきたが、イランはレバノンでの敵対行為の停止を和平合意の条件としている。先週火曜日、マルコ・ルビオ国務長官は複数の連邦上院議員に対して、「私たちはレバノンとイスラエルの協議をイランとは別個のものとして捉えようとしているが、イランはそれらを一緒にして混ぜてしまおうとしている」と語った。

トランプ大統領は、イスラエルがヒズボラに対する作戦をエスカレートさせていることに対し、ネタニヤフ首相への苛立ちを露わにしている。報道によると、トランプ大統領はレバノン情勢に関する最近の電話会談で、ネタニヤフ首相を罵倒し、感謝が足りないと非難したということだ。

しかし、ネタニヤフ首相には、より身近な問題も考慮しなければならない。支持率が低迷し、総選挙が目前に迫る中、自身の政治的将来を懸けて戦っているイスラエルの首相は、ヒズボラへの攻撃を継続し、攻撃を控えるよう求めるワシントンの要請を無視するよう、国内から強い圧力を受けている。

ヒズボラの攻撃を最も受けてきたイスラエル北部の住民は、特にネタニヤフ首相を批判しており、さらに強硬な姿勢を取るよう求めている。これはイスラエル全土で広く共有されている感情だ。5月下旬に国家安全保障研究所(イスラエル社会調査研究所)が発表した世論調査によると、イスラエル国民の過半数(59%)が、ヒズボラとの戦闘を強化すべきだと考えている。

トランプ大統領がネタニヤフ首相に対し、イランとの和平合意の可能性を損なわないようレバノンへの攻撃を控えるよう促したことは、イラン戦争とレバノン紛争の2つの問題が切り離せないというテヘランの立場を強めるばかりだ。そして実際、レバノン紛争とイラン戦争は根本的に結びついている。イスラエルとヒズボラは長年にわたり断続的に戦闘を繰り広げてきたが、今回の紛争はイラン戦争の勃発後に始まった。

イラン戦争の停戦合意が成立した当初から、レバノン問題がトランプ大統領にとって厄介な存在となり、最終的な合意の障害となることは明らかだった。アメリカとイスラエルが当初、レバノンを合意に含めることを拒否したため、停戦は崩壊寸前まで追い込まれた。イスラエルとレバノンは最終的に4月中旬に停戦協定に署名したが、情勢は依然として緊迫しており、ヒズボラとイスラエル軍の間ではその後も銃撃戦が続いている。

政治組織としても武装組織としてもレバノンで絶大な影響力を持つヒズボラは、武装解除の要求を拒否している。レバノン軍はヒズボラに武装解除を強要する能力がないと広く見なされており、ネタニヤフ首相はこれをイスラエル軍のレバノン駐留と活動継続の正当化の理由として挙げている。

前述のシェラは、「ネタニヤフ首相、そしてイスラエルが今理解しているのは、トランプ大統領にとって戦争は終わったということ、そして彼が今唯一気にしているのは、戦争終結を宣言できるようなイランとの何らかの和解だけだということだ」と述べている。

シェラによると、1月に当時のヴェネズエラ大統領ニコラス・マドゥロを拘束した作戦の成功後、トランプ大統領はイランで「容易な勝利(easy victory)」を収めるチャンスを見出したという。しかし、この「マドゥロ状況(Maduro situation)」は実現せず、トランプ大統領は関心を失い、次の段階に進みたいと考えているようだとシェラは付け加えた。だが、トランプ大統領以前の複数の米大統領が既に経験しているように、中東地域での戦争は容易には抜け出せない泥沼(quagmires)へと陥る傾向がある。

※ジョン・ホルティワンガー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@jchaltiwanger.bsky.social Xアカウント:@jchaltiwanger

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 古村治彦です。
 
 2026年6月14日、パキスタンのシャバズ・シャリフ首相が、アメリカとイランの間で継続されてきた和平交渉について「覚書(memorandum of understanding)」の内容に合意し、署名が実施されると発表した。その後、アメリカ側とイラン側でそれぞれ合意がなされたことが発表された。今週金曜日、2026年6月19日にスイスで署名式が開かれ、アメリカからはJD・ヴァンス副大統領が出席する可能性が高いとされている。今回の覚書は、停戦を60日間延長し、ホルムズ海峡の開放が実施され、イランの核開発に関する交渉が行われるということが主要な内容となっている。

 イラン側はこれまで、ホルムズ海峡の管理権と船舶の通行料徴収を強く主張してきたが、これまでのところ、これらの内容については詳細が伝わってきていない。核開発に関する交渉の内容もこれから詰められることになるが、バラク・オバマ政権時代の核開発に関する合意以上の内容にはならないことが予想される。アメリカはイランに対する制裁の緩和や介助を実施しなければならない可能性もがあり、そうなれば、アメリカ側の譲歩、敗北という評価が出てくるだろう。

 覚書発行によって全ての戦線での戦闘が停止されるとされている。これにはレバノンも含まれる。つまり、イスラエルによるレバノン攻撃が停止されるということだ。イスラエルはレバノンへの攻撃を継続し、イラン側はそれに対して、「戦闘を停止しなければ和平交渉は行わない」とアメリカ側に伝えてきた。アメリカのドナルド・トランプ大統領がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対して、怒りの電話をしたことはすでに報じられている。合意直前には、イランがイスラエルへの攻撃を計画しており、それが実施されれば交渉は行き詰まり、停戦も遠のくということで、アメリカ側は合意に向けて奔走し、最終的にはイランが攻撃を中止したことで、交渉は継続されて合意に至った。
 覚書の合意到達は喜ばしいことであるが、和平合意(agreement)には程遠い。要は停戦を60日間延長するということであり、アメリカとイランの間には合意に至っていない相違点があることをお互いが認めているという状態でしかない。もちろん、交渉が継続されるというのは大きいが、問題は、イスラエルという不確定、不安定、不誠実な要素が存在するということだ。イスラエルはイランの打倒をあきらめていない。アメリカが「損切り」で、勝手にイランと停戦することを認めないだろう。「自分たち(イスラエル)は覚書に拘束されない」「ヒズボラ側が攻撃を仕掛けてきた」という理由をつけて、イスラエルが攻撃を行うことは十分に考えられる。そうなれば、交渉は中断し、ホルムズ海峡の封鎖や再攻撃ということも考えられる。先行きは不透明であり、喜んでばかりもいられない。

 さらに言えば、トランプ大統領の「皆さん、おめでとう(Congratulations to all)」という無神経な書き込みは全く持って受け入れがたい。そもそも、トランプ大統領がネタニヤフ首相の口車に乗って、政権内で誰もが賛成していない(アホのピート・ヘグセス国防長官は除く)イラン攻撃を始めたのがそもそもの始まりだ。放火魔が他人の家に火をつけて、被害を出しておいて、「火が消えておめでとう」と言って、誰が「一緒に喜びましょう」となるか。トランプ大統領がなすべきは、全世界に自分の判断の誤りと不明を謝罪し、自ら引退を決定することだ。そして、イスラエルのネタニヤフ首相は戦闘行為を停止し、裁判所に出頭し、汚職やスキャンダルでの裁判で有罪判決を受け、その生涯を檻のついた獄で終わらせることだ。それが世界に対するけじめということになるだろう。お前が火をつけたんだ。

(貼り付けはじめ)

米イラン、戦闘終結で合意 19日の署名後、ホルムズ開放へ 「平和もたらす」とトランプ氏

時事通信 6/15() 6:43配信

https://news.yahoo.co.jp/articles/71464a2a8df4a1098836d1a9d10fe68485765d3e

 【ワシントン、カイロ、ニューデリー時事】トランプ米大統領は米東部時間14日夕(日本時間15日朝)、イランとの戦闘を終結する覚書について「合意が成立した」とSNSで発表した。

 署名式はスイスで19日に行われる予定。トランプ氏はイランが事実上封鎖する原油輸送の要衝ホルムズ海峡が署名後に「開放される」と強調した。

 交渉を仲介するパキスタンのシャリフ首相はX(旧ツイッター)で「米イランの和平合意が成立した」と発表。双方が、レバノンを含む全ての前線で軍事行動を「即時かつ恒久的に停止すると宣言した」と明らかにした。

 トランプ氏は合意について「地域全体に平和と安定をもたらす」と評価。ホルムズ海峡での通航料なしの自由航行を認め、米軍による海上封鎖の即時解除を承認すると表明した。「世界の船舶よ、エンジンを始動せよ。原油を流通させよう」とも呼び掛けた。海峡開放に伴い、機雷を除去する見通しも示した。

 バンス副大統領はFOXニュースに、署名式へ出席する予定で、トランプ氏も参加する可能性を示唆した。また、イランが核兵器を保有せず、開発や購入、調達をしない確約が合意に盛り込まれており、「イランが順守すれば中東を一変させる」と語った。

 イランで国防・外交を統括する最高安全保障委員会も覚書に合意したと発表した。同委は米国が「覚書の義務」を果たす必要性を強調。イランメディアによると、同国外務次官はイラン側の履行は署名後に始まるとの認識を示した。国営テレビは、イランの部隊と国民の不屈の精神と勇敢な抵抗により、米国は戦闘終結を受け入れざるを得なかったと伝えている。

 現時点で覚書の全容は明らかになっていない。シャリフ氏は署名式までに、仲介国を交えた一連の会合が開かれると表明しており、詳細を詰める作業が続く可能性もある。

 14日にはイスラエル軍が親イランのイスラム教シーア派組織ヒズボラの拠点を狙い、レバノン空爆に踏み切り、合意成立が危ぶまれた。ニューヨーク・タイムズ紙はイラン当局者の話として、イランが予告していたイスラエルへの報復を中止したと報じた。

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アメリカとイランが停戦延長と海峡の開放のための合意に達した(U.S. and Iran reach deal to extend ceasefire and open strait

バラク・ラヴィッド筆

2026年6月14日

『アクシオス』誌

https://www.axios.com/2026/06/14/us-iran-ceasefire-extended-hormuz-reopen-trump

アメリカとイランは、停戦を60日間延長する枠組みで合意した。金曜日に正式な署名式が行われ、その後に核に関する交渉が行われることになる。

●重要性(Why it matters):この合意はホルムズ海峡の航行再開、世界のエネルギー市場への圧力緩和、そしてイランの核開発計画に関する交渉の道を開くことになる。

・この覚書(memorandum of understanding)は、イラン戦争における最大の外交的突破口となり、未解決の核問題に関する交渉のための時間稼ぎ(buy time)を行えることになる。

●全体像(The big picture):この合意は、戦前は世界の石油と液化天然ガスの約20%を輸送していたホルムズ海峡の航行を回復することを目的としている。しかし、核に関する重要な問題は、今後2カ月間の交渉に任されることになる。

・海峡の完全な再開はすぐには実現しないだろう。戦前の航行量に完全に回復するまでに必要な、機雷除去(mine-clearing)、インフラの修復(repairing infrastructure)、そして安全確保(guaranteeing security)には時間がかかるだろう。

●ニューズの要点(Driving the news):パキスタンのシャバズ・シャリフ首相は日曜日、107日間に及ぶ戦争を経て、ホルムズ海峡の再開と核協議開始に向けた枠組み合意到達を発表した。

・ドナルド・トランプ大統領は、アメリカが間もなく海上封鎖を解除すると述べ、イランも海峡を再開し、その後、より詳細な核交渉が行われる見込みだと述べた。

・この合意は、パキスタンとカタールの仲介を経て、日曜日に電子署名される予定だったが、実際に署名されたかどうかはすぐには明らかになっていない。

●私たちが見ている現状(What we're watching):パキスタンのシャリフ首相と複数のイラン政府当局者は、正式な署名式は金曜日にスイスで行われると述べた。

トランプ大統領は、トゥルース・ソーシャルで、海峡の開放は「機雷除去のため、金曜日に合意が署名された後に行われる」と述べた。

・イランの最高国家安全保障会議(Supreme National Security Council)は、「レバノンを含む全ての戦線における戦争と軍事作戦は、今夜から直ちに、そして恒久的に終結する」と発表した。

・声明は続けて、「最終合意に向けた交渉は、相手側が覚書に基づく約束を履行した後にのみ行われる」と付け加えた。

●要約(Breaking it down):この合意では、アメリカとイランが60日間の猶予期間中に、イランの核濃縮と高濃縮ウランの廃棄について交渉することが求められている。

アメリカは、制裁緩和(sanctions relief)と凍結されているイランの資金の解放(the release of frozen Iranian funds)について協議する予定で、緩和はイランの合意遵守状況と連動すると見込まれている。

停戦は、日曜日に再び激化したレバノンのイスラエルとヒズボラ間の戦闘にも適用される。

現状:この合意は、緊迫した最終局面を経て成立した。イスラエルは署名予定の数時間前にベイルートのヒズボラの拠点を攻撃し、イランは合意からの離脱という脅しを使った。

・アメリカとイスラエルの複数の政府当局者によると、イランはイスラエルへの攻撃に向けた作戦準備を進めていた。

・アメリカの交渉担当者は、カタールとパキスタンの仲介者とともに、イランによるイスラエルへの攻撃を回避しようと奔走した。攻撃はイスラエルの厳しい報復を招き、合意を頓挫させる可能性が高かったが、イラン政府は最終的に攻撃を見送った。

彼らの発言(What they're saying):「イラン・イスラム共和国との合意は完了した。皆さん、おめでとう! 私はここにホルムズ海峡の通行料無料(toll free)を全面的に承認し、同時にアメリカ海軍による海上封鎖の即時解除を承認する。世界の船舶よ、エンジンを始動せよ」とトランプ大統領はトゥルース・ソーシャルに書き込んだ。

それよりも数分前、シャリフ首相は自身のXに、アメリカとイランの間で和平合意が「成立した(has been REACHED)」と投稿し、「双方はレバノンを含む全戦線における軍事作戦の即時かつ恒久的な停止を宣言した」と付け加えた。

シャリフ氏は、この合意は「既に成立している」と述べた。

Sharif said the deal was "now in place."

・イランのカゼム・ガリババディ外務次官はイランメディアに対し、覚書の本文が最終決定したと語った。

・ガリババディ次官によると、レバノンでの日曜日の情勢悪化を受けて、テヘランが覚書の本文に修正を求めた一部の修正案が受け入れられたという。

ガリババディ次官は、イラン軍の威嚇が「交渉の進展を促すことを助け("helped facilitate progress in the negotiations)」、「本文の最終決定に貢献した(contributed to finalizing the text)」と述べた。

ガリババディ次官は、今回の合意によって交渉中に未解決だったいくつかの問題が進展したと述べた。「軍は断固たる対応を取る準備ができていた(The armed forces were prepared to deliver a decisive response)」と述べた。

ガリババディ次官によると、合意文書に関する交渉はアメリカ東部標準時間午後5時頃まで続き、その15分後にシャリフ首相が合意を発表した。

●今後の展開(What's next):シャリフ首相は、パキスタンと他の仲介者が「今週中に一連の会合を仲介する」と述べ、その後技術協議を行う予定だと語った。

アメリカとイランの両国は、イランの高濃縮ウランの希釈方法、核開発計画の凍結と監視に関する技術合意に達するまで60日間の猶予を設けた。

詳細度の低い覚書の締結がいかに困難だったかを考えると、これは非常に難しい課題だ。

アメリカ側は、制裁緩和と凍結資金へのアクセス(access to frozen funds)は核開発の進展にかかっているため、イランは最終合意に達する動機があると主張している。アメリカとイスラエルの一部の強硬派は、最終的な合意は決して成立せず、核問題が解決されないまま戦争が終結するのではないかと懸念している。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 イスラエルはアメリカと共にイランに対して大規模攻撃を行い、イラン戦争が始まった。その後は、散発的に攻撃の応酬が行われているが、大規模な戦闘状態には至っていない。アメリカとイランの間で和平交渉が続けられているが(パキスタンの仲介であるが中国も大きな影響力を行使している)、和平合意に関しては、覚書の段階までは進んでいる。イラン側は、イスラエルが隣国レバノンへの攻撃を停止しない限り、交渉に応じないという通告をアメリカ側に行い、アメリカのドナルド・トランプ大統領が怒り狂って、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に電話をかけて、「あんたは狂っている」と述べ、イスラエルのレバノン攻撃を中止させたということは、このブログでもすでにご紹介した。
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 イスラエルが隣国レバノンに対して攻撃を行っているのは、同国に存在するイスラム教シーア派組織ヒズボラがイスラエル攻撃を継続しているからだ。ヒズボラは、レバノン内戦中の1982年に、内戦に介入していたイスラエル国防軍への抵抗として始まり、イランの支援を受けて拡大した。様々なテロ攻撃や武力攻撃を実施し、イスラエル国防軍をレバノンから撤退させることに成功した。ヒズボラ自体はイスラエルのせん滅を主張しており、イスラエルに対する攻撃を止めていない。イスラエルはこれまでもたびたび、ヒズボラを掃討するためにレバノンへの攻撃を実施しているが、成果は上がっていない。逆に、レバノン政府やレバノン軍を弱体化させることになり、ヒズボラの勢力を拡大させる結果となっている。
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 イスラエルは、今回のイラン攻撃と同時にレバノン南部を攻撃し、ヒズボラを掃討し、占領することで、イスラエル本土を防衛するということになっている。本来であれば、イスラエル国防軍が国境線まで撤退し、ヒズボラもレバノン南部から退去し、空白となったレバノン南部地域にレバノン軍が駐留することで安全が保たれるというかたちになるはずが、レバノン軍の実力不足もありそれもうまくいかない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は今回のレバノン攻撃で成果を挙げようとしているが、それも難しい。そうした中で、トランプ大統領から叱責されて、攻撃を中止しなければならなくなった。アメリカのトランプ政権としては、イランとの和平合意が優先される状況となっている。トランプ大統領がネタニヤフ首相にイラン戦争の責任を押し付けて逃げてしまうということも考えられる。そうなれば、ネタニヤフ首相の目論見は失敗する。そして、今年実施される議会選挙で敗北することになれば、以前からのスキャンダルに関する裁判も進められ、家族そろって服役ということにもなりかねない。ネタニヤフ首相の賭けの成否がどうなるかはこれから出てくることになるが、彼個人のことよりも世界の安定と平和こそが優先されるべきであるのは言うまでもないことだ。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプとイランの合意はネタニヤフ首相にトラブルをもたらす可能性がある(A Trump Deal With Iran Could Spell Trouble for Netanyahu

-イスラエルの指導者は重要な選挙を前に勝利を必要としている。

アーロン・デイヴィッド・ミラー筆

2026年6月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/06/01/trump-israel-iran-war-deal-election-netanyahu/

ドナルド・トランプ米大統領は、敵対国であろうと同盟国であろうと、自分の意向に従わなければ深刻な結果を招くと脅迫し、威圧することを常としている。これは「傑出した地位(bully pulpit)」のトランプ版と呼べるものだ。時にはそれが功を奏することもある。例えば、ベンヤミン・ネタニヤフ首相に対し、2025年10月に20項目からなるガザ和平案を受け入れるよう迫った際、トランプはイスラエルの指導者との交渉から離脱すると脅迫した。しかし、グリーンランド問題でヨーロッパ諸国に圧力をかけたり、イランにアメリカの条件を受け入れさせようとしたりした際には、うまくいかなかった。そしてもちろん、先週、オマーンに対し、ホルムズ海峡でオマーン首脳がトランプの意向に反する行動を取れば「爆破する(blow them up)」と脅迫したこともあった。

つい先週も、トランプはイスラエルに対して再び威圧的な発言をした。実際、トランプはイスラエルの指導者について、歴代米大統領が公の場で発言したことのないようなことを述べた。ネタニヤフ首相はイラン問題に関して「私が彼に対してやって欲しいと望むことは何でもするだろう(will do whatever I want him to do)」と述べたのだ。

ネタニヤフ首相に対するトランプ大統領の影響力は、特にネタニヤフ首相が権力維持のためにトランプ大統領の支持を必要としている現状において、非常に現実的なものと言えるだろう。トランプ大統領はイスラエル国内でネタニヤフ首相よりも人気が高く、もしトランプ大統領がネタニヤフ首相への支持を撤回したと見なされれば、10月の選挙で首相は敗北を喫する可能性がある。1991年、当時のイツハク・シャミル首相が占領地へのロシア系ユダヤ人移民の再定住を否定しなかったため、ジョージ・HW・ブッシュ(父)元大統領がシャミル首相に対し、彼らの受け入れのための住宅ローン保証を拒否したことを思い出して欲しい。この決定はシャミル首相の政治的立場を弱め、1992年の選挙でイツハク・ラビン首相に敗北する一因となった。ラビン首相はその後数カ月もしないうちに住宅ローン保証を獲得した。

トランプ大統領がネタニヤフ首相の1期目に与えた数々の恩恵イェルサレムをイスラエルの首都と承認、在イスラエル米大使館のイェルサレム移転、ゴラン高原に対するイスラエルの主権承認、そして継続的な軍事支援は、ネタニヤフ首相が強固なアメリカ・イスラエル関係を維持する上で不可欠かつ他に類を見ない人物であるというイメージを作り上げた。

しかしながら、現在、ネタニヤフ首相の弱点、特にヒズボラ、ハマス、そしてイランを鎮圧​​できない現状を考えると、彼はトランプ大統領の積極的な支援を必要としている。トランプ大統領はネタニヤフ首相を直接首相として選ぶことはできないが、トランプ大統領の支援と、ネタニヤフ首相を強固なアメリカ・イスラエル関係に不可欠な存在として位置づける姿勢がなければ、ネタニヤフ首相の弱点は飛躍的に増大するだろう。

アメリカとイランの交渉が覚書締結(a memorandum of understanding)に向けた最終局面を迎えており、トランプ大統領の交渉力のテスト結果が間もなく明らかになるだろう。現状の見通しに基づけば、トランプ政権が採用しているアプローチは、ネタニヤフ首相とアメリカ国内のトランプ反対派の双方にとって不利なもの(a lose-lose)と映るだろう。

イラン政権は前政権よりも強硬な姿勢を維持し、政権転覆[体制転換]regime change)のための条件は一切浮上してこない。政権の結束は強まり、イランがアメリカによる大規模攻撃を乗り越え、将来的に自由に使える新たな武器、すなわちホルムズ海峡を封鎖しペルシア湾岸諸国の脆弱性を露呈させる能力を手に入れたことで、アメリカの抑止力(deterrence)は弱まっている。同様に、現時点でアメリカがイランの損傷した核インフラに深刻な制限を課すことができるという証拠もない。

ネタニヤフ首相にとって残念なことは、戦争の始まり方、理由、時期については彼が大きな影響力を持っていたとしても、終結の仕方や時期について発言権を持つ可能性は極めて低いということだ。覚書が予想通りに進めば、停戦によってあらゆる問題に対処するための交渉期間が設けられ、アメリカとイスラエルによる攻撃再開の可能性はなくなるだろう。

ホルムズ海峡が段階的にでも開かれ、アメリカの封鎖が解除されれば、責任のなすりつけ合いが始まる。ネタニヤフ首相は不満を募らせるだろうし、一方、名前は明かされていない側近たちは、アメリカが政権交代を成し遂げられなかったのは意志の欠如(a lack of will)が原因だと主張するだろう。トランプ大統領は、ネタニヤフ首相が戦争終結の合意を台無しにすることを許さないだろうし、特にレバノンにおけるイスラエルの行き過ぎた行動を非難することで、アメリカ国内の批判から身を守ろうとするだろう。トランプ大統領は、ネタニヤフ首相からの反発や、アメリカ軍の介入を招く恐れのあるイスラエル軍のさらなる行動を一切容認しないだろう。トランプ大統領は、イスラエルがドーハにあるハマスの外部指導部を爆撃した後、ネタニヤフ首相に強硬な姿勢を示したことを思い出して欲しい。トランプ大統領がネタニヤフ首相から戦争再開を促されることはないだろう。このシナリオにおいて、イスラエル首相にとって唯一の現実的な希望は、イランがやり過ぎて交渉が決裂することだけだ。

レバノン情勢はネタニヤフ首相にとっても悪い結果に終わる可能性が高い。ヒズボラは停戦協定を遵守せず、武装解除も行わず、イスラエルが想定していたよりも速いペースで、より強力な勢力へと回復している。レバノン政府は、特にワシントンの仲介の下でイスラエルと直接会談する姿勢など、以前よりも強硬な姿勢を見せているが、ヒズボラを武力で武装解除する考えと能力は持ち合わせていない。イスラエルはレバノン南部の一部を占領し、さらに多くの村に避難命令を出し、ヒズボラ攻撃の過程でレバノン市民を殺害することで、事態を悪化させている。攻撃的な軍事行動はイスラエル、特にイスラエル北部国境地帯の住民の間では人気が高いものの、レバノン政府を窮地に追い込んでいる。

最大の焦点は、レバノンがアメリカ・イラン間の駆け引きにどのような影響を与えるかである。これまでトランプ政権は、イスラエルがレバノンでの軍事作戦を継続する余地を与えてきた。しかし現在、イランが、イスラエルがレバノンとの停戦を受け入れない限り、アメリカとの交渉を停止すると決定したことを受け、トランプ大統領はネタニヤフ首相に電話をかけ、ベイルート地域へのイスラエル軍の攻撃を停止するよう強く求めた。これは、イランとアメリカが合意に達した場合に起こりうる事態を示唆している。実際、覚書が実現し、イランがレバノンでの真の停戦を条件とした場合、トランプ大統領は躊躇なくネタニヤフ首相に譲歩を迫るだろう。ネタニヤフ首相は従う以外に選択肢はないだろう。

トランプ大統領は最近、その影響力を駆使して、イランとの合意と湾岸諸国のアブラハム合意への参加を結びつけようとした。しかし、この結びつきは湾岸地域の現実とはかけ離れており、誰もその意図を理解できない。トランプ大統領は、イランとレバノン問題でイスラエルに圧力をかける必要が生じた場合、この要求が国内の批判から身を守る手段になると考えているのかもしれない。

しかし、ヨルダン川西岸地区を併合し、レバノンの一部を占領し、ガザ地区で新たな大規模軍事作戦の準備を進めているように見えるイスラエル政府に、湾岸諸国が自らを縛り付ける可能性はまったくない。イスラエルとの関係を強化しているように見えるアラブ首長国連邦(UAE)を除けば、他の国々、特にサウジアラビアにとって、ネタニヤフ政権との緊密な関係は最も望ましくない。

つまり、トランプ大統領の威圧的な言動、脅迫、そして影響力行使は、必ずしも良い結果をもたらしたとは言えない。トランプ大統領は未だイランとの合意を成立させておらず、イランの瓦礫の下に埋まっている高濃縮ウランの将来についても明確な答えを持っておらず、ホルムズ海峡におけるイランの影響力拡大を招き、ガザ地区の「平和委員会(Board of Peace)」もハマスの武装解除に失敗している。ヨルダン川西岸地区では圧力が日々高まっているが、驚くべきことに、トランプ大統領や和平交渉担当者たちはこの状況を懸念していないようだ。

イランとの合意が実現した場合、トランプ大統領によるイスラエルへの圧力に歯止めはかかるだろうか? イスラエルへの圧力は、特に中間選挙が近づくにつれ、イスラエルを支持する共和党支持者を怒らせる可能性がある。しかし、トランプ大統領は何よりもまず自分のことしか考えておらず、中間選挙など気にしないとまで言っている。トランプ大統領が唯一懸念するのは、イランに損害を与えたかもしれないが、戦争には負けたと主張する人々からの反発だろう。左派は戦争を始めたことで彼を非難し、右派の一部は戦争に負けたと非難する中で、トランプ大統領は他者に責任を押し付けようとするだろう。その標的の最有力候補はネタニヤフ首相かもしれない。

※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和財団上級研究員であり、共和党政権と民主党政権の両方で米国務省の中東アナリスト兼交渉官を務めた経歴を持つ。著書に『偉大さの終焉:なぜアメリカはもう偉大な大統領を持てないのか(そして望まないのか)(The End of Greatness: Why America Can’t Have (and Doesn’t Want) Another Great President)』がある。Xアカウント:@aarondmiller2

※ダニエル・C・カーツナー:駐エジプト米大使、駐イスラエル米大使を歴任。プリンストン大学公共・国際問題大学院で外交と紛争解決について教鞭を執っている。Xアカウント:@DanKurtzer

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イスラエルのレバノン戦略は自滅的だ(Israel’s Lebanon Strategy Is Self-Defeating

-弱体化した国家はヒズボラを武装解除することはできない。

スティーヴン・サイモン筆

2026年5月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/14/israel-hezbollah-trump-iran-lebanon/

イスラエルのレバノン政策の中核には、矛盾した主張が存在する。それはあまりにも日常的になりすぎて、ほとんど気づかれないほどだ。イスラエルは、レバノン国家がヒズボラを武装解除し、自国領土に対する主権を確立しなければならないと正しく主張する。しかし、その一方で、レバノン国家がそれを実行できないように、あらゆる手段を講じる。レバノン軍(the Lebanese Armed ForcesLAF)へのアメリカ軍支援を妨害し、統治機構のインフラを攻撃し、南部におけるレバノン政府を支援する唯一の国際部隊を弱体化させるのだ。

レバノンの失敗を招く状況を作り出したイスラエルは、レバノン自身では対処できないと主張し、イスラエルが代わりに対処しなければならないと訴える。これは、強大な成果を要求する一方で、それを達成するための唯一の現実的な手段を無力化するという、矛盾した政策である。

これが自滅的な戦略であるからといって、イスラエルの根底にある戦略目標が不当であるとは限らない。もしカナダが、アメリカと国境を接していないものの、アメリカ人の殺害に強い関心を持つ遠方の勢力から資金援助と装備を受けた、重武装した過激派組織を匿っていたとしたら、ワシントンはカナダの主権を過度に懸念することはなく、あらゆる手段を用いてその脅威を排除しようとするだろう。

これはイスラエルがヒズボラに対して取る姿勢とほぼ同じであり、特に2023年10月7日の直後、そしてその後ヒズボラが行った、大部分はパフォーマンス的なハマスへの連帯表明キャンペーンにおいては、この対称性を念頭に置くことが不可欠である。最初の数週間、ヒズボラはロケット弾、迫撃砲、対戦車ミサイル、狙撃、ドローン、そしてイスラエルの監視システムへの攻撃を行った。交戦は続いたものの、ほとんどは国境付近に限定されていた。イスラエルは北部の多くの地域から住民を避難させ、南部のレバノン住民も国境沿いの村々から避難し始めた。

当時のヒズボラ指導者ハッサン・ナスララは、10月7日以降初めてとなる主要演説を2023年11月3日に行い、その姿勢を明確にした。彼は、ハマスの攻撃は「100%パレスティナ人によるもの」であり、ヒズボラの戦線は継続し、ガザ地区とイスラエルのレバノンに対する行動次第ではエスカレートする可能性があると述べた。その時点で、ヒズボラとイスラエルは10月8日から交戦を続けており、55人以上のヒズボラ戦闘員が死亡し、ヒズボラはまだ保有する兵器のごく一部しか使用していなかった。

ヒズボラは単なるレバノンの民兵組織ではなく、イスラエルに対するイランの抑止力の中核を成す存在であり、イランはイスラエルの人口密集地を危険に晒し、イランの核施設への攻撃を困難にするためにヒズボラを支援している。ヒズボラの解体は長年にわたりイスラエルの戦略的優先事項であり、10月7日の事件とその後の出来事は、その動機ではなく、むしろ引き金となった。

問題は、イスラエルが実際にこの目標を達成できるかどうかである。2年前、今回の作戦とほぼ同じような作戦が行われた際、ヒズボラは損害を受けたものの、組織自体はほぼ無傷で、再編成が可能であった。歴史的背景は示唆に富む。2006年の戦争終結から10月7日まで、イスラエルとレバノンの国境は、この地域の基準からすれば平穏であった。構造的な対立は消え去った訳ではないので平和とは言えないが、双方にとって、敵対行為を開始すれば容易に吸収できないほどの代償を払うことになると判断し、安定の方が望ましいと考えるほどに安定していた。

イスラエルは当時、ヒズボラがもたらす脅威に無関心だったということではなかったが、イランの前方抑止力が活動を停止している間はそれを容認し、動員される瞬間に備えて周到な準備を進めていた。ヒズボラの通信網への情報浸透、トンネル網のマッピング、上級司令官への標的設定、そしてポケベル攻撃の準備には数年を要した。

これは、イスラエルの計画立案者たちが10月7日以前から、ヒズボラに許容範囲内のコストで深刻な打撃を与えることができると確信していたにもかかわらず、北部の安定がイスラエルの国益に十分貢献していたため、攻撃を控えていたことを示唆している。ガザ地区におけるイスラエルとハマスの戦争は、この判断を覆し、行動を起こす口実と国内からの圧力をもたらしたが、この決断は必然的なものではなかった。

ここで再び循環論(circularity)に戻る。武装解除が成功するには、3つの条件が揃う必要がある。すなわち、国家または合意が、要求を信憑性のあるものにするだけの正当性(legitimacy)、それを強制するだけの強制力(coercive capacity)、そして武装集団の支持者からの反発を吸収または管理するだけの政治的権威(political authority)を備えていることだ。

比較事例がこれを裏付けています。アイルランド共和軍(Irish Republican ArmyIRA)は、ベルファスト合意(グッドフライデー合意)によってシンフェイン党が憲法上の政治に定着し、検証メカニズムが構築され、IRAが活動する安全保障および政治環境が変化した後になって初めて武装解除した。

コロンビア革命軍(Revolutionary Armed Forces of ColombiaFARC)は、武装解除と移行期正義、社会復帰、政治参加、国連監視を組み合わせたコロンビア和平協定によって武装解除したが、反体制派は存続した。インドネシアのアチェ分離主義者は、自治、恩赦、社会復帰、地域政治への参加、国際監視を約束する合意の後、インドネシア国家の残存する強制力に支えられ武装解除した。

国家の正当性、強制力、政治的権威という3つの前提条件のうち、どれか1つでも欠ければ、和平構想は崩壊する。レバノン政府は、分裂状態にあり、財政的に破綻し、2020年のベイルート港爆発と長年にわたるエリート層の略奪行為によって国民の信頼を壊滅的に失墜させており、既にこれらの条件を満たす水準をはるかに下回る状態で運営されていた。2019年には約20億ドルだった国防予算は、金融危機を受けて2020年には約4億3200万ドルにまで激減し、2023年になっても2億4000万ドルにまでしかならなかった。

名目上は約8万人の兵力を有しているが、慢性的な低賃金と基本的な装備を外国からの援助に依存しているレバノン軍(Lebanese Armed ForceLAF)は、広く用いられているある指標では世界118位にランク付けされている。これは、ヒズボラのような脅威とは比べものにならない国々よりも低い順位だ。ヒズボラは全盛期には、ヨーロッパのNATO加盟国の大半よりも多くの精密誘導ミサイルを保有していた組織だった。

イスラエルは、この既に脆弱な状況をさらに悪化させる一連の政策を導入した。長年にわたり、イスラエルはレバノン軍(LAF)への強力な軍事支援に反対するロビー活動をワシントンに対して行い、LAFの強化をヒズボラへの対抗勢力ではなく、潜在的な脅威とみなした。イスラエルは、レバノン軍がヒズボラの影響を受けずに独立して活動してきた実績を軽視し、ワシントンが本来提供するはずだった支援の流れを遅らせ、制限することに成功した。

2006年以降、アメリカはレバノン軍(LAF)に対し、軍事資金と装備を含め約25億ドルの支援を行ってきた。これは20年近くにわたる巨額の支援であったが、結果として、レバノン軍は旧式の装備、生活のために副業をせざるを得ないほど低い給与、そして防空能力の欠如という問題を抱えることになった。

同時に、イスラエルは国連レバノン暫定軍(the United Nations Interim Force in LebanonUNIFIL)の弱体化を図るべく積極的な行動をとった。UNIFILは、レバノン政府が南部で権限を行使するのを支援するために1978年に設立された、約8000人規模の国連平和維持軍(U.N. peacekeeping force)だ。イスラエル軍は2024年の作戦中にUNIFILの陣地を直接攻撃し、同時にアメリカの支援を受けてUNIFILの任務縮小を働きかけ、これを成功させた。

2024年の最初の停戦後、この状況を打破する真の、しかし限られた機会が訪れた。イスラエルがヒズボラに与えた制裁は、ヒズボラのレバノン南部における勢力を弱体化させ、国連安保理決議1701号の本格的な履行に向けた真の余地を生み出した。ジョー・バイデン政権はこの好機を認識していたものの、必要なエネルギーをもって行動することができなかった。

ジョー・バイデン前米大統領とそのティームは、イスラエルによるレバノン政府への軽蔑(Israeli contempt for the Lebanese government)にあまりにも迎合し、停戦が名目上有効である間、イスラエルが自衛を名目に攻撃や地上作戦を継続するのを黙認した。また、ヒズボラがレバノン南部で勢力を再構築する前に、レバノン政府がレバノン軍部隊を南部に大量投入することを可能にするような、ヨーロッパや地域の各種と、そしてイスラエル国内での持続的な外交キャンペーンを展開する勇気を持たなかった。

バイデン政権末期、ワシントンは停戦履行支援のため、レバノン軍(LAF)に約1億1700万ドルを急遽拠出した。この金額は、その運用上の価値はともかく、最も重要な局面において、レバノンの能力構築がいかに不十分であったかを浮き彫りにした。

ドナルド・トランプ米大統領の特使トム・バラックは、この問題を理解しているようで、段階的な武装解除計画を支持した。この計画では、ヒズボラが2025年末までに武装解除する代わりに、イスラエル軍の作戦停止とレバノン南部からの撤退が約束されている。バラックは「レバノン政府は自らの役割を果たした。今必要なのは、イスラエルがこの平等な約束を果たすことだ」と述べた。

アメリカが作成したロードマップは、バイデン政権によって完全には公表されなかった。レバノンによるヒズボラの武装解除とイスラエル軍の撤退および空爆停止を結びつけるものだったと報じられている。これは慎重かつ賢明なアプローチだった。なぜなら、ヒズボラに対する本格的な行動によって、レバノンが内政崩壊を起こしてしまうことを避けなければならなかったからだ。

これが真にアメリカの政策であったかどうかはともかく、イランとの核交渉とトランプ政権の戦争を経て、その政策はもはや通用しなくなった。イスラエルの黙認には代償が伴った。レバノンへの継続的な戦争は、その代償の一部だったようだ。

レバノンはこの作戦によって壊滅的な打撃を受けるだろう。一方、ヒズボラは損害を受けながらも壊滅には至らず、これまでと同様に再編成されるだろう。そして、イスラエル北部は依然としてヒズボラの兵器の射程圏内に留まることになる。最終的に行き詰まるであろう状況は、2000年5月の状況を不気味なほど彷彿とさせるだろう。当時、イスラエルは20年近くにわたる占領の後、政治的目的を何一つ達成することなく撤退した。そして、その占領の残虐行為によって、後に自らが排除することのできない勢力を育んでしまった。

こうした状況は必ずしも不可逆的なものではない。だからこそ、機会の浪費(the waste of opportunities)がこれほどまでに苛立たしい。トランプ大統領はいつものように「トゥルース・ソーシャル」で、イスラエルはレバノンへの爆撃を「禁止されている(prohibited)」と宣言し、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と米国務省を驚かせた今回の停戦は、狭き門ではあったものの、確かに突破口となった。

トランプ政権は、この投稿とその後の声明を通して、レバノン問題には別途対処し、ヒズボラ問題にはイスラエルの空爆以外の手段で取り組む意向を示している。そのシグナルが、首尾一貫した持続的な政策へと結びつくのか(現トランプ政権にそれを期待するのは少々無理があるように思えるが)、それとも過去の同様のシグナルのように消え去ってしまうのか、それが全ての決定的な問題となる。

真剣なアメリカの取り組みは、まず多国間監視メカニズムを通じて停戦を安定させることから始まるだろう。このメカニズムは十分な実効性と国際的な支持を備え、違反行為が全ての当事者にとって政治的に大きな代償を伴うものとなるように設計されている。レバノン軍(LAF)の再建は後回しにされるものではなく、レバノンにおけるアメリカの政策の中核的な目標として位置づけられ、レバノン軍がレバノン南部を確実に占領できるレヴェルまで、体系的に装備、資金、組織体制を整える必要がある。

そして、国連レバノン暫定軍(UNIFIL)の任務を縮小する方向へ向かう現状の流れを、まさにその存在が最も重要な時期に継続するのではなく、ニューヨークで持続的な外交努力を展開し、UNIFILの任務を更新、資金援助、強化する必要がある。さらに、湾岸諸国、ヨーロッパのパートナー諸国、そして多国間機関から国際的な資源を動員し、戦闘によって破壊された国境両側の町々の復興を支援する必要がある。

そして、ヒズボラの特異な地位をレバノン独自の憲法秩序に適合させるためのレバノン政府の取り組みを強く支持するとともに、より安定した南部が最終的に実現するであろうイスラエルとレバノンの直接的な外交関係を促進するだろう。

異なる結果をもたらす手段は存在する。少なくともアメリカ側に欠けているのは、それらを一貫して用いる意志と、イスラエルが望む政治的結果を爆撃によって達成することはできないという認識である。トランプ政権がそのような取り組みを開始し、維持するための集中力、能力、そして意欲を持っているかどうかは、控えめに言っても自明ではない。しかし、もしトランプ大統領が本当に「新たな中東の歴史的な夜明け(the historic dawn of a new Middle East)」をもたらそうとするならば、レバノンにおける今後の道筋は決して不可解ではない。

※スティーヴン・サイモン:ダートマス大学特別研究員兼客員教授。著書に『大いなる妄想:中東地域におけるアメリカの野望の興亡(Grand Delusion: The Rise and Fall of American Ambition in the Middle East)』がある。アメリカ政府に20年間勤務し、国務省と国家安全保障会議で要職を歴任。Xアカウント:@sns_1239

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2026年2月28日にアメリカとイスラエルによる大規模攻撃によって開始されたイラン戦争は、4月に停戦合意が結ばれ、その後は散発的に攻撃が行われているが、大規模な戦闘状態にはなっていない。ホルムズ海峡をイラン側、アメリカ側双方がコントロールするべく封鎖し、お互いの許可がない船舶に対しては攻撃が実施されている。石油価格の高騰や物資不足は世界規模で発生している。そうした中で、和平に関する「覚書(Memorandum of UnderstandingMOU)」への署名が早期に行われると報道されている。

 交渉の最大の焦点はホルムズ海峡の再開だ。イラン側は通行料徴収を継続したいが、アメリカ側は自由な航行を確保したいということで折り合いがつかなかった。イランとしてはホルムズ海峡の通糊料徴収を行いたい意向で、アメリカ側はそれに妥協するかどうかだ。アメリカ自体は中東地域からの石油に依存していないが、西側諸国は中東からの石油に依存していることもあり、ここで譲歩できる稼働は不透明だ。しかし、60日間の交渉期間でイラン側には一時的に制裁が解除されることになっている。そして、復興資金や即時現金給付がイラン側に支払われるということになっている。これが実質的な通行料の代替になる可能性とされ、合意に至る可能性もある。

 イランの核開発については、イラン国内で高濃度ウランの希釈を行い、その後に国外に運び出すということになっているようだ。トランプ大統領は現在イラン国内にあるウランに関してはイラン国内にとどめておくことに同意しており、イラン国内での処理で同意している。イランは繰り返し、核兵器開発は行わないとしており、核開発とウランに関しては合意に障害はないように思われる。

 イランとの合意内容について、アメリカ国内の対イラン強硬派は反発を強めている。確かに、彼らの視点(イランは武力で打倒すべき対象だ)からすれば、大幅な譲歩であり、実質的には敗北に近い。イランの体制を保証するような内容になることは、対イラン強硬派にとって受け入れがたいものとなるし、そもそもがイランと交渉をして、取引を行うことが許せないということになる。対イラン強硬派はトランプ大統領を支持してきた人々である。彼らからの反発はトランプ大統領にとっては痛手であるが、痛撃というほどのことはない。アメリカ国民の過半数がイラン戦争に反対している中で、イラン戦争終結に向けた動きを進めているのは国民の声に従っているということになる。

 イスラエルの存在も交渉にとっては難しい存在である。イラン側はイスラエルのレバノン攻撃停止を交渉の条件としている。トランプ大統領はイスラエルの動きに激怒し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相を怒鳴りつけたということはすでにご紹介した。ヴァンス副大統領も3月の時点でネタニヤフ首相を電話会談で厳しく批判した。ネタニヤフ首相はレバノンへの攻撃を一時的に停止したが、レバノンの新イランのシーア派組織ヒズボラ解体を目指し、攻撃を続けることになるだろう。そうなれば、イラン側としては、「停戦条件違反」ということになり、合意からの離脱を行い、ホルムズ海峡封鎖を実施することになるだろう。アメリカとしてはイスラエルを止めたいところだが、このブログでも紹介している通り、イスラエルはアメリカの力で止めるには大きくなり過ぎた。

 今回の「覚書(Memorandum of UnderstandingMOU)」という形式は、合意(Agreement)からは一段落ちることになる。「この点は合意しました。この点は双方に相違点があることを理解し、明記します」という形式で、相違点についてはこれから交渉を続けることに合意するというものだ。法的拘束力がどうしても弱い。また、現在残っている相違点は、数カ月間の交渉でも合意に至らなかった「難所」である。完全な合意に向けては困難が待ち構えている。

(貼り付けはじめ)

詳細が明らかになりつつあるイランとの合意に対して批判が強まっている;知っておくべき5つのポイント(Knives come out for emerging Iran deal: 5 things to know

コリン・メイン、マロリー・ウィルソン筆

2026年6月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5921933-us-iran-agreement-details/

ドナルド・トランプ大統領は木曜日、ワシントンとテヘランの間で早ければ今週末にも署名される可能性があると述べた合意の詳細が明らかになるにつれ、対イラン強硬派がすでに警戒の目を向けている。

ワシントンの強硬な反イラン系シンクタンクである民主政治体制防衛財団(the Foundation for Defense of DemocraciesFDD)に所属する元財務省高官ミアド・マレキは、「イランとのいかなる合意も、交渉力が喪失すること(the leverage is out the window)意味する」と、ソーシャルプラットフォーム「X」への投稿の中で述べた。

トランプの他の著名な支持者で、戦争を支持してきたリンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)、FOXニューズの司会者マーク・レヴィン、『ワシントン・ポスト』紙のコラムニストでるマーク・ティーセンといった人々は、報道された内容に懸念を表明しつつ、より詳細な説明を求めている。

トランプ大統領は木曜日の朝、14項目からなる覚書を詳述したイランメディアの報道を否定した。

「イランのメディアが報じているいわゆる合意は虚偽(fake)だとトランプ大統領から聞いて私は大変喜んでいる。イラン側が述べている合意はひどいものになるだろうから(大統領がそれを否定してくれて)」とグラハムはXに投稿した。

これまでのところ、渡地たちが把握している合意内容は以下の通りだ。

(1)核兵器に関する約束は依然として曖昧だ(Nuclear commitments remain vague

金曜日、あるアメリカ政府高官は、合意に基づき、イランの高濃縮ウランは廃棄され、イランは核兵器を保有しないという長期的な約束をする可能性があると述べた。

イランは以前から核兵器開発を目指さないと表明しており、バラク・オバマ政権時代の合意でもまさにその約束をしていたが、トランプ大統領は1期目にこの合意から離脱した。

より重要なのは、イランが合意に基づきどのような行動を約束するかである。

トランプ大統領は、イランが兵器となるウランの備蓄を引き渡すことは交渉におけるレッドライン(最低ライン)だと述べているが、イランは今のところこれを拒否している。

妥協案となるであろうアイディアとしては、イラン国内で核物質を希釈、つまり「ダウン・ブレンディング(down-blending)」して、核兵器に使用できないようにすることだ。

しかし、トランプ大統領は木曜日、当面は地下に核物質を放置しておくことにも異論はないと示唆した。

トランプ大統領は大統領執務室で記者団から核物質に関する確約を得たのかという質問をされた。これ対して、「山の下に埋まっているから、誰も近づくことはできない」と答えた。

トランプ大統領は以前、昨年夏のアメリカとイスラエルによる空爆で激しい攻撃を受けた地下核施設からイランが核物質を回収しないよう、アメリカはイランを監視していると述べていた。

(2)制裁緩和に関する混乱したシグナル(Mixed signals on sanctions relief

複数のアメリカ政府当局者は、イランが特定の措置を履行するまで、資産凍結は解除されず、資金も受け取れないと述べている。

算定合意に関して、「イランが履行するまで、資金は一切解放されない」とあるアメリカ政府高官は木曜日に「ニューズネーション」に対し語った。

しかしながら、『アクシオス』誌によると、この合意は、現在進行中の交渉を待つ間、イランの石油輸出に対するアメリカの制裁を60日間免除するという内容が入っている。

これは、ホルムズ海峡におけるアメリカの封鎖によって麻痺状態に陥っているイランのエネルギー市場にとって極めて重要な経済的生命線(economic lifeline)となるだろう。

マレキは、60日後に制裁を再発動することは困難であり、アメリカは「60日間の猶予期間が失敗に終われば、外交的影響力が低下し、制裁執行姿勢も一時的に弱まる」と警告した。

イラン国営メディアは、この合意によってイランは復興資金(reconstruction money)として3000億ドル、さらに240億ドルの即時現金給付(an immediate cash)を受けることになると報じた。

トランプ大統領は木曜日、トゥルース・ソーシャルでこれらの報道を真っ向から否定したが、どの部分が事実と異なるのかは明言しなかった。

(3)ホルムズ海峡が再開される(Strait of Hormuz reopens

いかなる合意も、戦争と不安定な停戦期間中にほぼ閉鎖されていた重要なエネルギー回廊(the key energy corridor)であるホルムズ海峡の船舶航行の再開を双方が認めることを前提とするのはほぼ間違いないだろう。

『アクシオス』誌によると、現在の合意案では、イランは30日以内に通行料なしでホルムズ海峡を完全に再開する。その見返りとして、アメリカはイランの港を出入りする船舶に対する封鎖を解除する。

イラン国営メディアは、イランがホルムズ海峡の支配権を公式に放棄することはないだろうと報じている。いずれにせよ、イランはここ数カ月、ホルムズ海峡を封鎖し世界のエネルギー供給を混乱させることで、絶大な影響力を行使できることを証明してきた。

対イラン強硬派は、イランに再開条件を提示するのではなく、トランプ大統領にホルムズ海峡を武力で封鎖解除するよう強く求めている。アメリカはここ数週間、100隻以上のタンカーについて、密かに海峡を通過させているが、これは通常の航行量のごく一部に過ぎない。

エネルギー価格の高騰が3年ぶりの高インフレを招き、世界的な原油在庫の枯渇が経済苦境をさらに悪化させる恐れがあるため、トランプ大統領に対しては合意形成を求める国内からの圧力が高まっている。

トランプ大統領は、ホルムズ海峡が再開すればガソリン価格は急速に下落すると主張しているが、エネルギー専門家たちは、アメリカが戦前の水準にすぐに戻る可能性は低いと指摘している。

(4)いつどこで署名されるか(When and where

トランプ大統領は木曜日、記者団に対し、合意の署名は早ければ週末にも行われる可能性があり、場所はおそらくヨーロッパになると述べた。

トランプ大統領は出席できないと述べ、代わりにJD・ヴァンス副大統領を派遣するとした。また、義理の息子であるジャレッド・クシュナーと特使のスティーヴ・ウィトコフが合意に向けて「素晴らしい仕事をした(great job)」と称賛した。

合意はヨーロッパで署名される可能性もあるが、イランはパキスタンが交渉で中心的な役割を果たし、過去の協議を主催したことから、この暫定合意を「イスラマバード宣言(the Islamabad declaration)」と呼んでいる。

事情に詳しいある外交官がニューズネーションに語ったところによると、カタール代表団は水曜夜遅くまでテヘランで交渉を続け、最終的にアメリカとイランの最高指導者が受け入れ可能な文言で合意に達したという。

金曜日の報道によると、覚書の署名式はジュネーブで行われることが検討されている。ジュネーブは、トランプ大統領とアメリカ代表団が来週フランスで開催されるG7サミットに出席する場所から離れていない。

トランプ大統領は日曜日、ホワイトハウスでUFCイヴェントを開催し、誕生日を祝う予定だ。

(5)攻撃は継続する(Strikes continue

トランプ大統領が合意に楽観的な見方を示しているにもかかわらず、ある国防総省当局者によると、アメリカ軍は木曜夜、海峡で船舶を標的にしていたイランの攻撃ドローン2機を撃墜した。

大統領は金曜、自身のソーシャルメディアのトゥルース・ソーシャルへの投稿でこの行動を批判し、イランが国営メディアを通じて発表した合意内容も非難した。

「彼らとは誠意をもって交渉するなどということはあり得ない。“驚きだ!”」とトランプは書き込んだ。「さらに、昨夜ホルムズ海峡を出港するインド船に対するドローン攻撃は完全に撃退されたが、“これは全く容認できない”。彼らは“すぐに”態度を改めるべきだ!」。

トランプ大統領は木曜日、イランへの攻撃を示唆し、カーグ島と石油関連施設を次の標的にすると警告していた。しかし、同日中にこの脅迫を撤回し、両国は和平合意に近づいていると述べた。

今回の攻撃は、アメリカ軍アパッチヘリコプター撃墜事件を受けてアメリカが火曜日と水曜日にイランを攻撃したのに続き、今週3度目の攻撃となるはずだった。

イラン最高指導者直属の準軍事組織であるイスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard Corps)は、これらの攻撃への報復として、ヨルダン、クウェート、バーレーンのアメリカ軍基地を標的にしたと発表した。

=====

戦闘終結に向けた合意はホルムズ海峡の再開につながるとイランは述べている(Deal to end fighting would lead to Hormuz reopening, Iran says

ガリー・オドネル(北アメリカ担当上級特派員、ワシントンDC)、オリヴィア・アイルランド筆

2026年6月12日

BBC
https://www.bbc.com/news/articles/c39y02x98k8o

イラン外相は、アメリカとの間でイラン戦争終結に向けた合意が間近に迫っており、ホルムズ海峡の再開も含まれると述べた。

セイイェド・アッバス・アラグチ外相は国営テレビに対し、合意にはアメリカによるイランへの海上封鎖解除も含まれるが、イランの核開発計画に関する協議は後日開始されると語った。

複数のアメリカ政府当局者は合意内容の一部を確認し、イランへの経済的利益はテヘランが義務を履行するかどうかにかかっていると述べた。

イラン戦争は2月28日、アメリカとイスラエルによるイラン全土への空爆で始まり、これを受けてイランはイスラエルとペルシア湾岸のアメリカの同盟諸国を攻撃し、世界の石油と液化天然ガスの主要輸送路であるホルムズ海峡を事実上封鎖した。

4月に停戦合意に至ったにもかかわらず、アメリカとイランは断続的に交戦を続けており、今週も2度にわたり報復攻撃が行われた。

ドナルド・トランプ米大統領は木曜日、交渉担当者たちが「素晴らしい合意に達した(just made a great settlement)」ため、イランに対する「予定されていた攻撃(scheduled attacks)」を中止したと述べた。この合意は間もなく署名される見込みだ。

金曜日、イランのメディアは、トランプ大統領が「合意された条件とは全く関係がなく」「真実とは無関係だ」と述べたとされる14項目の合意内容の一部を報じた。

数時間後、合意の仲介役を務めたパキスタンのシャバズ・シャリフ首相は、アメリカとイランの間で覚書(the Memorandum of UnderstandingMOU)が合意され、最終承認(finalising)を待っていると述べた。

イランのアラグチ外相は国営メディアに対し、イランの最高安全保障機関である最高国家安全保障会議(Supreme National Security CouncilSNSC)内には、合意の最新条項について「賛成派と反対派(supporters and opponents)」が存在すると述べた。

しかし、アラグチ外相は集団的な決定には至っていないと付け加えた。「今は待つしかない。承認されれば、合意は遠隔で署名されるだろう」と述べた。

イスラエルは、停戦延長とイランの核開発計画を含む主要問題に関する交渉開始を目指す今回の協議には参加していない。イランは数十年にわたり、西側諸国から核兵器開発を企てていると非難されてきた。イラン側は、核開発計画は発電や研究といった平和目的のためだと主張し、これらの非難を否定している。

金曜日午後、複数のアメリカ政府当局者は記者団に対し詳細な説明を行い、今回の合意によってホルムズ海峡が再開される代わりに、アメリカはイラン船舶に対する海上封鎖を解除すると述べた。

これらの措置はほぼ即座に発効する見込みだ。その後、60日間の交渉期間が設けられ、原子爆弾製造に不可欠なイランの濃縮ウラン問題に焦点が当てられる。アメリカ政府当局者によると、この交渉の結果、濃縮ウランは全て現地で破壊され、その後国外に搬出される予定だが、具体的な実施方法はまだ検討中だ。

経済面では、アメリカ政府当局者は、前払い金は一切提供されないことを強調した。これは、本格的な交渉開始前にイランの資産の一部が凍結解除されるという、以前のイランの報道を明らかに否定するものだ。

複数のアメリカ政府当局者によると、制裁解除や資産凍結解除などの措置は段階的に実施され、イランは段階的に世界経済に再統合される見込みだ。

この合意では、イランが地域内の代理勢力[proxy groups](ヒズボラをはじめとする中東各地のイラン系代理勢力)への資金提供を停止することが求められている。

複数のアメリカ政府当局者は、この覚書は信頼や約束に基づくものではなく、「履行(performance)」に基づくものであると強調した。イランは、約束した措置を履行したことが確認された場合にのみ、経済的利益を得られることになる。

アメリカ、イラン、パキスタン、そして仲介努力に貢献したカタールなど、関係各国は慎重ながらも楽観的な見方を示しているものの、解決にはまだ道のりは遠い。この合意案は過去1、2カ月の間に何度か修正案が提示されたものの、いずれも最終段階で頓挫している。

トランプ政権関係者によれば、今回の違いは、合意内容に対する楽観的な見方と、その内容に関する透明性の向上にある。

一方、イラン外相は「交渉の最終段階が完了次第、この合意は署名され、発表されるだろう」と述べた。

アラグチ外相はイラン国営テレビに対して「数日中に実現する可能性がある。私は非常に期待している」と語った。

アラグチ外相は、覚書(MOU)で最初に言及されたのは、アメリカによるイランへの海上封鎖の解除であると強調した。

世界の石油と液化天然ガスの約20%が通過する重要な航路であるホルムズ海峡について、アラグチ外相は「その管理は以前とは全く異なるものになるだろう」と述べた。ホルムズ海峡を封鎖して以来、イランは通過を希望する船舶に通行料の支払いを要求してきたが、アメリカは全ての船舶の通行を無料にすべきだと主張してきた。

イラン政府高官はまた、この覚書はイスラエルとレバノンのヒズボラ間の紛争終結を想定していると述べた。アメリカ国内の以前の報道では、イランがレバノンをこの合意に含めないことを強く主張しているため、レバノンはこの合意に含まれない可能性があると示唆されていた。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、ヒズボラがイスラエル北部への攻撃を続けるならば、イスラエルはヒズボラを攻撃すると述べている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 日本の経営コンサルタントの草分けである故船井幸雄先生が創設された船井本社が発行する月刊誌『ザ・フナイ』(出版はビジネス社)に論考を掲載していただきました。

今回の『ザ・フナイ』2026年7月号(2026年6月1日発売予定)は、アメリカ建国250周年(7月4日が建国記念日)にちなみ、「建国250周年の黙示録 アメリカ帝国の崩壊とトランプの蹉跌(さてつ)」をテーマにするということで、論稿の寄稿をご依頼いただいた。師である副島隆彦先生が毎月『ザ・フナイ』に論考を掲載しており、今回、お口添えをいただいた。副島先生と『ザ・フナイ』編集部に厚く御礼を申し上げます。

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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)

 私は、「トランプとネタニヤフが始めたイラン戦争の後始末 JD・ヴァンス副大統領が『アメリカ・ファースト』の灯を灯す」という題で論稿を寄稿し、掲載していただきました。

 私の論考の内容は、アメリカのドナルド・トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が主導し、2026年2月28日に開始されたイラン戦争(現在は一時停戦中だがホルムズ海峡は封鎖中)について、攻撃決定までの内幕、JD・ヴァンス副大統領が主導している和平交渉までを、資料にもどいて描き出した。そして、トランプの後継者はヴァンスであり、ヴァンスこそがアメリカ・ファースト(America First、アメリカ国内問題解決優先主義)を引き継ぐことも合わせて書いている。
 ヴァンスを拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体』(ビジネス社)で取り上げたピーター・ティールがしっかりと支えており、2028年の大統領選挙に向けて動いていることはこのブログでもすでにご紹介している。ブログと合わせてお読みいただければ、皆さまにアメリカ政治の理解を深めていただけるものと著者として確信を持っている。

 是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

(終わり)
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 古村治彦です。

 高市早苗首相(自民党総裁)の事務所(秘書)が自民党総裁選挙や前回の総選挙で、他候補を誹謗中傷する動画(中傷動画ではなく批評動画という表現もある)の作成と拡散に関与した疑惑について、答弁をごまかし、嘘をつき、しれっと訂正するという見苦しい姿を見せている。それに対して、批判の声も大きくなっているが、高市首相を擁護する声も大きい。高市政権の支持率が70%もあるというのも、高市首相擁護の国民が多いことを示している。一部の何の芸能スキルもない芸能人がテレビ番組に出演して、週刊誌が報道しているから嘘だ、正しい話ではないという論法で、火消しを行おうとしている。こうした一部芸能人の動きについて、「幇間(たいこもち)」という言葉で形容する人たちもいるが、これは「幇間」を馬鹿にするものである。「幇間」はそのような職業ではないし、一流の幇間ともなれば、相手に嫌な気持ちをさせないようにしながら良い方向に導く。芸能スキルのない芸能人の見苦しい高市首相擁護とは全く異なる。

 高市早苗首相の醜悪な姿は、現在の私たち日本人の姿そのものだ。高市首相の見苦しい行動は私たちが常日頃の行動と同じだ。見苦しい言い訳をして、自己正当化に終始し、謝罪をせず、相手が悪いという他責志向(思考)ではないという現代日本人がどれほどいるだろうか。日本でも特に人口が集中している東京、首都圏で暮らしていれば、自分も含めて、あのような醜悪な姿を晒しながら、道路を歩き、公共交通機関を使い、レストランや居酒屋でサーヴィスを受けている。高市首相の行動を見て、大きな批判をするのは、同族嫌悪、自分の姿を見せつけられてしまって、それを忌避するという感情が根底にあるのだろうと私は考える。自分の醜い姿を鏡で見せられているような感情になってそれを避けたいということで批判をしている。

 一方で、高市首相を声高に擁護する人たちは、「高市首相みたいな偉い人がやっているのだから、自己正当化や屁理屈、嘘を言うことは悪いことではない」「高市首相みたいな偉い人でも自分たちと同じだ」「はっきりと断言して力強い」という「親しみやすさ」「力強さ」を高市首相に感じているということになる。日本の一般国民の間で自己正当化や嘘を言うことのハードルが下がっているということになる。「一億総謝らない病(謝れない病)」にり患しているかのようだ。そして、考えが足りないままでぽろっと述べたことで大きな問題になっても、得意の自己正当化で逃げ切ろうとする姿は私たち日本国民の姿だ。

 「世界で最も礼儀正しく、親切で、思慮深い」という日本国民の自己認識と現実は大きく乖離していることを私たちは良く認識しなければならない。しかし、それは非常に難しい。それは、日本人が外側からの目を自分の中に備えていないからであり、その能力に欠けているがために、現状のようなことになっているということを分からないからだ。そして、このことはこれからも続くであろうと私は悲観的になっている。そうやって日本は衰退していくのだろう。

(貼り付けはじめ)

【速報】高市内閣の支持率70.0% 先月から4.2ポイント下落 JNN世論調査

TBS NEWS DIG TBSテレビ

202667() 23:29

https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/2715335?display=1

最新のJNNの世論調査で、高市内閣の支持率が先月の調査から4.2ポイント下落して、70.0%でした。一方、「支持しない」と答えた人は先月から3.1ポイント上昇して、27.4%でした。

各党の支持率は以下の通り。

自民  35.5%1.6↑

維新  2.0%2.0↓

国民  3.9%0.5↑

中道  1.9%1.1↓

立憲  3.4%2.2↑

参政  3.6%1.3↑

公明  2.3%0.0→

みらい 1.0%1.3↓

共産  2.4%0.1↑

れいわ 1.3%0.5↑

保守  1.1%0.5↑

社民  0.4%0.3↓

その他 1.0%0.7↑

支持なし37.9%0.2↑

【調査方法】

JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。66日(土)、7日(日)に全国18歳以上の男女2689人〔固定822人、携帯1867人〕に調査を行い、そのうち38.0%にあたる1021人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話463人、携帯558人でした。

インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。より「有権者の縮図」に近づけるためにも、JNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。

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●「高市首相が答弁訂正、週刊誌報道の「43日付の回答」事務所からと認める 秘書「勘違いをした」」

6/10() 19:39配信 J-CASTニュース

 高市早苗首相が2026610日の衆院法務委員会で、5日の答弁から一転し、「週刊現代に引用されている43日付の回答については高市事務所から回答した内容であるということでしたので、その点は訂正します」と述べた。

■週刊現代掲載の「回答」に秘書「事実と違う」→首相再確認で訂正「事務所から回答」

 国会では連日、首相陣営が259月の自民党総裁選や262月の衆院選で他候補を中傷する動画に関わったと疑われている問題が取り沙汰されている。その一環で、動画作成者が発行側とされる暗号資産「サナエトークン」との関係も騒がれてきた。同トークンは実業家・溝口勇児氏が運営するYouTube番組「NoBorder」から派生し、高市早苗首相が関与を否定したことで波紋を広げた。

 65日の参院予算委では、週刊現代が4日に公開した「高市総理の『面識のない方』は大間違い!高市事務所所長が認めていた『サナエトークン』『誹謗中傷動画』首謀者との接点」という題の記事に話が及んだ。

 記事中では、秘書と動画作成者の参加を文春オンラインが報じた「Zoom会議」をめぐり、高市事務所の43日付の回答だとして「1217日のオンライン会議は、NoBorder側からの求めに応じて行ったもの」などと掲載された。しかし、高市氏は答弁で、秘書に確認した結果として「43日付の回答とされる内容は、事実と違うと申しておりました」と述べていた。

 一方、610日の衆院法務委で事実関係を問われ、高市氏は下記のように答えた。

「これは改めて秘書に確認しましたところ、週刊現代に引用されている43日付の回答については高市事務所から回答した内容であるということでしたので、その点は訂正します」

●「なぜそういうことが起きたのか」首相説明は

 なぜこのようなことが起きたのか。高市氏は「65日の予算委員会の答弁に先立ちまして、当日未明......深夜から朝にかけて、ずっと秘書に電話を続け、未明にようやく出ましたので確認しました」と振り返り、

「その際、秘書は自宅で就寝中でもあり、手元に回答文もなかったです。私が電話で、回答文の一部が引用された週刊誌の記事を読み上げて確認いたしました。そして2か月も前の回答文であり、もともと会議について詳細を覚えていないこともあって、ごく一部抜き出されたところを私が電話で読み上げたものですから、回答した内容と違うと勘違いをしたということで、説明がございました」

と述べた。その後も「高市事務所から出した回答文、それは誠実にお答えしたものである」とし、下記のように補足している。

「違うというところは、先ほど説明したとおり、私が未明に、電話で、しかも週刊誌に一部切り取られた部分だけを秘書に確認をしたら、大変長い回答文を出しておりましたので、全体の趣旨と違うと、彼はそう思ったということでございました」

 これまで高市氏は、秘書と動画作成者は面識がなかったと繰り返してきた。今回、前出のZoom会議とされる音声を秘書本人に確認させたとして、このようにも説明していた。

「(秘書本人は)自分の声に似ているように思うが、編集されて発言が細切れになっていることなどから、内容も含め確信はもてない、ということ。ただ昨年、信頼できる方から紹介を受けた企業とのグループオンライン会議に参加し、そこで国民の声を広く聞くために検討しているという企画の紹介を聞いたことはある、ということでした」

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ザ・フナイ vol.225(2026年7月号)
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカとイスラエルがイランに大規模攻撃を実施し、3カ月は経過した。アメリカとイスラエルは数週間で片が付く、うまくいけばイランの体制が崩壊し、中東地域はイスラエル一強状態になるという目論見で始めてみたがその通りにはいかなかった。このブログでも紹介したが、『ザ・フナイ』に掲載していただいた論考でも書いたが、イラン攻撃、イラン戦争は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がアメリカのドナルド・トランプ大統領に売り込んで始まったものだ。ネタニヤフ首相がホワイトハウスを訪問し、トランプ大統領を前にして、(1)イランの最高指導層を殺害、(2)イランの軍事力の弱体化、(3)イランの民衆の反対運動の促進(イスラエルの支援あり)、(4)イランの政権転覆(体制転換)という目標と実現可能性を、1時間にわたり、プレゼンテイションを行い、トランプ大統領を納得させた。アメリカ側のほかの政権幹部たちは誰も納得しなかったが。

 この売込みの中で、ネタニヤフ首相はトランプ大統領に対して、「これが中東地域における最後の戦争になる。トランプ大統領は中東地域に平和をもたらしたとして歴史に名前が残る。そして、アメリカからイスラエルに対して毎年実施されている軍事支援は必要なくなる」とも訴えた。イスラエルがハマスから攻撃を受け、報復攻撃を実施した2023年以降は2年間で約3.3兆円がアメリカから支援されている。これまでであれば年間で約6000億円程度であった。ちなみに日本とアメリカとイスラエルの防衛予算とGDPについてみてみると以下の通りとなる。

・日本の国家予算は約122兆円、防衛費は約10兆円、GDPは約677兆円(国家予算に占める割合約8%、対GDP比約1.47%)

・アメリカの国家予算は約1200兆円、防衛費は約135兆円、GDPは約4500兆円(国家予算に占める割合約11.25%、対GDP比約3%)

・イスラエルの国家予算は約43兆円、防衛費約5.6兆円、GDP約90兆円(国家予算に占める割合約13%、対GDP比6.2%)

 イスラエルにとってアメリカらの軍事支援は防衛予算において大きな割合を占める。しかし、アメリカ側か見ればこれは負担となる。アメリカが軍事支援をしなくて済むということになればこれはアメリカにとってはありがたいことだ。さらに、アメリカではこれまでイスラエル支持の世論が大きかったが、若い人たちを中心にしてイスラエル支持が低下している。これは、イスラエル国防軍がガザ地区、ヨルダン川西岸地区、レバノンなどで民間人殺害を行い、多くの犠牲者が出ていることを受けてのことだ。また、イスラエルが「ユダヤ人差別」を看板にして、「イスラエル批判」を封じ込め、やりたい放題をしているという見方も広がっている。そう下動きを受けて、民主党側からイスラエルへの軍事支援を停止するという動きも出ている。これまでであれば、アメリカ国内の強力な「イスラエル・ロビー」がそのような動きを封じ込めてきたが、それもできなくなりつつある。アメリカ側でも対イスラエルに関しては変化が起きている。

 イスラエルが極右勢力に引きずられ、「世界の同情を引いて生き残るよりも誇り高く滅びる」というようなことを言い立てて、傍若無人に振る舞うようであれば、世界から孤立する。イスラエルを支援することが不正行為に加担することと同義になれば、支援を得られにくくなる。それはアメリカも例外ではない。しかし、イスラエルは既に核兵器まで保有している。アメリカは自身の意に沿わない国々をならず者国家(rogue state)というラベリングをして攻撃してきた。しかし、アメリカ自身が、そして、アメリカという虎の威を借りる狐となっているイスラエルこそがならず者国家ではないかという考えが出てきている。イスラエルをそこまで付け上がらせたアメリカの責任は重い。

(貼り付けはじめ)

なぜアメリカがイスラエルへの軍事援助を縮小すべきなのか(Why the U.S. Should Wind Down Military Aid to Israel

-ワシントンはもはやイスラエルの不正行為に対して責任を負うべきではない。

スティーヴン・A・クック筆

2026年5月26日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/05/26/israel-united-states-military-aid-gaza-trump-netanyahu/

アメリカからイスラエルへの軍事援助と武器売却の削減または停止は、近年大きな注目を集めている。4月には、民主党所属連邦上院議員の大多数が、イスラエルへの2億9500万ドル相当の装甲ブルドーザーと1億5100ドル相当の1000ポンド爆弾の売却に反対票を投じた(売却自体は共和党側の圧倒的な支持を得て承認された)。これは劇的な変化だった。2023年10月にガザ戦争が始まって以来、バーニー・サンダース連邦上院議員は、アメリカがイスラエルに武器を売却することを阻止するための法案を4つ提出してきた。4月の採決では、民主党側の連邦上院議員の過半数がサンダース議員に賛同した初めての事例となった。

明らかに、民主党所属の連邦上院議員たちは、イスラエルによるガザ戦争の遂行と、ヨルダン川西岸地区の漸進的な併合(creeping annexation)に、ますます不快感を募らせている。しかし、イスラエルの行動を変えさせたり、あるいは制裁を加えたりするために、アメリカが毎年割り当てている38億ドルの援助をイスラエルに利用しようとする提案は、ハマスによる2023年10月7日の攻撃や、ベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる併合主義政権(annexationist government)の誕生以前から存在していた。2020年の米大統領選挙期間中、サンダース議員はネタニヤフ首相にパレスティナとの交渉を迫るため、援助に条件を付けることを提案した。大統領選挙期間中、民主党の大統領候補ピート・ブティジェッジは、イスラエルがヨルダン川西岸を併合すれば援助を打ち切ると示唆したが、後に撤回し、親パレスティナ活動家から批判を浴びた。エリザベス・ウォーレン連邦上院議員は、イスラエルが併合を進めた場合、援助停止を含め「あらゆる選択肢が検討対象だ(including suspending aid if Israel proceeded with annexation)」と宣言した。

私はイスラエルへの援助停止を支持する。私は2020年に『フォーリン・ポリシー』誌に初めてこの件について書き、その後、2024年にその考えをさらに発展させた。その際、イスラエルは先進的な工業経済を有し、一人当たりのGDPはアメリカのNATO加盟同盟諸国を上回っていると主張した。イスラエルは自力で費用を賄うことができるはずだ。したがって、2028年に更新され2038年まで続く、この援助に関する10年間の覚書(the

私だけが援助停止を支持しているのではない。イスラエルの元国会(クネセト)議員ヨッシ・ベイリンと元駐イスラエル米大使ダニエル・カーツァーは、2020年に『ナショナル・インタレスト』誌でこの考えを提起した。ヴィクトリア・コーツとロバート・グリーンウェイも、2025年のヘリテージ財団の報告書で同様の主張を展開し、アメリカン・エンタープライズ研究所のダニエル・サメットも『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙への寄稿で同様の意見を述べている。ネタニヤフ首相率いるリクード党所属のクネセト議員アミット・ハレヴィは、戦略的自立(strategic independence)を進めるために援助を段階的に廃止すべきだと一貫して主張してきた。

しかし、私自身もこの考えを支持しているが、考慮すべき問題点もいくつかある。まず、イスラエルへの援助に反対する人々は、しばしばこれを施し(a handout)だと批判するが、覚書ではイスラエルが援助資金の全額をアメリカで支出することが義務付けられており、これは数千もの雇用を支えている。批判者たちは、軍事援助はボーイングやレイセオンなどの雇用数以外の要素に基づいて決定されるべきだと主張しているが、これは決して間違っていない。とはいえ、イスラエルが今後10年間で380億ドルをアメリカに支出するのをやめれば、一部のアメリカ人が職を失う可能性は否定できない。これは、選挙区に雇用をもたらすことを責務とする連邦議会議員たちにとって難しい判断となるだろう。

第二に、援助を段階的に削減すれば、アメリカはイスラエルの不正行為への関与を減らすことになるだろうが、イスラエルが制約を受けるとは考えにくい。イスラエルがアメリカから1000ポンド爆弾を購入するのを止めたとしても、イスラエル国防軍(IDF)が爆弾を全く使用できなくなることはない。2025年初頭、イスラエル政府はエルビット・システムズ社に、これまでイスラエルが輸入していた重爆弾とその関連原材料の製造を委託する2件の契約(総額2億7400万ドル)を発注した。イスラエルが独立独歩(self-reliance)へと進むにつれ、ワシントンの影響力はさらに低下するだろう(もっとも、イスラエルに対するアメリカの影響力という考え方は概して誇張されていると考えられる)。

10月7日のテロ攻撃以降、そして一部のアメリカの政治家の反応を受けて、イスラエルは独立独歩の美徳を再認識しつつある。元財務大臣のネタニヤフ首相は昨年、「イスラエルはますます自給自足の特徴を持つ経済(an economy with autarkic characteristics)に適応していく必要があるだろう」と発言したが、この考えは行き過ぎだった。イスラエルは今後もアメリカから戦闘機などの高額品を購入したいと考えるだろう。しかし、イスラエルは弾薬や一部の兵器システムを自国で製造する能力を十分に備えている。実際、ドローン、対ドローンシステム、防空システム、人工知能技術といった、現在のウクライナとイランの戦争で不可欠となった兵器の製造において、イスラエルはすでに卓越した能力を発揮している。

最後に、イスラエルへの軍事援助の段階的廃止は、エジプトへの年間13億ドルの軍事援助に影響を与えるのだろうか? イスラエルへの制裁に躍起になっている連邦議員たちは、ワシントンとカイロの関係の価値について深く考えていないように思われる。アメリカ・エジプト間の戦略的関係は、1970年代初頭にアンワル・サダトがヘンリー・キッシンジャーに語ったような理想とは程遠いものだったことは認めよう。さらに、エジプトは長年にわたり人権侵害を繰り返しており、アメリカはスエズ運河を軍艦が優先的に通過できる特権のために費用を支払っており、エジプトは中国とロシアの両国と強固な関係を築いていることも認めよう。

一般に信じられている通説とは異なり、イスラエルとエジプトへの援助には正式な関連性はなく、1979年のエジプト・イスラエル平和条約、1978年のキャンプ・デイヴィッド合意、あるいは両合意に関連する覚書にも、援助に関する記述は一切ない。とはいえ、エジプトへの軍事援助は、エジプトとイスラエルの和平における非公式な支えとなってきた。イスラエル政府はこのことを認識しており、そのため、エジプトが連邦議会に対してロビー活動を行い、資金の流れを維持できるよう支援することもある。イスラエルへの援助が段階的に削減されれば、エジプトへの援助についても議論が始まる可能性が高い。

イスラエルへの援助が削減される一方で、エジプトへの援助は維持されるべきだと主張するには、和平協定に依拠しない論拠を見出す必要があるだろう。例えば、エジプトへの援助は地域安定への投資である、援助額は管理可能な範囲内である、援助の段階的削減はカイロを北京の懐に追いやる、といった主張が考えられる。こうした主張は理解できるが、説得力に欠ける。エジプトは長らく地域情勢を主導したり、方向付けたりすることができておらず、既に中国との関係が緊密になっている。中国は紅海沿岸のアイン・ソフナ近郊に大規模な工業地帯を保有し、スエズ運河地帯にも大規模な投資を行っているほか、カイロ近郊のラマダーン10日市やナイルデルタにも工業施設を構えている。最も説得力のある主張は、軍事援助は巨額の投資ではなく、ワシントンがカイロで一定の影響力を得るための手段であるという点かもしれないが、その主張でさえ、エジプトへの援助を縮小するよう求める圧力に耐えられるとは限らない。

米連邦議会議員、活動家、そして国民の一部が、イスラエルの実際の犯罪と認識されている犯罪の両方に対してイスラエルを罰したいと考えていることは明らかだ。アメリカの軍事支援を停止することの利点は明白だ。アメリカはもはやイスラエルの不正行為に直接関与することがなくなり、イスラエルに関するアメリカの議論から感情的な要素がいくらか軽減されるだろう。イスラエルとの距離を少し置くことは良いことだが、軍事支援を停止してもイスラエルの領土併合を阻止することはできないし、イスラエル国防軍の戦闘力を弱めることも、パレスティナ国家の樹立を実現させることもできない。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、外交問題評議会(the Council on Foreign RelationsCFR)のエニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新刊に『野心の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、そして未来(The End of Ambition: America’s Past, Present, and Future in the Middle East)』がある。Xアカウント:@stevenacook

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