古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

 古村治彦です。

 2026年1月2日のアメリカのドナルド・トランプ大統領の決定に基づくアメリカ軍のヴェネズエラ急襲・ニコラス・マドゥロ大統領夫妻拘束移送は世界に衝撃を与えた。アメリカは1830年代のモンロー主義(Monroe Doctrine)と1900年代の棍棒外交(Big Stick Diplomacy)を合わせた、トランプが主導するドンロー主義(Donroe Doctrine)が実行される時代になった。ドンロー主義についてはまだ定義がはっきりはしないが、「西半球(western hemisphere)、南北アメリカ大陸はアメリカの影響圏(sphere of influence)であり、他国の影響力を排除する。そのためには武力行使も躊躇しない」ということになる。アメリカが世界の警察官(World Police)であることを辞め、世界の一極支配(unipolar dominance)を放棄するということだ。

トランプは気脈を通じている中国(習近平国家主席)、ロシア(ウラジーミル・プーティン大統領)とのG3体制、ヤルタ2.0体制で、「世界三分の計」を行おうとしている。世界の多極化が進むことになる。また、国際協力や国際機関からの撤退、脱退も積極的に推進する。私たちは世界からアメリカが引いていく状況に直面している。下記で紹介している論稿の著者アミタヴ・アチャラは「世界マイナス1(the world minus one)」と表現している。この世界では、アメリカは存在が必要ではあるならず者(the indispensable rogue)として存在することになる。そして、アメリカ以外の国々は、その対処を実地で学んでいくことになる。私たちはそのような時代の幕開きに立ち会っているということになる。

 トランプはG3,ヤルタ2.0という「表の顔」とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相、日本の高市早苗首相と共に、世界の地政学リスクを高める「悪の枢軸(the axis of evil)」も形成している。やりたい放題で、世界に不安を与えるが、トランプは世界に安定をもたらすG3の顔も持つことができる。この融通無碍さがトランプの真骨頂だ。日本とイスラエルはこの二重構造を看取して、それなりの対応をせねばならない。ただの嫌われ役になってしまっては国際的な孤立状態になり、非常に危険である。

(貼り付けはじめ)

世界マイナス1の瞬間(The World-Minus-One Moment

-敵対的・攻撃的なワシントンとともに世界秩序を管理する。

アミタヴ・アチャラ筆

20261月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/05/world-minus-one-united-states-isolationism-multilateralism-global-power/?tpcc=recirc_latest062921

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ドナルド・トランプ米大統領は二期目において、世界秩序(the global order)の基盤に対する継続的な攻撃を主導してきた。トランプは国際法(international law)を露骨に無視し、多数の国に対する一方的な関税賦課で世界貿易体制を破壊し、重要な多国間機関からアメリカを脱退させた。

アメリカは常に国際協力(international cooperation)の理想的な擁護者だった訳ではない。新興大国(a rising power)の時にはアイソレイショニズム(isolationism)に傾き、超大国(a superpower)になると単独行動主義(unilateralism)に傾倒した。しかし、トランプが世界秩序の再構築に取り組んだアプローチは、アイソレイショニズムと力の拡大という、新たな危険な組み合わせを生み出している。彼は多極主義(multilateralism)を軽蔑し、力の露骨な行使に固執している。彼の支持者も同じだ。これは、ワシントンで何が起ころうとも、今年80歳を迎えるトランプ大統領の時代を超えて、トランプ主義が生き続けることを意味しているだろう。

評論家や政治学者たちは、アメリカの一極支配時期(the United States’ unipolar moment)の終焉と、より多極的な秩序の台頭を長らく予測してきた。トランプはしばしばこのプロセスを加速させる要因として挙げられる。しかし現実には、彼は全く異なる事態を生み出してしまった。アメリカは今後数年間、世界で最も経済的にも軍事的にも強力な国であり続けるだろう。しかし、既存の国際秩序には参加せず、積極的に敵対するだろう。この特異な状況は多極(multipolarity)ではなく、むしろ「世界マイナス1(the world minus one)」と言える。

そこで出てくる疑問は、国際社会(the international community)がどのように対応すべきなのかということである。ワシントンの圧力に屈することなく、国際協力を維持することは困難だろう。トランプ主義を乗り越え、より強力な存在となるためには、既存の多国間機関は適応し、改革を行い、努力を倍増させなければならない。もしそれが成功すれば、アメリカはいつかより平等な条件で国際秩序に再加盟せざるを得なくなるだろう。

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2005424日、インドネシアのバンドンで行われた1955年バンドン会議50周年記念式典で握手するインドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領(左)が南アフリカのタボ・ムブイェルワ・ムベキ大統領(2005年4月24日)

「世界マイナス1」という概念は、トランプ政権第二期において新たな意味合いを帯びてきた。2025年初頭から、私は新たな世界秩序を表現する際に「世界マイナスXworld minus X)」「世界マイナスアメリカ合衆国(world minus the United States)」「世界マイナス1」といった用語を用いてきた。シンガポールのリー・シェンロン元首相は2025年7月、「一時的な世界マイナス1(the world temporarily minus one)」という表現を用いて、より狭義にはアメリカのリーダーシップなしに世界経済と貿易を管理することを指して、この概念を広めた。しかし、現在の状況は経済の枠を超え、現代の核心的な課題を物語っている。

マデリーン・オルブライト元米国務長官は、アメリカは不可欠な国(the indispensable nation)であり、アメリカなしでは国際協力の構築も維持も不可能であるとよく述べていた。この前提は、アメリカ政府が世界秩序への関与を放棄するにつれて、世界は非協力的になり、暴力的になる(Washington abandons its commitment to the global order, the world will grow less cooperative and more violent)という懸念の根底にある。

国際関係の歴史は異なる物語を物語っている。スティーヴン・クラズナーやロバート・コヘインといった学者が主張するように、経済の開放と政治協力(economic openness and political cooperation)が普及するためには、世界を支配する覇権国(a globally dominant hegemon)は必ずしも必要ではない。国際機関は一度形成されると、その存在は固定的である。集団的利他主義(collective altruism)のためではなく、加盟国の中核的利益(core interest)に奉仕するために存在するのだ。これらの中核的利益が存続するならば、協力も存続する。これは、覇権国が棄権する(abstains)、撤退する(withdraws)、あるいは他国間の協力に反対する(opposes cooperation among others)としても、多国間主義が存続できることを意味する。

実際のところ、20世紀の歴史は、現在の国際秩序の最も基本的な要素のいくつかが、いかなる覇権国(hegemon)の支援も受けずに形成されたことを示している。例えば、脱植民地化(decolonization)と人種平等(racial equality)は、アメリカ合衆国の不可欠な支援によってではなく、ワシントンの当初の抵抗に直面して、世界規範(global norms)となったのである。

1919年のヴェルサイユ会議において、ウッドロウ・ウィルソン米大統領は、国際連盟(the League of Nations)の基本原則に人種平等条項を盛り込もうとする日本の動きに反対した。ウィルソンは自身の人種差別的信念に基づき行動すると同時に、日本の移民に懸念を抱く国内政治家や、オーストラリアなどの西側同盟諸国への配慮も図っていた。しかし、こうした反対​​にもかかわらず、現在「グローバル・サウス(the global south)」として知られる国々はこの理念を支持し続けた。その顕著な例は、1955年にインドネシアのバンドンで開催されたアジア・アフリカ会議(the 1955 Asian-African Conference)である。

バンドン会議(the Bandung Conference)は、人種平等の提唱に加え、アジアとアフリカの即時脱植民地化も要求した。ここでも、アメリカの支援はせいぜい中途半端なものとなった。ワシントンは主要同盟国であるイギリスの支援を得て、会議参加国に対し、脱植民地化の要求を拒否するよう圧力をかけた。これは、新たに独立した国々が共産主義体制に乗っ取られることを懸念したためである。もちろん、脱植民地化のための戦いは続き、今日存在する 193の主権を持つ国連加盟国(sovereign United Nations member states)の世界が作り上げられた。

実際、第二次世界大戦終結以来、ワシントンは国際舞台において一貫して受動的かつ攻撃的なアクター(a passive-aggressive actor)であることを示してきた。アメリカは制度(institutions)や規則(rules)を作り上げ、それがアメリカの利益にかなう場合には尊重するが、そうでない場合には無視してきた。アメリカは多くの多国間条約に加盟しているものの、気に入らない結果には警戒を怠らない。極端な例では、ワシントンは行動に異議を唱える機関に対して、脅迫、ボイコット、制裁措置(bullying, boycotting, and sanctioning)に訴えることさえある。

近年の3つの例、すなわち国連海洋法条約(the U.N. Convention on the Law of the SeaUNCLOS)、気候変動に関するパリ協定(the Paris Agreement on climate change)、そして国際刑事裁判所(the International Criminal CourtICC)は、アメリカが不在(absent)、不遵守(noncompliant)、あるいは積極的に敵対する(hostile)場合でも、多国間制度や協定がいかに存続できるかを示している。

ワシントンは、第3回国連海洋法会議に参加した後も、1982年に締結された海洋法条約への署名を拒否した。しかしながら、国連海洋法条約は、海域(maritime zones)と航行権(navigational rights)に関する安定した世界的な法的枠組みの構築に広く貢献してきた。貿易を促進し、紛争の平和的解決のメカニズムを提供してきた。また、アメリカの国益にも合致してきた。ワシントンは、南シナ海における中国の広範な領有権主張に対し、国連海洋法条約の手段を行使し続けている。しかし、アメリカが国連海洋法条約への正式加盟に頑なに抵抗していることは、中国にワシントンの偽善を非難する根拠を与えている。加盟を拒否しながらも国連海洋法条約に整合した行動をとるというアメリカの決定は、世界マイナス1にとって最良のシナリオ、すなわちワシントンが正式に国際規範を拒否した後もそれを遵守し続けるというシナリオを体現している。

アメリカが多国間協定から離脱したり、協定に違反したりした場合でも、協力は維持される可能性がある。確かに、ワシントンのパリ協定離脱は有害な影響を及ぼすだろう。その一部は国内的なものであり、例えば気候規制の後退やそれに伴う温室効果ガスの増加などが挙げられる。国際的には、アメリカの離脱は、経済成長を犠牲にして排出基準を負担する国への補償など、気候規制のための資金を圧迫する可能性がある。

しかし、アメリカの財政支援の喪失はパリ協定の実効性を損なう一方で、他の国々は依然としてネットゼロ炭素排出目標(net-zero carbon emissions target)の達成を約束している。現在世界最大の汚染国である中国は、この目標を2060年までに達成することを誓約している。世界第4位の汚染国であるヨーロッパ連合(European UnionEU)は、日本と同様に2050年までにネットゼロを達成することを誓約しており、インドは2070年までにこの目標を達成することに同意している。実際、アメリカが何をしようとも、残りのパリ協定署名諸国は、自国が決定した炭素削減目標を5年または10年ごとに見直し、改善する義務を負っている。そして、風力・太陽光発電技術が安価になり普及するにつれて、これらの目標を上回る可能性も残されている。

最後に、国際刑事裁判所の例を挙げよう。1998年、ワシントンは国際刑事裁判所(ICC)の設立を定めたローマ規程に反対票を投じた。アメリカの市民、外交官、そして兵士を危険にさらす懸念があったからだ。さらに劇的なのは、アメリカがイスラエル指導者を訴追した国際刑事裁判所に対し、裁判官と検察官に制裁を科すことで報復措置を取った。しかし、イギリスを含むアメリカの同盟諸国は国際刑事裁判所の独立性を支持し続け、これに追随しなかった。その結果、国際刑事裁判所は指導者の不処罰を抑制し、人道犯罪の抑止力として機能し続けている。

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ニューヨークで開催された第80回国連総会での演説を終え退席するドナルド・トランプ米大統領(2025年9月23日)

アメリカの多極主義へのアプローチが常に条件付きであったとすれば、トランプ政権下では、それは紛れもなく敵対的なものとなった。実際、トランプはこの敵対的な姿勢を2025年国家安全保障戦略(2025 National Security Strategy)に明記し、「個々の国家の主権を明示的に解体しようとする国際機関のネットワーク(network of international institutions … that explicitly seeks to dissolve individual state sovereignty)」を非難している。アメリカは現在、同盟国と敵対国を問わず、自己中心的で二極主義的、排他的、そして取引的な関係を追求している。

2016年以降、トランプは複数の多国間協定や機関から脱退、あるいは脱退計画を発表している。これらには、パリ協定、イラン核合意(the Iran nuclear deal,)、国連人権理事会(the U.N. Human Rights Council)、オープンスカイズ条約(the Treaty on Open Skies)などが含まれる。さらに、第二次トランプ政権は、世界保健機関(the World Health OrganizationWHO)からの脱退とユネスコからの脱退を表明している。

さらに、トランプ大統領は国連予算の削減を計画している。最も顕著なのは、国連平和維持活動(U.N. peacekeeping operationsPKO)への8億ドルの削減で、これには既に連邦議会で承認されている資金も含まれる。政権はハイチ、レバノン、コンゴ民主共和国など、支援する特定の平和維持活動に資金を集中的に投入することに同意しているものの、より広範な削減によって国連は国際平和維持部隊(global peacekeeping forceGFP)を25%削減することになった。トランプ大統領はまた、アメリカ政府に割り当てられている義務的拠出金(mandatory contributions)の拠出を差し控えており、国連予算の削減総額は20億ドルを超えると推定されている。その結果、国連は現在、予算を5億ドル以上削減し、職員を約20%削減することを検討している。

皮肉なことに、トランプはノーベル平和賞を公然と要求する一方で、欠陥はあるものの紛争の緩和と人命救助に大きく貢献してきた国連平和維持活動を弱体化させている。

しかし、こうした破壊だけが全てではない。トランプがアメリカを世界の不在あるいは亡命国家の最高指導者という評判を固めている一方で、国際協力は維持されてきた。今や、台頭する大国がトランプの関税や脅しを拒絶し、BRICSG20、上海協力機構(the Shanghai Cooperation OrganisationSCO)、東南アジア諸国連合(the Association of Southeast Asian NationsASEAN)といった多国間フォーラムをその手段として利用しているのを目にしている。

BRICS諸国、特に当初加盟国であった国々は、高関税にもかかわらず、トランプ大統領に公然と反抗してきた。ブラジルでは、ジャイル・ボルソナロ前大統領の裁判は、ホワイトハウスからの免罪圧力にもかかわらず継続された。南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領はホワイトハウスに出向き、南アフリカの白人が迫害されているというトランプ大統領の主張を公然と否定した。中国は重要な鉱物サプライチェインにおける優位性を利用して、貿易戦争でトランプ大統領を出し抜こうとしてきた。インドにはそのような天然資源の切り札はないが、トランプ大統領はより身近なところで反発を招いている。アメリカの政策関係者は、トランプ大統領の任期1期目におけるインド太平洋戦略の要であった中国に対する重要な戦略的パートナーをホワイトハウスが疎外したことに、今や困惑し、憤慨している。

トランプ大統領が世界の不在大統領、あるいは離反大統領(the world’s absentee- or defector-in-chief)としてのアメリカの評判を固めている一方で、国際協力は維持されている。

2024年12月、次期大統領のトランプは、米ドルに代わる取り組みを放棄しないBRICS加盟諸国に対し、100%の関税を課すと警告した。2025年7月、リオデジャネイロで開催されたBRICS首脳会議において、トランプは「BRICSの反米政策(Anti-American policies of BRICS)」に沿う国からの製品に10%の追加関税を課すと発表し、「例外はない(no exceptions)」と付け加えた。これに対し、ブラジルなど一部のBRICS加盟国は、共通通貨構想(a common currency)を軽視する姿勢を見せている。しかし、トランプの圧力は裏目に出る可能性もあり、代替決済システムの開発とドルへの依存度の低減(to develop alternative payment systems and reduce their reliance on the dollar)への意欲をさらに強めることになる。

2025年8月に中国の天津で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議は、トランプの政策に対する多国間の抵抗を示す新たな場となった。この会議で、中国の習近平国家主席とインドのナレンドラ・モディ首相が会談し、インドと中国はライヴァルではなくパートナーであると宣言した。

しかし、上海協力機構だけではない。G20はブラジル、インド、インドネシア、南アフリカといった国々にも、世界的なリーダーシップを強化する機会を与えてきた。2022年のインドネシアでのG20首脳会議は、ロシア・ウクライナ紛争をめぐる混乱への対応をG20が後押しした。2023年のインドでのG20首脳会議は、アフリカ連合(the African UnionAU)のG20加盟確保に貢献し、グローバル・サウスの役割拡大につながった。2025年11月にヨハネスブルグで開催されたG20首脳会議は、もう1つの画期的な出来事となった。アフリカで初めて開催されたG20首脳会議はアメリカによるボイコットにもかかわらず、多様性、包摂性、そして、平等(diversity, inclusion, and equality)といった課題を中心に議論された。他の加盟国はアメリカのボイコットに追随せず、アメリカの世界的な孤立がさらに浮き彫りになった。

こうした国際フォーラムで示された結束(solidarity)に加え、地域主義(regionalism)への傾向も見られる。過去20年間で、アフリカ主導の平和活動は急増した。アフリカ連合や西アフリカ諸国経済共同体(he Economic Community of West African States)などの地域機関、そしてより小規模なアドホック連合は現在、アフリカ17カ国で10件の活動を展開している。アフリカ主導の平和活動は、チャド盆地、シエラレオネ、ソマリアにおける反乱勢力による紛争の封じ込めにおいて、一定の成功を収めている。実績はまちまちだが、これらの平和活動は、不安定な情勢に対する地域的かつ状況に応じた対応や、国連よりも幅広い活動に取り組む意欲など、独自の特徴を示している。重要なのは、これらのプロジェクトは主にヨーロッパ連合の資金提供を受けており、アメリカの役割は最小限にとどまっていることである。

これら全ての機関と並んで、国連は依然として重要な協力の場となっている。アメリカはしばしば国連の人権保護の不備を批判し、権威主義的なライヴァル国に対する政治的得点獲得の場として利用している。しかし、国連は民主政治体制国家と非民主政治体制国家が人道支援を効果的に推進する場として存続してきた。

特筆すべきは、過去20年間で中国の国連への拠出額が大幅に増加したことだ。アメリカは国連の通常予算の22%、平和維持活動の26.2%を拠出しているが、中国は現在、通常予算の20%、平和維持活動の23.8%を拠出しており、世界第2位の拠出国となっている。また、中国は国連安全保障理事会の常任理事国5カ国(the five permanent members of the U.N. Security Council)の中で、最も多くの平和維持部隊を派遣している。国連の人道支援機関に対する中国の自発的な拠出額は依然として比較的低い水準だが、もし中国がアメリカの不関与(U.S. disengagement)を絶好のチャンスと捉えれば、拠出額は急速に増加する可能性がある。

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中国深圳でコンテナ船、クレーン、そして積み上げられた輸送コンテナの近くに翻る中国国旗(4月12日)。

今後数年間、台頭する大国と多国間機関は、トランプ大統領の攻撃に対応して進化を続けるだろう。しかし、彼らは「世界マイナス1」という状況を乗り越え、国際協力と自由貿易(global cooperation and free trade)をうまく維持できるのだろうか?

中国の対応は特に重要となるだろう。北京は必然的に自国の利益に導かれ、ワシントンを犠牲にして影響力を拡大しようとするだろう。しかし、中国が賢明かつ自制心を持って行動すれば、中国支配の世界(a Chinese-dominated world.)の構築ではなく、国際協力(global cooperation)の強化につながるだろう。

伝統的に安全保障をアメリカに依存してきたアジア太平洋地域は、「世界マイナス1」秩序の中心となる可能性が高い。ここで特に注目すべき2つの貿易協定、すなわち東アジア地域包括的経済連携(the Regional Comprehensive Economic PartnershipRCEP)と中国・ASEAN自由貿易協定(the China-ASEAN Free Trade AgreementCAFTA)である。2022年に発効した15カ国・地域のRCEPは、GDPと人口の両面で世界最大の貿易グループへと成長しつつある。中国、日本、韓国、ASEAN諸国を合わせたRCEPは、現在、世界のGDPの約30%を占めている。RCEPは20年間で域内の関税の90%以上を撤廃し、電子商取引や知的財産など紛争の多い分野で共通ルールを策定することを目指している。

2010年に発効し、2015年と2025年10月に改訂されたCAFTAは、グリーン経済やサプライチェインの連結性などの分野で中国とASEANの協力を推進している。専門家の一部は、アメリカがASEAN諸国に対し、中国とのデカップリング(decouple、分離)と中国の積み替え貨物に対するアメリカの懲罰的関税(punitive U.S. tariffs)の遵守について圧力をかけてきたため、これは北京にとって明らかな戦略的勝利だとしている。しかし、真実はもっと複雑である。ASEAN諸国は、アメリカに完全に同調するつもりはなかった。むしろ、彼らは既にCAFTAなどの協定を利用して自国の利益を推進し、中国の影響力に対する懸念に対処している。実際、北京が経済的利益を制限し、これらの国々と多国間で関与し、自由貿易と開放的で包括的な地域秩序につながる関係を追求するようになったのは、ASEAN諸国からの圧力によるものである。

ヨーロッパ連合もまた、世界マイナス1への対応が極めて重要となる主要プレイヤーだ。2021年、ヨーロッパ連合は3000億ドル規模の「グローバル・ゲートウェイ」計画(Global Gateway plan)を発表した。これは、インフラ、エネルギー、気候変動対策プロジェクトを統合し、世界における中国の影響力に対抗するためのものだ。例えばアフリカでは、グローバル・ゲートウェイは北アフリカからヨーロッパを結ぶ水素パイプライン[hydrogen pipeline]SoutH2 Corridor」や、東アフリカの食料安全保障強化プロジェクトを支援している。また、ヨーロッパ連合は現在、メルコスール[Mercosur](アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ)諸国との自由貿易協定の締結に向けて調整を進めており、大半の品目の関税撤廃、投資拡大、持続可能性の確保を目指している。

理想的には、ヨーロッパと中国は、アフリカや南アメリカといった地域において、ゼロサムではなく相互補完的な(complementary)形で関与できるはずだ。例えばアフリカでは、中国はヨーロッパ連合のグローバル・ゲートウェイ構想(Global Gateway initiatives)に積極的に参加している。重要なのは、こうした姿勢はヨーロッパや中国の寛大さから生まれたものではなく、アフリカや南アメリカの指導者たちの要求によるものであるということだ。

インドはまた、世界がワシントンの不在にいかに効果的に対応するかを決定する上で重要な役割を担っている。トランプ大統領の圧力に強く抵抗する一方で、インドはインドの貿易関係を急速に拡大し、制度化している。これには、ASEANおよび日本との既存の貿易協定の強化交渉、そして、2025年7月にイギリスと締結する新たな貿易協定が含まれる。インドはまた、EU非加盟国のアイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイスを含む欧州自由貿易連合(the European Free Trade AssociationEFTA)とも2024年に貿易協定を締結した。中国と同様に、インドはロシアとの貿易の多くを自国通貨建てで行っている。インドはまた、ロシアと緊密な安全保障関係を維持しており、ロシアは引き続きインドの武器輸入の36%を供給している。たとえその後ワシントンとの関係が改善したとしても、インドが戦略的自立性を継続することで、米中の優位性が薄れ、世界マイナス1体制の持続可能性が確保されるだろう。

最後に、国連がトランプ大統領を機に、長らく待たれていた改革を実行に移すかどうかは、依然として不透明だ。トランプ大統領の第二期就任以来、アメリカはフランスで開催された国連海洋会議とスペインで開催された第4回開発資金会議をボイコットした。それでもなお、国連加盟国の大多数はこれらの会議に出席した。ワシントンの不在にもかかわらず、各国は海洋生物の保護、債務救済、気候変動対策への財政支援といった合意形成など、通常通りの活動を継続することができた。

この成功を基盤として、国連は更なる適応策を講じなければなりません。これには、優先分野に重点を置くための予算削減や、中核ミッションに不可欠ではなくなった機関の廃止による重複削減などが含まれます。元国連高官でスウェーデン首相のカール・ビルト氏らが提案した、より抜本的な対策は、国連本部をニューヨーク市から移転することです。これによりコストが削減され、米国にとって非友好的と見なされる地域からの代表団へのビザ発給を米国が拒否する可能性も排除されます。理想的には、各国がトランプ大統領の予算削減に対し、通常の国連予算の内外を問わず支援を強化し、国連に対し民間部門の資源と専門知識を動員するよう働きかけることで対応することが期待されます。これらの措置により、トランプ大統領の敵意によって国連が機能不全に陥る事態を回避できるでしょう。

To build on this success, the U.N. must do more to adapt itself. This should include making budget cuts to focus on priority areas and reduce duplication by dispensing with agencies no longer critical to core missions. A more radical step, suggested by former senior U.N. official and Swedish Prime Minister Carl Bildt and others, would be to move the U.N. headquarters out of New York City. This would cut costs and remove the chance of the United States denying visas to delegates from places deemed unfriendly to Washington. Ideally, every country would respond to Trump’s cuts by providing more support, within or outside the regular U.N. budget, and by pushing the U.N. to mobilize resources and expertise from the private sector. These measures can ensure that the U.N. will not die due to Trump’s hostility.

世界マイナス1の時代はいつ終わるのか? それはアメリカの国内政治と外圧(external pressures)の両方に左右される。トランプ大統領が多極主義と対外援助を拒否しているにもかかわらず、アメリカの国際社会からの離脱は完全でも不可逆的でもない。ピュー・リサーチ・センターが2025年3月に実施した調査によると、成人アメリカ人の47%がアメリカの国際情勢への積極的な関与を支持し、64%が主要な国際問題においてアメリカは他国と妥協すべきだと考えている。また、過半数が開発途上国への食料、医薬品、衣料品などの援助に賛成している。

アメリカが最終的にトランプ主義を脱却する場合、世界はどのように反応すべきだろうか? 多くのことは、新しいホワイトハウスがいかにしてダメージを修復するかにかかっている。例えば、アメリカはどれほど迅速に制度に復帰し、拠出金の返済や拠出停止を返済し、カナダからインドに至るまでの同盟諸国やパートナーとの関係を修復するだろうか? ワシントンがどのような行動を取ろうとも対応は様々だろう。NATO加盟諸国は、ロシアや国際テロの脅威から、同盟をかつての活力ある状態に戻そうと熱心に動くかもしれない。対照的に、BRICS諸国は、アメリカがかつての経済的役割を取り戻そうとするいかなる試みにも抵抗するだろう。

ワシントンの世界秩序への復帰を最もよく表すシナリオは2つあるだろう。放蕩息子(the prodigal son)と存在が必要ではあるならず者(the indispensable rogue)だ。ワシントンのリベラルエリートは前者を好むかもしれない。聖書に出てくる不良息子のように、アメリカが両手を広げて歓迎されるシナリオだ。しかし、このシナリオは実現しそうにない。世界はトランプ政権時代を許すかもしれないが、決して忘れることはないだろう。そして、ルールに基づく秩序(the rules-based order)にアメリカがもたらした過去のダメージも忘れることはないだろう。国民の記憶は短く移り変わりやすいものだが、アメリカはかつての同盟諸国やパートナー、たとえ西側諸国であっても、真の信頼を取り戻すことは難しいだろう。

ここから第二のシナリオが導き出される。アメリカはもはや自由世界のリーダーではなく、単に世界にとって存在が必要ではあるならず者(an indispensable rogue)となる。世界は依然として、アメリカの軍事力、経済力、そして技術力を、多くの地球規模の課題への対応に不可欠だと認識するだろう。しかし、世界はワシントンが世界のリーダーシップの座に就くことを望まないだろう。

簡潔に述べれば、アメリカの地政学的優位性(U.S. geopolitical dominance)やリベラル・ヘゲモニー2.0(liberal hegemony 2.0)への回帰はない。トランプの後継者が共和党の大統領で彼の政策を継続するか、善意の民主党大統領が政策転換を図るかに関わらず、トランプは世界のアメリカへの信頼と依存(the world’s faith in and dependence on the United States)を打ち砕いた。動揺した同盟諸国に対し、別のジョー・バイデンが次の大統領となって「アメリカは戻ってきた(America is back)」と告げるのを待つ人間はいない。

その結果、世界秩序はより多重化(multiplex)するだろう。ワシントンは、より広範に分権化されたシステム(more broadly decentralized system)の中で生きることになるだろう。それは、アメリカの力や目的よりも、経済・安全保障上の結びつきの網に絡み合った他の大国や中堅国によって形作られるシステム(one shaped less by U.S. power or purpose than that of other great and middle powers enmeshed in a web of economic and security ties)だ。

つまり、アメリカが多極主義に復帰する頃には、世界はすでに変化を遂げているだろう。ワシントンにとって唯一の選択肢は、より対等な条件で、より弱い存在(a weaker entity on more equal terms)として国際秩序に再加入することかもしれない。

※アミタヴ・アチャラ:アメリカン大学国際関係学部卓越教授。最新作は『かつての世界秩序と未来の世界秩序:なぜ世界文明は西洋の衰退を生き残るのか(The Once and Future World Order: Why Global Civilization Will Survive the Decline of the West)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領が2025年12月に発表した「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」は、アメリカによるヴェネズエラ攻撃が実施されたことで、注目度を増している。この文書にはアメリカの「西半球回帰」、モンロー主義(ヤンキー帝国主義)への回帰が明らかになった。第二次トランプ政権の外交政策が「国家安全保障戦略」を基盤にして進むとすれば、この文書に注目するのは当然のことだ。

 「国家安全保障戦略」において、トランプ政権はヨーロッパの「文明の消失(civilizational erasure)」を危惧している。トランプ政権が考える「ヨーロッパ文明」は「白人文明」であある。非白人、非キリスト教徒の移民を多く受け入れることでヨーロッパらしさがなくなっているということである。また、ヨーロッパが安全保障分野において、アメリカに「ただ乗り(free-ride)」をしているという批判も継続している。更には、厳しい規制のために創造性と工業力が低下したために経済力の低下も起きているという指摘もしている。NATO加盟諸国は防衛費の対GDP比を5%(そのうちの1.5%はインフラ整備)にまで引き上げるとしている。アメリカ(トランプ政権)はヨーロッパに対して、移民を制限し、防衛費の増額を求めている。アメリカはヨーロッパに対して厳しい要求を突きつける形で介入をしている。

 こうした中で、ヴェネズエラ攻撃が発生した。また、トランプ大統領自身からグリーンランドについての言及もあった。ヨーロッパ諸国は対応に苦慮している。ヴェネズエラ攻撃に関しては主語を曖昧にして、「国際法は遵守されるべき」と生ぬるい対応をしていれば良いが、グリーンランドで何か起きれば、そうも言っていられない。ヨーロッパ諸国のほぼ全てがNATOに加盟し、集団的自衛権の義務を負う。アメリカ軍がグリーンランドに侵入すれば、当事国デンマークと共にアメリカ軍の排除に出動しなければならない。対ソ連(現在は対ロシア)の防衛同盟であったはずのNATOという枠組みで、そのリーダーであるアメリカが脅威となるという異常事態である。

 トランプのアイソレイショニズム(Isolationism)は、アメリカを国内に戻すということではなかった。世界の警察官(World Police)の役割を放棄して、自身が切り取り強盗になるということであった。そして、全ては「アメリカ・ファースト」という言葉をお題目にして、正当化するというものであった。私は「国家安全保障戦略」を読んで、「何でもアメリカ・ファーストと言えば万事OK、全てがうまくいくと思っているな」という感想を持った。「アメリカ・ファースト」は「世界の諸問題ではなく、アメリカ国内の諸問題を解決することを優先する」ということであったはずだ。トランプ本人が「トランプ革命」を裏切った。いつの時代も革命の指導者が革命を裏切るものであるがそれが世の習いというものだろうか。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の「国家安全保障戦略」は西側諸国の崩壊に向けた青写真だ(Trump’s National Security Strategy Is a Blueprint for the Demise of the West

-ホワイトハウスの政策は一貫性に欠けるかもしれないが極めて危険だ。

ハワード・フレンチ筆

2025年12月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/11/trump-national-security-strategy-blueprint-west-demise/

かつて、アメリカの著名な保守派の人物たちは、西ヨーロッパの同盟諸国に対する数々の使い古された不満に固執していた。

冷戦期のアメリカのイデオローグたちによれば、ヨーロッパ諸国は過剰な税金を課し、その資金を過度に手厚い社会保障制度に費やし、それがヨーロッパを弱体化させ、技術革新と成長を阻害しているという。ヨーロッパは、かつて資本主義の砦であった自由で競争的な市場の精神を放棄し、着実に、しかし幾分静かに、社会主義の行き詰まりへと突き進んでいるという警告が頻繁に発せられた。

少なくともリチャード・ニクソン大統領の政権時代まで遡る、もう一つの定型的な不満は、ヨーロッパが慢性的に自国の防衛費を不足させているというものだ。これは、ヨーロッパ、ひいては西側諸国自身を、最大の存亡の危機であるソ連から守るために設計された、アメリカによる国防総省への多額の支出(予算)にただ乗り(free riding)しているだけなのだ。

ヨーロッパに対するこうした古くからの不満の一部、例えばヨーロッパ大陸の防衛費が倹約的だとされる点などは、ドナルド・トランプ米大統領政権が先週発表した新たな国家安全保障戦略にも依然として残っている。しかし、多くの評論家たちが指摘するように、この文書は共和党の世界観を数十年ぶりに抜本的に刷新するものだ。ヨーロッパに関する主要な前提に関して言えば、ほぼ全てが、近年の共和党の主要人物―ニクソン元大統領、ロナルド・レーガン大統領、そしておそらく1964年の大統領選挙で落選した超保守派のバリー・ゴールドウォーターでさえも―が認識できないほどに歪められている。

ロシアがアメリカとヨーロッパにとって共通の安全保障上の大きな懸念事項であるという前提は、ほぼ完全に消え去った。これは主に省略や行間から読み取れる情報を通して明らかだが、トランプ大統領が今年、アメリカの外交政策をモスクワに有利な方向に転換しようとした数々の行動からも見て取れる。そして、このことを最もよく表しているのはロシア自身だ。ロシアは、ワシントンの方針転換の中で、自らの幸運を信じられないかもしれない。ロシアのメディアは即座に、ワシントンの「国家安全保障戦略」はロシア自身の世界観と概ね一致していると断言した。

ウクライナで進行中の戦争が2022年のロシア侵攻によるものでなければ、これは別問題だろう。しかし、トランプ政権の安全保障関係者たちがロシアの拡張主義に関心を示していないという事実は、トランプとその顧問たちがまだ明確に表明する勇気も率直さも持ち合わせていない、真に急進的な何かを示唆している。

誤解のないようにしよう。ホワイトハウスの新たな戦略文書は、西洋―少なくとも第二次世界大戦以降、世界が西洋という言葉で理解してきたもの―の崩壊を企てる青写真であり、その出発点は、ヨーロッパとアメリカの間に緊密に結びついた共通の利益である。

トランプのシナリオは、名目上は白人社会が有色人種、つまりかつて熱狂的な白人パニック小説のジャンルを席巻した黒人、褐色人種、黄色人種の大群によって徐々に乗っ取られていくという暗い幻想を描いている。これは、1920年代の人気作家ロトロップ・ストッダードのような人物に最もよく例えられる。ストッダードは、影響力のある著書『白人の世界至上主義に抗う有色人種の高まる潮流(The Rising Tide of Color Against White World-Supremacy)』の中で、「有色人種の移民は普遍的な危機であり、白人世界のあらゆる部分を脅かす(colored migration is a universal peril, menacing every part of the white world)」と記している。(ストッダードへの薄っぺらな言及は、20世紀で最も高く評価されているアメリカ小説の一つ、F・スコット・フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー(The Great Gatsby)』にも見受けられる。)

一方、トランプの「国家安全保障戦略」は、移民によってヨーロッパはもはやヨーロッパではなくなる危機に瀕しており、それは明らかに白人によって定義されることを意味すると警告している。これがこれほど重要な文書に含まれるに値する理由は、トランプにとって、アメリカとヨーロッパが共に「白人のままでいる(“remain” white)」ことが、緊密な同盟関係を維持するための根本条件だからだと直感的に理解できる。言い換えれば、トランプにとって、白人であることへのこだわりを維持することは、長きにわたり普遍的かつ疑問の余地なく用いられてきた「西洋(the West)」という呼称に値し続けるための条件なのだ。

アメリカ政府の白人性への執着は憂慮すべきものだが、トランプ政権の政策に少しでも一貫性があると想像するのは間違いだろう。非白人移民の流入が主な原因でヨーロッパがそのアイデンティティを失う危険に晒されていると警告するトランプの発言には、あまりにも明白な論理的欠陥があり、問題となっているのは人種問題だけではない、むしろ根底には、おそらくもっと深刻な別の問題が潜んでいることを示唆している。

この欠陥は、アメリカの移民率をヨーロッパの主要国や最も裕福な国々の移民率と比較すると明らかになる。そうすることで、ヨーロッパがこの点で際立っているわけではないことが分かる。

ドイツの人口の約19%は移民であり、これは米国の15%をわずかに上回っている。これは、アンゲラ・メルケル首相時代にドイツの人口減少を冷静に評価した結果と言えるだろう。メルケル首相の在任中、ドイツは中東の破綻国家シリアから数十万人の人々を受け入れた。これほど多くの新規移民を受け入れるには、必然的に文化的な適応が必要となり、受け入れ側の住民と移民の双方にストレスをもたらす。しかし、多くのドイツ有権者が少なくとも一時的には大規模な移民受け入れに反対しているとはいえ、シリア人などの流入が、ドイツの深刻な人口減少、高齢化、そしてそれに伴う労働力不足(crisis of population decline, aging, and the associated problem of too few workers)という危機を食い止めることができれば、歴史はメルケル首相の政策を寛大に評価することになるかもしれない。

ヨーロッパの他の二大大国フランスとイギリスの外国生まれの人口は、それぞれ全人口の約14%と16%で、アメリカ合衆国とほぼ同程度だ。挙げた3つの例のいずれも統計的に例外的な数値ではないという事実は、ヨーロッパが自らの人種的抹消に向かって急速に進んでいるというトランプの見解を明確に反証している。そして、はっきり言って、アメリカ合衆国もそうではない。

ヨーロッパの国防費に対するアメリカの不満も同様に根拠に乏しい。『ワシントン・ポスト』紙の最近の論説が指摘したように、アメリカ合衆国はヨーロッパ諸国に対し、GDPの5%を国防費に充てることを要求しているにもかかわらず、2025年度にGDPの3%を国防費に充てるという基準をかろうじて上回る見通しだ。

ヨーロッパが何らかの形でアメリカの先導に従うべきだという考えは、ヨーロッパの生活水準がトランプ政権下のアメリカよりも高いという現実、そして今日多くのヨーロッパ諸国が、大西洋を挟んだ新たな曖昧な長年の同盟国であるアメリカよりも、より活気に満ちた民主政体国家であると広く認識されているという事実によっても裏付けられていない。

何が起こっているのかをより深く理解するには、トランプが2016年の政権獲得当初、外国人嫌悪と人種・民族に基づく脅しを主要な戦術として用いたことを思い出す必要がある。アイデンティティ問題で多数の有権者を煽動することは、支持を集める確実な手段であるだけでなく、近年のいかなる前例からも大きく逸脱する彼の政策要素から目を逸らす効果的な手段でもあった。

これは、トランプのヨーロッパに対する真の狙いを示唆しているように思われる。それは、より大規模で広範な急進的な保守政策を支持することであり、人種に基づくナショナリズムはその槍の先ではあるものの、単なる一要素に過ぎない。

事実、トランプ自身も、国家安全保障声明において、ヨーロッパにおける極右政党の推進に対するワシントンの関心を表明することで、このことを自ら明らかにしたのだ(不器用な表現だと言いたいところだが)。トランプが人種的排外主義に訴えたことは、ヨーロッパの論評家たちから困惑と憤りを招いたが、それほど驚くことではなかった。なぜなら、これらは既に長らく彼の国内政治の中核を成していたからである。

トランプはこれまでもヨーロッパ諸国の国内政治に介入しようと試みてきたが、これほど大胆な介入はかつてなかった。ヨーロッパ大陸の極右勢力への全面的な協力を明確かつ公式に表明したのだ。極右勢力の政党の多くは、反ユダヤ主義に加担し、ファシズムに影響を受けている。このような大胆な介入は、ヨーロッパの多くの方面から激しい抗議を引き起こしている。

もしトランプがこれほどまでに急進的な政治転換に基づく政策を実行に移すならば、そして何よりも、非常に過激な見解を声高に推進してきたJD・ヴァンス副大統領のような人物が後継者となるならば、こうした展開は単なる白人性の強調にとどまらず、古い西洋の終焉を正式にもたらすことになるだろう。

アメリカ独立戦争中、ベンジャミン・フランクリンは「私たちは私たち自身の自由を守ることで、彼ら(ヨーロッパ人)の自由のために戦っているのだ」と述べ、フランスなどのヨーロッパ列強に支援を訴えた。

もちろん、西側諸国の民主政体の記録には欠点がつきものだ。しかし、自由を中心とする共通の価値観というこの理念こそが、アメリカとヨーロッパ諸国の同盟関係を支えてきた核心であり続けた。トランプがこれまで以上に露骨に権威主義(authoritarianism)を信奉する中、アメリカがこの価値観から乖離していることこそが、世界が「西側(the West)」と呼ぶものの常識を最終的に覆す可能性がある。

もしフランクリンが今日生きていたら、彼は自分の定式を逆転させ、「ヨーロッパ人は私たちの自由を守ることで、アメリカ人が自らの自由を守るよう鼓舞することを望んでいる」と表現したかもしれない。

※ハワード・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年海外特派員を務めた。最新作に『第二の解放:エンクルマ、汎アフリカ主義、そして最高潮の世界的な黒人性(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global Blackness at High Tide)』がある。Blueskyアカウント:@hofrench.bsky.socialXアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 スティーヴン・ミラー大統領次席補佐官が主導する、ドナルド・トランプ政権が進める不法移民摘発はついに死者を出す事件を引き起こした。移民関税執行局の捜査官たちは全米各地に派遣され、不法移民摘発を行っている。これには民主党支持が多い州からは批判が起きており、これに対して、トランプ大統領は州兵派遣を行うという対決姿勢を見せていたが、一部の都市からは州兵を引き上げさせている。

 ミネソタ州ミネアポリスで移民政策に反対する抗議者に対して、移民関税執行局の捜査官が発砲し、抗議者の30代の女性が死亡した。連邦政府側は抗議者たちが移民関税執行局の捜査官たちを自動車で攻撃して殺害しようとしたために、自衛のための発砲で、「国内テロ行為」に対処だったと主張している。ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長はこれを否定し、激しい言葉で非難している。

 ミネソタ州のティム・ウォルツ知事は、ミネソタ州兵に対して、手動準備を行うための「警告命令(warning order)」を発令した。ミネソタ州兵を出動させ、移民関税執行局の行為を妨げよる意思を示すことで、連邦政府側の動きをけん制する狙いがあるように思われる。このブログでも紹介したが、「TACO(トランプは常に最後には怖気づく)」という言葉も出現しているように、トランプが引くという計算もあるのだろう。

話は逸れるが、ウォルツ知事は2024年の大統領選挙で民主党のカマラ・ハリス前副大統領の副大統領候補として出馬した経歴を持つ。トランプ政権は2025年12月、みねそとぁ州の融資制度を巡る大規模な詐欺疑惑を理由に550万ドルの資金拠出を停止するなど、ウォルツ知事への圧力を強め。ウォルツは次の選挙には出馬しないと表明する事態に追い込まれた。ウォルツ知事は大学院時代、そして高校教師(兼アメリカンフットボールのヘッドコーチ[監督])時代から中国との深い関係を持っており、何度も訪中していた。このこともトランプにとっては気に入らない点だったと推察される。

 問題は、ミネソタ州兵が移民関税執行局捜査官たちと実際に対峙するような状況になった場合である。トランプも引かずに、そのまま不法移民摘発を継続するように命じた場合には、事態はエスカレートする可能性がある。州兵と捜査官が対峙し、そこで発砲でも起きれば、衝突する事態となる。これはもう内戦(civil war、シヴィル・ウォー)状態ということになる。「まさかそこまで」「言い過ぎだ」という批判もあるだろうが、何が起きるかは分からない。不測の事態に常に備えておくべきだ。それでも不測の事態は想像を超える内容で起きる。それが歴史を動かしてきた。一発の銃声が第一次世界大戦を引き起こした例もある。

(貼り付けはじめ)

ウォルツ知事、ICEによる致命的な銃撃事件を受けてミネソタ州兵に警告命令を発令Walz issues warning order to Minnesota National Guard after fatal ICE shooting

サラ・デイヴィス筆

2026年1月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/state-watch/5677541-walz-minnesota-national-guard-ice-shooting/

ミネソタ州のティム・ウォルツ知事(民主党)は水曜日の朝、ミネアポリスで女性が移民関税執行局(Immigration and Customs EnforcementICE)捜査官に射殺されたことを受け、ミネソタ州兵に出動準備のための「警告命令(warning order)」を発令したと述べた。

ウォルツ知事は水曜日の記者会見で次のように述べた。「ドナルド・トランプとその政権はミネソタ州のことをあまり気にしていないかもしれない。それは明らかだ。しかし、私たちはこの州を愛している。彼らに州を引き裂かれるようなことはさせない。私たちは互いに敵対することはない」。

ミネソタ州兵の統合参謀本部部長サイモン・シェーファーは、州兵は1万3000人の陸軍と空軍で構成されており、「州機関とミネソタ州民に常に対応し、支援する準備ができている」と述べた。

シェーファーは、知事の警告命令を受け、州兵が動員される場合に備えて、装備の点検や隊員への連絡など出動準備を開始したと述べた。

ウォルツ知事は次のように述べた。「ミネソタ州民の方々へ申し述べたいことは、州兵は皆さんを守り、憲法上の権利を守るためにここにいるということだ。彼らは私たちの隣人だ。彼らは覆面をしていない(ICEの捜査官は覆面姿)。どこからか押し入ってくる訳ではない。皆さんに迷惑をかけるために、あるいは今日私たちが目にしたような悲劇を引き起こすためにここにいるのでもない」。

州兵の準備に加え、知事は州犯罪捜査局が事件の捜査を行っていると述べた。この事件では、覆面をした捜査官がミネアポリスの道路の真ん中で車両に近づき、加速した車両に向けて発砲する様子が録画されている。

ウォルツ知事はまた、州緊急対策センターと州警察の機動対応ティームのメンバーを動員したと述べた。

ウォルツ知事は「今後、私は非常にシンプルなメッセージを送る。連邦政府からのこれ以上の支援は必要ない。ドナルド・トランプ大統領とクリスティ・ノーム(国土安全保障長官)、もうたくさんだ」と述べた。

知事は、全米各地の都市でトランプ政権が進めている移民取り締まりに対抗するため、アメリカ国民に団結を呼びかけた。

ウォルツ知事は「これをご覧のアメリカ国民の皆さん、ポートランドにいても、ロサンゼルスにいても、シカゴにいても、あるいは彼らが次に向かう場所にいても、私たちと共に立ち上がって欲しい。私たちと共にこれに抗議し、対抗して欲しい」と述べた。

=====

(国土安全保障省(DHS)はミネアポリスで移民関税執行局(ICE)が関与した致命的な銃撃事件を確認した(DHS confirms fatal shooting involving ICE in Minneapolis

サラ・デイヴィス筆

2026年1月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/state-watch/5676754-minneapolis-ice-shooting-walz/

国土安全保障省(Department of Homeland SecurityDHS)によると、水曜日にミネアポリスでICE捜査員が女性を射殺した。

トリシア・マクローリン国土安全保障次官は、ソーシャルプラットフォームXに、事件は「暴力的な暴徒たち(violent rioters)」が市内で実施されたICEの作戦に妨害を試みたときに発生したと投稿したが、ミネアポリス市長はこの主張を強く否定した。

マクローリン次官は、抗議者の1人が「捜査官を轢いて殺害しようとした。これは国内テロ行為(an act of domestic terrorism)である」と主張した。

マクローリン次官は次のように書いた。「移民関税執行局職員は、自身の命、同僚の法執行官の命、そして公衆の安全について懸念を持ち、防御のために発砲した。彼は訓練を活かし、自身と同僚の命を救った。容疑者は銃撃され、死亡した。負傷した移民関税執行局職員は完全に回復する見込みだ。」

ミネアポリスのジェイコブ・フレイ市長は、国土安全保障省による事件の説明は虚偽であると主張し、激しい罵詈雑言を浴びせた。また、事件の映像を見たとも述べた。

「私自身も映像を見たが、皆さんにはっきり言っておきたい。これはでたらめだ。捜査官が無謀に権力を行使した結果、ある人が命を落とした」。

ミネソタ州のティム・ウォルツ知事は水曜日、州内の公安ティームが銃撃事件に対応中だと述べた。

ウォルツ知事は「詳細が分かり次第、情報を共有する。それまで、皆さんには冷静さを保っていただくように要請する」とソーシャルプラットフォームXに投稿した。

トランプ政権の移民法執行の一環として、数百人の連邦捜査官が最近、ミネソタ州に派遣された。

この取り組みは、州内で不正行為をめぐる論争が続く中で行われたもので、ウォルツ知事は今週初め、今年の再選を目指さないと表明した。

AP通信によると、オンラインで共有された事件のライヴ映像には、衝突事故に巻き込まれた複数の車両と、グレゴリー・ボヴィーノ司令官を含む多数の連邦および地方の法執行官が映っていた。

ボヴィーノは昨年9月、ロサンゼルスで移民関税執行局(ICE)による積極的な移民取り締まりを指揮した。

ミネアポリス選出のイルハン・オマル連邦下院議員(民主党)は、Xフォーラムに「状況を注視し続けている(monitor the situation closely)」と投稿した。

「移民関税執行局は、私たちのコミュニティへの恐怖を止め、この街から立ち去らなければならない」とオマル議員は書いた。

=====

●「移民取り締まり中に抗議の女性を射殺 ミネアポリス市長は「ICEは出て行け!」と激怒 アメリカ・ミネソタ州」

1/8() 7:42配信 FNNプライムオンライン(フジテレビ系)

アメリカのICE(アイス、移民関税捜査局)は7日、ミネソタ州で取り締まり中に「女性が車で捜査員をひき殺そうとした」として発砲し、女性は死亡したと発表しました。

ミネソタ州ミネアポリス市で、ICEの捜査員らが大規模な移民取り締まりを行っていたところ、抗議する人たちと衝突しました。

当局側は、抗議をしていた人のうち、車で道路をふさいでいた女性が「捜査員らをひき殺そうとしたため、捜査員が銃を発砲し女性は死亡した」と発表しました。

また、女性の行為は「テロ行為」で、捜査員らは負傷し、発砲は正当な行為だったと強調しました。

一方、ミネアポリス市長は、発砲の一部始終をとらえた動画と説明がまったく異なると指摘したうえで、捜査対象ではなかった37歳の女性が死亡したと激しく反発しました。

ミネアポリス市のフレイ市長は、会見で「これが自己防衛だというのは、まったくでたらめで真実ではない!」、「ICE、ミネアポリスから出て行け!ここにお前らはいらない」などと話しました。

ICEなど取り締まり当局はこの日、2000人規模の取り締まりを行っていて、移民の受け入れに寛容なミネソタ州との対立が続いています。

(貼り付け終わり)

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