古村治彦です。
※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)で、私はヴィヴェック・ラマスワミについて書いた。彼は2024年の大統領選挙共和党予備選挙に立候補し、最初は無名候補だったが、弁舌の巧みさと鋭さと、トランプ支持を表明したことで、注目を浴びることになった。トランプもラマスワミを気に入っていたようだ。
ラマスワミ(青いネクタイ)とヴァンス
ラマスワミの名前が再び注目されることになったのは、トランプが2024年の大統領選挙でカマラ・ハリス(とジョー・バイデン)を破り、大統領返り咲きが決まった後に、イーロン・マスクと共に、政府効率化省(Department of Government Efficiency、DOGE)を率いる責任者として名前が挙がった時だ。その後、ラマスワミは来年に実施される故郷オハイオ州知事選挙に出馬するために、責任者就任を辞退した。私は『トランプの電撃作戦』の中で、ラマスワミはヴァンスを助けて再び中央政界を目指すと書いた。
ラマスワミとJ・D・ヴァンス米副大統領はイェール大学法科大学院(ロースクール)の同級生であり、それ以来の盟友だ。彼らは共にオハイオ州出身という共通点もある。そして、彼らは学生時代に既にピーター・ティールに見いだされている。詳しくは『トランプの電撃作戦』をお読みいただきたい。
ラマスワミは保守派のネットワークに入れてもらえた。それは。保守派の重鎮で、第一次トランプ政権で大統領顧問を務めたレナード・レオの知己を得たからだ。ラマスワミは、2014年に設立した製薬業界に特化した企業ロイヴァントが成功して巨額の資産を手にすることになった。ラマスワミについては、「無名の新人」「アウトサイダー」という評価があったが、実際にはシリコンヴァレーの億万長者たちや保守派のネットワークの人々が支援している人物ということになる。この点もまた、ヴァンス副大統領とよく似ている。ラマスワミもまた、自分は主流派ではないと主張し、庶民の代表をアピールしているが、同時に、テック産業や保守派のネットワークの内部にいる人物ということになり、ハイブリッドということになる。ヴァンスとラマスワミという共通点の多い2人が2028年以降のアメリカ政治において、存在感を増していき、重要な役割を果たすことになる。
(貼り付けはじめ)
「彼はインサイダーだ」:ラマスワミ氏と右翼の中心的重要人物との深いつながりが明らかになった(‘He’s an insider’: Ramaswamy’s deep ties to rightwing kingpins
revealed)
-共和党候補は自らを「アウトサイダー」と位置づけているが、著名人レナード・レオやピーター・ティールと密接なつながりがある。
マーティン・ペングリー筆
2023年8月25日
『ザ・ガーディアン』紙(イギリス)
https://www.theguardian.com/us-news/2023/aug/25/vivek-ramaswamy-rightwing-elite-close-ties-leonard-leo-peter-thiel
ヴィヴェック・ラマスワミは、共和党の大統領候補指名争いのライヴァルたちが寄付者や特別利益団体(special interests)に「買収され、資金を提供されている(bought
and paid for)」と非難し、自らを「アウトサイダー(outsider)」と形容している。
しかし、38歳のオハイオ州を拠点とするヴェンチャー・キャピタリストのラマスワミは、押しの強い、怒りを前面に押し出した様子を今秋開催された最初の共和党候補者討論会で見せた。ラマスワミは政治の2つのサイドの影響力を持つ人物たちと深い関係を持っている。
こうしたつながりで有名なのは、テクノロジー大手ペイパルとパランティアの共同創業者で右派の大口寄付者であるピーター・ティールと、連邦裁判所に保守派判事を配置する運動で前例のない額を集めた活動家レナード・レオだ。
ラマスワミは、ベストセラーの回想録『ヒルビリー・エレジー』の著者で、政界入りする前に金融業界で成功を収めたJ・D・ヴァンスのイェール大学法科大学院時代の友人だ。イェール大学法科大学院在学中、ヴァンスとラマスワミは、ティールが主催した「選ばれた学生のための親密なランチセミナー(intimate lunch seminar for select students)」と『ニューヨーカー』誌が形容したセミナーに出席した。昨年、ヴァンスはティールの支援を受け、極右のトランプ支持の考えを唱え、オハイオ州選出の連邦上院議員の座を獲得した。
ティールはその後、政治献金から手を引いたと述べている。『ニューヨーカー』誌が「高齢者のメディケア利用を支援するベンチャー(a venture helping senior citizens access Medicare)」と呼ぶ企業を支援し、昨年は、企業投資家の環境・社会・ガバナンス(environmental, social and governance、ESG)方針を攻撃するためにラマスワミが立ち上げたファンドであるストライヴ・アセット・マネジメントを支援した。ヴァンスも支援者だ。
ラマスワミの主な成功手段は、2014年に設立された製薬業界に特化した投資会社ロイヴァントである。
ロイヴァントの顧問会には、共和党と民主党の両党の人物が名を連ねている。キャスリーン・セベリウス(オバマ政権の保健福祉長官)、トム・ダシュル(サウスダコタ州選出の元連邦上院民主党指導者)、オリンピア・スノー(メイン州選出、共和党所属の元連邦上院議員)などだ。
ラマスワミとレオとのつながりは数多くある。レオは最近、実業家のバレ・セイドから16億ドルの寄付を受けており、これは過去最大の寄付金とされているが、現在ワシントンDC地区の検事総長による捜査の対象になっていると報じられている。
「プロパブリカ」と「ドキュメンティッド」が報じたところによると、ラマスワミは、レオが議長を務めるテネオが主催するリトリートで講演している。この団体は、有力な保守派を結びつけ、アメリカ社会における「リベラルの優位を打ち砕く」ことを目指している。
テネオの他の講演者には、共和党予備選挙でラマスワミに先行しているフロリダ州知事のロン・デサンティスや、ミルウォーキーのステージでラマスワミと衝突したサウスカロライナ州元知事のニッキ・ヘイリーも含まれていると報じられている。
「プロパブリカ」はまた、ティールをテネオ・グループの創設に結び付けた。本紙が調べた文書によると、ラマスワミは2021年にテネオのメンバーになった。
他には、ラマスワミはレオとつながりのある慈善団体「ラウンドテーブル」の理事であり、レオ主導で裁判所に保守派の判事を就任させる運動を行っている団体「フェデラリスト協会」のメンバーでもある。
ラマスワミは、共和党所属の各州財務長官(state treasurers)の団体である「州財務官財団(State Financial Officers Foundation、SFOF)」でも講演し、賞も受けている。
6月、サウスカロライナ州において、『ポスト・アンド・クーリエ』紙は、昨年大統領選に出馬する前に、ラマスワミ氏が「[共和党の]コネを利用して[ストライヴに]有利な年金基金管理契約へのアクセスを与えようとした・・・[資産総額は]396億ドルに上る」と報じた。
ポスト・アンド・クーリエはミズーリ州とインディアナ州でも同様の圧力がかけられたと伝えた。サウスカロライナ州の財務長官カーティス・ロフティスはポスト・アンド・クーリエに対し、こうしたアプローチは「何ら不適切ではない(nothing improper)」と語った。
右翼の寄付者、活動家、体制側の人物とのつながりを踏まえてラマスワミがアウトサイダーであると主張していることについて質問された選挙運動のスポークスマンは本紙に「ヴィヴェックはアメリカンドリームを実現し、ビジネスで大成功を収めた」。と述べた
選挙運動関係者たちは「裕福な人々と友人関係やビジネス関係を持つ人と、スーパーPACの寄付者を喜ばせるために政策や立場を変える政治家との間には、大きな違いがある」と付け加えた。
ウィスコンシン州の討論会では、91件の刑事告発に直面しているものの、共和党の世論調査で圧倒的な差をつけてリードしている元米大統領ドナルド・トランプが不在だったため、ラマスワミは活躍した。
ラマスワミがトランプの副大統領候補になるかもしれないとの憶測が広がる中、共和党の活動家から反トランプの「リンカーン・プロジェクト」の共同創設者に転身したリード・ガレンは、ラマスワミを「2020年代の典型的なアメリカのテック産業系のでたらめ芸能人・・・21世紀のトランプ」と呼んだ。
ガレンによると、ラマスワミが自分をアウトサイダーであると主張したのは、ラマスワミの「根本的な理解の一部だ。・・・MAGA派(トランプ支持の共和党内の支持基盤)は、予備選の残りの人たちは政治家だと示してほしいと思っている。ラマスワミはショーマン、つまりアウトサイダー、反主流派になることを厭わない。『もし何かあれば、それがそこにあって嫌だ』。つまり、『私はこれで楽しもう。あなたたちは下手くそで悪党の集まりだから、真剣には受け止めない』という訳だ」。
しかし、別の意味では、ラマスワミとレオやティールのような人物とのつながりについて、ガレンは「彼はインサイダーだと思う」と語った。
「彼はレオナルド・レオと一緒に部屋に入ってきて、『私に何をしてほしいですか?』と言う。すると彼らは、『これが私たちがあなたにしてもらいたいことだ。これが私たちがあなたにしてもらいたいことです』と言う」。これは正しいのか?
「[ラマスワミ]が[中絶の制限などの]問題に関心があると思いますか? いいえ、特にそうではない。彼がそれについて確固とした信念を持っているとは思えない。しかし、それが彼の助けになると考え、それと引き換えにレオナルド・レオが、老人から彼に与えられた16億ドルのうちのほんの少しの金額を与えて彼を助けるとしたらどうだろうか?」何ということだ?
ガレンは「彼はここまでやれるとは思っていなかった。だから現在、彼はできる限りそれを押し進めようとしているのだ」と述べている。
ラマスワミは、レオが 「確かに中心にいる(certainly at the
center)」献金者や非営利団体の世界と密接に結びついているとガレンは述べている。ガレンは更に「この動きは1つの方向にしか進まない。それは暗黒(darkness)に向かう。それは権威主義(authoritarianism)の方向だ。それは、ラマスワミのような人物を見つけるためだ。そして、他の候補者たちが彼(ラマスワミ)を攻撃すればするほど、彼らは彼をますますそのような人々の腕の中に追い込んでいくだろう」と述べている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』