古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

 古村治彦です。

 イスラエルが主導して始まった、イスラエルとアメリカによるイランに対する大規模攻撃と、イランによる報復攻撃は終息の目途が立っていない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、レバノンにまで侵略の手を伸ばし、21世紀にもなって、遅れてきた帝国主義、植民地主義を展開している。イランの石油関連施設への攻撃はイスラエルが単独で実施し、これに対してトランプ大統領は、アメリカは攻撃に参加しておらず、このような攻撃を止めるようにネタニヤフ首相に求め、ネタニヤフ首相も今後はそのような攻撃を控えると発言した。しかし、トランプ大統領はイランに対して、ホルムズ海峡の安全航行を保証しなければ、電力設備攻撃を行うと発言し、イラン側は湾岸諸国へのさらなる攻撃を行うと発表し、事態は深刻化している。

 そうした中で、私が懸念しているのは、BTCパイプラインへの攻撃である。BTCパイプラインはカスピ海沿岸のアゼルバイジャンのバクー油田から、ジョージアを通り、トルコの地中海沿岸にあるジェイハン港までをつないでいる。ここからイスラエルに石油が輸出されている。アゼルバイジャンの国民の大多数が、イランと同じイスラム教シーア派(世俗主義である)であるが、イスラエルとの良好な関係を維持している。それは、石油を通じての経済的つながりということになる。
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 以下にあるように、アゼルバイジャンとトルコはイスラエルに対して複雑な態度を取らざるを得ない。ガザ地区やヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの圧制と横暴に対しては、同じイスラム教として反発をするのが当然であるが、経済や安全保障の面でイスラエルと敵対することはできない。従って、どっちつかず、どちらも支援するということになる。

 イランがエスカレーションを望んでいるならば、開戦当初にBTCパイプラインを攻撃するはずだ。イスラエルへの石油供給を断てば、イスラエルの軍事行動を制限できるし、イスラエル国内の生活にも打撃を与えることができるからだ。しかし、イランはそれをしなかった。問題は、アメリカとイスラエルがエスカレーションを辞さない姿勢を崩さないことだ。そうなれば、イランとしておBTCパイプライン攻撃を選択することになる。これに対して、イスラエルが保有する核兵器を使用するという最悪の決断をするする可能性も出てくる。

 ホルムズ海峡の安全航行に注目が集まるが、BTCパイプライン攻撃の可能性について、私たちは憂慮すべきである。アメリカとイスラエルの自制と反省、そして、辞を低くしての停戦要請が必要になってくるが、それは不可能であろう。せめて事態の悪化、エスカレーションが進まないことを祈るのみだ。

(貼り付けはじめ)

トルコは自国の石油禁輸措置を破っているのか?(Is Turkey Breaking Its Own Oil Embargo?

-レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領はパレスティナの大義(the Palestinian cause)を擁護する一方で、彼の政権がイスラエルへの支援を助長していることを示す証拠が存在する。

ハンナ・ルシンダ・スミス筆

2025年1月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/01/29/israel-gaza-war-cease-fire-turkey-oil-export-embargo/

2024年11月末、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は、国営放送のフォーラムで基調講演を行い、ガザ地区への支持を改めて表明した。聴衆の中にいたトルコの親パレスティナ活動家セイマ・ユルドゥルムは声を上げるべき時が来たことを悟った。彼女は「パレスティナへの支持表明と現場での行動との矛盾を指摘せざるを得ないと感じた」と語った。

ユルドゥルムとトルコの活動家グループ「パレスティナのための千人の若者」のメンバー8人は、生放送のテレビカメラの前で「ジェノサイドを支援するのをやめろ!」と叫び、水面下で行われているトルコからイスラエルへの石油輸出に注目を集めた。武器輸出ほど目立たないものの、石油輸出はイスラエルの戦争遂行に不可欠な要素である。抗議者たちが会場から退場させられると、エルドアン大統領は激しく反論した。「ここでシオニストの代弁者になるな(Do not be the mouthpiece of Zionists here)」。

エルドアン大統領は、特に2023年10月7日のハマスの攻撃とそれに続くイスラエル軍によるガザ地区への攻撃以降、世界中のスンニ派イスラム教徒の擁護者としてのイメージを確立する上で、パレスティナ人への支持を長らく中心的な要素としてきた。当初は紛争の仲介役を申し出ていたエルドアン大統領は、その後ハマスへの明らかな支持を表明し、イスラエルを「パレスティナの兄弟たちに対する全面的なジェノサイド政策を実行しているテロ国家(terrorist state [that] is implementing a policy of total genocide against our Palestinian brothers)」と非難した。

ガザ国境でイスラエル治安部隊がパレスティナ人60人を殺害した事件を受け、4年間の凍結状態を経て2022年に回復したトルコとイスラエルの関係は、昨年再び断絶した。2024年4月9日、トルコは建設資材を含む54品目のイスラエルへの輸出を停止した。数週間後、トルコは二国間貿易を全面的に停止した。2023年の貿易額は68億ドルに達し、その76%はトルコからの輸出品(主に鉄鋼、建設資材、機械装置)だった。

エルドアン大統領はその後、トルコはイスラエルとの「あらゆる関係を断絶した()severed all ties」と表明した。1月19日に発効したイスラエルとハマスの停戦合意後も禁輸措置は継続されており、エルドアン大統領はイスラエル指導者たちの戦争犯罪に対する責任追及を「増強する(intensify)」と表明している。

しかし、ロビー団体プログレッシヴ・インターナショナルが支援する、イスラエルへのエネルギー販売停止を各国政府に求めるキャンペーン「ストップ・フューリング・ジェノサイド」の研究者たちは、禁輸措置にもかかわらず、石油を積んだ貨物船が依然としてトルコからイスラエルへ航行し、痕跡を隠蔽しようとしていることを示す証拠をメディアに公開した。

研究者たちは、船舶追跡データ、港湾記録、衛星画像、目撃証言を用いて、2024年10月28日にトルコのジェイハン港を出港し、イスラエル方面へ向かった原油タンカー「シーヴィゴール号」を追跡した。2日後、タンカーは追跡装置の電源を切った。7日後に再び電源が入った時、シーヴィゴール号はイスラエル沿岸からまっすぐ離れ、シチリア島方面へ向かっていた。イタリアのリポスト港に入港した際、タンカーはトルコを出港した時よりも大幅に軽量化されていた。『フォーリン・ポリシー』誌が入手した調査報告書によると、これらの期間の間に、衛星画像にはシーヴィゴール号と外観が一致するタンカーが11月5日にイスラエルのアシュケロン港に入港する様子が写っていた。12月にメディアに公開された追加調査では、他のタンカーも同様の手法を用いていることが示唆されている。

トルコは、自国の港からイスラエルへ向けて貨物が出荷されている事実はないと否定している。2024年11月10日、トルコ政府エネルギー省は、石油輸出継続の主張は「根拠がない(baseless)」とし、イスラエルへの出荷が通常行われるジェイハン港で操業する全ての企業および関係者は、トルコの公式禁輸措置を遵守していると断言する声明を発表した。

しかし、問題はこうした否定が示唆するよりもはるかに複雑である。石油輸出は二国間の単純な取引ではなく、複数の国家および企業間の複雑な外交的・法的合意に基づいている。今回のケースでは、イスラエルへの石油輸出は、トルコの最も強力な同盟国の1つであるアゼルバイジャンをも巻き込むことになる。石油輸出を完全に停止しても、エルドアン大統領にとってイスラエルとの関係において政治的な代償はほとんどないだろうが、トルコの財政に打撃を与え、ひいては最も重要な地域関係の1つを損なう可能性もある。エルドアン大統領は、この代償を支払うつもりはないようだ。

トルコは自国のエネルギー資源は乏しいものの、主要なエネルギー輸送国(a major energy transit country)であり、それが国庫収入をもたらし、外交上の影響力を高めている。この地域は、アゼルバイジャン、イラクのクルド人地域、ロシアからトルコを経由してヨーロッパへガスと石油を運ぶパイプラインが縦横に走っている。トルコを通過する2本の石油パイプラインのうち、イラクからジェイハンまでを結ぶパイプラインは、アンカラとバグダッド間の紛争により2023年に停止された。もう1本のバクー・トビリシ・ジェイハン(BTC)パイプラインは2006年から稼働しており、カスピ海からジョージアを経由してトルコの地中海沿岸までアゼルバイジャン産の原油を運び、そこからイスラエルへ送っている。

パイプラインの終点であり、原油が貨物船に積み込まれるジェイハンでは、アゼルバイジャンとのつながりを示す痕跡が至る所に見られる。そこにはトルコ・アゼルバイジャン友好公園があり、パイプラインのルートを示す地図が刻まれた記念碑が建ち、その前には近代トルコの建国者ムスタファ・ケマル・アタテュルクとアゼルバイジャンの元大統領ヘイダル・アリエフの像が立っている(ターミナル自体もアリエフの名にちなんで名付けられている)。両国関係はソ連崩壊以降、友好的であったが、近年ではトルコがアゼルバイジャンによるアルメニアからのナゴルノ・カラバフ地域奪還に多大な支援を提供することで、アゼルバイジャンの支持をさらに高めた。

しかし、両国はイスラエル問題で意見が分かれている。エルドアン大統領はパレスティナの大義を声高に支持しているが、アゼルバイジャンはイスラエルと緊密ながらも異例の同盟関係にある。2011年以降、アゼルバイジャンとイスラエルの関係は、イスラエルによるアゼルバイジャンへの武器売却と、アゼルバイジャンによるイスラエルへの石油売却によって強化されてきた。2024年1月、トルコによる禁輸措置が発効する前、イスラエルはアゼルバイジャン産原油の最大の輸入国であり、この月だけで2億9700万ドル相当の原油を購入し、そのすべてがジェイハン・パイプラインを経由して輸出された。(『フォーリン・ポリシー』誌は、アゼルバイジャンのエネルギー省と国営石油会社SOCARに対し、BTCパイプラインを通じたイスラエルへの輸出が継続されているかどうかを問い合わせたが回答は得られなかった。)

関係する企業の利害関係が事態をさらに複雑にしている。パイプライン建設に関する協定はアゼルバイジャン、トルコ、ジョージアが締結したが、運営はBTC社が行っている。同社の11の株主のうち、最大株主はBPである。その他は、アゼルバイジャン、フランス、ハンガリー、インド、日本、ノルウェー、トルコ、アメリカに拠点を置くエネルギー企業である。各社は、生産された原油の自社分を個別に販売する権利を有している。

トルコが1999年にこのコンソーシアムと締結したホスト政府協定に基づき、トルコは自然災害、トルコが開始していないトルコ領内での戦争、または国際的な禁輸措置の場合にのみ、パイプラインを通る石油の輸送を停止できる。トルコはBTCパイプラインからイスラエルへの石油輸送を一方的に禁止することはできず、もしそうすれば関係者への賠償責任を負うことになる。

つまり、BTC契約によれば、トルコは他の関係者の合意を得るか、多額の罰金を科されるかのどちらかを選ばなければ、イスラエルへの石油輸送を阻止することはできない。これはエルドアン大統領にとって禁輸措置問題の格好のスケープゴートとなり得る。法的に、トルコは身動きが取れない状態にあるのだ。(トルコのエネルギー省と通信局は、一方的な禁輸措置を課すことが可能かどうかについてのコメント要請に回答しなかった。)

しかし、エルドアン大統領はこの件について説明するどころか、親パレスティナの姿勢を改めて強調し、トルコは石油輸送による経済的利益を享受している。2024年11月、エルドアン大統領率いる公正発展党(AKP)所属のオズレム・ゼンギン議員は議会で、トルコがBTCパイプラインを通じて原油1バレルあたり1.27ドルの収入を得ていることを明らかにした。このパイプラインは毎日70万バレルが輸送されており、年間約3億2500万ドルの収入となる。これは、トルコが経常収支赤字の削減を目指す上で、極めて重要な外貨獲得源となっている。

活動家たちは、BTC協定の条項に関わらず、トルコは国際法に基づきイスラエルへの石油輸出を阻止する権限を有していると主張している。トルコは国連ジェノサイド条約の締約国であり、ジェノサイド行為の防止と処罰を義務付けられている。英国を拠点とするロビー団体「パレスティナのためのグローバル・エネルギー禁輸」の活動家ナジ・ムハンマドは、国際司法裁判所がイスラエルに対して起こしたジェノサイド訴訟の当事国として、トルコはBTCパイプラインの終点における立場を利用してイスラエルへの輸出を阻止する法的根拠も有していると述べている。「ジェノサイドを防止するというこの法的義務は、いかなる契約上の問題にも優先する」とムハンマドは語った。

エルドアン大統領にとって、この問題は当分解決しそうにない。「人々はエネルギー輸送とジェノサイドがどのように関連しているかを理解し始めている」とムハンマドは述べた。国内では、これらの疑惑はエルドアン大統領の支持基盤である宗教的・親パレスティナ派の有権者、特に若い保守層を激怒させている。すでに、石油輸出の継続を詳述した「ジェノサイドを助長するのを止めろ」報告書は抗議活動を引き起こし、左派と保守的なイスラム教徒という政敵同士が結集して二重基準を非難する声を上げている。

これらの暴露はエルドアン大統領にとって国際的にも問題となり、彼がしばしば西側諸国に対して向ける偽善という非難を、イスラエルに対しても浴びることになるだろう。これはイスラム世界における彼の評判を傷つけ、急速に変化する中東情勢において西側諸国に対する影響力を獲得しようとする彼の試み​​を阻害する可能性がある。

シリアのバッシャール・アル・アサド大統領の失脚に伴い、エルドアン大統領はダマスカスの新政権に対する政治的影響力を行使しようと画策している。トルコの情報機関トップであるイブラヒム・カリンは、アサド大統領が国外に逃亡してからわずか4日後にダマスカスを訪問した。シリアの新閣僚の何人かはトルコと直接的なつながりを持っている。アメリカは既にトルコを、アサド政権を打倒した過激派組織「ハヤト・タハリール・アル・シャーム」への裏ルートとして利用しており、他の地域大国を関与させないようにしている。

しかし、トルコがイスラエルとの関係を継続していることに対する地域全体のイスラム教徒の怒りが高まれば、イスラエルによるシリア領土の占領が続いている現状を鑑みると、エルドアン大統領のダマスカスにおける影響力は阻害される可能性がある。

抗議活動で最大4年8カ月の懲役刑に直面しているユルドゥルムは、トルコの政策変更にはほとんど期待を抱いていない。彼女の目には、エルドアン大統領は自らの言動と現実との乖離を指摘する人々を黙らせようとしているように映る。ユルドゥルムは次のように述べている。「エルドアン大統領は、イスラエルとの重要な貿易・ビジネス取引、特に大企業や多額の資金が絡む取引について、一貫して言及を避け、あるいは全面的に否定している。これは無視できない厳しい現実だ」。

※ハンナ・ルシンダ・スミス:トルコ在住のジャーナリスト。著書に『エルドアン台頭:トルコの魂をめぐる戦い(Erdogan Rising: The Battle for the Soul of Turkey)』、共著に『ザリファ:男社会における女性の闘い(Zarifa: A Woman’s Battle in a Man’s World)』がある。Xアカウント:@hannahluci

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 現在は世界中で過剰さがあふれている。極端さと言っても良いだろう。政治の世界で言えば、ドナルド・トランプ大統領や高市早苗首相がその象徴である。過度なナショナリズム、過度な断定(言い切り)、過度な自己中心、過度な依存が特徴である。有権者にしても、中庸ではなく、過激を求める傾向がある。そのことは日本だけではなく、西側先進諸国において共通の現象になっている。このことはこのブログでも既に紹介した。

※古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ:「20260309日先進西側民主政体国家の有権者は破れかぶれになっているのかもしれない」

https://suinikki.blog.jp/archives/90360730.html

 過剰を求める反対の動きが抑制であり、中庸である。国際関係論ではその考えを持つ人たちを「リアリスト(Realist)」「抑制者(restrainer)」と呼ぶ。ウォルトは「抑制主義」について以下のように書いている。長くなるが、いくつか引用する。「アメリカ外交政策における抑制という考え方は、アメリカの力を用いて民主政治体制、市場経済、法の支配、その他のリベラルな価値観を世界中に広め、できるだけ多くの国をアメリカが支配する国際機関に取り込もうとする、リベラル覇権(liberal hegemony)の大戦略(grand strategy)に反対する形で生まれた。抑制者は、軍事力によって民主政治体制を広めようとするのは無謀な試みであり、他国を脅迫したり威嚇したりすることは通常逆効果となり、敵対国を疑心暗鬼にさせ、同盟国や中立国を敵に変えてしまうと確信している(Restrainers believe that trying to spread democracy with military force is a fool’s errand, and that threatening or bullying other states usually backfires, making adversaries more suspicious and turning allies or neutrals into enemies)。そのため、外交こそがアメリカ・ファーストの行動であり、武力行使は最後の手段(last resort)であるべきだと彼らは考えている」「抑制者は、世界は危険な場所であり、アメリカは一部の国と深刻な利害の衝突を抱えていることを認識しているものの、過剰な軍事費支出や海外での武力行使を正当化するために用いられる、絶え間ない脅威の誇張には反対している」「アメリカが国家安全保障への支出を減らし、依然として大きな力を持っているにもかかわらず、より賢明にその力を行使すれば、より安全で繁栄した国になると考えている」。第一次政権時のドナルド・トランプは抑制主義であったが、現在のドナルド・トランプは全くの別人である。下記論硬はスティーヴン・M・ウォルトによる昨年9月の論稿であるが、現在の状況を警告しているかのようでもある。

 私は昨年の5月頃に第二次ドナルド・トランプ政権における外交政策に大きな転換点があったと考えている。ここで抑制者から介入主義者に変化している。私たちはこのことをより深く研究する必要がある。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプは決して抑制者にはなれない(Donald Trump Will Never Be a Restrainer

-最終判決は下された。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/30/donald-trump-foreign-policy-restrainer-realist-war-defense-diplomacy/

ドナルド・トランプ米大統領が外交政策におけるリアリスト(foreign-policy realist)もしくは、「抑制者(restrainer)」なのかという議論に終止符を打つべき時が来た。確かに、彼の政策決定における気まぐれなアプローチや、言行不一致の傾向は、特に明確な理由もなく極端から極端へと態度を翻す時(ウクライナ問題を参照)には、彼の見解を捉えること(to pin down)を困難にしている。彼の発言や行動の中には、リアリスト・抑制者というレッテル(labels)に合致するように見えるものもあるかもしれないが、彼はリアリスト・抑制者ではない。

私がこの問題を提起するのは、レッテルが重要であり、誰がどのようなアプローチや思想と結びつけられるかによって、様々な考え方や政策提案がどのように受け止められるかが左右されるからだ。公平を期すために言えば、トランプは「永久戦争(forever wars)」への批判、外交政策エスタブリッシュメントへの不信感、裕福な同盟諸国に自衛のための行動を促そうとする姿勢、そして海外におけるリベラルな価値観の擁護への明らかな無関心などにおいて、抑制の提唱者のように聞こえる時もある。(この点において、彼は異例なほど一貫性を見せている。なぜなら、言論の自由や法の支配といった、厄介なリベラルな価値観に対しても、アメリカ国内で同様に敵対的な姿勢をとっているからだ。)要するに、内容ではなくスタイルだけを見れば、トランプはリアリスト・抑制者の典型的なメンバーだと結論づけるかもしれない。

この議論をしているもう一つの理由は、トランプをリアリスト・抑制者とレッテルを貼ることが、時に政治的な得点稼ぎ(to score political points)に利用されることがあるからだ。JD・ヴァンス副大統領のようなMAGA支持者の中には、抑制者というレッテルを受け入れることで、トランプが以前の公約を守り、アメリカが莫大な予算のかかる海外関与に陥るのを防いでいるとアピールする人たちもいる。(トランプ政権1期目には、傲慢なマイク・ポンペオ国務長官も同様の策略を試みたが、説得力はなかった。)対照的に、抑制に反対する人々は、アメリカの外交政策の軍事化(the militarization of U.S. foreign policy)に反対し、世界各地へのアメリカの介入を批判してきた個人や組織(例えば、クインシー責任ある国家運営研究所など)の信用を失墜させるために、トランプにそのレッテルを貼ろうとすることがある。(念のため申し添えておくと、私はクインシー研究所の理事を務めており、時折、同研究所の出版物に寄稿している。)

しかしながら、現時点ではトランプの実績が、この問題を解決する上で重要な手がかりとなる。そのためには、抑制者が何を主張しているのかを明確にする必要がある。そして、その出発点として最も適切なのは、この運動にその名を与えたバリー・ポーゼンの著書『抑制:アメリカの大戦略の新たな基盤(Restraint: A New Foundation for U.S. Grand Strategy)』であろう。さらに、ダリル・プレス、ユージン・ゴールズ、ハーヴェイ・サポルスキーによる初期の論文、クリストファー・レインによる注目すべきエッセイ、そしてジョン・ミアシャイマー、モニカ・トフト、シディタ・クシ、そして私自身による後期の著作も参照すべきだろう。

アメリカ外交政策における抑制という考え方は、アメリカの力を用いて民主政治体制、市場経済、法の支配、その他のリベラルな価値観を世界中に広め、できるだけ多くの国をアメリカが支配する国際機関に取り込もうとする、リベラル覇権(liberal hegemony)の大戦略(grand strategy)に反対する形で生まれた。抑制者は、軍事力によって民主政治体制を広めようとするのは無謀な試みであり、他国を脅迫したり威嚇したりすることは通常逆効果となり、敵対国を疑心暗鬼にさせ、同盟国や中立国を敵に変えてしまうと確信している(Restrainers believe that trying to spread democracy with military force is a fool’s errand, and that threatening or bullying other states usually backfires, making adversaries more suspicious and turning allies or neutrals into enemies)。そのため、外交こそがアメリカ・ファーストの行動であり、武力行使は最後の手段(last resort)であるべきだと彼らは考えている。彼らはアイソレイショニストでも平和主義者でもない。なぜなら、アメリカは主要地域における有利な勢力均衡(balances of power)の維持に貢献する利益を有しており、同盟国は有用ではあるが、責任を果たさせるべきであり、重要な国益を守るためには武力行使が必要となる場合もあり、適切に設計された国際機関は国家間の競争の中でも協力関係を促進できると信じているからである。抑制者は、世界は危険な場所であり、アメリカは一部の国と深刻な利害の衝突を抱えていることを認識しているものの、過剰な軍事費支出や海外での武力行使を正当化するために用いられる、絶え間ない脅威の誇張には反対している。

抑制者はあらゆる問題について意見が一致する訳ではない。例えば、中国に対してより積極的に対抗すべきだと主張する者もいれば、中国の台頭を容認する努力を強化すべきだと主張する者もいる。しかし、彼らは近年の民主党政権と共和党政権下でアメリカの国家戦略を特徴づけてきた、自己中心的で傲慢な姿勢に反対するという点では一致している。何よりも、抑制者は気まぐれな軍事力行使に反対し、アメリカが国家安全保障への支出を減らし、依然として大きな力を持っているにもかかわらず、より賢明にその力を行使すれば、より安全で繁栄した国になると考えている。

それでは、なぜトランプは真の抑制者ではないのか? その理由をいくつか挙げてみよう。

第一に、トランプ大統領はアメリカの国防予算の不必要な増額を依然として支持しており、その額は最近1兆ドルを超え、依然として他のどの国の国防予算をも大きく超えている。さらに悪いことに、彼はこれらの巨額の予算の一部を本来の目的である「外国の脅威からアメリカを守る(defending the United States against foreign dangers)」ことから逸脱させ、国内の架空の敵(fictitious domestic enemies)を追いかけるために流用している。脅威を弱めるどころか、トランプ大統領は国内外の架空の敵を利用して、大統領権限を危険なレヴェルまで拡大することを正当化している。抑制者は長年、過剰な軍事化(excessive militarization)は最終的にアメリカ国内の市民の自由を脅かすと警告してきたが、トランプ大統領は彼らの警告が正しかったことを証明してしまった。

第二に、抑制者は、アメリカはヨーロッパと中東地域における軍事的プレゼンスを縮小し、中東地域ではより公平な姿勢を取るべきだと考えている。トランプ大統領にはこれら両方を行う十分な機会があったにもかかわらず、どちらも実行していない。両地域におけるアメリカのプレゼンスはほぼ変わらず、トランプ大統領は中東地域におけるアメリカの「特別な関係(special relationships)」をさらに強化し、中東地域の敵対勢力との真剣な対話を拒否している。

第三に、トランプ大統領は、際限のない紛争にアメリカ軍地上部隊を投入することには慎重な姿勢を示しているものの、目に見える形ではあるものの戦略的に疑わしい軍事行動に空軍力を行使することには全く抵抗がない。2025年1月に大統領に復帰して以来、イエメンとイランの標的を攻撃し、カリブ海で麻薬密輸に関与していたとされる複数の船舶を軍に撃沈するよう命じた。これらの行動の合法性は疑わしいだけでなく、いずれも重要かつ永続的な戦略的目的を達成する可能性は低い。フーシ派は依然として強硬な姿勢を崩さず、イランは核開発計画を放棄しておらず、数隻の船舶を撃沈すればアメリカへの麻薬流入が減少すると考える者は夢物語を語っているに過ぎない。トランプ大統領の関税政策と並んで、こうした無意味な軍事行動は外交政策における自制とは正反対であり、トランプ政権に今もなお仕えている数少ない真の抑制者たち(彼らは自分が誰であるかを分かっている)が、こうした行動をどう思っているのか、私は疑問に思わずにはいられない。

第四に、トランプ大統領は、抑制者の一部が提唱するように、経済・安全保障に関する諸問題に関して中国と包括的な合意に達することも、また、他の抑制者が主張するように、アジアにおける中国の勢力均衡を図り、地域覇権の確立を阻止するための連合を強化する真剣な努力もしていない。それどころか、トランプ政権は日本、韓国、インドといったアメリカの重要なパートナー国との貿易をめぐって対立を煽り、ジョージア州のバッテリー工場で韓国人労働者を不当に扱うことで韓国との関係をさらに悪化させ、科学技術分野における中国に対するアメリカの競争力を組織的に弱体化させている。

第五に、抑制者、特に超党派を標榜するクインシー研究所のような組織が提唱する重要な提言の1つは、アメリカ外交を活性化させ、軍事力の反射的な行使を控えることである。しかし、以前にも述べたように、トランプ大統領とその側近たちは、準備不足、人員不足、一貫性のない取り組み、そして最終的には失敗に終わる外交交渉の典型例と言えるだろう。トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官兼国家安全保障担当大統領補佐官は、国務省を骨抜きにし、通常の省庁間協議プロセスを無視し、ガザ地区とウクライナに関する重要な交渉を、明確な資格がなく、潜在的な利益相反を抱える不動産弁護士(スティーヴ・ウィトコフ)に委ねてしまった。彼らがほとんど成果を上げていないのは何も不思議に思うものではないか?

トランプ大統領自身の外交姿勢については、先週の国連総会での彼の全くもって奇妙なパフォーマンスをご覧になることをお勧めしたい。国連が好きであろうと、トランプ大統領を嫌っていようと、彼がそこで見せた光景、そしてそれが我が国とその指導者について世界に何を物語ったのかを知れば、誰もが不快感を覚えるはずだ。トランプは持ち時間15分をほぼ45分も超過し、数十人の世界の指導者たちを前に、支離滅裂で自己憐憫に満ち、虚偽と侮辱に満ちた長時間のスピーチを続けた。この演説は、世界で最も力のある国がこれほど無能な人物の手に委ねられていることに、アメリカの敵対諸国を安堵させ、残されたアメリカの友好諸国を同じ理由で不安にさせたことは間違いない。

従って、トランプは抑制者でもリアリストでもない。もっと適切な表現はいくつかあるが、それらを挙げるには私は礼儀正し過ぎるのかもしれない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 私は昨年11月末に著書『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』を出した。著作の中で私は次のように主張した。ピーター・ティール率いるビッグデータ分析やAI開発のパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスク率いる宇宙開発のスペースX社、パルマー・ラッキー率いるドローン開発のアンドゥリル・インダストリーズ社が「新・軍産複合体(Neo Military-Industrial Complex)」を形成し、アメリカ政府とアメリカ軍に食い込む形で、大型契約を締結し、巨額の利益を生むということになる。その具体例が「ゴールデンドーム」という、ドナルド・トランプ大統領が発表した、アメリカ全土を防衛するシステムである。このシステムの重要な点は、長期契約(サブスクリプション契約)によって、長期にわたり、巨額の利益を上げる点にある。そして、彼らは大規模な戦争を忌避するだろう。新・軍産複合体は長期契約で利益を上げるが、米中衝突などの大規模な演奏は望まないし、そのようなことになったら、技術提供を止めるなどして阻止することになるだろう。


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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

 今回のイラン攻撃は大規模攻撃である。私の主張の一部は外れているという指摘があるだろう。しかし、今回のイラン攻撃について、イスラエルとアメリカの目論見は、最初の一撃でイランを屈服させるというものであった。しかし、それが外れてしまい、大規模化、長期化せざるを得なくなった。アメリカはこのような形になることを望んでいなかったし、想定していなかった。

 以下の論稿は、私の主張の正当性を担保してくれる内容になっている。「サブスクリプション」という言葉も出てくる。最先端の高度技術を提供する民間企業が政府の政策遂行、軍の作戦遂行においてイニシアティヴを取るという時代がそこまで来ている。最後に宣伝になって恐縮だが、是非、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』をお読みください。よろしくお願いいたします。

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スターリンクは地政学を民営化した(Starlink Has Privatized Geopolitics

-ウクライナからイランまでイーロン・マスクのサーヴィスは外交政策の仲裁者(an arbiter)となった。

ロバート・ムガー、ミシャ・グレニー筆

2026年3月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/20/starlink-spacex-musk-geopolitics-war-ukraine-russia-iran/

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ウクライナのドネツクで戦闘任務中にウクライナ兵がスターリンク衛星モデムを調整している(2025年3月12日)

スターリンクは単なる商用通信サーヴィスではない。それは、戦争をいかに戦われるか、国内の混乱へ国家は以下に対処するか、そして政府の統治が及ばない分野において犯罪組織が如何に活動するかについて、ますます左右する戦略的インフラ(strategic infrastructure)になっている。スターリンクが政治的にこれほど重要な意味を持つのは、その地球規模のネットワーク網だけでなく、その背後にあるガヴァナンスモデルにもある。

今や民間企業が軌道上のゲートキーパーとなり、誰が、どこで、どのような条件で、どのような技術的制約の下で接続できるかを決定する役割を担っている。多くの紛争において、こうした決定は軍事的、政治的な影響を及ぼし、国家はそれを再現したり制御したりすることが困難になっている。多くの戦略的サプライチェインが民間企業に依存している現状において、スターリンクは公共の安全保障機能に対する民間企業の裁量権が極めて集中している事例と言えるだろう。

スターリンクの地政学的な重要性は、その規模に比例する。2025年12月中旬時点で、軌道上には9357基のスターリンク衛星が存在していた。 2026年1月、アメリカ連邦通信委員会(FCC)はスペースXに対し、第2世代衛星7500基の追加配備を承認した。これにより、スペースXの衛星総数は約17000基となる。スペースXは以前から、最大42000基の衛星運用を目指すという野心を表明してきた。

スターリンクのサーヴィス提供範囲も拡大している。現在、160の市場でサーヴィスを展開しており、その決定に対処しなければならない軍、通信規制当局、法執行機関の数も増加している。競合他社と比較すると、スターリンクの圧倒的な優位性はより明確になる。低軌道における最大のライヴァルであるユーテルサット・ワンウェブ(Eutelsat OneWeb)は約650基の衛星を運用している一方、アマゾンのカイパー衛星群(Amazon’s Kuiper constellation)は2月時点でわずか200基強にとどまっている。スターリンクは事実上の独占状態にあり、当面の間、競合相手は存在しないことになる。

スターリンクは現在、世界中で1000万人以上のアクティヴユーザーを抱えていると発表しており、スペースXは2026年末までにその数を倍以上に増やすことを目標としている。その成長は、米国のT-Mobileをはじめとする携帯電話事業者との提携によってさらに加速しており、ドイツテレコムは2028年からヨーロッパでスターリンクを利用した衛星通信サーヴィスを開始する予定だ。

スターリンクの商業的な強みは、地上基地局や光ファイバー網が届かない農村部、遠隔地、災害被災地への接続にある。しかし、こうした重要な通信レイヤーを支配することで、スターリンク社は地政学的に大きな影響力を持つことになる。特に紛争、緊急事態、そして接続性が軍事、政治、人道的な結果を左右するあらゆる状況において、その影響力は顕著になる。

ウクライナ情勢は、スターリンクが戦場の通信にどのような影響を与え、戦略的な依存関係を生み出すかを示す、これまでで最も明確な事例と言えるだろう。2022年のロシアによる本格的な侵攻で地上ネットワークが機能停止した後、ドローン、分散型指揮、迅速な標的設定サイクルが特徴的なこの戦争において、スターリンク端末は運用インフラとなった。2025年初頭までに、ウクライナは少なくとも4万7000台のスターリンク端末を確保したが、その大部分はポーランド、ドイツ、アメリカ、そしてスペースX自身を含むパートナー国政府やその他の支援国から供給されたものだった。安定したモバイル帯域幅がなければ、ウクライナ軍はドローン映像の送信、兵站の調整、そしてこの紛争の特徴である分散型火力支援ネットワークの維持ができなかった。これらの端末は単なる利便性ではなく、効果的な抵抗のための必要条件だったのだ。

この依存関係は即座に攻撃対象領域を生み出した。ロシア軍は第三者ルートを通じてスターリンクへのアクセス権を取得したと報じられており、2024年にはロシア支配地域におけるスターリンクネットワークの利用が繰り返し懸念事項となった。問題は深刻で、スペースXとウクライナ国防省は不正接続を抑制するために認証管理を導入した。ウクライナ当局は、前線におけるロシア軍の利用が阻害されたと述べ、軍事顧問たちは、この影響はロシア軍の作戦にとって重大な後退であると評した。

この一連の出来事は示唆に富む。企業内のエンジニアが商業アクセスに関する方針に基づいて下した決定が、実戦中の戦争における戦術的バランスを崩した。条約による承認も、議会での採決もなかった。その決定を左右したのは、一企業の利用規約(a firm’s terms of service)だった。

戦略的、地政学的な側面はさらに深刻だ。2025年初頭、アメリカの交渉担当者は、ウクライナが重要な鉱物資源に関する合意を受け入れなければ、スターリンクへのアクセスを制限するとア圧迫を与えたとされる。スペースXのオーナーであるイーロン・マスクは関連性を否定したが、圧迫の信憑性と、それがキエフにもたらした不安は、その具体的な内容よりも重要だった。

すでに前例があった。2022年、マスクは、ロシア占領下のクリミア半島近辺でのスターリンクの通信網をウクライナ海軍のドローン作戦支援のために提供することを拒否したと報じられている。その理由として、事態のエスカレーションに関するリスクについて個人的な見解を挙げた。民間供給業者が個人的な直感に基づいて、最前線の国家が実施できる作戦を決定できる場合、その関係はもはや商業的なものではなくなる。それは主権の委譲であり、説明責任を負わない行政機関によって行使される戦略的機能である。

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衛星放送受信アンテナが点在するテヘラン中心部の住宅街の窓(2026年1月20日)

イランは、スターリンクの地政学的影響を示すもう1つの事例である。2026年1月に大規模な抗議デモが発生した後、イランの政権は史上最長かつ最も厳しいインターネット遮断を実施し、国内の接続率を通常の約4%にまで低下させた。近年、密輸され闇市場で取引された数万台のスターリンク端末は、弾圧の様子を外部に伝える重要な経路となったようだ。イラン国内の利用者には利用料が免除されたと報じられており、トランプ政権はスターリンク端末約6000台を密かにイランに持ち込んだ。これらの端末は単なる消費財としてではなく、アメリカの外交政策の手段として利用された。

テヘランの対応は前例のないものだった。政府当局は、地上妨害装置、GPSスプーフィング装置、携帯電話妨害装置を各地域に配備した。報道によると、治安当局は戸別訪問による捜索を行い、ドローンや情報提供者を使って衛星アンテナや端末の位置を特定し、利用者をスパイ容疑で告発した。イラン議会は既に、スターリンク端末の無許可所持・使用を犯罪と定めており、軽微な違反には懲役刑、スパイ行為や協力行為には死刑を含むさらに厳しい刑罰を科すことを規定していた。イランは国際電気通信連合(ITU)に対し、スターリンクが国家主権を侵害しているとして正式に提訴していた。

第2段階は2月28日に始まり、アメリカとイスラエルがイランの軍事施設、核施設、政府機関を標的とした共同攻撃を開始した。最高指導者アリ・ハメネイ師の暗殺は、イランによるイスラエル、中東各地のアメリカ軍基地、湾岸諸国、その他複数の国へのミサイルとドローンによる報復攻撃を引き起こした。イラン国内の通信状況はさらに悪化し、通常の約1%にまで低下した。

この段階において、スターリンクの役割はまさに矛盾をはらんだものとなった。密輸された端末によって、一部のイラン人は政府庁舎への攻撃を記録し、通信規制の努力にもかかわらず映像を拡散することができた。しかし、衛星通信へのアクセスは反体制派に限られていた訳ではないようだ。従来のネットワークが劣化するにつれ、スターリンクは国家と関係のある主体によっても利用された可能性がある。サイバーセキュリティ研究者たちは、インターネット遮断期間中、イラン情報保安省に関連する一部の活動がスターリンクのIPアドレス範囲から発信されていたと指摘している。同時に、イラン政府当局は検閲を回避しようとする市民によるスターリンクへのアクセスを妨害または低下させていたと報じられている。

また、別のサイバーセキュリティグループは、スターリンクを装った罠を利用した監視マルウェアを特定した。これは、同じ通信プラットフォームが抗議活動参加者、監視活動者、そして国家と関係のあるサイバー攻撃者によってどのように利用されうるかを示している。

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カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられた28基のスターリンク衛星を搭載したスペースX社のファルコン9ロケットが上昇している(2025年9月28日)

米国防総省は、イランを、低軌道システムが持続的な電子妨害や戦時下の混乱下でどのように機能するかを示す好例として捉えている。持続的な圧力によってスターリンクの耐障害性が著しく低下する可能性があるならば、例えば台湾におけるスターリンクの役割を支える前提は見直される必要がある。これはシステムの有用性を損なうものではない。単に、ネットワークが宇宙空間にあるというだけで耐障害性が保証される訳ではないことを意味する。

スターリンク技術は、犯罪組織や反乱組織のネットワークにも浸透しつつある。犯罪組織は、分散型通信の力を活用して作戦を遂行しようとしている。統治能力が低く、スペースXに対する影響力も乏しい脆弱な国家にとって、課題は喫緊の課題だ。通信網が地上の基地局やケーブルではなく、上空から提供されるようになると、遠隔地や紛争地域でのアクセス規制が困難になり、民間事業者がどのような条件で協力してくれるのかを交渉することもさらに難しくなる。

ブラジルのアマゾン熱帯雨林は、その具体的な例を示している。2025年6月、ブラジル連邦検察庁は、違法採掘や犯罪行為におけるスターリンクサーヴィスの利用を抑制するため、スターリンクと協定を締結した。この協定では、アマゾン地域における新規利用者に対し、身分証明書と居住証明の提出を義務付け、捜査対象となっている端末に関するデータをブラジル当局と共有することを認めている。また、違法行為に関与している疑いのある端末については、サーヴィスが停止される可能性がある。ブラジル環境庁の作戦調整官であるヒューゴ・ロスは、犯罪組織がスターリンクを利用して取締チームのリアルタイム位置情報を送信し、摘発を予測したり、現場の職員の安全を脅かしたりしていたことを指摘している。ブラジルは実行可能な合意を取り付けたものの、それは問題が環境犯罪の現場に深く根付いた後のことだった。

メキシコの組織犯罪の状況は、関連するリスクを示唆している。麻薬カルテルは、アメリカ国境沿いで拡大する技術軍拡競争の中で、密輸、監視、治安部隊への攻撃にドローンを活用している。このエスカレーションは、今や民間空域管理にも波及している。2026年2月、アメリカ連邦航空局(FAA)は、アメリカの対ドローン対策の展開への懸念から、テキサス州エルパソ周辺の空域を突然閉鎖したが、数時間後に制限を解除した。この一件は、犯罪組織によるドローンの脅威が、戦術的な安全保障対応だけでなく、深刻な外交的・航空的混乱を引き起こしかねないことを示した。

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左:メキシコ陸軍の対ドローン特殊部隊がメキシコ・ナウカルパン州で報道陣向けにデモンストレーションを行った(2026年2月17日)右:チャド・アドレの難民キャンプで、仮設小屋の横に設置されたソーラーパネルがスターリンク回線に電力を供給している(2026年2月19日)

アフリカのサヘル地域では、状況はさらに深刻だ。イスラム国家ジャマート・ナスル・アル・イスラム・ワル・ムスリミン(JNIM)やイスラム国西アフリカ州(ISWAP)などの反政府勢力は、リビアとナイジェリアからマリ、ニジェール、その他の紛争地域へとスターリンク機器の違法な供給網を構築している。2024年6月、JNIMはマリのガオ地域での作戦中にスターリンク端末が使用されている様子を映した動画を公開した。昨年(2025年)、ナイジェリア軍はボコ・ハラムに対する襲撃作戦で、サンビサ森林地帯の司令官からスターリンクの機器を押収した。

2025年を通して、ジハード主義グループは衛星通信をますます活用し、分散した部隊の連携、プロパガンダの配信、そして地上ネットワークに対する国家統制によって恩恵を受けていた傍受型監視の回避を図った。ニジェールとチャドは監視体制強化のため、2025年初頭にスターリンクの合法化と規制に着手したが、密輸ネットワークは今後も存続する可能性が高い。

スターリンクは宇宙分野における唯一の存在ではない。商業宇宙セクターは、国​​家防衛と軍事力にとってますます重要な役割を担うプレーヤーで溢れている。その結果、各国が同時に受け入れ、統制しようとする戦略的サーヴィスの市場が拡大している。通信分野では、イリジウムが防衛通信に深く根付いている。2024年、スターリンク社は合えりか宇宙軍と、高度なモバイル衛星サーヴィスとその維持管理に関する5年契約を発表した。これは、見通し外通信における商用プロバイダーへの依存が続いていることを示している。

ユーテルサット・ワンウェブとアマゾンのカイパー衛星群も防衛・政府市場で競合しており、ヨーロッパ連合(EU)のIRIS2構想は、EUの主権能力強化への野心を反映している。マクサール(Maxar)、プラネット(Planet)、ブラックスカイ(BlackSky)の商用画像データは、カペラ(Capella)とICEYEのレーダーデータとともに、軍事目標設定と状況認識に組み込まれている。

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ウクライナのロボティネ近郊の最前線の雪原に立つスターリンクデヴァイス。ドローン偵察・攻撃部隊の一部(2024年1月23日)

近年の紛争は、こうした仕組みをさらに深化させている。商用衛星、端末、データ契約は、今や軍事サプライチェインの一部となっている。そして、弾薬や防空システムと同様に、政治的圧力によってその供給が制限、転用、あるいは兵器化される可能性がある。商用宇宙は、国家が権力を行使し、また抑制する手段の一部になりつつある。

イランが最も鮮明に露呈させたのは、ウクライナやその他のスターリンク利用事例で部分的にしか明らかにならなかった統治上の欠陥である。国際人道法は、国家に対し軍事目標と民間目標を区別することを求めているが、午前中に反体制派に利用されていた端末が、午後には軍事攻撃を支援するために利用される可能性もある。

国連憲章の下で、商用衛星ネットワークの妨害行為を武力行使とみなすべきかどうかを判断するための、確立された国際的な枠組みは存在しない。商用機器の秘密裏の配備が情報戦行為に該当するか否かを規定する規則もない。CEOの意見が戦場の結果を左右する場合、民間事業者の責任を問う仕組みも存在しない。また、リアルタイムで民生用と軍事用を行き来するシステムを運用する商用衛星事業者の義務についても、明確な合意は得られていない。

戦略的な接続性は、もはや地理的な問題ではなく、ガヴァナンスの問題となっている。帯域幅は軌道上から供給され、情報はサブスクリプション方式(subscription)で購入される。主権(sovereignty)は、民間企業との関係、交渉によるアクセス協定、そして争点となる技術的設定を通じて、ますます行使されるようになっている。商用衛星インフラを、それに伴う規律、冗長性、そして法的枠組みといったあらゆる要素を含めた戦略的依存関係として扱わない国家は、危機に際して、その依存関係が他国によって管理されることを覚悟しなければならないだろう。

スターリンクの新たな地政学は既に始まっている。問題は、各国がそれを統治するのか、それとも単に反応するだけなのか、ということである。

※ロバート・ムガー:「セクデヴ」グループ最高責任者、イグナイト研究所共同創設者、ロバート・ボッシュ・アカデミー研究員。著述家であり、イアン・ゴールデンとの共著『未知の地:今後100年を生き抜くための100枚の地図(Terra Incognita: 100 Maps to Survive the Next 100 Years)』がある。Xアカウント:@robmuggah

※ミシャ・グレニー:人間科学研究所所長。多くの著作があり、『マクマフィア:深刻な組織犯罪(McMafia: Seriously Organised Crime)』と『宿敵:ブラジル最重要指名手配犯の追跡(Nemesis: The Hunt for Brazil’s Most Wanted Criminal)』がある。

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(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 なぜアメリカのドナルド・トランプ大統領がイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に乗せられて(ほぼ洗脳のような形で)、イランに対して大規模攻撃に踏み切ったのかということはこれから様々な分析がなされるだろう。大きく分ければ、トランプの個人的な資質や考え、アメリカ政府やホワイトハウス、アメリカ国内の状況とそれによる影響、そして、国際関係の状況の大きく3つに分けることが出来るだろう。

 下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルト(ハーヴァード大学教授)は、2007年に、ジョン・J・ミアシャイマー(シカゴ大学)と『イスラエル・ロビー』(邦訳は副島隆彦訳、講談社、2007年)を発表した。『イスラエル・ロビー』は衝撃を持って迎えられた。アメリカ国内では称賛を集める一方で、激しい批判にも晒された。特にユダヤ系諸団体や親イスラエル派の個人からは罵詈雑言に近い非難が寄せられた。「アメリカの外交政策に国内のロビー団体が影響を与える」というのは先ほどの分類で言えば、二番目の分類になる。是非、『イスラエル・ロビー』をお読みいただきたい。
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スティーヴン・M・ウォルト(左)とジョン・J・ミアシャイマー
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 今回のイラン攻撃について、ウォルトはイスラエル・ロビーの影響があったと分析している。ドナルド・トランプ大統領の周辺人物はほぼ親イスラエル、親ネタニヤフの人物で方得られていること、トランプが選挙資金の面から恩義を感じていること、民主党側もイスラエル・ロビーの影響力を受けて、戦争阻止や停戦に積極的に動いていないということを挙げている。確かに、アメリカ連邦議会ではトランプ大統領のイラン戦争に関する権限を制限する決議案を上下両院で否決している。『イスラエル・ロビー』で詳しく分析されているが、アメリカの選挙区(都市部がほとんど)によってはユダヤ系アメリカ人が集住しており、有権者グループとして力を持っている、もしくは弁護士や医師などの高学歴で専門職に就く割合が高く、巨額の政治資金を提供できるということから、政治家に影響を与えることが出来るということから、選挙に勝とうと思えば、イスラエル・ロビーやユダヤ系の人々の意向に反対することは難しいということになる。

 ウォルトは論稿の結語で「ロビー活動の影響力が弱まり、アメリカがイスラエルとのより正常な関係を確立するまで、こうした事態は繰り返される可能性が高く、アメリカは冷酷ないじめっ子のように見え、私たち全員にとって不利益となるだろう」と書いている。今まさに、このような状況になっている。そうした中で、アメリカ一辺倒の外交を行う日本と高市早苗首相は異常と言わざるを得ない。

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イラン戦争におけるイスラエル・ロビーの責任(The Israel Lobby’s Responsibility for the Iran War

-アメリカ・イスラエル間の特別な関係を擁護する人々は特別な役割を果たしてきた。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年3月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/17/israel-lobby-iran-war-trump-responsibility/
写真

ドナルド・トランプ氏が2016321日、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC)の年次政策会議で演説を行った(2016年3月21日、ワシントンDC

速報:イラン戦争は予想通りに進んでいない。「計画通り(planned)」に進んでいないと言いたいところだが、この状況ではその言葉は全く不適切に思える。アメリカをはじめとする各国が、またしても中東地域で惨敗を喫する中、誰が責任を負うべきかを知りたがっている。責任の所在を明確にすることは極めて重要だが、同時に、責任のない人間が不当に非難されることもあってはならない。

当然のことながら、有識者の一部は、これはイスラエルのために戦われている戦争だと考えている。彼らはその証拠として、マルコ・ルビオ米国務長官の発言を挙げている。ルビオ長官は、トランプ政権はイスラエルが攻撃を仕掛けてくることを知っており、イランがアメリカ軍に対して報復する可能性を予測したため、先制攻撃を選択したと述べていた。さらに、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは数カ月前からイランとの戦争を強く主張しており、元『イェルサレム・ポスト』紙編集長で、現在は『ニューヨーク・タイムズ』紙のコラムニストであるブレット・スティーヴンスのような親イスラエル派の評論家は、過去に繰り返しイランに対する戦争を訴え、現在もなお今回の戦争を擁護している。

ここで1つの明らかな疑問が生じる。アメリカ国内の「イスラエル・ロビー(Israel Lobby)」はこの戦争にどの程度の責任を負っているのだろうか? しかしながら、この問題を詳しく検討する前に、2つの注意点を述べておく。

第一に、まだ初期段階であり、今後数カ月の間に、この事態がどのように、そしてなぜ起こったのかを示す証拠がさらに明らかになるだろう。また、事態がさら​​に悪化すれば(go further south)、いつものように責任転嫁や混乱(kick up dust and shift the blame)を招く動きも出てくるだろう。2003年のイラク戦争とは異なり、今回の紛争はアメリカ国民に戦争を正当化するための長期にわたるキャンペーンが行われなかったため、誰が戦争を推進し、誰が疑問を呈していたのかを正確に把握するのは困難だ。

第二に、ロビー活動の影響を評価する際には、その定義を正しく定めることが不可欠となる。ジョン・ミアシャイマーと私が2007年に出版したこのテーマに関する著書で明らかにしたように、イスラエル・ロビーは宗教や民族によって定義されるものではなく、むしろその構成員が推進しようとする政治的立場によって定義される。それは、アメリカとイスラエルの「特別な関係(special relationship)」を維持することを共通の目標とする、諸団体や諸個人の緩やかな連合体である。実際には、この特別な関係とは、イスラエルがどのような行動を取ろうとも、寛大な軍事的・外交的支援を提供することを意味する。このイスラエル・ロビーはユダヤ人と非ユダヤ人の両方で構成されており、多くのアメリカ系ユダヤ人はイスラエル・ロビーに属しておらず、特別な関係を支持していない。さらに、イスラエル・ロビーの中核を成す人々(キリスト教シオニスト[Christian Zionists]など)の中には、ユダヤ人ではない人もいる。

したがって、イラク戦争の責任をアメリカ系ユダヤ人コミュニティに押し付けることは、2003年のイラク戦争の責任をアメリカ系ユダヤ人コミュニティに押し付けたのと同様に、分析的に誤りであるだけでなく、危険な分断を招くことになる。実際、2002年から2003年にかけて行われた調査では、ユダヤ系アメリカ人はアメリカ国民全体に比べて、イラクのサダム・フセイン大統領に対する戦争への支持が低いことが示された。イスラエルのユダヤ人政策研究所(Jewish People Policy InstituteJPPI)は最近、ユダヤ系アメリカ人の大多数がイランとの戦争を支持していると主張する世論調査結果を発表したが、これは慎重に選ばれた、明らかに代表性のない回答者グループによるものであり、ほぼ間違いなく偽りだ。(ちなみに、JPPIがこのような疑わしい調査結果を発表するのは無責任であり、まさに私たちが皆阻止したい反ユダヤ主義を助長する危険性がある。)また、最大の主流派リベラル系親イスラエル団体であるJストリートや、ニュー・ジューイッシュ・ナラティブ、ユダヤ平和の声といった進歩的な団体が、既に戦争を非難する声明を発表していることも注目に値する。

それでは誰に責任があるのか?

第一の、そして最も明白なのは、ドナルド・トランプ大統領と、彼の無能で無責任な忠実な側近たちだ。2003年のジョージ・W・ブッシュ大統領と同様に、トランプも決断を下し、その結果に対する最終的な責任を負う。そしてもちろん、地域全体におけるイスラエルの覇権確立を目指しているものの、米国の積極的な支援なしにはそれが不可能なベンヤミン・ネタニヤフ首相も、直接的な責任を負う。

しかし、トランプ大統領が私たちに信じさせようとしていることとは違い、どの大統領も完全に単独で行動する訳ではなく、トランプ大統領が周囲の人々から聞くことに左右される可能性があることは周知の事実である。そして、トランプ大統領の側近たちには、イスラエルを熱烈に擁護する者、イスラエルからの選挙資金を長年受け取ってきた者、あるいはその両方である者が多数含まれている。トランプ大統領の中東特使であるスティーヴ・ウィトコフとジャレッド・クシュナーは、駐イスラエル米大使のマイク・ハッカビーと同様に、イスラエルの熱烈な支持者である。国家安全保障担当大統領補佐官も兼務するルビオ国務長官は、連邦上院議員時代からイスラエルとの特別な関係を反射的に支持し、親イスラエル派の選挙資金を最も多く受け取った人物の1人である。現ホワイトハウス大統領首席補佐官のスージー・ワイルズは、ネタニヤフ首相の2020年の再選キャンペーンでコンサルタントを務めた。国家情報長官を務めたトゥルシー・ギャバード(トランプ政権発足以前にイスラエルへの過剰な支援を批判していた)を除けば、政権上層部でイスラエルとの距離を置くことを公然と支持する人物はほとんどいない。

第二に、トランプ大統領自身も、故シェルドン・アデルソンとその妻ミリアムといった熱心な親イスラエル派の人物に恩義を感じていることを認めている。エリ・クリフトンとイアン・ラスティックが『ザ・ネイション』誌の最近の記事(および近刊予定の著書)で述べているように、トランプ大統領は2025年10月のクネセト(イスラエル議会)演説で、近年のアメリカの選挙で最大の献金者であるミリアム・アデルソンを名指しし、彼女はアメリカよりもイスラエルを愛しているかもしれないとさえ示唆した。こうした懸念は、一部の民主党指導者がイスラエルの開戦やトランプ政権の参戦を批判することに消極的で、むしろ戦争計画の不備に焦点を当てている理由を説明するかもしれない。

第三に、この戦争は突如として起こったものではない。確かに、アメリカとイランは何十年にもわたって対立しており、両国が互いに抱く疑念は、イスラエルやロビー団体だけの責任ではない。とはいえ、AIPAC、民主政体防衛財団、アメリカ・シオニスト連盟、反核イラン連合といったロビー団体は、長年にわたりイランを悪者扱いし、アメリカ企業がイランで事業を行うことを阻止し、イランの元大統領であるアクバル・ハシェミ・ラフサンジャニとモハメド・ハタミによる関係改善の試みを妨害してきた。(後者の点については、2007年に出版した書籍の第10章をお読みいただきたい。)Jストリートとは異なり、これらの団体は、イランのウラン濃縮能力と核兵器備蓄を削減した2015年の合意を阻止するために奔走し、イランが完全に合意を遵守していたにもかかわらず、最終的には2018年にトランプ大統領に合意を破棄するよう説得した。トランプがそうしていなければ、当然ながら、今日イランの核開発計画を懸念する理由ははるかに少なかっただろう。

最後に、民主党と共和党のどちらの大統領もイスラエルに実質的な圧力をかけることをほぼ不可能にすることで、ロビー活動はネタニヤフ首相が地域全体で「無謀な行動(reckless driving)」を取ることを可能にした。イスラエルによるパレスチナ住民への継続的な抑圧、ガザ地区、レバノン、イエメン、シリア、イラン、そしてカタールへの度重なる攻撃などがその例だ。スティーヴン・サイモンが指摘するように、イスラエルがアメリカを今回の戦争に参加することを「強制(compel)」したのではない。トランプ政権は自発的に、そして熱心に参戦した。このことは事実だが、ロビー活動が特別な関係を守り、イスラエルが平和を乱し続けることを可能にした役割は、なぜアメリカ人が遠く離れた地で多大な犠牲を伴う紛争に巻き込まれ続けるのかを理解する上で役立つ。

結論は以下の通りだ。今回の惨事が展開する中で、アメリカ人をはじめとする人々は、責任者を追及したいと考えるのは当然のことだ。彼らは、大統領をはじめとする特定のグループや個人に焦点を当てるべきだ。彼らは、イスラエルの地域政策を支持し、さらなる暴力の乱発がアメリカの国益になると自らを納得させた。ロビー活動の影響力が弱まり、アメリカがイスラエルとのより正常な関係を確立するまで、こうした事態は繰り返される可能性が高く、アメリカは冷酷ないじめっ子のように見え、私たち全員にとって不利益となるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 私は映画については全くの門外漢である。しかし、私が毎日目を通している『フォーリン・ポリシー』誌のウェブサイトには、映画評論や文化評論が掲載される。先日は映画「国宝」の評論が掲載されておりそのことを紹介した。映画や文化は人間社会の重要な一要素であり、映画や演劇、小説、絵画などから歴史や社会について学ぶことが出来る。これらは人間社会にとって必要不可欠な要素である。

 1950年代から1960年代にかけて、フランスで「ヌーヴェルヴァーグ」と呼ばれる、一連の新しい手法を取り入れた映画が多く出てきたことは知識として知っており、写真や映像でそのスタイリッシュな様子は見たことがある。しかし、昨年、「ヌーヴェルヴァーグ」をテーマにした映画「ヌーヴェルヴァーグ」がNetflixで公開されたことは知らなかった。

 今回ご紹介する映画評論でヌーヴェルヴァーグについて少しだけ分かったような気がする。第二次世界大戦後の混乱が収まり、社会に安定がもたらされる中で、若者たちの既存の価値への反逆ということがあったのだろうと月並に考えている。これから様々な映画にも興味関心をもって接していきたいと思えるようになった。是非これからヌーヴェルヴァーグの映画を見ていきたい。

(貼り付けはじめ)

フレンチ・ヌーヴェルヴァーグは今でも新しい(The French New Wave Is Still New

-リチャード・リンクレイター監督の映画「ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)」は、私たちがまだ「勝手にしやがれ(Breathless)」の余韻から立ち直れていないことを示している。

ジョーダン・ホフマン筆

2025年11月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/11/21/nouvelle-vague-linklater-review-french-new-wave/

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オーブリー・デュリンがジャン=ポール・ベルモンド役、ゾーイ・ドゥイッチがジーン・セバーグ役、そしてギヨーム・マルベックが監督のジャン=リュック・ゴダール役で出演する映画「ヌーヴェルヴァーグ」の1シーン

Netflixで配信中のリチャード・リンクレイター監督の最新作「ヌーヴェルヴァーグ」の、特に活気に満ちた場面で、パリの街角でカメラの前で準備をしている2人の俳優を通りすがりの人が見かけ、何を撮影しているのか尋ねる。「ドキュメンタリーなんだ」とジャン=リュック・ゴダール役のギヨーム・マルベックは言い放つ。「ジャン=ポール・ベルモンドとジーン・セバーグがフィクションを演じているドキュメンタリーなんだけどね」。

ゴダールの画期的な長編映画「勝手にしやがれ」の制作過程を再現した、「ヌーヴェルヴァーグ」は、自らが神話を弄んでいることを十分に承知している。このやり取りが実際にあったかどうかは問題ではない。映画界に最も大きな衝撃を与えたムーヴメントの1つに対するリンクレイターのこの大胆な賛辞は、いわゆるヌーヴェルヴァーグの何がそんなに新しかったのか、そしてリンクレイター自身を含め、あらゆる革新的な映画監督がいかにその影響を受け続けているのかを的確に捉えている。

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パリの『カイエ・デュ・シネマ』編集部で新聞を読むジャン=リュック・ゴダールとクロード・シャブロル(1959年)

ヌーヴェルヴァーグ(このムーヴメントのフランス語名)とは、1950年代末から1960年代にかけて、主に型破りな『カイエ・デュ・シネマ』誌で批評家として地位を確立した後、映画製作に乗り出した、意欲的な映画監督たちのグループを指す言葉だ。会員証は発行されず、彼らの作風は多種多様であったが、彼ら(全員ではなかった)が若い(全員ではなかった)男性監督たちに共通していたのは、古臭く、陳腐で、確立されたフランス映画を打破したいという強い思いだった。彼らはまた、映画監督の作品には繰り返し現れるテーマや作風の特徴があるという、現在では定説となっている「作家主義」理論(the auteur theory)の普及にも貢献した。さらに、このグループの多くは、他の多くの真面目な批評家が低俗な芸術として切り捨てたものの中に芸術的価値を見出す先駆者であった。例えば、アルフレッド・ヒッチコックは興行的に大きな成功を収め(アカデミー作品賞も受賞した)、多くのエリート層は彼を研究対象としてふさわしくないと考えていた。フランスの批評家たちは、彼を偉大な芸術家として最初に称賛した人々であった。

しかし、ヌーヴェルヴァーグに明確な最終目標があったとすれば、それは革命的なリアリズムの実現だった。フランソワ・トリュフォーにとってそれは、たまたま犯罪者であったとしても共感を呼ぶ登場人物(sympathetic characters who may just happen to be lawbreakers)を描いた、重厚な人間ドラマを意味した。アラン・レネにとっては、現代の観客が「雰囲気だけで成り立っている(today’s audiences would say were entirely powered by vibes)」と評するような、夢のような映像交響曲だった。2022年に91歳で亡くなったフランス系スイス人監督ジャン=リュック・ゴダールにとって、それは映画の慣習を無視するだけでなく、むしろ嫌悪感を抱くことを意味した。彼の代表作「勝手にしやがれ(Breathless)」は、ごく基本的なあらすじを基に、ほぼ即興で制作された。

具体的な例を挙げると、映画「ヌーヴェルヴァーグ」で描かれているように、「勝手にしやがれ」の架空の制作現場で、あるスタッフが基本的な映画製作のガイドラインが無視されていることに懸念を表明する。「彼女は以前、別のストライプのセーターを着ていた」「視線がおかしい」 「君は何度も一線を越えている。編集の時、みんな同じように見ているだろう」。

「分かっている」とマルベック演じるゴダールは言う。「だが、気にしない。」

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「ヌーヴェルヴァーグ」の1シーンでゴダールを演じるマルベック

この(架空の)口論の最中にゴダールが撮影しているシーンは、「勝手にしやがれ」の中で最も長く、最も影響力のあるシーンだ。そこでは、警察から逃亡中のチンピラであるミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)と、彼の新しいアメリカ人の恋人パトリシア(ジーン・セバーグ)が、彼女の切手ほどの広さのアパートで、のんびりとした午後を過ごし、軽妙な会話を交わし、本を引用し、音楽を聴き、そして愛を交わす。私はこのシーンを人生で10回以上観たが、一度たりとも映像の矛盾を気にしたことはない。

これにはいくつかの理由がある。まず、この時点で私たちはすでにゴダールの世界に浸っており、そこでは「正しい」編集とされるものがしばしば無視され、ジャンプカットによるコラージュ効果が用いられている。今日ではこのような手法に驚くことはほとんどないが、「勝手にしやがれ」が公開された1960年当時は、映写室の故障でもない限り、このような映像を見ることはなかった。ゴダールは意図的にこの手法を用いた最初の映画監督ではないが、その使用は最も大きな影響力を持ったと言えるだろう。

ジャンプカットを用いた最も有名なシーンは、ミシェルとパトリシアがオープンカーで疾走する場面で、彼らの旅路を軽快に駆け抜けていくように編集している。これは現実の再現よりも、出来事のよりリアルな記憶を優先している。このシーンには、映画全体に流れるジャズのスコアが使われており、ゴダールがメロディーから予測可能なフレーズを削ぎ落とし、即興演奏を行うジャズ的な姿勢を反映している。

ゴダールの手法がこれほど好評を博したもう1つの重要な理由(これは「ヌーヴェルヴァーグ」でもはっきりと述べられている)は、1959年の「勝手にしやがれ」の撮影当時、ジャン=ポール・ベルモンドとジーン・セバーグほど写真映えする人物は他にいないということだ。ファッションの流行は移り変わるが、映画公開から数十年経った今でも、セバーグの短く刈り込んだブロンドの髪型とストライプのシャツ、そしてベルモンドのタバコとフェドーラ帽(それ自体がハンフリー・ボガートへの直接的なオマージュである)が似合わなくなった瞬間はない。「勝手にしやがれ」は時代を超越した作品なのだ。さらに、『パリ・マッチ』誌や『ルック』誌で活躍した戦場カメラマンを経験したラウル・クタールが撮影監督を務めたことも、成功の要因の1つだった。

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左:ゴダールの「勝手にしやがれ」の1シーンのベルモンドとシーバーグ。右:「ヌーヴェルヴァーグ」の1シーンのベルモンド役のデュランとセバーグ役のドイッチュ。

映画「勝手にしやがれ」が長年にわたり人を保っていることの理由として面白いのは、ストーリーがほとんどないことだ。ミシェルは自動車泥棒で、マルセイユからパリへ向かう途中、警官を追い越し、そのうちの一人を撃ってしまう。警官がミシェルのことを知っていたのかどうかも定かではない。ともあれ、彼は指名手配犯となるが、パリに戻ってからの彼の主な関心事は、少なくとも2人いる恋人のうちの1人、パトリシアを口説くことだった。(彼は短い滞在中に別の恋人から盗みを働く。)パトリシアは両親の金でパリに滞在し、ソルボンヌ大学で授業を受けながら、『ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン』紙で中身の良く分からない仕事をしている。空港での記者会見に派遣されることもあるが、ブランドTシャツを着て路上で新聞を売っている姿も目撃されている。

とにかく、ミシェルとパトリシアは愛や運命、幸福について語り合い、映画を見に行き、フォークナーの言葉を引用し合う。そしてついに、警察がミシェルを逮捕する。フランソワ・トリュフォーは、新聞で読んだ同様の事件の記事を基に短い脚本を書き、カイエ・デュ・シネマの仲間で、初の長編映画製作を熱望していたゴダールは、トリュフォーの脚本に忠実に従うことで、ほぼ資金を確保することができた。(トリュフォーの「大人は判ってくれない(the 400 Blows)」は既にヒットしていた。)しかし、いざ撮影が始まると、ゴダールは毎日即興で撮影を進めた。新しいアイデアが浮かばないと撮影を中断したり、街中でこっそり撮影したり、カフェテリアを駆け回ったり、カメラの後ろから俳優にセリフを指示したりする

ドリー撮影用機材を用意する資金がなかったため、撮影監督クタールは手持ちカメラで撮影し、車椅子に乗って移動した。街中で撮影する際に通行人の視線を避けるため、カメラレンズ用の穴を開けた郵便配達車にクタールを隠した。(映画「ヌーヴェルヴァーグ」はこのちょっとした仕掛けを再現しているが、ファンの中には、ベートーヴェンが交響曲第5番の冒頭の音符を夢想する様子を見ているような気分になる人もいるだろう。)

こうした逸話は、長年にわたり映画制作の教授陣と1年生の間で多くの論争を引き起こしてきた。どの学生も、カメラを手に取り、気ままに動き回れば、何の準備もなしに「勝手にしやがれ」のような映画が作れると思っている。しかし、ベルモンドやセバーグのようなカリスマ性を持つ俳優や、クタールのような撮影監督の技術を持つ俳優は滅多に見つからない。ましてや、最終的にスクリーンに映し出された時に何がダイナミックに見えるかを直感的に理解できる人はなおさらだ。

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映画「ヌーヴェルヴァーグ』撮影現場でのマルベックとリチャード・リンクレイター監督

ジャン=リュック・ゴダールの途方もないエゴを証言する文章やドキュメンタリーは数えきれないほど存在する。特筆すべきは、映画「ヌーヴェルヴァーグ」がゴダールを貶めるような描写を一切していないことだ。(最近のゴダールの伝記映画であるミシェル・アザナヴィシウス監督の映画「グッバイ・ゴダール!」にはもう少し辛辣な描写がある。)リチャード・リンクレイターは、「ぶらぶらする」映画(“hanging out” film)というジャンルに回帰した最も偉大な監督の一人である。オースティンを拠点とするこの映画監督の経歴には、「バッド・チューニング(Dazed and Confused)」(1993年)、「6才のボクが、大人になるまで(Boyhood)」、(2014年)そして「ビフォア(Before)」三部作(1995年、2004年、2013年)といった、人間味あふれる作品が含まれている。これらの作品はどれもストーリー展開は極めてシンプルだが、魅力的で立体的な登場人物描写で観客を魅了する。リンクレイター監督は、パトリシアの寝室でのあの長く「不適切な」シーンから生まれたかのような映画をいくつも作っている。

映画「ヌーヴェルヴァーグ」は「勝手にしやがれ」の編集スタイルを模倣している訳ではないが、リンクレイターはゴダールが使用したのと同様のモノクロフィルムで撮影し、長年のキャリアで初めてフランス語で作品を制作した。さらに重要なのは、オリジナル作品に見られたジャジーなクールさと若々しい活力をそのまま維持している点だ。彼の描くゴダールは相変わらず少し風変わりだが、脅威というよりはグルーチョ・マルクスのようなキャラクターに近い。彼が考えをまとめるためにその日の撮影を中断すると、キャストとスタッフは苛立ちを隠せないが、その後、皆で飲みに行って語り合う。

リンクレイターが、映画史における激動の時代の1つである「勝手にしやがれ」の伝説的な瞬間を、臆することなく再現できるのは当然のことだろう。彼自身のデビュー作である「スラッカー」は1990年に公開された、筋書きのない独白を繰り広げる奇人たちの連続を描いた作品だが、「勝手にしやがれ」に匹敵するほどの影響力を持っていると言えるだろう。これはアメリカのインディペンデント映画運動における最初期かつ最も影響力のある作品の1つであり、ケヴィン・スミスやクエンティン・タランティーノの同様に会話の多い作品に先駆けて作られた。全ての道はシャンゼリゼ通りに通じており、そこでジーン・セバーグは「ニューヨーク・ヘラルド・トリビューン!」と叫ぶ。

■「勝手にしやがれ」を超えて:フランス・ニューウェーブのおすすめ作品5選(Beyond Breathless: 5 Additional French New Wave Recommendations

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映画「気狂いピエロ」の撮影現場(フランス)でのゴダール、アンナ・カリーナ、ベルモンド(1965年)

(1)「大人は判ってくれない()」(1959年)、監督:フランソワ・トリュフォー。多くの人がこれをヌーヴェルヴァーグ最初の作品と位置づけている。ジャン=ピエール・レオは、14歳のトリュフォーをモデルにした架空の人物を演じ、学校をサボってパリの無法地帯で危険な目に遭う。監督と主演俳優はその後20年以上にわたり、このキャラクターを何度も演じることになる。

(2)「気狂いピエロ(Pierrot le Fou )」(1965年)、監督:ジャン=リュック・ゴダール。この映画を最も簡潔に表現するなら、「勝手にしやがれ」をさらに過激に、より多くのルールを破り、カラーで描かれた作品と言えるだろう。

(3)「5時から7時までのクレオ(Cléo From 5 to 7)」(1962年)、監督:アニエス・ヴァルダ。20世紀の多くの芸術運動と同様に、フランスのヌーヴェルヴァーグも少々男性中心の傾向があったが、アニエス・ヴァルダはその中でも際立った女性の声を示す存在であった。彼女の2作目の長編映画は、リアルタイムで撮影され、生検の結果から癌の診断を受けるかどうか、医師からの連絡を待つパリの歌手を描いている。

(4)『コレクションする女』(1967年)、監督:エリック・ロメール。監督の道徳物語シリーズの4作目となるこのゆったりとしたペースの海辺の物語は、フランス人がどれほど休暇を取るかという神話を払拭するには至らない。

『去年マリエンバートで』(1961年)、監督:アラン・レネ:映画界に『フィネガンズ・ウェイク』があるとすれば、それはこの作品だろう。謎めいた、しかし精緻な構図で描かれた、不気味なシャトーを舞台にした豪華なミステリーである。当時のレネの作品は、ヌーヴェルヴァーグのスピード感あふれる同僚たちとは対照的だったが、フランス映画界の常識を覆すものだった。

(5)「去年マリエンバートで」(1961年)、監督:アラン・レネ。映画界に小説『フィネガンズ・ウェイク』があるとすれば、それはこの作品だろう。謎めいた、しかし精緻な構図で描かれた、不気味なシャトーを舞台にした豪華なミステリーである。当時のレネの作品は、ヌーヴェルヴァーグのスピード感あふれる同僚たちとは対照的だったが、フランス映画界の常識を覆すものだった。

※ジョーダン・ホフマン:ニューヨーク市クイーンズ在住の映画評論家兼エンターテインメント・ジャーナリスト。Xアカウント:@jhoffman

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は現在二期目であるため、次の大統領選挙には立候補できない。2028年の大統領選挙の共和党候補者として最有力なのはJD・ヴァンス副大統領だ。現在のところ、各種世論調査で2位を争っているドナルド・トランプ・ジュニア、マルコ・ルビオ国務長官に大差をつけてリードしている。

2028presidentialelectionrepublicancanidates20260317001

 JD・ヴァンスと彼を支える周辺人物たちは大統領選挙に向けて準備をしている。私はそのことを以下の記事で書いた。ヴァンスと周辺人物たちについては、拙著『』(ビジネス社、2025年)で詳しく解説している。是非お読みいただきたい。

※「20260301日 JD・ヴァンス副大統領は2028年の大統領選挙に向けてまずは地元のオハイオ州を固めていく」

https://suinikki.blog.jp/archives/90347241.html

ヴァンス副大統領は今回のイランに使嗾された、イランへの大規模攻撃に反対していた。そのことは報道が出ているし、このブログでも紹介した。トランプ大統領の決心を覆すことが出来ないと判断すると「大規模にそして迅速に(go big and go fast)」攻撃を行うようにと主張するようになったという報道が複数出ている。「ヴァンスが戦争反対の立場を変えた」という文脈での報道であるが、これは誤りだ。ヴァンスの真意は「攻撃を止めることが出来ないなら、戦争を短期間で終わらせるために、大規模でかつ迅速に攻撃を行う」ということである。ヴァンス副大統領の念頭には第一次湾岸戦争があっただろう。あの時は、アメリカ軍は圧倒的な物量と最先端の兵器で、イラク軍を鎧袖一触、良い表現ではないが、瞬殺と言える短期間での完勝であった。しかし、イラン戦争は世界中が目撃しているように、イランを屈服させることに失敗し、それどころか、アメリカやイスラエルが苦境に立たされるほどになっている。

 今年2026年11月には連邦上下両院の選挙と一部の州で州知事選挙が実施される。現在のところ、トランプ大統領への支持率が上昇せず、それに伴い、共和党が劣勢の状態に置かれている。このままでは共和党の勢力は低下する。そうなると、共和党内部からトランプ大統領に対する批判も強まる。これまでは、トランプに従っていなければ自分の選挙が危ないということで面従腹背も含めて従っていたが、中間選挙で負けて、2028年の選挙にトランプは出ないとなれば、トランプの意向や支持を気にする必要もなくなる。トランプは「レイムダック化」して力を失うだろう。その際に重要になってくるのは、ヴァンス副大統領の存在である。ヴァンスとしては、トランプを支える姿勢を示しながら、同時に違いをきちんと印象付けるということもできなくてはいけない。非常に難しいかじ取りを行うことになる。

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【分析】イランとの戦争から距離を置くバンス副大統領、その姿勢はますます顕著に

CNN日本版

2026.03.16 Mon posted at 14:49 JST

https://www.cnn.co.jp/usa/35245059.html

CNN) 昨年6月、トランプ米大統領がイランの核開発計画をたたく攻撃を命じたわずか数時間後、バンス副大統領は日曜のテレビ番組2本にはしご出演し、作戦の成功を称賛した。バンス氏の言葉は熱烈で、「incredible(信じられない)」あるいは「incredibly(信じられないほど)」という単語を1分足らずの間に4回も使うほどだった。

今年1月には、ベネズエラのマドゥロ大統領を拘束するトランプ氏の作戦の数時間後にX(旧ツイッター)に現れ、作戦の合法性を強い調子で擁護した。

トランプ氏がイランとの戦争を開始して2週間が経つが、バンス氏は今回、こうした公の場での支持表明のような発言をまだ行っていない。

その姿勢は13日、記者から、開戦当初やその後、トランプ氏にどんな助言をしたかと聞かれた時も変わらなかった。

バンス氏は長々と答えたものの、戦争に対する個人的な見解を表明するのは避けた。

ノースカロライナ州で取材に応じたバンス氏は記者団に対し、「期待に添えないのは嫌だが、あの機密の部屋で正確に何と言ったかを大っぴらに話すようなことはしない」とコメント。ここで言う「機密の部屋」とはホワイトハウスのシチュエーションルーム(危機管理室)を指す。

さらに「一つには刑務所に行きたくないからだが、もう一つには、大統領は側近が米国メディアにべらべらしゃべるのを心配せず側近と話をできることが重要だと思うからだ」と続けた。(バンス氏が自らの見解を表明することがどうして犯罪になるのかは不明だ。バンス氏に投げかけられた質問は、トランプ氏への助言に関する一般的な内容で、機密扱いされる類いのものでは全くなかった)

奇妙な受け答えではあるが、バンス氏がいかにこの話題を避けているかをまざまざと示すものでもある。

実際、これまでのところ最もニュース価値が高いバンス氏のコメントは、この戦争が長期化しないと請け合った発言だった。

強い支持を打ち出さないバンス氏の姿勢は少し前から目立っていたが、それはさらに顕著になっている。

CNNの報道では、バンス氏は当初、中東での新たな戦争に反対する助言を行っていたものの、トランプ氏が軍事行動に傾いているのが明らかになると立場を変え、迅速かつ決定的な攻撃を提唱するようになった。バンス氏の当初の慎重姿勢は、非介入主義の利点を説いてきた過去の発言とも一致する。

バンス氏は上院議員だった2023年の寄稿で、トランプ氏が大統領として成功した大きな理由は、戦争に関与しなかったからだとつづった。24年には、特にイランとの戦争は米国の利益にならず、「リソースの多大な浪費」につながると指摘。20年にトランプ氏がイランの軍司令官の殺害を命じた際も、バンス氏は戦争への警鐘を鳴らしていた。さらに昨年の「シグナル・ゲート」で明らかになった非公開メッセージでは、イエメンの反政府武装組織フーシに対するトランプ氏の攻撃にも懐疑的だったことが示されている。

ただ、バンス氏はトランプ氏の副大統領という立場だ。ナンバー2を含め、周囲に卑屈なまでの忠誠を求めることが多いトランプ氏の下にあって、バンス氏が少なくとも一定の慎重姿勢を保っているのには驚かされる。

政権に批判的な人の目には、政治的打算が働いているように見えるだろう。つまり、バンス氏は28年の大統領選を見据えて保身を図っているとの見方だ。しかし、バンス氏の距離を置く姿勢は政治的なアキレス腱(けん)にもなり得る。

大半の世論調査で今回の戦争への支持が低迷するなか、ホワイトハウスはしばしば、MAGA(米国を再び偉大に)運動内での強固な支持を強調してきた。ところが、国内で2番目に強力なMAGA派の政治家であるバンス氏が、十分な政治的支持を打ち出すことすら渋っているのだ。

しかも、その姿勢をさして取り繕っているわけでもない。

1月の対ベネズエラ作戦後はすぐさまXで政権を擁護したバンス氏だが、ここ2週間はSNSで非常におとなしい。実際、戦争が始まってからの個人アカウントでの投稿はわずか8回にとどまる。(ただ、ここ数カ月のバンス氏が戦争開始前からSNSでの発信を減らしているように見えた点は指摘しておいて良いだろう)

バンス氏の個人アカウントや公式アカウントにはイランに関する投稿もあるが、大半は死亡した兵士について言及したり、トランプ氏の発言を共有したりする内容で、バンス氏自身の見解ではない。イランを巡るFOXニュースとのインタビューの内容も投稿している。

ただ、今月2日に行われたこのインタビューのテーマはイランだったが、バンス氏は戦争に関する見解の表明をおおむね避けた。

特徴的なのは、トランプ氏はどう考えているか、トランプ氏はどう言っているかをバンス氏が繰り返し強調したことだ。「大統領はこう見ていた」「大統領はこう判断した」「大統領はこう考えた」「大統領はこうしたかった」「大統領は極めて明確だ」「大統領はこう望んでいる」「大統領の目的は」「大統領は満足するだろう」――。

ある程度までは、それがバンス氏の仕事ではある。大統領の見解について話すのがバンス氏の役割なのだから。ただ、昨年6月のイラン核施設攻撃の後には、個人的な考えや感じ方をもっと語っていた。

FOXニュースへの出演で大きな注目を集めたのは、今回はイラクやアフガニスタンのような数十年単位のプロセスにはならないとバンス氏が請け合った点だ。

他の公の場でもイランに関する発言は少ない。9日に国際消防士協会で行った演説では、死亡した軍の要員に短く触れただけだった。ノースカロライナ州での13日の演説でも、話題を経済にほぼ絞った。

政権との間にずれがあるのではないかとの質問は、バンス氏本人以外にも向けられている。トランプ氏もヘグセス国防長官もこの問題について聞かれた際、バンス氏の立場は大統領とは異なっているとの見方に強く反論しなかった。

トランプ氏は9日、バンス氏と意見の相違があるのかと問われ、「そうは思わない。いや、我々はこの件で非常にうまくやっている」と答えた。

しかしその後、トランプ氏はやや含むところがある様子をほのめかし、「彼は哲学的に私と少し違うようだ。私ほど攻撃に熱心ではなかったように思うが、それでもかなり熱心だった」と振り返った。

ヘグセス氏は13日、バンス氏とトランプ氏の間に「亀裂」はあるかと聞かれ、正面からの答えを避けた。

「副大統領に関して言えば、素晴らしいメンバーであり、大統領や国務長官と並んでチームのリーダーでもある」。ヘグセス氏はそう述べ、このチームは大統領にさまざまな選択肢を与えていると言い添えた。「副大統領はその中で日々、重要な声を上げる存在だ。実際、その声は欠かすことができない」

どんな理由にせよ――哲学的な理由なのか政治的な理由なのか、それともその両方なのか――バンス氏は戦争に全面的には賛同していないとの見方を打ち消す材料を全く提供していない。そして政権側も、バンス氏が距離を保つことを容認している。

しかし戦争が長引くにつれ、いつまでその姿勢を維持できるかはまだ分からない。

本稿はCNNのアーロン・ブレイク記者による分析記事です。

=====

JD・ヴァンス副大統領はイラン戦争に関するドナルド・トランプ大統領への助言の詳細を明かすことを拒否した。それは「機密」だからだ(Vance declines to detail his advice to Trump on Iran war: It’s ‘classified’

ジュリア・マンチェスター筆

2026年3月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5783374-vance-trump-disagreement-iran/

JD・ヴァンス副大統領は金曜日、アメリカ軍のイラン攻撃に関してドナルド・トランプ大統領にどのような助言をしたのかを明かさず、記者団に対し「機密(classified)」だと述べた。

ヴァンスは、ノースカロライナ州ロッキーマウントで記者団に対して、「皆さんを失望させるのは本意ではないが、皆さんの前で、あの機密の部屋(classified room,)で私が何を言ったのかを具体的に話すためにここにいるのではないと語った。ここで言及されている機密の部屋とはホワイトハウスのシチュエーションルーム(the White House Situation Room)のことだ。

「一つには、刑務所に行きたくないからだ。そしてもう一つは、米大統領が側近たちと直接話し合えること、そして側近たちがアメリカのメディアにその内容をペラペラ話さないことが重要だと考えているからだ」とヴァンスは続けた。

ヴァンス副大統領の発言は、イラン問題を巡ってヴァンス副大統領とトランプ大統領の間に意見の相違があるとの報道がここ数日相次いでいる中でなされた。ヴァンス副大統領は過去に、アメリカの長期にわたる海外紛争への介入に反対の立場を表明している。

トランプ大統領は月曜日、ヴァンス副大統領は開戦当初は「おそらく私ほど熱心ではなかった」と述べたものの、自分と副大統領は「この件に関しては非常にうまくやっている」と語った。

トランプは続けて、「彼は、哲学的に言えば、私とは少し違っていた。おそらく私ほど熱心ではなかったと思うが、それでもかなり熱心だった」と述べた。

トランプは次のように語った。「しかし、私はこれはやらなければならないことだと感じていた。他に選択肢はなかった。もし私たちがやらなければ、彼らが私たちにそうさせただろう」と大統領は述べた。「スティーヴ・ウィトコフ、ジャレッド・クシュナー、マルコ(・ルビオ)、ピート(・ヘグセス)、そして関係者全員との話し合いから、彼らは私たちを後押ししようとしていると感じた」。

ピート・ヘグセス国防長官は金曜日、報道された大統領とヴァンス副大統領の間の意見の相違について問われた際、ヴァンス副大統領を擁護し、政権にとって「欠かせない声(ndispensable voice)」だと述べた。

「彼は大統領や国務長官と並んで、このティームの素晴らしいメンバーであり、リーダーでもある」とヘグセス長官は国防総省での記者会見で記者団に語った。

「このティームの素晴らしさ、連携の取り方、大統領への選択肢の提示の仕方については、いくら褒めても褒め足りない」と長官は続け、「そして副大統領は、毎日、そのティームにおいて重要な役割を果たしている」と述べた。

=====

ピート・ヘグセス国防長官はイラン問題でJD・ヴァンス副大統領がドナルド・トランプ大統領と意見対立しているとの報道に対しヴァンスを擁護した(Hegseth defends Vance over reports of division with Trump over Iran

ジュリア・マンチェスター筆

2026年3月13日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5782614-hegeseth-defends-vance-iran/

ピート・ヘグセス国防長官は、イランにおけるアメリカ軍作戦を巡り、JD・ヴァンス副大統領とドナルド・トランプ大統領の間で意見の相違があるとの報道について金曜日に質問された際、ヴァンス副大統領を政権内で「欠かせない声(indispensable voice)」と称賛し、ヴァンスを擁護した。

「ヴァンス副大統領は大統領や国務長官と並んで、このティームの素晴らしいメンバーであり、リーダーでもある」とヘグセス長官は国防総省での記者会見で述べた。

ヘグセスは「このティーム、その連携の取り方、大統領に選択肢を提供する能力については、いくら褒めても褒め足りない。そして、副大統領は、毎日、そのティームにおいて重要な役割を果たしている」と続けて述べた。

過去にアメリカの長期にわたる海外紛争への関与に反対してきたヴァンス副大統領が、イラン作戦の構想に懐疑的だったとの報道が出ている。

トランプ大統領は月曜日、ヴァンス副大統領は開戦当初は「やや消極的だったかもしれない(maybe less enthusiastic)」と述べたものの、自身と副大統領は「この件に関して非常に良好な関係を築いている」と語った。

トランプ大統領は続けて、「彼は、哲学的に言えば、私とは少し違っていたと言えるだろう。彼は私ほど熱心ではなかったかもしれないが、それでもかなり意欲的だった」と語った。

トランプ大統領はさらに次のように語った。「しかし、私にはそれがやらなければならないことだと感じた。選択肢はないと感じた。もし私たちがやらなければ、彼らが私たちに同じことをしただろう。スティーヴ・ウィトコフ、ジャレッド・クシュナー、マルコ(・ルビオ)、ピート(・ヘグセス)、そして関係者全員との話し合いを通じて、彼らは私たちを後押ししようとしているように感じた」。

先週のフォックスニューズのインタヴューで、ヴァンスはイランへの攻撃が長期紛争に発展するという見方を否定した。

ヴァンスはフォックスニューズのインタヴューで、「ドナルド・トランプ大統領が、明確な終結も明確な目的もないまま、この国を何年も続く紛争に巻き込むことを許すはずがない」と語った。

ヴァンス副大統領は次のように語っている。「トランプ大統領の何が他と違うのか、そして率直に言って過去の共和党員や民主党員と何が違うのか、それは明確な目的がない限り、国を戦争に巻き込まないという点だ。彼はその目的を、イランが核兵器を保有できないようにし、核能力を再構築しようとしないという長期的な約束をさせることだと定義している。これは非常に明確で、非常にシンプルだ。そして、これはイラクやアフガニスタンで経験したような問題に陥らないことを意味すると思う」。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカとイスラエルのイラン攻撃の最大の誤算は短期間で決着がつくという見通し通りに事態が進まなかったことだ。イランに対して大規模な先制攻撃を行って、最高指導者アリ・ハメネイ師をはじめとする政府の指導部を殺害すれば、イラン政府が機能不全に陥り、イラン国民はこの機会を利用して、政府を打倒するだろうという極めて甘い見通しを持っていたようだ。

私が不思議に思っているのは、世界最高峰の水準を誇るイスラエルの情報諜報機関であるモサドがそのような甘い見通しの基盤となる報告をイスラエル政府最高指導部層に出していたとはとても考えられないのに、どうしてこのような攻撃を行い、目的を達成できていないのかということだ。アメリカ軍はイラン攻撃のリスクは非常に高いという報告をトランプに上げていたが、トランプはそれを無視したというのは分かるが、イスラエル政府内の動きがどうだったのかということはこれから明らかにされるだろう。

 ウクライナ戦争においては、アメリカがウクライナにとっての最大の支援国である。ウクライナ戦争勃発から既に4年以上が経過しているが、膠着状態に陥っている。アメリカが武器支援を行っているが、アメリカでも生産体制が整わず、増産が思うように進まない。結果として、アメリカ軍は既定の武器や装備品の貯蔵量を下回る事態となっている。アメリカ軍制服組トップの統合参謀本部議長のダン・ケイン大将がイラン攻撃はリスクが高いという報告書を出して、イラン攻撃に反対したが、これは、武器や装備品の調達面での不安もあったことが考えられる。アメリカでは理工系に進むアメリカ人学生が少なく、理工系の優秀な学生は多くが中国や韓国、日本のアジアからの留学生が大きな割合を占めていることは知られている。

イランは医学や理工系学生の数が多く、また、女性の高等教育進学率も高い。日本では理工系に進む女性の数は少なく、「リケジョ」という言葉と共にアピールが続けられているが、イランでは「リケジョ」がごく当たり前の存在となっているようだ。また、より良い教育と研究環境を求めて、ヨーロッパやアメリカの一流大学に進む優秀な学生も多い。その結果として、国内の研究水準も高く、エンジニアや研究者の数も水準も高い。そうなると、軍事関連の研究も進んでいると考えるのが当然だし、生産力も高いと見なすべきである。
 アメリカもイスラエルも短期間で片を付けることが出来るという、甘い見通しでイラン攻撃を開始し、最高指導者アリ・ハメネイ師を殺害するということをしでかしてしまって、イランを本気にさせてしまった。戦争は長期化する可能性が極めて高い。アメリカとイスラエルが圧倒的な軍事力を持ちながら、押されてしまい、閉塞状況に追い込まれている。

(貼り付けはじめ)
開戦から36時間でアメリカ・イスラエルの軍需品は3000個以上消費された(The First 36 Hours of War Consumed Over 3,000 U.S.-Israeli Munitions

-備蓄の補充(replenishing stockpiles)は脆弱な重要鉱物資源の供給チェイン(vulnerable critical mineral chains)に依存している。

マクドナルド・アモア、モーガン・D・バジリアン、ジャハラ・マティセク筆

2026年3月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/05/iran-war-munitions-critical-minerals/?tpcc=recirc_trending062921

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2026年2月28日、海上で「壮大な怒り」作戦遂行中、アメリカ海軍海兵たちが空母USSエイブラハム・リンカーンの甲板上で弾着準備を行っている(アメリカ海軍提供)。

アメリカとイスラエルによるイランに対する軍事作戦の最初の36時間で、3000発以上の精密誘導兵器と迎撃ミサイルが消費され、サプライチェインの重大な脆弱性が露呈した。戦争の行方とその広範な影響については未知数が多いが、一つ確かなことは、弾薬備蓄の補充が必要であるということだ。

鉱物や資材を需要シナリオから分離する、ペイン研究所独自のオープンソース台帳およびデータスクレイピング装備を活用し、コロラド鉱山学校の専門知識を活用した私たちのティームは、紛争の最初の36時間における中東全域におけるイランのミサイル発射とドローン攻撃の回数を控えめに特定した。

グラフ1

イランが中東地域全域に1000発以上の弾頭を発射したことを受け、アメリカ、イスラエル、そして同盟諸国は数多くの迎撃を試みた。スーファン・センターが指摘するように、「イランはアメリカ、イスラエル、そして同盟諸国の防衛資源を枯渇させることに重点を置いた非対称消耗戦(an asymmetric war of attrition)を展開しているようだ」。イランの防空システムがほとんど活用されていないのは、アメリカとイスラエルがイランの防空・指揮統制インフラの大部分を電子的に抑制し、物理的に破壊する上で優位に立っているためと考えられる。

迎撃(interceptions)は概ね成功を収めているものの、そのコストは高額となる。消費された弾頭と、その製造に必要な鉱物資源は、西側諸国、特にアメリカにとって防衛産業上の課題となっている。アメリカ、イスラエル、そして同盟諸国の支出を計算した結果、アメリカはお馴染みの組み合わせに依存していたことが判明した。初期段階の攻撃にはスタンドオフ攻撃ミサイル、レーダーに対する制圧兵器、時間的制約のある目標には地上発射ロケット、そして大量の精密誘導爆弾を投入したのだ。イスラエルの兵器は実用性を重視している(Israel’s arsenal shows a preference for the practical)。つまり、大量生産可能な誘導キットと空中発射弾を大量に保有し、容赦ない出撃率を実現できる航空機と組み合わせるということだ。

これに地域パートナーによる防衛射撃を加えると、洗練された戦闘であると同時に、量も重視するハイエンド戦闘の印象的な様相が浮かび上がる。精密さ(precision)は戦争から質量(mass)を奪ったわけではない。質量は、目に見えない兵器の部分にのみ存在する。

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この分析の目的は、紛争の勃発局面を、軍需品の供給確保の必要性を緊急に示唆するシグナルへと転換することだ。ただし、この初期評価を今後の紛争に直ちに適用することはできないことを認識する必要がある。これは、戦略家や防衛計画立案者がしばしば見落としがちな、ある単純な疑問を提起する。西側諸国はどれほど迅速に軍備を補充できるのだろうか?

緊急の追加資金は必要だが、数十年かけて統合された生産ラインや衰退した鉱物処理能力を即座に回復させることはできない。時間、化学、そして産業物理学によって制約される。ミサイルの投入は単なる資金ではない。鉱物、処理、そして命令によって増強されることのない二次処理能力から始まるサプライチェインなのだ。

統合参謀本部議長ダン・ケイン米陸軍大将が、攻撃前にアメリカ軍の軍需品不足を懸念したことが、ペイン研究所の研究ティームをまさにこの問題に焦点を絞るきっかけとなった。こうした懸念は新しいものではない。紅海におけるアメリカ海軍の作戦は、ミサイルの消耗が交換可能なペースを上回っていることを既に浮き彫りにしており、既に逼迫している防衛産業基盤に更なる負担をかけている。

発射される全ての兵器は交換が必要であり、その交換には原材料(raw material)から精製と加工(refining and processing)、特殊部品の製造(specialized components)、そして最終的に認定生産ライン(finally into certified production lines)へと至る一連のプロセスが必要となる。ボトルネックは必ずしも政治家が考えるような場所にあるとは限らない。最も困難な点は、しばしば人目につかない隅にある。例えば、炉を一つしか持たない下請けサプライヤー、限られた材料に依存するコンデンサ供給、何年もかけて工場を建設しなければ拡大できないロケットモーターの協調製造システムなどだ。

一見単純な兵器でさえ、複雑な製造チェインに依存している。例えば、現代の兵器誘導キットは、中国が支配するレアアース元素からしか製造できない高性能部品に依存している。西側諸国の産業基盤は、原材料の発注、契約締結、資金承認など、いくつかの要素を迅速に増強することができる。しかし、熟練した労働力、適切な工具、そして認定された生産能力を一夜にして生み出すことはできない。

しかしながら、防衛計画は依然として在庫を丸め誤差(a rounding error 訳者註:切り上げ、切り捨てなどで生じる本来の数字とのズレ)であるかのように機能している。抑止力(deterrence)は態勢とプラットフォームの観点から議論されるが、敵対国は異なる指標に注目している。彼らは、ミサイル弾薬庫と弾薬備蓄がどれほど速く空(から)になるのか、そしてそれらを適時に兵站的に補充できるかどうかを知りたいのだ。

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同時進行する圧力に晒される世界において、ペルシア湾岸地域での長期にわたる軍事作戦は、単にそこでの情勢を左右するだけでなく、他の地域における軍事的選択肢をも蝕む。迎撃ミサイルの備蓄が底を尽きた部隊は、別の戦域でより大きなリスクを負うか、防衛を節約せざるを得ない。

これは、アメリカ軍がイランとの次なる交戦が小規模であることを願うべきだ、そして中国が台湾防衛用のアメリカ軍精密誘導弾薬の残存量を計算しないことを願うべきだという、婉曲な表現である。これは極めて深刻な問題だ。戦略国際問題研究所(CSIS)の2023年報告書は、一連の戦争ゲームシミュレーションに基づき、アメリカ軍が中国の台湾侵攻から防衛を試みた場合、主要な弾薬が1週間以内に枯渇すると結論付けている。

だからこそ、対イラン作戦の最初の36時間は重要なのだ。それは西側諸国の産業耐久力(Western industrial endurance)を試すストレステスト(a stress test)なのだ。防衛側が補充ペースを上回るペースで迎撃ミサイルを消費することを強いる作戦は、戦術的に過酷なだけでなく、戦略的にも侵食的である。

ペイン研究所独自のツールを用いて、表2の軍需支出を鉱物代替負担(戦略的に最も脆弱な投入物のキログラム数で表す)に変換した。表3は、消費された兵器の補充に必要な重要物資を示している。私たちの最近の研究では、これらが防衛上最も重要性の高い鉱物であり、平時においても調達が困難であり、危機時にはほぼ不可能であることが示された。

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消費されたものを補充するには、抽象的な規模の生産量の増加だけでなく、中国が供給の大部分を支配している特定の鉱物や材料を大量に必要とする。数量の問題以外にも、加工の集中、生産能力拡大の長期化、二次サプライヤーの脆弱性など、数多くの問題が存在する。

軍需品の膨大な量に加え、高価値資産の喪失は、更なる複雑さをもたらす。カタールのAN/FPS-132とバーレーンのAN/TPS-59という2基のアメリカ製最新鋭レーダーの破壊は、「鉱物資源費」の総額よりも、サプライチェインの極めて脆弱な状況と交換に要する長期にわたる期間が大きな問題となっていることを浮き彫りにしている。

私たちの分析では、AN/FPS-132の場合、レイセオン社は11億ドルの費用をかけて新型レーダーを5~8年で製造する。一方、ロッキード・マーティン社は、インフレ調整後のバーレーン向け有償軍事援助契約に基づき、AN/TPS-59の交換に少なくとも12~24カ月、推定5000万ドル~7500万ドルを要すると試算している。防衛産業基盤にとって最大の課題は、両システムに必要な77.3キログラムのガリウムの調達となる。このガリウムは中国が世界供給量の98%を支配している。これに加えて、テクノロジー分野からの需要が急増している商品である銅も30610キログラム必要となる。

より広い視点から見ると、西側諸国の軍備態勢に関する理論は不完全である。ウクライナ戦争の長期化が既に示しているように、戦争の費用は誤った単位で算出されている。重要な指標は、開戦時に発射台が何基あるかではなく、2日目、20日目、そして、200日目にどれだけの精密兵器と迎撃ミサイルを発射できるか、そして産業がそれらをどれだけ迅速に交換できるかである。これは、戦場の問題を産業の問題に、そして産業の問題を​​鉱物資源と加工の問題に変える。表4は、これらの重要な兵器システムの補充にかかる膨大なスケジュールを示している。

個々のボトルネックがこの補充を遅らせている。例えば、BGM-109トマホークは、ウィリアムズ・インターナショナル社が独占的に製造しているF107ターボファンエンジンに依存している。パトリオットPAC-3の生産は、アメリカ、ペルシア湾岸諸国、そしてポーランドで分担されており、ポーランドは2024年にWZL-1施設でPAC- MSE発射管の生産を開始した。ポパイ・ターボ(射程距離延長型はクリスタル・メイズIIとしても知られる)などの一部のシステムは、限られた在庫から削減されている旧来の資産だ。その他のシステムは深刻な逼迫状態にあり、GBU-57MOPは現在までに約25機しか生産されておらず、ボーイングが唯一の組立業者だ。この兵器は現在、B-2スピリット(わずか20機の機体)による配備のみが認定されています。B-21レーダーは追加の配備プラットフォームとなるが、実戦配備は2027年まで行われない。THAADシステムには特注の迎撃ミサイルが必要だが、これに匹敵する民生用ミサイルはない。これらの複雑な生産プロセスは全て、増産できない重要な鉱物資源に依存している。
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鉱物資源費用は抑止力の代償であり、これは初期費用に過ぎない。記者会見やソーシャルメディアの投稿、あるいは連邦議会公聴会でさえ、これを軽視することはできない。西側諸国の最も高度な兵器は、同時に長く複雑なサプライチェインに最も依存しており、将来の紛争における制約要因は再装填能力となるだろう。対イラン作戦の期間がどうなるかは、今や重要な問題にかかっている。西側諸国(the West)は、その戦略が意味を持つほど迅速に兵器を補充できるだろうか?

マクドナルド・アモア:ペイン公共政策研究所コミュニケイション担当研究員。ペイン研究所で重要鉱物から通常の工業関連の諸問題までの幅広いテーマについて研究している。

モーガン・D・バジリアン:ペイン公共政策研究所部長、コロラド鉱山学校教授。世界銀行エネルギー担当首席スペシャリスト。エネルギー安全保障、天然資源、国家安全保障、エネルギー貧困、そして、国際問題の各分野で20年以上の経験を持つ。

※ジャハラ・マティセク:アメリカ海軍大学研究員、ペイン公共政策研究所上級研究員。見解は海軍大学とペイン研究所のものではなく、マティセク自身のものだ。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 イラン戦争は開始から2週間が経過しようとしている。アメリカとイスラエルの大規模な先制攻撃によって、イラン政府や軍の指導者たちの多くが殺害されたが、イランの国歌体制は揺らぐことなく、現在はイスラエルとペルシア湾岸諸国に対いて報復攻撃を行っている。石油タンカーを中心とする民間船舶がホルムズ海峡を航行できず、アメリカ海軍も護衛を拒否しているということもあり、石油価格が上昇している。トランプ大統領は船員たちに「根性を見せろ」と発破をかけているが、アメリカ軍でも航行したくない海峡を丸腰の民間人に行けと言うのはあまりにも酷であり、「お前が行け」と言いたくなるような状況だ。

 今回のイラン戦争によって、ペルシア湾岸諸国の経済は大打撃を受ける。私たちは日本の報道でも、アラブ首長国連邦のドバイやカタールのドーハなどの諸都市の発展ぶりを見ることが多い。贅を極めたホテルやレストラン、リゾートに世界中の富裕層が集まり、煌びやかな生活をしている様子は日本でも羨望を持って受け止められている。湾岸諸国は世界中ら投資を受け入れて発展するというモデルを構築しているが、その前提となるのは、地域の安定と安全である。それが今回のイラン戦争で完全に崩れた。

 イスラエルと言う国家は地域の暗転や安全に関心を持っていない。イスラエルの関心は生き残りである。私はイスラエルについても詳しい佐藤優先生と対談を行ったが、その中で、佐藤先生はイスラエルの人々の心性について、「イスラエルのない世界などあっても仕方がない」というものであると指摘されていた。「イスラエルが生き残るためならば、世界がどうなろうが知ったことか」ということだ。現在のペルシア湾岸諸国の繁栄と発展など、イスラエルにとっては何の関心もない。それどころか、中東地域が不安定化することで自分たちの利益が得られると考えてもいるようだ。

 イスラエルのこのような心性のために、ペルシア湾岸諸国だけではなく、中東地域全体、そして世界全体に大きな悪影響が出ようといている。状況が悪化し、それが長引けば、世界経済は減速する。グローバライゼーションが進んでいる現在、それから逃れることが出来る国は少ない。アメリカとイスラエルが世界に災厄をもたらしたということを私たちは認識しなければならない。日本はこの両国を徹頭徹尾支持するという悪い選択をしている。これは非常に厳しい結末を迎えることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

イラン戦争は世界経済全体を危険に晒している(The Iran War Is Jeopardizing the Entire Global Economy

-ペルシア湾岸における紛争の余波は単なる石油問題よりもはるかに深刻なものとなるだろう。

エスファンディヤール・バトマンゲリジ筆

2026年3月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/04/iran-war-dubai-saudi-qatar-global-economy-oil-shipping-trade/

日曜日、ドバイにあるアマゾン・ウェブ・サービスのデータセンターで火災が発生した。この施設は、アラブ首長国連邦の防空システムが迎撃したイランのドローンから飛散した破片と思われる物体に直撃された。この事件は、主要企業のクラウドデータセンターが戦争で損傷した史上初の事例となる可能性があり、中東地域で現在進行中の紛争が前例のない性質を持つことを象徴している。これは、ペルシア湾岸での単なる戦争ではなく、第二次世界大戦以来、グローバル経済の中心地である都市や施設に直接的な影響を与えた初めての紛争である。

先週、アメリカとイスラエルの指導者たちがイランに対して軍事作戦を開始したとき、彼らは強力な反撃を予想していた。しかし、イランはアメリカとイスラエル軍に対する報復にとどまらず、湾岸協力会議(the Gulf CooperationGCC)加盟6カ国全ての民間施設を攻撃することで、戦争の痛みを外部化すること(to externalize)を選択した。

ここ数日間、イランのドローンと弾道ミサイルは、石油プラットフォーム、製油所、空港、港湾、ホテル、商船を攻撃している。これらの標的を選択することで、イランは大胆な賭けに出た。イランは、ドナルド・トランプ米大統領が就任して以来、外交を最も効果的に推進してきた国々を攻撃するために、安価なドローンや豊富な弾道ミサイルといった非対称的な能力(asymmetric capabilities)を活用している。ペルシア湾岸諸国の指導者たちは、ホワイトハウスにおける独自の影響力を行使し、アメリカをイランとの選択戦争から遠ざけ、新たな核合意へと導こうと繰り返し試みた。

ペルシア湾岸諸国の指導者たちはイランの攻撃を非難した。アラブ首長国連邦(UAE)の外交政策の主要立案者であるアンワル・ガルガシュは、湾岸諸国への攻撃は「イランを地域における主要な脅威とみなし、そのミサイル計画を不安定化の常態化要因と捉える人々の主張を裏付けるものだ」と警告した。ガルガシュは、地域がさらに深刻な危機に陥る前に、イランが「正気(senses)」を取り戻すよう強く求めた。

イランの攻撃は、ペルシア湾岸諸国を紛争に巻き込み、アメリカ軍に領空を開放させ、さらにはイラン国内の標的への攻撃作戦に加わらせる可能性もある。今のところ、湾岸諸国の指導者たちは、深刻化する経済混乱に耐えかね、トランプ政権に停戦(a cease-fire)を迫っていると報じられている。

過去25年間、ペルシア湾岸諸国は中東の経済大国として台頭し、世界経済において重要な役割を担うようになった。彼らがこうした発展を遂げられたのは、主に統治者たちが約束した安定と安全保障、そしてオマーンを除く全ての湾岸諸国に軍事基地を維持するアメリカによる支援があったからである。しかし、第一波のイランのドローンが湾岸諸国の防空網を突破した時、地域の安全保障という建前は崩れ去った。アメリカは、地域における全てのパートナーの安全保障を損なう戦争を引き起こし、その反動から湾岸諸国を守ることができていないように見える。

月曜日、アラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン大統領は、不安に駆られた住民や足止めされた観光客を落ち着かせようと、ドバイ・モールを散策した。ナヒヤーン大統領と他の湾岸諸国の指導者たちは、湾岸経済モデルの持続的な持続可能性(the continued viability of the Gulf economic model)について、世界の企業や投資家を安心させるために、さらに多くのことを行う必要があるだろう。

アラブ首長国連邦のドバイ、カタールのドーハ、サウジアラビアのリヤドにそびえ立つきらびやかな高層ビル群の光景は、もはや見慣れたものとなっている。しかし、これらはこの地域の経済発展を示す最も目に見える例に過ぎない。湾岸地域が世界経済においていかに重要であるかを理解するには、商品、物品、サーヴィス、資本、そして人の流れをたどる必要がある。戦争がこれらの流れに与える影響は、この紛争を真にグローバルな次元へと押し上げている。

最も明白な影響は、エネルギーと石油化学製品の輸出の途絶である。ロシアによるウクライナ侵攻は、トレーダーに地政学的リスクの価格設定に関する貴重な経験を与えたが、ペルシア湾での長期戦は、既存のあらゆるモデルを崩壊させるだろう。データ企業ケプラー社(Kpler)の分析によると、世界の原油、メタノール、肥料の約3分の1、そして液化天然ガス(liquid natural gasLNG)およびブタンやプロパンといった天然ガス誘導体の約5分の1が、ホルムズ海峡を経由して輸出されている。

これらの輸出が長期にわたって途絶えれば、価格ショックは重大なものとなるだろう。今のところ、エネルギー価格の上昇は小幅にとどまっているが、これはトレーダーたちが今回の戦争を短期で終結すると見込んでいることを反映していると考えられる。価格が長期にわたって高止まりすれば、ロシアにとっては追い風となり、主要エネルギー市場である中国において、湾岸諸国の供給業者から市場シェアを奪う可能性も出てくる。

ホルムズ海峡を通過する船舶のほとんどは、石油タンカーやLNGタンカーではなく、ペルシア湾岸諸国の経済をグローバルサプライチェインに繋ぐコンテナ船だ。2003年にアメリカがイラクに侵攻した当時、ドバイのジェベル・アリ港の年間取扱量は約500万個のコンテナに相当した。それ以来、取扱量は3倍に増加し、ジェベル・アリ港は世界で最も活発なコンテナ港トップ10に入る港となり、アメリカやヨーロッパのどの単一港よりも高い稼働率を誇り、世界150以上の港と接続してるす。

この港は、特に中国の輸出拡大に象徴されるように、グローバル化のエンジンとなっている。現在、ジェベル・アリの自由貿易地域には500社以上の中国企業が進出しており、その数は過去5年間で倍増した。アフリカの製造業者が中国のサプライヤーから機器を調達する場合、その輸送ルートはほぼ間違いなくジェベル・アリを経由することになる。

ペルシア湾岸諸国は、世界の海運に加え、世界の航空ハブとしても台頭してきた。特にドバイとドーハをはじめとする湾岸地域の空港は、世界で最も利用客​​が多く、接続性にも優れた空港の1つとなっている。世界の人口の3分の2が、これらのハブ空港から8時間以内のフライト圏内に居住している。旅客輸送に加え、湾岸諸国の空港は航空貨物輸送においても重要な役割を果たしており、世界の貨物量の約10%を取り扱っている。

ペルシア湾岸諸国経済を通過するエネルギーと物資の流れの増加に伴い、湾岸地域のサーヴィス部門の発展が不可欠となり、現在では世界的に競争力があり、システム上重要な銀行部門も含まれている。湾岸協力会議(GCC)諸国の商業銀行預金総額は昨年2兆3000億ドルに達し、イタリアの預金総額とほぼ同額となった。しかし、イタリアとは異なり、これらの預金のかなりの部分は非居住者によって保有されている。カタールでは預金の約5分の1が国外居住者によるものであり、UAEではその割合は約10分の1となっている。

ドバイは、ペルシア湾岸諸国に駐在する外国人労働者だけでなく、アフリカやアジア諸国間で国境を越えた送金を行う移民労働者も利用する、ノンバンク金融機関や両替所の中心地でもある。また、世界の金(きん)取引の15%をドバイが取り扱っている。このため、ドバイは南アジアやアフリカの金融サーヴィスが十分に整備されていない国々にとって、システム上重要な存在となっている。

湾岸協力会議(GCC)諸国における高度な商業銀行の台頭は、この地域における国際資本の流れを促進した。この地域の資本市場は依然として小規模だが、ドバイ、アブダビ、ドーハといった都市は、中東地域、ヨーロッパ、中央アジア、アフリカといった主要地域からの富裕層による投資先として、非常に大きな役割を果たしている。

この特異な役割を最も象徴する出来事の1つは、アメリカ大統領でさえドバイの不動産に直接的な利害関係を持っているという事実だ。トランプ・オーガナイゼーションがこの地域で計画している一連の開発プロジェクトの第一弾となるトランプ・インターナショナル・ホテル・アンド・タワーがドバイで建設中だ。

ペルシア湾岸諸国は外国資本の誘致を目指す一方で、対外直接投資を活用することで地政学的な目標も推進してきた。同地域の主要7つの政府系ファンドは、2025年までに世界の国営投資家による投資総額の43%を占め、総額1260億ドルの資金流出を記録した。2025年の取引の中には、カタール投資庁によるジャレッド・クシュナーの投資会社への大型投資も含まれていた。

今回の戦争は、こうした資金の流れ全てに脅威を与えている。主要なエネルギー施設では生産が滞り、ホルムズ海峡を通過する船舶数は日曜日には通常の5分の1にまで減少した。月曜日の時点で、アラブ首長国連邦、カタール、バーレーンへのフライトの70%以上が欠航となっている。カタールとサウジアラビアの株価は下落し、アラブ首長国連邦とクウェートの証券取引所は取引を停止した。ドバイの金(きん)取引市場も停滞している。

断片的な対策が散発的に発表されていることにより、トランプ政権が今後予想される数々のショックに対処する計画を持っている兆候はほとんどなく、ましてや今後数週間戦争が続く場合にそれらのショックがどのように顕在化するかを明確に理解している様子もない。マルコ・ルビオ米国務長官は記者団に対し、政権はエネルギー価格の高騰を「緩和する(mitigate against)」ための措置を講じると説明した。また、この問題は「予見されていた(anticipated)」と主張した。トランプ政権は、国際開発金融公社(International Development Finance Corporation)を通じて「船舶用船者、船主、主要な海事保険会社」に政治リスク保険を提供すると発表した。アメリカ政府が世界規模で海運を支援するために保険商品を動員したのは、第二次世界大戦中に戦時海運局(the War Shipping Administration)が実施したプログラム以来のことである。

国際貿易と金融の台頭を振り返り、ウッドロウ・ウィルソン元米大統領はかつて「戦争の影響はもはや戦場だけに限定されるものではない(“effects of war can no longer be confined to the areas of battle)」と述べ、「全世界の生活を混乱させるような行為は、実行に移される前にまず全世界の世論の場で検証されなければならない(whatever is done to disturb the whole world’s life must first be tested in the court of the whole world’s opinion before it is attempted)」と主張した。グローバル化を支える市場とネットワークは、軍事紛争が常に主要な拠点から遠く離れた場所で発生した戦後環境において発展した。朝鮮戦争、ヴェトナム戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争といったアメリカの戦争は、世界経済を脅かすものではなかった。

今日のアメリカの政策立案者たちは、ウィルソンのこの警告を忘れてしまったようだ。トランプ大統領がこの戦争に乗り出した時、彼はペルシア湾岸諸国を前例のない攻撃に晒し、ひいては世界経済の生命線である資金の流れを混乱させたのである。

※エスファンディヤール・バトマンゲリジ:ブールス&バザール財団創設者。Xアカウント:@yarbatman

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(終わり)

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争や今回のイラン戦争が始まると、私たちはどうしても「第三次世界大戦が始まるのではないか」という不安を覚える。「世界大戦(World War)」と名付けられる大規模戦争はこれまで2回しかない。第一次世界大戦(1914~1918年)と第二次世界大戦(1939~1945年)である。第一次世界大戦では、イギリス、フランス、ロシアの三国協商(Triple- Entente)を中心とする連合国(the Allies)とドイツ、オーストリア=ハンガリー帝国、イタリアの三国同盟(Triple Alliance)を中心とする中央同盟国(the Central Powers)のヨーロッパを主戦場とする大規模戦争であった(イタリアは連合国側で参戦)。第二次世界大戦では、現在の国連安全保障理事会常任理事国であるアメリカ、イギリス、フランス、ソ連(ロシア)、中華民国(中華人民共和国)を中心とする連合国(Allied Powers)とドイツ、イタリア、日本の日独伊三国軍事同盟を中心とする枢軸国(the Axis)のヨーロッパ、北アフリカ、太平洋地域を戦場とする大規模戦争であった。

 以下の論稿で述べられているように、世界大戦となる条件としては、(1)世界の主要大国(昔の表現では列強)の全てもしくは多くが参戦していること、(2)世界規模での戦争が行われていること、(3)戦争が総力戦で行わること、(4)戦争の結果が世界の構造、主要大国間の勢力均衡に変化が出ることが挙げられる。現在のところ、ロシア・ウクライナ戦争もイラン戦争も世界大戦の条件を満たしていない。従って、世界大戦ではないということになる。そして、それは、世界の主要な大国が積極的に参戦して、事態を悪化させないようにしていることが理由である。

 現在の世界の状況で言えば、西側諸国(the West、ジ・ウエスト)と西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)の2つの大きな陣営に分かれている。この2つの勢力が敵対的な関係になっている訳ではないが、アメリカとイスラエルの野蛮な攻撃によって、西側諸国に対する西側以外の国々の反感は高まっている。しかし、積極的に戦争に参加するということはしていない。それは、安易に戦争を拡大すれば、事態はコントロール不能の状態に陥ってしまうからだ。アメリカ、イスラエル、日本(アメリカとイスラエルを無条件に全面支持)以外の国々はそのような賢慮を行っている。事態を悪化させないという多くの国々の時勢に甘えて、アメリカとイスラエルは野蛮な行動をエスカレートさせ、それを日本が支持している。

アメリカとイスラエルは自分たちがワルも担ってしまうという状況を予測していなかっただろう。幕引き、出口を探しているだろう。のんきな日本はとりあえず、アメリカとイスラエルを全面的に支持しますと言っていれば済むと考えている。おめでたい指導者を選んだおめでたい国という認識を世界中に広げることになる。しかし、実際のところは、もう日本には国際的な影響力を行使するほどの国力はなく、世界から無視されているような状況であるので、何をしても大ごとにはならないだろう。それは悲しいことではあるが、衰退国家である日本の現在の位置はそういうことであろう。

(貼り付けはじめ)

第三次世界大戦を想起させる抑えきれない衝動(The Irresistible Urge to Invoke World War III

-誇張された比較は忘れよう。中東戦争もロシアによるウクライナ侵攻も世界規模の大戦の兆候ではなかった。

ヨー・インゲ・ベッケヴォルド筆

2026年3月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/12/world-war-iii-3-middle-east-iran-nuclear-russia-ukraine-china-history-geopolitics/

「第三次世界大戦(World War III)」という言葉は軽々に話し合うべき言葉ではないが、その勃発を予言することは政治評論家たちの常套句(a staple)となっている。中東地域における現在の戦争も例外ではない。イギリス・メディアは、イラン爆撃に向かうアメリカ軍機にイギリス空軍基地の使用を許可すれば、イギリスが第三次世界大戦に巻き込まれる可能性があると議論してきた。2022年と2023年には、ジョン・ミアシャイマー、タッカー・カールソン、イーロン・マスクといった人物が、ウクライナのロシアとの戦闘を支援することは世界的な大戦を引き起こすと警告した。政治専門誌『ポリティコ』誌が最近実施した世論調査では、イギリス、カナダ、フランス、アメリカの回答者の過半数が、今後5年以内に第三次世界大戦が起こる可能性が高いと考えていることが明らかになった。

世界政治の混乱を理解するためには、様々な種類の戦争を区別することが重要である。これは単なる言葉の綾(semantics)や学術的な厳密さ(academic exactitude)の問題ではなく、冷静な政策決定を行うための前提条件(a prerequisite)であり、言うまでもなく、私たちの正気(sanity)を保つためにも不可欠である。

ロシアによるウクライナ侵攻と、アメリカとイスラエルによるイランへの戦争は、関係諸国に壊滅的な影響を与える深刻な紛争ではあるものの、いずれも地域戦争(regional wars)である。イランが近隣諸国を攻撃し、それらの国々が参戦するかどうかが不透明な状況下でも、この事実は変わらない。世界大戦(world war)は、地域戦争、限定戦争(limited wars)、あるいは様々な形態のハイブリッド戦争と非対称戦争(hybrid and asymmetric warfare.)と比べて、大国間政治(great power politics)、安定(stability)、経済成長(economic growth)、そして国際システム(the international system)に、はるかに深刻な影響を及ぼす。

確かに、中東地域における戦争の激化は、地域を超えて深刻な影響を及ぼす可能性がある。しかし、この紛争、あるいは他のいかなる紛争も、世界大戦と呼ばれるためには、以下の4つの基準を満たさなければならない。

第一に、世界大戦は国際システムにおける主要諸国全て、あるいは大多数を直接対峙させる。第二に、戦争に関連する軍事作戦は世界規模、少なくとも2つ以上の大陸で行われる。第三に、世界大戦は限定戦争ではなく総力戦(total wars)であり、主要諸国は相当量の軍事力やその他の重要な資源を動員して戦う。第四に、戦争の結果は体系的な影響、すなわち主要諸国間の勢力均衡(the balance of power between the great power)の明確な変化をもたらす。

第二次世界大戦は明らかにこれら4つの基準を満たしている。当時の全ての主要諸国が関与し、全ての有人大陸(all inhabited continents)を巻き込み、総力戦であり、そして重大な体系的影響をもたらした。この戦争はアメリカ合衆国とソヴィエト連邦を超大国の地位(superpower status)へと押し上げ、一方、かつてのヨーロッパの主要諸国は徐々にその地位と植民地を失っていった。また、この戦争は国際連合とブレトンウッズ体制の設立にもつながり、国際システムを組織する全く新しい方法が生まれた。

第一次世界大戦は本質的にはヨーロッパの戦争だったが、最終的にはオスマン帝国やアメリカ合衆国を含む当時の全ての列強(all the great powers at the time)が参戦した。この戦争は世界規模で展開され、アフリカやアジア太平洋地域にはヨーロッパの植民地を含む複数の戦線が存在した。200万人以上のアフリカ人と100万人以上のインドの植民地住民が戦闘に参加したり、何らかの形で戦争に関与したりした。連合国(the Allies)は、1914年にドイツ帝国に宣戦布告した日本も加わり、南西アフリカから中国、ニューギニア、マーシャル諸島に至るまで、ドイツの植民地を支配下に置いた。第一次世界大戦は間違いなく総力戦だった。この戦争は、ロシア帝国、ドイツ帝国、オーストリア=ハンガリー帝国、オスマン帝国の崩壊をはじめとする、体系的な影響を生じさせた。

歴史上、世界大戦の資格を持つ戦争の数は非常に少ない。ウィンストン・チャーチルや他の人々は、七年戦争(1756年~1763年)こそが最初の真の世界大戦だったと主張している。イギリス、フランス、プロイセンをはじめとするヨーロッパの主要諸国は主に時刻がある大陸で戦ったが、北アメリカ(フレンチ・インディアン戦争と呼ばれる)、南アジアなどでも戦争は激化した。この戦争は、イギリスの世界的な地位をさらに高めた。

一方、他のヨーロッパの大規模紛争、例えば九年戦争(1688年~1697年)、スペイン継承戦争(1701年~1714年)、フランス革命戦争(1792年~1802年)、ナポレオン戦争(1803年~1815年)なども、主要諸国の植民地領土にまで戦火が及んだことから、世界大戦に分類される。もう1つの候補は、13世紀におけるモンゴルによるユーラシア大陸の大部分の征服だ。しかし、世界大戦のリストを拡張しても、その数は限られている。

冷戦(the Cold War)は、米ソ対立の結果として複数の地域戦争や代理戦争(proxy wars)が展開され、世界規模で行われたが、米ソ両超大国が直接軍事衝突することはなかったため、「冷戦」という名称が付けられた。ワシントンのいわゆる「テロとの戦い(war on terror)」も世界規模だったが、それは大国間の紛争ではなく、極めて非対称的な戦争(a highly asymmetric war)だった。

それでは、今日の政治議論における候補はどうだろうか? ウクライナは確かにロシアとの全面戦争に突入している。その利害は、国家としてのウクライナの存亡に他ならない。さらにこの戦争は、ヨーロッパの安全保障、アメリカの戦略、国際経済に極めて大きな影響を及ぼす。北朝鮮はロシアと共に戦う兵士を派遣しており、戦争の行方は中国の準属国(quasi-vassal)を通じたヨーロッパへの影響力拡大に影響する。しかし、それだけでは世界大戦とは言えない。軍事作戦はウクライナとロシア国内でのみ行われている。現在の国際システムにおける二大勢力であるアメリカと中国の間には直接的な軍事的対立が存在しない。したがって、ロシア・ウクライナ戦争の結果は、システム全体に影響を与えることはない。

ロシア・ウクライナ戦争は依然として地域紛争であり、この点において朝鮮戦争(1950~1953年)に類似している。しかし、朝鮮戦争では、当時二大超大国の1つであったアメリカが主要な役割を担っていた。アメリカ軍が中国人民解放軍と直接戦闘を行ったにもかかわらず、朝鮮戦争は体系的な影響を及ぼさなかった。

イランと中東地域における現在の紛争もまた、アメリカの関与、エネルギー価格への劇的な影響、国際航空便の混乱、そしてイランのミサイルやドローンによって影響を受ける多数の国々といった点にもかかわらず、地域紛争である。実際、イランが近隣諸国に対してドローン攻撃をエスカレートして使用していることは、現代の危機がいかに容易に紛争地帯周辺の国々を巻き込むかを示している。

それにもかかわらず、この紛争は依然として地域的な危機である。ロシアがイランにアメリカ軍の標的に関する情報を提供しているとの報道や、ロシアがイラン製のシャヘド無人機を使ってウクライナを攻撃しているという報道があるにもかかわらず、この紛争はロシアのウクライナ侵攻とは直接関係がない。中国も、イランとの緊密な関係、中東地域からの原油輸入、中東地域における積極的な外交活動にもかかわらず、この戦争において重要な役割を担っている訳ではない。中国にとって、この紛争に介入することは国益にそぐわない。たとえ介入を望んだとしても、中国は中東地域に軍事的拠点も、戦争に参戦できるほどの戦力投射能力(the power projection capacity)も持ち合わせていない。

今日の中国とアメリカ、そして冷戦時代の米ソ対立といった二極構造の国際権力構造(bipolar international power structures)は、3つ以上の大国による多極構造(multipolar systems of three or more great powers)よりも安定しており、紛争の発生リスクが低い傾向にある。さらに、核兵器の出現は、大規模な大国間戦争のリスクをさらに低下させている。

今日、米中両超大国が関与する戦争の最も可能性の高いシナリオは、中国による台湾併合の意図に関連した米国と中国の対立である。しかし、北京とワシントンがエスカレーションのリスクをどのように管理するかによって、米中両大国間の紛争が限定戦争にとどまる可能性もある。核兵器使用の閾値(threshold)を下回る範囲で(限定核戦争については議論が続いているが)、戦闘が西太平洋地域に限定されれば、限定戦争にとどまるかもしれない。

しかし、中国とアメリカが台湾をめぐる限定戦争の可能性を検討しているという事実そのものが、垂直的および水平的なエスカレーションの危険性を鑑みると、より大規模な紛争のリスクとなる。ヨーロッパ諸国が米中紛争に巻き込まれる可能性があり、ロシアはアジアでの戦争を、ヨーロッパにおけるヨーロッパとアメリカの決意を試す機会として利用するかもしれない。

現代社会における経済的・技術的な相互関係(the economic and technological interconnections)を考えると、西太平洋における限定的な戦争、あるいはヨーロッパや中東地域における地域戦争でさえ、紛争の中心地をはるかに超えた国々、経済、そして国民に計り知れない影響を与えるだろう。一方、新たな世界大戦が勃発した場合の影響は、ほとんど想像を超えるものだ。

いかなる種類の戦争も避けるべきであり、より広範な紛争へのエスカレーションはなおさら避けるべきだ。政策選択の分析を研ぎ澄まし、ますます混沌とする世界で正気を保つためには、言葉によるエスカレーションも避けるべきである。

※ヨー・インゲ・ベッケヴォルド:ノルウェー防衛学研究所中国担当研究員。元ノルウェー外交官。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権下のアメリカに対処することが世界の課題になっている。ドナルド・トランプの自己顕示欲と名誉欲、そして、気まぐれに私たちは振り回されている。アメリカにとっての従順な従属国である日本は、アメリカの国益の為だけに行動している。アメリカ以上に「アメリカ・ファースト」である。高市早苗首相の訪米は手に抱えきれないほどの貢物(みつぎもの)を持ち、喜び勇んで朝貢を行う対米従属・朝貢外交である。私たちが歴史の授業で習った、中国の各王朝への朝貢は、貢物の価値の何十倍ものお土産をいただいて帰ってくるものであったが、現在の対米朝貢外交はお土産などない。

 世界各国で、対トランプにとっての重要なポイントは異なる。しかし、下記論稿を読むと分かるが、共通する点としては、トランプの不確実性に備えることとアメリカ(トランプ)の言いなりにならないことである。それは、自国や地域の利益を追求する途でもある。

 以下の論稿で重要なのは、イスラエルの部分である。この論稿は2025年12月29日に発表されたもので、この段階では、アメリカによるヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領拘束も、イスラエルとアメリカによるイランへの大規模攻撃も全く予想されていなかった(可能性としては議論されていたが)。イスラエルに関しては、トランプがイスラエルへの支援を削減する可能英について言及されている。それを避けるためには、イスラエルがアメリカに見返りを与えるべきだという主張がなされている。しかし、実際には、トランプ大統領はイスラエルと共にイラン攻撃を行うという決断を行った。これは、国際関係論や世界政治の専門家から見て「例外的な」「通常では考えられない」決断であったことを示している。そして、それはまた、トランプと言う人物が原理原則にとらわれない、素人の無手勝流の判断をする人物であることを示している。

 素人の無手勝流が成功を収めることもある。しかし、多くの場合にはやはり失敗に終わる。トランプを戦争に引きずり込んだことで、イスラエル、そして、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は「勝利」したということになる。アメリカが中東地域から撤退する、イスラエルに対うる支援を削減するということを阻止して、イラン攻撃に巻き込んだ。そして、トランプはそれにまんまと乗ってしまったということはアメリカにとっての失敗となった。イラン戦争によって世界経済は大きく混乱し、アメリカとイスラエルに対する反感も大きくなっていく。そして、トランプの「騙されやすさ」という最大の欠点が曝露されたことで、日本以外の世界各国はそこを利用して国益の追求を行うだろう。

(貼り付けはじめ)

2026年の世界リーダーのためのトランプへの対処に関する6つの教訓(6 Trump Lessons for Global Leaders in 2026

-『フォーリン・ポリシー』誌コラムニストたちが世界は新しいワシントンにどう対処するかについて考察する。

ゾンユアン・ゾー・リュー、ラジャ・モハン、ジェイムズ・クラブトゥリー、エリザベス・ブラウ、アガテ・デマライス、スティーヴン・A・クック筆

2025年12月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/29/trump-lessons-2026-china-india-europe-middle-east/

年初の恒例として、コラムニストたちに水晶玉(crystal ball)を覗き込み、これからの1年がどうなるかを占ってもらう。

今年は、ドナルド・トランプ米大統領がホワイトハウスに復帰した1年間の教訓を、そして世界の指導者たちが今後これらの教訓をどのように活かしていくのかを、ライターたちに考察してもらった。トランプ政権は、最初の任期よりもはるかに大きな変革をもたらし、世界中に関税を課し、同盟関係を縮小し、敵対国との妥協を模索するなど、アメリカの外交政策を変革した。混乱を極め、予測不能な展開もしばしば見られたが、各国の指導者たちは、より不安定な時代において、ワシントンとの関係をいかに築くべきかを学んでいる。

2026年の世界政治を形作るであろう、トランプ政権2期目からの6つの教訓をご紹介する。-ステファン・タイル副編集長

●中国にとっての教訓:トランプをどう操るか(Lesson for China: How to Play Trump

ゾンユアン・ゾー・リュー(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、外交評議会研究員)

トランプ政権の関税最後通牒に世界の多くが反発する中、中国は抵抗を続け、2025年をほぼ無傷で乗り切った。そこから得られた教訓は単純だが、極めて重要だ。トランプは現在、一期目の任期中よりもはるかに奔放で、予測不可能であり、アメリカ経済を武器として用いることに積極的になっている。しかし、アメリカからの最も厳しい圧力でさえ、曲げられたり、鈍化されたり、時には覆されたりする可能性がある。

特に注目すべき教訓は3つある。一つ目の教訓は、トランプの過剰な脅威は滅多に効果を発揮しない(Trump’s maximalist threats rarely stick)というものだ。注目を集める関税、制裁、ハイテク製品の禁輸措置は、市場の圧力、ロビー活動、あるいは大統領が勝利と呼べる取引を何でも手に入れたいという欲求に屈することが多かった。二つ目の教訓は、中国は貿易の多様化を加速させ、アメリカの圧力を吸収し、弱みを示唆することを避ける余裕が生まれたというものだ。三つ目の教訓は、アメリカのサプライチェインの脆弱性と政治的に敏感な支持層に対する標的型報復は、広範な反撃よりもはるかに効果的であることが証明されたというものだ。

さらに明らかになったのは、中国がトランプ政権最初の貿易戦争で洗練され、アメリカの輸出管理体制を巧みに乗り越えてきた10年近くの経験に基づいて策定された戦略を実行に移したことだ。中国は自国の輸出管理体制を洗練させ、重要鉱物やその他の上流原材料の輸出を制限することで、アメリカに対して戦略を試した。象徴的なものではなく、実効的な手段で実行した。その結果は、中国政府当局が長らく疑念を抱いていたであろう事実を裏付けるものとなった。アメリカのサプライチェインは脆弱だ。価格高騰、メーカーからの苦情、ロビー活動による圧力は、その具体的な証拠となった。トランプ大統領がNVIDIA H200チップの中国への輸出許可を撤回したのは、善意によるものではなく、北京の調整された圧力が功を奏した証拠だ。

アメリカの最新の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」はこの解釈を裏付けている。アナリストたちは、アメリカが地政学的な闘争を軽視し、中国を主に経済的・技術的な競争相手として位置付けていることを指摘した。この文書は緊張緩和(détente、デタント)を約束しているものではないが、戦場を明確に示している。それは経済と技術の影響力であり、まさに中国が実力を発揮している分野である。

この経験は、もう一つの教訓を確固たるものにした。トランプ政権は中間選挙が近づくにつれ、中核支持層の活性化を図る必要性から、制度的な基盤がさらに薄れ、取引中心になり、短期的な政治的勝利にばかり焦点を絞るようになる可能性がある。したがって、トランプは標的を絞った圧力にさらに影響を受けやすくなる可能性がある。彼は、中国に利益をもたらす貿易や規制上の譲歩―様々な関税の緩和、技術ライセンス規則の調整、特定の中国企業の米国市場参入の許可など―を進んで行うかもしれない。同時​​に、これらの決定を勝利―交渉の成功、貿易赤字の「勝利(win)」、あるいは中国が報復措置の一部から手を引く―として位置づけるかもしれない。トランプの譲歩(concessions)がアメリカの中核的な国家安全保障上の利益を直ちに損なうものではないとしても、中国が時間をかけてつけ込む可能性のある脆弱性(vulnerabilities)を蓄積させる可能性がある。

2026年に向けた中国の姿勢は明確だ。トランプがほとんど譲歩することなく勝利を収められるような、限定的で取引的な合意を追求するだろう。ヨーロッパ、東南アジア、ペルシア湾岸諸国との関係を深めることで、アメリカの影響力を弱め、国内の技術自立を加速させるだろう。不安定さは今や構造的なものとなり、トランプが4月に予定している訪中でさえ、失われた安定と信頼を回復することはできないだろう。中国が期待しているのは緊張緩和(デタント)ではなく、時間だけだ。アメリカの脆弱性を探り、自国の体制を強化し、ワシントンの圧力が徐々に弱まるようにするための時間だ。忍耐、緻密さ、そして調整された影響力(patience, precision, and calibrated leverage)こそが、北京の国家運営における決定的な武器(Beijing’s defining arsenal of statecraft)となっている。

●インドにとっての教訓:アメリカとの関係を改善する(Lesson for India: Repair U.S. Relations

C・ラジャ・モハン(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、OP・ジンダル・グローバル大学教授)

インドのナレンドラ・モディ首相ほどトランプのアメリカ大統領復帰を熱狂的に歓迎した政府はほとんどなく、そしてこれほど失望した政府もほとんどない。

モディ首相はトランプ大統領就任後、最初に会談した世界の首脳の一人であり、インドは商業がアメリカの外交政策の中心軸となったことを認識し、速やかに貿易交渉を開始した。

しかし、インドとアメリカの戦略的パートナーシップを強化するという期待は、2025年8月にトランプ大統領がインド製品への関税を50%に引き上げたことで打ち砕かれた。問題の一因は、モディがトランプの平和構築に関する壮大な妄想、特にインドとパキスタンの軍事衝突に関する見解を誤読した点にあった。もしモディが、南アジアを自滅から救うというトランプの役割についてもっと熱心に賛辞を述べていれば、ニューデリーとワシントンの関係は少し違った展開を見せていたかもしれない。

モディ首相の側近たちは、トランプをホワイトハウスに復帰させた連合勢力をある程度把握していた。しかし、MAGA運動の力と熱狂に不意を突かれ、予想外の勢いでインドとその在外インド系市民たちに牙を剥いた。それ以来、インド政府はそのアプローチを調整し、現在は3つの原則に基づいて行動している。トランプが繰り返しパキスタンとの戦争を終結させたと主張しているにもかかわらず(インド政府はこれを虚偽だと考えている)、公の場でトランプ氏と議論することを避けること、ガザ地区とウクライナにおけるトランプの和平努力を称賛すること、そして貿易、技術、防衛といった分野におけるアメリカの幅広いシステムの関与を維持することである。

2026年には、トランプの国内での地位が低下の兆しを見せているため、インド政府はワシントンにおいて活動ができる政治的余地が拡大すると見ている。インドの戦略は今、3つの軸を中心に展開している。

第一に、2025年のトランプ政権下で沈黙を強いられた、伝統的な親インド派の支持基盤、すなわち安全保障体制、アメリカ連邦議会、ビジネス団体、そして在外インド人ネットワークを動員することだ。これまで発言をためらっていた人たちも、今こそ米印両国関係の均衡回復に貢献してくれる可能性がある。インド政府はまた、MAGA連合の少なくとも一部との関係改善策を見つけなければならないことも認識している。

第二に、インドはトランプ大統領の干渉を招く可能性のあるパキスタンとの新たな危機を回避する決意を持っている。新たな軍事紛争が勃発すれば、インドは再びトランプ大統領の奔放な衝動の標的となる可能性がある。

第三に、そして最も重要なのは、インド政府が多様化戦略(diversification strategy)を加速させていることだ。関税ショックは、インドに輸出先の拡大、ヨーロッパとの貿易交渉の迅速化、そしてロシアをはじめとする新興市場との経済連携の拡大を促した。安全保障政策においては、インドはより慎重にリスク回避(ヘッジ)を行っており、アメリカとのパートナーシップを維持しながら中国との緊張を緩和し、ロシアとの関係を深め、ヨーロッパと戦略的に関わっている。

人間と同じように、国も痛みに慣れる。モディ首相はトランプの関税への対応を学ぶ中で、ワシントンの威圧的な圧力に毅然とした態度で臨むことが国内で効果を発揮し、海外でも尊敬を得られることを学んだ。インド国内の伝統的にアメリカに懐疑的な人々にとって、トランプの2期目は、アメリカに戦略的な依存を過度に求めるべきではないという戒めとなる。楽観主義者にとっては、2025年の混乱は、トランプがその年のオリンピックのような政治的高みから退く2026年には、より良い基盤へと変わるかもしれない。この楽観主義の根底にあるのは、インドとの戦略的パートナーシップにおける25年以上にわたる超党派によるアメリカの投資が、どんなに予測不可能なホワイトハウスでさえ、1、2年で破壊される可能性は低いというインドの賭けとなっている。

●同盟諸国にとっての教訓:ヤマアラシになれ(Lesson for Allies: Become Porcupines

ジェイムズ・クラブトゥリー(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ヨーロッパ外交評議会客員研究員)

アメリカの同盟諸国やパートナーがトランプ政権下のアメリカ外交政策の変革に適応する中、彼らが直面する厳しい戦略的計算を一言で表すなら「ヤマアラシ(porcupine)」である。ウクライナ、バルト三国、ポーランドから台湾、日本に至るまで、潜在的に脆弱な国々は過去1年間から同じ不快な結論を導き出しているトランプの新世界秩序における生存は、もはや旧来のアメリカの保証に依存せず、自らを攻撃するのがあまりにも痛みを伴う存在にするということにかかっている(survival in Trump’s new world order no longer depends on old-fashioned U.S. guarantees but on making yourself too painful to attack.)。

ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領は2025年12月、2014年のロシア初侵攻以来、ウクライナの戦略的目標の礎であったNATO加盟がもはや現実的な目標ではないことを公に認めた。代わりにウクライナとヨーロッパの指導者たちはより現実的な目標に焦点を当てている。それは、将来のロシアの侵略を抑止するのに十分な軍事能力を再構築するための十分な余裕をもたらす停戦を確保することだ。ヨーロッパ委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が最近述べたように、「ウクライナは潜在的な侵略者にとって消化できない鋼鉄のヤマアラシ(a steel porcupine, undigestible for potential invaders)にならねばならない」。

アメリカの新しい「国家安全保障戦略(National Security Strategy)」は、ワシントンがヨーロッパの安全保障に関与する姿勢も、せいぜい条件付きであることを示している。ウクライナに当てはまることは、ロシアの他の潜在的な標的にしても同様である。特にヨーロッパのNATO加盟諸国が、かつての大西洋横断西側陣営の指導者に頼れなくなった今、その傾向は顕著だ。ヨーロッパ全域でトランプ・ショックは、各国に既に進行中だった「一世代で最大規模の再軍備(their most significant rearmament in a generation)」を加速させる要因となった。ドイツやポーランドといった主要諸国は軍事予算を劇的に拡大させている。

台湾もほぼ同様の計算を受け入れてきた。ワシントンの台北に対する安全保障上の関与は長らく公式には曖昧だったが、その戦略的な曖昧さは今や大統領の気まぐれに取って代わられた(that strategic ambiguity has now been replaced by changing presidential whims)。トランプ大統領が中国との「合意(deal)」と呼べるものの確保と、それに伴う国賓訪問に注力する今後数カ月は、特にこの傾向が顕著になるだろう。

台湾の頼清徳総統は最近、野心的な国防強化を発表し、2026年には軍事費をGDPの3%、2020年代末には5%に引き上げるという。これは台湾の戦略的脆弱性に対する懸念を反映している。台北の投資には、移動式対艦ミサイル、機雷、分散型防空システムなどが含まれる。これらは、アメリカの支援が不確実になる中で、中国の侵攻を高コストにすることを目的とした、いわばヤマアラシ兵器の集積である。

ヨーロッパと同様に、インド太平洋地域における長年のアメリカの同盟諸国は、2025年のトランプ大統領の不安定なアプローチを研究し、自国がより鋭い防衛戦略を開発することの賢明さを見出した。日本は防衛改革を加速させる計画で、軍事費は当初の計画より1年早い2026年にはGDPの2%を超える見込みだ。

冷戦時代と冷戦後の時代において、ワシントンは同盟諸国がアメリカの拡大抑止の下で繁栄できる秩序を築き上げた。同盟国の多くは、アメリカの安全保障保証への依存を当然のことながら高く評価していた。トランプ大統領が、アメリカは大統領が関心を持つ場合にのみ約束を守ると明確に表明した今、これらの国々は、鋼鉄の棘(steel spines)のような強靭さこそが最善の防衛手段であると判断しつつある。

●各大企業のCEOたちにとっての教訓:投資について慎重に考慮せよ(Lesson for CEOs: Think Twice About Investing

エリザベス・ブラウ(『フォーリン・ポリシー』コラムニスト、大西洋評議会上級研究員)

2025年はトランプ政権による数々の驚きの出来事に見舞われ、その中にはビジネス界に影響を与えたものも複数あった。特に経営者たちを驚愕させた事件が1つある。2025年9月にアメリカ移民税関捜査局(U.S. Immigration and Customs EnforcementICE)がジョージア州で現代自動車とLGの従業員約500人を拘束した事件だ。

労働者の中には、韓国の二大製造業大手が所有する新工場の設立を支援するためジョージア州に派遣された韓国国民317人も含まれていたことを思い出して欲しい。複雑な近代工場の設立には専門技術が必要だが、現代とLGはジョージア州で即座にそのような専門知識を持つ人々を見つけることができなかった。さらに緊急性もあった。トランプ大統領が韓国からアメリカへの輸入品に25%の関税を課した直後であり、ソウルは自国企業がアメリカにどれだけ投資できるかを示すことでホワイトハウスを喜ばせようと躍起になっていた。H-Bヴィザや類似の就労ヴィザ取得に通常かかる長い待機期間がこの取り組みを頓挫させる恐れがあった。『ニューヨーク・タイムズ』紙が報じたところでは、韓国人たちは短期ビジネス訪問者向けのB-1ヴィザと、短期ビジネス訪問も認めるESTAヴィザ免除プログラムを利用してアメリカに入国した。しかしこれはICE(移民関税捜査局)の方針に反するものだったので、彼らは拘束された。

このニューズは、アメリカへの投資を検討していた製造業の経営者たちに衝撃を与えた。中国が欧米に対してより敵対的になる中、多くの欧米メーカーはアメリカへの「フレンドショア(friendshore)」計画を立てており、トランプは関税措置など明確な手段でそれを促していた。結局のところ、産業をアメリカに呼び戻すことがトランプの経済政策の中核である。経営者たちを襲った「トランプ・ショック」とは、彼の意向に沿ってアメリカに製造拠点を設けることが自社ビジネスに逆効果となり得るという認識だった。そのリスクはICE(移民関税執行局)による労働者拘束を超えている。世界中から部品を調達するアメリカ製造企業—今日ではほぼ全ての主要メーカーが該当する—は今や複数の高額関税の直撃を受けている。

2026年、このトランプ・ショックが経営陣にアメリカ以外の立地を検討させるきっかけになっても驚くことはないだろう。ヴェトナムからケベックまで、中国からの生産分散を図る企業を歓迎する国や地域が相次いでおり、こうした管轄区域は取り組みを強化する可能性が高い。アメリカは依然として魅力的なビジネス拠点だが、企業が最も嫌うのは不確実性だ。製造業には多くの段階、複雑なサプライチェイン、長期的な視野で計画された投資が伴う。いずれかの部分が機能不全に陥ったり、混乱を経験したり、新たな政策によって突然混乱に陥ったりすれば、サプライチェイン全体が狂ってしまう。

2000年代初頭の中国ショックは、欧米諸国全体で賃金抑制と製造業雇用喪失を引き起こした。迫り来るトランプ・ショックは異なる様相を呈するだろう。経営者たちが「トランプ流のアメリカ」が想定とは全く異なるビジネス環境であるという現実を認識する契機となる。

●ヨーロッパにとっての教訓:冷静さを保ち物事を実行し続ける(Lesson for Europe: Keep Calm and Carry On

アガテ・デマライス(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ヨーロッパ外交評議会上級研究員)

昨春、ウォーレン・デービッドソン米連邦下院議員は、「トランプ錯乱症候群研究法案(the Trump Derangement Syndrome Research Act)」を提出した。これは、アメリカ国立衛生研究所に対し、なぜトランプとその政策が軽蔑されるのかを調査するよう命じる法案だった。一部の外国政策立案者も、同様の症候群に陥っている可能性がある。つまり、突発的な不安から途方もない政策を採用してしまうというものだ。その一例が、昨年日本がアメリカと締結した貿易協定である。この協定では、2029年1月までに5500億ドルの日本の納税者の税金をアメリカで支出することが約束されている。

これまでのところ、ヨーロッパの指導者たちは、この危険な症候群の最悪の症状を何とか回避してきた。反対の主張があるにもかかわらず、2025年7月に締結されたアメリカとヨーロッパ連合(EU)の貿易協定は、ヨーロッパの屈服とは程遠い内容だ。むしろ、EUはトランプへの対応について、既にいくつかの教訓を学んでいるようだ。まず、EUはトランプの関税への愛着を説得する時間を無駄にせず、関税率15%で合意した。第二に、EU首脳は、自国企業と消費者に損害を与えるだけの報復関税を課したいという衝動を賢明に抑えた。第三に、EUは結束を重視した。個々のヨーロッパ各国政府は、ワシントンに駆けつけて二国間協定を締結したいという衝動をうまく抑えることができた。二国間協定は、EUの集団交渉力を弱めることになるだろう。

2026年には、ヨーロッパ首脳にとって、トランプ政権への対応策を見直す十分な機会が与えられるだろう。大西洋をまたぐ最初の戦いはウクライナ問題だ。2025年11月、ヨーロッパとウクライナの頭ごなしに提案された、米露和平協定は、トランプが主にベルギー、そして比較的小規模ながらフランスをはじめとするEU加盟国に保有されているロシア中央銀行の凍結中の準備金3000億ドルを狙っていることを非常に明確にした。第二に、アメリカはおそらく、EU製鉄鋼への関税引き下げと引き換えに、透明性、コンテンツモデレーション、データプライバシーを含むデジタルルールの緩和をヨーロッパに迫るよう圧力を強めるだろう。第三に、フロリダ州マイアミ近郊にあるトランプが所有するゴルフリゾートで開催される今年のG20サミットは、驚きに満ちたものになるかもしれない。トランプがこの会合を、世界経済の80%以上を占める首脳を説得し、アメリカに利益をもたらす二国間協定に署名させる絶好の機会と捉えることは容易に想像できる。これら3つの戦いに打ち勝つために、EUは冷静さを保ち、継続する必要がある。ヨーロッパにとって、自助努力と結束(self-help and unity)は依然として今日の合言葉である。

●イスラエルにとっての教訓:トランプは容易に支援について再考する可能性がある(Lesson for Israel: Trump Could Easily Rethink Aid

スティーヴン・A・クック(『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、外交評議会研究員)

トランプの中東地域へのアプローチが驚きだったと言うのは、その言葉の意味を軽視することになる。振り返ってみよう。彼はイランの核施設への空爆を命じ、イスラエルとハマスに停戦を強制し、おそらく元ジハード(聖戦)主義者であろうシリアのアハメド・アル・シャラー大統領と大統領執務室で会談した。アメリカは現在、ガザ地区における国家建設(nation-building)を支援し、ヒズボラの武装解除に取り組み、イスラエルとレバノンの正常な関係構築を推進し、サウジアラビアへの安全保障保証の拡大について広範な協議を行っている。
これは、トランプが約1年前に大統領に復帰した際に支持者や同調者が皆に告げた中東地域からの撤退とは異なる。MAGAやそのシンクタンクの頭の中には「アメリカ・ファースト」外交政策があるかもしれないが、ホワイトハウスはそのような原則を一切遵守していない。中東地域を含むアメリカの外交政策は、トランプ大統領の直感に基づいていることが判明した。トランプ大統領は、耳を傾ける者全員にそう語ってきた。もし書面で確認したいのであれば、最新の「国家安全保障戦略(National Security StrategyNSS)」は、その一貫性のなさ、そしてこの地域におけるトランプ大統領の行動と滑稽なほど矛盾しているという点で特筆すべきものだ。

それでは、トランプ大統領は2026年に何をするのだろうか? 私は決して賭けるようなことはしないが、イスラエルへの軍事援助に関しては、トランプが事態を一変させるだろうと断言する。現在の支援協定はトランプ大統領の任期末まで期限切れにならないが、この問題は既にトランプの頭の中にある。2025年4月、ホワイトハウスでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した際、トランプ大統領は「私たちはイスラエルに年間40億ドルを支援している。これは多額の援助である。とにかく、おめでたいことではある」と述べた。これは、イスラエルがアメリカ内でこの援助の全てを支出しているにもかかわらず、トランプ大統領がこれを大した金額だとは考えていないことを示唆していると言えるだろう。

アメリカとイスラエルの両首都においては、私怨延長をめぐって多くの疑問が投げかけられている。これまでのところ、ネタニヤフ首相顧問のロン・ダーマーは、20年間の最終合意を提案しており、その後に支援は停止されるとしている。アメリカの軍事支援を段階的に縮小するのは良い考えだが、トランプを説得するには、イスラエル側が何か大きなものを提示しなければならないだろう。サウジアラビアが約束したように最大1兆ドルの投資を約束するだけの資金はイスラエルにはないため、工夫を凝らさなければならないだろう。トランプが3度にわたり大統領選に出馬した際、常に中心的テーマとして掲げてきたのは、アメリカは世界の平和と安定のために多大な犠牲を払っているにもかかわらず、何の見返りも得ていないという主張だった。今度はイスラエルが代償を支払う番である。

※ゾンユアン・ゾー・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会モウリス・Rグリーンバーグ記念中国研究研究員。最新作に『ソヴリン・ファンド:中国共産党は如何にして世界規模の野望に資金を提供しているか(Sovereign Funds: How the Communist Party of China Finances Its Global Ambitions)』(ハーヴァード大学出版局、2023年)がある。

C・ラジャ・モハン:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。OP・ジンダル・グローバル大学モトワニ・ジャデジャ記念アメリカ研究所卓越教授。シンガポール国立大学客員研究教授。インド安全保障諮問会議元委員。Xアカウント:@MohanCRaja

※ジェイズム・クラブトゥリー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。著書に『億万長者のインド支配:インドの新たな黄金時代に続く旅路(The Billionaire Raj: A Journey Through India’s New Gilded Age)』がある。Xアカウント:@jamescrabtree

※エリザベス・ブラウ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。大西洋評議会上級研究員。著書に『さらばグローバライゼーション(Goodbye Globalization)』がある。Blueskyアカウント:@elisabethbraw.bsky.social

※アガテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会地経学上級政策研究員。著書に『逆効果:制裁がいかにしてアメリカの利益に反して世界を変えていくか(Backfire: How Sanctions Reshape the World Against U.S. Interests)』がある。Blueskyアカウント:@agathedemarais.bsky.socialXアカウント:@AgatheDemarais

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会中東・アフリカ研究担当エニ・エンリコ・マッテイ記念上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東地域における過去、現在、未来(The End of Ambition: America’s Past, Present, and Future in the Middle East)』がある。Xアカウント:@stevenacook

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