古村治彦です。
特定秘密保護法案が衆議院で可決され、参議院に送付されました。今国会での成立の可能性が高い状況になっています。この特定秘密保護法案の採決の時、自民党が修正に応じたために、党として賛成することになったみんなの党から退席者、反対者が出ました。退席したのは江田憲司氏(神奈川8区・当選4回・みんなの党前幹事長・解任)、反対したのは井出庸生(長野3区比例復活・当選1回・東大野球部主将)、林宙紀(宮城1区比例復活・当選1回・東大アメフト部主将)の両氏です。
以下の新聞記事にあるように、みんなの党は、三氏に対して早速事情聴取が行いました。この動きですと、三氏のうち、若い井出、林氏には離党勧告までは出ないでしょうが、戒告や党員資格停止が出るでしょう。そして、江田氏に関しては離党勧告まで出される可能性が高いように思われます。みんなの党の分裂の可能性は高まっています。
(新聞記事転載貼り付けはじめ)
●「みんな「造反組」離党も…秘密保護法案採決」
2013年11月28日(木)7時30分配信 読売新聞
http://news.nifty.com/cs/domestic/governmentdetail/yomiuri-20131127-01320/1.htm
特定秘密保護法案の衆院本会議での採決を巡る混乱の余波が、内部で意見が対立した政党や、今後の法案審議に影響を与えている。
同法案への反対や退席が相次いだみんなの党では27日、渡辺代表の指示を受けた山内康一国会対策委員長が、採決で退席した江田憲司前幹事長のほか、反対に回った井出庸生、林宙紀両氏と国会内で個別に会い、事情聴取を行った。
その後、江田氏は記者団に「安全保障や国民の知る権利に関わる法案の強行採決は容認できないという立場を説明した」と述べた。江田氏に近い井出、林両氏に関しては「政治家の信念に基づく苦渋の決断だったと思う。2人には寛大な措置を執行部にお願いした」と語った。林氏は記者団に「議席を返すことを覚悟して造反したことを伝えた」と話し、井出氏は「いかなる処分も受け入れたい」と述べた。
同党では寺田典城参院議員が2011年3月、子ども手当つなぎ法案の参院本会議採決で党の方針に反して賛成に回り、党の役職停止6か月の処分を受けた前例がある。渡辺氏は、これを踏まえて3議員の処分内容を決める考えだが、野党再編を巡る対立から幹事長を更迭した江田氏に対しては「累積ポイントがある」と周辺に語っており、除名を含めた重い処分も想定される。江田氏が党を離れる場合、江田氏と行動を共にする議員もいるとみられるため、今後の展開次第では党分裂が現実味を増す。
一方、特定秘密保護法案は27日、民主党などとの対立が解けないまま参院本会議で審議入りした。与党側は当初、22日に衆院を通過させ、25日の参院審議入りを目指していたが、野党との修正協議が長引き、想定より2日遅れた。
参院国家安全保障特別委員会は27日、理事懇談会で、28日に委員会を開き、法案の趣旨説明と質疑をすることを中川雅治委員長(自民)の職権で決めたが、野党は態度を硬化させている。与党側は同特別委を連日開いて12月6日の会期末までに成立させる日程を描くが、野党が強く抵抗した場合の展開には、不透明感も漂う。
(新聞記事転載貼り付け終わり)
みんなの党は2009年に「国民運動体 日本の夜明け」を母体にして誕生しました。結党以来4年余りですが、着実に党勢を拡大してきたという印象があります。日本維新の会は急激に党勢を拡大(しかし国会議員の多くは石原慎太郎系のゾンビ議員や他党からの合流者たち)しましたが、その勢いは頓挫しています。
私は、堺屋太一、屋山太郎、江口克彦、三枝成彰といった人物が「日本の夜明け」のナビゲーター(役員?幹事?)となり、みんなの党のサポーターとなっていることを知った時点で、少し怪しさを感じていました。日本維新の会の裏にいる堺屋太一がここでも出てくるということは、日本維新の会とみんなの党は裏ではつながっているのだろうと考えました。そして、自民・公明・日本維新の会・みんなの党・民主党の一部が構成する「米政翼賛会(American Rule Assistance Association of Japan)」という言葉を思いついた訳です。
このみんなの党ですが、創設者の一人である渡辺喜美(わたなべよしみ)氏に対して、独裁的であるという批判がなされるようになりました。その批判はもう一人の創設者である江田憲司氏から出るようになりました。特に昨年の総選挙における日本維新の会との選挙協力や合流、野党の合併、政界再編といった話が出るようになってから、みんなの党の内部に亀裂が走るようになりました。そして、解党や政界再編にまで言及していた、柿沢未途代議士(東京15区・当選2回・父は柿澤弘治元外相)に、非公式な離党勧告が行われ、柿沢代議士は離党に追い込まれました。また、柿沢代議士の離党の前には、江田憲司代議士がみんなの党幹事長の役職から解任されました。以下の新聞記事にこれらのことが詳しく書かれています。
(新聞記事転載貼り付けはじめ)
●「みんな・柿沢氏が離党届提出 「渡辺代表から『出て行け』と」」
2013.8.23 22:50 (1/2ページ)[みんなの党] MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130823/stt13082313210000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130823/stt13082313210000-n2.htm
みんなの党の渡辺喜美代表は23日、柿沢未途(みと)前政調会長代理(衆院東京15区)に離党を勧告した。これを受け柿沢氏は離党届を提出、受理された。先の参院選後、野党から現職国会議員の離党者が出たのは初めて。野党再編をめぐる同党内の路線対立は、党代表が所属議員を“追放”するという異常事態に発展した。(原川貴郎)
柿沢氏は離党後、国会内で記者会見し、「はらわたがちぎれるほど残念だ」と無念さをにじませるとともに、「再編のあるべき姿として大きな器をつくり出すべきだ」と持論を展開。一方、渡辺氏も記者会見を開き、柿沢氏について「党の方針、私の方針と反する言動があった」と批判した。
柿沢氏らによると、渡辺氏は22日、議員会館の自室に柿沢氏を呼び出し「何も言わないから党から出ていってほしい」と通告。同席した浅尾慶一郎幹事長も「柿沢氏は新党に前向きではないのか」と迫った。即答をためらった柿沢氏が23日、渡辺氏のもとを再び訪れると、離党届を書くよう求められたという。
柿沢氏は、新党結成による野党再編を目指す民主、維新、みんなの中堅・若手会合の中心メンバー。これに対し、「多党連合」構想を掲げる渡辺氏は23日の会見でも「解党はしない」と党の存続にこだわった。
渡辺氏は若手会合に出席している柴田巧参院議員、井坂信彦衆院議員からも事情聴取する方針。同じく再編論者の江田憲司前幹事長に離党勧告をするかについても「これから考える」と含みを残した。
今回の一件で野党再編の機運はしぼみかねないが、今後、維新とみんなで再編をめぐる主導権争いが勃発する可能性がある。維新の橋下徹共同代表(大阪市長)は23日、市役所で記者団に「渡辺氏と一緒にやりたい国会議員や、渡辺氏のみんなの党と組む政治家は極めて少ない」と批判。柿沢氏の動きを「再編の起爆剤になる」と指摘した。
みんなからは昨年、3人の参院議員(現在衆院議員)が維新に合流している。維新側は渡辺氏と距離を置くみんな議員と接触を図ることになりそうだ。
(新聞記事転載貼り付け終わり)
●「みんなの党、終わりなき対立劇 再編で渡辺氏「みんなが母体」 江田氏「党解消も辞さず」」
2013.8.9 20:14 [みんなの党] MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130809/stt13080920170006-n1.htm
みんなの党の渡辺喜美代表と幹事長を更迭された江田憲司衆院議員が9日、それぞれ記者会見やテレビ番組の収録で「場外戦」を繰り広げた。両氏の対立はエスカレートするばかりで、渡辺氏の党内基盤を揺るがすことになりかねない。
渡辺氏は9日の記者会見で江田氏の処遇について「今後の推移を見たい」と述べるにとどめ、野党再編に関してはあくまでもみんなを母体に進める考えを示した。
江田氏が独自に野党再編に動いた場合の対応は「党の方針に反するか反しないかが(容認するかどうかの)判断のポイントになる」と語り、「江田切り」まで進みかねない勢いだ。
江田氏も黙っていない。9日のBS-TBS番組の収録で更迭について「理解できない」と不満をぶちまけ、再編に関しては「渡辺さんも私も党の発展的な解消を辞さずという立場だった。私は引き続きそうだが、最近、渡辺さんがどう思っているのか…」と懐疑的なまなざしを向ける。
ただ、2人の感情がこじれた根本的な要因は、党の資金運用や公認手続きなどをめぐる渡辺氏の「独断」ぶりに江田氏が不満を抱いたことが大きい。収録でも「ルールを決めて全員野球をしようというのが私の提起だ」と語っている。
もっとも、江田氏に離党する気はない。野党再編の機運がしぼみつつある中、離党しても、展望が開けるわけではないからだ。渡辺氏が党内基盤を強化したくても、2人の険悪な関係は党を弱体化させることにしかならない。
(新聞記事転載貼り付け終わり)
柿沢氏の離党は、江田氏の勢力を削ぐことが目的であったでしょうし、江田氏の解任は渡辺代表の力を誇示し、存在感を出すために必要な措置であったと言えるでしょう。みんなの党は党勢を確実に伸ばしてはいますが、政界再編となった場合に埋没し、渡邉氏がイニシアティヴをとることは難しいのが現状です。渡辺氏にしてみれば、党の創設や資金面で自分が全てやってきたオーナーという感覚があって、小賢しい江田氏や柿沢氏のような存在は邪魔になっていったと思われます。ここは、イデオロギーや理想ではなく、自分の力を保持するための生き残りを掛けた戦いです。
この分裂に手を突っ込まれた結果が、今回のみんなの党の特定秘密法案賛成ということになります。みんなの党の内部に出来た2つの勢力の対立を煽って、最後はオーナーである渡辺氏を勝たせることで、米政翼賛会体制に取り込むことに成功したと言うことができるでしょう。そのために橋下氏がみんなの党にちょっかいを出し、分裂を誘い、両勢力をうまく煽りながら、最後は一方を切るということになったのだと思います。
政治家は勢力にくっついて生き残ることも仕事のうちですが、渡辺代表の動きは大変残念なものです。そして、米政翼賛会(American Rule Assistance Association of Japan)の巧妙さにやられっぱなしというのは情けない限りですが、これが現状であることを認識することがまずは重要ではないかと思います。
(終わり)