古村治彦です。



 昨日(2013年12月6日)、特定秘密保護法案が参議院で可決され、成立しました。この法案については、様々な主張や議論がなされてきましたが、国会での審議が拙速で、「とりあえず、今国会で可決させる」という安倍晋三首相の意思のみで突っ走ってきた感があります。担当の森雅子大臣もさぞやお疲れになったことと思います。



 この特定秘密保護法案についての問題点は、特定秘密を決めるのも、解除するのも、官僚たちの手に委ねられているという点です。安倍首相は、「今まではあまり変わらない」「首相は国会議員であり、行政府の長だ。その責任で、秘密指定を解除すべきものは当然解除の判断をしていくことができる」といった発言をしています。しかし、特定秘密全てを総理大臣が見て判断できるとは思えないし、これまでもあったように、官僚による隠ぺい、政治家への通知を行わないといったサボタージュの危険性は十分にあります。


キャプチャ特定秘密保護法


 石破茂自民党幹事長は、国会に常設の委員会を設けて監視させるという提案を行っていますが、これはそもそも法案を出すときに既に備えておかねばならない条件であったはずです。それを法案が成立してから「まずかったなぁ」という感じで出してくるのは、彼らが官僚任せ、いや、官僚が自民党をうまく利用してこの法案が出されたことを物語っています。国会議員が主導で作ったならば、あれだけ「優秀な」若い、弁護士資格を持つ人材を揃えた自民党が了承した法案が、国会を無視した内容になるはずがありません。



 国会審議や反対の主張を聞いて、「これはさすがにまずい」と思ったのでしょう。急に国会に常設委員会を設けるという話になってきました。しかし、以下の記事にあるように、その危険性はずっと前に指摘されていたのです。



(新聞記事転載貼り付けはじめ)



●「<6>国会 政府監視 自ら放棄」



2013年10月9日 東京新聞電子版

http://www.tokyo-np.co.jp/feature/himitsuhogo/news/131009.html



 政府が指定する「特定秘密」は、憲法で「国権の最高機関」と位置づけられる国会や国民の代表である国会議員でも原則として中身を知ることはできず、議論もできない。



 国会には憲法で定められた国政調査権があり、政府は「正当な理由」なく資料提出要求などを拒否できないが、今回の法案は国政調査権より「国の安全保障に著しい影響がある」として、秘密保全を優先している。



 閣僚などの政務三役は特定秘密を扱えるが、漏えいすれば罰則の対象になり、公務員と同じく最高懲役十年。同じ政党の同僚議員に教えることもできず、議論さえできない。



 法案では、例外として、非公開の委員会など(秘密会)に提供できるとしている。出席した国会議員がその情報を漏らせば、最高懲役五年だ。



 ただ、議員の調査活動を補佐する秘書や政党職員に伝えた場合が違法になるかどうかは決まっていない。



 さらに問題を複雑にしているのは、「両議院の議員は、議院で行った演説、討論について、院外で責任を問われない」と規定する憲法五一条との関係だ。



 例えば、秘密会で特定秘密を知った議員が国民に伝えるべきだと判断し、本会議や委員会で明らかにしても罪にならない。政府から見れば秘密会の意味がなく、最初から特定秘密を提供しなくなる恐れがある。



 法案に反対する伊藤真弁護士は「国会が行政を監督するのに必要な情報を得られなくなり、議院内閣制は崩れてしまう。情報を持つ者が、持たない者を支配する『官僚政治』が進み、国民が主人公の国ではなくなる」と警戒する。



 重要な情報が「特定秘密」にされてしまえば、国民の代表が政府を監視する国会の機能は削(そ)がれ、政府の歯止め役にならない。国会がこの法律を成立させることは、自らの手で憲法で与えられた役割や権利を放棄することになりかねない。 (生島章弘) =おわり



(新聞記事転載貼り付け終わり)



 今回の特定秘密保護法案は、日本版NSC(国家安全保障会議)とセットであると考えられています。国家安全保障会議とは、アメリカでは大統領直属の機関で、国家安全保障問題担当大統領補佐官(National Security Advisor)が主催して(ジョージ・W・ブッシュ大統領時代には、ディック・チェイニー副大統領が主催していました)行われる会議のことです。外交と国家安全保障にかかわるアメリカ政府最高幹部たちが集まる機関です。日本では、早速外務省と防衛省出身者たちに牛耳られることになりました。下の記事にあるように、特定秘密保護法は、各国のNSC、特にアメリカとの秘密共有にとって必要なものとされています。



(新聞記事転載貼り付けはじめ)



●「背景に米の意向=アルジェリア事件が後押し-秘密保護」



2013年11月7日 時事通信電子版

http://www.jiji.com/jc/zc?k=201311/2013110700931



 安倍政権が特定秘密保護法案の成立を急ぐ背景には、同盟国間で共有する機密の保全を求める米政府の意向がある。特に、政権発足間もない今年1月のアルジェリア人質事件で、在留邦人の安全確保に米国の情報が不可欠であることを痛感し、法制化に前のめりとなった。民主党政権下で法整備が検討されていたことも下地となった。



 「国家安全保障会議(日本版NSC)の審議をより効果的に行うためにも、秘密保全に関する法制が整備されていることが重要だ」。安倍晋三首相は7日の衆院本会議でこう訴えた。



 米政府は「スパイ天国」とも称される日本の情報管理に懸念を抱き、日本政府に機密保全への具体的対応を求めてきた。とりわけ2001年の同時テロ以降、米政府はテロ情報の収集と保全を強化。05年10月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同発表には「共有された秘密情報を保護するために必要な追加的措置を取る」と明記された。



 第1次政権でもNSC法案を提出した首相にはもともと秘密保全への問題意識があったが、危機感をあおったのがアルジェリア人質事件だ。同国の複数の政府機関から寄せられた情報は相矛盾することもあったため、日本政府は米英両国の「確度が高い」(政府高官)情報に頼らざるを得なかった。両国の情報機関とより緊密に連携するため、秘密保護法制化を急務ととらえた。



 野党に転じた民主党の政権下で秘密保護法制の議論が活性化した経緯も大きい。10年11月、沖縄県・尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を撮影したビデオ映像がインターネット上に流出。これを受け、当時の菅政権は法制化の検討に着手した。提出には至らなかったものの、後を継いだ野田政権は秘密漏えいに10年以下の懲役を科す法案を内々にまとめた。こうした動きが、今回の法案提出の地ならしをした。(2013/11/07-19:30



●「米国務省が「歓迎」」



2013年12月7日 東京新聞電子版

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/list/CK2013120702000242.html



 【ワシントン=竹内洋一】米国務省のハーフ副報道官は六日の記者会見で、日本の特定秘密保護法の成立について「情報保全は同盟国間の協力を進める上で死活的に重要だ。機密情報保護に関する政策の進展を歓迎する」と評価した。



 ハーフ氏は、表現の自由や知る権利が脅かされるとの懸念が日本で強まっていることを踏まえ「表現の自由や報道の自由という普遍的な価値を共有していることも日米同盟の基盤だ」と強調した。



 米政府は情報共有を進める前提として、日本政府に情報管理の強化を年来、働きかけてきた。



◆中国メディア「与党が強行」



 【北京=白石徹】中国の新華社通信は七日未明、特定秘密保護法成立で「与党が強行採決」との記事を配信、「六日夜に約一万五千人の市民が日比谷公園で集会を開き、国会周辺に大勢の市民が集まって抗議する中、法案が可決された」などと伝えた。



 秘密保護法について中国メディアは「安倍政権の秘密政治」(中央テレビ)と報道し、法案内容よりも日本政府の右傾化に重点を置いて非難していた。



 だが、少数民族問題のほか、人権、宗教など複雑な内政問題を抱える中国政府は、特定秘密保護法については、外務省が「注視している」と述べるにとどめていた。



(新聞記事転載貼り付け終わり)



 私は前回のブログの更新で、戦前の日本の韓国に対する保護国化から併合に至る道筋と日本の属国化の類似点について書きました。まず、被支配国の行政がしっかりしておらず、自分たちではしっかりできないことを指摘し、その後、外交権、そして司法権や軍隊を含む統治権を奪い、最後に併合するというのがその手順でした。



 現代では、このような形での併合はできませんが、属国化はこの手順で行うことができます。アメリカは、日本のアメリカ化、一体化、相互運用(interoperability)を進め、日本の属国化を加速させているのです。日本が独自の外交や安全保障政策を行えないようにするために、NSCを作らせ、特定秘密保護法を作らせたのです。



 しかし、これらの成立過程は拙速と言えるものでした。公約にもないものを持ち出してきて、セットだから成立させねばならないと焦り、会期末になって審議では出てこなかった機関が突然出てくるというのは、準備がしっかりできていなかった、もしくは政治家が準備に全く絡んでいなかったことを示すものです。これはできるだけ速やかに成立させよと日本側を焦らせる命令が出ていたと考えられます。これは、アメリカ側の焦りを反映したものであろうと私は考えています。



(終わり)