アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 2014年12月14日の総選挙の結果、民主党は公示前の62議席から73議席へと議席を増加させました。しかし、代表の海江田万里氏が小選挙区で落選し、比例復活もできなかったために、党代表を辞任すると発表したことを受け、2015年1月18日に代表選挙を行うと発表されました。海江田氏が落選していなかったらどうだったか分かりませんが、勝敗ラインを100議席としていましたので、それに届かなかった場合には責任論が出て、民主党の伝統芸能であるお家騒動が起きたことでしょう。

 

 下に貼り付けた新聞記事によると、細野豪志元幹事長が代表選挙への立候補を正式に表明し、岡田克也元代表を推す声も多いということです。前原誠司元代表も出馬に意欲を持っているという報道もあります。岡田氏と前原氏、共に代表を経験しており、政権を担った時に共に外相を務めましたが、やや賞味期限切れという印象が残ります。

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細野豪志 

 

 今回の党代表選挙では、民主党の再建が先だとする「再建」と野党再編に向けて動いていくべきだとする「再編」の2つの考えがあるということです。岡田氏は「再建」派からの支持が多く、細野氏は「再編」派だと言われています。そして、前原氏も「再編」派なのですが、前原氏は維新の党の橋下徹共同代表(現・大阪市長)と親しく、連携を模索しているという報道がなされています。まとめるとこういうことになります。

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岡田氏(左)と前原氏(真ん中)

・細野豪志(元幹事長):維新との連携・合併まで視野に入れた野党再編派

・前原誠司(元代表):維新(橋下徹氏)との連携を深める野党再編派

・岡田克也(元代表):民主党の勢力回復を優先する民主党再建派(海江田執行部副代表で、国政選挙を担当し、野党共闘を行った)

 

 私は、重要になるのは、①民主党内でもう一度政権を担う気概が出てくるのか、②医師の党がどうなるのかということがポイントになると思います。

 

 民主党は今回の総選挙で議席を増やしましたが、二桁台に留まりました。これは2009年からの2012年まで与党であった時に、菅直人、野田佳彦両氏を総理大臣にして、結局財務省にだまされて消費税増税を行い、「国民の生活が第一」というスローガンをこそこそと隠してしまったことに対する怒りと失望がまだ国民の側にあり、「とてもじゃないが民主党には入れられない」「自民党が巨大与党であり続けるのはまずいから、仕方なく、涙を呑んで、鼻をつまんで、煮え湯を飲む思いで、嫌々民主党に投票する」という人たちが多く、民主党への積極的な支持は戻っていません。

 

 そうした中で、現状をどう考えるかですが、「とりあえず党勢は少し回復したし、野党第一党であることには変わりない。来年の地方選挙で頑張れば、2016年の参議院選挙でそこまで負けないだろう」という弛緩した雰囲気が民主党を覆っているのではないかと思います。「党勢は少し回復したとは言え、このままでは政権を担うところまではとても届かない」という危機感がそこまでないように見えます。しかし、これは大変危険な兆候です。

 

 1955年からの55年体制下、日本社会党がまさにそうでした。「昔はうちも与党になって総理大臣も出たんだよ」「野党第一党として自民党に対峙している」「改憲を阻止できるだけの議席は確保している」ということを正当化の道具にして、怠惰と安寧に阿り、結果は党を滅ぼすことになりました。もちろん、民主党に日本社会党出身の議員たちが多く参加したのは、こうしたぬるま湯ではいけないということで参加したと思いますが、人間は悲しいもので、やすきにつく、怠惰になるという歴史は繰り返されるようです。

 

 菅直人氏に功績があるとすれば、2003年に代表であった時に小沢一郎氏が率いる自由党と合併をする決断をしたことです(その裏には鳩山由紀夫氏の動きがありました)。これによって、異分子を入れることで、化学反応が起きて、民主党の体質は強化されました。それを面白く思わない人間たちが最終的には民主党を駄目にしてしまったのですが、民主党はこの時のような決断をして、党を再び活性化させるべきです。

 

 具体的には、細野氏を代表に据えて、維新の党の江田憲司、松野頼久両氏との交渉を始め、何からの形で融合を図るべきです。細野氏、江田氏、松野氏は政界再編を目指して、2013年に「既得権益を打破する会」を設立しています。ここでその人脈を活かすべきです。

 

 維新の党は、私の考えでは、「大阪ウィング」(橋下徹)、「日本維新の会国会議員団」(松野頼久)、「結いの党」(江田憲司)の3つのグループの寄り合い所帯です。この3つのグループのうち、松野氏と江田氏が率いるグループは国会議員たちばかりです。そうなると、選挙となれば、橋下氏個人の風頼み、しかも関西限定となると、やはり民主党の組織に頼る方が良いと考えるでしょう。結局、橋下氏対松野・江田氏ということになり、解党ということになるでしょう。橋下氏は安倍晋三氏を応援する「ゆ」党(野党でも与党でもない)ですから、自民党に対抗するための軸にはなりませんし、そのための新勢力に入るべきでもありません。大阪維新の会に戻ればよいのだろうと思います。そして、野党結集軸には「立憲主義」を守ることを掲げて戦いを挑むべきだと思います。

 

 私の同僚、中田安彦氏が書いていたことですが、細野氏は人脈が広く、自民党の二階俊博氏や野中広務氏の系列ともつながりが深いのだそうです。こうした人々を通じて、中国の最高指導者層とも関係を保っているということです。

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野中氏(真ん中)と細野氏

 また、細野氏自身はアメリカ留学などの経験はないですが、江田憲司氏は、ハーヴァード大学留学を経験し、留学時の寮のルームメイトはマイケル・フロマン米国通商代表であり、フロマンはオバマ大統領とハーヴァード大学のロースクールで一緒に法学雑誌の編集をしていた友人です。松野氏は、震災後に立ち上げられた、「国難対処のために行動する『民主・自民』中堅若手議員連合」(民自連)に参加し、マイケル・グリーンやリチャード・アーミテージとも会談を持っています。この民自連には、自民党からは菅義偉、河野太郎、岩屋毅、梶山弘志、平将明、民主党からは、樽床伸二(落選中)、松野頼久(維新の党)、長島昭久、笠浩史が参加していました。こうした人脈に関することは、拙著『アメリカ政治の秘密』『ハーヴァード大学の秘密』、そしてこのブログでも繰り返し書いてきました。是非お読みください。

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民事連の会合の様子

細野氏は、アメリカにとっても中国にとっても納得できる存在であると思いますし、ポスト安倍氏という点でも、有力候補になると思います。

 この文章は本日(2014年12月19日)の午後に書いていたのですが、細野氏が正式に党首選への立候補を表明したというニュースが入ってきました。新聞記事によると、細野氏は民主党の政権与党時代を「失敗」と断じ、先日の総選挙の結果も「完全なる敗北」であったと発言したそうです。また、「民主党の自主再建を実現する」と述べて、維新の党の江田氏からの新党設立への呼びかけに応じない考えを示したとのことです。
 
 この新聞記事は自民党の機関紙に等しい産経新聞(総選挙の結果予想を自民党単独で3分の2だと嬉々として報道した「をめでたき」自称・全国紙)の記事ですから、読者による読み解きが必要となります。民主党は今の状況では野党再編の軸にはなれません。議席数が多いだけのことです。ここで重要なのは、細野氏が現在の幹部たちに喧嘩を売りつつ、議員と党員の支持を幅広く集めようとしているところです。岡田氏。前原氏といった最高幹部連中に「あんたらの出る幕じゃない」と切り捨て、比例復活組の某N島議員のように、負け惜しみと強弁を繰り返す人に「俺たちは負けたんだ、お前は選挙に強いはずだったのにな。だからしばらく黙っとけよ」と切り付け、それでも、「民主党を再建します」と発言して、議員と党員たちの支持を得ようとしているのだと思います。

 
 維新の党は41議席を獲得しました。何の組織もなくて、橋下代表の人気や個々の努力で維新は現有議席をほぼ守りました。民主党は一部で安倍政権に対する批判票の受け皿にはなりましたが、その役割を共産党に奪われ、あれだけの組織がありながら勝ち切れませんでした。このような脆弱な野党第一党では、野党再編の軸にすらなれないというのが細野氏と周辺の考えなのでしょう。私は、いずれ野党再編はあると思いますが、それは2016年の参議院議員選挙のあたりではないかと思います。

 私の考えでは、民主党を残すが、55年体制時の社会党のようになって、自民党の一人勝ち、万年与党化を許すか、野党再編から野党再建に向けて動くか、今が重要なターニングポイントです。ここで、安倍自民党と「立憲主義」で対抗すべきだと思います。歴史を振り返ってみれば、大正時代に、「藩閥打破、憲政擁護」を掲げての大正デモクラシーがありました。立憲政友会(尾崎行雄)と立憲国民党(犬養毅)が桂太郎(長州出身)を倒すことに成功しました。ここで、民主党を残すかどうか、ということよりも、民主党を利用して、立憲主義を守り、「平成の時代の大正デモクラシー」を起こすべきだと私は考えます。そのためには国会論戦と選挙を通じて、自民党と会え晋三首相を追い詰めるしかありません。

 
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141219-00000583-san-pol

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

●「細野氏、出馬を正式表明 民主党政権は「失敗」、野党再編応じず」

 

産経新聞 1219()1936分配信

 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141219-00000583-san-pol

 

 民主党の細野豪志元幹事長は19日、国会内で記者会見を開き、党代表選(来年1月18日投開票)への出馬を正式に表明した。「民主党としての旗を掲げ直し、新民主党を再生していきたい」と決意を述べた。

 

 細野氏は会見で、安倍晋三政権で「立憲主義が危機的な状況に立たされている」と批判。「国民が選択できる政権の枠組みが風前のともしびだ。民主党の再生なくして政権交代の枠組みはない」と述べ、政権交代可能な政党にするための出馬だと強調した。

 

 細野氏は民主党政権を「失敗」と断じた上で、「再起を期した今回の衆院選も完全なる敗北だった」と語り、党の抜本的な改革の必要性に言及。野党再編については「自主再建を実現していきたい」と訴え、野党再編による新党を目指す維新の党の江田憲司共同代表らの呼びかけには応じない考えを示した。


●「民主党:代表選 細野・岡田両氏を軸 維新との関係が焦点」

 

毎日新聞 20141217日 2125分(最終更新 1217日 2300分)

http://mainichi.jp/select/news/20141218k0000m010106000c.html

 

 民主党が来月18日の代表選実施を決めたことを受け、各グループが相次いで会合を開くなど代表選に向けた動きが本格化した。17日に出馬を表明した細野豪志元幹事長は知名度があり、発信力強化への期待が高い。代表経験者で政策にも強い岡田克也代表代行を推す声も強く、両氏を軸に党内の多数派工作が活発化しそうだ。

 

 代表選は、党立て直しに向け、維新の党との関係を中心に野党再編への対応が焦点となる。新代表の任期は2017年9月末までのため、来春の統一地方選だけでなく、16年参院選も含めた「党の顔」にふさわしいかもテーマだ。ベテランか中堅・若手かの世代問題も注目を集める。

 

 細野氏は17日、野党再編について「まず民主党の旗を鮮明にした上で、その旗の下で(同調する)野党のメンバーの結集を目指すべきだ」と述べ、野党再編に意欲を示した。海江田万里代表が野党再編に慎重姿勢を崩さなかったことに、党内の一部には根強い不満がある。細野氏は現執行部への批判票も狙う。

 

 一方、現執行部に属する岡田氏は17日、代表選に名前が挙がっていることについて「光栄なことだ」と記者団に述べるにとどめた。細野氏と比べ、野党再編に慎重とされる。連合出身議員が多く、維新との再編に警戒感を抱く参院側を中心に支持を集めるとみられる。ただ、岡田氏は衆院選では維新とも選挙区調整を積極的に進めた。細野氏との違いはそれほど大きくないという見方もある。

 

 前原誠司元代表のグループは17日、東京都内で会合を開き、対応を協議した。前原氏は会合後、「まったく白紙だ」と述べた。ただ、出馬を促す声が複数あったと紹介し「どうすれば党が再生できるか仲間と相談し決めたい」とも語った。その後、前原氏は細野氏や長島昭久元副防衛相、松本剛明元外相と会談した。

 

 若手に推す声がある玉木雄一郎政調副会長は国会内で当選3回以下の若手議員の会合に出席した。玉木氏は記者団に「若手も党再生に中核的な役割を果たさなければならない」と述べた。馬淵澄夫選対委員長は記者団に「準備と覚悟はできているが、現在は白紙だ」と語った。

 

 このほか、大畠章宏前幹事長のグループや旧社会党系議員らで作るグループも相次いで会合を開いた。【高橋恵子、村尾哲】

 

 

●「細野豪志氏、民主党代表選への立候補を表明 野党再編に言及」

 

朝日新聞デジタル              |  執筆者:       奈良部健、安倍龍太郎

投稿日: 20141218 0912 JST 更新: 20141218 0912 JST

http://www.huffingtonpost.jp/2014/12/17/goshi-hosono-runs-for-dpj-leader_n_6344496.html

 

民主党は17日の両院議員総会で、代表選の日程を来年1月7日告示、18日投開票と決めた。代表選に向けた動きが本格化し、細野豪志元幹事長(43)が立候補を表明した。党内には岡田克也代表代行(61)を本命視する見方が強く、前原誠司元代表(52)も意欲を示す。党内の各グループは多数派工作に着手した。

 

細野氏は17日、記者団に「安倍政権に対抗しうる勢力がいまの国会にない。民主党の旗を鮮明にしたい」と立候補を表明した。19日に記者会見を開いて具体的な政策を表明する。それに先だって自らが率いる派閥「自誓会」の会合を国会内で開き、笠浩史元文部科学副大臣、階猛元総務政務官ら約10人が参加した。

 

今回の代表選は党再生を民主中心の「自主再建」で進めるのか、新党を含めた他の野党勢力との「再編」を目指すかが争点になる。再編派の細野氏は「結集できるメンバーが野党の中にいれば、結集を目指す」とも語った。

 

再編派からは、維新の党の橋下徹代表と近い前原氏もグループの所属議員約10人を集めた。夜には、自身に近い議員と協議。周辺は「前原氏は立候補の意思があるが、グループ内にも異論がある」と述べ、立候補できるかどうかは不透明だ。

 

一方、自主再建派の筆頭格と目される岡田氏はこの日、記者団から候補として名前があがっていることを問われ「光栄なことだ」と述べるにとどめた。重鎮議員は「自主再建派はみんな岡田氏だろう。数が多い」と語り、再建派の議員たちが推すとみている。

 

大畠章宏前幹事長のグループ9人は国会内で会合を開き、自主再建を目指す代表を推す考えで一致した。ただ、「(代表経験者ら)昔の顔ばかりではなく、いろんな人が出た方がいい」(篠原孝衆院議員)との意見も出た。岡田氏が衆院選で維新の党と候補者の一本化を進めたことから、閣僚経験者からは「失敗に終わり、その戦犯だ」との声もある。

 

一方、党中央代表選挙管理委員会は、代表選立候補には国会議員20人以上の推薦が必要だと決めた。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)