アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 
今回のブログは前回のものと合わせてお読みください。
 

安倍晋三政権下で、いよいよ、武器輸出が緩和され、日本の武器が世界中にばらまかれようとしています。正確には、民主党後半の菅直人政権、野田佳彦政権下で、武器輸出三原則の緩和は既に進められていました。これを進めてきた人物が、政策研究大学院大学学長の白石隆です。

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白石隆

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 政策研究大学院大学


白石隆は、京都大学の教授として、そして、アメリカのコーネル大学の政治学者ベネディクト・アンダーソンの弟子として知られていました。(博士号をコーネル大学で取得しています)アンダーソンは『創造の共同体(
Imagined Communities)』という著作を出していますが、日本語版は白石隆が担当しています。アンダーソンについては、『ベネディクト・アンダーソン、グローバリゼーションを語る』(光文社新書、2007年)が分かりやすいと思いますので、是非お読みください。こんな立派な先生の弟子がどうしてこうも簡単に劣化してしまうのか、不思議に思ってしまう程です。

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ベネディクト・アンダーソン
 
 


白石隆と関係が深い人物がマサチューセッツ工科大学教授(
MIT)のリチャード・サミュエルズです。サミュエルズについて、また彼と白石隆の関係については、拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、2012年)に書きました。詳しく知りたい方は、是非お読みください。サミュエルズは日本の財界や産業界の研究、特に軍事産業の研究で知られています。
 

 

白石が学長をしている政策研究大学院大学という何とも奇妙な名前の学校は六本木にあります。この近くには、赤坂プレスセンターと呼ばれる、米軍の施設(ヘリポート)や星条旗新聞社(米軍の新聞)が存在しています。また、米国大使館も近くに存在します。以下のウェブサイトに詳しく書かれています。日本中の米軍基地にはアメリカの関係者(民間人でも)はノーヴィザやパスポートのチェックなしで入れ、そこからヘリコプターでこの東京のど真ん中にやってくるのだそうです。政策研究大学院大学がこの場所に作られたのは、この学校がアメリカの威光で作られたものであることを示しています。


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赤坂プレスセンター

・渋谷民主商工会のウェブサイト:http://shibumin.jp/news/weblog_1366190198.html

NAVERまとめサイト:http://matome.naver.jp/odai/2138950837044500301

 

サミュエルズは、2011年3月11日に発生した東日本大震災後の日本の研究が彼の今のテーマのようで、よく日本を訪問しているようです、その際に政策研究大学院大学にも立ち寄っているようです。以下に写真を掲載します。

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 政策研究大学院大学の建物の前に立つリチャード・サミュエルズ

 

下の記事にあるように、日本政府は政府開発援助(ODA)の一環で武器を供与しようとしています。政府開発援助というと発展途上国に道路や橋、学校や病院を建設して現地の人々に喜ばれている映像などを見たことがあると思います。しかし、ODAの実態は、日本政府が予算を投入して、日本の企業に仕事をさせるためのものです。

 

日本政府は、「われわれ国民の税金」で武器を日本企業から買い、それを「援助物資」として発展途上国に渡そうとしています。もっと問題だと思うのは、その際に、日本政府の意向ではなく、アメリカ政府の意向によって「この国にどれだけ援助しろ」と言われて、それに唯々諾々と従わざるを得なくなるということです。

 

 その際に、アメリカが「俺が口を利いてやったからな」ということで恩を着せておいて、その武器が使われたことで起こる怒りや反感は日本が引き受けねばならないということです。私たちは自分たちでお金を払って、そうした反感や怒り、憎悪を買おうとしているのです。

 

日本を取り巻く状況について、危機感を煽りながら、アメリカに有利になるようにうまく利用しようとする、そのシナリオを書き、演出をしているのがサミュエルズであり、日本側の舞台監督が白石隆なのだと私は思います。この二人の動きから目を離すことはできません。そして、彼らが暗躍すればするほど、日本の未来はどんどん暗いものになっていきます。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「武器購入国に資金援助 途上国向け制度検討」

 

東京新聞201511 朝刊

http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2015010102000127.html

 

 防衛省が、日本の防衛関連企業から武器を購入した開発途上国などを対象とした援助制度の創設を検討していることが分かった。武器購入資金を低金利で貸し出すほか、政府自ら武器を買い取り、相手国に贈与する案も出ている。政府開発援助(ODA)とは別の枠組みとする方針だ。

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 援助制度は、武器輸出を原則認める防衛装備移転三原則決定を受け、輸出促進策の一環として検討されている。日本の防衛関連企業向けの資金援助や、相手国への訓練・整備支援なども合わせて検討している。

 

 援助については、有償援助を軸に検討を進めている。国が出資して特殊法人を新たに設立。この特殊法人が、金融市場から資金を調達し、武器購入に必要な資金を低利で相手国などに貸し出すという仕組みだ。

 

 さらに日本の防衛関連企業が製造した武器を政府自らが買い取り、途上国などに贈与する無償援助制度の創設も防衛省では議論。これは、他国の軍や軍関連機関に自衛官を派遣し、人道支援や災害救援、地雷や不発弾の処理などを訓練する防衛省の「能力構築支援制度」の拡充案が有力だ。国の一般会計の事業として実施しているこの事業の予算を大幅に増やして贈与資金に充てるという。

 

 政府は一月にもODAの原則を定めた大綱を改定する方針だ。新大綱(開発協力大綱)では、他国軍への支援について「実質的意義に着目」などとし、災害援助など非軍事目的なら容認しようとしている。しかし軍事目的の援助は、従来同様禁止しており、防衛省ではODAの枠外での創設を検討している。

 

【解説】軍事用途版ODAに

 昨年四月に決定された新三原則は、日本の安全保障に資する場合などに限定して武器輸出を認める、と定めている。しかし、防衛省が検討する援助制度から浮かび上がるのは、日本の安全保障強化のために、国が武器輸出に積極関与していこうという姿勢だ。現行とは別枠ながら軍事用途版ODAともいえる制度の実現は、歯止めなき軍事支援への道を開きかねず、日本の平和外交変質の象徴となりそうだ。

 

 制度の念頭にあるのは、南シナ海をめぐり中国との緊張が続く東南アジア諸国連合(ASEAN)だ。「積極的平和主義」を掲げた安倍晋三首相は昨年五月、シンガポールで講演し、ASEAN諸国に対し、武器を含めた海洋安全保障分野での支援を公約。防衛省もアジア太平洋地域などへの協力を課題として掲げている。

 

 援助制度は、軍事的用途を禁じた日本のODA政策を事実上転換させることにもなり、戦後日本が築き上げてきた平和国家というブランドの崩壊にもつながりかねない。しかし防衛省では「武器輸出は外交の手段として有益だ」(幹部)として、具体策を今夏までにまとめあげようとしている。国際社会に日本は今後何を訴えていくのか。理念なきまま、具体策を急ぐ姿勢に対しては、懐疑的な意見も少なくない。

 

 国際情勢にも詳しいジャーナリストの青木理氏は「日本は戦争ができる国になっていこうとしている。『国のため』に推進される武器輸出が、果たして『国民のため』になるのだろうか」と警鐘を鳴らしている。 (望月衣塑子)

 

 

●「防衛省が武器輸出の支援策で初会合、資金援助など検討」

 

ロイター通信 2014 12 18

http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0JW0LY20141218

 

[東京 18日 ロイター] - 防衛省は18日、軍事装備品の輸出を後押しする政府支援策の検討を開始した。輸出を促進するための資金援助制度のほか、輸出後の整備支援のあり方などを議論する。

 

左藤章防衛副大臣は同日開いた有識者会議の初会合(座長・白石隆政策研究大学院大学学長)で、「どういう形で政府が装備移転に関与していくことが効果的、適切であるか検討する必要がある」とあいさつ。有識者からは「輸出相手が国であることから、国が主体的に進めていくアクティブな制度設計が必要」などの意見が出た。

 

会合は月1回程度のペースで開催。海外の事例を参考にしながら、輸出案件の発掘のほか、日本から武器を調達する国や、他国との共同開発に乗り出す日本メーカーへの資金援助、輸出した装備の使用訓練や整備支援の仕組みなどを検討する見通しだ。来夏までに提言を取りまとめ、防衛省は具体策を2016年度予算要求に盛り込みたい考え。

 

日本は4月に武器の禁輸政策を見直し、自国の安全保障に資するなどの一定条件を満たせば輸出を許可する防衛装備移転三原則を導入した。

 

(久保信博)

 

 

●武器輸出新原則を閣議決定=条件付き容認へ転換

 

時事通信 2014年4月1日

http://news.yahoo.co.jp/pickup/6112138

 

 政府は1日午前の閣議で、武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」を決定した。政府は1976年以来、武器や関連技術の海外移転を原則禁じてきたが、新原則は条件を満たせば認める内容で、日本の安全保障政策の転機となる。(時事通信)

 

 

●「毎日フォーラム・ファイル:「武器輸出三原則」見直し論が再燃 前原政調会長が口火 国際共同開発の潮流を受け」

 

毎日新聞 20111011

http://mainichi.jp/feature/news/20111005org00m010037000c8.html

 

 これを受けて、防衛省は有識者による「防衛生産・技術基盤研究会」座長・白石隆政策研究大学院大学学長)を昨年12月発足。今年7月にまとめた中間報告で「従来の国産か輸入かという二者択一論ではなく、国際共同開発・生産が選択できる枠組みが不可欠だ」と、武器輸出三原則の緩和を提起している。

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)