古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2014年01月









 古村治彦です。



 私は最近、昭和史にも関心を持ち、それに関する本を読むようになりました。その中で、清沢冽の『暗黒日記』『清沢冽評論集』(ともに岩波文庫)を手にし、読む機会を得ました。これら2冊の本は本当に素晴らしい示唆を与えてくれました。



 清沢冽は1890年に長野県で生まれ、小学校を卒業後、内村鑑三の弟子、井口喜源治が開いていた「研成義塾」で学びました。そして、1906年に渡米し、苦学しながらタコマ・ハイスクール、ウィットウォース・カレッジで学びました。


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1918年に帰国し、中外商業新報社(現在の日本経済新聞社)、朝日新聞社に勤務した。1929年には朝日新聞を辞し、外交評論家として独立しました。その後は数多くの著作を著し、外務省の顧問なども務めました。1945年5月、肺炎をこじらせ55歳で急死してしまいました。彼の戦時中の日記は『暗黒日記』として出版されました。



 『清沢冽評論集』の編者山本義彦は、清沢冽の思想の特長を「(1)「心的態度」としての自由主義、中庸主義、(2)教育の国家統制に反対し、画一主義の排除と多元主義の擁護、(3)国際平和の実現をめざす外交論、(4)軍部の神がかり的、猪突猛進的で非科学的な戦争指導への否定、これに追従する思想家、ジャーナリストへの厳しい批判」としてまとめています。




 私は、清沢冽が1929年に発表した「甘粕と大杉の対話」に注目したいと思います。この文章を発表したことで、清沢冽は朝日新聞を追われ、外交評論家として独立しました。この文章は、獄中にいる甘粕正彦の許へ幽霊となった大杉栄が現れて対話を行うというものです。この二人のやり取りは清沢の創造の産物です。



 この対話の中で、私に最もなるほど、その通りだと思わせた一節をここで引用したいと思います。これは大杉の台詞です。



「今の俺は世界の思想を別けるに、右と左に区別しないで右と左を一緒にした極端派(エキストリーミスト)と、これに対する自由派(リベラル)とにする。そしてこの極端派の中には君ら軍人だの警官だのと一緒に生前の大杉やいわゆる戦闘的主義者とを編入する。この事実の特長は、持って生れた争闘性乃至は争闘を主とした教育の影響から、自分が闘うと同時に、他人をも闘わしたい点にある」



 私は、この「極端派(エキストリーミスト、Extremist)対自由派(リベラル、Liberal)」

という分類に触れて、自分の抱えていたもやもやをある程度晴らすことができたと感じました。私は、リベラルという言葉の定義の難しさもあって、今でもリベラルとは何かということを考えています。答えが出るかはわかりません。



 しかし、攻撃的な右と左対そうではない勢力という分け方にはある程度納得ができます。そして、右と左が極端派として一緒になり、リベラルと対峙するという構図を清沢は私に与えてくれました。



 私は、この構図は日本政治を理解する上で非常に重要だと思います。現在の状況に完全に当てはまるものではなくても、大きな示唆を与えてくれるものだと思います。



 現在の政治状況は、自民党が大きな勢力を持ち、公明党と共に与党となっています。野党側には元気がなく、共産党がある程度の活力を保っている状況です。日本維新の会やみんなの党は、安倍晋三首相が「責任野党」と呼んだように、自民党に大変強力的な姿勢を示しています。ここにリベラルな野党はいません。



これは2012年の衆議院銀選挙でリベラル政党が軒並み壊滅してしまったからです。この「リベラルの殲滅」を仕組んだのは、マイケル・グリーンであることは間違いのないところです。



 最近の選挙で安定して議席を確保し、微増させているのは共産党です。自民党に対する批判票を吸収する形で党勢を少しずつですが拡大させています。しかし、共産党が過半数を握って政権を掌握するということはないでしょう。



 ここで奇妙な「呉越同舟」「共存共栄」関係が生まれます。自民党がどんどん大きくなる。それによって、格差は拡大し、人々の生活は苦しくなります。すると、批判票が共産党に流れる。そして、自共の間には奇妙な相互依存関係ができます。自民党にしてみれば、批判票が共産党に流れることで、強力なリベラル野党の出現を防いでくれることになります。



 そして、ここで面白いことになるのですが、自共は共にリベラルの出現を阻止しようとして奇妙なランデブーを行うのです。その好例が今回の東京都知事選挙(2014年2勝ち9日投票)です。



 安倍晋三首相には国内に強力な反対勢力を持たないという状態になりました。私の考えでは、日本国内で安倍氏に少し動揺を与えられる反対勢力として、アメリカ大使館にいるキャロライン・ケネディ米駐日大使がいて、そのリベラル・カトリック人脈から、今回、細川護煕氏が突然、東京都知事選挙に出馬してきたと考えています。



 今話題の都知事選について考えてみます。舛添要一氏、田母神俊雄氏、宇都宮健児氏、細川護煕氏が有力な候補者となっています。自民党と公明党は舛添氏、日本維新の会の石原慎太郎系と自民党の一部は田母神氏、共産党は宇都宮氏、民主党は細川氏をそれぞれ支援しています。



 私は最初、宇都宮氏と細川氏が一本化してどちらかがどちらかの支援に回るくらいのことをしなければ、舛添氏が楽々と当選してしまうことになると考えていました。そうなるのなら、当選の可能性が高い細川氏が統一戦線の候補者となるべきだと考えました。しかし、細川氏も宇都宮氏も一本化の考えはないと言明されましたから、一本化がないのは残念だがしょうがないと考えあした。



 宇都宮氏陣営は、細川氏の出馬に関して文書をPDFファイル形式で発表していたり、細川氏の出馬が遅かったことを捉えて「後出しじゃんけんだ」という全く持って的外れな批判をしたり、と一番当選の可能性が高い舛添氏ではなく、細川氏を攻撃してきました。



 私は、主敵は誰なのか、自民党政権に大きなショックを与えるのは、舛添氏の落選ではないのかと考え、どうして宇都宮氏陣営は舛添氏に対して同じほどの熱心さで対峙しないのかと不思議で仕方がありませんでした。



 しかし、私は清沢の「極端派と自由派」という分け方を知り、合点がいきました。この都知事選でも「自共の共存共栄のためのリベラル潰し」が行われているのです。宇都宮氏個人は当選に向けて必死で選挙活動を展開されているでしょう、粘り強さが身上の方で、それこそ命がけの活動をなさっていると思います。しかし、彼の支援者や共産党はどうでしょう。



 自分たちの商売敵になりそうなリベラルの代表である細川氏を攻撃し、自共の安定した相互依存関係をこれからも維持していこうという戦略を取っているように見えます。自民党や安倍氏の圧政が続けば続くほど、彼らにとっては安定した支持や支援を得られるということで、これは「合理的な選択(ラショナル・チョイス)」と言えるでしょう。



 自民党にしてみれば、自分たちが動かなくても、宇都宮氏陣営が細川氏陣営を攻撃し、票を奪ってくれるのですからこんなに楽なことはありません。



 二正面作戦を強いられて、細川氏は苦戦するでしょう。そして、舛添氏が当選してしまうでしょう。そうなれば、自民党の圧政はしばらく続くことになります。これは国民の利益にかなうこととはとても言えません。



 「地獄への道は善意で舗装されている」という言葉があります。マルクスが『資本論』の中で使った言葉です。私はこの文章を書きながら、この言葉を思い出しました。



(終わり)







 


 

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 古村治彦です。

 今回は、2014年3月1日に開催される副島隆彦を囲む会・定例会を皆さんにお知らせ申し上げます。この定例会では、私も『ハーヴァード大学の秘密 日本人が知らない世界一の名門の裏側』(古村治彦著、PHP研究所、2014年1月)の内容をお話し、その後、鼎談にも出席する予定です。詳しくは以下をお読みくださいませ。

 是非、拙著『アメリカ政治の秘密』『ハーヴァード大学の秘密』をお読みいただき、ご参加いただければ幸いです。本の内容から少し踏み込んだお話、本の原稿の最終提出後に起きたが、是非本に入れたかったお話もしていく予定です。

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どうぞよろしくお願い申し上げます。

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(1)2014年3月1日(土)開催予定の定例会「キャロライン・ケネディ駐日大使着任が日本政治中枢に与えている衝撃」(仮題、時局講演を含む定例会)のご案内

※上記3/1(土)の定例会のお申込みはこちらからお願いします↓
http://soejima.to/cgi-bin/kouen/kouen.html

(1)2014年3月1日(土)開催予定の定例会『キャロライン・ケネディ駐日大使着任が日本政治中枢に与えている衝撃』(仮題、時局講演を含む定例会)のご案内

 昨年、孫崎享(まごさきうける)先生をお招きして開催した講演DVDも、まだまだご好評をいただいております。こちらもよろしくお願いします。

※オリジナル講演DVDのご注文はこちらから↓
http://www.snsi.jp/shops/index#dvd

 来る3月1日(土)に、いつもの御茶ノ水の全電通ホールで開催予定の当「囲む会」の定例会のご案内です。

 今回は時局講演会です。年末12月26日に安倍首相が靖国神社を就任一年目にして「強行参拝」し、アメリカ・オバマ政権は慰霊の「失望」の意を表明、さらに中韓のみならず、他の東南アジア諸国からも懸念を表明されました。

この参拝への異例の望表明から読み解けるのは、去る11月に着任したキャロライン・ケネディ駐日大使の存在感です。

今回の定例会では安倍政権の一年を振り返ると共に、安倍政権が強行突破に踏み切った背景となる国内の政治的勢力図の再編、そして、海外の日本への反応について、取り上げます。

 今回の定例会は3部構成です。13:00開演で16:30終了です。時間は延長する場合もあります。

第一部 古村治彦研究員出版記念講演『ハーヴァード大学の秘密とはなにか』(仮)(60分)
第二部 副島隆彦SNSI所長による「カルト・オブ・ヤスクニの再来:安倍支持層のネトウヨ、近視眼の中国・韓国嫌いの言論に反論する」(仮)(75分)
第三部 副島・古村・中田三者による鼎談(残りの時間)

 ケネディ駐日大使が日本の「本当の支配層」と「成り上がりの支配層」の間に楔を打ち込んだ感はあります。この辺の事情について、スライドを駆使し、ビジュアル化して浮き彫りになることを目指す講演会です。別に開催している会員の会「副島隆彦のケンカ道場」で討論されたことも踏まえての講演会となります。よろしくお願いします。

※上記定例会のお申込みは、こちらからお願いします↓
http://soejima.to/cgi-bin/kouen/kouen.html 

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(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12


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古村治彦
PHP研究所
2014-01-21




 古村治彦です。



 今回は、2012年12月28日に旧版の「古村治彦の酔生夢死日記」に掲載した文章を再掲します。



 最近、インターネットで未来の党、嘉田由紀子滋賀県知事、飯田哲也氏、そして田中秀征氏といった言葉を目にしたので、「自分も何か書いていたな」と思い、見返してみたところ、この文章を見つけました。


 そして、政治運動、選挙運動とは攪乱要員、傭員、要因との闘いであるということを最近、改めて認識しております。都知事選挙で選挙運動を行っている細川護煕候補の陣営では選挙対策本部から、責任者であった馬渡氏、ネット担当であった上杉氏、共に鳩山邦夫代議士の元秘書という経歴を持つ人たちですが、彼らが退いたということはまさにこのことを示しています。

 今でも説得力があるのかどうか、皆様にご判断いただければ幸いです。



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 2012年12月26日、国会では安倍晋三自民党総裁が総理大臣に指名されました。そして、安倍内閣が発足しました。この同じ時期、日本未来の党は、党内不和から分裂の道を選びました。本日、日本未来の党の党首(だった)嘉田由紀子滋賀県知事と、小沢一郎代議士が滋賀県大津市で共同記者会見を行うということです。



(記事貼り付けはじめ)



●「嘉田氏ら「名」を、小沢氏「実」取る…未来分裂」



読売新聞電子版 2012年12月28日



 日本未来の党は27日、党名を「生活の党」に変え、代表を嘉田由紀子滋賀県知事から森裕子参院議員へと変更することを総務相に届け出た。



 「生活の党」は小沢一郎衆院議員ら旧「国民の生活が第一」(現在は国会議員15人)のメンバーで構成される見通しで、嘉田氏と嘉田氏に近い阿部知子衆院議員らは離党することになり、分裂が決まった。嘉田氏らは政治団体として党名を引き継ぐ方向だが、結党1か月にして国会から未来の党の名は消えた。



 小沢氏と嘉田氏は28日に大津市内で共同記者会見を行い、党分裂の経緯などを正式に説明する。



 当初は小沢氏らが離党するとの観測もあったが、離党して新党を結成した場合に受け取れる政党交付金は、未来の党が受け取る予定だった約8億6500万円(現時点での勢力による試算)と比べ、大幅な減額となる。小沢氏に近い議員が「衆院選の選挙資金の多くは、旧『国民の生活が第一』が負担した」などと語る一方、嘉田氏側は、日本未来の党という党名の存続にこだわり、党の「割れ方」を巡る騒動を「カネ目当てと思われたくない」と周辺に語っていた。これが、嘉田氏らが「名」を取り、政党交付金という「実」を小沢氏らが取る格好の決着になったものとみられている。(201212280529 読売新聞)



(貼り付け終わり)



 日本未来の党は名前を「生活の党」にし、党首を嘉田由紀子知事から森裕子参議院議員に変更することになりました。離党するのは、嘉田由紀子知事と阿部知子衆議院議員で、党名は嘉田知事と阿部代議士が引き継ぐということになりました。新しい「日本未来の党」は、政党要件を満たさない、政治団体ということになります。



 2012年11月27日、嘉田由紀子滋賀県知事が新党「日本未来の党」結成を発表し、翌日の11月28日に選管に届け出を行い、日本政治の世界に「日本未来の党」が出現しました。小沢一郎氏が代表をしていた「国民の生活が第一」がすぐに合流を発表しました。また、新党を結成していた亀井静香氏たちも合流し、選挙前に衆議院議員61名、参議院議員8名の政党が誕生しました。私は、この日本未来の党結成時、「どうしてこの時期に、嘉田滋賀県知事が新党を結成し、それに小沢氏たちが合流するのか」という疑問を持ち、「違和感」を持ちました。そして、そのことをブログでも書きました。



 12月16日に実施された総選挙で、日本未来の党は大敗を喫し、所属衆議院議員は9名という結果になりました。その後、党内で人事をめぐり、嘉田代表と所属国会議員たちとの間で対立が起こり、昨日、日本未来の党から嘉田知事と阿部議員が離党ということになりました。



 思えば、2009年の民主党(と連立相手である社会民主党と国民新党)による政権交代は約3年で変質し、民主党は第二自民党と化し、そして、今回、自民党が総選挙で大勝利を収めることになりました。そこには、有権者の深い失望がありました。そして、強い怒りがありました。



 民主党の変質から、小沢一郎氏と小沢氏を支持する議員の離党、国民の生活が第一の結党、日本未来の党への合流、そして分裂という一連の「ここは決起せよ」「勝負を挑め」という決戦主義、突撃主義がありました。その裏側に「決起に参加せぬ卑怯者、臆病者」という罵倒がありました。また、今回の日本未来の党の分裂に関しては、嘉田知事や小沢代議士、森裕子参院議員に対して、罵詈雑言が投げつけられました。



 こうした一連の動き、日本人の短気さを示していると思います。「早く理想の状態に辿り着きたい」「早く結果を出してほしい」という焦燥が人々を駆り立て、怒りの感情を湧き起こさせ、罵詈雑言を吐いている、このように感じます。



 映画『硫黄島からの手紙』の中で、徹底抗戦で1日でも長く島を死守するという意図を持つ栗林忠道中将に対し、その他の多くの将官が決戦主義を主張し、自決、総攻撃、玉砕の道を選んでいきます。これは日本人の潔さを示すエピソードでありますが、同時に日本人の短気さも示しています。



 また、「日本にとっては自民党がいちばん良いのさ」「何をやっても変わらない」「日本国民は馬鹿ばかりだからな」という諦観と蔑みの感情も、今回噴出しました。自民党を支持している人々からも、それ以外を支持している人たちからもそのような声が聞かれました。これもまた、日本人の短気さ(=一度うまくいかなかったら「潔く」諦める)を示していると思います。



 民主党の変質から未来の党の分裂までの間、大変な罵詈雑言が聞かれました。その対象は、嘉田知事であったり、小沢議員であったり、森議員であったりと様々ですが、どうも見ていると、罵倒している人たちが一番罵倒したいのは、その人たち自身であるように思います。「信じた自分が馬鹿だった」「裏切られた」という気持ちの噴出であると私は見ています。それもこの3年ほどで「理想が実現されなかった」「結果が出なかった」ことに対する焦燥と失望が原因であると考えます。



 この日本人の短気さについては、山本七平がイザヤ・ペンダサンという名前で書いたベストセラー『日本人とユダヤ人』の中でも指摘されていることです。日本人毎年「キャンペーン型稲作農業」で鍛えられ、締切から逆算して行動するという訓練を受けてきたが、遊牧民たちはまた違う時間の流れで生きた、というのが山本七平の書いていることです。そして、日本人は「待つ」ということが苦手で、待つとなるとイライラして待つということになるのだと山本七平は書いています。



 私たちが陥っているのは、まさにこのような状態なのではないかと私は考えます。日本人特有の短気さゆえに、民主党による政権交代から以降の出来事に大きく失望し、怒り、諦めるというようなことになっているのではないかと思います。



 しかし、このような怒りや諦観をいつまでも引きずる訳にはいきません。私は、アメリカ生まれのユダヤ人政治学者マイケル・ウォルツァーの『正義の領分』(山口晃訳、而立書房、1999年)に所収されている「我が身を振り返って―私の特定主義―」という文章を思い出します。



 ウォルツァーはこの文章の中で、ユダヤ人のものの考え方を書いています。その中で、次のような文を書いています。



 「『指おり数え』『終わりを強行する』人々は、繰り返し私たちの人民に災厄をもたらしてきた。それゆえに、数えることと強行することの両方に対してラビの政治があるのである」



 「政治的解放、社会建設、国民形成、立法といった仕事、これらはすべて永続するものである。文字通り継続し、終わることなく更新される」



 「私たちは、最後の詩を書くことを期待すべきではないように、最後の法を制定したり、最後の国家を建設することを期待すべきではない」



 ユダヤ人に対しては、毀誉褒貶様々ありますが、歴史を見れば、自分たちの国家建設のために千年単位かけ、その間にユダ人内部でも激しい対立があったり、迫害にあったりと様々な出来事が起きています。しかし、ユダヤ人は民族として生き延びてきました。迫害や失敗の後に自暴自棄になることなく、また同じことを繰り返していったということが、ウォルツァーの言葉から読み取れます。また、考えや意見の多様性を大事にしていること、これもまた重要なのだろうと思います。このことについては今回は触れません。



 私たちは「決戦主義「突撃主義」で短兵急に結果を求めるのではなく、同じことを繰り返していく、それで良いのだ、と思うことから始めるべきではないかと思います。そこには華々しさはなく、長距離走のように苦しいことばかりがあると思います。しかし、それでも繰り返しをただ繰り返していく。うまくいかなかったら、また最初からやっていく、ということを「気長」にやっていくしかないのではないかと思います。



(終わり)





(終わり)
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 古村治彦です。


 昨日、共同通信で、そして今朝の東京新聞で報道された、「アメリカからのプルトニウム返還要求」というニュースについて考えたことを書いていきたいと思います。


 このプルトニウム返還に関して、怒りや戸惑いを示す意見が起きています。「世界で最も重要な二国間関係である日米関係を揺るがすものだ」「オバマ政権だからこういうことが起きるのだ」という主張もあります。


 確かにオバマ政権になってから「核セキュリティー」が重視され、核兵器に転用可能な物質の管理を厳しくする動きになっているようです。しかし、これはアメリカ側か見れば、自国の世界の安全と安定のために合理的な動きと言えます。リスクを小さくするのは合理的な動きです。


 「日本がテロリストにプルトニウムを横流しできる訳がない」「IAEAの厳しい監視の下にあるではないか」という反発もあると思います。しかし、日本だから特別扱いする、とか日本の管理体制を絶対的に信頼するという選択肢はアメリカにはないようです。


 このニュースが出たこの時期は、安倍首相が靖国参拝からわずか1カ月後、ダヴォス会議で現在の日中関係を第一次世界大戦前の英独関係に譬えて数日後、オバマ大統領による一般教書演説を直前に控えています。日本では国会が始まり、都知事選の選挙活動の真っ只中です。


 これらのことと結び付けられることは当然ながらニュースソースたちは分かって話をしたと思われます。そのことの意味を考えてみなければなりません。


 言い切ってしまえば、「安倍政権への不信」が根底にあると思います。ほっておくと勝手に「核武装」に向けた動きにまで出るのではないか、日本は数カ月で不完全ではあるが核兵器を作る物理的、人的、知的能力を有している、最悪のシナリオでそれを中国に向けて使うのではないかという懸念をアメリカが持つのは仕方がないことだと思います。


荒唐無稽であることはその通りなんですが、このように考えてもおかしくないほど、安倍政権への不信は高まっているのだと思います。外国から見てみれば、日本の国民一人一人のことは見えませんが、当たり前のことですが、指導者たちの動きはよく見えます。


 2014年に入って、政治的にも経済的にも安倍政権に対する包囲網ができつつあるように感じます。まるで太平洋戦争の直前の時期のように。


(新聞記事転載貼り付けはじめ)


●「米、日本にプルトニウム返還要求 300キロ、核兵器50発分」


2014年1月26日付 共同通信

http://www.47news.jp/CN/201401/CN2014012601001661.html


 核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが26日、分かった。


 このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約300キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器40~50発分程度に相当する。


 日本側ではこれまで「高速炉の研究に必要」と返還に反対する声も強かったが、米国の度重なる要求に折れて昨年から日米間で返還の可能性を探る協議が本格化している。


2014/01/26 19:59   【共同通信】



●研究用プルトニウム300キロ 米、日本に返還要求


2014年1月27日付 東京新聞

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014012702000135.html


 核物質や原子力施設を防護・保全する「核セキュリティー」を重視するオバマ米政権が日本政府に対し、冷戦時代に米国などが研究用として日本に提供した核物質プルトニウムの返還を求めていることが分かった。複数の日米両政府関係者が明らかにした。


 このプルトニウムは茨城県東海村の高速炉臨界実験装置(FCA)で使う核燃料用の約三百キロ。高濃度で軍事利用に適した「兵器級プルトニウム」が大半を占め、単純計算で核兵器四十~五十発分に相当する。


 日本側ではこれまで「高速炉の研究に必要」と返還に反対する声も強かったが、米国の度重なる要求に折れて昨年から日米間で返還の可能性を探る協議が本格化している。米側は三月にオランダで開かれる「第三回核安全保障サミット」を機に返還合意をまとめたい考えだ。


 オバマ政権は核テロ阻止の観点から、兵器転用可能な核物質量の「最少化」を提唱。二〇一〇年に初の核安保サミットを主宰した前後から、東海村にある日本原子力研究開発機構のFCA用のプルトニウム三百三十一キロ(うち核分裂性は二百九十三キロ)を問題視し、日本に返還を求めてきた。


 英国産のプルトニウムも含まれているため、米国は英国の理解を得た上で日本から米国への「第三国移転」を図りたい考え。外交筋によると、日米英三カ国間でも政策調整が進められている。


 文部科学省などはこれまで「研究に必要。他では取れない良いデータが取れる」と主張。日本は原発の使用済み核燃料の再処理によって他にも約四十四トンのプルトニウムを保有するが、「研究用のものと比べ不純物が多く、高速炉研究には使えない」(日本の政府系専門家)という。


 東京電力福島第一原発事故後、日本のプルトニウム消費の見通しが立たず、米政府は日本側に懸念を伝達していた。FCAは高速炉の特性を調べるため造られ一九六七年に初臨界した。


(新聞記事転載貼り付け終わり)


(終わり)





 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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 古村治彦です。


 今回は、2014年1月18日に行われたオバマ大統領の演説について書きたいと思います。この演説でオバマ大統領は、2014年を現状打破の年(Breakthrough Year)とする宣言しています。


 そのために、給料の良い仕事(雇用)の創出を行うとしています。そのためハイテク製造業に力を注ぎ、ノースカロライナ州に企業、大学、連邦政府による研究所を創設するとしています。


 そして、オバマ大統領は議会が適切な行動をとらない場合は、自分自身が行動をすると明言しています。「Where Congress isn’t acting, I’ll act on my own to put opportunity within reach for anyone who’s willing to work for it」という部分です。共和党は連邦政府の支出となるオバマ大統領のこのような動きには反対するでしょうが、オバマ大統領は断固として、雇用創出のために製造業に力を入れると言っています。


 オバマ大統領は就任当初、グリーンニューディールを打ち出しましたが、実際にはうまくいきませんでした。今回はより重厚長大産業の方に力を注ぐようです。


 オバマ大統領は次の大統領選挙には出られませんから、そこまで力を入れてやらなくても良い訳ですが(建前ではそんなことはないのですが)、外交面で何もやっていないに等しいので、せめて経済面で何とかと思ってのことでしょう。


 アメリカとしては雇用統計の数字をよくしないと、金融緩和をずっと続けていかなければならず、それにも限界があります。ですから、何とか雇用統計の数字を改善したい、FRBの議長も交代することだしということもあるでしょう。


 ここで日本は少し困ったことになります。アメリカが製造業に今から力を入れてもどこまで脅威になるか分かりませんが、オバマ大統領が本気になって製造業を何とかしたいということになると、やはり輸出にドライブがかかるということになって、円高ドル安ということになるでしょう。


 今のアベノミクスは円安による株高で支えられているようなものですが、これが円高になると頓挫してしまうことになります。更に、消費税増税ということになれば、景気に冷水を浴びせることになります。そうなると、安倍首相の進退問題にまで発展しかねません。最近では、ルー米財務長官の円安牽制発言もありました。


 アメリカ側としては、経済の面から安倍首相の生殺与奪の権を握っていると言えます。アメリカが本気で製造業で何とかとなると、安倍首相の退任の時期もそれだけ近づく可能性が高くなる、と言えると思います。

 2014年1月27日に東京証券取引所での取引が開始され、円高などの要因もあり、日経平均が400円以上の下げを記録しました。このことは私が書いたことの傍証になると思います。


(貼り付けはじめ)


Obama Believes 2014 'Can Be A Breakthrough Year For America'


AP  Posted: 01/18/2014 9:27 am EST

http://www.huffingtonpost.com/2014/01/18/obama-2014_n_4622789.html?ncid=edlinkusaolp00000003%20-#_=1390133357784id=twitter-widget-0lang=enscreen_name=HuffPostPolshow_count=falseshow_screen_name=falsesize=m


WASHINGTON (AP) — President Barack Obama says he believes 2014 can be a breakthrough year for the country.


In his weekly radio and Internet address, Obama says the U.S. is primed to bring back jobs lost in the recession or to overseas competitors. But he says to make that happen, the U.S. must act to create good-paying jobs and increase economic opportunity.


Obama says he wants to work with Congress. But he says when Congress doesn't act, he'll act on his own. He's pointing to a new manufacturing innovation institute the government helped launch in North Carolina.


In the Republican address, Indiana Rep. Marlin Stutzman says Democrats have focused on "making it easier to live without a job."


Watch Obama's address above. Or read his remarks below, via The White House


Hi, everybody. This week, I visited a company in Raleigh, North Carolina that helps make electric motors that save businesses money on energy costs and cut harmful carbon pollution.


 And I stopped by N.C. State University, where engineers are set to develop the new technology that will make those motors even better.


 It’s part of my push not only to make America home to more high-tech manufacturing – but to make America more attractive for the good jobs that a growing middle class requires.


 And increasingly, we are. Thanks in part to our all-of-the-above strategy for American energy, for the first time in nearly two decades, we produce more oil here at home than we buy from the rest of the world. We generate more renewable energy than ever, and more natural gas than anybody. Health care costs are growing at their slowest rate in 50 years – due in part to the Affordable Care Act. And since I took office, we’ve cut our deficits by more than half.


 So we are primed to bring back more of the good jobs claimed by the recession, and lost to overseas competition in recent decades. But that requires a year of action. And I want to work with Congress this year on proven ways to create jobs, like building infrastructure and fixing our broken immigration system.


 Where Congress isn’t acting, I’ll act on my own to put opportunity within reach for anyone who’s willing to work for it. That’s what I did in Raleigh by launching America’s second “manufacturing innovation institute.” It’s a partnership between companies, colleges, and the federal government focused on making sure American businesses and American workers win the race for high-tech manufacturing and the jobs that come with it – jobs that can help people and communities willing to work hard punch their ticket into the middle class.


 I firmly believe that this can be a breakthrough year for America. But to make that happen, we’re gonna have to act – to create good jobs that pay good wages, and to offer more Americans a fair shot to get ahead. That’s what I’m focused on every day that I have the privilege of serving as your president. That’s what I’m going to be focused on every single day of this year.


 Thanks, and have a great weekend.


(貼り付け終わり)


(終わり)


 


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 古村治彦です。

 本日は講演会を2件、お知らせ申し上げます。3月1日には私が皆様にお話を申し上げる機会をいただきました。
出席をご検討いただければ幸いです。宜しくお願い申し上げます。

(1)ブレイントラスト企画主催の「副島隆彦の“予言者”金融セミナー 第7回」

副島隆彦(そえじまたかひこ)の“予言者”金融セミナー 第7回」
日時:2014年2月9日(日)
開始:10時(受付)、11時(開演) 途中、休憩あり。
終了:17:30(予定)
場所:ヤクルトホール(ヤクルト本社ビル、新橋駅)
受講料:15,000円/全指定席

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お申し込み・問い合わせ先
ブレイントラスト企画(成甲書房内)
東京都千代田区神田神保町1-42
TEL:03-3292-8401(平日10~18時)
FAX:050-3156-3040
メール:seminar@seikoshobo.co.jp


(2)副島隆彦の学問道場主催の講演会

学問道場の定例会(講演会) 開催のお知らせ!
『キャロライン・ケネディ駐日大使着任が
日本政治中枢に与えている衝撃(仮題)』
講師:副島隆彦/古村治彦
開催日:2014年3月1日(土)
会場:(財)全電通労働会館 全電通ホール
開場  12:30
開演  13:00
終了  16:30
主催:副島隆彦を囲む会

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・3月1日定例会へのお申し込みは、コチラ↓
http://soejima.to/cgi-bin/kouen/kouen.html 





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 古村治彦です。



 2014年1月21日に私の2冊目の単著である『ハーヴァード大学の秘密』(PHP研究所)が発売になりました。全国の書店にも配本が済んだくらいではないかと思います。



 この本は、4つのテーマ、「ハーヴァード大学の日本人人脈」、「ハーヴァード大学を含む日本からの留学の実態」、「ハーヴァード大学の知的パワーを象徴する学者」、「ハーヴァード大学で教えられていること」を取り扱っています。「ハーヴァード大学」をキーワードにして、様々なテーマを取り扱っています。



 様々な関心をお持ちの幅広い読者の皆さんのお役に立つテーマを取り上げ、そしてあまり関心をお持ちではない分野のことも知識として吸収していただける本であると確信しております。



 是非お求めいただき、お読みいただきたく存じます。よろしくお願い申し上げます。

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 副島隆彦による推薦文



 本書『ハーヴァード大学の秘密』は、私の弟子である古村治彦君の二冊目の単著である。



 古村君の前作『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所、二〇一二年五月)は、有難いことに大きな評判をいただいた。古村君はこの『アメリカ政治の秘密』で、ヒラリー・クリントン(Hillary Rodham Clinton)前国務長官を支える三人の女性たちについて書いた。このうち、スーザン・ライス(Susan Rice)が国家安全保障問題担当大統領補佐官、サマンサ・パワー(Samantha Power)が米国連大使というアメリカの外交を担う要職に就いた。このことは古村君のアメリカ研究の確かさを示している。『アメリカ政治の秘密』は、現在のアメリカ政治、日米関係に関心を持つ人々にとって必読の書となった。未読の方は是非お読みください。



 古村君は、前作を発表してから、この『ハーヴァード大学の秘密』の準備に取り掛かったのだが、書き上げるまでに苦労していたようだ。私はその様子を見ていたので、今回、出版まで漕ぎつけたことを大いに喜んでいる。古村君には、益々の研鑽を期待している。



 今回、古村君が取り上げたテーマは、世界一の名門大学として知られるハーヴァード大学だ。私は、二〇一一年あたりから、古村君に「ハーヴァードの政治学の全体像を書いてみてはどうか」と提案した。彼がアメリカ留学経験で学んだ合理的選択論(Rational Choice Theory)について書いてもらいたいと思った。私自身が、何よりもこの理論を知りたかった。



 古村君がアメリカに留学していた二〇〇三年頃、アメリカの全ての大学の政治学(Political Science)研究や分析で共通の土台として使われている方法論(methodology)について、彼に根掘り葉掘り話を聞いたことがある。このメソドロジーをすぐに日本語で「方法論」と訳すから困ったことなのだ。メソドロジーは、そんな甘い「学問方法論」のことではない。いろいろの近代諸学問(サイエンス)の共通の基礎、土台を作っているものなのである。だから以後は、メソドロジーは「学問土台学」と訳すべきだ。文科系の諸学問の土台となる学問なのである。私の先生である碩学・小室直樹は自分をメソドロジストと称した。



 メソドロジーがしっかりしていない学問分野は欧米では大事にされない。そして、アメリカの名門ハーヴァード大学は、この大学のお家柄というか、その真髄である「合理的選択論」という方法論、ではなかった学問土台学を持っている。この学派が今のアメリカ政治学の分野で支配的な(dominant)であることを私なりに理解した。このハーヴァード大学の秘密と言うべき合理的選択論とは何か。この本の冒頭に、著者でもないのに推薦者が出しゃばってズバリと書く。それは、「合理的選択とは、政治家(権力者、支配者)にとって最大の目的は選挙に当選し続けることである。権力者(支配者)だったら自分が権力を維持し続けるということだ。そのためなら何でもする。どんなことでもする。それが合理的選択だ」ということだ。彼らはここまであけすけに言う。私は大いに驚いた。



 私は、古村君から合理的選択論についての話を聞く少し前の二〇〇一年に、「合理(ratio、ラチオ、レイシオ)」という言葉について研究し発表した。そしてその奥義をすっかり読み破った。ラチオ(合理)とは、元々が「割合、分け前」という意味で、「取り分、利益の分配」という意味の言葉だ。だから、自分の利益になるように「合理的(rational)」に「行動を選択(choice)せよ」ということである。自分が勝つ(得をする、生き延びる)ように賢く行動せよ、ということだ。



 このラチオを人類の長い歴史でよくよく分かっていたのがユダヤ人(ユダヤ民族)である。ユダヤ思想(Judaism)の中心に、このラチオがある。ラチオの思想こそは、ユダヤ人の生き方そのものであり、それがユダヤ思想(そのままユダヤ教でもある)の中心なのである。そして、このラチオが資本主義を生み出し、人類の近代(modern)も生み出した。ハーヴァード大学はユニテリアン系のプロテスタント修道院として創立されたのだが、その背景に強力な利益の法則を持つ。



 この合理的選択論については、本書の第8章で古村君が詳しく紹介している。是非お読みください。この合理的選択論という政治思想を大きく理解することが今の私たち日本人に極めて重要だ。そしてこの合理的選択論が、まさしくハーヴァード大学に世界中から集まってくる頭の良い学生たちに教えられていることを知ることもまた重要だ。



 本書には、合理的選択論以外にも、幅広い内容が収められている。前半では、ハーヴァード大学出身者たちのネットワークについて書かれている。三木谷浩史氏を中心とするハーヴァード大学出身者のネットワークを、古村君は「クリムゾン・クラブ(Crimson Club)」と名付け、その人脈を丁寧に追っている。

 後半部では、ハーヴァード大学の知的パワーを代表する政治学者の故サミュエル・ハンチントンとジョセフ・ナイについて詳しく、かつ分かりやすく紹介している。また、日本でもマイケル・サンデル教授の名で有名になった共同体優先主義(Communitarianism)と合理的選択論について詳しく紹介している。



 この一冊で、ハーヴァード大学の政治学部でどういうことが教えられ、どんな人材が育てられているのかを理解することができる。そしてハーヴァード大学が持つ、これまで私たちに明らかにされてこなかった部分を知ることができる。本書『ハーヴァード大学の秘密』を是非買って読んでください。



 二〇一三年十二月

副島隆彦 





 あとがき



 前作『アメリカ政治の秘密』を二〇一二年五月に出版していただいた後、師である副島隆彦先生から、「君はアメリカで政治学の勉強をしてきたのだし、次はハーヴァード大学の政治学の全体像について書いてみてはどうか」という提案があった。この提案を受けて、私は、本書『ハーヴァード大学の秘密――日本人が知らない世界一の名門の裏側』の準備に取り掛かった。構想を練り、準備するのに予想以上の長い時間がかかってしまった。本として出版できるのかという不安を持ちながらの執筆であったが、このように出版していただけることになり、ホッとしている。

 本書『ハーヴァード大学の秘密』は、「ハーヴァード大学」をキーワードにして、幅広いテーマを取り上げている。副島先生の提案通りに政治学の全体像を描くことは、私の力不足でできなかったが、ハーヴァード大学で教えられている政治学、ハーヴァード大学の政治学を代表する学者、留学全般に関することを網羅することはできた。読者の皆様に、それぞれの興味関心と重なる部分からお読みいただけたらと思う。



 そして、第1部では、ハーヴァード大学出身の日本人人脈を取り上げた。ハーヴァード大学をキーワードにして、張り巡らされた人脈の地下茎を掘り起こす作業を行った。私は、これを“属国日本の政界のたけのこ掘り”と呼んでいる。このたけのこ掘り作業を通じて、ハーヴァード大学から送り出された人材たちは、現在に至るまで日本の中枢を形成し、日本を動かしてきたことを発見した。正直なことを言えば、ハーヴァード大学出身者たちを中心にして人脈がここまで広く形成されていたことは、私にとって大きな驚きであった。私はこれからもたけのこ掘りの作業を続けていく。



 ハーヴァード大学は、「合理性(rationality)」の総本山と言うべき存在である。政治学部では、政治学の分野で主流となっている理論である合理的選択論(Rational Choice Theory)が教えられている。副島先生が推薦文の中で書いているように、合理性とは、一言で言ってしまえば、「自分が得をする、生き延びる」ために行動するということである。この合理性(ラチオともいう)はユダヤ思想(ユダヤ教)の中心となり、そこから資本主義(Capitalism)と近代(modern)が生まれた、ということである。合理性を身につけることこそが、資本主義社会で成功するためには必要なことだ。ハーヴァード大学で学んだ日本人たちも当然のことながら、この合理性を身につけている。



 私が前著『アメリカ政治の秘密』でも指摘したことでもあるが、最近のアメリカの日本管理には鷹揚さがなくなっている。ジャパン・ハンドラーズたちはより露骨に、かつ、より性急にアメリカの利益追求の姿勢を示すようになっている。アメリカと、そして自分たちの利益追求に一直線に進んでいる。それは、ジャパン・ハンドラーズたちの中で世代交代が起こり、若い世代は合理的選択論を学んだことで、合理性をより重視する姿勢を取るようになっているからだ。管理する側と管理される側を分けるものが「合理性」なのである。



 日本管理のジャパン・ハンドラーズが合理性を武器にしているならば、それに対抗するために、私たちも彼らが使っている武器を手に入れて使えるようにするべきだ。そうすることで、ジャパン・ハンドラーズの意図を見抜き、自分たち、そして日本が損をしないように賢く行動できるようにしなくてはならない。本書が読者の皆様にとって、合理性について、そして合理的選択論について学ぶ契機になれば幸いである。



 本書刊行にあたり、多くの方々にお世話になりました。

 私の師である副島隆彦先生には、本書に推薦文を寄せていただきました。ハーヴァード大学をテーマとして取り上げたのは、先生からの示唆を受けてのことでした。本として出版できてホッとしています。心からお礼を申し上げます。

 私の同僚である中田安彦氏には今回もお世話になりました。中田氏とのやり取りを通じて、多くの刺激を受け、様々なアイデアを生み出すことができました。中田氏のような同僚がいてくれることは私にとって大きな力となっています。感謝しています。

 更に、ここで名前を記すことはできませんが、アメリカの大学教員事情について話してくれた先輩、スポーツビジネスの世界、そして早稲田大学大学院スポーツ科学研究科について多くの有益な情報を提供してくれた友人、そして、東北楽天ゴールデンイーグルスと本拠地である仙台という街に私の関心を向けさせてくれた友人にもお世話になりました。加えて、家族や友人の支えも励みになりました。記して感謝します。

 最後に、本書の刊行にあたって、PHP研究所の大久保龍也氏には、前作同様、お世話になりました。なかなか筆が進まない筆者を、寛容をもって見守り、伴走をしていただきました。心から感謝を申し上げます。



 二〇一三年十二月

古村治彦



(終わり)






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 古村治彦です。



 2014年1月21日、安倍晋三首相をアメリカのマルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州選出、共和党)が訪問し、会談を行いました。下のウォールストリート・ジャーナル紙の記事の日本語版のタイトルは「米有力議員が安倍首相を訪問、揺れる日米関係で助っ人」(http://realtime.wsj.com/japan/2014/01/22/%E7%B1%B3%E6%9C%89%E5%8A%9B%E8%AD%B0%E5%93%A1%E3%81%8C%E5%AE%89%E5%80%8D%E9%A6%96%E7%9B%B8%E3%82%92%E8%A8%AA%E5%95%8F%E3%80%81%E6%8F%BA%E3%82%8C%E3%82%8B%E6%97%A5%E7%B1%B3%E9%96%A2%E4%BF%82%E3%81%A7/)となっています。



 助っ人というと、よくプロ野球の外国人選手に使われる言葉であり、また、やくざ映画などでは、義理と人情を大事にする高倉健さんが弱い方、負けると分かっている方のために戦いに行く時に使われる言葉です。外から援軍としてやって来るという意味のようです。



 それでは、今回のマルコ・ルビオ上院議員の訪問がそうした助っ人行為になるのでしょうか。ルビオ議員の訪問は、靖国神社参拝以来、アメリカ政府、議会関係者では最も上位の人物の訪問ということになります。次の大統領選挙では共和党の候補になり得る人物の一人として注目されています。ルビオ議員は、自衛隊強化(米軍の下請け化)と中国に対する牽制は支持しました。



 しかし、靖国神社参拝については、少なくともこの記事では支持するとも不支持とも書いていません。そこで何も言わなかったということは、米国務省の安倍首相の「失望」に対して、ルビオ議員は何も反対や疑義を持ってはいないということになります。上院議員の発言力は大変なものがありますが、彼はそれを行使して安倍首相の靖国参拝を支持するということはやっていません。これで何か「助っ人行為」になったのでしょうか。



 このブログでもご紹介した、アメリカ大使館の安倍首相による靖国神社参拝に関する声明の中の最後のtake noteの段落が重要になってきます。拙訳では、「安倍首相が過去に対して悔悟の念を表し、日本が平和構築のために関与していくことを改めて表明したことを私たちは注視している」となります。ルビオ議員は、「日本の平和構築のための関与」の部分を確認しに来たのです。



 戦後の世界体制はアメリカが作り上げたものです。アメリカが敵と決めればそれが世界の平和を乱す、世界共通の敵ということになります。そして、戦後世界の平和構築とは、アメリカの意向に沿ったものとなります。安倍首相は靖国神社参拝後、「平和構築に関与する」と発言しています。そうなると、靖国神社参拝で責めながら、同時に「平和構築の努力をするんだよね、ね?」ということで、日本には過度な負担が要求されるようになります。「だってやるって言ったじゃんね?」ということになります。



 ルビオ議員は笑顔のようでした。そして安倍首相も嬉しそうでした。しかし、その裏にあるのは、安倍氏への支持などではありません。自衛隊の米軍下請化、そして、中国への噛み付き犬係の役割の再確認というだけのことなのです。



(新聞記事転載貼り付けはじめ)



Rubio Offers Abe Reprieve From U.S. Diplomacy Woes



January 21, 2014, 5:44 PM

By Yuka Hayashi and Toko Sekiguchi

http://blogs.wsj.com/japanrealtime/2014/01/21/rubio-offers-abe-reprieve-from-u-s-diplomacy-woes/



Associated PressU.S. Sen. Marco Rubio of Florida, left, shakes hand with Japanese Prime Minister Shinzo Abe before their talks in Tokyo, Jan. 21.

After a few weeks of rough sailing in his diplomatic dealings with Washington, Prime Minister Shinzo Abe received a much-needed reprieve Tuesday from an unlikely American visitor: Sen. Marco Rubio of Florida.



During his stop in Tokyo, the Republican senator visited Mr. Abe at his residence and offered assurances on two issues at the heart of Mr. Abe’s policy agenda: the senator’s support for Mr. Abe’s efforts to bolster Japan’s military and a rebuke of China’s aggressive territorial policy.



Mr. Rubio, the ranking member of the Senate Foreign Relations Committee’s East Asian and Pacific Affairs subcommittee, was the most senior member of the U.S. government to meet Mr. Abe since the Japanese leader’s visit to a controversial war shrine in late December set off the fury of Japan’s neighbors and upset officials in Washington.



I’m encouraged by and personally support your effort to reinvigorate the security capacity of your country, especially in light of illegitimate territorial claims made by some of your more adventurous neighbors,” Mr. Rubio told the prime minister at the beginning of their meeting.



The remarks were probably exactly what Mr. Abe wanted to hear from a prominent American lawmaker after the U.S.’s unusually harsh reaction to Mr. Abe’s shrine visit, describing it as “disappointing,” an action that “exacerbates tensions with Japan’s neighbors.”



Mr. Rubio’s visit comes amid growing interest in Japan among U.S. lawmakers, a phenomenon American officials attribute to rising security tensions in East Asia, as well as stirring of Japan’s economy after a long slump, triggered by Mr. Abe’s aggressive stimulus policy known as Abenomics.  Mr. Rubio’s visit will be followed by a visit later this month by Rep. Ed Royce, a California Republican and chairman of the House Committee on Foreign Affairs.



During last U.S. fiscal year ended Sep. 30, the number of the members of Congress who visited Japan more than doubled from the previous year to 28, according to the U.S. Embassy in Tokyo.



Furthermore, two House lawmakers started the first-ever caucus on Japan earlier this month to press the White House to  pursue Japan-related policies, such as the Trans-Pacific Partnership trade agreement. California Republican Devin Nunes and Texas Democrat Joaquin Castro are seeking other members to expand the bipartisan caucus.



The caucus is a welcome move for Tokyo amid concerns over the dearth of U.S. lawmakers who advocate for Japan. Such worries have grown since the death of Sen. Daniel Inouye in 2012 and the retirement of Sen. Jim Webb last year — two lawmakers who had actively engaged in relations with Japan.



Mr. Rubio is on an official visit to Asia this week, visiting South Korea and the Philippines, in addition to Japan. A little-known figure in Japan, Mr. Rubio was introduced by the local media as a young Republican leader who is among the party’s top candidates for the 2016 presidential race.



During his two-day stay in Japan, Mr. Rubio received a briefing from Japanese coast guard officials on China’s increased maritime activities around disputed islands in the East China Sea, visited the U.S. naval base in Yokosuka and met with Japan’s defense and foreign affairs chiefs.



Mr. Rubio received a briefing from Japanese coast guard officials on China’s increased maritime activities around disputed islands in the East China Sea, visited the U.S. naval base in Yokosuka and met with Japan’s defense and foreign affairs chiefs.



(新聞記事転載貼り付け終わり)



(終わり)


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 


 



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「お控えなすって」と言っているようにも見えるが・・・
 


 


 


 


 


 


 




 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 古村治彦です。

 

 今回は、東京都知事選挙について、過去のデータを振り返りつつ、妄想していきたいと思います。過去のデータは、ウィキペディアに掲載されているものを使います。

 

※ウィキペディアの「東京都知事選挙」についてのページのアドレスは以下の通りです。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E9%83%BD%E7%9F%A5%E4%BA%8B%E9%81%B8%E6%8C%99

 

(貼り付けはじめ:少し加工を施しました)

 

2012(平成24)年1216日執行

 

※当日有権者数:10,619,652人 最終投票率:62.60%(前回比:+4.80ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・猪瀬直樹 66 無所属 4,338,936 65.27% 公明、維新支持・自民支援

・宇都宮健児 66 無所属 968,960 14.58% 日本未来の党、共産、社民、緑の党、

新社会党、東京・生活者ネットワーク支持

・松沢成文 54 無所属 621,278 9.35% なし

 

・笹川堯 77 都民のくらしを守る会 179,180 2.70% なし

・中松義郎 84 無所属 129,406 1.95% なし

・吉田重信 76 無所属 81,885 1.23% なし

・トクマ 46 幸福実現党 47,829 0.72% なし

・マック赤坂 64 スマイル党 38,855 0.58% なし

・五十嵐政一 81 無所属 36,114 0.54% なし

 

2011(平成23)年410日執行

 

※当日有権者数:10,505,848人 最終投票率:57.80%(前回比:+3.45ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・石原慎太郎 78 無所属 2,615,120 43.40% 都議会自民、公明 推薦

・東国原英夫 53 無所属 1,690,669 28.06% なし

・渡邉美樹 51 無所属 1,013,132 16.81% なし

・小池晃 50 無所属 623,913 10.35% 共産 推薦

 

・ドクター・中松 82 無所属 48,672 0.81% なし

・谷山雄二朗 38 無所属 10,300 0.17% なし

・古川圭吾 41 無所属 6,389 0.11% なし

・杉田健 43 新しい日本 5,475 0.09% なし

・マック赤坂 62 スマイル党 4,598 0.08% なし

・雄上統 69 東京維新の会 3,793 0.06% なし

・姫治けんじ 59 平和党核兵器廃絶平和運動 3,278 0.05% なし

 

2007(平成19)年48日執行[編集]

東京都庁舎前・東京都知事選挙横断幕詳細は「2007年東京都知事選挙」を参照

 

※当日有権者数:10,238,704人 最終投票率:54.35%(前回比:+9.41ポイント)

 

候補者名 年齢 所属党派 新旧別 得票数 得票率 推薦・支持

・石原慎太郎 74 無所属 2,811,486 51.06% 自民、公明 実質支援

・浅野史郎 59 無所属 1,693,323 30.75% 民主、社民、国民 実質支援

・吉田万三 59 無所属 629,549 11.43% 共産 推薦

 

・黒川紀章 73 共生新党 159,126 2.89% なし

・ドクター・中松(中松義郎) 78 無所属 85,946 1.56% なし

・桜金造 50 無所属 69,526 1.26% なし

・内川久美子 49 無所属 21,626 0.39% なし

・外山恒一 36 無所属 15,059 0.27% なし

・高橋満 61 無所属 5,558 0.10% なし

・雄上統 65 無所属 4,020 0.07% なし

・山口節生 57 カント~ 3,589 0.07% なし

・高島龍峰(木村一成) 71 無所属 3,240 0.06% なし

・佐々木崇徳 64 無所属 2,845 0.05% なし

・鞠子公一郎 33 無所属 1,373 0.02% なし

 

(貼り付け終わり)

 

これらのデータで分かることは、まず一応国会に議席を持っている政党の支持、支援がある候補者たちがある程度の票数を獲得していることです。そうではない場合は、圧倒的な知名度があることが必要です。

 

そして、当選するためには最低でも260万票が必要なことです。投票率が上がれば、この数字も上がっていくでしょう。

 

前回の選挙の場合、有権者数は約1060万、投票率は約63%でした。これを掛け合わせると、投票総数は約637万票ということになります。

 

自公維新が推した猪瀬直樹氏が約434万票(約65.3%)、次点の宇都宮健児氏(ほぼ全てのリベラルな野党が推した)が約97万票(約14.6%)、無所属の松沢成文(元民主党所属国会議員、元神奈川県知事で一定の知名度あり)が約62万票(約9.4%)を獲得しました。

 

前回は長く続いた石原都政の継続性と顔が変わるということで投票率も上がりましたが、上がった分が全て猪瀬氏に流れたと思われる程に猪瀬氏への投票が多くなりました。

 

政治学の理論の一つである合理的選択論(Rational Choice Theory)で考えると、有権者は自己利益の最大化を考えます。もし、投票することよりも投票しないことが自分の利益になると考えれば、棄権します。また、投票する一票が死票になって欲しくないと考えます。わざわざ自分が当選するはずもないと考える候補に入れる人はいません。できるだけ、勝ち馬に乗りたいと考えるのが人情という訳です。

 

主義、主張、イデオロギーがはっきりある人たちにとっては、投票を通じての意思表示が自己利益になるのですが、ほとんどの人にはそんな強固な考えはありません。そうではありますが、バランスを取るという行動に出ることもあります。

 

 今回の場合、細川護煕元首相の出馬表明がない段階では、舛添要一元厚労相、宇都宮健児弁護士・元日弁連会長、田母神俊雄元航空幕僚長・元空将・軍事評論家の争いになると考えられていました。舛添氏を自公に民主が支援し、宇都宮氏を共産党、社民党が支援し、田母神氏を石原慎太郎元東京都知事を含む、維新のゾンビ議員たちが支援することになっていました。はっきり申し上げて、この構図では、舛添え氏が圧倒的に有利な状況でした。自公で基礎票が180万から200万。民主党まで入れれば200万は超えてくる数でした。宇都宮氏に各政党が最大限支援しても100万に届かずで、田母神氏はそこまでもないということになったでしょう。

 

 そうなると、勝ち馬に乗りたい普通の有権者たちは舛添氏に投票するか、「もう結果が分かっているのなら」ということで棄権してしまったことでしょう。

 

 ここに細川氏が小泉純一郎元首相と小沢一郎代議士・生活の党代表の支援を受けて出馬表明を行いました。ここでこの安定した構図に波乱が起きました。細川氏、小泉氏、小沢氏はそれぞれ毀誉褒貶が多い人物です。それぞれが批判し合う関係でありました。それが東京都知事選に向けて「脱原発」ということでタッグを組みました。

 

 これで何が起きるかということを思考実験してみます。脱原発(舛添氏も自分なりの脱原発を主張されているようです)系が固まって支援するはずだった宇都宮氏から細川氏へ支援を変える組織や人々が出てきました。これに対して、宇都宮氏を支援する組織や人々はこうした動きに反発して、より支援に力を入れ、宇都宮氏支持に力を入れることになります。舛添氏の方では、足元にくさびを打ち込まれた形になります。

 

自民党と公明党は、党本部を上げて舛添氏支援を行おうとしています。しかし、自民党内部には舛添氏に対するアレルギーがあります。自民党政権時は厚生労働大臣を務めながら、自民党が野党に転落すると除名処分となる離党を強行しました。また、自民党の支持者の中には、田母神氏を支援したいとする人たちがかなりいることも分かってきました。

 

自民党の支持層に細川と田母神でくさびを打ち込んでいく、そして、公明党の支持母体である創価学会の信者の皆さんの中には平和や原発問題についてかなり懸念を持っている方々もいらっしゃると聞いています。安倍氏に対するブレーキ役になるかもしれません。

 

さて、ここで、基礎票について考えてみたいと思います。前回の投票数が約637万でした。舛添氏の基礎票は180万から200万ということで圧倒的に有利な状況は変わりません。数十万票の票数を獲得しそうな候補が4名ですから、過半数を獲得する候補者は出にくいと考えられます。ですから200万台での争いとなるでしょう。

 

宇都宮氏は共産党の支援がありますから大体60万、細川氏は民主、社民などを合わせて恐らく60万くらいではないかと考えます。田母神氏は20万票くらいではないかと考えます。これにはあまり根拠はありませんが、最終的に50万票ほど獲得出来たら御の字ではないかと考えます。

 

宇都宮氏と細川氏はいかにしてそこから200万台に乗せていくかの勝負となります。無党派層への浸透と他陣営の切り崩しが大きなカギとなります。自民、公明から多くを切り離せるのは細川氏であると考えます。宇都宮氏は共産党の党員でもないし、公認候補でもないのですが、自民党の支持者層は宇都宮氏に投票しづらいと考えられます。既に細川氏支持を表明している自民党の地方議員も出ているという話です。

 

無党派層への浸透は宇都宮氏の方が一日の長があるように思われますが、小泉氏の動員力(ミーハーですが見てみたいと思う人は多いと思います)と小沢氏とその周辺の選挙活動のうまさはやはり大きなものがあります。

 

そう考えると、200万台に乗せていく力を持つのは細川氏であると考えます。それでも恐らく舛添氏を抜くことは難しいでしょう。舛添氏230万、細川氏200万、宇都宮氏150万、田母神氏50万ということになるでしょう。

 

舛添氏が敗れる場合というのは、投票率の上昇と自公の支持者の投票が低調である時ということになります。しかし、自公に加え、連合東京の支援もあるということで、楽々と200万票を越えてくるということで、舛添氏の有利さは変わらないでしょう。

 

しかし、細川氏の出馬までは、勝利の確立がほぼ100%であったものが、少し引き下げられているのではないかと思います。細川氏の出馬によって「2月9日の投票日までどうなるかは予断を許さない状況です」という表現が少しリアリティを持つようになりました。

 

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



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 2014年4月にアメリカのオバマ・大統領が東アジアを訪問するという日程になっているようです。二週間前に「12月末の靖国参拝の影響で、4月のオバマ大統領の東アジアツアーで日本には立ち寄らないという話がある」という話を聞いていました。私は「まさかそんな。日本は同盟国ではないか」と思って、聞き流しました。


 そして、1月20日にTBSが以下のように報道しました。オバマ大統領の日本訪問が「国賓待遇」ではなく、「公式実務訪問」になったということです。天皇陛下との謁見や宮中晩餐会は行われないということです。2013年2月の安倍首相の訪米以降、日程の調整が続いていたということにも驚かされますが(アメリカの大統領の日程(一日一日)を貰うというのは大変なことなんだなと思いました)、やはり、昨年末に国賓待遇で調整が進んでいたものが、難しいということにあってレベルが格下げということにも驚かされました。


 前回のオバマ大統領の訪日は、2009年11月、2010年11月にそれぞれ、シンガポール、横浜で開催されたAPEC出席のついでという感じで実現しました。2009年大統領就任後の初来日時は、子供の時以来の鎌倉を訪問し、抹茶アイスを食べるパフォーマンスを行い、東京にあるサントリーホールで演説を行いました。2009年の訪日時は、皇居で午餐会に招かれ、天皇陛下に握手をしながら深々と頭を下げるオバマ大統領の写真が公開され、アメリカでも物議をかもしました。

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 2014年4月の訪日では、日本側がオバマ大統領を何とか国賓待遇で迎えたいとして、色々と動いていたようで、それが実現したところで急に実務訪問ということになり、宮中晩餐会もなく、天皇陛下も謁見なさらないということになりました。これは、駐日アメリカ大使館が出した声明で「失望した(disappointed)」という言葉を使われたことの重さがいみじくも証明されたことになります。こちらが「最高の待遇でお迎えしますのでどうぞいらしてください」とずっと言ってきていて、相手も「そうですか、じゃあお願いしましょうか」という感じであったものが、「いや、やはり結構です」ということになったというのは、やはり靖国神社参拝の影響があったと考えるのは自然です。


 私は、今回の国賓待遇ではない訪日に関して、ミシェル・オバマ夫人も難色を示したのではないかと思います。宮中晩餐会が開かれるとなると、やはり夫人のミシェルさんも大統領と一緒に訪日する必要が出てきます。せっかく夫人がいらっしゃって、今のところ訪日に関して健康面などで条件が合わないようには見えないのですが、訪日を嫌がるというのは、恐らく、頭の切れる弁護士同士であり、同性のキャロライン・ケネディ駐日アメリカ大使とも話をして、安倍晋三首相には会わないということをまず決めたのだと思います。そうなると、自分一人だけ国賓待遇で宮中晩餐会出席というのは天皇陛下・皇后陛下にも失礼になります。

 オバマ政権の特徴は、女性たちが外交の要職についていることです。スーザン・ライス国家安全保障大統領補佐官、サマンサ・パワー国連大使、そして、日本にはキャロライン・ケネディ大使がいます。こうした頭脳の切れが凄まじい女性たち、ミシェル夫人を加えますが、彼女たちに小手先の言辞は通用しませんし、本質を見抜かれてしまいます。彼女たちには安倍政権の本質が既に見抜かれ、日本に対する懸念は大きくなっていると思われます。こうしたことは前著『アメリカ政治の秘密 日本人が知らない世界支配の構造』(PHP研究所、2012年)に書きましたので、是非お読みください。


オバマ大統領が安倍首相に対して「消極的な態度」を示した訳ですが、これでもまだ、そんなに重要なことではないと言えるのかどうか、私は疑問を持っています。



 今のところは、「安倍晋三首相とその周辺」に対しての懸念だけで済んでいるのですが、キャロライン・ケネディ大使のツイッターやアメリカ大使館のfacebookのページにおける見るに堪えない、口汚い罵りの言葉が続いていくと、「日本人は安倍政権を支持している。確かにアメリカのジャパンハンドラーズがそのように仕組んだのだが、薬が効きすぎたようだ。反米がコントロールできなくなるようでは困る」ということになって、日米関係がもっとギクシャクしてしまうことになります。


 ですから、これ以上ギクシャクしないように、冷静になって、合理的な精神で、そして相手の立場に立って(外交は鏡のようなもので相手の態度は自分の態度を映しているものだという考えもあります)、自分たちを冷静に点検することが大事だと思います。それが安倍晋三首相やその周辺に出来るかどうか、私は不安を持っています。


(貼り付けはじめ)


●米大統領来日は国賓待遇にならず、靖国が影響か


2014年1月20日 TBS

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2107297.html


 4月に予定されているオバマ大統領の来日が、国賓待遇ではなく、宮中晩餐会も行われない方向であることが、JNNの取材で明らかになりました。アメリカ側が想定する日程では国賓待遇としての十分な時間がとれないためで、靖国をめぐる不協和音など、日米関係の昨今のあつれきが浮き彫りになった格好です。


  オバマ大統領の4月の訪日をめぐっては、去年2月、安倍総理が訪米した際、国賓として来日するよう要請し、去年の年末まではその方向で両国間で調整が続いていました。しかし、今回のオバマ大統領の日本滞在時間が当初の想定よりも短くなる見込みとなり、国賓として待遇する際、慣例となっている日本到着時の歓迎式典、天皇陛下との会見、宮中晩餐会などの行事を行うには十分でないとの判断から、国賓よりランクの下がる「公式実務訪問」とすることで最終調整が進められているということです。


 政府関係者によりますと、オバマ大統領のアジア歴訪をめぐっては、韓国にできるだけ長く滞在するよう朴槿恵(パク・クネ)大統領側が強く働きかけているということで、ここでも日韓のせめぎ合いが繰り広げられています。


 安倍総理の靖国参拝に関するアメリカの「失望」コメントやTPPの交渉難航など、日米関係がギクシャクしているだけに、政府としてはできるだけ国賓に準ずる形でオバマ大統領の来日を盛り上げたい考えで、検討が続けられています。(2011:12


(貼り付け終わり)

(終わり)

アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




 

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