古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2015年02月

 

 古村治彦です。

 

 ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内の「重たい掲示板」にアルルの男・ヒロシ(中田安彦)研究員が「[1756]安倍晋三が米議会で演説する件」として2015年2月23日に掲載した記事の中で、私が「おかしい」と思った部分があり、それを書いておきたいと思います。それは、中田研究員が貼りつけた共同通信の記事です。それを下に転載貼りつけします。


「重たい掲示板」の投稿記事へは、「こちら」からどうぞ。


(転載貼りつけはじめ)

 

(貼り付け開始)

 

安倍首相、米議会演説へ 池田勇人氏以来54年ぶり 

共同通信 2015年2月22日

 

 

 日米両政府は、安倍晋三首相が4月下旬からの大型連休中の訪米時に米議会で演説を実施する方針を固めた。日本政府関係者が21日明らかにした。1961年に池田勇人首相が下院で演説して以来54年ぶりとなる。日本の首相としては前例がない上下両院合同会議での演説へ最終調整している。先の大戦への反省を踏まえ、戦後一貫して「平和の道を歩んできた」との見解を示し、未来志向の関係を呼び掛ける考えだ。

 

 首相の祖父、岸信介首相も57年に演説している。

 

 安倍首相は演説で、TPPなど経済分野を含めた幅広い両国関係の深化が相互の国益にかなうとアピールするとみられる。

 

2015/02/22 02:00 【共同通信】

(貼り付け終わり)

 

この記事は何処が安倍首相を招請したか書いてないが、共同通信の英語版には次のようにある。

 

(引用開始)

 

According to the government official, U.S. Deputy Secretary of State Antony Blinken proposed, when he called on the prime minister’s office on Feb. 13 during a trip to Japan, that Abe address Congress, and he agreed.

 

Abe also expressed hope to make address Congress during a meeting in Tokyo on Monday with a bipartisan group of U.S. lawmakers led by Rep. Diana DeGette, a Colorado Democrat.

 

(引用終わり)

 

(転載貼りつけ終わり)

 

 古村治彦です。

 

 私が「おかしい」と思ったのは、英語版の方です。前半部を翻訳しますと、「ある政府高官によると、米国務副長官アントニー・ブリンケンが、2015年2月13日の訪日中に首相官邸を訪問し、安倍首相に対して、アメリカ連邦議会(Congress)での演説を提案し、安倍首相も同意した」となります。

 

①アメリカは三権分立(Separation of Power)が徹底している国です。「分立」とありますが、「緊張感を持って、自分の縄張りを犯されないように見張りあっている」状態です。この中で、行政府の国務省の一職員であるブリンケンが、連邦議会のことで何かを言うことありえませんし、あってはいけないことです。これは大変な越権行為です。「公務員が連邦議会のことで云々した」となると、これは大変なことです。それは、アメリカの国家体制である三権分立をないがしろにする行為だからです。

 

②ブリンケンには、国務省派遣で連邦上院外交委員会のスタッフ(その時の委員長は現在のジョー・バイデン副大統領)という経歴もあります。ですから、議会とのパイプがあって、「安倍首相の連邦議会での演説」について、提案があったということも考えられます。しかし、それはあくまで非公式であり、表に出てはいけない話です。それを「米国務副長官のアントニー・ブリンケン」が議会演説を提案した、と共同通信に漏らした「the government official」は、実は大変なことをしでかしているのです。

 

③ブリンケンが安倍首相を訪問したのが2015年2月13日です。その後、2015年2月16日に米議会の超党派議員団が安倍首相と会談しています。英語の記事の後半部にある通り、「安倍首相は月曜日(16日)に、コロラド州選出で民主党所属のダイアナ・デゲット連邦下院議員率いるアメリカの超党派の連邦議員たちと東京で会談し、その中で、連邦議会での演説を希望した」ということです。その時の様子を日経新聞は次のように伝えています。

 

(新聞記事転載貼りつけはじめ)

 

●「首相、米議会演説に意欲 春で調整の訪米時に」

 

日本経済新聞電子版 2015年2月17日

http://www.nikkei.com/article/DGXLASDE16H05_W5A210C1PP8000/

 

 安倍晋三首相は16日、米議会の超党派議員団と首相官邸で会談し、春の大型連休中で調整している自身の米国訪問時の米議会での演説に意欲を示した。デゲット下院議員が「首相が米議会で演説できるようにしたい」と話し、首相は「できればありがたい」と応じたという。同席者が明らかにした。

 

 日本の首相による米議会での演説が実現すれば1961年の池田勇人首相以来54年ぶりとなる。首相の祖父の岸信介首相も演説したことがある。

 

 首相は議員団との会談で、戦後70年について「戦火を交えた両国は戦後和解して強固な同盟国となり、ともに世界の平和と繁栄に貢献してきた。今後も幅広い分野で緊密に連携したい」と強調した。米側は「首相の訪米の成功を期待している」と語った。

 

(新聞記事転載貼りつけ終わり)

 

 古村治彦です。

 

④超党派議員団は、安倍首相に対して「演説ができるようにしたい」と述べて、安倍首相が「できればありがたい」と応じています。これはまだ正式な招待という訳ではありません。もちろん内々には根回しが済んでいるということもあるでしょうが、正式な招待のためには、連邦下院議長のジョン・ベイナーの親書なり、招待状がなければなりません。また、超党派議員団は別の機会では安倍首相の歴史認識が日米関係にとって懸念となっていると語ったとも伝えられています。以下の記事をお読みください

 

(記事転載貼りつけはじめ)

 

●「日本を訪問中の米議員団、安倍首相の歴史観を危惧「第二次世界大戦をめぐる問題で、日本が逆行しているとみなされないようにすべき」―米紙」

 

Record China 219()1037分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150219-00000029-rcdc-cn

 

日本を訪問中の米議員団、安倍首相の歴史観を危惧「第二次世界大戦をめぐる問題で、日本が逆行しているとみなされないようにすべき」―米紙

 

18日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、日本を訪問中の米国の議員団が、安倍晋三首相の歴史観が日米関係にとって懸念になっていると述べたと報じた。写真は安倍晋三首相。

 

2015218日、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、日本を訪問中の米国の議員団が、安倍晋三首相の歴史観が日米関係にとって懸念になっていると述べたと報じた。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルが17日に報じたところによると、日本を訪問中の米国の超党派の議員団が、安倍晋三首相の第二次世界大戦に対する歴史観が日米関係にとって大きな懸念になっていると述べた。ダイアナ・デゲット下院議員(民主)は、記者団に対して、「第二次世界大戦終戦70年にあたり、慰安婦問題をはじめ、第二次世界大戦に関連したその他の問題で日本は逆行しているとみなされないようにすることが重要である」と述べた。また、安倍首相の「歴史修正主義」は、日本の近隣諸国との関係を傷つけるものだとの見方を示した。

 

日系のマーク・タカノ議員(民主)は、非常に二極化された米国の政治的環境から見ても、安倍首相の歴史観は超党派の議員の反発を起こす危険性があると警告した。また、ジェームズ・センセンブレナー議員(共和)は、安倍首相と韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の首脳会議がまだ行われていないことに対して懸念を示し、北朝鮮が脅威となる可能性に対して日本、韓国、米国が協力することの重要性について述べたという。(翻訳・編集/蘆田)

 

(記事転載貼りつけ終わり)

 

 古村治彦です。

 

⑤このような状況では、安倍首相の連邦議会での演説が確実に行われるという保証はありません。三権分立の話に戻ると、共同通信の英語版記事では、「2月13日にブリンケンが機械演説を提案し、安倍首相が同意した」とあり、「2月16日に超党派議員団との会見で、安倍首相が議会演説を希望した」とあります。ブリンケンが提案することもおかしいですし、議会演説に関しては、何も正式には決定していないことが分かります。

 

⑥以下の投稿から私が考えたことは、「首相官邸側の高官が共同通信をはじめとするマスコミを使って、議会演説を既成事実化しよう」としているのだということです。3月3日にアメリカ連邦議会で演説するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、オバマ大統領ともバイデン副大統領とも会談できません。「それに比べて、安倍首相はオバマ大統領とも会談でき、議会でも演説できる」という最大限の厚遇で迎えられるのだ」ということに官邸側はしたいのでしょう。しかし、そこで、「ブリンケン米国務副長官からの議会演説の提案」という内容を話してしまいました。これは大きなミスです。

 

中田研究員の投稿を読んで、私が「おかしい」感じた点から考えたことを書きました。

 

(終わり)

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、2015年3月1日に開催されます副島隆彦先生の後援会を皆様にご案内いたします。お席がだいぶ少なくなっていると聞いておりますが、まだお申込みいただけるそうです。お申し込みは下記のウェブサイトから出来るということです。

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※お申し込みは以下のウェブサイトで可能です↓

http://kokucheese.com/event/index/259057/

 

※お申込みは「こちら」からもどうぞ。

 

宜しくお願い致します。

※副島先生の最新刊のご案内です。↓ 


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副島隆彦の”予言者”金融セミナー 第9回

 

『官製相場の暴落が始まる』発刊記念講演会

 

*日時:2015年3月1日(日)

開場・受付/10:00~ 終了/17:00(予定)

 

たっぷり 5時間!

 

株・金利・円ドル相場の次の大崩れは、いつ起きるか?

リーマン・ショックからもう6年。

次の金融経済の嵐が迫る。

 

副島隆彦は、予想を外したのか。

これからの投資で失敗しないための防御策を練る。


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セミナーの主な内容

 

◆金(きん) 急上昇 し始めた。小売り ,300円/ 超えた。

 金を 持ち続けた人々の 勝ち だ。この先 金価格は どうなるか?

 

◆スイスフラン・ショック が起きて、ヨーロッパ金融危機の始まり になる。

 日本、アメリカへの 影響 は? このあとの 世界経済の動き は?

 

◆為替(各国の通貨の値段)の 急変動 がコワイ。

 1元 19.5円 まで上昇。人民元預金 をした人は、儲かった。

 さらに 何に 投資するべきか。

 

◆株式は 官製相場(政府による市場のあやつり) まだまだ 続く。

 日本の 郵貯や年金 は大丈夫なのか。

 

◆大好評の質問コーナーもあります。

 

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開催概要

 

日時       20150301

開催場所              有楽町朝日ホール

(東京都千代田区有楽町2-5-1 有楽町マリオン11)


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参加費    15,000(税込)

定員       300(先着順)

申し込み終了       20150228 1700分まで

主催 (有)アールシステム

 

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(終わり)









 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


 

 古村治彦です。

 

 昨日、以下のような記事が配信されました。米連邦議会の超党派の議員たちが阿部首相を訪問し、今年四月末(大型連休の頃か?)に訪米する安倍晋三首相が米連邦議会で演説が出来るようにしたいと述べ、安倍首相も歓迎の意向を示したということです。

 

 日本の首相はこれまでアメリカ議会で演説をしたことはありません。「世界で最も重要な二国間関係」と日本の一部政治家やその周辺は威張っていますが、実態はこんなものです。「アメリカの利益と日本の破壊に最も貢献した」小泉純一郎元首相は在任中に訪米して演説をする千載一遇のチャンスがあったのですが、靖国神社参拝問題で流れてしまいました(「靖国神社へは参拝しない」という確約を米議会側が求めました)。

 

 本ブログをお読みいただいている方ならピンときていると思いますが、安倍首相が訪米(予定)の1か月前である3月(もうすぐです)に、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が訪米し、米連邦議会で演説を行います(ジョン・ベイナー下院議長の招聘による)。しかし、オバマ政権側はバラク・オバマ大統領も、ジョー・バイデン副大統領も、ジョン・ケリー国務長官も、高官は誰も彼と会談することはありません。また、連邦議員たちの中に、ネタニヤフ首相の演説を欠席すると表明する人たちが出てきています。

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ネタニヤフ(左)と安倍晋三両首相

 

 現在、アメリカ政治は、大きく2つのグループに分裂し、お互いが激しく争っています。2つのグループとは、①反オバマ・親ヒラリーのネオコン・人道主義的介入派と②抑制的な外交・防衛政策を求めるリアリスト派です。この①のグループにつながり、外側から支援し(そして利用されて)ている形になっているのが、イスラエルのネタニヤフ首相であり、日本の安倍首相なのです。

 

 ①のグループは、この2人の外国の指導者に対して、「世界のデモクラシーの総本山である米連邦議会での演説」という最大級の名誉を「エサ」として与えようとしているのです。それに対して、良識ある人々は怒っている訳です。安倍首相もおそらくオバマ政権の高官とは会ってもらえないか、会ってもらえてもきわめて短い時間での会談という形になるでしょう。

 

 ネタニヤフ首相と安倍首相の米連邦議会演説は、米連邦議会の歴史に泥を塗る行為になるでしょう。

 

(新聞記事転載貼りつけはじめ)

 

安倍首相、米議会演説に意欲=大型連休の訪問時

 

時事通信 216()2016分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150216-00000121-jij-pol

 

 安倍晋三首相は16日午後、米議会「日本研究グループ」のダイアナ・デゲット下院議員らと首相官邸で会談した。出席者によると、4月下旬からの大型連休中で調整している首相の訪米が話題になり、デゲット氏は「(首相が)米議会で演説できるようにしたい」と表明。首相は「(演説)できればありがたい」と意欲を示した。

 

 首相はこの中で「本年は戦後70年だが、戦火を交えた(日米)両国は戦後和解して強固な同盟国となり、地域と世界の平和と繁栄に貢献してきた。今後も幅広い分野で連携していきたい」と強調。米議員側からは「首相の訪米の成功を期待する」との声が出た。

 

 日本の首相の米議会での演説は過去に例がない。首相は演説が実現すれば、戦後70年を踏まえ、日本の平和国家としての歩みや、積極的平和主義に基づく安倍政権の外交・安全保障政策について説明する見通しだ。

 

(新聞記事転載貼りつけ終わり)

 

(終わり)















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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 

 古村治彦です。

 

 今回は、明日2015年2月18日に発売となります(都内一部書店で先行販売)、『崖っぷち国家日本の決断 安倍政権の暴走と自主独立への提言』をご紹介いたします。私も編集協力と言う形で少しだけお手伝いしました。

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 本書はベストセラー『戦後史の正体』の著者で外務省国際情報局長を務めた元外交官の孫崎享氏とニューヨーク・タイムズ紙東京支局長マーティン・ファクラーの対談です。少し裏の話をしますと、本書の出版元である日本文芸社は対談ものが得意な出版社であり、私の師である副島隆彦先生も元外交官でベストセラー作家の佐藤優氏と対談本を出しています。

 

 対談本の良いところは、文章が会話形式で分かりやすいところです。今回の本も二人の専門家が日本政治、外交、経済、メディアについて縦横無尽に語り合っています。副島先生や私たち弟子のブログや文章を読んでおられる皆様にしてみれば、話されている内容にそこまでの目新しさはないと思われますが、世界基準(ワールド・ヴァリューズ World Values)ではそのように考えるのか、と言うことを知る上では絶好の本だと思います。

 

 日本のリベラル(と穏健な保守勢力)が日本の政治世界から(民主党が政権与党時代にすでに準備され)排除され、安倍政権が誕生しました。メディアもだんだんリベラル派が呼吸できる空間が少なくなってきました。お二人のお話は一昔前であれば、穏健な保守勢力にとっては当たり前のことが多く、「やや激しいかな」程度であったと思いますが、今の日本の状況であれば、「過激だ、左翼的だ」ということになると思います。

 

 それだけ日本自体が変化してきたということもあるでしょうし、心ある人たちは日本の行く末に大きな懸念を持っているのだと思います。

 

 多くの皆様に、「外側から日本を見る目」を提供してくれる本書をお読みただけますようにご紹介申し上げます。
 

 

(終わり)









 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカとイスラエルの関係についての重要な論稿を皆様にご紹介いたします。

 

 現在、アメリカのバラク・オバマ大統領とイスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相との関係は悪化しています。

 

 このことを敷衍していくと、これからの2年弱の期間は、オバマ大統領とイスラエル=安倍首相(その周辺)=ネオコン・人道主義的介入派のトライアングルの戦いということが言えるかと思います。

 


==========

 

オバマはイスラエルの政権交代を求めている(Obama Is Pursuing Regime Change in Israel

 

ネタニヤフのアメリカ議会の演説招聘に怒り、ホワイトハウスは静かにイスラエルの選挙の実施前にネタニヤフ首相を不安定化させようとしている

 

アーロン・デイヴィッド・ミラー(Aaron David Miller)筆

2015年2月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/02/12/obama-is-pursuing-regime-change-in-israel-bibi-netanyahu-elections/?utm_content=bufferfc380&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

ホワイトハウス、ジョン・ケリー国務長官、政府高官たちは、イスラエル政治と選挙に介入することはないと繰り返し表明してきた。そして、通常の状況であれば、不介入は当然のルールである。

 

 しかし、イスラエルが突然しかも露骨にアメリカ政治に介入してきたらどうだろう?オバマ政権は既にイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に飽き飽きしてしまっており、3月17日に行われるイスラエルの総選挙で新指導者が選ばれることを熱望しており、接戦を演じているネタニヤフのライヴァルを支援するためにイスラエルのアメリカ政治介入を逆に利用しようとしているのだろうか?

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ネタニヤフ首相(左)とオバマ大統領 

 

 オバマ大統領は政権交代を歓迎するだろう。これまでイランのイスラム教指導者による政治形態を変化させる機会はほぼなかった。しかし、イスラエルに関して言うと、そうではない。アメリカ連邦下院のジョン・ベイナー議長がネタニヤフを連邦上院と下院の合同の場での演説へ招聘した。それを受け入れたことは失敗である。ネタニヤフ首相はオバマ政権にある種のチャンスを与えることになる。そして、ホワイトハウスはこの機会を利用して、ネタニヤフ首相はアメリカ・イスラエル関係に悪影響を与える人物であると明確にすることは間違いない。

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ベイナー下院議長(左) 

 

 ホワイトハウスは既にオバマ大統領がネタニヤフ首相と会うことはないと明言している。それでもネタニヤフは3月初めに訪米して、アメリカ連邦議会で演説することにこだっている。ネタニヤフ首相にとっての良いニュースとは、オバマ首相と会談して失敗する危険がないということだ。 そこまで良くないニュースは、ホワイトハウスのドアが現職のイスラエル首相に対して閉じられてしまうのはそこまで頻繁には起きないというものだ。ホワイトハウスのジョシュ・アーネスト報道官は、オバマ大統領がネタニヤフ首相と会談しない理由を、イスラエル国内の総選挙が近いためとしている。私は断言する。もしオバマとネタニヤフが友人同士なら、二人は大統領執務室オーヴァルオフィスで抱き合うことだろう。ビル・クリントン元大統領は1996年のイスラエル総選挙に関して、当時のシモン・ペレス首相を助けようとして彼とホワイトハウスで会談を行った。この時もイスラエルの総選挙が近い時期であった。しかし、この時は現職であるシモン・ペレスは敗北した。

 

 オバマ政権は中米イスラエル大使ロン・ダーマーに対する怒りをマスコミに表明するのに時間を無駄にしなかった。ダーマー大使はネタニヤフ氏へのアメリカ連邦議会からの招聘の仕掛け人だ。オバマ政権のある高官は、ダーマーがネタニヤフの政治生命をアメリカ・イスラエル関係よりも重要だと繰り返し発月していたと述べている。ここではっきりさせておこう。ダーマーに対する攻撃はすなわちネタニヤフに対する攻撃である。そのような個人攻撃を政権高官がするのは極めて珍しい。現在、ダーマーは彼の上司と同じく、ワシントンで総スカンを食っている。彼の存在と評価はアメリカ・イスラエル関係の機能不全を象徴している。先週、駐イスラエル米国大使のダン・シャピロはイスラエル政府の複数の高官たちと会談した。その内容な厳しいものであった。シャピロは、「この代償をイスラエルは支払うことになる」と発言したと伝えられている。

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 ロン・ダーマー

 

ジョー・バイデン副大統領もネタニヤフのワシントン演説に出席しないと見られている。バイデン副大統領は親イスラエルとして知られているが、そのような人物がネタニヤフの演説に出席しないということで、民主党の連邦議員の中にも欠席を表明する人たちが出ている。パトリック・リーヒー(ヴァーモント州選出)連邦上院議員は他の人々と一緒に欠席を表明している。欠席者の数は増えそうな勢いである。バイデン副大統領の欠席は、「イスラエルとアメリカの関係が悪化している」というシグナルをアメリカ側がから送ることを意味し、ホワイトハウスは演説によってネタニヤフに得点を稼がせないようにしているのである。

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バイデン副大統領(左)とネタニヤフ首相 

 

 オバマ政権高官は誰もネタニヤフと会談を行わない予定だが、彼のライヴァルである労働党党首イザク・ヘルツォグとは会談を行う予定だ。イスラエルのマスコミは、繰り返し、今週末に行われるミュンヘンでの安全保障会議でヘルツォグが非公式にバイデンとケリーと会談すると伝えている。また、この件についてのヘルツォグの発言を報道した。この結果、有権者がネタニヤフではイスラエルにとって最重要の同盟国であるアメリカとの関係をうまく処理できないのではないかという疑念を持つことになれば、それはオバマ政権にとって喜ばしいことだ。当然のことながら、ヘルツォグはこの機会を利用して、アメリカ・イスラエル関係の重要性を訴えている。彼は、イスラエルの安全保障はアメリカとの戦略的信頼に基づいているものであって、両国の指導者が良い関係にあることが重要だと主張している。

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イザク・ ヘルツォグ(右)とケリー国務長官

 

 しかし、これはただのコーヒーカップの中の嵐なのか、それとも、選挙結果をネタニヤフ首相に不利にすることはないにしても、ネタニヤフ首相追い落としの一致した行動なのだろうか?ジェイムズ・ベイカー元国務長官は、常々「曲芸師のように乾草の俵の上には乗らない」と発言していた。私はフォーリン・ポリシー誌の読者の殆どもそう考えていると思う。

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ジョージ・H・W・ブッシュ(左)とジェイムズ・ベイカー 

 

しかし、それでうまくいくだろうか? 確かに、ベイカーはそうした慎重な態度でいくつかの洞察を得たことだろう。1992年、イツハク・ラビンは僅差でイツハク・シャミルを破った。その理由は、ベイカーとジョージ・HW・ブッシュ(父)大統領の努力であった。彼らは、イスラエル首相であったシャミルに対して、イスラエルの入植政策に対しての不快感を表明して、入植地に対する住宅ローン保証を与えないと決めた。これがイスラエルの有権者は、シャミルがアメリカとの関係で間違いを犯したと判断するためのシグナルとなった。一方で、ビル・クリントンは1996年の総選挙でネタニヤフと争っていた現職のペレス首相を助けようとしたが、うまくいかなかった。その他の問題であるハマスによるテロ、選挙戦術の失敗、レバノン問題が決定的な要素となり、ペレスは敗北した。

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ラビン(左)とシャミル

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シモン・ペレス(左)とビル・クリントン

 

3月17日のイスラエルの総選挙の結果を左右する要素が多くある。そして、バラク・オバマ大統領がこの選挙において重要な要素とはならない。実際、イスラエルにおいては、オバマ大統領はクリントンほどには愛されていない。2014年1月の世論調査によると、イラン問題に関して、20%がオバマ大統領を信頼し、50%強がオバマのイスラエル観を心配しているということだ。とにかく、イスラエル国民はオバマ大統領がホワイトハウスにいるのも後2年くらいであると分かっている。しかし、彼らはまた、アメリカ・イスラエル関係は重要であること、特に中東情勢が激動の時期には重要であることをよく理解している。来たるべき総選挙では、現職のネタニヤフ首相がアメリカとの関係をめちゃくちゃにしたという認識を有権者が持つことは選挙結果に大きな影響を与えることになるだろう。

 

 そして、読者の皆さんはホワイトハウスがその事実に気付いていると信じるべきなのだ。オバマ大統領とケリー国務長官はネタニヤフが政権の座から去り、労働党のヘルツォグとツィッピー・リヴニのコンビが政権の座に付いて欲しいと願っているのだ。そして、オバマとケリーは彼らができることは何でもするだろう。さすがに選挙CMに出ることはできないが、労働党の2人を勝たせるためにそれ以外は何でもやるだろう。

 
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リヴニ
 

(終わり)









 
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