古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2016年01月

  古村治彦です。

 

 今回は、アメリカ大統領選挙に関して、「2016年の米大統領選挙は外交問題が大きなテーマ、争点になるだろう」という内容の記事を皆さんにご紹介します。

 

 アメリカ人は外国のことに無関心だと言われます。これは確かにその通りですが、一般的に普通の人々はどこの国の人でもそこまで外国のことに興味関心を持たないものです。今年2016年は米大統領選挙が行われ、新大統領が誕生します。大統領選挙の争点はほとんどの場合、経済でした。具体的には雇用・失業問題、収入の増加と言ったことがテーマになってきました。外国のことや外交政策が最大の争点になったことはほぼありませんでした(冷戦初期は除く)。

 

 そんなアメリカ人でも、現在の中東やヨーロッパの情勢は他人事ではないようです。それは、彼ら自身の生活にテロ攻撃という形で大きな影響を及ぼすと考えるようになっているからです。

 

 何事も始めるのに遅すぎることはない、という言葉はありますが、アメリカ人が自分たちの国アメリカが外国にやってきたこと、これからやろうとしていることについてやっと目を覚ましたのは良いことかもしれません。

 

しかし、アメリカの対外政策はどちらにしても強硬なものになるということは言えるでしょう。民主党のヒラリーが大統領選挙に勝利して、きれいごとを建前にして、外国に介入していく、ということはすでに既定路線となっています。

 

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問題は外交政策なんだよ、バカ野郎(It’s the Foreign Policy, Stupid

 

大統領選挙はほとんどの場合、経済が争点となる。2016年の場合はその例外となるかもしれない

 

ブルース・ストークス(Bruce Stokes)筆

2016年1月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/01/05/its-the-foreign-policy-stupid/

 

 これまでのアメリカ大統領選挙で、外交政策が重要な問題として取り上げられたことは少ない。多くの場合、「問題は経済なんだよ、バカ野郎(it’s the economy, stupid)」ということで、経済が最重要問題となってきた。しかし、2016年の米大統領選挙は例外となるかもしれない。ホワイトハウスの主を目指すレースが過熱しつつある中で、アメリカ国民は、外交政策、特にテロリズムについて考えるようになっている。そして、有権者の多くは、2016年のアメリカが直面している最重要の問題は、経済ではなく、国家安全保障だと考えている。

 

 2011年12月、2012年の米大統領選挙の直前にピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、55%のアメリカ人たちが、失業、貧困、不平等など、経済に関する不安を最も重要な問題だと考えていた。国防やイラク戦争のような国際問題を最重要だと考えた国民は6%だけだった。2014年12月の時点では、アメリカの抱える問題について、9%の国民が外交政策を挙げ、34%の国民が経済問題を挙げた。しかし、2015年12月の時点では、32%の国民が国際問題を最重要の問題だと捉える一方、23%の国民が経済問題を最重要だと考えるという結果が出た。

 

 アメリカ人が現在の世界で懸念を持つ場合、その多くの部分を占めるのはテロリズムだ。サンベルナルディーノでの銃乱射事件が起きる直前、パリでテロ攻撃により、多くの人々が殺傷された。この時、18%のアメリカ人が、アメリカの直面している問題の中で最も深刻な問題がテロリズムだと考えているという結果が出た。2014年12月の段階では、この数字は1%であった。25%のアメリカ人は2016年にイスラミック・ステイトやイラクとシリアの戦争がアメリカにとって最大の問題となると答えている。

 

 しかし、テロリズムとイスラミック・ステイトは、人々の中で混同されているかもしれない。ロシアにおいて確立されつつある権威主義的政治体制から世界規模の気候変動まで、アメリカの存立にとっての潜在的な国際的脅威のリストについて尋ねられた場合、83%のアメリカ人がイスラミック・ステイトを「大きな脅威」だとして、リストのトップに挙げている。2014年8月の段階で、この数字は67%であった。その他の国際的な問題に関してはこれまでとそんなに変化はしていない。国際的な脅威について考える場合、アメリカ人はテロリズムとイスラミック・ステイトを混同している。

 

約6割(62%)のアメリカ人がイランの核開発プログラムをアメリカの存在にとっての深刻な脅威だと見なしている。そして、ほぼ同じ割合(59%)のアメリカ人が北朝鮮の核開発プログラムに懸念を持っている。興味深いことに、これら2つの懸念は、中国の世界大国としての勃興に対する不安(49%)やイスラエル・パレスチナ紛争(43%)を超えているのだ。

 

 今回の大統領選挙で言えば、外交政策の重要性について共和党支持者と民主党支持者との間で分裂が起きている。共和党支持者の42%、民主党支持者の24%が、アメリカが直面している諸問題の中で国際的な懸念が最も深刻だと答えている。

 

 アメリカの存立にとっての国際的な脅威に関して、同様の党派的分裂が存在する。共和党支持者、民主党支持者両方ともイスラミック・ステイトについて懸念を持っている。しかし、両者には14%の温度差がある。共和党支持者の93%、民主党支持者の79%が懸念を持っている。共和党支持者の約8割(79%)、民主党支持者の約5割(52%)が、イラクの核開発プログラムを深刻な問題だと考えている。イスラエル・パレスチナ紛争と中国の超大国としての台頭に関しては、18%の温度差が存在する。これらの問題の場合、共和党支持者の方が民主党支持者よりも懸念を持っている。

 

 この党派による違いは、テロリズムとイスラミック・ステイトに関してどのように考えるかについての違いを生み出している。

 

 圧倒的な軍事力を使用してテロリズムを抑止するか、もしくは軍事力の使用によって更なるテロ攻撃を生み出す憎悪を作り出すか、について国家は分裂している。しかし、このアメリカ国内の分裂は、深刻な党派分裂を包含している。共和党支持者の72%は軍事力の使用が解決策だと答えている。一方、民主党支持者の66%は、軍事力使用が更なるテロリズムの種となるという懸念を持っていると答えている。

 

 同様に、共和党支持者の75%がイラクとシリアにおける軍事行動について懸念を持っているが、アメリカはイスラム民兵組織を掃討することはできないと答えている。一方、民主党支持者の61%は、アメリカが中東に関与し過ぎることに懸念を持っている。

 

 アメリカの有権者が11月の大統領選挙で投票ブースに入るまでに、テロリズムやイスラミック・ステイトをはじめとする国際問題の懸念が、アメリカ国内で大きな関心を持たれ続けるかどうかは、その時の状況次第だ。その時の状況は誰にも予測できない。景気後退や国内政治のスキャンダルが人々の耳目を再び惹きつけることになる可能性もある。しかし、現在のような危機に瀕した状況の中で、外交政策の分野における「ブラック・スワン」と呼ばれるようなリスクが存在しないなどということはできない。アメリカ国内でのテロ攻撃、シリア、イラク、アフガニスタン、ロシア、中国で状況が悪化することが起きるかもしれない。2016年の米大統領選挙がこれまでの大統領選挙のように、外交政策が最重要のテーマとなっても、驚くには値しない。

 

(終わり)




 
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 古村治彦です。

 

 今回も、2016年1月22日に発売された『BIS(ビーアイエス)国際決済銀行 隠された歴史』(アダム・レボー著、副島隆彦監訳・解説、古村治彦訳、成甲書房、2016年)の海外での書評を皆様にご紹介します。


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 是非、これらの書評を参考にしていただいて、お買い上げいただけましたら幸いです。宜しくお願い申し上げます。

 

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ニューヨーク・タイムズ紙2013年7月19日

 

http://www.nytimes.com/2013/07/21/books/review/tower-of-basel-by-adam-lebor.html?pagewanted=all

 

「彼らにはある秘密があるのだ:アダム・レボー著『バーゼルの塔』」

 

マイケル・フィアーシュ(Michael Hirsh)筆

 

アダム・レボーは最新刊『バーゼルの塔』で国際決済銀行(BIS)の歴史について書いている。この『バーゼルの塔』は、トム・ストッパードの戯曲『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』に似ているところがある。『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』では、『ハムレット』にほんの少しだけ登場する脇役ローゼンクランツとギルデンスターンが主役になり、『ハムレット』の劇中で起きる重要な出来事は背景の役割を果たしている。レボーは、BISはスイスのバーゼルに本拠を置く「中央銀行のための銀行」という曖昧な存在だと書いている。BISは1930年に創設され、ドイツの第一次世界大戦に関する賠償金支払いをスムーズに進めることをその使命とした。そして、BISは、80年以上にわたって、世界経済において重要ではあるが、秘密の役割を果たしてきた、とレボーは主張している。レボーは、「BISは現在、世界で最も重要な銀行となっている。説明責任を全く果たしていないのに、資金、力、隠然たる影響力の世界的なネットワークの中心に君臨している」と書いている。

 

BISは、大恐慌、第二次世界大戦、欧州通貨同盟の創設といった大きな出来事に関して、その裏面に深く関わった。BISには興味深い、そして秘密の歴史を有している。しかし、実際には、BISは歴史の創造者と言うよりは歴史の目撃者であり、スーパーマンと言うよりはフォレスト・ガンプのような存在なのである。レボーは、本書の副題に、陰謀論で出てきそうな「世界を動かす秘密銀行」とつけている。しかし、現在のBISは、そのような存在ではなく、中央銀行関係者たちの会談場所、クラブのような役割を果たしている。国際金融の世界は、今や世界規模で活動する巨大銀行、連邦準備制度、欧州中央銀行、その他の各国中央銀行によって動かされている。そして、各国中央銀行はBISのメンバーなのである。たいていの場合、各国中央銀行は各国の利益、もしくは地域の利益を最優先にして政策を立案する。

 

このような状況であるからこそ、BISについて詳しく書かれた本が必要なのである。ブタペストを本拠として活躍しているジャーナリスト、アダム・レボーはBISについて大変素晴らしい本を出版した。この本を読むと、金融は非道徳的な面を持っており、BISはそうした非道徳的なことを行ってきたこと、そして、国際的な資本移動に関してBISはより説明責任を果たす必要があることを教えてくれる。ウォール街の金融機関の重役たちがサブプライムローンの証券化を行い、それがもたらした厄災に対する責任を回避している現代にとってBISが教えてくれる教訓は重要なものである。

 

BISは1930年に秘密裏に創設された。そして多くの罪を犯しながら存続してきた。BISは、大恐慌時代のイングランド銀行総裁モンタギュー・ノーマンのアイディアから生まれた。ノーマンはメフィストフェレスのような外見であり、肩マントを着用し、ヴァンダイク髭を蓄えていた。また、2009年にピューリッツァ賞を受賞したライアカット・アハメドの『世界恐慌(上・下) 経済を破綻させた4人の中央銀行総裁』(吉田利子訳、筑摩書房、2013年)にもモンタギュー・ノーマンは出てきて、重要な(そして不幸をもたらす)役割を果たしている。ノーマンは「世界初の国際的な金融機関」として機能する新銀行の創設を望んだ、と書いている。そして続けて次のように書いている。「新銀行は、中央銀行総裁たちの会談場所となる予定であった。そこでは政治家からの要求や鵜の目鷹の目のジャーナルリストたちの詮索から自由になって、銀行家たちは世界金融システムが必要としている秩序と協調をもたらすべく話ができることになっていた」

 

ノーマンの提案を熱心に支持したのがヒャルマー・シャハトであった。シャハトもまた20世紀の金融の世界に出現したファウストのような人物であった。ドイツ帝国銀行総裁シャハトは新銀行をドイツの第一次世界大戦の賠償金の支払い負担の過酷さを緩和する役割を果たすものだと考えた。その後、ナチスが権力を掌握した時、戦勝国側をうまく出し抜いてドイツの賠償金支払いを完全に停止するのにBISが利用できると考えた。1930年代、シャハトは魔法のような手法を用いてドイツの財政を立て直した。これによってアドルフ・ヒトラーは戦争を行うことができるようになった。ずる賢いが、聡明な総統ヒトラーは、彼のために働く銀行家シャハトについて、「生き馬の目を抜く金融の世界でも、知性溢れるアーリア人がユダヤ人よりも優秀であることを示している」と称賛していた。

 

第二次世界大戦が始まった。この時期、BISは最も暗い時代を過ごさねばならなかったし、金融の歴史における最も恥ずべき出来事の一つがこの時期に発生した。スイスが中立であったために、バーゼルは「国際的なオアシス」のような存在となった。しかし、BISは中立などではなく、連合国側に対してよりもナチスに対してより協力的であった。チャールズ・ハイアムの『国際金融同盟―ナチスとアメリカ企業の陰謀』(青木洋一、マルジュ社、2003年)をはじめとする既刊の様々な本で描かれているように、BISの理事たちは、ナチスが占領した国々で略奪したり、強制収容所で殺害された犠牲者たちの遺体から取り出した金歯を溶かしたりして集めた金の売却を手助けした。そして、理事たちは、ドイツ第三帝国が金の売却で現金を得られるようにし、その現金で戦争遂行に必要な天然資源を購入する手助けも行った。BISはドイツを外の世界とつなぐ配水管のような役割を果たした。ドイツ帝国銀行副総裁エミール・プールはBISをドイツ帝国銀行の「唯一機能している海外支店」と評した。プールの友人トーマス・マッキトリックはアメリカ人で、戦時中BISの総裁を務めた。レボーはマッキトリックについて、「戦時中、ドイツ帝国銀行首脳部に経済面の、そして金融上の重要情報を繰り返し提供していた」と書いている。レボーは、マッキトリックが「ヒトラーのために活動したアメリカ人銀行家」と言う役割を果たしたにもかかわらず、それが問題にならなかったと書いている。確かに、マッキトリックは戦後、チェース・ナショナル銀行の副頭取に収まっている。

 

BISは戦時中、道徳に反した行為を行った。これに対して、1944年にアメリカのニューハンプシャー州ブレトンウッズで開催された会議の席上、米財務長官ヘンリー・モーゲンソーとアメリカ代表団を率いていた財務次官ハリー・デクスター・ホワイトはBISの解散と、新設の世界銀行と国際通貨基金による戦後の国際システムの構築を主張した。しかし、ジョン・メイナード・ケインズをはじめとするBISの後援者たちは有力者が多く、彼らの介入によってBISの存続が決まった。

 

BISは、顧客である中央銀行間の金と外貨準備の売買を仲介し、各国の中央銀行に対しての短期融資と資産管理サービスを提供するように設計されていた。しかし、現在、このような業務は必要ではなくなっている。BISはその変化に富んだ歴史や存在理由を2回も喪失するという経験を乗り越えて存続してきた。BISの存在理由はドイツの賠償金支払いとブレトンウッズ体制下での金本位制の維持であったが、これらは消失してしまった。1960年代以降、BISは欧州通貨同盟発足の準備を行ってきた。そして、続いてより重要な欧州通貨機関と欧州中央銀行の創設の準備に取り掛かった。

 

現在、BISは、啓蒙的な役割を果たすようになっている。BISは、銀行業監視のためのバーゼル委員会の開催場所となっている。バーゼル委員会は、国際業務を行う民間銀行が自発的に守る自己資本比率を決定することを目的にしている。そして、BISは金融に関する専門知識をも提供している。BISの経済調査・研究に従事しているスタッフたちは、1990年代後半に発生したアジア通貨危機やそれから10年後のサブプライムローン危機に対して警告を発していた。彼らは先見の明がある予言者のような役割を果たした。BISは2008年に発生した金融危機に向かう数年間に警告を発していた数少ない金融機関の一つであった。しかし、レボーが主張しているように、「BISは問題があることは知っていたが、各国の政策立案者たちが金融危機の発生を防ぐ方策を採る、もしくは衝撃を和らげる方策を採るように説得することはできなかった」のである。実際のところ、BISには動揺はなく、BISはただバーゼル委員会の開催場所でしかない。BISは各国の中央銀行の総裁たちが運営している。そして、BISは大きな影響力を持っている。

 

現在においても、BISは、理事会のメンバーとなっている18の中央銀行よりも情報公開が遅れている状態だ。BISの資産は差し押さえられることはない。民間銀行の自己資本比率の決定過程は曖昧である。そして、多くの批評家が述べているように、BISが行う勧告の内容は甘すぎるものだ。BISは国際機関を創設することは容易なことであるが、廃止することは困難という事実を示している。レボーは、結論として、「BISは21世紀を通じて信頼を醸成するだろう。しかし、BISの存在にとって信頼など必要なものではないのだが」と書いている。

 

(終わり)

 

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ウォールストリート・ジャーナル紙 2013年6月24日

 

http://online.wsj.com/article/SB10001424127887324577904578555670685396736.html

 

「本棚:テクノクラートたちのクラブハウス(A Clubhouse for Technocrats)」

 

国際決済銀行(Bank for International Settlements)は、中央銀行関係者たちのために用意された議論の場という存在以上に、ある種の非民主的な倫理を体現した存在である。

 

フィリップ・デルヴェス・ブロウトン(Philip Delves Broughton)筆

 

中央銀行総裁たちに対しては、聡明で影響力はあるが、説明責任を果たしていないという批判がなされる。彼らはワシントン、ロンドン、そしてフランクフルトから出てくると、名言を口にし、頭の良さを私たちに示す。彼らのやることを調査することはできない。その結果、彼らのやることは魔法のように感じられる。ただ投票するしかできない有権者たちが、中央銀行の総裁たちが駆使する魔法を理解できるだろうか?そんなことは放っておくのがより良いことだと多くの人たちは考えるだろう。

 

アダム・レボーの新刊『バーゼルの塔:世界を動かす秘密銀行の隠された歴史』は、彼ら金融界の神官たちに対する挑戦というような内容になっている。レボーは、彼ら中央銀行総裁たちは 彼らは民主政体が最も恐れなければならない存在である。彼らは金融分野におけるルールを利用する暴君たちである。彼らは文民が統制する軍隊や議会がコントロールできる存在などよりも危険なのである。

 

国際決済銀行は、その何の面白味もない名前とは裏腹に、特別な存在であり、強力な野獣のような存在である。BISは1930年に創設された。ドイツが賠償金支払いの負担を何とか軽減しようと努力していた時、ヨーロッパ各国の中央銀行総裁たちが集まって協議して創設が決定されたのである。長年にわたり、BISはバーゼル駅の近くのホテルであった小さな建物に本部を置いていた。世界中の中央銀行の総裁たちは毎月BISに集まり、BISが提供する素晴らしい雰囲気の中で、最新の問題について私的に話し合い、夕食を楽しむ。BISは中央銀行の総裁たちのクラブハウスなのだ。

 

しかし、BISはただのクラブハウス以上の存在である。BISには600名の職員がおり、彼らはスイスに居住している限りにおいて外交特権を享受している。BISは中央銀行間の取引の決済を行う清算機関であり、同時に融資も行うし、資産管理に関するサービスも提供する。BISはまた研究機関でもあり、BISのアイディアからユーロが実現し、銀行業に対する規制も生み出された。BISの銀行業監視バーゼル委員会には法的な強制力は存在しないが、道徳的、そして知的な権威によって民間銀行の資本と流動性に関して必要な条件を設定している。BISは年間10億ドル以上の売り上げを記録している。この売り上げには税金がかからない。そして、彼らは株主である各国の中央銀行に配当を支払っている。

 

これこそが権力者共同謀議論を信奉する人々(陰謀論者とも呼ぶ)の抱く夢なのだ。

 

レボーが述べているように、BISは、「世界を最もうまく運営できるのはテクノクラートだ」という考えを象徴している存在だ。BISを政治家に任せてしまえば自分たちの権威づけのために利用するだろうし、そもそも一般の人々はBISになど興味を持たない。そこで、経済学の博士号を持っていて、何でもよく知っている人々に、秘密のうちに仕事をさせることになる。これがBISの現実なのだ。『バーゼルの塔』の説得力のある書籍だ。それは、彼がBISに対して異議申し立てを行うことを目的にして書いているからだ。この本からは、レボーがアイダホの片田舎の小さな家でこの本の原稿を書いていて、彼の子供を誘拐するために国連やゴールドマンサックスの職員がその家に侵入してくるのを待っている、そんなある種の気迫が感じられる。

 

レボーはBISの創設から欧州統一通貨ユーロの導入で果たした役割、その結果としてもたらされた現在のヨーロッパ経済の混乱を一つの線で結んでいる。また、BISがドイツ第三帝国と行った非難すべき取引についても多くのページを割いて書いている。レボーは、BISは金融の分野で重要な役割を果たしてきたが非道徳的であり、この非道徳性は大変に危険だと考えているようだ。

 

BISが背負っている恥ずべき原罪、それは、BISがドイツ第三帝国を他国と区別なく取り扱ったことだ。1939年、ナチス・ドイツはプラハに侵攻した。その直後、BISはチェコスロヴァキアの保有していた金をベルリンに移すことを手助けした。第二次世界大戦中、BISの幹部たちはナチスとIGファルベンのような企業群と深い関係を維持していた。IGファルベンのような企業群はナチスに協力し、ホロコーストが効率的に実行される手助けをした。BISの理事を務め、ナチス政権下でドイツ帝国銀行副総裁を務めたエミール・プールは、BISのことを「ドイツ帝国銀行の唯一の海外支店」と評した。

 

戦後、BISは、ハンナ・アーレントが「机上の殺人者たち」と呼んだドイツの銀行家と産業資本家たちのために経歴や評価のロンダリングサービスを提供した。彼らは、経済的に統合された新生ヨーロッパの柱石として再び表舞台に登場した。1946年までBIS総裁を務めたアメリカ人のトーマス・マッキトリックは、IGファルベンの重役たちが逮捕され起訴されて有罪になっても、短い刑期になるように行動した。ナチス政権下、ナチスと深い協力関係にあったIGファルベンのCEOだったヘルマン・シュミッツはその恩恵を受けた一人だ。シュミッツは戦後、ドイツ銀行の取締役となった。カール・ブレッシングは1930年代、BISに勤務していた。そして戦時中、ドイツのコンチネンタル石油の財務担当取締役を務めていた。コンチネンタル石油は、ドイツ第三帝国の強制収容所の収容者たちの重労働を頻繁に利用した企業の一つである。戦後、ブレッシングは逮捕され投獄されたのだが、国際銀行業の分野の古い友人たちの助けもあって、ドイツ連邦銀行総裁として表舞台に復帰した。

 

「不愉快な、そして人々が話したがらない真実は、戦後ヨーロッパ経済に関するナチスの考えていた計画と実際のヨーロッパにおける通貨と経済統合計画が全く同じ内容だということだ。BISはこの2つをつなぐ糸のようなものだ」とレボーは書いている。

 

レボーは、BISの非道徳的、非民主的な思考様式はいまだに残っていると書いている。レボーは、BISとBISに所属している経済学者やエコノミストたちは「国家主権の消失」についての知的な土台とモデルを提示した。その結実がユーロ導入であった。レボーは次のように書いている。「ヨーロッパ統合プロジェクトとBISの使命両方にとって重要なのは、現在行われている決定、政策、行動が『技術的で非政治的』なもので、一般の人々は何も懸念する必要なないという主張である。しかし、実際のところ、その反対が本当のところだ。選挙で選ばれない人間たちが運営する国家を超える機関に国家主権を明け渡すこと以上に政治的な動きというものは存在しない。バーゼルにある秘密主義で説明責任を負わない銀行によって、国家を超える機関が必要とする財政に関するメカニズムが調整され、運営されるようになった」

 

同じことが金融危機についてでも言える。BISは、発表した2007年から2008年にかけての年度の年次報告書において、過度のレバレッジの危険性に対して警告を発した。しかし、BISは金融危機を阻止することはできず、発生後の状況を少しでも改善することしかできなかった。BISがより民主的な機関であれば、義務を放棄したことについてきちんと説明責任を果たしたことだろう。しかし、BISは説明責任を果たすことなく、特権的な権力を有する、官僚にとって理想郷のような存在なのである。私たちは、各国の中央銀行を通じてではあるが、BISの顧客なのである。しかし、BISに私たちの意見を反映させる手段は存在しない。現在、ギリシアの失業者たちは自分たちの家具を燃やして暖を取っているような状況だ。一方、民間銀行は大きな利益を上げ、中央銀行の総裁たちは緊縮財政を私たちに押し付けながら、自分たちはバーゼルで豪華な食事を楽しんでいる。これは醜い状況だ。そして、レボーはこうした状況をうまく描写して、私たちに伝えている。

 

(終わり)

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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23


メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31

 
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  古村治彦です。

 

 昨年12月に刊行しました『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、古村治彦訳、講談社、2015年12月)はご好評をいただいており、まことにありがとうございます。2016年アメリカ大統領選挙もだんだん本番が近付いてまいりまして、盛り上がって来ております。

 


 私が講談社の運営しておりますウェブサイト「現代ビジネス」に2016年1月14日付で掲載させていただきました「「コーク一族」米大統領選の命運を握る大富豪ファミリーの正体」(
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47359)も多くのアクセスをいただいており、御礼を申し上げます。

 

 現代ビジネスの記事に間に合わなかったのですが、コーク兄弟については、昨年日本経済新聞が買収したイギリスの経済紙『フィナンシャル・タイムズ』紙にインタビューが掲載されました。この中で、コーク一族の総帥チャールズ・コークは、共和党の有力大統領選挙候補者であるドナルド・トランプとテッド・クルーズのイスラム教徒に対する発言やイスラム過激派組織に対する攻撃について批判を行いました。

 

 チャールズ・コークはアメリカのリベラルなメディアからは悪者扱いになっています。彼はバラクオバマ大統領を倒すためにティーパーティー運動に資金を出したり、共和党の政治家たちに多額の献金を行ったりしてきました。しかし、今回の大統領選挙ではまだだれを支持するのかを明らかにしていません。そして、このように、有力候補者であるトランプとクルーズを批判しています。

 

 そもそもコーク一族は、父フレッドが反共産主義であり(極右団体ジョン・バーチ協会の創設メンバー)かつ反中央政府的な人物であり、その影響でチャールズとデイヴィッドのコーク兄弟も反共主義からリバータリアニズムを信奉するようになりました。

 

 このリバータリアニズムはアメリカ保守思想の一潮流ですが、極右的、ナショナリスティックな思想とは違います。個人の自由を徹底的に主張する思想ですから、保守的な思想からすれば、「ラディカルな」考えになります。麻薬の使用や同性愛の結婚などについては、リベラル派と考えを同じくします。

 

 またリバータリアニズムは反中央政府であり、反大きな政府ですから、アメリカ軍の海外駐留に反対します。十字軍の騎士気取りで海外に出ていって戦争なんかするか、そんなものは金の無駄遣いだというのがリバータリアンの考えです。

 

 ですから、コーク兄弟は共和党の大口スポンサーですが、共和党を全面的に支持している訳ではありません。「民主党よりはまだ考えが同じ部分が多いし、民主党政権下では、連邦政府の規制や調査でひどい目に遭った」ということで、共和党を応援しているのです。

 

 彼らの信奉するリバータリアニズムはですから、共和党のネオコンや民主党の人道主義的介入派に対抗する思想にはなるのですが、「市場の機能」を強調し過ぎるために、共和党の中でも主流派になることは難しいのが現状です。

 

 それでもコーク兄弟が持つ資金力は大統領選挙において大きな意味と存在感を持ちます。彼らの動きにはこれから注目していかねばなりません。

 

(貼り付けはじめ)

 

January 8, 2016 2:45 pm

Charles Koch attacks Republican hopefuls Trump and Cruz

 

Stephen Foley in New York

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/4aa089e0-b58b-11e5-b147-e5e5bba42e51.html#axzz3xMagLixJ

 

One of the largest donors to the US Republican party has attacked Donald Trump and Ted Cruz’s anti-Muslim rhetoric, claiming that ideas floated by the frontrunners in the presidential nomination campaign could complicate the battle against extremist Islamists.

 

Charles Koch’s comments in an interview with the FT not only put him sharply at odds with both Mr Trump and Mr Cruz but reflect his disillusion with the broad field of Republican presidential hopefuls.

 

Billionaire Mr Koch, who along with his brother David controls a network of rightwing think tanks and political action groups that plan to spend $889m to promote free market causes and influence this year’s US elections, said Mr Trump’s idea for registering and banning the entry of Muslims would “destroy our free society”.

 

Breaking with many Republican candidates’ call for an intensified war on Islamist terrorism, Mr Koch argued that military interventions in Iraq and Afghanistan had failed to make the US safer. Referring to the number of countries hosting the world’s 1.6bn Muslim population, he added: “What are we going to do: go bomb each one of them?”

 

Mr Trump repeated his proposals for a ban on Muslim tourism and immigration to the US in a TV advertisement this week, his first of the campaign. The latest national polls give him a double-digit percentage lead over rivals and he continues to attract crowds of thousands to his rallies.

 

Questioned about Mr Trump’s proposals, Mr Koch asked: “Who is it that said, ‘If you want to defend your liberty, the first thing you have got to do is defend the liberty of people you like the least?’”

 

Other Republican candidates are also competing with Mr Trump to sound tough on Islamist terrorism, in the wake of shootings in San Bernardino, California, last month. Mr Cruz, leading in polls in Iowa, which holds the February 1 caucus that kicks off the presidential contest, vowed to carpet-bomb Isis strongholds at the most recent Republican television debate, which took place after the interview with Mr Koch.

 

I have studied revolutionaries a lot,” said Mr Koch, the chairman and chief executive of Koch Industries, the US’s second largest privately held company, and something of a hate figure for the American left.

 

Over a pulled-pork sandwich in the staff canteen of Koch Industries, the businessman at its helm talks about power-broking for the Republicans and reshaping his ‘evil guy’ image

 

Mao said that the people are the sea in which the revolutionary swims. Not that we don’t need to defend ourselves and have better intelligence and all that, but how do we create an unfriendly sea for the terrorists in the Muslim communities. We haven’t done a good job of that.”

 

Mr Koch said his political organisation had presented all the Republican candidates with a list of issues it wanted on the agenda — including an end to subsidies and tax breaks for corporations, cutting the red tape required to set up small businesses, a large deficit reduction plan, and criminal justice reform — but that “it doesn’t seem to faze them much”.

 

He added that Mr Trump was “not the only one that’s saying a lot of things that we disagree with...If we only supported organisations and politicians that we agreed with 100 per cent, we wouldn’t support anybody.”

 

(貼り付け終わり)

(終わり)

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  古村治彦です。

 

 今年1月11日付の『ニューヨーク・タイズム』紙に以下のような記事が出ました。タイトルは「ある本によると、コーク兄弟の父親はナチス・ドイツの石油精製施設建設に協力した」となります。内容は、共和党や保守的なグループに多額の献金を行っているアメリカの超富豪たちは元々後ろ黒いやり方で金儲けを行ったと主張する本が出て、その中で、コーク一族が取り上げられており、コーク兄弟の父親フレッドがナチスに協力した、というものです。

 

 記事が取り上げている本は、ジェイン・メイヤーというジャーナリストの『ダーク・マネー』という本で、2016年1月19日にアメリカで発売になります。ジェイン・メイヤーは、『ニューヨーカー』誌の記者で、コーク兄弟についての詳しい記事を全米初めて書いた人物です。

 

 私が翻訳しました『アメリカの真の支配者 コーク一族』でも、メイヤーの話が出てきます。しかし、メイヤーの本に出てくる、フレッド・コークがナチスの協力者であったという話は出てきません。メイヤーは何か新発見の文書などの証拠を見つけて書いたものと思われます。
 


 また、アメリカの富豪たちがナチスに協力した過去を持っているという話ですが、こちらは、私が翻訳しました『BIS国際決済銀行 隠された歴史』にはたくさん出てきます。フォード・モータースやスタンダード石油などの製造業や銀行がナチスの戦争遂行に協力しました。詳しい内容は是非本を手に取ってお読みいただければと思います。

 


 ジェイン・メイヤーの本がこの時期に出るというのは、アメリカ大統領選挙とも関係があると言えます。彼女がターゲットにしているコーク兄弟はこれまで共和党の政治家たちを応援してきました。彼らは父親から会社を受け継いで、それを自分たちの力で大きくしたのですが、その大本である父の会社がナチスに協力したということになると、法的には何もないにしても、道義的な責任を問われます。そして、そうした人たちからお金を受け取っていたとなると、批判や攻撃の対象になります。

 

 コーク兄弟と関係を持たなかった共和党系の政治家はほぼいないと言って良いでしょう。現在の大統領選挙で言えば、自己資金でやっているドナルド・トランプ以外は何かしらの関係があります。そうなると、これは大きな痛手となります。

 

 ここからは妄想になりますが、これはヒラリーを勝たせるための援護射撃ということになります。ドナルド・トランプ以外の政治家たちに打撃となると、共和党の大統領選挙候補者がトランプになる可能性が高まります。しかし、「さすがにトランプを大統領にできない」ということになると、ヒラリーに投票が流れるということになります。

 

 ジェイン・メイヤーが『ニューヨーカー』誌の記者であることを考えると、ニューヨークを拠点としている勢力がバックアップしているのではないかということも考えられます。

 

(貼り付けはじめ)

 

 

POLITICS

 

Father of Koch Brothers Helped Build Nazi Oil Refinery, Book Says

 

By NICHOLAS CONFESSOREJAN. 11, 2016

http://www.nytimes.com/2016/01/12/us/politics/father-of-koch-brothers-helped-build-nazi-oil-refinery-book-says.html?_r=1

 

The father of the billionaires Charles G. and David H. Koch helped construct a major oil refinery in Nazi Germany that was personally approved by Adolf Hitler, according to a new history of the Kochs and other wealthy families.

 

The book, “Dark Money,” by Jane Mayer, traces the rise of the modern conservative movement through the activism and money of a handful of rich donors: among them Richard Mellon Scaife, an heir to the Mellon banking fortune, and Harry and Lynde Bradley, brothers who became wealthy in part from military contracts but poured millions into anti-government philanthropy.

 

But the book is largely focused on the Koch family, stretching back to its involvement in the far-right John Birch Society and the political and business activities of the father, Fred C. Koch, who found some of his earliest business success overseas in the years leading up to World War II. One venture was a partnership with the American Nazi sympathizer William Rhodes Davis, who, according to Ms. Mayer, hired Mr. Koch to help build the third-largest oil refinery in the Third Reich, a critical industrial cog in Hitler’s war machine.

 

David H. Koch, left, and Charles G. Koch. Credit Paul Vernon/Associated Press; Bo Rader/The Wichita Eagle, via Associated Press

The episode is not mentioned in an online history published by Koch Industries, the company that Mr. Koch later founded and passed on to his sons.

 

Ken Spain, a spokesman for Koch Industries, said company officials had declined to participate in Ms. Mayer’s book and had not yet read it.

 

If the content of the book is reflective of Ms. Mayer’s previous reporting of the Koch family, Koch Industries or Charles’s and David’s political involvement, then we expect to have deep disagreements and strong objections to her interpretation of the facts and their sourcing,” Mr. Spain said.

 

Ms. Mayer, a staff writer at The New Yorker, presents the Kochs and other families as the hidden and self-interested hands behind the rise and growth of the modern conservative movement. Philanthropists and political donors who poured hundreds of millions of dollars into think tanks, political organizations and scholarships, they helped win acceptance for anti-government and anti-tax policies that would protect their businesses and personal fortunes, she writes, all under the guise of promoting the public interest.

 

The Kochs, the Scaifes, the Bradleys and the DeVos family of Michigan “were among a small, rarefied group of hugely wealthy, archconservative families that for decades poured money, often with little public disclosure, into influencing how the Americans thought and voted,” the book says.

 

Many of the families owned businesses that clashed with environmental or workplace regulators, come under federal or state investigation, or waged battles over their tax bills with the Internal Revenue Service, Ms. Mayer reports. The Kochs’ vast political network, a major force in Republican politics today, was “originally designed as a means of off-loading the costs of the Koch Industries environmental and regulatory fights onto others” by persuading other rich business owners to contribute to Koch-controlled political groups, Ms. Mayer writes, citing an associate of the two brothers.

 

Mr. Scaife, who died in 2014, donated upward of a billion dollars to conservative causes, according to “Dark Money,” which cites his own unpublished memoirs. Mr. Scaife was driven in part, Ms. Mayer writes, by a tax loophole that granted him his inheritance tax free through a trust, so long as the trust donated its net income to charity for 20 years. “Isn’t it grand how tax law gets written?” Mr. Scaife wrote.

 

In Ms. Mayer’s telling, the Kochs helped bankroll — through a skein of nonprofit organizations with minimal public disclosure — decades of victories in state capitals and in Washington, often leaving no fingerprints. She credits groups financed by the Kochs and their allies with providing support for the Tea Party movement, along with the public relations strategies used to shrink public support for the Affordable Care Act and for President Obama’s proposals to mitigate climate change.

 

The Koch network also provided funding to fine-tune budget proposals from Representative Paul D. Ryan, such as cuts to Social Security, so they would be more palatable to voters, according to the book. The Kochs were so influential among conservative lawmakers, Ms. Mayer reports, that in 2011, Representative John A. Boehner, then the House speaker, visited David Koch to ask for his help in resolving a debt ceiling stalemate.

 

Dark Money” also contains revelations from a private history of the Kochs commissioned by David’s twin brother, William, during a lengthy legal battle with Charles and David over control of Koch Industries.

 

Ms. Mayer describes a sealed 1982 deposition in which William Koch recalled participating in an attempt by Charles and David to blackmail their fourth and eldest brother, Frederick, into relinquishing any claim to the family business by threatening to tell their father that he was gay.

 

David Koch has since described himself as socially liberal and as a supporter of same-sex marriage.

 

Correction: January 12, 2016

An earlier version of a capsule summary for this article misspelled the surname of the author of a new book about the history of the Koch family. She is Jane Mayer, not Meyer.

 

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は、昨年末に発表された、戦時中の韓国人慰安婦問題に関する合意に関する、ヘリテージ財団のブルース・クリングナー研究員の論説をご紹介します。

 

 目新しさのない、一般的な解説記事ですが、ヘリテージ財団とクリングナー研究員については今年もしっかり観察しておかねばならないと考え、論説をご紹介することにしました。

 

 世界情勢が不安定さを増している中、今回の日韓合意も世界と絡めて見る、言い換えると、アメリカの国益と絡めて見る必要があります。そうすると、今回の合意は、対中国、対北朝鮮という要素が大きいことが分かります。

 

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韓国と日本が「慰安婦問題」問題を解決(South Korea and Japan Resolve ‘Comfort Women’ Issue

 

ブルース・クリングナー(Bruce Klingner)筆

2015年12月28日

『ザ・デイリー・シグナル』誌

http://dailysignal.com/2015/12/28/south-korea-and-japan-resolve-comfort-women-issue/

 

月曜日、韓国と日本は長年にわたり、両国の間を引き裂いてきたいくつかの問題の解決に合意した。これは記念碑的な出来事だ。これらの諸問題は1910年から1945年まで続いた日本の朝鮮半島支配の結果として生まれたものだ。

 

 両国を最も感情的にしてきた複雑な問題として、「慰安婦」と呼ばれる制度例となることを強制された女性たちの存在がある。

 

 日本側は、この問題は、賠償を含めて、1965年に結ばれた、日韓の国交正常化のための日韓基本条約とそれ以降の複数回の謝罪声明で解決済みだと主張してきた。韓国側は、解決のためには更なる手段が必要だと主張してきた。

 

 韓国外相と岸田文雄・日本外相は、最終合意に向けて韓国の首都ソウルで会談した。合意内容の骨子は以下の通りである。

 

・日本政府は10億円(約830万ドル)を賠償として支払う。

・安倍晋三総理大臣は慰安婦に対して謝罪と反省を表明する。

・韓国政府は、市民団体に対して、ソウルの日本大使館近くに設置してある慰安婦の銅像の撤去を市民団体に要請する。

・日韓両国は、双方を批判しないことを約束し、今回の解決が「最終的で、覆されることのない」ものだと確認する。

 

 会談後の記者会見で日本の岸田外相は、日本は、女性たちを強制的に奴隷的労働に従事させたことに関して「責任を痛感」する、こうした強制的な労働によって「被害者となった女性たちの尊厳を傷つけることになった」と述べた。岸田外相は安倍首相が反省の意を表明し、「心からの謝罪」をし、今回の合理を誠実に履行することで、被害女性たちの尊厳を回復することに貢献したいと述べた、と語った。

 

憎しみの醸成

 

 日韓関係は、長年にわたり、度重なる緊張によって憎しみの醸成が行われ、常に良好な関係とは言い難い状態にあった。従軍慰安婦問題は、1990年代に生存者たちが初めて自分たちの苦難の物語を口にし始めてから、20世紀の日本による朝鮮半島支配に対する怒りの象徴となった。

 

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は、慰安婦問題を二国間の抱える諸問題のよう点であるとし、安倍首相との首脳会談を拒否した。そのために、慰安婦問題はこれまで以上に日韓両国にとって重要さを増した。しかし、安倍首相と朴大統領は2015年に両国関係を改善し、年末までに慰安婦問題の解決することを目指すと明言していた。

 

 今回の合意は、日韓両国の相互信頼を構築し、日韓関係を改善するために、慰安婦問題を解決するための効果的な基盤を提供するものだ。

 

●アメリカにとって日韓の合意が意味するもの

 

 アメリカは、アジアにおける同盟諸国が歴史における相違点を乗り越え、現在の北朝鮮と中国の脅威に対応することが出来ることになる今回の合意を歓迎するだろう。アメリカ政府は、歴史問題についての日韓両国の非妥協的な態度に苛立っていた。

 

 日韓関係の改善を阻害する要因を取り除くことで、悪化する北朝鮮の核の脅威を抑止するために、アメリカ、日本、韓国の間の軍事的な協力関係を増進することになる。2012年6月、韓国政府は日本政府との間で軍事情報共有に関する合意を拒絶した。この合意は、北朝鮮のミサイル攻撃に対しての三カ国の防衛体制を改善することに貢献するはずであった。

 

 今回の日韓合意によって、韓国は、安全保障に関する同盟諸国との合意を復活させることになるだろう。そして、自国の弾道ミサイル防衛システムを同盟諸国とつなげることによって、より包括的で効果的なものとすることが出来る。

 

今回の合意は、安倍首相と朴大統領の外交上の粘り強さと勇気がもたらした成功である。これによって両国間の克服しがたい相違を乗り越えることが出来た。しかし、合意がなされたことで、日韓両国の指導者はそれぞれの国のナショナリスト的な要素を押し返さねばならなくなっている。

 

 日本帝国陸軍の戦時中の残虐行為への関与を否定している日本の極右グループは、今回の日韓合意を骨抜きにしようとしている。韓国の非政府組織は日本側の反省の意を評価せず、日本側の更なる譲歩を求めている。

 

 韓国の市民団体が日本大使館前に設置した慰安婦の銅像を撤去する、もしくは将来の抗議運動を止める、といったことを拒否する場合、日本は合意内容を履行しないこともあり得る。また、戦時中の日本の行為に対する法的責任に関する解釈の違いでまた更なる困難が出てくることもあるだろう。

 

※ブルース・クリングナー:ヘリテージ財団付属アジア研究センター北東アジア担当上級研究員。CIAと国防情報エージェンシーの情報畑で20年勤務した。

 

(終わり)


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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




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第11回 副島隆彦の“予言者”金融セミナー

『再発する世界連鎖暴落』発刊記念~講演会~

カバー
 
 

開催日:2016年3月20日(日)

開演:12時(開場・受付11時)途中、休憩あり

終了:17時00分(予定)

受講料:15,000円(税込)/指定席

会場:東京証券会館

   東京都中央区日本橋茅場町1-5-8

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アクセス:東京メトロ東西線・東京メトロ日比谷線 茅場町駅8番出口直結

企画・運営:ブレイントラスト企画

主催:(有)アールシステム

 

お問い合わせ

(有)アールシステム ブレイントラスト企画

101-0051 東京都千代田区神田神保町3-2-1 サンライトビル601

電話:03-6261-5465(平日10~18時)[2015年12月26日~2016年1月5日は冬期休業]

ファックス:050-3153-2488

Eメール:bt-soejima@nifty.com



(終わり) 





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23




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野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 昨年末から今年初めにかけて、世界的には何だか元気のない状況になっています。2016年に景気上昇するという予測は立ちづらく、更にはテロの危険が世界各国に拡散しているとして、みんなで盛り上がろう、という感じはありませんでした。

 

 日本では昨年末に、日中戦争、太平洋戦争中の韓国人女性の従軍慰安婦問題について、日韓両国で最終的な解決となる合意がなされました。安倍晋三総理大臣は、従軍慰安婦に関して様々な疑義を呈する立場を取っていましたが、最終的には謝罪の声明を、岸田文雄外務大臣を通じて発表しました。日韓両国で外交関係上は「これ以上、この問題を蒸し返さない」ということになりました。今回の合意について、日本の安倍政権を支える右翼や一部保守派、韓国国内の様々な勢力から批判が出されました。今回の合意に関しては、第三国であるアメリカの意向が強く働いて、ある意味で急転直下の合意ということになりました。安倍晋三政権の「リアリスト(現実主義的)」外交の勝利ということを言う人たちもいましたが、第三国、しかも宗主国の意向を受けて慌てて合意するような外交、自主的に自分たちの抱える問題を解決できないような外交はリアリスト外交とは言いません。

 

 中東では、イスラミック・ステイト(IS)に対するロシアの攻撃があり、ISの勢力が減退しつつあるようです。結局、アメリカ(とサウジアラビア、イスラエル)が直接、間接に育てたISの始末をつけるのに、他人であるロシアの手を借りねばならなくなったという大変情けない状況になりました。いい面の皮となったのがシリアで、シリアのバシャール・アサド大統領の政府軍と反政府軍の内戦だったものが、いつの間にか、中東を巻き込む「代理戦争」となって、シリアは悲惨な状況になってしまいました。

 

 そうした中で起きたのが、サウジアラビア、バーレーンとイランの断交(外交関係の断絶)です。サウジアラビアがイスラム教シーア派の聖職者を処刑したことで、イラン国民の一部が激怒し、テヘランのサウジアラビア大使館を襲撃したことがきっかけで、サウジアラビアがイランの外交団の国外追放を決めました。サウジアラビアとしては全て予定の範囲内の、シナリオ通りの行動と言えるでしょう。

 

 イランはアメリカとの間で核開発を巡り、核兵器を開発しないことで合意に達していました。ここからイランとの間で国交正常化まで進む可能性もあります。そうなると、中東世界におけるサウジアラビアの影響力は低下します。更には、ISの脅威もサウジアラビアにとっては深刻です。ここで、不安定な中東世界にさらに不安定な要素を加えることで、低落傾向が続く原油価格は上昇しますし、アメリカも改めて、サウジアラビアに対するご機嫌取りに動くという計算もあるでしょう。 

 

 中東が不安定さを増す中で、アジアでも不安定さを増す事件が起きました。本日、北朝鮮が水爆実験を行ったと発表しました。これによって、北朝鮮を取り巻く日中韓は難しい状況に置かれてしまいます。アジア地域は経済発展が著しい訳ですが、安全保障環境が不安定になれば経済にも悪影響を及ぼすことになります。

 

 新年早々から、世界は不安定な状況に置かれてしまいました。しかし、こうした状況を利用しようとするのが、アメリカのネオコン(共和党)・人道主義的介入派(民主党)です。考えてみれば、こうした状況ではアメリカの軍事介入が望まれるようになるのですから、アメリカの優越と軍事介入を主張している両グループにとっては、渡りに船の状況です。

 

 サウジアラビアとイランが直接、事を構える(ミサイルを撃ちあう)、それにイスラエルが絡むということになれば、中東で新たな戦争が起きるということもあるでしょう。アジア地域では、北朝鮮の存在のために中国が苦境に立たされることもあるでしょう。

(23:05に加筆します。)

 

 私はオバマ政権最後の1年となった2016年、アメリカと北朝鮮との間で、イランやキューバの場合と同じく、ホワイトハウス主導で緊張緩和があるのではないかと考えていました。しかし、今回、北朝鮮が水爆実験を行いました。北朝鮮内部に、アメリカとの緊張緩和を妨害したい勢力がいるのだろうと推測されます。彼らは北朝鮮の今の体制を維持したいのだろうと思います。そして、こうした勢力はアメリカ国内のネオコン・人道主義的介入派とつながっているのだろうと思います。彼らの使嗾もあって、何カ月も前から水爆実験の準備が進められ、今回行われたのではないかと私は考えます。

 
 年末年始にかけて起きたことを一つの線で見てみて、「誰が一番得をするのか」ということを考えると、ネオコン・人道主義的介入派ということになります。アメリカは今年、大統領選挙の年で、来年には新しい大統領が誕生します。昨年の段階で、既にヒラリーの勝利がほぼ確定的と言えるでしょう。彼女の介入主義にとって、世界が不安定であることは、「得」なことなのです。一連の事件の裏には、アメリカの両グループとそれらに結び付いた現地勢力がいることは間違いないと言ってよいでしょう。
 

 アメリカのネオコン・人道主義的介入派が喜ぶような状況になれば、安保法制を成立させている日本に寄せられる期待(命令)は大きなものとなります。2016年、そして新年早々来年のことを言うと鬼が笑うかもしれませんが、2017年は世界にとって何か大きなことが起きて、多くの人々が苦難に苦しむようなことになるのではないか、と私は危惧しています。

 

(終わり)








 
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 古村治彦です。

 

 新年あけましておめでとうございます。旧年中は大変お世話になりました。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


 この度、私の仲間であり、先輩である、下條竜夫博士の著書が発売となります。私は高校1年生で数学と理科で赤点を取り始めて以来、理科系に関しては並以下の知識しかありません。今回の本は下條さんが世の中で起きた自然科学に関する事件を分かりやすく説明されています。私は下條さんに何度も会ってお酒を飲んだり、話をしたりしていますが、いつも穏やかに、笑顔を湛えながら、私(たち)の馬鹿な質問にも答えてくれる方です。

 今回の本では、福島第一原発事故や福知山線脱線事故、小保方晴子氏の「STAP細胞」騒動、和歌山カレーヒ素混入事件などが取り上げられています。数字や数式、化学物質の名前などは、文科系の私(高校1年生の早い段階で理系科目は赤点の常連になりました)には難しく感じましたが、それでも書いてある内容は刺激的です。小保方さんの騒動やカレーヒ素混入事件は、物理学者(自然科学の訓練を受けた人)から見たら、そう見えて、世間の「常識」とは大きく違うことが「確かなこと」、もしくは「確からしい」のだということが分かります。


 そして、自然科学の研究や分析の結果は得てして、「文科系」の最たるものである政治や経済に捻じ曲げられたり、すり替えられたりして、うまく利用されるのだということも分かります。そして、「自然科学のお墨付き」を使って、私たちは騙されてしまうこともあるということも分かります。


 「すべてを疑え」とはよく言われることですが、日本で生まれ育ち、暗記型の学校教育を受けてしまっては、どうやっていいか分かりません。その時に、下條さんが提唱している「批判的思考(critical thinking、クリティカル・シンキング)」が役に立ちます。是非、手に取ってお読みください。宜しくお願い申し上げます。


butsurigakushagatokiakasujudaijkennoshinso

 

 是非、手に取ってお読みください。

 ※ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」内の「今日のぼやき」でも宣伝をしております。こちらもお読みいただければ幸いです。http://snsi.jp/tops/kouhou/1872

 

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推薦文

                            副島隆彦

 

 下條竜夫(げじょうたつお)氏は、気鋭の物理学者(1964年生まれ)であり、大変優れた人である。私が主宰する副島国家戦略研究所(通称SNSI エスエヌエスアイ)の研究員を10年前からやってくださっている。私たちは政治評論や歴史研究をする、いわゆる文科系知識人の集まりである。その中にあって最先端の物理学を専攻している、純粋に理科系の下條氏に加わっていただいて大変感謝している。


 彼は私たちの発表している論文集に、すでに数多く寄稿している。地球温暖化という虚偽を暴いた本『エコロジーという洗脳 地球温暖化サギ、エコ利権を暴く』(成甲書房、2008年)で、二酸化炭素の増加は地球温暖化にはほとんど寄与していないことを証明した。


 下條君は公立大学の若手の准教授で、大学では「物理化学」なる高度な学問を教えている。彼は私たち文科系人間には理解できない難しい物理公式や数式が、すらすらと理解できる。しかも、この本で証明するとおり、彼は政治や思想などの文科系の知識と学問までも習得した。だから下條竜夫氏(現在51歳)は、この科学(サイエン)と政治(ポリティクス)の2つの学問を両輪にして大きな真実に迫ることができている。


 このことが、はっきりわかるのは第1、2章の「福島第一原発事故」の解明である。


 2011年3月11日に東日本大地震が起き、翌日から(正確には25時間後)福島で原発の爆発と放射能漏れが起きた。現地に行きもせず、遠くのほうから知ったかぶりをして、「放射能はコワイ」「子供たちが危ない」と騒いだ人々がたくさん出た。原子力工学と放射能医学の専門家の中にも、ごく少数であるが自然科学(ナチュラル・サイエンス)の正確な知識のふりをして、「危険だ、危険だ」と多くの虚偽を書いた人々がいる。


 私は、事故直後から弟子たちと現地(原発正門前)に入って放射線量を測定した。だから、あのとき放出された放射線量がどれくらい低いものであるかをはっきり知った。私は、あの後の国民的集団狂躁状態に、あきれ返った。その後も続いた怖いコワイの国民的、世界的な馬鹿騒ぎのことも腹の底から苦々しく思っている。


 福島の現地では、事故からやがて5年が経つが、赤ちゃん一人作業員一人誰も事故後の放射能のせいで発病している者はいない。「福島第1原発の事故の結果、日本でおよそ1600人が死亡した。この圧倒的大多数は避難がうまく行われなかったことと、ストレスに起因しており放射能が死因ではない」とニューヨーク・タイムズ紙(2015年9月21日付)は報じた。放射能をコワイコワイと煽(あお)って現地の人々を過剰に避難させたことで、人々にストレスがたまって死に至ったということだ。冷静に事実を現地で見て自分の脳(頭)で考えるということをすべきなのだ。

 

 原発事故のあのとき、日本で〝ショック・ドクトリン〟という政策が実行されたのである。『ショック・ドクトリン』とは、カナダ人の女性評論家のナオミ・クラインが書いた本の書名だ。2011年に岩波書店から日本語訳も出た。大災害や戦争、テロ事件などによって、国民大衆を、一瞬のうちに大きな恐怖に陥(おとしい)れ、ショックとパニックで、正常な判断力を国民から奪い取る。権力者、為政(いせい)者たちによる計画的な悪辣(あくらつ)なやり方だ。このことを、著者のナオミ・クラインは徹底的に暴いた。そのために原子力発電を過剰にコワがる言論と風潮が生まれる。そのことで電力(電気)をつくるコスト(費用)が異常に高くなった。


 これがショック・ドクトリンだ。大惨事を利用して一気に大量に政府が問題を解決するという戦略である。


 この「恐怖と扇動で国民を支配せよ」という手法の恐ろしい実験場が、福島原発の放射能漏れ事故を利用して日本でも実行されたのである。〝ショック・ドクトリン〟のために動転した日本国民は、コワイ、コワイと大騒ぎして、冷静な思考と判断力を失った。


 東大と東工大の原子力工学の専門学者たちは、日本の国策(こくさく)(国家政策)として育てられた人材だ。彼らは原発の製造から運転まで自分たちが行ってきたので、こんな微量の放射線量では誰にも被害が出ないし発病しない、とわかっていた。このことを早い時期に私は知った。ところが、その後、放射線医学の専門医師と、原子力工学の専門工学者たちのほとんどは、政府の命令で黙らされて鬱屈させられている。国民に真実を伝える術(すべ)を奪われた。


 だから、下條竜夫氏のような原発の製造管理の専門家ではないが、原子力工学も放射線物理も十分にわかっていて、しかも文科系の知識人としても話ができる人間が日本に出現したことを私たちは大きな喜びとする。理科系の本物の学者たちが、徹底的にわかりやすく事件や事故について説明しなければならない。そうでなければ福島の原発事故の真実はこれからも見えてこない。ここにこの本の価値がある。

 

 この本で特筆すべきは、第8章の仁科芳雄(にしなよしお)を扱った評伝だ。


 今こそ、〝日本の原爆の生みの親(まだだけど)〟の仁科芳雄(陸軍省委託。戦後のサイクロトロン実験も彼が主導した)の偉大さに日本国民の理解を求めなければいけない。下條氏は、ここに貴重な灯をともしてくれた。本当に頭脳明晰の日本人の理科系の人々であるならば、このことに気づいているはずだ。この仁科芳雄の復活、復権は今後、下條氏の功績となるだろう。


 敗戦後ひどい目にあった仁科芳雄(1951年死去)に私は非常に共感し同情した。仁科芳雄が、隼(はやぶさ)戦闘機を設計した日本ロケットの父、糸川英雄(いとかわひでお)と二人して、日本で一番頭がよかった科学者(ああ、科学者! という不思議なコトバ)だとずっと考えてきた。


 下條氏の仁科芳雄理解の土台は、「湯川秀樹と朝永振一郎は、仁科芳雄が、手塩にかけて育てた彼の忠実な弟子だ」である。彼ら二人は、戦後、アメリカ・ロックフェラー財団に尻尾を振って、パグウオッシュ会議に参加した。ここでアインシュタインという神格化された、相対性理論(そうたいせいりろん)という、何を言っているのか今も誰にも本当はわからない数式の山の理科系という宗教の大神官(グランド・マジシャン)の教徒になった。この二人の本当の先生は仁科芳雄だ。


 朝永振一郎も、湯川秀樹も、恩師である仁科芳雄のことを、戦後まったく書かなかった。自分の先生であり、自分たち二人を育てた仁科芳雄に対して、「戦争期の不都合なことは話さない」として。仁科が死んだときも追悼もしなかった。朝永振一郎と湯川秀樹は、パグウォッシュ会議で、アインシュタインとバートランド・ラッセルの子分になって、ぬくぬくと戦後世界で、「平和のための物理学」という、血塗られた過去を消し去る作業に加担した。


 仁科芳雄は本当に偉大だった。1925年に、コペンハーゲン大学で、ニールス・ボーアが、量子力学(クオンタム・フィジックス)を生み出し誕生させた。その記念すべき現場に若き理論物理学者として立ち会っている。デンマーク、ドイツ人物理学者たちの興奮の渦の中にいて、その激論の中に、たった一人、日本から仁科芳雄がいたのだ。


 今は、〝理研のワカメちゃん〟になってしまってお騒がせ事件を起こしたりしている。この理研(理化学研究所 りかがくけんきゅうじょ)という日本国の理科系の最高級の研究機関の闇の部分にも、そのうち、下條氏がきっと鋭く迫ってくれるだろう。理研は、アメリカからの監視がきついので、今はアメリカ様(さま)に屈服しているように見える。だが本当は、今でも、第三帝国(ダス・ドゥリテ・ラヒ! 嗚呼、偉大なるドイツ民族!)に、密かに忠誠を誓っているだろう。それは日本で最も優れた頭脳をもって生まれた理科系の人間たちの自然な運命である。

 

 宇宙物理学(スペイス・フィジックス)の分野にも、世界宇宙物理学界の体制派(アインシュタイン信奉者。その流れから出たビッグバン宇宙モデルの信奉者たち)に異議をとなえた優れた学者たちが世界中にたくさんいる。コンノケンイチ(1936〜2014)という人がいて、この国の基準では何の学歴もない人だったが、世界中の反アインシュタインや、反ビッグバン理論家たちの文献を懸命に丁寧に日本に紹介した。それを徳間書店が、「スピリチュアル本の中の一冊として」本にした。『ビッグバン理論は間違っていた』(1993年刊)という本である(現在は2011年にヒカルランドから文庫版で出ている)。90年代にものすごくよく売れた本だ。


 それに対する防御として、日本の宇宙物理学の体制派である佐藤勝彦(さとうかつひこ)氏や池内了(いけうちさとる)氏が反撃に出た。彼らは、体制、権力の側の学者であり、民衆、大衆を、「私たちが、おまえたちに教育と試験問題を与えるのだから、私たちが教えるとおりの答えを書きなさい。それ以外は、許しません」と強圧し威圧の態度をとる。池内了氏は『疑似(ぎじ)科学入門』(岩波新書、2008年)という本を出している。「私たちに逆らう者は、理科系の学者、研究者としてはろくな生活はおくらせない」という態度だ。それが支配、体制、権力というものだ。国民教育とか、メディア(報道機関)というのも国民洗脳の一種だ。これに反抗して大きな真実の指摘をする者たちは、何十年も何百年も抑えつけられ、苦しい思いをする。


 それでも大きな真実は、時間の経過とともに塗り壁の後ろから剥がれ落ちるように次第に明らかになる。権力(パウア)、支配(コントロール)、秩序(オーダー)よりも、事実(ファクト)と真実(トルース)そして、それを勇気を持って書いて、書物にして残す者たちのほうが、時間と時代の波に耐えて勝つ。下條竜夫氏は、第7章の「現代物理学は正しいのか」という文章で、このことにも風穴を開けてくれた。みなさん、読んでください。


 私が下條氏と話していて心底ビックリしたのは、「ビッグバン理論(宇宙膨張説)は、数学的には証明されているのです。だから私たち物理学者はそれに従うしかない。しかし天文学者(てんもんがくしゃ)たちによる観測(かんそく)と、実験からは何の証明もされていません」とのことだった。

 

 日本国で大切なのは、彼ら理科系の人々だ。ところがちっとも恵まれていない。


 理科系の中でも本当に大切なのは、理科系の学者たちではなく、理科系の技術者たちだ。理科系の技術者たちこそが日本の宝である。日本の製造業の大企業に、そういう優秀な技術者が、500万人くらいいるだろう。日本の繁栄はこの理科系の技術者たちのおかげだ。もっとハッキリ書くと、日本の先端技術は、工業高校や高専、そして聞いたこともないような地方の工業大学を卒業した技術屋(エンジニア、テクニシャン)たちがつくりあげたのだ。しかし、彼ら理科系の技術者たちも属国(ぞっこく)技術屋の集団でしかない。ほとんどが計算ロボットのようにされているかわいそうな人たちなのだと、最近、私は本当によくわかる。


 下條竜夫氏は、理科系の物理学者だが、技術屋(エンジニア)だ。実験屋(じっけんや)というらしい。その彼がなんとか、文科系の世界までもわかろうとして、こうして侵入、侵略してきて、文科系の世界にも風穴を開けようとしている。稀有な人である。世によくある本だが、理科系の学者が取り澄まして、文科系が主である一般書籍の読み手に向かって、高みからムズカしいことを講釈している本ではない。


 理科系と文科系という二つの世界をガッシリと繋ぐ人が、こうして出現して、文科系の人々の文の書き方までも必死で習得して書きあげた。この一点がこの本の本当のすばらしさだ。


 「理科系の世界の真実」がもっともっと、明らかにされなければならない。下條氏は、手始めにこの本でそれをやってくれた。しかし、まだまだ、もっと多くの隠された真実がある。彼が、私たちのために今後それらを明らかにしてくれることを、私は強く望みます。

 

  2015年12月                          副島隆彦

 

 

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目次

 

推薦文……… 副島隆彦

はじめに 

第1章 理科系の目からみた福島第一原発事故⑴

    福島第一原発事故の放射性物質放出量の過大評価とそのねらい

      日本がチェルノブイリと同じようになるという恐怖

      風評被害を拡大させた政府の発表

      報告されている数値から予測される放射性物質放出量

      実際に起きなかった健康被害

      高レベル放射性廃棄物最終処分場という原子力村の夢

第2章 理科系の目からみた福島第一原発事故⑵

    マスコミが伝えない原発事故の真実

      福島第一原発の1号機は電源車の電源をつないだために水素爆発を起こした

      3月15日に大量の放射性物質が放出されたのは

        班目委員長の指示によるものだろう

      官邸がSPEEDIの情報を出さなかった理由

      放射性廃棄物の最終処分場を探す

        行政法人NUMO(ニューモ)によってつくられた土壌汚染地図

      地上のセシウム量からがん罹患率を求めたトンデル氏は、

        すでに自分の論文が間違いであったことを認めている

第3章 福知山線脱線(尼崎JR脱線)事故は車両の軽量化が原因である

    理系の目から事件の真相を解明する

      カーブで転倒して脱線した電車は過去にない

      事件の概要と原因が特定されていった過程を追う

      〝なぜ転倒したか〟が書いてある本がある

      揺れて倒れやすかった事故車両

      情報が出てこないJRという会社

第4章 STAP細胞と小保方晴子氏について

    緑色に光る小さな細胞は本当に存在する

      リケジョの星の失墜

      理化学研究所という国の独立行政法人

      30歳の研究者は、ひとりでは、まともな英語論文は書けない

      確かに存在する緑に光る小さな細胞

      小保方晴子氏は天才実験家である

      STAP細胞の捏造は、小保方氏個人ではなく、若山研究室の問題である

      「常温核融合問題」と同じになるだろう論

第5章 和歌山毒カレー事件の犯人を林眞須美被告と特定した証拠は本物か?

    理科系の「科学的に証明された」ということばが、いつも正しいとは限らない

      事件の経緯

      蛍光X線分析法で何がわかったのか?

      鑑定結果に対する疑問点

      鑑定に異議をとなえた京都大学・河合潤教授

      【ふたりの論争内容その1】鑑定結果が意味するもの

      【ふたりの論争内容その2】犯人ではないことを証明した蛍光X線分析測定

      【ふたりの論争内容その3】谷口・早川鑑定について

      犯罪者である証明責任は、観察側にある

第6章 排出権取引に利用された地球温暖化問題

    科学では地球の未来はわからない

      地球温暖化や寒冷化は本当に起きているのか?

      クライメートゲート事件とホッケースティック曲線の捏造

      地球の二酸化炭素濃度が2倍になると気温は何度あがるか?

      では地球は寒冷化するのか?

      コンセンサスという名の世論誘導

      政治的には終わってしまった地球温暖化議論

第7章 現代物理学は本当に正しいのか?

    正しさの判定基準は、物理学の体系との整合性にある

      世に出回る数々の現代物理「否定」本

      マッハの科学哲学

      マッハの哲学を思想の歴史からひもといてみる

      現代物理学は、観測不可能のものを、実際に存在しているとみなしている

      数学的にだけ証明されている現代物理

第8章 仁科芳雄(にしなよしお)こそが「日本物理学の父」である

    政治的に葬られた日本の物理学の英雄をここに復活させる

      新庄尋常小学校の神童

      理化学研究所

      コペンハーゲン大学理論物理学研究所

      日本でただひとり量子力学を理解していた仁科芳雄

      サイクロトロンの建設と宇宙線の観測

      日本の原爆開発

      東京湾に捨てられた仁科芳雄のサイクロトロン

      戦後の仁科芳雄

      仁科芳雄の弟子たち




(終わり)


アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12






メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31






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