古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2016年02月









 

 古村治彦です。

 

 私はインターネット通販のアマゾンで購入することがほとんどです。アマゾンでは本の売り上げの順位が出たり、この本を買った人が他にどんな本を買っているかを本の表紙の写真を並べて表示したりしてくれたりとなかなかサーヴィスが充実しています。ある出版社の方が日本の本の売り上げにおけるアマゾンの占める割合は10%くらいと教えてくれたことがあります。私はそんなものか、もっと大きいんじゃないかなと思いました。

 

それでも私は定期的に本屋さんに行き、書店の棚を見るようにしています。それは立ち読みで面白い本に出会えるし、新刊本の棚で、出版社や書店がどんな本に力を入れて宣伝しているかを見るためです。

 

 中国崩壊論、中国脅威論の本が書店の棚を埋めています。これらの本は異口同音にかつ様々な論点から「中国は大嫌いだ。あんな国は潰れてしまえ」とか「なんで日本の隣にあんな変な国があるんだろう(人間関係では自分が嫌いな相手は自分の姿を映す鏡だなどと言いますが)」と主張しています。

 

しかし、世界は中国について「崩壊するのか、しないのか」という視点では見ていません。「中国はもう大きくなってしまって、崩壊しては困る」、これにつきます。だから、「崩壊しないようにする」ということになります。人口が1100万人のギリシアの債務不履行のためにヨーロッパ各国の指導者たちが集まって、どうする、どうすると額を寄せ合って会議をする時代です。ギリシアの100倍以上の人口を持ち、世界第2位の経済規模を持つ中国がもし崩壊したら、首脳たちが鳩首会議をする暇もなく、各国に致命的な影響が波及していくでしょう。日本で言えば、旅行に来てたくさんの買い物(「爆買い」)をしに来てくれた中国人が来なくなります。

 

日本のテレビが、中国人たちが日本の品物を大量に買って帰る様子を「爆買い」といって報道し、日本の視聴者は「下品だね」と眉をひそめて見ていますが、食べ物を食べたり、バスに乗ったり、品物を買うことでお金を落としてくれるお客さんが一切来なくなるなんてことになったら、どうしようもありません。日本人が中国人の代わりにお金を使うことはありません。

 

 そもそも中国が崩壊するというのはどういうことなのか、というとあまり具体的ではありません。確かにイメージを持つことはできます。人々が中国政府や中国共産党の支配に対して怒り、暴動を起こしてそれが反乱へと発展し、商店や家々を打ち壊したり、略奪したりすること、もしくは株式や不動産の価格が暴落、いわゆるバブル崩壊が起きて、人々が自殺したり、失業者が町に溢れたりということを思い描いているのかもしれません。しかし、中国国内がそうなってしまったら、相互依存関係にある日本もまた無傷ではいられません。その想像したイメージと同じことが日本でも繰り広げられることになる可能性だってあるのです。

 

 世界が求めているのは、「安定」であり、「経済発展」です。その成長センター・エンジンがアジア、特に中国である以上、「中国は汚い」「中国人は野蛮」などといくら言い立ててみても、既に私たちの生活と密接に関わっている(これを相互依存関係interdependenceと英語で言います)以上、もうそんなことも言っていられないのです。

 

 しかし、ここ最近の動きを見ていると、戦後世界において覇権国として、ある程度の安定をもたらしてきたアメリカの力の衰退が起きているようです。そのために世界は不安定になっています。また、アメリカがその衰退を受け入れられずに、じたばたすることで、かえって世界各地に紛争をもたらしていると私は考えます。アメリカの衰退に対して、中国が国力を増進させています。これからの時代は、アメリカから中国へ覇権が移り変わっていく、移行(transition)の時期になっていくと私は考えています。

 

ここで使う覇権国と覇権(hegemony、ヘゲモニー)という言葉は、政治学(Political Science、ポリティカル・サイエンス)、特に国際関係論(International Relations、インターナショナル・リレイションズ)で使われる概念です。政治や国際関係の世界では、どんな人がもしくはどんな勢力が、そしてどんな国が力を持っているのか、そして、それ以外の存在とどのような関係を持っているのかということが重要であり、学問になるとそれを研究します。

 

 「覇権(hegemony)」とは、簡単に言うと、「他からの挑戦を退けるほどの、もしくは挑戦しようという気を起こさせないほどの圧倒的な力を持つこと」が覇権です。そして、国際関係論で言えば、圧倒的な外交力と軍事力と経済力を持ち、他国を自分の言うことに従わせることのできる国のことを覇権国と呼びます。現在の覇権国は言うまでもなくアメリカです。この覇権国が自分の利益になるように、世界のシステムを作り、維持管理する、その恩恵として他の国々は安定とその中で発展することが出来るということになります。覇権国(hegemonic state、ヘゲモニック・ステイト)という言葉は、副島隆彦先生の本を読まれている皆さんには既になじみ深い言葉です。

 

現在の覇権国は、アメリカです。歴史的に見ればスペイン(17世紀)、オランダ(18世紀)、イギリス(19世紀)、アメリカ(20世紀)の各国がそれぞれ歴史の一時期に覇権国として君臨してきました。日本は第二次世界大戦でドイツと共に新旧の覇権国であるアメリカとイギリスに挑戦して敗れ、戦後、アメリカの従属国(tributary state、トリビュータリーステイト)になったというのが世界的な認識です。

 

 この覇権国の歴史を見てみると、全てがヨーロッパの国々です。現在のような国民国家(nation states)による世界の支配・被支配システムができたのは16世紀くらいからです。このシステムを作ったのがヨーロッパであり、大航海時代(Great Navigation)によって世界はこのシステムの中に組み込まれていきました。しかし、このシステムの埒外にあってヨーロッパに匹敵する力を持っていたのが中国です。これまでの西洋中心主義的な世界史に対して、「グローバル・ヒストリー」という研究分野が出現しています。このグローバル・ヒストリーの研究成果から、中国は1800年の段階で世界のGDPの25%を占めていたということが分かっています。しかし、それ以降は海外列強(powers)の食い物にされてしまいます。中国は、「恥辱(humiliation)の時代(1840年第一次アヘン戦争から始まります)」から150年以上を経て、ようやく、元々いた地位に戻っていく過程にあるということが出来ます。

 

 現在のアメリカは、巨大な軍事力を持つ負担に耐えられなくなっている。アメリカは巨額の国債を発行し、中国や日本、サウジアラビアが買い支えている。他国のお金で巨大な軍事力を維持しているのはおかしな話だ。「アメリカの軍事力があるから世界の平和は保たれているのだ。だからその分のお金を払っていると思えば良いのだ」という主張もある。しかし、他国のお金頼みというのは不安定なものだ。国債を買ってもらえなくなればお金が入ってこなくなる。そんなことになれば世界経済は一気に崩壊するから、あり得ないことだという意見もあるが、不安定な状況であることは間違いない。そして、国債を買ってもらっている相手である中国を敵だと考えるのはおかしな話です。敵が国債を買ってくれて手に入れたお金で敵をやっつけてやると息巻いているという図式は間抜けです。

 

 さて、このように外国からのお金で何とか凌いでいるアメリカですが、これで果たして「覇権国」だと大きな顔をしていられるのでしょうか。他国からお金を貢いでもらえるのだから、立派に覇権国だと言えるかもしれませんが、「将来的に覇権国のままでいられないんじゃないの」と考えてしまう人もいると思います。

 

さて、ここからは、国際関係論の分野に存在する覇権に関する理論のいくつかを紹介します。これまで国際関係論という学問の世界で覇権についてどういうことが語られてきたのかを簡単に紹介します。私の考えでは、国際関係論で扱われる覇権に関する理論は現実追認の、「アメリカはやってきていることは正しい」と言うためのものです。それでもどういうことを言っているかを知って、それに対して突っ込みを入れることは現実の世界を考える際に一つの手助けになるでしょう。

 

まず、覇権安定論(Hegemonic Stability Theory)という有名な理論があります。これは、覇権国が存在すると、国際システムが安定するという理論です。覇権国は外交、強制力、説得などを通じてリーダーシップを行使するというものです。このとき覇権国は他国に対して「パワーの優位性」を行使しているということになります。そして、自分に都合の良い国際システムを構築し、ルールを制定します。このようにして覇権国が構築した国際システムやルールに他国は従わないといけなくなります。従わない国々は覇権国によって矯正を加えられるか、国際関係から疎外されて生存自体が困難になります。その結果、国際システムは安定することになります。

 

ロバート・コヘイン(Robert Keohane)という学者がいます。コヘインはネオリベラリズム(Neoliberalism)という国際関係論の学派の大物の一人です。ネオリベラリズムとは、国際関係においては国家以上の上位機関が存在しないので、無秩序に陥り、各国家は国益追求を図るという前提で、各国家は協調(cooperation)が国益追求に最適であることを認識し、国際機関などを通じて国際協調に進む、という考え方をする学派です。

 

コヘインが活躍した1970年代、経済不況はヴェトナム戦争の失敗などが怒り、アメリカの衰退(U.S. Decline)が真剣に議論されていました。そして、コヘインは、覇権国アメリカ自体が衰退しても、アメリカが作り上げた国際システムは、その有用性のために、つまり他の国々にとって便利であるために存続すると主張しました。コヘインは、一種の多頭指導制が出現し、そこでは、二極間の抑止や一極による覇権ではなく、先進多極間の機能的な協調(cooperation)が決定的な役割を果たすだろうと考えました。

 

 覇権国が交替する時には戦争が起きるんだ、ということを主張した学者がいます。ロバート・ギルピン(Robert Gilpin)という人です。ギルピンは、1981年にWar and Change in World Politics(『世界政治における戦争と変化』、未邦訳)という著作を発表しました。ギルピンは、リアリズム(国家は国益の最大化を目的に行動し、勢力均衡状態を志向するとする考え方)の立場から、国際政治におけるシステムの変化と軍事及び経済との関係を理論化した名著、ということになります。アメリカの大学の国際関係論の授業では、この本を教科書として読ませます。国際関係論の分野の古典とも呼ばれています。

 

ギルピンは、覇権安定論(hegemonic stability theory)を主張しました。覇権安定論は、ある国家が覇権国として存在するとき、国際システムは安定するという考え方です。しかし、ギルピンは『世界政治における戦争と変化』のなかで、覇権国の交代について考察しています。

 

『世界政治における戦争と変化』の要旨は次のようになります。歴史上国際システムが次から次へと変わってきたのは、各大国間で経済力、政治力、社会の持つ力の発展のペースが異なり(uneven growth)、その結果、一つの国際システムの中で保たれていた均衡(equilibrium)が崩れることが原因となるとギルピンは主張します。台頭しつつある国が自分に都合がいい国際システムを築き上げるために、現在の国際システムを築き上げた覇権国と覇権をめぐる戦争(hegemonic war)を戦ってきました。台頭しつつある国が勝利した場合、その国が新たに覇権国となり、自分に都合の良い国際システムを構築し、逆に現在の覇権国が勝利した場合、そのままの国際システムが継続することになります。第二次世界大戦について考えてみると、英米が築いた国際システムに勃興していた日独が挑戦したという形になります。

 

現在、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)という各新興大国の経済発展は進んでいる一方で、先進国である欧米、日本の経済成長はほとんどありません。日本のGDPは中国に既に抜かれてすでに久しい状況です。現在世界最大のGDPを誇るアメリカも10年から20年以内に中国に抜かれてしまうという予測もあります。

 

ギルピンの理論は、世界各国の不均衡な発展は覇権戦争を導くとしているので、理論通りになると、アメリカが既存の覇権国で挑戦を受ける側、中国が新興大国で覇権国に挑戦する側になって戦争が起きるということが予測されます。このギルピンの理論は歴史研究から生み出された理論である。スペインが打ち立てた覇権をオランダが奪い、オランダに移った覇権をイギリスが奪取するが、やがてアメリカに奪われるという歴史を踏まえての理論です。

 

それでは、未来のある時点でアメリカと中国が覇権をめぐって戦争するかと問われると、「ここ数年以内という直近の間では戦争はない」と私は考えます。こう考えるにはいくつかの理由がある。第二次世界大戦での日本とドイツ、冷戦でのソ連とアメリカの覇権に挑戦して失敗した国々を見ていれば、「戦争をして覇権を奪取する」と言うのは危険を伴うということは分かります。だから中国の立場からすると戦争をするのは慎重にならざるを得ません。米中それぞれの軍人たちはスポーツ選手が試合をしたくてうずうずしているように「戦争をしてみたい、手合わせをしてみたい」と思っているでしょうが、しかし、政治指導者たちはそんな危険な賭けをすることは考えにくいです。

 

また中国は、アメリカの覇権下で急激な経済成長をしてきたのだから、今のままの環境が維持されるほうが良いのです。アメリカとの貿易がこれからもどんどん続けられ、輸出が出来る状況が望ましいのです。本当はアメリカが不況で輸入が鈍化すると中国も困ります。だから輸出先を多く確保しておくことは重要だが、アメリカがこのまま世界一の超大国であることは現在の中国にとっても利益となります。ギルピンの理論では自国にとって不利なルールが嫌になって新興大国は、戦争をすることの利益と損失を計算したうえで、戦争を仕掛けるということになっています。現在の中国にとっては、現状維持、アメリカが超大国であることが重要だから、自分から戦争を仕掛けるということはないでしょう。アメリカが短期的にそして急速に覇権国としての地位を失い、経済力を失うことを一番恐れているのは、チャレンジャーと目される中国だと私は考えます。

 

また、イギリスからアメリカに覇権が移った過程を考えると、「覇権国が勝手に没落するのをただ見ているだけ」「覇権国の没落をこちらが損をしないように手伝う」という戦略が中国にとって最も合理的な選択ではないかと思えます。イギリスは「沈まない帝国」として世界に君臨し、一時は世界の工業生産の過半を占め「世界の工場」と呼ばれるほどの経済大国となり、その工業力を背景に強大な海軍力を持ちました。イギリスはアメリカの前の覇権国でした。

 

しかし、ヨーロッパ全体が戦場となった第一次、第二次世界大戦によって覇権国の地位はイギリスからアメリカに移動しました。第二次世界大戦においてはアメリカの軍事的、経済的支援がなければ戦争を続けられないほどになりました。アメリカは農業生産から工業生産、やがて金融へと力を伸ばし、超大国となっていきました。そして、自国が大きく傷つくことなく、イギリスから覇権国の地位を奪取しました。イギリスとアメリカの間に覇権戦争は起きませんでした。外から見ていると、アメリカに覇権国の地位が転がり込んだように見えます。中国も気長に待っていれば、アメリカから覇権が移ってくるということでどっしり構えているように見えます。

 

現在の中国はアメリカにとって最大の債務国です。中国はアメリカの国債を買い続けています。中国にとってアメリカが少しずつ緩慢なスピードで没落することがいちばん望ましいのです。「急死」されることがいちばん困る訳です。覇権国が「急死」すると世界は無秩序になってしまい、不安定さが増すことで経済活動が鈍化します。中国としては自国が力を溜めながら、アメリカの延命に手を貸し、十分に逆転したところで覇権国となるのがいちばん労力を必要とせず、合理的な選択と言えます。

 

「覇権をめぐる米中の激突、その時日本はどうするか」というテーマの本や記事が多く発表されていますし、日本でも「日本はアメリカと協力して中国を叩くのだ」という勇ましいことを言う人たちも多いようです。しかし、その勇ましい話の中身も「日本一国ではできないがアメリカの子分格であれば、中国をやっつけられるのだ」というなんとも情けないものです。

 

もし米中が衝突すると、その悪影響は日本にも及びます。日本は中国や韓国といった現在の「世界の工場」に基幹部品を輸出してお金を稼いでいます。米中が戦争をすることは日本にとって利益になりません。だからと言って、日本が戦争を望まなくても何かの拍子で米中間の戦争が起きるという可能性が完全にゼロではありません。このとき、日本がアメリカにお先棒を担がされて中国との戦争や挑発に加担しないで済むようにする、これが日本の選ぶべき道であろうと私は考えます。そして、大事なことは。「日本は国際関係において最重要のアクターなどではない、ある程度の影響力は持つだろうが、それはかなり限定される。そして、アメリカに嵌められないように慎重に行動する」という考えを持つことだと思います。そう考えることで、より現実的な対処ができると思います。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23




メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31



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 古村治彦です。

 

 ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」(http://snsi.jp/tops)で、副島隆彦先生や関連の書籍販売が終了することを受けて、期間限定の割引販売が始まりました。


※本の販売画面へはこちらからどうぞ。

 

 私の著作(単著・翻訳・共著)も販売されています。是非、ご覧ください。私の単著、翻訳に限りましては、ご購入いただいた皆様のお名前を入れて、サインを入れて発送いたします。ご注文の際に、その旨をメッセージ欄にお書きいただければと思います。私の著作だけを4冊ご購入いただいてもいいですし、他の本と一緒に4冊にしてもご購入いただけます。

 

 是非、ウェブサイトをご覧いただき、ご検討いただけますようにお願い申し上げます。私関連の著作は以下の通りです。

 

※本の販売画面へはこちらからどうぞ。


(貼り付けはじめ)

 

(単著・翻訳)

 

●『ハーヴァード大学の秘密』

出版社:PHP研究所

発行年:20141

商品番号:B-30

 

 

●『アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界』

出版社:ビジネス社

発行年:20128

商品番号:B-27

 

 

●『アメリカ政治の秘密』

出版社:PHP研究所

発行年:20125

商品番号:B-26

 

 

●『ネクスト・ルネサンス』

出版社:講談社

発行年:20116

商品番号:B-22

 

 

●『バーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容』

出版社:成甲書房

発行年:20104

商品番号:76

 

 

●『メルトダウン 金融溶解』

出版社:成甲書房

発行年:20097

商品番号:71

 

=====

 

(共著)

 

●『フリーメイソン=ユニテリアン教会が明治日本を動かした』

出版社:成甲書房

発行年:20147

商品番号:116

 

 

●『放射能のタブー』

出版社:KKベストセラーズ

発行年:201110

商品番号:90

 

 

●『悪魔の用語辞典2 日本のタブー』

出版社:KKベストセラーズ

発行年:201012

商品番号:83

 

●『悪魔の用語辞典』

出版社:ベストセラーズ

発行年:200912

商品番号:74

 

 

●『エコロジーという洗脳』

出版社:成甲書房

発行年:200810

商品番号:66

 

(貼り付け終わり)


※本の販売画面へはこちらからどうぞ。

 

 どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23






 

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 古村治彦です。

 

 アメリカ大統領選挙ですが、共和党の予備選挙はドナルド・トランプがリードし、後は、混戦という状況になっています。

donaldtrump001
ドナルド・トランプ

 

私は先日の共和党の候補者討論会で、ドナルド・トランプが使った言葉が気になりました。それは、“I am a common sense conservative” というものです。直訳すれば、「私は常識を持った、常識的な保守主義者だ」となります。ここで使われている、common sense

という言葉は、日本語では「常識」と訳されることが多いです。分解してみると、commonは、「共通の、同じ」となり、senseは「感覚、考え方」となり、「皆が共通して持つ感覚や考え方」ということになります。

 

 アメリカ政治史で最も重要なcommon senseという言葉の使われ方は、1776年にトマス・ペイン(Thomas Paine、1737~1809年)が出版した政治パンフレット『コモン・センス(Common Sense)』であると思います。このパンフレットは、イギリスからの政治的、経済的独立を訴えた書物であり、これに鼓舞された北米植民地の人々が、イギリスからの独立を果たし、アメリカ合衆国が誕生しました。彼らは、「王様」とか「世襲の権威」というものを完全に否定して、民主政治体制に基づいたローマ以来の伝統ある共和国(王様のいない国)を建国しました。

 

 トランプは、「ジェブ・ブッシュにしても、ヒラリー・クリントンにしても“王朝”ではないか」「テッド・クルーズやマルコ・ルビオが支援を受けている金持ちたち、コーク兄弟にしたって世襲じゃないか」と言外に訴えているようです。「『コモン・センス』で否定されて、それに基づいたアメリカという共和国。しかし、実際は富裕な家族が実質的な王朝や世襲の権威になっている。これが共和国の実態ではないか」ということを訴えて、支持を受けているのです。

 

 それでは、トランプを支持している人たちとはどんな人たちなのかということについて、記事をご紹介したいと思います。

 

 2015年12月31日付のニューヨーク・タイムズ紙にネイト・コーンという人が書いた「ドナルド・トランプの最強の支持者たち:民主党員の一つのタイプに分類される人たち(Donald Trump’s Strongest Supporters: A Certain Kind of Democrat)」という記事が掲載されました。

 

Donald Trump’s Strongest Supporters: A Certain Kind of Democrat

Nate Cohn  DEC. 31, 2015

 

http://www.nytimes.com/2015/12/31/upshot/donald-trumps-strongest-supporters-a-certain-kind-of-democrat.html

 

コーンは、民主党系のデータ会社「シヴィス・アナリティクス」のデータを使って、トランプを支持しているのはどんな人たちなのかを分析しています。コーンによれば、トランプを支持しているのは、「教育程度が高くなく、選挙にあまり行かない。共和党の支持者でありながら、ある時期までは民主党支持として登録していた。南部各州、アパラチア山脈、北部の工業地帯に住んでいる」人たちであると結論付けています。

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トランプ支持が多い州は色が濃くなる 


 トランプに関しては、年齢が高く、白人で南部に住む人々が多く資しているという結果が出ています。しかし若い人々や非白人に支持を広げることは難しそうだと記事では書いています。地域的には、「メキシコ湾岸の各州からアパラチア山脈を通ってニューヨークに至る」地域でトランプへの支持が高く、州レヴェルではウェストヴァージニア州で次にニューヨーク、ノースカロライナ、アラバマ、ミシッシッピー、テネシー、ルイジアナ、サウスカロライナの各州ということになります。

 

 トランプへの支持が減るのは西部各州です。ミシシッピー州から西の各州では支持が高くありません。これは1992年の大統領選挙で第三党として出馬したロス・ペローとは全く逆のパターンだということです。

 

 南部各州には保守的な「サザン・デモクラッツ」と呼ばれる人々(民主党支持だが保守的)がいました。彼らは、共和党を支持するようになっています。そういった人々がトランプを支持しています。彼らは、有権者登録の際に「民主党支持」と登録しながら、実際には共和党に投票するという行動を取るようになっています。そして、現在はこうした複雑な状況が少なくなり、共和党支持と登録するようになっています。

 

 それでも、いまだに民主党支持という登録をしている人たちも多く、そういう人たちがトランプを支持しています。記事によると、そうなると、フロリダ、ペンシルヴァニア、ニューヨークといった州では、そうした人たちは共和党の予備選挙に参加できない(共和党支持者として登録されていないため)ということになります。これがトランプが抱える弱点になると記事は述べています。また、これまで選挙にきちんと行ったことがない人たちでもあるというのが2つ目の不安だということです。更には、本選挙になって、トランプが共和党の候補者になって支持を拡大できるのかということも言われています。

 

 トランプの支持層は、中流以下の白人の人々ということです。彼らは金持ち優遇の共和党にも、福祉やマイノリティ政策重視のリベラルな民主党にも反感を持っています。トランプはそうした反感をうまく吸い上げています。そうした人々は、2008年、2012年の大統領選挙では民主党の予備選挙ではヒラリーを支持し、本選挙では共和党の候補者ミット・ロムニーとジョン・マケインを支持しました。

 

 それは大統領選挙でどの州をどの候補者が取ったかを見れば一目瞭然です。私がこのブログで既に書きましたように、大都市を抱える西部湾岸各州、東海岸の北部各州、五大湖周辺の各州はオバマ大統領で勝利を収め、共和党は人口の少ない農業州で勝利を収めました。この傾向は今回の大統領選挙でも変わらないと思います。

 

 昨日、以下のような新聞記事が出ました。メキシコ訪問中のローマ法王がトランプを批判し、これに対して、トランプ陣営が皮肉で返したというものです。

 

(新聞記事貼り付けはじめ)

 

●「ローマ法王、トランプ氏を批判「壁を造るのはキリスト教徒ではない」 陣営は皮肉で返す」

 

The Huffington Post  |  執筆者:Christina Wilkie

投稿日: 20160219 1750 JST 更新: 20160219 1750 JST

http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/19/pope-francis-donald-trump-christian_n_9271072.html

 

 

2016年アメリカ大統領選で、共和党の指名争いトップを走るドナルド・トランプ氏が、信者であるカトリックの最高峰から「教徒ではない」と批判された。

 

メキシコを訪問中のローマ・カトリック教会のフランシスコ法王は218日、専用機の中で、不法入国の防止のため、メキシコとの国境に壁を建設しようというドナルド・トランプ氏の主張について記者に問われ、以下のように答えた。

 

「壁を造ろうとばかり考える人は、それがなんであれ、橋を架けようと考えない人は、キリスト教徒ではない」

 

法王は、アメリカの有権者に対し、特定の候補を支持するよう呼びかけるものではないとしながら、重ねて「そんなことを言ったのであれば、その男はキリスト教徒ではない」と、トランプ氏を批判した。

 

トランプ氏は即座に反応した。陣営から以下のようなコメントを出した。

 

「宗教指導者が、特定の人の信仰を疑うのは恥ずべきことだ」

 

ただ、トランプ氏は、自身が共和党で指名を争うテッド・クルーズ氏について「こんなに噓つきで不誠実な人が、本当にキリスト教福音主義者なのか?」と疑ったことは、都合良く忘れているようだ。

 

法王の言葉がソーシャルメディアで拡散すると、トランプ氏のソーシャルメディア・ディレクター、ダン・スカヴィーノ氏は、こんなツイートを投稿した。

 

「バチカンは100%、巨大な壁に囲まれているのに、法王のコメントは驚きだ。」

 

ちなみに、メキシコとの国境に壁を建設しようと主張しているのは、トランプ氏だけではない。共和党のテッド・クルーズ氏、ジョン・ケーシック氏、ベン・カーソン氏、マルコ・ルビオ氏もみんな、同様のことを言っている。

 

ベン・カーソン氏の広報担当者も18日、トランプ氏を擁護した。NBCニュースに対し「国境の守りを固めようと言っても、キリスト教徒であることを否定されるわけではない」と述べた。ルビオ氏も報道陣に「バチカン市国は出入国者を管理している。アメリカも同じことをする権利がある」と話した。

 

CNNの討論会で、トランプ氏は、法王のコメントが「メディアに誤解された」との考えを明らかにした。

 

「私は法王と争うのは嫌だ。メディアの報道より、もっと穏やかな言い方だったんじゃないか。おそらくメキシコ政府から一方的なことを聞かされたんだろう」

 

トランプ氏は、法王が好きで、機会があればいつでも会うと述べた。

 

「法王は人格者だ。特別な人だ。とてもいい仕事をしている。おそらく間違った情報を与えられて、間違って伝えられたんだろう」

 

(新聞記事貼り付け終わり)

 

 ローマ法王の発言に対して、他の候補者たちも反論しています。国境警備や出入語句管理といった内政問題にローマ法王が絡むことは許さないという態度です。これは、アメリカが建国以来、ローマ法王の影響力について懐疑や警戒を抱いてきたという歴史があるからです。

 また、宗教的迫害から逃れた清教徒(ピューリタン)たちが海を渡り、やってきたアメリカという歴史的な前提からすると、「ローマ法王が信者について個別に批判すること(信仰を疑うこと)は迫害ではないか」という言い方も成り立ちます。

 

ハーヴァード大学教授で、『文明の衝突』や『第三の波』などの著作を遺した政治学者サミュエル・ハンチントンは、最後の大著『分断されるアメリカ』で、アングロ・プロテスタントの伝統がアメリカの基盤であり、その基盤の上に平等、自由、個人尊重といった「アメリカの信条」が築かれ、その上に社会、経済、政治の各制度が成り立っていると主張しました。そして、「マイノリティがアングロ・プロテスタントの伝統に同化せずに、それぞれの伝統や文化に固執すれば、アメリカはアメリカではなくなる」と警告を発しました。簡単に言えば、「アメリカ国内で、“文明の衝突”が起きる」と警告した訳です。

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 プロテスタントは文字通り、カトリック、ローマ法王に対する「抵抗・反抗」から生まれたものです。カトリックとプロテスタントの争いで、血で血を洗う殺し合いまで起きました。「アメリカはプロテスタントの作った共和国だ」というのが、アメリカのアングロ・プロテスタントの伝統ということになります。こうして考えると、ローマ法王は警戒される存在でした。今ではそのような宗教対立はない訳ですが、何かの拍子にそれが出てくることになります。これは、フランス革命後のフランスでも人々を支配してきたカトリック教会、ローマ法王に対する反感や忌避が明確になりました。


 「共和国」であるフランスとアメリカは、ともに革命を経て、人類普遍の価値(自由や平等、基本的人権など)を基盤とする国になったという共通点を持っています。そして、そうした考えからすると、無知蒙昧な人々をたぶらかして、支配してきたカトリック、ローマ法王に対する反感というものが出てきます。今はもうそんなに激しい敵意は出てこないと思いますが、何かの拍子に顔を出すのだろうと思います。

 

 トランプを支持する人たちは、アングロ・プロテスタントの伝統とアメリカの信条に忠実な人々です。トランプ自身はカトリックだそうですが、その考えと発言、行動は、ハンティントンの言う「同化」に成功したアメリカ人そのものです。ですから、最も「アメリカらしさ」を求める人々から支持されるということになります。

 

 アメリカは人口が増えていますが、その中で存在感を増しているのがヒスパニックと呼ばれる人々です。中南米からの合法、不法の移民でスペイン語を話し、カトリックです。そうした中で、白人(プロテスタント)も黒人も人口に占める割合をどんどん小さくさせています。アメリカを建国し、主人公であった白人(プロテスタント)たちは、主役の座を奪われるのではないかという不安を持っています。その不安が怒りとなり、その怒りをトランプがすくい上げている、ということになります。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23








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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12

 

 リアリストであれば、オバマ大統領に対して、「アサドは権力の座から退かねばならない」とか化学兵器使用について「レッドライン」をひく、などと言わないように助言するだろう。それはバシャール・アル・アサドが擁護されるべき存在であるからでも化学兵器が戦時における正当な武器であるからでもなく、アメリカの重要な国益に関わらないし、何よりもアサドと彼の側近たちはとにかく権力を掌握し続けたいともがいているとことは明らかであったからだ。最重要なことは、人命をできるだけ損なうことなく内戦を速やかに終結させることであり、そのために必要とあれば、暴力的な独裁者とでも取引をするということであった。数年前にオバマ大統領がリアリストの意見に耳を傾けていたら、シリア内戦は多くの人命が失われ、国土が荒廃する前に集結していた可能性は高い。これはあくまで可能性が高いとしか言えないことではある。

 

 言い換えると、リアリストが過去20年のアメリカの外交政策の舵取りをしていれば、アメリカの国力を無駄に使うことになった失敗の数々を避け、成功を収めることが出来たはずだ。こうした主張に疑問を持つ人もいるだろう。しかし、「アメリカは世界の全ての重要な問題に対処する権利、責任、知恵を持っている」と主張した人々や、現在は馬鹿げたことであったとばれてしまっている、アメリカ政府の介入を執拗に主張した人々に比べて、リアリストは外交政策でより良い、まっとうなことを主張してきたことは記録が証明している。

 

 ここで疑問が出てくる。それは「リアリズムの助言は過去25年にわたり、ライヴァルの助言よりも好成績をあげているのに、リアリストの文章は主要なメディアには登場しない。それはどうしてか?」というものだ。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ワシントン・ポスト』紙、そして『ウォールストリート・ジャーナル』紙の論説ページに定期的に寄稿しているコラムニストについて考えてみる。この3紙はアメリカにおいて最も重要な紙媒体である。この3紙の記事と論説は他のメディアの論調を決定するくらいの力を持っている。それぞれの新聞のコラムニストは、講演を行ったり、他のメディアに出たりしている。そして、政策決定において影響力を行使している。この3紙はリアリストを登場させることはなく、『ワシントン・ポスト』紙と『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、国際政治とアメリカの外交政策についてのリアリズム的な考えに対して敵意を持っている。

 

 『ニューヨーク・タイムズ』紙の場合、外交問題に関して定期的に寄稿しているコラムニストのリストを見てみると、ネオコン1名(デイヴィッド・ブルックス)と有名なリベラル介入派(トーマス・フリードマン、ニコラス・クリストフ、ロジャー・コーエン)が存在する。ロス・ドウサットは伝統的保守派に分類される。しかし、彼が国際問題について書くことはほとんどなく、世界各地へのアメリカの介入政策を様々な理由を挙げて声高に擁護している。『ワシントン・ポスト』紙は、4名の強硬なネオコン、論説ページの編集者フレッド・ハイアット、チャールズ・クラウトハマー、ロバート・ケーガン、ジャクソン・ディールを起用している。過去にはウィリアム・クリストルを起用していたこともある。定期的に寄稿しているコラムニストには、ジョージ・W・ブッシュ前政権のスピーチライターだったマーク・ティエッセンとマイケル・ガーソン、極右のブロガーであるジェニファー・ルービン、中道のデイヴィッド・イグナティウスと論争好きのリチャード・コーエンがいる。言うまでもないことだが、この中にリアリストはいないし、彼ら全員が積極的なアメリカの外交政策を支持している。昨年に『ザ・ナショナル・インタレスト』誌に掲載されたある記事の中でジェイムズ・カーデンとジェイコブ・ハイルブランが書いているように、ハイアットは「『ワシントン・ポスト』紙を頭の凝り固まった戦う知識人たちのマイク」に変えてしまい、「アメリカ国内で最もひどい内容の論説ページ」を作っている。

 

 ここで明確にしたいのは、こうしたコラムニストたちに執筆の機会を与えることは正しいことだし、私が名前を挙げた人々の多くの書く内容は一読に値するものである、ということだ。私が間違っていると考えているのは、現在の世界政治に関してより明確なリアリス的な考えを発表する人間が起用されていないということだ。ごくたまにではあるが、3紙も不定期にリアリストに論説ページに記事を書かせている。しかし、リアリスト的なアプローチを持っている人々で定期的に論説を書いて3紙から報酬を得ている人はいない。読者の皆さんは、ほんの数名のリアリストがフォックス、CNN,MSNBCのようなテレビの他に、この『フォーリン・ポリシー』誌や『ナショナル・インタレスト』誌のような特別なメディアに出ていることはご存じだと思う。それ以外の主流のメディアには出られないのだ。

 

 これら3つの主要な大新聞がリアリスト的な観点を恐れているのはどうしてなのだろう?リアリストはいくつかの極めて重要な問題に対してほぼ正しい見方を提供してきた。一方、これらのメディアで発表の機会を得てきたコラムニストたちの意見はほぼ間違っていた。私にはこんなことがどうして起きたのかその理由は分からない。しかし、現役の外交政策専門家は、アメリカをより豊かにそしてより安全にするにはどの政策がいちばんよいのかということを必死になって考えるよりも、空疎な希望や理想を語りたがっているのではないかと私は考えている。そして、アメリカは既に強力で安全なので、アメリカは繰り返し繰り返し非現実的な目的を追求し、素晴らしい意図のためにそのために何も悪くない人々を犠牲者になって苦しむことになってしまっているのだ。

 

私は、メディア大企業を経営しているルパート・マードック、ジェフ・ベソス、サルツバーガー一族に訴えたい。リアリストを雇ってみてはどうか?国際問題について評論や提案をする人々を探しているのなら、ポール・ピラー、チャス・フリーマン・ジュニア、ロバート・ブラックウェル、スティーヴ・クレモンス、マイケル・デシュ、スティーヴ・チャップマン、ジョン・ミアシャイマー、バリー・ポーゼン、アンドリュー・バセヴィッチ、ダニエル・ラリソンを検討してみてはどうか?こうした人々に週一回のコラムを書かせてみてはどうか。そうすることで、読者の人々に対して、国際的な問題について包括的なそしてバランスのとれた意見を提供することができる。私が言いたいことは、「あんたたちはいったい何を怖がっているんだい?」ということだ。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23






メルトダウン 金融溶解
トーマス・ウッズ
成甲書房
2009-07-31


 
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 古村治彦です。

 

 2015年12月、そして2016年1月に出版した、『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、古村治彦訳、講談社、2015年12月)と『BIS国際決済銀行 隠された歴史』(アダム・レボー著、副島隆彦監訳・解説、古村治彦訳、成甲書房、2016年)が評判をいただいております。

 
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 『アメリカの真の支配者 コーク一族』に関しては、2016年アメリカ大統領選挙が本格化するにつれて、多くの方々からご注目をいただけるようになりました。朝日新聞でも書評ページで取り上げていただきました。以下に、書評などをまとめてご紹介します。

 

・2015年12月22日:「『アメリカの真の支配者 コーク一族』 石油から思想までを操る華麗過ぎる一族」(書評サイトHonz 評者:村上浩)

http://honz.jp/articles/-/42223

※ページへはこちらからどうぞ

 

・2016年2月7日:「アメリカの真の支配者―コーク一族 [著]ダニエル・シュルマン ■富豪兄弟、大統領選にも存在感」(朝日新聞朝刊 評者:諸富徹・京都大学教授)

http://book.asahi.com/reviews/reviewer/2016020700006.html?ref=rss2

 ※ページへはこちらからどうぞ。

 ・2016年2月8日:「アメリカの真の支配者 コーク一族 ダニエル・シュルマン著/古村治彦訳」(週刊東洋経済2016年2月13日号 評者:中岡望・東洋英和女学院大学教授)


・2016年1月14日:「賢者の知恵 「コーク一族」米大統領選の命運を握る大富豪ファミリーの正体」(現代ビジネス 著者:古村治彦)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47359

※ページへはこちらからどうぞ

 

・2016年2月11日:「ノンフィクション アメリカの大富豪集団が「トランプ阻止」に動き始めた 白熱! 米大統領選2016」(現代ビジネス 著者:古村治彦)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/47846

※ページへはこちらからどうぞ

 

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 『BIS国際決済銀行 隠された歴史』に関しては、アベノミクスの失敗、日銀によるマイナス金利などという訳の分からない政策の実行によって日本経済は大変な状況になって以降、ご注目をいただいているようです。こうした経済政策は、世界の中央銀行総裁や幹部たちが話し合って決めている訳ですが、BISはその拠点の一つとなっています。こうした動きを歴史的に理解する上で最良の一冊となっています。

 

 今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 

(終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23









 

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 古村治彦です。

 

 2016年2月11日付の『フィナンシャル・タイムズ』紙に「マイケル・ブルームバーグ待望論」と呼ぶべき記事が掲載されました。内容は、ビジネスマンとして、そして911テロ以降の厳しい状況下のニューヨーク市長として、ともに実績を残した有能な指導者であるブルームバーグがアメリカ大統領にふさわしいというものです。

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マイケル・ブルームバーグ

 

 ただ、既に民主、共和両党では正式に予備選挙をスタートさせています。ですから、この2つのうち、ブルームバーグが所属する共和党の予備選挙に参加することは難しい状況です。そこで、記事を書いたアックマンは、第三党・無所属で出馬したらよいと書いています。

 

 これまでのアメリカ大統領選挙でたまに第三党や無所属で出馬して一定の票数を獲得する人たちは出ていました。記憶に新しいところでは、1992年のアメリカ大統領選挙では、共和党で現職大統領だったジョージ・H・W・ブッシュ、民主党でビル・クリントンがそれぞれ候補者になり、第三の候補者として、ビジネスマンのロス・ペローが出馬し、一定の票数を獲得しました。ペローは保守派でしたので共和党の票を食ってしまい、現職大統領で2期目を目指したブッシュが敗北するという結果になりました。

 

 この記事で勉強になったのは、大統領選挙の本選挙で過半数を獲得する候補者がいなかった場合、アメリカ合衆国憲法修正第12条の規定で、大統領選挙の上位3名から、連邦下院が大統領を決めることが出来るのだということです。

 

 今回の選挙で言えば、共和党の候補者、民主党の候補者、そしてブルームバーグが選挙に出て、誰も過半数の票を獲得できなかった場合に、連邦下院が、誰が大統領になるかを決めることが出来るのだということです。

 

 記事の著者アックマンは、現在の連邦下院は共和党が過半数を占めているが、党の分裂を避けるために、ブルームバーグを大統領にするのではないかと書いています。

 

 このシナリオを荒唐無稽と切り捨てることは簡単ですが、大変示唆に富んでいる内容です。アメリカ大統領選挙はこれまで二大政党である民主、共和両党がそれぞれの中核的な支持者を固めて、そして中間層(日本で言うと無党派層)を取り合うというものでした。少し古いデータを基にしたものですが、2004年の段階での、アメリカ国民の支持政党はそれぞれ次のグラフのようになっています。中間層が大きな割合を占めていることが分かります。また、この記事では、ギャロップ社の調査では、中間層が43%になったということも引用しています。

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赤色が共和党、青色が民主党、黄色が無党派

 

 そうなると、この中間層を全部取れる候補者が出てきた場合、三すくみになって、誰も過半数を取ることが出来なくなります。そうなると先ほど書いたように、憲法修正第12条の規定が当てはまることになります。

 

 ブルームバーグが出た場合には、恐らく共和党の票を食い合ってしまって、民主党の候補者を勝たせる、1992年と同じようなパターンになることも考えられます。ですが、「トランプも嫌だし、ヒラリーもどうかな」ということになった場合に、ブルームバーグという選択肢は大変魅力的だと思います。彼はそこまでイデオロギー的ではありませんし、行政経験もあり、穏健な態度は好感を持って迎えられるでしょう。

 

 これまでイギリスと共に二大政党制の具体例とされてきたアメリカに対して,このような柔軟な考えが出てきて、それをあながち荒唐無稽な夢物語と簡単に切って捨てることもできないようになっています。そして、これは日本がこれまで目指してきた二大政党制の正当性を大きく揺るがすものでもあると私は考えます。

 

(貼り付けはじめ)

 

●「America is burning but Michael Bloomberg can put out the fire

 

Never has an independent candidate with his achievements run for office, writes William Ackman

 

February 11, 2016 6:08 pm

William Ackman

http://www.ft.com/intl/cms/s/0/1c440342-d0a2-11e5-831d-09f7778e7377.html#axzz3zxPWqCkI

 

 

Consider one of the greatest businesses in the world after decades of mismanagement. Growth is tepid, at best, and has been fuelled largely by debt. The organisation’s systems and infrastructure are outdated. International competitors have taken advantage of its weak position and stolen market share. A proxy contest is looming. The chief executive is about to step down, and the board and shareholders are faced with a decision about leadership. Who should they appoint? What qualities should they seek?

A turnround requires a leader with exemplary character, intelligence and independence, with a demonstrated record of success. It needs someone who can recruit extraordinary people, who understands the details yet knows how to delegate, negotiate and compromise. In short, a leader who commands respect from employees, the board and the shareholders.

 

After 9/11, New York needed such a leader. When Michael Bloomberg was sworn in as mayor on January 1 2002, the city was burning — literally. Our economy had crashed and public finances were shot. New Yorkers were scared and depressed.

 

But in only a few years, Mr Bloomberg created tens of thousands of jobs, converted a $6bn deficit into a multibillion-dollar surplus and made New York one of the safest cities in the world. He promoted development, improved public education, enhanced our infrastructure, cleaned up our parks, reduced the city’s carbon footprint and greatly contributed to the health of its citizens.

 

He did not do it alone. He did it by recruiting top talent to city government, working with other politicians and motivating the existing workforce and inspiring our citizens to do their part.

 

Today America is burning. Our government is wasteful and dysfunctional. Our national debt exceeds our gross domestic product. Our bridges, roads, airports and tunnels are crumbling. Our school system fails to educate our children. Our middle class is shrinking. Our tax code drives our most profitable businesses to relocate to foreign jurisdictions. Our immigration laws force talented young scientists and entrepreneurs to competitor nations. Our incomprehensible regulations fail to protect us from fraud, crime, pollution and abuse of power, while stunting growth and impairing our global competitiveness. Our international standing has deteriorated. Our enemies no longer take our pronouncements seriously and our military supremacy is threatened. The American dream is fading.

 

Yet there is hope. The key is finding the right leader. And that leader is Mr Bloomberg, who told the Financial Times this week that he is considering joining the race for the White House. His character is unimpeachable and he is an extraordinary entrepreneur and philanthropist. He has great judgment and is beholden to no one. He has a proven business record, having created $40bn of value building one of the most successful media and information technology companies in the world.

Bloomberg considers joining race for the White House

 

After a 12-year stint as mayor of New York, he has a demonstrated record in government too. He is a globalist, having immersed himself in foreign policy and used effective philanthropy to address international problems. Because he is pragmatic and non-ideological, he gets along with everyone. And he is prepared to make tough decisions based on the facts, without regard for his re-election prospects or obligations to a party and big-money donors.

 

If Mr Bloomberg were to run for president, he would do so as an independent. Some commentators say history shows that independents or third-party candidates cannot win. But today, according to one poll, 43 per cent of Americans identify as independents, which is a record. And never before has an independent presidential candidate with Mr Bloomberg’s achievements and financial resources run.

 

Significantly, Mr Bloomberg would not need a plurality of votes to win the presidency. If no single candidate receives an overall majority in the electoral college, the 12th Amendment to the US constitution allows the House of Representatives to choose the president from among the three candidates who received the most electoral votes.

 

If the top three are, say, Mr Bloomberg, Donald Trump or Ted Cruz for the Republicans, and Hillary Clinton or Bernie Sanders for the Democrats, then Congress, which is under Republican control, would surely choose Mr Bloomberg rather than destroy the party by selecting Mr Trump or Mr Cruz.

 

It is time to put the fires out and restore the United States to greatness. Mr Bloomberg is the right choice.

 

The writer is founder and chief executive of Pershing Square Capital Managemen

 

(貼り付け終わり)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23






 

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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12

 

 もしビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュ、そしてバラク・オバマがリアリズムの諸原理を採用していたら、1993年以降のアメリカの外交政策はどれほど違ったものになったのだろうか?

 

 第一にそして最も明らかなことは、ブッシュがブレント・スコウクロフト、コリン・パウエル、その他のリアリストたちの意見を聞いていれば、2003年にイラクに侵攻することはなかっただろう。ブッシュは、イラクで泥沼にはまるのではなく、アルカイーダの殲滅に集中したことであろう。数千のアメリカ兵たちが戦死したり、戦傷を受けたりすることもなかったことだろう。数十万のイラク国民が亡くなることもなく、今でも生きていたことだろう。イランの影響力は今よりもだいぶ小さいものだっただろうし、イスラミック・ステイトが生まれることもなかっただろう。リアリストによる正しい助言を拒絶することで、アメリカの納税者のお金を数兆ドルも無駄にした。そして、多くの人々の声明が失われ、地政学的に見て混乱が発生することにもなってしまった。

 

 第二に、アメリカの指導者たちがリアリズムの知恵をきちんと理解していれば、アメリカは1990年代にNATOを拡大させることはなかっただろう。NATOの範囲をポーランド、ハンガリー、チェコまでとしただろう。リアリストは、大国というものは自国に接する外側世界の力の構成に特に神経を尖らせるものだということを理解している。ジョージ・ケナンはNATOの拡大はロシアとの関係を悪化させるという警告を発していた。NATOの拡大は同盟関係を強化することにはつながらなかった。NATOの拡大によって、アメリカは一群の弱小なそしてアメリカから遠く離れてはいるが米軍が防衛しづらい国々を防衛する責務を負うことになってしまった。そうした国々はロシアと国境を接している。読者の皆さん、NATOの拡大は、傲慢さと地政学の間違った応用の結果なのだ、と私は申し上げたい。

 

 より良い選択肢だったのは、ロシアを含むワルシャワ条約機構に加盟していた国々と建設的な安全保障に関するつながりを求める「パートナーシップ・フォ・ピース」を構築することであった。残念なことに、注意深いアプローチは、NATO拡大を急がせる理想主義を掲げる動きを前にして放棄されてしまった。この決定は、リベラルの掲げる希望に基づいて行われた。彼らはNATOの拡大で安全保障が強化されると考えていたが、そんなことは起きなかった。

 

 リアリストは、グルジアとウクライナを「西側」陣営に引き込もうとすることで、ロシア政府から厳しい反応を引き起こすこと、ロシアはそうした試みを台無しにするだけの能力を持っていることを理解していた。リアリストがアメリカの外交政策を担当していたら、ウクライナ情勢は不安定なままであっただろうがクリミア半島はウクライナの一部であっただろう。そして、2014年から続いているウクライナ東部での戦闘は恐らく起きなかっただろう。クリントン、ブッシュ、オバマがリアリストの助言に耳を傾けていたら、ロシアとの関係は今よりもだいぶ良いものであっただろうし、東欧の状況はより安定したものとなっただろう。

 

 第三に、リアリズムの諸原理に大統領が従っていれば、ペルシア湾岸地域に対して、「二重の封じ込め」戦略を取らなかったであろう。イランとイラクを同時に封じ込めようとする代わりに、両国間のライヴァル関係を利用して、お互いを牽制させて均衡させようとしただろう。二重の封じ込め政策によって、アメリカはイラン、イラク両国を利用することが出来なくなり、サウジアラビアとペルシア湾岸地域に大規模な地上軍と空軍を駐留させ続けることになってしまった。長期にわたる米軍のサウジアラビア駐留は、オサマ・ビンラディンの怒りの理由となり、それが2001年9月11日に発生したアメリカに対する攻撃につながったのだ。ペルシア湾岸地域に対してリアリストが考える政策を行っていれば、アメリカに対する攻撃を根絶することはできなくても、少なくすることはできただろう。

 

 第四に、リアリストは、イラクに侵攻して、タリバンのネットワークの再構築を許してしまった時点で、アフガニスタンで「国家建設」をしようとすることは愚か者の先走りだと警告を発していた。そして、2009年にオバマ大統領が行った「増派」は全く役に立たなかった。オバマ大統領がリアリストたちの意見を聞いていたら、アメリカはアフガニスタンでの消耗をかなり早い段階で止めることが出来ただろう。結果としては失敗であってもその程度はだいぶ軽くで済んだはずだ。多くの命と莫大なお金が失われずに済み、アメリカは現在よりもより強力な戦略的立場に立てていたはずだ。

 

 第五に、イランとの核開発を巡る合意は、アメリカが現実的なそして柔軟的な外交を展開すれば成功を収めることが出来ることを示した。しかし、ブッシュかオバマがリアリストの助言を受け入れていれば、アメリカ政府はより良い条件で合意を結ぶことが出来ただろう。イランの核開発施設が小さい段階で合意を結ぶことが出来ただろう。リアリストは、繰り返し「イランはウラン濃縮技術を放棄することはないだろう、そしてイラン政府と軍部は核兵器開発を進めるだろう」と警告を発した。アメリカが、リアリストの助言通りにもっと早い時期に柔軟性を見せていたら、イランの核開発をより低いレヴェルの段階で止めることが出来たはずだ。アメリカの外交がより巧妙であったなら、2005年にムアマド・アフマディネジャドが大統領に当選することを阻止し、二国間の関係をより建設的な方向に進めることが出来たはずだ。たとえそこまでなくても、アメリカはそこまで悪い状況に追い込まれることはなかっただろう。

 

 第六に、様々な考えを持つリアリストたちは、アメリカとイスラエルとの間の「特殊な関係」に疑問を持ち、この特殊な関係が両国に害をもたらしていると警告を発している。イスラエルの熱心な擁護者たちの中にはリアリストに対して中傷を行っている。しかし、リアリストがアメリカとイスラエルの関係を批判しているのは、イスラエルの存在に対して敵意を持っているからではない。また、アメリカとイスラエル両国の国益が一致している場合にはアメリカとイスラエルは協力すべきだという考えに反対しているからではない。リアリストは、「イスラエルに対するアメリカからの無条件の支援は、世界におけるアメリカのイメージを悪く、テロリズム問題を悪化させ、パレスチナ人の犠牲の上に“大イスラエル”を建設しようとするイスラエル政府の自滅的な努力を続けさせている」という考えから、批判をしている。リアリストは、イスラエルとパレスチナの平和共存を進めるためには、アメリカが「イスラエルの弁護士」としてではなく、双方に圧力をかけるべきだと主張している。こうした考え以外のアプローチが繰り返し失敗している状況で、この考えの正しさに疑問を持つことができるだろうか?

 

 最後に、オバマがロバート・ゲイツのようなリアリストの助言を聞いていたら、リビアのムアンマール・カダフィを権力の座から追い落とすようなこともなかっただろう。そして、リビアが破綻国家の仲間入りをすることもなかっただろう。カダフィは独裁的な支配者であったが、人道主義的介入を主張する人々は、「大量虐殺」のリスクを誇張し、カダフィの独裁政治の崩壊の後に起きた無秩序と暴力を過小評価した。

 

(つづく)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23







 
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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 

 古村治彦です。

 

 今回から3回に分けて、外交・国際問題専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に掲載されたハーヴァード大学教授スティーヴン・ウォルトの国際関係論の一潮流であるリアリズムについての論説を皆様にご紹介します。

 

 ウォルト教授は私も翻訳作業に参加した『イスラエル・ロビー』の著者の一人で、国際関係論の大物学者です。今回の論説では、彼が信奉している国際関係論の一潮流であるリアリズムを紹介し、「これまでの3名のアメリカ大統領がリアリズムの諸原理に従っていれば、世界はもっと違って、より良いものになっていた」と主張しています。

 

 私は拙著『アメリカ政治の秘密』の中で、このリアリズムとネオコン・人道主義的介入の対立がアメリカ外交の流れだということを書きました。合わせてお読みいただければと思います。

 

==========

 

リアリストの世界はどのように見えるのか?(What Would a Realist World Have Looked Like?)①

 

イラク問題、大量破壊兵器、イスラエル・パレスチナ問題、シリアとロシアまでの中で、アメリカはアメリカの最大の誤りのいくつかをどのようにしたら避けることが出来ただろうか。

 

スティーヴン・M・ウォルト(Stephen M. Walt)筆

2016年1月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/01/08/what-would-a-realist-world-have-looked-like-iraq-syria-iran-obama-bush-clinton/

 

 アメリカの外交政策を研究している全学徒にとっての疑問、それは「外交政策研究分野における卓越したそしてよく知られたアプローチが、世論形成の場、特に主要な新聞の中で隅に追いやられているのはどうしてだろうか?これまでの記録を見てみれば、このアプローチが他のアプローチよりも好成績をあげているのに、隅に追いやられているのだ」というものだ。

 

 私はもちろん、リアリズムを好んでいる。私はリアリズムとリアリストが現在、完全に少数派に追いやられているというつもりはない。第一、今現在、あなたはリアリストの書いた文章を読んでいる。しかし、民主党内のリベラル介入主義(liberal internationalism)や共和党内のネオコンサヴァティズム(neoconservatism)に比べて、リアリズムが人々の目に触れることは極端に少なく、政策に与える影響もその存在に比べて小さい。

 

 外交政策研究の分野の中で、リアリズムが隅に追いやられている状況は驚くべきものだ。リアリズムは国際問題研究の分野で伝統的なアプローチとなっている。そして、ジョージ・ケナン、ハンス・モーゲンソー、ラインホールド・ニーバー、ウォルター・リップマンなどのリアリストたちは、過去においてアメリカの外交政策について鋭い、示唆に富んだ言葉を数多く残している。リアリズムは国際問題の学術的な研究において基礎となる考え方となっている。ここまで述べてきた通りだとすると、この洗練された思想体系は外交政策の議論の中で確固とした地位を保持していると皆さんは考えることだろう。そして、本物のリアリストはアメリカ政治や学術の世界において大きな影響力を持っているのだろうと思っているに違いない。

 

 更に言えば、過去25年にわたるリアリズムの行ってきた予測は、リベラル派とネオコン派の行ってきた予測よりもより質の高いものであった。しかし、冷戦終結後の25年間のアメリカの外交政策立案の分野においてリベラル派とネオコン派が大多数を占めてきた。更には、歴代大統領は、リベラル派・ネオコン派の主張を政策として追求し、リアリズムを無視する場合が多かった。また、主要なメディアはリアリストに対して、考え方を拡散するための手段を与えてこなかった。

 

 その結果は以下の通りだ。冷戦が終結した時、アメリカは世界の諸大国に対して有利な立場に立っていた。この時、アルカイーダの存在は取るに足らないものであり、中東における和平プロセスはしっかりと進んでいた。アメリカは「一極」世界で指導的な立場を享受した。権力政治は過去の遺物となったと考えられ、人類はグローバライゼーション時代において豊かになることに忙しくなり、繁栄、民主政治体制、人権が国際政治の重要なテーマとなった。リベラルな価値観は世界の隅々にまで行き渡るだろうと考えられた。そのペースがゆっくりとしたものであっても、アメリカの力はその拡散に貢献するだろうと見られていた。

 

状況は急激に変化している。対ロシア、対中国関係は徐々に敵対的になっている。東ヨーロッパ諸国とトルコにおける民主政治体制は後退している。中東全域の状況は悪いから最悪に移ってきている。アメリカは過去14年間にアフガニスタンで数十億ドルを使ってきた。しかし、タリバンは勢力を維持しているし、更に勝利を収める可能性を持っている。アメリカはイスラエルとパレスチナとの間の「和平プロセス」を20年にわたり仲介し、関与してきた。しかし、それによって「和平プロセス」は実現から遠ざかっている。更には、地上で最も明確にリベラル派の理想が現実化したヨーロッパ連合は、修復方法が見つからないような厳しい状況に直面している。

 

 こうした状況は、次の疑問を生み出す。それは、「最近の3人のアメリカの大統領たちがリベラルやネオコンではなく、リアリズムの諸原理に従っていれば、アメリカと世界はより良いものになったのではないだろうか?」というものだ。この疑問に対する答えは「イエス」だ。

 

 皆さんにリアリズムについて説明したい。リアリズムは、「パワー(力、権力)」を政治における中心要素であると考える。国家は、自国を他国から守ってくれる世界政府が存在しない世界において自国の安全保障を維持することを第一に考える存在だ、と考える。リアリストは、軍事力は国家の独立と自律性を維持するために必要不可欠だと考える。しかし、リアリストは、軍事力が多くの場合に意図しなかった結果を生み出すための手段にもなり得るとも考える。リアリストは、ナショナリズムと地域的アイデンティティは強力で持続的だと考える。そして、次のように考える。国家はほとんどの場合、自己中心的である。利他主義はほぼ存在しない。信頼関係が醸成されることは稀だ。規範や国際機関は強力な国家が行うこと大して限定的な影響力しか行使し得ない。まとめると、リアリストは、国際問題に関して悲観的な見方をし、それがどんなに抽象的なイデオロギーを基にした、魅力的な設計図に従って世界を作り変えようとする試みに懸念を持っている。

 

(つづく)

野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23






 
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  古村治彦です。

 

 2016年2月1日、アメリカ大統領選挙がアイオワ州の党員集会(Caucus)から正式にスタートしました。結果は、日本のマスコミでも報道されている通りで、民主党はヒラリー・クリントン前国務長官、共和党はテッド・クルーズ連邦上院議員が勝利しました。民主党のバーニー・サンダース連邦上院議員はヒラリーに肉薄し、ほぼ五分五分の結果を得ました。共和党側では全国調査ではトップを走っているドナルド・トランプが2位になりましたが、こちらはアイオワ州を「捨てて」おり、熱心な活動はしていなかったので、2位は既定路線、3位につけたマルコ・ルビオ連邦上院議員は善戦し、大統領選挙レースで有力候補になりました。アイオワ州の党員集会の結果については、『ザ・ガーディアン』紙には英語が読めなくても、結果が詳しく分かるようになっている記事が掲載されています。記事のアドレスは以下の通りです。

 

http://www.theguardian.com/us-news/ng-interactive/2016/feb/01/iowa-caucus-results-live-county-by-county-interactive-map

 

 党員集会の集計結果の詳細は以下の通りとなりました。

 

■民主党

①ヒラリー・クリントン:49.86%(701)

②バーニー・サンダース:49.57%(697)

 

■共和党

①テッド・クルーズ:27.65%(51,666)

②ドナルド・トランプ:24.31%(45,427)

③マルコ・ルビオ:23.10%(43,165)

④ベン・カーソン:9.31%(17,395)

⑤ランド・ポール:4.54%(8,481)

⑥ジェブ・ブッシュ:2.80%(5,238)

 

 アメリカの政治情報総合サイトである「リアル・クリア・ポリティックス(Real Clear Politics)」(http://www.realclearpolitics.com/)には、マスコミ各社や大学、調査機関が行う世論調査の結果やマスコミに掲載される政治関連記事が集められるので、アメリカ政治に関心のある人にとっては便利なウェブサイトです。

 

 このサイトでは、各種世論調査の結果から、各候補の支持率の平均を割り出して表示しています。その数字は以下の通りです。

 

■共和党

 

全国平均

・トランプ:35.8%

・クルーズ:19.6

・ルビオ:10.2%

・カーソン:7.6%

・ブッシュ:4.8%

 

アイオワ州

・トランプ:28.6%

・クルーズ:23.9%

・ルビオ:16.9%

・カーソン:7.7%

・ポール:4.1%

 

ニューハンプシャー州

・トランプ:33.7%

・クルーズ:11.5%

・カシック:11.3%

・ブッシュ:10.5%

・ルビオ:10.2%

 

 

■民主党

 

全国平均

・ヒラリー:51.6

・サンダース:37,2

 

アイオワ州

・ヒラリー::47.9%

・サンダース:43.9%

 

ニューハンプシャー州

・サンダース:55.8%

・ヒラリー:33.7%

 

 

 これらの数字とアイオワ州の党員集会の集計結果を見てみると、様々なことが考えられます。

 

 共和党では、テッド・クルーズとマルコ・ルビオの両方40代前半で連邦上院議員である2人が有力候補として浮上してきました。「政治経験もなく、失言も多いトランプよりはましだ」というある意味で「良識のある」人々がこの2人を応援しているものと考えられます。本当はジェブ・ブッシュが主流派の候補者たるべきなのでしょうが、あまりにも人気がないという状況になっています。しかし、まだまだ混戦状態が続く中で、撤退さえせずに、資金が枯渇しないようにしていけば、上位5位くらいまでの候補者誰にでもチャンスがあるのではないかと思います。それでもクルーズとルビオが有力候補となったのは興味深いことです。

 

 それは、この2人とランド・ポール連邦上院議員に対して、支援とまではいかなくても関心を持っているのが、共和党の大資金源となっているコーク兄弟だからです。トランプは自己資金で選挙戦を戦っていて、コーク兄弟を揶揄する発言を行っていますので、彼らがトランプを応援することはありません。これまでのトランプがトップを走る状況で、コーク兄弟の存在感は薄かったのですが、今回の大統領選挙に1200億円の政治資金を投入するということは明言しているので、クルーズかルビオがもっと支持を伸ばしてきた場合に、コーク兄弟が資金を投入してくることは考えられます。コーク兄弟に関しては、拙訳『アメリカの真の支配者 コーク一族』(ダニエル・シュルマン著、古村治彦訳、講談社、2015年12月)を是非お読みください。

 


 一方、民主党ではヒラリーに対してバーニー・サンダースが善戦しているという構図になっています。ただ、全国調査ではヒラリーがサンダースを10ポイント以上引き離しており、アイオワ州での世論調査でもヒラリーがサンダースを4ポイント上回っていました。しかし、結果はほぼ五分と五分でした。ヒラリーは勝利宣言をしましたが、サンダースの演説こそが勝利宣言にふさわしいものでした。ヒラリーにとっては敗北に等しい結果でした。

 

 私は数日前に、オバマ大統領がホワイトハウスでサンダースに会ったという記事が気になっていました。日本では次のように報じられました。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「「オバマ大統領は公平」 サンダース氏と会談」

 

産経新聞 2016年1月28日

http://www.sankei.com/world/news/160128/wor1601280043-n1.html

 

オバマ米大統領は27日、次期大統領選の民主党指名争いでクリントン前国務長官(68)を追い上げるサンダース上院議員(74)とホワイトハウスで会談した。サンダース氏は会談後、記者団に対し「大統領は公平であろうと努めてきたし、今後もそうだと期待する」と語り、オバマ氏の立場は中立だとの考えを強調した。

 

 サンダース氏の発言は、初戦となる2月1日のアイオワ州党員集会を控え、オバマ氏が内心はクリントン氏を支持しているとの観測を打ち消し、後継候補として対等の立場をアピールする狙いがありそうだ。

 

 大統領執務室(オーバルオフィス)で約45分間、内政や外交問題について広く意見交換したといい、サンダース氏は「建設的かつ生産的だった」と語った。(共同)

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

 この記事では、「オバマ大統領がヒラリーを支持しないように、中立を保つように」サンダースがくぎを刺しに行ったという解説になっています。しかし、私はこの行動は、オバマ大統領が間接的にサンダースを応援し、ヒラリーの勝利を妨害するためのものであったと考えます。ヒラリーにとってアイオワ州の党員集会は「鬼門」です。2008年の大統領選挙で、ヒラリーは圧倒的に有利と言われていました。しかし、アイオワ州で勝利を収めたのは、ダークホースであった当時のバラク・オバマ連邦上院議員でした。そこからあれよあれよという間にオバマ大統領が最有力候補になり、本選挙でも勝利を得ました。ヒラリーにとってはまさに悪夢のような思い出です。

 

 ですから、ヒラリーは昨年大統領選挙出馬を表明してから、日本で言うドブ板選挙をアイオワ州で展開していました。そして、全国調査でもそうですが、アイオワ州でもトップという世論調査の結果が出ていました。しかし、党員集会直前にオバマ大統領がサンダースに会ったということで、風向きが変わり、ヒラリーは大苦戦、サンダースは大善戦という結果になりました。次のニューハンプシャー州の予備選挙に関しては、今のところ、サンダースが圧倒的に有利ということが数字上でも出ていますので、サンダースが勝利するものと考えられます。そうなると、ヒラリーの優位は揺らぐことになるでしょう。

 

 共和党は混戦状態がしばらく続くでしょう。それでも次回の討論会である程度の流れが定まってくるのではないかと思います。まだ候補者が多数乱立し、乱戦がしばらく続くとなると、最初からトップに立たずに2位や3位をずっと堅持していく候補者が最後に飛び出るという、マラソンでよく見るような感じになると思われます。

 

 民主党はヒラリー対サンダースというマッチアップ(一対一)で、やるかやられるかの戦いになっていますので、相手を圧倒できる時に圧倒しておかねば足元をすくわれてしまうという厳しい戦いになります。その点で、ヒラリーはスタートに失敗しました。ここからどう巻き返してくるかに注目です。

 

(終わり)





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アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12





 

 古村治彦です。

 

 金銭スキャンダルで経済再生担当大臣を辞任した甘利明衆議院議員(神奈川13区選出、甘利グループ)の退任のあいさつ全文を自民党の“機関紙”である産経新聞が掲載しました。「自分のせいではない秘書のやったことに対して、潔く辞任して安倍政権を支えようとする、素晴らしい政治家である甘利明」を宣伝しようという意図が透けて見えます。

 

 あいさつの全文を読むと、ところどころでお笑い用語で言う突っ込みを入れたくなります。

 

 以下の2つの記事が今回の甘利氏の金銭スキャンダルを理解するのに役立ちます。

 

①「安倍政権史上、最大の政治スキャンダル!甘利大臣は「シロ」か「クロ」か - 山本洋一」

→ http://blogos.com/article/156231/

②「甘利大臣が辞任を表明「閣僚・甘利明にとっては誠に耐え難い事態」」

→ http://blogos.com/article/157437/

 

 ①の記事の著者、山本洋一氏は日本経済新聞の記者として長く政治の世界の取材をしてきたヴェテランだそうです。山本氏によると、今回の甘利氏のスキャンダルの問題点は2つあって、1つ目は、甘利氏が、問題の建設会社(S社と表記)のお願いを受けて、国土交通省の所管である都市再生機構(UR)に口利きをして、S社の利益となるような結果を導き出して、その結果としてお礼としてお金を受け取った、つまり賄賂を受け取ったのかどうか、ということだそうです。国会議員が口利きなどをしてその見返りで金品を受け取ると「あっせん利得処罰法」違反ということになります。

 

 昔であれば、職務権限の有無、が問われたので、「自分の職務とは関係ない」という言い逃れもできたそうですが、現在は、職務権限は問われないようになっているそうです。

 

 政治資金として適正に処理してあれば問題は言い訳は立つのだそうですが、そこがいい加減だと処罰される可能性が高くなるということです。このスキャンダルを報じた『週刊文春』誌の記事の内容では、秘書が個人的に使ってしまったと可能性が高いということになります。

 

2つ目の問題点は、S社からもらったお金を政治資金収支報告書にきちんと記載したかどうかという点になるそうです。

 

週刊文春の記事によると、「最初に事務所に持参した500万円のうち、200万円分は政党支部への献金として処理されているが、残り300万円はどこにも記載がない」ということだそうです。

 

「甘利事務所は記事中で、甘利氏に渡された50万円やその他の現金について「パーティー券で処理している」などと答えている」のだそうですが、S社側は否定しているのだそうです。お金を出したS社が否定しているのに、甘利事務所側がパーティー券を買ったことにして政治資金収支報告書に記載すると、これは虚偽記載(嘘の内容を政治資金収支報告書に記載した)ということになります。

 

 賄賂を貰ったのかどうか、政治資金収支報告書にきちんと記載したのかどうか、という点が問題になっています。「賄賂としてもらった訳ではない、政治資金としてもらったのだが、秘書が一部を個人的な目的のために使ってしまった」という説明を甘利氏はし、監督責任を取り、安倍政権へのダメージを食い止めるというということで大臣を辞任しました。

 

 それについて、甘利氏は「やせ我慢」だとか「美学」だとかそういう大仰な言葉を使いました。数百万円のお金を受け取っておいての「やせ我慢」というのは何ともおかしな話ですし、「美学」というと、なんだかとても崇高なもののために自分を犠牲にするという響きがありますが、こちらもなんだかおかしな感じがします。

 

こうしたおかしな日本語の使い方の裏には、「自分は罪なくして(冤罪で)大臣の座を去らねばならない。しかし、それについて言い訳も恨み言も言わない」というある種のヒロイズム、悲劇のヒーロー気取りがあります。しかし、実際にはあっせん利得処罰法や政治資金規正法に違反している可能性があることをすっかり忘れてしまっています。

 

 今回のスキャンダルでは甘利氏と秘書がそれぞれお金を受け取って、甘利氏は自分が受け取ったお金は政治資金としてきちんと処理したと述べていますが、そもそも政治資金収支報告書に虚偽の記載をした可能性(受け取った分を全額記載しなかったこと、お金を渡した側が否定しているのにパーティー券の購入代金として記載したこと)があります。

 

 「やせ我慢」や「美学」という言葉を使い、政治活動を一からやり直すということならば、中途半端なことはせずに議員辞職をして一からやり直すのが筋ではないかと思います。政治家の出処進退はその人だけが決めることですから、甘利氏がどのような決断をするのかは甘利氏の良心に従った決定を尊重すべきですが、「やせ我慢」だの「美学」だのと大見得を切ったのに、他の政治家と変わらない大臣だけの辞任ということになると、大見得を切った分だけ出処進退の「潔さ」の度合いは小さくなりますし、そもそも「やせ我慢の美学」がある人は、大見得を切ることなく、出処進退を静かにするものではないかと思います。

 

 大臣退任のあいさつで、「日本の官僚は世界一」という歯の浮くようなお世辞を残しました。官僚が「世界一」だから、今のほとんどの政治家たちのような「世界一」の質ではない、政治家を稼業にしているだけの二世、三世の人物たちが代議士になり、大臣をやっても国が何とかやっていけているのだろうという憎まれ口を叩きたくなります。

 

 また、今残っている問題を全て解決するまで安倍政権が存続すべきだという発言も気にかかります。安倍政権の閣僚だった人ですから、安倍政権の存続を願うのは当然でしょうが、いま日本が抱えている問題を全て解決するのに必要な時間はどれくらいのものでしょうか。1年、2年で済むものはないでしょう。たとえば、安倍晋三総理大臣が前回の首相在任時に「消えた年金」問題について、「私の政権で最後のおひとりまで救う」と選挙運動で述べたことがありましたが、これは解決しているでしょうか。財政赤字も問題とするのならば、それがここ1、2年で解消するものでしょうか。

 

甘利氏の退任のあいさつで気になったのは、「本当に身命を賭して突っ込んで」という表現です。もちろん物理的に、具体的に命を差し出すということではないのは分かっています。しかし、後半の安倍政権が今存在する問題をすべて解決するまで続くべきだという主張と併せて考えると、とても「狂信的な」感じを受けます。宗教的な熱狂と言ってよいかもしれません。「沖仲士の哲学者」と呼ばれた、アメリカの社会思想家エリック・ホッファーは主著『大衆運動』で、大衆運動の中心的な役割を果たす人々を「トゥルー・ビリーヴァーズ(True Believers)」と呼びました。この人々は大義や正義のためには命もいらないと考える人々ですが、こうした存在のために社会運動が得てして先鋭化してしまい、支持を失っていくということはこれまでも散々繰り返されてきました。冷静さを欠く、ある意味の熱狂が安倍政権の中にあるということになるとすると、安倍政権は穏健な保守政権というよりは、急進的な右翼反動的政権ということになります。甘利氏の発言からはそのようなことが読み取れると私は考えます。



 一つの内閣で問題が1つでも2つでも解決出来たらそれはそれで大したものですし、長期政権となるとどうしても緊張感がなくなり、弛緩してしまう部分が出てきます。特に今の自民党の体質では長期政権になると、緊張感を持続させることは難しいでしょう。

 

 今回の甘利氏のスキャンダルに関しては、「はめられた」とか「ゲスの極み」といった感想や批判が自民党の幹部から出ています。甘利氏を失脚させる「陰謀」があったということを言いたいのでしょうが、問題は誰がその「陰謀」を成就させるためにシナリオを書いたかということです。そこのところをはっきりさせねば、スキャンダルの発生を止めることはできません。しかし、自民党自体がこうしたスキャンダルの仕掛け人とか発生源とかに対して対処したという話は聞きません。

 

 今回はこれ以上は書きませんが、それはこうしたスキャンダルを仕掛ける「陰謀」の仕掛け人が海の向こうの意向を受けているということだからではないかと私は推察しています。簡単に言ってしまえば、「属国の悲哀」ということになるでしょうか。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

甘利氏退任あいさつ全文「私なりのやせ我慢の美学」「安倍内閣と一緒に使命を果たして」

 

産経新聞 129()132分配信

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160129-00000540-san-pol

 

 

 自らの金銭授受問題の責任を取り辞任した甘利明前経済再生担当相は29日、内閣府で職員に退任のあいさつを行った。あいさつの全文は以下の通り。

 

           ◇

 

 「このたびは私どもの不祥事により、世間をお騒がせし、皆さんに大変なご迷惑をおかけして、本当に申し訳なく思っています。責任の取り方に対し、私なりのやせ我慢の美学を通させていただきました」

 

 「この3年余りの間、いろんな仕事をさせていただきました。日本経済全体の指揮をとるという大役をお任せいただきました。この3年間を通じて、痛感したことは、やっぱり日本の官僚は世界一だということでした」

 

 「ただ、今までその官僚の力を思う存分発揮できなかったのは、政権が毎年、毎年、代わる。政権が代われば指示が変わる。働くものは下された指示を、本当に身命を賭(と)して突っ込んでいっていいのか、不安になる。それが素晴らしいポテンシャルを、宝を持ちながら、必ずしも十二分に発揮ができなかったことだと思いました」

 

 「安倍内閣はまだまだ続きますし、続けさせなければならないと思います。そしてその間に、日本が解決しなければならない課題はすべて、全部解決をすると。そのつもりで総理は邁進(まいしん)されています。それを信じて、一片の疑いもなく、その使命を安倍内閣と一緒に果たしていただきたいと思います」

 

 「重ねて、ご迷惑をおかけいたしたことをおわびします。本当に申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました」

 

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

(終わり)



 
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