古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2016年07月

 古村治彦です。

 

 今回は、Unionという言葉の意味について考えてみたいと思います。Unionを辞書で調べてみれば、結合、団結、連合といった意味が書かれています。

 

 私たちが知っている使い方では、労働組合はlabor unionがあります。これは労働者が団結して、労働に関する権利を守り、団体交渉を行うためのものです。最近、イギリスで国民投票が行われ、イギリスが脱退することが決まったのが、ヨーロッパ連合ですが、これはEuropean UnionEU)です。

 

Unionの動詞がUniteです。団結する、連合するという意味になります。50ある州(state)が連合している国です。イギリスは、United KingdomUK)です。イギリスの正式名称は「グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国」です。ブリテン島にあるイングランド、ウェールズ、スコットランド、そして、アイルランド島の北部が連合して王国を形成しています。私はラグビーが好きですが、古くはファイヴ・ネイションズ、今はシックス・ネイションズという、ラグビーの6カ国対抗戦があります。これに「イギリス」ティームは参加していません。イングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリアが参加して、ホームアンドアウェイ方式で戦います。

 

イギリスの国民投票で興味深かったのは、投票の結果に地域差があって、スコットランド、北アイルランド、大都市ロンドンではEU残留が大勢を占め、ロンドンを除くイングランドとウェールズはEU脱退が大勢を占めたことです。そして、スコットランドでは、スコットランドだけはEUに残留できるようにしたいという動きになっています。「イギリスって昔連合王国って習ったけど、実際にそうなんだなぁ」と改めて思いました。

 

 国際連合はUnited Nationsです。これは中国では「聯合國」となります。第二次世界大戦時に、枢軸国(Axis)と戦った連合国(Allied Powers)が戦後の枠組みとして、自分たちを常任理事国として作った組織ですから、「連合国」と訳すべきですが、今は世界のほとんどの国々が参加していますから、諸国連合ということになります。

 

 アメリカ合衆国はUnited States of AmericaUSA)です。これは全米50州(state)が連合した国ということです。独立した時は13州でしたが、それがどんどん拡大していきました。Stateという言葉は、国家を意味することもあります。全米各州には外交権と通貨発行権はありませんが、州兵(national guard)はいますし、ほぼ国のような機能があります。カリフォルニア州の州旗には、「Republic of California」と書かれています。

 

 アメリカ合衆国のUnionが崩れそうになったことがあります。それが1861年から1865年にかけて起きた南北戦争です。南北戦争といいますが、英語では、The Civil Warで、「内戦」という意味になります。Theがつきますので、特別な、これからもないであろうというくらいのことになります。アメリカが、北部各州のアメリカ合衆国と南部各州のアメリカ連邦(Confederate States of America)に分かれて戦いました。

 

 アメリカ史上最高の大統領は誰か、という質問があると、いつも一番になるのが、エイブラハム・リンカーンです。日本でも奴隷解放を行い、「人民の、人民による、人民のための政府」という言葉を残した人物として有名です。しかし、彼がアメリカ史上最高の大統領と言われているのは、アメリカの分裂を阻止することが出来たからです。これは、故小室直樹博士の著作に繰り返し書かれていたことです。

 

 アメリカで毎年1月に大統領がアメリカ連邦議会で演説を行いますが、これを一般教書演説と言いますが、英語では、State of the Union Addressと言います。State of the Unionというのは、「連邦国家(United States)であるアメリカの現状(state)」を述べるものであり、The Unionとはアメリカを示す言葉です。元々は大統領が演説をするということはありませんでした。アメリカ大統領は連邦議会への出席は認められていません。ですから、教書(message)を議会に送付して、アメリカの現状を報告するということになっていました。それが20世紀になって連邦上院と下院の議員たちと行政府、立法府の最高幹部たちが集まって、その前で演説するという一大イヴェントになっています。この時は、全米のテレビやラジオはほぼ全て生中継します。

 

 私がなぜこんなにUnionという言葉にこだわって文章を始めたかというと、United KingdomEuropean UnionUnited Statesで、Unionが崩れていく状況になっているからです。簡単に言うと、分離や反目、亀裂に敵対が蔓延する状況になっています。EUは、「20世紀前半に2度もヨーロッパを破壊し尽くした戦争を再び起こさないためにも、ヨーロッパが1つになるべき」という理念のもとに20世紀後半をかけて作られたものです。

 理念と裏腹にある現実は、「何かあれば対外膨張主義に陥りやすいドイツを抑える」というものでしたが、今や
EUはドイツを中心に回っています。イギリスはEUの主要なメンバーですが、ドイツやフランスほどの存在感がありません。そうした中で、「EUなんかにいてもいいことないし、かえっておカネを取られて、嫌なこと(移民の流入)はやらされる」という感情がイギリス国内にあり、大接戦ではありましたが、イギリスはEuropean Unionから脱退することになりました。


 もっと言えば、ナチス時代に既にドイツは「ひとつのヨーロッパ」という構想を立てていました。EUはその現代版ですが、ナチスの考えたヨーロッパ連合は、ヨーロッパ諸国がドイツに奉仕するための構造(日本の大東亜共栄圏とよく似ています)ですが、今は、名目上はそうではありませんが、現実はドイツを盟主にしている構造になっています。
 

 先ほども書きましたが、興味深いことに、イギリスの国民投票では、地域差がはっきり出ました。スコットランド、北アイルランド、ロンドン大都市部ではEU残留が多く、ウェールズとロンドンを除くイングランドはEU脱退が多くなりました。そして、スコットランドはEU残留を求めて独自に動こうという動きが出ています。ここでUnionが崩れそうな動きになっています。スコットランドでは以前に、連合王国から脱退するかどうかで住民投票があって僅差で否決されていますが、こうした動きも再び活発化するでしょう。連合王国の一部が脱落するということになります。Unionが壊れるかもしれないということです。

 

 アメリカではこのように州で分離独立の動きはありませんが、以前、このブログでもご紹介しましたが、カリフォルニア州南部、ロサンゼルスからさらに50キロほど南にあり、ディズニーワールドがあるアナハイムを中心とした地域で、「カリフォルニア州から離れて、アリゾナ州に入りたい」という動きが起きて、住民投票がありました。カリフォルニア州から離れたいと主張した人々の理由は、「カリフォルニア州はリベラルな政策ばかりだ。そのために税金が高い。自分たちは保守的な考えを持っている。年収も高い分、税金をたくさん取られて嫌だ。だから、保守的なアリゾナ州に入りたい」というものでした。

 

 アメリカでは、共和党と民主党が強い、レッド・ステイトとブルー・ステイトと呼ばれる州に分かれています。レッド・ステイトは共和党(イメージカラーが赤)、ブルー・ステイトは民主党(イメージカラーが青)が強いです。これが顕著に出るのが大統領選挙です。アメリカ南部から中西部にかけてはレッド・ステイト、西海岸、東海岸の大都市がある州はブルー・ステイトとなっています。もちろんそれぞれには反対の考えを持つ人々も多く住んでいますが、大勢ではこのようになっており、「アメリカの(イデオロギー上の)分裂」が語られます。ですから、2000年以降のアメリカの大統領選挙では、勝者も敗者も「分裂ではなく、団結を」という演説を行っています。また、オバマ大統領が無名の存在から飛び出してきたのは、「アメリカは、アフリカ系、アジア系、などに分裂しているのではなく、United States of Americaなのだ」という演説をして注目されるようになってからです。

 

 しかし、アメリカの政治家たちがアメリカ国民のUnionを強調するのは、現実では様々な亀裂が入っていることを示しています。著名な政治学者であった故サミュエル・ハンティントンは、最後の著書『分断されるアメリカ』の中で、「アメリカはホワイト・アングロサクソン・プロテスタント(White Anglo-Saxon Protestant)の国なのだ」ということを書きました。そして、文化相対主義(移民してきた人々の元々の文化や伝統を尊重する)を批判しました。それは、「アメリカがアメリカではなくなる」という危機感でした。アメリカで人口が増えているのは、ヒスパニック系やアジア系です。白人(白人の中でも区別があって、イタリア系やアイルランド系、ポーランド系はカトリック教徒が多いということあって非WASPということで差別されました)の人口に占める割合はどんどん小さくなっています。恐らく過半数を割っているでしょう。

 

 私が小さい頃は、アメリカは「人種のるつぼ(melting pot)だ」と習いました。これは、どんな人種の人でも、アメリカ人になるのだということでしたが、今は、アメリカは「サラダボウル(salad bowl)だ」ということになっています。レタス、トマト、きゅうりとそれぞれ違う野菜が一つのサラダを形成するので、それらが溶け合って姿を消してスープになるのではなく、個性を主張するのだということになっています。

 

非白人の人たちが身体的に肌の色を変えることはできませんし、そんなことは全くもって何も要求しないが、アングロサクソン・プロテスタントの文化やそれを基礎にした制度(今のアメリカの政治や経済、社会制度)を受け入れることを、アメリカ白人は求めています。ですが、良く考えてみると、非白人の人たちは何もアメリカの政治、経済、社会制度を乱そうとしている人などほとんどいません。それどころか、デモクラシーや三権分立は素晴らしいし、世界に誇れることだと思っています。

 

 だから、「制度や文化を身に着けてほしいだけ」という綺麗ごとをはぎ取ると、「自分たちの分からない言葉で書かれた看板が街中にあることや、自分たちの分からない言葉で、大声で会話することを止めて欲しい、それはとても恐いことだから」ということになります。フランス語やドイツ語、スペイン語であればまだアルファベットですし、同じ単語を使っていたり、類推できる言葉があったりで、まだ許容できるが、アラビア語や漢字、ハングルで書かれたものが街中にあるのは怖いことです。自分たちが理解できないものが身近にあることで誰でも違和感を持ちます。それは当然のことです。

 

 そして、そういう自分たちの分からない言葉を使い、身近ではない文化を持っていて、それを手放そうとしない人たち、に対する反感が出てきます。それがアメリカとイギリスで起きていることの原因です。「分かり合いましょう」といくら口で言っても、あまり意味はありません。怖いと思っている方がわざわざ近づこうとはしませんし、思われている方は、思われている方同士で固まってしまいます。そして、敵対してしまう、分裂してしまうということになります。

 

 国家という枠組みが近代から現代にかけて出来ました。国家は国民がいて、国境線があって(国土があって)、政府があって成立します。そうした国家同士が戦争をしないようということで、20世紀には国際連盟(League of Nations)が作られ、戦後は国際連合が作られました。また、地域的な結合で言えば、ヨーロッパ連合ということになります。

 

 近代は、ナショナリズム(Nationalism)を基盤とした国民国家を生み出しました。そして、国家を超えるためのグローバリズム(Globalism)を基礎にして国際機関を生み出し、かつ人間や資本の移動の自由を追求しました。EUはその中間にあるリージョナリズム(Regionalism)の産物と言えるでしょう。

 

 ナショナリズムは加熱すすると他国との摩擦を生み出し、それが戦争にまで結びつくという考えから、国家を超える機関の存在が考えられるようになりました。

 

 現在、アメリカとイギリスで起きていることは、国民国家に大きな亀裂を生み出しています。保守とリベラルというイデオロギー上の亀裂はこれまでもありましたが、ナショナリズムと排外主義・差別主義が結びつくことで、ナショナリズムが変質してしまい、攻撃的・後ろ向きの面が強調されることで、それを支持する人とそうではない人で国が分裂しかねない状況になっています。アメリカで言えば、レッド・ステイトとブルー・ステイトの存在、イギリスで言えば、連合王国からの脱退を考えるスコットランドといった存在です。

 

 そして、こうしたナショナリズムの変質をもたらしたのは、グローバリズムとリージョナリズムの深化です。グローバリズムとリージョナリズムによって、人の資本の移動は自由になり、活発になることで利益を得られる人とそうではない人が出てきます。パナマ文書事件が起き、「大金持ちは支払うべき税金を逃れる手段を色々と持っており、それを利用してずるい、不公平だ」ということになりました。また、移民がやってきて、安い賃金できつい労働をやることで、自分たちに仕事が回ってこないという不満も高まりました。

 

 このような社会・経済・政治不安から、既存の枠組みに対する不信が出てくる、そういう時に、歯切れの良い言葉で自分たちの「敵」を教えてくれる人を指導者に仰ぎたくなる、その人に任せて自分たちの不安を解消したいという思いが出てきます。それを掴んだのがヒトラー(彼はユダヤ人が元凶だと言いました)であり、イギリスのEU脱退派のリーダーたち(彼らはEUと移民が悪いと言いました)であり、トランプ(不法移民とイスラム過激派とヒラリーこそが彼の言う敵です)です。

 自由主義の考えからすると、国家とは構成する個人の利益を追求するためのものですが、同時に、相互扶助ということも重要な要素となります。人間社会においては、どうしても能力の差(いわゆる頭がいいとか悪いとか、体の機能の差)が出ます。それを全て埋めて平等にすることはできません。しかし、最低限の生存(日本国憲法にある「健康で文化的な最低限度の生活」)は保障することが近代の成果です。そして、そのための機能として国家がリヴァイアサンではあるが、その必要悪として受け入れて、出来るだけ悪いことをさせずに構成する個人の利益に資するようにすることが政治家の役目です。その枠組みが崩れそうになっているのが世界各地で見られる現象から分かる現状であると思います。

 強いリーダーたちに任せてみたい、そして大きな変革をして欲しいというのはこれまでも起きたことですし、これからも起きるでしょう。しかし、実際には、何も大きな変革、革命などは起きません。革命が起きれば新たな抑圧と不満が出てくるだけです。ですから、今ある枠組みを、まるで古ぼけた、故障がちのエンジンを修理しながら車をのろのろと走らせながら、道を進んでいくことしかありません。毎日、ぶつぶつと愚痴を言いながら進んでいくしかありません。その最低限の枠組みが、現在は国家であり、民主的な政治制度ということになります。そして、これらを担保するunionを何とか保っていけるようにするしかありません。 

 

(終わり)





 
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 古村治彦です。

 

 2016年7月25日(日本時間だと26日)から民主党全国大会が始まりました。バーニー・サンダース支持者の野次とブーイングが響く中で、不穏な空気を伴いながら、演説が続きました。ミッシェル・オバマ大統領夫人、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員、バーニー・サンダース連邦上院議員が演説を行いましたが、この不穏な空気は払しょくされませんでした。ヒラリー・クリントン自身は姿を見せず、夫のビル・クリントン元大統領とティム・ケイン副大統領候補の姿がありました。

 

 これだけ不穏な空気になったのは、先週の金曜日にウィキリークスが、民主党全国委員会のEメール2万通をリークし、その中に、バーニー・サンダースの予備選挙での躍進を妨害したいという内容のものが含まれていたことが導火線になりました。サンダースの名前を出さないで、「候補者が困るような質問が出来ないか」といった内容のEメールがありました。こうしたEメール2万通は匿名の人物からウィキリークスに送られてきたということです。

 

 その中には、デビー・ワッサーマン=シュルツ民主党全国委員長(フロリダ州選出連邦下院議員)のEメールも含まれていました。彼女はヒラリーが勝つべきだという内容のEメールをヒラリー支持の全国委員会のスタッフに出していました。民主党全国委員会がヒラリーに肩入れをしているという非難は予備選挙中ずっとサンダース支持者たちから上がっていました。少なくとも公正中立であるべき予備選挙実施団体のトップがスタッフが、ヒラリーを支持していたということが明らかになって、サンダース支持者の怒りは頂点に達しました。

 

 ワッサーマン=シュルツは全国大会後の委員長辞任を発表しましたが、サンダース支持者はこれでは収まらないでしょう。民主党特有の制度である特別代議員制度の撤廃をはじめとする民主党内部の改革を求めるでしょう。そして、これが不十分に終わるなら、ヒラリーには投票しないということになり、ヒラリーの大統領選挙当選は危うくなります。

 

 民主党予備選挙は、伏兵のバーニー・サンダースが大躍進し、善戦し、ヒラリーを追い詰めました。サンダース支持者はヒラリーがイラク戦争に賛成したこと、国務長官時代にリビアのベンガジで失敗したことやISの台頭を許したことを批判してきました。これはトランプ支持者と同じ主張となります。ですから、彼らの中にはトランプへ投票する人たちも出てくるでしょう。もしくは第三党である緑の党のジル・スタインに投票する人が多くなるでしょう。共和党側で言えば、リバータリアン党のゲイリー・ジョンソンに投票する人たちが出てくるのと同じです。

 

 民主党としては、サンダース支持者に対して、改革を約束し、全国委員会の幹部スタッフを更迭するという低姿勢を見せながら、「皆さんはドナルド・トランプを勝たせて、大統領にしてもいいのですか」と訴えることしかできません。「ヒラリーとトランプでどちらがよりましですか」と彼らに聞くしかありません。しかし、彼らにとって恐ろしいことは、「ネオコンに近いヒラリーよりも、トランプの方がましだよ」と答える人たちが出てくるであろうということです。

 

 おそらく、サンダース支持者たちの過半数は、「トランプも酷いし、ヒラリーに入れるしかないか」といやいや、渋々、目に涙を浮かべながら、ヒラリーに投票するでしょう。

 

 私は「8対2」でヒラリー優勢だと考えてきましたが、2つ目のEメール問題で、「6対4」でヒラリーやや優勢の状況になったと考えています。トランプはここを先途と、サンダース支持者を対象に切り崩しの攻撃を行い、「サンダースと闘うはずだった、それならタフな闘いになっただろう。私はサンダースの敵ではない、サンダースの敵はヒラリーと民主党だ」「予備選挙自体が無効なのだから、ヒラリーを民主党の大統領選挙候補者としては認めない」という発言をするでしょう。

 

 民主党とヒラリーは防戦として、「差別主義者で生まれながらの金持ちであるトランプをあなたは支持するのですか」「女性を侮辱し続けてきたトランプを選ぶのか、女性でも大統領になれることを証明することに参加するのか、どちらですか」といった主張を行うでしょう。また、「人権抑圧国で、周辺国への侵略を行っているロシアに対してトランプは友好的だ。ヒラリーは厳しい態度で臨むと言っているので、このような謀略を仕掛けられたのだ。あなたは外国による選挙への介入を許しますか」という訴えも行うでしょう。

 

 私としては、民主党大会後の激戦州の世論調査の結果を注視したいと思います。その数字でまた私なりの予想を変えねばならないと思います。

 

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サンダースの支持者たちは、民主党全国委員会Eメールリーク事件で民主党の団結は崩れないと述べているが、抗議者たちはそうではないと叫んでいる(Sanders Backers Say DNC Leak Won’t Unravel Party Unity Bid — Protesters Say Otherwise

 

モーリー・オトゥール筆

2016年7月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/07/25/sanders-backers-say-dnc-leak-wont-unravel-party-unity-bid-protesters-say-otherwise/

 

フィラデルフィア発。民主党は、クリーヴランドで開催された共和党全国大会は決定的なものとなったと述べた。

 

 ヴァ―モント州選出連邦上院議員バーニー・サンダースの支持者たちは、ブーイングと「ノー」の叫び声の大合唱を行った。これは予備選挙で次点に終わったサンダースが彼が獲得した代議員たちに対してヒラリー・クリントンを支持し、ドナルド・トランプを倒すために団結して努力しようと述べた時に起きた。民主党全国大会を前にしてこのようなことが起きているのは前代未聞のことだ。フィラデルフィアでの民主党全国大会のテーマが「団結してより強く」であるのはあまりにも皮肉めいている。

 

 先週金曜日にリークされた20000通の民主党全国委員会のEメールは、2016年の米大統領選挙について影響を与えるためにロシアのハッカーたちによってリークされたと考えられている。サンダースの主要な支持者たちは、民主党全国委員会がサンダースに対して妨害活動をしていたことをEメールが示しているが、他のサンダース支持者たちがヒラリー・クリントンに投票することを妨げないと述べている。しかし、フィラデルフィアに集結しているサンダースが獲得した代議員と講義をしている人々は全く別のことを叫んでいる。

 

 サンダースは、民主党全国大会が開催されるスタジアムから数キロ離れた集会場に集まった彼が獲得した代議員たちに対して「今まさに、私たちはドナルド・トランプを打ち倒さねばならない」と語った。サンダースは月曜日の夜に民主党全国大会で基調演説を行う予定だ。サンダースは更に「私たちはヒラリー・クリントンとティム・ケインを当選させねばならない」とも述べた。

 

 サンダースが発言を続ける中で、集まった人々は「兄弟たち、姉妹たち、これが私たちの生きている現実世界だ」と叫んだ。

 

 現実世界は、ウィキリークスが民主党全国委員会のEメールをリークしたことによって衝撃を受けている。サンダースが彼の代議員たちを前に演説している最中に、民主党全国委員会のデビー・ワッサーマン=シュルツは『オーランド・サン・センティネル』紙の取材に対して、月曜日の午後に4日間にわたって行われる民主党全国大会の開会宣言を行う大役を辞退すると述べた。フロリダ州選出の連邦下院議員であるワッサーマン=シュルツは日曜日に、全国大会でのいくつかの仕事をこなした後に委員長職を辞任すると表明した。

 

 民主党全国委員会と独立系のアナリストたちは複数のハッカーに対するEメールのリークは、ロシア政府との関係があるのではないかと疑いを持ち調査を行っている。ここ数時起きていることはまさにロシア政府が意図したことであると彼らは考えている。民主党内部の亀裂がどんどん大きくなることでヒラリーへの支持は下がり、トランプにとっては大きな後押しとなる。トランプは共和党の大統領選挙候補者で、彼の選挙戦とビジネスはロシアに対して友好的であった。

 

 フィラデルフィアで抗議活動をする人たちを鎮める方法はない。また、全国大会会場で、ヒラリーと民主党全国委員会に対する反対を明確に記録に残すために候補者指名方法に関して動議を出す計画をサンダース派の代議員たちが出すことを止めることもできないだろう。彼らはヒラリーが不当に依怙贔屓をされて予備選挙に勝ったと不公平感を強めている。

 

 ジム・ゾグビーはサンダースの外交政策顧問であった。ゾグビーは、「民主党全国委員会はEメールのリークにおけるロシアの役割ばかりを強調しているが、銀行強盗をやった人物が、自分を警察に密告した人に文句を言っているようなものだ」と述べた。

 

 「これはよくある行動パターンだ。民主党全国委員会側はこれまで私を非難してばかりきたが、私はそんなバカなことはしてこなかった、他人に自分の間違いの原因を押し付けたりしなかった」と本誌の取材に対して答えた。集会所の外にはサンダース支持者が多数詰めかけていた。

 

 ゾグビーは、アラブ・アメリカン研究所の所長で、フィラデルフィアには特別代議員としてやって来た。また、民主党政策綱領作成委員会の委員であった。彼は長年にわたり、民主党全国委員会のメンバーだが、彼は、サンダースの支持者がヒラリー支持に移る純部は出来ていないと述べた。

 

 「彼らは民主党内のエスタブリッシュメントではない。何が起きるかは分からない」とゾグビーは述べた。

 

 ゾグビーは、サンダースとヒラリーの間には多くの問題で相違点があることは明らかで、これがサンダースの熱心な支持者たちを動かしているので、彼らがドナルド・トランプを倒すことに力を傾けるようには今のところなってはいない」と述べた。

 

 ジャスティン・モリットは月曜日に開催されたサンダースの代議員たちの集会に参加した。モリットはロビン・フッドの帽子をかぶり、自分がサンダースの代議員であることを示していた。彼はコネチカット州の労働組合活動家だ。彼は、サンダース支持者がヒラリー支持に合流できないのは、Eメールスキャンダルのせいではなく、彼女の外交政策がネオコンと同じであることだと述べた。

 

 モリットは「ロシア人を非難するのは簡単だが、今は冷戦下の1985年ではない」と本誌の取材に対して述べた。「問題はリークされたかどうかではなく、Eメールの中身だ。もっと大事なことは、彼女の外交政策だ。彼女の政策によって中東は不幸に見舞われた」とも語った。

 

 ホセ・ナヴァレットは学生で、パートタイム警察官候補生だ。彼はカリフォルニア州サンフェルナンドヴァリーからサンダースの代議員としてフィラデルフィアにやって来た。ナヴァレットは11月には第三党の候補者に投票すると述べた。

 

 ワッサーマン=シュルツが委員長を辞任するだけでは十分ではないとナヴァレットは述べた。

 

 「もし彼らがサンダース支持者の支持を得たいと思うのなら、民主党を本当に改革しなければならない」とナヴァレットは述べた。

 

 「私たちの目を開かせるために外国の力を使うのはどういうことだろう?私たちに何が起きているかを教えるのがロシア人だったのは悲しいことだ」とも述べた。

 

 しかし、サンダースの外交政策ティームのメンバーであったジョセフ・シリンショーンは、サンダースの支持者たちの態度に衝撃を受けていると述べた。シリンショーンは、サンダースがこれほど困らされ侮辱されている姿を見たことがなかったと本誌の取材に答えた。

 

 シリンショーンは、フィラデルフィアでは抗議活動をする人々は大声で叫ぶだろうと予想した。しかし、と彼は続けて、「彼らはサンダース支持者の大部分を代表する人たちではなく、大部分はヒラリー・クリントンが木曜日に指名受諾演説を行う前に既に、彼女を支持するだろう」と述べた。

 

 彼らは民主党全国委員会のEメールのリークにばかり関心を払い、ロシアが後ろについているハッカーたちがEメールをハッキングしたという疑惑には関心を払っていない、とシリンショーンは述べている。

 

 「これは前代未聞のことだ。1800年代初めのフランスのようだ。私たちは大統領選挙に対するあからさまな外国からの干渉が行われているのを目撃している。ロシアが何を望み、ドナルド・トランプが当選することが何を意味するのかについて全てのアメリカ国民に対して警報を発するべきだ」とシリンショーンは語った。

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 現在、民主党全国大会がペンシルヴァニア州フィラデルフィアで開催されます。予備選で何とか勝利したヒラリー・クリントンがティム・ケインを副大統領候補に従えて、いよいよドナルド・トランプとの直接対決に臨みます。

 

 今回は、ヒラリーが抱えるスキャンダルについてまとめた記事をご紹介します。ヒラリーに対する攻撃はこれらのスキャンダルを基にして行われています。これから選挙戦が佳境に入っていきますが、攻撃もますます厳しくなっていきます。

 

 その時に、ヒラリーのスキャンダルがどのようなものであるかを知っておくと大変便利(ヒラリーにしてみれば大きなお世話ですが)と思います。

 ここでは詳しく書かれていませんが、ホワイトウォーター疑惑(事件)は、ビル・クリントンがアーカンソー州知事時代に友人と共同経営していた不動産会社で不正な取引を行っていたのではないかという疑惑が持ち上がり、追及されましたが証拠不十分に終わるということになりました。記事の最後に書かれている「フォスターの事件」とは、大統領の次席法律顧問のヴィンセント・フォスターが拳銃自殺をした事件です。フォスターはクリントン夫妻の親友で、右腕、側近でした(ヒラリーと法律事務所の元同僚で愛人関係にあったのではないかとさえ言われました)。フォスターはホワイトウォーター事件やビル・クリントンとモニカ・ルインスキーのスキャンダルについて真相を知る人物と目されていました。自殺の原因はよく分からないままに事件は幕引きされました。

 こうして見ると、「政治に関わることは怖い」と改めて思います。私たちが普段見ている政治の世界は表側だけで、裏側ではどんなことが行われているのか、すこし考えてみるだけで、恐ろしくなります。外側で愚痴を言ったり、批判をしたりをしている分には良いのでしょうが、自分が当事者として巻き込まれてしまうと、最悪命を失うことだってある世界だと、考えすぎかもしれませんが、思ってしまいます。そうした世界に40年もいるクリントン夫妻は神経が図太いのでしょう。

 ドナルド・トランプが生きてきたビジネス、経営者の世界もまた、やるか、やられるか、油断のできない世界であって、失敗して自殺する人が出る世界です。この世界で40年以上生き延びてきたのですから、トランプは何があってもびくともしない神経を持つ人です。そういう人でなければ1年以上の選挙戦を戦って大統領選挙候補者になることはできません。

 これからヒラリーとトランプの直接対決です。たとえると、お互いが超巨大戦艦で、お互いに大砲や魚雷を打ち込んで 、どちらが先に沈むかという一対一の戦いです。私は各種世論調査や大統領選挙のこれまでの結果(主に2000年以降)を見て、ヒラリーが優勢と見ています。

 しかし、ナチスドイツが持っていた超巨大戦艦ビスマルクは、イギリス海軍によって沈められました。ヒラリーを戦艦に例えると、既にベンガジ事件とEメール問題で損傷部分が出ていますから、ここを集中的に攻撃されると火事が起きて、その火事が延焼して、火薬庫に引火して大爆発、なることがあるかもしれません。私が「8対2」でヒラリー優勢と言っているうちの「2」はこの部分です。トランプはこの数字を増やしていきたいでしょうし、ヒラリーは何とか延焼を食い止めたいのです。

  民主党大会でも民主党全国委員会の幹部や委員長のEメールがリークされて(ロシアがヒラリーをけん制するためにやらせているということもあるでしょう)、大荒れになりそうです。民主党全国委員会側がヒラリーを贔屓にしてバーニー・サンダースを何とか脱落させようとしたという事件ですから、ヒラリーに直接関係がないと言えばそうですが、サンダース支持者は怒り心頭です。

 トランプとしてはここで民主党の団結に亀裂を入れて、ついでにサンダース支持者を何割かでも取り込みたいところです。サンダース自身がどのように動くかが注目です。しかし、表立って共和党のトランプ に投票しようと言うことはできないですから、大人の態度で、「謝罪や責任者の更迭、処分は要求するが、予備選をやり直すわけにもいかないので、ヒラリーを支持する」ということで一応は収まるでしょう。それでも失望したサンダース支持者が何割か離れていくでしょう。

 これからの注目は一対一の討論会です。8月、9月、10月にそれぞれ開催されますが、ここはまさに大砲、魚雷の撃ちあいです。私もこの討論会を見て、かつその時々の世論調査の結果を見ながら、情勢分析をしていきたいと思います。そこで、トランプ優勢となることは十分に考えられます。

 私が前回のブログ記事を書いた後に、ある友人から「あんなことを書かなきゃよかったのに」と言われました。私も少し後悔してします。情けない話です。しかし、前回の記事を書いたのは、あくまで、「7月のこの段階での世論調査の結果とこれまでの大統領選挙の結果を見ての情勢分析」のために書きました。 私は日本人ですので、ヒラリー、トランプどちらがなっても、日本にはまた一段と厳しい要求をしてくるだろうと思っていますので、そう考えると気が重くなります。ですから、ヒラリーに勝って欲しいと思って、前回の記事を書いたのではありません。勇み足で書いてしまいましたが、「現在の情勢と過去の大統領選挙の結果から見ると、8対2でヒラリー優勢だけど、これから100日以上もあるから情勢は変わる」と書くべきでした。

 長文になって申し訳ありません。ここまでお読みいただきありがとうございます。 


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ホワイトウォーターからベンガジまで:クリントン家のスキャンダル入門編(From Whitewater to Benghazi: A Clinton-Scandal Primer

―司法省がヒラリー・クリントンに対する捜査を打ち切ったが、国務省は彼女のEメールに関する捜査を再開している。

 

デイヴィッド・グラハム筆

2016年7月7日

『ジ・アトランティック』誌

http://www.theatlantic.com/politics/archive/2016/07/tracking-the-clinton-controversies-from-whitewater-to-benghazi/396182/

 

ヒラリー・クリントンはフライパンから飛び出して、火の中に入っている状況になっている。7月6日、ロレッタ・リンチ司法長官は司法省が民主党の大統領選挙候補者に内定しているヒラリー・クリントンが国務長官在任中に私的なEメールを使用していたことに関して、訴追しないと発表した。その翌日、AP通信は、刑事事件の捜査は終了したが、国務省は国務省で使われているEメールに関する調査を再開した、と報じた。

 

 国務省のジョン・カービー報道官はAP通信の取材に対して、国務省は、ヒラリー・クリントンとその当時の彼女の補佐官たちによって機密情報が適切に取り扱われていなかった可能性があると見ていると語った。ヒラリーと元補佐官たちは、秘密事項取扱の解除を含む行政処分を受ける可能性が高い。これは、ヒラリーの政治生命に傷をつけることになり、11月の本選挙勝利後に、彼女が国家安全保障政策ティームのメンバー選びを難しくすることになる。

 

 ジェームズ・コミーFBI長官は7月5日にヒラリー・クリントンの国務長官在任中の私的Eメール使用に関していかなる犯罪行為も見つからなかったので訴追には当たらないという声明を発表したが、ヒラリーが望んでいた完全な無罪放免とはならなかったことは記憶しておくべきだ。コミーはヒラリーのEメール使用に関して厳しく批判した。「クリントン国務長官と補佐官たちが機密情報の取り扱いに関する法律に意図的に違反していたことを示す証拠を見つけることはできなかった。しかし、極めて機密性の高い、取扱注意の情報を取り扱う際に、極めて不注意であったことを示す証拠は存在する」とコミーは述べた。ヒラリーは、同時機密であった情報のやり取りはしていないと主張していたが、FBIは彼女がやりとしたEメールの中で、110通の中に機密情報が含まれていたことを発見した。コミー長官は、ヒラリーのEメールがハッキングされたことを示す直接的な証拠はないと述べたが、同時に「合理的な人間がクリントン国務長官の地位に就いたら、攻撃されやすいシステムを使うべきではないことは分かるであろう」とも述べた。

 

 これらの発言はヒラリー・クリントンに関する判断は間違っていて、彼女の説明の前提が大きな矛盾を抱えていることを示している。コミーFBI長官は訴追できるだけの証拠は存在しなかったと述べたが、共和党はこの発表を、怒りをもって迎えた。コミーとリンチは連邦下院の委員会に召喚されている。連邦下院議長ポール・ライアンは、ヒラリーに非公開の公聴会を開催することを提案したが拒否された。トランプ旋風が吹き荒れる中、Eメール問題はとても珍しい現象を引き起こしている。それは、共和党が1つの問題で団結して行動している。ヒラリーは、不人気度が高く、信頼度が低い。そのヒラリーにとって、これらの動きはトラブルを増幅させることになった。この出来事を、ウォーターゲート事件で有名になった言葉「犯罪ではないが、もみ消しだ」の具体例だと評する人たちも多い。彼女は機密情報を送らなかったと主張したが、この主張はスキャンダルの解消には役立たなかった。犯罪ではなかったにしても、Eメールサーヴァーを巡ってダメージは蓄積した。

 

 コミー長官の一連の発言はヒラリーにとって悪いものであったが、Eメール問題についてあまり言いすぎるのは止めよう。ヒラリーにとって最悪のケースは、FBIが起訴を求めることであった。しかし、ほとんどの専門家たちは起訴されるべきではないと考えていた。もしリンチ司法長官が起訴提案を拒絶しても、起訴が提案された時点で、ヒラリーの選挙戦にとっては致命的なものとなったであろう。ヒラリーにとってこの2週間で2回目の一息つける時間ができた。2012年9月11日に発生したリビアのベンガジにあるアメリカ公使館の4名のアメリカ人殺害事件が発生した。事件を調査していた連邦下院特別委員会は6月28日に報告書を発表した。報告書で、在外公館の安全対策が不十分であったと批判しているが、ヒラリーが、攻撃があった夜にこれを無視していたことを示す証拠は見つからなかったとしている。

 

 まとめると、Eメール事件とベンガジ事件の調査は、ヒラリー・クリントンにすぐに降りかかりそうな危険(訴追)を取り除くことになった。しかし、ベンガジ事件の調査と底から派生したEメールスキャンダルは、ヒラリーの選挙戦を危うくする可能性がある現在進行形のスキャンダルだ。アメリカ国民はこれまでの数十年間、スキャンダルを見せ続けられることでそれが慢性通のようになり、そのためにビル・クリントンとヒラリー・クリントンを信頼できないとアメリカ人は多く存在する。多くのスキャンダルが火ではなく、煙の段階のものであり、中には全く費など存在しないものもあるが、スキャンダルによるダメージはリアルなものだ。

 

 連邦下院のベンガジ特別委員会はベンガジのアメリカ領事館攻撃に関してヒラリー・クリントンが国務長官として間違った行動を取ったことを示す証拠を発見できなかった。しかし、委員会の調査の過程で、彼女の私的Eメール使用問題が明るみに出た。これはクリントン一家のパターンといえるものであった。クリントン一家は1974年にビル・クリントンが初めて選挙に出て以降、人々の注目を浴び続けてきた。何か潜在的にスキャンダルの種になりそうなものが出てくるが、それは何でもないことが証明される。しかし、調査が進むと他の疑問となる行動が出てくるというのがクリントン一家のパターンだ。この典型例がホワイトウォーター事件だ。これは1978年にビルとヒラリーが行った不動産投資の失敗を巡る事件だ。操作では何も間違った行動がとられたことを示す証拠は見つからなかったが、捜査の過程でクリントン大統領の偽証と捜査妨害が明るみに出で、弾劾されることになった。

 

 ヒラリー・クリントンは民主党の大統領選挙予備選挙の過程で、ホワイトウォーター事件から国務省のEメール問題まで、クリントン関連のスキャンダル全てが細かく調べられている。汚職にまみれたニクソンや党派的な憎悪の対象となったジョージ・W・ブッシュなど含むあらゆるアメリカの政治家の中で、ビル・クリントンとヒラリー・クリントンほど、常に攻撃に晒され、それが一大産業になるほどにまでした人物たちは他に存在しない。それぞれのスキャンダルを追跡し、その発生原因、深刻度を見ていくのは詰まらない試みではない。ここに入門編としてこの論稿を書いていく。私たちは新しい情報が出てきたら更新していく。

 

●ヒラリー・クリントンの私的Eメールサーヴァー問題(The Clintons’ Private Email Server

 

・内容:ベンガジ事件の調査が行われている最中に、『ニューヨーク・タイムズ』紙のマイケル・シュミット記者は、ヒラリー・クリントンが国務長官在任時に私的なEメールアカウントを使用していたと報じた。このスキャンダルは、ヒラリーのニューヨークにある邸宅内に設置された私的なEメールサーヴァー使用にまで話が大きくなった。ヒラリーとスタッフはどのEメールを公的な記録して国務省に提出し、どれを提出しないかを決定した。彼らは、自分たちが私的なEメールだと判断したものはすでに廃棄したと述べた。

 

・期間:2009年から2013年まで(ヒラリー・クリントンの国務長官在任時)。

 

・人物:ヒラリー・クリントン、ビル・クリントン、フーマ・アベディンを含むヒラリーの側近たち。

 

・深刻度:深刻だが、大変深刻というところまではない。国務省の独立調査官は、5月に公表した報告書の中で、ヒラリー・クリントンのEメール使用は深刻な誤りであったと述べた。しかし、ロレッタ・リンチ司法長官は7月6日、司法省は刑事事件として起訴しないと発表した。これによって起訴されないということになり、ヒラリーの選挙戦にとって大変重要な出来事になった。しかし、Eメール問題は、これからも彼女にずっとまとわりつくスキャンダルとなるであろう。ジェームズ・コミーFBI長官は、ヒラリーの行動について厳しい発言を行った。「クリントン国務長官と補佐官たちが機密情報取り扱いに関する法律を意図的に破ろうとしたことを示す証拠を発見することはできなかったが、取扱に注意を要する極めて機密性の高い情報の取り扱いに関して極度に注意不足であったことを示す書庫は存在した」とコミー長官は述べた。この発言は、選挙期間中、ずっと繰り返されることになるだろう。ヒラリー・クリントンの使っていたサーヴァーがハッキングされたのかどうかという疑問にはまだ答えがない。コミー長官は、FBIはハッキングされたことを示す証拠を発見できなかったと述べたが、「“直接的な”証拠は発見できなかった」とも述べた。最近になって公表された宣誓証言書の中で、フーマ・アベディンはEメールの脆弱なセットアップについて不満を漏らしており、「このシステムは良くない」と言っていたということが明らかにされた。

 

●ヒラリー・クリントンの国務省Eメール問題(Clinton’s State Department Emails

 

・内容:ヒラリー・クリントンの私的なEメールサーヴァーの問題を別にして、ヒラリーが国務省に提出したEメールには何が書かれていたのかということも問題になっている。ベンガジ問題に関するEメールのいくつかが公表されたが、公的記録法によってその他のEメールは公表されていない。しかし、これらも公表に向けての過程の中にある。

 

・期間:2009年から2013年まで

 

・深刻度:深刻だが、そこまで深刻ではない。政治関係者たちはEメールの中からヒラリーにダメージを与えるような文言を見つけることを期待していたが、そのだいぶ部は退屈な内容であった。中にはシドニー・ブルーメンソールからのEメールのように興味深い内容のEメールが発見されることもあった。よりダメージが大きいのは、110通のEメールの中に、当時は機密指定された情報が書かれていてやり取りされたという事実だ。ヒラリーはずっと機密情報のやり取りはしなかったと主張していた。一方、いくつかのEメールは徐々に公開されつつある。国務省は、裁判所の命令を受けて、ヒラリーが提出したEメールを少しずつ公開している。しかし、彼女が提出しなかったEメールも存在するが、これらは裁判闘争の中で明らかにされつつある。特に、保守派のグループであるジュディシャル・ウォッチが行っている裁判で、ヒラリーが提出しなかった160通余りのEメールが公表されつつある。そして、どうしてこれらのEメールが国務省に提出されなかったのかという疑問が湧いて出てくる。 有る機会に、ヒラリーは、彼女の提出したEメールがどのように取り扱われるのか知らないと語った。「私は私の書類が国務省でどのように取り扱われているか知らなかったことに気付いた。誰が私の個人的なファイルと職務上のファイルを管理しているのだろうか?」と述べた。

 

●ベンガジ問題(Benghazi

 

・内容:2012年9月11日、リビアのベンガジにあるアメリカ領事館に攻撃が行われ、クリス・スティーヴンス大使と3名のアメリカ人が殺害された。事件発生以降、共和党は、ヒラリー・クリントンがアメリカの在外公館の安全対策を怠った、また、彼女はテロリストが攻撃を計画していたことを知りながら、攻撃が自然発生的なものだったと思わせようとした、として非難している。ヒラリーは2012年10月22日に最初の議会諸言を行った。

 

・期間:2012年9月11日から現在まで。

 

・深刻度:6月28日に連邦下院ベンガジ問題特別委員会は報告書を発表した。これ以降、ベンガジ事件に対する関心は低下している。報告書では、ベンガジのアメリカ領事館を含むアメリカの海外公館の防御態勢が準備不足であると批判している。しかし、確固とした証拠も攻撃があった夜にヒラリーが行うべきであったことについての失態も新たに発見できなかった。保守派の人々は彼女をベンガジ試験で攻撃し続けたいのであろうが、彼女にとっての最大のダメージはクリントン一家のパターンが繰り返されたことで起きた。連邦下院のベンガジ事件調査の過程で、ヒラリーにとって大きなダメージであるEメール問題が明らかにされたのだ。

 

●国務省における利益の衝突(Conflicts of Interest in Foggy Bottom

 

・内容:ヒラリー・クリントンの国務長官首席補佐官に就任する前、シェリル・ミルズはニューヨーク大学に勤務しながら、4カ月無給で国務省でも勤務をした。彼女はこの時、ニューヨーク大学がアブダビに進出し、キャンパスを建設するための交渉においてその地位を利用したとされている。2012年6月、当時の国務長官次席補佐官のフーマ・アベディンの地位が「特別公務員」に変更された。これによってアベディンは、ビル・クリントンの右腕と呼ばれた人物が経営しているコンサルタント会社「テネオ」に勤務することが出来た。アベディンはクリントン財団からも給与をもらい、同時にヒラリー・クリントンから直接お金をもらっていた。これらのケースとは別に、クリントン財団への最大の献金者であるラジフ・フェルナンドは国務省の国際安全保障顧問会議のメンバーに選ばれていた、とABCテレビが報じた。フェルナンドは他のメンバーに比べて委員会のメンバーにふさわしくないことは明らかであったが、国務長官オフィスの強い要請でメンバー入りとなった。内部のEメールのやり取りでは、国務省の職員は最初、ヒラリーのためにこのことを隠そうとしたことが明らかになった。ABCの報道から2日後、フェルナンドは会議のメンバーを辞任した。

 

・人物:シェリル・ミルズとフーマ・アベディンはヒラリーの長年の側近である。アベディンは現在、ヒラリーの大統領選挙ティームに参加している。また、アベディンはアンソニー・ウェイナーと結婚している。

 

・期間:2009年1月から2013年2月まで。

 

・深刻度:これは不思議な内容のスキャンダルだ。そこには利益の衝突に関する疑問が起きる。例えば、アベディンがテネオと国務省両方に勤務していた時、テネオの顧客は国務省から特別な取り扱いを受けたのかどうか、という疑問が出てくる。簡単に言うと、クリントン財団とビル・クリントンとヒラリー・クリントンの役割との間で利益の衝突があったということなのである。

 

●シドニー・ブルーメンソール(Sidney Blumenthal

 

・内容:ブルーメンソールは元ジャーナリストで、第2期ビル・クリントン政権で大統領補佐官を務めた。この時代に様々なスキャンダルに見舞われたクリントンを助けた。ブルーメンソールは2008年のヒラリー・クリントンの大統領選挙ティームの顧問を務めた。そして、ヒラリーが国務長官に就任した時、ブルーメンソールを国務省に迎えようとした。オバマの側近たちは、選挙期間中にオバマ候補に対する激しい攻撃を企図したのはブルーメンソールだったことを知っていたので、ヒラリーの要請を拒絶した。そこで、ヒラリーは、ブルーメンソールを非公式に顧問として迎えた。同時期、ブルーメンソールはクリントン財団から給与を貰っていた。

 

・期間:2009年から2013年まで。

 

・深刻度:中程度。ヒラリーは既にある程度のダメージを受けている。「ベンガジ領事館への攻撃は自然発生的なものだった」というシナリオのアイディアを出したのはブルーメンソールであった。しかし、このアイディアは間違いで、ヒラリーとオバマ大統領に対する政治的攻撃の道具となってしまった。ブルーメンソールはこの他にも様々な問題について国務長官であったヒラリーに助言を行った。北アイルランド問題や中国問題など様々な問題でもアドヴァイスを行った。また、ブルーメンソールは、息子のマックスを通じて自分の分析をヒラリーに届けていた。マックスはイスラエル政府を激しく批判している人物で、保守派からは嫌われている。しかし、公開されたEメールによると、ヒラリーの外交政策に関する首席アドヴァイザーのジェイク・サリヴァンは、ブルーメンソールの分析を否定し、ヒラリーがブルーメンソールの判断に信頼を置いていることに疑問を呈していたことが明らかになった。

 

●各種講演(The Speeches

 

・内容:ビル・クリントンが2001年に大統領職を退いてから、クリントン一家は講演を行って数千万ドルを稼ぎ出した。

 

・期間:2001年から現在まで。

 

・人物:ヒラリー・クリントン、ビル・クリントン、チェルシー・クリントン

 

・深刻度:一時的には危険だ。しかし、ぱっと燃え上って、鎮火するだろう。バーニー・サンダース連邦上院議員は、2016年初めに、ヒラリー・クリントンはゴールドマンサックスのような大銀行で講演を行っており、彼女はウォール街に妥協的だと批判したが、この攻撃は有効であった。ヒラリーは講演記録を公表すべきだという要求が今でもなされている。彼女はこの要求を拒否した。「他の全ての候補者がこれまでの講演の記録を公表するなら、私も従う」と述べた。クリントン一家は、スキャンダルにまみれ、司法の調査を受けながらホワイトハウスを後にした。そんなクリントン一家にとって、元大統領という肩書を使ってのお金儲けができる講演会は、富を再形成するためにはうってつけの方法であった。しかし、こうした講演会については様々な疑問が出てくる。ビル、ヒラリー、チェルシーはどこで講演を行ったのか?講演料の金額はどのように決まったのか?彼らは講演で何を語ったのか?彼らはどの講演がクリントン財団を通じた慈善事業のもので、どの講演が個人の収入となる公演となるかをどのように決定したのか?ビル・クリントンが以前に国務省とビジネスを行った顧客のために講演を行うというような、利益の衝突や利益供与のケースは存在するのだろうか?

 

●クリントン財団(The Clinton Foundation

 

・内容:ビル・クリントンは1997年に財団を創設した。しかし、実際には彼が大統領職を退いてから、クリントン財団が彼にとっての主要な活動組織となった。ビル・クリントンは財団を通じて様々な活動を行っている。人々の健康改善から象牙密猟、中小企業の支援、子供たちの成長まで様々なプロジェクトを行っている。クリントン財団は様々なプログラムを通じて、巨大な国際的慈善活動団体となっている。2013年にヒラリー・クリントンが国務長官を退任してから、財団の名前はビル・ヒラリー・チェルシー・クリントン財団に改められた。

 

・期間:1997年から現在まで。

 

・人物:ビル・クリントン、ヒラリー・クリントン、チェルシー・クリントンなど。

 

・深刻度:クリントン財団の強みは、ビル・クリントン大統領の知的な雑食性にあるが、弱点は、飽きやすさと詳細に対する関心がないことである。慈善事業のレヴェルでは、クリントン財団は外部の評価団体からは高い評価を受けている。批判する人々は、クリントン財団が余りにも手を広げ過ぎで様々なプログラムに関わっているが、財団のお金は目的を達成するには足りないと批判している。クリントン財団は税務申告で間違いを犯し、それを訂正しなければならなかった。しかし、クリントン財団に関する根本的な問題は、2つの関連した問題に分けられる。一つ目の問題は、利益の衝突の問題だ。クリントン一家が行っている慈善事業が彼らの有料の講演にどれくらい関わっているのか?彼らの講演がヒラリー・クリントンの国務長官の仕事とどれくらい関わっていたのだろうか? アメリカの政策に絡んでお金を儲けたのだろうか?クリントン財団はクリントン家の友人たちの会社に不適切な形でお金を流していたのか?二つ目の問題は、情報開示に関わる問題だ。ヒラリーが国務長官に就任した時、ヒラリーはクリントン財団の情報をある程度開示することに同意した。しかし、そうした情報開示は行われていない。ヒラリーの国務長官時代の私的Eメール使用問題もあって、これらの諸問題に答えを出すことはより困難である。

 

●過去の悪夢の日々(The Bad Old Days

 

・内容:クリントン夫妻は長年にわたり批判の的になってきた。特に保守派のメディアで今でも取り上げられるスキャンダルが数多く存在する。ホワイトウォーター事件、トゥルーパーゲート事件、ポーラ・ジョーンズ、モニカ・ルインスキー、トラヴェルゲート事件、ヴィンス・フォスターの自殺、ジュアニタ・ブロードドリックなどが取り上げられている。

 

・期間:1975年から2001年まで。

 

・人物:ビル・クリントン、ヒラリー・クリトン、脇役たち。

 

・深刻度:常識では、これらはそこまで危険ではない。フォスターの事件は不幸なものだ。その他のルインスキーとホワイトウォーター事件は既に調べ尽くされており、ヒラリーにこれ以上のダメージを与えることはできない。実際のところ、ルインスキースキャンダルは支持率を高める効果があった。しかし、2016年1月に再び浮上したジュアニタ・ブロードドリックに対する婦女暴行事件は、常識が本当に賢いのか、ただ常識的なのかどうかを試すケースとなる。5月23日、ドナルド・トランプはブロードドリックスの事件を強調するヴィデオを公表している。

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は、ヒラリーとトランプ、どちらかが勝つかということについて、アメリカの記事を基にしながら、見ていきたいと思います。

 

 私は今のところ、「8対2」の割合で、ヒラリーが勝利を収めると考えます。もちろん11月までに、何か大きな事件やスキャンダルがあれば大きく変わりますが、今のところはヒラリー優勢だと思います。トランプが昨年出馬表明した段階ですと、「99対1」でヒラリーでしたから、トランプはかなり追い上げてきたということが出来ます。

 

 こう書くと、私がヒラリー支持だと受け止める方がいると思いますが、私はヒラリー支持でも、トランプ支持でもありません。どちらになっても、日本には厳しい状況になるのは変わらないと思います。日本へのあたりが表面上やわらかいか、の違いだけです。お金も取られて、兵隊も出させられる、そしてこれらのことが糊塗できなくなるまで、騙されつつづけるふりをしながら、日本国民の多くは、「仕方がない」と諦めながら、「野党がダメだから、仕方なく自民党を応援するしかない」と自分を騙しながら生きていくしかありません。

 

 映画『華氏911』で知られ、著書『アホで間抜けなアメリカ白人』で知られ、突撃取材で有名な映画監督のマイケル・ムーアが「大統領選挙はトランプが勝つだろう(残念ながら)」という予想をあるテレビ番組で述べました。その内容が、下に貼り付けた記事に詳細に説明されています。

 

 このテレビ番組は観客を入れて収録されたもので、コメディアンでリベラルな論客、政治討論番組の司会者でもあるビル・マーが司会だったので、観客たちはリベラル、反トランプの人々で、このムーアの発言に一斉にブーイングをしました。

 

 しかし、ムーアの発言は根拠があるものです。彼は、「怒れる白人有権者がトランプに投票する」し、「6月に行われたイギリスのEU脱退の是非を決める国民投票で脱退派が勝利をしたことの衝撃がある」と発言しています。アメリカの怒れる白人とイギリスでEU脱退に賛成した人々に共通するのは、「アメリカの没落と不法移民とに対する恐怖心」です。この不安や恐怖を拭い去ってくれる人物としてドナルド・トランプを選びました。

 

ムーアの説明で重要なのは、彼がアメリカ五大湖周辺のラストベルトの重要性を強調している点です。彼はラストベルトのミシガン州(自動車の都と呼ばれたデトロイトがあります)に住んでいます(ミシガン州立大学のスポーツキャップをいつもかぶっていて、トレードマークです)。ミシガン州は、激戦州(スイング・ステイト、バトルグラウンド・ステイトと呼ばれます)です。激戦州は他には、ウィスコンシン州、オハイオ州、ペンシルヴァニア州があります。

 

 ムーアの分析によれば、イギリスでEU脱退(Brexit)を決めたのは多くがイングランド中西部(ウェールズを含む)の地域です。ラストベルトがまさにイングランド中西部になるということです。上記の4州の選挙人の数は64名です。この4州をトランプが制した場合には勝利を収めることになります。

 

 2012年の米大統領選挙では、オバマ大統領が共和党のミット・ロムニーに126人の差で勝利を収めました。下に貼り付けた記事によると、この中には前述の4州での勝利も含まれていましたが、この4州全てをロムニーが制していたら、結果は270対268でロムニーの勝利でした。

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マイケル・ムーアの予言を基にした場合 

 

 更には、ムーアは「トランプはバカではない、人々の操り方をよく知っている。バカな人々が彼に操られている」と述べています。

 

 2016年7月21日(日本時間では22日)に4日間にわたって続いた共和党全国大会が終わりました。トランプは「法と秩序(Law and Order)」を強調し、ヒラリー・クリントンをベンガジ事件とEメール問題で激しく批判しました。この週末の世論調査でどんな数字が出てくるかが注目されます。「私は皆さんの声です、代弁者です(I am Your Voice)」「グローバリズムではなく、アメリカニズム、アメリカ・ファーストだ」という言葉がとても印象的で、内向き志向を示していますが、同時に中国やテロに対しては厳しい姿勢で臨むということも述べています。

 

共和党の政策綱領の中には、イスラエル・パレスチナ問題について、「二国共存による解決(two-state solution)」という言葉が入っていません。イスラエルに対してかなり肩入れした内容になっており、ここにネオコン(イスラエル・ロビー)の影響が見て取れます。ネオコンの主要な人物たちはトランプに対して不支持を表明していますが、アメリカ連邦上院でネオコンとして知られる、トム・コットンがトランプを支持しました。トランプが当選した場合に、どれだけネオコンが入り込んでくるのか、そしてそれをどれだけ抑えられるか、ということが注目です。

 

 トランプが自分の姿を投影しているロナルド・レーガン政権も選挙中は、リバータリアニズムを基礎にした政策を訴えていましたが、政権発足後にはネオコンが外交政策に影響を与えるようになり、減税と軍事力増強という相反する政策を実行したために、貿易赤字と財政赤字という双子の赤字を抱えることになりました。ソ連崩壊(冷戦の勝利)があっために、レーガンは偉大な大統領と呼ばれますが、トランプが目の前の敵であるテロ組織と中国を屈服させることはできません。

 

(インターネット記事貼り付けはじめ)

 

July 21, 2016, 02:06 pm

Michael Moore: Trump is going to win

By Joe Concha

http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/288715-michael-moore-trump-is-going-to-win

 

The liberal filmmaker shared his presidential prediction at the Republican National Convention in Cleveland during a special edition of the longtime HBO political panel program "Real Time with Bill Maher."

 

"I'm sorry to have to be the buzzkill here so early on, but I think Trump is going to win. I'm sorry," the 62-year-old Moore proclaimed to gasps and boos from the progressive live audience. "Boo if you want."

 

Moore's rationale for a Trump victory includes angry white voters and the United Kingdom's vote to leave the European Union — known as Brexit — that sent shockwaves around the world in June.

 

"I live in Michigan. Let me tell you, it's going to be the Brexit strategy," Moore said.

 

"The middle of England is Michigan, Wisconsin, Ohio and Pennsylvania," he continued. "And Mitt Romney lost by 64 electoral votes. The total number of electoral votes in those states in the Rust Belt: 64. All [Trump] has to do is win those four states."

 

President Obama won by 126 electoral votes over Mitt Romney in 2012. But if the aforementioned four states and the 64 electoral votes that go with them collectively were to be flipped, Romney would have won that election 270-268.

 

Earlier in the day, Moore was much more pointed in his backhanded praise of Trump.

 

"He knows how to manipulate a dumbed-down population," he said at a press conference.

 

"The population of schools has been wrecked, and the news media is just insipid and stupid and doesn't give the people the facts about what's going on," he explained, calling American voters, "easily manipulated."

 

 "He's [Trump's] not as stupid as he looks. You should take it very seriously," the director of "Fahrenheit 911" and "Roger and Me" warned. "He knows the manipulation that's going on here, and the use of propaganda and the way he's doing it is just brilliant in the way that he is succeeding and has succeeded."

 

According to the RealClearPolitics average, Hillary Clinton and Donald Trump are in a statistical dead heat nationally with 109 days to go until Election Day. Clinton's lead is down to 2.7 points, within the margin of error.

 

(インターネット記事貼り付け終わり)

 

 次にご紹介するのは、私が知りたいと思っていた、統計上の資料がふんだんに使われている記事です。ニューヨーク・タイムズ紙が、全米50州+ワシントンDCのこれまでの大統領選挙での結果や世論調査からヒラリーが勝つ確率は74%だということを述べています。私がこのブログでも何回も書いていますが、アメリカでは共和党が確実に勝つ州と民主党が確実に勝つ州がはっきり分かれるようになってきました。ジョージ・W・ブッシュ前大統領の頃から、「レッド・ステイト(共和党が強い州)」と「ブルー・ステイト(民主党が強い州)」がある程度固定化され、それに分類されない「スイング・ステイト、バトルグラウンド・ステイト(激戦州)」の取り合いが大統領選挙の帰趨を決めることになりました。赤と青でオセロゲームをやっている感じです。


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青がヒラリー、赤がトランプ(NYタイムズから)


 アメリカ大統領選挙の特徴は、単純に得票数で結果が決まるのではなく、各州に割り当てられた選挙人を取り合って、その合計数で結果が決まるというものです、選挙人の数は州の人口に沿って割り当てられており、最大の州は55名のカリフォルニア、最少の州は3名のノースダコタやサウスダコタです。その州で投票の過半数を取れば、選挙人は勝者が総取りとなり、得票数に応じて配分ということではありません(いくつかの州で配分にする動きが出ています)。

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青が民主党が強い、赤は共和党が強い、真ん中は激戦州(NYタイムズから。州の数は赤が多いが、選挙人の数は青が多い) 

 

 今回の大統領選挙の副大統領候補選びで見えてくるのは、ヒラリー、トランプ両陣営の思惑です。ヒラリーはティム・ケイン連邦上院議員(ヴァージニア州選出)を選び、トランプはマイク・ペンスインディアナ州知事を選びました。民主党側は、ティム・ケインが地盤とするヴァージニアは激戦州ですが、アメリカ南部の「入り口」であるヴァージニア州とできれば、まだ何とかなりそうなノースカロライナ州を逆転させたいとおもっているようです。共和党側は、前述したように、ラストベルト、五大湖周辺部の64名を取りに行って、勝利に結び付けたい、また、ペンスは最近まで6期連邦下院議員を務めていたので、中央政界でも顔が利くので疎遠なトランプの助けになるという思惑があります。

 

 私がだいたい考えていたようなことがこの記事では書かれています。トランプがラストベルト4州で全勝すれば勝利となりますが、ここの出身者を民主党側が選ばなかったというのは、彼らは恐らく独自の世論調査をやっているでしょうが、「4つ全部落とすことはないし、1州くらいは落としても何とかなるし、それどころか、4つ落とすことはない」という手ごたえをつかんでいるのだろうと思います。トランプ側はここを崩さないと勝利はないので勝負をかけてきたということだと思いますが、4つを逆転するためには、ヒラリー側に相当な失態やスキャンダルが起きなければ厳しいです。


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ヒラリーが何人の選挙人を獲得して勝利するかの確率が固いかを1人毎に示しているグラグ(NYタイムズから。538名中347名を獲得して勝利というパーセンテージが高い)
 

 まだヒラリーとトランプの直接対決前ですので、どうなるか分かりませんが、今のところの状況では「8対2」でヒラリーが優勢だと私は考えています。私が今のところ考えている結果予想は次の図の通りです。

 

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(新聞記事転載貼りつけはじめ)

 

Who Will Be President?

 

By JOSH KATZ  UPDATED July 21, 2016

Last updated Thursday, July 21 at 8:08 PM ET

http://www.nytimes.com/interactive/2016/upshot/presidential-polls-forecast.html?src=twr&smid=tw-nytimes&smtyp=cur&_r=1

 

Hillary Clinton has about a 74% chance of winning the presidency.

 

 

The Upshot’s elections model suggests that Hillary Clinton is favored to win the presidency, based on the latest state and national polls. A victory by Mr. Trump remains quite possible: Mrs. Clinton’s chance of losing is about the same probability that an N.B.A. player will miss a free throw.

 

From now until Election Day, we’ll update our estimates with each new poll, as well as collect the ratings of other news organizations. You can chart different paths to victory below. Here’s how our estimates have changed over time:

 

 

State-by-State Probabilities

 

To forecast each party’s chance of winning the presidency, our model calculates win probabilities for each state. In addition to the latest state polls, our forecast incorporates a state’s past election results and national polling.

 

The table below shows our model’s estimate for Democrats and Republicans in all 50 states and Washington, D.C. We have put the states into five groups based on their voting history relative to the nation since 2004.

 

Our estimates in states that tend to vote ...

 

 

How Other Forecasts Compare

 

The New York Times is one of many news organizations to publish election ratings or forecasts. Some, like FiveThirtyEight or the Princeton Election Consortium, use statistical models, as The Times does; others, like the Cook Political Report, rely on reporting and knowledgeable experts’ opinions. PredictWise uses information from betting markets.

 

We compile and standardize these ratings every day into one scoreboard for comparison. First, every organization’s estimate for who will win the presidency:

 

 

Which Outcomes Are Most Likely

 

Some combinations of electoral votes are much more common than others. The chart below shows the estimated likelihood of each outcome.

 

 

Donald Trump’s Difficult Path to the White House

 

The interactive diagram below illustrates Mr. Trump’s challenging path to the presidency. Here, we assume Mrs. Clinton and Mr. Trump will win the states where we believe they are most strongly favored, and we let you control the outcome of the 10 most competitive states. Above all, this diagram illustrates how important Florida is to Mr. Trump. It is extremely difficult for him to win without it.

 

Select a winner in the most competitive states below to see either candidate’s paths to victory.

 

(新聞記事転載貼りつけ終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 ゲームで遊んだことないので、勉強不足で知らなかったのですが、ポケモンGOというゲームが流行っていることはニュースで知っていましたが、「なんじゃそりゃ?」と思っていましたが、世界中で大人気になっているそうです。

 


 ポケモン
GOは、スマートフォンを使って、地図上にいるポケモン(ポケモンは知っています、昔テレビアニメで目からの光線が強すぎて子供たちにてんかん症状が出た時に知りました)のキャラクターを実際の場所に行って捕まえるというものだそうです。

 

 その場所が人が入りにくければ入りにくいほど、珍しさが高まるようですが、原子力発電所や地雷原がその場所になっている場合もあるそうです。実際にポケモンの大冒険をやってしまうと、怪我をしたり、最悪事故死したりしてしまうことも考えられます。また、普通の街中でも、ゲームに夢中になり過ぎて自動車事故や通行人にぶつかるということもありそうです。

 

 今回は、ポケモンGOに絡めて、日本の「かわいい」文化・美意識について書かれた論稿をご紹介します。アメリカの外交・国際関係専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に掲載されたものです。FP誌が日本の参院選の結果に関する記事ではなく(こちらの方が雑誌にふさわしい話題だと思いますが)、ポケモンについての記事を掲載するのですから、これが国際的な出来事なんだということが分かります(任天堂もこのおかげで売り上げが上がり、株価も上がっているそうです)。

 


 「かわいい」文化・美意識が日本の主流の文化になり、「かわいい」が蔓延している。それは、人々の心を和ませる効果があるが、何でもかわいい表現をしてしまうために、現実逃避、問題に対する無関心を引き起こすという内容になっています。

 

 それではお読みください。

 

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ポケモン、日本の女子高校生パンクバンド、コカインに共通するもの(What Pokémon, Japanese Schoolgirl Punks, and Cocaine Have in Common

―かわいい(kawaii)がなければピカチュウは存在しなかっただろう。かわいいは、日本の中毒性のあるかわいさのカルトである

 

ソフィー・ナイト筆

2016年7月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/07/18/what-pokemon-japanese-schoolgirl-punks-and-cocaine-have-in-common/

 

「ポケモンGOモバイルゲームはどうしてそこまで魅力的なのだろうか?」という疑問に対する簡潔な答えは、「ポケモンが中毒になるくらいにかわいくデザインされているから」というものだ。世界中の多くの人々が走り回り、アニメ化された生物を捕まえようとしている。彼らは「かわいさのカルト」の最も新しい被害者だ。このカルトは、ポケモンと同様、その起源を日本に持つ。私たちがこのカルトの最も暗い底流を理解したいと望むなら、日本を見なくてはならない。

 

ポケモンはポケモン・カンパニーの専有物であり、ポケモン・カンパニーの一部は、日本の多国籍企業の任天堂の所有である。ポケモンは日本で長い伝統を持つ「かわいい」の一部である。「かわいい」は日本の現代文化における美的感覚であり、これからあなたの携帯電話の「絵文字」やコスチュームパーティーで着ようかなと思っている着ぐるみが生まれた。

 

「かわいい」は全てを魅力的な子供っぽさにするものだ。日本政府は、「かわいい」を文化輸出の主要な商品であり、「ソフトパワー」戦略の柱と位置付けている。ポケモンGOを伴って、「かわいい」はアメリカ文化へ波状的に侵入を続けている。

 

ピカチュウとピカチュウの仲間が魅力的なのはどうしてか?最も基本的な答えは、発達心理学の中にある。人類は、大きな目、大きな頭、ぶにぷにした短い手足、よちよち歩きのような乳児に似たものを見ると、脳内の中央にある喜びを感じる場所に幸福感を生み出すのだ。脳の同じ場所で、食べ物、セックス、コカインのような薬物の摂取による快楽を感じる。この幸福感によって、人間はかわいい対象物にもっと接近し、関わろうとする。過去、この本能によって、人間は乳児に栄養を与え、守ろうとし、それによって種としての人間は続いてきたのだ。

 

今日、この本能によって、私たちは、大きな目で丸い形をしたポケモンに出てくるキャラクターたちと遊びたいと考えるようになっている。ポケモンで遊ぶたびに、私たちは脳内の「かわいい」レセプターを押し、麻薬に似た幸福ホルモンを出すことでリラックスできるのだ。ストレスを感じる時に、ユーチューブで子猫やドジな赤ちゃんパンダの映像を見ることでホッとできる理由として、この幸福ホルモンの流れが挙げられる。

 

しかし、脳科学とGIFコードによる説明を除いて、他に日本以外でのかわいい文化の隆盛を説明することは不可能である。ポケモンの「かわいい」感覚は、責任、質実剛健、自己抑制を強調する日本の伝統文化に対する反抗である。日本人は伝統文化に変わるものを探していた。無意識のうちに探していた。そして、「かわいい」は甘美な逃避の形となった。虐待のような長時間労働、不条理な上司、不幸な家庭生活にストレスを感じている人々は、かわいい絵のついたクレジットカードや弁当箱、食器洗い用のスポンジを見ることで、ひと時の安らぎを得ることができる。「かわいい」のアピール力を認識した日本政府は、世界にこの潮流を拡大するために、多くの「かわいい」大使を任命した。

 

しかし、「かわいい」文化は主流の文化であった訳ではない。「かわいい」文化は1970年代の女子中高生の反乱が起きた時に発生した。この反乱はイギリスのパンク文化の日本版であった。人類学者のシャロン・キンセラは、十代の少女たちは、教師たちの、そしてより社会の意思に反抗する方法として、子供じみた文字を書き、乳幼児のような話し方をし、かわいらしい服装をするようになった。教師や社会は、責任感の強い、成熟した、真面目な大人になるように少女たちを型にはめようとするのだ。

 

西洋先進諸国の十代は、喫煙、飲酒、ピアス、入れ墨といった彼らの実年齢を超える姿勢と習慣を取り入れて、親や社会の権威に反抗しようとする。しかし、日本の十代は、子供のように振る舞う。それは大人の寒々しさに捕まることを逃れ、大人になるまでの時間を延長するためであった。大人になってストレスを感じることを避け、ピーターパンのように大人になることを拒絶したのだ。

 

しかし、反抗として始まったものは、現在では現状維持の分かとなっている。ハローキティのメーカーとして知られるサンリオは最初、大きな目をしたカエルの絵がついた筆箱を売っていた。最初はこのような一時的な試みに過ぎなかった。これが長い年月を経て変化したのだ。「かわいい」は、社会の全ての局面で実用的な美意識となっている。日本では現在、癌検診のお知らせ、津波の警告、保険の案内にも漫画のうさぎが書かれている。

 

外国人から見れば、このようなことをすれば、深刻な問題を軽いものだと思わせてしまうのではないかと考えてしまう。しかし、日本では、かわいさは実践的なものだと考えられている。「かわいい」によって、味気ない話題を受け入れやすくし、理解しやすくすると考えられている。大人は、アニメ化されたウサギが頼むことで、子宮癌の検査を受け、保険を新しくするだろうと考えられている。

 

日本企業以外の各企業も「かわいい」の心理的効果を認めている。ここ数年、国際的な自動車企業はそれぞれかわいい形の自動車を発表している。BMWは、丸い車体と優しい目のような丸いヘッドライトを持つミニマークを発表した。グーグルは昨年、ロゴの文字の「かざり」とフォントをより子供っぽくした。また、赤ちゃんコアラのような形をした自動運転自動車の原型を発表した。これはロボット装置の最新形態となりうるものだ。

 

 各自動車メーカーは、人々がかわいいものについてより関心を持ち、注意を払っているという調査結果に基づいて合理的な決定を行うはずだ。これが意味するのは、かわいい車体であれば後続の車のドライヴァーが無理に突っ込んできて衝突することはない、ということだ。かわいい顔を見ると守ってあげたくなるという感情の動きによって、ゆっくりとした運転に対して、他のドライヴァーが怒りを持ったり、イライラしたりするのを防ぐ効果も期待できる。

 

「かわいい」、もしくはかわいい対象物にはプラスの側面がある。「かわいい」によって、私たちはよりやさしく、怒りを和らげ、集中力と生産性を高めることができる。かわいい対象物は治療にも利用されている。その代表例が、ふわふわした表面のアザラシ型ロボット「パロ」だ。パロは、認知症の人々の気分を改善し、社会参加を促す効果があることが分かっている。

 

従って、うつ症状や不安神経症に苦しんでいる患者たちがポケモンGOをプレイすることで心理的に改善が見られる人たちが出ているという報告がなされているのは驚くべきことではない。そうした人たちが外に出て、歩き回って、他の人たちと関わるきっかけになることに加えて、大人の姿に似たキャラクターに比べて、ポケモンのキャラクターたちのかわいさは気持ちを明るくさせる効果があるのだ。

 

しかし、「かわいい」にはマイナスの面もある。「かわいい」が生み出す幸せホルモンは、合理的な思考や感情を圧倒する。ポケモンGOの場合、共感を高め、自動車などへの注意を高める以上に、プレイヤーたちは、視野狭窄に陥ってしまうことだろう。彼らはより珍しいキャラクターであるヴァポレオンやアイヴィザゥアーを捕まえるために夢中になって道路を掘り返し、他人の家に入り込むことになるだろう。つまり、キャラクターたちはかわいいので、プレイヤーたちは、彼らが捕まえようとしているキャラクターと競争相手以外のことは目に入らなくなり、その結果、周囲の人たちにとっては危険なことをしてしまうことになるだろう。

 

「かわいい」が抱えるもう一つの問題は、物事を簡単に理解できるようにする傾向にあり、深刻な問題と脅威を曖昧にしてしまうことである。シュレックの映画に出てくる、暗殺者の長靴をはいた猫は、純粋無垢の、眼の大きな見た目で敵の警戒感を弱めてしまう。「かわいい」は現実の危険なそして動揺する要素を曖昧にし、和らげることができる。たとえば、東京の警視庁のマスコットであるぴーぽ君は、警察権力の人々を威嚇する面を隠している。肺癌をかわいらしく描く漫画は、黒ずんだ内臓器官という現実を隠し、禁煙しようという決意を鈍らせてしまう。私たちは自分たちが歴史の分岐点に立っていることを認識している。この状況で、ポケモンGOを楽しむことで、私たちは、人種の分裂、海外におけるテロの増加、激しい大統領選挙といった現実からの楽しい逃避をすることができる。更には、ポケモンGOによって、私たちは注意を払わねばならない現実の諸問題から逃げることもできるのだ。

 

ドナルド・トランプの大統領就任、イギリスのEU離脱、核兵器、警察の暴力に対する恐怖は将来にとってどんな意義があるだろうか?心配はいらない。ただポケモンGOをプレイして、こうした不安が消えていくことを感じる。「かわいい」トレンドを始めた日本の十代の若者がしているのと同じく、ポケモンGOという視覚に訴えているマッサージに耽溺することは、自分を取り巻く現実からの逃避を意味するのだ。

 

(終わり)







 
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 古村治彦です。

 

 今回は、トランプの外交政策について書かれた記事をご紹介します。トランプについては過激な発言が注目されますが、彼の考えの本質をうまくつかまえた記事になっています。是非お読みください。

 


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ドナルド・トランプは首尾一貫した、リアリズムに基づいた外交政策を主張している(Donald Trump Has a Coherent, Realist Foreign Policy

―ドナルド・トランプは過激な発言を繰り返しているが、トランプは世界におけるアメリカの役割に関して大胆な考えを明確に発信している。トランプの外交政策についての考えについては、ワシントンのエリートたちをバカにするだけではなく、真剣に反応しなければならない。

 

ローザ・ブルックス筆

2016年4月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2016/04/12/donald-trump-has-a-coherent-realist-foreign-policy/

 

ああ、ドナルド、なんてことなの。あなたは口汚い言葉で、狂ったようなことを言い続けている。マスコミはあなたをバカにしている。あなたは吠え続けている。この素晴らしい国アメリカはあなたに感謝している。もしあなたがいなければ、私たちはテッド・クルーズについて話さねばならなかっただろう。何とつまらないことになったことだろう。

 

 しかし、『フォーリン・ポリシー』誌の私の編集担当者たちは、ホワイトハウスの表札に「トランプ」と掲げられた場合のアメリカの外交政策について真剣に書いて欲しいと依頼してきた。この依頼は簡単なものではない。それは、トランプがあらゆる外交政策の立場を取ることが出来るからだ。

 

 何から話を始めよう?

 

 もしドナルド・トランプが大統領になったら、核戦争が起きるかもしれないし、そうならないかもしれない。トランプは、「核兵器が世界中に拡散しているこの世界は恐ろしい。私にとってこの世界が抱える最大の問題は、核兵器とその拡散だ」と語っている。他方、「もし日本と韓国が核兵器を開発し、保有すると決断するならば、それはそれでよい。私たちにとって都合がよい」とも発言している。更に言えば、アメリカの先制攻撃における核兵器行使の話になった時には、「核兵器を選択肢から排除すべきだ」とも述べている。加えて、これは知られていないが次のような発言をしている。「私たちはヨーロッパの地域内で核兵器を使う必要が出てくるだろう。それはそこまで悲しいことではない。何故なら、ヨーロッパは広いし、いくつかの小国が放射能汚染でなくなってもそこまで大したことではない」。

 

 とにかく、NATOについて議論しよう。NATOはそんなに面白い話題ではない。トランプは「NATOを支持する」と述べている。しかし、彼はNATOについて面白くないと感じているので、ウクライナがNATOに加盟するかしないかに関して、「どうでも良い」と発言している。トランプは、「私はNATOのことなんて気にしない。NATOは“時代遅れ”であり、“アメリカに頼りきりの”タダ乗りの国々に溢れている」と発言している。しかし、「そんなことは気にしない!タダ乗りの国々を排除することでNATOが壊れるのなら、壊れてしまえ」と発言している。北大西洋条約機構は「再構成」し、「近代化」することが可能だ。トランプは、「そのためには恐怖感が必要だ。もしくは加盟諸国が一致団結できる何かが必要だ」と述べている。私は、トランプが、「火を消すのに火を用いる」という原理を基にして、NATOをテロリストと戦うためのテロリスト組織にすべきだと考えているとは思わない。しかし、そうではないと言いきれないとも考えている。

 

 更に話を進める。トランプ大統領の下では、アメリカは、テロリストたちに「誰がお前たちよりも上なのか」を示すために水責めのような拷問を行うし、「もっと残酷なこと」をすることになるだろう。彼はイスラミック・ステイトに対して空爆を行うだろうが、それでも効果がない場合には、イスラミック・ステイト参加者たちの妻や子供を捕まえるだろう。彼は「テロリストを倒すためには、彼らの家族を倒さねばならない」と述べている。アメリカ軍に拷問を行うように命じることや非戦闘員を攻撃対象にすることはもちろん違法である。しかし、アメリカ軍はトランプ大統領から出される命令に喜んで従うだろう。トランプは次のように発言している。「私がリーダーだ。私はいつもリーダーであった。私がやれと言えば、彼らはそれをやるんだ」。しかし、トランプはまた全く別のことを言った。彼は、「私は全てのアメリカ人と同じく、法律によって行動を制限されることになるだろう」とも述べた。

 

 とにかく、トランプ大統領の下では、アメリカ軍は強力であるだろうが、今現在軍が派遣されていない状況では、彼が大統領になっても軍が派遣されることはないだろう。トランプは、アメリカ軍が「酷い状況」にあり、破壊され、弱体化していると述べている。ホワイトハウスが世界で最も小さいトランプタワーとなった場合、このような状況は放置されることはないであろう。彼らはトランプ印の魔法の杖を振り回して、予算を削りながら、軍の規模を拡大するという矛盾することを同時にやってのける。その結果、アメリカ軍は「大規模になり、強力になり」、どの国の軍隊も立ち向かうことが出来ない存在になるだろう。しかし、アメリカ軍は、国内でだけで大規模になり、強力になることで満足しなければならないだろう。それは、日本や韓国のようなアメリカ軍を受け入れている国々が駐留経費を更に支払わねば撤退することになるからだ。トランプ大統領は、アメリカ軍を海外の基地から撤退させることになるだろう。

 

 だからと言って、何か問題があるだろうか?トランプは、ヴェトナムからイラクまで、アメリカが行ってきた軍事介入は全て、失敗に終わったと述べている。トランプは「ヴェトナム?あれは酷かった」、「イラク戦争?あれは大変な間違いだった」「リビア?全くもって酷かった」と述べている。イスラミック・ステイトに関してトランプは、「アメリカ軍の幕僚は、2万から3万の正規軍がいれば、イスラミック・ステイトを叩きのめすことはできるが、それがアメリカ軍である必要はないと言っている。中東の国々こそがイスラミック・ステイトを倒すために軍を出さねばならない。私が大統領になっても、米軍を2万から3万派遣するようなことなどしない」と述べている。

 

 ここら辺で十分だろう。私は次のように言いたい。トランプはこれまでメディアにとって格好の嘲りのための材料をこれでもかと提供してきた。しかし、私は共和党の最有力候補トランプをバカにし続けたいとは思わない。

 

 一つには、それはあまりにも簡単で陳腐なことであるからだ。ジョージ・W・ブッシュの「彼らは私のリーダーとしての私を間違って理解している」という見当違いなコトバをバカにするようなものだ。あまりにも陳腐なことなのだ。

 

 もう一つには、マスコミには、反トランプの言葉が溢れかえっている。NBCのアンドレア・ミッチェルは「トランプは世界のことを何も知らない」と述べた。『ワシントン・ポスト』紙のユージーン・ロビンソンは、「トランプの政策に対する無知ぶりにはため息が出るばかりだ」と書いた。CNNのタラ・セトマイヤーは、「トランプは大統領になる資質を少しも持っていない」と述べた。『ニューヨーク・タイムズ』紙の論説委員たちは、トランプは、「言葉遣いが酷く、攻撃的」で、「衝撃を受けるほどに無知」だと書いている。

 

 マスコミからこうした批判を受けても、トランプには全く影響がない。マスコミがドナルド・トランプを笑いものにするたびに、6人の平均的な怒れるアメリカ人たちが彼に投票しているのだ。マスコミのエリートたちがトランプの無知と傲慢さ、愚行を非難するたびに、怒れるトランプ支持者を17人ずつ生み出しているのだ。トランプが大統領になったら、マスコミの人々にこそその責任があるということになる。

 

 最後に、あまり言いたくはないことだが、ドナルド・トランプは狐のように抜け目のない人物なのだ。トランプは、大ぼらを吹き、暴言を吐き、ハッタリを仕掛けているし、矛盾、言い間違い、事実無根の主張を繰り返している。しかし、トランプは国際関係と世界におけるアメリカの役割に関して首尾一貫した考えを持っているのだ。

 

 デイヴィッド・サンガーとマギー・ハーバーマンは、トランプが『ニューヨーク・タイムズ』紙と行ったインタヴューをまとめた記事を書いたが、その中で、トランプの考えをよく描き出している。彼らは次のように書いている。「トランプ氏の世界観では、アメリカは衰退しつつある大国ということになる。そして、アメリカが世界における中心的な役割を再び果たすようになるためには、実利的な交渉が必要だ、としている。 トランプ氏は、戦略的な目標について正確に述べていないが、国際的な争いのほぼ全てを、交渉を通じて解決するとしている。トランプ氏は、アメリカが長年にわたり、より賢く、より洞察力に溢れ、より粘り強い人々によって、バカにされ、嘲りを受け、カネを奪い取られてきたと確信している。アメリカは力の強いいじめっ子のようになっているが、うまく導かれていないと考えている。アメリカはバカないじめっ子になっており、周りの人々から体系的に金を奪い取られていると感じているのだ」。

 

 トランプは暴れん坊だという認識を持たれることを全く意に介していない。しかし、彼は、人々から期待外れだ、騙されたと思われなくないと考えている。だから、トランプは、「サウジアラビアがイスラミック・ステイトと真剣に戦わないのなら、我々はサウジアラビアから石油を買うことを止めるだろう」「中国政府が南シナ海での拡張政策を続けるのは、中国のアメリカ市場へのアクセスを制限する」「NATOや太平洋地域のアメリカの昔からの同盟諸国が負担を引き受けないのなら、同盟関係を解消する」などという過激な発言を繰り返している。

 

 トランプの主張の矛盾、トランプの究極的な戦略的目標が何なのかがはっきりしないこと、そして人々に対して脅威を訴えていることを批判する人々に対して、トランプは、単純明快な、そしてマキャヴェリ的な返事をする。それが「私たちに必要なのは、予測されないということだ」というものだ。トランプにとって、成功する交渉というのは、自分の領域で交渉をするということだ。トランプは、相手に対して、自分が譲っても良い最低線を知らせることはない。そして、常に効果的なはったりを仕掛ける能力を持っている。彼が『ニューヨーク・タイムズ』紙と行ったインタヴューの記録からその一例を見てみる。「もし私が大統領になったら、軍事力を使って特定の紛争を解決すると言うか、言わないか、そんな状況にならないようにするね。私は何も言わないだろう。私は相手に対して自分が何を考えているかを知らせようとは思わないから」

 

トランプはネオコンやリベラル介入主義者たちを全く評価していない。トランプは、「彼らは、アメリカの価値観への盲信のために、アメリカの国益とアメリカの国力の限界に目を向けていない」と考えている。トランプは更に多極主義的な外交官も批判している。彼らは、アメリカの国益を犠牲にして、外国からの友好と協力を得ようとして妥協や取引をしがちである。そして、長年にわたるアメリカの同盟諸国を神聖な存在であると考えている人たちを評価していない。トランプにとって、アメリカの同盟諸国に対しては、不動産の分野における取引相手と同じように、常に次のように問い続けなければならない存在なのだ。「それであなたは私のために一体何をしてくれるというんです?」

 

トランプは彼にしかできないやり方で、ワシントンの民主、共和両党の外交政策にかかわるエリートたちが当たり前だとしてきた大前提に対して、強力な挑戦を行っている。そして、共和党と民主党それぞれの主流派がトランプの主張に対抗しようとするならば、彼の世界観がどうして適切ではないのかを説明することに真剣にならねばならない。そして、そうした説明をする際には、人々が聞き飽きた決まり文句ばかりにならないようにする必要がある。

 

決まり文句はすぐに口を突いて出てくる。アメリカの同盟諸国と同盟関係は大変重要だ。NATOは、アメリカの安全保障の重要な要素である。日本と韓国に駐留する前方展開可能兵力は同盟諸国への安全保障の提供と抑止にとって極めて重要な存在だ。私たちはサウジアラビアとは良い関係を維持しなければならない。どうしてこうしたことが重要なのであろうか?それは、ワシントンにいるすべての人々にとってこれらのことは共同了解事項であるからだ。

 

 しかし、これは学問的、そしてイデオロギー的な怠惰を示している。特殊な言葉遣いを取り除いてみれば、ワシントンの外交政策に関わるエリートたちの間の共通理解は陳腐なものだ。日本、アメリカ、クウェートに米軍を駐留させている理由は何なのか?アメリカが前方展開可能兵力を削減したら、空が落ちてくるような大変なことが起きるのだろうか?私たちはどのような緊急事態について備えていることになっているんだろうか?私たちはどんな人たちやどんな勢力を抑止しているんだろうか、そしてその抑止は機能しているとどのようにしたら分かるんだろうか?私たちはどんな人たちを安心させているんだろうか?財政上と機会の上でのコストはどんなものだろうか?第二次世界大戦後に結ばれた防衛条約と海外基地は今でもアメリカの国益に奉仕する存在であろうか?どんな国益に?どのようにして?サウジアラビアとの同盟からの利益はコストを上回っているか?アメリカにそこまで利益をもたらさない「同盟諸国」に対してそこまで妥協的に接しないなどこれまでのやり方を変えたら、どんな悪いことが起きるのだろうか?

 

 これらの疑問は自然なものであり、かつ重要なものだ。政治家や専門家たちがこれらの疑問に対してきちんと答えようとしないことに対して、一般のアメリカ国民が不満を募らせているのは当然のことだ。

 

 トランプの世界観と国家統治の概念は、私のものとはほとんど一致しない。しかし、トランプの世界観は、国際関係論のある首尾一貫した理論を反映している。それは、リアリズムであり、相互の交渉を重視し、マキャヴェリ的なものである。そして、トランプの世界観は、真剣な、良く考えられた、あけっぴろげなものである。

 

 もし私たちのような外交政策専門家が疑問に答えることが出来なければ、ホワイトハウスの表札に掲げられた「トランプ」という文字が、私たちの経験や知識など陵駕してしまうということになるだろう。

 

(終わり)






 

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 古村治彦です。

 

 2016年7月18日からオハイオ州クリーヴランドで共和党全国大会が始まりました。21日までの4日間大会は続き、様々な人たちが登場して演説をします。初日は、トランプ家から、ドナルド・トランプ夫人メラニア・トランプが登場しました。

 

 アメリカ生まれではないメラニアですが、堂々とした演説で、私は外国人が英語でスピーチをする際のお手本だなと思って聞いていたのですが、この演説に盗作疑惑が出てきました。2008年の民主党全国大会で、当時のバラク・オバマ候補(現大統領)の夫人ミッシェル・オバマ(現大統領夫人)が行った演説と同じ文言が入っていたということです。


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メラニアとミッシェル

 

アメリカでは、盗作(plagiarism)は厳しい対処を去れます。アメリカの大学ではレポート(ペーパー)を出す際に、少しでもルールから外れていて、丸写しの場所があったら、盗作となって、その授業の単位は与えられません。下手をすると、その楽器に受けた授業全部の単位を認められないということにもなりかねません。


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 私はメラニアの盗作疑惑のニューズを読みながら、「スピーチライターがいると思うが、その人がそんなコピペみたいなことはしないだろうに、誰が入れたのかな、おそらくメラニアが良いフレーズだと思って入れちゃったのかな」と考えていました。

 

 今回は、メラニアの演説を巡る騒動について簡単にまとめた記事をご紹介します。トランプ陣営は共和党系の有名なスピーチライターを2人雇っていたということです。この2人を招聘したのは、トランプ陣営を取り仕切っていると言われる、トランプの娘イヴァンカの夫ジャレッド・クシュナーでした。

 

 しかし、メラニアはこの2人の原稿が気に入らず、別の人と原稿の手直しをして、原稿はかなり変えられたそうです。実際に誰がミッシェルの使ったフレーズを入れたのかは記事からは定かではありませんが、今回の騒動にトランプ家内部の確執があるのかもしれない、と思わせる内容になっています。


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ジャレッド、イヴァンカ、メラニア

 

 私は次のように考えます。自分とは血のつながりがない義理の娘イヴァンカの夫ジャレッドが連れてきたスピーチライターの書いた原稿に唯々諾々と従うのが嫌だと考えた(2人が選挙を取り仕切っているのが気に入らない)、そこで別の人と一緒に手直しをした、その中で、気に入っているフレーズを入れてみたが、騒ぎになった、ということではないかと思います。実際に昼のメロドラマみたいなドロドロしたことがあるのか、ないのか分かりません。

 

 しかし、こういったハプニングも吹き飛ばしながら進んできたトランプですから、最終日のイヴァンカの演説と自身の候補者指名受諾演説がどうなるか興味は尽きません。

 

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メラニアの演説で注目を浴びた段落はスピーチライターの原稿には入っていなかった(Lifted passages of Melania’s speech not in speechwriter’s draft: reports

 

『ザ・ヒル』誌編集部

2016年7月19日

http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/288430-report-lifted-passages-of-melanias-speech-not-in

 

 

 メラニア・トランプの共和党全国大会における演説のスピーチライターが書いた原稿には、月曜日の夜に嵐を巻き起こすことになった段落は含まれていなかった。

 

 火曜日のNBCのニューズ報道によると、スピーチライターのマシュー・スカリーがドナルド・トランプ陣営に提出した原稿には、メラニア・トランプが使った、2008年のミッシェル・オバマの演説の言葉をそのまま使った段落は含まれていなかった。

 

 トランプ陣営のある幹部は、NBCの取材に対して、スカリーが出した最初の原稿は却下され、原稿作りは初めからやり直されたと語った。この幹部は、スカリーの提出した原稿は最終原稿の叩き台とはならなかったとも述べた。

 

 ニューヨーク・タイムズ紙は、メラニア・トランプの演説の原稿作りのために、トランプ陣営が2人の著名なスピーチライターのマシュー・スカリーとジョン・マコーネルを雇っていたと報じた。マコーネルはジョージ・W・ブッシュ大統領の同時多発テロ後の最初の演説をはじめブッシュ大統領の演説の原稿を準備した人物である。

 

 ニューヨーク・タイムズ紙は、「スカリーとマコーネルは原稿を提出したが、それから数週間しても何の音沙汰もなかった。それはメラニア・トランプが原稿を気に入らず、その文言を変え始めたからだ」と報じた。

 

 ニューヨーク・タイムズ紙は、トランプ陣営の関係者10名以上に取材し、その内容を基にしてどのようにして間違いが起きたのかを明らかにしている。

 

 スカリーとマコーネルは月曜日の夜にメラニア・トランプの演説を聞くまで、彼らの原稿がどれほど帰られたのかを知らなかった。

 

 ニューヨーク・タイムズ紙の報じたところではこのようになる。ドナルド・トランプの娘イヴァンカの夫じゃレッド・クシュナーがスカリーとマコーネルをメラニア・トランプの演説原稿作りのために招聘した。しかし、メラニア・トランプは2人ではなく、これまでドナルド・トランプの本をいくつも手掛けたメレデス・マッキーヴァーに頼った。

 

 マッキーヴァーがメラニアの演説原稿にどれくらい関与したのか明らかではない。しかし、複数の人々によると、トランプのメラニアのスタッフが演説原稿を読み直した際に、スカリーとマコーネルが出した原稿の文言のうち、残っていたのは、最初の段落と、「これまでにないような全国規模の選挙活動」という言葉が入った段落であった。

 

 トランプ陣営では、演説の中に盗作はなかったと主張している。また共和党側の人々も、彼女が話した内容は良くあるテーマで、似たような言葉づかいになっただけだと擁護した。

 

 しかし、メラニアの演説の言葉にはミッシェル・オバマ大統領夫人が語った言葉がそのまま使われていたのは明らかで、盗作の専門家たちはこれが偶然に起きたのではないかという疑念を超えて、盗作という確信を持っている。

 

カリフォルニアを本拠とするターンイットイン社は、コンピューターのアルゴリズムを使って、提出された文書が盗作かどうかを調べるという業務をしている。

 

ターンイットイン社のマーケティング担当副社長クリス・ハリックは、火曜日に本誌の取材に答えて、メラニアの演説のうち、6%が既に存在している演説の言葉と一緒であった、その6%は2008年の民主党全国大会でのミッシェル・オバマの演説の言葉であった、と述べた。

 

 ターンイットインによると、スカリーとマコーネルがミッシェルの使った16語を偶然にそのまま原稿の中に書いてしまった確率は10億分の1だということだ。メラニアとミッシェルの演説の中で共通する言葉の配列は最大で23語であった。

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回はアメリカ大統領選挙に絡んで、アメリカ民主党の党政策綱領草稿の中で、特に国際関係に絡む部分を読んでいきたいと思います。党綱領は大統領選挙が行われる4年に1度の民主党全国大会で採択されるもので、民主党候補が大統領になった場合の施政方針となるものです。

 

 今回のアメリカ大統領選挙民主党予備選挙では、ヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダース連邦上院議員が激突し、ヒラリー・クリントンが何とか勝利を収めました。しかし、バーニー・サンダースも多くの代議員を獲得したことで、来たる民主党大会でも大きな発言力を持っています。

 

 今回の党大会では、党綱領(Platform)が採択されるのですが、この党綱領作成委員会にはバーニー・サンダース支持の人々も半数近くを占め、バーニー・サンダースの主張が多く反映されるものとなりそうです。最低賃金の引き上げや学生の債務などに関しては、サンダースの主張が採用されています。また、アメリカの中央銀行である連邦準備制度(Federal Reserve SystemFRS)に関しては、金融業界(ウォール街)への規制を強めることが盛り込まれました。

 

 しかし、環太平洋経済協力協定(TPP)に関しては、バーニー・サンダースは反対していたのですが、反対ということは盛り込まれず、「アメリカの労働者の雇用と労働環境を守る」という内容になりました。

 

 以下のアドレスで民主党の党綱領草稿を見ることが出来ます。

 

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2016 Democratic

Party Platform

DRAFT

July 1, 2016

 

https://demconvention.com/wp-content/uploads/2016/07/2016-DEMOCRATIC-PARTY-PLATFORM-DRAFT-7.1.16.pdf#page=1&zoom=auto,-265,798

 

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 今回は、国際関係に関する部分を見ていきたいと思います。

 

目についたのは、党綱領の中で、「原理原則に則った、信念のある指導者像(Principled Leadership)」というセクションを設け、この中で民主党オバマ政権下での業績を強調し、ドナルド・トランプを批判している部分です。

 

 まずここで、民主党は、「アメリカの経済を成長させ、国益を守り、安全で繁栄した国にするために」、アメリカは世界をリードしていかねばならないと規定しています。これは、トランプのアイソレーショニズム(国内問題解決優先主義)と真っ向から対立する、グローバリズムを掲げています。そして、同盟諸国のネットワークは、アメリカにとっての重荷ではなく、戦略的に大きな利益をもたらす存在であるとしています。そして、アメリカの軍事力を使うのは最後の手段であって、そのためには軍の派遣のための条件が明確に整っていなければならないと述べています。

 

 ここで、過去8年間のバラク・オバマ政権ではこれらの原理原則に則って、重要な前進を遂げたと述べています。オサマ・ビン・ラディンに正義の鉄槌を下し、アルカイーダの中核となる指導部を殲滅し、どん底だった経済を建て直し、各国との同盟関係を改善し、キューバとの国交回復、イランとの核開発を巡る合意も実現したと述べています。これらの成果は上の段に挙げた原理原則に則って実現されたとしています。

 

 そして、これからの課題として、テロとの戦い、気候変動への対処、中国の台頭への対処、インターネット上の安全保障の強化を挙げています。

 

 民主党は、党綱領で、ドナルド・トランプを「民主、共和党両党の歴史の中で、最も大統領に適さない候補者」と非難しています。その理由として、「①もっと多くの国に核兵器を持たせる(日本と韓国の核兵器保有を認める発言がありました)、②アメリカ軍に戦争犯罪に関与させる(テロリストの家族の殺害や拷問を擁護する発言がありました)、③人種、宗教、出身に基づいて人々をアメリカに入国させないようにするために壁を作る(メキシコ国境に壁を作れ、イスラム教徒を入国禁止にしろという発言がありました)、④気候変動やISのような脅威に対処する戦略を持っていない、⑤同盟諸国を見捨て、敵を強化しようとしている」といったことが挙げられています。

 

 更に、ドナルド・トランプは、アメリカが弱く、情けない状態になっていると考えていると指弾し、アメリカは世界で最も大きな経済を持ち、軍隊を持ち、独自性を持つ国で、アメリカの価値観が世界の秩序を作っているとしています。そして、「私たちは壁の後ろに隠れているような国ではない」とトランプを揶揄しています。

 

 全体としては、民主党は、トランプに対して、「無責任で、行き当りばったり、原理原則のない人物」であって、「とうてい大統領にはふさわしくない」と批判しています。

 

 国際関係については、「世界規模の脅威に対峙する(Confront  Global  Threats)」と「世界のリーダーとして(A Leader in the World)」という2つのセクションを設けています。

 

 現在の世界規模の脅威として、テロ、イラン、北朝鮮、ロシア、インターネット公益からの安全対策、核拡散、気候変動を挙げています。アメリカと同盟諸国の平和を守るために、外交と発展援助計画を中心とするアメリカの国力をすべて利用する、戦争は最終的な手段だと述べています。

 

 テロに関し、まずISやアルカイーダを挙げ、これらを打ち破り、これ以上テロ組織が出てこないようにすると述べています。そのために、ISがシリアとイラクで支配している地域を奪還することを目的に、同盟諸国、特にペルシア湾岸諸国の地上軍派遣を求めています。また、2001年に認められた「アメリカ議会軍事力使用権威の承認(Congressional Authorization for Use of Military Force)」(緊急時には大統領がアメリカ軍を派遣することを決定できる権限を議会が与えるもの)の更新をするとも述べています。これは、最終的にはアメリカ軍の派遣も視野に入れた内容です。

 

 シリアについては、ISを打倒し、シリアの反体制勢力、国際社会、地域の同盟諸国をまとめ、交渉によってアサド政権の終焉に向かうようにすると述べています。そして、シリアとイラクの戦いで苦しんでいる市民たちへの援助を行うために国際社会をリードするとしています。

 

 アフガニスタンには、NATO主導の同盟諸国と一緒に、民主的に選ばれた政府の成立の手助けし、その政府がテロと戦えるようにすると述べています。パキスタンにも圧力をかけ、パキスタン国内にテロリストを匿わないようにさせるとしています。

 

 民主党は、テロとの戦いを進めるが、自分たちに害をもたらすような戦術は使わないとしています。ドナルド・トランプのイスラム教徒への中傷を否定するとしています。トランプの中傷は、アメリカの基礎となっている宗教の自由を侵害し、ISの極悪な主張を助長し、テロを打ち破るために重要な人物や国家を孤立させると述べています。

 

「トランプは、テロリストと疑わしい人物の家族を殺し、捕虜を拷問せよと提案し、アメリカ軍に戦争犯罪に加担するように求めているが、我々はこれを拒絶する」と述べています。その理由として、トランプの提案は、アメリカの諸原理に反し、道徳を低下させ、無実の人々の生命を失わせ、アメリカ国民を危険に晒すといったことを挙げています。また、ドナルド・トランプは、中東において間違った指導の下で行われる戦争で多くのアメリカの将兵の命を無駄にしようとしているがそれも拒絶すると述べています。

 

 オバマ政権はイランとの核開発を巡る合意を達成しました。これについては支持し、その実施を強く求めています。トランプはこの合意を破棄すると述べていますが、これについては否定しています。同時に、イランに対しては、テロ支援、人権侵害、ホロコーストの否定、イスラエル打倒といった問題があるために、経済制裁を含む断固たる措置を取ることもあると表明しています。

 

北朝鮮に関しては「地球上でもっとも抑圧的な体制」であろうと述べています。トランプが金正恩委員長は若くして政権の座につき、政敵を粛清してきたことを肯定的に述べ、彼と会っても良いと述べたことを捉え、「トランプは北朝鮮の独裁者を称賛し、日本と韓国、2つの同盟諸国を見捨て、アジアに核兵器の拡散をさせようとしている」と批判しています。そして、党綱領では、中国に圧力をかけて、北朝鮮に核開発とミサイル開発を止めさせるとしています。

 

 ロシアは、近隣諸国に対して状況を不安定にさせる行動を取っているとしています。ウクライナの主権を侵害し、アメリカの国益を損なうような影響圏の再構築を行っていると述べています。また、シリアのアサド政権を援助していると批判しています。そして、ここでもトランプを批判していて、「トランプは毎日テロと戦っているNATOを見捨て、ロシアのプーティン大統領と協力することで、50年以上続けられてきたアメリカの外交政策を転換しようとしている」と述べています。しかし、同時に、プーティンと協力して、米ロの核兵器の削減、イランの核開発プログラムの廃棄、北朝鮮への経済制裁、アフガニスタンへの米軍の再派遣と言った問題を解決する用意があるともしています。「ロシアが周辺に拡大することは認めないが、私たちに協力せよ」ということのようです。

 

 核不拡散について、ドナルド・トランプを批判しています。「ドナルド・トランプはアジアと中東における核兵器の拡散を促進し、核不拡散条約を弱め、ISに対する核兵器使用を排除していない」と述べています。そして、核兵器、化学兵器、生物兵器と運搬手段の世界への拡散を防止したいと述べています。

 

 気候変動に関しては国家安全保障にとっての喫緊の課題であるとしています。北極圏地域における環境保護に力を入れると述べています。ここでもトランプを批判しており、「トランプは気候変動を“ウソ”で中国人のためにこのようなことを言っているのだと述べているが、それは正しくない」と述べています。

 

最後に、民主党綱領では、世界をいくつかの地域に分けて、アメリカがどのような役割を果たすかということを述べています。

 

まず出てくるのは、アジア太平洋地域です。ここが最初に出てくるのは、ヒラリー政権が最も重視する地域であることを示しています。

 

まず、太平洋からインド洋にかけて、オーストラリア、日本、ニュージーランド、フィリピン、韓国、タイ(アルファベット順)といった同盟諸国との関係を強化すると述べています。インドとは長期にわたる戦略的関係を築いていくとも述べています。これはアメリカの対中政策にとって重要な事と言えます。

 

この地域の問題として、南シナ海の自由航行権をも待むこと、北朝鮮の攻撃的姿勢に対抗すること、中国がルールに従って行動するようにさせることを挙げています。中国に対しては、不公平な貿易慣習、通貨操作、インターネット上の攻撃に対処し、中国の人権状況、特にチベット人の人権状況を改善するようにするとしています。

 

 民主党は、「一つの中国」政策と台湾関係法を守り、台湾海峡問題の平和的解決を目指すとしています。その際に、台湾の人々の希望と最大の利益を一貫して考慮すると述べています。

 

 アジア太平洋に関しては、同盟諸国との関係を深めながら、中国に対峙するという姿勢を鮮明にしています。中国軍には直接的な言及はありませんが、経済や人権の面で、中国に対して、中国がおいそれと受け入れることのできないことを求めています。

 

 中東に関しては、イラクとシリアのISの支配地域を奪還すること、難民を迎え入れているレバノンとヨルダンに支援を与えること、湾岸諸国との間で安全保障面での協力関係を維持すること、経済的機会と自由を求める人々を支援することを課題としています。

 

 イスラエルは、戦略的な利益と民主政治体制、平等、寛容、多元主義といった価値観を共有しているので、アメリカにとって重要な国だと述べています。そして、イスラエルの自衛権を常に支持するとしています。

 

 イスラエル・パレスチナ紛争の二国共存による解決のために二国間の直接交渉を進めるとしています。二国共存によって、イスラエルは、確定した国境を持つ安全な、そして民主的なユダヤ国家としての将来を保証し、パレスチナの人々に独立した、主権を持つ、尊厳を持つ国家を与えると述べています。イェルサレムは交渉の最大の難関とし、イェルサレムはイスラエルの首都であるべきで、全ての宗教の聖地だと述べています。

 

 中東に関しては、まずISとの戦いを掲げ、そのために中東地域の湾岸諸国の関与を強く求めています。そして、オバマ政権下で、関係が悪化したイスラエルを重視する姿勢を鮮明に打ち出しています。

 

ヨーロッパはアメリカにとってかけがえのないパートナーであり、世界の安全保障の礎石であるとしています。民主党は、ロシアの進攻、ヨーロッパ南部の安全保障の脅威、経済的・社会的変化への対応のために、ヨーロッパの同盟諸国を援助すると述べています。トランプは、「ヨーロッパとNATOの同盟諸国を見捨てると言い、同時にロシアのプーティン大統領を賞賛している」と批判しています。

 

 NATO同盟諸国は、2001年9月11日の同時多発テロ発生後、北大西洋条約第5項(1カ国に対する攻撃は加盟国すべてへの攻撃と見なす)を史上初めて発効させた。アメリカは、NATOの集団安全保障を維持すると述べています。

 

 ヨーロッパに関してはNATOの枠組みを崩さないことを明確にしています。イギリスがEUからの脱退を表明し、ヨーロッパの連帯が揺れている状況ですが、アメリカが率いるNATOの枠組みで集団安全保障を維持していくとしています。

 

 南北アメリカ大陸については、「アメリカにとっては戦略的、経済的、文化的に重要な地域」としています。民主政治体制の促進、経済の発展、麻薬、犯罪、汚職への対処といった問題を挙げ、これらへの対処を謳っています。キューバに関しては、国交を回復したが、これからも民主政治体制と人権擁護を求めていくとしています。また、ヴェネズエラについても同様のことを述べています。「私たちは、ドナルド・トランプが述べているような南の国境に壁を作ることはしない」と述べています。

 

 民主党綱領は、アフリカを「世界で最も経済成長が速い国が多くある」と述べています。そして、アフリカ連合(AU)と協力しながら、オバマ政権時代と同様に、貿易関係を強化し、経済発展や投資、開発や健康などで協力していくとしています。更には地域のテロ組織の壊滅への努力を継続すると述べています。

 

 世界経済については、「ドナルド・トランプは我が国の債務を支払い停止(デフォルト)にして、世界経済を危険に晒し、危機を引き起こすことになる」と批判し、民主党は、パートナーと協力して、金融危機が起きないように努力すると述べています。

 

 民主党綱領では、国際機関や多国籍組織がアメリカの強さと影響力を高める存在であるとしています。これらの機関や組織には改革が必要であるが、ドナルド・トランプが述べているように、これらの機関を放棄することはないと述べています。

 

 民主党はアメリカが戦後に作った国際政治の枠組みを維持するという姿勢を明確にしています。国際機関や地域の多元的な枠組みを重視し、それらを使いながら、アメリカの国益を追求するということになります。日本に関して言えば、中国の台頭に対処するための同盟諸国のネットワークの鎖の輪のひとつとして役割を果たすことが求められています。

 

 アメリカからの要求もあって、日本は安保法制を成立させ、改憲に向かって進んでいます。世界の大きな流れからこうした動きが出てきているという理解をすることが重要であると思います。

 

(終わり)







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 古村治彦です。

 

 今回は、『内奏―天皇と政治の近現代』を皆様にご紹介したいと思います。新書にしては、こなれていなくて少し読みにくい本ですが、内容は大変充実しており、日本の近現代史に興味がある人にとっては、「そう、そこを知りたかったんだよ」という、かゆいところに手が届く本です。この本の中身を中心にお話を進めたいと思います。

 


 昭和10年代から敗戦までの歴史に関する本を読むと、重大な事件や決定の際に、政府の責任者(総理大臣や各国務大臣)、軍の責任者(陸軍の参謀総長や海軍の軍令部総長
[長く軍令部長])が天皇に報告するシーンが出てきます。この時に、天皇から厳しく追及され、脂汗を流す、頭を上げられないということがありました。一方、近衛文麿は、天皇から椅子を勧められ、それに足を組みながら座り、政治について語ったという話もあります。

 

 明治憲法(大日本帝国憲法)においては、天皇は主権者として、天皇大権と呼ばれる、国を統治し、軍を統帥する権限を持っていました。そして、この権限の行使の際には、国を統治する場合には、各国務大臣の輔弼(ほひつ)、軍の統帥の場合には、参謀総長と軍令部総長の輔翼(ほよく)を必要としました。

 

 天皇に何かを申し上げることを「奏」と言い、これに関する言葉は、上奏、奏上、密奏、内奏やそのほか様々な言葉があります。明治憲法下、国務大臣や参謀総長、軍令部総長がそれぞれの職務に関して決定を行い、それを天皇に報告し、天皇がそれを認める(裁可する)という流れの中で、天皇に報告することを「上奏」ということで統一され、制度化されたのは、1907年の「公式令」が制定されてからだということです。

 

 この上奏に関しては、天皇は「ご下問」という、質問で内容を確認したり、婉曲的、間接的にですが、「内容を再検討してみたら」「反対だ」という意思を伝えたり出来ました。戦争直前、このご下問対策に陸軍、海軍は頭を悩ませたということです。

 

有名な話では、日米開戦直前、参謀総長の杉山元が「日米開戦になった場合に、どれくらいで作戦を完遂するのか」という昭和天皇のご下問に対して、「太平洋は3か月で作戦を終了する見込みです」と答えました。そうすると昭和天皇は、「お前は陸軍大臣だったとき、支那は、2ヶ月程度で片付くと言ったが、支那事変は現在も終わっていないでないか」と厳しく問い詰められました。杉山が「支那は奥地が開けており、予定通り作戦がいかなかったのであります」と苦し紛れに答え、昭和天皇は「支那の奥地が広いというなら太平洋はもっと広い。いかなる成算があって3ヵ月と申すのか」と厳しく叱責し、杉山は汗をかきながら、頭を下げているしかなかったというものがあります。昭和天皇は厳しいご下問で、矛盾や過度の楽観を厳しく突く人物であったそうです。

 

 この上奏については、戦前から戦中にかけてさまざまなドラマが展開されました。内閣が倒れたこともありました。張作霖爆殺について、当時の田中儀一首相が天皇に「奏聞(報告)」することになっていました。これは「上奏(報告し、裁可を受ける)」とは異なる点に注意が必要です。この時、宮中では、最初に田中首相が示した陸軍の厳罰方針と異なる場合(軽い処分)には、認めない内容の「お言葉」を出して良いのかを研究し、その内容のお言葉を田中首相に与えることになりました。

 

 田中首相が「奏聞」のために参内し、昭和天皇に拝謁し、張作霖爆殺事件処理について行政処分で済ませることを報告すると、昭和天皇は以前の報告と内容が違うとして、報告を打ち切らせました。田中首相には「事件処理があまりに杜撰だ」という昭和天皇の意思が伝えられ、田中首相は内閣総辞職を決意しました。この時、昭和天皇は、これが田中首相の「上奏」だと考えており、「合理的な理由もなく、正式な(裁可を必要とする)上奏で前回と違うことを言うとは何事か」として、会見を打ち切ったとのことです。一方、田中首相にしてみれば、非公式の(裁可を必要としない)奏聞のつもりであったのですが、天皇に叱責されたことで内閣不信任だと考えて総辞職となりました。

 

 どうもこの上奏やら奏聞、内奏、奏上と言った言葉がはっきりした定義が共有されて使用されていなかったために、戦前から戦中にかけて、誤解や混乱を招くこともあったようです。

 

 1945年8月15日に昭和天皇の玉音放送が流れ、9月2日に東京湾の戦艦ミズーリの甲板上で降伏文書に調印が行われました。ここから1947年に日本国憲法が制定されるまで、昭和天皇は積極的に政治に関与します。この時はまだ明治憲法下ですから、憲法違反ということではありません。著者の後藤致人氏は、この時期は「天皇親政的色彩」が強い時期であったと述べています。

 

 19475月3日年に、大日本帝国憲法が日本国憲法に改正された形で施行となり、上奏という制度はなくなりました。しかし、昭和天皇は、内奏という形で、国務大臣などが報告に来ることは残すように要望しました。この内奏と同時に行われるご下問やお言葉については法的な根拠が曖昧で、天皇の政治関与(天皇執政)と考えられますが、「天皇の国情への理解を深める」ためのもので国事行為には当たらないということになっています。

 

 しかし、1947年7月には当時の外相・芦田均(首相は社会党の片山哲)が宮中からの要請を受けて外交問題についての内奏を行いました(芦田は日本国憲法制定に深くかかわったので、この内奏が天皇政治関与にあたるのではないかという疑念を持っていました)。この時、米ソ関係の悪化を受けて、「日本の外交は日米関係を基調とすべき」とする「お言葉」があったと芦田は日記で書いています。また、1947年9月には、沖縄メッセージ(米軍による沖縄の長期占領と日本の主権確認を求めるメッセージ)をアメリカ側に送りました。こうした天皇の姿は、日本国憲法下の象徴天皇の姿からは外れたものと言えます。

 

 片山内閣の後に成立した芦田内閣では、「①天皇不執政の徹底のために閣僚による内奏の廃止、②戦前・戦後の宮中の違いをはっきりさせるため、宮内府長官・侍従長という宮中首脳の同時交代による人事刷新、③道義的責任として天皇大意を求める」と言う方針を打ち出しました。これに対して、昭和天皇は抵抗しました。芦田内閣が短命であったために、これらの方針が徹底されることはありませんでした。

 

 次の吉田茂内閣(第二次)では芦田内閣の方針は破棄されました。吉田内閣の次の鳩山一郎内閣では、閣僚による内奏が復活しました。岸信介内閣では、都道府県知事の内奏が行われるようになりました。一方で、岸信介は天皇軽視の態度もみられ、宮中側には不満が残りました。たとえば、都道府県の知事の内奏では、天皇の日程を変更させると言ったことが起こりました。また、鳩山一郎の大勲位授与に関して、岸が内奏を行わないで、単なる伝奏で済ませようとしたことに関しては、昭和天皇が不満を漏らしたとそうです。

 

 岸とは対照的に、昭和天皇(そして当時の皇太子・現在の今上天皇)と良好な関係を築いたのは、岸の弟の佐藤栄作でした。昭和天皇と佐藤栄作の関係は「君臣情義」と呼ぶべきものでした。佐藤栄作は様々なことを天皇に内奏し、天皇もそれを熱心に聞き、お言葉もあったということです。佐藤栄作は沖縄の施政権の返還を実現しますが、これがなった時に思い浮かんだのは、自分が昭和天皇にこれを内奏する姿でした。やはり親しみを持ってよく顔を出す人に親近感を持つのは人間の情として自然なことなのでしょう。

 

 田中角栄内閣の時に、閣僚(増原恵吉防衛庁長官)が内奏の中身と天皇のお言葉をマスコミに話してしまう、内奏漏洩事件が起きました。第二次吉田内閣以降、内奏の中身を他に漏らしてはいけないということが不文律になっていました。内奏を終えた増原長官は、つい内容を漏洩してしまいました。その結果、内奏は政治的なものではないことが改めて確認されました。

 

 1980年代以降になると、政治家たちの昭和天皇に対する畏怖の念が低下していきました。日本国憲法化の象徴天皇ということが政治家たちの意識の中に浸透していった時代と言えます。1989年に昭和天皇が崩御し、今上天皇が即位しました。今上店で特徴的なことは、日本国憲法を強く意識していることです。折に触れて、日本国憲法や第二次世界大戦・太平洋戦争についての発言を行っています。これは昭和天皇には見られなかったことです。


 今上天皇になっても内装は続けられています。今上天皇は日本国憲法下で即位した初めての天皇で、昭和天皇のように、天皇大権があった明治憲法下の天皇の職務を体験していません。そういう意味では、新しい形の象徴天皇としての姿を模索し、それを実行していると言えます。

 

 この本『内奏』では、天皇の政治関与ということがテーマとなっています。明治憲法下では、天皇の政治関与が制度として組み込まれていたのですから当然行われていました。日本国憲法下では、象徴天皇と天皇不執政の原則から、政治関与は公的にはなくなりました。しかし、昭和天皇は、内装を残すことで、政治とのかかわりは保ち続けました。占領下では天皇不執政の原則を越えての発言もあったようです。

 

 その後、日本国憲法が定着していく中で、政治家側の温度や態度で、天皇との距離感の違いが出てきました。そして、現在では、とても「ドライな」関係になっているようです。この天皇と政治の距離感はある意味で絶妙なものであると言えるでしょう。天皇と皇室の存在を国民の多くが認めている現在、この距離感が大きく変わることはないでしょう。

 

この文章は2016年7月11日に書いたものです。書評ですし、内容から考えて、そんなに急がなくてもよいかなと思っていました。

 

 しかし、2016年7月13日夜に、NHKが今上天皇の生前退位の移行について報道し、共同通信や他のメディアも後追いの形で報道しました。

 

『内奏』のテーマは天皇の政治関与ですから、一気にこの本のテーマがホットな話題になりました。

 

 今回のケースでは、「天皇の地位から退きたい」という今上天皇の意向があるということが報道されました。

 

 現在の日本国憲法では天皇の地位と国事行為については規定がありますが、皇位の継承については、皇室典範によると書かれています。

 

 皇室典範には、天皇の生前退位に関する規定がありません。皇室典範は明治時代に制定され、昭和24年に改正された法律ですが、最後に天皇の生前退位があったのは1817年ですから、明治時代に皇室典範を作った時も、生前退位を想定されていなかったということになります。

 

 また、皇族の規定としては、皇太后(崩御した前天皇の皇后)はありますが、退位した天皇(おそらく大上天皇、上皇)については書かれていません。

 

 ですから、今のままでは天皇は即位すれば、崩御するまで天皇でいなければならないということになります。病気などで公務が出来ない場合には、摂政をおくことが出来ます。昭和天皇も父大正天皇の健康状態が悪くなって、摂政宮となりました。

 

 今上天皇が健康や年齢を理由に「退位したい」と考えて、ごく親しい人たちに話をするのは、人間として当然のことですが、それが表向きになると、途端に政治とからんでしまいます。

 

 私は今回、この報道を聞いて、「国事行為に天皇が自身の地位について話をするということがないが、これは逸脱行為、政治関与になる可能性はないのだろうか?」と、『内奏』を読んだばかりでしたので、考えてしまいました。

 

 もちろん、内奏で国務大臣や三権の長などに会う際に、政治的な意見を言い、それが影響するということになると、明らかな政治関与ですが、この場合にはそれに当たりません。しかし、国民的な議論というか、関心を集めるという点では、どの政治家も無視することはできないものです。

 

 その点では、政治関与とは言えないが、政治に大きな影響を与えるものとなったと言うことはできます。

 更に言うと、天皇には政治利用という側面もあります。つまり、天皇の意向だということで自分の主張や意見を押し通すということです。現在ではそのようなことは制度上はできませんし、政治利用を防ぐためにも内奏の中身を外に漏らすことはできません。しかし、今回の天皇退位の意向が、単に周囲に対して、「体もきついし、公務で間違うこともあるから、公務を皇太子に引き継いでもらうためにも、引退したい」と私的に述べたことが、外に漏れることで、大きな影響を与えることは明らかですから、問題は、誰が主体となってこのリークが行われたのかということを知ることが重要です。

 今上天皇が改憲の動きを阻止するために自ら意見のリークを認めた、ということも考えられますし、改憲派が日本国憲法擁護派の今上天皇を退位させようとした、もしくは皇室典範改正(現在のままでは皇太子が存在しなくなりますし、女性天皇の是非も問題になります)から改憲(天皇に関する条項の変更)へとつなげて、国民を国民投票や改憲に慣れさせるということも考えられます。


 天皇は日本では政治的な権威を失いましたが(君臨すれども統治せずの立憲君主制)、それでもやはり大きな存在なのだということを再認識した、という方は多いと思います。

(終わり)



 


(終わり)







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 古村治彦です。

 

 昨日、今上天皇が生前退位の意向を持っている、とNHKが報じました。このニュースは驚きを持って迎えられました。

 

 今回の報道をアメリカとイギリスの新聞はどのように報じているかを皆様にご紹介します。まぁフィナンシャル・タイムズの親会社は日本の日本経済新聞ではあるのですが。

 

 ニューヨーク・タイムズはかなり踏み込んだ内容になっています。参院選3日後であること、皇太子も含めて安倍首相に批判的であるといった内容が書かれています。

 

 ワシントン・タイムズはAP通信の記事を掲載していますが、皇后と一緒に皇室の伝統を変えてきたということを書いています。

 

 フィナンシャル・タイムズは病気はあっても、歴史の傷を癒そうとしていると書いています。

 

 それではお読みください。

 

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●『ニューヨーク・タイムズ』紙

 

Emperor Akihito of Japan Plans to Abdicate Throne, Broadcaster Says

By MOTOKO RICH JULY 13, 2016

http://www.nytimes.com/2016/07/14/world/asia/emperor-akihito-abdicate.html?ref=asia&_r=0

 

「テレビ放送によると、日本の明仁天皇が譲位の計画を持っている」

 

・日本の公共放送NHKによると、82歳になる明仁天皇(1989年即位、父は太平洋戦争も天皇であった昭和天皇)が側近たちに対して、息子の皇太子徳仁(56歳)に天皇の地位を譲る意向であることが明らかになった。生前の譲位は1817年以来のことだ。

 

・天皇の役割は現在は全体として儀式に限られている。第二次世界大戦終了まで、日本の人々は天皇を半神だと考えていた。また日本軍の最高司令官でもあった。日本降伏後、日本を占領したアメリカは、昭和天皇から全ての政治的権威を取り去った。現在でも多くの日本人が天皇に敬意を抱いている。

 

NHKによると、明仁天皇は2003年に前立腺がんの治療を受け、2012年には心臓の手術を受けた。正式な退位の意向の発表は近いうちに行われる予定だ。

 

・明仁天皇は自身の天皇の地位の継承に関して、ドラマが起きないようにしようとしている可能性がある。父昭和天皇は亡くなるまでの数年間、健康を害していた。ワシントンにある外交評議会日本研究担当状況研究員のシーラ・A・スミスは「天皇は継承をより簡素に、より事務的にしたいと望んでいるように見える」と述べた。

 

NHKの報道の後、日本の左派傾向にある新聞の朝日新聞は宮内庁次長が、譲位の報道について、「天皇はそのような意図を持っていない」と否定した。

 

・安倍晋三首相率いる自由民主党とパートナーが議会選挙で勝利を収めた3日後に、今回の報道がなされた。選挙の結果、彼らは参議院で3分の2を占めた。これは憲法の見直しに必要な数である。安倍首相は長年にわたり、戦争を放棄するとする日本国憲法の条項を覆したいという野心を持っている。

 

・天皇は公式的には一切政治的権威を持っていない。しかし、皇太子は安倍首相の目標に対抗するかのような行動を取っている。皇太子は1947年にアメリカの占領軍が起草した平和憲法について繰り返し発言を行っている。2015年の55回目の誕生日を前に、皇太子は、日本国憲法を賞賛し、「平和の大切さを心に留めておきたい」と述べた。

 

天皇が譲位するについては、国会が皇室典範の改正をする必要が出てくるであろう。現在の皇室典範では、天皇の崩御の後に次の天皇の即位が行われると規定されている。

 

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●『ワシントン・ポスト』紙

 

Japan’s Emperor Akihito, 82, reportedly considering retiring

By Associated Press July 13 at 11:40 AM

https://www.washingtonpost.com/world/asia_pacific/report-japans-emperor-akihito-82-considering-retiring/2016/07/13/bd97d23e-48e6-11e6-8dac-0c6e4accc5b1_story.html

 

「日本の明仁天皇(82歳)が退位を考えているという報道」

 

・日本の明仁天皇が、年齢を重ねることで公務を減らすよりも、数年のうちに退位して、天皇の地位を譲る意向を示した、と日本の公共放送が伝えた。

 

・82歳になる明仁天皇はここ数年、自身の好例について言及し、儀式で些細な間違いをしてしまうことを認めている。宮内庁は公務の削減し、皇太子に任せるように提案してきていた。

 

NHKは匿名の宮内庁の取材源からの話として、明仁天皇は宮中の職員たちに対して、天皇としての責任を大きく減らしたり、摂政を置いたりしてまで地位に留まりたくないと述べたと報じている。共同通信も政府関係者の話として、同様の報道を行っている。

 

・水曜日の深夜、宮内庁次長は報道を否定し、日本国憲法では天皇の政治関与は禁止されているので、天皇はコメントしないと述べた。

 

NHKは、明仁天皇は退位の可能性についてここ数年考えており、彼の2人の息子も父の考えを受け入れていると報じた。

 

・明仁天皇は1989年1月に亡くなった父昭和天皇から天皇の地位を受け継いだ。2003年には前立腺がん手術、2012年には心臓手術を受け、いずれも回復した。

 

・近現代の日本の歴史において生前の譲位は行われなかったことであり、明仁天皇はまた皇室の伝統を破ることになった。

 

・明仁天皇は、天皇として初めて、一般人出身の皇后と結婚した。また、皇后は皇室の歴史で初めて、皇后は3人の子供を、乳母を使わずに育てた。

 

・明仁天皇は2013年には、死後は火葬にして遺骨を歴代の天皇よりも小さい霊廟に収めること、そして皇后の遺骨も傍らに安置することを選択し、国全体を驚かせた。この計画は過去400年間の皇室の埋葬の習慣を破るものとなる。

 

・明仁天皇は高齢にもかかわらず、忙しいスケジュールを付けている。儀式に出席し、外国からの訪問者に挨拶をし、海外や日本国内を訪問している。巨大な地震の後は住民たちを慰撫するために被災地を訪問する。

 

・明仁天皇はこれまで、第二次世界大戦の傷を癒そうとしてきた。即位からすぐに中国を訪問し、またその後も主要な戦地を訪問している。昨年には、西太平洋の国パラオを訪問し、今年初めには、日本の戦時中の侵略の被害国フィリピンを訪問した。

 

・56歳になる皇太子徳仁は皇位継承第一位に位置している。皇太子妃雅子は元外交官で、現在は、ストレスが原因となる精神の不調からの回復途上にある。

 

・皇室典範は存命中の皇位継承についてのルールを定めていない。退位後の天皇の地位についても書かれていない。共同通信は匿名の政府関係者の話として、生前の皇位継承には皇室典範の改正が必要になると伝えている。

 

・最後に存命中の天皇の譲位が行われたのは200年前のことだ。

 

・伝統的な数え方では、明仁天皇は125代目の天皇となる。紀元前660年に神武天皇が初代の天皇となってから125代目と言われている。歴史学的な記録では、天皇の始まりは少なくとも紀元後5世紀まで遡れる。最も古い継承されてきた王家ということになる。

 

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●「フィナンシャル・タイムズ」紙

 

July 13, 2016 2:00 pm

Japan’s public broadcaster says Emperor Akihito ready to abdicate

Robin Harding in Tokyo

http://www.ft.com/cms/s/0/0ac18e98-48e6-11e6-b387-64ab0a67014c.html#axzz4EKBs9swl

 

「日本の公共放送、明仁天皇が退位の準備と報道」

 

・水曜日、明仁天皇は天皇の地位から退きたいと考えている、と日本の公共放送NHKが報じた。生前譲位は近現代の日本で前例のないことだ。

 

・生前譲位は「ここ数年」のことであるが、実現すれば200年ぶりとなる。これは、天皇の長男である56歳の皇太子が菊の玉座を引き継ぐことを意味する。

 

・ここ数年、82歳になる明仁天皇は病気がちであった。彼の退位は日本にショックを与えることになるだろう。日本では、天皇は日本国家の安定と継続性のシンボルだ。

 

・宮内庁はコメントを出していない。しかし、NHKはよく宮中からの準公式の情報を報じ、このような国にとって重大な問題について一か八かの報道はしない。

 

NHKの報道によると、天皇は高齢を理由にして公務を減らすことや代理を立てることに消極的だということだ。天皇は国家の象徴のような憲法上の義務を完全に履行できる人間が天皇の役割を果たすべきだと考えているとのことだ。

 

・日本では天皇の退位に対しての準備はできていない。法律を改正する必要がある。

 

・平均寿命が延びていることは、元首たちも高齢になっていくことを意味する。これが退位の理由となる。2013年、オランダのベアトリクス女王は息子に王位を譲った。同じ年、法皇ベネディクト一六世も退位した。

 

・明仁天皇は一九八九年に皇位を継承した。宮内庁が発表している系譜によると、明仁天皇は125代目で、初代は紀元前660年まで遡る。

 

・歴史上、天皇は退位を迫られることも多かったが、最後に生前退位が行われたのは1817年だ。この当時、日本の実権を握っていたのは徳川将軍であった。

 

・明仁天皇は健康問題を抱えている。2002年には前立腺がんと診断された。昨年には心臓病も見つかった。今年2月にはインフルエンザに罹患した。

 

・しかし、今年になって天皇は皇后を伴って、フィリピンを公式訪問し、全ての戦争で亡くなった人々を慰霊した。

 

・憲法で厳しい制約下に置かれているが、明仁天皇は日本の歴史に存在する傷を癒そうとしてきた。昨年は第二次世界終結70周年にあたり、「深い悲しみ」を表明した。

 

・昨年の誕生日の記者会見で、天皇は公務が負担になっていることをほのめかした。「私は誕生日を迎えて82歳となります。年齢を感じるようになりました。儀式ではいくつか間違いをするようになりました」と述べた。昨年のいくつかの機会で、天皇は間違いをしたことを認め、スケジュールの調整をしなければならないとほのめかした。「私は全ての機会において最善を尽くしてそのようなことがないように努めるつもりです」と述べた。

 

・天皇は歴史を正しく記憶することの大切さを発言した。この話題に関しては、皇室と日本の右翼歴史修正主義者とでは考えが対立している。理論上では彼らは天皇を崇め奉るのだが、この点では意見が異なる。

 

・「年を経るごとに、戦争を経験したことがない日本人がどんどん増えていきますが、前の大戦の知識を持ち、戦争についての考えを深めることが日本の将来にとって大変重要であると考えます」と天皇は述べた。

 

・皇太子には一人娘がいるが、現在の男性のみが皇位継承できるとする法律の下では、天皇の地位を継承できない。従って、現在では、皇位継承権第2位は、明仁天皇の次男の息子である悠仁皇子となる。

 

(終わり)





 
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