古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2018年03月

 古村治彦です。

 

 北朝鮮の金正恩労働党委員長の訪中に関しての最重要の言葉は「非核化(denuclearization)」でした。私たちはこの「非核化」という言葉を聞いて、「北朝鮮が核兵器を放棄することだな」と考えますが、ここで気をつけねばならないことがあります。それは、金正恩が「朝鮮半島の非核化(denuclearization on Korean Peninsula)」という言葉を使ったことです。

 

 現在、朝鮮半島は北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)と韓国(大韓民国)に分かれています。韓国は核兵器を保有していません。韓国駐留アメリカ軍は冷戦期、核兵器を配備していましたが(アメリカ政府は核兵器配備を公式に肯定も否定もしなかった)、1991年に当時のジョージ・H・ブッシュ大統領が核兵器を引き上げたことで、韓国国内には核兵器は存在しません。2017年になってアメリカ政府は韓国国内の駐留米軍基地に核兵器を再配備することを検討しましたが、実現には至っていないようです。

 

 ですから、韓国にはないのだから、「朝鮮半島の非核化」ということは、北朝鮮国内の核兵器の廃棄ということになります。しかし、金正恩が述べている「朝鮮半島の非核化」は、アメリカが核の傘で韓国を守ること、駐留米軍を撤退させることも含まれた概念ということになります。金正恩は「故金日成国家主席と故金正日総書記の遺志に従って朝鮮半島の非核化に努力する」と述べました。「祖父の代から準備して、親父の代に加速して、自分で核兵器を作っておいて非核化とはおこがましい、何を言っているんだ」と私は思いました。

 

 しかし、金一族の考えからすれば、韓国が先に「核武装化化(アメリカ軍が核兵器を配備しアメリカの核の傘に入った)」して現在もその状態は続いている、私たちは後発で自力で核兵器を保有するに至った、だから、朝鮮半島の非核化というのは、北朝鮮が核兵器を廃棄することと、アメリカ軍が撤退することなのだ、ということになります。

 

 アメリカは、北朝鮮の核兵器に関して、前提条件なしで完全な廃棄を求めています。経済援助といったものも認めないでしょう。米朝首脳会談が実現して、金正恩がドナルド・トランプ大統領に対して、こんな廻りくどい「朝鮮半島の非核化」の話をしても、「うるさい、お前は核兵器を捨てるのか、捨てないのかどっちだ」と一喝されて終わりになるかもしれません。

 

 しかし、トランプ大統領は「韓国駐留米軍はアメリカにとって負担になっている」とも述べました(2018年3月31日付読売新聞 http://www.yomiuri.co.jp/world/20180330-OYT1T50081.html?from=ytop_main3)。北朝鮮が核兵器を完全に放棄し、それを中国が担保し、中国がきちんと北朝鮮を管理できるならば、在韓米軍の撤退ということもあり得ます。

 

 北朝鮮国内では金正恩が「朝鮮半島の非核化」について語ったという報道話されていないということです。北朝鮮が核兵器を放棄し、アメリカが韓国から撤退ということが実現された場合、北朝鮮国内で故金日成国家主席以来の念願を孫である金正恩委員長が実現させたというような報道がなされて、金正恩支配の正統性を増すような動きが活発になるでしょう。

 

 かなり飛躍した推測になりますが、トランプ大統領の在韓米軍に関する発言は、中国政府や習近平からのかなり詳しい報告とそれに関する分析がなされての発言ではないかと思います。これについて2つの解釈が成り立つと私は考えます。一つは金正恩の朝鮮半島の非核化について、中国に責任を分担させることを条件にして受け入れ、これを機会に在韓米軍を撤退させようとしている、というものです。もう一つは、金正恩の朝鮮半島の非核化という考えを受け入れた姿勢を見せながら、実際の米朝首脳会談で、「韓国には核兵器は1発もないのだから、朝鮮半島の非核化というのは北朝鮮の核兵器廃棄しかありえない、その他のごちゃごちゃした解釈は認めない」と肘鉄を食らわせて、屈服させる、もし屈服しないなら、約束違反、朝鮮半島の非核化に努力していないのは北朝鮮だとして攻撃する理由とする、というものです。

 

 4月末に南北首脳会談もありますが、この時まで北朝鮮、中国、ロシア、アメリカ、韓国がどのように動いていくかを注視する必要があります。日本は残念ながら主要な登場人物とはなれません。お金が必要な時に呼ばれるだろうとは思いますが。

 

=====

 

・現在の北朝鮮をめぐる外交は伝言ゲーム(game of telephone)をしているかのようだ。

・韓国大統領特使が平壌で金正恩と夕食を共にし、その後ワシントンDCに向かった。韓国大統領特使は金正恩の「非核化」に関する交渉を行いたいという希望をアメリカに伝えた。トランプ大統領は今年の春に金正恩と会談を持つことに同意した。これを受けて金正恩は今週になって列車で北京に向かい、中国の習近平国家主席と会談を持った。習近平はトランプに金正恩訪中の最新情報を伝えた。トランプ大統領はツイートで、「中朝首脳会談はうまくいき、金正恩は私との会談を楽しみにしていると聞いた」と述べた。

 

・北朝鮮自体は沈黙を守っていた。

・朝鮮中央通信は金正恩の訪中と韓国との対話などは伝えたが、北朝鮮の非核化への努力については報じなかった。

 

・金正恩の非核化の約束は二次的な手段で伝えられた。中国国営新華社通信が報じたものしかない。新華社通信は金正恩の2つの発言を引用している。

・一つ目は核兵器プログラムについての金正恩の立場は父親と祖父の遺志に沿ったものだという発言。

・二つ目は朝鮮半島の非核化の問題は、韓国とアメリカが善意を持って北朝鮮の努力に応えること、平和を実現するための進歩的で同僚的な方法を採る間は平和と安定の雰囲気を作ることで、朝鮮半島の非核化の問題は解決可能となる、という発言。

 

CIAの元朝鮮半島担当分析官でCSIS上級研究員スー・ミ・テリーの分析は次の通り。

・金正恩が北朝鮮から核兵器を除去すると発言せず、「朝鮮半島の非核化」という言葉を使ったことが重要だ。「朝鮮半島の非核化」という枠組み提示は金政権にとっては「新しいものではない」。

・北朝鮮はこれまで安全保障のために、朝鮮戦争を完全終結させるための平和条約締結、韓国からの米軍の撤退、米韓軍事同盟の終結(アメリカの核の傘による韓国の防衛の終結)を求めてきた。

・韓国が核兵器を保有していないのに朝鮮半島の非核化という話になるのはこのためだ。

 

・北京訪問中、金正恩は安全保障に関する保証について言及しなかった。テリーはこの点について北朝鮮からの更なる報道を待ちたいとしている。

・北朝鮮は核兵器プログラム廃棄と引き換えでアメリカが韓国を見捨てること(アメリカ軍の撤退)以上のことは求めていない。

 

・韓国とアメリカからの譲歩があれば、韓国とアメリカから「善意、好意」を示すこと、「平和の雰囲気」を作り出すこと、「同調的な方法」を取ることでのみ非核化が進むと金正恩は述べたとテリーは分析している。

・韓国とアメリカからの譲歩とはトランプ政権が北朝鮮に科した国際的な経済制裁の緩和である。

 

・「たくさんのことが話されたが“明確”になったことは何もない」とテリーは述べた。

・北朝鮮は核兵器プログラムを放棄する用意があるとはなっていない。北朝鮮はいつでも撤退できるように保険を掛けた言葉遣いをしている。

・北朝鮮は核実験とミサイル実験を停止しアメリカと核兵器に関して直接交渉するという戦術に変更した。

・アメリカの経済面での圧力と軍事力の脅威によって金正恩が「動揺」し、「時間を稼ぐ」ために緊急的な動きを見せた。しかし、これらが戦略上の大転換であることを示す兆候はない。

 

・トランプは何かを話すときでも彼が本当に考えていることは明確にしない。

・トランプはアメリカ本土に直接届く長距離ミサイルに核弾頭を乗せて飛ばす能力を北朝鮮が持つことを明確に拒絶している。

・マイク・ポンぺオ(次期国務長官)を含むトランプ大統領の補佐官たちはより強硬な路線を主張している。それはこれまである国一国(南アフリカ)だけが成し遂げたことだ。それは、開発した核兵器を「完全に、証明付きで、再開できないような形」で放棄するということだ。

 

・トランプが大統領国家安全保障問題担当補佐官に指名するほんの数日前、ジョン・ボルトンは、「金正恩が核兵器プログラムを放棄し、それをアメリカに確約するという、2004年のリビアの行ったことをやらなければ、トランプは交渉をすぐに打ち切り、北朝鮮の核兵器が世界に脅威を与える前に核兵器プログラムを消滅させるために軍事力行使を真剣に考えるべきだ」と述べた。

・ボルトンは北朝鮮に経済援助を与えるべきではないとも述べた。北朝鮮は数十年に渡り経済援助を手にしつつ、核開発を止めなかった。また、金正恩との間で平和条約を蒸すムベキではないともしている。

・予備的な力を残したままの北朝鮮を信用できないとボルトンは述べた。

 

・金正恩が訪中で語った言葉が示しているのは、北朝鮮とアメリカとの間で、「非核化」という言葉についての定義がかけ離れているということだ。

 

(貼り付けはじめ)

 

What Does 'Denuclearization' Mean to Kim Jong Un?

A close reading of what the Korean leader reportedly told Xi Jinping in Beijing

 

URI FRIEDMAN 5:29 PM ET   GLOBAL

https://www.theatlantic.com/international/archive/2018/03/kim-jong-un-china-xi-jinping-train-nuclear-trump-summit/556679/?utm_source=atltw

 

One of the oddest things about the current flurry of diplomacy with North Korea is that it has played out like a game of telephone: South Korean officials dined with Kim Jong Un in Pyongyang and then flew to Washington, D.C., bearing a message that Kim was willing to discuss “denuclearization,” which inspired Donald Trump to agree to an unprecedented summit this spring with the North Korean leader, which motivated the North Korean leader to hop on a train to Beijing this week, which prompted Chinese President Xi Jinping to update Trump on how the visit went, which led the American president to tweet this morning that he’d heard the meeting “went very well and that KIM looks forward to his meeting with me.”

 

Through it all, North Korea itself has remained conspicuously silent, at least in public. Hopes for a resolution to the North Korean nuclear crisis have thus largely been pinned on a stream of whispers. As of this writing, the North’s state-run Korean Central News Agency features news of Kim’s trip to China and dialogue with South Korea, of the issuing of tea-themed postage stamps, and the invention of a fancy new “automatic meteorological observation device,” but no mention of any North Korean commitments to denuclearization.

 

Kim’s promises this week were conveyed second-hand through a report from China’s state-run news agency Xinhua, which includes two direct quotes from Kim Jong Un. In the first, he stated that his position on his nation’s nuclear-weapons program is in line with that of his father and grandfather: “It is our consistent stand to be committed to denuclearization on the peninsula, in accordance with the will of late President Kim Il Sung and late General Secretary Kim Jong Il.” In the second, he declared that the “issue of denuclearization of the Korean peninsula can be resolved, if South Korea and the United States respond to our efforts with goodwill, create an atmosphere of peace and stability while taking progressive and synchronous measures for the realization of peace.”

 

For a guided reading of Kim’s rare public remarks, I turned to Sue Mi Terry, a former Korea analyst at the CIA who is now a senior fellow at the Center for Strategic and International Studies. She said it’s significant that Kim spoke not of removing nuclear weapons from North Korea, but rather of the “denuclearization of the Korean peninsula,” as a whole. That formulation by the Kim government is “not new,” Terry told me, and has been accompanied in the past with demands for measures to preserve the regime’s security such as the signing of a peace treaty to finally end the Korean War, the withdrawal of U.S. troops from South Korea, and the end of the U.S.-South Korean military alliance, which in turn would terminate the protection the United States extends to South Korea through its nuclear weapons. Hence, talk of a nuclear-free peninsula despite the fact South Korea doesn’t have nuclear weapons. (In this respect, Kim was right to assert that he was simply echoing the policies of his father, who was also quoted by Chinese media as committing to the denuclearization of the peninsula even as he persisted in developing the nation’s nuclear-weapons arsenal.)

 

While it’s notable that Kim didn’t specifically reference security guarantees during his trip to Beijing, Terry said she’d need to see more statements from North Korea, and not just a one-off quote filtered through the censored Chinese press, to conclude that the North is now willing to trade away its nuclear program for anything less than the United States abandoning South Korea.

 

Terry interpreted Kim’s call for South Korea and the United States to exhibit “goodwill,” establish an “atmosphere of peace,” and take “synchronous measures” as a suggestion that he would only move towards denuclearization in response to concessions from both South Korea and the United States—specifically, relief from the severe international sanctions that the Trump administration has imposed on North Korea. 

 

 There’s a lot there” and none of it is particularly “revelatory,” Terry said. It’s not “North Korea is willing to give up its nuclear-weapons program.” Instead, it’s hedged language that the North can always retreat from. North Korea has shifted tactics in pausing its nuclear and missile testing and agreeing to direct nuclear talks with the United States, perhaps because U.S. economic pressure and threats of military force “spooked” Kim and made him scramble to “buy time,” Terry explained. But there aren’t strong signs yet of a strategic shift.

 

Trump also hasn’t clarified what he has in mind when he speaks, as he did on Wednesday, of “peace and the denuclearization of the Korean peninsula.” So far, he has focused on denying North Korea the capability of placing nuclear warheads on long-range missiles that can reach the United States. But his advisers, including Mike Pompeo, the man slated to become his next secretary of state, have staked out an even harder line, insisting that North Korea do what only one other country in history has done before: give up nuclear weapons it developed in a manner that is “complete, verifiable, and irreversible.”

 

Just days before being named Trump’s new national-security adviser, John Bolton said that if Kim Jong Un isn’t willing to relinquish his entire nuclear program and ship it off to the United States, the way Libya did with its far less advanced program in 2004, Trump should immediately end the negotiations and seriously consider using military force to eliminate North Korea’s nuclear weapons before they can threaten the world. He argued that the United States should not provide economic assistance, which North Korea has pocketed for decades without ceasing its nuclear activities, and certainly not sign a peace treaty with Kim. (Trump has at times seemed more willing to withdraw U.S. military support to South Korea.) The North Koreans are “lucky to have a meeting with the president of the United States,” he said. “Are we content with a resolution of this crisis that leaves North Korea with the technology to have nuclear weapons?” Bolton asked Larry Kudlow, Trump’s incoming director of the National Economic Council, during a radio interview in August. “I wouldn’t trust the North Koreans with a spare electron.”

 

There would, of course, be nothing to negotiate if negotiations began with the parties in perfect agreement about what they wanted out of the talks. But what Kim Jong Un’s comments in China this week indicated is just how far apart North Korea and the United States are on the definition of one hugely consequential word: “denuclearization.”

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回はアメリカの『ジ・アトランティック』という雑誌に掲載された金正恩朝鮮労働党委員長の訪中に関する分析記事の内容を抜粋してご紹介します。

 

 北朝鮮の指導者金正恩朝鮮労働党委員長は3月25日から28日にかけて、中国の北京を訪問しました。指導者になって初めての外国訪問となりました。中国の習近平国家主席の招待を受けての非公式訪問でしたが、最大級の歓迎ぶりでした。金正恩訪中についてはこのブログでも前回ご紹介しました。

 

 今回の金正恩訪中では、「朝鮮半島の非核化(denuclearization on Korean Peninsula)」という言葉がキーワードとなります。金正恩委員長は習近平国家主席に対して、祖父である金日成国家主席、父である金正日総書記の遺志を引き継いで、朝鮮半島の非核化に努力すると述べました。

 

 これは北朝鮮と韓国両国で核兵器は持たないということを意味する言葉です。韓国は核兵器を保有していませんが、韓国国内の米軍基地には1991年まで核兵器が配備されていましたが、ジョージ・WH・ブッシュ大統領(当時)が撤収を表明しました。昨年から韓国への核兵器配備を検討という動きがアメリカにあります。

 

 金正恩は核兵器を保有しているということを表明しつつ、韓国との関係改善を演出することに成功しました。そして、韓国を通じてアメリカに非核化について話し合いたいという希望を伝え、トランプ大統領も同意しました。

 

 金正恩としては非核化をできるだけ高く売りつけたい、少なくとも体制保障、あわよくば経済援助を引き出そうということを考えているでしょう。しかし、アメリカと約束をしても、リビアのカダフィ大佐のように、約束を反故にされて殺されてしまう危険性があります。

 

 そこで、関係を悪化させていた中国の後ろ盾が必要となります。金正恩は、中国とつながっていた叔父の張成沢を粛清し、中国が保護していた金正日の長男で、兄である金正男を殺害しました。このように中国に対して反抗的な態度を取ってきました。しかし、

 

 金日成が存命中、金正日が実務を継承した1982年に中国を訪問したことがありました。金正日は鄧小平を含む中国指導部と会談を持ち、中国国内を視察しました。帰国後、金正日は中国指導部について「修正主義者」だと批判しました。このことが中国指導部に極秘裏に伝えられ、鄧小平は激怒し、金正日を「黄嘴郎(嘴の黄色い青二才)」と呼び、「金正日のために北朝鮮は存亡の危機に瀕するかもしれない」と嘆いたと言われています。

 

 現在で言えば、金正恩が「黄嘴郎」であり、習近平は鄧小平と同じ立場にあり、「青二才である金正恩には困ったものだ、北朝鮮は潰れるぞ」と嘆いていることでしょう。それでも改善の傾向があります。金正恩は習近平との会談中に熱心にメモを取りながら話を聞いていたということです。また、金正恩が北京の駅に着いた際、出迎えたのは序列5位、中国共産党中央政治局常務委員である王滬寧(おうこねい、ワン フーニン、1955年―)中央書記処書記・中央精神文明建設指導委員会主任でした。王滬寧は中国屈指の戦略家としてヘンリー・キッシンジャーにも擬せられる人物で、習近平の側近です。

 

私は王滬寧が北京滞在中の金正恩に最新の世界情勢の情報と分析を教え、また、経済再建のための方策、権威主義的開発独裁について講義を行ったのではないかと考えています。そこで、「大変なことになるので、きちんと対応してほしい、経済発展も中国モデルを教えるから」ということになったのだろうと思います。

 

 金正恩としては、アメリカだけではなく中国からも体制保障を引き出し、二重の保険を掛けるということをやりたかったのだろうと思います。ただ、アメリカは前提条件なしで核兵器の放棄を迫るでしょう。核兵器の放棄に見返りを与えるという前例が出来てしまうのは好ましくありません。

 

 金正恩としてはアメリカからは核兵器放棄に伴う体制保障、中国からは体制保障と経済援助を引き出して、自身の支配体制を盤石なものにしたいと考えているのではないかと思います。そのためには恭順の意を示し、自分から戦争を仕掛けることはしないということを改めて中国側に確約したのだろうと思います(北朝鮮が戦争を始める場合には中国は支援しない)。

 

 習近平はアメリカに会談の様子を詳しく伝達したようです。アメリカは前提条件なしの核兵器放棄をさせて、その後のことは中国とロシア、韓国に任せるということになるのだろうと思います。ただ、北朝鮮がアメリカに対して何らかの前提条件を求めるとなると、交渉は決裂ということになるでしょう。

 

 朝鮮半島情勢は5月まで目が離せません。

 

=====

 

■記事の抜粋

 

・2018年初頭のスピーチで金正恩は核抑止力を保有したと述べ、かつ、冬季五輪大会への北朝鮮の参加に関心を持っていることを表明した。

・平昌五輪に北朝鮮からの代表団が訪問、金正恩と韓国大統領の特使の会見、同じ韓国大統領特使がトランプ大統領に対して金正恩からの会見の提案を伝達、トランプが受け入れ、といった順序で進んでいる。

 

・3月25日、金正恩は指導者となって初めての外遊として列車で中国の北京を訪問した。

・金正恩は習近平国家主席に対して、韓国大統領の特使にアメリカと核兵器に関して交渉をする用意があると述べたということを報告した。

・「故金日成国家主席と故金正日総書記の遺志に沿って朝鮮半島の非核化に取り組むという姿勢は一貫している」

 

・今回の中朝会談によって、中国は脇役にはならないということが示された。

・習近平は国際外交の世界で手腕を発揮している。

 

・今回の中朝会談はなぜこの時期に行われたのか?

・金正恩は時間を必要としていた。権力を掌握し、基盤を強化し、核抑止力を手に入れてやっと外国に行けるようになったと感じた。

・中朝関係はうまくいっていなかったが改善する方向にある。

・過去中国が国際的なイヴェントを開催した時に北朝鮮はミサイルを発射し、中国政府をイライラさせたが、党大会と全人代開催中、北朝鮮は静かだった。

 

・中国と北朝鮮は「唇亡歯寒」(毛沢東)と形容されるくらいに緊密で相互依存関係にある。

・中国は北朝鮮の輸出の90%を占めている。

・1961年の中朝友好条約には相互防衛上皇が存在する、現在では北朝鮮が攻撃を受けた場合に中国が援助するということになっている。北朝鮮が戦争を始めた場合には中国は支援しないことになっている。

・中国にとって北朝鮮は韓国龍柱米軍3万人に対する有効な緩衝材となっている。

 

・中朝首脳会談をアメリカ政府はどのように解釈すべきか?

・北朝鮮と中国はこれからも長期的な戦略目標を共有する。

・中朝両国とも金正恩体制の崩壊を望んでいない。

・中朝両国ともにアメリカが北東アジア地域の同盟諸国からの米軍撤退を望んでいる。

・北朝鮮政府の考える「朝鮮半島の非核化」はアメリカ政府が求める核兵器の「完全な、照明付きの、再開できない」廃棄ではない。

・北朝鮮の求める朝鮮半島の非核化は北朝鮮が核兵器の廃棄をする代わりに、朝鮮半島から「核兵器による盾」を除去することである。これは中国政府の目的にも適う。

 

・これからの数カ月は予測不能でかつ重要だ。習近平は金正恩からの招待を受けて北朝鮮を訪問することを承諾した。

・ホワイトハウスは混乱の中にあり、ジョン・ボルトンが新たな大統領国家安全保障問題担当補佐官となる。

・ジョン・ボルトンは外交や非武装化交渉には興味がない。米朝首脳会談は開催の時点でもう意味がないもの(dead on arrival)となっている可能性がある。衝突に向けた危険な道を進むことになる可能性がある。

 

・トランプは水曜日、金正恩が非核化を行い、外交政策を成功させる「十分な可能性」があるツイートした。

・トランプ大統領は金正恩が交渉を求めているのは「最大限の圧力」キャンペーンが奏功しているからだとしている。

・金正恩の年頭の演説は強硬な姿勢を示していることも忘れてはならない。

・金正恩が非核化をしたいとのべているが、これはアメリカが支払いたくない代償を支払った後に行うというものである。

 

・これからの状況は4月末の南北首脳会談にかかっている。

・南北首脳会談で穏健な前提条件を基礎にしたしっかりとした中身の非核化に関する声明が出れば、これがトランプ政権に対して北朝鮮と交渉が出来て生産的な結果を得られる道を進むことが出来るということを示すものとなる。

・生産的な道のりを進むことが出来れば、アメリカ政府が求める北朝鮮の核兵器の「完全な、照明付きの、再開できない」廃棄と破滅的な核戦争を回避できる。

 

(貼り付けはじめ)

 

Why Did Kim Jong Un Just Visit China?

His surprise visit to Beijing underscores China’s influence.

 

ANKIT PANDA 11:47 AM ET   GLOBAL

https://www.theatlantic.com/international/archive/2018/03/kim-jong-un-china/556670/

 

For months, China seemed to be a side player as relations improved between North Korea and South Korea. Kim Jong Un, the leader of North Korea, kicked off the year with an address celebrating the completion of his nuclear deterrent after months of boasting about his increasing nuclear capability. In his speech, he also expressed interest in North Korea’s participation in the Winter Olympics. That, in turn, provided Moon Jae In, the president of South Korea, with the diplomatic opening he sought. What followed: an exchange of conciliatory gestures at the Winter Olympics in PyeongChang, which set the stage for a meeting in Pyongyang between Kim and a team of South Korean envoys. Those same envoys then presented an invitation from Kim to meet with President Donald Trump, who had threatened North Korea’s total destruction; Trump immediately accepted. Seoul, it seemed, was in control of the fate of the Korean Peninsula.

 

Then, on Monday, speculative reports observed that an armored train from North Korea was en route to Beijing. Eventually, state media in China and North Korea confirmed that the visitor aboard the armored mystery train from North Korea to Beijing was none other than Kim Jong Un. For the first time in his six-year reign, Kim had finally left North Korean soil to meet the leader of his country’s oldest benefactor, China. During the visit, Kim reportedly told Xi Jinping, the president of China, what he had told South Korea’s presidential envoys: that he was ready to talk to the United States about his nuclear weapons. “It is our consistent stand to be committed to denuclearization on the peninsula, in accordance with the will of late President Kim Il Sung and late General Secretary Kim Jong Il,” Kim was quoted as having said, according to Xinhua.

 

The Beijing meeting showed that whatever may come of the upcoming inter-Korean and North Korea-U.S. summits, China will not be a peripheral player. Xi Jinping, fresh out of the National People's Congress with an open-ended mandate as president of the People’s Republic, has flung himself into international diplomacy with gusto.

 

After news of the Xi-Kim meeting broke, one of the obvious questions was: Why now? (For comparison: Kim’s father, Kim Jong Il, also waited six years before leaving North Korea to engage the outside world.) Kim likely just needed time. After eliminating his rivals, consolidating power, and achieving what he likely saw as the completion of a sufficiently credible nuclear deterrent, Kim finally felt ready to go abroad. Recent events also suggest that the Beijing-Pyongyang relationship, which is often strained, is on the mend. North Korea withheld from any ballistic missile provocations during China’s 19th Party Congress. Kim also congratulated Xi both after the Party Congress and the recently concluded National People's Congress. In the past, by contrast, North Korea launched missiles as China held a range of significant international events, embarrassing and annoying Beijing.

 

But no matter the tensions of the moment, China and North Korea are as close and interdependent as “lips to teeth,” as Mao Zedong put it. Whatever the temporary hiccups in their relationship, China accounts for 90 percent of North Korea's external trade, giving it extraordinary leverage over Pyongyang. The two countries also share a tight historical bond: Chinese soldiers fought, bled, and died on North Korean soil during the Korean War. Their 1961 Treaty of Friendship includes a mutual defense article—one that is thought to only apply now in the case that North Korea is attacked by an aggressor. (China would not back North Korea should it initiate a war.) Finally, for China, North Korea represents a useful buffer, separating it from the nearly 30,000 U.S. troops based on South Korean soil. Kim’s time with Xi underscored the unshakeable bond between Beijing and Pyongyang.

 

How should Washington interpret the Beijing meeting? For one thing, it should make abundantly clear to the Trump administration that, no matter what, North Korea and China will continue to share long-term strategic objectives. Neither country wants to see the end of the Kim regime, and both Beijing and Pyongyang seek to evict the United States from its alliances in Northeast Asia. It’s also worth remembering that Pyongyang’s interpretation of a “denuclearized Korean Peninsula” is not one where its arsenal has been “completely, verifiably, and irreversibly” dismantled as Washington would like, but one where it gives up its weapons in exchange for the United States withdrawing its nuclear shield from the Peninsula and leaving altogether. This would comport well with Chinese objectives.

 

The next few months are unpredictable and critical. Xi has accepted an invitation from Kim to visit North Korea. Meanwhile, the White House remains in chaos, anticipating the arrival of John Bolton as Trump's new national security advisor. Bolton, infamous in North Korea for his disinterest in good-faith diplomacy and disarmament talks, could leave the U.S.-North Korea summit dead on arrival, potentially paving a dangerous path for the president toward conflict.

 

Trump, meanwhile, said in a tweet on Wednesday that he believes there is a “good chance” that Kim will denuclearize and give him a foreign policy win that evaded his predecessors. He attributes Kim’s willingness to talk to his “maximum pressure” campaign. But Kim’s post-New Year’s overture is one borne of a position of strength, not weakness—something the White House must recognize. When Kim tells Trump that he’s willing to denuclearize, he’ll likely follow that up with a price that the United States should not be willing to pay.

 

Much will depend, too, on the success of the late-April summit between Moon and Kim. If this meeting produces a concrete statement on denuclearization, with moderate preconditions, it could show the Trump administration that there may be a productive path forward with North Korea. Where might this path lead? To a destination somewhere between “complete, verifiable, and irreversible denuclearization” and a disastrous nuclear war.

 

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 古村治彦です。

 

 3月25日から28日にかけて北朝鮮の最高指導者である金正恩朝鮮労働党委員長が中国・北京を非公式訪問し、中国の習近平国家主席と会談を行いました。

 

 ジョン・ボルトンが大統領国家安全保障問題担当補佐官になったことで北朝鮮側、そして中国側に焦りが出ているように感じました。今回の訪問は習近平国家主席の招待を受けてということになっていますが、これは中国が北朝鮮問題はあくまで中国の問題であるということを示したかったのだろうと考えられます。

 

金正恩は中国と関係の深かった叔父である張成沢を粛清して中国との関係を悪化させましたが、背に腹は代えられぬということで、訪中したということでしょう。指導者として初めての外国訪問の訪問先を中国にしたということも中国のメンツを立てるという意味もあるでしょう。

 

 新華社通信では会談の内容について詳細に報じていますが、中朝の親善関係の称賛と確認、更なる発展を目指す、ということが何度も話されています。また、金正恩はアメリカと韓国が北朝鮮の努力に対して適切に対応したら、朝鮮半島の非核化を進めることが出来ると述べています。習近平国家主席は政治的安定と平和ということをひたすら述べています。

 

 私が注目したいのは、今回の金正恩の訪中に際して、同行した人々、アテンドした人々です。中国側は政治局常務委員ではなく、習近平の側近たちと外交関係の責任者がアテンドしたようです。同時期にアメリカ連邦議会の議員訪問団が訪中しており、こちらには李克強国務院総理が対応したようです。

 

 北朝鮮側では金正恩の側近たちが随行したようです。金正恩の妹金与正朝鮮労働党副部長の名前は新華社通信の報道にはありませんでした。配偶者である李雪柱氏は同行していたのは写真で確認できます。以下にそれぞれの名前を挙げます。肩書以外の説明は私が付けました。

 

=====

 

■中国側

 

・丁薛祥(Ding Xuexiang、ていせつしょう、1962年):中国共産党第19期中央政治局委員、党中央弁公庁主任、党総書記弁公室主任。習近平の側近(浦江旧部[ほこうきゅうぶ]・上海時代からの側近たち)で第六世代の実力者。

 

・楊潔篪(Yang Jiechi、ようけっち、1950年):中国共産党第19期中央政治局委員、過去に外交部長(外相)を務め、現在は国務委員(外交)を務めている。

 

・郭声琨(Guo Shengkun、かくせいこん、1954年-):中国共産党第19期中央政治局委員、中国共産党中央弁公庁委員、中国共産党中央政法委員会書記。公安畑。

 

・黄坤明(Huang Kunming、おうしんめい、1956年):中国共産党第19期中央政治局委員、中国共産党中央弁公庁委員, 中国共産党中央委員会中央宣伝部長。習近平の浙江省、福建省勤務以来の側近(浙江省以来の側近を示す之江新軍[しこうしんぐん]・福建省以来の側近を示す閩江旧部[びんこうきゅうぶ])。

 

・蔡奇(Cai Qi、さいき、1955年-):中国共産党第19期中央政治局委員、北京市中国共産党委員会書記、国務委員。習近平の浙江省、福建省勤務以来の側近(浙江省以来の側近を示す之江新軍[しこうしんぐん]・福建省以来の側近を示す閩江旧部[びんこうきゅうぶ])。

 

・王毅(Wang Yi、おうき、1953年):中国共産党第19期中央政治局委員、国務委員。外交部長(外相)。

 

 

■北朝鮮側

 

・崔竜海(Choe Ryong Hae、1950年):朝鮮労働党中央委員会副委員長、朝鮮労働党組織指導部部長、朝鮮人民軍次帥、序列3位、金正恩の妹金与正と同じく実質的ナンバー2。

 

・朴光浩(Pak Kwang Ho、?):朝鮮労働党中央委員会副委員長、朝鮮労働党宣伝扇動部副部長、序列第6位、金正恩の側近。

 

・李洙墉(Ri Su Yong、1940年);朝鮮労働党中央委員会副委員長、朝鮮労働党国際部長、外交官、金正恩の側近。

 

・金英哲(Kim Yong Chol、1940年):朝鮮労働党中央委員会副委員長、朝鮮労働党統一戦線部長、平昌オリンピック閉会式に出席、朝鮮人民軍上将、朝鮮人民軍のエース。

 

・李容浩(Ri Yong Ho、1956年):外相、朝鮮労働党中央委員会政治局員、外交官。

 

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 アメリカ政府は「最大限の圧力」を賭けることで対話ムードを醸成できていると述べています。アメリカが言うのは分かりますが、日本でも安倍首相が同様のことを国会で発言していますが、中朝両首脳は日本についての言及をしなかったようです。日本は主要なアクターではないのに、国内向けの発言として、いかにも主要なアクターであるかのように発言しているというのは悲しいことです。インターネットが発達して情報がすぐに手に入るようになっている今、そのような態度はかえって哀れを誘うものとなります。

 

 今回の中朝首脳会談についてアメリカが、トランプ大統領がどのように反応するのか、注目です。

 

(貼り付けはじめ)

 

ホワイトハウス:北朝鮮に対する「最大限の圧力」キャンペーンが機能している(White House: 'Maximum pressure' campaign on North Korea is working

 

ルイス・サンチェス筆

2018年3月27日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/homenews/administration/380585-white-house-maximum-pressure-campaign-on-north-korea-is-working

 

ホワイトハウスは火曜日夜、金正恩が習近平国家主席と北京で会談を行った直後、北朝鮮に対する「最大限の圧力」キャンペーンが効果的に機能している、と発表した。

 

ホワイトハウスのサラ・ハッカビー・サンダース報道官によると、中国政府はアメリカ政府に対して、習近平と北朝鮮の最高指導者金正恩との会談について報告を行ったということだ。

 

サンダースは次のように語った。「アメリカは同盟国である韓国と日本と緊密に連携を取り続ける。今回の動きは、私たちの最大限の圧力をかけるというキャンペーンが北朝鮮との対話に向けての適切な環境を作りつつあるということを示している」。

 

金は火曜日から中国に滞在している。今回の訪中は2011年に最高指導者になって以来、金正恩にとって初めて北朝鮮国外に出たということになる。

 

中国国営新華社通信は、金正恩が習近平と複数回にわたり会談を持ったと伝えている。

 

北朝鮮の最高指導者金正恩は、アメリカと韓国と提携して非核化を進めたいという希望を持っていると語ったと伝えられている。

 

今月初め、トランプ大統領は金ジョンウンと会談しても良いと述べ、5月の会談に関していくつか計画が存在する。

 

トランプと金正恩はこれまでけなし合ってきたが、首脳会談の発表があってからは、金正恩はミサイル実験を停止したいと述べた。

 

来月、北朝鮮と韓国との間でいくつかのレヴェルで対話が行われる予定になっており、今回の訪中はその前に実行された。

 

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Xi Jinping, Kim Jong Un hold talks in Beijing

 

Source: Xinhua| 2018-03-28 07:43:07|Editor: Xiang Bo

http://xinhuanet.com/english/2018-03/28/c_137070598.htm

 

BEIJING, March 28 (Xinhua) -- At the invitation of Xi Jinping, general secretary of the Central Committee of the Communist Party of China (CPC) and Chinese president, Kim Jong Un, chairman of the Workers' Party of Korea (WPK) and chairman of the State Affairs Commission of the Democratic People's Republic of Korea (DPRK), paid an unofficial visit to China from Sunday to Wednesday.

 

During the visit, Xi held talks with Kim at the Great Hall of the People in Beijing. Xi and his wife Peng Liyuan held a welcoming banquet for Kim and his wife Ri Sol Ju and watched an art performance together.

 

Li Keqiang, Chinese premier and member of the Standing Committee of the Political Bureau of the CPC Central Committee, Wang Huning, member of the Standing Committee of the Political Bureau of the CPC Central Committee and member of the Secretariat of the CPC Central Committee, and Chinese Vice President Wang Qishan attended related activities, respectively.

 

During the talks, Xi expressed warm welcome on behalf of the CPC Central Committee to Kim for his first visit to China.

 

Xi said he appreciated that Kim sent him a congratulatory message after the 19th CPC National Congress on his re-election as general secretary of the CPC Central Committee and the assumption of office of chairman of the CPC Central Military Commission (CMC).

 

Xi was also grateful to Kim for congratulating him again several days ago immediately after he was re-elected China's president and chairman of the CMC of the country.

 

Xi said Kim's current visit to China, which came at a special time and was of great significance, fully embodied the great importance that Comrade Chairman and the WPK Central Committee have attached to the relations between the two countries and the two parties.

 

"We speak highly of this visit," Xi told Kim.

 

For his part, Kim said a series of major and happy events have taken place consecutively in China recently, as the 19th CPC National Congress was held victoriously last year, and the annual sessions of the National People's Congress and the National Committee of the Chinese People's Political Consultative Conference were successfully held not long ago.

 

Kim said Comrade Xi Jinping enjoyed the support of the CPC and the people of the whole country, became the core of the leadership and was re-elected Chinese president and CMC chairman. He said it is his obligation to come to congratulate Xi in person, in line with the DPRK-China friendly tradition.

 

At present, the Korean Peninsula situation is developing rapidly and many important changes have taken place, Kim said, adding that he felt he should come in time to inform Comrade General Secretary Xi Jinping in person the situation out of comradeship and moral responsibility.

 

Xi said the China-DPRK traditional friendship, established and cultivated meticulously by the elder generations of leaders of both parties and both countries, was the precious wealth of both sides.

 

Sharing common ideals and beliefs as well as profound revolutionary friendship, the elder generations of leaders of the two countries trusted and supported each other, and wrote a fine story in the history of international relations, said Xi.

 

He said several generations of the leaders of China and the DPRK have maintained close exchanges and paid frequent calls on each other like relatives.

 

The two parties and countries have supported each other and coordinated with each other during long-term practices, making great contributions to the development of the socialist cause.

 

"Both Comrade Chairman and I have personally experienced and witnessed the development of China-DPRK relationship," said Xi, adding that both sides have stated repeatedly that traditional China-DPRK friendship should be passed on continuously and developed better.

 

"This is a strategic choice and the only right choice both sides have made based on history and reality, the international and regional structure and the general situation of China-DPRK ties. This should not and will not change because of any single event at a particular time," Xi said.

 

The CPC and the Chinese government highly value China-DPRK friendly cooperative ties, Xi stressed. It is an unswerving principle of the CPC and the Chinese government to maintain, consolidate and develop good relations with the DPRK, he said.

 

"We are willing to work together with DPRK comrades, remain true to our original aspiration and jointly move forward, to promote long-term healthy and stable development of China-DPRK relations, benefit the two countries and two peoples, and make new contribution to regional peace, stability and development," Xi said.

 

Xi made four proposals concerning the development of China-DPRK relations.

 

Firstly, continue giving play to the guiding role of high-level exchanges. High-level exchanges have always played the most important guiding and promoting role in the history of China-DPRK relations. Under the new circumstances, I am willing to keep frequent contacts with Comrade Chairman through various forms such as exchange of visits, and sending special envoys and letters to each other.

 

Secondly, make full play of the time-tested valuable practices of strategic communication. It is the splendid tradition of the two parties to have frequent in-depth exchange of views on major issues. Both sides should maximize the important role of party-to-party exchanges, promote exchanges and cooperation between the two countries in various areas, and strengthen communication and mutual trust.

 

Thirdly, actively advance peaceful development. Socialism with Chinese characteristics has entered a new era, and the DPRK's socialist construction has also ushered in a new historical period. We are ready to make joint efforts with the DPRK side, conform to the trend of the times, hold high the banner of peace, development, cooperation and mutual benefit, continuously improve the wellbeing of the two peoples, and make positive contribution to regional peace, stability and development.

 

Fourthly, cement the popular will foundation for China-DPRK friendship. The two sides should, through various forms, enhance people-to-people exchanges, consolidate the foundation of popular will for bilateral friendly relations, especially enhance youth exchanges, inherit and carry forward the fine tradition of China-DPRK friendship.

 

Kim said he was greatly encouraged and inspired by General Secretary Xi's important views on DPRK-China friendship and the development of relations between the two parties and countries.

 

The DPRK-China friendship, which was founded and nurtured by the elder generations of leaders of both countries, is unshakable, he said. It is a strategic choice of the DPRK to pass on and develop friendship with China under the new situation, and it will remain unchanged under any circumstances.

 

Kim said his current visit aims to meet Chinese comrades, enhance strategic communication, and deepen traditional friendship, hoping to have opportunities to meet with Comrade General Secretary Xi Jinping often, and keep close contacts through such forms as sending special envoys and personal letters to each other, so as to promote to a new level the guidance of high-level meetings to the relations between the two parties and countries.

 

The two sides informed each other of their respective domestic situation. Xi said the 19th CPC National Congress had drawn a grand blueprint for building China into a great modern socialist country in all respects -- building a moderately prosperous society in all respects by 2020, having basically achieved modernization by 2035 and building a great modern socialist country that is prosperous, strong, democratic, culturally advanced, harmonious, and beautiful by the middle of the century.

 

The CPC will lead the Chinese people of all ethnic groups in keeping on working with great determination and continuously striving for the realization of the Chinese Dream of national rejuvenation, Xi said.

 

"We have noticed that Comrade Chairman has led the WPK and the people of the DPRK in taking a series of active measures and scoring achievements in developing economy and improving people's wellbeing in recent years," Xi said.

 

The Chinese side expects political stability, economic development and people's happiness in the DPRK, and supports the WPK, led by Comrade Chairman, in leading the people of the DPRK to advance along the path of socialism, as well as the endeavors by comrades of the DPRK in developing economy and improving people's livelihood, Xi said.

 

Kim said, since the 18th CPC National Congress, the CPC Central Committee with Comrade Xi Jinping at the core has, with tremendous political courage and a strong sense of responsibility, developed new thinking and new ideas, put them into action, and solved many tough problems that were never resolved and accomplished many big things that were long on the agenda but never got done. These achievements fully proved that the lines of the CPC are correct lines that accord with the national conditions. In particular, Comrade General Secretary has put forward the requirements that the Party should exercise effective self-supervision and practice strict self-governance in every respect, which has contributed greatly to Party building and realized the overall Party leadership over all work. At present, the WPK is also intensifying its efforts in fighting against arrogance, bureaucracy and corruption.

 

Kim said he sincerely hoped that China will continuously make new great achievements in the course of building a moderately prosperous society in all respects and a great modern socialist country.

 

The two leaders thoroughly exchanged views on the situation of the world and the Korean Peninsula.

 

Xi said that positive changes had taken place on the Korean Peninsula since this year, and China appreciates the important efforts made by the DPRK.

 

On the Korean Peninsula issue, Xi said that China sticks to the goal of denuclearization of the peninsula, safeguarding peace and stability on the peninsula and solving problems through dialogue and consultation.

 

China calls on all parties to support the improvement of inter-Korean ties, and take concrete efforts to facilitate peace talks, said Xi, noting that China will continue to play constructive role on the issue and work with all parties, including the DPRK, toward the thaw of the situation on the peninsula.

 

Kim said that the situation on the Korean Peninsula is starting to get better, as the DPRK has taken the initiative to ease tensions and put forward proposals for peace talks.

 

"It is our consistent stand to be committed to denuclearization on the peninsula, in accordance with the will of late President Kim Il Sung and late General Secretary Kim Jong Il," he said.

 

Kim said that the DPRK is determined to transform the inter-Korean ties into a relationship of reconciliation and cooperation and hold summit between the heads of the two sides.

 

The DPRK is willing to have dialogue with the United States and hold a summit of the two countries, he said.

 

"The issue of denuclearization of the Korean Peninsula can be resolved, if south Korea and the United States respond to our efforts with goodwill, create an atmosphere of peace and stability while taking progressive and synchronous measures for the realization of peace," said Kim.

 

The DPRK hopes to enhance strategic communication with China during the process, jointly safeguard the trend of consultation and dialogue as well as peace and stability on the peninsula, said Kim.

 

Before the talks, Xi held a welcoming ceremony for Kim at the North Hall of the Great Hall of the People.

 

After the talks, Xi and Peng held a welcoming banquet for Kim and Ri. While delivering an address, Xi said that in the beautiful season of spring when everything is coming back to life, the unofficial visit of Comrade Kim Jong Un and Lady Ri Sol Ju to China is of great significance for the two countries to deepen communication, strengthen coordination and promote cooperation, and will push the relations between the two parties and the two countries to a new high in the new historical phase, as well as make important contributions to pushing forward the peace, stability and development in the region.

 

Xi said he had candid and friendly talks with Chairman Kim Jong Un. "We agreed that carrying forward the traditional friendship between China and the DPRK accords with the common interests of both sides, and is the common strategic choice of both sides."

 

"No matter how the international and regional situation changes, we will both firmly grasp the global development trend and the overall situation of the China-DPRK relationship, strengthen our high-level exchanges, deepen our strategic communication, expand our exchanges and cooperation, and benefit the people of both countries and the people of all countries," he said.

 

While addressing the banquet, Kim said that as the situation of the Korean Peninsula is undergoing unprecedented changes, he paid a swift visit to China, out of good wishes for promoting peace and stability on the peninsula, and carrying on and developing the DPRK-China friendship.

 

He said the fact that he chose China as the destination of his first overseas visit showed his will to carry forward the tradition of DPRK-China friendship, and how he valued the friendship between the two countries.

 

"I have had successful talks with General Secretary Xi Jinping on developing relations between the two parties and the two countries, our respective domestic situation, maintaining peace and stability on the Korean Peninsula, and other issues," he said.

 

"In this spring full of happiness and hopes, I believe my first meeting with General Secretary Xi Jinping will yield abundant fruits of DPRK-China friendship, and facilitate peace and stability on the Korean Peninsula," he said.

 

During the visit, Xi and Peng held a luncheon for Kim and Ri in the Yangyuanzhai Room of the Diaoyutai State Guesthouse. Xi said that the Diaoyutai State Guesthouse has witnessed the development of the traditional friendship between the two countries, and the close relations between leaders of the elder generations of the two parties and two countries "have set an example for us."

 

"We welcome Chairman Kim Jong Un and Lady Ri Sol Ju to visit China now and again," Xi said.

 

Kim said that the DPRK-China friendship is especially precious, adding he would like to join hands with Xi to follow the noble will of leaders of the elder generations, carry on and develop the DPRK-China friendship that remains unchanged despite winds and rains, and elevate it to a new high under new circumstances.

 

Kim also visited an exhibition showcasing the innovation achievements of the Chinese Academy of Sciences since the 18th CPC National Congress. Kim showed his admiration for China's accomplishments in the development and innovation of science and technology, and wrote an inscription to mark the visit.

 

Ding Xuexiang, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee, member of the Secretariat of the CPC Central Committee and director of the General Office of the CPC Central Committee; Yang Jiechi, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee; Guo Shengkun, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee, member of the Secretariat of the CPC Central Committee and head of the Commission for Political and Legal Affairs of the CPC Central Committee; Huang Kunming, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee, member of the Secretariat of the CPC Central Committee and head of the Publicity Department of the CPC Central Committee; Cai Qi, member of the Political Bureau of the CPC Central Committee and secretary of the CPC Beijing Municipal Committee; and State Councilor and Foreign Minister Wang Yi attended the activities.

 

Choe Ryong Hae, vice-chairman of the WPK Central Committee and director of the Organization and Guidance Department; Pak Kwang Ho, vice-chairman of the WPK Central Committee and director of the Propaganda and Agitation Department; Ri Su Yong, vice-chairman of the WPK Central Committee and director of the International Department; Kim Yong Chol, vice-chairman of the WPK Central Committee and director of the United Front Department and Foreign Minister Ri Yong Ho, accompanied Kim Jong Un on his China tour and attended related activities.

 

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 古村治彦です。

 

 ドナルド・トランプ米国大統領は次期大統領国家安全保障問題担当補佐官にジョン・ボルトンを指名しました。4月9日付で、ハーバート・R・マクマスター陸軍中将と交代します。マクマスターは補佐官辞任後に大将に昇進せずに退役するということになります。

 

 ボルトンの指名は外交関係者やアメリカ政治に詳しい人々を驚かせました。レックス・ティラーソン国務長官からCIA長官マイク・ポンぺオへの交代と併せて、トランプ政権の強硬姿勢を取ることを示すものです。

 

 ジョン・ボルトン(John Bolton、1948年―)は、歴代の共和党政権に参加しています。ドナルド・レーガン政権時代(1981―1989年)には米国国際開発庁と司法省に勤務しました。続く、ジョージ・HW・ブッシュ政権時代(1989-1993年)には国際連合担当国務次官補を務めました。ジョージ・W・ブッシュ政権時代(2001-2009年)には国務次官、2005年には米国国連大使を務めました。

 

 ボルトンはジョージ・W・ブッシュ政権の対外政策を牛耳ったネオコンの一人です。彼自身はネオコンと呼ばれることを嫌います。それは、ネオコンの第一世代が民主党員だった人たちが民主党に失望し共和党支持に転向した人たちであるのに対して、自分は一貫して共和党支持者であったということから、「転向者を源流とするグループに入れないで欲しい」という考えを持っているためです。しかし、外形的にはネオコンです。

 

 ネオコンはアメリカの価値観を世界各地に「輸出」し、世界中の国々を資本主義と民主政治体制の国々にすればアメリカに敵対する国はなくなるし、世界から戦争がなくなって平和になるという考えです。これは、共産主義を世界中に輸出しようとした旧ソ連の裏返し(ヨシフ・スターリンは一国社会主義建設を優先しましたが)ということが言えるでしょう。

 

 しかし、彼らはアメリカに友好的な非民主国家まで民主化しろとは言いません。ペルシア湾岸諸国や中央アジアには王政や独裁制の国々が多くありますが、それらの国々を攻撃して政権(体制)変更(転覆)しろとは言いません。あくまでアメリカに逆らう国々の政治体制を転覆させろということを主張します。

 

 2002年の一般教書演説で、当時のジョージ・W・ブッシュ大統領は、イラク、イラン、北朝鮮を「悪の枢軸(Axis of Evil)」と呼びました。そして、イラクには実際に侵攻し、サダム・フセイン政権を瓦解させました。フセインは最終的には死刑となりました。

 

 ブッシュ政権の後に成立したバラク・オバマ政権で起きたのがアラブの春です。アラブの春では偶発的な事件から反体制運動が北アフリカの国々で連鎖的に発生しました。この過程で、アメリカとヨーロッパに屈服し、大量破壊兵器とテロ活動を放棄していたリビアのムアンマール・カダフィが殺害されました。こうした動きを主導したのは、民主党内でネオコンのカウンターパートと言うべき、人道的介入主義派で、国務長官を務めていたヒラリー・クリントンでした。こうしたことは拙著『アメリカ政治の秘密』で明らかにしています。

 

 現在、悪の枢軸で残っているのはイランと北朝鮮です。北朝鮮に関しては急速な核開発を行い、アメリカにとって脅威となっています。それでも今年に入って、緊張緩和ムードになり、アメリカのドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員長の首脳会談が開催されるということになりました。

 

 しかし、この開催の時期や場所がはっきりしない中で、国務長官がレックス・ティラーソンから現職のCIA長官だったマイク・ポンぺオに、大統領国家安全保障問題担当補佐官がハーバート・R・マクマスター陸軍中将からジョン・ボルトンに交代することになりました。ポンぺオもネオコンに近い人物であり、ネオコンによって対外関係の司令塔が独占されることになりました。トランプ大統領は常に2つの異なる考えを持つ人間たちをそれぞれ同様の力と権限を持つ役職に就けて、自分の考えを実行するときに2つの考えのうち、どちらかを選んで実行させるというやり方を取るということをやってきたと私は考えます。

 

 今回、国務省とホワイトハウスの対外関係部署をネオコンが抑えたということで、トランプ政権の対外姿勢は強硬になります。ボルトンは北朝鮮について強硬な主張をしていますので、緊張緩和ムードが大きく後退することになるでしょう。

 

 北朝鮮にしてみれば、ここで核兵器を手放すかどうかという決断を迫られますが、アメリカのこれまでの外交を考えると、核兵器を手放した時点で、金王朝は遅かれ早かれ崩壊させられるということを金正恩は考えるでしょう。手放してしまえば一時的な妥協が成立する(体制保障というアメリカの約束が反故にされる可能性が高い)、手放さなければまだアメリカがチキンゲームに負けて交渉に乗ってくる可能性がある(より良い条件で妥協が成立する可能性がある)となり、北朝鮮は核兵器を握りしめたままということになるでしょう。

 

 ボルトンは核兵器貯蔵施設や核開発関連施設に対する先制攻撃を主張しています。北朝鮮に対して先制攻撃であっても、先に攻撃をされてからの報復攻撃であっても、米軍が攻撃すれば、現在の北朝鮮の体制の転換というところまで進むことになるでしょう。

 

 ジョン・ボルトンの指名となってアメリカやヨーロッパでは、アメリカによるイランに対する攻撃があるのではないかという懸念の声が大きくなっています。イランに関しては、オバマ政権時代に核開発をめぐって合意が成立しました。しかし、ボルトンやポンぺオと言った人々はイランとの合意は失敗だったとしています。

 

 イランを怖がっているのはイスラエルで、核兵器を所有している両国間で戦争となれば核戦争まで行き着く可能性があります。イランがどれほどのミサイル能力を持っているのか分かりませんが、北朝鮮でもアメリカ本土に到達できるミサイルを開発できたとすると、イランも所有している可能性があると考えられます。北朝鮮もイランもロシアからの支援を受けているので、ある程度のミサイル開発技術をロシアからもらっているでしょう。

 

 中東での問題はより危険で複雑、ヨーロッパにも大きな影響を与えることから、トランプ大統領としては今の段階では関わりたくないでしょう。ですからボルトンとポンぺオの起用は対北朝鮮問題用のシフトということになります。

 

 私は北朝鮮問題が平和裡に解決できることを願っていますが、現実はその可能性が低くなっているのではないかと考えざるを得ない状況になっていると思います

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプは究極のタカ派(Uber-Hawk)のボルトンを大統領国家安全保障問題担当補佐官に指名(Bolton as National Security Adviser

―「爆撃、イランを爆撃」から北朝鮮に対する予防的先制攻撃まで、ブッシュ政権で高官だったボルトンはより好戦的な外交政策を主張している

 

コラム・リンチ、エリアス・グロール筆

2018年3月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/03/22/trump-taps-uber-hawk-bolton-as-national-security-adviser/

 

ボルトンは北朝鮮に対する予防的先制攻撃を明確に求め、イランの体制を変更させるために爆撃することを主張し、アフガニスタンにおける無制限の米軍駐留を求めている。ボルトンはまた台湾に米軍を駐留させるなど中国に対してより強硬な姿勢を取るように求めてきた。

 

ジョージ・W・ブッシュ政権に参加したボルトンを含む共和党所属のネオコンサヴァティヴの人々は2003年にイラクの指導者サダム・フセインを追い落とすように主張した。しかし、他のネオコンの人々とは対照的に、ボルトンは民主政治体制と人権のようなアメリカの価値観を輸出することに関心を持ったことはこれまでほぼなかった。ボルトンはブッシュ政権において国務省高官と米国国連大使を務めた。

 

ボルトンはトランプ大統領と同様に国際的な取り決めを無視し、国際連合やヨーロッパ連合(EU)のような多極的な組織を見下し、政治的な敵を激しく非難している。ボルトンは回想録『ジョン・ボルトン:降伏は選択肢に非ず』の中で、EU官僚たちを「EUの病人たち」と繰り返し揶揄している。

 

ここ数週間、ボルトンが指名されるという噂が流れた。実際にボルトンの指名が発表されるとアメリカとヨーロッパの外交関係者たちは驚きと不安の声を発した。彼らはマクマスターの辞任とボルトンの就任によってアメリカは複数の争いに関与する道を進むことになるという懸念を持っている。

 

外交評議会(CFR)のマイカ・ゼンコは次のようにツイートしている。「ジョン・ボルトンはこれまでアメリカが戦ってきた全ての戦争を支持した。彼はアメリカが戦う際に何の制限もつけるべきではないと考え、イランと核武装した北朝鮮との体制転換のための戦争を支持している。恐ろしいことだ」。

 

4月初め、ボルトンは現在の大統領国家安全保障問題担当補佐官を務めるHR・マクマスター陸軍中将と交代する。マクマスターは辞任と引き換えに大将に昇進させてもらえるという噂が流れたが、実際位は中将のままで退役することになる。ホワイトハウスの関係者は今回の交代は「常に憶測を呼ぶティームではなく、実際に行動できる新しいティームを結成する」ためのものだと述べている。発足して1年ちょっとのトランプ政権で、ボルトンは3人目の大統領国家安全保障問題担当補佐官となる。

 

ボルトンの補佐官任命は連邦上院の承認を必要としない。ボルトンの指名によって、トランプ政権のタカ派的な姿勢が強まることになるだろう。トランプは大統領選挙期間中、アメリカの海外における冒険主義を制限するという公約を掲げた。しかし、トランプは大統領就任後、アメリカの外交政策に関してより軍事中心的なものとなっている。トランプと同じく、ボルトンはヴェトナムでの従軍を忌避するために進学をした。ボルトンはヴェトナム戦争を支持した。

 

これから世界各地の諸問題について見ていく。ボルトンの政策に関する主張はアメリカの外交政策を大きく変化させる危険性がある。

 

●イラン爆撃

 

ボルトンが大統領国家安全保障問題担当補佐官に指名された。ボルトンは長年にわたりイランに対する軍事行動を主張してきた人物で、そのような人物がトランプの側近となる。トランプは国務長官をレックス・ティラーソンからマイク・ポンぺオCIA長官に交代させた。このようにイランに対してタカ派的な態度を取る強硬派を運転席につけたのだ。

 

2015年のニューヨーク・タイムズ紙に掲載した論説のタイトルの中で、イランとの戦争を主張した。ボルトンは「イランの核爆弾を止めるために、イランを爆撃せよ(To Stop Iran’s Bomb, Bomb Iran)」と書いた。ボルトンはこれまでイスラエルが近隣諸国の原子力施設に対して予防的先制攻撃を行ってきたことを支持してきた。また、核兵器関連施設に対する軍事行動を主張してきた。更にはイランの政権を打倒するために反対派勢力を支援することも主張してきた。

 

ボルトンはイランの体制変更を強く主張してきた。ボルトンはイランの過激な反体制派グループであるムジャヒディン・ハルクを支持してきた。ムジャヒディン・ハルクはアメリカ政府からテロリスト組織として認定されている。それでもこの組織を支持している。ボルトンに2011年にブリュッセルで開催されたイヴェントに出席した。ボルトンはこのイヴェントでムジャヒディン・ハルクが掲げるイランの体制変更を「無条件に」支持すると語った。

 

2009年、ボルトンはイスラエルがイランに対して核兵器を使用することを支持した。ボルトンはシカゴ大学での演説中に次のように語った。「イスラエルがイランの核開発プログラムに対して核兵器を使用する準備をしていなければ、イランは近い将来、プログラムで開発した核兵器をイスラエルに対して使用することになるだろう」。

 

●北朝鮮

 

北朝鮮は核兵器とミサイル技術を急速に開発している。これを受けて、ボルトンは北朝鮮国内の核兵器を除去するために予防的先制攻撃を行うことを主張している。

 

先月、ボルトンは『ウォールストリート・ジャーナル』紙に寄稿した。その中で、ボルトンは北朝鮮への攻撃の時は今だと主張した。ボルトンは19世紀の砲艦外交を使いながら次のように書いている。「危機はすぐそこまで迫っている。北朝鮮に関するアメリカの諜報不足という点からも考えて、私たちは攻撃開始を引き延ばすべきではない。攻撃を引き延ばせば北朝鮮はアメリカ本土を確実に攻撃できる核兵器を開発してしまう危険がある。それは現在よりも更に危険な状態となる」。

 

このような攻撃は北朝鮮の韓国や東アジア地域の展開する米軍基地に対する報復攻撃を誘発することになるだろう。米軍関係者は北朝鮮の報復攻撃によって数千名規模のアメリカ人が死亡し、ここ数十年では見られなかった規模の戦争が起きるだろうと警告している。

 

ボルトンの予防的先制攻撃という強い主張がトランプ大統領と北朝鮮の指導者金正恩との朝鮮半島の非核化について話し合う最高首脳会談の開催計画とどれほど一致するのかについては明確にはなっていない。昨年、ボルトンは北朝鮮との直接交渉を「オバマ政権時代の政策の継続」だと批判した。

 

●中国

 

ボルトンに対しては中国政府から疑念の目で見られている。ボルトンは台湾の自己決定を強く主張しており、トランプ政権に対して、これまでアメリカ政府が堅持してきた「一つの中国」政策を見直すように主張してきた。ボルトンはまた台湾に対するアメリカらの武器売却を増加させるように求めている。更にはアメリカ軍の台湾駐留も主張している。これは、ダグラス・マッカーサー元帥の掲げた中国沿岸の「不沈空母」という考えを思い出させる。

 

対照的に、中国政府は国交を開封したニクソン政権以来、アメリカとの国交に関して「一つの中国」政策は交渉の余地のない要素だと考えている。

 

今週、中国の習近平国家主席は中国の領土を「1インチでも奪われないように」防衛するという印象的な演説を行った。彼の語った中国の領土には台湾も含まれている。

 

●イスラエル

 

ボルトンはイスラエルに対して全面的な支持を与えることが予期される。マクマスターは保守派の一部からイスラエルに対して十分に支持していないという激しい非難を受けていた。元イスラエル米国大使ダン・ジラーマンはある時、ボルトンを「イスラエルにとっての秘密兵器」と形容した。

 

●国際機関

 

ボルトンはアメリカにおいてマルタイカルチュアニズムに対して厳しい批判を行う人物の一人だ。また、アメリカの武器制限条約への参加やアメリカの軍事能力を制限することになるだろう国際的な協定について繰り返し疑問を呈している。ボルトンは西サハラ領有権・独立問題に関して国連から交渉担当として派遣されたことがある。彼は国連について発言し、その発言が有名になった。ニューヨークにある国連の書記局ビルは38階建てだ。もしその10階分が失われてもこれまで変わらずに業務は行われることだろう」。

 

回想録の中でボルトンは次のように書いている。「国際刑事裁判所を創設するためのローマ規定に“署名をしない”となった時が国務省時代で私が最も幸福な日であった。私はコリン・パウエルに子供の時のクリスマスの日のようにウキウキした気分だと言った」。

 

ボルトンの国際条約に関する姿勢はトランプ大統領とほぼ同じだ。ボルトンはかつ手口のように語った。「条約はアメリカの目的にかなうときにだけ法律と同様の効力を持つ。国際的な状況においては、条約は法的な強制力を持つものではなく、単純に“政治的な”ものとなる」。

 

ボルトンは国際秩序の擁護者たちに対して最大級に見下している。EUと国務省の官僚たちを特に見下している。ボルトンは彼らについて背骨がないふにゃふにゃしていると非難している。

 

ボルトンは回想録の中で次のように書いている。「病気のようなEUの外交官たちの間で広がっているのが道徳的な優位性など存在しないという考えだ。これは高学歴者が陥りがちな病気のようなものだ。感染力が強いもので、国務省の官僚たちが感染しつつある」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)


アメリカ政治の秘密日本人が知らない世界支配の構造【電子書籍】[ 古村治彦 ]

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 古村治彦です。

 

 アメリカでは喜ばしいことに、国務省とUSAIDの予算削減をトランプ大統領は提案していますが、予算を決める連邦議会では削減を止めさせようという動きもあります。この動きは民主、共和両党にあります。また、元米軍の司令官クラスの人々も予算削減に反対し、懸念を表明しました。

 

 国務省、USAID、米軍は「世界中にアメリカと同盟諸国に対する様々な脅威が存在する」ということを理由にして多額の予算を分捕ってきました。そして、世界各国の政治に介入し、それらの国々を不幸にしてきました。日本もその中に入っています。日本の場合は、それに加えてお金の貢がされ係をやらされています。米国債の購入と為替市場への介入を通じて日本のお金をアメリカに貢いでいます。

 

 国務省の予算に関しては各国にある大使館や政府機関の出先の保護のために4割以上が割かれ、外交に使われているのが55%だということです。大使館の警備はアメリカ海兵隊が行っていますが、警備に対する予算が増えるということは海兵隊の仕事と予算が増えるということです。ですから、国務省の予算が減らされ、対外活動が減らされると海兵隊の食い扶持が減るということになります。

 

 米軍の大将クラスだった人々が連名で国務省とUSAIDの予算削減に反対しているのは、こうしたこともあってのことでしょう。また、アメリカが対外活動を行えば衝突や摩擦が起き、それを解決するために米軍が出るということになります。従ってアメリカの対外活動が減れば、米軍が今のような巨大な組織である必要もなくなる訳ですが、そうなれば、米軍の食い扶持や予算は減らされるということになります。国務省と米軍は一蓮托生な訳です。

 

 ですが、アメリカは既に力を失いつつあります。いつまでも膨大な数の米軍を外国に置いておくことはできませんし、米軍にかかる莫大な予算を支えられなくなっています。こうして帝国は衰退していくのでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

国務省とUSAIDは大幅な予算削減に直面(State Department, USAID Face Drastic Budget Cut

-民主、共和両党が政府予算における妥協が成立し、政府機関の閉鎖は終わった。しかし、アメリカの外交と国際開発プログラムの予算は削減されることになる。

 

ダン・デルース、ロビー・グラマー筆

2018年2月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/02/12/state-department-usaid-face-drastic-budget-cut-congress-military-generals-admirals-warn-against-slashing-diplomacy-budget/

 

国務省と米国国際開発庁(U.S. Agency for International Development、USAID)は先週民主、共和両党の間で成立した予算をめぐる合意を受けて、大幅な予算カットに直面している。先週の合意によって政府機関の閉鎖は終了した。連邦議会議員たちは税収不足を埋める更なる財源を探して苦闘している最中だ。

 

約88億ドルの税収不足を補うために、アメリカの外交団と国際開発プログラムに対して、1990年代以降で最大の予算削減が課されることになるだろう。与作削減によって国務省の士気の低下が起こり、外交官たちは「ドナルド・トランプ大統領は外交に対して熱心ではないのだ」と認識するようになっている。

 

民主、共和両党の連邦議会議員たちは国務省に予算をつけようと必死になっている。一方、トランプ政権の幹部たちは国務省の予算に関する議論には参加していない、と連邦議会関係者は語っている。

 

国務省と米国国際開発庁(USAID)の予算不足は2018年度、更には2019年度の各事業に影響を及ぼす。連邦議会の指導者たちとホワイトハウスとの間で先週に成立した予算に関する合意によって政府機関の閉鎖の長期化を避けることが出来た。合意は2018年度と2019年度の支出レヴェルを設定することで締結された。しかし、予算に関する合意によって米軍予算は増加したが、海外緊急活動作戦(Overseas Contingency Operations)における非防衛関連予算は削減された。海外緊急対応作戦予算の3分の1はこれまで国務省とUSAIDの予算として供給されてきた。

 

その結果、2018年の政府予算における国務省予算を増額させる方法を探すのに数週間残っていないという状態になった。2019年の予算に関しても同様のことが起きるであろう。

 

一方、トランプ政権は月曜日、2019年の連邦政府予算要求を提出することになる。2019年の予算に関して、ホワイトハウスは国務省の予算を削減するのかどうかは明確になっていない。

 

2018年の外交関係予算が削減される可能性が高いという観測を受けて、151名の退役した将官クラスの高級軍人たちが共同して懸念を表明した。この中には陸軍、海軍、空軍、海兵隊、特殊部隊の司令官クラスだった人物たちが多数含まれている。彼らは、「アメリカの国家安全保障に対する世界規模での脅威が高まっている中で、このような予算削減を行うとアメリカの世界に対する影響力が落ちてしまう」という警告を発した。

 

元将官たちが連邦議会の指導者たちに宛てた書簡の中には、「私たちは現在のような不安定な時代において世界をリードする能力を減退させることはすべきではない」という文言もある。この書簡は「USグローバル・リーダー・シップ・コアリション」という組織によって出された。この組織は、軍部、ビジネス、宗教各界に、国務省とUSAIDを支持することを求めるために活動している。

 

高級将官であった人々は、重要な外交職の多くが空席になっていることに懸念を表明し、また、「アメリカの安全を維持するために国防と共に外交と開発援助を強化することが重要だという確信」を持っていることを表明した。

 

イスラム国が戦場で敗北を喫している状況下で、イラクとシリアにおけるアメリカの外交と両国の再建支援は特に重要度を増している、と元将官クラスの人々は主張している。彼らは次のように書いている。「ISISに対して軍事的に優勢になっているが、疑問なのは戦場で勝ち得た勝利を守る準備が出来ているのか、悪者たちが空白に這いこまなうように防げるかどうかということだ」。

 

国務省の予算を2017年並みに戻すために、連邦議員たちはこれから難しい決断をしなければならないだろう。彼らは国内の他の優先問題と折り合いをつけねばならない。連邦議会両院の予算委員会は、2018年の予算において630億ドルの一任された予算を分割することになるだろう。しかし、約210億ドルは医療研究、対麻薬研究、退役兵士やその他に分野に投じられることになる。

 

連邦上院外交委員会の民主党側幹部委員であるボブ・メネンデス連邦議員(ニュージャージー州選出)は、金曜日書簡を発表した。書簡の中で、メレンデス議員は同僚議員たちに向けて、国務省とUSAIDの予算を現在のレヴェルに回復させるように予算を見直すことを求めた。

 

メネンデス議員は次のように書いている。「アメリカは世界各地で複雑化した多くの問題に直面している。この世界はアメリカの確固とした指導力を必要としている。国際問題に関連する予算はこうした必要に応えるものとならねばならない」。

 

本誌が入手した書簡は、リンゼイ・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とパトリック・リーリー連邦上院議員(ヴァーモント州選出、民主党)宛であった。2人は、国務省の予算を監視する連邦上院歳出小委員会の委員長と民主党側幹部委員だ。

 

予算に関する議論をフォローしているあるロビイストは次のように語っている。「安全保障支援から伝染病や飢饉対策までアメリカは関わっている。これらに関する予算が大幅に削減されるとアメリカの外交と国際援助プログラムに大きな影響が出るだろう」。

 

国務省の報道官は本誌の取材に対して次のように述べた。「国務省は2018年度の超党派の予算案について特定のコメントをする立場にない。私たちは、決定者たちが政府に対する予算の配分をするであろうと認識している」。

 

国務省の予算の中で実際に外交に使われている金額について正確に伝えられていない。世界各地の米国大使館の警護にかかる経費は増大し続けている。この経費は国務省全体の予算の中で割合を大きくしている。司法省、国土安全保障省、その他の連邦政府機関が世界各国にある米国大使館で業務を行っているのがその理由となっている。そして、国務省はこれらの帰還の保護のために予算を使わねばならなくなっている。

 

アメリカ外交協議会のデータによると、2008年、国務省は「外交と領事プログラム」関連予算の17パーセントを警備に使っていた。2018年の予算請求の中で、警備関連予算は「外交と領事プログラム」予算の45パーセントを占めるまでになっている。「外交と領事プログラム」の予算の55パーセントだけが実際の外交に使われることになる。

 

USグローバル・リーダー・シップ・コアリションの会長兼最高経営責任者リズ・シュレイヤーは「アメリカと同盟諸国は様々な脅威に直面している。アメリカ政府は世界から撤退することはできない」と語っている。

 

1年前、トランプ政権は国際問題に関連する予算の30パーセント減額を提案し、元高級外交官や軍人たちから激しく批判された。民主、共和両党の連邦議員たちはこの提案を退けた。

 

シュレイヤーは、連邦議会が今回の大きな予算カットに対して同様の反応をしてほしいと望んでいる。シュレイヤーは本誌の取材に対して、「私は、今度も前回と同様の大きなそして明確な反対の声が上がり、国務省とUSAIDに対して超党派の支持があるものと考えている」と述べた。

 

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 古村治彦です。

 

 2018年3月22日、アメリカのドナルド・トランプ大統領が4月9日付で、大統領国家安全保障問題担当補佐官にジョン・ボルトンを任命すると発表しました。現在のハーバート・R・マクマスター補佐官は辞任となります。マクマスター補佐官は現役の陸軍中将ですが、辞任に伴い、陸軍からも退役するということです。

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ジョン・ボルトン
 
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ハーバート・R・マクマスター

 2018年3月6日、ゲイリー・コーン国家経済会議委員長が辞任を発表しました。この時にメディアでは同じ日に、ジョン・ボルトンがホワイトハウスの大統領執務室でトランプ大統領と会談したというニュースも流れました。この時に既に今回のことは決まっていた可能性があります。

 

 ジョン・ボルトンはジョージ・W・ブッシュ政権時代に政権内の外交と軍事を牛耳ったネオコン派の一人です。トランプ大統領はブッシュ時代のイラク攻撃を批判していましたが、マイク・ポンぺオ国務長官、ジョン・ボルトン大統領国家安全保障問題担当補佐官という陣容を組みました。ポンぺオもまたネオコンに近い人物です。

 

 トランプ大統領はジェローム・パウエルFRB議長を起用し、アメリカ経済の引き締めを行おうとしています。その結果として過熱していた株価は調整され下がっていくことになるでしょう。実際にFFレートの利上げが発表され、NYダウは大幅に下げました。トランプ景気をひと段落させるにあたり、募る不満を対外関係に逸らせるということをトランプ大統領は考えているかもしれません。

 

 ポンぺオ国務長官、ボルトン大東両国家安全保障問題担当補佐官という布陣は北朝鮮に対して強硬な姿勢を取るということを鮮明に示しています。米軍による北朝鮮攻撃の可能性が高まりました。ジェイムズ・マティス国防長官は、北朝鮮攻撃と決まれば反対はしないでしょう。次はジョン・ケリー大統領首席補佐官の動向が注目されるところです。

 

(貼り付けはじめ)

 

諸問題についてのジョン・ボルトンの発言(John R. Bolton on the Issues

 

アシシュ・クマー・セン筆

2018年3月22日

「アトランティック・カウンシル」

 http://www.atlanticcouncil.org/blogs/new-atlanticist/john-r-bolton-on-the-issues

 

ドナルド・J・トランプ米国大統領は2018年3月22日に、4月9日付でジョン・ボルトンが次期大統領国家安全穂所問題担当補佐官に就任すると発表した。ここ数年の重要な外交政策問題に関してのボルトンの立場を彼の発言から見てみよう。

 

●北朝鮮について(On North Korea

 

・「北朝鮮の核兵器開発によって現在生じている事態に対して、アメリカが先制攻撃を行うことで対応することは完全に正当なことなのである」(2018年2月28日付『ウォールストリート・ジャーナル』紙)

 

・「問題:北朝鮮の政権が現在嘘をついているとどのようにして知ることが出来るか? 答え:彼らの唇が動いていることで知ることが出来る。(訳者註:北朝鮮は嘘ばかりをついているという意味)」(2018年3月9日付フォックスニュース[テレビ番組]

 

●イランの核開発に関する合意について(On Iran nuclear deal

 

・「オバマ大統領が交渉して引き起こした外交上のワーテルローの戦いの結果(惨敗)はまだ癒されないだろう」

 

・「トランプ大統領はオバマ前大統領が結んだ合意を戦略的に大きな間違いだと正確に見破っている。しかし、トランプ大統領の周囲にいる補佐官たちはどうした訳だか、この合意から撤退しないように大統領を説得している」(2018年1月15日付『ウォールストリート・ジャーナル』紙)

 

・「残された時間は大変に短いが、(イランの核開発施設)への攻撃はまだ成功できる可能性を残している。このような攻撃はイランに敵対している国々や勢力に対するアメリカの巨大な援助と共に実行されるべきだ。そして、こうした動きの目的はイラン政府の政権転覆(体制変更、regime change)だ」(2015年3月26日付『ニューヨーク・タイムズ』紙)

 

●アフガニスタンとパキスタンについて(On Afghanistan/Pakistan

 

・「アフガニスタンに関してはパキスタン次第で勝利もできるし、敗北をしてしまうこともある」(2017年8月21日付フォックスニュース[テレビ番組]

 

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 古村治彦です。

 

 今回は最近読みました『白い航跡』をご紹介します。吉村昭(1927-2006年)は歴史的な事実を小説とする手法で知られた歴史作家です。日露戦争の日本海海戦のバルティック艦隊を詳細に描いた『海の史劇』は初めて読んだときに衝撃を受けたことを覚えています。

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新装版 白い航跡(上) (講談社文庫)新装版 白い航跡(下) (講談社文庫)

 

 『白い航跡』は、東京慈恵会医科大学の創設者である高木兼寛(たかきかねひろ、1849―1920年)を主人公としています。高木は日向国穆佐(むかさ)村(現在の宮崎県宮崎市)に生まれました。大工の棟梁の家に生まれましたが、学問好きであり頭脳明晰の少年で、大工仕事を手伝いながら学問に没頭しました。

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 高木は身分制度が厳しい時代に、このまま田舎で大工の棟梁で終わりたくないと考え、医者になることを決意しました。医者は出自に関係なくなれ、良い暮らしができると考えました。そして、18歳の時に鹿児島に出て蘭方医石神良策の門下に入りました。20歳の時に、戊辰戦争が勃発し、薩摩藩小銃九番隊付の医者として従軍しました。鳥羽伏見の戦いから東北地方に転戦し、会津若松攻めにも参加しました。どの戦いも激戦で、多くの死傷者が出ました。高木は銃弾が降り注ぐ中で、負傷者の応急手当に従事しました。

 

 高木は野戦病院で西洋医学を駆使した治療を目の当たりにして自分の無力さを痛感し、かつ、薩摩藩が協力関係を持っていたイギリス公使館から派遣された公使館付医師ウィリアム・ウィリスが重傷者を救っていく姿に感動し、是非進んだ医学を学びたいと熱望するようになりました。戊辰戦争後、宮崎に帰還した高木は、薩摩藩が1869年に設立した開成所洋学局に入学し、英語と医学の基礎を習得しました。薩摩藩はウィリアム・ウィリスを鹿児島に招き、医学校を設立しました。高木は医学校に入学しましたが、頭脳明晰さと真摯な姿勢、英語をウィリスに認められ、片腕的存在となりました。

 

1872年、高木は恩師石神の引きで海軍に入り、海軍軍医となりました。高木はウイリアム・ウィリスの教えを受け、英語と実戦的な医療技術に秀でており、海軍内でもすぐに頭角を現しました。海軍は創設当初から薩摩藩出身者が重職を占めており、薩摩藩の軍医として従軍した高木は順調に出世を重ねていきました。また、薩摩藩はイギリスと関係が深く、ウィリアム・ウィリスを鹿児島に招いたこともあり、海軍の医療はイギリス式が採用されていたこともあり、高木には良い環境と言えました。

 

日本の西洋医学受容に関しては、ドイツ式かイギリス式かということで争いが起きました。戊辰戦争でウィリアム・ウィリスが多くの負傷者を救ったこともあり、当初はイギリス式が採用されることになっていました。しかし、ドイツの医学の方が進んでいるという意見も出て、どちらを採用するか、新政府に迷いが出ました。オランダ系アメリカ人の宣教師で、長崎で大隈重信や副島種臣を教えたグイド・フルベッキは、「ドイツ医学の方が進んでいる」という意見を述べ、最終的にドイツ式が採用されることになりました。ウィリスが鹿児島の医学校に招かれたのも中央に居場所がなくなったためでした。しかし、海軍の医療に関してはイギリス式が採用されました。

 

 当時のドイツ医学とイギリス医学の違いは、ドイツの方が基礎研究を重視し、学理を重視するというもので、イギリス式はより実践的な医療を重視するというものでした。ドイツ医学からみれば、イギリス医学は実践を重視するあまりに「軽い」もののように低く見られていたようです。

 

 1875年、軍医少監(少佐相当官)となっていた高木にイギリス留学の話が舞い込みます。そして、セント・トーマス病院付属医学校に留学しました。高木は下宿と学校の往復のみというストイックな姿勢で勉学に励み、常に成績優秀者として表彰と賞金を受ける学生として、イギリス人学生たちからも尊敬を受けるほどでした。セント・トーマス病院では実際の診療にもあたり、より実践的な医療技術も習得しました。高木は内科、外科、産科の医師資格を取得し、1880年に日本に帰りました。

 

日本に帰国後、高木は順調に昇進を重ね、海軍軍医学校長や病院長を歴任し、1883年には海軍軍医務局長、1885年には海軍軍医総監に就任しました。海軍軍医のトップにまで昇り詰めました。

 

 最高幹部クラスの海軍軍医となった高木が取り組んだのが脚気の治療と予防でした。海軍では脚気患者が多数出て、危機的状況にありました。実際に出動、戦闘となった時に、戦艦の乗組員の多数が脚気で動けないとなればどうしようもないということになります。実際に朝鮮半島をめぐり、中国(清帝国)と緊張が高まった際に、朝鮮半島に出動した軍艦では多くの脚気患者が出て、実際の戦闘になっても船を動かすことすらできない状況にまでなってしまいました。この時は実際の衝突は起きず、何とかごまかすことが出来ましたが、日本海軍は装備以前の問題で兵員の健康問題を抱えてしまうことになりました。

 

 この当時、ドイツ医学系の東京大学医学部と陸軍軍医たちは、脚気の原因は細菌だと考えていました。夏になると脚気患者数が増え、海軍でも士官よりも兵士クラスで患者数が多く出るということから、不衛生な場所で脚気の原因菌が繁殖するのではないかと考えられていました。しかし、原因菌の特定には至っていませんでした。

 

 高木はイギリス海軍では脚気の患者が出ないこと、日本伝統の漢方医たちの中に「脚気の原因は米だ」という主張があることなどから、食事、特に副菜を摂らない大量の米食が問題なのではないかと考えるようになりました。現在は日本でも米離れと言われ、米の消費量は減少していますが、昔は1日に5合や6合の米を少ないおかずで食べていました。海軍でも兵士たちに白米を支給し、白米など食べられない貧しい家庭出身の兵士たちは喜んでいました。また、副菜に関しては相当分のお金を兵士たちに支給して勝手に買わせていたのですが、米でおなか一杯になるし、節約の意味もあって、ほとんどの兵士がこのお金を貯金に回していました。そのため、兵士たちは米食に偏った食事をしていました。

 

 高木は海軍の食事を西洋式に改めることを訴え、パン食、肉食、牛乳の摂取を主張しました。しかし、経費がかさむこと、兵士たちが洋食を嫌がることなどの問題もあり、海軍醸造部も高木の訴えには理解を示しつつも実行には躊躇していました。高木は伊藤博文や有栖川宮幟仁親王といった明治政府の最高幹部、要人たちに直訴する形で海軍の食事制度を改善していきました。1883年から海軍内で食事が改革され、これに合わせて脚気患者も減少していきました。しかし、東大医学部や陸軍部では海軍の取り組みと高木の主張を激しく非難しました。陸軍軍医総監であった石黒忠悳や後任の森林太郎(森鴎外)は高木を厳しく糾弾しました。

 

 1883年にコルベット艦龍驤が練習航海を行いました。ニュージーランド、南米、ハワイを周航したのですが、多くの脚気患者を出しました。高木は1884年にコルベット艦筑波に食事を改善した状態で同じコースでの航海をしてもらうという実験を行いました。その結果は、脚気患者はほぼ出なかったという結果になり、高木の主張は海軍内で確固とした立場を確保することになりました。

 

 高木は海軍で軍医教育や将兵の衛生や健康、脚気患者の減少に取り組みながら、同時に海軍外での医療と医療教育にも取り組みました。1881年に慶應義塾医学所(前年に廃止されてしまっていた)の所長だった松山棟庵と医学団体成医会と医師養成機関である成医会講習所を創設しました。福沢諭吉は医学に関して英国式を支持しており、そのために慶應義塾の中に医学所を創設していたのですが、資金難などのために廃止せざるを得ない状況でした。日本国内でドイツ医学が優勢となる中で、イギリス医学の拠点とすべく、高木と松山はこれらの団体を創設しました。これが後に東京慈恵会医科大学へと発展していくわけですが、私の勝手な考えでは、現在の私立医学部の名門である慶應義塾大学医学部と東京慈恵会医科大学は今でも友好関係にあるのではないかと思います。

 

 1882年には、高木は自身が学んだセント・トーマス病院を範とする有志共立東京病院を創設しました。セント・トーマス病院では貧しい患者には無料、もしくは廉価で治療を施していましたが、東京病院もそのような形態を採用しました。東京病院では海軍軍医も診療にあたり、最新の医療が受けられるとして患者が殺到したということです。医者はただ本を読むだけでは技量は上達しないので、できるだけ多くの機会を海軍軍医たちに与えて、技量上たちの場にしたいという考えもあってのことでしょう。東京病院は1887年に明治天皇の皇后(昭憲皇太后)を総裁として迎え、皇后から「慈恵」の名前が与えられ、東京慈恵病院となりました。

 

 高木はまた、セント・トーマス病院で看護婦が豊富な医学知識と確固とした医療技術を駆使して活躍している姿に感銘を受け、日本でも看護婦を要請すべきだと考えていました。1885年に東京病院に付属の看護婦教育所を創設しました。

 

 これらの組織団体が後に東京慈恵会医科大学に発展し、現在に至っています。高木兼寛は東京慈恵会医科大学の創立者ということになります。ドイツ医学が優勢の中で、実践を重視するイギリス医学の拠点を作りたいという高木の意志が東京慈恵会医科大学にまで発展したということになります。

 

 1888年には日本にも博士号が作られ、文学、法学、工学、医学の各分野から4名ずつに博士号が授与されることになり、高木はその中に入り、医学博士となりました。日本ではドイツ医学優勢で傍流として虐げられていましたが、やはりロンドンで学んできたことと日本海軍内で脚気患者を減少させた功績を国家として無視することはできませんでした。

 

 1892年に高木は海軍を退き、貴族院議員となりました。また、1905年には男爵に叙せられました。日清・日露戦争で日本海軍が各戦闘で勝利を収めることが出来たのは、脚気患者を減らすことが出来たということになり、高木の功績に対して華族に叙せられることになりました。そのままの時代が続けば、頭脳明晰であった高木も父の跡を継いで大工の棟梁で終わるはずであったのが(大工の棟梁も素晴らしい仕事ですが)、明治維新という日本の勃興期に人生が重なった人物でした。

 

 高木は後にアメリカ・ニューヨークに今でもある名門コロンビア大学の招聘受けて渡米、更にヨーロッパ各地を歴訪しました。自分が学んだロンドンのセント・トーマス病院も訪問しました。高木は各地で歓迎を受け、いくつもの大学で講演し、名誉博士号を授与されました。日本では東京大学医学部と陸軍によってドイツ医学優勢となり、傍流とされているが、海外ではこんなにも評価されているということで高木は自信を取り戻しました。

 

 晩年は診療以外に一般教育と講演に力を注ぎました。自分が相手にされない医学界向けではなく、一般の人々に医療や衛生について話をし、更には道徳などについても話をするようになりました。また、この頃から日本の伝統に回帰するようになり、禊(滝行など)を好んで行うようになりました。また、日本の粗食(雑穀の入ったご飯や味噌など)が素晴らしいと言うようになりました。ロンドンまで行って近代学問を学んだ高木もまた日本人であったということになるでしょう。

 

『白い航跡』を読んで思うことは、イギリスとドイツの学問の方法論の違いということです。イギリスは帰納的であり、ドイツは演繹的であり、かつ、イギリスは形而下を重視し、ドイツは形而上を重視するという大きな違いがあり、哲学的に言えばイギリス経験論とドイツ合理主義の違いということが言えると思います。

 

たまたま生まれた時代と場所によって、高木はイギリス医学、森鴎外はドイツ医学を学びました。そして、お互いが自分の学んだ医学の優位性を確信しました。彼らは脚気をめぐって、それぞれの学問に忠実に向き合い、お互いに争いました。高木はドイツ医学を学んだ医学者たちからは冷笑をされたり、激しい非難を受けたりました。陸軍軍医たちは、最近接に固執し、麦飯を同流することに反対し、麦飯の効果を検証しようとする試みにも「天皇陛下の軍隊を実験に使うとは許せない」などと言いだす始末でした。とても科学者、医学者の発言とは思えません。

 

陸軍の長州閥の大物で後に総理大臣となった陸軍大臣寺内正毅は脚気を患っており、個人的には麦飯を食べていたという笑えない笑い話のような話もあります。寺内は日清戦争で指揮官として出征、自身も脚気患者となり、また部下たちからも多くの脚気患者を出しました。当時の陸軍では大量の米飯が継続されていましたが、海軍に比べて膨大な数の脚気患者を出すに至りました。皮肉なことに現地で調達した精米していない米に雑穀を混ぜた、食事に「恵まれなかった」部隊では脚気患者が少なかったということもありました。

 

東大医学部系や陸軍軍医たちの姿を見ていると、患者が実際に出て死亡していくのに、自分たちの学んだ学問に合わないからと言って、麦飯の効果を検証することすら邪魔をするというのは、異常なことです。彼らは人々を助けるために医学者になったのではなく、自分の頭脳明晰さと権力のために医学者になったのではないかと疑いたくなるほどです。そして、自分の学んだ学問の方法論にこだわるのは恐ろしいことであり、かつ、学問研究から離れているとされる宗教的な進行にすら似ているように感じられます。また、学問は間違ったり、失敗することが重要であり、そこから新しいものが生み出される(「失敗は成功の母」という言葉もあります)はずですが、実際には無誤謬性に凝り固まった宗教や信仰のようになってしまっている、これは現状でもそのようなことがあると思います。

 

 本書を読んで、学問とは何かということと人の人生は偶然と時代の産物なのだということを考えさせられます。

 

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 古村治彦です。

 

 中国が発表した「一帯一路」計画については、日本ではあまり報道がなされないようです。話が大きすぎて日本人には理解しづらい面があると思われます。私が子供の頃にNHKで放送された「シルクロード」という番組がありましたが、現代のシルクロードを作るということかな、だけどそれは時代遅れなんじゃないのかという考えもあると思います。


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 一帯一路計画は中国の東岸からヨーロッパ西岸をつなぐ、ユーラシア大陸を横断するためのインフラ建設や整備の一大プロジェクトです。そして、中国はこれを海上輸送、海運、シーレーンにまで拡大しようとしています。具体的には、海上輸送ルートでヨーロッパと中国をつなぐということになります。

 

 中国政府はそのために海運企業コスコとチャイナ・マーチャンツ・ポーツに多額の融資を行い、シーレーンの整備と世界各地の港湾施設の管理運営権を積極的に取得(買収)させています。ヨーロッパの港湾施設の10%は中国の管理下にあるという数字が出ています。

 

 一帯一路計画が進められる中で、日本はどのような立ち位置を取るか、で将来の展望も変わってくるでしょう。太平洋でアメリカとつながり、中国とは至近距離にある日本ですが、アメリカ偏重ばかりでは、世界の半分での活躍の機会を失いかねません。「中国を敵とする」という単純極まりない思考では日本はますます縮小の道を進むことになるでしょう。

 

(貼り付けはじめ)

 

なぜ中国はヨーロッパ各地の港湾施設を買い続けているのか?(Why Is China Buying Up Europe’s Ports?

-中国国有の港湾管理大企業が中国政府の推進する「一帯一路」プロジェクトの最前線で激しく活動している

 

キース・ジョンソン筆

201822

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/02/02/why-is-china-buying-up-europes-ports/?utm_content=buffer5fefe&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

「一帯一路」計画は中国が何兆ドルもの資金を投入する外交政策の目玉プロジェクトだ。しかし、この計画は実際には何も進んでいない、目に見えない曖昧なものだと揶揄されることが多い。

 

シンガポールから北海までの各港湾は活発に活動している。これらの港で、中国の国有企業が一帯一路計画を現実のものにしている。これらの企業は積極的にこれらの港湾施設を買収している。中国企業による買収によって、世界貿易と政治的な影響力の姿が現実的に書き換えられようとしている。

 

「コスコ・シッピング・ポーツ(中国遠洋運輸集団)」と「チャイナ・マーチャンツ・ポート・ホールディングス(招商局港口控股有限公司)」は資金豊富な中国の巨大企業だ。両社は先を争うようにして、インド洋、地中海、大西洋沿岸の各港湾施設を購入している。先月もコスコはベルギー第二の規模を誇るゼーブルージュの港湾施設の買収の最終合意にこぎつけた。ゼ―ブルージュは北東ヨーロッパにおける中国の最初の橋頭堡となった。

 

これまでも数年間にわたり、スペイン、イタリア、ギリシアといった国々の港湾施設の買収が進んでいた。中国の国有企業は国内市場に縛り付けられていたが、今やヨーロッパの全港湾の10%をコントロールするまでになっている。

 

港湾施設の買収契約は、中国政府の野心的な計画を明確に表すものだ。中国政府は、中国とヨーロッパを海路、道路、鉄道、パイプラインで物理的につなげる計画を持っている。港湾は一帯一路計画における海の半分の基礎をなすものだ。中国がコントロールする港湾は南シナ海からインド洋、スエズ運河を通ってヨーロッパの南半分にまで達している。

 

海事コンサルタント会社ドロウリー社で港湾施設担当上級アナリストを務めるニール・デイヴィッドソンは次のように語っている。「コスコのような企業にとって、港湾施設購入契約は財政的に無理のないものである。そして、中国政府の幹部たちを喜ばせるものだ。それは、中国政府の掲げる一帯一路計画に沿ったものであるからだ。こうした動きの下にあるのは地政学的な思惑だ」。

 

現代の商業の力を手に入れることは、中国が通常の状態だと考える状態に戻るための方法なのだ。西洋諸国によって与えられた中国の屈辱の世紀、それは中国の各港をヨーロッパ諸国の戦艦によって強引に開港させられたことで始まった。この状態から脱却するためには商業的な力を手に入れることが必要だと中国は考えている。

 

オランダ国際関係研究所の中国専門家フランス=ポール・ヴァンダー・パッテンは「究極的な目的は中国の外国依存を低下させ、世界に対する中国の影響力を強めることだ」と述べている。

 

中国の影響力が増していることはヨーロッパでは驚きをもって迎えられている。中国からの投資は天井知らずの状態になっている。ヨーロッパ各国の指導者たちは、中国の習近平国家主席が中国の経済力を政治的な影響力に転換するのではないかという不安を募らせている。コスコは10億ドルを投じて、ギリシアのさびれた港ピレウスの港湾施設を買収した。これについて、中国政府はギリシアを利用して、ヨーロッパ連合による中国の人権状況と南シナ海の行動への非難を弱めさせようとするのではないかという懸念が出ている。

 

現在、中国の国有企業は地中海を進撃している。そして、同時に中央ヨーロッパと東ヨーロッパへの投資も加速させている。こうした動きに対して、懸念が募っている。

 

HISマークイットで酒井各国の港湾を担当しているターロック・ムーニーは次のように語っている。「一帯一路計画に沿った主要な社会インフラへの投資の規模は、ヨーロッパ諸国における中国の政治的な影響が増大している。これは確かなことだ」。

 

中国の海運と港湾企業は海運分野では小規模であった。海運事業分野はAP・モーラー・マースクやハチソン・ポーツのような大企業によって支配されていた。しかし、2016年、中国政府はチャイナ・オーシャン・シッピング(中国遠洋運輸集団総公司)とチャイナ・シッピング・カンパニー(中国海運集団総公司)を合併させ、コスコを発足させた。コスコは海運、港湾管理、その他の輸送事業を手広く行う巨大企業となった。

 

コスコの進撃は止まらなかった。昨年、コスコは昨年60億ドル以上を投じてライヴァル企業であるオリエント・オーヴァーシーズ・インターナショナルを買収した。これによって海運ビジネスにおける地位を固めることに成功した。現在、コスコは、世界最大級の海運企業(ヨーロッパ以外では最大)と世界で最も忙しい港湾管理企業をコントロールしている。

 

港湾に関して言うと、コスコは最大の中国国営企業という訳ではない。チャイナ・マーチャンツ・ポート・ホールディングスの方がより多くの貨物を取り扱い、海外で活発な動きを見せている。ヨーロッパでの港湾施設の買収に加えて、スリランカ、ジブチ、ブラジルでの拠点づくりを進めている。

コスコとチャイナ・マーチャンツはヨーロッパの競合企業に対して有利な点を持っている。中国企業は低利の資金をふんだんに利用して世界中の魅力的な資産を積極的に買収することができる。コスコとチャイナ・マーチャンツは、中国国有銀行から低利の融資を受けることができる。コスコは、中国開発銀行が提供する一帯一路関連融資で数十億ドル規模の融資を受けることが出来る。

 

「貿易と商業の観点からすると、安い金利の貸付金が利用できることと外交上の支援を受けられることで、中国の港湾管理企業はライヴァルとなる投資家たちに競り勝ち、自分たちが選んだ港湾施設を手に入れることが出来るようになるということを意味する」とムーニーは語った。

 

ある港湾が商業的な価値よりも中国政府にとって戦略的な価値がある場合には、財政的な自由度が増す。中国政府が資金を積極的に融資するようになるのだ。ジブチにおけるチャイナ・マーチャンツ担当部分のカーゴ取り扱い量は、昨年前半、世界的な好景気にもかかわらず、減少した。しかし、ジブチは中国政府にとって死命を決するほどに重要な港である。それは、中国国外唯一の中国人民解放軍の基地が置かれ、中国にとって重要なインド洋のシーレーンにとっての拠点となるからだ。


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ジブチの中国人民解放軍基地
 

ムーニーは次のように語っている。「中国政府にとって戦略的な価値がある場合には、中国の企業は商業的な価値がほとんどない、もしくは全くない資産も買収し、投資し続けることが可能だ」。

 

中国の企業による積極的な買収は地政学的な熱狂だけが理由ではない。

 

2016年に世界の貿易取引量が減少し、海運企業も打撃を受けた。コスコは2016年に売り上げを14億ドルも減少させた。しかし、港湾は利益を出している。ドリューイー・デイヴィッドソンは「港湾と流通基地は利益が出る。しかし、海運ビジネスは飛行機会社のようなもので、利幅が薄いのである」と語った。

 

コスコのような企業は投資を行って、さびれていた港湾を巨大な流通基地に変貌させ、利益が出るようにしたいと考えている。コスコはギリシアのピレウスをさびれた港から、ヨーロッパ、中東、アジアをつなぐ流通基地に変貌させた。コスコは、スペインの港湾ヴァレンシアを西地中海、ゼ―ブルージュを北東ヨーロッパの流通基地に変貌させようとしている。

 

中国の拡大のペースはヨーロッパ経済にとって重要な要素となっている。港湾だけではなく、エネルギー産業とハイテク産業の分野でも重要になっている。ヨーロッパ各国の指導者たちはイライラを隠せないでいる。

 

欧州委員会委員長ジャン=クロード・ユンケルは、中国という名前は出していないが、港湾のような資産の外国による買収について懸念を表明している。欧州委員会は、国家の安全にかかわるような微妙な分野における外国からの投資を精査するための新しい方策の導入を検討中である。

 

フランス大統領エマニュエル・マクロンは、先月の中国の公式訪問の中で更なる表現を使った。マクロンは中国政府によるヨーロッパ各国の重要なインフラの買収について特に言及し、ヨーロッパ各国の団結によって対処することを呼びかけた。ロイター通信は、マクロンが「中国は、ヨーロッパ諸国の中で中国に門戸を開いている国がある場合に、ヨーロッパ大陸と力に敬意を払うつもりはないだろう。」と発言したと報じている。

 

中国はヨーロッパ各国の成長が期待できる各企業を買収しているが、これには反発もある。2016年に中国はドイツのロボットメイカー・クカを買収した。これは、ヨーロッパ経済が成長するために必要な最新技術を中国が横取りするのではないかという懸念を引き起こした。

 

オランダ国際関係研究所のヴァンダー・パッテンは、中央ヨーロッパと東ヨーロッパにおける一帯一路計画に沿った港湾契約やその他のインフラ計画は、既にガタガタになっているヨーロッパ連合から政治的に弱い加盟諸国が離脱する危険を伴うものだ、と述べている。

 

ヴァンダー・パッテンは次のように語る。「現在、中国からの投資によって政治的な影響を受けるのかどうかということがより議論されるようになっている。大きな違いは、地中海沿岸諸国は中央ヨーロッパ諸国に対する中国の投資が、これらの国々の中国に対する姿勢に影響を与えるであろうということがすでに議論の前提になっているということだ」。

 

(貼り付け終わり)

 

(終わり)

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 古村治彦です。

 

 今回は、『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(児玉博著、小学館、2017年)をご紹介します。一気に読めてしまう好著です。

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テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅

 

 東芝は、不正経理問題や子会社ウェスティングハウスの破綻問題により、大きなダメージを受けました。日本を代表する電機メーカーで売り上げは6兆円、社員は20万人の大企業が破綻するかどうかの瀬戸際まで追い込まれてしまいました。日本で育ち、生きてきた人たちの多くは日曜日の夕方、テレビで「笑点」、「ちびまる子ちゃん」、「サザエさん」を見ているうちに夕ご飯という経験を持っていると思います。「サザエさん」のスポンサーが東芝でしたが、これも撤退するということになりました。私は、何か、日本の一部が失われるという感じがしました。


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 西田厚聰

 本書の主人公は、西田厚聰(にしだあつとし、1943-2017年)という人物です。西田は、31歳で東京大学法学政治学研究科の博士課程の学生という学究の道を捨て、東芝に海外現地採用社員(イラン)として入社し、後に社長・会長を歴任した異色の経歴の持ち主です。学歴は置いておいても、年功序列がまだまだ厳然と残っている時代に、大学に現役で入学し、4年で卒業した人よりも10年も遅れて入社した形の人が最終的に社長・会長になったというのは、大企業では他に例がないでしょう。大学入学時に1年浪人、大学卒業までに5年(1年留年)くらいまでだったら、ハンディにはならない、と言われますが、10年というのは想像もつかない絶望的な差です。10年の差を埋めるだけの力があったということは間違いないところで、『テヘランからきた男』でも、西田の器の大きさと頭脳明晰さ、突破力が随所に描かれています。

 

 西田厚聰は三重県の田舎で、教師の家に生まれました。子供の頃から努力家で、地元の尾鷲高校から二年浪人して早稲田大学に進学しました。二年の浪人で何をしていたのかは本に書かれていませんが、東大や京大を受験していたということです。早稲田大学の学生時代の話もあまり書かれていません。西田が進学した当時は60年安保も終息していた頃で、ブントも終わっており、学生運動が過激さを増していく頃でした。西田も学生運動に参加し、下宿を何度も変わったと書かれています。恐らく、過激な学生運動のセクトに関わり、セクト間での抗争に巻き込まれたのだろうと推察されます。

 

 早稲田大学では授業に出る余裕もなかったそうですが、ドイツ語で政治学の原書に挑戦するという一面もあったそうです。卒業後に東京大学大学院の修士課程に進学します。専攻は政治思想史、指導教授は福田歓一(ふくだかんいち、1923-2007年)でした。『政治学史』やアイザイア・バーリンの翻訳で知られた政治学の重鎮です。西田はドイツの思想家ヨハン・フィヒテ(Johann Fichte、1762-1812年)を専門にしていたそうです。福田は西田を厳しく指導し、原点を厳格に解釈することを教えたそうです

 

 西田は福田に非常に期待されていました。博士課程に進学する際に西田を含む2名が合格しましたが、福田は西田以外の学生に就職することを勧めたので、西田だけが博士課程に進学しました。そのままいれば東大は無理にしてもどこかの大学の専任講師はまず間違いなかったでしょう。西田が途中で博士課程を中退したのは、学部が東大法学部ではなかったので、東大教授にはなれないと考えたからだ、という話があるそうです。しかし、これは正しくないでしょう。そもそもそんなことは東大修士課程に入る時点で分かっていることです。ドラマ「白い巨塔」で描かれたような醜い出世争いや東大出身でなければダメということは西田には分っていたはずです。西田は学究の道から離れたことについて、迷惑がかかる人がいるということでその理由を絶対に話しませんでした。ですが、東大教授になれないと分かったからということはないと私は考えます。

 

 西田は東大大学院在学中に日本に留学生として来ていたイラン人学生ファルディン・モタメディと出会い恋に落ちたそうです。ファルディン・モタメディは日本思想史の大家である丸山眞男(1914-1996年)の薫陶を受けた人物です。丸山の著書『「文明論の概略」を読む』(岩波書店、1986年)にはファルディンが丸山の許で福沢諭吉の思想を勉強したいと述べるシーンが出てきます。

 

 西田は福田の期待に応えました。岩波書店の月刊誌『思想』に26歳で論文を掲載しました。これは政治思想の世界では大変なことです。しかし、西田は、イランに帰国したファルディンを追いかけて学究の途を捨てました。

 

 その頃、東芝はイランに合弁で電球工場を建設することになりました。日本人写真たちは苦労していたようですが、そこに現れたのが日本語をはじめ欧米諸国の言語が出来るファルディンでした。ファルディンは東芝の工場建設に関わるようになりましたが、自分の恋人がイランにやって来て結婚式を挙げる、彼を雇って欲しいということになりました。この人物が西田です。東芝側は、学者上がり(もしくは崩れ)は使いづらいと考えていたようですが、現地採用となりました。

 

 西田は社会経験は少ないのですが、学者臭くなく、好奇心旺盛、何事にも真剣に取り組む上に語学も堪能ということで、頭角を現していきました。そして、本社採用となりました。

 

 西田は本社ではノート型コンピューターを担当し、東芝の主力商品にまで仕立て上げました。ドイツを拠点にして、ヨーロッパ中を動き回り、ノート型パソコンとそれに搭載するOSを作り上げ、売って売って売りまくりました。西田の活躍は痛快な冒険譚になっています。私もアメリカ留学中にノート型パソコンを買い替えようと思い、アメリカ人の友人にどの機種が良いかな、と質問したところ、「東芝が良い、丈夫で壊れないよ、アメリカでのシェアも大きいし。君は日本人なのにそんなことも知らないの」と言われてしまい、恥ずかしい思いをしました。私が東芝のパソコンを使って10年以上なりますが、それはメリカの経験からであり、東芝のパソコン事業の成功させたのが西田です。

 

 2005年に社長となった西田が行ったのが2006年の原子力メーカーのウェスティングハウス社(WH)の買収でした。東芝はジェネラル・エレクトリック社(GE)と付き合いが古く、GEが作っている沸騰水型軽水炉(BWR)を採用していました。しかし、東芝は、世界の趨勢は、加圧水型軽水炉(PWR)だと考え、PWRを製造しているWH社の買収に踏み切りました。WH社と古くから付き合いがあったのは三菱重工業でした。東芝はWH社買収で、最後の最後で三菱重工業の横やりも入りましたが、最終的に6600億円での買収に成功しました。東芝は原子力分野で1位、半導体分野で3位という世界最大の電機メーカーとなりました。

 

 しかし、半導体は価格が下がり、リーマン・ショック後で需要も下がってしまい、売り上げが落ちてしまいました。結果、2009年に社長の座から退きました。その後、会長となりましたが、2011年3月11日の東日本大震災と原発事故で原発建設などがストプすることになりました。そして、WH社は破綻し、その影響を受けて東芝も危機的状況に陥りました。原発事業拡大を進めた西田に対する非難の声も出ました。しかし、東日本大震災までは、原発は気候変動に対する有効な解決策ということで、拡大していっていたのですから、西田の判断を後付けの理由で非難するのは間違っていると思います。

 

 さて、私は西田厚聰という人物を主人公に据えた本書『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』は、大学教育と企業の関係の在り方についてヒントがあるのだろうと思います。日本の大学は長年にわたりレジャーランドと呼ばれ、入るのは大変だが出るのは簡単、授業に出なくても単位を取ることが出来る、企業も大学で変に勉強されるよりも社会性を身に着けておいて欲しい、教育は入社してからこちらでビシビシやる、ということになっていました。そして、大学教育は十年一日のごとし、教授は使い古したノートを毎年毎年読むだけ、学生は試験前にノートのコピーを集め勉強するのはまだよい方で、何も準備せずにテストを受けて「単位をください」と書いてしまうなんてことになりました。大学側はどうせ学生のほぼ全員が企業に入るのだから厳しく学問を仕込むことなんか望まれていないのだから手を抜けばいいということになりました。

 

 しかし、最近では世の中が「世知辛く」なったのか、大学できちんと教育をして社会に送り出せ、企業で役立つ教育をせよ、ということになっています。これに対して、大学でどのような教育をすべきか模索されています。

 

 私は西田厚聰という人物の生き方がこの問題にヒントを与えてくれるのではないかと思います。西田は学問研究に没頭しながら、10年も遅れて企業に飛び込み、成功しました。彼は政治学を学び、その中には企業内で仕事をするうえで役に立った知識もあるでしょう。しかし、その細かい知識や理論などはほぼ役に立つことは無かったでしょう。

 

 私は西田が成功したのは、方法論と「頭脳を酷使する」経験があったからだろうと思います。学問は何か問題を設定しそれを解決するものです。そこで解決する方法はそれぞれの学問分野に存在するのですが、問題を設定し、解決するという方法論をきちんと身に着けていた、そして、その解決に向かって頭脳を使い切る、「頭脳を酷使する」ということを知っていたのだろうと思います。西田の学んだ政治思想史の方法論は、徹底した原典主義と時代背景を含めた根拠のある解釈です。西田が難しい技術書を読みこなし、何が重要なのかを理解し、周囲を驚かせたのはこうした方法論に忠実であった、そして頭脳を酷使することに慣れていたということが西田の特徴として挙げられるでしょう。

 

 大学で学生に教える際に、日本ではこれらの点があまり行われていないのではないかと思います。方法論(methodology)を身に着け、頭脳を酷使するということが大学内で行われるようになれば、社会や企業からの要求に応えられる卒業生を送り出すことが出来るのではないかと思います。

 

(終わり))

 

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 古村治彦です。

 

 拙著『アメリカ政治の秘密』で取り上げました、アメリカの「民主化」の尖兵となってきた機関に対する予算が縮小されるそうです。全米民主体制のための基金(National Endowment for DemocracyNED)と言いますが、その下に、全米民主研究所(National Democratic InstituteNDI)と国際共和研究所(International Republican InstituteIRI)があります。それぞれ自分たちはきれいなNPOでございます、というふりをしていますが、大きな間違いです。

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アメリカ政治の秘密

 

 NDIIRIは、それぞれ民主党、共和党の下部組織です。民主党(Democrats)と共和党(Republicans)のDRがそれぞれについています。これらは、両政党の中でも、「民主化」に熱心な、人道的介入主義派(Humanitarian Interventionists)とネオコン派(Neoconservatives)の牙城になっています。それぞれにお金を流すために、NEDという組織があって、これに毎年約200億円の国家予算が投じられていましたが、この予算が6割以上カットされるそうです。非常にめでたいことです。

 

 これはそもそも上部団体である国務省(United States Department of State)とアメリカ国際開発庁(United States Agency for International DevelopmentUSAID)の予算500億ドル(約5兆3000億円)が37%削減されて315億ドル(約3兆4000億円)になったことを受けてのことです。ドナルド・トランプ大統領が国務省とUSAIDの予算を大幅削減すると聞いたとき、私は「さすがトランプ大統領、よく分かっている」と感心しました。私がトランプ大統領を支持する理由はまさにここです。

 

 拙著『アメリカ政治の秘密』でも書きましたが、アメリカが進めてきた世界各地の民主化(Democratization)は、世界を不幸にしました。「世界中の全ての国々が民主国家になれば戦争はなくなる、不幸はなくなる。そのためにアメリカは与えられた使命を果たさねばならない」という恐ろしい考えで世界各地にアメリカは介入していきました。最近では「アラブの春」という茶番劇が思い出されます。このアラブの春を演出したのは国務省であり、USAIDであり、NEDでした。私は『アメリカ政治の秘密』の中で証拠付きでこのことを明らかにしています。

 

 私は下に掲載している記事のタイトルである、「トランプ政権「世界の民主化運動を支援するお金はもうない」」も大変気に入っています。アメリカが衰退していることを明確に表しているからです。

 

 こうした動きに対して、人道的介入主義派とネオコン派はトランプ政権をしてくるでしょう。トランプ政権内部の動きについてはこれからも注視していく必要があります。

 

(貼り付けはじめ)

 

トランプ政権「世界の民主化運動を支援するお金はもうない」

Trump State Department Accused of Abandoning Global Democracy in New Budget

 

201838日(木)1920

カルロス・バレステロス

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/post-9693_1.php

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/03/post-9693_2.php

 

<アメリカ政府の手先、と疑いの目を向けられながらも、旧共産圏諸国の民主化を支援するなど功績のあったNEDがなくなる?>

 

米国務省が、全米民主主義基金(NED)の予算を大幅に削減しようとしている。親米の民主主義を広げるため、世界中のメディアや労働組合、人権団体に資金提供を行ってきたNPOだ。

 

ドナルド・トランプ米政権が2月に発表した2019会計年度(1810月~199月)の予算教書に沿って、国務省はNEDの予算を2018年度の16800万ドルから6700万ドルへと3分の1まで縮小する方針だ。さらに、全米民主研究所(NDI)や国際共和研究所(IRI)などNEDの中核となってきた組織に個別に割り当ててきた予算も、今後は米国務省の一般予算に組み入れたい、としている。

 

NEDの予算削減や見直しを、米議会が承認するかどうかは不明だが、もし認められれば、トランプ政権は海外の民主化運動を見捨てた、という誹りを免れないだろう。

 

「今回の削減案は大打撃だが、驚きはない。最終的に決めるのは議会だ」と、NEDのカール・ガーシュマン会長は本誌に語った。「ただNEDを骨抜きにすれば、ロナルド・レーガン元米政権のレガシー(遺産)を葬り去ることになり、政治的にも将来的にもあまりに短絡的だ」

 

「オープンなCIA」の位置づけ

なぜなら、NEDの予算が削減されれば「海外で同じ価値観を共有し、権力と戦う勇敢な民衆の支援からアメリカが手を引いた、というシグナルを世界中に送ることになる」さらにガーシュマンは米紙ワシントン・ポストの取材に語った。

 

トランプ政権は米国務省の2019年の予算を2017年度比で25%削減する方針だ。

 

NED1983年にレーガン元米大統領の特命で設立された。当時、米中央情報局(CIA)などの米政府機関は、海外の親米派への資金提供や援助を秘密裏に行ってきたとして、激しく批判されていた。

 

「今我々がやっていることは、25年前にCIAが秘密裏にやっていたのと同じことだ」と、NEDのデービッド・イグナシウス会長代理は1991年のインタビューで語っている。「当時と今の最大の違いは、大っぴらに活動しているので、後で批判される可能性が少ないということ。オープンであることは即ち、自己防衛だ」

 

NEDは設立以来、民間NGOの扱いだが、実際には活動資金の大半を米議会から受け取っている。NEDのホームページによれば、年間の資金提供は1200件、1件当たりの平均は5万ドルだ。

 

NED1980年代に共産主義政権の終焉に貢献したとして、その功績が認められてきた。特に1989年に民主化したポーランドへの支援では力があったとされる。

 

一方、アメリカ政府の手先として非難を浴びることも依然、多い。

 

2002年には、ベネズエラで民主的に選ばれたウゴ・チャベス大統領の政権転覆を図った反政府団体に資金提供を行ったと批判された。

 

2005年にジョージ・W・ブッシュ元米大統領がNEDの予算倍増を要求した時には、米共和党のロン・ポール下院議員(テキサス州選出)はこう批判した。「NEDはアメリカの意向に沿う海外の政党や運動に米国民の税金を垂れ流すことで、民主主義を転覆している団体だ」

 

(翻訳:河原里香)

 

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