古村治彦です。
スターバックスと言えば、今や日本中で展開するアメリカのコーヒーショップチェーンです。今から20年ほど前に日本に進出してきましたが、最初、どうやって注文して良いのかよく分からずに恥ずかしい思いをしたことを今でも覚えています。
そのスターバックスを現在のような規模にまで育て上げたのがハワード・シュルツ(Howard Schultz、1953年―)です。昨年スターバックス社のCEOを退任しました。
シュルツが最近ツイッターを始めたのですが、そのツイッター、並びに『ニューヨーク・タイムズ』紙とのインタヴューで、2020年の大統領選挙に出馬する可能性を示唆しました。現在、「真剣に考慮」しているということです。シュルツが実業家として成功していること、ツイッターを駆使して自分の考えを発信しようとしていることは、トランプ大統領と共通していますが、シュルツはトランプ大統領に比べてリベラルな考えを持っています。
シュルツは民主党、共和党どちらの予備選挙にも出ずに、無所属(independent)として立候補するということを述べています。正確には「中道派無所属(centrist independent)」として出馬する可能性を示唆しています。その理由が興味深いのですが、民主党も共和党も極左(far-left)、極右(far-right)に飲み込まれてしまっているから、ということで、中道派として出るのだ、ということを述べています。シュルツが述べている、極左は、民主党内のバーニー・サンダース派、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスたちを指しています。一方、極右は、共和党内のドナルド・トランプを支持する人たちということになります。この2つは共に「ポピュリズム(Populism)」という言葉でくくられます。
シュルツは民主、共和両党がポピュリズムに飲み込まれて、より過激な主張をするようになっていると考え、それに危惧を持っているようです。リベラルな考えを持つ大富豪、ということになりますから、本来であれば民主党から出馬することを考えるはずですが、シュルツは、サンダースやオカシオ=コルテスが主張している、大学無償化や政府が全額健康保険を負担することといったことには反対しています。民主党リベラル・進歩主義派が大富豪に多額の税金をかけると主張していることも気に入らないのでしょう。
面白いのは、シュルツが出馬するのは、「民主党で左派進歩主義的な候補者が一番手になる場合には」という条件を付けている点です。これは、そんな奴が当選する可能性を減らすために出馬する、裏を返せば、そんな奴が当選するくらいならトランプの方がましだ、ということになります。シュルツが左派進歩主義的ではない、もしくはその度合いが著しく低いと考える人物が最有力となったら出馬しないということになります。しかし、現在までに出馬表明している人物たちは、自分が少しでもリベラルに見えるように振舞うはずです。
シュルツの出馬表明は民主党内の亀裂、分裂を露(あら)わにしています。
(貼り付けはじめ)
ハワード・シュルツは、「中道派無所属」として大統領選挙へ出馬することを「真剣に考慮中」と発言(Howard Schultz says he's 'seriously considering' 2020 bid as
'centrist independent')
エミリー・バーンバウム筆
2019年1月27日
『ザ・ヒル』誌
元スターバックスCEOハワード・シュルツは日曜日、2020年米大統領選挙に「中道派無所属(centrist independent)」として出馬することを「真剣に考慮中」であると述べた。
シュルツは日曜日にツイッターを開始した。そして、「私は私たちの国を愛している。大統領選挙に中道派無所属として出馬することを考慮中である」と述べた。
シュルツは自身のウェブサイトへのリンクを張りながら、「現在は歴史上、前例がない状況にある。我が国の2つの政党はこれまでにないほど分裂している。より多くの人々のための機会を作り出すために私たちはどのように団結できるかについて議論しよう」と述べた。
日曜日に『ニューヨーク・タイムズ』紙に掲載されたインタヴュー記事の中で、シュルツは大統領選挙出馬を準備していることを認めた。シュルツはこれから3か月間、本の宣伝ツアーを行うが、その終了後に最終決定を行う予定だと述べた。
シュルツはニューヨーク・タイムズ紙に対して次のように述べた。「共和党と民主党には共に、極右(far-right)と極左(fa-left)の一部になり果てているという自覚がない。それでも両党は帰るべき家を探している。“無所属”という言葉は私にとってただ単に投票用紙に書かれた呼称でしかない」。
シュルツはインタヴューの中で、民主党側からの「シュルツが無所属で出ることでトランプに大統領を渡すことになる」という批判に対して、反論した。シュルツは大統領選挙に「妨害者・壊し屋(spoiler)」として出馬することはないと述べた。
民主党の大物政治家たちからの批判に対して、シュルツは次のように述べた。「あなたに出馬などできないと述べる冷笑者といつも否定論を展開する人物たちに反論する用意が出来ている。私は彼らに同意しない。出馬が出来ないなどと言うことは極めてアメリカ的ではない発言だと私は考える」。
シュルツは民主党の予備選挙に出馬しなくない、それは民主党の予備選挙に出ると“不誠実”にならざるを得ないからだ、とも述べた。
大富豪であるシュルツはニューヨーク・タイムズに対して、「私が民主党の候補者として出馬したら、自分に嘘をつくことになる、自分が信じてもいないことを言うことになると思う。それは、民主党が左に寄り過ぎているからだ」と述べた。
シュルツは次のように述べた。「21兆ドルの負債があるにもかかわらず、政府がお金を出す大学無償化、健康保険無償化、全ての人を政府職員に採用するという政策を主張する人々がいる。疑問に思うのは、国が破産しないようしながら、それら全てに金を出すにはどうしたらよいのか、ということだ」。
シュルツの純資産は34億ドル(約3700億円)と推定されている。
シュルツはニューヨーク・タイムズ紙に対して、穏健派の候補ではなく、左派進歩主義的(left-wing progressive)な候補が一番手になるようであれば、大統領選挙に出馬すると述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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