古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2021年10月

 古村治彦です。

 今回は、バイデン政権の「ビッグテック包囲網」の軍師役ティム・ウーについての記事をご紹介する。ティム・ウーはコロンビア大学法科大学院教授から、ホワイトハウスの国家経済会議(National Economic Council、NEC)に入り、テクノロジー・競争政策担当大統領特別補佐官(Special Assistant to the President for Technology and Competition Policy)を務めている。父が中国系、母がイギリス系でカナダに生まれ、カナダの名門マギル大学を卒業し、ハーヴァード大学法科大学院を修了、その後はいくつかの法科大学院で教鞭を執っていた。下にある写真にあるように、ダンディーでハンサムな人物だ。コロンビア大学法科大学院では、連邦取引委員会委員長を務めるリナ・カーンと同僚だった(カーンは准教授)。

 ティム・ウーはビッグテックに対する批判を声高に主張する人物と知られ、進歩主義派からは今回の人事を歓迎する声が上がった。彼は2018年に『巨大さの呪い-新たな金ぴか時代における反独占(The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age)』という著作を発表し、その中で、「経済における過度な集中は格差と物質的な苦境を生み出し、結果として、人々はより過激な、ナショナリズムを煽動するリーダーを渇望するようになる」と書いて注目を浴びた。

 ウーは今年夏にジョー・バイデン大統領が発した大統領令の起草の責任者を務めた。そこには具体的な産業分野での独占や反競争的行為の問題が列挙されていた(補聴器の高価格設定など)。ティム・ウーはホワイトハウスでバイデンに反独占についての助言を行う軍師役を務める。これまでに紹介した、ジョナサン・カンター、リナ・カーン、そしてティム・ウーにはこれから注目していかねばならない。

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バイデンの反独占革命(The Biden Antitrust Revolution

-新しい大統領令は連邦政府に対して、経済における公正とアメリカの民主政治体制を損なっている独占を終わらせるために積極的に行動するように求めている。

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ジョン・カシディ筆

2021年7月12日

『ニューヨーカー』誌

https://www.newyorker.com/news/our-columnists/the-biden-antitrust-revolution
彼のオフィスで撮影されたティム・ウーの写真(ティム・ウーは金曜日にジョー・バイデンが署名した広範囲な内容を含む反トラストの大統領令の作成に貢献した)

2018年、コロンビア大学法科大学院教授ティム・ウーは書籍を出版し、その中で、巨大企業による独占はアメリカ経済に負担を強いるだけにとどまらず、民主政治体制に対する深刻な脅威となると主張した。1世紀前の金ぴか時代が示したのは、「いかにして、過度の経済集中が激しい不平等(格差)と物質的な苦しみを生み出し、人々がナショナリストや過激派を指導者に据えようと渇望するのか」と、ティム・ウーは書籍『巨大さの呪い(The Curse of Bigness)』の中で書いている。彼はまた次のように書いている。 「金ぴか時代から私たちが学べることが1つあるとすれば、それは次のようなことであるべきだ。ファシズムと独裁に進む道は、一般の人々のニーズに応えるための経済政策の失敗によって舗装されている」。

先週の金曜日、私は電話でウーと話をした。彼は現在、ジョー・バイデン大統領の補佐官を務めている。彼は、バイデン大統領が経済全体の競争を促進するための大統領令に署名する際に開かれたイヴェントに出席したところだった。この大統領令の目的について、イヴェントに出席したバイデンは、「価格を引き下げ、賃金を引き上げ、全ての人々のために機能する経済に向かうための重要なもう一歩を進めさせる」ことだと述べた。バイデンは続けて次のように述べた。「独占による人々への虐待はこれ以上許容されない。大量の解雇、価格の引き上げ、労働者と消費者たちの選択を減少させることにつながる、良くない合併はこれ以上許容されない」。

3月上旬にバイデン政権に参加して以降、ウーはこの大統領作成にかかりきりだった。この大統領の内容は長く、詳細なものだ。ウーは私に対して次のように語った。「ここに知的な部分での革命があり、バイデン大統領はそれを受け入れている。その一環として、反トラストの努力を抽象的な学術的な行為ではなく、一般の人々も巻き込んだ運動として取り戻すことを目指している。私たちは反トラストの努力がより遠く、より抽象的なものとなってきた長い期間を過ごしてきた。しかし、バイデン大統領が述べたように、最終的には、全ての人々のために機能する経済を実現することだ」。

この大統領には、連邦取引委員会、農務省、国防総省など10以上の連邦政府機関に対する72の指令が含まれている。大統領令の指令の中で、すぐに大きなインパクトを持つ者を1つ挙げるように、私はウーに頼んだ。ウーは、2017年に議会で可決された法案で求められていたように、店頭での補聴器の販売を許可する新しい規則を発表することで、「低価格の補聴器を広く普及させる」ことを保健福祉長官に命じるものを挙げた。現在、聴覚障害者が補聴器を購入するには、処方箋が必要である。補聴器は、市場を独占している一握りの専門業者によって製造されており、一組の価格は5000ドル以上にもなる。

アメリカ人が企業の巨大化や暴力的な独占を考える時、通常は補聴器メーカーのことは考えないと言っていいだろう。競争政策についての議論は、アマゾン、グーグル、そしてフェイスブックのようなハイテク産業の巨大企業に集中する傾向がある。ウーは著書『巨大さの呪い』の中で、「ビッグテックは遍在している。私たちについて知り過ぎているようであり、見るもの、聞くもの、するもの、更には感じるものに対してあまりにも大きな力を持っているようだ」と書いている。

新しい大統領令はテクノロジー産業の巨大企業を無視してはいない。バイデン大統領が出した新しい大統領令は、連邦取引委員会に対し、テクノロジー分野の企業の合併を精査し、利用者データ収集のルールを確立し、「インターネット市場での不公正な競争方法を禁止する」などの措置を講じるよう命じている。まとめると、今回の大統領令の最も注目すべき点は、その幅の広さだ。農業、金融、医療、運輸といった各産業分野が含まれている。また、非競争契約の規制など、最も重要な提案のいくつかは、さまざまな業界に適用される。

ウーと彼の同僚たちは、この幅広いアプローチが今日のアメリカ経済の現実を反映していると述べている。経済諮問委員会のヘザー・ボウシェイとヘレン・ナドセンは、ホワイトハウスが金曜日に発表した記事の中で、「様々な産業において、市場がより集中し、おそらく競争力が低下しているという証拠がある」と述べている。この記事には、「4社の精肉企業が市場の80%以上を支配している。国内航空市場は4つの航空会社に支配されている。信頼できるブロードバンド供給会社として、アメリカ国民は1社しか選ぶことができない」と書かれている。複数の市場で競争が阻害されているのであれば、競争を促進するための政策は多くの異なった分野に対応する必要がある。補聴器の価格を引き下げることに加えて、大統領令の目的には処方箋の必要な薬の価格を引き下げること、銀行口座の変更を容易にすること、ブロードバンド事業者が高額な早期解約料を請求するのを防ぐこと、農家が自分で機器を修理することを禁止する販売契約を制限すること、低賃金や中程度の賃金の従業員に対して雇用主が競業避止義務を課さないようにすることなどが含まれる。

大統領令には個別の問題が列挙されているが、これはウーと彼の同僚が制限された道具を最大限効果的に使おうとする努力を反映している。バラク・オバマは彼の大統領二期目の最終年に競争を促す大統領令を発した。しかし、小の大統領令が大きな影響を与える前に、オバマは退任した。ドナルド・トランプは様々な種類の大統領令に署名したが、そのほとんどは、裁判所が取り消したり、バイデンが大統領就任後に取り消したりして、もはや有効ではない。ウーと彼の同僚は、この大統領令が裁判の場で正当性を争われる可能性が高いことを十分に認識している。多くの裁判官は、経済における競争を促進する政府の権限を限定的に捉えているからだ。そこで、この大統領令の策定にあたっては、目に見える形で既存の法律が適用されている具体的な問題点を取り上げようとした。「この大統領令の全体的なアプローチは、議会に強力な権限があり、それがニューディールや1945年、1960年代に与えられたものであるにもかかわらず、十分に活用されていない分野に焦点を当てることだ」と呉は説明した。

この発言は、ウーや、連邦取引委員会の新委員長であるリナ・カーン、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員の補佐官を務め、現在は国家経済会議の副委員長を務めるバラット・ラマムルティなど、バイデン政権の高官たちが代表する、経済における競争に対する活動家的なアプローチの核心をついている。彼らのアプローチは、進歩主義時代に産業分野における独占や大銀行を批判し、最高裁判事となったルイス・D・ブランダイスの経済哲学や、1935年から1936年にかけて実施された第二次ニューディール政策で重要な役割を果たしたフェリックス・フランクフルターをはじめとするブランダイスの弟子たちの見解を想起させる。この期間、ルーズヴェルト政権は、巨大電力会社の分割、労働者の交渉力を強化するワグナー法の成立、連邦準備制度理事会に銀行システムへの監督権限を与える1935年銀行法の制定など、経済の再構築と公正な競争を促進するためのさまざまな施策を実施した。

ウーや彼以外のブランダイスの後継者たちは、「新ブランダイス主義(New Brandeis-ism)」と呼ばれる政策体制を構想している。彼らは、連邦取引委員会や司法省の独占禁止法部門など、競争を促進するために設立された連邦機関に対し、最も悪質な企業独占に対して、時々裁判を起こすこと以上の施策をするよう求めている。新ブランダイス主義の推進者は、これらの機関が積極的に行動すべきだと主張している。つまり、広範な調査を行い、報告書を発表し、テクノロジー産業の巨大企業によるプラットフォームやブロードバンド・プロバイダーなど、市場で大きな力を持つ企業の行動規則を制定すべきだ、ということである。ウーは著作『巨大さの呪い』の中で、「アメリカの反独占は、その使命を果たすために、より大きな目標に立ち返り、その能力を向上させる必要がある」と書いている。

確かに、この新大統領令が実際にどれほどの成果を上げるかについては、懐疑的になる理由が存在する。メディケアに大手製薬会社との薬価交渉権を与えるなど、企業による不正行為を抑制するためには、新たな法律を制定する必要がある。既存の法律に基づいて連邦政府機関が権限を持っている分野であっても、月単位ではなく年単位の時間軸で動いていることもある。例えば、連邦取引委員会が提案する新しいルールは、制定される前に長いパブリックコメントの過程を経なければならない。

更に、企業合併の承認ルールの変更など、新政策の主要項目に裁判所が賛成するかどうかも定かではない。司法省の独占禁止法部門の責任者であるウィリアム・J・ベア氏は『ニューヨーク・タイムズ』紙に対し、「そこには克服できるかどうかわからない逆風が吹いている」と語った。新しい反独占運動にとっての最良のシナリオの中でも、保守的な経済思想が司法の場で確立したほぼ覇権を覆すには、何年も、あるいは何十年もかかるだろう。

金曜日に株式市場が上昇したという事実が示しているのは、ウォール街が今回の大統領令によって大企業の利益が圧迫される懸念は大きくないと考えていることを示している。しかし、全ての政策闘争はどこかで始めなければならない。ウーが2018年に発表した著作で示したように、今回の政策闘争が生み出す利害はこれ以上ないほど高いものとなるだろう。経済システムがアメリカ国民のために公平に機能することをアメリカ国民に示す努力をしない限り、民主政治体制の基盤はますます損なわれていくだろう。バイデン政権が引き受けた仕事の規模、そして仕事の達成の速度について、誰も幻想を抱くべきではない。しかし、少なくとも、記憶に残る形での努力は始まっている。バイデンは次のように発言した。「明確にしたいことがある。競争のない資本主義は資本主義ではない。それは搾取だ」。民主党から出た大統領が経済についてこれほど平易に語ったのはいつ以来だろうか?

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ビッグテックへの批判を主導している人物がホワイトハウス入り(A Leading Critic of Big Tech Will Join the White House

-国家経済会議へのティム・ウーの指名はバイデン政権の対決姿勢を示している。

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コロンビア大学法科大学院教授ティム・ウー。金曜日にテクノロジーと競争政策に関する大統領特別補佐官に指名された。

セシリア・カン筆

2021年3月5日

『ニューヨーク・タイムズ』紙

https://www.nytimes.com/2021/03/05/technology/tim-wu-white-house.html

ワシントン発。バイデン大統領は金曜日、コロンビア大学法科大学院教授ティム・ウーを国家経済会議のメンバーに指名した。肩書はテクノロジー・競争政策担当大統領特別補佐官だ。ビッグテックの力に対して最も声高に批判を行っている人物を政権に入れることになった。

48歳になるウー教授は民主党進歩主義派と反独占を主張する各種団体によって支持されている。ウーの指名は、バイデン政権が、アマゾン、アップル、フェイスブック、グーグルなどの企業の規模と影響力に対抗するために、議会と協力して独占禁止法を強化する法案を作成する計画を持っていることを示している。バイデンは選挙期間中、ビッグテック企業の解体に前向きだと述べた。

テクノロジー産業に対するこのような対決的なアプローチはトランプ政権からの継続の一つである。昨年末、連邦政府と各州政府の規制当局は、フェイスブックとグーグルを独占禁止法違反で裁判に訴えた。規制当局はアマゾンとアップルに対しても競争を不幸性に阻害しているとして捜査を継続している。

バイデンはソーシャル・ネットワーク・メディア企業と、ソーシャル・ネットワーク・メディア企業に対する法的防護盾として知られる通信品位法第230条について懐疑的だ。バイデンは2020年1月に『ニューヨーク・タイムズ』紙論説ページに発表した論稿した中で、「通信品位法第230条は即座に廃止されるべきだ」と書いている。

テクノロジー産業巨大企業は新たな独占禁止法と規制に対して徹底的戦ってきた。それらを押し返すために、ワシントンで最も能力の高いロビー活動勢力を構築している。

ウーは、少数の企業の手に過剰な力が集中していることの影響に対して警告を発し、1800年代末の金ぴか時代(Gilded Age)に似ていると述べた。

ウーは2018年に発表した著作『巨大さの呪い-新たな金ぴか時代における反独占(The Curse of Bigness: Antitrust in the New Gilded Age)』の中で、ウーは「経済における過度な集中は全体的な格差と物質的な苦境を生み出し、ナショナリスティックで過激な指導者を人々が求める状態を促進する」と書いている。

ウーは更に次のように書いている。「私たちの日常生活で最も目につくのは、グーグル、フェイスブック、アマゾンなどのテクノロジー産業のプラットフォームの巨大な力だ」。

ウーはホワイトハウス入りが決まる前まで、本紙の寄稿者を務めていた。

競争政策に集中したウーの役割は、国家経済会議の中でも新しいものとなる。ウーはまた、企業によって強制される競業避止義務、農業分野と製薬産業における力の集中など労働政策における競争に集中している。ウーの役職であるテクノロジー・競争政策担当大統領特別補佐官には連邦上院の人事承認を必要としない。

バイデン大統領はまだ司法省の独占禁止法部門の責任者と連邦取引委員会委員長について正式に指名していない。両部門は商業活動における競争を監視する政府機関である。進歩主義派の人々は、テクノロジー巨大企業やその代理人である法律事務所で働いた人物よりも、ウーのような左派のビッグテックに対する批判者の起用を強く求めてきた。

マサチューセッツ州選出で民主党所属の連邦上院議員エリザベス・ウォーレンは声明の中で次のように述べている。「ティムは長年にわたり反独占を主張してきた。ビッグテックの解体と抑制を政府に働きかけてきた。私は彼が政府で反独占の役割を果たすことを楽しみにしている」。

ウーはこれまでにも何度か学術界から離れて政府で働いたことがある。2011年から2012年にかけて連邦取引委員会の特別アドヴァイザーを務め、オバマ政権下で国家経済会議に入り、競争政策を担当した。オバマ政権は、フェイスブック、グーグル、そしてアマゾンといったテクノロジー兄弟企業を手厚く扱ったことで知られている。ウーはそれ以来いささかの後悔を持っていた。

ウーは、2019年に開催されたアスペン・アイディアズ・フェスティヴァルで行われたインタビューで次のように述べた。「私はオバマ政権で働き、独占禁止法の分野で働いた。私にももちろん個人的な責任はあるが、私たちは本来厳しく実施されるべき合併に対する監視を行っていなかった」。また、テクノロジー分野について、「時には、過度にバラ色の見方をしていたかもしれない」とも述べた。

これらの企業は、オバマ大統領の任期である2期8年の間に、規制に縛られることなく、合併買収(mergers and acquisitions)によって大きく成長した。ウーは当時から多くの民主党の政治家たちが、テクノロジー産業企業が利用者データの保護、小規模な競争相手への公平な対応、プラットフォームからの誤った情報の排除などの約束を果たせていないことを認識していたと述べている。

ウー教授は強力な電気通信企業に対する批判や、「ネット・ニュートラリティ(net neutrality)」(消費者はインターネット上のすべてのコンテンツに平等にアクセスできるべきだという規制理念)という言葉を生み出したことで知られている。最近では、ウーは、インターネット上の言論、調査、小売りを支配している、フェイスブック、グーグル、アマゾンなどのゲイトキーパー(門番)と呼ばれる存在に注意を向けるようになっている。

フェイスブックに関する連邦政府と各州政府の捜査が続いている間、ウーはフェイスブックの共同創設者クリス・ヒューズと共に、フェイブックの解体を主張した。

ミネソタ州選出エイミー・クロウブシャー連邦上院議員は、連邦上院司法委員会独占禁止小委員会委員長を務めている。クロウブシャー議員は、「ウーの指名は独占禁止法執行において新しい時代の方向性を定めることになった」と述べている。クロウブシャー議員は、独占禁止関連諸法を強化するための広範囲をカヴァーする法案を提出している。

彼女は「法律は何も変わっていない。従って、法執行と新しい考えが重要だ。これが競争政策に必要なカンフル剤となる」と述べる。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 私が現在翻訳を進めている、The Tyranny of Big TechJosh Hawley著)の邦訳を『ビッグテック5社に解体せよ』(ジョシュ・ホウリー著)とすることに、編集者と話し合いを持ち、決定しました。来月に刊行できるように作業を進めています。素晴らしい内容ですので、楽しみにお待ちください。
joshhawley501

ジョシュ・ホウリー
 今回は、バイデン政権の「ビッグテック包囲網」の要、リナ・カーンについての論稿を紹介する。2本目の記事はリナ・カーンだけではなく、連邦議会での「ビッグテック包囲網」を形成する重要な議員たちが紹介されている。アメリカでは「ビッグテックを何とかしろ」「解体せよ(
Break Up)」という声が超党派で高まっている。『ビッグテック5社を解体せよ』を読むと、アメリカでの動きがよく分かるようになっている。
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リナ・カーン

 リナ・カーンは弱冠32歳で、コロンビア大学法科大学院准教授から連邦取引委員会委員長に抜擢された。連邦取引委員会(FTC)は、日本で言えば公正取引委員会に相当する。連邦取引委員会が仕事をサボっていたために、ビッグテックが野放しになったということで、今回リナ・カーンが起用された。リナ・カーンの名前が知られるようになったのは、イェール大学法科大学院在学中に「アマゾンの反独占に関するパラドックス(Amazons Antitrust Paradox)」というタイトルの論文を発表したことだ。その内容は、アマゾンが取引業者を虐めて低い価格での物品を販売を行っているが、これまでの独占禁止法の執行(物価や価格に焦点を当てる)に当てはめると、消費者にとっては安い価格でものが買えるということで、独占禁止法違反での執行ができないということになる、というものだ。彼女は、ビッグテックに対する批判を主導する立場に就いた。

 リナ・カーンはイェール大学法科大学院在学中から、新アメリカ財団というシンクタンクの上級研究員を務めていた。このシンクタンクには、グーグル元CEOエリック・シュミットから多額の資金が投入されていた。カーンが、EUがグーグルに対して独占禁止法違反で多額の罰金を科したことについて、肯定的なコメントをツイッターに投稿したことがあった。シュミットはこのコメントに激怒し、結果として、カーンの解雇、カーンのアシスタントをしていた職員たちの解雇、カーンが責任者を務めていた部門の閉鎖が行われた。

 リナ・カーンの連邦取引委員会委員長就任は、バイデン政権のビッグテック包囲網の本気度を示すものとして受け止められた。これは非常に重要なことである。前回紹介した司法次官補ジョナサン・カンターと一緒になって、行政府におけるビッグテック包囲網形成に、リナ・カーンは重要な役割を果たす。

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バイデンは独占禁止法専門の学者リナ・カーンを連邦取引委員会委員長に指名する意向(Biden to nominate antitrust scholar Lina Khan as FTC commissioner

クリス・ミルズ・ロドリゴ筆

2021年3月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/544379-biden-to-nominate-antitrust-scholar-as-ftc-commissioner

バイデン大統領は月曜日、影響力の高い独占禁止法専門の学者リナ・カーンを連邦取引委員会(FTC)委員長に指名する意向であることを明らかにした。

カーンは32歳、コロンビア大学法科大学院准教授を務めている。上院での人事承認がなされれば、史上最年少の委員長ということになる。

リナ・カーンはイェール大学法科大学院在学中に、「アマゾンの反独占に関するパラドックス(Amazon’s Antitrust Paradox」というタイトルの論文を書いたことで有名になった。この論文はEコマースの巨人がいかにして独占禁止法を違反できているかを詳述した内容だった。

最近では、カーンは連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会が主要なデジタルプラットフォームの独占力を調査している間、補佐官として働いていた。

進歩主義派内のビッグテックに対する批判者たちはカーンの指名を求めてきた。

アメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクトのサラ・ミラー上級部長は次のように述べている。「小規模事業、企業家たち、働く人々の擁護者であるリナ・カーン教授は連邦取引委員会にとって素晴らしい選択である」。

ミラーは続けて次のように述べている。「カーン教授は、法学分野におけるこれまでにない業績によって国際的に認知されている学者だ。また、右派左派や党派を超えて働くことができる能力や政策における専門性でも知られている。連邦取引委員会において、数十年にわたる組織の特性による失敗から、連邦取引委員会を導き、脱出させるために、カーン教授は重要な役割を果たすことだろう」。

連邦取引委員会において、カーンはフェイスブックの独占禁止法違反容疑の事件について監督を行う上で重要な役割を果たすだろう。カーンはその他にも、シリコンヴァレーの巨大企業や他の産業分野の企業に対する新たな独占禁止法違反容疑事件にも関与するだろう。

正式な発表が行われた後、カーンはツイッターに「今回の指名は光栄でありかつ謹んでお受けするものです。人事承認をいただけるだけの幸運に恵まれましたら、私は委員長としての仕事が出来るのだと思い、今から楽しみにしているところです」と投稿した。

カーンの指名が連邦上院で承認されると、バイデン大統領は5名で構成される連邦取引委員会の委員を充足させるために、もう一枠の委員の指名が必要となる。

バイデンは今年1月に連邦取引委員会委員レベッカ・ケリー・スローターを委員長代理に任命したが、彼女をそのまま委員長代理として処遇することも選択できる。

月曜日の発表の前、バイデンは、もう一人のテクノロジー産業の巨大企業の批判者であるティム・ウーをテクノロジー・競争政策担当大統領特別補佐官に指名した。

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ビッグテックに対する独占禁止をめぐる戦いで見るべき5人の重要なプレイヤー(Five big players to watch in Big Tech's antitrust fight

レベッカ・クレアー、クリス・ミルズ・ロドリゴ筆

2021年4月23日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/549855-five-big-players-to-watch-in-big-techs-antitrust-fight

アメリカ政府は、アメリカ国内の最大のテクノロジー企業群の市場支配力を抑制するための努力が強化している。

バイデン大統領は、就任してから、反トラスト法関連の行動についてはほとんど発言をしていないが、ビッグテックに批判的な2人の人物を執行機関や諮問機関の重要ポストに指名し、任命している。

連邦上院では、民主、共和両党の議員たちが、反競争的な行為に対する懸念を抑制することを目的とする法案を提出している。連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会は、今週初めに、アップルとグーグルの役員たちを招聘して重要な聞き取りを行った。先週には、委員会の民主党側の議員たちが昨年発表した、グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブックの4社が市場力を濫用するために採用している方法についてまとめた報告書を、全会一致で正式に承認した。

これからビッグテックの戦いを進める、5人の注目すべき重要なプレイヤーたちを紹介していく。

(1)リナ・カーン(Lina Khan

バイデンのハイテク産業の巨大企業の市場支配力を制限したいという考えを示しているのは、連邦取引委員会(FTC)委員長にリナ・カーンを指名したことだ。

カーンは反トラストについての研究者であり、影響力を持っている。彼女はビッグテックを批判する進歩主義派の人々から後押しを受けている。カーンは、論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス(Amazons Antitrust Paradox)」で知られている。この論文は、カーンがイェール大学法科大学院の学生の時に書いたものだ。彼女はまた、連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会のテクノロジー産業の巨大企業群の市場支配力の調査の際に補佐官として参加した。

連邦上院商務委員会でのカーンの人事承認をめぐる証言が水曜日に実施された。その席上、カーンは、グーグルとアップルがアプリストア部門において享受している市場支配力は、「深刻な問題」であり、詳細に調査されるべきだと述べた。

彼女は更に、子供たちのプライヴァシー保護手段の拡充を支持し、議員たちに対して、現行のルールは「天井ではなく、床であるべきだ(これが上限ではなく、最低限のものであるべき)」と述べた。

カーンについては民主党側から称賛の声が上がっている。特に、連邦上院司法委員会独占禁止法小委員会委員長エイミー・クロウブシャー連邦上院議員(ミネソタ州選出)は、カーンを「従来の枠にとらわれない発想の持ち主」、「競争政策における先駆者」と呼んだ。

公聴会の雰囲気は和やかなものだった。それでも共和党所属の議員たちからいくばくかの懸念が表明された。マーシャ・ブラックバーン連邦上院議員(テネシー州選出)はカーンの前歴や背景、そして経験について質問を行った。マイク・リー連邦上院議員(ユタ州選出)からは、カーンが連邦下院独占禁止法関連報告書に関与したことを理由に、いくつかの案件に関わらないのではないかという質問が出たが、強いて彼女の指名の人事承認を撤回させようという議員は誰もいなかった。

テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)でさえもカーンに対して、「私は貴方と一緒に仕事ができることを楽しみにしている」と述べた。これは、ビッグテックに対峙しようという超党派の意気込みを示すものだ。

クルーズは「現在、非常に不透明な状況にあるビッグテックの透明性を確保するために、当委員会ができることはたくさんあると考えている」と述べた。

人事が承認され連邦取引委員会委員長に就任した場合、カーンには既にバイデン政権内に強力な協力者たちが存在する。

バイデンは先月、ビッグテックに対する批判で有名なティム・ウーをテクノロジー・競争政策担当大統領特別補佐官に任命した。

水曜日には、連邦上院は、バイデンのヴァニタ・グプタの司法省序列第3位(司法次官)への指名の人事承認を行った。ここ数年、グプタは、「リーダーシップ・カンファレンス・オン・シヴィル・アンド・ヒューマン・ライツ」の代表者として主要なソーシャル・ネットワーク・メディア・プラットフォームに対して、敵対者となってきた。

カーンは、連邦取引委員会がフェイスブックに対して訴訟を提起している時期に重要な時期に連邦取引委員会に参加する。連邦取引委員会と46州、ワシントンDC、グアムが反競争的な合併容疑で訴訟を提起した。

(2)エイミー・クロウブッシャー(Amy Klobuchar)連邦上院議員(ミネソタ州選出、民主党)
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エイミー・クロウブッシャー
クロウブッシャー議員は2020年の大統領選挙に出馬したが、バイデンとは良好な関係を持っている。これからの戦いで注目すべき、重要な民主党所属の連邦上院議員である。ミネソタ州選出の議員であるクロウブシャーは今年初め、「競争と独占禁止法執行改革法案」を提案した。この法案の目的は独占禁止法の執行を再び強化するというものだ。その一環として、連邦取引委員会と司法省独占禁止法局の年間予算を増額するということが提案されていた。

クロウブシャーの提案した法案は、クレイトン法を修正して、同法にリスクベースの基準を加え、独占を生み出す合併は同法に違反することを明確にすることで、反独占的な合併を難しくすることを目的とするものでもあった。

クロウブシャーは連邦上院司法委員会独占禁止法小委員会の委員長を務めている。クロウブシャーは委員長として小委員会で一連の公聴会を開催し、テクノロジー企業の反競争行為の可能性を調査し、法案を検討すると述べた。

水曜日に実施された最新の公聴会では、クロウブシャー議員を筆頭に小委員会のメンバーの議員たちが、アプリストアのポリシーについて、グーグルとアップルの役員たちに質問を行った。

クロウブシャーは公聴会で次のように発言した。「私たちはアップルとグーグルが、私たちの時代の特徴を生み出しているテクノロジーの多くを想像する手助けをしていることに感謝している。これは素晴らしいことだ。私たちは成功に対して怒っているのではない。私たちはただ、資本主義がこれからも全ての人々に対して公正であるように、力強い道筋を進み続けるように望んでいるだけなのだ」。

クロウブシャー議員は更に次のように述べた。「資本主義とは競争なのだ。資本主義とは新しい製品が生み出され続けることだ。資本主義とは新しい競争者たちが参加し続けることだ。私にとって、現状は、そのようなことが起きているようには見えない」。

(3)マイク・リー(Mike Lee)連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)
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マイク・リー
リー議員は連邦上院司法委員会独占禁止法小委員会の共和党側の幹事メンバーである。彼もまたビッグテックに照準を合わせている。しかし、クロウブシャー議員とはいささか異なる考えを持っている。

リーは、2021年1月6日の連邦議事堂での暴動の後、テクノロジー巨大企業が過激なソーシャル・ネットワーク・メディア・アプリ「パーラー(Parler)」に対して行った行動を、反競争行為として非難している。

リーは、保守派に偏っているという根拠のない主張を、テクノロジー巨大企業を非難する共和党の同僚議員たちと一緒に行っている。しかし、反競争慣行の告発では、クロウブシャーやその他の議員たちと一緒になって、テクノロジー巨大企業の責任を追及している。

水曜日の公聴会で、リーは、グーグルとアップルに対して、一部のアプリにかかる最大30%の手数料と、手数料の対象となるアプリとそうではないアプリの区別について、グーグルとアップルに厳しく質問をぶつけた。

グーグルとアップルの役員たちは、ウーバーのような物理的な商品を配送するアプリは手数料の対象外だが、ティンダーのような出会い系アプリはデジタルサービスを提供しているとみなされるので、手数料の対象になると答えた。

リーは次のように反論した。「ウーバーは、文字通り、流通の分野で見知らぬ人と出会うという内容のサーヴィスだ。流通分野で見知らぬ人に出会うことと夕食の席で見知らぬ人と出会うことの違いを私は理解することができない」。

ジョシュ・ホウリー連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)ももまた、ビッグテックの巨大企業の力を弱めるための立法上の行動を提案している。

ホウリーは、「21世紀の独占破壊法」を発表した際に、言論を「コントロール」しようとする「意識の高い巨大企業」を非難しました。

しかし、クロウブシャーの提案と同じく、ホウリーの提案は、規制当局が支配的な企業を解体することを容易にするために、クレイトン法を改革するという内容だ。

(4)デイヴィッド・シシリーニ(David Cicilline 連邦下院議員(ロードアイランド州選出、民主党)
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デイヴィッド・シシリーニ
ロードアイランド州選出デイヴィッド・シシリーニは、連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会で、民主党側で独占禁止法を担当するトップの立場にある委員であり、民主党のビッグテック分野へのアプローチの形成を主導してきました。

先週、独占禁止についての報告書が承認された委員会で会合の後、シシリーニは「我々が提起した重大な懸念に対処する法案を作成することを楽しみにしている」と発言した。

ロードアイランド選出の連邦下院議員であるシシリーニは、今春中に最大10本の独占禁止法関連法案を発表する予定だ。より積極的な政策を民主党に支持してもらうためには、いくつかの作業が必要となるだろう。

この報告書の中には法案化が可能な解決策が複数記載されている。それらは、大手企業の買収を決定前に凍結すること、いくつかの企業には一分野のビジネスを追求することを義務化する構造分離の実施、連邦取引委員会と司法省独占禁止法局の予算と権限を拡充することである。FTCDOJの反トラスト局の資金と権限の拡大などが挙げられます。

このような内容を限定した提案は、大きな改革を連邦上院で進めるために必要な共和党の支持を集めやすくする。

シシリーニは、報告書で取り上げられた独占問題に対する立法上の解決策を作成するために、競争の活性化に焦点を当てた3つの公聴会を現在の議会で既に開催している。

(5)ケン・バック(Ken Buck)連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)  
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ケン・バック

連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会において、民主党所属のシシリーニ議員に対応するのは、ケン・バック連邦下院議員(コロラド州選出、共和党)である。バック議員は、いかなる提案についても、共和党側で支持を取りまとめる上で重要な役割を果たすことになる。

バックは、先週行われた報告書の最終折衝において、ビッグテックの市場支配力に関する報告書にまで結実した調査について、「完全に超党派」で実施されたものだと認めたが、報告書に対する賛成票を投じることはなかった。その理由は、報告書の中で書かれていた是正案が民主党側だけで書かれたものだったからだ。

コロラド州選出の下院議員であるバックは、共和党所属の議員たちの支援と支持を得て独自の報告書を発表し、独占禁止規制当局への予算や人員の配分と、合併案件の立証責任に関する改革の必要性について、超党派の合意を得た。バックは、今議会で既に独占禁止法改革法案(ジャーナリズム分野における競争と意地に関する法案)について支持を表明している。

バックはまた、アップル、グーグル、アマゾンがパーラーに対して行った行為をきっかけに、アプリストアやウェブホスティングサービスに対するテクノロジー巨大企業の利用させるかどうかの決定に伴う支配力についても積極的に発言している。

バックとリーは、グーグルとアップルが、アプリストアからパーラーを削除したことについて、またアマゾンがウェブホスティングサービスからパーラーを削除したことについて、手紙を書いた。これらのビッグテックの巨大企業は、パーラーがコンテンツ・モデレーション・ポリシーを持たず、連邦議事堂での死者を出した暴動についての投稿を許したことを理由に排除する行動を起こした

アップルは今週議員たちに宛てた書簡の中で、承認されたアップデートを行った後で、アプリストアにパーラーのアプリを戻すことを許可する予定だと述べた。

バック議員はグーグルとアマゾンに対して同様の措置を取るように訴えている。

バック議員は水曜日に発表した声明の中で次のように述べている。「グーグルとアマゾンはアップルの例に倣う時だ。検閲を止めろ」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 現在、私が翻訳を行っているジョシュ・ホーリー著『ビッグ・テック5社を解体せよ』に関連する内容をこれからご紹介する。
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ジョナサン・カンター
 ジョナサン・カンター(
Jonathan Kanter、1973年-、48歳)は、ニューヨーク州立大学オルバニー校(State University of New York at AlbanySUNY)を卒業して学士号を取得し、その後、ワシントン大学法科大学院で法務博士号を取得し、弁護士資格を得た。キャリアを連邦取引委員会に勤務する弁護士としてキャリアをスタートさせた。その後は、いくつかの法律事務所に勤務し、2020年には自身の法律事務所「カンター・ラー・グループ(Kanter Law Group)」を開設した。

2021年7月20日に、ジョー・バイデン大統領は、カンターを独占禁止法担当司法次官補(assistant attorney general for the antitrust division)に指名した。10月6日には、連邦議会司法委員会で人事承認のための公聴会が開催された。現在の状況は、「未定(TBDTo Be Determined)」である。しかし、人事承認は確実視されている。

 カンターについては、日本経済新聞に簡潔にまとめられた記事が掲載されていたので、以下に貼り付ける。

(貼り付けはじめ)

米、巨大ITの追及緩めず 司法次官補に反グーグル弁護士

逆境の巨大IT

2021721 19:43 (2021721 21:13更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2101X0R20C21A7000000/

【ワシントン=鳳山太成】バイデン米大統領は20日、司法省の反トラスト法(独占禁止法)担当トップに米グーグルへの批判で知られる弁護士を指名した。米連邦取引委員会(FTC)のカーン委員長を含め、競争政策を担う主要ポストにはIT(情報技術)大手に厳しい専門家をそろえる。独禁法を厳しく執行する方向へ転換する姿勢を鮮明にした。

この弁護士は、司法省の反トラスト局を率いる次官補に指名されたジョナサン・カンター氏。就任には議会上院の承認が必要だ。

司法省とFTCは反トラスト法を共同で所管する。カンター氏が就けば、カーン氏と共に独禁当局ツートップを形成する。FTCは委員5人の多数決で意思決定するが、司法次官補は組織の長として大きな権限を持つ。

カンター氏は巨大IT企業に挑む弁護士として名をはせてきた。米メディアによると、米マイクロソフトや飲食店口コミサイト「イェルプ」の代理人弁護士として、競合であるグーグルや米アップルなどの不公正な慣行を訴えてきた。

カンター氏は自身が設立した法律事務所の代表を務める。「反トラストの権利擁護者」を自称し、活動家の側面を持つ。オバマ元政権で司法次官補を務めたビル・ベア氏は「尊敬される経験豊富な弁護士だ。全国民に対して自由市場経済を機能させるという(バイデン)政権の公約に取り組むだろう」と話す。

デジタル時代に沿うように反トラスト法の改正を求める声もあるが、現行法でも対応可能だというのがカンター氏の主張だ。202010月のイベントでは「私たちには法律がある。勢いよく情熱を持って定期的に執行しよう」と述べていた。

司法省は米国のIBM、マイクロソフトといった巨大企業を独禁法違反で提訴してきた。01年に発足した共和党のブッシュ政権(第43代)を機に、独禁法にからむ大型訴訟は途絶えた。カンター氏は独占や寡占に寛容な当局の姿勢をやり玉にあげてきた。

トランプ前政権の司法省は2010月、グーグルを独禁法違反の疑いで提訴した。カンター氏が就任すれば、23年にも公判が始まる久しぶりの大型訴訟を引き継ぐ。

バイデン氏は司法省の独禁法担当トップには穏健派を登用し、カーン氏のFTC委員長指名とのバランスをとろうとするとの見方もあったが、リベラル色を前面に押し出した。「巨大IT企業解体」を唱える民主党左派のウォーレン上院議員は「企業の強力な支配力を監視する戦いのリーダーだ」と、今回の人選を称賛した。

(貼り付けはじめ)

 上の記事にあるように、カンターは法律家(弁護士)としてのキャリアを連邦取引委員会(日本の公正取引委員会)から始め、その後はいくつもの法律事務所に所属しながら、中小企業の代理人として、グーグルやマイクロソフトとの訴訟を戦ってきた。今回、司法次官補となり、反独占禁止法違反容疑でビッグ・テックを捜査し、訴訟を提起するということになるだろう。

 バイデン政権の「ビッグ・テック解体」を目指す姿勢を示すのが、ジョナサン・カンターの指名である。今後は後2人のキーパーソンを紹介していく。

(貼り付けはじめ)

バイデンは、ビッグ・テックの批判者を司法省の独占禁止法担当部門責任者に指名(Biden to appoint Big Tech critic to DOJ antitrust role

クリス・ミルズ・ロドリゴ筆

2021年7月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/563923-biden-to-appoint-big-tech-critic-to-doj-antitrust-role

バイデン大統領は法律家のジョナサン・カンターを司法省の独占禁止法担当部門の責任者として指名する計画を持っている、とホワイトハウスは木曜日に発表した。これはバイデン政権のビッグ・テックとの対峙姿勢のもう一つのシグナルだ。

カンターの指名は、司法省と連邦取引委員会(FTC)に対しテクノロジー業界における反競争的行為の取り締まりを強化するよう求めてきた進歩主義的な各組織にとって、満足できる人事となった。

昨年、自身の法律事務所を立ち上げたカンターは、独占禁止法の執行機関にグーグルを訴えるように仕向けようとする企業の代理人を務めてきた。人事承認を得られれば、カンターは、独占禁止法担当司法次官補(assistant attorney general for the antitrust division)に就任することになる。今回の人事を最初に報道したのはブルームバーグだった。

「アメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクト」の上級部長サラ・ミラーは次のように述べている。「バイデン大統領は、司法省の独占禁止法担当部門の責任者に素晴らしい人物を選んだ。ジョナサン・カンターは経験豊富で、有能で、知的先見性を持っている。彼はバイデン政権下での独占禁止法に基づいた執行を確実に行い、それは労働者や中小企業、共同体のための仕事をしてくれるだろう」。

ミラーは更に次のように述べた。「高い能力を有する法律家(弁護士)として、カンターはキャリアを通じて、独占禁止法の執行の再活性化に取り組んできた。彼は、ビッグ・テックに対する主要な独占禁止に関する調査において、最も成功した法的議論を数多く展開してきた。彼は連邦議会の民主、共和両党から、さらに法曹界において多くの人々からの尊敬を集めている」。

エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)はバイデンの指名を称賛し、カンターについて、「企業の統合的な力を抑制し、市場における競争を強化するための戦いにおけるリーダー」と評した。

民主、共和両党で50議席ずつを持っている連邦上院で人事承認が得られれば、カンターは連邦取引委員会委員長リナ・カーンとホワイトハウスの経済アドヴァイザーであるティム・ウーと共に、バイデン政権内のビッグ・テックに対して声高の批判を行う人々のグループに参加することになる。

今回のカンターの指名の前には、バイデンは競争促進を目的とした包括的な大統領令を発表した。大統領令の実行は、連邦取引委員会と司法省独占禁止法担当部門に大きく依存している。

連邦上院司法委員会反独占小委員会委員長は声明の中で、「カンターの司法分野における深い経験と積極的な行動を主張してきた経歴を見れば、司法省独占禁止法担当部門を率いる地位に彼を就けることは素晴らしい選択である」と書いている。

カンターが司法次官補に就任すれば、グーグルが検索およびオンライン広告の分野で、違法に独占的な地位を維持しているとする既存の訴訟を引き継ぐことになる。

フェイスブックとアマゾンは既にカーンに対して、自分たちを対象とした調査を中止するように求めている。カンターの過去の仕事を見れば、グーグルから同様の異議申し立てがなされる可能性がある。

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大企業の力に対峙するために、バイデンにはジョナサン・カンターが必要だ(To confront corporate power, President Biden needs Jonathan Kanter

モンダレー・ジョーンズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)

2021年4月21日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/blogs/congress-blog/judicial/549404-to-confront-corporate-power-president-biden-needs-jonathan

1980年代以降、企業の力はどんどん強まっていく一方で、独占禁止法を執行する連邦政府諸機関は、その責任をほとんど放棄し続けて現在に至る。このような企業の力の集中は、経済に対する脅威であるだけでなく、民主政治体制そのものへの脅威でもある。

連邦取引委員会(FTC)委員長にリナ・カーン、国家経済会議(NEC)の大統領特別補佐官にティム・ウーをそれぞれ指名することで、バイデン大統領は、企業に対して制つめ五責任を果たさせる準備ができていることを示した。彼の独占禁止法担当ティームの人事の仕上げとして、現在の独占禁止運動の主導者を、独占禁止法担当司法次官補に指名することが必要だった。その人物こそはジョナサン・カンターだ。

独占禁止法執行こそは、企業の力を抑制し、公正で包括的な経済を構築するために、連邦政府が持つ最良の手段の一つである。独占禁止法担当司法次官補の仕事は、現在の経済のルールを決めている現代の独占企業に対抗するための政権のアプローチを確立することである。連邦下院司法委員会独占禁止法小委員会の委員として、我が国の独占禁止法は、独占禁止法執行者たちくらいにしか効果的ではないということが分かっている。

これまでの数十年間、私たちは独占禁止法執行の重要性を痛い目に遭いながら学んできた。連邦政府は、大企業が自分たちに有利なように市場を操作するのを阻止できなかった。その結果、労働者、中小企業、消費者が犠牲になってきた。

大統領選挙候補として、バラク・オバマは「独占禁止法執行の再活性化」を公約として挙げた。しかし、オバマ政権は、アマゾン、フェイスブック、そしてグーグルのようなビッグ・テックの各企業が独占的な地位を確立することを阻止できなかった。アメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクトが明らかにしたように、オバマ政権は大企業の持つ力に挑戦する歴史的な機会を得ていた。しかし、オバマ政権の最高幹部たちのほとんどは、レーガン政権から始まった「大企業には手を出さない」アプローチから脱却しようとはしなかった。その結果として、2009年から2019年にかけて、五大インターネットプラットフォーム企業による400件以上の行買収に対して、1件も独占禁止法の執行は行われなかった。

驚くべきことに、オバマ政権は、独占禁止法の執行を難しくした面もある。2010年、取引委員会と司法省独占禁止法担当部門の両者は、企業統合を黙認するために、一部の合併ガイドラインを改訂した。法学教授であるダニエル・クレインは『スタンフォード・ラー・レヴュー』誌に掲載した論文の中で、これらのルールは、「(この種の)合併による集中は、以前の体制に比べて、独占禁止法の審査を受ける必要が出てくる」ということを示唆していると書いた。

2010年、司法省独占禁止担当部門は、ライヴネイション社とティケットマスター社の合併を承認した。両社はチケット販売とコンサート関連市場をそれぞれ支配していた。しかしながら、企業合併は単純に企業の力を統合することではあるが、独占禁止法担当省次官補はこの企業合併を承認した決定について、両社に対して一部資産の売却を認めることを条件に付けただけだった。この決定について「強力な独占禁止法の執行だったが、ハンマー(sledgehammer)ではなくメス(scalpel)を使っているだけのことだった」と評された。

同様に、オバマ大統領の連邦取引委員会は、2013年に反競争の行動について、グーグルに説明責任を果たさせることに失敗した。広範囲にわたる捜査の結果、連邦取引委員会のスタッフたちは、グーグルを独占禁止法で提訴すべきだと連邦取引委員会に働きかけたが、連邦取引委員会は訴訟の提起を拒絶した。

そして、当然のことだが、オバマ政権はフェイスブックがインスタグラムとワッツアップの買収することを阻止できなかった。フェイスブックは強力な競争相手となり得る存在を吸収することができた。

これまでのところ、バイデン大統領の独占禁止法関連の人事は、新しい、より希望に満ちた道筋を描いている。バイデン大統領は、優れた独占禁止法執行の主導者であるリナ・カーンを連邦取引委員会委員長に指名することで、新しい経済のために強固な独占禁止法の執行を刷新することを決心したことは明らかだ。また、技術・競争政策のアドヴァイザーとしてティム・ウーを起用したことで、バイデン大統領は新しい進歩主義時代の到来を認識していることを示した。今回の人事により、バイデン大統領は、すべての人に恩恵をもたらす経済を実現するために必要な、勇気ある指導力を発揮している。

独占禁止法担当ティームの性格が大きく変更されつつあるが、その変更を完成させるためには、バイデン大統領はジョナサン・カンターを独占禁止法部門担当司法次官補に任命すべきだ。カンターが司法の世界で最初にインターンとして働いたのが連邦取引委員会だった。それ以来、カンターは集中した企業の力に対峙することでキャリアを過ごしてきた。 連邦取引委員会の競争担当部で弁護士として働いていた時、カンターは、統合による危機を生み出した大企業の合併に異議を唱えた。現在、司法省は最近では最も重要な独占禁止法違反容疑の訴訟である、アメリカ合衆国対グーグルの訴訟を抱えている。独占禁止法担当部門は、創造性を持ち、訴訟における法理論を構成するために努力を惜しまない人物に率いられるべきだ。アメリカとヨーロッパでは、独占禁止法執行部門は、現代の独占巨大企業に対する最も厳しい訴訟に勝つためには、ジョナサン・カンターから助言を受けねばならない。法律関係の出版において、ジョナサン・カンターが独占禁止法に関する指導者として繰り返しトップにランク付けされる理由はここにある。

最も重要なポイントだと思われるのは、カンターはキャリアを通じて、今の時代に必要な政治的勇気を持っていることを示していることだ。カンターは、私たちがテクノロジー産業のプラットフォーム提供巨大企業の力を再認識する数年前にすでに、グーグルがテレビ業界を支配することに警鐘を鳴らしていた。2018年に連邦上院で証言を行った際、カンターは「集中した経済力は、集中した政治力と同様に、自由に対する大きな脅威となり得る」と強調した。また、自身の法務活動を通じて、競争を促進するために苦しい戦いを強いられている中小企業を代理してきた。今こそ、私たちのために考えてくれる、独占禁止法執行者が必要とされているのだ。

次期独占禁止法担当司法次官補(assistant attorney general for the Antitrust Division)は、チェックを受けない大企業の力こそが問題だ、その解決のためには大企業の力と対峙しなければならないと認識する人物が就任しなければならない。アメリカの歴史が示しているのは、司法省独占禁止法担当部門においては、真の反独占主義者が責任者に就くことで、アメリカの働く人々と小規模業者たちに大きな利益を与えることができるということだ。バイデン大統領がフランクリン・デラノ・ルーズヴェルト大統領の足跡を負いたいと望むならば、問題の当事者ではなく、解決の当事者でもある人を選ぶ必要がある。

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バイデンは独占禁止法担当人事でテクノロジー企業に対する厳しい姿勢を示す(Biden signals tough stance on tech with antitrust picks

クリス・ミルズ・ロドリゴ、レベッカ・クレアー筆

2021年7月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/technology/564612-biden-signals-tough-stance-on-tech-with-antitrust-picks

バイデン大統領によるジョナサン・カンターの独占禁止法担当司法次官補指名は、アメリカ最大のテクノロジー企業の解体(break up)を目指す進歩主義派の運動に支持される、予想外の一連の人事が完成したことを意味する。

カンターと共に、バイデン政権はリナ・カーンを連邦取引委員会(FTC)委員長に就任させ、ティム・ウーをホワイトハウスの補佐官に指名した。

3名の人事は、バイデンの反独占禁止法の再活性化と独占に対する挑戦の意図を示すものだ。

最近盛り上がりを見せている独占反対運動の主要な団体であるアメリカン・エコノミック・リバティーズ・プロジェクトの政策・アドヴォカシー担当部長モーガン・ハーパーは、

「今回の指名は、バイデン大統領が強力な独占禁止法執行と優れた競争政策を持つことにどれほど真剣に取り組んでいるかを示す、極めて重要な一歩である」と述べている。

ハーパーは続けて次のように述べている。「問題をよく理解しているだけでなく、経済で起きている多くの問題を解決するための政策に積極的に取り組むという実績を持つ人々を見ることは興奮することです」。

カンターは、独占禁止法専門弁護士として中小企業を代理していた時代に、長年にわたり巨大ハイテク企業を批判してきた。

イェルプやマイクロソフトを含む、グーグルの反競争的な行為を非難する企業の代理人をカンターは務めてきた。司法省が検索エンジン大手のグーグルに対して現在進行中の独占禁止法違反訴訟を抱えていることを考えると、カンターの指名は特に重要な意味を持つと考えられる。

カンターとカーンの両者の独占禁止法に関する考えを現実化するためには、訴訟が重要な道具立てということになる。

カーンが率いる連邦取引委員会は、今年6月に最初の訴訟が棄却された後、フェイスブックに対する訴訟で、訴状の修正版を提出する期限が今月末に迫っている。

この訴訟のターゲットは、フェイスブックが以前に買収したワッツアップとインスタグラムである。

訴訟以外にも、連邦取引委員会は新しい規則を発行したり、報告書を作成したり、公聴会を開いたりして、経済の様々な分野での集中に注意を喚起することが可能である。

カーンは、連邦取引委員会委員長に就任してから、今月2回の公開ミーティングを開催するなど、すでにいくつかのステップを踏んでいる。

連邦取引委員会は今週、消費者保護団体にとって重要な課題である、「修理を行う権利」に関する諸法を施行することを全会一致で決議した。

カーンは会合の席上、次のように述べた。「連邦取引委員会は、違法な修理制限を根絶するために利用できる様々な手段を保有しており、本日の政策ステイトメントは、この問題を新たな勢いで前進させることを約束するものだ」。

この政策ステイトメントは、連邦取引委員会が直面している、論争の少ない投票の一つとなった。連邦取引委員会は今年5月、この問題についての長文の報告書を発表した。この報告書に関しては、その当時に委員会に在籍していた4名の委員全員が賛成票を投じた。

しかし、消費者金融保護局の責任者に指名されたロヒット・チョプラ委員長の後任をバイデン氏が指名する時期によっては、他の施策の可決が難しくなる可能性がある。

例えば、水曜日の会合の席上、連邦取引委員会は、1995年に出された政策ステイトメントを取り消すことを3対2の賛成多数で決議された。この政策ステイトメントでは、過去の合併で法律に違反した企業に対して、今後の合併の際には連邦取引委員会の事前承認を得ることを義務付けるという慣行が廃止された。

カーンは、会議において、1995年の政策によって「追加的な負担」がもたらされ、「すでに窮地に立たされている資源を使い果たしてしまう」と主張した。共和党側の委員たちは1995年の政策ステイトメントの取り消しは「不確実性をもたらす」と主張した。

今月初めの、カーンが委員長となって開催された最初の会議において、共和党側の委員2名は同様に反対票を投じた。これは、既存の独占禁止法に違反していない「不公正な競争方法」に異議を唱えることを封じる2015年の方針声明を廃止する投票について、反対したのだ。

新たに指名された人物たちはホワイトハウスから完全な支援を受けていることが明らかだ。

バイデン大統領は今月初め、各産業分野における反競争的行為を取り締まることを目的とした包括的な大統領令を発表した。ホワイトハウスが発表したファクトシートによると、この大統領令では、司法省と連邦取引委員会が「過去の悪質な合併に異議を唱える」ことが法律で認められていることになった。

ハーヴァード大学ケネディ記念行政学大学院教授でオバマ大統領の経済アドヴァイザーを務めたジェイソン・ファーマンは「バイデン大統領は個人的に、競争に関する諸問題について大いに関心を持っている。連邦取引員会の動きはこれに同調している」と述べている。

米国の消費者が電子機器や自動車を自ら修理できるようになるが、メーカー側はこれについて引き続き反発している。連邦取引委員会は、修理する権利の投票などバイデン大統領の命令で示された提言に沿って、すでにいくつかの行動を起こしている。

カンターは、バイデンの命令を司法省で実現するために、指名プロセスを通過しなければならない。

カンターの指名は、連邦上院司法委員会独占禁止法小委員会委員長であるエイミー・クロウブッシャー連邦上院議員(ミネソタ州、民主党)やエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州、民主党)などの連邦上院民主党の主要メンバーから絶賛された。

カンターの人事承認は、民主党側の賛成票だけで進めることができるが、マイク・リー連邦上院議員(ユタ州選出、共和党)もカンターに前向きな姿勢を示している。

連邦上院独占禁止法小委員会共和党側幹部委員であるマイク・リー議員は本紙の取材に対して声明で次のように述べた。「カンター氏のビッグ・テックと対峙してきた経歴を見て、私は彼に賛成票を投じることを考えている。私は人事承認プロセスを通じて、彼の適格性についてより多く学べることを楽しみにしている」。

バイデンが指名した人々が共有している独占禁止についての考えの実現を確実にするためには連邦議会の存在も重要になる。

前述のファーマンは次のように述べた。「しかし、重要なポイントは、リナ・カーンとジョナサン・カーンが司法システムの内部に入ってしまったことだ。ほとんどの問題について、最終的には彼らが判断するのではなく、裁判官が判断することになる。従って、彼らは自分たちの考えをそのまま実現することはできない」。

連邦下院司法委員会は先月、独占禁止法を改善し、規制当局が最大規模のテクノロジー企業を攻撃しやすくすることを目的とした法案の審議を進め、本会議の審議のために上程した。

しかし、司法委員会での投票は、民主党内の分裂を浮き彫りにし、連邦下院での可決のチャンスをふいにする可能性があった。特に、穏健派の指導者たちは、いくつかの法案に懸念を表明している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 サイバー空間の安全保障ということが現在の大きな課題になっている。バイデン大統領もサイバー戦争ということに言及したほどだ。具体的には、中国やロシアからアメリカへの攻撃がサイバー空間を使って行われているということだ。インフラのシステムに侵入してその機能を停止させるということが実際に起きている。また、SNSを使って、人々の考えをコントロールするということも起きている。

 下にご紹介する論稿は、サイバー安全保障・社会資本[インフラ]安全保障庁(Cybersecurity and Infrastructure Security AgencyCISA)を国土安全保障省(Department of Homeland SecurityDHS)の下にある現状から、独立させて、大統領直属の機関にせよ、という内容のものだ。

 この最新の課題解決で直面するのが古くからある、省庁再編問題、予算や権限を減らされたくない省庁とそれらを増やしたい省庁とのせめぎ合いということになる。この解決のためには時間がかかる。課題の重要性よりも、省庁の予算や権限の方が大事、ということは世界各国で起きていることだ。アメリカのサイバー空間での安全保障でもそれが起きているということだ。

 サイバー空間の安全保障ということになれば、国土安全保障省、国防総省、連邦捜査局(FBI)、中央情報局(CIA)などが絡む。しかし、国家情報関連についてはアメリカ合衆国国家情報長官(Director of National Intelligence)が統括している。これを応用すれば、サイバー安全保障・社会資本[インフラ]安全保障庁長官がサイバー安全保障関連を統括するということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカには閣議に参加できる長官を持つサイバー安全保障省が必要だ(America deserves a Cabinet-level Department of Cybersecurity

タヤナ・ボルトン、ブライソン・ボート筆

2021年6月30日

https://thehill.com/opinion/cybersecurity/560920-america-deserves-a-cabinet-level-department-of-cybersecurity

先週、報道されたように、国土安全保障省(Department of Homeland SecurityDHS)の政治問題化についての戦いと、サイバー安全保障・社会資本[インフラ]安全保障庁Cybersecurity and Infrastructure Security AgencyCISA)の規模縮小についての戦いが活発化しているということだ。サイバースペース・ソラリウム委員会(Cyberspace Solarium Commission)をはじめ、多くの人がサイバー安全保障・社会資本安全保障庁の機能を現状維持しながら同時に、強化することを主張している。一方、サイバー安全保障を国土安全保障省から分離させ、サイバー安全保障・社会資本安全保障庁を独立させるという思い切った方法が正しい答えとなる。

現在のところ、ジェン・イースタリーのサイバー安全保障・社会資本安全保障庁長官の人事承認は保留となっている。これは、リック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)がハリス副大統領のアメリカ南部国境地帯訪問について懸念を持っているためだ。サイバー安全保障・社会資本安全保障庁長官の人事と副大統領の国境地帯訪問に何の関係があるのか?何も関係がない。しかし、サイバー安全保障・社会資本安全保障庁が国家安全保障省に属しているので、スコット議員はサイバー安全保障を人質として取り扱い、譲歩を引き出せている。クリス・クレブス元サイバー安全保障・社会資本[インフラ]安全保障庁長官も、国土安全保障省とサイバー安全保障・社会資本安全保障庁の分離を支持しているようだ。

国家サイバー安全保障強化委員会上級部長を務めたカーステン・トッドは次のように述べている。「国土安全保障省創設において、911事件の再発を防ぐために、できることは全てを行った」。その結果、国土安全保障省の役割は、大統領の警護、スーパーボウル警備、入国管理、空港警備、サイバー安全保障となった。これが最良でかつ最も効率的な構造なのだろうか?国土安全保障省は、ソーラーウィンズを介したロシアによる連邦政府機関への侵入を防いだり、コロニアル・パイプラインを保護したりするには明らかに不十分だった。

更に、サイバー安全保障・社会資本安全保障庁の限定されたリソースと少ない予算のために、職員たちは自信を持って職務を遂行することはできず、才能のある人材を集めることもできない。サイバー安全保障・社会資本安全保障庁は、予算の増額や民間企業との情報共有の調整などを主張しているが、今回の人事承認問題以外にも、サイバー安全保障・社会資本安全保障庁が政治問題に巻き込まれていることについて、対応に常に苦慮している。

サイバースペース・ソラリウム委員会とのデフコン(DEFCON 訳者註:米国防総省が規定する戦争準備の5段階のこと)に関する議論の中で、サイバー安全保障と政治問題化の重要性は、テクノロジー産業の巨大企業とのかかわりにおいて重要だということが明らかになった。オフレコ(外に漏れない)会話の中で、テクノロジー産業の巨大企業の社員たちの中には、サイバー安全保障・社会資本安全保障庁との協力には反対だ、なぜなら自分たちは国土安全保障省の政策の多くについて疑念を持ち、道徳的に間違っていると考えているからだ、と述べる人たちがいた。

国土安全保障省からサイバー安全保障・社会資本安全保障庁を再編するには多くの時間がかかり(最大で5年かかる)、国家安全保障において重要な時期と考えられる現在において、業務を停滞させることになると反対する人たちがいる。日常のハッキング問題についても対応が遅くなってしまうということだ。しかし、それならば、適切な再編のために「良いタイミング」というのはいつかと言われると、そんなタイミングは存在しない。私たちの敵は、私たちへの攻撃や私たちのシステムをテストすることについて、ひとときも手を止めることはないだろう。サイバー安全保障・社会資本安全保障庁が現在重要な仕事を行っているので再編は不可能だとするならば、これから10年間でどれほど重大なサイバー安全保障にかかわる問題が出てくるかについて考えてもらいたい。

国土安全保障省が監督するサイバー安全保障・社会資本安全保障庁が常に主導権争いに明け暮れて生産性が失われ、指導者たちは自分たちの政策目標を国土安全保障省の包括的な政策にいかにして落とし込むかを考えてばかりということになり、その結果は壊滅的なものになる。マーク・カネラスは最近次のように主張した。「サイバー安全保障・社会資本安全保障庁の知名度が上昇しつつある。これは、政治的資本として有効である。バイデンと連邦議会はサイバー安全保障・社会資本安全保障庁を独立した規制執行機関とする機会として捉えるべきだ。それによって、サイバー安全保障・社会資本安全保障庁はアメリカの重要なインフラを守るという目的を完全に達成することができる」。

サイバー安全保障・社会資本安全保障庁単独では、より大規模な、より成熟した政府機関、「重量級」の役所である、連邦捜査局(FBI)や国防総省(DoD)似た対抗できないと主張する人々がいる。しかし、大統領に直接面会も出来ず、国防総省の250分の1の予算や規模しか持たない機関のトップが、これまでどれだけ強い立場にいたかを考えて欲しい。独立した内閣機関である「サイバー安全保障省(Department of Cybersecurity)」は、大統領に直属し、連邦政府のネットワーク防御機関として、大幅な権限を持つことになる。

物理的な安全保障とサイバー安全保障を分離することについて懸念が高まっているが、これは確かに重要なことである。しかし、課題が重なっている諸機関はこの問題を解決している。国防総省や連邦捜査局との省庁間調整について、同じことを主張する人はいない。なぜなら、彼らは強力で機能的な組織であり、他の省庁との協力関係を持っているからだ。サイバー安全保障・社会資本安全保障庁はこの方法を国土安全保障省との関係にも応用することができる。サイバー安全保障・社会資本安全保障庁は計画立案に特化し、執行運用を国土安全保障省に任せるマトリックス型の組織を作ることができる。時間はかかるだろうが、関係が構築されれば、手間は大きく削減されるだろう。

最近のイースタリーの人事承認阻止、コロニアル・パイプラインやソーラーウィンズのハッキングが示しているのは、サイバー安全保障に関しては、国土安全保障省に埋もれた予算不足で経験不足な官僚組織ではなく、国家安全保障の重要な分野を防御する、強力で独立した非政治的な機関が必要であることだ。サイバー安全保障・社会資本安全保障庁には、国際的に認知された中核拠点として成長・発展するための自由が必要である。アメリカに必要なのはサイバー安全保障・社会資本安全保障庁なのだ。

タティアナ・ボルトン:Rストリート研究所サイバー安全保障・脅威担当部長。サイバースペース・ソラリウム委員会政策担当部長。※ブライソン・ボート:Rストリート研究所サイバー安全保障・脅威担当ティーム研究員。次世代型攻撃無力化プラットフォームのスタートアップ企業サイズ(SCYTHE)サイバー安全保障専門コンサルタント企業グリム(GRIMM)創設者。産業コントロールシステムの安全を訴える非営利団体ICSヴィレッジ共同創設者。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2021年10月16日に副島隆彦先生の最新刊『ミケランジェロとメディチ家の真実 隠されたヨーロッパの血の歴史』(秀和システム)が発売されました。

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ミケランジェロとメディチ家の真実 隠されたヨーロッパの血の歴史

 『ミケランジェロとメディチ家の真実』は、『隠されたヨーロッパの血の歴史 ミケランジェロとメディチ家の裏側』(2012年、KKベストセラーズ)を大幅に加筆して、出版社を変えて再発売という形になりました。本書は、ルネサンス期のイタリア、特にフィレンツェの歴史を分かりやすく解説し、ヨーロッパ近代の始まりが分かります。

 本書の主人公はミケランジェロ・ブオナローティ(Michelangelo Buonarroti、1475-1564年、88歳で死)と レオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci、1452-1519年、67歳で死)です。

 そしてフィレンツェの名家メディチ家が最隆盛したときの 当主で、ヨーロッパの国王たちよりも巨万の富を持った、「老コジモ(il Vecchio)」コジモ・デ・メディチ(Cosimo de' Medici、1389-1464年、74歳で死)も登場します。

 そして、その孫の「偉大なるロレンツォ(Lorenzo il Magnifico)」「ロレンツオ・イル・マニフィーコ」と、今も欧米世界で、公然と呼ばれ賞賛される、真に偉大で、壮麗(マグニーフィセント)だった、人類史(世界史)の中の頂点で最も輝く人物である、ロレンツォ・デ・メディチ(Lorenzo de' Medici,1449-1492年、43歳で死)です。

 このメディチ家の当主で、棟梁の 偉大なるロレンツオが、12歳のミケランジェロの天才に気づいて、自分の屋敷であるリッカルディア宮殿(パレス)に呼び寄せて、そこに結集していました、ルネッサンスを築いた、最高の頭脳の学者たちの 討論、議論を、毎回の食事の時間も含めて、ずっと、観察させたということです。 

ミケランジェロが15歳になった、1492年に、残念なことに、偉大なるロレンツオは、痛風で死去しました。大きな後ろ盾を失って、フィレンツエの ルネサンス思想運動は、以後、弾圧され圧殺されていきました。それらのすべての歴史を、この副島隆彦の本が、描き出しています。

 以下に、まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にして、是非、本書を手に取って読んでください。

(貼り付けはじめ)

  はじめに    副島隆彦

 私は、自分が60歳の還暦(かんれき)になったときヨーロッパへの巡礼(ピルグリメッジpilgrimage)の旅に出た。巡礼と言っても私には宗教(信仰)はない。ズタ袋と木の棒だけを持って、野垂れ死にする覚悟の巡礼者の気持ちを微(かす)かに味わいたかっただけだ。キリスト教への信仰にどっぷり浸つかった巡礼者たちと違って、私のは、ヨーロッパの隠された〝巨大な真実〟を掘り当てるための調査旅行である。

 ヨーロッパとは何か?

 私たち日本人にとってのヨーロッパ(Europaオイローパ。エウロパ)とは、まずイギリスであり、それからフランスである。しかし、イギリス王もフランス王も、たかが王キング(国王[ドミナトゥス]・君主[モナーク])に過ぎない。14世紀からヨーロッパ全体の皇帝[エムペラー]は常にウィーンにいた。今は小国のオーストリアのウィーンだが、ハプスブルク家が代々ヨーロッパ皇帝(神聖ローマ皇帝)であった。

 ヨーロッパ皇帝はたいていウィーンにいたのだ。西暦800年のフランク族シャルルマーニュ(カール)大帝と、961年のオットー大帝の即位は、中部ドイツのアーヘンだ。だから、イギリス、フランスごときは、ただの国王だ。たかが王様だ。

 日本人はこのことを今もよく分かっていない。

 私は2年前(2010年の冬)、トルコ(旧コンスタンティノープル)から入ってハンガリー(ブダペスト)に行き、ウィーンに行った。帝都のすばらしさを、この本の主題、主眼目としない。ただのつまらない旅行記になってしまう。

 ヨーロッパ全史にとっては、イタリアこそが重要なのだ。イタリアのフィレンツェ市こそが、すべてのヨーロッパ問題の一〇〇〇年間の中心なのだとはっきり分かったのである。フィレンツェのメディチ家(Medici、メディシン。薬、医学の語源である)こそは、ルネサンスの生みの親であり、ミケランジェロの生みの親である。苛烈(かれつ)なるルネサンス人文(じんぶん)知識人(umanista[ウマニスタ]humanist[ヒューマニスト])たちの生みの親であった。彼らは圧殺された。誰に?

 私は大きな秘密を解き明かす。 Umanesimo[ウマネジモ](人文[じんぶん]主義)=新プラトン主義(アッカデミーア・ネオプラトニニーカ)と、ルネサンス  renaissance  ,

完全に同義であった。この秘密に決然として迫る。私は、日本人として初めて、ヨーロッパとは何であったのか、の巨大な問題に答えを出す。日本人としてヨーロッパという巨大な秘密の鉄の扉を、なんとかこじ開けて、中に入ってみせる。

=====

『ミケランジェロとメディチ家の真実』◆ 目次

はじめに 3

序 章 ルネサンスとは本当は何であったのか 13

日本人が知らないルネサンスという思想運動 14

私に取りつこうとした悪霊 21

ローマ・カトリックという巨大な悪 24

ミケランジェロがなぜ西欧最大の芸術家なのかを誰も説明しない 29

「フィレンツェから近代が始まるのか、フィレンツェが近代以前の頂点なのか」問題 34

第1章 ローマ・カトリックの巨悪に対する反抗がルネサンスを生んだ 45

ローマで鳴り響いた「ルターを法王に!」という叫び 46

ミケランジェロは生涯、彫刻と絵だけを描いていたわけではない 55

近代はいつどこで始まったのか 63

キリスト教会の原罪という思想のインチキに気づいたのがルネサンス 69

ローマ・カトリック教会がウソつきの集団であることに気づいたのがルネサンス 75

ロレンツォという男の偉大さ 88

人文主義者たちを保護した老コジモの偉大さ 93

第2章 押し潰されて消滅させられたプラトン・アカデミー 97

プラトン・アカデミー 98

アッカデミア・プラトニカの基礎を築いたプラトン主義者第一世代 105

アッカデミア・プラトニカ最盛期の第二世代 115

第3章 メディチ家とは何者であったのか 141

政治都市フィレンツェの誕生 142

メディチ家の勃興 150

偉大な老コジモ 156

メディチ家の歴史 161

同時代人としてすべてを目撃したミケランジェロ 168

メディチ家の黄昏 174

第4章 フィレンツェを真ん中に据えてヨーロッパ史を見る 191

絵画に見るロレンツォの偉大さ 192

レオナルド・ダ・ヴィンチの偉さは人体解剖のほうにある 207

ニーチェとは何を体現した人か 217

11-17世紀のフィレンツェで何が起こったのか 222

第5章 イタリアが分からないとヨーロッパが分からない 231

2012年現在のイタリアに迫る金融恐慌 232

爛熟の文化的絶頂期にフィレンツェに現れたサヴォナローラ 235

「アンチ(反)・キリスト」問題 239

塩野七生(ななみ)問題 244

19世紀イタリア統一の簡単な経緯さえ知っている日本人が少ない 252

映画『イ・ヴィチェレ』で『山猫』の裏側が見えた 254

バジリカが分からない日本人 258

なぜラテラノで何度も公会議が開かれていたか 261

映画『アレクサンドリア』で描かれたヒュパティアの虐殺 264

西ローマ帝国の滅亡(476年)頃から12世紀までがまったく分かっていない日本人 266

再び、ルネサンスとは本当は何であったのか 271

サヴォナローラは何を間違っていたのか 275

あとがき 279

ミケランジェロとメディチ家の関連年表 282

=====

あとがき    副島隆彦

 私が芸術家ミケランジェロの名前を知ったのは中学2年生(14歳)の時だった。1968年だったから、あれから45年の年月が過ぎた。田舎の公立中学校の一学年全員が、九州の地方都市の繁華街の大きな映画館まで整列してゾロゾロと歩いて行った。

 『華麗なる激情』という何とも言いようのない邦題のアメリカ製の映画だった。この映画の原題は、 “The Agony and the Ecstasy(ジ・アゴニー・アンド・ジ・エクスタシー), 1965 ”だ。

 ミケランジェロと、システィナ礼拝堂の天井壁画「天地創造」の制作を命じた教皇ユリウス(ジュリア)2世の二人の友情と葛藤を描いていた。

 天井画は1512年に完成している。奇しくも丁度500年前だ。ミケランジェロが7年かけて描いた。

 私はこの映画を45年ぶりにDVDを捜し求めて見て、勉強になった。分からなかったことがたくさん分かった。

 システィナ礼拝堂の天井画を、私は35年ぶりに今年(2012年)見に行った。私にとっての巡礼(ピルグリメッジ)の旅だ。ただし私は無垢で善意の巡礼者ではない。この世の大きな悪の本体に向かって突進するための巡礼だ。自分の45年の年月をかけて、ようやく人類の歴史の全体像の理解に到達したと思った。そのことで一冊の本を書けた。よし、もうこれぐらいでいい、という気になった。

 この世に自分が暴き立てて日本国民に知らせるべき大きな真実がある限り、体が倒れる日まで私は真実の暴あばきの旅を続ける。

 KKベストセラーズ編集部の小笠原豊樹氏に「現地のフィレンツェを見るべきですよ」と誘われて行った。小笠原氏のヨーロッパ古典文学に賭けた人生があったからこそ、この本はできた。記して感謝します。

2012年10月   副島隆彦

 この本は、初版の出版から9年後にこうして復刊され甦よみがえった。著者は嬉しい。もっともっとこの本は多くの人に読まれるべきである。西洋世界の本当の真実を知りたいと思う人々の、暗黙の熱意が私の戦う気力を支えてくれる。引き続き秀和システムの編集部に移った小笠原豊樹氏が出して下さった。身に余る光栄だ。

2021年10月  副島隆彦

(貼り付け終わり)  

(終わり)

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