古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2022年04月

 古村治彦です。

私が所属している副島隆彦の学問道場定例会(講演会)が2022年5月15日に開催されます。以下に詳細を貼り付けます。

(貼り付けはじめ)

第43回副島隆彦を囲む会主催定例会

「第3次世界大戦に向かう悪魔のシナリオ」

・講師:副島隆彦(そえじまたかひこ)先生、田中進二郎(たなかしんじろう)研究員

・開催日時:2022年5月15日(日)12時開場、12時45分開演

・会場:JR「御茶ノ水」駅 全電通労働会館ホール

・会場住所:〒101-0062  東京都千代田区神田駿河台3丁目6

TEL03-3219-2211 FAX03-3219-2219

・会場までのアクセス:

JR中央・総武線 御茶ノ水駅

(聖橋口出口 徒歩5)

東京メトロ千代田線 新御茶ノ水駅

(B3出口 徒歩5)

東京メトロ丸ノ内線 淡路町駅

(A5出口 徒歩5)

都営地下鉄新宿線 小川町駅

(A7出口 徒歩5)

・当日の予定:

開場  12:00

開演  12:45

終了  17:00(予定・終了時刻は延長する可能性がございます)

【新型コロナウイルス感染拡大防止のお願い】

・発熱など体調が悪い場合には参加をお見合わせ下さい。

・マスクを着用してご参加ください。

・手洗いと手指の消毒をお願いいたします。

・ロビーやお手洗いなどでは密にならないよう、ご協力をお願いいたします。

※ウェブサイト「副島隆彦の学問道場」の「今日のぼやき」広報ページもご参照ください。
<a href="http://www.snsi.jp/tops/kouhou/2317l">http://www.snsi.jp/tops/kouhou/2317</a>

(貼り付け終わり)

※定例会出席のお申し込みはコチラ↓

<a href=" https://www.kokuchpro.com/event/4dbd8693d5c0c3a54b17e2d92c198edd/"> https://www.kokuchpro.com/event/4dbd8693d5c0c3a54b17e2d92c198edd/</a>
(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回はアメリカのネオコン内の「名家」ケーガン一族の次男フレデリック・ケーガンの論稿をご紹介する。ケーガン一族はネオコンの「名家」ということになる。まず父親のドナルド・ケーガン(Donald Kagan、1932-2021年、89歳で没)がネオコンの第一世代ということになる。父ドナルドはコーネル大学やイェール大学で教鞭を執った歴史学者(専攻はギリシア古代史)だ。ドナルドはリトアニア生まれのユダヤ人であり、1970年代まではリベラル派であったが転向した。これはネオコン第一世代の特徴である。トロツキー主義から反共主義へと転向し、対外的には対ソ強硬路線、国内的にはリベラルな政策志向というのが特徴だ。対ソ連、対ロシア強硬というのはドナルドがリトアニア出身のユダヤ人ということも影響しているだろう。リトアニアは歴史的にポーランドと近く(同君連合を形成していた時期も長かった)、その影響もあり、ロシアに対しては複雑な感情を持つ人々が多い。ネオコンについては拙著『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を是非読んでいただきたい。

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ドナルド・ケーガン

 ドナルドにはロバート・ケーガンとフレデリック・ケーガンという息子たちがいる。彼らは現在のネオコン派の論客ということになる。ブルッキング研究所研究員である長男ロバート・ケーガン(Robert Kagan、1958年-、63歳)について、私は早い段階で『アメリカが作り上げた“素晴らしき"今の世界』(ビジネス社)という著書を翻訳して日本に紹介した。ケーガンは1997年に発足した「アメリカ新世紀プロジェクト(Project for the New American Century)」というネオコン系のシンクタンクの共同設立者であり、現在も理事を務めている。

ロバート・ケーガンは2001年の911同時多発テロ事件後に軍事力でテロを抑え込み、イラクとアフガニスタンの体制転換を図ることを狙ったジョージ・W・ブッシュ政権下のアメリカとそれに批判的なヨーロッパ諸国を対比させて、「火星人と木星人」ほども違い、お互いに理解ができない存在になっているとし、ヨーロッパ諸国を非難した。これが大きな議論を呼んだ。現在のウクライナ戦争について米欧は一致して行動しているが、これはロバート・ケーガンにとっては何とも望ましい状態ということになる。

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ロバート・ケーガン

ロバート・ケーガンの配偶者ヴィクトリア・ヌーランド(Victoria Nuland、1961年-、60歳)についてはここではもう詳しく書かない。現在は国務省序列第3位の政治問題担当国務次官の地位にある。このブログの記事についているタグでヌーランドに関する記事を検索してお読みいただきたい。

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ヴィクトリア・ヌーランド

さて、今回ご紹介するのはロバートの弟フレデリックの論稿である。アメリカン・エンタープライズ研究所研究員を務めるフレデリック・ケーガン(Frederick Kagan、1970年-、52歳)もまたネオコンの論客である。フレデリックはウェストポイントにあるアメリカ陸軍士官学校の戦史担当の教授を務めた経歴を持つ。フレデリックは2010年に国際治安支援部隊(ISAF)司令官兼アフガニスタン駐留アメリカ軍司令官に任命されたデイヴィッド・ペトレイアスから政治腐敗担当の顧問に任命された。以下の論稿にあるように、NATOの対ロシア方策の強化を訴えてきた。

フレデリックの配偶者キンバリー・ケーガン(Kimberly Kagan、1972年-、50歳)は、2007年に自ら戦争研究所(Institute for the Study of War)というシンクタンクを立ち上げ、現在も所長を務めている。このシンクタンクは毎日ウクライナ戦争に関するレポートを発表し、所属している研究員たちは活発にマスコミに出て発言を行っている。キンバリーも2010年からアフガニスタン駐留アメリカ軍司令官となったペトレイアスの顧問を務めた。

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イラク訪問時のフレデリックとキンバリー

 ケーガン一族については、2022年4月8日にインターネット上で発表されたエマニュエル・トッドの『文藝春秋』に掲載された記事(有料)でも言及があり、トッドはキンバリー・ケーガンが所長を務める戦争研究所が発表している分析(これが西側マスコミの報道でも使われている)について、その内容に疑義を呈している。

 このブログでも繰り返し指摘しているように、現在の状況はネオコンにとって非常に好ましい状況となっている。しかし、それは世界にとっては大きな不幸ということになる。

(貼り付けはじめ)

ロシアと戦うウクライナをアメリカはどのように支援しているか(How the US is helping Ukraine fight Russia

ジョーダン・ウィリアムズ筆

2022年3月4日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/596824-how-the-us-is-helping-ukraine-fight-russia

アメリカは過去1年間、ウクライナ軍を支援するために10億ドル以上を供与し、ロシアによるウクライナに対する1週間にわたる戦争が続く中、更なる支援を約束している。

アメリカ政府は、最新の防衛支援(package of defensive aid)の一部として数百発のスティンガーミサイルを送ったと伝えられている。一方、ホワイトハウスは水曜日、ウクライナに対する安全保障、人道、経済支援として更に100億ドルを承認するよう議会に求めた。

しかし、戦争が進むにつれて、アメリカは支援をどのようにウクライナに届けるかについての戦略を変更しなければならないし、安全保障と人道的援助を通じてウクライナがより長期的な紛争を生き残るのを助ける方法を評価しなければならないだろう。

バイデン大統領は過去6カ月間に3度、立法府の承認なしに大統領が不測の事態に対応できる権限である大統領権限を行使している。

バイデン大統領がこの権限を最近使う機会となったのは2月26日に3億5千万ドルの安全保障支援を承認したことだ。

政治・軍事問題担当国務次官補ジェシカ・ルイスは木曜日に連邦下院軍事委員会に出席し、支援パッケージには、一人で持ち運び発射できる、ジャヴェリン対戦車ミサイルが含まれていると述べた。

アメリカン・エンタープライズ研究所のクリティカル・スレッツ・プロジェクト(Critical Threats Project)のフレデリック・ケーガン部長は、「ジャヴェリン対戦車ミサイルはおそらく、アメリカがウクライナに提供できる最もインパクトのある武器だろう。それは、ジャヴェリン対戦車ミサイルは待ち伏せや様々な状況において個人で使用でき、かなり確実にロシア戦車を倒せるからだ」と語った。

アメリカはまた、ウクライナに数百のスティンガー対空ミサイル防衛システムを送ったと伝えられている。このシステムは、地上軍が空中の標的を撃つために配備することができる。

ケーガンは、対空システムでロシアの航空機を落とすのは難しいが、「ロシアのヘリコプターにとっては絶対に悪夢になる」と述べた。

アントニー・ブリンケン米国務長官は水曜日、アメリカは二国間パートナー協定を結んでいる諸国と協力してウクライナに防衛用装備を急いで送るようにし、そうした装備はロシアと戦う部隊に届けられつつあると述べた。

しかし、ロシアが侵攻を続ける中、ウクライナに追加の装備を送ることは難しくなるだろう。

時間的な制約もあることから、ウクライナ軍は、すぐに訓練できる武器、つまり弾薬やジャヴェリン対戦車ミサイル、スティンガー対空ミサイルといった武器を必要とするだろう。

「戦略国際問題研究所(CSIS)の国際安全保障プログラムの上級アドヴァイザーであるマーク・カンシアンは、「これは、非常に短期間に集中しなければならないので、私たちが提供できる支援には大きな制約がつくことになる」と述べた。

カンシアンは「現代の戦争では弾薬が大量に消費されるため、時間が経つにつれて、より多くの弾薬が提供されると思う。それは、現代の戦争は弾薬を大量に使うが、軍隊は通常そこまでの弾薬を貯蔵していないからだ。従って、私たちは弾薬のような武器を提供することになるだろう」と述べた。

アメリカは、紛争状態によりウクライナ領空を直接飛行機で飛ぶことができないため、兵器の運搬方法も考え直さなければならない。しかし、小型の兵器システムであれば、地上輸送(ground transportation)で送ることができる。

国防総省に勤務した経験を持ち、現在は大西洋評議会に所属するリー・ショイネマンは、安全保障上の支援を届けるために使われている地上ルートの一部は、紛争から逃れようとするウクライナ人の退避にも利用されていると指摘する。

ショイネマンは「アメリカ軍ほどロジスティクスが得意な国はない。現在、連邦議会で検討されている支援計画について話す時、その支援が実際に国に届く必要があるように、私たちはこれらの重要な陸路を維持するのを助けることができる」と述べた。

バイデン政権は、過去数ヶ月の間にNATOの東側陣地を強化するためにおよそ15千人の軍隊を送ったが、紛争に直接アメリカ軍を送らないことを明確に表明している。

ウクライナ領空に飛行禁止区域を設けるというアイデアは、ワシントンでは却下された。不幸禁止区域を設定すれば、アメリカ軍がロシアの航空機を撃墜する可能性があり、事態が急速にエスカレートする懸念が高まるからだ。

複数の専門家によれば、アメリカ軍を直接紛争に投入しないが、ウクライナがロシアの侵攻に対抗するためには、まだ他の選択肢があるということだ。

カンシアンは「戦争が長引く場合、他にできることがあるはずだ。ウクライナ国外にいるウクライナ人を訓練することもできる。新しいタイプの装備の導入も考えられるが、それは戦争が何カ月も続けばの話だ」と述べた。

ウクライナの人々が戦争に対処できるように、食料、医薬品、燃料の供給などの人道支援を送ることも同様に重要だろう。

ケーガンは「ウクライナ人に武器を届けることに注力する一方で、紛争を乗り越え、ウクライナ人に必要なすべての生命維持装置を届けることにも注力する必要があると思う」と述べた。

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プーティンは世界を変えてしまった。そして、アメリカはそれに適応するか負けるかだ(Putin has changed the world — and the US must adapt or lose

フレデリック・W・ケーガン筆

2022年2月22日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/595304-putin-has-changed-the-world-and-the-us-must-adapt-or-lose

ウラジミール・プーティンは、私たちが知っている冷戦終結後の世界を根本的に変えてしまった。

冷戦後の秩序は、ロシアの通常兵器による深刻な脅威が存在しないことを前提に構築された。アメリカの軍事態勢、NATOの軍事費と配備、戦争計画、国家安全保障戦略は、30年間にわたり、ヨーロッパにおける大規模な通常兵器による紛争のリスクを想定してこなかった。

今日、ウクライナの周辺やウクライナに進出している何千台ものロシア軍の戦車は、その前提を足元から打ち砕いているのである。アメリカとNATOは、国家安全保障戦略、防衛予算、配備を根本的にそして長期的に考え直さなければならない。

プーティンはこの10年間、ロシアの通常戦力を再構築するために多額の資金を投入してきた。ロシアが経済的に困窮しているにもかかわらず、これほどまでに軍事費を投入するのは、武力のために国民の幸福を犠牲にするソ連的な意思(Soviet-like willingness)を示すものだ。このプロセスは、2008年のグルジア侵攻におけるロシア軍の不振の後に始まり、過去数年間で劇的に加速した。ロシア軍の地上部隊は、大規模な機動戦を行えるように再編成された。プーティンは全軍をより近代的な装備になるように再整備している。最も重要なことは、ロシア軍は年に数回、陸海空、核、サイバー軍を含む大規模な軍事演習を予告なしに定期的に行っていることだ。このような演習は非常にコストがかかる。また、軍隊を戦争に備えるために不可欠なものでもある。

プーティンは、ベラルーシ軍のロシア軍への事実上の編入を完了し、ロシア軍をポーランドとベラルーシの国境に移動させることによって、ロシア国境を300マイル西に静かに移動させたことになるのだ。ロシアはすでにカリーニングラード外郭(Kaliningrad exclave)にあらゆる種類の軍隊を多く集中させ、ポーランドとリトアニアの両国に脅威を与えていた。この飛び地はロシアの他の地域から孤立しているため、これらの軍隊を使ってNATOを攻撃することは考えにくく、非常に危険なことだった。カリーニングラードから攻撃するロシア軍は、ベラルーシからの迅速な増援を期待できるようになり、ポーランド、リトアニア、あるいはその両方への挟撃が考えられるようになったのである。

プーティンは、NATOの境界付近にいる部隊だけでなく、NATOを脅かすために全軍を動員する能力を実証している。彼は、ロシアの極東と中央アジア地域から何万人もの軍隊を移動させ、ポーランドとウクライナの国境に駐留させている。太平洋からベラルーシまで、これほど多くの軍隊を移動させたことは、西側諸国が受け取り、対応しなければならないメッセージである(繰り返すが、非常にコストがかかるものである)。NATOに対するロシアの通常兵器による脅威は、大きく、現実的で、永続的である。

プーティンは、今回の危機における要求の中で、NATOに別のメッセージを送っているが、その中でウクライナに言及しているのは一部だけだ。プーティンは、冷戦終結後にNATOに加盟した国々、つまり東欧とバルカン半島から軍事インフラをすべて撤退させるようNATOに要求している。NATOの拡大凍結は、少なくとも旧ソ連諸国全体に対する宗主権(suzerainty)という大きな要求に包含されている。彼はまだバルト三国に同盟からの脱退を要求していないが、彼の動きをけん制しなければ、そこまで要求をエスカレートさせる可能性がある。

プーティンの最終目的について言えば、ヒトラーについて推測する必要があったのと同じように、疑うべくもないものだ。プーティンは、NATOを破壊し、アメリカをヨーロッパから追い出し、ソ連の勢力圏を再確立するつもりだと、いつ私たちに示唆している。

冷戦後のNATO加盟国に関するプーティンの要求は、彼がその勢力圏を旧ソ連の国境にとどまるものとは考えていないことを強く示唆している。彼は、NATOが現在東側加盟諸国に保有している軍に真剣に挑戦し、場合によっては打ち負かすことができる軍を構築するために膨大な資金を投入してきた。

ウクライナで何が起ころうとも、この脅威を真剣に受け止め、それが何事もなく過ぎ去ってしまうことはないと理解するための時は、遅きに失した感は否めないが、それを理解する時とはまさに今だ。

アメリカは国家安全保障と国家防衛に関するこれまでの戦略草案を破り捨てることから始めるべきだ。中国は1つの脅威であるが、ロシアは別の脅威である。この2つの脅威は大きく異なる課題を提起し、それらに対応するためには異なる要件を課すことになる。

プーティンは従来の機械化部隊を再現し、大規模に使用する意思を示した。そうした状況下で、アメリカは、現在の文書や予算が提案するような、従来の機械化戦争に必要な戦力から太平洋での戦闘に不可欠な航空・海軍戦力に転換することはできないということが明らかになった。アメリカ軍は、ロシアのような「レガシー」軍隊による大規模な攻撃を打ち負かす能力の再建を犠牲にして、中国が提起している課題である近代化に注力することもできないのである。

アメリカはまた、ヨーロッパでの迅速で前例のない攻撃に備えて、軍の態勢を再構築しなければならない。2000年代に始まった、ほとんどのアメリカ軍機械化部隊のヨーロッパからアメリカへの撤退は常に誤りであった。アメリカとヨーロッパの間には大西洋が存在し、起こりうる紛争を抑止することが難しくなった。現在の状況下でその誤りを続けることは許しがたいことである。アメリカは、NATOに対するロシアの攻撃を事実上予告なしに阻止するために必要な規模で、ヨーロッパに大規模な部隊を恒久的に再配置する必要がある。世界最先端の防空・防波堤システムを突破するために必要なステルス機やその他の航空・海事資産をヨーロッパにおいて維持しなければならない。

同時に、アジアでの前方展開を強化し、中国の侵略を抑止し、必要なら打ち負かすために緊急に必要な空・海・陸軍を増強し、中国の技術的進歩に対応し、それを上回るよう近代化する必要がある。さらに、アメリカは中東、アフリカ、南北アメリカ大陸に依然として重要な国家安全保障上の利益を有している。アメリカは、冷戦終結後初めて、広く分離した複数の戦域で同時に戦い、勝利する能力を再構築する必要に迫られているのだ。

当然のことだが、それはアメリカだけではできない。NATOは軍事費を大幅に増やし、東側諸国の防衛のために通常戦力を再配置しなければならない。NATOは、東方からの主要な通常兵器の脅威を阻止し、防衛するという本来の目的を再認識しなければならない。プーティンが冷戦を復活させ、鉄のカーテンを再び打ち立てようとしていることを認識する必要がある。

これらの提案は、費用がかかり、不人気なものになるだろう。アメリカ人もヨーロッパ人も、どこでもいいからとにかく戦いたいとは思っていない。軍拡競争も、戦争も、冷戦も、熱戦も好んでいる訳ではないのだ。

しかし、私たちは現実を直視しなければならない。戦争をするのは1人であり、2人ではない。プーティンは、自分が望むものを得るためには戦うことを避けるようなことはしないと示した。彼が望むものは、70年以上にわたってヨーロッパの平和を守ってきた西側同盟の破壊である。私たちは、それを守るために戦う意志を持たなければならない。そして、そのための代償を払う意志も持たなければならない。

※フレデリック・W・ケーガン:「クリティカル・スレッツ・プロジェクト」の部長、ワシントンにあるアメリカン・エンタープライズ研究所の常勤研究員を務めている。また、戦争研究所のロシア専門ティームに助言を行っている。

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NATOは今すぐ東側陣地を強化せねばならない(NATO must reinforce its Eastern flank right now

フレデリック・ケーガン、ジョージ・バロス筆

2022年1月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/591008-nato-must-reinforce-its-eastern-flank-right-now

現在ベラルーシに進出しているロシアの機械化部隊は、ウクライナだけでなく、NATOに対しても直接的に脅威を与えている。アメリカと同盟諸国は、ロシアによるウクライナ侵攻の明白な準備に注目し、モスクワを抑止しようとするのは当然の動きだ。ベラルーシ南東部の陣地に移動するロシア軍は侵略の準備をしている可能性があり、西側諸国はその文脈で対応する必要がある。しかし、ロシア軍はワルシャワから約100マイル以内のポーランド国境やその付近、リトアニア国境付近にも陣地を構えている。 このような場所への配備は、ウクライナ侵攻計画の一環としてはほとんど意味をなさない。しかし、ポーランドに対するロシアの脅威を劇的に増大させ、NATOがバルト諸国を防衛する能力をさらに低下させることになる。アメリカと西ヨーロッパの同盟諸国は、ロシアがウクライナを攻撃するか否かにかかわらず、同盟に対するこの脅威に対応しなければならない。

7個から10個の機械化大隊(2個から3個の旅団に相当、兵力は4200人から9000人)がロシア極東からベラルーシに移動している。また、ロシアの最新鋭防空システムS-400の2個大隊と最新鋭戦闘機Su-35 12機もベラルーシに配備された。ロシア国防省は、これらの部隊は2月中旬までベラルーシで演習を行うと発表している。演習は主にブレスト(ポーランド国境)、バラノビチ(ブレストの北東)、グロドノ(リトアニアとポーランド国境付近)、ミンスク付近の訓練場で行われるとされる。これらの地域はウクライナ侵攻に最適な場所ではないが、バラノビチはロシア軍が攻撃の準備をするのに適した後方基地である。しかし、ベラルーシ南東部にはすでにロシア軍の一部が出現しており、発表された訓練地から遠く離れ、ウクライナ侵攻に理想的な立地の1つとなっている。つまり、ロシア新軍はウクライナとNATOの両方を同時に脅かしている。

ロシアのベラルーシへの進出は、突発的なもの(spur-of-the-moment)でも、日和見的なもの(opportunistic)でもない。プーティンが何年も前から進めてきた長期計画の一部であり、だからこそ我々は何カ月も前から予測してきた。プーティンは少なくとも2015年から、ベラルーシに軍事空軍基地を開設する意向を示してきた。ロシアは、ベラルーシとの合同演習の強化を通じて、少なくとも2020年9月からベラルーシに戦力を投射する準備を進めてきた。また、ロシア軍は、燃料や弾薬などの必需品をベラルーシの近くで供給するなど、ロシア軍をベラルーシに投入するために必要な兵站や指揮統制のリハーサルを行ってきた。

ここ数年、ベラルーシで演習するロシアの地上軍は、プーティンがS-300防空システムとロシア航空機を常駐させてベラルーシで共同航空パトロールを行い、2021年8月にベラルーシに共同訓練センター(航空基地)を開設したが、いつもロシアに帰っている。今ベラルーシに移動している部隊も、はっきり言って帰国するかもしれない。しかし、プーティンがベラルーシに軍隊を常駐させることに対するベラルーシの政治的制約をついに克服したため、彼らは今回留まるかもしれないし、急速に他の軍隊に取って代わられるかもしれない。

プーティンとベラルーシのアレキサンドル・ルカシェンコ大統領は、ベラルーシがロシアとの連合国家の一部となるための条件を20年以上にわたって交渉してきた。ルカシェンコ大統領は、モスクワからの独立の名残を保とうと、このプロセスを引き延ばしてきた。しかし、2021年11月、ルカシェンコはついに、ロシアとベラルーシの共同軍事ドクトリンの改訂を含む、これまで引き延ばしてきた協定の全て、あるいはほとんどを批准した。また、2021年12月末には新憲法草案を発表し、今年2月に採択される可能性が高い。新憲法は、ベラルーシの中立を約束し、ベラルーシに核兵器を駐留させることを禁止する2つの重要な条項を現行憲法から削除している。ベラルーシのロシアとの政治的・法的統合は、ここ数カ月で急速に完了に向かって進み、ベラルーシにロシア軍を恒久的に配備するための条件が整った。

こうした活動は全て、ウクライナへの侵攻を脅かすロシアの積極的な準備よりずっと前に、ロシアが長年にわたって行ってきた入念な計画と努力の結晶である。プーティンが単にチャンスを掴むだけでなく、長期にわたって首尾一貫した戦略を構想し、追求する能力を備えていることを示すもう一つの例である。そして、プーティンは常に、ウクライナだけでなくNATOを脅かすことを意図している。

ベラルーシにロシア軍が地上軍を展開することによるポーランドとバルト三国への脅威は、私たちが他の場所で論じたように、非常に深刻だ。NATOはこの脅威に対して緊急に対応しなければならない。アメリカ、カナダ、西ヨーロッパのパートナー諸国は、ポーランド北東部と東部への機械化部隊の配備を直ちに開始し、それらの部隊を無期限に維持する準備をしなければならない。

NATOがロシアのウクライナ侵攻に軍事的に対応しない場合、部隊と戦闘車両の移動だけでは、NATO最東端の加盟国に同盟が引き続き防衛する意思と能力があることを安心させるには十分ではないだろう。

また、今ポーランドに軍を配備することは、軍事的脅威に対するアメリカの軍事的対応を考慮する意思を示すことで、プーティンのウクライナでの冒険主義を抑止するのに役立つ。また、プーティンがウクライナを攻撃すればコストを負わせると脅すだけでなく、危機を長引かせることでプーティンに実際のコストを負わせることで、これまでのアメリカとNATOの危機対応のもう1つの弱点を緩和することができるだろう。

2022年1月19日のバイデン大統領の発言を受けて、具体的な行動が急がれる。NATOの東側陣地を強化することは、プーティンの冒険主義を止め、NATOとウクライナを守るには十分ではないが、必要な次のステップとなる。

※フレデリック・W・ケーガン:ワシントンにあるアメリカン・エンタープライズ研究所クリティカル・スレッツ・プロジェクト部長兼常勤研究員。戦争研究所(インスティテュート・フォ・ザ・スタディ・オブ・ウォー、ISW)においてロシア担当ティームに助言をしている。

※ジョージ・バロス:戦争研究所ロシア・ウクライナ研究の研究員。戦争研究所に参加する前、連邦下院外交委員会の委員に対するウクライナとロシア専門補佐官として連邦下院に勤務した。ツイッター:@georgewbarros.

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ウクライナで何が起きているのか、なぜそれがアメリカと同盟諸国にとって重要なのか(What's at risk in Ukraine, and why it matters to America and its allies

フレデリック・ケーガン

2021年12月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/national-security/584646-whats-at-risk-in-ukraine-and-why-it-matters-to-america-and-its

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ウクライナ国境付近に侵攻軍を集結させたが、それを使うつもりはさらさらないようだ。しかし、プーティンはウクライナ国境付近に侵攻軍を集結させている。バイデン政権とNATOは、プーティンを抑止するために必要な声明を出し、いくつかの軍事行動を起こしたが、西側諸国のコミットメントは依然として曖昧なままである。

そうであってはならない。アメリカ人とヨーロッパ人は、ウクライナの独立が、私たちにとってもウクライナにとっても極めて重要であることを理解し、ウクライナの独立が保持されるように行動しなければならない。それがプーティンを抑止する最良の方法でもある。

1991年のソ連崩壊後、ウクライナとベラルーシが独立したことで、ロシアの国境は数百マイル東に移動し、ロシアと中欧の間に事実上の緩衝地帯(a de facto buffer)が形成された。アメリカとヨーロッパはこの緩衝地帯を頼りにして軍備を大幅に縮小してきた。

しかし、ロシアがウクライナを占領する場合、ポーランドとルーマニアの国境にロシアの深刻な通常兵器の脅威が再び出現し、ヨーロッパの戦略的状況は一変する。NATO諸国は再動員され、これらの国境に大規模な軍隊を配備する必要がある。黒海はロシアの湖と化し(Black Sea into a Russian lake)、トルコ(問題はあるにせよ、依然としてNATOの同盟国である)への圧力が高まるだろう。アメリカ、ヨーロッパ連合、NATONATOの東側諸国を防衛する意思に重大な疑問を投げかけることになる。ウクライナの4500万の人口と重工業基盤(heavy industrial base)がロシアに加わることになる。そして、中国や他の略奪者たちに西側の弱さを示す壊滅的なシグナルを送ることになる。特に、アメリカがアフガニスタンから不名誉な撤退をした後ではそうである。

プーティンのウクライナに対する脅威は、ベラルーシを着実に吸収していることを背景にしている。プーティンは既にロシア軍をベラルーシに戻し、更に多くのロシア軍を送り込もうとしている。ポーランドとリトアニアは、NATOのバルト諸国と他の同盟諸国を結ぶ唯一の地上連絡線である重要なスウォーキー回廊(Suwalki Corridor)の近くで、ロシアの機械化部隊に直面することになりそうだ。更にロシアがウクライナを支配すれば、ポーランドやルーマニアにさえも存亡の危機が訪れるだろう。このような危機には、新たな鉄のカーテン(Iron Curtain)となり得る場所に、アメリカとヨーロッパの地上・空軍を大規模に展開することでしか対応できないだろう。

欧米諸国がウクライナ防衛に対して曖昧な態度を取らざるを得ないのは、ウクライナの独立国家としての存在意義に対する混乱が一因である。ロシアのプロパガンダや専門家の一部が、ウクライナがロシアから独立していることの「社会文化的」根拠、少なくともウクライナ東部がウクライナ一国に含まれることの「社会文化的」根拠を疑問視している。しかし、主権国家はその社会文化的独自性(socio-cultural uniqueness)を証明する義務はない。国際社会と国連に無条件で承認されれば、いかなる国家も、それがどんなに小さく、弱く、文化的に他の国家と似ていても、他の国家と同じ主権的権利を持つ。

ウクライナは30年前に現在の国境(クリミアと東部を含む)内において独立国家として、当時独立したばかりのロシア連邦にも承認されたのである。ドイツがフランスからアルザスやロレーヌの返還を要求したり、チェコ、オーストリア、ポーランドに住むドイツ系住民を守る権利を主張したりしたのと同様、ロシアがウクライナの一部の返還を主張する法的根拠はない。他国の領土に対するロシアの特別な権利の主張に同意することは、全ての国の主権を損なう。それは、世界をホッブズ的な状態に戻そうとする国際的な捕食者(international predators)を招き入れることになる。

ウクライナ国境付近へのロシアの配備は防衛的な性格のものではなく、侵略の恐れがある。ウクライナはロシアにとって軍事的な脅威ではない。プーティンは、ウクライナ政府が自国の領土であるロシア占領下のドンバス地域への侵攻を準備していると誤った主張をしている。しかし、欧米の議論では、キエフがドンバス奪還に動いたとしても、ロシアには対応する権利があるという、同様に誤った根拠を受け入れることが多い。この問題におけるロシアの想定される権利は、2014年にロシアがクリミアを掌握・併合して始めた紛争を凍結し、その後ドンバスへの暗号侵攻と占領を開始したミンスクII協定に由来している。プーティンは、ウクライナが奪ったものを取り戻すのを阻止する権利を主張している。なぜ西側諸国はその主張を尊重しなければならないのか?

状況は実にシンプルだ。ロシアは2014年にウクライナに侵攻し、その一部を併合し、代理人を通じて別の一部を占領し、そして今、残りの国土に対して更なる侵略をすると脅している。

本当に困ったことに、西側諸国はこの戦いに対して気迫がなくかなり困難な状況にある。

プーティンはウクライナの近くに十分な戦力を集めており、ほとんど予告なしに侵攻を開始することができる。アメリカ地上軍の大半がヨーロッパから撤退し、ヨーロッパ自体の軍事力が低下しているため、ロシアの侵攻を阻止するために西側諸国の機械化部隊を展開することは不可能である。そのため、NATOはウクライナの持つ防衛力、あるいはNATOが共有する意思のある防衛力に主として依存することになる。NATOの航空戦力やミサイル戦力を利用するにしても、ロシアの高性能な防空システムには問題がある。NATOは、ロシアの攻撃を阻止するために、艦船や潜水艦発射のミサイルとともに、多くのステルス航空機を配備しなければならないだろう。

航空戦力だけではその攻勢を止めることはできないだろうが、ロシアの軍隊に多大な犠牲を強いることができる。そこに、そもそも攻撃を抑止するための鍵がある。

ロシアは貧しい国で、実のところ、経済が機能していない。泥棒経済(kleptocracy)が確立されている。ロシアのGDPはアメリカやヨーロッパの10分の1以下、NATO諸国合計の20分の1以下である。西側諸国は、戦闘で失われた高価な兵器システムも交換する余裕があるが、ロシアにはない。プーティンはそれを知っている。

ロシアの軍事ドクトリンは、軍隊が動員されたNATOに対してロシアは通常戦争で勝てないという前提のもとに成り立っている。プーティンは、NATOがウクライナ防衛のためにそのような戦争をしないだろうと考えているが、このことは彼が侵略を考える上で重要な要素となる。この信念を、NATOは本当に戦ってくれるという確信に置き換えることが、プーティンを抑止する鍵である。

バイデン政権とNATOは、この方向でいくつかの重要なステップを踏んだが、さらに多くのステップを踏まなければならない。キエフにミンスク協定を守らせる必要性について、侵略の脅威を感じながら話すのは止めなければならない。このような状況でウクライナ国内の問題解決について議論することはないのだということをプーティンに明確に伝えなければならない。プーティンに侵略の代償を示すために、航空機を配備し、艦船を配備し続けなければならない。そして、プーティンが攻めてきた時にウクライナを守れるかどうかの不安を払拭しなければならない。

プーティンは、こうした行動はすべて挑発(provocations)だと主張するだろう。それは侵略者や独裁者がよく使う言葉だ。しかし、NATOはロシアと同様に、自国の国境と領海内に軍を展開する権利を持っており、脅威を受けているパートナー国に防衛兵器を提供したり売却したりする権利も持っている。これらの活動は、攻撃を意図し、優位性を失うことを恐れる人間にとってのみ憂慮すべきものである。もし、それを行うことでロシアの侵攻を促すのであれば、ロシアの侵攻はすでに始まっているとも言えるのだ。

西側諸国は、侵略を「誘発する(provoke)」ことを恐れるよりも、ウクライナとロシアと中欧の間の重要な緩衝地帯(vital buffer)を失うことを心配することにもっとエネルギーを使わなければならない。国際システムの中核をなす原則を失い、世界が混沌に陥ることを心配しなければならない。

それらは今日のウクライナにおける重要な問題である。西側が戦う準備をしなければならない利害関係に関わる問題だ。

※フレデリック・ケーガン:ワシトンDCにあるアメリカン・エンタープライズ研究所クリティカル・スレッツ・プロジェクト部長兼研究員。『勝利の選択(Choosing Victory)』の著者でイラクにおける香華的軍事戦略の立案者となった。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ロシア黒海艦隊の旗艦(flagship)である誘導巡行ミサイル巡洋艦(guided missile cruiser)「モスクワ(Moskva)」が沈没した。ウクライナ軍が発射した2発の対艦ミサイル「ネプチューン」が命中し、船内で火災が発生し、それが搭載していた弾薬などに引火して爆発し沈没したと見られている。モスクワは乗組員500名、全長約180メートル、排水量1万2000トンで、これほどの大きな戦艦が攻撃を受けて沈没したのはアルゼンチンとイギリスの間で行われたフォークランド紛争以来のことだそうだ。「モスクワ」は旧ソ連時代の1983年に就役した艦船であり、そのシステムが時代遅れであったということは指摘されている。

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モスクワ

 ウクライナが使用した「ネプチューン」ミサイルは旧ソ連時代のミサイルが基盤となっているそうだ。2021年に配備されたもので重量は870キログラム、試験では100キロメートル先の目標に命中させることに成功したということだ。どれほどの飛行距離があるのかは不明だ。「ネプチューン」は、排水量5000トンまでの水上艦艇を撃破できるように設計されているということであり、「モスクワ」の排水量1万2000トンはその対象外であるが、今回2発命中したということで致命的なダメージを与えることに成功したということが考えられる。

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ネプチューンミサイル

 専門家たちは「モスクワ」の防空システムの結果とダメージコントロールの杜撰さを指摘している。簡単に言えば「守りに弱かった」という点を指摘している。旧ソ連型の戦艦は、攻撃は強いが防御は弱いということがあるようだ。旧ソ連が開発したミサイルを基盤としたミサイルでロシアの軍艦が沈没させられるとは何とも皮肉な話である。

 今回沈没した「モスクワ」の任務については、アメリカ国防総省は「ロシア黒海艦隊の防空を担っていた」と発表しているが、専門家たちは海上からのウクライナ国内の物流センターや飛行場への攻撃を担当していたとしている。防空を担当していたということであれば、その要が沈没させられるということになると、ロシア黒海艦隊はより安全な場所に退避し、防空システムの再構築を図らねばならず、その活動は停滞することになるだろう。

 今回の「モスクワ」沈没によって「水上艦の脆弱性」が明らかになった。アメリカが誇るイージスシステムであればネプチューンミサイルからの攻撃を退けることができるようだが、中国が持つ対艦ミサイルの性能はネプチューンミサイルを凌駕するものであるようで、米中間で衝突が起きた場合にはアメリカ艦隊はその射程外で活動をすることになると指摘している専門家もいる。今回の「モスクワ」沈没は米中両国にとって教訓となる。

 ロシア軍がウクライナ東部と南部に力を注ぐという転換を行っている中で、ロシア黒海艦隊の活動が停滞するということはロシアにとっては大きな痛手ということになるだろう。戦争は長引き、双方の犠牲者がどんどん増えていくということになりそうだ。

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「モスクワ」沈没:ロシア艦隊の誇りに何が実際に起きたのか?(Moskva sinking: What really happened to the pride of Russia's fleet?

ブラッド・レンドン筆

2022年4月15日
CNN

https://edition.cnn.com/2022/04/15/europe/russia-guided-missile-cruiser-moskva-sinks-intl-hnk-ml/index.html

CNN発。ロシアの誘導巡行ミサイル巡洋艦「モスクワ」が今朝、黒海洋上で最後の息を引き取った。

ウクライナ当局はウクライナ軍の複数のミサイルが「モスクワ」に命中し、それが原因となって沈没が発生したと主張している。ロシア当局は沈没の原因は火災であると主張している。金曜日、アメリカ政府はウクライナ側の説明を支持した。アメリカ国防総省のある高官はウクライナ軍のネプチューンミサイル2発が黒海洋上のロシアの軍艦「モスクワ」に命中したと発言した。

「モスクワ」がウクライナのミサイル攻撃によって国会の底に横たわったのか、ロシアの無能、不運、もしくはそれらの3つの要素(ミサイルを含む)が重なり合ったのか、議論が続いている。しかし、確かなことは、これまでの40年間において戦時における最大の選管の損失によって、モスクワだけでなく、世界中の軍事プランナーにとって厄介な問題を提起されたということだ。

●沈没の原因は何だったのか?(What caused the sinking?

木曜日、黒海のウクライナ沖で巡洋艦「モスクワ」が沈没した。ウクライナ当局は、モスクワに対艦巡航ミサイル(anti-ship cruise missiles)を命中させ、これで火災が発生し。弾薬に引火して爆発したと発表している。

ロシア当局は独自の見解を発表している。ロシア国防省は、原因不明の火災により、艦内に保管されていた弾薬が爆発し、その結果、「モスクワ」は構造的な損傷を受けたと発表している。ロシア国防省は、原因不明の火災が発生し、その爆発で「モスクワ」は構造上の損傷を受け、近くの港にえい航される途中、荒波の中で沈没したと発表している。

ロシア国営タス通信が匿名の情報源を引用して報じたところによると、「モスクワ」の乗組員はクリミアのセヴァストポリ港に移送されたということだ。タス通信は、戦艦から救出された乗組員の数について、追加の詳細を伝えていない。

「モスクワ」は、対艦・対空ミサイルのほか、魚雷(torpedoes)、艦砲(naval guns)、ミサイル防衛システム(missile defense system)で武装しており、大量の爆発物を搭載していたことになる。

アメリカ情報当局の複数の高官たちは、沈没時に「モスクワ」が核兵器を積んでいたとは考えていないと述べた。アメリカ情報当局の最新情報調査分析の内容を知る2名の高官はCNNの取材に対してそのように語った。

●この大きさの船が最後に戦争で失われたのはいつだったか?(When was the last time a ship of this size was lost in war?

アルゼンチンの巡洋艦「ジェネラル・ベルグラノ」がイギリスの原子力潜水艦HMSコンクアラーに魚雷を撃たれ沈没したのが1982年5月2日のことだった。

「ジェネラル・ベルグラノ」と「モスクワ」は同じようなサイズである、それぞれが全長600フィート(182メートル)、排水量1万2000トンだ。乗組員数は異なり、「ジェネラル・ベルグラノ」は1100名と、「モスクワ」の500名の2倍以上であった。

ロシア当局は「モスクワ」の火災とそれに続く沈没による死傷者数を公表していない。「ジェネラル・ベルグラノ」が沈没した際の乗組員の死者数は323名だった。

●「モスクワ」の沈没はロシアの戦争努力にとって何を意味するか?(What does the loss of the Moskva mean for the Russian war effort?

最も大きな影響は、ロシアの士気(morale)に関わることになるだろう。ロシアの黒海艦隊の旗艦(flagship)であるモスクワは、ウクライナ戦争で最も目に見える資産の1つだった。モスクワはロシア国内の戦争に関するニュースを慎重に管理しているが、このような大型艦が突然いなくなったことを隠蔽するのは難しいだろう。

そして、その喪失は、敵の行動によるものであれ、事故によるものであれ、ロシアの戦争遂行能力に対する疑念を持たせることになる。

戦争研究所のアナリスト、メイソン・クラーク、カテリーナ・ステパネンコ、ジョージ・バロスは、「モスクワの沈没に関するロシア当局とウクライナ当局双方の説明も、ロシア軍の持つ欠陥の可能性を示している。防空能力の低下、もしくは黒海艦隊の旗艦の安全手順と損害管理の信じられないほどいい加減さがあった可能性を示しいている」と毎日発表しているウクライナ戦争に関する報告書に書いている。

元アメリカ海軍大佐のカール・シュスターは、疑惑はクレムリンにまで及んでいると述べた。

シュスター元大佐は「ロシアのウラジミール・プーティン大統領がロシア海軍の能力、士気、プロ意識(professionalism)を回復させると宣言してから10年経過したが、ロシア海軍の能力について疑問が生じている」と発言している。

シュスターは、ロシア軍が陸上でも失敗していることを指摘し、「プーティンはロシアのどの軍事分野に対しても、約束を守ることができなかったようだ」と述べた。

しかし、アナリストたちの間で、「モスクワ」沈没がロシアのウクライナ侵攻に与える衝撃について見解が分かれている。

戦争研究所のアナリストたちは、「モスクワ」は主にウクライナの物流センターや飛行場への巡航ミサイル攻撃に使用されていたとし、衝撃は比較的小さいと見ている。アナリストたちはロシア軍には同等の能力を持つ陸上システムと攻撃機があると述べている。

しかし、アナリストたちは、もし本当にウクライナのミサイルが原因で沈没したのであれば、ロシア海軍は作戦を見直す必要があり、ウクライナ領土から遠く離れた場所に艦船を移動させ、防空網を再構築する可能性があるとも述べた。

ワシントンで、国防総省のジョン・カービー報道官が、「モスクワ」の主要任務は黒海におけるロシア軍に対する防空だったと述べた。

カービー報道官は記者団に対し、「確かに近い将来、黒海におけるロシアの防空能力に影響を与えるだろう」と述べた。

●中国にとっての教訓?(A lesson for China?

複数のアナリストが、今回の「モスクワ」沈没は、ウクライナのミサイルによる軍艦攻撃によるものだと確認されれば、東アジア地域でこの事例が慎重に研究されることになる、と述べている。

特に、北京の共産党が自国の領土と主張する民主政体が保持されている島である台湾との軍事衝突の可能性について、何らかの示唆を与えるのではないかと複数のアナリストが分析している。北京は台湾を支配するために武力を行使することを否定しておらず、このことが台湾に防衛兵器を提供することを約束しているアメリカとの間に緊張を生んでいる。

ランド研究所上級国際防衛研究員のティモシー・ヒースは、ウクライナによる「モスクワ」への攻撃は、軍事衝突の可能性において「水上艦の脆弱性(the vulnerability of surface ships)」を中国とアメリカの双方に強調することになるだろうと述べた。

ヒースは、「軍事衝突というシナリオが実際のものとなった場合、アメリカ海軍は水上艦を、北京が中国本土に蓄積している対艦ミサイルの射程外に置いておきたいだろう」と語った。

一方、中国は、台湾がウクライナの主張する「モスクワ」を攻撃したものと同様の安価な対艦ミサイルを入手していることを認識しているだろうとヒースや他のアナリストたちは指摘している。

そのため、ヒースは「中国が台湾に侵攻するというシナリオは、極めてリスクの高いミッションであることに変わりはない」と指摘している。

しかし、「モスクワ」の沈没と東アジアの状況との関連性は限定的だとするアナリストもいる。

元アメリカ海軍潜水艦司令官で、現在は新アメリカ安全保障センターのアナリストを務めるトーマス・シュガートは、両者の状況にはあまりにも多くの相違点があると指摘している。

シュガーとは「モスクワ」の防空システムは、アメリカ海軍の駆逐艦に搭載されているより最新のイージスシステムとは同程度のシステムではなく、ウクライナの対艦ミサイルは中国のものには及ばないと述べた。

また、シュガートは「モスクワ」のようなソ連時代の軍艦は典型的に、「攻撃的な能力の高さは有名であるが、防御システムやダメージコントロールの点ではさっぱりだ」と述べた。

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ロシアによるウクライナ侵攻が開始されたもうすぐ2カ月が経過しようとしている。西側諸国はロシアに対する経済制裁を実施しているが、その効果について疑問が出ている。そもそもヨーロッパ諸国、特にドイツはロシアからのエネルギーに依存しており、輸入代金を支払っている。季節が春になり、暖房用のエネルギー需要は少なくなっていくだろうが、ヨーロッパ諸国はロシア以外の輸入エネルギー元を手当てしなければならない。

 しかし、BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)をはじめとして、対ロシア制裁に参加していない国々も多い。ロシアとしてはこうした国々に割引でエネルギーを供給していけば(価格上昇前の水準の金額でもこれらの国々にはありがたいことになる)、経済に対する致命的なダメージは避けられることになる。実物資源を持っていることはやはり大きなことだ。

 ロシアのルーブルは侵攻前の住準に戻りつつあり、2022年のエネルギー収入は約40兆円が見込まれている。その多くはヨーロッパのロシアからのエネルギー輸入代金ということになる。ロシアからエネルギーを輸入しておいて代金は制裁だから支払わないという厚顔無恥は、歴史的これ以上の狡猾なことをやってのけてきたヨーロッパ諸国でもいくらなんでもできない。

ヨーロッパ諸国がロシアからのエネルギー輸入を完全に遮断しない限り、「ヨーロッパからの資金がロシアの戦費となる」という事実は変わらない。ヨーロッパ諸国はウクライナを応援しながら、ロシアにも戦費を提供するという何ともふざけた状況になっている。正義の為ならエネルギー輸入を完全に遮断したらよい。ロシアに経済戦争を仕掛けてロシア経済を破壊すると述べたおっちょこちょいのヨーロッパの政治家もいたが、自分たちがどのような状況に置かれているのか分からなかったようだ。

 日本もアメリカの属国、西側諸国という立場から対ロシア制裁という正義にお付き合いしなければならない。ウクライナ戦争によって物価が上昇しており、さらに追い打ちをかけて今年の4月から値上げラッシュだ。日本で上がらないのは人間の労働に対する対価だけだ。戦争は早く止めてもらいたい。しかし、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は妥協をする意図を持たず、戦争の更なるエスカレーションを求めている。これでは戦争はこれからも続いていくという悲観的な先行きしか持つことができない。新型コロナウイルス感染拡大に何とか対処しつつあり、世界的に良い方向に進んでいたのに、という何ともやりきれない状況だ。

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●「ロシア、制裁の迂回に成功か-エネルギー輸出で経済下支え」

Alan CrawfordJulian Lee

202248 3:46 JST

ルーブルは戦争前の水準回復、「制裁は経済をまひさせるに至らず」

ロシア産ソコル原油の来月分は完売、今年のエネルギー輸出3割増も

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-04-07/R9Z8M0T1UM1001

-ルーブルは戦争前の水準回復、「制裁は経済をまひさせるに至らず」

-ロシア産ソコル原油の来月分は完売、今年のエネルギー輸出3割増も

ロシアのウクライナ侵攻を巡り、欧州は米国と歩調を合わせて追加制裁を打ち出す構えだ。だが、ロシアが経済を支える方法を見いだしつつある兆しが多く表れている。

 ロシア極東産ソコル原油の来月出荷分は完売。中国の数社は3月にロシア産石炭を人民元で購入した。ロシアから欧州に輸出されるガスの量は、侵攻以降に増加した。このいずれもが、制裁の対象とはなっていない。

 ブルームバーグ・エコノミクスはロシアがエネルギー輸出で今年上げる収入を約3200億ドル(約40兆円)と予想、前年から3割強増加すると見込む。ロシア・ルーブルはドルに対して戦争前の水準をすでに回復している。

ロシアの原油生産は今月減少しているが、エネルギー輸出で稼ぎ続け通貨を支えている状況は、西側の首脳をいら立たせている。ロシアの孤立は深まり、ロシア軍がウクライナの一部地域から撤退しているとしても、ロシア経済の底堅さはプーチン大統領にとって国内向けに勝利をアピールできる材料になる。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェローで、欧州中央銀行(ECB)の政策委員だったパトリック・ホノハン氏は6日、「金融などの制裁がロシア経済を弱体化させているのは疑いない」としつつ、「ロシアの輸出から得る収入を断たない限り、制裁がロシア経済をまひさせるには至らない」とブログでの投稿に記した。

Foreign Exchange Reserves(外貨準備)

Russia estimates that half of its reserves are frozen by sanctions(ロシアは外貨準備高の約半分が制裁によって凍結されていると推定)
foreignexchangereservesbloomberg511

欧州連合(EU)加盟国は7日、ロシア産石炭の段階的な輸入禁止を盛り込んだ第5次の制裁パッケージで合意する見通し。EUがエネルギー輸入に関連した制裁を打ち出すのはこれが初めてになる。EUの行政執行機関、欧州委員会はロシアのトラックと船舶について、農産物やエネルギーなどの例外を除き大半のEU入域を禁止することを目指している。

ウクライナのゼレンスキー大統領は定例となっている夜の演説で、新たな対ロシア制裁は見た目こそ「華々しい」が、十分ではないと主張。「世界がブチャで目にした悪事に釣り合うとは、ほとんど言えない」と語った。

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●「バイデン米大統領が「がれき」とやゆしたルーブル、盛り返し鮮明」

Sydney Maki

202247 13:18 JST

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2022-04-07/R9XYG9T0AFH601

-対ロ制裁でもルーブルはウクライナ侵攻前の水準まで戻す

-ロシア産原油・天然ガス購入で外国勢がプーチン大統領に命綱

ウクライナ侵攻開始からの数日間に、通貨ルーブルはロシアの新たな金融孤立を浮き彫りにする有力な象徴となった。

 プーチン政権に対する米欧などの制裁を受け、ルーブルは一時1ドル=121.5ルーブルと過去最安値に沈み、1998年のロシア金融危機時の暴落を想起させた。厳しい様相となる中で、バイデン米大統領は「ルーブル(ruble)が瞬く間にほぼrubble(がれき)と化した」とやゆした。

しかし現状は異なることは明らかだ。6日のモスクワ市場のルーブル終値は79.7ルーブルで、ウクライナ侵攻前の水準を回復している。

ロシア政府や新興財閥(オリガルヒ)にさまざまな制裁が科され、外国企業の撤退も相次いでいるが、外国勢がロシア産原油・天然ガスの大量購入継続でプーチン大統領の財源を満たしルーブルが下支えされる限り、こうした措置がほぼ骨抜きであることは明らかだ。

それ以外の面でロシアが世界経済からほぼ遮断されたままであっても、同国の今年のエネルギー輸出収入は約3210億ドル(約397000億円)と、前年を3割余り上回るとブルームバーグ・エコノミクスは推計する。

Russia's onshore currency recovers to pre-invasion levels(ロシアのオンショア通貨はウクライナ侵攻の前のレヴェルに回復)

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米欧などの制裁に対応し、ロシアが実施した資本規制もルーブルを支えているものと見受けられる。海外に住む投資家の資産凍結やロシア企業に保有外貨の8割売却を義務付ける措置などが含まれる。

こうした事情を背景に、ルーブルが侵攻前の水準を回復したことの意義に疑念を抱く見方もある。しかも相場持ち直しは約10年ぶりの薄商いの中で起きている。「当局が講じたあらゆる措置を踏まえると、ルーブルは変動相場制ではない」と、ゼネラリ・インシュアランス・アセット・マネジメントの新興国市場シニアストラテジスト、ギヨーム・トレスカ氏は語る。

一方、ロシア産原油・天然ガス購入で外国勢がプーチン大統領に実質的に命綱を差し伸べている状況は見過ごし難い。これはロシアに対し、通貨高につながる傾向のある経常黒字をもたらし、制裁で同国に打撃を与える取り組みに水を差している。

ウェルズ・ファーゴ・セキュリティーズのストラテジスト、ブレンダン・マッケナ氏は「経常黒字は実際ルーブルを安定させるもう一つの材料だろう」とし、「エネルギー高が続きロシア産エネルギー・商品の主要輸入国が購入を継続すれば、経常収支は黒字のままだろう」と指摘した。制裁へのロシア側の対抗措置もあってルーブルは対ドルで78ルーブルに上昇する可能性があると同氏は話した。

Dollar Lifeline(ドルの生命線)

Russia is set for another year of higher energy earnings(ロシアは今年もエネルギー収入の増加が見込まれる)

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Source: Bloomberg Economics

Note: * Revenue calculated for 2022 based on current prices

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 古村治彦です。

 ネオコンという言葉はジョージ・W・ブッシュ(子)政権(2001-2008年)時代に日本でも知られるようになった言葉だ。私の師匠である副島隆彦先生が『現代アメリカ政治思想の大研究 <世界覇権国>を動かす政治家と知識人たち』(筑摩書房)でネオコンについて日本でほぼ初めて紹介したのが1995年で、2000年代に入ってネオコンという言葉が日本のマスコミで使われるようになって「何を今更」の感があった。今回のロシアによるウクライナ侵攻について、アメリカのネオコンの動きがあったということで、ヴィクトリア・ヌーランドの名前を挙げて説明している論稿もあるが、こちらもまた「何を今更」である。私は2012年に出した『アメリカ政治の秘密』でネオコン(共和党)とカウンターパートとして「人道的介入主義派(humanitarian interventionists)」(民主党)について詳しく説明した。ネオコンだけではなく、人道的介入主義派も危険だということは早い段階で指摘した。

 アメリカ政治に詳しい方なら「ネオコンは共和党のジョージ・W・ブッシュ政権の時にアメリカの外交政策と軍事政策を牛耳った人々ではないか。それが民主党のジョー・バイデン政権で重要な政策決定に関与できるのか」という疑問を持つだろう。だから大事なのは、民主党内のネオコンのカウンターパートである、人道的介入主義派なのである。今度は人道的介入主義派の出番ということになるのだ。ネオコンと人道的介入主義派は立場が近い。ネオコンの論客ロバート・ケーガン(共和党員)は2016年の大統領選挙で、ドナルド・トランプ当選を阻止したいと考え、民主党のヒラリー・クリントンの政治資金集めのためのパーティを計画したことがあった。アイソレイショニズムのトランプよりも党は違うヒラリーの考えの方が近いということになるのだ。

 昨年出版した『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』について、ありがたいことに最近になって評価をして下さる方が少しずつであるが増えてきている。私の主張や思考はとにかくシンプルで、バイデン政権とはヒラリー政権が4年遅れでやって来た存在に過ぎず、ヒラリーが当目である人道的介入主義派が多く政権に入ればそれだけ危険だということから思考を組み立てている。私のこれまでの著作を是非お読みいただきたい。

 バイデン政権はウクライナ戦争が勃発してから武器や物資の供与は行うがアメリカ軍が直接関与することは回避している。ウクライナの国土とウクライナ人の生命と財産が失われる状況でアメリカの軍需産業は大儲けをしている。その原資はアメリカ国民の血税であるが、日本人もまた高みの見物ということはできない。日本もまた相応の負担を強いられることになる。急速に進んだ円安とエネルギーコストの急上昇によって生活が苦しくなる一方であるが、それに加えて戦争税が課されることは間違いない。

 アメリカ国内でもアメリカ軍の直接的な関与を求める声が高まっている。そのためのキーワードが「戦争犯罪(war crime)」だ。ロシアによる戦争犯罪を裁く、もしくはウラジミール・プーティンを権力の座から引きずり下ろすためにはアメリカ軍が出張っていってロシア軍を破らねばならない。しかし、そんなことをすれば戦争は拡大し、エスカレートし、その行き着く先がどうなるか予想ができない。核戦争の可能性が大いに高まる。アメリカ国内も安全ということはなくなる。ネオコンと人道的介入主義派の動きは非常に危険だ。私たちは感情と思考を区別して置かれた状況でより賢い選択をするという思考ができるようにしなければ大きく騙されて大事な生命と財産を危険に晒すことになる。

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バイデンにとっての最大のウクライナ問題はプーティンではない。それは戦争マシーンだ(Biden’s Biggest Ukraine Challenge Isn’t Putin, It’s the War Machine

-ウクライナ国境で軍事紛争が起きる場合、バイデン政権はアメリカによる介入を煽る応援団に抵抗しなければならない。

マイケル・トマスキー筆

2022年2月16日

『ニュー・リパブリック』誌

https://newrepublic.com/article/165380/ukraine-russia-neocon-media-war

ウラジミール・プーティンは手を引きつつあるのか? 火曜日の朝の『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ワシントン・ポスト』紙、『フィナンシャル・タイムズ』紙の見出しは、ロシアがウクライナ国境からいくつかの部隊を撤退させ、他の軍事演習が続いている間にも、そのことを伝えている。プーティンは今日、ドイツのオラフ・ショルツ首相と会談している。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、侵攻は水曜日に行われると一見警戒しているように見えたが、メディアを通過する際に訳がわからなくなった皮肉な発言であったことが判明した。とはいえ、アメリカ政府は一時的に米国大使館をキエフからより安全な西のリヴィウに移した。

このようにまだ明らかになっていないことは多いが、バイデン政権にとっての明確な最低ラインは明確になっている。それは、「戦争に行くな、以上(Don’t go to war. Period.)」だ。

今日のニュースが一時的な休息、あるいは策略であることが判明し、ロシアが侵攻した場合、ケーブルニュースは少なくとも数日間は侵攻の映像を流し続けることになる。ロシアの残虐行為やウクライナ市民の死が強調されることになるだろう。アメリカのネオコンとその一部の上院議員、特に民主党のロバート・メネンデスと共和党のマルコ・ルビオは、ドナルド・トランプの犯罪を謝罪していない時に侵略が進む場合、多くの放送時間を得るだろう。ちなみに、この最後の点は、主流メディアが民主政治体制(democracy)を失敗させている重要な点の一つである。外交政策について優れた演説ができる人物は、たとえ10年か20年の間全てを間違っていたとしても、テレビはその人物を専門家として任命する。

太鼓が鳴り、衣服が裂け始めるだろう。これを見よ! スターリンが再びやって来るぞ!これは民主政治体制の死だ。バイデンを見てみろ、何もしていない! アフガニスタン、そし

て今はウクライナ。そして、この展開を見ている中国が何を考えているか想像してみよう。

しかし、バイデンはこれら全ての誇大広告に対して毅然とした態度で臨まなければならない。バイデン政権はこれまで、ウクライナでいかなる状況が起きてもアメリカ軍を駐留させないという、見事なまでに明確な態度を示してきた。これは良いスタートだ。しかし、プーティンが引き金を引くようなことがあれば、政権も踏ん張らなければならない。

バイデン政権の立場は変わらないと思う。しかし、私は少しばかり神経質になっている。バイデンは連邦上院議員時代、ウクライナをNATOに加盟させることを支持していたが、私はいつもそれを恐れていた。バルト三国の場合はそうだろうが、そこでも私は疑問に思った。アメリカ国民の何%が、聞いたこともないエストニアの町(ナルヴァ)を守るためにアメリカ人の命が失われることを喜んで支持するのだろうか? 世論が外交政策を左右するべきだというわけではない。少なくともヒトラーが宣戦布告をするまでは、ほとんどのアメリカ人は第二次世界大戦でドイツと戦うことに反対していた。しかし、民主的に選ばれた指導者は、ある状況がなぜアメリカの介入を必要とするのか、アメリカ国民に説明しなければならない。ウクライナの場合、それは無理な話だ。

そう、そこにネオコンがいるのだ。ありがたいことに、彼らは2002年から2003年にかけてのイラク戦争のときのように電波を支配しているわけではない。昨年12月、フレデリック・ケーガンは『ザ・ヒル』誌に、アメリカは戦争マシーン(war machine)を強化する必要があると書いた。彼は賢いので「戦争」という言葉は使わなかったが、これらの文章はそのポイントを伝えている。そのポイントは次の通りだ。

・本当に問題なのは、西側諸国がこの戦いに対する気概(stomach)を持っていないことだ。

・空軍力だけでは攻勢を止めるのには十分ではない。

・ティーム・バイデンはプーティンがウクライナを攻撃した場合の防衛について不安を払拭しなければならない。

こうした人々は何事も学ばない。もっとありそうなのは、自分たちの世界観から学ぶべきことを学ぶということだ。つまり、もう少し強力な決意と火力があれば、そして宥和派からの干渉がもっと少なければ、今日の軍事介入は大成功だっただろうという風に考えるということだ。

しかし、私には、歴史的な大成功の記憶はない。その代わり、記録にあるのは、ヴェトナムとイラクの悲惨な泥沼(disastrous quagmires)である。また、軍事や情報諜報の観点から「成功」したとされる介入(interventions)も、広い意味では悲惨な結果に終わったものがほとんどである。1954年、私たちはイランで迅速なクーデターを起こしたが、その後どうなったか。私たちは冷酷な親米政権を設立し、イラン国民は1979年についにこれを追放した。この政権は、ネオコンの好戦によって、冷酷な反米政権に取って代わられ、世界的とは言わないまでも、恐らくすぐに核兵器能力を持つ地域大国に変貌することになった。イランが本格的に核開発を始めたのは、ジョージ・W・ブッシュがイランを「悪の枢軸(axis of evil)」の一部と烙印を押した後であることを思い出そう。

私はかつて、当時の流行語であった「人道的介入(human interventions)」というものをアメリカがうまくやってのけると信じたかった。当時、スーザン・ソンタグやクリストファー・ヒッチェンスといった人々が、血と土(blood-and-soil 訳者註:民族主義的なイデオロギーのスローガン)の暴君に対抗するために、西側はまだ始まったばかりの多民族民主主義を支援しなければならないという道徳的説得力を持つ主張をしていた。その中心となったのは1990年代のボスニアだった。当時のベイカー国務長官が議会で「私たちはこの戦いに関与しない」と発言したことに私は愕然とした。

ボスニアは、ある種の軍事介入が正当化されるケースだった。主にNATOの空爆が行われ、最終的には和平合意(peace accords)に至った。しかし、その10年後、ボスニアのような人道的介入になるという理由で、イラク侵攻を主張する人たちがいたことをよく覚えている。何だと? ある国に攻め込んで、その国の隅々まで作り直すことと、大量殺人者が別の国で大量虐殺を行うのを阻止することが、どうして同じことだと言うのだろう?

そう、違うのだ。そして、ウクライナの状況と似たような比較をするような強制は避けるべきだ。教訓は次のようなものだ。歴史的類似性(historical parallels)を安易に使うことには常に注意を払うこと。ウクライナに軍事的に関与するということは、ロシアとの戦争に巻き込まれるということであり、脅威冷戦時代の越えられない一線、核兵器による消滅というを越えることである。プーティンは引き下がるかもしれない。しかし、彼が引き下がらなかったとしても、ここでの戦いはあくまで経済的なものだ。バイデンがかつてウクライナをNATOに加盟させることを熱望していたとしても、彼は今の状況を理解している。もしプーティンが参戦し、好戦派が国を熱狂の渦に巻き込もうとし始めたら、彼は自分の戦争への非関与を貫くべきだ。

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ネオコンたちがウクライナで新たな惨事を引き起こそうとしている(Neocons bent on starting another disaster in Ukraine

-アメリカの外交政策は、明らかに、毒舌で欲張り、そして何よりも無謀なエリート集団の人質となっている。

ジェイムズ・カーデン筆

2021年12月15日

『アジア・タイムズ』紙

https://asiatimes.com/2021/12/neocons-bent-on-starting-another-disaster-in-ukraine/

いずれにしても、ワシントンのネオコンたちは、生き残るための正確な本能を持っている。2001年9月11日のテロ攻撃以来20年間、イラク戦争からリビアとシリアでの大失敗に至るまで、数々の惨事を引き起こしてきたネオコンたちは、失敗の芸術を完成させているようだ。

ハーヴァード大学のスティーヴン・ウォルトは「ネオコンであることは、決して謝る必要がないということを意味する」と述べたことがある。この点でケーガン一族の話は参考になる。

『ワシントン・ポスト』紙のコラムニストであり、ブルッキングス研究所の上級研究員で、『ザ・ジャングル・グロウズ・バック(The Jungle Grows Back)』のような偽史の著者でもあるロバート・ケーガンは、長年にわたってアメリカの軍国主義(American militarism)の主唱者であった。

弟のフレデリックはネオコンが主流派となっているアメリカン・エンタープライズ研究所の常勤研究員である。2021年12月7日付の『ザ・ヒル』にフレデリック・ケーガンが寄稿し、ロシアがウクライナを支配すれば、ポーランドやルーマニアにも存亡の危機が訪れると主張し、それは新しい鉄のカーテン(Iron Curtain)となりうるものだ、アメリカとヨーロッパの地上・空軍を大規模に展開させることによってのみその状況に対応できる、と主張した。

フレデリック・ケーガンと妻キンバリーは戦争研究所を率いている。夫妻は失脚した元CIA長官デーヴィッド・ペトレイアスの側近だった。実際、フレデリック夫妻は、2007年から2008年にかけて、ジョージ・W・ブッシュ政権が追求した米軍増派戦略のブレインとして頻繁に言及される存在だった。

しかし、ケーガン一族で最も有力なのは、フレデリックの兄ロバートの妻で政治担当国務次官であるヴィクトリア・ヌーランドだ。

バラク・オバマ政権で、ヌーランドは米国務省報道官を務めた。彼女は明らかに不適格であり(現報道官の資質を考慮すればなおさらだ)、その後、ヨーロッパ・ユーラシア問題担当国務次官補に就任した。

2014年2月にウクライナで民主的に選ばれたヴィクトール・ヤヌコヴィッチ大統領の転覆を画策し、国連によると1万3000人以上が死亡した内戦(civil war)を招いたのは、ヌーランドがその役割を担っていたからだ。

アメリカがロシアとの戦争という重大なリスクに晒されている理由の一つは、ここまでに至った政策についてほとんど議論されていないが、ワシントンの外交政策が事実上、排他的なサークルによって行われていることだ。

そして、このサークルはケーガン一族のような人々によって独占され、支配されている。

ワシントンの既存メディアは、官僚機構のための永続的なエコーチェンバーとして機能することで、こうした外交政策を永続させる役割を担っているのである。その証拠としては、『ワシントン・ポスト』の社説では、ウクライナ危機が始まった当初から、外交と関与を求める声を軽率に退け、その代わりに、完全な戦争(outright war)を呼びかけている。

その一例が2014年8月21日にワシントン・ポスト紙の社説に掲載された見解だ。

「停戦や、外交交渉につながる何らかの一時的な停止を模索したくなるところだ。しかし、一時停止と外交で何が達成されるだろうか? ウクライナに禍根を残すような交渉は避けなければならない。受け入れられる唯一の解決策は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の侵略を撤回させることだ」。

『ナショナル・インタレスト』誌の編集者ジェイコブ・ヘリブラウンと私が当時次のようにコメントした。「無慈悲な態度とほぼ同程度に悪いのは、率直さの欠如である。ワシントン・ポストは、プーティンの侵略を逆転させるためにどのような提案をするのかについて何一つ実際に説明していない」。

これは現在でも変わらない。ウクライナをめぐってロシアと戦争すると豪語するアームチェア・ウォリアー(安楽椅子に座って戦争を論じる言葉だけお勇ましい人)たちは、そのような「逆転」がどのように行われるのか、更に言えば、米露間の戦争が成功する確率はどの程度なのか、まったく議論していないのだ。

ウクライナ危機が始まった約8年前からあまり変わっていない。2021年12月7日のアメリカ連邦上院外交委員会(SFRC)でヌーランドが行った「米露政策の最新情報」に関する証言について少し考えてみよう。

ヌーランドは次のように証言した。

"ロシアのプーティン大統領がウクライナへの攻撃や政府転覆を決定したかどうかは分からない。しかし、そのための能力を高めていることは確かだ。この多くは、2014年のプーティンの脚本に沿ったものだが、今回は、より大規模で致命的な規模である。したがって、正確な意図やタイミングが不明であるにもかかわらず、私たちはロシアに方向転換を促すとしても、あらゆる事態に備えなければならない」。

ヌーランドは更に、アメリカ政府は2014年以来、ウクライナに24億ドルの「安全保障分野での支援」を行い、本年度分としてこれまで4億5千万ドルがその中に含まれていると指摘した。

この巨額の投資に対して、アメリカはどのような見返りを得たのだろうか?

連邦上院外交委員会のボブ・メネンデス委員長は、ロシアが自国の国境で圧倒的な軍事的優位性を持っていないという印象を抱いているようだ。同様に、民主党のベン・カーディン連邦上院議員は、ロシアがウクライナに侵攻すれば「私たち(アメリカ)にはエスカレートする必要がある」と言い切った。

一方、共和党所属のトッド・ヤング連邦上院議員は、ヌーランドに対して「ロシアの侵略に対抗するために、政権はどのような方策を検討しているのか」と迫り、民主党所属のジャンヌ・シャヒー連邦上院議員は、エストニアの国会議員との対話の中で「ウクライナ問題に関するヨーロッパの結束」の重要性について語られたと述べた。

また、エストニアの国会議員共に、ポーランドなどの東欧諸国の国会議員たちも、「バルト諸国にさらに軍隊を駐留させるか、させないかについて懸念を表明したとシャヒーン議員は述べた。

この日、最も鋭いコメントをしたのは共和党のロン・ジョンソン連邦上院議員だった。ジョンソン委員は外交委員会が珍しく超党派の合意を達成したことに明らかに誇らしげだった。彼はさらに、アメリカはウクライナを支持し、ロシアに対抗するために「団結」しているのだと強調した。

そしてジョンソンの発言内容は全く正しいものだ。外交委員会は、アメリカが何の条約上の義務も負っていないウクライナをめぐる紛争を望むことで完全に一致した。

実際、ヌーランドも連邦上院外交委員会も、アメリカの国益が存在しない場所を見ているようだ。より心配されるのは、制裁と軍事的脅威を組み合わせることで、アメリカから何千キロも離れた場所で起きている紛争の結果を形成する、アメリカの能力、いや、義務に対する盲信のようなものを持っているように見えることである。

今回の連邦上院外交委員会の公聴会が明確に示したことは、アメリカの外交政策が毒と欲にまみれたおり、そして何よりも無謀なエリート集団の人質になっていることだ。そのエリートには、外交委員会の委員たち、公聴会で証言する政府高官たち、外交委員会にブリーフィングするスタッフたち、スタッフが信頼する学者や政策担当者たち、そして「匿名」の政府筋から聞いたことを無批判に書き写す記者やジャーナリストが含まれる。

このように、われわれが直面している最も緊急な問題は、次のようなものだ。手遅れになる前に、良心のあるアメリカ人はどうやって彼らの権力支配を断ち切るか?、である。

※ジェイムズ・W・カーディン:『ザ・ネイション』誌の外交専門記者を6年間務めた。その他に様々な出版物に記事や論稿を掲載してきた。それまでは米国務省の顧問を務めたサイモン・ウィール政治哲学センター理事、アメリカ・ロシア協力アメリカ委員会上級コンサルタントを務めている。

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ネオコンであることは決して謝罪する必要がないということだ(Being a Neocon Means Never Having to Say You’re Sorry

-この人たちはイラクのあらゆる面で間違っていた。なぜまだ彼らの言うことを聞かなければならないのか?

スティーヴン・M・ウォルト筆

2014年6月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2014/06/20/being-a-neocon-means-never-having-to-say-youre-sorry/

2001年から2006年のある時点まで、アメリカはネオコンヴァティヴィズムを信奉する人々(ネオコン)が外交政策の中核をなすプログラムに従った。この巨大な社会科学的実験の悲惨な結果(disastrous results of this vast social science experiment)は、これ以上ないほどに明らかである。ネオコンのプログラムは、米国に数兆ドルとアメリカ軍将兵の数千人の死傷をもたらし、イラクとその他の地域に殺戮と混沌をもたらした。

リンドバーグやマコーミックのようなアイソレイショニズムの信奉者たちが、第二次世界大戦で、ディーン・ラスク元国務長官がヴェトナム戦争で疎外されたように、ネオコンたちの信用は永遠に失墜するのではないかと考える人もいるだろう。たとえ、ネオコンが自分たちの愚行が引き起こした失敗にもめげず、自分たちの主張に固執し続けるとしても、合理的な社会は彼らにほとんど注意を払わないだろうと予想される。

しかし、アンドリュー・バセヴィッツ、ジュアン・コール、ポール・ウォルドマン、アンドリュー・サリヴァン、サイモン・ジェンキンス、ジェイムズ・ファローズといった、多くの論客が落胆したように、ネオコンの論客たちは今日も健在である。CNNをはじめとするニュースチャンネルの一般視聴者たちは、ポール・ウォルフォヴィッツ、ディック・チェイニー、ビル・クリストルらの空疎な(vacuous)分析に接しているのである。

より懸念されることは、バラク・オバマ大統領が圧力に屈して、イラクの無能で悩めるマリキ政権を助けるために300人のアメリカ軍顧問団を派遣したと思われることだ。いつものように、オバマ大統領は新たな泥沼を警戒し、アメリカの関与を制限しようとしているようだ。しかし、彼は滑りやすい坂道への第一歩を踏み出し、この最初の動きが成功しなければ、もっとやるようにという追加の圧力に直面することになるだろう。

一体何が起こっているのか? ネオコンの最新の戦争推進キャンペーンの論理を破壊している人々がいる。ネオコンの一連の悪いアドヴァイスに対する強力な再反論は、前述の論客たちの記事を読むとよい。あるいは、バリー・ポーゼンが『ポリティコ』誌に寄稿した、ネオコンのあまりにも有名な妨害行為に対する有効な警告を提供している記事も読んで欲しい。

しかし、過去の失敗を考えると、ネオコンがあらゆるレヴェルの説明責任(accountability)から免れているように見えるのはどうしてだろうか? 一つのグループが、これほど頻繁に、これほど高いコストをかけて間違いを犯しながら、それでもなお、上層部でかなりの尊敬と影響力を維持できるのはなぜなのか? アメリカがネオコンに少しでも耳を傾けることは、ワイリー・E・コヨーテにロードランナーの捕まえ方を聞いたり、故ミッキー・ルーニーに結婚のアドヴァイスを求めたり、バーニー・マドフに退職金の運用を任せたりするようなものである。

私の知る限り、ネオコンが奇妙なほど持続しているのは、相互に関連する4つの要因によるものである。

(1)厚顔無恥(No. 1: Shamelessness

ネオコンサヴァティヴィズムが生き残っている理由として、そのメンバーが、自分たちがどれだけ間違っていたか、あるいは善悪そのものを気にしていないことである。トロツキー派やシュトラウス派のルーツに忠実なネオコンは、政治的目標を達成するために、常に真実を弄ぶことを厭わない。例えば、彼らはイラク戦争を売り込むために、情報を捏造し、とんでもない虚偽の主張をした。そして今日、彼らは現在のイラクの混乱に対する自らの責任を否定し、オバマによって浪費された戦争の大成功を描くために、同様に虚偽の物語を構築しているのだ。そして、この運動全体が先天的に誤りを認めることができず、自分たちが浪費したり取り返しのつかない損害を与えたりした何千人もの人々に謝罪することができないようだ。

著名なネオコンの知識人で、イラク戦争の初期の推進者ロバート・ケーガンが、来月行われるヒラリー・クリントンの選挙資金調達パーティのトップを務めることが、『フォーリン・ポリシー』誌によって明らかにされた。この動きは、クリントン陣営が著名な共和党員と関わりを持とうとする姿勢の変化を示すものであり、ドナルド・トランプ大統領の誕生を阻止するために、共和党の離反者がどこまでやる気があるかを示す最新の兆候である。

つまり、リチャード・ニクソンやシルヴィオ・ベルルスコーニと同様に、ネオコンたちは、自分たちが何度間違っていたかを気にせず、世間の注目を浴びるためならどんなことでもする、あるいは言う、という姿勢でカムバックを繰り返している。また、自分たちの度重なる政策の失敗がもたらす悲劇的な人的結果には、まったく無関心であるように見える。ネオコンであることは、決して「申し訳ございません」と言う必要がないことを意味するようだ。

(2)資金援助(No. 2: Financial Support

ネオコンの生き残りの第二の源泉は資金だ。アメリカの開かれた政策アリーナでは、雇用を維持し、活動するためのプラットフォームと組織を提供する資源さえあれば、ほとんど誰でもプレイヤーになることができる。2003年にアメリカを崖っぷちに追い込んだネオコンは、ベルトウェイ(ワシントンの内部)で疎外されるどころか、『ウィークリー・スタンダード』誌、アメリカン・エンタープライズ研究所、カーネギー財団、外交問題評議会、戦争研究所、ハドソン研究所など、資金力のあるシンクタンク、雑誌などを出す組織から支持され続けている。エリオット・エイブラムスのように何度失敗しても、資金力のある外交評議会の上級研究員になれるのなら、アメリカの政策論議において間違ったアドヴァイスが目立つようになるだろう。

(3)言い分をそのまま受け入れ共感するメディア(No. 3: A Receptive and Sympathetic Media

ネオコンは、主流メディアが彼らに注目し続けなければ、その影響力はかなり小さくなる。彼らは自分たちの雑誌を出版したり、フォックス・ニューズに出演したりすることもできるが、大きな力を発揮するのは、『ニューヨーク・タイムズ』紙、『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『ワシントン・ポスト』紙などのメディアで彼らが注目され続けていることだ。ネオコンは依然として論説ページに頻繁に登場し、外交政策の様々な問題について記者たちからよく引用されている。

このような傾向は、主要メディアの重要なメンバーが、自らネオコンであったり、その基本的な世界観に強く同調していたりすることも一因となっている。ニューヨーク・タイムズのデイヴィッド・ブルックス、ワシントン・ポストのチャールズ・クラウトハマーとフレッド・ハイアット、ウォールストリート・ジャーナルのブレット・スティーヴンスは、いずれもネオコン信奉者で、もちろん当初から戦争推進派では著名な発言者だった。ニューヨーク・タイムズ紙は2005年にクリストルを起用し、論説コラムを書かせたが、それはイラク情勢が既に悪化していた後だった。クリストルの論稿がそれほど退屈で杜撰な内容でなかったなら、彼は今日もまだコラムニストを続けているかもしれない。

しかし、ネオコンが主要な報道機関に存在し続けるということだけが問題ではないのだ。

ネオコンが影響力を持ち続けているのは、アメリカの他のメディアが「バランス」にこだわっているからであり、無頓着な記者たちは、オバマ政権やよりハト派的な声から何を言われても、いつでもタカ派のネオコンの言葉を引用してバランスを取れることを知っているからである。記者が正確さよりもバランスが重要だと考えている限り、新保守主義者は自分たち特有の外交政策に関する当てにならない商品(スネークオイル、snake oil)を売り込む場所をたくさん見つけることができるのだ。

(4)リベラル派の同盟者(No. 4: Liberal Allies

ネオコンの持続性にとっての最後の源泉は、彼らの近いいとこである、リベラル派の介入主義者(liberal interventionists)から継続的な支持を得ていることである。ネオコンは、イラク侵略というアイデアを作り出したかもしれないが、様々な種類のリベラルなタカ派から多くの支持を得ていたのである。前にも述べたように、この2つのグループが唯一意見を異にする主要な問題は、国際機関の役割についてであり、リベラル派は国際機関を便利な道具と見なし、ネオコンはアメリカの行動の自由を妨げる危険な制約と見なしている。つまり、ネオコンはリベラルな帝国主義者のステロイド版であり、リベラルなタカ派は実際にはより親切で優しいネオコンに過ぎないのだ(Neoconservatives, in short, are liberal imperialists on steroids, and liberal hawks are really just kinder, gentler neocons.)。

リベラル派の介入主義者たちはネオコンの計画に加担しているため、ネオコンをあまり批判したがらない。それは、そんなことをしてしまうと、ネオコンの悲惨な計画における自らの過失に注目が集まるからだ。したがって、ピーター・ベイナートやジョナサン・チェイトのようなリベラルなタカ派が、イラク戦争を支持していたにもかかわらず、最近になって、ネオコンの立場を厳しく批判しつつ、イラクをめぐる新しい議論に参加するネオコンを擁護していることは、驚くにはあたらない。

ネオコンとリベラル派の同盟は、事実上、ネオコンの世界観を再正当化し、アメリカ主導の戦争に対する彼らの継続的な熱意を「正常(normal)」に見せているのである。オバマ政権にサマンサ・パワーやスーザン・ライスのような熱心な介入支持者がいて、アン・マリー・スローターのような元オバマ高官が、シリアに武器を送る必要性についてネオコン的な議論をしているとき、ネオコンは米国政策コミュニティの中で完全に立派な一派のように聞こえ、むしろ彼らの考えが実際にはどれほど極端で信用できないものであるかが強調されているのである。

圧倒的な証拠を前にしてもなお、影響力と地位を維持するゾンビのような能力は、F・スコット・フィッツジェラルドが間違っていたことを教えてくれる。アメリカの人生には実際、無限の「セカンドチャンス」があり、アメリカの政治システムにはほとんど、あるいはまったく説明責任がない。ネオコンの持続力はまた、アメリカが無責任な言説から逃れられるのは、それが非常に安全だからだということを思い起こさせる。イラクは大失敗で、アフガニスタンでの敗北への道を開くことになった。しかし、一日の終わりには、アメリカは帰ってきて、おそらくちょうどいい状態になる。確かに、ネオコンの空想に耳を傾けなければ、何千人もの市民が今日も元気に暮らしていただろうし、1993年以降の彼らの処方箋を儀礼的に無視していれば、アメリカ人は海外でもっと人気があり、国内ではもっと繁栄していただろう。何十万人ものイラク人も生きていただろうし、中東の状態もいくらか良くなっていただろう(これ以上悪くなりようがない)。

ネオコンの影響力を適切な次元(つまり、ほとんどゼロ)まで低下させるものがあるとすればそれは何だろうか? もし、この10年間がネオコンの信用を失墜させなかったとすれば、これからどうなるかは明確ではないということだ。モスクワや北京の指導者たちは、この事実から大きな安心感を得ているに違いない。アメリカが危機から危機へ、そして泥沼から泥沼へと転落し続けることを確実にするためのより良い方法はどんなものだろうか? この社会が、確実に間違っている人ではなく、一貫して正しい人の意見に耳を傾けるようになるまでは、私たちは同じ過ちを繰り返し、同じ悲惨な結果を招くだろう。ネオコンはそんなことを気にしないだろうが。

(貼り付け終わり)

(終わり)


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