古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2022年06月

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争勃発後、中立政策を採用してきたスウェーデンとロシアの隣国でソ連時代からロシアとは微妙な(絶妙な)関係を築き、こちらも西側と東側の間で中立のような状態にあったフィンランドがNATO加盟の意図を表明した。これはロシアからの安全保障上の脅威に対抗するためと見られている。
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ヨーロッパの地図

 ここで、下記の論稿のウォルト教授は、これまで成功してきた中立政策をここにきて放棄する理由、特にスウェーデンはNATOに正式加盟していないがこれまでNATOと緊密な協力関係を持ち、加盟国の責務を果たさずに利益を得てきたが、加盟することで義務が生じるのにどうして加盟するのか、ということを設問として提示している。その前提として、ロシア軍は旧ソ連軍時代よりも弱体化しており、ウクライナ一国を短期間で占領する力はなく、西側の援助があればそれは猶更である。それならば、わざわざNATOに加盟しなくてもよいではないかということになる。

 これについて、ウォルト教授は「脅威(threat)」という言葉で説明している。スウェーデンとフィンランドにとっては、「ロシアがウクライナに侵攻した」という事実が重要ということになる。NATOの加盟国であれば、ロシアが侵攻してくれば、NATO加盟諸国は義務として、侵攻された国を支援して、ロシアと戦うということになる。そうなればロシアは国家体制を変更させられるほどの痛手を被るか、核兵器を使用するかということになるが、そのような状況で核兵器を使用すれば国家体制は崩壊させられることになるだろう。

 スウェーデンとフィンランドはロシアからの「脅威」を感じてNATO加盟の考えを表明した。これによって、ヨーロッパ、特にバルト湾岸地域の状況は大きく変化する。ウクライナ戦争におけるプーティンの誤算はここにあると考えられる。NATOの北方拡大もまたロシアにとっては脅威となる。北極海、バルト海から黒海までの地域はヨーロッパの火薬庫になる可能性がある。

(貼り付けはじめ)

スウェーデンとフィンランドは何を考えているか?(What Are Sweden and Finland Thinking?

-ヨーロッパ諸国の指導者たちはロシアの意図を再評価し、プーティンが領土の現状維持に与えている脅威に対してバランスをとっている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年5月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/18/nato-sweden-finland-russia-balance-threat/

優れた理論の長所の一つは、他の方法では意外に思えたり、少なくとも多少不可解に思えたりするような事象を理解できるようにすることである。例えば、スウェーデンとフィンランドが長年にわたる中立の伝統を捨て、NATOへの加盟を申請する決定を下したことがその例となる。

一見したところ、この決断の説明内容は明白である。ロシアは第二次世界大戦以降、ヨーロッパで最も破壊的な戦争を始め、かなりの残虐性をもってその戦争を遂行してきた。ウクライナ戦争が長引き、破壊的な膠着状態に陥る恐れがあるため、スウェーデンとフィンランドは安全保障環境が悪化していると判断し、NATO加盟によってもたらされると思われる、より大きな保護を選択したのである。大学で国際関係論を学んだ人なら、これは力の均衡理論(balance-of-power theory)の典型的な例と見るかもしれない。

それでも、この説明にはいくつかの疑問が残る。長い間成功してきた中立政策を放棄することは大きな一歩であり、将来的に大きなコストとリスクを伴う可能性がある。特にスウェーデンの場合、長年NATOと緊密に協力し、既に加盟国としての責務をほとんど果たすことなしに、多くの利益を受けることができた。この点は特に重要だ。それなのに、何故今になって方針を転換するのか?

もっと重要なことは、ウクライナにおけるロシアの惨めな軍事的パフォーマンスによって、スウェーデンやフィンランドは安全が損なわれるどころか、むしろ向上していると感じたかもしれない点だ。この戦争で、ロシア軍の能力では他国を征服することが難しいということが明らかになった。西側の制裁、戦争自体のコスト、そして人口が減少し高齢化する中で優秀な若いロシア人たちが海外に流出し続けることが重なり、ロシアの持つ潜在能力は今後何年にもわたって低下し続けるだろう。冷戦時代、ソ連の力が絶頂にあった時にスウェーデンは中立を保っていたことを考えると、少なくともスウェーデン(とフィンランド)がこのタイミングでNATOの保護を必要としたことは不可解ということになる。

私が長年主張してきたように、従来の力の均衡理論が不完全であることを認識すれば、このような不可解はなくなる。各国家は力の均衡(パワーバランス)に細心の注意を払っているが、各国家が本当に気にかけているのは脅威についてである。ある国家が他国に与える脅威のレヴェルは、その国家の総合的なパワーだけでなく、特定の軍事能力(特に他国を征服または害する能力)、地理的な近接性、および認識された意図の関数ということになる。

一般に、自国の近くにある国家は、遠くにある国家よりも危険である。同様に、征服に最適化された軍隊を持つ国家は、自国の領土を守ることを主目的とする軍隊を持つ国家よりも危険であるように見える。また、現状に満足しているように見える国家は、現状を修正しようとしているように見える国家よりも警戒心を抱かせない傾向がある。

脅威の均衡理論(balance-of-threat theory)は、1990年にイラクがクウェートを占領した際、崩れた経済基盤と三流の軍事力を持つイラクを凌駕する連合軍が誕生した理由を説明する。また、ヨーロッパがロシアのウクライナ侵攻にあれほど強力に対応しながら、遠く離れた中国の台頭にささやかな対応しかしていない理由もこの理論で説明できる。中国はロシアよりはるかに強く、長期的にはより大きな課題となりそうだが、ユーラシア大陸の反対側にあり、ヨーロッパ自体を脅かすに足る軍事力は持っていない。

スウェーデンとフィンランドの場合、転機となったのは明らかにロシアの意図に対する見方が変わったことだ。スウェーデンのマグダレナ・アンダーソン首相が週末に記者団に語ったように、スウェーデンがNATOへの加盟を決めたのは、ロシアの「暴力を行使する」「多大なリスクを負う」意思に対する見方が変わったからだ。ロシアがウクライナに侵攻した動機は、スウェーデン人にとって中心的な問題ではないことに注意したい。ロシアのプーティン大統領が根っからの拡張主義者であるか、深い不安感に大きく動かされているかは問題ではない。重要なのは、プーティン大統領が戦争に踏み切ったことである。

スウェーデンとフィンランドの反応(そして一般的な西側諸国の反応)は、国家が脅威をどのように認識し、どのように対応するかについて多くのことを教えてくれる。一般に、国家は、自国内の努力によって力を増すが、その力を現状変更のために使ったり、他の国から領土を奪ってより強くなろうとしたりしていない国に対して、どのように対応したらよいかを考えるのに苦労するものである。

この傾向には例外がある。19世紀にアメリカが北米大陸に力を拡大し、メキシコを解体することができたのは、他の大国と巨大な海によって隔てられていたことと、ヨーロッパ諸国が新興のアメリカにではなく、互いに照準を合わせていたことが理由である。しかし、台頭してきた国家が威張り散らさない限り、他の国家は増大する富から利益を得ようとする可能性が高く、それを封じ込めることは比較的少ない。

各国家は台頭する国家に対して疑いの目を向けるだろうが、その国が力を直接的に行使する意思を明確に示さない限り、反応は薄いものとなるだろう。中国が「平和的台頭(peaceful rise)」という戦略で成功を収めたのはそのためであり、結果として習近平がより積極的な行動を取るようになり、各国のより大きな懸念を引き起こしたのである。

プーティンの動機についてどう考えようが、彼がいくつかのレヴェルで大きな誤算を犯したことは、今や極めて明白である。プーティンはウクライナのナショナリズムを過小評価し、ロシアの軍事力を過大評価した。他の失敗した侵略者たちと同様に、彼は外交政策のリアリズムの重要な教訓を理解することができなかった。国家は脅威に対してバランスをとる。現状を打破するために武力を行使することは、一国がなし得る最も脅威を与える行為にほかならない。

戦争は時に必要であり、時には、戦争を始めた国にとって大きな利益をもたらす。しかし、戦争を始めると、必ず他の国々に警戒心を抱かせ、危険を封じ込めるために協力するようになるのが自然である。プーティンは、ヨーロッパが分裂しており、ロシアの石油とガスに依存しているため、自分の行動に反対することはできないと考えたのだろう。そこで彼は、目的を迅速に達成し、最終的には通常通りのビジネスに戻ることができることに賭けた。しかし、プーティンの得た結果は、ヨーロッパ諸国がロシアの意図に対する評価を改め、古典的なリアリスト的バランス(均衡)をとる行動をとったことだ。ウクライナ国内のネオナチの存在の可能性を過度に非難したこととロシア兵士の残忍な行動は結果として、スウェーデンとフィンランドの決断を容易にしただけのことだった。

ストックホルムとヘルシンキで起こっていることはこれで全てだろうか? おそらくそうではないだろう。NATOがウクライナに最新鋭の軍備を迅速に供給したことは、紛れもなく物流機能の優秀さを示すものであり、加盟することの価値を高めたかもしれない。西側諸国によるウクライナへの支援の高まりに対してロシアがエスカレートしなかったことも、ロシアの反撃についてのスウェーデンやフィンランドの懸念を和らげたと思われる。ロシアが弱体化すると同時に好戦的になっているのを見て、厳格な中立を放棄することがより安全な選択肢に見えたのかもしれない。

理由はどうであれ、世界の指導者の多くにとって、心に刻むべきより大きな教訓がある。国家は権力に敏感であるが、その権力の行使方法には更に敏感である。大きな棒を持つならば、穏やかに話すことが賢明である。ある国がその力を賢く使うことはあまりないのである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争は「ウクライナ対ロシア」という枠組みを超えて、「西側対それ以外」という構図にもなっている。戦費や武器の支援から見れば、この戦いは「ウクライナ・アメリカ対ロシア」の戦いということになる。アメリカが約6兆円をつぎ込んでいる。

 西側諸国は対ロシア制裁で結束し、ロシアに大打撃を与えようとした。しかし、その効果は限定的だ。ロシア産の石油を西側諸国は禁輸としたが(イギリスは今年いっぱい輸入するとし、ドイツは全面禁輸には踏み切らない)、西側諸国に代わって、中国とインドがロシア産石油を少し安い値段で買い入れを行っており、石油の代金収入が戦費を上回るということが起きている。ロシアは石油の購入をルーブルで行うように要請し、一度大幅に下落したルーブルの価値も上昇した。

 このように、西側諸国の方策は効果を発揮していない。それは、西側以外の、それ以外の国々がロシアに対して積極的に支援をしている訳ではないが、西側の対ロシア制裁に同調しないからだ。その代表格がインド、中国、サウジアラビアといった国々だ。これらの国々が西側に同調しなければ、西側の制裁は効果を持たない。それではこれらの国々を西側の味方に引き入れられるかというと、それは難しい。それぞれの国が自国の国益を守るために行動している。これらの国々にとって西側に同調しないように行動すること、バランスを取ることが国益になるので、そのように行動する。それに対して何からの矯正をすることは難しい。

 下記の論稿にあるドイツとハンガリーはEUNATOの加盟国であり、本来であれば、アメリカとイギリスに同調すべき立場にある。しかし、両国はやはり自国の国益に沿った行動を取っている。ドイツもハンガリーもロシアからのエネルギー資源に依存している。ロシアとは決定的な断絶を避けたいということは当然のことだ。

 ウクライナ戦争が長期化し、「戦争疲れ」「ゼレンスキー疲れ」がたまっていく中で、西側諸国の結束は揺らいでいくことになるだろう。その結果、現在の世界体制の大きな転換、アメリカの終わりの始まりを印象付けることになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカがロシアに関して味方にしようと試みている5カ国(Five countries US is trying to sway on Russia

ブレット・サミュエルズ、ロウラ・ケリー筆

2022年4月12日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/international/3264413-five-countries-us-is-trying-to-sway-on-russia/

ジョー・バイデン政権は、ロシアに対する圧力キャンペーンを支援するために多くの西側同盟国を集めることに成功したが、モスクワのウクライナ侵攻に反対するために他の多くの同盟諸国や主要な競争相手を味方につけることはより困難であることが判明した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「世界の国内総生産50%以上の国々を世界的な同盟に構築したが、失敗とは言えないだろう。誰もそれを失敗とは言わないと思う」と述べた。

それでも米政府関係者は、紛争にほぼ中立の立場を維持しているか、ロシアにさらに圧力をかけるという申し出を断っている世界中の国々と関わってきた。

Still, U.S. officials have engaged with nations around the world that have largely remained neutral in the conflict or declined overtures to further pressure Russia.

これから、ロシアに圧力をかけ、ロシアの侵略による世界的な経済的波及効果を鈍らせるためにバイデン政権が説得を試みている5カ国を紹介する。

(1)インド

バイデン大統領は月曜日、インターネットを通じてインドのナレンドラ・モディ首相と歓談を持った。ダリープ・シン国家安全保障問題担当大統領次席補佐官がインド当局者との会談のためにニューデリーに出張したのは2週間前のことだった。

バイデンは、ロシアの侵攻に反対する民主政治体制諸国の結束をしばしば宣伝してきた。しかし、世界最大の民主政治体制国家であるインドは、ロシアの石油を輸入し続け、ウクライナで行われた人権侵害に関する国連の決議投票では中立を保っている。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は、「バイデン大統領はモディ首相との会談で、アメリカと同盟諸国が課す制裁の効果を明らかにしようと努め、アメリカはインドのエネルギー輸入の多様化を喜んで支援すると強調した」と記者団に語った。

サキ報道官は「バイデン大統領はまた、ロシアのエネルギーや他の商品の輸入を加速したり増やしたりすることがインドの利益になるとは考えていないと明言した」と述べた。

インドは、ウクライナのブチャで起きた民間人殺害事件を非難し、戦争犯罪の可能性について独立機関による調査を求め、人道的な救援活動を行ったことを強調した。

サキ報道官は続けて「私たちの目的の一つは、それを基礎にして、さらに多くのことを行うよう奨励することだ。だからこそ、指導者同士の対話が重要なのだ」と述べた。

(2)サウジアラビア・アラブ首長国連邦

石油輸出国機構(OPEC+)の中核メンバーで石油資源の豊富な湾岸諸国は、ロシアの石油・ガス輸出を制裁・抑制する取り組みの中で、上昇した価格を引き下げることを目的としてアメリカが世界市場での石油供給を増やすよう要求していることに抵抗している。

特にサウジアラビアは、OPEC+を通じてロシアと結んだ原油生産と価格に関する協定に大きく依存しており、リヤドはエネルギー依存から脱却した経済の多角化の一環として、将来の国内経済計画にそれを織り込んでいる。

ロシアの戦争はまた、『ワシントン・ポスト』紙の記者ジャマル・カショギの殺害におけるサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子の役割に対するアメリカの非難をめぐり、リヤドとワシントンとの関係全般が冷え込む中で起こったものである。

『ウォールストリート・ジャーナル』紙は先月、ムハンマド王太子が、アメリカがロシアの石油輸入を禁止することについてバイデン大統領と話すのを拒否したと報じた。ホワイトハウスはこの報道を不正確だと述べた。

ワシントンのアラブ湾岸諸国研究所上級研究員フセイン・イビッシュは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦のロシアに対する姿勢が失敗であるという考え方に反論し、代わりに「部分的成功」と表現した。

イビッシュは「アラブ首長国連邦とサウジアラビアは曖昧な態度を取っているが、湾岸諸国は、ワシントンや国際社会から突きつけられる厳しい選択に立ち向かう準備を整えている佐中なのだろう」と述べた。

イビッシュは続けて「ウクライナ侵攻はヨーロッパの危機であり、世界の危機ではない、というのが彼らの誤算だったのだろう。彼らは、このような出来事に対して、自分たちはかなり周辺にいると考えていたがそれは間違いだ」と述べた。

イビッシュは、リヤドとアブダビは、バイデン政権からのイランが支援するイエメンのフーシ派反政府勢力からの攻撃に対抗するための安全保障の強化を求めており、アメリカとのそうした取引は、ロシアへのコストを高める行動に彼らを動かす可能性がある、と付け加えた。

イビッシュは次のように述べた。「サウジアラビアが原油を増産し、ロシアとのOPEC+合意を破棄しなければならないかもしれない。それは彼らにとって苦痛で不快なことだろうが、もしそうするならば、少なくとも彼らはワシントンとの前向きなリセットのためにそうしていると確信できるだろう」。

(3)中国

バイデン政権は、中国がロシアに軍事装備や資金援助を行うことを阻止するために、多大な時間とエネルギーを費やしてきた。

バイデン大統領は中国の習近平国家主席と直接会談し、アントニー・ブリンケン国務長官は中国の王毅外相と会談し、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官は中国のトップ外交官である楊潔篪とそれぞれ会談した。いずれの場合も、米政府要人たちは北京に対し、ロシアが有利となるような介入をしないよう警告を発した。

バイデン政権高官たちは、中国がロシアとウクライナの紛争に関与しないことを明確に決めているかどうかはまだ不明だと述べている。しかし、これまでのところ、北京はモスクワが要求したとされる軍事援助をまだ送っていない。

ロイター通信は、中国はロシアとの石油契約を尊重しているが、新たな契約にはまだサインしていないと報じている。これは北京が、経済的に関係を持っている西側諸国からの反発の可能性を認識していることの表れである。

バイデン政権のある幹部は、侵攻が始まった直後に記者団に対し、北京がロシアを助けに来ることはないだろうと楽観視していると述べ、「中国はアメリカの制裁の効力を尊重する傾向にある」と指摘した。

(4)ドイツ

ロシアのウクライナ侵攻が始まった当初、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、キエフへの重要な軍事支援と、ロシアがヨーロッパへの天然ガス供給を計画していたガスパイプライン「ノルドストリーム2」の閉鎖によって、ベルリンの歴史的平和主義姿勢を厳しい行動に転じたとして称賛された。

しかし、戦争が7週目に入るとその勢いは弱まり、ドイツは、アメリカやヨーロッパの他の国々が、1日約10億ドル分入ってくるロシアの石油とガスの世界的な輸入を断ち、ロシアの戦費をさらに圧迫するという要求に加わることに反対を表明している。

ドイツは「ノルドストリーム1」パイプラインを通じてロシアの天然ガス供給に依存し続けており、ドイツ政府高官たちは、ヨーロッパで最も人口の多い国にとって蛇口を止めるという選択肢はないと明言している。

連邦下院多数党(民主党)院内総務捨てに―・ホイヤー連邦下院議員(メリーランド州選出、民主党)を団長とする連邦下院議員訪問団は、今週ベルリンに移動し、ヨーロッパへの複数国訪問の一環としてショルツ氏と会談する予定である。

同盟諸国は、ヨーロッパ、特にドイツをロシアのエネルギーから直ちに切り離すことが困難であることを認識している。

イギリスの対ヨーロッパ・北米外交のトップを務めるジェイムズ・クレヴァリーはあるインタヴューの中で、ドイツがこれまで進んできたステップを称賛し、次のように述べた。「ドイツ政府がこれまでの数十年間に行われたあらゆる決定によって作り出された状況の下で生きていることを批判するのは公正かつ合理的ではないと考える」。

クレバリーは「ショルツ首相は、ウクライナ侵攻の直接的な結果として、この1カ月でドイツの外交政策を再定義した」と述べた。

(5)ハンガリー

ハンガリーはNATO加盟国だが、ロシアの侵攻には慎重に対応しており、現在進行中の紛争において、複雑な国家であることが証明されている。

ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相は2010年から政権を担っている権威主義的指導者で、ロシアの侵攻を非難しているが、ロシアのウラジミール・プーティン大統領個人に対して発言することは避けている。

ヨーロッパ連合(EU)の一員として、ハンガリーは対ロシア制裁措置の発動に協力した国の一部だが、ハンガリー自身はロシア経済を下支えするための措置をとっている。

オルバン大統領は先週、ロシアのガスをルーブルで購入する用意があると述べた。多くの西側諸国がロシアからのエネルギー購入を制限または完全に断ち、ロシアの通貨を孤立させようとしている時に、この発言はロシアの通貨を安定させる一助となるであろう。

先週、対ロシア制裁に関してアメリカはハンガリーと協力するのかと質問され、ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は「ハンガリーはNATO加盟国であり、今後もそうあり続ける。私たちは、NATOの防衛や人道支援を含む、様々な二国間および共通の世界的利益について協力を続けている」と答えた。

サキ報道官は続けて「ハンガリーは現在、NATOの戦闘部隊である、アーミー・ストライカー歩兵部隊を駐留させておる。私たちは彼らと定期的に合同訓練を行っており、今後もハンガリーとのパートナーシップを強化するために努力していく」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争が始まって4カ月近くが経過した。ウクライナには欧米諸国から多額の資金援助、物資援助、軍事援助がなされている。武器のグレードが挙がり、ハイエンド(高度)な武器が供給されることで、戦争は停戦には向かわず、ロシアとの全面戦争という様相を強めている。戦争は容易に終了しないということだ。

 アメリカ政府の各機関はウクライナにどのような資金を提供しているのかということを紹介している記事があったので紹介する。ウクライナにはそこまでの資金がないので、欧米諸国の金で戦争を継続しているということになる。その原資は欧米諸国の国民の税金だ。軍事費となると途端に制限なくじゃんじゃん使えるようになるというのがアメリカの特徴だ。税金(と国債で賄っている資金)が湯水のごとくに投入されている。それに対して反対することは難しい。批判をすれば「国防は最重要だ」「アメリカが世界の秩序を守っている」「非国民」と言った悪罵を投げつけられるだろう。

 しかし、一方で、「どこまで続くぬかるみぞ」ということもある。欧米諸国の一般国民の生活は、エネルギー高もあり、高いインフレ率で苦しくなっている。インフレ率よりも高い給与の上昇があればなんということもないが、インフレ下ではそのようなことはない。日本の高度経済成長期のように毎年経済成長率が10%以上ということであれば給料もどんどん上がっていくだろうが、そんな国は今世界には存在しない(中国が新型コロナウイルス感染拡大まではそれに近かった)。「いつまで私たちの税金からウクライナ支援を続けるのか」「私たちの生活への支援はないのか」ということになる。

 最新の調査の結果では、ウクライナ支援が全体で11兆円、その内の上位3カ国は55%がアメリカ(約6兆円)、6%がイギリス(約6600億円)、4%がドイツ(約4400億円)である。アメリカが突出し過ぎている。ヨーロッパの大国だと威張っているイギリスとドイツが合わせてようやく1兆円である。ウクライナ戦争を支えているのはアメリカで、威勢のいいことばかりを言う口先番長はイギリスということになる。大英帝国だと威張ってみてもこの体たらくだ。それでいて、イギリスのボリス・ジョンソン首相は「戦争疲れが起きている」と述べている。

 ドナルド・トランプ政権を誕生させたアメリカ国民は思うだろう。「アフガニスタンからの撤退では混乱があったがまぁ良かった。だけど今度はウクライナかよ。ヨーロッパのことはヨーロッパで解決してくれ。アメリカがそんなに資金を出さなくちゃいかんのか。どこまで続くぬかるみか」。

 ロシアは経済制裁を受けてはいるが、対中、対印の石油輸出増加で、戦費を上回る収入を得ている。西側の対ロシア包囲網は破綻しつつある。これではいつまでウクライナ戦争を「続けさせる」ことができるのかということが焦点になってくる。良い条件の時に停戦しなかったことは何とも悔やまれるが、今からでも遅くはない。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ支援額、アメリカが5割超…日本は0・7%で7位

読売新聞

2022/06/20 23:41

https://www.yomiuri.co.jp/world/20220620-OYT1T50018/

 【ロンドン=池田慶太、ワシントン=田島大志】ロシアの軍事侵攻を受けるウクライナに対し、西側諸国が表明した支援額の5割超を米国だけで占めることが、ドイツの調査研究機関「キール世界経済研究所」の集計でわかった。各国が約束した支援が滞っている実態も判明しており、迅速な実行が課題となっている。

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日本は7位

 キール研究所は、先進7か国(G7)や欧州など37か国と欧州連合(EU)を対象に、侵攻開始1か月前の1月24日から6月7日までに表明された軍事・財政・人道分野の支援額を集計、比較した。

 各国の支援総額は783億ユーロ(約11兆円)に上り、国別では米国が427億ユーロ(55%)、英国48億ユーロ(6%)、ドイツ33億ユーロ(4%)などと続いた。日本は6億ユーロ(0・7%)で7位だった。

 米国は射程の長い 榴弾りゅうだん 砲や、高機動ロケット砲システム(HIMARS)など最新兵器の支援を次々と表明している。軍事物資購入に充てる資金援助を含めた軍事分野の支援額(240億ユーロ=約3・4兆円)は、日本の今年度防衛予算(5・4兆円)の半分を超える。

到着遅れ課題

 だが、兵器・弾薬支援の遅れも目立つ。キール研究所が公開情報を分析したところ、ウクライナに実際に届いた米国の兵器・弾薬は、約束した分の48%(金額ベース)にすぎず、ドイツはさらに低い35%だった。37か国全体でも69%にとどまるという。

また、ウクライナ政府に対する財政支援は総額309億ユーロが約束されたものの、支払われたのは2割弱だった。軍事侵攻の長期化はウクライナ財政を圧迫しており、国際通貨基金(IMF)は、兵士の給与や年金の支払いで毎月50億ユーロの外部資金が必要だと指摘する。支援がさらに遅れれば、政府機能がマヒしかねない。

限界指摘も

 国内総生産(GDP)比でみると、支援額では13位(2億ユーロ)のエストニアが0・87%と最も高く、ロシアと地理的に近い東欧、バルト諸国が上位を占めた。特にポーランドは、支援額が米英独に続く4位(GDP比では3位)で、ウクライナから多くの難民も受け入れており、貢献が際立っている。

 対照的に独仏伊は対GDP比では0・1%未満と低い。EUと加盟27か国の支援額を合わせても、米国の7割に届かない。キール研究所は「米国の支援が、激しい戦闘が間近で起きているEU加盟国の総額を上回るのは驚くべきことだ」と指摘する。

 ウクライナ侵攻以来、世界のエネルギー、食糧価格の高騰が各国の財政を直撃する中、支援をいつまで続けられるかも議論され始めた。英国のジョンソン首相は18日、地元メディアに「世界各地で『ウクライナ疲れ』が起き始めていることは懸念だ」と語った。米国でも、国内のインフレを背景に、支援の限界を指摘する声が出ている。

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ウクライナ国内でアメリカからの資金が流れている場所はここだ(Here’s where US money is flowing in Ukraine

ブラッド・ドレス筆

2022年4月28日

『ザ・ヒル』

https://thehill.com/policy/finance/3469118-heres-where-us-money-is-flowing-in-ukraine/

ロシアが2022年2月24日にウクライナへの侵攻を開始して以来、アメリカはいくつかの同盟諸国とともに、ウクライナ国民とウクライナ軍を支援するためにさまざまな形での支援を約束してきた。

アメリカは3月にウクライナへの経済、人道、軍事支援として136億ドルのパッケージを承認した後、ウクライナにとっての最大の支援者となったが、現在ではほぼ使い果たされている。

バイデン大統領は木曜日、9月までのウクライナ支援のため、連邦議会の承認が必要な330億ドルの追加パッケージを要求した。

これまでに承認されて支出されたアメリカ・ドルは、ウクライナの経済と国民を支援し、首都キエフ周辺のロシア軍を食い止める手段をウクライナ軍に与えることで、ウクライナを後押ししている。

これまでに承認された資金の内訳とウクライナ支援のために使われる場所は以下の通りだ。

●軍事・安全保障(Military/Security

ウクライナに提供されたアメリカの資金の大部分は軍事・防衛費に割り当てられている。

ジョー・バイデン政権は大統領就任以来、ウクライナへの安全保障支援に40億ドルを支出したが、この中にはロシアの侵攻以来34億ドルも含まれている。さらに30億ドルがアメリカ軍のヨーロッパ司令部の作戦に承認された。

米国防総省はヘリコプター、対空ミサイル、榴弾砲など、様々な軍備や兵器をウクライナに提供してきた。

■軍事車両(Military vehicles

4月22日現在、ウクライナには155mm榴弾砲を牽引する戦術車72台、Mi-17ヘリコプター16台、装甲多目的車数百台、M113装甲兵員輸送車200台、無人沿岸防衛船などが供給されている。

■装備と武器(Equipment and arms

1400以上の対空システム、2万以上の対装甲システム、700台以上のスイッチブレイド・ドローン、90台の155mm砲榴弾砲が安全保障支援に含まれている。

また、7000丁の小火器と5000万発以上の弾薬、7万5000セットの防護服とヘルメット、レーザー誘導ロケットシステム、レーダー、C-4爆薬も含まれている。

■その他(Other

通信システム、暗視装置、衛星画像サーヴィス、生物・核・放射性物質防護装置が供与されている。

●経済(Economy

これまでに承認された10億ドルの経済安全保障支援は、ウクライナの様々な部門に流れ込んでいる。

バイデンは、資金がウクライナ国内の地元の共同体や労働者に向けられていることを強調している。

バイデン大統領は4月21日、「これはウクライナ政府が経済の安定を助け、ロシアの猛攻撃によって荒廃した地域社会を支援し、ウクライナの人々に不可欠なサーヴィスを提供し続けている勇敢な労働者に支払うために使える資金だ」と述べた。

ジャネット・イエレン米財務長官は、経済援助は従業員の給与や年金を支払い、その他の社会プログラムを支援することで、ウクライナ政府の運営を維持することになると述べた。

3月の支援策には「ウクライナのマクロ経済的ニーズ、エネルギーやサイバー安全保障などの政府の取り組みの継続、または近隣諸国のニーズのいずれか」を支援するために20億ドル近くが含まれていた。

●人道支援(Humanitarian aid

米国国際開発庁(USAID)によると、アメリカはこれまでウクライナに3億100万ドル以上の人道支援を実施してきた。

3月10日、USAIDはウクライナ難民のために約5300万ドルを承認し、戦争中の国から逃れてきた人々のための世界食糧計画(WFP)の活動を支援することを決定した。

別のパッケージには、国連国際子ども緊急基金への680万ドルが含まれていた。

そして、国際移住機関への約610万ドルの援助は、HIVの治療に使われる抗レトロウイルス薬や、HIV移動検査車、薬の宅配などに使われた。

USAIDはこれらに加えて、国際赤十字に2万800ドル、国連食糧農業機関に30万ドル、国連人道問題調整事務所に250万ドルの援助を発表した。

世界保健機関には約96万7280ドル、ウクライナ東部のドネツク、ルハンスク両地域のウクライナのパートナー支援に1160万ドルが支出された。

国務省は更に、国連難民高等弁務官事務所やその他のパートナーのために9300万ドル以上を費やした。

USAIDと国務省の残りの資金は、ハンガリー、ベラルーシ、ルーマニア、モルドバ、ポーランド、スロバキア、その他のヨーロッパにおける関連する人道的対応に使用された。

3月のパッケージでは、紛争を支援するための人道的および対外的な支援ニーズに対して、各機関合計で約50億ドルが承認された。

●その他(Other

3月のパッケージで承認された追加支援には、エネルギーとメディア分野への資金が含まれている。

エネルギー省:ウクライナの電力網を支援するために3000万ドルを拠出する。

農務省海外農務局:ウクライナとウクライナ難民への食糧支援寄付を支援するため、「平和のための食糧」プログラムに1億ドルを拠出する。

商務省:経済・貿易関連の分析、執行、調整のために2210万ドルを拠出する。

司法省:サイバー犯罪の脅威や制裁措置の執行、紛争に関連するその他の事件や捜査に取り組む司法省のウクライナ対策本部とFBIを支援するため、5490万ドルを拠出する。

財務省:ロシアに対する制裁措置の実施、その他の金融措置の実施、情報支援、ウクライナ支援のための対策本部を支援するために3月のパッケージで6100万ドルが承認された。
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※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 日本だけではなく、世界の大多数の人々はヴォロディミール・ゼレンスキーという名前を知らなかったと思う。ヨーロッパ政治に関心がある人たちはそうではなかっただろうが。また、アメリカ政治に関心がある人々であれば、「ドナルド・トランプ前米大統領が、ウクライナ国内でのジョー・バイデンと息子のハンター・バイデンの動きについて圧力をかけた相手」として名前が出てきて覚えていた人も多いだろう。しかし、2022年2月24日のウクライナ戦争勃発以降、今や世界中で知らない人はいないような有名人となった。

 ウクライナ戦争は2022年2月24日に始まったが、ウクライナはロシアをめぐって不安定な状況にあった。2014年にクリミア半島はロシアに併合され(西側諸国はそれを認めていない)、ロシア系住民が多い東部地方では分離主義勢力が自治を行ってきた。ウクライナ軍とアゾフ大隊はこうした状況に対処してきた。

 バイデン大統領になり、アメリカはウクライナ支援を明確化した。昨年は2度の電話会談の後(4月と6月)、9月1日にバイデン大統領とゼレンスキー大統領は直接会談を持った。ホワイトハウスを訪問し、アメリカの大統領と直接会談を持つことは、ゼレンスキーとウクライナ側の「悲願」だった。アフガニスタンからのアメリカ軍撤退とそれをめぐる混乱から、会談の日程が変更されたこともあったが、ゼレンスキーにとっては大きな前進ということになった。この当時から対ロシア侵攻を想定して、軍事支援が行われていた。それ以前に、2014年以降で、ウクライナには合計で46億ドル規模の支援が実施されていた。年で割ればおおよそ6億5000万ドル、だいたい750億円の軍事支援が実施されてきたことになる。ロシアからの観点からすれば、これは大きな脅威だ。国際関係論で言えば「安全保障のジレンマ(security dilemma)」ということになる。

 昨年、アメリカは外交上、パッとしなかった。アフガニスタンからの撤退をめぐってはタリバンが復権する結果になり、「何のために大きな犠牲を払ってアフガニスタンに侵攻し、駐留したのか」ということになった。アメリカへの信頼性を大きく損なうことになった。そうした中で、ウクライナ戦争が起きた上は、ヨーロッパの同盟諸国に対してのアピールもあって、アメリカはウクライナを支援し続けることになる。しかし、アメリカの国力は大きく低下している。そうした中で、いつまで続くのか、続けるのか、ということがアメリカで議論されることになるだろう。そして、「何故早く停戦させなかったのか」という大きな疑問が西側諸国の指導者たちに突きつけられることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ウクライナ大統領はホワイトハウスを訪問しバイデンと会談を持つという数年にわたる追求を達成(Ukrainian President accomplishes years-long quest for a White House visit with Biden meeting

ミーガン・ヴァスケス、ケヴィン・リブタック筆

2021年9月1日

CNN

https://edition.cnn.com/2021/09/01/politics/ukraine-volodymyr-zelensky-biden-white-house/index.html

CNN発。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は水曜日、ワシントンでジョー・バイデン大統領と会談し、一時は米国政治の中心的な話題となった、ゼレンスキーのホワイトハウス訪問を確定させるための数年にわたる闘いを終結させた。

待望されてきた会談は、2019年に就任して以来、アメリカの支持を求めてきたゼレンスキーにとって、大きな意味を持つ可能性がある。ゼレンスキーは大統領就任直後に、当時のドナルド・トランプ大統領から祝福の電話を受け取ったが、トランプはゼレンスキーにバイデンとその息子ハンターを調査するようにと迫った。この電話は、連邦上院が当時の大統領を職権乱用と議会妨害で無罪とする前に、連邦下院によるトランプ大統領の最初の弾劾の核心となった。

ゼレンスキーとバイデンの両者がその歴史的な最初の弾劾に巻き込まれてから約2年後のホワイトハウスでの会談で、東ヨーロッパの指導者ゼレンスキーが新政権との関係について新しいトーンを直接示す機会となった。

水曜日の午後遅く、連邦議会議事堂で、ウクライナ大統領は弾劾について、そしてアメリカ・ウクライナ関係が改善されたかどうかについて質問された。

ゼレンスキーは「ウクライナは悪名ではなく、良いことで知られていて欲しい」と答えた。

水曜日午前にホワイトハウス大統領執務室で、ゼレンスキーは報道陣の前でバイデン政権に大きな要求をした。その中には、ウクライナのNATO加盟の可能性についてアメリカの意見を聞くこと、ウクライナのドンバス地方での和解に向けたアメリカの役割の可能性を高めること、ドンバスで投獄されている数百人を解放するためにアメリカの支援を要請することなどが含まれている。

ゼレンスキーは「私は私たちの関係について非常に大きな議題を持っているが、おそらくこの会談は全ての質問に答えるには短すぎます」と述べ、ウクライナの安全保障問題が会談の優先事項になるだろうと付け加えた。

アメリカの長期的な外交政策のアプローチに関する疑問は依然として宙に浮いている。

トランプは、世界におけるアメリカの長年の外交的役割に挑戦し、「アメリカ・ファースト」を掲げると断言した国家主義的なプラットフォームを構築し、クリミアをめぐるウクライナとの係争で攻撃性をエスカレートさせているにもかかわらずしばしばロシア側についた。バイデンはアメリカの外交が復活したと主張しているが、同盟諸国でさえ、それがいつまで続くのか疑問に思っている。特にアメリカのアフガニスタンからの撤退をきっかけにそのような疑問が募っている。

バイデンは、「アメリカは、ロシアの侵略に直面しているウクライナの主権と領土の保全に引き続きしっかりと関与(コミット)し、ウクライナのヨーロッパ・大西洋への希望を支持する」と述べた。彼はまた、アメリカとウクライナは「同じような価値体系を持っている」と述べた。

バイデンは、アメリカが「ウクライナが民主的な改革課題を進め、ヨーロッパに完全に統合される方向に進んでいるので、引き続き支援する」と示唆した。そして、水曜日の午後に出された両国の共同声明でも、アメリカのウクライナとの連帯が強調された。

共同声明の中では、「21世紀において、国家が力によって国境を引き直すことは許されない。ロシアはウクライナでこの基本ルールを破った。アメリカはロシアのクリミア併合と称するものを認めず、今後も認めない」と強調されている。

●水曜日のホワイトハウス訪問の詳細

バイデン政権高官たちは、ホワイトハウスでの会談は、ウクライナの主権と領土保全に対するアメリカの関与(コミットメント)を示すためのものであると述べ、月曜日の記者との電話会談で、「ウクライナが独立を達成して以来30年間、私たちの戦略的パートナーシップが今ほど強くなったことはない」と述べた。

バイデンは大統領執務室で、6000万ドルの新たな安全保障支援を正式に発表した。電話会談に同席した当局者たちは、この支援には新しいジャベリン対装甲ミサイルが含まれると述べた。バイデンは、ロシアの侵略行為が続く中、地域の安全保障情勢について最新情報を得る見込みだという。また、ゼレンスキー大統領には、汚職をターゲットにした自国の改革を行うよう圧力をかけるだろう。

ウクライナ政府と密接な関係を持つ、あるアメリカ企業の関係者は、NATO加盟と防衛協定が最重要課題だと指摘した。

防衛協力とゼレンスキーの改革アジェンダの他に、エネルギーも大きな話題として浮上するだろう。バイデンは、ロシアのパイプライン「ノードストリーム2」の完成後、ウクライナのエネルギー部門への支援を強化することを期待している。ウクライナの指導者ゼレンスキーは以前、アメリカがノードストリーム2の制裁を緩和することは、ロシアにとって勝利であり、バイデンにとっては個人的な損失であると考えていると発言したことがある。

水曜日午後、連邦議会ウクライナ議連との会談後、ゼレンスキーは通訳を介して記者団に対し、バイデンとロシアのパイプラインであるノードストリーム2の「セーフガード」について議論したと述べ、一方でそのセーフガードの詳細はまだ策定する必要があるとも語った。

アメリカは共同声明で、ウクライナへの新型コロナウイルス感染拡大対策支援を拡大し、「コールドチェーン貯蔵支援と、アメリカ救済計画法から引き出した新型コロナウイルス関連の追加支援1280万ドルを提供する」と発表した。アメリカは既にウクライナに220万本近い新型コロナワクチンを寄贈している。アメリカは今年、ウクライナへの人道支援として4500万ドルを追加で提供し、さらに「民主政治体制、人権、地方統治と地方分権、民営化、司法改革に焦点を当てたプログラムを含む」開発支援に4億6300万ドル以上を割り当てる予定である、と共同声明で述べている。

火曜日には、エネルギー省のジェニファー・グランホルム長官とウクライナのエネルギー大臣ヘルマン・ガルシチェンコが、ゼレンスキーと並んで、エネルギーと気候に関する戦略的対話に署名した。ゼレンスキーとアンドレイ・タラント国防相も火曜日にペンタゴンを訪問し、アメリカとウクライナは戦略的防衛枠組みに署名した。

●長年にわたり待ち焦がれられていた会談

この夏初め、ゼレンスキーはバイデンに、アメリカ大統領がスイスのジュネーブでロシアのプーティン大統領と会談する前に、直接会談を行うよう懇願した。結局、ホワイトハウスはこの要求を拒否し、代わりにワシントンで夏の会合を開くことを選んだ。

バイデンはジュネーブでプーティンと会談した際、ウクライナを最重要視することを示唆し、「ウクライナの主権と領土の一体性に対するアメリカの揺るぎない関与を伝えた」と後に述べた。

ゼレンスキーとバイデンの会談は、当初火曜日に行われる予定だったが、8月31日がアフガニスタン戦争の最終日となることが明らかになったため、日程が変更された。

アメリカ企業の関係者たちは、当初7月下旬を目処に予定されていた訪問の日程がずれたことについてキエフは不満を持ち、また、ノルドストリーム2に関する動きやバイデンがゼレンスキーとの会談前にプーティンと会談したことから、ウクライナに対するアメリカの支援の強さを懸念する声が上がっていたと述べた。

バイデン政権のある高官は月曜日の電話会談について「二人の国家元首を引き合わせることは複雑で動きの速いプロセスの結果だ」と語った。そして、「私たちは、この会談がそれに値する注目を浴びることを望んでいる。双方が議論すべき問題は多岐にわたるので、水曜日にそのための時間と空間を持てることを本当に楽しみにしている」と述べた。"

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ゼレンスキー氏が(ついに)ワシトンを訪問(Mr Zelensky (finally) goes to Washington

アンソニー・ザーチャー筆

2021年9月1日

BBC

https://www.bbc.com/news/world-us-canada-58414184

政治の世界では、1年とは一生に相当する。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と聞いてピンと来ない読者も多いだろうが、この2年はおそらく1世代分の寿命に相当する。

ゼレンスキーは2年前、ドナルド・トランプ大統領(当時)から「頼みごと」をされた。それは、ホワイトハウスへの立候補を表明したばかりのジョー・バイデンについて、ウクライナ政府が調査していると発表するというものだった。その見返りは、ゼレンスキーのワシントン訪問と軍事援助を得ることだった。

トランプは望んでいた発表を得られず(彼の要求は代わりに彼の弾劾を引き起こした)、ゼレンスキーは今日までワシントン訪問ができなかった。大統領執務室でバイデン現大統領とともに写真撮影をするということができていない。ゼレンスキーにしてみれば、バイデンは自分が攻撃して撃沈するように頼まれた、トランプ前大統領の選挙運動の相手ということになる

会談の公開部分は、通訳が必要だったこともあり、入念に台本が作られたように感じられ、バイデン大統領の厳格な管理体制を反映するものだった。アメリカの国家元首としてのトランプ大統領の自由奔放な日々は明らかに終わっている。

バイデンは、ウクライナのソ連からの独立30周年に言及し、アメリカは「ロシアの侵略に直面しても、ウクライナの主権と領土の完全性にしっかりと関与し続ける」と付け加えた。また、米国は昨年の4億ドルに加え、6000万ドルの援助をウクライナに送る予定であることを改めて強調した。

ウクライナ大統領側は、バイデンが「世界とアメリカにとって困難な時期」に面会することに同意したことに感謝の意を表した。実際、会談は当初月曜日に予定されていたが、バイデンがアメリカのアフガニスタン撤退の最後の時間に集中できるようにと、2度延期された。

今回が初めての直接会談であるが、バイデンとゼレンスキーは今年に入って2度、4月と6月(ロシアのウラジミール・プーティン大統領とバイデンの米露首脳会談の直前)に電話会談を持っている。

しかし、ゼレンスキーのホワイトハウス訪問は、単なる社交辞令にとどまらない。多くの外国人指導者と同様に、ウクライナ大統領も、アフガニスタン撤退がアメリカの国際公約にとって何を意味するのか、アメリカが同盟国を守るという前提をまだ信頼できるのか、懸念を持っている。

バイデンは、火曜日の午後に行われた演説で、アメリカはアフガニスタンに「重要な国益」を持っていないと述べた。ゼレンスキーは、バイデン大統領がウクライナについて同じように感じているのかどうか、疑問に思っているかもしれない。

ロシアが旧ソ連の旧共和国に圧力をかけるキャンペーンの一環として、この疑問を際立たせた。

ロシア安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記は2週間前にロシアの『イズベスチヤ』紙の取材に対して次のように答えた。「アフガニスタンがNATO以外のアメリカの主要な同盟国という地位にあるということであったが、カブールから追放された親米政権の意図人はそれで救われただろうか? ウクライナでアメリカに賭けている人たちにも、同じような状況が待っている」。

バイデンが副大統領時代、ウクライナの独立を声高に擁護していた。例えば、ロシアがウクライナを迂回して天然ガスを直接ヨーロッパに輸出するためのガスパイプライン「ノルドストリーム2」がほぼ完成しているが、これに対する制裁を断念したことである。

ゼレンスキーは今日、パイプラインと、ロシアが支援するウクライナ領土への継続的な軍事侵攻、そして自国のNATO加盟の(一見おぼつかない)見込みを持ち出すと述べた。

バイデンは、火曜日の演説の後半で、アメリカがアフガニスタンから撤退することで、20年前の脅威ではなく、将来の脅威に外交政策の焦点を合わせることができるようになると強調した。そして、彼は特にロシアを挙げ、喫緊の懸念事項の一つだと述べた。

しかし、ウクライナの指導者は、その言葉が継続的な行動を伴うものであることの証拠を待っている。

その一方で、大統領に当選して2年後に、自分の名前がアメリカ国内の新聞の一面トップで見出しに載るよりも、より大きな政治的な脚光を浴びるようになったことで、ゼレンスキーはホッとしているだろう。たとえウクライナ大統領が、アメリカ人に自国の問題を完全に忘れてほしいとは思っていなくても、それはおそらく、より快適な場所ということになる。

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ゼレンスキーの訪問を前にしてアメリカはウクライナに対して6000万ドルの軍事支援を約束(US pledges $60M in military aid to Ukraine ahead of Zelensky visit

ロウラ・ケリー筆

2021年8月31日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/570194-us-pledges-60m-in-military-aid-to-ukraine-ahead-of-zelensky-visit/

ジョー・バイデン大統領は、水曜日に行われるウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領との初の直接会談を前に、ウクライナに6000万ドルの軍事援助を行うことを約束した。

バイデンは連邦議会に送った通知でこの発表を公式に行い、軍事支援パッケージは「重要な国境警備と自衛のニーズ」のためであり、増大するロシアの侵略からウクライナが自らを守るのを助けるものであると述べた。

通知の中には「ロシアのウクライナ国境沿いの軍事増強は、ウクライナ軍のロシアの侵略に対するウクライナ軍の防衛能力の不足を浮き彫りにしている」と書かれている。

通知には続けて「現在のロシアの脅威を考慮し、抑止力を強化するために、ウクライナの著しい能力不足に緊急に対処しなければならない」とも書かれている。

ホワイトハウスからの通達はまた、9月中旬に予定されているロシアとベラルーシの軍事演習についても懸念を示している。同通知は、「ロシアはこのような演習を隠れ蓑にして、近隣諸国に対して攻撃的な行動をとってきた歴史がある」と指摘している。

ホワイトハウスが提案した援助パッケージには、対装甲ミサイルシステム「ジャベリン」、救急キット、小火器・弾薬などが含まれることになっている。また、「対無人航空機システムや対モルタルレーダーなどの能力も、間接火や空中からの脅威から重要な早期警告を提供することができる」と書かれている。

AP通信がバイデンの連邦議会への通知について最初に報じた。

バイデンは当初、先週ホワイトハウスでゼレンスキーと会う予定だったが、アフガニスタンからのアメリカ軍撤退が混乱する中、会談は延期された。

この軍事パッケージを発表するメモが金曜日にホワイトハウスによって初めて公表され、バイデン大統領は「ウクライナへの支援を行うために国防総省の防衛用品やサーヴィス、軍事教育や訓練において最大6000万ドルの引き揚げを指示し、そのような引き揚げを指示するために当該条項に基づいて必要な決定を行う」と連邦議会に通告している。

ウクライナへの軍事支援は、ロシアの侵略、特にロシアに支援された分離主義勢力に対するウクライナ東部での進行中の戦闘に対抗するためのアメリカの努力の重要な側面と考えられている。ロシアは2014年からウクライナのクリミア半島を占領しているが、国際社会はこれを違法な併合と非難している。

バイデン政権はウクライナとの連帯をアピールしようとしているが、ウクライナが地政学的脅威とみなすロシアの天然ガスパイプラインの使用を認めるドイツとの合意をめぐって、ワシントンとキエフの間に亀裂が走っている。

バイデンは就任以来、6月にジュネーブで行われたロシアのプーティン大統領との注目の会談を前に、ゼレンスキーと2回電話で会談している。

アメリカによるウクライナに対する軍事支援は、トランプ政権時代、前大統領が2019年に、当時民主党の有力大統領候補だったバイデンとその息子ハンター・バイデンが、ジョー・バイデンが副大統領だったオバマ政権時代にウクライナでのビジネス取引について調査を開始するようウクライナに圧力をかけたという容疑で弾劾され、政治の大嵐の中心となっていた。

その推定4億ドル規模の軍事支援パッケージは、結局、期限を前倒しして交付された。トランプは連邦上院の弾劾裁判で無罪となった。

アメリカは2014年以降、ウクライナに安全保障分野と非安全保障分野を合わせて46億ドルを援助している。

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バイデンがウクライナ大統領をホワイトハウスに招待(Biden invites Ukraine’s president to the White House

モーガン・チャルファント筆

2021年6月7日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/557172-biden-invites-ukraines-president-to-the-white-house/

ジョー・バイデン大統領は月曜日、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と話し、この夏にゼレンスキー大統領をホワイトハウスに招待し、ロシアのウラジミール・プーティン大統領との重要な会談を前に、ウクライナへの支援を表明した。

ホワイトハウスの国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンは月曜日、記者団に対して「バイデン大統領とゼレンスキー大統領は長時間にわたって話す機会を持ち、アメリカ・ウクライナ関係における問題全てについて話した。バイデン大統領はゼレンスキー大統領に対し、バイデン大統領はウクライナの主権と領土の保全、そして今後の希望についてしっかりと立ち向かうと伝えることができた」と述べた。

サリヴァンは続けて「バイデン大統領はまた、バイデン大統領がヨーロッパからアメリカに戻った後、この夏にワシントンのホワイトハウスに彼を迎えることを楽しみにしていると伝えた」とも語った

バイデンは水曜日、大統領として初の外遊先としてヨーロッパに向かう予定だ。イギリスでG7Group of Seven)諸国と会談し、ブリュッセルでNATO首脳会議に出席して欧州の指導者たちと会い、最後にジュネーブに移動して6月16日にプーティンと直接会談する予定である。

週末に公開された『アクシオス』誌とのインタヴューで、ゼレンスキー大統領はバイデンに来週のプーティンとの会談の前に自分に会うように促した。

バイデンがヨーロッパ訪問前にゼレンスキーに電話したのは、ホワイトハウスがウクライナへの支持を示すための努力であり、バイデンがプーティンとの会談でウクライナを擁護し、ロシアによるクリミア半島の占領継続について懸念を示すことを示唆するものであった。

バイデンは4月に一度ゼレンスキーと話し、特に今年初めにロシア軍がウクライナの国境に集結したことから、ロシアのウクライナにおける侵略についてプーティンに懸念を表明している。

ゼレンスキーが会談を訴えたにもかかわらず、サリヴァンはプーティンとの首脳会談の前にバイデンが会談するとは述べなかった。

両首脳の話し合いの内容について更に詳細を求められたサリヴァンは、バイデンとゼレンスキーはウクライナの安全保障を含む「アメリカ・ウクライナ関係の重要な側面について基本的に全て」話したと述べたが、それ以上の具体的な説明は避けた。

ゼレンスキーは2019年の当選以来、まだホワイトハウスを訪れていないため、夏の間のバイデンとの会談が初めてとなる。

ゼレンスキーは、トランプ大統領が当時の大統領選挙候補者バイデンと息子ハンターのウクライナでの取引を調査するようウクライナ大統領に迫ったことが内部告発で明らかになり、トランプ前大統領の初の弾劾捜査に巻き込まれた。

連邦下院民主党は弾劾裁判の中で、トランプがホワイトハウスでの会談を武器代わりにしてゼレンスキーにバイデン親子を調査するよう迫ったと主張した。

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 古村治彦です。

 今回は少し難しい話になる。と言っても、「そんなことは当たり前ではないか」ということでもある。そして、「学者たちは物事をどんどん細かくしていって、かえって物事が見えなくなり、大きな理解ができなくなっているんだ」ということが分かってもらえる話になると思う。

 政治学という学問は大きなくくりであり、その中に様々な学問分野がある。方法論、比較政治、政治思想、日本政治やアメリカ政治など一国の国内政治、国際関係論といった分野が存在する。そして、それぞれの中でまた細分化がなされている。政治学の教授もしくは研究者というのは政治学全体の大隊の知識は持っているが、当然のことながら自分の専門を深く研究することになる。そうなると、たこつぼ的な状況が出てきてしまうのは仕方がない。医学を例にして考えてみても、内科から外科、泌尿器科、産婦人科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科などなど多岐にわたる。それぞれを全て極めた医師は存在しなのではないかと思う。

 政治学に統合されたアプローチが必要という議論がある。これは理解できることであるが、これは非常に難しいことだ。政治学を含む社会科学の目的とは、社会で起きる様々な現象を分析し説明することから最終的には法則の発見であるが、これは大変に難しい。法則とは全ての環境で機能するもので、これが分かれば「予測」ができるということになるが、人間が絡む社会においてはそのような予測は難しい。統合されたアプローチは今のところ不可能である。

 ただ、政治という人間の営為ということになればそうも言ってはいられない。国家を運営する、政策を立案し、実行するということになれば、諸理論に経験や知識をプラスして、「大戦略」を作らねばならない。専門家のような狭く深い見方ではなく、深さは少なくても広さは気宇壮大なものであるべきだ。

 アメリカの外交政策や安全保障政策分野で考えてみると、弁護士や外交官として経験を積み、もしくは研究者として研究をしながら、抜擢されて国務次官補代理や国防次官補代理になって外交や安全保障の分野で経験と専門性を高め、評価を高めていくパターンが多い。そうした中で、専門性と知識と経験を高め、より多くの材料や要素を取り入れながら、また時には多くの材料を取捨選択しながら、政策を立案し、政策判断を下すということになる。

 日本に「大戦略」があるだろうか? 残念ながら見当たらない。場当たり的でかつアメリカの言いなりになっておけばよいということが大戦略の代わりになっている。しかし、それではアメリカの衰退が進む中で、羅針盤がない中で公開をする船と同じになってしまう。つまり、どこの港にも着けないということになる。

(貼り付けはじめ)

大戦略は十分に壮大ではない(Grand Strategy Isn’t Grand Enough

―世界最高の国家安全保障の専門家たちは、外交政策のあらゆる側面を研究することを知っている。しかし、それだけでは十分ではない。

アラスディア・ロバーツ筆

2018年2月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2018/02/20/grand-strategy-isnt-grand-enough/?utm_content=bufferf8a38&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

大戦略(Grand Strategy)は、外交政策と国家安全保障の専門家たちにとってよく知られている概念だ。大戦略の意味は長年にわたり膨張してきた。専門家の中には、肥大化しすぎてもはや役に立たないと考える人もいる。しかし、それは間違いである。大戦略の本当の問題は、それが十分に壮大でない(not grand enough)ということだ。

19世紀、大戦略とは実際に戦争をすることであった。一つの作戦地域にいる司令官は、敵を倒すための戦略を持っており、最高司令官は、多くの作戦地域に軍隊を展開するための大規模な計画を持っていた。ある文筆家は、1904年に、大戦略とは「陸上と水上にある国家の全武力」のことだと説明した。

総力戦の到来で、その概念は拡大した。エーリッヒ・ルーデンドルフ元帥が主張したように、戦争の勝利が国家の物理的、精神的な力の総動員に依存するならば、戦時計画も同様の大規模な範囲を持つべきであると考えたのである。BH・リデル・ハートは、大戦略を「社会・経済活動のあらゆる側面を戦争目的の達成に向けて指導する国家政策」と定義した。他の専門家も1942年に、「大戦略の基本は戦争と戦争が起こる社会との相互関係である」 ということに同意している。

冷戦が始まると、その概念は再び拡大した。大戦略は、依然として社会のあらゆる資源を動員することに関係していた。しかし、その目的はより曖昧になった。2度の世界大戦期間中、各国首脳は実際の戦争に関心を寄せていた。対照的に、第二次世界大戦後、各大国は数十年にわたる地位の優位をめぐる争いに巻き込まれた。このように、今日の大戦略は、トーマス・クリステンセンが定義するように、平時においても戦時においても「力と国家の安全を高めるために設計された国内および国際政策のフルパッケージ」である。

大戦略の理論化は、実際の意思決定のあり方とほとんど関係がない、と批判する人々もいる。現実の世界では、国内政策と国際政策の適切な調整はほぼ不可能であるという議論もある。指導者たちは先見性を備えていないし、明確に定義された目標に向かって安定したコースを維持することはない。むしろ、現状維持(status quo)を変化させ、実験をし、危機から危機へ移らせることが多い。

このような批判は、ほとんど見当違いである。漸進主義(incrementalism)や実験主義(experimentalism)は、不確実性(uncertainty)や政治的党派性(political polarization)がある状況では、多くは妥当な反応ということになる。更に重要なのは、実際の政策の方向性が不規則であったり、効果がなかったりするからといって、指導者たちが戦略を軽視していることにはならないことである。戦略的に振る舞おうとしても、それがあまり得意でない指導者もいる。しかし、下手な作家がやはり作家であるように、無能な戦略家もやはり戦略家である。また、どんなに綿密な計画を立てていても、出来事によって混乱に陥ることがある。

指導者たちは状況に応じて戦略を立てなければならない。世界は激動する危険な場所であり、指導者たちは重要な利益を損なわないようにするために、外交領域を無視することはできない。指導者たちは外交に携わらなければならない。それぞれの決断は、目的と手段、そして他の決断への影響について、何らかの計算(some calculation)によってなされなければならない。これらは、大戦略の基本である。専門家は戦略の質を高めようとするが、指導者たちが戦略的に行動しようとする衝動は既に存在している。

しかし、ここに難しさがある。国内政治の世界もまた同様に裏切りの世界だ。現実主義の大御所マキャベリは、君主は二つの恐怖を持たねばならないと警告した。「一つは臣下に由来する内なる恐怖、もう一つは外国の権力に由来する外なる恐怖」である。民主政治体制国家では、内政に不手際を起こした指導者たちは次の選挙で放り出される。独裁国家では、クーデター(coups)で倒される。また、不器用な指導者は、突然、国家が崩壊していることに気がつくこともある。外交の危機が指導者たちを戦略に向かわせるのなら、内政もまたその通りである。

これは容易に想像がつく。指導者たちは、秩序、繁栄、正義、そして自らの任期中の生存といった、国内の重要な利益に対する脅威を管理するための政治プログラムを常に洗練させている。彼らは、これらの利益を確保するために、社会的資源を動員し、政策手段を調整しようとする。言い換えれば、彼らは国内大戦略(domestic grand strategy)を策定する。指導者の中には、これをうまくこなす者もいるが、全ての指導者が大戦略策定を行うよう駆り立てられる。

これら2つの大戦略、外交分野の大戦略と国内分野の大戦略は、相互に密接に関係している。国内の平穏(tranquility at home)は経済成長に依存しており、国家の指導者たちは資源と市場を海外に求める。国内世論が揺れ動く中で、対外戦争は開始され、もしくは中止される。選挙権の拡大、福祉国家の建設、公民権の保護など、指導者たちは国内で譲歩を行い、海外でのキャンペーンへの支持を高める。主要な同盟諸国との貿易協定を強化するために、国内の規制権限が削減されるなどなどが行われる。この2つの大戦略の絡まり方のスタイルは無限大に存在する。

しかしながら、ここで私たちは概念的な問題に直面する。もし、外交と国内の二つの大戦略があるとすれば、どちらか一方が本当の大戦略ということになるのだろうか。また、指導者たちは本当にこのように考えているのだろうか。私たちはこれらの問いに対する答えを知っている。指導者たちはマキアヴェッリの言う2つの恐怖を別々の箱に入れてはいない。彼らは両方を同時に管理し、国内と海外の圧力を同時に調整する首尾一貫したアプローチ、すなわち統治のための単一の戦略(single strategy for governing)を探し求めている。

レーガン主義(Reaganism)は、国内と国外を切り離すことができない単一のドクトリンであった。クリントン主義(Clintonism)もそうだった。トランプ主義(Trumpism)、プーティン主義(Putinism)、「習近平思想(Xi Jinping thought)」も同様だ。

従来の大戦略は、決して大戦略ではない。より大きなものの一面であり、統治するための全体的な戦略である。このことを認識し、大戦略の概念をそれなりに拡張している専門家もいる。ピーター・トルボウィッツは、大戦略を「国家指導者たちが行政権力を維持・強化しようとする手段」であり、単に外交政策上の目標を追求するための手段ではないと定義している。また、アンドリュー・モナハンは最近の著書で、大戦略を「国家の利益を促進するために国家のあらゆる資源を用いることであり、認識されている敵や現実の敵から国家を守ることも含まれる」と定義している。これらの定義は、国家戦略をより広く、より統合的に見るために、分析を一段階上に進めようとするものである。しかし、結局のところ、大戦略の研究は、国家安全保障と外交政策の問題に留まっているのが通常の姿だ。

これはある程度、学問的な便宜の問題だ。学界には、国内政策と外交政策を二分する長い伝統がある。しかし、このような概念的な区分は、指導者が実際に考える方法とは関係がない。リアリズムでは、統治のための戦略についてより広い視野が求められる。

より広範な視点を持つことには3つの利点がある。1990年代に予測された市場民主主義(market democracy)が世界的に拡大し、それに収れんする(convergence)という予測は実現されていない。大国の統治戦略が再び大きく相違する時代に突入している。今後数十年間、競合する各国家戦略の利点をめぐる議論が展開されるであろう。20世紀初頭、1930年代、そして冷戦期、私たちはこれらの時代にそうした議論を経験している。どの国の改革者も、ライヴァル国のパフォーマンスに対する判断に影響を受けるだろう。その際、改革派は内政と外交を切り離して考えることはない。その際、改革派は内政と外交を分けて考えるのではなく、他国の実績を総合的に判断する。学者の役割は、このような世界的な議論を構成する手助けをすることである。私たちの理論的ツールキットが現実の会話を反映したものであれば、より効果的にこれを行うことができる。

国策に関する従来の常識が崩れた瞬間に、戦略を大きく把握することは有効だ。アメリカは今、このような瞬間に苦しんでいる。国内政策と外交政策についての古い共通理解(consensus)が崩れ、その断片を新しい構成に組み直すのに苦労している。国家政策の全体的なデザインについて話し合う必要がある。内政や外交の部分を切り離して考えるべきではない。そのためには、大戦略よりも大きな器が必要である。

広範な視野が持つ3つ目の利点は何だろうか?それは「真実性(Verisimilitude[ヴェリシミリチュード]、訳者註:英語ではtruthlikeliness)」だ。近代大戦略の父と呼ばれるマキャベリは、外交政策や内政の指針として『君主論』を書いたという訳ではない。この本は国家戦略全般の指南書(guide to statecraft in toto)だったのだ。しかし、現実主義者にとっては、この課題から逃れることはできない。指導者に区分けは許されないし、学者もそうであってはならない。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ロシアのウラジミール・プーティン大統領の「頭脳」と呼ばれるアレクサンドル・ドゥーギンという学者については日本でも報道されている。ドゥーギンの「ユーラシア主義」という考えを基にしたシナリオ通りにプーティン大統領が動いているというものだ。ドゥーギンの主張するユーラシア主義とは、ユーラシア大陸の多くの部分を占めるロシアが中国も含めて、ヨーロッパからアジア地域まで支配する帝国を構築するというものだ。これは現状、「偉大なロシア帝国」という歴史を捻じ曲げた妄想に基づいた戯言ということになる。
aleksandrdugin511

アレクサンドル・ドゥーギン

 ロシア帝国、その後のソ連は、版図は巨大であり、その軍事力も強大だった。ソ連時代にはある時期までは経済力も高かった。しかし、「世界を支配するロシア帝国」という時代はなかった。また、これからもそれはないだろう。人口が少なく、経済力も弱く、世界各国への影響力も限定的だ。一方、ロシアが支配するとした中国は経済力、軍事力、世界への影響力を見れば、ロシアを大きく凌駕する。歴史的に見ても、中国の歴代王朝、帝国は世界を支配するほどの力を持っていた。また、世界初の世界帝国はモンゴル帝国である。現在にモンゴル帝国を復活させるとすれば、それは中国であって、「タタールの軛」という言葉もあるように何百年も支配されてきたロシアではない。

 ロシアは「ヨーロッパに裏切られてきた」という強い考えがあるのだろうと私は考える。ヨーロッパが華やかできらびやかで、様々な近代的な価値観やイデオロギーを広めてきて、それらを受け入れてみたら、大失敗だったという思いがあるのだろう。その最たるものが、共産主義と革命ということになるだろう。ロシアはそれらによって汚された、ロシアらしい発展を阻害されたという思いがあるのだろう。この点は理解できる。そのために、「偉大なロシア帝国」という幻想を持つのも理解できる。そして、反西洋としての動き、ロシアの影響圏にあるべきウクライナがヨーロッパに奪われることの危機感からウクライナ戦争を起こしたということにもなる。

 ヨーロッパ諸国はロシアを恐れながら馬鹿にしてきた。そして、ヨーロッパの一員として迎え入れるということをしてこなかった。ロシアの天然資源に依存しながら威張り腐って、「ロシアは国家体制から変革しないとね、とても私たちの仲間だとは言えませんよ」という舐め腐った態度を取ってきた。ヨーロッパの反ロシア感情は理解できるが、冷戦が終わった段階でNATO(旧ソ連を標的とした軍事同盟)を解体できなかったことが現在の状況を生み出したとも言える。

 ロシアはヨーロッパを離れ、中国のジュニアパートナーとなって、一帯一路計画に協力することで生き延びる、これしかない。

(貼り付けはじめ)

論説:「プーティンの頭脳」と呼ばれる男が描くヨーロッパの分裂と中国の没落(OpinionThe man known as ‘Putin’s brain’ envisions the splitting of Europe — and the fall of China

デイヴィッド・フォン・ドレール筆

2022年3月22日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/opinions/2022/03/22/alexander-dugin-author-putin-deady-playbook/

ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ウクライナ侵攻の前夜、ウクライナとウクライナ人の存在を否定する長々とした演説を行い、欧米諸国のアナリストたちが演説の内容が奇妙でかつタガが外れたものだと感じた。奇妙なこと、まさにそうだ。しかし、そうではない。その分析は、アレクサンドル・ドゥーギン(Aleksandr Dugin)というロシア帝国を最大限に利用するファシストの預言者の著作から直接もたらされたものだ。
ドゥーギンがロシアの指導者に与えた知的影響は、ポスト・ソビエト時代を研究している人たちにはよく知られており、中でもドゥーギン(60歳)は「プーティンの頭脳」と呼ばれることがある。彼の研究は、ドゥーギンが30年近く中心的存在であったヨーロッパの「新右翼(new right)」や、アメリカの「オルト・ライト(alt-right)」にもよく知られている。実際、ロシア出身で白人民族主義者のリーダー、リチャード・スペンサーの元妻であるニーナ・クープリアノヴァは、ドゥーギンの著作をいくつか英語に翻訳している。

しかし、ウクライナへの無差別爆撃を世界が恐怖と嫌悪の目で見ている今、ドゥーギンの致命的に危険な思想をより広く理解することが必要である。ロシアは過去20年間、彼のプレイブックを実行してきた。そしてその結果、私たちは再び世界大戦の瀬戸際に立たされることになった。

ソ連末期の衰退の産物であるドゥーギンは、失敗した現在を説明するために、神秘主義を吹き込み、権威に従順な、強力で輝かしい過去を発明する政治理論家の長く悲惨な系譜に属している。未来は、リベラルで商業的でコスモポリタンな現在(しばしばユダヤ人に代表される)から、この過去を取り戻すことにあるのだ。このような思想家は、100年前、第一次世界大戦のヨーロッパの残骸の中で全盛期を迎えていた。イタリアン・ファシズムの狂僧ユリウス・エボラ、反動的なフランス人ナショナリストであるシャルル・モーラス、アメリカの狂信的なラジオ司会者チャールズ・コフリン、そして『我が闘争』というドイツ語の本の著者がそうであった。

ドゥーギンは、ロシアの視点から、本質的に同じ物語を語っている。近代化が全てを台無しにする前に、精神的に動機づけられたロシアの人々は、ヨーロッパとアジアを一つの大きな帝国に統合し、ロシア民族が適切に支配することを約束した。しかし、アメリカやイギリスが率いる腐敗した金儲け最優先の個人主義者たちが、ロシアの運命を妨げ、「ユーラシア(Eurasia)」(将来のロシア帝国を指す彼の言葉)を衰退させたのである。

1997年に刊行された大著『地政学の様々な基盤:ロシアの地政学的将来』で、ドゥーギンはそのゲームプランを詳細に描いている。その内容は以下の通りだ。ロシアの工作員たちは、アメリカ国内の人種的、宗教的、部門的な分裂を煽り、アメリカの孤立主義的な派閥の成長を促すために活動する。イギリスでは、スコットランド、ウェールズ、アイルランドの分離主義運動やヨーロッパ大陸との歴史的な対立を悪化させることに焦点を当てた心理オペレーションが必要である。一方、西ヨーロッパ諸国は、石油、ガス、食糧などの天然資源の魅力によってロシアの方向に引き寄せられるはずである。NATOは内部から崩壊するだろう。

プーティンはドゥーギンの助言に忠実に従った。アメリカ連邦議会の廊下で窓を割る暴徒、イギリスのEU離脱、ドイツのロシア天然ガスへの依存の高まりを見て、うまくいっていると感じたに違いない。西側諸国を貶めることがうまくいったので、プーティンはドゥーギンのテキストのページに目を向け、こう宣言した。「ウクライナは領土的野心を持った独立国家であり、ユーラシア全体にとって大きな危険性を持っている」「ウクライナ問題の解決なしに、大陸政治を語ることは一般的に無意味である」と宣言している。

では、プーティンがウクライナにおける「ロシア問題」を「解決」できたとして、次に来るものは何だろうか。ドゥーギンは、ヨーロッパをドイツとロシアの勢力圏に徐々に分割し、最終的にドイツの資源ニーズを掌握することでロシアが主導権を握ることを想定している。イギリスが崩壊し、ロシアがその破片を拾い上げるとき、ユーラシア帝国は、ドゥーギンの言葉を借りれば、「ダブリンからウラジスヴォストクまで」広がるだろうということだ。

プーティンの中東への二枚舌の侵攻は、ドゥーギンの考えるモスクワ・テヘラン軸の影響を受けている。イスラエル政府は目を覚まし、サモワールの匂いを嗅いで、ロシアとの駆け引きをやめるべきだ。ニューデリーの民族主義政府を誘惑しているのは、ユーラシア帝国はインド洋まで広がっていなければならないというドゥーギンの主張の反映である。

西側諸国の意思決定者がドゥーギンの神秘的な誇大妄想を真剣に受け止めることが重要であるのと同様に、中国の習近平にとってもそれは急務である。習近平とプーティンは先月、アメリカを切り崩すための提携を発表した。しかし、ドゥーギンによれば、中国もまた倒れなければならない。アジアにおけるロシアの野望は、「中国国家の領土的崩壊、分断、政治的・行政的分割」を必要とするとドゥーギンは書いている。極東におけるロシアの自然なパートナーは、ドゥーギンによれば、日本である。

ある意味で、600ページに及ぶドゥーギンの著書は、一つの思想に集約される。第二次世界大戦に勝利したのは間違った同盟(wrong alliance)である。ヒトラーがロシアに侵攻しさえしなければ、イギリスは崩壊していたかもしれない。アメリカは自国にとどまり、孤立主義で分裂しただろう。日本はロシアのジュニアパートナーとして旧中国を支配していただろう。

アイルランドから太平洋まで広がるファシズム。これは妄想だろうか? あくまで幻想であって欲しい。しかし、暴君がこうした妄想を抱くとなればは現実世界にとって極めて重要なこととなる。

※デイヴィッド・フォン・ドレール:『ワシントン・ポスト』紙の隔週コラムニスト。『タイム』誌元編集長。4冊の著作を発表しており、『偉大さへの台頭:エイブラハム・リンカーンとアメリカの最も危険な年』と『三角形:アメリカを変えた火』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 古村治彦です。

 私が以前に訳した『ネクスト・ルネサンス 21世紀世界の動かし方』(講談社)の著者パラグ・カンナの論稿をご紹介する。
paragkhanna511

パラグ・カンナ
 カンナは簡単に言えば、ロシアはヨーロッパを離れ、アジアに頼ることになる、ということを述べている。それは短期的に見れば当たり前の話で、西側諸国(日本を含む)は対露制裁を科しているのだから、何も取引ができないのだからヨーロッパとの関係は切れる。一方で、アジア地域の大国であるインドと中国はロシアに対して融和的であり、ロシアとの取引を続けている。そうなればアジア(中国とインド)に寄るのが当然だ。

 更に中・長期的に見れば、ヨーロッパのような経済成長もあまり見込めない国々よりも(日本はもっと悲惨な状態であるが)、世界経済のエンジンとなっているアジア諸国(日本を除く)との関係を強化するということになるだろう。ロシアとアジア諸国(中国とインド)が結びつくことは、世界帝国の誕生ということになる。史上初の世界帝国はモンゴル帝国である。その版図はユーラシアのほとんどを覆った。中国、インド、ロシアが結びつくことで、ユーラシアに世界帝国が誕生する。それが、「西側世界対それ以外の世界(the West vs. the Rest)」の軸ということになる。ユーラシアからアフリカ大陸、南米大陸が「それ以外の世界」ということになり、北米大陸とユーラシアの西の端と東の端にへばりつく日本列島が「西側世界」ということになる。その色分けが進みつつある。これは見方を変えると、アメリカがヨーロッパと日本をバッファにして何とか抵抗しているという形になっているようにも見える。アメリカの世界支配は徐々にその範囲や度合いを縮小している(日本は例外であるが)。

 私たちは大きな世界観や歴史館、アナロジーで世界を見て、世界を獲得していかねばならない。今の日本ではそうしたことがなかなか難しい。

(貼り付けはじめ)

ロシアが「アジア・クラブ」に参加(Russia Joins the Asian Club

-ロシアのウラジミール・プーティン大統領がたとえウクライナに侵攻しなかったとしても、ロシアはアジアのシステム参加に傾いていた。

パラグ・カンナ筆

2022年3月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/03/29/russia-india-china-ukraine-war-putin-asia/

私たちはロシアによるウクライナ侵攻について次のような終着点を想像することができる。ウラジミール・プーティン大統領は、ロシアが10年近く手放さなかったクリミアへの陸橋を含むウクライナ東部の一部に対する支配を固め、ウクライナは他の地域を支配し続けるという領土的解決策である。ウクライナからの難民たちはヨーロッパの避難所から一斉に母国に戻り、この歴史上最新の祖国への侵略の後、破壊されたが誇りを持つ祖国ウクライナを残骸から再建することになるだろう。

しかし、プーティンが権力の座に座り続けるならば、プーティニズムや権威主義的な強者が気まぐれに紛争を暴力的に解決するという伝統も存続することになる。これは戦後ヨーロッパにおける秩序に対する憎悪の提示ということになるが、プーティンがますますインスピレーションと支持を求めるアジアでそうした前例がない訳ではない。

プーティンがウクライナに侵攻しなかったとしても、ロシアはアジアシステムに組み込まれる方向に進んでいる。この10年間、ロシアはアジア地域で重要な役割を果たすアンカーとなることを目指して進んできた。

ロシアはヨーロッパ評議会からの脱退を表明したが、国連では中国やインドなどアジアの大国がロシアを支持し、もしくは非難決議に棄権を表明している。自由主義的民主政治体制国家のオーストラリアや日本はNATO加盟諸国と同様にロシアの行動を強く非難している。中国とインドは多くの国境紛争を抱えるライヴァル関係にあるが、ウクライナ侵攻を非難しないという点では、事実上、ロシアを支持している点で共通している。その理由はそれぞれである。

中国は何十年にもわたってチベット人やウイグル人を弾圧してきたし、今後数年以内に台湾を侵略して占領するかもしれない。台湾は、中国の習近平国家主席が追い求める最優先の国家ヴィジョンであり、プーティンにとってのウクライナと同じ意味を持つものだ。2006年、私は、いわゆるならず者政権(rogue regimes)を封じ込めようとするアメリカの努力にもかかわらず、中国が軍事的、財政的、あるいは外交的に生命線を与えている国家全てのリストを作成し始めた。そのリストには既にヴェネズエラ、キューバ、イラン、シリア、リビア、ミャンマーが入っている

現在、私たちは自信をもってロシアをリストに加えることができる。たとえ中国が西側勢力との熱い代理戦争に関与するリスクがあるとしてもロシアを支援している。

ここ数週間、ジェイク・サリバン米国国家安全保障顧問はローマで中国の楊潔篪外交担当中国国務委員と会談した。そしてジョー・バイデン米国大統領は習近平国家主席と会談を持った。両方の機会でアメリカ側は中国に対してロシアからの支援を差し控えるよう求めた。ウクライナ戦争に味方しないとする中国の公式声明や、親ロシア派のコンテンツを検閲するソーシャルメディアキャンペーンにもかかわらず、中国は日和見主義であり、泥沼化した欧米と弱体化したロシアの両方から利益を得ていることになる。

一方、インドのナレンドラ・モディ首相は、インド国内全土で反イスラム政策を推進しながら、不安定なカシミール地方への野心を徹底して封じ込めた。特にアメリカ、日本、オーストラリアなどの反中国勢力による「日米豪印戦略対話」のメンバーであるインドの親露姿勢は、アメリカ寄りになっていると見てきた西側諸国の多くにとっては驚きでしかない。

しかし、インドと旧ソ連、そして現在のロシアとの結びつきは依然として強固であり、インドとロシアは友好的である。今回の戦争勃発を受け手、ロシアは石油を20%引きでインドに販売し、ルピーで代金を受け取ることで合意した。インドはもはや非同盟(nonaligned)ではないが、自信に満ちた国家がそうであるように、目的に応じてあらゆる方向に複数の同盟関係を維持(multi-aligns)していることは確かである。

多極化した世界では国家を孤立させることは不可能だ。ましてや多くの国々と国境を接し、強力な友好諸国を持つ大国であればそれは猶更のことだ。ロシアの行動は北京とニューデリーに望ましくない詮索と圧力をもたらしたが、ロシアのウクライナ侵攻を関係悪化の原因というより不便な事態と見ているのは中国とインドだけではない。

サウジアラビアの指導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子はバイデンからの電話には出ないが、プーティンとは数回話し、中国への石油輸出の価格を人民元建てで開始することに暫定的に合意している。中国もロシアも制裁にもかかわらずイランとの貿易を継続し、アジア・クラブへの加盟を更に強固なものにするだろう。

ウクライナ侵攻前、ロシアはアジアとの貿易を拡大する一方で、ヨーロッパからの投資をより多く受け入れていた。ヨーロッパからの投資がなくなることで、ロシアは必然的にアジア諸国の経済面での従属国(vassal)となる。ルーブルが瓦礫と化し、ロシアのお金も国民も西側諸国では歓迎されなくなったため、中国との二国間貿易が急増し、ロシアは中国からの輸入品への依存度を高めることになる。

相対的にバランスのとれた貿易を考えると、ロシアの中国へのエネルギー輸出は、もはや西側諸国から中国に売られていない商品の中国への支払いをカバーするのに十分な人民元を生み出す。銀聯ATMカードと中国越境銀行間決済システムとロシアMir決済システムの統合が加速される。ファーウェイとZTEは、ノキアとエリクソンが提供しなくなったインターネットと5G通信機器を提供する。

エネルギー分野では、クリミアの再来を目撃している。2014年にロシアがウクライナからクリミア半島を奪取した後、ロシアはエネルギー輸出を強化するために中国に目を向けることで補った。ロシアは日本海(東海とも呼ばれる)までのパイプラインを一般市場向けに建設するのではなく、中国に直接パイプラインを建設することに初めて合意し、最大の顧客である中国の価格決定権に事実上譲歩したのである。

ガスプロムの「パワー・オブ・シベリア」パイプラインは2019年に開通した。ドイツ向けパイプライン「ノルドストリーム2」が中断したことで、ロシアと中国はさらに2本の中露直接パイプラインの完成を早めることで合意したところだ。一方、今年、中国もロスネフチからのロシア産原油の購入を強化することで合意した。

アジアにおけるロシアの将来を人口統計学的な側面から見ることは困難である。ロシアの広大な東側地域は、水や食料、石油やガス、木材や金属など、考えられるあらゆる資源に恵まれている。しかし、その東側地域にはほとんど人が住んでいない。

しかし、中国やロシア国内での鉄道、工業、農業への投資は、過去30年間に荒廃した内陸部を近代化するために多くの労働者を必要としている。昨年、ロシアはインドと技術パートナーシップ協定を結び、小麦の生産量を増やすために農民や食品加工労働者を確保することに成功した。

10年以上前、私は巨大なモンゴル帝国を継承したクビライ・ハーン皇帝の元朝が、より安定した気候を求めてアジア人が北上することによって再編成されるのではないかと提案した。中国とシベリアの将来において、その可能性はますます高まっている。

この10年以上、欧米の戦略家たちは「逆ニクソン的」な外交を実現することを求めてきた。これは半世紀前にニクソン元米大統領が中国をソ連から切り離したように、ロシアを中国の軌道から切り離すということだ。ロシアが大国としての地位を維持するためには、最終的にはこのような戦略が必要になるかもしれない。しかし、西側諸国は中露分離を追求する意欲を失っている。

子供たちが地理を勉強する際、アジアとヨーロッパとの間の境界線を指し示すことが難しいことに気づく。そして、ロシアは謎の存在ということになる。良かれ悪しかれ、この議論は解決された。ロシアの人々は自分たちをヨーロッパ人だと考えるかもしれないが、ロシア国家はアジアのパワーのように振る舞い、その地理的位置づけはアジアの未来に非常に近いものである。

※パラグ・カンナ:「フューチャー・マップ」創設者兼パートナー。最新作は『ムーヴ:私たちを追い立てている力』。ツイッターアカウントは@paragkhanna
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 古村治彦です。

 日本では7月に参議院議員選挙、アメリカは11月に中間選挙(連邦上院議員の一部、連邦下院議員の全議席、州知事の一部)を控え、選挙の大きな争点は、物価高による生活の困難さになっている。「物価高を何とかしてくれ」という国民の声は大きくなっている。その原因は対露経済制裁による石油価格や食料価格の上昇であり、日本の場合にはそれに円安も加わる。円安の合わせ鏡はドル高(弱い円・強いドル)であり、円高の合わせ鏡はドル安(強い円・弱いドル)である。簡単に言えば、強い通貨の場合には輸入が有利になり、弱い場合には輸出が有利になる。現在、日本は円安となっているが、少しでも改善しようという動きにはなっていない。これは「日本がアメリカの属国である」という視点か見ると、アメリカのドル高を維持するための動きということになる。アメリカ国民の生活のために、日本国民が犠牲になる、エネルギーと食料の価格高騰と円安というダブルパンチを甘受しなければならない。属国の悲しさということになる。

 ウクライナ戦争は膠着状態になっている。そして、ここにきて「戦争疲れ(war fatigue)」という言葉が出てきた。これは特にヨーロッパで使われている言葉のようだ。日本語では「ゼレンスキー疲れ」と言っているが、これは言いえて妙だ。ただ、欧米のメディアでは「Zelensky fatigue」という言葉は使われていない。更に探せば「ウクライナ疲れ(Ukraine fatigue)」という言葉もあるようだ。西側諸国は対露経済制裁を実施して、ロシアを早期に経済的に追い込む、そのためには各国に保管してあったロシアの資産も没収するという挙に出た。しかし、ロシアは経済的に持ちこたえ、更に以下の記事にあるように、中国とインドがロシアからの石油輸入を急増させ(ロシアは現在の世界水準よりも安い価格で販売することで両国にとって利益がある)、ロシアの戦費を上回る収入を与えているということが明らかになった。一方、ヨーロッパはエネルギーをロシアに依存していたところに対露制裁を行い、ロシアもエネルギー供給を自ら制限するということになり、ドイツなどは厳しい状況に置かれている。

 ヨーロッパ各国の世論調査では「和平派(peace camp)」と「正義派(justice camp)」に分かれているようだ。「もういい加減、戦争は止めてくれないか」という声が大きくなっている。「ロシアを罰するまで止めてはいけない」という声も大きいようだが、戦争直後からすれば、だんだんと小さくなっている。

 リアリスト的な観点からすれば、現在の状況はウクライナ戦争勃発直後から予見できた。そのために、私は「ウクライナ軍が善戦してロシア軍を押し返しているうちに、できるだけ有利な条件で停戦を」と3月から書いてきた。しかし、こうした主張は少数派で注目されることもなかった。

 ここまで来ると、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領の退陣、和平推進ができる人物の登用が必要だ。しかし、こうした主張も少数派ということで取り入れられることはないだろう。そして、止めるタイミングが分からないまま、戦争は続き、西側諸国はどんどん疲弊していくということになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカ国内に“ゼレンスキー疲れ”も…長期化するロシアの侵攻、ウクライナ支援はどこまで?

6/16() 16:34配信

ABEMA TIMES

https://news.yahoo.co.jp/articles/a9df07e584d9457204fa556000eb766a2f485be8

 アメリカのバイデン大統領は日本時間16日、ロシアの攻撃に抵抗を続けるウクライナに対し新たに1340億円規模の軍事支援を行うと表明した。

 ホワイトハウスによると、バイデン大統領はウクライナのゼレンスキー大統領と電話で会談、追加の軍事支援を行う意向を伝えたという。ロシア軍が攻撃を激化させている東部ドンバス地方で抵抗を続けるウクライナ軍の防衛力強化を念頭に、ロケット弾やりゅう弾砲の弾丸などの提供が想定されている。

 これに対してゼレンスキー大統領は新たに公開した動画の中で、「アメリカの支援はドンバス地方での防衛にとって特に重要なものだ。

バイデン大統領のリーダーシップにも感謝する」と述べている。

"ゼレンスキー疲れ"?

 ロシアによる侵攻開始からおよそ3カ月半。軍幹部が「ロシアに対抗するために必要な支援のうち10%程度しか受け取っていない」と説明、ゼレンスキー大統領も連日のようにNATOやアメリカなど国際社会に武器の提供や支援を呼び掛けてきたウクライナ。

 一方、先月にはウクライナ支援として5兆円規模の予算を可決したアメリカは急激なインフレの中にあり、戦略家のハル・ブランズ氏はブルームバーグへの寄稿の中で「資金や銃の要求に欧米の指導者がうんざりするゼレンスキー疲れの危険性がある」とも指摘している。

■“重荷”のように捉えられはじめているのではないか

15日の『ABEMA Prime』には戦略コンサルタント(防衛・安保)での勤務経験を持ち、ジョージタウン大学修士課程に在籍する佐々木れな氏が出演。次のように話す。

 「現在はウクライナ東部のベロドネツクとリシャンスクの間を流れる川を挟んで両軍が対峙していて、その狭い範囲での消耗戦となっている。ただ、ここにアメリカがウクライナに武器を送れば良いかと言えば、必ずしもそうではない。

 まず弾薬が不足していること、そして整備・修理上の課題だ。例えばウクライナではメートルを使っているが、アメリカではインチが使われているので、工具が使えないといわれている。加えて官僚制度がオペレーションの改善を阻んでいる。たとえばアメリカ国防総省の組織内で決裁が下りるのに時間がかかっているという話もある。

 しかもアメリカでは中間選挙が近づいているので、国内問題に目が向きやすい時期になってきている。8.6%という40年来の驚異的なインフレ率で、私が住むワシントンD.C.でも卵1パックが日本円で1000円ほどになっている。しかも多くは車での移動なので、ガソリン価格の上昇にも不満が高まっている。最近では銃乱射事件も起きているし、バイデン政権としても票を集める上で国民が何を考えているのか、目に見えやすい政策は何かを考えざるを得ない。

 ゼレンスキーとしては西側諸国に支援を訴え続けているし、逆に言えばそれしかできない。これに対し、イギリスやドイツなどのG7、あるいは自由民主主義陣営は一定の支援を続けている。それでも自国の経済が弱体化する中、アメリカ国民の間ではいつまでウクライナ、ゼレンスキーは我々に武器や資金の援助を要求してくるんだと、いわば重荷のように捉えられはじめている部分もあると思う。実際、要求してくる武器のレベルは上がっていて、当初はジャベリン(対戦車ミサイル)だったのが、最近ではHIMARS(高機動ロケット砲システム)になってきている。こうした装備が鹵獲されることで、軍事技術をロシアに取られてしまうのは嫌だな、という気持ちもあるだろう」。

 長期化がウクライナに優勢をもたらすとの分析もあったが、佐々木氏によると、今や優勢なのはロシアだという。

"支援にも限界がある"との声も

 「“食料の武器化”と呼ばれる、ロシアによるウクライナ産小麦の輸出ブロックや友好的な国だけに輸出するといった措置によって、世界の供給と価格に影響が及んでいる。国連ではこれによって最大5000万人近くが飢饉ないし飢饉に近い状態になるのではないかと予測している。

 ウクライナ疲れ、ゼレンスキー疲れのようなものが進み、西側の援助が減っていく一方、ロシアは耐え続けている。課題があるとすれば兵員不足、特に歩兵の不足だ。ロシア軍は冷戦後に規模を縮小、平時のレベルでは大規模な通常紛争能力に欠けることが明らかになっている。これから新たにリクルーティングした兵員の投入を加速すると思うし、補給に関してもキーウ方面よりもロシアに近い東部の方が容易だ。

 ロシアとしては先ほど紹介したセベロドネツクを占領してしまえば“ルハンスク州を確保した”といった宣言ができると思うし、東部2州を押さえれば、彼らの言葉でいう解放したという説明が国内向けにできることになる。最終的にどこまで取りたいかは分からないが、少し期間をおいて南部を、ということはあり得ると思う。

■「ロシアにとって、NATOの脅威はかえって高まるのではないか」

 アメリカ出身のパックンは「第二次大戦の経験から消極的になるなど、NATOの国々がまとまらない中、単独で行動できるだけの軍事力を持っているアメリカが疲れてしまうというのはゼレンスキーのピンチにつながる。ロシアとしてもウクライナの軍事能力も含めインテリジェンスを把握できているから、こういう戦い方を続けているんだと思うし、バイデン政権が本気でロシアに対抗するというなら、ウクライナを全面支援してロシア軍を押し返すという努力を見せて、向こうに勝てるぞと思わせないようにしなければ。

 ただし皆さんに知っておいていただきたいのは、アメリカは去年8月まで戦争中だったということ。そしてインフレや銃乱射に加えて、去年1月の議事堂乱入事件の聴聞会も始まっている。センセーショナルなニュースが次から次へと起きていて、ウクライナ問題が優先されるような状況ではない。一方、ロシアがウクライナの東部2州を奪った場合、国境沿いに配備されるNATOの軍事力は強化されることになるのではないか。フィンランドの加盟の話もあるし、ロシアにとっては解消を目指してきたNATOの脅威はかえって高まるのではないか。それで本当に目的達成と言えるのか疑問が残る」とコメント。

 近畿大学情報学研究所の夏野剛所長は「もちろんバイデン大統領はトップマネジメントとして世論を気にしながらやっているだろうが、ウクライナ支援は国民に支持されている話なので、インフレや選挙によって無くなるというほど単純ではないと思う。問題はアメリカが考える“着地点”だ。もともとウクライナ東部にはロシア系住民が住んでいたわけだが、ゼレンスキーはクリミアも含めて全て取り返さない限り戦争は終わらないと言っている。そこまでアメリカやNATOが、そこまで支援ができるだろうか」と疑問を呈した。

 日本でもウクライナ侵攻に関する報道が減る中、14日の自民党外交関係部会では、現状に即したウクライナ支援を行う上で、岸田総理にキーウ訪問を求める声が浮上している。16日にはフランス、ドイツ、イタリアの首相がキーウを電撃訪問した。

岸田総理のキーウ訪問は…

 佐々木氏は「岸田総理がキーウを訪問し、自由民主主義陣営と連携をアピールすることで、日本は国際秩序にコミットメントしているということを世界に示せる。日本は中国、ロシア、北朝鮮に囲まれた大変な場所に位置している。もしウクライナと同じような状況になって他国に支援を求めた場合、“あの時、キーウに行ってなかったですよね。武器も渡さなかったですね”と言われて支援を受けられなくなるかもしれない。

 さらに言えば、私たちもロシアとの領土問題を有しているし、脅威だ。北海道周辺におけるロシアの軍事的な威圧に対して屈しないぞというメッセージを送ることもできる」と話していた。(『ABEMA Prime』より)

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ワールド

20226184:59 午前4日前更新

ウクライナのEU加盟、「全く異存ない」=ロシア大統領

https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-eu-russia-idJPKBN2NY1LN

[17日 ロイター」 - ロシアのプーチン大統領は17日、ウクライナの欧州連合(EU)加盟に全く異存はないと述べた。

プーチン氏は記者団にウクライナEU加盟の見通しについて問われ、「われわれは全く反対していない。EUは軍事同盟ではない。経済連合に加入するのは全ての国が持つ権利だ」と答えた。

ロシアは、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)への加盟には反対し続けており、西側諸国との間で大きな対立軸となっている。

プーチン氏は「ロシア版ダボス会議」と呼ばれるサンクトペテルブルク国際経済フォーラムで演説し、ウクライナには他のEU加盟国が難色を示すであろう巨額の補助金が必要だと指摘。EUのウクライナ加盟承認が「望ましい」かどうかに疑問を呈した。

欧州連合(EU)欧州委員会は17日、ウクライナとモルドバを「加盟候補国」として認定するよう勧告した。

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ウクライナの背後に結集するヨーロッパ。しかし、疲労は限界に迫っている。(Europe rallies behind Ukraine. But fatigue is around the corner.

イシュハン・サローア筆

2022年6月20日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/2022/06/20/european-union-ukraine-support-fatigue/

先週末、ウクライナにとって歓迎すべき外交上の追い風が吹いた。金曜日、ヨーロッパ連合の執行機関であるヨーロッパ委員会は、ウクライナ(および旧ソ連の隣国であるモルドヴァ)にヨーロッパ連合(EU)加盟候補国の地位(candidate status for membership to the European Union)を与えるよう勧告する意見を発表したのである。ヨーロッパの著名な指導者たちは、この決定が必要であり、主に、ロシアの侵攻が続く中、戦場でのウクライナの勇気と勇気を認める連帯の意思表示であると述べている。

ヨーロッパ委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は金曜日の記者会見で、ウクライナの国旗の色である青のブラウスに黄色のブレザーを着て、「ウクライナ人はヨーロッパの展望のために死ぬ準備ができている。私たちは彼らにヨーロッパの夢を生きて欲しいと考えている」。

その前日には、EU3大経済大国の首脳がポーランドから夜行列車でキエフに向かい、ウクライナのEU加盟への支持を表明している。フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相、イタリアのマリオ・ドラギ首相は、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領と一緒に共同記者会見に臨んだ。

ドラギ首相は、シュルツ首相の言葉遣いを繰り返し、「私たちは歴史の転換点にいる」と語った。ドラギ首相は続けて「ウクライナの人々は日々、民主政治体制と自由の価値を守り、それがヨーロッパのプロジェクト、つまり私たちのプロジェクトの柱となっている」と述べた。

ヨーロッパ連合(EU)への加盟は既成事実化(fait accompli)されたものではない。まず、EU加盟国27カ国全てがウクライナに加盟候補国の地位を与えることに同意しなければならない。そして、キエフ政府が自国の制度や規制を他の加盟国に合わせようとするため、政治的・官僚的な改正プロセスが待ち受けている。アルバニア、北マケドニア、モンテネグロ、セルビア、トルコが現在の正式な加盟候補国である。

キエフには既に失望している理由がある。キエフは、条件を付けずに早く加盟候補国になることを望んでいた。「しかし、委員会はウクライナに望む6つのステップを挙げた」と私の同僚たちは報じた。同僚たちは「その中には、適格な裁判官の選出を保証し、オリガルヒの影響力を制限するための法律を実施することが含まれている。また、汚職の調査、起訴、有罪判決に関する実績を改善するよう求めている」と述べた。

あるEU加盟国の外交官は、取材に対して匿名を条件にして、「ウクライナは以前も近くなかったし、今も近くはない」と語った。

ウクライナはロシアとの本格的な戦争の真っ只中にあるため、加盟には何年もかかる可能性が高い。また、キエフや他のヨーロッパ諸国の首都における将来の政治的発展がプロセスを頓挫させる可能性があるため、まったく実現しない可能性もある。

例えば、トルコは1999年に加盟候補国の地位を獲得し、2005年に加盟交渉を開始した。しかし、長年政権を担ってきたレセプ・タイアップ・エルドアン大統領が独裁的な欧米離れを起こし、ヨーロッパ諸国の一部ではイスラム教徒が多数を占める国家の加盟に敵意を示したこともあり、トルコの加盟の見通しは事実上凍結されたままである。

ウクライナは、そのような文明的な苦悩に直面していない。ヨーロッパの政治家や評論家たちにとって、ウクライナは一種の目標となっており、彼らはその闘争に地政学的な西側の統一と結集の瞬間を見て取った。数週間前から、ウクライナの政府関係者や国会議員たちは、より広範なイデオロギー的根拠に基づいて欧州大陸の各国政府に対して自分たちの主張を展開している。

ウクライナの国会議員であるイヴァンナ・クリンプシュ・ツィンタゼは先月、私の取材に対して、ウクライナのEU加盟はロシアのウラジミール・プーティン大統領の新帝国主義の野心への打撃となり、彼に「ウクライナは別の文明の一部であることを理解させる」だろう、と語った。

ウクライナの兵士たちは「自分たちの国土のためだけに戦っている」のではなく、ヨーロッパの自由主義的なプロジェクトを自分たちの国にも広げたいという希望を持っている、と彼女は言った。ツィンタゼは「ウクライナ人にトンネルの先にある一筋の光を与えなければならない」とも語った。

しかし、現在のところ、戦争のトンネルは長く、曲がりくねって、暗いままである。日曜日にゼレンスキーは、ロシアが重要な領土を確保しようとしているウクライナ南部の前線を視察し、戻ってきた。ゼレンスキーは「南部は誰にも渡さない」と述べた。ウクライナの劣勢な将兵が戦線を維持する中で、反抗の表明でもあるが、キエフが領土の譲歩で解決する必要があるかもしれないという他の地域からの提案に対する暗黙の拒否でもある。

ゼレンスキーの発言は、戦いの潮流がウクライナの一部でクレムリンの方向に不気味に揺れ動き、ロシアが今後数週間のうちに新たな攻勢をかける準備をしていることを思い出させるものだ。キエフを2度目に訪問したイギリスのボリス・ジョンソン首相は、ロシアがウクライナで「少しずつ前進している」一方で、西側諸国は「戦争疲れ(war fatigue)」で士気が低下していると警告を発した。

ヨーロッパ各国の要人たちの虚勢(bravado)はより脆弱な現実を裏付けている。ヨーロッパは経済的な圧力による脅威を受けている。ロシアが最近、ヨーロッパ大陸へのガス供給を大幅に減らす決定を下したことで、アナリストたちは、ヨーロッパの大部分にとって厳しく費用のかかる冬がやってくると警告している。

ヨーロッパ外交問題評議会(ECFR)が先週発表した世論調査の結果によると、ウクライナ戦争に対する見方について、欧州市民の間で2つの異なる政治的陣営が出現していることが明らかになった。一方は「和平(peace)」派で、「たとえウクライナが譲歩することになっても」戦争の早期終結を求めるとECFRは指摘している。そして、ロシアを罰し、ウクライナの領土を回復させることが平和の要求よりも優先されるべきと考える「正義(justice)」派がいる。

調査対象10カ国のうち、イタリアは前者(和平派)、ポーランドは後者(正義派)の立場が強い。ECFRのマーク・レナード所長は電子メールで次のように述べた。「生活費、難民、核のエスカレーションをめぐって分裂する可能性もあるが、戦争をできるだけ早く終わらせたい人々と、ロシアに罰を与えたい人々の間に大きな溝がある。下手をすると、ウクライナをめぐる『和平派』と『正義派』の溝は、ユーロ危機の際の債権者と債務者の溝と同じようなダメージを与えかねない」。

今のところ、ヨーロッパの指導者たちは勇気と反攻を提唱している。「NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長は週末、ドイツの『ビルト・アム・ゾンターク』紙の取材に対して、「私たちはウクライナ支援の手を緩めてはならない。「軍事支援だけでなく、エネルギーや食料の価格上昇のためにコストがどんなに高くついたとしても、だ」。

しかし、プーチンは西側の脆弱性を感じ取っているのかもしれない。「世界の政治と経済における西側の支配は不変であり、永遠だと考えている」と、サンクトペテルブルクでの会議で堂々と宣言したのだ。「しかし、永遠のものなどない」。

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中国の原油輸入、ロシア産が55%増で過去最高 サウジアラビア抜き首位に

2022620

https://www.bbc.com/japanese/61861915

中国石油化工集団が運営するターミナルに停泊する石油タンカー(浙江省舟山市)

中国が5月に輸入したロシア産原油は、前年比55%増と、ロシアが中国の原油輸入元としてサウジアラビアを抜いて首位になったことが、中国当局が20日に公表したデータで明らかになった。ウクライナ侵攻をめぐり西側諸国がロシアに制裁を科す中、ロシアが割安な原油を中国に輸出したことが背景にある。

中国税関総署のデータによると、東シベリア太平洋パイプライン経由の供給とロシアの欧州および極東の港からの海上輸送を含む、5月のロシア産石油の輸入量は合計842万トン近くに上った。

これまで中国からサウジアラビアから最も多く原油を輸入していたが、5月のサウジアラビアからの輸入高は782万トンで、2位になった。

中国は割安なロシア産原油の輸入を増やし、5月のロシア産原油の輸入が前年比55%増の過去最高を記録した。

欧州やアメリカの買い手が、侵攻をめぐる制裁に則りロシア産エネルギーを敬遠する中、国営の石油精製大手シノペックや、国営振華石油などの中国企業は大幅な値引きを提示され、この数カ月でロシア産原油の輸入を増やしてきた。

中国とロシアは2月初旬の首脳会談後の声明で、両国の友好関係に「限界はない」としていた。

アメリカとイギリスは3月、ロシア産の石油の輸入を禁止すると発表。欧州連合(EU)も、ウクライナ侵攻に対する欧米の経済制裁強化の流れを受け、ロシア産ガスへの依存を解消する方向で動いている。

ジョー・バイデン米大統領は当時、「ロシア経済の大動脈」を狙った措置だとした。

エネルギー輸出はロシアにとって重要な収入源だが、この動きは欧米の消費者にも影響を与える可能性が高い。

収入が戦費を上回る

先週には、フィンランドに拠点を置くシンクタンク「エネルギー・クリーンエアー研究センター」(CREA)が、ウクライナにおける戦争の最初の100日間で、ロシアは石油とガスの輸出によって約1000億ドル(134000億円)の収入を得たとする報告書を公表した。

それによると、この収入のうちEU61%を占めており、輸入額は約590億ドルだった。

ロシアの石油とガスは、全体としては輸出が減少している。ロシア政府のエネルギー販売による収入は、1日あたり10億ドルをはるかに超えていた3月をピークに下落している。

それでも、開戦から最初の100日間でみると、収入が戦費を上回った。CREAはロシアの戦費を、1日あたり約87600万ドルと見積もっている。

イラン産原油の購入続く

中国当局のデータでは、イラン産原油の輸入量は26万トンと、昨年12月以来3度目のイランからの出荷があったことが示された。

アメリカは核合意をめぐりイラン産の原油輸入を禁止する制裁を科しているが、中国はイラン産原油の購入を継続している。

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ワールド

20225318:22 午前22日前更新

インドのロシア産原油輸入、ウクライナ侵攻以降急増

https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-india-russia-idJPKBN2NG1OA

[ニューデリー 30日 ロイター] - リフィニティブ・アイコンのデータによると、ロシアが2月24日にウクライナに侵攻して以来、インドは3400万バレルのロシア産原油を輸入したことが分かった。

他の製品を含むロシアからの輸入総額は2021年の同時期と比較して3倍以上となっている。

世界第3位の石油輸入国であるインドは、輸入代金削減のために値崩れの激しいロシア産原油に目をつけた。

インドは今月、2400万バレル以上のロシア産原油を輸入。4月の720万バレル、3月の約300万バレルから急増。6月には約2800万バレルを輸入する予定だ。

政府統計によると、エネルギー輸入の急増により、2月24日から5月26日までのインドのロシアからの物品輸入総額は、昨年同期の19億9000万ドルから64億ドルに増加した。

西側諸国が侵攻に対して制裁に乗り出す中、インドはロシアのエネルギーを継続して輸入していると非難されているが、これらの輸入は国全体の需要のほんの一部に過ぎないとして批判を一蹴。急な輸入停止は消費者のコストを押し上げると主張し、「安価な」ロシア産原油を輸入し続けるとしている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 スティーヴン・M・ウォルト教授の論稿をご紹介する。ウクライナ戦争が始まって以来、西側諸国は武器支援を強化してきた。それに対して、ロシア側では「核兵器による攻撃」も選択肢として否定しないという立場を取っている。「いくらなんでも核兵器による攻撃はない」「ロシアが核兵器を使用すればそれは自殺と同等の行為だ」というのが西側諸国の政府の立場であるが、その可能性を完全に排除できないところに弱み、隙が出てくる。「もしかしたらやるかもしれない」「その可能性がどんなに低くてもゼロではないということになれば考慮しなければならない」ということになる。核兵器による攻撃となれば、戦争の段階は何段階も上がり、被害の程度も上がり、第三次世界大戦に向かう第一歩となってしまう。

 西側諸国ではエネルギー価格の高騰を受け、インフレーションが高まっており、一般国民の生活に打撃を与えている。これはやはりウクライナ戦争が大きな影響を与えている。それならば、早期に停戦して状況を安定させて欲しいということを願う人々の声も出てくる。しかし、問題は出口がきちんと見えていないことだ。ウクライナ側としてはロシア軍のキエフ侵攻を阻止したことで意気が上がり、クリミアや東部地域を取り返すまで戦うぞという姿勢を見せている。そうなれば戦争は終わらない。戦争を終わらせるには西側諸国が支援を減らして、ウクライナに妥協を迫るということも重要だ。

 西側諸国はロシア側と本気で事を構える気はない。偽善者の『ニューヨーク・タイムズ』紙も「停戦を考えるべきだ」と訴えたが、これはロシアから核兵器がアメリカに飛んでくるかもしれないという危険性を感知したからだ。我が身可愛さで、無責任なことを言いだすというのは人間の性だから仕方がないが、それならそのように、「ロシアからの句兵器が怖いので強いことが言えなくなりましたので」と正直に書くべきだ。

 ロシアは今更領土を拡張するとか、道楽でとかそういうことで、ウクライナに侵攻したのではない。ロシアなりの合理性があり、国家存亡の脅威を取り除くために侵攻した。それは、太平洋戦争直前まで英米に圧力をかけ続けられた日本と同じだ。国家存亡の危機となれば核兵器使用もためらわないだろう。もちろんその可能性が低いが、ゼロではない。

 繰り返し繰り返し述べているように、ここは妥協点を探って停戦をするべきだ。西側諸国もウクライナの要求に従って供与する武器の程度と量を上げるのではなく、停戦に向けてウクライナを説得、時には圧力をかけるという行動を取らねば現状は好転しない。

(貼り付けはじめ)

ワシントンがロシアからの核兵器による脅威を真剣に対応すべき理由(Why Washington Should Take Russian Nuclear Threats Seriously

-歴史的に見て、国家は敗北の危機に直面するとエスカレートするものであり、プーティンはその脅しを実行に移した実績がある。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年5月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/05/05/why-washington-should-take-russian-nuclear-threats-seriously/

今年2月、私は『ニューヨーク・タイムズ』紙のロジャー・コーエン記者に、「プーティンを含む世界の指導者たちが、今回のシナリオのいずれにおいても、核兵器の使用を真剣に考えていると確信するのは難しい。それは彼らが核兵器使用の結果について分かっているからだ」と述べた。私はまだ核攻撃の確率は低いと思っているが、数ヶ月前に比べて、核攻撃の可能性を想像しやすくなっている。

バイデン政権は、エスカレーションのリスクをある程度考慮している。その理由は、ウクライナ戦争勃発直後、バイデン大統領はアメリカ軍将兵をウクライナで戦うために派遣することはないと発言したことだ。この決定の前提は、アメリカ人が引き金を引いて積極的にロシア人を殺さない限り、エスカレーションの危険は最小化されるということだ。ジョー・バイデン大統領らは明らかにそうであることを望んでいるし、ローレンス・フリードマンのような軍事専門家たちもそう考えている。

この立場には健全な根拠がある。米ソ両軍の直接的な武力衝突を避けることは、冷戦の重要な不文律であり、それは良いことだった。もしあの時代に米ソが撃ち合いを始めていたら、偶発的あるいは不用意なエスカレーションのリスクは相当なものだっただろう。同じような理由から、アメリカ軍を戦火から遠ざけておくことは、今日においても正しい行動である。

残念ながら、この政策は望まないエスカレーションを防ぐ絶対的な障壁にはならない。歴史的に、国家がエスカレートするのは、たまたま戦場で相手が誰であったからではなく、戦争目的を達成できず、大敗北の可能性にさえ直面している可能性があるからである。

Unfortunately, this policy is not an absolute barrier to unwanted escalation. Historically, states escalate not because of who they happen to be facing on the battlefield but because they are failing to achieve their war aims and may even be facing the possibility of a major defeat.

例えば、第一次世界大戦では、西部戦線が膠着状態に陥ったため、双方が戦争を拡大させることになった。ドイツは無制限の潜水艦戦争を始め、イギリスはアラブの反乱を支援してオスマン帝国を弱体化させ、ガリポリを攻撃し、双方が毒ガスや民間人への空爆を行った。

ヴェトナム戦争では、アメリカはなかなか勝利できないことから、北ヴェトナムへの大規模な空爆作戦(ローリングサンダー作戦)、枯葉剤「エージェント・オレンジ」などの化学兵器の使用、1970年にカンボジアへの侵攻を行った。つまり、ある国が負けている時、あるいは思うように勝てない時、誰が引き金を引こうが、別の選択肢を考える可能性が高くなるということになる。

更に言えば、ウクライナにアメリカ軍が駐留していないことが、ロシアの指導者たちにとってエスカレーションをより魅力的にしているのかもしれない。ウラジミール・プーティン大統領とその側近が、ウクライナの標的に対して12発の戦術核兵器の使用を考えていた場合、攻撃でアメリカ軍将兵が死なないという事実が、さらなる阻害要因を取り除くことになるかもしれない。

はっきり言って、クレムリンの中で誰かがそのようなことを真剣に考えているかどうかは分からないし、この指摘は、抑止力の盾(deterrent shield)としてアメリカ軍をウクライナに派遣することを主張するものではない。私が言いたいのは、アメリカ軍将兵を戦場から遠ざけても、エスカレートする動機が全てなくなる訳ではないし、モスクワの計算の中で他の動機が大きくなり始めたら、核使用の危険性が低く見えるようになるかもしれない、ということだ。

また、プーティンは警告を発し、それを実行に移すという実績があるだけに心配だ。2008年、ロシアはウクライナとグルジアのNATO加盟に断固反対し、両国の加盟を阻止するためにできることは何でもすると明言した。その後まもなくグルジアで戦争が勃発し、凍結された紛争はグルジアのNATO加盟をそれ以来ずっと見送らせてきた。2014年、モスクワは、アメリカが受け入れたウクライナのヤヌコビッチ大統領の失脚を、同様に深刻な脅威と見なすことを明らかにした。クリミア半島を占領し、ドンバス地方の分離主義勢力の蜂起を支援することで、これに応えた。

そして2021年、欧米のウクライナ武装化への取り組みへの懸念と、ワシントンとキエフの安全保障協力の進展により、プーティンは国境に大規模な軍隊を配置し、自国の懸念に対応しないのならば軍事行動を起こすと威嚇した。アメリカとNATOは、最終的にウクライナを加盟させるという約束を再検討することを拒否したが、それで何が起こったかは周知の通りだ。ロシアの警告をはったり(bluff)と見なすのではなく、ワシントンは真剣に受け止めるべきかもしれない。

ロシアのウクライナ侵攻は違法、非道徳的であり、正当化できないが、プーティンが気まぐれに開始したものではない。軍事作戦が彼の期待通りにいかなかったからといって、彼がつまらない理由や軽率な理由でそれを行ったとは言えない。その逆なのだ。プーティンの多くの演説が明らかにしているように、彼とその仲間は、ウクライナが事実上、アメリカやNATOと協調するようになったことを、ロシアにおけるカラー革命の脅威も含めて、存亡の危機と考え、このプロセスを止める時間がなくなってきたとほぼ確信していたのだ。

キエフ占領の失敗により、ロシアの戦争目的は東方へシフトした(そしておそらくモスクワ全体の野心も低下した)が、ウクライナの将来の地政学的配置が主要な開戦事由(casus belli)なのであり、モスクワの観点からすれば、その問題は消えていない。

一方、戦場でのウクライナの成功は、キエフとワシントンに自らの戦争目的を拡大させることにつながった。ロイド・オースティン米国防長官は「ロシアの弱体化を見たい」と発言し、ナンシー・ペロシ連邦下院議長は「勝利が得られるまで米国はウクライナを支援する」と述べた。イギリスのリズ・トラス外相は更に踏み込んで、NATOは「倍返し(double down)が必要であり、ロシアをウクライナ全域から追い出すために、私たちは更に急速に進み続ける」と明言した。

バイデン政権はウクライナに最新兵器を注ぎ込み続け、情報提供のパイプを「開放」し、ウクライナはそれを使ってロシアの将官たちを狙うなどしている。当然のことながら、ウクライナの目的も、2014年以降に失った領土の奪還への希望にまで高まっているように見える。

このような戦争目的は、多くの人々が、プーティンがウクライナに与えた苦痛を罰したいと思うので、感情からすれば魅力的だ。残念ながら、ロシアに決定的な敗北を与えようとするならば、合理的な指導者なら小型核兵器による示威攻撃など、他の選択肢を考えるような状況を作り出すことになる。このような行動の目的は、理論家の故トーマス・シェリングが「リスク・テイクの競争」と呼んだものだ。一方の側が明らかに危険な行動を取ることで、目の前の問題にどれだけ関心があるかを示し、相手を説得して手を引かせるというものだ。

もしプーティンが、自分が完敗し、軍事的に崩壊し、あるいは権力の座を追われると考えるとするならば、なぜ賭けに出ることを考えないということになるだろうか? 確かにギャンブルではあるが、彼は以前にもギャンブルを行った。そして、彼はおそらく、敵対する諸国連合が自分にそのような結果をもたらすことを心配するよりも、そのような結果を避けることをより心配しているのだろう。しかし、核兵器を持っていない敵対国に対する示威攻撃は、深刻なリスクがないとは言えないが、別の問題である。

確かに、ロシアによって核兵器が1発でも使用されれば、ロシアにとって侵略と同じように有害となる。核のタブーを破れば、ロシアは何年にもわたり孤立した存在であり続けることになる(いずれそうなるのかもしれない)。また、ウクライナへの更なる支援を呼び起こし、中国にロシアと距離を置くよう説得することもできるだろう。しかし、西側諸国の政府を怯えさせ、紛争を速やかに終結させることも可能だろう。いずれにせよ、これは非常に危険な前例となり、たとえ非常に限定的な使用であっても、このままで良いとは誰も言い切れない。

したがって、ワシントンには、この憂慮すべきシナリオを回避すべき理由がある。いくらロシアの決定的な敗北を望んでいても、核武装した敵国を安全に追い込むには限界がある。安全保障の専門家であるサム・ロジェヴェンが今年3月の論稿で明らかにしたように、「ロシアが経済的、軍事的崩壊に向かって突き進んでいるならば、西側の指導者たちは圧力をいかに弱めるかを考えるべき」なのだ。なぜなら、戦争は事実上ロシアにとって大惨事であり、西側諸国が今何をしようとも、ロシアの衰退を早めるからである。

ウクライナ戦争は悲劇であり、とりわけウクライナ国民にとって悲劇である。もしロシアがエスカレーションのはしごを上がり、衰退に向かう運命を救おうとするならば、更に悲劇的なことになる。私はこの可能性はまだ低いと考えており、プーティンが勝利を宣言して非エスカレーションを試みる可能性が高いと考える人々の主張が正しいことを望む。しかし、西側諸国の指導者たちが核兵器使用の可能性をもっと真剣に受け止め、戦争の目的についての緩い話をやめ、明確ではないが決定的と思われる勝利を得ることよりも、戦争を終わらせることにもっと注意を向けてくれるならば、私はより安心できるだろう。

以前にも述べたように、この戦争を終わらせるには、当事者全てが当初の望みよりも低い線で妥協することが必要であり、それはアメリカも同様だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2022年2月24日からのウクライナ戦争について理解する上で、国際関係論のリアリズムに基づいた分析は非常に有効だと私は考えている。現在のリアリズムを代表する、ジョン・J・ミアシャイマーとスティーヴン・M・ウォルトの論稿を数々ご紹介しているのはそのためだ。
stephenmwaltjohnjmearsheimer513
ウォルト(左)とミアシャイマー

 今回、ウォルト教授が「どうしてリアリズムは憎まれるのか」というテーマで書いた論稿をご紹介する。リアリズムはウクライナ戦争を理解する上で重要な分析を提供してくれる。また、このような事態を引き起こすことになるので、EUNATOを東方に拡大することでロシアを刺激するな、と警告を発してきた。そして実際に戦争という悲劇が起きてしまった。

 リアリズムは基本的に物事を悲観的にとらえる。明日に向かって希望がある、理想に向かって良くなるという考え方をしない。そのために、どうしても「暗く」なってしまう。それが嫌われる原因になってしまう。しかし、これは私個人の意見であるが、物事を過剰に心配しすぎるのは良くないが、心配を持ちながら対処するのは人生において重要なことではないかと思う。「転ばぬ先の杖」という言葉もある。悪いことが起きると備えておくことは人生訓として重要だ。これで理想主義的な考えを持つ人々に好かれない。

 リアリズムはどのような形態の国家でもあっても、それが一般的に「良い国家」と見られていようが、「悪い国家」と見られていようが、国家は生存と国益のために行動し、生存と国益が危ういとなればどんなことでもするという考え方だ。それがたとえ民主国家であろうが、独裁国家であろうがそれは変わらないと考える。このような考えをすれば、自国至上主義的なナショナリストたちに嫌われる。

 そして、リアリズムに基づく予測や分析が正しいほどに嫌われることもある。それは、リアリズムの予測や分析が「暗い」ものであるからだ。しかし、結局それらが当たってしまうというところに現実世界の厳しさがある。現実世界がそのように厳しいものだというところから世界観を構築することが「転ばぬ先の杖」ということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

人々は何故リアリズムをそこまで憎むのか?(Why Do People Hate Realism So Much?

-この学派が全てを説明できる訳ではない。しかし、この学派の信奉者たちは、ウクライナ戦争が勃発するかなり前からウクライナをめぐり戦争が起きる可能性を予測していた。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年6月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/06/13/why-do-people-hate-realism-so-much/

政治学者ロバート・ギルピンは、かつて「誰も政治的リアリストを愛さない」と書いた。ウクライナの悲劇が現実主義バッシングを引き起こした今日、彼の嘆きは特に適切であるように思われる。バッシングをしている人物たちの一部を挙げる。『アトランティック』誌のアン・アップルバウムとトム・ニコルス、コロンビア大学教授で本誌コラムニストアダム・トゥーズが『ニュー・ステイツマン』誌に掲載した論稿、トロント大学のセヴァ・ガニツキー教授、ランド研究所のマイケル・マザールといった人々がリアリズムを批判した。アメリカと世界の政策について常に最も洞察力のある主張をする、オブザーバーの一人である『フィナンシャル・タイムズ』紙のエドワード・ルースでさえ、最近「外交政策の“リアリズム”派は最近酷い報道を受けているが、そのほとんどは当然といえば当然だ」と論評している。

この怒りの多くは私の同僚で以前共に著書を出したジョン・J・ミアシャイマーに向けられたものだ。怒りの理由の一つはロシア・ウクライナ危機を引き起こしたのは欧米が大きな役割を果たしたからだという彼の見解が、彼は「親プーティン」になっているのだという奇妙な主張と、彼の攻撃的リアリズム(offensive realism)の理論に対する重大な誤読に基づくものだ。

もう一人の怒りの対象は元国務長官ヘンリー・キッシンジャーである。キッシンジャーは最近、モスクワとの和平交渉、ウクライナの領土問題での妥協、ロシアとの永久的な断絶の回避などを求める発言を行っている。こうした発言は現実主義の道徳的破綻を露呈したものと見なされている。以下に述べるように、キッシンジャーは現実主義の伝統の中では外れ者であるが、リアリズムの批判者たちにとっては都合のよい引きたて役の対象であることは間違いない。

この皮肉は見逃せない。リアリストたちの中にはいろいろな考えがあるが、リアリストたちは全体として西側の対ロシア、対ウクライナ政策が深刻な事態を招くと繰り返し警告していた。しかし、NATOの門戸開放政策がヨーロッパの恒久平和につながると主張する人々は、その警告を平然と無視したのだ。戦争が始まり、人命が失われ、ウクライナが破壊されている現在、NATOの開放的な拡大を支持する人々は、理想主義的な幻想を捨て、これらの問題について、ようやく冷静にそしてリアリズムに基づいて考えているだろうとリアリストたちは考えた。しかし、その逆が起きている。NATOを拡大すればヨーロッパに広大な平和地帯が生まれると信じていた人々は、ロシアが完全に敗北し、大きく弱体化するまで戦争を続けるよう主張している。

この現象は、アメリカ国内でリアリズムがほぼ人気がないことを考えれば、それほど驚くことでもない。国際関係学の重要な伝統としてリアリズムは認識されているが、かなりの反感を買うこともある。例えば、2010年にカリフォルニア大学サンディエゴ校のデイヴィッド・レイク教授が世界国際関係学会の会長講演で、リアリズムやその他のパラダイムを「宗派(sects)」「病理(pathologies)」と批判し、「重要な研究」から注意感心をそらすものだと指摘した。1990年代、リベラルな価値観が世界に広がっていると多くの人が信じていた頃、政治学者のジョン・ヴァスケスは『アメリカ政治学レヴュー』に浩瀚な論文を発表し、リアリズムは「退化した」研究プログラムであり、破棄されるべきものであると主張した。

それでは、何故これほど多くの人々がリアリズムを激しく憎むのだろうか? 私はこの問題に関して最も客観的な判断ができないかもしれませんが、次のように考えている。

リアリズムというのは、たとえ穏健なものであっても、政治に対してより暗い見方をする。人間には救いようのない欠陥があり、個人や人々が形成する社会集団の利害対立を全て排除する方法はないと想定しているのだ。さらに、リアリズムの全てのバージョンは、合意を強制し、国家が互いに攻撃するのを防ぐことができる包括的な世界的権威の不在から生じる不安を強調する。暴力が起こりうる場合、部族、都市国家、ストリートギャング、民兵、民族、国家など、あらゆる種類の人間集団は、自分たちをより安全にする方法を模索し、つまり、権力争いに強く傾斜していくことになる。

批判者の一部が主張するのとは逆に、リアリストたちはこれらの特徴を、国家がとりうるあらゆる行動を決定する鉄則とは考えていない。また、協力が不可能であるとか、国際的な制度に価値がないとも考えていないし、人間が自国の利益を守るために様々な選択をする主体性を欠いているとも考えていない。リアリストたちは、国際的な無秩序(つまり、包括的な中央政府の不在)が国家間の競争と競合の強力な誘因を生み出すと主張している。

多くの人々にとってこのような悲観的な人間観を受け入れることに抵抗があるのは理解することは難しくない。特にそうした悲観的な状況から抜け出す術はないとなれば尚更のことだ。しかし、本当の問題は、「リアリズムは国際政治についての正確に見る考え方なのか?」ということだ。人類の歴史を通じて起こり、今日まで続いている紛争や争い、そして国家が自国の安全保障に懸念を持つ傾向を考えると、リアリズムの明白な根拠は強い。

第二に、リアリズムがパワーポリティクスを重視することから、リアリズムの支持者たちは軍事力に過度に固執し、タカ派的な解決策を好む傾向があると考える人が多い。しかし、この考え方は誤りである。キッシンジャー(彼はヴェトナム戦争ではタカ派で、2003年のアメリカのイラク侵攻を支持した)を除けば、最も著名なリアリストたちは概してハト派に傾いていた。ジョージ・F・ケナン、ラインホルド・ニーバー、ウォルター・リップマン、ハンス・J・モーゲンソー、ケネス・ウォルツはいずれも米国のヴェトナム参戦について早くから批判しており、彼らの学問的後継者たちは2003年のブッシュ政権のイラク戦争への進撃に強硬に反対した。

第三に、リアリズムは、倫理的・道徳的配慮に無関心である、もしくは敵対的であるとさえ見なされている。リアリズムの理論的枠組みが明示的に価値や理想を組み込んでいない以上、この主張には一部の真実がある。リアリズムとは、その名の通り、世界をありたい姿ではなく(not as we might like it to be)、「ありのまま(as it really is)」に世界を捉えようとするものである。しかし、マイケル・デッシュやその他の専門家たちが指摘するように、リアリストの多くは深い道徳的コミットメントに導かれており、国際政治の悲劇性と、そうでない行動を取るべきという圧力にもかかわらず道徳的に行動しようとすることの重要性の両方を意識している。リアリストたちにとって、高貴な目標や善意は、その結果としての選択がより大きな不安や人間の苦しみをもたらすのであれば、十分なものではないということになる。

第四に、リアリズムがアメリカで不人気なのは、アメリカの例外主義(American exceptionalism、アメリカは唯一無二の道徳的存在であり、常に人類のより大きな利益のために行動するという考え)の広範な信条と相反するためだ。リアリストたちにとって、中央政府のない世界で安全と独立を維持する必要性から、まったく異なる特徴を持つ国家が驚くほど似たような行動を取ることがよくある。例えば、アメリカと旧ソヴィエト連邦は、国内秩序、政治イデオロギー、経済システムの面でこれ以上ないほど異なっていた。しかし、冷戦時代の競争の圧力により、それぞれが大規模な同盟を結び、それを主導し、できる限りそれぞれのイデオロギーを広め、何万もの核兵器を作り、他国に介入し、破壊的な代理戦争を行い、外国の指導者を暗殺するようになった。競争の中にあって、この全く異なる2つの国は、むしろ類似した外交政策を生み出した。

確かに、リアリストたちは、国際政治は国内政治と無関係ではないと認識している。例えば、ナチス・ドイツとエドワード朝時代のイギリスとの間には重要な違いがあることを理解している。しかし、リアリストたちが世界を「良い」国家と「悪い」国家に分け、世界の問題のほとんどを後者のせいにしているのに対し、リアリストたちは、確立された民主政治体制国家でさえ、自国の重要な利益が危うくなると、他国に対して恐ろしいことをすることを認めている。

例えば、1960年代、ジョンソン政権は南ヴェトナムが共産主義世界の一部になることを心配し、太平洋を渡って戦うために50万人近い兵士を送り込んだが、そのうちの5万8千人は帰って来なかった。米軍はナパーム弾や枯葉剤を使用し、約800万トンの兵器を投下した。それがうまくいかないと、ニクソン政権はカンボジアに侵攻し、脆弱な政府を弱体化させ、大量虐殺を行うクメール・ルージュ政権を知らず知らずのうちに手助けしてしまった。ヴェトナムは弱小国であり、アメリカ本土から8000マイル以上離れていた。しかし、その指導者たちは、これらの行動がアメリカの国家安全保障のために必要であると自分たちに言い聞かせていたのだ。

1979年7月、それから10年も経たないうちに、カーター政権は、ニカラグアの民衆蜂起が親アメリカの独裁者アナスタシオ・ソモサを倒したことに危機感を持った。それは、2014年2月にウクライナのマイダン蜂起が親ロシアのヴィクトール・ヤヌコビッチ大統領を倒したのと同じである。1981年1月に政権の座に就いたレーガン政権は、ロシアがウクライナの分離主義勢力民兵を支援したように、反政府軍(コントラ)を組織して武装化することで対応した。ニカラグアは人口400万人の貧しい国であったが、アメリカはこれを深刻な脅威とみなした。ニカラグアは人口400万人の貧しい国であったが、アメリカはこれを脅威とみなし、コントラ戦争で約3万人のニカラグアの人々が犠牲になった(人口比では約250万人のアメリカ人が犠牲になったことに相当する)。

これらのアメリカの過去の不正行為の例は、今日のロシアの行為を少しも正当化するものではない。もし私たちが一貫しているならば、これらの行動(イラク侵攻を含む)は全て、戦略的・道徳的な理由から徹底的に非難されるべきものである。しかし、どのようなタイプの政府であれ、脅威を感じれば、その恐怖が時に幻想であったとしても、残忍なことを行うものだということを思い起こさせるものである。しかし、アメリカのように自らを徳の高い国だと考え、トップが過ちを認めたり、その責任を受け入れたりすることがほとんどない国では、アメリカの指導者が時に今日のウラジミール・プーティン大統領のような行動を取ってきたことを人々に思い出させることは、おそらく人々を説得する最善の方法ではないだろう。

この現象は戦時中に特に顕著であり、国民の支持を集めたいという自然の欲求から、政府は自国の大義を完全な正義であると表現し、敵対者を悪の権化のように描き出すことになる。ウクライナの悲劇にアメリカの過去の行動が関係している可能性を示唆することは、プーティンの侵攻の決定やロシア軍の行動を弁解するものではないが、この紛争を残忍な侵略者と無実の犠牲者、そして後者の善意と同様に無実の友人との単純な道徳劇として捉えようとする人々からは厳しい反応が出るに違いない。

リアリストたちは、悪事が行われること、一部の国家が他国よりも悪い行動をとることを認識している。しかし、全ての国家が不完全な世界で安全保障のために競争し、いかなる国の行動も非難を浴びない訳ではないことも理解している。このため、リアリストたちは、外交と妥協を、意見の相違を管理し、軍事力を使わずに相違を解決するための重要な手段であると考える。これに対して、リベラル派やネオコン派などの理想主義者たちは、世界のあらゆる問題の原因が悪い指導者や政権にあると考え、唯一の解決策は悪人を一掃することということになる。しかし、問題は、悪とみなされる政府を排除しようとすると、多くの人々が殺されることになる。そして、現在のウクライナ戦争のように、より広範で危険な紛争に発展しかねない状況もある。

最後に、リアリズムが不人気なのは、その支持者が正しいという厄介な傾向を持っているからである。もちろん、常にという訳ではないが、外交政策とは不確実性が蔓延する複雑な活動であり、政策立案者たちの指針となる様々な理論はせいぜい粗雑なものでしかないからだ。例えば、私自身を含め、ほとんどのリアリズムたちは、NATOが冷戦後も存続し、拡大していることに驚いた。

しかし、NATOの拡大、ペルシャ湾の二重封じ込め、イラク戦争、ウクライナの核放棄という不運な決断、中国の台頭の意味、アフガニスタンでの国づくりの愚かさなど、いくつかの例を挙げれば、リアリストたちは正しかったのである。

リアリズムを批判する多くの人々と比べれば、これは悪い記録ではない。しかし、多くの国家が多かれ少なかれリアリズムの描く通りに行動し続けたとしても、リアリズムがより一般的になるとは思えない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)

※6月28日には、副島先生のウクライナ戦争に関する最新分析『プーチンを罠に嵌め、策略に陥れた英米ディープ・ステイトはウクライナ戦争を第3次世界大戦にする』が発売になります。


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