古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2023年01月

 古村治彦です。

 今や世界において中国の動向は重要な要素となっている。中国がどのように動くかで国際社会の動向が決まるということになっている。アメリカも重要であるが、中国もその重要度を増している。2023年の中国はどのように動くかということに多くの人々は関心を持っている。

 最近の中国に関する報道と言えば、「新型コロナウイルスゼロ」政策を放棄し、行動の緩和が実施されている。そのために新型コロナウイルス感染者数が増大しているが、公式発表では死者数が極端に抑えられているということだ。中国はこれだから信用できないということになる。

対外的には台湾問題に注目が集まっている。昨年2月24日のウクライナ戦争勃発後、「ウクライナの次は台湾だ」、つまり「中国が台湾に侵攻する」という主張が声高に叫ばれ、米中間の関係も緊張をはらむものとなった。最近では台湾からも「あまり危機感を煽らないで欲しい(特に日米両国)」という声が出ている。中国は国内問題もあり、また、現在の国際秩序の中で経済力を高める段階にあり、保守的な状況である。

 下に紹介にした論稿では5つのポイントで中国に関する予測を行っている。簡単にまとめると、「(1)新型コロナウイルス感染拡大で死者数が増える、(2)経済の回復は遅い、(3)旅行業界だけは活況を呈する、(4)人々の不満が小規模な抗議活動ということで噴出する、(5)米中関係は穏やかになり、台湾問題は静けさを保つ」ということになる。

 上記の予測ポイントについて、私なりの考えを書いていきたい。新型コロナウイルス感染拡大に関しては、中国は世界で最初に対処した国であり、その対処方法を模索し、開発し、改善してきた。病院の整備などのスピード感は群を抜いていた。自然免疫に方向転換を行っても、ある程度の管理を行うものと思われる。経済活動は、世界経済と連動している部分もあるが、国内需要がこれから増大していくだろう。そのスピードと規模をうまく予測できる人はいないだろう。ただ、国内需要が経済回復をけん引するだろう。旅行については既に私たちが目撃しているように活況を呈している。人々の不満が収まれば抗議活動は沈静化するだろう。国際関係について言えば、アメリカが敵対姿勢を弱めれば中国も穏やかになるだろうし、台湾問題もアメリカが煽動しなければ落ち着いたまま進んでいくだろう。

 新型コロナウイルス対策もウィズコロナに変更されていく中で、経済と社会が少しずつ動き始めているのは世界共通だ。中国も例外ではない。巨大船舶と同じで、少しの動きが他の小さな船舶に比べれば大きなものとなる。あまりに急激な動きは世界に及ぼす波も大きくなってしまう。中国はそろりそろりと動いてくれるのが最善なのである。

(貼り付けはじめ)

2023年の中国に関する5つの予測(5 Predictions for China in 2023

-新型コロナウイルスをめぐる悲劇から弱体化する習近平まで、来年に起こる可能性があることを述べていく。

ジェイムズ・パーマー筆

2022年12月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/12/28/china-predictions-2023-covid-xi-jinping/

今年(2022年)は中国にとって非常に悪い年であった。しかし、このニューズレターが昨年予測したように、事態は常に更に悪くなる可能性がある。14億人の人口を抱える国について推測するのは難しいし、中南海(中国政府中枢)のシャッターの内側を覗き込もうとするのもまた難しい。しかし、2023年にどのような悪いことが起き、そしてどのような良いことが起こるかについて、以下に私が最善を尽くして行った予想を書いていく。

(1)新型コロナウイルスに関する悲劇(A COVID-19 Tragedy

中国はつい2度目の新型コロナウイルス感染拡大の危機に直面しており、その様相は悲惨なものとなっている。中国疾病予防管理センター(Center for Disease Control and PreventionCDC)の内部ブリーフィングによると、2022年12月1日から12月20日の間に2億5000万人が感染したと推定され、12月7日に政府が新型コロナウイルスゼロ政策を解除したのは封じ込めシステムの失敗に対する性急な対応だったことが明白に確認された。中国疾病予防管理センターの推定では、先週の火曜日の1日だけでおよそ3700万人が感染していることになる。

中国の医療制度は、長年の準備不足と治療よりも封じ込めに重点を置いてきたこともあり、既に対応に追われている状況だ。オミクロンBA.2亜型の致死率0.3%に基づいて計算すると、2億5000万人の感染者の中から75万人が死亡する可能性があることになる。この指数関数的な増加率からすると、第一波は2023年1月末までに中国の人口の60%に到達する可能性があります。この場合、9億人が感染し、270万人が死亡することになる。

もちろん、未知の部分も多く、現在中国で流行している変異株は致死率が低い可能性もある。私はそうであって欲しいと願っている。『フォーリン・ポリシー』が正式に確認したのではないが、中国の友人たちは、家から一歩も出ていないのに、新型コロナウイルスに感染したという話を語っており、アパートの集中空調システムを通じて感染している可能性を示唆している。

多数の死者が出れば、特に新型コロナウイルスゼロの価値があるかどうかという点では、心理的に大きな影響を与えるだろう。インドの新型コロナウイルス感染拡大の経験から、中国でもウイルスが猛威を振るえば、2020年には数百万人の死者が出る可能性があった。しかし、救われた命では、それぞれの喪失の悲しみや辛さを軽減することはできない。しかし、中国で公的な政治的危機が起こるとは思わないで欲しい。新型コロナウイルスによる死亡の影響は、犠牲者の多い国においても、世界的には驚くほど小さい。

更に言えば、2億5千万人の感染を経て、12月23日現在、中国が公式に報告した死者はわずか8人である。中国が死者数について明らかに嘘をつき、馬鹿げた計算方法を用い、メディアで危機を取り上げないようにしているのは、国民の怒りを恐れてのことだ。たとえ公式発表の数字が事実でないと分かっていても、危機的状況をテレビ画面から遠ざけることで、かえって危機を身近なものとして感じられるかもしれない。

(2)弱含みの経済回復(Weak Economic Recovery

中国の新型コロナウイルスの死者数は2023年の怪しいデータだけしか存在しないのではない。政治体制は、プロパガンダのためと内部の政治的理由のために、たとえ判断が不可能であっても統計事態は要求する。今回の新型コロナウイルス感染の波の規模からすると、ヴェトナムなどのように新型コロナウイルス感染対策を解除したからと言って、中国経済が以前のレヴェルに回復することはないだろう。

中国においては、消費者の潜在的な需要はたくさん存在が、新型コロナウイルスに感染することへの不安やリスクを回避しようとする志向が強いため、その需要は少しずつ出てくるのではないかと考えられる。厳しい2年間を経て、地方政府も中央政府もポジティブなデータを出すようにという政治的圧力が非常に強くなっている。それは人口の数字にも影響を及ぼしている。研究者たちは、中国の人口はすでに減少しており、新型コロナウイルスによる死亡はその問題をより厳しいものにすると主張している。

更に言えば、新型コロナウイルスは、病気や死亡によって主要な労働者がいなくなることで、サプライチェインに打撃を与える。また、最悪のシナリオでは、大きな流行を経験していない村や小さな町が、感染拡大当初と同じように、訪問者を隔離し、旅行を阻止する方法を採用する可能性がある。中央政府は2020年よりもずっとこうした方法を敵視するだろうが、地方における中央政府の執行能力は遅くしかも弱くなる可能性が高い。

挙句の果てに、中国は新型コロナウイルス感染拡大の結果ではない、多くの経済問題を抱えている。経済成長の大半を支えてきた不動産セクターはゆっくりとした崩壊を続け、アメリカは自国経済と中国経済を切り離す試みを本格化させ、世界的な景気後退の危機が迫っている。中国政府は、景気刺激策で不動産ブームを少しは下支えできるかもしれないが、いつかは現実を直視しなければならないだろう。

同様に、中国のテクノロジーを標的にしたアメリカの政策は、中国のテクノロジー産業に対する中国の公式な巨額の投資を生み出す可能性が高い。しかし、それは政府のコネに依存し、半導体向けのビッグファンドの失敗のように、多くの腐敗を伴うことになるだろう。

(3)旅行ブーム(A Travel Boom

2023年に甦る可能性があるのは旅行業界だ。国内需要は現在の新型コロナウイルス感染の波が過ぎるまで回復しないが、10月の大型連休には過去最高を記録する可能性がある。また、海外旅行もより早く回復するだろう。検疫期間が短縮され、完全に終了する可能性が高いため、中国人は大量に海外旅行に出かけることになる。この記事はクリスマス前に書いたが、検疫は12月26日に終了し、飛行機の予約ラッシュとなった。3年間も世界から隔離されていたため、旅行する余裕のある人は、アメリカの学校に通う子供たちを訪ねたり、タイのビーチに行ったりなど、国外に出ることに必死だ。

また、若者の間では、常に後退しているように見えるこの国から移住したいという願望も存在する。欧米諸国は、移民に対する偏執的な嫌悪感を維持するのではなく、潜在的な才能の大きな波を拾い上げることに目を向けるべきだ。

(4)より小規模な抗議運動(More Small Protests

2022年末の抗議デモの波の後、中国では来年も小規模なデモが続くと考えられる。新型コロナウイルスゼロ政策終了を求めるデモのような統一されたシナリオはないだろう。しかし、不正な金融会社から盗まれたお金を取り戻すか、新型コロナウイルス感染拡大による封鎖を終わらせるかにかかわらず、当局に圧力がかかる可能性があることは明白だ。

習近平国家主席の退陣を求める思想的なデモ参加者は嫌がらせや逮捕を受けたが、新型コロナウイルスゼロ政策反対のデモ参加者のほとんどは報復を免れた。このことは、人々が他の問題についても限界に挑戦することを促すかもしれない。残念ながら、不動産業界にとっては更に悪いニュースだ。過去10年間、中国で最も一般的で成功した抗議活動の1つは、資産税導入の試みに反対するものであった。

また、習近平の立場も非常に弱くなっている。習近平は、中国メディアが常にその成功を誇っていた「新型コロナウイルスゼロ」政策と密接に結びついていた。これに加えて、経済が減速しているため、中国の政治エリートは習近平の指導力に対して深刻な疑念を抱いている。問題は、2022年10月の中国共産党大会で習近平がいかにうまく立ち回ったかを考えると、彼らが何かできるのかということだ。

今年、習近平が国民と中国共産党の両方に対する権力を再強化するために、政治的統制を強化することはあり得る。しかし、長年にわたるイデオロギー的な弾圧の後に、何を締め付けるのだろうか?

(5)より穏健な言葉と静かな海峡(Softer Words and a Quiet Strait

中国の国内問題の数々は、国際舞台では、主に非公式な場でではあるが、より良い言葉につながっているようだ。アメリカをはじめとする外交官たちは、中国側が以前よりも対話に前向きになっていると報告しており、2022年11月のG20サミットでジョー・バイデン米大統領と会談した習近平国家主席は、両国間の経済摩擦の激しさにもかかわらず、笑顔のトーンを維持する可能性がある。

しかし、その部分的な雪解けは非常に不透明であり、ちょっとした危機でも関係が再び凍結する可能性がある。中国の国営メディアは、10年前よりも外国嫌いで反米的であり、中国の問題をアメリカのせいにしようとする強い動機がある。

これら全ての問題は、今年、台湾をめぐる大きなトラブルを期待しない方が良いということを示唆している。中国政府は単に国内で対処すべき問題が多すぎて、戦争はおろか、新たな危機を迎える余裕もないのだ。ナンシー・ペロシ米連邦下院議長の台湾訪問をめぐる一時的な騒動は、結局のところ大げさなものであったことが判明した。だからといって、いわゆる統一への執着や台湾への政治的干渉がなくなる訳ではなく、おそらく現状維持にとどまるだろう。

※ジェイムズ・パーマー:『フォーリン・ポリシー』誌副編集長。ツイッターアカウント:@BeijingPalmer

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ジョー・バイデン政権1期目(任期4年)も後半に入った。アメリカ政治は2024年11月の大統領選挙(と連邦議会選挙:連邦下院は全議席、連邦上院は一部議席、更には州知事選挙)に向けて動き出す。民主党は現職大統領を抱える側であり、共和党は挑戦者の立場だ。

ジョー・バイデンが2期目を目指して選挙に出馬するかどうかがまず現在の関心事だ。バイデンは現在80歳(1942年生まれ)、2024年の大統領選挙投開票日あたりには82歳になっている。現在でも現職としては史上最高齢であり、2年後に当選すればこれまで史上最高齢となる。人間の寿命は確実に伸びている。先進諸国は多少の違いはあるものの高齢化社会(日本は高齢社会)である。80歳で現役は良いじゃないか、という主張もあるだろうが、判断力や健康の面で不安があるというのが正直なところだ。民主党の中から挑戦者が出る様子は今のところない。バイデンが病気やスキャンダルで2期目に出られないとなれば、カマラ・ハリス副大統領が候補者として出ることになるだろう。

 興味深いには、民主党が大統領選挙の民主党予備選挙(民主党の大統領選挙本選挙候補者決める選挙)で、各州で実施される予備選挙や党員集会の日程を変更して、アフリカ系アメリカ人有権者が選挙の結果を左右する州が早めに予備選挙や党員集会を実施できるようにしようとしていることだ。これは民主党エスタブリッシュメント派が、進歩主義派を抑え込もうとする動きである。

アフリカ系アメリカ人有権者は民主党エスタブリッシュメント派の支持基盤である。バイデンが2020年の大統領選挙民主党予備選挙で、勝利を決定づけたのはアフリカ系アメリカ人有権者の多いアメリカ南部サウスカロライナ州の予備選挙だった。早めに民主党エスタブリッシュメント派の候補者が勝利を印象付けられるようにするための日程変更である。2016年の民主党予備選挙ではバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)がヒラリー・クリントンに対して東部などで善戦し、戦いが長引き、批判合戦が激しくなり、結果としてヒラリーにマイナスに働いた。日程変更はそのようなことが起きないようにしようという動きだ。

 共和党側では、エスタブリッシュメント派はトランプを排除したい、トランプ支持勢力の力を削ぎたいということになる。そのために、トランプ支持の有力者である、共和党全国委員長ロナ・マクダニエルの再任を阻止しようという動きに出ている。また、保守派の大口献金者であるコーク・インダストリーズの総帥チャールズ・コークの意を受けたフリーダム議連が、トランプの協力者であるケヴィン・マッカーシー連邦下院議員(カリフォルニア州選出、共和党)の連邦下院議長選出をことごとく妨害し続けたことは記憶に新しい。トランプが共和党の大統領選挙候補者になるかならないか、ここはアメリカ政治においての大きな焦点ということになるだろう。共和党エスタブリッシュメント派はアメリカ主流派マスコミと組んで、フロリダ州知事ロン・デサンティスの待望論を醸成してくことだろう。

 2022年の中間選挙では事前の予想に反して、民主党がそこまで負けなかった。2024年に向けて、共和党としては挑戦者として民主党に戦いを挑む形になる。今年に行われる州規模の選挙(州議会議員や州知事の選挙)は注目を集めることになる。ここで共和党が勝利を収めることになれば、2024年の大統領選挙の序盤の流れがそれによって形成されることになる。これからアメリカは少しずつではあるが、激しい政治の季節に入っていく。

(貼り付けはじめ)

2024年の政治状況を形作るであろう今年の政治的イヴェント5選(Five political events this year that will shape 2024

マックス・グリーンウッド筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/3812434-five-political-events-this-year-that-will-shape-2024/

大統領選挙での予備選挙や党員集会が始まるまでに1年以上ある。今後数カ月は、2024年にほぼ間違いなく重要な意味を持つ、アメリカ政治における重要な出来事が次々と起きることになる。

共和党と民主党の両党は、今後数週間のうちに政党のために大きな決定を下す予定で、今年11月にはいくつかの州で選挙が行われ、来年の状況がどのように見えるかについて政治ウォッチャーたちに早い段階でのプレヴューを提示する。

この論稿では、2024年について何らかのヒントを与えてくれる、今年起きる5つの政治的な出来事を紹介する。

(1)バイデンの再選表明(Biden’s reelection announcement)(日付は未定)

この2年間、民主党にとって最大の問題の1つは、ジョー・バイデン大統領がホワイトハウスの2期目を目指すかどうかということだった。そして、バイデン大統領がその意思を持っていることが明らかになりつつある。

バイデン大統領は今後数週間のうちに大統領選挙再出馬の計画を明らかにすると予想され、2月の一般教書演説の前後に発表することが有力視されている。

もしバイデン大統領が最終的に再選の選挙戦を進めるのであれば、ホワイトハウスへの野心を持つ他の民主党の政治家の動きが封じられる可能性がある。その結果、民主党は、2024年の大統領選挙で、激しい戦いとなりうる予備選挙シーズンを免れ、バイデンは、2期目の大統領就任に向けた説得にのみ集中することができるようになるかもしれない。

バイデンは、それでもなお、いくつかの疑問を抱えて再選キャンペーンに臨むことになる。80歳という年齢は、既に大統領執務室の主としては史上最高齢者である。2024年11月に2期目を勝ち取れば、大統領2期目の宣誓をする頃には82歳になっている。

もちろん、ドナルド・トランプ前大統領が再びホワイトハウスに挑戦するために選挙への立候補を表明しているが、彼はバイデンに比べてそれほど若いという訳ではない。バイデンの存在が、現職大統領と明確な対比を描ける可能性がある若い候補者選出に共和党を誘導する可能性があるかどうかが、1つの疑問点として残っている。

(2)共和党冬季ミーティング(The GOP’s winter meeting)(1月25-27日)

共和党全国委員会(Republican National CommitteeRNC)は2023年1月末、カリフォルニア州ダナポイントで開催される会合において、次期全国委員長を選ぶことになっている。そして、現在のリーダーであるロナ・マクダニエルは、共和党の組織上の最高ポストをもう1期務めようとしているが、彼女と協力者たちが期待したほどには、彼女の再選は安泰とは言えない。

6年近く全国委員長を務めてきたマクダニエルは、2016年の大統領選挙でトランプがサプライズでの勝利を収めた後、全国委員長に抜擢された。

しかし、2022年の中間選挙で共和党が連邦上院の主導権を取り戻すチャンスを逸し、連邦下院では僅差の過半数にとどまったことから、マクダニエルに対しては共和党内部からのプレッシャーが強まっている。

月曜日には、アラバマ州共和党の運営委員会はマクダニエルに対する不信任声明を発表し、共和党全国委員会委員長としてマクダニエルがもう1期務めることを支持しないと表明した。

また、マクダニエルは共和党内でトランプ前大統領の最も熱心な擁護者の1人という評価を得ているが、彼女は他の2人のトランプ支持者、共和党全国委員会のハルミート・ディロンと枕製造で大成功を収めたマイク・リンデルからの挑戦を受けることになった。ディロンは、「2020年の大統領選挙では自分に対して不正に行われた」というトランプの虚言の最も大きな後ろ盾を務める1人になってしまった。

このコンテストで全国委員長に選ばれる人物は、2024年の大統領選挙を通じて協和党全国委員会を率いる任務を負うことになる。しかし、トランプ前大統領の忠実な支持者の存在は、前大統領を党の現在の課題の少なくとも部分的な責任とみなす共和党内の人々にとって、事態を複雑にする可能性がある。

(3)民主党冬季ミーティング(The Democrats’ winter meeting)(2月初頭)

民主党の幹部たちは、民主党の伝統的な大統領予備選の日程を大幅に変更する計画を進めており、人種的に多様な各州が指名プロセスにおいてより大きな発言力を持つことを望んでいる。

この計画は、来月初旬にフィラデルフィアで開催される民主党全国委員会(Democratic National CommitteeDNC)の冬季ミーティングで主要な投票が行われる予定だ。

この新提案では、2024年2月3日の予備選は、数十年にわたって大統領予備選の集会を開催してきたアイオワ州に代わって、サウスカロライナ州が先頭に立つことになる。その次は、2月6日にニューハンプシャー州とネヴァダ州、2月13日にジョージア州、2月27日にミシガン州という順番になる。

もし、民主党全国委員会がこの新提案を採用すれば、従来の投票日程だけでなく、大統領候補の選挙戦への取り組み方も根本的に変わることになる。

もちろん、まだ障害は残っている。早期予備選の提案に該当する5州のうち、ジョージア州とニューハンプシャー州の2州は、早期に予備選を実施するための委員会の要件を満たそうと、民主党全国委員会に延長を要請している。

更に言えば、共和党は既に、アイオワ州、ニューハンプシャー州、サウスカロライナ州、ネヴァダ州の伝統的な順番を維持した予備選カレンダーを採用している。このことも、民主党が日程を組み替えることを難しくしている。

(4)保守政治行動会議(Conservative Political Action ConferenceCPAC)(3月1-4日)

毎年恒例の保守政治行動会議(CPAC)は、過去2年間、フロリダ州とテキサス州で開催されたが、今年3月にワシントンDCに戻ることが決まっている。

フロリダ在住のトランプが再び大統領選に出馬し、フロリダ州のロン・デサンティス知事(共和党)が2024年の選挙戦を考慮する中、保守派の活動家と共和党関係者の有名な集会が中立地帯に戻ることになる。

過去数年間、CPACはトランプと共和党の彼のグループの決起集会のようなものであった。しかし、今年のCPACをめぐる大きな疑問は、これまでとは異なるトーンで開催されるかどうかということだ。

一つには、トランプがもはや共和党の大統領候補として有望視されていないことがある。最近の世論調査では、仮に予備選で対決した場合、デサンティスが前大統領を引き離すという結果が出ている。更には、共和党は2022年の中間選挙の影響と、トランプが共和党を次の選挙サイクルで党を率いるのに最適な人物であるかどうかを決めかねている状況だ。

(5)2023年選挙投開票日(Election Day 2023)(11月7日)

ケンタッキー州、ルイジアナ州、ミシシッピ州の3州が今年州レヴェルの選挙を予定している。しかし、最大の関心はヴァージニア州に集まりつつある。ヴァージニア州の有権者は今年11月に州議会でどちらの党が過半数を握るかを決定することになる。

ヴァージニア州では近年、左派が確実に支持を拡大し続けていた。しかし、2021年にグレン・ヤングキン知事(共和党)がテリー・マコーリフ前知事を破り、共和党が州下院において僅差で過半数を占めると、状況が一変した。

今年は、共和党が州下院の過半数を維持するだけでなく、民主党が僅差で握っている州上院の過半数を獲得しようと試みるだろう。これらの州議会選挙がどのように展開されるかは、2024年に向けての政治環境を占う上で、何らかのヒントになる可能性がある。

同時に、ケンタッキー州のアンディ・ベシア知事(民主党)が知事2期目を目指しており、既に共和党側の対抗馬と競い合っている。

ベシアは2019年、現職だったマット・ベヴィン知事(共和党)を僅差で破り、知事職に就任した。しかし、当時の政治情勢は民主党に有利なものであったが、今年はより厳し選挙戦が待っていると予想されている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 昨日は、国際関係論の一学派リアリズムの泰斗であるスティーヴン・M・ウォルトのリアリズムによる新型コロナウイルス感染拡大に関する分析論稿を紹介した。今回ご紹介する論稿はウォルトの論稿に対する反論という内容になっている。

 新型コロナウイルス拡大が国際的な問題となって3年が経過した。各国は医療体制の拡充や補助金の新設や増額などで対応してきた。日本も例外ではない。そうした中で、国家の役割が増大し、人と物、資本が国境を越えて激しく動き回る、グローバライゼーションの深化はとん挫した形になった。国際機関に対する信頼も小さくなっていった。

 しかし、今回ご紹介する論稿の著者ジョンストンは、初期段階の対応はリアリズムで分析できるが、これからはそうではないと述べている。もう1つの学派であるリベラリズム(Liberalism)によって分析・説明が可能になると主張している。

 リベラリズムとは、各国家は国益を追求するために、進んで協力を行う、国際機関やNGOなどの非国家主体が国際関係において、重要役割を果たすと主張する学派だ。新型コロナウイルス感染拡大の初期段階では各国は国境を閉じ、人の往来を制限して、国内での対応に終始した。しかし、これから新型コロナウイルス感染拡大前の世界に戻るということになれば、国際的な取り決めや協力が必要になり、国際機関の役割も重要になっていく。グローバライゼーションの動きがどれくらい復活をしてくるかは分からないが、おそらくこれまでのような無制限ということはないにしても、人、物、資本の往来はどんどん復活していくだろう。

 社会科学の諸理論は、社会的な出来事を分析し、説明し、更には予測することを目的にして作られている。理論(theory)が完璧であればそれは法則(law)ということになるが、それはなかなか実現できないことだ。諸理論は長所と短所をそれぞれ抱えており、また、現実の出来事のどの部分を強調するかという点でも違っている。理論を構成していくというのは、言葉遊びのようであり、まどろっこしくて、めんどくさいのように感じる。

 しかし、そうやって遅々としてか進まない営為というものもまた社会にとって必要であり、いつか大いに役立つものが生み出されるのではないかという希望を持って進められるべき営為でもある。日本においては官民で、学問研究に対する理解も支援も少なくなりつつあるように感じている。それは何とも悲しいことだし、日本の国力が落ちている、衰退国家になっているということを実感させられる動きだ。

(貼り付けはじめ)

感染拡大とリアリズムの限界(The Pandemic and the Limits of Realism

-国際関係論の基本的な理論であるリアリズムはそれが主張するよりも現実的ということではない。

セス・A・ジョンストン筆

2020年6月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/06/24/coronavirus-pandemic-realism-limited-international-relations-theory/

スティーブン・ウォルトの「コロナウイルス感染に対するリアリズム的ガイド」は、彼の他の論文とともに、国際関係の現実主義者がコロナウイルスをこの学派の思想の正当性を証明するのに役立つと見ている説得力のある例である。現実主義者が自信を持つには十分な理由がある。新型コロナウイルス感染拡大への対応は、主権国家の優位性(primacy of sovereign states)、大国間競争の根拠(rationale for great-power competition)、国際協力への様々な障害(obstacles to international cooperation)など、リアリズムの伝統の主要な信条を実証するものとなった。

しかし、新型コロナウイルス感染拡大は、政策を成功に導く源泉としてのリアリズムの欠点も露呈している。リアリズムが得意とするのは、リスクや危険を説明することであり、解決策を提示することではない。リアリズムの長所は治療や予防よりも診断にある。新型コロナウイルスに最も効果的に対処するためには、政策立案者たちは、過去4分の3世紀の他の大きな危機への対応に、不本意ながら情報を与えてくれたもう1つの理論的伝統に目を向ける必要がある。

リアリズムは多くのことを正しく理解しており、それが、少なくともアメリカにおいて、リアリズムが国際関係論の基礎となる学派であり続ける理由の1つである。新型コロナウイルス感染拡大は、世界政治の主役は国家であるというリアリズムの見識を浮き彫りにしている。新型コロナウイルスが発生すると、各国は国境を閉鎖または強化し、国境内の移動を制限し、安全保障と公衆衛生の資源を結集して迅速に行動した。世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は当初、こうした国境管理に反対するよう勧告し、企業は経済活動の低下を懸念し、個人は移動の自由の制限に苦しんだが、これは秩序を維持し出来事を形成する国家の権威を強調するものだ。

しかし、国の独自行動がいかにリアリズムから理解できるものであっても、また予測できるものであっても、その不十分さは同じである。国境管理と渡航制限によって、各国が新型コロナウイルス感染拡大から免れることはなかった。たとえ完璧な管理が可能であったとしても、それが望ましいかどうかは疑問である。島国であるニュージーランドは、物理的な地理的優位性と国家の決定的な行動により、新型コロナウイルスに対して国境を維持し、比較的成功を収めていることについて考える。ニュージーランドが国家的勝利を収めたとしても、感染拡大が国境を越えて猛威を振るう限り、それは不完全なものに過ぎない。再感染し、国際的な開放性に依存する産業が経済的なダメージを受け続ける危険性がある。つまり、自国内での感染を防ぐことは国益にかなうが、他の国が同じことをしない限り、その国益は実現しないのだ。経済や安全保障の競争は、「相対的利益(relative gains)」やゼロサムの競争論理といったリアリズム的な考察に合致しやすいが、疾病のような国境を越えた大災害は、「無政府状態(anarchy)」の国際システムにおける個々の国家の限界を露わにする。

国境を越えるようなリスクと国益との間の断絶は、資源をめぐる国家の奔走という別の問題にも関連している。ここでもリアリズムがこの問題の診断に役立っている。なぜ各国が医療用マスク、人工呼吸器、治療やワクチンのための知的財産といった希少な品目をめぐって争うのかを説明している。このような争いは、ゼロサムの論理の性質を持つ。しかし、協調性のない行動は非効率的な配分(inefficient allocation)をもたらし、時間と労力を浪費し、コストを増大させる。これら全ては、感染症の発生を阻止するという包括的なそして共通の利益を損なうものである。同じ資源をめぐるアメリカの州や自治体の無秩序な争いは、国内でもよく見られる光景である。リアリズムが提示する建設的な選択肢はほとんどない。

リアリストたちは国際機関を信用しないよう注意を促す。例えば、国連もWHOも新型コロナウイルスを倒すことはできない。国際機関が自律的な国際的なアクターであるとすれば、それは弱いものであることは事実である。しかし、この批判は的外れである。国際機関は、国家の行動に代わるものでも、国際関係における国家の主要な地位に対する挑戦者でもない。むしろ、外交政策や国家運営(statecraft)の道具である。国家が国際機関を設立し、参加するのは、予測可能性(predictability)、情報、コスト削減、その他機関が提供できるサーヴィスから利益を得るためである。リアリズムの著名な学者であるジョン・ミアシャイマーでさえ、国際機関は「事実上、大国が考案し、従うことに同意したルールであり、そのルールを守ることが自分たちの利益になると信じているからである」と認めている。制度学派のロバート・コヘインとリサ・マーティンが数十年前にミアシャイマーとの大激論で述べたように、国家は確かに自己利益追求的であるが、協力はしばしば彼らの利益になり、制度はその協力を促進するのに役立つのである。ミアシャイマーは、最近、他の分野でもアメリカの利益に資するために、より多くの国際機関を創設するよう主張したので、最終的には同意することになったのかもしれない。また、制度学派も、安易な協力を期待することの甘さに対するリアリズムの警告を認めている。日常生活において、隣人との協力は簡単でも確実でもない。しかし、アメリカ人の多くが感染拡大にもかかわらず、街頭に出て要求したように、代替案よりも望ましいことであるから、それを得るために努力する価値があるのだ。

主要な違いは、制度主義(institutionalism)の方が、自己利益追求的な協力の現実的な可能性をより強調することである。この強調の仕方の違いによって、リアリズムと制度主義の間にある実質的な共通点が曖昧になりかねない。両方とも、国際協力(international cooperation)が望ましいことは認識しているが、より困難な問題は、それをどのように達成するかということである。この点では、現実主義的な洞察(insight)が大いに貢献する。覇権的なパワー(hegemony power)が国際的な制度を押し付けると、その制度は覇権を失った後も存続しうるという古典的な考え方がある。また、ジョセフ・ナイのリーダーシップに関する議論でも、パワーは中心的な役割を果たし、コストを下げ、成果を向上させるために、パワーのハードとソフト両面の「賢い(smart)」応用が必要であるとしている。さらに他の研究者たちは、制度設計(institutional design)が強制、情報共有、その他の設計上の特徴を通じて、不正行為(cheating)、恐怖(fear)、不確実性(uncertainty)のリスクを縮小することができると指摘している。これらの資源は完璧ではないが、パワー、リーダーシップ、制度設計に対する影響力など、その全てがアメリカで利用可能であることは朗報である。

日常生活において、隣国との協力は簡単でも確実でもない。しかし、感染拡大にもかかわらず、アメリカ人の多くが街頭に立って要求しているように、代替案よりも望ましいことであるから、それを得るために努力する価値はある。国益は、利用可能な資源やヴィジョンと相まって、アメリカや他の国々が過去の危機の際に国際機関を設立し、行動してきた理由を説明する。国際連合(United Nations)は、第二次世界大戦中にアメリカが連合国(the Allies)に対して作った造語であり、終戦時に制度化されたものである。イスラム国(Islamic State)討伐のための国際的な連合は、国際テロ対策という共通の利益を更に高めるために数十カ国が結集し、それ自体は2014年のNATO会議の傍らで考案されたものである。2008年の金融危機の際、各国は経済政策を調整し、コストを分担し、経済を救うために、G20を再発明した。

アメリカはこうした制度の創設を主導し、莫大な利益を得た。第一次世界大戦後の国際連盟(League of Nations)への加盟を拒絶し、911後のテロ対策では、当初はやや単独行動的(unilateral)であったように、国際協力は必ずしもアメリカの最初の衝動では無かった。しかし、アメリカは最終的に、国際的な協調行動とリーダーシップによって、自国の利益をよりよく実現することができると判断したのである。

新型コロナウイルスの大流行に対する国家の初期反応については、リアリズムで説明することができるが、より良い方法を見出すためには、他の諸理論に建設的な政策アイデアを求める必要がある。これまでの世界的危機と同様、アメリカは国際機関に国益を見出す努力をすることができるし、そうすべきである。

※セス・A・ジョンストン:ハーヴァード大学ベルファー科学・国際問題センター研究員。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 大変古い記事で申し訳ないが、国際関係論におけるリアリズムとリベラリズムという2つの学派の考え方を現実問題に当てはめてみたらどのような分析になるかという内容の論稿をご紹介したい。著者はリアリズムの代表的な学者でハーヴァード大学教授のスティーヴン・M・ウォルトだ。

 ここ最近の世界的な大事件と言えば、新型コロナウイルスの世界規模での感染拡大だ。各国はどのように新型コロナウイルスに対応するのかという分析記事である。国際関係論におけるリアリズムとは、国際政治においては国家が主役であり国益のために行動し、それぞれのパワー(力、国力)を前提として、国際関係を分析するが、国家間の協力よりは競争、更には均衡状態が実現しやすいという考え方である。リベラリズムとは、世界各国は国益を実現するために協力を行い、相互依存関係を深化させる。そして、国家以外の主体(国際機関やNGOなど)も重要なアクターであるとするものだ。

 今回の新型コロナウイルス感染拡大で各国政府は様々な分野で役割を果たした。国家の存在、役割が改めて認識されることになった。その点で言えば、リアリズムの分析が有効ということになる。リアリズムは国益を国家の生存と定義し、各国家の体制の違いにはあまり注目していない。どの形の国家であっても、国家の生存を第一とするということになる。各国家は滅亡しないように生存を最優先して行動する。これが前提となる。

 グローバライゼーションが深化して、国家以外の主体、国際機関やNGOなどが重要な主体となっているということが盛んに喧伝されたが、今回の新型コロナウイルス感染拡大ではそこまでの存在感を示すことはできなかった。やはり各国家が、他の国々の対応を横目で見ながら対応するということになった。

 2016年のドナルド・トランプの米大統領選挙当選、イギリスのEUからの離脱(ブレグジット、Brexit)はグローバライゼーションへの大きな反撃となったが、新型コロナウイルスもまたグローバライゼーションを止めるための要素となった。「アイソレイショニズム(Isolationism)」「アメリカ・ファースト(America First)」という言葉が改めて実感を持って認識されることになった。

 日本国内でもグローバライゼーションによる格差拡大、各レヴェルの政府の役割の縮小が進んでいた中で、新型コロナウイルス感染拡大対策が後手に回ったと言わざるを得ない。日本でもグローバライゼーションに対する揺り戻しがこれから進んでいくだろう。グローバライゼーションの推進勢力である自民党、公明党の連立政権と与党補完勢力(ゆ党)の日本維新の会に対する支持率の低下はそのことを示していると言えるだろう。

 新型コロナウイルスは世界の進む方向とそのスピードを変えるほどの大きな影響があったということになる。

(貼り付けはじめ)

コロナウイルス感染に対するリアリズム的ガイド(The Realist’s Guide to the Coronavirus Outbreak

-グローバライゼーションはICU(集中治療室)に向かっている。そして、増大する国際的な危機の性質に関するその他の外交政策に関する洞察にも向かっている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2020年3月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/03/09/coronavirus-economy-globalization-virus-icu-realism/

国際政治と外交政策に対するリアリズムのアプローチは、新型コロナウイルスの発生のような潜在的な感染拡大の問題にあまり注意を向けない。もちろん、全てを説明する理論は存在しない。リアリズムは主に、無政府状態の制約効果(constraining effects of anarchy)、大国同士が優位性を競う理由(reasons why great powers compete for advantage)、国家間の効果的な協力に対する永続的な障害(enduring obstacles to effective cooperation among states)に焦点を当てている。種間ウイルス感染、疫学、または公衆衛生の最善の形態についてはほとんど語られていないため、リアリストたちに在宅勤務を開始する必要があるかどうかを尋ねるべきではない。

これらの明白な限界があるにもかかわらず、リアリズムは、新しいコロナウイルスの発生が提起しているいくつかの問題に対して、有益な洞察を提供することができる。たとえば、トゥキディデスのペロポネソス戦争に関する記述(リアリズムの伝統の基礎となった文書の1つ)の中心的な出来事が、紀元前430年にアテネを襲い、3年以上にわたって続いたペストであることは、記憶しておく価値がある。歴史家たちは、このペストはペリクレスのような著名な指導者を含むアテネの人口の約3分の1を殺害し、アテネの長期的な力の可能性に明らかにマイナスの影響を及ぼしたと考えている。リアリズムとは、私たちが現在置かれている状況について、何か示唆を与えてくれるものではないだろうか?

第一に、最も明白なことは、現在の緊急事態(present emergency)は、国家(states)が依然として世界政治の主役であることを思い起こさせるということだ。数年ごとに、学者や評論家たちは、世界情勢において国家の存在意義が薄れつつあり、他の主体や社会勢力(非政府組織、多国籍企業、国際テロリスト、グローバル市場など)が国家の主権を弱め、国家を歴史のごみ箱に押し込んでいると指摘している。しかし、新たな危険が生じた時、人間は何よりもまず国家に保護を求める。911同時多発テロの後、アメリカ人はアルカイダから自分たちを守るために、国連やマイクロソフト社やアムネスティ・インターナショナルに頼らず、ワシントンと連邦政府に頼った。そして、それは今日も同じである。世界中で、市民は公的機関に権威ある情報を提供し、効果的な対応策を講じるよう求めている。先週、ジャーナリストのデレク・トンプソンがツイッター上で書いていたように、「パンデミックにリバータリアンは存在しない(There are no libertarians in a pandemic)」。これは、より広範なグローバルな取り組みが必要でないということではなく、グローバル化にもかかわらず、国家は依然として現代世界の中心的な政治的アクターであることを思い出させるものである。現実主義者たちはこの点を何十年にもわたって強調してきたが、コロナウイルスはそれをまたもや鮮明に思い出させるものである。

第二に、より構造的なリアリズムでは、相対的なパワーを除いて、国家間の差異を軽視する傾向があるが、コロナウイルス感染への対応を通じて、異なるタイプの政権の強みと弱点が露呈していることだ。硬直した独裁国家は飢饉や伝染病などの災害に対して脆弱であると、学者たちは以前から指摘してきた。これはまさに中国やイランで起こったと思われることである。警鐘を鳴らそうとした人々は沈黙させられ、あるいは処罰され、トップはそれに対処するために迅速に動員する代わりに、何が起こっているのかを隠そうとした。権威主義的な政府は、資源を動員して野心的な対応をすることが得意である。北京が都市全体を隔離し、広範囲に及ぶ規制を行ったのはそのためだが、トップに立つ人々は何が起こっているのかを把握し、認識した後でなければならないのである。

民主政体国家では、独立したメディアや下級役人が処罰されることなく警鐘を鳴らすことができることもあり、情報がより自由に流れるため、問題の発生をより的確に把握することができるはずだ。しかし、民主政体国家においては、時宜を得たな対応策を策定し、実行に移す際に問題が生じる可能性がある。特にアメリカでは、緊急事態に対応する第一対応者(first responder)やその他の機関が、多くの州政府や地方政府の管理下に置かれているため、この欠陥が深刻になる可能性がある。事前に十分な計画を立て、ワシントンから効果的な調整が行われない限り(最善の状況でこれを行うのは容易ではない)、正確で時宜を得た警告であっても、効果的な緊急対策は生まれないかもしれない。ニューオーリンズのハリケーン・カトリーナやプエルトリコのハリケーン・マリアへの対応の失敗がその具体例だ。

残念なことに、ミシェル・ゴールドバーグが最近の『ニューヨーク・タイムズ』紙の論稿で指摘したように、「ドナルド・トランプのコロナウイルスへの対応は、独裁と民主政体の最悪の特徴を兼ね備えており、不透明さとプロパガンダと指導者不在の非効率性が混在している」のである。以前、連邦政府全体とホワイトハウス自体の災害対策を格下げしたトランプは、一貫してコロナウイルス発生の深刻さを軽視し、資格を持つ科学者の評価を覆し、あるいは挑戦し、効果的な連邦政府の対応を調整できず、前線にいる地方公務員と喧嘩をし、全てを退任して3年以上になる前任者バラク・オバマのせいにしてきた。分権的な民主政体システム(decentralized democratic system)の責任者に権威主義者を据え、更に深刻な緊急事態が重なれば、このような事態も予想される。

明るい兆しはあるのだろうか? リアリズムはわずかながらあるのかもしれないと提案している。競争の激しい世界では、国家は他国が何をしているかに警戒心を抱き、成功を真似ようとする大きな動機がある。例えば、軍事上の技術革新はすぐに他国に採用される傾向がある。適応に失敗すれば、遅れをとって脆弱になるからだ。このような観点から、いくつかの国がコロナウイルスに対してより効果的な対応をとれば、他の国もすぐにそれに追随することが予想される。このプロセスは、各国が正確な情報を共有し、情報を政治的に利用したり、利益を得るために利用したりすることを控えれば、より迅速に実現することができる。

残念なことに、リアリズムは、この問題に関して効果的な国際協力を実現することは、その必要性が明らかであるにもかかわらず、容易ではないことも指摘している。リアリストたちは、協力(cooperation)は常に起こるものであり、規範(norms)や制度(institutions)は、国家が協力することが自国の利益になる場合には、それを助けることができると認識している。しかし、リアリストたちは、国際協力は往々にして脆弱であると警告する。その理由は、他国が約束を守らないことを恐れたり、協力が自分たちの利益よりも他国の利益になることを心配したり、コストの不釣り合いな負担を避けようとしたりすることにある。このような懸念があるからといって、各国が互いに協力してこの地球規模の問題に取り組むことを妨げるとは思わないが、これらの懸念のいずれか、あるいは全てが、集団的対応(collective response)の効果を低下させる可能性がある。

最後に、外交政策上のリアリズムは、もしこの新型コロナウイルス感染拡大が(2003年のSARSの流行のように)迅速かつ多かれ少なかれ永久に沈静化しないならば、既に進行中の脱グローバリズムへの拡大傾向を強化することになるとも指摘している。1990年代、グローバライゼーションの使徒たち(apostles of globalization)は、貿易、旅行、グローバル金融統合、デジタル革命、そして資本主義的自由民主政治体制の明白な優位性によって、世界はますます緊密につながり、ますますフラットでボーダレスになっていく世界で、私たちはみな豊かになるために忙しくなるだろうと信じていた。過去10年以上、この楽観的なヴィジョンは着実に後退し、自律性(autonomy)と大切な生活様式の維持のために、効率、成長、開放性を交換しようとする人がどんどん増えている。イギリスのEU離脱賛成派(Brexiteers)が言うように、彼らは「コントロールを取り戻したい」ということなのだ。

リアリストにとっては、この反発は当然のことである。リアリストのケネス・ウォルツがその代表作『国際政治の理論(Theory of International Politics)』で書いているように、「国内の命令は『特殊化する(specialize)』」であり、国際的命令は『自分のことは自分でやれ!(Take care of yourself !)』」なのだ!」。キリスト教的リアリストのラインホールド・ニーバーも1930年代に同様の警告を発し、「国際商業の発展、国家間の経済的相互依存(economic interdependence)の増大、技術文明(technological civilisation)の全装置は、国家間の問題や課題を、それを解決する知性(intelligence)が生まれるよりもはるかに急速に増大させている」と書いている。

リベラル派の理論家たちは、国家間の相互依存の高まりが繁栄の源泉となり、国際的な対立を阻害すると主張してきた。これに対し、リアリストたちは、緊密な関係は脆弱性(vulnerability)の源でもあり、紛争の原因となり得ると警告している。ウォルツとニーバーは、国家間の結びつきが強くなればなるほど、解決できる問題と同じくらい多くの問題が発生し、時には解決策を考えるよりも早く問題が発生する、と言っているのだ。そのため、国際政治の重要な構成要素である国家は、互いの取引に制限を設けることでリスクと脆弱性を軽減しようとする。

従って、リアリズムの観点からすれば、新型コロナウイルスは国家にグローバライゼーションを制限する新たな理由を与える可能性がある。超グローバライゼーションは、世界の金融システムを危機に対してより脆弱にし、雇用の奪い合いによる深刻な国内政治問題を引き起こしたが、現在我々が目撃しているような国際規模の感染拡大に文字通りさらされる機会も増加した。

明確にしよう。リアリズムは、経済的自立への後退や、2つの世界大戦と世界恐慌の結果として起こったのと同じレヴェルの脱グローバリズムを予測するものではない。現代の国家は、新型コロナウイルスのようなものに直面しても、全ての関係を断ち切る訳にはいかない。しかし、現代のグローバライゼーションの高水準はもはや過去のものとなり、2つの種類の境界を越えたウイルスが、国家間の境界(borders)をもう少し高くする理由の1つになるのではないかと私は推測している。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 「ウクライナ戦争はアメリカ(とNATO加盟の西側諸国)の火遊びが引き起こした」「NATOの東側への拡大とウクライナの実質的なメンバー入りと軍備増強がロシアを刺激して戦争にまで発展した」というこれらの主張が説得力を持つようになっている。

 西側諸国がウクライナをおもちゃにして、対ロシア強硬姿勢の最前線としたことで、ウクライナの運命は決した。ウクライナは早晩ロシアと戦わされる運命になっていた。そのために傀儡として、ヴォロディミール・ゼレンスキーが大統領になり、アメリカや西側諸国から中途半端ではあるが、大規模な軍事支援が行われていた。「ロシアがどこで怒り出すか、一つ試してみようじゃないか」という西側諸国の指導者たちの火遊びの結果が、ウクライナ戦争という大火事である。

 アメリカは大火事になっても、自分で何とかしようとはしない。「ありゃ困ったな」という感じである。アメリカ軍を派遣してロシア軍をウクライナから追い出すことはしないし、重要な、ロシア軍を圧倒できるような武器を渡すこともしない。戦闘機を渡さないというのは、ウクライナ軍が制空権を取ることができないということになって、結果として有利に戦いを進めることができないということになる。

 アメリカはロシアが核兵器を使ってウクライナ国内を攻撃してくることを恐れている。第三次世界大戦が起きてしまうことを恐れている。そして、アメリカを「戦争当事国」に認定して核ミサイルでアメリカ本土を攻撃してくることを何よりも恐れている。「アメリカ国民の生命と財産を守る方がウクライナ防衛よりも大事だ」ということになる。

 ウクライナの運命は日本の運命である。「ウクライナの次は台湾だ」というスローガンは間違っている。「ウクライナの次は日本だ」ということの方がより正確だと私は考える。「ウクライナがロシアにぶつけられるように仕向けられた結果としてのウクライナ戦争」を敷衍するならば「日本が中国に仕向けられた結果としての日中戦争」ということになる。日本はウクライナのようになってはいけない。最近の自民党公明党連立政権(+与党補完勢力の日本維新の会)は、先制攻撃の容認と軍事予算の倍増を進めている。これは日中戦争の下準備ということになる。日本国民は騙されることなく、戦争に徹頭徹尾反対しなければならない。
 下記論稿に出てくるジョー・バイデン政権の外交政策分野のキーパーソンたちについては拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』を読んでいただくと理解が深まると思う。是非手に取って読んで欲しい。

(貼り付けはじめ)

バイデンのウクライナに関するソフトな泣き所(Biden’s Soft Underbelly on Ukraine

-バイデン政権は、プーティンを刺激して第三次世界大戦の危険を冒すことを恐れて、ウクライナに対してあまり手を貸さない口実になっている。

The Biden administration’s fear of provoking Putin and risking World War III has become an excuse to do less for Ukraine.

ダニエル・プレトカ筆

2022年10月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/12/biden-ukraine-support-putin-armageddon/

2022年の夏の終わり、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、ジョー・バイデン政権が対ロシアでウクライナ支援を熱心に進めることを改めて宣言した。しかし、「大統領が提供する用意がないと言っている能力もある」とも断言した。その1つが射程300キロの長距離ミサイルだ。「アメリカの重要な目標はウクライナを支援し防衛することだが、もう1つの重要な目標は、第三次世界大戦への道を歩むような状況に陥らないようにすることだ」とサリヴァンは述べた。

数週間後、バイデン政権の「複数の高官」は、ロシアのウラジミール・プーティン大統領の盟友アレクサンドル・ドゥーギンの娘の殺人事件の調査結果を漏洩することに成功した。ダリア・ドゥギナは自動車爆弾で死亡した。ウクライナ政府関係者の一部は、この攻撃はキエフの「ナチス」に対する敵意をかき立てるためのクレムリン側の偽旗作戦(false flag operation)の可能性を示唆した。しかし、「複数のアメリカ政府高官」は、「攻撃はウクライナ人によるものだ」と主張し、「アメリカはこの攻撃に関与していない」と言い添えた。

この2つの出来事は、バイデン政権における厄介な底流(undercurrent)を裏付けている。ウクライナを完全に支援することへの躊躇(hesitation)、重要な兵器の遅配、そしてアメリカ大統領とそのスタッフが繰り返し第三次世界大戦の脅威と表現してきたものに対するほとんど病的な恐怖心などである。このような躊躇は、ウクライナにとってより多くの死者と勝利への道のりの遅れを意味すると米連邦議会の国家安全保障担当者は私に語っている。更に悪いことには、紛争が長引き、コストが上昇し続けた場合、ホワイトハウスはウクライナにモスクワとの交渉による和平を求め、例えば、キエフがクリミアを奪還する前に、あるいはもっと早く戦争を終わらせるように圧力をかけ始めるという深刻なリスクがあることを示唆している。

今年(2022年)の初めの頃はもっと希望に満ちていた。2月のロシア侵攻の数週間前、バイデン政権は、戦争を引き起こしたとしてウクライナを非難するロシアの計画、動き、陰謀に関する情報を狡猾に機密扱いで解除した。この心理作戦(psychological operations)は、冷戦時代の勢いを彷彿とさせる見事な振り付けで、バイデン政権の国家安全保障ティームは、これから起こるであろう事態に備え、本番に臨んでいることを約束するものであった。しかし、奇妙なことに、実際のところ、そうではなかった。

問題は侵攻発生前から明らかだった。2021年のウクライナとの国境でのロシアの軍備増強(最終的に2022年の侵攻に使われる装備の準備)する一方で、バイデン政権は6000万ドルのアメリカ軍の軍備縮小(ミリタリー・ドローダウンズ、military drawdowns)を取り止めた。ドローダウンズはアメリカ政府が既存の軍備貯蔵から軍備品を輸出することを認めるものだ。サリヴァンは、取り止めを否定した後、「ロシアがウクライナに更に侵攻する場合」には、ドローダウンズを許可すると認めた。そして、2021年8月にようやく承認された。2021年9月のウクライナ大統領ヴォロディミール・ゼレンスキーのワシントン訪問のための決定であったと考えられる。

秋までに、バイデン政権は以前のように、ロシアを刺激するとして、スティンガー・ミサイルの納入を阻止した。2021年12月には、2億ドルの供与が阻止された。12月末には、バルト諸国がウクライナにジャベリンとスティンガーを提供する承認を留保した。

2022年1月までに、バイデン政権は、政権内部のある方面(国防総省と聞いた)から出た「ロシアを怒らせるな(don’t anger Russia)」というシナリオを完全に信じ込み、東ヨーロッパでの戦力削減を考えていた。翌2月には戦争が始まり、ウクライナへの情報共有や軍事支援は、ホワイトハウスの弁護士たちが、アメリカを戦争の当事者(party to the war)にしかねないと主張し、議論されることになった。

2022年3月、バイデンはポーランドからウクライナへのMiG-29戦闘機の移送を阻止した(ウクライナには現在でも十分な航空戦力がない)。2022年6月、数ヶ月の遅れの後、バイデン政権は画期的な高機動砲ロケットシステム(ハイマース、HIMARS)を納入したが、米国防総省がアメリカの備蓄をさらに枯渇させることに難色を示したため、わずか16台しか納入しなかった。先週、米国防総省は2年以内にさらに18基のハイマースを納入すると発表した。

ホワイトハウスがロシアとの心理戦(mind games)で見せた戦略的技術(strategic skills)とはほど遠く、ウクライナの軍事防衛の驚くべきサクセスストーリーの各章は、もめごとに満ちている。ホワイトハウスはなぜか先のことを考えず、アメリカの在庫や予算が要求するよりもゆっくりと軍備を縮小し(連邦上下両院の軍事委員会の民主・共和両党の怒りを買った)、20億ドル以上の縮小権限を失効するまで放置している。

実際のところ、ウクライナ軍が米国防総省の期待(決して高くない)を超えるような行動を取る場合、ホワイトハウスは次の段階に進むために説得(persuasion)と口うるさい対応を要求してきた。一歩前進する度に、今度はやりすぎだと手をこまねいているうちに、慎重さ(prudence)が麻痺してしまったのだ。

バイデン政権の擁護者たちは、NATO諸国の中でウクライナに支援を約束しているのはアメリカだけであり、ドイツのオラフ・ショルツ首相の不安定な関与と比較するとバイデン政権は積極的な軍事主義者(positively militant)に見えると主張している。しかし、常に臆病なヨーロッパ諸国とアメリカを並べることは問題ではない。むしろ、ウクライナのためにアメリカができることと、バイデン政権が実際に行っていることを比較する時にこそ、疑問が生じるのである。

バイデン政権の国家安全保障ティームによる答えは、第三次世界大戦(World War III)の見通し、あるいはバイデン大統領が最近民主党の資金調達パーティーで「ハルマゲドン(armageddon)」と表現したものである。ホワイトハウスと国防総省の高官たちは、核兵器のシナリオが「あり得る(probable)」とは考えていないことを強調している。それでも、マスコミはサリヴァンやコリン・カール米国防次官など政府高官たちの言葉を引用して、エスカレーションを懸念する声で一杯だ。しかし、なぜなのか? 世界大戦は本当に起こるのだろうか? プーティンの核の脅威(nuclear threats)は現実的なものか? それとも、「ハルマゲドン」や「第三次世界大戦」は、ホワイトハウスがウクライナの全面的な防衛を避けるために抱えている詭弁を弄する論客たち(straw men)なのだろうか?

アメリカ大統領の最重要の仕事は、アメリカ国民の安全と安心(safety and security)を守ることである。バイデンは、最悪のシナリオを考え、それが実現してしまうことを避けることが正しい。プーティンの脅しに耳を傾け、それを真剣に扱うのは正しい。しかし、ロシア軍がフルダ・ギャップ(Fulda Gap、訳者註:ヘッセンとフランクフルトの間にある地域)から押し寄せるどころか、実質的にロシア軍よりも小規模なウクライナ軍を打ち負かすことができないのはもはや明白になっている。

プーティンは、潜水艦に搭載したミサイルを使ってウクライナに戦術核攻撃を行う可能性があるだろうか? その可能性はあるだろう。しかし、アメリカや他のNATOの同盟諸国に対してはどうだろうか? なぜその可能性はないと言えるだろうか? それは非合理的なだけでなく、非常識な破壊行為であるからだ。最も平和主義的な指導者でさえもロシアに対応して攻撃せざるを得ないことになるだろう。

しかしながら、このような最悪の事態を想定した夢物語(worst-case fever dreams)は、終末(apocalypse)を明確に予見しているというよりも、バイデン政権がクレムリンを「刺激(provoking)」することを恐れ、ウクライナに対してあまり手を出さない理由の1つになっているように思われることが多くなってきた。そして、この仮定(supposition)の真実性を疑うに足る十分な歴史がある。

バイデンの現在の国家安全保障ティームのメンバーの多くは、バラク・オバマ政権でその地位を確立した。サリヴァンは当時のバイデン副大統領の国家安全保障問題担当副大統領補佐官を務めた。アヴリル・ヘインズ国家情報長官は、オバマ大統領の下で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官とCIA副長官を務めた。現国務長官のアントニー・ブリンケンは国務副長官を務めた。バイデン副大統領(当時)の補佐官を務めたサリヴァンの後を継いだのは、現在の国防次官(政策担当)であり、現在ではウクライナに関する重要な意思決定者であるコリン・カールである。ウクライナとロシアに関してオバマの安全保障ティームを支配していたのと同じ考え方が、現在バイデン政権を支配しているのは何ら不思議ではない。

クリミア半島のロシア併合をもたらし、2022年の戦争を予感させることになった、2014年のロシアのウクライナ侵攻の後、オバマ政権は、キエフと米連邦議会の両方からの嘆願をはねつけ、ウクライナに意味のある効果を持つ軍事支援をすることを拒否し続けるだけのことだった。2014年3月、アメリカ軍援助の最初の支援物資は、30万食の調理済み食品だった。ホワイトハウスは、「ウクライナ軍の力がロシア軍と同等まで引き上げられるシナリオはないだろう」として、ウクライナにとって「武力行使は望ましい選択肢ではない(use of force is not a preferred option)」と断言した。その後、2014年9月に暗視スコープと毛布が支援物資として提供された。

トランプ政権は、オバマ大統領のウクライナ向け重要装備の禁止を撤回したが、210基のジャベリンミサイルと37基のランチャーは、モスクワに対する「戦略的抑止力(strategic deterrent)」としてのみ使用し、箱に入れておくことが要求された。ドナルド・トランプ大統領も、バイデン一家に関する情報をゼレンスキーから提供されることを期待しながら、2ヶ月近く援助を遅らせた。

トランプ政権の逆転劇の余波を受けた後でさえも、発足したばかりのバイデン政権はウクライナへの子押下的な軍事援助を強化することに慎重であった。2022年2月の『ジ・アトランティック(The Atlantic)』への寄稿で、アレクサンダー・ヴィンドマン退役米陸軍中佐(悪名高いゼレンスキー・コールの件でトランプ時代のホワイトハウスを劇的に辞めた)は、バイデンを「プーティンにフリーハンドを与えた」と非難し、「パトリオット対空ミサイルやハープーン対艦ミサイルといった高度な兵器システムのウクライナへの提供を拒否したが、それはウクライナ軍がそれらを扱うほど高度ではないと判断したためだ」と述べている。そして、それは戦争が始まる前のことである。

共和党が連邦下院(そしておそらく連邦上院も)で過半数を獲得する可能性があるため、更に複雑な事態が予想される。共和党の幹部の多くがホワイトハウスにウクライナへの武器供与のスピードと質を上げるよう求めている一方で、中間選挙後に更に増えるであろう少数派が、ウクライナのために使われる銃弾や予算に反対する声を上げることになるであろう。その少数派の中に、更に自制を主張する政権側のカウンターパートがいるのだろうか?

ウクライナ政策の方向性は、週ごと、月ごとの漸進主義(incrementalism)を除けば不明確である。しかし、バイデンのパターンは明確で、ウクライナへの武器供与のペースと質を上げ下げし、プーティンを怒らせる可能性のあるものを調整し、更に再調整している。そして、ウクライナでの戦術核攻撃に対するバイデンの恐怖(現実か政治ドラマの内容かは別として)が彼の想像力をさらに支配するにつれて、彼は虎を突っつくことについてより一層心配するようになる。

どの時点で、大統領の懸念は、ヘンリー・キッシンジャーのハイパーリアリズムな助言に従って、紛争を凍結し、交渉のテーブルにつくようキエフへの圧力を強めるように指示するだろうか? それは分からない。バイデンはどの時点で、ウクライナに対する戦後復興支援(既に数千億ドルと見積もられている)の見通しを活用し、完全勝利の前に戦争を終わらせるようウクライナに強制するようになるのだろうか? もしかしたら、バイデン大統領はそうしないかもしれない。

しかし、バイデンの国家安全保障ティームの歴史、資金援助と武器売却の証拠、そしてバイデン大統領自身のこれまで以上に困惑したレトリックは、オバマ時代のウクライナ政策の亡霊がますます大きくなり、ウクライナの自由勢力への支援がこれまで以上に制約されることを示唆している。

※ダニエル・プレトカ:アメリカンエンタープライズ研究所名誉上級研究員、ポドキャスト番組「一体全体何が起き居ているのか?(What the Hell is Going On?)」共同司会者。ツイッターアカウント:@dpletka

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 「韓国が核武装する」という話を聞いて、「そんな馬鹿なことはあり得ない」「アメリカが許すはずがない」という反応をする人たちがほとんどだろう。朴正熙大統領が最後暗殺されたのも核武装を目指した彼をアメリカが許さずに最後はCIAが殺害指令を出したからだという話もあるほどで、日本と同じくアメリカの属国である韓国の核武装は、日本がそうであるように許されるはずがないというのは常識的判断である。

 朝鮮半島の非核化はドナルド・トランプ政権時代に動くかに見えた。トランプ大統領と北朝鮮の金正恩国務委員化委員長が会談を行い、「CVID(完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄、complete, verifiable, irreversible dismantlement)」で合意した。しかし、その後は何の進展もなかった。北朝鮮は核開発を進めている。旧ソ連時代からの関係でロシアが支援しているという話もある。

 北朝鮮がアメリカ本土を射程に収めるミサイルと核兵器を保有することになれば、「アメリカは本土攻撃を受けるリスクを冒してまで韓国を守ってくれるだろうか」という疑問が韓国側に生じてくるのは当然のことだ。特に現在のウクライナ戦争の状況を見れば、「アメリカはロシアの核攻撃を怖がってウクライナを本格的に防衛するということを行わない」ということになる。そうなれば韓国としては北朝鮮との対抗上、自国で核兵器を所有しなければならなくなると。

 朝鮮半島を西洋的な考えから見ればそういうことになるだろう。しかし、大前提として、北朝鮮の核兵器とミサイルは韓国向けに建造されたものではない。中国、ロシア、アメリカ、日本という大国の間で生きていくための抑止力である。北朝鮮のミサイルはアメリカと日本にだけ向いているのではない。ロシアと中国にだって向いている。勧告はそのことを知っている。「北朝鮮の核兵器」とは「朝鮮半島の朝鮮民族が持つ核兵器」である。韓国は自分たちで核兵器を開発して保有する必要はない。韓国が自国で核兵器を持ったとして、どこに照準を合わせるのか。北朝鮮ではあるまい。やはり中国、ロシア、アメリカ、日本ということになる。

 このようなことを書けば身もふたもないということになる。「韓国と北朝鮮が赤の他人で仇敵」ということであれば、韓国の核武装も現実味を帯びる。しかし、両国は共に言葉も同じ民族だ。そのことをよくよく考慮しなければならない。

 アメリカにとってそんな危険な状況を作り出すことは得策ではない。韓国は日本とは立場の違うアメリカにとっての属国である。韓国の核兵器とミサイルがアメリカに向かうということを起こしてはならない。だから、アメリカはそのようなことを許すことはない。しかし、このような議論が出てくるというのは、アメリカの信頼性が低下し、国力が減退し、衰退国家となっている証拠ということになる。

(貼り付けはじめ)

ワシントンは韓国に原爆を持たせる許可を与えるかもしれない(Washington Might Let South Korea Have the Bomb

-北朝鮮の核武装によりかつてタブーとされていた選択肢が考えられるようになっている。

ダグ・バンドウ筆

2023年1月17日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/01/17/us-south-korea-nuclear-weapons-denuclearization/

北朝鮮の核武装の野望を抑えようとするワシントンの試みは行き詰まりを見せている。北朝鮮は核保有国(nuclear state)である。北朝鮮の核兵器は規模と精巧さを増している。アメリカへの先制攻撃(preemptive strike)はできないだろうが、アメリカが韓国防衛に関与していることに対して報復することはできるようになるかもしれない。

このバランスの変化は、アメリカと韓国の間で核政策をめぐる深刻な議論を巻き起こしている。まず、北朝鮮が既に爆弾を持っているのに、非核化(denuclearization)、有名なCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な廃棄、complete, verifiable, irreversible dismantlement)を追求することに意味があるのかという疑問である。金正恩委員長に核廃棄を説得、もしくは強要できると考える楽観主義者たち(Panglossians)はまだ少数派である。ワシントンの公式政策は、北朝鮮を核保有国として断固として認めないが、現実はいずれ政策の後退を余儀なくされるかもしれない。

更に重要なことは、韓国のエスタブリッシュメント派がアメリカの核兵器を手に入れたい、あるいは少なくともそれに近づきたいと考えていることである。あるいは、韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)大統領は、ソウルが独自に核兵器を開発する可能性を示唆した。多くの韓国政府関係者は、半島に「戦略的資産(strategic assets)」を駐留させ、ヨーロッパのような「核の共有(nuclear-sharing)」を望んでいる。韓国の冷笑主義者、もしくはリアリストたちは、アメリカの関与の持続性と約束の誠実さを疑っており、自国(韓国)独自の核兵器を欲しがっている。アメリカの政策立案者の中には、その可能性に前向きな人もいるようだ。

北朝鮮の核戦力の増強は、朝鮮半島の安全保障の現状に脅威を与えている。1953年の米韓相互防衛条約(Mutual Defense Treaty)の批准(ratification)以来、アメリカは韓国の防衛を約束した。アメリカの責任は戦場に限られていたため、初期のころは比較的簡単に約束できた。朝鮮戦争(Korean War)は激烈で破壊的であったが、これまでの世界的な紛争と同様に、その暴力はアメリカ本土にはほぼ及ばなかった。そして最近まで、北朝鮮はアメリカや太平洋の領土にさえ到達する術を持たなかった。例えば、1953年に韓国の李承晩大統領(当時)が休戦協定への署名を拒否したにもかかわらず、半島統一(to unify the peninsula)のために戦わないという選択をしたように、アメリカは自国に有利なように政策を調整することが容易にできた。

しかしながら、ソウルの政策立案者たちは、通常兵器と核兵器の両方による拡大抑止力(extended deterrence)の実行可能性(viability)について、ますます神経質になっているように見える。昨年(2022年)、北は90回を超える弾道ミサイル(ballistic missiles)実験を行い、世界的な注目を浴びた。平壌は大陸間弾道ミサイル(intercontinental ballistic missiles)に核弾頭(nuclear warheads)を搭載し、アメリカの諸都市を危険に晒すことに精力的に取り組んできた。もし、金正恩がアメリカ本土に「炎と怒り(fire and fury)」をもたらすことができたら、ワシントンは韓国との約束を守れるだろうか?

ウクライナはアメリカの条約上の同盟国ではないが、それでもこうした懸念は強まっている。ジョー・バイデン政権はロシアのエスカレーション、特にモスクワの核兵器使用の可能性に懸念を示しているが、高度化する兵器移転(arms transfers)を止めるのではなく、減速させている。結果として、北朝鮮がロシアと同様の(ロシアよりも規模が小さいのではあるが)核兵器能力を持つ場合のアメリカの対応に対する疑問を生じさせる。

尹大統領は次のように説明した。「拡大抑止力と呼ばれるものは、アメリカが全て面倒を見るから心配するなということでもあった。しかし、今はそれだけでは国民を納得させるのは難しい」。尹大統領は、アメリカの核兵器の使用について、ソウルが手を貸す考えを示した。大統領は「核兵器はアメリカのものだが、計画や情報の共有、演習、訓練はアメリカと米国が共同で行うべきだ」と述べた。

これは合理的な懸念である。もちろん、アメリカの政府当局者たちは、韓国に対する深くかつ永遠の関与を表明することで韓国側の懸念に応えた。ホワイトハウスは2022年5月、韓米同盟について「磐石な基盤(rock solid foundation)」と形容した。バイデン政権は更に、バイデン大統領訪韓を次のように称賛した。「ジョー・バイデン大統領は、核、通常兵器、ミサイル防衛能力を含むアメリカの防衛能力の全範囲を使用して、韓国に対するアメリカの拡大抑止の約束を確認する」と述べた。

しかしながら、一般的な保証はほとんど意味をなさない。ウクライナ人は、キエフがソ連時代の核兵器を放棄することと引き換えに提示された、歯切れの悪い、内容があいまいな1994年のブダペスト・メモランダムについて覚えている。

将来、米韓両軍が北上し、北朝鮮が最後通牒(ultimatum)を出し、同盟諸国軍が北朝鮮の領土から撤退しなければ、あるいはワシントンが紛争から完全に撤退しなければ、アメリカ本土を核攻撃すると脅している紛争を想像してみるといい。ワシントンの視点に立てば、韓国にはアメリカの多くの都市と何百万人ものアメリカ人を犠牲にする価値のあるものは何もないだろう。未来のアメリカ大統領ならどうするだろうか?

だからこそ、独立した抑止力に対する韓国の強力な後押しがある。国民の支持も強い。しかし、ほとんどの人は避けられない複雑な事態を考慮していないのではないだろう。現在、レ任浩永(イム・ホヨン)退役陸軍大将や国会議員の趙慶泰(チョ・ギョンテ)など、この考えを推し進めようとしている人物もいる。既に述べたように尹大統領も可能性を示唆している。しかし、ソウルの公式政策は一般的にワシントンから兵器を提供されることを望んでいる。

ワシントンは韓国製の原子爆弾については徹頭徹尾反対している。その理由の1つは、原則としての核不拡散(nonproliferation in principle)に忠実であることだ。また、通常は明言されないが、友好諸国間での核の独占を維持することで、アメリカのアジアにおける優位性(America’s Asian predominance)を維持したいとの考えもある。

しかし、この政策的な難問については、一部の人々の考えを変えつつあるようだ。例えば、フーヴァー研究所のマイケル・オースリンは早くからこの問題を提起している。彼は次のように書いている。「金正恩がいわれのない核攻撃を行うとは考えにくいが、経験豊富な韓国ウオッチャーたちは、戦争が起きれば負けが明らかになった時点で、間違いなく核兵器を使用すると私は考えている。このようなリスクが高まるにつれ、アメリカは韓国との数十年にわたる同盟関係を見直すことを避けられなくなるだろう。ワシントンが韓国を助けると約束し続けるだけで、アメリカの民間人に対する脅威はグロテスクなまでに拡大するだろう」。

オハイオ州選出の連邦下院議員を長年務めたスティーヴ・シャボットは最近、「ワシントンが 日本と韓国の両方と核兵器プログラム自体を検討するための話し合いに入るべきだ」という驚くべき提案を行った。彼は、この道を進む必要がないことを望むが、「韓国と話すだけでも中国の注意を引くことができ、もしかしたら彼ら(中国)は初めて北朝鮮を抑制するために積極的に行動するかもしれない」と主張した。

かつて、私を含む一部の専門家は、少なくともこのような議論を始める理由として、この可能性を提示していた。しかし、北朝鮮の核兵器が増え続けている現状では、北朝鮮の核武装を阻止するタイミングはほぼ確実に過ぎている。仮に北京がその気になったとしても、パンドラの箱に詰め物をするようなものだ。いずれにせよ、中国は以前にも増して国境の安定を維持することに関心を持ち、アメリカが軍事封じ込め(military containment)だけでなく経済的封じ込め(economic containment)に動いた後は、アメリカに便宜を図ることには以前に比べて関心が薄くなっている。

その場合、シャボットの主張は明白な疑問をもたらすだろう。アメリカは同盟諸国の核兵器製造を容認するのか? 特に岸田文雄内閣は軍事費の大幅増を約束しており、同時に2050年までに約2000万人(約17%)の日本の人口が減少すると予想され、大規模な軍備を整えることが難しくなっているため、韓国の原爆は日本国内で議論を引き起こすことは必至であろう。

拡大抑止を止めれば、金正恩がアメリカ本土を人質(hostage)に取ることはできなくなる。北朝鮮以外の国にも利点がある。北京は、軍事的に領有権を主張する際に、これまでとは異なるリスク計算に直面することになる。台湾への核技術移転も考えられる。ただし、中国のアメリカへの先制攻撃を防ぐために、アメリカが直接兵器を台湾に提供しなければならなくなるかもしれない。

しかしながら、このような政策の欠点も明らかである。核兵器が増えれば、事故(accidents)や漏えい(leaks)、脅威(threats)の機会が増え、戦争が起きれば事態が悪化する可能性がある。中国は核開発を加速させることで対抗するかもしれない。北朝鮮は、核兵器の制限に関する交渉に消極的になるだろうが、いずれにしても交渉には応じないかもしれない。アメリカが核武装した北朝鮮と対峙することを望まないのであれば、核武装したイランやロシアと戦争するリスクを冒すだろうか。他の同盟諸国も核武装の選択肢を検討するかもしれない。

しかし、友好諸国への核拡散(friendly proliferation)を許す、あるいは助長する可能性はもはや否定できない。特に韓国は、ワシントンの承認なしに核武装を進めることを決定する可能性がある。もしアメリカがイスラエルへの制裁を望まず、インドとパキスタンへの処罰を諦め、北朝鮮を阻止できなかったら、ソウルやおそらく東京の核開発を阻止できるのだろうか? そうすることの代償は見合うのだろうか? そうすることは可能なのだろうか? アメリカは、特に中国を封じ込めようとしている間は、同盟を解消したり、制裁を課したりすることはないだろう。

長年にわたり、同盟諸国の核武装を認めることは考えられなかった。それゆえ、韓国と台湾の核開発に対してアメリカは圧力をかけてきた。しかし、それは北朝鮮が実質的な核保有国になる前のことである。アジアにおける拡大抑止力は、アメリカ国民にとってそれほどリスクにはならない。韓国のために全てを賭ける覚悟がない限り、アメリカの政策立案者たちは、これまで考えられなかったようなこと、つまり韓国の各爆弾所有について考えなければならない。

※ダグ・バンドウ:ケイト―研究所上級研究員。ロナルド・レーガン大統領の特別補佐官を務めた。複数の著作があり、最新作は『仕掛け線:変化した世界における韓国とアメリカ外交政策(Tripwire: Korea and U.S. Foreign Policy in a Changed World)』である。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 「アメリカは中国とロシアの間を引き離すように中国に働きかけるべきだ」という声が上がっている。現在、ウクライナ戦争を戦っているロシアに対して、中国は表立って支援を行ってはいない。しかし、中露両国間には正式な条約を結んでの同盟関係、相互防衛関係は存在しないが、中露間の関係は緊密になっている。中国の一帯一路計画や上海協力機構(SCO)にロシアは参加し、ユーラシア同盟としての関係を築いている。ロシアはヨーロッパ志向(思考)を捨て、ユーラシア国家として生きていくという道を選択した。

中国はウクライナとの関係も良好であり、中国初の空母「遼寧」は、ウクライナの空母「ワリヤーグ」(1988年竣工)を購入し、改造したものだ。正確に言えば、ソ連時代に建造した空母であるが、造船所がウクライナにあり、ソ連崩壊の混乱とウクライナの独立があり、造船所がウクライナに国有化されるなどしたため、ロシアとウクライナの間での交渉の結果として海外に売却するということになっていた。ウクライナは所有権を持っていただけのことで、建造したのは旧ソ連ということになる。

 中国とロシアの間は離れがたく見えるが、それでも相違点は存在する。中国は現在の国際秩序の中で、自由貿易体制の利点を利用して高度経済成長を達成している。国際秩序の急速な変更は望んでいない。短期的、中期的には現状維持を望んでいる。ロシアは冷戦時代にアメリカと世界を二分して渡り合った。その前にはロシア帝国としてヨーロッパで覇を競った。ソ連崩壊でロシアはプライドを傷つけられた。ロシア国民はプーティン大統領が国民生活を改善し、ロシア帝国を復活させてくれるということで支持している。ロシアは現状に対する挑戦国となっている。ここが中露両国間の相違点だ。

 アメリカは中国を潜在的な脅威として捉えていて、強硬な対中姿勢を取っている。そうなれば、中国としてはアメリカとバランスを取る必要が出てくるので、ロシアの接近を受け入れるということになる。

ドナルド・トランプ大統領時代に「ヤルタ2.0」という風刺写真が出たことがある。1945年のソ連のヤルタでの米ソ英3カ国の首脳会談(フランクリン・D・ルーズヴェルト米大統領、ヨシフ・スターリンソ連共産党書記長、ウィンストン・チャーチル英首相)で戦後世界の管理体制が決められた。

このことを受けて、ドナルド・トランプ米大統領、習近平中国国家主席、ウラジミール・プーティン露大統領の米中露三帝が世界を管理するという意図が風刺写真に込められている。米中露がうまく折り合いをつけてやっていれば、世界は平和だという意図もその写真には込められている。現在は、冷戦初期のような段階になっている。アメリカが中露に対して強硬な姿勢を取り、それぞれとの戦争の可能性も出てきて、世界は第三次世界大戦に近づいている。
donaldtrumpvladimirputinxijinpingyalta2511

 中国がソ連と中国を離間させて、世界政治を動かしたのはリチャード・ニクソン大統領、ヘンリー・キッシンジャーの国務長官時代のことだ。この時代のことを懐かしみ、「アメリカは中国とロシアの間を引き離すべきだ」という主張が出ている。

 しかし、1970年代と現在では状況が大きく異なっている。アメリカの国力が衰退し、中国とソ連は国力を増大させている。中露は共にアメリカの衰退を待って、国際秩序の変更を行う(その規模やスピードには両国間で相違はあるが)、より露骨に言えば、西洋近代500年の支配を終わらせるという決意をしている。そして、それを西洋以外の新興の国々(the Rest)が支持している。中露は「ザ・レスト」の旗頭になっている。ここでアメリカに近づくことはもうできない。

 ジョー・バイデン政権ではなく、ドナルド・トランプ政権が続いていたら現在の状況はどうなっていただろうかということを考えることがある。そんなことを考えても仕方がない、詮無き事ではあるが、現在のような世界的に厳しい状況になっていなかったのではないかと考えてしまう。2024年にジョー・バイデンが米大統領に再選されることが世界に幸せをもたらすのかということも考えてしまうと、先行きはなかなか暗いと言うしかなくなる。

(貼り付けはじめ)

ワシントンは中国をロシアに対立させる機会を失いつつある(Washington Is Missing a Chance to Turn China Against Russia

-稀な状況で危機が重なったことで北京が軌道修正する可能性が出てきている。

ロバート・A・マニング、ユン・サン筆

2023年1月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/01/19/us-china-russia-ukraine-allies-war/?tpcc=recirc_latest062921

直感に反するかもしれないが、ロシアのウクライナ戦争、経済の低迷、反ゼロ新型コロナウイルスの反動、中国の習近平国家主席が一連の政策を撤回したこと、これらの出来事が中国に与える政治・経済的コストによって、ウクライナに関する米中協力のスペースを開く可能性がある。また、ウクライナ戦争が台湾への世界的な支持を集めていることも、北京にとって重荷になる可能性がある。

ウクライナ戦争が始まって以来、中国はロシアを言葉の上では支援し、NATOの行動を非難してきたが、モスクワを実質的に支援することを約束することは避けてきた。中露同盟は、西側諸国でよく見られるように、修正主義的な2つの独裁国家の間の単純なイデオロギー的共感ではない。むしろ、現実的でやや取引的な関係であり、アメリカは少なくとも特定の問題に関して、両者を引き離す機会を逸している可能性がある。

第一に、昨年9月に旧ソ連のカザフスタンを訪問した際、習近平は「断固として(resolutely)」カザフスタンの主権を支持すると約束し、モスクワをけん制(a snub to)した。そして、同じ9月の上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)の会議で、ロシアのウラジミール・プーティン大統領は、ウクライナ戦争をめぐる中国の「疑問と懸念(questions and concerns)」を前代未聞の形で公に認めた。2022年10月初旬、中国は国連安保理と総会の両方で、ロシアのドンバス併合を非難する投票に反対票を投じず、棄権(abstain)した。北京はまた、インドとともにウクライナ戦争の終結を訴えた。

これは、傷ついた西側諸国との傷ついた外交関係を修復しようとする試みと並行して行われた。ヨーロッパ連合(EU)当局者によれば、北京はNATOを非難する発言を止め、中国政府当局者たちが、中国はロシアの核使用を容認できないと考えていると語ったという。

中国は、「ウクライナの領土はどの範囲になるか」についてのロシアの解釈を支持する余地を十分に残しつつも、一貫してウクライナの「主権と領土保全(sovereignty and territorial integrity)」への支持を繰り返してきた。このような矛盾した、やりにくい努力を続けている。中国は侵略を正当化しているロシアを含む「当事者全て(all parties)」に自制(restraint)を呼びかけ、ウクライナの現在の状況に失望を表明してきた。それでも、 2022年2月 24日以前からウクライナとの強固な経済的および軍事的関係にもかかわらず、中国のメディアは親ロシアおよび反 NATO の偽情報を絶え間なく流しつつ、中国はウクライナに対してはわずか300万ドル程度の人道援助(humanitarian aid)しか提供していない。

ロシアと中国は、国際秩序が自由主義的民主政治体制家によって不当に支配されているという見解とアメリカの優位性(primacy of the United States)を共有することで結びついた。中露両国は自由主義的な国際秩序に対する地政学的な脅威(geopolitical threats)として認識されており、それは当然、欧米諸国、特にアメリカに対する中露両国が持つ脅威認識と同様だ。こうした地政学的な懸念の共有は、2014年、クリミア危機でロシアが孤立し、バラク・オバマ政権のアジアへの軸足転換(pivot to Asia)で、中国の周辺地域の安全保障環境に対する不安が強まりそして加速した。加えて、習近平の冷戦時代からのロシアへの親近感、絶対的政治指導者(strongman)としてのプーティンへの憧れが、中露の緊密な連携に対するトップリーダーのお墨付きをもう1つ与えることになった。

しかし、中国も他の国と同様、自国の利益を最優先しており、その利益はウクライナをめぐるモスクワの利益とますます乖離している。中国は、農業貿易、軍事技術協力、「一帯一路(Belt and Road)」社会資本(インフラ)整備プロジェクトなどで強固な関係を築いてきたロシアがウクライナに侵攻したことで、かなり困惑している。

プーティンがウクライナに侵攻した際、ウクライナには6000人以上の中国人が滞在していた。北京にはほとんど何の事前通報もなかったために、中国人の避難作戦を開始するために中国政府は東奔西走奔走させられることになった。中国政府は非公式に、避難民の一部が殺害されたことを認めている。このことは、プーティンが習近平に対して、戦争について知らされていなかったという中国当局者の主張を裏打ちしており、何が起こるかについてロシアは中国に対して正直ではなかったことを示唆している。プーティンは中国を、ロシアとの「無制限の(no-limits)」協力と、主権と領土保全に関する基本的な外交政策原則を選択的に、自分に都合が良い形で適用するプーティンとの間で、無駄な努力をする立場に追い込んだ。

プーティンのウクライナ戦争は、中国経済が困難な時期に、中国の経済的利益を直撃することになった。ウクライナ戦争による世界経済の混乱は、中国にとって最大の海外市場のいくつかに打撃を与えている。中国は問題を抱えた発展途上諸国への最大の資金の貸し出し者であるため、ウクライナ戦争と欧米諸国の制裁の影響でエネルギー、食糧、肥料の価格が上昇し、中国の融資返済の努力を複雑にしており、中国の巨額の債務問題を悪化させている。

ウクライナは北京が嫌うアメリカとの同盟関係を強化している。そして、次は自分たちだと恐れる旧ソ連諸国とロシアの関係を弱め、これらの国々がワシントンとの対話に関心を高めるように仕向けている。ウクライナ戦争の影響は、中国の大国としての外交政策の信頼性に疑問を投げかけている。プーティンがアメリカ主導の秩序を害する混乱を自らの利益と見なす破壊者(disrupter)であるのに対し、北京は中国の利益に有利なように世界の制度を再編成することに関心を持っている。この点は、米国の政策に織り込まれるべき、両国の間の重要な違いである。

特に、台湾問題に影響を与えている。岸田首相が「東アジアは明日のウクライナになるかもしれない(East Asia could be the Ukraine of tomorrow)」と言ったように、プーティンの戦争に対する西側諸国の反応と台湾へのアナロジー(類推)は、北京が今後の台北に対する行動を考える上で新たな要素を加えたことはほぼ間違いない。

ロシア経済への制裁が強まる中、中国が半導体などの重要なテクノロジーを提供するかどうかが1つの指標になるだろう。問題を抱えるジュニアパートナーとの協力関係を制限しているのは、中国がロシアと距離を置いていることを示すというよりも、巻き込まれての副次的な制裁を恐れてのことなのかもしれない。いずれにせよ、アメリカは、ウクライナに関する米中協力を可能にするのに十分な新しい機会が開かれるかもしれないという命題を検証することで失うものはほとんどない。

もしアメリカが、ウクライナに関するロシアと中国の見解の間の政治的空間が、米中間の慎重な協力のための新たな機会を開くほど広がっている可能性を見分けるのが遅くなっているが、それは初めてのこととは言えない。冷戦時代の反共産主義の影響力は、中ソが国境で短時間ながら激しい対立を繰り広げた時でさえ、アメリカが中ソの緊張を利用するのを複雑化し遅らせた。中ソの緊張は1950年代半ばにはアメリカの情報アナリストにとっては明白であったが、当時のリチャード・ニクソン米大統領とヘンリー・キッシンジャー国家安全保障問題大統領補佐官が中国との国交回復を利用し、この時代最大の戦略転換の1つを生み出したのは1971年になってからのことであった。

米国の近視眼(myopia)と確証バイアス(confirmation bias)は、中露両国を互いに接近させ、中国の対ウクライナ政策を過度に単純化することになる。中露同盟の宣言を額面通りに受け取ることで、アメリカは中露両国のそれぞれの国益とアプローチにおける重要な相違点を捉え損ねている。そこをうまく捉えればアメリカ外交のためのスペースを開く可能性が出てくる。

ウクライナ戦争初頭から、ワシントンは中国をロシアの共犯者として糾弾する「私は糾弾する(J'accuse[訳者註:フランスの作家エミール・ゾラがドレフェス事件で出した著作の書名]」を延々と繰り返してきた。プーティンの侵攻計画を中国が事前に知っていたというリークが何度も報道機関に流れたのは、やってもいない犯罪の責任を中国に負わせることが目的だった。プーティンが白紙委任(blank check)したロシアとの「無制限(no-limits)」の協力を進めた習近平は、確かに軽率であり賢明ではなかったと考えられる。しかし、北京の不可能に近いバランス行動、一種の親ロシア的な中立努力は、戦争への積極的参加とは決定的に異なる。

中国がロシアと経済的な関わりを継続していることは問題だが、インドやトルコ、そして南半球の多くの国々も同様である。北京はロシアへの石油・ガスプロジェクトやアジアインフラ投資銀行への融資を中止している。2022年7月までに、複数のアメリカ政府高官は、中国は、ロシアから制裁を科すという脅しを受けながらも、ロシアが制裁を逃れるのを助けず、モスクワの戦争行為に軍事支援をしなかったことを公然と認めている。

北京がロシアを非難したり、制裁を科したりすることを拒否していることは、もちろん道徳的に問題であり、政治的に役に立たないし、一貫して親ロシア的な国内メッセージも同様である。しかし、これは道徳的な問題であると同時に、実際的な問題でもある。

ワシントンは、中露同盟が確立され、揺るぎないものであるという前提で動いているが、現実には、より限定的な戦略的パートナーシップである。両国間には相互防衛に関する第5条のような協定は存在しない。

アメリカが公然と非難を繰り返したところで何の解決にもならない。アメリカとの戦略的競争が中国の対外関係における最も重要なテーマであり続ける限り、特に台湾をめぐる緊張が高まる中で、北京はアメリカに対抗するために必要なパートナーとしてモスクワを見るだろう。しかし、戦争が長引くにつれ、中国の風評被害と経済的コストは増大し、衰退しつつある戦略的資産との悪い取引と見なされつつあることから、いくつかの問題で北京を遠ざけることができるかもしれない。

アメリカは、中露両国の違いを緩和し、橋渡しするのではなく、中露両国間の断層(Sino-Russian fault lines)を探ろうとするはずである。2022年7月にアントニー・ブリンケン米国務長官が中国側に行ったような道徳的な嘆願は、変化をもたらすというよりも、中国のナショナリズムを煽る傾向がある。戦略的競争という文脈の中で、中国との協力や非干渉という戦術的転換(pivot)は、利害が重なったときに移行し、利害に利益をもたらし、おそらくわずかな信頼を再構築することができる。北京の計算を形成するために、ワシントンは単に懲罰的な行動だけでなく、相互の脆弱性(vulnerability)と懸念の分野を指摘する必要がある。

中国が制裁体制外でロシアに経済貢献することを抑止するためのアメリカの警告は聞き入れられそうにない。中国最高指導部序列第3位である栗戦書は、2022年9月にロシアを訪問した際、貿易、インフラ、エネルギーなどに関して、ロシアとの経済協力の強化を約束した。これは昨年(2022年)12月の習近平・プーティン間のズーム会談で更に確認された。北京の見解では、アメリカは中国とロシアとの経済関係、特にエネルギー関連技術やその他の天然資源の領域での協力を永久に阻止することはできない。

ロシアの意思決定に決定的な影響力を持つ数少ない国の1つとして、中国がウクライナ危機の調停(to mediate)を早くから申し出ていることを検証しておく必要がある。中国は紛争の当事者ではないと主張するかもしれないが、紛争を助長してきたのは事実である。大国として、戦争を早期に終結させる責任から逃れることはできないことを明確にする必要がある。

ウクライナに関する米中対話の入口として考えられるのは、プーティンの核兵器使用の公然たる脅威と、77年間の歴史を持つ核に関するタブーを破ることの結果に対する相互懸念である。ジョー・バイデン米大統領は「ハルマゲドン(Armageddon)」の脅威を口にした。中国は「先制不使用(no first use)」を明言しており、ロシアの核兵器使用は北京を自衛不可能な状態に追い込むことになる。また、ウクライナでの核兵器使用が北朝鮮に対する制限を低くし、北東アジアでの核拡散に拍車をかけるという懸念が共有されているので、予防手段(preemptive measures)の議論が急がれているのであろう。

また、戦争終結の方法と手段、更にはウクライナの経済再建の将来についても、戦争の進む方向を見据えて考えなければならない。アメリカ、ヨーロッパ連合(EU)、日本、世界銀行、国際通貨基金、ヨーロッパ復興開発銀行が協調して経済資源を動員することは、政治的困難と資源の枯渇を考えると非常に困難であろう。世界有数の貸し手である中国に、その議論に加わる機会や努力の調整の機会が与えられなければ、中国独自の復興努力が欧米諸国の努力を複雑にしたり妨害したりすることになりかねない。協調的でグローバルなキャンペーンにおいて、中国が公正な役割を果たすための対話が模索されるべきだろう。

問題は、ウクライナに関して利害が一致する可能性のある分野を探るのに十分な政治的空間を開くために、いかにして米中間の相互不満(mutual grievances)を中断するか、あるいは少なくとも区分けする(compartmentalize)かである。アメリカは道徳的なレトリックを抑えて、まずは北京との静かなバックチャンネル・アプローチで関心を探るのが賢明であろう。また、ブリンケンが近く訪中する際には、問題の範囲が限定的かつ現実的であることを強調し、ウクライナのアジェンダを形成するよう努めるべきであろう。

北京がよりソフトなアプローチを示唆しているにもかかわらず、その困難に幻想を抱いてはならない。しかし、ウクライナ情勢がいかに悲惨なものになっているかを考えると、必要は発明の母(necessity may well be the mother of invention)ということになるかもしれない。

そのためには創造的な外交が必要だが、中露間の対立、北京の広範な利益、戦争を終結させ紛争後のウクライナを再建するために北京が果たせる積極的な役割など、冷静な判断も必要となるだろう。このような利害に基づく取引的なアプローチは、自己実現的な予言である北京・モスクワ同盟の強化を回避するのに有効であろう。

※ロバート・A・マニング:スティムソンセンター、同センター・リイマジニング大戦略プログラム名誉上級研究員。ツイッターアカウント:@Rmanning4

※ユン・サン:スティムソンセンター中国プログラム部長。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界的な問題になって3年余りが経過している。思い返してみればその最初は中国の武漢市であった。その当時、日本でもアメリカでも武漢市での混乱の様子や人々が戸惑い慌てている様子を連日報道していた。中国政府はうまく対応していない、強権的に人々を抑圧している、中国はパンデミックでたいせいに大きな影響が出るのではないかというような主張もなされていた。その後、同じような光景が世界各地で見られた。西側諸国の感染者数や死亡者数(それぞれ1000人あたりの数)を見れば、先進諸国がうまく対応してきたと評価する人は少ないと思う。

 アメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』誌に感染拡大初期の中国の様子を現地に住む人物が回顧して書いた記事が掲載された。その内容は「中国政府がいかに効果的に新型コロナウイルス感染拡大に対応したか」というものだ。著者エリック・リーは英語で文章が書けるくらいの人物であり、おそらく中国以外の英語圏で教育を受けたものと考えられる。中国系の苗字であるが、国籍は中国ではないのではないかとも考えられる。中国の上海に在住し、子供たちは中国の公立学校で教育を受けているところから、中国でこれからも暮らすことを選択しているのだろう。彼の各内容はある程度割り引いて読まねばならないだろうとは思う。

 しかし、中国が新型コロナウイルス感染拡大に対して国家を挙げて、ある程度効果的に対応したということは認めなければならない。私は中国の対応は、「戦時態勢に向けた訓練」という意味が強かったのではないかと思う。第三次世界大戦が勃発し、中国が攻撃を受ける場合を想定しての

 中国の戦時態勢を率いるのが習近平だ。習近平がこれまでの慣例を破って、中国国家主席として3期目に突入しているが、このブログで何度も指摘しているが、戦時態勢構築のためである。中国国民は「賢帝」習近平を先頭にして戦時態勢の準備を進めているということになる。習近平の人気、支持率の高さは一般国民の意思が反映されているという解釈もある。「賢帝」という言葉はいささか過剰な高評価とも思われるが、そういう評価があるということを私たちは知っておくことも良いのだろう。民主的な選挙で選ばれた指導者が「賢帝」になり得ないということを私たちは身近で経験できているのは悲しいことだ。

(貼り付けはじめ)

習近平は「賢帝」である(Xi Jinping Is a ‘Good Emperor’

-一人の中国の擁護者は、なぜ新型コロナウイルス感染拡大によって習近平、党、北京への信頼が高まったかを語る。

エリック・リー筆

2020年5月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2020/05/14/xi-jinping-good-emperor-coronavirus/

上海では、生活も仕事も徐々に平常に戻りつつある。私も同僚もオフィスに戻った。レストランやバーも再開し、入り口で体温チェックをしている。私が出資している中国最大の自転車シェアリング会社「ハローバイク」は、利用者が大流行前の70%に戻ったと報告している。中国の他の地域でも程度の差こそあれ、同じようなことが起こっている。永遠に続くと思われた悪夢は、もう終わったのかもしれない。この機会に、中国の社会と政府について私が学んだ5つのことについて話してみよう。中国は時宜を得て正しい指導者を持つという幸運に恵まれた。

中国の人々は、自分たちの政治機関を信頼している。私たちの中国に対する理解は、権威主義的一党独裁国家(authoritarian one-party state)は国民の真の信頼を維持することができないという定義に支配されてきた。しかし、そろそろそれを脇に置く時期が来ている。大自然がこれほどのインパクトを与えてくれたのだから、もはや現実は無視できない。

2020年1月23日、中国政府は武漢市を封鎖し、更に総人口5600万人の湖北省全域に人類史上最大の検疫(quarantine)を命じた。2日後、チベットを除く全ての省が最高レヴェルの健康緊急事態を宣言し、7億6000万人以上の都市住民が家に閉じこもり、必要な時だけ外出を許され、公共の場ではマスク着用が義務づけられた。ほとんどの農村も閉鎖された。当時、全国で報告された感染者は571人、死亡者は17人であり、その後の世界的な状況を考えると、むしろ少ない方であった。

この措置の大きさには中国全土が驚かされた。人口2400万人の上海で、数日前まで渋滞していた道路が一夜にして人も車もいなくなった。最初は1週間か2週間で終わるだろうと思っていた。しかし、封鎖は継続した。人々は家に留まり、通りは空いたままだった。

何億人もの人々が即座に、そしてほぼ完全に封鎖に従ったことは、私にとって本当に驚きとなった。中国に行ったことがある人なら、中国の人々がどれほど手に負えないように見えるかを知っているだろう。中国の正規の警察は非武装である。上海の街角では、交通違反の切符をめぐって警察官と口論している人を見かけることがよくある。これほど長い間、多くの人がこのような大規模な封鎖に完全に服従したのは、自発的な行動以外に説明のしようがない。確かに、誰も病気になりたくないという利己心で説明できる部分もある。しかし、教養ある若者の大群が政府の命令や警告に公然と反抗してビーチやクラブに集まり(少なくとも初期の段階では)、警察の厳しい取締りが今も続いている他の国々と比較すれば、利己心だけでは説明できないことは明らかである。政治機関の専門性と自分たちを守る能力に対する国民の極めて高度な信頼だけがこのような服従をもたらす。

このような服従は、中国の厳格な治安維持体制によるものだと主張する人もいるかもしれない。これは2つの理由で的外れである。第一に、治安部隊が有効なのは少人数の活動家に対してであり、数億人の膨大な人口が集団で不服従を選択した場合には有効にはならない。第二に、感染拡大期間中、監禁を強制する大規模な強制行動があったという報告はほとんどなく、証拠もほとんどない。

また、中国政府は国民とのコミュニケーションにも余念がない。毎日、市、県、全国的レヴェルで新しいデータが発表された。テレビでは毎時間、政府の専門家たちが新型コロナウイルスと国の対応について詳しく話していた。どの新聞も、ソーシャル・ディスタンシングを置くことの重要性について書いている。つまり、信頼は盲目的なものではなかった。

中国の市民社会は健在だ。2月初旬に中国のソーシャルメディアにどっぷり浸かっていたら、逆の結論になったかもしれない。文化大革命終結後の最大の国民的トラウマの中で、国民の怒りが渦巻いていたのだ。15年前のSARS流行後に政府が構築した、地方当局が北京に早期警報する仕組みは、コロナウイルス発生の初期段階で明らかに失敗していた。その原因は、官僚が悪い知らせを上層部に伝えることを恐れていたためと推測され、中国の政治体制に重大な欠陥があることが露呈された。12月にコロナウイルスの危険性を最初に警告し、地元警察から口止めされた武漢の医師李文亮が自らウイルスに感染し、騒動は最高潮に達した。それだけを見れば、中国のチェルノブイリの瞬間、あるいは「アラブの春」の始まりと見る向きもあろう。しかし、結果はそうではなかった。

中国中央政府が人類史上最も大規模な疫病対策に動員をかけると、国は一つにまとまった。50万人のヴォランティアが湖北省の最前線に向かい、衛生要員、検疫要員、後方支援要員として健康と生命を危険に晒しながら活動した。全国では200万人以上の国民がヴォランティアとして登録し活動した。ソーシャルメディアは、彼らの感動的なストーリーや画像で溢れ始めた。カフェやレストランでは、ビジネスが壊滅的な損失を被っているにもかかわらず、ヴォランティアに食べ物や飲み物を無料で提供していた。ある写真には、武漢のコミュニティワーカーが宅配用の薬包で肩からつま先まで覆われている様子を写したもので、話題になった。ほぼ全ての地域で24時間体制の検問所が設けられ、ヴォランティアと警備員が出入りを管理し、人々の体温をチェックした。また、多くの地域がヴォランティアを組織し、高齢者などの弱い立場の住民の生活をチェックした。14億人もの人々が、全ての道路、全ての地域、全ての村で、このようなことが起こっていることを想像してみて欲しい。犯罪はほぼ皆無だった。

インターネット上では、政府や様々な社会機関がコロナウイルスの特徴やパンデミックの進行状況について膨大な量の情報を発信した。ソーシャルメディアでも大規模な市民参加型の情報発信が行われた。今、私はCNNBBCで、欧米諸国の専門家や当局者たちが、ウイルスが硬い表面やエアロゾル状で生存できる時間の長さなどについて話しているのを見ている。しかし、こうしたことは、2月の時点で既に何千万人もの中国のネットユーザーが毎日、毎時間話していたことだ。

政府はトップダウンで、パンデミックに対する「人民の戦争(people’s war)」を呼びかけた。そして、これはまさにボトムアップで起こったことだった。私はこれまで、中国では権威主義的な政党支配国家が市民社会の発展を許さないから市民社会が弱いのだという、多くの政治思想家の共通認識を、多少なりとも信じていた。しかし、それは、市民社会が国家とは別のもの、あるいは国家と対立するものであるという、一般的なリベラル派の定義に基づいていることに思い至った。中国の市民社会を古典的な定義、すなわちアリストテレスが「コイノニア・ポリティケ(koinonia politike)」(国家と区別されない政治的共同体)と呼んだもので見てみると、このパンデミックを通じて、おそらく世界で最も活気に満ちているように見えた。

中国では、国家の能力は市場よりも重要である。中国に限らず、最も議論が尽きないテーマの一つが、市場と国家の関係(relationship between the market and the state)である。今回は、国家が勝利し、大勝利を収めた。最も熱心な新自由主義者以外には、市場の成長とともに国家の能力を維持することが、何百万人とは言わないまでも何十万人もの死者を出すかもしれない想像を絶する破滅から中国を救ったことは極めて明白である。

1月下旬の疫病対策が始まると、中国国家は行動を開始した。中央政府は国家の医療資源を調整し、いち早く湖北省に集中させた。全国から217の医療チーム、42,000人以上の医療関係者が機材や物資とともに湖北省に派遣された。中央政府は、約17千台の人工呼吸器の湖北への輸送を調整した。その結果、流行の中心地である湖北省では、人工呼吸器が大きく不足することはなかった。

At the onset of the counter-epidemic operation in late January, the Chinese state swung into action. The central government coordinated national medical resources to quickly concentrate on Hubei province. In total, 217 medical teams with more than 42,000 medical personnel were dispatched to Hubei from around the country, along with equipment and supplies. The central government coordinated the shipment of around 17,000 ventilators to Hubei. The result was that the epicenter of the outbreak never experienced any major shortage of ventilators.

武漢では、10日間で1000床の巨大な新病院が建設された。その後、コンヴェンションセンターなどの既存の建造物を利用して、市内16カ所、計1万3000床の仮設病院を建設し、隔離された環境で軽症の患者を治療した。工業用マスクの原料を生産する国営エネルギー大手シノペックは、35日間かけて生産ラインを設計し直し、医療用マスクの生産に対応させた。自動車メーカーも組立ラインからマスクや医療用品を送り出した。マスクの生産量は1月の1日2千万枚から2月下旬には1億1600万枚になった。

それでは、これらのことを誰がやったのか? 全国から湖北に派遣された医師や看護師は、ほとんどが国営病院に勤務する国家公務員であった。病院を建設し、マスクを製造したのも国有企業である。

広大な国土にもかかわらず、この作戦は非常によく組織化されていた。北京から、中央政府が毎週、時には毎日、地方に対策を展開する。北京から、中央政府が週単位、時には日単位で地方に施策を展開し、地方政府には、その地方の事情に合わせた自由な発想で指示が出された。そして、省政府が市や県に同じように下降線を引いていく。また、その逆もある。また、その逆もしかりで、地方政府から北京へも意見が上がってくる。例えば、武漢のある学術チームは、既存の病院では、感染の恐れのある軽症の患者を多数収容することができないことを発見し、「仮設病院」のアイデアを提案した。その結果と提案を北京に送ったところ、承認され、24時間以内に実施するよう命じられた。

また、中国は国家としては経済危機の影響を和らげるために迅速に行動した。企業への直接の補助金に加え、政府は労働法の施行方法を調整し、不況時に従業員に給与を全額支払う義務を免除するようにした。その代わり、各企業は従業員を解雇せず、最低賃金と健康保険を維持するよう求められた。また、地主が国有企業の場合は、家賃の減額や免除を受けることができた。

中国共産党が中心的な役割を果たしてきた。この危機を乗り越えるにあたり、3名の人物が無名から全国的な名声を得るに至った。警告を無視した最初の内部告発者である李医師は、新型コロナウイルスで死亡した。鍾南山は、このパンデミックのための国家公衆衛生総責任者であり、アメリカのアンソニー・ファウチと同様に、対疫病作戦の表の顔として活躍している。張文宏は、上海で流行対策活動を主導してきた華山病院の医師である。経歴も地域も世代も全く異なる3人だが、2つの共通点がある。まず、全員が医師である。コロナウイルスを最初に警告し、警察に口止めされた武漢の医師がウイルスに感染したことで、騒動は最高潮に達した。

この試練の中で、中国共産党は最も目立つ存在であった。張は、私の家の2ブロック先にある病院で働いている。上海防衛のための医療チーム編成について語る彼の姿がヴィデオに収められていた。「党員は問答無用で真っ先に行け!」と叫んでいた。このヴィデオはインターネット上で大いに拡散された。

連日、武漢に向かう中国共産党の旗の前で宣誓する党員ヴォランティアの映像が中国のインターネット上に溢れ、自分の命より他人の命を優先させることを誓った。4月29日現在、前線で死亡した496人の医療従事者とヴォランティアのうち328人が党員である。

中国の習近平国家主席は「賢帝(good emperor)」だ。何年か前に、アメリカの政治学者フランシス・フクヤマが、「悪帝問題(bad emperor problem)」という言葉を作った。権威主義的な政治体制では、たとえ良い統治者が出るにしても、この体制では悪い統治者が権力を持って国を滅ぼすことを防ぐことはほとんどできないという理論的な意味である。今は、この理論を議論する時期でも場所でもない。しかし、今、私が知っていることは、習近平は「賢帝」だということだ。

1月28日、習近平は世界保健機関(WHO)のトップとの会談で、自分が伝染病対策作戦の直接の責任者であることを国民に告げた。このとき、未来はこれほど暗く、不確かなものではないと感じたが、日和見主義や責任回避はこの最高指導者の性格には存在しない。武漢と湖北を封鎖することは、非常に大きな結果をもたらすので、彼一人の決断であったろう。武漢・湖北の封鎖は、彼一人の決断であったろうが、結果的に国家を破滅から救う決断となった。彼は、政治局常務委員会(Politburo Standing Committee)の会議を主宰し、政策指示を出し、それを公表するという前代未聞の行動に出た。公の場ではマスクを着用した。17万人の第一線の政府関係者や有志とテレビ会議を行った。まさに「人民の戦争」は、全国民の前で彼自身が主導した。

習近平は強力な指導者として、特に国際的に、しかし国内的にも非難されることが多かったし、今後もそうであることは間違いない。欧米諸国のメディアや政府は、メディアや政治的異論に対する規制を強化し、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒に対する政策が物議を醸しているとして、習近平政権を攻撃している。国内の反対派の中には、北京に政治権力を集中させようとする最近の動きに反対する者もいる。しかし、私の知人や中国の政治評論家の間では、最も厳しい批判をする人たちでさえ、この一世一代の危機における彼の舵取りを認めている。私は、この後、習近平の国民的人気は急上昇すると思っている。

習近平の指導力は、政府全体の社会的信用を高めた。初期段階でミスがあり、その結果、発生時の対応が遅れたことは明らかである。そして、特に内部告発者(whistleblower)である李医師の明らかな口封じに対する正当な怒りもあった。しかし、中国がほとんど知られていないウイルスに不意を突かれたことも事実である。今、中国人は、14億人の人々が数ヶ月にわたって何が起こるかを世界に示した後にもかかわらず、多くの国の政府がパンデミックの抑制に苦心しているのを恐怖の目で見ているため、自国政府の最初の誤りは、検討と反省に値するものの、もはやそれほど許しがたいとは思えない。中国のインターネット上には、武漢に向かうヴォランティアが中国共産党の旗の前で宣誓する画像が溢れかえっていた。

私にとっても、世界中の多くの人にとっても、新型コロナウイルスは生涯で最も特別な出来事であることは間違いない。ビジネスマンとして、政治学を学ぶ者として、確かに影響を与えた。しかし、親として最も感情的な影響を受けたのはこの出来事だった。私の子どもたちは、上海の公立学校に通っている。1月27日、上海は2月に予定されていた春学期の開始を延期すると発表した。子供たちは喜んだ。しかし、その喜びは長くは続かなかった。2週間後、上海市教育局から学校再開の命令が出た。上海市教育局では、全教育課程をオンライン学習に対応させるべく、記録的な速さで準備を進めていた。その新しい教材がメールで送られてきて、プリントアウトするように言われた。2日目に自宅のインクジェットプリンターが壊れた。そこで、業務用のレーザープリンターを購入し、中学校の教科書を1000ページ以上印刷した。

全ての学校は、毎日、朝8時から夕方4時まで、中国語、数学、物理、英語と、普段の学校と同じようにパソコンの画面の前で、次々と授業を続けている。宿題は毎晩、プリントアウトしたものを写真に撮り、学校のシステムにアップロードして提出する。翌朝、採点され、訂正を求められる。子供たちが家にいるのは良いことだ。しかし、私たち親の負担は大変なものだ。子供たちにこれほど怒鳴ったことはなかった。

3月19日の朝、私は目を覚まし、約2カ月間毎朝続けてきたように、前日のコロナウイルスの数値を確認しようとスマホに手を伸ばした。その朝、中国で確認された感染者数は8万928人、累積死亡者数は3245人であることを確認した。「新たな確定症例はゼロ!」となった。

私は急いで1階に降りて、子供たちに良い知らせを伝えた。子供たちの臨時教室になっているダイニングルームに入ると、国歌の前奏が聞こえてきて、私は足を止めた。子供たちは制服姿でパソコンの前に立ち、国旗掲揚の儀式を見守っていた。私は久しぶりに涙を流した。

※エリック・リー:ヴェンチャー・キャピタリスト、政治学者。上海在住。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ジョー・バイデン大統領のワシントンDCにある古い事務所とデラウェア州ウィルミントンにある自宅ガレージから、バラク・オバマ政権の副大統領を務めていた時代の政府機密文書が発見された。発見は昨年11月2日の中間選挙直前であったが、アメリカ政府はこの事実をすぐには発表せず、今年に入ってCBSニューズがスクープ報道して、それに追随する形でホワイトハウスは事実として認めた。

 ヒラリー・クリントンが国務長官時代に私的なEメールアドレスと私的なサーバを使って、機密情報を含む公的な情報をやり取りしていたこと、ドナルド・トランプ前大統領の邸宅からも政府機密文書が発見されたこと、そして、今回のバイデン大統領の事務所と自宅から機密文書が発見された。子のようなことが続くというのは、アメリカの公文書管理に関して緩みが出ているということになるだろう。そして、公文書のほとんどは大した中身のものではなくて、あってもなくても良いものがほとんどということなのだろうと推察される。

 バイデン政権にとっての問題は、現在、連邦下院で過半数を握っている共和党が、バイデン大統領と息子のハンター・バイデンのウクライナとの関係について追及しているが、見つかった公文書の中にウクライナ関連のものがあったということである。これは、共和党側からすれば、バイデン父子がウクライナを「個人所有」「私有化」していた論理構成で攻勢をかけるということになる。

 中間選挙の前に公文書発見が公表されなかったのは、ヒラリー・クリントンに結び付けられ、ヒラリーの二の舞となることを避けたかったという意図があったのは間違いないところだ。これが選挙前に発表されていたら、ヒラリーのEメール問題に絡められ、「Lock Him Up !(彼を逮捕せよ!)」というスローガンが全米各地で叫ばれていたことだろう。民主党側としては、この問題を大きくしたくないところだろう。しかし、政治とはけたぐり合いであり、より過激に言えば殺し合いである。どんな材料でも相手を攻撃できるとすれば利用する。利用されないように問題を封じ込めるという守りも必要だ。

 その守りが甘ければ、蟻の一穴から堤防が崩壊するということが起きる。バイデンのホワイトハウスは守りが甘いということになる。特に「きまじめ」「きちんとしている」ということを売りにバイデンは大統領に当選しているので、このような問題は意外なダメージを与えることになる。

(貼り付けはじめ)

更に5つの機密文書がバイデンのウィルミントンの自宅から発見と弁護士たちが発言(Five more classified documents found at Biden’s Wilmington home, lawyer says

ブレット・サミュエルズ筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3813424-five-more-classified-documents-found-at-bidens-wilmington-home-lawyer-says/

ホワイトハウスは土曜日、ジョー・バイデン大統領の副大統領時代の機密文書が、木曜日にデラウェア州ウィルミントンのバイデンの自宅で更に5通発見されたと発表した。

バイデン大統領特別顧問であるリチャード・サウバーは声明の中で、水曜日の夜にバイデンの自宅のガレージに隣接する部屋で1通の機密文書が発見されたと述べた。その文書を発見した弁護士は、セキュリティクリアランス(機密文書取扱適格性)を持っておらず、結果として捜索を一時中断したとサウバーは述べた。

セキュリティクリアランスを持っているサウバーは、司法省(DOJ)への文書の転送を促進するために木曜日の夜にウィルミントンに到着した。

サウバーは「同行した司法省の職員に機密文書を移している間に、一緒にあった資料の中からさらに5ページ、合計6ページの分類記号が発見された。同行した司法省の職員はすぐにそれらを手に入れた」と述べた。

5通の資料が更に発見されたことで、バイデンの古い事務所とウィルミントンの自宅で発見された機密表示のある資料の数は、およそ20通になった。バイデンは金曜日の夜にウィルミントンの自宅に到着した。バイデンは頻繁に週末を自宅で過ごしている。

サウバーは、追加の質問について、この問題を今後検討するために木曜日に任命された特別検察官に照会し、ホワイトハウスが特別検察官に協力することを改めて表明した。

サウバーは声明の中で次のように述べた。「大統領の弁護団は、ペンシルヴァニア大学バイデンセンターの文書を公文書館に、ウィルミントンの自宅にある文書を司法省に提供するために、直ちに自発的に行動した。私たちは発見された文書について、どのように判別され、どこで発見されたか、具体的な詳細について公表した」。

バイデン大統領の弁護団は11月2日、ペンシルヴァニア大学の名誉教授を務めていたバイデンが2017年から2019年にかけて使っていたワシントンDCの事務所で、機密事項が記されたおよそ10通の書類を発見した。その発見は、CBSニューズが報道した後、月曜日にホワイトハウスによって事実確認がなされた。

水曜日には、2カ所目で更なる文書が見つかったと報じられた。ホワイトハウスは木曜日、事務所での文書発見後、弁護士がデラウェア州ウィルミントンとレホボトビーチにあるバイデンの自宅を捜索し、バイデンのウィルミントンの自宅ガレージで機密資料を発見し、さらに隣の部屋でも1通の文書を発見したことを確認した。

5つの追加文書は木曜日の夕方に発見されたが、土曜日の朝まで調査結果は公表されなかった。

ホワイトハウスは、このプロセスに関する質問について、司法省へ注意が向くように何度も逸らした。メリック・ガーランド司法長官は、文書の取り扱いに関する調査を担当する特別検察官(special counsel)を任命した。

しかし、バイデン政権に対しては、調査結果について国民に開示するのが遅いという批判を浴びている。

バイデン大統領の個人弁護士であるボブ・バウアーは、土曜日に発表した声明で、「本職は適切な場合には、公共の透明性の重要性と、調査の完全性を守るために必要な確立した規範と制限のバランスを取ろうとした」と述べました。

バウアーは「これらの考慮は、捜査が進行中の間、捜査に関連する詳細の公開を避けることを必要とする。定期的な情報公開は、当局が新しい情報を得る能力を弱めるか、状況が進展するにつれて情報が不完全になる危険性がある」と付け加えて述べた。

バイデン大統領は、副大統領時代の機密文書が見つかったことについて驚いていると述べ、政府の機密資料の取り扱いについて真剣に受け止めていると繰り返し述べている。

バイデン大統領は、自宅のガレージは施錠されていると述べており、ある時点で、文書のいくつかは彼の個人的な図書館で見つかった可能性があると示唆した.

今回の特別検察官の任命により、直近の2名の大統領が機密文書をどのように扱ったかを審査する特別検察官が2人存在することになるが、それぞれのケースの内容は大きく異なっている。

ガーランド司法長官は11月、トランプ前大統領の機密資料の取り扱いに関する調査を監督する特別検察官を任命した。連邦政府当局は昨年、トランプ前大統領のフロリダ州の邸宅で、最高機密と記された文書を含む数百点の政府機密資料を発見した。

トランプ大統領と彼のティームが数カ月にわたって捜査当局の捜査活動を妨害し、国立公文書館が求める文書の引き渡しに協力しなかったため、FBI8月にトランプの邸宅の式内を捜索した。
=====
民主党はバイデンに関する議論がクリントンのEメール問題の再来となるのではないか危惧している(Democrats worry Biden controversy will be Clinton emails repeat

エイミー・パーネス筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3812626-democrats-worry-biden-controversy-will-be-clinton-emails-repeat/

民主党は、ジョー・バイデン大統領のデラウェア州ウィルミントンの自宅と前事務所で見つかった機密文書をめぐる論争が、予想される再選キャンペーンに大きく立ちはだかることを懸念しているようだ。

民主党側は、バイデン大統領がこの問題を克服できると確信していると述べる一方で、多数の機密文書の一斉公開が、選挙戦開始を控えた大統領にとって問題を複雑にしているとも述べている。

非公式の場では、民主党側はバイデンが何が起こったかを説明し、2016年の民主党大統領候補ヒラリー・クリントンのメール論争(元国務長官クリントンが政府の仕事をする際に私用メールアカウントを使用していたことを認めた)と比較することがどれほど厳しいことになるだろうかと考えている。

また、2022年8月に機密文書が押収されたフロリダ州の邸宅をFBIが捜索したことをめぐり、トランプ前大統領に対する民主党の攻撃を複雑化させ、共和党に贈り物を与えることになる。

この問題について率直に話すために匿名を条件にした民主党系のあるストラティジストは次のように語っている。「これは大統領にとってかなり大きな問題になるだろう。共和党は常にスキャンダルを煽動するのが得意で、ここでのバイデン大統領の状況はトランプに関わる状況とは全く異なるにもかかわらず、彼らはこれが大きな問題であるかのように行動するだろう」。

民主党は内心ではこの問題の存在と重要性を認めているが、公の場ではトランプとバイデンの状況は劇的に異なると反論している。

民主党系ストラティジストのヴェテランであるロデル・モリノーは「リンゴとオレンジ位に違うのだ」と語った。同時に、民主党は「共和党がこれをウォーターゲート事件以来の大スキャンダルに仕立て上げることに対して徹底的に準備する必要がある」と警告を発した。

モリノ-は「この事件は確実な武器ではないが、共和党側は試してくるだろう」と述べた。

連邦下院監視・説明責任委員会の共和党側委員たちは今週、バイデンが所有していた機密文書について調査を開始した。

共和党全国委員会(RNC)は今週、プレスリリースやソーシャルメディア上で、バイデンが自家用のコルヴェットを自宅のガレージにバックで入れている映像ファイルの公開などこの話題に多くのエネルギーを注いでいる。「これは、ジョー・バイデンが機密文書を隠していた、鍵のかかったガレージの映像だ」と、共和党全国委員会のリサーチアカウントからツイッター上に投稿されたものもあった。

テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)はツイッターで、2016年に進行中のクリントンの問題と冗談交じりに結びつけた。「ビッグストーリーが明日やってくる。ヒラリーのサーバもジョーのガレージにあった」とジョークを述べた。

木曜日と金曜日、記者たちは、このニューズがバイデンの再選出馬の決断に影響を与えるかどうか政権関係者たちに厳しく質問した。

金曜日に行われたホワイトハウスの記者会見で、大統領上級顧問ケイシャ・ランス・ボトムズ(公共関与担当)は、「機密文書の発見が再出馬の決断に影響するか」と記者団から質問された。

ボトムズは「そのような質問があったことは大統領にお知らせする。大統領自身がこの質問について話すだろう」と答えるにとどめた。

機密文書の発見がバイデン大統領の再出馬の決断に影響を与えるかどうか質問されたホワイトハウスのアンドリュー・ベイツ副報道官は「それはない」と答えた。

ベイツは「バイデン大統領は、司法省の独立性を尊重し、政治から切り離すという約束を守っている 。バイデン大統領の政策が評価され、民主党大統領として60年ぶりの中期選挙の好結果をもたらした後も含めて、出馬の意向を彼から直接聞いているはずだ」とも述べた。

ベイツは次のように述べた。「インフレ率の低下、過去50年間で最低の失業率、アメリカ国内の雇用の回復、薬剤費の引き下げなど、全て先週だけのことですが、大統領の関心はアメリカの家族のためにさらなる進歩を遂げることだ。また、連邦下院共和党のヴィジョンである富裕層の減税のための中間層への増税、インフレの悪化、中絶の禁止などに直面している」。

2020年の大統領選挙でバイデン選対に参加したある側近は、もし機密文書の開示が問題になければ、共和党は何か別のことで大統領を攻撃しているだろうと語った。しかし、文書問題でバイデンを追及することは、同じテーマでトランプがお荷物になっているため、彼らにとっては負け戦になる。

この側近は、トランプが何ページもの公文書を所有しいて、それを提出するようにというFBIの要求になぜ抵抗したのかという疑問に対して共和党は答えるのが難しいはずだと述べた。この側近はまた、中間選挙で実証されたように、誰がより法律を守っているかで争うことは共和党にとって勝ち目のない状況になると述べ、FBIへの資金提供拒否、1月6日の連邦議事堂への侵入者の擁護、2020年大統領選挙結果についての陰謀論を指摘した。

最終的には、有権者たちはインフレ率の低下を含む問題にもっと関心を持つだろうとこの側近は語った。

機密文書論争が起こる前、バイデン大統領と側近たちは一連の良いニューズの流れに乗っていた。

それは、中間選挙が予想以上に成功を収め、民主党が連邦上院の過半数を握り、2024年の大統領再選に向けてバイデンの地位が強化されたからだ。

共和党は、2024年に誰が党を率いるべきか、党はトランプから脱却する必要があるのか、といった議論に分断されているように見える。先週の連邦下院議長選挙も共和党内の分裂を浮き彫りにした。

バイデンは世論調査の数字を少しずつ上げ、インフレの鈍化など経済も改善の兆しを見せている。

こうした一連の良いニューズは、バイデンが大統領選への再出馬を表明する準備として、幸先のよいスタートを切ることになった。

しかし、バイデンが機密文書を所持していることが、最初はワシントンのかつてのオフィスで、その後ウィルミントンの自宅ガレージ内で発見されたことから、民主党は神経質になっている。木曜日の特別検察官の任命は更に不安を煽った。

木曜日の夜、MSNBCに出演したバイデン大統領の元報道官ジェン・サキは、その不安の一端を口にした。

サキは「誰も特別検察官任命を望んでいない。大統領選に出馬するかもしれない前の年に、『今年は特別検察官がいて欲しい』と考えることはないだろう。誰もそんなことは望んでいない」と述べた。ホワイトハウスは、これは「政権移行期のずさんなスタッフの仕事」であり、「長期的には、たとえ短期的な痛みを伴っても、彼らの利益になる」可能性があると確信しているとサキは付け加えた。 

連邦議会民主党議会選挙対策委員会委員長を務めたスティーヴ・イスラエル元連邦下院議員(ニューヨーク州)は、オバマ前大統領が2012年に再選に成功する前のティーパーティーの多数派から学んだ教訓を指摘し、共和党が機密文書の発見に過剰に反応する可能性があると述べた。

イスラエルは次のように語った。「オバマ大統領は順調に再選を果たし、民主党は連邦下院で8議席上回って過半数を獲得した。何が起こったかというと、共和党の多数派が手を出しすぎたのだと私は考える。彼らは自分たちの支持基盤を発奮させたが、しばらくして、毎日の詮索ではなく、集中力と日常の課題を求める穏健派有権者を失った」。

しかし、非公式の場では、民主党側はバイデンが2023年を迎えることを望んでいた方法ではないことを認めた。

あるクリントン選対に参加したあるヴェテランは「誰もが好き勝手なことを言えるが、これでバイデンは完全に弱体化した。この問題はいつまで経っても解決しないだろう」と述べた。

クリントンの元側近は続けて次のように述べた。「迷惑な話だし、彼らが好むと好まざるとにかかわらず、この問題は残り続けるだろう。そしてつぎのような疑問が生まれるだけだ。もし彼がガレージでコルヴェットと一緒に書類についてこんなに軽薄なことをしているなら、他に何をやっているのか誰にも分からないだろう」。

共和党系ストラティジストであるスーザン・デルペルシオは、機密文書の発見は共和党への贈り物だと語った。

デルペルシオは機密文書発見について「これは大皿に盛られたものだ。それ自体は大したことではないが、共和党がそれをどう武器にするかだ」と述べた。

現在まで、共和党がバイデンに対して持っていたのは、バイデンの息子ハンター・バイデンに関する税金やビジネス取引に関する論争と経済に関する問題だけだったとデルペルシオは言う。

デルペルシオは次のように語った。「バイデンが出馬しない理由を探していたのならこれはかなり良い理由だ。彼はこんな選挙戦を望んではいないはずだ。釈明ばかりしていたら負けてしまうことになる」。
=====
ホワイトハウスはなぜもっと早く機密文書発見を公表しなかったのか説明するよう圧力を受けている(White House under pressure to explain why it didn’t reveal documents discovery earlier

アレックス・ガンギターノ筆

2023年1月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3812679-white-house-under-pressure-to-explain-why-it-didnt-reveal-documents-discovery-earlier/

ホワイトハウスは、バイデン機密文書の発見がなぜすぐに公表されなかったのか説明するよう圧力を受けており、中間選挙を控えて最初の発見について沈黙を保っておこうとする意図的な試みがあったのではないかという批判が公然となされている。

最初の文書が最初に発見されたのは2022年11月2日で、選挙からわずか6日後のことだった。しかし、ホワイトハウスは、今週初めにCBSニューズが報道するまでこの発見について公表しなかった。

ホワイトハウスのカリーヌ・ジャン=ピエール報道官は金曜日、機密文書発見時にすぐに明らかにしなかったのは大統領を政治的ダメージから守るためだったのかという質問に対して、「それはあなたの言い分に過ぎない」と答えた。

ジャン=ピエール報道官は「私はここで非常に明確にしてきたし、ここ数日、異なる機会で何度もその質問に答えてきた。ここにはプロセスがあり、私たちはそのプロセスを尊重するつもりだ」と付け加えて答えた。開示のタイミングについてスタッフが戦略の立案に関与したかとの質問には「ノー」と答えた。

2022年12月20日にバイデンのデラウェア州ウィルミントンの自宅のガレージの収納スペースから2回目の機密文書が発見され、今週も隣の部屋の収納資料の中から1ページの文書が発見された。バイデンの自宅の捜索は水曜日に終了した。

メリック・ガーランド司法長官は、バイデン大統領のウィルミントンの自宅で更に機密文書が発見されたとの公表を受け、機密文書発見を調査する特別顧問としてロバート・ハーを木曜日に任命した。また、ホワイトハウスが機密文書を発見した際、リアルタイムで通知されたと述べた。

バイデンの長年の盟友で情報将校出身のクリス・カーニー元連邦下院議員(ペンシルヴァニア州選出、民主党)は、「機密文書発見のタイミングは実に不思議だ」と述べた。カーニーは更に「バイデン大統領は、この厄介なエピソードについて説明責任を果たし、その責任を受け入れなければならない。ここで最も重要なことは、個人的な政治的恥辱を防ぐことではなく、我が国の安全保障を守ることだ」と発言した。

記者たちは金曜日、ジャン=ピエール報道官は機密文書について、1週間を通して質問に答えたというが、CBSがニューズを流したために、彼女は全く質問に直面しなかったと指摘した。彼女は、調査が進行中だからだと主張した。

報道官は「司法省は独立した機関であり、私たちはその調査プロセスを尊重する」と述べた。

連邦議会共和党も公表のタイミングに疑問を呈しており、連邦下院監督・説明責任委員会は今週、公文書に関する調査を開始した。

今週、ジェイムズ・コマー連邦下院監督・説明責任委員会委員長(共和党)は「よく見て欲しい、これは11月2日の出来事だ。ジョー・バイデンはアメリカ史上最も透明性の高い大統領になると述べた。なぜ今になってこのことが分かったのか? CBSは素晴らしい仕事をした、CBSの報道がなければ私たちは知ることができなかった」とCBSで語った。

ホワイトハウスが公表しないまま、11月と12月に機密文書がバイデンの自宅から発見されたというニューズは、12月にインフレが鈍化したという連邦政府の報告などの今週の他の政治的展開に影を落としている。

共和党系のストラティジストであるダグ・ヘイは、もし11月に発見が明らかになったとしても、同じことが起こっただろうと主張した。そして、民主党は選挙の最終週に自分たちのメッセージから注意をそらすことを望まなかっただろうとも述べた。

ヘイは「これは、タイミングについて、非常に合理的に出てくる最初の質問の一つです。2022年の選挙に大きな影響を与えただろうか? これについてははっきりしないが、過去にさかのぼってその影響を否定することはできない」と述べた。

ヘイは更に「民主党側が主張していたのが、『トランプの信奉者である非常識な人たちが立候補しているのを見よ』というものだったことを考えると、明らかに民主党が望んでいたメッセージとは違う」とヘイは述べた。

ジョージワシントン大学の法学教授で元司法省職員のスティーヴン・サルツバーグは、2016年の選挙直前にジェームズ・コミー前FBI長官が当時の大統領候補ヒラリー・クリントンに対する捜査について詳細を発表したやり方が、多くの人の口に「後味の悪さ(bad taste)」を残したと指摘している。

サルツバーグ「とは言っても、選挙が終わった後、なぜ積極的に公表しなかったのか分からない。発見された際、マスコミはこぞってそれを取り上げ、それで彼らは守勢に回った」と述べた。

ホワイトハウスは、特に選挙の前に、この発見を黙っておこうとする意図的な試みがあったかどうかという質問に対して、本誌に以前の声明を紹介した。これらの声明の中では、司法省の調査は進行中であり、ホワイトハウスが発言できることは限られていると繰り返し述べている。

バイデンのワシントンオフィスでは、副大統領時代から2020年の大統領選出馬までの間に使用した、機密事項が記された10通の文書が、他の個人的な資料と混ざって発見されたと伝えられている。それらの文書には、ウクライナ、英国、イランに関するブリーフィング資料が含まれていたとされる。

現在ノサマン社の上級政策顧問を務めるカーニーは「ワシントンで政治家を指弾するのはよくあることだが、管理されていない情報文書がこの国の安全保障に与えうる損害を忘れることはできない。バイデンであれ、トランプであれ、あるいは他の誰であれ、文書を管理できなくなれば、国家の重大な損害につながる可能性がある」と述べている。

カーニーは更に、機密文書を扱ったことのある人間として、「国の指導者が情報報告に対してこれほどまでに軽率になれることに激怒している」と付け加えた。

バイデンのティームは、機密文書が発見された直後に国立公文書館と司法省に警告を発したとホワイトハウスは発表している。

これは、トランプ前大統領の政府文書の取り扱いとは明確に区別される。当局者は昨年夏にFBIの捜査が行われる前に、トランプに複数回にわたり文書返還を要求していた。

バイデンは今週、メキシコでの記者会見で、自身の古いワシントンオフィスで機密文書が見つかったと知って驚いたとコメントした。また、その文書が何についてであったかは知らないと付け加えた。

しかし、ホワイトハウスが当時この発見を公表しなかったことについて、大統領を守るために発見を非公開にしたかったのかどうかなど、機密文書の中身以上に疑問を生じさせている。

ヘイは次のように述べた。「バイデンの記者会見とカリーヌのブリーフィングの間に、私は政治には古い一線があることを思い知らされた。釈明していたら負けだ。昨日は、良い経済ニューズの日であったはずなのに、釈明の日になってしまった」。

ブレット・サミュエルズはこの記事の作成に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 世界は問題にあふれている。個人生活から、それぞれの国家、国際社会、国際関係まで、それぞれのレヴェルで様々な問題が存在する。複数の問題が複雑に絡まって、こんがらがって、にっちもさっちもいかない状態に起きることもある。

 以下の論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトはまず現代の諸問題(大きな衝撃)を10個挙げている。それらは、(1)ソヴィエト帝国の崩壊、(2)中国の台頭、(3)911テロ攻撃と対テロリズム国際戦争、(4)2008年の金融溶解、(5)アラブの春、(6)世界規模の難民危機、(7)ポピュリズム、(8)新型コロナウイルス、(9)ウクライナでの戦争、(10)気候変動である。これらはメディアの主要なテーマであったし、現在でも主要なテーマになっている。昔の表現を使えば、「新聞の一面記事を飾る」ということになる。

 これらの問題に対処する際に、「一気にできるだけ早く(問題があることは良くないことで許せない)」という理想主義で対処すると大抵失敗する。共産主義革命がよい例だ。革命によって、旧体制が抱える諸問題を一気に解決しようとすると思いもよらなかった新たな問題が起きたり、無理をすることで人々や社会に大きな負担を与えたりすることになる。諸問題に対処するためには、「ゆっくりと堅実に(問題が起きるのは人間や社会が存在する限り仕方がないのだから慎重に対応しよう)」という態度が必要だ。

 何か追われているという感覚がみなぎっている時代に「ゆっくりと堅実に」という態度は非常に難しくなっている。

(貼り付けはじめ)

世界はどれだけの衝撃に耐えられるか?(How Many Shocks Can the World Take?

-私たちはあらゆることがあらゆる場所で一度に起こった時に何が起こるかを目の当たりにしている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2022年10月24日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/10/24/how-many-shocks-can-the-world-take/

このコラムの常連読者の皆さんは、私が警鐘を鳴らすのが好きではないことをご存じだろう。ある外交政策決定がもたらすコストやリスクを心配することはあっても、外交政策の専門家たちが脅威を誇張し、最悪の事態を想定する傾向に対して、私は反発する傾向があるが、いつもそうだという訳ではない。しかし、いつもそうとは限らない。時に、オオカミが本当にドアの前にいて、心配し始める時がある。

今日、私を悩ませているのは、私たちの集団的な対応能力を圧倒するような一連の混乱の中で私たちが生きているのではないかという、歯がゆい不安である。もちろん、世界の政治が完全に静止していることはないが、これほど深刻な衝撃の連続は、長い間、見たことがあない。私たちは人間の知恵が最終的に解決してくれると考えることに慣れている。しかし、政治学者のトーマス・ホーマーディクソンが何年も前に警告したように、解決すべき問題の数があまりにも多く複雑になると、その心強い仮定は当てはまらないかもしれない。

(1)ソヴィエト帝国の崩壊The breakup of the Soviet empire

ソヴィエト連邦の崩壊と東欧のビロード革命(velvet revolutions)は、多くの点で前向きな展開であったが、同時にかなりの不確実性(uncertainty)と不安定性(instability)をもたらし、今日でも反響を呼ぶ政治展開(NATO拡大など)への扉を開いてしまったのだ。アゼルバイジャンとアルメニアの戦争、ユーゴスラビアの崩壊とその後のバルカン戦争、アメリカの不健康な傲慢さの助長、中央アジアの政治の再構築などに直接つながったのである。ソ連の庇護を失ったことで、アフリカ、中東、アメリカ大陸の政府も不安定になり、予測不可能な、そして時には不幸な結果を招いた。歴史は終わったのではなく、別の道を歩んだ。

(2)中国の台頭(China’s rise

アメリカ人は当初、一極(unipolar)の時期は長く続くと考えていたが、ほとんどすぐに新たな大国のライヴァルが出現した。中国の台頭は、おそらく突然の、あるいは予期せぬ衝撃ではないだろうが、それでも極めて急速であり、西側の専門家の多くは、それが何を予兆しているかを見誤っていた。中国はまだアメリカよりかなり弱く、国内外で深刻な逆風(headwinds)に晒されているが、目覚しい経済成長、高まる野心、拡大する軍事力は否定しようがない。また、中国の経済発展は、気候変動を加速させ、世界の労働市場に影響を与え、現在の超グローバリズムに対する反発の引き金にもなっている。その富と力(wealth and power)の増大は中国国民の生活を向上させ、他の人々にも恩恵を与えたが、既存の世界秩序に衝撃を与えていることに変わりはない。

(3)911テロ攻撃と対テロリズム国際戦争(The 9/11 attacks and the global war on terrorism

2001年9月、世界貿易センターを破壊し、米国防総省に被害を与えた同時多発テロは、アメリカの外交政策を一変させ、アメリカは10年以上にわたってテロとの戦いに巻き込まれることになった。この出来事は、アフガニスタンのタリバン打倒と2003年のイラク侵攻に直結し、いわゆる「永遠の戦争(forever wars)」は、結局、あの日失ったものをはるかに上回る血と財をアメリカに浪費させたのである。また、テロとの戦いは中東諸国を不安定にし、意図せずして「イスラム国」のような集団を生み出し、その行動はヨーロッパにおける右翼過激派の台頭を助長した。更に言えば、アメリカ国内政治の軍事化(militarization)と分極化(polarization)、アメリカ国内における右翼過激派の主流化(mainstreaming)を加速させたことは、どう考えても大きな衝撃だった。

(4)2008年の金融溶解(The 2008 financial meltdown

アメリカのサブプライムローン市場の崩壊は、金融パニックを引き起こし、瞬く間に世界中に広がった。ウォール街の「宇宙の支配者(Masters of the Universe)」とされた人々は、他の誰よりも誤りやすい(あるいは腐敗しやすい)ことが判明し、この問題を起こした人々は責任を問われることはなかったが、危機発生前のような威信と権威を伴って発言することはできなかった。ヨーロッパは急激な景気後退(sharp recession)、長引く通貨危機(protracted currency crisis)、10年にわたる苦しい緊縮財政(painful austerity)に見舞われ、ポピュリズム政党に再び政治的な追い風を与えた。中国当局もまた、この危機を欧米の衰退を示す兆候であり、自国の外交政策上の野心を拡大する機会であると考えていた。

(5)アラブの春The Arab Spring

忘れられようとしているが、「アラブの春」は、いくつかの国で政権を倒し、一時は広く民主制度移行(democratic transitions)を期待させ、リビア、イエメン、シリアで現在も続く内戦(civil wars)を引き起こした騒々しい出来事であった。この革命は権威主義的な弾圧(authoritarian crackdowns)(「アラブの冬[Arab Winter]」として知られる)で終わり、改革者たちが獲得した成果のほとんど全てを覆した。ヨーロッパで起きた1848年の革命のように、「近代史が転換できなかった転換点(turning point at which modern history failed to turn)」であった。しかし、それは意思決定者の多くが時間と関心を消費し、多くの高官の評判を落とし、多大な人的被害をもたらした。

(6)世界規模の難民危機The global refugee crisis

国連難民高等弁務官事務所によると、「強制移住者(forcibly displaced)」の数は2001年の約4200万人から、2021年には約9000万人に増加すると言われている。難民の流入は、それ自体、私たちが経験した他の衝撃の結果であるが、それ自体が深刻な影響を及ぼし、この問題は簡単には解決できない。そのため、近年、各国政府や国際機関が対応に苦慮しているもう1つの衝撃となっている。

(7)ポピュリズムが人気になる(Populism becomes popular

2016年は、少なくとも2つの衝撃的な出来事があった。ドナルド・トランプがアメリカの大統領に選ばれ、イギリスがヨーロッパ連合からの離脱に票を投じた。どちらも予想を裏切り、反対派が懸念していた通りの悪い結果となった。トランプは、選挙期間中に現れた通り、腐敗し、気まぐれで、ナルシストで、無能であることが証明されたが、彼の最も厳しい批判者たちでさえ、アメリカの民主政治体制の基盤(foundations of American democracy)を攻撃する彼の意欲を過小評価していた。実際、選挙での敗北から2年以上が経過し、複数の法的問題に直面しているトランプは、アメリカの政治生活に毒を及ぼし続けている。ブレグジットは、イギリスでも同様の影響を及ぼした。EU離脱はイギリス経済に大きなダメージを与えただけでなく(まさに反対派の警告通り)、保守党の現実逃避を加速させ、ボリス・ジョンソン前首相の風刺的で連続的に不正直な行動や、リズ・トラス首相のダウニング街10番地での短い在任期間を完全に破綻させるに至った。世界第6位の経済大国が、このような愚か者の連続によって統治されるのは、誰にとっても良いことではない。

(8)新型コロナウイルス(COVID-19

次はどうなる? 世界的な大流行(パンデミック)はどうだろうか? 専門家は以前から、このような事態は避けられない、世界はそれに対する備えをしていないと警告していたが、そう舌警告はあまりにも的確なものであったことが判明した。少なくとも6億3千万人が感染し(実際の数はもっと多いだろう)、公式の世界死者数は650万人を超え、パンデミックは多くの国々(特に発展途上諸国)の貿易、経済成長、教育成果、雇用に大きな影響を及ぼしている。ワーク・ライフ・パターンは崩壊し、各国政府は自国の経済を救うために緊急対策を講じなければならず、将来の生産性の伸びはほぼ確実に低下し、金融緩和政策とサプライチェインの混乱が相まって、政府や中央銀行が現在その抑制に苦慮している持続的インフレの引き金となった。

(9)ウクライナでの戦争(The war in Ukraine

ロシアのウクライナ侵攻がもたらす影響の全容はまだ分からないが、それは決して些細なことではないだろう。この戦争はウクライナに甚大な損害を与え、武力による領土獲得を禁じた既存の規範を脅かし、ロシア自身の軍事的欠陥を露呈し、ヨーロッパの本格的な再軍備に火をつけ、世界のインフレを悪化させ、核兵器使用の可能性を含むエスカレーションのリスクをここ数十年で見られなかったレヴェルまで高めた。ロシアと欧米諸国の関係は以前から悪化していたが、これが2022年に大規模な戦争につながり、ワシントンやヨーロッパの外交政策課題を支配することになるとはほとんど予想されていなかった。

(10)気候変動(Climate change

これらの出来事の背後には、気候変動という動きの緩慢な衝撃が隠されている。気候変動の影響は、自然災害の悪化、内戦の激化、深刻な被害を受けた地域からの移住の増加として現れている。移住や気温上昇への適応には多大な費用がかかり、温室効果ガス排出削減のための国際協力も進んでいない。つまり、気候変動の規模は、各国政府があまりにも長い間無視してきた衝撃のひとつであり、今後数十年にわたって対処していかなければならないものだ。

この他にも様々な出来事があり、そのうちの1つや2つでもうまく対処するのは容易ではない。このような急激な連続に対処するなど、ほぼ不可能であることははっきりしている。

第一の問題は処理能力(bandwidth)である。あまりにも多くの混乱があまりにも早く発生すると、政治指導者には創造的な解決策を考慮したり、代替案を慎重に検討したりする時間や注意力がなくなってしまう。政治指導者たちは、創造的な解決策を考えたり、代替案を慎重に検討したりする時間や注意力を持てず、ひどい対応をとる可能性が高くなる。また、選択した解決策がどの程度うまく機能しているかを評価する時間も十分になく、誤りを適時に修正することも困難になる。

第二に、資源は有限なので、過去の危機で今必要な資産を使い果たした場合、最新の衝撃に適切に対処することが不可能になる可能性がある。指導者たちが直面する問題が多ければ多いほど、それぞれの問題に注意を払い、必要な資源を提供することは難しくなる。

第三に、連続する衝撃がつながっている場合、ある問題を解決しようとすると、他の問題を悪化させる可能性がある。 例えば、ウクライナ侵攻後、ヨーロッパがロシアから天然ガスを買わなくなったのは良いことだったが、この措置によりエネルギーコストが上昇し(インフレを悪化させ)、天然ガスの代わりに石炭を燃やすと温室効果ガスの排出が増え、気候変動を悪化させることにつながった。ウクライナ支援に注力することは正しいことかもしれないが、中国の台頭がもたらす問題から時間と労力を奪うことになる。中国が軍事力を強化するために西洋の技術を利用することを制限することには、それなりの理由がある。しかし、チップなどの先端技術に輸出規制を課すことは、アメリカの経済成長を損ない、少なくとも短期的には、アメリカ企業の一部に大きな打撃を与えることになる。一度に解決しようとする問題が多ければ多いほど、ある問題への対応で他の問題への取り組みが損なわれる危険性が高くなる。

最後に、指導者たちが極めて幸運であるか、異常に熟練していない限り、複数の衝撃に対処しようとすると、政治システム全体に対する国民の信頼が損なわれる傾向がある。ロシアの攻撃に対するウクライナの人々のように、明確な危機がひとつでも発生すれば、市民は政府のもとに集い、政策の成功によって、担当者は自分たちのしていることを本当に理解しているのだと確信することができるかもしれない。しかし、公務員が誰もが対処できないほどの衝撃に直面し、繰り返し良い結果を出せなかった場合、市民は彼ら(そして彼らが助言を求めている専門家たち)に対する信頼を失うことになる。関連する知識、経験、責任を持つ人々を信頼する代わりに、市民は専門知識を軽視するようになり、権力者共同謀議論(conspiracy theories)やその他の現実逃避(flights from reality)に弱くなる。もちろん、この問題は、責任者が目に見えて不正直で、腐敗し、利己的で、国民から軽蔑されても仕方がないような人物であれば更に悪化してしまう。

この物語にハッピーエンドはない。それで、ただ最後に思うことがある。私たちは、「速く動いて、壊す(move fast and break things)」ことが呪文になっている時代に生きてきた。それは、動きの速いデジタル技術の世界だけに限ったことではない。近年、私たちが経験した衝撃を考えると、今は「ゆっくりとそして堅実に(slow down and fix stuff)」をモットーにした方がいいのだろう。この機会を逃さないようにしたいものだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ