古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員・愛知大学国際問題研究所客員研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。twitter accountは、@Harryfurumura です。よろしくお願いします。

2023年06月

 古村治彦です。

 現職のジョー・バイデン大統領の人気のなさが少しずつだが報道されるようになっている。更に、バイデンの数々の奇行(何の脈絡もなく「女王陛下に神のご加護を」と叫ぶなど)や、考えなしの発言(「日本の岸田首相を“説得”して防衛費増額をさせた」という内政干渉発言)に不安を持つアメリカ国民も増えている。バイデンの年齢は80歳で、アメリカ史上最高齢の大統領となり(就任時の78歳でも史上最高齢)、年齢に関する不安も大きくなっている。

バイデンは再選を目指すと表明しているが、選挙の投開票日である2024年11月上旬では81歳、更に4年の任期を務めれば86歳となる。アメリカ歴代の大統領46名の内、40代で大統領になったのは9名、50代で大統領になったのは25名だ。健康で頭脳が良く働く人生の時期、いわゆる働き盛りの世代が大統領になることが多い中で、既に仕事から引退している人が多い70代で大統領になり、80歳を迎えた人物であるバイデンを不安視する人が多いのは自然なことだ。

 バイデンの不人気に加えて、副大統領であるカマラ・ハリスの不人気も目を覆うばかりだ。ハリスの仕事ぶりに関する世論調査は軒並み、不支持が支持を10ポイントも上回る状況だ。ハリスが足を引っ張ることでバイデンの再選が危ういという不安が民主党内部で高まっている。しかし、ここでバイデンがハリスを更迭して別の人物を副大統領候補にして再選を目指すということになると、バイデンの任命責任や民主党内部の人材の払底など、マイナスになる要素をアピールすることになる。
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 そうした中で、「ミシェル・オバマを副大統領にしたらよい」論がでてくることになる。ミシェル待望論では、「ミシェルもハリスと同じアフリカ系アメリカ人女性だし(ハリスはインド系でもあるが)、ハリスよりも頭脳明晰で仕事ができる。それにバラク・オバマ元大統領も政権に協力するだろう」ということになっている。

 ミシェルは政治家に向かない。ミシェルは頭が良すぎて、人を見たらまずその人の頭脳レヴェルを判定して、及第点に達したら話をするが、及第点以下となったら冷たい対応をするというのは有名な話だ。ミシェルは、一般国民とも交流しなければならない、時には道化を演じなければならない政治家などできないのだ。日本風に言えば、頭が高い、頭を下げられない人物ということになる。それだったら、「バラクを副大統領に」ということになるが、憲法上の規定では大統領経験者、しかも二期務めた人物が副大統領になれないということはないようだが、それはそのような想定がなされたことがないからだ。民主党の人材払底と行き当たりばったりはアメリカ国民に不安を与えることになる。

 バイデンの再選を民主党は最大目標にしており、そのために各州で実施される予備選挙の日程を変更したり、討論会を行わないと発表したりとなんとも卑怯なことを行っている。どうにかこうにかバイデンが勝った後はどうするのかという構想もなく、民主党はこれから厳しい時期を迎えることになる。

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ミシェル・オバマは2024年の大統領選挙で民主が勝利を挙げる可能性が最もある選択肢となる(Michelle Obama would be Democrats’ best chance to win in 2024

メリル・マシューズ筆

2023年3月14日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/3899576-michelle-obama-would-be-democrats-best-chance-to-win-in-2024/

ミシェル・オバマ前大統領夫人が2024年大統領選挙に出馬する可能性があると、最近メディアで話題になっている。その可能性は極めて低いが(彼女は常に出馬の可能性を否定してきた)、その熱狂ぶりは理解できる。ミシェルが民主党の大統領候補、あるいは副大統領候補になれば、民主党がホワイトハウスを維持する最大のチャンスとなる。

現状では、ジョー・バイデン大統領が指名獲得の可能性が高い共和党大統領候補(トランプ前大統領を除く)に対して再選を勝ち取る可能性は大きくない。

有権者の大多数は80歳のバイデンの再出馬を望んでおらず、その中には民主党有権者の過半数(57%)も含まれている。そして、有権者が大統領の健康状態や大統領としての職務遂行能力に更に懸念を抱くようになれば、この過半数はさらに拡大する可能性が高い。

更に言えば、バイデンの最近の動きに関して、彼があれほど非難していたトランプ大統領の移民政策を受け入れたり、進歩主義派の警察費廃止構想に反対しようとしたりするもので、民主党の政治的エネルギーの大半が存在する進歩主義派を疎ましく思っている。

しかし、バイデンが勝てないとしたら、誰が勝てるだろうか? ミシェル・オバマならチャンスはある。その理由は次の通りだ。

民主党は、バラク・オバマの大統領就任を、ジョン・F・ケネディの大統領時代を指す言葉としてよく使われる、現代の「キャメロット(Camelot)」のようなものだと考えている。ある歴史家は、「キャメロットという言葉は、1961年1月から1963年11月まで続いた、ケネディとその家族のカリスマ性をとらえたケネディ政権を指して、回顧的に使われてきた」と評している。

民主党は、オバマとその家族から発せられるカリスマ性を懐かしんでいるが、ジョー・バイデンからカリスマ性を連想する人はいない。

事実は、オバマは現在の民主党で最も人気があり、有能な人物である。フォックスニューズが昨年10月に指摘したように、中間選挙直前、民主党がオバマ大統領に選挙運動をするよう促していたとき、「2017年1月に大統領を退いたオバマ元大統領は、依然として民主党支持者たちの間では絶大な人気があり、無党派層には中程度の人気がある」ということだ。

もしミシェルが民主党の指名候補になれば、バラクはミシェルだけでなく政権や民主党の側近になるだろう。要するに、ミシェルを取り込むことが、民主党が考えるオバマ・マジックを取り戻す最善の方法なのだ。

加えて、ミシェルの指名は、ヒラリー・クリントンの敗北に対する一種の政治的仕返しとなるだろうが、ミシェルの方が高い人気を誇るという点ではましだ。

ヒラリーはアメリカ初の女性大統領になりたかった。彼女は失敗し、民主党、特にヒラリーはドナルド・トランプによる敗北を乗り越えられないでいる。

ヒラリーはいまだに、おそらくロシアの干渉によって選挙が何らかの形で盗まれたと信じている。

もしミシェル・オバマが2024年の大統領選挙で勝利し、特にドナルド・トランプが共和党候補だった場合、彼女がドナルド・トランプを打ち負かせば、民主党にとっては正義が復活したように見えるだろう。

最後に、ミシェルがバイデンの再選を目指して民主党の大統領候補者になることを拒否して、副大統領候補になる場合、彼女はカマラ・ハリス副大統領を脇に追いやることができるかもしれない人物である。

民主党、そして一般市民はカマラ・ハリスに不満を抱いているが、それには理由がある。彼女のスピーチは、しばしば脈絡のない言葉や考えの羅列になってしまう。そして彼女は、アメリカ南部国境危機の管理など、与えられた数少ない仕事を失敗している。

ティーム・ハリスは問題点を把握しており、民主党の指導者たちは批判を抑えようとしている。

この状況は、1992年のジョージ・HW・ブッシュ大統領の再選キャンペーンを彷彿とさせる。副大統領はインディアナ州選出の元連邦上院議員、ダン・クエールだった。クエールはまっとうな人物だったが、公の場で発言するときにはそれなりに問題があり、メディアはそれを串刺しにした。

1992年夏、何人かの共和党指導者は、再選において厳しい状況に直面していたブッシュに、クエールを降ろし、別の副大統領を選ぶよう説得しようとした。クエールを降ろし、別の副大統領候補を選ぶよう、厳しい再選に直面していたブッシュを説得しようとしたのだ。ブッシュはこれを断り、再選に失敗した。

バイデンは大統領候補として、アフリカ系アメリカ人女性を伴走者に選ぶよう圧力をかけられ、それを実行した。ミシェルが彼の伴走者になったとしても、それは変わらないだろう。さらに、賢くて明晰な副大統領を得ることができ、その副大統領は大統領候補としてのバイデンの魅力を高め、民主党や多くの無党派層から絶大な人気を得るだろう。

おそらく実現しないだろう。しかし、ミシェル・オバマが副大統領候補としてだけでも出馬すれば、2024年に民主党が勝利する最大のチャンスとなる。

※メリル・マシューズ:テキサス州ダラスにあるポリシー・イノヴェイション研究所常勤研究員。ツイッターアカウント:@MerrillMatthews.

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 ヘンリー・キッシンジャーは100歳となった。キッシンジャーが国家安全保障問題担当大統領補佐官、米国務長官を務めてから半世紀ほどが経つ。この50年ほどはコンサルタントというか、ネットワーカーとして活躍し、世界各国の最高首脳たちに具体的な指針を与えている。現在も移動は車椅子であるが、世界各地を飛び回っている。最近では日本を訪問し、岸田文雄首相とも会談している。
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 「キッシンジャーなんてまだ生きているの?」「過去の人でしょ?」「もうそんなに影響力なんてないでしょ」ということを言う人は多い。そして、下の論稿の著者であるスティーヴン・M・ウォルトも「どうしてそんなに評価されるのだろうか」という疑問を持っているようだ。ウォルトに言わせれば、キッシンジャーのキャリアには、学者、政府高官、コンサルタントの3つの場面があるが、学者としての業績(新しい考えや理論の提示)は中途半端で終わり、国家安全保障問題担当大統領補佐官や国務長官としての業績は確かにあるが、失敗もある。政府を離れてからのコンサルタント(キッシンジャー・アソシエイツ創設)からの方が50年ほどと最も長いキャリアであるが、政策提言など敗退したことはない、という評価になる。

 キッシンジャーの業績は「裏側(behind the scene)」でこそ発揮される。だから、表に出てくる内容だけで判断するのは、正確な判断ではない。彼の一挙一投足が報道されることはないが、漏れ伝わる動きは世界政治の勘所を抑えている。肝心な場所(ツボ、経絡)に適宜鍼を打つ鍼灸医のようなものだ。東洋医学のように、じんわりと効果が出てくる。それが現在の世界の状況だ。米中関係、米露関係が危険をはらみつつも、最終的な手切れまで進まないのはキッシンジャーの手当てがあるからだ。彼の米国内、海外に張り巡らせた人脈のおかげだ。

 キッシンジャーの抱える弱点は、彼の同程度の力を持つ後任者がいないことだ。キッシンジャーも人間であり、いつかは亡くなる。彼亡き後に誰がキッシンジャーと同じ役割を果たせるだろうか。管見ながら、私には彼の後任となり得る人物は思いつかない。そうなれば、大きく言えば、リアリズム側の力が弱まり、ネオコン(共和党)と人道的介入主義派(民主党)の力が大きくなる。目の上のたんこぶがいなくなり、これら2つの勢力が伸長することで、世界は大規模戦争の危機に直面する。その準備は進められている。NATOのアジアへの伸長はその一例だ。

 キッシンジャーをただの学者やコンサルタントと侮るのは間違いだ。また、「キッシンジャーは日本が嫌いなんでしょ」と訳知り顔に言うのも浅薄な態度である。キッシンジャーはそのような低次元の存在ではない。そもそも日本など世界から相手にされていないのだ。老人ばかりになって、金がなくなっていく日本にどれだけの価値があるのか。せいぜい中国の沿岸にべたっと張り付く空母、基地といったところだ。国際ゲームのプレイヤーではなく、コマ程度の存在だ。そういう認識を持って世界を眺めて、初めてキッシンジャーの凄さが少し分かるようになる。

(貼り付けはじめ)

ヘンリー・キッシンジャーの評判の不思議に関する問題を解決(Solving the Mystery of Henry Kissinger’s Reputation

-元米国務長官は天才だ、しかしそれは読者の皆さん方が考えるような形ではない。

スティーヴン・M・ウォルト筆
2023年6月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/06/09/henry-kissinger-birthday-reputation-foreign-policy/

ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官に関して、この1ヵ月間、ニューヨーク経済クラブやニューヨーク公共図書館でのプライヴェートイヴェントなど、何度も100歳の誕生日のお祝いが開かれ、多くのVIPが出席している。この光景は、キッシンジャー独自のステータスを雄弁に物語るものだ。外交官のディーン・アチソン、ジョージ・ケナン、ジョージ・シュルツはもちろん、生きている間にこれほどの扱いを受けた政治家はほとんどいない。歴代大統領もそうだ。

キッシンジャーについて考える際、誰でも認めることであるが、彼は驚くべき人生を歩んできた。ナチス・ドイツからの難民でありながら、やがてアメリカで権力の頂点に立ち、70年近くもアメリカの外交政策に大きな影響を与え続けてきた。1世紀の時を経て、キッシンジャーはアメリカが生んだ最も偉大な戦略的思想家であると称賛されるようになった。彼の名前は、外交問題評議会や議会図書館のフェローシップ、いくつかの大学の寄付講座や研究センター、そして彼の名を冠したコンサルティング会社にも刻まれている。101歳を迎えてなお、これほどまでに世間の注目を集める人物は他にいない。

しかし、キッシンジャーの素晴らしい人生の中心には、難問がある。 キッシンジャーは、現在、独特の深みと知恵と洞察力を備えた外交政策思想家として常に賞賛されているが、その長いキャリアは、彼の崇拝者たちが考えているほど印象的なものではないように見える。キッシンジャーが恐るべき知性と卓越した業績を持つ人物であることは、彼の最も厳しい批判者たちでさえ認めるところであるが、問題は、1世紀を経て得た評価が十分に正当化されるかどうかである。

これが「キッシンジャーの難問(Kissinger conundrum)」である。なぜ、キッシンジャーは畏敬の念を持たれ、彼自身が世界情勢を掌握し、他の誰よりも優れているかのように扱われるのだろうか?

この謎を理解するためには、キッシンジャーの職業上のキャリアを3つのセクションに分けることが有効である。第1段階は、ハーヴァード大学で1954年から1969年まで教鞭を執った研究者としてのキャリアである。第2段階は、リチャード・ニクソン大統領(当時)の国家安全保障問題担当大統領特別補佐官、ニクソンとニクソンの後継者ジェラルド・フォードの国務長官と国家安全保障問題担当大統領補佐官として、政府で活躍したキャリアである。第3段階は、著者、評論家、有識者としてのキャリアであり、その多くは、政府を離れた後に設立したコンサルティング会社キッシンジャー・アソシエイツの代表として行われたものである。

キッシンジャーは、ハーヴァード大学の学者として、数冊の本と多くの論文を発表し、ネルソン・ロックフェラーや外交問題評議会(CFR)との長いつきあいを開始した。いくつかの著書は広く注目されたが、結局、この時期の彼の学問への貢献は大きなものではなかった。彼の初期の著作はどれも古典という評価に値するものではなく、今日、学者たちに広く読まれ、議論されているものもほとんどない。ハンス・モーゲンソーやケネス・ウォルツのようなリアリストの著作は、国際関係の学術的研究に今なお長い影響を与えているが、キッシンジャーの学術的著作(最初の主著『回復された世界平和(A World Restored)』を含む)は、そうではない。キッシンジャーは核兵器についても多くの著作を残したが(1957年にベストセラーとなった『核兵器と外交政策(Nuclear Weapons and Foreign Policy)』を含む)、グレン・スナイダー、バーナード・ブロディ、アルバート・ウオルシュテッター、トーマス・シェリングの著作は、キッシンジャーの著作よりも核戦略の進化にはるかに大きな影響を与えた。キッシンジャーが後に出版した『選択の必要性(The Necessity for Choice)』(1961年)は評判が良くなく、ナイオール・ファーガソンのようにキッシンジャーに同情的な伝記作家でさえ、NATOに関する後の本『二国間の歪んだ関係――大西洋同盟の諸問題(The Troubled Partnership)』(1965年)は急いで書いたもので、すぐに時代遅れになったと認めている。

確かに、キッシンジャーが学問の世界に力を注いでいれば、もっと大きな影響を与えることができたかもしれない。キッシンジャーは、ウィーン会議でのヨーロッパ秩序の再構築を考察した『回復された世界平和』から続く、世界秩序に関する三部作を書くつもりであったことが現在分かっている。しかし、キッシンジャーは現実の政策課題に取り組むようになり、三部作の完成には至らなかった。そして、アメリカのヴェトナム政策を深く掘り下げるなど、こうした活動が、やがて1968年の政権発足につながった。しかし、事実は変わらない。 学者としてだけ見れば、キッシンジャーは学術界の神殿の一員ではない。

キッシンジャーが国家安全保障問題担当大統領補佐官や国務長官として残した記録は、常に論争の的となっている。中国への開放(国交回復)、ソ連との重要な軍備管理協定の交渉、繰り返されるアラブ・イスラエル紛争への対応など、注目すべき業績もある。しかし、これらの成果は、ヴェトナム戦争への支持と、戦争に勝てないという認識にもかかわらず、その長期化に直接関与したこととのバランスを取る必要がある。ニクソンとキッシンジャーはまた、戦争をカンボジアに拡大することを選択し、知らず知らずのうちにクメール・ルージュの大量虐殺支配への扉を開いてしまった。キッシンジャーがチリで起こしたピノチェトの軍事クーデターを支援したことや、1971年のインド・パキスタン戦争への対応についても、厳しい評価を下す価値がある。

これらの出来事(およびその他多くの出来事)をどのように評価するかについては、合理的な人々の間で意見が分かれるところであろう。しかし、キッシンジャーの政治家としての功績が、ディーン・アチソン(第51代国務長官)やジョージ・シュルツ(第60代国務長官)、あるいはハワード・ベイカー(第61代国務長官)の功績をはるかに凌ぐものであると評価することは難しい。これは、キッシンジャーの業績を否定するものではない。就任後の行動が彼を卓越した政治家という評価を得させるものではないことを認めているに過ぎない。

ここからは第3段階についてだ。キッシンジャーは、企業や政府、そして一般市民に対して戦略的な助言を提供するというキャリアで長い経験を持ち、重厚な書籍や新聞コラム、その他様々な形で、めまぐるしい活動をしてきた。キッシンジャーの長いキャリアを振り返って、その実績はどうだろうか?

悪くはないが、あなたが思っているほどでもない。まず、キッシンジャーは政府を去ってから多くの本を出版しているが、3冊の回顧録(邦題は『キッシンジャー秘録1-5』。『ホワイトハウス時代』『激動の時代』『再生の時代』)を除けば、どれも画期的なものではなく、学問への貢献度が特に高いものではない。最も野心的な『外交』(1995年)と『世界秩序』(2014年)は、それぞれのテーマについて長大かつ博識に考察しているが、いずれも斬新な理論的見方や挑発的で新しい歴史解釈は示していない。これに対して、キッシンジャーの回顧録は、アメリカの上級政治家が書いた個人的な記述としては最高のものであり、重要な業績であると私は考えている。アチソンの『アチソン回顧録』(『天地創造[Present at the Creation]』)だけが、それに近い。他の回顧録と同様、著者が在任中に行ったことを強力に擁護しているため、懐疑的な目で読まなければならない。しかし、世界最強の国の外交官であり戦略家である著者が、膨大な不確実性の中で、矛盾する圧力と優先順位をリアルタイムで調整しながら、どのような仕事をしていたかを、間近で見ることができるのである。また、巧みな人物描写と力強いドラマ性に満ちた、魅力的な作品となっている。

キッシンジャーの他の活動についてはどうだろうか? マット・ダスが最近指摘したように、キッシンジャーは、政府機関での勤務を、政府機関から退任後に有利なキャリアに転換させる技術を、発明し、確かに完成させたのである。 キッシンジャー・アソシエイツは、コーエン・グループ、オルブライト・ストーンブリッジ・グループ、ライス、ハドレー、ゲイツ&マニュエル、ウエストエグゼック・アドバイザーズなど、元政府高官の名前、見識、コネを多種多様な(通常は正体不明の)クライアントに提供する会社の家内工業(cottage industry)の手本となったのである。ジョージ・マーシャルのような公僕が、公の奉仕(および他者の犠牲)から利益を得ることは不適切だと考え、自分のキャリアを現金化するための儲け話を断ったが、そんな時代はとっくに終わっており、キッシンジャーはその倫理観を損なうようなことを誰よりもした。特に、これらの元高官が外交政策に関する公的な議論に積極的に参加し続け、場合によっては再び政府に戻る場合、利益相反の可能性は明らかである。問題は、彼らの公的な立場が、私的な収入を強化する(あるいは少なくとも保護する)ことを意図していたかどうかを知ることができないことである。

更に言えば、キッシンジャーは、彼が政府の職から退任して以来、私たちが直面している最大の戦略的問題のいくつかについて、ひどく間違っていた。例えば、彼はNATOの拡大を早くから支持していたが、この決定は、他のオブザーヴァーが、ヨーロッパの永続的な平和ではなく、ロシアとの直接的な衝突をもたらすと正しく予見したものである。また、キッシンジャーは2003年のイラク侵攻を支持したが、これはアメリカ史上最大の戦略的失敗の1つであることは間違いなく、2015年のイランとの核合意には反対した。そして、キッシンジャーは、関与政策によって中国の台頭を助けると、強力なライヴァルの出現を早めることになることを予見できなかった。この盲点が、2011年に出版された『中国――キッシンジャー回想録』が、明らかに両極端な結論に達した理由の一因かもしれない。

キッシンジャーが全てにおいて間違っていたと言っているのではない。現代の出来事を分析するのは難しいことであり、全てを正しく理解する人はいない。私が言いたいのは、評論家としての彼の実績は、日常的に世界情勢を論じる他の人々よりも明らかに優れている訳ではないのに、なぜ多くの人々が彼をアメリカの偉大な戦略家として称賛するのかが理解しがたい、ということだ。

従って、謎は次のようになる。誇大宣伝を無視すると、キッシンジャーは生産的で有名であり続けてきたが、最終的にはそれほど影響力のある学者ではなかった。実際の成功と憂慮すべき失敗の両方を経験した政策立案者である。そして、現代の政策問題のアナリストでもあるが、その実績は他の人よりも際立ったものではない。それでは、彼が今日享受している高い評判についてどのように説明されるだろうか?

その答えの一つは、もちろん、彼が長寿であることだ。もしキッシンジャーが70歳代後半、あるいは80歳代半ばでこの世を去っていたら、その死は多くの人々の注目を集め、アメリカ外交史における彼の地位は揺るぎないものになっただろう。しかし、現在のような象徴的な地位は得られなかっただろう。最後の1人ということは、批評家やライヴァルがほとんどいなくなり、時間の経過によって過去の罪の記憶が曖昧になり、信奉者たちが彼の評判を高める時間が長くなることを意味する。

100点満点の答えには、この説明は間違いなく役に立つが、謎に答えるには、それ以上のことが必要となる。

私は本当の理由は極めて単純だと考えている。キッシンジャーほど、影響力と名声を獲得し、維持するために、これまで、そしてこれからも、より長く努力した人はいないだろう。私はこれまで、驚くほど意欲的で野心的な人物を数多く知っているし、他の人物についてもたくさん本を読んできた。キッシンジャーはそのどれにも当てはまらない。キッシンジャーに関する多くの伝記を何気なく読んだだけでも、その野心が桁外れであること、集中力が抜群で仕事の邪魔をするような趣味がないこと、そしておそらく現代世界がこれまでに見たことのないような偉大なネットワーカーであったことが分かる。彼は、自分の役に立つかもしれない人との間にある橋を焼き切ることはしなかったし、明らかにコンセンサスから外れた立場を取ることもなく、新しい人脈を築く機会を逃すこともなく、侮辱を忘れることもなく、十分にやったと結論づけることもなかった。分かりやすく言えば、キッシンジャーは、他の誰よりも働き、魅力的で、巧みで、人々を出し抜いてきたのだ。そして、何よりも驚くべきことに、彼は今なおその歩みを止めない。

キッシンジャーはまた、影響力が自己強化されることも理解していた。あなたが十分に有名であれば、他の人々は、批判的であるよりも、支持的であり、融和的である方が、より多くの利益を得られると結論付けるだろう。キッシンジャーを追いかけることは、ジャーナリストや大学教授など、広い視野を持たない人であれば、まったく問題ないかもしれないが、外交政策の中枢で大成したいのであれば、賢い戦略とはいえない。彼は既に多くの友人やコネクションを持っていた。彼が大きくなればなるほど、野心的な政策担当者は彼の知恵を疑うよりも、彼の寵愛を求めることを選ぶだろう。

このような大きな野望は計画を狂わせることもあるだろうし、少し怖い気もするが、賞賛に値するものもある。そして、巨大な野望を持つ人々全員がキッシンジャーのようにやれる訳ではない。しかし、キッシンジャーが今受けている賞賛を額面通りに受け取る、もしくは判断に迷った瞬間に目を向けないということをしてはいけない。彼が死ぬなどと言うことは考え難いことだが、完全に無謬であるとは言い難い。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。 

 本日は、副島隆彦先生の最新刊『米銀行破綻の連鎖から世界大恐慌の道筋が見えた』(徳間書店)をご紹介します。発売日は2023年7月1日です。
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米銀行破綻の連鎖から世界大恐慌の道筋が見えた

 以下に、まえがき、目次、あとがきを貼り付けます。参考にして是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

まえがき

副島隆彦

●アメリカ地方銀行の取り付け騒ぎは終わらない

 アメリカで、中堅の地方銀行(リージョナル・バンク)の破綻(はたん)が5月にも相次いだ。この動きはさらに続く。9月には再び、銀行の取(と)り付(つ)け騒ぎ(バンク・ラニング bank running)が起きる。

 それは今年の3月10日に起きた取り付け(バンク・ラン)よりも大規模なものだ。

 アメリカの金融がガラガラと崩れつつある。

 私は、「世界大恐慌(ワールド・グレイト・デプレッション)が迫り来る」と、「株式(ストック)と債券(ボンド)の大暴落が起きる」と書き続けて、もう25年が経()つ。いまさら私は何を言い、何を書けばいいのか。ひとりで呆(あき)れ返(かえ)っている。私はホラ吹き人間だったのか?

「アメリカは強い。アメリカは強大だ。アメリカさまにしっかり付()いていれば、これからも日本は大丈夫だ」と言い続け、信じ続けた者たち、即ち、お前たちだ! この馬鹿やろうたちは一体、これからどうするつもりだ。

 今さら私に何の助言を求めるというのか。

 私、副島隆彦は、憮然(ぶぜん)として、ひとりで不愉快極まりない思いで事態を見つめている。5月の連休も、自分のこの金融本を書く気が起きないまま過ぎ去った。

「先生の次の金融本は、いつ出ますか?」と、自分のおカネ(投資)のことしか考えない人々が、安心、安全のお札(ふだ)がわりに私の新刊本を待つ。たいして真面目(まじめ)に読みもしないくせに。

 これからの世界の金融、経済の動きについて、私はもうグダグダと書かない。徹底的に分かり易く、サラサラと、書く。私の文章を読んだ人が、誰でもすっと分かるように1行ずつ、ではっきりと書く。1行ずつ、文章は平易であるべきだ、の極意(ごくい)を、私は、大(だい)作家のひとり谷崎潤一郎(たにざきじゅんいちろう)の文体[ぶんたい](スタイル)から学んだ。

 誰がいつまでも訳(わけ)の分からない、バカみたいに難かしい金融本、経済(学?)本なんか書いていられるか。金融、経済の専門家という連中は皆(みんな)、滅びた、死んだ。お前たちの高級文章なんか誰にも相手にされない。読んで貰(もら)えない。書いていることが、ウソで人騙(ひとだま)しだからだ。

 米の中堅銀行(各州を代表する有力な地銀[ちぎん]である)の経営破綻は、4月にいったん治(おさ)まった。危機が一旦(いったん)は、収束(しゅうそく)したように見える。しかし、皆さんもご存知のとおり、その後もぐずぐずとぐずついて、再びアメリカの銀行たちの取り付け騒ぎ(バンク・ラニング)が起きると言われている。次の連鎖破綻(はたん)は、8行までならいいが、10行を超すと金融恐慌(マネタリー・クライシス)になる。日本でも昭和2(1927)年3月に起きた(写真のとおり)。米政府(財務省)とFRB(連邦準備制度理事会)が助けきれなくなる。

●2024年から「ドル覇権の崩壊」が始まる

最近は「脱(だつ)ドル化」という言葉がよく言われる。アメリカのドルの信用が世界中で低下している。それでも、まだ世界の貿易の決済の54パーセントは、米ドルでやっている。これが、50パーセントを割ると、アメリカの世界からの信頼が決定的に落ちる。このことの別名が「ドル覇権(はけん)の崩壊」だ。私は、ドル覇権(ヘジェモニー)(米ドルによる世界支配)が終わることを、15年前(2007年)から書き続けている。

「副島の予言はハズレ」と言われてずっと不愉快だった。それで、それから、どうなったか。何が今、起きつつあるのか。まだ「副島ハズレ」と、私の本に向かって書評(ブック・レビュー)を書けるのか。

 アメリカのドルによる世界支配が、本当に崩れつつある。この考えに反対する人はもうほとんどいなくなった。日本人は、従順奴隷[じゅうじゅんどれい]という意味だ)だから、風向き(日和[ひより])に合わせて、何とでも、平気で自分の考えを変える。今やドル支配(覇権[はけん])の終焉(しゅうえん)は、いつ起きるか、の議論になっている。

「いやあ、まだあと20年は続く(即ち2043年まで)」と主張し続けた専門家たちが、アメリカにもずっといた。私は、そんなに長くはかからない、と書いて来た。来年2024年から、ドル覇権はガラガラと崩れるだろう。

 たとえ米ドルの弱体化(ドルの暴落)が起きても、アメリカの世界支配は、簡単には終わらなくて、ずっと続くと思っている人々が日本の保守派の大半だ。今もそうだ。しかし、そんなことはもう無いよ。あと数年で終わりだ。

●金とドルの戦いでドルは大暴落

 金(きん)は、これからまだまだ上がる。1グラム2万円、いや3万円までゆく。今(5月12日)金(きん)の小売(こうり)価格で、1グラム=9800円まで行った(P203の表を参照)。アメリカ政府(財務省)とFRB(米[べい]中央銀行)とゴールドマンサックスが組んで、違法そのものの、金(きん)ETF(イーティーエフ)(金(きん)証券。ペイパー・マネーの先物取引。差金決済[さきんけっさい])で、レバレッジ(投資倍率)を何と500倍どころか、今や1000倍ぐらいをかけて、金(きん)を売りクズしている。

 わずか1割(10パーセント)の担保(保証金)も差し出さずに、全くタダで「政府さま(お上[かみ])がやる取引だぞ」と〝裸の空(から)売り(ネイキッド・ショート・セリング)〟を仕掛けている。

 アメリカ政府(財務省とFRB)は、もう現物(げんぶつ)の金(きん)をほとんど持っていない。「アメリカはニューヨーク連銀(れんぎん)が8300トンの金(きん)を保有している」というのはウソである。

 もう、ケンタッキー州のフォートノックス(米陸軍の基地である)のニューヨーク連銀(れんぎん)の金庫(巨大な横穴[よこあな]の洞窟)に、金の地金(じがね)(ingot インゴット)はほとんど無い。有るはずなのに無い。使ってしまって外国に流れた。

 アメリカ政府がいくらドルの空(から)売りをやっても、もうダメだ。金(きん)が米ドルを、ブチ壊して大上昇してゆく。金(きん)とドルの戦いで、ドルの大敗(おおま)けが迫っている。だからドルは大(だい)暴落する。

 この金融本では、私はさらに、これからの金融の動きを予言をする。どこまででも分かり易く書く。

 日経新聞と週刊ダイヤモンドと週刊東洋経済という一流金融雑誌が、毎号、毎号書いているような難しいことを私は書きたくない。ああいう難しい文章を読んで、何か分()かったふりをしている投資家や金融業界の人間たちが大嫌いだ。私は、本当に分かりやすい言葉でお金(かね)の動きを説明する。これが出来なければ、私の負けだ。私はすでにこの25年間に70冊以上の、金融本を書いてきた。あいつら(金融評論家たち)に妥協して、私も難しいことを知ったかぶりをしてワザと書いてきた。それがもうイヤになった。

 恐れいったことに、この金融雑誌たちが、平気で、「世界恐慌が迫り来る」という特集記事を書くようになった。恐慌になる、大暴落が起きる、と書いたら、その業界人は、業界追放ではなかったのか。お前たちは、いつ、自分たちのルールを変えたのだ。この恥知らずどもめが。

●米政府は無限にお札を刷って自滅してゆく

 3月10日に、シリコンバレー・バンク(SVB)が経営破綻した。それで、アメリカに新しい金融危機が勃発した。それ以来アメリカは震(ふる)えている。誰もがこのことに気づいている。しかし、日本のアメリカの手先(てさき)どもが、今も団結して、日本国民を洗脳して、騙(だま)し続けているから、誰も公然と真実を言う(書く)者がいない。私、副島隆彦だけが、なんとか、かんとか書いてきた。

 私は、SVBの破綻の翌々日の3月13日に、自分のホームページにはっきり書いて予言した。次のアメリカの中堅銀行たちが破綻の連鎖をするのは7月だ、と。遅くとも9月までに次の米(べい)金融危機が起きると。だが、米(べい)政府とFRBは、自分たちがやることは違法(いほう)であり、さらに犯罪(刑事違法[けいじいほう])であることを知りながら、「もう、こうなったら」で無限にお札を刷って、市中(しちゅう)という名前の、危ない民間銀行たちに、10トン・トラックの現金輸送車で運び込む。こうなったら、何でもやる。「政府がやることはすべて合法(ごうほう)である」という近代(モダーン)ヨーロッパで生まれた、「国家は悪(あく)evil[イーヴォ])をなさず」(ハ?)の、おかしな法理論で突破する気だ。

 そして、その揚げ句に、(法律上の根拠がなく)刷り散らかし過ぎた米ドル札(さつ)と国債(こくさい)(国の借金証書)が原因で、ドルの信用が一気に、世界中で消滅して、それでドルの大(だい)暴落が起きるのだ。

 即ち、「ドル覇権の崩壊」 “ The() Collapse(コラプス) of(オブ) the() US(ユーエス) Dollar(ダラー) Hegemony(ヘジェモニー)  である。

 めでたし、めでたし。

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米銀行破綻の連鎖から世界大恐慌の道筋が見えた──[目次]

まえがき

アメリカ地方銀行の取り付け騒ぎは終わらない─2

2024年から「ドル覇権の崩壊」が始まる─5

金とドルの戦いでドルは大暴落─7

米政府は無限にお札を刷って自滅してゆく─9

第1章 世界大恐慌への道筋が見えた            

SVBの経営破綻から金融危機が始まった─18

やっぱり2024年に世界大恐慌に突入する─22

政府による銀行救済にも限度がある─31

米国債の高値掴みで損失を出した─37

ハイリスク・ハイリターン債とは高危険債だ─40

ニューヨークのジャンク債市場こそが金融核爆弾─42

債券市場から大恐慌が始まる─44

パウエルFRB議長が自らの誤りを認めた─46

米政府もFRBもお手上げの事態になる─51

アメリカの連鎖破綻がヨーロッパに飛び火した─56

第2章 これから米地銀の破綻が連鎖する   

これから全米で160行の中堅銀行が潰れる─66

米の有力地銀が次々と破綻する─72

日本でもAT1債を仕組み債で売っていた─86

国債の売り崩しをやっていた連中が敗北した─92

ついにNY株がピークアウトした─102

世界中で債券価格が暴落を始めたのはなぜか─106

金利が上がることほどいやなことはない─119

第3章 いよいよアメリカのドル覇権が崩壊する       

ジリアン・テットが金利リスクの恐ろしさを指摘─124

インフレとはエネルギー(石油、ガス)の価格が上がっているだけのこと─158

ペトロ人民元がアメリカのドル覇権に挑戦する─165

世界の主要な港でドル決済がどんどんされなくなっている─167

日本でも脱ドル化が進んでいる─173

ドルの大暴落への対応がリデノミネーション─178

アメリカは没落してドルは大暴落する─182

第4章 金は1グラム=1万円をもうすぐ超える       

金価格が暴騰し始めた─186

国内の金は1円の円安で、1グラム60円上がる─190

金は減価償却がないから売ったら消費税10%が返ってくる─195

国が召し上げるのは売値の3割と覚えておく─198

金の売買の証拠を見せられたら黙って払いなさい─201

(きん)を小分けにしたければ日本マテリアルに頼みなさい205

「ばかの金」で金(きん)をあやつる206

(きん)証券の先物市場はぶっ壊れてゆく208

世界の中央銀行が競って金を買い漁っている─214

金は上海黄金市場で取引されるようになる─226

預金封鎖がすでに準備されている─231

1ドル=1円にこれからなってゆく─235

日本円は新札切り替え時にリデノミネーションをやる─237

第5章 黒田日銀総裁は日本を救った            

黒田は勝利宣言をして引退の花道を飾った─242

日本国債暴落にかけたゴロツキ投資家たちが総敗北した─248

黒田日銀は米国債を売って日本国債を買った─249

日本のインフレ目標2%達成は黒田の大業績だ─260

アメリカの経済学は死んだ─264

日本が裏金でアメリカに貢いでいる残高は1800兆円─268

あとがき─280

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あとがき

 アメリカの次の銀行の連鎖倒産は9月だろう。遅くても10月だ。

 この本では「(これから)潰れる危ない米有力地銀(ちぎん)トップ14行のリスト」を、私は独自に作って載せた(本書P20とP64)。これがこの本の最大の売り物だろう。我れながら苦労して作った最先端の金融情報である。

 併せて、全米トップ45の銀行のリストも載せた。私が金融・経済の近(きん)未来予測を本に書き続けて25年になる。

 全米で潰れる(破綻処理)中堅銀行は60行と噂(うわさ)されている。

 私が自力で調査し作成した「危ない米銀行」をじっと見ていたら、これらは、全米50州の各々(それぞれ)の州を代表する銀行たちであることが分かって驚いた。その州の州民(日本でなら県民)にとっては、一(いち)大事で大騒ぎになっているだろう。このことが、日本にいる私には全く伝わらない。

 やはり、情熱、知識、ニューズは大きく統制(コントロール)されているようである。日本の金融メディアの欠点、欠陥、節穴(ふしあな)を補(おぎな)うために、私の本が存在する。私は、さらに意気揚々(ようよう)と、世界大恐慌(ワールド・グレイト・デプレッション)に向かう世界に、日本の持ち場からカッサンドラの預言(よげん)をあげ続ける。

 この本も徳間書店学芸編集部の力石幸一氏との地獄の共同作業の中から生まれた。記して感謝します。

2023年6月

副島隆彦 

ホームページ「副島隆彦の学問道場」 http://www.snsi.jp

ここで私は前途のある、優秀だが貧しい若者たちを育てています。

会員になってご支援ください。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 アメリカ政府の債務上限引き上げ問題は解決された。アメリカ連邦議会で債務引き上げ法案が賛成多数で可決した。現在のアメリカ連邦議会は、連邦下院は共和党、連邦上院は民主党がそれぞれ過半数を握っており、ねじれている状況だ。そうした中で、「先行き不透明、アメリカ国債のデフォルトが起きる可能性がある」というマスコミの報道もあったが、いつも通りに決着する茶番だった。しかし、この茶番はアメリカにとっては深刻でかつ重要な茶番であり、債務上限が引き上げられなければデフォルトになり、アメリカ発の世界恐慌ということになりかねない。こうして債務はどんどん積み上げられ、総額は約32兆8250億ドルとなっている。1ドル=140円で計算すると、4595兆5000億円となる。日本のGDPが約5兆ドル(約700兆円)であるから、およそ7倍の規模である。

 今回の債務上限引き上げ問題に関しては、民主、共和両党の連邦議員たちが交渉役となり、どこまで妥協できるかということを話し合った。最後は民主党側のジョー・バイデン大統領、共和党側のケヴィン・マッカーシー連邦下院議長(カリフォルニア州選出、共和党)がトップ会談で決着をつけた。民主党側は「大事な部分は歳出削減をせずに債務上限引き上げができた」、共和党側が「歳出削減を認めさせることができた」という成果を強調できる形となった。

連邦下院(定員435議席)は共和党が222議席で過半数を握り、民主党が213議席を持っている。過半数は218議席だ。今回の債務上限引き上げ法案は、賛成314(共和党:149;民主党:165)、反対117(共和党:71;民主党:46)、棄権4(共和党:2;民主党:2)という採決結果で可決された。

その後、連邦上院(定数100議席)に送られた。連邦上院は民主党が48議席、民主党系の無所属が3議席、共和党が49議席という構成で、民主党が過半数を握っている。採決は、賛成63(共和党:17;民主党:44;民主党系無所属:2)、反対36(共和党:31議席;民主党:5議席)、棄権1(共和党:1)という結果で、法案は可決した。ジョー・バイデン大統領が署名することで法律が可決成立ということになる。

 バイデン大統領と民主党としては債務上限引き上げを行いたいし、共和党の主流派も口では威勢の良いことを言っていても自分たちが政権(大統領)を担う際に債務上限問題に直面する可能性もあるので、裏では当然賛成となる。ある程度政府の支出を減らす形を見せるように求めて、それができたら妥協して賛成しましょうという出来レースである。民主党内では主流派と反主流派(進歩主義派)、共和党内では主流派と反主流派(トランプ派、フリーダム議連)という分裂が起きて、民主党と共和党の主流派同士が手を握って賛成し、民主、共和両党の反主流派が反発して反対という構図になる。これは、民主化研究における非民主政府対民主化勢力の対立から民主化へ向かう道筋と同じ構図である。

 共和党の反主流派は「歳出削減の規模が小さすぎる」から反対、民主党の反主流派は「歳出削減の規模が大きすぎる」から反対ということになった。民主、共和両党の反主流派は、それぞれの立場が大きく違っているが、共通している点もある。それはアメリカの対外的な役割の縮小だ。簡単に言えば、「アメリカは帝国であることを止めよう」ということだ。両者はウクライナに対する過剰な支援に反対しているし、アメリカ軍の海外展開にも反対している。アメリカ国内問題解決を第一にする、アメリカ国民の生活を第一にする、「アメリカ・ファースト」の立場であり、これこそがポピュリズムの立場である。既存のアメリカ政治に反対する反主流派があってこそ、アメリカ政治は「らしさ」を保っている。

(貼り付けはじめ)

米債務上限引き上げ法案 上院で可決 米国債の債務不履行回避へ

202362 1354分  NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230602/k10014086261000.html

アメリカの議会上院は政府の借金の上限、債務上限を一時的になくす法案を可決しました。法案はバイデン大統領の署名を経て成立することになり、アメリカ国債の債務不履行は回避されることになりました。

アメリカ政府の債務上限をめぐっては引き上げを求めるバイデン政権と、歳出削減を強く求める野党・共和党の対立が続いてきましたが、バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長が再三にわたって協議を行った結果、先月28日に合意しました。

合意内容を反映した法案は議会下院で31日に超党派の議員の賛成多数で可決されたのに続いて1日、議会上院の本会議で採決が行われました。

与党・民主党が主導権を握る上院でも、与野党双方の一部の議員が反対しましたが、バイデン大統領や、議会指導部の説得もあり、超党派の議員が賛成して賛成63、反対36で、必要な60票を上回り可決されました。

法案は政府予算について、2024年度は国防費以外の歳出を2023年度とほぼ同額にするなど支出を抑えるかわりに、アメリカ政府の債務上限を20251月までなくし、政府が借り入れることができる額を事実上、引き上げる内容となっています。

これによって来年秋の大統領選挙までこの問題をめぐる政治対立は避けられることになります。

イエレン財務長官は上限の引き上げなどがなければ、今月5日にも債務不履行に陥ると警告していましたが、アメリカの国債の債務不履行は回避されることになりました。

法案はバイデン大統領が署名して成立することになります。

バイデン大統領が声明「アメリカ国民にとって大きな勝利」

アメリカの議会上院で政府の借金の上限、債務上限を一時的になくす法案が可決されたことを受けて、ホワイトハウスは1日、バイデン大統領の声明を発表しました。

バイデン大統領は「民主党・共和党両党の上院議員は今夜、われわれが苦労して獲得した経済発展を守り、アメリカ史上初の債務不履行を防ぐために投票した。この超党派の合意はアメリカ国民にとって大きな勝利だ」として、歓迎しました。

さらに、「われわれの仕事は終わらないが、この合意は重要な一歩だ。できるだけ早く法案に署名し、あす、アメリカ国民に直接、伝えることを楽しみにしている」としています。

債務上限引き上げで合意した内容「財政責任法案」とは

バイデン大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長が先月28日に債務上限の引き上げで合意した内容は「財政責任法案」としてまとめられました。

法案では再来年・20251月までを期限に債務上限についてその適用を停止、つまり一時的に上限をなくします。

これによって、アメリカ政府は上限を超えて追加で借金して資金の調達ができるため、アメリカ国債の元本の償還や利払いが可能となり、国債の債務の不履行=デフォルトを避けることができます。

上限の適用を一時的に停止する期限については、共和党側は当初、来年3月まで、バイデン政権は来年秋の大統領選挙後までとするよう求めていました。

法案では上限適用の停止が再来年までになり、大統領選挙の後まで債務上限の問題が解消されることから、バイデン政権の主張が通った形です。

一方、共和党が求めていた歳出削減の内容については、国防費以外の支出を2023年の会計年度と比べて、2024年度はほぼ同額に、2025年度は1%程度の増額に抑えるとしています。

また、共和党が要求していた低所得者向けの食料支援の支給条件の厳格化は盛り込まれましたが、民主党が反対していた低所得者向けの医療保険制度「メディケイド」の利用条件の厳格化は見送られました。

さらに、石油・ガス業界から支援を受ける共和党が求めていた、石油・天然ガス・鉱物などの資源開発プロジェクトに対して政府の許認可プロセスを迅速にすることが盛り込まれました。

日本の国税庁にあたるIRS=内国歳入庁の予算を削減することも含まれています。

バイデン大統領は大企業や富裕層への課税の強化を掲げていて去年成立させた「インフレ抑制法」にIRSの予算の増額を盛り込んでいました。

共和党は課税強化や増税につながるIRSの予算増額に強く反発していて、共和党の主張が通った形です。

アメリカ国債の債務不履行回避までの経緯

アメリカでは、財政規律を守るため政府が国債などを発行して、借金できる上限が決められています。

その上限を引き上げるには議会の承認が必要となります。

ことし1月、政府の借金が増えてその上限に達しました。

イエレン財務長官は臨時の対応として公務員や障害者の年金基金の中で直ちには必要のない資金を使ってやりくりする特別措置を始めたと発表しました。

イエレン長官はこの特別措置で確保できる資金が早ければ今月1日に底をつく可能性があると指摘。

議会に対して繰り返し上限の引き上げを求めてきました。

上限が引き上げられなければ信頼性が高く、安全な資産として世界中で取り引きされているアメリカ国債が史上初めて債務不履行=デフォルトに陥る可能性があります。

バイデン大統領は先月9日、16日と続けて野党・共和党のマッカーシー下院議長など議会の指導部と会談し、上限の引き上げに向けて協力を要請しましたが協議はまとまりませんでした。

バイデン大統領はG7広島サミット後に予定していたオーストラリアなどへの外国訪問をキャンセルし、帰国を早めて対応にあたることになりました。

バイデン大統領が日本を訪問している間も担当者レベルでの交渉は続けられ、マッカーシー下院議長は18日、「何も合意はしていないが、合意できるかもしれない。道筋は見えてきた」と述べて、話し合いが前向きに進んでいることを示唆しました。

しかし、19日になって事態は一転します。

交渉を担当する共和党の議員が「交渉が生産的ではない」と述べて協議が一時、中断されました。

これについてバイデン大統領はG7広島サミットの閉幕後、記者会見し、野党・共和党の提案は「率直に言って受け入れがたい」と述べ、意見の食い違いが依然として大きいことを明らかにしました。

バイデン大統領はワシントンに戻る機内でマッカーシー下院議長と電話で協議を行い、22日午後には直接ホワイトハウスで会談しましたが合意には至りませんでした。

その後も続いた担当者レベルの交渉でも妥協点は見いだせず債務不履行に陥るおそれがある期限が迫る中、金融市場では警戒感が高まります。

イエレン財務長官は26日、マッカーシー下院議長をはじめ議会指導部に宛てた書簡で、議会が債務上限の引き上げなどに応じなければ、今月5日に債務の不履行に陥るおそれがあるという最新の見通しを示しました。

これまでは早ければ来月1日が期限だとしてきており、日程上、わずかな余裕が生まれましたがイエレン長官は、過去のケースを踏まえると、期限ギリギリまで交渉が続けばアメリカの信用などに深刻な打撃を与えると警告しました。

アメリカでは27日から3連休に入る中、バイデン大統領はマッカーシー下院議長と電話で協議を行い、原則、合意したとの声明を発表しました。

アメリカ国債が債務不履行=デフォルトに陥るおそれがある期限が9日後に迫るなかでの妥結となりました。

28日には最終合意し、この内容をもとに法案が作成され31日には議会下院で賛成314、反対117の超党派の議員の賛成多数で可決されました。

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米債務上限引き上げ、原則合意 妥協案に反発も 予断許さず

5/28() 17:26配信 毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/805b8ce54e5d46eaf44322221065ce8e456e53d3

 バイデン米大統領と野党・共和党のマッカーシー下院議長は27日、連邦政府の借金限度額「債務上限」の引き上げで原則合意した。共和党が上限引き上げの条件として求めていた歳出削減についてバイデン氏側が妥協するなど、双方が歩み寄った。

 マッカーシー氏は、合意内容を基にした法案を28日中に完成させて議員に周知した後、31日に下院で採決するとした。米国債の史上初のデフォルト(債務不履行)回避の「タイムリミット」とされる65日までに何とか法案成立を間に合わせたい考えだ。ただ、両党から妥協案への反発も予想され、予断を許さない状況が続く。

 バイデン氏とマッカーシー氏が27日に電話協議して合意した。バイデン氏は同日夜、「マッカーシー氏と私は今夕、原則合意に達した。経済不況を引き起こす破滅的デフォルトを防ぐことができる」との声明を発表。「両院が直ちにこの合意内容を可決するよう強く求める」と議会に協力を呼びかけた。マッカーシー氏も記者団に対し「数週間の交渉の末に原則合意に達した。まだやるべきことは多いが、米国民にとって価値ある合意だ」と述べた。

 ロイター通信などによると、双方は27日までに国防費を除く多くの政府プログラムへの支出に上限を設けることなどで合意。共和党が求める低所得者向け給付制度の就労条件の厳格化などが対立点として残ったが、27日にトップが電話協議して妥協点を探った。これらの歳出削減に関する合意事項と引き換えに、2年間の債務上限引き上げを認める法案を策定する。

 今後の焦点は議会の対応だ。202211月の中間選挙の結果、米議会は下院で野党の共和党が多数派を握る一方、上院では与党の民主党が多数派を握る「ねじれ」状態にあるためだ。

 トップ合意した妥協案に対しては、大幅な歳出削減を求める共和党保守強硬派や、バイデン政権の巨額予算の維持を求める民主党急進左派の双方から反発を受ける可能性が高く、審議が円滑に進むかは不透明だ。

 連邦政府の現在の債務上限は314000億ドル(約4400兆円)だが、1月に上限に達して追加の借金ができなくなった。財務省は公的年金基金の運用見直しなどの臨時措置で資金繰りを続けてきたが、イエレン財務長官は最速で65日に手元資金が枯渇すると警告。実際にそうなれば、政府機関の閉鎖に加え、米国債のデフォルトで世界経済が大混乱に陥る恐れがある。【ワシントン大久保渉】

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債務上限引き上げ合意の中身はこうなっている(Here’s what’s in the deal to raise the debt ceiling

ブレット・サミュエルズ、エミリー・ブルックス筆

2023年5月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/4024014-whats-in-the-deal-to-raise-the-debt-ceiling/

ジョー・バイデン大統領とケヴィン・マッカーシー連邦下院議長(カリフォルニア州選出、共和党)の交渉担当者たちは土曜日深夜、政府支出に関する合意に達し、債務上限を引き上げ、迫り来るデフォルト(支払い不能)を回避することができることになった。

今回の合意は、今後数日の間に、連邦上下両院を通過しなければならないが、労働条件、支出上限、その他の問題についての意見の相違を解決するため、数日間の激しい交渉の後にまとまることができた。

バイデン大統領とマッカーシー議長は、土曜深夜にそれぞれ、今回の合意を勝利と称したが、今後は具体的な内容についてそれぞれの党に売り込む必要がある。

合意の中身についてこれから見ていく。

●債務上限を2年間上げる(Raises debt ceiling two years

今回の合意は、債務上限を金額ではなく、期間として引き上げるもので、2年間引き上げる。それは、次の大統領選挙(2024年)後までこの問題が再び浮上することはないことを意味する。

債務上限引き上げは歳出合意とは別のもので、交渉に詳しいある関係者は、2015年、2018年、2019年の予算合意で、当時の債務上限を同時に引き上げた仕組みと一致していると述べた。

ジャネット・イエレン財務長官は今週、連邦議会の措置がなければ6月5日に連邦政府は資金不足に陥り、デフォルトに陥る可能性が高いと議員たちに警告していた。専門家たちは、デフォルトは景気後退の引き金になりかねないと警告していた。

ホワイトハウスは数ヶ月間、債務上限について交渉していないと主張し、連邦議会には条件なしに債務上限を引き上げる責任があると主張してきた。ここ数日、政府関係者たちは、債務上限について交渉しているのではなく、単に歳出の合意について協議しているに過ぎないと主張していた。

●歳出上限(Spending caps

共和党が発表したこの合意に関する資料には、国防以外の裁量支出を2022年度の水準まで後退させる一方で、連邦政府の主要支出を6年間にわたり年率1%の成長率に制限することが盛り込まれていると記載されている。

しかし、今回の合意に詳しいある関係者は、2025年以降の予算上限はなく、「強制力のない予算目標」に過ぎないと述べている。また、その関係者によると、国防以外の支出は、合意された他の予算調整を考慮すると、ほぼ横ばいになるとのことだ。

その同じ情報提供者によると、国防費はバイデンが2024年度予算案で要求した9000億ドル近いもの同様の金額になるということだ。

今回の合意では、超党派の電子タバコ規制法による有害物質暴露基金への資金提供を含め、退役軍人の医療費に全額が充てられる。

保守派の多くが今回の交渉を政府支出に関して大幅に抑制する機会と見ていたことから、最終文書に盛り込まれる歳出削減のレヴェルと期間によって、最終的にどれだけの共和党員がこの合意を支持するのかを左右する可能性が出てくる。

●就労義務(Work requirements

就労義務は、ここ数日の協議で最も大きな対立点の一つであり、共和党は、より厳しい就労義務が合意に含まれることを強く求め、ホワイトハウスは、貧しいアメリカ人から援助を奪うような変更には難色を示した。

今回の合意では、フードスタンプの受給者が受給資格を得るため、仕事を探さなければならない年齢を49歳から54歳に段階的に引き上げる一方、退役軍人やホームレスなど、SNAPプログラムの制限の対象となる弱者の数を減らすための改革も含まれている。

フードスタンプ・プログラムの変更は2030年に終了すると、合意に詳しいある関係者は述べている。

この合意には、貧困家庭一時扶助(TANFTemporary Assistance for Needy Families)プログラムに対する就労要件の追加が含まれているが、これは民主党にとっては不満の種になりそうだ。合意に詳しい関係者によると、債務上限を引き上げるための下院共和党の当初の法案に含まれていた変更は、最終的な合意には含まれておらず、100万人以上の潜在的な受給者を危険にさらすことになるということだ。

今回の合意には、共和党が提案しホワイトハウスが強く反発した、メディケイド受給者の就労要件の変更は含まれていない。

●新型コロナウイルス関連貸付回収(COVID-19 funds clawback

共和党は、今回の合意に関する要約文書で、米疾病管理予防センターの「グローバルヘルス基金」からの4億ドルを含む、新型コロナウイルス対策に充てられた未使用の資金、数百億 ドルを取り戻すと述べている。

バイデンはここ数週間、支出協議の一環として未使用の新型コロナウイルス救済資金を交渉のテーブルに載せることに前向きだと示唆していた。

●内国歳入庁予算(IRS funds

今回の合意は、民主党が昨年承認した、強制捜査の強化のための10年間で800億ドルの資金増強はそのままにして、内国歳入庁の予算を一部削減するものだ。この増額措置の廃止は、共和党の長年の優先事項であった。共和党のリストによると、この合意は「新しい内国歳入庁エージェントのための2023年度の総人件費要求を修正する」ものであるということだ。

ダン・ビショップ議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は、今回の合意は内国歳入庁の予算を19億ドル削減するものだと不服そうにツイートした。「それは、マッカーシーが債務上限を4兆ドル増やすことに同意したのと同様の“成果”ということになるのだろう」と、ビショップはツイートした。

●許認可改革と環境条項(Permitting reform and environmental provisions

今回の合意に詳しいホワイトハウスの関係者は、暫定合意には、ジョー・マンチン連邦上院議員(ウエストヴァージニア州選出、民主党)の主要な優先事項であり、マッカーシーが合意の特徴になる可能性があると述べていたエネルギー許可改革が含まれていることを本誌は確認した。

この情報筋は、今回の合意では、バイデンの代表的な気候・インフラ関連法案であるインフレ抑制法(Inflation Reduction ActIRA)の気候条項が維持されると強調する。この法案は、共和党が債務上限引き上げと引き換えに縮小することを求めていた。

「今回の合意は、連邦政府機関の意思決定に関連する調整、予測可能性、確実性を高めることを目的とした改革を、国家環境保護法において成文化するものである」と、関係者は声明の中で述べている。

この暫定的な合意は、許認可プロセスを見直し、公的なスケジュールのもとで最終的な環境評価文書の作成を単一の機関が担当することになると伝えられている。ホワイトハウスは、これによって時効が短縮されたり、利用可能な法的救済措置が縮小されたりすることはないと強調している。

マンチンは2022年、許認可改革案の採決と引き換えにインフレ抑制法を支持することに同意したが、彼の提案はその後、連邦上院共和党によって阻止された。これとは別に、連邦上院環境・公共事業委員長のトム・カーパー連邦上院議員(デラウェア州選出、民主党)は今月初め、再生可能エネルギーに特化した許認可改革を発表した。

この案件に関する共和党の資料には、「お役所仕事を減らし、エネルギー・インフラプロジェクトを合理化する」ための施策が含まれていると書かれている。

●新しい課税は行わない(No new taxes

マッカーシーは土曜日に記者団に対して行った短い声明発表の中で、今回の合意には新たな課税は含まれないと述べた。

マッカーシーは「新しい課税はなく、新たな政府プログラムもない」と述べた。

バイデンは最近、公の場にいて、交渉には歳入の財源に関して議題になると主張していた。特に、税金の抜け穴をふさぎ、富裕層に対して課税を強化することを主張していた。

●政府予算法案を可決するためのインセンティヴ(Incentive to pass government funding bills

連邦議会に予算案の期限内通過を促す意味で、債務上限引き上げ合意には、12本の予算案の全てが可決成立するまで、政府資金を賄う継続決議の上限を現行の99%に抑える措置が盛り込まれている。この案は、トーマス・マッシー議員(ケンタッキー州選出、共和党)が以前から提案していたものだ。

●行政上のペイゴー原則(Administrative Pay-Go

共和党側は、今回の合意には、裁量支出の増加に伴う支出削減を提案する機関に関する、史上初の行政上のペイゴー原則に関する文言が含まれていると主張している。共和党は、この措置により、制定される行政規則や規制が節約されることを期待している。

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バイデン、マッカーシーがデフォルトを回避するために債務上限に関して合意に達する(Biden, McCarthy reach debt ceiling deal to avoid default

マイク・エリス筆

2023年5月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/4023783-debt-ceiling-deal-reached/

民主、共和両党のトップリーダーたちは土曜日、前例のない政府のデフォルト(債務不履行)を回避するために長い間求められていた合意に達し、債務上限を2年間引き上げ、同じ期間に連邦支出に新しい上限を適用する計画で合意したと発表した。

合意に到達するために、交渉担当者たちは、支出水準の引き下げ、社会給付プログラムの新たな就労義務、エネルギーインフラの承認を促進するための改革許可など、ここ数日の交渉を悩ませてきた小さいながらも重要な未解決の問題のリストについて、両者の意見の相違を整理する必要があった。これら3つの要件は共和党側が要求し、民主党側のほとんどが反対していた。

土曜日の夕方、ジョー・バイデン大統領とケヴィン・マッカーシー連邦下院議長(カリフォルニア州選出、共和党)が、膠着状態を打破するために11時間かけて、率直な腹を割った電話会談を行うほど、行き詰まりは深刻化していた。

マッカーシー議長は、連邦議事堂での短い挨拶の中で、まだやるべきことは残っているが、日曜日には立法文書を掲載し、翌水曜日には議場での採決を行う予定であると述べた。

特に連邦下院では、保守派がこの妥協案を、マッカーシーがバイデンに屈服したものであり、協議に臨む共和党の赤字削減目標を台無しにするものだとして、合意発表後すぐに非難を浴びせた。保守派は、この法案が議場に持ち込まれた際には反対すると宣言している。

マッカーシー新議長は、党派的なメッセージング法案では共和党をまとめ上げるという困難に立ち向かったが、民主党の支持を得られるような、特に経済が危ぶまれる重要な法案は、まだ試されていない。

合意内容に詳しい関係者によると、共和党は政府の借入権限を2年間延長することに合意し、バイデンが要求していたデフォルトの危機を2024年の選挙以降に延期することに成功した。

その見返りとして、ホワイトハウスは2024年の国防以外の支出を凍結するか、あるいはわずかな削減を受け入れることに同意した。2025年の支出は1%増額され、2026年以降には上限が適用されないと、情報筋は指摘した。

この合意では、フードスタンプの受給資格を得るために仕事を探さなければならない年齢を49歳から54歳に引き上げるという、共和党の重要な要求もある。しかし、退役軍人やホームレスなど、他の特定のグループの就労要件も緩和され、民主党側に有利になるような変更が加えられている。

情報筋によると、メディケイドは影響を受けず、バイデンが導入した学生ローン救済プログラムも影響を受けないとのことである。

この妥協案は、マッカーシー、バイデンとその代理人との緊迫した交渉の11日目に出されたものだ。この交渉は、前日に財務省から出された、政府が6月5日に全ての債務を返済するための資金が不足するという警告に後押しされたものであった。

土曜日の朝、連邦議事堂で行われた最終協議に臨んだマッカーシーは、連邦議会がその期限を守ると確信していることを表明した。

時間的な制約があり、連邦上院での投票を遅らせるという連邦上院の脅しを考えると、これは難しい注文だ。それでもマッカーシー連邦下院議長は、1月に保守派に約束した「立法文書が完成し、議員たちが内容を理解できるように72時間掲示するまで連邦下院は法案を採決しない」という約束を守るつもりだと述べた。立法文書が日曜日に完成する見込みであることから、水曜日の議場での採決に向けた準備が整ったことになる。

マッカーシーは土曜日の朝、「両者の合意という結末は、誰もが気に入らないものであるだろう。しかし、一日の終わりには、人々が投票する前に、その合意内容が何であるかを確認するべきだと思う」と述べた。

この合意は即座に通路の両側から怒鳴り声が上げられた。リベラル派は歳出削減が激しすぎると抗議し、保守派は歳出削減が十分ではないと反対した。

このような批判は当然である。それは、マッカーシーやバイデンの支持を得た超党派の妥協案は、各党のイデオロギーの過激派・原理主義派を疎外することが常に予想されたからである。マッカーシーだけでなく、ハキーム・ジェフリーズ連邦下院少数党(民主党)総務も含めて、党のリーダーたちが直面している課題は、超党派の多数派をまとめ、パッケージを連邦上院に送るため、民主、共和両党の支持を十分に集めることである。

この課題は、1月に保守派の反対を押し切って連邦下院議長に当選したマッカーシーにとって特に深刻で、債務上限交渉で一線を画すよう右派から強い圧力を受けている。債務上限交渉に対する保守派の怒りが十分に高まれば、1月の規則改正によって容易になった決定の取り消しを求める動きが出てくるかもしれない。

連邦下院共和党は先月、党派を超えた債務上限法案を下院で可決した。この法案には約4.8兆ドルの赤字削減が含まれ、グリーンエネルギー税控除、学生ローン補助金、800億ドルのIRS資金など、バイデン時代に決められたプログラムの多くを廃止するものとなった。

しかし、共和党の交渉担当者たちは、新たな支出上限を確保するために、協議の過程でこれらの条項のほとんどを削除した。そして、この合意が発表される前から、フリーダム・コーカスは、バイデンに多くを与えすぎているとして、この提案を非難していた。

保守派が指摘しているのは大きな論点である。保守派は、自分たちの法案における債務上限引き上げの上限は1.5兆ドルであるのに対し、マッカーシーがバイデンと結んだ取引はその3倍近くになると予想されている。

フリーダム・コーカスは一言、「受け入れられない」とツイートした。

ダン・ビショップ連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は批判を更に強め、この規模の債務上限引き上げは、保守派と指導部の間で「戦争」を引き起こすだろうと述べた。

ビショップは「マッカーシー議長の交渉担当者たちが、実質的にきれいな債務上限引き上げを持ち帰り、それが大統領選でバイデンを問題から守るほどの規模なら、その結果は共和党内部での戦争だ」とツイートした。

保守派の批判にもかかわらず、共和党はある重要な意味で明らかにこの議論に勝利した。共和党の指導者が歳出削減を要求する一方で、その見返りとして民主党に増税を譲歩した過去の債務上限闘争とは異なり、マッカーシー議長はプロセスの早い段階で新規歳入にレッドラインを引き、赤字削減努力を予算方程式における支出側だけに集中させ、共和党にとって大きな勝利となった。

今回の合意で増税が見送られたことで、民主党は激怒している。そして、協議の不均衡さを嘆いている。しかし、極右の懐疑論者から批判を浴びるマッカーシーにとっては、援護射撃となる可能性もある。

「この法案の中身を恐れているわけではない」とマッカーシー議長は述べた。

連邦下院多数党(共和党)院内幹部を務めるトム・エマー連邦下院議員(ミネソタ州選出、共和党)は、この協議に直接関与していない。しかし、彼は土曜日に連邦議事堂を訪れ、共和党の指導者たちが、保守的な批判者たちの懸念を払拭するために、既に連絡を取り合っていることを明らかにした。

エマー議員は合意が発表される前、「私たちは常に議員たちと連絡を取り合い、受け入れられないようなないようでも報告されて情報を与えられている。私たちから情報が提供されるまでは、報道などで読んでいる内容を信じてはいけない」と述べた

交渉が難航し、交渉担当者の表情に疲れが見える中、最終局面では明るい話題もあった。

連邦下院金融サーヴィス委員会委員長で、共和党のトップ交渉担当者の1人であるパトリック・マクヘンリー連邦下院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は、自分の子供が参加する誕生日パーティーや料理の好みについて、記者団に語った。

土曜日の朝、連邦議事堂に入りながら、記者団の問いかけに答えて、「子供たちはフレンチトーストを食べた。私は何ももらえなかったけどね」と述べた。

数時間後、マッカーシー、マクヘンリー、ギャレット・グレイブス(、ルイジアナ州選出、共和党)の3人の共和党側の交渉担当者たちは、チポトレで昼食を取るために議事堂を後にした。自動車の中には、数え切れないほどのポテトチップスの袋やクエッソ(チーズケーキ)の入れ物が載せられており、彼らは会談を見守る何十人もの記者たちのためにそれを配った。

更にその後、マッカーシーのスタッフたちは事務所からミニカヌーを運び出し、氷、ソーダ、水のボトルを詰め込んで、これも記者のために用意した。しかし、この試みにはいくつかの難点があった。

まず、議事堂内を歩き回る観光客たちに取られてしまった。そして、スタッフたちが更に補給を終え、観光客の流れが落ち着いてみると、氷が溶けて水漏れを起こしてしまった。

ある記者は「今の状態を表しているみたいだ」と述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 私はトゥルシー・ギャバード元連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)がロバート・F・ケネディ・ジュニアの副大統領候補にふさわしいと考える。このブログでも何度もトゥルシー・ギャバ―ドについて取り上げた。以下にいくつかを選んでご紹介する。是非お読みください。
robertfkennedyjrtulsigabbard001

※「20220319日 アメリカでウクライナ情勢に関して慎重な姿勢を示しているのが極右と極左ということに」

http://suinikki.blog.jp/archives/86057158.html

※「20211017日 共和党の大統領候補に民主党出身の副大統領候補?:頭を柔らかくするということ」

http://suinikki.blog.jp/archives/85594494.html

※「20191105日 トゥルシー・ギャバード連邦下院議員がヒラリー・クリントン元国務長官からの攻撃に鮮やかに反撃」

http://suinikki.blog.jp/archives/80518767.html

※「20190906日 注目するトゥルシー・ギャバードに関する記事をご紹介します」

http://suinikki.blog.jp/archives/80079707.html

 トゥルシー・ギャバードは民主党反主流派に属し、主流派に対抗してきたが、最近になって離党してしまった。連邦下院議員を辞めてからはメディアでコメンテイターとして活躍している。FOXニューズに出ているので、保守派だと思われがちだが、彼女は反エスタブリッシュメント、ポピュリズム(アメリカの民主から沸き起こる既存の政治に対する異議申し立て)を代表する人物である。FOXニューズはドナルド・トランプ前大統領をずっと応援しているが、トゥルシー・ギャバードは民主党側から出てきた「アメリカ・ファースト」、「アメリカ国内問題解決を最優先にする」「アメリカ国民の生活が第一」の人物ということになる。だから、ギャバードがFOXニューズに出ているのは可笑しくないのである。

 2024年アメリカ大統領選挙にロバート・F・ケネディ・ジュニアが出馬することは既にこのブログでも紹介した。ロバート・F・ケネディ・ジュニアもまた、民主党側からの「アメリカ・ファースト」の人物である。私はシンプルにして、明快な考えとして、「アメリカ・ファースト」同士、ケネディ・ジュニアとギャバードがタッグを組んで、民主党主流派、エスタブリッシュメント派に戦いを挑むべきだと考える。そして、ケネディ・ジュニアが民主党の大統領選挙指名候補となる時には、トゥルシー・ギャバードが副大統領候補になるのが良いと考える。

 ジョー・バイデンはなんとしても2期目当選を実現させたいので、あらゆる手段を使うだろう。合法・非合法、裏表、何でもやってくるだろう。そして、当選してしまうだろう。しかし、その結果として、アメリカという国そのものとアメリカン・デモクラシーは大きく傷つけられるだろう。そうした中で、ケネディ・ジュニアとギャバードが共闘して、それに抵抗を示すことはアメリカのポピュリズムに連なり、アメリカを救うことになると考える。

(貼り付けはじめ)

トゥルシー・ギャバ―ド:理性の声(Tulsi Gabbard: A voice of reason

ジョー・コンチャ筆

2022年10月16日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/3689785-tulsi-gabbard-a-voice-of-reason/

「私はもはや、現在の民主党にとどまることはできない。現在の民主党は、卑劣な覚醒に駆り立てられた戦争屋のエリート主義陰謀集団(elitist cabal of warmongers)の完全な支配下にあり、彼らはあらゆる問題を人種差別化し、反白人人種差別を煽ることで私たちを分断し、憲法に謳われている神から与えられた自由を損なおうと積極的に働いている」。

この発言はトゥルシー・ギャバ―ド元連邦下院議員(ハワイ州選出、民主党)が今週初めに民主党を離党した時にその理由を説明した声明の一部だ。民主党がギャバ―ドを捨てたという説明の方がより合理性が高いだろう。

一つだけ確かなことがある。それは、民主党は私たちの父親の時代の民主党ではないし、これからそれに戻ることは二だろうということだ。ジョンF・ケネディ大統領は、減税と軍備強化を掲げて、国民の支持を得た。ジミー・カーターは、生命を守り、神を畏れる人だった。そして、ビル・クリントンは、不法移民、犯罪、支出に関して保守的だった。

クリントンは、政府の規模を縮小し、福祉国家(welfare state)を終わらせ、ないものは使わないという点で、今日の民主党議員のほとんど誰も口にしないようなことを言った。偶然とは言え、クリントンはテレビ時代の民主党大統領の中で最も高い支持率で政権を去った。

しかしその後、党は左に傾き、ソーシャルメディア上で最も人気のある連邦議員たちは社会主義を受け入れている。ジョー・バイデン大統領をはじめ、ほとんどの民主党所属の議員たちは、何兆ドルも使うことがインフレを抑える最善の方法だと信じているようだ。持っていないものを使わないというのは、そういうことなのだ。

また、党内の一部の人々は、凶悪犯罪者を路上に出すことを可能にするキャッシュレス保釈法が犯罪を減らすと信じている。これは、かつてバイデンが支持した1994年の犯罪法案が取ったアプローチとは正反対だ。

また、クリントン大統領は国境警備の熱心な支持者だったが、バイデンは今年200万人以上の不法入国を許し、国境に危機があることさえ認めようとしない。

教育に関しては、ギャバードはロン・デサンティス知事(フロリダ州、共和党)の親権法(メディアは「ゲイと言うな」法案と偽っている)を支持する数少ない民主党議員の1人だった。

ギャバードの包括的なテーマは、今年初めに政権が試みた「情報統制委員会(Disinformation Governance Board)」の設置のような、権威主義的な手段を優先して基本的な自由が崩壊することを不安視しているということだ。

「独裁国家には必ずプロパガンダ部門があり、それは「真実省(Ministry of Truth)」と呼ばれる。バイデン政権は、いわゆる『情報統制委員会(Disinformation Governance Board)』を創設し、このような独裁国家の仲間入りをした」とギャバードはツイートし、この不穏な委員会の設置を、現在の民主党内でほぼ唯一批判してきた。

2020年の大統領選挙で民主党やメディアからいじめを受け、軽蔑された後、ギャバ―ドがもっと早く離党しなかったのは、率直に言って驚きでしかない。

CNNは選挙期間中、ギャバードに1時間のゴールデンタイムのタウンホール・ミーティングを行う機会を与えなかった。彼女より世論調査での支持率が低かった民主党のライヴァルたちがその機会を得たにもかかわらず、である。

ヒラリー・クリントンは、「ギャバードがロシアの手先かもしれない」と、証拠もなく示唆した。著名な民主党議員たちの中で、クリントンの無謀な暴言を非難した者はおらず、主要な新聞の編集委員会ももちろん非難しなかった。

「ヒラリー・クリントンのような強力な人物が私の評判を貶めようとし、私が愛する国に対する裏切り者だとほのめかした時、彼女がやろうとしたことは私の人生を奪うことだ」とギャバードは反論した。ヒラリー・クリントンが謝罪することはなかった。

ギャバードが離党を表明した直後、ツイッター上では「厄介払い(Good Riddence)」がトレンドになった。

もちろん、その通りだ。トゥルシー・ギャバードは現在の民主党にとって十分な貢献を行っていない。彼女は民主党にとって十分なほどに左派ではない。そして、多くの議員とは異なり、彼女はツイッター上の群衆に迎合しない。

しかし、彼女は、かつて自分がしっかりと受け入れていた党、そして彼女を受け入れるに十分な規模を持つ党に何が起こったのかを理解できるくらいに、原則を重視しながらも現実的な人物である。民主党はかつて小市民の擁護者であった。そして今、ギャバードによれば、エリートに迎合する政党となっている。

しかし、ギャバードは、最近の政治では珍しい、党派にとらわれない独立した思想を提供している。

※ジョー・コンチャ:メディア・政策コラムニスト。

(終わり)

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