古村治彦です。
現職のジョー・バイデン大統領の人気のなさが少しずつだが報道されるようになっている。更に、バイデンの数々の奇行(何の脈絡もなく「女王陛下に神のご加護を」と叫ぶなど)や、考えなしの発言(「日本の岸田首相を“説得”して防衛費増額をさせた」という内政干渉発言)に不安を持つアメリカ国民も増えている。バイデンの年齢は80歳で、アメリカ史上最高齢の大統領となり(就任時の78歳でも史上最高齢)、年齢に関する不安も大きくなっている。
バイデンは再選を目指すと表明しているが、選挙の投開票日である2024年11月上旬では81歳、更に4年の任期を務めれば86歳となる。アメリカ歴代の大統領46名の内、40代で大統領になったのは9名、50代で大統領になったのは25名だ。健康で頭脳が良く働く人生の時期、いわゆる働き盛りの世代が大統領になることが多い中で、既に仕事から引退している人が多い70代で大統領になり、80歳を迎えた人物であるバイデンを不安視する人が多いのは自然なことだ。
バイデンの不人気に加えて、副大統領であるカマラ・ハリスの不人気も目を覆うばかりだ。ハリスの仕事ぶりに関する世論調査は軒並み、不支持が支持を10ポイントも上回る状況だ。ハリスが足を引っ張ることでバイデンの再選が危ういという不安が民主党内部で高まっている。しかし、ここでバイデンがハリスを更迭して別の人物を副大統領候補にして再選を目指すということになると、バイデンの任命責任や民主党内部の人材の払底など、マイナスになる要素をアピールすることになる。
そうした中で、「ミシェル・オバマを副大統領にしたらよい」論がでてくることになる。ミシェル待望論では、「ミシェルもハリスと同じアフリカ系アメリカ人女性だし(ハリスはインド系でもあるが)、ハリスよりも頭脳明晰で仕事ができる。それにバラク・オバマ元大統領も政権に協力するだろう」ということになっている。
ミシェルは政治家に向かない。ミシェルは頭が良すぎて、人を見たらまずその人の頭脳レヴェルを判定して、及第点に達したら話をするが、及第点以下となったら冷たい対応をするというのは有名な話だ。ミシェルは、一般国民とも交流しなければならない、時には道化を演じなければならない政治家などできないのだ。日本風に言えば、頭が高い、頭を下げられない人物ということになる。それだったら、「バラクを副大統領に」ということになるが、憲法上の規定では大統領経験者、しかも二期務めた人物が副大統領になれないということはないようだが、それはそのような想定がなされたことがないからだ。民主党の人材払底と行き当たりばったりはアメリカ国民に不安を与えることになる。
バイデンの再選を民主党は最大目標にしており、そのために各州で実施される予備選挙の日程を変更したり、討論会を行わないと発表したりとなんとも卑怯なことを行っている。どうにかこうにかバイデンが勝った後はどうするのかという構想もなく、民主党はこれから厳しい時期を迎えることになる。
(貼り付けはじめ)
ミシェル・オバマは2024年の大統領選挙で民主が勝利を挙げる可能性が最もある選択肢となる(Michelle Obama would be Democrats’ best chance to win in 2024)
メリル・マシューズ筆
2023年3月14日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/opinion/campaign/3899576-michelle-obama-would-be-democrats-best-chance-to-win-in-2024/
ミシェル・オバマ前大統領夫人が2024年大統領選挙に出馬する可能性があると、最近メディアで話題になっている。その可能性は極めて低いが(彼女は常に出馬の可能性を否定してきた)、その熱狂ぶりは理解できる。ミシェルが民主党の大統領候補、あるいは副大統領候補になれば、民主党がホワイトハウスを維持する最大のチャンスとなる。
現状では、ジョー・バイデン大統領が指名獲得の可能性が高い共和党大統領候補(トランプ前大統領を除く)に対して再選を勝ち取る可能性は大きくない。
有権者の大多数は80歳のバイデンの再出馬を望んでおらず、その中には民主党有権者の過半数(57%)も含まれている。そして、有権者が大統領の健康状態や大統領としての職務遂行能力に更に懸念を抱くようになれば、この過半数はさらに拡大する可能性が高い。
更に言えば、バイデンの最近の動きに関して、彼があれほど非難していたトランプ大統領の移民政策を受け入れたり、進歩主義派の警察費廃止構想に反対しようとしたりするもので、民主党の政治的エネルギーの大半が存在する進歩主義派を疎ましく思っている。
しかし、バイデンが勝てないとしたら、誰が勝てるだろうか? ミシェル・オバマならチャンスはある。その理由は次の通りだ。
民主党は、バラク・オバマの大統領就任を、ジョン・F・ケネディの大統領時代を指す言葉としてよく使われる、現代の「キャメロット(Camelot)」のようなものだと考えている。ある歴史家は、「キャメロットという言葉は、1961年1月から1963年11月まで続いた、ケネディとその家族のカリスマ性をとらえたケネディ政権を指して、回顧的に使われてきた」と評している。
民主党は、オバマとその家族から発せられるカリスマ性を懐かしんでいるが、ジョー・バイデンからカリスマ性を連想する人はいない。
事実は、オバマは現在の民主党で最も人気があり、有能な人物である。フォックスニューズが昨年10月に指摘したように、中間選挙直前、民主党がオバマ大統領に選挙運動をするよう促していたとき、「2017年1月に大統領を退いたオバマ元大統領は、依然として民主党支持者たちの間では絶大な人気があり、無党派層には中程度の人気がある」ということだ。
もしミシェルが民主党の指名候補になれば、バラクはミシェルだけでなく政権や民主党の側近になるだろう。要するに、ミシェルを取り込むことが、民主党が考えるオバマ・マジックを取り戻す最善の方法なのだ。
加えて、ミシェルの指名は、ヒラリー・クリントンの敗北に対する一種の政治的仕返しとなるだろうが、ミシェルの方が高い人気を誇るという点ではましだ。
ヒラリーはアメリカ初の女性大統領になりたかった。彼女は失敗し、民主党、特にヒラリーはドナルド・トランプによる敗北を乗り越えられないでいる。
ヒラリーはいまだに、おそらくロシアの干渉によって選挙が何らかの形で盗まれたと信じている。
もしミシェル・オバマが2024年の大統領選挙で勝利し、特にドナルド・トランプが共和党候補だった場合、彼女がドナルド・トランプを打ち負かせば、民主党にとっては正義が復活したように見えるだろう。
最後に、ミシェルがバイデンの再選を目指して民主党の大統領候補者になることを拒否して、副大統領候補になる場合、彼女はカマラ・ハリス副大統領を脇に追いやることができるかもしれない人物である。
民主党、そして一般市民はカマラ・ハリスに不満を抱いているが、それには理由がある。彼女のスピーチは、しばしば脈絡のない言葉や考えの羅列になってしまう。そして彼女は、アメリカ南部国境危機の管理など、与えられた数少ない仕事を失敗している。
ティーム・ハリスは問題点を把握しており、民主党の指導者たちは批判を抑えようとしている。
この状況は、1992年のジョージ・H・W・ブッシュ大統領の再選キャンペーンを彷彿とさせる。副大統領はインディアナ州選出の元連邦上院議員、ダン・クエールだった。クエールはまっとうな人物だったが、公の場で発言するときにはそれなりに問題があり、メディアはそれを串刺しにした。
1992年夏、何人かの共和党指導者は、再選において厳しい状況に直面していたブッシュに、クエールを降ろし、別の副大統領を選ぶよう説得しようとした。クエールを降ろし、別の副大統領候補を選ぶよう、厳しい再選に直面していたブッシュを説得しようとしたのだ。ブッシュはこれを断り、再選に失敗した。
バイデンは大統領候補として、アフリカ系アメリカ人女性を伴走者に選ぶよう圧力をかけられ、それを実行した。ミシェルが彼の伴走者になったとしても、それは変わらないだろう。さらに、賢くて明晰な副大統領を得ることができ、その副大統領は大統領候補としてのバイデンの魅力を高め、民主党や多くの無党派層から絶大な人気を得るだろう。
おそらく実現しないだろう。しかし、ミシェル・オバマが副大統領候補としてだけでも出馬すれば、2024年に民主党が勝利する最大のチャンスとなる。
※メリル・マシューズ:テキサス州ダラスにあるポリシー・イノヴェイション研究所常勤研究員。ツイッターアカウント:@MerrillMatthews.
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