古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2023年07月

 サウジアラビアとイランはこれまで対立を深刻化させてきた。両国の対立が最高潮に達したのは、2016年のことだった。サウジアラビアがシーア派指導者を処刑して、それに対して、イラン国民がテヘランのサウジアラビア大使館を襲撃するという出来事が起きた。一連の出来事の後、両国は国交を断絶した。
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そうした状況下、サウジアラビアとイラン両国は2023年4月、7年ぶりに国交正常化を行うと発表した。両国を仲介したのは中国だ。両国は中東の地域大国として相争う関係だった。そもそもは戦後のアメリカが構築したペトロダラー体制(石油の取引はドルのみで行うという密約を基礎とした)を支える、親米の産油大国(王制)であったが、1979年のイランのイスラム革命で、イラン国内において王制が崩壊し、更にイランは反米へと転換した。サウジアラビアはイスラム革命の飛び火を懸念し、イランと激しく対立するようになった。サウジアラビアはアラブ人でイスラム教スンニ派、イランはペルシア人でイスラム教シーア派という違いもある。
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中国がサウジアラビア・イラン両国の激しい対立を収めたということは、中東にとっては地域情勢の安定に大きな貢献となる。他のアラブ諸国はサウジアラビアに追随することが多く、独自にイランと事を構える力はない。サウジアラビアの意向に従うということになれば、中東は一気に安定する。中東地域の地図を見れば分かる通り、サウジアラビアとイランはペルシア湾をはさんで対峙する位置関係になっている。ペルシア湾岸が安定することは、石油の安定供給にとって必要不可欠である。

 中国にとっては、対立する国々を仲介して国交正常化・関係改善に成功したということは、世界の舞台における中国の実力を示すことができたというのは大きい。これまでそうした役割は西側諸国、特にアメリカが世界覇権国として独占してきた感があるが、それが大きく変わることを象徴する出来事であった。中国にしてみれば、安定した石油輸入の確保が最優先だ。
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 対イランでまとまっていたアラブ諸国はイスラエルとの国交正常化や関係改善を模索していた。イランのパワーに対抗するために、イスラエルを味方にしたいという動きだった。しかし、これでは4度の中東戦争を戦ったアラブの大義は崩れることになる。パレスティナ難民の存在は無視されることになる。ベンジャミン・ネタニヤフ首相はパレスティナに対して「二国共存」とは異なる、強硬な姿勢を取っている。そうした中で、アラブ諸国がイスラエルと国交正常化・関係改善を行うことは裏切り行為ということになる。

 サウジアラビアがイランと国交正常化を決めたことで、中東地域における力関係が変化する。中東地域の二大親米国、アメリカの同盟国であるサウジアラビアとイスラエルの関係は悪化している。サウジアラビアはアラブ人、イスラム教の守護者を自認しているが、イスラエルのネタニヤフ政権によるパレスティナに対する強硬な姿勢は容認できない。また、サウジアラビアはバイデン政権とは仲が悪い。バイデン政権とイスラエルも又微妙な関係になっている。サウジアラビアが中国陣営にシフトする姿勢を鮮明にしていることを考えると、中東におけるアメリカの拠点が崩れてしまうことになる。もちろん、サウジアラビアが今すぐに完全にアメリカと切れるということはないし、サウジアラビア国内のアメリカ軍基地を撤去するということはないだろう。しかし、サウジアラビアが少しでも中国寄りの姿勢を見せることで、中東におけるアメリカの動きと影響力は制限を受けることになる。
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 サウジアラビアとイランの国交正常化によって、中東におけるアメリカの拠点は崩され、イスラエルは孤立する。そうした事態を防ぐために、アメリカはサウジアラビアとイスラエルの関係を改善したい。しかし、そうした動きはなかなかうまく行っていない。中国とイスラエルの関係については、中国がネタニヤフ首相の訪中を招請するなど、関係の深化に努めている印象だ。イスラエルが親米の同盟国を止めるということは考えにくいが、中国はイスラエルに対しても働きかけを行っている。中東における世界覇権国としての動きができているのがアメリカなのか、中国なのか分からない状況になっている。世界は動いている。

(貼り付けはじめ)

サウジアラビア・イスラエル間の和平合意はそれを進める価値などない(A Saudi-Israeli Peace Deal Isn’t Worth It

-アメリカが最新の中東政策に大きな努力を傾けたことを公開することになるだろう理由

スティーヴン・M・ウォルト筆

2023年6月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/06/27/saudi-israel-biden-blinken-peace-normalization/

『ニューヨーク・タイムズ紙』は、ジョー・バイデン政権がイスラエルとサウジアラビアの関係を正常化させるための「希望の薄い戦い(long-shot bid)」に挑んでいると報じた。両国の関係正常化のためには、イスラエルがパレスティナの住民たちを虐待し続けているというサウジアラビアの懸念を払拭し、サウジアラビアの先進的な民生用核開発計画をイスラエルに受け入れさせる必要がある。バイデンとアントニー・ブリンケン米国務長官は手一杯の状況だ。ウクライナ戦争はそれほどうまくいっていないし、中国との建設的な関係を再構築するのは困難な課題となっている。バイデンとブリンケンはイランの核開発プログラムについて、非公式の交渉を何とか実現しようとしている。しかし、アメリカの外交政策立案担当者たちに傲慢さが、失礼、野心が欠けていると非難した者は存在しない。

一見したところ、サウジアラビアとイスラエルの関係正常化を推進することは、何の問題もないように思える。 アメリカの指導者たちは長い間、イスラエルの近隣諸国がイスラエルの存在を受け入れ、恒久的な和平に達することを望んできた。カーター政権が推進した1978年のキャンプ・デイヴィッド合意とそれに続くエジプト・イスラエル和平条約、そして1994年のイスラエル・ヨルダン和平の仲介などは、そのような衝動と冷戦期において中東におけるソヴィエト連邦の影響力を削ごうという関連した目的に駆られてのことだった。残念なことに、オスロ合意の枠組みの中で「2国家共存による解決(two-state solution)」を達成しようとしたその後の努力は、アメリカが公平な調停者(evenhanded mediator)ではなく、代わりに「イスラエル側の弁護士(Israel’s lawyer)」として行動したこともあって、惨憺たる失敗に終わった。それでも、アラブ・イスラエル間の長い敵対関係を考えれば、リヤドとテルアビブの正常化が平和を強化し、地域の経済発展を促進すると考えるのは簡単だ。なぜワシントンは、最も親密な、地域パートナーである2国間の折り合いをつけようとしないのだろうか?

実際、この突然のサウジアラビアとイラン間の関係改善の推進が、現在においてはほとんど意味を持たないのには、2つの大きな理由がある。

第一に、イスラエルとアラブ諸国の間で深刻な紛争が起こる危険性は、すでにほとんどなくなっている。イスラエルが、敵対的で人口の多い大規模なアラブ連合(ソ連によって武装・訓練されたメンバーもいる)に包囲されることを心配しなければならなかった時代は、とうの昔に終わっている。多勢に無勢で弱いはずのダヴィデ(デイヴィッド)であるイスラエルが、強力なはずのゴリアテ(ゴライアス)であるアラブ連合と戦った数次にわたる戦争でことごとく勝利したことを忘れてはならない。今日、イスラエルはこの地域で最も強力な軍隊を持ち、中東で唯一の核兵器保有国である。サウジアラビアはどんなことがあってもイスラエルを攻撃するつもりはないし、ヨルダン、イラク、エジプトも同様だ。シリアは厳密にはまだ交戦国だが、ボロボロのアサド政権もイスラエルには指一本触れることはないだろう。実際、これらの国のほとんどは、ガザのハマスやもちろんイランも含め、長い間、イスラエルと協力して敵対してきた。

誤解しないで欲しい。完全な国交正常化は、特にイスラエルにとっては素晴らしいことであり、バイデン政権はおそらく、米国イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)のような団体から賞賛を得るだろう。しかし、国交正常化は地域政治を一変させるものではなく、既に存在する状況を成文化し(codify)、より可視化する(more visible)ものにすぎない。公然の秘密(open secret)としては、サウジアラビア(および他の湾岸諸国)が、たとえ公の場でそれを認めようとしなかったとしても、ずっと以前にイスラエルを黙認していた(tacitly accepted)ということだ。つまり、仮にバイデンが進めている希望の薄い試みが成功したとしても、アメリカにとっての戦略的メリットは小さいということだ。

第二に、バイデンとブリンケンは、サウジアラビアとイスラエルの関係改善を推進することで、アメリカのポートフォリオの中で、最も感謝を示さない顧客の2名に対して、乏しい政治資金を浪費するという無駄な努力をしている。イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相はアメリカ大統領を軽蔑の目で見てきた歴史があり、バイデンとの関係も冷え切っている。彼は現在、イスラエル史上最も強硬な政府(hard-line government)を率いており、ヨルダン川西岸地区の植民地化を正当化し、パレスティナ住民(米国市民を含む)に対するますます暴力的なキャンペーンを促進している。バイデン政権は、イスラエルが民主政治体制から遠ざかっていることを含めて、こうした動きを快く思っていない。一方、イスラエルはウクライナでの戦争に関しては一貫して中立を堅持しながらも、アメリカの軍事的・外交的支援を惜しみなく受け続けている。もちろん、ネタニヤフ首相とその一派はイスラエルの最善の利益のために行動しているに過ぎないが、彼らの行動はバイデン政権にとって警鐘となるはずだ。

サウジアラビアはもうアメリカが外交的に配慮をするべき相手ではない。2018年にサウジアラビアの諜報員によってジャーナリストのジャマル・カショギが殺害された事件を無視したとしても、サウジアラビアは最近、アメリカに対して厳しい態度を取る、アメリカの利益をもたらさない同盟国となっている。イエメンでの軍事作戦は、アメリカの支援が破壊的でほとんど無意味な戦争を助長したという点で、人道的災害であり、アメリカのイメージに打撃を与えた。リヤドはまた、ウクライナをめぐっても傍観者となっており、ロシアの石油を交渉して低い価格で購入する一方で、自国産の石油を割高で輸出することで、ロシアの戦争マシーンを養い続けている。加えて、サウジアラビアは昨秋、価格を維持するためにロシアと減産を調整し、バイデン政権を怒らせた。ムハンマド・ビン・サルマン王太子は中国に対して着実に接近しており、サウジアラビア政府高官は、特に経済分野において、アメリカの庇護に代わる選択肢を歓迎することを明らかにしている。

ここでも誤解して欲しくない。サウジアラビアはバイデン政権に意地悪をするためにこのようなことをしているのではない。彼らは自国の利益に従っているだけだと主張することもできる。リヤドからすれば、ウクライナの運命は重要な問題ではなく、中国に手を差し伸べ、アメリカの保護への依存を減らすことは戦略的に理にかなっている。しかし、それならば何故ワシントンはリヤドとテルアビブの取引を仲介しようとして、時間と労力と潜在的な影響力を浪費しているのだろうか?

ここで明確にしておきたい。もしこの2つの国(サウジアラビアとイスラエル)が共に現時点で関係を正常化することに意味があると考えるなら、アメリカは反対しないだろうし、反対すべきではない。しかし、アメリカが両国を説得するために労力を費やす必要があると考える理由は何だろうか?

バイデンとブリンケンは、この地域におけるアメリカの影響力低下を懸念し、中国の最近の外交成果に警戒している可能性がある。サウジアラビアを説得してイスラエルとの関係を正常化させれば、たとえその戦略的意義がささやかなものであったとしても、アメリカはまだ目に見える外交的成果を上げられることを示すことができる。サウジアラビアを説得し、核兵器開発への野心を封印させることができれば、真の成果となるだろうが、その可能性はあまり高くない。

この試みにはもう一つ大きなマイナス面がある。バイデンとブリンケンはイスラエルとサウジアラビアの関係正常化を推し進めることで、イスラエルのアパルトヘイト(人種隔離政策)にとって世界をより安全なものにする手助けをしていることになるのだ。もちろん、サウジアラビアがイスラエル一国家体制の現実に反対することはないだろうが、国交正常化はパレスティナ人を永久に服従させることは問題ないと言っているに等しい。バイデンとブリンケンは、人権に真剣に取り組むという彼らの主張を嘲笑し、ロシアのウクライナ併合や中国の少数民族ウイグルの扱いに反対することが、独立した観察者たちの目には偽善的に映るとしても、このプロセスを止めたり覆したりするために何かをするつもりはない。 もしあなたが、どうして世界の多くの国々がもはや米国を進歩の鼓舞する道標として見なしていないのかと不思議に思っているなら、その答えの一端がそこにある。

国務省の「やることリスト」にある他の全ての項目を考えると、なぜこの希望の薄い試みを行っているのか、私には全くもって理解できない。 そして、少なくともやってみる価値はあると考える人々には、取引の仲介を試みては失敗し、ワシントンが無能に見える可能性を思い出してもらいたい。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)
(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今年の5月、ジョー・バイデン大統領の国内政策担当大統領補佐官・ホワイトハウス国内政策会議議長を務めた、スーザン・ライスが退任した。ライスは外交政策の専門家として知られ、バラク・オバマ政権では国家安全保障問題担当大統領補佐官と米国連大使を務めた。2つの役職は共に閣僚級のポジションだ。オバマ政権下での国務長官就任が確実視されていたが、2011年のリビア・ベンガジ事件についてテレビ番組に出演しての発言で大きな批判を浴び、連邦上院の人事承認が必要な役職に就くことが不可能になった。
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バラク・オバマとスーザン・ライス
 ジョー・バイデン政権が発足し、ライスは国内政策担当大統領補佐官・ホワイトハウス国内政策会議議長に起用された。ライスは大学院時代から外交政策畑一筋であったため、国内政策担当に起用されたことは驚きをもって迎えられた。ライスは国内政策担当大統領補佐官・ホワイトハウス国内政策会議議長として、新型コロナウイルス感染拡大阻止、学生ローン救済問題、糖尿病患者に必要なインシュリンの上限額設定、移民問題、南部国境問題などを担当した。よりはっきりと書けば、副大統領格として政権内部を取り仕切った。政権発足から2023年2月までバイデン大統領の首席補佐官となったロン・クレインとスーザン・ライスはオバマ政権下においてエボラ出血熱対応でタッグを組んだ間柄であった。バイデン政権の国内問題はライスが対応したということになる。カマラ・ハリスにはそうした能力がないということは分かっていたから、スーザン・ライスが起用された。スーザン・ライスが退任と言うのは国内問題についての一応の対応が終わったという政権内の判断もあるだろう。

そして、後任にはニーラ・タンデンが起用された。タンデンは国内政策の専門性を持ち、ビル・クリントン政権時代からホワイトハウスで働いていた。ファースト・レイディだったヒラリーの国内政策担当補佐官を務めた経験を持つ。また、オバマ政権下では医療保険制度改革(オバマケア)で重要な役割を果たした。バイデン政権では大統領上級顧問(医療保険制度・デジタル担当)、大統領秘書官を務めてきた。
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ニーラ・タンデンとジョー・バイデン

  ニーラ・タンデンはヒラリー派のど真ん中の人物であり、カマラ・ハリスとの関係も深い。タンデンは自身が設立メンバーとなり2003年に創設されたシンクタンク「アメリカ進歩センター(Center for American ProgressCAP)」において2011年に所長となった。このCAPはヒラリー派の牙城である。タンデン自身も「クリントン・ロイヤリスト(Clinton Royalist):ヒラリー・クリントンの忠実な支持者」と『ニューヨーク・タイムズ』紙に報道されたことがある。

そして、カマラ・ハリス副大統領の妹であるマヤ・ハリスが研究員を務めていた。タンデンとハリス姉妹にはインド系という共通点もある。CPAという場所と妹を通じて、ヒラリー・クリントンとカマラ・ハリス副大統領はつながっている。そのキーパーソンがニーラ・タンデンである。

カマラ・ハリスはバイデン政権一期目のここまで、目立った仕事はさせてもらえない。南部国境問題を担当させてもらったが、うまくいかなかった。国内政策担当大統領補佐官がスーザン・ライスということで、ライスに対して批判は集まったが、ハリスはほぼ無視されている状況だ。批判さえされないというのは、「好き嫌い」を超えての「無関心」ということになる。ハリスは透明人間のような存在感だ。ライスが退任し、タンデンが国内政策担当大統領補佐官・国内政策会議議長就任で、ハリスの存在感が増すことになるだろう。より正確に言えば、ヒラリーの代理人として行動するということになるだろう。
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ヒラリー・クリントンとマヤ・ハリス
 タンデンはバイデン政権発足時にホワイトハウス行政予算管理局長に指名された。この役職は連邦上院の人事承認が必要だ。タンデンはツイッター上で共和党を攻撃していたが、それだけでなく、同じ民主党内の進歩主義派や保守派を揶揄し批判した。そのために、人事承認を得られずに、就任は否決された。「タンデンはヒラリー派の重要人物だ」ということで、人事が否決させたことも考えられる。そのタンデンがバイデン政権で重要な役職に就くことになった。
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カマラ・ハリスとヒラリー・クリントン(若い頃)

今回の人事について考えられることは、バイデン政権二期目はヒラリー色が強まるということだ。スーザン・ライスはベンガジ事件によって国務長官就任の可能性を断たれた。ベンガジ事件はヒラリー・クリントン国務長官(当時)の失策であったにもかかわらず、だ。そのため、ライスにはヒラリーのために働く気などない。ヒラリー色が強まる、ヒラリー院政と言うべきバイデン政権二期目に付き合う義理などない。アントニー・ブリンケン米国務長官、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官もバイデン政権一期目で退任するだろう(サリヴァンが国務長官に就任する可能性は残っているが)。大統領の任期8年間を全うするというのは大変なことだ。外交政策分野の重要な役職でヒラリー系の人物たちがバイデン政権二期目になって登場してくるということになると、2024年からの世界は不安定化するということになる。それまでにウクライナ戦争は停戦しておかねばならない。また、世界に不安定をもたらす要素をできるだけ減らしておく必要もある。

 宣伝になって恐縮だが、ここに出てくる人物たちは全て拙著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』で取り上げている。バイデン政権について理解するためには拙著は非常に有効であると自負している。今からでもぜひ読んでいただきたい。

(貼り付けはじめ)

スーザン・ライスがバイデン大統領の国内政策担当大統領補佐官を退任(Susan Rice to step down as Biden domestic policy adviser

アレックス・ガンギターノ筆

2023年4月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3966064-susan-rice-to-step-down-as-biden-domestic-policy-adviser/

ジョー・バイデン大統領は月曜日、スーザン・ライス国内政策担当大統領補佐官が退任すると発表した。

ライスはバイデン政権発足当初から補佐官を務め、銃乱射事件から学生ローンまで、政治色の強い国内問題を数多く担当した。バイデン大統領は声明の中でライスの功績を称揚し、「スーザン・ライスほど能力が高く、アメリカ国民のために重要な事績を成し遂げようとする決意に満ちた人物は存在しない」と述べた。

バイデンは続けて次のように述べた。「リーダーとして、また同僚としてのライスを際立たせている要素は、彼女が自分の役割に真剣に取り組み、緊急性と粘り強さをもたらすこと、行動と結果に対する彼女の方向性、そして彼女がこの仕事に取り組む誠実さ、謙虚さ、ユーモアである」。

バイデン大統領はライスの退任日がいつになるかは明言しなかったが、NBCは彼女が5月26日にホワイトハウスを去る予定であると報じた。

バイデンがこれから選挙モードに突入し、早ければ火曜日にも再選を表明すると見られている中でのライスの補佐官退任発表となった。

バイデン政権の移民問題や南部国境の危機への対応には批判が集まっている。またジェフ・ザイアントが新しい大統領首席補佐官が就任してわずか数カ月後に、ライスの退任が発表された。NBCによると、ライスとザイアントは高校時代からの知り合いだということだ。

ライスはオバマ政権時代に国家安全保障問題担当大統領補佐官と国連大使を務めた。バイデンは声明の中で、ライスの外交政策における経歴に触れ、彼がライスを国内政策最高責任者に指名した当初は人々を驚かせたと述べた。

バイデンは、ライスが国家安全保障問題担当大統領補佐官と国内政策担当大統領補佐官の両方の役職を担当できる能力を持つ唯一の人物であることを指摘した。

バイデンは、医療保険制度改革法(オバマケア)の拡大、国家精神衛生戦略への取り組み、インシュリン費用35ドルの上限設定、銃乱射事件削減への取り組み、警察改革の推進、マリファナへの新たなアプローチの設定、学生の債務救済、移民制度への取り組みなど、彼女の功績に感謝した。

バイデン大統領は「功績を挙げれば切りがないが、どれもスーザンなしでは実現不可能だっただろう」と述べた。
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スーザン・ライスがバイデン大統領の国内政策担当大統領補佐官を退任(Susan Rice to Step Down as Biden’s Domestic Policy Adviser

-ライスはバイデン政権でより政局化されている諸問題のいくつかを監督してきた。それらの問題の中には銃規制、学生ローン救済、移民が含まれる。

ゾラン・カンノ=ヤングス、アイリーン・サリヴァン筆

2023年4月24日

https://www.nytimes.com/2023/04/24/us/politics/susan-rice-biden.html#:~:text=WASHINGTON%20%E2%80%94%20Susan%20Rice%2C%20President%20Biden's,Ms.

ワシントン発。ジョー・バイデン大統領の国内政策担当大統領補佐官であったスーザン・ライスは、移民問題、銃規制、学生ローン救済など、バイデン政権下で、最も政治問題化された諸問題のいくつかに対処してきたが、来月退任するとホワイトハウスが月曜日に発表した。

バラク・オバマ大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官や国連大使を歴任したライスは、ホワイトハウスがアメリカ南部国境での不法移民の越境をめぐる圧力に直面し、バイデン政権が国境捜査官による移民追放を許可したトランプ時代の公衆衛生法第42条を解除する準備を進める中で退任する。

ライスの補佐官としての最後の勤務日は5月26日だ。

ライスの在任中、インシュリン価格の上限設定、医療保険の拡大、超党派の銃制度改革の可決など、立法面での功績が目立った。しかし、彼女はまた、移民問題や他の分裂問題に対する政権のアプローチについて批判を浴びた。

本『ニューヨーク・タイムズ』紙は先週、ライスのティームに対しては移民児童労働危機の拡大を示す証拠を繰り返し示されていたと報じ、その中には複数のスタッフが人身売買の兆候が増加していると警告した2021年のメモも含まれていたと、内部事情に詳しい関係者が暴露する内容も含まれている。

退任が発表された後にインタヴューを受けたライスは「児童労働や移民の児童労働に関するシステム上の問題について私たちは報告を受けたことはなかった。私はそのことを報告するメモを目にしたことはない」と述べた。

ライスは、当初から補佐官としての勤務は2年間にすると予定していたという。

ライスは「勤務期間もだいたい2年半くらいになる。もし2年半くらいになるなら、夏前に退任して、夏を楽しみ、家族と一緒に過ごしたり、ちょっと旅行したりする時期にしようと考えていた」と語った。

バイデン大統領は、国内政策会議をリードする役割にライスを指名したことで多くの人々を驚かせた。この会議は、国家安全保障会議に比べてより規模が小さく、名前もよく知られていなかった。2020年の大統領選挙においては、ライスはバイデンの副大統領候補として名前が挙がっていたし、これまでの経歴から国務長官と関係がある役職に就く可能性があった。

しかし、2012年にリビアのベンガジにあるアメリカ公使館がテロ攻撃を受け、4人のアメリカ人が死亡した事件への対応をめぐって共和党の攻撃の的となっていた。この論争により、彼女が連邦議会の承認を必要とする役職に就ける可能性は低くなった。

「ライスはバイデン大統領が国内政策担当に選んだことに驚いていた」とロン・クレインは述べている。クレインはバイデン大統領の前首席補佐官であり、政権移行期間中にライスに電話をかけてこのニューズを伝えた人物である。

クレインは次のように述べている。「彼女は、“あなたも知っているでしょう、私は国内政策の専門家じゃないのよ”と言っていた。私は“そのことは分かっているよ、スーザン、しかし、私はこれまで君がホワイトハウスで働いてきたことを見ていて、困難な問題にも対処して、仕事をやり遂げることができる人だと知っている”と答えた」。

月曜日、バイデン大統領はライスの業績を称えた。

バイデンは声明の中で、「国家安全保障問題担当大統領補佐官と国内政策担当大統領補佐官の両方を務めた唯一の人物として、スーザンの公的な職における業績は歴史に残るものだ」と述べた。

ライスの退任を最初に報じたのは、NBCニューズであった。

ライスは、自動保育ややホームヘルス分野の補助員への投資など、バイデン大統領の気候変動・社会支出パッケージの全てを議会で法案通過させられなかったことを後悔していると述べた。ライスは、メンタルヘルスの問題を含む様々な問題への取り組みについて誇りに思うと語った。彼女は「もし私たちがそうした問題に懸命に取り組まなければ、より厳しい問題が起きたことだろう」と述べた。

複数の政府関係者は、ライスが2022年1月に警察改革の大統領令の初期草案が流出し、警察組合の支持を危うくした後、警察組合との交渉に没頭した時のことを記憶している。彼女は、警察による殺人に関して人種間格差について言及することを譲らないことを明らかにした、と複数の当局者が語った。警察組合は結局、バイデン政権が殺傷力の行使に関する部分の文言を変更したことに満足し、支持を表明した。

ライスはバイデンを長年にわたりよく知っている。オバマ政権の国家安全保障問題担当補佐官を務めた時、彼女のオフィスは副大統領のオフィスと非常に近く、お手洗いの場所が一緒だった。ライスは、バイデンが当時彼女のオフィスを「アポなし(unannounced)」訪問することが多く、そのことを気に入っていたと述べた。

国境管理問題のバイデン政権のアプローチに関して、民主党と共和党両方が激しく批判し、ライスはその批判に耐えてきた。最近、ニュージャージー州選出のボブ・メネンデス連邦上院議員(民主党)は、政権のアプローチによって、バイデン大統領は「亡命者否定大統領(asylum denier in chief)」になったと述べ、ライスが制限的な強制措置の背後にいると非難した。

移民の権利擁護団体であるナショナル・デイ・レーヴァラー・オーガナイジング・ネットワークのパブロ・アルバラードは「ライス補佐官の在任中は、移民の権利と人権に関するホワイトハウスの悪しき決定が次から次へと下された」と述べている。

ライスは月曜日、移民問題は「純粋に強制執行だけで対処できるものではない」と述べた。

ライスは「私たちは法を執行する責務を担っている。しかし、同時に、正当な保護ニーズや難民申請をしている人々の主張を聞き、彼らのケースを法的に判断することを可能にする義務もある」と述べた。

※ゾラン・カンノ=ヤングス:バイデン政権のホワイトハウスで、国土安全保障と過激主義を含む国内問題と国際問題を幅広く担当するホワイトハウス特派員。2019年に国土安全保障担当の特派員として『ニューヨーク・タイムズ』紙に入社した。

※アイリーン・サリヴァン:国土安全保障省担当のワシントン特派員。AP通信で働いた経験を持ち、調査報道の分野でピューリッツア賞を受賞している。

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バイデン大統領は二―ラ・タンデンを新しい国内政策担当大統領補佐官に指名(Biden names Neera Tanden as new domestic policy adviser

アレックス・ガンギターノ筆

2023年5月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/3990218-biden-neera-tanden-domestic-policy-adviser/

ジョー・バイデン大統領は金曜日、退任するスーザン・ライスの後任として、ニーラ・タンデンを国内政策担当大統領補佐官に指名すると発表した。

タンデンはバイデン政権下で大統領上級顧問とホワイトハウス秘書官の2つの役職を務めてきたが、後任にステファニー・フェルドマンが就任する。フェルドマンは長年バイデンの補佐官を務めており、大統領次席補佐官兼ホワイトハウス国内政策上級顧問を務めている。

バイデンは声明の中で、「ニーラ・タンデンが引き続き、経済的流動性や人種的公平性から医療、移民、教育に至るまで、私の国内政策の立案と実施をこれから推進することを発表でき、それを嬉しく思う」と述べた。

タンデンは、ホワイトハウスの3大主要政策会議のいずれかを率いる史上初のアジア系アメリカ人となる。タンデンは、センター・フォ・アメリカン・プログレスとセンター・フォ・アメリカン・プログレス・アクション・ファンドの会長兼CEOを務めた経験を持つ。

バイデンは政権発足当初の2021年、タンデンを行政管理予算局長に指名した。彼女は、アメリカ進歩センターでの仕事に端を発した論争の中で、連邦上院民主党の中道派からの任命支持が得られず、指名を取り下げた。彼女は、ミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務(共和党)を『ハリー・ポッター』の登場人物ヴォルデモートに例えるなど、危険なツイートをしていた。

タンデンは以前、オバマ前大統領の下で医療保険制度改革担当の上級顧問を務めていた。

バイデンは声明の中で「タンデンは、医療保険制度改革法(オバマケア、Affordable Care Act)の策定に関して重要な役割を果たし、クリーン・エネルギー補助金や効果の高い銃制度改革など、私のアジェンダの一部となった主要な国内政策の推進に貢献した。ニーラは実績を積む過程で、彼女が国内政策担当大統領補佐官として監督することになる重要なプログラムのいくつかに関して知識と経験を蓄え、その洞察力が私の政権とアメリカ国民に大いに貢献すると確信している」と述べた。

タンデンは大統領選挙における選挙運動にも携わっており、国内政策担当大統領補佐官への昇格は、大統領が再選を目指して動き出した1週間後のことだ。彼女はオバマ・バイデン大統領選挙キャンペーンで国内政策担当部長、ヒラリー・クリントン大統領選挙キャンペーンで政策担当部長を務めた。

バイデン大統領は先月、ライスが国内政策担当大統領補佐官から退任すると発表した。ライスは政権発足当初から国内政策担当大統領補佐官を務め、銃規制から学生ローンまで政治問題化した諸問題に対処した。

フェルドマンはバイデンが副大統領時代にバイデンの下で働いた。オバマ政権が終了後にはデラウェア大学で働き、その後2020年の大統領選挙でバイデン陣営に参加し、そして、ホワイトハウスで働くようになった。バイデンはフェルドマンについて、「もっと長く働いてくれて、最も信頼できる補佐役の一人」と述べている。

バイデンは更に金曜日、ザイン・シディクを国内政策会議の筆頭副議長に昇格させると発表した。シディクは以前、経済流動化担当大統領次席補佐官を務めた。
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バイデンが国内政策担当大統領補佐官にニーラ・タンデンを指名(Biden names Neera Tanden as his domestic policy adviser

-タンデンはスーザン・ライスの後任となる。ライスは今月末に政権から離れる予定となっている。

アダム・キャンクリン、エリ・ストコロス筆

2023年5月5日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2023/05/05/biden-to-name-neera-tanden-as-his-domestic-policy-adviser-00095566

ジョー・バイデン大統領は金曜日、ニーラ・タンデンが次のホワイトハウス国内政策会議議長を務めると発表した。

タンデンは、長年にわたり民主党側の有能な人物として活躍してきた。今月末に政権を去る予定のスーザン・ライスの後任として補佐官に就任する。タンデンはこの1年半、ホワイトハウスの上級顧問や秘書官(staff secretary)を務めてきた。政権発足当初は行政管理予算局(Office of Management and Budget)の責任者に指名されたものの、連邦上院の反対でこの人事は流れてしまった。

バイデンは人事交替発表の声明の中で次のように述べている。「ニーラは、実力を蓄積していく過程で、彼女が国内政策担当大統領補佐官として監督することになる重要なプログラムに関わってきた。その洞察力は、私の政権とアメリカ国民に貢献してくれると確信している」。

さらにホワイトハウスは、オバマ政権時代から長年バイデンの補佐官を務めているステフ・フェルドマンがタンデンの後任として秘書官を務めると発表した。

バイデンは再選キャンペーンを準備しているが、彼の再選はインフラ整備、気候、ヘルスケアにまたがる一連の国内政策の成果を効果的に実施できるかどうかにかかっている。こうした重要な状況下で、タンデンは国内政策担当大統領補佐官に起用されることになった。ライス議長下の国内政策会議は、来週から解禁されるトランプ政権時代の厳格な国境政策である公衆衛生法第42条を置き換えるための政権の戦略を考案する際にも中心的な役割を果たしていた。

タンデンは民主党の政策サークルで豊富な経験を持ち、以前は進歩主義的なシンクタンクであるセンター・フォ・アメリカン・プログレスを運営していた。また、オバマ政権では医療保険担当の高官を務め、医療保険制度改革法(オバマケア、Affordable Care Act)の策定に貢献した。

彼女の起用は共和党側、そして、攻撃的だった彼女のツイッターアカウントの標的になっていた民主党側の各連邦議員からも不安視されそうだ。

彼女の攻撃的なツイートが原因で、共和党やジョー・マンチン上院議員(ウエストヴァージニア州、民主党)は、タンデンの行政管理予算局長指名に強固に反対したのだ。国内政策会議議長の役割は連邦上院の承認を必要としない。

タンデンにコメントを求めたが返事はなかった。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

今回は日本政治について取り上げたいと思う。現在のところ、岸田文雄首相の人気は高くない。物価高に対する対応や軍事費増強のための増税のために国民の間で不満が高まっている。
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岸田文雄とジョー・バイデン
 岸田首相は親族の男性のほとんどが東京大学出身、自身も東大の合格者数で全国トップクラスに君臨する東京の名門私立開成高校の出身であるが、東大の入試に失敗して、二浪という形で早稲田大学法学部に入学、卒業している。早大時代には東大入試に不合格となった学生たちと集まってやけ酒を飲んでいたこともあったそうだ。早大には東大入試不合格組からどうしても早稲田に行きたくてギリギリで入学した早大偏愛組まで幅広くいるが、二浪してまで東大を目指しながら失敗してしまって、嫌々ながら仕方なく早稲田に入った、岸田首相のような人に対して、早大偏愛組は冷淡である。「あんまり早稲田出身とは言って欲しくない」という複雑な感情がある。

 しかし、昨年12月、早稲田大学の大隈講堂の裏、昔の大隈重信邸の庭である大隈庭園の一部にある古民家・完之荘(かんしそう)に岸田首相、森喜朗元首相、そして、青木幹雄元自民党幹事長が集まって会談が持たれた。完之荘は卒業生であれば予約をして使うことができる。食事も可能だ。この面々であれば、都内の一流の料理屋(料亭)やホテル、更に言えば昨今話題の首相公邸で会合を持つことができる。それをわざわざ完之荘という、早大卒業生でもあまり存在を知らない場所で会合を持つというのは、象徴的な行為である。それは「早稲田部族(俺もお前も早稲田じゃないかという仲間)」としての話があったということである。
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完之荘
 今年亡くなった青木幹雄は、自分の早大、政治家時代の後輩である小渕恵三元首相の娘である小渕優子に派閥(平成研究会)を引き継がせたい(日本初の女性首相にしたい)、現在派閥領袖の茂木敏充自民党幹事長は首相にしたくない、早く派閥を引き継がせたいと願っていた。そのために、健康状態が万全ではない中で、大隈講堂の裏にある完之荘に出向いた。早大雄弁会時代の後輩である森喜朗も参加して、青木の悲願を後押しすることを約束した。森の影響力が強いうちに、小渕優子の派閥継承までは進めるということになるだろう。「雄弁会の先輩である青木さんの頼みだし、後輩の小渕君の娘さんのことだから」という何とも浪花節的な話ではある。しかし、このような義理人情で日本政治の人事は動いてきた。このプリンシプルに合わない行動しかできない人物はトップに立てない。威張るばかりで、パワハラ体質でもある茂木にはこのようなことはできない。岸田にしてみれば、一応は「早稲田族」でもある訳で、ここで浪花節的な早大雄弁会人脈に恩を売っておくというのは悪いことではない。

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 岸田首相の派閥である宏池会は保守本流として伝統を誇ってきたが、2000年の加藤の乱でガタガタにされ、分裂した。現在は谷垣グループの有隣会、麻生派の志公会、宏池会となっている。宏池会系の悲願は宏池会系の派閥の再合同だ。これによって自民党内において大きな勢力となる。岸田首相としては自身の手でこの大宏池会構想の実現を成し遂げたい。そうすることで日本政界において大きな影響力を保持できる。そこで邪魔になってくるのが、麻生太郎だ。麻生太郎は吉田茂の孫ということを前面に押し出して、宏池会の正統な後継者は自分だということで、威張り腐りながら、いまだに政界にとどまっている。麻生としては自分が大宏池会を実現して、中途半端に終わった首相在任(野党転落となった)の屈辱を雪ぎたいというところだろう。麻生太郎は野中広務に大変嫌われた。平成研究会としては相容れない人物ということになる。平成研究会としては、岸田首相の派閥である宏池会を支援するということになる。田中・大平の蜜月時代以来の協力関係ということになる。そうした中で調整役・仲介役となるのは鈴木俊一財務相となるだろう。鈴木俊一は、故鈴木善幸元首相の息子だ。鈴木善幸は東大出身・キャリア官僚出身者が多い池田派と後継の大平派(お公家様集団と呼ばれた)にあって、党人派として調整役にあたっていた。息子の俊一もまた調整役に適任の人物だ。鈴木俊一は早稲田出身であり、妹(鈴木善幸の娘)は麻生太郎と結婚しているので麻生の義理の兄ということになる。

 岸田首相は「開成高校族」でもある。岸田首相は開成高校出身者として初めての首相となった。多くの東大合格者を出し、それに比例して中央官僚のキャリア官僚、政治家たちを生み出してきたが、岸田首相が初めての開成高校出身の首相というのは驚きである。開成高校出身者のキャリア官僚と政治家で構成される同窓会組織もあり、その組織が岸田首相をバックアップしているということは良く知られている。開成出身者にしてみれば、「早稲田程度にしか行けなかった勉強のできなかった人」扱いであろうが、東大法学部を出た、中央官庁のキャリア官僚になって出世コースに乗ったと言ったところで、首相の座を掴むためには、勉強の出来や頭脳明晰さだけではどうしようもない部分が大きい。
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岸田首相を中心にして、開成出身の中央官庁のキャリア官僚たちはまとまって支えているということになるだろう。財務省としては、岸田首相がアメリカから「厳命」されている防衛費倍増をかなえながら、増税の幅を小さくしたい(大増税に賛成なのは防衛費増額を望む国会議員たちだ)ということで苦心しているようだ。増税の時期もまだはっきりとは決まっていない。腹芸で出来るだけ遅らせて、その間に世界の政治情勢、経済情勢の変化を待って対応しようという感じになっている。

岸田首相は2つの部族にうまくはまっている。政治力を持つ早稲田族と、中央官庁、霞が関で大きな影響力を持つ開成高校族だ。こうした2つの勢力をうまく使いながら、中央政界でうまくやっていく、誰とも衝突しないという戦略で生き延びていくと思われる。。

(貼り付けはじめ)

●「「ご遺族の意向を押し切って参列」 茂木幹事長が青木幹雄元官房長官のお別れ会に姿を見せた理由」

7/20() 5:56配信

デイリー新潮

https://news.yahoo.co.jp/articles/f0f8753c79027d48866a4795a4120807efb52887

https://news.yahoo.co.jp/articles/f0f8753c79027d48866a4795a4120807efb52887?page=2

 山陰地方が記録的な大雨に見舞われた今月9日。島根県出雲市で、6月に死去した参議院のドンこと青木幹雄元官房長官のお別れ会が行われた。

「政界引退後も、平成研究会(茂木派)の実質的なオーナーとして歴代政権に影響力を及ぼした。悪天候の中、式典には300人もの参列者が集まりました」

 とは、さる自民党関係者。

「青木さんのご遺族は、事前に“改めて東京でも開催します”と周知し、国会議員には声を掛けませんでした。例外的に招かれたのは、細田博之衆院議長ら中国地方選出議員のほか、小渕優子元経産相くらい。派閥会長の茂木敏充幹事長も招待は見送られていたんです」

 青木氏は平成10年に発足した小渕恵三内閣で官房長官に就任。が、小渕総理は在職中に病に倒れて優子氏がその後を継いだ。その縁で青木氏は、彼女に「実の娘のように目をかけてきた」(地元関係者)ことで知られる。もう一人の招待者である細田氏は、同じ島根県選出の盟友だ。

●“茂木敏充の名義の花なら受け取るな”

 先の自民党関係者が言う。

「青木さんは生前、茂木さんを“我(が)が強すぎる”などと蛇蝎(だかつ)のごとく嫌ってきた。二人の確執は最後まで解消されず、青木さんは“茂木敏充の名義の花なら受け取るな。受け取るなら平成研の名義にしてもらえ”と言い残したとも。供花の名義にまでこだわるのは細やかな配慮で有名だった青木さんらしいですが、“そこまで嫌っていたのか”と、改めて対立の根深さが浮き彫りになりました」

 9日の朝、それでも茂木氏は出雲市に向かった。

 政治部デスクが解説する。

「茂木にとり、この日は南米と欧州に向かう外遊の出発日。彼が強行軍にもかかわらず出向いたのは、青木の“最後の一撃”の影響を気に病んだからでしょう」

 青木氏が自身の死後も続けた“茂木切り”に、茂木氏は危機感を募らせた。

「この日、小渕は弔辞を任されていました。個人名での供花すら断られていた茂木は、弔辞を読む小渕の姿が派閥の世代交代を内外に印象付けることを恐れたはず。だから彼は、あくまで遠慮を求めたご遺族の意向を押し切って、強引に顔を見せたとみられています」

●後がない茂木氏は…

 折悪く、岸田文雄総理は今秋と目される内閣改造と党役員人事で、茂木幹事長の交代を検討しているとされる。

「最大の理由は東京都における公明党との選挙協力を巡るトラブルです。交代となれば、派閥における茂木の影響力低下は避けられませんが、一方で小渕の求心力は一気に高まりますね」

 政治ジャーナリストの青山和弘氏はこんな見方だ。

「茂木氏は65歳の岸田総理より2歳年上で、年齢的にも次の総裁選が最初で最後の挑戦になる。衆院33人、参院21人からなる派閥の結束や小渕氏の台頭を考えれば大雨の中、外遊の出発日に出雲まで出向いたという事実は今後、大きな意味を持つ可能性がある。派閥の中堅幹部は無理して行かなくても……”と鼻白んでいましたが、後がない茂木氏に行かないとの選択肢はなかったのでしょう」

 恩讐の彼方に仄見えてしまう老獪な打算――。

「週刊新潮」2023720日号 掲載

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●「岸田政権は5月までもつ? 「第1次安倍政権と似てきた」の声」

村上新太郎

2022年12月14日

『アエラ』

https://dot.asahi.com/wa/2022121300069.html?page=1

https://dot.asahi.com/wa/2022121300069.html?page=2

https://dot.asahi.com/wa/2022121300069.html?page=3

 秋の臨時国会が1210日、閉幕した。焦点だった旧統一教会問題をめぐる救済新法は成立したものの、世論の評価はいまいち。相次ぐ閣僚スキャンダルも来年に持ち越されそうな情勢だ。満身創痍の岸田文雄政権、いつまでもつのか──!?

*  *  *

「総理大臣は実に孤独なものです……ちょっとつらいときもあります」

 岸田文雄首相は1121日夜、母校・早稲田大学の大隈庭園内にある「完之荘」で森喜朗元首相や自民党の青木幹雄元参院議員会長らと会食し、こう心情を吐露してみせたという。森、青木両氏とも早大雄弁会出身の実力者。今後の政権運営などについて意見交換したと思われる。大物たちに悩みを打ち明けた岸田首相の真意は何だったのか。政府関係者はこう語る。

「岸田首相は、財務省出身で最側近の木原誠二官房副長官や、官邸官僚たちの進言をほぼ言いなりで聞いて政権運営をしてきた。それに対し、自民党サイドからは『事前に一切説明がない』と猛反発を食らい、政府・与党の連携欠落が明らかになった。問題閣僚の更迭判断の遅れや身体検査のずさんさなども影響し、官邸が機能不全に陥った」

「政高党低」と言われた時代から一転、いまや官邸は党を抑えられなくなっているという。物価高騰対策の補正予算案では、萩生田光一政調会長に押し込まれ、当初政府が想定していた25兆円規模から4兆円超の上積みを余儀なくされた。注目された2023年度から5年間の防衛費についても、財務省は当初30兆円台前半を主張していたが、増額を求める防衛族をバックにした防衛省に押し切られ、総額約43兆円の大盤振る舞いに。岸田首相は1兆円強の増税を表明せざるを得なくなった。

 閣僚の辞任ドミノも止まらない。岸田派の葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相に続き、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との深い接点が明らかになった秋葉賢也復興相も危うい状態だ。「岸田首相は非主流派の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と面会したり、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と3人で何度も会ったりするようになった。ある程度、党側に軸足を移さないといけないと思ったようだ」(自民党関係者)

■新閣僚にも醜聞 野党の鼻息荒く

 だが、肝心の支持率は低下する一方だ。共同通信社が112627日に実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率は10月末の前回調査から4.5ポイント減の33.1%で、過去最低を更新。不支持は51.6%で初めて5割を超えた。

 中でも、旧統一教会問題を巡る被害者救済新法について、マインドコントロール(洗脳)された人の寄付の取り消し規定が必要との回答が75.8%に上ったことは重要だ。新法に洗脳下の寄付規制を明記しない政府方針は、世論とズレていることになる。「この数字に官邸は焦ったが、『洗脳下』は定義付けが難しい。そこで、寄付を勧誘する際、十分に配慮する規定を修正法案に盛り込むなど、内閣提出法案としては異例の、野党案を取り入れた法案となった」(与党国対関係者)という。

 岸田政権の現状について、政治ジャーナリストの野上忠興氏は「閣僚が次々とドミノ辞任した第1次安倍政権と酷似している。こういう展開になると、内閣自体がもう長くない」と断言する一方で、こうも語る。

「岸田首相は案外しぶといから、支持率が30%あれば来年5月の広島サミットまではもつのではないか。状況的には20%台前半に落ちていてもおかしくないが、日本人はお人よしだから信任してしまう。ただ、岸田首相には危機感がない。自分の長男を首相秘書官にして、後ろがついていくはずがない。今、ほとんどの霞が関幹部の心は岸田首相から離れている」

 政権の危機はまだ続く。寺田氏の後任に据えた松本剛明総務相は就任早々、資金管理団体が会場収容人数を超えるパーティー券を販売し、政治資金規正法違反の疑いがあると「しんぶん赤旗」にスクープされてしまった。

 松本氏は旧民主党から自民党に転じた転向組で、麻生派(志公会)所属。「適材適所」(岸田首相)と言うものの、あからさまな麻生人事だ。だが、旧民主の流れをくむ立憲民主党にとって松本氏はいわば裏切り者。立民にとっては“制裁”を加える絶好の機会とあって、批判の手は緩めないだろう。立民幹部は「元々、プライドが高く、自民党内でも浮いた存在と聞く。徹底的に追及し辞任に追い込む」と鼻息は荒い。

岸田首相からすれば、松本氏や秋葉氏を更迭しようにも、これ以上、首を切ると政権がもたない恐れもある。そこで浮上していたのが年明け以降の内閣改造。人心一新し、立て直しを図るのが狙いだ。ただ、11月下旬ごろから「改造は視野に入れているが慎重に見極めようという意見が出てきた。問題大臣の交代だけで収める可能性も十分ある」(自民党幹部)という。

 自民党役員人事も合わせて行うとみられていたが、国会運営をめぐり立憲民主党の安住淳国対委員長にやられっぱなしの、高木毅国対委員長も所属する安倍派の要請で交代させない芽も出てきた。

 そもそも内閣改造しても支持率が上がるとは思えないが、来年5月の広島サミットで議長国として存在感を発揮して支持率を上げ、余勢を駆って解散に持ち込むというのが首相の基本戦略だろう。

 最大の救いは「ポスト岸田」の有力候補が不在で、野党の支持率も非常に低い点だ。支持率がジリ貧でも、どこかの段階で解散の引きがねを引き、反転攻勢に出ることを狙っているのは間違いない。

「残念なのは、かつては三角大福中(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘各氏)、安竹宮(安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一各氏)など自民党はベンチの中に予備軍がいっぱいいたのに、今はいないこと。国民の側は誰も『あの人がいいね』という発想ではなく、『あの人でいいや』という見方をする。政治の劣化ぶりもこれ極まれりだ」(野上氏)

「冗談に聞こえるかも」と前置きしたうえで、前出の政府関係者は語る。

「官邸内部ではサッカー日本代表が格上のドイツ、スペインに勝ち、メディアがサッカー一色になり政治ニュースが霞むと喜んでいた。しかし、クロアチアにPK戦で負けて、これで平時に戻ったとがっくりする職員が多いといいます」

 このままでは何も成し遂げないまま、“オウンゴール”で試合終了だ。(本誌・村上新太郎)

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 ウクライナ戦争によって、ヨーロッパの安全保障環境が安定したものではなく、常に危険と隣り合わせのものであることが明らかになった。「それは当然だ。ロシアに対峙しているので、ロシアが侵攻すれば危険になるのは当然ではないか。アジアにおいてはさらに中国があるのだから危険が高まる」という主張が出てくるだろうが、それこそが危険な主張だ。自分たちのことだけではなく、相手側に立って考えてみることも重要だ。相手側からすれば、「大きな脅威」が存在しているということになるから、取り返しがつかなくなるほどに大きくなる前にその脅威を取り除かねばならない、ということになる。
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 「相手に対して危害を加えようなどとはみじんも考えていない」といくら言葉で行っても駄目で、態度で示さねばならない。態度でどんどんと武力を増強し続けていれば、相手は「口ではあんなことを言っているが嘘だ」ということになって、武力を増強する。そういうお互いが武力を増強し続ける状況になり、「自国の安全保障を高めるために武力を増強することが相手を刺激し、相手も武力を増強する行動に出て、結局安全保障は高まらない」という「安全保障のディレンマ(security dilemma)」に陥ってしまう。このような状況を喜ぶのは一部の政治家と国防産業である。

 ロシアは確かに自国の安全保障に関して病的なほどに固執する。自国の国境の周りに緩衝地帯を置くという行動を何世紀も続けてきた。それがロシアの拡大主義ということになる。対ロシアをどのようにするかということはヨーロッパにとっては何世紀もの課題ということになる。東ヨーロッパ、中央ヨーロッパという地域に目を向けると、ここも栄枯盛衰が激しい場所である。色々な国が合従連衡を繰り返し、ある時は一緒の国になり(同君連合や連邦)、または滅亡の憂き目にあった。ドイツの拡大主義やポーランドの拡大主義ということもあった。

 現在のウクライナ戦争を見ていく中で重要なのは、東ヨーロッパ、中央ヨーロッパの安全保障環境のための枠組みである。バルト海から黒海までの東ヨーロッパ、中央ヨーロッパにおいては、ポーランド、ウクライナ、リトアニアの「ルブリン・トライアングル(Lublin Triangle)」、ポーランド、エストニア、ラトヴィア、リトアニア(バルト三国)の「リガ・フォーマット(Riga Format)」、ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリーの「ヴィシェグラード・グループ(Visegrad Group)といった枠組みが存在する。中心的な役割を果たしているのはポーランドである。ルブリン・トライアングルは中世にはポーランド、ウクライナ、リトアニアが一つの国(連邦)であったということから考えるとこの枠組みは数世紀にわたる歴史を持つということになる。
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 私が注目したいのは、「イギリス・ポーランド・ウクライナ産国協約(British–Polish–Ukrainian trilateral pact)」である。これは、イギリスが、ヨーロッパ本土にぴしりと打ち込んだ碁盤上の石で、ドイツとロシアをけん制する効果を持つ。ポーランドの動きを見ていると、その後ろにはヨーロッパ本土をコントロールしようとするイギリスがいる。
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 ロシアにとって脅威となる環境にある中で、ロシアが暴発しないのは、カリーニングラードを保持しているからだ。カリーニングラードはルブリン・トライアングルに突き刺さった杭となっている。ロシアはカリーニングラードを保持していることで、ポーランドとバルト三国をけん制できる。ベラルーシとカリーニングラードの間に、ポーランドとリトアニアの国境線が約72キロにわたって走っており、これをスヴァウキ・ギャップ(Suwałki Gap)と呼ぶ。
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ベラルーシとカリーニングラードをつなぐ道路がポーランドとリトアニアの国境線となっているという、国際関係論的に非常に複雑で微妙な場所ということになる。ロシアはベラルーシとの間の補給路となるこのスヴァウキ・ギャップを確保したい。一方で、ポーランドやリトアニアはこのスヴァウキ・ギャップを遮断してカリーニングラードへの補給路を断つことができる。しかし、そのような状況になれば、ポーランドとリトアニアはロシアと全面対決となる。カリーニングラードをめぐっての激しい攻防戦ということになるし、ロシア本国からの長距離ミサイル攻撃ということにもなる。バルト海をめぐる状況が一気に不安定化するので、バルト海に面している国々はそのような状況を歓迎しない。西側がロシアから先に手を出させるということは考えられるが、今のところはあまり現実的ではないだろう。

 ウクライナ戦争終結と終結後の戦後のヨーロッパにおいてポーランド(とその後ろにいる)の動きは重要になると考える。ポーランドが現状を変更する、ロシアに対してより強硬な姿勢を取り続けるということになれば、ヨーロッパを不安定化させることになる。アジア地域はヨーロッパを反面教師にして、「不安定」なアジアを作り出さないようにしなければならない。

(貼り付けはじめ)

ポーランドとウクライナはプーティンの帝国主義的な夢をいかに挫くことができるか(How Poland and Ukraine Could Undermine Putin’s Imperial Dreams

-歴史上、両国はロシアの帝国主義への抵抗の中で国家のアイデンティティを形成した。そして、今日、両国は協力してロシアを打倒できる。

マチェイ・オルチャワ

2023年2月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/21/poland-ukraine-russia-putin-imperial-dreams/

ロシアがウクライナで続けている戦争は、何百万人もの人々に想像を絶する苦しみを与え、ヨーロッパの安全保障構造を大きく変化させた。戦闘の終結はほとんど見通すことができない状態であり、ウクライナの武装勢力は欧米諸国からの武器供与を受けて攻勢に転じる構えを見せている。この紛争には明るい兆しもある。それは、ワルシャワとキエフが強力な同盟関係となった。

「自由なウクライナなくして自由なポーランドはない」という宣言は、ポーランド建国の父ヨゼフ・ピルシュツキに由来し、この文言はよく引用される。当時、赤軍は世界革命を起こそうとしていたが、ポーランド軍とウクライナ軍によって阻止され、追い返された。

当時も今も、このスローガンは、主権国家ウクライナが存在しないヨーロッパという概念がもはや考えられないことを証明している。キエフとワルシャワにとって、一方の繁栄は他方の成功と安定に支えられている。両国の国歌(national anthems)の冒頭の歌詞はほぼ同じである。「ポーランド(ウクライナ)はまだ敗北していない(Poland/Ukraine is not yet lost)」という歌詞は、分割、占領、敵の侵略を経験しても生き延びようとする民族特有の頑強さを表現している。どちらの国歌もロシア帝国主義(Russian imperialism)に反抗して作られた。

両国に関する友好的なエピソードが残っているにもかかわらず、20世紀のポーランド人とウクライナ人の関係は、反感(animosity)と民族浄化(ethnic cleansings)に特徴づけられた。ソ連とナチス・ドイツの占領は国境地帯を血の土地に変え、相互の不満と固定観念が傷跡を残した。1945年以降、ポーランドの共産主義政権は、「ウクライナ問題を完全に解決する」という目的を達成するために、ウクライナ人を国内避難させた。民族主義的傾向が疑われた民間人は、1943年から44年にかけてヴォルヒニアと東ガリチアで数千人のポーランド人を虐殺した「獣のような」ウクライナ人反乱軍の同調者とみなされた。

集団的責任が適用されたのは1947年で、14万人以上のウクライナ人が南東部の国境地帯から北と西の戦後領土(ポーランドの一部となった旧ドイツ領)に追いやられた。この軍事作戦(コードネーム「ヴィスワ」)の目的は、共産主義ポーランドにおけるウクライナ人のアイデンティティと文化を破壊することだった。

映画や文学におけるポーランド政府のプロパガンダは、ウクライナ人が血に飢えたファシストであるという有害なイメージを植え付けた。1991年にポーランドがカナダとともにウクライナの独立を承認した最初の国であったにもかかわらず、世論調査ではウクライナ人に対する否定的な見方が1990年代を通じて続いていた。この困難な歴史が、今日のポーランド人のウクライナとの連帯をより顕著なものにしている。

ポーランドは、手段とノウハウさえ与えられれば、ウクライナが西側の安全保障の消費者から、ヨーロッパ・大西洋共同体にとって重要な安全保障の提供者に早変わりできることを知っている。こうした志を同じくする反帝国主義者たち(like-minded anti-imperialists)は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の失地回復・大国復活的な(revanchist)策動を一挙に覆す脅威を与えるだけでなく、ヨーロッパの政治的・軍事的重心の東方シフトを加速させている。西側諸国は、プーティン帝国崩壊後の不測の事態に備えるべきだ。そのひとつが、ポーランド・ウクライナ戦略同盟に支えられた戦後ヨーロッパということになる。

かつてソ連勢力圏に属しながら、ロシアの拡張主義に反対した経緯を持ち、プーティンが「今世紀最大の地政学的大惨事(greatest geopolitical catastrophe of the century)」と嘆いたソ連崩壊に貢献した東欧諸国間の親密な関係ほど、プーティンを苛立たせるものはない。最近のリトアニア、ポーランド、ウクライナの大統領による共同宣言のような戦略的措置は、キエフの防衛力を継続的に強化し、NATOEUでの支援を更に推進する用意があることを再確認するもので、プーティンを狂気へと駆り立てている。

プーティンの目には、ウクライナ、リトアニア、ラトヴィア、エストニア、ベラルーシは、モスクワの勢力圏(sphere of influence)内にある小国、いわゆる「旧従属国(near abroad)」のグレーゾーンを構成しており、超大国間の世界的な争いの中で、勢力争いの可能性が残されている。プーティンは、これらの国々のヨーロッパ・大西洋機構への加盟とその熱望を、克服すべき危険な障害とみなしている。これらの国々をロシアの支配下に置かくことなしに、モスクワの影響力を再構築し拡大する道はないと考えている。

これらの国々がロシアからのサイバー攻撃、虚偽情報キャンペーン、政治的干渉、武力侵略の標的となっているのは驚くに値しない。プーティンの野心に対抗するため、これらの国々は各種の多国間枠組みを立ち上げている。その中には、リトアニア、ポーランド、ウクライナの間で政治、経済、インフラ、安全保障、防衛、文化的なつながりを強化することを目的とした三国間プラットフォーム「ルブリン・トライアングル(Lublin Triangle)」や、バルト三国とポーランドの間の「リガ・フォーマット(Riga Format」などがある。ハンガリーの親ロシア的な態度や、フランスとドイツのウクライナ支援が当初は揺らいでいたことを考えると、これらの多国間フォーラムは、ヴィシェグラード・グループ(Visegrad Group)など、以前の東欧ブロックの影響力や重要性を凌駕している。

ポーランドは、より多くのウクライナ人から、友人としてだけでなく、重要な同盟国として見られている。

ワルシャワとキエフの戦略的関係は現実的に発展している。一時は政治的な遅れをとったとしてパートナー諸国から批判されたポーランドだが、プーティンの新帝国主義的なレトリックが、ウクライナとワルシャワが堅固に結ばれているヨーロッパ・大西洋同盟にもたらす脅威をきちんと認識していた。ポーランドはヨーロッパを代表する安全保障推進の存在であり、同盟諸国の防衛と脅威の抑止という公約を果たすために軍備を近代化し、反乱主義失地回復・大国復活志向のプーティンに対抗する重要な同盟国として地位を高めている。

戦争からの避難を求めるウクライナ人に対して、ポーランド人は連帯感を示している。これは当然のことだ。2022年2月24日以来、900万人以上のウクライナ人がポーランドに入国し、150万人から200万人がポーランドに留まり、その他の人々は帰国した。数百万人が安全を求めてポーランドに逃れてきたが、難民キャンプは必要なかった。難民危機の際によく使われる間に合わせのテントや国連の臨時キャンプ地の代わりに、ポーランド人はウクライナ人の隣人たちに家を開放した。過去には難民支援に関してヨーロッパのパートナー諸国から異端児扱いされていたポーランドだが、現在ではヨーロッパ大陸で疑いようのない人道主義の巨人となり、ウクライナとの友愛関係と重なる道徳的義務感を示している。

130万人以上のウクライナ人がポーランドの社会保障番号に相当するものを取得し、合法的な雇用を見つけることができるようになった。彼らは公的医療、幼稚園、学校、直接的な財政援助を受けることができる。ポーランド経済研究所によると、2022年1月から9月までの間に、ウクライナ資本の企業3600社とウクライナ人の個人事業主10200社がポーランドで設立され、調査対象となった企業の66%が、ウクライナ情勢にかかわらずポーランドで事業を継続すると宣言した。

更に言えば、戦争終了後にウクライナに戻った人々は、ポーランド人による歓待を覚えている可能性が高い。ロシアの絶滅戦争(war of extermination)だけでなく、ポーランドでの肯定的な経験からも影響を受けるだろう。労働力として働いていたため、多くの大人はポーランド語でコミュニケーションをとることができ、子どもたちはポーランドの教育システムで数カ月から数年を過ごした後、流暢に話すことができるようになるだろう。既に、ポーランド語の習得に関心を持つウクライナ人の数は増加しており(36%)、今後も増加し続けるだろう。

社会的な絆の深まりは、今後の両国の政治関係に影響を与えるだろう。ミエロシェフスキ・センターがウクライナで実施した世論調査の結果によると、回答者の40%がポーランドとウクライナは単に良き隣人であるべきだと考えているのに対し、ウクライナ人の58%はそれ以上に緊密な関係を築くべきだと考えている。29%は、外交政策で協調しながらお互いを支援する同盟関係を構築することを望み、さらに29%は、純粋に象徴的な国境と共通の外交政策を持つ連邦(commonwealth)の形をとるべきだと考えている。

プーティンの戦争マシーンは、かつてナチス・ドイツやソ連がポーランド人とウクライナ人を分断させるために行ったような、敵意を利用した作戦を成功させることはできなかった。ポーランドが過去に帰属していたウクライナ西部の領土を取り戻すという秘密計画について、戦争中に流布されたロシアのプロパガンダは説得力がない。むしろ逆効果だ。

もちろん、ポーランド人とウクライナ人は過去の悲劇的な出来事、特に20世紀における悲劇的な出来事に対して互いに不満を持っている。犠牲者の記憶について言えば、1943年から44年にかけてヴォルヒニアと東ガリチアでポーランド人が殺害された事件や、1947年にウクライナ人が強制移住させられた事件のような出来事は、水に流されるのではなく、むしろ研究され、記憶されるべきである。良い兆候は、両国を分断するのではなく、むしろ結びつけるもの、すなわちロシアの新帝国主義という存亡の危機重点が置かれつつあることだ。

ポーランドとウクライナの両国大統領が、20世紀初頭に両国が争ったリヴィウの軍事墓地で並んで献花した姿は、戦略的な結びつきを追求する上で歴史が邪魔にならないことを示す象徴的なイメージとなった。過去の傷跡や記憶とともに生きていない若い世代が一緒に過ごす時間が多ければ多いほど、歴史的な出来事をめぐる和解(reconciliation)の可能性は高まる。

国際舞台でウクライナの領土保全を明確に擁護するポーランドは、より多くのウクライナ人に友人としてだけでなく、重要な同盟国として見られている。87%のウクライナ人が、ジョー・バイデン米大統領(79%)を含む他のどの西側指導者よりも、ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領を信頼している。ポーランド人はまた、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領を好意的に見ている。ある世論調査では、ポーランド人が最も信頼する外国人指導者のトップはゼレンスキー(86%)で、バイデンは2位(74%)だった。

昨年11月のポーランドの独立記念日を記念して、ゼレンスキーはメッセージを録音した。「ウクライナ人はポーランド国民から受けた支援を常に忘れていない。あなた方は私たちの同盟国であり、あなた方の国は私たちの姉妹だ。私たちの間には意見の相違があったが、私たち親族であり、自由な国民なのだ」。同じ日、ウクライナのオレナ・ゼレンスカ大統領夫人は、ウクライナ人女性とその子供たちが家を出てポーランドに避難し、ポーランド人ヴォランティアの腕の中で慰めを受ける様子を描いたイラストを投稿した。夫が戦死したと聞き、イラスの中の女性は言う。「もう二度と夫に会えないと分かった時、あなたは私と一緒に泣いてくれる。もう会えないんだと思うと、あなたは一緒に泣いてくれる。私はウクライナ。あなたはポーランド。そして私たちの心臓は常に共に鼓動している」。 歴史上、ポーランド人とウクライナ人がこれほど親密だった時期を見出すのは難しい。

プーティンの侵略行為と罪のない市民に対する残虐行為は、ウクライナ人をロシア人から永久に遠ざけ、彼らを許すことはおろか、モスクワとの戦後の関係を追求する考えからも遠ざけている。前線の兵士たちやブチャのような町の犠牲者たちは、国民全体が、そして世界が自分たちのものと呼ぶ新しい世代の英雄や殉教者を生み出している。彼らの犠牲は、ウクライナ人の強い反帝国主義的感情を中心とした国民意識とアイデンティティを自動的に再確認させる。将来、キエフがポーランドや西側に近づいていくのは自然な流れだ。

このプロセスは、どちらの国にとっても、二国間関係の明暗を分ける瞬間として扱われるべきではなく、プーティンのような権威主義的な暴力志向者が間違っていることを証明したいという純粋な願望として扱われるべきである。

アレクサンダー・モティルはその画期的な著作『帝国の終焉』の中で、帝国が終焉を迎えるのは、中心部が周辺部を支配できなくなった時ではなく、周辺部が互いに大きく影響し合うようになった時だと指摘している。このプロセスは、ポーランドとウクライナの間で進行中である。ポーランドはヨーロッパ・大西洋共同体にしっかりと根を下ろし、ウクライナはそうした正式な機構への加盟を目指している。

カナダ、イギリス、アメリカといった利害関係者の支援を受けながら、ワルシャワ・キエフの結びつきを軸とする強力なパートナーシップが構築されれば、政治、経済、防衛の課題を再優先するという骨の折れるプロセスを経ているヨーロッパを支えることができる。もし西側諸国が、プーティンの敗北を早める可能性のあるこの戦略的パートナーシップを支持できなければ、ヨーロッパは敵対的なロシアや将来の不安定性に対して脆弱なままになってしまう危険な可能性がある。

※パヴェル・マルキェヴィッチ:20世紀の中央・東ヨーロッパを専門とする歴史家。ポーランド国際問題研究所ワシントンオフィス事務局長。著作に『あり得ない同盟:第二次世界大戦中のウクライナ総督府におけるナチス・ドイツとウクライナのナショナリストの協同関係(Unlikely Allies: Nazi German and Ukrainian Nationalist Collaboration in the General Government during World War II)』がある。ツイッターアカウント:@DrPMarkiewicz

※マチェイ・オルチャワ:ロヨラ大学シカゴのコジオスコ財団スカラー。ポーランド・東ヨーロッパ史で教鞭を執る。ウクライナの複数の著作があり、代表作は『ミッション・ウクライナと帝国のゲーム:アメリカの地政学的戦略におけるウクライナ(Mission Ukraine and Imperial Games: Ukraine in the United States’ Geopolitical Strategy)』がある。ツイッターアカウント:@MaciejOlchawa

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ポーランドは如何にしてウクライナを西側に向けさせたか(How Poland Turned Ukraine to the West

-キエフにとって、ロシアの傘から離脱するにあたり、ワルシャワはどのような国になることができるかという点でモデルとなる。

ルカ・イワン・ユキッチ筆

2022年2月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/02/18/ukraine-poland-russia-history-west-nato-euromaidan-crimea/

多くの人々はウクライナを東ヨーロッパの国と考えている。ウクライナのドミトロ・クレバ外相はそのような人たちの仲間ではない。クレバ外相は、「私は、ウクライナは歴史的にも、政治的にも、文化的にも、常に中央ヨーロッパの国家であると深く確信している。私たちのアイデンティティは中央ヨーロッパに属している」と述べている。

これは地理的な事実ではなく、歴史的、文化的な観点からの発言である。ウクライナの未来は、過去と同様、ロシアではなく、北大西洋条約機構(NATO)とヨーロッパ連合(European UnionEU)にしっかりと根を下ろしている中央ヨーロッパ諸国と共有している。そうした中央ヨーロッパ諸国にはスロヴァキア、ハンガリー、リトアニア、そして特にポーランドが含まれている。

過去20年間、ポーランドはウクライナの文化的、政治的発展にロシア以外のどの国よりも大きな影響を与えてきた。EUNATOの中でウクライナを最も強力に支援し、何百万人ものウクライナ人を受け入れている。ウクライナ人の多くがポーランドに住み、学び、働いている。ポーランドは、ウクライナが真の中央ヨーロッパの国になるための代替モデル(alternative model)を提供してきた。ポーランドは、ヨーロッパ的で、愛国的で、公然と反ロシア姿勢を示し、経済的に成功し、その全てが米国の安全保障の傘の下にある。

2014年にロシアがウクライナに侵攻し、クリミア半島を併合して以来、キエフはポーランドをモデルにした国家として着実に自国を築き上げてきた。これはロシアが自ら仕掛けたプロセスであり、ロシア軍が再びウクライナの国境に集結し、戦争が間近に迫っている現在、これを覆すことは不可能である。

ほとんどの西側諸国は、反ロシアの立場からウクライナを強く支持しているが、ポーランドとウクライナを結びつける個人的な絆、相互の歴史、そして近接性を主張できる国はない。

ポーランドとウクライナは、1795年に地図上から消滅したポーランド・リトアニア連邦で数世紀を共に過ごした。19世紀のロマンチックなナショナリズムの時代、ポーランド人とウクライナ人は東ヨーロッパの広大な領土をめぐって、お互いに競合する主張を展開したが、常に共通していたのはロシアの支配に対する敵意だった。

次のようなポーランドの古い格言がある。「自由なウクライナなくして自由なポーランドはあり得ず、自由なポーランドなくして自由なウクライナはあり得ない(There can be no free Poland without a free Ukraine, nor a free Ukraine without a free Poland)」。意識的であろうとなかろうと、この原則は今世紀に入ってからのポーランドの対ウクライナ政策を動かしてきた。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、ウクライナ人とロシア人は「ひとつの民族」であると主張し、ポーランド人を含む西側諸国の人々はウクライナを搾取することしか考えていないと主張している。

「歴史は、ロシアとウクライナの戦争が始まった当初から戦場となっている」とウクライナの歴史家セルヒイ・プロキーは指摘する。一方では、ウクライナは単に、より大きなロシア全体の中にある「小さなロシア(little Russian)」だと考える者もいる。一方、ウクライナは西側諸国の一部であるべきで、ポーランドやリトアニアのような中央ヨーロッパの国であるべきだと主張する者もいる。ロシア帝国主義の手による抑圧という歴史的運命を共有し、近代ヨーロッパでの復活を望んでいるからだ。どちらの歴史観もウクライナ国内外に支持者がいるが、2つの考えは両立しない。

ポーランドはウクライナに、その歴史的な戦争の進め方のモデルを提供した。ポーランドで共産主義が崩壊した後、ソ連は第二次世界大戦後のポーランド国民を解放したのではなく、占領し抑圧した存在として再認識された。それにも理由がある。1940年、カティンの森で、当時のソ連の指導者ヨシフ・スターリンは、ナチス・ドイツによってポーランドが二分された後、2万2000人のポーランド人将校と知識人の大量処刑を密かに命じた。冷戦の間、ドイツ人を非難してきたソ連政府が、自らの責任を認めたのは1990年のことだった。

1998年、ポーランド政府は、物議を醸している歴史戦争部門である国民追悼研究所(Institute of National Remembrance)のポーランド国民に対する犯罪訴追委員会(Commission for the Prosecution of Crimes Against the Polish NationIPN)を設立した。その目的は、カティンの森事件のようなポーランドにおける共産主義政権とナチス政権の犯罪を捜査することだ。そこには、両者を同等の悪とみなすことが含まれており、ポーランドやバルト三国では当たり前のことだが、ロシアやその緊密な同盟国の間では支持されない。こうした国々では、ソヴィエト連邦は依然としてナチスの侵略からヨーロッパを解放した積極的な勢力と見なされている。

2006年、ウクライナはIPNをモデルにした独自の国家追悼研究所(Institute of National Remembrance UINR)を設立した。親ロシア派のウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコヴィッチ政権下の2010年から2014年まで、UINRの活動は一時停止していた。UINRは、1917年から1991年にかけてソ連当局が犯した犯罪を調査するという、IPNと同様の任務を与えられていた。残虐行為のなかでも、1932年から1933年にかけてスターリンのもとで何百万人ものウクライナ人が人為的な飢饉で餓死したことは、現在ではウクライナも大量虐殺(genocide、ジェノサイド)と認めている。

設立の翌年、UINRはウクライナで物議を醸した一連の非教権化法(decommunization laws)の起草に重要な役割を果たした。この法律では、ソ連時代の第二次世界大戦記念碑が撤去され、地名が変更され、共産主義的シンボルが全て禁止された。この法律は、研究所と同様、ポーランドやバルト三国で可決されたものをモデルとしている。そこでは、ソ連によるナチス支配からの東ヨーロッパ解放は、新たな占領として扱われていた。近年、新たな大祖国戦争崇拝とスターリン礼賛(a renewed cult of the Great Patriotic War and valorization of Stalin)が再燃しているロシアとは対照的である。

ウクライナは共産主義の遺産だけでなく、元共産主義者そのものを追及するようになっている。2014年、ポーランドとバルト三国が1990年代に同様の法律を独自に可決したのに続き、ウクライナでも元共産主義当局者を対象とした物議を醸す一連の浄化法(lustration laws)が可決された。 「浄化(Lustration)」は、共産主義の文化的遺産だけでなく、その制度的遺産も根こそぎ絶やしてしまおうとする試みであり、ウクライナ国内の親ロシア派とソヴィエト懐古主義者を主要なターゲットにしているものである。

ポーランドとウクライナの両国共にソ連の傘下にあった時代(前者は衛星国[satellite state]として、後者はソ連の一部として)、ポーランドとウクライナの間に取り立てて言及すべき関係はなかった。しかし、1989年にポーランドで共産主義が崩壊し、1991年にソ連が崩壊すると、両国関係は一夜にして大きく変わった。

当時のポーランドの最優先目標は「ヨーロッパ・大西洋統合(Euro-Atlantic integration)」であり、ウクライナが今日直面しているような状況を避けるために、できるだけ早くNATOEUに加盟することだった。ポーランドは、NATO加盟の招待がなければ、独自の核開発を行うとさえ脅迫し、ポーランドの初代大統領レフ・ワレサは、当時のロシア大統領ボリス・エリツィンに、NATOへの加盟は「ロシアも含まれるいかなる国家の利益にも反しない」と主張し、ポーランドのNATO加盟に同意するよう圧力をかけた。ポーランドは早期のうちに、具体的には1999年に NATO に加盟し、2004 年には EU に加盟した。

ヨーロッパ・大西洋統合という目標が達成されたことで、ポーランドは今や自由に東方への新たな大戦略を追求することができるようになった。ポーランドの大戦略とは、西側世界の境界線が自国の東部辺境に位置しないようにするというものだ(ensuring the West’s border did not lie on its own eastern frontier)。

2008年、ポーランドはスウェーデンとともに、EUが欧州近隣諸国と東方パートナーシップ(Eastern partnership)を追求することを提案し、ウクライナ、モルドヴァ、ベラルーシ(後に一時停止)、アゼルバイジャン、グルジア(ジョージア)、アルメニアの加盟への道筋を明示した。EUの主要諸国は、このパートナーシップをEUの新たな勢力圏を切り開こうとする試みだと非難したクレムリンを刺激するのをためらい、この構想には曖昧な態度を示した。

一方、ウクライナは苦境に立たされていた。ソ連崩壊の影響は、ワルシャワの体制転換(regime change)よりもはるかに深刻だった。1990年代、ウクライナの経済は年々縮小した。それでも2005年になってようやく1989年の水準を上回った。政治的、文化的アイデンティティの問題も独立当時から国民を分断し始めていた。ポーランドがEU加盟を祝う一方で、2004年、ウクライナは不正選挙をめぐる一連の抗議行動に突入し、オレンジ革命(Orange Revolution)として知られる事態に発展した。

大激戦となった大統領選の決選投票では、ヤヌコビッチが親欧米派候補のヴィクトル・ユシチェンコを僅差で降した。しかし、ユシチェンコと彼の支持者たちはこの結果に異議を唱え、ウクライナの最高裁判所が投票を無効とし再選挙を要求したことで、ユシュチェンコ側の正当性が証明され、ユシチェンコが勝利した。

ロシアは激怒し、ヤヌコビッチを正当な勝者と認定した。ポーランドはユシュチェンコ側の勝利という結果を支持した。ワレサをはじめとするポーランド政府高官たちは一致してユシチェンコを支持した。当時のポーランド大統領アレクサンデル・クワシニエフスキは、政府と反体制派の円卓会談開催を推し進めた。そしてクワシニエフスキ大統領は他の多くの欧州首脳とともに会議に出席した。

オレンジ革命から10年後、ヤヌコビッチ(最終的に2010年に当選)がEUとの連合協定への署名を拒否したため、より重大な抗議運動が発生し、いわゆるユーロマイダン革命(Euromaidan revolution)に発展した。ロシアはクリミア半島を併合し、まもなくウクライナ東部のドンバス地方で戦争を始めた。ロシアはユーロマイダン革命をワルシャワが画策したクーデターと呼んだ。

ポーランドは、ロシアを除くと、ウクライナの文化的、政治的発展に、どの国よりも大きな影響を与えた。

それ以来、何百万人ものウクライナ人がポーランドでより良い生活、少なくともより良い賃金を求めてやって来た。かつてはヨーロッパで最も単一民族的な国の一つであったポーランドにとって、この変化は誇張しがたいものであり、今やウクライナ人はポーランド社会のいたるところに存在する。ウクライナはまた、ヨーロッパで最も送金に依存する国となっている。送金額は2020年時点でウクライナのGDPの9.8%を占めており、ウクライナの経済にとって外国で働く人々は重要な役割を果たしている。

ポーランドは経済分野以外でも、ウクライナを地域における重要なパートナーだと考えている。ポーランドのある地域は何世紀にもわたりロシアが支配してきた。一方、ウクライナはポーランドを、モスクワの支配から逃れるために必要な西側諸制度への加盟を確かなものとするために重要なパートナーと考えている。

2019年にウクライナの現大統領であるヴォロディミール・ゼレンスキーが政権に就いた時、前任のペトロ・ポロシェンコ大統領の下で、ポーランドとの間で歴史をめぐる対立が関係を緊張させていたが、それを「リセット」することを求めた。象徴的なことに、ゼレンスキーは第二次世界大戦開戦80周年をワルシャワで過ごし、ポーランド・ウクライナ関係の雪解けどころか躍進を宣言した。

2020年、ポーランド、リトアニア、ウクライナの各国首脳はポーランドのルブリンで会談し、「ルブリン・トライアングル(Lublin Triangle)」と呼ばれる新たな同盟の共同宣言を発表した。親クレムリン派のプロパガンダは、この結成をロシアとの「アングロサクソンの代理戦争(Anglo-Saxon proxy war)」の一部と位置づけた。今年、ポーランドとウクライナは、ウクライナの主権を守ることを目的とした三か国同盟(trilateral alliance)を、今度はイギリスと結んだ。

2021年末に行われたルブリン・トライアングル3カ国の大統領による会議では、同盟の目的が実際に行われ、ゼレンスキーは共通課題を「ロシアの脅威を阻止し、攻撃的なロシアの政策からヨーロッパを守ること」とまとめた。ポーランド、リトアニア、ウクライナは「この抵抗の先陣を切っている」とゼレンスキーは述べた。ポーランドのアンドレイ・ドゥダ大統領は、EUNATOの加盟国であるポーランドとリトアニアは、「ヨーロッパの一部の安全を確保する」ためのこの提案を推進しなければならないと強調した。

ウクライナ自身の汚職と法の支配の問題、そして東部での活発な戦争を考慮すると、同国が近い将来にEUにもNATOにも加盟することは不可能である。ロシアは、モスクワとワシントンの相互合意によって、ウクライナのNATO加盟を完全に排除することを要求している。しかし問題の一つは、ウクライナはNATOに加盟していないにもかかわらず、EUNATO加盟諸国(ポーランドやリトアニアなど)がウクライナの安全保障を自国の安全保障の問題として扱っていることだ。

ウクライナが今日ロシアの侵略に苦しんでいるのを見て、ポーランド人は自分たちが過去ロシアの侵略の犠牲者であった事実を考え、同情を寄せている。ヨーロッパ外交問題評議会が最近行った世論調査によると、ポーランド人は、自国がロシアの新たな侵略からウクライナを守るべきだという考えにおいて、欧州主要諸国の中で圧倒的に強固であり、他のEU主要国では半数以下であるのに対し、65%がそうすべきだと答えている。同じ世論調査によれば、ポーランド人の80%が、ロシアの侵攻があった場合にはNATOEUの両方がウクライナの防衛にあたるべきだと考えている。

ポーランドとウクライナが隣接する主権国家同士として姿を現したのは1991年のことだった。共通の政治的利害を発見するまでにさらに10年、そして2014年の出来事によって2つの社会が不可逆的に融合するまでにさらに10年かかった。

しかし、その運命は、ポーランドとウクライナがロシアの侵略を共有した経験によって、多くの意味で運命づけられていた。プーティンは、ウクライナを恒久的に自国の影響下の下に置くという賭けに出たが、その代わりにウクライナ人を西に向かわせた。どちらの国にも引き返す兆しは見えない。

・訂正(2022年2月19日):この記事の前のヴァージョンはカティンの森がどの国にあるかについて誤って言及していた。

※ルカ・イワン・ユキッチ:フリーランスのジャーナリストで中央・東ヨーロッパに水滴字を書いている。ツイッターアカウント:@lijukic

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2022年2月24日にウクライナ戦争が始まり、2度目の夏を迎える。西側諸国はウクライナに支援を続け、今年の春にはウクライナが春季大攻勢(Spring Offensive)を開始したが、大きな成果は上がっていない。これは当たり前の話で、ウクライナ側があれだけさんざん「近々大攻勢をやるぞ」とウクライナ国内外で宣伝して回れば、ロシア側は準備ができる。防備を固めた要塞や基地を攻め落とすには、攻める側は数倍の戦力が必要であるが、ウクライナにはそれだけの戦力もない。

最近になって西側諸国がウクライナに対して、より強力な武器を支援する動きを見せているが、ウクライナ軍が戦力を落としているので、それを再強化するための「カンフル剤」ということになる。出血しながらカンフル剤で何とか心臓を動かしてウクライナを戦わせていているというのが西側の実態だ。西側諸国は一兵も出さずに、兵器を出しているから助けているでしょというふざけた態度に終始している。本当にウクライナを助けるというのならば、自国の若者たちをウクライナに送るべきだ。そうすれば戦争終結に対してより本気になるだろう。しかし、そのようなことをすれば、ロシアがどのような報復をするか分からないということで、西側は腰が引けている。

「西側(the West)」に対抗する「それ以外の国々(the Rest)」が、ロシアにとっての大後方(great back)となっている。ロシアの石油や天然資源を非西側諸国が購入している。ここで重要なのは、BRICsによる新共通通貨である。「ブリックス・ペイ」という「デジタル共通通貨」となるか、「ブリック」という通貨になるかは分からないが、「米ドル基軸通貨体制」に対する大きな脅威となる。ブリックス5カ国(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)にインドネシア、トルコ、メキシコを加えた「新G8」が貿易決済でブリックス共通通貨を利用するとなれば、ブリックス共通通貨が有効な決済通貨となり、国際通貨となる。米ドル決済体制によってアメリカは世界の石油と食料の貿易を支配する態勢が崩壊する。

 西側諸国、特にアメリカとイギリスは対ロシアで、ウクライナはEUにもNATOにも正式加盟していないのにロシアを刺激し、挑発するかのような行動を繰り返してきた。ウクライナの武力を増強し続け、ロシアに脅威を与えてきた。そのような「火遊び」の結果が今回のウクライナ戦争である。そして、ロシアが戦争に打って出ざるを得ない状況にしておいて(真珠湾攻撃直前の日本のように)、ロシアを戦争に引きずり込んで、一気にロシア経済を破綻させてロシアをつぶしてやろうというシナリオになっていた。しかし、ロシアはそのような危機的状況から脱した。っそして、ウクライナ戦争で負けない戦術に転換している。西側の短期間でのロシアの屈服というシナリオが崩れた時点で、西側の負けだ。戦争は多くの誤算の積み重ねだ。戦っている当事者たちはあらゆるレヴェルで多くの誤算を積み重ねていく。しかし、重要なのは戦略的な判断ミスを戦術レヴェルで挽回するということは困難だということだ(私はこの言葉を『銀河英雄伝説』で覚えた)。政治家の判断ミス、誤算を軍人がいくら奮闘しても挽回することはできないということだ。西側諸国の政治家の大きなミスは最後まで響くことになる。

(貼り付けはじめ)

プーティンが正しく行ったもの(What Putin Got Right

スティーヴン・M・ウォルト筆
2023年2月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/15/putin-right-ukraine-war/

ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は、ウクライナ侵攻を決定した際に多くのことを誤った。彼はロシア軍の軍事力を過大評価した。ウクライナのナショナリズムの力と、脆弱なウクライナ軍がウクライナを防衛する能力を過小評価した。西側諸国の結束、NATOやその他の諸国がウクライナ支援を決定執行するスピード、エネルギー輸入諸国がロシアに制裁を科し、ロシアからのエネルギー輸出と自国を切り離す意思と能力を見誤ったようだ。プーティンはまた、中国の支援意欲を過大評価していたかもしれない。北京はロシアの石油とガスを大量に購入しているが、モスクワに対して明確な外交的な支援や貴重な軍事援助を提供してはいない。こうした誤りと失敗を全て合わせると、プーティンが表舞台から去った後も長く残るであろう、ロシアにとってマイナスな結果をもたらす決断となってしまったということになる。戦争がどのような結果になろうとも、ロシアはプーティンが別の道を選んだ場合よりも弱体化し、影響力を失うだろう。

しかし、もし私たちが自分自身に対して正直であるならば、そして戦時下においては冷酷なまでに正直であることが必要不可欠であるならば、ロシアの大統領も正しいことをしたと認めるべきである。そのどれもが、開戦の決断やロシアの戦争遂行方法を正当化するものではない。これらの要素を無視することは、彼と同じ過ちを犯すことになる。つまり、相手を過小評価し、状況の重要な要素を読み違えることである。

彼は何を正しく実行したのか?

ジョー・バイデン政権は、「前例のない制裁(unprecedented sanctions)」の脅威がプーティンの侵攻を抑止することを期待し、そしてこの制裁を科すことでプーティンの戦争マシーンの首を絞め、民衆の不満を引き起こし、プーティンを方向転換させることを期待した。プーティンは、われわれがどんな制裁を科そうとも、ロシアはやり過ごすことができると確信して戦争に踏み切った。ロシアの原材料(エネルギーを含む)にはまだ十分な需要があり、GDPはわずかな減少で済んでいる。長期的にはもっと深刻な結果を招くかもしれないが、制裁だけではしばらくの間は紛争の帰趨は決まらないと考えたプーティンの判断は正しかった。

第二に、プーティンは、ロシア国民が高いコストを許容し、軍事的挫折が自身の失脚につながることはないと正しく判断した。プーティンは、戦争が短時間で低いコストに終わることを望んで始めたのかもしれないが、最初の挫折(setbacks)の後でも戦争を続け、最終的には予備兵力を動員して戦い続けるという決断を下したのは、ロシア国民の大半が自分の決断に賛同し、出てきた反対派を抑え込むことができるという彼の信念を反映したものだった。しかし、ロシアは甚大な損失にもかかわらず、またプーティンの権力維持を危うくすることなく、大規模な部隊を維持することができた。もちろん、それが変わる可能性もあるが、これまでのところ、この問題に関してもプーティンが正しいことが証明されている。

第三に、プーティンは、他国が自国の利益に従うこと、そして自分の行動が万国から非難されることはないことを理解していた。ヨーロッパ、アメリカ、その他いくつかの国は鋭く強く反応したが、グローバル・サウス(global south)の主要メンバーや他のいくつかの主要な国(サウジアラビアやイスラエルなど)はそうではなかった。戦争はロシアの世界的なイメージの向上にはつながっていないが(国連総会での戦争非難の票が偏っていたことが示している)、より具体的な反対は世界の一部の国に限られている。

とりわけ重要なのは、ウクライナの運命が西側諸国よりもロシアにとって重要であることをプーティンが理解していたことだ。読者の皆さんに心に留めていただきたいことは、ロシアにとってウクライナの命運は、自国を守るために多大な犠牲を払っているウクライナ人にとっての命運よりも決して重要ではないということだ。しかし、プーティンは、ウクライナの主要な支持者たちよりも、コストとリスクの負担を嫌がらない点で優位に立っている。プーティンが有利なのは、西側の指導者たちが弱虫だからでも、臆病だからでも、屁理屈をこねているからでもない。

このような利害と動機に関わる、根本的な非対称性が、アメリカ、ドイツ、そしてNATOの他の多くの国々が対応を慎重に調整した理由であり、ジョー・バイデン米大統領が最初からアメリカ軍の派遣を否定した理由である。プーティンは、ウクライナの運命には数十万人の軍隊を送り込んで戦わせ、死に至らしめる価値があると考えるかもしれないが、アメリカ国民は息子や娘たちをウクライナに反対させるために送り込むことに同じような気持ちは持っていないし、持つはずもないということを正しく理解していた。ウクライナ人が自国を守るのを助けるために何十億ドルもの援助を送る価値はあるかもしれないが、その目的は、アメリカがアメリカ軍を危険な目に遭わせる、もしくは核戦争の重大なリスクを冒すほど重要なものではない。このような動機の非対称性を踏まえ、私たちはアメリカ軍が直接関与することなくロシアを阻止しようとしている。このアプローチがうまくいくかどうかはまだ明確ではない。

この状況は、ウクライナ人、そして西側で最も声高な支持者たちが、自国の運命を多くの無関係な問題と結びつけるために莫大な労力を費やしている理由にもなっている。彼らに言わせれば、ロシアがクリミアやドンバスのどこかを支配することは、「ルールに基づく国際秩序(rules-based international order)」にとって致命的な打撃であり、中国が台湾を掌握することへの誘いとなり、どこの国の独裁者にとっても恩恵となり、民主政治体制の破滅的な失敗であり、核兵器による恐喝は簡単で、プーティンはそれを使って英仏海峡まで軍隊を進軍させることができるというサインだということになる。西側諸国の強硬派は、ウクライナの運命がロシアにとって重要であるのと同様に私たちにとっても重要であるかのように見せるために、このような議論を展開するが、そのような脅しの戦術は、おおざっぱな調査にすら耐えられない。21世紀のこれからの行方は、キエフとモスクワのどちらが現在争っている領土を支配することになるのかによって決まるのではなく、むしろ、どの国が重要な技術を支配するのか、気候変動や他の多くの場所での政治的展開によって決まる。

この非対称性を認識することは、核兵器による威嚇(nuclear threats)が限定的な効果しか持たない理由や、核兵器による恐喝(nuclear blackmail)に対する恐怖が見当違いである理由も説明できる。トーマス・シェリングが何年も前に書いたように、核兵器による応酬(nuclear exchange)は非常に恐ろしいものであるため、核兵器の影の下での交渉は「リスク・テイクの競争(competition in risk taking)」となる。誰も核兵器を1発たりとも使いたくはないが、特定の問題をより重視する側は、特に重要な利害がかかっている場合には、より大きなリスクを冒すことを避けることはないだろう。このような理由から、ロシアが壊滅的な敗北を喫しそうになった場合、核兵器を使用する可能性を完全に否定することはできない。繰り返すが、西側の指導者たちは意志薄弱であったり、臆病であったりするのではなく、賢明で慎重に振舞っているのだ。

これは、私たちが「核兵器による恐喝nuclear blackmail)」に屈していることを意味するのだろうか? プーティンはこのような脅しを使って、別の場所で更なる譲歩を勝ち取ることができるのだろうか? 答えは「ノー」である。なぜなら、プーティンが先に進めば進むほど、動機の非対称性がわれわれに有利に働くからである。ロシアが自国の重要な利害に関わる問題で他国に譲歩を強要しようとしても、その要求は耳に入らないだろう。プーティンがバイデンに電話して、「もしアメリカがアラスカをロシアに返還することを拒否したら、核攻撃を仕掛けるかもしれない」と言ったとしよう。バイデンは笑って、酔いから醒めたらかけ直すように言うだろう。ライヴァルの強圧的な核兵器による威嚇は、決意の均衡(balance of resolve)が私たちに有利な場合には、ほとんど、あるいはまったく通用しない。長い冷戦(long Cold War)の期間中、米ソ両国は、自由に使える膨大な核兵器があったにもかかわらず、非核保有国に対してさえ、核兵器による恐喝を成功させたことはなかったことを思い出すことには価値がある。

しかしながら、この状況が変化する可能性がある方法が1つあり、それは安心できる考えではない。アメリカとNATOがウクライナに提供する援助、武器、諜報、外交支援が増えれば増えるほど、その評判が結果に結びつくようになる。これが、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領とウクライナ人がますます洗練された形態の支援を要求し続ける理由の1つである。西側諸国を自分たちの運命にできるだけ密接に結びつけることが彼らの利益になる。ちなみに、私はこのことで彼らを少しも責めない。私が彼らの立場だったらそうするだろう。

風評被害は誇張されがちだが、重大な物質的利益が危機にさらされていなくても、そうした懸念が戦争を継続させることがある。1969年、ヘンリー・キッシンジャーは、ヴェトナムがアメリカにとって戦略的価値が低く、勝利への道筋が見えないことを理解していた。しかし彼は、「50万人のアメリカ人のコミットメント(関与)によって、ヴェトナムの重要性は決着した。今必要なのは、アメリカの約束に対する信頼なのだ」と述べた。その信念に基づき、彼とリチャード・ニクソン大統領は、「名誉ある平和(peace with honor)」を求めて、さらに4年間もアメリカの参戦を続けた。ウクライナにエイブラムス戦車やF-16を送るのも同じ教訓からとなるだろう。武器が増えれば増えるほど、私たちはより献身的になる。残念なことに、両陣営が自らの死活的利益には相手に決定的な敗北を与えることが必要だと考え始めると、戦争を終わらせることは難しくなり、エスカレートする可能性が高くなる。

繰り返すと次のようになる。プーティンが戦争を始めたのは正しかったとか、NATOがウクライナを助けるのは間違っているとか、そういうことを示唆するものではない。しかし、プーティンは全てにおいて間違った訳ではない。プーティンが正しかったことを認識することが、ウクライナとその支持者が今後数カ月をどのように過ごすかを決めるはずだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 ヘンリー・キッシンジャーは今年初めから、「ウクライナのNATO加盟を容認」という主張を行っている。キッシンジャーをはじめ、リアリスト系の人々はウクライナのNATO加盟に長く反対してきたので、キッシンジャーの容認姿勢は驚きをもって迎えられた。しかし、キッシンジャーの主張をよくよく吟味してみると、リアリストの原理原則から導き出された内容であることが良く分かる。
henrykissinger101

 キッシンジャーがウクライナのNATO加盟に反対していたのは、ウクライナがNATOに加盟すると、NATOの後ろ盾を受けて、ロシアと事を構える、ロシアと戦争を起こす危険があった、ロシア側からすれば、脅威が一気に増大する、ロシア側もウクライナを自陣営に「取り戻す」ために事を構えるという事態が考えられたからだ。
easterneuropemap

 実際には、ウクライナをNATO(特にアメリカ)が手厚く支援し、急激に武力を増強した。結果として、ロシア側は危機感を強め、ウクライナに対して侵攻するということになった。ウクライナはNATO加盟を悲願として、10年以上にわたり、加盟申請を行いながら、NATOはウクライナの加盟を認めてこなかった。しかし、ウクライナに対する支援を強め、「正式にメンバーにしている訳ではありませんよ」という建前を主張しながら、対ロシア姿勢を強硬なものとし、実質的にウクライナをメンバーとして扱っていた。

 戦争が起きてしまった以上、前提は変わった。そのため、キッシンジャーは、一転して、ウクライナのNATO加盟を容認することになった。その理由は、「軍事力を高めたウクライナを単独で行動させないために、枠にはめる、タガをはめるためにウクライナをNATOの中に入れる」ということだ。ウクライナは現在、西側諸国(the West)の手厚い支援を受けて、ロシア軍と交戦中だ。今回の戦争の前、ウクライナ軍は脆弱で、ロシア軍はすぐにキエフを奪えると見られていた。しかし、ウクライナ軍は西側の武器と最新テクノロジーによる情報奪取に成功し、ロシア軍を退かせた。ロシア軍はウクライナ東部を奪取し、現在、それら地域を守っている。ウクライナ軍は大攻勢をかけていると報道されているが、大きな戦果は挙げていない。しかし、シリア内線にも参加し、精強なロシア軍に対して、西側の支援はありながらも1年以上、戦争を継続できているウクライナ軍は周辺国の軍隊よりも確実に強化されている。ウクライナは精強な軍隊を持つ大国ということになる。そのような「変な自信」を持つと、何をしでかすか分からない。そのために、ウクライナにタガをはめるということが必要なのだ。

 また、東ヨーロッパ、中央ヨーロッパに軍事力を持つ大国が出てくることは、地域のこれまでの均衡(equilibrium)、バランス(balance)を崩すことになる。ここで問題になるのは、ポーランドである。ポーランドは歴史上、2度亡国の憂き目にあっているが、保湿的に拡大志向、大国志向国家であり、ポーランドの蠢動はヨーロッパを不安定化させる。ポーランドはリトアニアと共和国を形成していた時代にウクライナの大部分を支配していた時代もある。ウクライナ西部にはユニエイトと呼ばれるローマ法王を崇めるカトリック系の宗教グループがあり。ポーランドのとの親和性が高く、ポーランドがウクライナ西部を併合するという話もあった。ポーランドがウクライナと組んで、ロシアに対して攻撃を仕掛けるという可能性もある。このような状況から、ウクライナをNATOに入れて、ポーランドと共に、しっかり監視して軽挙妄動をさせないということが重要だ。そして、ヨーロッパにおけるパワーバランス、力の均衡を構築し、紛争を未然に防ぐというリアリズムの原理に基づいた戦後処理が必要ということになる。キッシンジャーの慧眼には恐れ入るばかりだ。

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再びの世界大戦を避ける方法(How to avoid another world war

ヘンリー・キッシンジャー筆

2022年12月17日

『スペクテイター』誌

https://www.spectator.co.uk/article/the-push-for-peace/

第一次世界大戦は、ヨーロッパの名声を失墜させた一種の文化的自殺(cultural suicide)であった。ヨーロッパの指導者たちは、歴史家クリストファー・クラークの言葉を借りれば、夢遊病(sleepwalk)のように、1918年の終戦時の世界を予見していたならば、誰も参戦しなかったであろう紛争に突入した。それまでの数十年間、ヨーロッパ諸国は2つの同盟を形成して対立し、その戦略はそれぞれの動員スケジュールによって結びついていた。その結果、1914年、ボスニアのサラエヴォでオーストリア皇太子がセルビア人の民族主義者によって殺害された事件は、ドイツがヨーロッパの反対側にある中立国ベルギーを攻撃してフランスを敗北させるという全目的に適う計画(all-purpose plan)を実行したことから始まった戦争へとエスカレートしていった。

ヨーロッパの国々は、テクノロジーがそれぞれの軍事力をいかに強化したかを十分に理解していなかったため、互いに前例のない壊滅的な打撃を与え合った。1916年8月、2年間の戦争と数百万人の死傷者を出した後、西側の主要戦闘参加国(イギリス、フランス、ドイツ)は、殺戮を終わらせるための展望を探り始めた。東側では、ライヴァルのオーストリアとロシアが同等の働きかけを行っていた(feelers)。既に被った犠牲を正当化できるような妥協案はなく、また誰も弱気な印象を与えたくなかったため、各指導者は正式な和平プロセスを開始することを躊躇した。そこで彼らはアメリカの仲介(mediation)を求めた。ウッドロウ・ウィルソン大統領の個人的な使者であったエドワード・ハウス大佐の尽力によって、修正された現状維持に基づく和平(a peace based on the modified status quo ante)が手の届くところにあることが明らかになった。しかし、ウィルソンは調停に乗り出し、最終的には熱望したものの、11月の大統領選挙が終わるまで延期した。その頃には、イギリスのソンム攻勢とドイツのヴェルダン攻勢によって、更に200万人の死傷者が出ていた。

フィリップ・ゼリコウによるこのテーマに関する本の言葉を借りれば、あまり踏み固められていない道(the road less travelled)となったのである。第一次世界大戦は更に2年続き、何百万人もの犠牲者を出し、ヨーロッパの既存均衡(Europe’s established equilibrium)は取り返しのつかないほど損なわれた。ドイツとロシアは革命によって引き裂かれ、オーストリア・ハンガリー帝国は地図上から姿を消した。フランスは白骨化(bled white)した。イギリスは勝利のために、若い世代と経済力のかなりの部分を犠牲にした。戦争を終結させた懲罰的なヴェルサイユ条約は、それが取って代わった構造よりもはるかに脆いものであることが証明された。

冬が大規模な軍事作戦の一時停止を迫る中で、世界は今日、ウクライナにおける転換点を迎えているのだろうか? 私は、ウクライナにおけるロシアの侵略を阻止するための同盟諸国の軍事的努力に対する支持を繰り返し表明してきた。しかし、既に達成された戦略的変化を土台とし、交渉による和平の実現に向けた新たな構造へと統合する時が近づいている。

ウクライナは、近代史上初めて中央ヨーロッパにおける主要国(major state)となった。同盟諸国に助けられ、ヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に鼓舞されたウクライナは、第二次世界大戦以来ヨーロッパを覆ってきたロシアの通常戦力(conventional forces)を阻止した。中国を含む国際システムは、ロシアの脅威や核兵器使用に対峙している。

このプロセスは、ウクライナのナNATO加盟に関する当初の問題を根底から覆した。ウクライナは、アメリカとその同盟諸国によって装備された、ヨーロッパで最大かつ最も効果的な陸軍の一つを保持している。和平プロセスは、ウクライナとNATOをつなげるべきである。特にフィンランドとスウェーデンがNATOに加盟した後では、中立(neutrality)という選択肢はもはや意味がない。だからこそ私は2022年5月、2022年2月24日に戦争が始まった国境線に沿って停戦ライン(ceasefire line)を設定することを提案した。ロシアはそこから征服を放棄するが、クリミアを含む10年近く前に占領した領土は放棄しない。その領土は停戦後の交渉の対象となりうる。

戦前のウクライナとロシアの分断線(dividing line)が、戦闘によっても交渉によっても達成できない場合は、自決の原則(principle of self-determination)に頼ることも考えられる。自決に関する国際的な監督下にある住民投票(referendums)は、何世紀にもわたって何度も政権が交代してきた特に分裂の多い地域に適用される可能性がある。

和平プロセスの目的は2つある。ウクライナの自由を確認することと、新しい国際構造、特に中央・東ヨーロッパの構造を定義することである。最終的にロシアは、そのような秩序の中に居場所を見つけることになる。

戦争によって無力になったロシアが望ましいと考える人もいる。私はそうは思わない。ロシアはその暴力的な傾向の割には、半世紀以上にわたって世界の均衡(global equilibrium)とパワーバランス(balance of power)に決定的な貢献をしてきた。その歴史的役割を低下させてはならない。ロシアの軍事的後退は、ウクライナでのエスカレーションを脅かすことができる世界的な核兵器の存在を消去するものではない。たとえ核兵器能力が低下したとしても、ロシアが解体したり、戦略的な政策能力が失われたりすれば、11の時間帯にまたがる領土が争いの絶えない空白地帯と化す可能性がある。競合する社会が暴力によって紛争を解決することになるかもしれない。他国が武力で領有権を拡大しようとするかもしれない。これら全ての危険は、ロシアを世界2大核保有国の地位に押し上げている、数千発の核兵器の存在によって、更に深刻化するだろう。

世界の指導者たちは、2つの核保有国が通常兵器で武装した国と争う戦争を終わらせるために努力する一方で、この紛争や長期的な戦略に影響を与えつつあるハイテクや人工知能の影響についても考えるべきである。自動自律兵器(auto-nomous weapons)は既に存在し、脅威を定義し、評価し、標的とすることができる。

この領域への一線を越え、ハイテクが標準的な兵器となり、コンピュータが戦略の主要な実行者となれば、世界はまだ確立された概念(established concept)のない状態に陥るだろう。コンピュータが、人間の意見を本質的に制限し、脅かすような規模や方法で戦略的指示を出す時、指導者はどのように統制することができるだろうか? このような相反する情報、認識、破壊的能力の渦の中で、文明はどのようにして維持可能となるだろうか?

この緊迫しつつある世界についての理論はまだ存在せず、この問題に関する協議の取り組みはまだ発展していない。おそらく、有意義な交渉によって新たな発見が明らかになる可能性があるが、その開示自体が将来のリスクとなるためだろう。先進技術とそれを制御するための戦略の概念との間の乖離を克服すること、あるいはその影響を完全に理解することは、気候変動と同じくらい今日重要な問題であり、テクノロジーと歴史の両方を把握できる指導者が必要である。

平和と秩序の追求は、時に矛盾するように扱われる2つの要素を持つ。安全保障の要素の追求と和解(reconciliation)行為の要求である。その両方を達成できなければ、どちらにも到達することはできない。外交の道は複雑で苛立たしく見えるかもしれない。しかし、その道を進むには、ヴィジョンと勇気の両方が必要なのである。

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キッシンジャー:ウクライナに単独で勝手な行動をさせないためにウクライナをNATOに加盟させる(Kissinger: Bring Ukraine into NATO to stop them from acting alone

デイヴィッド・P・ゴールドマン筆
2023年5月25日

『アジア・タイムズ』紙

https://asiatimes.com/2023/05/kissinger-bring-ukraine-into-nato-to-stop-them-from-acting-alone/

西洋のメディアの報道は、キッシンジャーがウクライナのNATO加盟を支持したことを見逃している。以下は、彼が『エコノミスト』誌に語った内容である。

ヘンリー・キッシンジャー:ウラジーミル・プーティンにとって、ウクライナのNATO加盟は強迫観念(obsession)だった。だから今、私は人々が「彼は考えを変えた、今はウクライナのNATOへの完全加盟に賛成している」という奇妙な立場にいる。一つは、ロシアはもはやかつてのような、通常の脅威となる存在ではない。だから、ロシアの挑戦は別の文脈で考えるべきだ。そして二つ目には、ウクライナがヨーロッパで最も武装した国であり、加えてヨーロッパで最も戦略的経験の乏しい指導者が率いている状態で、私たちはウクライナを武装してしまったということだ。おそらくそうなるであろうが、戦争が終結し、ロシアが多くの利益を失いながらもセヴァストポリは保持することということになっても、ロシアに不満が出るかもしれない。しかし同時にウクライナにも不満が出るかもしれない。

つまり、ヨーロッパの安全のためには、ウクライナをNATOに参加させ、領土問題について国家的な決定を下せないようにした方がよいということになる。

『エコノミスト』誌:つまり、ウクライナをNATOに加盟させるというあなたの主張は、ウクライナの防衛に関する主張というよりも、ウクライナがヨーロッパにもたらすリスクを減らすための主張ということか?

ヘンリー・キッシンジャー:私たちはウクライナを防衛する能力を証明した。ヨーロッパ諸国が今言っていることは、私から見れば、非常に危険なことだ。なぜなら、ヨーロッパ諸国はこう言っているからだ。「私たちは彼らをNATOに入れることを望まない。何故なら彼らの加盟はリスクが高すぎるからだ。従って、私たちは彼らを武装させ、最新鋭の武器を与えるようにする」。このようなやり方を機能させるにはどうしたらよいだろうか? 間違った方法で戦争を終わらせるべきではない。その結果があり得るものだと仮定すれば、それは2022年2月24日以前に存在した現状維持の線上のどこかということになるだろう。ウクライナがヨーロッパに保護され続け、自国のことだけを考える孤独な(単独行動を行う)国家にならないような結果であるべきだ。

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キッシンジャーがウクライナのNATO加盟を支持(Kissinger Backs Ukraine's NATO Bid

ブレット・フォーレスト筆

『ウォールストリート・ジャーナル』紙

2023年1月20日

https://www.wsj.com/livecoverage/davos2023/card/kissinger-backs-ukraine-s-nato-bid-TEbEBq5ulGr0dBS9sPTZ

ヘンリー・キッシンジャー元国務長官は、ウクライナの北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganizationNATO)加盟を主張した。

キッシンジャーはスイスのダヴォスで開催中の世界経済フォーラム(World Economic ForumWEF)の会議にリモートで出演し次のように述べた。「この戦争が起こる前、私はウクライナのNATO加盟に反対していた。なぜなら、ウクライナのNATO加盟によって、まさに今私たちが目にしているようなプロセスが始まることを恐れていたからだ。現状のような状況下で中立のウクライナ(neutral Ukraine)という考えはもはや意味がない。私は、ウクライナのNATO加盟が適切な結果(appropriate outcome)になると信じている」。

ウクライナは2022年9月にNATO加盟申請を行った。

キッシンジャーの発言は、先月『スペクテイター』誌に寄稿した記事の中で、侵攻前の接触線に沿ってロシア・ウクライナ戦争の停戦を確立するよう主張した内容と重なる。

キッシンジャーは火曜日、戦争を終結させる計画について、このような戦闘の停止は「軍事行動の合理的な結果であり、後の和平交渉の結果とは限らない」と述べた。

ロシアもウクライナも交渉開始について特に熱意を示していない。モスクワは、ウクライナがロシアの領土獲得を承認することを交渉の前提条件としているが、キエフは、意味のある交渉を始める前に、ロシア軍がクリミア半島と他の全てのウクライナの土地を放棄することを要求している。

キッシンジャーは、短期的な交渉が「戦争がロシアそのものに対する戦争にならないようにするだろう」と述べた。ロシアが大量の核兵器を保有していることを踏まえ、ロシア国内の不安定を引き起こすようなことがないように警告を発した。「交渉はモスクワに“国際システムに復帰する機会”を与えるだろう」とも述べた。

99歳のキッシンジャーは、1970年代に米国務長官としてソ連との冷戦の緊張緩和(Cold War détente)の確立に尽力した。

キッシンジャーは次のように述べた。「私は、戦争が続いている間もロシアと対話し、戦前の路線に達すれば戦闘は終結すると信じている。戦前の線で停戦することは、開戦時に存在した問題を超えて新たに深刻な問題を提起し、軍事衝突の継続の対象とすることで、戦争がエスカレートするのを防ぐ方法だと信じている」。

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ヘンリー・キッシンジャー、ウクライナのNATO加盟反対を撤回(Henry Kissinger Reverses Opposition to Ukraine’s NATO-Membership Bid

ジミー・クイン筆

2023年1月18日

『ナショナル・レヴュー』誌

https://www.nationalreview.com/corner/henry-kissinger-reverses-opposition-to-ukraines-nato-membership-bid/

今週スイスで開催された世界経済フォーラムの聴衆を前にして、ヘンリー・キッシンジャーは、ウクライナのNATO加盟はロシア侵攻の「適切な結果(appropriate outcome)」になる可能性があると述べた。

リモートでパネルディスカッションに出席した99歳のキッシンジャーは、ロシアは内部崩壊(internal collapse)による危機を回避するために、紛争後に国際社会への復帰を認められなければならないと説明した。CNBCによると、キッシンジャーは「独自の政策を追求できる国家としてのロシアを破壊することは、その領土に1万5000発以上の核兵器が存在する今、11の時間帯からなる広大な地域を内部紛争や外部からの介入の機会を開放することになる」と発言した。

キッシンジャーは以前、ウクライナがロシア軍に攻撃され、占領された領土を割譲することを条件とする、交渉による戦争解決を求めていた。キッシンジャーがその姿勢を翻したという兆候はないが、ウクライナのNATO加盟に関する彼のコメントは、重要な撤回を意味する。

キッシンジャーは次のように述べた「戦前、私はウクライナのNATO加盟に反対していた。NATO加盟は、まさに今私たちが目にしているようなプロセスを始めることになると危惧していたからだ。現状のような状況下で中立的なウクライナという考えはもはや意味がない。私は、ウクライナのNATO加盟が適切な結果になると信じている」。

NATOは10年以上にわたり、ウクライナはいずれ集団安全保障同盟(collective-security alliance)であるNATOに加盟する可能性があると述べてきたが、加盟を早めるための具体的な措置をとることは拒否してきた。

ロシアが侵攻を開始する3カ月前、ウクライナ政府高官ロマン・マショベツは、加盟を認めて欲しいというキエフの長年の要望を繰り返した。マショベツは2021年11月にナショナル・レヴュー誌のインタヴューに対して次のように語った。「プーティンはウクライナのNATO加盟にショックを受けるだろう。ウクライナがNATOに加盟すれば、彼はウクライナに対して、ハイブリッド、非通常的、通常型、非対称など、あらゆる戦争の形態を私たちに仕掛けることはできないだろう」。

フィンランドのサナ・マリン首相もダヴォス会議で同様の発言をし、ウクライナがNATOに加盟していればロシアは攻撃しなかっただろうと聴衆に語った。また、フィンランドとスウェーデンはNATO加盟国の承認を求め続けており、同盟に参加する「準備は十分にできている」とも述べた。

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 古村治彦です。

 中国がこれから世界覇権国(hegemony)となるという予想が多く出ている。超大国(superpower)となっていく過程を私たちは目撃しているということになるだろう。米中関係はとかく対立的に描写され、「中国が台湾に侵攻する場合にはアメリカは台湾を助けるのか」「米中戦争はいつ起きるのか」という「中国脅威論」に基づいた言説がふりまかれている。そして、「中国脅威論」に基づいて、日本の防衛費増額、そのための増税が行われている。この「中国脅威論」はアメリカ発の言説である。

 「中国が明日にも日本に攻めてくる」という煽動的な言葉は全く実態を伴っていない。中国が日本を攻撃することのメリットは何なのかということを冷静に考慮していない。中国が日本を屈服させることは軍事力を使わなくても簡単なことだ。日本経済の中国異存はどんどんと大きくなっている。中国の経済力を使えば日本を屈服させることなど簡単なことだ。また、中国が日本を占領して国民を奴隷化するなどということも起きない。こんな年寄だらけの国、腰が痛いの膝が痛いのと泣き言ばかりで奴隷労働もできない年寄ばかりの国を占領する意味などない。

 中国は対日本となると、ナショナリズムが先に来て強硬な姿勢になるが、これは東アジア近現代史を振り返れば仕方のないことである。特に第一次世界大戦時の「二十一か条の要求」以来、第二次世界大戦で日本が惨敗するまでの30年ほどは中国にとっては精神的に、また物理的に大きな屈辱を与えた。もともと日本を下に見ていたということからその屈辱感が大きくなったというのは中国の勝手ではないか、ということも言えるが、それでもなお、中国本土を戦場にした日本という事実は消えない。

そうしたことから、日本に対して冷静になれない部分が出てくるのは仕方がない。しかし、中国は外交的には冷静かつ抑制的であり、協調的である。そして、中国は現在の国際関係を大きく変更させようと自発的に動いているとは言えない。変化に対応しつつ、大きな変更、中国を中心とする国際秩序に関しては「時期尚早」という姿勢を崩していない。国際関係が変化しつつあるのは、アメリカの国力の衰退、ヨーロッパ諸国の経済的縮小という、これまでの主役たちの変化の都合である。世界経済の成長のエンジンである中国と東南アジアの好循環と西側諸国の悪循環によって世界は変化に直面している。

これに対して「中国脅威論」が出てくる。中国脅威論は突き詰めると、「中国がアメリカに取って代わる」ために、戦争を起こすということになる。「覇権交代を目指して戦争が起きる」というのは覇権戦争(hegemonic war)と国際関係論では呼ばれる考え方だ。この戦争は成功する場合もあり、失敗もある。失敗例としてはドイツが挙げられる。覇権国に都合の良い国際秩序を変更するために、挑戦する国(力を伸ばしている国)が出てくるということだ。現代で言えば、それは中国ということになる。しかし、中国は自分から戦いを挑むことはない。そして、騙されて戦争を仕掛ける、もしくは戦争に巻き込まれるということがないようにどっしりと構えている。西側諸国が中国に依存しながら、衰退して養分を中国に送り続けるという状況をできるだけ続けるのが中国の戦略だ。「熟柿(柿が熟して自然に落ちるまで待つ)」戦略ということになる。

 自分たちが衰えていく一方で、どんどん力と存在感を増していく国が出てくれば、それは「脅威」に見える。これを過剰に宣伝して回っているのがアメリカということになる。問題はアメリカだということになる。

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アジア地域における中国の覇権について心配するのは止めよう(Stop Worrying About Chinese Hegemony in Asia

-アメリカの抱える恐怖は不合理であるだけでなく、自己達成的予言(self-fulfilling prophecy)となる可能性がある。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2023年5月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/05/31/stop-worrying-about-chinese-hegemony-in-asia/

アメリカとアジアのパートナー諸国は、表向きは中国がインド太平洋地域における地域覇権国(regional hegemon)になるのを防ぐため、インド太平洋地域のパワーバランス(balance of power、力の均衡)を維持したいと考えている。彼らは、北京が近隣諸国を徐々に説得することで、アメリカから距離を置き、中国の優位性を受け入れ、重要な外交政策問題で北京の意向に従うようになることを懸念している。例えば2018年、ジェームズ・マティス米国防長官(当時)は、「中国は既存の世界秩序を書き換える長期的な計画を抱いている。明朝が彼らのモデルであるように見えるが、より強硬なやり方で、他国を朝貢国家にし、北京に屈服させることを要求している」と発言し、警告を発した。ラッシュ・ドーシやエルブリッジ・コルビーといった元米政府高官や、私自身も含め、アメリカの大戦略について執筆している著名なリアリストたちも同様の主張をしており、中国は「世界をリードする大国(leading global power)」になりたいと公言し、南シナ海やその他の場所でも現状を変えようとしていることから、こうした懸念は正当化されるように見える。

この見解の意味するところは悩ましいものだ。中国が積極的にアジア地域の覇権国家になろうとしており、アメリカがそれを阻止しようと躍起になっているのであれば、世界最強の二国間での直接衝突を避けることは難しいだろう。

しかし、こうした懸念は正当化されるのだろうか? 中国がアメリカをアジアから追い出し、真の地域覇権国になることができれば、中国はより良い方向に向かうかもしれないが、その目標はおそらく中国には達成できないものとなるだろう。中国がアジア地域の覇権を握ろうとすれば、失敗する可能性が高く、その過程で中国(および他国)に甚大な被害をもたらすだろう。したがってアメリカは、この見通しを完全に否定することはできないとしても、比較的楽観的に見ることができる。よって、アメリカとその同盟諸国は、インド太平洋におけるパワーバランスを維持するために努力するとしても、その努力が中国の指導者たちに、「明らかなリスクがあるけえども覇権を狙うべきだ」などと思わせないようにしなければならない。

●地域覇権が望ましい理由(Why Regional Hegemony Is Desirable

強大な国家が、地域の覇権国家(すなわち、その地理的範囲内で唯一の大国)になりたがる理由は、容易に理解できる。近隣に他の大国がなければ、地域覇権国が自国の領土への直接攻撃を恐れる理由はほぼ存在しなくなる。このように周囲を支配する大国は、封鎖やその他の形の圧力に弱いということはなくなり、影響圏内の弱小国からの恭順を、直接支配していなくても期待することができる。また、地域内における危険がないため、地域の覇権国家は、それが必要または望ましいと思われる場合、世界の他の地域に力を注ぎやすくなる。

アメリカの歴史はこうした利点をよく示している。アメリカは、他の諸大国から2つの巨大な海によって隔てられており、彼らの争いの多くから隔離されている。この「自由な安全保障(free security)」が、アメリカの指導者たちに多大な自由裁量権(enormous latitude)を与えた。他国で紛争が勃発しても中立を保つことができたし、それが望ましいと思えば、自国から遠く離れた場所で「選択戦争(wars of choice)」を戦うこともできた。ヴェトナム、イラク、アフガニスタンのように、こうした遠方への介入が失敗した場合、アメリカは自国の安全保障を深刻な危険に晒すことなく、最終的に撤退することができた。

中国の指導者たちは、インド太平洋で覇権を握ることができれば、中国はより安全になると考えているに違いない。アメリカが多くの近隣諸国と密接に連携しない、また、この地域全体に強力な軍事力を駐留させることがなくなれば、北京の恐怖は小さくなる。東アジアと東南アジアの限られた海洋地理と北京の対外貿易への大きな依存を考えれば、これは重大な懸念である。心配すべき地域の危険が少なくなれば、北京が望めば、他の地域に力を及ぼすことも容易になる。

アメリカがこのような事態の発生を防ぎたい理由も、これと同じ要因から説明できる。20世紀初頭に大国となって以来、アメリカはヨーロッパと東アジアにおける大枠でのパワーバランスを維持し、いずれかの国がいずれかの地域を支配することを防ごうとしてきた。アメリカの指導者たちは、ヨーロッパやアジアの覇権国家がいずれアメリカと同等かそれ以上の経済力や軍事力を持つようになることを懸念してきた。もはや地域の脅威など気にせず、アメリカがそうしてきたように、他の地域に介入することを選ぶかもしれない。この種のライヴァルは、西半球の国家と同盟を結び、ワシントンの注意を自国に集中させるかもしれない。ヨーロッパやアジアにおける地域覇権を阻止したいという永続的な願望こそは、アメリカが最終的に2つの世界大戦に参戦した理由であり、長い冷戦の間、両地域にかなりの軍事力を保持した理由である。

したがって、もし地域覇権が容易に確立可能であれば、中国の指導者たちがそれを望み、アメリカの指導者たちがそれを阻止するために全力を尽くすことは、戦略的に理にかなっているかもしれない。しかし、一見魅力的に見えるこの目標が、実は達成困難で不可能かもしれない、蜃気楼(mirage)のようなものだとしたらどうだろうか? もしそうなら、北京がこの目標を追求するのは愚かなことであり、ワシントンはそれを阻止するためにもっと慎重なアプローチを取ることが可能となる。

●地域覇権確立が(ほぼ)不可能な理由(Why Regional Hegemony Is (Nearly) Impossible to Achieve

地域覇権は理論的には望ましいものかもしれないが、歴史が示唆するように、つかみどころのない目標である。ジョナサン・カーシュナーが指摘するように、近代にはさまざまな大国が地域覇権を目指したが、そのうちの1つを除いては全て失敗に終わっている。フランスはルイ14世とナポレオン・ボナパルトの時代に失敗し、ドイツは両世界大戦で決定的な敗北を喫した。アメリカだけが、その地域で唯一の大国となることに成功した。要するに、現代世界では成功率は20%にも満たないのである。

更に言えば、その失敗は単なる些細な失敗ではなかった。ナポレオン戦争で100万人以上のフランス人が命を落とし、ボナパルト・ナポレオンは南大西洋の孤島に流刑となった。ナポレオン戦争ではおそらく100万人のフランス人が命を落とし、ボナパルトは南大西洋の孤島で流刑生活を送った。ドイツは両大戦で甚大な被害を受け、40年以上にわたって2つの国に分裂した。日本は第二次世界大戦で爆撃を受け、原爆で2つの都市が破壊され、外国の占領者によって政治秩序(political order)が作り直された。地域の覇権国家になることは望ましいことかもしれないが、覇権国家になろうとすると、ほとんどの場合、国家の安全性は高まるどころか、むしろ低下する。

覇権主義が失敗する主な理由は2つある。第一に、防衛的リアリストが長い間強調してきたように、大国には脅威に対して均衡を保とうとする強力な傾向がある。強力な国家が近くにあり、その軍事力が他国に対して力を誇示するために調整されているように見え、修正主義的な野心を抱いているように見える場合、近隣の大国は通常、その国家を抑止(deter)または打ち負かす(defeat)ために団結する。覇権国家になろうとする国が戦争を始めることによってその目的を明らかにすれば、均衡行動はさらに顕著かつ効果的になる。

地域覇権に対する第二の障壁はナショナリズムだ。ナポレオンがスペインを侵略した時に発見したように、ソ連とアメリカがともにアフガニスタンで学んだように、そしてモスクワが現在ウクライナで思い知らされているように、地元住民は侵略者を撃退するために多大な犠牲を払う。一時的に征服された国であっても、覇権を狙う勢力のくびきを振り払おうと躍起になることはよくある。20世紀におけるヨーロッパの植民地帝国の消滅は、ナショナリズムの教義の普及がいかに外国の支配に対する抵抗を強めてきたかを更に物語っている。

このような傾向が繰り返される中で、アメリカは唯一の例外である。アメリカは現代における唯一の地域覇権国である。他の覇権国家は、強大でよく組織化された複数の国民国家からの協調的な反対に直面したが、アメリカは他の大国から海を隔てていたため、他の大国と戦ったり、均衡連合に打ち勝ったりすることなく、北米全域に拡大することができた。先住民は抵抗しようとしたが、ヨーロッパ人が持ち込んだ病気にかかりやすかったために弱体化し、多くの緩く組織された部族や国家に分裂した。アメリカの拡大に対する先住民の反発は19世紀後半まで続いたが、先住民部族は乗り越えがたい集団行動の問題と人口減少に直面し、やがて抗いがたい人口潮流に押し流されていった。わかりやすく言えば、アメリカは運が良かったのだ。

●中国は地域覇権国になることは可能か?(Could China Become a Regional Hegemon Today?

アメリカが西半球を支配し、他の大国を排除できた条件は、今日のアジアには存在しない。中国は近隣諸国のどの国よりも強いかもしれないが、そのうちの数カ国は中国の力を牽制できる可能性を秘めた主要産業大国であり、世界のもう1つの大国であるアメリカは、その防衛を支援することを約束し続けている。インドの人口は中国より多く年齢も若い。中国の近隣諸国の多くはすでに、より精力的にバランシング(balancing)を行っている。国防予算は急増し、オーストラリア、インド、日本は互いに、またアメリカとも協調している。中国の覇権確立に対する恐怖心が強ければ強いほど、こうした対応はより活発になるだろう。

加えて、インドは既に核兵器を保有しており、日本や韓国もいざとなれば核抑止力(nuclear deterrent)を獲得する可能性がある。東京とソウルの政府関係者は以前から、いざとなれば核抑止力を保有することも現実的な選択肢だと考えていることを明らかにしており、自国の抑止力を保有することは、中国が自国を威嚇する能力を更に制限することになる。従って、中国が近隣諸国により多くの核兵器を保有させたくないのであれば、その野心を制限し、そのような措置は不要とすべきである。

また、中国の習近平国家主席が「アジアの問題を運営し、アジアの問題を解決し、アジアの安全を守るのはアジアの人々のためだ(it is for the people of Asia to run the affairs of Asia, solve the problems of Asia, and uphold the security of Asia)」と示唆しても、アジアの諸大国は動じることはないだろう。このような発言は明らかに、アジアにおけるアメリカの役割を正当なものではないと思わせることを意図している。しかし、「アジア」というアイデンティティを共有することで、個々の国家の自己利益が優先されるという信念は、近代のナショナリズムの力を無視したものである。ナショナリズムは、中国はもちろん、インド、韓国、日本、オーストラリア、ヴェトナムでも強力な力を持っている。これらの国家のどれもが、国家の自主性(national autonomy)よりも北京への従属(subordination)を好むとは考えにくい。

最後に、現代の監視・通信技術は、国家が脅威となる大国を特定し、防衛的対応を調整することをはるかに容易にしている。中国がアジアで覇権を握ろうとすれば、偽装することは不可能であり、その脅威に晒された国家は、懸念を共有し、資源を出し合い、迅速に集団的対応をとることができる。ロシアのウクライナ侵攻に対する西側の迅速かつ活発な対応が示すように、共通の危機に直面した国々は、必要な時に驚くほど迅速に行動することができる。

●地域覇権が選択肢にないのならどうだろうか?(If Regional Hegemony Is Not an Option, What Then?

中国が地域覇権を握る見込みが限定的だとしたら、米中両国は何を争う必要があるのだろうか? アメリカと中国はそれぞれ、何億人もの愛国心にあふれた国民が暮らす広大な国である。両国の経済規模は大きく、洗練されており、どの国も外部勢力(outside power)の首を絞めるようなことはできない。両者を隔てるのは巨大な海であり、どちらも相手国への侵攻を成功させることはできない。共存は単に望ましいことではなく、不可避のことなのだ。

しかし、中国の指導者たちは、他の覇権国家がたどったような危険な道を選ぶ可能性もある。地域のパワーバランスが自国に有利に大きく傾き、近隣諸国を虐めて中立に導くことができ、一度や二度の勝利でその後の抵抗が不可能になり、アジアの他の国々がやがて中国の優位を正当なものとみなすと考えれば、覇権主義追求のリスクは(たとえ無策であっても)高まるだろう。最悪の場合、中国の指導者たちは、一時的に地域の覇権を握るのに有利な状況にあると自らを納得させ、同時に、この機会を捉えなければ、パワーバランスが決定的に不利になることを恐れることになる。このような希望的観測とパラノイアの組み合わせは、予防戦争(preventive war)の教科書的な条件であり、これはまさに20世紀前半にドイツと日本の指導者たちが確信を持った論理であり、結果として両国を大失敗に導いたのである。

アメリカとアジアのパートナー諸国にとっての意味は明確だ。一方では、効果的なバランシングを阻害し、「覇権獲得が成功するかもしれない」という誤った結論を北京が出さないように、様々な要因を軽減するよう努めるべきである。しかし同時に、アメリカとその同盟諸国は、中国の独立や領土保全を脅かしたり、中国共産党の権威を失墜させたり、中国経済を破綻させたりしようとはしていないことを明確にする必要がある。中国の指導者たちが、たとえ成功する確率が低くても覇権を追求するしかないと結論づけることのないよう、安心感を与える必要がある。

一貫したメッセージが不可欠である。ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官とジャネット・イエレン財務長官の最近のスピーチは、アメリカの輸出規制やその他の経済措置の範囲と目的について北京を安心させることを明らかに意図したものだったが、NATOにアジアにおける戦略的役割を与えようとする努力や、今月初めのG7首脳会議後に発表されたより対立的な閉会声明は、緊張を高めずにはいられない別のシグナルを送っている。

過去3世紀の間に複数回にわたり、いくつかの大国は自国の安全保障のために、近隣諸国に対する支配的地位を確立する必要があると結論づけて行動した。これらの試みは、1回を除いて全て大失敗に終わった。中国がこのような試みをするのは賢明ではないが、アメリカとその同盟諸国も、自らの行動が知らず知らずのうちに、リスクの高い覇権獲得が最善の選択肢であると北京に思わせていたとするならば、同様に賢明ではないだろう。

※本論稿は、シンガポール国立大学アジア研究所のアジア平和プログラムの協力のもとに発表された。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 来年の大統領選挙の前哨戦となる、民主党の大統領選挙候補者を決める民主党予備選挙に、ジョン・F・ケネディ元大統領の甥、ロバート・F・ケネディ元司法長官の次男である、ロバート・F・ケネディ・ジュニアが立候補したことは既にお伝えした。泡沫候補だ、勝利の希望がゼロの候補だと主流メディアは報じている。世論調査の結果を見ればそのように報じることになるのだろう。しかし、ロバート・F・ケネディ・ジュニア(RFK Jr.)の存在感はどんどん大きくなっている。
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 主流メディアはロバート・F・ケネディ・ジュニアを一種の狂人のように形容しているが、彼は、民主党最高の「王家」であるケネディ家の一員であり、生まれた時から民主党政治、アメリカ政治の中で生きてきた人だ。ケネディ・ジュニアは非常にしたたかな人物だ。それが分かる記事を以下にご紹介する。

 ドナルド・トランプ前大統領ケネディ・ジュニアを「常識のある男」と形容した。「common-sense guy(コモンセンス・ガイ)」だと肯定的に評した。「コモンセンス」という言葉は、アメリカ独立戦争(革命)の「バイブル」的な存在となった著作、トマス・ペインが著した政治パンフレット『コモン・センス(Common Sense)』を思い起こさせる言葉だ。トランプ前大統領は、ケネディ・ジュニアが人々が考えていること、望んでいることを理解する、分かるということができる人物だと評したのだ。ケネディ・ジュニアは人々の、アメリカ国民の側にいる人だと評した。

 この言葉を受けて、ロバート・F・ケネディ・ジュニアは、まずライヴァル政党である共和党の候補者であるトランプ前大統領を批判することを拒絶し、トランプが自分を好きだと発言したことを誇りに思うと述べた。ケネディ・ジュニアは「自分たちはアメリカ国民の側にいる人間だ。ポピュリストだ。そして、自分と似た人物であるトランプが自分を好きだと言ってくれたことを喜んでいる」と述べたことになる。重要なのは、ケネディ・ジュニアは「トランプ大統領」と呼んでいることだ。「前大統領(former president)」と呼んでいない。「前」や「元」といった言葉(英語ではどちらもformerとなるが)で呼ばないということはよくあることではあるが、ケネディ・ジュニアはこういう細かい点にも気遣いができる人物ということになる。また、ジョー・バイデン大統領に対して個人攻撃を行っていない。アメリカ政治では、討論会になればお互いに口汚く罵り合うのが当たり前である。

 下の記事で重要なのは、「ケネディ・ジュニアが民主党予備選挙で敗退したら、無所属で大統領選挙本選挙に出馬し、バイデンから票を削り取る」という可能性に言及している点だ。1992年の大統領選挙でのロス・ペロー旋風によって当時現職のジョージ・HW・ブッシュ(父、共和党)が民主党のビル・クリントンに敗れた事例がある。ケネディ・ジュニアが本選挙に出馬することは、トランプを側面支援することになる。ロバート・F・ケネディ・ジュニアの存在感は大きくなっている。

(貼り付けはじめ)

ロバート・F・ケネディ・ジュニア:「私はトランプ大統領が私を好きであることを誇りに思っている」(RFK Jr.: ‘I’m proud that President Trump likes me’

ハンナ・トルドー筆

2023年6月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4072768-rfk-jr-im-proud-that-president-trump-likes-me/

ロバート・F・ケネディ・ジュニアは、水曜日の夜、ドナルド・トランプ大統領を批判することを拒否し、「常識のある男(common-sense guy)」としてRFKを賞賛するトランプからの最近のコメントに対して光栄だと語った。

司会のエリザベス・ヴァルガスから、ケネディはトランプ前大統領についてどう思うかと聞かれ、ケネディは次のように答えた。「私は他人に対して個人攻撃したくはない」。

そして、更に一歩踏み込んで、大統領選挙共和党予備選挙の有力候補ではあるが、訴訟問題に巻き込まれているトランプ前大統領から、最近肯定的な評価をもらったことを誇りに思っていると示した。彼はまた、前大統領を大統領と現在形で呼んだ。

RFKは「私はトランプ大統領が私を好きであると発言したことを誇りに思っている」と語った。

トランプは今週、テレビ番組『ハウイー・カー・ショー』に出演し、ケネディを擁護した。右派の人物としてケネディを擁護をした。

トランプはケネディに「とにかく頑張れ」と忠告した。トランプは続けて「彼は私にとても良くしてくれた。彼はとても聡明な男で、良い奴だよ」と述べた。

トランプは「彼は常識のある男だ。私もそうだがね。保守派であろうとリベラル派であろうと、常識は常識ということだよ」と語った。

ケネディにとってはトランプを批判する機会であったがそれをしなかった。これは、ケネディが大統領候補として民主・共和両党の間にある微妙なラインを歩いていることを示す最新の兆候だった。

RFKはまた、世論調査で大きくリードしているジョー・バイデン大統領に大統領選挙民主党予備選で敗れた場合、バイデン大統領を支持することを約束することも避けた。しかしその後、数十年来の知り合いである大統領を「好きだ」と語った。

「憎み合うのは止めるべきだ」とRFKは語った。

民主党所属の連邦議員の中には、ケネディが大統領選挙の本選挙において、無所属で出馬し、バイデンから票を奪いトランプを助ける可能性を懸念する人たちもいる。

ケネディのトランプに対するアプローチは、バイデンや民主党の大多数がトランプ前大統領を憲法と民主政治体制に対する脅威としているのとは明らかに異なるアプローチだ。

「ニューズネイション」はネクスタ―社が所有している。ネクスタ―社は『ザ・ヒル』誌も所有している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 今回は久保修著、副島隆彦監修『プロが厳選する 世界大恐慌が来ても絶対大丈夫な株200銘柄』(秀和システム)をご紹介します。発売日は2023年7月11日です。
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プロが厳選する 世界大恐慌が来ても絶対大丈夫な株200銘柄

久保修氏は私と同様に、副島隆彦先生の弟子で、現在、外資系の運用会社にて日本株の運用にあたっています。本作は久保氏の渾身のデビュー作です。副島先生の推薦文、目次、あとがきを以下に掲載します。参考にして、是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

推薦文 副島隆彦

 本書、『プロが厳選する 世界大恐慌が来ても絶対大丈夫な株 200銘柄』は、私の弟子である久保修君(仮名)が、気合を入れて書いたものである。

 彼は現役の歴戦のファンド・マネージャーであり、何百億円も顧客たちから資金を預かり、日本株で利益を出して来た。大損をしたこともあると言う。そして彼なりの血尿を出すほどの苦闘の末に、結論に到達した。それはウォーレン・バフェットが教えるバリュー投資(割安株を、半値で買って長く持つこと)であった。バリュー投資こそは投資の極意(ごくい)である、と彼は知った。

 そんな子供じみた、株の投資家なら誰でも知っていることを言うな、と読者は笑うだろう。しかしプロのファンド・マネージャーとして、高級な高等数学まで駆使して、実践で相場を

張って来た者であるが故に、この結論に達したのである。

この本に挙がっている日本株200株は、全て、優れた実績と、頑丈な経営実体を持つ、まさしく「大恐慌でも戦争でも、何が起きても大丈夫な株たち」である。経営陣がしっかりしていて技術力もあり資金(内部留保)もしっかりと持っている。

 この本に書店で出会って、持(も)ち前(まえ)のその鋭い嗅覚(きゅうかく)で、この本に載っている株たちを一覧しただけで「これは本物だ」とすぐに感づく人たちは、本当のプロ並みの株式投資家である。

 こんな厳しい時代に、それでも株の売り買いで儲(もう)けを出している人たちがいる。彼らは、変な騙(だま)しには乗せられない。騙されたら自分の〝虎の子〟の資産を失う。身を切られる思いである。投資は、やっぱり博奕(ばくち)である。どんなに気取って健全な資産の運用とか言ってみてもギャンブルである。不確実( uncertainty [アンサーティンティ])である先のこと(近[きん]未来)にサイコロを振って、己(おの)れの才覚で厳しく勝ち残らなければ済まない。敗残者は、自分の知恵と用心が足りなかった、と去ってゆくしかない。

 真剣勝負で、自分の身銭(みぜに)を賭ける者たちにウソは通用しない。全ての勝負は、勝つか負けるか、の丁(ちょう)(偶数)か半(はん)(奇数)かのどちらかで決まる。中途半端はない。あたりか外れ、のどっちかだ。

「儲(もう)ける」という言葉は、不思議な気がするが、「信じる(偏[へん])に者(もの)」と書く。

 自分が「これは本物だ。ウソはない」と、心底(しんそこ)信じて惚(ほ)れ込んで買う株こそは、自分の宝物だ。

  著者の久保修君は、早稲田大学大学院のファイナンス研究科を出た秀才だ。彼が言うには、「金融エリートたちは高級な金融理論(ファイナンシャル・セオリー)を学び、それに従って投資を行いました。そして皆、大失敗しました。客に大損をさせました。彼らは理路整然(りろせいぜん)と間違ったのです」と。

 久保君自身も、血の小便を垂らしながら苦闘の末に、長期投資を旨(むね)とするバリュー投資こそ高いリターン(利益)を上げられる、と悟った。人間、痛い目に遭(あ)わないと成長しない。

 株式投資(ここもやっぱり博奕[ばくち]の世界だ)もまた、厳しい人生の修行の場なのである。

2023年6月10日

副島隆彦

=====

『プロが厳選する 世界大恐慌が来ても絶対大丈夫な株200銘柄』目次

推薦文(副島隆彦) 1

序 章 大動乱の時代の絶対賢い株式投資 11

バリュー投資とは何か 12

米ドル中心の体制から、ロシアによる実物経済圏の構築へ 15

機能不全に陥りつつあるペトロダラー体制 16

「日本の借金は内国債だから財政破綻しない」論は極めて危険 21

ウクライナ戦争の帰結としての実物経済の台頭、ペトロダラー体制の崩壊 27

金と天然ガスに裏付けられたルーブルがドルより遥かに安全 34

ドル覇権は自壊する 39

本書の構成 47

第1章 インフラ・経済正常化関連30銘柄 51

2章 暴落したら買いたい76銘柄 73

第3章 軍需関連19銘柄 125

第4章 産業廃棄物、都市鉱山、鉱物資源37 銘柄 141

第5章 時価総額は小さいが、成長が見込まれる38銘柄 167

あとがき 195

=====

あとがき 久保修

 2023年に入り、日本株市場は活況を呈している。4月、5月と大量の外人買いにより、東証株価指数(TOPIX)は33年ぶりの高値を付けた(5月23日)。これはご祝儀(しゅうぎ)相場だ。日本にNATO(北大西洋条約機構)の事務所を置くことが決まり、西側陣営の一員として逃げられないようにしたことへのご祝儀だ。

 ただし、この間、為替は円安に振れている。4月5日の1ドル131円台から5月26

日には140円台まで、この2ヵ月で、約9円の円安になっている。「株式市場の外人買い」を「はるかに上回る円売りドル買い」があった、ということだ。G7で日本に来たバイデンが、日本から10兆円、20兆円のお金をむしり取ったのではないか。そうでなければ、「大量の外人買いが入ったのになぜか円安になった」ということの辻褄(つじつま)が合わない。

 債務上限問題という「お金の話」で七転八倒(しちてんばっとう)しているバイデンが、わざわざ日本に来たのは、日本から金をむしり取って、お金の話を何とかしようとしたためだ、と考えれば辻褄が合う。日本は今でもアメリカの属国であり、都合のいいATMのような役回りをずっとやらされている。

 この30年間、日本は全く成長していない。増えたのは借金だけだ。それでいて少子高齢化により日本の就労人口は減っている。だから、これから日本は大増税国家になる。

 このような成長のない日本で、それでも資産を守り、増やそうとするならば、業績が拡大

している企業の株に投資するしかない。日本に本社があり、日本の株式市場に上場している

企業の中には、本書で紹介したように、着実に利益を出している企業がたくさんある。バブ

ル崩壊後の30年間を、国に頼らず、自力で生き残ってきた企業だ。自分に経営の才や商売の才がなくても、親から受け継いだお金がある人は、これらの企業の株に投資して、株価が上昇することに賭けたらよい。

 株式は企業の所有分であり、実物だ。これからの動乱の時代、株式市場はものすごく乱高

下するだろうが、企業は株式市場の乱高下とは無関係に、生き残りを賭けて事業活動に邁進(まいしん)する。だから、株式市場の変動に一喜一憂せず、動乱の時代でも生き残る企業に投資して、5年でも10年でも保有しておく。動乱の時代が終わり、新たな時代が来た時に、生き残った企業の株価は、「5年、10年、保有してよかった」と思えるくらい、上昇していることだろう。

 本書は、師匠である副島隆彦先生の叱咤(しった)激励と、秀和システムの小笠原豊樹編集長のアドバイスにより、何とか出来上がった。お二人がいなければ、一介の相場師に出版の機会など与えられるはずがない。副島先生、小笠原編集長、どうもありがとうございます。

2023年6月

久保修

(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 古村治彦です。

 企業の独占、寡占を取り締まる米連邦取引委員会(Federal Trade CommissionFTC)が、アメリカ国内のビッグテック各社への攻撃を強めている。2017年にビッグテック各社が独占禁止法に違反しているという内容の論文を発表し一躍脚光を浴びた、リナ・カーンが2021年に公正取引委員会委員長に就任した(ジョー・バイデン大統領が指名)。リナ・カーンのリーダーシップの下、連邦取引委員会はビッグテック各社に対する裁判を起こしている。


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ビッグテック5社を解体せよ

 ビッグテック各社がどのような方法で市場を独占し、利用者の利益を棄損しているか、ということについては、拙訳『ビッグテック5社を解体せよ』をお読みいただきたい。

 著者ジョシュ・ホーリーは現役のアメリカ連邦上院議員(ミズーリ州選出)、若手のホープとして、大統領選挙候補者の名前にも取り沙汰されるほどだ。本書はただのビッグテックの危険や脅威を煽る本ではない。ホーリーがミズーリ州司法長官として、ビッグテックと対峙した経験、アメリカの独占禁止法成立、それ以降の歴史に関する研究の成果が基礎となっている。アメリカの独占禁止法がどのような歴史的経緯で誕生し、その精神はどこにあるのか、ということが本書前半に書かれており、後半で、ビッグテックの実際のやり口が赤裸々に描かれている。原題通り、「ビッグテックの暴力的支配(The Tyranny of Big Tech)」である。

 以下に引用した記事と併せて、是非本書を読んで、アメリカにおけるビッグテックの暴力的支配に対する戦いを理解していただきたい。

(貼り付けはじめ)

●「米取引委、独禁法違反でAmazon提訴か 米報道」  

ビッグテック

2023630日   日経新聞 

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN29DQD0Z20C23A6000000/

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FTCのカーン委員長はアマゾンを批判してきた=ロイター

【シリコンバレー=山田遼太郎】米ブルームバーグ通信は29日、米連邦取引委員会(FTC)が反トラスト法(独占禁止法)違反で米アマゾン・ドット・コムを近く提訴する見通しだと報じた。カーン委員長が事業分割など厳しい要求を突きつける可能性もあり、FTCと同社の対立は一段と激しくなる。

関係者の話として、FTCが今後数週間のうちに訴訟を起こす計画だと伝えた。アマゾンのインターネット通販を巡り、外部の出品者が同社の物流サービスを使う場合に、利用しない出品者と比べ不当に優遇していると主張する内容になるという。提訴の時期は8月以降に遅れる可能性もあるとした。

FTC21日に有料会員制度「プライム」を巡り、消費者を意図しないうちに登録させたとしてアマゾンをFTC法などへの違反で提訴したばかりだ。アマゾンとFTCは日本経済新聞に対しコメントを控えた。

アマゾンは自ら小売業者としてネット通販で商品を販売する一方、一般の小売業者が参加して販売できる「マーケットプレイス」を運営する。外部の出品者は追加の手数料を支払えば、配送や倉庫保管といった同社の提供する物流サービスを利用できる。

FTCは物流などのサービスを使わない出品者が、通販サイトで商品が目立たないといった不利益を受けた証拠を集めている。1回のクリックで購入できる「購入ボックス」の商品購入先に一部の業者を優先表示している疑いも調べているという。

アマゾンのマーケットプレイスを巡っては、2019年から欧州連合(EU)もEU競争法(独占禁止法)違反の疑いで調査をしていた。自社の販売を有利にする目的での外部出品者のデータ利用や、購入ボックスの仕組みについて懸念があると指摘した。

アマゾンが自社の小売事業のためにデータを使わないなどの譲歩案を示し、2212月にEUと和解した経緯がある。ブルームバーグはカーン氏の強硬姿勢を踏まえるとFTCが同様の和解に応じる見込みは低く、アマゾンに事業再編などを求める可能性もあるとした。

FTC216月に就任したカーン氏の下で米テクノロジー大手への監視を強めている。同氏は学生だった17年、アマゾンを独禁法違反で規制すべきだとする論文を書いて脚光を浴びた。FTC委員長に就任後、アマゾンや米フェイスブック(現メタ)は公平性が担保できないとして独禁法に関する調査から同氏を外すよう求めた。

FTCはメタに対しても、画像共有アプリ「インスタグラム」運営会社や、仮想現実(VR)関連アプリ開発の米ウィジンの買収を巡り独禁法違反で提訴した。ウィジンを巡るFTCの訴えは棄却されている。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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