古村治彦です。
2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。年末年始でお忙しい時期だと思いますが、書店にお立ち寄りの際には是非手に取ってご覧いただければと存じます。よろしくお願いいたします。
ジョー・バイデン政権の外交政策において重要なのは、ウクライナ支援と対中封じ込め政策だ。最近ではそれらに加えて、中東紛争(イスラエルとハマスの紛争)も入ってきている。この記事が書かれた段階では、中東紛争は起きていなかったので、ウクライナ支援と対中封じ込め政策が中心となっている。私は2023年12月27日発売の最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で、これらについて書いているので、そちらも読んでいただきたい。
重要なことは、バイデン政権の外交政策コミュニティが分裂しているということだ。対中姿勢について、強硬派と宥和派がいるということだ。このことも『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で書いたが、バイデン政権の対中強硬派は、カート・キャンベル米国務副長官(アメリカ連邦上院による人事承認はまだ)である。キャンベルは、現在、ホワイトハウスに設置されている、国家安全保障会議(NSC)インド大洋担当調整官を務めている。キャンベルが国務省ナンバー2の国務副長官に就任することになるが、その前任は、ウェンディ・シャーマンであり、シャーマンは対中宥和派であった。国務省には今年亡くなったヘンリー・キッシンジャー元国務長官系列の外交官たちがおり、対中強硬姿勢に反対しているが、それを制圧するというのがキャンベルの国務副長官人事である。
バイデンはウクライナ支援も出厳しい状況に立たされている。ウクライナ支援については、アメリカ国民の過半数が「既に十分にしてやった。これ以上は必要ない」と考えている。連邦議会共和党内にも反対論が根強い。連邦下院ではウクライナ支援を切り離しての、イスラエル支援が可決された。バイデンとしては、パッケージとしてウクライナ支援とイスラエル支援をやりたいところだが、それは難しい状況だ。ここで舵取りを間違うと、来年の大統領選挙にも影響が出る。
バイデンの外交政策の行きつく先は、同盟諸国とパートナー諸国を動員することである。ウクライナ支援とイスラエル支援をヨーロッパ諸国と日本にやらせるということである。イギリスは狡猾なので口だけで、何もしない方向で、負担を他の国々に回す。結局、ドイツと日本が貧乏くじを引かされる。第二次世界大戦の敗戦国にそうした役割を押し付ける。しかし、世界は良い悪いは別にして、第二次世界大戦後の新しい秩序に向かいつつある。2024年はそのような新しい方向への兆候がより明らかになる年になる。
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バイデン・ドクトリンは存在するのか?(Is There a Biden
Doctrine?)
-第46代アメリカ大統領の外交政策に驚くべき成績がついた。
ラヴィ・アグロウアル筆
2023年2月2日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2023/02/02/biden-doctrine-russia-china-defense-policy/
ジョー・バイデン米大統領の就任一期目の中間点を記念し、本誌『フォーリン・ポリシー』は20人の専門家に、ロシアや中国との関係、さらには国防、民主政治体制、移民などの問題についてバイデン政権の実績を採点するよう依頼した。評価は A-(マイナス) から不合格までの範囲で行われた。しかし、より広範に見て、彼の政権の課題を定義する方法はあるのか? バイデン・ドクトリン(基本原則)は存在するのか?
私は洞察を得るために、まったく異なる視点を持つ専門家たちに話を聞いた。ナディア・シャドロー(Nadia Schadlow)はドナルド・トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を務め、現在はハドソン研究所の上級研究員である。スティーヴン・ワートハイム(Stephen Wartheim)はカーネギー国際平和財団の上級研究員で、いわゆる永久戦争(forever wars)を終わらせることを長年提唱している。意外なことに、ワートハイムはシャドローよりもバイデンの外交政策、特に中国政策に批判的だった。それはバイデンがドナルド・トランプ前大統領の中国政策をころころと二転三転させたからなのだろうか?
ナディア・シャドロー
スティーヴン・ワートハイム
それを知るには、続きを読む必要がある。このインタビューはFP Liveの一環として行われた。購読者はこのページ上部のビデオボックスでインタビューの全容を見ることができる。以下はその要約と編集である。
フォーリン・ポリシー:テーブルにカードを置いてみよう。スティーヴン、もしバイデン政権の外交政策を採点するとしたら、どう評価するか?
スティーヴン・ワートハイム:イェール大学ロースクールで、私は成績をつける必要がないので、これは私にとって慣れない経験だ。評価は分かれるだろう。困難な状況下で実行しているという点では、バイデン政権にはB+という良い評価を与えたい。A-(マイナス)に上げても納得できるところもある。
しかし、アメリカの外交政策がアメリカ国民のニーズやアメリカの国益に応えることができる軌道に乗ったかどうかという点については、私は、Cくらいの低い評価を与えたい。
バイデン政権は、特に中国との関係に関して、私たちをこのような状況に追い込む上で、ポジティブな役割よりもネガティブな役割を果たしたと思う。バイデン自身は大統領として、またアメリカ軍最高司令官として立派な資質をたくさん持っていると思うが、ドナルド・トランプ大統領から受け継いだ政策よりも戦略性に欠け、コストがかかり、リスクの高いアメリカの外交政策を後継者に手渡す危険性がある。
ナディア・シャドロー:採点が非常に主観的なものであることが、この試みの素晴らしいところだ。ジョー・バイデン政権の対中アプローチについては、私はB+に近い点数をつけたいと思う。一方、外交政策の他の多くの側面については、おそらくCをつけると思う。多くの場合、人権政策であれ、エネルギー政策であれ、気候変動関連政策であれ、美辞麗句が多く、美辞麗句と実際の実行との間にギャップがあるからだ。
フォーリン・ポリシー:スティーヴン、バイデンの外交政策に明確なドクトリンがあるか?
スティーヴン・ワートハイム:カーター・ドクトリンやトルーマン・ドクトリンのような、アメリカの死活的利益(U.S. vital interests)を表明し、その死活的利益を実現するためにアメリカが何をするつもりなのかを示す、厳密な意味でのドクトリンは存在しない。
バイデンの全体的なヴィジョンについての質問には、私は「2人のバイデンの物語」だったと言いたい。最初の年、バイデンは永久戦争を終わらせようとし、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が言ったように、普通のアメリカ人の日常生活をどのように向上させるかによって全ての決定を判断することを目指す、アメリカ国民、あるいは中産階級のための外交政策を推進した。
それと、ロシアがウクライナに本格的に侵攻した、ほぼ1年前に登場したバイデンとはまったく異なるものだ。バイデン・ドクトリンは、自由世界(free world)の防衛、特に独裁的で修正主義的な諸大国(autocratic
and revisionist powers)、すなわち中国とロシアに対する防衛を重視しているようであり、新たな国家安全保障戦略にはそのヴィジョンが反映されていると思う。バイデンがこうした課題に関連して使っている「自由世界」という言葉が、特に冷戦時代の概念であることは注目に値する。それは、アメリカの同盟諸国やパートナー、そして場合によっては同盟諸国やパートナーではない人々を非自由主義勢力による侵略から守ることとして、否定的に定義されている。それが今、私たちがいるところだ。
フォーリン・ポリシー:その通りだ。あなたは過去に、世界を民主政治体制国家と独裁主義国家に分断されたものとして見るのではなく、ウクライナの戦争をより良い枠組みでとらえるには、主権(sovereignty)について語るべきだと指摘していた。
ナディア、トランプ前政権の戦略において重要な役割を果たした人物として、バイデン・ドクトリンというものが存在するかどうか、あなたはどう考えるか?
ナディア・シャドロー:バイデン・ドクトリンは存在しないと思う、そしてそれを定義するのは非常に難しいだろう、というスティーヴンの意見に同意する。ドクトリンが存在しないのは、時系列的な理由というよりも、むしろ政権内の根本的な分裂のためだ。
バイデン政権内には中国に焦点を当てている人たちがいるが、彼らは世界を競争の場、他の大国やライヴァルとの競争の場として見ていると私は主張する。しかしその後、気候や地球規模の問題を物事の最優先に据える、より伝統的な進歩的で左翼的な政策に固執する人がさらに多くいる。これらすべての問題は国家レヴェルで始まり、実際には国家レヴェルでのみ解決できるものだ。つまり、バイデン政権の大部分が、世界を望む通りすることに固執していることが分かる。
フォーリン・ポリシー:ロシアとウクライナに焦点を移そう。ナディア、バイデン政権がこの1年半ほど、この危機をどのように管理してきたか、あなたはどう感じるか?
あなたならどう違った行動を取っただろうか?
ナディア・シャドロー:危機はバイデンが大統領になる前から始まっていた。2014年を出発点とするならば、バラク・オバマ政権はウクライナの防衛力を強化し、ロシアによるこれ以上の侵攻を阻止するか、ウクライナ人によるこれ以上の侵攻を阻止する手助けをするかの選択を迫られていた。そして、その選択をしなかった。
トランプ政権は2017年、ウクライナへのジャヴェリンの提供を再開した。バイデン政権は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領との話し合いで状況が変わることを期待して、これらの防衛兵器の提供を停止することを決定した。つまり、これは2022年2月よりも前のことだった。
バイデン政権は、ロシアによるこの残忍な侵略から自国を守るために必要な武器をウクライナ人に提供するという正しいアプローチを採った。しかし、このアプローチの漸進性には問題があると思う。大統領はおそらく30回ほど、ドローダウン権限(drawdown authorities)と呼ばれるものを行使している。この漸進主義は、ある種のシグナルを発している。兵器を送るという強みを損なう。ロシア側に再編成の時間を与えることになる。例えば、最近発表された戦車派遣の場合、その決定が実際に実施されるのは1年後になる。私たちは、ロシアが計画を立て、適応できるような状況を作っている。戦車派遣が1年遅れたからといって、現地の作戦状況が変わるわけではない。つまり、一連の複雑なシグナルがあるわけだ。
フォーリン・ポリシー:スティーヴン、あなたは違う見方をしている。あなたの感覚では、政権はウクライナを支援する熾烈で団結した連合を実際に構築している。それについて説明して欲しい。
スティーヴン・ワートハイム:これまでのところ、バイデン政権のウクライナ・ロシア政策への対応に対する私の評価は、肯定的なものの方が多い。政権がロシアとの安定的で予測可能な関係を追求したのは正しかったと思う。今となっては馬鹿げているように聞こえるが、それは後知恵の恩恵を受けているからだ。アジアにおける安全保障の課題を考えれば、そうした優先順位を設定しようとすることは理にかなっていた。バイデンが大統領に就任した時、彼は侵攻が起こると理解するとすぐに調整し、情報を公開し、世界の同盟諸国に何が起こるかを準備させるという驚くべき仕事をした。確かに、現在の戦争の状況を見れば、私はウクライナに戻らず、ウクライナを支援せず、ウクライナが失った領土の一部を奪還できるようにすることはないだろう。
私が抱いている懸念は2つある。一つ目は、私たちは本当にどこに向かっているのか、ということだ。バイデン政権は、この戦争における私たちの目標がどこにあるのか、はっきりさせていない。最近の報道では、ウクライナはクリミアを危険にさらし、この戦争の一環としてクリミアを解放する可能性がある。ウクライナがそれを望んだ場合、バイデン政権がどう対応するかは正確には分からない。しかし、その場合のエスカレーションのリスクは非常に大きいので、この戦争の一部としてテーブルに載せるべきではない。私は、ウクライナが自国の理由からそのようなことを望まないだろうと楽観視しているが、これは非常に危険な状況になりかねない。
私はバイデンが第三次世界大戦の可能性について警告したことを賞賛する。彼はリスクを理解している。彼はかなり早い段階で飛行禁止空域を拒否した。彼はエスカレーションのリスクについてはかなり冷静だ。そしてそれに関して、私は彼の功績を認める。しかし私は依然として、西側諸国が送っている実際の軍事支援だけでなく、ある種のレトリックのエスカレーションがあるのではないかと懸念している。バイデン政権は、独裁者の侵略に対抗する民主政治体制を支持するという観点から、ウクライナへの支持を非常に重んじてきたと思うが、それは当然、中国との緊張の高まりを意味し、人々が台湾をウクライナの観点から見るようになっている。これらは、おそらくグローバル・サウス(global south)のウクライナ側に魅力を感じる多くの国にとって実際に不快な枠組みである。なぜなら、本当に危機に瀕しているのは、主権国家に対するロシアの侵略であり、最も基本的な事項の侵害であることを彼らは理解していると思うからである。国際関係のルールと国連憲章における武力行使の禁止は、ウクライナが民主政治体制国家であるかどうかに関係なく当てはまる。
フォーリン・ポリシー:確かに、世界中の多くの国では実際にはそうではないが、私たちは民主政治体制と独裁政治体制を明確にさせる問題として考えるという罠に陥る可能性がある。
ナディア、あなたが政府にいた時、トランプ政権はNATOや同盟構築とまったく異なる関係にあった。それは変化した。アメリカはヨーロッパ諸国やNATOとの関係をどう見ているか?
ナディア・シャドロー:スティーヴンの指摘に戻るが、これはどのような結末を迎えるのだろうか。ウクライナとロシアにも大きな発言権があることを忘れないで欲しい。すべてはアメリカが主導している訳ではない。エスカレーションはロシアの選択にも大きく関係している。
トランプ政権時代、彼は同盟諸国に対し、国防費を増やし、その能力を向上させることに非常に厳しかった。また、石油や天然ガスをロシアに依存しているドイツに対しては非常に厳しい態度をとった。しかし、この2つの問題に関しては、正しい姿勢だったと考えている。
ロシアの侵略で我々が目にしたのは、例えばドイツのような場所では、NATOに非常に懐疑的だったヨーロッパ人の一部が、突然同盟の価値について全く異なる見解を持つようになったということだと思う。それもまた、世界の現実、権力の現実、軍事力の重要性に目が開かれたという事実によって動かされた。それでは、米欧関係の外交はよりスムーズになったのだろうか?
スムーズになった。しかし、私は、そこにある基本的なもの、プラス面とマイナス面、そして緊張の両方は前政権時代にも存在し、現在でもある程度は存在していると主張したい。バイデン政権の電気自動車補助金に対するヨーロッパの反発で、私たちは今それを目の当たりにしている。
何年もの間、同盟関係には常に緊張感と協力関係があった。トランプ前政権において、メディアの多くが言うほど劇的に同盟関係が悪化していったとは思えない。
フォーリン・ポリシー:ナディア、あなたはこの対談の冒頭で、バイデン政権の中国政策をかなり高く評価すると言っていた。それは何故か?
ナディア・シャドロー:バイデンの中国専門家(アジア・中国ポートフォリオを担当しているグループ)の大半は、中国をアメリカにとって長期的な戦略的競争相手と見ていると思う。中国は自国の体制内だけでなく、対外的にもイデオロギーや権威主義を推進しようとしているからだ。中国共産党の支配という中国の内部目標と、マルクス・レーニン主義イデオロギーとの間に関連性があると見ている。イデオロギー的な脅威でもある。テクノロジーは、この種の政治経済システムを実現する重要な手段であり、中国の並外れた軍事的近代化を可能にするものだと考えている。そのため、アメリカに危害を加える可能性のある中国のシステム開発を遅らせると同時に、アメリカが内部で行うべきことを進めようとする政策を練り上げてきた。彼らは中国をアメリカにとって長期的な戦略的脅威とみなしている。私もそれには同意する。その根拠はたくさんある。
フォーリン・ポリシー:ナディア、私はこのイデオロギーの戦いについても書いたが、世界の他の国々の多くは同じような分裂を見ていない。彼らは2つの巨大な貿易相手国が激しく対立するのを見たくないと考えていると思う。彼らは半導体産業に対する制裁を目の当たりにしており、自国の経済や企業への二次的な影響を懸念している。あなたは指摘しているが、世界の他の国々が役に立たないと考えているイデオロギーの隔たりをどうやって乗り越えるのか、あなたはどのように考えているか?
ナディア・シャドロー:それは私たちに有用だ。その理由は何が問題なのかを理解する必要があるからだ。それに基づいて一連の政策を策定する必要がある。とはいえ、実際には他国にそのような枠組みを押し付けてはいないと思う。サウジアラビアとはきちんとした関係を築いているし、中国とも強い関係を築いている。対外政策において、特定の路線をとることを各国に強制しているとは思わない。私たちは、たとえばファーウェイを自国の技術に取り入れることが危険だと考える理由を説明している。採掘が行われている多くのアフリカ諸国において、アメリカの労働慣行が中国の労働慣行よりも優れている理由を主張し、事例を示している。しかし、これに同意しないからといって、パートナーシップの輪から追い出すような例はあまり見られない。シンガポールとは非常に良好で強固な関係を築いている。シンガポールが中国やアメリカとも強い関係を持たなければならないことは、私たちも長い間認めてきた。だから、私たちは友好の輪から人々を排除している訳ではないが、他国に対して、経済的な関係であれ、技術への投資であれ、このような関係が長期的にどのような意味を持つのかを適切に伝えているのだと思う。
フォーリン・ポリシー:例えば、半導体へのアクセスに対する制裁では、結局のところ、企業や国を巻き込む一連の要件が下流に存在することになる。
スティーヴン、あなたは過去にこのFP Liveで米中関係の行く末を心配していると発言した。あなたはアメリカの自制をもっと強めるべきだと主張してきた。そのことについて聞かせて欲しい。なぜ心配しているのか?
バイデン政権は何を間違えていると思うか?
スティーヴン・ワートハイム:中国と競争することに問題はない。中国に対して競争的なアプローチを採用すべきだ。四極安全保障対話(Quadrilateral Security Dialogue、QUAD)を活性化させることは、おそらくプラスだと思う。この地域で起きている多くの変化、例えば日本が軍事大国化を画期的に計画していることなどは、北京が行っていることが大きな原因となって起きていることだが、私たちアメリカもそれを助長する役割を果たしている。こうした進展の中には、前向きなものもある。私たちは中国の本質について明確な目を持つべきであるが、最終的に私たちがたどり着きたいのは、競争的な共存関係の場(place of competitive coexistence)だと思う。
ナディアが示唆したように、バイデン政権はこの件に関して2つの考えを持っている。冷戦を避けたい、共存したいというが、それは対中発言における捨て台詞のようなもので、政策においてもますます後回しにされているように見える。私たちは各国に選択を迫っている。私たちの軌道を離れ、私たちとの関係を断ち切りたいのか、そうでないのか。そして、彼らはそれを選択していない。しかし、私たちはそうした選択を強制している。それが、半導体制裁のような制限を科している理由だ。彼らは自発的にやっている訳ではない。それが本当に国益にかなうのであれば、そうすることに問題はない。しかし、そうでないことが心配だ。二次的、三次的な影響が心配だ。
私が特に懸念しているのは、バイデン大統領の台湾に関する発言だ。それは彼のスタッフのせいではないかもしれないが、重要なことだ。そして、私の見解は、確かに抑止力(deterrence)の問題はあるが、安全保障のスパイラルの問題も抱えており、中国政府の越えてはならない一線に忍び寄って越えようとすると、台湾を巡る紛争が起きるのではないかと心配している。だからといって中国政府がそのような状況で行動するのが正しいとは言えないが、私たちは慎重に行動する必要がある。
ロシアに関しては第三次世界大戦のリスクをよく理解しているように見える大統領は、台湾には独立を宣言する能力があることを示唆するような失言をすることで、何度も「一つの中国(One China)」政策を劣化させてきた。それは本当に台湾が決める問題だ。抑止力という点でさえ、何の得があるのか私には分からない。私は、ヤマアラシ防衛戦略(porcupine defense strategy)によって台湾の自衛能力を高めようとするのは正しいと思う。それは理にかなっている。しかし、かなり危険な方法で北京を困らせることはない。
※ラヴィ・アグロウアル:『フォーリン・ポリシー』誌編集長。ツイッターアカウント:@RaviReports
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