古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2023年12月

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。年末年始でお忙しい時期だと思いますが、書店にお立ち寄りの際には是非手に取ってご覧いただければと存じます。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ジョー・バイデン政権の外交政策において重要なのは、ウクライナ支援と対中封じ込め政策だ。最近ではそれらに加えて、中東紛争(イスラエルとハマスの紛争)も入ってきている。この記事が書かれた段階では、中東紛争は起きていなかったので、ウクライナ支援と対中封じ込め政策が中心となっている。私は2023年12月27日発売の最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で、これらについて書いているので、そちらも読んでいただきたい。

 重要なことは、バイデン政権の外交政策コミュニティが分裂しているということだ。対中姿勢について、強硬派と宥和派がいるということだ。このことも『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で書いたが、バイデン政権の対中強硬派は、カート・キャンベル米国務副長官(アメリカ連邦上院による人事承認はまだ)である。キャンベルは、現在、ホワイトハウスに設置されている、国家安全保障会議(NSC)インド大洋担当調整官を務めている。キャンベルが国務省ナンバー2の国務副長官に就任することになるが、その前任は、ウェンディ・シャーマンであり、シャーマンは対中宥和派であった。国務省には今年亡くなったヘンリー・キッシンジャー元国務長官系列の外交官たちがおり、対中強硬姿勢に反対しているが、それを制圧するというのがキャンベルの国務副長官人事である。

 バイデンはウクライナ支援も出厳しい状況に立たされている。ウクライナ支援については、アメリカ国民の過半数が「既に十分にしてやった。これ以上は必要ない」と考えている。連邦議会共和党内にも反対論が根強い。連邦下院ではウクライナ支援を切り離しての、イスラエル支援が可決された。バイデンとしては、パッケージとしてウクライナ支援とイスラエル支援をやりたいところだが、それは難しい状況だ。ここで舵取りを間違うと、来年の大統領選挙にも影響が出る。

 バイデンの外交政策の行きつく先は、同盟諸国とパートナー諸国を動員することである。ウクライナ支援とイスラエル支援をヨーロッパ諸国と日本にやらせるということである。イギリスは狡猾なので口だけで、何もしない方向で、負担を他の国々に回す。結局、ドイツと日本が貧乏くじを引かされる。第二次世界大戦の敗戦国にそうした役割を押し付ける。しかし、世界は良い悪いは別にして、第二次世界大戦後の新しい秩序に向かいつつある。2024年はそのような新しい方向への兆候がより明らかになる年になる。

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バイデン・ドクトリンは存在するのか?(Is There a Biden Doctrine?

-第46代アメリカ大統領の外交政策に驚くべき成績がついた。

ラヴィ・アグロウアル筆

2023年2月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/02/biden-doctrine-russia-china-defense-policy/

ジョー・バイデン米大統領の就任一期目の中間点を記念し、本誌『フォーリン・ポリシー』は20人の専門家に、ロシアや中国との関係、さらには国防、民主政治体制、移民などの問題についてバイデン政権の実績を採点するよう依頼した。評価は A-(マイナス) から不合格までの範囲で行われた。しかし、より広範に見て、彼の政権の課題を定義する方法はあるのか? バイデン・ドクトリン(基本原則)は存在するのか?

私は洞察を得るために、まったく異なる視点を持つ専門家たちに話を聞いた。ナディア・シャドロー(Nadia Schadlow)はドナルド・トランプ政権で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を務め、現在はハドソン研究所の上級研究員である。スティーヴン・ワートハイム(Stephen Wartheim)はカーネギー国際平和財団の上級研究員で、いわゆる永久戦争(forever wars)を終わらせることを長年提唱している。意外なことに、ワートハイムはシャドローよりもバイデンの外交政策、特に中国政策に批判的だった。それはバイデンがドナルド・トランプ前大統領の中国政策をころころと二転三転させたからなのだろうか?
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ナディア・シャドロー
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スティーヴン・ワートハイム

それを知るには、続きを読む必要がある。このインタビューはFP Liveの一環として行われた。購読者はこのページ上部のビデオボックスでインタビューの全容を見ることができる。以下はその要約と編集である。

フォーリン・ポリシー:テーブルにカードを置いてみよう。スティーヴン、もしバイデン政権の外交政策を採点するとしたら、どう評価するか?

スティーヴン・ワートハイム:イェール大学ロースクールで、私は成績をつける必要がないので、これは私にとって慣れない経験だ。評価は分かれるだろう。困難な状況下で実行しているという点では、バイデン政権にはB+という良い評価を与えたい。A-(マイナス)に上げても納得できるところもある。

しかし、アメリカの外交政策がアメリカ国民のニーズやアメリカの国益に応えることができる軌道に乗ったかどうかという点については、私は、Cくらいの低い評価を与えたい。

バイデン政権は、特に中国との関係に関して、私たちをこのような状況に追い込む上で、ポジティブな役割よりもネガティブな役割を果たしたと思う。バイデン自身は大統領として、またアメリカ軍最高司令官として立派な資質をたくさん持っていると思うが、ドナルド・トランプ大統領から受け継いだ政策よりも戦略性に欠け、コストがかかり、リスクの高いアメリカの外交政策を後継者に手渡す危険性がある。

ナディア・シャドロー:採点が非常に主観的なものであることが、この試みの素晴らしいところだ。ジョー・バイデン政権の対中アプローチについては、私はB+に近い点数をつけたいと思う。一方、外交政策の他の多くの側面については、おそらくCをつけると思う。多くの場合、人権政策であれ、エネルギー政策であれ、気候変動関連政策であれ、美辞麗句が多く、美辞麗句と実際の実行との間にギャップがあるからだ。

フォーリン・ポリシー:スティーヴン、バイデンの外交政策に明確なドクトリンがあるか?

スティーヴン・ワートハイム:カーター・ドクトリンやトルーマン・ドクトリンのような、アメリカの死活的利益(U.S. vital interests)を表明し、その死活的利益を実現するためにアメリカが何をするつもりなのかを示す、厳密な意味でのドクトリンは存在しない。

バイデンの全体的なヴィジョンについての質問には、私は「2人のバイデンの物語」だったと言いたい。最初の年、バイデンは永久戦争を終わらせようとし、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が言ったように、普通のアメリカ人の日常生活をどのように向上させるかによって全ての決定を判断することを目指す、アメリカ国民、あるいは中産階級のための外交政策を推進した。

それと、ロシアがウクライナに本格的に侵攻した、ほぼ1年前に登場したバイデンとはまったく異なるものだ。バイデン・ドクトリンは、自由世界(free world)の防衛、特に独裁的で修正主義的な諸大国(autocratic and revisionist powers)、すなわち中国とロシアに対する防衛を重視しているようであり、新たな国家安全保障戦略にはそのヴィジョンが反映されていると思う。バイデンがこうした課題に関連して使っている「自由世界」という言葉が、特に冷戦時代の概念であることは注目に値する。それは、アメリカの同盟諸国やパートナー、そして場合によっては同盟諸国やパートナーではない人々を非自由主義勢力による侵略から守ることとして、否定的に定義されている。それが今、私たちがいるところだ。

フォーリン・ポリシー:その通りだ。あなたは過去に、世界を民主政治体制国家と独裁主義国家に分断されたものとして見るのではなく、ウクライナの戦争をより良い枠組みでとらえるには、主権(sovereignty)について語るべきだと指摘していた。

ナディア、トランプ前政権の戦略において重要な役割を果たした人物として、バイデン・ドクトリンというものが存在するかどうか、あなたはどう考えるか?

ナディア・シャドロー:バイデン・ドクトリンは存在しないと思う、そしてそれを定義するのは非常に難しいだろう、というスティーヴンの意見に同意する。ドクトリンが存在しないのは、時系列的な理由というよりも、むしろ政権内の根本的な分裂のためだ。 バイデン政権内には中国に焦点を当てている人たちがいるが、彼らは世界を競争の場、他の大国やライヴァルとの競争の場として見ていると私は主張する。しかしその後、気候や地球規模の問題を物事の最優先に据える、より伝統的な進歩的で左翼的な政策に固執する人がさらに多くいる。これらすべての問題は国家レヴェルで始まり、実際には国家レヴェルでのみ解決できるものだ。つまり、バイデン政権の大部分が、世界を望む通りすることに固執していることが分かる。

フォーリン・ポリシー:ロシアとウクライナに焦点を移そう。ナディア、バイデン政権がこの1年半ほど、この危機をどのように管理してきたか、あなたはどう感じるか? あなたならどう違った行動を取っただろうか?

ナディア・シャドロー:危機はバイデンが大統領になる前から始まっていた。2014年を出発点とするならば、バラク・オバマ政権はウクライナの防衛力を強化し、ロシアによるこれ以上の侵攻を阻止するか、ウクライナ人によるこれ以上の侵攻を阻止する手助けをするかの選択を迫られていた。そして、その選択をしなかった。

トランプ政権は2017年、ウクライナへのジャヴェリンの提供を再開した。バイデン政権は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領との話し合いで状況が変わることを期待して、これらの防衛兵器の提供を停止することを決定した。つまり、これは2022年2月よりも前のことだった。

バイデン政権は、ロシアによるこの残忍な侵略から自国を守るために必要な武器をウクライナ人に提供するという正しいアプローチを採った。しかし、このアプローチの漸進性には問題があると思う。大統領はおそらく30回ほど、ドローダウン権限(drawdown authorities)と呼ばれるものを行使している。この漸進主義は、ある種のシグナルを発している。兵器を送るという強みを損なう。ロシア側に再編成の時間を与えることになる。例えば、最近発表された戦車派遣の場合、その決定が実際に実施されるのは1年後になる。私たちは、ロシアが計画を立て、適応できるような状況を作っている。戦車派遣が1年遅れたからといって、現地の作戦状況が変わるわけではない。つまり、一連の複雑なシグナルがあるわけだ。

フォーリン・ポリシー:スティーヴン、あなたは違う見方をしている。あなたの感覚では、政権はウクライナを支援する熾烈で団結した連合を実際に構築している。それについて説明して欲しい。

スティーヴン・ワートハイム:これまでのところ、バイデン政権のウクライナ・ロシア政策への対応に対する私の評価は、肯定的なものの方が多い。政権がロシアとの安定的で予測可能な関係を追求したのは正しかったと思う。今となっては馬鹿げているように聞こえるが、それは後知恵の恩恵を受けているからだ。アジアにおける安全保障の課題を考えれば、そうした優先順位を設定しようとすることは理にかなっていた。バイデンが大統領に就任した時、彼は侵攻が起こると理解するとすぐに調整し、情報を公開し、世界の同盟諸国に何が起こるかを準備させるという驚くべき仕事をした。確かに、現在の戦争の状況を見れば、私はウクライナに戻らず、ウクライナを支援せず、ウクライナが失った領土の一部を奪還できるようにすることはないだろう。

私が抱いている懸念は2つある。一つ目は、私たちは本当にどこに向かっているのか、ということだ。バイデン政権は、この戦争における私たちの目標がどこにあるのか、はっきりさせていない。最近の報道では、ウクライナはクリミアを危険にさらし、この戦争の一環としてクリミアを解放する可能性がある。ウクライナがそれを望んだ場合、バイデン政権がどう対応するかは正確には分からない。しかし、その場合のエスカレーションのリスクは非常に大きいので、この戦争の一部としてテーブルに載せるべきではない。私は、ウクライナが自国の理由からそのようなことを望まないだろうと楽観視しているが、これは非常に危険な状況になりかねない。

私はバイデンが第三次世界大戦の可能性について警告したことを賞賛する。彼はリスクを理解している。彼はかなり早い段階で飛行禁止空域を拒否した。彼はエスカレーションのリスクについてはかなり冷静だ。そしてそれに関して、私は彼の功績を認める。しかし私は依然として、西側諸国が送っている実際の軍事支援だけでなく、ある種のレトリックのエスカレーションがあるのではないかと懸念している。バイデン政権は、独裁者の侵略に対抗する民主政治体制を支持するという観点から、ウクライナへの支持を非常に重んじてきたと思うが、それは当然、中国との緊張の高まりを意味し、人々が台湾をウクライナの観点から見るようになっている。これらは、おそらくグローバル・サウス(global south)のウクライナ側に魅力を感じる多くの国にとって実際に不快な枠組みである。なぜなら、本当に危機に瀕しているのは、主権国家に対するロシアの侵略であり、最も基本的な事項の侵害であることを彼らは理解していると思うからである。国際関係のルールと国連憲章における武力行使の禁止は、ウクライナが民主政治体制国家であるかどうかに関係なく当てはまる。

フォーリン・ポリシー:確かに、世界中の多くの国では実際にはそうではないが、私たちは民主政治体制と独裁政治体制を明確にさせる問題として考えるという罠に陥る可能性がある。

ナディア、あなたが政府にいた時、トランプ政権はNATOや同盟構築とまったく異なる関係にあった。それは変化した。アメリカはヨーロッパ諸国やNATOとの関係をどう見ているか?

ナディア・シャドロー:スティーヴンの指摘に戻るが、これはどのような結末を迎えるのだろうか。ウクライナとロシアにも大きな発言権があることを忘れないで欲しい。すべてはアメリカが主導している訳ではない。エスカレーションはロシアの選択にも大きく関係している。

トランプ政権時代、彼は同盟諸国に対し、国防費を増やし、その能力を向上させることに非常に厳しかった。また、石油や天然ガスをロシアに依存しているドイツに対しては非常に厳しい態度をとった。しかし、この2つの問題に関しては、正しい姿勢だったと考えている。

ロシアの侵略で我々が目にしたのは、例えばドイツのような場所では、NATOに非常に懐疑的だったヨーロッパ人の一部が、突然同盟の価値について全く異なる見解を持つようになったということだと思う。それもまた、世界の現実、権力の現実、軍事力の重要性に目が開かれたという事実によって動かされた。それでは、米欧関係の外交はよりスムーズになったのだろうか? スムーズになった。しかし、私は、そこにある基本的なもの、プラス面とマイナス面、そして緊張の両方は前政権時代にも存在し、現在でもある程度は存在していると主張したい。バイデン政権の電気自動車補助金に対するヨーロッパの反発で、私たちは今それを目の当たりにしている。

何年もの間、同盟関係には常に緊張感と協力関係があった。トランプ前政権において、メディアの多くが言うほど劇的に同盟関係が悪化していったとは思えない。

フォーリン・ポリシー:ナディア、あなたはこの対談の冒頭で、バイデン政権の中国政策をかなり高く評価すると言っていた。それは何故か?

ナディア・シャドロー:バイデンの中国専門家(アジア・中国ポートフォリオを担当しているグループ)の大半は、中国をアメリカにとって長期的な戦略的競争相手と見ていると思う。中国は自国の体制内だけでなく、対外的にもイデオロギーや権威主義を推進しようとしているからだ。中国共産党の支配という中国の内部目標と、マルクス・レーニン主義イデオロギーとの間に関連性があると見ている。イデオロギー的な脅威でもある。テクノロジーは、この種の政治経済システムを実現する重要な手段であり、中国の並外れた軍事的近代化を可能にするものだと考えている。そのため、アメリカに危害を加える可能性のある中国のシステム開発を遅らせると同時に、アメリカが内部で行うべきことを進めようとする政策を練り上げてきた。彼らは中国をアメリカにとって長期的な戦略的脅威とみなしている。私もそれには同意する。その根拠はたくさんある。

フォーリン・ポリシー:ナディア、私はこのイデオロギーの戦いについても書いたが、世界の他の国々の多くは同じような分裂を見ていない。彼らは2つの巨大な貿易相手国が激しく対立するのを見たくないと考えていると思う。彼らは半導体産業に対する制裁を目の当たりにしており、自国の経済や企業への二次的な影響を懸念している。あなたは指摘しているが、世界の他の国々が役に立たないと考えているイデオロギーの隔たりをどうやって乗り越えるのか、あなたはどのように考えているか?

ナディア・シャドロー:それは私たちに有用だ。その理由は何が問題なのかを理解する必要があるからだ。それに基づいて一連の政策を策定する必要がある。とはいえ、実際には他国にそのような枠組みを押し付けてはいないと思う。サウジアラビアとはきちんとした関係を築いているし、中国とも強い関係を築いている。対外政策において、特定の路線をとることを各国に強制しているとは思わない。私たちは、たとえばファーウェイを自国の技術に取り入れることが危険だと考える理由を説明している。採掘が行われている多くのアフリカ諸国において、アメリカの労働慣行が中国の労働慣行よりも優れている理由を主張し、事例を示している。しかし、これに同意しないからといって、パートナーシップの輪から追い出すような例はあまり見られない。シンガポールとは非常に良好で強固な関係を築いている。シンガポールが中国やアメリカとも強い関係を持たなければならないことは、私たちも長い間認めてきた。だから、私たちは友好の輪から人々を排除している訳ではないが、他国に対して、経済的な関係であれ、技術への投資であれ、このような関係が長期的にどのような意味を持つのかを適切に伝えているのだと思う。

フォーリン・ポリシー:例えば、半導体へのアクセスに対する制裁では、結局のところ、企業や国を巻き込む一連の要件が下流に存在することになる。

スティーヴン、あなたは過去にこのFP Liveで米中関係の行く末を心配していると発言した。あなたはアメリカの自制をもっと強めるべきだと主張してきた。そのことについて聞かせて欲しい。なぜ心配しているのか? バイデン政権は何を間違えていると思うか?

スティーヴン・ワートハイム:中国と競争することに問題はない。中国に対して競争的なアプローチを採用すべきだ。四極安全保障対話(Quadrilateral Security DialogueQUAD)を活性化させることは、おそらくプラスだと思う。この地域で起きている多くの変化、例えば日本が軍事大国化を画期的に計画していることなどは、北京が行っていることが大きな原因となって起きていることだが、私たちアメリカもそれを助長する役割を果たしている。こうした進展の中には、前向きなものもある。私たちは中国の本質について明確な目を持つべきであるが、最終的に私たちがたどり着きたいのは、競争的な共存関係の場(place of competitive coexistence)だと思う。

ナディアが示唆したように、バイデン政権はこの件に関して2つの考えを持っている。冷戦を避けたい、共存したいというが、それは対中発言における捨て台詞のようなもので、政策においてもますます後回しにされているように見える。私たちは各国に選択を迫っている。私たちの軌道を離れ、私たちとの関係を断ち切りたいのか、そうでないのか。そして、彼らはそれを選択していない。しかし、私たちはそうした選択を強制している。それが、半導体制裁のような制限を科している理由だ。彼らは自発的にやっている訳ではない。それが本当に国益にかなうのであれば、そうすることに問題はない。しかし、そうでないことが心配だ。二次的、三次的な影響が心配だ。

私が特に懸念しているのは、バイデン大統領の台湾に関する発言だ。それは彼のスタッフのせいではないかもしれないが、重要なことだ。そして、私の見解は、確かに抑止力(deterrence)の問題はあるが、安全保障のスパイラルの問題も抱えており、中国政府の越えてはならない一線に忍び寄って越えようとすると、台湾を巡る紛争が起きるのではないかと心配している。だからといって中国政府がそのような状況で行動するのが正しいとは言えないが、私たちは慎重に行動する必要がある。

ロシアに関しては第三次世界大戦のリスクをよく理解しているように見える大統領は、台湾には独立を宣言する能力があることを示唆するような失言をすることで、何度も「一つの中国(One China)」政策を劣化させてきた。それは本当に台湾が決める問題だ。抑止力という点でさえ、何の得があるのか私には分からない。私は、ヤマアラシ防衛戦略(porcupine defense strategy)によって台湾の自衛能力を高めようとするのは正しいと思う。それは理にかなっている。しかし、かなり危険な方法で北京を困らせることはない。

※ラヴィ・アグロウアル:『フォーリン・ポリシー』誌編集長。ツイッターアカウント:@RaviReports

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。米中関係についても書いておりますので、是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 米中貿易戦争はドナルド・トランプ前政権から始まった。制裁的な関税をかける競争を行ったが、こうした状況はジョー・バイデン政権でも変更がない。バイデン政権は対中強硬姿勢という点ではトランプ前政権を踏襲しているということになる。

アメリカ連邦議会は、米中経済安全保障評価委員会という委員会を設置し、中国の経済や貿易に関する評価を依頼したそうだ。そして、委員会は勧告書を発表し、更なる制裁的な対応を行うように勧告している。アメリカ経済は中国経済に依存し、結果として中国をここまで大きくした。そして今頃になって、中国経済や貿易の慣習はおかしいとして、制裁を加えようとしている。

 一方、中国はアメリカ依存からの脱却を目指している。中国は基本的に、アメリカにとっての「工場」として機能してきたが、重要な部品は中国国内で開発できず、「組み立て工場」の地位に甘んじてきた。それでは先はないということを分かっていた。そこで、重要な部品の研究開発を2010年代から始め、その成果が出つつある。そのことを最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で書いた。是非お読みいただきたい。

 アメリカは逆に国内での工業生産を復活させようとしているが、それはうまくいっていない。アウトソーシングしつくしたアメリカ国内に工業生産を復活させる力は残っていない。ウクライナ戦争において、アメリカは大量の武器や装備をウクライナに支援してきたが、そのために、アメリカ軍自体が武器や装備不足に落ちっているが、その回復の見込みは立っていない。厳しい状況だ。

 アメリカは中国に依存すべきではなかった、「アメリカと経済的に接近すれば中国は変化する」という理由付けは間違っていたということになるが、それは今更の話である。それではアメリカはどうすべきなのかということで、アメリカは解決策を見いだせないでいる。中国が一枚上手だったのである。

(貼り付けはじめ)

米中貿易戦争はヒートアップする可能性が高い(U.S.-China Trade War Could Heat Up

-米連邦議会委員会はバイデンに対して中国との貿易関係を再考するように望んでいる。

ジャック・ディッチ筆

2022年11月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/15/u-s-china-trade-war-wto-sanctions-xi-jinping-biden-trump/?tpcc=recirc_latest062921

米連邦議会が委任した委員会は、バイデン政権に対し、中国が略奪的な貿易慣行に従事しているかどうかを評価するよう求めており、この評価が、最終的に、アメリカが中国との通常貿易関係を永久に停止させることにつながる可能性がある。

もしこの勧告の内容が採用されれば、米中経済安全保障評価委員会(U.S.-China Economic and Security Review Commission)が火曜日に発表した連邦議会への年次報告書は、20年にわたる貿易関係をひっくり返し、2つの超大国の間の既に乱れた力学をさらに揺るがすことになるだろう。中国が世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)への加盟を推進する中、2000年に連邦議会が承認したいわゆる恒久的な通常貿易関係を撤回することで、アメリカは中国の輸入品に対する関税を更に引き上げるための舞台を整えることができる。トランプ政権は2019年、様々な中国製品に25%の関税をかけた。

超党派の委員会は、基本的にトランプ時代の中国との経済対決をさらに推奨しており、ワシントンの多くの人々は、ここ数十年のアメリカ国内の製造業の雇用喪失と、アメリカの経済競争力の浸食の原因を中国に求めているのだ。

米中経済安全保障評価委員会委員長で、トランプ政権時代の国務省元高官であるアレックス・ウォンは次のように語った。「これはバイデン政権にも連邦議会にも権限を与え、連邦議会にも、うまくいかない、アメリカの利益に役立たない貿易関係を再調整するためのものだ。この委員会は、米中関係に影響を与えるだろうか? もちろんそうなるだろう。しかし、そこが重要だ。私たちは、対中貿易関係を評価し、適切に再均衡するために、連邦議会とバイデン政権がこの仕組みを検討することを推奨している」。

アメリカはWTOの最恵国待遇貿易規則(WTO’s most-favored-nation trade rules)を広く適用しており、この規則は加盟諸国に対し、他のすべての加盟国に同じ条件を適用するよう求めている。ヨーロッパ連合(EU)やアメリカ・メキシコ・カナダ協定など、自由貿易協定には例外もあるが、アメリカはキューバと北朝鮮を除くほとんどの国に自由な地位を与えている。WTOの規則によれば、アメリカは国家安全保障の例外として、中国の最恵国待遇を取り消すことができる。これはまた、中国が20年来の貿易関係において、その取り決めを守っていないことを認めることにもなる。具体的には、委員会は中国がWTOの誓約に違反し、産業補助金(industrial subsidies)を制定し、知的財産を盗み、保護主義的な政策を実施し、アメリカ企業に損害を与えていることを指摘した。

特恵貿易ステータスの取り消しが決定されれば、連邦議会は貿易関係の再評価を迫られることになる。これまでのところ、バイデン政権はドナルド・トランプ前大統領が最初に導入し、中国政府からの数十億ドルの報復関税につながった一連の関税をほぼ維持している。中国の略奪的な貿易慣行を見直す動きは、この問題への対応が遅れているアメリカの官僚機構を混乱させる可能性もある。『フォーリン・ポリシー』誌は9月、キャサリン・タイ米通商代表部が中国からの輸入品に関する4年間にわたる見直しを来年まとめる予定だと報じた。

しかし、たとえバイデン政権と連邦議会が、ホワイトハウス部局の設置からアメリカのサプライチェーンの強化、対中エネルギー封鎖の実現可能性まで、すべてを網羅する報告書の、39点の広範な勧告の実施を決定しなかったとしても、この報告書は、ワシントンが政治的通路の両側で中国に対してよりタカ派的なスタンスを採用することに拍車をかけている。

2022年10月、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、バイデン政権の国家安全保障戦略を発表したジョージタウン大学でのスピーチで、冷戦後の時代は「最終的に終わった(definitively over)」と宣言した。中国のWTO加盟後、議会法に基づいて設置された委員会は、北京の貿易慣行に対して、より厳しい姿勢を取り、中国が組織的に自国通貨を過小評価し、不公正な貿易慣行に関与することでアメリカの貿易赤字を膨らませてきたという主張を20年近く続けてきた。

一方、中国もアメリカへの経済依存(economic dependence)からの脱却に向けた動きを見せている。 2022年9月の第20回中国共産党大会で歴史的な3期目の任期を与えられた中国の指導者である習近平は、アメリカおよび西側諸国からの輸​​入、特に重要技術に対する中国の依存度を減らすことを目的とした「二重循環(dual circulation)」戦略を推し進めてきた。バイデン政権は、ウクライナへの本格的な侵攻に対抗して、ロシア国内のコンピューターチップを減少させようとしており、半導体生産をアメリカに戻すことを目指すCHIPS法など、最近のアメリカの法律は中国のハイテク分野を脅かしている。報告書はまた、台湾に対する中国の軍事行動に対抗するための制裁やその他の経済措置を検討する常設のアメリカ政府委員会の設置を議会に求めている。

WTOが中国の貿易慣行を取り締まることができない中で、トランプ政権がWTOを意地でも中途半端にしていることもあり、米中経済安全保障評価委員会はワシントンの政策立案者たちに立ち上がるよう働きかけている。

ウォンは、「1999年の投票にさかのぼれば、それは本質的に、このステータスを付与することが私たちの貿易関係を繁栄させるだけでなく、中国との関係全般の改善につながり、中国を国際システムに引き入れ、より大きな安定を生み出すという、アメリカ側の情報に基づいた賭けだった。そして20年後、私たちの賭けがうまくいったのか、それともそれによって私たちが傷ついたのかが強く問われている」と述べている。

※ジャック・ディッチ:『』誌米国防総省・安全保障分野担当記者。ツイッターアカウント:@JackDetsch
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が発売になりました。ウクライナ戦争に関しては1章分書いています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ウクライナ戦争は2022年2月24日に始まり、長期戦となり、2024年まで続く状況になっている。戦況は膠着状態に陥り、ロシアがやや攻勢を強めているという状況だ。最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いたが、アメリカ国民はウクライナ支援に嫌気が差しており、「ウクライナ疲れ」「ゼレンスキー疲れ」の状況になっている。ジョー・バイデン大統領はさらなるウクライナ支援をしたいが、予算はアメリカ連邦議会が決めているため、アメリカ連邦議会下院で多数を握る共和党内にウクライナ支援反対派がいる以上、先行きは不透明である。ウクライナ支援の半分以上を占めるアメリカの支援がなくなれば、ウクライナは戦争継続が難しくなる。

 2023年10月に始まった、パレスティナ紛争(ハマスとイスラエルの戦い)で、アメリカを中心とする西側諸国(the West、ザ・ウエスト)はハマス避難を行い、その後のイスラエルによるガザ地区への攻撃とその攻撃による犠牲者についての非難を行っていない状況である。一方で、西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)は、即時停戦を求め、イスラエルの攻撃によるパレスティナ側の民間人犠牲者の増大を非難している。ここに国際社会、国際政治の最新の分断線がある。

 ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、ハマスによる攻撃発生直後から、ハマス非難、イスラエル支持を明確に表明した。これは、もちろん西側諸国からの支援を期待してのことだ。ハマスをテロ組織、ロシアをテロ国家と呼び、同じ悪だと非難した。その後、イスラエルによるガザ地区攻撃については非難ができない状況になってしまった。「強大な力によって虐げられる弱者」という構図を作りたいならば、ウクライナとパレスティナを並べ、ロシアとイスラエルを並べるのが妥当な状況になっているが、それができないようになった。結果として、西側諸国からの支援が先細りすることが確実な状況で、非西側諸国からの支援が期待できない状況になった。このような状況に陥ってしまったのは、ゼレンスキーの国際感覚の欠如と指導者としての才能の欠落が原因である。どちらにもついて、どちらにもつかないということができなければ、強大な勢力に囲まれた小国は生き抜いていくことはできない。これは日本にとっても教訓となる。

 更に言えば、より悪質なのは、イギリスである。イギリスのシンクタンクであるチャタムハウス(王立国際問題研究所)の研究員は「プランB」があって、戦争は継続できるというようなことを言っている。ウクライナを焚きつけているのはイギリスである。この狡猾さがイギリスを世界帝国にまで押し上げた訳ではあるが、西側の没落によって、イギリスの力も落ちていく。

 ウクライナ戦争は「金の切れ目が縁の切れ目」ということになるだろう。

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ウクライナにとっての新たなダメージ:ハマスとガザに対する戦争でイスラエルの側に立つこと(New danger for Ukraine: Taking Israel’s side in war against Hamas and Gaza

イソベル・コシウ筆

2023年10月29日

『ワシントン・ポスト』紙

https://www.washingtonpost.com/world/2023/10/29/ukraine-israel-gaza-russia-support/

キエフ発。ウクライナ大統領ヴォロディミール・ゼレンスキーは、ハマスとの戦闘について、イスラエルに対して即座のそして力強い支持を表明した。これは、キエフがこの1年にわたって行ってきた、ロシアとの戦争における、アラブ・イスラム諸国からの支援を勝ち取るための努力を無駄にする危険がある。

ハマスからの奇襲攻撃の後、ゼレンスキーはすぐの段階でイスラエルを支持する声明を発表した。ハマスの奇襲攻撃によって、1400名以上のイスラエル国民が殺害された。この声明は、ウクライナに対する国際的な関心の維持に役立ち、そして、明確に、ウクライナをアメリカの側に立たせることになった。

ゼレンスキー大統領のイスラエル支持の立場によって、イスラエルの不倶戴天の敵であるハマスの主要スポンサーであり、ロシアにとって無人機やその他の武器の重要な供給国でもあるイランとロシアとの関係がますます緊密になっていることにも注目を集めた。

ゼレンスキー大統領は2023年10月9日にNATO議会で演説しその中で、ハマスとロシアは、「同じ悪であり、唯一の違いは、イスラエルを攻撃したテロ組織があり、ここにはウクライナを攻撃したテロ国家があるということだ(Hamas and Russia are the “same evil, and the only difference is that there is a terrorist organization that attacked Israel and here is a terrorist state that attacked Ukraine)」と述べた。

しかし、イスラエルの軍事作戦が4週目に入り、パレスティナ人の犠牲者が増えるなか、ガザでの戦争は、2022年2月のロシアの侵攻以来、ウクライナにとって最も困難な外交的試練の一つとなっている。

ウクライナに重要な支援を提供してきたトルコ、サウジアラビア、カタールなどの国々は、イスラエルに対する控えめな批判と比較して、ウクライナでの民間人の死亡に対する広範な非難を示唆しながら、ガザにおける二重基準(ダブルスタンダード、double standards)で西側諸国を非難している。

しかし、イスラム諸国やアラブ諸国との緊張は、キエフが直面しているリスクの一つに過ぎない。キエフは現在、世界の関心が中東での新たな戦争に大きく移っていることに加え、ウクライナへの追加援助に反対している連邦下院共和党のマイク・ジョンソン新議長(ルイジアナ州選出)が選出されたばかりの時期に、アメリカの軍事支援に対する競合する要求とも戦わなければならない。

一部の専門家たちは、イスラエルは既にウクライナへの支援拡大で応酬するつもりはないことを明らかにしていると指摘した。

中東研究所の平和構築(peace-building)の専門家であるランダ・スリムは、ロシアがシリアを支配していることもあり、イスラエルはモスクワとの関係を維持するしかなかったと述べ、イスラエルがハマス攻撃後にゼレンスキーの訪問申し出を拒否したことを指摘した。

ゼレンスキー大統領の親イスラエルの立場は「意味がなかった」とスリムは述べ、多くのアラブ・イスラム諸国は、イスラエルとウクライナよりも攻撃的な軍事大国としてのイスラエルとロシアの類似点が多いと見ていると付け加えた。

スリムは次のように述べている。「これがアラブ地域の現状です。彼らはバイデンの言う、ロシアとハマスの比較を受け入れるつもりはない。ロシアとイスラエルを比較するのは、死者数や民間人を標的にすることに関してのことである」。

スリムは続けて次のように述べた。「ゼレンスキーが、ロシアがウクライナでやっていることは、イスラエルがガザでやっていることと同じだと言う用意があれば、もっと多くの友人を獲得できただろう。しかし、ウクライナがそのような発表を行う準備ができている、もしくは進んでやろうとしていると私は考えていない」。

ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が当初、イスラエルに直接哀悼の意を表することもなく、ハマスに対する断固とした非難もしなかったように、イスラエルが報復空爆を強化する中、ゼレンスキーはガザのパレスティナ市民を保護する必要性についてなかなか口を開かなかった。

ハマスの攻撃のニューズが最初に流れた時、ゼレンスキーと彼のティームのメンバーはハマスとロシアを比較し、ウクライナ人はイスラエル人に「何が起こっているのか特別に理解している」と述べた。イスラエルには多数のウクライナ人とロシア人移民が住んでいる。

そのわずか10日後、ゼレンスキーは、民間人を保護する必要性と非エスカレーションの必要性を訴え、ガザへの砲撃を間接的に支持した。

一方、ゼレンスキーは、ガザで数千人のパレスティナ市民と少なくとも21人のウクライナ市民が死亡したにもかかわらず、イスラエルの攻撃を批判することを避けている。

捕虜交換(prisoner-of-war exchanges)やロシアによるウクライナの穀物輸出封鎖などの問題でウクライナとロシアの交渉に重要な役割を果たしてきたトルコとカタールの外相は、西側諸国の偽善(hypocrisy)を主張する共同声明を発表した。

カタール外相のムハンマド・ビン・アブドゥルラフマン・アル・タニは「ある文脈では民間人の殺害を非難し、別の文脈ではそれを正当化することは許されない」と述べた。トルコのハカン・フィダン外相は、「西側諸国がガザでの殺害を非難しないのは非常に深刻な二重基準(ダブルスタンダード)だ」と付け加えた。

ヨルダンのラニア女王もCNNのインタヴューで鋭い批判を展開した。女王は「私たちは、銃を突きつけられて家族全員を殺すのはいけないことだが、砲撃して殺すのは構わないと言われているのだろうか?」と述べた。

他の専門家たちは、ゼレンスキーが比較しようとしたところで、アラブ諸国には響かないだろうと述べた。

ライス大学の研究員で、ウクライナとアラブ世界の関係について執筆しているクリスティアン・ウルリクセンは、ウクライナはアラブ世界にとって「最前線に立ったことがない」とし、「彼らにとって、ウクライナは関心のない紛争だ」と述べている。

ウリクセンはさらに、「イスラエルが多くの帯域幅(bandwidth)を占めているので、中東の誰も今ウクライナのことを本当に考えているとは思えない」と付け加えた。

今週末、ウクライナは、占領下のウクライナ領土からロシア軍を一方的に撤退させ、ウクライナの領土主権を完全に回復することを求める「和平計画(peace plan)」への世界的な支持を促進することを目的とした第3回協議の開催を予定していた。

サウジアラビアが主催し、ほぼすべての主要な非同盟諸国(major unaligned powers)の代表が出席した8月の第1回ウクライナ和平公式会合(Ukraine peace formula meeting)とは異なり、サウジアラビアの高官たちが今週末のマルタでのイヴェントに出席するかどうかは不明だった。

ゼレンスキーは月曜日、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子と会談したが、リヤドから発表された会談内容の公式発表では、マルタ会談やウクライナへのさらなる支援についての言及はなかった。

ブルームバーグ・ニューズが報じたところによると、中国はここ数日、ロシアとともにイスラエルとパレスティナの紛争を解決するための二国家解決策(two-state solution)への回帰を求めているが、マルタのイヴェントには参加しなかった。

トルコはマルタへの代表団派遣を計画していたが、ここ数日、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領はイスラエルに対して強硬に発言し、ハマスを抵抗運動(resistance movement)と表現しており、ゼレンスキー大統領の表明した立場とは全く対照的である。

ロシアが東部戦線での攻撃を強化している今、ウクライナは友好国を失うわけにはいかない。連邦議会の共和党議員たちがウクライナへの援助増額に反対を強めていることを考えれば、なおさらである。

バイデン大統領は、ウクライナへの600億ドルの追加援助を提案し、最近の演説では、イスラエルへの資金援助やアメリカ国内の国境警備の強化と結びつけている。

しかし、ホワイトハウスは、「ウクライナへの追加資金援助に繰り返し反対票を投じ、イスラエルへの援助からウクライナへの資金援助を切り離すつもりだ」とフォックス・ニューズに出演して語ったジョンソン新連邦下院議長に対処しなければならない。

ジョンソンは、ワシントンはウクライナを見捨てないと述べているが、ホワイトハウスの最終目標には疑問を呈している。一方、ヨーロッパでは、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相が最近、中国での会議の傍らでプーティンと会談し、ヨーロッパ連合(EU)からのウクライナへの500億ユーロの援助案を却下しようとしている。

ヨーロッパ連合(EU)は12月、2023年から2027年にかけての予算案の一部として、加盟27カ国の全会一致で承認される必要がある。

ウクライナの元経済大臣であるティモフィー・マイロバノフは、ゼレンスキー政権がウクライナに対する国際的な支援を再強化し、短期、中期的に戦争への関心を維持するための計画を打ち出すだろうと自信を示した。

ウクライナ外務省、ウクライナ大統領府、そしてゼレンスキー報道官は、彼らの計画がどのようなものなのか、コメントを求めたが回答はなかった。

一方、ロンドンのシンクタンクであるチャタムハウス(王立国際問題研究所)でウクライナ・プログラムの部長を務めるオリシア・ルツェビッチによれば、ウクライナはアメリカの支援が先細りになる可能性に備えてきたという。

ウクライナの「プランB」は、最近のドイツやトルコの武器企業との合弁事業や、イギリスとアメリカのメーカーとの交渉に見られるように、対外政治からできるだけ距離を置くことだとルツェビッチは言う。

ルツェビッチは、「アメリカがウクライナを完全に見捨てたら、それは非常に難しいことだ。しかし、ウクライナは自国の資源とヨーロッパの同盟諸国からの資源で戦い続けるだろう」と述べた。

カリーム・ファヒムがこの記事の作成に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 古村治彦です。

 本日、2023年12月27日は、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)の発売日です。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカのシンクタンクであるランド研究所は、アメリカの軍事関係の研究所としては最先端に位置する。そもそもが第二次世界大戦後の戦争戦略についての研究のために創設された。ランド研究所ではウクライナ戦争についても研究がなされており、その教訓をアメリカ軍の改善にどう活かすかということになっている。
 下の記事は、ウクライナ戦争開戦から1年が経過した段階での、ウクライナ戦争における陸、海、空各軍の装備や武器に関する評価を行っている。アメリカは、50年までの第四次中東戦争で、イスラエルがエジプト・シリア連合軍(ソ連の指導を受けた)の奇襲を受けて、苦戦したことから教訓を得て、エアランド・バトル(AirLand Battle)という戦術を開発し、地上機動(ground maneuvers)、正確な航空戦力(precision air power)、全体的な速度(overall speed)の融合を再検討し、第一次湾岸戦争における電光石火の大勝利につなげたということだ。

 ウクライナ戦争では、アメリカ軍が提供した対戦車ミサイル、対空防衛システムが効果を発揮し、ロシア軍の戦車やヘリコプター、戦闘機の攻撃を食い止めた。ここから、アメリカ軍は、これまでの通常兵器、戦車やヘリコプター、有人戦闘機の有効性について、論文の筆者たちは議論を行うべきだとしている。これは非常に興味深い指摘だ。
 そして、実際の戦場では、高性能の武器よりも、性能は低くても大量にある兵器の方が有効であるという指摘も行っている。この指摘も非常に重要だ。アメリカは物量作戦で、ウクライナを支援しなくてはいけない。しかし、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも説明した通り、アメリカ連邦議会ではウクライナ支援予算は可決されず、アメリカ国民も「ウクライナ疲れ」「ゼレンスキー疲れ」に陥り、「もう十分にしてやったではないか」ということになっている。アメリカが物量で支援できなければ、ウクライナは戦争を継続できない。結果として、停戦となり、現状がそのまま確定される。これは、アメリカと西側諸国(ザ・ウエスト、the West)の敗北であり、ロシアと西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)の勝利ということになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカ軍はウクライナ戦争から教訓を得ることができるか?(Is the U.S. Military Capable of Learning From the War in Ukraine?

―米国防総省はこれまで痛みを伴う教訓を得てきた。そして、その痛みを伴う教訓を再び得ることになるだろう。

ラファエル・S・コーエン、ジアン・ジェンタイル筆

2023年2月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/02/02/us-military-lessons-war-ukraine-russia-weapons-tactics/

国家の防衛戦略の核心は、非常に高価なギャンブルのようなものだ。アメリカは毎年、防衛費として数千億ドルを費やしているが、これは全て、こうした投資によって次の戦争に勝利できるという前提に立っている。アメリカが直接関与する紛争がない限り、政策立案者たちがこうした賭けの結果として勝ったのかどうかを知る機会はほとんどない。その1つが、今日のウクライナのように、他国がアメリカの軍事装備や戦術を使って戦争をする場合である。別の例としては、1973年の第四次中東戦争(ヨム・キプール戦争[Yom Kippur War]としても知られる)がある。イスラエルが敗北しかけたことで、ワシントンはアメリカの兵器と戦術を徹底的に見直した。つまり、どの兵器を購入するかだけでなく、21世紀の大国間戦争をどのように想定するのか、つまり、戦争が短期間で鋭利なものになるのか、それとも長引く消耗戦になるのかということを見直したのだ。

1973年、アメリカが最後に紛争を起こさずに紛争の未来を見通すことができた時、イスラエルはエジプト・シリア主導の連合軍の奇襲攻撃によって足元をすくわれた。最終的にはイスラエルが勝利したものの、この戦争はユダヤ国家にとって大失敗だった。イスラエルは、数十年にわたる戦闘経験を持つ熟練した軍事指導部を擁し、アメリカの兵器を装備していたにもかかわらず、800台以上の装甲車と100機以上の戦闘機を失った。イスラエルが第三次中東戦争(6日間戦争[Six-Day War])でアラブ連合軍を瞬く間に粉砕して世界を驚かせたわずか6年後、第四次中東戦争は対照的な結果となった。数週間も長引き、装備の損失を補うためにアメリカの緊急援助が必要となり、イスラエルは敗北に近づくという屈辱を味わった。

第四次中東戦争はアメリカへの警鐘となった。アメリカが直接参加した訳ではないとはいえ、アメリカ軍の指導者たちは、イスラエル軍が使用したアメリカの装備と戦術が、ソ連軍が指導したエジプト軍やシリア軍相手にどのような戦いを繰り広げたかをリアルタイムで目撃した。アメリカにとってはその光景は望ましいものではなかった。もしアメリカ軍が事態に対して適応しなければ、将来起こりうる紛争で同じように敗北に近づくか、それ以上になる可能性があるとワシントンは推測した。

そこで、アメリカ軍は戦争のあらゆる側面を研究することに取り組んだ。これらの教訓から、陸軍は新しい教義であるエアランド・バトル(AirLand Battle)を開発し、またヴェトナム戦争後、徴兵制度廃止後の軍隊の新たな青写真を示す最新の訓練計画を開発した。そして、冷戦中にアメリカがソ連と直接戦ったことはなかったが、第四次中東戦争とそこからアメリカが得た教訓は、地上機動(ground maneuvers)、正確な航空戦力(precision air power)、全体的な速度(overall speed)をどのように融合させるかについての知的基盤を提供した。第一次湾岸戦争中、ソ連軍が装備を提供したイラクに対するアメリカの電光石火の勝利を可能にしたまさにその戦略の組み合わせだ。半世紀を経た今でも、第四次中東戦争はアメリカ軍の将来に対する考え方や計画を形成している。

今日、ロシアの対ウクライナ戦争は、第四次中東戦争が20世紀の紛争に与えたように、21世紀の戦争に多くの示唆を与える可能性がある。何十年もの間、米国防総省は、スピードと正確さが支配する瞬間的な紛争や迅速な介入を想定して米軍を形成してきた。しかし、たった数日で終わると思われていた戦争が始まって1年経過し、ウクライナは産業戦争(industrial warfare)の時代が戻ってきたのかという疑問を投げかけた。結果は次のようになる。アメリカは、現在とはまったく異なるタイプの紛争に備える必要がある。

例えば、ウクライナ軍が地上戦で対戦車兵器(anti-tank weapons)や遍在する小型から大型の無人航空機システム(unmanned aerial systems)の使用に成功したことを考えると、戦車の継続的な重要性を疑問視する多くの論稿が既に発表されている。また、ウクライナ戦争では、最新鋭のモデルを含む75機ほどのロシア製ヘリコプターがウクライナ側に破壊され、そのほとんどが比較的古い防空ミサイルを使用され損傷されたことを考えると、現代の戦場にヘリコプターがまだ居場所があるのか​​という疑問も提起している。

また、ウクライナ紛争は主に陸戦であるにもかかわらず、この紛争は同様に米海軍に不穏な問題を提起している。ロシアの巡洋艦モスクワの沈没は、自国の海軍戦力を持たない国によって損傷または破壊された、他の十数隻の小型のロシア艦船と同様に、現代の戦争における大型水上艦船の生存能力について深刻な疑問を投げかけるものである。逆に、ウクライナが乗組員のいない小型艦艇の使用に成功したことは、海軍力を行使する別の方法の可能性を示唆している。

アメリカ空軍にとっての教訓もまた深甚なものとなる。NATOが飛行禁止区域を設定しなければ、ロシアの航空戦力はたちまちウクライナを圧倒するだろうという戦前の予測にもかかわらず、ロシアは航空優勢を得ることができず、ウクライナ空軍は開戦後1年近く経った今もなお飛行を続けている。ウクライナ戦争は、航空戦力が敵ミサイルの射程圏内でも活動できることを示している。さらに重要なことは、陸、海、空の各領域における現代の戦闘において、ドローンの重要性が増していることだ。実際、ウクライナ上空での戦闘では、ある意味で有人機が遠隔操縦機(remotely piloted aircraft)に後塵を拝している。

宇宙とサイバースペースにとっても重要な教訓が出てきた。ウクライナ戦争は、初の商業的宇宙戦争(commercial space war)と呼ばれている。このレッテルが正確かどうかは別として、ウクライナ軍のオンライン維持から世界中の紛争報道を形作る画像の提供まで、民間宇宙企業がこの紛争で大きな役割を果たしたことは間違いない。サイバースペースでは、ロシアが自慢していた能力は期待に応えることはなく、一部の人々が主張するように、サイバー攻撃は本当に次の大量破壊兵器なのか、それともその効果はもう少し限定的なものなのかという疑問が投げかけられている。

まとめると、ウクライナ戦争は、半世紀前の第四次中東戦争と同じような豊富な洞察をもたらしている。第四次中東戦争では、アメリカ軍が革新を余儀なくされるほど鮮明で暗澹たる状況が描かれたのに対し、ウクライナ戦争では、少なくとも今のところは、アメリカ軍の装備と戦術が勝利を収めているように見える。その結果、教訓に耳を傾け、変化をもたらそうという同じ原動力が生まれてこない。

名誉のために言っておくと、アメリカはウクライナがうまく活用してきた能力を倍増させている。例えば、アメリカ陸軍は、ウクライナでの支出を補うために、砲弾、ジャヴェリン対戦車ミサイルやスティンガー対空ミサイル、高機動砲ロケットシステム発射装置をさらに購入している。しかし、これらはおそらく簡単な教訓である。アメリカに何か違うことをするよう要求しておらず、同じものをもっと買うだけのことだ。

アメリカはまた、この戦争から得た教訓以外のものをもとに行動しないことも正しい。ウクライナ戦争が教訓にならない場合もある。例えば、ロシアは最新鋭機のほとんどをロシア領空内にとどめ、ウクライナの防空圏外に置いている。したがって、この戦争は、ステルス機と防空ミサイルのどちらが優勢かについて、今のところ結論が出ていない。

また、技術的な教訓は明らかでも、運用上の影響は明らかではない場合もある。例えば、戦車に関する論争について考えてみよう。キエフの戦いは、戦車が非常に脆弱であることを示した。同時に、ハリコフ州とヘルソン州でのウクライナの反撃の成功は、特に開けた地形で地を制するための機甲戦に代わる手段がほとんどないことを証明した。従って、アメリカ軍も同様に分裂していることはおそらく驚くことではない。海兵隊は戦車を放棄したが、陸軍はより近代的な戦車の開発を進めている。

しかし、特にウクライナの成功ではなくロシアの失敗から学ぶ必要がある場合、アメリカが戦争の厳しい教訓、つまり実際にアメリカ軍の方向転換を根本的に要求する教訓を受け入れるかどうかについては、まだ結論が出ていない。ロシアのヘリコプターがすべて失われたにもかかわらず、アメリカ陸軍は依然として、5種類の新しいヘリコプターに対して、費用をかけて開発する将来の垂直リフト計画を推し進めている。モスクワやその他のロシア艦艇が沈没したにもかかわらず、アメリカ海軍は依然として水上艦艇への投資を続けている。そして、空域ではドローンが優勢であるにもかかわらず、空軍は引き続き有人航空機部隊の開発と錬成に取り組んでいる。

さらに根本的には、アメリカは将来の能力capability)と現状の能力(capacity)のバランスを考え直す必要がある。1発数千万ドルのミサイルから、数億ドルの飛行機、数十億ドルの艦船に至るまで、アメリカ軍はたとえ取得するシステムの数が少なくなるとしても、高価な武器を標準にし続けている。しかし、ウクライナ戦争の最も重要な教訓は、安価で豊富な兵器は、実際には、精巧だが高価な兵器に勝る可能性があるということだ。実際、ロシアは極超音速ミサイルのような比較的少数の不思議な兵器を使用しただけで、ほとんど成功していないように見える。同時に、ウクライナ戦争は、第四次中東戦争がそうであったように、数が重要であることを示している。現代の戦争は多大な損害を伴う。

実際、ウクライナにパトリオット防空システム、エイブラムス戦車、レオパルド戦車、F16戦闘機を供与するかどうかが世間で激しく議論されているが、現在のところ、特定の兵器システムよりもその質量が戦局を左右するように見える。複数のコメンテーターが指摘するように、個々の能力は確かに役立つが、特定の兵器システムが十分な量提供されない限り、バランスを意味あるものに変えることはできないだろう。長期化する戦争では、誰が硬化の高い武器(silver bullet)を持っているかよりも、単に弾丸の数が多いかどうかが問題になる。そのため、アメリカは、より多くの弾丸を確保する必要がある。

公平を期すために述べるが、ウクライナ戦争は一つのデータに過ぎず、アメリカ軍はロシア軍ではない。アメリカのハードウェアは、ロシアの類似プラットフォームよりも生存性が高く、より思慮深い戦術を採用しているかもしれない。アメリカの指導者たちはまた、より思慮深く、ウクライナでのロシアのような弱点に陥らないかもしれない。そしてアメリカの戦略は、確かに、アメリカが迅速に勝利し、紛争が長期化しない可能性を高めているかもしれない。(イラク戦争とアフガニスタン戦争を見れば、そうではないことが分かるだろうが)。

ウクライナ戦争が意味するものをすべて受け入れるには、ロシアの失敗から学ぶべき教訓がまだあるという事実を受け入れる必要がある。少なくとも、今後のアメリカの防衛戦略の責任は転換しなければならない。なぜアメリカのヘリコプターや艦船、航空機はロシアのものと同じ運命をたどらないのか? なぜ次の戦争が長期化しないのか? なぜ次の戦争がウクライナ戦争のようにならないのか?

幸いなことに、大規模な戦争はめったに起こらない。ウクライナにおいてロシアが実施しているような戦争は、アメリカ人の血を犠牲にすることなく、アメリカのハードウェアと戦略的前提を試す有意義な機会となる。しかし、この戦争によってアメリカが次の紛争に備え、より賢明な未来への賭けをすることができるかどうかは、アメリカ軍が自己反省と点検に取り組むことができるかどうかにかかっている。そしてそれは、アメリカがウクライナの戦場での成功と勝利の可能性をどう見るかにかかっている。

もしアメリカがウクライナ戦争から教訓を学べば、50年前の第四次中東戦争後のように、今後数十年にわたってアメリカ軍の質的優位(qualitative edge)を確保できるかもしれない。そうでなければ、二度目のチャンスはないかもしれない。

※ラファエル・S・コーエン:ランド研究所空軍プロジェクト戦略・教義プログラム部長。

※ジアン・ジェンタイル:ランド研究所陸軍研究部副部長。

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古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』が発売になります。年末年始で宣伝が打てないのですが、自力で皆さんにご紹介しております。このブログで、内容の一部をご紹介しております。参考にしていただいて、お読みいただければ幸いです。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「モンロー・ドクトリン、モンロー主義(Monroe Doctrine)」とは、1823年にアメリカ第五代大統領ジェイムズ・モンローが連邦議会での演説で発表した外交政策の原理だ。教科書的な書き方をすれば、「アメリカ合衆国がヨーロッパ諸国に対して、アメリカ大陸とヨーロッパ大陸間の相互不干渉を提唱したこと」となるが、簡単に言えば、「ヨーロッパ諸国に対して南北アメリカ大陸に再び手を出すことは許さないと宣言したこと」である。このモンロー・ドクトリンの考え方を「アメリカの“孤立主義”」とする解釈もあるが、そうではない。

 モンロー・ドクトリンは、「南北アメリカ大陸を含む西半球のことはアメリカが決める、ヨーロッパ諸国に手出しをさせない。その代わり、他の地域のことにアメリカが何か介入することはしない」というものだ。アメリカが西半球の決定者になるということで、「地球の半分の王になる」という宣言であった。しかし、何かきれいごとのように、モンロー・ドクトリンは、「アメリカは海外のことに手を出さない」「アメリカは植民地を求めない」という解釈の根拠にされてきた。

 南米諸国にしてみれば、アメリカがヨーロッパ諸国に対して、南米に手を出すなよと言ってくれた、ということは守ってくれるんだということになって、モンロー・ドクトリンは、歓迎された。しかし、実際には、旧宗主国(colonial master、コロニアル・マスター)であるヨーロッパ諸国に代わって、アメリカが影響力を行使するということであることが分かり、南米諸国を失望させた。アメリカも結局、ヨーロッパ諸国と同じ穴の狢であった。

 アメリカは世界帝国の座から滑り落ちようとしている。アメリカは19世紀にそうであったように、「地球の半分(西半球)の王」へと縮小しようとしている。しかし、南米では中国の影響が増大している。それを何とか解決したい。これこそが「21世紀のモンロー・ドクトリン」である。南米に注力しようにも、人的資源、予算の面で、南米へ注げる力は限られている。そうしている間に中国が影響力を高めている。BRICS(ブリックス)に、南米地域の大国であるブラジルとアルゼンチンが加盟している。アメリカが南米大陸での影響力を回復することはかなり難しい。アメリカの凋落を止めることはかなり難しい。

(貼り付けはじめ)

モンロー・ドクトリンへの回帰(The Return of the Monroe Doctrine

-ラテンアメリカで存在感を増す中国へのアメリカの対応は家父長主義的な、古いパターンに陥る危険性がある。

トム・ヤング、カーステン=アンドレス・シュルツ筆

2023年12月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/12/16/monroe-doctrine-united-states-latin-america-foreign-policy-interventionism-china-gop/

モンロー主義が復活しつつある。今月建国200周年を迎えるにあたり、この古くから神聖化された外交政策原則、「ワシントンが西半球の外に存在する諸大国による、西半球への政治的・軍事的侵略に反対することを宣言する」が再びアメリカの政治議論の最前線にある。

ヴィベック・ラマスワミやロン・デサンティスといった共和党の大統領候補たちは、ラテンアメリカで存在感を増す中国を狙い撃ちするために、このドクトリンの再活性化を求めており、メキシコの犯罪組織に対するアメリカの軍事攻撃の可能性を正当化するものとして、このドクトリンを提示している。彼らは、国連総会でモンローを称賛したドナルド・トランプ前米大統領や、ジョン・ボルトンやレックス・ティラーソン前国務長官などのトランプのアドヴァイザーたちに従っている。

バイデン政権はこの原則を明示的に発動することを控えているが(モンロー大統領について言えば中南米諸国の人々を強く刺激することを認識しているのだろう)、西半球における中国の拡大する足跡に対するホワイトハウスの警告には、明らかにモンロー主義的な色合いが含まれている。

10年前でさえ、21世紀におけるモンローの重要性は薄れていると思われていたかもしれない。イェール大学教授でマチュピチュ探検家のハイラム・ビンガムは、モンロー・ドクトリンの100周年に「時代遅れの禁句(obsolete shibboleth)」というレッテルを貼った。ドクトリンの2世紀目には、アメリカ大陸におけるアメリカの冷戦介入(U.S. Cold War interventions)や単独行動主義(unilateralism)と密接に関連するようになっていた。ジョン・ケリー米国務長官(当時)が2013年に「モンロー・ドクトリンの時代は終わった」と宣言した時、この原則は時代錯誤になっていた。

しかし、最近の復活が示唆するように、モンロー・ドクトリンは長い間、聴衆によって異なる意味を持たれてきた。「モンロー・ドクトリン」という言葉は広く有害であると考えられているが、ワシントンの政治家たちはその遺産継承を断ち切ろうと苦闘してきた。そして、ラテンアメリカにおけるアメリカの言動は、いまだにモンローのレンズを通して認識されている。

死後、モンロー・ドクトリンとして知られることになるその教義(ドクトリン)は、1823年12月2日、当時のジェームズ・モンロー米大統領が連邦議会への年次メッセージの中で初めて発表したものだが、問題となる、一節の大部分は当時のジョン・クインシー・アダムズ国務長官によって書かれたものだった。モンローとアダムスの外交政策には2つの主要原則があった。1つは、ヨーロッパとアメリカ大陸の間に「分離領域()separate spheres”」と呼ばれるものを確立することで、もう1つは、ラテンアメリカと太平洋岸北西部におけるヨーロッパの再征服(reconquest)の試みと領土的野心に対するアメリカの反対であった。

当初、この考えはドクトリンではなかったし、設立されたばかりの共和政体のアメリカがそのドクトリンを武力で裏付けることもできなかった。モンローの言説は当初、かなり高圧的なものではあったものの、ヨーロッパ征服の脅威に対する団結の宣言として受け止められた。旧スペイン系アメリカ植民地の独立指導者たちは、自分たちの大義(cause)に対する暗黙の支持の表明としてモンローの演説に熱心に注目した。

しかし、1846年から1848年まで続いた征服戦争でアメリカがメキシコの北半分を併合すると、アメリカの政策は不吉な色合いを帯び始めた。

数十年にわたって、モンロー・ドクトリンはアメリカの競合する政治派閥の間でより顕著になり、モンローの本来の文脈とのつながりは弱まった。歴代のアメリカ政府は、イギリス、ドイツ帝国、第二次世界大戦の枢軸諸国、そしてその後のソ連など、世界中の他の敵を撃退するためにモンロー・ドクトリンを発動した。ラテンアメリカでは、この原則は各国に(要請の有無にかかわらず)アメリカの保護を提供する一方、どのような行為が脅威とみなされるかを定義するアメリカの権利と、それにどのように対応するかを決定する権利を留保した。この地域に対する固有の家父長主義(パターナリズム)はすぐに、完全な一極主義と介入主義によって補完された。

それにもかかわらず、1860年代後半には、ラテンアメリカのリベラル派やアメリカの奴隷廃止論者(U.S. abolitionists)の一部が、モンロー・ドクトリンを、王朝の利益や大国の共謀ではなく、法の支配(rule of law)と連帯(solidarity)に基づく地域秩序(regional order)を創造する好機と捉えた。

19世紀半ばのリベラル派は、モンローを膨張主義(expansionism)のライセンスと見なす代わりに、旧世界の戦争や共謀から脱却した西半球共通の運命を構想した。このドクトリンは、メキシコのベニート・フアレス大統領やセバスティアン・レルド・デ・テハダ大統領といったラテンアメリカのリベラル派指導者たちの呼びかけを含め、アメリカ大陸におけるフランスやスペインの侵略に対してアメリカが行動することを求めるものとして再び登場した。

リベラル派の指導者たちは、アメリカの規模と力が西半球におけるその地位を際立たせることを認識していたが、国家間の相違は共和党の団結、多国間外交、国際法によって埋められるべきだと主張した。平和は小国を犠牲にして秘密協定を結ぶのではなく、仲裁と協議によって実現されるだろう。

ラテンアメリカ諸国はこの文脈でモンロー・ドクトリンを援用し、今や悪名高い1884年から1885年のベルリン会議へのアメリカの参加を批判した。そこではヨーロッパ列強が西洋文明を広めるべきだという義務(duty)の意識のもとにアフリカの領土を分配した。ラテンアメリカ諸国は、この認可された帝国の拡大が自分たちにも及ぶのではないかと恐れた。

数年後、ヴェネズエラはモンローの遺産を再び訴え、ヴェネズエラとガイアナの国境をめぐるイギリスとの紛争でアメリカの支援を求めた。100年前に行われた仲裁手続きに対するヴェネズエラの不満が、最近の戦争の脅威の舞台となった。アメリカでは、このドクトリンは、国内問題優先主義者たちがヨーロッパの同盟政治にアメリカが関与していることへの批判を進めるためにも役立った。

しかし今世紀に入り、セオドア・ルーズヴェルト大統領は、モンロー・ドクトリンとアメリカの単独介入との結びつきを深めた。最も悪名高いのは、ルーズヴェルト大統領がこの原則の「推論(corollary)」として、新たに強大になったアメリカが近隣諸国を統制する権利と義務を主張したことである。ウッドロー・ウィルソン大統領もまた、多くの外交問題でセオドア・ルーズヴェルトと敵対していたが、モンロー・ドクトリンに対するこの見解をほぼ共有していた。ウィルソンは国際連盟憲章にモンロー・ドクトリンを明記し、アメリカの一方的な特権を明記するよう主張した。

この時点で、ラテンアメリカの好意的な人々でさえもモンロー・ドクトリンに嫌悪感を抱いており、モンローはこの地域の民族主義者や反帝国主義者にとってのスローガンとなった。セオドア・ルーズヴェルトのドクトリン解釈は、連帯と自制を強調するドクトリンの解釈を大きく転換させた。この時代には、アメリカにはラテンアメリカ人を指導し、教育する権利と義務があるという人種的、文明的な驕りが蔓延していた。

しかし、学者フアン・パブロ・スカルフィが示したように、セオドア・ルーズヴェルトの考えが覆され、モンロー・ドクトリンを多国間主義と両立するものとして解釈し直そうという希望が消えた訳ではない。ラテンアメリカ社会の一部では、アメリカは依然として近代性のモデルとして支持されていた。

フランクリン・ルーズヴェルト大統領の、いわゆる善隣政策(Good Neighbor Policy)、西半球不干渉宣言に対するラテンアメリカの主張にアメリカが同意した、この暖かい雰囲気の時代に、モンロー・ドクトリンはこの地域である程度の救済を経験した。1930年代後半までにヨーロッパは戦争状態に入り、独立した平和な領域という考えはアメリカ大陸全体に大きな魅力をもたらした。

そのような期待に反して、アメリカは第二次世界大戦に引き込まれ、当時のヘンリー・スティムソン陸軍長官は1945年5月の日記で、国際連合(United Nations)設立の提案とフランクリン・ルーズヴェルトの不介入の約束が相まって、モンロー・ドクトリンは希薄になったと内々に不満を漏らし、スティムソンは大いに落胆した。

モンロー・ドクトリンに関する明確な言及は減少したが、冷戦の期間中、アメリカの対ラテンアメリカ外交政策は、より介入主義的な熱意を帯びるようになった。ソ連の影響力を排除するという正当な理由によって、アメリカ政府はラテンアメリカ各地で改革主義的な民主化計画を覆し、アメリカに友好的な独裁政権を樹立する手助けをした。1970年、故ヘンリー・キッシンジャー米国務長官はチリについて、「ラテンアメリカの有権者が自分たちの判断に委ねるには、問題はあまりにも重要だ」と述べた。

アメリカがラテンアメリカに露骨に介入することはまれとなった30年後の現在、モンロー・ドクトリンに関する議論が復活しつつあるようだ。

今度は中国との大国間競争が再燃することを予期し、アメリカは西半球以外の地域からの挑戦者、そして西半球内からの挑戦者に対する首尾一貫したアプローチを模索している。モンロー・ドクトリンは、一見シンプルで持続性があるため、アメリカ国内で支持者を増やしている。しかし、最近の共和党内におけるモンロー・ドクトリン礼賛は、ラテンアメリカにおけるモンロー・ドクトリンとその意味を表面的にしか理解していないことを示唆している。

このような使い方はアメリカ国内向けかもしれないが、ラテンアメリカの耳に届くと、常識はずれ(out of touch)、あるいはそれ以上に思われる。モンロー・ドクトリンを褒め称えたところで、ラテンアメリカの人々が、自分たちの利益は西半球地域以外のライヴァルではなく、アメリカとの協力にあるのだと納得することはない。モンロー・ドクトリンを呼び起こすことは、モンロー・ドクトリンが回避しようとする結果そのものを早めることになる。

ラテンアメリカで「モンロー・ドクトリン」という言葉を受け入れる人はほとんどいないだろうが、ブラジルのジャイル・ボルソナロ前大統領、エクアドルのギジェルモ・ラッソ前大統領、アルゼンチンのハビエル・ミレイ新大統領など、この地域の右派の指導者の多くは独自の反中国的気質を持っている。これらの指導者たちは、中国の経済的・政治的比重の高まりを相殺するためにアメリカを頼っている。近年、この地域のいくつかの国々は、台湾から中国に外交関係を切り替え、北京との貿易・投資取引を拡大している。

ジョー・バイデン米大統領が、国連で公然とモンロー・ドクトリンを称賛するトランプ大統領に追随することはないだろう。しかし、バイデン政権のイニシアティヴの多くは、ラテンアメリカでも同じように受け止められている。複数のアメリカ政府高官は、移民や麻薬取引に関連する問題以外にラテンアメリカのために時間を割くことはほとんどなく、アメリカがこの地域に提供する経済支援は、他の地域への関与に比べるとわずかなものと見られている。バイデン政権の高官たちがラテンアメリカの人々に中国との経済的な関わり合いの危険性を説く時、その警告は「アメリカが一番よく知っている(the United States knows best)」というモンローの常套句の現代版として聞かれる。

モンロー・ドクトリンは、最近の復活によって、さらに多くの意味を持つようになった。しかし、モンロー主義(Monroeism)は名目であれ、暗黙の政策パラダイムであれ、失敗する運命にある。用語としての「モンロー・ドクトリン」は、贖罪するにはあまりにも汚染されている。今日の南北アメリカ関係においてこの言葉を持ち出すことは逆効果である。モンロー・ドクトリンは、一極主義、家父長主義(パターナリズム)、介入主義(interventionism)との2世紀にわたるつながりを拭い去ることはできない。

モンロー・ドクトリンを別の名前で呼んでも、その胡散臭さは隠せない。モンロー・ドクトリンの核心原理(core principles)は、現在の国際関係や南北アメリカ関係と衝突している。モンロー・ドクトリンは分離領域の考え方を前提としており、より多国間的なモンロー・ドクトリンの解釈は、独特の「西半球の考え方(Western Hemisphere idea)」の基礎としてこの側面を強調する傾向があった。

しかし、冷戦下の世界規模の対立と普遍的な核の脅威は、分離領域の実現可能性に疑問を投げかけた。グローバルな気候変動とヴァリューチェーンの時代となった今、この主張はさらにありえないものに見える。アメリカはヨーロッパ、アジア、そして世界情勢と切っても切れない関係にあるだけでなく、ラテンアメリカも同様である。

多国間のドクトリンの概念でさえ、家父長的な前提に陥っていた。より多国間的で平等主義的な地域秩序を求める声は、誰が西半球の脅威となるかを決めるのはアメリカであるというモンロー・ドクトリンの基本的な前提とは相容れない。

同様に、当初のモンロー・ドクトリンにあったヨーロッパ諸国による再征服の禁止は、時代とともに他の活動、たとえば数十年前のソ連との外交・通商関係や今日の中国の「債務の罠(debt traps)」にも適用されるようになった。モンローから出発するということは、アメリカがどのような外交関係が不穏当であるかを定義することを前提としている。

そしてここに問題がある。政策立案者たちがモンロー・ドクトリンの意味をどう考えようと、モンロー・ドクトリンの核心は、ラテンアメリカ諸国が世界の中で独自の道を切り開くことができるということを疑っているのだ。アメリカの外交政策がそのような考えを払拭しない限り、モンローの呪縛から抜け出せないだろう。

※トム・ロング:ワーウィック大学国際関係論講師、メキシコシティにある経済学研究教育センターの非常勤教授を務めている。ツイッターアカウント:@tomlongphd

※カーステン=アンドレス・シュルツ:ケンブリッジ大学国際関係学助教授を務めている。ツイッターアカウント:@schulz_c_a
(貼り付け終わり)

(終わり)

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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』が発売になります。よろしくお願いします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 今回も最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で取り上げたカート・キャンベルとイーライ・ラトナーの論文をご紹介する。キャンベルとラトナーがバイデン政権の対アジア、対中政策の責任者である。2人がどのようなことを考えているかを知ることは重要だ。彼らの認識は「中国をここまで大きくしたのはアメリカだ。中国を世界市場にアクセスさせ、世界の潮流に晒せば、中国は変化すると考えたのは誤算だった」というものだ。アメリカは中国の安い製品を大量に輸入することで、中国を経済発展させる。経済発展に伴って人々の生活は向上し、世界の情報を得るようになり、中国の体制変革を求めるようになるとアメリカは考えた。一人当たりのGDPが6000ドルに達すると、民主化に向かうという仮説もある。

 しかし、中国共産党政府はそのような方向に進むことを警戒し、国内体制の強化を行った。また、中国国民も中国共産党政府を支持した。「私たちの生活を豊かにしてくれた中国共産党を支持する」ということになった。アメリカの中国の体制変革の目論見は崩れた。そして、気づいてみれば、アメリカは強大な中国というライヴァルを自分自身で生み出してしまった。今や中国は「西側諸国(the West)対西側以外の国々(the Rest)」という、世界を二分する構造の中で、西側以外の国々の旗頭である。

 こうした状況に陥り、アメリカは中国とどのように対峙するか、ということになる。最悪のシナリオは米中覇権戦争(Sino-US hegemonic war )であるが、アメリカは中国との戦争に踏み切れない。戦争に踏み切って中国を打倒しても、アメリカは致命的なダメージを受けて立ち直れない。アメリカ一国で中国と対峙することはできない。そこで、アメリカの同盟諸国、パートナーの出番である。その一番手は地理的なことから考えても、日本である。日本を中国にけしかけて、戦争まではいかなくても、武力衝突位させるのがアメリカである。最近では、アメリカは対ロシアを名目に、NATOまで対中封じ込めに利用しようとしている。こうしたことは、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』に詳しく書いている。

 日本は何があっても中国と直接衝突してはいけない。そのことを私たちは肝に銘じておかねばならない。

(貼り付けはじめ)

中国に関する計算(The China Reckoning

-北京はいかにしてアメリカの期待を裏切ったか

カート・キャンベル、イーライ・ラトナー筆

2018年3・4月(発行日:2018年2月13日)号
『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/articles/china/2018-02-13/china-reckoning

アメリカは常に、中国の行く末を決めることができると過大な期待を抱いてきた。しかし、その野望は何度も失敗に終わってきた。第二次世界大戦後、アメリカの中国特使だったジョージ・マーシャルは、中国内戦における国民党と共産党の和平を仲介することを望んだ。朝鮮戦争中、ハリー・トルーマン政権は毛沢東軍に鴨緑江を渡らせないようにできると考えた。リンドン・ジョンソン政権は、北京が最終的にヴェトナムへの関与を抑制すると考えていた。いずれの場合も、中国の現実はアメリカの予想を覆した。

リチャード・ニクソン米大統領の対中国交正常化で、ワシントンはこれまでで最大かつ最も楽観的な賭けに出た。ニクソンも国家安全保障問題担当大統領補佐官であったヘンリー・キッシンジャーも、和解(rapprochement)によって北京とモスクワの間にくさびが打ち込まれ、やがて中国がアメリカに接近するにつれて、中国自身の利益に対する考え方が変わると考えていた。1967年秋、ニクソンは本誌(フォーリン・アフェアーズ)に次のように書いている。「中国が変化するまで、世界は安全にはなり得ない。したがって、私たちの目的は、出来事に影響を与えることができる範囲において、変化を誘導することであるべきだ」。それ以来、商業的、外交的、文化的な結びつきを深めることが中国の内部発展と対外的な行動を一変させるという前提が、アメリカの戦略の根幹をなしてきた。中国の意図に懐疑的なアメリカ政界の人々でさえも、アメリカの力と覇権(power and hegemony)が中国を容易にアメリカの意のままに形作ることができるという根底にある信念を共有していた。

ニクソンが和解に向けた最初の一歩を踏み出してから半世紀近くが経過し、ワシントンが再び、中国の方向性を形成する力を過信しすぎたことは、次第に明らかになっている。自由貿易主義者や金融主義者は中国の開放が必然的に進むと予測し、融合主義者は国際社会との交流が深まれば北京の野心も抑えられると主張し、タカ派はアメリカの優位が続けば中国の力は弱まると信じていた。

ニンジンも棍棒も、予測されたようには中国を揺さぶることができなかった。外交的、商業的関与は政治的、経済的開放をもたらさなかった。アメリカの軍事力も地域的なバランシング(勢力均衡)も、北京がアメリカ主導のシステムの中核的な構成要素を置き去りにしようとするのを阻止していない。リベラルな国際秩序は、中国を期待されたほど強力に誘い込むことも束縛することもできなかった。中国はその代わりに独自の路線を追求し、その過程でアメリカの様々な期待を裏切ってきた。

この現実は、アメリカの対中アプローチを明確な目で見直すことを正当化する。現在の枠組みを擁護する人たちは、二国間関係を不安定化させたり、新たな冷戦を招いたりしないよう警告するだろう。しかし、より強固で持続可能な対中アプローチ、そして対中関係を構築するには、多くの基本的な前提がいかに間違っていたかを正直に語る必要がある。イデオロギーの違いを超えて、われわれアメリカの外交関係者たちは、中国に対する期待(経済、国内政治、安全保障、世界秩序に対する中国のアプローチ)に、それに反する証拠が積み重なっても、更に多く投資し続けてきた。そのような期待の上に築かれた政策は、われわれが意図した、あるいは期待したような形で中国を変えることはできなかった。

●市場の力(THE POWER OF THE MARKET

中国との商業交流の拡大は、中国経済の段階的だが着実な自由化をもたらすはずだった。ジョージ・HW・ブッシュ大統領が1990年に発表した国家安全保障戦略(1990 National Security Strategy)では、世界との結びつきを強化することが「中国が経済改革の道を再び歩む上で極めて重要である」と説明された。この主張は数十年にわたって優勢だった。1990年代に中国に最恵国待遇を与え、2001年には世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)への加盟を支援し、2006年にはハイレヴェル経済対話の枠組みを創設し、バラク・オバマ大統領の下で、二国間投資条約を交渉するというアメリカの決定を後押しした。

米中間の物品貿易は、1986年には80億ドルに満たなかったが、2016年には5780億ドルを超えるまでに爆発的に増加した。しかし、今世紀初頭以降、中国の経済自由化は停滞している。欧米諸国の期待に反して、北京は豊かになる一方で国家資本主義モデル(state capitalist model)を強化してきた。一貫した成長は、開放を促進する力になるどころか、中国共産党とその国家主導の経済モデルを正当化するのに役立っている。

複数のアメリカ政府高官は、債務、非効率、より高度な経済への要求から、更なる改革が必要になると考えた。2007年、温家宝首相は中国経済を「不安定、不均衡、調整不能、持続不可能(unstable, unbalanced, uncoordinated, and unsustainable)」と呼んだ。しかし、中国共産党は競争拡大のために国を開放するのではなく、経済の支配を維持することを意図し、代わりに国有企業を統合し、航空宇宙、生物医学、ロボット工学などの重要な分野で国家技術チャンピオンを促進することを目的とした産業政策(industrial policies)(特に「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025)」計画)を追求している。また、繰り返し約束したにもかかわらず、北京は外国企業の競争条件を公平にするというワシントンやその他の国からの圧力に抵抗してきた。市場アクセスを制限し、非中国企業に合弁企業との契約や技術共有を強要する一方で、国の支援を受けた国内企業には投資や補助金を与えてきた。

つい最近まで、アメリカの政策立案者や経営者たちはこのような差別をほぼ黙認していた。潜在的な商業的利益があまりにも大きいため、保護主義や制裁で関係を根底から覆すのは賢明ではないと考えたからだ。潜在的な商業的利益があまりにも大きいため、保護主義(protectionism)や制裁(sanctions)で関係を破壊するのは賢明ではないと考えたのだ。しかし現在では、かつては中国とのビジネスにおける短期的なフラストレーションにすぎないと考えられていたものが、より有害で恒久的なものに思えるようになっている。アメリカ商工会議所は昨年、アメリカ企業の約8割が、数年前に比べて中国において歓迎されていないと感じていると報告し、60%以上の企業が、中国が今後3年間で市場をさらに開放するという確信がほとんどない、あるいはまったくないと回答した。ドナルド・トランプ政権が新たに開始した「包括的経済対話(Comprehensive Economic Dialogue)」も含め、中国経済を開放するための協力的で自発的なメカニズムは大方失敗に終わっている。

成長は更なる経済開放だけでなく、政治的自由化(political liberalization)ももたらすと考えられていた。急成長する中国の中産階級が新たな権利を求め、現実主義的な政府高官たちが更なる進歩に必要な法改正を受け入れるという好循環が、発展によって引き起こされると考えられていた。ソヴィエト連邦が崩壊し、韓国と台湾が民主政体移行を行った後、この進化は特に確かなものに思えた。「外国の思想を国境で阻止しながら、世界の商品やサーヴィスを輸入する方法を発見した国は地球上に存在しない」とジョージ・HW・ブッシュ大統領は宣言した。アメリカの政策は、技術を共有し、貿易と投資を促進し、人と人との交流を促進し、アメリカの大学に何十万人もの中国人留学生を受け入れることによって、このプロセスを促進することを目的としていた。

1989年の天安門広場での民主化デモ参加者たちへの弾圧は、中国における選挙制民主政治体制の台頭への期待を薄れさせた。しかし、アメリカの専門家や政策立案者の多くは、中国政府がより大きな報道の自由を認め、より強力な市民社会(civil society)を許容する一方で、共産党内と地方レベルの両方でより多くの政治的競争を徐々に受け入れることを期待していた。彼らは、1990年代の情報技術革命が、中国市民を更に世界に晒し、開放への経済的インセンティヴを高めることで、そうした傾向を後押しするだろうと考えていた。ビル・クリントン大統領が述べたように、「思考し、質問し、創造する完全な自由がなければ、中国は、国富の最大の源泉が人間の心に宿るものである情報化時代において、完全に開放された社会と競争することになり、明らかに不利な立場に立たされる」ということだった。北京の指導者たちは、個人の自由を認めることによってのみ、中国がハイテクの未来で繁栄できることを理解するようになるだろう、と考えられていた。

しかし、開放の拡大が国内の安定と政権の存続の両方を脅かすのではないかという恐怖から、中国の指導者たちは別のアプローチを模索するようになった。天安門事件の衝撃とソヴィエト連邦の崩壊は、民主化と政治的競争の危険性を示す証拠となった。そのため、北京は開放というポジティブなサイクルを受け入れるのではなく、壁を建設し、国家統制(state control)を強化することでグローバライゼーションの力に対応した。今世紀に入り、経済の減速、政府と軍部における腐敗の蔓延、世界各地での民衆蜂起の不吉な例など、体制に対する更なるストレスによって、権威主義は弱められるどころか、更に強化されている。

実際、過去10年間の出来事は、政治的自由化に対するささやかな希望さえも打ち砕いた。2013年、文書第9号として知られる共産党の内部メモは、「西側の立憲民主主義」やその他の「普遍的価値」を、中国を弱体化させ、不安定化させ、さらには分裂させることを意図した、当て馬(stalking-horses)として、明確な警告を発した。このガイダンスは、中国の政治的将来に対する米中の期待のギャップが広がっていることを示した。アメリカの代表的な中国専門家であるオーヴィル・シェルはつぎのように述べている。「中国は、1980年代の鄧小平よりも、1970年代の毛沢東を彷彿とさせるような政治情勢へと、不可避的に後退しつつある」。今日、ジャーナリスト、宗教指導者、学者、社会活動家、人権派弁護士に対する弾圧が止む気配はなく、2015年だけで300人以上の弁護士、法務助手、活動家が拘束された。

西側の多くの人々が予測したように、中国国民に権力が委譲されるどころか、通信技術は国家の統制力を強め、中国当局が情報の流れをコントロールし、市民の行動を監視するのに役立っている。検閲、拘束、そして中国のインターネットに対する政府の広範なコントロールを認める新しいサイバーセキュリティ法は、中国の「グレート・ファイアウォール(Great Firewall)」内部での政治活動を妨げている。中国の21世紀の権威主義には現在、ビッグデータと人工知能を融合させ、政治的、商業的、社会的、オンライン上の活動に基づいて中国市民に報酬を与え、罰する「社会信用システム(social credit system)」を立ち上げる計画も含まれている。顔認識ソフトウェア(Facial recognition software)は、中国全土に遍在する監視カメラと組み合わされ、国家が数分以内に物理的に人々の居場所を特定することさえ可能にしている。

アメリカ外交とアメリカの軍事力の組み合わせ、つまり、ニンジンと棍棒の組み合わせは、アメリカが主導するアジアの安全保障秩序に挑戦することは不可能であり、またその必要もないと北京を説得するはずだった。クリントン政権が1995年に発表した『国家安全保障戦略』によれば、ワシントンは「近隣諸国を安心させ、自国の安全保障上の懸念を解消するために、中国が地域の安全保障メカニズムに参加することを強力に推進」し、軍事対軍事の関係やその他の信頼醸成措置によってこれを後押しした。このような関与の仕方は、「ヘッジ(hedge)」、すなわちこの地域におけるアメリカの軍事力の強化と、有能な同盟諸国やパートナーによる支援と結びついていた。その結果、アジアにおける軍事的競争が緩和され、地域秩序を変えようとする中国の欲望が更に制限されることになると考えられていた。北京は軍事的充足に落ち着き、狭い地域の不測の事態のために軍備を増強する一方で、そのリソースの大半を国内の必要性に充てるだろうと考えられた。

その論理は、中国が自国の発展のために自称「戦略的な機会の窓(strategic window of opportunity)」に集中しているというような単純なものではなかった。アメリカの政策立案者や学者たちは、中国がソ連から、アメリカとの軍拡競争に巻き込まれた場合の破滅的なコストについて、貴重な教訓を学んだとも考えていた。したがって、ワシントンは中国の侵略を抑止するだけでなく、米国防総省の言葉を借りれば、中国が対抗しようとすることさえ「思いとどまらせる」ことができたのである。レーガン、ブッシュ両政権の高官であったザルマイ・ハリルザドは、アメリカが優位に立てば、「中国指導部に、挑戦の準備は困難であり、追求するのは極めて危険であると確信させることができる」と主張した。加えて、中国がアメリカの優位に挑戦したくてもできるかどうかは不明だった。1990年代後半まで、中国人民解放軍(People’s Liberation Army PLA)はアメリカやアメリカの同盟諸国の軍隊より何十年も遅れていると考えられていた。

このような背景から、アメリカ政府関係者は失敗して中国と対立関係にならないように、相当な注意を払っていた。政治学者のジョセフ・ナイは、ビル・クリントン政権時代に国防総省のアジア担当部署を率いていたときの考え方を次のように説明している。「中国を敵として扱うなら、将来も敵になることが保証されることになる。中国を友人として扱ったとしても、友好関係を保証することはできないが、少なくともより良い結果が生じる可能性を残しておくことはできる」。国務長官に指名されていたコリン・パウエルは、2001年1月の人事承認のための公聴会で、「中国は敵ではない。私たちの課題は、その状態を維持することだ」と述べた。

中国政府は、新たに得た富を軍事力により多く投資するようになっても、ワシントンを安心させようと努め、鄧小平が打ち出した慎重で穏健な外交政策を引き続き堅持する姿勢を示した。2005年、共産党幹部の鄭必堅は本誌に、中国は決して地域の覇権を求めず、「平和的台頭(peaceful rise)」を約束し続けると書いた。2011年、中国の指導者たちの間でギアチェンジの時期かどうかが活発に議論された後、戴秉国国務委員は「平和的発展は中国の戦略的選択である」と世界に断言した。2002年から、米国防総省は連邦議会が義務付けた中国の軍事に関する年次報告書を作成していたが、アメリカ政府高官の間では、中国は依然として遠くに存在するだけの、管理可能な課題であるというのがコンセンサスだった。

しかしながら、このような見方は、中国の指導部がどれほど不安と野心を同時に抱いているかを過小評価していた。北京にとって、アジアにおけるアメリカの同盟関係と軍事的プレゼンスは、台湾、朝鮮半島、東シナ海と南シナ海における中国の利益にとって受け入れがたい脅威であった。北京大学の王緝思教授の言葉を借りれば、「中国では、ワシントンは新興大国を阻止しようとすると強く信じられている。ワシントンは新興大国、特に中国の目標達成と地位向上を阻止しようとするだろう。そこで中国は、アメリカが主導するアジアの安全保障秩序を切り崩し始め、この地域へのアメリカ軍のアクセスを拒否する能力を開発し、ワシントンとその同盟国との間にくさびを打ち込むことにした」ということになる。

結局のところ、アメリカの軍事力もアメリカの外交的関与も、中国が自力で世界トップクラスの軍隊を作ろうとするのを思いとどまらせることはできなかった。イラクやその他の場所でアメリカの力をハイテクで誇示したことは、中国人民解放軍を近代化する努力を加速させただけだった。中国の習近平国家主席は、中国人民解放軍をより殺傷力の高いものにし、中国国外にも軍事力を展開できるようにするための軍事改革を開始した。3隻目の空母を建造中と報じられ、南シナ海に高度な軍事施設を新設し、ジブチに初の海外軍事基地を設置した中国は、アメリカがソ連以来見たことのないような軍事的ライヴァルになる道を歩んでいる。中国の指導者たちはもはや、中国が繁栄するためには「その能力を隠し、その時を待つ(hide [its] capabilities and bide [its] time)」という鄧小平の考えを繰り返すことはない。習近平は2017年10月、「中華民族は立ち上がり、豊かになり、強くなった」と宣言した。

●秩序の制約(THE CONSTRAINTS OF ORDER

第二次世界大戦後、アメリカは世界政治とアジアの地域力学を構造化するのに役立つ制度とルールを構築した。通商と航行の自由、紛争の平和的解決、国際的な課題に対する国際協力など、広く受け入れられた規範は、19世紀の勢力圏に取って代わった。このリベラルな国際秩序の主要な受益者として、北京はこの秩序の維持にかなりの利害関係を持ち、その継続が中国自身の発展にとって不可欠であると考えるようになった。アメリカの政策は、中国を主要な国際機関に迎え入れ、グローバル・ガバナンスや地域の安全保障について中国と協力することで、北京の関与を促すことを目的としていた。

中国が多国間機関に参加するにつれ、アメリカの政策立案者たちは、中国がルールに従うことを学び、やがてその維持に貢献し始めることを期待した。ジョージ・W・ブッシュ(子)政権時代、ロバート・ゼーリック国務副長官が北京に対し、国際システムにおける「責任ある利害関係者(responsible stakeholder)」になるよう呼びかけたのは記憶に新しい。ワシントンの立場からすれば、中国が国際システムから多大な利益を得ている以上、大きな力には大きな義務が伴う。オバマ大統領が強調したように、「私たちは、中国が自分たちを成功に導いたルールを守る手助けをすることを期待している」のだ。

特定の場において、中国は、ばらつきはあるにせよ、着実にこの責任を担っているように見えた。1991年にアジア太平洋経済協力機構(Asia-Pacific Economic Cooperation organizationAPEC)に加盟し、1992年には核拡散防止条約(Nuclear Nonproliferation TreatyNPT)に加盟、2001年には世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)に加盟し、北朝鮮とイランの核兵器開発に対処するための6カ国協議(six-party talks)やP51交渉など、主要な外交努力に参加した。また、国連の海賊対策や平和維持活動にも大きく貢献するようになった。

しかし北京は、アメリカ主導の秩序(U.S.-led order)を構成する他の中心的な要素に脅威を感じ続けており、そうした要素に取って代わろうとする姿勢を強めている。特に、経済制裁や軍事行動も、アメリカやパートナー諸国による国家主権の招かれざる侵害と見なされてきた。例えば、人権侵害から人々を守るために介入する国際社会の権利や責任に関するリベラルな規範は、外国からの干渉から自国の権威主義体制を守ることを最優先とする中国に真っ向からぶつかってきた。いくつかの顕著な例外を除いて、中国は多国間制裁に水を差したり、欧米諸国の非難から政権を守ったり、国連安全保障理事会が介入主義的な行動を承認するのを阻止するためにロシアと共通の大義を作ったりすることに忙殺されてきた。スーダン、シリア、ベネズエラ、ジンバブエなど、多くの非民主的政権がこうした妨害の恩恵を受けている。

中国はまた、既存の機関への関与を深めるのではなく、アメリカを外側に置いて、独自の地域機関や国際機関の構築に着手した。アジアインフラ投資銀行、新開発銀行(ブラジル、ロシア、インド、南アフリカとともに)、そして最も注目すべきは、中国と世界の大部分を結ぶ陸路と海路を建設するという習近平の壮大なヴィジョンである「一帯一路構想(the Belt and Road Initiative)」を立ち上げたことだ。これらの制度やプログラムは、中国に独自の議題設定力や招集力を与える一方で、既存の国際機関が支持する基準や価値観からしばしば逸脱している。北京は、アメリカやヨーロッパの諸大国とは異なり、援助を受ける条件として統治改革を受け入れることを各国に要求しないことで、開発へのアプローチを明確に差別化している。

一方、自国がある地域では、北京は安全保障のバランスを変えることに着手し、アメリカの軍事的反応を刺激しない程度の小さなステップで現状を少しずつ変えている。世界で最も重要な水路の一つである南シナ海で、中国は沿岸警備船や合法的な戦争、経済的な強制力を巧みに利用して、領有権を主張してきた。場合によっては、単に紛争地域を占領したり、人工島を軍事化したりしている。北京は時折、自制心や戦術的な慎重さを見せることもあるが、全体的なアプローチからは、近代的な海洋勢力圏(modern maritime sphere of influence)を築きたいという思惑が伺える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016年夏、中国は国連海洋法条約に基づく法廷による画期的な判決を無視した。同判決は、南シナ海における中国の広範な領有権の主張は国際法上違法であるとした。アメリカ政府高官たちは、圧力や羞恥心、そしてルールに基づく海洋秩序を求める自国の願望が何らかの形で組み合わさり、北京が時間をかけて判決を受け入れるようになるだろうと誤って考えていた。それどころか、中国はそれを真っ向から否定した。判決から1年後の2017年7月、コロラド州アスペンで開催された安全保障フォーラムで、CIAの上級アナリストは、この経験は中国の指導者たちに「国際法に逆らっても逃げ切れることを教えた」と結論づけた。アジア地域の国々は、中国への経済的依存とアメリカのアジアへの関与に対する懸念の高まりの両方によって揺さぶられており、アメリカの政策立案者たちが期待したほどには、中国の自己主張に反発していない。

●現状把握(TAKING STOCK

アメリカの中国政策を牽引してきた前提が次第に弱く見え始め、アメリカの期待と中国の現実とのギャップが拡大するにつれ、ワシントンはその大部分を別の場所に集中させてきた。2001年以来、アメリカの国家安全保障はジハード主義テロとの戦いに費やされ、中国が軍事、外交、商業の面で飛躍的な進歩を遂げつつあったまさにその時期に、アジアの変化から目を逸らしてきた。ジョージ・W・ブッシュ(子)大統領は当初、中国を「戦略的競争相手(strategic competitor)」と呼んでいた。しかし、9月11日の同時多発テロを受け、2002年に発表した国家安全保障戦略では、「世界の諸大国は、テロリストの暴力と混乱という共通の危険によって結束した、同じ側にいることに気づく」と宣言した。バラク・オバマ政権時代には、アジアへの戦略的注目の「軸足(pivot、ピヴォット)」、すなわち「再均衡(rebalancing、リバランシング)」が試みられた。例えば、国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)の中東担当スタッフの数は、東アジア・東南アジア全体の3倍だった。

この戦略的な目移りは、中国に自国の優位性を押し付ける機会を与えたが、その動機となったのは、アメリカが、より広い意味での西側諸国とともに、どうしようもなく急速に衰退しているという見方が中国でますます顕著になっていることだ。中国当局者は、世界金融危機、アフガニスタンとイラクにおける高価な戦争努力、ワシントンにおける深まる機能不全によって、何年も足かせをかけられているアメリカを見ている。習近平は、中国が今世紀半ばまでに「総合的な国力と国際的影響力の面で世界のリーダーになる」ことを求めている。習近平は、中国の発展モデルを「他国にとっての新たな選択肢」として売り込んでいる。

ワシントンは今、近代史上最もダイナミックで手強いライヴァルに直面している。この課題を正しく理解するには、アメリカの対中アプローチを長年特徴付けてきた希望的観測から脱却する必要がある。トランプ政権初の国家安全保障戦略は、アメリカの戦略における過去の前提を問い直すことで、正しい方向への一歩を踏み出した。しかし、二国間の貿易赤字に焦点を絞る、多国間貿易協定を放棄する、同盟の価値を疑問視する、人権や外交を軽視するなど、ドナルド・トランプの政策の多くは、ワシントンが中国に対して、競争的なアプローチではなく、対立的なアプローチを採用する危険性をはらんでいる。

より良いアプローチの出発点は、アメリカが中国を変える能力について新たな謙虚さ(humility)を持つことである。中国を孤立させ弱体化させようとすることも、中国をより良い方向に変えようとすることも、アジアにおけるアメリカの戦略の主軸に据えるべきではない。ワシントンはその代わりに、自国の力と行動、そして同盟諸国やパートナー諸国の力と行動にもっと焦点を当てるべきである。中国についてのより現実的な仮定に基づいた政策を採用することで、アメリカの利益をより向上させ、二国間関係をより持続可能なものにするだろう。そのためには努力が必要だが、最初のステップは比較的容易なものである。

※カート・M・キャンベル:「ジ・アジア・グループ」会長。2009年から2013年まで国務次官補(東アジア・太平洋問題担当)を務めた。

※イーライ・ラトナー:外交評議会マウリス・R・グリーンバーグ記念中国研究上級研究員。2015年から2017年までジョー・バイデン副大統領国家安全保障問題担当次席大統領補佐官を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』が発売になります。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 米コロラド州の最高裁判所は、2024年の大統領選挙共和党予備選挙のコロラド州の選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が候補者としての資格がない、力行方ができない、投票用紙に名前が載せられないという判決を下した。判事7名の投票で賛成4,反対3で判決が出た。私は、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で、アメリカ政治の分析も行った。そして、民主党からは現職のジョー・バイデン大統領が出て、共和党からはドナルド・トランプ前大統領が候補者に選ばれて、本選挙が戦われるが、バイデンが合法・非合法、あらゆる手段を尽くして勝利して、再選すると私は書いた。今回のコロラド州の最高裁の判決はその1つである。

 今回のコロラド最高裁の判決の根拠は、アメリカ合衆国憲法修正第14条第3節「アメリカ合衆国議会議員、国の機関の役人、州議会議員、あるいは州の行政及び司法の役人として、アメリカ合衆国憲法を支持することを以前に誓い、かつそれらに対する反乱に加わった者あるいはその敵に対して援助や同調した者は、アメリカ合衆国下院または上院議員、大統領および副大統領の選挙人、あるいは国または州の公的、軍事的役職に就くことはできない。ただし、アメリカ合衆国議会が各院の議席の3分の2以上で決した場合は、その禁止規定を排除する」である。「ドナルド・トランプがアメリカに対する反乱に加担し、援助したから公職(大統領)に就く資格がない」ということである。

 トランプが反乱に加担し,援助したというのは、2021年1月6日のアメリカ連邦議事堂にトランプ支持者たちが乱入し、死傷者が出た事件を指す。トランプが実際に支持者たちを引き連れて、議事堂内に乱入してはいないが、「教唆(incitement)」があったというのが、トランプ反対派の主張である。裁判で、トランプによる「教唆」を厳密に証明することは大変に難しい。しかし、今回のコロラド州最高裁はそうした証明をすっ飛ばして、「トランプが反乱に加担した」と認定した。これは司法手続きの正当性もないがしろにするものだ。そして、特定の人間の参政権を奪うということで、アメリカの民主政治体制の根幹も揺るがすものである。

 今回のコロラド州最高裁の判決の効力は、「コロラド州で実施される大統領選挙共和党予備選挙」に限定されるものだ。トランプの立候補資格の差し止めは、ニューハンプシャー、ミネソタ、ミシガンの各州でも裁判が起こされていたが、いずれも差し止めには至っていない。このような異常なことを求める裁判が全米各地で起こされて、裁判合戦になることは、共和党予備選挙の実施の妨害にもつながる。このような裁判を起こしているのは、リベラル派の「ワシントンの責任と倫理のための市民(Citizens for Responsibility and Ethics in WashingtonCREW)」という政治監視団体だ。この団体は、トランプ政経時代から、トランプをターゲットにして活動してきた。非営利団体で、政治活動に制限があるはずなのに、このような政治活動を行っていることについて批判がある。

 「ジョー・バイデンを勝たせるためには何でもする」「人気がないバイデンは普通にやっていたのでは勝てないので何でもやる」というのが、民主党だけではなく、アメリカの原稿の国内体制から利益を得ている人々のコンセンサスである。しかし、こうして、司法手続きの正当性や民主政治体制(デモクラシー)の正当性を傷つける行為が続けば、アメリカのデモクラシーは崩壊する。そうなれば行きつく先は、アメリカの国家解体(分裂)である。

(貼り付けはじめ)

【米大統領選2024】 トランプ氏の立候補資格を認めず コロラド州最高裁

BBC JAPAN 2023年12月20日 15時19分

https://www.bbc.com/japanese/67769200

米コロラド州の最高裁判所は19日、ドナルド・トランプ前大統領について、来年の大統領選の同州予備選に立候補することはできないとの判断を示した。反乱に関する憲法の修正条項を理由とした。

州最高裁は43で、トランプ氏に大統領選の州予備選の候補者となる資格はないと判断した。

大統領候補の資格の剥奪に、合衆国憲法修正第143項が使われたのは初めて。同項は、憲法の擁護を宣誓して公職に就いた者について、アメリカに対する反乱や謀反に関わった場合は再び公職に就くことを禁じている。

トランプ氏を投票の対象から除外する試みは、これまでもニューハンプシャー、ミネソタ、ミシガンの各州であったが、どれも失敗に終わっていた。

この日の判断は上訴が可能。最も早くて来月4日までは効力をもたない。

コロラド州以外には適用されないほか、来年35日の共和党の州予備選にのみ適用される。ただ、11月の大統領選に影響を与える可能性はある。

トランプ氏側は、連邦最高裁に「速やかに上告する」としている。同裁判所は保守派が63で多数派となっている。

●州地裁の判断を覆す

コロラド州では地裁が先月、憲法修正第14条の禁止規定は大統領には適用されないとの判断を示していた。大統領について明記していないというのが理由だった。

ただ地裁は、トランプ氏が20211月の連邦議会襲撃に加わったと認定した。この襲撃では、トランプ氏の支持者らが、ジョー・バイデン大統領の大統領選での勝利を承認中の議会になだれ込んだ。

州最高裁の今回の判断は、地裁の判断を覆すものとなった。

州最高裁の判事らは判決文で、「私たちは気軽な気持ちでこの結論に達してはいない。眼前の問題の大きさと重さに留意している」と説明。「同様に私たちは、法を適用する厳粛な義務にも留意している」とした。

反対意見を述べた判事3人の1人、カルロス・サムール判事は、「候補者について過去に恐ろしい行為を犯したと確信しても、たとえそれが反乱への関与であっても、公職に就く資格を剥奪すると私たちが宣言する前に、適正な手続きが必要だ」と書いた。

●トランプ陣営は判決を非難

トランプ陣営の広報担当のスティーヴン・チャン氏は声明で、今回の判決を「まったく欠陥がある」と批判。判事(全員が民主党の知事による任命)を非難した。

チャン氏はまた、与党・民主党の指導者らについて、「失敗したバイデン政権を信頼していないが、アメリカの有権者が来年11月にバイデン政権を退陣させるのを阻むことに全力を尽くしている」とした。

トランプ氏は判決が出た後、アイオワ州で演説したが、判決には触れなかった。

●原告は歓迎

再選を目指すバイデン氏の選挙陣営は、今回の判決に関してコメントを避けた。

ただ、陣営に関わっている民主党幹部は、今回の判決は連邦議会襲撃が反乱未遂だったとする民主党の主張を支えるものであり、同党の助けになるだろうと、BBCが提携する米CBSに話した。

野党・共和党の議員らは、今回の判決を非難している。マイク・ジョンソン下院議長は判決を「見え透いた党派攻撃」と非難した。

「政治的な所属に関係なく、投票権のあるすべての国民は、前大統領であり、かつ共和党予備選に関するすべての世論調査でリードしている人物を支持する権利を否定されるべきではない」

この裁判を起こした 監視団体「ワシントンの責任と倫理のための市民(CREW)」は判決を歓迎。

ノア・ブックバインダー代表は「歴史的で正当であるだけでなく、私たちの国の民主主義の未来を守るために必要なものだ」との声明を出した。

トランプ氏は前回の大統領選では、コロラド州で大差で敗れた。

トランプ氏は現在、4件の刑事裁判で被告となっている。うち2件は、ジョージア州で選挙結果を覆そうとしたとして、連邦政府と州政府の検察がそれぞれ起訴したもの。

(英語記事 Trump disqualified from 2024 ballot in Colorado

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』が発売になる。今回の記事は、最新刊の中で言及した人物たちの重要な論文をご紹介する。論文の著者はカート・M・キャンベルとイーライ・ラトナーだ。それぞれ、前著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』でも詳しくご紹介し、最新刊でも取り上げているが、バイデン政権におけるアジア政策立案の主要人物たちである。キャンベルはバイデン政権で、ホワイトハウスの国家安全保障会議(National Security Council)のインド・太平洋調整官(Coordinator for the Indo-Pacific)を務め、最近になって、米国務副長官(Deputy Secretary)に指名された人物である。ラトナーは、米国防次官補(インド太平洋安全保障担当)を務めている。ここで重要なのは、両者の肩書についている「インド太平洋」という言葉だ。これは、アメリカが対中封じ込めのために生み出した言葉である。アジアへ軸足を移す、Pivot to Asiaという、ヒラリー・クリントン国務長官が打ち出した重要な概念が根底にある。
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カート・キャンベル
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イーライ・ラトナー

 下の記事で重要なのは、アメリカがあくまで中国と潰し合いにならないようにしながら、競争していくということだ。そして、アメリカ一国では中国に対応できる段階を過ぎており、アジア地域の同盟諸国だけではなく、ヨーロッパ諸国にも対中封じ込めに参加させるということだ。ウクライナ戦争勃発後、NATOは対中、対ロシア政策のために、アジア太平洋地域への進出を企図し、東京に事務所を設置するということを発表した。それに対して、フランスが反対論を唱えている。また、キャンベルが肝いりでスタートさせた、日米豪印4カ国のQUAD(クアッド)や米英豪3か国のAUKUS(オーカス)という枠組みは、対中封じ込めのための枠組みである。しかし、オーストラリアとインドは米中両にらみの形を取り、日本だけが真面目にアメリカ一辺倒の姿勢を取っている。こうしたことを最新刊で詳しく取り上げている。

 下に掲載した論文が発表されたのが2014年だ。今から10年も前のことだが、この論文に書かれていることが現在、実現している。著者のキャンベルとラトナーは、2016年の選挙でヒラリー・クリントンが勝利することを前提にして、論文を書いたと思われる。そして、2017年のヒラリー政権で、現在と同じような役職に就いて、対中封じ込め政策を行おうと考えていただろう。それが、ドナルド・トランプの勝利によって4年ずれたということになる。こうした重要論文を読むことは、これから先を予想する上でも非常に重要なのである。

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極東の誓約(Far Eastern Promises

-ワシントンがアジアに集中すべき理由

カート・キャンベル、イーライ・ラトナー筆

2014年5・6月号

『フォーリン・アフェアーズ』誌

https://www.foreignaffairs.com/articles/east-asia/2014-04-18/far-eastern-promises

アメリカは、アジア太平洋地域により大きな関心と資源を投入するために外交政策を方向転換する(reorienting its foreign policy to commit greater attention and resources to the Asia-Pacific region)という、重大な国家プロジェクトの初期段階にある。このアメリカの優先事項の再定義は、南アジアと中東への10年以上にわたる熱心な関与の後、戦略的再評価が切望されている時期に現れたものである。この地域はアメリカのリーダーシップを歓迎し、政治的、経済的、軍事的投資に対するプラスの見返りによってアメリカの関与に報いる地域である。

その結果、オバマ政権は、アジアへの「軸足移動(ピヴォット、pivot)」「再均衡(リバランシング、rebalancing)」として知られる外交、経済、安全保障の包括的な構想を打ち出している。この政策は、クリントン政権とジョージ・W・ブッシュ政権による重要な措置を含め、1世紀以上にわたってアメリカがこの地域に関与してきたことを基礎としている。バラク・オバマ大統領が正しく指摘しているように、アメリカは現実的にも、レトリック上も、既に「太平洋の大国(Pacific power)」である。しかし、リバランシングは、アメリカの外交政策におけるアジアの位置づけを大幅に引き上げるものである。

ヒラリー・クリントン国務長官が2011年に『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿した論文で、この戦略の最も明確な表現である「ピヴォット」という言葉を初めて使ったときから、新しいアプローチの目的と範囲に関する疑問が浮上していた。それから約3年、オバマ政権はいまだにこの概念を説明し、その約束を果たすという難題に直面している。しかし、この政策が直面した厳しい監視や短期的な挫折にもかかわらず、大きな転換が進行中であることは疑いない。そして、ワシントンが望むと望まざるとにかかわらず、アジア地域の繁栄と影響力の増大、そしてアジア地域が突きつける巨大な課題のおかげで、アジアはアメリカからより多くの注目と資源を集めることになるだろう。問題は、アメリカがアジアを重視するかどうかではなく、必要な決意と資源と知恵をもってアジアを重視できるかどうかである。

●東向きにそして南下(EASTBOUND AND DOWN

アジア太平洋地域には、逃れられない引力がある。世界人口の半分以上が居住し、世界最大の民主政治体制国家(インド)、第2位と第3位の経済大国(中国と日本)、最も人口の多いイスラム教徒国家(インドネシア)、そして10大軍隊のうち7つが存在する。アジア開発銀行は、今世紀半ばまでにこの地域が世界の経済生産の半分を占め、世界10大経済大国のうちの4つ(中国、インド、インドネシア、日本)を占めるようになると予測している。

しかし、アジアをこれほど重要な地域にしているのは、そのめまぐるしい規模だけでなく、進化の軌跡である。フリーダム・ハウスによれば、過去5年間、アジア太平洋地域は世界で唯一、政治的権利(political rights)と市民的自由(civil liberties)において着実な改善を記録してきた。また、新興市場(emerging markets)が急速な経済成長を維持できるのかという疑問があるにもかかわらず、アジア諸国は、低迷し不透明な世界経済の中で、依然として最も有望なビジネスチャンスの一端を担っている。同時にアジアは、北朝鮮の挑発的な行動、地域全体の国防予算の増大、東シナ海や南シナ海での関係を揺るがす厄介な海洋紛争、自然災害や人身売買、麻薬取引といった非伝統的な安全保障上の脅威など、慢性的な不安定要因(sources of chronic instability)とも闘っている。

アメリカは、アジアが今後どのような道を歩むかについて、否定できないほどはっきりした関心を持っている。アメリカ国勢調査局によれば、アジアはアメリカの主要輸出先であり、ヨーロッパを50%以上も上回っている。アメリカ経済分析局によれば、アメリカの対アジア直接投資とアジアの対米直接投資はともに過去10年間で約2倍に増加しており、アメリカの海外直接投資先として最も急成長している10ヵ国のうち4カ国を中国、インド、シンガポール、韓国が占めている。アメリカはまた、この地域に5つの防衛条約の同盟国(オーストラリア、日本、フィリピン、韓国、タイ)を持ち、ブルネイ、インド、インドネシア、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、台湾とは戦略的に重要なパートナーシップを結んでいる。日本と韓国にある主要な米軍基地は、ワシントンがアジアとそれ以外で力を発揮するための中心的存在である。

アメリカの軍事同盟は数十年にわたり、この地域の安全保障を支えてきたが、軸足移動の主な目的の一つは、そうした結びつきを深めることにある。近年ワシントンは、大国間の紛争を防ぎ、シーレーンを開放し、過激主義と闘い、非伝統的な安全保障上の脅威に対処するよう、アジアのパートナーに働きかけている。日本と韓国はアメリカとの共同作戦でますます重要な役割を担う態勢を整え、アメリカ軍はオーストラリアと協力して水陸両用能力を開発し、フィリピンと協力して自国の海岸を取り締まる能力を高めている。その結果、より強力な同盟関係と、より安全な地域が実現した。

これらは、いずれも中国を包囲したり、弱体化させたりする努力を示唆するものではない。それどころか、北京との関係をより強固で生産的なものにすることは、リバランシング戦略の主要な目標である。中国を封じ込めようとするどころか、アメリカはここ数年、前例のないほど頻繁なトップレヴェルの会談を通じて、より成熟した二国間関係を構築しようと努めてきた。軍事対軍事の関係さえも軌道に乗りつつあり、時には北京が提案する活動レヴェルに米国防総省がついていけないこともある。

●アジアへ軸足を移す、そしてアジア域内で軸足を築く(A PIVOT TO -- AND WITHIN – ASIA

リバランシング戦略はまた、アジア太平洋地域の多国間機関へのアメリカの関与(U.S. engagement)を大幅に増やすことも求めている。オバマ政権の下、アメリカは東アジア地域の首脳が毎年集う東アジア・サミットに加盟し、東南アジア友好協力条約に調印して東南アジア諸国連合(ASEAN、アセアン)に対するアメリカの関与を強化し、ジャカルタにアセアン担当の常任大使を置いた。これらの重複する制度は、そのスローペースとコンセンサスの必要性から不満が溜まることもあるが、地域協力を促進し、国境を越えた複雑な課題に対処するためのルールとメカニズムのシステム構築に役立っている。たとえば2013年6月、アセアンは18カ国から3000人以上が参加した初の人道支援・災害救援演習を開催した。

一方、アメリカは、アジア太平洋地域がますます世界経済の成長を牽引するという新たな現実に対応している。オバマ政権は、2012年に米韓自由貿易協定を発効させ、12カ国による大規模な自由貿易協定である環太平洋パートナーシップ協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)の交渉完了を強力に推し進めることで、アメリカの経済的利益を促進してきた。TPP交渉に参加する国の多くは、マレーシアやシンガポールなど東南アジアの活気ある市場であり、この地域の地政学的重要性(geopolitical importance of that subregion)の高まりを反映している。実際、アメリカのアジアへの軸足を移すことは、アジア内での軸足を築くことである。ワシントンは、北東アジア諸国への歴史的な重点を、インドネシア、フィリピン、ヴェトナムといった東南アジア諸国への新たな関心とバランスを取りながら、世界で最も活気のある経済圏のいくつかとの双方向の貿易と投資を強化しようとしている。2010年、ワシントンとジャカルタは、医療、科学技術、起業家精神など幅広い分野での協力を深めるため、「包括的パートナーシップ(comprehensive partnership)」を締結した。

米国防総省が同地域の軍事態勢に変更を加えたのも、同地域におけるアメリカの優先順位を再調整したいという同様の願望が背景にある。北東アジアの米軍基地は、ワシントンの戦力投射(to project power)や戦争遂行能力の中心であり続けているが、ミサイル攻撃に対してはますます脆弱になっており、南シナ海やインド洋における潜在的な災害や危機からは比較的遠い場所にある。一方、東南アジアの国々がアメリカの軍事訓練や災害対応への援助を受けることに関心を高めていることから、アメリカはこの地域における軍事的足跡を多様化し、オーストラリアのダーウィンに数百人のアメリカ海兵隊を駐留させ、シンガポールに2隻の沿岸戦闘艦を配備している。

アメリカ軍の姿勢に対するこうした変更は、挑発的である(provocative)、もしくは無意味である(meaningless)と批判されている。どちらの容疑も的外れだ。こうした取り組みは攻撃性を示すものではない。彼らは主に自然災害への対応などの平時の活動に貢献しており、アメリカの戦闘能力には貢献していない。そして、参加した海兵隊員や艦船の数が一見控えめに見えることは、アメリカ軍との共同演習や訓練の比類のない機会を得ることができる、アメリカのパートナー諸国の軍隊に提供する大きな利益を覆い隠している。

オバマ政権はアジアへの軸足を移すことで、アメリカの経済的・安全保障的利益を高めるだけでなく、文化的・人的交流を深めることを目指している。オバマ政権はさらに、この軸足の移動によって、アメリカがこの地域の人権と民主政治体制を支援することを期待している。ミャンマー政府は、政治犯の釈放、長年の懸案であった経済改革の実施、組織的権利の促進や報道の自由拡大など、目覚ましい前進を遂げている。特に少数民族の保護など、さらなる進展が必要ではあるが、ミャンマーはかつて閉鎖的で残忍だった国が変革の一歩を踏み出した強力な例であり、アメリカは当初からこの改革努力にとっての不可欠なパートナーであった。

●外交政策は決してゼロサムゲームではない(FOREIGN POLICY IS NOT A ZERO-SUM GAME

ピヴオット反対派は、主に3つの反対論を唱えている。第一に、ピヴォットによって不必要に中国と敵対することを懸念する声がある。この誤解は、北京との関与を深めることがリバランシング政策の中心的かつ反論の余地のない特徴であるという事実を無視している。新たなアプローチの例としては、「米中戦略・経済対話(U.S.-China Strategic and Economic Dialogue、米国務・財務長官と中国側担当者が出席する包括的な一連の会議)」の年次開催や、「戦略的安全保障対話(Strategic Security Dialogue)」の設置が挙げられる。戦略的安全保障対話では、日中両国は海上安全保障やサイバーセキュリティといった機密事項について、これまでにないハイレヴェルの話し合いを行ってきた。アジアにおけるアメリカ軍のプレゼンスが高まり、ワシントンが中国の近隣諸国への働きかけを強めているため、緊張が高まるかもしれない。しかし、米中二国間の関係は、ピヴォットによって生じるいかなる意見の相違も、より安定し協力的な米中関係という広い文脈の中で対処されるような形で発展している。

第二の反対論は、アフガニスタンやシリアでの紛争、エジプトやイラクでの不安定な情勢、イランと欧米諸大国との長期にわたる対立を考えれば、ワシントンの焦点を中東からアジアに移すのは賢明でない、あるいは非現実的だという主張から生じている。しかし、この批判はリバランシング戦略を表面上でとらえての浅い理解に依拠している。この見方によれば、中東と南アジアは米国の力(power)と威信(dignity)を奪っており、ピヴォットは実際には、より平和で収益性の高いアジア太平洋の海岸に目を向けることで、切り捨てて逃げ出そうとしているということになる。オバマ政権が中東におけるアメリカの存在感を減らそうとしているのは確かだ。しかし、資源は有限であるとは言いながら、外交政策はゼロサムゲームではない。アジアにより多くの関心を払うことは、中東での戦略的敗北を認めることになるという批判は、決定的な現実を見逃している。過去10年間、ワシントンがより多くの関心を払いたいと考えているアジア諸国は、中東と南アジア全域の平和と安定の推進に大きな利害関係を静かに築いており、アメリカがこれらの地域での影響力を維持することを強く望んでいる。

つい最近までは、アジア諸国の大半は自国の開発ばかりに関心を寄せ、他地域の問題は他人事と考える傾向があった。ジョージ・W・ブッシュ大統領のアジア政策の最も重要な成功の一つは、この地域の新興大国(region’s rising powers)が世界の他の地域でより多くの貢献をするよう促したことだ。ブッシュ政権下で、多くの東アジア諸国政府は初めて「地域外(out of area)」という視点を打ち出し、中東や南アジアでの外交、開発、安全保障により多く関与するようになった。日本はアフガニスタンの市民社会発展(civil society development)の主要な支援者となり、学校や市民団体に資金を提供し、刑事司法、教育、医療、農業の分野でアフガニスタンの人々を訓練した。「アラブの春(Arab Spring)」をきっかけにして、韓国は中東全域の開発を支援し始めた。インドネシア、マレーシア、タイは、アフガニスタンとイラクの医師、警察官、教師の訓練プログラムに物資援助を提供し、オーストラリアとニュージーランドはアフガニスタンで戦うために特殊部隊を派遣した。中国でさえも、イランの核開発への野心を抑制し、公海上の海賊行為に対処し、アフガニスタンの将来を形作ることを目的とした舞台裏の、非公式の外交(behind-the-scenes diplomacy)により積極的である。

もちろん、ワシントンからの働きかけは、アジア諸国が中東への関与を強めている要因の一つにすぎない。アジアは毎日約3000万バレルの石油を消費しており、その量はEUの2倍以上である。アジア各国の政府は、アメリカが中東から早急に撤退すれば、自国のエネルギー安全保障と経済成長に受け入れがたいリスクが伴うことを知っている。その結果、彼らは10年以上にわたって、アメリカの安定化の役割を代替するのではなく、補完するために、中東に多額の政治的・財政的資本を投資し、場合によっては軍を派遣してきた。端的に言えば、ワシントンのアジアのパートナーは、軸足の移動を支持するが、アメリカが中東から離脱するという見通しを支持することはないだろう。

軸足移動方針に反対する3つ目の反対論は、予算削減の時期におけるこのアプローチの持続可能性(sustainability)に関するものである。国防費が減少する中、懐疑論者たちは、アメリカがアジア地域の同盟諸国を安心させ、挑発しようとする者たちを思いとどまらせるために必要な資源をどのように投資できるのか疑問に思っている。特に中国の力と影響力が増大し続けている中で。答えは、アジアに向けたリバランスには劇的な新たな資金は必要ない、ということだ。むしろ、米国防総省はより柔軟になり、より良い支出方法を見つける必要があるだろう。例えば、アメリカは陸軍全体の規模を縮小する中で、アジアにおける軍事的プレゼンスを維持し、地域の安全保障環境により適した海空軍の能力に投資すべきだ。そして、アメリカの国防費がすぐには大幅に増加する可能性が低いことを考慮すると、アメリカ政府は、より多くの教育的および専門的交流を実施し、多国間軍事演習を強化し、アメリカ軍が不要になった装備を引き継ぎ、アジア各国の軍事能力を向上させるために共同計画を推進するなど、努力を行うべきだ。

●バランス(均衡)を取る行動(BALANCING ACT

リバランスに反対する最も一般的な議論は精査に耐えないが、それでもこの政策は大きな課題に直面している。その最たるものが人的資本の不足であろう。10年以上にわたる戦争と反乱に対する闘争の後、アメリカはイラクにおける民族間の対立、アフガニスタンにおける部族間の違い、紛争後の復興戦略、アメリカ軍特殊部隊と無人機の戦術に精通した兵士、外交官、情報専門家の全世代を育成し、登用してきた。しかしワシントンは、アメリカ政府全体にアジア専門家たちの持続的な幹部を育成するための同等の努力をしておらず、驚くほど多くの政府高官が、キャリアの終わりに近い高官の地位に就いてから初めてこの地域を訪問している。どんなに優秀な公務員であっても、アジアでの経験がなければアジアの複雑な問題に対処するのは難しいからだ。したがって、アジアへの軸足移動は、米国防総省だけでなく、非軍事部門の政府機関の予算にも影響を与えるだろう。なぜなら、アメリカは、アメリカの外交官、援助要員、通商交渉担当者、情報専門家たちが、仕事をうまくこなすために必要な語学力とアジアでの経験を確保するために、より多くの投資を行うからである。

軸足移動はまた、他の地域、特に中東が確実に供給し続ける危機の着実な流れに振り回されることになるだろう。同時に、「アメリカ軍の帰国」を求める圧力が強まることも間違いなさそうだ。第一次世界大戦から1990年から91年にかけての湾岸戦争に至るまで、アメリカの近代的な紛争は全て、国民が政治家や政府関係者に国内問題に集中するよう圧力をかけてきた。過去13年間に起きた各戦争は、この本能的な偏狭さ(instinctive insularity)を再び引き起こした。金融危機後の経済回復が遅々として進まないことにアメリカ国民が苛立ちを募らせており、偏狭さが増大している。アメリカ政治には国際主義や強力な防衛を求めることで起きるひずみが依然として存在するが、アメリカ連邦議会には、アメリカが海外に関与することは、たとえアジアのような、アメリカの経済的安寧にとって重要な地域であっても、より困難な新時代を迎えるかもしれないという微妙な(そしてそうでない)兆候が出現しつつある。アジアに関しては、オバマ政権の残り数年間、そしてそれ以降も、やるべきことは山積している。

●軸足移動を行うためのパートナー諸国(PIVOT PARTNERS

アジアでは、経済と安全保障は切っても切れない関係にあり、アメリカは軍事力だけではリーダーシップを維持できない。だからこそ、TPPを成功させることは、海外でも議会でも厳しい交渉を必要とするが、最優先事項なのである。この協定はアメリカ経済に即効的に利益をもたらし、保護主義に引きずられることのない長期的な貿易システムをアジアに構築するだろう。交渉においてアメリカにさらなる影響力を与えるため、連邦議会は貿易促進に関する迅速な権限を速やかに復活させるべきだ。この制度の下で、TPPやその他の自由貿易協定を交渉した後、ホワイトハウスは連邦議会での賛否を問う投票を実施するように働きかける。オバマ政権はまた、アメリカのエネルギーブームを活用し、アジアへの液化天然ガスの輸出を加速させ、アジアにおける同盟諸国やパートナー諸国のエネルギー安全保障を強化するとともに、アジアの発展に対するアメリカの強い関与を示すべきである。

南シナ海における潜在的な危機を管理する一方で、イランと北朝鮮に対するアプローチの協調を強めることで、ワシントンと北京の深化し続ける関与はすでに成果を上げている。しかし、1998年にビル・クリントン大統領が表現したように、「戦略的パートナー(strategic partner)」であると同時に、後にジョージ・W・ブッシュ(子)大統領が表現したように、「戦略的競争相手(strategic competitor)」でもある、台頭する中国との関係をうまく取り扱うことは、アメリカにとってますます難しくなっている。

中国が東シナ海と南シナ海における領有権の現状を変えようとしていること、たとえば、東シナ海で日本が管理する島々の上に「防空識別圏(air defense identification zone)」を設定することは、当面の課題である。アメリカは中国に対し、修正主義的な行動は安定した米中関係、ましてや習近平国家主席がオバマ大統領に提案した「新しいタイプの主要国関係(new type of major-country relationship)」とは相容れないことを明確にしなければならないだろう。ワシントンは最近、政権高官たちが中国の広範な領有権主張の合法性に公の場で疑問を呈し、南シナ海に2つ目の防空識別圏を設定することに警告を発したことで、正しい方向へ進むための一歩を踏み出した。

東シナ海の向こう側では、日本の安倍晋三首相が数十年にわたる経済停滞から脱却し、日本に新たな誇りと影響力を与えようとしている。ワシントンは東京に対し、特に日本の帝国主義的過去をめぐる論争に関しては、自制心と繊細さ(restraint and sensitivity)をもって行動するよう促し続けなければならないだろう。安倍首相は最近、靖国神社を参拝した。靖国神社には、第二次世界大戦中に犯した戦争犯罪で有罪判決を受けた人々を含む、日本の戦没者が祀られている。この参拝は、国内では安倍首相を支持する政治家もいたかもしれないが、国際的には高い代償となった(The visit might have helped him with some political constituencies at home, but the international costs were high)。ワシントンにおいては疑問が生じ、韓国との関係をさらに悪化させ、中国は安倍首相が政権を握っている限り、日本と直接交渉したくないという姿勢を強めた。

この緊迫した外交情勢の中で、アメリカは、日本がアジア地域と世界において安全保障上の役割をより積極的に果たせるよう、日本の自衛隊と協力することになる。これには、実際には完全に合理的な措置であり、長い間待ち望まれていたにもかかわらず、日本の憲法再解釈と軍事近代化を反動的または軍国主義的であると特徴づける中国のプロパガンダに対抗することが含まれる。アメリカはまた、日韓関係改善に多大な政治資本を注ぎ続けなければならないだろう。この日韓二国間の関係強化は、北朝鮮がもたらす巨大かつ増大する脅威に対処するのに役立つだろう。

東南アジアの課題は北東アジアの課題とはまったく異なるが、アメリカの国益にとって重要であることに変わりはない。カンボジア、マレーシア、ミャンマー、タイを含む東南アジアの多くの国々は、程度の差こそあれ、外交政策を変更しかねない政治的混乱を経験している。このような状況の中で、ワシントンは民主政治体制と人権の基本原則を守らなければならないが、その際、独断的に行ったり、アメリカの影響力を低下させたりするようなことをしてはならない。勝者に賭けるのではなく、教育、貧困削減、自然災害への対応など、誰が政権を握ろうともこの地域の人々にとって最も重要な問題に焦点を当てることが最善のアプローチとなるだろう。

アジアの多国間フォーラムへのアメリカの参加を増やすことに加え、ワシントンは、南シナ海の主権紛争に対処するために国際法と仲裁を利用する努力を全面的に支援することによって、ルールに基づく地域秩序の発展を支援すべきである。フィリピンは、中国と競合する領有権を国際海洋法裁判所に提訴した。具体的な主張の是非について、今のところ判断を下すことなく、ワシントンはアジア地域の全ての国に対し、このメカニズムを公に支持するよう呼びかけることで、国際的なコンセンサス(合意)を形成する手助けをすべきだ。

アメリカは単独でアジアへのリバランスを行うことはできない。国際法や制度構築などの分野で多大な貢献ができるヨーロッパ諸国の参加が不可欠である。二国間関係が許せば、ワシントンはインドやロシアとも東アジアにおける協力拡大の機会を探るべきだ。そしてもちろん、この地域、特に東南アジアの国々が、アメリカの努力を補完するリーダーシップとイニシアティヴ(主導権)を発揮することも必要である。アジアへの軸足移動の重要点は、各国政府が強制や武力ではなく、ルールや規範、制度を使って対立を解決する、開かれた平和で豊かな地域を育成することである。アジアへの軸足移動はアメリカのイニシアティヴであるが、その最終的な成功はワシントンだけが実現するものではない。

※カート・キャンベル(KURT M. CAMPBELL):アジア・グループ会長兼CEO。2009年から2013年まで米国務次官補(東アジア・太平洋担当)。イーライ・ラトナー(ELY RATNER):新アメリカ安全保障センター上級研究員、アジア太平洋安全保障プログラム副部長。ツイッターアカウント: @elyratner

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 最初に最新刊の宣伝をします。2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』が発売になります。年末年始の読書計画の1冊にお加えください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2022年2月24日に始まったウクライナ戦争は、2023年中も継続し、2024年になろうとしている。ウクライナ戦争は世界中の人々の生活を直撃した。石油価格の高騰のために、物価高が引き起こされた。日本でも電気料金の値上げや生活必需品価格の高騰が起きている。戦争当事国のロシアは石油や天然ガスなどのエネルギー資源の輸出国として知られ、ヨーロッパ諸国はロシアに依存していた。それがウクライナ戦争によって安いロシアからの石油が入らなくなり、代替としてアメリカからの高い石油や天然ガスを輸入せざるを得なくなり、生活は苦しくなっている。

 昨年、「ウクライナ戦争はエネルギー構造を変革するための良いきっかけだ」という内容の論稿が発表されていた。著者のメーガン・オサリヴァンは、2003年から2023年まで、アメリカの外交評議会会長リチャード・ハースの片腕的存在である。オサリヴァンはアメリカの外交政策に影響を与えることができる存在だ。
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メーガン・オサリヴァン
 オサリヴァンは、環境保護のために、石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料に依存する構造を変革する必要があり、ウクライナ戦争はそのための絶好の機会となると主張している。外国からのエネルギー資源輸入に頼っているのは国家安全保障上好ましくないので、そこを変革するということを述べている。こうした主張は、2001年の同時多発テロ事件発生後にもなされていた。そして、保守派と環境保護派が呉越同舟で、「石油に頼らないようにする」と盛んに喧伝していた。保守派の政治家とハリウッドのリベラルに見せたい有名俳優たちがこぞって、トヨタのプリウスを購入し、それに乗っている姿をメディアに撮影させていたことを思い出す。しかし、その後はそうした主張は下火になっていたが、オサリヴァンはそうした主張を再び俎上に載せようとしている。

 こうした議論は一見すると、環境保護につながるし良いことだと思われるかもしれないが、物事には表もあれば、裏もある。裏の理由は、アメリカで産出されるシェールオイルと天然ガスをヨーロッパ諸国や日本に輸出しようというものだ。これらの国々をアメリカに依存させようというものだ。そのために、アメリカは、ロシアからドイツに天然ガスを送っていたパイプラインであるノルドストリームを爆破して使えなくした。結果として、ドイツは物理的にロシアからの安い天然ガスを輸入できなくなり、アメリカからの高いエネルギー資源を買わざるを得なくなった。こうしたことは最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で詳述している。

 アメリカがきれいごとを言う時には、必ず裏があるということを世界各国は良く知っている。それをよく分からないでほいほいと受け入れてしまうのは日本の悪いところだ。まず、「アメリカを疑う」という姿勢を身に着けるところから、私たちは始めなければならない。

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ウクライナ危機はエネルギーと気候の協力のための貴重な機会を提供する(The Ukraine Crisis Offers a Rare Chance for Energy and Climate Cooperation

-ロシアのウクライナ戦争は、世界のエネルギー需要に関するいくつかの困難な真実を露呈した。

ジェイソン・ボードフ、メーガン・L・オサリヴァン筆

2022年4月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/04/18/ukraine-russia-war-oil-energy-climate-gas-prices/

夏のドライヴシーズンを前に、アメリカのガソリン価格は過去最高値に近い水準にある。しかし、そろそろ回復の兆しが見えてきた。原油価格の下落により、今後数週間のうちにガソリン価格は1ガロンあたり4ドルを下回る見込みだ。

原油価格下落の主な原因は、ジョー・バイデン政権が最近発表したアメリカ史上最大規模の戦略備蓄原油(strategic stockpiles)の放出と、それに続くヨーロッパ諸国の小規模ながら効果的な放出にある。バイデン米大統領は、この動きを説明する中で、世界の現在のエネルギー需要を満たすためには、現時点ではより多くの化石燃料が必要であるという難しい事実を認めた。しかし、バイデンはもう一つの困難な真実も認めている。それは、世界はクリーンエネルギーの未来に向かってより迅速に動く必要があるということだ。

このエネルギーの2つのステップこそが、世界が現在のロシアとの危機をうまく切り抜け、よりクリーンなエネルギーの未来を確保する唯一の方法なのである。この2つの目標を達成するためには、エネルギー論議における現在の隔たりを埋めるとともに、気候専門科学者、環境保護論者、国家安全保障分野のタカ派、石油・ガス産業が、今日のエネルギー需要を満たし、明日の化石燃料の需要を大幅に削減することを支持する連合体を形成することが必要だ。

超党派の連合というと政治的な印象を受けるかもしれないが、そのような連合には前例がある。2001年9月11日の同時多発テロとアメリカのイラク侵攻をきっかけに、保守的な国家安全保障論者たちが環境活動家と手を組み、石油の輸入は、国家安全保障と環境の両面にリスクがあるとして、2025年までに石油使用量を半分にするように連邦議会に対して要求したのが2004年のことだった。それから20年近くが経過したが、アメリカのフラッキングブームで一息ついた、保守派と環境保護派の連合については忘れられてしまい、アメリカの石油需要は変化していない。

 

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の後、国家安全保障を理由に、この連合を復活させる機会が再び到来している。ウクライナ侵攻は、当面のエネルギー需要に対応する必要性から、ウラジーミル・プーティン大統領に十分な圧力をかける手段が限られていることを露呈している。ドイツのショルツ首相は、ロシアの石油を禁輸すれば、「わが国とヨーロッパ全体を不況に陥れることになる」と述べている。ドイツの駐米大使もツイッターで同じことを主張したばかりだ。一方、今回の危機は、化石燃料への依存を減らすための集団的な失敗が、世界を地政学的な脅迫(geopolitical blackmail)に対して脆弱な状態にしていることも明らかにした。

ウクライナ侵攻から6週間が経過したばかりの段階で、2つの点が明白になったようだ。それらは、「アメリカは、当面のエネルギー安全保障の必要性に対する課題をよりよく克服しなければならないこと」、そして、「同時に未来をグリーンなものに作り変えなければならないこと」である。

これら2つの課題には反対論が存在する。環境保護主義者や民主党所属の連邦議員の多くは、化石燃料の生産やインフラへの投資を増やすことに反対している。同時に、化石燃料業界の多くは、連邦議会の共和党所属議員の多くとともに、エネルギー転換を促進するために必要な支出やその他の措置を承認することに抵抗している。この膠着状態(stalemate)は、表面的には妥協の余地がほとんどないことを示している。

今こそ、エネルギーと気候の両分野の指導者たちが、凝り固まった立場から一歩引いて、この国が本当に必要としているもの、すなわち、今日のエネルギー・ニーズを満たしながら、将来的にはより野心的な気候変動対策を確保するグランド・バーゲン(極めて重要な取引)を模索する時だ。このコンセンサスを得るためには、各方面が忌み嫌う行動を受け入れる必要があるが、合意ができれば、最終的には、はるかに悪い代替案の数々よりも望ましい結果をもたらすことになる。

具体的には、気候変動コミ​​ュニティは、ロシアの侵略に直面して、手頃な価格で安全で信頼できるエネルギー供給を確保するために、今日のエネルギーシステムへの短期的な投資の必要性を認識すべきである。今そのような投資を行わなければ、それ自体がエネルギー転換に対する脅威となる。気候変動を巡る政策はこれまで困難であったが、最も弱い立場にある消費者がエネルギーコストに過剰な負担を感じている世界では、気候変動はさらに厄介なものとなるだろう。

フランスの悪名高い「黄色いベスト」抗議運動から、燃料価格の高騰をめぐるアイルランドのトラック運転手による最近の抗議運動まで、人々が暖房や自動車を運転するための料金の支払いに苦労しているとすると、エネルギーコストを直ちに引き下げることが政治的急務であることはますます明白になっている。結果として、より野心的でコストのかかりそうな気候変動政策への支持は縮小することになる。

実際、今日ヨーロッパ全土で目を見張るようなエネルギー料金に対応して、各国政府は燃料税を削減し、エネルギー費用に補助金を出しているが、これはまさにエネルギー節約と代替エネルギー源への移行を促進するために行うべきこととは正反対である。市場ベースのエネルギー価格の高騰自体が原因であるかもしれないが、エネルギー価格の高騰は、燃料税のような政府の政策よりもはるかに大きな苦痛を生み出している。また、燃料税は特に低所得世帯への影響を緩和するために使用できる政府歳入も生み出す。

短期的、もしくは中期的には、石油・ガス・インフラの許認可や開発が、既存の鉱区などでの供給を強化するために必要になるだろう。また、ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)が最近記したように、一朝一夕にはいかない移行期において、金融機関が炭化水素プロジェクト(hydrocarbon projects)の一部に投資する必要もある。

最新の気候変動に関する政府間パネル報告書が明らかにしているように、既存および新規の化石燃料インフラを通常の経済的耐用年数の最後まで稼働させることは、温暖化を摂氏1.5度に抑えることと両立できない。したがって、現在建設されているインフラの一部は、「移行資産(transition assets)」と考えられ、世界が気候変動目標を達成した場合に投資家が期待リターンを得られる通常の期間よりも早く引退させる必要があるかもしれない。そうすることで、中国が既に液化天然ガス(liquified natural gasLNG)のヨーロッパへの供給分を補うために石炭を増産しているように、ロシア産ガスの不足分を補うことになる。

シェールオイルと天然ガスは、継続的な投資がなければ生産量が急減するため、移行に適している。その結果、クリーンエネルギーによって石油と天然ガスの使用量が減少するにつれて、シェールオイルと天然ガスの生産はより迅速に段階的に縮小させることができる。必要な投資には、アメリカ国内の供給を支えるものだけでなく、欧州大陸が石炭に回帰することなくエネルギー需要を確実に満たすためには、欧州へのLNG輸送を拡大することも含まれる。

グランドバーゲンの裏側で、石油・転園ガス産業はエネルギー転換にもっと全面的に参加し、化石燃料への中長期的な依存がアメリカの環境、経済、社会、そして国家安全保障に危険をもたらすことを認識する必要がある。特に気候変動とクリーンエネルギーの劇的なコスト低下に対処する緊急性の高まりと、石油とガスの使用量を削減するという国家安全保障上の責務が明らかになっていることから、ウクライナ危機によって、産業界がクリーンエネルギーの未来に向けた避けられない方向性を認識する機会を提供することになる。

短期的な石油・天然ガス増産策には、メタンガス漏れやフレアリングの排除など、高い環境基準を求める厳しい要件だけでなく、長期的に石油・ガスの使用を削減するためのより強力な対策を即座に支援するという、企業による拘束力のある関与が必要だ。

産業界を含む広範なコンセンサスに裏打ちされた強力な政策シグナルと、政府による賢明な許認可は、炭化水素インフラへの追加投資が、エネルギー需要を満たすために必要な額を超えないようにすると同時に、エネルギー転換を加速させるのに役立つだろう。

そのためには、成立の見込みがほとんどない法案にリップサービスをすること以上の作業が必要だ。今日のエネルギー供給が容易になる代わりに、石油・天然ガス会社には、バイデンの「ビルド・バック・ベター(Build Back Better)」法案のクリーンエネルギー関連法案のような、将来的に炭化水素の使用を削減するための幅広い対策を支持することが求められるだろう。

このような対策がもたらす気候変動への長期的な恩恵は、今日の照明や暖房を維持するために必要な追加的なインフラや生産に伴う排出量をはるかに上回るだろう。さらに、企業は気候変動に関するロビー活動を開示し、連邦議会に対する民間による働きかけと公的な声明が一致していることを示すべきである。

エネルギー転換は、それが必要ではあるが、かつ、複雑で地政学的に不安定なものになるだろう。そのくねくねとした道筋をスムーズに進むためには、より多くの社会的コンセンサスが必要だ。ロシアのウクライナ侵攻は、その悲劇は残念なことであるが、そのようなコンセンサスを形成する機会を与えてくれる。左派にも右派にもにも寄り過ぎることなく、多種多様な勢力を連合に結集して、現在を捨てることなく集合的に未来を掴むことによってエネルギー転換は可能となる。

※ジェイソン・ボードフ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア気候スクールの共同創設者、コロンビア大学国際公共政策大学院のグローバルエネルギー政策センターの創設部長。国際公共政策の専門実践の教授を務めている。アメリカ国家安全保障会議の元スタッフでバラク・オバマ前米国大統領の特別補佐官を務めた。ツイッターアカウント:@JasonBordoff

※メーガン・L・オサリヴァン:ハーヴァード大学ジーン・カークパトリック記念国際問題実践担当教授。著書に『僥倖:新しいエネルギーの豊かさは、いかにして世界政治を変え、アメリカの力を強化するか(Windfall: How the New Energy Abundance Upends Global Politics and Strengthens America’s Power)』がある。ジョージ・W・ブッシュ政権下で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官(イラク・アフガニスタン担当)、大統領特別顧問を務めた。ツイッターアカウント:@OSullivanMeghan

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 今回は、私の最新刊『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)をご紹介いたします。発売日は2023年12月27日です。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』は私にとって4冊目の単著で、ジョー・バイデン成立後のアメリカ政界の動きと世界政治の動きを網羅した内容になっています。何とか年内に出すことができました。2023年を振り返る、冬休みの一冊として、是非手に取ってお読みください。

 以下に、副島隆彦先生の推薦の言葉、はじめに、目次、おわりにを掲載します。

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推薦の言葉 副島隆彦(そえじまたかひこ)

 本書『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』は、私の弟子である古村治彦(ふるむらはるひこ)君にとって4冊目の単著となる。

 古村君の前著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム、2021年6月刊)は、アメリカ政治研究の専門家たちから高い評価をいただいた。それで、本書がその続編として書かれた。前著を読んだ編集者から執筆の話をいただいたと聞いた。大変ありがたいことだ。

 前著『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』では、古村君は、アメリカのバイデン政権を作っている、ディープステイト(超[ちょう]財界人と米軍需産業)側の政府高官たちが、中国・ロシアとの対決、戦争をどのように仕組んで、どのような計画で実行しているかを、正確にはっきりと説明した。なんと、この本が出てから8カ月後に、実際にウクライナ戦争が始まった(2022年2月24日)。これは真に驚くべきことだ。

 アメリカの国防政策と外交政策を実際に操(あやつ)っている、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社とその創設者のミッシェル・フロノイ元(もと)米国防次官(アンダーセクレタリー)のことを、詳しく紹介していた。これは日本初(はつ)のことで、国際関係論(インターナショナル・リレイションズ)の研究者である古村君の学問業績である。本書に続いてお読みください。

 本書では、古村君は、引き続き、アメリカ国際政治の悪の司令塔であるウエストエグゼク社と、米国防総省(ペンタゴン)の密接な結びつきを丹念に追っている。ウエストエグゼク社が、米国防総省と、民間のハイテク企業群のグーグル、フェイスブック(現在はメタ)などのビッグテック(Big Tech 巨大IT企業)を結び付けて、アメリカの軍事部門の先端技術(ハイテク)と武器開発の優位を保っている様子を、精(せい)(かく)に描いている。古村君はこのことを「新(しん)・軍産(ぐんさん)複合体」と表現している。今も前著の帯に書かれた「アメリカをWestExec(ウエストエグゼク)社が動かす!」の通りだ。

 古村君は、バイデン政権の進めている「産業政策(Industrial Policy(インダストリアル・ポリシー))」に注目している。産業政策は日本語で書くと珍腐なコトバだが、アメリカ政治学における重要な概念だ。この産業政策という概念を生み出したのは、日本研究学(ジャパノロジー)の大(だい)学者だったチャルマーズ・ジョンソン博士だ。私は、当時アメリカ留学中だった古村君を伴(ともな)って、カリフォルニア州サンディエゴにあるチャルマーズの自宅を訪問し、長時間にわたって話し込んだ。2004年4月のことだ。このことを懐かしく思い出す。

 古村君は、本書の後半部で世界政治における「西側諸国(the West[ザ・ウエスト[)対(たい) 西側以外の国々(the Rest[ザ・レスト] 残りの部分の意味)の分裂と対立」を描き出している。ウクライナ戦争は、アメリカのディープステイトが、何が何でも、プーチン政権を罠(わな)に嵌めてウクライナにおびき出して、ロシアを弱体化することが目的だった。この外交・軍事戦略を決定して実行した者たちが、まさしく今のバイデン政権の高官たちだ。一方、中国、インド、サウジアラビアなど、非()西洋、即ち西側以外の国々は、継続してロシアから石油を輸入することでロシアを支えた。ウクライナ戦争は膠着(こうちゃく)状態だが、英と米のディープステイト側の敗北、そしてロシアとロシアの苦境を支える西側以外の国々の勝利が見えてきた。

 本書『バイデンを操(あやつ)る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で、古村君は、「世界覇権がアメリカから中国に移動する、中国は焦らず、じっくりと熟柿(じゅくし)作戦で覇権(ヘジェモニー)が泰然自若(たいぜんじじゃく)で手に入るのを待つ。大国の風格だ」と書いている。まさしくその通りで、もうすぐ世界覇権の移動が起きる。

 この一冊で、最新のアメリカ政治と世界政治の動きを理解することができる。ぜひ、読者諸賢にお読みいただきたい。

2023年12月

副島隆彦(そえじまたかひこ) 

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はじめに 古村治彦(ふるむらはるひこ)

 私は2021年6月に、著書『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)を発表した。その中で、ジョー・バイデン Joe Biden(1942年~、81歳。大統領在任:2021年~)政権の高官たちの多くが、アメリカの首都ワシントンDCにあるコンサルティング会社の、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社 WestExec Advisors の出身者であることに着目し、この会社を中心とする人脈からバイデン政権を分析した。

 このウエストエグゼク社が米国防総省 United States Department of Defense(ユナイテッド・ステイツ・デパートメント・オブ・ディフェンス) や軍事産業と関係が深い点に注目し、「バイデンとバイデン政権の高官たちは中露に対して強硬な姿勢を取る、もしかしたら戦争になるかもしれない」と書いた。

 翌年の2022年2月24日にウクライナ戦争が始まった。バイデン政権の下でロシアが絡(から)む戦争が起きたということで、私の本に注目してくださる方が増えた。アメリカと中露が直接戦う戦争ではなかったが、アメリカはウクライナに対して大量の武器を支援しており、ウクライナがアメリカの代理 proxy(プロキシー) となり、ロシアと戦っている。

 しかし、バイデン政権の活動の根幹を担っている、ウエストエグゼク社と同社の出身者たちの人脈に対して、日本では大きく注目されるところまではいかなかった。私はそのことを残念に思っていた。

 しかし、2023年9月2日、講談社が運営するウェブサイト「現代ビジネス」の「ニュースの深層」というコーナーを長年にわたり担当している、ヴェテランのジャーナリスト歳川隆雄(としかわたかお)氏が、「米バイデン政権『国務副長官』の後任は……政府要職を占めるコンサル出身者のからくり」(https://gendai.media/articles/-/115663)という題名の記事の中で、ウエストエグゼク社について取り上げた。歳川氏は、バイデン政権に数多くのウエストエグゼク社出身者がいることを指摘し、バイデン政権にとって重要だと書いた。

 歳川氏の記事が出てから、「あの記事で取り上げられていたウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社は、あなたが本の中で取り上げていた会社ですね」「あなたの方が先に注目していたことになる」という嬉しい声を多くいただいた。これでウエストエグゼク社と出身者たちについて、日本でも注目されるようになるだろうと考えている。

 本書では引き続き、ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社の動きから、バイデン政権の意図を分析する。さらに、アメリカ国内政治、国際政治の最新の動きを網羅的に捉(とら)え、日本の主流メディアでは紹介されない、見方や考え方を提供する。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる──目

推薦の言葉 1

はじめに 5

第1章 中国に対する優位性の確保に苦労するバイデン政権──米中で実施される産業政策でも中国が有利

バイデン政権の産業政策に深く関わるウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社 20

ウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社とはどのような会社か 22

ウエストエグゼク社出身者が重要高官を占めるバイデン政権はヒラリー政権でもある 27

国防総省がウエストエグゼク・アドヴァイザーズ社と関係を深めている 30

ウエストエグゼク社創設者ミシェル・フロノイは国防総省の予算を使いやすくするように提言報告書を執筆 35

産業政策の本家本元は日本 40

バイデン政権が進める産業政策 46

バイデン政権で産業政策を推進する人材としてのジャレッド・バーンスタイン 51

ジェイク・サリヴァン大統領補佐官が産業政策の熱心な支持者 54

産業政策の成功例である中国 66

ファーウェイがiPhoneと同水準のスマートフォンを開発──21世紀のスプートニク・ショック(Sputnik Crisis(クライシス)) 70

軍事面で優位に立つためには技術面での優位が必要──長期計画ができる中国が有利ということが明らかに 75

第2章 2024年米大統領選挙は大混迷

米大統領選は100年に一度の大混乱 80

アメリカ大統領選挙はマラソンレース──まずは党の候補者を決める予備選挙から 82

アメリカ大統領選挙本選挙は各州の選挙人の取り合い 85

現職大統領なのに支持率が上がらないバイデン──有権者は高齢問題を憂慮 88

民主党全国委員会はバイデン当選に向けて露骨な依怙贔屓 91

民主党予備選挙に出馬宣言したロバート・F・ケネディ・ジュニア──大いなる期待 99

ケネディ・ジュニアが無所属で大統領選挙本選挙に出馬表明という怪しい動き 104

共和党ではトランプが圧倒的に有利な情勢 110

トランプを尊敬する新人候補ヴィヴェック・ラマスワミが大健闘 111

アメリカ史上初めての連邦下院議長解任まで起きた連邦下院共和党の分裂 115

連邦下院では10月から始まる2024年度の予算が可決成立していない 123

共和党内の分裂で注目を集めるフリーダム・コーカスは「トランプ派」議員連盟ではない 127

「大統領の犯罪」を隠(いん)(ぺい)するためにはどうしても勝たねばならないバイデン 136

第3章 ウクライナ戦争から見えてきた世界の分断

長期膠着状態に陥っているウクライナ戦争の戦況 142

アメリカ軍やNATOの評価が低い、そして自分勝手なウクライナ軍では勝てない 149

「ゼレンスキー疲れ」「ウクライナ疲れ」に陥ったヨーロッパとアメリカ 153

国際関係論の大物学者ミアシャイマーが「ウクライナ戦争の責任は、アメリカとNATOにある」と喝破 157

ヘンリー・キッシンジャーの提示する「落としどころ」が停戦の基本線 164

「世界の武器庫」であるべき西側諸国、特にアメリカの武器増産が進まずに武器不足に陥る 171

「大統領の犯罪」ノルドストリーム爆破事件──アメリカは平気で自分の同盟諸国を苦境に陥れる 177

戦争直後の国連でのロシア非難決議の採決で世界の分断が明らかになった 187

ウクライナ戦争の結末はどうなるか 191

第4章 「西側諸国 the West」対「西側以外の国々 the Rest」の分断が世界の構造を変える

「西側以外の国々」の中核となるBRICS(ブリックス)(ブリックス) 199

多元的な国際機構や枠組みで重層的な関係を築いている西側以外の国々 202

サウジアラビアがバイデン大統領の依頼を断り、中国寄りの姿勢を鮮明にした 208

中国の習近平国家主席がサウジアラビア訪問で石油取引の人民元決済に言及 210

アメリカを追い詰めすぎると怪我するということで、「ブリックス通貨」導入は見送り 218

国際社会で仲介者になるほどに中国の大国としての存在感は高まっている 225

アメリカはインド・太平洋で中国を封じ込めたい──QUAD、AUKUS、NATOのアジア進出 229

「アジアの皇帝」カート・キャンベル国務副長官指名は、バイデン政権の対中強硬姿勢を鮮明に 234

ハマスによるイスラエルに対する大規模攻撃とイスラエルの反撃 240

アメリカの意向を無視するイスラエルがアメリカを追い詰める 246

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争から見えてくるアメリカの威信の低下 253

第5章 覇権国でなくなるアメリカとこれから覇権国になる中国

国際関係論の覇権国交代理論である覇権戦争論と長期サイクル論 261

世界は西洋支配の前の状態に戻る 269

米中間で戦争が起きるか 273

米中は戦争の可能性を視野に入れて体制強化を図る 277

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争が長引けば、国際情勢はアメリカと西側諸国にとって不利になる 279

ウクライナ戦争とパレスティナ紛争で抑制的な動きをしている中国だが国際情勢は中国有利になる 284

アメリカはこれから同盟諸国にバック・パッシング(責任転嫁)を行う 287

短期的に見て怖いのは、直接戦争ができないアメリカが日本に代理戦争をさせること 290

おわりに 295

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おわりに 古村治彦(ふるむらはるひこ)

 本書の一貫したテーマは、アメリカを筆頭とする西側諸国(the West[ザ・ウエスト])の衰退と中国を筆頭とする西側以外の国々(the Rest[ザ・レスト])の台頭が世界に大きな変化をもたらしている、ということだ。そのことを、アメリカ国内政治と世界政治の分析を通じて描き出そうと努めた。

 本書の執筆中、10月になって、アメリカ国内では、史上初の連邦下院議長解任が起き(10月3日)、国際的に見れば、ハマスによるイスラエルへの攻撃が起き、イスラエルがガザ地区に報復攻撃を開始した(10月7日)。そのため、本書の構成を一部変更せざるを得なくなったが、これらの出来事は、本書で掲げたテーマを裏付けるものだ。

 アメリカ国内政治は混迷の中にある。アメリカ国内の分裂と衰退はもう隠すことができないところまで来ている。アメリカ国内では、2024年の大統領選挙で、高齢問題もあり、有権者から全く支持されていないバイデンが再選を果たすことになると私は見ている。合法、非合法、あらゆる手段で、アメリカ国民の意思を捻()じ曲げて、バイデン勝利とするだろう。そうしなければならない理由を、私は本書で書いた。バイデン勝利が「作り出されたcreation(クリエイション)」後に、アメリカでは、バイデンが大統領選挙で勝利した州を中心にして、アメリカ国民による大規模な抗議活動が起き、アメリカ国内の分裂はさらに深まる。

 さらには、バイデン再選とそれに対する抗議運動がきっかけになって、アメリカが新たな「南北分裂」状態に陥ることも考えられる。私は、本文の中で、バイデン勝利は「アメリカ民主政治体制の死」を意味すると書いたが、さらに進んで「アメリカ合衆国の死(解体)」にまで進む可能性も高い。

 バイデン政権は、分裂を避けるために、国内政策に注力しなければならなくなる。対中封じ込め政策を強化しようとしているが、国内対策に足を取られて、思い通りに物事を進められない状態になる。国内経済の先行きも不透明になる中で、アメリカは分裂と衰退に向かう。アメリカの分裂と衰退は、西側諸国全体にも悪影響を及ぼすことになる。

 世界政治の構造も大きく変化している。アメリカの分裂と衰退で利益を得るのは、中国を中心とする西側以外の国々だ。ウクライナ戦争では、西側以外の国々はロシアを間接的に支え切り、ロシアは戦争初期の厳しい段階を乗り越えて、守備を重視した、負けない体制を構築し、戦争継続が可能となっている。西側諸国は、武器生産能力が限界を迎え、資金面でも、限界に来ており、全体に厭戦気分が広がっている。

 西側以外の国々は、重層的な国際組織を結成し、宗教、政治体制、経済体制の面で、多様な国々が連携できるネットワークづくりを進めている。その中心がBRICS(ブリックス)であり、中国が核となっている。石油の人民元(じんみんげん)決済やドル以外の共通通貨(脱[だつ]ドル化)の話が出ているのは、アメリカの戦後支配体制の揺らぎを象徴している。中国は、アメリカとの対立激化を避けながら、アメリカの自滅を待つという姿勢だ。できるだけ労力をかけないようにしながら、慌てず急がずで、世界覇権を手にする。

 西洋近代は、もちろん素晴らしい成果を収めた部分もある。西洋近代がもたらした科学(サイエンス)(学問)の発展や価値観、制度によって、人類はより快適で豊かな生活を享受することができた。その点は認めなければならない。しかし、一方で、西洋中心主義 Ethnocentrism(エスノセントリズム) によって、西洋的な価値観と制度を世界中に押し付け、結果として、西洋化することで世界を一色にまとめ上げようとしてきた。

 非西洋諸国の文明化 civilization(シヴィライゼイション) は、社会工学 socialengineering(ソーシャル・エンジニアリング) を通して行われた。非西洋の土台の上に無理やり、西洋社会の価値観や制度が移植された。社会工学は「文明化外科手術(ぶんめいかげかしゅじゅつ)」とも呼ばれるべきもので、不自然な移植のために、制度がうまく機能しないことも起きた。それに対して、西洋諸国は、「近代化の出来ない落ちこぼれ」というレッテルを貼った。

 しかし、これから、世界の「優等生」たちが力を失い、これまでの「落ちこぼれ」たちが力をつけていく。そうした時代に入っていく。西洋近代、戦後世界の終わりの始まりである。

 本書の構成を友人に話したところ、「世界の今が分かるということですね」と言われて、私は少し驚いた。私としては、そのような大それた目的をもって執筆を始めた訳ではなかった。しかし、本書を通じて、読者の皆さんに、現在の世界情勢を理解するための情報や視点を提供できるとすれば、それは筆者として、何よりの喜びだ。

 師である副島隆彦(そえじまたかひこ)先生には、力強い推薦文をいただきました。徳間書店学芸編集部の力石幸一氏には、本書の企画から出版までお世話になりました。記して御礼申し上げます。

2023年12月

古村治彦

(貼り付け終わり)

(終わり)

bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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