古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2024年02月

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。世界は大きく「ザ・ウエスト(the West、西側諸国)対ザ・レスト(the Rest、西峩々以外の国々)」に分裂していく、構造変化が起きています。そのことを詳しく分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「デカップリング(decoupling)」「脱ドル化(de-dollarization)」という言葉を聞くようになった。特に昨年、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の総会で、「BRICS通貨の創設が発表されるのではないか」という予測が出て、ドルに代わる世界通貨になるかもしれないということで、話題になった。結局、インドの反対もあり、今回は見送りとなったが、ドルが世界の基軸通貨(key currency)の地位を失う可能性が取り沙汰されるきっかけとなった。このことは、最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げた。脱ドル化、デカップリングとは、西側世界への経済的な依存を減らすことである。その先頭を走っているのは中国である。下の論稿には、中国が行ってきたデカップリングと脱リスク化について、脱ドル化、技術依存度(technological dependence)を下げる努力、国内の金融部門に外国が関与することを制限することが挙げられている。これらは、20世紀末から西側諸国を中心に進められてきた、グローバライゼーション(Globalization)に逆行する動きであるが、グローバライゼーションに対する逆行こそが、国家を救う道である。

 現在の日本を見てみると、自国通貨である円の価値の低下によって、諸外国から見て、「なんでも安い国」となった。しかも高品質というおまけがつくので、「なんともおいしい」区になっている。現在、バブルを超える勢いで、株式市場が上昇を見せているが、これは、外国からの投資が増大し、それに国内の資金が流れているということである。外国からの資金はいつか日本株を打って出ていく。株高に誘惑されて株式を買ったり、NISA投資をしたりしている日本の人々には損がかぶせられる。そうして国力が奪われていき、日本の衰退は加速していく。グローバライゼーションで利益を得るのは国境を軽々と超えるエリートたちや資産家たちだけである。日本は30年以上、グローバライゼーションによって国力を毀損させられてきた。

 世界の構造が大きく変化しようとしている時期になっている。グローバライゼーションと世界構造の大変化に備えるためにも、デカップリングと脱ドル化を真剣に検討し、議論するべき時だ。しかし、既にアメリカ国債を買いまくり、外貨準備もドルに偏重している日本はこのようなことはできないかもしれない。アメリカと一緒に心中をするしかないということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

西側諸国がデカップリングを発明したのではない-中国が発明したのだ(The West Did Not Invent Decoupling—China Did

-北京は長い間、経済を西側諸国から切り離すことで自由裁量(free hand)を手にしようとしてきた。

アガーテ・デマライス筆

2024年2月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/01/china-decoupling-derisking-technology-sanctions-trade-us-eu-west/

クレムリン・ウォッチャーたちの間で語り継がれている話がある。2014年のロシアによるクリミア侵攻と併合に対して、西側諸国が初めてロシアに制裁を課した直後、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は経済補佐官たちを呼び出した。彼の質問は単純だった。「ロシアの食料自給率はどのような状況なのか?」。補佐官たちはあまり良くないという答えが返ってきた。ロシアは国民に提供する食糧は輸入に頼っていた。プーティンは顔をあ納めさせて、制裁によってモスクワの主食へのアクセスが制限されることを恐れ、何とかするよう命じた。

2022年にロシアが本格的にウクライナに侵攻する時点にまでテープを早送りすると、プーティンはもはや食料の心配をする必要がなくなった。わずか8年で、ロシアは食糧をほぼ自給自足できるようになり、肉、魚、そして、まあまあの品質のチーズまで生産できるようになった。

ロシアが食糧自給を目指したのは、現在流行している経済的デカップリング[economic decoupling](最近では脱リスク[de-risking]と言い換えられている)をめぐる議論よりもずっと以前のことである。政治的言説(political discourse)が示唆するところとは逆に、西側諸国がこうした政策を考案したわけではない。ロシアの例が示すように、西側の民主政治体制国家と対立する国々は、潜在的な敵国から自らを守るために、長い間リスク回避政策(de-risking policy)を追求してきた。

ロシアに比べ、中国は技術、貿易、金融の面で西側諸国への経済的依存(economic reliance)を減らしてきた実績がある。デカップリング(decoupling)とデリスク(de-risking)の発明者であり、世界のリーダーでも存在がいるとすれば、それはどう見ても北京である。

近年、アメリカが中国へのハイテク輸出を次々と規制するずっと以前から、中国の指導者たちはテクノロジーを脱リスクの最初の柱としてきた。例えば、北京の半導体分野への最初の投資計画は、1980年代まで遡るが、当時の中国が基本的なチップを生産する域にも達していなかったことを考えると、その結果は成功と失敗が入り混じったものであったことは間違いない。

中国の計算はシンプルだ。テクノロジーは経済的・軍事的優位性のバックボーンである。したがって、北京にとって技術的な自給自足は、生き残り、繁栄するために必要不可欠なことなのだ。

中国の技術依存度(technological dependence)を下げる努力は過去10年間で推進された。ドナルド・トランプ前米大統領が中国との関係断絶を自慢し始める2年前の2015年、北京は半導体(semiconductors)、人工知能()artificial intelligence、クリーンテクノロジー(clean tech)などの主要技術分野で、自給自足を目指す「メイド・イン・チャイナ2025(Made in China 2025)」の青写真を発表した。

中国は技術的な自給自足を自国が生存し続けるための必須条件と考え、わずか数年で目覚ましい進歩を遂げた。多くのハイテク分野では、中国企業や研究者たちは揺るぎない世界的リーダーであるか(特にクリーン技術分野では、中国企業がソーラーパネル[solar panels]、風力タービン[wind turbines]、電気自動車[electric vehicles]の市場を独占している)、あるいは西側諸国の競合相手とほぼ肩を並べている(人工知能、量子コンピューター[quantum computing]、バイオテクノロジー[biotech]を含む)。

半導体は例外だ。マイクロチップに関して言えば、西側諸国の政策立案者たちは、中国は最先端チップ(cutting-edge chips)の生産において、アメリカ、台湾、韓国に大きく遅れをとっていると指摘し、自らを安心させたがっている。確かにその通りだが、北京はアメリカの輸出規制が危機感を煽ることを歓迎しているのかもしれない。

中国指導部はまた、輸出管理が容易に裏目に出る可能性があることを知っている。歴史が示しているように、長期的には、アメリカの一方的な輸出管理は、ほとんどの場合、輸出収入を制限することでアメリカ企業に損害を与え、その結果、最先端を維持するための研究開発に費やすことができる額も抑制されることになる。言い換えれば、中国政府は長期戦を繰り広げており、アメリカ政府の積極的な戦略が最終的には裏目に出て、西側諸国の技術への依存を減らすという中国の取り組みを更に支援することを期待しているのだ。

金融分野は、北京のリスク回避戦略の2本目の柱であり、長い歴史を持つ。この分野でも、西側諸国経済との関係を断ち切ろうとする中国の努力は、北京からのリスクを取り除くというアメリカとヨーロッパの計画に先行していた。最も明白な例は、北京が国内の金融部門に外国が大きく関与することを認めてこなかったことだ。中国の金融市場は閉鎖的で、外国人投資家は中国株の4%、中国国債の9%しか保有していない。中国独自の銀行システムは、国際金融からほぼ完全に遮断されており、中国人以外の投資家が中国の銀行資産の2%未満しか所有していない。また、国内外への資金移動を厳しく制限する資本規制は、いまだ解除されていない。

しかし、金融分野における北京のリスク回避努力は、外国人を遠ざけるだけではない。中国の指導者たちは不都合な真実に直面している。西側諸国の金融チャネルへの依存は、北京のアキレス腱になるかもしれない。西側諸国は世界の支配的な通貨を所有し、世界の全ての銀行を結ぶ世界的な決済システムであるSWIFTや、世界で最も重要な証券保管機関であるユーロクリア(Euroclear)など、グローバルな金融インフラへのアクセスを支配している。

西側諸国の金融支配が制裁を強力なものにしている。ドルやSWIFTへのアクセスを失うことは、ほとんどの銀行や企業にとって事実上の死刑宣告である。2012年に西側諸国がイランのSWIFTへのアクセスを遮断する決定を下した後、北京はその結果を目撃した。

金融制裁に対抗するための先制攻撃として、中国は3つの戦略を展開している。

第一に、人民元による国境を越えた決済の整備を進めている。世界貿易におけるドルとユーロの優位性を考えれば、その道のりは険しい。しかし、中国の脱ドル化計画(China’s de-dollarization plans)は進展している。人民元で決済される世界的な決済の割合は、2023年にはほぼ倍増し、約4%にまで達した。重要なのは、中国の対外貿易の3分の1が人民元建てになっていることで、中国企業は西側諸国の制裁からある程度身を守ることができる。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、そして最近加わった5カ国からなるBRICS圏の通貨の可能性が取り沙汰されているが、人民元がロシアと中国の貿易で最も使用されている通貨になったように、北京もBRICS諸国間の貿易で人民元が選択される通貨になることを望んでいる。

SWIFTに代わる中国の決済システムCIPSthe Cross-Border Interbank Payment System)は、北京の金融リスク軽減の2つ目の礎石となる。2015年に開始されたこの決済ネットワークは、SWIFTよりもはるかに規模が小さい。しかし、SWIFTは世界中のほとんどの銀行を接続している中で、SWIFTが中国の銀行を切断した場合のバックアップとなるだろう。最後に、中国はアラブ首長国連邦やタイなどともデジタル通貨を使った国境を越えた取引を試験的に行っている。中国のデジタル通貨がグローバルになる道のりはまだまだ遠い。しかし、優位性は重要ではないかもしれない。中国の目標は、保護手段として代替金融チャネルを持つことであり、そのためには運用が可能であることが必要なだけなのだ。

中国のリスク回避戦略の3つ目のそして最後の柱は、貿易および中国の投資先としての非友好国への依存を減らすことを伴う。その論拠は、2014年にプーティン大統領がロシアの食糧安全保障を懸念したときの論拠と似ている。紛争、感染症拡大、地政学的な緊張によって経済関係が阻害されたり、サプライチェインが混乱したりする可能性があるため、中国政府は貿易の流れをどこかの国に過度に依存することが弱点だと見なしている。中国のような輸出指向の経済にとって、重要な原材料の輸入や主要な輸出先として特定の国に過度に依存することは致命的となる可能性がある。

中国の貿易におけるリスク回避の努力は、ハイテクや金融のそれよりも最近のもので、2018年の最初の米中貿易戦争が起きた際に始まった。しかし、中国の税関が発表した最新の統計を見てみると、中国は最近、一見非友好的に見える西側諸国との関係を分散させるための明確な努力をもって、貿易のリスク回避を加速させている。

2023年の最初の11か月間で、中国のアメリカへの輸出は2022年の同時期と比較して8.5%減少し、ヨーロッパ連合(EU)への輸出は5.8%減少した。一方、インド、ロシア、タイ、ラテンアメリカ、アフリカを含むほとんどの新興市場への中国の輸出は増加した。西側経済への貿易依存度を減らす中国の努力は功を奏しており、2023年には東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟諸国向けの輸出が、アメリカやEUを抑え、中国の最大の輸出先となった。

中国のリスク回避努力は投資分野にも及んでいる。アメリカン・エンタープライズ研究所のデータによると、2014年までの10年間、G7諸国とオーストラリア、ニュージーランドは、「一帯一路」構想の資金を除いた中国の対外投資フローの半分近くを吸収していた。2022年までに、この割合はわずか15%にまで低下し、インドネシア、サウジアラビア、ブラジルなどの新興諸国が中国からの直接投資の最大の流入を引き寄せている。

中国の他の取り組みと同様、新興国市場への投資促進も、西側諸国のリスク回避策が発明される以前から行われていた。この変化は2017年のデータで顕著になったが、投資プロジェクトは通常、実現までに数年かかるため、開始はもっと早かったと考えられる。

これらのことから、中国のリスク回避の動きは、アメリカやヨーロッパの取り組みよりもはるかに古く、広範囲に及んでいることが分かる。しかし、中国自身のリスク回避戦略に関する議論は、西側諸国の議論の中ではかなり少ない。

これは重大な欠陥である。北京から見ると、中国への依存を減らそうとする西側諸国の圧力は、アメリカの最先端技術への依存から技術的自給自足の優先、西側の銀行チャネルよりも自国の金融インフラへの依存、西側経済よりも新興市場の優先という、中国の長年確立された計画を加速させるもう1つの理由となる。北京の長期にわたる組織的なアメリカやヨーロッパからの離脱は、中国の経済政策の顕著な特徴であり、それは大きな影響を持つ。

リスク回避は双方向である。協力と平和を導く、経済的相互依存(economic interdependence)という考えは、ロシアのウクライナ侵攻で崩れ去ったと主張する人々もいるが、経済的結びつきはアメリカとヨーロッパに対して、北京への大きな影響力を与えている。しかし、現在進行中の中国と西側諸国との関係を断ち切るプロセスは、西側諸国の制裁脅威の抑止効果を弱めることは避けられず、世界、特に台湾海峡をより危険なものとするだろう。

これはまさに中国の戦略であり、そもそも中国が自給自足を目指す基底には、台湾併合という野望がある。アメリカやヨーロッパがリスク回避を発明したのではなく、中国が発明したのである。そして中国は、この分野で最も熟練した実践者のようである。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか』がある。ツイッターアカウント:@AgatheDemarais
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。今年実施されるアメリカ大統領選挙についての分析も行いました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 米大統領選挙共和党予備選挙は、ドナルド・トランプ前大統領が4連勝となった。既に有力なライヴァルたちは選挙戦から撤退し、ニッキー・ヘイリー元米国連大使・元サウスカロライナ州知事しか残っていない。先週末、サウスカロライナ州で共和党予備選挙が実施された。結果はトランプの圧勝となった。ヘイリーは地元サウスカロライナ州でも敗北を喫し、選挙戦からの撤退が話題に上がっている。トランプの共和党予備選挙の勝利と大統領選挙本選挙候補者指名が確実視されている。これで、大統領選挙本選挙は、民主党のジョー・バイデン大統領対共和党のドナルド・トランプ前大統領の戦いとなる。
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 共和党の反ポピュリズム勢力・反トランプ勢力の旗頭であるコーク一族は、ヘイリーに資金提供を行ってきたが、サウスカロライナ州共和党予備選挙でのヘイリーの敗北を受けて、資金提供を停止すると発表した。大統領選挙でトランプを止めることは不可能だということを敵であるコーク一族も認めたことになる。
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左がデイヴィッド・コーク(故人)、右がチャールズ・コーク(コーク系の総帥)

 コーク一族の資金ネットワークは、連邦下院共和党の議員たちで構成する、議員連盟であるフリーダム・コーカスの議員たちの当選と新しい議員たちの当選を目指すことになる。フリーダム・コーカスは日本では親トランプ派とされているが、実態は、コーク一族の資金が入っている反トランプ派である。それなのに、日本で親トランプ派とされているのは、共和党エスタブリッシュメントに反対する姿勢のために、親トランプ派の議員たちが入っているからである。フリーダム・コーカスは反トランプ派・反エスタブリッシュメントである。詳しく知りたい方は、私が翻訳した『アメリカの真の支配者 コーク一族』(講談社)と、拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)をお読みいただきたい。

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大統領選挙サウスカロライナ州共和党予備選挙の5つのポイント(Five takeaways from the South Carolina GOP primary

ナイオール・スタンジ筆

2024年2月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/4487698-five-takeaways-from-the-south-carolina-gop-primary/

サウスカロライナ州チャールストン発。土曜日に行われた大統領選挙サウスカロライナ州共和党予備選挙で、ドナルド・トランプ前大統領が対抗馬のニッキー・ヘイリーを打ち負かし、圧勝した。

アメリカ東部標準時の午後7時に投票が締め切られた瞬間、トランプの選挙戦での勝利が決まった。午後10時前に開票率が83%に達した時点で、トランプは、ヘイリーに21ポイントの差をつけて圧勝した。

大統領選挙ミシガン州共和党予備選挙は来週火曜日に行われる。そして、3月5日は10以上の州で投票が行われるスーパーチューズデーとなる。

サウスカロライナ州での予備選挙についてこれから5つのポイントを挙げていく。

(1)トランプは地滑り的な勝利によって、候補者指名への最終経路に入った(Trump’s landslide puts him on a glide path to nomination

よほどの重大な出来事が起きない限り、トランプが2024年大統領選挙の共和党の指名候補となるのは間違いのないところだ。

トランプ前大統領はこれまでのところ、予備選挙が4州で行われ、4連勝している。サウスカロライナ州では、ヘイリーが知事として2度当選した実績があったが、トランプはヘイリーを叩きのめした。

コロンビアで行われたトランプの勝利演説では、サウスカロライナ州の共和党エスタブリッシュメントがどの程度トランプの後ろ盾になっているかが明らかになった。ティム・スコット連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)とリンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、ヘンリー・マクマスター州知事(共和党)と一緒に壇上に立ち、トランプに代わって短いスピーチを行った。

チャールストンでは、ヘイリーがたった一人で壇上に立ち、少数の聴衆を前に演説した。

ヘイリーは、トランプは11月の大統領本選挙では当選不可能だと訴え続けている。しかし、彼女の主張が共和党の有権者の支持を得られると信じる根拠はない。

これは必ずしも前サウスカロライナ州知事ヘイリーの失敗ではなく、単に共和党の支持層が依然としてトランプに熱狂していることを反映している。

これまでのところ、どの州でもトランプ前大統領はライヴァルたちに得票率で二桁の差をつけて圧勝している。

候補者指名争いは、掛け声を除けば全て終わっている。

(2)ヘイリーは選挙戦から撤退しない(Haley isn’t quitting

数週間前、ヘイリーがサウスカロライナ州予備選挙を前に選挙戦から撤退するかどうか、疑問を持たれていた。

この当時、トランプの支持者たちは、ヘイリーが惨敗すれば、彼女は選挙戦を止めることになるだろうと予測していた。

しかし、この予測通りにはならなかった。

選挙後のサウスカロライナ州でのヘイリーの演説は、少なくともスーパーチューズデーまでは戦い続けるという断固とした宣言に等しかった。

彼女は、これまでに有権者たちに示してきた約束について言及し、「私は約束を守る女性」と述べた時、その夜最大の歓声を受けた。

彼女の主張の根拠は、多くのアメリカ人がバイデン大統領とトランプ氏の対決に興味を持てない状況にある中で、「この戦いをあきらめない(not going to give up this fight)」というものだ。

ヘイリーは語気と言葉を強め、このような激しい選挙戦は、「アメリカが分裂するだろう」結果をもたらすだろうと示唆した。

前知事ヘイリーは1月に、これまでで最高の献金額を記録したが、選挙戦を継続するための資金を持っている。そして、彼女には熱烈な支持者もいるが、その数はトランプ大統領の指名獲得への影響を与えるほどではない。

サウスカロライナ州での支持者の一人、ネル・パーカーは、ヘイリーは「明かりを灯し続ける資金がある限り選挙戦に留まるべきだ」と本誌の取材に語った。

(3)共和党は現在MAGAMake America Great Again)の政党になっている(The GOP is now the MAGA Party

トランプが共和党内を支配していることを示すのは、トランプのライヴァルたちにつけた票差だけではない。

サウスカロライナ州の共和党有権者のほとんどが、トランプの世界観全体を共有しているということだ。

AP通信の有権者調査「ヴォートキャスト」は、少なくとも初期の結果では、サウスカロライナ州の共和党有権者の約10人に6人が、アメリカのウクライナに対する援助継続に反対していることを示した。これはヘイリーにとって悪いニューズであり、軍事的伝統の強い州においては印象的な結果となった。

この調査によると、サウスカロライナ州の共和党有権者の約10人に7人が、トランプの行動に関する各種の捜査はトランプを弱体化させようとするものだというトランプの主張を受け入れている。

これらの数字を考慮すると、ここにいる共和党員の約10人中6人が自分たちを「アメリカを再び偉大に(MAGA)」 運動の支持者だと考えるのも不思議ではない。

共和党は良い意味でも悪い意味でも、今やトランプの党となっているのだ。

(4)トランプの暴言は本選挙への危険信号となる(Trump’s rhetoric still raises red flags for the general election

共和党のサウスカロライナ州予備選挙で大差をつけたにもかかわらず、11月の本選挙におけるトランプの当選可能性に関する疑問は消えない。

それは、トランプが直面している91件の刑事告発のせいだけではない。それはまた、彼が炎上させる性質(propensity to inflame)を持っているからでもある。

トランプはサウスカロライナ州での予備選挙前夜、金曜日に開催されたアフリカ系アメリカ人保守連合の年次総会で演説した際に、その傾向を再び示した。

トランプは、アフリカ系アメリカ人が自分の警察に捕まった際に撮影される顔写真(mugshot)を「受け入れてくれた」と述べた。これは、犯罪率の高いアフリカ系アメリカ人の有権者たちが、自分が起訴されたことについて共感を持ってくれるだろうということを、不器用に示唆しようとした発言だった。

トランプ前大統領は次のように述べた。「私は何の理由もなく、何でもないことで起訴された。そして多くの人が、だからこそアフリカ系アメリカ人の皆さんが私のことを好きなのだと言ってくれている。アフリカ系アメリカ人の皆さんはひどく傷つけられ、差別されてきたからこそ、私に共感してくれる。実際、アフリカ系アメリカ人の皆さんは私を差別されているように見ている。とても素晴らしいことだが、そこに何かがあるかもしれない」。

翌朝、ヘイリーはサウスカロライナ州キアワアイランドで予備選挙の投票を行った後、トランプによるこれらの発言を非難した。

ヘイリーは「これはドナルド・トランプがテレプロンプターを外したときに起こること、本当にうんざりしてしまう。これがドナルド・トランプが引き起こす混乱というものだ。これが、本選挙の日まで毎日やってくる不快感の原因だ」と述べた。

もちろん、更に別の論争が起きることになっても、トランプに固執している支持者が離れていくことはないだろう。しかし、彼の暴言(よく言えば無礼)は、説得されやすい有権者たちを獲得するチャンスを妨げている。

民主党がよく指摘するように、トランプは2016年と2020年の2度の本選挙で得票総数で敗れている。

(5)ヘイリーの攻撃は共和党支持層を超えてトランプの妨げになる可能性がある(Haley’s attacks could hinder Trump beyond the GOP base

ヘイリーの攻撃はトランプの共和党候補指名獲得への前進を妨げるものではないが、穏健派の共感を呼び、民主党が11月にトランプ前大統領に対して主張を展開して支持を集めるのに役立つ可能性がある。

土曜日の演説でヘイリーは、トランプが政敵たちを「人間のくず(vermin)」という言葉で表現することに異議を唱えた。

サウスカロライナ州での予備選挙までの数日間、ヘイリーはトランプが本選挙で勝つことはできないと述べ、最近のNATOに関する発言で彼がロシアのプーティン大統領に「味方(sided)」していると非難し、トランプをナルシストと評し、軍服を着たことがないと嘲笑した。

トランプ大統領の盟友たちは、ヘイリーがこの種の発言で、トランプに対して損害を与える可能性があるため、ヘイリーの選挙戦からの撤退を望んでいる。ナンシー・メイス下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は、金曜日、サウスカロライナ州ロックヒルでのトランプの集会で本誌の取材に応じた際、この主張を展開した。

しかし、トランプ前大統領は、ヘイリーが自分よりも得票するという脅威の可能性を打ち砕いた。

しかし、民主党の攻撃広告の絶好の材料となるであろうヘイリーの言葉は、11月の大統領選挙本選挙に向けて、まだまだトランプを苦しめる可能性がある。

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●「米富豪コーク氏団体、ヘイリー氏の支援停止 米報道」

2024年2月26日 日経新聞 

https://www.nikkei.com/article/DGKKZO78750410W4A220C2EAF000/

【ワシントン=中村亮】米富豪チャールズ・コーク氏の政治団体は、11月の大統領選に向けた共和党の候補指名争いでニッキー・ヘイリー元国連大使の支援を停止する。米ポリティコが25日に報じた。ヘイリー氏への撤退圧力になる。

保守系政治団体「繁栄のための米国民アクション」の首脳が25日、スタッフに宛てたメールでヘイリー氏支援のために資金を使うのをやめると伝えた。

「外部グループが彼女の勝利に向けた道を広げるために大きな貢献をできると思わない」と記した。代わりに11月に大統領選と同時実施の上院選や下院選に資金を振り向けるという。コーク氏の政治団体による動きは、ヘイリー氏の選挙資金が細る予兆となる可能性がある。資金集めが行き詰まると、指名争いから撤退を余儀なくされる公算が大きい。ヘイリー氏は24日、地元である南部サウスカロライナ州の予備選でトランプ前大統領に敗れた。前大統領が1月の中西部アイオワ州の党員集会から5連勝を果たし、ヘイリー氏は反転攻勢の糸口をつかめていない。

米メディアによるとヘイリー氏の選挙陣営は25日、最近24時間で100万ドル(約15000万円)以上の資金を集めたと明らかにした。敗北が続いても、資金集めの勢いが衰えていないとアピールする狙いがある。

ヘイリー氏は25日、中西部ミシガン州で支持者集会を開く。同州では27日に予備選を予定する。16州・地域が予備選を一斉に開く35日のスーパーチューズデーが指名争いの大きな山場になる。

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 昨年12月27日に刊行した、私の最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を、佐藤優先生が『週刊ダイヤモンド』の「佐藤優 知を磨く読書」コーナーでご紹介くださいました。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

雑誌の86ページに掲載されています。コンビニでは場所によって置いていないところもありますが、駅のキオスク、書店にはありますので、是非お読みください。『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』の第3章で取り上げた、ウクライナ戦争に関する分析について「秀逸だ」「説得力がある」と評価していただきました。佐藤先生、まことにありがとうございます。

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 発売から2カ月が過ぎていますが、大型書店ではまだ購入できます。以下の写真は、2月中旬に私が、東京・池袋にあるジュンク堂書店と東京・新宿にある紀伊國屋書店本店を訪れた際に撮影しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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ジュンク堂書店「陰謀論」コーナーにて

kinokuniyashoten200402001
紀伊國屋書店「話題の本 アメリカ」コーナーにて

 (終わり)
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。アメリカの衰退が明らかになりつつある中で、世界の構造が大きく変化していることを分析しています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカは第二次世界大戦後、世界覇権国となり、セ狩りを支配し、リードしてきた。冷戦期にはソヴィエト連邦というライヴァルがいたが、ソ連崩壊により、冷戦に勝利し、世界で唯一の超大国となった。ソ連崩壊の前後、アメリカには戦勝気分があった。2000年代以降は、中国の台頭があり、現在は冷戦期のソ連寄りも軍事的、経済的に強大となり、アメリカが中国に追い抜かれるのも時間の問題となっている。そして、世界は、「ザ・ウエスト(the West、西側諸国)対ザ・レスト(the Rest、西側以外の国々)」の二極構造に分裂しつつある。

 アメリカは世界の警察官としてふるまってきたが、直接武力を使ったのは、「自分が確実に勝てると考えた相手」に対してのみだった。その想定がそのままであれば、アメリカの思い通りになったのであるが、ヴェトナムやアフガニスタン、イラクではアメリカの想定通りにはいかず、苦戦し、最終的には撤退することになった。世界で唯一の超大国であるアメリカが、国力で言えば全く相手にならない、問題にならない国々に敗れさったというのは、確かに、周辺諸国からの支援ということもあるが、「決意(resolve)」の問題もあったと、下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトは主張している。

 アメリカは自国の周辺に深刻な脅威は存在してこなかった。カナダもメキシコもアメリカ侵略を虎視眈々と狙うような国ではなかったし、これからもそうだと言える。東側と西側は大西洋と太平洋によって守られている。大陸間弾道弾(ICBM)の時代となったが、それでもアメリカの存在している、北アメリカ地域、そして、大きくは米州地域に脅威は存在しない。キューバ危機で、キューバにソ連のミサイルが設置される瀬戸際まで行った時が、アメリカにとっての最大の脅威であったと言えるだろう。

 アメリカが軍隊を送ったり、何かしらの問題解決のために介入したりする際には、自国から遠く離れた地域ということになる。世界の様々な問題は、アメリカにとっては遠い世界のことでしかない。敵対国にしても、アメリカ本土に直接進行してくる懸念はない。ミサイルは怖いが、「アメリカにミサイルを発射すれば、その国が終わりになる、なくなってしまうことくらいはよく何でも分かっているだろう」という前提で行動している。アメリカの決意は当事者の中では低くならざるを得ない。結果として、アメリカによる問題解決はうまくいかないということになり、「アメリカは駄目になっている」という印象だけが強まっていく。

 これは世界帝国、世界覇権国の隆盛と衰退のサイクルを考えると仕方のないことだ。ローマ帝国や秦帝国以来、衰退しなかった世界覇権国、世界帝国は存在しない。このことは、『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』の第5章で詳しく紹介した。国旅国の低下に合わせて、決意も低下し、問題解決もできずに力の減退だけが印象付けられる。大相撲、日本のスポーツ界で一時代を築いた、大横綱であった千代の富士が、当時伸び盛りだった、貴花田(後の横綱貴乃花)に敗れ、引退を決意した際の言葉「体力の限界、気力も失せて引退することになりました」はアメリカにも当てはまるようだ。

(貼り付けはじめ)

アメリカは決意の固さの格差に苦しんでいる最中だ(America Is Suffering From a Resolve Gap

-敵国群が自分たちの思い通りにしようとする決意を固めた時にワシントンがすべきこと。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年1月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/30/biden-america-foreign-policy-middle-east-jordan-china/

近年のアメリカの外交政策は、イラクとアフガニスタンでの戦争の失敗、中東での和平努力の失敗、対立している大国の一部の核能力増強、その他数多くの不祥事など、一連の不幸のように見えることがある。そして、親イラン民兵組織による無人機(ドローン)攻撃でヨルダンで3人のアメリカ兵が死亡した最近の逆境は、アメリカ軍がこれらの激動の地域で何をしているのか、そしてアメリカ軍をそこに駐留させておくのは理にかなっているのかという新たな疑問を引き起こしている。

こうした度重なる失敗を、民主、共和両党の無能なアメリカの指導力や、間違った大戦略(grand strategy)のせいにしたくなる誘惑に駆られるが、世界政治を形成しようとするアメリカの取り組みは、次のようなより深刻な構造的問題に直面している。私もその種の批判をたくさん書いてきた。私たちは時々見落としてしまっている。アメリカの取り組みが失敗することがあるのは、アメリカの戦略が必ずしも悪いからでも、政府職員たちの熟練度が思ったほど低いからでもなく、敵対者が結果に大きな利害関係を持ち、彼らの思い通りにするために我々よりも大きな犠牲を払うことをいとわないためである。このような状況では、アメリカの優れた力が敵の優れた決意によって打ち破られる可能性が存在する。

このような問題が生じるのは、アメリカが現代史においてはるかに安全な大国だからである。自国の領土の近くには強力なライヴァルがおらず、大規模で洗練された多様な経済を持ち、数千発の核兵器を保有し、非常に有利な地理的条件を享受している。現在の安全保障と繁栄が永遠に続くとは限らないが、今日、これほど恵まれた立場にある国は他にない(このような大国は他に存在しない)。

その結果、矛盾が生じることになる。アメリカは武力攻撃から自国の国土を守ることを心配する必要がないため、世界各地に進出し、遠く離れた多くの問題に介入できる。しかし、これらの有利な状況は、これら遠く離れた地域で起こっていることがアメリカの生存にとって重大であることはほとんどなく、長期的な繁栄とは、ほぼ関係していない可能性があることも意味している。とりわけ、これは、アメリカが戦ったほぼ全ての主要な対外戦争が、ある程度、選択された戦争(a war of choice)であることを意味する。敵対的な侵略者や急速に悪化する治安状況に直面している国家には、独立を維持するために戦う以外に選択肢はないかもしれないが、アメリカは19世紀以来、こうした問題に直面していない。二度の世界大戦へのアメリカの参戦ですら、厳密に言えば、必要ではなかった可能性が高い。私は、二度の世界大戦に参戦したことは戦略的および道徳的見地から正しい決断だったと信じているが、アメリカの関与については当時激しく議論されており、それには当然の理由がある。

それ以来、アメリカは頻繁に、自国の海岸から遠く離れた敵と、敵の領土の近くまたは領土内で敵と戦うようになった。アメリカに比べてはるかに弱体だった中国が朝鮮戦争に介入したのは、アメリカ軍が中国国境に迫っていたためであり、毛沢東はアメリカとその同盟諸国が朝鮮半島全体を支配するのを阻止するために10万人以上の軍隊を犠牲にすることを厭わなかった。アメリカはヴェトナムに200万人以上の軍隊を派遣し、そのうち5万8000人以上を失うほどヴェトナムに深く介入した。しかし、北ヴェトナムは私たち以上に決意をもって戦い、より深刻な損失に耐え、最終的には勝利した。 2001年9月11日の同時多発攻撃の後、アメリカはアフガニスタンでアルカイダに対して積極的に攻撃な加え、タリバンが権力を取り戻すのを阻止するために何年も留まり続けることさえ厭わなかった。しかし最終的には、タリバンは私たちよりもアフガニスタンの運命を真剣に捉え、決意をもって戦った。同様の状況はウクライナでも明らかだ。アメリカと西側諸国はキエフを支援するために資金や武器を送るなど、費用のかかる手段をウクライナに提供する用意をしているが、ロシアの指導者たちは現地で戦って死ぬために兵士を派遣する強い決意を持っている。ウクライナを支援する諸外国はそうではない。それは、西側諸国の指導者たちが軽薄だからではなく、モスクワ(そしてウクライナ)にとって、それが世界の他の国々よりも大きな問題だからだ。台湾に関する議論にも同じ不快な問題が潜んでいる。アメリカ政府当局者や国防専門家たちが台湾の自治はアメリカにとって極めて重要な国益であるとどれほど強調しても、彼らがこの問題を中国政府よりも重視していると確信するのは難しい。

ここで注意して欲しい。敵国がより多くの利害関係を持ち、より大きな決意を持つという事実は、アメリカがグローバルな関与を引き受けるべきでない、あるいは遠くの紛争に介入すべきではないということを意味するものではない。例えば、相手が危険な行動を選択しないように抑止するためには、同等の決意は必要ないかもしれない。また、1991年のイラク、1999年のセルビア、そしてイラクのイスラム国との対立が示しているように、決意の固い敵が必ずしも勝つということでもない。しかし、アメリカは通常、自国から遠く離れた場所で活動しており、それゆえ敵対する相手が、アメリカより強い決意を持つ傾向があるという事実は、より広範な戦略環境の繰り返し見られる特徴である。

実際、アメリカはこの問題に対して、2つの方法で対処してきた。第一の方法は、アメリカの決意と信頼性に対する評判を、特定の紛争の結果に結びつけることだ。たとえ利害関係がそれほど大きくなくても、アメリカ政府高官たちは、将来どこかで起こる挑戦を抑止するためには、自分たちは勝たなければならないのだと主張する。この戦略は事実上、ある問題に対するアメリカの関心は、当初考えられたものよりも大きく、それはアメリカが過去に行ったかもしれない他のあらゆる公約や関心と結びついていると主張して、アメリカの政策に反対する国々や敵対勢力を納得させようとするものだ。

ヴェトナム、イラク、アフガニスタンで私たちが見てきたように、このやり方は、うまくいっていない戦争や、利益がコストを上回ると思われる戦争に対する国民の支持を維持するのに役立つ。しかし、アメリカに敵対する、もしくは不満を持っている国々を納得させることはできないかもしれない。特に、敵たちの決意が固まる、もしくは他の同盟諸国から、「自国を守るために使えるはずの資源を浪費している」と不満が出たりすればなおさらだ。更に言えば、1つの国家がより多くの関与を引き受ければ引き受けるほど、それら全てを一度に守ることは難しくなり、それぞれの関与の信頼性も低下する。挑戦者たちはいずれこのことを理解し、優位に立つ機会を待つことになる。ドミノ理論(domino theory)の応用形態を持ち出しても、それだけでは効果的な戦略にはならない。

2つ目の解決策は、アメリカが自国にほとんど、またはまったく犠牲を与えずに敵国を倒すことができるように、十分な軍事的および経済的優位性を維持することだ。敵対勢力は、深刻になっている問題により懸念を持つので、彼らが目的を達成するために高い代償を払わなければならないかどうかは、彼らにとって問題にはならないかもしれない。しかし、私たちはそうではない。サダム・フセインが1990年にアメリカに反抗したのは、アメリカ社会が1回の戦争で1万人の兵力を失うことを受け入れないだろうと考えたからだ。ところが、アメリカ政府の指導者たちは、アメリカがそのような多大な犠牲を払って戦いに舞えるということはないということを確信しており、「砂漠の嵐」作戦は、アメリカ政府の指導者たちが正しかったことを証明した。実際、この原則がアメリカの国防と外交政策全体のアプローチを支えていると主張する人もいるだろう。比較的低コストで敵を倒すことができる能力を獲得するために多額の資金を費やしている。アメリカは、多種多様な武力による保護手段に多くの資源を投入し、世界金融システムの主要な結節点に対する支配を利用して他国に一方的な制裁を課している。そして可能な限り、問題が起きている国の地上軍(例えば、イラク特殊部隊対イスラム国、今日のウクライナ軍対ロシア軍といった形)に依存している。

 

 

 

 

 

問題は、特に一極時代(unipolar moment)が終わり、諸大国のライヴァルたちが再び台頭しつつある現在、アメリカがこの規模での優位性を維持するのが難しいことだ。更に言えば、反乱やその他の形態の局地的な抵抗に直面すると、アメリカの軍事的優位性は低下する。テクノロジーの発展(具体例:無人機、監視強化、ミサイル能力の普及など)は、イエメンのフーシ派などの比較的軍事力の弱い主体にも、全体的な能力がはるかに強い敵にコストを課す能力を与えている。ヨルダンで無人機攻撃を行った民兵組織など、弱いながらも意欲的な現地主体は、アメリカに自分たちの望むことを強制することはできないかもしれないが、アメリカが思い通りに行動することが困難にすることはできる。アメリカはこれまで数十年にわたり思い通りに行動することができた。

もし世界が防衛力優位の時代に突入し、ほとんどの国家の決意が身近な地域を対象にすることで最大になるのであれば、どの国にとっても、広大で揺るぎない世界的影響力を行使する能力は低下するだろう。5つ以上の大国が、自国が存在する地域である程度の影響力を行使するが、自国の領土から離れれば離れるほど、その影響力は急速に低下するという多極的な秩序(multipolar order)が出現することも想像できる。影響力が低下するのは、パワーを投射する能力(the ability to project power)が距離とともに低下するためでもあるが、遠くへ行けば行くほど、決意のバランスが他国へシフトするためでもある。

このような世界では、アメリカはこれまでよりも慎重に戦いを選択する必要があるだろう。なぜなら、どこにでも行き、あらゆることを行うコストは上昇し、遠く離れた敵国は、自分たちが存在する地域内で、それらのコストをより喜んで支払うようになる。私たちよりも彼らがコストを負担する決意を持っている。良いニュースとしては、アメリカの現在の同盟諸国の一部が、自分たちの利益になるということで、自分たちと自分たちの周囲を守るためにもっと行動し始める世界になるかもしれないということだ。私たちが過去75年暮らしてきた世界とは異なる世界になるだろうが、アメリカ人はそれを過度に心配する必要はない。以前にも主張したように、それはアメリカ人にとって有利な世界になる可能性さえある。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。近いうちにある週刊誌にて紹介していただけることになりました。詳しくは決まりましたらお知らせいたします。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イエメン内戦は長期化している。政府側と反政府組織フーシ派の間の戦いとなっているが、政府側をサウジアラビアが支援し、フーシ派側をイランが支援している。あ氏アラビアとイランとの間で国交正常化が合意されたことにより、この構図も変化を見せつつある。サウジアラビアがフーシ派と停戦交渉を行っている。そうした中で、アメリカとイギリスが共同でフーシ派を攻撃した。アメリカとイギリスは、紅海上において、フーシ派が民間船舶(中国やイランの船舶を除く)に対して攻撃を行い、世界の物流に影響を与えていることを理由に挙げている。フーシ派は、イスラエルによるガザ地区への過剰な攻撃に対する攻撃として、紅海上で民間船舶を攻撃している。これを受けて、世界の海運各社は航路変更を余儀なくなされている。これに対して、サウジアラビアは、アメリカやイギリスに同調せず、静観の構えを見せている。
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紅海の地図
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フーシ派の関連地図

 アメリカとイギリスの攻撃は沈静化しかけていた紅海の状況を再び不安定化させている。サウジアラビアとしては、アメリカとイギリスには介入して欲しくなかったところだが、アメリカとイギリスとしては、物流の停滞による物価高もあり、何もしないという訳にはいかなかった。そして、西側諸国においては、「中国はイランとの関係も深いのだから、紅海の状況を何とかせよ、フーシ派をおとなしくさせるために何かやれ」という批判の声が上がっている。中東地域は中国にとっても、エネルギー面において重要な存在であり、中国も中東地域において重要な役割を果たしつつある。サウジアラビアとイランの国交正常化合意を仲介したのは中国である。
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紅海航路と迂回航路の違い
 パレスティナ紛争や紅海の危機的な状況において、中国は何もしていないという批判の声が上がっている。しかし、これはなかなか難しい。中国が中東地域において活発に動き始めてまだ20年くらいだ。それに対して欧米諸国は戦前から植民地にするなど長期間にわたって深くかかわってきた。中東地域においての役割については欧米諸国の方が先輩であり、一日(いちじつ)の長がある。そして、欧米諸国の政策の失敗が現在の状況である。それを修正して、正常化するのは欧米諸国の責任だ。どうしても駄目だ、万策尽きたということならば、他の国々の出番もあるだろう。「中国が何とかせよ」というのが、「自分たちの力ではどうしようもありません、私たちが馬鹿でした、どうもすいません」ということならばまだしも、ただの自分勝手な言い草であるならば、中国が何かをするという義理はない。欧米諸国は一度徹底的に追い込まれて、自分たちの無力を自覚することだ。それが世界の構造の大変化の第一歩である。

 

(貼り付けはじめ)

紅海危機が中国の中東戦略について明らかにする(What the Red Sea Crisis Reveals About China’s Middle East Strategy

-中国は確かに中東地域のプレイヤーになったが、今でもまだ極めて利己的なゲームをしている。

ジョン・B・アルターマン筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/red-sea-crisis-china-middle-east-strategy-egypt-yemen/

昨年(2023年)3月、中国の王毅外相の顔に満足感があったのを見逃すことはできなかった。サウジアラビアとイランの間の和平合意を仲介したばかりの、王毅中国外相(当時)は、二国の代表を優しく近づけた。王毅は彼らの間に立ち、しっかりとコントロールしていた。

王毅外相が満足する理由は複数存在した。多くの人が不可能だと考えていたことを中国がやってのけただけでなく、それが可能な唯一の国でもあった。サウジアラビアとイランの両国は敵対していたが、それぞれが中国を信頼していた。アメリカは中東の安全保障を重視していたが、中国は実際にそれを提供していた。王毅のあり得ない成功は、中東における中国の役割の重要性の高まりを示す新たな兆候となった。

しかし、この4ヵ月の間、2023年3月のような自信に満ちた中国外交は影を潜めている。半世紀以上にわたるパレスティナ人への支援、10年以上にわたるイスラエルとの緊密な関係、イラン、サウジアラビア、エジプトなどへの数百億ドル規模の投資にもかかわらず、最近の中国は静けさを保っている。

さらに明らかなのは、紅海の海運に対するフーシ派による3ヶ月に及ぶ攻撃によって、中国の貿易が大打撃を受け、中国の一部の地域パートナー諸国が首を絞められ始めたとき、北京はしばしば、外交的、軍事的、経済的に、パートナー諸国はおろか、自国の広範な利益を追求するために行動することができないか、あるいはしたくないように見えたことである。

中国は自らを台頭する世界大国(rising global power)として宣伝しようとし、平和と繁栄を確保するという世界的な野望を達成できていないアメリカを非難することを好む。アラブのコメンテイターらは、2022年12月にサウジアラビア・リヤドで行われた中国の習近平国家主席を招いての首脳会談をめぐる温かさを、その5カ月前にジェッダで行われたジョー・バイデン米大統領とサウジアラビア指導部とのより緊迫した会談を対比させた。『アルリヤド』紙は「西側の独立筋」の主張を引用し、「中東地域は中期的には独裁と覇権(hegemony)から離れ、開発、投資、人民の幸福、紛争からの距離に基づく中国の影響力を通じての、戦略地政学的なバランスと政治的正義の段階に移行するだろう」と主張した。

それこそが、中国がこれらの国に望んでいる未来の姿である。間違ってはいけないのは、中国はアメリカを主要な戦略的挑戦と見なしており、それ以外のものは重要ではないということだ。

驚くべきことは、これがどれほど真実であるかということである。過去4カ月間の中国の行動と不作為は、数十年にわたる中東への投資にもかかわらず、北京がこの地域で重視しているのは、依然としてアメリカを弱体化させるためであることを浮き彫りにしている中国は確かに中東地域のプレイヤーになったが、今でもまだ極めて利己的なゲームをしている。

中国の中東への関心の大元はエネルギーだ。中国は30年前に初めて石油の純輸入国となり、過去20年間のほとんどにおいて、世界の石油需要の増加のほぼ半分を中国が占めてきた。この期間を通じて、中国の輸入石油の約半分は中東地域から来ている。

中国にとって、中東への依存は一貫して脆弱性ともなる。アメリカは半世紀にわたり、この地域の安全保障を支配してきた。中国人の多くは、米中両国が敵対した場合、アメリカが中国にとって不可欠なエネルギー供給を遮断することを恐れている。同様に、中東にはホルムズ海峡、バブ・エル・マンデブ海峡、スエズ運河という、世界貿易に不可欠な3つの海運の重要地点(chokepoints)がある。アフリカ、ヨーロッパ、そしてアメリカ東海岸に向かう多くの中国製コンテナは、この3つの地点すべてを通過する。アメリカ海軍は現在、これら全ての重要地点を守る態勢を整えているが、同時に通行を阻害することも可能だ。

中国の戦略は、アメリカと対立するのではなく、アメリカと共存することであり、アメリカとの関係とともに中国との関係も発展させるよう地域諸国を説得することだ。10年ほど前、中国はアルジェリア、エジプトとの「包括的戦略パートナーシップ(comprehensive strategic partnerships)」を宣言し、後にサウジアラビア、イラン、アラブ首長国連邦をリストに加えた。偶然にも、北京は昨年8月、後者4カ国がBRICSブロック(当時はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成)に加盟するよう働きかけ、新規加盟国全体の5分の4を占めた。中国は、中東全域で経済関係を深め、その過程で貿易と開発を促進することを主張している。

中東諸国は中国の地域的役割の拡大を歓迎している。その理由として、中国が西側諸国の自由化圧力から解放してくれることが挙げられる。また、中国が厳格な規制よりもスピードを重視する経済パートナーとなってくれるからでもある。中東諸国は中国を台頭する世界大国と見ている。10年以上にわたって歴代米大統領が「ワシントンの主要な利益はアジアにある」と宣言してきたのだから、中東諸国が中国と強固な関係を築かないということはあり得ないのである。

中国が提示している主張は、各国は西側諸国との関係とともに中国との関係も発展させることができるというものだ。原則としては正しいが、現実問題としてはより複雑である。西側諸国の政府は、中国がこの地域に技術投資を行うのは、中国のスパイ活動の道具を組み込むためだと非難している。その結果、西側諸国の政府は、中東地域の各国政府がその技術を獲得することを、安全保障上の多種多様な協力体制の確立にとっての障害と見なしている。

中国の学者たちは、アメリカの地域安全保障の取り組みを厳しく批判してきた。ある著名な中国人学者は、「中国は、アメリカの無謀な軍事行動とプレゼンスの結果としての地域の不安定化の犠牲になっている」と書いている。王毅が2022年1月に中東6カ国の外相と会談したことを伝える中国メディアの記事では、王毅が「中東の主人は中東の人々だと私たちは確信している。『力の空白(power vacuum)』など存在せず、『外からの家父長制(patriarchy from outside)』など必要ない」と述べたことを伝えた。

中国の専門家たちが頻繁に主張しているには、アメリカのアプローチは中東諸国への敬意が不十分だということだ。ある学者は「あまりにも長い間、覇権国であったため、アメリカは自国の利益のために他国に圧力をかけることに慣れているが、他国の懸念には耳を貸さない」と指摘している。

2023年3月にサウジアラビアとイランの合意が成立したとき、中国側はこれを「中東の平和と安定の実現のための道をならすものであり、対話と協議を通じて国家間の問題と意見の相違を解決する素晴らしいモデルとなる」とし、「中国は建設的な役割を継続する」と公約した。

しかし、中東で暴力が勃発してから数カ月、中国は世界的な懸念声明に便乗することはあっても、独自の声明を発表することはほとんどなかった。最も明確に非難したのは、2023年10月にイスラエルがガザ市のアル・アハリ病院を攻撃したと当初は考えられていたが、後にパレスティナ側のロケット弾の誤射によるものと判明した事件に対してである。

中国は、2023年10月7日に発生したハマスによるイスラエル民間人に対する攻撃も非難しておらず、紅海の船舶に対するフーシ派の攻撃も非難していない。和平会議の開催が一般的には望ましいと表明すること以外に、この地域で展開し相互に関連する危機のいかなる要素にも対処するための中国の外交提案はない。中国にとって、高官の訪問、奨励と懲罰、調停などの外交手段は全てが保留されている。

2024年1月のジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官と王毅外相とのタイでの会談での議題は紅海の安全保障についてであった。この会談の前に、中国とイランの政府関係者は口をそろえて、中国はイラン政府に対し、フーシ派への支援について苦言を呈したが無駄だったと主張した。このような発言は、単にアメリカの圧力から王毅を守るためなのか、それとも中国がイランの思惑に影響を与えることができないという現実を反映したものなのかは明らかではない。

一方で、西側諸国と中東諸国の外交官たちは、人命を守り、緊張を緩和し、世界貿易の自由をより促進するための、何らかの方法を見つけようと、互いに深く関わっている。

この地域での出来事が中国の利益を直接的に傷つけるものではないと主張するのは難しい。まずフーシ派から話を始めることができる。彼らはイランから年間約1億ドルを受け取っている。イランは中国との貿易が全体の3分の1を占めているが、その貿易額は中国貿易の1パーセントにも満たない。

中国はイランよりも世界の他の国々に対してより注意を払っている。一部の報告によると、通常は紅海南部を通過するコンテナ船の90%が同海域を避けるために航路を変更したということだ。平常時、紅海航路は世界のコンテナ輸送量の約 3分の1、アジアとヨーロッパ間の全貿易量の40% を占めている。輸送のボトルネック(bottleneck)となっているのは、コンテナ価格が3倍から4倍に高騰しており、ヨーロッパに向かうエネルギー輸送がアフリカを迂回し、配送の遅れによりサプライチェインが麻痺していることだ。

中国は貿易立国(trading nation)であると同時に海洋立国(maritime nation)でもある。世界貿易における争いは中国に直接影響を与えるだけでなく、将来の混乱を避けるために、投資家たちを「ニアショアリング(nearshoring)」(サプライチェインの依存をより近くて友好的な国々にシフトすること)に向かわせる。

混乱はまた、中国の中東への投資にも打撃を与える。中国は紅海の各種施設に数百億ドルを注ぎ込んできた。ジブチの軍事基地だけでなく、東アフリカ、サウジアラビア、スーダンの港湾施設、鉄道、工場、その他無数のプロジェクトに注ぎ込んできた。これらの投資は一帯一路計画の一部だ。これらのプロジェクトは全て、紅海航路の断絶によって危機に瀕している。

中東全域で、イランの代理諸勢力がこの地域を戦争に導くと脅しており、その一部はイスラエルへの攻撃を通じてその脅迫に説得力を持たせている。イスラエル自身もほぼ20年にわたって中国との関係を着実に強化してきた。アメリカン・エンタープライズ研究所の中国グローバル投資トラッカーによると、中国は過去10年間でイスラエルに90億ドル近く投資し、30億ドル相当のプロジェクトを構築した。

中国がイランの代理になるどころか、イランをコントロールできると期待する人はほとんどいないが、中国がそのつもりすらないようであることは注目に値する。しかし、今回の紅海危機において中国はチャンスも見出している。

中国はこの危機を利用するために2つのことを行った。 1つ目は、中東におけるアメリカの役割に対するグローバル・サウスの敵対心を刺激しようとして、アメリカを批判することだ。2023年10月に『チャイナ・デイリー』紙に掲載されたあるコラムは、「アメリカはガザ地区において、『歴史の間違った側(wrong side of history)』に属しており、ガザ地区におけるより大きな人道危機の回避を支援することで、世界唯一の超大国としての世界的責任を果たすべきだ」と主張した。中国メディアは、グローバル・サウスの反米感情と反イスラエル感情両方を煽る形で、アメリカの外交努力を非難し続けている。中国メディアは、今回の紛争を根本的に解決するためには二国家解決策の追求が必要であるが、それを阻害しているのは、根本的に、アメリカのイスラエルの肩入れが存在している(これが今回の紛争の基底にある)、と時に間接的に、時に直接的に、主張している。

 中国が行っている2番目のことは、当面の経済的利益に配慮することだ。中国船舶の需要が高まっており、荷主はフーシ派が中国籍の船舶を攻撃しないと信じている。紅海を航行する一部の船舶は、攻撃を避けるために「全員が中国人の乗組員」を船舶追跡装置に表示されるようにしていると発表している。

中国は中東において、急速に変化する状況に適応するために外交が緊張していることを示している。加えて、共通の利益につながる困難なことを行うことへの嫌悪感を示している。中国当局者たちは協力する代わりに、パートナー諸国や同盟諸国を犠牲にして自国の利益を推進するためのギリギリの方法を模索している。

それは、中国がしばしば名刺代わりとして宣伝するような「ウィン・ウィン(win-win)」の論理ではない。現在、中国を含む全員が負けている中で、中国は状況を傍観している。

※ジョン・B・アルターマン:戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)上級副所長、ブレジンスキー記念国際安全保障・戦略地政学(geostrategy)部門長、中東プログラム部長。

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(終わり)
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。アメリカの外交政策についても詳しく分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年11月にアメリカ大統領選挙が実施される。現段階で、民主党は現職のジョー・バイデン大統領、共和党はドナルド・トランプ前大統領がそれぞれ、候補者に指名されることが確実視されており、2020年に続いて、バイデン対トランプの構図になる。各種世論調査を見てみると、両者の対決は接戦で、ややトランプ有利となっている。トランプが大統領に返り咲く場合、もしくはバイデンが大統領として二期目を迎える場合、どちらになっても、アメリカの外交政策は大きく変わらないというのが、今回下にご紹介している、ハーヴァード大学教授スティーヴン・M・ウォルトの主張だ。

 アメリカにとって重要な外交政策の対象は、ウクライナ、中東、そして中国だ。トランプ前大統領はウクライナ戦争勃発後からウクライナへの支援に反対し、即時の停戦を行うようにロシアに働きかけるべきだ、自分にはそれができると主張している。ウクライナ、ロシア療法に圧力をかけてでも停戦すべきだと述べている。バイデン政権はウクライナ支援を行ってきたが、ウクライナ戦争の状況を好転させるまでには至らず、アメリカ国内での共和党の反対によって、ウクライナ支援を継続できない状況にある。結果として、停戦に向かうしかないという状況だ。

 中東に関しては、バイデン政権は、サウジアラビアに対して宥和的な姿勢を示しているが、サウジアラビアはバイデン政権との関係修復を望んでいない。アメリカはサウジアラビアとイスラエルとの間の国境正常化を行おうとしたが、その試みはとん挫している。対イスラエルに関しては、バイデン政権は、イスラエルの過剰な攻撃を止めるに至っていない。トランプも恐らく、イスラエルを止めることはできないし、まず、止めることはしないだろう。

 中国に関しては、トランプもバイデンも強力な競争相手として、敵対的に見ている。中国と対峙するために、アジア地域の同盟諸国に対して、負担の増加を求めており、それについて、同盟諸国は嫌気が差しながら、しぶしぶ従っている状況だ。

 バイデン政権の方が、トランプ政権に比べて、より理想主義的な外交を行うと見られていたし、公約でもそのようなものが多かった。しかし、現実としてはうまくいっていない。それは、アメリカの力が減退している中で、それに気づいている国々がアメリカに従わなくなっているからだ。世界の構造は大きく変化しつつある。そうした中で、アメリカにできることの範囲はどんどんと狭まっている。

(貼り付けはじめ)

トランプが再び大統領に就任してもアメリカの外交政策は大きく変わらないだろう(Another Trump Presidency Won’t Much Change U.S. Foreign Policy

-世界の恐怖はほとんどが誇張されているに過ぎない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年1月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/22/another-trump-presidency-wont-much-change-u-s-foreign-policy/

不測の事態が起きない限り、2024年の米大統領選は現職のジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領の再戦となる。アメリカ国民の多くは、どちらも出馬しない方が幸せだと考えているが、2024年11月に直面するのはそのような選択ではないだろう。この選挙は既に、アメリカの民主政治体制と世界に対するアプローチに広範囲な影響を及ぼす、画期的な出来事として位置づけられている。

第一の問題、つまり国内で起こりそうな結果については、選択肢は明確だ。トランプは有罪判決を受けた詐欺師であり、性的虐待者であり、前任の大統領時代には無能な最高責任者であった。民主政治体制の原則と法の支配に対する彼の関与は存在せず、彼と共和党は2期目も、権力を、政敵を罰するために利用し、アメリカを事実上の独裁政治に向かわせるつもりであることが懸念される。女性の権利は更に縮小され、気候変動を食い止める努力は放棄され、裕福なアメリカ人や企業は、より広範な社会的・政治的影響をほとんど考慮することなく、自分たちの利己的な利益を自由に追求するようになるだろう。あなたがバイデンや彼の政策をどう思おうとも、彼がそのようなことをする可能性はない。私にとっては、それだけでトランプに反対票を投じる十分な理由ということになる。

しかし、外交政策に目を向けると、その違いはそれほど顕著ではない。現在、多くの人々がトランプ大統領の2期目がアメリカの外交政策に劇的な影響を及ぼすのではないかと懸念しているが、その違いは皆さんが思っているほど大きくはないだろう。トランプは1期目と同じように、不安定で、気まぐれで、粗野で、特にNATOの同盟諸国に対して対立的な態度をとるだろう。しかし、他の点では、トランプ大統領の2期目は、バイデンが更に4年間の任期で大統領を務めた場合とそれほど変わらないかもしれない。このことを理解するためには、現在の外交政策で間違いなく最も重要な3つの議題について、それぞれの人物がどのように対処する可能性があるかを考えてみればよい。ウクライナ、中国、中東である。

●ウクライナ(Ukraine

共和党の一部議員の反対や、キエフが戦争に勝利したり、失った領土を回復したりする能力について悲観的な見方が強まっているにもかかわらず、戦争が始まって以来、バイデン政権はウクライナに全面的に関与してきた。ウクライナ人とその西側の支持者たちは、トランプ大統領がアメリカの支援を打ち切り、ウクライナをヨーロッパからの援助に頼り、ロシア軍のなすがままにするのではないかと心配している。トランプは得意な大げささで、戦争を「1日で(in one day)」解決できると自慢し、ウクライナの勝利を望んでいるのかと聞かれると、言葉を濁した。従って、トランプ当選でアメリカの政策が大きく変わると多くの人々は思うかもしれない。

しかし、バイデンがもう1期当選すれば、たとえ追求の方法が違っても、同じような道をたどる可能性が高いのだ。戦争の潮流は2023年にウクライナに有利に傾き、これまで、ウクライナの支持者たちはウクライナの運命を逆転させ、ロシアが不法に征服し併合した領土を解放するための楽観的な計画を考え続けているが、彼らの希望はほぼ間違いなく幻想であり、米国防総省はおそらくそのことを分かっている。バイデンと彼のティームは選挙前にこのことを認めるつもりはないだろう。なぜなら、そうなればこれまでの戦争への対応に疑問符がつくからだ。しかし、もし大統領に再選されれば、キエフにもっと現実的な目標を採用し、和解に向かうよう圧力をかけるだろう。

私は、バイデンなら慎重なやり方でウクライナへ圧力をかけ、キエフが可能な限り最良の取引を行う手助けをしようとすると信じている。これとは対照的に、トランプ大統領はおそらく、北朝鮮の金正恩委員長との素人同士の仲良しな態度(amateurish bromance)で見せたような外交的手腕を発揮し(つまり、何もしない)、ウクライナとはさっさと手を切って逃げようとするだろう。しかし、より大きなポイントは、トランプ政権になっても、バイデン政権が続いても、2025年1月以降の戦争終結を交渉しようとするだろうということであり、その結果得られる合意は、キエフの戦争目的よりもロシアの戦争目的にかなり近いものになる可能性が高いということだ。

●中国(China

トランプはその最初の任期中、それまでの対中経済関与政策を決定的に変更し、米国経済に打撃を与え、是正されるはずだった二国間の貿易赤字にはほとんど何の効果もない、お粗末な貿易戦争(trade war)を開始した。バイデンはこのアプローチを改め、更に強化し、先端技術のいくつかの主要分野をマスターしようとする中国の努力を阻害することを意図して、ますます厳しい輸出規制を課した。あからさまな保護主義(protectionism)を拒否した、ある政権高官は、このアプローチを国家安全保障上の懸念に焦点を絞ったもの(つまり「高いフェンス(high fence)」のある「小さな庭(small yard)」)だと擁護した。しかし、庭の大きさはどんどん大きくなっており、中国に対するより対決的なアプローチは、超党派の強いコンセンサスを得ている数少ない問題の1つである。

このため、2024年11月にどのような結果が出ようとも、アメリカの対中政策は大きく変わることはないだろう。バイデン政権とトランプ前政権の公式声明は、中国をアメリカの世界的優位に対する主要な挑戦者の1つと見なしており、その見方は、どちらかと言えば、今日より顕著になっている。トランプは、アメリカの保護に過度に依存していると繰り返し非難している、アメリカのアジアの同盟諸国に対して、やや対立的な態度を取るかもしれないが、北京に本気で立ち向かうつもりなら、アジアの同盟諸国を見捨てることはできない。

結論は次の通りだ。中国との関係に関しては、バイデンもトランプも2期目には同じ合唱曲の歌詞を歌うことになるだろう。

●中東(The Middle East

アメリカの中東政策が大混乱に陥っていることを考えれば、バイデンもトランプも2025年には軌道修正を図りたいと考えるかもしれない。悲しいことに、どちらが大統領になっても将来、過去と異なる行動を取ることを期待する理由はない。実際、最も印象的なのは、この不安定な地域に対処する際、このまったく異なる2人の大統領がいかに似たような行動をとってきたかということである。

トランプは大統領として、イランの核開発に上限を設けていた核合意を破棄し、在イスラエル米大使館をエルサレムに移転し、ワシントンのパレスティナ問題担当領事事務所を閉鎖した。彼はまた、熱狂的にイスラエルの入植者たちを支持する弁護士を駐イスラエル大使に任命した。彼の和平計画は、二国家解決(two-state solution)というアメリカの長年の目標を嘲笑するものであり、一方で素人外交官(そして娘婿)であるジャレッド・クシュナーのアラブ・イスラエル国交正常化計画を後押しするものだった。その結果、アブラハム協定(Abraham Accords)は、イスラエルとバーレーン、モロッコ、アラブ首長国連邦、スーダン(後者は現在内戦状態にある)との間に外交関係を樹立したが、ヨルダン川西岸とガザ地区でイスラエルの過酷な支配下に暮らす500万人のパレスティナ人の苦境には何も対処しなかった。

この状況を引き継いだバイデンは何をしたのか? 彼は事態を悪化させた。イランとの核合意に復帰することを選挙公約に掲げていたにもかかわらず、イランの選挙で強硬派が政権を握り、共同包括行動計画への復帰がさらに困難になるまで、彼は逡巡した。結果は次の通りだ。イランは今、かつてないほど核爆弾所有に近づいている。バイデンとアントニー・ブリンケン米国務長官はパレスティナ人について、トランプと同じように扱い、在エルサレム米総領事館の再開を遅らせ、和平プロセスの再開にはほとんど力を注がなく、ヨルダン川西岸で増加するイスラエル人入植者たちによる暴力行為には目をつぶった。入植者たちの行為は、イスラエル史上最も極右的な政府によって公然と支持されていないが、容認されてきた。

トランプと同様、バイデンとブリンケンはサウジアラビアの機嫌を取ることに集中し、亡命ジャーナリストのジャマル・カショギ殺害に関与したサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子を「不可触民(pariah)」として扱うというバイデンの選挙公約を完全に覆した。共和党政権と民主党政権にまたがって存在感を示すブレット・マクガーク(Brett McGurk、1973年-)の指導の下、アメリカは昨年、イスラエルとの国交正常化と引き換えにサウジアラビアに安全保障(およびその他の特典)を与える取引を完了させようとしていた。マクガークは、おそらく近年の米国政策で最も影響力のある唯一の設計者である。パレスティナ問題はまたしても脇に追いやられ、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は昨年秋、中東は「ここ数十年来で最も静かだ(quieter than it has been for decades)」と自画自賛した。

トランプに始まり、バイデンが続けたこれらの誤りは、世界中で見られる、逆噴射を引き起こした。2023年10月7日、ハマスの戦闘員たちはガザの野外刑務所を脱獄し、イスラエルの国境地帯に残忍な攻撃を仕掛けた。イスラエルの市民に対する彼らの不可抗力とも言える残忍な攻撃は重大な犯罪であったが、イスラエルの獰猛で不釣り合いな、そして間違いなく大量虐殺的な対応は、イスラエルのイメージ、アメリカの評判、そして世界の良心に対する、更に深刻な汚点である。

かつてブリンケン国務長官が「人権をアメリカの外交政策の中心に据える」と述べたアメリカは、この外交的・人道的大惨事にどう対応したのだろうか? ガザで既に2万3000人以上のパレスティナ人を殺戮したイスラエルに、何十億ドルもの軍事援助を急ぎ提供し(その過程でアメリカの法律を迂回したと報じられている)、停戦を求める国連安全保障理事会決議(U.N. Security Council resolutions)に何度も拒否権を行使し(vetoing)、イスラエルの大量虐殺を非難する南アフリカの国際司法裁判所への広範な文書による申請を「メリットがない(meritless)」として却下した。アメリカ政府高官はイスラエルに行動を慎むよう求めたと伝えられているが、アメリカの支援を縮小すると脅した訳ではない。予想通り、ベンヤミン・ネタニヤフ政権はアメリカの要請を無視してきた。

今年、誰が選挙で勝とうとも、何かが変わると期待する理由はない。バイデンもブリンケンも自称シオニストであり、どちらもイスラエルに軌道修正を迫るような意味のある圧力をかけることはないだろう。トランプはどちらの側にもあまり関心がないように見えたが、アメリカにおける政治的影響力のバランスを理解しており、彼の反イスラム偏重(anti-Muslim bias)はよく知られている。バイデンの2期目には、ある種の和平プロセス(peace process)を復活させる試みが見られるかもしれないが、それがアメリカのこれまでの努力以上のことを成し遂げられると騙されるべきではない。結局のところ、バラク・オバマ前大統領の二国家解決への努力を台無しにしたと言われるバイデンが、もう1期務めたとしても、二国家解決を達成する可能性はないだろう。トランプ大統領は、義理の息子であるジャレッド・クシュナーと同じように、資金の流れに従う可能性が高い。ウクライナや中国と同様、アプローチの類似性は、世界観や外交スタイルの違いを凌駕している。

明らかにしておきたいが、私は今回の選挙がアメリカの外交政策に難の影響も及ぼさないと言っているのではない。例えば、トランプが大統領になれば、アメリカをNATOから脱退させようとするかもしれないが、そのような動きは間違いなく外交・防衛政策当局からの多大な抵抗に直面するだろう。トランプは主に国内の課題、そして長引く法的問題に焦点を当てる可能性があり、その場合、既に限定されている外交問題への関心がより減ることになり、現状を強化する傾向があるだろう。トランプはその1期目で外交政策の人材の見極めが不十分であった(そして前例のない離職率を引き起こした)ため、その傾向がアメリカの政策実行を妨げ、外国政府がさらなるリスク回避につながる可能性がある。バイデン2とトランプ2の間には微妙な違いがあるだろうが、私は根本的な変革が起きる方には賭けない。

全体として、次の選挙は外交政策の重要な問題よりもアメリカの国内政治にはるかに大きな影響を与えるだろう。冒頭で述べたように、国内での利害は十分に大きく、明確であり、十分な懸念が存在するため、投票方法を決めるのにそれほど問題はないだろう。私は民主政治体制下での生活が好きなので、2024年11月には主要州で過半数の有権者が私の考えに同意してくれることを願うばかりである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:

@stephenwalt

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。
 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。2023年10月に始まったイスラエルとハマスの紛争についても分析しています。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 イスラエルとハマスとの紛争、その後のイスラエルによるガザ地区への過酷な攻撃が今も継続中だ。イスラエルによるガザ地区への苛烈な攻撃に対しては、体調虐殺(ジェノサイド)だという批判の声が上がっている。アメリカは、一貫してイスラエル支持の姿勢を崩していないが(もちろん崩せないが)、ガザ地区の状況については憂慮しており、イスラエル側に自制を求めているが、イスラエルはアメリカ側の言うことを聞かない。アメリカは、イスラエルに引きずられる形になっている。それでも、「イスラエルを支援しているアメリカが何とかしろ」というアメリカに向けた批判の声も大きくなっている。

 私は最新作『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』の中で、世界は「ザ・ウエスト(the West、西側諸国)対ザ・レスト(the Rest、西側以外の国々)」という対立構造で、これからの世界は動いていくと書いた。ザ・ウエストの旗頭はアメリカで、ザ・レストの旗頭は中国である。ザ・レストには南半球の発展途上国が多いことから、「グローバル・サウス(Global South)」とも言う。アメリカが世界唯一の超大国として、一極構造であった世界から大きく変化しつつある。今回のパレスティナ紛争についても、この構図が当てはまる。

 中国は紛争発生当初から、即時の停戦を求めてきた。最近では、イスラエルによるガザ地区への攻撃を憂慮し、パレスティナ側に立つ姿勢を見せているが、深入りすることはせず、調停者の役割までは担うという姿勢を見せいている。中国の調停案はイスラエルには受け入れがたいものであるが、中国は強硬な態度を示していない。これは、アメリカの失敗、敵失を待っているということも言える。アメリカが自滅していくのを待っているということになる。そして、ザ・レスト、グローバル・サウスの旗頭として、これらの国々の意向を尊重しながら行動しているということになる。中国は慎重な姿勢を見せている。

 アメリカとイスラエルはお互いに抱きつき心中をしているようなものだ。イスラエルはアメリカを巻き添えにしなければ存続できない。アメリカはイスラエルを切り離したいが、もうそれはできない状況になっている。お互いがお互いにきつく抱きついて、行きつくところまで行くしかない。非常に厳しい状況だ。

 世界の大きな構造変化から見れば、アメリカとイスラエルは即座に停戦し、パレスティナ国家の実質的な確立を承認すべきであるが、イスラエルの極右勢力の代表でもあるベンヤミン・ネタニヤフ首相には到底受け入れられない。また、ハマスにしてもイスラエルとの共存は受け入れがたい。中国としてもパレスティナの過激派組織をどのように扱うかは頭の痛いところであろうが、イランとの関係を使ってうまく対処するだろう。二国間共存に向かうように今回の機器をうまく利用できるとすれば、それはアメリカではなく、中国だ。

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中国がイスラエルとハマスの戦争をどのように利用するか(How China Is Leveraging the Israel-Hamas War

-ワシントンとグローバル・サウスとの間に広がり続けている分断は、北京に有利に作用している。

クリスティーナ・ルー筆

2024年1月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/31/china-israel-hamas-global-south-us-foreign-policy/?tpcc=recirc062921

イスラエルによるガザ地区での軍事作戦に対する世界的な怒りが高まるなか、中国は、この戦争に対するワシントンとグローバル・サウス(Global South)のスタンスの間に広がる分断(divide)を利用し、北京自身の外交政策上の野心を高めることに注力してきた。

イスラエル・ハマス戦争の過程を通じて、中国は深刻化し続ける紛争に巻き込まれたり、地域のつながりが危​​険に晒されたりすることを警戒し、慎重に傍観者の立場を守り続けてきた。しかし、アメリカ政府がイスラエル支援をめぐって激しい反発に直面する中、中国政府もまた、ブラジル、インド、南アフリカ、パキスタンを含む数十カ国の集合体である、いわゆるグローバル・サウスと連携する機会を捉えている。アメリカの立場とは大きく異なり、イスラエルの行動を非難した。

戦略国際問題研究センター(Center for Strategic and International StudiesCSIS)で中東プログラムの部長を務めるジョン・アルターマンは、「中国は、そのほとんどをアメリカに任せている。中国が中東で追求している唯一の利益は、アメリカとグローバル・サウスの大部分との間に大きな分断が生まれるのを見守ることだ」と述べた。

イスラエル・ハマス戦争に対する中国のアプローチは当初から慎重さが特徴だった。例えば、中国の習近平国家主席は、2023年10月7日のハマスの最初のイスラエル攻撃後の検討まで2週間近く待ったが、一方、初期の政府声明ではハマスの名前さえも言及せずにいたが、この対応はイスラエル当局の怒りを買った。それ以来数カ月間、中国は自らを和平調停者(peacemaker)として位置づけ、紛争に直接関与するまでは至らないようにしながら、停戦とパレスティナ国家の確立を呼びかけた。

ブルッキングス研究所の研究員パトリシア・キムは本誌の取材に対して、電子メールを通じて答え、「中国は、現在進行中の紛争において実質的な役割を明らかに回避している」と語った。キムは更に、「中国政府は自らを地域の権力仲介者として見せたいと考えているが、安全保障の提供者(security provider)としての役割を果たすことや、地域における関係を危うくする可能性のある困難な状況に直接介入することには全く興味がない」と述べた。

こうした力関係は紅海でも明らかであり、フーシ派がパレスティナ人との連帯と主張して行った数か月にわたる商業船舶に対するフーシ派の攻撃により、世界貿易が混乱している。しかし、紅海を守るために船舶を派遣する国が増えているにもかかわらず、中国は自国の海軍の介入に抵抗している。中国政府が関与に最も積極的に取り組んでいるのは、フーシ派を支援するイランに非公式に介入を迫っているとロイター通信が報じたが、イラン当局者はこの報道を否定した。

北京のアプローチは、ワシントンとは対照的である。ワシントンは、イスラエルの建国以来、長年イスラエルの最も強力な支持者の1人であり、数十億の軍事援助で同国を支援してきただけでなく、パレスティナ紛争が始まって以来、国際舞台でイスラエルの主要な擁護者(primary defender)として行動してきた。国連安全保障理事会(United Nations Security Council)でアメリカの拒否権(veto)を行使し、中国だけでなく、グローバル・サウスの国々を含む数十カ国が支持する停戦を求める決議を阻止してきた。ジョー・バイデン政権は紅海でも行動を起こし、イエメンのフーシ派に対する攻撃を開始し、紅海の航行の自由を確保するために国際タスクフォースを動員した。

しかし、ガザでのイスラエルの軍事作戦が壊滅的な人道的被害をもたらしている中、ハマスが運営するガザ保健省によると、イスラエル軍は戦争開始以来、ガザで2万6000人ものパレスティナ人を殺害しているということだ。イスラエルに対するワシントンの揺るぎない支援に、世界の多くの人々はますます不満を募らせ、幻滅している。ガザでは現在、50万人以上の人々が「壊滅的なレベルの深刻な食糧不足(catastrophic levels of acute food insecurity)」に直面しており、統合食糧安全保障段階分類は12月に警告を発している。

そして、中国政府はその分断を利用しようとしている。「チャイナ・グローバル・サウス・プロジェクト(China Global South Project)」の共同創設者エリック・オランダーは、次のように述べた。「中国は、分断によって、世界の他の国々の目、彼らが関心を寄せる世界の地域において、アメリカを更に弱体化させることになると感じている。これは、アメリカがいかに孤立しているかを示し、世界と歩調が合っていないことを示し、そしてアメリカの偽善を示すという、中国に対する彼らの戦略にそのまま反映されている。」

オーランダーは、「中国は、自国の外交政策を追求し、アメリカ主導の国際秩序の欠点について彼らが言おうとしている価値観のいくつかを広めるという点で、これをかなり巧みに演じていると考える」と述べた。

この戦略の一環として、中国は自らを平和調停者であると公言し、5項目の和平計画を提案し、イスラエル・パレスチナ和平会議の開催を呼びかけている。2023年10月、北京はカタールとエジプトに地域特使を派遣し、停戦(ceasefire)を促した。それ以来、ガザへの約400万ドルの人道支援(humanitarian aid)を約束し、アラブ・イスラム諸国の閣僚代表団を受け入れ、紛争をめぐるBRICSブロック(当時はブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカで構成)の事実上の首脳会議に参加した。

中国の張軍国連大使は、戦争が始まって1カ月後、安全保障理事会のブリーフィングにおいて、「中国は、敵対行為の停止と平和の回復を促進するために、たゆまぬ努力を続けてきた。中国は引き続き、国際的な公正と正義の側に立ち、国際法の側に立ち、アラブ・イスラム世界の正当な願望の側に立っていく」と述べた。

中国の王毅外相は2024年1月、アフリカの多くの国々を訪問した。その際、イスラエル・ハマス戦争の仲介役の1人であるエジプトへの訪問の機会を利用し、停戦とパレスティナ国家の確立を繰り返し訴えた。

しかし、専門家たちは、北京の行動はほとんどがパフォーマンスであり、具体的な成果はほとんど得られていないと主張している。ヨーロッパ外交問題評議会のマーク・レナードが『フォーリン・アフェアーズ』誌上で指摘したように、2023年11月のBRICS首脳会議では、共同声明も現実的なロードマップも作成できなかった。ブルッキングス研究所によれば、中国が提案した和平案では、紛争解決の責任は北京ではなく、国連安全保障理事会にあるとしている。

大西洋評議会の非常勤研究員であるアーメド・アブドゥは2023年12月、「中国の外交用語の不明瞭さと、世界第2位の経済力を持っているにも関わらずガザに提供した金額の少なさ」を引き合いに出し、イスラエルとハマスの戦争調停に対する中国の真剣さは「巧妙な欺瞞(smoke and mirrors)」に過ぎないと書いている。

中国政府は紛争に巻き込まれるのではなく、バイデン政権の世界的な信頼性に疑問を投げかける一環として、ワシントンを厳しく追及し、米中両国の間の立場の違い対比させることに重点を置いている。こうした努力は国連安全保障理事会でも全面的に表れており、中国は2023年10月にアメリカの提出した安保理決議案が停戦を求めていないとして批判し、拒否権を発動した。ロシアもこの決議案に拒否権を発動した。

中国の張国連大使は、「アメリカは加盟諸国のコンセンサスを無視した新たな決議案を提出した」と述べた。北京を含む他の理事国が修正案を提案した後でも、ワシントンは彼らの「主要な懸念(major concerns)」を無視し、「善悪を混同(confuses right and wrong)」した決議案を提出したと張国連大使は続けて述べた。

12月下旬、人道的即時停戦(immediate humanitarian ceasefire)を求める安全保障理事会決議案(Security Council draft resolution)にワシントンが拒否権を発動した後、中国は再びその投票を利用して自らをグローバル・サウスと並び称し、ワシントンの立場を際立たせた。張国連大使は、決議案の約100の共同提案者の1人として、中国政府は「草案がアメリカによって拒否権を発動されたことに大きな失望と遺憾の意を感じている。これら全ては、二重基準(double standard)が何であるかを改めて示している」と述べた。

中国国営メディアもこうした意見に同調し、アメリカと中国の立場の相違にさらに注目した。『環球時報』はアメリカの拒否権について、「ガザ住民の安全と人道的ニーズに配慮すると主張しながら、紛争の継続を容認するのは矛盾している。紛争の継続を容認しながら、紛争の波及を阻止することを主張するのは自己欺瞞(self-deceptive)である」と書いている。

さらに最近、北京はイスラエルの行動に対する怒りの最も明確なケースの1つにおいて、グローバル・サウスと協調している。国際司法裁判所(International Court of JusticeICJ)での南アフリカによるイスラエルに対する大量虐殺訴訟がそれである。国際司法裁判所(ICJ)には判決を執行する手段はないが、南アフリカが提起した裁判は、イスラエルに対する国際的な圧力の高まりを反映している。

国際司法裁判所は、イスラエルがガザで大量虐殺を犯しているかどうかという問題についてはまだ判決を下しておらず、おそらくこれから何年も判決を下すことはないままだろうが、先週の金曜日には、イスラエルの軍事作戦の緊急停止を命じるよう裁判所に求めた南アフリカの要求に応えた。国際司法裁判所は判決の中で、イスラエルに対し、ガザの民間人への被害を最小限に抑えるために「あらゆる手段を取る(take all measures)」よう命じた。

この判決が発表された後、中国の国営メディアは、イスラエルのガザでの行動に対して「見て見ぬふりをするのをやめるよう」いくつかの主要国に働きかけることになる((some major countries to stop turning a blind eye))との期待を表明した。これに対してバイデン政権は、プレトリアによる大量虐殺疑惑は「根拠がない(unfounded)」という立場を繰り返したが、国際司法裁判所の判決はイスラエルに市民の安全を確保するよう求めるイスラエルの要求に沿ったものだとも述べた。

中国は長年、グローバル・サウス諸国との政治的・経済的関係を育むことを優先しており、王外相は最近、2024年の最初の外遊をエジプト、チュニジア、トーゴ、コートジボワールを訪問して締めくくった。中国外相が今年最初の世界歴訪の目的地をアフリカにするのは34年連続となる。その後、王外相はブラジルとジャマイカを訪問した。

アトランティック・カウンシルの専門家であるアブドゥは、「中国はイスラエルを、巻き添え被害を与える存在として扱うことにした。中国は、グローバル・ガバナンスと戦略的優先事項のために、これらの国々の支援を求めている」と述べている。

※クリスティーナ・ルー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@christinafei

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。準備中に、イスラエルとハマスの紛争が始まり、そのことについても分析しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカは戦後、中東地域で大きな影響力を保持してきた。親米諸国と反米諸国が混在する中で、石油を確保するために、中東地域で超大国としての役割を果たしてきた。1993年にはオスロ合意によって、イスラエルとパレスティナの和平合意、二国間共存(パレスティナ国家樹立)を実現させた。しかし、中東に平和は訪れていない。パレスティナ問題は根本的に解決していない。今回、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はパレスティナ問題を「最終解決」させようとしているかのように、徹底的な攻撃を加えている。アメリカは紛争解決について全くの無力な状態だ。イスラエルを抑えることもできていないし。パレスティナへの有効な援助もできていない。

 アメリカの中東政策について、下の論稿では、「社会工学(social engineering)」という言葉を使っている。この言葉が極めて重要だ。「社会工学」を分かりやすく言い換えるならば、「文明化外科手術」となる。はっきり書けば、非西洋・非民主的な国々を西洋化する(Westernization)、民主化する(democratization)ということだ。日本も太平洋戦争敗戦後、アメリカによって社会工学=文明化外科手術を施された国である。アメリカの中東政策は、アラブ諸国に対して、西洋的な価値観を受け入れさせるという、非常に不自然なことを強いることを柱としていた。結果として、アメリカの註徳政策はうまくいかない。それは当然のことだ。また、アメリカにとって役立つ国々、筆頭はサウジアラビアであるが、これらに対しては西洋化も民主化も求めないという二重基準、ダブルスタンダード、二枚舌を通してきた。

 アメリカの外交政策の大きな潮流については、私は第一作『アメリカ政治の秘密』(PHP研究所)で詳しく書いたが、大きくは、リアリズムと介入主義(民主党系だと人道的介入主義、共和党系だとネオコン)の2つに分かれている。第三作『悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める』(秀和システム)で、私は「バイデン政権は、ヒラリー・クリントン政権である」と結論付けたが、ヒラリー・クリントンは人道的介入主義派の親玉であり、バイデンはその流れに位置する。従って、アラブ諸国を何とかしないということになるが、それではうまくいかないことは歴史が証明している。それが「社会工学」の失敗なのである。

 最新作『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)で、私は世界が大きく「ザ・ウエスト(西洋諸国)対ザ・レスト(西洋以外の国々)」に分裂していくということを書いたが、西洋による社会工学=文明化外科手術への反発がその基底にある。私たちは、文明化外科手術を中途半端に施された哀れな国である日本という悲しむべき存在について、これから向き合っていかねばならない。

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「バイデン・ドクトリン」は物事をより悪化させるだろう(The ‘Biden Doctrine’ Will Make Things Worse

-ホワイトハウスは中東に関して、自らの利益のために野心的過ぎる計画を策定している。

スティーヴン・A・クック筆

2024年2月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/09/biden-doctrine-israel-palestine-middle-east-peace/

アメリカに「中東についてのバイデン・ドクトリン(Biden Doctrine for the Middle East)」は必要か? 私がこの質問を発するのは、トーマス・フリードマンが先週の『ニューヨーク・タイムズ』紙でバイデン・ドクトリンについて述べていたからだ。どうやらバイデン政権は、「イランに対して強く毅然とした態度(a strong and resolute stand on Iran)」を採用し、パレスティナの国家化(statehood)を進め、サウジアラビアに対して、サウジアラビアとイスラエルとの関係正常化(normalization)を前提とした、防衛協定(defense pact)を提案する用意があると考えられている。

フリードマンのコラムがホワイトハウス内の考え方を正確に反映しているなら、そしてそうでないと信じる理由はないが、私は「ノー」の評価を下すことになる。これまで中東変革を目的とした大規模プロジェクトを避けてきたジョー・バイデン大統領とその側近たちは、特にパレスティナ国家建設に関しては、噛みつく以上に多くのことを実行しようとしている。これが更なる地域の失敗になる可能性が高い。

第二次世界大戦後のアメリカの中東外交を振り返ると、興味深いパターンが浮かび上がってくる。政策立案者たちがアメリカの力を使って悪いことが起こらないようにした時は成功したが、ワシントンの軍事、経済、外交資源を活用して良いことを起こそうとした時は失敗してきた。

中東地域で国際的な社会工学(social engineering 訳者註:文明化外科手術)にアメリカが公然と取り組もうとしたきっかけは、1991年にまでさかのぼる。その年の1月から2月にかけて、アメリカはイラクの指導者サダム・フセインのクウェート占領軍を打ち破った。そしてその10ヵ月後、ソ連の指導者たちはこの連合を終わらせることを決定した。アメリカは、唯一残された超大国として独り立ちしたのである。冷戦に勝利したワシントンは、平和を勝ち取ること、つまり世界を救済することを決意した。中東でこれを実現するために、アメリカ政府高官が求めた主な方法は「和平プロセス(the peace process)」だった。

フセインによるクウェート吸収への努力が行われ、イスラエルとその近隣諸国との紛争との間に関連性がほとんどなかったにもかかわらず、イスラエルとアラブとの間に和平を築こうとするアメリカの努力は、砂漠の嵐作戦後のワシントンの外交の中心となった。もちろん、抽象的なレベルでは、イラクもイスラエルも武力によって領土を獲得していたが、1990年8月のイラクのクウェート侵攻と1967年6月のイスラエルの先制攻撃はあまりにも異なっていたため、比較の対象にはなりにくかった。

中東和平へのアメリカの衝動は、国際法(international law)というよりも、アメリカの力がより平和で豊かな新しい世界秩序の触媒になりうるという信念に基づくものだった。もちろん、これは主流の考え方から外れたものではなかった。結局のところ、アメリカは世界をファシズムから救ったのであり、ジョージ・HW・ブッシュ大統領がマドリードで平和会議を招集した当時、ソヴィエト共産主義は死にかけていた。

あらゆる努力にもかかわらず、ブッシュの中東における目標は依然として主にアラブとイスラエルの和平問題の解決に限定されていた。和平プロセスが決定的に変化する様相を呈したのはクリントン政権になってからである。 1993年の同じ週、イスラエルのイツハク・ラビン首相とパレスティナ解放機構の指導者ヤセル・アラファトが、当時のアメリカのアメリカ大統領ビル・クリントンと国家安全保障問題担当大統領補佐官アンソニー・レイクの支援と許可のもとでオスロ合意の最初の合意に署名した。ビル・クリントンとアンソニー・レイクは、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題大学院(SAIS)の学生と教職員の前に現れ、冷戦直後の世界におけるクリントン政権の米国外交政策の目標を述べた。クリントン大統領のアプローチの中心は、レイクが「民主政治体制の拡大(democratic enlargement)」と呼んだものだった。

クリントン率いるティームが中東の変化を促進する方法はパレスティナを通じてであった。クリントンは、イスラエル人とパレスティナ人の間の和平は、より平和で繁栄した統合された地域を生み出し、それによって中東の国家安全保障至上国家群の存在の理論的根拠を損なうことになると推論した。平和の後、アラブ世界では権威主義が民主的な政治制度に取って代わられることになる。主要な側近の一人の言葉を借りれば、「クリントンは変革の目標を自らに設定した。それはアラブ・イスラエル紛争を終わらせることによって中東を21世紀に移行させることだ」ということだ。

和平が政治的変化をもたらすという考えは魅力的だったが、クリントンはこの地域の権威主義的な政治の理由を見誤っていた。いずれにせよ、イスラエル人とパレスティナ人の間で紛争終結に向けた合意を成立させようとしたクリントンの努力は、ほぼ10年かけても実を結ばなかった。クリントンが大統領を退任すると、暴力がイスラエルとパレスティナの両地域を巻き込み、第2次インティファーダ(Intifada)が発生した。

クリントンの次の大統領ジョージ・W・ブッシュは当初、クリントンが中東和平に割いた時間とエネルギーに懐疑的だったが、実はブッシュはパレスティナ国家をアメリカの外交政策の目標と宣言した最初の大統領だった。そこに到達するために、彼は前任者の論理をひっくり返した。ブッシュのホワイトハウスにとって、パレスティナの政治機構を民主的に改革し、ヤセル・アラファトを追放して初めて和平が成立するということになっていた。

クリントン前大統領と同様、ブッシュは失敗した。大統領執務室をバラク・オバマ大統領に譲った時、パレスティナの民主政治体制も和平もパレスティナ国家も存在しなかった。クリントンとブッシュは、中東に対するアプローチがまったく異なる2つの政権にもかかわらず、中東の政治的・社会的変革という共通の野心的目標を共有していた。

イラクの変革であれ、いわゆるフリーダム・アジェンダによる民主政体の推進であれ、パレスティナ国家建設の努力であれ、中東においてアメリカは失敗を繰り返していると認識していながら、オバマもドナルド・トランプ大統領もバイデンもそのことを念頭に置いていなかった。新しい中東を社会工学的に設計したいという願望を持っていた。バイデンの場合、彼はイスラエル人とパレスティナ人を交渉させ、和平協定に署名させるための当時の国務長官ジョン・ケリーの奮闘を監督したが、二国家解決には悲観的な見方をした。バイデンの側近たちは就任直後、過去の政権の地域的野望は繰り返さないと明言した。

そして、2023年10月7日、ハマスによる約1200名のイスラエル人の残忍な殺害と、イスラエルによるガザ地区での徹底的な破壊を伴う軍事的対応が始まった。トーマス・フリードマンによれば、イスラエルとハマスの戦争が続き、ほとんどがパレスティナの民間人である死体が積み重なる中、バイデンは中東で成し遂げたいこと、つまり、石油の自由な流れを確保すること、イスラエルの安全保障に対する脅威を防ぐ手助けをすること、中国を出し抜くこと、は、再び外部から中東の変化を促すような新しく野心的なアメリカのドクトリンなしには実現しそうにないという結論に達したということだ。

公平を期すなら、イランがワシントンとの新たな関係を望んでいないことをホワイトハウスが理解したことは好ましい進展だ。また、サウジアラビアとの防衛協定は、中国との世界的な競争という点では理にかなっている。しかし、パレスティナの国家建設にアメリカが多額の投資をすることは、以前の取り組みのように失敗に終わる可能性が高い。

確かに、今回は違いがある。10月7日以降、専門家たちが何度も繰り返してきたように、戦争は新たな外交の機会を開く。しかし、イスラエルとパレスティナという2つの国家が並んで平和に暮らすことで、現在の危機から脱するチャンスが訪れると信じる理由はほとんど存在しない。

バイデンと彼のティームは、二国家解決を追求するしかないと感じているかもしれないが、自分たちが何をしようとしているのかを自覚すべきである。今回のイスラエル・パレスティナ紛争は、アイデンティティ、歴史的記憶、ナショナリズムといった、とげとげしい、しかししばしばよく理解されていない概念に縛られている。

イスラエル人とパレスティナ人の闘争には宗教的な側面もある。特にハマスとメシアニック・ユダヤ人グループ(messianic Jewish groups)は、ヨルダン川と地中海の間の土地を神聖化している。パレスティナの政治指導者たち(ハマスもパレスティナ自治政府も)は、ユダヤ教とパレスティナの歴史的つながりを日常的に否定している。これらの問題から生まれる対立的な物語は、バイデン政権が現在思い描いているような共存には向いていない。

そして、イスラエルとパレスティナの社会における残忍な政治が、長年にわたる当事者間の膠着状態を助長してきた。ガザを中心としたイスラエルとハマスの闘争は、イスラエル人がパレスティナ人の和平のための最低限の要求(完全な主権を持つ独立国家[a fully sovereign independent state]、エルサレムに首都設置[a capital in Jerusalem]、難民の帰還[a return of refugees])を受け入れることをより困難にする可能性が高い。同様に、パレスティナ人は、自分たちの鏡像であるイスラエルの最低限の和平要求に同意することはできないだろう。 イスラエル人が求めているのは、エルサレムをイスラエルの分割されていない永遠の首都とすること、1967年6月4日に引かれた線を越えて領土が広がる国家とすること、そしてパレスティナ難民を帰還させないことである。

新しいアイデアを失い、ガザ戦争で世界の競争相手である中国に立場を譲ることを懸念し、若い有権者たちからの支持の喪失を懸念しているバイデンとそのティームは、和平プロセスにしがみついているが、失敗に終わった事業であり、過去30年間で、今ほど、これ以上成功する見込みはない時期は存在しなかった。

ある意味、大統領を責めるのは難しい。和平プロセスの努力をしていれば安全なのだ。大統領の党内にはそれを支持する政治的支持がある。彼は努力したと言うことができる。中東を変革しようとするこの最新の動きが、おそらく何年にもわたる交渉の結論の出ない交渉の末にパレスティナ国家を生み出せなかった時、バイデンはとうに大統領職を終えていることだろう。

その代わりにアメリカは何をすべきか? これはとても難しい問題だ。それは、この問題が、解決不可能な紛争を解決するためのアメリカの力の限界を認識するように、特にアメリカの政策立案者、連邦議会議員、そしてワシントン内部(the Beltway、ベルトウェイ)の政策コミュニティに求めているからだ。

それでも、アメリカにできる重要なことは存在する。それは、イランがこれ以上地域の混乱を招くのを防がなければならないということだ。ワシントンは、既に起こっている地域統合の後退を食い止めるために努力しなければならない。そしてアメリカの指導者たちは、イスラエル人に対し、なぜイスラエルを支持する政治が変わりつつあるのかを説明することができる。ある意味では、これはイスラエル人とパレスティナ人の間の和平について、より利益をもたらす環境作りに役立つだろうが、それが実現し、実際に利益をもたらす保証はない。

2001年のある出来事を思い出す。イスラエルのアリエル・シャロン首相との記者会見で、コリン・パウエル米国務長官(当時)は「アメリカは当事者たち以上に和平を望むことはできない(The United States cannot want peace more than the parties themselves)」と発言した。これこそがバイデン大統領が陥っている罠なのである。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、米外交評議会中東・アフリカ研究部門エニ・エンリコ・マテイ記念上級研究員。最新作『野心の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、未来(The End of Ambition: America’s Past, Present, and Future in the Middle East)』が2024年6月に発刊予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行いたしました。前半はアメリカ政治、後半は世界政治の分析となっています。2024年にアメリカはどうなるか、世界はどうなるかを考える際の手引きになります。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 今回は地政学の大きな流れをまとめた優れた論稿をご紹介する。著者のハル・ブランズはジョンズ・ホプキンズ大学教授で、『フォーリン・ポリシー』誌や『フォーリン・アフェアーズ』誌に多くの論稿を発表し、著書『デンジャー・ゾーン 迫る中国との衝突』(飛鳥新社)もある。ハルフォード・マッキンダー、アルフレッド・セイヤー・マハン、ニコラス・スパイクマン、カール・ハウスホーファーといった、地政学の大立者の思想を簡潔にまとめている。また、現代にまで引き付けて、分析を加えている。

 地政学の有名な理論としては、「ランドパワー・シーパワー」「ハートランド・リムランド」「生存権(レーベンスラウム)」といったものがあるが、簡潔に述べるならば、「イギリス、後にはアメリカが、世界を支配するためには、ユーラシア大陸から有力な挑戦者が出てこないようにする」ということである。地政学がドイツに渡れば、「ドイツが生き残るためには拡大していかねばならない」ということになった。
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 現在に引き付けて考えてみると、「ロシアと中国を抑え込むために、アメリカは、ヨーロッパ(とイギリス)、日本を使う」ということであり、「インド太平洋」という概念を用いるということになる。これは逆を返して考えれば「ユーラシアでロシアと中国が団結して強固な結びつきで一大勢力となって、アメリカやイギリス、日本を“辺境化”する」ということになる。今、私たちは世界の中心がアメリカやイギリスであると考えるが、ユーラシアに世界の中心が移れば、アメリカもイギリスも世界の外れということになる。世界は大きな構造変化を起こしつつある。これからはユーラシア大陸の時代ということになるだろう。

 世界を大きく、俯瞰で見るために地政学は有効である。地政学的な素養は学者だけではなく、多くの人々にとっても必要である。現在の世界を説明するために、そして、新たな状況の出現を予測したり、考えたりすることは有意義なことだ。そして、新たな時代には新が地政学の思想が出てくることだろう。それが今から楽しみだ。

(貼り付けはじめ)

地政学は期待と危機の両方をもたらす(The Field of Geopolitics Offers Both Promise and Peril

-世界で最も悲惨な学問(science)は、ユーラシア大陸を非自由主義や略奪にとって安全なものにするかもしれないし、そうした力から守るかもしれない。

ハル・ブランズ筆

2023年12月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/12/28/geopolitics-strategy-eurasia-autocracies-democracies-china-russia-us-putin-xi/

アレクサンドル・ドゥーギン(Aleksandr Dugin、1962年-、62歳)はちょっとした狂人だ。このロシアの知識人は2022年、ドゥーギン自身を狙ったと思われる、ウクライナの工作員が仕掛けたモスクワの自動車爆弾テロで、彼の娘が殺害され、西側で大きな話題となった。ドゥーギンが標的にされたのは、ウクライナでの大量虐殺を伴う征服戦争(genocidal war of conquest in Ukraine)を何年も前から堂々と提唱していたからだろう。「殺せ! 殺せ! 殺せ!」。2014年、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領が初めてウクライナに侵攻した後、彼はこう叫んだ。更に、「これは教授としての私の意見だ」と述べた。娘の葬儀でも、ドゥーギンはメッセージに忠実だった。幼児だった娘の最初の言葉の中に、「私たちの帝国(our empire)」という言葉があったと彼は主張した。

本当かどうかは別として、このコメントはプーティン大統領の外交政策を形作る熱狂的なナショナリズムを知る窓となった。それはまた、よく誤解されている伝統である、地政学(geopolitics)への窓でもある。単に力の政治(power politics)の同義語として使われることも多い地政学は、実際には19世紀後半から20世紀初頭にかけて現れた、国際関係に対する独特の知的アプローチであり、その洞察(insights)と倒錯(perversions)が現代を深く形作ってきた。

ドゥーギンは1990年代、アメリカに対抗するためにユーラシア帝国を再建することで、落ちぶれた(down-and-out)ロシアがその偉大さを取り戻すことができると主張し、一躍有名になった。これは、1904年にイギリスの地理学者ハルフォード・マッキンダー(Halford John Mackinder、1861-1947年、86歳で没)が提唱した「これからの時代はユーラシアに依拠する侵略者とオフショアのバランサーとの衝突(clashes between Eurasian aggressors and offshore balancers)によって定義される」という論文の奇妙な世界への応用であった。マッキンダーの論文は、地政学という学問分野の確立に貢献した。ドゥーギンの暴言やプーティンの犯罪が示すように、地政学は今日でも知識人や指導者に影響を与えている。

地政学は、地理学が、テクノロジーと相互作用するかを研究する学問であり、グローバルパワーをめぐる絶え間ない争いに関して研究する学問である。地政学が注目されるようになったのは、ユーラシア大陸という中心的な舞台を支配することで、現代世界を支配しようとする巨人同士の衝突の時代が始まってからだ。そして、冷戦後の時代に地政学が時代遅れのものに思えたとしても、酷い戦略的対立関係が再登場している今、その重要性は急劇に高まっている。しかし、20世紀の歴史と現代の戦略的要請を理解するには、地政学の伝統は1つではなく、2つあることを理解する必要がある。

マッキンダーと彼の知的継承者たちに代表される、地政学の民主的な伝統が存在する。これは恐ろしいが悪とは​​言い難い。それは、猛烈な無政府状態の世界で自由主義社会がどのように繁栄できるかを理解することを目的としているからだ。そして、ドゥーギンに象徴される独裁的な地政学学派があり、それはしばしば純粋かつ単純な毒である。この独裁学派地政学はプーティン大統領と中国の習近平国家主席の政策によく表れている。民主諸国家の政策立案者たちが新たな時代を形作るには、自らの地政学の伝統を再発見する必要がある。

経済学が陰鬱な学問だとすると、地政学はそれほど明るい科学ではない。地政学は1890年代から1900年代にかけて出現した。この時代は、帝国間の競争が激化し、交通と通信の革命により世界が1つの戦場となり、戦略家たちが危険で相互につながりのある世界で生き残るための絶対条件を見極めようとしていた時代だった。地政学の研究は常に、世界中の自由の運命の中心となりつつある超大陸であるユーラシアに特別な焦点を当ててきた。

マッキンダーが論文「歴史の地理的軸(The Geographical Pivot of History)」で説明しているように、テクノロジーはユーラシア大陸の地理を紛争の温室(hothouse of conflict)にしてきた。鉄道の普及は軍隊の移動時間を大幅に短縮し、野心的な国家、特に急速に近代化する独裁国家が陸地の端から端まで覇権を求める時代を予見していた。それらの国家が資源豊富な超大陸を征服した後は、比類なき海軍の建設に目を向けることになる。

マッキンダーの厳しい予測は、大陸の諸大国がユーラシア大陸を支配することを目指し、やがて世界を支配するというものだった。マッキンダーは、やがてロシアが世界を支配すると懸念していた。マッキンダーの言う、リベラルな超大国は、ユーラシア大陸の分断を維持することで、この世界的専制主義(global despotism)を阻止しなければならない。マッキンダーにとって、そのリベラルな超大国はイギリスだった。イギリスは、陸と海で覇権を狙う国々をけん制しながら、その周辺では、危険に晒されている「橋頭堡(bridge heads)」を保持しなければならないとマッキンダーは考えた。

アルフレッド・セイヤー・マハン(Alfred Thayer Mahan、1840-1914年、74歳で没)は、アメリカに出現したマッキンダーの分身のような存在であった。シーパワー(sea power)の伝道師であるマハンは、中米地峡に運河を建設し、戦艦軍団を編成し、難攻不落の海洋強国を築き上げるようアメリカに働きかけ、知的キャリアを積んだ。しかし、マッキンダーのように、マハンも超大陸を神経質に見つめていた。彼は次のように見ていた。蒸気の時代(age of steam)には、ユーラシア大陸の統合は海を隔てた国々を脅かすかもしれない。もしかしたら、ロシア皇帝が中東や南アジアを突破して、より温暖な海域とより広い地平線を目指すかもしれない。あるいは、日本やドイツが自国内の支配を確立した後、海を越えてさらに遠くを見据えるかもしれない。

マッキンダーが卓越した陸の力が卓越した海の力につながると考えたとすると、マハンはユーラシア大陸内の危険をコントロールするには、その周辺の海域を支配する必要があると考えた。そこでマハンは、米英の海洋同盟(maritime alliance between the United States and Britain)に狙いを定め、2つの海洋民主政治体制国家が海を取り締まり、それぞれの自由の伝統にふさわしい世界システムを維持することを目指した。マハンは1897年、「英語を話す民族の心情の統一(unity of heart among the English-speaking races)」こそが、「この先の疑わしい時代における人類の最良の希望となる(lies the best hope of humanity in the doubtful days ahead)」と書いている。

地政学の闘技場で重要な3人目の人物は、第二次世界大戦の世界的混乱の中で頭角を現したオランダ系アメリカ人の戦略家であるニコラス・スパイクマン(Nicholas J. Spykman、1893-1943年、49歳で没)だ。スパイクマンはマッキンダーの主張や考えを次のように改造した。最も鋭い挑戦は、荒涼としたロシアの「ハートランド(heartland)」ではなく、ユーラシア大陸に深く切り込みながら、隣接する海を越えて攻撃することができるダイナミックで工業化された、「リムランド(rimland)」の国々、すなわちドイツと日本だ。鉄道がマッキンダーを魅了し、戦艦がマハンを夢中にさせたとすれば、スパイクマンを悩ませたのは爆撃機(bomber)であった。ひとたび全体主義国家がヨーロッパとアジアを制圧すれば、彼らの長距離航空戦力(long-range airpower)が新世界(西半球)の海洋進入路を支配し、その一方で封鎖と政治戦争がアメリカを弱体化させ、殺戮に向かうとスパイクマンは考えた。ユーラシア大陸内のパワーバランスを冷酷に調整することによってのみ、ワシントンは致命的となりかねない孤立を避けることができると主張した。

現在、これらの思想家たちを分析することは憂鬱であり、逆行的でさえある。マハンは誇らしげに自らを「帝国主義者(imperialist)」と呼び、マッキンダーは中国に「黄禍(yellow peril)」のレッテルを貼った。地政学が拠り所とする二重の決定論(dual determinism)、すなわち地理が世界の相互作用を強力に形成し、世界は過酷で容赦のない場所であるということを、全員が受け入れていた。スパイクマンは1942年に「国家が生き残れるのは、絶えずパワーポリティックスに献身することによってのみである」と書いている。

それは正しくなかった。マッキンダー、マハン、そしてスパイクマンは、新しいテクノロジーと、より凶暴な暴政の夜明けによって、より恐ろしくなった世界規模での対立の時代を乗り切ろうとしていた。マハンが言うところの「個人の自由と権利(the freedom and rights of the individual)」を尊重する民主的な社会が、「個人の国家への従属(the subordination of the individual to the state)」を実践する社会からの挑戦を生き残ることができるかどうか、3人とも最終的にはそれを懸念していた。つまり3人とも、どのような戦略、マッキンダーの言葉を借りれば「権力の組み合わせ(combinations of power)」が、許容可能な世界秩序を支え、ユーラシア大陸の統合が新たな暗黒時代の到来を告げるのを防ぐことができるかを見極めようとしていた。

この民主学派地政学(democratic school of geopolitics)は、非自由主義的な諸大国によって運営される超大陸を、避けるべき悪夢とみなした。権威主義学派地政学(authoritarian school)は、それを実現すべき夢と考えた。

自由主義の伝統に彩られた地政学が英米の創造物であるとすれば、より厳しく独裁的な倫理観を持つ地政学はヨーロッパ大陸で生まれたものだ。後者の伝統は、19世紀後半にスウェーデンの学者ルドルフ・チェーレン(Rudolf Kjellen、1864-1922年、58歳で没)とドイツの地理学者フリードリヒ・ラッツェル(Friedrich Ratzel、1844-1904年、59歳で没)が始まりである。これらの思想家たちは、ヨーロッパの窮屈で熾烈な地理学の産物であり、当時の最も有害なアイデアのいくつかを生み出した。

チェーレンとラッツェルは社会ダーウィニズム(social Darwinism)の影響を受けていた。彼らは、国家を拡大しなければ滅びる生命体とみなし、国民性を人種的な用語で定義した。彼らの一派は、1901年にラッツェルが作り出した「生存圏(Lebensraum)」、生活空間(living space)の探求を優先した。この伝統は、大陸の征服と開拓に成功したアメリカからインスピレーションを得ることもあったが、帝国ドイツのように、拡張主義的なヴィジョンと非自由主義的、軍国主義的な価値観が両立していた国々で最も開花した。そしてその後の数十年の歴史が示すように、この反動的でゼロサムの傾向を持つ地政学は、前例のない侵略と残虐行為の青写真(blueprint)となった。

このアプローチの典型は、カール・ハウスホーファー(Karl Haushofer、1869-1946年、76歳で没)である。彼は第一次世界大戦時には砲兵司令官を務め、1918年の敗戦後、ドイツ復活(German resurrection)の大義を掲げた。ハウスホーファーにとって、地政学は拡大と同義だった。第一次世界大戦後、ドイツは連合国によって切り刻まれた。ドイツが取るべき唯一の対応は、「現在の生活空間の狭さから世界の自由へと爆発することだ(out of the narrowness of her present living space into the freedom of the world)」と彼は書いている。ドイツは、ヨーロッパとアフリカにまたがる資源豊富な自国の帝国を主張しなければならない。抑圧され、持たざる国、すなわち日本とソヴィエト連邦が、ユーラシア大陸と太平洋の他の地域でも同様のことをすると、彼は信じていた。

ハウストホーファーが「汎地域(pan-regions)」と呼ぶものを統合することによってのみ、修正主義諸国は敵に打ち勝つことができた。また、協力することによってのみ、敵、すなわちイギリスによる分割統治(divide-and-conquer)を阻止することができた。この地政学の目標は、独裁的な軸によって支配されるユーラシアであった。マッキンダーが警告していたことを、ハウシュホーファーは彼の著作から惜しみなく借用し、実現する決意を固めた。

騒乱や殺人なしにこれが達成できるという気取りはなかった。ハウスホーファーは「世界は、政治的な整理整頓(political clearing up)、権力の再分配を必要としていた。小国はもはや存在する権利がない」と書いている。ハウストホーファーは、1930年代後半から1940年代初頭にかけてドイツが行った「生存圏」の獲得という殺人行為を支持することになった。

ハウスホーファーは、アドルフ・ヒトラーが1920年代に収監されている間、アドルフ・ヒトラーの相談役を務めていた。ヨーロッパのライヴァルを排除することの重要性、東方における資源と空間の必要性など、ヒトラーの『我が闘争(Mein Kampf)』の中心的主張は、純粋なハウスホーファーの主張であったと歴史家のホルガー・ヘルヴィッヒは書いた。ヒトラーが英米のシーパワーへの回答として提唱した広大なユーラシア陸軍帝国も、同様にハウスホーファーの思想に影響を受けたものだった。歴史上最も大胆な土地強奪は、ヒトラーの誇大妄想(megalomania)、病的な人種差別主義、権力への壮大な渇望に起因する。それはまた、悪の地政学(geopolitics of evil)に支えられていた。

国家と国家の衝突は思想の衝突である。20世紀を解釈する1つの方法は、民主学派地政学が独裁主義的な地政学を打ち負かしたということである。

第一次世界大戦、第二次世界大戦、そして冷戦において、根本的に修正主義的な諸国家(radically revisionist states)は、ハウストホーファーの脚本をそのまま実行に移した。ドイツ、日本、ソヴィエト連邦はユーラシア大陸の広大な土地を占領し、近隣の海と争った。支配地域は、時には殺人的な残虐性をもって統治された。しかし、リベラルな超大国が指揮を執り、民主国家が持つ最高の地政学的洞察に導かれた世界連合によって、彼らは最終的に敗北した。

マッキンダーによれば、これらのオフショア(ユーラシア大陸から離れた)諸大国(offshore powers)は、ユーラシア大陸の捕食者たちが超大陸を蹂躙し、彼らの注意が完全に海洋に向くのを防ぐために、陸上に同盟諸国を育成した。マハンが予見したように、米英は大西洋を支配し、ワシントンの圧倒的なパワーを発揮させるために同盟を結んだ。そして、スパイクマンが推奨したように、アメリカは大西洋と太平洋にまたがる同盟関係を構築し、かつての同盟国であったソ連を封じ込めるために、日本とドイツという改心した敵を利用することで、ユーラシア大陸の分断を維持することに最終的に関与することになる。

実際、こうした闘いでは道徳的な妥協が繰り返された。西側民主政体諸国は、第二次世界大戦ではソ連の指導者ヨシフ・スターリンと、冷戦後期では中国の指導者毛沢東と悪魔の取引(devil’s bargains)をした。彼らは、封鎖、爆撃、クーデター、秘密介入といった戦術を用いたが、それはより高い善への貢献によってのみ正当化できるものだった。スパイクマンは、「全ての文明的生活は、最終的にはパワーにかかっている。と書いている。民主政体諸国は、世界最悪の侵略者が最も重要な地域を支配するのを防ぐために、冷酷にパワーを行使した。

1991年のソヴィエト連邦の戦略的敗北と解体によって頂点に達したこれらの勝利の報酬は、繁栄する自由主義秩序と、グローバル化と民主化によって地政学が時代遅れになったという感覚であった。しかし残念なことに、世界は今、独裁的な挑戦者たちが古い地政学的思想を武器とする、新たな対立の時代に突入している。

プーティンの新帝国主義プログラム(neoimperial program)について考えてみよう。1990年代から、ドゥーギンは、ロシアは覇権主義的な「大西洋主義者」連合(“Atlanticist” coalition)によって存在を脅かされていると主張し、ロシアの安全保障エリートたちの間でその名を知られるようになった。ハウホーファーと同様、ドゥーギンはマッキンダーを逆転させることで活路を見出した。ドゥーギンは2012年に、モスクワにとっての最良の戦略は「私たち自身の手でロシアのために偉大な大陸ユーラシアの未来を作ることだ(great-continental Eurasian future for Russia with our own hands)」と書いている。旧ソ連の諸共和国を取り戻し、不満を抱く他の国々と結びつきを強めることで、ロシアはユーラシア修正主義者のブロック(bloc of Eurasian revisionists)を構築することができる。「ロシアの核心地域(The heartland of Russia)」は「新たな反ブルジョア、反米革命の舞台(“staging area of a new anti-bourgeois, anti-American revolution)」だとドゥーギンは1997年に書いた。西側諸国ではプーティンとドゥーギンの結びつきはしばしば誇張されてきたが、後者の著作は前者が何をしたかを知る上で悪くない指針となる。

プーティンのロシアは、その支配から逃れようとした近隣諸国(グルジアとウクライナ)の領土を分割し、一方で毒殺、戦略的腐敗、その他の戦術を駆使して他のポスト・ソヴィエト諸国を従属させ、隷属させてきた。西側諸国の政治的不安定を煽り(これもドゥーギンが提唱した共同体を崩壊させる戦術である)、その一方で、プーティンの言葉を借りれば、「現代世界の両極の1つ(one of the poles of the modern world)」として機能しうるユーラシアの制度を構築しようとしている。その一方で、プーティンはユーラシアを独裁的で反米的な大国の要塞とすることを目指して、中国やイランと擬似的な同盟関係を結んでいる。プーティンはまたもやドゥーギンの言葉を引用し、ロシアは「リスボンからウラジオストクまで」広がる「共通地帯(common zone)」を作らなければならないと述べている。プーティンはまた「ユーラシア超大陸は、ロシアが守るべき“伝統的価値”の避難所(a haven for the “traditional values”)であり、ロシアが利用すべき“大いなる機会”の源泉(a source of “tremendous opportunities”)である」と述べた。

2022年2月のロシアのウクライナ侵攻は、広々としたユーラシア大陸の中心地とダイナミックなヨーロッパ大陸の縁を結ぶウクライナを征服することで、この計画を加速させることを意図していた。ここでプーティンは、ドゥーギンが規定した血なまぐさい倫理観をもって、ロシアの「偉大な大陸ユーラシアの未来(great-continental Eurasian future)」を追求した。拷問、強姦、殺人、去勢、大量拉致、ウクライナの民族的アイデンティティを抹殺する組織的な努力は、専制的な政権の残虐性を帯びたユーラシア拡張の地政学の再来を示している。

中国の国家運営もまた、おなじみの弧を描いている。第二次世界大戦以来最大の海軍増強を行うことで、北京は台湾を奪取し、スパイクマンが西太平洋の「限界海域(marginal seas)」と呼ぶ重要な海域を支配する力を身につけようとしている。この目標を達成すれば、中国はユーラシア大陸で最も活気のある地域の覇者となる。また、世界中に基地を持つブルーウォーター・ネイヴィー(外洋海軍)への投資を自由に行うことで、習近平の言葉を借りれば「海洋大国(great maritime power)」となる。マハンが生きていれば、きっとこの中国の動きに注目していたことだろう。

マッキンダーの思想を応用した考えが中国の戦略にも反映されている。習近平の「一帯一路(the Belt and Road)」構想は、それに続くいくつかのプログラムと同様、東南アジアから南ヨーロッパ、そしてそれより遠方の国々を、経済的、技術的、外交的、そしておそらくは軍事的な影響力で包み込むことを意図している。これがうまくいけば、中国は中国中心の超大陸の周縁部(periphery of a Sino-centric supercontinent)にしがみつこうとしているヨーロッパに対して、圧倒的な地位を占めることになり、おそらくは北京が管理するシステムの中で、アメリカを二流の地位に追いやることさえできるだろう。学者ダニエル・S・マーキーは著書『中国の西方水平線』の中で、「ユーラシア大陸の資源、市場、港湾へのアクセスは、中国を東アジアの大国から世界の超大国へと変貌させる可能性がある」と書いている。習近平の中国は、人民解放軍の劉亜州上将が2004年に提言したように、「世界の中心を掌握する(seize for the center of the world)」ことを決意した。

しかし、中国の国家運営がマハンとマッキンダーの見識を採用しているとすれば、その意味するところは独裁的な伝統に沿ったものということになる。中国の外交官たつは、台湾が中国と統一された後に台湾の住民を「再教育(reeducate)」することを約束しているが、この脅しは20世紀最悪の犯罪の記憶を呼び起こさせる。中国が支配するユーラシア大陸は、ハウスホーファーが誇りに思うような権威主義的な汎地域となるだろう。北京とモスクワは、時には上海協力機構(Shanghai Cooperation Organization)を通じて協力し、中央アジアにおける潜在的なカラー革命(color revolutions)を阻止し、国境を越えて逃亡する反体制派を追い詰めてきた。その一方で、専制政治の近代化は北京の積極的な援助によって続けられている。「中国のデジタル・シルクロード(China’s Digital Silk Road)」は、最先端の監視装置を装備することで、非自由主義的な政府を強化している。

膨張と抑圧がどのように相互作用しているかを示す最も明確な例は、中国国内において見られる。習近平政権は新疆ウイグル自治区を、ウイグル族を強制収容所に押し込め、容赦ないデジタル弾圧を実施することで、人道上のホラーショーと化している。北京は「独裁の器官(organs of dictatorship)」を駆使し、「絶対に容赦しない(absolutely no mercy)」と習近平は2014年に指示した。この政策の根拠は地政学にある。新疆ウイグル自治区は、中国のユーラシア大陸への重要な輸送ルートの上に位置しているため、「新疆ウイグル自治区は特別な戦略的意義を持つ(Xinjiang work possesses a position of special strategic significance)」と習近平は述べている。それは、中国の力によって残虐行為が拡散することを予感させるものだ。

ハウホーファーの後継者たちは、非自由主義と略奪にとって安全なユーラシアを求めている。民主世界はその試練に応えるため、自らの地政学的系譜を復活させる必要がある。

ワシントンは今、マハンが夢見たような艦隊のような戦艦を必要としているわけではない。

技術革新は、その本質ではないにせよ、ライヴァル関係のリズムを変化させる。今日の競争は、新しい能力と新しい戦争領域を特徴としており、かつてないほど長距離の敵を攻撃することが容易になっている。しかし、いくつかの現実は変わらない。グローバル秩序を安定させるには、その中心にある悪意ある覇権主義(hegemony)を回避する必要がある。民主学派地政学は、このように常に変化しながらも、私たちが考えているほど斬新ではない世界をナビゲートするための心象地図(mental map)と一連の原則を提供している。

第一に、地政学とリベラルな価値観は相反するものではない。後者を守るには前者をマスターすることが不可欠だ。自由主義世界は理性、道徳、進歩を称賛するが、地政学的伝統は闘争と争いを強調する。しかし、西側の自由主義秩序の前提条件は、二度の世界大戦と冷戦において、自由の最も恐ろしい敵を打ち砕くか封じ込める力の組み合わせを生み出すことであった。世界が、ほんの数年前に出現した、破滅的な戦争や独裁的な優勢から安全ではなくなっていることを考えると、リベラルな価値観の隆盛には、パワーポリティックスにおいて地政学をスムーズに応用できる能力を国家が持つことが再び必要となるだろう。

地政学を学ぶ者なら、2つ目の洞察も理解できるだろう。スパイクマンは、ユーラシア大陸が枢軸諸国(the Axis)に制圧されそうになっていた1940年代初頭に、彼の代表的な著作を執筆した。リベラル勢力がどん底状態に陥ったことが、ユーラシア大陸の均衡が新たに崩れないようにすることで、次の戦争を防ぐ戦略を求めるスパイクマンの主張につながった。

スパイクマンが着想した戦略の歴史的成果のおかげで、西側諸国は、プーティンがウクライナに強硬に攻撃しないように、重要な援助を提供することで、東ヨーロッパの奥深くでロシアと均衡を保つことができるようになった。ワシントンとその同盟諸国は、中部太平洋ではなく台湾海峡で北京の力を牽制することができる。このような立場を維持するための軍事的・外交的要求は重いが、修正主義者たちが勢いづいた後に、より弱い立場からバランスを取ることに比べれば、その要求が少ないことは確かである。

ポジションを維持するためには、第3の原則を守る必要がある。それは、地政学とは同盟政治(alliance politics)であり、ユーラシア大陸の覇権をめぐる戦いは、同盟の構築と破棄の競争ということだ。スパイクマン、マッキンダー、マハンが把握していたように、海外の大国は、たとえ超大国であっても、最前線の同盟国の助けがあって初めてユーラシア大陸の情勢を調整することができる。逆に、覇権国家を目指す国は、海外からの支援を阻止し、隣国を孤立させることによってのみ、隣国を制圧することができる。

したがって、ユーラシア大陸のバランスは、アメリカが旧世界の周辺地域に介入するために必要な主権的、軍事的優位性を維持できるかどうかにかかっている。しかし、たとえ強制、賄賂、選挙妨害、その他の介入戦術を用いる敵対者に対して、遠く離れた大陸にアクセスし、影響力を与え、追加の能力を与える同盟と安全保障ネットワークをワシントンが適応させて強化すればそれは問題ではない。それらの同盟は全く別のもとして考える必要がある。

マッキンダーが思い起こさせるように、パートナーのタイプや場所も重要である。中国との戦いは主に海洋問題である。しかし、これは4つ目の教訓であるが、ランドパワーとシーパワーは、たとえその相対的なメリットが際限なく議論されるとしても、互いに補完し合うものである。ワシントンが太平洋で孤立無援の敵に直面することを望むならば、ヴェトナムや特にインドなど、中国の脆弱な陸上国境に沿ってディレンマを生み出すような友好諸国の存在が必要になる。

ヴェトナムもインドも理想的なパートナーではないが、これは第5の原則を強調している。アメリカにとって戦略とは、民主的な団結と卑劣な妥協を融合させる技術である(art of blending democratic solidarity with sordid compromises)。ユーラシア大陸の大西洋と太平洋の縁に広がる自由民主諸国は、ワシントンの連合の中核である。しかし、バランスを維持するには、常に非自由主義的なアクターたちと非自由主義的な行為が関与してきた。

この世代の修正主義者たちを封じ込めるには、シンガポールからサウジアラビア、トルコに至るまで、友好的な、あるいは単に二律背反的な権威主義者の弧に対峙する必要がある。ライヴァル関係の激化によって、ワシントンが秘密裏の謀略、経済的妨害工作、代理戦争に手を染めることになっても、ショックを受ける必要はない。覇権をめぐる争いは、比較的立派な民主国家に醜いことをさせるものである。

しかし、第6の教訓を忘れてはならない。ユーラシアの争いは一次元的なものでも、単地域的なものでもない。マハン、マッキンダー、そしてスパイクマンはみな、ユーラシア大陸を巨大で相互に結びついた舞台と見なしていた。最近では、アメリカにとって本当に重要なのは台湾だけであり、軍事力だけが真に重要なパワーの一種であるという、より還元主義的な見方(reductionist view)をする分析者たちもいる。西太平洋で中国に敗戦した場合の結果は、確かに画期的なものとなるだろう。しかし、自由世界が直面している問題はそれだけではない。

今日のウクライナにおける仮定の話ではない戦争の結果は、バルト海から中央アジアまでの戦略的バランスを形成し、ユーラシアの独裁国家とそれに対抗する自由民主政体国家との間の優位のバランスを形成する。だからこそ、ウクライナを切り離せという声は、ワシントンの最も脆弱な西太平洋の同盟諸国からはほとんど聞こえてこないのだ。

更に言えば、マッキンダーが1904年の論文で書いたように、中国は対外的にも対内的にも拡大することができる。ユーラシア大陸に進出すれば、「偉大な大陸の資源に海洋の出入り口を加える(add an oceanic frontage to the resources of the great continent)」ことができる。また、スパイクマンが付け加えるように、政治戦争(貿易、技術、その他の非軍事的手段の利用)は、戦争そのものと同様に敵を軟化させることができる。つまり、これらの思想家たちは、北京の経済的・技術的影響力を封じ込めることは、その軍事力を牽制するのと同じくらい重要であり、ワシントンがユーラシア大陸の一部分に焦点を当て、他の地域を排除するような単純なことはできないということを理解している。

その多くは、将来に対する厳しい見通しを示している。しかし、民主学派地政学が冷徹なパワーに関する計算の専門知識を必要とするのであれば、それだけに限定することはできない。最後の洞察は、世界的な危機は創造の機会であるということだ。

20世紀において、ユーラシア大陸における挑戦諸国の活動は、世界の民主国家に前例のない協力を呼び起こした。ユーラシアの挑戦諸国の活動は、世界の民主国家にかつてない協調を呼び起こし、侵略の計画を退けるとともに、世界の多くの地域にかつてない繁栄と幸福をもたらした自由主義秩序の基礎を築いた。現在の対立関係の中で成功する連合とは、20世紀の時と同様に、地球規模のグループが、かつてないほど軍事的、経済的、技術的、外交的に団結して、この時代の最も差し迫った課題に対処するものである。マッキンダーは、「反感を買う個性(A repellent personality)」には「敵を団結させる(uniting his enemies)」という美点があると書いた。民主学派地政学の目標は、今日また新たな時代の創造を可能にする安全保障を提供することであるべきだ。

ハル・ブランズ:ジョンズ・ホプキンズ大学ポール・H・ニッツェ記念高等国際関係大学院(SAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念特別教授、アメリカン・エンタープライズ研究所上級研究員。ツイッターアカウント:@HalBrands
(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を発売しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 サウジアラビアは隣国イエメンの内戦で政府側を支援し、反体制派フーシ派との戦いを続けてきた。フーシ派を支援しているのはイランである。同時に、サウジアラビアは、フーシ派との和平交渉を続けてきた。中国が仲介したサウジアラビアとイランの国交正常化交渉開始も追い風になっている。しかし、これに水を差す形になったのは、アメリカとイギリスによるフーシ派への攻撃だ。これによって、サウジアラビアとフーシ派との和平交渉はとん挫する形になった。
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 アメリカはイスラエルと中東諸国との間の和平を進めている。実際に一部の中東諸国とイスラエルとの間に和平が成立している。サウジアラビアもアメリカの仲介でイスラエルとの和平、国交正常化を続けてきたが、2023年10月8日のハマスによるイスラエル攻撃、その後のイスラエルの過剰報告によって、サウジアラビアとイスラエルとの和平は絶望的になっている。イスラエルは中東で孤立状態になっている。
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 フーシ派は紅海で船舶攻撃を行っている。紅海はスエズ運河を通じて、地中海とインド洋を繋ぐ重要地点である。紅海の安全が保障されない状況では、世界の物流も厳しい状況になる。結果として、物価にも影響が出る。サウジアラビアは自国の安全を最優先にして、フーシ派を暴れさせないように、和平交渉を行ってきた。フーシ派はパレスティナ紛争をめぐり、イスラエルとの和平を行った各国への攻撃も行う可能性を持っている。こうなれば中東全体の不安定要因となる。サウジアラビアの和平交渉が重要であったのだが、米英両国によるフーシ派攻撃によって状況は悪化することになった。

 中東の状況がこれから悪化することになる。注目していかねばならない。

(貼り付けはじめ)

紅海上での衝突をサウジアラビアが傍観している理由(Why Saudi Arabia Is Staying on the Sidelines in the Red Sea Conflict

-フーシ派との数年にわたる戦争の後、リヤドは何よりも自国の安全を確保しようとしているが、和平交渉は不安定であり、この計画は裏目に出る可能性がある。

ヴィーナ・アリ=カーン筆

2024年1月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/01/16/saudi-arabia-red-sea-conflict-houthis-us-strike/?tpcc=recirc_trending062921

ほんの数年前であれば、サウジアラビアはフーシ派の拠点を狙った米英共同攻撃の機会を利用しようとしただろう。リヤドはほぼ10年間、フーシ派と残酷な戦争を戦ってきた。しかし今日、イエメン内戦から手を引き、国境を越えた攻撃から自国を恒久的に守るためにフーシ派指導部と微妙な和平交渉を行っているリヤドにとって、イエメンのグループであるフーシ派に対する西側の攻撃はまさに望むところとは正反対である。

紅海における緊張が高まる中、サウジアラビアは紛争に関わらないことを選択した。その代わり、サウジアラビアとフーシ派の間のコミュニケーションラインはオープンなままであり、リヤドは攻撃の標的にならないよう、あからさまにワシントンに味方することを避けている。今のところ、この戦略はうまくいっているように見えるが、長期的にサウジアラビアの保護が保証されるのかという大きな疑問が残る。

1月12日未明。米英軍機はイエメンのフーシ派軍事拠点数十カ所を標的とした。その翌日、ワシントンはフーシ派の拠点への新たな空襲を開始し、司令部、弾薬庫、ミサイル発射システム、無人機を標的にした。復讐を誓うフーシ派は1月15日、アメリカ所有のコンテナ船に弾道ミサイルを発射した。(ワシントンは1月16日に再び報復した)。

これらの攻撃は、紅海の商業船舶に対するフーシ派の2ヶ月にわたる攻撃に続くもので、反政府勢力フーシ派は、ガザ地区のパレスティナ人との連帯を示すものだと主張している。フーシ派は、これらの攻撃はイスラエルと関係のある船舶に限定されていると言っているが、実際には、射程距離圏内にある全ての船舶を標的にしている。これまでに30件近いフーシ派による国際海運への攻撃により、少なくとも50カ国が影響を受けている。

世界の主要なコンテナ海運会社のほとんどが、世界の輸送量の約15%、最大で3分の1を扱うスエズ運河に通じる重要な水路である紅海を避ける決定を発表するまでに時間はかからなかった。

アントニー・ブリンケン米国務長官の最近の中東歴訪は、ガザ紛争を封じ込めるよう地域アクターに圧力をかけることを意図したものだった。しかし、ペルシャ湾岸諸国はフーシ派をよく知っており、彼らに対する影響力も限られているため、大した反応はしなかった。別の試みとして、アメリカはサウジアラビアに対し、反体制派との和平交渉において紅海の危機を考慮し、交渉のペースを落とすよう促した。

それにもかかわらず、フーシ派とリヤドは、紅海の危機が両者の合意を妨げることを避けるために、協議を継続することを選択した。米英両国の攻撃を受けて、サウジアラビア外務省は「大きな懸念(great concern)」を表明し、エスカレートを避けるために「自制(self-restraint)」を求めた。

リヤドには、フーシ派との新たな手に負えない紛争に巻き込まれる気はまったくない。サウジアラビアは反政府勢力への軍事対処を通じて過去の教訓から学び、直接戦闘を行うことの危険性を痛感している。

フーシ派が主張した2019年のアラムコ攻撃は、2つの主要石油施設を標的とし、サウジアラビアの石油生産の半分を一時的に停止させたが、これが転機となった。その原因はアメリカの対応の遅れにあった。アメリカから裏切られたと感じたリヤドは、その後数年間、外交政策を急速に見直し、ワシントンの救援に頼るのではなく、地域の頭痛に対する外交的解決策(diplomatic solutions to its regional headaches)を模索するようになった。

最近では、リヤドは代わりにイランとの対話を続けている。イエメン攻撃の前日、サウジアラビアのファイサル・ビン・ファルハン外相はイランのホセイン・アミール=アブドラヒアン外相から連絡を受けた。サウジアラビアの皇太子であるムハンマド・ビン・サルマンにとって、待望の「ビジョン2030(Vision 2030)」(国民経済の多様化を目的とした大規模な改革計画)に向けた重要な数年間において、状況を混乱させるようなエスカレーションは最も避けたいことだ。その結果、サウジアラビアは紅海の危機において沈黙を守ることを選択し、2023年春に発表された中国が仲介するイランややフーシ派とのコミュニケーションチャンネルが、地域の混乱や将来のフーシ派の攻撃から自国を守ることになると期待している。

これらの新しいコミュニケーションラインは、紅海におけるフーシ派の行動を阻止することを目的としている訳ではない。むしろ、どのような状況であれ、地域のエスカレーションからサウジアラビアを孤立させるための、より広い努力の現実的な一部なのだ。今のところ、この戦略はうまくいっているようで、リヤドは標的にされていない。実際、サウジアラビアがフーシ派に対するアメリカ主導の海上連合(maritime coalition)に参加しないという決断を下した理由には、イランとアメリカの緊張の矢面に立たされた経験が影響している。

サウジアラビアの最優先事項は自国を守ることだ。サウジアラビアはイエメン戦争からの迅速な撤退を望んでおり、西側諸国と反体制派との最近のいざこざがこれを台無しにすることはないだろう。2021年以来、オマーンが促進したフーシ派との交渉は困難な中で進んできた。リヤドはようやくフーシ派との効果的な意思疎通が可能になった。それゆえサウジアラビアは、紅海でのアメリカの作戦を支援するためだけに、フーシ派の攻撃から自国を守るのに十分だとサウジアラビアが考えているこの関係を危うくする価値はないと判断している。

むしろ、最近のエスカレーションは、サウジアラビアにできるだけ早く合意をまとめようとする、更なる誘因を与えた。 2023年11月末に向けて、リヤドはイエメン政府とフーシ派との間の将来の国連主導の協議の基礎を築くことを目的とした提案草案を国連イエメン担当特使に提出した。伝えられるところによると、協定の一部にはサウジアラビアの最優先事項である国境を守るための緩衝地帯(buffer zone)が含まれている。

リヤドも自画自賛している。サウジアラビアは以前から、フーシ派がより高度なドローン能力を獲得し、紅海に近い地域を支配する危険性についてワシントンに警告してきたが、彼らの目には、精彩を欠いた対応しか受けられなかった。それゆえ、サウジアラビアは、フーシ派に対する残忍な戦争で何年も自国を批判してきた同じ西側のパートナーを、なぜ支援しなければならないのかと疑問を呈している。

しかし、サウジアラビアの計算は間違っている可能性がある。最終的な和平合意はまだ確実なものとなっていない。現在存在しているのは、いつ崩壊するか分からない脆弱な理解だけだ。正式な和平合意がなければ、将来的にフーシ派が紅海やその国境でサウジアラビアを標的にすることを阻止するものはない。

状況がエスカレートすればするほど、その可能性は高まるばかりだ。フーシ派自身も、リヤドの保護が、より広範な紛争に関与しないという決断にかかっていることを内心認めている。フーシ派はサウジアラビアの弱点である国境を認識しており、いつでもこれを利用することができる。アメリカによる第2次空爆のわずか数時間後、フーシ派はサウジ国境沿いで軍事作戦を実施し、アメリカに味方した場合の潜在的な結果についてサウジアラビアに警告を発した。

問題を更に複雑にしているのは、もしリヤドがイスラエルとの国交正常化交渉を再開することになれば、サウジアラビアは再び反政府勢力の格好の標的になりかねないことだ。フーシ派は、アブラハム協定(2020年にイスラエルと一部のアラブ諸国がアメリカの仲介によって国交正常化した協定)に対する批判の声を避けておらず、この問題はアラブ首長国連邦に対する批判の中心となっている。

サウジアラビアが国交正常化交渉を進めれば、フーシ派がゴールポストを移し、イスラエルと同盟関係にあると思われる国々を標的にすると宣言し、和平交渉でサウジから更なる譲歩を引き出す正当な理由にする可能性が高い。確かなことは、リヤドはフーシ派による将来の標的の可能性に留意しながら、イスラエルとの協議を再開する必要があるということだ。

サウジアラビア・フーシ派両陣営にとって理想的な世界であれば、和平交渉は紅海の危機から切り離されたままであろう。しかし、今日の現実はそうではない。この地域は急速にヒートアップしており、イエメンの脆弱な和平プロセスを完全に脅かしかねない事態に、より多くの関係者が次々と参戦している。アメリカがフーシ派を対外テロ組織として指定するなど、非軍事的なアプローチを選択すれば、フーシ派の国連主導の和平交渉への参加は危うくなり、イエメンの地域紛争が再燃し、事実上の停戦が終わる恐れが出てくる。

他方、米英がイエメンへの攻撃を続ければ、フーシ派は、バーレーンを含むこの地域にある米軍基地や、イスラエルと連携しているとみなす湾岸諸国の首都を標的にすることで、これまで彼らが脅してきたように、状況をさらに悪化させる可能性がある。少なくとも、このような攻撃は和平交渉を完全に頓挫させ、サウジアラビアに行動を起こさせ、イエメンをより複雑な地域戦争(regional war)に巻き込むことになるだろう。

全体として、イエメンにおいてサウジアラビアに残された、自分たちを有利にする選択肢はない。2つの問題を区分するという戦略は、今のところリヤドを守ることに成功しているが、これは公式な和平合意がない場合の一時的な応急処置にすぎない。イエメン紛争の将来は、今や紅海の動乱と表裏一体であり、イエメンの和平プロセスはこの不快な現実についてきちんと考慮しなければならない。

※ヴィーナ・アリ=カーン:ニューヨークを拠点とするイエメンとペルシア湾地域の研究者。イスタンブールで、インターナショナル・クライシス・グループのイエメン研究担当を務めた経験を持つ。

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