古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2024年04月

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 今回は、トランプ政権で高官を務めた人物による「保守派の諸原則とは」という内容の論稿をご紹介する。

アメリカの保守派は、保守的な外交政策を支える諸原則として、自由の優位性(primacy of liberty)、国家主権(national sovereignty)、軍事力(military power)、そして国際情勢の本質的な競争性に対する現実的な認識(realistic appreciation for the inherently competitive nature of the international landscape)を重視している。これらの原則は、政策選択に影響を与え、アメリカの外交政策に修正を促すことができる。保守派は、自由、主権、競争、力の4つの原則を基盤とするリアリズム戦略を採用しており、これによってアメリカの力を維持し、国家の利益を守ることを目指している。共和党内には、大まかに言えば、介入主義的なネオコン派とリアリズム派がいる。ドナルド・トランプ大統領のアイソレイショニズム(Isolationism、アメリカ国内問題解決優先主義)はリアリズムの系統になるだろう。「外国で起きている問題は、外国が解決すべきで、アメリカにはアメリカ国内の問題がたくさん存在するのでそれらを解決することだ」という考えになる。外国にわざわざ出かけて、戦争を仕掛けて、既存の政権を倒して、新しい政権を樹立するなどということをしなくてよいという考えだ。「体制転換(regime change)を外交政策の柱にしたことで、アメリカは酷い目に遭った(アフガニスタンとイラクで)」ということになる。

保守派は、アメリカの外交政策において、地域のアクターたちと協力し、安定圏の拡大や国際秩序の維持に努めるべきだと考えている。同盟諸国やパートナー諸国との協力、地域のバランスの維持、そして地域の主体の積極的な参加が重要であると強調している。アメリカの保守派は、アメリカの利益と価値観を守るために、地域に特化した政策を展開し、同盟諸国との協力関係を重視している。

 こうしたリアリズム的な原則であれば、同盟諸国とアメリカとの関係もうまくいく。しかし、実際には、介入主義的な、ネオコン派や人道的介入主義派が実権を握っている状況が続き、アメリカの外交政策はうまく行っていないのが現状だ。現在のバイデン政権も結局は、「ヒラリークリントン政権」と言わざるを得ず、外交政策はうまく行っていない。それが、アメリカの衰退を促進させている。
(貼り付けはじめ)
21世紀のための保守的なアメリカの国家統治術(Conservative U.S. Statecraft for the 21st Century

-共和党内には多種多様な人たちがいてそれぞれに政策面で不同意のところもあるだろうが、共和党の持つ原理原則は、分断されつつある世界を、アメリカが主導していくのに役立つだろう。

ナディア・シャドロウ
2022年11月7日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2022/11/07/us-republicans-conservative-foreign-policy-principles/

アメリカの保守派は喜ぶべきだ。彼らは、現在の政策課題に適用すれば、アメリカが困難で複雑な国際状況を乗り切ることを可能にする、一連の信念と前提を保持している。保守的な外交政策を支える諸原則、自由の優位性(primacy of liberty)、国家主権(national sovereignty)、軍事力(military power)、そして国際情勢の本質的な競争性に対する現実的な認識(realistic appreciation for the inherently competitive nature of the international landscapeは、各種の政策選択に影響を及ぼす。

分裂し、競合する政治システムによって緊張を深める世界に直面した時、アメリカの保守派はアメリカの外交政策に必要な修正を促し、アメリカを将来に向けて強い立場に置くことができる。全ての政策選択が上記の原則から完璧に導き出されるわけではないが、政策立案者たちは困難な選択をするための指針として、これらの原則を用いるべきだ。世界を現実的に見ることは、政策立案者たちが歯の浮くような美辞麗句と厳しい現実のギャップを縮めるのに役立つ。これらの間のギャップこそが重要な問題なのだ。思考が現実から切り離されると、冷笑が生まれ、成果を上げる可能性が低くなり、民主政治体制への信頼が低下する。アメリカの保守派は、246年もの歴史を持つ、アメリカで実施されてきた実験に根本的な信頼を寄せているが、その理想主義は、アメリカは常に不完全であるという現実的な理解によって抑えられている。完璧主義(perfectionism)は夢想家(dreamers)や暴君(tyrants)たちが担当すべき仕事だ。

当然のことだが、保守派全員が一致した考えを持つことはない。歴史家のラッセル・カークが述べたように「お手本・モデルになる保守主義者(model conservative)」は存在しないが、「市民的社会秩序を見る(looking at the civil social order)」という点では、明らかに保守的なやり方がある。これは外交政策の領域にも及んでおり、保守主義の諸原則は、挑戦と機会を評価し、自由へと進む選択をするための枠組みを提供する。

保守的な外交政策には4つの原則がある。

第一に、自由への信念が保守的な外交政策の中核にある。それは、権力が持つ、人々の生活に介入する本性に対して必要な懐疑を提供し、無制限で説明責任を果たさない政府を是正するものだからだ。従って、国内においては、保守派は地域レヴェルから始まる解決策を好む。国際政治においては、国際規模の解決策や超国家的な解決策とは対照的に、国家的・地域的な解決策に偏ることになる。これは補完性の原則(principle of subsidiarity)ということになる。この原則は、小さな組織でできることを大きな組織で行うべきではないというものだ。自由の重要な側面は経済的自由である。アメリカの保守派は、経済的自由を拡大する方向に進まなかった国は繁栄しなかったことを知っている。

第二に、国家主権の尊重は、自由を維持し、安定した国際秩序を維持するための中心的な役割を果たす。第二次世界大戦後、自由主義的な国際秩序の基盤を形成した主要な制度は全て、国家主権が侵害できないものであり、平和と繁栄に不可欠なものであることを認めている。国際連合の設立憲章には、国家の主権平等(sovereign equality)が書かれている。アメリカの保守派は、個々の国家が依然として主体性(agency)と秩序(order)を提供する最良の方法であると信じている。国家主権のない民主政治体制(democracy without national sovereignty)は存在不可能である。

第三に、国際情勢は競争的であり、今後もそうであろうという理解は、保守的なリアリストたちにとって基本的な前提となる。2017年のアメリカの国家安全保障戦略が指摘したように、「歴史における中心的な連続性は力の争いである(central continuity in history is the contest for power)」ということになる。多くの外交政策の専門家たち、特にリベラルな国際主義者たち(liberal internationalists)は、この前提に反発している。歴史家のドナルド・ケーガンは「現代世界の多くの人々にとって、パワーという言葉には不快な響きがある(To many in the modern world, the word power has an unpleasant ring,)」と書いている。しかし現実には、各種の政治的、もしくは経済的なシステムは依然として競争しており、各国が国民生活をどのように秩序づけるかについても見解が分かれている。

第四に、強力なアメリカ軍は、これらの競合するシステムに打ち勝ち、アメリカの利益を守り、力を誇示するために必要である。それは、アメリカが戦争を好んでしたいからではなく、平和を維持するために強力な軍隊が必要だからである。軍事力はまた、他の形の影響力や国家統治(statecraft)に必要な基盤にもなる。

これら4つの原則(自由、主権、競争、力)は、保守的なリアリズム戦略の土台となっている。このような戦略の全体的な目標は、アメリカ国民が自国の経済的・政治的利益を守り、不安定と支配を求める人々を牽制し、平和を維持できるように、アメリカの力を維持することである。

現在、世界は政治的、経済的、軍事的、技術的に分断されつつある(fragmenting)。アメリカの保守派がこうした変化の力に対処するのに有利なのは、彼らの前提や原則が、世界が実際に機能する方法によりよく合致しているからである。保守派は、世界的な政治的収束(global political convergence)が避けられない、もしくは、可能であるなどとは考えていない。いわゆる「一極集中の瞬間(Unipolar Moment)」の陶酔の中で、アメリカの指導者たちは自由主義的民主政治体制の勝利に酔いしれ、そもそもアメリカを成功に導いた原則の多くを放棄した。これらの原則はアメリカの保守的伝統の一部であり、戦略的考え方の基礎である。

もちろん、戦略は自国から始まるものであり、アメリカ国民の安全と幸福が優先されなければならない。しかし、これはアメリカの保守派が、「アメリカ要塞主義的な考え方(Fortress America)」を採用すべきだという意味ではない。ロシアのウクライナ侵攻、エネルギー価格の高騰、広範なサプライチェインの混乱が示すように、アメリカは世界と関わりを持たなければならない。なぜなら、アメリカ国民が地政学的な出来事や世界中で起きているその他の事柄から個人的に影響を受けるという単純な理由があるからだ。

中国のような権威主義国家(authoritarian state)は、アメリカの利益を損わせようとして積極的に活動している。アメリカはもはやかつてのような圧倒的な力を享受していないが、その強みは依然として大きい。この力を賢く使えば、アメリカの利益に有利な形で地政学的展開に影響を与えることができる。

保守的な国家安全保障戦略とは、外交、経済、軍事、技術の4つの面での国家戦略に沿って政策内容を構築するために、今までに概説した諸原則を具体化したものである。

(1)保守的な外交統治術は、世界中の政治的協調(political alignments)を促進するために行われるべきだ。これは軍事力を使って主導することや、アメリカの価値観を押し付けることを意味しない。つまり、その地域のアクターたちと協力することであり、そのアクターたちがこのような協調の基盤を作るのである。アメリカの友人や同盟諸国が多ければ多いほどよい。これは安定圏(sphere of stability)の拡大に貢献し、ライヴァルたちが利用できる資源や選択肢を減少させ、アメリカのパワーを維持するのに役立つ国際秩序を維持することになる。

保守的なアイソレイショニストたち(isolationists)の中には、アメリカの海外関与を、民主政体を促進する永遠の戦争(forever wars)と反射的に同一視する人たちもいる。この考え方は、アメリカの既定の立場は自国の価値観を他国に押し付けることであり、世界中の何百万もの人々が、より良い生活を望んでいるという事実を無視している。

アメリカの戦略的利益を損なわない限り、アメリカが自由と繁栄(freedom and prosperity)を求める人々に支援を提供しない理由はない。自由を求める草の根運動への支援(support for grassroots movements)は、文化侵略(cultural aggression)でも軍国主義(militarism)でもない。同時に、アメリカの戦略的利益のために、アメリカ人が望むほど自由を支持しない政権との一時的な協力が必要となる場合も多くなるだろう。

主権は、特にグローバルな多国間機関による侵害から守る価値がある。アメリカの保守派が健全な懐疑を持って国際機関に臨むのは当然である。多くの国際機関は、移民問題から気候変動問題、新型コロナウイルスに至るまで、重要な地球規模の問題に対処してきた実績は明らかにまちまちである。アメリカは、共通の課題に対処するために、志を同じくする国々と行動を共にすべきだが、選挙で選ばれた政府が適切な権限を持つべきものを、説明責任のない組織(unaccountable organizations)に委ねるべきでない。

アメリカとその同盟諸国やパートナー諸国に有利な地域における力の均衡(balance of power)は、アメリカの利益と価値観に有利な国際的なバランスを維持するための構成要素である。脱グローバリズム(deglobalization)の新時代においては、グローバルで画一的な政策ではなく、地域に特化した政策がアメリカの成功に不可欠である。

インド太平洋、欧州、中東における地域のバランスを維持するためには、同盟諸国やパートナー諸国との協力、そして彼らの積極的な参加が必要である。ロナルド・レーガン大統領以来、どの大統領も一貫して同盟諸国に更なる努力を求めてきた。アメリカの保守派は、同盟諸国やパートナー諸国が自国の防衛に資源を割く必要があることを明確にし、現地の主体も投資する場合にのみ軍事力の展開を提唱すべきである。台湾、日本、ドイツなどの同盟諸国は、自国の防衛への関与を高める必要がある。重要なのは、地域のアクターたちの決意だ。

アメリカの保守派は多国籍組織の恩恵を受けずに、問題をより迅速に解決する連合の構築に集中できる。とりわけ、二酸化炭素排出など多くの問題の解決は地方や地域レヴェルで始めなければならないからだ。

(2)保守的な経済国家戦略・経済安全保障(economic statecraft)は、アメリカの優位性を拡大し、敵対国に力を与えることを避け、志を同じくする国々に繁栄の圏を築くべきである。アメリカが技術革新(innovation)の最前線での地位を維持するには、国内の自由市場システムを維持するだけでなく、アメリカの優位性を高めるための国際経済政策を構築する必要がある。

重要なことは、アメリカ政府が国家安全保障にとって重要な分野における強力で革新的な国内製造基盤を確保する必要がある。アメリカ企業が過去30年間に行ってきたように、効率を最大化するための執拗なオフショアリング(offshoring)は、今日のアメリカが半導体などの主要な製造部門で企業と労働力を欠いていることを意味する。これを是正するには、アメリカの理工系学生の数を拡大し、技能を持つ移民を促進し、研究開発に適切なリソースを提供するという取り組みが必要だ。アメリカ政府はまた、敵対者がアメリカの技術革新の恩恵を受けることを阻止すべきだ。アメリカのテクノロジー企業は、人工知能やその他の機能を開発するために中国の研究センターを支援すべきではない。

アメリカの保守派は、友好国間だけでなく、敵国との間でも、貿易協定における真の互恵性(genuine reciprocity)を主張すべきだ。修正主義勢力は自由世界の経済へのアクセスを厳しく規制されるべきだ。制裁対象の中国企業と中国政府の軍事・諜報機関に関係する企業は西側の株式市場や債券市場から締め出されるべきだ。アメリカの投資家たちは、たとえ第三国の市場を通じてであっても、自国の敵対者に資金を提供すべきではない。また、中国などのライヴァル国への危険な依存を避けるためにサプライチェインを再構築すべきであるということについては、政治的立場を超えたコンセンサスがある。多様化(diversification)により回復力(resilience)が向上する。全世界が台湾に集中しているマイクロチップ工場に依存すべきではない。

アメリカの保守派の中には、効率性を損なうだけでなく利益団体によるレントシーキング(ただ乗り)にもつながる産業政策(industrial policy)への一線越えに警告を発する人たちもいる。こうした議論は今に始まったことではない。1980年代、レーガン政権はアメリカの半導体産業を日本との競争から守るために介入した。レーガンが市場と国家安全保障のバランスを取る必要性を認識したのは正しかった。

理想的なのは、権力を集中させることなく、触媒(catalyzed)となって有利な条件を設定する連邦政府である。バランスを取るのは難しいが、産業政策に対する保守的なアプローチは、以下の原則に導かれるかもしれない。

第一に、国内で競争力のある効率的な市場を可能にする必要がある。アメリカは、インフラ、新しい鉱山、産業施設をより迅速に推進できるように規制を削減する必要がある。複雑なプロジェクトを開始して完了するには、10年以上かかる場合がある。

第二に、政府機関は主要セクター、特に半導体のような複雑なセクターについて、より良いデータと情報を必要としている。最近では、アメリカ政府よりも優れた経済データを持つヘッジファンドが存在する。

第三に、アメリカの保守派は国家レヴェルのアプローチを重視すべきだ。連邦政府は戦略的に重点を置くことができるが、新しい施設が建設され、インセンティヴが与えられるのは州および地方レヴェルだ。第四に、経済効率よりも国家安全保障への配慮が優先されなければならない。アメリカの政策立案者たちは、たとえ関税や国内調達規制、その他の市場介入が必要な場合でも、軍事的および経済的安全保障にとって重要な分野を特定し、国内能力を維持または構築する必要がある。競争の場は平等ではない。

海外では、アメリカは国際市場へのアメリカ人​​の参加の自由を拡大する政策を追求すべきだ。この目的を達成するために、アメリカの保守派はアメリカとその同盟諸国およびパートナー諸国を含む繁栄圏(sphere of prosperity)の成長を促進する必要がある。

冷戦後、アメリカの政策立案者たちは、世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)に代表されるようなグローバルな経済開放を推し進めた。中国やロシアのような修正主義的大国(revisionist powers)の台頭により、このアプローチは、産業化が進んだ民主政体諸国(industrial democracies)を中心とした自由主義諸国間の経済的関与のための排他的な領域を発展させることに道を譲らなければならなくなった。それ以外の国々は、加盟資格を満たす価値観や制度を採用するよう奨励されるだろう。

保守的なアプローチは、より現実的な気候政策を策定する機会も提供するが、その現在のヴァージョンは、繁栄を危険に晒し、国内外のエネルギー危機を引き起こし、ひいては経済をより弱体化させることになる。アメリカは国内の気候変動に関する課題を発展途上国に押し付けるべきではない。保守的なリアリストたちは、ナイジェリアのエミ・オシンバジョ副大統領からヒントを得るべきである。オシンバジョ副大統領は、エネルギー転換は「多次元(multidimensional)」であり、「様々な経済の異なる現実を考慮(into account the different realities of various economies)」する必要があると説明した。アメリカの保守派は、地方や地域のアプローチに基づいて、現実的な時間枠で炭素排出量を削減することができ、経済の繁栄と成長と一致させる、気候変動課題を推進する有利な立場にある。

(3)保守的な軍事国家運営は、強力な軍隊を支持するという長く健全な伝統に基づいている。そのためには、予測可能な国防予算と、地域の力の均衡を維持するために必要な活動や能力が必要となる。これには、紛争を抑止するのに十分な規模と能力を備えた海外前方プレゼンス(forward presence abroad)を維持することも含まれる。これらの広範な目標は、軍事力が第一の手段であることを意味するのではなく、軍事力は平和を維持し、アメリカの影響力と国家統治の他の形態を支えるために必要な基盤であるという理解を示すものだ。

インフレ率が急上昇する中、予測可能な防衛予算は特に重要だ。2023年の約4%の増加はインフレ率を下回っており、実質的には大幅な予算削減となる。これは言い換えれば、準備の低下と装備調達の余地の減少を意味するが、これは政権が2回連続の予算サイクルにわたって無視してきたことである。

アメリカの保守派の一部、およびリベラル派は、国内政策への支出と国防への支出はトレードオフの関係にあると主張する。これは論点のすり替え(strawman)だ。世界におけるアメリカの役割の縮小と、例えば学校、医療、インフラの改善との間には何の相関関係(correlation)もない。国内制度の弱点は、一般的にお金の問題ではない。アメリカの保守派は、こうした問題の原因が、政策選択の誤り、規制の停滞、技術革新を阻害しリスクテイクにペナルティを課す官僚機構にあることを知っている。アメリカは外部からの脅威を抑止し、国民の生活の質を向上させることができる。

保守的な政策立案者たちは、必要なときには批判者となり、毎年国防授権法に忍び込む多くの無関係な項目ではなく、実際の防衛ニーズに焦点を当てるよう国防省に圧力をかけるべきだ。ホワイトハウスの気候変動に関する優先事項は、再生可能エネルギーで活動するためのユートピア的な計画を軍に開発させることを含め、軍の優先事項から遠ざかり、装備品の調達や訓練のようなミッション重視なプログラムにおいてトレードオフを余儀なくされる。軍の役割は、気候変動と戦うことではなく、敵を抑止し打ち負かすことである。

アメリカの保守派はまた、非政治的で、党派的な文化戦争(partisan culture wars)から切り離され、国家とアメリカ合衆国憲法に奉仕したい男女の採用に重点を置いて活動する軍隊を支持しなければならない。

自由企業に重点を置く保守派は、軍に必要な技術革新を提供する任務を負った防衛企業と国防総省の絶え間なく硬化した関係に関しても結果を要求しなければならない。

地域の均衡を維持しようとするアメリカの戦略の中心的な要素は、アメリカ軍の前方展開である(forward deployment of the U.S. military)。有能な前方展開部隊は、必要であれば迅速に行動し、信頼できる抑止力(credible deterrence)を維持する能力をアメリカに提供する。いったんアメリカ軍が撤退した戦域に再び進駐することは、はるかに困難であり、場合によっては不可能である。重要な戦闘力を移動させるための兵站には数カ月を要し、世界中のアメリカ軍が直面している反アクセス・領域拒否(anti-access/area denial)の課題は、いったん危機が進行すると戦域に再突入することがますます難しくなることを意味する。

保守派の間で最も激しい議論のいくつかは、アメリカの海外プレゼンスに関するものである。ある陣営は、アイソレイショニスト、あるいはより流行の言葉では自制派(restrainers)と呼ばれ、縮小を求める。このグループの代表は、アメリカ軍の前方プレゼンスは、「地の果てまで(to the ends of the earth)」進歩的な価値観を押し付けようとする、アメリカの「企み(contriving)」を象徴していると主張してきた。彼らの論理的根拠は、アメリカは世界で拡張しすぎており、アメリカの海外プレゼンスは、「文化的傲慢(cultural arrogance)」の一形態であるというものだ。

このような国際関係の見方には深い欠陥がある。世界各地で起きている出来事は、単にアメリカに対する反応ではない。グローバルに拡大し、アメリカに取って代わろうとする中国の決意は、ワシントンに対する反応ではなく、北京自身の戦略的目標の追求である。イランの地域的な願望は、そのアヤトラが目指す救世主的な目的から直接生じている。ロシアは、ウクライナのような主権国家の存在を否定する新帝国主義プロジェクトを進めている。これは架空のアメリカの過剰な拡張に対する反応ではなく、ロシアとその帝国エリートに対する特殊な自己概念に起因する。

更に言えば、前方展開への反対は、そのような展開の基本的な軍事的目的、すなわち紛争を抑止することを軽視している。抑止は戦争を防ぐための主要な手段であり、「ジャスト・イン・タイム(just in time)」の軍事力では抑止は不可能である。

(4)保守的なテクノロジー国家戦略は、テクノロジーが21世紀の戦略的競争の鍵を握っているという認識に基づいている。テクノロジーは将来の社会、経済、軍事を形成する。米国は、人工知能、量子コンピューター、半導体、バイオテクノロジー、自律システム、新エネルギー技術(核融合など)、宇宙という重要な領域など、中国との競争に不可欠な分野で競争上の優位性を保持しなければならない。

アメリカの保守派は規制緩和を推進し、許認可を合理化し、科学技術教育を改善し、技能を持つ移民を促進し、研究への投資を増やす必要がある。これにより、自由市場と無制限の起業家精神という、アメリカの最大の競争上の優位性が解き放たれることになる。出発点は、これらの分野の改革と進歩を妨げているものを特定し、ゼロから始めることを避けることです。

技術的優位性を維持または獲得するには、革新的で将来を見据えた生態系(エコシステム)だけでなく、ルールを守らないライヴァルによる侵害からアメリカ企業を防御する防御策も必要となる。これには、半導体業界だけでなく、全ての米国企業や研究機関が中国軍の武装を支援する団体と取引することを禁止する取り組みも含まれる。最近のある報告書では、人民解放軍に人工知能技術を供給している中国企業273社のうち、米商務省の取引制限リスト(entity list、エンティティリスト)に載っているのはわずか8%であることが明らかになった。同様に重要なことは、アメリカの保守派はその影響力を利用してアメリカのテクノロジー企業と関わり、中国への継続的な投資のリスクを評価すべきである。

保守的な思想は、変化に対する懐疑や秩序への偏見が連想されがちだ。もしそうだとしたら、保守派は困ってしまうだろう。彼らは世界の変化を主体的に形作るのではなく、その変化に反応するだろう。しかし、変化への抵抗は保守主義に対する誤解である。イギリス啓蒙時代の偉大な保守思想家エドモンド・バークは、「保全(conservation)と是正(correction)の2つの原則(two principles of conservation and correction)」のバランスを取ることの重要性を重んじた。バークの考えでは、「何らかの変化の手段を持たない国家は、その保全の手段を持たない」ということになる。

経済的な秩序から政治的な領域まで、世界秩序が分断されていることは、前途がますます不透明になっていることを意味する。アメリカの保守派は、アメリカ国民が自国の象徴である最高のものを維持し、アメリカの核心的な国益を増進する可能性が最も高い方法で出来事を形作るのを助けることができる政策を開発する能力を持っている。

30年以上前、サミュエル・ハンティントンは、「衰退主義(declinism)は、信じなければ無効になる理論である」と書いた。言い換えるならば、アメリカは真剣に問題に向き合う必要がある。保守派は世界の仕組みを理解し、アメリカ建国の原則に根本的な信頼を寄せているため、そうするのに適した立場にある。それは、私たちが直面する乱気流を乗り切るための良い立場なのである。

※ナディア・シャドロウ:ハドソン研究所上級研究員、トランプ政権下で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。


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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 バイデン政権はインテリジェンス外交(intelligence diplomacy)ということで、国家情報長官も参加させての外交を行おうとしている。ウクライナ戦争直前にロシア軍の動きをウクライナ側に通報するということで、その成果を挙げたと言われている。

 インテリジェンスが外交の場で重要な役割を果たすということはこれまでもあった。代表的な例としては、日中国交正常化の交渉過程において、アメリカは軍事偵察衛星から撮影した中ソ(当時)国境のソ連赤軍の配備が分かる写真を中国側に提供し、これを見た毛沢東が米中国境正常化を最終決断したという話が残っている。「敵(ソ連)の敵は味方」ということで、共通の敵をつくり、それを認識させるために、インテリジェンスが重要であった。

 米中国交正常化やニクソンショックに関して、日本は情報収集ができず、アメリカからも情報を得ることができず、寝耳に水の状態で、慌てて対応しなければならなかった。日本は、情報諜報を軽視しがちと言われてきた。太平洋戦争開戦前、戦時中において、日本は情報部門を軽視し、情報を分析することを怠ったために、国が亡ぶという結果を招いたと言われている。しかし、日本には忍者の伝統があり(忍者は現在で言えば情報将校であり、スパイである)、日露戦争において、明石元次郎大佐(後に大将)がスウェーデンのストックホルムに拠点を置いて、ロシアに対する諜報上活動と後方かく乱に従事し、ロシア国内に混乱をもたらすことで、戦勝に貢献したことは知られている。日本には優秀な情報将校の伝統もある。しかし、それが何故か、一番重要なアメリカに対して機能しなかったのは、そこに何らかの意図があったのではないか、機能しないように仕組まれたのではないかと疑わざるを得ない。

 インテリジェンス外交によって、機密情報が各国で「交換」されることになり、そのために、セキュリティクリアランスが設定されたということもある。アメリカは、正確な情報を同盟諸国に与え、それを各国の行動の誘因にしようとしている。米中国交正常化交渉の時は、衛星写真であったが、今は各種情報となっているだろう。セキュリティクリアランスの運用に関しては、国家や政府に都合の悪い情報を機密情報に指定して、国民に知らせないということが起きる危険がある。自衛隊の日報問題ということがあったが、そのようなことが起きる危険がある。ここで重要なのは、シヴィリアン・コントロール(文民統制)、国民に選ばれた政治家がコントロールすることである。そして、国会がきちんとした権限を持つことだ。現在の弛緩しきった自民党にそうした緊張感を持ったコントロールができるかどうか、心もとない。こうしたことがしっかりできなければ、他国からの信頼も得られない。

(貼り付けはじめ)

インテリジェンス(情報諜報)外交の時代(The Age of Intelligence Diplomacy

-イラク戦争はそのリスクを浮き彫りにした。ロシアのウクライナ戦争はその機会を示した。

ブレット・M・ホルムグレン筆

https://foreignpolicy.com/2024/02/19/russia-ukraine-us-intelligence-diplomacy-invasion-anniversary/

私は残りの人生で、2022年2月22日のことを忘れることは決してないだろう。その日の夕刻、国務省内の、盗聴などから遮断された、安全が確認された部屋で、閣僚級の人々、そしてホワイトハウスの国家安全保障会議(National Security CouncilNSC)の幹部クラスの人々が集まっての会議が招集された。私はアントニー・ブリンケン米国務長官とともに出席した。会議の冒頭で行われた通常の情報ブリーフィングでは、厳しい警告が発せられた。 ロシアがウクライナへの本格的な侵攻を開始する姿勢を鮮明にしていた。

その前の数カ月間、アメリカはロシアの計画についてウクライナと世界に警告するため、戦略的に情報の機密性の格下げ(downgrading)と機密解除(declassifying)を行っていた。会議が行われた夜、国務省で国家安全保障会議の指導者たちは、新たな緊急脅威情報を直ちにウクライナと共有する必要があるとの結論に達した。

偶然にも、ウクライナのドミトロ・クレバ外相がブリンケン国務長官との会談の後、国務省に来ていた。ブリンケン、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官、そしてアヴリル・ヘインズ国家情報長官(Director of National IntelligenceDNI)は、私と、ヘインズ長官の分析担当副官モーガン・ミュアに国家安全保障会議を抜け出し、情報機関と協力してウクライナと共有できる文言を明確にするよう要請した。許可を得た後、私たちは国務省の7階にいるクレバ外相を探し出し、情報を伝えた。クレバは絶望の表情を浮かべながら、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に戦争の準備をするよう電話をかけた。

最終的に、ロシアの計画を事前に暴露しても戦争を回避することはできなかった。しかし、アメリカの情報公開はウクライナの自衛を可能にし、同盟諸国やパートナー諸国を動員して、キエフを支援させ、国民の目にはロシアの偽情報(disinformation)を無力化させ、世界の人々に対して、アメリカからの情報、そしてアメリカの信頼性を回復させた。イラク戦争がインテリジェンス(情報諜報)外交のリスクを浮き彫りにしたとすれば、ウクライナにおけるロシアの戦争はその機会を示した。

アメリカは常に外国のパートナーと脅威に関する情報を共有しており、情報は長い間、アメリカの外交官たちにとって貴重なカードであった。しかし、ロシアのウクライナ侵攻は、アメリカの外交に対する情報諜報(インテリジェンス)支援の規模、範囲、スピードの著しい進化を象徴するものだった。それはまた、アメリカの国家安全保障上の利益を支援するために情報活動を行う18の機関で構成されている、アメリカ情報諜報(インテリジェンス)コミュニティの世界的な信頼性の転換点ともなった。

ロシアのウクライナ侵攻に対するアメリカと同盟諸国の対応を可能にする上で、戦略的で、承認された情報開示が中心的な役割を果たした。情報開示のおかげで、ウィリアム・バーンズCIA長官は2021年11月、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領に対し、アメリカはウクライナにおけるモスクワの意図を認識しており、断固とした対応を取るだろうと警告を与えることができた。また、ロシアの計画についてウクライナの人々や世界に警告を発した。そのような情報開示の一例として、モスクワがウクライナ侵攻を正当化するためにいわゆる「偽旗(fake flag)」残虐行為をでっち上げるかもしれないというアメリカの情報があった。

ロシアの陰謀を暴く諜報機関の正確さと成功を考慮して、政府、メディア、一般大衆の多くは、情報開示が他の世界的な紛争や課題における外交手段として利用される可能性があると認識している。

「インテリジェンス(情報諜報)外交(intelligence diplomacy)」について、一般的に受け入れられている定義は存在しない。ある人はこの概念を、外国のパートナーとの伝統的な情報共有という狭い意味で捉えている。また、情報外交をパブリック・ディプロマシー活動(public diplomacy campaigns)を強化するための手段、あるいはプレス・リリースなど政府高官の発言に注目を集めるための手段と考える人もいる。国務省では、情報諜報外交を「外交活動やパブリック・ディプロマシーを支援するための情報活用であり、アメリカの外交目的を推進し、パートナーに情報を提供し、同盟関係を構築し、協力を促進し、アプローチや見解の収斂を促し、条約を検証するためのもの」と定義している。

戦略的かつ責任を持って使用された後に、機密性のレヴェルが下げられた、もしくは機密解除された情報は、アメリカの外交政策を強力に後押しすることができる。例えば、1962年10月、アメリカは国連安全保障理事会に機密解除された情報を提出し、キューバにソ連の攻撃用ミサイルが存在することを暴露した。2017年4月、ホワイトハウスは対シリア攻撃への支持を集めるため、シリア政権による自国民への化学兵器使用を詳述した情報の機密指定を解除した。

しかし、適切な保護措置や監視がなければ、インテリジェンス外交は国家安全保障へのリスクを高め、外国のパートナーとの信頼を損ない、アメリカの利益を損なうような使われ方をすることもある。最も悪名高いのは、2003年にイラク侵攻を開始する前に、ジョージ・W・ブッシュ政権が、イラクの指導者サダム・フセインが大量破壊兵器を保有していることを主張するために機密情報を公開したことである。この情報は不正確であることが判明し、情報諜報コミュニティは一世代(30年)にわたって世界的な評判を落とした。

情報諜報コミュニティと政策立案者たちにとっての課題は、この種の誤用や悪用を防ぎながら、インテリジェンス外交の利点を最大限に活用することだ。インテリジェンス外交の将来を考えるとき、イラクの教訓を決して忘れてはならない。同時に、ロシアの本格的なウクライナ侵攻に対するアメリカの対応において、なぜインテリジェンス外交があれほど成功したのかを概説する価値がある。

第一の理由は、ジョー・バイデン大統領の決然たる指導力だ。2021年後半、ロシアが軍を動員し、情報諜報コミュニティが明らかにウクライナへの攻撃が間近に迫っていると評価する下地が整えられつつあったとき、バイデンはモスクワの計画と意図に関する情報を、機密レヴェルを下げるように指示した。ウクライナをはじめとするアメリカの同盟諸国やパートナー、そして一般市民が、アメリカが見ているものを正確に理解できるようにするためだ。

第二に、アメリカの政策意図は、戦争を防ぐという原則的かつ明確なものだった。サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官が2022年初頭、ホワイトハウスでの記者会見の場で述べたように、「イラク情勢では、戦争を始めるために、まさにこの演壇から情報が利用され、展開された。私たちは戦争を止め、戦争を防ぎ、戦争を回避しようとしている」。ブリンケン国務長官は、ロシアが侵攻する数日前に、国連安全保障理事会で同様のメッセージを発した。

第三に、ロシアとウクライナに関するアメリカの情報は、具体的で一貫性があり、正確であり、そして今後もそうであり続ける。情報諜報機関のアナリストたちは、ロシアの活動と意図に関して収集した情報の信頼性と確実性に大きな自身を持っており、これは収集と分析能力に対する長年の投資の結果である。

第四に、商業画像やソーシャルメディアなど、ロシアの活動に関する新たなオープンソースデータによって、情報諜報コミュニティは、より機密性の高い収集源や方法を発覚の危険に晒すことなく、信頼できる情報の機密レヴェルを下げたり、機密扱いを解除したりして、外国のパートナーや一般市民と共有することができるようになった。

ブリンケンのリーダーシップの下、国務省は、より多くの外交にインテリジェンス(情報諜報)を注入するため、集中的かつ計画的なアプローチを採用し、実行してきた。その際、国務省は情報諜報機関と緊密に連携してきた。大使をはじめとする外務官僚から次官、副長官、そしてブリンケン自身にいたるまで、国務省の多くの高官が、格下げされた、あるいは機密解除された情報を、国際的な関与や公の場での発言、外交上の方策(diplomatic demarches)に利用する機会を定期的に探し求めている。

ブリンケン国務長官は、2022年7月に国家情報長官室で行った講演の中で、「我が国の情報諜報活動と外交との間の深い相乗効果(profound synergy between our intelligence and our diplomacy)」についてほのめかした。ブリンケンは続けて「私たちは、ウクライナに対するロシアの侵略に関してだけでなく、全般的に、インテリジェンス外交を我々の思考の一部に組み入れ続ける必要があると考える」と述べた。

2023年9月、ブリンケンは、冷戦後の秩序の終焉から、民主政治体制と独裁政治の闘いによって定義される戦略的競争の新時代へと移行する際のアメリカの外交アプローチについて概説した。この戦略の核心は、「アメリカの最大の戦略的資産である同盟とパートナーシップを再参加させ、活性化させ、再構築すること」だとブリンケンは語っている。

インテリジェンス(情報諜報)は、これらの関係をサポートし、発展させる上で重要な役割を果たす。情報を共有することで信頼を築き、信頼できる情報に基づく共通の見解を確立し、パートナー間の協力のための新たな分野を開くことが可能となる。同盟関係の強化は、アメリカ情報諜報機関にとっても重要な資産となる。バイデン政権の国家安全保障戦略と国家情報長官の最近の国家情報諜報戦略はいずれも、権威主義的、もしくは修正主義的な諸大国に対するアメリカの戦略的競争においてインテリジェンス外交が中心的な役割を果たすことを明らかにしている。

国務省当局者や外交官たちによる膨大な量の格下げ(downgrade)および機密解除(declassification)要求は、この新たな現実を浮き彫りにしている。たとえば、2021年には、情報諜報機関の格下げまたは機密解除を求める要求が900件以上もあった。 2023年には、そのようなリクエストは1100件以上あり、週あたり20件以上のリクエストがあった。

国務省はウクライナ戦争以降もインテリジェンス外交を展開してきた。2023年だけでも、ウクライナ戦争を支援するためにロシアに致死性殺傷兵器を提供した場合の結果について中国に警告するために、格下げまたは機密解除された情報が公に、そして外交ルートで、非公開で利用された。つい最近、国務省は、アメリカとの二国間協定に違反して中国製軍事装備品の輸入を検討している国に方向転換を促す大規模な取り組みの一環として、格下げされた情報を利用した。そして国務省は、人権侵害に関係する政府への監視技術の拡散を防ぐために各国と連携するために、格下げされた情報に大きく依存してきた。

インテリジェンス外交に万能のアプローチはない。アメリカ国内外の様々な政府機関が、それぞれの権限や目的、そして少なくともアメリカにおいては、国家情報長官のガイダンスに沿ったモデルを開発し、展開している。国務省としては、インテリジェンス外交の厳密性、規律、そして慎重さをもって、いつ、どのようにインテリジェンス外交を行うべきかについて、最善の実行手段(best practice)を制度化するためにいくつかのステップを踏んできた。

第一のステップとして、私たちは国務省職員による情報の開示または公表の要求を通知するのに役立つ指針を確立した。これら7つの核となる原則は、国家情報長官によって設定された既存の情報諜報コミュニティの開示ポリシーを補完するものだ。

インテリジェンス外交は、明確な政策目標を支援し、国力の他の要素と整合性を保ちながら、国力を強化し、同盟関係やパートナーシップの強化を優先し、アメリカの信頼性を維持するために、信頼性が高く、理想的には複数のソースからの情報に依拠し、オープンな情報源では得られないような新しくユニークな情報の共有に努めるべきだ。更には、外交を支援するために使用される情報は、明確で理解しやすく、伝えられる側に伝わりやすいものでなければならない。また、インテリジェンス外交の提案は、情報源や方法に対する潜在的なリスクと期待される利益を慎重に比較検討すべきだ。

2024年1月、私たちは、職員の意識を高め、将来の世代の外務官僚や公務員たちに指針を提供するために、国務省の内部政策の中に、インテリジェンス外交を活用するためのこれらの原則とガイドラインを成文化し、追加した。

第二のステップとして、テクノロジーを活用し、国務省の機密・非機密ネットワークを通じてリソースや情報共有ツールをオンラインで利用できるようにすることで、国内外の米外交官たちのインテリジェンス外交へのアクセスを拡大した。

最後のステップは、新任の外交官や大使を対象に、インテリジェンス外交について、またこの能力を世界各地の米在外公館での外交活動にどのように組み込むかについて教育するための研修の開発に着手したことである。

結論は次のようなものだ。インテリジェンス外交は、アメリカの外交政策を担う主要機関である国務省の使命を支え、それを可能にする上で、ますます不可欠になっている。しかし、それは国家の安全保障とアメリカの価値観に合致した形で活用されなければならない。ガードレールがなければ、インテリジェンス外交が誤用されたり、悪用されたりする危険性がある。

2022年2月の厳粛な夜のことを思い出すと、世界がどれほど変わったか、そして情報諜報活動と外交の関係がほんの2、3年の間にどれほど進化したかを思い知らされる。もはや情報を分析資源としてのみ捉える余裕はない。むしろ情報は、戦略的敵対国との競争の最前線において、アメリカの外交を可能にする重要な手段と見なされなければならない。適切な保護措置が講じられれば、インテリジェンス外交はアメリカの未来を守る上で重要な役割を果たすことになる。

※ブレット・M・ホルムグレン:米国防省情報諜報(インテリジェンス)・研究局(Intelligence and ResearchINR)担当国務次官補。米国防省情報諜報(インテリジェンス)・研究局は、INRは情報諜報コミュニティの18の構成機関の1つであり、アメリカで最古の文官系情報機関だ。

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(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生の書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻が起きて以来、人々の不安を煽る主張が多く出ている。「ロシアはウクライナの次として●●(バルト三国や隣接している国々の名前が入る)を狙っている、攻める」とか、「ウクライナの次は台湾だ(中国がロシアの成功を見て台湾侵攻を行う)」といった主張がなされてきた。「ロシアのプーティンも中国の習近平も共に独裁者で、自分たちの思うとおりに軍隊を動かして、他国を攻める」「ロシアも中国も膨張主義(expansionism)だ」という粗雑な、浅はかな考えが基本になっている。プーティンも習近平も、こうした浅はかな主張をする人間たちよりも、はるかに頭が良く、自分の欲望だけで何かをするという次元の人間ではない。また、ロシアも中国も国土に関して野心を持っていない。

 プーティンのウクライナ侵攻の原因をきちんと精査し、分析し、合理的な判断もしないで、粗雑な前提で、「攻めてくる、攻めてくる」と騒ぎ立てるのは、人々の不安を煽って、自分の金儲けに使おう、商売にしようというさもしい根性から出ている。独裁者だから連続してどんどん侵略するということはない。ヒトラーやナポレオンがいるではないか、という声も出るだろうが、独裁者が全員、ヒトラーやナポレオンのような行動を取った訳ではない。

 プーティンが独裁者だから必ず、ウクライナ以外にも侵略戦争を仕掛けるというのは粗雑な考えであり、プーティンがどうしてウクライナに侵攻したのか(2014年の時も含めて)を考えるならば、NATOの拡大が理由として挙げられる。NATOとは対ソ連、今では対ロシア軍事同盟だ。ロシアの側か見れば、それがどんどん東側に拡大して、自国に迫ってくる。東欧諸国やバルト三国が加盟してNATOと隣接することになる。それでもロシアは自制した。しかし、ウクライナはロシアにとっては喉首のような場所であり、NATO拡大は看過できない(EU加盟には賛成している)。こうして考えると、西側諸国がロシアの意向を無視して、ロシアを煽ったということになる。ロシアは乾坤一擲、ウクライナを抑えた。それ以上のことをする意図はない。

 これは中国にも言えることで、台湾が現状のままならば、わざわざ侵攻することはない。既に両岸関係は緊密に絡まり合って、経済的には一蓮托生の状態になっている。アメリカをはじめとする西側諸国が余計なことをしなければ、そのままの状態で、経済が発展していく。西側諸国という存在が世界にとって大いなる邪魔者になっているということを私たちは良く考えねばならない。そして、過度に単純化された、不安を煽る言説に惑わされてはいけない。

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ロシアが次に何をするかを実際のところは誰も知らない(Nobody Actually Knows What Russia Does Next

-ウラジーミル・プーティンの将来に関する計画に対して西側諸国の警告はますます大きくなっているが、説得力は増していない。

The West’s warnings about Vladimir Putin’s future plans are getting louder—but not any more convincing.

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年4月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/02/russia-putin-nato-warning-war-west/?tpcc=recirc062921

どうやら、西側諸国の外交政策エリートの主要メンバーたちは読心術者(mind readers)であるようだ。彼らは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の意図が何であるかを正確に知っていると主張している。著名な当局者や政治評論家たちは、プーティンの野心は無限であり、ウクライナは単なる最初の標的に過ぎないとの意見で一致している。

ロイド・オースティン米国防長官は、「プーティンはウクライナに止まらないだろう」と述べた。デイヴィッド・ペトレイアス元CIA長官は、CNNのクリスティアン・アマンプール記者に「プーティンはウクライナに止まらないだろう」と語った。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領は、「次はリトアニア、ラトビア、エストニア、モルドバになるかもしれない」と警告し、ジェーン・ハートリー駐英米大使は、「ロシアがこの後止まるかもしれないと考える人は誰でも間違っている」と述べた。リトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス外相も同じ考えだ。「ロシアは止まらないだろう。プーティンは、明らかに更なる計画を持っている」と述べている。ジョー・バイデン米大統領も2023年12月に同じ警告を発し、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長も同じ警告を発した。西側諸国の政府関係者たちは、ロシアがいつNATOを狙うのか定かではないが、モスクワを断固として打ち負かさなければ、より広範な戦争は避けられないと考える声が高まっているようだ。

ウォルター・リップマンが警告したように、「全ての人が同じように考えるとき、誰もあまり考えない」。ウクライナ戦争が終結し、ロシアが2022年以前のウクライナの領土の一部を支配することになる場合、プーティンやロシアがどのような行動に出るかは、これらの人々の誰も、何も分からないというのが明白な事実である。私もそうだし、プーティン自身(そしてプーティン自身もはっきりとは知らないかもしれない)を除いて、他の誰も分からない。プーティンが大きな野心を持っていて、ウクライナでの高価な成功に続いて、どこか別の場所で新たな攻撃を試みる可能性はある。しかし、プーティンの野望が、ロシアが莫大な犠牲を払って勝ち取った以上のものには及ばず、それ以上のギャンブルをする必要も欲望もないという可能性も十分にある。例えば、プーティンは最近、ロシアはNATOを攻撃するつもりはないと宣言したが、ウクライナに供与されるF-16やその他の航空機がウクライナに配備されれば、合法的な標的になるとも指摘した(当たり前だ)。プーティンの保証を額面通りに受け取るべき人はいないが、彼の言うことは何でも全て嘘だと決めつけるべきではない。

もちろん、プーティンの将来的な行動について、薄気味悪い警告を発している西側の専門家たちは、西側諸国の人々(そしてアメリカ連邦議会)を説得して、ウクライナへの援助を増やし、ヨーロッパの防衛費を増額させようとしている。はっきり言って、私もウクライナへの援助を継続することには賛成だし、NATOの加盟国であるヨーロッパ各国が通常戦力を増強することで抑止力(deterrence)を強化することを望んでいる。私が気になるのは、このような宣言に触発される反射的な脅威を危険視する不安感の急速な膨張であり、このような暗い予測をあたかも確立された真実であるかのように扱い、それに疑問を呈する者を考えが甘い人間、親ロシアでロシアの手先、あるいはその両方と決めつける傾向があることだ。

プーティンに無限の野望があるという、偏った、信仰に近い考えは、全ての独裁者は生来攻撃的で抑止が難しいという、おなじみのリベラル派の主張にもとづいている。その論理は単純だ。「全ての独裁者は拡大を求める。プーティンは独裁者だ。だからプーティンはウクライナで止まらない。証明終わり」。この三段論法(syllogism)はリベラルなエリートたちの間では信条(article of faith)になっているが、この主張を裏付ける証拠はほとんどない。確かに、ナポレオンやアドルフ・ヒトラーのように危険な連続侵略者だった独裁者もいる。だから、現在私たちが偶然対峙することになっている独裁者は誰でも、必然的に「もう1人のヒトラー(another Hitler)」というレッテルを貼られる。しかし、他の独裁者たちは、国内での行いがいかに酷いものであったとしても、国際舞台ではむしろ品行方正(well-behaved)であった。毛沢東は誰がどう見ても暴君であり、彼の政策は何百万人もの同胞を死に至らしめたが、毛沢東の征服戦争(war of conquest)は1950年のチベット占領だけだった。オットー・フォン・ビスマルク率いるプロイセンは、8年間に3度にわたって戦争を繰り返したが、1871年に誕生した統一ドイツは、それから19世紀が終わるまで、断固として現状維持(status quo)に努めた。スタニスラフ・アンドレスキーが何年も前に論じたように、多くの軍事独裁政権は平和的な姿勢を取る傾向がある。プーティンが国内のライヴァルを投獄したり殺害したりする冷酷な独裁者であり、その他の卑劣な行為を行っているという事実は、彼がロシアの近隣諸国を征服したいと思っているかどうか、あるいはそうできると信じているかどうかについては、ほとんど何も語っていない。そして、いわれのない違法で破壊的な戦争を仕掛けるのに、独裁者である必要はほぼないのである。

第二に、ウクライナでの戦争が最終的に終わったとき、ロシアは新たな侵略戦争(new wars of aggression)を仕掛けることができる状態にはないだろう。アメリカの情報諜報機関は、ロシアがウクライナで死傷した兵力は30万人を超え、数千台の装甲車や数十隻の船舶・航空機も失ったと考えている。プーティンは、(「再選[reelection]」が終わった今、そうするかもしれないが)追加出動(additional troop mobilizations)を命じることに消極的だ。そのような措置はロシア経済をさらに弱体化させ、民衆の不満を煽る危険があるからだ。西側の制裁措置(sanctions)は、アメリカとその同盟諸国が期待したほどにはロシア経済に打撃を与えなかったが、ロシアにとって長期的な経済的影響は依然として深刻なものになるだろう。長い通常戦争(conventional wars)を戦うにはコストがかかる。現在の戦争が終わるたびに次の戦争を始めるのは、プーティンが簡単だと信じていた「特別軍事作戦(special military operation)」を開始するという当初の決断以上に無謀なことだ。ウクライナでのロシアの困難は、たとえプーティンの軍隊が最終的にピュロスのような勝利を収めたとしても、プーティンを今後はるかに慎重にさせる可能性が高いのではないだろうか?

第三に、プーティンが侵攻を決意した大きな理由が、ウクライナが西側の軌道に乗り、いつの日かNATOに加盟するということを阻止するためだったとすれば、その後の和平協定でその可能性が封じられれば、プーティンは満足するかもしれない。国家はしばしば、貪欲さ(greed)よりも恐怖(fear)から戦争に踏み切るものであり、ロシアが持つ安全保障上の恐怖が弱まれば、ヨーロッパ地域の他国を狙うインセンティヴ(誘因)もおそらく低下するだろう。もちろん、NATO加盟諸国はこの可能性を当然と考えるべきではないが、プーティンの狙いに際限がないという仮定と同程度には、説得力を持つ話だ。

ヨーロッパの専門家たちの一部は、ロシアのウクライナ侵攻に、NATOの拡大は関係ないと主張し、プーティンが侵略したのは、ウクライナ人とロシア人は文化的・歴史的に深いルーツを共有しており、形式的には統一されていなくても、政治的には同盟を結ばなければならないと考えているからだと主張している。この見解では、NATOの拡大は開戦の決断とは無関係であり、古き良きロシアの文化的帝国主義(cultural imperialism)の一例に過ぎない。しかし、もしそうだとすれば、プーティンの思考においてウクライナは特別な存在であり、プーティンが侵攻した理由(そして侵攻が容易だと考えた理由)は他の国には当てはまらないということになる。興味深いことに、この結論は、2008年にウィリアム・バーンズ駐ロシア米大使(当時)がワシントンに警告した「ウクライナのNATO加盟は(プーティンだけでなく)ロシアのエリートにとって最も明白なレッドラインだ」という指摘と一致している。ロシアはそれ以前のNATO拡大についてはしぶしぶ容認していたが、ウクライナはまったく異なるカテゴリーだった。プーティンの「ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性(historical unity of Russians and Ukrainians)」についての錯綜した主張をどう考えるかにしても、プーティンはフィンランドやスウェーデンやポーランドや他の誰をも同じようには見ていない。バルト三国におけるロシア語を話す少数民族の地位は、その後のロシアの干渉の口実になるかもしれないが、プーティンは、国民のほとんどがロシア人ではなく、再統合されることを断固として反対して、ロシアを敵視している国々をめぐって、NATOと直接武力で衝突する危険を冒すだろうか?

私が指摘したいのは、プーティンがロシア人とウクライナ人を「ひとつの民族(one people)」だと考えているから侵略したと考えるのであれば、プーティンの野望はこの特殊なケースに限定されると結論づけるのが合理的だということになる。

最後に、プーティンは完全敗北させなければ新たな戦争を仕掛ける、容赦のない連続侵略者だという主張は、戦争を終結させ、ウクライナのさらなる被害を免れる努力を妨げている。プーティンが新たな戦争を始めるのを防ぐには、完全な敗北しかないと考えるのであれば、ウクライナが全ての領土を取り戻すまで現在の戦闘を続けなければならないということになる。私はウクライナが領土を回復して欲しいと考えているが、西側欧米諸国の追加支援があったとしても、その可能性はますます低くなっているようだ。昨夏のウクライナの反転攻勢(Ukraine’s counteroffensive last summer)が成功すると誤って予測した、考えの足りない楽観主義者たちは、その誤りを謝罪し、なぜ間違っていたのかを説明しただろうか?

繰り返す。私はプーティンが何をするか知っていると言っていない。また、ウクライナでの戦争が終われば、プーティンの意図は良性となり、ヨーロッパの現状を確実に維持するだろうと単純に考えるべきだとも思わない。私が反対しているのは、彼が何をするか正確に知っていると主張し、単なる推量(mere guesswork)に基づいて非現実的な目標を追求し続ける影響力のある声全てに対してだ。

ウクライナでの戦争がウクライナの完全勝利に満たないもので終わるのであれば、適切な対応とは、将来的に他の国がウクライナのような運命をたどる可能性を低くすることだ。プーティンが何をしでかすかは誰にも分からないのだから、NATOのヨーロッパ加盟諸国は防衛能力を高め、明らかな脆弱性(vulnerabilities)について是正すべきだ。しかし同時に、アメリカとNATOの同盟諸国は、ロシアの正当な安全保障上の懸念(全ての国がそうであるように、ロシアにも実際に懸念はある)を認め、それを和らげるために何ができるかを検討すべきである。そのような努力は、ロシアが行ったことに対して「代償を払わせる(make Russia pay)」という願望が残っていることを考えれば、物議を醸すだろうし、こんなことになるだろう。しかし、賢明な国家運営とは将来を見据えたものであり、将来の戦争を防ぐことが優先されるべきだ。そのためには、信頼できる抑止力と信頼できる保証を組み合わせる必要がある。そうすれば、プーティンやその後継者たちが持つ、武力行使を考える必要性も、武力行使をすればロシアが有利になるという確信も減るだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ドイツのオラフ・ショルツ首相が訪中を行った。昨年にもショルツ首相は訪中を行っており、ドイツの対中重視の姿勢が見て取れる。ウクライナ戦争が続く中、また、最先端技術分野での西側と中国の競争が続く中で、ショルツ首相訪中は西側を中心として批判を浴びている。「対中弱腰」「自国の経済的利益のみを追求」「必要なことは何も言わないで媚中的な態度」といった批判を浴びている。対中姿勢については、ショルツ政権内でも意見が割れている。

現在のドイツの内閣は、ショルツ首相が所属する社会民主党(SPDSozialdemokratische Partei DeutschlandsSocial Democratic Party of Germany)、同盟90・緑の党(Bündnis 90/Die GrünenAlliance 90/The Greens)、自由民主党(FDPFreie Demokratische ParteiFree Democratic Party)の連立政権になっている。ドイツ連邦議会で3番目の議席を有する緑の党は対中強硬姿勢を取っている。人権問題や経済問題、中国のロシア支援などについて、厳しい批判を行っている。ショルツ政権には、重要閣僚である副首相並びに経済・環境保護相(ロベルト・ハーベック)と外相(アンナレーナ・ベアボック)に緑の党から入閣している。これらの人物たちは、中国に対する強硬姿勢を崩していない。閣内不一致と言える状態だ。ちなみに、ドイツの緑の党や環境保護運動には戦後、多くの元ナチス党員やナチ支持者たちが参加しており、ファシズムとの共鳴性があることが指摘されている。

 しかし、ドイツのようなアメリカの属国の立場ではこれは賢いやり方だ。アメリカにあくまで追従して、中国に敵対するという姿勢を見せながら、実利的に、特に経済面において、中国と良い関係を保っておくということを行うことは重要だ。ドイツの産業界は、日本の産業界と同様に、中国との緊密な関係を望んでいる。政治は政治として、経済は別という立場で、経済成長が鈍化したとは言え、まだまだ経済成長を続ける中国と中国市場から排除されることは大きな損失である。また、成長を続ける中国企業の海外投資もまた魅力的である。「ドイツの外交政策は大企業の役員室で決められている(だから対中弱腰なのだ)」という悪口がある。それで、平和が保たれ、経済的利益が生み出されるならば、何よりも結構なことではないか。政治家が、自分たちは安全地帯にいて、排外的、好戦的な、強硬姿勢を見せるのは、あくまで政治の方便としてならともかく、本気でそのようなことをしているのは馬鹿げたことであり、何よりもそれが平和に慣れ切って、平和の大切さを忘れて、平和をいじくろうとする、想像力の欠如した、「平和ボケ」ということになる。ショルツ首相の舵取りを日本も見習うべきだ。いや、水面下では既に中国とうまくやっているのだとは思うが。

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オラフ・ショルツの戦略的不真面目さ(The Strategic Unseriousness of Olaf Scholz

-彼の最新の訪中は、ドイツの対中国政策は大企業の役員室で作られていることを示すものだ。

ジェイムズ・クラブトゥリー筆

2024年4月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/22/olaf-scholz-germany-china-policy-companies-mercedes-vw-xi-jinping/

 

4月16日、釣魚台国賓館でのドイツのオラフ・ショルツ首相と中国の習近平国家主席

中国への最善の対応を巡るヨーロッパとアメリカの間に存在する、深く長期間続く分裂が再び全面的に露呈した。アントニー・ブリンケン米国務長官は4月24日に中国を訪問する予定だ。訪中前、ブリンケン国務長官は、中国がクレムリンへの兵器関連技術の提供を通じて、対ウクライナ戦争におけるロシアの支援をやめない限り、厳しい措置を講じると警告を発した。対照的に、ドイツのオラフ・ショルツ首相は、口調も内容もはるかに融和的な中国訪問を終えたばかりだが、このアプローチはドイツ、ひいてはヨーロッパを、驚くほど甘い態度のために、経済と安全保障を前にして、危険に晒している。経済と安全保障をめぐる諸問題は中国が提起する課題となっている。

ブリンケンの訪中は、米中関係の改善が進めようとする試みに続くものだ。ジョー・バイデン米大統領と習近平国家主席は、2023年11月にカリフォルニア州ウッドサイドで生産的な会談を行い、今月はそれに続く電話会談を行った。ジャネット・イエレン米財務長官も4月初めに北京を訪問した。新たな閣僚レヴェルのコミュニケーション・チャンネルは、昨年、制御不能(out of control)に陥る危険性があると思われた関係を安定させた。イエレンは現在、中国の何立峰副首相と経済問題に対処し、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は中国の王毅外相と交渉している。

ホワイトハウスはサリヴァンと王毅のチャネルが特に成功していると見ているが、その理由の1つは、王が現在、政府と中国共産党の外交政策責任者という2つの役割を兼ね備えているからだ。これにより、これらの役割が2つに分割されていたときと比較して、より効率的なコミュニケーションが可能になる。

それにも関わらず、アメリカのアプローチは基本的に競争力を維持している。今週到着するブリンケン国務長官がウクライナについて警告を発したのと同じように、イエレン財務長官もまた、中国の不公平な工業生産慣行(China’s unfair manufacturing practices)と彼女が表現したものについて厳しいコメントを訪問中何度か行った。

ショルツのアプローチは著しく異なっており、良い内容ではなかった。このことは、彼の代表団の詳細が明らかになった瞬間から明らかだった。ドイツには、ロベルト・ハーベック副首相やアンナレーナ・ベアボック外相を筆頭に、中国に対して強硬で戦略的な見方をする閣僚がいる。しかし、どちらも北京にはいなかった。代わりにショルツは、北京との緊密な協力を好む農業などの分野の閣僚や、中独貿易・投資を推進する産業界の重鎮たちを連れて行った。

ショルツはまたお膳立てされた厳しい内容の演説を拒絶した。実際、ショルツ首相は、中国のロシア支援から産業の過剰生産能力の増大するリスクに至るまで、ヨーロッパの経済と安全保障の重要な利益に打撃を与える問題について、公の場において、驚くほどほとんど発言しなかった。ショルツのこうした態度について、中国メディアが大喜びしたのは当然だ。ロディウム・グループの中国アドヴァイザーであるノア・バーキンはショルツの訪中後に、「報道は熱狂的だったと言えるだろう。中国が弾丸を避けたという感覚があるのは明らかだ」と書いている。

ショルツのアプローチは、ドイツの経済的利益に対する認識を基盤にしている。ドイツの対中経済的利益は昨年、著しく悪化した。3月上旬の全国人民代表大会(National People’s Congress、全人代)で習近平は、中国が「新たな質の高い生産力(new quality productive forces)」を発揮することを要求した。これは、電気自動車(electric vehiclesEVs)やバッテリーを含む先進的な製造業に巨額の資金を投入し、中国の経済モデルの失速を補うことを意味する。国内需要が限られている以上、その成果は必然的に輸出されることになり、中国はヨーロッパや北アメリカの先進製造業経済と衝突することになる。

ヨーロッパ連合(European UnionEU)は、中国政府からの補助金(subsidies)が自動車やソーラーパネルを含む産業の企業に競争上の優位性を与えているかどうかを調査しており、ショルツが指摘したように、中国の電気自動車に対する関税を検討し始めている。しかし、中国が国家補助金を削減するという、極めてあり得ないシナリオがあったとしても、その膨大な生産量と低コストのために、ヨーロッパ各国が対抗するのは極めて困難である。電気自動車からエネルギー転換技術、よりシンプルなタイプの半導体まで、ヨーロッパは現在、中国製の工業製品に支配される未来が明らかに近づいている。

ベルリンは、ドイツが誇る製造業の中で最も重要な自動車部門において、特別な課題に直面している。BMW、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲンといった企業にとって、中国は何十年もの間、最も重要で最も収益性の高い市場だった。しかし、その時代は終わった。中国のBYD(比亜迪)は現在、テスラ(Tesla)と、世界最大の電気自動車メーカーの座を争っている。BYDは、アメリカのライヴァルであるテスラとほぼ同等の性能を持ち、それよりもはるかに安価な自動車を生産している。北京や上海の通りには、他の中国電気自動車ブランドで作られた車でごった返しているが、そのほとんどは西側職の人々には知られていない。伝統的な内燃エンジン(traditional combustion engines)の需要は崩壊しつつある。

クライスラーの中国における元責任者で、現在はコンサルタント・グループであるオートモビリティの責任者であるビル・ルッソは、こうした状況の変化に伴い、中国国内の自動車市場における外国ブランドの総シェアは、2020年以降の短期間で、64%から過半数を割る40%に急落したと述べている。現在、フォルクスワーゲンは、まだ中国で多くの自動車を販売しているが、それも長くは続かないだろう。「これらの企業に未来があるとは思えない」とルッソは述べている。

ドイツには二つ目の懸念がある。それは、自国市場へのリスクだ。中国製のバッテリーやその他の部品を対象とした規制のため、現在アメリカでは中国製電気自動車はほとんど販売されていない。中国からの電気自動車輸入の波に直面し、ヨーロッパは関税をアメリカとほぼ同じ水準に引き上げる可能性が高い。

しかしながら、ショルツは自国ドイツの自動車メーカーからは正反対の要求を突きつけられている。電気自動車への移行に多額の投資を行ってきたメルセデス・ベンツのオラ・ケレニウスCEOは、ブリュッセルに電気自動車関税の引き上げではなく引き下げを求め、競争がヨーロッパの自動車メーカーの改善に拍車をかけると主張した。中国をヨーロッパ市場から締め出すだけでは、ドイツが電気自動車で競争力を取り戻すことはできないだろう、という意見には真実味がある。ドイツが電気自動車分野で競争力を取り戻すためには、ドイツ企業は少なくとも自国での製造方法を確立するまでの間、バッテリーなどの分野で中国の技術を利用する必要がある。ドイツはまた、ヨーロッパの関税が中国のドイツ自動車メーカーを標的にした相互措置につながることを恐れている。

したがって、好意的に見れば、ドイツのアプローチは、2008年の世界金融危機を前にした当時のシティグループCEOチャック・プリンスの有名な格言の変形である。その格言とは「音楽が流れている限り、立ち上がって踊るしかない」である。2007年、プリンスは、災難が近づいている兆候が明らかになる中で、なぜ自分の銀行がリスクの高い金融取引を続けたのかを説明しようとしてこの言葉を使った。これと同じように、ショルツはドイツ企業がかつての国際競争力を取り戻そうとする一方で、中国市場の残りのシェアで稼ぎ続けられることを願っている。

もちろん、中国の工業力が高まっていることを考えれば、これがうまくいく確率は低い。しかし、たとえうまくいったとしても、この戦略はドイツ企業にとっての利益と、ドイツやヨーロッパ全体にとっての利益を混同するという、昔からの過ちを犯していることに変わりはない。

このアプローチが甘く見える理由は2つある。1つは、中国の進路が決まってしまったことだ。ショルツは上海で学生たちを前にして、中国に節度ある行動を求めた。「競争は公正でなければならない」とショルツ首相は述べ、北京がダンピング(dumping)や過剰生産(overproduction)を避けるよう求めた。しかし、中国のシステムは現在、この道を十分に進んでおり、北京がショルツの言葉に耳を傾けたとしても、そのような要求の実現は実際には不可能だ。

それどころか、中国は自国の経済モデルを復活させるために製造業を強化しようとしている。ドイツの自動車メーカーが自国(中国)の市場で成功することなどまったく考えておらず、電気自動車やその他の産業で世界的なリーダーになることに全力を注いでいる。ドイツの自動車メーカーは、中国での地位が救われると誤解しているかもしれないが、ドイツの政治指導者たちが同じ作り話を信じる必要はない。ショルツのソフト・ソフト・アプローチ(softly-softly approach)もまた、中国との競争によってもたらされる自国の経済モデルへの巨大な挑戦に対して、ドイツの国民や企業を準備させることはほとんどない。

ドイツのアプローチには、ヨーロッパと西側の団結に対する地政学的な二つ目のコストが伴う。中国の熱烈な報道が示すように、ショルツの訪独は、ヨーロッパ内、そしてアメリカとの分断を狙う北京の長年のアプローチへの贈り物であった。この分断は、貿易をめぐっても明らかだった。しかし、それはウクライナ問題でも同様だった。ショルツ首相の官邸は、ショルツ首相が習近平との個人的な会談でウクライナを取り上げ、ロシアの「再軍備(rearmament)」は「ヨーロッパの安全保障に重大な悪影響(significant negative effects on security in Europe)」を及ぼし、ヨーロッパの「核心的利益(core interests)」に直接影響すると主張したと述べている。しかし、中国にロシアへの支援を止めるよう求める私的なメッセージは、同様の公的なメッセージが既に失敗している以上、効果があるとは考えにくい。

ドイツのアプローチはまた、近年中国への依存を減らすために真剣に取り組んでいるインドや日本を含む、より広いインド太平洋地域の新たなパートナーとの信頼できる関係を構築することを、ヨーロッパにとって難しくしている。インドと日本の指導者もまた、中国がもたらす経済的・安全保障的脅威を率直に公言している。ニューデリーや東京から見れば、ショルツの今回の訪中は、単にヨーロッパの信頼性のなさ(unreliability)と戦略的真剣さの欠如(strategic unseriousness)の証拠としか受け取られないだろう。

もっと良いテンプレートがあることを考えると、ドイツのアプローチは特に奇妙に見える。ブリンケンとイエレンの訪中は、厳しいメッセージを発信しながらも北京でのビジネスが可能であることを示している。ヨーロッパ委員会のアーシュラ・フォン・デア・ライエン委員長は、昨年(2023年)12月に北京で開催された直近のEU・中国首脳会議で、リスク回避に関して同様のバランスを取った。オランダのマーク・ルッテ首相も2024年3月に同様のことを行い、中国のサイバースパイ戦術とウクライナでのロシア支援を公然と批判した。 

ショルツ首相がヨーロッパのパートナーやワシントンと調整し、最も有能な閣僚とともに北京に到着し、明確な飴と鞭を携えて公の場でしっかりと共同方針を表明するような、これまでとは異なるドイツの姿勢を見せると想像することは可能だ。その代わり、ドイツのアプローチは長期的な戦略的洞察に欠けているように見えた。ドイツの政策立案者たちは、ドイツの経済政策や外交政策がベルリンの首相府や省庁ではなく、企業の役員室で決定されるという考え方に歯がゆさを感じている。しかし、ショルツの訪中を、そして気の遠くなるようなことだが、ドイツの中国政策の多くを、それ以外の方法で説明するのは難しい。

※ジェイムズ・クラブトゥリー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。アジア国際戦略研究所元上級部長。著書に『億万長者による支配:インドの新しい黄金時代を通じての旅路(The Billionaire Raj: A Journey Through India’s New Gilded Age)』がある。ツイッターアカウント:@jamescrabtree

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オラフ・ショルツは本音を隠せないままに中国訪問に向かう(Olaf Scholz Is on a Telltale China Trip
-ヨーロッパは中国に対して強硬な姿勢を取っているが、ドイツが本当にそれに協力しているかどうかはすぐに分かるかもしれない。

ノア・バーキン筆

2024年4月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/13/scholz-germany-china-trip-europe-derisk-decouple/

 

2022年11月3日、中国に向かうためにベルリンで飛行機に乗り込むオラフ・ショルツ

ヨーロッパ連合(European UnionEU)は、これまで何年も小さな棒を持ち、やわらかく話してきたが、安価な中国製品の流入が自国産業を衰退させることを懸念し、中国に対して経済的な力を行使し始めた。大きな問題は、EU圏最大の経済大国であるドイツが、より積極的なアプローチに全面的に賛同するかどうかだ。

これが、ドイツのオラフ・ショルツ首相の来週の中国訪問を特に興味深いものにしている。ベルリンの対中国政策は近年、硬化している。昨年(2023年)7月、ショルツ政権は厳しい文言の対中戦略を発表し、焦点をリスク回避(de-risking)、多様化(diversification)、対中依存度の削減(reduction of dependencies on China)に移行した。

しかし、もしショルツ1人だけが戦略を立案していたら、そもそもこの戦略は発表されなかったかもしれない。新たな批判的アプローチの原動力となったのは、ショルツの連立パートナーの1つである緑の党(the Greens)だ。ショルツ自身は慎重な姿勢を崩しておらず、中国市場を将来と結びつけている一握りのドイツ大企業に対して北京が報復するのではないかという懸念もあって、中国をあまり強くプッシュしたがらない。

2021年の首相就任以来、最長となる二国間訪問の1つであるショルツ首相訪中は、4月14日から16日まで3日間フルに中国を滞在し、重慶と上海のドイツ企業を訪問した後、習近平国家主席および李強首相と会談するために北京へ向かう予定となっている。中独両国は様々な協力分野が存在することの強調について熱心である。

ショルツは、ドイツ経済の弱体化と、タカ派もハト派も満足させられないウクライナ政策によって、国内ではプレッシャーにさらされている。ドナルド・トランプの再選によって大西洋を越えた関係に衝撃が走るかもしれない今年、北京と新たな戦線を開くことを避けたいとショルツは考えている。習近平は、中国経済が不動産危機、新型コロナウイルス規制解除後の経済不振、そしてアメリカの技術規制によって大きな圧力にさらされているときに、中国とドイツが互いに協力することを約束し続けるというシグナルを送りたいと考えているだろう。

しかし、水面下には、両首脳が封じ込めるのが難しい、様々な対立問題(a range of divisive issues)が潜んでいる。

ウクライナ戦争におけるロシアの戦争継続に対する中国の支援は、ドイツにとって重要なアジェンダとなるだろう。北京が西側のレッドラインを越え、軍事作戦に不可欠な物資や技術援助をモスクワに提供しているという懸念が高まっているからだ。

ジャネット・イエレン米財務長官は先週中国を訪問した際、ロシアの戦争に物質的支援を提供した中国企業は制裁という形で「重大な結果(significant consequences)」に直面するだろうと警告した。ショルツが同様のメッセージをより穏やかな口調で伝えることを期待したい。

しかし、おそらく最重要のアジェンダは、ヨーロッパ連合と中国の貿易関係の悪化だろう。ブリュッセルでは、中国が安価な補助金付き商品(cheap, subsidized goods)をヨーロッパ市場に膨大に流入させることで、経済の停滞から脱出しようと考えて、対ヨーロッパ輸出を試みるのではないかという懸念が高まっている。同時にヨーロッパ諸国は、ワシントンからの圧力が強まる中、中国への機密技術の輸出(export of sensitive technologies to China)をどこまで制限するかについて議論している。

昨年(2023年)6月、ヨーロッパ委員会のウルスラ・フォン・デア・ライエン委員長は、中国との技術協力のレッドラインを定めることを目的とした経済安全保障戦略(economic security strategy)を発表した。その数カ月後、ヨーロッパ委員会は中国からの電気自動車(electric vehicles)輸入に関する調査を開始した。そしてここ数週間は、風力タービン(wind turbines)、ソーラーパネル(solar panels)、鉄道に関連する補助金についての調査結果を発表し、中国企業が自国で受けている手厚い国家支援のおかげでヨーロッパ市場で不当な優位性を得ていると非難している。

これらを総合すると、これは、これまで私たちが目にすることがなかった、ヨーロッパからの最も強力な中国に対する反発に相当するが、それはほんの始まりにすぎない。

今週、プリンストン大学で行われた重要な講演で、競争問題ヨーロッパ委員のマルグレーテ・ヴェステアーは、新たな措置を強調したが、ヨーロッパの「モグラたたき(whack-a-mole)」戦術では不十分かもしれないと認めた。

「ケース・バイ・ケース以上のアプローチが必要だ。系統だったアプローチが必要だ。そして、手遅れになる前にそれが必要である。ソーラーパネルで起きたことが、電気自動車や風力発電、あるいは必要不可欠なチップで再び起きるような事態は避けたいと考えている」。

ヴェステアーは、重要なクリーン技術に対する「信頼性(trustworthiness)」基準の策定を提案した。これは、ファーウェイのような「ハイリスク」の5Gサプライヤーに対するアプローチと同じものだ。サイバーセキュリティ、データセキュリティ、労働者の権利、環境基準などの分野でヨーロッパの基準を満たさない国は、自国の企業が制限を受けるか、市場から排除されることになる。これは、ヨーロッパと中国との経済関係の重大な変化を意味する。

しかし、その戦術が機能するためには、ドイツからの支援が不可欠である。そしてショルツが、中国との特権的な経済関係を、たとえそれがますます緊張状態にあるとしても、危険に晒す覚悟があるかどうかは不明である。ショルツは、近年中国市場への進出を倍増させている三大自動車メーカー(BMW、メルセデス、フォルクスワーゲン)のCEOを含むドイツ産業界のリーダーを集めた代表団とともに中国を訪問する予定だ。ロディウム・グループの統計数字によれば、ドイツの対中直接投資額は2022年に71億ユーロを記録し、驚くべきことに、EU全体の79%を占めた。

2022年11月に首相として初めて中国を訪問する数週間前、ショルツは中国の海運大手コスコにドイツ最大のハンブルク港のターミナルの株式を与えるという取引を強行した。ショルツはまた、ファーウェイをドイツの通信ネットワークから段階的に排除する決定を下すよう、連立パートナーから受けている圧力に抵抗している。ファーウェイはドイツの5Gネットワークにおいて、59%のシェアを持っており、これはヨーロッパで最も高いレヴェルに達している。

このような背景から、ヨーロッパ委員会の担当者たちは、ショルツ首相が中国で発するメッセージを注視している。貿易関係に対するヨーロッパの懸念が深刻であることを中国側に説明し、EUが対応するという意思表示をするのだろうか? そうすれば、中国経済が苦境に立たされ、北京の指導者たちがヨーロッパからの投資を誘致し、欧州市場へのアクセスを維持しようと必死になっているときに、ドイツとそのパートナーが経済的な影響力を行使する用意があることを示すことができる。

それとも、ドイツ産業界がショルツに強く求めているように、貿易摩擦(trade tensions)を軽視し、その過程において、ブリュッセルを弱体化させるのだろうか?

その答えは、11月のアメリカ大統領選挙を頂点とする重要な年に、ヨーロッパが中国に対してどれだけ団結しているかを多く物語ることになるだろう。ショルツ首相訪問の数週間後、習近平は5年ぶりにヨーロッパを訪問し、フランス、ハンガリー、セルビアをそれぞれ訪問する。ショルツとフランスのエマニュエル・マクロン大統領が習近平に同じメッセージを伝えれば、それは強力なシグナルとなるだろう。それができなければ、致命的である。

※ノア・バーキン:ロディアム・グループ上級アドヴァイザー、アメリカのジャーマン・マーシャル基金非常勤上級研究員。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
20211129sankeiad505

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「有志連合(coalitions of the willing)」という言葉を聞くようになって久しい。このことを別名では「ミニラテラリズム(minilateralism)」とも言う。この言葉は比較的新しい言葉だ。一極主義(unilateralism)、二極主義(bilateralism)、多極主義(multilateralism)と似たような言葉があるが、二極主義と多極主義の間に入るのがミニラテラリズムだ。ミニラテラリズムは、簡単に言えば、3から6の国が集まって枠組みを作って、世界で起きる様々な問題に対処するということだ。アメリカのジョー・バイデン政権はこうしたミニラテラリズムに基づいた数カ国からなる有志連合を外交政策の中心に据えている。それは、国連は既に機能不全に陥っており、国際問題への効果的な対処が難しい状況になっているからだ。そして、これは、戦後の世界構造が変化しつつあることも関係している。
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 国連において最重要期間は国連安全保障理事会(国連安保理)である。その中でも、安保理常任理事国5カ国、アメリカ、イギリス、フランス、中国、ロシアが意思決定において優越的な地位を占めている。これらの国々には拒否権(veto)が認められている。国際連合(the United Nations)は、第二次世界体制の戦勝側である、連合国(the United NationsAllies)が国連なのである。戦時中の下のポスターを見て欲しい。ここには「The United Nations Fight for Freedom(連合国は自由のために戦う)」と書かれている。国連とは、第二次世界大戦の戦勝側が優越的な地位を占めるための国際的な枠組みなのである。そして、戦争で大きな犠牲を払った主要諸大国(powers)が世界の方向を決めるという仕組みになっている。
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 しかし、米ソ対立から冷戦が始まり、国連は協調の場ではなく、米ソ対立を基にした争いの場になってきた。そして、現在は、米英仏対中露、西側諸国対それ以外の国々、ザ・ウエスト(the West)対ザ・レスト(the Rest)の争いの場に変容しつつある。

 国連では何も決められない。問題にも対処できない。アメリカの国力がダ充実していたころは、一極的な行動もできたが、今はそれも難しい。だから、「ある程度お金や力を持っている気の合う仲間」を誘い合わせて、有志連合を形成する方向に進んでいる。パートナーは、西側の仲間内で見つけるということになる。各地域で有志連合を作り、それを重層的なネットワーク化しようとしている。こうした動きはザ・レスト側にもあり、その基本がブリックス(BRICS)ということになる。戦後世界構造の変化の中で、国際的な枠組みにも変化が起きている。

(貼り付けはじめ)

バイデンの「有志連合」外交ドクトリン(Biden’s ‘Coalitions of the Willing’ Foreign-Policy Doctrine

-アメリカ外交の最新の動きは、大統領がいかに「ミニラテラリズム(minilateralism)」を重視しているかを示している。

ロビー・グラマー筆

2024年4月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/11/biden-minilateralism-foreign-policy-doctrine-japan-philippines-aukus-quad/

foreignpolicyaukusleaders001 

2023年3月13日、オーカス(AUKUS)の三カ国首脳会談の後の記者会見でのオーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相、ジョー・バイデン米大統領、リシ・スナク英首相

ジョー・バイデン米大統領が今週、ワシントンで日本とフィリピンの両国首脳を招き、史上初の3カ国首脳会議を開催する一方で、バイデン政権のアントニー・ブリンケン米国務長官は来週、イタリアで開催されるG7外相会議の準備を進めている。何千キロも離れており、議題も大きく異なっているにもかかわらず、この2つの会議はいずれもバイデン外交のドクトリンの特徴となっているミニラテラリズム(minilateralism)の一環である。

ミニラテリズムとは、本誌フォーリン・ポリシーの複数の記事で最初に広まった、奇妙な用語で、国連や世界貿易機関(WTO)のような大規模で動きの遅い伝統的な多国間機関ではなく、共通の利益を持つ、より小規模でよりターゲットを絞った国々のグループが関与する国際協力の一形態を指す。および。これはまさにバイデン政権が追求してきたアプローチであり、冷戦後の世界秩序がいかに崩壊しつつあるかを示すこれまでで最も明らかな兆候を表している。

この戦略は、民主党の外交政策の伝統的な理念からの大幅な転換を示している。バラク・オバマ政権時代、ワシントンは国連システムや他の主要な多国間ブロック(multilateral blocs)を通じて主要な外交政策の取り組みを推進することに重点を置いていた。2011年のNATOによるリビアへの介入については、最初は国連安全保障理事会のゴーサインを得ようと努力したし、バラク・オバマ大統領の気候変動への取り組みについても、主要な国連内部の会議を通して行おうとした。

その代わりに、バイデン・ティームは、主要な危機に関する特定の政策課題を推進するために、より小規模で目的に合った「有志連合」(smaller, fit-for-purpose “coalitions of the willing”)にますます頼るようになっている。

ヨーロッパでは、G7を利用してウクライナ戦争に対するロシアへの徹底的な経済制裁を実施し、ウクライナへの軍事援助を数十カ国間で調整するための暫定的な新組織、いわゆるラムシュタイン・グループ(Ramstein group、訳者註:ウクライナ防衛のための40カ国以上が参加した国際会議)を設立した。アジアでは、中国の台頭を食い止めようと、日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)、AUKUS、そして日本とフィリピンとの三国間イニシアティヴ(今週首脳会談が実施された)など、重複する小さなグループのパッチワークをバイデン政権は採用している。

新アメリカ安全保障センター上級研究員リサ・カーティスは、「このような3、4カ国によるミニラテラルな会合(minilateral meetings)は、安全保障関係の緩やかなネットワーク(a loose network of security relationships)を発展させるというバイデン政権の戦略の特徴となっている」と述べている。

カーティスは、バイデンが2期目を勝ち取るかどうかにかかわらず、ミニラテラリズムのアプローチはバイデン政権が終わってからも、より長続きする可能性が高いと述べた。インド太平洋に関するバイデンとトランプのドクトリンは、驚くほどよく似ていると指摘している。加えて、中国に対抗するためのAUKUSのような構想は、ワシントンの政治的スペクトルを超えて広く普及しており、ドナルド・トランプの共和党にしても、国連と政界貿易機関(WTO)のシステムに深い懐疑的な見方をしている。

この戦略が功を奏しているかどうかはまだ明らかになっていない。バイデン政権は、インド太平洋地域でこうした外交的イニシアティヴの「格子細工(latticework)」と呼ばれるものを立ち上げ、一定の勝利を収めたが、それらが実際に中国を地政学的に制限できるかどうかはまだ分からない。

しかし、ワシントンが注意深くなければ、こうしたミニラテラルな取り組みも暗礁に乗り上げる可能性がある。「ASEANウォンク・ニュースレター」の発行人であるラシャンス・パラメスワランは次のように述べている。「もし将来の米政権が、気候や経済といった分野での各国のニーズも認識した、より包括的なアジェンダを維持するのではなく、アメリカ主導のミニラテラリズムの焦点を中国への対抗だけに絞った場合、アメリカは北京に対して僅かな勝利を得ることはできても、この地域の多くを失うリスクがある」。

パラメスワランは続けて次のように述べている。「ミニラテラルに参加する国々は、物事を成し遂げるために、より柔軟な連合を構築する。しかし、ミニラテラルは、二国間(bilateral)、もしくは多国間(multilateral)での関与を調整したときにこそ最も効果を発揮するため、既存の制度を弱体化させる一連の排他的なクラブのようには見えない。中国はじしんが発するメッセージの一部を使って、ミニラテラルを厄介者のように印象付けようとしている」。

いずれにせよ、バイデン政権の内部関係者たちによれば、新しいミニラテラリズム(minilateralism)のアプローチは、アメリカが何十年にもわたって築き上げ、維持してきた第二次世界大戦後の国際システムが、もはや目的にそぐわなくなっていることを端的に反映したものだという。

あるバイデン政権幹部は匿名上条件に、次のように率直に意見を述べた。「私たちが80年間構築し、依存してきた多国間秩序(multilateral order)は、あまりにも時代遅れ(old-timey)で扱いにくくなっている(unwieldy)。国連やその他の大きな機関における絶え間ない行き詰まりに対する回避策を見つけなければならない」。

新しい方策のために、バイデン政権は熱狂的なペースで取り組んでいる。政権の高官たちとこの問題に詳しい複数の外交官たちによれば、バイデンは来週イタリアで開かれるG7外相会議に続いて、6月にイタリアで開かれるG7サミットと、今年後半にペルーで開かれるアジア太平洋経済協力サミット(Asia-Pacific Economic Cooperation summit)に出席する予定だという。複数のバイデン政権関係者はまた、11月下旬か12月上旬にニューデリーで開催される日米豪印戦略対話首脳会議(Quad Summit)のためのインド訪問の可能性も視野に入れ、その下準備を進めている。この計画はバイデンが再選されるかどうかにかかっている。

この言葉は比較的新しいかもしれないが、国連のような組織における外交的膠着状態を回避する方法としてのミニラテラリズムという考え方は、決して新しいものではない。たとえばG7はもともと、1973年の石油危機をきっかけにして、フランス、ドイツ、日本、イギリス、アメリカの主要先進工業国が、世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)の厳格なシステムの枠外で、主要な金融問題に取り組むためのフォーラムとして1970年代初頭に設立された。後にイタリアとカナダが加盟し、ヨーロッパ連合(EU)も「数に挙げられていないメンバー(non-enumerated member)」として加わった。

しかし、近年ワシントンの一部では、ロシアのウクライナ紛争をめぐる行き詰まり、ミャンマー紛争への対応の失敗、国際機関における中国の影響力拡大に対する不信感、スーダンが内戦に突入した際の不手際など、注目される国際機関の失敗や失策が後を絶たないため、ミニラテラリズムはさらに魅力的なものとなっている。こうしたことから、民主党内の伝統的な制度の熱心な支持者でさえ、解決策を他に求めるようになっている。

経済面では、アメリカはG7レヴェルにおいて、対ロシア制裁を調整することを選択した。ウクライナ戦争の主要な侵略者が常任理事国(permanent member)であり、拒否権(veto)を持つ国連安全保障理事会(U.N. Security Council)では、そのような努力は効果を上げないと予測していたからだ。バイデン政権はまた、世界貿易機関(WTO)や国際通貨基金(IMF)などの機関ではなく、G7という場を利用して世界的な法人税制の見直しを行い、中国の「一帯一路」構想(Belt and Road Initiative)に対抗して、国際インフラ投資プログラム(international infrastructure investment program)を立ち上げて注目を集めた

インターナショナル・クライシス・グループの国連担当部長のリチャード・ゴーワンは、「ホワイトハウスは世界をよく観察し、多くの制度が綻びを見せているのを見て、かなり重要な問題に関して国連から望むものを引き出すのは非常に難しいと見ている」と述べている。

現在世界で最も大きな地政学的引火点の2つ、ウクライナ戦争とインド太平洋の緊張には、いずれも国連安全保障理事会の常任理事国であるロシアと中国が関与しており、それらの緊張に対処するための国連の取り組みを阻止するために、中露両国は拒否権を行使することに何の躊躇もしない。(つい先月、ロシアは、ウクライナ戦争を支援するための武器供与と引き換えに北朝鮮との関係を強化する中、成立すると広く考えられていた対北朝鮮制裁を監視する15年間の計画を頓挫させた。)

アメリカはまた、世界で3番目に大きな地政学的火種であるイスラエルとハマスの戦争に対処する努力において、国連から距離を置いている。先月、ようやく1つの決議が可決されたが、アメリカが棄権したため、緊密なパートナーであるイスラエルは怒ったが、イスラエルの戦争戦略に全く変更は行われなかった。

2022年の歴史的な国連総会の投票では、世界の圧倒的多数がロシアのウクライナ侵攻を非難したが、それまでと同様にモスクワの戦争に関する計算を変えさせることはできなかった。

そして今週、アメリカがイランによるイスラエル攻撃の可能性に警告を発した時、アントニー・ブリンケン米国務長官は、イランが常設の外交拠点を持つ国連にその懸念を持ち込まず、むしろ従来のシステムを回避してトルコ、中国、サウジアラビアの外相に電話をかけ、緊張緩和のためにテヘランに水面下で働きかけを行うように促した。

インド、南アフリカ、ブラジルなどの中堅・新興大国(middle and rising powers)は、国連安全保障理事会は時代遅れであり、いわゆるグローバル・サウス(global south)が国際問題で果たす役割の高まりを反映していないと主張しているが、制度改革の努力は全てが失敗に終わっている。

表向きは大国(列強)間競争(great-power competition)に関与していない問題、たとえばハイチの安全保障危機やエチオピアとスーダンの戦争でさえ、バイデン政権は国連に可能な役割は存在しないと見ている。2021年にバイデン政権の国連大使に就任したリンダ・トーマス=グリーンフィールドは、エチオピア北部ティグライ地方での致命的な戦争に安保理が正式に対処するよう強く働きかけた。しかし、この危機に関する公開会合が開かれるまでに数カ月が必要だった。

前述のゴーワンは、このため、当初はバイデン政権がトランプ政権後の世界機構に大きな再投資を行うことを期待していた国連外交官たちは、バイデン政権のミニラテラリズムへの軸足移動(Biden’s pivot to minilateralism)に失望することになった、と主張している。

ゴーワンは次のように述べている。「バイデン政権は、大多数の国にウクライナの主権に対するリップサービスを求めたいときには国連は役に立つが、実際に何かを成し遂げたいときには、別の場所に行く方が賢明だと考えている。国連では、『トランプの嵐を乗り切って、バイデンが晴れをもたらしてくれると思ったのに、代わりに霧雨が降ってきた』という感覚があるようだ」。

※ロビー・グラマー:『フォーリン・ポリシー』誌外交・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウント:@RobbieGramer

(貼り付け終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アレックス・ガーランド監督作品「シヴィル・ウォー(Civil War)」(2024年)は、アメリカ社会の分裂と内戦を描いたSF・ディストピア作品のようだ。詳しいないようなまだ分からないが、カリフォルニア州とテキサス州(とフロリダ州)が同盟を組み、中央政府に反旗を翻して内戦状態に入っている、映画の中で名前を明かされていないアメリカ合衆国大統領はファシストとして描かれている、ということは分かっている。この映画は「2024年のアメリカ大統領選挙の後に、アメリカが内戦状態、第二次南北戦争になるのではないか」という、感覚の鋭いアメリカ人たちに不安と共にある種の実感を与えているようだ。

 荒唐無稽な物語にして、「南北戦争のような大規模な内戦は起きない」「現実はもっとちゃんとしている」と思わせようとしながら、映画の基底には、現実感があるのだろうと思う。うまくごまかしながら、何かしらの不安を与えるというのは高等技術であり、それがアメリカ人の神経を逆なでしながら、映画を見ないと済まないという気持ちにさせているということになるだろう。


 カリフォルニア州とテキサス州が連合を組むというのは荒唐無稽のようだが、ワシントンDCとニューヨークに巣食う東部エスタブリッシュメントに対しての反感という点では共通点がある。「アメリカでポピュリズムが跋扈している」という書き方をする人間は多いが、こうした人たちは「大衆迎合主義」の意味で使っているが、アメリカのポピュリズムは、「エスタブリッシュメントによって奪われた政治、デモクラシーを一般庶民・大衆が取り戻そうとする動き」ということである。2016年の米大統領選挙では、共和党からはドナルド・トランプ、民主党からはバーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ―モント州選出、無所属)が出て、ヒラリークリントンを苦しめ、最終的には彼女の大統領就任を阻止することに成功した。サンダースの選挙運動からは、民主党進歩主義派の議員たちが生まれ、その代表格がアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)である。トランプとサンダースは水と油のような関係であるが、ポピュリズムという点では共通である。カリフォルニア州とテキサス州が連合するということもあり得る。

 連邦議会でのトランプ派議員たちと進歩主義派議員たちの動きはよく似ている。たとえば、ウクライナ支援に関しては、こうした議員たちは共通して反対している。こうした動きについては、このブログでも紹介している。その中で、「馬蹄理論(horseshoe theory)」を紹介している。政治的なスペクトラムで両端にある「極右」「極左」が近づくということだ。※「2022年08月16日 伝統的な「右と左」「穏健と過激」ではなくポピュリズムによってアメリカ政治を理解する」 http://suinikki.blog.jp/archives/86488603.html

 日本語で言う「南北戦争」は英語では「The Civil War」と言う。「civil war」と言えば、一般的な「内戦」である。ガーランドの映画のタイトル「Civil War」は、「内戦」という意味でもあり、「アメリカの内戦=第二次南北戦争」ということになる。南北戦争(1861-1864年)は、奴隷制度反対の北部と奴隷制度維持の南部の争いで、エイブラハム・リンカーンが奴隷解放の父・英雄というのが教科書通りの定説だ。しかし、実際はそんなに単純なものではない。リンカーンは南部がアメリカ合衆国に留まるならば奴隷制度を維持しても良いと考えていた。南北戦争は勃興する工業中心の北部と、伝統的なプランテーション農業を中心とする南部の経済的な争いが大きかった。奴隷制度はプランテーション経営の根幹であり、それが廃止されれば経営は立ち行かない。また、関税で言えば、北部はアメリカで勃興し始めた興行を守るために保護関税を訴え、南部は競争力のある綿花の輸出のために低い関税を訴えた。そうした違いから南北戦争になった。そして、リンカーンがアメリカで英雄となっているのは、奴隷解放のためではなく、アメリカの連合(Union)を守ったからだ(南部を相当痛めつけることになったが)。

 アメリカ社会の分断・分裂は、第二次南北戦争を引き起こすかもしれない、今年の大統領選挙がそのきっかけになるかもしれない、という漠然とした不安がアメリカ国民の間に存在する。その不安を刺激したのが、現在公開されている「シヴィル・ウォー」だ。優れた小説や映画は時に予言的な役割を果たす。アメリカの分断・分裂は危険水位に達している。

(貼り付けはじめ)

映画「シヴィル・ウォー(Civil War、内戦、南北戦争)」が成功したのは、その中で描かれている政治が荒唐無稽だからだ(‘Civil War’ Succeeds Because Its Politics Make No Sense

-悪夢のようなシナリオは、論理が夢想のように欠如しているがゆえに余計に恐ろしい。

ジョーダン・ホフマン筆

2024年4月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/13/civil-war-movie-review-garland-us-politics-election-trump/

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「シヴィル・ウォー」で主演を務めるキルスティン・ダンスト(中央)

「ここではそんなことは起こりっこない(It can’t happen here)」。これは、1930年代に小説家シンクレア・ルイスがアメリカ政治に忍び寄るヨーロッパ型ファシズム(European-style fascism)を警告するために使い、1960年代にはミュージシャンのフランク・ザッパがカウンターカルチャー(counterculture)の熱狂的な支持者たちに怯えるアイゼンハワー時代の四角四面ぶりを嘲笑するために使い、2021年1月6日のアメリカ連邦議事堂襲撃事件以来、多くのアメリカ人が自国の安定性を再確認するために使っている常套句だ。アメリカの政治陣営間の対立(animosity)は、私の記憶にある限り、これまでにも増して激しくなっている。しかし、それでは第二次南北戦争(second civil war)が起きるのだろうか?ここではそんなことは起こりっこない。

小説『ザ・ビーチ』(1996年、映画版は2000年)、脚本『28日後...(28 Days Later)』(2002年)、『サンシャイン2057(Sunshine)』(2007年)、映画「エクス・マキナ(Ex Machina)」(2015年)、「アナイアレイション -全滅領域-Annihilation)」(2018年)、「MEN 同じ顔の男たち(Men)」(2022年)、テレビシリーズ「デヴズ(Devs)」(2020年)などを手がけてきた、53歳のイギリス人脚本家兼監督アレックス・ガーランドは、明らかにそう考えていない。しかし、彼の新作「シヴィル・ウォー」は期待を裏切る大胆な作品だ。ジョー・バイデン対ドナルド・トランプの選挙(待てよ、ここでそんなことが起こるのか?)に向けて私たちが夢遊病のように歩くなか、ガーランドの作品はリンカーン・メモリアルの影で武装する「アメリカを再び偉大に(MAGA)」やアンティファ(antifa)の話ではない。彼の大きな芸術的な振れ幅は、スクリーン上で展開されている災難から、アメリカの政治を曖昧にすることだ。そうすることで、内戦の狂気がより鮮明になるのだ。

この映画は、大音量で暴力シーンが執拗なほどに多く含まれる109分間の映画で、2020年後半に脚本が書かれたものだ。当時、アメリカ連邦議事堂に突入することなど、怒りながらポッドキャストをしている人々には全く予想できない時期であった。物語の舞台は「今から数年後」で、アメリカとその大統領(ニック・オファーマンが演じている)は、分離主義勢力の連合(a coalition of secessionist forces)によって窮地に立たされている。このシナリオの経緯や理由は、脚本の適切な位置にある隙間から透けて見えるが、どの時点でも明確な全体像は得られない。信頼できる戦争のための政治理論の欠如は、映画の予告編が公開されて以来、一部の人をイライラさせてきたが(カリフォルニアとテキサスの同盟? なんだそりゃ?)、ニューヨークでのメディア向けの試写会の後、ロビーに数人が集まって、つなげられないいくつかの点について不平を言っていたことを報告したいと思う。敬意を込めて、私は同僚たちに、皆さんは完全に要点を見逃したのだと言いたい。

「シヴィル・ウォー」は、4人の特派員たちに焦点を当てた作品だ。キルスティン・ダンストが演じる主人公リー・スミスは、第二次世界大戦で最も有名な女性写真家の名前もリーであったことをよく知るフォトジャーナリストだ。彼女のそばには、ロイター通信の記者ジョエル(ワグナー・モウラ)がいる。後部座席には、「ニューヨーク・タイムズ紙に残されたもの」で働くヴェテランのジャーナリストであるサミー(スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソンが演じる)と、リーに憧れる新米カメラマンのジェシー(カイリー・スペイニー)が座っており、最前線を観客に説明する脚本家としての役割をうまく果たしている。4人は、ホワイトハウスが崩壊する前にニューヨークからワシントンD.C.へ移動することに決める。ジョエルは大統領の言葉が欲しいし、リーは写真を撮りたい。

これが彼ら登場人物たちのモチヴェーションの全てである。国のあり方について彼らが持つかもしれない政治的意見は、この目標の追求のために転化される。主人公のリーは、「私たちが記録するから、他の人たちが疑問を持ってそれを調べる。これこそがなすべき仕事だ」とまで言っている。「シヴィル・ウォー」にはいろいろあるが、細かい部分での繊細さはない。

彼らのヴァンに乗っての旅は、「地獄の黙示録(Apocalypse Now、アポカリプス・ナウ)」のパトロール・ボートの旅に似ており、神経を逆なでするような残虐行為やシュールな恐怖の描写に遭遇する。(私はIMAXシアターで「シヴィル・ウォー」を耳をつんざくような大音量で見た。) デパートのJCペニーの駐車場で燃え尽きたヘリコプターを見たり、高速道路の陸橋で首を絞められた死体を見たり。派閥同士が、自分がどっちの味方なのか分からないまま殺し合っている。これは、シリアやスーダンの問題を扱った映画を見ている多くのアメリカ人が経験するような混乱である。しかし、お洒落でかわいらしい飾りのクリスマス用品店の外で主人公たちを挟み撃ちにするスナイパーは、明らかに違う印象を与える。

しかしながら、映画の中の混乱をつなぎ合わせようとするのは当然のことだ。分かっているのは、映画の中で描かれている大統領が現在3期目だということだ。この大統領は、ある時点でFBIを解散させ、アメリカ市民への空爆を許可した。赤いネクタイを締め、「史上最大の軍事的勝利」などと大げさな発言をするが(トランプみたい?)、落ち着いて完全な文章で話す(トランプらしくない)。横顔のショットで、映画の中で生を明らかにされないアメリカ合衆国大統領に扮したオファーマンは、アル・ゴア元米副大統領を思い出させた。

主要な分離主義者たちは西部勢力(the Western Forces)、つまり、前述のカリフォルニア州とテキサス州の同盟だ。彼らが掲げる旗は、一見すると普通のアメリカ国旗のように見えるが、星が2つだけ付いている。彼らが武器などをどこで手に入れているのかは不明だ。フロリダ州は彼らの味方だが、ヴェテランジャーナリストのサミーはこれを第二次世界大戦における米英露の同盟(the U.S.-British-Russian alliance)に喩えている。同盟の共通の敵が敗北するとすぐに、次の戦いは同盟間の分裂となるだろう。(また、ポートランドは毛沢東主義者によって制圧されていると言われている。)

主人公で、フォトジャーナリストのリーは「アンティファの大虐殺(The Antifa Massacre)」で有名な一発を浴びて覚悟を決めたということが映画の中で語られる。このちょっとした裏話がいかに曖昧であるかは、「シヴィル・ウォー」らしいところだ。アンティファ(antifa)が虐殺を行ったのか、それとも虐殺されたのか? この映画では、そんなことはどうでもいい。なぜなら、結果は同じだからだ。その結果とは、アメリカ社会の完全な解体である。

大統領については、ムアンマル・アル=カダフィ、ベニート・ムッソリーニ、ニコライ・チャウシェスクと比較される。だから、主人公たち4人がワシントンに行くことは急務となる。しかしながら、戦争のさなかにあるニューヨークからワシントンまで行くのは容易なことではない。(ニューヨークは、停電[power blackouts]や、夜間外出禁止令[nightly curfews]が解除されると誰もが自転車で移動するようになったために自動車が通れなくなっているし、時折自爆テロが起きているにもかかわらず、ある程度安定しているようだ)。南行きのハイウェイは侵入不可能で、「フィラデルフィア近辺」に行くのは自殺行為と見なされる。4人はピッツバーグを経由し、ウェストバージニア州を通る長い回り道をする。ぶら下がった死体の横に描かれた「(Go Steelers!、訳者註:プロアメリカンフットボールのピッツバーグ・スティーラズへの応援)」の落書きもその1つだ。

ガソリンタンク半分の価格は300ドル、カナダドルでの表示だ。他に外国の土地について言及されているのは、グリーンランドとアラスカへの安全な航行の話だけだ。

ある夕暮れの場面では、暴力が見過ごしたような小さな町に主人公一行がいる。カメラが傾き、メインストリートのいたるところに武装したスナイパーが現れる。そして、なぜかピンクのサングラスをかけたジェシー・プレモンスが一行を捕らえ、銃を突きつけるシーンがある。彼のキャラクターは、「シヴィル・ウォー」では典型的な悪役に最も近く、「真のアメリカ」のために戦う、血に飢えた外国人嫌いだ(a bloodthirsty xenophobe fighting for the “real America”)。予測不可能な映画の中では珍しく陳腐なキャラクターではあるが、ハラハラドキドキのシーンが多いこの映画では、このシーンは一番緊迫感がある。

政治的な混乱や実存的なドラマがあっても、この映画が興行的にヒットするかどうかはアクションにかかっている。結末を明かしたくはないが、アクションは、「フルメタル・ジャケット」や「ブラックホーク・ダウン」のような、最も激しい戦争映画作りの一部である。ジャーナリストたちは、過激派が政府を転覆させようとするのと同様に、自分たちにとっての最終的な目標を達成しようと躍起になっている。私はガーランドの他の作品(少々評判の悪い「MEN 同じ顔の男たち(Men)」も)のファンだが、彼の大規模な職人技はここで新たなレヴェルに達している。アメリカ人が観ると動揺してしまうが、「シビル・ウォー」は確かに見事な映画となっている。

もちろん、この映画が実際にはトランプについてのものではないと主張する記事がいくらあったとしても、人々がこの映画について、本当にトランプについてのものであると考えないようにさせることは無理だ。ガーランドと配給会社のA24が、アメリカ社会で激しさを増している言論にガソリンを注いでいるかどうかは、議論の余地があるのは確かだ。今度の選挙が明らかな大敗(clear blowout)以外であれば、暴力が街頭を襲うのではないかと心配したことは否定できない。しかし、この映画の政治という丸い穴に四角い釘を打っているかのような不自然さが不安を煽っているのであり、明らかに良い面を支持すると、その不安を台無しにすることになる。何よりも、ガーランドの「シヴィル・ウォー」は、戦争特派員としてのキャリアが決して私にふさわしい選択肢として存在しなかったということを証明した。戦争についての映画を見ただけでこんなに動揺するのなら、私のノートと私は間違いなく戦場にはふさわしくないということになる。

※ジョーダン・ホフマン:ニューヨーク市クィーンズ在住の映画評論家、エンターテインメント・ジャーナリスト。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。イスラエル、パレスティナ情勢についても分析しています。また、『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 「アメリカが動けばイスラエルは言うことを聞くはずだ」という内容のブログを掲載して、舌の根も乾かないうちに、「イスラエルはアメリカの言うことを聞かないよ」という文章を掲載するのはおかしいと思われるだろうが、これが国際政治やどのように考えるのかということの面白いところだと思う。

 アメリカはイスラエルにとって最大の支援国であり、アメリカの動向はイスラエルの政策決定にとって重要だ。そのため、イスラエルは、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人たちを動かしてアメリカの世論や政策決定に影響を与えようとしてきた。それが成功している様子は、ジョン・J・ミアシャイマー、スティーヴン・M・ウォルト著『イスラエル・ロビー』に詳しく書かれている。アメリカの連邦議員たち、特に都市部に地盤を持つ議員たちは、ユダヤ系の投票と資金に依存しているため、「支援しない」となれば政治生命が断たれることになる。イスラエルにとってアメリカは最重要の国である。

 支援をする国(アメリカ)と支援を受ける国(イスラエル)で言えば、イスラエルはアメリカ以外からの支援はほぼない状況であるので、イスラエルはアメリカから、支援を見直す、支援を打ち切ると言われてしまえば、立ち行かなくなってしまうので、アメリカの言うことを聞く。しかし、ここで、アメリカにばかり頼っていないという状況が出てくれば、アメリカに対して、「支援を打ち切るならどうぞ」と強い立場に出ることができる。また、支援を受ける国の特殊な事情、例えば、その国がある位置、国内政治体制や価値観の相似などによって、支援を受ける国の方が強い立場に立つことができる。それこそがイスラエルである。

イスラエルは中東にあって西側の形式の自由主義的民主政治体制、資本主義、法の支配などを確立している唯一の国だ。アメリカとしてはイスラエルを存続させることが重要ということになる。また、位置としても非常に微妙なところにある。従って、イスラエルの発言力は強くなる。

 こうして考えると、日本もイスラエルのように、アメリカに対して、ある程度の発言力を持つことができるのではないかと私は考える。それは、「アメリカがあまりに酷いことを日本に求めるならば、日本はアメリカの陣営から飛び出しますよ」という形で、中国と両天秤にかけることだ。しかし、戦後80年、アメリカに骨抜きにされ、アメリカ妄信が骨絡み状態になっている日本には難しいことだ。アメリカが衰退していって、初めて私たちは、その呪縛から解放されるだろう。その時期は私たちが考えるよりもかなり早く到来するだろう。

(貼り付けはじめ)

皆さんが考えるよりも、イスラエルに対するアメリカの影響力は小さい(The United States Has Less Leverage Over Israel Than You Think

-アメリカの影響力の基礎とその欠如について詳しく見てみる。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2024年3月21日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/21/us-israel-leverage-biden-netanyahu/

ジョー・バイデン政権は、イスラエルのガザ報復作戦(Israel’s retaliatory campaign in Gaza)を止められなかったことで、執拗な批判にさらされている。バイデン米大統領とその側近たちは、増え続ける死者数(現在3万人を超えている)について憂慮し、故郷を追われた何十万人もの罪のないパレスティナ人に十分な人道支援を届けようとしないイスラエルに苛立ちを募らせていると伝えられている。しかし、バイデンはアメリカの武器の流入を止めず、アメリカは停戦を求める3つの国連安全保障理事会決議について拒否権(veto)を行使している(アメリカが承認する可能性のある決議案が準備中と報じられている)。カナダとは異なり、ガザの国際連合パレスティナ難民救済事業機関(United Nations Relief and Works AgencyUNRWA)の職員がハマス支持者で埋め尽くされていたという非難が今となっては疑わしいと思われるにもかかわらず、アメリカはUNRWAへの資金提供を停止するという決定をまだ翻していない。

バイデンを批判する人々は、アメリカがこの状況に対して多大な影響力を持っており、大統領が毅然とした言葉を発し、アメリカの援助を縮小、もしくは停止するとの圧力(脅し)を加えれば、イスラエルはすぐに方針転換を余儀なくされるだろうと想定している。しかし、この仮定は精査するに値する。弱小国家は、しばしばアメリカの要求に従うことを拒否し、場合によってはそれを無視してしまう。セルビアは1999年のランブイエ会議でNATOの要求を拒否した。イランと北朝鮮は数十年にわたり制裁に耐えてきたが、反抗的な姿勢を維持している。ヴェネズエラではニコラス・マドゥロが依然として権力を握っている。そしてバシャール・アル・アサドは、アメリカが以前から「退去せよ(must go)」と主張してきたにもかかわらず、依然としてシリアを統治している。

これらの指導者たちがアメリカの圧力に逆らうことができたのは、アメリカの支援に依存していなかったからであり、それぞれが、「強硬手段に出るよりも従う方が失うものが大きい」と考えたからである。しかし、ドイツがアメリカの反対にもかかわらず、パイプライン「ノルド・ストリーム2」の建設を継続したように、アメリカの親密な同盟諸国も、アメリカの圧力に抵抗することがある。依存度の高い属国であっても、驚くほど頑固な場合がある。アフガニスタンの指導者たちは、米政府高官の要求する改革を何度も無視して実施しなかったし、ウクライナの司令官たちは昨夏の不運な反攻作戦を計画する際、アメリカの助言を拒否したと伝えられている。カブールとキエフはほとんど全面的にアメリカの物質的支援に依存してきたが、ワシントンは彼らの要求に従わせることができなかった。同様に、イスラエルの指導者たちも、ダヴィド・ベン=グリオンからベンヤミン・ネタニヤフに至るまで、アメリカの圧力に幾度となく抵抗してきた。バイデンから電話がかかってきて、アメリカの援助を打ち切ると脅せば、イスラエルがアメリカの言いなりになると自動的に考えるべきではない。

影響力はどこから来るのか? 偶然にも、私はこの問題について、1987年に、最初の著書の第7章で長々と書いた。支援国が、経済的・軍事的援助、外交的保護、その他の便益を、支援を受ける国に提供することで、支援を受ける国に提供される援助をほぼ独占している場合、支援国が目下の問題について支援を受ける国と同程度の関心を持ち、支援を受ける国に圧力をかけて順守させるために援助水準を操作することに国内的な障害がない場合、支援国はかなりの影響力を持つ。支援を受ける国が他の誰かから同じような援助を受けることができる場合、係争中の問題に関して、支援国よりもはるかに多くのことを気にかけており、それゆえ支援の削減という代償を支払う意思がある場合、あるいは支援国が国内的あるいは制度的な制約のために支援を削減する場合、影響力は低下する。

このような条件によって、なぜ、そして、どのようにして、支援を受ける国の一部が支援国の選好に逆らうことができ、また逆らうことを避けないのかを説明できる。支援国が、弱い同盟国に本質的な価値があると考えている場合(重要な戦略的位置にある、価値観が似ているなど)、あるいは、支援を受ける国の成功が支援国の評判や名声に結びついている場合、支援国は支援を受ける国が頑なに反抗的であっても、その国を切り捨てようとはしない。たとえば、ソ連はアラブの様々な支援を受ける国を自分たちの側に引き留めるのに苦労した。なぜなら、それらの国々は中東における影響力にとって重要な存在であり、クレムリンは、それらの国々が失敗する(あるいはアメリカと同盟を結ぶ)ことを望まなかったからである。同様に、アメリカは南ヴェトナムやアフガニスタンの指導者たちに、支援を撤回すると脅して圧力をかけることはできなかった。もちろん、ヴェトナムのグエン・バン・チュー大統領やアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領はこのことをよく理解していた。

更に悪いことに、援助を提供すると、短期的には影響力が低下する。なぜなら、一度提供された援助を取り戻す方法がないからだ。ヘンリー・キッシンジャーはあるジャーナリストに次のように語った際に、彼はこの力関係を完璧に捉えていた。「私はイスラエルのイツハク・ラビン首相に対して妥協するように求めた時、ラビンは、イスラエルは弱いので妥協はできないと答えた。そこで私は彼にもっと武器を与え、妥協するように求めた。ラビンはイスラエルは強いので譲歩する必要はないと言った」。更に言えば、弱くて依存的な支援を受ける国は、自分たちの方がより脆弱で、より多くのことを抱えているため、しばしば、支援国よりも、問題が提起されている問題について気にかけている。そして、同盟諸国が国内の主要な政治的支持層から支持されている場合、その支援国がその影響力を自由に利用する可能性はさらに低くなるだろう。

それでは、アメリカとイスラエルの関係の現状と、バイデンがもたらす可能性のある実際の影響力について何を物語っているかを考えてみよう。

第一に、イスラエルは以前ほどアメリカの支援に依存していないものの、誘導爆弾と砲弾、F-35航空機やパトリオット防空ミサイルなどの先進兵器システムと精密誘導ミサイルの両方を含むアメリカの兵器へのアクセスに依然として大きく依存している。もちろん、高度な兵器を生産しているのはアメリカだけではなく、イスラエルも独自の高度な防衛産業を持っているが、万が一アメリカが援助を遮断した場合に軍隊を再装備するのは困難で費用のかかるプロセスとなるだろう。イスラエルの戦略家たちは長年、潜在的な敵対国に対して質的優位性を維持することが極めて重要であり、アメリカの援助が失われれば長期的にはその能力が危うくなると信じてきた。これに、国連安全保障理事会の拒否権や他国がイスラエル批判を自制するよう圧力をかける形であれ、アメリカの外交的保護の価値が加わると、イスラエルがアメリカから得ている支援に代わるのは不可能ではないにしても困難であることは明らかだ。だからこそ、専門家の多くは、バイデンがすべきことはアメリカの援助を減らすと脅すことだけであり、ネタニヤフ首相には従う以外に選択肢はない、と考えている。

第二に、立場の弱い、援助を受ける国が問題に関心を持っている場合、圧力をかけるのは難しいが、現在、アメリカの手段を強化する方向に決意のバランスが変化している可能性がある。以前の中東紛争ではよくあったことだが、アメリカは自国の利益がより重視される場合にはイスラエルに行動を変えさせることができた。 1956年の第二次アラブ・イスラエル戦争後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領はイスラエルにシナイ半島から撤退するよう圧力をかけることに成功し、アメリカ政府当局は1969年から1970年の消耗戦争と1973年のアラブ戦争中にイスラエルに停戦協定を受け入れるよう説得するのに貢献することができた。ロナルド・レーガン大統領からイスラエル首相メナヘム・ベギンへの怒りの電話も、1982年のレバノン侵攻中のイスラエルによる西ベイルートでの大規模な爆撃作戦を終わらせた。これらのいずれの場合でも、アメリカの指導者たちは、より広範なアメリカの利益が危険に晒されていると信じていたため、強力に行動し、成功した。

しかし、今どちらの側に大きな決意があるのかはわからない。ネタニヤフ首相は国内では不人気となっているが、世論はガザ地区での軍事作戦を支持しており、ネタニヤフ首相に取って代わりたい政治的ライヴァルたちでさえ、これまでネタニヤフを支持してきた。これに加えて、ネタニヤフ首相は二国家共存解決[two-state solution](あるいはパレスティナ人との公正な和平)に反対し、汚職による訴追を避けたいと考え、政権を維持するために極右閣僚たちに依存している。イスラエルは「バナナ共和国(banana republic、訳者註:政治的に不安定で、経済は外国に支配され、1つの産物の輸出に依存する小国)ではない」と宣言したネタニヤフ首相は、アメリカの明確な警告にもかかわらず、イスラエル国防軍(IDF)が混雑するガザ地区の都市ラファを攻撃すると強硬に主張し続けている。しかしネタニヤフはまた、この問題について協議する代表団をワシントンに派遣することにも同意した。

加えて、ガザ地区における危機的状況は世界中でアメリカのイメージに大きなダメージを与え、バイデン政権が冷酷で無力であるように見せている。もし結果がそれほど憂慮すべきものでないならば、アメリカの政策の矛盾は滑稽なものになるだろう。アメリカ政府はガザ地区の飢餓に瀕している避難住民たちに食糧を空輸している。それと同時に、彼らを避難させ飢餓の危険にさらしている軍備をイスラエルに提供している。この状況はバイデンの再選の可能性を危うくする可能性もあり、ホワイトハウスが強硬姿勢を取る新たな理由となった。

私は、アメリカがイスラエルよりもガザ地区の状況を懸念していると言っているのではない。イスラエルとパレスティナで何が起こっても、アメリカで比較的安全に暮らす私たちよりもイスラエル人(そしてパレスティナ人)にとって、ガザ地区の状況は明らかに重要である。私が言いたいのは、どの程度かということを言うことは不可能ではあるが、決意の均衡がワシントンの方向に向かって進んでいるということだけだ。

最後に、国内の制約についてはどうだろうか? 過去の大統領が想像以上に影響力を行使できなかった主な理由は、イスラエル・ロビー(Israel lobby)の力である。アメリカ・イスラエル公共問題委員会(American Israel Public Affairs CommitteeAIPAC)などが議会で行使してきた影響力を考えれば、イスラエルに深刻な圧力をかけようとする大統領は、必ず自分が所属する党の連邦議員たちからも含む、厳しい批判に直面した。ジェラルド・フォード大統領はこの教訓を1975年に学んだ。イスラエルの長期にわたる横暴に対し、関係を見直すと脅したところ、すぐに75人の連邦上院議員が署名した書簡が届き、その動きを非難されたのだ。バラク・オバマは大統領就任1年目に同じ教訓を学んだ。ネタニヤフ首相に入植地建設を止めるよう圧力をかけようとしたとき、共和党所属の連邦議員たちからも民主党所属の連邦議員たちからも同様の反発を受けた。イスラエル・ロビーの影響力は、長い間、結局は失敗に終わったオスロ和平プロセスにおいて、アメリカの交渉担当者がイスラエルの譲歩を得るために、肯定的な誘導策、つまりニンジン(carrots)しか使えずに、結局は棍棒(sticks)を使うことができなかった理由も説明する。

この状況も徐々に変わっていくだろう。アパルトヘイト制度(system of apartheid)を運用している国家を守ることは、特に現在、大量虐殺を行っているという、証明されていないが、もっともらしい告発に直面している場合には、簡単な仕事ではない。イスラエル政府のプロパガンダ(ハスバラ、hasubara)がいくら法廷で無実を訴えても、ガザ地区から流れ出る映像や、イスラエル国防軍兵士自身が投稿した不穏なTikTokYouTubeの動画を完全に否定することはできず、AIPACのような団体が影響力を維持することが難しくなっている。長らくイスラエルを最も忠実に擁護してきたチャック・シューマー連邦上院議員が連邦上院議場で演説し、ベンヤミン・ネタニヤフ首相の政策はイスラエルにとって悪であると宣言したことは、政治の風向きが変わりつつあることが明らかだ。アメリカ政治に対する考え方も、特に若者の間で変化しつつある。イスラエルの行為をアメリカの支持条件とすることには、依然として恐るべき政治的障害(formidable political obstacles)が存在するが、特に選挙の年には、数年前ほど考えられないほどの障害という訳ではない。

私は、ワシントンには確かに潜在的な影響力がたくさんあり、それを利用するための障壁は過去に比べて低くなっていると結論付ける。しかし、イスラエルの現在の指導者たちは、この問題に関して、依然として高い決意を持っているため、アメリカの支援を削減するという信頼できる脅しがあっても、彼らが大きく方針を変えることはないかもしれない。また、バイデンや彼の側近たちが、現在の失敗したアプローチから、より効果的なアプローチに移行するために必要な精神的な調整ができるかどうかも明らかではない。イスラエルへの圧力が機能するかどうかに焦点を当てるのではなく、問うべき真の問題は単に、大規模かつ悪化する人道的悲劇に積極的に加担することがアメリカの戦略的または道義的利益にかなうかどうかである。たとえアメリカがそれを止められなかったとしても、事態をさらに悪化させることの手助けをする必要はない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。ツイッターアカウント:@stephenwalt

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2023年10月7日にガザ地区を実効支配するハマスによるイスラエルへの攻撃で、約1200人が殺害され、250人以上が拉致された。そのうちの一部は解放されたが、大部分は拉致されたままだ。被害者家族たちは即時の解放を求めている。イスラエルは人質の解放とハマスの壊滅を掲げて、ガザ地区に侵攻し、激しい攻撃を加えた。ガザ地区では民間人の死傷者が多数出ており、イスラエル軍の過剰な反撃に対しては国際的な非難が高まっている。イスラエルを全面的に支持し、これまでも手厚い支援を行っているアメリカでも、国内世論がイスラエルの過剰な反撃に対して嫌悪を示している。その世論を背景にして、ジョー・バイデン米大統領はイスラエルに対して不満を隠そうとはしていない。

 これまでも何度か行われた停戦交渉で拉致された人質の一部が解放されているが、イスラエルの軍事的な反撃が激しさを増しながら、半年を過ぎようとしているが、人質救出の目途は立っていない。イスラエル国内でもベンヤミン・ネタニヤフ首相の強硬路線に対する反対の声が上がるようになっている。ネタニヤフ首相は政権内部の極右勢力の閣僚たちを頼りに政権運営を行っているが、一番の問題は「ハマスを壊滅させることもできず(ハマス以外の過激派組織が成長することも含めて)、人質を救出することもできず」という状態にあることだ。
 軍事力だけで比べれば、イスラエルがガザ地区を徹底的に破壊して、再占領をすることは容易なことだ。しかし、ガザ地区再占領が今回の軍事作戦の目的ではない。人質を解放することが最優先だ。ハマスの壊滅はそれに比べれば重要度は低い。ネタニヤフ首相はそのことを履き違えている。しかも、軍事作戦を進めれば進めるほどに、国際的な非難の声は大きくなるばかりだ。イスラエルはガザ地区での作戦を中止し、一部部隊を撤退させた。ネタニヤフ首相はただガザ地区を破壊し、パレスティナ人の憎しみを増大させ、肝心の人質の救出にはつながっていない。半年も経ってこのような状態では、ネタニヤフ首相は大きな失敗をしたと言わざるを得ない。

 バカ極右が下手に軍事力を持つとどのようなことを起こすか、日本にとって良い教訓だ。

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ネタニヤフ首相の戦争戦略は意味をなしていない(Netanyahu’s War Strategy Doesn’t Make Any Sense

-イスラエルの計画は、それ自体の条件から見てもつじつまが合わない。

アンチャル・ヴォ―ラ筆

2024年4月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/05/israel-gaza-war-netanyahu-strategy/

2023年11月、私はテルアヴィヴでハマスに人質として拘束されたリリ・アルバッグの父親エリ・アルバッグに会った。ベギン通りの真ん中で19歳の娘の写真を手にしながら、彼はハマスに圧力をかける政府の軍事作戦を支持すると言った。「ハマスが自ら人質を解放すると思うか?」 しかし、アルバッグは我慢の限界に達したようだ。2024年3月下旬、彼はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に最後通牒を突きつけ、家族たちはもう支援集会を開かず、反ネタニヤフ抗議運動の拡大に加わって街頭に集まると地元メディアに語った。

問題となっているのは、人質の家族が、親族の帰還(the return of their relatives)とハマスのイスラエルに隣接するガザ地区からの排除(Hamas’s removal from their neighborhood)を、この順で勝利と見なしている一方で、多くの人がこの2つの戦争目的が矛盾していることを以前から知っていたことだ。しかしネタニヤフ首相は軍事作戦開始以来、人質解放よりもハマスの排除を意図的に優先してきたが、実際にはどちらも達成するための一貫した計画はない。

ネタニヤフ首相は、戦争を終結させ、人質を解放し、平和をもたらす見通し、ヴィジョンを欠いたまま、ただ出来事に反応しているだけだと、軍事アナリストやイスラエル国民の一部から非難されることが増えている。

しかし、ネタニヤフは依然として憤慨している。抗議デモに対してネタニヤフ首相は、「勝利がもうすぐ訪れるこの時期に早期の選挙は国を麻痺(paralyze)させ、ハマスを利するだけだ」と述べた。彼は今、100万人以上のパレスティナ人が避難しているガザ地区南部のラファに目をつけている。このような攻撃は国際的な怒りを買うだけでなく、ハマスとの交渉をより難しくするだろう。

2023年10月7日、ハマスがイスラエルの町やキブツ(kibbutzim)を襲撃し、約1200人を殺害、250人以上を拉致した直後、ネタニヤフ首相は宣戦布告した(declared war)。ガザ地区を空爆することでハマスに圧力をかけ、捕虜を解放させ、同時にハマスを排除するというのが、人質の家族に対する基本的なメッセージだった。

しかし、ハマスは、ガザ地区をはじめとするパレスティナ地域だけでなく、レバノン、シリア、イランなどにも拠点を構え、国民から絶大な支持を得ている。ハマスは、どのように排除するつもりなのかという、より根本的な問題については、ネタニヤフ首相は口をつぐんだ。アメリカの情報諜報機関が毎年まとめている脅威評価によれば、イスラエルはハマスの何年にもわたる抵抗に直面する可能性がある。

何年にもわたる対反乱作戦の末、イスラエルの治安部隊がガザ地区でハマスを壊滅させることができたとしても、将来のどうようなグループの再来はどうなるだろうか? イスラエル国防軍(IDF)が更に長い期間をかけてハマスの分派を壊滅させたとしても、ネタニヤフ首相は、政治的解決の目処が立たないまま、武装抵抗をどのように排除するのだろうか?

安全保障担当のある政府高官は匿名を条件に本誌に次のように語った。「私たちはハマスの全24大隊のうち18大隊を壊滅させたが、ハマスの撲滅にはどれだけの距離があるだろうか? それは大きな疑問だ。ハマスを排除することは可能だが、その期限を決めることはできない。もちろん、他のグループが台頭する可能性もある」。

ガザ地区内でのイスラエルの軍事作戦は、ハマスのインフラと軍事能力に大きなダメージを与えたが、平和は保証されていない。イスラエルの世界的に有名な国防軍と治安機関が、10月7日の攻撃の2人の首謀者、モハメド・デイフとヤヒヤ・シンワルを逮捕することができていないという事実、今もガザの裂け目のどこかに2人が身を潜めているという事実が、イスラエルの限界と、ハマス指導部が今も受けている支援の大きさを物語っている。

2月にネタニヤフ首相がついに計画の概要を発表したが、詳細はほとんどなく、イスラエルの専門家たちによって「計画ではない(non-plan)」としてすぐに却下され、「現実から切り離されている(untethered from reality)」と形容され、ただの大騒ぎのように聞こえた。結局のところ、ガザ地区再占領への行程表(ロードマップ、roadmap)以上のものではなかった。

ネタニヤフ首相は、ガザ地区を当面の間、「安全管理(security control)」し、この地域が完全に非武装化されて初めて復興を許可すると述べた。また、パレスティナ人の非武装化を望んでおり、パレスティナの国家承認を否定している。いかなる合意も、イスラエル人とパレスティナ人の「直接交渉によって(through direct negotiations)」のみ達成されるとネタニヤフは語ったが、交渉の時期は明らかにしていない。報道によると、流布された計画では、戦後のガザ地区の文民行政は、ハマス以外の非敵対的な地元の各グループによって運営されることになっている。

パッと見たところでは、ハマスの残忍な攻撃を受けて恐怖に怯え、安全に暮らしたいと願うイスラエル国民にとっては理に適っている。しかし、よくよく考えてみると、辻褄が合わない。最初に、ネタニヤフ首相はイスラエル軍を無期限に派遣するつもりなのか、それとも必要なときに必要なだけイスラエル軍に自由に立ち入ることを望んでいるのか、明らかにしていない。前者はガザ地区の再占領を意味し、後者は事実上の支配を意味する。どちらの選択肢も、イスラエル国民やイスラエルの国際的パートナーにはまだ提示されていない。

たとえ、ネタニヤフ首相が、イスラエルが最近国交を結んだ、アラブ諸国からなる多国籍軍がガザ地区の治安維持を引き継ぐことに同意したとしても、そのような多国籍軍がパレスティナ人の間でどのような信頼を得られるかについては疑問が残る。ハマスの大隊を全て非武装化するのは短期的な課題かもしれないが、その残党や別組織と戦うには何年も、もしかしたら何十年もかかるだろう。治安維持部隊にとっては、反目する準国家を監視するよりは、反乱軍に対処する方がまだ扱いやすい仕事だが、イスラエル軍には大きな犠牲を強いることになる。イスラエルの高圧的な態度は、イスラエル国内でのパレスティナ人の攻撃を抑制するか、もしくは助長するかのどちらかだ。

イスラエルの元国家安全保障担当次席補佐官エラン・ラーマンは、パレスティナ人の非急進化(deradicalize)という目標は、永続的な和平に向けたものだと語った。ラーマンは、「私たちは一過性の現象であり、遅かれ早かれ圧力で崩壊するだろうというパレスティナ人の認識を変える必要があるため、非急進化がカギとなる」と述べた。学校やモスクでの非急進化プログラムは、「イスラエルの生存権を認めない」人々(those who do not “accept Israel’s right to exist”)を対象にしたものだ。

しかしパレスティナ人は、これもまた二国家共存による解決を遅らせるためのネタニヤフ首相の戦術だと言う。結局のところ、パレスティナ人は単にハマスのプロパガンダによってイスラエルに反対しているのではない。パレスティナ人の多くは、イスラエル国家と入植者による土地収奪の犠牲者であり、それは現在の戦争による苦しみ以前の問題なのだ。ネタニヤフ首相は、パレスティナ人の自決の考えをより生産的な形で形成する方法についての計画を明らかにしていない。

ネタニヤフ首相の、地元住民に最終的な文民統制権を与えるという提案もまた、軽率に思える。いったい誰を念頭に置いているのだろうか? あるイスラエル安全保障関係者は、イスラエルに友好的なアラブ諸国、特にアラブ首長国連邦に従順な現地人はテストに合格するだろう、と語った。しかし、そのような指導者はイスラエルの操り人形とみなされ、パレスティナ人の間では立場が弱いかもしれない。ヨルダン川西岸のマフムード・アッバス率いるパレスティナ自治政府(Palestinian Authority)のように、嘲笑の的になるかもしれない。

ネタニヤフ首相のハマス壊滅、ガザ地区の非武装化、パレスティナ人非武装化キャンペーンは、事実上ガザ地区の再占領に等しい。ガザ地区を再占領することは、イスラエル国民の多くが快く思っていないとしても、ネタニヤフ首相の、計画になっていない計画はそこに向かっている。イスラエル国防軍で報道官を務めたジョナサン・コンリカスは「イスラエル人は占領という言葉を使いたがらないが、他に選択肢はない」と述べている。

先月、アメリカは停戦を求める国連安全保障理事会の採決を棄権した。ガザ地区の再占領は亀裂を更に広げるだろう。言い換えれば、ネタニヤフ首相の戦略は、ガザ地区とその200万人の住民、ますます疎外されるアメリカ政府、国際的孤立の増大に対する責任という形で、悲惨な勝利に向かう可能性がある。

※アンチャル・ヴォ―ラ:ブリュッセルを拠点とする『フォーリン・ポリシー』誌コラムニストでヨーロッパ、中東、南アジアについて記事を執筆中。ロンドンの『タイムズ』紙中東特派員を務め、アルジャジーラ・イングリッシュとドイツ国営放送ドイチェ・ヴェレのテレビ特派員を務めた。以前にはベイルートとデリーに駐在し、20カ国以上の国から紛争と政治を報道した。ツイッターアカウント:@anchalvohra

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号の、佐藤優(さとうまさる)先生の書評コーナー「名著、再び」で2ページにわたってご紹介いただきました。ありがとうございます。是非お読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 4月10日に岸田文雄首相が国賓待遇でアメリカを訪問し、ジョー・バイデン米大統領と首脳会談を行った。岸田首相の連邦議会での演説では「巧みなジョークで大うけ」という演出がなされた。これだけのおもてなしを受けるためには、お土産にどれくらいが必要なのだろうか、と考えると気が重くなる。ウクライナ戦争やパレスティナ紛争で、ウクライナとイスラエルへの支援をしなければならないアメリカからすれば、唯々諾々とお金を出してくれる日本は移動式金庫のようなもので、首相を呼びつければお金を持ってやってくる、「カモがネギを背負ってやってくる」ということでしかない。今回も「共同開発」「協力」などと言う言葉たくさん並べられたが、それぞれの請求書は東京に送られる。

 日本にとっての最大の懸念は、「アメリカの尖兵となって、中国にぶつけられること」であり、「中国と戦争をしなければならない状態にさせられること」だ。日本では、「中国が攻めてくる、攻めてくる」と声高に叫ぶ考えの足りない人たちが一部にいる。中国が日本に軍事的に侵攻してどのような利益があるのか、よく考えた方が良い。そうした日本人は、「日米安全保障条約があるから、いざとなったらアメリカが一緒に戦ってくれる」などとも言う。それは大きな間違いだ。アメリカは日本と一緒になって戦ってくれない。それどころか、いざとなれば、「日本国憲法があるのに中国と勝手に戦争をした」という理由で、日本を米中共同の敵に祀り上げるくらいの論理構成をしてくるだろう。ここで怖いのは、アメリカの間接的なお墨付きを得て、日本が中国に攻め込ませさせられる(中国とぶつけられる)ということだ。日米防衛協力は、自衛隊をアメリカ軍の下に置いて、好きに使えるようにするということだ。そして、自衛隊がアメリカ軍の尖兵となって(アメリカは自分たちの不利益にならない形で)、中国と戦えるようにするということだ。

 日本の自衛隊は今のところ、正式な形でアメリカ軍の指揮下に入っていない。実質的には入っているようなものではあるが、今のところは、アメリカ軍と協議をしてという形を取って、独立した形になっている。今、テーマになっているのは、「いざとなった時に、話し合いなどをしている時間的余裕などないのだから、いざとなったら、自衛隊はアメリカ軍の指揮下に入れるということ」である。このような状態になった時に怖いことは、アメリカがシナリオを書いて、日中が衝突するということを起こされることだ。もしくは、中国人民解放軍の一部(アメリカに使嗾されるスパイのような存在)が暴発して、自衛隊を攻撃するという事件を起こすことだ。

 そのようなことが起きるはずがないと考えるのは当然だろうが、そのようなことが起きる危険については可能性についても私たちは考えておくべきだ。日中が戦わないということを基本線にして、物事を組み立てていく。アメリカには面従腹背、中国には実態を説明して何か起きても自制、そしてどうしようもなくなれば、八百長を仕組む、これくらいのことは日本政府に期待したいところだ。

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バイデン・岸田首脳会談は新たな防衛協力を確実なものとする(Biden-Kishida Summit Secures New Defense Cooperation

-アメリカと日本は南シナ海における中国の影響力に対抗することを目的としている。

アレクサンドラ・シャープ筆

2024年4月10日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/10/us-japan-summit-biden-kishida-state-visit-south-china-sea/

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ホワイトハウスにてジョー・バイデン大統領の隣で演説を行う日本の岸田文雄首相

●「壊れることのない」パートナーシップ(An ‘Unbreakable’ Partnership

ジョー・バイデン米大統領は水曜日、日本の岸田文雄首相をホワイトハウスに迎え、二国間の防衛・情報協力を強化するための70項目以上の計画を発表した。今回の数日間にわたって行われた日米首脳会談は、南シナ海における中国の野心や北朝鮮の核開発計画への懸念など、インド太平洋における緊張の高まりに対処することを目的としている。

バイデン大統領は、日米のパートナーシップは「壊れることはない(unbreakable)」と述べ、「2つの偉大な民主政治体制国家の間の記念碑的な同盟(monumental alliance between our two great democracies)」を称えた。

バイデンと岸田はまた、日本の自衛隊との連携を強化するため、日本にあるアメリカ軍司令部の機能向上(upgrading)についても話し合う予定だった。両首脳はまた、アメリカと日本がどのような種類の防衛兵器を共同生産できるかを検討するための「軍産評議会(military industrial council)」の設立も発表した。ロイド・オースティン米国防長官と日本の木原稔防衛大臣は今後数カ月かけて詳細を最終決定する予定だ。

第二次世界大戦での日本の敗北後、日本は軍隊を自衛(self-defense)の目的に限定する平和憲法(pacifist constitution)を制定した。しかし、岸田は前任者の安倍晋三政権下で始まったそのドクトリン(doctrine)からの転換を続けている。2021年の首相就任以来、岸田は殺傷兵器の輸出規制を緩和し、2027年までに防衛費をGDPの2%に引き上げると約束し、反撃能力(counterstrike abilities)を高めるためにアメリカ製トマホークミサイルを購入し、日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQuad)などの安全保障グループの設立を支援した。

岸田首相は「今日、世界はこれまで以上に多くの課題と困難に直面している。日本はアメリカの友人たちと手を携え、共にインド太平洋地域と世界の課題に取り組む先頭に立って進んでいく」と述べた。

首脳会談の中で、バイデンと岸田は、共同月探査計画、人工知能、半導体、クリーンエネルギーに関する研究協力、日本の学校との交流プログラムに参加するアメリカの高校生のための新しい奨学金制度創設を発表した。両首脳の会話の多くは、東京の機密情報保護活動を強化する方法(ways to boost Tokyo’s sensitive intelligence protection efforts)にも及んだ。日本は以前から、中国の挑発行為により対抗するため、ファイブ・アイズ[Five Eyes](オーストラリア、カナダ、ニュージーランド、イギリス、アメリカで構成される情報諜報ネットワーク[intelligence network])への加盟を目指してきた。

木曜日、岸田首相はアメリカ連邦議会の合同会議で演説する史上2人目の日本の指導者となる。また、南シナ海で繰り返される中国とフィリピンの沿岸警備船との敵対行為について話し合うため、バイデン、フィリピンのフェルディナンド・マルコス・ジュニア大統領との三者会談にも出席する。バイデンが計画している岸田首相、マルコス大統領との会談の狙いについて、あるアメリカ政府関係者はロイター通信の取材に対して、「台本をひっくり返し、中国を孤立させる(flip the script and isolate China)」ことだと語った。

※アレクサンドラ・シャープ:『フォーリン・ポリシー』誌「ワールド・ブリーフ」欄記者。ツイッターアカウント:@AlexandraSSharp

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バイデンと岸田にとって勝利のヴィクトリーランをするにはまだ早過ぎる(It’s Too Soon for Biden and Kishida to Take a Victory Lap

-日米同盟にはまだ3つの不愉快な疑問が存在する。

ジェニファー・カヴァナー、ケリー・A・グリ―コ筆

2024年4月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/09/kishida-biden-japan-summit-united-states-military-alliance/

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2022年5月23日、東京・赤坂の迎賓館で行われた歓迎式典で、儀仗兵を閲兵するジョー・バイデン米大統領と岸田文雄首相。

4月10日にジョー・バイデン米大統領が日本の岸田文雄首相をホワイトハウスに迎える際、国内で国内政治的課題に直面している両首脳は、日米同盟の強靭さを熱心に宣伝するだろうが、それには当然の理由がある。日米安全保障協力は、日米両国の管理の下で新たな高みに達している。日本は防衛費を増額し、同盟諸国は緊急時対応計画(contingency planning)を深め、軍事演習を強化した。

日米両首脳は、結束のイメージが不一致によって損なわれないよう、茨の道を突き進みたくなるだろう。しかし、喫緊の問題が依然として日米同盟の上に横たわっている。過去3年間の急速な進展にもかかわらず、日米両国は、紛争が発生した場合に信頼できる共闘を行うために必要な、協調的な意思決定プロセスと統合をいまだに欠いている。同盟に弱点があると見なされれば、中国を増長させる危険性があるため、これは憂慮すべきことだ。

日米同盟の最大の脅威により効果的に対抗するために、バイデンと岸田は今度の訪問をきっかけにして、3つの難問に緊急に取り組むべきだ。同盟の指揮統制体制をどのように近代化するか、日本がアメリカの地上配備型長距離攻撃能力を自国内に配備すること(the deployment of U.S. ground-based long-range strike capabilities)を認めるかどうか、認めるとすればどのような条件になるのか、そして在日アメリカ軍、特に沖縄の態勢と再配分をどうするか、である。

ワシントンと東京がこれらの問題に対処する窓口は限られており、それを避ければ避けるほど、抑止力(deterrence)が破綻し、日米同盟が真の危機に備えられなくなるリスクが高まる。

軍事同盟にとって、同盟軍の展開と使用をどのように調整するかほど重大な決定はほとんどない。しかしながら、日米同盟はこれまで決して戦争をするための同盟ではなかったため、基本的な軍事調整メカニズムが欠如している。

過去70年間、日米同盟は2つの異なる指揮系統(two separate command structures)で運営されてきた。日米両国はそれぞれ独立した指揮系統を維持し、同盟国全体の指揮官に権限を委譲することはなかった。朝鮮戦争でそうであったように、日本は主として、アメリカがこの地域で作戦を展開するための拠点であり続け、戦場における同盟国ではない状態が続いたので、この取り決めは機能した。

中国の軍事力がより強力になり、自分たちの権益を主張する態度が強まり、日本自身の能力と役割が拡大するにつれて、この取り決めはもはや同盟のニーズに合わなくなっている。今や日米同盟の成功は、並列作戦(parallel operations)ではなく、統合作戦(combined operations)を実施できるかどうかにかかっている。この時代遅れの構造を更新することが、バイデンと岸田が取り組むべき喫緊の課題である。幸いなことに、彼らは今週、指揮系統関係を見直す計画を発表する予定だ。理想的な世界では、日米両国は韓国の連合軍司令部(Combined Forces Command)のような統一司令部構造(unified command structure)を確立するだろうが、日本国内の法的・政治的制約があるため、日本軍がアメリカ軍の指揮下に入ることはできない。

検討中と報じられている、次善の選択肢は、ハワイを拠点とする米太平洋艦隊(U.S. Pacific Fleet)の四つ星の海軍大将クラスが司令官として率いる統合任務部隊(joint task forceJTF)の下で、2つの国の司令部をより緊密に統合することである。在日アメリカ軍(U.S. Forces JapanUSFJ)は現在、統合作戦司令部(joint operational command)ではない。その代わり、三つ星の海軍中将クラスの司令官は日本との日米地位協定(the Status of Forces Agreement with Japan)を監督する管理的な役割を果たし、作戦を実施する権限は限られている。しかし、提案されているオプションでは、統合任務部隊(JTF)は有事の際にアメリカ軍統合部隊の作戦統制権を握り、日本の自衛隊と調整することになる。

しかし、統合任務部隊(JTF)のオプションは、日米同盟の指揮統制の問題に対する特効薬ではない。例えば、日本の陸上自衛隊に命令を下す正式な権限がないため、統合任務部隊(JTF)司令官は説得によってしか同盟を指揮することができないが、ハワイからではその任務がさらに困難になっている。同盟国の指揮系統が重複することは複雑なだけでなく、しばしば軍事的惨事に終わることもある。たとえば、1940年にはフランス側の代表団が複数の階層構造になっていたため、イギリスの同盟諸国は誰と調整すべきか混乱し、フランスのドイツへの降伏に終わった急速な軍事崩壊の一因となった。

バイデンと岸田は、より合理的なアプローチ、具体的には在日アメリカ軍をアメリカの四つ星の大将クラスが司令官を務める統合作戦司令部(joint operational command headquarters)に移行させることを検討すべきだ。このアプローチでは、在日アメリカ軍を日本の将来の統合作戦司令部(Japan’s future joint operational headquarters)と同居させるかどうかや、両者間の調整をどのように行うかといった問題に日米が取り組む必要がある。しかし、情報共有、適時的な意思決定、密接に統合された作戦の効果的な遂行を促進することができるようになり、現在のモデルから大幅に改善されるであろう。

しかし、紛争時に意思決定を行うためのより効果的な枠組みは、いざというときに同盟軍がどのように共闘するのかについての明確なコンセプトも持っていなければ意味をなさない。日米両国はそのような統合計画に向けて取り組んできたが、アメリカ軍が日本本土において、どのようなシステムを使用できるかという疑問はまだ解決していない。例えば、アメリカ軍の地上発射型長距離ミサイルを日本に配備できるかどうかなどである。これは岸田首相とバイデン大統領にとっての2番目の議題になるはずだ。

アメリカの立場からすれば、日本に配備される、信頼できる地上攻撃能力の第一の目的は、台湾海峡や南シナ海、東シナ海周辺にいる中国の水上艦船やその他の標的を狙い撃ちすることだ。そうすることで、この地域で起こりうる様々な事態において、北京に軍事的勝利を簡単に与えないようにすることである。日本は、独自の地上配備型長距離ミサイル[ground-based long-range missiles](アメリカ製トマホーク400発)の購入を計画しているが、主に、北京が日本本土を攻撃した場合に中国本土を標的にするための反撃能力(counterstrike capability)の一部として使用するつもりである。

自国の作戦上の野心を満たすため(To fill its own operational ambitions)、アメリカは、アメリカが所有し、運用している地上配備型トマホークや、より短距離の精密攻撃弾道ミサイルシステム(shorter-range precision-strike ballistic missile systems)を日本国内に配備することに関心を示している。しかし東京都は、アメリカがミサイルを配備することを容認することには否定的だ。アメリカのミサイルを受け入れると、日本は中国からの報復(retaliation)を受けやすくなる、もしくは、先制攻撃(preemptive attack)を招き、民間人に被害が及ぶ可能性が高まるからだ。

しかし、日本が、アメリカの運用しているミサイルを受け入れるかどうかについて曖昧な態度であることは、同盟国軍が中国の軍事作戦を妨害し、低下させる能力について、複雑に様々な要素が絡み合った、抑止力のシグナルを中国に送っている。日本とアメリカには今後の選択肢がいくつかあるが、時間が最も重要である。ミサイルシステムを配備する場合、アメリカのミサイルは紛争が始まるかなり前に日本に配備する必要がある。なぜなら、ミサイルの運搬は攻撃や封鎖(blockade)に対して脆弱であるからだ。紛争以外でも、緊張が高まる中での配備は誤算(miscalculation)と事態悪化(エスカレーション、escalation)の可能性を高めるだろう。

バイデンと岸田は次回の会談でこの問題を完全には解決できないかもしれないが、そのような展開が受け入れられる時期と場所を定義することで議論を進めることはできるだろう。また、長距離ミサイルシステムの共同生産(co-production)や共同管理(shared management)、あるいは二国間軍事演習に長距離ミサイルを組み込むなど、ある種のローテーション体制など、短期的な代替案も検討すべきである。

岸田とバイデンが取り組むべき最後の問題は、在日アメリカ軍の態勢を、特に沖縄における日本自身の防衛態勢とより緊密に連携させることである。第二次世界大戦後、アメリカは沖縄に大規模な軍事プレゼンスを維持してきたが、沖縄は台湾海峡や南シナ海に近いため戦略的に貴重である一方、日本本土から遠いため脆弱でもある。

アメリカは沖縄でより生存可能で信頼できる戦力の構築を目指しており、沖縄の海兵隊連隊(Marine Corps regiment)を転用するという野心的な計画を進めている。これらのアメリカ軍は、近くに駐留する自衛隊と並行して戦い、対艦ミサイル(anti-ship missiles)や無人機(drones)を装備し、中国が発見しにくく、重要なシーレーンで中国の船舶を狙いやすくなる周囲の島々に迅速に分散することを可能にする。

しかし、日本政治は独自の戦力態勢の変更を推進している。日本との長年にわたる兵力再編計画では、約9000人のアメリカ海兵隊が沖縄からグアムなど他の場所に移動することになっており、日本が新基地建設費の3分の1以上を負担すると決定している。

これら2つの取り組みは相互に作用し、対処すべきリスクを生み出している。たとえ危機の時期であっても、沖縄全土に海兵隊を配備することは、既に中国の攻撃の標的になることを恐れている沖縄県民との緊張を悪化させるだろう。こうした憤りは、アメリカ軍と沖縄県民、さらには沖縄と東京との関係を悪化させ、中国の偽情報(disinformation)が日米同盟と日本国内の結束を損なう隙を生む可能性がある。しかし、アメリカ軍を沖縄からグアムに移転すれば、政治的緊張は緩和される可能性があるが、アメリカ軍は統合作戦に直接貢献できなくなる。

政治的緊張(political tensions)を緩和しながら沖縄のアメリカ軍の態勢を維持するために、アメリカと日本は、沖縄のアメリカ軍基地を、2015年の三沢基地や横須賀海軍基地のように、アメリカ軍と日本の陸上自衛隊の両方が使用する統合基地に転換することを検討すべきである。日本の他の地域。この変更は、統合作戦のための部隊をさらに統合し、アメリカ軍が占領軍であるかのような外観を回避し、日米同盟が互恵協力(mutually beneficial cooperation)に基づいていることをより具体的に伝えることになるだろう。

日米同盟は日米両国の安全保障と防衛の要であり、国内の政治的議論においても重要な役割を果たしている。しかし、その目的に沿うためには、日米同盟は効果的な戦闘力になるために真剣になる必要がある。バイデンと岸田は、今回の訪日をきっかけにこうした対話を開始し、日米同盟が最も差し迫った脅威に立ち向かうために十分な強さと信頼性を持つようにすべきである。

※ジェニファー・カヴァナー:カーネギー国際平和財団アメリカン・ステイトクラフト・プログラムの上級研究員、ジョージタウン大学非常勤教授。ツイッターアカウント:@jekavanagh

※ケリー・A・グリ―コ:スティムソンセンターのアメリカ大戦略再構築プログラムの上級研究員、海兵隊大学のブルート・クルラック記念革新・未来戦争センターの非常勤研究員、ジョージタウン大学の非常勤教授。ツイッターアカウント:@ka_grieco
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 昨年10月に始まった、イスラエルとハマスの紛争は半年以上が経過した。4月7日に、イスラエルはラファへの大攻勢を前にして、ガザ地区から部隊を撤収させると発表した。「勝利の一歩手前まで来ている」中で、一部部隊を撤収させた。その前には、アメリカのジョー・バイデン大統領による、イスラエルのガザ地区への攻勢による民間人の死者の増加や国際支援団体の西側諸国の国民の死亡などについて、不満の表明がなされていた。イスラエルとしては、アメリカ側の不快感を増加させないようにするため、一旦停止ということになったようだ。イスラエルは傍若無人であるが、唯一と言ってよい支援国のアメリカの機嫌を損ねたら立ち行かないことは分かっている。

 このブログでも紹介したが、アメリカ国内の世論は、昨年11月の段階での、イスラエル支援への賛成が多数という状況から変化している。イスラエル支援を求めるアメリカ国民は過半数を割っているのが現状だ。これは、アメリカのジョー・バイデン大統領にとっては、アメリカの世論の動きを背景にして、イスラエルに対して強く出られる。「戦闘を停止せよ、アメリカ世論がそのように求めている。もし停止しない場合には、支援についても再検討する」ということで、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に圧力をかけることができる。イスラエル側としては、アメリカからの支援が減らされてしまえば、孤立を避けられない。

 アメリカとしては、イスラエルがハマスを支援しているということで、イランに対して攻撃を加えることを迷惑に思っている。ウクライナ戦争もママらない状況で、中東で更に戦争が起きることは好ましくない。そうしている間に主敵である中国がどんどん伸びていく。現在、イスラエルがシリアにあるイラン大使館を攻撃し死傷者が出て、それに対して、イランがイスラエルに報復攻撃を行った(イランの武器が旧式で効果はかなり限定的だったと言われている)。イランが抑制的であったという見方もできるが、中東が不安定化していることは間違いない。それで誰が得をするのかということを考えると、それはアメリカではない。

 アメリカ国内でのユダヤ系の人々の影響力の強さ・大きさはこれまでも語られてきた。マスコミにも多くのユダヤ系の人々がおり、世論形成にも影響を与えてきたと言われている。しかし、今回、アメリカ国内でもイスラエルに対しての批判が高まっているという状況になっている。イスラエルとしては、昨年10月のハマスによる攻撃を利用して、ガザ地区を攻撃し、ハマスの弱体化(育てたのはイスラエルなのに)とガザ地区の破壊、そして、イスラエルとパレスティナの二国共存を葬り去ろうということだったのだろうが、当てが外れている。半年が経過してもイスラエルの思い通りにはなっていない。また、世界中でイスラエルとアメリカに対する批判が高まっている。アメリカは何とかイスラエルを止めたい。そのために、アメリカ国内の世論の動向も武器として使いながら、支援条件を厳しくするなどの圧力をかけていこうとするだろう。

(貼り付けはじめ)

アメリカはイスラエルをどのように抑制できるか(How the U.S. Can Rein in Israel

-条件付き援助(conditional aid)を求める声が広がる中、バイデン大統領は非常に効果的な外交手段を見落としている可能性がある。

バーバラ・エリアス筆

2024年2月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/16/us-israel-gaza-conditional-aid-diplomacy/

ラファへのイスラエル軍の攻撃が迫る中、アメリカはガザで進行する人道災害に対処する上で、引き続きいくつかのディレンマに直面している。アメリカ国民や政策立案者たちの声はますます高まっており、アメリカがパレスティナの民間人を保護しながら同時にイスラエルの安全保障をどのように支援できるかを問う声が高まっている。

同盟諸国に矯正するのは難しい外交業務であり、特に国防に対する相手国のアプローチを制限する政策を推進する場合にはそうだ。更に言えば、アメリカのイスラエルに対する長年の関与により、アメリカの交渉力はさらに低下する。危機に陥ったイスラエルの意思決定者たちは、アメリカに恩義があると感じるどころか、フーシ派やイランを含む共通の大胆な敵に対して確立された戦略的パートナーシップを維持するというアメリカの利益が、アメリカ政府がイスラエルの政策立案者たちに厳しく圧力をかけることはできないだろうということに賭けている可能性が高い。

アメリカがパートナー諸国に圧力をかける手段として最も頻繁に議論されるのは、諸改革を援助の条件とすることだ。先週、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員とクリス・ヴァン・ホーレン連邦上院議員を含む著名な民主党議員たちからの圧力の高まりを受けて、ジョー・バイデン大統領は、アメリカの戦略的パートナー諸国全てに対し、アメリカが提供した軍事援助が国際法に従って使用されていることを証明する書面による確認書の提出を求める「歴史的」指令に署名した。しかし、これがイスラエルの政策にどのような影響を与えるのか、またバイデン政権が違反行為にどのように対応するのかは不明である。この措置がガザのパレスティナ人やアメリカとイスラエルの関係にどのような影響を与えるのかが明確でない理由の1つは、援助を改革の条件とすることに伴う複雑な問題を理解していないことにある。

アメリカの外交官たちが以前にもこのようなことを行おうとした。アメリカは自国の利益を保護しながらパートナーを幅広く支援することを目指しているが、これはイラクやアフガニスタンでの戦争で地域の同盟諸国とともにこれまで直面してきた課題である。もちろん、カブールとバグダッドはイスラエルに比べて制度的および軍事的能力がはるかに限られていたため、反乱鎮圧のための占領に関するこれらの同盟はアメリカとイスラエルのパートナーシップとは大きく異なっていた。それにもかかわらず、これらのパートナーシップの力学には大きな違いがあるにもかかわらず、アメリカ政府は、民主政治体制の促進や人権保護といったアメリカの規範や利益を維持しながら、重要な同盟国を支援する方法を見つけ出す必要があった。

歴史が示しているように、イスラエルにガザ政策の穏健化を行わせるために圧力をかける場合、条件付き援助(conditional aid)は、見落とされがちな外交手段である。しかし、アメリカの一方的な行動の脅威(the threat of unilateral U.S. action)ほどには機能しない可能性がある。

理論的には、条件付き援助の形での「厳しい措置・愛の鞭(TOUGH LOVE)」により、アメリカは影響力と物資を交換することができる。しかし実際には、そのようなアプローチの政治は、見た目よりも複雑で、アメリカにとってリスクが高い。

第一に、援助を制限することはパートナーを弱体化させるリスクがあり、それはほぼ常にアメリカの利益に反することになる。パートナーが失敗した場合、そもそものパートナーシップを動機づけた共通の脅威に対して、アメリカの立場も不安定になる。ワシントンが従えばアメリカも結果に苦しむことをパートナー諸国は理解しているため、このことはそのような脅しの信頼性を制限することになる。

2009年、当時のバラク・オバマ大統領はアフガニスタンのハミド・カルザイ大統領に対し、アフガニスタンにおける汚職と麻薬取引の取り締まりを公式に求めた。なぜアメリカが上記改革を活用するために軍隊と援助を差し控えなかったのかとの質問に対し、元駐アフガニスタン米国大使は率直にその議論は「愚かだ(stupid)」と述べた。なぜなら、カルザイの弱体化はタリバンを活性化させ、アメリカの介入を延長し、アメリカが自国とアフガニスタンのパートナー国に設定した主要な国家建設の基準を後退させる危険性があるからである。

第二に、援助の削減はパートナーシップの将来に損害を与える可能性がある。パートナー諸国が、ワシントンが自国の安全を損なったと判断すれば、イスラエルの場合はロシアを含め、代替の同盟国を探すようになる可能性がある。現在のイスラエルの不安と孤立についての考え方は、並外れた技術を持って行動しない限り、進行中のイスラエル国防軍の作戦中に軍事援助を大幅に制限するというアメリカの脅しは、イスラエル当局者の怒りと抵抗に見舞われる可能性が高いことを意味している。

第三に、専門家たちとは違い、政策立案者たちは、ワシントンのハッタリを非難し、アメリカの要求に従うことを拒否する重要な同盟諸国に対処するという重い責任を負っている。反抗的な同盟諸国はアメリカにとって、双方にとって不利なシナリオを作り出す。アメリカ政府当局者たちが宣言した罰則を遵守し、戦略的パートナーを弱体化させ、場合によっては共通の敵対国を勇気づけるリスクを冒すか、コストを課すことに失敗して信頼性と将来の影響力を失うかのどちらかである。したがって、バイデン政権がイスラエルへの武器供与を遅らせる意向があるとの報道にもかかわらず、ホワイトハウスがまだ明確な計画を発表していないのは驚くべきことではない。

これらのリスクにより、援助の条件付けは、持続可能な外交アプローチとは対照的に、アメリカの外交官たちが通常は使うことを控える、露骨な戦術となっている。アメリカがパートナー諸国に依存すればするほど、援助の条件は魅力的ではなくなる。確かに、無条件援助は、たとえ恐ろしいものであっても、パートナー諸国の政策に対して少なくとも部分的に責任をアメリカに負わせることになるため、無条件援助にもリスクが伴う。たとえば、イラクでは、スンニ派の政治勢力を政府に組み込もうとするアメリカの要請に抵抗するというヌーリ・アル・マリキ元首相の決意が、2014年にイラクとシリアの一部を占拠した反乱の一因となった。幸いなことに、パートナーに圧力をかけるための別の方法がある。

その代わりに、アメリカは、パートナー諸国の参加の有無にかかわらず、それらの国々の国内政治に影響を与える政策を一方的に実施すると脅すことで、パートナー諸国の行動を変えることができる。パートナー諸国に対する強制的なメッセージは、「あなたが政策Xを実施するか、それとも私たちが実行するか、どちらかだ」というものであり、「政策Xを実施しなければ、アメリカは支援を打ち切る」という援助条件の論理とは異なる。前者のメッセージは、同盟国や同盟に広範な損害を与える可能性のある主要資源を削減するという脅しではなく、問題になっている特定の政策に焦点を当てている。

選択的一方的行動(select unilateral action)の脅威は、アメリカの大規模な介入(wide-scale U.S. intervention)を提案することを意図したものではなく、アメリカの利益にとって特に有害な地方政策に影響を与えるように調整することができる。同盟諸国はこれを自国の自治に対する強制的な脅威と認識し、このメッセージを歓迎しない可能性が高いが、目標は賭け金を高め、同盟諸国に妥協に達するよう圧力をかけることだ。

イラク、ヴェトナム、アフガニスタンでは、パートナー諸国の不作為に対して、アメリカが一方的行動を起こすと脅すことで、現地の同盟国がアメリカの要求に従うように仕向けることが多かった。例えばイラクでは、2010年にアメリカがマリキをスンニ派との関与を強めるためにこのアプローチをうまく利用できたのは、バグダッドのシーア派指導者の支持の有無にかかわらず、アメリカが従順なスンニ派指導者との関与を継続すると信頼できる脅しをかけていたからである。(しかし、2011年のアメリカ軍のイラク撤退に伴い、スンニ派民兵を一方的に支援するとの脅しがなくなったことで、アメリカはイラクにおける影響力を失った)。

アメリカが南ヴェトナムの参加の有無にかかわらず、北ヴェトナムとの妥協を進めるという確かな脅しがあったため、アメリカの撤退中にサイゴンの現地パートナーから譲歩を引き出すこともできた。 2010年、アメリカは国連当局者を招いて進捗状況を報告させることで、アフガニスタンにおける穏健な汚職撲滅改革を推進することができた。アフガニスタン政府は傍観されるのではなく、監視プロセスを監視し、途中で政策を形成するという目的もあり、妥協して監視プロセスに参加した。

一方的な行動を取ることで、アメリカの要求を満たすように重要な同盟諸国をうまく誘導してきた実績がある。しかし、それはアメリカが要求された政策を実行する唯一の能力を持っている場合にのみ適用される。例えば、パートナーに国内法の変更や攻撃的作戦からの撤退を強制するためには利用できない。これらはパートナーの参加なしにはアメリカが実施できない改革だからだ。

しかしながら、アメリカは、イスラエルがガザ地区での攻撃をより選択的に行うよう強制するために、この方法を使うことはできない。しかし、ワシントンは、たとえば、ガザ地区での標的に関する詳細な情報を一方的に公開すると脅すことで、イスラエルに活動の透明性と説明責任を高めるよう動機づけることはできる。アメリカの政策立案者たちはまた、監視とモニタリングの一形態として、ガザ地区での民間人の死亡に関する独立調査機関(independent inquiry)の設立を提案したり、紛争に対処するためにアメリカの機関を利用したりすることもできる。ヨルダン川西岸地区でパレスティナ人に対する暴力を扇動した4人のイスラエル人に対し、金融制裁(financial sanctions)を科すという最近のアメリカの決定は、この方向への一歩である。

現在のガザ地区での緊急事態に関して、イスラエルがこの重要な援助を妨害した場合、アメリカは一方的に人道援助(humanitarian aid)を提供すると脅すことができる。たとえば、USNSマーシーやUSNSコンフォートなどの、アメリカ海軍の災害対応艦艇を派遣し、この地域に配属されている空母打撃群(carrier strike groups)に参加させることで、そうすることができる。当然ながら、この措置はイスラエルの軍事作戦を弱体化させかねないと主張する批評家たちもいるだろうが、そうした立場は、パレスティナの民間人とハマスの過激派を区別できないイスラエルの失敗に安住しすぎている。アメリカは、ガザの市民が基本的なニーズと生存を確保できるよう支援することを申し出ることで、現在の攻撃に対する不快感を示すことができる。アメリカの一方的な援助をガザに送り、イスラエル側の協力があろうとなかろうと、この援助は行われると伝えれば、3つの重要なメッセージを送ることができる。

第一に、歴史的記録は、アメリカの一方的な行動に対する確かな脅しが、アメリカによる政権転覆などを避けるためにイスラエルをアメリカの立場に近づける可能性があることを示唆している。第二に、それは地域におけるアメリカの交渉の信頼性を高め、アメリカが紛争における自主的な主体であることと、イスラエルの献身的な同盟国でもあることを強化する。アメリカがイスラエルによるガザ地区占領の継続に反対し、ヨルダン、サウジアラビア、エジプトなどのアラブの主要パートナーとの関係を強化する必要がある可能性があるため、これはますます重要になる可能性がある。最後に、一方的な行動により、アメリカはパレスティナの民間人の死をただ嘆く以上のことができるようになる。アメリカが10月7日に残酷に虐殺されたイスラエルの民間人を守るために行動を開始したのと同じように、現在国連が「終末的な(apocalyptic)」状況と呼ぶ状況に直面しているパレスティナの民間人を守るために、アメリカも行動を開始する可能性がある。

あらゆる国家外交の手段と同様、これはアメリカの外交ツールキットに含まれる数多くのアプローチの1つに過ぎない。条件付援助と比較して議論されることが少ないとはいえ、戦略的パートナーに参加を強制しようとしての一方的な政策行動の威嚇は、安全保障上の同盟関係とパートナーへの物質的支援を維持しつつ、特定のパートナーの政策を問題視することができるので、より微妙でリスクも少ない。加えて、ガザ地区での一方的な政策実行を脅かすことは、アメリカが選択的な援助条件や、イスラエルの立場に異議を唱える国連行動の阻止を再考するなど、さらなる圧力経路(pathways of pressure)を検討することを妨げるものではない。

ガザ地区への攻勢を含むイスラエルの政策がアメリカの利益を侵害するものであっても、アメリカはイスラエルを支援しながら影響を与えようとするため、ワシントンは外交的アプローチにおいて機敏かつ目的意識を持つ必要がある。アメリカはもっとできることがあるし、そうすべきである。

※バーバラ・エリアス:ボードウィン・カレッジ政治学・法学准教授。著書に『同盟国が反乱を起こす理由:反乱鎮圧戦争における反抗的な地元パートナー諸国(Why Allies Rebel: Defiant Local Partners in Counterinsurgency Wars)』がある。ワシントンDCにある国家安全保障公文書館アフガニスタン、パキスタン、タリバンプロジェクト責任者を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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