古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2024年04月

 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号の、佐藤優先生の書評コーナー「名著、再び」にてご高評いただきました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 現在、ディズニー+で配信されているドラマシリーズ「ショーグン(将軍)」の評判が良い。映像に迫力があり、物語もシリアスな展開であるということだ。戦国末期、関羽柄の前の歴史を基にしているということで、日本人視聴者にはお馴染みの話だ。

1980年には、NBCが「ショーグン」のドラマシリーズを制作した。この当時、日米貿易摩擦が起き、日本の経済力が高まる中で、「日本の経済侵略」という言葉も出てきて、アメリカでは日本脅威論が出ていた。エズラ・ヴォ―ゲルの『ジャパン・アズ・ナンバーワン』も同じくらいの時期に出ていた。「日本を知りたい(どれくらい気尿なのか)」という欲求がアメリカ側にあったと思う。

1980年当時、私は6歳だった。小学校に入ったばかりの頃だ。NBCの作ったテレビシリーズ「ショーグン」のことはうっすらと覚えている。おそらく再放送で見たのだと思う。大人たちは戸田鞠子を演じる島田陽子の入浴シーン、ヌードシーンに大きな関心を持っていたと記憶している。大人たちは、島田陽子は「国際女優」になると噂していた。作家・評論家の小林信彦は「ショーグン」のパロディを書いていたと思う。「黙ってかしずいて男に尽くすきれいな日本人女性」「野蛮な日本対文明化された西洋」というステレオタイプ、オリエンタリズムが満ちていたと思う。今回知ったのだが、アメリカで放送されたNBC版では、日本語はそのまま放映されて、吹替も字幕もなかったのだという。「主人公のブラックソーンと同じく言葉が分からない中での不安」を視聴者にも感じさせるという狙いがあったということだ。日本で放映された時には、おそらく英語の部分に字幕を付けたのだろうと思う。

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1980年の「ショーグン」での島田陽子の入浴シーン

 2024年の「ショーグン」は1980年のものとだいぶ変わっているそうだ。1つには、主人公が徳川家康がモデルとなっている吉井虎永(真田広之)であり、ドラマの大部分が日本語で進んでいく中で、英語字幕が付けられているということだ(欧米の視聴者は字幕を読みながらの映像視聴は苦手と言われて避けられてきた)。また、女性たちのキャラクターや役割もより積極的なものとなっているということだ。エキゾティックな風味は残しながら、現代的な要素が入っているもののようだ。更には、西洋中心主義的なドラマ制作ではなくなっているということも大きい。現在、配信されている「三体問題(三体)」は内容の難解さもあるだろうが、舞台をロンドンに移し、原作の小説から内容を大きく変更している。そのために評価が芳しくないということがあるようだ。

 西洋中心主義で見た非西洋は、非西洋に住む人々から見れば、それこそかなり「奇妙」な姿となる。日本人である私たちは、西洋の映画やドラマで描かれている日本やアジアの姿についてかなり奇妙に感じる。それが今回の「ショーグン」ではだいぶなくなっているようだ。それは西洋中心主義の減退を示す兆候であると思われる。

 1980年の「ショーグン」から数年後に、大島渚監督の「戦場のメリークリスマス」が公開されて話題となった。「戦場のメリークリスマス」はローレンス・ヴァン・デル・ポストの短編「影さす牢格子」と「種子と蒔く者」を原作にして、大島渚がメガホンを取った。あの映画の中にある「不自然さ」は何なのかということを私は考えていたが、今回、あれは、大島渚の西洋中心主義やオリエンタリズムから見た日本と日本人という姿を、「あなたたちにはこのように見えているのだろう」という形で描いたことで、二重に屈折したものとなっているのではないかと考えるに至った。大島渚からの西洋中心主義やオリエンタリズムに対する、痛烈な批判とパロディと反撃だったのだろうと思う。
 最後の最後で脱線してしまったが、2024年の「ショーグン」

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テレビの新しい「ゲーム・オブ・スローンズ」は17世紀の日本が舞台(TV’s New ‘Game of Thrones’ Is Set in 17th-Century Japan

-「ショーグン(Shogun)」は、44年前のシリーズを現代の好みにぴったりと合わせてアップデートしたものとなっている。

ジョーダン・ホフマン筆

2024年3月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/30/shogun-game-of-thrones-hulu-japan/

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「ショーグン(Shogun)」の中で吉井虎永役を演じる真田広之。

●「冬がやってくる」を日本語ではどのように言うか?(How do you say “Winter is coming” in Japanese?

FXプロダクションが制作し、現在、アメリカではHulu、その他の地域ではディズニー+でストリーミング配信されている新シリーズ「ショーグン」は、視聴者に「ゲーム・オブ・スローンズ」を思い出させるかもしれないと言っても、ほとんど批判とはならない。ジョージ・RR・マーティンの小説を基にしたHBOのスペクタクル「ゲーム・オブ・スローンズ」は、私たちの時代の最も変革的なテレビイヴェントの1つであり、似ているが模倣ではないシリーズを生み出した何人かの製作者にインスピレーションを与えた。Netflixには「ザ・ウィッチャー」があり、Amazonには法外に高価な「ロード・オブ・ザ・リング: 力の指輪」があり、HBOにはゲーム・オブ・スローンズの前編「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」があり、どれも魅力的だが、「ゲーム・オブ・スローンズ」を超えるまではいかなかった。

しかし、ついに後継者が誕生したことを報告できることを大変嬉しく思う。私たちの集団的な情熱に火をつけたのは、魔法使いや翼のある獣ではなかったことを後継者は証明した。私たちの想像力を征服したのは、さまざまな目的を持った複雑なキャラクターのパレット、厄介な同盟、そして不可解な計画だった。「ショーグン」は、ジェームス・クラベルの1975年のベストセラー(doorstopper)の『ショーグン』(1980年にはテレビドラマ化もされた)を原作としたもので、17世紀初頭の日本の権力闘争(power struggle)をフィクション化したもので、権力闘争を維持してきた指導者の死後、5人の地方領主が主導権を争うというものである。安定しているが、息子が統治するには若すぎる。この物語にスパイスを加えているのは、ポルトガルのイエズス会(黒船がマカオに秘密基地[secret base]を建設中)と、この地域におけるポルトガルの足場を不安定にする秘密の使命を帯びてオランダ国旗を掲げて航行している狡猾なイギリス人水先案内人(pilot)の到着である。 しかし、彼らの役割は小さいものとなるだろう。とにかく、私がここまで書いた紹介は非常に短いものであるが、読者である皆さんの関心を引くことができればと考えている。

「ショーグン」は、特別な精神的努力が要求されるが、その努力が報われる、珍しいテレビシリーズである。(幸いなことに、FXプロダクションは登場人物全てを把握できるよう、徹底した学習ガイド[study guide]を作成している)。加えて、歴史と本物の習慣に根ざした描写がなされていることが、この作品に大きな重みを与えている。知っての通り、真実はしばしば小説よりも奇なりである(Truth is often stranger than fiction)。

しかし、「奇妙さ(strangeness)」という言葉は、特に他国の歴史を題材にしたハリウッドを拠点とする作品にとって、昨今は、多くの批判を招くような、定まらない言葉となっている。2018年8月にこの「ショーグン」シリーズの制作が発表されるとすぐに、プロデューサーたちは、それ以前のNBCテレビのシリーズは大きく異なるものになるとを明言した。リチャード・チェンバレン、伝説となっている三船敏郎、ウェールズ出身の性格俳優ジョン・リース=デイヴィスが屈強なスペイン人を演じ、オーソン・ウェルズがナレーションを担当した1980年の「ショーグン」は、「ルーツ」、「ナザレのイエス」、「戦火の風」、「ノース・アンド・サウス」などを含む大予算のミニシリーズの流行の頂点であり、日本のあらゆるものに対するアメリカの関心の高まりに完璧にタイミングを合わせた、高い視聴率を獲得した大作となった。そしてこの作品は、西洋人の主人公の視点から語られ、古典的な、「白人が救世主となる」型(classic white savior trope)が使われた。

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1980年のNBCのドラマシリーズ「ショーグン」の1シーンから。ジョン・ブラックソーン役のリチャード・チェンバレンと石堂和成役の金子信雄。

「ショーグン」のストーリーは、日本に最初に航海したイギリス人となったウィリアム・アダムス(William Adams)の実人生に大まかに基づいており、「ショーグン」の中核をなすものだが、ジャスティン・マークスとレイチェル・コンドウの夫婦のタッグによって開発された新シリーズは、クラヴェルが書いた小説の内容を取り入れつつ、その幅を広げている。コスモ・ジャーヴィス演じるアダムスのキャラクター、ジョン・ブラックソーンは、今や吉井寅永(真田広之)や戸田鞠子(アンナ・サワイ)を含む、同じく重要な3人の主人公の1人となっている。実際、オープニング・クレジットでトップを飾るのは真田広之だ。

新しい物語の1つの指標はこれだ。1980年版では、登場人物が日本語を話しても翻訳されなかった。「視聴者はブラックソーンと同じ状況に置かれ、彼と同じように何が起こっているのかを知ることになる」とプロデューサーは当時、この創造的な選択について自慢していた。現在のヴァージョンでは、話し言葉の日本語には字幕があり、それは文字であって装飾ではない。しかも、ストップウォッチを使って正確に測定した訳ではないが、ドラマの約4分の3は日本語だ。

プロデューサーの何人かは日本人だが、脚本家はそうではない(もっとも、一部は日本の血を引いているが)。そのため、会話は英語で書かれ、それから厳格に日本語に翻訳され、英語は話せないが専門知識を持った日本人劇作家に引き渡された。そしてこうして作成された日本語の台詞を字幕用に翻訳し返した。シーンの多くには、言葉を通訳し、選択するための緊張感のある会議がなされた。こうした努力は、アンナ・サワイのような優れたパフォーマーにとって、声ではあることを言いながら、表情では別のことを意味するという、信じられないほど肥沃な基礎となった。 (あまり複雑にしないように注意するが、物語の中では誰も英語を話していない。ただし、一部の登場人物はポルトガル語を話すが、それが英語のように聞こえる。信じて欲しい。ドラマを見てもらえば、私が言っていることが分かってもらえるだろう)

これが「ショーグン」が何か別のことをしながらの視聴(passive viewing)に向かない理由の1つだ。インスタグラムを片目で見ながらテレビを見ている人は、この作品に問題を感じるだろう。(そして、するべきことは、スマホを置くことだ!)様々に移り変わる立場を持つキャラクターが次々と登場するだけでなく、中心的なテーマの1つは、欺瞞と発覚の遅れである。この物語は、誰が一体何を考えているのかが分からないことが成功の鍵を握っている。これは「八方塞がり(eightfold fence)」に象徴される。日本の鎖国哲学(Japanese philosophy of isolation)は長年にわたって政治的な駆け引きに役立ってきたが、「ショーグン」のような濃厚なドラマでは、女性が夫への永遠の愛を公言しているとき、内心では死んでしまいたいと願っているかもしれないということを意味する。

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「ショーグン」で戸田鞠子を演じるアンナ・サワイ

新シリーズが視点を広げる(そして女性の役割も強化する)という決断を下したことで、17世紀の日本文化がちょっと、いや、強烈に奇妙に見えるような題材が削ぎ落とされるのではないかと心配する人たちもいただろう。率直に言おう。 私たちが現在生きている、過敏な時代に、囚人の苦悶の叫び声を聞きながらボーッとするために、囚人を生きたまま茹でるような描写が必要だろうか? 答えはイエスだ。そして、そのサディスティックなキャラクターは決して善人ではないが、最後には少し好感が持てるようになる。

さらに極端な(そして早速第1話で出てくる)のは、自分を擁護する発言をしたにもかかわらず、儀礼に反した方法でそれを行った部下が、儀礼に則った自殺をするだけでなく、自分の幼児を殺さなければならないことをキャラクターが受け入れる時だ。それは、彼の家系を確実に絶つためだった。しかもそれを承認するのは我らが主人公である真田広之演じる虎長である。

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「ショーグン」で樫木央海を演じる金井浩人(馬上)

実際のところ、頻繁に行われる切腹という行為は、ブラックソーンの西洋人の目には不可解な日本の風習の1つに過ぎず、彼のキャラクターはその点では視聴者の代弁者であり続けている。(苔を踏むのは無礼であるという信念ははるかに良心的である。) しかし、チェンバレンのブラックソーンからの重要な変化は、ジャーヴィス演じるブラックソーンは頻繁に泣き言を言う嫌なやつだということだ。ジャーヴィスの演技は、トム・ハーディの最もエネルギッシュな時の演技に少し似ているが、短気で唾を吐き、罵倒ばかりしている、吹けば飛ぶような嫌な奴で、おそらく最初から冷静になればもっと楽に物事を進められるだろう。(それは時に笑いを誘うものであり、実際その通りだ。)日本人は彼のことを「あの野蛮人[The Barbarian]」と呼ぶが、当時のイギリス人の入浴に対する態度を見れば、片付け上手な日本人と比べて、その理由が分かるだろう。私が「ショーグン」に対して与える最高の褒め言葉の1つは、定期的に、「待てよ、なぜ私はこの中の誰かを応援しているんだ!」と思いながらも、ドラマの中で多くのことが危機に晒されていると感じられることだ、ということだ。

このシリーズには凄惨な流血の描写(gore)も多いが(CGで作られた馬が大砲の弾に当たるとどんなふうに見えるか、今ならよく分かる)、圧倒的な美しさがある。着物にかけた予算は屋根を突き抜けていたに違いない。明らかにグリーンスクリーンが追加されているシーンでさえ、丁寧にライトアップされている。これは、ショッキングな暴力描写があるにもかかわらず、秩序と気品を重んじる文化にとって重要なことだ。1時間のエピソードが10もあるので、お茶の正しい出し方、酒の注ぎ方、あるいは自分の商売に誇りを持つ芸者がいかにしてそれを芸術にまで高めることができるのかについて、じっくりと考える時間がある。

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「ショーグン」の1シーン。樫木藪重を演じる浅野忠信とヴェスコ・ロドリゲスを演じるネスター・カーボネル

しかし、ストーリーに説得力がなければ、そんな細かいことはどうでもいいことで、クラヴェルが何かを掴んでいなければ、2100万部も本を売ることはできなかっただろう。おそらく『ショーグン』が彼の最も有名な作品だろうが、X世代の子供だった私は、あちこちの表紙で彼の名前を目にしたのを覚えている。私の母は、ハードカヴァ―で2巻に分かれた巨大な『ノーブル・ハウス』を何カ月も持って読んでいた。彼の作品のほとんどは、より大きな「アジアン・サーガ(Asian Saga)」シリーズの中に収まっているが、1980年代初頭には、ディストピア短編小説(『ザ・チルドレンズ・ストーリー』)を基にしたテレビスペシャルを監督し、人気テレビ番組『レイト・ナイト・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』でパロディにされるほどの影響力を持っていた。

しかしながら、異国情緒(exoticism)や複雑な歴史がある分、登場人物たちの内なる希望や欲望が後を引く。「花は散るからこそ花なのだ(Flowers are only flowers because they fall)」という台詞は、文脈からすれば陳腐なものに思えるかもしれないが、「ショーグン」の繊細な世界では、この特別なシリーズにいくつもある名台詞の1つであり、完璧な瞬間なのだ。

※ジョーダン・ホフマン:ニューヨーク市クィーンズ在住の映画評論家・エンターテインメント・ジャーナリスト。

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(終わり)
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』4月20日号にて、佐藤優(さとうまさる)先生の書評コーナー「名著、再び」にてご高評いただきました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 映像配信サーヴィスであるディズニー+とNetflixで、「ショーグン」と「三体」が公開されて話題になっている。「ショーグン」は1980年にNBCがドラマ化したものがあったが(原作はジェームズ・クラヴェル)、今回、再び映像化された。「三体問題[三体]」は、中国のSF小説で、英訳された後に世界で大ヒットとなった。「三体問題」とは物理の問題で、三質点間の運動がどうなるかという問題で、明確な方程式が存在しないものとされる。二体問題までは明確な公式があるのだそうだが、質点が1つ増えるだけで大きく変わるものらしい。小説はなかなか面白かったが、全部を読み通すのは大変だ。

 私事で恐縮だが、私は現在、中国語を勉強している(遅々として知識は増えないが)。そのクラスで小説『三体』と今回のドラマ化は話題になっている。先生が中国生まれの方で、小説を読んだ感想を聞くと「難しくてよく分からなかった」、ドラマについては「原作とはだいぶ違っていてまたよく分からなかった」と述べていた。受講生は日本人ばかりで、その中にドラマ好きの方がいて、いつも色々なドラマの話をしてくれるのだが、「三体」に関してはまぁまぁということだった。
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 「ショーグン」はかなり評価が高い。西洋人が作る日本物は、日本人から見ると珍妙なものになるということは事実としてあったが、今回の「ショーグン」はそのようなことがないようだ。主演の真田広之が制作陣のプロデューサーに入って、かなり意見を述べたそうだ。渡辺謙もそうだが、意見を述べて作品の質を上げることに貢献する日本人俳優が出てきているようだ。

 アメリカ人や西洋人は「字幕がついているものは見ない(苦痛に感じる)」ということで、これまでの非西洋を舞台にした作品でも、英語が使われたり、舞台が大きく返られたりということはあった。「王様と私」でタイの王様をユル・ブリンナーが演じたこともあった。しかし、これからはそのようなことも減っていくだろう。また、技術の進歩で、英語吹替、中国語吹替と言ったこともできるようになっているので、こうした面での障壁は低くなっていくだろう。なんでも亜アメリカの衰退に結び付けるな、ということを言われそうだが、エンターテインメント業界、そして、アメリカのソフトパワーという面でも変化は起きつつあるようだ。

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アメリカのソフトパワーの新しい表出(America’s New Expression of Soft Power

-「ショーグン(Shogun)」と「三体問題(3 Body Problem)」は、ヨーロッパ人やアメリカ人を前面に、また中心に据えなくても、アメリカのポップカルチャーが人気を集めることを示している。

ハワード・W・フレンチ筆

2024年4月6日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/06/us-soft-power-shogun-pop-culture/

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「三体問題」のオープニングシーンから

この件について議論しようとする人にとって、アメリカの衰退の推定される過程を描くために使用できるデータポイントは不足することなどない。

まずはこの国(アメリカ)の政治の腐敗から始めよう。今年11月、有権者は現職か、2度の弾劾を受けた前大統領のどちらかを選ばねばならない。前大統領トランプは、それまでの歴代大統領たちと異なり、民事と刑事の両面で法廷において深刻な問題を抱えている。ジョー・バイデンは、超大国級の深刻な問題が山積しているアメリカを統治するには高齢すぎると多くの人は考えている。最近の予備選の結果が示しているように、バイデンは長年の同盟国であり、保護国でもあるイスラエルに対して、イスラエルの継続的な攻撃によって膨大な数の死者数が出ていること、ガザ地区で飢餓が発生する恐れがあることについて、それらを抑えることに消極的であるとして、民主党支持層の一部からの造反にも直面している。

現在、アメリカは環境保護への移行を進めようとしているが、手厚い保護なしには、外国製品と競争できるソーラーパネルも電気自動車も作れない。また、先進的なマイクロプロセッサーを製造するリーダーでありたいという希望を持っているが、巨大な補助金以外に、誰もその実現方法を考え出すことできないように見える。軍事面でも優位を維持したいが、軍事費は、アメリカに続く10カ国の合計よりも多く使っているにもかかわらず、艦船やその他の先進兵器システムの建造率では中国に大きく遅れをとっている。

このように悲観的な出だしではあるが、これはアメリカの衰退を嘆くために書いたコラムではない。実際、悲観的な兆候と同じくらい、アメリカのパワーの持続性に関する明るい兆候も多い。世界のGDPに占めるアメリカのシェアは、今世紀のほとんどをほぼ一定に保っており、現在は25%弱と、世界人口の5%にも満たない国としては驚くべき好成績である。アメリカの大学は、不可解なことに国内では熾烈な文化戦争(culture wars)の激戦地となっているが、依然として世界の羨望の的である。もう1つの国内紛争の原因であり、そのほとんどが醜く非合理的なものである、移民のおかげで、今世紀の残りの期間、高齢化(aging)や人口減少(population decline)による人口減少圧力に直面する可能性は、他の競争相手の国々よりもはるかに低いだろう。

ここ数週間、私はアメリカの力のこれらのどの特徴よりも、更に注目に値するものに感銘を受けてきた。そしてその証拠は、夜に10フィートの距離から私を楽しませる、力を測定する珍しい情報源から来た。私のリヴィングルームにある大画面のスマートテレビがその情報源だ。

このどこにでもある乗り物から発せられ、私に強烈な衝撃を与えたのは、これまでにない、そして素晴らしいという言葉を口から出したくなる、文化的産物であり、ソフトパワーの決定的に新しい表出であることの証拠だ。より明確に言うと、私は2つの新しいテレビシリーズである、「ショーグン(Shogun)」と「三体問題(Three Body Problem)」について話す。どちらも、慣れない規模と野心を持っている。慣習的な西洋の歴史や文化とは対照的に、アジアに根ざした壮大な物語を採用している。そして、アメリカのエンターテイメントでは非常にまれなことに、時代の詳細と言語の信憑性を維持することに努めている。

ヨーロッパが作った、非西洋文化に根ざした大衆向けの時代叙事詩の作品で、非西洋の登場人物や非西洋言語のためにこれほど多くのスペースが確保されている類似の例があるかどうか、私はよく知らない。そして私は、中国、日本、インド、あるいはその他の非西洋の主要な映画産業やテレビ産業についても、あえて同じことを言いたいと思う。ほとんど知らない。彼らは、文化的細部への同じくらい献身的な感覚を持って、現在を更に大きく超えて、彼らの文化的快適さと親近感のゾーンの外に到達する何かを試みているだろうが、私は彼らのことについて知識を持たない。

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「ショーグン」の1シーン

叩かれる前に言っておくが、「ショーグン」はオーストラリア生まれのイギリス人作家、ジェームズ・クラヴェルが1975年に発表した小説が原作として作成されたものであることは十分承知している。このことが、私がこれまでに言ったことを無効にしていると感じる人もいるかもしれない。しかし、今回の「ショーグン」は、1980年にNBCで放送された過去のドラマのミニシリーズとは異なり、自国の時代劇を得意とする日本の俳優と作家を中心に据え、信憑性にも驚くほどの注意を払っている。これは、記者として5年間日本に滞在した経験を持つ、まともな日本語話者としての私の意見だ。アメリカのテレビ視聴者は字幕付きのコンテンツにはあまり興味を示さないと考えられてきたが、私は字幕で使われる英語と、400年前に遡る、日本の宮廷用語の、絶妙にフォーマルな(そして複雑な)スタイルで表現される話し言葉の台詞を合わせて理解しようとしながらも、画面にうっとりとなって見入ってしまった。

このコラムは、テレビのレヴューや批評家による記事というよりも、むしろ文化的な解説であるが、アメリカのエンターテインメント業界の野心と、アメリカのソフトパワーの能力において、この2つの模範を分けているいくつかの点についても、ここではっきりとしておかなければならない。持続するだけでなく拡大しているようだ。原作となる小説が西洋人によって書かれた「ショーグン」とは異なり、「三体問題」は中国の小説、具体的には SF の最近の作品が原作となっている。私は、Netflix で放映されている、この作品の演出が、日本の歴史小説である「ショーグン」ほどには魅力的だとは思えない。その理由については、後ほど説明する。

しかしながら、「三体問題」は、私がこれまで見た中国の文化大革命(Cultural Revolution)の最も強力なシーンの1つから始まる。文化大革命は、1966年から1976年までの間、毛沢東とその最も卑劣な取り巻きたちがこの国に解き放った、公式に認可された準無政府状態(quasi-anarchy)の10年間だった。理論研究がマルクス・レーニン主義・毛沢東主義の思想に沿わない、高名な物理学者に対する、恐ろしい大衆の暴力(hazing)、または「批判闘争(struggle session、批斗)」を描いた冒頭シーンは、オール中国語で、セットが作られて撮影され、本物らしさがあふれ出す中国人の群衆が配置された。私は中国語も話し、中国(そして日本の歴史)についての本を書いた者としてこのように断言する。政権に卑屈にこびへつらい、政権の基盤を強化するのではなく、純粋な知識の追求に努めた中国の科学者たちに対するイデオロギー十字軍(ideological crusades)の懲罰の描写は、あたかも『中国で最も指名手配された男:科学者から敵への私の旅(The Most Wanted Man in China: My Journey From Scientist to Enemy of the State)』のページからそのまま出てきたように感じられる。この本は、亡命を余儀なくされるまでは、かつて祖国中国を代表する天体物理学者だった方励之(ほうれいし、Fang Lizhi)の力強い回想録である。

「三体問題」の冒頭シーンに対する中国の一部の人々のネット上での激しく敵対的な反応は、作家ラ・ロシュフーコーの有名な言葉を思い出させる。「偽善とは、悪徳が美徳に払う敬意である(Hypocrisy is the homage that vice pays to virtue)」。これらの一般的な批判は、政治的な理由で「三体問題」が中国で公開されておらず、おそらく今後も公開されることはないため、別のストリーミング配信方法を探している人たちによるものだろう。それはネットフリックスのミニシリーズが何か間違っているからではなく、むしろこの中国のシーンを正しく描いているからだ。もちろん、最良の対応は、推定200万人が殺されたこの歴史上重要な時期について、中国が独自にリアルなドラマや正確なドキュメンタリーを制作することだろうが、もちろん公式検閲(official censorship)がこれを容認するはずがない。

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「三体問題」の中での白沐霖[Bai Mulin](ヤン・ヒーウエン、Yang Hewen)と若き日の叶(葉)文潔[Ye Wenjie](ザイン・ツェン、Zine Tseng)の1シーン

中国のソーシャルメディア上で、Netflixが中国の物語を流用したとされることへの怒りに満ちた騒ぎが起きたことについて、あるコメンテーターが次のように述べた。「あの時代は巨大な傷跡であり、不条理なジョークだ。もし私たちが歴史に正面から向き合わなければ、どうやって未来を望むことができるだろうか?」

私にとって、Netflixのミニドラマシリーズ「三体問題」の最大の問題は、平板なキャラクターと生気のない台詞に加え、キャスティングの大規模なごまかしである。これは、西洋のエンターテインメント・ビジネスに深く浸透している、厄介なほどに伝統的な失敗であり、非西洋的なストーリーを採用したことによる信用を損なうものだ。「三体問題」の原作者である劉慈欣(Liu Cixin)は、原作では登場人物を中国人として書いている。Netflixは、商業的な理由から、欧米諸国の視聴者は中国語の登場人物を何話も何話も見ることに耐えられないと判断し、物語の大半をロンドンに設定し、欧米人キャストを通して物語を伝えるよう工夫したようだ。

「ショーグン」のクリエイターが行ったデザインの選択と比較してみよう。このシリーズでも、西洋人のキャラクターが重要な役割を占めている。これは原作であるクラヴェルの50年近く前の小説に沿ったものだ。しかし、「ショーグン」の原作とは異なり、現在のFX版ではこのキャラクターはほとんど脇役(middle background)に追いやられている。飢えた視聴者としての私の経験が、より広い観客の反応を少しでも反映しているとすれば、「ショーグン」のストーリーテリングは、「三体問題」の製作者たちが暫定的に投げかけた問いに答えていることになる。その問いとは、「西洋の観客は、主役を独占する西洋人以外の俳優に乗せられるのだろうか?」

アメリカのエンターテインメント業界が、この人種的な臆病さや田舎臭さを克服できれば、進み行く先に限界はないと思う。欧米人を前面に出す必要のほとんどない、あるいは全くない歴史における劇的な時代について真正面から語られる物語を作成して、あらゆる大陸で新たな観客を獲得することができる。

※ハワード・H・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 日本で、「もしトラ」という言葉が流行っている。このことはワシントン・ポストでも報じられている。「もしもトランプが大統領に返り咲いたらどうなるか」ということを述べる際に使われる言葉だ。昔、「経営学者ピーター・ドラッカーの経営理論を高校野球のマネージャーが学んだら、その高校野球のティームは甲子園に行けるのか」という題材の小説がアニメ化、ドラマ化され、「もしドラ」という言葉が流行ったが、その言葉を真似たものが「もしトラ」ということになる。

 「もしトラ」を心配しているのは、日本だけではないようだ。先進国首脳会議(G7)に加盟している先進諸国全体で心配しているようだ。「トランプが再び大統領になったら、自分たちにどんな要求をしてくるか分からない」ということで戦々恐々だ。トランプが訴えていた、各国の軍事費増額は、バイデン政権でも継続して要求され、先進諸国でその動きが出ている。日本も国防予算の倍増が決められ、そのための増税も行われている。トランプは各国にGDP比2%までの増額を求めていたが、その数字を上げてくるかもしれない。更に言えば、アメリカはNATOから脱退し、「お前ら、対ロシアはお前らの力だけでやれ」ということになるかもしれない。トランプがロシアのウラジーミル・プーティンとヨーロッパの頭を飛び越えて勝手に仲良くなって、「NATOは抜けるから後はよろしく」となったら、ヨーロッパ各国は恐慌状態になるだろう。そして、「やはりロシアとは仲良くしなくては」「資源を買うことで顧客になって仲良くしよう」という「新しい東方外交に舵を切る」だろう。

 問題は中国である。トランプは対中国強硬姿勢を見せるだろう。しかし、もちろん、「中国がアメリカに投資をして雇用を作り出してくれるならウエルカムだ」という交渉条件を付ける。中国はトランプを懐柔するために、投資をする。もちろん、アメリカがどんどん衰退していくことは織り込み済みだから、致命的にならない程度に、共倒れにならない程度に、「少しは延命策になるか」程度の投資をするだろう。そうなれば、中国との関係も良くなって、「ヤルタ2.0(米中露=トランプ・習近平・プーティン)三帝体制」ということになる。

 このように書くと、「もしトラ」といって怖がっているのは馬鹿らしくなる。「もしトラ」と言って怖がっているのは、ヨーロッパと日本の親米エスタブリッシュメントたち(アメリカの民主・共和両党のエスタブリッシュメント・エリートたちとつながっている売国者たち)である。トランプが大統領だった4年間に、核ミサイルは飛ばなかったし、アメリカが大規模な海外戦争を仕掛けもしなかった。そのことをよくよく考えねばならない。

(貼り付けはじめ)

G7はトランプに備えねばならない(The G-7 Must Prepare Now for Trump

-今夏のサミットは、単なる50周年記念式典以上のものにならねばならない。

ロビン・ニブレット筆

2024年3月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/19/g-7-trump-biden-election-prepare/

イタリアのジョルジア・メローニ首相が6月13日から15日にかけて主催するG7サミットの計画を立案している。世界をリードする民主政治体制国家のクラブであるG7の50回目のサミットということで、祝賀ムードが高まるだろう。

当然らそうなるだろう。 G7にはカナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、イギリス、アメリカ、そして、1981年以降はヨーロッパ連合(EU)が加盟しており、現在、世界のGDPの54%、世界の国防支出の55%以上を占めている。 G7加盟諸国は何十年にもわたって、民主社会(democratic societies)や開かれた市場(open markets)の保護など、共通の外交政策上の優先事項を追求するために各国の経済力を調整することで、世界の舞台での重要性を更に高めてきた。

しかし、今度のサミットの重要性は、画期的な記念回以上のところにある。G7の未来、そして世界的な民主政治体制の結束の未来が今、危機に瀕している。

共和党の大統領候補ドナルド・トランプによる最近のNATO蔑視発言は、アメリカの同盟国に対する関与の信頼性を疑問視する声につながっている。トランプのNATOに対する不満の一因は、他のNATO加盟諸国の国防費が、アメリカに比べて歴史的に低いことにある。なぜアメリカ人がヨーロッパの防衛費に、ヨーロッパ人が進んで支出する以上の支出をしなければならないのだろうか?

しかし、G7はトランプ2期目の気まぐれに対して、より脆弱であることが判明するかもしれない。トランプ大統領にとって、アメリカの外交政策を他国と調整することは、アメリカの行動の自由に対する無意味な制約である。

ここに問題がある。アメリカは現在、イギリスを除くG7の全ての相手国との間の貿易で赤字を出している。2023年には、これらの赤字は3370億ドルに達し、アメリカの対中赤字(2790億ドル)を上回る。商品の貿易赤字は、トランプにとって外交政策の赤信号だ。だからこそ、彼は、アンゲラ・メルケルのドイツをウラジーミル・プーティンのロシアよりも大きなライバルとして扱い、アメリカの保護主義(protectionism)に対抗した、2018年のG7首脳会議の成果を台無しにした。

G7首脳たちは米大統領選挙について沈黙を守っている。現職の米大統領ジョー・バイデンの2期目の実現を期待できる可能性がある。しかし、現時点では、その可能性はせいぜい五分五分だ。その代わりに、彼らは今後3カ月を利用して、2期目のトランプ大統領誕生の打撃に耐えることがで、バイデン2期目の綱領としても機能する政策課題を策定すべきだ。

バイデンの1期目におけるG7の成果は印象的だった。2022年2月にプーティンがウクライナに本格的に侵攻して以来、G7はロシアに対して前例のない制裁措置を実施してきた。ロシア中央銀行がG7諸国の通貨で保有する約3000億ドルの準備金の凍結から、ロシア産原油が1バレルあたり上限60ドルを超えて販売された場合のタンカーへの保険提供の禁止まで、多岐にわたる。このようなことができるのは、世界の外貨準備の93%以上がG7各国の通貨で保有され、世界の外航船舶の90%以上がG7に本社を置く企業によって発行された損害保険でカバーされているからである。

中国の台頭に対する共通の懸念と、北京とモスクワの緊密な連携を反映し、G7は過去3年間、緊密な同盟国である韓国とオーストラリアとも、将来の経済成長の中心となる半導体や再生可能エネルギー投入のための「フレンドシェアリング(friendshoring)」サプライチェーンを開始するための努力を一貫して行ってきた。

トランプ新政権が、フリーライダーであることを理由にして、最も親密な同盟諸国を罰することに戻れば、こうした重要な仕事も全て終わりを迎えることになりかねない。しかし、G7メンバーの対米貿易不均衡を是正することは、短期的には不可能である。だからこそ、今度のG7サミットでは、敵対的なトランプ大統領の復活の可能性に備えることを優先しなければならない。

第一に、G7加盟諸国は、ウクライナの主権を守るための支援には期限を設けないという明確なシグナルをモスクワに送る必要がある。支援をめぐる紛いは現在、どちらの側が政治的、経済的に他方を上回ることができるかを示す激しい競争の陰に隠れている。アメリカの新たな支援が現在連邦議会で阻止されている中、欧州諸国とEUは既に、キエフに対する今後の複数年間の財政・軍事支援として約750億ユーロに加えて、更に770億ユーロの供出を約束することで、決意を示す重要な一歩を踏み出している。彼らは戦争が始まって以来すでに割り当てを行っている。

G7サミットではまた、凍結されたロシアの外貨準備から得られる利益を、G7の全メンバーがどのように引き出すかを決定する必要がある。これまでの障害は、これらの外貨準備の大部分がEUの銀行によって保有されていることである。一部の政府とヨーロッパ中央銀行は、稼いだ利子(昨年は44億ユーロ)を分配するという控えめなステップでさえ、確固たる法的根拠を欠いており、また世界的な基軸通貨としてのユーロの信頼性を損ないかねないと懸念している。こうした懸念を克服することは、G7の決意を強調することになる。トランプ大統領が誕生すれば、ウクライナを支援するためにアメリカが負担した費用の一部に充足させる取り決めを反故にすることを考えるかもしれない。

第二に、G7メンバーは韓国とオーストラリアを正式にグループに招待すべきである。もしバイデン政権2期目が発足すれば、韓国とオーストラリアの加盟はハイテクと再生可能エネルギーにおけるG7の総合力を強化するだろう。もし2期目のトランプ大統領が誕生しても、G7に入っておけば、この2つの民主的同盟諸国はトランプ大統領の重商主義的脅威の前に孤立することはなくなるだろう。

第三に、バイデン政権、EU首脳、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、インドが昨年発表した、インドから湾岸諸国とイスラエルを経てヨーロッパに至る、鉄道によるエネルギー供給システムとデータの回廊を建設する計画に、G7メンバーは初期の資金を割り当てるべきである。中国の「一帯一路」構想に対抗するこの遅ればせながら重要なプロジェクトは、インドと湾岸諸国の、若く急成長する経済と、ヨーロッパの裕福だが高齢化が進む市場をつなぐものだ。

ガザでの戦争はこの計画に疑問を投げかけているが、イスラエルにとってのメリットは、ネタニヤフ後の政権がパレスチナ人と持続可能な和平を築くための重要な追加的インセンティヴとなる。同時に、トランプ大統領の外交政策上の主要な成果である、イスラエルとアラブ諸国との関係を正常化した2020年のアブラハム合意を支援することになる。

G7は、中国やロシアとの新たな冷戦が長期化しそうな状況において、貴重な地政学的経済調整機関である。バイデン大統領の成果を確固たるものにするためであれ、トランプ大統領の世界的リスクを軽減するためであれ、G7の50周年記念サミットはその名に恥じないものでなければならない。

※ロビン・ニブレット:チャタム・ハウス特別研究員・元最高経営責任者。著書に『新しい冷戦:アメリカと中国との間の争いは如何にして私たちの世紀を形作るか(The New Cold War: How the Contest Between the U.S. and China Will Shape Our Century)』である。ツイッターアカウント:@RobinNiblett

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 東京や関東近郊では本日発売の『週刊現代』2024年4月20日号の佐藤優先生の書評コーナー「名著、再び」(64-65ページ)にて、『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』をご高評いただきました。2ページにわたり、拙著から多くの引用をしながら、評価をしていただきました。佐藤先生には、『週刊ダイヤモンド』2024年3月2日号でも、拙著をご紹介いただきました。佐藤優先生、まことにありがとうございます。皆様には、是非手に取ってお読みくださいますよう、よろしくお願い申し上げます。
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 最近、『タイム』誌が統一教会についての長い記事を発表した。統一教会が日本政界、特に自民党に深く浸透していたことを紹介しているが、後半は、統一教会内部の分裂や、アメリカ政界への浸透を紹介する内容になっている。安倍晋三元首相殺害から、日本では統一教会の政治からの排除まで進んだ。日本での霊感商法や莫大な献金が統一教会の主要な資金源であったことから、日本での活動が縮小することは統一教会にとっては痛手となるだろう。しかし、自民党が本当に統一教会と決別するのか、日本政界が統一教会の新党を排除し、浄化されるのかは不明だ。それほどに根深い問題である。
 今回、タイムが掲載した記事は、統一教会がアメリカ政界に浸透しているという内容だ。そして、「指桑罵槐(しそうばかい)」(ある人物を非難しているようで、実際には遠回しに別の人物を非難する手法)で、ドナルド・トランプ前大統領を非難している内容だ。ドナルド・トランプと統一教会が深い関係にあることをところどころに書いている。

 今回の記事について足りないと感じているのは、日本政界への浸透ぶりと、岸信介・安倍晋太郎・安倍晋三と続く血脈が、協力関係にあったアメリカのCIAと統一教会と深くかかわり、日本人と日本のお金をこれらに貢ぐことに貢献したということが書かれていないことだ。

 非常に長い論稿であるので、冒頭の紹介はこれくらいにして、中身を読んでいただきたい。この記事にもヴェクトルがかかっているので、トランプ批判のために書かれたということに注意しながらこのような統一教会と長年にわたりずぶずぶの協力関係にあった自民党は許しがたい存在であることだけはよく分かると思う。

(貼り付けはじめ)

統一教会は日本政府に浸透した。現在、その標的はアメリカに向けられている(The Unification Church Infiltrated Japan’s Government. Now Its Sights Are Set on the U.S.

チャーリー・キャンベル(東京発)筆

2024年4月4日

『タイム』誌

https://time.com/6961050/unification-church-ffwp-moonies-us-election/

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ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで演説する際に劇的な動きをする文鮮明(Sun Myung Moon)牧師。牧師の首席補佐役である朴普煕(Bo Hi Park)大佐(右)が韓国語から英語に翻訳している。

日本の西側にある奈良市の空は曇っていた。午前11時29分、安倍晋三首相にマイクが手渡された。紺のジャケットにパリッとした白いシャツを着た安倍元首相が、大和西大寺駅の小さな赤い台の上に立つと、集まった聴衆から割れんばかりの拍手が起こった。15メートルほど離れたところに山上徹也が立っていた。フェイスマスクを鼻の穴の下に下げ、両手を腰に当て、演説には全く無関心な様子だった。安倍元首相が地元選出の自民党議員を応援する演説を始めると、山上は演説場所から遠ざかり、数秒後に安倍の側近たちの真後ろに再び姿を現した。安倍がマイクを手にしてから2分25秒後、銃声が鳴り響き、現場は濃い白煙に包まれた。安倍は混乱した様子で、周囲を見回した。その3秒後、もう1発の銃声が安倍の首と胸を捉えた。安倍は倒れた。山上は警備員にタックルされ、逮捕された。路上から手製の銃器が回収された。

2022年7月8日の事件は、衝撃的であると同時に、間違いなく事実である。安倍はドクターヘリで奈良県立医科大学附属病院に搬送されたが、そこで死亡が確認された。山上被告(当時41歳)は殺人容疑で起訴され、今年末の裁判を控えている。山上は、安倍元首相が物議をかもしている統一教会(Unification Church)を支持していたことが殺害の動機だと主張している。統一教会は、山上の母親を説得して、1億円(67万ドル)以上を教団に献金させ、山上一家を破産と困窮に追い込んだ。釜山長神大学校教授で統一教会の専門家であるタルク・ジイルは、「ある意味、この青年は加害者ではなく被害者だ」と述べている。

安倍元首相が暗殺されてから数カ月後、内部調査によって自民党所属議員の約半数が統一教会と関係があることが明らかになり、日本政府の最高首脳部から辞任が続出した。しかし、「ムーニー(Moonies)」と呼ばれ、合同結婚式(mass weddings)や熱狂的な反共(anticommunist fervor)で知られる宗教的好奇心が、なぜこのような殺人的怒りを引き起こしたのだろうか? そして、当時世界第3位の経済大国であった日本の統治エリートたちに中に、粛清(purge)が必要なほど深く入り込んだのはなぜなのか?

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日本の奈良県で行っていた選挙運動の間に銃撃された後に地面に横たわる安倍元首相。2022年7月8日。

統一教会の真実は、1件の暗殺事件や日本よりもはるかに深い。統一教会はあらゆる大陸に広がる政財界の網の目のような存在であり、約200万人の会員(この数字には反対意見も多い)と10億ドル以上の資産を擁していると見られている。教団は、『ワシントン・タイムズ』紙、UPI通信、マンハッタンにあるニューヨーカー・ホテル、バレエ団、そしてアメリカの寿司業界に鮮魚を供給する最大手のトゥルー・ワールド・フーズ(True World Foods)を所有している。アメリカの諜報機関の報告によれば、第三世界のクーデターに資金援助をしている。共和党や民主党の有力者たちを招待して、保守的な大義を推進するイヴェントを開催している。リチャード・ニクソン、ロナルド・レーガン、ドナルド・トランプを含む歴代アメリカ大統領は、教団について熱心な支持を表明してきた。

統一教会は1954年に文鮮明牧師によって設立された。彼は、神の王国(God’s Kingdom)を地上に樹立し、世界平和をもたらすという任務を完遂するために、イエスから第二のメシア(second messiah)として託されたと主張した。文鮮明の神学(theology)は、エデンの園でアダムと寝る前にエヴァがサタンに誘惑されたという考え方に基づいている。信者は、文鮮明の選んだ配偶者と結婚し、塩をたっぷりまぶした部屋で文鮮明の肖像画の下で、あらかじめ決められたさまざまな体位でセックスするなどの一連の儀式を行うことで、この「原罪(original sin)」の血統を清めることができる。

このような特殊性は、神聖なふりをした、1人の指導者に焦点を当て、資金を積極的に収奪することに加えて、統一教会はカルトであるという非難を増大させてきた。文鮮明は自らを「完璧なアダム(perfect Adam)」、韓国を「アダム国家(Adam nation)」とし、「天使長(archangel)」国家アメリカの支援を得て、人類が発作前の純粋さを取り戻す手助けをするだろうと主唱した。一方、日本は、1910年から1945年の朝鮮半島植民地支配中に犯した罪の償いを求められる「イヴ国家(Eve nation)」に指定された。数多くの日本の元教会員の代理人を務める弁護士の山口隆は次のように述べている。「彼らは、日本人全ての資産は韓国に返還されるべきだと信じている。それが救いへ向かう道だ、と」。

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2022年8月10日、東京の首相公邸での写真撮影から退場する岸田文雄首相に頭を下げる閣僚たち。支持率の低迷を受け、岸田首相はこの日、政権から統一教会とのつながりを排除するために内閣を改造した。

しかし今日、統一教会は自らを苦境から救おうと奮闘している。 HBOのヒット作「サクセッション」の中に描かれたような、内紛(infighting)、悲劇(tragedy)、反社会的組織の陰謀が充満している。統一教会の資産が増加するにつれて、その資産をめぐる争いはより激しく、憎むべきものになった。文鮮明の末子ショーン(文亨進、SeanMoon Hyung-jin)は、タイム誌とのインタヴューで、安倍殺害の責任は、2012年の文鮮明の死後、統一教会の実権を奪った別居中の母親である韓鶴子(Hak Ja Han)にあると断言した。ショーンは、「これは、主である神と再来したイエスを裏切ってきた組織に対する裁きの鉄槌だ」と語っている。ショーンはペンシルヴァニア州の田舎に、分派の教会であるサンクチュアリ教会を設立した。ショーンは銃を携帯し、銃を前面に押し出している。1月6日には国会議事堂の外で親トランプ暴徒の中で催涙ガスを浴びた。ショーンは「盲目的なそして異端的な方向性がその組織(統一教会)に呪いをもたらした」と述べている。

確かに、安倍元首相の死は、統一教会にとって存在を揺るがす深刻な問題である。日本政府は10月13日、統一教会から宗教法人としての地位を剥奪するように裁判所に訴えた。宗教穂人の資格はく奪により、法人税と固定資産税が免除されなくなる。統一教会の世界的な資金源の70%は日本だと推定され、積極的な献金勧誘に加え、先祖の霊を「鎮める(appease)」とされる高値の「霊感(psychic)」人参茶や大理石の壺を販売している。全国霊感商法対策弁護団(Japan’s National Network of Lawyers Against Spiritual Sales)が実施した調査によると、1987年から2021年までに、全国の弁護士会や消費者センターに報告された統一教会の募金に関する被害件数は3万4537件に達し、被害総額は8億5000万ドルを超えている。カルト研究家のサラ・ハイタワーは「彼らは基本的に日本をATMとして利用している」と述べた。

その資金源が脅かされている今、統一教会は、積極的な資金調達戦術が憲法修正第1条によって守られている、アメリカに重点を移している。10月、ハク・ジャハンは4年ぶりにアメリカに戻り、ラスヴェガスで「真のお母様の心を理解する(understand True Mother's heart)」ための「特別ワークショップ(special workshop)」を開催した。17歳から40歳を対象としたこのイヴェントは、日本からの収入減を補うために寄付を増やす必要性に支配されていた。タイム誌が入手したリークされた電子メールには、「真のお母様に私たちがどれほど感謝しているかを伝えるために」、イリノイ州シャンバーグにある住所に100ドル札を送るようアメリカの信者たちに指示し、「文書に現金という文字を書かないように」と更に指示していた。

統一教会のアメリカ支部である世界平和統一家庭連合(Family Federation for World Peace and Unification InternationalFFWPUI)の会長、デミアン・ダンクリー牧師が主催した9月26日のZoom会議の映像がリークされた。この中では、同団体が直面している様々な危機について説明し、日本からの減少分を補うためにアメリカ人会員からの献金を3倍にするよう牧師たちに促した。「最も高い献金者から始め、徐々に下げていこう」とダンクリー牧師は述べた。今後の「主要な目的」は、「会員数の増加」と「財政的な成長」だと彼は言った。ダンクリー牧師は「もし、ネパールの食べるのに苦労している家族が、自分たちの子供たちを食べさせることができるかどうかも分からないのに、年に一度、真のお母様に真の愛の献金をすることができるのであれば、アメリカの家族にも同じことができるはずだ」と述べた。

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2020年2月7日、韓国・加平の清心平和国際センターで行われた世界平和統一家庭連合の祝福式で、新婚カップルたちの中に立つ統一教会創始者である故文鮮明の妻、韓鶴子。

会議の中でダンクリーは、「日本の人口の90%が統一教会解散に賛成している」ことを認め、友好的な「首相周辺の国会議員たち(parliamentarians around the prime minister)」(彼はこれを「私たちの仲間(our people)」と表現している)は、「おそらくこれを逃れる方法はないだろう」と述べていると語った。日本におけるこのような逆風を考慮すると、アメリカの牧師たちは「若者」の勧誘に力を入れるべきであり、また「お母様に会うように言われた億万長者や大富豪たち」を参加させれば、これらの問題を迅速に解決できるとダンクリーは指示した。

統一教会の中で育ち、現在は回復した元会員たちを助けるために「フォーリング・アウト」というポッドキャストを主催しているエルゲン・ストレイトにとって、このメッセージは非常に明確だ。そして、秋には接戦が予想される大統領選挙が近づいており、統一教会の政治的、財政的な力は、統一教会のアジェンダに最も適した人物たちに握られている。

統一教会は長い間、定義づけを拒んできた。統一教会は、1960年代から1970年代にかけて西側諸国を席巻したハレ・クリシュナ(Hare Krishna)や超越瞑想(Transcendental Meditation)などの新宗教運動の津波の一部ではあるが、その持続性と影響力の両方において際立っている。それでも今のところ、ISISやマンソン・ファミリー、ジム・ジョーンズの人民寺院(People’s Temple)のような殺人志向は見受けられない。統一教会の信者の多くは、何十年もの間、統一教会を出たり入ったりしている。統一教会が与えるいかなる害も、より陰にこもったものだ。

1920年、現在の北朝鮮北西部に生まれた文鮮明は、残忍な日本統治時代に藁葺き小屋で育った。10歳の時、彼の家族はキリスト教に改宗し、16歳の時、彼はイエス・キリストの訪問を受けたと主張した。1945年に連合軍が朝鮮半島を解放した後、彼はソ連が支配する平壌に移り住んだが、3年後に逮捕され、共産主義者が運営する収容所で5年間を過ごした。

朝鮮戦争勃発後、文鮮明は国境を越えて逃亡し、韓国の釜山に定住し、一間の掘っ立て小屋に住んでいた。彼は、キリスト教(Christianity)、儒教(Confucianism)、シャーマニズム(shamanism)、反共産主義の辛辣さ(anti-communist vitriol)を混ぜ合わせた神学的信条を土壁に走り書きし始めた。1950年代には、文鮮明の献身的な信奉者の一団が成長し、文鮮明が教会関連の財団や企業を多数設立するのを支援した。1960年、文鮮明は40歳のときに、当時まだ17歳だった2番目の妻、料理人の娘、韓鶴子と結婚した。文鮮明はまた、1963年に複合企業「統一グループ(Tongil Group)」を設立し(「統一(Tongli)」とは韓国語で「統一」を意味する)、武器、農業、高麗人参、造船、航空、観光、鉱物などの事業に進出し、急速に多角化(diversified)した。

元統一教会信者で文鮮明の非公式伝記を書いたマイク・ブリーンは、「間近で見る文鮮明は、とても謙虚な印象を受けた。とても、とても気配り上手で、向き合っているその瞬間、本当に相手に集中している人という感じがした」と述べた。

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2012年8月14日、ソウルで開催された日本の植民地支配からの解放記念行事に先立つ集会で、日本軍によって行われた戦争時の朝鮮人性奴隷に対する謝罪の行為として頭を下げる統一教会の日本人信者たち。

1973年までに、文鮮明は自分の使命をアメリカに持ち込み、ニューヨーク州タリータウンのイースト・ガーデンと呼ばれる18エーカーの森林地帯に居を構えた。そこでは、アルコールとドラッグが禁止され、結婚以外のセックスをすると罪人として燃えるような天罰を受けるという新しいコミュニティを設立した。1974年までに、アメリカの統一教会は年間800万ドルの収益を上げ、文鮮明はその2年後にニューヨーカー・ホテルと隣接するマンハッタン・センターを購入することができたと言われている。アールデコ調の建物は、統一教会のアメリカでの活動拠点となり、統一教会の信者たちの子供たちが共同保育される場所となった。前述のストレイトは3歳になるまでニューヨークで育ったが、両親が大学のキャンパスを探し回る勧誘員から「愛の爆撃(love bombed)」を受けた後だった。ストレイトは、「多くの家族があのホテルに住んでいた。そこから、人々が資金集めや布教活動に出かけた」と回想する。

統一教会は、若い男女を家族から引き離し、「洗脳(brainwashed)」されたとされる隔離されたキャンプに送り込むことで悪名高い存在となった(教会はこれを否定している)。しかし、改宗の熱意(zeal of conversions)は、心配した親族が「ディプログラミング(deprogramming)」と呼ばれる連れ出しを開始することを促し、双方に訴訟が相次いだ。文鮮明はまた、保守的な政治活動を支援し始めた。ウォーターゲート事件の最中には、全米の新聞にニクソン支持の全面広告を掲載し、連邦議事堂で「神はリチャード・ニクソンを愛している(God Loves Richard Nixon)」集会を開いた。文鮮明は魅力的な女性信者たちを派遣し、連邦上院議員たちを篭絡させ、情報を収集させた。そうした信者の1人は、カール・アルバート連邦下院議長の側近にまでなった。

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1974年、ホワイトハウスでリチャード・ニクソン米大統領と会談する文鮮明牧師。

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1981年10月22日、文鮮明牧師の巨大なポスターが経っている間にアメリカ国旗がいくつも立てられている。彼の信者たちが一団となってアメリカ連邦地方裁判所の外の公園でデモを行っ写真7た。

1976年、米連邦議会の調査により、文鮮明が、アメリカの対北朝鮮政策に揺さぶりをかけようとする韓国の諜報活動に関与していたことが明らかになった。1982年、文鮮明は脱税で有罪判決を受け、18カ月の禁固刑を言い渡された。文鮮明は自らを型破りな信仰のために迫害された殉教者に仕立て上げ、ジェリー・ファルウェルやティム・ラヘイなど、さまざまな市民的自由主義者や宗教保守派から支持を集めた。影響力を高めるため、文鮮明はワシントン・タイムズ紙を創刊し、その創刊号は文鮮明が有罪判決を受ける前日に発行され、ロナルド・レーガン大統領を含む保守派の間で必読の新聞となった。

文鮮明は信教の自由と反共の熱意を訴え、当時の冷戦の熱気の中で幅広い支持を得た。ラテンアメリカでは、米州社会統一連盟(Confederation of the Associations for the Unification of the Societies of the AmericasCAUSA)を設立した。アメリカ政府の情報筋によれば、CAUSAはコントラ反乱軍に現金と物資を送り、1980年に民主的に選出されたボリヴィア政府を転覆させた右派クーデターを画策した準軍事組織、コカインカルテル、逃亡中のナチス戦犯クラウス・バービー(「リヨンの虐殺者(Butcher of Lyon)」)といった多様な一団に資金を提供した。

冷戦が終結しても、文鮮明の並外れた政治的影響力を妨げることはなかった。1995年、ジョージ・HW・ブッシュ元大統領とバーバラ夫人は韓国の統一教会で、一連の有料講演を行い、その1年後、ブッシュはブエノスアイレスを訪れ、文鮮明が設立した新しい地域日刊紙『ティエンポス・デル・ムンド』の創刊式で演説した。その他の著名な仲間には、ジェラルド・R・フォード元大統領、共和党のジャック・ケンプ連邦上院議員、ミハイル・S・ゴルバチョフ、そして現在不祥事を起こしている芸能人のビル・コスビーなどがいる。2000年、文はパラグアイにデラウェア州とほぼ同じ広さの土地を購入した。地元の警察当局は、統一教会が武器や麻薬の密輸を容易にするためにこの土地を使用していると非難している。統一教会は、その土地での違法行為を認識していると述べているが、関与は否定しており、警察当局に協力していると主張している。

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2005年7月16日、パラグアイのタクアラで、プエルト・カサドの町のパラグアイ人たちが、文鮮明の統一教会が自分たちの地域で取得した土地の一部を、自給自足農業のために自分たちに引き渡すよう政府に圧力をかけるため、自宅から首都アスンシオンまで148km(91マイル)の行進に参加した。

統一教会の政治的結びつきが強まるにつれて、そのプロパガンダも直接的になっていった。2003年、ワシントン・タイムズ紙は見開き2ページで、亡くなった36人のアメリカ大統領全員が文鮮明の卓越性を認めていたと主張した。一方、トーマス・ジェファーソンは、墓の中から「全ての人々にとっての救世主である文鮮明師の教えに従え」という個人的な推薦文を書いた。翌年、ダークセン記念連邦上院議員会館で行われた華やかな式典には、少なくとも12人の米連邦議員が出席した。式典の中で、文鮮明は「戴冠式(crowned)」を行い、自らを「人類の救世主、救世主、帰天の主、真の親」と宣言した。また、数百名のゲストを前にして、イエス、仏陀、ヒトラー、スターリンは文鮮明の教えを通じて「生まれ変わり、新しい人間となった」と報告された。共和党のロスコー・バートレット議員は文鮮明と韓鶴子の前で一礼し、民主党のダニー・デイビス議員は文鮮明の頭に金の王冠を載せた枕を差し出した。2006年、ジョー・バイデン大統領の弟のジェームズは、甥にあたるジョー・バイデンの息子ハンターとともに、文鮮明の義理の息子であるジェームス・パークが設立したヘッジファンドを購入した。

しかし、舞台裏で全てが順調だった訳ではない。

1984年、文鮮明の次男文興進(Heung Jin Moon)が自動車事故による負傷がもとで亡くなった。17歳だった。1999年、もう一人の息子文榮進(Young Jin Moon)がリノの17階建てのホテルの部屋から飛び降り自殺した。一方、文鮮明の長男で後継者と目されていた文孝進(Hyo Jin Moon)は、飲酒、麻薬、無差別暴力を好む気まぐれな人物として知られていた。1995年、妻のナンスク・ホンさんは家族と決別し、文孝進をコカインとポルノ中毒の不倫女たらしで、妊娠7カ月の時も含め定期的に暴力を振るったとして非難する本を書いた。文孝進は2008年に心臓発作で亡くなった。45歳だった。両親が指導的立場の信者で、イースト・ガーデンの近くで育ち、現在は脱会した元信者であるテディ・ホースは、「成人した大人たちが、文鮮明の子供たちに頭を下げてかしずいてきたので、文鮮明の子供たちは、人々をおもちゃのように扱っていた。彼らはまさに反社会的家族だった」と述べている。

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1986年に撮影された文鮮明の家族写真。

文鮮明地位族の偶像崇拝(idolatry)は、一般信者の経験とは対照的である。攻撃的な資金集めは日本で最も深刻であるが、山上徹也の貧しい子供時代と似たような話は、統一教会の信者がいるところならどこでも見られる。ノルウェーのオスロでリリアン・ホルドフスが「本当に、本当に貧しく」育ったのは、母親が文鮮明に対して献身的に献金していたからだと彼女は言う。

文鮮明は、全ての先祖は地獄におり、信者たちは各世代の先祖を解放するために金を払わなければならないと教えていた。「天元(Cheon Won)」として知られる統一教会の韓国本部の公式ウェブサイトには、国に応じて価格が異なる「祖先解放」計算ツール(“ancestor liberation” calculator)さえある。先祖たちがいる世界は明らかにウェストファリア的な国家概念と現代のGDP指標に固執しているようだ。父系と母系の430世代の家族全員を解放するには、ノルウェーやアメリカでは1万2420ドルが必要だが、スーダンではわずか2280ドルで済む。ちなみに、日本では同じ偉業を達成するには652万円(約4万4800ドル)が必要だ。先祖を祝福したり、流産や中絶で失われた胎児の魂を解放したり、死ぬ前に自分の魂を事前に解放する機会には追加料金がかる。 ただし、先祖全員が既に救われている場合に限られる。

ホルドフスの母親は、先祖を救うことに執着し、リリアンが8歳から15歳までの間、毎晩学校が終わると子供たちを新聞配達に行かせ、家族のために現金を稼がせた。日曜日には、礼拝の前に新聞を配達するため、ホルドフスとその兄弟は朝4時にベッドから引きずり出された。そのお金は全て統一教会に献金された。リリアンは「学校では、教科書を読むのがとても遅かったことを覚えている。働いた後だったので、疲れて宿題をする気にもなれなかった」と述べている。

攻撃的な資金集め以外に、統一教会は手配された合同結婚式で最もよく知られている。1982年、マディソン・スクエア・ガーデンで2075組のカップルが文鮮明によって結婚式を挙げられ、花嫁はレースとサテンのガウンを、花婿は同じコバルト色のスーツを身にまとった。2012年、彼女がまだ17歳だったとき、リリアンの番が回ってきた。彼女は天元に送られ、文鮮明が生前に個人的に行った最後の集団「祝福」に参加することになった。文鮮明は彼女をドイツのニュルンベルクに住む20歳のイタリア人男性と引き合わせた。一目惚れという訳にはいかなかった。リリアンは「彼はすぐに私に悪い印象を与えた。『こんな人と結婚するなんてありえない』という感じだった」と語った。

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統一教会の指導者である文鮮明とその妻韓鶴子。1982年の元旦にマディソン・スクエア・ガーデンで2075組の信者の合同結婚式を挙行した。

しかし、リリアン・ホルドフスが結婚を取り止めようとしたとき、統一教会の関係者の一人が、リリアンがサインしたイヴェント参加の意思を示す契約書を見せた。リリアンは「彼女は私に腹を立て、私はとてもプレッシャーを感じた。だから、私は結婚の儀式に参加すると言わざるを得なかった」と述懐している。今日、リリアンは何が起こったかについてはっきりと語った。「私は人身売買された(trafficked)のです。私は成人として法的に自分のことを決めることができなかった。人身売買の疑惑について尋ねられたダンクリーは、強制的な行為の責任は参加者の親にあるとし、「大多数は信じられないよう茄子払い井経験をしている」と主張している。

リリアンは高校を卒業するためにオスロに戻ったが、卒業後、母親からドイツにいる新しい夫のもとに行くよう命じられた。リリアンは、「彼は精神的な虐待をする人で、私のことを馬鹿だ、ノロマだとの常に罵声を浴びせてきた。彼はまったく協力的でも共感的でもなかった」と述べている。

結婚後もリリアンの苦労は続いた。新しい夫に言われるまま、ホルドフスは8人のティーンエイジャーと一緒にヴァンに乗ってイタリア、スロヴェニア、ドイツを3ヵ月間にわたって回り、教会の資金を稼ぐために、グリーティングカードやろうそくなどの小物を一軒一軒売り歩いた。車内で寝ることもあれば、コミュニティセンターの床で寝ることもあり、まれにホステルの一室に詰め込まれることもあった。食料は、チームリーダーがスーパーマーケットで安いパン、ハム、チーズを買ってきて作ったサンドイッチだった。

リリアンは、「北イタリアの何もない小さな村で、文章が書かれた小さな紙切れ1枚ヲ渡されて、ヴァンから降ろされたことを覚えている。言葉も分からないし、本当にパニックになってしまった」と述べた。

毎朝、参加者全員がその日の自分の目標を述べさせられた。そして毎晩、リーダーたちに渡す前に、グループの前で自分の稼いだお金を数えなければならなかった。リリアンは次のように述べている。「私はたいてい1日に200ユーロ(230ドル)ほど稼いだ。私は稼ぎが良い方ではなかった。稼ぎが少ない人はティームの前で恥をかかされた。だから、もっともっと稼がなければならないというプレッシャーがあった」。資金集めに重点を置いたこの計画について尋ねられたダンクリーは、「実際はお金のためでもなく、むしろ、教育のためだ」と主張している。

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2022年7月29日、東京の日本外国特派員協会で行われた統一教会の活動に関する記者会見で、統一教会の歴史書と教団の聖典を提示する、全国霊感商法対策弁護団の山口広弁護士(左)と川井康雄弁護士(右)。

リリアンの経験は決して特別なものではない。ストレイトやホースを含め、アメリカの統一教会で育った子供たちは、高校卒業後1、2年の間、キーホルダーや風鈴のような意味のない小物を売る、当初は特別任務部隊(Special Task Force)と呼ばれた同様の計画に参加する。これは危険な仕事だ。2002年、18歳のジン・ジュ・バーンは、教会のためにコスチューム・ジュエリーを売っている最中に、シャーロットのアパートで性的暴行を受け殺害された。数年後、特別任務部隊はジェネレーション・ピース・アカデミー(Generation Peace Academy)に改名されたが、新型コロナウイルス感染拡大による封鎖中でさえ、毎年全米だけで約200人の若者を派遣し、高値のカレンダーや立体的な猫の写真を売り続けている。このアメリカのプログラムは、年間1000万ドル以上を売り上げていると推定されている。リリアン・ホルドフスは、「彼らはこのプログラムをとても美化している。私は、これが単なる労働者人身売買(labor trafficking)だと気づいた」と述べている。タイム誌の取材に対し、ダンクリーは再び人身売買の非難を否定し、集まった資金は「プログラムに投資されるか、地域社会に還元される」と述べた。

山口弁護士は、「統一教会がこうしたプログラムを行っているのは、若者はそれほどお金を持っていないので、代わりに自分の労働力を求めているからだ。害となるのは、若者たちが最も実り豊かな年月を無駄にさせられていることだ」と述べている。

不安障害や広場恐怖症などの精神的健康状態の悪化が5年続いた後、リリアンは夫に別れを告げてオスロに戻った。しかし、母親は大いに困惑した。リリアンは「母は私に『彼とよりを戻すべきだ』と言い続けた」と述べている。しかし、しばらくすると、母親は折れた。 「しかし、私が教会に行くたびに、母は私を単なる商品であるかのように、適当な年上の人と私を結び付けようとする」とリリアンは述べている。

リリアン・ホルドフスの精神状態は悪化し続けた。「彼らは、悪霊のようなおかしなものがあなたをコントロールしようとしていると信じている」とリリアンは述べている。「アルコールを一口飲むと、それはあなたの体への悪霊の侵入を招くことになると言ってくる。もう我慢できなかった」。結局、新型コロナウイルス感染拡大が彼女を助けてくれた。ロックダウンは物理的に教会の礼拝に出席しない口実を与え、オンラインで組織について調べ始める心の余裕を彼女に与えた。リリアンは、「統一教会は、なぜメンバーからそんなにお金が欲しいのか、疑問を持った。子どもの頃は『文鮮明一族の方々に私たちのお金が必要だ!』ということしか言われなかった」と述べている。

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1976年9月18日、韓国の伝道者である文鮮明牧師と統一教会が主催する「ゴッド・ブレス・アメリカ・フェスティバル」のためにワシントン記念塔の敷地に集まる群衆。

家族間の内紛で金庫の中の資金が目減りする中、統一教会は献金に重点を置いている。1998年、文鮮明は文顕進(プレストン、Hyun Jin Moon)に愛情を注いだ。プレストンは現在生き残っている彼の長男であり、元オリンピック馬術選手で、世界平和統一家庭連合(FFWPUI)の副会長である。2006年には、教会の資産を管理するためにワシントン D.C. に設立された非営利団体である国際統一教会 (Unification Church International UCI) の会長にも指名された。後継者としてのプレストンの将来は確実視されていた。

しかし、2008年、文顕進は両親に統一教会の方向性を批判する書簡を送った。これに応じて、文鮮明は文顕進(プレストン)に代わって、文亨進(ショーン・ムーン)をFFWPUIの副会長に任命した。同年、文鮮明の三女文仁進(タチアナ、In Jin Moon)がアメリカ統一教会総会長に任命された。文顕進は主流の組織から外れ、代わりに「平和構築への革新的で価値観に基づくアプローチ(an innovative, values-based approach to peacebuilding)」を促進するという明言された使命を掲げ、世俗的な非営利団体であるグローバル平和財団(Global Peace Foundation)を設立した。しかし、彼は個人的に厳選された理事会のおかげでUCI会長に留まり、2011年には関連のないスイスの財団に約5億ドルの資産を寄付したとして母親から訴訟を起こされた。この訴訟はアメリカの法廷で続けられており、9月26日にリークされたダンクレー牧師のズーム会議では、現在の「危機(crisis)」の1つとして挙げられていた。ダンクレーは、「これは家族の問題なので、私たちは時には態度を静観していたが、これ以上は沈黙を守っていられない」と述べた。

2012年の文鮮明の死後、権力闘争はエスカレートした。三女文仁進(タチアナ)は、不倫関係で子供を産んだことが明らかになり、母親韓鶴子から辞任を強要された(中傷者は韓鶴子がスキャンダルをリークしたと非難している)。翌年、韓鶴子はまた、ペンシルヴァニア州の田舎に世界平和統一サンクチュアリ教会[World Peace and Unification Sanctuary Church](ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ[Rod of Iron Ministries]として知られる)を設立した文亨進(ショーン)の追放にも成功した。現在、サンクチュアリ教会で、文亨進(ショーン)は母親を「バビロンの売春婦(whore of Babylon)」と非難している。文顕進(プレストン)と韓鶴子は、タイム誌からの複数回のインタヴュー要請を断っている。しかし、文亨進(ショーン)は喜んでZoom通話に応じた。「父(文鮮明)は、後継者が誰であるかを明確にするためだけに、韓国で2回、アメリカで1回、計3回も私に王冠をかぶせた」と文亨進(ショーン)は憤慨する。

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2018年4月26日、ペンシルヴァニア州グリーリーのカー・アベニューにあるカー・アームズ社のトミー・ガン倉庫で撮影のためにポーズを取るカー・アームズ社のオーナー文國進(ジャスティン・ムーン、Justin Moon)。

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2018年4月26日、ペンシルヴァニア州マタモラスにある自宅で、金色のAR-15「鉄の棒」を持ってポーズを取る文亨進(ショーン)牧師。

韓鶴子の権力強化(consolidation of power)は友情、結婚、家族を引き裂く分裂を生み出した。信者のほとんどは、韓鶴子が率いる主流の統一教会に留まったが、文顕進(プレストンに従う者もいたし、文亨進(ショーン)の分派に加わった者もいた。文亨進(ショーン)はカール・アームズと呼ばれる小型武器会社の創始者であるもう一人の兄弟文國進(ジャスティン)と同盟を結んだ。2016年に開業したカール・アームズ社の、トミー・ガン倉庫ショールームでの開業式の主賓はエリック・トランプだった。文國進(ジャスティン)はこのイヴェントを利用して、出席者たちに「ヒラリー・クリントンは決して米大統領になるべきではないことに全員が同意できることを願っている」と語り、盛大な拍手を浴びた。

銃は、合衆国憲法修正第2条を神の祝福にまで高める、世界平和統一サンクチュアリ教会(ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ)において決定的な役割を果たしている。老若男女の信者たちが礼拝中に銃器(通常はAR-15)を握りしめる一方、文亨進(ショーン)は弾丸の冠をかぶるようになった。彼は、父親(文鮮明)が1960年代から韓国の武器製造に投資していたと指摘する。それでも、子供たちに「同性愛の政治的課題(the homosexual political agenda)」を教え込む公立学校を非難する文亨進(ショーン)による、良く準備された派手な内容の説教は、南部貧困法律センターのヘイトウォッチから、ヘイトスピーチ指定を受けた。文亨進(ショーン)にとって、自由に対する最大の敵は国家であり、2020年の選挙はトランプから盗まれたものだと今でも堅く信じている。文亨進(ショーン)は、「歴史上、地球上で最大の虐殺を行った最も暴虐な勢力は、実際には中央集権的な全体主義政府である」と述べている。

現在、文亨進(ショーン)の分派は、政治的影響力においてその著名な前身団体に匹敵する存在となっている。定期的にフリーダム・フェスティヴァルを開催しており、保守的な共和党員からソーシャルメディア陰謀論者の著名人まで、右翼の講演者が多数集まる。極右過激派グループ「プラウド・ボーイズ(Proud Boys)」がブースを出展した10月7日と8日の最新イヴェントで、文亨進(ショーン)はステージ上で小児性愛者たち(pedophiles)を「木材破砕機(the wood chipper)」に入れることについて歌ったラップを披露した。このイヴェントでは、全性愛(pansexual)のプライド旗の焼却式と、元トランプ高官セブ・ゴルカのスピーチも行われた。これまでには、トランプ大統領顧問のスティーヴ・バノン、元NRA報道官のダナ・ロエシュ、ペンシルヴァニア州上院議員のダグ・マストリアーノが登場した。世界平和統一サンクチュアリ教会(ロッド・オブ・アイアン・ミニストリーズ)は最近、テキサス州ウェイコ近郊の30エーカーの土地と、テネシー州東部の山にある130エーカーの「トレーニングセンター」を購入したが、文亨進(ショーン)によると、そこが将来の本部となるということだ。1月26日、文亨進(ショーン)はトランプタワーのパーティーで、ドナルド・トランプ・ジュニアと元共和党大統領候補のヴィヴェク・ラマスワミと談笑する自分と文國進(ジャスティン)の動画をXに投稿した。

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2023年10月7日、ペンシルベヴァニア州ジーリーで毎年開催されるロッド・オブ・アイアン(鉄の棒)・フェスティバルの文國進(ジャスティン・左)と文亨進(ショーン・右)。このフェスティバルでは銃、トランプ前大統領、憲法修正第2条を祝う。

今日、統一教会の主流派とその分派は、アメリカの右派からの支持を競っている。リークされたダンクリーのズーム画像はまた、「ワシントン・タイムズの仕事を中心としたアメリカ における政治的影響力活動の活発化」を明らかにした。2022年8月12日、マイク・ポンペオ元CIA長官・元国務長官とニュート・ギングリッチ元連邦下院議長は、ソウルで開催された統一教会のフロント組織である万国平和連合(Universal Peace FederationUPF)のイヴェントで、文鮮明の没後10周年を記念して演説を行った。一方、トランプ元大統領はヴィデオメッセージを送り、文鮮明を「真のインスピレーション(true inspiration)」、韓鶴子を「驚くべき素晴らしい女性(amazing and wonderful woman)」と評した。財務記録によると、トランプは2021年から2022年にかけて、このヴィデオメッセージと他の2つのビデオ出演のために約250万ドルを受け取っており、マイク・ペンス前副大統領はUPFのイヴェントで講演するために55万ドルを受け取っていた。5月にも、トランプはUPFのイヴェントにヴィデオメッセージを送った。

ストレイトは、統一教会の指導者たちはこのようなお礼を払って受ける支持を「宣教の神性の証明(as proof of the divinity of mission)」と捻じ曲げて主張し、信者たちからより多くの献金を強要していると述べている。その効果は循環している。つまり、教会が寄付を募れば募るほど、知名度の高い後援者を集めるためにお金を費やすことができるという循環が出来上がっている。

これは日本から直接借用した戦略であり、犯罪も銃器もほとんどない日本で、統一教会のエスタブリッシュメントたちに守られた資金集めが安倍殺害に関与していると日本では言われている。現在、文鮮明一族は、世界で最も銃所有率が高く、一人当たり殺人率が日本の20倍を超えるアメリカで、同様の政治的隠れ蓑(political cover)、富、そして最も重要なことに人材の採用を進めている。ストレイトは次のように疑義を呈している。「力を行使できる人々が自分たちの人生をめちゃくちゃにしたことに子供たちが気づいたら、20年後には何が起こるだろうか? 更に大きな目標を狙った怒りの爆発が再び起こるだろうか?」

文鮮明一族の行く先々には悲劇がつきまとう。彼らの新しいアメリカでの冒険にも悲劇がつきまとうとしても、誰も驚かないだろう。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。週刊ダイヤモンド2024年3月2日号にて、佐藤優先生にご紹介いただきました。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 最近、名越健郎(なごしけんろう)著『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書、2019年)を読んだ。この本では、外国勢力、具体的には、アメリカ、中国、ソヴィエト連邦から、日本の各政党、自民党、民社党、社会党、共産党への資金提供があったことが書かれている。アメリカや旧ソ連などの公開資料を調べ、その中に出てくる日本の各政党への資金提供の文書を詳しく分析し、資金の流れを解明している。日本の政党が外国勢力から資金提供を受けることは法律で禁止されており、違法行為である。従って、外国勢力からの資金提供は非公式、秘密に行われた。

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秘密資金の戦後政党史

 自由民主党結党時(1955年)に、民主党系から出て、初代の幹事長となった(1956年末まで)のが岸信介だった。岸信介は、戦前に商工省に入省し、次官となった。国家総動員立案の中心的人物であった。満州国の産業政策を立案し、戦争開始時の東條内閣では商工大臣・無任所大臣兼軍需時間を務めた。敗戦後は、A級戦犯として逮捕されたが、後に釈放し、政界復帰を果たした。

岸信介は、1956年の石橋湛山との自民党初の党総裁選挙で敗れたが、1957年3月には石橋の病気退陣を受けて、自民党総裁、首相に就任した。1960年の日米安保条約改定で大規模な反対運動に遭い、安保改訂成立後に退陣したが、その後も日本政界で隠然たる力を保持した。80歳を超えた1979年まで代議士を務めた。戦前から戦後まで日本政界で影響力を保持し、「昭和の妖怪」と呼ばれた。

 戦後の岸信介につきまとったのは、CIAとの密接な関係、そして韓国発祥の統一教会、創始者である文鮮明との蜜月関係であった。外国勢力との関係が取り沙汰されてきた。『秘密資金の戦後政党史』によれば、岸信介と弟の佐藤栄作元首相といった人物たちが、自民党の資金不足を言い訳にして、アメリカ大使館の外交官やCIAの要員たちに資金提供を求めている。反共のためのアメリカの手先として利用されたのが岸信介だった。岸信介・娘婿の安倍晋太郎・孫の安倍晋三と続く、アメリカのCIAと統一教会との深いつながりは、下に掲載した東京新聞の記事の通りである。

 民社党はもともと社会党右派であったが、1959年末に参議院選挙敗北の責任をめぐって、社会党を脱党し、1960年に民社党が結成された。安保については条件付き賛成という立場を取った。民社党は、民間労組(同盟)を支持基盤として、中道路線を標榜したが、自民党よりも右寄りの姿勢を持つ野党であった。民社党にもCIAからの資金が入っていた。民社党首脳部は社会党在籍時からアメリカ大使館、CIAと特別な関係を結び、民社党結成後は、資金提供を受けた。現在の国民民主党は、20世紀の民社党のような存在だと考えるのが妥当である。民社党・同盟系の研修機関として設立された富士政治大学校にはCIAの資金が出ていたという説もある。富士政治大学校では、反共教育がなされていた。ここで教育を受けた民間労組の組合員たちが民社党の活動家にもなっていった。現在の連合の会長である芳野友子は、この富士政治大学校の強い影響を受けている。

また、ここで重要なのは、富士政治大学校を設置した、富士教育センター(民社党系)の理事長に、松下正寿という学者が就任していた事実である。松下正寿は政治学者であり、立教大学教授・立教大学総長を務め、民社党所属の参議院議員を務めた。松下は、統一教会の教祖である文鮮明に傾倒し、文鮮明を褒め上げる著書も書いている。富士政治大学校がどのような教育をしていたか、推して知るべし、である。民社党・同盟にはこのような統一教会との深い関係があった。それが現在も続いていると考えることが自然である。

 さて、ここからは私の考えたことである。日本が経済成長する前に、アメリカ(CIA)は日本に資金を提供し、「反共の防波堤」として成長させた。その後、経済成長を遂げた日本は、CIAに搾取される存在になった。CIAは、冷戦下、共産主義の拡大を阻止するために、反響を掲げる宗教団体である統一教会を利用した。統一教会の勢力を南米に拡大させ、共産主義勢力と競わせた。その際に、利用したのが、統一教会の日本人信者と資金である。以前放送された、TBSの「報道特集」で、統一教会の南米での拡大が取り上げられていた。日本人信者が大金を持って大挙して南米に向かったということが報告されている。これは、統一教会がCIAの意向を受けて動いていたことを示している。

 自民党と民社党という、日本の保守勢力にCIAと統一教会は深く浸透し、利用してきた。それは今も続いていると考えることが自然だ。その中心が、岸信介・安倍晋太郎・安倍晋三の流れであり、安倍派(清和政策研究会)だった。日本の保守を標榜しながら、日本人と日本の資金を外国勢力に搾取されることを許してきたのがこの勢力だ。日本がアメリカの属国を止め、芯の独立を果たすためには、まずここを切開手術して明らかにして、切除しなければならない。

(貼り付けはじめ)

●「旧統一教会系と歩んだ安倍氏「3代」スパイ防止法を巡る歴史から闇を読み解く」

2022817 0600分 東京新聞

https://www.tokyo-np.co.jp/article/196366

https://www.tokyo-np.co.jp/article/196366/2

 続々と明るみに出る国会議員と世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関係。ただ、そもそもの話をお忘れではないか。安倍晋三元首相のケースだ。読み解くカギになるのが、いわゆる「スパイ防止法」。法制定を巡る経過をたどると、祖父の岸信介元首相、父の安倍晋太郎元外相、そして当人までの3代にわたり、教団系の政治団体「国際勝共連合」と共同歩調を取った過去が浮かんできた。政権中枢が絡んだ闇の深さこそ、目を向けるべきだ。(特別報道部・木原育子、中沢佳子)

◆岸信介氏「あるときは内密に…」

 「岸元首相は、本連合設立当初から勝共運動に理解を示し、陰に陽に支援、助言を行ってきた」

 勝共連合の機関紙「思想新聞」の1987816日付1面には、同月7日に亡くなった信介氏の評伝が掲載され、先の一文がつづられた。広辞苑によると、「陰に陽に」とは「あるときは内密に、あるときは公然と」の意。親密ぶりがうかがえる。評伝はこう続く。「スパイ防止法制定運動の先頭に立ってきた

 この法律は、防衛と外交の機密情報を外国勢力に漏らせば厳罰を下す内容だ。信介氏は並々ならぬ思いを持っていたようだ。

 57年に首相として訪米した際、米側から秘密保護に関する新法制定の要請を受けて「いずれ立法措置を」と応じていた。晩年の84年に「スパイ防止のための法律制定促進議員・有識者懇談会」が発足すると、会長に就いた。

◆岸氏、勝共連合、そしてCIA

 勝共連合の「本気度」もすさまじかった。思想新聞によれば、78年には「3000万人署名」を行い、久保木修己会長は元検事総長や元最高裁判事、元韓国大使らとともに79年発足の「スパイ防止法制定促進国民会議」に参加。以後、勝共連合は全都道府県に下部組織をつくり、地方議会への請願運動を展開した。

 思想新聞も連日、「国会への圧力を強めていこう」などと喧伝けんでん。87年の元日紙面では漫画で同法を解説しており、左派と想定した人物を博士風の男性が論破する流れになっていた。

 日本のトップだった信介氏、韓国発祥の教団の流れをくむ勝共連合。スパイ防止法を求めたのはなぜか。

 「根本的にはCIA(米中央情報局)」と話し始めたのは、御年89歳の政治評論家、森田実さんだ。「アメリカの政策は今も昔も変わらない。反共で韓国と日本の手を結ばせ、アジアを分断しながら戦いを挑ませる手法だ」

 信介氏は「米共和党に最も近い人物」といい、旧ソ連と向き合う上で「日本の関連法制では整備が不十分という米側の意向をくもうとした」。勝共連合の方は「権力や金のために日本に食い込むには米側に取り入るのが一番早かった」。

◆晋太郎氏「自信たっぷりの笑顔で…」

 スパイ防止法を巡り、勝共連合と共同歩調を取ったのは晋太郎氏もだった。

 856月に自民党議員が法案を提出した時には外相で、このころの参院外務委員会では「審議について関心を持っている。そういう方向を打ち出すことも理解できる」と踏み込んだ。

 思想新聞を読むと、勝共連合関連の会合に党代表や来賓として再三参加しており、「自信たっぷりの笑顔で『スパイ防止法成立に積極的に取り組みたい』と述べました」と報じられた。

 その晋太郎氏は韓国と深い縁を持っていたようだ。

 「安倍三代」の著者でジャーナリストの青木理氏によると、晋太郎氏の地元、山口県下関市は古くから朝鮮半島との交流の要衝だった。釜山行きのフェリーが行き交い、今も韓国との玄関口。在日コリアンが多く暮らし、地元の有力な韓国系の実業家も晋太郎氏を支援してきた。

◆全ては朝鮮半島との関係の中に

 青木氏は「勝共連合の結び付きと土地柄は切り離して考えるべきだ」と念押ししつつ、「時代背景もあり、反共というイデオロギーを核に岸さんと旧統一教会が結び付き、晋太郎氏もそのまま引き継いだ事実は間違いない。戦前から戦中、戦後に続く朝鮮半島との関係の中に全てはある」と指摘する。

 晋太郎氏は1991年に亡くなった。信介氏の時と同じように、思想新聞は1面で評伝を掲載した。やはり、この言葉で悼んだ。

 「安倍氏はまた、故岸信介元首相や福田元首相と同様、陰に陽に本連合に対し支援、助言を行ってきた」

 85年提案のスパイ防止法案は野党の強い反発などもあり、このころに成立することはなかった。

 「世界情勢は成立へと推し進める流れになかった」。政治評論家の小林吉弥氏はそう話す。冷戦の終結や旧ソ連の崩壊があり「急いで成立させる必要性は薄れた」。信介氏が87年、晋太郎氏も91年と相次いで亡くなり、旗振り役が消えたのも一因という。

 晋太郎氏に関しては、力を振るいにくい状況もあった。「外相こそ務めたが、当時首相だった中曽根康弘氏とは党総裁選で競った間。田中派に担がれた中曽根政権で、福田派の晋太郎氏はさほど重きを置かれず、政権中枢と距離があった」(小林氏)

◆晋三氏の登場と「特定秘密保護法」

 晋太郎氏の死から15年たった2006年、晋三氏は首相に就いた。思想新聞はここぞとばかりに「スパイ防止法制定急げ」「法の再上程を」と必要性を訴える見出しを付けた。

 安倍晋三政権は07年、海上自衛隊の情報流出疑惑を機に、「軍事情報包括保護協定(GSOMIA)」を米国と結んだ。米国と協定を交わした国が秘密軍事情報を共有する際、米国と同レベルの秘密保護が求められる。

 短命の第1次政権後、晋三氏は12年末に返り咲いた。翌137月の参院選で衆参ねじれ国会が解消したのを受け、力に任せた政権運営を展開。衆参両院で採決を強行して成立させたのが「特定秘密保護法」だ。

 防衛や外交の機密情報の漏洩ろうえいを厳罰化する同法は当時、スパイ防止法との類似点が指摘された。知る権利を侵す危うさをはらむが、思想新聞は「安保体制が大きく前進した」と持ち上げた。その一方、諜報ちょうほう活動をより強く取り締まる内容を盛り込んだスパイ防止法を制定するよう促した。

◆「教団系は自民党のいたるところに」

 「晋三氏が秘密保護法を成立させたがったのは祖父、信介氏への思いの強さ、教団との関係性からかもしれない」

 旧統一教会に詳しいジャーナリストの鈴木エイト氏はそう推し量る。

 ただ、教団と必ずしも考えが完全一致していないとも。「秘密保護法は政府が探られたくないことを追及されないようにした。一方、教団がスパイ防止法で求めるのはより踏み込んだ内容。両者の関係はまだ分からないことが多い。さらなる解明が必要だ」と語る。

 名古屋学院大の飯島滋明教授(憲法学)は、晋三氏が対米関係を考え、秘密保護法制定に動いたとみる。「スパイ防止法も秘密保護法も、政府による情報隠しを可能にし、戦争できる国づくりのための法。一気に進めると反発が大きいので、規制できる言動の範囲が限られる秘密保護法を足掛かりとしたのだろう」

 共同歩調が浮き彫りになった安倍家と教団系の過去。右派色の強い教団と一国の首相との関わりに、飯島氏は警鐘を鳴らす。

 「スパイ防止法が制定されれば、情報の入手はさらに制約される。基地監視はスパイ活動とされ、反基地運動が抑え込まれかねない。教団は自民党のいたるところに食い込んでいる。たださなければ、過去と似た動きが繰り返される」

◆デスクメモ

 陰に陽に勝共連合を支援したという晋太郎氏。死去から2年後、同じ山口県の選挙区から立候補したのが晋三氏だ。東京育ちで、選挙区との関わりは希薄。初当選を支えたのは父と縁深い面々だろう。では、勝共連合はどうか。恩返しのごとく、陰に陽に動いたのか。どうにも気になる。(榊)

(貼り付け終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げたが、2023年10月7日から始まった、イスラエルとハマスとの間の紛争は半年を超えようとしている。イスラエルはガザ地区での地上作戦を展開し、パレスティナ側の民間人に多数の死傷者が出ている。最近では西側諸国の支援者たちがイスラエル軍の攻撃で死亡するという事件も起きた。ジョー・バイデン政権はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と政府の対応に、極めて強い不満を持っていることが報じられている。

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも書いたが、アメリカの二大政党である共和党と民主党のそれぞれの支持者で、ウクライナ戦争とパレスティナ紛争へのアメリカの支援(対ウクライナ、対イスラエル)について、姿勢が異なる。民主党支持者は、ウクライナ戦争でウクライナ支援を支持し、中東紛争でイスラエル支援には不熱心である。一方、共和党支持者は逆で、ウクライナ支援には不熱心であり、イスラエル支援には熱心である。昨年の段階で、そのような世論調査の結果が出ており、このことは拙著でも紹介した。

 昨年11月の世論調査に比べて、今年3月中旬の世論調査の数字は、イスラエルへの支援に反対が増えており、過半数が反対となったということだ。民主党支持者、無党派層では反対が大幅に増え、共和党支持者の中でも支持が減ったということである。

 イスラエルによるガザ地区での地上作戦でのパレスティナの民間人犠牲者については、世界各国で報じられ、アメリカ以外の国々では、イスラエルの行動に反対が多くなっていた。アメリカはイスラエルの強力な支援国であるが、そこでも反対が多くなっている。民主党であるバイデン政権は、この世論の動きを「利用」して、イスラエルへの支援の削減や、イスラエルのガザ地区での軍事行動に制限をかけるようとするだろう。これは、今年実施される大統領選挙を見据えた動きとなる。支持基盤である民主党支持者からの指示を固めるためにも、イスラエルに対しての何らかの動きは必要となる。大統領選挙に向けて、バイデン大統領は経済回復を実績とアピールしたい。それに加えて、外交、対外政策の面でも成功をアピールしたい。ウクライナ戦争が泥沼の状況になっている中で、中東紛争は、政権にとって対処すべき問題であり、そこで成功(停戦など)をアピールできれば、政権支持率の上昇に資することになり、大統領選挙でも有利に働く。アメリカとしてはまずイスラエルに停船を促す、圧力をかけるということになるだろう。更には、ネタニヤフ首相の「交代」「更迭」ということも視野に入っているかもしれない。

(貼り付けはじめ)

アメリカ人の過半数が現在、ガザ地区におけるイスラエルの行動に反対だ(Majority in U.S. Now Disapprove of Israeli Action in Gaza

-昨年11月から現在までで支持が50%から36%に下落した。

ジェフリー・M・ジョーンズ筆

2024年3月27日

「ギャロップ」

https://news.gallup.com/poll/642695/majority-disapprove-israeli-action-gaza.aspx

ワシントンDC発。昨年11月の時点では、イスラエルのガザ地区での軍事行動を僅差で支持したアメリカ人が、現在、この作戦に大差をつけて反対をするようになっている。現在、55%のアメリカ人がイスラエルの行動に反対し、36%が支持を表明している。
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最新の世論調査結果は、3月1日から20日までのものだ。イスラエルとハマスの戦争は5ヶ月間続き、数万人のパレスティナ人と1000人以上のイスラエル人が亡くなっている。ガザ地区の大部分は破壊され、今もそこに住むパレスティナ市民に人道援助を届ける努力を難しくしている。国連とジョー・バイデン政権を含む国際社会は停戦(cease-fire)を呼びかけているが、イスラエルとハマスの両陣営は合意できない状況だ。

今回の世論調査は、月曜日に国連安全保障理事会がラマダン期間中の停戦を求める決議を可決する前に終了した。アメリカが拒否権を行使せず、棄権したため決議は可決された。アメリカは以前に停戦を求める他の決議には拒否権を行使した。

アメリカの成人の74%は、イスラエルとハマスの状況に関するニュースを注意深く見ていると回答している。これは昨年11月に測定されたギャラップ社の世論調査の結果の72%とほぼ同じである。アメリカ人の3分の1(34%)は、状況を「非常に注意深く」注視していると答えた。

イスラエルの軍事行動に対する反対は、アメリカ人がどれだけ紛争に注目しているかにかかわらず、ほぼ同様である。しかし、注目度が低い人ほど、この問題に関して意見を持たない傾向が強く、その結果、注目度が高い人よりも支持率が低くなっている。
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●共和党支持者は肯定的スタンスを維持しているが、無党派層は決定的に否定的になっている

アメリカにおける3つの主要な政治的なグループ分け全てで、イスラエルのガザ地区での行動を昨年11月時点よりも支持しなくなっている。これには、民主党支持者と無党派層の支持率が18ポイント低下したことと、共和党支持者の支持率が7ポイント低下したことが含まれる。

無党派層は、イスラエルの軍事行動に対する見方が分かれていたが、反対へとシフトした。民主党の支持者は、昨年11月の時点で既に過半数が反対していたが、現在はさらに反対を強めており、賛成が18%、反対が75%となっている。

共和党支持者は依然としてイスラエルの軍事行動を支持しているが、賛成が71%から64%に減少した。
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イスラエルの行動に対する民主党所属の連邦議員たちの間で、反対意見が拡大していることは、ジョー・バイデン大統領にとって、彼の最も忠実な支持者の間でもこの問題が困難であることを浮き彫りにしている。民主党を批判する人々の中には、バイデンは停戦を促進し、紛争地域に巻き込まれたパレスティナ市民を支援するためのより強力な行動を取らず、イスラエルに寄り添いすぎていると考えている人がいる。

バイデンの中東情勢への対応に対する支持率は27%で、今回の調査でテストされた5つの質問の中では最低の数字であった。これは、バイデンがイスラエルとパレスチティナの情勢をどのように扱っているかを支持する民主党支持者たち(47%)が、経済、環境、エネルギー政策、外交問題など幅広い分野でのバイデンの扱いを支持する民主党議員よりもはるかに少ないためである。これらの問題に関しては、民主党支持者の66%以上がバイデンを支持している。

中東情勢に関するバイデンの低評価をさらに促しているのは、無党派層のわずか21%、共和党員の16%が、この問題でのバイデンの対処を支持していることだ。

それでも、中東紛争がバイデンの政治的地位に明らかな打撃を与えている訳ではないようだ。昨年10月と11月の調査では支持率が37%であったが、今回は40%となり、これは、おそらくアメリカ国民のアメリカ経済への信頼が高まっていることが理由となるだろう。

●結論(Bottom Line

イスラエルとハマスの戦争が長引くにつれ、戦争における同盟国イスラエルの行動に対するアメリカの支持は低下している。ギャラップ社が今年2月に実施した世論調査によると、アメリカ人はイスラエルとパレスティナ自治政府の両方に対してあまり好意的でないという結果が出ている。

多くの問題でそうであるが、アメリカ国内は党派別で激しく対立している。共和党支持者の大半は、秋の調査よりは少ないものの、イスラエルの行動を支持しており、民主党支持者の大半は反対している。無党派層の意見は、民主党支持者の意見にかなり近づいている。

アメリカ人はバイデンの紛争への対応を低く評価しているが、バイデンの大統領としての仕事ぶり全般に対する支持率は紛争が始まる前より下がってはいない。中東紛争は、アメリカ人が、アメリカが直面している最重要な問題を挙げるという質問では上位にランクされていない。また、アメリカ人がアメリカの重要な利益に対する重大な脅威として、いくつかの国際問題をそれぞれ評価する際にも上位にランクされていない。しかし、中東紛争は、この問題に深い関心を持ち、バイデン大統領の対応に憤慨している、バイデンに投票するであろう民主党支持者の投票率を下げることで、大統領に打撃を与える可能性がある。

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。「西側諸国対西側以外の国々」という構造で国際政治を分析しています。是非手に取ってお読みください。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 インドネシアの新大統領に選出されたプラヴウォ・スビアント国防相が選挙後の初めての外遊として、中国と日本を訪問した。中国だけ、日本だけではなく、両国を訪問したという点はインドネシアの置かれている立場をよく表している。インドネシアは東南アジアの地域大国として、アジア全体の地域大国である中国と日本の橋渡しができる国である。思い返せば、北朝鮮の拉致被害者曽我ひとみさんが夫ジェンキンズ氏と娘たちと再会を果たしたのはインドネシアの首都ジャカルタでのことだった。

 プラヴウォ国防相(新大統領)は、インドネシア共和国の建国の父スカルノを失脚させ、第2代大統領となり、独裁者として権勢を振るったスハルトの娘婿だ(1983年に結婚・現在別居中という話がある)。陸軍の中で栄進を重ね、陸軍中将となった時に、民主化でスハルトが失脚し、軍を追われることになった。軍籍をはく奪された後は海外で亡命生活をしながら、ビジネスを展開し成功、資産は約1億5000万ドル(約225億円)と見られている。スハルトの娘婿、東ティモール派遣軍の司令官時代に、独立運動の活動家の殺害や弾圧、人権侵害に関わった疑いというマイナス面がありながら、政界に進出し、大統領選挙に何度も出馬している。

 2019年の大統領選挙では、二期目を目指すジョコ・ウィドド大統領の対抗馬として出馬し、選挙後には選挙に不正があったと主張し、プラヴウォ支持者が暴動をおこし、死者が出る騒ぎとなった。それほど対立した関係であったが、ジョコ大統領は、プラヴウォを自分の政権の国防相に迎え入れた。そして、今回の大統領選挙では、ジョコ大統領の長男ギブランが、プラヴウォの副大統領となり、実質的に、ジョコ大統領が「後継者」としてプラヴウォを指名し、「お目付け役」として長男をつけるということになった。選挙結果は、プラヴウォの勝利だった。1回目の投票で過半数を取れないので、2回目の決選投票になると思われていたが、1回目の投票で、プラヴウォは58%の得票率で勝利を決めた。

 ジョコ大統領はこれから院政を敷くことになる。プラヴウォは、ジョコ大統領の路線を継承することを公約に掲げている。そして、アメリカをはじめとする西側諸国と、中国をはじめとする西側以外の国々との間でうまくバランスを取りながら、国内経済成長路線を維持する。もし、何か反する動きがあれば、プラヴウォのマイナス面である、過去を掘り返して、大統領の座から追われるということになるだろう。副大統領となるジョコ大統領の長男ギブランが、大統領になるかどうかは不明だが、それもこれから5年での成果にかかっている。インドネシア政治はこれから注目される。

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インドネシア次期大統領 中国 習主席と会談 関係強化を確認

202442 633分 NHK

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240402/k10014409911000.html
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インドネシアの次期大統領のプラボウォ国防相は、当選後、初めての外国訪問先として中国を訪れて習近平国家主席と会談し、双方とも両国関係のさらなる強化を確認しました。

ことし2月に行われたインドネシアの大統領選挙で当選したプラボウォ国防相は、当選後初めての外国訪問として習近平国家主席の招きを受けた中国を訪れていて、1日、北京で習主席と会談しました。

インドネシア国防省によりますと、会談でプラボウォ氏は「防衛分野の協力において、中国は地域の平和と安定を確保するのに鍵となるパートナーの1つだ」と述べ、中国との関係を重視していく姿勢を強調したということです。

中国外務省によりますと、これに対し習主席はプラボウォ氏の当選を祝福し「中国とインドネシアはともに新興国の代表であり、主権や安全保障、発展の利益を守る上で互いをしっかり支持すべきだ」と述べ、両国関係の強化を確認しました。

また、南シナ海をめぐってASEAN=東南アジア諸国連合の一部の国との領有権争いを念頭に「海洋協力を引き続き深めることを望んでいる」と述べ、インドネシアに理解を求めました。

中国としては、ASEANの大国であるインドネシアとの連携を重視する姿勢を改めて示し、地域での影響力を強めるねらいがあるとみられます。

プラボウォ氏は2日、日本も訪れる予定で、岸田総理大臣との会談が調整されています。
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【インドネシア】プラボウォ氏と岸田首相会談、協力強化確認

4/4() 11:31配信  NNAKyodo News Group

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e93ecdf6cc95647af589409f4383d76e4abd06d

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 インドネシア次期大統領のプラボウォ・スビアント国防相は3日、訪問中の日本で岸田文雄首相と会談した。2国間関係や地域情勢について意見交換し、協力関係を強化していくことを確認した。プラボウォ氏の大統領選当選後の外遊先としては、日本が中国に続いて2カ国目となった。

 プラボウォ氏と岸田氏の会談は、午前9時15分から約35分間実施された。岸田氏は、プラボウォ氏に当選の祝意を改めて示し「早々の訪日は日本重視の姿勢と受け止め、大変心強い」と述べた。また「基本的な価値や原則を共有する『包括的・戦略的パートナー』として、2国間関係や地域・国際情勢に係る協力をさらに進めていきたい」とした。

 岸田氏は、2国間関係において、インフラやエネルギー分野で協力するほか、インドネシアが目指している経済協力開発機構(OECD)への加盟に向けて支援することも伝えた。

 プラボウォ氏は「インドネシアと日本は旧友であり、重要なパートナーだ。これまでの良好な関係をさまざまな分野でさらに強化したい」と述べた。安全保障協力をはじめ、農水産業や防災などの分野で、2国間関係を深めることに期待を示した。

 地域情勢を巡っては、東シナ海や南シナ海情勢、北朝鮮への対応、ミャンマー情勢などでも意見交換し、連携を継続していくことを確認した。

 プラボウォ氏は、2月に実施された大統領選の正式結果が3月20日に発表され初当選した。当選後初の外遊で同月31日~4月2日に中国を訪問し、習近平国家主席や李強首相と会談した。

 プラボウォ氏は、憲法上3選が認められておらず2期・10年で退任するジョコ・ウィドド大統領の後任として、1020日に就任する。

 ■木原防衛相とも会談

 プラボウォ氏は3日、木原稔防衛相とも会談した。両者は、防衛省で午前1028分から約50分間会談し、2国間・多国間の防衛協力や交流を強化していくことで一致した。木原氏は、南シナ海での力による一方的な現状変更や緊張を高める行為に強く反対すると表明した。中国の海洋進出を念頭に置いた発言とみられる。

 また木原氏は、海洋国家の両国間において「法の支配に基づく『自由で開かれたインド太平洋』を維持・強化していきたい」と述べた。 

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プラヴウォはインドネシアをどのように主導するか?(How Will Prabowo Lead Indonesia?

-今回の大統領選挙の勝者プラヴウォは選挙運動の中で過去を葬ろうとした。指導者として成功するために、彼は歴史が繰り返されないことを期待している。

サリル・トリパティ筆

2024年2月28日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/28/indonesia-elections-prabowo-leader-human-rights-jokowi/

大統領選挙において2度の失敗を経験した末、今年の2月14日、インドネシアのプラヴウォ・スビアント国防相が大統領選挙で念願の勝利を収めた。プラヴウォは自分の勝利が自分の政治の結果だと考えたいように見えるが、彼の成功はジョコウィとして知られるインドネシアのジョコ・ウィドド現大統領の人気に負うところが大きい。プラヴウォは2014年と2019年にジョコウィの対抗馬として出馬し、いずれも敗れた。しかし、ジョコウィは2019年にプラヴウォを国防相に任命することで、専門家と支持者の多くを驚かせた。ジョコウィの長男であるギブラン・ラカブミン・ラカは、プラヴウォの副大統領候補として出馬した。

インドネシアにおける選挙の最終結果は数週間以内に発表されるが、初期の集計によると、プラヴウォが得票率58%でリードしており、対抗馬のガンジャル・プラノウォとアニエス・バスウェダン(いずれも元州知事)を大幅に上回っている。他の候補者は2月14日の選挙に関して不正があったと主張し、投票結果に異議を唱えるつもりだと述べている。広範な操作の証拠があれば、憲法裁判所は結果を取り消す可能性がある。新大統領は10月まで就任しない。

任期制限により、ジョコウィ大統領は3度目の出馬を妨げられた。今回の選挙は、ジョコウィなら簡単に勝てたであろう。ギブランが副大統領として勝利すると予想されているため、多くのインドネシア人は次期政権がジョコウィの事実上の3期目、あるいは少なくとも継続性を示すものと見なしている。しかし、ジョコウィは大統領職を辞し、未知の領域に入りつつある。プラヴウォを支援することで、自身が今でも関係を持っている、インドネシア闘争民主党(Indonesian Democratic Party of Struggle PDI-P)との架け橋をジョコウィが燃やしてしまうことになった。闘争民主党候補者のガンジャールが3位に終わって、裏切られたと感じるのには十分な理由がある。ガンジャールは、自分の得票数がこれほど少ないとは信じていないと述べている。

プラヴウォはジョコウィの支援なしでは勝利できなかったが、統治するにあたり、ジョコウィに依存する必要はもはや存在しない。退任する大統領のテクノクラート出身の閣僚のうち、プラヴウォの下で引き続き職務を続ける者はほとんどいないと見られているが、プラヴウォはそれを気にしないかもしれない。彼の経済政策はポピュリズム的であり、特にインドネシアの財政赤字を増大させる学校給食プログラムなど補助金の増額提案などがある。対照的に、ジョコウィ政権の財務大臣、尊敬を集める経済学者スリ・ムリャニ・インドラワティは改革派として知られ、かつては世界銀行の専務理事を務めたこともある。彼女がプラヴウォの下で職務を継続する可能性は低い。

タイミングは選挙において、プラヴウォに対してもう1つの利点をもたらした。プラヴウォは、人々の記憶が薄れつつあることを利用して、権力を固めようとしている。選挙期間中、彼はソーシャルメディアを使って若い有権者に自分をアピールし、過去を覆い隠すような、かわいらしいおじいさんとしてのイメージを打ち出した。元陸軍中将の人権に関する記録はあまりに酷いもので、何年もの間、アメリカへの入国が事実上禁止されていた。興味深いことに、プラヴウォは3人の候補者の中で唯一、ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った「インドネシアの次期大統領として人権を守るために何をするか」という質問に答えなかった。インドネシアの有権者の半数以上は1980年代以降に生まれており、プラヴウォが東ティモール(現東ティモール民主共和国)で特殊部隊の司令官を務めていたことなど、おぼろげな記憶しかないことになる。人権団体は、プラヴウォが東ティモールでの人権侵害に関係していると主張しているが、プラヴウォはこれを否定している。

もしプラヴウォが東ティモールでの勤務していた時代以降、ある種の免罪符を持っているように見えたとしたら、それは彼が長年、インドネシアを32年間統治したスハルト元大統領の次女、シティ・ヘディアティ・ハリジャディ(別名ティティーク)と結婚していたからだ。スハルトの息子たちはビジネスに専念し、婿のプラヴウォは軍隊で華々しいキャリアを積んだ。プラヴウォとティティークの結婚はかなり前に終わったが、ティティークは彼の立候補を支持し、今年最後の選挙集会にも彼の側に姿を見せた。2023年12月、プラヴウォは元妻ティティークを自身が率いる政党グリンドラ党の顧問に任命した。

スハルトの長期にわたる統治の間、インドネシアは多くの社会経済指標を改善し、食糧生産を増加させ、識字力を向上させ、外国からの投資を誘致した。しかし、この時代には寡頭制文化の台頭も見られた。スハルトの子供たちは事業で繁栄し、指導者と協力する縁故資本家たち(crony capitalists)が経済を支配した。1980年代に経済を安定させようとした努力にもかかわらず、汚職(corruption)は1990年代半ばまでに大幅に増加した。1997年7月にタイの通貨バーツが急落し、他のアジア通貨もその影響に巻き込まれた。

当時、インドネシアは公的債務を比較的うまく管理していたが、民間部門は、過大評価されているインドネシア・ルピアが安定的に続くとの前提で無謀な借り入れを行い、短期債務を積み上げていた。何かが与えられなければならず、市場はルピアに賭けて、ルピアを暴落させた。インフレと物資不足は避けられず、金融危機は本格的な経済危機(economic crisis)に変わり、その後、政治危機(political crisis)に発展した。スハルトは国際通貨基金(International Monetary Fund)に緊急支援を求め、その後はより実質的なパッケージを求めた。

世情不安(public unrest)が高まり、首都ジャカルタ全土でデモ行進が行われた。1998年5月、治安部隊はトリサクティ大学の学生活動家たちを取り締まり、少なくとも4人の学生が殺された。他にも多くの学生が拉致され、何人かは帰ってこなかった。その後の数日間、大きな変化が迫っていた。戦車が首都を走り回り、煙が充満し、デモ隊は企業を破壊し、スハルトに近い大物たちの邸宅を襲撃した。1998年5月21日、スハルトは辞任した。この出来事はプラヴウォのキャリアを後退させ、今も彼を苦しめている。

プラヴウォは予備役に編入された。プラヴウォは当初、学生拉致の責任を否定していたが、2014年の大統領選挙においては、命令を実行しただけだ、と自らの役割を認めた。

南東アジアはノスタルジックな局面を迎えているようだ。古い秩序への憧れが地域全体の選挙で繰り広げられている。フィリピンを統治するフェルディナンド・"ボンボン・マルコス・ジュニア(Ferdinand “Bongbong” Marcos Jr.)大統領は、彼の父親が1965年から1986年まで大統領を務め、民衆蜂起の後に倒され、1989年にハワイに亡命した。一方、マレーシアでは、1990年代に副首相を務めたアンワル・イブラヒムが首相を務めている。アンワルは1981年から2003年まで、そして2018年から2020年まで再びマレーシアを統治したマハティール・モハマド首相(当時)と対立し、アンワルは1998年に淫行と汚職の罪で投獄された。アンワルは最終的に2022年に首相となった。

多くの国民がスハルト時代の暗黒面を忘れていることを願いつつも、プラヴウォがインドネシアで政権を取ったことは、この傾向を裏付けているようだ。残る疑問は、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかということだ。ジョコウィの息子であるギブランは、スラカルタ市長を務めただけで、政治経験は浅いが、いつかは大統領になりたいと考えているようだ。もしプラヴウォがギブランを脅威と見なせば、2人の同盟関係に綻びが生じるかもしれない。72歳のプラヴウォは、スハルトが辞任したときより5歳若いだけで、選挙チームは選挙運動中に脳卒中の治療を受けたという噂を否定しなければならなかった。

インドネシアの専門家たちは、ワヤン・クリット[wayang kulit](影絵人形劇[shadow puppetry])と呼ばれる民俗劇を、この国の表向きには不可解な政治のメタファーとして用いることが多い。人々はスクリーンの向こう側で何が起きているのかを垣間見ることしかできないし、目に見えるものが正確に出来事を表しているとは限らない。スハルトはそのような曖昧さの達人(the master of such ambiguities)だった。しかし、プラヴウォはもっと率直で険悪で、短気なことで知られている。彼がインドネシアを統治する際に、ジェモイ(gemoy、かわいい)イメージを維持できるかどうかは未知数だ。

プラヴウォの闘争的な性格は、西側の諸大国に説教することを厭わないということであり、有権者にアピールできるかもしれない。過去には、インドネシアにとって他国からの民主政治体制に関する教訓は必要ないと発言し、ジャカルタのパーム油輸出への依存をめぐるヨーロッパ諸国からの批判には、植民地時代の歴史を引き合いに出して歯向かった。大統領選挙期間中、ヨーロッパ連合(EU)の森林破壊に対する政策を批判し、プラヴウォは次のように述べた。「茶、コーヒー、ゴム、チョコレートを植えさせたのはヨーロッパ人だ。そして今、私たちが森林を破壊していると言うのか? 私たちの森林を破壊したのはあなたたちだ」。この態度は、礼儀正しいポピュリスト(polite populist)というジョコウィの評判とは対照的である。

更に、狭い目的によって同盟関係が変化する多極化した世界では、プラヴウォはスハルトの型にはまり、独立した路線を作り上げるかもしれない。インドネシアと中国は南シナ海の係争中の島々の所有権を主張している国の1つだが、プラヴウォは中国への投資にヨーロッパの投資家たちよりも制約が少ないため、中国に言い寄っている。 2023年6月にシンガポールで開催されたシャングリラ対話(Shangri-La Dialogue)で、プラヴウォはモスクワで作成された可能性が高い、ロシアのウクライナ戦争に対する和平案を提案し、多くの地域アナリストやインドネシアのメディアを驚かせた。

プラヴウォは、インドネシアの広大な群島全域で学校給食費の補助を拡大する計画など、国内の支持を補強するために危険なポピュリスト的施策に頼ることになりそうだ。彼のチームは、初年度に76億8000万ドルもの費用がかかる可能性があると述べている。それは称賛に値するが、給食費補助計画はインドネシアの予算を圧迫し、財政赤字を拡大させる可能性がある。そうなればインフレにつながり、プラヴウォの側にはジョコウィ政権のテクノクラート的な有能な大臣たちはいなくなるだろう。プラヴウォは、ジョコウィのようなテクノクラート的な大臣たちを味方につけることはできない。彼の過去の気質がどうであれ、それはインドネシアに危険をもたらすかもしれない。

結局のところ、過去はインドネシアに必要なことの序章であってはならない。世界で4番目に人口の多い国として、その安定は重要であり、民主政治体制への移行(transition to democracy)を確固たるものにしなければならない。成功するためには、プラヴウォはインドネシアの若い人々の願望に応えることができる21世紀のリーダーになる必要がある。そして、技術力だけでなく、実質を提供する必要がある。

※サリル・トリパティ:ニューヨークを拠点とするライター。1990年代から東南アジアから報道を続け、その中にはジャカルタからスハルト政権崩壊も含まれている。著書に『悔い改めない大佐:バングラデシュ戦争とその不穏な遺産(The Colonel Who Would Not Repent: The Bangladesh War and its Unquiet Legacy)』があり、現在はグジャラートについての本を執筆中。

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インドネシア大統領選挙の勝者には暗い過去とかわいいイメージがある(Indonesia’s Election Winner Has a Dark Past and a Cute Image

-プラヴウォ・スビアントの記録は民主政治体制にとって良い兆候ではない

ジョセフ・ラックマン筆

2024年2月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/14/prabowo-indonesia-election-democracy-jokowi/

ジャカルタ発。「神のご加護で、1ラウンド、1ラウンド、1ラウンドだ。プラヴウォ、プラヴウォ」。歓喜に沸く群衆が、ジャカルタのスタジアムで次期大統領に決まったプラヴウォ・スビアントが勝利演説をするために到着したときにこのように大合唱した。約2億人のインドネシア国民が投票権を持ち、その52%が40歳以下という圧倒的な差で、旧独裁政権と深いつながりを持つ72歳の元陸軍中将を選んだ。

彼は変わったと言う人たちもいる。また、ジョコ・ウィドド現大統領(通称ジョコウィ)の選挙運動への暗黙の支援によって、既に緊張状態にあるインドネシアの民主政治体制にとって、ジョコウィの登場は悪い知らせになると懸念する声もある。ジョコ・ウィドド現大統領は、かつてのライバルの選挙運動を黙認していた訳ではない。インドネシアのヒューマン・ライツ・ウォッチのヴェテランのメンバーであるアンドレアス・ハルソノは、「ジョコウィは、インドネシアをかつての独裁者スハルトの、新秩序の闇に逆戻りさせる扉を開いてしまった」と語った。

最も明らかな心配の種は、プラボヴウォの伴走者であるギブラン・ラカブミン・ラカがジョコウィの息子であるという事実だ。父親が政治家としてのキャリアをスタートさせた、スラカルタ市長として2年強の政治経験を持つ、この36歳が立候補資格を得たのは、40歳以上という従来の制限を例外とする憲法裁判所の判決が最終的に下ったからだ。

国家は選挙運動の他の部分でも同様の判断を下している。党指導者たちに対する汚職捜査が浮上したが、ジョコウィがプラヴウォを支援することになった後は消えた。野党陣営は警察が嫌がらせをし、人々にプラヴウォを支持するよう圧力をかけていると訴えた。そして、インドネシア人への社会援​​助への支出が急増しただけでなく、場合によってはプラヴウォの選挙運動に関係する人々によって配られたとさえ伝えられている。前述のハルソノは「多くの法学教授や他の学者は、これはスハルト後のインドネシアでこれまで行われた中で最も汚い選挙であると述べた」と述べた。

大統領選挙に敗れた2人の候補は現在、開票における大規模な不正を主張している。結果を覆すのに必要な規模の、信頼に足る証拠はまだない。インドネシアの世論調査の専門家であるセス・ソダーボーグは、「あちこちに不正や問題があるのは確かだと思う。しかし、何千万票もの偽の投票があれば、その痕跡が残るだろう」と語った。

それでも、選挙運動中の選挙妨害は、多くの人々にとって、特にプラヴウォ自身の過去と組み合わせれば、懸念が存在することになる。特にプラヴウォ自身の過去と合わせればなおさらだ。彼が最初に注目されるようになったのは、東ティモールでの流血の対反乱作戦中にインドネシアの特殊部隊を指揮していた時だ。プラヴウォは将官として、抵抗運動の指導者ニコラウ・ロバトの殺害に関与した。プラヴウォは東ティモールと西パプアの虐殺の責任者として告発されているが、彼は疑惑について常に激しく否定している。

スハルトの娘との結婚により、プラヴウォは政治的に有名になり、一部の人は彼を潜在的なスハルトの後継者と見なしている。1998年に民主化運動がスハルト政権を崩壊させたとき、プラヴウォは23人の民主活動家誘拐に関与し(うち13人は行方不明で死亡と推定されている)、自ら権力を掌握しようとしたという疑惑がある。

新しい政権によって一時的に失脚させられたプラヴウォは、すぐにインドネシア政界に復帰した。2004年に大統領候補に指名され、2009年には副大統領候補として出馬し、2014年と2019年には大統領選に出馬した。

いずれの時もプロヴウォはジョコウィに敗れた。2019年に敗れたジョコウィは当初、大規模な不正を主張して結果を否定し、8人の死者を出す暴動を引き起こした。ジョコウィはプラヴウォを国防相として政権に参加させることで事態を打開し、多くの人々を驚かせた。

これにより、プラヴウォはジョコウィの後継者となり、多くの若い有権者にとってはかわいらしい老人へと変貌を遂げることになった。それ以前の10年間、プラヴウォの選挙運動は熱狂的な「強者のナショナリズム(strongman nationalism)」によって特徴づけられ、彼はスタジアムの馬の後ろに乗って、熱狂する群衆に対して、外国の破壊的勢力や共産主義について警告を発していた。彼は明らかに日和見主義(opportunism)であるにもかかわらず、過激派イスラム主義グループと同盟を結び、脅威を増大させた。プラヴウォの母親はキリスト教徒であり、彼の兄もキリスト教徒である。

今回、プラボウォは、かつて彼の陣営が、秘密共産主義者・中国系無神論者・キリスト教徒と中傷したジョコウィへの忠誠を仰々しく、繰り返し宣言し、その政策を継続することを計画した。選挙戦では、ナショナリズムの隆興が、外国人たちがインドネシアを没落させ、富を盗むことへの警告として感じられた。しかし、選挙戦で最も目立ったのは、「ジェモイ(gemoy、かわいい)」というイメージの宣伝だった。ソーシャルメディアは、父親のように不器用に踊ったり、猫を抱っこしたりする動画や、彼の顔をピクサーのアニメのように描いたもので埋め尽くされた。

特に若い有権者たちは、プラヴウォのイメージが気に入り、おそらく彼の過去を知らずに、彼に群がった。プラヴウォの勝利演説を待つ群衆の中で、大学の工学部で学ぶ学生のファウザン・ディスマスは、プラヴウォは「タフ(tough)」だから好きだと明言した。しかし、過去の人権侵害疑惑やスハルトとのつながりについて尋ねられると、ディスマスは「そのことについてはよく知らない」と言葉を濁した。彼は「私はまだ生まれていなかった」とも述べた。

それでは、次はどうなるのか?

国際的には、インドネシアの姿勢や立場が大きく変わることはないだろう。アメリカも中国もインドネシアに言い寄ってきているが、インドネシアは長い間、国際問題における中立(neutrality)と非同盟(nonalignment)の原則を堅持してきた。プラヴウォは、インドネシアの立場を冷戦時代のスイスやフィンランドに例えて、この姿勢への関与を強調している。

それでも、プラヴウォの大げさな性格と鋭敏なナショナリズムは、時折驚きをもたらすかもしれない。インドネシアは南シナ海における中国の領有権に異議を唱え続けており、その領有権はインドネシアが「北ナトゥナ海(North Natuna)」と呼ぶ海域と重なっている。昨年8月、プラヴウォはロイド・オースティン米国防長官との共同声明を発表し、一時的に対中強硬路線を取るように見えた。しかし、その2カ月前、シンガポールで開かれたシャングリラ・ダイアログで、彼はウクライナ和平案を提案した。

国内的には、民主政治体制の衰退(democratic decline)を心配する以上に、プラヴウォとジョコウィの同盟関係がいつまで続くかが重要な問題かもしれない。大統領選挙期間中、詳細な政策論議は欠けていたが、プラヴウォはインフラ整備、インドネシアの天然資源の「川下化(downstreaming)」、ボルネオ島への新首都建設などでジョコウィに追随することを声高に約束した。しかし、プラヴウォは気性が激しいことで知られ、何十年もの間、指導者への野心を抱いてきた。果たして彼は前任者の影に隠れていることに満足するのだろうか?

もしプラヴウォがこれに反旗を翻す場合、ジョコウィの影響力は限られたものになるかもしれない。ジョコウィの息子は副大統領かもしれないが、その役割にはアメリカと同様、大統領が譲り渡したいと思う以上の正式な権限はほとんどない。

ジョコウィはまた、自分自身の政治的手段も持っていない。彼はまだ形式的にはインドネシア闘争民主党(PDI-P)のメンバーだが、闘争民主党が推薦した候補者ガンジャル・プラノウォ元中部ジャワ州知事よりもプラヴウォを非公式に支援したことで、その闘争民主党との関係を繋ぐ橋は完全に焼け落ちてしまった。一方、彼のもう一人の息子であるケーサン・パンガレップが9月に引き継いだインドネシア連帯党という小政党は、国民評議会に議席を得るのに十分な票を得ることができなかった。

プラヴウォも72歳で、健康状態が良くないと噂されている。世界第3位の民主政体国家が、事業経営にはある程度成功したが、かつて父親が市長をしていた市の市長を2年間務めた経験しかない若者の手に委ねられることになるかもしれない。インドネシアのヴェテランのテクノクラートの中には、どちらがより心配なのか分からないというひとたちもいる。 プラヴウォ大統領か、ギブラン大統領か、どちらの方が酷いことになるのか?

※ジョセフ・ラックマン:インドネシアと東南アジアからの報道を行うフリージャーナリスト。ツイッターアカウント:@rachman_joseph

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)が刊行されました。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年2月にインドネシア大統領選挙が実施され、プラヴウォ・スビアントが大統領に当選した。インドネシアはジョコ・ウィドド大統領政権下、経済発展を遂げ、国際政治、世界経済においてその存在感を増している。これからの10年間で更に成長を遂げ、重要な国となるだろう。今回は、少し長くなるが、インドネシア政治について書いていく。

インドネシアは東南アジアにある島国だ。以下の地図にあるように、約1万5000の島からなり、広大な国土を誇る。スマトラ、ジャワ、カリマンタン、スラウェシ、ニューギニアが主要な島だ。この国土に、約2億7000万人(世界第4位)が住んでいる。世界最大のイスラム教国だ。

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インドネシアの地図

2020年のインドネシアの年齢の中央値は約31歳(2024年)だ。日本は世界第2位の48.6歳だ(1位はモナコの55.4歳)。インドネシアは大変若い国であり、これから若い人々が労働者・消費者として、元気に経済活動、社会活動をしていく。それが更なる経済発展につながる。若い人々が多い状況を「人口ボーナス」と呼ぶ。インドネシアは人口の面から見ても、これから大きく発展していく国だ。以下に、インドネシアと日本の「人口ピラミッド(population pyramid)」を載せる。図の下の方が若者層で、インドネシアは「釣り鐘型(若年層から中年層が多い)」、日本は「極端なつぼ型(老年層が多く、若者層が少ない)」となっている。私が最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』で紹介した世界で言われている言葉「ヨーロッパは博物館(美術館)、日本は老人ホーム」そのものだ。

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インドネシアの人口構成(2020年)

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日本の人口構成(2021年)

●優秀な指導者の下で着実に経済成長を続けている

インドネシアの名目GDPは約1兆ドル(約143兆円)であり、現在のところ、世界第16位に位置している。GDPが1兆ドルを超える国々で構成される「1兆ドルクラブ(Trillion Dollar Club)」に2017年に入った。「1兆ドルクラブ」に入るということは、発展途上国から脱し、地域の大国になったということだ。インドネシアは東南アジア初の「1兆ドルクラブ」のメンバーとなった。更に言えば、西側以外の国々(ザ・レスト)の中核をなす国になった。

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世界のGDP上位国のリスト

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「1兆ドルクラブ」のメンバー国

以下のグラフにある通り、インドネシアはこれまで5%以上の経済成長率を維持し、着々と経済発展を続けている。インドネシアは21世紀に入って、安定的に経済成長を続けている。これは、天然資源に恵まれたということもあるが、何よりも国家の指導者がしっかりしているからだ。下のグラフにあるように、2004年から2014年まで大統領を務めたスシロ・バンバン・ユドヨノ(Susilo Bambang Yudhoyono、1949年-、74歳)、2014年から大統領を務めるジョコ・ウィドド(Joko Widodo、1961年-、62歳)の下で、インドネシアは着実な経済成長を続けている。

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2005年から2019年まで(コロナ前)のグラフ

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2019年(コロナ期間を含む)からのグラフ

●「インドネシアの田中角栄」と言うべき偉大な指導者ジョコ・ウィドド(愛称はジョコウィ)大統領

インドネシアは1945年にオランダから独立してから、初代大統領スカルノ(Sukarno、1901-1970年、69歳で死 在任:1945-1966年)と第2代スハルト(Soeharto、1921-2008年、86歳で死 在任:1967-1998年)の政権が長く続いた。1998年にスハルトが失脚後、第3代バハルディン・ユスフ・ハビビ(Bacharuddin Jusuf Habibie、1936-2019年、83歳で死 スハルト失脚後に副大統領から昇格、在任:1998-1999年)、第4代アブドゥルラフマン・ワヒド(Abdurrahman Wahid、1940-2009年、69歳で死、国会で罷免された、在任:1999-2001年)、第5代メガワティ・スティアワティ・スカルノプトゥリ(Megawati Setiawati Sukarnoputri、1947年-、76歳、副大統領から昇格 在任:2001-2004年)と短命な大統領が続いた。

国民による大統領直接選挙で選ばれた、第6代ユドヨノ、第7代ジョコがそれぞれ、憲法で定められた任期(2期10年まで)を全うしている。インドネシア政治が安定したのは2004年からだ。ユドヨノ大統領、ジョコ大統領がインドネシアの経済成長をけん引したのは既に書いた通りだ。安定した政権の下、工業化とインフラ整備が進んだ。特に、ジョコ大統領の経済政策は、ジョコ大統領の愛称の「ジョコウィ」を取って、「ジョコウィノミクス(Jokowinomics)」と呼ばれ、高く評価されている。

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インドネシア歴代大統領の一覧

現在のジョコ・ウィドド(愛称はジョコウィ)大統領(第7代)は、「父が誰々」「祖父が誰々」というようなエリートの出身ではない。スラム街で育ち、苦労して大学を卒業し、元々は家具製造業で成功したビジネスマンだった。20代で自分の会社を興したが、騙されて会社を倒産させたこともある。その後に見事に復活するなど、苦労を重ねた。2005年に闘争民主党に所属して、ジャワ島中部の小さな町スラカルタの市長(在任期間:2005-2012年)、首都ジャカルタの知事(在任期間:2012-2014年)を務めた。都市計画で立ち退きを迫られて、反対運動を起こした住民たちのところに直接出向いて、何十回も一緒に食事をし、最終的に説得に成功したり、自然災害が起きた際にはいち早く駆け付けたりなど、類まれな行動力を見せた。スラカルタ市長、ジャカルタ知事としての実績を積んだジョコは国民的人気を高めていった。

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メガワティ(左)とジョコ大統領

1998年の結党以来、闘争民主党の党首を務めているメガワティ元大統領は、スカルノの長女ということで、スハルト政権末期の1990年代に国民的人気を得た。しかし、2004年、2009年の大統領選挙で、ユドヨノに敗れた。この雪辱を果たし、党勢の拡大を図るため、メガワティは2014年の大統領選挙に自分が出るのではなく、国民的人気の高いジョコ・ウィドドを大統領選挙に出馬させることにした。ユドヨノ側は、右派政党の「グリンドラ党(Partai Gerakan Indonesia RayaGerindra Party)」の党首で、スハルトの娘婿、元陸軍中将というエリートのプラヴウォ・スビアント(Prabowo Subianto Djojohadikoesoemo、1951年-、72歳)を候補者に立てた。2014年の大統領選挙は、メガワティにとっての大きな賭けとなったが、この賭けに勝った。ジョコは大統領になり、闘争民主党は党勢を拡大し、国会で第一党となった。2019年の大統領選挙でも、ジョコ大統領がプラヴウォを破った。

ここで、インドネシアの政党について簡単に説明すると、インドネシアは、30年にわたって大統領として君臨した、スハルト時代に、政権を支える与党として「ゴルカル(Golkar)」という組織があった。そして、政府が認める合法野党として、イスラム系の「開発統一党(Partai Persatuan PembangunanPPPUnited Development Party)」と非イスラム系の「インドネシア民主党(Partai Demokrasi IndonesiaPDIIndonesian Democratic Party)」があった。メガワティは元々インドネシア民主党に所属していたが、島内の権力争いのために、追い出される形になって、「闘争民主党(Partai Demokrasi Indonesia-PerjuanganPDI-PIndonesian Democratic Party of Struggle)」を結成した。現在、インドネシアには10くらいの政党があるが、大きいものは、ゴルカルと闘争民主党だ。

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現在のインドネシアの政党一覧

ジョコ大統領の人気ぶり(支持率は70%を超える)に危機感を募らせたメガワティは、「憲法を改正して大統領の人気制限を撤廃しよう」「新型コロナ騒ぎで活動が停滞した2年分は延長しても良いではないか」という声を潰し、ジョコ大統領の任期延長の動きを阻止した。このために、ジョコ大統領とメガワティの間はうまくいっていない。

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ジョコ大統領の支持率の変遷

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インドネシアの現在の政治状況

今回の大統領選挙では、ジョコ大統領が所属する闘争民主党からガンジャル・プラノウォ(Ganjar Pranowo、1968年-、55歳)という人物が出馬している。しかし、ジョコ大統領は、どの候補者に対しても公的に支持を表明していない。

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大統領選挙候補者の顔ぶれ

ジョコ大統領は、自分が2014年、2019年の大統領選挙で戦ったプラヴウォを閣内に防衛相として起用し、今回の大統領選挙では、自分の長男ギブラン(Gibran Rakabuming Raka、1987年-、36歳)を副大統領候補としてプラヴウォつけるという、乾坤一擲(けんこんいってき)の、政治的に素晴らしい一手を打った。こうして、メガワティを抑えることに成功した。ギブランも父ジョコ大統領と同じく、闘争民主党に所属していたが、離党して副大統領候補となった。

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ギブラン(左)とプラヴウォ

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プラヴウォ(左)とジョコ大統領

プラボウォは、政敵であった、ジョコ・ウィドドに、2015年から、ジョコ大統領と協力関係にあり、後継者に選ばれた。もっと露骨に言えば、ジョコウィは、プラヴウォに自分の長男を副大統領として監視役をさせて、院政を敷く。プラヴウォはどうしてもなりたかった大統領になる、その代わりに、ジョコウィ路線を継承する。このようにして、ジョコ大統領は大統領を退任しても、後任の大統領になるプラヴウォに、自分の政策を継続遂行させる手はずを整えた。しかし、だからと言って、メガワティと喧嘩をして、闘争民主党を割るとか、メガワティを党から追い出すということはしない。大きく、長期的な構えをしている。ここもまた政治家として凄いところだ。闘争民主党は今回、プラヴウォに敗れたが、国民評議会選挙では第一党になった。闘争民主党は野党の立場となるが、ジョコ大統領路線の警鐘をプラヴウォが堅持する限り、政権に対して敵対的な姿勢を取ることはないだろう。

ジョコ大統領は、2023年9月に次男のケーサン・パンガレップ(Kaesang Pangarep、1994年-、29歳)をインドネシア連帯党(Partai Solidaritas IndonesiaPSIIndonesian Solidarity Party)の党首に就任させた。この政党は2014年にできたばかりで、若者や女性の権利を主張する政党だ。現在は国会議員を出していない。しかし、今回の大統領選挙と同時に実施される国会議員選挙では、国会での議席獲得が期待されている。インドネシア連帯党が国会で議席を得れば、プラヴウォ大統領とギブラン副大統領を支える与党の立場になる。ジョコ大統領は自分の息子たちを政界に送り込み、自分の政策の継続性を確保する。

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ケーサン・パンガレップ(右)、オバマ元大統領、ウィドド大統領

インドネシアは、ジョコ・ウィドド大統領が敷いた経済成長路線を継続する。そのために、ジョコ大統領は着々と段取りを整えている。自分が所属している闘争民主党のメガワティ党首・元大統領と喧嘩をしないが、政治的なライヴァルだったプラヴウォを取り込むことで、結果として、メガワティの力を抑えることに成功した。ジョコ大統領はまだ62歳と若い。これから少なくとも10年は仕事ができる。そして、この10年は世界にとっても、インドネシアにとっても重要な10年となる。それは、これからの10年で世界の構造が大きく変化するからだ。これから伸びていく、非西側陣営の重要なメンバーとして、インドネシアは偉大な指導者の下、発展を続けていく。

(貼り付けはじめ)

インドネシアの選挙は与党である闘争民主党にとって何を意味するか(What Indonesia’s Election Result Means For the Ruling PDI-P

20年ぶりに野党に転落した闘争民主党(PDI-P)は次期政権の権力をチェックする重要な役割を担うことになる。

ヴィルディカ・リスキー・ウタマ筆

2024年2月16日

『ザ・ディプロマット』誌

https://thediplomat.com/2024/02/what-indonesias-election-result-means-for-the-ruling-pdi-p/

水曜日、インドネシアでは、大統領選挙と国民議会および地方議会の選挙が同時に行われた。その結果、複雑な政治情勢が明らかになった。各調査機関と「コンパス」の毎日の研究開発からの簡単な集計に基づくと、与党インドネシア闘争民主党(PDI-P)は大統領選挙で後退に直面したが、国民議会選挙では好成績を収めた。公式結果は来月まで発表されないが、闘争民主党の現在の位置と果たすべき役割を明確に示している。

闘争民主党は、最近まで中央ジャワ州知事を務めていた大統領候補ガンジャール・プラノウォが得票率約16から18%に留まり、大統領選挙戦で大きな課題に直面した。これは、24から26%を獲得した元ジャカルタ知事アニエス・バスウェダンや、各種速報結果によると約56から58%の得票率で圧倒的な勝利を収めた最終的な勝利者プラヴウォ・スビアント国防大臣を大きく下回った。プラヴウォの勝利はインドネシア政治の極めて重要な瞬間を示し、有権者の志向の変化と政治勢力の再編の可能性を示している。

特に中央ジャワ、東ジャワ、バリといった伝統的な闘争民主党の拠点でのガンジャール・マフフドの敗北は、党への忠誠心を超えた有権者の力関係の複雑な相互作用を明らかにしている。大統領選挙での敗北にもかかわらず、闘争民主党は国民議会選挙で好成績を収めた。「リトバン・コンパス」の速報集計結果によると、闘争民主党は得票率17から18%を獲得し、国民議会で最も高い得票率を確保し、ゴルカル党、ゲリンドラ党、国民覚醒党がそれに続いた。

闘争民主党の立法府部門での成功は、闘争民主党がインドネシア政治の雄として不朽の強さと回復力を保持していることを再確認させるものだ。この逆説的な変化は、政治的再編成とインドネシアの有権者における新たな分断線の出現という、より広範な物語を強調するものである。また、過去10年間与党であった闘争民主党は、その戦略を再評価し、進化する政治情勢における自らの役割を再定義する必要に迫られている。

立法府選挙における闘争民主党の好成績は、闘争民主党の永続的な強さと回復力の証である。この結果は、立法部門における闘争民主党の本拠を再確認するものである。闘争民主党が政治戦略を立て直し、強大な野党勢力としての影響力を再強化するための重要な足場を提供するものである。

しかしながら、インドネシアにおける競争的権威主義(competitive authoritarianism)への移行を示唆する可能性があるプラヴウォ・スビアントの大統領就任という文脈において、闘争民主党の立法府選挙での勝利の重要性はいくら強調してもしすぎることはない。公平性と平等の原則が侵食される一方で、選挙競争の幻想を特徴とする競争的権威主義は、ウラジーミル・プーティン政権下のロシアの政治路線を彷彿とさせる。

この文脈において、与党政権に対するカウンターバランスとしての闘争民主党の役割は、国の民主政体構造を維持するために不可欠である可能性がある。この変化に対する懸念は、ジョコ・ジョコウィ・ウィドド大統領が選挙結果を自分たちに有利に操作しようと努めたと主張する先週公開された映画「汚い投票」で強調された選挙不正疑惑など、いくつかの要因によるものだ。プラヴウォと副大統領候補ギブラン・ラカブミン・ラカはジョコウィの長男である。さらに、プラヴウォは独裁者スハルトの義理の息子という経歴と人権侵害の経歴から、民主的な原則への取り組みに懸念が生じている。

更に言えば、プラヴウォの支持者の中には、異論を唱える者を警察に通報することで批判を封じ込めようとする傾向があり、民主政治体制の基本的な柱である表現の自由に対する不寛容さを反映している。これらの要素を総合すると、プラヴウォの大統領就任は、選挙の装いはあるが民主政治体制の本質が損なわれた、より権威主義的な統治スタイルへとインドネシアを導く可能性があることを示唆している。

闘争民主党がもたらす反対派としての資産は、この重大な局面において非常に貴重なものとなる可能性がある。国民議会で重要な議席数を獲得している闘争民主党には、民主政治体制の完全性、透明性、説明責任の大義を擁護する機会が出てくる。闘争民主党は立法上の影響力を活用して政府の政策を精査し、改革を主張し、民主的な原則を支持する世論を動員することができる。

更に言えば、闘争民主党が10年間の政権運営を経て野党のベンチに戻ったことは、その政治的アイデンティティを再定義し、草の根の支持基盤とのつながりを取り戻すまたとない機会となる。社会正義、経済的公正、政治的包摂の大義を唱えることによって、闘争民主党はそのイデオロギー的な魅力を若返らせ、インドネシアにおける民主政治体制の先駆者としての地位を強化することができる。

闘争民主党が野党としての役割を受け入れる必要性は、単なる立法バランスの仕組みにとどまらない。それは闘争民主党のイデオロギー的基盤と、インドネシア社会の恵まれない人々や社会から疎外された人々を擁護するという歴史的関与に根ざしている。闘争民主党の左派的傾向は、スカルノ主義(Sukarnoism)または「マルヘーニズム(Marhaenism)」に触発されたもので、社会正義、ナショナリズム、そして庶民(マルヘーン、ordinary people)の力をつけてやること(empowerment)を強調している。このようなイデオロギー的スタンスは、闘争民主党を、エリートの利益を優遇したり、社会的公正を損なうような政策を効果的に批判し、対抗できる政党として自然に位置づける。

野党の役割への復帰は、戦闘的で忠実な草の根基盤を持つ政党としての闘争民主党の本質的な特徴とも一致している。数十年にわたって培われたこの草の根ネットワークは、東証民主党に世論を動員し、非民主的な統治の転換に対する抵抗を組織するための強力なプラットフォームを与えている。闘争民主党にはスハルト時代の、強力な反政府勢力としての名高い歴史があり、その回復力と民主的価値観への献身を示してきた。その後、メガワティ・スカルノプトリの指導の下で闘争民主党は権力を掌握し、スシロ・バンバン・ユドヨノ(2004年-2014年)およびジョコウィ(2014年-2024年)の大統領時代を通じて、政治情勢におけるその重要性をさらに強固なものとした。これら全てによって、闘争民主党はプラヴウォ政権に対する強力な野党勢力となる理想的な立場にある。

強力な野党としての役割は、競争力のある独裁政権の状況において極めて重要であり、与党はしばしば潜在的な挑戦者を取り込むか無力化しようとする。 闘争民主党は、その明確な政治的アイデンティティとイデオロギーの明確さを維持することで、民主的規範への侵食を防ぎ、政治の場が真の論争と議論のための空間であり続けることを保証することができる。これは、少数派の権利を保護し、政府が社会のあらゆる層に対して責任を負い続けることを保証するために特に重要だ。

闘争民主党にとって、野党の地位を受け入れることは、党の将来にとって戦略的な意味を持つ。それは、闘争民主党が不人気な政府の政策から距離を置き、国民の利益、特にウォン・シリク(wong cilik、庶民)のチャンピオンとして自らを位置づけ直すことを可能にする。これは、党のイメージを再構築し、国民の信頼を回復する上で、特に選挙での敗北の余波を受けた場合には、貴重な財産となりうる。闘争民主党は、インドネシアのための明確で首尾一貫した代替ヴィジョンを明示することで、支持基盤を活性化し、現状に幻滅した新たな支持者たちを引きつけることが可能となる。

しかし、野党としての闘争民主党の前途は多難である。建設的な批判と協力の間で微妙なバランスを取らなければならない。闘争民主党の野党共闘が妨害的なものとしてではなく、ガバナンス(統治)を強化し民主的価値を守るための真の努力として受け止められることが肝要である。更に言えば、闘争民主党は、その政治的正当性を損ない、国民議会での発言力を抑圧しようとする試みに対して警戒を怠らないようにしなければならない。闘争民主党は、デジタルメディアと草の根動員の力を活用し、メッセージを増幅させ、その民主的アジェンダに対する国民の支持を喚起しなければならない。

今週のインドネシアでの選挙は、国の民主政体を守る上で、活気と回復力のある野党が極めて重要であることを浮き彫りにした。闘争民主党は国民議会選挙で一貫して成功を収めており、闘争民主党を政治情勢において極めて重要な勢力として位置づけ、プラヴウォ次期政権への動きに対抗できる立場にある。速報結果が、総選挙管理委員会が発表した公式の選挙結果と厳密に一致する場合、闘争民主党は警戒を怠らず、プラヴウォの選挙後の団結という物語の魅力に屈しないことが不可欠である。プラヴウォ政権に協力することは、インドネシアにおける野党の役割を軽減することになる。

政府機構内に強力な抑制と均衡が存在しないことは、国の民主政治体制の健全性に悪影響を及ぼす。インドネシア国民は、十分な情報に基づいた、回復力のある、批判的で明確な反対派を切実に必要としている。歴史的な先例は、闘争民主党が希望すればこの役割を果たす独自の立場にあることを示している。

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元陸軍の実力者がインドネシア大統領選挙での勝利を確実のものとした(Ex-army strongman leader claims victory in Indonesian presidential election

ヘザー・チェン、アンガス・ワトソン、ソフィー・ジオン、キャサリーン・マグラモ(CNN)筆

2024年2月14日

CNN

https://edition.cnn.com/2024/02/14/asia/indonesia-election-prabowo-subianto-intl-hnk/index.html

CNN発。議論が続いている過去を持つ元陸軍大将がインドネシア大統領選挙が勝利を確実のものとした。

国営報道機関アンタラ、CNN系列局CNNインドネシア、ロイター通信が報じた非公式結果によると、プラヴウォ・スビアント(72歳)が開票率約85%の段階で、大統領選挙決選投票を回避するには十分な得票率60%近くを獲得したということだ。初期の集計は非政府シンクタンクによって行われた。水曜日の午後早くに全国の投票所が閉鎖された。

プラヴウォ候補は、水曜日の投開票を前にジャカルタの支持者に対し、ジョコ・ウィドド大統領の長男であるギブラン・ラカブミン・ラカ候補とともに「インドネシア国民全員のため(for all the people of Indonesia)」に政治を行うと語った。

プラヴウォは次のように宣言した。「感謝はしているが、私たちは傲慢になってはいけないし、有頂天になってはいけない。今回の勝利は全てのインドネシア国民のための勝利でなければならない。部族、民族、人種、宗教、社会的背景に関係なく、インドネシアの全ての人々を育て、守り、守るために、私はギブランとともに先頭に立つ」。

非公式の開票速報によると、人気の高いアニエス・ベスワダン前知事は22%弱の得票率で2位となり、ライヴァルのガンジャール・プラノウォが3位となった。

ロイター通信が引用したアニエス陣営、ガンジャール陣営のスポークスマンによれば、両陣営とも初期の結果に異議を唱えており、勝利者が確定したとするには時期尚早だという。

CNNは、早期の投票結果の数字を独自に検証することはできないが、信頼できるシンクタンクによる集計は、インドネシアの過去の選挙で正確であることが証明されている。

水曜日の演説の中で、プラヴウォは支持者たちに対し、インドネシア選挙管理委員会が正式な投票結果を発表するのを「静かに待つ(calmly wait)」よう呼び掛けた。選挙管理委員会は3月に正式な結果を発表する予定だ。

2019年の前回選挙後、敗れたプラヴウォが結果に異議を唱え、激しい暴動が発生した。

インドネシアは世界で4番目に人口の多い国であり、世界最大のイスラム教徒人口を抱えている。世界最大規模の1日限りの選挙とされる今回の選挙では、水曜日に38の州の2億人以上が投票する資格を持っている。

しかし、世界最大の群島国家であるインドネシアで投開票を実施するのは大変な労力が必要である。国土はアメリカよりも広く、3つの時間帯にまたがっている。1万8000以上の島と小島で構成され、そのうち6000に人が住み、150以上の言語が話されている。

専門家たちは、今年の投票では若い有権者が鍵を握っており、総選挙管理委員会によると、登録有権者の約半数が40歳未満であると指摘している。

プラヴウォの後にステージに登場したギブランは、今回の選挙における若者有権者の影響力を認め、支持者たちに「将来、私たちは若者を巻き込んでいくことになる」と語った。

●プラヴウォの大統領就任は何を意味するか?(What will a Prabowo presidency mean?

プラヴウォはエリート政治家一族の出身だが、彼の過去、特に義父でもあった故独裁者スハルトの時代については議論を呼んでいる。軍人としての過去における人権侵害の告発は、彼の政治家としてのキャリアを通してずっとつきまとってきた。

プラヴウォの父親スミトロ・ジョジョハディクスモは元財務・貿易大臣で、祖父マルゴノはネガラ・インドネシア銀行を設立し、大統領諮問委員会委員長を務めいた。

プラヴウォは1970年にインドネシア陸軍士官学校に入学し、特殊部隊の司令官となり、インドネシアが24年間東ティモールを軍事占領した際、独立派に対する作戦を指揮した。

プラヴウォはまた、スハルト独裁政権の最後の数か月間、民主化活動家たちの誘拐を命令したと非難されている。

その後、プラヴウォはインドネシアの活気ある民主政体を支持する人物へと変身し、最近では親しみやすいが頼りになるおじいさんのような人物というイメージを築き上げ、過去10年間にわたり政界の主要人物として存在感を増してきた。

プラヴウォは2014年と2019年に大統領選に出馬したが、ジョコウィの名で親しまれているジョコ・ウィドド現大統領に2度とも敗れた。

かつてのライヴァル2人は、ジョコウィがプラボウォを国防相として入閣させたことで対立は解消した。

今年、プラヴウォはジョコウィの長男であるギブラン・ラカブミン・ラカを副大統領候補として指名して、コンビを組んだが、この決定は議論を巻き起こした。ジョコウィが大統領職を退く準備を進める中、妨害の疑いでジョコウィに対する激しい批判を巻き起こした。

インターナショナルIDEAアジア太平洋ディレクターであるリーナ・リッキラ・タマンは、「大統領が選挙で中立を保つことは広く予想されている。プラヴウォの勝利は『ジョコウィの政策の継続』と見なされるだろう」と述べた。

プラヴウォの人気が2019年の選挙以降上昇しているのは、ジョコウィの暗黙の支持によるところが大きいと専門家たちは指摘している。

ジョコウィは貧しい家族の出身で、インドネシア政治の伝統的な裕福なエリートからの脱却を掲げて選挙戦を戦ったジョコウィは、目覚ましい経済成長を主導し、人気を博して政権を去ることになる。しかし、ジョコウィが在任中、インドネシアは人権問題や汚職指数で後退した。プラヴウォはジョコウィの遺産を受け継ぐ後継者という位置づけが強い。

ヴェリスク・メープルクロフト社の東南アジア担当上級アナリストであるローラ・シュワルツは次のように述べている。「プラヴウォ大統領の就任に関する懸念は、彼が以前から大統領の任期制限撤廃、大統領直接選挙の廃止、人権保護の縮小を主張していることから、非自由主義的な行動が増加する可能性が高まると考えられることだ。このような動きは、インドネシアの評判を落とし、外国投資を誘致する能力を低下させるだろう」。

ワシントンDCのアメリカ合衆国国防大学で東南アジアの政治と安全保障問題を研究するザカリー・アブザ教授は、CNNの取材に対し、「プラヴウォは自分自身を再創造し、過去を白紙に戻そうと懸命に努力してきた」と語った。

アブザは、元軍人をトップに据えることは、権威主義的支配の暗黒時代への回帰を意味すると続けて指摘した。アブザは、「ジョコウィは多くの陸軍大将に囲まれ、コロナウィルスのパンデミックのような多くの問題を『安全化(securitize)』する傾向があったが、プラヴウォでは事態が悪化する可能性がある」と述べた。

アブザは、「プラヴウォは、退役軍人たちを顧問や閣僚の地位に就けるだろうと私は考えている。しかし、より大きな懸念は、彼が軍の政治への復帰を加速させることだ」と述べている。

ジャカルタの有権者たちはCNNの取材に対し、今回の選挙の結果は「王朝政治(dynasty politics)」の復活を示唆するものになるだろうと述べた。ヨハネス・グレゴリウス・トゥカン氏(41歳)は、プラヴウォとギブランの選挙運動は、「ニュアンスの違う縁故主義と腐敗(nuanced nepotism and corruption)」を示していると語った。もう1人の有権者であるクンコロ・リコニは「権威主義的支配への回帰(a return to authoritarian rule)」を恐れていると述べた。

リコニは「1998年に血と涙を流して戦い取った民主政治体制を失いたくない」と述べた。

CNNのアレックス・スタンボー、ティール・レバンが今回の記事の作成に貢献した。ジャーナリストのアウグスティヌス・ベオがジャカルタからの報道に貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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