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2024年05月

 古村治彦です。

 2023年12月27日に最新刊『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。アメリカ政治について詳しく分析しました。2024年はアメリカ大統領選挙の年です。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカ連邦議会(上院と下院)の民主、共和両党の議員たちの間には、議員連盟(caucus)と呼ばれるグループがある。民主、共和両党内の議員連盟は、日本の派閥(faction)的な色合いがあるが、明確な親分・子分関係は存在せず、イデオロギーや信条が近い議員たちが一緒に行動するというような形のものである。民主、共和両党に複数の議連があり、採決の時などに、賛成、反対の動きや票読みの際に、注目を集める。

 『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも取り上げたが、アメリカ連邦下院共和党において、重要な存在になっているのが、「フリーダム・コーカス」と呼ばれる議連だ。この議連は、日本語では「自由議員連盟」と訳されることもある。フリーダム・コーカスは、保守派・リバータリアン派の議連である。オバマ政権時代に、勢いを伸ばした、ティーパーティー運動に源流があり、ティーバーティ―運動で当選した議員たちが結成した議連であり、政府による介入や規制を排除することを求めている。2015年に結成された比較的新しい議連であるが、メンバーは41名を数える。共和党の連邦下院議員が217名の内の41名が属しており、一大勢力となっている。共和党内で最も右寄りの議連であり、エスタブリッシュメント派とも対立する場面があり、トランプ支持の議連と言われるが、そのような単純な話では済まない。この議連には、トランプ支持派の議員たちも入っているが、同時に、トランプに対して反対する、リバータリアンの議員たちも入っており、中で対立が起きた。トランプ派の議員たちが、自分たちだけの議連を結成しようとして、その動きを潰されたことがある。

 昨年(2023年)、トランプ派として有名なマジョ―リー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出)が「アメリカ・ファースト・コーカス(議連)」を結成する動きを見せた。グリーンを中心とするトランプ派の議員たちがフリーダム・コーカスから独立する動きを見せた。それに対して、連邦下院共和党指導部とフリーダム・コーカスの幹部メンバーたちが激怒し、アメリカ・ファースト・コーカスが結成されたら、参加議員たちは、議会のどの委員会にも参加させないという脅しを行った。委員会に所属できなければ、立法作業に参加する道を閉ざされることになり、議員活動はできなくなる。トランプ派の議員たちはおとなしく従うしかなかった。首謀者のグリーン議員は、フリーダム・コーカスから追放処分となった。

 共和党所属の連邦議員たちの間では、トランプに対する恐れと反感、諦観が入り混じっている。トランプに表立って反対すれば、「あいつは落とすべきだ」とトランプに言われてしまう。そうなると、トランプ支持者たちは、その議員を落選させてしまう。これまでにも、トランプに反対した議員たちは多くは落選させられる、もしくは自主的な引退を選択することになった。だから、議員たちはよほど選挙に自信があるなら別だが、表立っては従うしかない。しかし、同時に反感もある。それが、トランプ派議員たちに対する動きとして出てくる。このような複雑な動きになっているので、一概に「この議連はトランプ支持の議連」と決めつけてしまうのは実態に即していないということになる。

(貼り付けはじめ)

グリーンがフリーダム・コーカスから追放された、と幹部メンバーが言及(Greene ousted from Freedom Caucus, board member says

エミリー・ブルックス筆

2023年7月6日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/4084065-greene-ousted-from-freedom-caucus-board-member-says/

強硬派のフリーダム・コーカスは、マジョーリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州選出、共和党)をメンバーから除名するための投票を実施した、とフリーダム・コーカスの幹部メンバーであるアンディ・ハリス連邦下院議員(メリーランド州選出、共和党)は述べた。

ハリスは木曜日、『ポリティコ』誌とCNNの取材に対して、「マジョーリー・テイラー・グリーンは、彼女のこれまでの行動を理由にして、連邦下院フリーダム・コーカスから除名されるべきかどうかの投票が実施された」と述べた。

連邦下院フリーダム・コーカスの報道担当者は、コーカスの秘密保持条項を指摘して、コーカスがグリーンを除名したかどうかについて、その正否を認めなかった。

フリーダム・コーカスは「連邦下院フリーダム・コーカスはメンバーの地位や資格(membership)や内部のプロセスについてコメントしない」と発表した。

今回のニューズに関する声明の中で、グリーンは連邦下院フリーダム・コーカスにおける、彼女の地位について直接言及しなかった。

グリーンは「連邦議会において、私は自分が代表している選挙区であるジョージア州北部を最優先にして仕事をしている。ワシントンにおけるいかなるグループのためにも仕事をしていない。アメリカ・ファーストの考えは、私のキリスト教の信仰に導かれ、鋼で鍛えられ、私の人格に焼き付けられ、決して変わることはない」と述べた。

グリーン議員は「私は、この国を破壊しようとするアメリカを憎んでいる民主党と、連邦議会の儀仗で毎日戦っている。私は、国境を守り、子宮の中にいる、もしくは生まれた後の子どもたちを守り、永遠に続く外国の戦争を終わらせ、この国を救うために働くことを望む人となら誰とでも協力する。共和党は、2024年にドナルド・トランプ大統領が選挙に勝利する時、共和党主導の、強力で統一された連邦議会が何をするのかをアメリカに示すことができる期間は、既に2年を切っている。私が最重要視しているのはこの一点であり、他には何もない」と締めくくった。

広報担当のハリスは、グリーン議員が正式にフリーダム・コーカスから外れたかどうか質問され、次のように答えた。「私の知る限り、そういうことだ」。

ケヴィン・マッカーシー連邦下院議長(カリフォルニア州選出、共和党)がジョー・バイデン大統領と交わした債務法案の合意を支持することで、多くの同僚と対立したため、グリーン議員はフリーダム・コーカスから排除されることになった。グリーン議員はマッカーシーに近い支持者となっている。フリーダム・コーカス所属の同僚議員たちの多くが反対し、1月に歴史的な15票差の連邦下院議長選挙を余儀なくされた時でさえ、マッカーシーを議長候補として支持した。

ハリスは、債務法案とグリーンのマッカーシー支持について、「その全てが重要だったと思います」と語った。

しかし、グリーン議員と同様の、お騒がせ議員であるローレン・ボーバート下院議員(コロラド州選出、共和党)との最近の衝突が、結果としてフリーダム・コーカス所属の議員らにグリーン議員の排除投票を促したようで、広報担当ハリスはそれを「決定的な一撃となった(the straw that broke the camel’s back)」と語った。

グリーン連邦議員は2023年6月下旬、ボーバートが国土安全保障省長官アレハンドロ・マヨルカスに対する弾劾訴追を強行する意表をつく行動に出た後、連邦下院の議場でボーバートを「小娘(little bitch)」と呼んだ。グリーンは、ボーバートが連邦下院共和党所属議員会に自分の決定について説明しに来なかったことを批判し、ボーバートがマヨルカスに対する弾劾訴追についても自分の行動を真似ただけのことだと非難した。

ハリスは、「グリーンが同僚議員ボーバートに使った表現は、おそらく同僚議員、特に女性議員に対して使うべきではなかったと思う」と述べた。

『ポリティコ』誌が先週初めて報じたこの投票は、連邦下院が独立記念日を前に2週間の休会に入る前の朝に行われた。

ハリスは投票方法については明言しなかったが、連邦下院フリーダム・コーカスのスコット・ペリー会長(ペンシルヴァニア州選出、共和党)を「真のリーダー(true leader)」であり、「素晴らしい仕事(great job)」をしていると称賛した。

しかし、グリーンを排除する動きは、ペリーやフリーダム・コーカス全体に対する外部からの批判を呼んでいる。

ある共和党幹部補佐官は本誌の取材に対して、「私がスコット・ペリーなら、8月の休会前の3週間の会期を前に、これが最後の見出しになることを望んでいる。HFCをめぐるドラマの連続のせいで、議員たちはどの議案も通過させることができない。指導部も疲れているはずだ」と述べた。

連邦下院フリーダム・コーカスのメンバーと下院共和党指導部との間の最も差し迫った争いは、予算と支出レヴェルをめぐるものだ。先月、同グループの一部メンバーとその協力者たちは、債務上限法案で設定された歳出水準の上限に抗議し、下院議場での立法活動を1週間妨害した。

それ以来数週間、同グループのメンバーは支出レヴェルについて定期的に指導部と会談してきたが、意見の相違が残ったまま2週間の休暇に入った。

支出レヴェル以外にも、フリーダム・コーカスのメンバーは、自分たちの法案を強行採決するための特権的動議で、指導部の頭痛の種を増やした。マヨルカス弾劾訴追案を強行採決したボーバートの動きは最終的に委員会に差し戻されたが、これに加え、アナ・パウリナ・ルナ議員(フロリダ州選出、共和党)は、アダム・シフ議員(カリフォルニア州選出、民主党)のトランプ前大統領に関する発言に対する問責決議案を強行採決した。

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マジョーリー・テイラー・グリーンは、共和党からの反撃を受ける中で、「アメリカ・ファースト」コーカス発足の計画を放棄する(Marjorie Taylor Greene scraps planned launch of controversial ‘America First’ caucus amid blowback from GOP

ダニエラ・ディアズ筆

CNN

2021年4月18日

https://edition.cnn.com/2021/04/17/politics/marjorie-taylor-greene-america-first-caucus/index.html

CNN発。保守派のマジョーリー・テイラー・グリーン連邦下院議員は金曜日、報道担当者を通じて「アメリカ・ファースト」コーカス(議員連盟)の発足を確認していたにもかかわらず、共和党内の指導者たちから反撃を受け、コーカスの発足を取りやめることになった。

グリーン議員の報道担当ニック・ダイアーは土曜日の午後、ジョージア州選出の共和党連邦下院議員グリーンは「何も立ち上げない」とCNNに送った電子メールの中で述べた。

ダイアーは、パンチボウル・ニューズが入手した、煽動的な表現が使われたコーカスの宣伝ビラに言及しながら、「議員は、何も立ち上げてようとしていないを明確にしたいと望んでいる。これはごく初期の提案であり、合意も承認もされていない」とCNNに送ったメールの中で語った。

ダイアーは更に、「彼女はその文言を承認しておらず、何も立ち上げる予定はない」と付け加えた。

これは、グリーン議員の事務所が「ごく近いうちに」コーカスを発足させると言っていた金曜日からの大きな後退だ。

ダイアーは金曜日、CNNに送った声明の中で、「アメリカ・ファースト・コーカス(議員連盟)の綱領が近々発表されるので、楽しみにしていてください」とダイアー氏はCNNに声明の中で述べていた。

グリーンは土曜日の午後、一連のツイートで、彼女の「アメリカ・ファースト」コーカスのスタッフ・レヴェルの草案は、「私が読んでいない外部グループからのもの」だと主張した。彼女はまた、メディアが「誤った物語(false narratives)」を作り、人種に焦点をあてて、「アイデンティティ政治(identity politics)を通じ、憎しみでアメリカ国民を分断している」と非難した。

グリーンはツイッター上で、ドナルド・トランプ前大統領のアメリカ・ファーストのアジェンダの提唱を進める計画を示唆した。

新しいコーカス(議員連盟)を宣伝するチラシは、「アングロサクソン独自の政治的伝統に対する共通の敬意(common respect for uniquely Anglo-Saxon political traditions)」を呼びかけ、選挙の整合性に関する一連の共同謀議論を前面に押し出している。

チラシはまた、「大量の移民」が「独自の文化とアイデンティティを持つユニークな国としてのアメリカの長期的な存続的な未来」を脅かすと警告する、白人中心主義的な(nativist)主張も概説している。

連邦議会の議員連盟は通常、特定の政策課題を推進しようとする議員たちで構成される任意団体である。このグループは正式な議会の立法機構の外で運営されているが、その多くは、議論に影響を与え、共通の政策提言を増幅させることに成功している。

金曜日、新しいコーカス(議員連盟)に関する報道がなされる中、ダイアーはチラシの初期案が流出したことに不満を述べたが、CNNに対する声明では、このコーカス(議員連盟)の結成計画が進行中であることを確認した。

グリーン議員の事務所からの発言の撤回は、連邦下院共和党トップのケヴィン・マッカーシー連邦下院議員・連邦下院少数党院内総務が間接的に同議員の新しいコーカスに言及しながら、「共和党はリンカーンの党であり、すべてのアメリカ人にさらなる機会を与える党であり、排外主義的な白人中心主義者にとっての犬笛(dog whistles)ではない」とツイートした翌日に行われた。

また、連邦下院共和党第3位の地位にある共和党連邦下院議員会議長リズ・チェイニーは、グリーンの新しいコーカス(議員連盟)に関する報道についてツイッター上で次のように反応した。

チェイニー議員は「共和党は、万人に平等な機会、自由、正義を信じている。私たちは子供たちに寛容、良識、道徳的勇気という価値観を教えている」と彼女は書いた。「人種差別、民族主義、反ユダヤ主義は悪だ。歴史が教えているように、私たちには皆、そのような悪意ある憎しみに立ち向かい、拒絶する義務がある」と書いた。

闘争中の共和党のマット・ギーツ下院議員(フロリダ州選出)は、金曜日に次のようにツイートした。彼は現在、性売買と売春の疑惑で連邦捜査を受けている、「私はマジョ―リー・テイラー・グリーン議員(@mtgreenee)と共に、アメリカ・ファースト・コーカスに参加することを誇りに思う。私たちは戦争を終わらせ、不法移民を阻止し、アメリカの労働者にとっての公平な貿易を推進する。これは、ビッグ・メディア(主流メディア)、ビッグ・テック(GAFAなど)、ビッグ・ガヴァメント(大きな政府)に属するアメリカ・ラスト派による単なる反撃に過ぎない」。

共和党のポール・ゴーサー連邦下院議員(アリゾナ州選出)は、「アメリカ・ファースト」コーカスの立ち上げ計画への関与を否定し、土曜日の声明で 「連邦下院フリーダム・コーカスに所属して、アメリカ・ファーストの問題に取り組み続ける」と記した。パンチボウル・ニューズは、ゴーサーがこの「アメリカ・ファースト」コーカス(議員連盟)に関与していると報じていた。

彼は土曜日、パンチボウル・ニューズの報道を読み、初めてビラの存在を知ったと主張した。

共和党のアダム・キンジンガー連邦下院議員(イリノイ州選出)は、新しいコーカス(議員連盟)についての最初の報道を受けて「うんざりしている」と述べ、金曜日、新しい議員連盟に参加する議員から委員会の割り当てを剥奪され、共和党の議員会議への参加を阻止されるべきだと述べた。

キンジンガ―議員は「私たちは、共和党員、共和党所属を名乗ることを阻止することはできないが、彼らは共和党に属しいていないと声を大にして言うことはできる」とツイッターに投稿した。

この記事は追加で更新された。

CNNのアリ・メイン、ヴェロニカ・ストラカルシ、アニー・グレイヤー、ライアン・ノーブルズ、ポール・ルブランがこのレポートに貢献した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカ大統領選挙は、民主党は現職のジョー・バイデン大統領、共和党は予備選挙を圧倒的な勢いで勝ち進み、ライヴァルたちを蹴散らしたドナルド・トランプ前大統領がそれぞれ候補者に内定し、いち早く、「バイデン対トランプ」の構図となり、攻守所を変えて、2020年大統領選挙の再戦となっている。現在のところ、トランプが若干のリードという状況だ。ただ、五大湖周辺の激戦州となっている、ミシガン、ウィスコンシン、ペンシルヴァニア各州の世論調査の数字は拮抗しており、予断を許さない。これらの州をバイデンが取ると、数字上では選挙人獲得数で、バイデンが僅差で勝利を収める。

 私は個人としてはトランプ大統領支持である。もしアメリカ国民で投票権を持っているならば、トランプ大統領に投票する。しかし、バイデンを操っているエスタブリッシュメント派(民主党、そして共和党)は、非常に手強い。また、政府を握っているということは、大きな力を持っているということで、やれることの数や範囲は大きい。また、彼らは、バイデンも含めて、数々の犯罪行為に手を染めている(その代表がヒラリーだ)。彼らが逮捕を逃れるためにも、バイデン再選が彼らにとって望ましいということになる。
 アメリカ国内の分断は深刻化している。経済格差も大きくなり、かつ、教育格差(経済格差に連動する)、人種間格差(これもまた前記2つに連動する)などが大きくなっている。そうしたことから、「内戦」「第二次南北戦争」という声も上がっている。「選挙が正常に実施されない」という予測も出ている。確かに、全米各地の投票所での民主、共和両党の支持者やそれ以外の人々による、にらみ合いや衝突が起きることは考えられるが、それがアメリカ全土に広がるかどうかは不透明だ。トランプにしても、バイデンにしても、自身がアメリカ合衆国大統領であると主張するためには、「民主的な選挙」で選ばれた、という正統性が必要だ。

 トランプが大統領に当選すれば、ロバート・ライトハイザーが財務長官に就任するだろうという見方が出ている。ライトハイザーは米通商代表部に勤務した経験を持つ弁護士で、貿易交渉に長けた人物として知られてきた。そして、トランプ1期目の政権で、米通商代表に就任した。そして、米中間の関税引き上げ競争、米中貿易戦争を指揮した。その彼が、トランプ政権の財務長官になるという話だ。
 ライトハイザーは、現在、トランプ陣営の経済政策顧問を務めており、トランプ政権発足後に財務長官に起用されるということは絵空事ではない。ライトハイザーの影響は、現在のバイデン政権にも引き継がれている。バイデン政権は中国製の電気自動車の関税を100%に引き上げると発表したが、このような保護主義的、ナショナリスト的な関税政策は、トランプ政権下で激化したものであり、その主導者がロバート・ライトハイザーだった。

ライトハイザーは、中国製品に対する関税引き上げ(60%)や中国政府が出している補助金に対する調査など、積極的な姿勢を示している。ライトハイザーが財務長官になれば、アメリカの通商政策だけでなく国際経済政策も変化することになるだろう。

ライトハイザーは、貿易赤字に注目し、炭素国境税の導入や人権侵害者への制裁などを提案している。彼は中国を敵対国と位置付けている。ライトハイザーは現在のバイデン政権の「強いドル」政策(輸入品が安くなる)ではなく、「弱いドル」政策(輸出品が安くなる)を進めることになる。アメリカらの輸出を増やすことで、雇用を増やすということを目指す。そうなれば、日本に関して言えば、円高が進むということになる。

「バイデン、トランプ、どちらが勝つか」という予測ももちろん重要だろうが、「どちらが勝って、どのようになるか、何が起きるか」というより細かいことにも注目していく必要があるだろう。

(貼り付けはじめ)

トランプが世界経済を革命的に変化させる手助けをするであろう人物(The Man Who Would Help Trump Upend the Global Economy

-ロバート・ライトハイザーは財務長官となる可能性があり、貿易政策以外にも革命を起こそうとしている。

エドワード・アルデン筆

2024年5月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/18/robert-lighthizer-trump-election-trade-tariffs-treasury-secretary/?tpcc=recirc_trending062921

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この10年近く、アメリカの通商政策は、1人の人物のイメージで作り替えられてきた。その人物とは、ロバート・ライトハイザーである。ドナルド・トランプ大統領時代の通商代表(trade representative)として、彼は、60年にわたるルールに基づく多国間貿易システム(multilateral trading system)の支持から離れ、強固なナショナリスト的アプローチへと、アメリカを方向転換させた。ジョー・バイデン大統領の下でライトハイザーの後任となったキャサリン・タイは、彼が築いた道を歩み続けている。トランプ大統領の元高官たちのほとんどが、トランプ大統領は再び大統領になるにはふさわしくないと非難しているにもかかわらず、ライトハイザーは他の多くの人々と同じように、トランプ大統領をより大きな公共の利益のための、欠陥のある船(flawed vessel for some greater public good)であると信じている。ライトハイザーは、2024年の選挙戦でもトランプの政策顧問の一人であり、11月にトランプが勝利すれば、より大きな仕事(おそらく財務長官)を任されるだろう。アメリカの通商政策だけでなく、より広範なアメリカの国際経済政策を変革するというライトハイザーの使命はまだ始まったばかりだ。

ライトハイザーの影響力は先月、バイデンが激戦州ペンシルヴァニア州ピッツバーグにある北米最大の産業別労働組合であるユナイテッド・スティールワーカーズの本部を訪問した際に最大限に発揮された。訪問後、政権はライトハイザーの要請でトランプ大統領が最初に課した一部の中国からの輸入品に対する関税を大幅に引き上げる計画を発表した。今週、タイ通商代表による見直しを受けて、バイデン政権は輸入された中国製電気自動車に100%の関税を課し、中国製の半導体、リチウムイオン電池、太陽電池、鉄鋼、アルミニウムの税率を引き上げた。タイ通商代表はまた、造船業界に対する中国の補助金に対する新たな第301条調査(ライトハイザーが復活させた1970年代の米国通商一国主義[trade unilateralism]の手段)にも着手した。更なる関税が中国に課せられる可能性が高い。そして、ライトハイザー自身も、トランプが大統領に選ばれたら、アメリカの輸出を増やすために強い米ドルの価値を切り下げるようアドバイスしており、このアドバイスは財務省ポストのオーディションの内容として広く読まれている。

ライトハイザーの影響力の拡大は、トランプ大統領の通商政策に見られる攻撃的なナショナリズムが一過性のものではないことを、アメリカの最も親密な同盟国を含む貿易相手国に警告するものである。その代わりに、アメリカは、民主、共和両政党の垣根を越えて、国際経済政策に「アメリカ・ファースト(America First)」のアプローチを取り入れる選択をした。この選択が意味するところは、今後何年も、おそらく何十年も続くだろう。そのため、自由貿易と多国間ルールのアメリカによる受け入れを非難の代弁者として、キャリアを積んできたライトハイザーは、その中間に位置する人物ということになる。

ライトハイザーがアメリカの次世代の国際経済政策の立案者になるとは考えにくい。第二次世界大戦の終戦直後に生まれた彼は、弁護士としてキャリアのほとんどを外国の競争からアメリカの鉄鋼産業を守ることに費やした。かつてアメリカの製造業の基幹産業であった鉄鋼は、情報技術、成長しているグリーン産業、高等教育や観光を含む国際サーヴィス貿易が急増する経済が支配する経済において、今や誤差の範囲のシェアを占めているだけだ。しかし、ライトハイザーが鉄鋼から学んだ教訓、つまり、アメリカの貿易相手国が、生産に補助金を出したり、商品を原価以下でダンピングしたりするなどの略奪的な行為に従事し、アメリカの雇用を奪い、製造業を空洞化させているという教訓は、今や民主、共和両党の貿易当局者たちにとって福音となっている。

ライトハイザーは2023年に著書『どんな貿易も自由ではない(No Trade Is Free)』を発表した。この本は、貿易自由化(trade liberalization)のメリットに関する長年にわたるコンセンサスに対する痛烈な告発である。フランクリン・D・ルーズベルトからバラク・オバマに至るまで、アメリカの歴代大統領は、世界的な貿易障壁(global trade barriers)の交渉による削減が、アメリカと世界をより豊かで安全なものにすると信じていた。ライトハイザーは常にこれに反対していた。しかし、ドナルド・レーガン政権時代に米通商代表部に短期間勤務した後、彼は世間から忘れ去られた存在になったが、連邦議会の公聴会にはたびたび登場した。特に2001年に実現した世界貿易機関(WTO)への中国の加盟に警告を発した。トランプが2020年の選挙で敗北した後に書かれた彼の著書は、アメリカの通商体制に対する「私はあなたにそう言ったよね(I told you so)」となるものだ。関税を引き下げ、世界的な貿易ルールでワシントンの手を縛ることは、「私が予想した以上に明白で、議論の余地のない失敗(a starker, more indisputable failure than even I could have predicted)」であり、アメリカの製造業の喪失、アメリカ人の賃金の低迷、中国に対するアメリカの戦略的地位の急激な低下をもたらしたとライトハイザーは書いている。しかし、「多国籍企業と輸入業者の影響下にある共和党と民主党のエスタブリッシュメント派は、自分たちの過ちを認識したくなかったし、認識することが不可能だった(political establishments of both the Republican and Democratic parties, under the influence of multinational corporations and importers, were unwilling or unable to recognize their mistakes)」と彼は主張する。

ライトハイザーは任期の4年間、米通商代表を務めた。これは、気まぐれな大統領の下では稀な業績である。彼は、アメリカを別の方向に変えることができた。ライトハイザーは世界の大部分からの鉄鋼とアルミニウムの輸入品に最大25%の関税を課し、中国のアメリカ向け輸出の4分の3に同様の関税を課し、北米自由貿易協定(North American Free Trade AgreementNAFTA)の再交渉にカナダとメキシコを強硬に参加させた。こうした動きは、主に国内で人気があり、メキシコでの労働法の執行を強化し、アメリカでの生産拡大を求める条項をめぐって、民主党は新たなアメリカ・メキシコ・カナダ協定を支持して結集した。バイデン政権はまた、ジャネット・イエレン財務長官の当初の強い反対にもかかわらず、対中関税を維持した。

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ワシントンのホワイトハウスの大統領執務室で、新たな関税を課す措置に署名したドナルド・トランプ米大統領に並んで立っているロバート・ライトハイザー米通商代表(2018年1月23日)

しかし、ライトハイザーはまだ始まったばかりだ。彼が思い描いているのは、最も単純な言葉で言えば、世界経済における安定化勢力(a stabilizing force in the global economy)となることをあまり心配せず、アメリカの狭い経済的利益を追求することをはるかに心配するアメリカの姿である。財務長官となったライトハイザーは、その使命を遂行するためにより多くの手段を手にすることになる。

ライトハイザーの重要な指標は、従来の経済学者がほとんど注目しないもの、それは、貿易赤字(trade deficit)だ。アメリカは、1975年以来、毎年財とサーヴィスの赤字を出しており、2022年にはなんと9510億ドルに達するが、2000年代半ばの経済規模に比べて貿易赤字ははるかに大きかった。しかし、ほとんどの経済学者は、貿易赤字は国民貯蓄率の関数(a function of national savings rates)であり、これはアメリカの高い消費と低い民間および公的貯蓄の必然的な結果であるため、貿易面での政府の介入の影響をほとんど受けないと考えている。ライトハイザーはこれに反対し、赤字はアメリカの富が競合国、最も重要なのは中国に直接移転するものであり、政府の強制的な行動によって是正できると考えている。

ライトハイザーは、中国だけでなく世界の他国との貿易のバランスを取ることをアメリカの政策目標とするだろう。その影響は非常に大きくなるだろう。ライトハイザーがトランプに提案したとされる手段の1つは、他の通貨に対して米ドルを安くするための協調的な取り組みだ。他の条件が同じであれば、ドルが安くなれば外国人がアメリカの輸出品に支払う価格は下がり、アメリカ人にとって輸入品はより高価になり、貿易を均衡に近づけるのに役立つだろう。しかし、ドルは世界通貨(world currency)としての役割もあり、長い間過大評価されてきた。最近では、好調なアメリカ経済と中東とヨーロッパの紛争を受けて投資家たちが安全なアメリカ資産を求めて高騰している。詳細は乏しいが、ライトハイザーは、1971年にリチャード・ニクソン米大統領と、1987年にロナルド・レーガン大統領が取った措置、つまり、貿易相手国がドルに対して自国の通貨を切り上げる措置を講じることに同意しない限り、関税を課したり脅したりする行為の再現を構想しているようだ。今日の世界的な金融の流れの規模(レーガン大統領がドル安に取り組んだときの水準の何倍にもなっている)を考えると、通貨の安定を乱すことの結果を予測するのは難しい。

ライトハイザーは同様に、アメリカに拠点を置く製造業の競争力を促進するため、アメリカの税制の見直しを構想している。複雑な歴史的理由から、アメリカの輸出は長い間、アメリカの税制によって損なわれてきた。ヨーロッパをはじめとするほとんどの国は付加価値税(value-added taxesVAT)に大きく依存しており、国外に持ち出される商品やサーヴィスは通常免除されている。一方、アメリカの税金は所得税が主体であり、国際貿易ルールの下ではそのような税金は払い戻されない。ヨーロッパに輸出するアメリカ企業は、ヨーロッパでの売上に対して、アメリカの法人税と現地の付加価値税の両方を支払う。ライトハイザーは、付加価値税の利点を模倣して法人税制を「国境調整可能(border adjustable)」にすることで、これを終わらせたいと考えている。しかし、このような改正は連邦議会の試練を乗り越えなければならず、過去にはウォルマートのようなアメリカの大手輸入業者からの反発で失敗に終わっている。ライトハイザーが財務長官になれば、再びこの問題に取り組むことを期待したい。
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左:アメリカが鉄鋼とアルミニウムに関税を課した後、ブリュッセルでヨーロッパ通商担当委員との会談に臨むライトハイザー米通商代表と世耕弘成経済産業大臣(2018年3月10日)。右:ホワイトハウスで行われたアメリカ・メキシコ・カナダ通商協定の署名式で、マイク・ペンス副大統領とライトハイザー代表に挟まれスピーチするトランプ大統領(2020年1月29日)。

しかし、ライトハイザーのお気に入りの手段は、ホワイトハウスが最も明確にコントロールされている関税であることに変わりはない。今年3月の『エコノミスト』誌に寄稿したライトハイザーは、トランプ大統領が当選した場合、新たな関税を課すと発表した計画を擁護し、関税撤廃という、アメリカの「大胆な実験」は「失敗した」と主張した。アメリカの貿易赤字を削減し、再工業化を加速させるためには、新たな関税(少なくとも一律10%)が必要である。それは、「経験上、これは成功し、高賃金の産業雇用が創出される」からだ。ライトハイザーは、そのような取り組みがどこまで可能かを示唆している。全ての輸入品に対して、「均衡を達成するまで、年々段階的に高い関税率を課すべきである」と書いている。言い換えれば、全ての貿易に対して最低10%の関税をかけるというのは、あくまでも最初の一手にすぎないということだ。

ライトハイザーはさらに、デ・ミニミス(de minimis、それ以下の輸入品は関税を完全に免除される価格)として知られるあいまいな規定の削除を目指すだろう。2015年の貿易円滑化および貿易執行法により、連邦議会は消費財の少量出荷に対する高価な事務手続きを排除することを目的として、その料金を200ドルから800ドルに引き上げた。この変化は、ちょうど海外からのオンライン注文が普及し始めたときに起こった。中国のファストファッション大手の「Shein(シーイン)」社のことを考えてみよう。シーイン社は2015年に零細企業から、年間売上高が少なくとも300億ドルの巨大企業に成長し、現在ではアメリカに単一の店舗やブランドを持たずにアメリカのファストファッション市場の30%近くを占めている。シーイン社のショッピングアプリのダウンロード数は、2015年には全世界で300万件にも届かなかったが、昨年は2億6000万件以上に増加した。シーイン社のビジネスモデルには、デ・ミニミス免除により中国製の衣料品をアメリカの消費者に免税で直接発送することが含まれている。FedEx(フェデックス)やUPS などの大手運送会社も喜んで協力している。ライトハイザーは、この規定により多くの中国企業が相互主義を必要とせずにアメリカ市場に関税を払うことなしにアクセスできるようになっていると主張している。

11月にどちらが勝とうとも、ライトハイザーの影響力は残るだろう。バイデンは、アメリカの製造業を促進することと、アメリカの保護主義(protectionism)の高まりを懸念する同盟諸国との共通点を模索することの間で一線を画そうとしてきた。しかし選挙の年、バイデン政権の公平性は失われつつある。オハイオ州選出のシェロッド・ブラウン連邦上院議員(民主党)の要請を受けたバイデンは、例えば、日本の日本製鉄によるUSスティールの買収計画を阻止すると約束した。日本製鉄は既に、全ての労働組合契約を尊重し、アメリカ本社をヒューストンからピッツバーグに移転し、雇用削減や海外への生産移転を行わないことを約束している。しかし、アメリカの労働組合は依然としてこの取引に反対している。そのためバイデンは、国家安全保障を理由に買収を阻止すると発言しているが、この動きはアジア太平洋におけるアメリカの最も重要な同盟国を激怒させるに違いない。

ライトハイザーと民主党の共通点は、多くの人が認識しているよりもはるかに深い。気候変動について考えてみよう。トランプを含む多くの共和党員は科学に懐疑的であり、化石燃料の使用を削減するための政府の行動に反対している。しかし、ライトハイザーは炭素を多く含む輸入品に対する追加関税を強く支持しており、この政策はヨーロッパ連合が既に導入しており、現在バイデン政権が真剣に検討している。ライトハイザーは著書『どんな貿易も自由ではない(No Trade Is Free)』の中で、セメント、肥料、アルミニウムなどの排出量集約的な製品に追加関税を課すことになる炭素国境税(carbon border tax)を支持しており、そうしなければ「私たちが許容できるよりもはるかに多くの炭素を使用している」製品を生産する国に利益をもたらすと主張している。

タイ米通商代表と勇敢な労働省の下で、バイデン政権はまた、世界中の人権侵害者や労働者の権利侵害者を制裁するために貿易手段をより積極的に利用するようになった。ライトハイザーはそれよりもはるかに先を行くだろう。ライトハイザーは著書の中で、輸出企業が環境保護、労働規則、労働者の健康と安全に関するアメリカと同等の基準を順守しない限り、全ての輸入を阻止すべきだと提案している。

これらの構想の最大の標的は、もちろん中国である。中国を貿易相手国としてではなく、敵対的な敵対国として扱い、アメリカの対中政策転換を開始したのはトランプ政権である。この転換で重要な役割を果たしたライトハイザーは、中国を「アメリカが国家として、そして西側スタイルの自由民主主義政府として、アメリカ革命以来直面してきた最大の脅威」だと声高に主張した(mince no words)。その証拠に、ライトハイザーは、中国の巨大な経済規模を挙げている。これは、ナチス・ドイツや帝国主義時代の日本はおろか、旧ソヴィエト連邦よりもはるかに有能な敵国である。ライトハイザーは、完全な経済的デカップリング(decoupling)に近いものを求めるだろう。その第一歩として、ライトハイザーは、北京のWTO加盟を認めるために2000年に連邦議会が与えた中国の「最恵国待遇(most favored nation)」の撤廃を提案する。そうなれば、米大統領は中国に差別的な関税をかけることができるようになる。

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(左から)中国の劉鶴副首相と貿易合意に署名する前のマイク・ペンス副大統領、ロバート・ライトハイザー米通商代表、ドナルド・トランプ大統領(2020年1月15日)

民主党側でそこまで進めようという人はほぼいない。今のところ、バイデン政権は、半導体や新しい電気自動車技術など、制限する必要がありそうな戦略的な対中貿易と、自由に取引できる一般消費財(ordinary consumer goods)貿易とを区別しようとしている。「小さな庭と高いフェンス」や「デリスク」というフレーズで包含されるバイデン政権の戦略は、米中貿易における相互利益の余地をまだ多く想定している。しかし、中国が脅威と見なされれば、見なされるほど、ライトハイザーの包括的なデカップリング(decoupling)の論理は説得力を増すだろう。アメリカの対中貿易はいかなる形であれ、中国を豊かにする可能性が高く、将来的には中国をより手強い敵にする可能性がある。特に選挙の年には、米中関係におけるニュアンスの違いを求める声はかき消されてしまうだろう。

しかし、ライトハイザーのアジェンダの影響力が民主、共和両党で拡大し、持続するだろうが、その混乱は専門家の多くが懸念しているよりも小幅なものになるかもしれない。トランプ大統領が関税を課した際、世界の貿易システムはかつて考えられていたよりも回復力があることが証明され、米中貿易の小幅な下落とインフレの小幅な上昇にとどまった。しかし、アメリカのちょっとした保護主義が突然、より有害なものにエスカレートする危険性も高まっている。ライトハイザーのトランプ政権時代の戦友であるピーター・ナヴァロ前ホワイトハウス通商製造業政策局長は、2021年1月6日に起きた連邦議事堂襲撃事件に関する連邦議会の調査への協力を拒否した罪で現在服役中だが、アメリカが全面的に関税の相互撤廃を要求することを望んでいる。ある製品の関税をアメリカの水準まで引き下げることを拒否した国(ヨーロッパの乗用車に対する10%の関税をアメリカの2.5%まで引き下げる必要がある)は、相殺関税(offsetting tariffs)に直面することになる。(その場合、ヨーロッパはアメリカの輸入SUVに対する25%の関税を相殺することで報復するだろう)。民主党もまた、風力タービンや電気自動車を含む多くのクリーンエネルギー製品に新たな関税を課すことを熱望している。先月、タイ米通商代表は連邦議会の委員会で、バイデン政権は、アメリカの電気自動車産業を保護するために「早期の行動、断固とした行動(early action, decisive action)」を取ると述べた。

民主、共和両党とも保護主義を支持する傾向が強まっていることは、この先更に多くのことが起こることを示唆している。他国がこれに応じれば、1920年代や1930年代以来の貿易戦争(trade wars)や通貨戦争(currency wars)が勃発することは容易に想像できる。

確かに、歴史は繰り返さなければならないという規則はない。アメリカは単に、自由化の方向に行き過ぎ、急ぎすぎた通商政策を修正し、アメリカの一部の産業や労働者を略奪的な競争に晒されている最中にあるだけかもしれない。確かに中間地点は可能だ。しかし、あらゆる証拠は、アメリカが反対方向にあまりにも速く進みすぎるという深刻な危険に晒されていることを示唆している。それが疑わしい場合は、私たちが生きている間に登場したアメリカ通商政策の最重要な人物であるライトハイザーがこれまでに何をし、何を言い、そしてこれからも何をしようとしているのかをよく見て欲しい。

※エドワード・アルデン:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ウェスタン・ワシントン大学のロス記念特別客員教授、米外交評議会の上級研究員。著書に『調整の失敗:アメリカ国民はどのようにして世界経済に取り残されたか(Failure to Adjust: How Americans Got Left Behind in the Global Economy)』がある。ツイッターアカウント:@edwardalden

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 2024年5月19日に、イランのエブラヒム・ライシ大統領とホセイン・アミール=アブドラヒアン外相、他に政府高官たちが乗ったヘリコプターが墜落事故を起こし、搭乗員たちが全員死亡した。大統領と外相という最重要の政府高官たちが同じヘリコプターに登場していたというのは、安全管理の面から解せないところであるが、ライシ大統領の事故に、アメリカやイスラエルが絡んでいるということはひとまずないようだ。
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 今回の事故で、イランとイスラエルとの間の状況がさらに悪化するということはないと考えられる。これまで、イスラエルがシリアのダマスカスにあるイラン大使館を攻撃し、イスラム革命防衛隊の司令官クラスを殺害している。報復として、イランはイスラエルにドローンやミサイルによる攻撃を行った。両国間の関係が悪化し、より大規模な戦闘ということになれば、両国が直接領土を接してはいないので、航空機やミサイルによる攻撃が主体となり、最後は核兵器使用ということまで考えられる。ライシ大統領は、イランの国家最高指導者であるアリ・ハメネイ師の意向に沿って、強硬な態度を取ってきた。しかし、同時に、状況がさらに悪化しないように、細かい点で配慮を見せてきた。この流れは変わらないようだ。しかし、イスラエルと対峙する、レバノンのヒズボラとガザ地区のハマス、それらを支援するイスラム革命防衛隊を強化することは忘れないだろう。
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 イランにしてみれば、イスラエルとそれを支援するアメリカが国際世論の批判に晒されて、孤立することが望ましい。実際に、イスラエルによるガザ地区での作戦実行が過剰な防衛であって、一般市民に大きくの犠牲者が出ているということは、批判を招いている。ハマスについては、パレスティナ内部でも決して大きな支持を集めている訳ではないが、パレスティナの代表のような振る舞いをし、イランにとって有効な存在になっている。ハマスとヒズボラを使って、イスラエルを攻撃するということはイランにとって重要な戦略となっている。
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更には、イランが紅海の入り口にあるイエメンのフーシ派も支援していることも大きい。これによって、貿易海運に影響が出ており、アメリカが率いる西側諸国にとっては頭が痛い問題である。

イランが中国やロシアの支援を受けて、中東での動きを活発化させている。それは、中国が仲介してのサウジアラビアとの国交正常化合意が実現したことが大きい。サウジアラビアも向米一辺倒から脱却しており、中東におけるアメリカとイスラエルの重要性が縮小している。重要なのは、中東の現状が核兵器使用の大きな戦争にまで進まないようにコントロールすることであり、イランもそれを望んでいるようだ。
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(貼り付けはじめ)

イランがイスラエルに勝てると信じているその理由(Why Iran Believes It’s Winning Against Israel

-イラン政府は、地域秩序の再構成(regional reordering)が進行中であると結論づけた。大統領と外務大臣が亡くなってもその流れは変わらないだろう。

アリ・ヴァエス、ハミドレザ・アジジ筆

2024年5月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/20/iran-israel-war-deterrence-raisi-crash/?tpcc=recirc_latest062921

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バグダッドのイラン大使館前にて、イランの故エブラヒム・ライシ大統領を弔う人々のキャンドルリストの横で警備するイラク軍兵士(5月20日)

日曜日(5月19日)、イランのエブラヒム・ライシ大統領とホセイン・アミール=アブドラヒアン外相を含む数名の政府高官がヘリコプター墜落事故で死亡した。この事件は、4月にイランとイスラエルの間で前例のないエスカレーションが起こった後に発生し、イランの地域政策と現在進行中のイスラエルとの対立に潜在的な影響を与えるのではないかという予測が出ている。

イラン行政府のトップに突然空白が生じたにもかかわらず、イランの外交・地域政策の戦略的方向性は、主に最高指導者アリ・ハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)によって決定され、イスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)の影響を受けており、今後も変わらないと見られている。しかし、イランとイスラエル間の最近の事態悪化は、既にイランの戦略的思考(strategic thinking)と地域的計算(regional calculations)に影響を与えている。

イランにとって、イスラエルが4月1日にダマスカスにあるイラン大使館を攻撃し、高級指揮官を含む、イスラム革命防衛隊メンバー数人を殺害したことは一線を越えた。イランの立場からすれば、標的の幹部と施設の性格の両方が、イスラエルによる容認できない、事態悪化を意味する。

当面の問題として、テヘランは、イランが主権領土に相当すると見なしている場所への攻撃を放置すれば、イスラエルがイラン領内で、更に多くのイラン政府高官を標的にする可能性があると考えている。しかし、おそらく、より重要なことは、イラン政府関係者たちが、ダマスカスにあるイラン大使館攻撃を、ヒズボラの後方支援を断ち切ることを目的としたものであり、イスラエルによるレバノン侵攻という、より大きな目的に向けての中間的な動きと認識したことであろう。

2023年12月にイスラエルがダマスカス郊外で、イスラム革命防衛隊のラジ・ムサビ准将を殺害したことで、レヴァント地域におけるイランの非国家同盟組織の支援を担当する、イランの後方支援担当責任者(chief of logistics)が排除された。2024年1月の同様の攻撃で、シリアにおけるイスラム革命防衛隊の情報諜報責任者が解任され、4月1日にはモハメド・レザ・ザヘディ将軍が殺害されたことで、レヴァント地域の作戦責任者が排除された。

イランはまた、国内および地域の同盟国、組織の面子を保つ必要もあった。4月のダマスカス攻撃後、一部の強硬派は指導部を公然と批判し始めた。そのため、テヘランは武力で対応しなければならないと考えたが、戦争を引き起こすことなく、ある程度の抑止力を回復する必要があった。

414日未明、イスラエルに対し、高度に電波誘導を用いた大規模な無人機とミサイルによる攻撃を実施することで、戦争にならない範囲での報復を行った。優先事項は死と破壊ではなく、むしろイスラエルの領土を直接攻撃する勇気があることを示すことであった。もちろん、攻撃の規模を考えると、死と破壊の危険が当然のこととしてあった。イラン政府はおそらく、イスラエルとアメリカの防衛能力に関する重要な情報を収集しながら、自国が持つ能力のどの部分を公開するかを選択した可能性が高い。

イスラム革命防衛隊の航空宇宙戦隊司令官は、イランが今回の作戦のために準備した能力の20%未満しか投入しなかったのに対し、イスラエルは、アメリカや他の同盟諸国の支援を受け、防衛兵器をフル動員しなければならなかったと示唆した。これらの主張が少しでも正確であれば、イランがより高度な兵器を用いて、更なる大規模な攻撃を行う場合、特に奇襲的で長期間に及ぶような攻撃の場合、今回成功した防衛を再現できるのかという疑問が生じる。

イスラエルとそのパートナーたちは、この攻撃をほぼ無力化すること(neutralizing)に成功したが、テヘランは支持者・支援者の間での立場を強め、おそらくアラブ各国の路上で、パレスティナの権利擁護を公言し実行しているという評判を高めた。ガザでの戦争の惨状から国際的な関心をそらすことなく、このようなことが成し遂げられた。この事実は、アメリカやヨーロッパ諸国の大学キャンパスで行われた親パレスティナ派の抗議行動によって、より浮き彫りにされた。

この観点からすると、今回のイランによる攻撃の成功は、その限定的な軍事的成果からではなく、より強力な超大国の支援を受けている、強力な敵を直接標的にしたという事実そのものからもたらされた。ハメネイ師が主張しているように、イランがイスラエルに送った重要なシグナルは、イスラエルがイラン軍を切り崩し、レヴァントでの行動ができないようにすることを目的とする、今後の作戦を抑止するために、テヘランはある程度のリスクを受け入れることができるということであった。

しかし、この攻撃の直後に、イスラム革命防衛隊の最高司令官が設定したレッドライン(イランの標的に対するいかなる攻撃も、イランがイスラエルを再び直接攻撃する原因となる)は、イスラエルが現地時間4月19日にイスファハンで行った空対地ミサイル攻撃(イラク領空からS-300ミサイル防衛システムのレーダーを空対地ミサイルで攻撃、ナタンツの機密核施設に近接)に照らして、すぐに空威張りであることが示された。

イランにとって、イスラエルとの暗闘が現状に戻ることは、おそらく受け入れられる結果だろう。テヘランからすれば、せいぜい、シリアにおけるイランの武器輸送と施設を標的とするイスラエルのマバム(「戦争の中の戦争[war within the wars]」)キャンペーンの範囲を制限する方法を見つけることだろう。イランは少なくとも、イスラエルがイランの上級指揮官を標的にすること、そして、イラン国内で屈辱的な秘密工作を行うのを止めさせたいと考えている。イランがこれらの目的を達成できるかどうかを判断するのは時期尚早である。

今、重要なのは、イスラエルとイランの二国間の対立(bilateral rivalry)が、より広い地域情勢の中でどのように位置づけられるかということである。イスラエルとアメリカは、アラブ諸国との一時的な地域協力関係(ad hoc regional cooperation with Arab states)を活性化させ、ミサイルの一斉射撃を阻止したと自慢することができた。しかし、関係するアラブ諸国は、イスラエルから名指しされたり、味方についたと見られたりすることを避けたがった。イスラエルがアラブ諸国の行動を、自国に有利な反イラン地域同盟(anti-Iran regional alliance)の出現を示唆するものだと決めつけようとしたのとは反対に、アラブ諸国の指導者たちは、イスラエルとイランとの間の緊張が、自国を銃撃戦に巻き込む可能性があるという、以前から恐れていたことが証明されたと考えたのである。

イランの指導者たちは、ヒズボラという地域的な槍の先端を使わなかった、自分たちの報復が、更なる事態悪化の可能性を軽減することに成功したと、今のところは確信しているようだ。イランの攻撃からイスラエルを守るには10億ドル以上の費用がかかり、少なくとも5カ国が参加する大規模なティームワークが必要であるのに対し、イランには攻撃に2億ドルの費用がかかったということは、イスラエルもアメリカも、更なる戦闘を求めていないことを暗示している。したがって、イスラエルとアメリカ軍がおそらく同じことをしているのと同じように、イランには学んだ教訓に焦点を当てる余地がある。

イランがパンチを手加減してやったと主張しているにもかかわらず、アメリカ政府当局者たちは、その目的は「明らかに重大な損害と死者を引き起こすことであった」と評価している。今回の場合、パンチは当たらなかった。これは攻撃の脆弱性と防御力の両方の結果であると思われる。長距離を飛行するイランの無人機はほぼリアルタイムで探知され、発射体の多くはイスラエル領土に到達する前に迎撃されたからだ。かなりの割合(おそらく半分程度)が迎撃された。弾道ミサイルのうち多くが、自然に失敗して到達できなかったと報じられている。

これらの欠陥を正すために、イランはイスラエルに近い地域で武器の開発と備蓄を強化し、シリアでのプレゼンスの強化を必要とするだけでなく、将来の攻撃手段の一環として極超音速ミサイルを含むより先進的なミサイルの開発を加速させようとする可能性がある。

イスラエルによるイランへの報復は、イスラエルがイランの核施設に重大な損害を与える能力を持っていることをイランの指導者たちに思い知らせるものだった。また、イラン国内における、S-400のような、より高性能な防空システムの欠如や、近隣の空域に侵入するイスラエルの本質的に揺るぎない能力といった、テヘランの主要な欠点も露呈した。前者の欠点に対処するため、テヘランは、イランとヨーロッパの関係を更に悪化させることになるとしても、弾道ミサイルと引き換えにロシアの最新兵器を入手する努力を強化するだろう。

後者の欠点に対処するために、特にシリアでは、ロシアに助けを求める可能性もある。しかし、イラクではアメリカ軍が立ちはだかり、イランは、イラクの民兵組織にアメリカ軍基地を狙い続けるよう促し、イラク政府への政治的圧力を強めることで、イラクから約2500人のアメリカ軍を追い出そうとする動機をより高める可能性が高い。

テヘランはまた、シリアのユーフラテス川以東で、既に不安定な状態にあるクルド人主導のシリア民主軍の支配を緩めるための努力を強化する可能性が高い。これにより、イランは、シリアへの(そしてその先のレバノンへの)陸上アクセスポイントを増やし、同時にユーフラテス川西岸のデイル・エゾル州での影響力を強化することができる。最後に、テヘランは度重なる諜報活動の失敗により、国外にいる上級指揮官の所在が明らかにされてしまったことや、国内が脆弱になったことへの対処にも注力するだろう。

イラン指導部は、イランが10月以来実証してきた能力、つまり地域パートナーの非対称戦闘能力と、イスラエル上空を飛ぶイランのミサイル弾頭の永続的なイメージが、ガザ紛争の余波と相まって、地域秩序の再構成の前兆となる可能性があると信じている。

イラン政府の目には、イスラエルは世界的にますます排斥されると映っている。ロシア、中国、インドのような他の大国が影響力を拡大するにつれ、アメリカはもはやこの地域の最も重要なプレーヤーではなくなるだろう。そしてペルシア湾岸アラブ諸国(Gulf Arab states)は、イランに対して団結することを避け、代わりにシリアやヒズボラなどのイランの同盟国や組織との関係改善を目指すことになるだろう。

イラン指導部は、短期間に核弾頭を開発できる、制限核兵器保有国(threshold nuclear weapons state)としてのイランの地位を強化したいという願望でこのヴィジョンを補完している。特に、西側諸国が効果的で持続的な経済制裁緩和を行う能力があるかについてのテヘランの悲観的な見方を考慮すれば、イランの核能力の大幅な縮小を目的とした将来の合意は困難ということになるだろう。

しかし、イランの指導者たちは、永続的な現実が彼らの強気な物語を台無しにし、短期および中期の両方のリスクをもたらすことに気づくかもしれない。イランとイスラエルがゲームの新しいルールをまだ完全に定義してテストしていないことを考えると、特にイランは自慢の戦略的忍耐力(strategic patience)を放棄し、より攻撃的な姿勢に置き換えるべきだと信じる、政府内の人々が優勢であるように見えるため、両国は誤算を示す可能性がある。これらの強硬派は、イスラエルが、近いうちにイランが越えてはならない一線を堅持する姿勢を試すことになり、イランがそれに失敗すれば、4月14日に取った多大なリスクから得られる利益は失われると信じている。

そうなれば、双方の誤算(miscalculation)のリスクが高まり、壊滅的な打撃を与えかねない状況悪化の連鎖につながりかねない。中期的には、イランが中東で消滅しつつあるパクス・アメリカーナ(Pax Americana、アメリカによる平和)に代わる新たな秩序が生まれつつある、と見ていることが、かえってペルシア湾岸アラブ諸国が、アメリカの安全保障をより強固なものにする要求を倍加させ、テヘランが直面する脅威に対する認識を深めることになりかねない。

※アリ・ヴァエス:インターナショナル・クライシス・グループのイランプロジェクト部長、ジョージタウン大学外交学部非常勤講師。ツイッターアカウント:@AliVaez

※ハミドレザ・アジジ:ジャーマン国際・安全保障問題担当研究所訪問研究員。シャヒド・バレスティ大学地域研究助教(2016-2020年)。テヘラン大学地域研究学部訪問講師(2016-2018年)。ツイッターアカウント:@HamidRezaAz

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ライシ大統領の死がイランの未来に意味するもの(What Raisi’s Death Means for Iran’s Future

-ヘリコプター墜落事故によるライシ大統領の突然の死は、地域的な混乱の中でイランに不確実性をもたらす。

ジャック・ディッチ筆

2024年5月20日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/20/iran-president-helicopter-crash-raisi-politics-supreme-leader/

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イラン大統領エブラヒム・ライシがシリアのダマスカスを訪問(2023年5月3日)

イランのエブラヒム・ライシ大統領は日曜日、他のイラン政府高官たちの一団を乗せたヘリコプターがイラン北部の山中に不時着した事故で死亡し、イランと中東地域の将来に大きな疑問を生じさせた。

イラン国営のイスラム共和国通信が確認したところによると、ホセイン・アミール=アブドラヒアン外相と他の高官たちもイランの東アゼルバイジャン州を移動中に墜落し死亡した。墜落現場が発見されるまでの数時間、濃霧が捜索・救助活動を妨げた。霧は非常に濃く、イラン側はヘリコプターの位置を特定するためにヨーロッパ連合(EU)の衛星の支援を要請せざるを得なかった。

ライシ大統領の死は、イランが強硬な方向(hard-line direction)に進み、中東を地域戦争(regional war)の危機に晒される恐れがあったイラン政治の短い変革の時代(transformative era)に終止符を打った。ライシは政権の座に就いて約3年間、イランの国内政治と社会政策をより保守的な方向に動かし、2017年の大統領選挙でライシを破った前任者のハッサン・ロウハニの後、イランをこの地域における明らかなアメリカの敵対者の立場へと更に推し進めた。ロウハニは、代理攻撃(proxy attacks)を強化する前に、まずイランの核開発をめぐる西側諸国との緊張緩和を模索した。

イスラム法学者で、アリ・ハメネイ師(Ayatollah Ali Khamenei)との緊密な関係で知られ、多くの当局者や専門家たちが高齢化する最高指導者の後継者候補とみなされてきた、ライシの大統領在任期間中、イランはウラン濃縮(uranium enrichment)を加速させ、包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)の交渉を遅らせた。アメリカはライシが大統領に就任する3年前の2018年に協定を離脱した。

ライシ政権下のイランはまた、シャヘド自爆ドローンや大砲の大規模な輸出でウクライナに対するロシアの戦争を支援し、ハマスによる2023年10月のイスラエルへの越境攻撃の後、アメリカとイスラエルに対する地域の代理民兵組織(regional proxy militias)による攻撃を増加させ、ライシの死のわずか1カ月前には、イスラエルに対して大規模なドローンとミサイル攻撃を開始した。

複数の専門家によれば、ライシの後任が誰になろうとも、彼が追求した戦略はイランの政治的・聖職的指導部の上層部の間で堅持されており、変わることはないだろうという。

民主政治体制防衛財団(Foundation for Defense of DemocraciesFDD)のイラン上級研究員ベーナム・ベン・タレブルーは次のように述べている。「ライシがいてもいなくても、政権は10月7日以降の中東の成り行きに満足している。イランは、アメリカとイスラエルに対して、代理人を使って直接攻撃したが、4月に見られたような、一触即発(tit-for-tat)の状況にも何度か直面しながら、状況を有利になるように進めている」。

イラン憲法では、選挙が実施されるまでの50日間は、ムハンマド・モクバー筆頭副大統領が政権のトップを務めることになっている。アナリストによれば、最近の議会選挙は記録的な低投票率だったという。更に、2021年の前回の大統領選挙では、ライヴァルたちを追い落とし、ライシ候補の勝利を確実にするために、ハメネイと協力者たちは多大な努力を行った。

ライシは大統領に就任する前、1988年に推定5000人の反体制派の処刑を担当した、イラン検察委員会の委員を務めていた。ライシは国連から人道に対する罪で告発され、米財務省から制裁を受けていた。そして、その強圧的なアプローチは、2022年9月にイラン道徳警察が、22歳のマフサ・アミニが公共の場で適切にヒジャブを着用しなかったとして交流した後に死亡した事件がそれに続き、これが全国的な抗議活動を引き起こした。

臨時選挙や来年に予定されている正式な大統領選挙という地平線の先には、イランの支配層のトップに激震が走る可能性がある。国家元首(head of state)の息子であるモジタバ・ハメネイ以外に、85歳のハメネイの後継者となりうる人物は限られているため、ライシの死はイランの政治的未来を更なる混乱に陥れる可能性がある。

イラン経済の主要部分を支配するイラン国軍最大の部隊である、イスラム革命防衛隊(Islamic Revolutionary Guard CorpsIRGC)も、この混乱を利用して自らの力を増大する可能性がある。

米国防大学近東アジア戦略研究センター教授で退役米陸軍大佐のデービッド・デ・ロシュは、「ライシがいなくなってしまう場合、後継者は明白になっていない。本当に興味深いのは、イスラム革命防衛隊が基本的に、スローモーションクーデター(slow-motion coup)を完了するかどうかを見ることだ」と述べている。

救助隊が墜落したライシのヘリコプターを捜索中に、国営メディアはイラン国民にライシのために祈るよう求めた。その代わりに、墜落の報道を受けて、イラン国民の一部は祝賀の花火を上げ、強硬派の指導者の死について歓喜したようだ。

米海軍大学院准教授で、ヴェテランのイラン専門家であるアフション・オストヴァールは、ライシ大統領の死去が確認される前に、「今日の墜落とライシ大統領と外相の死亡の可能性はイラン政治を揺るがすだろう」とXへの投稿で書いた。オストヴァールは続けて、「原因が何であれ、不正行為(foul play)の認識は政権内に蔓延するだろう。野心的な分子が利益を求めて圧力をかけ、政権の他の部分からの反発を強いられる可能性がある。このような事態が起きることに備えておくべきだ」。

専門家たちは、臨時選挙でも2025年のイラン大統領選挙でも、自由化を進める人物が現れる可能性は低いとしながらも、ライシの死は、水面下で続いてきた抗議運動の復活にわずかな隙を残す可能性があると述べている。

「民主政治体制防衛財団の専門家ベン・タレブルーは、「講義運動は死んでいない。これらの運動は、ストライキや労働組合など、低レヴェルの周辺地域で活動している。全国的な引き金になるかもしれないし、何も起こらないかもしれない。しかし、イランの抗議運動の物語はいつ起こるか、起きるかどうかの問題でもある」と述べた。

※ジャック・ディッチ:『フォーリン・ポリシー』誌国防総省・国家安全保障担当記者。ツイッターアカウント:@JackDetsch

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 拙著『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』でも詳しく書いたが、西側諸国では、エネルギー高から波及しての、物価高が続き、ウクライナ支援も合わせて、「ウクライナ疲れ」「ゼレンスキー疲れ」が国民の間に生じている。「早く戦争を終わらせて欲しい」「取り敢えず停戦を」という声は大きい。

ウクライナ戦争勃発後、アメリカとヨーロッパ諸国(西側諸国)は、ロシアに対して経済制裁を科した。ロシアからの格安の天然ガスを輸入していたが、輸入を停止することになった。アメリカはそれに代わって、天然ガスをヨーロッパ向けに輸出することになったが、ヨーロッパの足元を見て、高い値段で売りつけている。これはヨーロッパ諸国の人々からの恨みを買っている。以下の記事では、西側諸国の制裁がロシアに大きな打撃を与えており、ヨーロッパ諸国の経済には影響を与えていないということだが、かなり厳しい主張ということになるだろう。
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 10年ほど前から、ヨーロッパ諸国で勢力を伸長させているポピュリスト勢力(アメリカのドナルド・トランプ大統領誕生も同じ流れ)は、プーティン寄りの姿勢を取り、ウクライナ戦争の停戦を求めている。これは、アメリカで言えば、連邦議会の民主党左派・進歩主義派議員たちと、共和党のトランプ派議員たちの考えと同じだ。彼らもまた、アメリカの国内世論の一部を確実に代表している。
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ポピュリスト勢力は人種差別的と批判される。そういう側面もあるが、彼らは既存の政治に対する、人々の不満を吸い上げ、代表している。エスタブリッシュメントたちが主導する政治が戦争をもたらしていると多くの人々が考えている。トランプ前大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」は「孤立主義(Isolationism)」を基礎としているが、これは「国内問題解決優先主義」と訳すべきだ。そして、「アメリカ・ファースト」は「アメリカが何でもナンバーワン」ということではなく、「アメリカのことを、まず、第一に考えよう」ということだ。ここのところを間違ってはいけない。ポピュリストたちに共通しているのは、「外国のことに首を突っ込んで、税金を浪費するのではなく、自国の抱える諸問題を解決していこう」ということであり、そうした側面から見れば、ポピュリストたちが違って見えてくる。

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ヨーロッパのポピュリストたちが制裁反対の戦いでクレムリンに加わる(European Populists Join the Kremlin in Anti-Sanctions Fight

-彼らは「制裁はロシアよりもヨーロッパを傷つける」と誤った主張を展開している。

アガーテ・デマライス筆

2024年3月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/11/russia-sanctions-oil-gas-populists-europe-elections/?tpcc=recirc_latest062921

ヨーロッパのポピュリスト政党の多くがロシアに友好的な傾向を持つことを考えれば、ヨーロッパのポピュリストたちがしばしばクレムリンの主張をオウム返しにしたがるのも当然と言えるだろう。最近では、極右から極左まで多くのヨーロッパの政党が要求しているように、欧米諸国の対モスクワ制裁の停止を求めることもその1つだ。

対モスクワ制裁解除要求の背後にある通常のシナリオは基本的なものだ。フランスの「国民連合(National RallyRassemblement National)」、ドイツの「ドイツのための選択肢(Alternative for GermanyAlternative für Deutschland)」、ハンガリーのヴィクトール・オルバン首相はいずれも、制裁は裏目に出ており、ヨーロッパ経済には打撃を与えているが、モスクワには打撃を与えていないと主張している。EU全域のポピュリスト政党が6月のヨーロッパ議会選挙に向けて準備を進めており、このような論調はますます目立つようになるだろう。だからこそ、このような誤った主張を論破する絶好の機会なのだ。

ロシアに好意的な政治家たちが最もよく口にするのは、制裁がヨーロッパの企業や消費者を破滅に追いやるというものだ。これらの主張の中で最も広まっているのは、制裁がヨーロッパにおけるエネルギー価格の高騰(およびインフレ)を引き起こしているというものだが、これは最も簡単に反証できる。2022年初頭に世界の炭化水素価格が高騰したのは、ロシアによるウクライナ攻撃とヨーロッパに対するガス恐喝がきっかけだった。欧米諸国がロシアのエネルギー輸出に制裁を課し始めたのは、その年の11月であり、石油・ガス価格はすでに下落していた。

もう1つの主張は、制裁がロシア市場へのアクセスを失ったEUの輸出志向企業にペナルティを与えているというものだ。しかし、現実はもっと穏やかなものだ。ロシアはEU企業にとって決して主要な市場ではなく、2021年にロシア企業がEUの輸出品のわずか4%を購入したにすぎない。EUの対ロ輸出の約半分が制裁の対象となることを考えると、EUの輸出のわずか2%が影響を受けることになる。

フランスの研究機関である国際経済予測研究センター(Centre d'Etudes Prospectives et d'Informations Internationales)の国家レヴェルのデータは、この評価を裏付けている。それによると、対ロ制裁がフランス経済に与える影響はほとんど無視できるもので、フランスの輸出のわずか0.8%、約40億ユーロ(44億ドル)しか影響を受けていない。視点を変えれば、これはフランスのGDPの0.1%ほどに相当する。この調査はフランスのみを対象としているが、おそらく他のEU経済圏でもこの調査結果は劇的に変わることはないだろう。ドイツ企業と並んで、フランス企業はヨーロッパでロシアと最も深い関係にある企業である。このことは、他の多くのヨーロッパ諸国の企業は、より少ない影響しか受けていないことを示唆している。

制裁がヨーロッパ経済を圧迫しているというクレムリン寄りの主張の別のヴァージョンは、EU企業が制裁のためにロシアへの投資を断念せざるを得なかったという考えに基づいている。例えば『フィナンシャル・タイムズ』紙は、ウクライナへの本格的な侵攻が始まってから2023年8月までの間に、ヨーロッパ企業はロシア事業から約1000億ユーロ(約1094億ドル)の損失を計上したと計算している。

この数字は正確かもしれないが、制裁と大いに関係があるという考えは精査に耐えない。現段階では、制裁によってヨーロッパ企業がロシアでビジネスを行うことは、防衛など一部の特定分野を除けば妨げられていない。それどころか、ヨーロッパ企業のロシアでの損失には他に2つの原因がある。1つは、風評リスクを恐れ、ロシアの税金を払いたくないためにモスクワの戦争に加担したくないという理由で、多くの企業が撤退を選択したことだ。

損失の第二の原因は資産差し押さえの急増で、クレムリンは多くのヨーロッパ企業に、場合によってはわずか1ルーブルの価値しかない資産の売却を迫っている。言い換えれば、仮に制裁がない世界であったとしても、かつてロシア市場に賭けていたヨーロッパ企業は現在、大規模な損失に直面している。もちろん、クレムリンは、収用は制裁に対する報復手段に過ぎないと主張している。この台詞は、欧米諸国の侵略から自国を守るためだけだというモスクワのインチキ主張の長いリストの、もう1つの項目にすぎない。

ヨーロッパのポピュリスト政治家たちが好んで売り込むもう1つの論点は、ロシアのエネルギーに対するヨーロッパの制裁は、これまで見てきたように、コストがかかるだけでなく、役に立たないというものだ。この神話(myth)にはいくつかのヴァージョンがあるが、最もポピュラーなものは、G7とEU加盟諸国が合意したEUの石油禁輸と石油価格の上限は、ロシアの石油生産者に影響を与えないというものだ。それは、ロシアは、ヨーロッパ向けの石油をインドに振り向けることができるからだ。

実際、以前はヨーロッパ向けだったロシアのバルト海沿岸の港からの原油輸出の大部分は、現在インドの精製業者が吸収している。しかし、このような見方は、モスクワにとってインドの精製業者に石油を売ることは、ヨーロッパに売るよりもはるかに儲からないという事実を無視している。インドへの航路は、ヨーロッパへの航路よりもはるかに長い(したがってコストが高い)。加えて、インドのバイヤーたちは値切ることができる。彼らは、ヨーロッパ市場の損失を補うことでクレムリンの好意を受けていると考えており、そのためロシア産原油の急な値引きを受ける権利がある。

キエフ経済学院の研究によれば、ロシアの損害は無視できるものではないという。過去2年間で、クレムリンは推定1130億ドルの石油輸出収入を失ったが、その主な原因はEUによるロシア産石油の禁輸だった。EUの禁輸措置とG7とEUの石油価格上限がともに完全に効力を発揮した昨年、ロシア全体の貿易黒字は63%減の1180億ドルに縮小し、ウクライナ戦争を遂行するためのクレムリンの財源に制約を課すことになった。

ロシアの石油輸出企業にとって、今年は良い年にならないかもしれない。先月クレムリンは、輸出収入の減少を国家に補填するため、石油会社は利益の一部を放棄する必要があると発表した。ロシアの石油会社ロスネフチなどにとって、モスクワが国内のエネルギー企業に戦争資金調達への直接的な協力を求めるのは初めてのことだ。

制裁の実施が強化されるにつれ、制裁は無意味だという考えはさらに薄れていくだろう。 2023年10月以来、アメリカはG7とEUの原油価格上限を回避してロシア産原油を輸送していたタンカー27隻に制裁を課しており、これにより、どちらかの圏に拠点を置く企業がこれらのタンカーと取引することは違法となる。これは西側諸国の制裁解釈の劇的な変化を浮き彫りにしている。最近まで、価格上限はG7かEUを拠点とする海運会社または保険会社がロシア石油の輸送に関与する場合にのみ適用されていた。ワシントンは現在、西側企業とのつながりをより広範囲に解釈している。

たとえば、ロシアの幽霊船団(ghost fleet)のかなりの割合を占めるリベリア船籍のタンカーは、リベリアがアメリカを拠点とする企業に船籍業務を委託しているため、現在では石油価格上限の対象となる。これと並行して、西側諸国はインドの石油精製業者への圧力を強め、ロシアからの石油供給を止めるよう働きかけている。クレムリンを落胆させているのは、こうした努力が功を奏しているように見えることだ。今年に入ってから、インドのロシア産原油の輸入量は、2023年5月のピークから徐々に約3分の1に減少している。

制裁はロシアに損害を与えるよりもヨーロッパに損害を与えるというポピュリストたちの主張は、精査に耐えられない。現実には、これらの措置がヨーロッパ企業に与える影響は小さいが、ロシアは原油のルートを欧州から外そうとしているため、ますます逆風に直面している。

制裁にはコストがかかり、効果もないという主張を否定するのは簡単だが、このシナリオがすぐに消えることはなさそうだ。ロシアに好意的な政治家たちがヨーロッパ議会やその他の選挙に向けてキャンペーンを強化するにつれ、このような主張が今後数週間でますます広まることが予想される。制裁がロシアに深刻な影響を及ぼしていないのであれば、クレムリンと西側の同盟国は制裁を弱体化させるためにこれほどエネルギーを費やすことはないだろう。

※アガーテ・デマライス:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ヨーロッパ外交評議会上級政策研究員。著書に『逆噴射:アメリカの利益に反する制裁はいかにして世界を再構築するか』がある。ツイッターアカウント:@AgatheDemarais

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 中東におけるキープレイヤーとしては、サウジアラビア、イラン、イスラエル、アメリカが挙げられる。これらの国々の関係が中東情勢に大きな影響を与える。アメリカは、イスラエルと中東諸国との間の国交正常化を仲介してきた。バーレーンやアラブ首長国連邦(UAE)といった国々が既にイスラエルとの国交正常化を行っている。アメリカにとって重要なのは、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化であった。昨年、2023年前半の段階では、国交正常化交渉は進んでいた。こうした状況が、パレスティナのハマスを追い詰めたということが考えられる。

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中東諸国がイスラエルと国交正常化を行うと、自分たちへの支援が減らされる、もしくは見捨てられるという懸念を持ったことが考えられる。ハマスをコントロールしているのはイランであり、イランの影響力はより大きくなっていると考えられる。イランは、レバノンの民兵組織ヒズボラも支援している。イランは、ハマスとヒズボラを使って、イスラエルを攻撃できる立場にいる。イランの大後方には中国がいる。

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 イスラエルとしては、サウジアラビアと国交正常化を行い、中東地域において、より多くの国々をその流れに乗せて、自国の安全を図りたいところだった。イランを孤立させるという考えもあっただろう。しかし、ここで効いてくるのが、2023年3月に発表された、中国の仲介によるサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。これで、イランが中東地域で孤立することはなくなった。イスラエルとすれば、これは大きな痛手となった。そして、アメリカにしてみても、自国の同盟国であるサウジアラビアが「悪の枢軸」であるイランと国交正常化するということは、痛手である。これは、中国が中東地域に打ち込んだくさびだ。

 アメリカはサウジアラビアと防衛協定を結ぼうとしているが、それには、イスラエルとの関係が関わってくる。アメリカはサウジアラビアとイスラエルという2つの同盟国を防衛するということになるが、サウジアラビアとイスラエルとの関係が正常化されないと、アメリカとサウジアラビアとの間の防衛協定交渉も進まない。サウジアラビアのアメリカ離れということもある。ここで効いてくるのはサウジアラビアとイランの国交正常化合意だ。アメリカとイスラエルの外交が難しくなり、中国の存在感が大きくなる。

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サウジアラビアは次のエジプトへの道を進んでいる(Saudi Arabia Is on the Way to Becoming the Next Egypt

-アメリカ政府はリヤドとの関係を大きく歪める可能性のある外交協定を仲介している。

スティーヴン・クック筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/saudi-arabia-us-deal-israel-egypt/?tpcc=recirc062921

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サウジアラビアの紅海沿岸都市ジェッダのホテルで開催されたジェッダ安全保障・開発サミット(GCC+3)期間中に、家族写真のために到着したジョー・バイデン米大統領とサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子(2022年7月16日)

彼らはそうするだろうか、それとも、しないだろうか? それがここ数週間、中東を観察している専門家たちが問い続けてきた疑問だ。アメリカとサウジアラビアは、両国当局者たちが少なくとも2023年半ばから取り組んでいる大型防衛協定プラス協定(big defense pact-plus deal)を発表するだろうか?

2024年4月末のアントニー・ブリンケン米国務長官のリヤド訪問と、ジェイク・サリバン国家安全保障問題担当大統領補佐官の保留中のリヤド訪問計画により、合意の可能性の話に緊迫感と期待感が注入された。報道によると、サウジアラビアとジョー・バイデン政権は準備ができているが、「いくつかの障害は残っている(obstacles remain)」という。これはイスラエルを指す良い表現だ。

ワシントンとリヤドの当局者間の協議が始まったとき、バイデン政権はサウジアラビアとの単独合意では、米連邦議会から適切な支持は決して得られないという確信を持っていた。連邦上院で過半数を占める民主党の議員と少数派の共和党の議員(防衛協定に署名する必要がある)は、アメリカをサウジアラビアの防衛に関与させることに二の足を踏む可能性が高い。しかしホワイトハウスは、そのような協定がイスラエルとサウジアラビアの国交正常化を巡るものであれば、連邦議会の支持が得られる可能性が高いと推測していた。

2023年9月時点では、それは素晴らしいアイデアだったが、今ではやや理想的過ぎる考えになっている。ガザでの7カ月にわたる残忍な戦争の後に、サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化実現に求めている代償は、イスラエル人にとって大き過ぎ、イスラエル人の約3分の2がこの考えに反対している。それだけに基づいて、国防協定のための正常化協定を追求し続ける正当性はない。

しかし、ワシントンの当局者、そして、特にリヤドは、いずれにせよイスラエルをこの協定案から外したがっているはずだ。そうでなければ、アメリカとサウジアラビアの二国間関係に三国間関係の論理を持ち込むことになる。アメリカとエジプトの関係が何かを示すものであるとすれば、それはワシントンとリヤドの関係を深く不利な方向に歪めかねない。

ジョー・バイデン米大統領がサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子を本質的にペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物、persona non grata)であると宣言し、米連邦議会の議員たちがサルマン王太子の人権侵害疑惑の責任を追及するよう要求したのは、ずいぶん昔のことのように思える。

リヤド当局者たちが当時予測していたように、バイデン大統領がサウジアラビアの指導者たちを必要とする時が来るだろう。彼らはそれほど長く待つ必要がなかった。新型コロナウイルス感染拡大後の旅行客の急増とロシアのウクライナ侵攻によるガソリン価格の上昇圧力は、ホワイトハウスに特別な難題を突きつけた。その結果、世界規模のエネルギー価格の高騰はアメリカ経済の健全性を脅かし、ひいてはバイデンの選挙での見通しを脅かした。このためバイデンはリヤドに外交官を派遣し、最終的には2022年7月に自らリヤドを訪問するに至った。サウジアラビア政府高官たちにもっと石油を汲み上げるよう説得し、アメリカ人のガソリン代負担を軽減させ、大統領は低迷する世論調査の数字を少しでも改善することを望んでいた。

そして、エネルギー価格の高騰が部分的に後押ししたインフレと、ヨーロッパにおけるロシアのウクライナ侵攻は、ホワイトハウスの中国に対する厳しいアプローチを背景にしていた。バイデンは政権発足当初から、世界中で北京を出し抜くことを優先課題としていた。最も影響力のあるアラブ国家として、サウジアラビアはその戦略の重要な要素になると期待されていた。

そしてイランの脅威が存在した。ドナルド・トランプ米大統領(当時)が2018年にワシントンを脱退させた核合意である「包括的共同行動計画(Joint Comprehensive Plan of Action)」にテヘランが再加盟するよう、米政府高官たちが政権発足後2年の大半の期間を費やして追い回した結果、バイデンは、イランが実際にはアメリカやペルシャ湾西側の近隣諸国との新たな関係を望んでいないという結論に達したようだ。

結果として、アメリカ政府はイランの封じ込め(containing)と抑止(deterring)を目的とした、地域の安全保障を強化する取り組みに乗り出したが、その取り組みにおいてサウジアラビアが重要な役割を果たすことが期待されている。しかし、核合意と、2019年の自国領土へのイラン攻撃に対するトランプ大統領の反応に消極的だったことを受けて、リヤド当局者らは賢明に振舞った。その結果、彼らは現在、サウジアラビアの安全保障に対するアメリカの取り組みを大枠で規定する、正式な合意を望んでいる。

2017年と2018年に自らが負った傷のせいで、米連邦議事堂内におけるサウジアラビアの不人気が続いており、その結果、かつてはサウド家の忠実な召使であったが、ムハンマド王太子を激しく批判するようになった、ジャーナリストのジャマル・カショギの殺害にまで至ったことを考えると、連邦議会では支持大きいイスラエルが協定を締結するはずだった。しかし、このアイデアはうまく設計されているかもしれないが、サウジアラビアとアメリカとの防衛協定のための、サウジアラビアとイスラエルとの国交正常化は、アメリカとサウジアラビア当局者が最も重要であると信じている関係に、重大な下振れリスクをもたらすことを示している。

アメリカのサウジアラビアへの関与が、サウジのイスラエルとの国交正常化を条件とするならば、その関係、すなわちイスラエルとサウジアラビアの関係の質は、明白な意味でも、そうでない意味でも、ワシントンとリヤドの二国間関係に影響を及ぼす可能性が高い。

エジプトは、このダイナミズムがどのように展開するかを示す典型的な例である。ホスニ・ムバラク前大統領の時代を通じて、とりわけ長期政権末期には、アメリカ・エジプト・イスラエルの三者関係の論理がエジプト政権に対する、破壊的な政治批判をもたらした。ムバラクの敵対勢力、特にムスリム同胞団(Muslim Brotherhood)は、イスラエルのせいで、ワシントンがエジプトをこの地域の二流大国(second-rate power)にしたのだと主張した。

換言すれば、ムバラクと側近たちは、イスラエルが2度にわたってレバノンに侵攻し、ヨルダン川西岸とガザ地区を入植し、イェルサレムを併合するのを傍観していた。そうしなければイスラエルとの関係が危険に晒され、ひいてはイスラエルとの関係が損なわれるからである。そうなれば、エジプトとアメリカとの関係を損なうことになる。その結果、エジプトはイスラエルに直接挑戦するのではなく、国連やその他の国際フォーラムの場でイスラエルに抗議をする、つまり弱者の武器(weapons of the weak)を使うことになった。

2007年頃、エジプトからガザ地区への密輸トンネルの存在が初めて発見されたとき、イスラエルとその支持者たちはワシントンでそれを喧伝した。もちろん、彼らが憤慨するのは当然のことだが、エジプト政府関係者たちは、イスラエルがこの事態を二国間問題として処理せず、ワシントンを巻き込むことを選択したため、エジプトはカイロの軍事支援が危険にさらされることを恐れたと、私的な会話で苦言を呈した。米連邦議会の議員たちも、エジプトの軍事援助を削減し、他の支援にシフトするかどうか公然と議論していた時期だった。エジプトから見れば、特に敏感な時期に密輸トンネルをめぐって批判を浴びせられたことで、エジプトとイスラエルの二国間の問題が、ワシントンとカイロの問題になり、アメリカとエジプト関係に不当に緊張が走ることになった。

サウジアラビアとの安全保障協定を確保する努力にイスラエルを含めることは、既に複雑な二国間関係を更に複雑にすることを求めるだけだ。そのようなことをする価値はほとんどない。もちろん、エジプトとサウジアラビアには多くの違いがある。国境を接していないことから、イスラエルの安全保障上の懸念が、アメリカとエジプトとの関係で見られるような形でアメリカとサウジアラビアとの関係に影響を与えることはないだろう。

それでも、イランを管理するサウジアラビアの微妙なアプローチがイスラエルを怒らせた場合はどうなるのか? エジプトと同様、サウジアラビアは、アメリカの安全保障援助に依存している。イスラエルがサウジアラビア王室の外交政策の進め方を好まなければ、アメリカとサウジアラビアの関係に問題が生じる可能性は現実のものとなる。

バイデン政権がサウジアラビアとの防衛協定を望むなら、締結しよう。協定を結ぶにあたり、十分な根拠があるはずだし、バイデン大統領は懐疑論者を説得できるほど熟練した政治家だ。

※スティーヴン・A・クック:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。外交評議会エニ・エンリコ・マッテイ記念中東・アフリカ研究上級研究員。最新作に『野望の終焉:中東におけるアメリカの過去、現在、将来』は2024年6月に刊行予定。ツイッターアカウント:@stevenacook

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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 来年2025年に、名目GDPでインドが日本を抜いて世界第4位になるという予測が日本でも報道された。日本は世界第5位に下がる。日本の衰退が印象付けられるものだが、インドの躍進スピードが大きい。現在第3位のドイツと日本の差は小さいことから、インドがドイツを抜いて世界第3位になるのも近いということになる。インドは、「西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)」の中で、存在感を増している。

 インドは中国を抜いて、世界最大の人口を抱えている。14億1700万人を誇る。名目GDPは世界第4位であるが、一人当たりのGDPにすればまだ3000ドル程度だ(中国は約1万ドル、韓国は約3万ドル)。まだまだ貧しいのであるが、これから伸びしろが大きいということになる。人口ボーナス(15歳から64歳までの人口が、それ以外の人口の2倍いる状態)もあり、これから国内需要が増大し、国内市場が巨大になっていく。外国企業にとっても魅力的な市場である。
 2014年に就任したナレンドラ・モディ首相のインフラ整備と「メイク・イン・インディア」政策という製造業育成政策で、自動車生産が伸びている。もちろん、IT関係のサーヴィス業もお家芸であり、経済成長をけん引している。ヒンドゥー・ナショナリズムを経済ナショナリズムに転化させて、国内産業を育成し、雇用を確保し、国民生活を改善していくという流れになっている。それでは、インドは、中国のように世界覇権を握るほどの大国になるかどうかであるが、世界第一の経済大国にまでなれるかどうか、については疑問が残る。しかし、これからインドは注目に値する国である。

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インド経済の躍進:世界をリードする成長とチャンスの地

NEW 2024/5/23

Global X Japan

https://media.rakuten-sec.net/articles/-/45248

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●歴史的な高成長が続くインド経済

●モディ政権による経済政策、外国資本が参入しやすいビジネス環境

●インドの経済成長をまるっと捉える

■歴史的な高成長が続くインド経済

 インドの直近3年間の実質GDP(国内総生産)成長率は9.69%(2021年)、6.99%(2022年)、7.83%(2023年)と高水準です。2024年は6.81%と予測*されており、世界経済の成長率がおおむね3%で推移していることを踏まえるとインド経済の力強さが際立ちます。

 また、2023年の名目GDPは日本に次ぐ5位となり、2027年には日本とドイツを抜いて世界3位の経済大国になるとみられています*

*IMF(国際通貨基金)による予測

 力強い経済成長を支えるのは世界一の人口、特に生産年齢人口が多いことです。国連の推計では、インドの人口は2023年に中国を抜き世界一となりました。さらに人口ボーナス期(1564歳の生産年齢人口がそれ以外の人口の2倍以上に達する状態)が2050年ごろまで続く見通しであり、今後も巨大な人口に支えられた経済成長が持続すると考えられます。

 一方で、1人当たりの名目GDP(約2,410ドル、2022年)は1970年代の日本と同水準と低く、伸びしろが十二分にあります。2010年当時の中国でも同様に言われていたことですが、国民一人一人の所得水準が増加することで、その後中国経済は急速に拡大、今や米国を脅かす超巨大経済大国となりました。

 なお、一般的に1人当たりの名目GDP3,000ドルを超えると家電製品や家具などの耐久消費財の売れ行きが加速し、7,0001万ドルに達すると自動車や高級家電の普及に拍車がかかります。

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(出所)世界銀行よりGlobal X Japan作成

■モディ政権による経済政策、外国資本が参入しやすいビジネス環境

 インドのナレンドラ・モディ首相は現在2期目です。1期目(2014年~)ではインフラ整備や法税制改革を推進し、2期目(2019年~)では法人税引き下げや補助金制度の導入で製造業振興策に取り組みました。3期目については現在行われている総選挙の結果次第ですが、選挙公約として高速鉄道網の拡張などさらに積極的なインフラ政策を盛り込んでいます。

 また、インドは外国資本が参入しやすいビジネス環境となっています。英語が第二公用語であることや、初等教育の段階からプログラミングの授業が行われているためIT人材が豊富なことが主な背景です。

 そのため、先進国企業の業務のアウトソースを受託できる素地があります。IT分野はカースト制度の概念にない新しい職種であり、それ故、低カースト出身者が経済的に成功するための機会にもなっています。

 歴史的には中国、パキスタンなどともめる場面もありましたが、近年は経済優先の全方位外交を行っており、G7を中心とする民主主義的な国だけでなく、ロシアや中国などの権威主義的な国々とも中立的な立場で貿易を行うなど、結果として外国資本をうまく誘致できています。

 今後も外国資本により新たな雇用が生まれ、その結果として中間層を中心に所得水準が上がり、消費が拡大するという内需主導型の成長が続くと期待されます。

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(出所)世界銀行よりGlobal X Japan作成

■インドの経済成長をまるっと捉える

 上記のような背景からインドの株式市場には海外投資家から資金が流入しており、インドにおける個人の資産運用への関心の高まりも相まって、主要株価指数は最高値を更新しています。

 しかし、バリュエーションの面では高い利益成長からPER(株価収益率)は横ばいで推移しており、相場に過熱感はみられません。今後も良好なファンダメンタルズを支えに中長期的な株価上昇が期待されます。

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(注)株価指数はNifty50を使用。期間は201812月末から20244月末、株価は起点を100として指数化(月次、インドルピー建て)(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

 523日に、インド全体の経済成長を取りにいくETF(上場投資信託)が東証に上場しました。【188A】グローバルX インド・トップ10+ ETFは、インドが強みを持つ情報技術やコミュニケーション・サービスを含む9つのセクターを投資対象とし、各セクターを代表する大型の15銘柄を厳選します。ウエートは特定のセクターに偏らないようにするため均等にします。

 一般的なインドの株価指数(Nifty50SENSEXなど)は時価総額加重平均のため、時価総額の大きい金融が3040%と大きくなる傾向があります。過去のインドのGDPのセクター別の内訳をみると農業、工業、サービスの3大項目が大きく、比率を変えることなく推移しています。

 インド経済は特定のセクター、分野に偏った成長ではなく、ある程度均等に成長していることから、セクターを分散している当ETFに投資することでインド経済全体の成長を享受できます。

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※四捨五入の関係で必ずしも100にならないことがあります。(注)2024430日時点(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

 このようにセクターを分散・銘柄を厳選することで、当ETFの対象株価指数(Mirae Asset India Select Top 10+ Index)は他のインド株価指数を上回っており、今後も相対的に高いパフォーマンスが期待されます。なお、当ETFNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)の成長投資枠の対象銘柄です。

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(注)Mirae Asset India Select Top 10+ Indexの算出開始日は202445日。算出開始日以前の指数に関する情報は全て指数算出会社がバックテストしたデータ。期間は2008620日から2024430日。起点を100として指数化(インドルピー建て、配当込み、日次)(出所)BloombergよりGlobal X Japan作成

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インドは本当に次の中国なのか?(Is India Really the Next China?

-インド経済上昇の可能性は高いが、政府の政策が妨げになっている。

ジョシュ・フェルマン、アルビンド・スブラマニアン筆

2024年4月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/08/is-india-really-the-next-china/

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インドは中国になるだろうか? 中国経済が下降線をたどり、インドの成長に対する楽観論が世界中に広がる中で、この疑問はもはやナショナリストの熱狂的な妄想として片付けることはできない。なぜなら、少なくとも、世界は既にインドを大国のように取り扱っているからだ。

次のことについて考えてみて欲しい。2023年、カナダ国内で起きたカナダ人殺害事件と、アメリカ国内で起きたアメリカ人殺害計画にインド政府が関係しているという疑惑が持ち上がった。しかし、疑惑以上に注目すべきはその反応である。アメリカ政府は、煽動的になりかねない事態を鎮火させるために、ほとんど何も語らず、ただ裁判を無事に終わらせることを選択した。つまり、インドの傲慢さは非難されることなく容認された。これは、インドの政治的地位が新たに確立されたことを示す証拠である。

経済面に関して言えば、過去40年間の中国の経験が非常に特殊なタイプの奇跡であり、再現できる可能性が低いことは事実である。しかしながら、そうではありながらも、インドはもはやかつてのような経済的に制約された大国ではないため、中国のようになる可能性は存在する。

過去四半世紀にわたり、インドの発展はインフラによって妨げられ、インド自身の製造ニーズを満たすには、インフラの納涼区が不十分であり、インドを輸出基地として検討する外国企業にとってもまた明らかに不十分だった。しかし、過去10年間で、インドのインフラは大きく変化した。ナレンドラ・モディ首相の政府は、道路、港湾、空港、鉄道、電力、電気通信を大量に建設し、以前のインドの姿が認識できないほどになった。ほんの一例を挙げると、2014年にモディ政権が発足して以来、約3万4000マイルの国道が建設された。

インドのデジタルインフラも大きく姿を変えた。かつてはギシギシと音を立て、技術的にも後進的だったデジタルインフラは、今や最先端を行くようになり、一般的なインド人は、ごく日常的な買い物でさえスマートフォンで決済するようになった。より重要なのは、デジタル・ネットワークが全てのインド国民をカバーするようになったことで、政府は困っている人に現金を直接給付するなどのプログラムを導入できるようになり、民間企業は起業や技術革新のプラットフォームとして活用している。

同時に、モディ政権の「新福祉主義(New Welfarism)」はインド国民の生活の質を向上させた。この特徴的なアプローチは、基本的に私的な財やサーヴィスを公的に提供することを優先し、有権者にクリーンな燃料、衛生設備、電力、住宅、水、銀行口座を提供する一方で、恩恵を受けるのはモディ首相であることを明確にしている。こうしたプログラムの結果、新型コロナウイルス感染拡大のような苦難の時期にも、国家は雇用や無料の食料で弱者を救済できるようになった。インドが国家として、より良いものを構築し、提供する能力には目を見張るものがある。

これらは主要な政策成果であり、累積的な国家的努力の成果だ。これらの取り組みの多くは、実際には、モディ政権前の中央政府および州政府によって開始されたものだが、その進歩を加速させている点でモディ政権は重要な称賛に値する。そして、その成果が出ている兆しも見えている。

第一に、インドは、技能ベースのサーヴィス輸出に新たな大きな弾みをつけている。インドのサーヴィス産業は2000年代初頭にブームになったが、2008年から2009年にかけての世界金融危機の後に停滞した。そして今、再生が見られる。2022年、インドの世界市場シェアは1.1%ポイント(約400億ドル)増加し、これはスキルの重要なジャンプアップを反映している。(2023年、インドは更に世界市場シェアを拡大する可能性が高いが、そのペースはそれほど速くない)。

以前は安価なコードを書いたり、コールセンターで働いたりしていたインド人が、今では世界規模の能力センターを運営し、高いスキルを持った人材が世界のトップ企業で分析業務を行っている。JPモルガン・チェースだけでも、インドに5万人以上の従業員がおり、ゴールドマン・サックスのニューヨーク以外で最大のオフィスはベンガルールにある。アクセンチュアやアマゾンなども大規模な拠点を構えている。このブームが高層マンションの建設に火をつけ、アーメダバード、ベンガルール、ハイデラバード、ムンバイ、プネーといったハイテク都市のスカイラインに点在するようになった。建設業も大いに発展している。SUVの販売台数は急増し、高級ショッピングモールや高級レストランが誕生している。

第二に、インドで最も人口が多く、最も開発が遅れているウッタル・プラデシュ州が復活の兆しを見せている。ウッタル・プラデシュ州は、老朽化したインフラ(多くの寺院は言うまでもない)を改修し、財政を管理下に置き、自警団のヒンドゥー教の僧侶から政治家に転身したカリスマ的な宗派指導者の下、汚職や暴力を激減させている。ウッタル・プラデシュ州が最終的に魅力的な投資先になることができれば、その人口的な重さによって国全体の軌道を変える可能性がある。その変革は、インドのヒンディー語中心地域(最近までバイマル(bimaru、病んだ地域[diseased region])と蔑称されていた)が永久に低開発(underdevelopment)を強いられる訳ではないというシグナルを送ることになるだろう。

最後に、習近平国家主席の下で中国経済の下降スパイラルが加速している。その結果、資本は驚くべきペースで中国から流出し、公式の数字によれば、2023年には企業や家計の資金が正味690億ドルも流出したという結果になっている。

こうした資本のうち、わずかではあるが、インドに流れ込んでいるものがある。最も顕著なのは、アップルがインドの多くの州に工場を設立したことで、インド国内市場への供給が容易になり、特に米中間の経済的緊張が高まっている現在、輸出基盤が多様化している。その結果、国内の電子機器供給のためのチェーンが構築され、特にインド南部では2万人以上の労働者を雇用する大規模な工場の設立を計画しているところもある。これは、常に小規模で非効率な製造業を特徴としてきたインドにおいて、驚くべき現象である。

このような大規模工場が実現可能であることが証明されれば、商品輸出の急増に火をつけることになる。それは、長年苦境に立たされてきたインドの製造業だけでなく、高スキルの輸出サーヴィス・ブームを享受できなかった、低スキル労働者にとっても、展望を大きく変えることになるだろう。この計算は考慮に値する。インドの低スキル輸出は、40%を超える世界市場シェアに反映される中国の競争力レヴェルには決して到達しない。それは、先進諸国が産業基盤の多くを、1国(中国)だけにシフトすることを促した政治的・経済的な特殊事情が、もはや存在しないからだ。しかし、今後10年間で、インドが現在の3%程度のシェアを5~10ポイント高めることは十分に可能であり、これは数千億ドルの追加輸出に相当する。

良好な前兆にもかかわらず、インドが中国を追い越すという宣言は時期尚早である。それは、明るい兆しはまだ経済データには説得力を持って反映されておらず、政府の政策も新たなチャンスを実現するには不十分なままだからだ。

経済データについて考えてみよう。私たちはしばらくの間、インドが2010年代の失われた10年間を本当に脱却することができたという主張に懐疑的であった。この時代は、緩やかな成長、ほとんど構造的変化が見られず、雇用創出も弱かった。確かに、新型コロナウイルス感染拡大後に経済は回復したが、その方法は不平等であり、労働力よりも資本が、中小企業よりも大企業が、そして非公式経済で雇用されている数百万の人々よりも給与をもらっている中産階級や富裕層が優遇されている。

問題の一部は、インドがこれまで、中国の相対的な経済衰退によって生まれた新たな機会のごく一部しか活用できていないことだ。政府が「メイク・イン・インディア(インドで製品を作ろう、Make in India)」というキャンペーンを決然と展開しているにもかかわらず、多くの企業にインドでの事業拡大を納得させるまでには至っていない。実際、外国直接投資(foreign direct investmentFDI)の流入は減少している。また、中国を除く新興市場への外国直接投資の流入に占めるインドの割合も小さくなっている。

これは慎重な外国人だけの話ではない。政府が整備したインフラ整備や補助金、そして場合によっては製造業に対しての惜しみない保護主義(protectionism)にも関わらず、国内企業でさえ投資に消極的だ。プラントや機械への民間投資は、過去10年間の低迷した水準から依然として回復していない。そして、この状況が好転していることを示す説得力のある兆候はない。実際、2023年の新規プロジェクトの発表は、前年のレヴェルと比較して名目上において、減少した。

その結果、膨大な非熟練労働力の雇用創出の源泉であるインドの製造業輸出は低迷を続けている。実際、世界金融危機以降、アパレルなどの主要分野におけるインドの世界市場シェアは低下している。このような事態はモディ政権やインド中央銀行にとっても大きな懸念材料であり、中央銀行は最近、民間セクターが「行動を共にし(get its act together)」、政府の投資負担を軽減するよう促す報告書を発表した。

なぜ企業は、目の前にあるチャンスをつかむことに消極的なのだろうか? 基本的には、インドで事業を拡大することのリスクが高すぎると認識しているからである。

企業の懸念は主に3つの分野にある。第一に、彼らは政策決定の「ソフトウェア(software)」が依然として脆弱であることを懸念している。少数の国内複合巨大企業と一部の大手外資企業が有利な企業と見なされており、競争の場は平等ではなく、広範な投資環境に悪影響を及ぼしている。結局のところ、リスクが低減されたという理由で投資を引き受けるあらゆる好意的な企業に対し、リスクが増大したために投資を削減した競合他社も数多く存在する。彼らにとって、国家の恣意的な行動の犠牲者となるリスクは依然として大きい。

第二に、インド政府は輸出を促進する必要性を認識しながらも、内向き志向(inwardness)、つまり、輸入障壁には依然として強い執着を持っている。この保護主義には新たな魅力がある。それは、インドの国内市場は今や非常に大きく、国内企業は非常に発展しているため、政府の後押しを受けさえすれば、外国企業に取って代わることは容易だと多くの人が考えているからだ。当然のことながら、経済的ナショナリズム(economic nationalism)は必然的に政治的ナショナリズム(political nationalism)を伴う。

しかし、インドの国内市場は、少なくともグローバル企業が売ろうとしている、中産階級向けの商品については、特別に大きくはないというのが現実だ。また、保護主義的な措置が頻繁に発表されると、企業は遅かれ早かれ重要な海外からの供給を断たれるかもしれないとリスクを回避するようになり、実際に国内投資が減退する。例えば、昨年(2023年)8月に発表されたノートパソコンの輸入規制は、重要なIT部門の企業にパニックを引き起こした。結局、規制は緩和されたが、他のセクターでも同様の措置が実施されたため、その懸念はいまだに残っている。

結局のところ、政治と経済の間に、くさびのようにして、はまり込んでいる問題が立ちはだかっている。政治体制が安定している限り、制度の崩壊に直面しても、投資と成長は生き残り、さらには繁栄することができる。そして、モディ首相の人気は安定を予感させている。しかし、インド北部の少数民族コミュニティ、南部諸州、反政府派、農民の間で不満と反抗心が高まり、突発的な事件発生の可能性が高まっている。経済学者のジョン・メイナード・ケインズが述べた有名な言葉にあるように、「避けられないことは決して起こらない。それはいつも予想外のことだ(The inevitable never happens. It is the unexpected, always.)」。

※ジョシュ・フェルマン:JHコンサルティング社代表。国際通貨基金(IMF)インド事務所長を務めた。

※アルビンド・スブラマニアン:ピーターソン国際経済研究所上級研究員。モディ政権の首席経済補佐官を務めた。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 ジョージ・W・ブッシュ大統領(在任:2001-2009年)の外交政策は、ネオコン派と呼ばれる人々によって牛耳られていた。彼らは、介入主義を基盤とする、外交政策を展開した。2001年9月11日の同時多発テロ「911事件」の報復として、アフガニスタン(2001年)とイラク(2003年)に侵攻した。その当時の両国の政権を倒すことはアメリカにとっては容易(たやす)いことだった。それからはアメリカ軍が占領しながら、新体制、新政権を樹立することになった。それからは厳しい状況が続いた。自爆テロや地元の人々の反感を受けて、アメリカ軍の占領は泥沼状態に陥った。結局、アメリカ軍(と同盟諸国の軍隊)は両国から撤退し、両国の状態は大きく改善(西側の視点から)されることはなかった。ベトナム戦争からの撤退を思い出させる混乱があった。

 そもそも論として、アメリカは外交政策を失敗したのだ。安易な介入主義、「アメリカの力をもってすれば、一国の政治体制を変革し、資本主義と民主政治体制を確立することは可能だ」という介入主義の傲慢さが、泥沼化(quagmire)を招き、最終的にはアメリカ軍は撤退するに至った。ブッシュ政権のネオコン派による外交の失敗、介入主義の失敗が、バラク・オバマ大統領を誕生させた。しかし、オバマ政権(リアリズム外交を志向した)も、1期目にはヒラリークリントンを国務長官に据えて、「アラブの春」を演出した。アメリカ軍が介入することはなかったが、介入主義の外交政策が続き、結局それらは失敗に終わった。アメリカの権威を大いに傷つける結果となった。

 介入しての体制転換、政権交代、新体制樹立が成功したのは、敗戦後の日本だ。アフガニスタンやイラクへの侵攻が行われた後、アメリカ国内のメディアでは、「イラク(アフガニスタン)は次の日本になれるか」というようなタイトルや趣旨の記事が多く出た。結局、失敗したのであるが、日本における、特殊な成功体験が、アメリカを狂わせたということになる。「あれだけ激しく抵抗した日本が戦後はおとなしく属国になり果てた」ということが、歴史的に見れば、アメリカの失敗を引き出したということになる。

(貼り付けはじめ)

バイデン政権の外交政策の原罪(The Original Sin of Biden’s Foreign Policy

-ジョー・バイデン政権の外交的弱点は全て、アフガニスタンからの撤退に既に現れていた。

ジョン・カンプナー筆

2024年5月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/05/the-original-sin-of-bidens-foreign-policy/?tpcc=recirc062921

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ワシントンDCのホワイトハウスのイーストルームから、アフガニスタンのカブール情勢について語るジョー・バイデン米大統領(2021年8月26日)。

数週間前、トロントで私は20代半ばの若いアフガニスタン女性に会った。彼女はアフガニスタンの国際援助機関で働いており、精神の健康に関する問題に苦しむ女性たちを支援していた。2021年にタリバン軍が国中に押し寄せる中、彼女は外国人と協力したことで罰せられることを知り、必死に逃げようとした。彼女は最終的に弟と妹と一緒に脱出し、まずイランを経由してブラジルへ逃亡した。その後、彼女は南米を縦断し、パナマのジャングルを抜け、ドナルド・トランプ元大統領の壁を乗り越え、アメリカを通過し、最終的にはカナダに至るという危険な旅を経験した。
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彼女の物語はその勇敢さにおいて並外れたものだが、決して特別なものではない。数え切れないほどのアフガニスタン人が、殺人、拷問、レイプ、強制結婚から逃れるためにできる限りのことをした。カブールの空港から避難する際、西側諸国の軍隊によって空輸された幸運な人たちもいた。多くの人々が故郷に捨てられ、運命に翻弄された。また、危険な旅に出た人たちもいる。幸運な人たちは新しい生活を始めたが、それ以上の人たちは難民キャンプに取り残されている。数え切れないほどの人々が、危険な旅の途中で命を落とした。
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こうした人々は全て、統計の数字であり、より大きなパワーゲームの犠牲者である。彼らは、2001年のアメリカによる侵攻の瞬間から、20年後の悲惨な撤退まで、アフガニスタンにとって何が最善かを知っていると主張していた、アメリカとその同盟諸国に失望させられてきた。3500人以上の外国の将兵たちが戦死された「不朽の自由作戦(Operation Enduring Freedom,)」は、永続する自由をもたらしたわけではなく、アフガニスタン人に与えられた、より良い生活というつかの間の希望だけが、突然そして残酷に打ち消された。

その中で、1人の男が傲慢であった。ジョー・バイデン米大統領は、前任のドナルド・トランプ大統領が打ち出した方針を貫いた。バイデンはホワイトハウスに入るずっと以前から、アフガニスタンとイラクでの無益と思われる軍事作戦に何十万人ものアメリカ軍が投入されることを批判していた。これは、バイデンがトランプの仕事を引き継いだ、アメリカの外交・安全保障政策のいくつかの分野の1つであった。2021年8月にカブール国際空港で起こった、半世紀前のサイゴン陥落を彷彿とさせるような恐ろしい光景の中でさえ、バイデンは自らの評価に固執した。バイデンは「私はこの永久戦争(forever war)を延長するつもりはなかったし、永遠の撤退を延長するつもりもなかった」と述べた。

逆襲の中、連邦議会による多くの調査が行われ、大失敗から数カ月の間に、多くの報告書が発行された。映画も作られ、何が起こったのか、誰に最も重い責任があるのかを説明する本も多く書かれた。それとは対照的に、政策立案者や軍の最高責任者たちはすぐに次の段階に移った。彼らの関心は、ロシアのウクライナ侵攻、そしてイスラエルとハマスの紛争という中東問題へと移った。その間も、中国は西側諸国の利益に対する、長期的な最大の戦略的脅威とみなされている。公平を期すなら、ワシントンやその同盟諸国が、アフガニスタンに駐留し続けるだけの資源や政治的支持を持つとは考えられない。

それにもかかわらず、道徳的な観点だけでなく、政策立案の観点からも、アフガニスタンで何が間違っていたのかに立ち返ることは有益である。アフガニスタンからの撤退は、その後の世界を包んでいる、絶えることのない危機の多くがそうであったように、外交官や軍人たちが善意と誠実な努力で、できる限り多くの人々を守ろうとした物語だった。しかし、それはまた、現地の担当者たちと政治的意思決定者たちの致命的な判断ミスの物語でもあった。

当時のイギリス大使であったローリー・ブリストウによる新たな証言(アメリカでは近日発売予定だが、イギリスではすでに発売されている)は、この大惨事が展開された際の重要な洞察を更に深めるための材料となる。

ブリストウは、2021年6月14日にカブールに到着する前から、自分の任期が短いことを分かっていた。2020年2月29日にトランプ政権が、カタールのドーハでタリバンと署名した「アフガニスタンに平和をもたらす」ための協定(agreement for “bringing peace to Afghanistan”)は、現代の最も評判の悪い協定の1つだった。タリバンが合意されたスケジュールを遵守し、どういう訳か、信じられないことに、より現代的なものに改革したと信じるのは世間知らずだったばかりでなく、キャンペーンを通じて、他の主要な参加者、つまりアフガニスタン政府そのものとアメリカ政府、重要な同盟国、特にイギリスをこれ見よがしに排除した。

2021年前半を通じて、アメリカが兵力を削減することで自国の立場を守ったため、不吉な予感はたちまちパニックにつながった。タリバンはほとんど抵抗を受けることなく、アフガニスタン国内を席巻した。

イギリス大使館にとっての主な任務の一つは、アフガニスタン移転・援助政策(Afghan Relocations and Assistance PolicyARAP)に基づいてどのアフガニスタン人が出国の資格があるかを特定することであった。ブリストウは、日記形式で書かれた自身の説明の中で、運命に見捨てられたらどうなるかを知っていた地元の従業員やアドヴァイザーたちとの困難な会議について説明している。

ブリストウは85日の日記の中で次のように書いている。「私たちは戦没者慰霊碑の隣にある大使館の庭に輪になって座り、必要な人のために男性の1人が通訳となった。私は1人ずつ発言するよう呼びかけた。女性たちが最初に、まとまった長さで話した。そのうちの1人、年配の女性は自信に満ち、自然な威厳をもって話し、男性にまったく譲らなかった。空気には恐怖と怒りがあり、涙も見られたが、アフガニスタン人本来の礼儀と威厳で和らげられた」。ブリストウは続けて次のように書いている。「彼らの目を見て、出国の申請を拒否したのは正当な判断だと思うと言うのは不可能だった」。

何人かは幸運だったが、ほとんどはそうではなかった。いずれにせよ、事態は収拾がつかなくなり、本国の官僚たちが申請を処理し続けることは不可能だった。数日もしないうちに、イギリスをはじめとする、諸外国からの軍隊は大使館を空港に避難させる準備をしていた。彼らはタリバンにプロパガンダの勝利を提供できるものは全て処分した。ブリストウは「女王の写真、旗、公式ワインショップ、全てを撤去するか、破壊しなければならなかった」と書いている。

タリバンによる8月15日の占領宣言から8月21日の最終撤退までの最後の日々の混乱した光景は記憶に刻まれている。ブリストウは次のように回想する。「空港は膨大な数の人々に圧倒されて混雑していた。アメリカ軍だけでも約1万4500人が飛行場にいて、カブールから空輸されるのを待っていた。ゲートや北ターミナルの周り、どこに行っても、どこを見ても、日よけの下、屋外、出入り口に人がいた。子どもたち、年老いた親、惨めな荷物など、ボロボロのケースやスーパーマーケットのビニール袋に人生全体が詰め込まれていた」。

故郷のホワイトホールでは、夏休みのピーク時期だった。ドミニク・ラーブ英外務大臣は家族とともにギリシャに滞在しており、休暇の邪魔をされたくないと怒って主張した。ティームがカブールとロンドンでできるだけ多くの人々を避難させるために24時間体制で活動している一方で、政治工作員たちには別の優先事項があった。ブリストウはこれを「非難と責任転嫁の醜いゲーム(an ugly game of recrimination and buck-passing)」と形容し、次のように付け加えた。「ロンドンの一部の人たちの優先事項は、閣僚とその側近たちに個人的かつ政治的な恥をかかせないことだと私には見えた。現場の人々からの助言、評価、福利厚生は二の次だった」。ボリス・ジョンソン政権時代の最も不運な閣僚の一人であったラーブ外相は、その職をめぐって多くの競争があったが、その後すぐに政治家としてのキャリアが消滅することになった。

ブリストウの全体的な評価は注目に値する。彼は次のように述べている。「アフガニスタン作戦の失敗は、資源不足のためではなかった。2011年、『オバマ・サージ』の最盛期には、NATOは13万人以上の兵力をアフガニスタンに展開していた。イギリスは2001年から2021年にかけて、アフガニスタンへの軍事作戦と援助に300億ポンド以上を費やした。20年間で1兆ドルから2兆ドルで、この間のアフガニスタンのGDPの累計を上回った。しかし、20年近くにわたって行われたこれらの莫大な支出は、アフガニスタンに平和も安定も良い統治ももたらさなかった」。

ブリストウは続けて次のように書いている。「ドーハ合意は、交渉による解決を達成するための真剣な試みとして理解されれば、史上最悪の合意の有力な候補となる」と付け加えている。しかし、そうではなかった。トランプ大統領の合意は、アメリカの選挙日程というかなり異なるものによって推進された」。ブリストウが会ったアフガニスタンに詳しい人は皆、「トランプ大統領とタリバンとの間の酷い内容の合意と、その後のバイデン大統領の失敗に終わった撤退実行に愕然とした」と述べている。

2024年の多くの危機の渦の中で、アフガニスタンは既に歴史の脚注のように感じられる。ブリストウは、アフガニスタンの失敗がもたらした多くの教訓の1つは、アメリカと同盟諸国との間の協力のあり方だと書いている。ブリストウは「イギリスはジュニア・パートナーであり、アメリカの意思決定に対して対等な発言権はなかった。私たちが軍事的撤退を賢明でなく、熟慮が足りないと考えたからといって、アメリカの方針が変わることはなかった」と書いている。これは言い換えれば、トランプ流とバイデン流の「アメリカ・ファースト」(“America First,” Trump-style and Biden-style)の最初の大きな試練であり、他の誰もがその後塵を拝した。バイデンが再選されようがされまいが、他の紛争地域でもこのようなことが起こるのは間違いない。

ジョン・カンプナー:『なぜドイツ人はうまくやれるのか:成熟した国からの教訓(Why the Germans Do It Better: Notes from a Grown-Up Country)』の著者。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 電気自動車分野の動きに関して、ここ数回、このブログでもご紹介している。アメリカは中国製の電気自動車に対して、関税100%を課す決定を下した。この措置は、アメリカの国内市場で、中国製の電気自動車がシェアを広げており、アメリカ政府としては、経済問題と安全保障上の問題として、懸念を持っていることを示している。世界最大の電気自動車メーカーであるテスラにしてれば、ありがた迷惑な措置であることは前回の記事で書いた。

 アメリカは、電気自動車に必要不可欠なバッテリー分野で重要な存在となっているインドネシアとの間での自由貿易協定を結ぶことを躊躇している。インドネシア政府が、精錬されていないニッケル(バッテリーにとって必要な鉱物資源)の輸出を禁止したことで、インドネシアにニッケル精錬工場や、バッテリー製造工場を建設するために、各国が投資を行っているが、その中心は中国である。中国が関連しているニッケル精錬工場からのニッケルや、バッテリー製造工場からのバッテリーを、アメリカ国内に入れることに、バイデン政権は躊躇しているようだ。「インドネシアはいつまでもはアメリカを待っていられないよ」とルフット・ビンサル・パンジャイタン海洋・投資調整担当大臣名で『フォーリン・ポリシー』誌に掲載した論稿についてもこのブログで既にご紹介している。

そうした中で、イーロン・マスクがインドネシアを訪問し、ジョコ大統領とルフット大臣と会談を持ったということ、インドネシア国内にバッテリー製造工場を作ると発言したことは重要だ。イーロン・マスクはアメリカ政府の意向に反するような動きをしているが、これはマスクからすれば当然の動きだ。テスラは、中国市場が最大の得意先であり、中国の上海で製造している。中国が既に進出しているインドネシアに進出して、バッテリー工場を作るというのは、これもまた当然のことだ(中国資本の精錬工場からのニッケルを使うだろう)。アメリカが中国とインドネシアを排除している中で、テスラが入って、電気自動車分野に関して、三角形を形成している。そこにアメリカが入れないというのは、アメリカにとって大きな痛手である。

 インドネシア政府の海洋・投資調整府(Coordinating Ministry for Maritime and Investment Affairs)が、インドネシアにおける電気自動車関連、最終的な電気自動車の生産と輸出を担当している重要な部署となっている。ジョコ・ウィドド大統領就任直後の2014年10月27日に設置された(ジョコ大統領就任は10月20日)。ジョコ政権下、海洋・投資調整大臣はルフット・ビンサル・パンジャイタンが一貫して務めてきた。大統領交代のため、ルフット大臣が退任し、エリック・トヒル国有企業大臣が後任大臣に就任するという予測が出ている。大きな政策変更はないということのようだ。以下に紹介している論稿では、東南アジア地域では、タイが最大の電気自動車市場になっており、輸出量も地域で最大になっているということだ。これは世界の巨大自動車メーカーがタイに進出しているということもあるだろうが、インドネシアにとっては手強い競争相手になる。また、ヴェトナムもヴィンファスト社という会社があって、既に電気自動車を輸出しているとのことだ。これは、おそらく、中国からの支援や協力があってのことだろう。こうやって、アメリカの影響力を削いでいる。

 電気自動車分野は、国際政治の最前線ということになる。ここでも、米中対立が起きているが、アメリカは中国に対して、既に劣勢に立っている。最先端分野でのアメリカの衰退は、アメリカの世界帝国としての終わりを告げている。

(貼り付けはじめ)

マスク氏、インドネシア大統領と会談 EV電池工場の建設検討へ

By Stefanno Sulaiman

ロイター通信 2024520日午後 3:04 GMT+92時間前更新

インドネシアのルフット海洋・投資担当調整大臣は20日、ジョコ大統領とこの日面会した米電気自動車(EV)大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同国にEV電池工場を建設する案を検討すると明らかにした。

[デンパサール(インドネシア 20日 ロイター] - インドネシアのルフット海洋・投資担当調整大臣は20日、ジョコ大統領とこの日面会した米電気自動車(EV)大手テスラ(TSLA.O), opens new tabのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が同国にEV電池工場を建設する案を検討すると明らかにした。

マスク氏からコメントは得られていない。

同氏とジョコ大統領は20日にインドネシアのバリ島で開催された世界水フォーラムに出席後、会談を開いた。

また、ジョコ大統領はマスク氏にインドネシアの人工知能(AI)センターへの投資を検討するよう求めたほか、マスク氏の宇宙開発企業スペースXがパプア州ビアク島にロケット発射場を建設することを改めて提案した。

インドネシア政府は同国の豊富なニッケル資源を活用してEV産業を振興しようとしており、何年もテスラの工場誘致に力を入れてきた。

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インドネシアは電気自動車に大きく賭けている(Indonesia Bets Big on Electric Vehicles

-ジャカルタの最新の開発ギャンブルはグリーン転換にかかっている。

ジョセフ・ラックマン筆

2024年5月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/08/indonesia-electric-vehicle-green-transition-china-tariffs/

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ジャカルタで開催されたインドネシア国際モーターショーで、ヴェトナムの電気自動車ブランド「ヴィンファスト(VinFast)」が電気自動車VF7を展示(2024年2月24日)。

インドネシアの投資・海事担当調整担当(coordinating minister for investment and maritime affairs)副大臣ラフマト・カイムディンは、「中国は工業化するには40年から50年かかった。私たちはもっと速くする必要があるかもしれない」と述べた。インドネシア政府は、2045年までに先進国になるという野心的な目標を設定している。その一環として、電気自動車生産の世界的なハブ(global hub)となるという大きな賭けが行われている。

ジャカルタは、世界的なグリーン転換の中で、国内に埋蔵している莫大なニッケルとコバルトを成長の原動力にするチャンスに目をつけた。これらの鉱物はバッテリー生産に不可欠であり、鉱山から自動車ユーザーまでの国内サプライチェーン構築の基盤として利用できる。

今のところ、この賭けはうまくいっているようだ。インドネシアは現在、世界のニッケル生産の51%を占めており、コスト競争を圧倒し、コンゴ民主共和国に次ぐ世界第2位のコバルト生産国となっている。韓国のヒュンダイ、日本の三菱自動車、中国の五菱、奇瑞、DFSKの5社がインドネシア国内で既に、少数ではあるが、電気自動車を生産しており、今後更に多くの電気自動車が生産することが期待されている。大手電池メーカーや電池材料メーカーもこれらの企業と一緒にインドネシアに進出している。

この電気自動車という新興産業分野は、国内問題、地政学的保護主義、環境問題、技術革新など、無数の仕掛け線(tripwire)に直面しているが、楽観できる理由もある。ビジネス情報会社「ベンチマーク・ミネラル・インテリジェンス」のバッテリー・電気自動車担当主任アナリストのルーク・ギアは、「控えめに見積もっても、インドネシアは2030年までに年間50万台の電気自動車を生産できるようになるだろう」と述べている。

インドネシアの開発アジェンダ全体が電気自動車に懸かっており、その前途は険しいからだ。2045年までに政府の開発目標を達成するためには、インドネシアの成長率を平均5%前後から6~7%に引き上げる必要がある。最も基本的なレヴェルでは、インドネシアが望ましい商品を生産し、労働者が生産性の高い仕事に従事できるような産業からこれらの商品が生まれるようにし、これらの産業を構築するために必要な大規模な海外直接投資(foreign direct investmentFDI)を誘致できるようにする必要がある。もしそれができなければ、若い労働者と消費者からなるインドネシアの現在の人口ボーナスは、足かせに変わるだろう。希望は、今垣間見えるチャンスの窓がいつ閉じるのかという静かな不安と混ざり合っている。

電気自動車産業は、これらの条件を全て満たしているように見える。電気自動車市場は今後、猛烈な勢いで拡大すると予想されている。国際エネルギー機関(International Energy AgencyIEA)は、2035年までに販売される全ての自動車が電気自動車になると予測している。生産の大幅な増加によって生み出される雇用の多くは工場での仕事であり、工業化は労働者を農業や小規模サーヴィスなどの生産性の低い部門から生産性の高い部門に移動させる典型的な方法となる。これがインドネシアで起きることになる。

インドネシアは、莫大な重要鉱物資源を活用することで、海外企業にインドネシアへの投資を促し、鉱業に必要な直接投資を確保することを惜しまない。ニッケル鉱石の輸出禁止により、多くの中国企業がインドネシアでの精錬を開始した。2023年、中国企業はインドネシアの金属・鉱業プロジェクトに42億ドルを投じた。

現在、焦点はバッテリーと電気自動車生産の詳細を構築することに移っている。ここでインドネシア政府はムチよりもアメを投入している。補助金の対象となるには、インドネシアで製造された電気自動車が一定レヴェルの現地コンテンツ要件を満たす必要があり、この要件は時間の経過とともに増加している。しかし、その代わりに、これらの 電気自動車に対する付加価値税はわずか1% だ。この分野の主要投資家たちも10年間の納税猶予を受けている。インドネシアで生産を展開する際に、出荷する電気自動車には輸入税や奢侈税が課されない。

アメリカやヨーロッパの大手メーカーの多くはまだ参入を表明していないが、これは必ずしも問題になる訳ではない。その多くは世界的な電気自動車移行を呆然と見つめるだけで(caught flat-footed)、中国や新たな生産拠点の新興企業がチャンスを得ている。

しかし、この移行の裏返しとして、象徴的(totemic)な国家産業を保護したいという願望が、インドネシアの輸出への期待を台無しにする可能性のある先進国の保護主義を生み出しているということだ。ジョー・バイデン政権の電気自動車補助金には多くの条件が付けられており、インドネシアで組み立てられた電気自動車は排除されている。ヨーロッパ連合もまた、安価な中国製電気自動車が市場に流入することにパニックを起こし、ますます保護主義的な方向に進んでいる。インドネシアでは大量の石炭が燃焼されているため、同国の電気自動車は比較的炭素集約的である。

問題の1つは、グリーン・サプライチェーンにおける中国の支配に対する恐れである。しかし、これはほとんどの西側諸国の自動車メーカーが技術シフトについていけなかったことと表裏一体の関係にある。ステランティスはそれなりの業績を上げている。しかし、GM、フォード、フォルクスワーゲンは後塵を拝している。

競争力はないが政治的に重要な産業に対する保護主義について、長年にわたり発展途上国に説教してきた、西側諸国は、逆の立場になるとその姿勢を変えようとしている。保護主義や西側メーカーが採算の取れない電気自動車の撤退を遅らせていること、加えて、世界経済が不安定であることが、電気自動車の販売台数は伸び続けているものの、その伸び率は鈍化しており、下方修正されているとUBSの電気自動車バッテリー調査担当エグゼクティブ・ディレクターのティモシー・ブッシュは指摘する。

インドネシアの計画に対するもう一つの脅威は、更なる技術革新である。インドネシアの魅力の多くは、NCM電池に必要なニッケルとコバルトの豊富さにかかっている。しかし、過去5年間で、ニッケルもコバルトも使用しないLFP電池は、ニッチな製品から、電気自動車電池市場の40%以上を供給するまでになった。皮肉なことに、高価だが航続距離が長いNCM電池は、消費者が豊かで、世界的に見ても大変長距離を走る米国市場に最適かもしれない。しかし、インドネシアはその市場から締め出されている。

インドネシアはまた、電気自動車製造ブームに乗ろうとする他の国々との厳しい競争にも直面する可能性がある。ブルームバーグNEFのアナリスト、コマル・カレールは、「電気自動車に対する強い国内需要の欠如は、より多くの現地生産を誘致するためのハードルとなり得る。通常、バッテリーメーカーや自動車メーカーは、エンドユーザー層が厚い市場を好むものだ」と言う。実際、インドネシアは既にタイとの競争に直面している。タイは東南アジア諸国連合(ASEAN)最大の自動車輸出国であり、この地域最大の電気自動車市場を持っている。

この文脈では、インドネシアが長い間苦労してきた電気自動車分野に特化しない問題が特に重要になる。最近の改革は、外国人投資家の生活をより容易にしようとしている。しかし、非関税障壁は依然として大きな問題である。また、多くの企業にとって、この国の不透明な規制をナビゲートするための権力ブローカーとの関係が必要なのは、まさに生活の現実である。ニッケル部門における中国の主要投資は、海事・投資担当調整大臣であるルフート・ビンサール・パンジャイタン(インドネシアの便利屋[Mr. Fix It.])が指導している。

また、インドネシアの教育制度にはまだ多くの課題が残っており、競争相手の国々と比較しても一貫して悪い成績が続いている。電気自動車企業にとって、有能な労働者を見つけることは難題かもしれない。この問題をより深刻にしているのは、技術開発によって製造業の技能や資本集約度が高まり、労働吸収力が低下するという明らかな傾向である。電気自動車製造が熟練度の低い労働者の雇用を生み出す代わりに、インドネシアは少数の専門職のために適切な訓練を受けた労働力を提供するのに苦労することになるかもしれない。

それでも、こうした潜在的な問題が死刑宣告となる必然性はない。電気自動車の販売台数の伸び率が鈍化しているにもかかわらず、アナリストの多くは依然として強気で、世界市場は依然として力強く拡大していると指摘している。前述のベンチマーク社のギアは、インドネシアが魅力的なのは、その鉱物資源だけでなく、ASEAN最大の巨大な国内自動車市場があるからだ、と述べている。現在、国内の電気自動車普及率は低いが、需要は急速に伸びると予想される。強力な国内市場は、輸出に移行する企業をサポートするのに役立つだろう。

自動車メーカーが代替拠点としてインドネシアに目を向ければ、反中の保護主義がインドネシアに有利に働く可能性さえある。メイバンク・インベストメント・バンキング・グループの持続可能性調査責任者であるジガー・シャーは、「このような状況では、中国の自動車メーカーが採用する可能性のある最善の政策は、多くの拠点で現地に根ざした事業を立ち上げることだ」と語る。

有力な有力者たちとの関係が必要なため、物事が厄介になることもあるが、適切なコネクションを築いた企業にはレッドカーペットが敷かれる可能性がある。電気自動車メーカーに対する様々な優遇措置は、メーカーとの協議の上で決定されたものであり、投資を行う企業は、インドネシア政府が直面する問題を解決しようとしていることを期待できるだろう。また、プラヴウォ新大統領が誕生する一方で、ジョコ・ウィドド政権の主要人物が新政権で活躍することが期待されている。その中には、ルフット海洋・投資調整相の後任として一部で期待されている、大富豪のエリック・トヒル国有企業相も含まれている。

技術面では、LFPバッテリーの台頭が問題となる可能性があるが、対処可能な問題である。BMIの自動車アナリスト、コケッツォ・ツォアイは「LFPバッテリーはかなり大きなリスクだ」と述べている。しかし、ニッケルリッチ電池の市場シェアは、一時的な縮小の後、2026年に向けて回復すると予想している。エネルギー密度に関して、ニッケル電池の優位性は、様々な用途でニッケル電池が存在し続けることを保証するはずだ。また、先駆的なLFPブレード・バッテリーをほぼ独占的に使用するBYDによるインドネシアへの大規模な投資計画も、インドネシアがニッケル資源だけではない魅力を持っていることを示唆している。

また、製造における技術的な方向性も明確に定められたものではない。最近の研究では、電気自動車の労働集約性が低いかどうかが再評価され、ほぼ同じであるか、実際にはより多くの労働者が必要である可能性が示唆されている。特に市場シェアを拡大させている、BYDは労働集約的な生産モデルを開発しており、創業者は実際に自動車の製造には特に複雑な技術の習得が必要であることをきっぱりと否定している。

技術、市場、地政学がますます急速に変化する中、インドネシアが行う政策的な賭けは確実なものではない。ラフマット副調整相は次のように述べている。「私たちは成功するだろうか? その答えは時間が出してくれるだろう。私たちが知っているのは、立ち止まってはいられないということだ」。

※ジョセフ・ラックマン:インドネシアと東南アジアをカヴァーするフリーランス・ジャーナリスト。ツイッターアカウント:@rachman_joseph

(貼り付け終わり)

(終わり)
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 アメリカのジョー・バイデン大統領は、中国からアメリカに輸出される電気自動車の関税を100%に引き上げると発表した。電気自動車をめぐり、米中の間は争いになっている。

バイデン大統領が強いドル政策を維持していれば、自然とアメリカからの輸出は高くなり、中国からの輸入は安くなる。関税を引き上げて、国内メーカーを保護するにしても、アメリカ最大の電気自動車メーカーであるテスラは中国との関係は悪くないし、既に進出して一定のシェアを保っている。

アメリカのテスラ(Tesla Motors)のイーロン・マスクは、中国との関係が悪くないどころか、良好である。上海にテスラの工場があり、テスラにとっての最大の市場は中国市場である。テスラのイーロン・マスクにしてみれば、バイデン政権の輸入電気自動車の関税引き上げは、中国からの報復を引き起こす可能性があり、迷惑なことだろう。テスラは電池だけの電気自動車に特化しており、バッテリー関連で制裁されると、テスラにとっては大きな痛手となる。イーロン・マスクがバイデンを支持していないこと、アメリカの三大メーカーが電気自動車で後塵を拝していることから、関税引き上げがやりやすかったということが考えられる。

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 バイデンの関税引き上げは、国家安全保障上の懸念から実施された面がある。アメリカ国内で中国メーカーの電気自動車が「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」であり、個人情報の流出やハッキングを警戒している。コネクテッド・ヴィークル「インターネットを介し、さまざまな情報を送受信できる次世代の自動車」のことであり、ジーナ・ライモンド米商務長官は中国製の電気自動車を「車輪のついたスマートフォン」と呼んでいる。個人情報が外国(中国)に流れることを懸念している。また、ハッキングされたり、遠隔操作をされたりして、運転できない状態にされることや、この電気自動車を通じて、政府機関のコンピュータへの侵入されてしまうことを懸念している。アメリカ国内市場で、安価な中国製の電気自動車がシェアを伸ばすことは、こうした懸念を増大させることになる。しかし、他国からすれば、アメリカ製の電気自動車に対して、同様の懸念がある。
 今回のバイデン大統領の措置は経済的な懸念というよりは、安全保障上の懸念の側面が強いということになる。また、政治的に見て、自分の再選に大きな影響がないと判断したものでもあるだろう。

(貼り付けはじめ)

●「バイデン氏、中国製品国家経済会議分への関税引き上げ 電気自動車は100%に」

2024.05.14 Tue posted at 20:30 JST CNN

https://www.cnn.co.jp/usa/35218904.html

ワシントン(CNN) バイデン米大統領は14日までに、中国からの輸入品のうち、国家安全保障に戦略的な重要性を持つ180億ドル(約2兆8000億円)相当の製品に対する関税を引き上げる方針を明らかにした。

鉄鋼やアルミニウム、汎用(はんよう)(レガシー)半導体、電気自動車、バッテリー部品、重要鉱物、太陽電池、クレーン、医療用品などに適用される。

電気自動車の関税を現行の27.5%から100%と約4倍に引き上げるほか、太陽光パネル関連は50%、他分野の製品は25%とする。

米国家経済会議(NEC)のブレイナード議長は、中国が自国の成長のために他国を犠牲にする戦略を続けていると批判した。

トランプ前大統領は在任中、中国から輸入される3000億ドル相当の製品に追加関税を課した。この措置は4年に1度、効果を検証することが法律で義務付けられている。バイデン政権の新たな関税は、この検証結果に基づいているという。

ホワイトハウス当局者らによると、バイデン政権は政策の優先順位に沿って算定法の見直しも図り、クリーンエネルギー技術に重点を置いた。

中国はこれまでの関税に、高い報復関税で対抗してきた。ホワイトハウスは、中国が今回どのような対抗措置を取るかについての言及を避けた。

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バイデン氏、中国の電気自動車を取り締まる(Biden Cracks Down on Chinese Electric Vehicles

-外国の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」に関する新たな調査は、将来的に北京のハイテク部門に対する措置を可能にする可能性がある。

A new investigation into foreign “connected vehicles” could enable future action against Beijing’s tech sector.

クリスティーナ・リュー、リシ・イエンガー筆

2024年3月1日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/03/01/biden-china-electric-vehicles-tech-security-investigation-commerce/

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中国東部の江蘇省にある蘇州港にある国際コンテナターミナルで船への積み込みを待つBYD製の電気自動車(2023年9月11日)

バイデン政権は木曜日、米商務省に対し、中国製の「コネクテッド・ヴィークル(connected vehicles)」がもたらす潜在的な国家安全保障上の脅威を調査するよう命令した。これは、中国との関係のリスクを軽減し、中国のハイテク産業に対して、圧力をかけようとするアメリカの最近の取り組みを示すものである。

ジョー・バイデン米大統領は声明の中で次のように警告している。「これらの電機自動車は、私たちの電話やナビゲーションシステム、重要なインフラ、そしてそれらを製造した企業に接続されている」と述べた。このような自動車は、わが国の市民やインフラに関する機密データを収集し、そのデータを中華人民共和国に送り返す可能性がある」。これらの電気自動車事態は「遠隔操作でアクセスされたり、機能停止させられたりする」とバイデンは述べている。

中国は電気自動車(electric vehicleEV)生産大国に成長し、アメリカとヨーロッパの同盟諸国を動揺させてきた世界の産業内で支配的な地位を築いている。バイデン政権が発表した調査は、テクノロジーへの懸念が米中関係を支配するようになった最新の例であり、車両を対象とした将来のアメリカの措置の基礎を築く可能性がある。

バイデンは続けて次のように述べている。「中国は、不公正な慣行を用いるなどして、将来の自動車市場を支配しようとしている。中国の政策は、私たちの市場に中国製の電機自動車を氾濫させ、私たちの国家安全保障にリスクをもたらす可能性がある。私の目の前でそのようなことが起こるのを許すつもりはない」。

バイデン政権の最新の攻撃は、テクノロジーの未来と未来のテクノロジーの両方をめぐる米中競争の、より広範なエスカレートに当てはまる。半導体チップ(semiconductor chips)、人工知能(artificial intelligence)、対外技術投資(outbound tech investment)に対する行動が最も注目されているが、ワシントンは更に多くの蛇口を閉めようとしているようだ。

コロラド鉱山大学ペイン研究所のモーガン・所長は、本誌に宛てた電子メールの中で、バイデン政権が発表の中で国家安全保障上の必要性を強調したことに触れながら、「これは米中間の現在進行中の貿易戦争の一環のように考えられる」と書いている。

バジリアンは、「確かに、サイバーとデータの面で実際のセキュリティ上の脅威は存在するが、私にとって主な推進力は経済的な闘争のように見える」と付け加えた。

こうした経済的懸念は、アメリカに限ったものではない。ここ数カ月間、安価な中国製電気自動車の流入に対する懸念は、中国政府の主要電気自動車市場の1つであるヨーロッパでも動揺しており、ヨーロッパ議会議員らは、中国政府が国内の電池式電気自動車メーカーに与えた補助金疑惑について調査を開始するまでに至っている。中国政府は、中国の電気自動車に補助金を与えることで、EUの電気自動車メーカーを圧倒しているという疑いだ。中国の電気自動車輸出は過去3年間で851%と爆発的に増加し、中国製のほとんど電気自動車がヨーロッパ市場に上陸した。

アメリカにおける中国製電気自動車の販売は依然として比較的小規模だが、特にバイデン大統領と共和党の対抗馬となる可能性が高いドナルド・トランプ前大統領が、11月の大統領選挙に向けて準備を進める中、アメリカの政治論争でも、ヨーロッパにおけるのと同様の懸念が浮上している。バイデンは先月、全米自動車労働組合がバイデン大統領の再選を正式に支持し、政治的に大きな勝利を確実にした一方、トランプ前大統領は自動車労働者の支持を集めるために選挙期間中、バイデンの電気自動車政策を激しく非難してきた。

そして実際、バイデンは木曜日の声明で、自身の政治的動機を隠そうとはしなかった。バイデンは次のように述べた。「大統領として、私は自動車労働者と、自動車産業に雇用を依存する中流家庭に対して正しいことをすると誓った。今回の措置やその他の措置によって、私たちは、自動車産業の未来がここアメリカでアメリカ人労働者によって作られることを確実にするつもりだ」。

戦略国際​​問題研究所の中国ビジネス専門家イラリア・マッツォッコは、「自動車産業をめぐる政治経済は非常に強力かつ重要だ。中国の電気自動車が先進諸国の主要産業を、非常に破壊的な形で脅かす可能性があるという深刻な懸念があると考えている」と述べている。

複数の米政府高官は、今回の調査は、データをめぐる国家安全保障上の懸念に根ざしていると強調する。ジーナ・ライモンド米商務長官は、「コネクテッド・ヴィークルにアクセスできる外国政府が、国家安全保障とアメリカ国民の個人的プライバシーの双方に深刻なリスクをもたらす可能性があると考えるのは、ほぼ想像力を必要としないものだ」と述べ、電気自動車を「車輪のついたスマートフォン(smart phones on wheels)」と例えた。

ライモンド長官は、「これらの自動車に搭載され、広範囲のデータを取得したり、コネクテッド・ヴィークルを遠隔操作で無効化したり、操作したりできる技術の範囲を理解する必要がある」と続けて述べた。

バイデン政権の今回の発表は、中国やロシアを含む6つの「懸念国(countries of concern)」に対する、アメリカ人の個人データの売却を制限することに焦点を当てた大統領令を発表した翌日に行われた。この大統領令では、ゲノムデータ(genomic data)、バイオメトリックデータ(biometric data)、金融データ(financial data)、個人健康データ(personal health data)、地理位置情報(geolocation data,)、そして個人を特定できる特定のカテゴリーという6つの機密情報のカテゴリーについて概説している。

しかし、データの流れを監督し取り締まることはより難しくなる可能性があり、バイデン政権による最新の規制は、アメリカ市民にとって意図しない結果をもたらす可能性があると、アメリカ自由人権協会(ACLU)は水曜日に警告した。ACLU上級政策顧問コーディ・ヴェンスキは声明の中で次のように述べた。「この大統領令は、政府の干渉を受けずに情報を共有しアクセスする私たちの権利を更に侵食し、消費者たちがプライバシーとセキュリティのニーズに最も適したオンラインサービスを選ぶことを禁じ、プライバシーを保護するどころか、むしろ害する結果になりかねない」。

ヴェンスキは続けて、「私たちのオンライン上の安全を本当に守るために、バイデン政権はその代わりに、私たちに関して収集されるデータの氾濫を食い止め、暗号化のような強力な保護を受け入れる、強固なプライバシー法を可決するよう議会を後押しすることに集中すべきだ」と述べた。

この2つの措置は互いに接近しており、中国のアメリカのテクノロジーへのアクセスを遮断することを目的とした過去数年間にわたる一連の大統領指示の最新のものである。

戦略国際​​問題研究所(CSIS)の貿易・技術専門家エミリー・ベンソンは、「これらの政策を総合すると変化が起こり、新たなパラダイムが生まれる。全体として、テクノロジーがこの新たな経済と国家安全保障の課題の最前線にあるということは、改めて非常に明白な象徴であり、それがすぐに変わる可能性は低い」と述べている。

※クリスティーナ・リュー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@christinafei

リシ・イエンガー:『フォーリン・ポリシー』誌記者。ツイッターアカウント:@Iyengarish

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める
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 古村治彦です。

 2023年12月27日に『バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる』(徳間書店)を刊行しました。『週刊現代』2024年4月20日号「名著、再び」(佐藤優先生書評コーナー)に拙著が紹介されました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

 BRICS、グローバル・サウス、西側以外の国々(ザ・レスト、the Rest)の一角を占める新興大国インドについては、最近、「2025年には、名目GDPで日本を抜いて世界第4位になる」という報道がなされた。

インドについては、旅行記などで、大変に貧しい人たちが多くいる、衛生状態が良くない、とにかく人口が多い(約14億2000万人で中国を僅差で抜いて世界第1位)などの印象があり、インドの経済大国化は信じられないという人も多いと思う。

「何で儲かっているのか?」と不思議に思う人も多いと思う(私もその1人)。なんでも、IT(インド人の数学の強さと関連して)、製造業(タタ・グループの自動車産業や製鉄など)、農業が主要産業であり、世界最大の人口を誇るので、巨大な国内市場がある。インドのGDP成長率は、新型コロナウイルス感染拡大前は、安定して5%前後を推移してきたがその後急落したが、現在は持ち直している。インドの人口ピラミッドは釣り鐘型であり、若い人たちが多く、これが「人口ボーナス」となり、これから国内市場の消費はどんどん伸びていく。
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 インドのナレンドラ・モディ首相は高い支持率を誇る。経済成長を実現し、人々の生活を改善し(トイレの建設に力を注いできた)、インド国内のナショナリズムを高揚させてきた。一方で、人口の大部分を占めるヒンドゥー教徒優先の政策を実施し、マイノリティのイスラム教徒(それでも2億人もいる)への憎悪が増大しているという面もある。インドは独立以降は、世俗国歌として、宗教は政治の中心から排除されてきたが、ヒンドゥー教徒中心になりつつある。それに対して懸念する声もある。また、インド国内の「南北問題」、貧しい北部と豊かな南部という分裂も存在する。現在のモディ首相を支える与党は、インド国民党(BJP)であり、その基盤はヒンドゥー教至上主義の民族義勇団(RSS)だ。彼らがよりナショナリズムを高揚させていくと、外交政策にも影響を与えかねないが、中国との関係が平穏であることは大きい。インドにとって重要なのは中国、そしてロシアとの距離感である。西側諸国(ザ・ウエスト、the West)とも良好な関係を維持しながら、西側以外の国々の中で存在感を増していくということになるだろう。アメリカとしては、地理的な位置関係も含めて、インドと中国の接近は防ぎたいところだが、インドはアメリカの意図を見透かして、自国の利益になるような行動を選択的に取っている。インドについてはこれからも注視していかねばならない。
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ナレンドラ・モディ

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インドについての新しい国家像に関する思想(The New Idea of India

-ナレンドラ・モディの統治は、リベラルではないが、より確固とした国家を生み出しつつある。

ラヴィ・アグロウアル筆

2024年4月8日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/08/india-modi-bjp-elections/?tpcc=recirc_latest062921

4月中旬から6月上旬にかけて、数週間にわたり、世界最大の選挙が行われる。人口14億人のうち9億6000万人以上のインド国民がインド連邦議会選挙の投票権を持ち、世論調査ではナレンドラ・モディ首相と彼の率いるインド人民党(Indian People's PartyBharatiya Janata PartyBJP)が3期連続で政権に就くことが強く示唆されている。

モディはおそらく世界で最も人気のある指導者だろう。最近のモーニング・コンサルタント社による最近の世論調査では、インド人の78%が彼の指導力を支持している。(次に支持率の高いメキシコ、アルゼンチン、スイスの指導者の支持率の数字は、それぞれ63%、62%、56%である)。モディが賞賛される理由を理解するのは難しくない。彼はカリスマ的指導者であり、ヒンディー語の巧みな演説家であり、勤勉で国の成功に尽力していると広く認識されている。彼は縁故主義(nepotism)や汚職(corruption)に手を染める可能性がほぼないとみなされているが、これは彼が73歳の男性で、パートナーも子供もいないことに起因することが多い。モディには真のライヴァルはほとんどいない。彼の党内での権力は絶対的であり、対立候補は分裂し、弱く、家柄だけは立派な王朝的と言えるものだ。G20を主催する機会を最大限に活かし、注目を集める海外訪問を行うことで、モディは世界の舞台でインドの存在感を高めた。それに伴って、モディ自身の人気も高めることに成功した。ニューデリーは外交政策でも自己主張を強め、イデオロギーや道徳よりも自己利益を優先している。これが国内向けに大きなアピールとなっている。

モディの成功は彼を非難する人々を混乱させる。結局のところ、彼は権威主義的な傾向をより強めている。モディは記者会見にほとんど出席せず、難しい質問をする数少ないジャーナリストたちとのインタヴューにも応じず、議会での議論もほとんど避けてきた。モディは権力を集権化し、カルト的な人格を構築する一方で、インドの連邦制(federalism)を弱体化させている。彼の指導の下、インドの多数派であるヒンドゥー教徒が支配的になった。このような1つの宗教の優位は、少数派に害を及ぼし、世俗主義(secularism)への国の関与に疑問を投げかけるなど、醜い影響をもたらす可能性がある。報道の自由や独立した司法など、民主政治対英の重要な柱は傷つけられている。

しかし、モディは民主的に勝利した。政治学者のスニル・キルナニは、1997年に出版した著書『インドの思想(The Idea of India)』の中で、当時、建国以来50年の歴史を持つインドを形作ったのは、文化や宗教よりもむしろ民主政治体制であると主張した。キルナニによれば、この思想の第一の体現者はインドの初代首相であり、ケンブリッジ大学出身のジャワハルラール・ネルーである。ネルーは、イスラム教徒の祖国として明確に形成されたパキスタンとは対照的な、リベラルで世俗的な国というヴィジョンに確信を持っていた。モディは多くの点でネルーとは正反対である。下層カーストの中流以下の家庭に生まれたモディ首相は、ヒンドゥー教徒のコミュニティ・オーガナイザーとして国内を何年も旅し、一般庶民の家に寝泊まりして、彼らの不満や願望への理解を深めることから、政治に関する教育を受けた。モディのインド思想は、選挙民主政治体制と福祉優先主義(welfarism)を前提としながらも、ネルーのそれとは大きく異なっている。文化や宗教を国家の中心に据え、ヒンドゥー教を通じて国家・国民であることの意識を定義し、個人の権利や市民的自由を縮小することを意味するとしても、強力な最高責任者がリベラルな指導者よりも望ましいと考えている。この全くの別の選択肢のヴィジョン、すなわち非自由主義的民主政治体制(illiberal democracy)は、モディと彼の率いるインド人民党にとって、自分たちにより大きな勝利をもたらす提案となっている。

ヒンドゥー教徒はインドの人口の80%を占める。インド人民党は、彼らが自分たちの宗教や文化に誇りを感じるように仕向けることで、このインド国民の大多数の支持を追求している。時には、人口の14%を占める2億人のイスラム教徒への憤りを煽動することで、このプロジェクトを助長することもある。インド人民党はまた、ヒンドゥー教徒が歴代の侵略者の大群によって犠牲になったと解釈する歴史も進めようとしている。ヒンドゥー教徒はカーストや言語によって分断されており、一枚岩とは言い難いが、インド人民党が国政選挙で勝利するためには、ヒンドゥー教徒の半分の支持を得るだけで十分なのだ。2014年、インド人民党は国政選挙で31%の得票率を記録し、30年ぶりに単独政党として、議会の過半数の議席を制した。2019年はより成功し、37%の得票率を記録した。

非自由主義的で、ヒンディー語が支配的で、ヒンドゥー教を第一とする国家が出現しつつあり、それはジャワハルラール・ネルーを含む他のインドのこれまでの考えに挑戦している。

インド人民党の成功の少なくとも一部の要因としては、モディの知名度の浸透(name recognition)と選挙戦での精力的なパフォーマンスに起因している。しかし、1人の人物に注目しすぎることは、インドの軌跡を理解することから目を逸らすことになりかねない。モディがここ数世代でインドのどの指導者よりも権力を集中させたとはいえ、彼の中核的な宗教的アジェンダは、インド人民党や、そのイデオロギー的母体である民族義勇団(Rashtriya Swayamsevak SanghRSS、ラシュトリヤ・スワヤムセバク・サング、National Volunteers Organization)、500万人以上の会員を数えるヒンドゥー教社会団体・準軍事組織によって、長い間伝えられてきた。モディは2014年以来、インド人民党にとっての主要な顔であるが、党自体は1980年から現在の形で存在している。(モディの真のイデオロギー的ルーツである民族義勇団はさらに古い。来年には創立100周年を迎える)。インド人民党のヴィジョン、つまりインドについての考え方は、新しいものでもなければ、隠されているものでもない。それは選挙マニフェストに明確に記載されており、モディのセールスマンシップと相まって、投票箱の中でますます成功を収めている。

言い換えると、インドの現在の政治的状況は、一世代に一人の(once-in-a-generation)、不世出な指導者と、説得力のある代替案の少なさという供給と大いに関係があるが、需要の変化とも関係があるかもしれない。インド人民党の政治プロジェクトの成功は、インドがどのような国になりつつあるのかをより明確に示している。インドの人口の半分近くは25歳以下である。こうした若いインド人の多くは、新しい文化的、社会的な国家像を主張しようとしている。非自由主義的で、ヒンディー語が支配的で、ヒンドゥー教を第一とする国家が出現しつつあり、それはネルーを含む他のインドの考え方に挑戦している。このことは、国内政策と外交政策の双方に重大な影響を与える。インドのパートナーやライヴァルとなるべき国々がこのことに早く気づけば、ニューデリーの世界的影響力の増大にうまく対処できるようになるだろう。『モディ以前のインド』の著者であるヴィナイ・シタパティは、「ネルー的なインド国家像思想は死んだ。何かが失われたのは間違いない。しかし、問題は、新しい考えがそもそもインドにとって異質なものであったかどうかである」と述べている。

インド人は、市民社会の健全性を示す重要な指標において、インドが近年どれほど落ち込んでいるかを示す報告に歯がゆさを感じている。しかしながら、こうした評価に異議を唱える価値はある。「国境なき記者団」によると、インドは報道の自由度において、2002年の139カ国中80位から、2023年には180カ国中161位にランクを落とした。世界中の民主政体を測定するフリーダム・ハウスは、2024年の報告書でインドを「部分的に自由(partly free)」としか評価せず、インド統治下のカシミール地方は「自由ではない(not free)」と判定された。過去10年間でインドよりも自由度が低下したのは、ロシアや香港などほんの一握りの国と地域だけである。世界経済フォーラムの2023年グローバル・ジェンダー・ギャップ指数では、インドは146カ国中127位だった。ワールド・ジャスティス・プロジェクトは、法の支配の遵守について、インドを142カ国中79位とし、2015年の59位からランクを下げた。ある法学者が「Scroll.in」で書いているように、司法は「急進的な多数民族決定優先決主義的アジェンダを追求するために、政府が自由に使える巨大な武器を形成している(placed its enormous arsenal at the government’s disposal in pursuit of its radical majoritarian agenda)」。ウェブへのアクセスについても考えてみよう。インドは、過去10年間で、どの国よりもインターネットを遮断しており、イランやミャンマーよりもその程度が高くなっている。

インドを観察している専門家たちが最も心配している社会的指標は、宗教の自由(religious freedom)である。ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の間のトラブルは今に始まったことではない。しかし、モディの率いるインド人民党は、政権に就いてからの10年間、立法を通じてヒンドゥー第一主義(Hindu-first agenda)のアジェンダを推進することに著しい成功を収めてきた。2019年には、イスラム教徒が多数を占めるカシミール地方の準自治領の地位を剥奪し、同年末には選挙の年であるにもかかわらず、イスラム教徒が多数を占める近隣3カ国からの非イスラム教徒に市民権を与える移民法を成立させた。この法律は、インドのイスラム教徒が市民権を証明することをより困難にするもので、2020年3月に施行された。この発表のタイミングは、選挙上の利点を強調するものだったと考えられる。

このような立法措置よりも有害なのは、モディ政権の沈黙であり、インドのイスラム教徒にとってますます脅威を感じる状況の中で、しばしば、ヒンドゥー教至上主義への励ましの口笛を吹くことである。かつてネルーが世俗主義を強調したことで、公の場では暗黙のルールが課せられたが、今ではヒンドゥー教徒はイスラム教徒のインドへの忠誠心に比較的平気で疑問を呈することができる。ヒンドゥー至上主義(Hindu supremacy)が基準となり、これに対する批判者たちは「反国家的(anti-national)」の烙印を押される。このヒンドゥー至上主義は、2024年1月22日、モディがインド北部の都市アヨーディヤでヒンドゥー教の神ラムを祀る巨大な寺院を奉献したことで頂点に達した。2億5000万ドルをかけて建設されたこの寺院は、1992年にヒンドゥー教徒の暴徒によって取り壊されたモスクの跡地に建てられた。30年前にこの事件が起きたとき、インド人民党の指導者たちは自分たちが引き起こした暴力に反発した。今日、その恥辱は国家的誇りの表現へと姿を変えた。ボリウッド(Bollywood)のトップスターやこの国のビジネスエリートが集まった聴衆の前で、寺院の開院式で、ヒンドゥー教の僧侶の衣装を身にまとったモディは、「新しい時代の始まりだ(It is the beginning of a new era)」と述べた。

インド人であることの意味に関する、モディのヴィジョンは、少なくとも部分的には世論に表れている。ピュー・リサーチ・センターが、2019年末から2020年初めにかけてインドの宗教に関する大規模な調査を実施したところ、ヒンドゥー教徒の64%がヒンドゥー教徒であることは「真のインド人(truly Indian)」であるために非常に重要だと考えており、59%がヒンディー語を話すことも同様にインド人であることを定義する上で基礎になると答え、84%が宗教は生活において「非常に重要」だと考え、59%が毎日祈りを捧げていることが分かった。シヴ・ナダル・チェンナイ大学で法律と政治を教えているシタパティは、「インド人民党の優勢は主に需要主導型だ。しかし、進歩的な人々はこのことを否定している」と述べている。

シタパティに対しては、「彼の研究がインド人民党と民族義勇団の過激派のルーツを過小評価し、彼らのイメージ回復に役立っている」と主張する左派の批評家たちがいる。しかし、需要と供給の問題については インド人民党の優勢は、国民の多くがヒンディー語を話す北部に限られている。ハイテク企業が栄え、識字率が高く、ほとんどの人がタミル語、テルグ語、マラヤーラム語などの言語を話す裕福な南部では、インド人民党の人気は明らかに低い。南部の指導者たちは、自分たちの税金が北部のヒンディー語地帯に補助金として出されているという憤りを募らせている。この地理的な亀裂は、全国的な区割りが行われる2026年に表面化する可能性がある。野党指導者たちは、インド人民党が議会の選挙区を自分たちに有利なように変更することを恐れている。もしインド人民党が成功すれば、モディが他印した後も、ずっと選挙で勝ち続けることができるだろう。

こうした状況にもかかわらず、シタパティはこの国が民主政治体制であり続けていると主張し、「政治参加(political participation)はかつてないほど高まっている。選挙は自由かつ公正だ。インド人民党は、州選挙で定期的に負ける。あなたの民主政治体制の定義が選挙の神聖さと政策の内容に焦点を当てているのであれば、インドの民主政治体制は繁栄していることになる」と述べた。シタパティは、インド社会では文化は自由主義や個人の権利を中心としていないと語った。モディ首相の台頭はその文脈で見られなければならない。

反対を唱えるようなリベラル派のインド人たちは、表舞台から姿を消しつつある。明らかな例外は、ブッカー賞を受賞した小説家アルンダティ・ロイである。昨年(2023年)9月、スイスのローザンヌでロイは、ファシズムに堕しつつあるインドについて次のように語った。「与党インド人民党のヒンドゥー至上主義のメッセージは、14億人の国民に執拗に流布されている。その結果、選挙は殺人、リンチ、犬笛(dog-whistling)の季節となった。私たちが恐れなければならないのは、もはや指導者たちだけでなく、国民全体なのだ」。

10億人以上のヒンドゥー教徒の動員(mobilization)は、多数派の暴政(tyranny of the majority)の一形態なのだろうか? プリンストン大学で教鞭をとるインドの政治学者プラタップ・バヌ・メータはそうではないと言う。メータは「ヒンドゥー教の民族主義者は、自分たちのプロジェクトは古典的な国家建設プロジェクトだと言うだろう」と述べ、インドは独立国としてまだ若い国であるかを強調した。ポピュリズムもまた、モディ首相の政治を説明するのに満足のいく言葉ではない。彼は控えめな経歴を誇示しているが、決して反エリート主義者ではなく、実際、インドや世界のトップビジネスリーダーにインドへの投資を頻繁に勧めている。エリートたちは、時に、モディ首相の成功に直接資金を提供することもある。2017年の選挙公債規定により、インド人民党への匿名の寄付が6億ドル以上もたらされた。最高裁判所は2024年3月に、この制度を「違憲(unconstitutional)」として廃止したが、今回の選挙で大口献金者の影響を防ぐには判決が遅すぎた可能性が高い。

ニューデリーを拠点とする歴史学者ムクル・ケサヴァンは、インド人民党のアジェンダを多数民族決定優先決主義(majoritarianism)と表現する方がより正確だと主張する。ケサヴァンは、「多数民族決定優先決主義には少数派を動員する必要がある。インドはその先陣を切っている。私たちがやっているようなことをやっているのはインドだけだ。西側諸国がこのことに気づかないことに、私はいつも驚かされる」と述べている。

西側諸国がいつも気づかないのは、モディがアメリカのドナルド・トランプのような強権者とは大きく異なるということだ。トランプが共和党を凌駕するイデオロギーを広めたのに対し、モディはインド人らしさをヒンドゥー教とより密接に同一視するという、民族義勇団の100年来の運動を実現している。世論調査の結果でも選挙の結果でも、この運動が実現する時期が来ていることが明らかになっている。

前述のメータは、「人々は偏狭な考えを持っていない。トレードオフを受け入れることを厭わない」と述べ、たとえそのプロジェクトに不快な要素があったとしても、インド人民党のヒンドゥー国家という前提を受け入れるインド人が増えていることを説明した。「彼らは多数民族決定優先主義的なアジェンダが交渉決裂になるとは考えていない。少なくとも今のところは。重要な問題は、多数民族決定優先決主義がこのトレードオフを国民が受け入れることを困難にするような事態を引き起こしたときに何が起こるかということである。ここでの最大のリスクは、インドの歴史に刻まれたような、共同体による暴力が急増する可能性にある。例えば2002年、西部のグジャラート州ゴードラで、アヨーディヤから戻る列車が炎上し、58人のヒンドゥー教徒巡礼者が死亡した。当時のグジャラート州首相であったモディは、この事件をテロ行為であると宣言した。イスラム教徒が火事の犯人だという噂が流れた後、暴徒が3日間にわたって州内で暴力を振るい、1000人以上が死亡した。死者の圧倒的多数はイスラム教徒だった。モディはいかなる関与でも、有罪判決を受けたことはないが、この悲劇はモディにとって不利にも有利にも作用した。リベラルなインド人たちは、モディが暴力を止めるためにそれ以上のことをしなかったことに怯えたが、相当数のヒンドゥー教徒にとっては、モディは自分たちを守るためには手段を選ばないというメッセージになった。

それから22年後、モディはグジャラートよりもはるかに多様な国民を対象とする主流派の指導者となっている。かつて暴動は彼の経歴の中で大きな位置を占めていたが、今やインド人は、暴動を世間の注目を浴びる複雑なキャリアのほんの一部としか見ていない。共同体による暴力が再び大量に発生した場合にインド人がどのような反応を示すか、また市民社会が国民の最悪の行き過ぎを抑制する力を保持しているかどうかは未知数である。楽観主義者たちは、インドが厳しい局面を乗り越えて強くなってきたことを指摘するだろう。1975年にインディラ・ガンディー首相が非常事態を宣言し、政令による支配を許可したとき、有権者は最初のチャンスで彼女を政権から追い出した。しかし、モディは国をより強く掌握し、投票箱で勝利しながら権力を拡大し続けている。

市民たちが世俗主義や自由主義の理想だけでは生きていけないように、ナショナリズムや多数民族決定優先決主義も同じだ。最終的には、国家が成果を出さなければならない。この点で、モディの記録は複雑だ。「モディは日本をモデルとしている。文化的な意味での西洋ではなく、工業的な意味での近代的なモデルとして見ている。彼はヒンドゥー教復興主義(Hindu revivalism)と工業化(industrialization)を混合させたイデオロギー的プロジェクトを実現した。

インドはモディ首相の下、国家建設(state-building)という巨大な国家プロジェクトに取り組んでいる。2014年以降、交通インフラへの支出は対GDP比で3倍以上に増加している。インドは現在、年間6000マイル以上の高速道路を建設しており、2014年以降、農村部の道路網の距離は倍増している。2022年、ニューデリーは活況を呈している航空市場を利用し、経営難に陥っていた国営航空会社エア・インディアを民営化した。インドには現在、10年前の2倍の空港があり、国内線の利用客は2億人を超えて、2倍以上に増えている。中間層の消費支出も増えている。都市部における一人当たりの消費支出は、過去10年間で月平均146%増加した。一方、インドは悪名高い官僚主義的なハードルを取り払い、産業界にとって使いやすい国になりつつある。世界銀行が毎年発表している、「ドゥーイング・ビジネス・レポート」によると、インドは2014年の134位から2020年には63位に上昇している。投資家たちは強気のようだ。インドの主要株価指数であるBSE Sensexは、過去10年間で250%上昇した。

強権的な実力者という存在は、通常、女性よりも男性の間で人気がある。したがって、インド人民党が2019年の国政選挙で記録的な女性票を獲得し、有権者の参加と女性の投票が増加し続けているため、2024年にも再び女性票を獲得すると予測されているのは奇妙な矛盾である。モディ首相は、家庭生活を楽にするサーヴィスを巧みに展開することで女性有権者をターゲットにしてきた。例えば、地方での水道へのアクセス率は、2019年のわずか16.8%から75%以上に上昇した。モディ首相は、1億1千万個以上のトイレを建設するキャンペーンの後、2019年にインドでは屋外排泄(open defecation)が根絶されたと宣言した。また、国際エネルギー機関(International Energy Agency)によると、インドの送電線の45%が過去10年間に設置されたということだ。

私が2018年に出版した『インディア・コネクティッド(India Connected)』で書いたように、この国で最も大きな変革をもたらしているのは、インターネットの普及である。100年以上前に自動車が発明され、それに伴って州間高速道路や郊外住宅地が形成され、現代アメリカが形成されたように、安価なスマートフォンによって、インド人は急成長するデジタル・エコシステム(digital ecosystem)に参加できるようになった。スマートフォンとインターネットのブームとはあまり関係がなかったが、政府はそれを利用した。政府が運営する即時決済システム(government-run instant payment system)であるインドのユニファイド・ペイメント・インターフェイス(Unified Payments Interface)は、今や国内の現金以外の小売取引の4分の3を占めている。デジタル・バンキングと新しい国民生体認証システム(national biometric identification)の助けを借りて、ニューデリーは補助金を国民に直接送金することで汚職を回避し、何十億ドルもの無駄を省いている。

民間部門は、インドの新しいデジタル経済と物理的経済に進んで参加してきた。しかし、本号(42ページ)で2人の一流エコノミストが述べているように、民間部門は更なる投資に対して奇妙な警戒心を抱いている。例えば、モディはインドの2人の大富豪、ムケシュ・アンバニとゴータム・アダニ(ともに出身はグジャラート州)と癒着しすぎていると見られている。ニューデリーの遡及課税(retroactive taxation)と保護主義の歴史が、せっかくの企業計画を台無しにしてしまうのではないかという懸念が渦巻いている。

モディ首相は強大な権力を掌握しているため、失策をするとその影響は大規模になりがちだ。2016年、モディは突然、法定通貨としての高額紙幣を回収し、通貨廃止(demonetization)のプロセスを発表した。この動きは、多額の非課税所得を持つ人々を排除することで汚職を減らそうとしたものであったが、実際にはインドの成長を2%近く引き下げる大失敗だった。同様に、2020年に新型コロナウイルス感染症の発症にパニックに陥り、モディ首相は突然の国家封鎖(national lockdown)を発表し、その結果何百万人もの出稼ぎ労働者が急いで帰国することになり、ウイルスが蔓延する可能性が高まった。 1年後、新型コロナウイルス感染症のデルタ変種が国内に蔓延し、数え切れないほどのインド人が死亡したとき、ニューデリーはほとんど傍観していた。あの時、国家が国民を失望させたという事実は、どんなにナショナリズムやプライドでも覆い隠すことはできなかった。

朗報に飢えた国民を抱えるインドは今、最高の外交政策取引を利用しようとしている。移り変わる世界秩序の中で、方法はいくらでもある。アメリカの力は相対的に低下し、中国は台頭し、いわゆるミドルパワー諸国(middle powers)と呼ばれる国々がその地位を高めようとしている。モディは、より力強く、たくましく、誇り高き国家像を打ち出しており、インド人はその自画像に夢中になっている。

昨年(2023年)9月、カナダのジャスティン・トルドー首相が、ブリティッシュコロンビア州でインド政府の諜報員がシーク教徒のコミュニティリーダーの殺害を画策したという「信頼できる疑惑(credible allegations)」をオタワが調査中であると発表した。ニューデリーはトルドーの告発を「馬鹿げている(absurd)」と真っ向から否定した。殺害されたハルディープ・シン・ニジャールは、彼の出身地であるインド北西部のパンジャーブ州を領土とする、カリスタン(Khalistan)と呼ばれる国家の樹立を目指していた。2020年、ニューデリーはニジャールをテロリストと宣告した。

トルドー首相がカナダ国内で起きた殺人事件を公にインドを非難することは、モディにとって大恥をかくことになりかねなかった。しかしながら、この事件はモディの支持者を活気づかせた。国民的なムードは、ニューデリーはやっていないという、政府の公式見解に同意しているように見えたが、そこには重要な背景があった。それは、「もしやったのなら、正しいことをしたのだ」ということだ。

シタパティは、「それは、『私たちはやっとここまで来た。これで白人と対等に話ができる』という考えだ」。作家で国会議員のシャシ・タローが指摘したように、「略奪(loot)」という言葉さえヒンディー語から盗用されたものなのだ。インド人民党の国家建設プロジェクトは、ヒンドゥー教徒を何世紀にもわたる、過ちの犠牲者でありながら、いまや真の地位を主張するために目覚めた者として描くことで、しばしば自尊心を取り戻そうとしている。だからこそ、2024年1月22日のラム寺院の開院式は、ヒンドゥー教徒の間に、かつて自分たちが享受していた優位性を正当に主張しているという感覚を蘇らせることになった。

ステージは派手であればあるほど良い。インドは2023年の間、他のほとんどの国がおざなりにしている、輪番の議長国としてG20首脳会談の主催で力を誇示した。モディ首相にとって、それはマーケティングマシーンとなり、ニューデリーのホスト役としての誇りを宣伝する巨大な看板が設置された(常に首相の肖像画と並んで設置されていた)。2023年 9月にサミットが始まると、テレビ局は律儀に主要部分を生中継し、モディ首相が一連の世界のトップ指導者たちを歓迎する様子を放映した。

その数週間前、インド人は別の祝賀の瞬間に団結した。インドが2台のロボットを月面に着陸させ、月面に着陸した4番目の国となり、月の南極に到達した最初の国となった。テレビ局が着陸の生中継を流すなか、モディ首相は着陸の重要な瞬間にミッション・コントロールを行い、彼の顔が着陸の様子と分割された画面に映し出された。このような自己宣伝は派手に見えるかもしれないが、集団的な達成感や国民的アイデンティティにつながるものだ。

また、ウクライナ侵攻後にロシアへの制裁を求める西側諸国を嘲笑っている、モスクワに対するニューデリーの姿勢も人気がある。2022年以前、ロシアがインドに輸出していた原油は全体の1%にも満たなかったが、現在は半分以上をインドに供給している。中国とインドは合わせてロシアの海上輸出原油の80%を購入しており、西側諸国が課した価格制限のために、市場価格よりも安い価格で購入している。インド人もグローバル・サウスの多くの人々と同様、西側諸国が世界情勢に二重基準(double standards)を適用していると広く認識するようになったこともあり、道徳に対する配慮はほとんどない。その結果、道徳的な基準がないのだ。インドにとって、有利な石油取引はまさにそれである。インドとロシアは歴史的な友好関係を共有しており、双方はその継続を望んでいる。

ニューデリーが外交政策で自己主張を強めているのは、他国からより必要とされているという認識からきている。同盟諸国はこの新たな動きを認識しているようだ。アメリカにとっては、台湾海峡における中国との潜在的な争いでインドが助けに来なかったとしても、ニューデリーが北京に接近するのを防ぐだけでも、地政学的な勝利となり、他の意見の相違を覆すことになる。他国にとっては、成長するインド市場へのアクセスが最も重要である。インド人民党がイスラム教徒を敵視しているにもかかわらず、モディはペルシャ湾諸国を訪問するとレッドカーペットを敷かれての式典が行われる歓迎(red-carpet welcome)を受ける。

インドが自国の戦略的利益を把握し、その選択を明確にすることに自信を持っていることは、自国をどう見るかという広範な変化と一体のものである。モディとインド人民党は、西洋式のリベラリズムを犠牲にして自国の利益を追求することを美徳とするインドの国家像を推進することに成功している。若者の経済的願望と、相互の結びつきが強まる世界におけるアイデンティティへの欲求に訴えることで、インド人民党は一世代前には想像もできなかったような宗教的・文化的アジェンダを推進する余地を見出した。このヴィジョンは純粋なトップダウンではありえない。将来的には、インドをめぐる様々な構想が更に競われることになるだろう。しかし、モディのインド人民党が投票箱で勝ち続ければ、歴史はこの国のリベラルな実験が中断されただけでなく、異常であったことを示すかもしれない。

※ラヴィ・アグラワル:『フォーリン・ポリシー』誌編集長。ツイッターアカウント:@RaviReports
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