古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2024年06月

 古村治彦です。

 2024年6月27日に開催された米大統領選挙候補者討論会での、ジョー・バイデンの酷い状態を受けて、民主党内はパニック、お通夜状態になっている。「敗北だ」という雰囲気は理解できるが、ついには、「バイデンが死んでくれなえれば、自分たちが死んでしまう(誇張表現ではあるが)」という言葉まで出てきている。日本でも、リベラル派、民主党びいきのニューヨーク・タイムズが論説委員室から、バイデンに選挙からの撤退を求める内容の論稿を発表したと報じられた。

 ドナルド・トランプ陣営は、リベラル派のCNNが「自分たちを非常に公正に扱った」と高く評価している。トランプ前大統領は通常運転であったが、それだけで、バイデンとのコントラストが大きくなって、「討論会はトランプがバイデンに圧勝」ということになった。民主党側からすれば、「バイデンは高齢ではあるが元気で、トランプをやっつけた」ということにしたかったが、期待以下、最低線以下の最悪の結果となった。討論会中、トランプが何度か、バイデンの発言中に怪訝そうな表情を浮かべ、「何かおかしいぞ」という感じになり、発言を手加減しているように私には見えた。いつもよりエンジンをかけてやってしまうと、「トランプが高齢のバイデンを虐めている」という構図になりそうだったのを抑えたように見える。高齢者はトランプにとっての大事な選挙基盤だ。

アメリカ大統領は、アメリカ軍最高司令官(Commander-in-Chief)であり、やはり体力や活力が必要というのがコンセンサスだ。バイデンのあの弱弱しさでどうやって最高司令官たり得るかといいうことになる。共和党側からは、マイク・ジョンソン連邦下院議長などから、合衆国憲法修正第25条4項の規定に基づいて、バイデン大統領に職務続行不能を宣言し、カマラ・ハリス副大統領が職務代行せよという声が上がっている。この憲法の規定では、副大統領と閣僚の過半数が申し立てれば、大統領の職務続行不能が認められ、副大統領が代行となる。バイデン大統領の討論会の様子は、そのような懸念を引き起こすのに十分であった。

 もう7月で、8月の候補者指名のための全国大会まで1カ月半ほど残されていない。バイデンと交代して候補者となり得る人物の名前が多く出ているが、ここはやはりカマラ・ハリス副大統領しかいないだろう。負ける公算が大きい以上、大事な候補者は民主党としても出せない。カリフォルニア州は民主党の金城湯池であるにもかかわらず、これまで大統領選挙候補者は出てこなかった。かえって、共和党側からカリフォルニア州出身の大統領候補・大統領が出ている(リチャード・ニクソンやロナルド・レーガンなど)。ここは、カマラ・ハリスが民主党初のカリフォルニア州出身の大統領選挙候補者になるというのも良いのではないかと思う。

(貼り付けはじめ)

重要な転換となったトランプ・バイデン討論の5つのポイント(5 takeaways on a pivotal Trump-Biden debate

ジャレッド・ギャンズ、ジュリア・ミュラー、キャロライン・ヴァキル、ブレット・サミュエルズ筆

2024年6月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4745219-five-takeaways-on-a-pivotal-trump-biden-debate/

ジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領は木曜日、4年ぶりにアトランタで討論会の舞台で相まみえた。この討論会は大統領選挙の選挙戦において極めて重要な瞬間になった。

90分間の討論会終了までに、左派と右派は共に、この夜がゲームチェンジャー(game changer)となった、バイデンにとって有益な夜ではなかったということで一致したようだ。

両候補は経済、中絶、移民、外交政策をめぐって対立したが、この夜はバイデンのつまずきのスタート(stumbling start)として最もよく記憶されることになるだろう。ホワイトハウスはその原因の一部を風邪のせいだと主張した。

これから5つのポイントを見ていく。

(1)バイデンは彼の年齢に対する懸念の払しょくに失敗した(Biden fails to dispel worries about his age

現在81歳で大統領任期2期目の終わりには86歳になるバイデンは、大統領職をあと4年間続けるための準備ができていないのではないかという有権者の懸念を和らげることが何もできなかった。

バイデンが2024年の選挙戦を通じて直面し続けてきた主な懸念の1つは年齢であり、バイデン陣営が求めていた討論会でのスロースタートぶり(slow start)は6月の討論会を進めるというバイデン自身の決断に疑問を投げかけた。

連邦下院少数党(民主党)院内総務のハキーム・ジェフリーズ議員(ニューヨーク州選出、民主党)の元広報担当のマイケル・ハーダウェイはSNSXに投稿し、「あのような状態で自分のボスを全国テレビ放送に送り出すようなことを私ならしない」と書いた。

バイデンは言葉につまずき(stumbled over)、時には発言が不明確になるなど、いくつかのミスに苦しんだ。彼の声は討論会の間中、ずっとかすれていて(hoarse)、特に静かな調子で討論を始めた。

バイデンがつまずいた最も注目すべき事例の1つは、討論会序盤における、メディケアに関する討論だった。

「私が新型コロナウイルスに対して私ができたことを、全ての人たちに確実に受けられるようにすることだ。失礼、私たちが関係しなければならない全てのことに対処している」とバイデンは時折言葉に詰まりながら発言した。「よろしいか・・・私たちはついにメディケアを完全に打ち倒した(we finally beat Medicare)」と述べた。

トランプ陣営は、バイデンにはあと4年間ホワイトハウスに留まる用意ができていないと主張しようとしてきた。トランプ自身は、このバイデンの言い間違いの機会を利用してバイデンが「メディケアを徹底的に打ち負かした」と述べたことへ反応しようとしたが、止まってしまった。

複数の関係筋が本誌や他のメディアに語ったところによると、バイデン大統領は風邪をひいており、それが「スロー」スタートの理由ということであった。しかし、バイデン大統領の能力についての疑問を払拭するのに、この釈明はバイデンが必要としていたものではなかったことは確かだ。

トランプはひよっこ(spring chicken)ではない。トランプは78歳になったばかりで、二期目を務めれば史上最高齢の大統領となる。しかし、トランプの年齢に関する疑問は、バイデンほどには根強く残っておらず、木曜日の夜の彼のパフォーマンスがこの状況を変える可能性は低かった。

討論会が進むにつれてバイデンの様子は改善し、トランプの様々な発言についてトランプと対立することが増えた。注目に値する例の1つは、2018年に大統領としてトランプが退役軍人を「間抜け」や「負け犬」と呼んだ発言を非難したことだ。これについて、トランプは否定している。

民主党系ストラティジストのジョン・ライニッシュは、バイデンは時間の経過とともに改善したと主張した。

ライニッシュは「大統領は、スロースタートだったが、勢いを取り戻した(picked up stream)。彼のティームは、喉に効く2つの自家製治療薬、ハチミツとレモンについて調べる必要がある」と述べた。

(2)トランプは比較的規律正しく行動した(Trump is relatively disciplined

2020年の大統領選挙選挙戦の最初の討論会でのトランプ前大統領のパフォーマンスは、バイデンに対する度重なる妨害と攻撃的な口調のために酷評された。木曜日にはそのような問題はなかった。

トランプ大統領の回答には、バイデンが国民全員の税金を4倍にする計画があると主張したときのように、誤解を招く発言や虚偽が頻繁に含まれていた。トランプは2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件についての発言最小限にとどめ、2024年の選挙結果を受け入れるかどうかについては曖昧な態度を取った。

しかし、バイデンが特定の話題について蛇行し、時には思考回路(train of thought)がうまく機能しなかったため、過去にトランプを悩ませたような爆発は避け、厳しい試験に合格することができた。

トランプ元大統領の側近と共和党系のストラティジストたちは木曜日の対決に向けて、トランプには自傷行為による傷(self-inflicted wounds)を一切負わせず、その夜の焦点をバイデンに集中させることが責務であると主張した。

マイクをミュートにして、候補者の発言の番ではないときに候補者の声が聞こえないようにしたことも、一部にはトランプに対する助けになったかもしれないが、共和党は夜の終わりまでにトランプの果たすべき使命は達成されたと感じた。

共和党系ストラティジストのフォード・オコネルは本誌の取材に対して次のよう述べた。「トランプにとって、今回の討論会のMVPは、トランプとバイデンの分割画面の視覚的なコントラストだ(split screen visual contrast)。トランプは20歳若くシャープに見えたが、バイデンはぼんやり(dazed)していて、あと4年など務められそうにないように見えた。今夜以降、トランプとバイデンの間で再び討論会が行われる可能性はゼロ以下だ」。

(3)司会者たちはファクトチェックに失敗した(Moderators fail to fact-check

司会者のダナ・バッシュとジェイク・タッパーは候補者たちが時間制限を守るように努めたが、討論会の間でリアルタイムでのファクトチェックを行わなかった。これは、専門家の一部から、事前にトランプとバイデンの責任ある発言を引き出すために必要だと主張していたにもかかわらず、ファクトチェックを行わなかった。

討論会の場で行われる主張に異議を唱えないという決定は、候補者たちが真実を拡大解釈して非難の応酬を行う余地を残した。 

これは、トランプにとって有利となった可能性がある。討論会終了後、CNNのファクトチェッカーであるダニエル・デールは、トランプの虚偽主張が少なくとも30件、バイデン側では少なくとも9件あったと主張した。しかし、デールの努力は多くの視聴者が討論を見終えた後に示された。

ある時点で、トランプは先月有罪判決を受けたマンハッタン口止め料事件を通じて、バイデンに対して、「基本的に政敵を追いかけ回した(basically went after his political opponent)」と示唆したようだ。

4年前、2020年の討論会でのトランプ大統領の突飛な主張により、幕が閉まった後に厳しいファクトチェックが行われた。 

バイデン陣営とバイデンの補佐官たちは一晩中、ソーシャルメディアへの投稿でトランプ大統領の発言に関するチェックをシェアし、様々な報道機関は、両候補の動向を把握しようと努めた。

物議を醸した討論会は、両方の候補者を遮断するミュートボタンと、無観客によって部分的に制御された。これは、2020年の騒々しい両者の対決の繰り返しを避けるためのCNNが苦心して決めたものだ。

しかし、司会者らは候補者に任務を遂行させるのに苦労し、虚偽や逸脱の両方に扉を開いた。ある時点で、トランプは保育料の料金に関する質問を無視し、その代わりにバイデンを「史上最悪の大統領(“the worst president ever)」と叩きのめすことに時間を費やした。 

他の専門家たちが批判する中、長年ニューヨーク・タイムズのコラムニストを務めるニコラス・クリストフ氏はSNSXに「CNNの司会者たちがもっとファクトチェックをして、全くの虚偽の発言があった場合には視聴者に知らせて欲しかった。事実を装った虚偽を送信することがプラットフォームにとってどのように役立つのかは分からない」と投稿した。 

一方、保守派コメンテイターのアン・コールターは、司会者たちを「驚くほど素晴らしい」、「まったく不公平ではない」と評価した。

共和党系ストラティジストのブライアン・セイティックは、司会者たちは抑制的なアプローチでスポットライトを避けることに成功したと述べた。民主党系ストラティジストのライニッシュは、司会者がもっと介入すべきだったと述べた。

(4)2020年に行われた灯篭会ではなかったが、個人的・感情的になった(It wasn’t 2020, but it got personal

2020年のトランプとバイデンの1回目の討論会は、会場を支配した混乱と両候補が激しい口論になったことで評価が低かった。

木曜日の討論会はそこまでの緊張レヴェルには達しなかったが、それでも時として個人的・感情的なものになった。

バイデンは討論会の後半で発言を強め、トランプが亡くなった退役軍人について発言したと伝えられていることに言及し、トランプを「間抜け(sucker)」で「負け犬(loser)」と呼んだ。

「彼は四つ星の将軍と一緒に立っていてこう言った、『彼らは負け犬で間抜けの集団だから、あそこ(墓地)には入りたくない』と」とバイデンは語った。バイデンは続けて、「私の息子は負け犬ではない。彼は間抜けではない。あなたが間抜けだ。あなたが負け犬だ」と述べた。

トランプ大統領は、バイデンを「洗脳されている(Manchurian candidate)」と呼び、中国に立ち向かわないとして非難した。

両候補は、様々な政策問題に関して討論する中で、相手が嘘をついた、または真実ではないと非難した。

注目すべきことに、候補者たちは討論会の前後に握手をしなかった。最後にバイデンは妻のジル・バイデン大統領夫人に出迎えられ、トランプはただ立ち去った。

(5)民主党は懸念と不満を高めて夜を終えた(Democrats left the night worried and frustrated

集中力を失い、言葉が出てこないバイデンのパフォーマンスは、討論会が終わる前から民主党をパニック状態に陥らせた。

本誌に記事を寄稿している、民主党系ストラティジストで、オピニオンライターのマックス・バーンズはXに次のように投稿した。「私はバイデン陣営のスタッフでも、バイデンワールドの腹心でもない。バイデンの懸念すべきパフォーマンスについて今、最高幹部レヴェルで話し合いが行われているかどうかは分からないが、今夜バイデンの選挙戦が前進したかのようなふりをするのは政治的不正(political malpractice)となるだろう」。

バーンズは別の投稿で次のように述べた。「2012年にバラク・オバマがミット・ロムニーに対する最初の討論会で大失敗したとき、何がうまくいかなかったのか、それを修正するには何が必要なのかについて真剣に議論することになった。オバマは船の進先を修正した。 同じような話し合いが今すぐ、幹部たちとバイデンとの間で行われる必要がある」。

民主党にとって、今回のCNN主催の討論会は、トランプとバイデンの対照がどのようなものか有権者に示す最初の機会となるはずだった。民主党はバイデンが今年の一般教書演説で示したような活力を発揮してくれることを期待していた。

その代わりに、当初は動きが鈍かったバイデンの討論パフォーマンスが、年齢に対する有権者の懸念を強調する内容となった。

ハリス副大統領の元上級補佐官シモーネ・サンダース・タウンゼントはXに投稿し、「バイデンのスタートは悪かった(皆さん、他に言い方はない)。彼は討論会を通じて改善したが、これはバイデンの支持者たちが期待していたものではなかった。大統領が風邪をひいているようだと指摘するのはもっともだが、討論となると、内容と同じくらいパフォーマンスも重要だ」と述べた。

アリゾナを拠点とする共和党系ストラティジストであるバレット・マーソンは、「#ReplaceBiden(バイデン交代)」というハッシュタグがネット上で流行し始める可能性についてXでつぶやいた。「認知症(dementia)」という言葉もXでトレンドになっていた。

バイデンは、9月に行われるABCニューズ主催の討論会でトランプと対決し、パフォーマンスを大幅に向上させる機会をもう1度得ることになる。しかし、バイデン大統領はそれまでに多くのことを改善しなければならないだろう。

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トランプが集会で討論司会者を称賛:「彼らは私を非常に公平に扱ってくれた」(Trump lauds debate moderators at rally: ‘They treated me very fairly’

ロウレン・アーウィン筆

2024年6月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4747126-trump-lauds-debate-moderators-they-treated-me-very-fairly/

ドナルド・トランプ前大統領は金曜日の集会で、木曜の夜、CNNの大統領選挙討論会司会者のダナ・バッシュとジェイク・タッパーが自分を「非常に公平に(very fairly)」扱ってくれたと思うと述べた。

メディアイトが切り抜いて拡散した映像の中で、トランプはヴァージニア州の聴衆に対して、「昨夜、CNNが私を非常に公平に扱ったと実際に思ったので、CNNを批判すべきではない。2人ともとてもプロフェッショナルだった。ジェイクとデイナ、彼らは私を非常に公平に扱ってくれた」と語った。

トランプ大統領は聴衆に対し、CNNが何年にもわたって自分を虐待していたと語ったが、木曜日にタッパーとバッシュがトランプ氏を「公平に(fairly)」扱ってくれたことは「素晴らしい(great)」と思うと述べた。

リベラル派の一部は、司会者たちが2人の候補者に対してファクトチェックを行わず、それぞれが虚偽の発言を許していたと批判している。

トランプ元大統領は金曜日午後、選挙集会を実施し、バイデン大統領とその不安定なパフォーマンスを批判し、その夜のニューズのテーマになった。バイデンの討論は民主党員の間で広範な不安を引き起こしており、今秋に新たな人物がトランプに対抗できるようバイデンに退くよう求めている。

しかし、バイデンのパフォーマンスを受けて、共和党はCNNと彼らの討論会の進め方を賞賛した。

アーカンソー州のエイサ・ハッチンソン知事(共和党)はオンラインで、今回の討論会は「公正で有益かつ統制された最高級の討論会(a top-notch debate that was fair, informative and controlled)」だったと述べた。

ハッチンソン知事は「このフォーマットはうまくいった。激しいやりとりがたくさんあるが、視聴者にとってはより見応えのあるものだった。よくやった」と語った。

トランプ元大統領の息子であるドナルド・トランプ・ジュニアは、候補者が発言していないときはマイクをミュートにするなどの形式が気に入ったと述べた。

「実は父にとってこのフォーマットが気に入っている。このフォーマットによって、彼を規律正しく集中させ続ける。彼はバイデンの悲惨で失敗した政策について、1つ1つ解体している」とSNSXに投稿した。

ハイテク億万長者のイーロン・マスクもCNNの放送に意見を述べた。

マスクは次のように述べた。「@CNN は討論会の管理について良い仕事をしたと言わざるを得ない。質問は合理的であり、党派に偏らないものだった。どちらの候補者に対しても贔屓が見られなかった。これが国民がメディアに求めていることだ」。

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アクセルロッドが共和党のストラティジストたちに次のように発言:バイデンが交代となったら「あなたたちは問題を抱える」(Axelrod to GOP strategists: If Biden is replaced, ‘you guys are in trouble’

タラ・サッター筆

2024年6月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4745498-biden-debate-trump-challenge/

民主党系ストラティジストのデイヴィッド・アクセルロッドは、討論会後のパネルディスカッションにおいて、共和党側のストラティジストたちに対して、もしジョー・バイデン大統領が交代となれば、彼らとドナルド・トランプ前大統領は、「問題(trouble)」に直面するだろうと述べた。

アクセルロッドは木曜の討論会後、CNNに出演し、「何らかの理由で、大統領選挙候補者に変更があれば、皆さんはドナルド・トランプに関して問題を抱えることになる。なぜなら、今夜そこにいた男は人々にインスピレーションを与えるような男ではないからだ」と述べた。その映像はメディアイトが切り抜き映像にして拡散した。

アクセルロッドは続けて「バイデンは、人々が非常に好意的に評価する人物から何も変わっていない。これは納得できることだ」と述べた。

バイデンの討論会でのパフォーマンスは、声がかすれ、言葉に詰まり、党内での懸念を引き起こした。民主党の幹部やコメンテイターたちは討論会後、選挙前にバイデンが辞任することについて議論が行われていると示唆した。

アクセルロッドはCNNのテレビ番組の中で、次のように述べた「実際、この討論会の初めのバイデンの言動や様子にはショックを受けたと思う。彼の声はどう聞こえたか。彼は少し混乱しているようだった。討論が進むにつれて彼は確かに強くなった。どのような結果になるか私にも分からない議論を聞くことになると思うが、彼が続投すべきかどうかについては議論が行われるだろう」。

あるホワイトハウス当局者によると、バイデンは討論会中に風邪を引いており、民主党候補のトップとしてのバイデンの立場をめぐって疑問が渦巻く中、陣営はバイデンを擁護した。

バイデンの補佐官の1人は、「バイデン大統領はこれまでにドナルド・トランプを破った唯一の人物だ。彼はまたやるだろう。ドナルド・トランプは今夜、有権者に自分に投票する理由を何も与えなかった。この問題に関して、アメリカ国民はジョー・バイデンを支持している」と語った。

討論会を視聴した登録有権者を対象としたCNNの即時世論調査では、67%はトランプが勝利したと答え、33%はバイデンが勝利したと答えた。

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スヌヌがバイデンの討論会での酷いパフォーマンスについて「民主党エリート」を非難(Sununu blames ‘Democratic elite’ for Biden’s poor debate performance

ヤシュ・ロイ筆

2024年6月28日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4746941-chris-sununu-joe-biden-debate-performance-2024-presidential-election/

ニューハンプシャー州のクリス・スヌヌ知事(共和党)は金曜日のインタヴューで「民主党エリート」を非難し、討論会でのバイデン大統領のパフォーマンスの低調さは民主党指導部の責任だと非難した。

スヌヌは、ニューハンプシャー州の予備選をスキップし、まずサウスカロライナ州に焦点を当てるという民主党全国委員会(Democratic National CommitteeDNC)の民主党予備選挙序盤の流れに関する決定を強調した。

スヌヌは「ニューズネイションナウ」の司会者であるコネル・マクシェーンに対して次のように語った。「これはジョー・バイデンの失敗ではないことを忘れないようにしよう。これは民主党のエリートの責任だ。彼らは、ニューハンプシャー州の全米で最初に実施される予備選挙をスキップしようとしたし、ジョー・バイデンが問題を抱えていると分かっていながら、大統領選挙の候補者にさせるつもりだった」。

スヌヌ知事は続けて「彼らにはチャンスがあった。彼らが良好な予備プロセスを実行させるのではなく、基本的にゲームをしようとした。そして、こういう結果になった」と述べた。

スヌヌのコメントは、サウスカロライナ州および地元の民主党員からの呼びかけを受け、党の多様な有権者をより代表すると考えられる州(サウスカロライナ州)で、最初の予備選を実施するとした、民主党全国委員会の決定に言及している。スヌヌやニューハンプシャー州の他の政治家たちは、民主党とバイデン大統領のこの決定を非難した。

ニューハンプシャー州での予備選挙では、投票用紙に名前が記載されていなかったにもかかわらず、結家者たちは投票用紙に名前を書き込み、その結果、予備選の勝者と宣言された。それでも州は彼に代議員を与えなかった。

スヌヌは、木曜夜のアトランタでの討論会でのトランプ前大統領のパフォーマンスを称賛し、トランプ前大統領は討論会で「まさにやるべきことをやった(did exactly what he had to do” at the debate)」と述べた。

スヌヌは金曜日、「トランプは有能さを示した。彼は昨夜、強硬になりすぎず、やるべきことを正確にやった。彼は明らかにその部屋にいる唯一の大人だった。バイデンは全くもって酷かった」と述べた。

スヌヌは、民主党が優勢なアメリカ北東部の各州の中で、ただ1人の共和党所属の知事だ。彼は、共和党予備選挙ではニッキー・ヘイリー元国連大使を支持していた。3月にヘイリーが選挙戦から撤退すると、トランプが共和党の候補者となるための道が開かれた。

過去にトランプを「負け犬」と呼んだこともあったが、スヌヌは誰が共和党の候補者になっても糖尿することを示唆していた。

金曜日に行われたインタヴューで、スヌヌ知事は昨年の段階でバイデンを候補者から交代させるように訴えたとし、現段階では、それはもう手遅れだと確信していると述べた。

スヌヌのコメントは、木曜日の討論会でのバイデンのパフォーマンスが酷かったことを受けて、民主党内でパニックが起き、現職のバイデンが選挙から撤退し、8月の民主党全国大会で、オープン・コンヴェンションの開催を許可すべきかどうかの議論が巻き起こったことを受けて出された。バイデンと選対は、大統領はどこにも行かないとし、この呼びかけを拒否した。

スヌヌは、オープン・コンヴェンション開催の要求を「馬鹿げたアイディア」と呼んだ。

スヌヌは次のように語った。「バイデンは候補者に選ばれるだろう。約4カ月で5億ドルを調達しなければならない状況で、誰が彼に代わって選挙戦を行うだろうか? これは難しいことだ。候補者になることができるかもしれないが、バイデンと同じか、名前が知れ渡ればバイデンよりも敗北の程度は低くなるかもしれないが、負けてしまうことになるのだから」。

しかし、バイデンが「2回目の討論会で強さを示し、有能さを出すことができれば、アメリカは、1回目の討論会をバックミラーに戻し、リセットボタンを押すことができるだろう」とスヌヌは付け加えた。

木曜日の討論会の冒頭、バイデンの声はかすれており、バイデンのティームはすぐに風邪のせいだと説明した。金曜のノースカロライナ州での集会中、バイデンの声は正常に戻り、エネルギーも増し、言葉に詰まることもあまりなかった。

司会のマクシェーンは、これからの討論会や集会での好転についてスヌヌに質問した。スヌヌは、テレプロンプターの効力があることを認めながら、そのようなことはないと指摘した。

スヌヌは次のように述べた。「バイデンがテレプロンプターを持っている場合、発言時間の80%で、バイデンは原稿をまとめてテレプロンプターから読むことができる。だから、プロンプターがない状態であれば、私たちは最も当惑させられることになると思う。それが、昨夜私たちが見たものだ。昨夜のジョー・バイデンこそが明らかに本物のジョー・バイデンだ」。

スヌヌ知事は「バイデン大統領のパフォーマンスは多くの人を神経質にさせ、心配させるものとなっている。これが、私たちが経済危機に陥っている理由であり、これが、制御不能な移民危機に見舞われている理由だ」と述べた。

スヌヌは続けて、「アメリカ国民がそのような心配をするのは当然のことで、彼らは変化を望んでいるだけだ」と述べた。
(貼り付け終わり)
(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 2024年アメリカ大統領選挙は一晩にして急展開を見せている。6月27日夜(アメリカ時間)に、ジョージア州アトランタで開催されたCNN主催の大統領選挙候補者討論会で、民主党のジョー・バイデン大統領が高齢問題の懸念を払しょくできず、それどころか懸念を大きく強めてしまうパフォーマンスをしてしまった。一方の、共和党のドナルド・トランプ前大統領は、いつも通りの意気軒昂で、3歳しか違わないが、元気さ、健康さをアピールした。討論会終了後、民主党側は「お通夜状態」になり、SNS上で、あらゆるネガティヴな単語が飛び交った。「悲劇(tragedy)」「災厄(disaster)」「パニック(panic)」「痛み(pain)」「悪夢(nightmare)」などなど、民主党員と支持者の間には驚き(バイデン大統領の状態はあそこまで酷かったのか)と怒り(それでよく再選などと言ってここまで引っ張ってくれたな)が渦巻いている。

 民主党側からは既に候補者交代(replacement)を求める声が上がっている。「バイデンでは戦えない」という悲鳴が上がっている。現職大統領が二期目を目指して敗れるということは過去にもあったが、今回の討論会の様子を見て、バイデンを支持できないとする有権者は増えていき、このままの状態で選挙戦を進めれば、民主党優勢のブルーステイトは獲得できても、激戦州では軒並み敗れ、惨敗という結果になる。同時に行われる連邦上院議員選挙(約3分の1の議席)と連邦下院議員選挙(全議席)にも大きな影響が出て、民主党がホワイトハウスを失い、上下両院で過半数を失いという、民主党にとっては非常事態が起きる可能性が高まった。一晩のたった90分間の出来事で、いや最初の1分間アメリカ政治の潮目が大きく変わった。

 各種世論調査では、バイデン大統領が劣勢を伝えられていたが、最近になって、徐々に盛り返す展開になっていた。それが、今回の討論会で全てご破算、それどころか、バイデンに引退、撤退を求める声が民主党側から出るまでになった。今のところ、バイデン陣営は撤退を表明しておらず、「王様は裸だ(the emperor with no clothesThe Emperor's New Clothes)」状態になっている。

 問題は8月後半に民主党全国大会が開催される日程になっており、今から予備選挙をやり直す時間はない。もしバイデンが撤退を表明するならば、8月の全国大会で新しい候補者を決めることになる。「ブローカード・コンヴェンション(brokered convention)」「全ての候補者に開かれた全国大会(open convention)」と呼ばれる手続きがあるが、戦後になってこのような、非常事態の全国大会は開かれていない。バイデンが撤退した場合の新しい候補者の候補には、カリフォルニア州知事のギャヴィン・ニューサム、ミシガン州知事のグレッチェン・ウィットマー、副大統領のカマラ・ハリスなどの名前が挙がっているが、どう見ても負け戦確実な選挙に進んで手を挙げる人はいないだろう。このままバイデンで突っ込んで大惨敗するか、他の候補者を今から立てて惨敗に押しとどめるか、くらいの選択肢しかない。

 まだ救いとしては、これが7月直前に分かったことだ。まだ、候補者交代は可能だ。全国大会の後に正式に候補者指名を受けてしまえば、万事休すで、その後に討論会があって、どんなに醜態をさらしても、どうしようもない。7月の一カ月間でできることがある。バイデンの側近たちは、バイデンの状態を見て、自発的な引退を促したのではないかと私は考える。しかし、バイデンとジル夫人がそれを強硬に拒絶したので、異例のこの時期の討論会を受け入れて、大統領と夫人に引導を渡そうとしたのだろうと私は考える。バイデン陣営と民主党執行部は、民主党に対して大きな傷を残した。ヒラリー・クリントンよりもその罪は重いと言えるだろう。

(貼り付けはじめ)

民主党は考えられないことを考える:バイデンが退陣する時が来た(Democrats consider the unthinkable: It’s time for Biden to go

-民主党大統領選挙候補者になり得る人物3人に近い、3人のストラティジストたちは、テキストメッセージの攻撃を受けたと述べている。

エレーナ・シュナイダー、アダム・ウレン・ローレン・イーガン筆

『ポリティコ』誌

2024年6月27日

https://www.politico.com/news/2024/06/27/biden-democrats-replacement-00165672

民主党はジョー・バイデン大統領の討論会の低調なパフォーマンスに非常にパニックに陥っており、かつては口にできなかった事柄、つまりバイデンの後任を指名することについて積極的に議論し始めている。

民主党大統領選挙候補者になり得る人物3人に近い、ストラティジスト3人は匿名を条件にして取材に応じ、討論会中ずっとテキストメッセージが送り続けられたと述べた。あるストラティジストは、自分たちの候補者がバイデンの代替候補として名乗りを上げるよう嘆願(pleas)を受けたと述べた。

別のストラティジストは、「6人以上の主要な献金者たちから“災害(disaster)”というメッセージが送られてきたので、党は何かをする必要がある」と述べたが、バイデンが撤退しない限り「多くのことは不可能だ(not much is possible)」と認めた。

ある民主党の大口献金者でバイデン支持者は匿名を条件に取材に応じ、バイデン大統領は選挙運動を終える時が来たと語った。この人物はバイデンの夜を「史上最悪のパフォーマンス(the worst performance in history)」と形容し、バイデンは「トランプの嘘には誰も注意を払わないほど悪かった(bad that no one will pay attention to Trump’s lies)」と述べた。

この人物は「バイデンは撤退する必要がある。それについては疑問の余地はない」とテキストメッセージで述べ、メリーランド州とミシガン州の知事が代替で候補者になることを提案した。

2028年大統領選挙の有力な有力候補者である2人、イリノイ州のJB・プリツカー知事とカリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事は、バイデンのパフォーマンス後もバイデンを支持すると述べた。

ニューサム知事はMSNBCでバイデンが撤退すべきかと問われ、その話は「役に立たない」「不必要」だと述べた。

ニューサム知事は「一度のパフォーマンスのせいで背を向けることなどない。そんなことをするのはどんな政党なのか?」と述べた。

バイデンは討論会の大部分を通じて苦戦した。今回の討論会は、2024年大統領選挙でバイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領が初めて対決する機会となった。 81歳のバイデン大統領は長年、大統領としての適性について疑問に直面しており、現代政治史上、この種の総選挙での最も早い対決であるこの討論会は、選挙戦をめぐる物語をリセットするためのバイデン陣営の策略(gambit)だった。

民主党は数週間にわたり、討論会でバイデンが良好なパフォーマンスができれば、バイデンの年齢に対する懸念が和らぐのではないかと期待していた。しかし、その代わりに、それは逆のことが起きた。

バイデン政権下でホワイトハウス高官を務めたある人物は、「ノー・ラベルズとディーン・フィリップスがこの討論会で勝利した」と述べ、トランプやバイデンではない別の候補を大統領選挙に立候補させようという外部の取り組みについて言及した。

党内からの嘆願は、実際に候補者変更につながる可能性は低いものの、選挙運動の大きな転換を反映している。現職の大統領は伝統的に、最初の討論会では大統領としての仕事に追われ、準備に多くの時間を割けないことが多く、良い評価を得ることができない。しかし、木曜日の討論会は、バイデンの売り込み討論会を経て、多くの有権者の間で、バイデンが売り時を過ぎた候補であるという既存の先入観が肯定される結果になったという点でこれまでにないものとなった。

民主党の大口献金者の顧問の1人は、木曜夜にアトランタで開かれた献金者の会合において、テキストメッセージを送っている人たちが多くいて、中には「なんてことだ(wtf)」と書いている人もいたと語った。

この人物は「我々の唯一の希望は、バイデンが撤退するか、話し合いで候補者を決める全国大会を開くか、バイデン死ぬかだ。そうでないと、私たちは死んでしまう」と述べた。

それにもかかわらず、候補者が決まらないまま全国大会に突入して全国大会での話し合いで候補者決まることやバイデンが撤退する可能性は低く、バイデンのパフォーマンスについて個人的に不満を抱いていた人々さえもそれを認めているのが現実である。

匿名を条件に自由に発言できるある民主党系ストラティジストは匿名を条件に取材に応じ、「決定できるのはただ1人、それは彼だ」と語った。

バイデン陣営のジェン・オマリー・ディロン選対委員長は声明で、バイデン大統領が「アメリカの将来について前向きで勝利に満ちたヴィジョンを提示した」一方、トランプは「もしバイデンがホワイトハウスから去ったら、アメリカがどうなるかについて、暗くて後ろ向きな窓を提供した」と述べた。

ある州で選挙に出た経験を持つある民主党員は、「全体的に良くなかった。私たちの大統領は言語障害を持ち、風邪を患っていて、81歳だ」と述べた。

民主党最高幹部の上級顧問を務めるある人物は匿名を条件に取材に応じ、次のように語った。「ジョー・バイデンからディベートのマスタークラスを伝授されるとは誰も期待していなかったが、今回の急降下も誰も予想していなかった。彼はメッセージもダメ、内容もダメ、カウンターパンチもダメ、プレゼンテーションもダメ、非言語表現(non-verbals)もダメだった。今回の討論会において、バイデンにとって明るい材料はなかった。唯一の明るい材料は、討論会が10月ではなく6月に行われたことだ」。
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バイデンの討論会でのパフォーマンスは民主党側にとって「悪夢」となった(Biden debate performance is ‘nightmare’ for Democrats

エイミー・パーネス筆

2024年6月27日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/campaign/4745090-biden-debate-disaster-democrats-concerned/

木曜夜の討論会で民主党の人々がバイデン大統領から見せてもらいたかったものがあるとすれば、それは強さだった。

彼らは、バイデン大統領がトランプ前大統領に対して、1月6日の反乱や、ロウ対ウエイド裁判の判決の覆しについて叩くのを見たかったのだ。「有罪判決を受けた重罪人(convicted felon)」という呼び名(moniker)でトランプを打ちのめすことを望んでいたのだ。

民主党員のほとんどは木曜日、バイデンがノックダウンされたことを認めた。

しかも激しく倒されたことを。

バイデンの声はかすれていた。唇は震えていた。討論会開始後、ホワイトハウスはバイデンが風邪をひいたと発表した。

バイデンは言葉につまずいた。時には話題を逸らし、間違った方向に進んだ。ある瞬間、バイデンは「私たちはついにメディケアを打ち負かした(We finally beat Medicare)」と宣言し、給付金について脱線した。

バイデンの支持者の1人は「これは正直言って悪夢だ。自分が見ているものが信じられない。私は今回の選挙で私たちが負けるのをスローモーションで見ている」と語った。 「自分が見ているものが信じられない。私は今回の選挙で私たちが負けるのをスローモーションで目撃している」。

別の民主党系のストラティジストは「政治的自殺」と表現した。

ある民主党議員は、暗い瞬間においてブラックユーモアを言うのが精いっぱいだった。「ジャマール・ボウマン(予備選挙で敗北した現職下院議員)が近くにいて火災警報器を鳴らしてくれたらよかったのに」と、ニューヨーク州選出の連邦下院議員に言及しながら述べた。

民主党はバイデンがトランプの責任を追及しなかっただけでなく、トランプが中絶や新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関して虚偽を吐くのを傍観して見ていたことを認めた。そして、トランプがバイデンを「我が国史上最悪の大統領(the worst president in the history of our country)」と非難し続けたとき、ある民主党員が述べたように、バイデンは「ほとほと当惑していた(almost bewildered)」と振り返った。

バイデンの広報担当を長年務めたケイト・ベディングフィールドは討論会の後にCNNに出演し、「これに関しては2つの方法は存在しない。今回の討論会はジョー・バイデンにとって良いものではなかった」と語った。

バイデンの上級補佐官を務めたデイヴィッド・アクセルロッドは、同じくCNNのパネルディスカッションで、「人々の恐怖を裏付けた一夜だった(It’s the one night that confirmed people’s fears)」と述べた。

討論会が進むにつれ、民主党側はますます不安を募らせ、バイデンが撤退するには遅すぎるのではないかと考える人もいた。彼らは他の候補者についても考え始めた。

ある民主党系のストラティジストは、カリフォルニア州知事ギャヴィン・ニューサムについて「私たちの周囲ではニューサムについて多くの話がなされている」と語った。

激戦州出身の民主党連邦下院議員は次のように述べた。バイデンのティームは、バイデンに撤退し、候補者を決めるための、公開された全国大会を開催するよう説得する必要がある」。

民主党の献金者の一人も討論会を見て激怒した。

この民主党の献金者は「この状況がどうなっていくのか、真剣に議論する必要がある。年齢に関する議論を無視することはもはやできない。真剣にならねばならない。ここでは非常に多くのことが危機に瀕しているが、私たちは一体何をしているのか?」と述べた

討論会の間、バイデンは時折トランプに反撃しようとした。ある時には「あなたは子供だ」と述べた。そして別の機会では、彼はトランプの体重について非難した。

バイデンはまた、2020年にトランプ前大統領が敗北したことを指摘し、トランプを「負け惜しみが強い敗北者(sore loser)」と呼んだ。

バイデンは「あなたは敗北には耐えられない。前回負けたとき、何かがはじけたのだ」と述べた。

バイデンの長年の盟友の一人は、夜が更けるにつれてバイデン大統領は「少し良くなった(a little better)。トランプと真実の関係は、本当に素晴らしいものだ(皮肉を込めて)」と語った。

リアルタイムでトランプ大統領の事実確認をほとんど行わなかったCNNの司会者ジェイク・タッパーとダナ・バッシュにも多くの不満が集まった。

しかし、民主党の人々の多くは激怒し、今後の数週間について懸念していた。討論会後、バイデン大統領はジル・バイデン大統領夫人とともにウォッチパーティーに登場した。そして一部の民主党員はバイデンが前進することを期待していた。

金曜日の午後、バイデン大統領はノースカロライナ州で選挙イヴェントを開催した後、今週末はニューヨークとニュージャージーで3回に分けて資金集めを行う予定だ。

今現在、民主党側の人々は今晩起こったことについてきれいに忘れてしまいと望んでいる。

ある民主党関係者は今回の討論会ではなく、選挙戦について「私たちは今夜で敗北した」と述べた。

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「バイデンの討論会パフォーマンスに激怒する民主党:「バイデンは破滅だ」」(Dems freak out over Biden’s debate performance: ‘Biden is toast’

-ある著名な民主党活動家はテキストメッセージで「開かれた全国大会(open convention)の時だ」と送った。

リサ・カシンスキー、アダム・カンクリン、ユージン・ダニエルズ筆

2024年6月27日

『ポリティコ』誌

https://www.politico.com/news/2024/06/27/biden-debate-opening-concerns-00165595

ジョー・バイデンに必要だったのは、一般教書演説でのパフォーマンスの再現だけだった。

その代わりに、バイデンは言葉に詰まった。つまずいた。そして、11月まで5カ月を切った今、彼は民主党が最も恐れていること、つまり、不器用な失敗をして、ドナルド・トランプにこの選挙での勝利を譲ってしまうことをそのまま行ってしまった。

バイデンがつかえながら、かすれた声で話し始めた瞬間から、民主党に対する警鐘は鳴り始めた。討論が始まって数分後、バイデンは自身の監督下にある経済について効果的な弁明をするのに苦労し、再選を目指す上で中心となっている主要な医療政策について「私たちは最終的にメディケアを打ち負かした(we finally beat Medicare)」と言ったり、自身の政権がインシュリンの価格をどれだけ引き下げたかを間違えて説明したりした。アフガニスタン問題では、自分の政権の撤退の失敗を何の脈絡もなく持ち出し、自分自身を窮地に追い込んだ。「10億」と「100万」を何度も間違え、90分の討論の長い間、弁明に追われた。

また、発言していない時間は、演壇の後ろに固くなって立ちすくみ、口をとがらせ、目を大きく見開き、まばたきもしない状態が長く続いた。

ニューハンプシャー州出身の弁護士で民主党活動家のジェイ・サードゥコウスキーは「バイデンは破滅だ。今がその時だ」と述べた。サードゥコウスキーは、2016年の大統領選挙で、マーティン・オマリー前メリーランド州知事の大統領選挙の選対の共同委員長を務めた。

本誌とのテキストメッセージのやり取りの中で、民主党員たちは、討論会の最初の数分間を見て、混乱と懸念を表明した。バイデン政権下でホワイトハウスに勤務し、選対にも参加したある人物は、「全くもって酷い(terrible)」と言い、何度も、「彼はいま何を言ったのか? おかしくなっている」と自分に問いかけたほどだったと述べている。

ジャレッド・ハフマン連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は「良いところがない」と書いた。

本誌は6名ほどの民主党員に取材した。彼らの中には匿名を条件に、バイデンのパフォーマンスについて議論することを了承した人たちがいた。

バイデンのティームはすぐに大統領のパフォーマンスを擁護した。まず彼らは、バイデンが風邪をひいていたと言った(そして、新型コロナウイルスは陰性だったと述べた)。そして、バイデンの大統領としての記録を侮辱することで、トランプは自らを傷つけていると主張した。

バイデンは、トランプが戦死した兵士たちを「アホと負け犬(suckers and losers)」と呼んだことを利用して、前大統領を本当の「アホ」であり、「負け犬」だとして、激しく非難する場面もあった。また、トランプがニューヨークで有罪判決を受けたことを非難する場面もあった。

バイデンは「私が今見ている男、このステージにおいて、重罪で有罪判決を受けた唯一の人物だ」と語った。

しかし、第一印象は重要であり、特に選挙を意識し始めたばかりの有権者にとっては、9月に予定されている第2回討論会よりも第1回討論会を見る可能性が高い。そして、バイデンの不安定なパフォーマンスは、大統領選挙戦の次の段階の基盤を作るどころか、有権者がバイデンをホワイトハウスに再び送ることについて、精神力を体力の面を最も懸念している中で、バイデンは11月まで党を引っ張ることさえできないかもしれないという懸念を民主党員の間に再燃させた。

ある著名な民主党活動家はテキストメッセージで「開かれた全国大会(open convention)の時だ」と送った。

バイデンのティームは、この討論会を自分に有利になるように仕組もうとした。そして大統領は、11月に勝てるかどうかという民主党の神経を落ち着かせるために、今回の討論会の開催に同意した。

その後、民主党はバイデンのパフォーマンスの酷さをごまかそうとはせず、トランプが依然として国内外におけるアメリカの利益にとって脅威であることを強調しようとした。

カマラ・ハリス副大統領は、討論会が終わった1時間後、CNNのアンダーソン・クーパーに対して次のように語った。「スロースタートだったのは誰の目にも明らかだ。その点について議論するつもりはない。私は11月の選択について話している。私たちの生涯で最も重要な選挙の1つについて話している。11月がもたらすものを見て、民主政治体制を破壊へと進むアメリカの道を歩みたいのか?」

民主党員の一部はバイデンの失策をすぐに隠そうとした。ヘイリー・スティーヴンス連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)は、バイデンは「テレビのショーマンではなく、仕事人間だ」と述べた。しかし、選挙戦の方向性は劇的に変化したように見える。

クレア・マッカスキル元上院議員(ミズーリ州選出、民主党)はMSNBC次のように語った「今の私の仕事は、本当に正直であることだ。ジョー・バイデンには、今夜やらなければならないことが1つあった。そして、彼はそれをしなかった。彼には成し遂げなければならないことが1つあった。それは、この年齢でこの仕事をこなせるのだとアメリカを安心させることだった。そして今夜、彼はそれに失敗した」。

民主党員の一部は、バイデンは選挙戦を終えるべきだと公言していた。ある民主党の大口献金者でバイデン支持者は、「バイデンは撤退すべきだ。それは疑問の余地がない」と述べた。

バイデンは、選挙戦の最大のセールスポイントのいくつかについて、強い主張を明確にするのに苦戦し、医療保険制度に関する記録でつまずいたり、妊娠中絶の権利の支持について返答につまずいたりした。

バイデンは「私はロウ対ウエイド判決を支持する。妊娠には3つの時期がある。1回目は女性と医師の間で。2回目は医師と極端な状況との間、3回目は医者と、つまり女性と国家との間だ」と述べた。

トランプもつまずいた。ナンシー・ペロシ前下院議長の娘でドキュメンタリー映画制作者のことを "映画製作者 "と呼んだ。彼は、民主党は「生まれた後(after birth)」の「子どもの命を奪う(take the life)」ことを望んでいると非難した。トランプは自身の大統領就任期間の経済の強さを誇張した。

トランプは、1月6日の暴徒を再び擁護し、2020年の選挙結果を覆すために連邦議事堂を襲撃した数百人のトランプ支持者の有罪判決に対する長い世迷言に入った。また、勝者が誰であれ選挙結果を受け入れるのかと何度も質問されたが、トランプはまともに答えようとせず、最終的には、「選挙が公正で自由であれば(if the election is fair and free)」受け入れると明言した。

しかし、トランプは共和党が望んでいたことをほぼ実行した。バイデンの弱点をさらけ出しながら、適度な自制(modicum of restraint)を示したのだ。ことあるごとにバイデンを「眠い」「不正をしている」と罵倒して喜ぶトランプ前大統領は、民主党の最初の不安定なパフォーマンスに注目させるため、20分も待った。

トランプは、バイデンが移民に関する質問に対してたどたどしく答えた後、「彼があの発言の最後で何を言ったのか、本当に文からない。彼も自分が何を言ったのか文かっていないと思う」と発言した。

そして、比較的静かで地味な討論会で、最も低い期待にさえ届かなかったのがバイデンだった。

あるヴェテランの民主党活動家は「バイデンにはウォームアップに数分必要だったようだ。哀れな男にはお茶が必要だ。たぶんウィスキーも」と述べた。もう1人の活動家は、バイデンにのど飴(throat lozenge)を勧めた。

バイデンも、バイデンよりわずか3歳若いトランプも、討論会の終盤には、あと4年の大統領任期への適性についての質問に直面した。

バイデンは咳き込みながら、有権者に対し、自分の力量を記録に基づいて判断するよう促し、トランプを「3歳若いが、能力はかなり劣っている(three years younger and a lot less competent)」と攻撃した。

バイデンは「記録を見て欲しい。私がしてきたことを見て欲しい」と、選挙戦でよく使うセリフを繰り返した。

そしてトランプは、2つの認知テストに「好成績で合格(aced)」していると主張し、スタミナがある証拠として自身のゴルフコースで優勝したゴルフトーナメントを挙げ、自分の適性を主張した。

このやりとりはすぐに優勢を競うゲームに発展し、バイデンはある時点で「自分のゴルフバッグを自分で持ってプレーするのであれば、喜んでゴルフをする」と言い返した。しかしその時点で、多くの視聴者の意見は既に固まっていただろう。

元ニューハンプシャー共和党委員長でバイデン氏への投票を検討している「反トランプ派(Never Trumper)」のファーガス・カレンは、木曜日のバイデン大統領のパフォーマンスが悪ければ民主党は候補者について再検討する必要があると警告した。

討論会の後、カレンは次のように語った。「親が年をとり、弱くなり、霧がかかったような認知になっているのを見てきた人なら誰でも、自分が見ているものを認識し、ここからは状況が加速度的に悪化するだけであることが分かる」。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 日本では太平洋戦争以後、徴兵制度はなくなった。私の祖母は終戦時に女学校を卒業して働いていた世代で、徴兵制度のことを覚えていて、私が成人の年齢(20歳)になった時に、「昔は徴兵検査を受けていたよ」と言っていたことを思い出す。男性は徴兵検査を受けて初めて一人前、という風潮があったそうだ。
 アメリカに留学中に、韓国や台湾からの留学生たちと親しくなったが、彼らは徴兵され、軍務に着いた経験を持っていた。陸軍や海軍、空軍の話をたまに聞くことがあった。ある女性の留学生からは彼女のお兄さんが生まれつき体が弱く、徴兵に適さない健康状態で、どうしても徴兵に行って一人前に見られたいと言って聞かなかったという話を聞いた。戦前の日本と同じく、徴兵されて一人前という風潮がまだまだ根強いようだ。

 アメリカではヴェトナム戦争までは徴兵が行われていた。徴兵忌避者(draft dodgers)は国内や外国に逃げるということもあったそうだ。ヴェトナム戦争後に徴兵は停止となったが、1980年にジミー・カーター政権下で、選抜調整システムが導入され、18歳から26歳までの男性は名簿に登録するということになった。アメリカ軍は志願制を取っているが、志願兵だけでは足りないという状況になったら、この名簿に載っている人々から徴兵されるということになる。2004年には一般徴兵制(男女の名簿登録)の導入が連邦議会で提案されたが、法案の議論まで至らずに、導入されなかった。

 民主党側は徴兵名簿への女性の登録に積極的であり、共和党の一部も賛成しているが、社会的保守派と呼ばれる共和党議員たちは強硬に反対している。民主党側は、「軍務の範囲が拡大し、語学担当は情報諜報分析担当まで広がっており、女性の能力も必要だ」と主張している。反対派は「女性たちは望んでいない」「危険すぎる」ということで反対している。アメリカ軍は既に女性が軍務に就き、最前線にも配属される場合があり、戦死や戦傷を追う人も実際にいる。ヨーロッパではウクライナでの戦争もあり、各国で徴兵制度の導入や復活の動きが始まっている。ヨーロッパの場合は、男女ともに徴兵されるようだ。イスラエルも徴兵制度であり、女性が徴兵されている。

 ウクライナやロシアでは徴兵によって若者たちが軍務に就いており、その数が足りなくなって、対象が拡大していると言われている。そして、徴兵を逃れようと国外逃亡を図る人々も多く出ているようだ。国家はある意味で非常に怖い存在だ。「完全動員(full mobilization)」という号令がかかれば、国民はひったくられるようにして、集められ、強制的に国家のために働かされることになる。日本では日本国憲法によってそのようなことを国家(政府)に禁止しているが、憲法を変えるということはそういうことができる範囲を広ゲルということも含まれており、私たちは気を付けるべきだ。現在の日本でも、自民党の政治家たちやそれらに近い人々があらゆる理屈をこねて徴兵制度導入を目論んでいるが、私たちは注意しておかねばならない。

(貼り付けはじめ)

女性に徴兵を義務付けることをめぐり炎上騒動が勃発(Firestorm erupts over requiring women to sign up for military draft

アレクサンダー・ボルトン筆

2024年6月20日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/4730560-senate-democrats-require-women-draft/

連邦上院民主党は、年次国防権限法案(annual defense authorization bill)に女性の徴兵登録を義務付ける文言を追加したため、共和党や社会保守派の反発を招き、11月の投票日までに法案を連邦上院議場で可決する可能性が複雑になっている。

ロジャー・ウィッカー連邦上院議員(ミシシッピ州、共和党)が率いる保守派が、女性に徴兵登録を義務付ける規定を削除しようとするのは確実で、その場合、ジョン・テスター連邦上院議員(モンタナ州選出、民主党)とジャッキー・ローゼン連邦上院議員(ネヴァダ州選出、民主党)、他の民主党所属の連邦議員たちは再選レースを戦っている中で、厳しい投票となる。

ローゼンの対抗馬として、連邦上院議員選挙に立候補している共和党のサム・ブラウン候補は、ネヴァダ州の選挙運動で、既にこの問題を争点にしている。

即席爆発装置(improvised explosive device)の爆発により重度の火傷を負った退役軍人であるブラウンは、女性の徴兵への参加を義務付ける投票について、ヴィデオでローゼンを非難した。

ブラウンは、最近ソーシャルプラットフォームXに投稿し、「私の顔を見て欲しい。これは戦争の高額な代償だ(Look at my face. This is the high cost of war)」と書いた。

ブラウンは妻に対して「エイミーと私は軍務を志願した。そして、奉仕する全ての人に敬意を表したい」と述べた。そして、続けて、「しかし、アメリカの娘たちに徴兵登録を強制することはとても“容認できない”。ジャッキー・ローゼンは恥を知るべきだ」と述べた。

これらのコメントの下に投稿されたヴィデオの中で、ブラウンは戦場で女性が直面するだろう危険性の証拠として、自身の顔の傷を挙げた。

ブラウンは、「私の顔を見て欲しい。これは戦争の高額な代償であり、今週、ジャッキー・ローゼンが私たちの娘たちに徴兵への参加を義務付けることに投票したことを知った。この件について、皆さんは、また私から話を聞くことになるだろう」と述べた。

ジョシュ・ホウリー連邦上院議員(ミズーリ州選出、共和党)は、法案に女性への参加を義務付ける規定は「馬鹿げている(insane)」だと批判した。

ホウリー議員は、バイデン政権が国防総省で起きている、ウォーク議題(woke agenda、訳者註:リベラルな議題)を実行しようとしていると非難した。

ホウリー議員はフォックス・ニューズに出演し、「徴兵に女性を入れるべきではない。女性たちが望んでいないのに軍務を強制されるべきではない」と語った。ホウリー議員は、民主党が軍隊を使っての実験(experiment with the military)を望んでいることを批判し、「普通の人々は、“娘たちを放っておけ”と考えている」と語った。

ホウリーは、2021年と2022年の国防権限法案から女性の登録を義務付ける文言を削除する取り組みを主導した。

マイク・ペンス前副大統領の関連団体も水曜日、この問題について介入した。

「アメリカの自由推進(Advancing American Freedom)」というグループは、ミッチ・マコーネル連邦上院少数党(共和党)院内総務(ケンタッキー州選出)とマイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)に書簡を送った。その中で、「戦争を戦うために女性に徴兵登録を義務化するというアメリカ合衆国の考えは、全く支持できず、何としても反対しなければならない」と主張した。

連邦上院軍事委員会の共和党側のトップであるウィッカー議員は、法案から女性の徴兵登録の文言を削除するよう努めると述べた。

ウィっか―議員は、「私は女性の徴兵登録義務化に反対だ。今は、それについて、連邦議会の両院の議場で、議論を始める時期ではないと思う。私たちの現状は、徴兵の実施には程遠いし、差し迫った本当の問題について話し合う必要があるときに、枝葉末節にかまけることになると私は考える」と述べた。

ウィッカー議員は、「議場での討論や委員会の出会議で、そうした文言が法案からなくなることを願っている」と続けて述べた。

しかし、連邦上院軍事委員会のジャック・リード委員長(ロードアイランド州選出、民主党)は政策変更案を擁護し、女性は最前線の歩兵として勤務しなくても、多くの種類の軍務に就くことができると主張した。

リード議員は、「今日、我が国の軍隊では、女性が目覚ましい活躍をしている。もし、徴兵が必要な状況になったとしたら、18歳以上の健康な国民全員が必要になると考える」と語った。

リード議員は、「徴兵が実際に行われるということは、私たちが非常に深刻な状況にあることを意味する」と付け加えた。

リード議員は「大量の歩兵が必要だった第二次世界大戦当時とは違う。私たちは、サイバー専門家、情報諜報アナリスト、言語学者などを必要としている。ちょっと待って欲しい、男性よりもこの仕事ができる女性はたくさんいます」と主張した。

リード議員は、共和党がこの提案に激しく反対しているのは、「筋が通らない(just doesn’t make any sense)」と述べた。

連邦上院の補佐官たちは、この問題は党派を超えていると指摘し、共和党所属の議員の一部は、女性が18歳になったときに男性と同様に選択兵役制度(Selective Service System)に登録することを義務付けることに概ね賛成している。

連邦上院共和党は既に、11月の選挙までの議会日程が減りつつあることを考慮すると、チャック・シューマー連邦上院多数院(民主党)院内総務(ニューヨーク州選出、民主党)が法案を近いうちに議場に提出するかどうかについて疑問の声を上げている。

ウィッカー議員は「法案が議場に提出されることを願っている。公の場で議論することは非常に重要だ。民主党執行部がこの法案を提出しないのではないかという噂を耳にするが、それを覆してほしい」と述べている。

共和党側のマコーネル院内総務は月曜日、民主党側のシューマー院内総務に対し、国防権限法案を「遅滞なく(without delay)」提出するよう求めた。

共和党側の指導者であるマコーネル院内総務は、今月初めに、連邦上院軍事委員会が国防権限法案を取りまとめたことを称賛したが、その後、民主党が法案を審議するプロセスを長引かせる可能性があると示唆した。

マコーネルは「しかし委員会の行動直後、連邦上院民主党幹部たちは国防の要件を真剣に受け止め始める用意があるという期待を打ち砕いた」と述べた。

女性に徴兵資格を求める投票は、モンタナ州やネヴァダ州といった共和党優勢の州や激戦州の民主党に再び打撃となる可能性がある。

共和党連邦上院議員委員会委員長のスティーブ・デインズ議員(モンタナ州選出、共和党)は前回議会で、女性に選抜兵役制度への登録を義務付ける規定を国防権限法(NDAA)から削除する2022年の修正案を支持した際、この問題を取り上げた。

デインズ議員は「モンタナ州の勇敢な男女は、自発的に我が国の軍隊に加わり、モンタナ州が持つ、豊かな軍務奉仕の遺産を受け継いでいる。私たち国の娘たちに徴兵を強制する必要はない」と述べている。

ホウリー議員は、2021年の国防権限法の女性の徴兵に関する文言を無効にする修正案を提案した。ホウリーの行動は民主党に対し、2021年12月の修正案の採決を行わずに最終的にこの問題を法案から削除するよう圧力をかけた。

ホウリー議員はまた、2022年には、共和党のテッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出)、トム・コットン連邦上院議員(アーカンソー州選出)、マイク・リー上院議員(ユタ州選出)、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出)、ロジャー・マーシャル(カンザス州選出)、ジョン・ブーズマン(アーカンソー州選出)、ジェームズ・ランクフォード連邦上院議員(オクラホマ州選出)、デインズ上院議員(モンタナ州選出)が共同提案した、女性に選抜兵役制度への登録を義務付ける文言を削除する国防法案修正案を提案した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 改革開放以降の中国の経済発展は、あらゆる人々の予測を超えるものとなった。一世代(30年間)で年率10%以上の成長を達成したのは人類史上でも例を見ないほどだ。1984年、私は地元の新聞社が企画した、子供たちだけの訪中団(「こども遣唐使」という企画名だった)に参加し、上海と無錫を訪問した。当時の中国はまだまだ貧しかった。私たちは何も上等の服を着ていた訳ではないが、私たちの後をぞろぞろと、ついてくる中国の子供たちの格好はランニングに半ズボンで、「写真や映像で見る戦後すぐの子供たちのようだ」と妙に大人びていた私は感じていた。

 あの当時に見た、私たちと同年代の上海の子供たちは、今頃どんな生活をしているんだろうか、と考えることがある。あれから40年近く経過し、上海の彼らは怒涛の経済発展と開発を、私たちはバブル崩壊と深刻なデフレ経済を経験した。今は、私が彼らを驚きの目で、仰ぎ見る方になっているだろう。実際、私は遅ればせながら、中国語の勉強を始めている。

 中国の奇跡の経済成長はどのようにしてもたらされたのかについては多くの研究がなされている。最近、カリフォルニア大学アーヴァイン校の王丰[王豊](ワン・フェン)という社会学者が『中国の豊かさの時代:起源、隆盛、そして余波(China’s Age of Abundance: Origins, Ascendance, and Aftermath)』を出版した。これがアメリカの外交専門誌『フォーリン・ポリシー』誌で取り上げられていた。

 中国の経済発展は農村部における初期工業化によって始まった。私が小学校で習った言葉に「万元戸」という言葉がある。農村部で市場経済が導入され、個人の農産物生産ができるようになり、才覚のある農民たちが生産を拡大し、農産物の売り上げを拡大して、年に1万元を稼ぐ農家が出るようになったというものだ。そして、万元戸は製造業に従事するようになり、農村部で初期工業化が始まった。そして、そこで経験を積んだ農民=労働者たちはより高い賃金を求めて、都市部に流入し、質の高い労働者となった。

 『中国の豊かさの時代』の著者の王丰[王豊]は、文化大革命の重要性について指摘している。以下の論稿から引用する。

「文化大革命の暴力と混乱(violence and disarray of the Cultural Revolution)が、1976年以降の急速な成長を促進する上で強力な役割を果たしたと説得力を持って主張する。王は次のように述べている。「毛沢東の死で終わったこの激動の10年間の終わりに、中国国民はひどく混乱し、失望し、完全に疲れきっていた。彼らは変化、より物質的な豊かさ、社会の安定、そして人間の礼儀を備えた生活を切望していた」。私たちが見てきたように、鄧小平もこうした考えに大まかに同意したようだ。王は、文化大革命についての鄧小平の発言を「文化大革命は悪いことのように見えた。しかし、結果的にはそれが良かったのだ。それは人々に考えさせ、私たちが抱えている問題を認識させた。私たちが1970年代と1980年代に政策を実施できたのは、まさに当時の教訓を学んだからだ」と引用している」。

日本では中国の経済発展は嘘だ、あんなものはすぐに崩壊するという主張が20年以上にわたって続いている。私たちは中国の経済発展についてより冷静に分析していくことが必要なのだろうと思う。

(貼り付けはじめ)

何が中国の奇跡を生み出したのか?(What Produced the China Miracle?

-北京の台頭における国家の役割について、従来の常識に挑戦する力強い新著。

ハワード・フレンチ筆

2024年5月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/05/22/china-economic-rise-state-deng-xiaoping-history-beijing-state-future-demographics/?tpcc=recirc062921

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中国の驚異的な台頭、その巨大な世界的野心、そしてその将来について、息を呑むような台頭の第一段階が終わりを迎え、重力が人口の高齢化とますます時代遅れになりつつある経済モデルと政治モデルに結びついている今、中国をどう評価すべきか? 今日の世界には、これより重要な疑問はほとんどないし、答えるのが難しい疑問もほとんどない。

私がここ数年で遭遇した、これらの疑問に対処する最も印象的な試みの1つは、予想されるような経済学者、歴史家、政治学者の作品ではない薄い新著だ。この著作『中国の豊かさの時代:起源、隆盛、そして余波(China’s Age of Abundance: Origins, Ascendance, and Aftermath)』は、カリフォルニア大学アーヴァイン校の、中国生まれの社会学者である王丰[王豊](ワン・フェン)によって書かれており、これら全ての分野からの情報が網羅されている。

王の新著を読んで、私は謙虚な思いになった。私は今世紀最初の10年間、『ニューヨーク・タイムズ』紙の特派員として中国に住み、その後も中国を訪れ、中国に関する本を書き、中国問題に関する無数の著作を読み、しばしば書評も書いてきた。しかし、『中国の豊かさの時代』には驚かされた。この本では間接的に述べられているが、王が最近、私が勤務するコロンビア大学で行った公開講演では正面から述べられているのは以下の主張だ。1976年に毛沢東が死去してから、中国が経済的に飛躍したことは、ルネサンス、啓蒙主義、産業革命と並んで、過去1000年で最も衝撃的な現象の1つとして考察に値する、人類にとって重要な出来事だ。

最近グッゲンハイム・フェローシップを受賞した王が、この主張の先頭に立っているという証拠を踏まえると、この枠組みがこれまで、人々のイメージに定着していなかったことは、私自身だけでなく、私自身の職業にとっても少し恥ずかしいことだと感じている。これほど広範囲の人類に良い影響を与えた出来事が他にどれだけあるだろうか?  1978年に始まった改革期間を通じて、中国は世界人口の約5分の1を占めた。そして、一人当たり所得の25倍の増加など、中国の発展のスピードを考慮すると、西洋の歴史的類似点でさえ不十分であるように見え始める。

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上海の少年宮(Children’s Palace)で誕生日を祝うピクニックに集まる若者たち(1987年5月)。

王は社会学(sociology)という学術的ルーツに基づいて、GDPの測定にどうしてもつきまとう、特有の精度の疑わしさや抽象性をはるかに超えて、中国経済の台頭が一般の人々の生活に及ぼしてきた影響について、より具体的なベンチマークを読者に提供しており、それらは息を呑むほどのものだ。

王は本の冒頭で、著者自身ではないかと思われる名前のない子供の物語について語る。1972年、この少年は空腹を感じ、泣き叫ぶ祖母が捕まえる前にゆで卵をひったくって飲み込み、小さな家族危機を引き起こした。その後、その子供は、その卵が肝臓病に苦しむ父親のために処方された栄養補助食品として入手されたものであることを知った。当時、人口のおよそ80%が農業に従事していたが、中国は国民を養うために毎週1人あたり 、1個未満の卵しか生産できなかった。

王は、生活必需品の供給が次から次へと爆発的に増えていく様子を記録し、彼の人生の初期がいかに厳しい状況であったか、そしてそれ以降、国の大部分に、豊かに供給され、あるいは彼が書いているように、それが当たり前になったことで、当たり前のように暴飲暴食(commonplace gluttony)の状況にまで至ったかを描いている。卵に関しては、1978年から1983年の間に、消費量が50%増加したことから始まり、1988年までに更に 3倍に増加し、その後も増加し続けた。他の主要な食品についても同様だった。王が提示したデータによると、1978年から1983年にかけて、1人当たりの豚肉消費量は61%、植物油消費量は151%、家禽肉消費量は268%増加し、その後それぞれの物品の消費量(そして他のほとんど全ての食料生産)は急激に増加し続けた。

この豊かさは、全体的な健康状態の大まかな指標である中国人の平均身長に明らかな影響を与えた。毛沢東時代に既に大幅に伸びていた平均寿命は、中国が急速に豊かになるにつれて伸び続けた。「わずか20年の間に、中国の子どもたちは歴史的なペースで成長しました」と王は書いている。王は続けて「7歳で小学校に入学した時点で、中国の都市部では、2002年の男子の身長は、1992年よりも5.2センチ高く、女子の身長は5.7センチ高かった。あまり裕福ではない田舎の子供たちの身長の伸びはより際立ったものとなっている」と書いている。

1981年、平均的な中国人は、1.3足の靴下と1組の下着と一緒に、安い綿の靴を一足購入したと王は書いている。しかし、2000年の段階で、中国は15億6000万足の靴を輸出しており、その半分以上が革製でした。5年後、その数字は24億8000万に達し、中国は世界最大の衣料品製造者への道を順調に進んでいた。

今日では、専門家も素人も、中国が世界の支配的な製造大国であることはほぼ誰もが知っている。しかし、国の隆盛を示すあまり馴染みのない指標について考えてみよう。1980年代の終わりには、中国には約62万マイルの道路があったが、高速道路はほとんどなかった、と王は書いている。2000年までに、1万100マイルの高速道路が建設された。20年後、中国は10万マイルの高速道路網を誇っている。現在、これらの高速道路では、過去1年間で世界最大のEVメーカーの座をテスラと交換した中国企業BYD製のものも含め、電気自動車が走行している。現在、アメリカや他の西側諸国は電気自動車などの安価な(そして多くの場合多額の補助金を受けている)中国製品から身を守ろうとしており、第二の「チャイナ・ショック(China shock)」が起きると警戒している。

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2017年2月11日、中国東部福建省の古田村付近の畑で、高速道路下のトンネルを、龍を掲げて練り歩く村民たち(2017年2月11日)。

北京の地下鉄は、中国に数多くある新しい都市交通システムの1つであり、2010年代には、ロンドンの地下鉄が150年間をかけて達成した以上の成長を遂げた。今世紀の最初の10年間は、中国の歴史における成長と変革のピーク期であったが、私は世界有数の大都市である上海が完全に生まれ変わるのを目の当たりにした。毎週毎週、古くからの住民が住む古い町並みが取り壊され、息をのむような速さできらびやかな高層ビルが立ち並ぶ新しい地区に変わっていく様子を私は撮影した。そして、それらの写真をまとめて本として出版した。

1980年、人口約10億人に対して年間航空旅客数がかろうじて350万に達していた頃、ほとんどの中国人は飛行機を見たこともなかったと王は書いている。1990年までに、航空旅行の総数は1660万回に増加した。航空旅行は増加を続け、2017年の段階で、中国人航空旅客数は5億5200万に達した。この結果の1つは、海外旅行の爆発的な増加だった。私が初めて中国を訪れた1990年代には、海外旅行はまだ非常にまれだった。新型コロナウイルス感染症のパンデミックの前年である2019年、中国からプライヴェートの海外旅行に出発したのは延べ1億6200万人となった。

王は、旅行の機会が拡大したことが中国人の思考を開放することに貢献したと確信しており、中国の並外れた成長とそれに伴う社会変革にとって、従来の経済政策よりも、更に重要であると考えている。

英国人ジャーナリストのタニア・ブラニガンが、中国に関するもう1つの印象的な近著『レッド・メモリー:中国文化大革命後の生活(Red Memory: The Afterlives of China’s Cultural Revolution)』で詳細に詳しく述べているように、暴力的で政治的に混乱した毛沢東の時代は、息苦しい政治的・社会的服従(political and social conformity)によって特徴付けられていた。ブラニガンは、当時の中国を毛沢東の思考というただ1つの思考によって支配された国家として描写した、中国の哲学者である徐友漁の言葉を引用している。ブラニガンが引用した、当時よく話された皮肉は、毛沢東主義による芸術に対する息苦しいイデオロギー統制のせいで、人口8億の国で承認されたオペラはわずか8本しかなかったというものだ。

毛沢東の死後、教育と思想の流通が本格化した。王は、年間出版される本の数が、1977年の1万3000冊弱から、 1982年には約3万2000冊に増加し、1990年までに再び2倍以上に増加したと書いている。学校への入学者数も爆発的に増加した。高校入学者数は、1995年から2010年の間に、300%以上増加し、職業教育も急速に成長したと王は書いている。しかし、最も印象的だったのは、高等教育における中国の成果だ。 1995年から2005年のわずか10年間で、大学の年間入学者数は5倍に増加し、500万人に達した。今世紀初頭、大学進学年齢に達した若い中国人の中で、高等教育に進んだのは50人に1人だけだった。それが、2020年までに、その数字は世代の半分以上にまで増加した。

ある情報提供者がブラニガンに語ったところによると、中国は毛沢東の肖像が入った小さなアルミのラペルピンを何十億個も生産しており、その製造に使われる金属の量は、4万機の航空機を製造するのに十分な量になるという。

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深圳の羅湖地区で撮影された鄧小平の肖像画(2015年1月30日)。

中国の貧困と低開発からの脱却(China’s breakout from poverty and underdevelopment)に関する、各種の伝統的な説明は、決して完全に満足のいくものではなく、時には知的怠惰(intellectual laziness)に近いものもある。私はその要素を自分自身で引き出している者としてこれを言っている。アナリストの一部は、1980年代以降に他の主要経済大国を上回り、中国は長期的な歴史的軌道(longer-term historical trajectory)に戻り、世界経済における主導的地位を取り戻しているだけだと主張している。それは19世紀初頭まで、過去 1000年の大部分にわたって維持されてきた。しかし、そこで止まるということは、目的論(teleology)、つまり決定論(determinism)を信じることを意味し、私(そしてほとんどの歴史家)にとって、それではまったく説明ができていないということになる。

もう1つの一般的な説明は、毛沢東の死後、中国共産党は、多くの深刻な間違いを犯すのを止め、経済発展の邪魔をしなくなっただけだというものだ。この主張の一般的な変形は、南部の都市深圳などにおける経済特区(special economic zonesSEZ)の創設を含む、有名な政府改革を評価するものだ。 1980年に鄧小平が深圳を経済特区に指定して以来、この目立たない漁村が中国最大かつ最も裕福な都市の1つとなり、近隣の香港にますます影響を与える大都市となったことについては際限なく語り継がれている。この理論の支持者たちは、1980年代初頭に初めて着手された、外国投資の誘致と輸出の創出を伴う他の象徴的な改革にも言及している。

他の多くの分析は、中国の歴史的幸運(historical good fortune)を強調している。1980 年頃、西側企業が海外の安価な場所に製造拠点を置こうとしていたのと同じように、中国は人口ボーナス(demographic dividend)、簡単に言うと若者の増加(youth bulge)が始まっていた。中国は繊維、プラスティック、単純な組み立てなどのアウトソーシング産業を発展途上国の中でいち早く受け入れたことで、この新たなグローバライゼーションの流れの最大の受益者となった。そして、設計されたものであるかどうかにかかわらず、中国の優位性により、中国のような発展を望む他の国々が、中国の影響によって、同じ開発のはしごを上がることが非常に困難になった。

確かに、これらの説明の中には真実の要素も含まれている。しかし、完全に間違っている訳ではないにしても、それらがあまりにも安易に行われている理由を理解するために、王は、改革時代の初期に中国の成功の範囲を予測することがいかに困難だったかを実証している。彼はその一部として、2004年に世界有数の経済学者の多くの予測を共有することによってそのことを明らかにした。その年、ウォールストリート・ジャーナルは12人のノーベル経済学賞受賞者に、75年の2079年に、アメリカ、ヨーロッパ連合、または中国のどれが世界最大の経済大国になると思うかどうかを質問した。中国経済が既に20年以上にわたって好況を呈してきたが、中国を勝者として挙げたのは経済学者の半数だけだった。他の経済学者たちは、中国が西側諸国との差を縮めることができるかどうかについて、曖昧なこたえをするか、疑念を抱いていたかであった。

偶然にも、特定の国で通貨単位で買える金額を示す富の尺度である購買力平価(purchasing power parity)から判断すると、2004年のウォールストリート・ジャーナルの調査からわずか12年で中国は世界最大の経済大国になった。より広く引用されているものの、おそらく精度が低い名目 GDP を基準にすると、中国は現在でもアメリカに次いで世界第2位に位置している。しかし、その経済規模は米国経済の約64%であり、その差は劇的に縮まった。比較すると、ソ連経済は1970年代半ばに米国経済の約57% に達した。
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深圳市の陵定陽橋の建設現場で吊り上げられる鋼鉄製箱桁(2023年2月22日)。

世界銀行や多くのジャーナリストの説明では、しばしば何億人もの人々を貧困から「引き上げた(lifting)」と称賛する中国自身の指導者たちでさえ、自国の経済実績を一貫して過小評価しており、そうすることで中国の驚異的な成長についてほとんど理解を裏切ってきた。この誤った判断の記録は、中国の台頭を設計したとほぼ広く認められている指導者、鄧小平自身によって始まったが、決して終結した訳ではない。

1979年、鄧小平は、多少の困難はあるものの、中国は今世紀末までに一人当たり所得1000ドルを達成できるだろうと推測した。中国が先進国の地位に近づくには、さらに30年から50年かかるだろうと鄧小平は考えた。しかし、1982年までに、彼はすでに2000年の目標が高すぎると公の場で懸念を表明していた。そして、これは決して無意味な歴史的事実ではない。1980年代後半に中国ではインフレが制御不能になりかけ、1989年の天安門事件とその致命的な弾圧につながる主な原因となった。

1992年、87歳になった鄧小平は再び未来を見つめようとした。中華人民共和国建国100周年となる2049年までに、中国は中所得国(middle-income countries)の仲間入りをすることができ、それは目覚ましい成果となるだろうと鄧小平は述べた。王が辛辣に指摘しているように、57年間待つ代わりに、5年後に亡くなった鄧氏は生きてこの目標が達成されるのを見届けた。1980年から1997年にかけて、中国の一人当たり所得は4倍以上に増加した。

中国の指導者たちは中国の経済発展に影響を与える変化の力を過小評価する傾向を持っている。鄧小平時代以降も長く続いた。例えば、1995年に中国政府は2000年から2010年の間にGDPを倍増させるという目標を発表した。しかし、その10年間に、中国は経済規模を2兆7700億ドルから、7兆5500億ドルへと270%以上成長させた。一人当たりの収入は2194ドルから​​5647ドルへと2.57倍も増加し、目標を29%上回ったと王は書いている。中国の指導者たちは、国運を変えた最大の原因は中国の政策ではなかったため、現実を把握するのに非常に苦労した。王は、北京にはこれほどの経済的成功を達成するための一貫したロードマップがなかったと主張する。

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北京南郊外に最近建設された製造組立工場の端まで続く土地で働く農民(2008年10月14日)。

それでは、中国の驚異的な成功は何によって説明できるのか? ここが王の仕事が最も価値を持つところだ。著書『中国の豊かな時代』は、単一の要因を強調するのではなく、複雑かつ予期せぬ形で国の躍進に貢献した一連の相互に絡み合った原因を明らかにしている。

中国の有名な農業分野における実験は、農民を農村部の共同体(コミューン、communes)、人民公社のためだけに生産する義務から解放するもので、重要な改革として長らく喧伝されてきた。これに、王は、あまり注目されていないもう一つの決定的な変化を加えている。それは、農村部における初期工業化の恐るべき波(formidable wave of early industrialization in the countryside)だ。王は、第一段階では工業化が「現場で始まった(took off in situ)」と書いている。農民たちは都市に移住するのではなく、村で産業労働者(industrial laborers)として働き始めた。王は次のように書いている。「1990年代半ばまでに、中国の農村労働力の40%が中国の田舎で工業製品を生産していた。1995年、中国の農村労働者は中国の工業生産高の半分以上を生み出した」。 1987年、鄧小平はユーゴスラビアからの訪問者にこのことへの驚きを明かした。鄧小平は「農村改革における私たちの最大の成功は、そしてそれは我々が全く予想していなかったことであったが、村や郡区が運営する多数の企業が出現したことだ。彼らは自然発生的に生まれた新しい力のようなものだ」と述べた。

中国の都市への人口流出が本格的に始まったのは、地方の工業化が始まってからずっと後の1990年代後半に入ってからのことだった。歴史的に、都市化(urbanization)は、日本やそれ以前のアメリカを含め、経済発展の重要な特徴だった。しかし、中国の都市化には 2つの固有の特徴があった。都市への新参者の多くは産業経験を持っていたため、工場での仕事に直接取り組む準備がはるかに整っていた。第二に、中国は戸口(hukou)制度、戸籍制度(長年の都市居住者を優遇する一種のソフト・アパルトヘイト[soft-apartheid])に基づく二重構造の社会構造を強制しているため、地方から移住してくる新たな産業労働者には、より低い賃金が与えられる可能性がある。既存の都市居住者よりも手厚い社会保障。更には、工場労働者は、歯が立たず政府の管理下にある労働組合からの保護をほとんど享受できなかった。

ここまで述べてきたことは、中国が離陸期(takeoff period)に、膨大な安価な労働力を保有してだけだという理論と一致する。しかし、王は、これは物事を非常に単純化しすぎている(oversimplifies things)と正しく指摘している。戸籍制度が裕福な大都市の出身でない人々を差別していることは否定できない。しかし、それでも都市部への新参者たちは、高い識字率と概して良好な健康状態を誇ったという、国の急成長を促進する上で極めて重要な特別な属性を持ってやって都市部にやって来た。

これらはいずれも、毛沢東時代の懲罰的な時代に、社会的平等(social equality)を重視したことの目に見える成果だった。王にとって、これは中国の都市部への新参者が単なる安価な労働力源ではなかったことを意味する。また、彼らは複雑なタスクを実行することもできた。これは、コストと同じくらい重要な要素であると彼は考えている。これは、2010年代後半に中国で先進的な製品を製造する企業であるアップル社とその製造パートナーで働いていた約300万人の人々(そのほとんどが都市部への新参者)であったことを説明するのに役立つ。

これらの変革はいずれも国家によって開始されたものではない。王は次のように書いている。「むしろ、それらは全て、自分たちの生活を改善しようと必死で決意した人々の強い願望から生まれた。このような草の根の取り組み(grassroot initiatives)は、受け入れられる前に、最初は政府に抵抗されることがよくあった」。「中国の奇跡(China miracle)」を生み出したのは中国人民であり、指導者ではないと王は何度も主張する。

私が特に興味深いと思っているのは、中国の台頭における他の2つの要因は、歴史と文化に関係している。王は、文化大革命の暴力と混乱(violence and disarray of the Cultural Revolution)が、1976年以降の急速な成長を促進する上で強力な役割を果たしたと説得力を持って主張する。王は次のように述べている。「毛沢東の死で終わったこの激動の10年間の終わりに、中国国民はひどく混乱し、失望し、完全に疲れきっていた。彼らは変化、より物質的な豊かさ、社会の安定、そして人間の礼儀を備えた生活を切望していた」。私たちが見てきたように、鄧小平もこうした考えに大まかに同意したようだ。王は、文化大革命についての鄧小平の発言を「文化大革命は悪いことのように見えた。しかし、結果的にはそれが良かったのだ。それは人々に考えさせ、私たちが抱えている問題を認識させた。私たちが1970年代と1980年代に政策を実施できたのは、まさに当時の教訓を学んだからだ」と引用している。

王の説明パズルの最後のピースには、中国の改革期に相対的に栄えた、新しいアイデア、議論、様々な言説に対する寛容さが含まれている。王は、中国の経済成長は2007年にピークに達し、その開放性と寛容さ(openness and tolerance)はその後の10年間にピークに達したと書いている。2012年に習近平が権力の座に就いて以来、成長と知的自由の両方が急激に低下している。
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中国中部湖南省衡陽で、旧正月を控えた旅行のピーク時に鉄道駅に到着する乗客たち(2024年1月31日)。

 中国社会の原動力としての政党国家の圧倒的な復活と、一種の中国の啓蒙活動の時期尚早な縮小は、この国の将来にとって良い前兆ではない。王の本の中で今後数十年を展望した比較的短い部分は、中国が強い逆風に直面することを明らかにしている。これは崩壊や衰退を予測するものではない。しかし、王は、高い成長率は過去のものだと確信している。最も重要な逆風の1つは、王の専門分野である人口動態(demographics)に直接当てはまる。人口減少への記念碑的な傾向を逆転させることはできないだろう。国連人口部の予測中央値によれば、現在約14億人の中国の人口は2100年までに8億人未満に減少するだろう。

高齢化の加速により、退職、慢性疾患、高齢者の介護に関連する膨大な社会的コスト(social costs)が発生する。王の予測では、これらのプログラムへの人々の寛大な支出が増えないと仮定すると、中国政府は2030年までに全歳入のほぼ半分を教育、医療、年金に費やす必要があるだろう。たとえば、中国が経済協力開発機構加盟国(Organization for Economic Cooperation and Development)の2009年の平均に匹敵する水準の医療と年金支援を提供したいと考えた場合、2030年までに政府歳入の3分2をこれらのサーヴィスだけに充てる必要があるだろう。巨大な高速鉄道網の旅客運賃を大幅に値上げするという中国の最近の決定が予告しているように、人口とともに利用者層が縮小する中、新たな交通インフラの維持費さえも大きな財政的負債になる可能性がある。

この人口動態の将来とその過酷な結果は、私が何年も書いてきたテーマだが、国民に情報を提供せず、有意義な議論を妨げる極めて非民主的な制度を痛烈に試す、気の遠くなるような政治的決定を暗示している。

最近、私が勤める大学のキャンパスで、中国人学生たちから、私が中国に住んでいた時代のこと、特に、今ではほとんど想像もできないような、表現と結社の相対的な自由について不思議そうに質問された。インターネット(中国のような厳しく取り締まられたものでさえ)、高等教育への幅広いアクセス、海外旅行によって、かつて毛沢東にはできたことだが、1人の指導者が一国の人々の心を完全に支配するような状況に戻ることはありえない。しかし、それが習近平の挑戦を妨げている訳ではない。かつて、中国の指導者たちは、自分たちの社会とその成長の可能性を把握するのが遅かった。今、どちらかといえば、王は、中国の指導者たちが支配的な国家の復活がもたらすマイナス面をひどく過小評価していると考えているようだ。

王は次のように結論付けている。「ほんの一世代前には想像もできなかった物質的豊かさのレヴェルを達成した中国は、豊かさの時代(age of abundance)を経て、自己満足の新たな段階(new phase of complacence)に入った。法的・合理的な権限が欠如すると、不透明な政策設定を伴う国家権力の官僚化(state power bureaucratization)は停滞を招くことになる。これは、中国の歴史を通じて繰り返されてきたテーマである。神のような指導者である毛沢東に別れを告げてからほぼ半世紀が経った今、この国は再びカリスマ的権威の時代(era of charismatic authority)に耐える用意をしているように見える」。

※ハワード・W・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト、コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年にわたり海外特派員を務めた。最新作に黒人として生まれて:アフリカ、アフリカの人々、そして近代世界の形成、1471年から第二次世界大戦まで(Born in Blackness: Africa, Africans and the Making of the Modern World, 1471 to the Second World War.)』がある。ツイッターアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 今回は、私が関係している「副島隆彦の学問道場」の仲間である藤森かよこさん(福山市立大学名誉教授)の最新刊『舌はがしから始める平井メソッド健康革命』(秀和システム)をご紹介します。2024年7月5日から発売となります。アマゾンで予約受付が開始されています。

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『舌はがしから始める平井メソッド健康革命』

 今回の藤森氏の著書のテーマは「平井メソッド」という「舌はがし」を行う健康法です。藤森氏が2017年に出会って、それから実践している健康法だそうで、これで体の調子が良くなっているとのこと。お金をかけずに自己流でも効果があるというのは大きいですね。私も中年になって(おじさんになって)、体の不調を感じるようになり、一丁前に薬を処方されるようになってしまいました。食べ過ぎず、適度な運動(ウォーキングやストレッチなど)をすれば良いのでしょうが、億劫がってしまいます。ですが、不調もあり、健康法には興味があります。藤森さんがやっておられる、舌はがしがどんなものか、ちょっと試してみようかという気持ちになっています。

 以下に、まえがき、目次、あとがきを掲載します。是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

まえがき

★本書の目的

本書の目的は、福岡市の「七星(ななほし)スパルタ鍼灸院」院長の平井幸祐(ひらいこうすけ)氏の提案を紹介することだ。平井氏は、「地球上で楽(らく)に私たちが生きる方法」を広める活動をしている。

言い換えると、「引力と地球の自転による遠心力の合力(ごうりょく)である重力によって過剰回転し捻(ねじ)れやすい人間の身体を、まっすぐに伸ばして生きる方法」を広める活動をしている。               

その提案は、「舌はがし」(「したはがし」とも、「ぜつはがし」とも読む。特に決まっていない。歯科医は「ぜつはがし」と読むことが多い)と「舌上げ」と「咀嚼(そしゃyく)と嚥下(えんげ)」と「左右交互片鼻片肺呼吸」と「身体の捻れを解く姿勢と方法」に分けることができる。平井氏の同志の方々や信奉者の方々は、これらの提案をまとめて、いつの頃からか「平井幸祐メソッド」とか「平井メソッド」と呼ぶようになった。それに倣(なら)って本書でもそう呼ぶことにする。

★平井メソッドとは何か!    ここだけは読んでください!

私が、この「平井メソッド」の一端に触れたのは2017年だった。私は、2011年3月から2017年3月末まで広島県福山市に単身赴任していた。福山市では、歯の治療に関して「歯科室むつてっせん」院長の松永心子(まつながしんこ)氏にお世話になっていた。

その心子先生が、「舌はがし」啓蒙活動をしている平井幸祐氏を「歯科室むつてっせん」に招聘(しょうへい)するから、「フジモリさんも舌はがしの施術を受けてみませんか?」と誘ってくださった。舌はがし???

で、気楽に受けてみた。64歳のときだった。それがきっかけとなり、私は平井メソッドという「未知なる道」に踏みこむことになった。

平井メソッドは舌はがしから始める。なぜ、舌はがしから始めるのか?

ほとんどの人は舌と下顎(したあご)が癒着しているので、まず舌を下顎からはがすことが必要だ。では、なぜ舌を下顎からはがすことが必要なのか?

人間は肛門から舌にいたる一本の管(くだ)である。その管の先端である舌(舌根[ぜっこん])がきちんと上口蓋[じょうこうがい](上顎)をまっすぐ推(お)して(押してではない)いないと、人間は「引力と地球の自転による遠心力の合力(ごうりょく)である重力」に拮抗(きっこう)できない。

ここで、ちょっと小学校の理科のおさらいをします。地球は自転しながら太陽の周りを公転している。地球の自転の速さは秒速約460メートルである。なのに、私たちがその回転を感じないのは、私たちも秒速約460メートルで回転しているからだ。

いつも回転している丸い地球から、私たちが宇宙に放り投げられないのは、なぜか?それは地球の強い引力のおかげである。地球上にあるものは、みな地球に引っ張られている。地球が私たちに及ぼしている力は、引力以外にもある。地球の回転による遠心力だ。引力と遠心力を合わせた力が重力だ。

地球の引力と遠心力を合わせた重力と地球の回転と、それに伴う地球上の生物の回転の 関係については、物理学的には「コリオリの力」という用語で詳しく説明できるものらしい。物理学など、私にはわかりません。物理学的説明はスルーさせていただきます。

ともかく、重力に拮抗するためには、舌(舌根)が上口蓋(上顎)をまっすぐに推進することによって頭(脳)を支えていないといけない。肛門から舌に至る一本の管がしっかりまっすぐに伸びていなければならない。

そうしないと重力に拮抗できずに、人間の身体は過剰回転し、捻(ねじ)れてしまう。肛門から舌に至る一本の管の周囲にある内臓もその他の組織も捻(ねじ)れて捩(よじ)れてしまう。人間の身体は、過剰回転することによって捻れることがなければ、上に向かって螺旋(らせん)を描くように方向づければ、その身体はまっすぐ伸びていく。そうなれば、内臓もその他の組織もあまり捻れないので、不調も起きない。

だから、舌を下顎からはがして、口蓋(上顎)を常にまっすぐに推進できるように舌を上げることが身体のありようとして基本となる。

また、舌はがしをして舌を上げないと、歯が舌に当たる。上の歯と下の歯があうこと(歯の食いしばり)が起きる。上の歯と下の歯がギシギシと音をたてるほどにあうこと(歯ぎしり)が起きる。上の歯と下の歯は通常は2ミリから5ミリほどの「安静間隙(あんせいかんげき」」と呼ばれる隙間があるのが正常だ。

歯が舌に常に当たっていると舌(ぜつ)ガンになりかねない。歯の食いしばりや歯ぎしりは、無駄に身体に圧力をかける。そうなると、無駄に身体に力が入り、伸びやかになれない。頭痛の原因になる。その他の身体の不調も生み出す。十分な咀嚼ができなくなるし、嚥下障害も起きる。食いしばりの害は大きい。

身体の過剰回転や歯の食いしばりを防ぐことができる舌はがしや舌上げは、意図的に努力してキープする必要がある。舌はすぐに下がるから。

舌が上がっている状態をキープするには、呼吸方法によっても可能になる。その呼吸方法が「左右交互片鼻片肺呼吸法」だ。この呼吸法は、誰でもできるけれども、ちょっと練習が必要になる。しかし、どの呼吸法よりも、身体に酸素を送り、脳にもいっぱい酸素を送ることができる。そうすれば脳も正常に機能する。この呼吸法は、身体から無駄な力を抜き、緩(ゆる)ませる。

ただし、舌はがしにせよ舌上げにせよ、左右交互片鼻片肺呼吸法の実践にせよ、ここまでできれば免許皆伝(めんきょかいでん)とかいう類のものではない。この地球上で生きる限りは死ぬまで意識して実践すべきものだ。

そのためには、日常の姿勢というものに意識的である必要がある。過剰回転による捻れを解く姿勢を知っているほうがいい。

★本書の構成

ということで、本書の構成は以下のようになっている。

第1章では、実際に平井メソッドを体験した5人の方々の言葉を紹介する。

第2章においては、なぜ平井メソッドなる健康法が生まれたのかについて書く。メソッド創始者の平井幸祐氏と、平井氏の最強弟子で最強同志であり、かつ独立した身体研究家でもある秋保良子氏について紹介する。

第3章においては、舌の重要性そのものは従来から歯科医師などによって指摘されてきたが、その根拠についての説明が足らなかったことを指摘する。意外なほどに、舌に関する書籍は多く出版されてきている。しかし、その理由について根本的に考えて説明しているのは、私が知る限り平井氏だけだ。

第4章は、妊婦の方々や乳幼児の養育者の方々にとって必読だ。舌はがしと舌上げは、乳幼児時代の子どもにとって最も効果があるのだから。平井メソッドは、もともとは子どもの健(すこ)やかな成長を促すために考案されたものだからだ。

第5章において、自分でできる舌はがしと舌上げ方法を紹介する。一見難しそうだけれども、テキトーに実践し続けていれば慣れます。章のまとめとして、舌はがしや舌上げの諸効能について、あらためて整理してみた。

第6章においては、舌はがしと舌上げができていてこそ可能な適切な咀嚼と嚥下法について紹介する。せっかく歯があるのにきちんと咀嚼せずに丸飲みしてしまうことが多い。もったいない、もったいない。適切な咀嚼と嚥下を習慣にすれば、いかに大きな恩恵があることか。

第7章においては、左右交互片鼻片肺呼吸法について紹介する。平井氏によると、この呼吸法を実践できれば、舌は自動的に上がる。脳にも酸素が十分に行き渡る。実は最も大切なのが呼吸法だそうだ。この章は高齢者の方々にとって必読です。

第8章においては、身体の捻れを解く姿勢と方法を紹介する。平井氏や秋保氏は、舌が上がっていないからこそ起きる身体の過剰回転による捻れを解く方法をいろいろ考えてき                 た。捻れを解くための道具なども手作りしてきた。

この章も、妊婦の方々や乳幼児の養育者の方々にとって非常に有益だと思う。子どもや           身体がまだ柔らかい若い人々にとっても実に有益だと思う。

私のような身体の硬い類の高齢者は、なかなか効果が感じられないかもしれないが、じっくり実践して行けば望ましい変化がある。

本書の最後には、平井メソッドを理解し、舌はがしを施術できる歯科医院や鍼灸院や整          体院や健康サロンのリストを載せた。また、平井氏が考案した身体の捻れを解く足板や手板(第8章で詳しく述べる)を製作販売している工房も紹介した。

★人間はまだ予備機能しか使っていない

平井氏はこう言う。

「人間って、いまだかつて正常な身体の動かし方をしていないです。間違った使い方ばかりしてきています。まるで予備機能だけで動いているみたいです。予備機能だけで生きていて、ここまで歴史を作ってきたのだから、人間はすごいといえばすごいですよ。ほんとうに人間が正常に身体を使いだしたら、どんな素晴らしい世界が出現することか。80歳くらいになったら健康寿命が尽きて寝たきりになるなんて、本来の人類のポテンシャルを考えたら、ありえないんですよ」と。

どういうわけか、人類は自分の身体の取り扱い方を間違えてきてしまったらしい。正しい身体の取り扱い方は、門外不出(もんがいふしゅつ)の一子相伝(いっしそうでん)的な秘密になってしまってきたらしい。

平井メソッドは、そこそこいい加減に実践しても、ある程度の効果はある。しかも無料                 だ。平井氏や秋保氏のセミナーを受講するなら、なにがしかの受講料はかかる。あたりまえである。しかし、基本的には自分で実践できる。

★平井メソッド紹介本を私が書いた理由

ところで、医療系や健康産業系にはまったく素人の私がなぜ平井メソッド紹介本を書いたのか。その直接的な理由としては、自分たちは実践活動で忙しく書いている時間がないので代わりに書いてくださいと平井氏や秋保氏に依頼されたということがある。

しかし、一番の理由は、私自身が、2017年に平井メソッドに出会い、その内容を少しずつ知るにつれて、また自分なりに実践を続けるにつれて、その効用を感じるようになったからだ。平井メソッドは理にかなっていると思うからだ。

私には、平井メソッドが現行の科学や医学においてどう評価されるのか、説明されるものであるかについて語ることができるほどの専門的知識がない。エビデンスを出せだの、データを出せなど言う人は多いが、そんなものいくらでも捏造(ねつぞう)できるではないか。そういうことを言い立てる人々は、これからも医薬業界やメディアに騙され続けるのであろう。そもそもが、科学や医学の知見は、ある時代の知識の枠組みの中で、学問的権威とされる人々が提示しているものである。それ以上でもそれ以下でもない。その知見は真理であるかもしれないし、真理ではないかもしれない。事実であるかもしれないし、事実でないかもしれない。科学や医学の知見は常に更新されていく。今日の科学や医学の常識は20年後には迷信になっている(かもしれない)。

私は、非常に猜疑心(さいぎしん)の強い人間である。「常識」とか「良識」というものの多くも、ある時代やある環境における支配的な思い込みでしかないと思っている。時代が変わり、環境が変われば、常識も良識も変わる。

私は、医師や看護師や薬剤師や医療業界の人々から受ける具体的な助言でさえ、「まあ、そういう意見もあるよな」と考える。人間の身体は個人差も大きい。現行の医学界が正しいと提供する標準的医療行為を受けて効果がある人間もいれば、効果がない人間もいる。ややこしい病気ほどそうだろう。

そういう私は、だから「平井メソッド教」の信者にはなり得ない。ですから、読者の方々は、安心してください。本書は平井メソッド紹介本ではあっても、「平井メソッド教」カルト本ではありません。

もともと、私は自分の身体について、ろくに考えたこともなかった人間だ。だからと言って、私が非常に健康な人間であったわけではない。若い頃から身体の不調には常に悩まされてきた。ただ、そういう数々の不調を気にする暇がなかった。今の社会で、少しでも安全な立場を築こうとする競争に勝たずとも負けないためには、いろいろとすべきことは多かったから。

加えて、私は、若い頃から肉体嫌悪の傾向があった。不便で思うようにならない身体など邪魔だと思っていた。人体などサッサとサイボーグ化されればいいと思っていた。脳のデータベース化ができれば、それが自分自身であり、経年劣化する人体など機械で代替可能(だいたいかのう)だと思ってきた。『攻殻機動隊』のヒロインに憧れていた。私という情報さえあればいいのであり、身体は要らないと思ってきた(まあ、かなり先の未来にはそうなっているだろうが)。

そういう人間をして、初めて身体について強く意識させてくれたのが平井メソッドだった。身体という自分の唯一の資本について意識し、正常に機能できるように自分自身をケアすることの意義と責任と面白さを感じさせてくれたのが平井メソッドだった。

そのために、私の読書範囲の中に、身体研究本やセラピー本などが大いに混じるようになった。安保徹(あぼとおる)医師の著作や、野口整体の創始者の野口晴哉(のぐちはるちか)氏の著書や、健昴会(けんぼうかい)・FPM整体体操研究所代表の宮川眞人(みがわまこと)氏の著作や、さとう式リンパケアの佐藤青児(さとうせいじ)氏の著作など、いろいろと読んできた。

自分の唯一の資本である自分の身体を、どうして私は邪険(じゃけん)に扱ってきたのだろう。もっとも私が仲良くすべきは、誰よりも自分自身の身体であるのに。自分の不細工な身体を直視することから逃げていたのだろうか。それとも、霊肉の二項対立論や、肉体よりは精神が大事であるといった類の精神論に、私自身も毒されていたのだろうか。

★平井メソッドは依存心が根深い人には適していない

本書には、「すべての不調が3日で解決する!」とか、「この方法で一生健康!」とか、「この方法でガンが治る!」とか、そのような安直なことは書いていない。

何にしても、一度や二度の実践で身体の状態が良くなるなどということはない。整体院に行けば、調子は良くなる。しかし数日も過ぎれば元に戻る。そういうものだ。整体院に定期的に通ってはいられない。カネもかかるのだから。

結局は自分で何とかするしかない。自分で何とかするための方法が平井メソッドである。 だから、本書は依存心が根深い人間には適していない健康本です。

私は、できうる限り正直に平井メソッドの事実を書いた。根気よく実践を続けないとダメですよ、何事も。

平井メソッドは、優れた健康法であるが、単なる健康法を超えている。平井メソッドを実践すること自体が、自分の身体感覚を鋭くさせるから。自分と身体の関係を考え直させるから。知って実践し始めると、常に思い出して、自分の身体の変化に意識的になれるから。

この意味において、平井メソッドは認識革命と呼べる。身体が捻れっぱなしで、平井メソッドの実践を怠けがちな私にとっては「呪い」に思える時もある。いや、「祝福」と言うべきか。

ともあれ、死ぬまでに、自分の身体と相棒になれて良かった。平井メソッドを独学で構築してきた平井氏に感謝します。平井氏のお弟子さんたちにも感謝します。平井メソッドを知る機会を提供してくださった「歯科室むつてっせん」院長の心子先生に感謝します。

(備考)「舌はがし」は商標登録済みです。

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『舌はがしから始める平井メソッド健康革命』 ◆目次

まえがき 1

★本書の目的 1

★平井メソッドとは何か!    ここだけは読んでください! 2

★本書の構成 5

★人間はまだ予備機能しか使っていない 8

★平井メソッド紹介本を私が書いた理由 9

★平井メソッドは依存心が根深い人には適していない 12

第1章  平井メソッドでこうなった! 25

1・1 まずは5人の方々が感じた平井メソッドの効能を列挙 26

1・2 青木レイノさんの体験(REINOタロットスクール代表) 30

1・3 岩元星龍さんの体験(目黒スパルタ七星整体院代表) 35

1・4 井出万紀子さんの体験(健康トレーニング整体・セルフケアサロン経営) 38

1・5 和田貴美恵さんの体験(holistic助産院 MOON LODGE運営) 43

1・6 中嶋朋美さんの体験(主婦、二児の母) 48

第2章 平井メソッドはいかに生まれたか? その創始者とその最強同志 53

2・1 平井幸祐氏の経歴 54

2・2 顎が長く前に突き出ていることに悩んだことが始まりだった 57

2・3 舌が下顎に癒着しているのが問題だ! 58

2・4 平井メソッドは舌はがし啓蒙活動から始まった 60

2・5 なぜピンク色を常に身に着けるのか? 61

2・6 秋保良子氏の経歴 63

2・7 秋保氏がキャリアウーマンを経て鍼灸を学んだ理由 64

2・8 平井氏と秋保氏の出会い 65

2・9 平井氏も秋保氏も超能力者なのか 66

2・10 秋保氏は妊娠し出産し育児しながら平井メソッドを検証 67

2・11 養育者が平井メソッドを実践することが子どもの成長を育む 69

2・12 発展途上の身体 71

第3章 舌はがしをして舌を上げる! 75

3・1 舌が大事であることは従来から多くの人が指摘してきた 76

3・2 なぜか2018年以降に多く出版されている舌に関する本 79

3・3 YouTube にも舌の重要性に関する動画はいっぱい 80

3・4 石塚ひろみ著『舌はがし健康法』は必読書 82

3・5 低位舌は認知症になりやすく不細工にもなりやすい? 84

3・6 人間は肛門から舌に至る一本の管(くだ) 87

3・7 映画『キングコング 髑どくろ 髏島の巨神』のコングの勝利の理由 89

3・8 内臓も皮膚も筋肉も血管も神経も骨も捻れやすい 90

3・9 舌の推進力こそが重力に拮抗する 92

3・10 舌が上がれば肛門も膣も締まる 94

3・11 日本文化は歯の食いしばりを促進する? 98

3・12 舌が上がると歯のくいしばりがなくなり身体が緩む 102

第4章 妊婦さんと乳幼児の養育者のみなさま必読! 105

4・1 胎児が辛いので子宮に圧力がかかる姿勢を妊婦は避けるべき 106

4・2 妊婦が舌を上げると胎児が嬉しい 108

4・3 妊婦の安全と胎児の健やかな成長を脅かす現代 109

4・4 当事者意識の希薄な妊婦たち 111

4・5 すべての養育者に知って欲しい赤ちゃんの授乳法 113

4・6 すべての養育者よ、赤ちゃんは縦抱きせよ! 垂直に抱こう! 116

4・7 赤ちゃんの顔は外向きに脚がまっすぐ伸びるように胸側におんぶする! 117

4・8 赤ちゃんにも整体が必要だ! 120

第5章 舌はがしと舌上げの方法 125

5・1 自己流でも効果はある 126

5・2 第1段階はうなじを伸ばし、てっぺん吊り【図1】 130

5・3 第2段階は下顎を落とす【図2】 132

5・4 第3段階はツボを軽くさわる(押すのではない)【図3】 132

5・5 第4段階は口周りの筋肉をはがしほぐす【図4】 134

5・6 第5段階は顎を広げて歯ぐきを立てる【図5】 136

5・7 第6段階は舌をほぐす【図6】 138

5・8 第7段階は、いよいよ舌はがし!【図7】 140

5・9 第8段階は舌をつまみ上げる【図8】 142

5・10 第9段階は舌ベロトントン【図9】 144

5・11 第10段階は舌プレス【図10】 146

5・12 舌はがしと舌上げは生きている限り続けよう 148

5・13 まとめ ── 舌はがしや舌上げの効能 150

5・14 なぜ舌はがし舌上げの重要性が常識になっていないのか? 156

第6章 適切な食べ方(咀嚼)と飲みこみ方(嚥下) 161

6・1 舌は内臓の状態のバロメーター 162

6・2 海老蔵のお茶の飲みかた 167

6・3 平井メソッドが推奨する咀嚼方法と嚥下方法 168

6・4 平井メソッドが薦める咀嚼法は唾液も良く出る 172

6・5 舌が上がっていれば適切な嚥下ができる 174

6・6 食事中に水分を必要とするのは嚥下ができていないから 176

6・7 平井メソッドの咀嚼法は便秘と過食による肥満を防ぐ 178

6・8 番外編 ── 乳酸菌WB21で口腔内の善玉菌を増やす! 180

第7章 左右交互片鼻片肺呼吸法のすすめ 189

7・1 口呼吸の弊害はすでに常識だけれども 190

7・2 舌をはがして舌上げすれば鼻呼吸になる 193

7・3 ふたつの鼻孔で交互に呼吸しているという「交代制鼻閉」説 193

7・4 ヨガの片鼻呼吸法と左右交互片鼻片肺呼吸法は違う 196

7・5 左右交互片鼻片肺呼吸こそ合理的な呼吸法 197

7・6 あなたの呼吸は脳に酸素を送ることができているか? 200

7・7 左右交互片鼻片肺呼吸のしかた 202

7・8 湯船に浸かり左右交互片鼻片肺呼吸をすると身体が浮く? 205

7・9 高齢者こそ左右交互片鼻片肺呼吸法を習慣にしよう 206

第8章 身体の捻れを解く姿勢と方法 209

8・1 寝相が悪いのは過剰回転により身体が捻れているから 210

8・2 身体の捻れを解く姿勢 212

8・3 針金のハンガーを頭にかぶってみよう 214

8・4 ハンガー反射(Hunger Reflex) 217

8・5 両脚を縛る 219

8・6 平井メソッドの紐縛りと「ヒモトレ」 225

8・7 平井氏考案の就寝用足板の威力 228

8・8 腰掛け用足板 236

8・9 椅子の座り方 238

8・10 手板 242

あとがき 245

参考引用文献(初出順) 248

舌はがし施術を受けることができる施設リスト(順不同 2024年4月現在) 252

=====

あとがき

まさか、自分が健康法に関する本を書くことになるとは思いもしなかった。おかげで大いに勉強になった。物事の見方が大きく変わった。

平井さんや秋保さんを通じて、さまざまな整体師さんや鍼灸師さんや、心と身体の関係を考えるセラピストさんたちにお会いできたことも面白かった。その体験は私の狭い視野を大いに広げてくれた。

 私は面倒くさがりで、人間関係を広げることには消極的である。だから、異業種の方々との交流もしたことはなかったが、世の中は、実にいろいろな方々によって支えられているのだなと、あたりまえのことに気がついた。

私は妊娠したこともなく、子どももいないので、産婦人科や小児科に行ったこともない。だから、妊婦さんのこと、胎児のこと、授乳のこと、乳幼児のことについて、言語道断なほどに無知だった。

本書を書くために、取材と称して、平井さんや秋保さんが主宰するセミナーや施術会に参加し、助産師さんのお話をうかがったり、乳幼児と接したり、その養育者の方々(主にお母さん方) とお話ししたりしたことも、私にとっては新鮮な体験だった。

このようなことがすべて、本だけ読んできたような私の狭い生活の殻を破ってくれた。本書を書くということは、私にとっては決して容易なことではなかったが、意義の大きいことだった。

本書の第1章のために平井メソッド体験を語ってくださった青木レイノさん、岩元星龍さん、井出万紀子さん、和田貴美恵さん、中嶋朋美さんに感謝いたします。

お名前をすべて挙げることはしませんが、本書の中で言及させていただいた、整体師の方々や歯科医の方々に感謝いたします。

また、本書にあるイラストや、表紙のイラストの作成者のさがわかすみさんに感謝いたします。さがわさんは、平井さんや秋保さんと相談を重ねながら、平井メソッドを理解するための図を描いてくださいました。注文の多さに応えてくださり、ありがとうございました。

装幀については、また大谷昌稔(まさとし)さんにお願いいたしました。大谷さんには、アイン・ランドの小説の拙訳『水源』(ビジネス社、2004年) や、私が編著者を務めた文学研究の論集や、『ニーチェのふんどし いい子ぶりっこの超偽善社会に備える』(秀和システム、2023年)を含む単著5冊の装幀など、2004年以来ずっとお世話になっております。ありがとうございます。

 最後に、本書の出版にあたり、数々のご助言をくださり、ご尽力いただいた秀和システムの編集者小笠原豊樹さんにお礼を申し上げます。小笠原さんには、拙著『ニーチェのふんどし』のときにも、随分とお世話になりました。なのに、またもや厚かましく本書の原稿を送りつけて「読んでください!」と強引にもお願いさせていただきました。ご迷惑をおかけいたしました。ありがとうございました。

2024年5月

藤森かよこ

(貼り付け終わり)

(終わり)

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 中国が主導する多国籍機関がうまく機能していない、という指摘がある。そもそも、中国が主導する多国籍機関は、上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)やブリックス(BRICS)といったところは知られているが、その他は、あまり知られていない。しかし、これらの枠組み以外にも、「ユーラシア地域の問題について話し合う機関(talk shop)であるアジア交流信頼醸成対策会議(Conference on Interaction and Confidence Building Measures in AsiaCICA)がそうした組織である。過去3年間で、この中国中心の国際組織壮絶プロジェクトのアルファベットのスープ(訳者註:頭字語や略語)に、更に多くのイニシアティヴが追加されてきた。世界安全保障イニシアティヴ(Global Security InitiativeGSI)、グローバル文明イニシアティヴ (Global Civilization InitiativeGCI)、およびグローバル開発イニシアティヴ (Global Development InitiativeGDI) 」といった枠組みが存在する。しかし、これらの諸機関がうまく機能していないというのが下記論稿の趣旨である。

下記論稿では、以下のような主張がなされている。中国が提案する多国間主義構想に多くの国々が注目しているが、中国中心の組織やイニシアティヴは成果を上げていない。アメリカ主導のシステムの崩壊に伴い、中国の提案には賛同する声が広がっているが、実際には中国の行動に疑問符がつくこともある。中国は一帯一路構想を通じて世界経済に影響を与えているが、その取り組みには批判も多い。ブリックスや中国の新たな金融秩序構築に期待する声もあるが、実際には、西側手動の枠組みの方が現在ではまだ、信頼性が高い。中国が新たな秩序を築くには、ソフトパワーや文化面での魅力を高める必要があり、その過程で外交的課題や経済問題に直面する可能性がある。

 中国が多国籍機関を主導するようになっての歴史はまだ浅い。大国として台頭してきたのは21世紀に入ってからだ。中国は大国として、まだ経験が浅い。そうした中で、中国主導の多国籍機関が、歴史と経験を持つ西側諸国の枠組みよりも信頼を勝ち得ていないのは仕方がない。しかし、これから、中国が更に台頭し、米中二国による世界支配・管理体制が構築されていく中で、中国自身の経験が蓄積され、中国が主導する枠組みも洗練されていくだろう。

(貼り付けはじめ)

中国は発展途上世界を騙している(China Is Gaslighting the Developing World

-北京の平等に関する約束は、覇権のための偽装である。

ロバート・A・マニング筆

2024年4月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/04/05/china-developing-world-bri-global-development-initiative-hegemony/?tpcc=recirc062921

昨年12月の習近平国家主席のヴェトナム訪問中に、ハノイが中国の提案する「運命共同体(community of shared destiny)」に対しての支持を表明したとき、中国政府はこれを歓迎した。中国は独自に設計するポスト・アメリカの世界秩序(post-American world order of its own design)を望んでおり、習近平国家主席のヴィジョンは野心的であると同時に曖昧ではあるが、中国政府は主に、現在不安定になっている、1兆ドル規模の融資を含む公共財という名目でそのプロジェクトを構築している。

習近平が政権を掌握して以来、時にはまだ初期段階にあるとはいえ、既存の中国中心の組織を構築してきた。上海協力機構(Shanghai Cooperation OrganizationSCO)、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、そして現在他の4カ国で構成されているBRICSグループ。そして、ユーラシア地域の問題について話し合う機関(talk shop)であるアジア交流信頼醸成対策会議(Conference on Interaction and Confidence Building Measures in AsiaCICA)がそうした組織である。過去3年間で、この中国中心の国際組織壮絶プロジェクトのアルファベットのスープ(訳者註:頭字語や略語)に、更に多くのイニシアティヴが追加されてきた。世界安全保障イニシアティヴ(Global Security InitiativeGSI)、グローバル文明イニシアティヴ (Global Civilization InitiativeGCI)、およびグローバル開発イニシアティヴ (Global Development InitiativeGDI) がそれに当たる。

しかし、これらのプログラムの多くは、グローバルサウス(global south)にとって魅力的かもしれないが、これらの国々が本当にポスト・アメリカの未来、ましてや北京主導の未来を望んでいるのかどうかは不明である。中国の多国間主義構想(China’s vision of multilateralism)は自らの覇権的野望をカモフラージュするものであり、心からの目標ではない。

現在のアメリカ主導のシステムは崩壊しつつある。購買力平価(purchasing power parity)に基づくG7のGDPは世界のGDPの約30%に低下し、BRICSよりわずかに小さく、気候変動から貧困削減に至るまで多くの公約は果たせなかった。そのため、各国は「民主的多国間主義(democratic multilateralism)」、つまり、アメリカ主導の秩序へのアンチテーゼに基づく協力の感覚を育むと主張する中国の提案を受け入れやすくなっている。軍事同盟は冷戦の遺物として否定され、人権は経済中心で、政治的権利、少数民族の権利、独立した司法、言論の自由は結果として制限されている。北京は、非西洋的な発展の道(non-Western path to development)を提供すると主張し、代替案として中国の国家主導モデル(China’s state-driven model)を示唆している。偶然の一致ではないが、中国がアメリカの統治から離れようとしていることは、北京の構想が描く想像上の偽ユートピア(faux utopia)にはない。

しかし、これまでのところ、これらは全て願望的なものだ。上海協力機構(SCO)、BRICS、アジア交流信頼醸成対策会議(CICA)は、話し合いの場ではあるが、決定の場ではない(talking shops)という役割を果たしているが、大きな成果は出ていない。カザフスタンで危機が起きたとき、介入したのは、上海協力機構ではなくロシアだった。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領がウクライナに侵攻したとき、中国政府は主権(sovereignty)と不干渉(noninterference)という自国の核心原則に対する違反を無視した。

習近平の行き過ぎにも関わらず、中国政府の指導力とグローバルサウスにおける多大な連携とヘッジには需要と供給の両方が不足している。習近平は、2014年のCICA会議で行ったように、「アジア人のためのアジア(Asia for Asians)」演説をするかもしれないが、その反応を決定づけたのは、南シナ海における中国の侵略と、韓国のTHAADのようなプロジェクトをめぐる近隣諸国へのいじめだった。アメリカの同盟関係は強化されており、これに対応してアジア内の協力も深まっている。

経済が低迷し、中国という債権者に対する発展途上諸国の債務が増大する(そして一帯一路の融資と投資が減少する)にもかかわらず、北京は依然として巨大な世界経済の足跡を残している。しかし、多極同盟のグローバルサウスに対する習近平の訴えは薄れるのだろうか? 一帯一路構想(Belt and Road InitiativeBRI)については、ジンバブエやスリランカといった債務者に、主権の尊重についてはフィリピンの海事当局者に、世界最大の温室効果ガス排出国については気候活動家に聞いてみて欲しい。ピュー・リサーチ・センターによる2023年の世論調査によると、調査対象となった24カ国のうち、中央値の3分の2がブラジル、インド、韓国を含む中国に対して否定的な見方をしていた。2017年のピュー世論調査では、インドネシア、フィリピン、ヴェトナムでは中国の台頭が脅威と見なしていることが多かった。

しかし、中国政府は、世界安全保障イニシアティヴ(GSI)が、100カ国以上から「支持と評価(support and appreciation)」を得ていると述べている。世界安全保障イニシアティヴは、「全ての国の主権と領土一体性の尊重(respecting the sovereignty and territorial integrity of all countries)」、「共通、包括的、協力的かつ持続可能な安全保障(common, comprehensive, cooperative and sustainable security)」、「国連憲章の目的と原則(the purposes and principles of the U.N. Charter)」、そして「対話と助言を通じた国家間の相違と紛争の解決(resolving differences and disputes between countries through dialogue and consultation)」に対する関与を進めている。

世界安全保障イニシアティヴ(GSI)は、中印協定締結後の1954年に周恩来が導入して以来、中国の公式外交政策の柱となっている平和共存5原則の再利用版である。

それでは、表面的に、何が良くないこととなるだろうか? グローバルサウスの多くの人々にとって、習近平国家主席の取り組みを支持することには、具体的な費用や約束は伴わないが、それらを拒否すれば中国を怒らせるリスクがある。しかし、現実の世界では、他の国よりもより平等に扱われる国もある。その例外がパキスタンであり、中国政府はパキスタンに対して、安全保障を提供していない。また、中国の取り組みのほとんどが、アメリカのパワーの正当性を拒絶し、その地位を奪うことを目的としているという内実もまったく感じられない。ワシントンの庇護下にある国々は、アメリカのパワーについて、不満を言いたくなるかもしれないが、必ずしも、アメリカのパワーが消滅することを望んでいる訳ではない。

理論的には、不侵略(nonaggression)、不干渉(noninterference)、主権の尊重(respect for sovereignty)、紛争の平和的解決(peaceful resolution of disputes)は、小国が大国からいじめられたり、強要されたりしないという希望を与える。実際には状況は異なる。中国の経済力と軍事力が増大するにつれ、それは中国の特徴をもった不干渉(noninterference with Chinese characteristics)へと変化してきた。ウクライナの主権に対する大規模な侵害であるロシアの戦争に対する中国の沈黙、現在はトーンダウンした「戦狼」外交(“wolf warrior” diplomacy)、そしてオーストラリア、リトアニア、フィリピン、台湾などが、中国を少しでも批判すると輸出品の多くが突然歓迎されなくなるような経済的強制を見れば分かるだろう。

中国政府は、リスクの低い調停の役割(low-risk mediation roles)を果たしている。しかし、主要な世界問題に関しては、中国のしばしば活動的な外交は、人を欺くごまかし(smoke and mirrors)であり、問​​題解決ではない。2023年2月、中国は、ウクライナに対する12項目の和平案を発表したが、本格的な外交フォローアップもなく、白紙となった。中東特使の翟隽は、10月下旬に中東地域各国を歴訪し、翌月には中国が北京でアラブ・イスラム指導者たちの会合を主催し、イスラエル・ハマス戦争の終結を訴えた。繰り返しになるが、こうした試みの効果はない。

習近平の外交は、現実的な問題解決よりも、グローバルサウスに対するパフォーマンス的な要素が強いように思われる。よく引き合いに出される、2023年のサウジアラビアとイランの脆弱な緊張緩和(détente)を中国が促進したことはその例外である。北京での式典は、湾岸諸国との経済関係の結びつきを強める中国の影響力の高まりを反映したものだった(そしてサウジアラビアは、ジョー・バイデン米大統領に対する影響力を高めようとしていた)。

もう1つの習近平派プロジェクトである、グローバル文明イニシアティヴ (GCI)は、「文明の多様性(diversity of civilizations)」の尊重を反映した対話を呼びかけており、言論の自由、表現の自由、民主政治体制といった普遍的価値観に関する、アメリカの概念の正当性を拒絶することを目的としているようだ。理解を深めるために対話をする。繰り返しになるが、グローバルサウスの国々がこれに同意することにはリスクはないが、ほとんど意味はない。

3番目の計画であるグローバル開発イニシアティヴ GDI)は、中国政府の取り組みの中で最も深刻であり、おそらく最も正当なものである。概念的には、これは本質的に、貧困緩和、食糧安全保障、グリーン開発、気候変動対策などの国連の持続可能な開発のための「2030アジェンダ」を再パッケージ化したものである。一帯一路構想は、中国が産業の過剰生産能力を輸出する傾向を制度化した。150カ国が参加する中国の大規模な一帯一路インフラ・プロジェクト(グローバルサウスでは少なくとも90のプロジェクト)と、ある程度の独自の開発経験を考慮すると、中国にはある程度の信用がある。2022年以来、中国政府はグローバル開発イニシアティヴ目標を追求する「南・南協力(South-South cooperation)」に関する一連の会議を開催している。

しかし、中国の金融危機と発展途上国の債務が増大するにつれて(中国は発展途上国の債務総額の約37%を保有している)、一帯一路の融資は90%以上減少し、規模を縮小した一帯一路は、IT接続とグリーンテクノロジーに重点を置いている。しかし、現在の一帯一路融資の58%は中国の債務者に対する救済融資の形となっている。世界最大の二国間債権者であるにもかかわらず、中国は発展途上国の債務再編に関して、G7を中心とするパリクラブ(Paris ClubClub de Paris)に参加しておらず、G20共通枠組みに関与しているにもかかわらず、協力することはたまにしかない。むしろ、中国政府は債務者に対して二国間的に行動し、他の債権者の債務救済の取り組みをしばしば妨害してきた。それにもかかわらず、債務危機を軽減するためにIMFや世界銀行のリソースを改革して拡大したり、グローバルサウスに同等のインフラを提供したりしていないアメリカとG7にとっての問題は、何も持たずに何かを打ち負かすことはできないということだ。

一帯一路と、米ドルに象徴されるアメリカ・G7の優位性に対する憤りが、BRICSの推進力となっている。他の全ての加盟国を合わせたよりも経済規模が大きい中国は、拡大するBRICSを中国中心のネットワークとして、ブレトンウッズ体制とは言わないまでも競争相手として構想している。多くの加盟国は、G7に対抗する新たな多極性を実証するためのプラットフォームとして捉えているが、驚くほど異なる議題を持っている。例えば、インドとブラジルには、グローバルサウスの代弁者になるという独自の野望があり、それは習国家主席が初めて欠席した昨年のニューデリーでのG20会議で明らかだった。ニューデリーは中国政府を支援することにほぼ関心を持っていない。

新たな金融秩序と脱ドル化(de-dollarization)に対する期待に関して言えば、BRICS新開発銀行(BRICS New Development Bank)は取るに足らない存在である(small beer)。脱ドル化の目標にもかかわらず、330億ドルのプロジェクト融資の約3分の2は、米ドルで行われている。同グループの新規メンバーの一部(エジプト、エチオピア)は債務不履行(debt defaults)の有力候補となっている。人民元や他の現地通貨との通貨スワップ(currency swap)は、新たな世界金融危機の際にある程度の断熱効果をもたらす可能性があるが、中国が通貨管理を維持する限り、ドルに取って代わることは遠い夢にとどまるだろう。

まとめると、BRICS の人気は、アメリカ・G7の内向性と経済ナショナリズム(inwardness and economic nationalism)は、に正比例して高まっている。BRICSの人気は、グローバルサウスから西側諸国に対しての、代替案というよりは、頭痛の種として見られている。発展途上国の多くは、BRICSが低コストで、ある程度の利益をもたらす可能性があり、加えて、アメリカに対して、もっと自分たちに注意を払うよう信号を送る梃子(てこ)としても同様に重要であると考えている。

第二次世界大戦後に、アメリカが設計したブレトンウッズ経済・政治システムは、アメリカの安全保障の傘と比較的開かれた市場へのアクセスによって促進され、当初は主にヨーロッパと日本に限定されていたものの、前例のない成長と安定を促進する秘密のソースとなった。しかしソ連崩壊後、その恩恵は世界中に広がり、ブラジル、中国、インドなどで数億人が貧困から救い出され、世界規模の中流階級(global middle class)が育成された。

アメリカが主導する自由主義秩序は、アメリカの世界的優位性を強化したが、全ての参加者(他ならぬ中国)に利益をもたらし、合意に基づくものであり、アメリカの力を正当化するのに役立った。しかし、2008年の金融危機と現在高まっている、アメリカの経済ナショナリズム、そしてイラク戦争からガザ危機に至る出来事により、西側諸国とグローバルサウスの信頼性の格差(credibility gap)は拡大し、その正統性の感覚は失われつつある。

中国は、安全保障や核の傘(nuclear umbrella)をほとんど提供しておらず、外交的な問題解決にはあまり役立たない。中国政府による公共財の提供は、アメリカの戦略を参考にしている。しかし、発展途上諸国の中国に対する負債、貿易ルールの欠如、経済的強制、あまり開かれていない市場などの理由から、経済的な代替案は実行可能ではない。これまでのところ、中国政府が着手しつつある取り組みは、中国中心の秩序における平和と繁栄を約束する体制には至っていない。

更に言えば、中国は偽善(hypocrisy)においてアメリカに匹敵し始めている。このことは、世界貿易機関(WTO)の制度を利用したゲームから、経済的強制や保護主義、そして疑わしく信用できない主権主張に基づくヒマラヤ山脈から東シナ海や南シナ海に至るまでの軍事的主張に至るまで、その公言する原則、姿勢、そして実際の行動との間のギャップに明らかになりつつある。

新秩序の構築に関して言えば、中国には、第二次世界大戦以来、アメリカの支配力を支えたようなソフトパワーや文化、開放性、機会といった魅力がない。米中間に緊張があるにもかかわらず、毎年約30万人の中国人学生がアメリカに留学しているが、中国に残っているアメリカ人学生はわずか350人に過ぎない。他のアジア諸国とは異なり、中国にはボリウッド、K-POP、韓国映画、ポケモンや近藤麻理恵のような日本のポップカルチャーに相当するものはまだ存在しない。検閲が強化され続けている文化は、世界に広がる可能性が存在しないことを意味する。

中国は、せいぜい、未熟な大国であるように見え、その願望は、その把握力や魅力をはるかに超えている。中国政府が目指す、ポスト・アメリカ秩序(post-U.S. order)は正統性の欠如に直面している。世界がIMFの呼ぶところの「地経学的分断(geoeconomic fragmentation)」に耐えている中、米中競争でどちらの国がどのようにして「勝つ(wins)」のかは明らかではない。

※ロバート・A・マニング:スティムソンセンター・リイマジニング大戦略プログラム名誉上級研究員。ツイッターアカウント:@Rmanning4
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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 昨年10月から始まった、イスラエル・ハマス紛争は8カ月を経過し、終息の兆しを見せていない。イスラエルは、ハマスの殲滅と人質奪還のために、ガザ地区での軍事作戦を遂行中であるが、パレスティナの民間人の犠牲者が3万7000人を超え、停戦に向けての国際的な圧力が高まっている。

 昨年のハマスの攻撃から、イスラエルでは中道派も入っての戦時内閣が形成され、紛争へ対処してきた。中道派野党「国民の団結」から、代表のベニー・ガンツ前国防相が閣僚として、ガディ・アイゼンコット元参謀総長がオブザーバーとして、入閣した。残りの4名はベンヤミン・ネタニヤフ首相率いる与党リクードのメンバーである。ガンツとアイゼンコットは、イスラエル国防軍の参謀総長経験者である。国家団結が内閣から離脱ということで、挙国体制の戦時内閣が形成できないことから、戦時内閣の解散ということになった。ネタニヤフ内閣自体は、右派、極右派の連立政権となっている。
israelwartimecabinetdissolves20232024001

 ガンツは、ネタニヤフ内閣には、ガザにおける戦争戦略の欠如を指摘し、「真の勝利に向けて前進させる」ことを阻害しているとしてネタニヤフを非難した。そして、速やかなクネセト(議会)選挙の実施を求めた。これは、イスラエル国内の、戦争に対する不満や、ネタニヤフ首相の腐敗に対する反感を反映したものだ。

 ネタニヤフ首相は、自身がスキャンダルを抱える身であり、戦争が終了する、選挙に負けるということになれば、逮捕・訴追を受ける可能性が高い。そうした面からも、戦争が継続することは彼個人にとって利益となる。国際社会は、事態のエスカレーションを望んでいない。イスラエルを手厚く支援しているアメリカも停戦を求めている。そうした中で、ネタニヤフは、極右派に更に依存し、戦争を進めていくことになる。

ガンツは、今年5月にレバノン国境の安全について発言している。イスラエルはガザ地区でのハマスの掃討作戦を行い、北部のレバノン国境では、ヒズボラとの戦いを続けている。ハマスもヒズボラもイランからの支援を受けているが、ヒズボラの方が武器のレヴェルが高く、かつ、練度も高い。イスラエルは両組織よりも軍事力としては圧倒的に上であるが、二正面作戦を長期間にわたって継続することで、イスラエル国内では、経済的、社会的な損失を被ることになる。
isralepalestineinternationalrelations2024001

 イスラエル・ハマス紛争については、やはりアメリカが圧力を強めての停戦、人道支援の実現ということが重要だ。中道派離脱による戦時内閣の解散は、イスラエルの戦争継続に影響を与えることになるだろう。アメリカとイスラエルは、何が自分たちの国益に適うことなのかを冷静に計算し、判断するべき時に来ている。

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●「イスラエル首相、戦時内閣を解散 主要閣僚辞任で「必要性なくなった」と」

2024618日 BBC NEWS Japan

https://www.bbc.com/japanese/articles/cnllv42qn9zo

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は16日、パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラム武装組織ハマスとの戦闘を指揮するために昨年10月に発足させた戦時内閣を解散した。中道派のベニー・ガンツ前国防相とその盟友のガディ・アイゼンコット元参謀総長が、6人からなる戦時内閣を辞任したことを受けてのもの。

政府報道官は17日、ガザでのハマスとの戦闘については既存の安全保障内閣と、それより大規模な内閣全体で決定していくと説明した。

ガンツ前国防相が9日に、ガザにおける戦争戦略の欠如を理由に戦時閣僚ポストを辞任して以降、政権閣僚を務める複数の極右政党幹部が後任として戦時内閣入りすることを求めていた。

戦時内閣を解散することでネタニヤフ首相は、連立政権に参加する極右政党や同盟国とのやっかいな状況を避けることになる。

イスラエル国防軍(IDF)の報道官は、指揮系統への影響はないとしている。

ガンツ氏とアイゼンコット氏はいずれもIDFの参謀長を務めた退役将軍。2人は昨年10月の開戦から数日後、ネタニヤフ氏率いる右派連合との挙国一致政府に加わった。

ガンツ氏は辞任の際、ネタニヤフ氏が「我々が真の勝利へ近づくことを妨げている」と述べた。

ガンツ氏の辞任発表直後、極右政党を率いるイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相は、自分を戦時内閣に参加させるよう要求した。

■ガンツ前国防相辞任で戦時内閣「必要なくなった」

ネタニヤフ氏は16日夜、新たなメンバーを迎え入れるのではなく、戦時内閣を解散することに決めたと閣僚に伝えた。

首相は「戦時内閣はベニー・ガンツの要請による連立協定にもとづいたものだった。ガンツが同内閣を去った今、この政府の追加部局はもう必要ない」と述べたと、ダヴド・メンサー政府報道官は17日の定例会見で述べた。

また、「安全保障内閣は、内閣全体とともに、決定を下す権限を国から与えられている」と付け加えた。

イスラエル紙ハアレツは、これまで戦争内閣が議題にしてきた問題のいくつかは、安全保障内閣が担当することになるだろうと報じた。同内閣はベン=グヴィル氏や極右のベザレル・スモトリッチ財務相ら14人で構成される。

同紙によると、センシティブな決定は「より小規模な協議の場」で扱われることになる。そこにはヨアヴ・ガラント国防相やロン・デルメル戦略担当相、超正統派政党シャス党のアリエ・デリ党首が含まれる見込み。この3人は戦時内閣に名を連ねていた。

IDFの作戦に影響なしと、政府と対立も

IDFのダニエル・ハガリ報道官は17日、このような動きがIDFの作戦に影響を与えることはないと主張した。

「閣僚が交代し、方法が変更される。我々には階層というものがあり、指揮系統を知っている。我々は指揮系統に従って動いている。これは民主主義だ」

ハマスは昨年107日、イスラエル南部に前代未聞の攻撃を仕掛けた。これを受け、IDFはハマス壊滅を掲げてガザでの作戦を開始した。ハマス運営のガザ保健省は、同地区で37340人以上が死亡したとしている。

イスラエル政府内ではこの1日の間に、緊張が増している様子。IDFはガザへの人道支援物資の搬送を増やすため、ガザ南部ラファ近郊で日中の「軍事活動の戦術的一時停止」を導入する決定を下したが、ネタニヤフ氏と極右閣僚たちはこれを批判した。

この軍事活動の一時停止は、ラファの南東にあるイスラエル支配下のケレム・シャローム検問所から支援物資を集め、ガザを南北に走る主要ルートまで安全に輸送できるようにするもの。イスラエルが先月にラファでの作戦を開始して以降、同検問所で物資が滞留している。

しかし、ベン=グヴィル氏はこれは愚かな方針だと批判。ネタニヤフ氏は、「我々は軍隊を持つ国であって、国を持つ軍隊ではない」と述べたと、イスラエルメディアは報じた。

IDFは人道支援が確実にガザに届くよう、政治指導者たちの命令を遂行したとしている。

また、活動の一時停止はガザ南部での戦闘停止を意味するものではないとしており、現地では何が起きているのか混乱が生じている。

ガザで最大の人道支援組織、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)は、17日時点もラファや南部の他地区で戦闘が続き、「作戦上はまだ何も変わっていない」と報告している。

こうした中、IDFは部隊が「ラファで、情報に基づいて標的を絞った作戦を続けている」とした。また、ラファのタル・アルスルタン地区では複数の武器を発見したほか、爆発物が仕掛けられた建造物を攻撃し、「数人のテロリスト」を排除したという。

UNRWA推計では、ラファには今も65000人が避難している。ハマス戦闘員の根絶とパレスチナの武将集団が使用するインフラ解体のため「限定的な」作戦とIDFが呼ぶものを開始する以前は、この街には140万人が避難していた。

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ガザ紛争戦時内閣の解散でイスラエルの分極化が進む(Israel grows more polarized as Gaza wartime Cabinet dissolves

ブラッド・ドレス筆

2024年6月19日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/4728638-gaza-war-israel-cabinet/

今週の戦時内閣(wartime Cabinet)の正式な消滅は、ガザでの紛争をめぐってイスラエルがいかに分極化(polarized)しているかを明らかにし、かつては団結していた連合が現在、紛争の方向性(conflict’s direction)、人質の返還(return of hostages)、増大するヒズボラの脅威(growing threat from Hezbollah)をめぐって争っている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる内閣から、野党指導者ベニー・ガンツが退いたことで、イスラエルの指導者であるネタニヤフ首相は、極右政党の同盟者たちへの依存度を高めることになる。それによって、人質解放と停戦(cease-fire)に向けた合意形成に向けた取り組みが複雑になる可能性がある。

世界的な防衛情報会社「モザイク(MOSAIC)」社の最高経営責任者(CEO)であるトニー・シエナは、ガンツの「穏健な影響力(moderating influence)」がなければ停戦と人質解放の合意形成の可能性は低いと述べ、ネタニヤフ首相がガザ地区で積極的な行動に出る可能性が更に高まるかもしれないと付け加えた。

シエナは、ネタニヤフ首相の同盟者であるベザレル・スモトリッチ財務相とイタマル・ベン=グヴィル国家安全保障相の名前を挙げている。彼らは、最近、ガザへの人道支援を促進するためにイスラエル軍が日中に戦術的一時停止を行っていることに抗議した。

シエナは次のように語った。「彼らが一時停止を批判したという事実は、ネタニヤフ首相が、より大胆になることで、この状況が今後どうなるかを示している。それは彼に自分の力を再確認する機会を与える」。

ガザ地区には、約120人のイスラエル人の人質が残っているが、何人が生存し、ハマスに拘束されているのかは不明だ。

イスラエルは、数千人のハマスの戦闘員を殺害したと主張しているが、過激派組織ハマスは、イスラエルが以前に掃討した地域で再び勢力を拡大し続けている。イスラエル軍がガザ地区南部の都市ラファで最後に残ったハマスの各大隊と交戦しており、紛争は、ほぼ9カ月を経て、変曲点(inflection point)に達しつつある。しかしイスラエル政府高官たちは、紛争は今年いっぱい続く可能性があると述べている。

イスラエルでは戦争に対する不満が高まっており、イェルサレムにあるネタニヤフ首相の自宅近くで、月曜日の夜にデモが行われ、抗議活動参加者たちが大挙して不満を表明した。

不満を抱いたイスラエルの抗議活動参加者たちは再選挙を要求しており、ガンツとその同盟者たちもこれを推進している。しかしネタニヤフ首相は、それは戦争から注意を逸らす行為(distraction from the war)に過ぎないと言って、これらの呼びかけを拒否した。

大西洋評議会のミレニアムフェローであるアルプ・セビムリソイは、有権者が戦争に対処するための代替案を模索しているため、イスラエルでは「選挙が迫っている(election is looming)」と述べた。

セビムリソイは、「ベニー・ガンツや他の多くの人が戦争全般を支持しているとしても、少なくとも言論を通じて、戦争に向けた代替ロードマップの準備を始めたいという願望は多くの人にある」と述べた。

ガザ地区が更なる人道危機に陥る中、イスラエルは、国際的に、戦争を終わらせるよう求める更なる圧力に直面している。ガザでは3万7000人以上が死亡し、パレスティナ人は食料や水などの基本的必需品にアクセスできない。

ガザ戦争に関して、イスラエルに対する大量虐殺の告発を審理している国連の最高裁判所である国際司法裁判所(International Court of Justice)は、イスラエルに対しラファでの攻撃を停止するよう求めた。そして、独立の国際刑事裁判所は、ガザ紛争に関連した戦争犯罪の容疑で、ネタニヤフ首相とイスラエル国防相ヨアヴ・ガラント、ハマスの幹部らに対する逮捕状を発行した。

戦時内閣では、ガンツ、ネタニヤフ、ガラントの3人のメンバーの間に団結が投影されていた。 

また、ネタニヤフ首相とガンツのような対立する人物たちは、ガザ地区での紛争や、イランの支援を受けた過激派・政治組織ヒズボラがイスラエルにロケット弾や大砲を撃ち続けるレバノンとの国境での紛争をめぐり、意思決定のバランスを取ることも可能にしていた。

アメリカ国家安全保障ユダヤ研究所のマイケル・マコフスキー所長兼最高経営責任者(CEO)は、戦時中の内閣の方が「国にとって良かった(better for the country)」と述べた。

マコフスキーは、「イスラエルの自然な分裂状態は、数カ月ぶりに再発しており、これは状況を更に悪化させる可能性が高い。彼らはガザにどのように対処するかについても解決する必要があるのでこれは不幸なことだ」と述べた。

ガンツが戦時中の政策プロセスに関与しなくなったことで、ネタニヤフ首相に対する政治的圧力はより強まる可能性が高い。

中東研究所のイスラエル担当上級研究員ニムロッド・ゴーレンは、内閣とともに危機感と団結の必要性が消滅しており、ガンツはネタニヤフ首相との連携で「本当にチャンスを与えたのだが、成功できなかった」と述べた。

ゴレンは、戦争への不満が高まる中、一部のイスラエル国民はネタニヤフ首相抜きの新たな指導部を求めるだろうと予想した。

ゴレンは、「人々は現状にうんざりしている。人質は戻ってこない。一般的に言って、より多くの兵士が殺されている。南部と北部の状況は何も変化がなく続いている。戦争は長引いており、戦略目標が何なのかは明らかではない」と述べた。

今月初めに、テレビ中継された辞任を表明する声明発表の中で、ガンツは「真の勝利に向けて前進させる」ことを阻害しているとしてネタニヤフを非難した。

今年5月、ガンツは、ネタニヤフが以下のことを実行しない場合には辞任すると記載した最後通告を発した。ガンツが突きつけた条件とは、レバノン国境にいる住む場所を奪われたイスラエル避難民の帰還、人質の解放とハマスの殲滅、サウジアラビアとの国交正常化の道筋をつけること、ガザ地区に政府を樹立することの諸計画を発表するというものだ。

ガンツと同様、ガラントもまた、ネタニヤフ首相のガザ戦後計画について公の場で懸念を表明し、ハマス壊滅への道筋をめぐって首相と激しく議論してきた。

ネタニヤフ首相は、イスラエルがガザ地区に関して、無期限で治安管理し(indefinite security control)、過激派組織ハマスとつながりのないパレスティナ人が沿岸部の領土を統治することを含む、戦後計画の曖昧な概要しか発表していない。

ヒズボラとの紛争に対処するイスラエルの苦闘は、より深い問題にもなりつつある。イスラエルは、レバノン国境での戦闘から逃れた約8万人のイスラエル人避難民の帰還を望んでいる。

ガラントは、ヒズボラの壊滅を主張しているが、アメリカや他の同盟諸国は外交を通じて緊張を和らげようとしており、イスラエルに対してエスカレーションさせないように警告している。ネタニヤフ首相は、2006年にイスラエルとヒズボラとの間で起こった、犠牲を伴う戦争の舞台となったレバノンを攻撃することに前向きではないようだ。

しかしガンツが内閣から退いたことで、ネタニヤフ首相はガラントや、ヒズボラとの全面戦争を望むスモトリッチ財務相やベン=グヴィル国家安全保障相のような極右の同盟者の攻撃を受けやすくなる可能性がある。

大西洋評議会のアルプ・セビムリソイは、ネタニヤフ首相は、レバノン問題で中道寄りにシフトしているとしながらも、イスラエルの指導者がヒズボラを含む未解決の「軍事的目標の多くに取り組む」ことを近いうちに期待すると付け加えた。

セビムリソイは、イスラエルは「前回の紛争で未解決だった問題の解決」を目指しているため、イスラエル国防軍に言及し、「レバノンへのイスラエル軍の対応が見られるだろう」と述べた。

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 古村治彦です。

 21世紀に入り、世界の構造は大きく変化しつつある。第二次世界大戦後の20世紀の後半は、アメリカとソ連がそれぞれ、資本主義ブロックと共産主義ブロックを率いて、対立する、冷戦(Cold War)の下で、二極(bipolar)構造となっていた。その後、ソ連が崩壊し、アメリカの一極(unipolar)支配構造となっている。21世紀に入り、中国をはじめとする非西側諸国、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の台頭もあり、米中二極構造へと変化しつつある。これを「新冷戦」(New Cold War)と呼ぶ人たちもいる。
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ゴードン・ブラウン

 こうした状況下、アメリカ一国だけでは対処しきれない国際的な問題が多く発生している。アメリカは西側諸国を巻き込んで、問題への対応を行おうとしているが、西側諸国だけでも無理な問題が多い。そこで、中国との関係を再構築すべきだというのが、下記の論稿の著者ゴードン・ブラウン元英首相の主張だ。米中関係が緊張をはらむ中で、それでも国際問題を解決するためには、協力する必要がある。そのための枠組みを構築する必要がある。冷戦期、 米ソ両国は厳しく対立したが、同時に協力できる分野では協力を行った。米中両国間もそのような関係となるべきだ。そうすることで、米中両国間が戦争となることを阻止することもできる。

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新しい多極主義(A New Multilateralism

-アメリカは自らが作り上げたグローバルな制度を如何にして再生させることができるか。

ゴードン・ブラウン筆

2023年9月11日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/11/us-china-russia-multilateralism-diplomacy-alliances-trade/

「アメリカは戻ってきた」。これは、2021年2月のミュンヘン安全保障会議で、最近のアメリカ大統領の中で最も国際主義者(internationalist)であるジョー・バイデン米大統領が語ったメッセージである。バイデンは、「多国間行動を調整する切実な必要性(dire need to coordinate multilateral action)」があると宣言した。しかし、二国間協定や地域協定に固執し、グローバルな協調行動(globally coordinated action)を犠牲にする、バイデン政権は、国際機関の可能性を過小評価し、安定した管理されたグローバライゼイションの可能性を損なっている。新たな多極主義(multilateralism)が生まれなければ、10年間にわたる世界的な混乱は避けられないだろう。

もちろん、最大の皮肉は、国際通貨基金(International Monetary FundIMF)や世界銀行から国連に至るまで、世界の卓越した多国間機関は全て、第二次世界大戦の直後にアメリカによって創設されたということだ。アメリカのリーダーシップを通じて、これらの機関は平和の実現、貧困の削減、健康状態の改善に貢献してきた。現在、アメリカは孤立しており、世界秩序の亀裂は深い谷になりつつあり、世界的な課題に対する世界的な解決策を策定できていない。

ウクライナ戦争の責任はウラジーミル・プーティン大統領以外にはない。この戦争は、アメリカの名誉のために言っておくと、ヨーロッパ全体を団結させた。しかし、他の地域では、世界は自ら招いた傷に苦しんでいる。増大する債務への対処の失敗、低所得および中所得のアフリカを苦しめる飢餓と貧困、新型コロナウイルス感染拡大への公平な対応の調整能力の欠如、そして最大の存亡の危機である気候変動に対処するための資金の確保の行き詰まりなどだ。これらの危機は、発展途上国を混乱させるだけでなく、主導権を握れなかった西側諸国に怒りを抱かせている。

国際社会が行ったことは、どれも中途半端で、たいていは遅すぎた。ワクチン不足で人々が亡くなり、食糧不足で人々が飢え、気候変動とそれに続く大惨事への無策で人々が苦しむのを放置してきた。国連の人道支援(humanitarian aid)や世界食糧計画を見ればわかるが、どちらも今年必要な資金の半分にも満たない額しか受け取っていない。世界銀行による貧困国への資金援助は今年、来年と削減され、人的資本介入(human capital interventions)に気候変動投資を追加するよう求める声が高まっている。

アメリカの指導者たちは、古いアプローチが機能しないことを認識したことは評価に値する。かつては支配的だった、ワシントン・コンセンサス(Washington Consensus)は、ワシントンをはじめ、現在はほとんど支持されていない。経済学者のラリー・サマーズが「政権の哲学を最も注意深く知的に展開した説明(most carefully intellectually developed exposition of the administration’s philosophy)」と的確に評した4月の演説で、ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官は、崩れつつあるパルテノン神殿のような世界構造を非難した。むしろ、持続可能な鉄鋼・アルミニウムに関する世界協定、インド太平洋繁栄経済枠組、米州経済繁栄パートナーシップなど、対象を絞り、精密に誘導された行動のほうが有望だと考えた。サリヴァンは、世界銀行(ジャネット・イエレン米財務長官が演説でこのテーマを取り上げているにもかかわらず)や世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)の改革の必要性については軽く触れただけで、IMF、国連、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)についてはまったく触れなかった。そして、2009年にG20と名付けられた国際経済協力の主要なフォーラムは、名前を挙げる価値すら認めなかった。

サリヴァンの総合政策は、アメリカが経済の方向性を決める上で安全保障を決定的な要素にする必要性が高まっていることを認識した、現代の産業政策(industrial policy)に関する声明として、非難の余地はない。しかし、サリヴァンの発言は「国際経済政策(international economic policy)」の声明として事前に宣伝されており、国内産業政策だけに関するものではない。この点で何かが欠けていた。アメリカの国際関係に関するこの包括的な演説は、管理されたグローバル化の計画には至らなかった。国際協力を強化するために設立されてほぼ80年になる世界機関の誰もが認めるリーダーであるアメリカは、その重要性と改革の可能性に関する真剣な議論から姿を消しているようだ。そして、貿易戦争(trade wars)が技術戦争(technology wars)や資本戦争(capital wars)になり、競合する世界システム(competing global systems)を特徴とする新しい種類の経済冷戦にさらに陥る恐れがある中、一般的に一極世界(unipolar world)において、多国間主義的(multilateralist)だったアメリカは、多極世界(multipolar world.)での一国主義(unilateralism)に近づいている。

国際政策を、地域的および二国間関係の単なる合計に還元することはできない。世界的金融危機(global financial crisis)が再び起こったらどうなるか? 世界的伝染病が再び起こったらどうなるか? 干ばつ、洪水、火災により、講じるべき世界的な対策が明らかになった場合はどうなるか? かつて、ロナルド・レーガン米大統領がソ連の指導者ミハイル・ゴルバチョフに語ったように、小惑星が地球に向かって猛スピードで接近してきたらどうなるか?

嵐の海に浮かぶ船には安定した錨が必要だが、今日ではそれが存在しない。かつて、世界はアメリカの覇権(hegemony)によって錨を下ろしていた。そうした一極主義の時代は過ぎ去った。しかし一極主義の時代の後には多極主義の時代がやってきて、多極主義の錨が必要となる。この錨とそれがもたらす安定性は、改革された多国間制度の上に築かれなければならない。実際、グローバルアーキテクチャ(global architecture)のこのような見直しこそが、今やグローバルでもリベラルでも秩序でもないグローバルなリベラル秩序を修復し、統治されていない空間の無人地帯をもたらした地政学的不足を克服する唯一の方法である。

多国間改革アジェンダがなおさら重要なのは、専門家たちが思い描く代替的な世界秩序(alternative world orders)がほとんど包括的でなく、したがって実現不可能だからである。アメリカ主導の自由貿易圏は、そこから排除された人々だけでなく、より保護主義的な米連邦議会からも反対される可能性が高い。民主政治体制諸国の連合は、定義上、ルワンダやバングラデシュからシンガポールやサウジアラビアに至るまでのアメリカの同盟諸国を排除しなければならないが、ワシントンはそれを嫌がるだろう。また、1815年以降のヨーロッパの協調(Concert of Europe)に似た列強の協調(Concert of Great Powers)、あるいはアメリカと中国だけからなるG2も、世界の他の190余りの国のほとんどから怒りの反応を引き起こすだろう。こうした排他的なクラブは、規模の大小を問わず、世界に必要な安定をもたらすことはなく、活力を取り戻した多国間システムの方が、「一つの世界、二つのシステム(one world, two systems)」の未来への傾斜を食い止めるはるかに良い方法となる。

​​中国の習近平国家主席は、地政学的な力の移行(shifts in geopolitical power)から北京が得られる利益をよく理解している。アメリカが多国間主義から二国間主義と地域主義(regionalism)に移行したのと同様に、中国は独自の新しい包括的アイデアを世界の舞台に持ち込んだ。

10年前、中国は、149カ国を誘致することに成功した一帯一路構想(Belt and Road Initiative)や、ヨーロッパの大半、イギリス、カナダを含む106カ国を擁するアジアインフラ投資銀行[Asian Infrastructure Investment Bank](アメリカは参加を拒否しており、自国が主導しないクラブには参加しないという印象を与えている)などの、公然と地域的な構造に焦点を当てていた。

これに勢いづいて、中国の焦点は、新たな開発銀行やブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのBRICSグループを含む共同国際イニシアチヴ(joint international initiatives)に移った。現在、中国は世界に進出し、大胆な名前の「グローバル安全保障イニシアチヴ(Global Security Initiative)」と「グローバル文明イニシアチヴ(Global Civilization Initiative)」で独自に活動している。犯罪、テロ、国内安全保障に関する共同行動に焦点を当てたこれらのイニシアチヴは、中国が最初の完全に独立したグローバルプログラムであるグローバル開発イニシアチヴ(Global Development InitiativeGDI)の成功例に続くものである。これら3つの介入は、より大きな仕組みで、実際はそうではないとしても、レトリックにおいては、間違いなくより構造化され、野心的である。合計で約60カ国が既に、グローバル開発イニシアチヴのグループに加わっている。ドーン・C・マーフィーの著書『グローバルサウスにおける中国の台頭(China’s Rise in the Global South)』で詳述されているように、中国はこれらのグローバルイニシアチヴを利用して、いつか競合する世界秩序(competing global order)になり得る勢力圏(spheres of influence)を構築している。

そして、この中国の世界規模での関与の急増は、中国からの一時的なプロパガンダではなく、習近平主席の永続的な取り組みであり、政治的野心の意図的な表示であり、中国を国際秩序の真の守護者として示す試みである。サウジアラビアとイランの間で外交関係を回復し、イエメン戦争を終わらせる可能性のある合意を仲介したばかりの習近平主席は、ロシアのウクライナ戦争を終わらせるための和平提案を推進するのに十分な勇気を既に持っており、言うまでもなく、二国家によるイスラエルとパレスチナの和平解決において中国が主導的な役割を果たすという噂も流れている。これらは全て、国連憲章(U.N. Charter)の遵守という傘の下で行われている。

もちろん、細かい点もある。中国は国連憲章の領土保全(territorial integrity)と加盟国の内政不干渉(noninterference)の約束を支持しているが、憲章やその後の国連決議の人権、保護責任、自決(self-determination)の原則に焦点を当てた部分については何も語っておらず、国際司法裁判所や国際刑事裁判所、あるいは例えば国連海洋法条約の判決を支持することもほとんどない。

論理的な反応は明らかだ。アメリカはこれ以上後退するのではなく、新たな多国間主義を擁護することで変化する世界秩序に対応しなければならない。これは、アメリカの揺るぎない覇権を前提とし、同盟諸国やアメリカの同盟国になりたがっている国々(suitors)に指示することで維持できた古いハブ・アンド・スポーク型の多国間主義(hub-and-spoke multilateralism)ではない。命令(dictation)ではなく説得(persuasion)によって力づけられ、世界経済の現実に基づいた新たな多国間主義は、アメリカが再び主導する可能性のある国際機関の改革を通じて人々を団結させるだろう。

ワシントンはまだ、習近平が「1世紀の間でも見られなかった大変革(great changes unseen in a century)」と呼ぶ、パックス・アメリカーナ(Pax Americana)がもはや存在しない、分裂し分断された世界を作り出そうとしている、3つの地政学的シフトの規模とパワーを、十分に理解していない。そして、そのような世界でも、気候変動、パンデミック、金融不安、過度の不平等から生じる混乱と闘うためには、世界的な公共財の提供に依然として注意を払う必要がある。

もちろん、最初の地殻変動は、少なくともホワイトハウスの国内的野心に影響を与える限り、サリバヴァン補佐官も認識している。 30年間支配的だった新自由主義経済は、オープンではあるが十分に包括的ではなかったグローバライゼイションを引き起こした。世界の半数がより高い生活水準を享受していたが、アメリカと西側諸国の多くが停滞していた経済秩序は、国家が安全保障の観点から経済的自己利益を再定義するにつれて、新重商主義経済学に取って代わられつつある。今では回復力が、効率性を求める昔の欲求に勝ります。供給の保証はコストに勝る。そして「万が一に備えて(just in case)」は「間に合わせに(just in time)」よりも重要だ。かつては、経済が政治を動かしていたが、世界中を巻き込んでいる貿易、テクノロジー、投資、データ保護主義が証明しているように、現在は政治が経済を動かしている。

2つ目のシフトは、ワシントンではあまり理解されていない。政策立案者たちは、単極世界(unipolar world)の30年間の確実性が多極世界(multipolar world)の不確実性に取って代わられつつある中、その影響を十分に認識できていない。もちろん、これは、3つ以上の国が同等の力と地位を持っているという狭義の「多極(multipolar)」と表現できる世界ではない。したがって、専門家の一部は、依然として「部分的な一極(partial unipolarity)」が存在すると結論付けている。むしろ、多極化とは、複数の権力の中心地が競合する世界を意味し、将来の世界におけるアメリカの関係に多大な影響を与える。私たちは、このことが、世界の半分、つまりほとんどの非西側諸国(non-Western countries)が、ロシアとの戦争でウクライナを支援することに劇的な形で働いているのを目にしてきた。モスクワへの制裁に参加しているのはわずか30カ国程度だ。アシュリー・J・テリスの著書『非対称性の攻撃(Striking Asymmetries)』で説明されているように、複数プレイヤーグループの成長を反映する多極性のより脅威に関する尺度は、核兵器の拡散の可能性だ。イランが核兵器を確保すれば、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、トルコ、エジプトはいずれも核武装を目指す可能性が高い。そして、中国の核兵器保有量が2035年までに約400発から1500発以上に拡大する中、韓国と日本が自ら核保有国にならないためには、アメリカからのより決定的な保証が必要となるだろう。おそらくもっと憂慮すべきは、中国の力の増大にますます懸念を強めているインドが、インドで最も信頼できる兵器の収量が中国の100分の1であることを考えると、信頼できる熱核兵器設計の取得を目指していることだ。これら全ては、より致死性の高い核兵器を求めるパキスタンと中国との関係の深化という形で、別の種類のドミノ効果を引き起こす危険性がある。

主に新自由主義と一極から、1つの覇権国家と1つの覇権的な世界観からの脱却の結果として、第三の地殻変動が進行中である。過去20年間の大部分を特徴づけたハイパーグローバライゼイション(hyperglobalization)は、新しい種類のグローバライゼイションに取って代わられている。貿易は依然として拡大している(以前のように世界経済拡大は2倍の速度ではないが、それに歩調を合わせている)ため、これは脱グローバル化(deglobalization)ではない。実際、世界の商品貿易は2022年に記録的な水準に達した。デジタルサーヴィスにおける世界のサプライチェーンは、2025年から2022年の間に年間平均8.1%で成長しましたが、これは5.6%であったのに対し、カタツムリのペースで進むグローバル化、「スローバライゼイション」ですらない。商品の場合。デジタルサーヴィスの世界輸出は2022年に3兆8000億ドルに達し、輸出サーヴィス全体の54%を占めた。会計、法律、医学、教育などの専門職が分離されているため、現在世界のどこからでも提供できる技術サーヴィスの多くは、コールセンター業務と同様にオフショアリング(offshoring)されることになる。「グローバライゼイション重視(globalization-heavy)」、つまり貿易によるグローバライゼイションが自国の国民の暮らしを良くするだろうという思い込みは、「グローバライゼイション軽視(globalization-lite)」、つまり、貿易を制限する方が国民の生活水準を守るより良い保証になるかもしれないという考えに取って代わられている。

この3つの激変を底支えしている共通項があり、それがこれらの新たな動きをまとめているように見える。それは、ナショナリズムの復活(resurgent of nationalism)であり、世界的な自国第一主義運動(country-first movements worldwide)に最もよく反映されている。バイデンの「バイ・アメリカ」というラベルでさえ、トランプ政権時代の「アメリカ・ファースト」の水増しヴァージョンであり、アメリカの経済ナショナリズムを薄めることはできないようだ。

それは、国境管理の強化、関税の強化、移民制限の強化だけでなく、関税戦争、テクノロジー戦争、投資戦争、産業補助金戦争、データ戦争によっても特徴付けられるナショナリズムだ。世界的には、内戦(civil wars)が増加し(その数は約55件)、分離主義運動(secessionist movements)が増加し(約60件)、物理的に国を隔てる壁やフェンス(more walls and fences physically separating countries)が増えています(2019年時点で70件、1990年の4倍以上)。

この復活したナショナリズムは更に攻撃的な形で表現されている。ますます多くの政府や国民が、「私たちと彼ら(us and them)」、つまり、内部の人間と外部の人間との間の闘争の観点から考えるようになってきている。この偏狭で啓発されていない自己利益(narrow and not enlightened self-interest)への新たな焦点は、地球規模の課題に対処するために国際協力(international cooperation)が最も必要とされているまさにその時に、国際協力を犠牲にして行われた。

断片化には経済的なコストもある。WTOの研究者たちは、国際貿易が減少し、専門化と規模から得られる利益が減少する「1世界2制度(one world, two systems)」の未来では、長期的には実質所得が少なくとも、5%減少すると試算している。低所得国は所得が12%減少し、更に大きな打撃を受けることになり、中所得国や高所得国との融合という期待は損なわれることになる。IMFも同様の調査を行っており、貿易の細分化による世界的な損失は、GDPの0.2から7%に及ぶ可能性があると示唆している。技術的なデカップリング(decoupling)を考慮すると、コストが高くなる可能性がある。考えてみて欲しい。1970年代と1980年代には、アメリカとソ連間の貿易は両国の貿易総額の約1% にとどまっていたが、現在では、中国との貿易はアメリカの16.5%EUの貿易の約20%を占めている。

これらの地殻変動による地政学的な影響により、世界は流動的、あるいは更に悪いことに、亀裂が生じ、分裂の危機に瀕している。私たちに固定的な忠誠心と揺るぎない同盟関係をもたらした古い世界的構造は、緊張に晒されている。新たな世界的な道筋が敷かれ、古い同盟関係が再評価されているが、特筆すべき例外としては、アメリカが大西洋横断安全保障協力(trans-Atlantic security cooperation)を復活させた拡大NATOexpanded NATO)がある。サリヴァンは現在、G20ではなくG7を「自由世界の運営委員会(steering committee of the free world)」と見なしている。しかし、それでは G180+は感動せず、表現されていないと感じている。そして、他の長期にわたる関係にも緊張がかかり、地政学的な状況には不規則で重なり合い、競合する取り決めが点在している。人々を団結させる新たな計画がなければ、セメントが固まるまでに私たちは10年間の混乱に直面することになる。

既に一極の束縛から解放された国々は、大国との距離を享受し、それを美徳としており、シンガポールを拠点とする学者ダニー・クアが「第三国家機関(Third Nation agency)」と呼ぶものを実践している。多くの場合、一時的な同盟だ。ゴールドマン・サックスのジャレッド・コーエンは、これらの国々を忠誠心が風前の灯火となっている、「スイングステイト(swing sates)」だと表現した。彼らは、インドのオブザーバー研究財団の理事長サミール・サランが「有限責任パートナーシップ(limited liability partnerships)」と名付けたものを形成することを好むが、これは、それ自体、政治学者がミニラテリズム(minilateralism)と呼んでいるものとは異なる形態であり、各国がグループとして集まり、目的を達成することを目的とするものではない。長期的な共通の目標は追求するが、短期的な経済的利益や安全保障上の利益は追求しない。

インドを例に挙げてみよう。インドは現在、ヒンズー教ナショナリズム(Hindu-nationalism)、権威主義(authoritarianism)、宗教的不寛容(religious intolerance)を支持する指導者によって統治されている。しかし、インドとアメリカが共有する価値観、つまり民主政治体制と信教の自由への支持が弱まるにつれ、両国の共有する物質的利益、特に中国との関係は今のところ強くなっている。インドのナレンドラ・モディ首相は、アジアにおける中国の影響力拡大を懸念しながらも、アメリカとロシアを互いに相手にし、武器契約や有利な貿易協定をめぐって両国を争わせている。

次にインドネシアについてだ。ジャカルタが主要な鉱物資源であるニッケルを管理する中、資源ナショナリズム(resource nationalism)が議題となっている。しかし、インドネシアの資源ナショナリズムは、ニッケルだけでなく銅やその他の鉱物の主要購入者同士が対立することも意味する。あるいは、サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)などの国々が、アメリカ、中国、ロシアの全く異なる利益を利用して、アメリカのインド太平洋への軸足を利用している中東について考えてみよう。

しかし、一度限りの貿易・安全保障協定や、敵対味方の関係で国家を獲得できるのは今のところ限られている。彼らの経済の将来は、その時々の都合に合わせた場当たり的で日和見的な取引よりも、安定した国際システムに依存している。各国はそれぞれ異なる理由から、古い日和見主義(opportunism)ではなく、新たな多国間主義を必要としている。

アフリカには、鉱物資源だけでなく、未開拓の市場や労働力、そしてアフリカの関与なしには気候危機に対処し克服することはできないという認識からもたらされる新たな交渉力がある。改革された多国間システムの中心に、アフリカを近づけること(G20でのより大きな役割、世界銀行とIMFでの代表強化、新たな気候変動金融の受益者)は、大陸全域に国々を強制するよりも優れた、より永続的な解決策である。中国、ロシア、アメリカのいずれかを選択する。

実際のところ、これらの各ブロックは、ヨーロッパと同様に、国際機関を通じた多国間調整から恩恵を受けるだろう。ヨーロッパ各国には、理由は異なるにせよ、中国との貿易を維持したい理由がある。ドイツは製造業の輸出を維持するため、フランスは戦略的自律性(strategic autonomy)の考えを推進するため、東ヨーロッパは一帯一路構想への依存のため、イベリア諸国はラテンアメリカとのつながりがあるため、最大の貿易相手国との関係を断つことを望んでいないため、ヨーロッパもアメリカと中国の間で圧迫されることを望んでいない。そして、アメリカは中国を穏健にするために、ヨーロッパを必要とし、中国もヨーロッパを使って、アメリカを穏健にする必要があるため、ヨーロッパはおそらく認識しているよりも多国間主義を擁護する強い立場にある。

より安定した多国間主義を促進することは、アフリカ、中東、ヨーロッパだけの利益ではない。世界的により効果的になるためには、アメリカが自ら創設し主導してきた国際機関に対する偏見を失うことから始めなければならない。それはなぜか? それは、古いヴァージョンのパックス・アメリカーナの誘惑は、もはや世界の他の国々をアメリカの力に応じるように誘惑するほど強力ではないからだ。しかし、アメリカを中心とした新たな多国間主義であれば、その可能性はある。それが十分な理由でないとすれば、中国の世界安全保障抗争は、ワシントンにとって警鐘を鳴らすものであり、二国間や地域的な構想にとどまらない手を差し伸べるよう呼びかけるものとなるだろう。

私が長年かけて気づいたことは、例えば、IMFや世界銀行の理事会において新興諸国の経済力の向上を認識し、これらの機関の資本を増強するために改革が緊急に必要とされているときでさえ、アメリカには、「物事を先延ばしにする(dragging its feet)」習慣があるということだ。世界的な制度を刷新し、国連での膠着状態を終わらせるよう求める声が、イギリスなどの最も近い同盟国からも高まっているにもかかわらず、ワシントンが沈黙していることがあまりにも多く、その理由はほぼ確実に、一極世界の考え方が定着してからもずっと存続していることである。時代錯誤的で、素朴ですらある。ほとんどの加盟国が痛感しているように、根本的な改革を先行させなければ、このような制度は発展しない。しかし、今日、アメリカには、そのような改革を進める力を持っていない。

このことについて考えてみて欲しい。アメリカがあまりにもしばしば一極時代の古い考え方に囚われているため、バラク・オバマ政権が中国を封じ込めるために創設した貿易協定そのものである環太平洋経済連携協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)から離脱した。アメリカが中国を排除することを構想していたグループが現在、中国を参加させるよう圧力を受けているのは実に皮肉である。太平洋に軸足を移したアメリカが、大陸最大の貿易パートナーシップの一部となるのは理にかなっている。しかし、自らが設立し管理していないクラブには加盟しないという印象を与え続けている。そして、その同じ一国主義的な考え方が、対アフガニスタン連合を形成した同盟諸国との実質的な協議なしに命令されたアフガニスタン撤退の失敗につながった。

アメリカは自らを空売りしている。一極世界を主導した国は、同盟国に属国(vassals)であるかのように命令を下すのではなく、同盟国として説得することで、多極世界でも主導することができる。協力の力によってのみ、アメリカが多国間秩序(multilateral order)を擁護し、各国に多国間秩序の支持を求めるという、不可能なことを企てること(square the circle)ができる。ワシントンは、もはや首尾よく押し付けることができなくなっても、首尾よく提案することができる。そしてもしそうすれば、世界の大半が今もリーダーシップを期待しており、今後もリーダーシップを発揮したいと望んでいる国アメリカは、活性化した多国間主義のもとに世界の大多数を結集できる唯一の国となるだろうし、そうするだろう。グローバルな機関を通じて、グローバルな問題に対するグローバルな解決策を提供する。

2つの結論が導き出される。アメリカは世界中で同盟を構築し、各国を参加させるのに時間がかかる必要がある。慇懃なる無視(benign neglect、訳者註:通貨当局が為替相場の変動を静観すること)は問題の無害な説明である。たとえば、過去100年間に米大統領が訪問したのはアフリカ54カ国中、20カ国に届かない。私たちは彼らにレッテルを貼るのではなく、昔ながらの陳腐なレンズを通して彼らを見るのではなく、対等な立場で彼らの話を聞き、彼らとの共通の原因を見つけなければならない。私たちは、西側諸国が発展途上国に説教するだけではなく、共通の世界的大義のパートナーとしてサインアップしなければならない世界について考える必要がある。

そして第二に、もしアメリカが、自らが創設に大きな役割を果たした国際機関への歴史的な支持を新たにすれば、中国のハッタリは通用しなくなるだろう。そうなれば、習近平は、国連、IMFWTOWHOへの支持を含む国際秩序を守るか、自身の世界安全保障構想が真実ではなくプロパガンダに基づいていることを認めるかのどちらかを迫られることになる。

「新世界秩序(new world orders)」の歴史的な運命は、読んでいて憂鬱になることが多い。

1815年、1918年、1945年の新世界秩序は、世界構造の変化が戦争や崩壊の後にのみ起こる傾向があることを示している。実際、1990年は米大統領ジョージ・HW・ブッシュ大統領によって歓迎された。ブッシュ大統領は、冷戦の終結とともに「新世界秩序(new world order)」の始まりを宣言した。実際には、それは歴史が十分に決定的な方向に転換しなかった転換点だった。ドイツはドイツの統一を望み、ドイツのことだけを考えていたと主張することもできるだろう。フランスはヨーロッパの統一を通じてドイツを封じ込めたいと考えており、フランスのことだけを考えていた。そして、アメリカはNATOとその指導力を維持したいと考えており、アメリカのことだけを考えていると主張した。屈辱を与えられたロシアは決して新世界秩序に組み込まれることはなかった。そして、変化が議題に上っているこの瞬間に、中国、インド、そして発展途上国が将来果たす役割についてはほとんど考慮されていなかった。

気候変動や私たちが経験している地殻変動(seismic shifts)に始まり、私たちが現在直面している存在にかかわる課題は、私たちの足元で岩盤が変化し(bedrock shifts)、国際的な枠組みが再び作り直されなければ衰退してしまうという、まれな世界的瞬間を生み出している。1940年代に組み立てられた国際構造は、より経済的に統合され、より社会的に相互接続され、地政学的に相互依存する(geopolitically interdependent)世界において、世界的な相互依存(global interdependence)によって、全ての国の独立が認められる2020年代のニーズに合わせて再考されなければならない。全く新しいパルテノン神殿を建設することはできないかもしれないが、アクロポリスの廃墟でキャンプをすることを避ける方法を見つけなければならない。それを避けるためには、変化が伴わなければならない。

金融危機の波及(financial contagion)が常にリスクとなり、グローバルサプライチェーンがかつてないほど国や大陸を結びつけている世界では、各国を従来のように、つまり各国が単独で十分な存在として見ることはできない。むしろ、ネットワークと関係の網の一部として見るべきであり、一国からの波及効果が他の国に壊滅的な影響を及ぼす可能性がある。したがって、IMF はもはや、個々の国が国際収支危機に陥ったときに行動を起こすのを待つ機関ではなく、危機の予防と解決に携わらなければならない。そして、将来の不況を未然に防ぐために、IMF のグローバル監視部門は、金融安定理事会および国際決済銀行(Bank for International Settlements)と協力して強化され、世界経済を脅かす全てのリスクの監視と報告を行う必要がある。

世界銀行は、人的資本と環境管理の両方に重点を置くグローバルな公共財銀行にならなければならない。そして、世界銀行がこれらの役割を果たすには、現在の支出の3倍にあたる年間約4500億ドルの資金が必要になるため、活力あふれる、新総裁アジャイ・バンガは改革の過程で、アメリカの支援を必要とするだろう。さらに、株主たちは、銀行の低所得者向け施設と中所得者向け施設の統合、保証、融資、補助金の利用における革新、そして銀行を民間投資を動員するためのプラットフォームとみなすなどの改革に、より多くの資本を割り当てることに同意しなければならない。

1940年代から1990年代にかけて、WTOは合意に基づいて機能し、しばしば苦痛を伴う交渉と不安定な妥協を経てきた。1990年代半ばのWTOの新自由主義的再編以来、そして50年の間で初めて、世界貿易協定は成立していない。そして、広く尊敬されている事務局長のンゴジ・オコンジョ=イウェアラの下では、最も規制の少ない貿易分野、つまりサーヴィス、データ、情報技術全般を扱うには、外交と改革された控訴制度への更なる重点化が不可欠となるだろう。そして、インターネットだけでなく、人工知能における自由奔放(free-for-all)の危険性から生じる規制や倫理的な問題に対処するために、新たな国際的枠組みを構築しなければならないだろう。

新型コロナウイルス感染拡大の余波の中で、アメリカの中規模病院3つに相当する予算を持つWHOを真剣に検討する者なら、今や、拡大し続けるリスクリストに立ち向かうために十分な資金が不可欠であることを過小評価することはできない。G20は他の175カ国をより代表するようになり、年次会合の合間にも存在できる適切な事務局を設立し、世界の最貧地域で相互に関連する危機にもっと注意を払う必要がある。

そして、国連は進化しなければならない。ロシアが、独占的な安全保障理事会内で戦争犯罪、大量虐殺、人道に対する罪を処罰することを含む、全ての問題で拒否権(veto)を握っている限り、国連全体が無力化される(frozen into inaction)可能性がある。拒否権の権限を削減または廃止することで、安全保障理事会を改革できない場合、アメリカは国連総会とその193カ国が、より責任あるリーダーシップを発揮するよう促すべきだ。

少なくとも、アントニオ・グテーレス国連事務総長の熱心なリーダーシップの下、国連の平和維持活動の改革は達成され、世界中で増加する難民や避難民のために年間410億ドル必要でありながら、必要な額の半分以上が支給されることのない人道援助予算をより適切に提供する方法を構築することができる。出発点は、気候変動対策、パンデミックへの備え、人道的取り組みに十分な資金を提供するための負担分担協定をワシントンが提案し、推進することだろう。特に、今年ドバイで開催される国連気候変動会議では、巨額の臨時利益の恩恵を受けている中東の石油産出諸国は、過去および現在の炭素排出諸国に加わり、低・中所得国に必要な緩和と適応に資金提供すべきである。

アメリカのこうした改革アジェンダは、多国間主義を軌道に戻す可能性がある。国際関係論分野の学者たちは、トゥキュディデスの罠(Thucydides trap)についてよく語る。トゥキュディデスの罠は、紀元前5世紀にアテネがスパルタに挑んだのと同じように、台頭する大国が定着した覇権国に挑むというものだ。しかし、スパルタが負けたのはアテネの力によるものではないし、実際の戦争ではスパルタはアテネを破ったということを忘れがちだ。その数年後、アテネより小さな国々がスパルタの覇権を破壊し、スパルタは敗北した。

ますます中国に注意関心を持っているアメリカにとって、ここに教訓がある。しばらくの間、アメリカが最大の競争相手に打ち勝つ能力は計算され、証明される。あまり注目されていないのは、アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、中東におけるアメリカの影響力の喪失による影響である。アメリカは中国との戦いに勝つかもしれないが、そうすることで世界からの支持獲得戦争に負けることになる。

アメリカにとってはるかに良いのは、世界秩序の再構築を主導することであり、この点ではアメリカが最善の策を持っている。ワシントンが世界規模の解決策を必要とする世界規模の問題に十分大胆に立ち向かうことができれば、北京の影響力拡大にそれほど執着する必要はないだろう。その代わりに、中国は決定的な選択に直面することになるだろう。アメリカが望んでいるように、アメリカと協力するか、国際協力や世界機関の重要性について語りながら「中国第一(China first)」政策にしか関心がないことで暴露されるかだ。今日、中国は世界の先導者(global beacon)となるために必要な関心は持っているが、価値観を持っていないように見える。アメリカは価値観を持っているが、現状では十分な関心を持っていない。価値観は一夜にして変わることはないが、利益は変わる。アメリカよ、君たちの番だ。

※ゴードン・ブラウン:イギリス元首相、国連の国際教育特使。ブラウンは、モハメド・A・エラリアン、マイケル・スペンス、リード・リドウと共著で『長期にわたる不安定な状況:破壊された世界の修理計画(Permacrisis: A Plan to Fix a Fractured World)』を執筆した。

(貼り付け終わり)

(終わり)

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
bigtech5shawokaitaiseyo501
ビッグテック5社を解体せよ

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 第二次世界大戦後から1991年のソヴィエト連邦崩壊まで、アメリカとソ連は激しく対立した、資本主義と共産主義というイデオロギー上の対立から、世界各地で代理戦争が勃発した。しかし、同時に、米ソは直接戦うことはなく、核戦争の危機を回避するために、米ソ両国の首脳はホットラインを設置し、核兵器削減のための枠組みを構築した。冷戦期は、「長い平和(Long Peace)」という評価もある。

 冷戦後は、冷戦に勝利したアメリカの一極(unipolar)支配状態が続いたが、21世紀に入り、アメリカ支配への反発(ブローバック)が起き、アメリカはテロとの戦争(war on terror)の泥沼にはまり込んだ。そして、中国の台頭という新たな局面にも直面している。中国の台頭は、世界構造を「西側諸国(the West、ザ・ウエスト)」対「西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)」の対立構造へと変化させた。これは、グローバルノース対グローバルサウスの対立と言い換えることもできる。現在は、米中両国による新冷戦時代へ突入しつつあるという見立てがある。これは正しい見立てということになる。米中による二極(bipolar)構造、G2体制が形成されつつある。

 ここで重要なのは、米中が直接戦うことがなく、世界大戦も核戦争も起きなかった、冷戦期から教訓を引き出すことである。米中両国の直接の戦い、熱い戦い(hot war)を防ぐことが何よりも重要だ。

 下記論稿の著者アジーム・イブラヒムは、中国が中国であることが理由による敵意を高めず、協力の可能性を追求することが重要だと指摘している。しかし、同時に、西側諸国は、中国に対して過度に依存することなく、戦略的物資供給や技術独立を重視しなければならない。中国に対する抑止力のバランスや明確な交戦規則が重要であり、中国による民主国家への不干渉が、中国との共存に不可欠だとしている。米ソ冷戦時代のように、熱い戦争を避けるため、冷静な判断と宥和を選択すべきであるとしている。

 米中関係は相手の意図を読み取り、コミュニケーションを途切れさせず、世界の諸問題や衝突を深刻化させない、エスカレーションさせないという協力の枠組みが必要だ。アメリカが国力を減退させ、中国が国力を増進させる中で、長期的に見れば、米中逆転が起きる可能性は高まっている。そうした中で、アメリカによる一極支配から米中による二極構造へと変化していく。そうした中で、世界が戦争を避けるために、冷戦時代に培った教訓を活かす時期が来ている。

(貼り付けはじめ)

新たな冷戦には独自のルールが必要となる(A New Cold War Needs Its Own Rules

-中国との衝突は避けられないが、コントロールは可能だ。

アジーム・イブラヒム筆

2024年66

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/06/06/china-cold-war-rules-competition/

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ワシントンのホワイトハウスで中国の習近平国家主席とのヴァーチャル会談に参加するジョー・バイデン米大統領(2021年11月15日)。

ソヴィエト連邦との冷戦の記憶は薄れつつある。多くの人は、中国と新たな冷戦が始まるという考えや、差し迫った核による絶滅の脅威(threat of imminent nuclear annihilation)が頭上に漂う世界に戻っているという考えに躊躇(ためら)いを抱いている。専門家の一部は、中国との貿易から戦略物資を削減する取り組みは行き過ぎだと考えている。

残念なことに、多くの人が、中国の人権侵害や地政学的な挑発に対して、それらに対処することで、世界の国々が統合されている貿易関係が混乱することを避けることと求めており、何の影響も発生しないことを望んでいる。

サルマン・ラシュディやシャルリー・エブドに対して団結し、そして今度は再びイスラエルに対しても立ち上がったイスラム世界ですら、中国に対して沈黙を選択している。西側諸国に住む私たちが、同じように宥和を求める圧力(same pressure to appease)から免れているなどと想像しないで欲しい。

新冷戦に代わる選択肢が、激戦であるならば、前者は後者よりも限りなく好ましい。これha,

私たちが直面している二分法(dichotomy)だ。戦争を回避するということは、中国の野望と戦うために何が必要なのかという現実を受け入れることを意味する。

中国とワシントンが、特に世界市場(global markets)で競争するのは当然のことだ。競争は建設的である場合もあれば、破壊的な場合もある。技術的および経済的な競争は、誰にとっても良い結果となる可能性がある。たとえば、アメリカとソ連の間の宇宙開発競争(space race)は、科学技術における恩恵だ。これとは対照的に、戦争は当然、私たち全員をより貧しくさせ、安全性を低下させることになるだろう。

台頭する大国が衰退する大国に遭遇すると、常に暴力が発生する可能性がある。大英帝国とアメリカの間の覇権(hegemonic power)の譲渡のような友好的な移行(transfer)はまれだ。 1990年代の活気に満ちた時代、更には2000年代においても、中国の台頭により中国がアメリカの敵ではなくパートナーになる可能性があるように思われた。ナイオール・ファーガソンのような著名な歴史家は、リーダーシップを共有する世界的な双子である「G-2」と「チャイメリカ(Chimerica)」について語った。これは中国の一部の人たちに受け入れられている考えだ。

しかし、そうした世界は、中国共産党(Chinese Communist PartyCCP)において、習近平が政権を掌握した2012年に終焉を迎えた。習近平は、中国が地球上で最も強力な国になる運命に揺るぎない信念を持ち、西側諸国に対する復興主義者の熱意(revanchist fervor)を持った漢民族至上主義者(Han supremacist)である。習近平は、他の最近の中国指導者よりも、この国の「屈辱の世紀(Century of Humiliation)」について中国の学校で教えられた教訓を吸収してきた。中国の教科書によると、この期間は、第一次アヘン戦争から中国共産党が権力を掌握するまでの期間のことである。この時期、西側諸国は中国の首を絞め続けた。

今日、再び熱い戦争が起こる可能性があるが、それに対しては冷戦がより良い選択肢だ。

習近平の中国共産党総書記(CCP general secretary)への昇格が実現したとき、中国政府は容赦ない地政学的競争の道を選択した。おそらく一部の前任者とは異なり、習近平は、既存のグローバル化した自由主義秩序(incumbent globalized liberal order)内での必然的な中国権力の台頭が中国の「正当な立場(rightful standing)」にとって十分であるとは考えていない。米大統領ジョージ・HW・ブッシュ、ビル・クリントン、ジョージ・W・ブッシュは皆、中国がグローバル化した世界経済の中心となる未来を予見し、黙認したが、その中で、アメリカは引き続きこの世界秩序のハードパワーの執行者であった。習近平は、そのような取り決めは中国の力と潜在力に不当な制約を課すものだと考えている。

言い換えれば、習近平は、前任者たちがそうしたように、アメリカが制定し強制する世界秩序が、中国の必然的な成功への道であるとは考えていない。むしろ、彼はそれを、挑戦しなければならない束縛(straitjacket)だと考えている。彼は同じように世界的にアメリカの力に挑戦したいと考えている。彼はウクライナでも同様のことを行っており、ロシアの軍産基盤を支援し、モスクワの侵略を非難することを拒否している。習近平はまた、ハマス、ヒズボラ、その他の代理勢力を通じて中東に大きな不安定化をもたらすテヘランの影響を考慮し、中国がイランの石油の主要顧客となり、イランの軍事近代化を支援している。習近平は、アメリカに対抗して深まりつつあるイランとの連携を維持するため、フーシ派反政府勢力(Houthi rebels)を巡る航路など共通の利益を犠牲にする用意がある。

もちろん、中国が自国の再建を可能にした貿易から利益を得ることを依然として望んでいるため、その全てが常にそうであるとは限らないが、現在の国際秩序の規範や制度が、中国共産党の気まぐれや企みを制約する可能性がある場合には、習近平の提唱している「チャイニーズ・ドリーム(Chinese Dream)」を確保するために、その全てに挑戦しなければならない。

現在の国際的な制度的秩序は、中国共産党だけでなく、グローバルイーストとグローバルサウスの大部分の動機ややり方と衝突する価値観や規範を前提としている。西側の偽善は、確かにそれらは偽善ではあるけれども、中国のレトリック攻撃に対して危険なほど脆弱になっている。アメリカによる、悲惨かつ誤った戦争の真最中にあるイスラエルへの支援により、アメリカの立場は世界的に弱体化している。アメリカ主導の秩序と協力してきた長い歴史を持つインド、パキスタン、インドネシアを含む第三世界の国々は、最近の国連総会での投票結果が示しているように、中国が西側の行動を牽制できるようになる、多極化世界を非公式に、あるいは公然と応援している。中国のソフトパワーは、残忍な人権侵害に対する抗議活動をかき消すほど遠く離れた北京において仲介された、サウジアラビアとイランの国交回復合意などの成果を上げている。

現在の中国共産党を支配している世界観は、西側諸国との対決、そして西側諸国が第二次世界大戦後に構築し、冷戦終結時に作り直した国際統治システムの転覆、占領、破壊に取り組んでいる。

西側諸国の指導者たちは、この現実を認識し、世界システムとその価値観に対する攻撃に適切に対応することができる。理由が何であれ、彼らがそうしないことを選択した場合、それは紛争の、善意による回避とはならない。それは、弱みを察知し、更なる要求をするだけの危険な権威主義体制に対する宥和(appeasement)に過ぎない。中国がより強力になり、抑制力を失っていることで、熱戦のリスクが増大している。

中国自体も、道徳的にも戦略的にもより強硬な姿勢を正当化するほどの深刻な国内課題に直面している。最近の中国共産党中央委員会政治局(Politburo)の粛清、景気低迷、信用危機、企業や資本逃避(capital flight)の取り締まりにより、中国は特に制裁に対して脆弱になっている。習主席は久しぶりに、アメリカがいくつかの重要な難題、特に半導体への技術禁輸問題を解決し、アメリカ企業の中国からの投資引き揚げの流れを逆転させることを求めている。西側諸国は譲歩(concessions)を強要し、中国の軍事技術を後追いの状態においておけるだけの影響力を持っている。

中国との新冷戦は、紛争と競争を確立された範囲内に厳密に制限し、真の紛争に波及する可能性を制限するだろう。ソ連に対する冷戦から私たちが学べる貴重な教訓がある。

第一に、冷戦は慎重に行われた熱戦であるかのように語られてはならない。中国政府の敵対的な立場を認めて適切に対応することと、中国であるという理由だけで中国に対する敵意を高めることにイデオロギー的に関与することは別だ。冷戦が示すように、一般的な正反対の対立の中には、アメリカとソ連がポリオワクチンで協力している場合でも、現在中国と気候変動やパンデミックで協力している場合でも、協力の例が含まれる可能性がある。これは、世界の人権や国際秩序に対する中国の攻撃に全面的に従うことを要求するものではなく、問題を慎重に切り離し、独自のスペースを作り出すことを要求するものだ。

1990年代と2000年代の経験が示すように、アメリカと中国の間で協力は可能だった。将来の中国政権が西側諸国およびルールに基づく国際秩序(rules-based international order)とのより友好的で協力的な関係を選択できるよう、私たちは扉を開いたままにしておくべきである。習近平が権力を握っている間に、これが起こる可能性は低いが、中国が現在の行動を撤回する限り、西側諸国はそれが可能であるとシグナルを送り続ける必要がある。

中国はソ連ではない。ソ連のように、戦争の失敗や軍拡競争によって経済的に挫折することはない。モスクワに対して有効だった解決策は、中国に対しては有効ではないかもしれない。それは、特に北京もまた、冷戦に関する歴史書を読むことができるからだ。

しかし、私たちが長期に​​わたる紛争に陥っているという現実を考慮すると、戦略的物資供給(strategic supplies)を中国に依存しないことが絶対に必要となる。中国はアメリカの技術から戦略的に、特に軍事的に独立するために、最善を尽くしている。西側諸国も同様に、中国の技術、バリューチェイン、製造業の戦略的独立性を発展させなければならない。西側経済と防衛力に対する、非対称的なレバレッジは災厄を招くことになる。抑止力の安定したバランスにより、ソ連との対決中に大惨事は避けられた。中国に対してもまたそうなる可能性がある。

紛争から抜け出す道を提供すること(providing a path out of conflict)は、この新たな競争において何が許容され、何が許容されないか、そして最終的にどのようなステップが紛争につながるのかについて明確な一線を引くことを意味する。曖昧さがあるとエスカレーションが起こる。エスカレーションはすぐに手に負えなくなる可能性がある。民主政治体制国家への不干渉により、中国は受け入れ可能な世界的パートナーとなり、無数の敵対的な国家行動にもかかわらず、アメリカとの共存が可能になるだろう。経済戦争やサイバー戦争(economic and cyberwarfare)といった現在の敵対行為、特にイギリス選挙管理委員会やアメリカ軍施設などを標的とした行為には、長期にわたるエスカレーションのリスクが伴う。しかし、西側諸国は、これらの犯罪行為を非難以上にエスカレートさせるつもりはないことを既に示しており、おそらくそれが私たちにできる最善のことである。

これまでのところ、戦略的曖昧さ(strategic ambiguity)が唯一明確に機能している例は、台湾に対するアメリカの立場である。そしてその場合、台湾に間違った動機を与えたり、無用な不安を煽ったりしないように、政策を維持することができる。しかし、それ以外の場合は全て、アメリカが中国の何らかの行動を懸念するのであれば、その懸念を明確に説明し、一線を越える場合に、どのようなコストを課す準備ができているかを事前に正確に述べるべきだ。明確な交戦規則(clear rules of engagement)は冷戦時代の紛争管理に有益だった。それらは新冷戦にも役立つだろう。

このような見立ては西側の人々の懸念を掻き立てることだろう。それは、私たちの思考と内省を研ぎ澄ますはずだ。しかし、宥和は有益な選択肢でも道徳的な選択肢でもない。私たちは、直接的な軍事衝突、つまり熱い戦争への不必要なエスカレーションを避けるために必要な行動について、冷静に判断しなければならない。

冷戦は恐ろしい時代だった。しかし、私たちが思っているよりもうまく管理されていた。戦争は避けられた。熱い戦争はなかったし、現在もあってはならない。実際、中国は冷戦時代のソ連のように激しい代理戦争(proxy wars)に資金を提供してはいない。中東におけるイランの植民地獲得の野心やソ連のイデオロギー闘争とは異なり、中国の目標はより独善的であるが、恐ろしいほど偽りのないものである。

そして、少なくとも、その意味では、政府、学者、軍隊内の「冷戦の心性(Cold War mentality)」は、本能的な宥和、あるいはその恐ろしい2つの要素、制御不能なエスカレーション(uncontrolled escalation)を避けるためにまさに必要なものなのかもしれない。私たちは、この新冷戦を正確に把握し、それに応じて行動する準備をしなければならない。

※アジーム・イブラヒム:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。アメリカ陸軍大学戦略研究所研究教授。ワシントンのニューラインズ戦術・政策研究所部長。著書に『過激な起源:なぜ私たちはイスラム過激派との戦いに敗れつつあるのか(Radical Origins: Why We Are Losing the Battle Against Islamic Extremism)』と『ロヒンギャ族:ミャンマーの隠された大量虐殺の内側(The Rohingyas: Inside Myanmar’s Hidden Genocide)』がある。ツイッターアカウント:@azeemibrahim

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる
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ビッグテック5社を解体せよ

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 米中戦争についてはその危険性が高まっているということを主張する人々が多くいる。台湾有事、中国が台湾に軍事侵攻して、台湾を防衛するアメリカ、そして、日本と戦争状態になるという主張がある。中国は既に武力に訴えなくても、台湾を統一することができるようになっているということはアメリカでも言われている。台湾に対して武力を用いないとなれば、中国が他に武力を用いることは考えられない。また、中国がアメリカに代わって、世界覇権国になる可能性が高いが、アメリカの凋落を中国は熟した柿が落ちてくるのを待つ、熟柿作戦で十分だ。わざわざ木を揺さぶって、柿を無理やり落とすようなことは必要ない。アメリカが挑発しない限り、中国は戦争を起こさない。

 しかし、中国は習近平がこれまでのルールを変更して、3期目の国家主席を務めている。また、中国国内政治において重要な勢力である中国共産主義青年団派(Communist Youth League FactionCYLF、共青団派、団派)を最高指導部層から排除している。そして、「工航天系、jungonghangtianxi」と呼ばれる、国防・航空宇宙産業出身者たちが多数、中国共産党中央政治局に入っている。彼らは、軍事と最先端技術の知識を持つ人材である。そして、こうした人事は、中国の戦争に備えた体制、アメリカの不安定さから起きるかもしれない突発的な事態に備える体制を整えている。中国は戦争を起こす意図は持っていないが、怠りなく、戦争に備える態勢を整えている。

 アメリカとアメリカの同盟諸国(アジアでは日本ということになる)は、中国の膨張に備えて、中国を抑止できるようにしておかねばならない。抑止力の強化、中国の封じ込めこそが重要だという論である。しかし、これでは、アメリカ(と同盟諸国)、中国の双方が軍拡競争を行うということになる。軍備を増強して、安心感を得ても、相手は不安を感じ、軍備を更に増強する。これがずっと繰り返されていくという、「安全保障のディレンマ(security dilemma)」に陥ってしまう。国力が減退し続けているアメリカは中国との軍拡競争をすべきではない。そんなことをすれば、自分で死期を早めるようなものだ。また、アメリカは西側諸国を対中包囲網に引き入れようとしているが、西側先進諸国の国力も衰退しつつある。一方、非西側諸国は国力を増進させている。大きな流れで言えば、中国を封じ込めることはできないし、非西側諸国の国力の膨張を停めることはできない。

 短期的、中期的に見て、米中両国は「G2」体制を形成し、世界の平穏維持に努めるべきだ。そして、G2の枠組みを通じて対話を行い、無用な衝突を避ける、このことが何よりも重要だ。米中戦争という馬鹿げた幻想に乗せられて、衝突することこそは人類の大いなる不幸である。

(貼り付けはじめ)

中国はどれほど戦争の準備ができているのか?(How Primed for War Is China?

-紛争の危険信号が赤色で点滅している。

マイケル・バックリー、ハル・ブランズ筆

2024年2月4日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2024/02/04/china-war-military-taiwan-us-asia-xi-escalation-crisis/

中国が戦争を始める可能性はどのくらいあるか? これは今日の国際情勢において最も重要な問題かもしれない。中国が台湾や西太平洋の別の目標に対して軍事力を行使した場合、その結果はアメリカとの戦争、つまりこの地域とより広い世界の覇権(hegemony)をめぐって争う核武装した二人の巨人の間の戦いになる可能性がある。ウクライナと中東で続く戦争の最中に中国が攻撃すれば、世界はユーラシアの主要地域全体で連動する紛争に飲み込まれ、第二次世界大戦以来例のない世界規模の大火災となるだろう。

米中戦争についてどれだけ心配すべきだろうか?

最近のワシントンと中国の間のハイレヴェル外交の慌ただしさにもかかわらず、危険な兆候は確かに存在している。中国の習近平国家主席の下、中国政府はここ数十年で最大規模の軍事力増強の一環として、船舶、航空機、ミサイルを増強している。気まぐれな海外投資を呼び戻そうとする最近の取り組みにもかかわらず、中国は燃料と食料を備蓄し、制裁に対する経済の脆弱性(vulnerability)を減らそうとしている。これは紛争が近づくと取られるかもしれない措置である。習主席は、中国は「最悪かつ極端なシナリオ(worst-case and extreme scenarios)」に備え、「強風、荒れた海、さらには危険な嵐(high winds, choppy waters, and even dangerous storms)」に耐える準備をしておく必要があると述べた。これら全ては、中国政府がフィリピン、日本、インドを含む近隣諸国との関係でますます高圧的(時には暴力的)になり、台湾を攻撃し、封鎖し、場合によっては侵略する能力を定期的に宣伝している中で起こっている。

アメリカ政府高官の多くは、戦争の危険性が高まっていると考えている。ウィリアム・バーンズCIA長官は、習主席が2027年までに台湾を占領する能力を模索していると述べた。また、中国経済が苦戦する中、一部の観察者(伝えられるところによれば、アメリカ情報アナリストを含む)は、ピークに達した中国が中国からの注意をそらすために攻撃的になる兆候を探している。内部の問題を解決するか、まだ可能なうちに利益を固定するためだ。

他のアナリストたちは、中国の侵略のリスクは誇張されていると考えている。一部の学者は、アメリカが中国を刺激しなければ、この危険は管理できる可能性が高いと述べているが、これは中国が自国に有利に機能してきた現状をひっくり返すつもりはないという長年の主張の反映だ。中国は、1979年のヴェトナム侵攻以来、戦争を始めていないと指摘する人もいる。また、中国には陽動戦争(diversionary war)の歴史がないと主張して、経済減速やその他の国内問題に対応して中国が戦争を起こす可能性があるという見通しを否定する人もいる。これらの議論を結びつけているのは、中国の行為の基本的な継続性に対する信念である。つまり、40年以上悲惨な戦争を始めていない国が今も戦争を始める可能性は低いという考えである。

私たちは、この自信は危険なほど見当違いであると考えている。国の行動は、その戦略的伝統に劣らず、その国の状況によって深く形成されており、中国の状況は爆発的に変化している。政治学者や歴史家たちは、大国が多かれ少なかれ戦争する傾向にある様々な要因を特定している。このような4つの要因を考慮すると、かつては、平和的な隆盛を可能にしていた条件の多くが、現在では暴力的な衰退を促進している可能性があることが明らかになる。

第一に、中国が争っている領土問題やその他の問題は、かつてほど妥協や平和的解決(compromise or peaceful resolution)が受けにくくなり、外交政策がゼロサムゲームになっている。第二に、アジアの軍事バランスは変化しており、中国政府が戦争の結果について危険なほど楽観的になる可能性がある。第三に、中国の短期的な軍事的見通しが改善するにつれて、長期的な戦略的および経済的見通しは暗くなっており、この組み合わせが過去に修正主義諸大国(revisionist powers)を更に暴力的にすることがよくあった。第四に、習国家主席は中国を、特に悲惨な誤算と多大な費用がかかる戦争(disastrous miscalculations and costly wars)を招きやすい種類の個人崇拝的独裁政治体制(personalist dictatorship)に変えてしまった。

これは、中国が特定の週、月、または年に台湾を侵略すると言っているのではない。紛争の引き金は予期せぬ危機であることが多いため、紛争がいつ起こるかを正確に予測することは不可能だ。1914年にヨーロッパが戦争の準備を整えていたことは今では分かっているが、もしオーストリア大公フランツ・フェルディナンドを乗せた車の運転手が歴史上最も運命的な誤った道を歩まなければ、第一次世界大戦はおそらく起こらなかったであろう。戦争は地震に似ている。戦争がいつ起こるかを正確に知ることはできないが、リスクの程度の高低につながる要因を認識することはできる。現在、中国のリスク指標は赤く点滅している。

米中戦争の可能性は一見すると遠いように見えるかもしれない。中国政府は44年間大規模な戦争を行っておらず、中国軍は1988年に南沙諸島での小競り合いで中国のフリゲート艦がヴェトナム海軍の水兵64人を機銃掃射して以来、外国人を殺害していない。いわゆるアジアの平和、つまり、1979年以来、東アジアで国家間戦争が起こっていないことは、中国の平和の上に成り立っている。

戦争がないことは、侵略がないことを意味する訳ではない。中国政府は軍事力と準軍事力を利用して、南シナ海と東シナ海での権限を拡大してきた。近年、中国はインドとも血なまぐさい争いを繰り広げている。それにもかかわらず、アメリカがいくつかの戦争を戦った一方で、中国政府が大規模な戦争を回避してきたという事実により、中国政府当局者たちは、自国が世界的大国への道を独自に平和的に歩んでいる(peaceful path)と主張することができた。そして、戦争を心配する人々は、二世代にわたる平和によって記録的な成長を遂げた中国が、なぜこれほど劇的な方向転換をするのか説明するよう強いられる。

一見平和そうに見える新興大国が破綻するのはこれが初めてではない。1914年以前、ドイツは40年以上大規模な戦争をしていなかった。1920年代、日本は海軍の制限、アジアでの権力の共有、中国の領土一体性の尊重を誓約する条約に署名する際、多くの外国専門家たちを責任ある利害関係者のように見ていた。2000年代初頭、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領はNATOに加盟し、ロシアを西側に近づけることについて熟考した。それにもかかわらず、これらの国々がそれぞれ野蛮な征服戦争を開始したということは、状況は変化するという基本的な真実を強調している。同じ国でも、状況に応じて、異なる行動を取る可能性があり、場合によっては極端な行動する可能性がある

そのような状況の1つは、領土紛争に関係する。ほとんどの戦争は、地球のどの部分を誰が所有するかをめぐる争いだ。1945年以降に起こった国際紛争の約85%は、領土の主張を中心に展開している。領土には象徴的または戦略的な重要性があることが多いため、共有するのは困難だ。国家が地域を分割することに同意した場合でも、都市、石油埋蔵量(oil reserves)、聖地(holy sites)、水路、戦略上の高地などの最も貴重な部分をめぐって争いになることがよくある。更に言えば、領土を確保するには、フェンス、兵士、入植者(settlers)の形で物理的に存在する必要がある。したがって、国家が同じ縄張りを主張すると、頻繁に望ましくない接触が発生する。領土紛争は、一方の側が自国の主張が急速に侵食されることを懸念している場合、特にエスカレートする可能性が高い。神聖な土地が失われつつある、あるいは国が敵によって解体されるかもしれないという信念は、国境をより安全に保っている国であれば避けるであろう侵略を引き起こす可能性がある。

戦争の第二の原因は、軍事バランスの変化だ。戦争は様々な問題をめぐって行われるが、全ての根本的な原因は共通している。それは誤った楽観主義だ。こうした事態は、両方が目的を達成するために武力を行使できると信じている場合、言い換えれば、双方が勝てると考えている場合に起こる。もちろん、両方にとって、真に有利な戦争はほとんどない。つまり、少なくとも一方が、そして非常に多くの場合は両方が、敵の力を悲惨なほど過小評価していた。つまり、競争的または曖昧な軍事バランスが戦争を引き起こす。したがって、新しい技術の導入や弱い側による大規模な軍事増強など、特定のバランスを、競争力を高めたり曖昧にしたりすると、戦争のリスクが高まります。

第三に、諸大国は将来の衰退を恐れると好戦的になる。地政学的競争は強烈で容赦がないので、各国は相対的な富と力(wealth and power)を神経質に守っている。最も強力な国であっても、経済の停滞、戦略的包囲網、または自国の国際的地位を脅かし、敵の略奪に晒される、その他の長期にわたる傾向に悩まされると、暴力的な不安に陥る可能性がある。武装を強化しながらも不安は増大し、衰退の瀬戸際にある大国は、必要なあらゆる手段を使って不利な傾向を阻止しようと熱心に、あるいは必死になるだろう。ドイツ帝国、大日本帝国、そしてプーティン大統領のロシアにとって、それは最終的には戦争を意味した。

最後に、国家の行動はその政権によって形作られる。個人崇拝的な独裁国家は、多数の手に権力が握られている、民主政体国家や専制国家に比べて、戦争を起こす可能性が2倍以上高い。独裁者は紛争の代償に晒されることが少ないために、より多くの戦争を起こす。過去100年間で、戦争に負けた独裁者が権力の座から転落したのはわずか30%であったのに対し、戦争に負けた他のタイプの指導者は投票で排除されるか、その他の方法で政権の座から追放された。ほぼ100%排除される。独裁者が過激主義に傾くのは、親愛なる指導者の要求に全力で応えようとするおべっか使いたちに囲まれているからだ。独裁者はまた、血と土のナショナリズムが国内での圧制を正当化するのに役立つため、海外に現実の敵や想像上の敵を仕立て上げていく。そのため、限られた政府の指導者は通常、控えめに統治し、忘れ去られていくのに対し、ドイツのアドルフ・ヒトラー、イタリアのベニート・ムッソリーニ、ソ連のヨシフ・スターリン、中国の毛沢東、イラクのサダム・フセイン、ロシアのプーティンなどの独裁者は、しばしば歴史書に名前を残すようになっている。

これら4つの要因、つまり、確定していない国境、競争的な軍事バランス、否定的な予測、独裁政治は、中国の歴史的な武力行使を説明するのに役立ち、今日でも不気味な影響を及ぼしている。

中華人民共和国は戦いの中から誕生した。中国は一世紀にわたる外国帝国主義(foreign imperialism)に耐え、1937年の日本侵攻後、アジアで第二次世界大戦の矢面に立たされた。少なくとも1400万人の中国人が死亡した。その後、1945年から1949年にかけて、中国国共内戦は血なまぐさい最高潮に達し、共産主義者が権力を握るために戦う中で少なくとも200万人以上が殺害された。

こうした紛争のさなか、中国は極度の好戦国家(hyper-belligerent state)として台頭した。数十年にわたり、この国は世界で最も苦境に立たされた国の1つであり、5つの戦争を戦い、冷戦時代の米ソ両超大国(superpowers)の主敵となった。中国は戦争のあらゆる危険因子を示していたため、この暴力的な記録は驚くべきことではない。

第一に、中国は個人支配(one-man rule)の権化(apotheosis)である毛沢東によって率いられていた。毛沢東は日常的に同僚を粛清し、不可解で移り変わる論理的根拠に基づいて、しばしば夜中に寝ぼけながら一方的に決定を下した。彼はまた、人命に対する驚くべき軽視を示した。毛沢東が生きているうちに中国を超大国に変えるという無謀な計画である大躍進政策中に、およそ4500万人が飢えたり、殴られたり、射殺されたりした。この悲惨な作戦の背後に国民を結集させる必要もあり、毛沢東は1958年に台湾の国民党政府が保有する島々を砲撃して国際危機を煽動した。

毛沢東はサディスティックだったかもしれないが、これほど冷酷でない指導者であったら、これほど打ち砕かれた国家について、平和で統一された状態に保つのにより苦労したことだろう。内戦に勝利した後、中国共産党(Chinese Communist PartyCCP)は中央政府の権限を村ごとに再賦課し、少数民族、軍閥(warlords)、国民党支持者による抵抗勢力を苦労しながら、根絶しなければならなかった。更に悪いことに、日本とヨーロッパの諸帝国の崩壊により、中国の一部は、敵対的か不安定な、あるいはその両方の新たな国々に囲まれた状態になった。中国の国境の大部分はある程度争われていた。1960年代までに、ソ連との国境は世界で最も軍事化された地域となった。台湾はアメリカの支援を受けた、ライヴァルの中国国民党政府の拠点であり、本土の再征服を公然と計画していた。インドはチベット亡命政府(Tibetan government in exile)を受け入れ、広範囲の中国領土を自国領土と主張した。そして中国の中心地は、冷戦の2つのホットスポット、インドシナと朝鮮半島の間に挟まれていた。

中国は自らが常に引き裂かれる危険に晒されており、毛沢東が引き起こした経済的大惨事と政治的混乱によって、こうした歴史的トラウマはさらに強調された。しかし、北京は陸の隣国それぞれに対して常に実行可能な戦略を持っていた。なぜなら、中国の巨大な人口により、北京が「人民戦争(people’s war)」と呼ぶ、人海攻撃(human wave attacks)とゲリラ襲撃(guerrilla raids)を組み合わせた方法で敵国を飲み込むことができたからである。全体として、それは、領土紛争に巻き込まれ、無尽蔵に見える人的資源で武装した残忍な独裁政権という、可燃性の高い組み合わせ(combustible combination)となった。

このように中国は紛争から紛争へと戦い続け、特に脆弱だと感じたり、差し迫った立場の低下を恐れたりすると暴力を振るった。 1950年、中国は核報復(nuclear retaliation)の危険を冒して、北朝鮮奥深くまで進軍してきたアメリカ軍を攻撃した。1950年代後半、中国は台湾海峡の沖合の島々にある国民党の守備隊を砲撃し、更に2つの戦争を始めるところだった。1962年、中国が領有権を主張するヒマラヤ山脈にインド軍が前哨基地を建設した後、中国政府はインド軍を攻撃した。ヴェトナム戦争中、中国はアメリカ軍と戦うために数万人の軍隊を派遣した。1969年、ソ連軍の大幅な増強を受けて、北京はウスリー川沿いでソ連赤軍を待ち伏せ攻撃し、再び核戦争の危険を引き起こした。10年後、ヴェトナムがソ連軍の受け入れを開始し、中国政府の唯一の緊密なパートナーの一つであるカンボジアに侵攻した後、中国はヴェトナムを攻撃した。

その後、中国の銃はほとんど沈黙した。例外はあるが、最も顕著なのは1995年と1996年に中国が台湾付近にミサイルを発射した時だ。しかし一般的に言えば、1980年から2000年代半ばにかけて状況が劇的に変化したため、中国政府はそれほど苛烈で攻撃的ではなくなった。

まず中国最高指導部が軟化した。1976年に毛沢東が亡くなり、最終的に鄧小平が後任となったが、鄧小平は毛沢東によって粛清され、個人支配の危険性を理解していた。鄧小平の指導の下、最高級指導者たちの任期制限(term limits)が設けられた。全国人民代表大会と中国共産党中央委員会は、定期的に会合を開き始めた。専門化された官僚制(professionalized bureaucracy)が形成され始めた。これらの制度は完璧とは程遠いものだったが、毛沢東政権下では全く欠けていた権力に対するチェック機能(checks on power)を生み出した。

第二に、中国の地政学的立場が改善され、領土保全に対する脅威が減少した。1970年代にアメリカが中国に対して開放した後、台湾の敵対政府は外交上の承認とアメリカとの軍事同盟の大部分を失った。ソ連を追い詰めるため、アメリカは中国と準同盟(quasi-alliance)を結び、先端技術を中国企業に移転した。台湾、ソ連、インド、ヴェトナムは、アメリカの反応を引き起こす可能性なしに中国の領土を侵害することはもはや不可能となった。そして、1991年にソ連が崩壊すると、中国の陸上国境に対する主要な脅威はほぼ完全に消滅した。ロシアの支援がなければ、インド、ヴェトナム、そして中央アジアの新興諸国は中国の国境に対抗できる立場になかった。その代わりに、中国との関係正常化に動いた。

第三に、中国の将来に対する見方が明るいものとなった。アメリカや他の民主政体諸国との接近を経て、中国は世界経済への容易なアクセスと国連安全保障理事会の常任理事国の地位を獲得した。1970年代後半から2000年代初頭にかけて、その経済は驚異的なペースで成長した。各国は急成長する市場にアクセスするため、中国政府に好意を示した。イギリスは香港を返還した。ポルトガルはマカオを放棄した。アメリカは中国の世界貿易機関(WTO)への加盟を急いだ。中国経済が大混乱に陥り、世界の最も強力な国々が中国の台頭を歓迎している中、中国政府には日に日に良くなっているように見える現状をひっくり返す動機がほとんどなかった。

最後に、中国には征服の機会がほとんどなかった。経済的、外交的影響力が拡大していった一方で、中国軍は未だ係争中の領土、そのほとんどが海上にある領土を占領する能力が明らかに無かった。2000年代以前のみすぼらしい空軍と海軍では、中国の台湾侵攻は「百万人の水泳大会(million-man swim)」のようになり、日本の最先端の部隊との衝突は数時間でけりがついていたかもしれない。最も重要なことは、アメリカが海洋アジアにおける中国の侵略を鎮圧することが期待できることだった。湾岸戦争でアメリカ軍がイラク軍を壊滅させたのを見た中国指導者たちは、鄧小平の格言を受け入れて、「韜光養晦(とうこうようかい、to hide their light and bide their time)」、光を隠し、時を待つ傾向にあった。

今日の中国は隠れて入札することは終わった。その代わりに、第二次世界大戦後、どの国よりも速いペースで軍艦やミサイルを大量生産している。中国の航空機と軍艦は台湾とアメリカの目標への攻撃をシミュレートしている。アジアのシーレーンには中国軍の前哨基地が点在し、中国沿岸警備隊や漁船があふれており、中国政府が主張する海域から近隣諸国を図々しくも追い出している。一方、中国はロシアによるウクライナへの残虐行為を支援し、中印国境に軍隊を集結させている。

中国が戦闘的になった理由の1つは、それができるからだ。中国のインフレ調整後の軍事予算は、1990年から2020年の間に10倍に拡大した。現在、中国政府はアジアの他の全ての国を合わせた支出を上回っている。世界最大の弾道ミサイル戦力と海軍を擁する。2020年代の終わりまでに、中国の核兵器保有量はワシントンの核兵器に匹敵する可能性がある。台湾から500マイル以内にある唯一の基地である、沖縄のアメリカ軍基地を粉砕できる通常ミサイルでは、国防総省が中国の台湾攻撃に即座に対応できるか、ましてや打ち破ることができるかは、もはや明らかではない。歴史的に、アメリカは長引く戦争で敵国を上回る生産力を誇る製造力に頼ってきた。しかし、中国が世界の工場となった今、中国政府は、正しいかどうかにかかわらず、戦争が長引けば長引くほど軍事バランスは、更に中国側に有利に変化すると信じているかもしれない。

領土紛争(territorial disputes)が激化する中、中国も戦争への動機を強めている。第一に、台湾を統一する平和的手段は急速に失われつつある。1995年には、台湾人よりも自分たちはもっぱら中国人であると考える台湾国民の方が多く、独立よりも中国との統一に向かうことを好む人が多かった。現在、人口のほぼ3分の2が自分たちをもっぱら台湾人であると考えているのに対し、もっぱら中国人であると自認する人はわずか4%だ。台湾人の多くは、今のところ現状維持を支持しているが、人口の49%は、無期限の現状維持(27%)や統一(12%)よりも、最終的には独立することを望んでいる。一方、アメリカは台湾との関係を強化しており、ジョー・バイデン米大統領は、アメリカが中国の攻撃から台湾を守ると少なくとも4回宣言している。アメリカと台北が中国との潜在的な紛争に備えて軍事体制を見直している中、中国政府は最も切望する領土の運命について警戒を強めている。

南シナ海における中国の軍事的プレゼンスは大幅に拡大しているが、その外交的地位は損なわれつつある。2016年、ハーグの常設仲裁裁判所は、南シナ海に対する中国の広範な主張は無効であるとの判決を下した。訴訟を起こしたフィリピンは、2022年以来、自国の海洋権(maritime rights)を再主張し、アメリカが自国の領土を防衛するために、追加の軍事基地にアクセスすることを認めている。日本は、マニラと準同盟(quasi-alliance)を結んでいるほか、イギリス、フランス、ドイツを含む多くの国が中国政府の主張に反して、南シナ海に軍艦を派遣している。これに対抗して、中国は物理的に攻撃的になった。例えば昨年、中国沿岸警備隊の船はフィリピンの補給船を放水銃で爆破し、第二トーマス礁に駐留する軍関係者に食料を届けることを妨害した。

中国の軍事力が増大するにつれて、そのより大きな地政学的見通しは暗くなっている。中国経済は最近、アメリカに比べて停滞し、縮小している。生産性は低下し、負債は爆発的に増加している。中国政府がこの問題に関する統計の発表を一時停止した2023年半ばの時点で、若者の20%以上が失業しており、この数字はほぼ間違いなく問題の深刻さを過小評価している。裕福で教育を受けた大勢の中国人が金と子供たちを国外に送り出そうとしている。中国が世界史上最悪の高齢化危機に見舞われるにつれ、こうした問題は更に悪化するだろう。今後10年間で、中国は7000万人の労働年齢成人を失う一方で、1億3000万人の高齢者が増えることになる。

最後に、中国はますます敵対的な戦略環境に直面している。世界で最も裕福な国々は、経済と軍事の革新の生命線であるハイエンド半導体へのアクセスを遮断し、中国政府に対して、毎年新たな貿易と投資の制限を課している。 AUKUS、日米豪印戦略対話(Quadrilateral Security DialogueQUAD)、日米韓三カ国協定などの反中協定が急増している。中国の唯一の大国の同盟国であるロシアは、ウクライナで軍隊による破壊を引き起こし、多くのヨーロッパ諸国の世論を反中国にさせている。

もし中国がテクノクラートたちの委員会によって統治されていれば、外交的妥協と経済改革で、こうした圧力に対抗するかもしれない。しかし、中国は独裁者によって統治されており、その壮大な目的を達成するためには、中国国民の幸福を犠牲にする用意があることを既に示している。

2012年に権力の座に就いて以来、習近平は自らを終身主席(chairman for life)に任命し、自らの統治哲学を憲法に盛り込み、数千人の潜在的なライヴァルを粛清してきた。習近平は、中国の広大な領土主張に関して妥協のない立場をとっている。習は2018年、「祖先が残した領土を1インチたりとも失うことはできない」とジェームズ・マティス米国防長官に警告した。習は中国を超大国にすることの正当性を主張してきた。国営メディアは現在、毛沢東の下で中国は立ち上がったと宣言している。鄧小平の下で中国は豊かになった。そして習金平の下で中国は強大になるだろう。近年、習近平は内部演説で中国軍に戦争の準備をするよう指示し、中国国民に「極端なシナリオ(extreme scenarios)」に備えるよう指示した。

おそらく、このレトリックはただの暴言なのかもしれない。しかし、残忍なゼロコロナ封鎖、新疆の強制収容所、香港の自由の粉砕など、習近平の行動の多くは、本質的な冷酷さを示すものだ。中国が経験している他の変化と組み合わせると、これらの形態の内部侵略は、今後待ち構えているかもしれない、外部侵略について私たちを非常に緊張させるはずだ。

もちろん、国家が何も考えずに戦争か平和を選択するということはない。彼らはまた、世界のより大きな国家からヒントを得る。1930年代、連鎖的に起こる国際的な混乱は、既存の秩序を守る人々の士気をくじき、それを攻撃しようとする人々を勇気づけた。それでは、ヨーロッパにおける第二次世界大戦以来最大の戦争と、中東での拡大する紛争によって、中断された現在の混乱は、中国の選択をどのように形作る可能性があるのだろうか?

一つの見方は、ロシアのウクライナ戦争が、どれほど手厳しく裏目に出るかを示し、他の侵略戦争の可能性を低くするというものだ。バイデン政権高官たちや学識経験者の一部が支持するこの話では、中国はプーティン大統領の不正な土地強奪から厳粛な教訓を学んでいるということになる。中国政府は、献身的な防衛者に対する征服がいかに難しいか、独裁的な軍隊が戦闘でいかに劣悪なパフォーマンスを発揮するか、米諜報機関が略奪計画の探知にどれほど熟達しているか、そして民主世界が自由に基づいた秩序の規範に反抗する国をいかに厳しく罰することができるかを学んでいる。中国軍はロシア軍を弱体化させた腐敗の有無を厳しく調べており、その腐敗が思ったよりもずっと深刻であることが判明した。アメリカ政府当局者たちは、中国が最近の出来事を同様の観点から解釈していることを期待しているに違いない。

しかし、私たちはこの解釈を注意深く精査する必要がある。まず、中国がウクライナ戦争についてどう考えているかを知るのは非常に難しい。結局のところ、重要な教訓は、中国人民解放軍の上級大佐や北京のシンクタンク研究員によって発表されたものではない。重要な教訓は、世界に対する認識が個人崇拝政権のあらゆる通常の病理によって彩られている可能性がある、甘やかされた独裁者によって描かれている。習近平の公の発言からすると、今回の紛争が習近平の野心を和らげたり、中国の国家政治を根本的に穏健にしたりする証拠はほとんどない。習近平は、2023年3月にモスクワを訪問した際、プーティン大統領に対し、「現在、私たちがこの100年にしたことのないような変化が起きており、私たちはその変化を共に推進している」と語った。

加えて、習近平は、ウクライナと台湾を比較できるものとは考えていない可能性がある。プーティンが派遣したロシア軍がウクライナで苦戦したのは、ウクライナ戦争が、彼らが準備され、教化されてきた(indoctrinated)戦争ではなかったからでもある。中国は何十年にもわたって台湾をめぐる戦争の準備をしており、統一(unification)が「中華民族の偉大な復興(great rejuvenation of the Chinese nation)」の中心であると兵士たちに厳しく教えていることを考えると、台湾への侵攻は問題ではないだろう。さらに、社会全体で抵抗する能力において、台湾はウクライナより劣ると習近平が考えているとしても、それは彼だけのことではない。アメリカ政府の高官や専門家たちも同様の懸念を表明している。

あるいは、もしかしたら習近平は、アメリカは核武装した大国とはいかなる戦争もしないと結論づけているのかもしれない。なぜなら、アメリカがモスクワと正面から対峙しない理由をバイデンが説明する際に、同じことを言ったからである。おそらくバイデンは、西側諸国の制裁は実際にはそれほど懲罰的ではないと考えているのだろう。戦争が始まって2年が経ち、ロシアはウクライナ領土の20%を支配し、石油やその他の輸出品は新たな市場を開拓し、工場は兵器を大量生産しており、経済は崩壊の危機に瀕していない。そして、おそらくバイデンは、ロシアがウクライナの反撃を切り抜ける一方で、アメリカの政治家たちがキエフに更なる資金と武器を送るかどうかで争っている最近の戦争の軌跡を、独裁国家は民主的な敵よりも強さと回復力を発揮できるという証拠だと考えているのだろう。

明確にしておきたい。習近平が実際に何を考えているのかは分からない。しかし、中国の戦争への動機を強める可能性のある、あまり安心できない別の教訓ではなく、まさにアメリカ人が彼に学ばせたい教訓を彼が学んでいると考えるのは危険である。

中国は最終的に、2025年、2027年、2029年、あるいはこれからも、台湾、あるいはインド、日本、フィリピン、あるいは他の国を攻撃するかもしれない。北京がいつ武力を行使するか、あるいは行使するかどうかを確実に予測することはできない。しかし、戦争になりやすい国なのか、なりにくい国なのか、中国の内的特徴や外的条件によって、暴発するリスクが高いのか、低いのかを評価することはできる。今日、歴史家や政治学者たちが戦争の原因について知っていることの多くは、中国が暴力を振るう素地があることを示唆している。

残念なことに、ワシントンは北京をこの危険な道へと突き進ませているいくつかの要因に影響を与えることはできない。アメリカは中国の人口危機を解決することも、構造的な経済問題を解決することも、習近平のワンマン支配を止めることもできない。例えば、北京の高度技術へのアクセスを緩和したり、インド太平洋でより強力な連合を構築する努力を放棄したりすることで、中国の将来に対する否定的な期待を変えることはできるかもしれないが、そうすることはワシントンの立場を致命的に弱めるかもしれない。アメリカは、競争に勝ち抜くと同時に、深刻な衝突を避けなければならない。その中で、アジアでの戦争がどのような結果をもたらすかについての、中国の楽観論を抑え、北京が屈辱的な敗北を避けるために戦わなければならないと結論付けるのを防ぐことを目指すべきである。

戦争の結果についての中国の楽観論を否定するための要件は、たとえ簡単に満たされるものではないとしても、非常に単純である。その中には、対艦ミサイル、機雷、移動式防空システム、その他の安価だが致死的な能力を持つ武器が満載の台湾も含まれる。無人機、潜水艦、ステルス航空機、そして膨大な量の長距離攻撃能力を使用して、西太平洋に決定的な火力をもたらすことができるアメリカ軍もそうした要因の1つとなる。そして、アメリカ軍に地域内のより多くの基地へのアクセスを許可し、更に多くの国を中国政府との戦いに参加させる恐れのある同盟諸国やパートナーとの協定。中国経済を制裁で打撃し、海洋貿易を阻止できる世界規模の国々の連合。そして経済的、財政的優位性が最終的に決定的であることが判明するまで、民主政体諸国が戦いを継続できる、活性化された産業基盤といったものもある。ワシントンとその友人たちは、既にこれらのあらゆる取り組みを推進している。しかし、彼らは、急速に成熟する中国の軍事的脅威を上回るために必要なスピード、リソース、緊急性を持ってはいない。

2つ目の課題には、抑止力(deterrence)と安心感(reassurance)を組み合わせることが含まれる。これは、習近平の目から見ると、不作為が中国を解体(dismemberment)と屈辱(humiliation)に導く可能性がある程度を制限することだ。中国政府高官たちは、アメリカの政策と台湾の政治が台湾を独立やその他の形での永続的な分離(permanent separation)への道に導いていることを心から懸念しているが、その傾向の主な原因が自国の行動にあることを認識していない。したがって、アメリカは台湾に関して慎重に対処しなければならない。

アメリカ政府は、2022年8月のナンシー・ペロシ連邦下院議長(当時)の台湾訪問のような、台湾の防衛強化には何の役にも立たず、中国の不安と怒りを大いに煽る派手な見せ物は避けるべきだ。アメリカは、とりわけマイク・ポンペオ前米国務長官が提案した「一つの中国」政策(“One China” policy)を捨てて台湾を正式に承認する(formally recognizing Taiwan)という考えを拒否すべきだ。台湾の指導者たちによる独立推進の宣言や行動については反対すべきだ。言い換えるならば、アメリカは台湾を防衛するための信頼できる能力を行使すると同時に、米中どちらの側も一方的に現状を変更すること(unilaterally changing the status quo)を阻止することを目指すという信頼できる誓約を提示しなければならない。

このアプローチには多くの矛盾があるので、その実施は非常に困難だ。アメリカとの同盟関係の強化は、中国の軍事的楽観主義(military optimism)を低下させる可能性があるが、同時に戦争の予感(sense of foreboding)を強める可能性がある。抑止力を強化するために必要な緊急性は、特に中国政策が米大統領選挙戦に巻き込まれる中で、両岸外交(cross-strait diplomacy)に必要な慎重さと一致させるのは難しいかもしれない。強力だが問題を抱えた中国は悪い方向へ進んでいる。戦争への突入を防ぐには、アメリカとその友好諸国が結集できるあらゆる力と節度(strength and sobriety)が必要となる。

※マイケル・バックリー:タフツ大学政治学准教授、アメリカン・エンタープライズ研究所非常勤上級研究員。

※ハル・ブランズ:ジョンズ・ホプキンズ大学ポール・H・ニッツェ高等国際関係大学院(SAIS)ヘンリー・A・キッシンジャー記念世界問題担当優等教授、アメリカン・エンタープライズ研究所上級研究員。ツイッターアカウント:@HalBrands

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