古村治彦です。
第二次トランプ政権の副大統領J・D・ヴァンスは、シリコンヴァレーの大富豪で、今話題のイーロン・マスクとも関係が深いピーター・ティール長年の協力関係を持っており、ティールはヴァンスのキャリアを支援してきた。ヴァンスがティールと初めて会ったのは、2011年のことで、ヴァンスがイェール大学法科大学院(ラースクール)でティールの講演会に聴衆として参加したことが始まりだ。ティールはこの時に、選抜された法科大学院の学生たちと昼食会を開いており、この昼食会に、ヴァンスと、現在、オハイオ州知事選挙出馬に向けて準備をしているヴィヴェック・ラマスワミ(ヴァンスと同じオハイオ州出身で学友であり親友)が出席している。ヴァンスの妻ウーシャも同級生で、ラマスワミとは同じインド系というルーツを持つ。ラマスワミの妻はイェール大学時代に知り合った医者である。ティールと知り合う機会を得て以来、ヴァンスとラマスワミはキャリアにおいて、ピーター・ティールから手厚い支援を受けてきた。
ドナルド・トランプとピーター・ティール
イーロン・マスク、ドナルド・トランプ、J・D・ヴァンス
ティールはヴァンスとラマスワミにビジネスを始める際の企業資金を提供している。ヴァンスは2015年にティールが共同創設者となったミスリル・キャピタルのパートナーとなった。この時期に後にベストセラーとなる回顧録『ヒルビリー・エレジー』(2016年発表)を執筆している。2019年にはヴァンスは地元のオハイオ州に戻り、ヴェンチャーキャピタル会社ナリヤ・キャピタルを創設した。この会社設立を手助けしたのもティールだった。ヴァンスは地元からの政界進出を目指していた。2021年にティールは、ヴァンスを連れて、フロリダ州にあるトランプの邸宅マール・ア・ラーゴに赴き、ヴァンスとトランプを引き合わせて、ヴァンスと熱心なトランプ支持者にすることに成功した。2022年のオハイオ州選出の連邦上院議員選挙では、共和党の候補者を決める予備選挙から激戦となったが、ティールはヴァンスに1500万ドルという、議員選挙では異例の額(史上最高額)の献金を行い、ヴァンスは選挙を勝ち抜いて連邦上院議員となった。
ヴァンスは次に副大統領の地位まで上昇した。2028年の大統領選挙では、トランプの有力な後継者となり、大統領になる可能性もある。ティールはヴァンスを15年近く前にすでに見出し、育ててきた。この関係は容易に切れることはない。ティールは表向きトランプを支持していないが、彼の影響力は、大きいものである。
(貼り付けはじめ)
J・D・ヴァンスとピーター・ティール:トランプの副大統領候補と大富豪との間の関係について知っておくべきこと(JD Vance And Peter Thiel: What To Know About The Relationship
Between Trump’s VP Pick And The Billionaire)
アントニオ・ピクエノ筆
2024年7月16日
『フォーブス』誌
https://www.forbes.com/sites/antoniopequenoiv/2024/07/16/jd-vance-and-peter-thiel-what-to-know-about-the-relationship-between-trumps-vp-pick-and-the-billionaire/
ドナルド・トランプ前大統領の副大統領候補となり、注目を集めているJ・D・ヴァンスは、共和党の大口献金者で、シリコンヴァレーの大富豪ピーター・ティールと長期にわたる協力関係を築いており、ティールは、ヴェンチャーキャピタル時代からオハイオ州選出の連邦上院議員としての役割に至るまで、ヴァンスを一貫して支援してきた。
■重要な事実(Key Facts)
ヴァンスとティールの関係は2011年にまで遡ることができる。ヴァンスがカトリック系の雑誌『ザ・ランプ』に寄稿したブログ記事によると、イェール大学法科大学で、ヴェンチャーキャピタリストのティールが講演を行い、その後に連邦上院議員となっているヴァンスはティールと会った。ヴァンスはティールの講演について「私の人生においてもっともも重要な瞬間」と形容した。
投稿記事の中で、ヴァンスは講演後、法律分野の外の世界でのキャリアの軸を定める計画を立て始めた。ティールは、これまで自分(ヴァンス)が会った中で「おそらく最も賢い人」であり、ティールのキリスト教信仰は「愚かな人はキリスト教徒で賢い人は無神論者だという、私が作り上げた社会的テンプレートに反していた」と書いている。
『ワシントン・ポスト』紙によると、ティールはその後、ヴァンスにとって「非常に素晴らしい指南役(pretty good mentor)」となり、ヴァンスはヴェンチャーキャピタルに転身し、2015年にティールが共同設立したミスリル・キャピタルにパートナーとして加わったと『ポリティコ』誌は報じている。
ワシントン・ポストによると、ヴァンスはまだミスリル・キャピタルに勤務していた2016年に『ヒルビリー・エレジー:危機にある家族と文化の回想録(Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis)』を出版し、将来の大統領選挙に立候補する可能性について熟考し始めた、ヴェンチャーキャピタリストであったヴァンスは一躍脚光を浴びるようになった。
ヴァンスは2017年にミスリル・キャピタルを退職し、ワシントンDCに本拠を置く投資会社レヴォリューションにマネジングディレクターとして入社し、シリコンヴァレーやニューヨーク市などの主要拠点以外の新興企業に投資した。
ヴァンスは2019年にナリヤ・キャピタルという名前で自身のヴェンチャーキャピタル会社を立ち上げ、見過ごされてきた都市の新興企業への投資を目指し、ティールのほか、ヴェンチャーキャピタリストのマーク・アンドリーセンや元グーグルCEOのエリック・シュミットら億万長者の投資家から支援を受けたと『アクシオス』誌は報じている。
『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、ティールはまた、トランプの批判者としての地位を確立していたヴァンスを2021年にマール・ア・ラーゴに連れて行き、トランプ前大統領との関係を円滑化させたということだ。
会談後、ヴァンスはトランプとその政策に同情するようになり、2021年1月6日の連邦議事堂襲撃を軽視し、投票日のわずか数週間前に、2022年の連邦上院議員選挙でトランプ前大統領からの支持を取り付けた。
ヴァンスは2022年の連邦上院選挙で成功を収めたが、ティールから更に多くの支援を集め、ティールから約1500万ドルという記録的な寄付金を受け取り、これは1人の連邦上院議員候補者への寄付としては史上最高額となった。
ヴァンスの選挙運動広告のほほ部べ手は、ティールが寄付した「プロテクト・オハイオ・バヴァューズ・スーパーPAC」に外注されており、ティールが100万ドルを寄付したヴェンチャーキャピタリストのデイヴィッド・サックスを含む約10人の大口寄付者をヴァンスに集めるのに協力したとポリティコは報じている。
ピーター・ティールの純資産は79億ドルと推定されるが、これはフェイスブックの初期投資家の1人としての彼の役割と、ストライプやスペースXの主要投資家であるヴェンチャーキャピタル会社ファウンダーズ・ファンドのジェネラル・パートナーとしての彼の仕事によるところが大きい。ティールはまた、物議を醸している顔認識ソフトウェア企業クリアビューAIにも数百万ドルを投資している。
■脱線(Tangent)
ティール氏の支持は、ヴァンスの2022年上院議員選挙で大きな変化をもたらすかに見えたが、当時のヴァンスは他の候補者に比べて資金面での優位性が欠けており、数年前から反トランプ的な発言を繰り返し、前大統領を「非難すべき(reprehensible)」「冷笑的(cynical)」と呼び、彼が「アメリカのヒトラー(America’s Hitler)」になる可能性を内密にほのめかしていたためだ。ヴァンスは投票日を前に自身のコメントを撤回し、トランプ大統領からの支持を得ることができたが、後にトランプは、ヴァンスが「今は理解しているし、私もそれをよく見てきた(gets it now, and I have seen that in spades)」と語った。
■重要な引用(Crucial Quote)
ティールは先月、アスペン・アイディア・フェスティヴァルのインタヴューで、「私の頭に銃を突きつけても、トランプに投票するよ」と語った。この発言は、トランプ支持に消極的であることを示しているようだ。ティールは、もしトランプ支持を主張するよう求められたら、「おそらく反バイデンの主張は思いつくだろうが、そうしないだろう」と述べた。ティールはまた、トランプに献金することはなく、11月にはドナルド前大統領が勝利すると信じていると述べた。ティールは2016年にトランプに100万ドル以上を寄付している。
■ピーター・ティールとドナルド・トランプとの関係は何か?(What Is Peter
Thiel’s Connection To Donald Trump?)
ティールは2016年、トランプの最も重要な献金者の1人であり、トランプをソースとする陰謀論に共鳴した議会候補者を支援し、後にトランプへの更なる財政支援を撤回するなど、前大統領へのある種消極的な支持を表明してきた。ティールは昨年、『ジ・アトランティック』誌に対し、2016年の前大統領への支援について「間違っていた(got wrong)」ことがたくさんあったと語った。ティールの政治思想は、既成制度への不信と進歩的エリートへの批判にある。彼はまた、国境での規制強化を推進してきた。一方、ヴァンスはよりトランプに近い政治を行っており、国として保証された中絶の権利に反対し、厳格な銃規制に反対し、インフレとの闘いを優先している。しかし、トランプとヴァンスは、プロジェクト2025に対する国民的支持の度合いを含め、全てにおいて意見が一致している訳ではない。
■重要なバックグラウンド(Key Background)
CIAが支援している分析会社パランティア社の共同創設者でもあるティールは、2010年以降、主に共和党所属の連邦議員や政治活動委員会に数百万ドルの寄付をしており、時にはカリフォルニア州知事のギャヴィン・ニューサムやカリフォルニア州の民主党所属のロウ・カンナ連邦下院議員などの民主党員にも寄付していると選挙資金追跡調査会社オープンシークレットは報じている。ティールは、2022年の上院選で共和党候補として落選したヴェンチャーキャピタリストのブレイク・マスターズを支援したセービング・アリゾナPACに2000万ドルを寄付した。マスターズは現在、アリゾナ州議会候補として立候補している。ティールはまた、テッド・クルーズ連邦上院議員(共和党、テキサス州)、マイケル・マッコール連邦下院議員(共和党、テキサス州)なケヴィン・マッカーシー元下院議長(共和党、カリフォルニア州)などの共和党所属の連邦議員たちに数千ドルの寄付を行っている。
(貼り付け終わり)
(終わり)

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

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