古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2025年05月

 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2025年1月20日に第2次ドナルド・トランプ政権が発足し、イーロン・マスクが率いる政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)が各政府機関の調査を行った。「急襲(blitzkriegblitz)」という言葉がぴったりだった。政府効率化省は、米国国際開発庁をはじめとするいくつかの政府機関の閉鎖と人員削減、予算削減を行おうとしているが、目標の予算の2兆ドル(約290兆円)の削減(連邦政府の予算は約7兆ドル[約1020兆円])まではまだまだ遠い道のりだ。現在、連邦議会ではトランプ大統領肝いりの予算案が共和党内部の意見対立もあり、連邦下院でだいぶ修正されており、連邦上院での更なる修正も行われる。予算案については、イーロン・マスクは「失望」しており、更に、もうすぐでトランプ政権から去る(自身のビジネスに専念するため)ことになっている。マスクとトランプは最後には意見の対立があり、イーロンが静かに政権を去るということになりそうだ。関連の記事を以下に貼り付ける。

(貼り付けはじめ)
●マスク氏、減税法案に「失望」表明 トランプ氏と意見対立鮮明に

日本経済新聞 2025529

【ワシントン=高見浩輔】米政府効率化省(DOGE)を実質的に率いる起業家のイーロン・マスク氏が、連邦議会下院が可決したトランプ減税の延長法案を批判した。米CBSテレビが5月28日、インタビューの一部を明らかにした。同法案を推進するトランプ米大統領との意見対立が鮮明になっている。

■マスク氏、「DOGEの取り組み損なう」

マスク氏は「財政赤字を削減するどころか、さらに拡大し、DOGE チームが行っている取り組みを損なうような巨額の歳出法案には率直に言って失望した」と話した。超党派組織の責任ある連邦予算委員会(CRFB)は大型法案によって政府債務が2034会計年度までの10年間に3.1兆ドル(約450兆円)膨らむと試算している。225年末に期限を迎える個人所得減税の恒久化やチップ収入や残業代への免税措置を盛り込んだ一方、歳出削減を巡っては低所得層向けの支援策をどこまで削るか調整が難航した。防衛や国境警備には増強には2000億ドルを超える額が新たに積み増された。

多くの公約を詰め込んだ法案は「1つの大きく美しい法案」と名付けられ、トランプ氏は可決後に「我が国の歴史上最も重要な立法措置の一つ」と称賛した。これに対し、マスク氏はインタビューで「法案は大きいか美しいかのどちらかだ」と皮肉った。

マスク氏は政治活動への批判が経営する米テスラの不買運動に発展したことを受け、政権から距離を置くと表明済みだ。5月20日には政治献金も今後は大幅に減らす考えを明らかにした。

■政権から距離、批判も控えめか

今回の批判も下院が5月22日に法案を可決して1週間が経過した後に発信された。マスク氏は、政権交代前の202412月、議会の与野党指導部が合意した「つなぎ法案」を直後にSNSへの大量投稿で批判して、撤回させた。当時と比べて発言は控えめだ。

DOGEが進めた連邦政府職員のリストラは、多くの訴訟に発展するなど強引さが批判されてきたが、財政規律の回復を求めるマスク氏の主張は政権発足前から一貫している。

共和内には、低所得層向けの公的医療保険といった歳出を大幅に削減すれば、2026年の中間選挙で逆風になると慎重な声が根強い。

財政改善を求める保守強硬派と大幅な歳出削減に反対する穏健派との綱引きのなかで、トランプ氏も調整に加わりお互いに妥協点を見いだしたのが今回の大型法案だ。議会の共和党指導部は上院での修正を経て7月の成立を目指している。
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●「イーロン・マスク氏、政権去る 歳出削減果たせず―米」

時事通信 外信部202505292031分配信
https://www.jiji.com/jc/article?k=2025052900798&g=int#goog_rewarded

 【ワシントン時事】トランプ米大統領に近い実業家イーロン・マスク氏は28日、X(旧ツイッター)に「特別政府職員としての予定された任期が終了する」と投稿し、トランプ政権を去る意向を明らかにした。行政の無駄を省く新組織「政府効率化省(DOGE)」を率い、政府部門縮小の旗振り役を担ったが、強引な手法に反発は大きく、歳出削減を果たせないまま退場となった。

 大口献金者としてトランプ氏の信頼を勝ち得たマスク氏は、政権内外で権勢を振るった。世界最大の援助機関だった米国際開発局(USAID)を「犯罪組織だ」と決め付け、政府縮小の「先輩」であるアルゼンチンのミレイ大統領から贈られたチェーンソーを集会で振り回すなど、過激な言動で耳目を集め続けた。

 しかし、DOGEが音頭を取った政府職員の大量解雇や一部政府機関の解体は混乱を招き、野党民主党や労組は「マスクこそ切れ」「影の大統領だ」と批判。内部対立を辞さないやり方を巡っては、ルビオ国務長官やベセント財務長官ら重要閣僚との確執も報じられた。

 批判の高まりを背景に、マスク氏が最高経営責任者(CEO)を務め、本人の富の「源泉」でもあった米電気自動車(EV)大手テスラは急激な販売不振に見舞われた。マスク氏は4月、「テスラにより多くの時間を割く」と表明することを余儀なくされた。

 トランプ政権は「歳入より歳出が問題だ」(ベセント氏)とし、歳出削減を掲げるが、トランプ氏肝煎りの大型減税関連法案ではかえって財政赤字が大きく増える見通し。与党共和党の財政規律派からは「DOGEが暴露した無駄の削減を実現する必要がある」(上院議員)との声が上がる。

 マスク氏が米テレビに対し、「赤字を増やす大規模な支出法案には失望している」と発言したことが27日伝わると、ボート行政管理予算局(OMB)長官はDOGEが示した削減案を含めた減額修正予算の提案を「来週にも行う」と表明した。トランプ政権が「小さな政府」を志向する限り、マスク氏の隠然とした影響力は残りそうだ。

(貼り付け終わり)

蒸気の記事で重要なのは、「低所得層向けの支援策をどこまで削るか調整が難航した」という部分だ。トランプ政権はポピュリズム政権であり、アメリカ国民の連邦政府やワシントン政治に対する不信感から生まれた政権だ。トランプ政権の支持基盤は、貧しい白人労働者だ。彼らはしかしながら、政府からの福祉に頼っている面もある。共和党内の財政規律派は、こうした貧しい人々向けの支援策を削りたい(その裏には富裕層への減税をしたいという考えがある、共和党は金持ちの党であるというアイデンティティは残っている)ということになる。トランプは、法案を支持しているが、イーロンとしてはそんなことをして良いのか、それならまず政府の無駄を削減する方が先だということになっているのだろう。

 更に、下記論稿にあるように、イーロン・マスクの突破力をホワイトハウスの行政管理予算局(Office of Management and BudgetOMB)のラッセル・ヴォート局長は利用してきた。下記論稿には次のように書かれている。「振り返ってみると、連邦政府の官僚機構に対する統制強化こそがDOGEの真の目的で、コスト削減は副次的なものだということは明らかだ。ヴォートは常に連邦政府の官僚機構を統制することを目標としていた。マスクは、自身の奇行で注目を集め、「政府の効率(government efficiency)」(結局のところ、誰がそれを望まないだろうか?)が全てであるかのように見せかけることで、その目的から目を逸らし、トランプへの批判を逸らす役割を果たした」。
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ラッセル・ヴォートとイーロン・マスク

 ヴォートは官僚機構を削減し、統制を強化するために、イーロン・マスクを利用した。それはお互いにとってウィンウィンの関係だ。しかし、イーロンが政権を去るとなると、そうした動きが頓挫することになる。そして、妥協派であるスコット・ベセント財務長官などが力を持ち、トランプ革命は骨抜きにされることになるだろう。ポピュリズムは常に敗北で終わるということを歴史は教えてくれるが、トランプもその教訓から逃れることは難しいのかもしれない。

(貼り付けはじめ)

イーロン・マスクはドナルド・トランプにとっての役に立つ馬鹿(訳者註:良い活動をしていると信じているが実際にはそれと気付かずに悪事に荷担している者)だった(Elon Musk Was Donald Trump’s Useful Idiot

-世界一の富豪が利用された可能性が高まっている。

ギデオン・リックフィールド筆

2025年5月14日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/14/elon-musk-donald-trump-doge-russell-vought/?tpcc=recirc_trending062921

イーロン・マスクは、政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)で一体何を達成したいと望んでいたのだろうか?

先月末、反省の色を見せるマスクは、政府効率化省について「期待したほどの効果を上げていない(not as effective as I’d like)」と認めた。この準政府機関は、主に連邦職員の解雇、規制の撤廃、契約や助成金の取り消しによって、これまでにアメリカ政府に1700億ドルの節約をもたらしたと主張している。しかし、これらの節約額の大半については、証拠を示していないか、あるいは大幅に誇張している。実際には、政府効率化省の杜撰な政府削減策は、ある推計によると、今年、納税者に1350億ドルの追加負担をもたらすことになる。そして、実際の連邦政府支出は、ドナルド・トランプ大統領の就任以来、増加している。

マスクが現在、アメリカ政府関連の業務を縮小し、経営難に陥っているテスラをはじめとする所有する事業に注力する中で、波乱に満ちた在任期間中に彼を悩ませてきた疑問は依然として渦巻いている。彼は本当に連邦予算から1兆ドルを削減できると信じていたのだろうか、それともインサイダーとしての立場を利用して契約を獲得し、競合他社の情報を入手し、厄介な規制当局を自社の邪魔者から排除しようとしていただけなのだろうか? 人工知能を用いて政府のプロセスに革命を起こそうとしていたのだろうか、それとも単に「意識の高い(wokeness)」人々を排除しようとしていただけなのだろうか? 政府効率化省の真の狙いは、数十もの政府機関にまたがる政府データを統合することで、超強力な監視国家(a superpowered surveillance state)を築くことだったのだろうか?

上記の全てが同時に真実である可能性もある。しかし、コスト削減策としての政府効率化省の惨憺たる失敗は、マスクを他者、特にトランプ政権で最も影響力のある影の実力者の1人である行政管理予算局(Office of Management and BudgetOMB)のラッセル・ヴォート局長の思惑のための道具のように見せ始めている。

マスクが政府効率化省で何をしようと考えていたかを理解するには、彼の経歴を調べると役に立つ。

ウォルター・アイザックソンの『2023年のイーロン・マスク(2023 Elon Musk)』は、しばしば聖人伝的(hagiographic)だと批判されるものの、マスクの伝記作家の中で、彼と真剣に時間を過ごした唯一の人物と言える。CNNの元会長で『タイム』誌編集長でもあるアイザックソンは、マスクが20代半ばまでに、人類にとって不可欠だと彼が信じる3つの要素に基づいた「人生ヴィジョン(life vision)」を描いていたと述べている。それは、破壊的な可能性を秘めたインターネット(the internet, because of its disruptive potential)、気候変動への対応を考えた持続可能なエネルギー(sustainable energy, because of climate change)、そして人類が自らの生存のために他の惑星に植民地化しなければならないと信じていた宇宙旅行(space travel, because he believed the human race must colonize other planets to ensure its own survival)だ。

リンクトイン(LinkedIn)の共同創業者となる前に、ペイパル(PayPal)でマスクと共に働いていたリード・ホフマンは、アイザックソンに次のように語った。「イーロンはまずヴィジョンを描き、その後、それを経済的に実現するために埋め合わせる方法を見つける」。ペイパル時代の同僚であるマックス・レブチンは、「イーロンの最大の才能の1つは、自分のヴィジョンを天からの命令のように伝える能力だ」と付け加えた。

テスラはマスクにとって気候変動への取り組み方であり、スペースXは火星への道筋だった。神聖な使命感に突き動かされたマスクは、安全性や環境への影響について些細な懸念を抱く政府の規制当局を、人類の生存を阻む障害としか考えなかった。

この好例が、『ワシントン・ポスト』紙の記者ファイズ・シディキの新著『傲慢無比:イーロン・マスクの崩壊(Hubris Maximus: The Shattering of Elon Musk)』に示されている。アイザックソンとは異なり、マスクと面会のなかったシディキは、2016年からテスラのCEOであるマスクが、オートパイロット[Autopilot,](部分的自動運転モード[the car’s partial self-driving mode])搭載車による死亡事故の調査において、米国高速道路交通安全局(National Highway Traffic Safety AdministrationNHTSA)とその姉妹機関である米国運輸安全委員会(National Transportation Safety BoardNTSB)の職員と繰り返し衝突した様子を描写している。

シディキによると、テスラの主張の1つは、高速道路ではオートパイロットが「事故データと比較した場合、通常の運転よりも安全だった」というものだった。2022年のテスラのイヴェントで、マスクは「自動運転機能の追加が負傷や死亡を減らすと信じるようになった時点で、それを導入する道義的義務があると思う」と述べた。この論理に従えば、オートパイロットの導入を遅らせようとした規制当局は人々を殺していることになる。

官僚制と規則に対する嫌悪感に加え、マスクの「まず削減、後で修正(slash first, fix later)」というコスト削減の姿勢、計画に対する全般的な軽蔑、そして自分が常に正しいという揺るぎない信念が加わる。これらの特徴は、『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者ケイト・コンガーとライアン・マックが2024年に出した著書『文字数制限:イーロン・マスクはいかにしてTwitterを破壊したか(Character Limit: How Elon Musk Destroyed Twitter)』で巧みに記録されている。マスクはTwitter(現在はX)の従業員の5分の4を削減し、プラットフォームは当初は苦戦したものの、崩壊には至らなかった。なぜ同じアプローチが連邦政府には機能しないのだろうか?

マスクと、同じく衝動的で自信家でもあるトランプが昨年夏にDOGE構想を思いついた時、彼らが綿密に練られた計画を持っていたとはにわかには信じ難い。しかし、ヴォートという人物は、注目を集めたいだけの道化師が率いる準政府機関が、自身の目的を影に隠しながら、その目的の達成に役立つ可能性を間違いなく見抜いていた。

キリスト教国家主義者を自称するヴォートは、極右改革計画「プロジェクト2025」の立案者の1人だった。これは、トランプ氏が選挙運動中に否定したほど有害な計画であり、その後、ヴォートを行政管理予算局(OMB)に任命して、その効果的な実行を任せた。

2年前の演説で、ヴォートは「私たちは、官僚たちにトラウマになるような影響を与えたい。朝起きたら、仕事に行きたくなくなるようにしたい(We want the bureaucrats to be traumatically affected. When they wake up in the morning, we want them to not want to go to work)」と述べた。彼の最終的な目標は、妨害的な左派が跋扈する「ディープステート(deep state)」と彼が見なす連邦政府機関を弱体化させ、大統領の手にさらなる権力を与えることだった。

マスクとヴォートの関係の詳細は、『ブルームバーグ』誌のジャーナリストであるマックス・チャフキンの先月の記事で明らかになった。チャフキンは、マスクが選挙後に「ヴォートと定期的に連絡を取り合っていた」と述べ、「ヴォートに近い人々から、マスクは彼の政策を国民に訴える役割を担う存在」と見なされ、ヴォート自身からもマスクは「戦力増強装置(force multiplier)」と見なされていたと記している。

DOGEにおけるマスクの手法、例えば試用期間中の連邦職員(労働保護が最も少ない職員)の解雇や連邦データシステムの掌握といった手法が、ヴォートではなく、マスク自身の発明であったかどうかは定かではない。おそらくOMB長官であるヴォートは、マスクの強引さに匹敵する者はいないと認識し、マスクが企業で用いてきたのと同じ電撃戦的な精神を政府にも持ち込むよう促したのだろう。

政府は無駄と詐欺の巣窟だと確信していたマスクは、できるだけ多くの職員を解雇し、若い支持者にAIツールとデータへのアクセスを与えるだけで、政府支出を削減できると本気で信じていたのかもしれない。(実際には、政府支出を大幅に削減することは可能だが、それは主に防衛、金融、医療といった産業への実質的に補助金となっているものを廃止することであり、それは政府運営の合理化だけでなく、大幅な政策変更が必要となるだろう。)

マスクはまた、利益相反(conflicts of interest)は関係ないと考えているのかもしれない。結局のところ、彼の事業が全て人類のためになるのであれば、政府との契約が増えることは人類のためになるのではないだろうか?

しかし、その過程でマスクは官僚にトラウマを与えるというヴォートの目的を確実に達成した。そして、マスクが一歩退いた現在も急速に進められている政府データの統合は、ホワイトハウスが政敵や不法移民、そして不従順な政府職員を標的にするために利用される可能性がある。

振り返ってみると、連邦政府の官僚機構に対する統制強化こそがDOGEの真の目的で、コスト削減は副次的なものだということは明らかだ。ヴォートは常に連邦政府の官僚機構を統制することを目標としていた。マスクは、自身の奇行で注目を集め、「政府の効率(government efficiency)」(結局のところ、誰がそれを望まないだろうか?)が全てであるかのように見せかけることで、その目的から目を逸らし、トランプへの批判を逸らす役割を果たした。

マスクのDOGEでの任期は、彼自身、ヴォート、そしてトランプが予想していたよりも早く終わりを迎えそうだ。関税をめぐって大統領と対立し、閣僚たちを疎外し、2500万ドルを投じたにもかかわらず州司法選挙で勝利を収められなかったことは、マスクをある種の負債にしていたのかもしれない。彼の潤沢な資金力は、トランプ政権にとって常に一定の有用性を維持することを保証し、彼の所有する企業は間違いなく有利な契約の恩恵を受け続けるだろう。しかし、ここ数カ月の出来事を踏まえると、彼が騙されたと結論づけずにはいられない。

※ギデオン・リックフィールド:元『ワイアード(WIRD)』誌編集長。民主的統治の将来についてのニューズレター「フューチャーポリス(Futurepolis)」を執筆している。Blueskyアカウント:@glichfield.bsky.social Xアカウント:@glichfield

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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第2次ドナルド・トランプ政権100日では様々なことが起きたが、今はひと段落で、トランプ関税については、90日間の猶予の間に、各国がトランプ詣でをして、二国間で個別交渉を行い、妥協や譲歩を引き出すという動きになっている。日本も赤澤亮正経済再生担当大臣が何度も訪米し、トランプ大統領自身とも会談を持っている。日本としては自動車に関する関税や米を含む農産物について、妥協を引き出したいところだ。
 トランプ大統領が高関税を正式に打ち出したのは2025年4月2日で、「解放記念日(Liberation Day)」関税と呼んだが、これによって、株式が大幅下落し、米国債の金利が上昇したために、後退を余儀なくされた。スコット・ベセント財務長官が主導権を握る形で、状況が悪化することを防いだ。

私が奇妙だと思っているのは、高関税を発表すれば、株価が下落し、米国債の金利が上昇するくらいのことは政権が予測していたのではないか、それなのに慌てた様子で妥協を行ったということだ。ここからは私の想像で話を進めていきたい。
 現在の株式の高騰は現実の経済全体を反映したものではない。中央銀行が供給した資金が株式や不動産投資に回っているだけのことだ。コロナ禍もあり、中央銀行は市場に多くの資金を供給した。それが社会の隅々にまで行き渡れば良かったが、無利子の資金は富裕層や大企業に集中して回り、彼らを更に肥え太らすことになった。トランプ政権を誕生させたのは、貧乏な白人労働者たちを中心とする一般国民である。トランプ政権は富裕層や大企業の利益最優先ではない。株価の下落や米国債の金利上昇はウォール街や投資マネーにとっては痛手であるが、彼らのブクブクに膨れた、あぶく銭の資産を少し減らすことは重要なことだ。トランプ政権はそこから「撤退」して妥協する形になったが、いつでもこのようなことができるんだぞということを示した。これは大きい。富裕層や大企業はトランプの一挙一投足に気を遣わねばならなくなった。

 共和党は金持ちの党であったが、トランプの出現によって、そのウイングは広がっている。そして、トランプ政権は大きな矛盾を抱えることになった。貧乏人のための政策を行いながら同時に金持ちたちの利益もある程度は守らねばならない。この矛盾をどう解決するのか、それともそもそもそんなことはできないのか、何か共通の敵を見つけるのか、これから注目していかねばならない。
(貼り付けはじめ)
ドナルド・トランプ大統領が就任100日で経済を変えた5つの方法(5 ways Trump has changed the economy in his first 100 days

トバイアス・バーンズ筆

2025年4月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/trumps-first-100-days/5273522-5-ways-trump-has-changed-the-economy-in-his-first-100-days/

ドナルド・トランプ大統領の就任から100日間の経済政策は、これまでとは全く異なるものだった。

トランプ大統領の関税措置は、世界の貿易関係を根本から覆し、企業と投資家を政権の一挙手一投足に合わせて右往左往させた。

トランプ大統領は複数の規制機関に猛攻撃を仕掛け、広範囲にわたる政府職員の人員削減を命じた。これは、テクノロジー業界の支持者たちが唱える「迅速に行動し、物事を打破する(move fast and break things)」というスローガンを、かつてないほど極端に押し進めたと言えるだろう。こうした命令と方針転換の嵐のようなリズムに、アメリカの経済同盟諸国も敵対諸国も、トランプ大統領の政策がどこに向かうのか見極めようと苦慮している。

景気後退から戦争に至るまで、経済危機の際の伝統的な安全資産であるアメリカの金融資産でさえ、弱体化の兆候を見せている。

ここで、トランプ大統領の政策が就任後100日間に経済に与えた影響を見てみよう。

(1)1世紀ぶりの高関税率(Century-high tariff rates

国際通貨基金(International Monetary FundIMF)の分析によると、アメリカの総関税率は25%を超え、1世紀以上ぶりの高水準となっている。

総関税率の主な構成要素は、中国に対する145%の関税、10%の一般関税、そして木材、自動車、金属などの製品に対する特定関税である。

金融当局は輸入税についてスタグフレーション的な見通し(a stagflationary picture)を示しており、IMFから連邦準備制度理事会(FRB)に至るまで、様々な機関が、その結果として物価上昇と経済成長率の低下を予想している。

IMFのエコノミストたちは4月の経済見通しで、「(関税水準は)それ自体が経済成長への大きなマイナスショックだ」と述べている。

トランプ大統領は関税を断続的に導入しており、発令後、すぐに撤回するといった行動を何度も繰り返してきた。

撤回された関税には、カナダとメキシコへの25%の関税、中国からの800ドル未満の貨物に対するデミミニス免除(the de minimis exemption)の終了、そして数十カ国のアメリカの貿易相手初校に対する様々な税率の国別関税の一時停止などが含まれる。商務省は火曜日、5月3日に予定されていた自動車部品への関税を縮小した。

戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International StudiesCSIS)の国際ビジネス部門長ビル・ラインシュは本誌の取材に対して次のように語った。「これは(貿易相手国を)不均衡な状態に維持することを意図している。これにより、アメリカは最大限の立場を取り、その後、そこから後退することが可能になる。これはトランプのいつものやり方だ」。

ウォール街の投資家たちは関税を激しく非難している。億万長者のヘッジファンドマネージャーであるビル・アックマンは、トランプの特定国への関税は「誤った計算(bad math)」に基づいており、「世界経済を落ち込ませている(taking the global economy down)」と述べた後、最終的に関税を緩和したことを称賛した。

主要アメリカ株で構成されるダウ工業株30種平均は、トランプの就任以来約8.4%S&P500は約8.7%下落している。ハイテク株中心のナスダック総合指数は12%以上も下落している。

(2)貿易の再構築と国際関係の揺さぶり(Resetting trade, shaking up international relations

トランプ大統領の関税は、アメリカの経済的なライヴァル諸国と同盟諸国の両方を標的にしており、中国のような敵対国との緊張を高める一方で、カナダ、メキシコ、ヨーロッパ連合(European UnionEU)といった長年のパートナー国との新たな緊張を生み出している。

中国は貿易戦争に「最後まで(to the end)」戦うと明確に表明し、先手を打つかどうかはアメリカ次第だと述べている。

中国外務省の郭嘉昆(Guo Jiakun)報道官は火曜日に、「この関税戦争(tariff war)はアメリカが始めたものだ。もしアメリカが本当に交渉による解決を望むのであれば、脅迫や圧力を止め、中国との対話を追求するべきだ」と述べた。

専門家たちは、トランプ大統領と会談する代表団は、トランプ大統領が貿易戦争で実際に何を求めているのかを理解していないと指摘する。

ラインシュは本誌に対して次のように語った。「今朝と先週、外国の関係者といくつか話し合った。「彼らは『彼はXについてもYについても言及しなかった。私たちは彼が話を持ち出すと予想していたのに。一体何が起こっているんだ?』と言っている」。

生産とサプライチェインの専門家たちは、戦後のアメリカの貿易政策の集大成である世界貿易機関(World Trade OrganizationWTO)に体現された一元的な貿易協定とは異なる、多極的な世界貿易システムの新たな基盤が築かれつつあると見ている。

供給管理研究所(Institute for Supply ManagementISM)のCEOトム・デリーは本誌とのインタヴューで次のように語った。「私が話を聞いたほとんどの人は、二極化した貿易体制に向かっていると考えている。WTO中心の、単一の合意に基づく貿易ルールではなく、西側中心、おそらくアメリカ主導の貿易圏(a Western-centered, maybe U.S.-led trade bloc)と、東側中心、中国主導の貿易圏(an Eastern-centered, China-led trade bloc)だ」。

(3)アメリカ金融資産からの逃避(A flight from U.S. financial assets

トランプ大統領が世界経済に大きな変化をもたらしていることを示す最も確かな兆候は、おそらく、米ドルが他の通貨に対して同時に下落し、アメリカ国債が市場で売られたことだ。

通常、投資家たちは経済の不確実性が高まるとアメリカ資産に逃げ込むが、この傾向は2001年9月11日の同時多発テロから世界大不況に至るまで、様々なショックにも耐えてきた。

しかし、指標となる米ドル指数はトランプ大統領の就任以来一貫して下落しており、4月2日と4月9日の追加関税発表直後には顕著な下落を記録した。

トランプ大統領が4月2日の「解放記念日(Liberation Day)」に関税を発表した直後、債券も売られ、トランプ政権は発効当日に特定国向け関税の90日間の一時停止を宣言した。

ユーロが対ドルで上昇するにつれて、アメリカ国債とドイツ国債の利回り格差は拡大した。これは異例のパターンであり、エコノミストたちはすぐにこの動きに気づいた。

タンパ大学の経済学者ヴィヴェカナンド・ジャヤクマールは今週の論説記事で、「2年物アメリカ国債と2年物ドイツ国債の利回り格差が200ベーシスポイントを超えたにもかかわらず、ユーロは対ドルで急上昇した。これは通常の市場動向の転換を示し、アメリカからヨーロッパへの資本逃避を示唆している」と述べている。

(4)移民パターンと労働市場(Migration patterns and the labor market

トランプ大統領はまた、国連が「世界で最も危険な移民の地上陸路(deadliest migration land route)」と表現するアメリカ南部国境沿いの取り締まりを強化し、移民の流入を阻止しようと努めてきた。

アメリカ税関・国境警備局によると、2024年度のこの時点で国境での接触件数は130万件、2023年度には120万件に達していた。今年は38万1000件に上る。

近年、移民はアメリカの労働力の動向において重要な要因となっており、成長予測や物価水準にも影響を与えている。

連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長は昨年、多くの人が景気後退を予想していたにもかかわらず、2024年の経済が予想を大幅に上回ったのは、移民に関する測定値の違いが原因かもしれないと指摘した。

パウエル議長は昨年4月、移民問題に言及し、「これはまさに、私たちが自問自答してきたことの真相を説明している。つまり、外部のエコノミストほぼ全員が景気後退を予測していた年に、なぜ経済が3%以上成長できたのかということだ」と述べた。

移民の減少は、長期的には労働力不足と経済成長の鈍化を意味する可能性がある。保守派は、アメリカの労働者の利益のためには、こうしたコストを支払う価値があると主張する。

ヘリテージ財団予算センター所長リチャード・スターンは、本誌に対し、「企業に不法労働者、つまり労働法を破っても税金を全額負担しなくて済む労働者を雇用する能力を与えれば、それは事実上、不法労働者を雇用するための政府補助金となってしまう」と語った。

ヘリテージ財団が重要な役割を担って策定した「プロジェクト2025」で明記された政権の取り組みについて問われたスターンは「順調に進んでいる(on track)」と述べた。

スターンは「政権最初の100日間を振り返ると、政権が容易に実行可能なプロジェクトの部分を見ると、その主要部分の多くで間違いなく順調に進んでいる」と述べた。

(5)減税に先立ちIRS(内国歳入庁)を解体(Gutting the IRS ahead of tax cuts

トランプ大統領と、イーロン・マスクが率いるコスト削減委員会(the cost-cutting panel)である政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)は、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSID)、消費者金融保護局(Consumer Financial Protection BureauCFPB)、教育省(Department of Education)など、連邦政府諸機関の閉鎖をしてきた。

保守派の中には、DOGEの取り組みを政治的な芝居だと一蹴している。財政的に保守的なマンハッタン研究所の上級研究員ジェシカ・リードルはロイター通信に対し、「DOGEは真剣な取り組みではない(DOGE is not a serious exercise)」と述べ、最終的には節約効果を上回る費用がかかると予測している。

しかし、DOGEは、1万2000人を超えるIRS職員全体の4分の1から40%を人員削減する可能性がある。これは、政府の歳入とその財源に深刻な影響を与える可能性がある。

これは特に、IRSがバイデン政権下で開始し、トランプ政権によって完全に撤回された大規模な業務改革を考慮すると、なおさらだ。

アーバン・ブルッキングス税制政策センターの上級研究員ハワード・グレックマンは本誌に対して次のように語った。「彼らは何千人もの人を解雇し、さらに何千人もの人が辞めた。所得税制度に与えるダメージは計り知れない。文字通り、私たちは、彼らが何をしているのか分からないため、ダメージを測定することができない」。

トランプが1月に再就任して以来、IRS(内国歳入庁)には5人の長官が就任しており、グレックマンはその交代率を「驚異的(remarkable)」と評した。

IRSの空洞化は、共和党議員たちが2017年の減税延長と、トランプが選挙運動中に約束した新たな未検証の減税策の追加を進めている中で起こっている。

最終的な対策は、数兆ドル規模の財政赤字を増加させる可能性があり、公式会計では無視される見込みの4.6兆ドルの財政赤字拡大も含まれる。

(貼り付け終わり)
(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 拙著『トランプの電撃作戦』(秀和システム)の第1章で、私は、ドナルド・トランプ大統領とJD・ヴァンス副大統領と、シリコンヴァレーの大立者で大富豪のイーロン・マスク、そして、ピーター・ティールとの関係を分析し、イーロン・マスクとピーター・ティールがトランプとヴァンスの影響力を行使して、アメリカ政府との数兆円規模の巨額な契約を自分たちが所有するテック大企業(スペースXとパランティア・テクノロジーズ社)と結び、新たな軍産複合体づくりを行おうとしていると結論づけた。

 リバータリアニズム(Libertarianism)を信奉するのがリバータリアン(Libertarian)と呼ばれる人々である。リバータリアニズムは故人の自由を至上の価値として尊重し、政府についてはそれを邪魔する存在する存在として敵とみなす。反福祉、反中央政府でもある。シリコンヴァレーの大立者であるイーロン・マスクやピーター・ティールは「テクノリバータリアン」である。彼らからすれば、自分たちのヴィジョンに基づいて生み出す最先端の技術に規制をかけて邪魔をしたり、企業や大富豪に高い税金を掛けたりすることは、敵対行為ということになる。ところが、実際には、ピーター・ティールは第1次ドナルド・トランプ政権誕生の立役者になり、イーロン・マスクはトランプの最側近の立場に就いた。テクノリバータリアンたちは政府を忌避するはずだが、正否を利用しようという立場になっている。

 トランプを大統領にまで押し上げたのは、一般のアメリカ国民、有権者である。彼らは、既存の政治が自分たちの利益を反映していない、ワシントン政治は汚れているのでそれを掃除しなければならないということで、自分たちの代表として、ワシントン政治とは無縁のアウトサイダーだったトランプを送り込んだ。これはポピュリズムである。このポピュリズム政権であるトランプ政権に世界で最も富裕なイーロン・マスクが参加している訳であるが、トランプを支持する貧しい白人労働者と世界で最も金持ちのイーロン・マスクの共通点は、「(現在の)中央政府、政治エスタブリッシュメントを敵とみなす」ということだ。そして、「中央政府を自分たちの利益になるように作り替える」ということだ。

 第2次トランプ政権は大きな矛盾を抱えた政権である。中央政府を敵とみなすアメリカ人が作り上げた政権が中央政府を運営することになる。しかし、それはうまくいかないだろう。高関税の被害を受けるのはアメリカ国民である。アメリカはドル安に向かい、輸入が減り、物価は高くなる。アメリカ国内で輸入に代替して物品を製造しなければならなくなるが、アメリカの労働者たちの賃金の上昇は厳しいだろう。誰かが低賃金で安い物品を作らねばならない。イーロン・マスクやピーター・ティールたちは最先端の技術をアメリカの軍事に利用させようとして多額の契約を結ぶ。結果として、彼らは大儲けということになる。アメリカの未来については悲観的にならざるを得ないが、これは大きな流れであり、人為的に止めることや流れを逆転させることはできないだろう。大きな流れに乗ったアメリカの衰退の後始末をトランプが実行するということになる。トランプは歴史の悲劇と喜劇の上に、名を残す大統領となるだろう。

(貼り付けはじめ)

テクノリバータリアンたちはいかにして大きな政府に恋をしたのか(How techno-libertarians fell in love with big government

-国家が主要な顧客になるとすぐに彼らの原則的な反対は消え去る。

クイン・スロボディアン筆

2024年6月19日

プロジェクト・シンディケイト

『ジャパン・タイムズ』紙

https://www.japantimes.co.jp/commentary/2024/06/19/japan/techno-libertarians-big-government/

マサチューセッツ州ケンブリッジ発。億万長者のテック投資家バラジ・スリニヴァサンは、2013年にシリコンヴァレーの、アメリカからの「最終的な撤退(ultimate exit)」について講演し、反政府運動家として名を馳せた。彼はアメリカを「国家のマイクロソフト(Microsoft of nations)」と呼びました。

おそらく最も印象深いのは、スリニヴァサンがアメリカの「ペーパーベルト(Paper Belt)」、つまり、法律と規制のワシントン、高等教育のボストン、エンターテインメントのロサンゼルス、広告と出版のニューヨークを現代のラストベルトと表現したことだ。

彼の考えでは、シリコンヴァレーは、規制に先行し、学術的権威を軽蔑し、ストリーミングサーヴィスを導入し、消費者直販マーケティングを刷新することで、かつて戦後アメリカの権力の中心であった全4都市を奪いつつあると見られていた。その後数年間、スリニヴァサンはテクノリバータリアンのメッセージをさらに強めた。政府への軽蔑を長々と語る演説を行い、敵対者に対しては攻撃的な姿勢を見せ、「ネットワーク国家(network state)」、つまり所有(ownership)、同意(consent)、契約(contract)を通じて全ての決定が行われる新しいタイプの政治体制について熱弁をふるった。

そして、2017年初頭、スリニヴァサンはTwitterの履歴を削除した。彼はどこへ行ってしまったのだろうか? 連邦政府が彼の専門知識を求めて彼を訪れていたことが判明した。新しく大統領に選出されたドナルド・トランプは、スリニヴァサンの友人であり、同じくリバータリアンであるテック投資家のピーター・ティールを閣僚の編成に任命し、スリニヴァサンは食品医薬品局(Food and Drug AdministrationFDA)の長官候補に挙がっていた。スリニヴァサンが昔ながらの政治権力を握ろうとした瞬間、何年にもわたる激しい反政府声明は消え去った。

これは孤立した事件ではない。実際、このような偽善は新たな規範となっている。近年、テクノリバータリアンたちは、コバンザメのように(remora-like)アメリカ政府に取り入ろうとしている。何が起こっているのか? 単なる軽率な行動なのか、それとも何か深い理由があるのか。

シリコンヴァレーを代表するテクノリバータリアンたちは、自分たちが個人的に豊かにならない場合に限り、国家に反対している。政府が主要な顧客になるという見通しに直面すると、国家権力に対するかつての原則的な反対は消えてしまう。

この変化はティール自身にも見て取れる。2009年、ティールは「リバータリアンにとっての重大な課題は、全ての形態の政治から脱出することだ(the great task for libertarians is to find an escape from politics in all its forms)」と宣言した。しかし、2016年には共和党全国大会で演説し、党派政治(partisan politics)に完全に関与するようになった。それから数年の間に、彼が共同設立したデータ分析企業パランティアは巨大企業へと成長し、巨額の政府契約の恩恵を受けている。現在では、収益のほぼ半分を公的資金から得ている。

もう1つの具体例は、シリコンヴァレーを代表するベンチャーキャピタル企業アンドリーセン・ホロウィッツ(a16zとしても知られる)の創業者マーク・アンドリーセンだ。スリニヴァサンはa16zのパートナーを一時期務めていた。2023年10月、アンドリーセンは「テクノ・オプティミスト宣言(The Techno-Optimist Manifesto)」を執筆した。これは、自由市場と起業家精神を持つ技術者のプロメテウス的な力を称賛する、話題を呼んだ文書である。5000語のテキストには「政府(government)」という言葉は一度も登場せず、「国家(state)」という言葉が言及されたのはわずか2回で、国家を敵(the enemy)と位置づけていた。

しかし、国家はアンドリーセンにとって必要不可欠な生活手段だ。アンドリーセンは、彼が最初のインターネットブラウザの開発に携わった土地付与大学の資金を国家が拠出した。そしてブルームバーグの報道によると、a16zは近頃ワシントンではよく知られた存在となり、「アメリカン・ダイナミズム」構想(“American Dynamism” initiative)を推進するために、他のベンチャーファンドよりもはるかに多くのロビー活動費を投じている。この構想は、政府の防衛、エネルギー、物流契約の獲得を目指す企業を支援するものだ。

このシフトの内部論理は、今ではほとんど見られなくなったティールの公的な執筆活動の1つで説明することができる。2020年、彼はジェームズ・デール・デイヴィッドソンとウィリアム・リーズ=モッグの1999年の著書『主権を持つ個人(The Sovereign Individual)』の序文を新たに執筆した。この本では、サイバー通貨や従来の市民権の放棄など、国家からの脱却の可能性を描いている。ティールは、著者が説明できなかった2つの発展、すなわち中国の台頭(the rise of China)と人工知能の進歩(advances in artificial intelligence)を指摘した。

1990年代のシリコンヴァレーでは、大躍進の裏には政府からの資金援助があったという事実を隠蔽し、代わりに自作の天才(self-made genius)という神話を育てることが可能だった。しかし、2000年代からの中国の急速な台頭は、ハイテク覇権には別の要素が必要であることを示唆した。テスラCEOのイーロン・マスクは、ティールと同様、かつては大量監視(mass surveillance)に反対していたはずだが、最近、まさにその種のデータを確保するために中国を訪れたことから、その立場は逆転した。

テスラの株価は低迷しているが、マスクは現在、アメリカの人工衛星の主要な打ち上げ会社であるスペースXや、現在ウクライナの戦争努力を支えている衛星インターネット・サーヴィスであるスターリンクといった、彼のポートフォリオのより強固な要素に頼ることができる。しかし、これらのヴェンチャーは、『主権を持つ個人(The Sovereign Individual)』で想像されたような、才能ある認知エリートと国家の関係を根本的に見直すというよりは、伝統的な軍産複合体(the traditional military-industrial complex)の反映である。

シリコンヴァレーがアメリカから撤退するという話は、いつも別の名前でフリーライド(ただ乗り)してきたものだ。そして今、それは究極の、ありのままの姿に達し始めている。テクノリバータリアンたちには、華やかさはないにせよ、より正確なレッテルが必要なのかもしれない。結局のところ、彼らは遠い惑星はおろか、大陸の果てや世界の海で政治を超えた神秘的な世界を築いている訳でもなければ、必ずしもテクノ封建主義(techno-feudalism)への転落を加速させているわけでもない。実際、彼らはテクノ・コントラクター(techno-contractors)に過ぎず、次の請求書をペーパーベルトに提出しているに過ぎない。

クイン・スロボディアン:ボストン大学フレデリック・S・パーディー記念国際研究大学院国際史教授。最新刊に『資本主義の崩壊:市場急進派と民主政治体制なき世界の夢(Crack-Up Capitalism: Market Radicals and the Dream of a World Without Democracy)』(メトロポリタン・ブックス刊、2023年)がある。

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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今回はジョー・バイデン前大統領の健康問題についての報道が多く出たがそのことについて書いていく。
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ドナルド・トランプ、ジョー・バイデン、ジル・バイデン
 ジョー・バイデン前大統領の健康状態について、前立腺がんと診断され、がんが骨に転移していることが明らかになったという報道がなされた。私が甚だ疑問なのは、正式には今年の1月まで大統領を務めていたバイデンの健康診断や健康チェックの状況である。がんが骨にまで転移しているということはがんは以前からあったということであり、それを早期発見できなかったのかということだ。高齢になればがんの拡大のスピートは遅くなると聞いたことがある。それならば、そこまでがんが進行するとなると時間がかかる。大統領在任時に健康診断や健康チェックはしていなかったのか、もしくはその方法がずさんだったのではないかという疑問がある。
 次に、リベラル派のメディアの記者たちが書いた『原罪』という本についてである。この本では、ジョー・バイデンの認知機能が2024年の大統領選挙前から既に衰えており、大統領の職務遂行に支障をきたすほどだったということが書かれている。ジェイク・サリヴァン国家安全保障問題担当大統領補佐官の名前を思い出せない、とりとめのない話を繰り返すということがあったようだ。ホワイトハウスの高官たちはこの状況では大統領を続けるのは無理だと分かっていたようだが、夫人のジル・バイデンや側近によるグループ(「政治局(Political BureauPolitburo)」と揶揄されていたようだ)が、バイデンの再選に固執したということだ。

 バイデンの恒例や健康状態についての不安は大統領選挙前から既に出ていた。そして、今回の出版でも分かるように、それはホワイトハウスの高官たちも分かっていた。家族や側近たちだけがそれを否定していたが、バイデンで公の場で何かをするたびに多くの人々が「大丈夫だろうか、心配だ」と思うようになっていた訳で、このような不安を持たせること自体が問題ではある。

 これは民主党全体の問題でもある。党が機関として機能して、「アメリカ国民のために、バイデン大統領に対して勇退を勧告する」ということができなかったのは、実際にそんなことをするのは困難であることは分かっているが、それでも勧告すべきだった、予備選挙をきちんと実施すべきだったということになる。それだけの重たい責任がある。結局、事なかれ主義で、隠ぺいに走ったために、民主党は2024年の大統領選挙と連邦上下両院議員選挙において敗北を喫した。

 バイデン自身が決断をする、もしくはバイデンに近い人々が冷静に判断して強く勧めるということができなかったのは、バイデンという政治家の晩年に大きな汚点を残すことになった。「一期目だけで勇退します。後任は党の予備選挙でしっかりと決めてください」とバイデンが言えれば、選挙の結果は変わっていたかもしれない。しかし、バイデンは、このような大きな決断ができないくらいの人物であった。それでもアメリカ大統領になれたのだから、幸運な人物ではあっただろう。
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●「バイデン前米大統領に前立腺がんの診断 骨にも転移と事務所発表」

2025519日 BBC NEWS JAPAN

https://www.bbc.com/japanese/articles/crr7zqzwn14o

ジョー・バイデン前米大統領(82)が前立腺がんと診断されたと、個人事務所が18日、発表した。骨に転移しているという。

今年1月に退任したバイデン氏は先週、排尿に関する症状があり医師の診察を受けたところ、16日に診断を受けた。

がんは悪性度が高く、がん組織の悪性度を検査で調べ点数化した「グリソンスコア」の等級10段階のうち9だという。英研究団体キャンサーリサーチUKによると、がん細胞が急速に転移する可能性があることを示す結果だという。

バイデン氏と家族は、治療方法の選択肢を検討していると伝えられている。同氏の事務所は、がんはホルモン感受性のある種類なので、おそらく治療は可能だろうと説明した。

前大統領の病状が公表されると、与野党を問わずアメリカ政界から支援のコメントが相次いだ。

ドナルド・トランプ大統領は、自分のソーシャルメディア・プラットフォーム「トゥルース・ソーシャル」に、自分と妻メラニア氏は「ジョー・バイデン氏の最近の診断結果を聞き、悲しく思っている」と投稿。さらに、バイデン氏の妻ジル氏に対して「ジルと家族に心からお見舞い申し上げる」と呼びかけ、「ジョーの1日も早い回復を願っている」と書いた。

バイデン政権で副大統領を務めたカマラ・ハリス氏は、自分と夫のダグ・エムホフ氏がバイデン一家のために祈っているとソーシャルメディア「X」に書いた。

「ジョーは闘士なので、これまでの人生とその指導力を常に決定してきた力強さとたくましさと楽観姿勢で、この困難に立ち向かうはずだと承知している」と、ハリス氏は書いた。

バイデン氏が2009年から2017年まで副大統領を務めた際の大統領だったバラク・オバマ氏は「X」で、自分と妻のミシェル氏が「バイデン一家全員のことを考えている」と書いた。

「あらゆる種類のがんに対する画期的な治療法の発見に、ジョーほど貢献した人はいない。彼が持ち前の強い意志と品位をもって、この試練に立ち向かうと確信している。早期の完全回復を祈っている」とオバマ氏は書いた。

オバマ元大統領は2016年、がん治療の進歩加速を目指す「がん・ムーンショット」イニシアチブを開始。バイデン氏が取り組みを主導した。「ムーンショット」とは、月面到達を目指したアポロ計画にも匹敵する意欲的な取り組みを意味する。

男性にとって2番目に多いがん

現職の米大統領として最高齢だったバイデン氏は昨年7月、健康状態と高齢が不安視される中で、2024年大統領選から撤退を余儀なくされた。

それまで再選を目指していたバイデン氏は、共和党候補だったトランプ氏を相手にした6月末のテレビ討論会で精彩を欠いたことから、民主党内の懸念が高まり、当時のハリス副大統領が民主党候補になった。

米オハイオ州のクリーヴランド・クリニックによると、前立腺がんは男性が発症するがんの中で、皮膚がんに次いで2番目に多い。米疾病対策センター(CDC)によると、男性100人中13人がどこかの時点で前立腺がんを発症する。年齢が最も一般的な危険因子だという。

アメリカがん協会の最高科学責任者で前立腺がん専門医のウィリアム・デイハット博士はBBCに対して、バイデン氏の病状に関する公開情報を基に、悪性度の高いがんのようだと話した。

「一般的に、がんが骨に転移した場合、治癒可能ながんだという見方はしない」とデイハット博士は述べた。 ただし、ほとんどの患者は初期治療によく反応する傾向があり、「診断から何年も生きることもあり得る」という。

デイハット博士によると、バイデン氏のような診断を受けた患者にはおそらく、症状を緩和し、がん細胞の増殖を遅らせるためにホルモン療法が提供される可能性が高い。

バイデン氏は退任以来、表舞台から退き、公の場に登場することもほとんどなかった。

前大統領は今年4月、アメリカ拠点の障害者支援団体「障害者の擁護者、相談員、代表者協会」がシカゴで開いた会議で基調講演を行った。 5月には退任後初めてBBCのインタビューに応じ、2024年大統領選から退く決断は「困難」だったと認めた。

アメリカではこのところ、バイデン氏の健康状態を疑問視する指摘が相次いでいた。人気トーク番組「ザ・ヴュー」に5月に出演したバイデン氏は、ホワイトハウスでの最後の年に自分の認知能力が低下していたという意見を否定し、「それを裏付けるものは何もない」と述べた。

バイデン氏は長年にわたり、がん治療の研究推進を提唱してきた。大統領在任中の2022年には、妻ジル氏と共に、2047年までに400万人以上のがんによる死亡を防ぐための研究強化を掲げ、「がん・ムーンショット」イニシアチブを再開した。

バイデン氏の長男ボー氏は2015年、脳腫瘍のため亡くなっている。

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●「米民主党、大統領任期中のバイデン氏の衰えに衝撃受けるも沈黙守る 新著が明かす内幕」

2025.05.21 Wed posted at 20:00 JST CNN日本版

 https://www.cnn.co.jp/usa/35233278.html

(CNN) 米大統領任期中の最後の2年間、バイデン前大統領は非公開の場面で最側近の名前を思い出せずにいた。個人的な予定がどんどん制限され、首尾一貫しない発言を連発。思考の脈絡を失ったその姿は世間の目から隠され、衰えの度合いは伏せられた。CNNのジェイク・タッパー記者とアクシオスのアレックス・トンプソン記者が手掛けた新著で明らかになった。

同書に収録された詳細なエピソードの数々からは民主党議員、ホワイトハウスの側近、バイデン政権の閣僚、民主党への献金者らがバイデン氏の心身の衰えに衝撃を受ける様子が浮かび上がる。当時バイデン氏は2024年大統領選での再選に向けて動き出していたが、彼らのほぼ全員が同氏の状態について公言せず、大統領選出馬を止めようともしなかった。

「世界が目の当たりにした、バイデン氏にとって最初で最後の24年大統領選のテレビ討論は、例外的な事象ではなかった。本人が風邪を引いていたのではない。準備不足もしくは準備のし過ぎでもなかった。多少の疲労によるものでもない」。タッパー氏とトンプソン氏はそのように記す。

「長年能力に衰えが生じていた81歳の男性として、自然な結果だった。バイデン氏とその家族、彼のチームは、自分たちの利益とトランプ氏再選への不安を理由に正当化しているが、ここでの試みは思考の混乱した老人をさらに4年間、オーバルオフィス(大統領執務室)に据えておこうとするものに他ならない」

当該の新著「原罪:バイデン大統領の衰えとその隠蔽(いんぺい)、再出馬という破滅的な選択(仮題)」は、20日に発売された。本書の元になっているのは200を超えるインタビューで、その大半は民主党の内部関係者に対するものだ。ほぼ全てのインタビューが24年大統領選の終了後に行われた。

この数日、バイデン氏の年齢と健康には大きな注目が集まっている。18日には同氏の事務所が本人について、進行性の前立腺がんと診断されたと発表。がんが骨にまで転移していることを明らかにした。現在同氏と家族は、医師と相談しながら治療の選択肢を検討しているという。

それでも再選を目指したバイデン氏の選択にまつわる議論は続いている。バンス副大統領は19日に記者団に対し、バイデン氏の健康を祈る一方、「前大統領が職務可能な状態だったのかどうかについて、我々は本当に正直になる必要がある」と付け加えた。

「ある意味で、私が非難するのは彼よりも彼の周囲の人間たちだ」「我々としては健康を祈ることはできるが、同時に仕事が可能な健康状態にない人物はそもそも仕事に就くべきではないと考える」(バンス氏)

16日には、バイデン氏の元事務所や自宅から副大統領時代の機密文書が見つかった問題で同氏から聴き取り調査を行ったロバート・ハー特別検察官との会話の音声記録がアクシオスによって公開された。ハー氏は当時、聴き取り調査後の報告書でバイデン氏の記憶力の衰えに言及していた。

■最側近らが結束

タッパー氏とトンプソン氏が伝えるところによれば、バイデン氏の健康に関しては20年の段階で周囲から懸念する声が上がっていた。それでも心身の衰えが加速したのは23年から24年にかけてだという。

22年12月のある時点で、バイデン氏は政権のジェイク・サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)とケイト・ベディングフィールド広報部長の名前を思い出せなくなった。23年秋には、民主党全国委員会のジェイミー・ハリソン委員長を認識できないようだった(ハリソン氏はこれに異議を唱えている)。そして24年初め、バイデン氏は長年付き合いのある映画スターのジョージ・クルーニー氏のことが分からなかったという。

バイデン政権時代の一部の閣僚はタッパー氏とトンプソン氏のインタビューに答え、バイデン氏が国家的緊急事態の際、午前2時に職務を遂行できるとはとても思えないと明らかにした。

タッパー氏とトンプソン氏は、バイデン氏が妻と息子、長年の取り巻き集団などで構成される孤立したグループによって守られていたと記述する。この取り巻き集団は共産党の上級機関にちなんで「政治局」とあだ名されている。

選挙陣営スタッフなどこうした取り巻きから外れる人々は、これらの側近がバイデン氏を否定的な情報から守っていたと考えている。新書の内容によるとバイデン氏が再選への出馬を決断する際も議論は行われず、ホワイトハウスと選挙陣営に所属する他の人々の意見は入れられなかったという。

CNNへの声明で、バイデン氏の広報担当者は同書を批判。同氏が当時職務遂行が不可能な状態だったことを示す証拠はないと主張し、実際にはしっかり職務を果たした大統領だったと示唆した。

■「まるで別人」

タッパー氏とトンプソン氏は、バイデン氏の健康に関する懸念が20年大統領選の時期から存在していたことを確認した。バイデン氏は党大会の前、有権者へ向けて語りかける形式の選挙動画を撮影したが、それらの大半の映像は使用されなかった。陣営の一部はその映像に衝撃を受けている。

「まるで別人のようだった。信じられなかった。運転を任せられないおじいちゃんを眺めているようだった」「大統領が務まるとは思えなかった」。同書の中で、ある民主党議員はそう振り返った。

バイデン氏に近い一部の人々は、本人の状態の悪化を強いストレスに関連するものとの見方を示した。特に次男のハンター氏が起訴され、24年6月に有罪評決を受けたことが大きな打撃になったと、ある閣僚は証言している。

24年3月、バイデン氏は熱のこもった一般教書演説を行ったが、同日夜の高校生に向けての演説では状態の悪化にホワイトハウスの一部の側近たちが動揺。とりとめのないスピーチを続けるバイデン氏の姿に側近の一人は、自分たちが何を見せられているのか分からなかったという。

同書によればこの側近は、「これでうまくいくはずがない」「彼には無理だ。こんなことはクレージーだ。全くもってクレージーだ」と思ったという。

■テレビ討論後の圧力

散々な結果に終わった24年6月のトランプ氏とのテレビ討論後、バイデン氏の最側近らは失態を過去のものにしようとした。まるで何事もなかったかのように。

ある選挙陣営顧問は、テレビ討論の後、エアフォースワン(大統領専用機)の機内でバイデン氏と議論したときのことを振り返る。同書の中でこの顧問は、一文もまともに話せないバイデン氏に困惑。「このような会話では、相手が大統領でなくてもその人の健康状態が不安になる。だが実際ここにいるのは、現職の合衆国大統領なのだ」。この顧問はそのように当時を回想する。

バイデン氏と妻のジル夫人は今月、米ABCとの共同インタビューで大統領時代のバイデン氏の仕事ぶりを擁護。任期最後の年に認知機能が低下していたとする見方に反論した。

ジル氏は「そうした書籍を書いた人々は、ホワイトハウスで私たちと一緒にいたわけではない。だからジョー(・バイデン氏)が毎日どれだけ懸命に働いていたか、彼らは目にしていない」と主張した。

昨年の大統領選で、オバマ元大統領と民主党のシューマー上院院内総務(当時)は、バイデン氏が自身の最側近から必要な情報を与えられていないのではないかとの懸念を抱いていた。「原罪」の著者らによれば、この情報とはバイデン氏の再選の見込みがどれだけ薄いかを示す率直なデータのことを指す。オバマ氏はシューマー氏に対して、バイデン氏と話をし、データを渡すべきだと告げたという。

シューマー氏はデラウェア州へ出向き、上院民主党の間でバイデン氏の大統領選継続を望む声がいかに少ないかを表すデータを本人に示した。その上で、バイデン氏には大統領選の勝算にまつわる情報が伝えられていないと警告した。

これを聞いたバイデン氏はシューマー氏に、「カマラ(・ハリス氏)なら勝てると思うか?」と問いかけた。

「原罪」の記述によるとシューマー氏は、「彼女が勝てるかどうかは分からない」「ただあなたが勝てないことだけは分かる」と答えた。

バイデン氏は24年7月、大統領選からの撤退を決めた。

=====

バイデン前大統領の健康問題、組織的な隠ぺい疑惑…「補佐官の名前も覚えていない」

ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2025.05.21 06:470 글자 작게
https://japanese.joins.com/JArticle/333997

米国のジョー・バイデン前大統領が少なくとも就任2年目(2022年)から「毎日会う補佐官の名前を覚えていない」という主張が出た。

昨年の米大統領選挙時代に提起されたバイデン前大統領の健康悪化と認知力の低下が、実はすでに執権初期から始まったということだ。

CNNアンカーのジェイク・タッパー氏とアクシオス誌記者のアレックス・トンプソン氏が20日(現地時間)に出版した『Original Sin(原罪)』(原題)によると、バイデン氏はこのように政権初期から認知力問題を抱えていた。

また、昨年の大統領選挙中には「車椅子を使わなければならない」という深刻な議論があったが、高齢イシューを避けるために車椅子を使わなかったという。

『原罪』はホワイトハウスと選挙キャンプ関係者200人に対するインタビューを基に執筆された。彼らはインタビューを通じてバイデン氏の家族と中心参謀らがこのような問題を組織的に隠ぺいした可能性を提起した。

著者は「昨年6月、初の大統領選挙テレビ討論で世界が見たのは突発状況や風邪、あるいは準備不足か、過度に準備された人、または少し疲れた人ではなかった」として「バイデン氏の家族と彼のチームは自分たちの私利私欲とトランプ氏の任期に対する恐れのため、数年間認知力が低下してきた81歳の老人を執務室に4年さらに置こうとする試みを正当化した」と主張した。

著者は特に「ジル夫人はホワイトハウスの参謀たちに自身を『ドクターB』と呼ぶように指示した」とし「ジル夫人は(バイデンの)再選出馬の決定を最も強く支持した人の一人であり、彼の病状悪化を最も強く否認した人」と書いた。

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 米穀の小売価格が4000円台となっている現在、国民の不満は高まっている。そうした中で、江藤拓前農水相(2025年5月21日に辞任)が「米を買ったことがない、売るほどある」などと発言したことで、顰蹙を買い、その後の釈明もとんちんかんな状態が続いたことで、石破茂首相は更迭を決断し、小泉進次郎議員を後任の農水相に抜擢した。
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 江藤前農水相の失言については当初、与野党は批判をしながらも、辞任までは必要ない、現状の米の価格の引き下げに尽力せよという考えが大勢を占めていた。それが変わったのが昨日になってからのようだ。以下に下に貼った記事から引用する。

(引用はじめ)

「実は当初、国民民主党の玉木代表は『不適切な発言』としながらも『辞める必要はないと思う』と話していたんです。それだけに、野党第1党の立憲民主党としても国民民主や維新が賛成しなければ、不信任案を出しても否決されるだけ、と様子見だったんですが、国民民主の他の幹部が、『不信任案を出しましょう』と持ちかけたことで、一気に話が進みました」

「ある立憲の幹部は『国民民主がこういう対応をすることはあまりなかった』と話しています。実際、予算や選択的夫婦別姓など、大きな課題で、これまで野党は一致しませんでした。野党が一枚岩になって対応したのは、今の国会では初めてのことです。『野党がまとまれば、大きな力になることが証明できた』と、ある立憲幹部は手応えを感じていました」

(引用終わり)

 今回の江藤前農水相更迭の流れを作ったのは国民民主党であったようだ。これまで愛並みを揃えることができなかった野党は一致結束すれば数では少数与党を上回ることができることをここで示した。他にもっと重要な場面で示すことができたのではないかと批判したくなるが、これが参院選までの政局において重要な要素ということになりそうだ。しかし、国民の批判は大きかったが、江藤前農水相の失言はそこまでのことだったのか、そして、国民民主党はどうして急に「やる気」になったのかということも疑問は残る。そして、今回の極めて政治的な動きは小泉進次郎議員を担ぎ出すための動きではなかったかという考えも出てくる。

小泉進次郎議員の「改革」路線は、国民民主党とは親和性が高い。小泉進次郎議員は昨年の自民党総裁選挙で、大きく支持を落として敗退し、その後、自民党の選挙対策本部長に起用され、衆院選挙に臨み、自公の過半数割れという結果で辞任した経緯がある。小泉進次郎議員が首相になるという話はだいぶ遠のいたが、それでもまだ「将来の総理総裁候補」ではある。ここで米の価格を下げることに成功すれば一気に劣勢を挽回できる。そもそも小泉議員が農水相に就任したくらいで米の価格が下がるなどは考えにくい。政府による施策が効果が出る頃に交代で、成果が出る時の大臣が小泉進次郎であれば、その「手柄」は小泉大臣のものとなる。

 米の価格は急上昇を続けている。その原因は「よく分からない」ということだが、需要に比べて供給が少ないために価格が上がっていると考えるのが自然だ。それでは米は不作かと言えば、ここ数年は「豊作」とは言えないまでも、1993年時のような不作ではなかった。米の流通は複雑だとも言われるが、米を精米して袋詰めして、市場に出すまでには様々な作業が必要であり、現在のコスト高では米の価格が上昇するのは仕方がない面はある。しかし、5キロで3000円台前半が適正という意見もある。
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 小泉進次郎議員を農水相に起用するにあたり、菅義偉元首相の後押しがあったという報道も出ている。神奈川売国連合が動いている。小泉議員を総理総裁候補に復活させることで利益を得るのはアメリカである。小泉議員は「米担当大臣のつもりで」で発言しているが、彼が担当しているのは「米穀」ではなく「米国」である。農林中金100兆円(運用額50兆円・外債運用20兆円)をアメリカに差し出すための「改革」を行う。そのためには、「小泉大臣のおかげで米の値段が下がった」という成功物語が必要となり、そして、これに続くのは「米の値段を吊り上げた戦犯は農協とそれにくっつく農林族議員だ」というプロパガンダだ。私たちはこのことによくよく注意しておかねばならない。

(貼り付けはじめ)

●「続投から一転…江藤氏の“更迭”なぜ? 小泉新農水相でコメ価格「3000円台」は」

5/22() 6:11配信 日テレNEWS NNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e592a8a8367fdac48b0ff0005b55d16628b82f1

https://news.yahoo.co.jp/articles/6e592a8a8367fdac48b0ff0005b55d16628b82f1?page=2

「コメは買ったことがない」などと失言した江藤農水大臣が事実上、更迭され、後任として小泉進次郎氏が就任しました。なぜ、江藤農水大臣が事実上の更迭となったのか、コメ価格は下がるのか、などについて解説します。

■野党が一枚岩に 今国会で初

藤井貴彦キャスター

「当初、石破総理は続投させる考えでしたが、なぜ一転して事実上の更迭ということに変わったのでしょうか?」

小栗泉・日本テレビ解説委員長

「ある野党のベテラン議員は、江藤大臣に対する不信任決議案の提出に向けて、『野党がまとまった後、自民党が慌てだした』と話しています」

「実は当初、国民民主党の玉木代表は『不適切な発言』としながらも『辞める必要はないと思う』と話していたんです。それだけに、野党第1党の立憲民主党としても国民民主や維新が賛成しなければ、不信任案を出しても否決されるだけ、と様子見だったんですが、国民民主の他の幹部が、『不信任案を出しましょう』と持ちかけたことで、一気に話が進みました」

「ある立憲の幹部は『国民民主がこういう対応をすることはあまりなかった』と話しています。実際、予算や選択的夫婦別姓など、大きな課題で、これまで野党は一致しませんでした。野党が一枚岩になって対応したのは、今の国会では初めてのことです。『野党がまとまれば、大きな力になることが証明できた』と、ある立憲幹部は手応えを感じていました」

■石破内閣への不信任決議案は

藤井キャスター

「そうなると、夏には参院選もありますし、この先の野党の戦略にも今回の動きは影響しそうですね」

小栗委員長

「まさにその通りで、今後、最大の焦点は、石破内閣への不信任決議案を野党が出すのかどうかです。石破総理はこれまで周辺に、内閣不信任案が出された時点で、つまり国会での採決を待たずに衆議院を解散する意向を示していて、ある自民党幹部は『不信任案が出されたら衆参ダブル選挙になるだろう』と話しています」

「こういうことになると、選挙の準備は整っているのか、勝てる見込みはあるのか、など野党各党の思惑にもズレが出てきます。ただ、今回、野党が足並みをそろえて江藤農水大臣を辞任に追い込んだ実績は重く、立憲のある幹部は『野党のほうが数が多いという事実をもう一度、しっかり活用していかないといけない』と、国民民主のある幹部は『内閣不信任案、出すしかないだろう』と話していました」

「最終的にどうするかは、まだまだ不透明ですが、野党の結束が一歩前進するきっかけにはなったと言えそうです」

藤井キャスター

「『コメは買ったことがない』という一言から政界の大きな動きになってきましたね、李光人さん」

板垣李光人さん(俳優・『news zero』水曜パートナー)

「コメの値段が少しずつ上がり始めた時には、ここまで政治が動くことになるとは思っていなかったので、率直に驚きがあります。ただ、自分もごはんは食べますし、皆も毎日食べるよねっていうところが、皆の怒りにつながって、野党が初めてまとまって政治を動かすことになると、食の問題はすごく重大なものだなと思いました」
■「随意契約」で価格下がる? 公平性の問題も

藤井キャスター

「そして、21日に農水大臣に就任した小泉進次郎さんですが、その初日に、総理からコメ5キロの価格を3000円台にというハードルを突きつけられたわけですが、実際にコメの価格は下がるんでしょうか」

小栗委員長

「複数の政府関係者からは『トップがかわって(価格が)下がるならとっくに下がっている』と悲観的な見方も出ています。ただ、石破総理は備蓄米が市場に出回ってないことについて、21日に早速、『随意契約を活用した備蓄米の売り渡しを検討するように』と新たな指示を自ら出しました」

「これまでは競争入札でしたので、どうしても価格が上がりがちでした。これを『随意契約』にするとどうなるのか、コメの流通に詳しい宇都宮大学の松平尚也助教によると、『予定価格を決めて国が事業者と契約を行うので、この価格以下で値段を設定される。そのため、安い価格帯の備蓄米の流通が増えることになる』ということです」

「ただ、『契約する事業者をどう選定するのかという公平性の問題は予想される』と指摘していました」

■小泉氏の「改革に向けた情熱」 “変なことさせない”すでにけん制の声も

藤井キャスター

「その難しい一手を任せる重要なポジションに石破総理が、小泉さんを起用したということになるわけですね」

小栗委員長

「石破総理は、小泉さんの『改革に向けた情熱』を理由の1つにあげています。これまでの農水省の一連の対応に石破総理は『消費者ではなく農家に向きすぎている』と不満を漏らしていて、農政を改革するという点で小泉さんに期待している面もあるようです」

「ただ、小泉さんの過去の農協改革については、自民党内には『結局、改革は進まなかった』という批判的な見方もあります。実際、農水大臣の経験もある自民党のベテラン議員からは『小泉さんには変なことはさせません』と小泉さんの動きをけん制するような声もすでに上がっていて、短期間で結果を出せるのか、小泉さんにとっても石破総理にとっても正念場となりそうです」

藤井キャスター

「コメの価格は、毎週月曜日に発表されます。新大臣の手腕による効果なのか、備蓄米が行き渡り始めた効果なのか、も含めて価格動向に注目したいです」

521日『news zero』より)
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●「コメ価格の下落、備蓄米出回る4月以降か…大手スーパー担当者「大幅な値下がりはないだろう」」

2025/03/15 09:20 読売新聞

https://www.yomiuri.co.jp/economy/20250315-OYT1T50014/

 政府がコメ価格安定を狙い初めて実施した備蓄米の入札は、9割以上が落札され、ひとまず順調な滑り出しとなった。今月下旬にもスーパーなどの店頭に並び、4月以降、販売価格も下がり始めるとみられる。昨夏の「令和の米騒動」以来続いてきたコメ価格の高騰に歯止めがかかるのかが注目される。(経済部 佐藤寛之)

■タイムラグ

 江藤農相は14日夕に開いた臨時記者会見で「胃が痛い思いをしていたが、ほっとした」と述べ、流通の停滞解消に期待感を示した。備蓄されている場所に偏りがあることを踏まえ、全国に均等に流通するよう、集荷業者や卸売業者、小売業者に通達した。

 総務省の小売物価統計調査では、東京都区部のコシヒカリ(5キロ・グラム)の価格は昨年5月から10か月連続で上昇し、今年2月には4363円で過去最高値を更新した。今後の価格について、日本国際学園大学の荒幡克己教授は「小売りや外食は既に高い価格で仕入れており、今回の放出で安い米を仕入れたとしてもタイムラグがある。4月半ばから5月の連休明けに価格は下がるのではないか」と指摘する。

 一方、入札に参加した集荷業者は「競争入札なので、安い金額では応札できなかった」と明かした。大手スーパーの担当者も「大幅に価格が下がることはないだろう」と冷ややかだ。

■不足

 これまで高騰が続いた理由は、市場に出回るコメが不足したことだ。農林水産省によると、2024年産米の生産量は前年より18万トン多い679万トン。一方で、大手集荷業者が生産者から買い集めた量(集荷量)は24年12月末時点で前年より21万トン少なく、今年1月末時点では23万トン減と減少幅が拡大した。生産量が伸びたにもかかわらず、集荷量は減ってしまっている。

 その原因の一つに、高値での売却を当て込み、一部の卸売業者や農家らがコメを抱え込んでいる実態もある。江藤氏は13日の参院農林水産委員会で「正直なところ、新しいプレーヤーが入りすぎて(流通状況が)わからない」とこぼした。

 備蓄米の放出により、流通市場でのコメ不足は和らぐとみられる。転売目当てでコメを押さえていた一部業者らも、価格が低下する前に手放さざるを得なくなりそうだ。

 ただ、農水省が計画通り21万トンの備蓄米を放出しても、コメ価格が大幅に下がるほどの影響があるかどうかは見通しにくい。24年産米は「猛暑の影響から中身がスカスカで、精米した後の量が例年より減っている」(荒幡氏)との指摘もある。
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●「菅元首相「小泉さんにぴったり」 農相就任の決断を後押しか」

5/21() 17:00配信 カナロコ by 神奈川新聞

 小泉進次郎元環境相(衆院神奈川11区)が21日、石破茂内閣の農相に就任した。コメ価格高騰を巡る失言で前任の江藤拓氏が更迭され、米国との関税協議など難問も山積。野党時代の初当選以来、苦難を共にしてきた菅義偉元首相(同2区)が苦渋の決断を後押しした。自民党内には「総裁選への出馬を阻むための入閣要請か」との臆測も飛び交うが、小泉氏本人は「総裁選は二の次、三の次の話。コメの高騰など目の前の生活の危機を突破しないといけない」とくみする気配は皆無だ。

 「誰もが敬遠する時期で、誰もが敬遠する仕事。党の政治改革事務局長など厳しいことを選んでやってきた小泉さんにぴったりだ」。就任打診を報告した小泉氏を菅氏は励ました。自民幹部は「石破総理は断られないように外堀を埋めていた」と推測する。菅氏は神奈川新聞社の取材で「小泉氏への打診前に官邸などから相談があったのでは」と問われ、「任命権者は総理」とけむに巻いた。一方で「(打診は)テレビとかに出る前には知っていたかな」と自らの関わりに含みを持たせ、党内の「石破降ろし」の動きをけん制した。
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●「首相、コメ価格「5キロ3000円台でなければならない」国民民主・玉木氏に 党首討論」

5/22() 7:00配信 産経新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/4d5daeae8b7e711b575271d852edd8370397c0c4

石破茂首相は21日の党首討論で、スーパーなどで販売されているコメ5キロ当たりの価格について、「3000円台でなければならない」と述べた。国民民主党の玉木雄一郎代表に答えた。

玉木氏は「コメの値段は必ず下げるのか。どのようにいつまでに5キロいくらまで下げるか」と具体的に質問した。

首相は「どこに、なぜ、どれだけのものが滞留しているのか把握しないと、おまじないを言っても仕方がない。気合で下がるわけでもないので、下げる方針が分からない」と述べた。さらに「コメの供給が安定的になされれば、こんなに価格が上下するはずがない。安定的なコメの供給を必ず実現する」とした上で、「3000円台でなければならないと思っている。4000円台などということはあってはならない」と強調した。時期については「一日も早く実現する」と述べた。

さらに首相は、実現できなかった場合に「責任を取らなければならない」と述べた。「仮に下がらないとするならば、なぜ下がらないかということをきちんと説明するのは政府の責任だ」とも語った。玉木氏は「コメの高騰が続いて1年ぐらいになるが、いまだにその分析か」と批判した。

玉木氏はコメの増産に向けて政策変更をするよう求め、首相は「増産の方向に舵を切れという主張は同意する」と明言した。

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 今回は、ズビグニュー・ブレジンスキー(Zbigniew Brzezinski、1928-2017年、89歳で没)についての論稿を紹介する。ブレジンスキーは、2023年に亡くなったヘンリー・キッシンジャー(Henry Kissinger、1923-2023年、100歳で没)と並び称されるほどの著名な大物学者だった。2人の共通点はヨーロッパ生まれ(キッシンジャーはドイツ、ブレジンスキーはポーランド)、ナチズムから逃れた亡命者、ハーヴァード大学で博士号(キッシンジャーは政治学、ブレジンスキーは国際関係論)を取得、大統領国家安全保障問題担当大統領補佐官(キッシンジャーはニクソン政権・フォード政権[フォード政権では国務長官を兼任]、ブレジンスキーはカーター政権)に就任が挙げられる。
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ヘンリー・キッシンジャー(左)とズビグニュー・ブレジンスキー
 ブレジンスキーはまた、こちらもまた有名な学者だったサミュエル・P・ハンティントン(Samuel P. Huntington、1927-2008年、81歳で没)とは終生の友人だった。ハンティントンは、「諸文明間の衝突(The Clash of Civilizations)」を提唱したことで知られる。2人はほぼ同時期に、ハーヴァード大学大学院を修了した。学生時代から英才の誉れが高く、そのままハーヴァード大学に残っていたが、ハーヴァード大学での終身在職権(テニュア)付のポジションに就けず(リベラルな教授会に忌避された)、2人は揃ってニューヨークにあるコロンビア大学に移籍した。ハンティントンは1963年に懇願され、ハーヴァード大学に復帰したが、ブレジンスキーは復帰を拒否してコロンビア大学にとどまった。ブレジンスキーは、ニューヨークでの生活を気に入っていたという話が残っている。ハンティントンとブレジンスキーは性格こそ大きく違ったが、終生の友人関係を続けた。ブレジンスキーがジミー・カーター政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任した際には、安全保障計画調整担当として国家安全保障会議に招集した。2人は米連邦緊急事態管理庁(Federal Emergency Management AgencyFEMA)創設を行った。
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サミュエル・P・ハンティントン

・ヘンリー・キッシンジャー:ハーヴァード大学(1954-1968年)

・サミュエル・ハンティントン:ハーヴァード大学(1950-1958年)、コロンビア大学(1958-1962年)、ハーヴァード大学(1963-2008年)

・ズビグニュー・ブレジンスキー:ハーヴァード大学(1953-1959年)、コロンビア大学(1960-1989年)

 キッシンジャーとブレジンスキーは学者よりも、実務者としての面が強く、ハンティントンは大学人の面が強い。彼らはそれぞれの立場で大きな影響力を持った。ブレジンスキーはジミー・カーター政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官としてホワイトハウス入りしたが、サイラス・ヴァンス国務長官と対立し、ヴァンスから外交の実権を奪って活動した。1979年に発生したイラン革命に伴う、在テヘラン米大使館人質事件(1981年まで)では、反対を押し切り、米特殊部隊を起用しての人質救出事件を立案・実行し、失敗している。結果として、カーター政権の命運が尽きた事件となった。

 ブレジンスキーは、出身がポーランドということもあり(貴族であったブレジンスキー家の領地は現在のウクライナにあったそうだ)、ロシア(ソヴィエト連邦)を敵視し、ソ連によるアフガン侵攻では、ムジャヒディン支援を行った。ムジャヒディンにはオサマ・ビン・ラディンも参加していた。コロンビア大学時代の学生にはバラク・オバマがおり、オバマに大統領選挙に出馬するように勧め、陣営の外交顧問に就任したことでも知られる。民主党内のリベラルホーク(liberal hawk、国内問題ではリベラルな立場を取り、対外問題では強硬な姿勢を取る)であり、彼らの仲間の内、共和党に移っていた人々がネオコン派を形成している。リベラルホークは、民主党内の人道的介入派の源流ともなっている。

 しかし、対中国に関しては、ロシアをけん制するという意味もあり宥和的であり(カーター政権では米中国交正常化に取り組んだこともあり)、米中で世界を管理するG2路線に理解を示していた。その点でヘンリー・キッシンジャーと共通する。ブレジンスキーの反ロシア、反ソ連は骨絡みで、子供の頃からの信念、ポーランド貴族出身としての意地ということもあるだろう。冷戦の闘士であったブレジンスキーは現在の状況をどう見ているだろうか。そして、アメリカ外交政策に関して言えば、有名な大物学者が参加する、影響を与えるという時代は終わったと言えるだろう。そして、これはアメリカの世紀の終わりを示す1つの現象ということになるだろう。

(貼り付けはじめ)

地政学戦略家たちはどこへ行ってしまったのか?(Where Have All the Geostrategists Gone?

-ズビグニュー・ブレジンスキーの人生とその意義。

セオドア・バンゼル筆

2025年5月16日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/16/zbigniew-brzezinski-zbig-review-edward-luce/

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2010年の夏、蒸し暑い北京で会議を行き来しながら、ズビグニュー・ブレジンスキーに外交政策において最も大きな影響を与えたのは誰かと尋ねたことがある。当時、私はこの偉大な人物のリサーチアシスタントをしており、ぎこちなく時間をつぶそうとしていた。彼は少し間を置いて、困惑したような表情を浮かべた。「本当に誰も(Nobody, really)」と彼は答えた

第一印象では、ブレジンスキーの無表情な答えは自慢げだと思った。しかし、今にして思えば、ズビグ(彼の愛称)はただ正直だっただけだった。ポーランド生まれの戦略家であり、ジミー・カーター大統領の国家安全保障問題担当大統領補佐官として最もよく知られた彼は、安易なカテゴライズを逃れた人物だった。彼は民主党の冷戦の賢人(the Democrats’ Cold War sage)で、ロナルド・レーガン大統領の外交政策ティームにも崇拝者がいた。ジョージ・W・ブッシュ政権時代にはネオコンの宿敵(an arch-nemesis)だった根っからの対ロシア強硬派であり、バラク・オバマ米大統領の初期からの支持者でもあった。

ブレジンスキーは、同時代人で、ライヴァルでもあったヘンリー・キッシンジャーとしばしば比較される。2人は共にヨーロッパからの亡命者で、訛りの強いで話し、スター学者から国家安全保障問題担当大統領補佐官へと転身するという共通の経歴を持っていた。しかし、2人はアメリカの戦略に全く異なる視点からアプローチしていた。ドイツ生まれで旧世界のヨーロッパ外交を研究していたキッシンジャーは、アメリカの進路について悲観的な見方をし、ソ連については過大評価しており、デタント(détente、緊張緩和)を通じて米ソ両国の力の均衡(a balance of power)を図ろうとしていた。ソ連のイデオロギー的・政治的弱点を研究していたブレジンスキーは、東ヨーロッパを隷属させたモスクワに恨み(grudge)を抱き、冷戦においてアメリカが勝利すると確信していた。

ブレジンスキーの輝かしい生涯は、『フィナンシャル・タイムズ』紙のコラムニストであるエドワード・ルースによって鮮やかに語り直され、素晴らしい伝記となっている。ルースの著書は、思想家として、そして人間として、ブレジンスキーの真髄を捉えようとする初の試みである。辛辣なウィット、並外れた競争心、滑稽なほどのケチさ(comical tight-fistedness)、そして家族への優しくも揺るぎない献身。ルースは、この重要な新著でこれを見事に描き出し、アメリカ外交政策思想家たちの殿堂におけるブレジンスキーの地位を正当に高めている。

ルースの著書は多くの印象を残したが、中でも最も印象深いのは、アメリカがもはやブレジンスキーやキッシンジャーのような偉大な戦略家を生み出していないということだ。これは、第二次世界大戦の荒廃を経た世代が成熟し、世界秩序の問題に執着する思想家を輩出したという、彼らの世代の特殊性によるところもあるかもしれない。しかし、おそらくそれ以上に、現代のアメリカの外交政策立案における成功の要件に関係しているだろう。現代の巨大な国家安全保障国家、そしてブレジンスキー時代には数十人だった国家安全保障会議(NSC)自体でさえ、戦略的深みと同じくらい多くの運用上の専門知識をますます要求している。世界が大きく変貌を遂げているこの時代に、この地政学戦略家の不足は残念なことだ。キッシンジャーが2017年にライヴァルの訃報を受けた際に書いたように、「ズビグがその洞察力の限界を押し広げなければ、世界はより空虚な場所になる(The world is an emptier place without Zbig pushing the limits of his insights)」のだ。

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左:ブレジンスキーとジミー・カーター米大統領が1977年12月にエアフォースワンに搭乗している。右:イスラエルのメナヘム・ベギン首相(左)が、当時ホワイトハウスの国家安全保障問題担当大統領補佐官だったブレジンスキーとチェスの対局に臨む(1978年9月9日、メリーランド州キャンプ・デイヴィッドでの首脳会談にて)。

ブレジンスキーはポーランド人外交官の息子として生まれた。生まれてから10年間は​​断続的にしかポーランドに住んでいなかったが、ポーランドとその悲劇的な歴史はブレジンスキーの人生において大きな影を落とすことになった。1940年代のモントリオールで成人を迎えるまで、幼いズビグはポーランドの騎士や英雄を夢見ていた。高校時代には、国際関係におけるポーランド問題をテーマにした早熟なエッセイを書いた。

鉄のカーテンがポーランドと東ヨーロッパ諸国に降りる中、ブレジンスキーはその類まれな才能を敵国の研究に注ぎ込んだ。彼はロシア語を学び、1953年に当時黎明期にあったソヴィエト学(Sovietology)の分野でハーヴァード大学で博士号を取得した。ズビグが1960年に修士論文に基づいて著した『ソヴィエト圏:統一と対立(The Soviet Bloc: Unity and Conflict)』は、先見の明があり、かつ永続的な内容であった。彼は、ソヴィエト圏の民族分離、更にはソ連自体の民族の寄せ集め(バルト人からウクライナ人まで)が、最終的にソ連を破滅させるアキレス腱となると主張した。冷戦時代には、モスクワが汎ソ連的な市民意識をうまく醸成したという主張が盛んに行われていたが、ブレジンスキーはしばしばこう反論した。「それでは、彼らはソヴィエト語を話しているのか?(So do they speak Soviet?)」

ハーヴァード大学教授、それからコロンビア大学教授となり、ブレジンスキーの関心は次第にワシントンへと向けられていった。リンドン・B・ジョンソン政権時代に国務省に短期間勤務した際には、東ヨーロッパをモスクワから引き離すために平和的な関与(peaceful engagement)を提唱した。しかし、ブレジンスキーが国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任したことで、彼はアメリカ外交のコックピットに座ることになった。カーター政権内でズビグの最大のライヴァルであったサイラス・ヴァンス国務長官は、ソ連との関係安定化を支持していたのに対し、ブレジンスキーはデタントを一方的な交渉と見なしていた。内部での影響力争いで、彼はヴァンスを昼食代わりに食べ、カーターの耳目を独占した。ブレジンスキーがホワイトハウスに近かったせいもあるが、ズビグは新しいアイデアと愉快な仲間の宝庫でもあった。あるとき、カーターがソ連の歴史を教えて欲しいと頼んだとき、ブレジンスキーは、レーニンのもとでは「復興集会(a revival meeting)のようだった、スターリンのもとでは監獄(a prison)のようだった、フルシチョフのもとではサーカス(a circus)のようだった、ブレジネフのもとではアメリカ合衆国郵便公社(a United States Post Office)のようだった」と答えた。

ブレジンスキーは影響力を行使して、膠着状態にあったデタントにナイフを突き刺した。ニクソンとキッシンジャーによる対中開放を土台に、カーターは1979年に北京との関係を完全に正常化した。小柄な鄧小平と、モスクワに対する相互の反感に基づく深い信頼関係を築いた。ブレジンスキーがヴァージニア州の自宅で開いた晩餐会では、レオニード・ブレジネフお気に入りのウォッカで米中友好を祝った。キッシンジャーは、対中開放はアメリカをモスクワと北京の両方に近づける優雅な「戦略的三角形(strategic triangle)」を生み出すと主張していた。ブレジンスキーはその代わりに、ソ連に対抗して米中関係を操作した。1979年のクリスマスにソ連が侵攻した際、カーター政権は中国の助けを借りてアフガニスタンの抵抗勢力を支援し、ソ連を永続的な泥沼(an enduring quagmire)に沈め、その崩壊(demise)を加速させた。

ブレジンスキーはまた、ソヴィエトをイデオロギー的に守勢に立たせる方法として、カーターの人権擁護を奨励したが、モスクワとの協力関係を維持したい国務省関係者の反発を招いた。この追求においてブレジンスキーは、ローマ法王ヨハネ・パウロ2世という偶然のパートナーを見つけた。ルースは、戦略家とローマ法王の感動的な往復書簡を掲載し、この重要な歴史的関係を鮮明に回想している。

しかし、ブレジンスキーの遺産を永久に傷つけたのはイランだった。皮肉なことに、ズビグは1979年のイラン革命の危険性について先見の明があった。彼は1917年のロシアの影を見ていたし、ウィリアム・サリヴァン米大使のように、ホメイニ師を「ガンジーのように」なる可能性を持つ重要人物(a potential “Gandhi-like” figure)と見る人もいた。しかし、ズビグは、彼が提唱し、大失敗に終わり、カーターの選挙の運命を決定づけた、テヘランでのアメリカ人人質救出作戦「イーグル・クロー作戦(Operation Eagle Claw)」と永遠に結びつくことになる。

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1979年11月9日、人質事件の最中にテヘランの米大使館の屋上に集まったデモ参加者たちがアメリカ国旗に火をつけている。

ブレジンスキーはまた、イラン情勢の背後にソ連の関与があると過度に疑心暗鬼に陥っていた。カイ・バードによるカーター元大統領の伝記『アウトライアー(The Outlier)』では、ブレジンスキーは無謀な超タカ派(a reckless superhawk)として描かれ、「地政学的なゴブルディゴック(geostrategic gobbledygook[難解な、意味不明な言葉])」(ストローブ・タルボットがかつて『タイム』誌で表現したように)に傾倒し、至るところにソ連の影を感じている人物として描かれている。この風刺画には一片の真実も含まれている。ズビグは1980年のカーター・ドクトリン(Carter Doctrine)の立案者であり、このドクトリンはアメリカが「外部勢力(outside force)」(つまりモスクワ)によるペルシャ湾支配の試みを阻止することを約束した。今にして思えば、ソ連が終末的な衰退へと突き進む中で、この地域へのソ連の進出の脅威はあまりにも誇張されていたと言えるだろう。

その9年後、鉄のカーテンが崩壊し、ブレジンスキーの少年時代と職業上の夢が実現した。ブレジンスキーはそのわずか数カ月前に共産主義の崩壊が間近に迫っていることを予言し、1989年の著書『大いなる失敗――20世紀における共産主義の誕生と終焉』の中でミハエル・ゴルバチョフの改革努力は絶望的であると力説した。フランシス・フクヤマは、「ブレジンスキーほど、歴史的な出来事の実際の流れによって正当性が証明された人物はいない」と書いている。そしてソ連は、40年前にズビグが修士論文で予見したように、構成民族に分解した。

ルースは、ブレジンスキーが冷戦時代にはアメリカの能力について楽観的であったにもかかわらず、その後、アメリカがグローバル・リーダーのマントを担う能力については皮肉屋に転じたことを鋭く指摘している。ズビグは、ジョージ・HW・ブッシュがスローガン以上の「新しい世界秩序(new world order)」のヴィジョンを具体化できなかったことを悔やみ、ビル・クリントン政権がイスラエルとパレスチナの恒久和平に失敗したことを批判した。ブレジンスキーは、ジョージ・W・ブッシュのイラク戦争を即座に痛烈に批判し、対テロ世界戦争を「準神学的」な不条理(“quasi-theological” absurdity)だと断じた。

ズビグがよく知るロシアについては、彼は特徴的に予言的であった。ブレジンスキーは、ソヴィエト連邦崩壊後のロシア連邦が間もなく報復主義(revanchism)に取り込まれると予言し、西側の利益を強固にするためにNATOの東方拡大を提唱した。この予言の中で、ブレジンスキーはウクライナの中心性に焦点を当てた。彼は1994年に、「ウクライナがなければロシアは帝国ではなくなるが、ウクライナが従属し、そして従属させられれば、ロシアは自動的に帝国になる(without Ukraine, Russia ceases to be an empire, but with Ukraine suborned and then subordinated, Russia automatically becomes an empire)」と書いている。彼の予測がなんと正しかったことか。

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左上から時計回りに:ブレジンスキーとマデレーン・オルブライト元米国務長官(2006年、ワシントンにて)、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官(2016年、オスロにて)、ドナルド・トゥスク・ポーランド首相(2008年、ワシントンにて)、潘基文国連事務総長(2012年、ワシントンにて)。

何が優れた戦略思考者を作るのか? 歴史的視点、政治的意志を直感的に読み取る能力、そして軍事から人間心理に至るまでの様々な分野の統合だ。ブレジンスキーはこれらの資質を全て見事に体現していた。彼の理論は、政治、イデオロギー、そして社会発展という多様な要素を統合し、鋭くも学術的な文体で表現していた。その典型は、1970年に出版された著書『二つの時代の狭間:テクネトロニック時代におけるアメリカの役割(Between Two Ages: America’s Role in the Technetronic Era)』に象徴されている。

優れた戦略家の特徴としてしばしば過小評価されるのが、独創的な思考力だ。ズビグはそれを自分の中で大事に育んだ。ブレジンスキーは、ワシントンの集団思考(gtoupthink)を助長するようなことは決してしなかった。ブレジンスキーは、望ましくない影響を避けるため、自分が執筆しているテーマに関する意見記事を読んだり、重要なスピーチをしたりすることを意図的に避けていた。私はブレジンスキーのリサーチアシスタントとして、彼が外国の視点をより深く理解できるよう、毎週国際新聞の速報記事をまとめていた。

知的な面で恐れを知らないことも重要であり、それはしばしば鋭い攻撃を伴う。ブレジンスキーはなかなか魅力的で、ジョージタウン(ワシントン)の社交界よりも家族を優先する姿勢で、多くの同僚とは一線を画していた。しかし、タカ派の顔立ちは、彼の使命感と物事への真摯なアプローチを露呈していた。彼は国務省をはじめとするあらゆる部署で、巧妙にライヴァルを出し抜き、更にそれを大いに楽しんでいた。かつて彼は、カーター政権時代に関するある本で、ブレジンスキーの描写が「マキャベリがボーイスカウトのように見えるようにさせた」と自慢げに語ったことがある。

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ワシントンの事務所にいるブレジンスキー(1981年12月1日)

しかし、ブレジンスキーの最もマキャベリ的な駆け引きは、権力のために権力(power for power’s sake)を求めるのではなく、理念の追求(the pursuit of idea)に向けられた。ルースによれば、ジョンソン政権下でズビグは、ロバート・F・ケネディがジョンソンの冷戦政策を批判する演説を予定しているという作り話をでっち上げ、大統領がブレジンスキーの東ヨーロッパ戦略を盛り込んだ演説でライヴァルに先手を打つよう仕向けた可能性が高い。ブレジンスキーは当然ながら人気と報道に恵まれていたが、人気は常に二の次であり、自らが正しいと考えることを主張することの方が重要だった。ズビグは初期から二国家共存の解決(a two-state solution)とイラク戦争反対を強く訴え、ワシントンの多くの場所で疎外されたが、それでも決して諦めなかった。

アメリカの外交政策におけるリーダーシップの必要条件は、ブレジンスキーの全盛期とは根本的に変化しており、ズビグのような地政学戦略家はかつてないほど見つけにくくなっている。ブレジンスキーはNSCを大学のゼミのように運営していた。20人ほどのスタッフがそれぞれ異なる地域を担当し、1つのテーブルを囲んで座っていた。しかし、今日の国家安全保障官僚機構はあまりにも巨大で複雑であるため、深い地政学的思考はあっても十分ではない。膨大な資料を処理し、経済と国家安全保障の分野横断的な課題に取り組むには、ブレジンスキーには到底及ばなかったであろうスキルと姿勢が求められる。国際関係論の著名な学者も姿を消した。かつてないほど細分化され専門化された学界は、そのような学者を輩出していない。そして、国民の関心が内向きになるにつれ、彼らも彼らに価値を見出さなくなっている。

ブレジンスキーは晩年、アメリカ人の外交問題に対する無知を一貫して嘆いていた。例えば、アメリカの高校生の3分の1が地図上で太平洋の位置が分からないといったエピソードを、演説に盛り込み、説得力を持たせていた。このようにブレジンスキーは、ジョージ・ケナンのような国際関係論学者の偉大な伝統を受け継いでいた。ケナンは、アメリカの一般国民の唯物主義と浅薄さ(materialism and superficiality)を、時代錯誤に聞こえるほどに嘆いていた。しかし、アメリカが旧来の同盟関係から離脱し、自国中心主義とポピュリズムに囚われつつある今、この点においてブレジンスキーは再来した予言者だったのかもしれない。

※セオドア・バンゼル:ラザード・ジオポリティカル・アドバイザリーのマネージングディレクター兼責任者。以前は駐モスクワ米大使館の政治部と米国財務省に勤務した。2008年から2010年まで、ズビグニュー・ブレジンスキーのリサーチアシスタントを務めた。

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 20世紀は「アメリカの世紀」と言ってよいだろう。アメリカが世界の中心となって、覇権国となって、世界の政治や経済を動かしてきた。その中心的な考えとなったのは、リベラル国際主義(liberal internationalism)であった。これは第二次世界大戦前までのアイソレイショニズムを放棄して、戦争終結後もアメリカが世界の安定に寄与するために、世界各国と同盟関係を結び、戦後世界秩序を構築した。しかし、ドナルド・トランプ大統領の出現によって、アメリカの外交政策は大きく変化している。リベラル国際主義は戦後の長い間、つまり、アメリカの世紀においては主流となる考え方だったが、トランプが二期目の政権に就くことで大きく変化している。リベラル国際主義への懐疑論は政治的な立場を超えて広がりを見せている。

アメリカの国際的な役割が問われる中、トランプ大統領のもとでの政策の一貫した批判や不安が高まっている。下記論稿では、その背景に、過去の戦争や秘密作戦による国民の信頼の損失があることも指摘されている。戦後世界秩序を守るためには、常に継続的な努力が求められてきたが、トランプ政権の下で、その基盤が特に急速に揺らいでいる現実が浮き彫りになっていると下記論稿では指摘されている。

 戦後世界におけるアメリカの役割が大きかったことを否定する人は少ないだろう。しかし、その負の側面もまた指摘しなければならない。そして、アメリカの国力が低下する中で、アメリカの役割が変化することは自然な流れである。アメリカ国民が内向きになることは自然なことだ。トランプ大統領は、アメリカの国家としての生命力とアメリカ国民の内向き意識を汲み取り、外交政策を大きく転換しようとしている。それは混乱や不信感を生み出しているが、大きくとらえるならば、時代が変化する中で、新しい時代を生み出すための「陣痛」と言えるかもしれない。

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第二次世界大戦後の体制は常に脆弱だった(The Post-World War II System Was Always Fragile

-フランクリン・D・ルーズヴェルトは平和な時期においてもアメリカの世界に対する義務は継続すると警告を発した。

ジュリアン・E・ゼリザー筆

2025年5月12日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/12/post-world-war-two-international-system-fragile/

第二次世界大戦が終結してから80年が経過した。第二次世界大戦の終結という歴史的な瞬間は、祝賀ムードと高揚感、そして人類全体の安堵をもたらした。壊滅的な戦争はついに終結し、ファシズムは敗北したかに見えた。アメリカの当時の雰囲気を最もよく表しているのは、1945年8月14日、日本降伏のニューズが報じられた後、ニューヨーク市のタイムズスクエアでアメリカ海軍の水兵が女性にキスをしているという象徴的な写真だろう。

しかし、アメリカ人が国際的な脅威がまだ終わっていないことに気づくのに、それほど時間はかからなかった。第二次世界大戦後、ソ連とアメリカ合衆国の間に、冷戦が急速に広がった。核兵器の出現により、全面衝突(full-scale confrontation )を回避することのリスクは劇的に高まった。

これに対し、ハリー・S・トルーマン大統領(民主党)とドワイト・D・アイゼンハワー大統領(共和党)は、リベラル国際主義(liberal internationalism)のヴィジョンを推進した。2人の大統領は連邦議会と協力し、2025年まで存続する一連の制度と政策を構築した。この戦後秩序は、人類が想像しうる最悪の軍事紛争(the worst military conflict)を阻止し、ヨーロッパに一定の安定をもたらした。これはアメリカの国家安全保障と経済力にとって不可欠であることが証明された。

今日、第二次世界大戦後のシステム全体が深刻な脅威に晒されている。ドナルド・トランプ大統領は、トルーマン大統領とアイゼンハワー大統領が築き上げたものに、組織的な攻撃を開始した。アメリカ政治の多くの要素と同様に、トランプ大統領は長年の前提の脆弱性(fragility)を露呈させた。アメリカ大統領による正面攻撃を受けたことで、外交政策の根幹は崩れ始めた。

トランプ大統領はわずか数カ月で主要な国際関係を深刻に緊張させ、あるいは断絶させ、カナダの敵意さえ招いた。イーロン・マスクは米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSID)にチェーンソーを振りかざした。トランプ大統領はNATOについて辛辣な批判を繰り返し、同盟への関与の維持に懸念を表明する一方で、ロシアやハンガリーといった独裁国家(autocratic countries)を称賛している。トランプはテレビでウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領を侮辱し、ロシアとの戦争におけるウクライナへのアメリカの支援期限が迫っていることを明らかにした。

トランプ大統領は1940年代後半に確立された国家安全保障機構の多くを空洞化させてしまった。ヘンリー・キッシンジャーが1973年と1975年にリチャード・ニクソン大統領とジェラルド・フォード大統領の下で国家安全保障問題担当大統領補佐官と国務長官を務めていた当時、政府機関において1人の人物が絶大な影響力を持つと考えられていた。今月初め、マルコ・ルビオが2つの職を兼任する史上二人目の人物となった際、専門家のほとんどは、ルビオの役割は大統領の望むことを何でも承認することだと合理的に推測した。

第二次世界大戦終結以前から、フランクリン・D・ルーズヴェルト大統領は、アメリカの世界に対する義務は継続すると警告していた。1945年1月の最後の就任演説で、ルーズヴェルトは次のように述べた。「私たちは、恐ろしい代償を払って教訓を学び、そこから利益を得るだろう。私たちは、平和に1人で生きることはできないこと、私たち自身の幸福は遠く離れた他国の幸福にかかっていることを学んだ。私たちは、ダチョウのようにも、飼い葉桶の中の犬のようにもならず、人間として生きなければならないことを学んだ。私たちは、世界市民(citizens of the world)、人類社会のメンバー(members of the human community)となることを学んだ。エマーソンが述べたように、『友人を持つ唯一の方法は、友人になることだ(The only way to have a friend is to be one)』という単純な真実を学んだ。猜疑心や不信感を抱いたり、恐怖心を抱いたりして平和に近づいても、永続的な平和を得ることはできない」。

1945年以来、このヴィジョンはあらゆる困難と挫折に直面してきたが、観察者の多くは、その基本的前提は維持されていると考えていた。ネオ・アイソレイショニズムは終焉を迎えたとみなされ、リベラル国際主義が主流となった。トランプ政権の最初の任期後も、その基盤は生き残ったように見えた。

しかし、トランプが二期目に、数十年にわたりアメリカの外交政策を導いてきた国際システムを解体しようとしている今、その基盤の弱さ(the foundation’s weakness)が際立ってきている。

歴史的に見れば、リスクは常に存在していた。国家安全保障体制が構築され始めた初期の頃、リベラル国際主義者たちは、永続的な国際的関与を主張し、激しい抵抗に直面した。国防総省、国家安全保障会議、中央情報局を創設した1947年の国家安全保障法をめぐる連邦議会審議の際、推進派は「兵営国家(garrison state)」がアメリカが反対すると主張する全体主義そのものを助長するのではないかという懸念を克服しなければならなかった。

歴史家マイケル・ホーガンの著書『鉄の十字架(A Cross of Iron)』は、その抵抗の根深さを詳細に描いている。トルーマンの公約に反対したオハイオ州選出のロバート・タフト連邦上院議員のような保守派共和党員、ソ連との不必要なエスカレーションを懸念したヘンリー・ウォレス副大統領のような進歩主義派、そして連邦政府資金による研究の制約を懸念する大学の科学者たちなど、抵抗の根深さが見て取れる。1945年から1953年の間、トルーマンは中道(middle path)、すなわち新たな制度を制限し、文民の国防長官を軍事担当に任命するなど、安全保障措置を講じる道を模索した。連邦議会は、元将軍または元海軍提督が連邦議会の許可なしに任命される資格を得るには最低10年の勤務期間が必要であると定めた。

トルーマン大統領は、恒久的な戦時体制は予算を膨れ上がらせるという財政保守派の懸念を払拭するため、国内政策の予算削減も受け入れた。トルーマン大統領は、自らが望んでいたより野心的な国民皆兵訓練(universal military trainingUMT)プログラムではなく、戦時における兵員補充のための平時における選抜徴兵制度(Selective Service System)を採用した。国民皆兵訓練は、18歳になると全ての男性に軍事訓練を受けることを義務付けるものだった。アメリカ社会主義労働党から全米教育協会に至るまで、幅広い反対派連合が国民皆兵訓練を建国の理念に反するとして攻撃していた。

北大西洋条約機構(North Atlantic Treaty OrganizationNATO)に対する懸念も長年続いていた。連邦上院におけるNATOに関する議論の最中、タフト連邦上院議員は次のように宣言した。「非常に遺憾ではあるが、北大西洋条約の批准に賛成票を投じることはできないという結論に至った。なぜなら、この条約には、我が国の費用で西ヨーロッパ諸国の軍備増強を支援する義務が伴うと考えるからだ。この義務は、世界における平和ではなく戦争を促進するものだと私は考えるからだ(with that obligation I believe it will promote war in the world rather than peace)」。

NATO設立に貢献した軍事指導者のアイゼンハワーでさえ、ヨーロッパの同盟諸国に対し、より多くの責任を負うべきだと考え、非公式に不満を表明した。NATOへの批判は、1990年代初頭の冷戦終結後、ますます強まった。ソ連の脅威が後退するにつれ、アメリカの外交政策を他国の利益に縛り付ける根拠を疑問視する声が高まった。

NATOの拡大はロシアを不必要に刺激するのではないかと懸念する人たちもいた。1997年、軍備管理協会(Arms Control Association)は当時のビル・クリントン大統領に対し、「最近のヘルシンキ・サミットとパリ・サミットの焦点となっている、アメリカ主導のNATO拡大への取り組みは、歴史的な規模の政策的誤りである。NATOの拡大は同盟諸国の安全保障を低下させ、ヨーロッパの安定を揺るがすと私たちは考えている」と警告した。

国連もまた、長らくNATOの標的となってきた。1964年、共和党の大統領候補だったバリー・ゴールドウォーター連邦上院議員は、国連は無力だと批判した。ジョン・バーチ協会(the John Birch Society)は1960年代、アメリカの脱退を求めるキャンペーンを展開した。1984年、ロナルド・レーガン大統領は、ユネスコの腐敗と反西側偏向を非難し、アメリカを脱退させた。 2000年の改革党大会で、パット・ブキャナンは当時の国連事務総長コフィ・アナンに言及し、「コフィ氏よ、失礼ながら年末までに出て行かなければ、荷造りを手伝うために数千人の米海兵隊員を派遣する」と述べ、アメリカからの国連の立ち退きを求めた。

リベラル国際主義への懐疑論は、右派に限ったことではない。ジョンソン首相がヴェトナム戦争をエスカレートさせると、多くのリベラル派や進歩主義者は外交政策のコンセンサスに反旗を翻した。この戦争は、デイヴィッド・ハルバースタムの言葉を借りれば、「ベスト・アンド・ブライティスト」の信用を失墜させ、アメリカの指導者たちが帝国ではなく民主政治体制の名の下に(in the name of democracy rather than empire)真に行動しているという信頼を揺るがした。学生運動家や連邦議会の支持者たちは、アイゼンハワー大統領が退任演説で「軍産複合体(military-industrial complex)」と呼んだもの、つまり請負業者、連邦議員、国防当局者による不道徳な同盟が、予算の肥大化と戦略の逸脱を生み出していると非難した。

1973年の徴兵制度の廃止は、ほとんど抗議されることなく可決された。そして、1975年から1976年にかけて、フランク・チャーチ連邦上院議員率いる委員会がCIAFBIによる国内監視や無許可の暗殺を含む秘密作戦を暴露すると、国民の信頼は地に落ちた。最終報告書は次のように結論づけている。「諜報機関は国民の憲法上の権利を侵害してきた。その主な理由は、憲法の起草者が説明責任を果たす(assure accountability)ために設計した抑制と均衡の仕組みが適用されていないためだ」。

政府機関の指導者たちは信頼回復に努めたものの、依然として脆弱な状態が続いていた。911事件以降、監視と拷問(surveillance and torture)に関する暴露は国民の信頼をさらに損なわせた。2004年、CBSのダン・ラザー記者は、黒いマントとフードをかぶった囚人が機械に指を繋がれた状態で小さな段ボール箱の上に立たされている映像が放映された際、厳粛な声で「アメリカ人はイラク人囚人にこのようなことをした(Americans did this to an Iraqi prisoner)」と述べた。ラザー記者によると、囚人は小さな箱から落ちれば感電すると告げられたという。イラクにおける連合軍作戦担当副部長マーク・キミットは「兵士たちを常に誇りに思える日ばかりではない(Some days we’re not always proud of our soldiers)」と認めた。アブグレイブ収容所での暴露が例外的な事態ではなく、政府の戦略の一部であることが明らかになると国民の怒りはより高まった。

共和党の大統領と同様に、民主党も同盟諸国の対応が不十分だと攻撃してきた。熱心な国際主義者だった当時のバラク・オバマ大統領は、2016年に『アトランティック』誌のジェフリー・ゴールドバーグに対し、「フリーライダーは私を苛立たせる()free riders aggravate me」と語った。

厳しい真実は、戦後の国際秩序が確固たる政治的基盤の上に築かれたことは決してなかったということだ。抵抗は当初から存在していた。トルーマンとアイゼンハワーが築き上げたものを守るには、常に継続的な努力が必要だった。批判は、時にはシステムの中核原則(core principles)に向けられ、また時には、破滅的な政策や制度の濫用に端を発した。いずれにせよ、トランプがアメリカの統治の柱であるこの秩序を標的にしたとき、多くの外交政策のヴェテランが予想していたよりも急速に崩壊し始めた。

リベラル国際主義の欠点を明確に理解していたとしても、その貢献については否定することはできない。第二次世界大戦後に生まれた同盟(alliances)、制度(institutions)、そして、関与(commitments)は、核による惨事を防ぎ、世界情勢を安定させ、アメリカの経済力を支え、国家危機の際には経験豊富な助言を提供してきた。

戦後システムの支持者たちは今、途方もない闘いに直面している。反対の声は声高であるだけでなく、深く根付いている。彼らが自分たちのヴィジョンを守り、正当な批判に率直に反応できない限り、彼らが生涯をかけて守ってきた世界秩序が崩壊し、アメリカ・ファーストの深淵に取って代わられるのを、彼らはすぐに目撃することになるかもしれない。

※ジュリアン・E・ゼリザー:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。プリンストン大学歴史学・公共問題教授。独自の視点のニューズレター「ザ・ロング・ヴュー」の著者。Xアカウント:@julianzelizer

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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

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 アメリカの外交政策に関する考えについては大きな分類、グループ分け、潮流が存在する。私は、人道的介入主義派・ネオコン対リアリズムの対立があると分類している。これは、「世界各国に介入して各国の体制を変革する」ことを目指す介入主義(Interventionism)と「アメリカのパワーを国益のために使うことを最優先し、外国に介入することには抑制的であるべきだ」と考えるリアリズムの対立である。

 以下の論稿では、昨年の大統領選挙の共和党の立候補者たち(当時は民主党はジョー・バイデン前大統領が現職で2期目を目指すということで民主党には有力候補者はいなかった。栄枯盛衰、会者定離)と歴代の大統領たちの外交政策に関する考えを6つに分類して紹介している。大きくは、「国際主義者(internationalists)」対「非国際主義者(non-internationalirs)」の2つである。国際主義者はアメリカの影響力を行使し、世界に積極的に関わると考えるグループで、非国際主義者は世界に関わるのは抑制的であるべきだと考える。国際主義者の中には、(1)一極主義的国際主義者(Unilateral Internationalists)、(2)民主政体志向国際主義者(Democratic Internationalists)、(3)リアリスト国際主義者(Realist Internationalists)、多極主義的国際主義者(Multilateral Internationalists)の4つのグループがあり、非国際主義者には、(5)後退者(Retractors)と(6)抑制主義者(Restrainers)の2つのグループがある。

(1)の一極主義的国際主義者は、「アメリカの優位性と行動の自由が最も重要であると信じ、同盟(alliances)や国際協定(international agreements)に制約されないアメリカの一極主義的行動を優先し、戦略的利益を推進する」という考えだ。(2)の民主政治体制志向国際主義者は、「民主政治体制の擁護はアメリカと世界の安全保障の維持に不可欠であり、共通の価値観とルールに基づく民主政治体制秩序の推進のため、志を同じくする同盟諸国との協力を優先すると信じている」。(3)のリアリスト国際主義者は、「アメリカの力はより限定的な戦略的利益の防衛に活用されるべきであり、世界と地域の安定を維持するために、全ての国々との実際的な関与を優先すべきだと考えている」。(4)の多極主義的国際主義者は、「他国との平和共存(peaceful coexistence)を主要な目標とすべきであり、国連やその他の多国間機関を通じて地球規模の課題を解決し、国際規範を遵守することを優先するべきだと考えている」。(5の後退者は、「世界がアメリカを利用していると考え、アメリカを国際社会の公約から引き離し、金銭的利益(pecuniary benefits)を最大化することを目指す、より取引中心の外交政策(a more transactional foreign policy)を支持する」。(6)の抑制主義者は、「アメリカが過剰な負担と過剰な関与を強いられていると考え、より抑制的な外交政策を支持し、それによってアメリカの国際的影響力を大幅に縮小する」。

 冷戦期からポスト冷戦期にかけてのアメリカの外交政策の主流は当然のことながら、国際主義者だった。しかし、アメリカの国力の衰退や世界構造の変化によって、国際主義者の中でもリアリズム系が台頭し、また、非国際主義者も勢力を増しつつある。その象徴がトランプ大統領だ。長い論稿ではあるが、是非以下の論稿を読んで一緒に勉強してもらえたらと思う。

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アメリカの外交政策思考の混乱したスペクトラム(The Scrambled Spectrum of U.S. Foreign-Policy Thinking

-大統領、政府関係者、候補者は党の方針に従わない6つの陣営に分類される傾向がある。

アシュ・ジェイン筆

2023年9月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2023/09/27/republican-debate-trump-biden-foreign-policy-ideology/
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共和党大統領予備討論会では外交政策が大きく取り上げられそうだ。8月の討論会では、候補者たちは、アメリカの対ウクライナ支援継続を支持するかどうかという質問で激しい議論を行った。フロリダ州のロン・デサンティス知事は以前、ロシアのウクライナ戦争はアメリカにとって「重大な(vital)」国益ではないと示唆していたが、実際も懐疑的なようで、代わりにヨーロッパに対して更なる対応を求めた。起業家のヴィヴェク・ラマスワミは、そのような援助にもっと率直に反対し、アメリカが「他国の国境を越えた侵略から守る(protecting against an invasion across somebody else’s border)」ことは「悲惨な(disastrous)」ことだと述べた。一方、マイク・ペンス元副大統領とニッキー・ヘイリー元国連大使は、ウクライナ支援への強い支持を表明し、ロシアの侵略に対抗するジョー・バイデン大統領の取り組みを事実上支持し、アメリカに更なる努力を求めた。

政治のもう一方の側においては、民主党所属の連邦議員の中にはバイデンのウクライナ政策を警戒する人たちもいる。それは、進歩主義的な民主党所属の連邦議員たちが大統領宛に送った、紛争の外交的終結とロシアに対する制裁緩和の可能性を求める書簡(後に撤回された)からも明らかである。

今日の分極化した政治的雰囲気の中では、このような横断的な見解は混乱に見えるかもしれない。たいていの国内政策問題では、政治指導者たちの名前の横にR(共和党)とD(民主党)がついているかどうかが、特定の問題に対する彼らの考え方を示す良い目安になることが多い。しかし、外交政策に関しては、通常の政治ルールは適用されない。むしろ、政治指導者たちが外交政策イデオロギーのスペクトラムのどこに位置するかが、より大きな意味を持つ。
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このスペクトラムを構成する複数の学派は、世界におけるアメリカの役割について根本的に異なる見解を反映しており、影響力は大きいが、あまり理解されているとは言えない。

外交政策の立場を区別しようとするとき、メディアはしばしば「タカ派対ハト派(hawks versus doves)」といった決まり文句(cliches)や、「アイソレイショニスト(isolationist)」「ネオコンサヴァティヴ(neoconservative)」といった流行語(buzzwords)に頼る。しかし、これらの用語は単純化されすぎたり(oversimplified)、誇張されたりする(exaggerated)傾向があり、有益な情報はほとんど伝わらない。国際関係論(international relations)もそれほど役に立たない。「リアリズム(realism)」は、国家がどのように行動すべきかではなく、どのように行動することが期待されるかを予測する学問的概念と日常的に混同されている。また、「アイデアリズム(idealism)」や「コンストラクティヴィズム(constructivism)」といった他の理論も、現実世界の意思決定を理解する上で役立つことは限られている。

しかし、政策立案者たちが世界をどのように捉え、アメリカの外交政策の方向性に影響を与えようとしているかには、決定的な違いがある。例えば、アメリカの影響力は概ね肯定的であり、アメリカは世界情勢において積極的な役割を果たすべきであると考える人々と、アメリカの傲慢さは往々にして悪い結果をもたらすと考え、アメリカの海外での関与を縮小したいと考える人々との間には、明確な二分法が存在する。

アメリカは民主政治隊の価値観と規範の推進を優先すべきだと考える人々と、より限定的な戦略的利益の擁護を信条とする人々との間にも、大きな隔たりがある。また、アメリカはロシアや中国といった敵対諸国に対して毅然とした態度を取るべきか、それとも共通の基盤を見出すべきなのかについても、見解は大きく分かれている。

私は、アメリカの世界における役割に関する主要な考え方を代表する6つの外交政策陣営を整理した。これらの陣営は、国際的な関与のスペクトラムに沿って位置づけることができる。そのうち4つは、このスペクトルの中でもより積極的な側、「国際主義者(internationalists)」に属し、アメリカは影響力を行使し、国際情勢に積極的に関与すべきだと考えている。そして、残りの2つは「非国際主義者(non-internationalists)」に属し、アメリカは国際社会への関与を縮縮小し、より前向きでない外交政策を採用すべきだと考えている。

●国際主義者(INTERNATIONALISTS

(1)一極主義的国際主義者(1. Unilateral Internationalists)

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一極主義的国際主義者:ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルド、ジョン・ボルトン

■定義的な世界観(Defining worldview):一極主義的国際主義者は、アメリカの優位性と行動の自由が最も重要であると信じ、同盟(alliances)や国際協定(international agreements)に制約されないアメリカの一極主義的行動を優先し、戦略的利益を推進する。ジョージ・W・ブッシュ大統領は、特に最初の任期中にこの考え方に近づいたが、この学派を直接的に支持したアメリカ大統領はいない。

■主な特徴(Key attributes):

・中国とロシアを国際システムにおけるアメリカの優位性に対する最大の脅威と見なし、アメリカの敵対勢力に対抗し、アメリカの力を誇示するために最大限の圧力をかけようとする。

・同盟諸国を犠牲にしてもアメリカの国益を優先し、民主政治体制的な価値観や「ルールに基づく秩序(“rules-based order)」よりも戦略的利益を重視する。しかし、同盟諸国の行動意欲には懐疑的ながらも、アメリカの同盟諸国を支持する。

・国連や国際協定に不信感を抱き、米国の力と主権への制約を回避するために、必要に応じて国際機関から米国が脱退することを支持する。

米国の利益を促進するために軍事力を使用することを支持する。

国連や国際協定に不信感を抱いており、アメリカの力と主権への制約を回避するために、必要に応じて国際機関からアメリカが脱退することを支持する。

・アメリカの利益のために軍事力を使用することを支持する。

■著名な発言者たち:ディック・チェイニー、ドナルド・ラムズフェルド、ジョン・ボルトン

■最近の米大統領:いない

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

(2)民主政体志向国際主義者(2. Democratic Internationalists)

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民主政体志向国際主義者:マデリーン・オルブライト、ジョン・マケイン、ミット・ロムニー、クリス・クーンズ、G・ジョン・アイケンベリー、ハル・ブランズ、ハリー・トルーマン、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ、ジョー・バイデン、クリス・クリスティ、ニッキー・ヘイリー、マイク・ペンス

■定義的な世界観(Defining worldview):民主政治体制志向国際主義者は、民主政治体制の擁護はアメリカと世界の安全保障の維持に不可欠であり、共通の価値観とルールに基づく民主政治体制秩序の推進のため、志を同じくする同盟諸国との協力を優先すると信じている。この学派は、ハリー・トルーマン大統領が「自由で独立した国家が自由を維持できるよう支援する」ことがアメリカの政策であると宣言して以来、民主、共和両党を問わず、アメリカの選出指導者の間で主流となっている。

■主な特徴(Key attributes):

・民主政治体制と独裁政治の戦略的競争を国際システムの主要な断層線(the major fault line)と捉え、中国とロシアといった修正主義独裁国家(revisionist autocracies)に対抗するための積極的な措置を支持する。

民主政治体制同盟と連帯(democratic alliances and solidarity)を強く擁護し、「自由世界のリーダー(leader of the free world)」としてのアメリカの役割を維持することに熱心である。

・民主的価値観と人権を推進し、独裁政権の戦争犯罪と暴力的弾圧の責任を問うための強力な取り組みを支持する。

・民主政治体制とルールに基づく秩序を守るために、必要であれば武力行使も検討する用意がある。

■著名な発言者たち:マデリーン・オルブライト、ジョン・マケイン、ミット・ロムニー、クリス・クーンズ、G・ジョン・アイケンベリー、ハル・ブランズ

■最近の米大統領:ハリー・トルーマン、ジョン・F・ケネディ、ロナルド・レーガン、ジョージ・W・ブッシュ、ジョー・バイデン

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:クリス・クリスティ、ニッキー・ヘイリー、マイク・ペンス

(3)リアリスト国際主義者(3. Realist Internationalists)

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リアリスト国際主義者:ヘンリー・キッシンジャー、ブレント・スコウクロフト、ロバート・ゲイツ、リチャード・ハース、スティーヴン・クラズナー、チャールズ・カプチャン、リチャード・ニクソン、ジョージ・HW・ブッシュ、ロン・デサンティス

■定義的な世界観(Defining worldview):リアリスト国際主義者は、アメリカの力はより限定的な戦略的利益の防衛に活用されるべきであり、世界と地域の安定を維持するために、全ての国々との実際的な関与を優先すべきだと考えている。元国家安全保障問題担当大統領補佐官のブレント・スコウクロフトとヘンリー・キッシンジャーは、この学派の典型的な実践者であり、彼らが仕えた大統領たちもこの考え方を支持した。

■主な特徴(Key attributes):

・大国間競争(great-power rivalry)は世界システムにおいて不可避であると認識し、アメリカの同盟関係と、ライヴァル諸国を抑止し世界秩序を維持するための積極的な取り組みを支持する。

・戦略目標の推進のため、政治体制の種類に関わらず、敵対諸国と対峙し、あらゆる国と協力する用意がある。

・安定した勢力均衡(a stable balance of power)を達成するために、ライヴァル諸国と相互に妥協するか、分断を図る用意がある。

・「世界をあるがままに受け入れる(accept the world as it is)」傾向があり、アメリカの介入や民主政治体制促進の取り組みに警戒感を抱いている。

・アメリカの強力な防衛態勢を支持し、重要な国益を守るために必要であれば武力行使も辞積極的に行う。

■著名な発言者たち:ヘンリー・キッシンジャー、ブレント・スコウクロフト、ロバート・ゲイツ、リチャード・ハース、スティーヴン・クラズナー、チャールズ・カプチャン

■最近の米大統領:リチャード・ニクソン、ジョージ・HW・ブッシュ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:ロン・デサンティス

(4)多極主義的国際主義者(4. Multilateral Internationalists)

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多極主義的国際主義者:ジョン・ケリー、ブルース・ジョーンズ、バラク・オバマ

■定義的な世界観(Defining worldview):多極主義的国際主義者は、他国との平和共存(peaceful coexistence)を主要な目標とすべきであり、国連やその他の多国間機関を通じて地球規模の課題を解決し、国際規範を遵守することを優先するべきだと考えている。バラク・オバマ大統領の外交政策はこの学派に深く根ざしており、現在、アメリカの気候変動対策首席交渉官を務めるジョン・ケリー元国務長官がその代表を務めている。

■主な特徴(Key attributes):

・大国間の対立や戦略的競争を警戒し、敵対諸国に「手を差し伸べる(extend a hand)」ことで共通点を見出すことに熱心である。

・国際規範、良い統治、人権の推進に向けたアメリカの積極的な関与を支持する。

・国境を越えた課題への対応において、全ての国と協力することを目指し、特に気候変動(climate change)を優先する。

・包摂的な制度を通じた関与を優先するが、ルールに基づく秩序の促進のためにアメリカの同盟諸国と協力することを支持する。

・軍事力の使用には消極的(disinclined)であり、国連安全保障理事会の承認を得た場合にのみ検討する。

■著名な発言者たち:ジョン・ケリー、ブルース・ジョーンズ

■最近の米大統領:バラク・オバマ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

●非国際主義者(Non-Internationalists

(5)後退者(1. Retractors)

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後退者・非国際主義者:マイケル・アントン、ドナルド・トランプ、ヴィヴェック・ラマスワミ

■定義的な世界観(Defining worldview):後退者は、世界がアメリカを利用していると考え、アメリカを国際社会の公約から引き離し、金銭的利益(pecuniary benefits)を最大化することを目指す、より取引中心の外交政策(a more transactional foreign policy)を支持する。ドナルド・トランプ大統領の外交政策はまさにこの学派の典型である。しかし、この学派の支持者は、1990年代後半の共和党大統領候補パット・ブキャナンや、アメリカを第二次世界大戦に巻き込ませまいとした1930年代のアメリカ・ファースト運動にまで遡ることができる。

■主な特徴(Key attributes):

・価値観や規範に対して非常に懐疑的で、陰謀論を信奉し、それに陥りやすく、アメリカの政策を操作する「ディープステート(deep state)」の役割を疑っている。

・同盟関係に批判的で、特にヨーロッパにおけるアメリカの同盟諸国を軽蔑し、国際機関を通じた協力の取り組みはナイーブで自滅的だと考えている。

・独裁政権との「取引と合意(make deals)」を求め、民主的な価値観や国際規範を軽視している。

・他国が「アメリカを騙す(ripping America off)」のを防ぐため、経済保護主義(economic protectionism)と国境封鎖を強調している。

・アメリカは軍事的に過剰な関与をしていると確信しているが、「強硬な態度(act tough)」を取り、アメリカの実力を示すために、時折限定的な軍事行動を行うことを支持している。

■著名な発言者たち:マイケル・アントン

■最近の米大統領:ドナルド・トランプ

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:ドナルド・トランプ、ヴィヴェック・ラマスワミ

(6)抑制主義者(2. Restrainers)

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抑制主義者・非国際主義者:ランド・ポール、バーニー・サンダース、アンドリュー・ベスヴィッチ、スティーヴン・M・ウォルト、ステファン・ヴェルトヘイム

■定義的な世界観(Defining worldview):抑制主義者は、アメリカが過剰な負担と過剰な関与を強いられていると考え、より抑制的な外交政策を支持し、それによってアメリカの国際的影響力を大幅に縮小する。この学派は依然として周縁的存在ではあるものの、近年、クインシー記念責任国家戦略研究所とその支持者たちの台頭に見られるように、ある程度の存在感を増している。

■主な特徴(Key attributes):

・国際システムにおけるアメリカの力と影響力に不信感を抱いており、欠陥のある民主政治体制、偽善(hypocrisy)、帝国主義(imperialism)を基礎にして考えると、アメリカには民主的価値観やルールに基づく秩序を推進する立場はないと考えている。

・アメリカは敵対諸国と不必要な戦い(unnecessary fights)を仕掛けており、海外における軍事態勢、同盟、制裁政策はしばしば過度に挑発的であると考えている。

・中国とロシアによる脅威を「誇張(inflating)」することを警戒し、敵対諸国と協力し相互妥協に至る外交努力を支持し、国家主義的な外交政策は傲慢で不快だと考えている。

・海外におけるアメリカ軍のプレゼンスの削減、NATOやその他の同盟諸国への関与の縮小を求め、武力行使に強く反対している。

■著名な発言者たち:ランド・ポール、バーニー・サンダース、アンドリュー・ベスヴィッチ、スティーヴン・M・ウォルト、ステファン・ヴェルトヘイム

■最近の米大統領:いない

■今回の大統領選挙(2024年)の共和党候補者:いない

この分析からいくつかの重要な点が導き出される。第一に、確かにこれらの陣営の境界線は曖昧であり、政策立案者たちは、特定の問題においては、これらの陣営のいずれか、あるいは複数の陣営にまたがっている場合が多い。しかしながら、これら6つの学派は十分に明確に区分されており、アメリカが外交政策をいかに進めるべきかという現代の議論に影響を与えている主要な世界観を代表している。

第二に、これらの学派の多くは党派の垣根を越える傾向がある。例えば、民主政治体制志向国際主義は、与野党の政治指導者たちから熱烈に支持されており、国際共和研究所(International Republican Institute)や全米民主研究所(National Democratic Institute)といった民主政治体制志向機関に見られるように、超党派の強力な支持基盤を有している。リアリズムもまた、アメリカの外交政策において長い伝統を持ち、民主、共和両党の国家安全保障担当者の共感を呼んでいる。同様に、抑制者は、左派の進歩主義者と、ワシントンの国際的関与の縮小を求めるリバータリアンの両方から支持を集めている。一方、一極主義的行動主義は主に保守派に支持され、多国主義的国際主義は主にリベラル派の支持を得ている。近年、トランプ支持派の共和党員の間では、こうした姿勢の撤回が主流となっている。

第三に、近年の米大統領がこのスペクトルのどこに位置づけられるかは自明ではない。就任当初は特定の陣営に傾倒するかもしれないが、ほとんどの大統領は純粋主義者(purists)ではなく、政権を担う中で、多くの大統領が、一貫性があり予測可能な外交政策の理念を維持することを困難にする実際的かつ政治的な現実に直面することになるだろう。

例えば、バラク・オバマはリアリスト国際主義に傾倒していたように見え、ロシアとの関係を「リセット(reset)」しようとし、後にシリアのバシャール・アサド大統領による化学兵器使用の責任追及のためのアメリカ軍派遣を拒否した。しかし、オバマがキューバやイランといった敵対諸国への関与や国連を通じた活動を重視していたことを考えると、彼の外交政策の主眼は多極主義的国際主義とより整合しているように見えた。

ジョージ・W・ブッシュもまた、様々な立場に立脚していた。世界的な対テロ戦争の開始に際し、ブッシュはアメリカの優位性を主張しようと決意し、一極主義的国際主義に傾倒しているように見えた。しかし、イラクとアフガニスタンにおける民主政治体制の推進、彼の代名詞である「自由のアジェンダ(Freedom Agenda)」、そして2回目の就任演説における「世界の専制政治の終焉(ending tyranny in our world)」の訴えなど、ブッシュの全体的な世界観はより、民主政治体制志向国際主義に根ざしているように見えた。

バイデンがどの立場を取るかは依然として議論の余地がある。現在、バイデン政権の国家安全保障ティームは、アフガニスタンからの撤退とサウジアラビアのムハンマド・ビン・スルタン王太子との交渉再開を求めるリアリストと、大統領による民主政治体制サミット開催の取り組みを支持する民主政体志向国際主義者に分裂している。しかし、バイデンがNATOと協力して民主的なウクライナを守るという揺るぎない決意と、世界は「民主政治体制と独裁政治の世界規模での闘争()global struggle between democracy and autocracy」に直面しているという確信を踏まえると、これまでのバイデン政権の外交政策の大筋は、民主政治体制志向国際主義とより整合しているように思われる。もっとも、より明確な判断は、バイデンの任期満了まで待たなければならないだろう。

それでは、現在の共和党候補者たちはどうなるのだろうか? ペンス、ヘイリー、そしてニュージャージー州元知事のクリス・クリスティは、ロシアの侵略に立ち向かうよう訴え、中国の人権侵害を非難しており、まさに民主政治体制志向国際主義陣営に属している。ドナルド・トランプには、もちろん独自の路線がある。一方、デサンティスとラマスワミは、アメリカの国際社会への関与に懐疑的な共和党支持者からの支持獲得に苦戦する中で、リアリズムとトランプの撤回との間で板挟みになっているように見える。デサンティスはウクライナから中国への軸足を移すことを支持しており、これはトレードオフについて非常に現実的な考え方と言える。ロシアと中国を分断する戦略を提唱してきたラマスワミは、時折リアリストのようにも聞こえるが、ロシア・ウクライナ戦争へのアメリカのいかなる関与も回避し、台湾を中国に譲渡する可能性、そして「アメリカの利益を最優先する(interests of America first)」という彼の姿勢は、彼が撤回に向かっていることを示唆しているように思われる。

有権者たちは次期大統領を選ぶ際に外交政策を中心的な要素とは考えていないかもしれないが、アメリカの指導者が世界とどのように関わっていくかは、アメリカ国民の安全と繁栄にとって極めて重要である。最も影響力のある外交政策の学説をより明確に理解することで、有権者たち、そして候補者たち自身も、より情報に基づいた選択を行うことができるようになるだろう。

※アッシュ・ジェイン:米国土安全保障省(U.S. Department of Homeland SecurityDHS)職員。最近まで、アトランティック・カウンシル(大西洋評議会)傘下のスコウクロフト戦略安全保障センターで民主秩序担当部長を務めていた。ここで表明された見解は、米国土安全保障省(DHS)、またはアメリカ政府に帰属するものではない。Xアカウント:@ashjain50

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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 2025年5月までに、「知日派」の二大巨頭と呼ばれた、ハーヴァード大学教授ジョセフ・ナイ(Joseph Nye、1937-2025年、88歳で没)リチャード・アーミテージ(Richard Armitage、1945-2025年、79歳で没)元国務副長官が亡くなった。以下の記事に写真があるので是非じっくり見て欲しい。

知日派という言葉は何とも聞こえの良い言葉であるが、実態は「ジャパン・ハンドラーズ(Japan handlers」「日本操り班」「日本飼い慣らし班」である。ジョセフ・ナイとリチャード・アーミテージはジャパン・ハンドラーズの代表だった。知日派に育てられた日本人の多くはアメリカの手先であり、買弁(compradors)と言うべき存在である。そんな人物たちが与野党問わず永田町に生息し、霞が関でアメリカの利益になる政策を粛々と立案して遂行している。私たち日本人はそのことに気づくべきだ。

 以下の記事は追悼記事であるが、中々厳しい内容だ。ジョセフ・ナイは「ソフトパワー(soft power)」という概念を提唱した。ソフトパワーは、軍事力や経済力ではなく、自国の文化や価値観の魅力で、他国を魅了して、説得して協力させる力のことを言う。アメリカの文化、ポップカルチャー(音楽や映画など)や食文化(ハンバーガーとコーク)、価値観(自由や人権など)を世界の人々の多くが好むことで、アメリカの言うことを聞くということである。

 しかし、現実世界は内の考えるようにはなっていない。アメリカ文化を好むからと言って、アメリカの言うことを聞くかと言えばそのようなことはない。2022年のウクライナ戦争以降の動きを見れば明らかだ。ナイの主張は、戦後の世界構造を補強するものであるが、構造が大きく変化する中で、彼の主張の説得力は大きく失われることになった。

 ジョセフ・ナイが活躍した時代は冷戦期後半からポスト冷戦期、アメリカの一極支配時代だった。彼は、戦後の世界構造の正当性を信じ、その維持と補強を目指した。しかし、最晩年は彼の愛した世界が大きく変化する様子を目撃することになった。リチャード・アーミテージにも言えることだが、これは故人に対して言うべきではないだろうが、「ざまあみろ」ということになる。

(貼り付けはじめ)

ジョセフ・ナイはもはや存在しない世界のチャンピオンだった(Joseph Nye Was the Champion of a World That No Longer Exists

-「ソフトパワー」という言葉を生み出した卓越した学者は50年にわたるアメリカの外交政策を形作った。

スザンヌ・ノセール筆

2025年5月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/05/09/joseph-nye-death-us-foreign-policy-soft-power/

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ハーヴァード大学でインタヴューを受けるジョセフ・ナイ(2018年10月15日)

著名な国際関係学者ジョセフ・ナイを悼むのは、胸が痛むと同時に、おそらく適切なことだろう。それは、アメリカのリーダーシップとリベラル国際主義を擁護するという彼の生涯にわたる活動が、ドナルド・トランプ米大統領の第二期政権で暗礁に乗り上げてしまったからだ。

「ソフトパワー(soft power)」という言葉を生み出したナイは、火曜日に88歳で亡くなった。彼の知的リーダーシップ、教育、政策指導、そして外交努力は、50年にわたるアメリカの外交政策を形作った。彼の思想はまた、アメリカの外交政策エスタブリッシュメント、すなわち、バラク・オバマ大統領の元顧問ベン・ローズがかつて「ブロブ(Blob)」と揶揄して呼んだ学者、シンクタンク、官僚、そして市民社会のリーダーたちの集合体を形成した。

ナイとその仲間たちは、アメリカがカードを賢く使えば達成できないことはほとんどないという考えを固く信じていた。つまり、堅固な同盟諸国を結集し、説得力のある議論を展開し、道徳的に優位な立場を維持し、ナイが時折「三次元チェス(three-dimensional chess)」のゲームと表現したゲームで敵を側面から攻撃するという考えだった。

第2次トランプ政権の初期の数ヶ月は、数十年にわたる衰退の時代を締めくくるものとして、ナイが体現したアメリカ主導の戦後秩序の終焉を告げるものだった。ナイの知的後継者たちは今、彼と同じように、陳腐な理論を捨て去り、新たな世界秩序と、その中でアメリカをどう位置づけるべきかについて、現実的でありながらも想像力豊かな理解を呼び起こさなければならない。

1937年、ニュージャージー州の小さな農村に生まれたナイは、プリンストン大学で学び、その後、ハーヴァード大学で博士号を取得し、教授職に就いた。1977年に政治学者ロバート・O・コヘインと共著した著書『パワーと相互依存:変遷する世界政治(Power and Interdependence: World Politics in Transition)』は、瞬く間に古典となった。ヘンリー・キッシンジャー時代の支配的なリアリズムに対する一撃として、この本は、ヴェトナム戦争と1973年の石油禁輸におけるアメリカの経験を引き合いに出し、地球規模の相互連結性(global interconnectedness)は、単なる経済力や軍事力だけでは解決できない一連の課題をもたらし、協力と共同の制度構築を要求すると主張した。

後のグローバライゼーションの概念を予見させる初期の著作は、国際的な力関係の層を明らかにし、地政学に大きな影響を与える、ほとんど注目されていない力を暴き出すという、ナイの生涯にわたる傾向を明らかにした。

ナイが、明白な視界に隠れた力関係にスポットライトを当て、分析し、分類する才能は、1990年に『フォーリン・ポリシー』誌に寄稿した論文で「ソフトパワー(soft power)」という概念を提示した際に、鮮やかに示された。この用語は、経済的な強制や軍事力ではなく、模範となる力(the power of example)、文化的影響力(cultural sway)、そして道徳的説得力(moral suasion)を通して、各国が互いの好みや行動を形作る能力を指していた。

ナイは、1990年の著書『不滅の大国アメリカ(Bound to Lead: The Changing Nature of American Power)』でこの概念をさらに発展させ、アメリカ合衆国は、その起源、憲法上の価値観、そして技術革新と芸術的革新への傾倒によって、他国の台頭に伴う相対的な衰退を食い止めるなど、目に見えない力の源泉を活用する独自の立場にあると主張した。(個人的なメモ:私は、2004年の記事で「スマートパワー(smart power)」と名付けた、彼のアイデアをベースにした私の独自の解釈をナイが寛大に広めてくれたことに感謝している。その記事では、ナイのソフトパワーの概念とハードパワーの概念を統合し、2つを協調して使うべきだと主張した。)

ナイはその後、核安全保障や外交政策における倫理などをテーマに20冊近くの著書を執筆・編集し、『パワー・ゲーム(The Power Game)』という小説も執筆した。彼の思想は海と国境を越え、ヨーロッパ連合(EU)、中国、ロシアなどは、文化外交(cultural diplomacy)、伝統的価値観の重視(an emphasis on traditional values)、そして自国の言語と文化を海外に浸透させるための投資(investments in seeding their languages and cultures abroad)を通じて、ソフトパワーを発揮してきた。

しかし、何よりもナイの一連の著作がアメリカの外交政策立案者たちを価値観重視の制度主義者(values-oriented institutionalists)へと育て上げたのは明らかだ。外交楽観主義者(Diplo-optimists)である彼らは、対話と協力の必要性(the imperatives of dialogue and cooperation)を固く信じていた。彼らは、開発援助(development aid,)、民主政治体制支援(democracy assistance)、防衛保証(defense guarantees)、武器(weapons)、そして有利な貿易条件(favorable trade terms)といった形で示される国家の寛大さが、計り知れない善意を返してくれると信じていた。こうした国際関係の学者や実務家たちは、多国間機関、条約、同盟、そして政府が資金提供する平和・開発・メディア組織の集合体を含む、アメリカの力のツールキットについて訓練を受けていた。

ナイ自身は、制度の役割を理論的に擁護するだけでなく、自らのアイデアを行動に移す手腕を備えた実践的な構築者でもあった。カリスマ性と洗練性を兼ね備えたナイは、魅力的な物腰、輝く瞳、そして政策に対する揺るぎない情熱で、同僚たちや外国の専門家たちをも魅了した。カーター政権とクリントン政権下では、国際安全保障担当国防次官補や国家情報会議議長など、国家安全保障分野の要職を歴任した。1995年には、東アジアにおけるアメリカの関与の重要性に関する画期的な報告書を執筆し、約30年後のバイデン政権下で実現することになるいわゆる「アジアへのピボット(pivot to Asia)」を予見した。

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左:ナイ(左)、ハーヴァード大学学長(当時)ローレンス・サマーズ、ビル・クリントン元大統領。2001年11月19日のマサチューセッツ州ケンブリッジでのハーヴァード大学の学生を前にしたクリントンの演説会にて。右:ハーヴァード大学ジョン・F・ケネディ記念行政大学院院長(当時)のナイ、マサチューセッツ州知事ミット・ロムニー(左)、アイダホ州知事ダーク・ケンプソーン。2003年5月29日、ケンブリッジにて。

ナイはまた、ハーヴァード大学ジョン・F・ケネディ行政大学院の強化にも尽力し、1995年から2004年まで大学院の院長を務めた。近年では、アスペン戦略グループ(Aspen Strategy Group)を率い、生涯をかけて、他者が混沌としか見ていないところに秩序、意味、そして方向性を見出す探求を続け、その過程で著名人を集めた。

ナイは、アメリカの力の将来性について、尽きることのない希望を抱いていた(彼の著書の多くには「力(power)」という言葉がタイトルに含まれている)。しかし、晩年には、アメリカが衰退期にあるのではないかという問題に真剣に取り組んだ。2024年に出版された回顧録『アメリカ世紀に生きた人生(A Life in the American Century)』では、アメリカの優位性は、今後数十年は続くかもしれないが、彼の生きた時代とは異なる様相を呈するだろうと結論づけている。ナイは先見の明を持って、アメリカの将来に対する懸念の多くは中国に集中しているものの、自身の「より大きな懸念(greater concern)」はアメリカのソフトパワーを損なう可能性のある「国内の変化(domestic change)」だと指摘した。「たとえ対外的な力が依然として優勢であったとしても、アメリカは内なる美徳と他国にとっての魅力を失う可能性がある」とナイは指摘した。

過去8年間、ナイが構築に尽力した信念体系の基盤(the foundations of the belief system)は、修復不可能なほどに蝕まれてきた。トランプ政権は、アメリカの力の誇大で気まぐれ、そして時に冷酷な側面を世界に示した。謙虚になったバイデン政権は、アメリカが「戻ってきた(back)」と宣言したものの、ナイが予測したように、国際情勢はますます分散化(diffuse)と対立(contested)を深めており、新たな謙虚さへの関与と、説得力のある力を発揮する能力との両立に苦慮することになった。

トランプ政権2期目の最初の数ヶ月は、ナイが築き上げてきたソフトパワーへの関与を、ワシントンが驚くべき形で放棄する結果となった。現トランプ政権は、米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)を解体し、人道支援・人権活動に従事する市民社会団体への資金提供を削減し、ヴォイス・オブ・アメリカをトランプ支持のワン・アメリカ・ニュース・ネットワークの代弁者として作り変え、移民と外国人ヴィザを制限し、アメリカの大学と研究機関を攻撃した。そしてワシントンの世界的な外交的影響力を縮小した。

一方、トランプ大統領の大西洋同盟への無関心、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領への甘言、カナダ、パナマ、グリーンランドへの脅威、そして反動的な関税政策は、戦後のアメリカのアイデンティティの基盤に亀裂を生じさせている。

ナイはこうした崩壊を目の当たりにした。死のわずか1週間前、CNNのジム・シュートとのインタヴューで次のように語った。「トランプ大統領はソフトパワーを理解していないようだ。権力をムチとアメとハチミツと考えると、彼はハチミツを省いている。しかし、もしこの3つが互いに補強し合うことができれば、はるかに多くのことを成し遂げられる。ハチミツの魅力があれば、アメとムチを節約することもできる。だから、USAIDの人道支援のようなものを中止したり、ヴォイス・オブ・アメリカの声を封じ込めたりすると、権力の主要な手段の1つを失ってしまうのだ」。

アメリカのパワー行使に関するナイの主張は、政策の世界に身を置く私たち世代に根付いているが、現在の国家安全保障担当指導者たちには理解されていない。また、トランプ大統領が長年にわたりアメリカのパワーの象徴として機能してきた手段をほとんど無視して破壊するのを目の当たりにしてきた連邦議会の大多数や国民にとっても、ナイの主張はさほど重要ではないようだ。

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ナイ(右)がリチャード・アーミテージ元国務副長官と米連邦下院監視・政府改革委員会の911後の戦略について公聴会で証言している(2007年11月6日、ワシントンにて)

ナイは戦後に育った人だった。日本が真珠湾を攻撃した時、彼はまだ5歳だった。そして、1946年、連合軍の勝利を祝うため1万3000人の兵士がニューヨークの五番街をパレードした時、彼は9歳になる1週間前だった。ナイは、自由を守るために立ち上がり、世界を圧制から救い、自国を地球規模の地位へと押し上げるアメリカの若い世代の姿を見ながら育った。ソ連が理想化されたアメリカ合衆国の引き立て役となり、核による壊滅の恐怖が迫る冷戦の時代に、彼は成人した。栄光(glory)、犠牲(sacrifice)、仲間意識(camaraderie)、恐怖(fear)、そして決意(resolve)といった感情的な力が、ナイが見て、説明し、形作った世界を形作っていた。

こうした象徴的な闘争の記憶が薄れていく中、911事件はアメリカに新たな目的意識を与えたが、同時に終焉の始まりを告げる反射的な行き過ぎをも促した。アフガニスタンとイラクにおける長期にわたる戦争は、侵略の当初の論理や目的をはるかに超えた幻想、インセンティヴ、そして惰性によって煽られた。

この時点で、アメリカで台頭している層は、アメリカの外交政策における大きな勝利を思い出すことができない。ナイが不可避と認識したグローバライゼーションは、アメリカの労働者と地域社会に多大な犠牲を強い、前例のない所得格差を加速させた。安価な商品や相対的な平和と繁栄といったグローバライゼーションの恩恵は、アメリカ人にとってますます当然のものとなっていった。ナイとコヘインが提唱した相互依存(interdependence)の概念は、連帯と運命共同体というヴィジョンから、脱出すべきゼロサムゲーム的な葛藤へと変貌を遂げた。トランプのアメリカはティームプレーヤーではない。長年の同盟諸国をパートナーや友人ではなく、障害、あるいはせいぜい共犯者とみなしている。

今、ナイの知的後継者たちは、ナイが見ていた世界を超えて、ほとんど見違えるほど変貌したアメリカ合衆国を導くという課題に直面している。いつになるかは予測できなかったものの、ナイは自身のキャリアを特徴づけてきたアメリカの世紀が終焉を迎えることを予見していた。ナイは、アメリカに対する潔白さや魅力が失われることはあっても、それがこれほど早く訪れるとは予想していなかった。

ナイの概念では、アメリカのアイデンティティとリベラルな精神は分かちがたく絡み合っていた。この融合により、外交政策に携わる私たち全員が、愛する国と私たちが抱く価値観を、あたかもそれらが一体であるかのように主張することができた。我が国は数え切れない裏切りと道徳の欠如を経験してきたが、私たちはアメリカが表す価値観を見失うことも、そのより良き本質への信念を捨てることもなかった。

トランプ政権下で、この国と、私たちが長きにわたり結び付けてきた一連の原則は、引き裂かれつつある。ナイの弟子たちは今、愛する国家と現政権が残しつつある大切な価値観との間の溝を、どのように切り抜け、そしていつの日か再び埋めていく方法を学ばなければならない。ナイの死を嘆くと同時に、彼が遺してくれた世界が消えゆくことをも悲しまなければならない。

※スザンヌ・ノセール:元政府職員・「ペン・アメリカ」元最高経営責任者。『勇気を持って発言しよう:すべての人の言論の自由を守る(Dare to Speak: Defending Free Speech for All)』の著者。Xアカウント:@SuzanneNossel

(貼り付け終わり)

(終わり)
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。
※2025年3月25日に最新刊『トランプの電撃作戦』(秀和システム)が発売になりました。是非手に取ってお読みください。よろしくお願いいたします。
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『トランプの電撃作戦』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに行きます。
   
 第2次ドナルド・トランプ政権の発足後100日の中心人物であり続けたのは、イーロン・マスクだった。政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を率いて、各政府機関を回り、情報を収集し、米国国際開発庁(USAID)の閉鎖を決定するなど、華々しい動きをしてきた。連邦政府職員の削減はOPM()

マスクは自身の世界観を物理学に基づいており、第一原理思考を通じて複雑な問題をシンプルな公理から解決するアプローチを重視している。マスクはペンシルヴァニア大学で経済学と物理学で学士号を取得し、物理学を専攻するためにスタンフォード大学大学院に進学した(後に中退)。マスクは数学と物理で天才的な才能を示した。そして、彼はこの物理の才能を経営や政策に応用しようとしている。以下の論稿では、イーロン・マスクが物理学の第一原理思考(first principles thinking)で物事を捉えようとしていると主張している。以下に重要な部分を引用する。

(引用はじめ)

「第一原理思考(first principles thinking)」はマスクの世界におけるマントラのようなものになっている。それは、どんなに複雑な問題に対しても、厳格さと子供のような無邪気なアプローチの両方を呼び起こす。

この考え方は、自動車であれロケットであれ、あらゆる技術的問題を分解し、ゼロから始めるというものだ。そして、非常に基本的な公理から解決策を導き出す。そしてこのプロセスにおいて、それまでに誰かが行ったこと、受け継がれてきた伝統など、何一つ考慮されない。実際、その根底にある前提は、受け継がれてきた思考や実践は全て、古臭く、埃をかぶった、悪いお荷物であり、それらを手放して先に進んだ方がよい、というものだ。

(引用終わり)

 橘玲著『テクノ・リバタリアン』で、著者である橘玲氏は、ピーター・ティールやイーロン・マスクを「テクノ・リバタリアン(techno libertarians)」と定義し、彼らは数学的に物事を捉えると分析している。そして、引用したように、非常に明晰に、明快に原理に則り、物事を進めていくということになる。私たち一般人ではしり込みしてしまうようなことを、彼らは平気で進めてしまう。今までのしがらみや伝統から抜け出せないということがイーロン・マスクたちには理解できないだろう。天才的な頭脳を持つ彼らにはヴィジョンが見えており、それに向かって進んでいく。トランプ大統領も一種の天才であり、ヴィジョンが見えている。それを理解できない一般人はついていけない。

 しかし、残念なことだが、数学の天才でも間違うことがある。人間や社会の理解に限界がある。天才的な人間が全能の力を持つことはある種の理想であるが、それはまた危険なことでもある。人間や社会は大変革を短期間で起こすことは難しい。また、短期間で起きた大変革は深刻な副作用をもたらす。そのことは歴史が証明している。

(貼り付けはじめ)

イーロン・マスクの第一原理(Elon Musk’s First Principles

-世界一の富豪は、物理法則を政治に応用しようとしている。一体何が問題になるのだろうか?

アダム・トゥーズ筆

2025年3月25日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/03/25/elon-musk-trump-doge-physics-principles/

イーロン・マスクは世界で最も裕福な人物であり、歴史上最も裕福な人物の1人でもある。しかし、マスクの権力はもはやテスラやX、スペースXから得られる金銭的な富だけに結びついている訳ではない。マスクはドナルド・トランプ大統領との親密な関係によって、新たに設立された政府効率化省(Department of Government EfficiencyDOGE)を通じて、アメリカ政府全体の政策に影響を与えるという大役を与えられている。起業家としての彼の人生は、政治家としての彼の仕事に重要な光を当てている。

マスクはしばしば、物理学が彼の世界観の中心にある(physics is at the center of his worldview)と主張してきた。彼は、ビジネスや生活全般における行動の動機として、自然な第一原理の探求(the search for natural first principles)について語っている。そして、「第一原理思考(first principles thinking)」はマスクの世界におけるマントラのようなものになっている。それは、どんなに複雑な問題に対しても、厳格さと子供のような無邪気なアプローチの両方を呼び起こす。

この考え方は、自動車であれロケットであれ、あらゆる技術的問題を分解し、ゼロから始めるというものだ。そして、非常に基本的な公理から解決策を導き出す。そしてこのプロセスにおいて、それまでに誰かが行ったこと、受け継がれてきた伝統など、何一つ考慮されない。実際、その根底にある前提は、受け継がれてきた思考や実践は全て、古臭く、埃をかぶった、悪いお荷物であり、それらを手放して先に進んだ方がよい、というものだ。

テスラとスペースXの成功が証明しているように、このアプローチには利点がある。しかし、有能な自動車評論家なら誰でも言うように、大きな欠点もある。テスラの車はまるで火星人が設計したかのようだ。まるで、現代の高性能車のシャシー、ステアリング、ブレーキを設計、最適化し、効率的に製造する方法について、業界が何十年もの経験を持っていないかのように。

そして、政治となると、この「ゼロから始める(start from scratch)」アプローチの利点ははるかに曖昧になる。マスクと彼のDOGEティームは、彼の思考習慣を利用して、政府機関、特に米国国際開発庁(U.S. Agency for International DevelopmentUSAID)を破壊し、財務省決済システムという形でアメリカ政府の仕組みそのものに干渉しようとしている。

もちろん、物理学との類似性から政治や倫理へのインスピレーションを得られることは事実だ。アイザック・ニュートンが現代の政治思想に与えた影響を考えてみて欲しい。経済における均衡の概念(the notions of equilibrium in economics)、均衡の安定性(the stability of equilibria)といった概念は、物理学の類似性、多くの場合は力学から派生したものだ。あるいは、初期のコンピュータ時代におけるサイバネティクス(cybernetics)の影響を考えてみて欲しい。そして、物理学の近いいとこである工学(engineering)について考えると、このことはさらに顕著だ。ウラジーミル・レーニンは、共産主義をソヴィエト権力とロシアの電化(Soviet power plus the electrification of Russia)と定義したことで有名だ。1930年代から1940年代にかけての権威主義的なテクノクラシー運動も、工学から同様のインスピレーションを得た。後にカナダから南アフリカに移住することになるマスクの母方の祖父もこの運動に関わっていた。

物理学を政治に類似させるこうした立場の波及効果(knock-on effect)は2つある。第一に、それは誤った物理学である可能性が高いということだ。第二に、たとえ物理学に基づくアナロジーからイデオロギーを導き出せたとしても、最終的に得られるものは本当に政治的なものなのだろうか? 政治とは議論、意見の相違、人間の感情や思想の戯れであるならば、工学や物理学のアナロジーから政治を導き出すことは、決して額面通りに受け止められるべきではない。それは政治的であり、自らそれを自覚している(ただし、その場合、物理学や力学は単なる比喩に過ぎないことを認めざるを得なくなるだろう)。そうでなければ、それは政治ではなく、実際には政治を抑圧しようとする権威主義的なテクノクラート的ヴィジョンである。

マスクの政策に対する白紙姿勢(Musk’s blank-slate approach)は、そもそも彼がアメリカ政治に前例のない形で関与してきたことの裏返しだ。2024年のトランプ勝利に賭けることで巨額の富を得る方法は数多くあった。しかし、マスクはトランプの個別的な取引の最大の受益者というだけではない。寄付、X、そして個人的な支持を通して、彼はその実現に貢献した。彼はトランプの政治的成功に全面的に関わっている。

紛れもない事実は、マスクが政治関与によって個人的に利益を得てきたということだ。現在、マスクの個人資産は3300億ドルから3500億ドルと推定されている。これは株式市場の動向に応じて変動し、100億ドル上昇したり、100億ドル下落したりしている。つい最近の2024年夏には、彼の資産は1700億ドルと評価されていたが、2023年には1300億ドルまで落ち込んでいた。

その間に何が変わったのだろうか? マスクの個人資産の中核であるテスラの事業見通しについては、根本的な変化は見られない。実際、テスラは苦境に立たされている。消費者がトランプとの新たな関連性を理由にテスラを拒否し始めているからだ。マスクの巨額の個人資産が2倍以上に増加した明白な理由は、トランプの大統領選出馬が成功し、マスクが最大の寄付者であり、そして今やトランプに最も近い人物となったことだ。トランプとのパートナーシップは、マスクの個人的な利益と国家の利益を融合させている。

不正行為(malfeasance)は一切必要ない。利益相反(conflict of interest)さえも必要ない。トランプにとって良いことは、マスクにとって良いことであり、アメリカにとって良いことだ。彼らはそう想像し、それに従って行動するだろう。例えば、スペースXは、その絶え間ない革新と投資によって、既にアメリカの宇宙計画の中核を担う地位を確立している。大統領就任時にアメリカ宇宙軍を創設したトランプは、この計画とスペースXの地位を容易に拡大することができる。そして、マスクは常に自らを歴史の正しい側にいると考えるだろう。

マスクから見れば比較的取るに足らない投資で、彼は自身のヴィジョンの力強さを示し、今や現場で事実を生み出している。おそらく疑問なのは、なぜこれまで誰もこれをしなかったのかということだろう。トランプは明らかに、この種の特異な個人的な影響力に、非常に影響を受けやすい。トランプはビジネスの成功を愛している。マスクほどの資金力を持つ者はいないものの、それでも数十億ドルの富を持つ人は数多く存在する。なぜ大富豪たちは政治システムへの寄付、そして政治全般を操ろうとする努力を、口先だけで済ませているのだろうか? 確かに、数百万ドルが費やされていることは目に見えている。しかし、マスクはツイッター社を買収し、2024年の大統領選挙でトランプをはじめとする共和党候補に2億7700万ドルを投じた。そして、その見返りを見れば、それは目覚ましい成功を収めた投資と言えるだろう。

唯一思い浮かぶ明確な類似点は、ナレンドラ・モディ首相とアンバニ家のようなインドの寡頭政治の支配者たち(oligarchs)との関係だろう。彼らは、単に狭い意味でではなく、より広い意味で、自分たちに有利な方向に流れを変えてくれる政治家に、真に長期的かつ大規模な投資を行った。

この「政治への投資(investment in politics)」は、マスクの事業を活気づけるヴィジョンを取り巻く環境を積極的に形作る、つまり、更なるリスクテイクを可能にするものと考えることもできる。あるいは、彼の政治介入をより防御的なものと捉えることもできる。

歴史が自分に降りかかるのを待ちながら、ただ傍観し、自分の道を進み、富を享受する方が良いのか? それとも、真剣に賭けに出て、どうにかしてこの対立を乗り切ろうとする方が良いのか? マスクは明らかに後者の道を選んだ。リスクや矛盾はあるのだろうか? もちろんある。テスラは中国で大きなリスクを負っている。中国はテスラにとって最大の市場の1つであり、世界の生産量に占める割合は更に大きい。

これがトランプ大統領の貿易政策や、よりタカ派的な側近たちの地政学政策と衝突しないという保証はあるだろうか? もちろんない。しかし、政権内部にいる方が、事態の行方に影響を与え、自社にとって効果的な現実的な解決策を見つける可能性が高くなるだろうか? もちろんある。第1次トランプ政権下で関税免除のロビー活動を成功させたアップルは、その可能性を実証した。マスクは更に上を行くだろう。アップルのCEOティム・クックと同様、マスクも中国の上層部から下層部まで強力な人脈を持っている。おそらく彼は何らかの方法で矛盾を解消できるだろう。マスクが選択肢として考えていないのは、架空の中立の立場に後退することだ。

マスクが極右イデオロギーに傾倒しているのは、南アフリカで育ったせいではないかとの議論が盛んだ。土地再分配や黒人の所有権に関する政策をめぐって、トランプ政権が南アフリカの現政権をいじめようとしていることは、今や明らかだ。マスクが糸を引いているかどうかは別として、トランプの周囲には、より広範な南アフリカの白人グループが存在し、その中でマスクは最も権力を握っている。彼らがこの話題に関する彼の見解を形成していないとは考えにくい。

しかし、より深いレヴェルでは、1970年代から1980年代にかけての南アフリカ政治という実に変幻自在な環境で育ったことが、マスクの政治の根底にあるリスクテイクの形、つまり憲法の腐敗可能性や歴史そのものに対する理解を形成した可能性を考えることは有益である。

アパルトヘイト体制が崩壊し、人種戦争(race war)という終末論的なシナリオ(これは今日でも南アフリカに色濃く残っている)が政治生活に影を落としていた。あらゆるものが争奪戦に晒されていた。いかなる政治体制も排除することはできなかった。リベラルな想像力を育むには不向きな環境だった。マスクの父親はリベラルだったと言われているが、南アフリカの文脈では、それは黒人の代表をある程度認めるための多院制議会について議論することを意味していた。マスクによれば、彼自身はアパルトヘイトの柱であった南アフリカ軍への徴兵を避けるために国を離れたという。

マスクやピーター・ティール、そしてシリコンヴァレーの仲間たちに共通しているのは、あらゆる物事について「考えられないことを考える(think the unthinkable)」のが好きだということだ。それは、科学的な公理に基づいて政治を考える習慣につながる。アパルトヘイト後期の南アフリカのような状況では、全てが修正される可能性がある。第一原理に立ち戻るしかない。

しかし、ヨーロッパの右翼政策におけるマスクの冒険は、彼の動機が彼自身も認めているほど明らかではないことを示唆している。ベルリン郊外に建設した工場周辺では、ドイツ政界から度々ビジネスプランへの抵抗を受け、不快な思いをしてきた。報道によると、マスクはベルリンの極端にヒップなパーティーシーンの一部と険悪な関係にあるという。現時点では、報復のためにドイツを混乱させるという考えをマスクはかなり好んでいるのだろう。そして、その感情的な計算に第一原理を当てはめてみると、ドイツの極右は強力な支持に値するという結論がすぐに導き出される。

極右政党「ドイツのための選択肢[Alternative for Germany]AfD)」の共同党首アリス・ヴァイデルとの会話を目にすると、マスクはほとんど世間知らずに思える。政策面では、AfDは一般的に極右とされているものの、アメリカの共和党よりも右翼的という訳ではない。唯一の違いは歴史であり、だからこそマスクは、ドイツ人はナチスの過去をあまり心配する必要はないと結論づけたのだ。

マスクが決してしないのは、マイクロソフトで築いた莫大な財産を、世界の公衆衛生や教育といった従来型の慈善事業に注ぎ込んだビル・ゲイツのような人物の、おとなしく追随することだ。ゲイツはベビーブーマー世代で、伝統的な趣味を育み、定評のあるアメリカ美術コレクションを所有している。一方、マスクは1970年代から1980年代にかけて、社会化が乏しく、やや野性的なコンピュータキッズだったが、型破りなエネルギーによって、自らを世界一の富豪へと押し上げた。型破りな思考(thinking outside)こそが、彼が知っている唯一無二の道なのだ。

政府効率化省におけるマスクの最終目的が何なのか、そして彼の政治哲学が最終的にどこへ向かうのかは、誰にも分からない。マスク自身も含めて誰にも分からない。

政府インフラへの侵入やオフィスビルの占拠といった形で行われる敵対的な監査(hostile audits)は、政治史において決して珍しいことではない。例えば、ユーロ危機の後期には、いわゆるトロイカ(ヨーロッパ委員会、ヨーロッパ中央銀行、国際通貨基金)の検査官がギリシャ政府庁舎を訪れ、コンピュータやファイルにアクセスし、ギリシャの将来の支出形態を決定した。

しかし、これには何年もかかり、一定の手続きが踏まれた。第二次トランプ政権発足後数週間で私たちが目にしたのは、2021年1月6日の暴動に似た攻撃だ。予算400億ドルの米国国際開発庁は、アメリカ政府機関の中では小さな部分を占めるに過ぎないが、世界の政府開発援助(official development assistanceODA)の20%以上を占めている。この機関の破壊は、近年の政府改革において前例のない事態だ。

おそらく戦略があるのだろう。マスクは現状打破を望んでいるようだ。アメリカ政府を混乱させることで、想像を絶するほどの効率化が実現できると考えているのかもしれない。

彼が変革を推進するために活用しているティームは、10代のエンジニア、彼の様々な事業からの出向者、そして一流弁護士といった構成だ。レイオフは、教育省から中小企業庁、消費者金融保護局に至るまで、ほぼ全ての連邦政府機関に及んでいる。もし彼らが何らかの計画を実行しているとすれば、それは場当たり的なものに思える。

しかし、そこには戦略があるのか​​もしれない。マスクは物事を打破したがっているようだ。アメリカ政府を混乱させることで、想像もできなかったほどの莫大な効率化が実現できると考えているのかもしれない。スペースXNASAで事実上実現したように、政府の大部分を民間企業に置き換えることさえ構想しているのかもしれない。しかし最近、彼は自身のヴィジョンを説明するのに、醜悪なガーデニングの比喩に頼っている。

機関の一部を残すのではなく、機関全体を削除する必要があると私は考える。それは雑草を放置するのと似ている。雑草の根を抜かなければ、雑草は簡単にまた生えてくる。しかし、雑草の根を取り除いても、雑草が再び生えてこなくなる訳ではなく、生えにくくなるだけだ。

庭師とは、もちろん、雑草を識別し、手入れが必要な植物と区別するための実践的な知識を培った人のことだ。言い換えれば、原則に従って仕事をする人ではない。

※アダム・トゥーズ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学歴史学教授、ヨーロッパ研究所部長。経済、地政学、歴史のニューズレター「チャーターブック」著者。Xアカウント:@adam_tooze

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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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