古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2026年01月

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領の外交政策はいつも通り、はったりを利かせながら進んでいる。西半球(Western Hemisphere)を勢力圏(Sphere of Influence)として、支配を確立するために、逆に言えば、世界覇権国であることを辞めるために動いている。ヴェネズエラ攻撃、グリーランド奪取への言及、パナマ運河への野心、カナダやメキシコを「州」として扱うような行動は南北アメリカ大陸を支配するための動きである。ドンロー主義は、モンロー主義(南アメリカからイギリスの影響を排除する)と棍棒外交(アメリカ海軍の戦艦の太平洋と大西洋の行き来を確保しつつ、物流の通行料を取るためにパナマを奪取する)を混合させたものだ。ドンロー主義が排除を目指すのは、中国とアメリカの影響力だ。

 19世紀のイギリス、21世紀の中国とロシア、それぞれターゲットは異なる。また、置かれている状況も異なる。南アメリカには「西側以外の国々」の中核であるBRICSの一角ブラジルが控えている。ブラジルは国力を充実させ、南アメリカの地域大国となり、ドル覇権からの離脱を目指す存在である。BRICSは既に世界の重要な拠点を押さえている。BRICSの位置を確認すれば、北米大陸(とヨーロッパ)が包囲されていることが分かる。
bricsmap201
BRICS加盟諸国の地図

 アメリカの横暴な動きが続けば、ヨーロッパ諸国がそうであるように、アメリカを「脅威」と見なすことで、西側以外の国々が「対米防衛同盟」を成立させることで、「脅威の均衡(balance of threat)」を図るということも起きるだろう。「脅威の均衡」はこのブログでも頻繁にご紹介しているスティーヴン・M・ウォルトが提唱した考えである。簡単に言えば、ある国を「脅威」と認識した国々は、その国に従うか(「バンドワゴニング、勝馬に乗る[bandwagoning]」)、同盟を組んで対抗するか(バランシング、均衡を図る[balancing])ということになる。中国は表立って、対米防衛同盟の動きを行うことはないだろうが、アメリカの暴力的な動きが激しくなれば、西側以外の国々が結束して、アメリカに対抗し、アメリカを包囲し、封じ込める(containment)ということも考えられる。

(貼り付けはじめ)

勢力均衡理論が再び台頭している(The Balance-of-Power Theory Strikes Again)

-ドナルド・トランプの脅しに対する世界の反応に誰も驚くことはない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年1月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/23/trump-threats-europe-greenland-balance-power/

ついに、かつて友好国だった国々が、ならず者国家アメリカ(a rogue America)に対抗し始めているのを目にする日が来たのだろうか?

このような変化は、世界情勢の大きな転換点となるだろう。もし実際にそうなったとしても、それはトランプ政権の戦略的近視眼(the strategic myopia of the Trump administration)と、ますます不安定になる大統領の略奪的衝動(the predatory impulses of an increasingly erratic president)に完全に起因するだろう。

過去100年ほど、アメリカの世界支配の台頭は、その地位が圧倒的ではあっても、多くの国々がワシントンを牽制するために結集するほどではなかったという点で、古いスタイルの勢力均衡理論(old-style balance-of-power theory)の部分的な例外であった。冷戦期には、アメリカはソ連主導の諸国連合という対抗勢力に直面したが、世界の主要諸国や中規模諸国のほとんどは、アメリカの特定の政策に時折反対する場合があっても、アメリカを貴重な同盟国と見なしていた。しかし、カナダのマーク・カーニー首相が火曜日、スイスのダヴォスで開催された世界経済フォーラムの参加者に語ったように、そのような世界はもはや過去のものとなった。今日、彼は次のように語った。「大国間の競争(great-power rivalry)が繰り広げられる世界において、中間に位置する国々には選択肢がある。互いに好意を得るために競争するか、協力して影響力のある第三の道を切り開くかだ。」

以下、私自身の研究に触れて恐縮ですが、約40年以上前に博士論文(そして最初の著書)を執筆して以来、同盟の諸起源(the origins of alliances)と国家間の均衡を保つ理由(the reasons why states balance)というテーマについて考え、書き続けてきた。国家が同盟を結ぶのは、主に脅威への対応(response to threats)であり、力(power)だけによるものではないと私は主張した。もちろん、力は脅威の一要素だ(つまり、他の条件が同じであれば、強い国家は弱い国家よりも危険だ)。しかし、地理や知覚された意図[他者の行動から読み取った目的や動機](geography and perceived intentions)も重要だ。近隣にある国家は遠くにある国家よりも厄介な傾向があり、修正主義的な野心を持つ国家(states with highly revisionist ambitions)は特に危険だ。特に、他国から領土を奪ったり、他の国の統治者を支配しようとしたりする場合には猶更だ。弱小国家や孤立国家は、脅威となる勢力に「勝ち馬に乗る、バンドワゴニング(bandwagoning)」することで融和(accommodate)しようとすることもあるが、より典型的な対応は、理想的には他国と連携して、脅威となる勢力と均衡を保つことだ(the more typical response is to balance against a threatening power, ideally in partnership with others)。

私が「脅威の均衡理論(balance-of-threat theory)」と名付けたこの定式は、とりわけ、アメリカの冷戦同盟システムがワルシャワ条約機構やソ連の様々な非同盟諸国よりもはるかに大規模で強力であった理由を説明するものであった。アメリカは総合的な力では勝っていたが、ソ連はヨーロッパとアジアの多くの中規模国に隣接し、領土獲得に最適化された大規模な軍隊を有し、その指導者たちは共産主義の普及に公然と尽力していた。対照的に、アメリカはヨーロッパとアジアから2つの巨大な海によって隔てられており、そこに領土的野心はなかった。脅威の均衡理論は、1991年にイラクをクウェートから追い出した多国籍軍のような、不均衡な構造(lopsided alignments)も説明できる。あの事件では、イラクをはるかに上回る能力を総合的に備えた、本来はあり得ないような国々のグループが力を合わせた。なぜなら、彼らは皆、イラクの行動が地域の安定に対する深刻な脅威であると見なしたからである。

脅威均衡理論は、アメリカが単独で権力の頂点に立つ一方で、公然とした均衡維持の努力が少数の脆弱なならず者国家(weak rogue states)に限られていた「一極時代(unipolar moment)」という一見異常な状況を理解する上でも役立つだろう。冷戦時代のアメリカの同盟諸国がNATOに残留したのは、(1)制度的惰性(institutional inertia)(「NATOが崩壊していないのなら、なぜ修復する必要があるのか​​?」)、(2)不確実性へのヘッジをしたいという願望(a desire to hedge against uncertainty)、(3)アメリカの保護に頼るのは極めて良い取引だという認識(the recognition that relying on American protection was a pretty good deal)、そして、(4)ワシントンの最悪の衝動が他国に向けられていたという事実(the fact that Washington’s worst impulses were directed elsewhere)、による。ヨーロッパの指導者たちは、2003年のイラク侵攻のような失策が自国に悪影響を及ぼすことを正しく恐れ、アメリカの判断力に何度も疑問を呈したが、「ソフト・バランシング(soft balancing)」にとどまり、再編や自立に向けた努力は行わなかった。この決定が容易にされたのは、アメリカが依然として同盟諸国に対して自制(with restraint)を示し、領土的野心を抱かず、概ね各国政府と建設的な協力関係を築こうと努めていたためである。対照的に、ロシア、中国、北朝鮮、イランは、アメリカからの潜在的な脅威をより強く懸念する理由があったため、アメリカの力のバランスを取るためにより積極的な努力を傾けた。

それは当時のことであり、今は違う。ドナルド・トランプは、大統領として2期目を開始して以来、脅威の均衡理論が警告するほぼ全てのことを実行し、予想通り否定的な結果をもたらしている。トランプは、カナダ、グリーンランド・デンマーク、パナマに対する拡張主義的な目標を公然と繰り返し宣言しており、その野望はそこで止まらないかもしれない。彼と彼の側近たちは、主権の規範(the norm of sovereignty)を含む国際法は無意味であり、強い者は手に入れることができるものは何でも手に入れることができると信じているようだ。彼は、他国に経済的・政治的譲歩を強要するために、関税の脅威を繰り返し振りかざしたり、課したりしてきた。彼は、多くの場合、非常に疑わしい理由をもって、6カ国以上に軍事力を行使し、デンマークなどの忠実な同盟国に対しても軍事力行使をほのめかしてきた。彼は、他の外国の指導者たちを露骨に軽蔑し、適正手続きを経ずに100人以上の外国人民間人を殺害することを容認してきた。これもまた、国際法違反である。さらに、反逆的な政府の凶悪集団(例:移民関税執行局[Immigration and Customs Enforcement])をアメリカ国内の都市に解き放つことで、他国社会がアメリカを安定し規制の行き届いた社会と見なすこと、あるいは彼の外交政策行動を異常な事例と捉えることを不可能にした。要するに、国内外を問わず、アメリカ政府は危険ないじめっ子であり、強迫的な略奪者のように振る舞っているのだ。

ある意味、この行動は奇妙だ。賢い捕食者たち(clever predators)は、真意を可能な限り隠そうとする。トランプも2016年、そして最初の任期の大部分においてそうだったように、それは「部屋の中の大人(adults in the room)」によって抑制されていたことも一因だ。しかし、2021年1月6日の犯罪を免れ、再選を果たし、確固たる信念を持たない取り巻き、忠誠者、追従者、そして日和見主義者たち(cronies, loyalists, sycophants, and opportunists with no fixed principles)で政権を固めたことで、彼は最悪の衝動を解き放った。そして今、世界は注目し始めている。

世界はどのように反応しているのだろうか? 確かに、アメリカの最も近い同盟諸国は、いくつかの明白な理由から、トランプの好戦的な姿勢に抵抗するのが遅れている。アメリカとの関係を縮小し、アメリカに対抗する動きを見せるにはコストがかかり、意味のある対抗勢力となるのに十分な数の国を集めるには、集団行動におけるよくあるディレンマ(the usual dilemmas of collective action)に直面する。したがって、イギリスのキア・スターマー首相、NATO事務総長のマーク・ルッテ、韓国の李在明大統領のような人々が、お世辞、象徴的な服従、贈り物、そして小さな譲歩を組み合わせることで、ワシントンとの緊密なパートナーシップから得られる利益のほとんどを維持できるかどうかを見極めようとしたのは理解できる。

試してみる価値はあったかもしれないが、その賭けは明らかに成功しなかった。トランプ自身の言動が、そのアプローチの愚かさを露呈した。過去の合意は全ていつでも再交渉可能であると信じ、いかなる譲歩もさらなる要求への誘いと解釈する捕食者を受け入れることはできない。

脅威均衡理論が予測するように、かつての友好諸国は距離を置き、信頼できず潜在的に敵対的なアメリカに対する依存を減らし、互いに、そして場合によってはアメリカの敵対諸国とも新たな取り決めを結んでいる。長年、どの国にとっても最良の隣国であったカナダの首相が北京を訪れ、「新たな戦略的パートナーシップの柱(the pillars of [a] new strategic partnership)」を概説するということは、地殻変動が起こっていることを物語っている。ヨーロッパの指導者たちも、数十年にわたるゼリー状の優柔不断の後、再び背骨が生えてきたように見える。なぜなら、彼らには選択肢がほとんど残されていないからだ。『フィナンシャル・タイムズ』紙のエド・ルースは明確に次のように述べている。「トランプに立ち向かうことが成功を保証するわけではない。一方、服従は必ず失敗する(Standing up to Trump offers no guarantee of success. Submission, on the other hand, is certain to fail)」。

かつてアメリカが誇った数々の国際的パートナーシップの更なる崩壊を防ぎ、新興国により適した新たな枠組みを構築するには、もう手遅れではないだろうか? 確かに手遅れだが、それはトランプ政権がこれまでの略奪的な戦略を捨て、アメリカが一方的な利益のためだけでなく、共通の利益のために他国と協力する意思を示すことが条件だ。その可能性はどれほど高いだろうか?

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 イスラエルはハマスからの奇襲攻撃を受け、人質を取られたことで、それを奇貨として大規模な反撃を行い、ガザ地区での大規模な破壊を行った。多くの民間人が犠牲となった。アメリカの仲介による停戦は実行されたが、現在も状況は改善していない。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、自身のスキャンダル隠しと訴追逃れのために、戦争状態を継続している。アメリカのドナルド・トランプ大統領のエプスタイン文書隠し、日本の高市早苗首相の自民党と統一教会の爛れた関係隠しと同様であるが、日本の場合は人間が殺されないだけまだましと言えるだろう。

 話は逸れたが、イスラエルは中東地域において地域覇権ではなく、生存を最優先にしてきた。そのために戦いながら、同時に交渉を行い、スパイ活動を行いながら情報戦を行いながら、近隣諸国と裏舞台では協力関係を保ってきた。中東諸国もイスラエルを公式には認めないスタンスであったが、裏では取引ができるようにしていた。

 ネタニヤフ首相の武力偏重のスタンスで、ガザ地区への大規模な攻撃は、せっかく進められていたサウジアラビアとの国交樹立交渉にも影響を与えた。サウジアラビアとしても、アラブの盟主として、イスラエルを公式に認めることができない状態になってしまった。中東地域の安定という地域共通の利益をイスラエルが破壊していることが根本の問題である。

 イスラエルのガザ地区とイランへの攻撃は短期的には一定の成果を上げるだろうが、中長期的に見て、それがイスラエルの利益になるとは考えられない。イスラエルが中東地域を支配することはあり得ない。武力で中東地域を従わせることはできないし、そもそもがそのような制度設計になっていない。結局のところ、ネタニヤフ首相の私戦を戦っているに過ぎない。これは、イスラエルにとっては一時的な逸脱という見方もできる。

(貼り付けはじめ)

イスラエルは(地域)覇権国にはなれない(Israel Can’t Be a Hegemon)

-イスラエル政府は成功する可能性の低い地域支配を狙っている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年6月16日

https://foreignpolicy.com/2025/06/16/israel-iran-war-middle-east-hegemon/

benjaminhetahyahu2024001

イェルサレムの政府報道室(Government Press Office、GPO)での記者会見で、中東の地図の前で演説するイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ(2024年9月4日)

イスラエルによるイランへの広範囲にわたる攻撃は、地域のあらゆる敵対勢力を排除または弱体化させるためのキャンペーンの最新のラウンドである。2023年10月のハマス攻撃を受けて、イスラエルはパレスティナ人を意味のある政治勢力として破壊するための残忍なキャンペーンを遂行しており、主要な人権団体や多くの学術専門家たちはこれをジェノサイド(genocide)と呼んでいる。レバノンでは空爆(airstrikes)、爆弾を仕掛けた携帯電話(booby-trapped cellphones)、その他の手段でヒズボラの指導部を壊滅させた。イエメンではフーシ派を攻撃し、アサド政権崩壊後のシリアを爆撃して武器貯蔵庫を破壊し、危険と見なす勢力が政治的影響力を行使するのを阻止した。そして、イランに対する最新の攻撃は、イランの核インフラに損害を与えたり破壊したりする以上のことを目的としている。イスラエルは少なくとも、イランの核計画をめぐる交渉を終わらせたいと考えている。イランの最高指導者、軍関係者、外交官、科学者を殺害することでイランの反撃能力を弱体化させ、可能であればアメリカを戦争にさらに深く引きずり込む。最大限には、イランの体制を崩壊させるまで弱体化させることを望んでいる。

これらの行動はいずれも、少なくとも短期的には、また部分的には成功している。では、今やイスラエルを地域覇権国(a regional hegemon)とみなすべきだろうか? もしそのような国家が「特定の地域における唯一の大国(the sole great power within a particular region)」であり、「全面的な軍事力の試練において、他のいかなる国家(あるいは国家連合)も本格的な防衛力を発揮できない(no other states (or combination of states) could mount a serious defense in an all-out test of military strength)」と定義されるならば、イスラエルは今やその資格を満たしていると言えるだろうか? もしそうであれば、近隣諸国も覇権国に直面した際に他の国々がしてきたように行動することを期待すべきだろうか? つまり、「その優位性を認め、覇権国にとって極めて重要な問題においては従う(recognize its superior power and defer to it on matters of vital interest to the hegemon)」ということだろうか?

一見すると、この可能性は非現実的に思える。人口1000万人にも満たない国(そのうちユダヤ人は約75%に過ぎない)が、数億人(主にイスラム教徒のアラブ人)と9000万人以上のペルシャ人を抱える広大な地域を、どのようにして支配できるのだろうか?

しかしながら、イスラエルが近隣諸国に対して多くの優位性を持っていることを考えると、この考えはより説得力を持つように思える。イスラエル国民はアラブ諸国の国民よりも教育水準が高く、愛国心が強く、より有能な指導者に導かれてきた。イスラエルは裕福で政治的に影響力のあるディアスポラ(diaspora、離散民)から惜しみなく揺るぎない支援を受けており、過去にはイギリスやフランスといった大国からも多大な支援を受けてきた。アラブ諸国のライヴァル諸国の多くは、様々な内部分裂(internal schisms)、動乱(upheavals)、クーデター(coups)に直面し、アラブ諸国間の対立(divided by inter-Arab rivalries)によって分断されてきた。

さらに言えば、現代の軍事力は単なる兵力よりも、技術力、訓練、そして能力の高い指揮統制に大きく依存しているため、イスラエル国防軍(Israel Defense Forces、IDF)は常に、敵対する軍よりもはるかに優れた能力を誇ってきた。この優位性は、戦争が高価で高度な兵器にますます依存するようになるにつれて、さらに高まっている。ヒズボラとハマスは共に時とともに能力を高めていったものの、どちらもイスラエルの存在を脅かしたり、イスラエルがヒズボラとハマスに与えることのできる損害に匹敵したりすることはできなかった。イスラエルの膨大な核兵器と評価の高い情報能力はその立場をさらに強化した。

何よりも重要なのは、イスラエルがアメリカから広範かつほぼ無条件の支援を受けていることだ。アメリカ政府はイスラエルの行動の如何に関わらずイスラエルを支持し、イスラエルの「質的軍事優位性(qualitative military edge)」を維持することを正式に約束している。この支援がなければ、約1000万人のイスラエル人は自国の領土を守ることはできるが(核兵器を保有していることを忘れてはならない)、周辺地域を支配する可能性はほとんどない。

以上の点を考慮すると、イスラエルがより広い中東知己を支配するという考えはそれほど突飛なものではない。しかし、イスラエルを真の地域覇権国と見なすのは誤りだろう。

第一に、地域覇権国は近隣諸国に比べて非常に強力であるため、近隣諸国から重大な安全保障上の脅威を受けることはなく、真のライヴァルがすぐに出現することを心配する必要もない。これは、20世紀初頭までにアメリカが達成した立場だ。他の大国は西半球(the Western Hemisphere)から撤退し、この地域のどの国や組み合わせも、アメリカの経済力と軍事力の組み合わせに近づくことはできなかった。キューバ危機(外部の大国(ソ連)が核兵器搭載ミサイルを西半球に送り込んだ)という短い例外を除けば、アメリカは19世紀後半以降、西半球地域からの重大な軍事的脅威に直面していない。この特権的な立場により、ワシントンは外交・防衛政策をユーラシアに集中させ、戦略的に重要な地域で他の大国が同様の地位を獲得するのを阻止することができた。

今日のイスラエルは、その基準を満たしていない。例えば、フーシ派は依然として反抗的な姿勢を崩しておらず、イスラエル国防軍はガザ地区の住民に甚大な被害を与えたにもかかわらず、依然として泥沼に足を取られている状況だ。イスラエルはヒズボラとハマスを著しく弱体化させたが、これらは非国家アクターであり、イスラエルの存在に実存的な脅威を与えたことはこれまで一度もない。今日、アラブ諸国や連合軍でイスラエルに匹敵するものは存在しない。しかし、トルコとイランはどちらも強力な軍事力とはるかに大きな人口を有しており、総力戦(all-out war)が発生した場合、たとえ最終的に敗北するにしても、それぞれ信頼性の高い防衛体制を構築することができる。つまり、イスラエルはこれらの国々を計算から除外したり、これらの国々が従うと想定したりすることはできない。イランの継続的な抵抗がそれを如実に示している。最近の攻撃に対するイランの報復は、被った被害に比べれば少ないものの、決して軽微なものではなく、紛争はまだ終わっていない。たとえ今回の戦闘で敗北することになったとしても、テヘランが自国の利益をイスラエルに進んで従属させる兆候は見られない。その理由だけでも、イスラエルは地域の覇権国とは言えない。

さらに言えば、これらの最新の攻撃の正当化の根拠は全て、イランがいつの日か核兵器を入手するかもしれないという懸念にあった。リスクは、イランが自殺行為となる核兵器でイスラエルを攻撃することではなく、むしろイランの核兵器が、イスラエルがこの地域で無制限に武力を行使する能力を制限する可能性にあった。イスラエルの指導者たちが、より大きな抑制をもって行動せざるを得なくなる可能性を危険と見なしたことは、彼らが世界唯一の真の地域覇権国であるアメリカが長年享受してきたような「無料の安全保障(free security)」を享受していないことを示している。

イスラエルの最近の戦場での成功も、イスラエルが支配する地域の人口の約半分を占めるパレスティナ人というより根本的な問題を解決してはいない。イスラエルの優れた軍事力と情報能力は、2023年10月にハマスが数百人のイスラエル人を殺害するのを防げなかった。また、それに対する報復としてイスラエルが5万5千人以上のパレスティナ人を殺害したことで、この紛争の政治的解決に近づいた訳でもない。むしろ、イスラエルの世界的なイメージは著しく傷つき、長年の同盟諸国でさえ支援を弱めている。

最も重要なのは、イスラエルが依然としてアメリカ国内の後援者に決定的に依存している点だ。アメリカは、隣国を攻撃するために必要な航空機、爆弾、ミサイルの大半を供給し、絶え間ない外交的保護を提供している。真の地域覇権国は近隣地域を支配するために他国に依存する必要はないが、イスラエルは依存せざるを得ない。強力な国内利益団体の影響力により、アメリカの支援は何十年にもわたって揺るぎないものだったが、近年、この関係には緊張の兆しが見られ、アメリカの力そのものの衰退に伴い、この関係を維持することはさらに困難になるだろう。そして、今回の戦闘が最終的に米国を巻き込むことになれば、ドナルド・トランプ米大統領がアメリカの平和を維持すると信じていた MAGA の支持者たちを含め、より多くのアメリカ国民が、「特別な関係(special relationship)」のためにアメリカが支払っている多大な代償を認識することになるだろう。

最後に、永続的な地域覇権は、近隣諸国が覇権国の優位な地位を受け入れる(場合によっては歓迎する)ことを必要とする。そうでなければ、覇権国は常に新たな反対勢力の出現を懸念し、反対勢力の出現を阻止するために繰り返し行動を取らざるを得なくなる。自らの特権的な地位(privileged position)を他国に受け入れてもらうためには、永続的な覇権国はある程度の寛容さ(forbearance)をもって行動しなければならない。これは、フランクリン・D・ルーズヴェルト元米大統領がラテンアメリカに対して「善隣(Good Neighbor)」政策を採用した際に示したものである。ナポレオン時代のフランス、ナチス・ドイツ、大日本帝国といった地域覇権国を志向した国々が一時的に優位な地位を獲得したものの、当初の成果を固めることができず、最終的にはより強力な反対勢力の連合に屈服したことを想起することに価値がある。

しかし、隣国への寛容を持っての処遇はイスラエルの得意分野ではなく、イスラエルの右翼勢力や宗教過激派の影響力拡大によって、その可能性はさらに低くなっている。これらを総合すると、イスラエルが地域の覇権国となるには程遠い。指導者たちがその地位を望んでいることは疑いない—当然だろう—。しかしそれは永遠に手の届かないものとなる。つまりイスラエル国家の長期的な安全保障は、結局のところパレスティナを含む近隣諸国との永続的な政治的解決の達成にかかっている。これは、永続的な安全保障が最終的に依存するのは力だけではなく政治であるという、また1つの教訓なのである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、X:アカウント@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ウクライナ戦争はアメリカの仲介による停戦交渉が続いている。ウクライナ戦争は2026年2月24日を過ぎて継続していると、満4年となり、5年目に入る。ウクライナ、ロシア両国の国民にとっての苦痛が長期間続くことになる。トランプ政権は、2026年2月24日に一般教書演説(the State of the Union Address)を予定している。ここまでに停戦交渉をまとめて、一般教書演説で大々的にアピールしたいところだろう。

 ウクライナ戦争は、ロシアとウクライナの戦争であるが、ウクライナのバックにはアメリカとヨーロッパの西側先進諸国という「大応援団」がいて、ロシア対西側諸国という構図になっていた。ロシアは戦術核兵器使用(ウクライナだけに限定せず)を示唆したことで、西側諸国の腰が引けた。ウクライナにロシアを本気で怒らせない程度の攻撃しか許さない状況になった。

 そもそも西側諸国はウクライナに軍事支援や軍事顧問団派遣を行い、ロシアを挑発してきた。ロシアがその挑発に乗ってしまったという面はある。西側諸国はロシアが挑発に乗ってきたところで、経済制裁を発動してロシアを締めあげてやろうとしており、実際に経済制裁を行ったのだが、意図に反して、ロシアは屈服しなかった。ウクライナからロシアを完全に追い払うには、西側諸国が自分たちも危険を冒して、血を流す覚悟、最終的には地上軍派遣を行わねばならないところまで進んだが、もちろん、西側諸国にそのような意図も度胸もない。ロシアは西側以外の国々からの支援を受けて、守りを固めて、戦争を継続している。ウクライナはどうしようもない状態になっている。さらに、ウクライナ国内の状況もばれつつあり、はっきり言って、見た目はヨーロッパだが、中身は昔の第三世界の国のようなもので、腐敗と汚職の蔓延した国家である。そのような国に重要な武器を渡して、それをアメリカの敵対国や敵対勢力に横流しでもされたら目も当てられない。いくらお金を注ぎ込んでも、そのお金が政府高官たちの贅沢な生活に消えてしまうが、それくらいはまだましであるということになる。

 西側諸国がウクライナ支援に対して及び腰なのは、ロシアを怒らせたくないということと、ウクライナ国内の腐敗と汚職の問題があることが原因だ。アメリカをはじめとする西側諸国の支援が足りないなどと言っても、支援したくてもできない事情がある。ウクライナ戦争は西側諸国の間違った戦略のために起きた災厄である。ウクライナの一般国民が一番の犠牲者である。一日も早い停戦の実現を望む。

(貼り付けはじめ)

ジョー・バイデン政権のウクライナへの長い影(Biden’s Long Shadow Over Ukraine)

-バイデン政権はウクライナに対してほぼあらゆる面で失望を与え、今日に至るまで戦争を形作ってきた。

エイドリアン・カラトニツキー筆

2025年12月5日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/12/05/biden-war-ukraine-russia-putin-zelensky-military-aid/

2022年夏の終わり、ウクライナはウクライナ南部で大規模な反撃を開始した。11月11日、この作戦の結果、ヘルソン市とドニエプル川西側のロシア占領地域全てが解放された。

ウクライナ軍がヘルソンに復帰したという高揚感の中、包囲網に閉じ込められていたロシア軍の驚異的な脱出劇はほとんど注目されなかった。数週間にわたり、前線強化のために派遣された精鋭部隊を含む推定2、3万人のロシア兵と大量の軍事装備が、フェリー、桟橋、そしてウクライナ軍が事前に一部通行不能にしていた橋を使って、ドニエプル川を越えて安全に撤退した。ウクライナ軍は撤退に先立ち、この橋をロケット砲で攻撃していたが、ロシア軍の主力が渡河した数週間後、この脆弱な隘路への砲撃をほぼ停止した。戦争研究所のロシアティームを率いるジョージ・バロスは『フォーリン・ポリシー』誌に「ヘルソンから秩序正しく撤退したことは、戦争全体を通してロシアにとって最も成功した軍事作戦だった」と語った。もしこの部隊が壊滅するか降伏を強いられていたら、それは戦争の転換点となり、全世界の前で晒される、クレムリンにとっての大きな屈辱となっただろう。

最近、ウクライナ政府高官数名と背景について話をする機会があり、これらの出来事について新たな知見が得られた。第一に、この撤退は、屈辱的な敗北がロシアの戦術核による反撃を誘発するのではないかとアメリカが懸念する中で行われた。第二に、ウクライナは河川を越える距離まで到達できる弾薬が不足しており、これはアメリカがウクライナに供給する弾薬の種類と量を厳しく制限していたことが理由だ。ロシア軍の驚くほど妨害のない撤退の真相は、戦争終結後も長らく秘密のままとなる可能性があるが、ヘルソン周辺での出来事は、ウクライナの攻撃が戦争中ずっと、アメリカをはじめとする西側諸国からの兵器の流入とその使用制限によって厳しく制限されてきたことを象徴している。

ドナルド・トランプ大統領は、ロシアとウクライナの紛争をしばしば「バイデンの戦争(Biden’s war)」と呼んでいる。ジョー・バイデン前大統領がロシアのウクライナ侵攻の個人的な責任を負っているというトランプ大統領の主張はもちろん誤りだ。責任はロシアのウラジーミル・プーティン大統領にあるのであり、トランプ大統領も主張しているように、バイデンやウクライナにあるのではない。トランプ大統領を除くほとんどの人が知っているように、プーティン大統領は長らくウクライナの正統性(legitimacy)に疑問を呈しており、少なくとも2014年にクリミア侵攻とドンバス占領というロシア初の領土獲得を開始して以来、その領土を渇望してきた。プーティン大統領の野望の大きさを考えれば、全面戦争に突入するのは時間の問題だった。

しかし、これは全く異なる意味でのバイデンの戦争である。今日に至るまで、この侵攻は、バイデン政権がウクライナにいつ、どのように武器を供給するかという決定、そしてアメリカが軍事援助をてこ入れしてウクライナの戦争遂行を制約した方法によって、大きく形作られてきた。ホワイトハウスのこれらの決定は、ロシアの侵攻の輪郭を大きく決定づけた。ウクライナの現在の軍事態勢、支配地域、そして増大している民間人および軍人の犠牲者数は全て、バイデン政権がウクライナの戦争遂行方法に課した制限によって大きく形作られており、その制限は今日まで続いている。

確かに、バイデンのウクライナにおけるレガシーは、ネガティヴなものだけではない。バイデン政権の多大な支援と、キエフを支援する国際連合の形成における彼の成功がなければ、ウクライナは領土の約80%を維持できなかっただろう。ロシアの侵攻を衰弱させるほどに減速させることもできなかっただろう。もしトランプが政権を握っていたら、キエフを支援するよりもモスクワとのビジネス取引を優先したかもしれない。しかし、バイデンの過剰な慎重さとウクライナの戦闘方法に対する厳しい制約は、2022年秋のウクライナの急速な反撃の停滞にほぼ確実に寄与し、そして今日に至るまでロシアが戦争を終結させ、自国が出す以外の条件で和解を求める圧力をほとんど感じていないという事実にもつながっている。

バイデンはウクライナの運命を深く憂慮しており、NATO同盟諸国とその他の民主政治体制国間の結束、負担分担、支援の調整、そして協力を巧みに形作った功績は、高く評価されるべきだ。実際、ヨーロッパ各国の首脳が最近示した強い結束、そして8月18日に大統領執務室で行われたトランプ大統領との会談で最も劇的な結束は、バイデンの非常に効果的な連合構築の成果である。

しかし、バイデン陣営の失策、そしてウクライナ軍への支援における過剰な慎重さは、誠実な評価を免れるべきではない。

最初の失策は、バイデンが副大統領を務めていたオバマ政権時代の遺産であるが、2021年3月に政権発足からわずか数週間後に始まったロシアによるウクライナ国境での大規模な軍事力増強の過程で、バイデンがウクライナへの大幅な武器供与を拒否したことだ。ウクライナは、トランプ政権初期に供与された対戦車兵器を補強するための新たな兵器を強く​​求めていたにもかかわらず、バイデンは何もしなかった。

ワシントンが2億ドルの控えめな武器パッケージを送る準備をした後も、バイデンはプーティンとの緊張の高まりを恐れて援助の送付を遅らせた。2021年12月中旬のNBCニューズの記事によると、バイデンは「緊張を緩和するための外交努力のための時間を増やす」ために援助を差し控えることを決めた。『ワシントン・ポスト』紙の信頼できる情報源による報道によると、アメリカの情報機関はその時にすでにロシアがウクライナへの全面攻撃の準備をしていると結論付けていたため、援助の遅延はこのようにして多くの重要な数週間にわたって続いた。バイデンの遅延の結果、2022年2月にロシアが攻撃するまでに、比較的わずかな援助パッケージの一部しか移送されなかった。バイデンが事実上、ロシア・ドイツ間のノルドストリーム2・ガスパイプラインとアフガニスタンからの屈辱的なアメリカの撤退を支持したことと相まって、クレムリンはこれら全てをワシントンの弱さと決意の欠如のシグナルと見ざるを得なかった。

さらに、戦争の初期段階では、バイデン政権はウクライナ軍がロシア軍に対して短期間で敗北すると確信していたため、多額の援助を控えていた。政権の誤った評価は、バイデン政権の国家安全保障ティームが信頼するロシア専門家サミュエル・シャラップによっても主張されていた。彼は『フォーリン・ポリシー』誌で「西側諸国の兵器はウクライナに何ら影響を与えない」と主張した。アメリカ側との協議に関わったウクライナ政府の元高官は、バイデンの消極的な姿勢は、少なくとも部分的には、タリバンが数十億ドル相当のアメリカ製兵器を押収したことが影響していると考えていると私に語った。バイデンはロシアがすぐにウクライナを制圧すると考えており、そのため、アメリカ製兵器がプーティンの手に渡ることを恐れていたようだ。

現実は全く異なっていた。トランプ政権初期に提供された対戦車ジャヴェリン、イギリス製の対戦車NLAW、そしてウクライナ独自の兵器(国産兵器とソ連時代の装備の混合)に加え、ヴァレリー・ザルジニー将軍率いる士気の高い防衛部隊による大胆な戦闘作戦により、ウクライナは苦境を克服し、ロシアを当初奪取した領土の多くから追い出すことができた。ウクライナの予想外の成功は、バイデン政権とNATO同盟諸国がようやく懸念の一部を克服し、支援を強化する機会をもたらした。

しかし、ウクライナは大きな成功を収めたにもかかわらず、バイデンと彼のティームは戦争中、事実上あらゆる場面でウクライナを失望させた。彼らは重要な兵器を渡さず、過剰な警戒からキエフの生存をかけた戦い方を著しく制限した。

バイデン政権の核エスカレーションへの懸念は、その後数年間のアメリカによる支援を形作る上で決定的な役割を果たした。こうした懸念を認識したクレムリンは、頻繁な脅しによって巧みに国民の懸念を煽った。これは、ソ連時代の戦略家たちが「反射的統制(reflexive control)」と呼んだ、敵対者の思考を形作るための一種の心理戦の典型例である。バイデン政権は、オバマ政権のロシアの「エスカレーション優位(escalation dominance)」理論の派生型、すなわちロシアはいつでも紛争をエスカレートさせてアメリカの援助を無効化できるという考えを信じていた。2014年からオバマ政権の任期満了となる2017年まで、この理論はキエフへのアメリカの致命的な軍事支援を拒否する根拠となった。

ロシアは戦争初期に戦術核兵器の使用を検討していたかもしれないが、ウクライナ側は喜んでそのリスクを負うつもりだった。1年間の激戦、ロシアの戦場での大敗(占領地の大規模な喪失を含む)、そして西側諸国からの新型兵器の供与を経て、エスカレーションの脅威は(かつて存在した限りでは)後退していた。その時点で残っていたのは、ウクライナによる戦争遂行の実効性を抑制するというアメリカの一貫した政策だけだった。この政策の運用は、ボブ・ウッドワードの著書『WAR 3つの戦争(War)』で明らかにされている。同書は、2022年10月21日のやりとりを報じている。その中で、ロイド・オースティン国防長官はロシアのセルゲイ・ショイグ国防長官に対し、「私たちは特定のことを行わないよう注意してきた。(中略)私たちが提供した兵器の使用方法については、一定の制限を設けている」と述べている。オースティンのこの言葉は、ウクライナの戦争遂行に対するバイデン政権のアプローチの本質を明らかにしており、この政策は今日まで続いている。

ロシアの主要な戦略的パートナーである中国が、プーティン大統領が核兵器使用の選択肢に訴えることはないという強い兆候を示した後も、アメリカの牽制は続いた。ウクライナのある高官は私に、習近平国家主席がプーティン大統領に対し、核兵器使用の選択肢は容認できないと明確に伝えたと中国側がウクライナ側に伝えたと語った。プーティン大統領が中国の支援への依存度を高めていることを踏まえると、この情報はウクライナ当局者に、ロシアが核兵器使用のリスクを冒さないと確信させた。しかし、ワシントンは、キエフの戦争遂行能力を劇的に強化する可能性があった主要兵器の移転を、一貫して遅らせたり、遅々として進まなかったり、あるいは完全に反対したりした。

2023年1月末までに、ロシアによる戦術核兵器の使用が差し迫っているというアメリカの懸念は、ある程度和らいだ。ウクライナがハリコフとヘルソンを解放するという戦場での見事な活躍を受け、西側諸国は大型戦車を含む新たな兵器支援を約束した。しかし、多くの物資の搬入は依然として遅延していた。しかし、ロシア軍後方の軍事目標および兵站目標を攻撃するための深層攻撃兵器を求めるウクライナの要請は、バイデン政権時代を通じて常に無視されてきたように、依然として無視されたままであった。

バイデン政権がウクライナに適切な武器を提供することに消極的だった歴史的記録は衝撃的だ。ウクライナが当初HIMARS多連装ロケット砲を要請したが、2022年夏まで回答が得られなかった。しかも、要請が出されたのは、人口約45万人の戦略的に重要な港湾都市マリウポリが、凄惨な包囲攻撃で街がくすぶる廃墟と化した後にすぎなかった。マリウポリ近郊の集団墓地は、ウクライナの民間人および軍人の死者が数万人に上った可能性があることを示している。キエフがパトリオット防空システムを求める要請も、ロシア軍がウクライナの都市の民間人を標的に継続的かつ残忍な攻撃を行ったにもかかわらず、2022年の大半の間、回答が得られなかった。なぜ当時、純粋に防御用の兵器ですら禁止されていたのかは、バイデンと当時の国家安全保障問題担当大統領補佐官ジェイク・サリヴァンの秘密のままである。

最初のエイブラムス戦車がウクライナ軍に到着したのは、ロシアの侵攻から1年半以上経った2023年9月になってからだった。そして、2023年5月にキエフに長距離ストームシャドウミサイルを供給すると発表したのは、ワシントンではなくロンドンだった。アメリカによるATACMSと呼ばれる長距離ミサイルの納入は、2023年10月にようやく始まった。当時でさえ、これらのミサイルは射程距離を制限するように改造されており、ロシア領内の軍事目標への使用は制限されていた。例えば2024年夏、ウクライナは国境からわずか100マイル内側にあるロシアの主要爆撃基地の1つへの攻撃許可を懇願したが、結局拒否された。この制限が部分的に解除されたのは、2024年11月になってからだった。

また、バイデン政権はキエフに対し、ウクライナの主権領土内であっても、特定のロシア軍・兵站施設を攻撃しないよう圧力をかけたようだ。『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、アメリカはクリミア半島のロシア空軍基地と、ロシア軍にとって重要な補給路であるケルチ海峡橋へのウクライナ軍の攻撃に反対している。この記事ではまた、アメリカがクレムリンの要請により停止した、未公表のウクライナ軍による作戦についても言及している。

さらに、バイデン政権は戦争中ずっと、アメリカとウクライナだけでなく、ヨーロッパの同盟諸国にも恣意的なレッドラインを引いた。同盟諸国は、戦車、長距離ミサイル、ヨーロッパ所有のF-16戦闘機など、特定の兵器の提供を差し止められた。しかし、これらの制限が遅れて解除されると、これらの戦闘機はロシアの攻撃に対するウクライナの防空防衛の不可欠な要素となった。

ハドソン研究所のルーク・コフィーが述べているように、「遅延はクラスター弾、戦車、歩兵戦闘車、そしてATACMS(対空ミサイルシステム)の提供に影響を与えた。アメリカは最終的にこれらのシステムすべてを承認したが、その決断の遅れはウクライナに多大な損害を与え、積極的対応ではなく事後対応を強いることとなった」。言い換えれば、バイデンはウクライナに対し、背中に片手を縛られた(one hand tied behind its back)状態でロシアと戦うことを強いた。

アメリカの限定的な援助はロシアの侵攻をやっと抑える程度ではあったが、ウクライナが国家として存続することを確かに保証した。こうした状況下で、ウクライナは、自国の長距離ミサイルを含む、これまで供給が認められていなかった兵器の開発と量産を徐々に開始した。また、強力な戦闘用ドローン産業の台頭にも時間を稼ぎ、戦場は一変した。

ウクライナ自身の技術革新にもかかわらず、バイデン政権によるロシアへの攻撃制限は、爆撃機攻撃に利用される飛行場など、ロシア国内の軍事施設やインフラ施設への攻撃能力を非常に限定的なものにしていた。2024年には、バイデン政権はキエフの国産兵器の使用さえも細かく管理し、ロシアの石油精製所へのドローン攻撃を中止するようウクライナに圧力をかけた。ウクライナはこれに従い、爆発力は大きいものの戦略的な影響は小さい燃料貯蔵庫への攻撃に切り替えたようだ。トランプ政権下では、この制限は撤廃され、ウクライナはロシアの製油所に対して非常に効果的なドローン作戦を開始した。その結果、ロシアの大部分が燃料不足に直面している。この作戦の成功は、石油インフラへの攻撃が、バイデン政権が想定していたようなレッドラインではなかったことを証明している。

バイデン政権の制限は軍事的にはほとんど意味をなさず、むしろ著しい不均衡を生み出した。ロシアのミサイルとドローンがウクライナの都市で電力、暖房、水道の供給を停止させた際、ウクライナには同様の対応を行う能力がほとんどなかった。ロシアの攻撃は今日まで衰えることなく続いており、民間人が殺害され、数千ものウクライナの学校、教会、病院、アパート、オフィスが壊滅した。これらの攻撃の一方的な姿勢は、バイデン政権の制限が今もなお及ぼしている影響を如実に示している。

バイデン政権の慎重なアプローチは、アメリカにも政治的な遺産を渡すことになった。武器の漸進的な供給と厳しい使用制限によってウクライナで生じた膠着状態は、新たな「永遠の戦争(forever war)」の恐怖を生み、トランプに近い共和党員からの反対を強め、2024年の選挙戦においてトランプを有利に導いた可能性が高い。

MAGA保守派の間でウクライナへのアメリカからの支援を縮小すべきだという機運が高まっていることを念頭に、共和党の連邦下院議員マイケル・マコール、マイク・ロジャース、マイク・ターナーは2024年1月に詳細な報告書を発表し、武器制限の解除を求め、バイデン政権は戦争終結を確実にする計画を策定していないと警告した。議員たちは「戦争の初日以来、バイデン大統領がウクライナへの重要兵器の提供をためらい、それがウクライナの勝利を遅らせてきた」と非難した。さらに彼らは、ウクライナの勝利への道筋は「(1)必要かつ迅速なウクライナへの重要兵器の提供、(2)プーティン政権への制裁の強化、(3)凍結されたロシアの国家資産(3000億ドル)のウクライナへの移管」が必要だと主張した。

トランプも2025年8月にトゥルーソーシャルに「バイデンはウクライナに反撃をさせず、防衛だけをさせた。その結果は一体どうなったんだ?」と投稿し、この批判を繰り返した。しかし、バイデン政権下でウクライナの戦闘行為に対して課された制約の大部分は、トランプ政権下でも依然として有効である。実際、ウォール・ストリート・ジャーナルが2025年8月23日に報じたように、トランプ政権はウクライナによるロシア国内への長距離対空ミサイル(ATACMS)発射をひそかに阻止した。すべての兵器輸送の費用をヨーロッパまたはウクライナが全額負担することを義務付けるアメリカの新たな政策下でも、これらの購入のほとんどは、種類、数量、使用方法において依然として厳しく制限されている。

バイデン政権が恣意的なレッドラインを課さず、クレムリンによる核恐怖の煽動に操られることもなければ、マリウポリは陥落しなかったかもしれない。ウクライナは2022年の反攻作戦の勢いを確実に維持し、ロシア軍が陣地を固める前にさらに多くの領土を解放できただろう。ウクライナはヘルソンで撤退するロシア軍とその装備に屈辱的な敗北を味合わせることができただろう。ウクライナ市民に毎夜死をもたらすロシアの爆撃機と空軍基地を破壊できたはずだ。ロシアの戦争マシーンにとって最重要の資金源である石油・ガス産業は麻痺状態に陥っていた。そしてクレムリンはとっくの昔に交渉の席に着き、勝ち目のない戦争からの脱却を迫られていたかもしれない。

その代わりに、バイデンが形作ったウクライナ戦争はトランプ政権下でも継続している。トランプが戦闘終結に向けた精力的な試みで一定の功績を認められる一方で、特使スティーヴ・ウィトコフの拙劣な取り組みが示すように、成功の見込みは薄い。永続的な平和を実現するには、プーティンを交渉のテーブルにつかせる必要がある。そのためには、トランプはまずウクライナが自力で効果的に戦えるよう支援し、バイデンの戦争(Biden’s War)を終わらせる必要がある。ヨーロッパの資金援助(凍結されたロシア資産の活用を含む)、アメリカと同盟諸国の武器の制限なき使用(モスクワやサンクトペテルブルクの標的攻撃能力を含む)、強力な二次制裁を伴うこうした戦争こそが、紛争終結への最短ルートである。

※エイドリアン・カラトニツキー:大西洋評議会上級研究員、ミュルミドン・グループ創設者。著書に『戦場としてのウクライナ:独立からロシアとの戦争へ(Battleground Ukraine: From Independence to the War with Russia)』がある。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領はグリーンランド領有に関して、反対したヨーロッパ諸国への関税措置を撤廃し、買収交渉を行うという姿勢の転換を行った。「俺たち(アメリカ)が第二次世界大戦で助けてやらなかったら今頃お前たちはドイツを話していたんだぞ、そして、片言の日本語も話していただろう」ということをスイスで開かれているダヴォス会議で発言し、ヨーロッパ諸国の国民の不興を買っている。トランプにすればそんなことはお構いなしだ。「アメリカ・ファースト」で突き進むだけだ。グリーンランドのレアメタルと、中露両国が開発し、アジア諸国にとって便利な北極海航路に対する嫌がらせ(と通行料の徴収ができれば最高)でアメリカ国民に利益をもたらす、お金を配ることが最重要の目的だ。
arcticnavigationlanegreenlandmap001

 この伝で行けば、パナマ運河もアメリカに戻せということになる。グリーンランドとパナマ運河を押さえることで、世界の物流を押さえることができる。それがトランプと側近たちの狙いだろう。しかし、それは中露両国も黙ってはいないだろう。

 トランプの交渉術は相手にショックを与えて、思考力を奪っておいて、それで交渉を行うというものだ。とんでもないことを言ったり、行ったりして、相手がひるんでいる隙に、自分の要求を通すということだ。交渉という点では、トランプは世界でも指折りの才能と経験を持っている。日本の政界で太刀打ちできる人はいないだろう。経済界ではいるかもしれないが。

 しかし、このようなトランプの交渉術は既に見切られている。トランプが強く出る場合に、相手も強く出て、トランプをひるませることができれば、トランプは引く。実際に、高関税政策に対して、中国は強く出てトランプを引かせている。今回のグリーンランドに関することでも、ヨーロッパ諸国がアメリカ国債の売却をちらつかせることで、トランプは引いた。世界の先進諸国はアメリカ国債を「安全資産」と保有してきたが、その売却という、一種の自爆的な方法を取るぞと脅すことで、トランプを引かせるという方法を採用している。

 トランプの「アメリカ・ファースト」外交は、アメリカの衰退を促進する。そして、世界は、世界覇権国アメリカの衰退に対応するために、この時期を過ごすことになる。

(貼り付けはじめ)

トランプは外交をどのようにやるかを全く分かっていない(Trump Has No Idea How to Do Diplomacy)

-たとえ部分的に正しいとしても、彼は間違っている。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年8月19日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/08/19/trump-diplomacy-putin-ukraine-europe/

アラスカで行われたウラジーミル・プーティン大統領とのあの奇妙な首脳会談と、ワシントンで行われたNATO首脳会議の組み合わせは、ドナルド・トランプ米大統領がひどい交渉者であり、「譲歩の術(art of the giveaway)」の達人であることを改めて思い知らせる出来事だった。トランプは準備を怠り、部下に事前に根回しをする(lay the groundwork beforehand)、会議に臨むたびに自分が何を望んでいるのか、どこまで譲歩(red line)すべきかさえ分からずにいる。戦略もなければ細部にも関心がなく、行き当たりばったりで臨む。

最初の任期中、北朝鮮の金正恩委員長との的外れなリアリティ番組のような会合に時間を浪費したことで分かったように、トランプが本当に求めているのは注目と、自分が主導権を握っていることを示唆するドラマチックなヴィジュアルだけだ。彼が締結するであろう合意の中身は、無関係とまでは言わないまでも、二次的なものに過ぎない。だからこそ、最近発表された貿易協定の中には、彼が主張するほどアメリカにとって有利ではないものもあるのだ。

トランプの突飛な外交失策に人々が注目するのは、彼が世界最強の国の大統領であり、カルト的な共和党の卑怯な議員たちが彼の気まぐれに付き従い続けているからに他ならない。しかし、トランプ、マルコ・ルビオ国務長官、そして外交の素人スティーヴ・ウィトコフのような軽薄な人物が、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領やセルゲイ・ラブロフ外相といった人物と対峙すれば、後者がアメリカから巧みに利益を得ることは目に見えている。自問自答してみて欲しい。トランプがアラスカでプーティンと会談した際、アメリカ、同盟国、あるいはウクライナのために何か得たものはあっただろうか? プーティンは何かを譲歩しただろうか? さらに言えば、ウクライナを見捨てないよう説得するために現れたヨーロッパ各国の首脳からトランプはどのような譲歩(concessions)を得たのだろうか?

強力な敵対国との交渉を成功させるには、双方の利益、力、そして決意を冷徹かつ容赦なく現実的に評価する必要がある。プーティンのような指導者を、単に好意を抱いているから、あるいは滑走路にレッドカーペットを敷いたからといって、魅了して譲歩させることは不可能だ。希望的観測にふけったり、誰も真剣に受け止めないような脅しや約束をしたりしても、何の成果も得られない。

この最後の問題は、10年以上にわたり西側のロシア・ウクライナ政策を悩ませてきた。大半の西側諸国の政治家や評論家たちは未だ認めたがらないが、問題の根本原因はロシアと西側諸国の動機付けにおける根本的な非対称性(a fundamental asymmetry)にある。これは双方の脅威認識(perceptions of threat)と致命的な国益の定義(definitions of vital interests)の相違から生じる非対称性だ。(記録のために付記すれば、この認識の隔たりこそが、2014年に私たちのうちの何人かがこの道を進むことに警鐘を鳴らした理由である)。プーティンが自らの行動に数多くの理由を抱えていたとしても、最も重要なのは、ウクライナのNATO加盟がロシアにとって存亡の危機(an existential threat to Russia)をもたらすという恐怖、ロシアの政治スペクトル全体に広く共有されていた恐怖であった。

この問題において西側の立場を最も損なったのは、外交政策エリートたちが「無制限なNATO拡大(open-ended NATO enlargement)」、特に2008年のウクライナとジョージアへの将来加盟申請準備招待が戦略的失策(a strategic blunder)であった事実を、現実逃避的に認めてこなかったことだ。これがプーティンが和平合意で対処すべきと主張する「根本原因(root causes)」の中で最も重要であり、西側諸国の拡大推進の使徒たち(the Western apostles of expansion)が最も激しく否定、無視しようとしてきた点だ。これらはいずれもプーティンの違法な予防戦争(Putin’s illegal preventive war)を正当化するものではないが、そもそも紛争が起きた原因を誰も認めず対処しなければ、深刻な対立を終結させるのは困難である。

非愉快な現実は、モスクワは自国の経済を戦時体制に置き、数十万人の命を犠牲にすることを厭わなかったのに対し、ウクライナを支援する西側諸国はそうしておらず、今後もそうするつもりはないということだ。ウクライナ人は祖国を守るために計り知れないほどの英雄的な犠牲を払ってきたし、西側諸国はキエフに多額の資金、武器、情報、訓練、外交支援を提供してきた。しかし、ヨーロッパや北アメリカの他の国々が、自国の軍隊をキエフに派遣してそこで戦死するなどということについては、最初から明らかだった。(繰り返すが、西側諸国の指導者たちが2008年、あるいは2014年以降にこの点をもっと慎重に検討していればよかったのにと思う。)NATOが自ら参戦すべきだったと考える人々もおり、私は彼らの一貫した姿勢を尊敬しているが、彼らが関係する国民や指導者を説得することは全くできなかった。

その結果、ロシアは戦場で優位に立っており、ウクライナの失策(例えば2023年夏の不運な反撃など)もその一因となっている。ウクライナが失った領土(クリミアを含む)を全て奪還し、NATOとヨーロッパ連合に加盟することが唯一の受け入れ可能な結果だと依然として主張する人たちにはこの目標を具体的にどのように達成するつもりなのか説明を求めるべきだ。この奇跡をどのように実現するのか、首尾一貫した説得力のある戦略を提示するまでは、交渉のテーブルに彼らを招き入れるなど全く馬鹿げている。

したがって、トランプが先日のアラスカ首脳会談でプーティン大統領の側に立ったのは正しかったのだろうか? そして、トランプの姿勢を固めようとワシントンを訪れたヨーロッパ諸国の首脳たちの甘言や嘆願(blandishments and pleas)に抵抗すべきだったのだろうか? 答えはノーだ。

ここではより大きな利害関係が絡んでおり、アメリカとヨーロッパの交渉戦略はこれらに焦点を当てるべきである。プーティン大統領の要求の一部は将来の和平協定で受け入れざるを得ないとしても、NATO加盟国の一部からの軍撤退や、ウクライナの「非ナチ化(de-Nazified)」と部分的な武装解除といった要求は即座に拒否されるべきだ。ロシアが、将来ウクライナに駐留するかもしれないと懸念する外部勢力から自国を守る必要があると主張するならば、ウクライナはロシアによる新たな攻撃から守られ、自国を防衛する手段を与えられるべきである。

後者の懸念は、ウクライナや他の欧州諸国が、NATO第5条のような、正式な加盟国ではないものの何らかの安全保障保証に関心を持つ理由である。しかし、この考えには少なくとも2つの明白な反対意見がある。第一に、第5条は完全な安全保障の誓約ではなく、攻撃を受けた加盟国を支援するために同盟軍の派遣を自動的に引き起こすような仕掛けでは決してない。第5条は、加盟国の1つへの攻撃は加盟国全体への攻撃とみなされ、各加盟国は個別および集団的に「必要と考える行動(such action as it deems necessary)」をとると述べているだけだ。第二に、そして同様に重要な点として、トランプは生涯にわたって約束を破り、予告なしに方針を転換してきた経歴を持つ。それを考えると、分別のある国が彼の約束や誓約をなぜ信じるだろうか? たとえウクライナに対する何らかの安全保障の誓約について最終的に合意に達したとしても、誰がそれを真剣に受け止めるだろうか?

プーティン大統領とゼレンスキー大統領の直接会談の実現も検討されており、おそらくアメリカが仲介役を務めることになるだろう。これは、これまでそのような要請に抵抗してきたプーティン大統領にとって象徴的な譲歩となるだろう。しかし、戦場の現状やウクライナの長期的な展望に大きな変化がない限り、そのような会談が永続的な平和をもたらすとは到底思えない。繰り返しになるが、個人的な会談というドラマに惑わされないことが重要だ。メディアは騒ぎ立てるが、(トランプとウィトコフが関与している場合)成果はほとんどない。

一体何が期待できるというのだろうか? 戦闘の進展状況、そしてロシアがこの問題をウクライナ以外の国よりも重視しているという事実を考えると、モスクワは望んでいたことの一部を得ることになるだろう。しかし、ロシアがすでに支払ってきた莫大なコストと、ウクライナが今後も外部からの寛大な支援を受け続けることでさらに大きな損失が生じる可能性を考えると、西側諸国の利益にならないものをロシアに提供することを拒否することは可能であるはずだ。

トランプ大統領のオンオフの繰り返しや、その他多くの問題でヨーロッパの同盟諸国と争おうとする姿勢とは対照的に、最良の合意を得るための最善の方法は、アメリカがヨーロッパとの統一戦線(a unified front)を維持し、NATOがウクライナに寛大な軍事支援を継続し、ウクライナとアメリカが双方の交渉状況を現実的に評価した上で、ロシアとの真剣かつ綿密な交渉を進めることだ。しかしながら、真剣かつ綿密な交渉を遂行してくれる人物を探しているのであれば、ペンシルベニア通り1600番地は私としてはお勧めしない。

こうした状況を考えると、もし昨年(2024年)11月にカマラ・ハリス米副大統領が大統領に選出されていたらどうなっていただろうかと疑問に思う。ハリスは優れた外交政策戦略家とは言えず、バイデン政権もロシアとウクライナへの対応で幾度となく失策を犯していた。しかし、ワシントン(そして民主党エリート層)では、ウクライナがその目的の全てを達成することは不可能であり(たとえそれが抽象的にどれほど望ましく正当であったとしても)、アメリカ大統領選が終結した暁には戦争を終結させる必要があるという認識が広く共有されていた。ハリスなら、バイデンのティームを他の有能な顧問に交代させ、その成果を追求するよう指示し、困難な状況下でもウクライナが可能な限り最良の合意を得られるよう支援し続けただろうと私は思う。

もちろん、ハリス政権が成功したかどうかは分からない。しかし、信頼できる有能な外交アクターとしてのアメリカの評判をトランプ氏以上に傷つけることはできなかっただろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカに関しては外交政策に注目が集まっている。「ドンロー主義」というモンロー主義と棍棒外交を足して、再植民地化という要素を掛け合わせた、アメリカの新たな外交政策は、各国から脅威と見られている。ドナルド・トランプ大統領が外交に注力しているのは、国内問題から目を逸らさせるためだ。国内には大きな不満が溜まり、不安定な状況になっている。不法移民摘発から火がつきそうな国内での暴力や生活費が下がらないインフレ状況は、トランプ政権を苦しめている。結果として、移民(有色人種)や外国を攻撃することで、不満を逸らさせるという、古典的な方法を採用している。

 MAGA派の中で分裂があったのは、ジェフリー・エプスタイン事件の文書、エプスタインファイルの公開をめぐってのことであった。トランプ大統領は選挙期間中、エプスタインファイル公開を公約に掲げていた。しかし、大統領就任後には、エプスタインファイルは存在しないと述べ、批判者たちを「弱虫」と呼んだ。誰もが、エプスタインファイルにトランプの名前があって、未成年の女性たちとの性的な関係があったのだろう、だからファイルを公開できないのだろうと推測した。トランプ大統領のこれまでの行状から、それくらいは織り込み済みで、それが暴露されたからと言って、支持が大きく減ることはないとも言えた。ここからは私の推測だが、エプスタインファイルにはイギリス王室やイギリス貴族たちの名前があったのだろう。アンドルー元王子に責任を全部負わせているが、更なる重要人物たちの名前があったものと推測される。トランプ大統領が当選してから、二度もイギリスを訪問し、チャールズ国王を先頭に大変な歓迎であったことは、口止めをお願いしてのことだったのではないか。エプスタインファイルは結局公開されたが、のり弁当のように一面真っ黒な文書もあった。「被害女性のプライヴァ氏―を守る」ということにすれば、重要な部分を消して公開することも可能だ。

 アメリカ国内のインフレ(物価高)、生活苦の影響を一番に受けているのはMAGA派、失業している白人労働者たちである。彼らの中から「こんなはずでなかった」とトランプ支持を止める人たちも出てきている。同時に、「トランプの進める世直しはこれからが本番だ」と支持する人たちもいる。こうして、支持基盤に分裂が起きることになる。そして、支持派はどんどん過激になっていく。先鋭化していく。アメリカ社会の分断は続き、アメリカの衰退は進むことになる。

(貼り付けはじめ)

抑制されない過激主義がMAGAを内部から分裂させている(Unchecked extremism is tearing MAGA apart from within)

スヴァンテ・マイリック筆

2025年11月10日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/opinion/campaign/5595297-maga-movement-antisemitism-controversy/

MAGA運動にとって、この1カ月は厳しい月だった。有権者たちがトランプ大統領と同調する候補者を拒否する一方で、MAGAの指導者たちは、運動にどの程度の反ユダヤ主義的偏見(antisemitic bigotry)や過激主義(extremism)を受け入れるべきかを巡って互いに争っていた。これは決して好ましい状況ではない。

論争の中心となったのは、元FOXニューズ司会者のタッカー・カールソンが、ヒトラーとスターリンを崇拝するネット上の有名人ニック・フエンテスに親近感を持って行ったインタヴァューだった。フエンテスは、人種差別、反ユダヤ主義、女性蔑視、白人キリスト教ナショナリズム、暴力の脅し、そしてアメリカ民主政治体制がファシスト独裁政治に取って代わられることへの切望(racism, antisemitism, misogyny, white Christian nationalism, threats of violence and a yearning for American democracy to be replaced with a fascist dictatorship.)を日々発信し、疎外された若い白人男性の間で支持を集めてきた。

フエンテスは右翼系ポッドキャスト番組に出演し、インタヴュアーたちの助けを借りて評判を高め、過激主義を軽視してきた。カールソンはFOXニューズを去って以来、極右の熱狂的な支持基盤にどっぷり浸かってきたため、彼がフエンテスをより幅広い聴衆に届ける手助けをする人物になったことは、それほど驚くべきことではなかった。

驚くべきは、MAGA運動においておそらく最も影響力のある団体であるヘリテージ財団のケヴィン・ロバーツ会長が、保守派がカールソンとフエンテスとの軽率なインタヴューを非難し始めた後、公にカールソンを擁護せざるを得なくなったことだ。

ロバーツは水面下で仲間を擁護しただけではない。彼は、保守運動はカールソンやフエンテスを「キャンセル(cancel)」すべきではないと宣言するヴィデオ映像を録画した。ヘリテージ財団と有料メディア関係にあるカールソンは、シンクタンクの「常に」親しい友人であり続けると明言した。

それだけでも十分に良くないのだが、ロバーツはさらに踏み込み、カールソンを批判する人々を「悪意のある連合(venomous coalition)」で、「グローバリスト階級(globalist class)」の一部だと非難するという、典型的な反ユダヤ主義の比喩を使った。

ロバーツのヴィデオは、ヘリテージ財団内、そしてその支持者や政治的同盟者の間で怒りと混乱を引き起こした。彼が公私ともに謝罪したにもかかわらず、この混乱は続いている。

ロバーツとカールソンは親密だ。ロバーツは昨年の共和党全国大会でヘリテージ財団のイヴェントにカールソンを特別講演者として招待した。カールソンは聴衆に対し、「キリスト教徒を殺す(kill Christians)」ことを望む人々との「精神をめぐる戦い(spiritual war)」に臨んでいると述べた。

カールソンはJ・D・ヴァンス副大統領の大ファンでもあり、トランプにヴァンスを副大統領候補に選ぶよう勧めた。そして、ヴァンスもカールソンをホワイトハウスに招待し、チャーリー・カーク暗殺後に自身が司会を務めた番組「チャーリー・カーク・ショー」に出演させた。カールソンの息子はヴァンスのために働いている。

MAGAの継承者を目論むヴァンスは、運動の一部が求める「右翼に敵なし(no enemies to the right)」の立場を取らざるを得ないだろう。ロバーツは動画の中でこの立場を支持しているように見えた。そのため、ヘリテージ財団のスタッフの中には、保守派の大きな組織がカールソンやフエンテスのような人物を排除できないことを意味するのかと疑問を呈する者もいる。

ヴァンス自身もいかがわしい仲間と交流し、極右の人物たちと付き合っている。その中には民主政治体制に敵対する者もいれば、フエンテスとそれほど変わらない見解を持つ者もいる。

ヴァンスは最近、共和党の若手党幹部グループの間で流出したテレグラムのチャットで明らかになった人種差別的・ナチス的な感情を軽視した。この発言に対する超党派の激しい非難の中、ヴァンスは「子供」や「少年」の間で交わされた冗談を「大袈裟に誇張している(pearl clutching)」と揶揄した。

しかし、彼らは子供ではなかった。ほとんどが24歳から35歳までの大人であり、ヴァンスは人々に彼らを許すよう促していた。トランプ政権が人種差別や陰謀論を助長する高官たちを許してきたのと同じだ。

さらに最近、ヴァンスは「ターニングポイントUSA」のイヴェントで講演した。ある質問者は、アメリカのイスラエル支援について質問した際、「彼らの宗教はアメリカの宗教と一致しないだけでなく、アメリカの宗教の迫害を公然と支持している」と主張した。ヴァンスはこの質問に反論する機会を逃した。

こうした状況において、フエンテスは勝利を収めた。彼はヘリテージ財団が「私とタッカーに同情的な人々にとっての安全な避難所であり、踏切板になりつつある」と主張した。これは、彼の支持者(通称グロイパー[groypers])を共和党に浸透させ、保守的な組織を乗っ取ろうとする彼の試み​​における画期的な出来事だった。

フエンテスは、ヴァンスの最近の行動について言及し、副大統領は共和党の寄付者を喜ばせたいという欲求と、選挙活動中にヴァンスを執拗に追い回すと断言する「グロイパー」たちを疎外させたくないという願望の間で板挟みになっていると自慢げに語った。

これはMAGA運動が自ら招いた事態だ。

トランプは初の大統領選挙キャンペーンを開始して以来、排外主義者、白人至上主義者、そしてキリスト教至上主義者を活気づけてきた。偏見を持つ人々が誇りを持って自己表現できるよう、彼は彼らを勇気づけてきた。ますます不人気となっている自身の運動と政権に彼らを招き入れ、フエンテス、カールソン、ロバーツらが引き起こしたような衝突を避けられないものにしてきた。

一方、民主党候補は全米各地で勝利を収め、強力で包括的な連合を築き、私たち全員のために機能するアメリカというヴィジョンを掲げて若者たちを鼓舞した。そこに私たちの未来がある。共に築こう!

※スヴァンテ・マイリック:「ピープル・フォ・ジ・アメリカン・ウェイ」会長。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック


 古村治彦です。

 今回は、副島隆彦最新刊『金を握りしめた者が勝つ 銀は10倍になる』(祥伝社)をご紹介する。発売日は2026年2月4日だ。
kinwonigirishimetamonogakatsu001
『金を握りしめた者が勝つ』←青い部分をクリックするとアマゾンのページに移動します

 このブログでも何度かご紹介しているように、昨年から金をはじめとする実物資産の価格が上昇している。アメリカと日本とイスラエルの「悪の枢軸」「地政学リスクトリオ」の「活発な動き」のために、ドル離れと実物資産の需要の増加が見られる。ドナルド・トランプ、高市早苗、ベンヤミン・ネタニヤフがやりたいことをやり続けることで、実物資産の価格上昇が続くことが予想される。

 こうした状況下で、『金を握りしめた者が勝つ 銀は10倍になる』の刊行は時宜を得たものとなる。

以下に、まえがき、目次、あとがきを掲載する。是非手に取ってお読みください。

(貼り付けはじめ)

『金を握りしめた者が勝つ 銀は10倍になる』 まえがき 副島隆彦(そえじまたかひこ)

「金(きん)とドルの戦い」において、金が勝利した。

金の値段が、日本だけでなく世界中で暴騰(ぼうとう)した。世界中の人々が金を買うために金ショップに殺到している。この動きは今も続いている。中国、ロシアだけでなく、インドでも、南米のブラジルでも、アラブ中東世界でも、資金のある人は金を買うことに熱中している。欧米白人の資産家たちも同様である。これまでに金(きん)を買っていた人々の勝利である。

金1グラムの最高値段は、2025年(去年)10月21日の史上最高値(さいたかね)で2万3370円(国内の小売[こうり]の値段)まで行った。1グラム=2万円を大きく超えた。この事態に多くの人が驚いた。

 金1キログラムの延(の)べ板(いた)( bar [バー])ならば2000万円もする。小さな家1戸(こ)や鉄筋アパート1室が買える値段である。とんでもないことが起きてしまった。

私、副島隆彦は、ずっと金の価格の上昇を予言して、自分の本に書き続けた。この20年間の自分の金融予言が当たって、私の信用はさらに高まった。この事実を私の本の読者とともに私は喜ぶ。

私が「金とドルの戦い」という考えを思いついて書き始めたのは、2003年である。その証拠は、自分の過去の本にさかのぼって、この本に載(の)せる。そのころ金は1グラム=1200円ぐらいだった。だから、そのときと比べて実に、金は20倍の値上がりをした。

私はそのころ「金(きん)をどれだけ買ったらいいですか」の質問に対して「皆さんの奥さんの体重と同じだけ金を買いなさい」と講演会で話して回っていた。女性の体重は、だいたい50キロ前後である。男である私が成人女性の体重は50キロ前後なのだ、と実感で知るようになったのは最近のことである。男はだいたい70キロから80キロである。ということは、その体重分の金の値段は、当時6000万円であった(1200円×50キロ)。それが今現在、いくらになったと思いますか。

金(きん)1グラム=2万2000円として50キログラムの金は12億円である。驚くべき金額である。あのころ私が講演していた聴衆の企業経営者や資産家たちにとって、6000万円というお金は本当に、たいしたことはなかった。それが今、12億円にもなってしまった。そして今度は金(きん)の、売却時(譲渡益課税)と相続のときの税金の払いのことで、これまた、たいへんなことになっている。新たに大きな問題が出現したのだ。 

私は、3年前に『金融恐慌が始まるので 金(きん)は3倍になる』(2023年12月、祥伝社刊)を書いた。この本で「金は3倍になる」と私がはっきりと予言した。ところが、誰も本気にしてくれなかった。私のすぐ周(まわ)りにいる人たちも理解しなかった。皆、ぼーっとしていた。私が何を言っているのか、誰も分からなかった。ところが現実にまさにまさしく「金は3倍に」なりつつある。あのとき、2023年8月28日に金1グラムが1万円を突破したあとだった。まさしくあの本を書いたとき、 金1グラムは1万円を突破した。あのときから「3年で3倍になる」が、私たちの目の前で実現しようとしている。

このあと金1グラムが快進撃を続け、2万円を突破した(2025年9月29日)。1万円が2万円になるのに2年と1カ月かかっている。このとき、私の書いたことが当たり始めた。私の予言は真実味を帯(お)びた。私の書くことを信じて、この20年間の間に金(きん)を要所、要所で買い続けた人々の大勝利である。買わなかった人たちは……。

去年2025年中に2万3000円台まで行った1グラムの金が、残りの5000円上昇を達成して私の予言の金1グラム3万円を超えれば、私が3年前に予言したとおり、まさしく「3年で3倍になる」という予言は的中である。あと1年で3万円を突破すれば、私が3年前に予言したとおり、「3年で3倍になる」という予言を的中させたことになる。

このようにして、私はすでに金融の予言書として信頼されている。私の書いたことは日本国民から評価されている。

これからの金(きん)の値上がり(あるいは、一時の逆流)予測に関して、この本で細かく書いていく。ジム・リカーズ James Rickards(75歳)というアメリカ人の金融評論家(リスク・アナリスト)が「1オンス=1万ドルになる」と言った。彼の2016年刊(10年前)の本である。ということは、金1グラムは、今の為替(かわせ)1ドル=150円で計算すると、日本円で4万8000円になる。とんでもない金額である。だが私は、ジム・リカーズの、この金1オンス=1万ドルは実現すると思う。なぜならば、人類の歴史は、今や金本位制(きんほんいせい)(ゴールド・スタンダード)の復活に向かって着々と進んでいるからである。

米ドルはもはや金(きん)との戦いにおいて敗れ去った。ドル体制が崩壊して数年後にできる新しい世界通貨体制が始まる。それを支(ささ)えるだけの金が、現在のドルでの全通貨量(金額評価する)の20%はなければいけない。

金(きん)は国際値段(NY(ニユーヨーク)の先物(さきもの)市場)で、1トロイオンス(31・1グラム)=4000ドルを突破した。2025年10月7日から8日にかけてである。そして10月20日の終値(おわりね)で4359ドルの史上最高値をつけた(P7のグラフ)。世界中の金融投資に関わっている人々は、驚き呆(あき)れて言葉を失った。

そしてこの翌日から下落した。10月21日には1オンス=3880ドルまで下落した。その数日後には、ふたたび4000ドルを回復した。直(ちよつ)近(きん)の値段は1オンス=4638ドルである(1月14日)。

年末の金の下落で、金価格のグラフに1回〝踊り場〟ができた。この金のいったんの下落はなぜ起きたか。それはNYのガラの悪いヘッジファンドたち(恐ろしい博奕[ばくち]打ちの金融ユダヤ人たちである)が急遽(きゅうきょ)(初めて、と言ってよい)、金市場に参入して、1オンス=4000ドルの声を聞いて驚いて、「オレたちも乗り遅れるな」(FOMO[フォウモウ] Fear[フィア] of[オブ] Missing[ミツシング] Out[アウト] )で、金(きん)ETF(イーティーエフ)(ペイパー・ゴールド)市場で大量の買いを入れたからだ。おそらく1兆ドル(150兆円)ぐらいの買いである。

しかし、彼らは、どんなものでも短期売買しかしない。だから10日後に4000ドルから300ドル値上がりしたところで一斉(いつせい)に売り払った。これを利益(りえき)確定(かくてい)(利確[りかく])と言う。こういう荒っぽいことをするのがヘッジファンドたちである。だから、世界の金価格に踊り場が生まれた。この動きは今後も続くだろう。金(きん)は、このあとは急には上がらないで、着々と少しずつ上がってゆくと私は予測している。

このNYのガラの悪い投機家たちの他に、世界中で金の4000ドル超え高騰が起きたあとに、「やっぱり今からでも金を買おう」と思って、自分のポートフォリオ(自己資産の割り当て表)で、金(きん)を15%にまで上げた人たちがいる。彼ら個人投資家たち堅実であり着実だ。彼らは新規の金(きん)市場への参入者である。彼らはこのあと金をずっと長く保有(ロングホールド)するつもりである。このように世界中で個人の金買いが続いてゆく。私は、この個人たちが正しい投資行動をとっていると判定する。

だから、このあと、長期での金の上昇がふたたび始まる。目先の目標値は1オンス=5000ドルである。そして1万ドルである。

私が「金を買いなさい」と言って本に書き始めて23年が経(た)った(2003年から)。これまでに私が書いた本を熱心に読んで、内容を信用して、金を買って持ち続けた人々に大きなご褒美(ほうび)が与えられた。

2026年1月

副島隆彦(そえじまたかひこ)

=====

『金を握りしめた者が勝つ 銀は10倍になる』 【目次】

まえがき

第1章 世界は金本位制の復活へ向かう

●金1グラムは10万円になる、と私、副島隆彦は予言する

●アメリカ中心の時代が終わり、世界は新しい秩序に移行する

●なぜ金本位制に戻ってゆくのか

●日本円は米ドルの動きと反対方向に切り上げられ、やがて電子マネーになる

●金価格は、わずか2年で2倍になった

●〝砂金(さきん)採(と)り体験〟が人気に

●私は23年前から「金を買いなさい」と書いてきた

●「金を握りしめる」のは世界的な動きである

第2章 もうすぐ金1グラムは3万円になる

●リーマン・ショックのとき、アメリカは「やってはならないこと」をやった

●米ドルの価値の毀損(きそん)が起きている

●貧困国・アメリカの現実

●私の助言で金を買った人々からの大きな反響

●「写真相場」とは何か

●ゴールドマン・サックスより先に私が「1オンス5000ドル」を予言した

●先物の「裸の空売り」で巨額の損失

第3章 これからは金貨(ゴールド・コイン)を買いなさい

●NY先物市場での金(きん)の動きの全体像

●紙キレの金を売り買いして失敗した

●ペイパー・ゴールドに手を出すな

●イギリス、スイス、ヴァチカンから金地金がアメリカに運び込まれた

●〝天皇家の金〟を持ち出そうとした2人の日本人

●「13兆円の米国債」の正体

●中国とロシア、そして新興大国が金を買う

●「税務署が怖い」と言う人たちへ

●1キロや2キロの金で税金に悩む必要はない

●なぜ私は金貨(ゴールド・コイン)を薦(すす)めるのか

●業者が買い取った金はどこへ行くのか

●年間110万円までなら贈与税はかからない

●金で儲かったなら、そのお金で周りの人を助けなさい

第4章 銀(シルバー)とプラチナも上がってゆく

●相続税とタンス預金をどうするか

●金は現物(げんぶつ)を自分で守るべきだ

●女性銀行員が貸金庫の金(きん)と現金を盗んだ

●急騰の裏側で何が起きているのか

●銀1キロが300万円になる日が来る

●先端企業が「いくらでもいいから買え」と指示

●イーロン・マスクが銀鉱山の株を大量に買った

●46年前の〝シルバー・ショック〟

●インドの中央銀行が銀を融資の担保に認めた

●なぜ幕末の日本から金(小判)が流出したのか

●かつてプラチナは金より高かった

●人造ダイアの量産でダイアモンドの資産価値は失われた

第5章 金に敗れたドル覇権は崩壊する

●もうすぐ超円高=ドル暴落が起きる

●トランプのドル切り下げで1ドル=15円になる

●NYの株とともに日本株も暴落する

●日銀の利上げをアメリカは認めなかった

●日本はインフレではない。デフレだ

●トランプが各国への相互関税をやめた理由

●なぜ国(くに)は国民から消費税を取りたいのか

●国家の借金は毎年毎年、積み上がる

●15京円の借金大国・アメリカの真実

●日本は「対米投資」で80兆円をふんだくられた

●日本人は歯を食いしばって頑張り続ける

●2026年末、アメリカは世界覇権国の地位からすべり落ちる

第6章 日本と米中、世界はこうなる

●軍事政権の特殊な人間、イーロン・マスク

●トランプは軍人たちに支えられている

●黒塗りされたエプスタイン・ファイル

●なぜ江戸幕府はキリシタンを弾圧したのか

●クリントン夫妻も悪魔の儀式に参加した

●〝次の大統領〟J.D.ヴァンスの人物像

●自民党員の中に統一教会員が集団加入

●世界と歴史を大きく見るために

●日本の政治指導者は靖国参拝をしてはならない

●米中は「台湾をどうするか」で話し合っている

●台湾は平和的に中国に統一される

●誰が日本の核保有を許さないのか

●だから安倍晋三は〝処分〟された

あとがき

=====

『金を握りしめた者が勝つ 銀は10倍になる』 あとがき

 この本の書き上げの昨年末(12月おわり)に、NYの銀(ぎん)の先物(フューチャー)市場 COMEX(コメックス) で大変動があった。銀価格は、下落した(1オンス=72ドル。銀貨1枚で1万5000円)どころか、200ドルに向かっている。米と英が支配する先物市場とETF(イーティーエフ)(ペイパー・シルバー、紙キレの銀)が壊れつつある。現物(げんぶつ)(実物)の銀の7割を握っている中国の勝ちだ。第4章で前述した。世界は金(きん)だけでなく、銀(シルバー)も加えた金銀本位制(バイメタリズム bimetallism )に向かっている。

 1月3日に、アメリカ(トランプ政権)による南米ベネズエラ国のマドゥロ大統領の拘束(キャプチュア)、連行が起きた。アメリカは、直接ベネズエラ国にある大量の石油と天然ガスを自分のものにする戦略に出た。鉱物資源(ミネラルズ)も直接、支配する。トランプはもうNY(ニユーヨーク)の金融(紙キレ)経済を信用していない。実物を握るしかない、と。世界は一気に実物(じつぶつ)経済( tangible[タンンジブル] economy(エコノミー) )が中心になった。これは『「実物経済」の復活』(2003年3月、光文社)を出版して日本では私が初めて言い始め(唱導[しょうどう])した理論だ。

 私は昨年10月中(ちゅう)の金の高騰(こうとう)の凄(すご)さを横目で見ながら、ずっと不愉快だった。もう本を書く気力を失った。「俺(おれ)がずっと20年間、書いて(主張し、予言して)きたとおりじゃないか」とブツクサ言いながら、うつ症(しょう)のまま過ごした。12月になって、ようやく「それでも、やっぱり書くか。全国に私の読者が待っている」と元気(げんき)(気の元)を取り戻した。

 本当にもうすぐ世界体制が変わる。この本に、書くべきことはすべて書いた。しっかりと読んでもらえれば分かる。

 この本も長年(25年間も)私につき合ってくれている編集者の岡部康彦氏が苦労して編集してくれた。記して感謝します。

2026年1月

副島隆彦(そえじまたかひこ)

(貼り付け終わり)

(終わり)sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ大統領がカナダやメキシコをアメリカに併合するというような話をしていた時、私たちはいくらなんでも、そんな馬鹿なと考えていた。しかし、ヴェネズエラ攻撃の後、グリーンランド領有の話をするトランプ大統領に対しては恐怖感を持つようになっている。「狂人理論(madman theory)」という考えもあるが、「こいつには常識が通じないから何をしてくるか分からない」と怯えさせて、こちらの意向を飲ませるというやり方もある。しかし、トランプ大統領と側近たちは本気のようだ。彼らはネオコンもやらなかったようなことをやろうとしている。

 2025年、第二次ドナルド・トランプ政権発足1年目は、世界は、トランプをなだめすかしてごまかして時間を稼いで、任期の終わりまで何とか無事に過ごそうと考えていた。お金で済むことならばある程度は仕方がないという感じであった。ヨーロッパ諸国の防衛予算の増額や高関税政策への対応がそうであった。ちなみに、トランプ関税の増加分の負担は、外国の企業が4%、アメリカの消費者が96%だったという研究結果もある。トランプ関税はアメリカの消費者からお金を巻き上げるということになった。インフレ状況であればそれも当然である。

 2026年は世界にとって大きな転換の年である。それまでのアメリカとは大きく異なるアメリカが出現した。自分たちの欲望を前面に出し、大義名分も理屈も装うことなく、自分の利益のためにまい進する超大国が出てきた。アニメ「ドラえもん」のガキ大将であるジャイアンそのものである。そして、自己利益の追及の為なら、自分の評判や将来の利益など考慮することなく、軍事力まで使用する。アメリカは静かに消え去ってくれることはない。ゴジラのように散々暴れまわることだろう。暴れまわるアメリカに対応するために、世界は団結することになるだろう。映画「インディペンデンスデイ」のように、宇宙からの脅威に対して、世界が一致して立ち向かったように。

 世界は、中国という新興大国が呉氏らのように暴れまわると考えていた。しかし、実際には、アメリカがそのようになった。私たちはそのような時代に生きている。日本の行く末についてはよくよく考慮するべき時であろう。

(貼り付けはじめ)

トランプ大統領の空想的な地政学(Trump’s Fantastical Geopolitics)

-ホワイトハウスの攻撃的な姿勢はすでに他国に数の力(strength in numbers)を求めるよう迫っている。

ハワード・W・フレンチ筆

2026年1月13日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/13/trump-china-venezuela-geopolitics/

数年前、台頭する中国が世界大国としての自己イメージをどのように構築しているかを扱った書籍を調査中、突如として露骨な地政学的野心を示すリスクを描いた寓話に出会った。あまりにも衝撃的だったので、長々と引用した。ここでも改めて引用する。

戦略家エドワード・N・ルトワックによるこの一節に込められた比喩表現は、今もなおその力強さを失っていない。しかし、今日特に際立っているのは、それが適用される世界がいかに変化し、指導者たちの役割がいかに徹底的に入れ替わったかということだ。

「極度の肥満体のミスター・チャイナが、混雑したエレヴェーターに乗り込んだ途端、乗客は自己防衛のために反応せざるを得ない。彼が猛烈に太っていき、壁に押し付けられるような状況では、たとえ彼が全く威圧的ではなく、むしろ愛想が良いとしても。確かに、混雑したエレヴェーターには、ミスター・チャイナよりも太っていて、声が大きく、しばしば暴力的なミスター・アメリカが既に乗っていた。しかし、彼が長年同じ乗客だったというだけの理由で、ほとんど全員が何十年にもわたって、彼の騒々しい体格に満足のいく形で慣れ親しんできたのだ…」。

ルトワックのエレヴェーター・シナリオは、不快なボディ・イメージを伴い、10年以上前に発表されたものだ。急速に台頭する中国への不安が高まっていた時期のことだった。当時、世界最大の人口を誇り、四半世紀にわたる驚異的な経済変革の記録を持つ中国は、多くの人々を不安にさせていた。もちろん、これにはアメリカを筆頭とする西側諸国も含まれていた。彼らは長年、自国の圧倒的な富と、それが支える広範な力と影響力に慣れきっていた。当時、彼らは中国がひたひたと迫りくるのをバックミラー越しに不安げに見守るしかなくなっていた。

ルトワックが当時述べたように、中国は依然として親しみやすさを備えていたかもしれないが、「全く脅威ではない​​(entirely unthreatening)」とは程遠い存在だった。ルトワックが描写したように、既に満員のエレヴェーターに特大の乗客が乗ったような感覚は、日本や東南アジアの海洋国家といった中国の近隣諸国にとって、時に息苦しささえ感じさせた。中国が新たな外洋海軍(a new blue-water navy)に投資し、周辺地域のほぼ全域における超法規的な領有権主張を強めるためにそれを利用し始めたことで、彼らは公然と脅迫されていると感じていたのだ。

当時から最も大きく変わった点が2つある。1つは、いわゆるエレヴェーターの乗客のほとんどが、中国の重圧に慣れてきたことだ。もう1つは、驚異的な経済成長がやや鈍化し、そしてさらに重要なのは、衝撃的な現実としてではなく、より現実的な視点で見られるようになったことだ。また別の1つの点は、もちろん、ドナルド・トランプ大統領率いるアメリカ合衆国の驚くべき振る舞いである。

2017年に自著『天下の万物:過去が中国のグローバルパワー獲得をどう形作るのか』を執筆した際、アメリカに対し冷静さを保つよう助言するのは当然のことのように思えた。アメリカにとって最善の道は、自国の秩序を維持することだと私は助言した。それは、科学と教育における卓越した強みに継続的に投資しながら、世界に対して比較的開かれた姿勢を維持することを意味する。ワシントンは、中国の新たな力に過剰反応し、より攻撃的な行動をとったり、軍事力を過度に重視したりするといった過ちを犯すべきではない。むしろ、同盟関係を強化し、国際法を強化すべきである、というものだ。

こうしたことが、世界におけるアメリカの魅力を再び高め、中国に対しては、非常に有利な条件で競争ができるということになる。これには、ソフトパワー(soft power)、民主政治体制(democracy)、法の支配(the rule of law)、そして世界のどこの国から来たとしても才能と勤勉さを持つ人々を喜んで受け入れることが含まれる。中国はこれらの最近のいくつかの項目ではほとんど何もしていないが、外交的には控えめにしながらも将来の競争力の頭金として教育システムを強化し、自国の強みに継続的に再投資してきた。

2期にわたる断続的な大統領としての任期中、トランプは事実上、あらゆる面で正反対のことをしてきた。しかし、私にとって、ルトワックの色彩豊かな寓話がここ数週間でようやく強く蘇ってきた。

ナイジェリア、シリア、ヴェネズエラといった地理的に遠く離れた国々での過剰な攻撃行動(ヴェネズエラでは、トランプはニコラス・マドゥロの拉致を命じた後、自らを「大統領代行(acting president)」と宣言した)や、イランなどの国々へのさらなる攻撃の脅威など、今やアメリカは多くの国々をエレヴェーターの壁に押し付けている。ルトワックの比喩によれば、中国は主に経済成長によって拡大してきた。二期目のトランプ政権下では、ワシントンは全く異なる方法で拡大を模索し始めた。それは、世界で富と力(wealth and power)を競い合う国家の最初の本能が領土拡大であった帝国時代(the imperial age)を彷彿とさせるものだった。こうした結果、エレヴェーターの寓話が書かれた時代にはほとんど想像もできなかった事態が生じた。今日では、世界の現状維持勢力として登場するのは、アメリカよりも中国であることが多い。

その最も顕著な例は、トランプが最近グリーンランド領有権を主張し始めたことだろう。これは、アメリカのイメージをならず者国家(a rogue nation)へと作り変えかねない。簡単であろうが難しかろうが、何とかして領有権を獲得すると誓う彼の言葉は、伝統的な外交というより、ハリウッドのギャングの台詞を彷彿とさせる。そして、これは最終的にワシントンとヨーロッパの関係を崩壊させ、ますます警戒を強める同盟関係を、より状況に応じた、そして潜在的に距離を置くものへと変貌させる恐れがある。

トランプがロシアのウラジーミル・プーティン大統領を好意的に見ているように見えること、そしてそれに伴い、包囲されているウクライナへの曖昧な支持を表明していることからも分かるように、これが彼の当初からの目標だったのかもしれない。このアメリカ大統領は、体系的な思考力や長期的なヴィジョンを持つ人物として、私には決して印象に残っていないが、論理的に結論づければ、ルトワックのシナリオは、急速に変化する世界で何が起こるかについて多くのことを示唆してくれる。そして、こうした変化の一部は、実際に既に始まっている。

既に満員のエレヴェーターの中で、ある乗客が攻撃的な態度を取り始め、鋭い肘を突きつけ、顔に向かって咳き込み、常識を完全に無視した行動をとった場合、他の乗客はいずれ反撃せざるを得なくなる。トランプが国際法など関係なく、自らの「道徳観(morality)」にのみ縛られると宣言した後、世界はまさにこの現実に気づき始めている。特に初期段階では、反撃は様々な形を取り、必ずしも攻撃的な行動を真似る必要はない。この巨大な存在に単独で立ち向かう勇気を持つ者はほとんどいないだろう。しかし、国際関係の用語で言えば、彼らは数の力(strength in numbers)を求め、不満を抱えた近隣諸国や、場合によっては直接の仲間ではない同情的な乗客と連携を組む。

これが、ヨーロッパが最近、長らく遅ればせながら南アメリカとの貿易協定を締結したことの、少なくとも部分的には意味するところだ。この論理は「ヘッジング(hedging)」と呼ばれている。これは、長年のパートナーシップが疑問視されたときに各国が行うことであり、誇大妄想に屈しているように見えるトランプ大統領への反応として、世界中でこのような行動がますます増えることが予想される。

もう1つ、より分かりにくく、かつ意外な例として、トランプが熱心に働きかけてきた石油大国サウジアラビアが、空軍向けに中国製戦闘機の購入交渉を進め、核兵器保有国のパキスタンと戦略的相互防衛協定を締結したというニューズが挙げられる。現大統領トランプの下、ワシントンはサウジアラビアに対し、アメリカの最新鋭戦闘機を含め、事実上あらゆる兵器を売却する用意を示してきた。問題は、トランプの気まぐれで攻撃的な言動が、他の国々と同様にサウジアラビアを不安にさせていることだ。

ラテンアメリカは、富、技術革新、技術、製造力、人口、そして考え得るほぼ全ての重要な競争指標において、NATO、日本、韓国といったアメリカの伝統的な緊密な同盟諸国と比べて見劣りする。これは、アメリカが長らく後回しにしてきたラテンアメリカへの再投資に反論するものではない。しかし、トランプ政権下のアメリカが地政学的な拠点を自国中心の半球に据えることで、より豊かで強力な国になるという考えは全くの愚策である。

しかし、さらなる問題が生じる。ヴェネズエラで行ったように、そしてコロンビア、メキシコ、キューバで脅威を与えているように、ラテンアメリカで影響力を行使することで、アメリカは自国の裏庭(backyard)にも、アメリカに対するさらなるバランシング(balancing)をもたらすことになる。それは時間の問題だ。

※ハワード・フレンチ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。コロンビア大学ジャーナリズム大学院教授。長年海外特派員を務めた。最新作に『第二の解放:エンクルマ、汎アフリカ主義、そして最高潮の世界的な黒人性(The Second Emancipation: Nkrumah, Pan-Africanism, and Global Blackness at High Tide)』がある。Blueskyアカウント:@hofrench.bsky.social、Xアカウント:@hofrench

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2026年2月24日で、ウクライナ戦争は満4年、5年目に進む。アメリカの仲介による停戦の動きは進んでいない。ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領は共に、アメリカ側から提案される条件に同意していない。プーティン大統領は慌てて停戦をする必要がない状況であり、できるだけ良い条件を引き出すための「熟柿(じゅくし)作戦(Waiting for the right moment)」を展開している。柿が熟れて自然と落ちてくるまで待つということになる。

 ゼレンスキー大統領は追い込まれている。西側諸国からの支援を受けて、戦線を維持しているが、支援もいつまで続けてもらえるか分からない。既に国土の6分の1を失い、多くの死傷者を出している。ウクライナ政府の非効率性や腐敗も、世界中からの注目もあって、白日の下に晒されている。このような状況であったなら、ウクライナ軍が敢闘し、ロシア軍の進行を阻止し、ロシア軍が慌てていた戦争の初期段階で、停戦交渉を行った方が良かったということになる。その後も大反攻(great counter-attack)を企図したが、それも失敗した。支援したアメリカ軍やイギリス軍の将官たちから、「そんなものが成功するはずがない」と批判されていながら、反攻作戦を強行し、失敗した。ロシア軍は守りを固めつつ、ウクライナを攻撃している。戦線は膠着している。ゼレンスキーは八方塞がりになっている。
ukurainewarsituation20260119map001

 ウクライナ軍はドローン戦闘機を使っての攻撃も行っているようだが、その効果も限定的である。そのようなゲリラ戦に毛が生えたような攻撃で、ロシア軍を押し戻すということは不可能である。既に勝負は決している。これ以上は徒に犠牲を増やすだけである。狂信的なナショナリズムや精神力で戦争を維持することが得策とは言えない。はっきり書けば、ウクライナ以外の国々は「早く停戦交渉のテーブルに着いて、少しでも良い条件の停戦を勝ち取る方が良いのに」と考えている。ウクライナ国民にとっては残念なことだと思う。しかし、国際政治は残酷な面を持つのもまた事実だ。平和を回復して、今度こそ、公明正大な政府を構成し、その恵まれた肥沃な大地から立ち上がって欲しい。

 そして、私たちは、ウクライナの状況をしっかり観察し教訓を得て、日本がそのような状況に陥らないように動くことが肝要だ。しかし、私は、日本国民全体がそこまでの賢さと能力を持っているかという点について、残念なことであるが悲観的になっている。

(貼り付けはじめ)

ウクライナのドローン攻撃は問題にはならない(Ukraine’s Drone Attack Doesn’t Matter)

-残念なことだがこの派手な作戦は根本的な現実を変えるものではない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年6月9日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/09/ukraine-war-drone-attack-spiderweb-russia-air-bases/

ウクライナによるロシア奥地の空軍基地への劇的で衝撃的な無人機攻撃「蜘蛛の巣作戦(オペレイション・スパイダーズ・ウェブ、Operation Spider’s Web)」は、2022年にロシアが違法な侵攻を開始して以来、この戦争を特徴づけてきたいくつかのテーマを浮き彫りにしている。これはウクライナの回復力(resilience)、創造性、そして大胆さ(audacity)を示す好例であり、これらはモスクワを幾度となく驚かせてきた資質である。また、この作戦はロシアの国家安全保障・情報機関の無能さ(incompetence)と油断(complacency)を暴露した。彼らは、ウクライナが100機以上の殺傷能力を持つ無人機と遠隔操作装置をロシア領土の奥深く、戦略爆撃機が配備されている空軍基地の近くに密輸しようとした試みを予測も検知もできなかった。ロシアの戦場での戦闘能力は戦争初期から向上しているが、国家安全保障体制は依然として脆弱である。

しかしながら、「蜘蛛の巣(スパイダーズ・ウェブ)」の報を受けて多くの観測者が感じた当然の満足感は、ロシアの侵攻に対する効果的な対応策を練る努力を損なってきたいくつかの誤りをも反映している。優れた戦術的革新(tactical innovations)も、戦力や決意の非対称性(asymmetries in forces or resolve)、そして効果的な全体戦略の欠如(the absence of an effective overall strategy)を補うことはできない。開戦から3年が経過した現在も、キエフとその支援者たちは、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領の戦争目的を阻止し、戦闘終結を説得するための説得力のある計画を依然として欠いている。プーティン大統領の決意は今回の事件によって揺るぎないように見え、ドナルド・トランプ米大統領に対し、ロシアは報復する決意であると明言したことは、まさにその言葉通りだった。

さらに重要なのは、ウクライナの攻撃の戦術的独創性に目を奪われて、その戦略的重要性の無さに目をつぶるべきではないということだ。ドローン攻撃は斬新であり、戦争のあり方、そして今後のあり方を既に変えているが、結局のところ、それは航空戦力のもう一つの形態に過ぎない。たとえ非常に効果的な空爆であっても、それだけで戦争に勝利することはほぼない。しかし、航空戦力(ドローンを含む)は地上部隊の作戦において重要な役割を果たす可能性がある。

戦略的な観点から、これらの問題を最もよく研​​究をした、ロバート・ペイプは、1991年に著した『勝利のための爆撃:戦争における航空戦力と強制(Bombing to Win: Air Power and Coercion in War)』を出版した。ペイプは、航空戦力は民間人を懲罰したり、敵の戦略資産を危険に晒したり、敵の指導部を失脚させたり、敵の戦争目的を達成するための軍事力を奪ったりするために使用できると主張した。彼の事例は、最初の3つの戦略では敵を降参させることはほとんどなく (たとえば、民間人を爆撃すると、敵が戦争遂行をさらに強く支持するようになる傾向がある)、航空戦力は他の軍事資産と組み合わせて使用​​して敵軍を打ち破り、戦略目標を達成できないことを敵に示す場合に最も効果的であることを示した。

この観点から見ると、最近のウクライナのドローン作戦は、純粋に戦術的な観点からは確かに印象的であったものの、本質的には脇役的であり、本筋ではなかった。この点において、これは、同じく予想外で当初は成功したものの戦況を変えることができず、その後完全に逆転したクルスク近郊へのウクライナの侵攻と類似している。12機以上の戦略爆撃機を破壊したとしても、ロシアがウクライナへの進撃を継続したり、ウクライナの都市に対してミサイルや無人機による追加攻撃を実施したりする能力に、実質的な影響を与えることはないだろう。

確かに、この作戦はウクライナの士気を高め、ウォロディミール・ゼレンスキー大統領の人気を高め、ロシアに将来的な同様の作戦を阻止するための資源投入を迫っていることは間違いない。ロシアの国家安全保障エリートの間で、この戦争の賢明さとプーティン大統領の戦略に対する疑念が高まったのではないかと期待する声もあるが、プーティン大統領の権力基盤が揺ぐ、もしくは、戦争に反対するエリートや国民がプーティン大統領の考えを変えるような兆候は見られない。もしそうなれば素晴らしいが、計画を立てる材料としては薄っぺらなものに過ぎない。

この状況は、ウクライナとその支援諸国を、戦争開始以来直面してきたのと同じ難題に直面させる。すなわち、ウクライナの地政学的立場(Ukraine’s geopolitical alignment)を存亡の問題と見なし、最低限の戦争目的としてウクライナが西側の防壁となることを阻止することを掲げる、数的に優位な敵をどう打ち破るかという課題である。ウクライナ国民は祖国防衛のために並外れた犠牲を払ってきたが、戦略的パートナー(ジョー・バイデン前米大統領を含む)のいずれも自分たちの軍隊や領土を危険に晒す意思を示していない。この非対称性を踏まえ、キエフと西側諸国は代わりに、ウクライナの不屈の精神(Ukrainian grit)、西側の財政・物資支援、そしてロシアに対する厳しい経済制裁(economic sanctions)の組み合わせが、最終的にモスクワに方針転換を促すことを期待してきた。

それはまだ起こっていない。現時点では、そうなる可能性はますます低くなっているように思える。2022年秋のウクライナの攻勢は戦況を覆すことはできず、その後の2023年夏の反攻(ウクライナを支援・支援する西側諸国によって装備・訓練された新設旅団が投入された)は、多大な犠牲を伴う大失敗に終わった。前述の通り、クルスクへの侵攻は当初成功したものの、戦争の軌道を変えることも、キエフに有効な交渉材料を提供することもなかった。ロシア軍は多大な犠牲を払いながらも、ゆっくりと前進を続けている。戦場の情勢が概ねプーティン大統領に有利に進んでいる現状では、トランプでさえプーティン大統領には戦争を終わらせる動機がほとんどないことに気づき始めているようだ。

戦争終結への希望は、相互に受け入れられる解決策を見出すことを特に困難にする政治勢力との闘いにも直面しなければならない。キエフとモスクワは戦争以前、ほとんど互いを信頼していなかったが、今や全く信頼していない。プーティン大統領は、開戦前からロシア国境付近におけるNATOの存在を致命的な危険と見なしていた。フィンランドとスウェーデンの参加、そしてNATOによるウクライナへの支援は、プーティンの懸念を間違いなく高めた。同時に、ロシアの行動は近隣諸国にロシアの将来の意図に対する懸念を一層深めさせ、ロシアへの譲歩を躊躇させている。ロシアと西側諸国間の安全保障のディレンマ(security dilemma)は、開戦前よりも今の方が深刻化しており、安定的で相互に受け入れられる解決策の策定はより困難になるだろう。そして、お馴染みのサンクコスト(sunk cost)の誤謬を忘れてはならない。あるロシア兵が最近『ニューヨーク・タイムズ』紙に次のように語った。「私たちは皆疲れ果てており、家に帰りたい。だが、将来、それらの地域のために苦労しなくて済むように、全ての地域を奪取したい。そうでなければ、兵士たちは皆、無駄死ということになるではないか?(have all the guys died in vain?)」。こうした感情はウクライナにも間違いなく存在している。

戦争のこの時点で、正しい答えがあると過信すべきではなく、完璧な結果を得ることは過剰な期待ということになる。しかし、新たな兵器や戦術、あるいは「蜘蛛の巣(スパイダーズ・ウェブ)」のような大胆だが本質的に限界のある作戦に期待を託すのは、単なる希望的観測に過ぎない。むしろ、ウクライナにロシアに不釣り合いな損害を与える能力を与え続けること、そしてモスクワを抑止し安心させる中央ヨーロッパの将来の安全保障体制を真剣に構想し交渉することこそが、戦争を終結させ、ウクライナの残存部分を保全する唯一の方法だ。これは宥和政策(appeasement)ではない。ロシアの現状打破(undermining the status quo)への関心を低下させ、その試みが失敗に終わることを確信させるような安全保障体制の交渉に前向きであることを意味する。

残念ながら、特にトランプ政権のこの問題への不安定な対応と、多くのヨーロッパ諸国に対する根底にある敵意を考えると、西側諸国の指導者たちがこの方針を追求するのに十分な団結力、決意、そして想像力を持っているとは到底言えない。結局、ウクライナの運命を決めるのはこうした政治的要因であり、戦術的には素晴らしいが戦略的には無関係な英雄的防衛軍の努力ではない。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、 Xアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 昨年は金、銀、プラチナという実物資産の価格が上昇した。年初にこの動きは収まるかと思われていたが、ドナルド・トランプ大統領によるウクライナ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領夫妻の拘束連行によって、「地政学リスク(geopolitical risks)」が高まったことで、実物資産への投資が続くことになり、価格が上昇している。田中貴金属のウェブサイトには毎日の値動きが表示され、グラフもある。これを見れば、地政学リスクの動きに連動していることが分かる。
goldprices2025120120260119graph001
2025年12月1日から2026年1月19日までの金価格の推移
silverprices2025120120260119graph001
2025年12月1日から2026年1月19日までの銀価格の推移
platinumprices2025120120260119graph001
2025年12月1日から2026年1月19日までのプラチナ価格の推移

地政学リスクとは、「ある特定の地域が抱える政治的・軍事的な緊張の高まりが、地理的な位置関係により、その特定地域の経済、もしくは世界経済全体の先行きを不透明にするリスク」と定義されている。ドナルド・トランプ大統領の動きはまさに地政学リスクそのものとなっている。また、日本の高市早苗首相のこれまでの動きも地政学リスクとなっている。私は、トランプと高市の日米両国の首脳を「地政学リスクのTTコンビ」と呼んでいる。日米で地政学リスクを上昇させているのだから、実物資産の価格が上昇する。そして、通貨であるドルや円の価値が毀損される。こうした動きがしばらく続くだろう。

 私の師である副島隆彦先生が2月4日に『金を握りしめた者が勝つ 銀は10倍になる』(祥伝社)を発刊する。まさに時宜を得た、出版となっている。是非、お読みいただき、資産防衛にお役立ていただきたい。
kinwonigirishimetamonogakatsu001

『金を握りしめた者が勝つ』

(貼り付けはじめ)

国内金価格、初の2万6000円台に上昇 FRBへの政治圧力を警戒

グローバルマーケット 日本経済新聞

2026年1月14日 9:57

(2026年1月14日 11:36更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB140UW0U6A110C2000000/

金(ゴールド)価格の国内指標となる地金商最大手の田中貴金属工業が14日午前に公表した小売価格が、初めて1グラム2万6000円を超えた。前日比258円(1%)高い2万6051円を付け、2日連続で最高値を更新した。米インフレの鈍化を示す経済指標の発表を受けて米利下げ継続への観測が強まった。トランプ米政権による米連邦準備理事会(FRB)への政治圧力の激化への警戒と共振し、金を求める動きが広がった。

米労働省が13日に公表した2025年12月の米消費者物価指数(CPI)はエネルギーと食品を除くコア指数が市場予想を下回り、物価上昇の落ち着きを示唆する内容と受け止められた。FRBが利下げを継続するとの見方が金相場を支えた。利下げは金利の付かない金の相対的な投資妙味を高めることにつながる。

国際価格の指標となるロンドン現物価格は13日の取引で前日比40.84ドル(0.9%)高い1トロイオンス4634.33ドルを付け、最高値を更新した。

米政権によるFRBへの政治圧力の強まりも金需要を強めている。トランプ米大統領は市場予想を下回ったCPIの発表後、SNSへの投稿で再び大幅な利下げを要求した。FRBについては本部ビルの改修工事を巡ってパウエル議長が刑事捜査の対象となっているが、トランプ氏は改めてパウエル氏を「無能か不正のどちらかだ」と批判した。

中央銀行の独立性が損なわれて金融市場が混乱することへの懸念が広がるなか、コモディティーなどの取引仲介を担う米StoneXのローナ・オーコネル市場調査責任者は「相場は既に高値圏にあるものの、重要な金への追い風となる」と指摘する。

外国為替市場で進む円安が円建ての金価格を押し上げている面も大きい。国内では高市早苗首相が早期に衆院を解散するとの観測が広がった。財政出動による財政悪化への懸念から対ドルの円相場は1ドル=159円台と1年半ぶりの円安・ドル高水準に下落。円の価値が下がれば、円でみた金の価値は相対的に上昇する。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2026年1月は、第二次ドナルド・トランプ政権の外交・軍事面の「暴れっぷり」が際立つ時期となっている。ヴェネズエラへの攻撃の状況が落ち着いている中で、グリーンランド領有に向けて、デンマークをはじめとするヨーロッパ諸国に圧力をかけている。また、イランでの反政府デモをきっかけとして、イラン政府に対しても圧力をかける姿勢を見せている。外交で大きな成果を上げて、政権発足一周年を祝い、2月24日に連邦議会で実施予定の一般教書演説(the State of the Union Address)で国内外にアピールをしたいというところだろう。そこまでに、ロシア・ウクライナ戦争の停戦ができれば、大金星ということになるが、それは難しいだろう。

 ヴェネズエラ攻撃に目を奪われてしまうが、第二次ドナルド・トランプ政権の外交に注力する動きは昨年からのことであった。そして、これは、国内状況が好転しないことから、国民の目を逸らさせるということも大きな原因であろう。国内のインフレ状況が収まらず、住宅費(家賃)をはじめとする生活費の高騰が続き、一般国民には苦しい状態が続いている。移民・関税執行局(ICE)による不法移民捜査に対する反感がトランプ政権、連邦政府に対する反感へと進み、武力衝突・内戦状態になる可能性がある。トランプ外交に関しては、アメリカ国民からの支持を得ていない。不支持率が上昇している。
donaldtrumppresidentjobapprovalratings202526001
政権発足以来のトランプ政権の支持率の推移(赤線が不支持率)

 ヴェネズエラやグリーンランドをコントロール下に置くことで、トランプ政権としては、金銭的な利益を得ようという目論見もある。ヴェネズエラの石油の売却利益、グリーンランドのレアアース開発と北極海航路に対する通行税の性格を持つ通行料を入手し、それらをアメリカ国民に「分配」することで、国民の不満を和らげたいところだ。アメリカの影響圏(sphere of influence)である西半球(Western Hemisphere)をアメリカとアメリカ国民の利益のために使い尽くす、再植民地化(recolonialization)することが、「アメリカ・ファースト」外交の真骨頂ということになる。短期的にはそれが利益となるだろうが、長期的に見れば、それはアメリカにとっては世界での立場を失うということになり、損失ということになる。衰退して世界から退場するならば、静かに退場して欲しいところだ。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領が2025年末を外交政策で埋める(Trump fills end of 2025 with foreign policy)

ブレット・サミュエルズ筆

2025年12月30日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5665946-trump-foreign-policy-focus/

ドナルド・トランプ大統領は、2期目の1年目が終わりに近づく中、外交政策に没頭している。2026年にはアメリカ経済への懸念が共和党を席巻すると見込まれているにもかかわらず、外交政策に注力している。

トランプ大統領は年末をフロリダ州の邸宅「マール・ア・ラーゴ」で過ごし、ウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相を招待した。トランプ大統領はクリスマスの日にナイジェリアにおけるイスラム国への軍事攻撃を発表し、南アメリカのヴェネズエラとの緊張が高まる中、12月26日にはヴェネズエラの施設を攻撃したことを明らかにした。

こうした一連の出来事は、トランプ大統領が2期目において外交政策に注力し、国外での実績を確固たるものにしようとしていることを如実に示している。しかし、こうした注目は、国内における最大の課題の1つを犠牲にすることになるかもしれない。

匿名を条件に率直に語った共和党系のストラティジストの1人は、トランプ大統領とホワイトハウスは就任以来、財政見通しの改善にどのような対策を講じてきたかを有権者に直接訴える必要があると語った。

このストラィテジストは、「トランプは外交問題に注力している。彼のエネルギーはどこへ行ってしまったのか? 有権者にとってはちょっと変な時期だ。議論をしようとしている人がいない」と語った。

トランプの国際的な関心については、月曜日に大統領がベンヤミン・ネタニヤフ首相と会談した際に完全に明らかになった。

イスラエル首相ネタニヤフが到着すると、トランプは数分間質問に答えたが、そのほとんどが世界的な紛争に関するものだった。

トランプ大統領は、麻薬密輸船を標的としたヴェネズエラの「実施区域(implementation area)」への最近のアメリカ軍による攻撃について言及した。また、イスラエルとハマス間の停戦維持に向けた継続的な取り組みについても議論した。ロシアのウラジーミル・プーティン大統領との「生産的な(productive)」電話会談についても言及し、イスラエルによるイランへの攻撃の可能性についても質問を受けた。

トランプ大統領とネタニヤフ首相の昼食会に記者団が部屋に入ってくると、トランプ大統領が首相に対し、二国間の紛争を終わらせるためにいかにして貿易を利用したかを説明する声が聞こえた。

トランプ大統領は「私がそのことで功績を認められたか? いいや、そんなことはなかった。私は停戦を8つもやった。インドとパキスタンはどうか? つまり、私は8つやった。そして、残りのことは何も教えてくれないんだ」と述べた。

トランプ大統領が月曜日にネタニヤフ首相と会談した翌日、トランプ大統領はゼレンスキー大統領をマール・ア・ラーゴに招き、ウクライナ紛争終結に向けた和平案について重要な協議を行った。トランプ大統領は今月初め、エジプト大統領が新年を迎える前にフロリダにある自身の邸宅を訪問する可能性を示唆していた。

トランプ大統領の年末の会談は、2期目の1年目を象徴するものだ。この1年間、トランプ大統領はイタリア、ヴァティカン、サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦、イギリス、イスラエル、日本、カナダ、韓国、マレーシアを訪問し、和平協定や貿易協定の締結に尽力した。

トランプ大統領は、イスラエルとハマス間の戦闘終結のため、中東における停戦合意の仲介に数ヶ月間にわたって努力した。ウクライナ紛争の終結を目指し、ゼレンスキー大統領やプーティン大統領とは今年を通して複数回電話会談を行い、アラスカではプーティン大統領と直接首脳会談も行った。

トランプ大統領の側近たちは、ノーベル平和賞の受賞を公然と訴えた。一方、ネタニヤフ首相やFIFA会長を含む他の人々は、トランプ大統領の国際的な貢献を称える賞を授与することで、トランプ大統領の支持を得ようとしてきた。

数カ月にわたりトランプ大統領の外交重視を批判し、関係を断ったことで、来週には連邦議員辞職を予定しているジョージア州選出のマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(共和党)は、トランプ大統領の過ごし方に注目している。

「今日はゼレンスキー。明日はネタニヤフ。アメリカらしくやっていけるだろうか?」とグリーン議員は日曜日、ソーシャルプラットフォーム「X」に投稿した。

ホワイトハウス高官たちは、トランプ大統領が外交政策に偏りすぎているという批判に反論している。彼らは、移民取り締まりを強化する大統領令の発令、夏の間に成立した巨額の増税・歳出法案、そして製薬会社との「最恵国待遇(most favored nation)」協定による処方薬価格引き下げの取り組みがあったことを指摘している。

トランプ大統領の支持者たちはまた、大統領の海外での行動がアメリカ国内に利益をもたらしていると主張している。彼らは、トランプ大統領がEU、日本、イギリスなどと締結した貿易協定に加え、ヴェネズエラとの対峙が麻薬や不法移民の脅威からアメリカを守ることになるという考えも主張している。

しかし、世論調査では、有権者たちが必ずしもトランプ大統領の外交政策への注力について支持していないことが明らかになっている。

今月初めに発表されたキュニピアック大学の世論調査によると、トランプ大統領に対する有権者の全体的な支持率は低迷しており、回答者のわずか40%が彼のパフォーマンスを支持していると回答した。世論調査によると、トランプ大統領の外交政策の対応を支持する人は41%、不支持は54%だった。

しかし、ストラティジストたちは、11月の中間選挙の結果は、有権者がトランプ大統領の外交政策の成果についてどう感じているかよりも、経済についてどう感じているかによって左右される可能性が高いと概ね同意している。

ホワイトハウスは、インフレの鈍化と堅調な国内総生産(GDP)をトランプ大統領の経済政策が成功している証拠として挙げているが、世論調査では、有権者の大半がそう感じていないことが示された。

キュニピアック大学の世論調査によると、回答者の40%がトランプ大統領の経済政策を支持し、57%が不支持と回答した。この結果は、同様に有権者がトランプ大統領の経済政策に失望していることを示す他の世論調査結果と一致している。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ