古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

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2026年02月

 古村治彦です。

 2025年11月末、私は、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社)を刊行した。その中で、ピーター・ティールが率いるパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスクが率いるスペースX社、パルマー・ラッキーが率いるアンドゥリル・テクノロジーズ社(ティールとマスクの出資を受けている)が企業コンソーシアムを形成して、ゴールデンドーム計画に参画し、巨額の利益を上げるだろう、そして、彼らがアメリカの「新・軍産複合体」として台頭するだろうということを書いた。
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 ゴールデンドーム計画は数重兆円規模の巨大プロジェクトであるが、その内容も不透明なのが実際だ。そして、現在、予算承認が進んでいないということだ。しかし、準備段階でも相当な予算が投入される。陸海空に宇宙という多層的なミサイル防衛システムということになると、パランティア社のビッグデータ分析、スペースX社の宇宙開発、ロケット打ち上げ技術、アンドゥリル社のドローン技術の融合が必要となる。そして、ドナルド・トランプ大統領誕生に、ピーター・ティールやイーロン・マスクが重要な役割を果たしたことを考えると、ゴールデンドーム計画は彼らに対する利益供与ということもできる。

 中国は、2015年に「中国製造2025」というプロジェクトを発足させ、AI、ドローン、量子コンピュータなどの分野でアメリカに対抗している。同じ年、中国は、「軍民融合(Civil-Military Fusion)」プロジェクトもスタートさせた。これは、民間企業が開発した、最先端技術の中国軍による利用を促進するものだ。アメリカでも同様の軍民融合を行おうということになれば、ゴールデンドーム計画のような形になる。

 詳しくは是非拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』を読んでいただきたい。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領はゴールデンドームを愛している。彼自身のホワイトハウスは支出を遅らせている(Trump Loves Golden Dome. His Own White House Is Slow-Rolling Spending

-行政管理予算局によって承認された数十億ドルの支出が差し止められている。

サム・スコーヴ筆

2026年2月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/23/golden-dome-spending-omb-budget-pentagon-trump-missile-defense-drones/
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ピート・ヘグゼス米国防長官(右)がワシントンのホワイトハウスでドナルド・トランプ米大統領とゴールデンドームについて協議している(2025年5月20日)
『フォーリン・ポリシー』誌が入手した国防総省の文書によると、トランプ政権の目玉となる国家安全保障戦略である「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムとドローン生産増強計画への数十億ドル規模の予算が支出されていないことが明らかになった。

ドナルド・トランプ米大統領は2025年5月、ゴールデンドームへの支出を称賛し、政権は「アメリカ本土へのミサイルの脅威を永遠に終わらせる」と約束した。

ミサイル防衛兵器を宇宙に配備するなど技術的な課題を抱えながらも、トランプ大統領はわずか3年、つまり大統領の2期目が終了する前に、迅速にプロジェクトを完遂すると約束した。トランプはプロジェクト費用を1750億ドルと見積もっているが、他の推計ではそれよりかなり高額になるとされている。

この計画の財源として、トランプ大統領は昨年連邦議会で可決された「ワン・ビッグ・ビューティフル・ビル法(the One Big Beautiful Bill Act)」の一環として、この計画に250億ドルを支出すると発表した。

しかしながら、米国防総省の文書によると、ゴールデンドームに関連する宇宙能力への支出のうち、最大140億ドルが連邦資金を配分する行政管理予算局(OMB)の「承認待ち(pending approval)」となっている。

これには、宇宙ベースセンサーに72億ドル、軍事衛星とその防護に36億ドル、標的捕捉関連の軍事衛星に20億ドル、次世代大陸間弾道ミサイル防衛システムに8億ドル、宇宙指揮統制システムに3億5000万ドル、そして宇宙通信システムに1億2500万ドルが含まれる。

アメリカンエンタープライズ研究所上級フェローのトッド・ハリソンは、この資金繰りの停滞により、トランプ大統領が提案した野心的なスケジュールでのゴールデンドーム配備が遅れる可能性があると述べた。「会計年度のほぼ半分が過ぎていることを考えると、この資金の多くを2026年度に使用することは困難であり、つまり配分は2027年度に繰り越されることになる」とハリソンは述べた。

国防総省もドローンの調達を最優先事項としており、ピート・ヘグゼス国防長官は「ドローン優位性(drone dominance)」の実現を約束している。しかし、文書によると、小型ドローン船に15億ドル、中型ドローン船に21億ドルの予算が承認待ちのまま保留されている。

行政管理予算局(OMB)が資金拠出を保留している理由は不明だが、これは行政管理予算局と国防総省の間で資金配分の最適解をめぐる意見の相違を示唆しているとハリソンは述べた。国防総省はコメント要請に応じなかった。

コメントを求められた行政管理予算局広報部長のレイチェル・コーリーは、「これは事実ではない。誰がそう言っているにせよ、誤解している。ホワイトハウスが競争政策と単独調達契約についてどのような立場を取っているかは秘密ではない」と述べた。

『フォーリン・ポリシー』誌は当初、競争政策や単独調達契約について質問していなかった。その後、フォーリン・ポリシー誌はコーリーに対し、ゴールデンドームやドローンの契約プロセスが競争的でないという懸念から資金拠出を差し控えているのではないと言っているのかと尋ねた。

コーリーは「その資金のほとんどは全く保留されていない。全くのナンセンスだ」と答えた。

現在承認待ちとなっている項目の少なくとも1つは、「空中移動目標指示」衛星システムへの20億ドルの割り当てである。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は以前、スペースXがこの契約を獲得する見込みだと報じていた。ゴールデンドームは、スペースX、アンドゥリル、パランティアによるシステム建設の入札で、以前から世間の厳しい批判に晒されてきた。

※サム・スコーヴ:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Xアカウント:@samuelskove
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トランプ大統領のゴールデンドームは万能薬ではない(Trump’s Golden Dome Is No Silver Bullet

-アメリカ最大の防衛計画の1つは発表からほぼ1年が経過した現在も構想の域を出ていない。

アレクサンドラ・シャープ、ジョン・ホルティワンガー筆

2026年1月22日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/01/22/golden-dome-trump-missile-defense-explained-greenland/

ドナルド・トランプ米大統領は、1年足らずで歴代大統領の誰よりも多くのことを成し遂げたと主張している。しかし、「トランプ2.0」の最大の提案の一つである「ゴールデンドーム」ミサイル防衛システムは、発表から12カ月近くが経過した現在も、構想の域を出ていない。トランプ大統領は2期目終了までにゴールデンドームを完成させると述べているものの、その実現はますます困難になりつつある。さらに、グリーンランドへの進出もこの構想と結びつけ、今週スイスのダヴォスで行った演説では、デンマーク領であるこの地こそ「史上最大のゴールデンドームを建設する地(land on which we’re going to build the greatest Golden Dome ever built)」だと述べた。

このようなシステムが本当に費用に見合う価値があるのか​​、建設と維持にかかる費用(一部の推計では数兆ドルに上る)と、新たな軍拡競争を煽る可能性の両方において、多くの疑問が残る。一部の専門家は、現在のアメリカのミサイル防衛能力には悪用される可能性のある脆弱性が存在することに同意しているものの、ゴールデンドームが真の解決策となるかどうかについては疑問を呈している。

現在、アメリカは複数のミサイル防衛システムを保有している。その中には、飛行中期段階における中・長距離大陸間弾道ミサイルからアメリカ本土を守るために設計された地上配備型中間段階防衛システム(Ground-Based Midcourse DefenseGMD)、飛行中期段階における短・中距離弾道ミサイルを防御するために地上および海上に配備されたイージス弾道ミサイル防衛システム(the Aegis Ballistic Missile DefenseBMD)、そして飛行最終段階における短・中距離弾道ミサイルを防御するために設計された迅速展開・移動式の最終高高度防衛システム(Terminal High Altitude Area Defense THAAD)がある。

しかし、専門家の中には、ロシア、中国、北朝鮮といった主要敵国が兵器の増強と近代化を進めている現状において、極超音速ミサイル、ドローン、先進巡航ミサイルといった新技術がアメリカの防衛体制に危険な隙間をもたらしていると警告を発している人たちもいる。

米国防総省は、小規模で的を絞った取り組みによってこれらの脆弱性(vulnerabilities)に対処しようとしている。しかし、トランプ大統領ははるかに大胆で包括的な解決策を求めている。大統領は、ゴールデンドームによってアメリカ本土へのミサイルの脅威が「永遠に(forever)」なくなると述べている。

ゴールデンドームについて、その目的、期待される能力、潜在的なコスト、開発スケジュール、そして考えられるリスクなど、知っておくべきことを以下に挙げていく。

●ゴールデンドームとは何か、そしてその目的は何か?(What is Golden Dome, and what is it meant to do?

ゴールデンドームは、多様な空中脅威を阻止できる多層型ミサイル防衛システム(a multilayered missile defense system capable of thwarting a wide range of aerial threats)であるが、特に長距離ミサイルの破壊に重点を置く。多くの点で、これは防衛のために宇宙を兵器化する(weaponizing space for the sake of defense)ということだが、地上、海上、空中の層も含まれることになる。

ゴールデンドームは、1984年にロナルド・レーガン米大統領が提唱した「スターウォーズ(Star Wars)」の愛称を持つ戦略防衛構想(Strategic Defense InitiativeSDI)の近代化された拡張版と言えるかもしれない。しかし、この計画が実用化されることはなかったことは注意すべき点だ。

トランプ政権はゴールデンドームを「次世代ミサイル防衛シールド(next-generation missile defense shield)」と表現している。この構想を主導する米宇宙軍のマイケル・グートライン大将は、これを「マンハッタン計画に匹敵する規模(on the magnitude of the Manhattan Project)」と評した。しかし、プロジェクトの規模はそれよりもさらに大きくなる可能性がある。

ゴールデンドームは、基本的にあらゆるもの、つまり国防総省が2025年5月に発表したプレスリリースにあるように「あらゆる敵からの空中攻撃(aerial attacks from any foe)」から防衛することを目指している。当初の構想は、主にロシアや中国などのアメリカの敵対諸国が発射する大陸間弾道ミサイル(intercontinental ballistic missilesICBM)の迎撃に重点を置いていた。ICBMは、核兵器を搭載して宇宙空間に発射され、大気圏に再突入して標的を攻撃する先進的な長距離ミサイルで、射程は通常3400マイル(約5600キロメートル)以上だ。

しかし、ホワイトハウスが2025年1月下旬にこの構想を初めて発表して以来、この防衛システムの提案能力は拡大し、「巡航ミサイル、弾道ミサイル、極超音速ミサイル、ドローン(通常兵器か核兵器かを問わず)」を含む、他の多くの潜在的な脅威も含まれるようになったと、ピート・ヘグゼス米国防長官は昨年5月に述べた。

これは、冷戦時代の核への恐怖からドローン技術の実際的な懸念へと現代戦争の変遷に対応するための取り組みの一環だ。ロシアとウクライナの戦争は、偵察から直接的な標的攻撃まで、あらゆる用途における低コストで使い捨て可能なドローンの有効性を特に示した。この戦争における両陣営の死傷者の約70%はドローンによるものと推定されている。

「この分野では、十分な速さで対応できない」と、米陸軍副参謀総長のジェームズ・ミンガス将軍は昨年7月に述べた。その理由として、多くの軍指導者や専門家が、短距離ドローンの脅威への対応においてアメリカは後れを取っている点を強調した。

ゴールデンドームがドローンの脅威に具体的にどのように対処するのかについては疑問が残るものの、国防総省は他の方法でこの問題に取り組んでおり、特に現代の戦場で好んで使用される小型無人航空機(small, unmanned aerial vehicles)への対抗能力をアメリカ軍にいかに強化するかに重点を置いている。このため、陸軍はドローンの訓練にますます力を入れている。昨年8月、国防総省は小型ドローンに対抗する軍の能力強化を加速させるため、新たな省庁間合同タスクフォースを設置した。これは、この問題が軍にとって優先事項となっていることを示す新たな兆候である。

しかし、ゴールデンドーム推進の推進は、音速の5倍(マッハ5)以上で飛行するため迎撃が極めて困難な極超音速ミサイルの開発競争をめぐる世界的な懸念によっても促進されている。

But the push for Golden Dome has also been catalyzed by concerns over the global race to produce hypersonic missiles, which travel at five times the speed of sound (Mach 5) or faster, making them exceptionally difficult to intercept.

●ゴールデンドームは理論上どのように機能するのだろうか?(How will Golden Dome function in theory?

ゴールデンドームは、センサーと迎撃衛星を搭載した数百、あるいは数千もの衛星群を用いて、極超音速ミサイルをはじめとする兵器システムを追跡・破壊する。

トランプ政権は、この宇宙配備型システムがブースト段階、つまり発射後約5分間の初期段階にあるミサイルを迎撃できる能力を持つことを想定している。ブースト段階のミサイルは探知が容易ですが、破壊は困難だ。なぜなら、ミサイルを破壊には発射地点付近に迎撃衛星を配置する必要があるからだ。迎撃衛星を低軌道に配備することで、ゴールデンドームは理論的には、ブースト段階、つまり飛行初期段階にある敵ミサイルを破壊する能力をアメリカに提供する可能性がある。

アメリカの現在のミサイル防衛システムは、中間段階(ブースターの燃焼が終わった後、ミサイルが最大20分間宇宙空間を滑空する段階。これはミサイルの飛行の中で最も長い段階であり、大気圏再突入前の迎撃の絶好の機会である)と最終段階(ミサイルが大気圏に再突入し、目標に命中するまでの段階)におけるミサイルの迎撃に重点を置いている。

もし今日、ICBMがアメリカ本土に向けて発射された場合、ワシントンの主要な防衛線は地上配備型の中間段階防衛システムであり、ミサイルが中間段階にある間に迎撃する。しかし、アメリカ西部のカリフォルニア州とアラスカ州に設置されている地上配備型中間段階防衛システム(GMDシステム)の一部として運用されている地上配備型迎撃ミサイルはわずか44基である。GMDシステムは全50州を防衛する設計となっているが、北朝鮮のような敵対国による限定的な攻撃に対抗することを目的としており、ロシアや中国のより大規模で高度な兵器に対する防御は想定されていない。

イージスBMDシステムは信頼性が高いと考えられているが、ICBMの迎撃を目的として設計されている訳ではない。これは地域に特化した防衛システムであり、大規模な攻撃に対抗したり、アメリカ本土全体を防衛したりすることを目的としたものではない。

アメリカには最終高高度防衛システム(Terminal High Altitude Area Defense THAAD)とパトリオットシステムがあり、ミサイルを最終段階で迎撃することが可能ですが、限られた時間(1分未満の場合もあり)やミサイルが標的に近接していることなど、様々な課題から、最終段階はそのような脅威を迎撃するには最も理想的なタイミングとは言えない。これらのシステムは、一般的にICBMや長距離ミサイルの迎撃を目的として設計されていない。

ここでゴールデンドームの出番だ。提案されているシステムは、より高度な技術を持つ敵から発射される様々な射程のミサイルを、ブースト、ミッドコース、そして最終段階の全ての飛行段階で迎撃することができる。

しかし、繰り返すが、これはあくまでも理論上の話だ。

ゴールデンドームの開発には、その機能を果たすために必要な宇宙配備型迎撃ミサイルの膨大な数をはじめ、重大なハードルが存在する。

「核兵器に対処する場合、真に安全だと感じるためには、非常に高い迎撃率が必要だ」と、ブルッキングス研究所の防衛専門家マイケル・オハンロンは次のように述べている。「多層防御が必要だ。そして問題は、多層防御の多くは、大国によって偽装されたり、欺かれたり、あるいは飽和状態に陥ったりする可能性があるということだ」。

つまり、アメリカの敵対国がゴールデンドームの能力を圧倒するには、システムを水浸しにするか、デコイを使うだけで済むということだ。アメリカはまだ、宇宙空間にある弾頭が真の脅威なのか、それとも欺瞞なのかを判断する技術を開発している。

●ゴールデンドームの費用はいくらかかるだろうか?(How much will Golden Dome cost?

ゴールデンドーム開発における重大なハードルはおそらく費用となるだろう。トランプ大統領はこのプロジェクトの費用は約1750億ドルだと述べているが、実際の費用ははるかに高額になると推定されている。

宇宙配備型迎撃ミサイルに頼るのは、飛来する飛行体1個を撃墜するのに数十基の迎撃ミサイルが必要となるため、費用のかかる戦略となる。「不在率(the absentee ratio)こそが真の致命的な問題だ。これらの迎撃ミサイルやレーザーミサイルのほとんどは、高度が高いため常に周回しているため、適切な位置に配置できず、適切な位置にある1基に対して10基ほどの迎撃ミサイルを宇宙に配備しなければならない」とオハンロンは述べている。

アメリカンエンタープライズ研究所上級研究員のトッド・ハリソンによると、迎撃ミサイル1基の調達コストは平均440万ドルから890万ドルと推定されている。つまり、ゴールデンドームが最大2発のミサイルに対抗するために全世界を継続的にカヴァーするために1900基の迎撃ミサイルが必要だとすると、総調達コストは86億ドルから172億ドルとなる。しかし、(例えばシステムを氾濫させる戦略の一環として)発射される弾道ミサイルの数が増えると、より多くの迎撃ミサイルが必要となり、調達コストは急騰する。連邦議会予算局の推計によると、限定的な宇宙配備型迎撃ミサイルシステムでさえ5000億ドル以上のコストがかかるということだ。

これはゴールデンドームの総費用を考慮に入れていない。ゴールデンドームの総費用は、どの脅威を優先するか、そしてどこでカヴァーするかによって、20年間で2520億ドルから3兆6000億ドルと推定されている。

これまでに、連邦議会はゴールデンドーム構想に約250億ドルを拠出している。この構想は2026年国防権限法にも漠然と言及されているものの、具体的な支出指示は示されていない。

2025年10月、ロッキード・マーティンのジム・タイクレットCEOは、ロッキード・マーティンは2028年までにゴールデンドーム構想の一部である宇宙配備型ミサイル迎撃ミサイルを少なくとも1基試験する計画だと述べた。

ミサイル防衛プロジェクトのディレクターであり、戦略国際問題研究所(CSIS)の上級研究員であるトム・カラコは、ゴールデンドームは「システム(system)」ではなく、むしろ「数年にわたって段階的に展開される構想(initiative” that will be rolled out in phases over a “number of years)」であると述べた。ミサイル防衛へのこのようなアプローチはずっと前から必要だったと述べるカラコは、ゴールデンドームを「会計機能(accounting function)」と表現し、この構想に関する多くの詳細が依然として未確定であることを強調した。

トランプ政権には「計画のコンセプト(concept of a plan)」があると元国防次官(政策担当)のエリック・エデルマンは述べた。エデルマンは続けて次のように語った。「トランプ政権が実際に成果を上げたいのであれば、現状の巡航ミサイルの脆弱性への対処といった、容易に達成できる目標に取り組むだろう。そうでなければ、3年で成果を上げることは難しいだろう。なぜなら、はるかに長い時間がかかるからだ」。

しかし、国防総省は依然として楽観的な姿勢を崩していない。2025年10月、ある国防関係のお当局者は『フォーリン・ポリシー』誌に対し、ゴールデンドームは国防総省にとって依然として「戦略的に不可欠なもの(strategic imperative)」であり、同省は「作戦上の安全保障を最優先に考えている(operational security top of mind)」ため、これ以上の情報提供はできないと述べた。

「私たちは大統領のヴィジョンを実現するために、引き続き尽力していく」と公式コメントを控えたこの当局者は付け加えて述べた。

フォーリン・ポリシーは2025年を通して国防総省に複数回連絡を取り、ゴールデンドームの開発状況について最新情報を求めたが、追加情報は得られなかった。

国防専門家の中には、イスラエルのアイアンドーム・システムをトランプ大統領のゴールデンドーム構想の実現可能性を示す証拠として挙げている。しかし、重要な違いがあるため、この比較は不完全である。

第一に、イスラエルは地理的にアメリカ合衆国よりもはるかに小さく、守るべき領土も多くない。イスラエルの面積はアメリカ合衆国ニュージャージー州とほぼ同じである。さらに、イランの代理組織であるハマスやヒズボラなど、イスラエルの敵対勢力の多くは、単純な軌道と小型の通常弾頭を持つ安価なロケットを主に発射している。アイアンドーム・システムはコストを抑えるため、ネゲブ砂漠のような無人地帯を狙ったロケットも攻撃対象としている。これらの地域は民間人に実質的な脅威を与えないからだ。一方、アメリカは世界最大級の核兵器に対抗することになる。これらの核兵器は大都市圏を標的とする可能性が高く、攻撃を放置する余裕はない。

エデルマンは、「全てを攻撃しなければならない。これが核弾頭漏れ防止防衛の問題点だ」と述べた。

ロシアは5400発以上の核弾頭を保有しており、中国は約600発の核弾頭を保有しているが、2035年までに1500発の核弾頭を保有すると予想されている。北朝鮮の核弾頭の総数は未確認だが、アメリカ科学者連盟は平壌が50発以上を保有していると見ている。(アメリカは約5225発の核弾頭を保有している。)

新アメリカ安全保障センターの防衛プログラムのディレクターであるステイシー・ペティジョンは次のように述べている。「ゴールデンドームは、ロシアや中国が保有する量のミサイルを迎撃できるような防御力場にはならないだろう。中露両国の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の兵器規模は大きすぎるからだ。むしろ、限定的な攻撃を迎撃できる盾となることを意図している」。

●ゴールデンドームのリスクは何か?What are the risks of Golden Dome?

効果への懸念に加え、多くの批評家はゴールデンドームが世界的な軍拡競争(arms race)を誘発するのではないかと懸念している。ペティジョンは次のように語っている。「つまり、敵対国がゴールデンドームを見て、アメリカが先制攻撃を仕掛けてくると想定し、ミサイルの増強、そしてシールドを迂回するためのより高度なミサイルの開発に着手するのではないかという懸念だ。つまり、ゴールデンドームが対処できるものに加えて、さらに強力なミサイルを開発し、さらに新システムの弱点を突こうとする新型ミサイルも開発するだろう」。

これは、オハンロンが懸念した、戦場への電子線(flooding)やデコイの使用という戦略にも繋がる。アメリカにはまだ対抗できる技術力がない。

しかし、一部の専門家は、外国の敵対国がゴールデンドーム構想に不満を抱いていることは良い兆候だと主張する。カラコは次のように述べている。「ミサイル防衛は抑止力に貢献するために存在する。空に浮かぶスピードバンプ(スピードを落とさせるための道路上の段差)のようなものだ。中国人がそれについて不満を言うのを聞くのは、私たちが何か建設的なことをしているという良い兆候となるだろう」。

※アレクサンドラ・シャープ:『フォーリン・ポリシー』誌「ワールドブリーフ」担当ライター。Blueskyアカウント:@alexandrassharp.bsky.socialXアカウント:@AlexandraSSharp

※ジョン・ホルティワンガー:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター。Blueskyアカウント:@jchaltiwanger.bsky.socialXアカウント:@jchaltiwanger
(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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 古村治彦です。

 2026年2月25日、ドナルド・トランプ大統領は連邦議場で一般教書演説を行った。1時間48分に及ぶ演説は、史上最長記録となった。もっとも一般教書演説が連邦議事堂で実施されるようになったのは20世紀になってからで、歴史としてはそこまで古くはない。事前の予想通りに、分断を印象付ける一般教書演説となった。連邦議場内の分断は、アメリカ国内の分断を象徴するものとなった。民主、共和両党の議員たちがあれほど刺々しい態度を取ったのはこれまでに例がなかったのではないかと思う。

 現在、トランプ大統領の支持率は芳しくない。それでも40%以上はある。トランプ支持の基盤は強固であることも事実だ。今年11月の中間選挙(mid-term elections)は、文字通り、第二次ドナルド・トランプ政権の中間テスト(mid-term examinations)になる。現在は連邦上下両院で共和党が過半数を握っているが、現状では民主党が下院で過半数を奪還するのではないかという見通しになっている。そうなればトランプ政権にとっては痛手となる。トランプ政権としては経済で成果を上げたいところだが、厳しい。目玉政策の高関税政策は連邦最高裁に差し止められ、先行きは不透明だ。ドル安も進行している。インフレ率は落ち着いているが、アメリカ国民の中で不満を抱えている人たちが多くいる。

 外交政策は、西半球に焦点を当てたドンロー政策を採用しているが、アメリカの国益に適っているとは言い難い。何よりも、他国からの信頼が大きく揺らいでいる。第二次トランプ政権の外交政策は第一次政権時と異なり、ネオコン的な介入主義的となっている。中国とは融和を行うような姿勢を取りつつも、対決姿勢も取っている。こちらも先行きが不透明だ。アメリカ帝国の衰退だけが印象付けられている。

 一般教書演説は、英語では「State of the Union Address」と言う。直訳すれば、「統一されたアメリカ国家(the Union)の現状に関する演説」となる。今回の演説が示したのは「分断された国家(division)の姿」である。「分断されたアメリカ国家の現状任官する演説( State of the Division Address)」と言うべきものだった。アメリカはこうして、帝国であることを止め、国内の不安定さを増して、衰退していく。このブログでも何度も書いたが、私は、トランプ大統領はアメリカ帝国の墓堀人の役割を果たすと考えている。今回の一般教書演説はそれにふさわしいものとなった。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の一般教書演説から得られる5つのポイント(Five takeaways from President Trump’s State of the Union address

ナイオール・スタンジ筆

2026年2月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5754101-trump-state-union-address-takeaways/

ドナルド・トランプ大統領は火曜日、2期目初の公式の一般教書演説(the first official State of the Union address of his second term)を行った。

大統領は、特に経済政策に関する支持率の低迷に悩まされながらも、11月の中間選挙を前に党の結束を強めようと努める形で演説は行われた。

トランプ大統領は、イランとの緊張が高まる中で、1時間50分弱に及ぶ演説を行った。大統領は、この地域に2つの空母群を派遣した。

演説の主要なポイントは以下の通りだ。

(1)イランに関する様々な計画は不透明な状態のままを維持している(Iran plans remain murky

今回の演説に関して、最も重大な政策課題は、トランプ大統領が対イラン計画をより明確にするか否かという点にあった。しかし、トランプ大統領は計画について明確にしなかった。少なくとも、それほど明確にはしなかった。

トランプ大統領は次のように述べた。「私たちは彼らと交渉中だ。彼らは合意を望んでいるが、『私たちは決して核兵器を持たない』という秘密の言葉をまだ聞いていない。私は外交を通じてこの問題を解決することを望んでいる。しかし、一つ確かなことは、世界最大のテロ支援国である彼ら(イラン)に核兵器を持たせることなど決して許さないということだ。絶対に許すことはできない」。

木曜日にジュネーブで予定されているイランとアメリカとの協議を前に、この問題には多くの複雑な要素が絡んでいる。

第一に、イランのマソウド・ペゼシュキアン大統領は昨年9月、国連総会で次のように述べた。「イランは核爆弾の製造を試みたことはなく、今後も決して試みることはないだろう」。

第二に、トランプ大統領は演説の他の部分で、これまで同様、イランの長距離兵器能力(核兵器か非核兵器かを問わず)がそれ自体の障害であると示唆した。また、イラン政府が年末に起きた抗議デモの複数の参加者を殺害したことを非難した。

まとめると、トランプ大統領が曖昧に定義された問題に対する解決策として具体的に何を提案しているのか、あるいはテヘラン政権の存続を想定しているのかどうかは依然として不明確である。

(2)中間選挙へのメッセージを追求(Seeking a midterms message

演説の序盤、つまりテレビ視聴者の視聴率が例年最高値に達する時間帯は、主に経済に焦点を当てていた。

トランプの主張の中には、株価が過去最高値、あるいはそれに近い水準にあるなど、妥当なものもあれば、そうでないものもあった。トランプが主張するように、いかなる基準で見ても「記録的なインフレ率(inflation at record levels)」にある国を引き継いだ訳ではない。2期目が始まった2025年1月の年率インフレ率は3.0%だった。最新の今年1月の数値では2.4%となっている。

トランプの支持率は、物価上昇に対する国民の認識に関しても、特に不安定な状況にある。

『ワシントン・ポスト』紙、ABCニューズ、イプソス社が最近実施した世論調査では、成人の65%がトランプのインフレ対応に不満を示し、支持したのはわずか32%だった。

火曜日の夜、トランプは以前から繰り返してきた攻撃を再び展開し、民主党は「突然『手頃な価格(affordability)』という言葉を使った。誰かが与えてくれた言葉だ」と主張した。そして、物価高騰の責任は実際には民主党にあると主張した。

また、昨年の減税・歳出法案に反対票を投じた野党を激しく非難し、「彼らは大規模な増税で国民を苦しめようとした(they wanted large scale tax increases to hurt the people instead)」と述べた。

(3)移民をめぐる対立(A confrontation on immigration

演説で最も劇的な場面は、おそらく予想通り、移民に関する部分で訪れた。

ある場面でトランプは、「アメリカ政府の第一の義務はアメリカ国民を守ることであり、不法移民を守ることではない」という発言に賛同する聴衆は「立ち上がって支持を表明する」べきだと述べた。

民主党所属の連邦議員たちは圧倒的多数が着席したままだった。これは、移民関税執行局(ICE)や国土安全保障省(DHS)傘下の他の機関による強硬な執行措置に彼らが強く反対していることを考えると、驚くべきことではない。

これらの措置は、1月にミネソタ州でレニー・グッドとアレックス・プレッティという2人のアメリカ国民が射殺される事件につながった。

その間、トランプは民主党議員たちを睨みつけ、「立ち上がらないのは恥ずべきことだ」と述べた。

イルハン・オマル連邦下院議員(ミネソタ州選出、民主党)をめぐっては、「トランプがアメリカ人を殺した」と叫ぶなど、激しい口論も繰り広げられた。

トランプが、オマルも属する「ソマリア人コミュニティ」が数十億ドルもの税金を「略奪した」と非難すると、オマルは「彼は嘘つきだ」と叫んだ。

オマルが「彼は嘘つきだ」と叫んだのも聞こえた。

(4)最高裁への怒りは小さいものとなった(Supreme Court draws only a bit of ire

トランプ大統領は、先週、判事が自身の主要関税措置の多くを無効にした直後から、既に最高裁を批判していた。

大統領は特に、自身の意に反する判決を下した保守派判事3人に憤慨していた。この中には、自身が最初の任期中に任命したニール・ゴーサッチ判事とエイミー・コニー・バレット判事も含まれている。先週、トランプ大統領はこの判決は「彼らの家族にとって恥ずべきものだ」と述べた。

この発言は、ジョン・ロバーツ判事、エレナ・ケーガン判事、ブレット・カヴァノー判事、バレット判事の4名が出席した火曜日の夜、激しい対決の緊張を高めたように思われた。

トランプ大統領はこの判決を「残念」で「失望した」と述べたが、最高裁を完全に非難することはなかった。

(5)政治的には両党とも望むものを得た(Politically, both parties got what they wanted

現代において、一般教書演説はかつてほど重要ではなくなった。
つい最近まで、この年次演説はアメリカ大統領が国民に率直に語りかける稀有な機会と見られていた。しかし最近では、トランプ大統領はソーシャルメディアで一日に何度も国民に語りかけている。

それでも、この演説はテレビで多くの視聴者を獲得している。

共和党は、移民やトランスジェンダーの権利といった重要な問題でトランプ大統領が対比を描いたこと、そして他の全てをかき消してしまうような大規模な論争を巻き起こさなかったことに概ね満足していると思われる。

民主党は、少なくとも11月には連邦下院の過半数を奪取できると期待している政治情勢において、トランプ大統領が何ら変化をもたらしたとは考えていない。

ヴァージニア州知事アビゲイル・スパンバーガー(民主党)は、党の立場から反論し、3つの質問を中心に論点を整理した。

「大統領はあなたとあなたの家族の生活費を安くするために尽力しているか? 大統領は国内外でアメリカ国民の安全を守るために尽力しているか? 大統領はあなたのために働いているか?」と彼女は修辞的に質問した。

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トランプ大統領の一般教書演説の注目すべき5つの瞬間(5 stand-out moments from Trump’s State of the Union address

ジュリア・ミュラー、サラ・デイヴィス筆

2026年2月25日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5754028-trump-state-of-the-union-memorable-moments/

ドナルド・トランプ大統領は火曜日、連邦議会で記録的な長さの演説を行い、「アメリカの黄金時代(golden age of America)」というヴィジョンを掲げ、政権の成果を誇示するとともに、支持率の低迷と経済への不満を抱えながらも、ライヴァルである民主党を攻撃した。

大統領は、共和党所属の連邦議員たちからのスタンディングオベーションや民主党所属の議員たちへの非難を含む、多岐にわたる演説の中で、この国は「かつてないほど大きく、より良く、より豊かに、より強くなった(bigger, better, richer and stronger than ever before)」と宣言した。

多くの民主党議員が演説をボイコットし、トランプ大統領への抗議として反対集会に参加した一方で、多くの党員は大統領の演説中、終始沈黙を貫いた。テキサス州選出の民主党議員1人が議場から退場させられ、共和党議員のスタンディングオベーションを理由に大統領に野次を飛ばした議員もいた。

1時間48分のプログラムは、トランプ大統領が昨年、連邦上下両院合同会議で行った100分間の演説(厳密には一般教書演説ではない)よりも長く、クリントン元大統領が保持していた一般教書演説(SOTU)の記録を破った。

(1)物議を醸す中でトランプ大統領は男子アイスホッケー米代表ティームを歓迎(Trump welcomes U.S. men’s hockey team amid controversy

演説開始直後、トランプ大統領は、オリンピックで金メダルを獲得したアメリカ男子アイスホッケーティームを議場に迎えた。選手と大統領の電話通話を捉えた動画が拡散し、物議を醸している中、彼らの発言は大きな話題となった。

「今夜、ここにいるのは、アメリカ全土を誇らしくさせた勝者たち、オリンピックで金メダルを獲得した男子アイスホッケーティームだ」とトランプ大統領は述べ、ティームを連邦議場上部の記者席に案内すると、拍手と「USA」コールが沸き起こった。

トランプ大統領とアイスホッケー選手たちは、ロッカールームでの電話の映像で批判を浴びた。その映像では、大統領が男子アイスホッケーティームに対し、女子アイスホッケーティームをホワイトハウスに「招待しなければならない」、さもなければ「おそらく弾劾されるだろう」と告げていた。

トランプ大統領は演説の中で、日曜日の金メダル決定戦における男子アイスホッケーティームの勝利を称賛したが、その後、議会演説への出席を辞退した女子アイスホッケーティームをあえて批判した。

「彼女たちは、誰もが見ていたように、延長戦で素晴らしいカナダチームを破った。間もなくホワイトハウスにやってくるアメリカの女子アイスホッケーティームも同様だ」とトランプ大統領は述べた。

トランプ大統領はまた、2028年にロサンゼルスで開催される「夏季」アイスホッケーにも言及し、同市での移民取り締まり強化に言及し、「安全な大会になるだろう」と述べた。大統領は長らくカリフォルニア州を批判し、移民法執行やその他の取り組みをめぐって同州民主党指導部と対立してきたが、オリンピックはアメリカ本土で開催されると繰り返し主張してきた。

(2)トランプ大統領は複数の勲章を授与(Trump hands out several medals

トランプ大統領は演説中に招待客に複数の勲章を授与し、自身も名誉勲章を受章することに引き続き意欲を示していると述べた。

トランプ大統領は、アメリカ男子アイスホッケーのゴールキーパー、コナー・ヘレビュックに「我が国における最高の民間人栄誉」である大統領自由勲章を近日中に授与する計画を発表した。ケイティ・レデッキーやマイケル・ジョーダンなど、他のオリンピック選手もこの勲章を受章している。

今秋、ホワイトハウスから数ブロック離れた場所で銃撃を受けた州兵2名に、戦闘で負傷または死亡した軍人に与えられる名誉ある軍の勲章パープルハート勲章が授与された。

アンドリュー・ウルフ二等軍曹はトランプ大統領の演説中に勲章を授与され、事件後に銃撃で死亡した州兵サラ・ベックストロムさんの両親も娘に代わって勲章を受け取った。

また、トランプ大統領は軍の最高勲章である名誉勲章を授与した。

メラニア夫人は、トランプ大統領が「生ける伝説(living legend)」と呼んだ100歳の元海軍戦闘機パイロットのロイス・ウィリアムズ大尉に名誉勲章を授与した。また、軍当局者は、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領逮捕に向けた1月の軍事作戦を指揮したエリック・スロバー准尉に名誉勲章を授与した。

昨年、テキサス州で発生した壊滅的な洪水の際にキャンプ・ミスティックで164人の少女を救助した沿岸警備隊の水泳選手スコット・ラスカンには、レジオンド・オブ・メリット勲章が授与された。

(3)トランプ大統領、最高裁の関税判決を「残念」と批判(Trump pans ‘unfortunate’ Supreme Court tariffs ruling

最高裁判所判事たちが傍聴席にいたトランプ大統領は、先週、自身が課した広範な関税措置の大部分を無効とする最高裁の「残念な」決定を嘆いた。

「わずか4日前、連邦最高裁判所から残念な判決が下された」とトランプは述べた。判事たちは両手を膝に当てまっすぐ前を見つめていた。

最高裁は先週、6対3の票決で、政権が第二期の目玉として掲げてきた国際経済戦略を無効にする判決を下した。トランプは国際緊急経済権限法(IEPA)を発動して関税を課そうとした初の大統領だが、判事たちは、国際緊急経済権限法はトランプにその権限を与えていないと判断した。

最高裁のジョン・ロバーツ長官に加え、エレナ・ケーガン判事、ブレット・カヴァノー判事、エイミー・コニー・バレット判事も同席した。カヴァノー判事は、関税問題に関する最高裁の反対意見に賛同した唯一の判事だった。

政権は現在、その看板となる経済政策を継続するため、他の代替的な権限に目を向けている。先週金曜日、トランプは別の緊急条項である1974年通商法に基づき、新たに10%の世界的な関税を課すと発表した。彼は後に、計画されていた輸入税を15%に引き上げた。

「少し複雑ではあるが、実際にはおそらくより優れたものであり、これまでよりもさらに強力な解決策につながるだろう」とトランプ大統領は火曜日、これらの代替権限について述べた。

「連邦議会の措置は必要ないだろう」とトランプ大統領は続けた。「すでに議論の的となっているが、時が経てば、外国が負担する関税が、過去と同様に、現代の所得税制度に実質的に取って代わり、私の愛する人々から大きな経済的負担が軽減されるだろうと信じている」。

(4)民主党議員たちがトランプ大統領に野次を飛ばし、グリーン議員は2年連続で議場から退場させられた(Democrats heckle Trump; Green escorted out for second year

演説中、数名の民主党議員が大統領に野次を飛ばしたが、過去の激しい対立―バイデン前大統領が前回の一般教書演説で当時のマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ルイジアナ州選出、共和党)と対立した時のような―、に比べると、やり取りは比較的穏やかだった。

トランプ大統領が不法移民と国境問題について話している間、ラシダ・タリブ連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)はトランプ大統領に向かって「あなたたちはアメリカ人を殺している」と怒鳴りつけた。イルハン・オマル連邦下院議員(ミネソタ州選出、民主党)は「あなたたちはアメリカ人を殺した」と叫んだ。

他の民主党議員もトランプ大統領を野次った。ノーマ・トレス連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は、今冬ミネソタ州で入国管理官に殺害された2人のアメリカ人アレックス・プレッティとレニー・グッドの写真が印刷された両面プラカードを掲げた。

大統領の演説冒頭、アル・グリーン連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)は2年連続で連邦下院議場から退場させられた。

グリーン議員は「黒人は類人猿じゃない!(BLACK PEOPLE AREN’T APES!)」と書かれたプラカードを掲げた後、退場させられた。大統領が共有した、AIで加工された、現在は削除された動画への言及として、黒のマーカーで殴り書きされた。その動画には、オバマ前大統領とミシェル前大統領夫人の顔が猿の体に映し出されていた。

グリーン議員は連邦下院議場を去る際にザ・ヒル誌に、「これは大統領と大統領夫人だけでなく、黒人である私への侮辱だ。・・・私は彼に、誰かが彼に面と向かってそう言う勇気を持っていることを知って欲しかった。そして、私はそうした」と語った。彼は、自身の解任は「驚きではない」と述べた。

昨年、テキサス州選出のグリーン下院議員は、大統領の演説中に野次を飛ばした後、議場から強制的に退場させられた。その後、連邦下院の採決で「適切な行動規範違反(breach in proper conduct)」として非難された。

大統領に野次を飛ばしたり、あからさまに抗議したりしなかった民主党議員でさえ、共和党議員が何度か立ち上がって大統領に拍手喝采する中、着席したまま異議を唱えた。

「立ち上がらないなんて、恥じるべきだ。自分たちを恥じるべきだ」と、トランプは国土安全保障省の一部閉鎖を受けて、予算措置を求めた際に、着席したままの民主党議員たちに語りかけた。

「見て見ろ、誰も立ち上がらない。この連中は狂っている。本当にそうだと言いたい」とトランプは別の場面で述べた。

しかしながら、トランプ大統領が国民に「いかなる種類の政治的暴力も完全に拒否する」よう呼びかけた時や、ハマスに拘束されていた最後の人質の帰還における政権の成功などを誇示した時には、民主党議員たちは立ち上がって拍手を送った。

(5)議員の株式取引禁止を求める声が上がる状況でトランプ大統領はペロシ元連邦下院議長を批判(Trump jabs at Pelosi amid push to ban lawmaker stock trades

トランプ大統領は、議員の株式取引禁止を支持したナンシー・ペロシ連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)を批判した。

「株価上昇の恩恵を全てのアメリカ国民が享受できるようにすると同時に、連邦議員がインサイダー情報を利用して不正な利益を得ることができないようにしなければならない」とトランプ大統領は述べた。

民主、共和両党の議員が拍手し、トランプ大統領は一部の民主党議員が立ち上がったことに驚きを隠せない様子で述べた。

「信じられないことだ。ナンシー・ペロシ議員がここにいて、立ち上がった?」とトランプ大統領は質問した。

20期連続で連邦下院議員を務めているペロシは、夫の株式取引の成功をめぐって批判に晒されて、かつては株式取引禁止を支持しなかったことで批判を浴びたが、後に方針を転換した。カリフォルニア州選出の民主党所属の連邦下院議員である彼女は、自身は株式を保有していないことを強調し、昨年は議員とその配偶者に対する別途の株式取引禁止法案を支持した。

連邦議会は長年、議員による株式取引の禁止を目指してきたが、提案はなかなか実現しなかった。トランプ大統領は、共和党主導の「インサイダー取引禁止法案(Stop Insider Trading Act)」を「遅滞なく(without delay)」可決するよう議員たちに求めた。

ペロシ議員とトランプ大統領は、トランプ大統領の最初の任期以来、特に連邦議会での演説の際に確執を続けてきた。

当時下院議長だったペロシ議長は、2020年の一般教書演説の最後に、トランプ大統領が用意した演説原稿を破り捨てた。彼女は、火曜日のトランプ大統領の演説に先立ち、別の原稿を破り捨てている画像をソーシャルメディアに投稿した。

当時連邦下院議長だったペロシは、2020年の一般教書演説の最後に、トランプ大統領が用意した演説原稿を破り捨てた。彼女は、火曜日のトランプ大統領の演説に先立ち、今回の演説の原稿を破り捨てている画像をソーシャルメディアに投稿した。

ペロシ元議長は11月、トランプ大統領を「地球上で最悪の存在(the worst thing on the face of the earth)」と呼び、現連邦下院議長マイク・ジョンソン(ルイジアナ州選出、共和党)への影響力によって事実上「連邦下院を廃止した(abolished the House of Representatives)」と非難した。

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ドナルド・トランプ大統領の一般教書演説は民主党との衝突が支配した(Clashes with Democrats dominate Trump’s State of the Union

マイク・リリス筆

2026年2月24日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/house/5754005-trump-state-of-the-union-democrats-clashes/

ドナルド・トランプ大統領は火曜日の夜、連邦議事堂に突入し、政権復帰1年目の成果を称賛し、民主党を無能なライヴァルと痛烈に批判し、11月の中間選挙では共和党が連邦議会の支配権を維持するべきだと主張した。

この長時間にわたる一般教書演説は、約1年前に同じ議場で行った演説に見られた特徴的な闘争心に満ちていた。そして、長年トランプをアメリカの民主政治体制の実験に対する脅威とみなしてきた民主党議員たちからの同様の露骨な抗議を引き起こした。

黒人議員連盟の重鎮であるアル・グリーン連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)は、今回も群衆から際立った存在だった。昨年3月、グリーン議員は議場から立ち上がり、杖を演壇に突きつけながら大統領に野次を飛ばしたため、議場から退場させられ、最終的には譴責処分を受けた。

今年のグリーン議員は、以前より物静かだったものの、以前ほど遠慮はなくなった。トランプを人種差別主義者だと非難する手書きのプラカードを掲げていた。「黒人は類人猿じゃない」と書かれていた。これは、トランプが最近ソーシャルメディアで、バラク・オバマ前大統領とミシェル夫人を猿に見立てた加工動画を宣伝したこと(現在は削除されている)への言及だった。この動画は両党の議員たちから反発を招いた。

グリーン議員の沈黙のデモは、おそらく、連邦下院少数党(民主党)院内総務のハキーム・ジェフリーズ連邦議員(ニューヨーク州選出、民主党)が、議場内では静かに抗議するよう民主党議員に要請したことへの敬意を表したものだったのだろうが、座席を確保することはできなかった。演説開始からわずか数分後、議場警備隊員がグリーン議員を議場から連れ出した。これは年に一度の恒例の行進となった。

通路を歩いていて退場する途中、保守的なトランプの熱烈な支持者であるトロイ・ネルズ連邦下院議員(テキサス州選出、共和党)がプラカードを奪おうとした。

その後、グリーン議員は堆積させられる覚悟はしていたが、演説を見るよりもメッセージを伝えることの方が重要だと主張した。

グリーン議員は次のように述べた。「トランプ大統領は黒人、それも二人の著名な黒人、(元)大統領とファーストレディを類人猿のように描写してきた。これを見過ごすことはできない。あまりにも長い間、私たちは彼の卑劣な行為を許してきた。なぜなら、彼はまた別の卑劣な行為に手を染めるからだ。私はこれを見逃すことはできない」。

この出来事はあっという間に終わったが、その後の長時間にわたる一般教書演説の基調を決定づけることになった。演説では、トランプ大統領が民主党を攻撃し、民主党もそれに応じ、連邦議会とアメリカ国家を分断する党派間の分極化(the partisan polarization that divides Congress and the country)、特にトランプ政権下で顕著な分極化を鏡のように映し出していた。

人種、犯罪、移民がしばしば論争の的となった。

トランプ大統領の演説は、国土安全保障省(DHS)の歳出をめぐる行き詰まりの最中に行われた。ミネアポリスで連邦移民局職員による銃撃で2人のアメリカ市民が死亡した事件をきっかけに、国土安全保障省は部分的な閉鎖に追い込まれた。そして、これらの悲劇は、火曜日の夜に起きた数々の記憶に残る衝突の背景となった。

ある場面でトランプ大統領は議場においてこう問いかけた。「この発言に賛同される方は、立ち上がって支持を表明して欲しい。アメリカ政府の第一の義務は不法移民ではなく、アメリカ市民を守ることだ(If you agree with this statement, stand up and show your support — the first duty of the American government is to protect American citizens, not illegal aliens)」。

共和党議員は長い拍手で立ち上がったが、民主党議員はほぼ全員が冷静に座ったままだった。トランプ大統領はこの違いに気づいた。

「立ち上がらないことを恥じるべきだ」と民主党議員に語りかけた。

「あなた方はアメリカ国民を殺した」とミネアポリス選出のイルハン・オマル連邦下院議員(ミネソタ州選出、民主党)は叫び声を上げた。「恥じるべきだ」と叫んだ。

ノーマ・トレス下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)も殺人事件を取り上げ、被害者のレニー・グッドとアレクサンダー・プレッティの顔を反対側に描いたプラカードを掲げた。

民主、共和両党は選挙のセキュリティと、より厳格な投票法の妥当性についても対立した。この問題は、トランプ大統領が、民主党がバイデン前大統領の勝利を確実にするために投票を「不正操作(rigging)」したと虚偽の非難をした2020年の選挙以降、特に顕著になっている。実際には、重大な不正投票の証拠はなかったが、それでもトランプは古い主張を増幅させ、11月の中間選挙は腐敗に汚染されるだろうと新たな警告を発し続けている。

トランプは「なぜ有権者IDを欲しがらない人がいるのか? 一つには、不正をしたいからだ」と問いかけた。

この非難は、ラシダ・トライブ連邦下院議員(ミシガン州選出、民主党)にとってあまりにも受け入れがたいものだった。彼女は、トランプがきっと自分のことを言っているに違いないと叫んだ。

その後、オマル、トライブ、トレス各議員は抗議のため全員退席した。

また、稀にだが超党派の合意が見られる場面もあった。演説開始からわずか数分後、トランプ大統領は、日曜日にイタリアで金メダルを獲得した米男子オリンピックホッケーティームのメンバー数名を二階にある記者席に招待し、ゴールキーパーのコナー・ヘレビュックに大統領自由勲章を授与すると発表した。

両党の議員たちは、長い間立ち上がって拍手を送った。

トランプ大統領が、軍たちの並外れた勇敢な行動に対し、様々な栄誉勲章を授与すると発表した時も、同様の結束の姿勢が見られた。

しかし、この演説は概ね、両党と国全体との間の激しい分裂(stark divisions)を浮き彫りにする結果となった。多くの民主党議員は異例なことだが演説を全面的にボイコットした。その中には、連邦下院少数党(民主党)院内幹事のキャサリン・クラーク連邦下院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)をはじめとする有力議員も含まれていた。ボイコットした議員の中には、トランプ大統領に聴衆を割きたくないと不満を抱くリベラル派が、対抗メッセージを発信する場として企画された、議場外で行われたライヴァルイヴェントに参加した人たちもいた。

もしトランプ大統領が空席に少しでも不快感を覚えていたとしても、彼はそれを表に出さなかった。むしろ、彼は民主党が、犯罪率の高さ、国境開放、そして猛烈なインフレという状態の国を作ったと激しく非難した。彼はこれらの問題術得てを、この1年で解決したと主張していた。

「民主党は我が国を破壊しようとしているが、間一髪でそれを阻止した」とトランプ大統領は述べた。

しかしながら、トランプの激しい口調は昨年の演説と同じだったとしても、政治の雰囲気は大きく異なり、大統領と共和党にとってはるかに有害なものだった。

当時、トランプ大統領はワシントンでの統一政府の公約と、わずか数カ月前の圧倒的な選挙勝利に支えられ、絶好調だった。この選挙は、アメリカ史上最も異例の政治的復活の一つとなった。

しかし、その後、政治の風向きは変わり、国内外でより困難な問題に直面している。不安定な経済(a volatile economy)、ウクライナとガザでの血なまぐさい紛争(bloody conflicts in Ukraine and Gaza)、最高裁による世界的な関税の否決()the recent defeat of his global tariffs at the hands of the Supreme Court、そしてミネアポリスでの銃撃事件を受けてあらゆる層の有権者から支持を失った移民政策(an immigration agenda that’s lost favor from voters of all stripes following the deadly shootings in Minneapolis)などだ。

民主党はこうした問題を使い、11月の投票で有権者が大統領とその与党に罰を与え、2027年には連邦下院の支配権を民主党に返すだろうと予測している。

ジェフリーズ氏は演説の直前に次のように述べた。「ドナルド・トランプ大統領の下での私たちの国歌の状態は完全なる惨事だ。そしてアメリカ国民はそれを知っている」。

(貼り付け終わり)
(終わり)



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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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『トランプの電撃作戦』
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世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 第二次ドナルド・トランプ政権の肝いり政策である高関税に対して、米連邦最高裁判所が差し止め判決を出した。9名の最高裁判事のうち、判決に賛成が6名、反対が3名となった。共和党政権時に指名された保守派の判事が多い構成で、差し止め判決が出たことは衝撃となった。トランプ大統領は判事たちを口汚く非難した。
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 高関税政策は保護貿易政策であり、国内の産業を守り、育てるためのものだ。たとえば、自国内で自動車産業を育成したいということであれば、外国から入ってくる自動車(輸入車)に高関税を掛け、国内では高価格となるようにし、自国の自動車産業が製造する自動車が自国内で多く購入され、利益が出て、それが設備投資や研究開発に回るようにするということである。アメリカは、第二次世界大戦直後において、世界を凌駕する製造業の国であった。しかし、今は見る影もない。トランプ大統領は造船業や自動車産業、更に鉄鋼、そして、エネルギー産業を復活させるということで高関税政策を実施した。高関税の値上げ分を負担するのは消費者である。価格が上昇した輸入品を買わなくなることで、貿易赤字を減らすという目論見もあった。さらに、ドル安誘導にもなるということであった。

しかし、このような政策は1年くらいでやっても効果はない。製造業の設備投資だけでも数年の計画になる。保護貿易は長期間の見通しと計画が必要である。実は、第一次トランプ政権の後の、民主党のジョー・バイデン政権も保護貿易政策であった。第二次トランプ政権ほど激しい政策ではなかったが、保護貿易路線であった。それが、今回、最高裁判所の差し止め判決が出てしまった。

トランプ政権は一時的に、150日間、世界的に15%の関税を課すことになった。日本は交渉して既に15%になっていたので関税の引き下げの恩恵を受けない。加えて、80兆円規模の投資ということになると、実質的にはマイナスである。ここで恩恵を受けるのは、アメリカが貿易赤字を抱えるとして、高い税率を課されていた国々である。中国やブラジルは15%への引き下げで恩恵を受ける。トランプ政権はこの差し止め判決で打撃を受ける。中国やインド、ブラジルからの輸入品が安くなるというメリットがある。ドル安傾向のために効果は薄れるだろうが、それでも大きい。
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 トランプ政権は今年11月の中間選挙での共和党の連邦議会過半数維持を目指している。しかし、これまでのところ、経済政策などで支持が高まっていない。そうであれば、国内の不満を逸らすために、外国の脅威を喧伝し、外国への攻撃を企図することは可能性として高い。具体的には、イランへの攻撃ということも考えられるが、イランの実力はヴェネズエラ以上であり、アメリカ軍の制服組の最高機関である統合参謀本部は、イラク攻撃はリスクが高いという報告書をトランプ大統領に提出し、一蹴されたという報道も出ている。ウクライナ戦争停戦の仲介も進まない状況で、外交や軍事に支持率上昇のきっかけを見出すのも難しい。そうなると、今回の最高裁判決はトランプ政権にとって大きな打撃ということになる。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプ大統領の貿易戦争は次はどうなるか(What’s Next for Trump’s Trade War

-米連邦最高裁の判決は、米大統領の関税戦略と貿易協定を混乱に陥れた。

キース・ジョンソン筆

2026年2月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/23/trump-tariffs-trade-deals-supreme-court/

写真

左から右へ:ワシントンのホワイトハウスで実施された記者会見に出席した米訟務長官D・ジョン・ザウアー、米大統領ドナルド・トランプ、米商務長官ハワード・ラトニック、米通商代表ジェイミーソン・グリア(2026年2月20日)

ドナルド・トランプ米大統領は、金曜日の最高裁判所の不利な判決、国内の政治的支持の欠如、そしてこれまでのところ貿易政策による経済効果の不在にもかかわらず、週末にかけて関税を二度引き上げた。

米連邦最高裁判所が、トランプ大統領が関税賦課に用いてきた主要な権限を無効とした後、トランプ政権は1974年の法律のかつて用いられたことのない条項を、一時的な措置としてアメリカ企業と消費者への高税率を維持するための措置として利用した。この措置は5カ月後に失効するが、政権は年内に、より強力で包括的な関税権限を整備するための時間を稼ぎたいと考えている。

新たな権限の下での関税の即時再導入は、いくつかの疑問を提起する。今や違法となった関税の脅威の下でトランプ政権と貿易協定を交渉してきた国々は、この事態をどう見ているのだろうか? トランプ政権の関税に関するプランBはそもそも合法なのだろうか? プランCDは合法なのだろうか? これら全ては、連邦議会が貿易政策に対する伝統的な統制を取り戻すきっかけとなるだろうか? なぜ逆効果をもたらす政策がこれほど熱心に推進され、国民の議論がほとんど行われていないのだろうか?

第一に、トランプ政権との貿易協定で妥協・修正(accommodation)に至った国々は、偽りの商品を買ってしまったのではないかと自問している。皮肉なことに、アメリカの同盟諸国(イギリスなど)は1週間前よりも高い輸出障壁に直面する一方で、名目上の経済ライヴァル諸国(中国など)はより低い障壁に直面している。

例えば、ヨーロッパ連合(EU)はアメリカと貿易戦争休戦(a trade truce)について交渉した(まだ批准していない)。この休戦協定では、アメリカのEU製品に対する関税は15%という高水準に据え置かれる一方、アメリカからの輸出に対するEUの関税は引き下げられる。しかし、それは過去の話だ。最近発表されたアメリカの関税率では、EUは実際には交渉時よりも高い関税率に直面する可能性がある。EUは「合意は合意(deal is a deal)」であり、「関税の引き上げはなし(no increases in tariffs)」と主張している。ヨーロッパ議会のベルント・ランゲ通商担当委員長は、関税に関するおとり商法(bait-and-switch)は当初の合意に違反する可能性があると示唆した。

イギリスは、自国の輸出品にわずか10%の関税を課すという甘い協定を結んだと思っていたが、現在では自国の製品に対する障壁がさらに高まっており、トランプ政権との自国の貿易協定の運命がどうなるのか明確になることを切望している。

ヴェトナム、マレーシア、日本、韓国を含むアジア諸国も、懲罰的関税の脅威(the threat of punitive levies)に晒されながら、トランプ政権との合意を急いだが、その関税は後に違法と判明し、今や自らの約束に疑問を呈している。

もう一つの大きな疑問は、トランプ政権が関税維持のために講じた代替措置、すなわち1974年通商法第122条だ。トランプ政権は最高裁判決を受け、直ちに全ての国に10%(後に15%に引き上げ)の関税を課すことを発表した。第122条は、5カ月間最大15%の関税を課すことを可能にしており、その後関税を継続するには議会の承認が必要だ。(政権が新たな大統領令で関税を再び延長できるかどうかは不明だ。)

しかし、真の疑問は、これらの代替関税が合法なのか、それとも先週金曜日に無効とされた関税のように違法なのかということだ。第122条に基づく関税は、国際収支危機への対処を明確に意図している。これは、アメリカがまだ金本位制(the gold standard)だった。1960年代と1970年代に苦闘していた問題だ。その後、アメリカは通貨を自由変動相場制に移行しており、理論的には国際収支危機は発生し得ないため、新たな関税も違法となった。国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストのジーナ・ゴピナスは、世界最大かつ最も流動性の高い経済が国際収支危機に直面しているとは考えていない。

しかし、誰もが同意している訳ではない。現在外交問題評議会に所属する、尊敬を集める元米財務省高官のブラッド・セッツァーは、アメリカの経常収支状況は1974年の法律で定められた条件を基本的に満たしていると主張した。

また注目すべきは、トランプ政権が最高裁判所への提出書類の中で、第122条に基づく関税は現在の状況には適用できないと主張し、だからこそカーター政権時代の法律を前例のない形で適用し、各国により高い関税を課さざるを得なかったと主張した点である。

新たな関税はほぼ確実に訴訟を呼ぶだろうが、近い将来には問題にはならず、あるいは審理されることさえないだろう。(裁判所が最終的に、広範な新たな関税概念を持つ行政府に敬意を払うならば問題は生じるだろう。)新たな関税は、連邦議会が更新を決定しない限り、7月下旬に失効する。

それまでに、トランプ政権はプランCDを準備したいと考えている。これらには、1974年通商法第301条の更なる活用が含まれる。これは、政権が「差別的(discriminatory)」行為を理由に中国に関税を課す際に繰り返し利用してきた、より明確な貿易救済措置である。第301条関税をめぐる法的疑問は少ないものの、実施には時間がかかる。米通商代表部(USTR)はその件で残業を続けている。

その他の可能性のある措置としては、1962年通商拡大法第232条に基づく「国家安全保障」関税(the “national security” tariffs)の更なる活用が挙げられる。米商務省は既に、木材や大型トラック部品といった分野の国家安全保障を守るために関税を利用する件について、12件の調査を進めている。別の選択肢としては、1930年スムート・ホーレー関税法(そう、あのスムート・ホーレー法だ)の新たな斬新な活用が挙げられ、これは更なる法的争点を招く可能性がある。

法的措置に関しては、直ちに行われる措置として、アメリカ政府が輸入業者から徴収した1300億ドルから1750億ドルの税金の還付が行われる予定だ。これは後に違法と判明した。昨年の法廷闘争中、アメリカ政府は、還付は容易かつ自動的に行われると述べていた。しかし、最高裁判所で敗訴した際には、還付は不可能であり、そうでなければ「企業福祉(corporate welfare 訳者註:政府が特定の企業や産業に対して行う補助金、減税、優遇措置)」に当たると警告した。既に数千社の企業が救済措置を申請している。高額な輸入品に高い代金を支払った消費者たちは、いずれにせよ還付を受けられないが、経験豊富な法律事務所の中には還付を受けられるところもある。

より大きな疑問は、最高裁判所のニール・ゴーサッチ判事が金曜日の判決に賛成する中で提起した疑問であるが、それは、連邦議会がほぼ1世紀を経て、アメリカの貿易・関税政策の立案者であり裁定者としての役割を取り戻すかどうかである。トランプ大統領の第二期目において、これまでのところ、貿易権限を行政府から奪還しようとする臆病で不運な試みはほんのわずかしかなかった。

さらに大きな疑問は、最高裁判所の非難と、トランプ政権が輸入品に課税するための未検証の方法を必死に模索していることが、過去半世紀以上にわたり前例のない繁栄の促進に貢献してきた貿易の流れを阻害することの有用性をめぐる、より広範な政治的議論を巻き起こすかどうかである。

トランプ大統領の関税は、アメリカの貿易赤字削減や製造業の再建という目標を達成していないものの、企業と消費者のコストを上昇させ、世界の他の経済圏に取引相手を見直すよう促すことには成功している。自由貿易への強い政治的支持があることを考えると、最高裁の重大判決と政権の慌ただしい対応は、行き詰まりを招いてきた政策を見直す機会となるかもしれない。

※キース・ジョンソン:『フォーリン・ポリシー』誌スタッフライター(地経学とエネルギー担当)。Blueskyアカウント:@kfj-fp.bsky.socialXアカウント:@KFJ_FP

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 アメリカのドナルド・トランプ政権がドンロー主義を基盤として、西半球をアメリカの勢力圏として固める意向を示し、ヴェネズエラ攻撃やグリーンランド領有希望の公表など動きを強めている。そうした中で、カナダはアメリカを脅威と見なし、懸念を深めている。アメリカとカナダの関係について、私たちは深く学ぶ機会を持たない。正直なことを言えば、「どっちも似たようなものだろう」「カナダはフランス語を使用する地域があるな」というくらいのことしか思わない。しかし、考えてみれば、あれだけの長い国境線で接している、アメリカとカナダの関係は改めて知っておくことは有益であろう。

 アメリカは建国してしばらくの間、カナダの領土に対して野心を持っていた。1776年にアメリカはイギリスから独立したが、北方には、カナダが存在した。そこには当たり前のことだがイギリスが存在した。イギリスはアメリカにとって脅威である。従って、アメリカの北方にいるイギリス勢力に懸念を持ち、カナダの領土を欲するということもあった。イギリスの勢力に対する懸念は、アメリカの外交政策の原理原則である、モンロー主義(イギリスの影響力を排除する)に通底する。そうした動きは20世紀に入るまで続いた。カナダが自治領となり、独立国家となることで、アメリカの懸念は減少した。

 今回、トランプ大統領がカナダをアメリカの51番目の州と呼ぶなどの行為から、カナダ側の懸念が高まった。そして、アメリカとカナダの間に歴史的にある緊張関係に注目が集まっている。NATO加盟国であり、G7の一角であるカナダをアメリカが攻撃することは考えにくい。たとえカナダ攻撃の命令が出ても、アメリカ軍は「違法な命令である」として、動かない可能性が高い。しかし、このような緊張関係を生み出してしまったことは、国際関係に大きな影響を及ぼす。アメリカは同盟国でも攻撃するかもしれないという懸念を世界各国に持たせてしまうことは、アメリカの国益にとって大きなマイナスである。そして、それを注視しながらほくそ笑んでいるのは中国とロシアである。

(貼り付けはじめ)

アメリカは再びカナダにとって最大の脅威となっている(The United States Is Once Again Canada’s Biggest Threat

-ドナルド・トランプは北隣国カナダとの伝統的に緊張関係にあった関係を取り戻した。

ケイシー・ミシェル筆

2026年2月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/03/us-canada-threat-trump-carney-history/

ここ数週間、アメリカが国境を強制的に拡大することはない、NATO加盟国が他の加盟国を侵略することはないといった基本的な地政学的事実が、ドナルド・トランプ米大統領によるグリーンランドへの継続的な脅威によって、突如として揺らぎ始めた。カナダのマーク・カーニー首相が最近述べたように、これは「断絶(a rupture)」であり、古い秩序が崩壊し、新しい秩序が生まれようともがく瞬間である。

大西洋横断関係の亀裂に注目が集まっている一方で、その断絶の多くはカーニー首相にとってはるかに身近な問題、すなわち米加関係に集中している。トランプ政権下のワシントンが今や脅威となっていることに、デンマークやグリーンランドだけが突然気づいた訳ではないからだ。カナダもまた、今やアメリカ政府がカナダの主権(sovereignty)だけでなく、カナダという国家そのものを公然と脅かしているのを目の当たりにしている。トランプ大統領自身もカナダを幾度となく脅迫し、アメリカによるカナダ併合を要求し、両国の国境を撤廃すべきだと繰り返し示唆している。これは単なるおしゃべりではない。先週、トランプ政権当局者がアルバータ州の分離独立派と直接会談を開始したことが明らかになった。彼らはアルバータ州をカナダから分離し、アメリカに併合しようと躍起になっている。

カナダをアメリカの51番目の州にするというトランプの脅しを一笑に付した時代はとうに過ぎ去った。新たな現実が突如カナダ全土に波紋を広げている。トランプ政権下のアメリカは、受け入れがたい現実かもしれないが、突如としてカナダにとって最大の国家安全保障上の脅威となった。

カナダ国民はようやくこの現実を受け入れ始めている。しかし同時に、これはカナダが直面するアメリカの危機の、はるかに長く、はるかに根深い部分を浮き彫りにする現実でもある。実際、過去80年ほど続いた米加友好関係、世界最長の国境線は概ね平和裡に保たれ、ワシントンとオタワはおそらく世界で最も緊密な同盟国となったが、もはや時代錯誤(anachronism)、アメリカが北米におけるはるかに広範な拡大の歴史において単に立ち止まっただけの例外的な出来事のように思えるかもしれない。

トランプ政権下のアメリカ合衆国は、むしろ北の隣国を威嚇し、安定した同盟関係よりも野蛮な拡大(brutish expansion)を志向し、カナダを地図から完全に消し去ろうとする、伝統的な立場に戻ろうとしていると言える。この歴史はアメリカ合衆国ではほとんど見過ごされているが、ワシントンが再び信頼できるパートナーになるために、そして再び安定した北アメリカ大陸を見るために、検討する価値がある。

アメリカ合衆国がカナダの領土を欲しがる歴史は、アメリカ合衆国建国初期にまで遡る。1774年、フィラデルフィアで開かれたばかりの大陸会議(Continental Congress)は、カナダ国民に書簡を送り、彼らは「小さな人々(small people)」であると主張し、イギリスの支配を打破するための、芽生えつつある取り組みに加わるよう呼びかけた。この呼びかけには脅迫的な言葉が込められており、カナダ国民は「北アメリカの他の全ての国を揺るぎない友とするのか、それとも根深い敵とするのか」を考えるべきだと述べている。書簡には、もしカナダ人がアメリカ植民地人(American colonists)への参加を拒否した場合、彼らは「征服されて自由になる(conquered into liberty)」だろうと付け加えられていた。

これは決して少数派の立場ではなかった。「大陸の一致した意見は、カナダは私たちの領土でなければならないというものだ」と、後のアメリカ大統領ジョン・アダムズは1776年に書いた。「ケベックは奪取されなければならない」とベンジャミン・フランクリンも同様に、カナダを将来のアメリカ領土と見なしていた。カナダの歴史家マデリーン・ドロハンが明らかにしたように、フランクリンは当時アメリカがイギリス領北アメリカ全域を支配していた状況下で、フランス系カナダ人(当時カナダのヨーロッパ系植民地人口のほぼ全員を占めていた)の強制同化(forced assimilation)、あるいは全面的な追放(outright eviction)を主張した。

もちろん、こうした初期の立場は全て無駄になった。アメリカ軍はケベックへの壊滅的な攻撃を開始したが、戦略のまずさと天然痘の蔓延によって頓挫した。その後のイギリスとの交渉において、フランクリンがカナダを占領しようとした試みも失敗に終わった。アダムズ自身が記したように、「ああ、カナダよ! あの一帯は不幸と恥辱に満ちていたことを私たちは発見した(Alass Canada! We have found Misfortune and disgrace in that Quarter)」ということになる。

しかし、これらの失敗によって、アメリカのカナダに対する計画が終わることはなかった。米英戦争中、アメリカ軍は再びイギリス領カナダを視野に入れ、ある将軍はカナダを「アメリカの一部になる(one of the United States)」だろうと発言した。カナダ併合(Canadian annexation)は、この戦争全体の明確な目標ではなかったかもしれないが、この戦争自体、北アメリカ中部の大部分からイギリスの要塞を追放し、アメリカの拡張主義に対するイギリスの障壁を事実上終わらせたが、アメリカが大陸の覇権へと急速に突き進む、押しつけがましく、奪い取る大国であるというイメージを確固たるものにした。

その現実は、アメリカの大陸帝国主義(United States’ continental imperialism)が頂点に達した19世紀半ばに表面化した。当時、英米共同所有地として管理されていたオレゴン準州をめぐる紛争が続く中、米大統領候補ジェームズ・ポークの支持者たちは、太平洋岸北西部の北緯54度線までの全域に対する主権を放棄するよう英領カナダを説得する手段として、「54か40か、さもなくば戦え!(Fifty-Four Forty or Fight!)」と繰り返し叫んだ。ポークは最終的に全面戦争を諦め、北緯49度線までのアメリカの主権を確保した(その代わりにメキシコの分割に注力した)。それでも、ポークの帝国主義的支持者たちは止まらなかった。「明白な運命(Manifest Destiny)」という言葉の生みの親とされるジョン・オサリバンが書いたように、カナダの領土を含む「神の摂理によって割り当てられた大陸に広がることは、依然として明白な運命である(manifest destiny to overspread the continent allotted by Providence”—including Canadian territory.)」ということになる。

南北戦争(the Civil War)はアメリカを分裂させ、数十万人ものアメリカ人の虐殺を招いたが、それでもアメリカのカナダに対する計画を阻止することはほぼできなかった。戦争終結直後、アメリカはアラスカ購入を確定させ、帝政ロシア(tsarist Russia)から領土を獲得した。しかし、この購入は地政学的な空白の中で行われた訳ではない。購入を主導した国務長官ウィリアム・スワードは、アメリカが支配するアラスカがブリティッシュコロンビア、ひいてはそれ以上の領土を獲得する鍵となると見ていた。「自然は、この大陸全体が遅かれ早かれ、・・・アメリカ合衆国の魔法の輪の中に入るように設計している(Nature designs that this whole continent … shall be, sooner or later, within the magic circle of the American Union)」とスワードは1867年に聴衆に語った。ヴァージニア大学のアラン・テイラーが、この時代に関する傑出した歴史書の中で述べているように、「アメリカ人は(アラスカの)獲得をカナダに対する締め付けとして歓迎した」。彼らがすべきことはただ待つことだけだった。そうすれば、カナダは彼らのものになるはずだったのだ。

しかしながら、カナダ人は異なる方向へと進んだ。アメリカのアラスカ購入は、カナダを分裂させるどころか、主権国家としてのカナダと完全に独立したカナダのアイデンティティの確立に直接つながった。ジョン・マクドナルドをはじめとする指導者たちの指導の下、カナダ人は全国規模の連邦を発足させ、その後数年間で次々と州を新たなカナダ自治領に加えた。アメリカの併合論者(U.S. annexationists)の餌食になるのではなく、カナダは統合を進め、アメリカのさらなる拡大を鈍らせ、150年以上続く独立した国家としての地位を確固たるものにした。

建国の父たち(the Founding Fathers)のカナダに対する領有権主張、北の隣国に対するアメリカの脅威の一貫性、アメリカの脅威に直面したカナダの統合といった要素は全て、ごく最近まで、魅力的な歴史の脚注、より激動の時代を捉えたスナップショットだった。1890年代にアメリカの政治家たちが潜在的な戦争を警告し、1910年代には「カナダのあらゆる場所に星条旗を掲げる」よう求め続け、1930年代にはワシントンがカナダに対する有事の戦争計画を策定したにもかかわらず、カナダの主権に対するアメリカの実際の脅威は大幅に減少した。実際、米加関係は非常に緊密になり、良好な関係は最終的に当然のことと見なされるようになった。ワシントンが維持した最も緊密なパートナーシップは、安定した北アメリカの安全保障体制によってアメリカの世界的な支配力の拡大が可能になり、背景の雑音のようなものへと薄れていった。

そして、全ては崩壊した。トランプのグリーンランドに対する脅しは、カナダに対する脅しと並行して行われてきた。実際、グリーンランド危機のピーク時でさえ、NBCニューズはトランプがカナダへの「密かに関心を強めている(privately ramping up his focus)」と報じ、カナダの地図にアメリカ国旗を掲げた地図を見せたほどだった。さらに、カナダ国民がよく認識しているように、トランプのグリーンランドに関する言説、つまりグリーンランドを守れるのはアメリカだけであり、そもそもデンマークにはグリーンランドに対する権利はないという言説は、カナダの北極圏の島々にも容易に当てはまり得る。その多くはグリーンランドに隣接している。

トランプだけではない。MAGAのイデオローグであるスティーヴ・バノンは、カナダに対するアメリカの宗主権を幾度となく声高に訴えてきた。バノンは最近、「かつてカナダにとって大きな障壁であった北極圏北部が、今や最大の脅威となっている」と述べ、カナダの「弱点(soft underbelly)」だと主張した。さらにバノンは、カナダは「次のウクライナになる可能性がある」と述べた。ウクライナには「アメリカに敵対する人々」が溢れているそうだ。そして、これは北極圏だけではない。今週、『フィナンシャル・タイムズ』紙は、トランプ政権当局者がアルバータ州の極右分離主義者と複数回直接会談したと報じた。彼らはアメリカへの加盟の熱意を隠そうともしていない。

国境を拡大し、近隣の分離主義運動を煽り立てようとする新帝国主義大国(a neoimperialist power)である。これは全て、地域的支配を主張し、近隣諸国を分裂させる手段だ。実際、カナダとウクライナの類似点は、不快なほどに緊密になっている。しかし、カナダ国民は、かつてウクライナ国民であったのと同様に、この事態を黙って受け入れるつもりはない。カナダ国防省は新たな文民・民間人防衛軍(a new civilian defense force)の構想を練り始めており、オタワ政府は1世紀ぶりに、アメリカの侵略への対応をモデル化した軍事演習の計画を開始した。

そしてカナダ当局はついに、そして公に警鐘を鳴らし始めた。元カナダ国連大使のボブ・レイは『グローブ・アンド・メール』紙に対し、カナダに対するアメリカの脅威は「存亡の危機」(U.S. threats against Canada are “existential)に瀕していると語り、元カナダ国防長官はトランプ大統領の行動はカナダを警戒態勢に追い込むことになると述べた。あるカナダの紛争研究者は『ガーディアン』紙に次のように語った。「私たちはアメリカの友好と寛大さ(the friendship and benignness of the United States)に大きく依存してきたのに、突然、その両方が消えてしまった。消滅してしまった。今になってようやくカナダ国民がこの意味を真に理解し始めたのではないかと危惧している」。これはまさに衝撃的な出来事であり、かつて北アメリカに存在していた安定がもはや当然のこととは考えられなくなったことを示している。NORAD(北アメリカ航空宇宙防衛司令部)から砕氷船団、情報収集に至るまで、あらゆるものが突如として未解決の問題となり、カナダの領土保全さえも疑問視されるようになった。

しかし、トランプ大統領は恐らく気づいていないだろうが、カナダはカナダ国外のほとんどの人々が知るよりもはるかに長く、アメリカの計画を撃退してきた歴史を持っている。その歴史は、ここ一世紀よりも今の方がはるかに意味を持つ。それは全て、始まったばかりの断絶(a rupture)のおかげだ。

※ケイシー・ミシェル:ヒューマン・ライツ財団の「クレプトクラシー対策プログラム」の責任者。『アメリカのクレプトクラシー:アメリカはいかにして史上最大のマネーロンダリング計画を作り上げてきたのか(American Kleptocracy: How the U.S. Created the World’s Greatest Money Laundering Scheme in History)』の著者。Xアカウント:@cjcmichel

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 古村治彦です。

 先日の総選挙での自民党の大勝を受けて、友人、知人から「選挙についてはどのように考えているか」という質問を受けた。これは私にはなかなか答えるのが難しい質問である。個人的には、選挙戦期間中に複数のメディアの選挙情勢分析で「自民党が300を超える議席獲得」という報道があり、ショックを受けつつ、「まさかそんな」と考えていただけに、自民党大勝という結果が突きつけられ、呆然としてしまった。しかし、いつまでも呆然としていられない。何か考えなければいけない。

 今回の総選挙の結果は小選挙区制の特徴である得票率と実際の議席占有率の乖離の大きさということが結果をセンセーショナルに見せている。2009年の総選挙でも同様のことが起きている。小選挙区制が良いのか、比例代表制が良いのか、もしくは別の選挙制度が良いのかということは結論が出ない議論である。それぞれに長所、短所がある。選挙については数千年の歴史があるが、選挙制度の精緻な研究は数十年の研究しかされていない。専門家たちの英知を集め、人々の議論の活発化が望まれる。

 私は、以下のスティーヴン・M・ウォルトの論稿を参考にして、今回の日本の総選挙の結果は、西側先進諸国に共通するある心性(mentality)がこのような結果を生み出したと考えている。それは、ウォルトが書いているように、「不確かな未来への恐怖(the fear of an uncertain future)」だ。西側先進諸国はどこも程度の差はあれ、少子高齢化が進み、経済成長も鈍化敷いている。最も厳しいのは日本であるが、他の先進諸国も同様である。そして、世界に目を転じてみれば、BRICSを中核とする「西側以外の国々」の活況や経済成長が目に入る。日本にも多くの外国人観光客が訪問し、「日本は安い」として食事や買い物を楽しんでいる。その様子を私たちは見ている。そして、「日本は安く買われる国だ」「日本は衰退しつつある」ということを肌で感じるようになっている。他の西側先進諸国もこの点で共通している。

こうした中で、強いリーダーの存在が求められるようになっている。強いリーダーは実際に強かったり、賢明であったり、頭脳明晰であったりする必要はない。嘘でも誇張でも何でも言い切り、その後に絶対に謝ったり、撤回したりしない。空とぼけるくらいの図太い人物で、強さを演出できる人物であれば良いのだ。日本はまさにそのような状況になっている。高市早苗首相は私が今書いた通りの人物であり、彼女の指導者としての正統性は、日本初の女性首相であるという目新しさと故安倍晋三元首相の正統な後継者であるという演出にある。そして、人々は強いリーダーを求め、そして、近代的な価値観を否定することが「改革」だと勘違いをする。

これらは全て、恐怖から発していることだ。未来が怖いのだ。そして、現状を正確に分析して受け入れることが怖いのだ。そして、強さを演出する指導者の語るお花畑の話を支持する。南鳥島近海で採掘されるレアアースが日本を豊かにするという夢物語を信じる。自民党が公約したのだから消費税減税がすぐに実行されるという与太話を信じる。信じたいのだ。そして、裏切られる。そして、また、新しく自分たちを騙してくれる指導者を探す。そのようにして国を滅ぼしていく。

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恐怖がいかにしてリベラリズムを殺したか(How Fear Killed Liberalism

-政治における不安感が積み重なり人々の楽観主義の時代は終焉した。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/02/fear-populism-liberalism-trump-far-right/

学者、専門家、政治家たちは常に誤った予測をするが、その間違いの中には本当にとんでもないものもある。ちなみに、過去50年間で最悪の地政学的予測として私が挙げるのは、冷戦後の世界が平和でますます繁栄するリベラリズムの未来へと容赦なく押し流されていくという信念だ。フランシス・フクヤマの有名な「歴史の終わり(end of history)」という主張に表れているが、これは彼に限ったことではない。この見解は、民主政治体制が広がり続け、貿易と投資に対する障壁が全ての人々の利益のために減少し続け、ナショナリズムが衰退し、国境はますます重要ではなくなり、国際機関が最も困難な地球規模の問題に対処するために立ち上がり、戦争の危険は、指導者たちがそのメモを受け取っていない、弱くますます無関係になっている少数のならず者国家(rogue states)に限定されるだろうと想定していた。

それが全て実現していたらどんなに素晴らしいことだっただろう。1990年代に多くの賢明な人々がこの魅力的なヴィジョンに熱狂したのも無理もないことだ。ソヴィエト型の共産主義は崩壊し、アメリカ合衆国は力の頂点に君臨し、世界の多くの国々がリベラリズムの定式を受け入れているように見えた。民主政治体制は東ヨーロッパや中南米に広がり、グローバライゼーションは加速し、人権尊重は勢いを増し、専門家も政治家も、中国をはじめとする一党独裁国家(one-party states)が徐々に多党制民主政治体制(multiparty democracy)へと移行していくと予想していた。アメリカの政策決定層はリベラルな国際主義者(liberal internationalists)とネオコン(neoconservatives)が支配し、世界をアメリカのイメージに沿って再構築し、グローバルなリベラルな秩序を創造することに強く関与していた。

2025年まで早送りしよう。過去四半世紀を振り返ると、こうした楽観的な予測はほぼ完全に間違っていたことが明らかだ。中国はより権威主義的になり、ロシアは真の選挙民主政体を短期間試した後、独裁政治へと逆戻りした。実際、民主政体はここ20年近く、世界中で着実に衰退しており、アメリカ自身も例外ではない。中国、ロシア、そしてアメリカは収斂しつつあるが、アメリカはむしろこれらの腐敗した独裁政治体制(corrupt autocracies)に似てきている。トランプ政権はほとんど抑制なく行政力(executive order)を拡大し、法の支配(rule of law)は崩壊し、トランプは習近平が中国で行ったように、大学、法律事務所、民間企業から譲歩(concessions)を強要している。トランプ政権は、卑劣で抑制のきかないトランプ大統領の怒りを買った者に対して個人的な復讐を仕掛けている。そして今、連邦軍は首都ワシントンDCに展開し、主に一般市民を威嚇することを目的とした武力誇示を行っている。グローバライゼーションは保護主義の台頭に取って代わられた。現在、インド、ハンガリー、そしてアメリカ合衆国では非自由主義的な指導者が政権を握っている。そして、国連、世界貿易機関、世界保健機関、ヨーロッパ連合、核不拡散体制といった国際機関は、30年前よりも弱体化している。

要するに、アメリカ(そしてヨーロッパ)の外交政策を支えてきたリベラルな楽観主義は、全く的外れだったことが判明した。こうした展開の原因として、アメリカの傲慢さ(hubris)、「永遠の戦争(forever wats)」の悪影響、ソーシャルメディアの有害な影響、中国の経済発展、2008年の金融危機、エリート層の説明責任の欠如、格差の拡大など、様々な点を指摘するのは容易だ。そして、リベラルな世界秩序の拡大に向けた努力が失敗した理由を説明する書籍を執筆した人たちもいる。しかし、そこには、アメリカを含む多くの場所で政治が非リベラルな方向へ転じた理由を説明する、より深い力が働いていた。そして、それら全ての深層的な力に共通するのは、不確かな未来への恐怖(the fear of an uncertain future)だ。

今日、それほど裕福でも恵まれたわけでもない人々が、どれほど多くのことを心配しているかを考えてみよう。

第一に、経済の不確実性の高まりだ。これは、格差の拡大、腐敗と縁故資本主義(crony capitalism)の蔓延、人工知能(AI)とロボット工学の労働力への影響、多くの国における若者の失業率(一部のSTEM分野でさえも)、一部の経済大国における生産性の低迷、人口の高齢化、国際貿易やマクロ経済学を理解していない米大統領、またしても軽率な金融市場の規制緩和(一体何が問題になるというのか?)、そしてバブルの兆候を多く示す株式市場などが原因だ。もしあなたが既に超富裕層でなく、経済的な将来について少しでも不安を感じていないのであれば、あなたは注意を払っていないと言えるだろう。

第二のテーマは気候変動だ。その影響はますます顕著になり、ほぼ完全に有害で費用がかさみ、さらに悪化する可能性が高い。トランプとMAGAの世界は、この事実を否認し、問題をさらに悪化させるためにあらゆる手段を講じているかもしれない。しかし、物理法則や化学法則はソーシャルメディアの投稿を読んだり、フォックス・ニューズを見たりはしない。そして、ほとんどの一般人は、私たちがより暑く、より風が強く、より雨が多く、より危険な未来を迎えることを理解している。世界中の若者たちは、私たちが大きな問題を抱えていることを理解しており、彼らが子供を持つことに不安を抱く理由の一つでもある。

次に、大国間競争が再び到来する。一極化の時代は終わり、中国、ロシア、そしてアメリカ合衆国(そしてその他の国々)は対立し、新たな軍拡競争が始まり、直接衝突が起こり得る火種は数多く存在する。第三次世界大戦は避けられないものではないが、リスクは高まっている。より多くの国が核兵器の取得を試みる可能性が高く、長期的には安定化につながるかもしれないが、短期的には予防戦争(preventive war)への大きな動機付けとなり、私たちはさらに恐怖を抱く理由が増えることになる。

テロリズムについても忘れてはならない。確かに、ほとんどの人々がテロリズムに直面する実際の危険は常に誇張されてきた(あるいは、場合によっては政治的な目的で意図的に誇張されてきた)。しかし、テロリズムは依然として世界の一部の地域で深刻な問題であり、無差別的な政治的暴力行為への恐怖は、人々の認識に依然として大きな影を落としている。

さらに、移民や難民の問題もある。そして、様々な国が海外からの人々の流入に飲み込まれ、その結果、ある種の文化が消滅してしまうのではないかという恐怖がある。これは、白人至上主義運動(the white nationalist movement)の中心的な柱である「大人口置換理論(great replacement theory)」のような偏執的な幻想の背後にある恐怖だ。人口増加を切実に必要としている高齢化社会でさえ、この懸念に非常に敏感であり、アメリカ合衆国のような人種のるつぼ社会は、時計の針を戻そうと、障壁を築き、生産性の高い住民を追い出そうとしている。寛容なコスモポリタニズムの世界に溶け込む代わりに、「他者(other)」への恐怖は世界中で深刻な反発を引き起こしている。

しかし、待って欲しい。それだけではない! 専属の免疫学者を雇う余裕があったり、隠れ家としてプライヴェートアイランドを持っていたりしているのでなければ、おそらく次のパンデミックを心配していることだろう。私たちはここ数十年で、エイズ、SARS、エボラ、そしてもちろん新型コロナウイルスなど、すでにいくつかの大きな脅威を経験してきた。そして、またいずれ大きな脅威が起こるだろう(米保健長官ロバート・F・ケネディ・ジュニアの思い通りに事が運ぶなら、おそらくもっと早く起こるだろう)。

最後に、私たちが耳にする偽りの脅威を忘れてはならない。トランスジェンダーの人々、図書館の本、命を救うワクチン、ピザゲート事件、ワシントンDCをはじめとする民主党支持の都市での犯罪などだ。これらの脅威が全くの空想、あるいは極端に誇張されたものであっても、世界は民主政治体制では対処できない危険に満ちており、人々が本当に必要としているのは独裁者だ(the world is brimming with dangers that democratic systems cannot handle and that what people really need is a dictator)という、広く信じられている認識を助長することになる。もちろん、独裁者への依存は他の国々で非常にうまく機能したからだ。

不運なことに、人々は恐怖を感じると、何よりも保護を提供してくれる強力な権威を渇望する傾向がある。アルカイダによる911同時多発テロの後、アメリカ人は愛国者法の賢明さ、国内監視の拡大、そしてたとえテロとは全く関係のない外国の占領の妥当性について疑問を抱くことはなかった。人々は限界まで恐怖を感じると、事実が何であるかを理解し、どのように対応するかを慎重に検討するまで待つことはない。彼らは、誰かが指揮を執り、ただ危険に対処してくれることを望むようになる。

理想的には、有権者たちは、上記のような様々な困難な問題に効果的な対応策を講じるために24時間365日体制で働く、非常に有能な指導者を選ぶことになるだろう。しかし、恐怖心は、たとえそれが現実からどれほどかけ離れていても、強さと能力のイメージを巧みに演出する独裁者予備軍が売りつけるインチキ薬に、人々をいとも簡単に騙してしまう。野心的な独裁者は当然ながらこのことを知っているため、正当な懸念を誇張したり、架空の緊急事態をでっち上げたりすることで、権力の強化を正当化し、自らの行動の結果から人々の目を逸らそうとする。

フランクリン・ルーズベルト大統領は一期目の就任式で、「私たちが恐れるべき唯一のものは恐怖そのものである(The only thing we have to fear is fear itself)」という有名な言葉を残している。しかし、これは必ずしも正確ではない。遅滞なく対処する必要がある真の問題がいくつかあり、あなたがそれらを心配するのは当然だ。私たちが決して許されないのは、恐怖に麻痺したり、判断力を曇らせたりすることだ。私たちが直面する最大の危険は、将来への不安に駆られて、問題を悪化させる兆候を示し、個人的な力を得たいという欲によってより自由な世界というリベラルなヴィジョンを消えゆく記憶にしてしまう可能性のある指導者に頼ってしまうことだ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント: @stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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