古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2026年03月

 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権の目玉政策にゴールデンドーム・ミサイル防衛システム(Golden Dome missile shield)がある。政権発足直後の2025年1月27日に、トランプ大統領はゴールデンドーム計画を発表した。これは、イスラエルのミサイル防衛システムであるアイアンドームをアメリカに適用する計画だ。国土の大きさを考えると、大規模な計画になり、約1850億ドル(約30兆円)規模の大型プロジェクトである。私は拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(2025年11月、ビジネス社)でゴールデンドーム計画について分析を行った。そして、これは、ピーター・ティールが率いるパランティア・テクノロジーズ社、イーロン・マスクが率いるスペースX社、パルマー・ラッキーが率いるアンドゥリル・インダストリーズ社が重要や役割を果たす、特に、オペレイティングシステムで重要な役割を果たすと書いた。

 以下の記事にあるように、パランティア社とアンドゥリル社がゴールデンドーム計画のソフトウェア開発を行っているということが報道された。この約30兆円に及ぶ巨大プロジェクトの根幹を両社が請け負うということである。さらに私は両社は長期的にゴールデンドーム計画に関与し、長期契約(サブスクリプション)で安定して利益を上げるということを目指しているとも書いた。実際にその通りに動いているようだ。

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 

 何度も宣伝になり申し訳ないが、是非、拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』をお読みいただきたい。

(貼り付けはじめ)

アンドゥリル社とパランティア社がゴールデンドーム・ミサイル防衛システムのソフトウェアを開発中と情報源が述べる(Anduril, Palantir developing Golden Dome missile shield's software, source says

ロイター通信

2026年3月25日

https://www.reuters.com/business/aerospace-defense/anduril-palantir-developing-golden-dome-missile-shields-software-source-says-2026-03-24/

2026年3月24日(ロイター通信)。米大統領ドナルド・トランプが推進するミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」構想向けソフトウェアの開発で、アンドゥリル社とパランティア・テクノロジーズ(PLTR.O)社が協力しているとこのテーマに詳しい取材源が火曜日に取材に対して答えた。

1850億ドル規模のゴールデンドーム・ミサイル防衛計画(Golden Dome missile defense project)は、弾道(ballistic)ミサイル、巡航(cruise)ミサイル、極超音速(hypersonic)ミサイルを迎撃できる宇宙配備型防衛システムの構築を目指しており、数百社が防衛システム開発で役割を果たそうとして競っている。

アンドゥリル社とパランティア社は、ゴールデンドーム構想の発足当初から参画に関心を示してきた。ロイターは昨年、アンドゥリル社とパランティア社がイーロン・マスクの率いるスペースX社と共同でプロジェクトの様々な部分で協力していると報じた。

アンドゥリル社は昨年(2025年)11月、ゴールデンドーム関連の小規模契約を6件獲得し、競合するミサイル防衛システムの試作機を開発する企業の1つにも選ばれた。情報源によると、アーリリア・テクノロジーズ社(Aalyria Technologies)、スタートアップ企業のスケールAIScale AI)、そしてソフトウェア企業のスウープ・テクノロジーズ社(Swoop Technologies)もこのプロジェクトに取り組んでいるという。

各社はロイターのコメント要請に期日までに応じなかった。この件は『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙が火曜日に最初に報じた。

ロッキード・マーティン社(LMT.N)、RTX社(RTX.N)、ノースロップ・グラマン社(NOC.N)は既に主契約企業としてこのプログラムに参加している。

プログラムの責任者は先週、主要な宇宙関連能力の開発を加速させるため、プロジェクト費用が100億ドル増の1850億ドルになったと述べた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
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 古村治彦です。

 アメリカとイスラエルがイランに対して大規模攻撃を行ったが、それ以前はオマーンを仲介役として核開発に関する交渉を行っていた。イギリスの『ガーディアン』紙の報道によると、イラン側の譲歩によって核兵器開発繋がる物質の放棄を受け入れ、アメリカによる経済制裁の大幅解除に合意直前であったが、結局、イスラエルの使嗾によって、アメリカとイスラエルはイランに大規模攻撃を行った。アメリカ軍の制服組はイラン攻撃のリスクの大きさを助言し、JD・ヴァンス副大統領(海兵隊時代にイラク派遣を経験)は攻撃に消極的で、「攻撃するならば、長引かないように、大規模で短期間に終わるようにすべき」と主張していた。結局、ドナルド・トランプ大統領によって攻撃が決断されたが、当初の想定と大きく外れ、戦争は長引くことになった。攻撃開始から1カ月弱が経とうとしているが、停戦の目途は立っていない。

 アメリカのウクライナと中東(イラン)の外交交渉の最前線に立っているのが、スティーヴ・ウィトコフ特使とトランプ大統領の娘婿ジャレッド・クシュナーである。ウクライナ戦争の停戦がうまくいかず、イランとの関係も結局戦争になってしまったことで、ウィトコフとクシュナーに対する評価は低い。実際、以下の論稿にあるように「落第」「不合格」「F」という評価になっている。しかし、私はあえて両者を擁護したいと思う。

ウクライナに関しては、トランプが選挙戦から政権発足直後のように、ウクライナに対する支援を打ち切るというカードを使って、ウクライナのヴォロディミール・ゼレンスキー大統領に停戦を迫っていれば、停戦は実現していた可能性は高い。もちろん、条件交渉はする必要があるが、大枠ではその方向に進んでいただろう。しかし、トランプが中途半端にウクライナ支援を継続するという方向転換を行ったために、ゼレンスキー大統領は嫌な決断を先延ばしできる状況になっている。これでは条件交渉もできない。

 イランについては、戦争開始の隠れ蓑のために交渉を続けさせられていたということになる。ガーディアン紙の報道の通りならば、イランの譲歩もあって、アメリカとの合意は間近であったようだ。それで困難な立場になるのがイスラエルだ。イスラエルはイランが核兵器外の通常兵器を維持したままで、アメリカの経済制裁解除を勝ち取ってしまえば、経済力の上昇と共に軍事力強化も進み、中東地域におけるイスラエルの優位性が崩れてしまう。そして、アメリカの西半球撤退もあり、孤立してしまう危険性を避けるために、アメリカを中東地域に縛り付けておくために、戦争を選択した。トランプ周辺には親イスラエル人脈が張りめぐらされている。ウィトコフとクシュナーも親イスラエルである。しかし、交渉役としてイランと合意直前であったことは強調されるべきだろう。

 交渉役の出来ることは限られている。その後ろの指導者たちの意向が最重要である。交渉役が仕事を失敗していると非難することは簡単だが、その後ろにいる指導者たちこそが最も批判されるべき立場である。

(貼り付けはじめ)

スティーヴン・ウィトコフとジャレッド・クシュナーの外交手腕は落第(F評価)(Witkoff and Kushner Get an F in Diplomacy

-経験不足で任務に手を広げすぎたトランプ政権の特使たちは3つの最前線で失敗した。

アーロン・デイヴィッド・ミラー、ダニエル・C・カーツァー筆

2026年3月3日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/03/witkoff-kushner-trump-fail-diplomacy-iran-ukraine-gaza/

オマーンとスイスで行われたアメリカとイラン交渉の失敗と、戦争への急展開は、イランとの交渉がいかに困難であるかを痛烈に思い起こさせる出来事である。しかし同時に、ドナルド・トランプ米大統領が紛争解決のために構築した交渉体制が、いかに混乱を極めているかも露呈している。

アメリカ外交の歴史において、大統領が3つの歴史的な紛争の解決を、親友と義理の息子に同時に委ねるという前例は存在しない。ヘンリー・キッシンジャー元国家安全保障担当大統領補佐官兼国務長官は、1970年代に中国との国交正常化、ヴェトナム戦争に関するパリ和平協定、そして1973年の第四次中東戦争後の3つの撤退協定という、3つの偉業を成し遂げた。しかし、スティーヴン・ウィトコフとジャレッド・クシュナーはキッシンジャーとは似ても似つかない。そして戦略的思考という点では、トランプはリチャード・ニクソンとは比べ物にならない。

トランプの家族や友人にアメリカの外交を委ねることには、もちろんメリットもある。それは、仲介者がトランプと個人的なつながりや信頼関係を築き、主要な意思決定者と接触できる点だ。しかし、デメリット、特に大統領執務室に大人の監督者がいないという点は、そうしたメリットをはるかに上回る。トランプの三段構えの交渉術(three-ring negotiating)は失敗に終わっている。その理由は以下の通りだ。

●戦略における空白(Strategic vacuum

ロシア・ウクライナ、イラン、イスラエル・パレスティナという3つの紛争におけるアメリカの政策は、方向性が欠如しており、全体的な戦略もなく、手段と目的の連携もほとんど取れていない。トランプ大統領はウクライナのウォロディミール・ゼレンスキー大統領に対して強い偏見を示し、この紛争における明白な侵略者であるロシアに圧力をかけることにも同様に消極的である。制裁(sanctions)を通じてロシアの諸機関にかけられたわずかな圧力は、トランプ大統領がウクライナへの圧力、すなわちヨーロッパにウクライナ向けアメリカ製兵器の費用を負担させ、キエフの長距離攻撃能力を否定することでウクライナにかけた圧力に比べれば、取るに足らないものだ。アメリカの交渉担当者は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領に戦争停止を迫ろうとしない大統領によって身動きが取れなくなっている。表面的には、プーティン大統領の戦争目的からすれば、いかなる合意もほぼ不可能である。それにもかかわらず、トランプ大統領の指示を受けたクシュナーとウィトコフは、ロシアに迎合し、トランプ大統領が持つ強力な影響力を行使することを拒否することで、自ら交渉の場から退いてしまった。

現在進行中のアメリカとイスラエルによるイラン攻撃も、同様に戦略的なポイントを欠いている。トランプ大統領と報道官たちは、戦争開始を正当化するに足る重大な理由を説明しようと、必死に言葉を選んでいる。トランプ大統領は体制転換(regime change)を理由に挙げたものの、その後の発言ではその点に触れていない。一方、ピート・ヘグセス米国防長官は体制転換ではないと述べている。ダン・ケイン米統合参謀本部議長は、イランの海外への軍事力投射能力(Iran’s capacity to project its power abroad)を破壊することを目的としたと述べた。トランプ大統領は、イランのミサイルがアメリカに向けて発射される寸前だと述べたが、軍関係者はイランがアメリカを攻撃する計画を立てている証拠はないと述べている。

ウィトコフとクシュナーは、トランプ大統領の意図を察知し、その指示の下、トランプ大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が戦争を画策する一方で、イランと交渉し、実現不可能な要求を突きつけるという欺瞞戦略(a deception strategy)を実行したことは明らかだ。2025年6月のイランとの戦争と現在の紛争の両方において、トランプ政権は戦争が差し迫っていることを知りながら、フォローアップ協議を予定し、マルコ・ルビオ米国務長官のイスラエル訪問まで計画していた。オマーン外相は、アメリカが戦争に突入する前日、ワシントンで不運にも孤立無援の状態に陥った。

ガザ地区については、ウィトコフとクシュナーの茶番劇(charade)はさらに顕著だ。トランプ大統領は停戦を皮切りに、イスラエルに20項目の和平案を受け入れさせることに成功したが、その後は真剣な交渉ではなく、一連のパフォーマンス的な行動が続いている。いわゆる「平和評議会(Board of Peace)」はガザ地区への資金調達に役立つ可能性を秘めているが、ハマスに非武装化(demilitarizing)を、イスラエルに撤退(withdrawing)を迫る真剣な圧力がなければ、ハマス支配地域では資金となる建設事業は存在しないだろう。ネタニヤフ首相とハマスは明らかに現状維持(status quo)を望んでいる。

クシュナーがダヴォスで開催された今年の世界経済フォーラムで発表したガザ地区の近未来計画(a day-after plan)は、ホームレス、食糧不安、健康被害が依然として存在する社会について、ディズニーランドのような幻想的な空想を描く内容に過ぎなかった。ガザ和平案にはパレスティナ側の高官代表は関与しておらず、パレスティナ自治政府の役割もほとんどなく、トランプ政権はヨルダン川西岸におけるイスラエルの併合政策を抑制しようとする努力すら見せていない。ましてや、イスラエルが現在占領しているガザ地区の50%以上からイスラエルを撤退させるなど、なおさらである。イランとの戦争はトランプ案の実施を遅らせるだけであり、ガザ地区は分断され、機能不全に陥り、散発的な暴力が蔓延するだろう。

●専門知識もなく、プロセスもない(No expertise, no process
ウィトコフとクシュナーの不動産取引能力を評価するには、私たちよりも、不動産業界の専門家たちの方が適任だろう。外交官として数十年の経験を持つ私たちは、ウィトコフとクシュナーのティームがイスラエル・パレスティナ紛争の根深い問題、共有する宗教空間の重なり合い、そして双方の要求とニーズについて、明らかに無認識もしくは無理解であると結論づけることができる。これは確かに不動産取引の一面もあるが、それ以上に複雑な問題だ。トランプ政権1期目、クシュナーは私たちの1人に、過去の合意や交渉について聞く気はないと語った。その後、イスラエルとパレスティナ間の和平交渉の過去の試みから学ぶべきことは何もないと宣言した。クシュナーはアブラハム合意ではより大きな成果を上げた。しかし、トランプ政権のパレスティナに対する政策は完全に失敗だった。実際、トランプが1期目にパレスティナとの関係を断ち、イスラエルが既に支配している歴史的パレスチナ・イスラエルの大地(Eretz Israel、エレツ・イスラエル)の78%に加えて、ヨルダン川西岸の30%を併合することを容認する一方的な計画を提示したことは、外交がいかに現実からかけ離れていたかを如実に示している。

ウクライナにおいて、トランプ大統領はウィトコフとクシュナーに対し、ゼレンスキー大統領に自国領土の戦略的に重要な部分を、ウクライナ全土の征服という長年の目標を放棄する気配すら見せない侵略者に割譲するよう迫るよう指示した。プーティンの特使キリル・ドミトリエフは、トランプ政権に対し、トランプや側近、その家族のビジネス利益につながるロシアでの商業取引案で誘惑してきた。アメリカ側交渉担当者は、紛争の複雑な背景や大西洋横断・世界的安全保障への広範な影響にはほとんど関心を示さず、むしろウクライナがロシアの要求に屈服する形で合意を急ぐ姿勢を見せている。

同様にイランでは、オマーンのホスト兼仲介者たちが、ウィトコフとクシュナーが真剣に交渉しているという幻想を剥ぎ取った。トランプが2018年に包括的共同行動計画(JCPOA)から離脱した後、新たな合意達成のハードルは越えられないほど高くなった。イランがウラン濃縮制限や侵入的な査察を受け入れる可能性はあったが、濃縮をゼロにすることを期待するのは最初から無理な話だった。ウィトコフとクシュナーは、JCPOAを破棄した大統領から「無償の濃縮ウラン供給(free enriched uranium)」を約束されても、イランがそれを信じるだろうと本気で考えていたのだろうか? 戦争直前にフォックスニューズで語ったウィトコフの発言は、イランがアメリカの圧力に「屈服(capitulated)」しなかったことに驚愕していることを露呈していた。

●規律の欠如(No discipline

トランプ大統領と交渉担当者は、国内外を問わず、交渉や戦略的コミュニケイションにおいて一切の規律を示していない。ガザ問題では、トランプがネタニヤフ首相の目標に同調し、イスラエルの利益に従属する姿勢が致命的な欠陥となっており、1990年代半ば以降のアメリカの仲介努力の大半を損なってきた。イスラエル・パレスティナ紛争には2つの当事者が存在するが、ウィトコフとクシュナーはネタニヤフの利益のみに対処しようとしてきた。

トランプのトゥルース・ソーシャルのプラットフォームが国内政治で彼に提供する利点はあるが、外交政策、特にこれら3つの交渉においては、それは極めて大きな負担となっている。ウィトコフとクシュナーがロシア、ウクライナ、イスラエル、オマーンと接触する一方で、トランプはSNSで威嚇と空虚な誇大発言を繰り返している。結果としてアメリカの交渉相手は、何を信じればよいのか全く判断がつかない状態だ。

このような外交を行うことがいかに困難なことかを私たちは知っている。特に、紛争終結よりも自らの地位維持やイデオロギーへの固執に重きを置く指導者たちとの交渉はなおさらだ。私たちもその場に立ち会い、成功と失敗を経験してきた。したがって、キッシンジャーを復帰させ、ジェームズ・ベイカーとタッグを組ませ、ジョージ・HW・ブッシュのような外交判断力と経験を持つ大統領をホワイトハウスに据えたとしても、ロシアとウクライナ問題を打開できるかどうかは分からない。ましてやイランやイスラエル・パレスティナ紛争の解決などなおさらである。仲介者がどれほど有能であろうと、紛争当事者双方に「合意が望ましく実現可能である(a deal is desirable and possible)」という共通の切迫感がなければ、仲介者がインセンティヴとディスインセンティヴを用いて合意へと導くことはできない。

しかし、気まぐれな大統領、戦略の欠如、強い偏見、素人同然で無理な交渉担当者、そして自己利益追求の度合いが重なり、ウィトコフとクシュナーが3つの交渉全てで失敗に終わった理由が明らかになった。これらの紛争のいずれも、最良の状況下でも外交的解決が可能だったかどうかは定かではない。しかし、トランプ大統領の失敗したリーダーシップと、ウィトコフとクシュナーの失敗した交渉によって、状況は悪化する一方だ。アメリカ、イスラエル、イランは戦争状態にあり、ロシアとウクライナは依然として戦争状態にあり、イスラエルとハマスも事実上戦争状態にある。寛大に評価するならば、クシュナーとウィトコフには今学期の成績評価を「評価保留(incomplete)」とするべきだろう。しかし、実際に何か重要な成果を出すまでは、彼らにはF評価を与えざるを得ない。

※アーロン・デイヴィッド・ミラー:カーネギー国際平和財団上級研究員。歴代の共和党政権と民主党政権の両方で米国務省の中東アナリスト兼交渉官を務めた経歴を持つ。著書に『偉大さの終焉:なぜアメリカはもう偉大な大統領を持てないのか(そして望まないのか)(The End of Greatness: Why America Can’t Have (and Doesn’t Want))』がある。Xアカウント:@aarondmiller2

※ダニエル・C・カーツァー:駐エジプト米大使、駐イスラエル元米大使を歴任。プリンストン大学公共国際問題大学院で外交と紛争解決について教鞭を執っている。Xアカウント:@DanKurtzer

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 古村治彦です。

 2026年4月7日(火)18時~20時で、独利言論フォーラム(Independent Speech Forum)の代表理事・編集長を務めておられる、鹿児島大学元教授の木村朗先生からお声がけをいただき、「トーク茶話会」を行います。木村先生とは鹿児島で以前にお目にかかってからのご縁です。
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茶話会のテーマは、「トランプ政権と世界秩序の変容〜日本の選択は?」です。茶話会では私が40分から50分ほどトークをした後に、お茶とお菓子をいただきながら、参加者の皆さまとお話をするという形だそうです。

今年1月のヴェネズエラ攻撃とニコラス・マドゥロ大統領拘束連行、2月末からのアメリカとイスラエルによるイラン大規模攻撃とイランによる報復攻撃によって、国際情勢は混とんとなっています。このブログでも連日、様々な角度から分析や私の主張をご紹介していますが、茶話会を通じて、皆さまと意見を交換し、交流をする機会をいただけたらと思います。

平日の夕方からということで、大変かとは存じますが、参加をご検討いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

※参加お申し込みについては下記アドレスの案内の要領に従ってお願いいたします。

https://isfweb.org/post-71485/

(終わり)

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 古村治彦です。

 以下に紹介している、スティーヴン・M・ウォルトの論稿は昨年9月に発表された論稿であるが、現在の状況において非常に重要な内容を含んでいるのでご紹介したい。政治的な殺害、つまり暗殺は外交や国際関係にとって危険であり、同時に国内政治においても危険である。そのことをウォルトは論稿の中で説明している。

 今回のイスラエルとアメリカによるイランに対する大規模攻撃に当てはめてみよう。アメリカはイランと核開発に関して交渉を行っていた。オマーンが仲介役を務めていた。しかし、最終的には、アメリカのドナルド・トランプ大統領は、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に説得(洗脳)されイランに対する大規模攻撃を行った(2025年だけでネタニヤフは6回訪米し、トランプと会談を持っている)。攻撃はイラン政府や軍の指導者を多数殺害した。その中にはイランの最高指導者であるアリ・ハメネイ師も含まれている。ハメネイ師が自宅にいることを特定し、攻撃を加えて殺害した。

 ここで重要なのは、交渉中の相手国の最高指導者を、「宣戦布告もなしに」、奇襲攻撃をして、殺害したことである。これは政治的な殺害、暗殺である。下記論稿の内容に沿って考えると、なぜ暗殺が良くないかと言うと、信頼を損ない、交渉や階段を持つことが出来なくなるからだ。実際に、イランはアメリカからの交渉を拒否している。アメリカと交渉しても、交渉中に攻撃を受けるかもしれない、もしくは、交渉で合意した内容を守らないかもしれないという疑念は当然出てくる。それほどの重大事をアメリカとイスラエルは起こしている。

そして、「邪魔な奴は殺してしまえばよい」ということが当然に行われるようになれば、それは国内でも同様のことが起きる可能性にもつながる。

 アメリカとイスラエルが国際法無視で暗殺者集団と同様のことを行っていれば、国際社会における信頼を失ってしまう。それは長期的に見て、アメリカとイスラエルの国益を損ない、アメリカ国民とイスラエル国民を苦しめることになる。

(貼り付けはじめ)

暗殺はどのようにして再び常態化したのか(How Assassinations Became Normal Again

-国内外における政治的な殺害(political killings)は、かつては頻繁に起こっていたが、その後ほぼなくなり、そして再び頻繁に起こるようになった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年9月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/09/18/assassination-political-violence-charlie-kirk-normal/

インフルエンサーのチャーリー・カーク殺害事件と、イスラエルによるハマス幹部殺害未遂事件(カタール爆撃)には、どのような共通点があるのだろうか? もちろん、明白かつ重要な相違点もある。カーク事件は動機が明らかになっていない個人による単独犯行(isolated act)とみられる一方、後者は動機が明白な選出された政府による意図的な軍事行動である。しかし、2つの事件は、国家間および国家内部における現代政治の規範の広範な崩壊(the broader erosion of norms in contemporary politics)、特に暗殺を正当な政治戦術とみなす傾向(the tendency to see assassination as a legitimate political tactic)の兆候と捉えることもできる。

政治的な殺人(political killings)は、もちろん新しい現象ではない。しかし、ウォード・トーマスが2000年に『インターナショナル・セキュリティ』誌に掲載した画期的な論文で示したように、数世紀にわたり、ある国の指導者が他国の指導者を殺害しようとする行為に対しては、極めて効果的な規範が存在していた。国家による暗殺(assassinations)は、かつては一般的だったが、時が経つにつれ、この戦術は主要諸国の間で廃れ、暗殺を禁じる規範が徐々に形成されていったとトーマスは主張した。

この変化は、物質的・戦略的な利害と、変化する規範意識が複合的に作用した結果である。暗殺は、弱小国がより強力なライヴァル国に対して用いることのできる手段であったが、大国(great powers)は暴力的な政治行動(すなわち戦争)を、自国の優位な資源が有利に働く可能性が高い戦場に限定することを好んだ。さらに、各国の支配者たちは、たとえ他の相違点がどうであれ、何千人もの国民を血みどろの戦場に送り込んで死なせようとしながらも、互いに殺し合わないという共通の利益を有していた。

暗殺に反対する規範は、国家指導者は一般市民とは異なる道徳的原則に従うのであり、国家のために行った行為について個人的に責任を問われるべきではないという、現実政治の考え方も反映していた。一般市民が人を殺害すれば起訴され有罪判決を受ける可能性があるが、「国益(in the national interest)のため」に戦争を開始した君主や首相は、その決定の結果として何千人もの命が失われたとしても、何の罰も受けずに済むことがあった。失敗に終わった戦争を始めた指導者は権力の座から追放されることはあっても、公的な立場で行動していた限り、裁判にかけられたり処罰されたりすることはほとんどなかった。

この二重基準(double standard)が最も鮮明に表れたのは、第一次世界大戦後だ。廃位されたドイツ皇帝(deposed German kaiser)ヴィルヘルム2世は、オランダでの平穏な亡命生活を送り、余生を全うすることを許された。1世紀前、ナポレオン・ボナパルトも、幾度となくヨーロッパを戦争に巻き込んだにもかかわらず、直接的な処罰を免れた。もっとも、彼は最終的に南大西洋の孤独な流刑地で老い、生涯を閉じた。驚くべきことに、この暗殺禁止の規範は、凄惨な戦争の最中でさえも守られていた。連合国(the Allies)はアドルフ・ヒトラーを暗殺しようとはしなかった(一部のドイツ人は試みた)。また、日本の昭和天皇やイタリアの指導者ベニート・ムッソリーニを直接標的にすることもなかった。(アメリカは日本の山本五十六海軍大将を標的にし、その飛行機を撃墜して殺害したが、彼は軍司令官であり、文民の公職者ではなかった。)

トーマスによれば、第二次世界大戦後、新たな倫理的・物質的配慮が定着するにつれて、この規範は崩れ始めた。ニュルンベルクおよび東京の戦争犯罪裁判において、勝利した連合国は、公的行為と私的行為との従来の区別を否定し、日本およびドイツの元政府高官たちに対し、その公的(かつ疑いようのないほど凶悪な)行為について個人的責任を問うた。同様の動きが、『世界人権宣言(the Universal Declaration of Human Rights)』の採択や、戦争犯罪(war crimes)、ジェノサイド(genocides)、その他の人道に対する罪(crimes against humanity)の責任者を処罰するという、残念ながら一貫性に欠けるものの、世界的に高まりつつある取り組みの原動力となった。その後の国際刑事裁判所(the International Criminal Court)の創設や、こうした重大な犯罪の有罪とみなされた指導者を制裁しようとする関連の取り組みも、同じ広範な潮流の一部であった。

なぜこのような規範的視点の転換が重要だったのか? それは、個々の指導者が自らの決定に対して道義的責任を負うようになったことで、特に邪悪あるいは危険であると判断された者たちに対する直接的な措置を正当化することが容易になったからである。一人の指導者(そしておそらくは少数の側近)を標的とすることは、はるかに多くの人命が失われる戦争を始めるよりも望ましいとみなされる可能性もあった。暗殺は、政治的問題に対処する上でより費用対効果の高い方法のように見え始め、少なくとも軍事的に最も能力のある国々においては、軍事技術の発展によって精密攻撃(precision strikes)や標的殺害(targeted killings)が可能になるにつれて、その傾向はさらに強まった。

そのため、国家が支援するライヴァル指導者の暗殺は極めて稀なことではなく、時が経つにつれてより一般的になった。例えば、冷戦時代には、アメリカはフィデル・カストロ、パトリス・ルムンバ、ゴ・ディン・ディエム、ムアマル・アル・カダフィ、その他複数の外国指導者を直接殺害、殺害への協力、または殺害を試みた。ブッシュ政権は2003年のイラク侵攻開始時にサダム・フセインを意図的に標的とし、2020年にはトランプ政権がミサイル攻撃でイランの精鋭部隊であるコッズ部隊の司令官カセム・ソレイマニを殺害した。(ソレイマニは軍事指導者であると同時に高官でもあった。もし外国が統合参謀本部議長を意図的に標的にしたらアメリカ人がどう反応するか想像してみて欲しい。)イスラエルは長年にわたり、ハマスやヒズボラの指導者、そして複数のイラン人民間核科学者を含む多くの政治的敵対者たちを殺害してきた。北朝鮮は1968年と1983年の2度、韓国の大統領暗殺を企てた。ウクライナは、ロシアがウォロディミール・ゼレンスキー大統領の暗殺を繰り返し試みたと主張している。かつて存在した「各国政府は他国の要人を標的にしてはならない(governments should not target their foreign counterparts)」という規範は、もはや風前の灯火(on life support)となっている。

これは少なくとも3つの理由から非常に懸念すべき事態となっている。

第一に、強力な規範であっても、強大な国家が自らの意思で行動することを完全に阻止することはできないも。しかし、確立された規範に違反すれば、違反国は評判を損なうことになり、他国は違反した国との緊密な関係や協力関係を維持することを躊躇するようになる。規範が崩壊するにつれ、評判を損なう行為によって、抑止力(deterrent)は低下し、暗殺を極端な手段ではあるものの、正当な政治行動とみなす国が増えるだろう。世界中の政府はより恐れを抱き、互いを信用しなくなり、既存の紛争に対する相互に受け入れ可能な解決策を見出すことはより困難になる。結局のところ、自らを殺害しようと積極的に企んでいる相手と、誠実に交渉できるだろうか? 規範が崩壊すればするほど、世界の政治はより醜悪で、より争いの多いものになるだろう。

第二に、そして第一の点から派生する点として、暗殺を禁じる規範を放棄することは、単に会談が危険であるという理由が発生することになり、ライヴァル同士の会談を阻害することになる。その結果、進行中の紛争に対する外交的解決の道はさらに狭まるだろう。また、第三者が外交的解決取り組みを支援しようとする意欲も削ぐことになる。これこそが、イスラエルによるカタールへの攻撃がこれほど無謀であった理由である。それは、責任ある国際社会の一員としてのイスラエルの評判をさらに損なうだけでなく、一部の国々がイスラエルの外交活動を仲介する意欲を削ぐことになるからだ。どの国も時として敵と対話する必要があり、その過程を円滑に進めるには通常、中立的な第三者の仲介が不可欠である。このようにカタールの主権を侵害し、暗殺を禁じる規範に背くことは、国際外交がより一層必要とされているこの時期に、その歯車にさらなる砂を撒き散らすことになる。イスラエルが、ワシントンから目立った制裁を受けることなく、名目上ではあるがアメリカの同盟国を攻撃する姿勢を示したことは、この地域におけるアメリカの既に傷ついている評判にさらなる打撃を与えた。もっとも、その評判がこれ以上低下する余地があるとは到底思えないのではあるが。

最後に、対立する外国の要人を標的にして殺害することは全く問題ないという考え方は、一部の人々にとって、意見の合わない国内の政治家に対する暴力行為を正当化しやすくする。いずれの場合も、標的となりうる人物はまず悪の権化(the embodiment of evil)、国家に対する致命的な脅威(a mortal threat to the nation)として悪魔化される(demonized)。一度そのレッテルが貼られると、彼らに対処するための極端な手段は許容され、場合によっては必要不可欠とさえ思えるようになる。もしあなたがアメリカ人で、国内における暴力的な政治活動の増加(JD・ヴァンス副大統領や他の政権関係者が述べている嘘とは異なり、これは圧倒的に右派によるものであり、左派によるものではない)を懸念しているのなら、アメリカ合衆国、その最も緊密な同盟諸国の一部、そして他の主要諸国が、海外における暗殺に対する規範をいかに損なってきたかについても懸念すべきである。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

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バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

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 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

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 古村治彦です。

 スティーヴン・M・ウォルトによる以下の論稿は2025年7月に発表された論稿であるが、現状を理解する上で重要な内容となっている。ここで重要なのは、政治的力、政治的な魅力と政策立案・遂行を分けて考えている点だ。私はこのことが出来ていなかった。第二次ドナルド・トランプ政権に持つ違和感を言語化できていなかったが、この政治的な力と政策立案・遂行を分けることで、私の抱える違和感を言語化できるように思う。

トランプは生粋の政治家ではなく、財界人としても主流から外れたアウトサイダーだ。そうした人物が既存の政治を破壊するためにワシントンに乗り込んだ。彼の個人的な魅力で大きな政治力を持った。しかし、政策立案・遂行は彼一人ではできない。周囲に人材を配置しなければならない。第二次政権の特徴は、イスラエルとの関係が深い人物が揃ったことだ。国家情報長官であるトゥルシー・ギャバードは民主党所属の連邦下院議員時代から、非主流派であり、イランやロシアとの交渉を主張し続けてきた。ギャバード長官以外は親イスラエル派であり、今回のイラン攻撃を推進した。トランプは政治的な力を持つが、政策立案・遂行の力を持たず、結果として、政策の失敗をしてしまうことになった。更に言えば、トランプに周辺に配置された人物たちはワシントンの既存政治、エスタブリッシュメントの息のかかった人物たちであり、彼らによって、トランプ政治が変容させられたということが考えられる。

 トランプが政策立案・遂行を任せる人物の選定に失敗したとも言えるだろう。しかし、選定の過程で述べたことと実際に政権発足後に実行することに乖離がある場合、つまり、嘘をついた、もしくは態度を変化させたと言うことになる。

 私がここで重要だと考えているのは、JD・ヴァンス副大統領の存在である。第二次トランプ政権が大統領選挙期間の公約をことごとく破っている状況で、ヴァンスは非常に苦心してトランプ政権内でバランスを取りながら、選挙期間中の公約を守る、もしくは守る姿勢を見せている。トランプが州に騙されて搦(から)めとられている様子も見ている。そうした中で、彼がトランプの後継者として、トランプの失敗を学んでいると私は見ている。政治力を持ちながら、政策立案・遂行に失敗するのは、自分を利用しようとして集まる、もしくは集められる人物たちの影響が大きいということを学んでいるだろう。

 トランプもまた騙され、利用されたということを考えると、ワシントンの既存の政治、エスタブリッシュメントたちの力は大きく、簡単に打ち破ることが出来ないということが認識される。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプが逃した好機は積み上がっている(Trump’s Missed Opportunities Are Piling Up

-トランプ政権にはアメリカをより良い方向に変えるという前例のない好機があった。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年7月29日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/07/29/trumps-missed-opportunities-are-piling-up/

好むと好まざるとにかかわらず、ドナルド・トランプ米大統領は、この10年近くにわたり、アメリカ政界で最も重要な人物であり続けている。今や、私たちは彼を評価する十分な時間があり、彼について2つのことが明白になっている。第一に、トランプの政治的魅力は当初から過小評価されていたこと、そして彼は時を経るごとに、より有能な政治家へと成長してきたことだ。度重なる嘘、公約違反、重罪判決、性犯罪、そして自分の望みを阻むあらゆる規範を容赦なく破壊する姿勢にもかかわらず、彼は共和党を自らの理想とする姿へと変貌させ、最初の任期の惨憺たる実績にもかかわらず、2024年の再選を果たした。彼は今、アメリカ史上最も過激な政治変革を試みている。権威主義的な政権掌握(an authoritarian takeover)は着々と進んでおり、成功する可能性が高い。

彼について分かったもう一つのことは、彼が政策立案者として極めて無能だということだ。無知、衝動性、そして能力よりも忠誠心を優先する傾向が相まって、彼は幾度となく愚かな決断を下してきた。彼は権力を集中させ、私腹を肥やし、弱者を威圧することには長けているが、アメリカ全体に利益をもたらす建設的な政策を立案・実行する能力には長けていないことが明らかになった。

政治的手腕(political adroitness)と政策立案能力の欠如(policymaking ineptitude)の組み合わせは、まさに悲劇(tragedy)のようになっている。なぜなら、トランプはそのカリスマ性と有利な立場(共和党が連邦上下両院を支配し、従順とは言わないまでも、トランプに理解を示す最高裁判所が存在する)を活かせば、近年の大統領が国家の深刻な問題に取り組むことを困難にしてきた膠着状態と機能不全(the logjams and dysfunction)を打破できたはずだからだ。もしトランプがこの機会を建設的に、そして異なる政策のために活用していれば、「アメリカを再び偉大にする(make America great again)」ために大きく貢献できたかもしれないし、ひいては彼が長年主張してきた「アメリカ史上最も偉大な大統領の一人(one of the country’s greatest presidents)」という称号にふさわしい人物になれたかもしれない。

しかし、イギリス国教会の祈祷書を言い換えるならば、トランプは「なすべきことをせず、なすべきでないことをした。彼には健全さが全くない([has] left undone those things which [he] ought to have done,; and [he has] done those things which [he] ought not to have done; and there is no health in [him])」となる。そして、アメリカはこれらの失敗によって大きな苦しみを味わうことになるだろう。

私が言いたいことは何か?

まず、トランプはアメリカの過剰な軍事プレゼンスを縮小し、同盟諸国に防衛努力のより大きな分担を促し、国防総省の肥大化した軍事予算を抑制することで、差し迫った国内のニーズに対応し、増大する国家債務を削減するために必要な資源を確保できたはずだ。ロシアのウクライナでの行動も少なからず影響しているものの、トランプは一部の同盟国にさらなる協力を促すことに成功したが、アメリカの世界的な軍事プレゼンスは縮小されておらず、国防予算は増え続けている。その一方で、連邦議会が可決したばかりの予算案は、アメリカの債務水準を数兆ドル増加させ、上位1%の富裕層をさらに富ませ、幅広い公共サーヴィスを削減し、大多数のアメリカ人の生活を改善する効果はほとんどないだろう。さらに、この予算案には、警察国家(police state)の萌芽となる要素も含まれている。

なんという機会の損失だろう! 中国を含む先進工業国を訪れれば、きらびやかな近代的な空港、安全で効率的かつ手頃な価格の公共交通機関、穴だらけではない道路、超高速の都市間鉄道、そして最先端の港湾やその他の重要なインフラが整っていることに気づくだろう。これらの国の多くは、優れた医療制度と高い平均寿命も誇っている。かつてアメリカはそのインフラの質で世界を驚嘆させたが、同盟諸国やライヴァル諸国に追いつくことはできなかった。その代わりに、愚かな対外戦争や長期にわたる介入(foolish foreign wars and protracted interventions)に数兆ドルを浪費してしまった。さらに悪いことに、国内は深刻な分極化に陥っており、政治システムには拒否権が行き渡っているため、私たちが求める長期的なプログラムを立ち上げ、実行することはほぼ不可能となっている。トランプは、自らが繰り返し主張する(そして最高裁が認める意向を示している)大統領権限を行使し、こうした行き詰まりを打開して国内で「国家建設(nation-building)」を行うこともできたはずだ。しかし彼は、大学への脅迫、NPR(公共ラジオ)やPBS(公共テレビ)への資金削減、トランスジェンダーの選手への処罰、メディケイドの縮小、そしてジョー・バイデン前大統領やバラク・オバマ元大統領が関与したあらゆる政策の解体を選んだ。

トランプは、科学に対する連邦政府の支援を大幅に削減し、大学キャンパスには反ユダヤ主義が蔓延しているという荒唐無稽な主張に基づいて高等教育を攻撃する代わりに、連邦政府の権限を活用して、科学研究におけるアメリカの優位性を維持することもできたはずだ。ソ連がスプートニクを打ち上げた後、ドワイト・D・アイゼンハワー大統領がそうしたように、連邦政府の支援によって生み出された発見から、その後の世代のアメリカ人は多大な恩恵を受けてきた。アメリカはまた、世界中から最も優秀な人材を引き寄せ、留める能力からも恩恵を受けてきた。しかしトランプは今、その優位性を逆転させようとしている。中国はすでに研究開発費でアメリカを上回り、研究者たちはより多くの特許や科学論文を生み出しており、電気自動車やクリーンエネルギーといった将来の重要技術のいくつかにおいて主導的な役割を獲得している。トランプの対応とはどうだろうか? それは一方的な知的武装解除(unilateral intellectual disarmament)の政策である。

もし、その強大な権力を公益のために使おうとする強力な大統領であれば、アメリカ国民の健康を守ることを使命とする機関をロバート・F・ケネディ・ジュニアのようなペテン師たちに委ねたりはしなかっただろうし、気候危機に対処するための、遅ればせながらなお不十分な国の取り組みを後退させるようなこともなかったはずだ。もしトランプが真に偉大なことを成し遂げたいと望むなら、彼は自身の第一期政権における数少ない成功事例の一つ記録的な速さで命を救うCOVID-19ワクチンの開発を可能にした「ワープ・スピード」計画を基盤とし、バイデンが推進しようとしたグリーン・トランジションを加速させるはずだ。誤解のないように言っておくが、気候変動は現実のものであり、事態はさらに悪化するだろう。なぜなら、大気物理学の法則はフォックスニューズを見たり、ソーシャルメディア上のプロパガンダに左右されたりしないからだ。パリ協定からの離脱や化石燃料への依存強化を促すというトランプ氏の決定は、問題を悪化させ、米国はその結果に対する備えが不十分になるだろう。

アメリカの偉大さについて言えば、より賢明なトランプであれば、同盟諸国を搾取すべき属国(vassals)のように扱うのではなく、アメリカの戦略的パートナーシップの改革と強化に尽力するだろう。あるヨーロッパ連合(EU)当局者が「ゆすりたかり(shakedown)」と正しく指摘した彼の気まぐれで強圧的な関税政策は、アメリカの消費者の物価を上昇させ、国内外の経済成長を鈍化させるだろう。また、アメリカの同盟諸国がトランプの国防費増額要求に応じることをより困難にするだろう。デンマーク、カナダ、韓国、日本といった親米諸国と対立することは、歴代大統領の中でも最も愚かな決断の一つと言えるだろう。これらの国々は歯を食いしばってトランプの要求の一部を受け入れるかもしれないが、二度とアメリカを以前と同じように見ることはなく、ワシントンの指示に従う、もしくは、将来的にワシントンが望むような調整を行うことに消極的になるだろう。

トランプ大統領が本当に前任者よりも外交手腕に優れていることを示したいのであれば、ガザ地区での虐殺を終わらせるためにアメリカの影響力を活用し、イランとの新たな核合意に現実的なアプローチを取り、ウクライナ和平に向けて飴と鞭(carrots and sticks)を組み合わせるべきだった。しかし、彼はこの問題を素人外交官のスティーヴ・ウィトコフに任せてしまい、結果として中東地域でのさらなる惨劇(carnage)、アメリカのイメージのさらなる悪化(もはやこれ以上悪化する余地があるのか​​どうかも怪しいが)、そしてロシアの前進を招いた。

一方、トランプ大統領とマルコ・ルビオ国務長官は外交団を弱体化させ、かつて多くの国際機関で支配的だったアメリカの地位を放棄している。『ニューヨーク・タイムズ』紙が先週報じたように、北京はこれにいち早く乗じて、様々な国際フォーラムで存在感を高め、取引を成立させている。こうした動きは一見不可解に思えるかもしれないが、これらの機関こそ、多くの国際関係を形作るルールや技術基準が確立される場なのである。中国当局は、将来的に影響力を拡大するための専門知識と人脈を築き上げており、一方で、アメリカはますます存在感を失っている。スコット・ベセント米財務長官は、先日開催されたG20サミットに出席することさえしなかった。なぜか? それは、南アフリカで開催されたからだ。中国は、外交の価値、直接対話の利点、そしてソフトパワーの重要性を理解しているからこそ、すでにアメリカよりも多くの外交官と在外公館を擁している。トランプ大統領はそれを理解していない。アメリカの当局者やビジネスリーダーが、もはや「アメリカ製(made in America)」ではないルールで世界を渡り歩かなければならないことに気づいた時、それは大きな衝撃となるだろう。そして、まさにトランプ大統領がアメリカを導こうとしている世界こそが、そうした世界なのだ。

最後に、トランプは、国をさらに分断するのではなく、共和党に対する影響力と、政府の三権全てを掌握している立場を利用して、国を統一することもできたはずだ。彼は、実績のある女性やマイノリティを政府の要職から追放し、「無能な白人男性のためのアファーマティブ・アクション(affirmative action for incompetent white guys)」を推進するのではなく、より過激な形の「ウォークイズム(wokeism)」からの撤退を(すでに進行中だったプロセスだが)巧みに促し、厳格な実力主義の必要性を強調することもできたはずだ。その好例が、ピート・ヘグセス米国防長官、あるいはダレン・ビーティーだ。ビーティーは、白人至上主義者とのつながりを理由に第一期トランプ政権から解雇された陰謀論者だが、つい先日、アメリカ平和研究所の所長に任命されたばかりだ。トランプは、法的に疑問の残る強制送還を承認し、海外からの有能な人材にとってアメリカをはるかに魅力のない場所にしてしまうのではなく、賢明な移民制度改革を推進することもできたはずだ。

要するに、トランプには、アメリカを弱体化させている政治的分断を縮小し、国際的な地位を強化する可能性のある、広範囲にわたる、そして長らく待望されていた改革(far-reaching and long-overdue reforms)に着手する絶好の機会があった。もし彼がそのカリスマ性と政治的手腕を、より思慮深く、国民の利益を重視する政策に注いでいれば、私を含め、彼を最も厳しく批判する人々も納得したかもしれない。しかし彼は正反対の道を選び、支持率が急速に低下しているにもかかわらず、その姿勢を改める気配は全く見られない。

読者の皆さんが何を考えているかは分かっている。「もしトランプがこうしたことを少しでも実行していたら、穏健な民主党員のような振る舞いになり、MAGA支持層が反旗を翻していただろう」と考えているだろう。私はそうは考えない。ジェフリー・エプスタインのスキャンダルはさておき、トランプの支持層は、たとえ過去の立場と真っ向から矛盾していても、彼が言うことならほぼ何でも飲み込む用意があるようだ。私は、彼が支持基盤を説得し、上述した政策を受け入れさせることができたと確信している。特に、その多くの施策が彼らにとってすぐに利益となるものであったならばなおさらだ。無党派層や穏健派は喜んだだろうし、それによって2024年の大統領選挙で彼に僅差の勝利をもたらした緩やかな連合が固まったはずだ。化石燃料業界は反対しただろうが、その他の経済界は、規制改革や、おそらくは控えめな減税によって、説得できたかもしれない。

しかし、私のこのフィクションのシナリオには致命的な欠陥(a fatal flaw)がある。それは、別のトランプを想定している点だ。自らの天才性を確信し、自己顕示欲にのみ執着し、ルールや規範を軽視する復讐心に燃えるナルシストではなく、私のシナリオが想定するのは、真に民主政治体制を守り、できるだけ多くのアメリカ人の生活を向上させ、世界政治におけるアメリカの特権的な地位を維持したいと願う大統領である。残念ながら、トランプはそのような人物ではない。だからこそ、彼に与えられた機会は浪費され、あるいはそれ以上に台無しにされているのだ。素晴らしい未来はあり得たはずだが、この大統領の下では実現しなかった。トランプ自身が称賛されることを切望していることを考えれば、これは彼自身の悲劇だと捉えることもできるだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

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