古村治彦です。
中東地域で起きている諸問題の多くはイスラエルが絡んでいる。イスラエル建国から拡大、占領という形で中東地域において不協和音を起こしている。現在でいえば、イラン戦争はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が引き起こした戦争である。イスラエル側にも理屈がある。イスラエルが自衛行動を取ることは制限されない。問題は、彼らが自衛という名の下に過剰な攻撃を民間人に加えていることであり、イスラエルへの正当な批判までも「反ユダヤ主義」というレッテルを貼って圧殺、封殺をしようとすることだ。そして、イスラエルの傲慢な態度の源泉はアメリカからの支援がある。アメリカから数兆円の軍事支援を受け、最新の兵器を備えて、中東地域の近隣諸国を圧倒している。核兵器までも開発し保有している。興味深いのは、こうして中東地域最強になりながら、一向に安全が確保されていないことだ。矛と盾をどんなに最新最強にしても、建国以来、安全安心を確保することはできなかった。
アメリカはイスラエルを支援することを「国是(national credo)」としてきた。第二次世界大戦中にユダヤ人の大規模虐殺を止めることができなかったことが原罪のように突き刺さっている。また、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人がイスラエルを支援するために、その資金力と影響力を行使してきた。彼らは、いくつかの親イスラエル組織を構築し、政治的な活動、ロビー活動を展開してきた。イスラエルに批判的な政治家に対して、落選運動に資金提供をしたり、ユダヤ系が多く住む大都市圏であれば、集団的に相手候補に投票したりすることで落選をさせるなどの行動を取って、影響力を保持し、イスラエルに有利になる政策をアメリカ政府が行うように働きかけてきた。このようなアメリカからの手厚い支援がイスラエルを増長させてきた。
イスラエルの傲慢と増長が中東地域における諸問題の原因となっている。それであるならば、問題を解決するためには、こうした傲慢と増長を取り去ることが必要である。そのためには、アメリカとイスラエルの間の「特別な関係」を見直し、改善していくこと、他国との関係に近づけていくことが、アメリカとイスラエル両国にとって重要だ。そうしなければ、お互いが抱きつき合ったままで、世界から孤立し、衰退、滅亡の途を進むことになる。
(貼り付けはじめ)
ガザの平和は長続きしないだろう(The Peace in Gaza Won’t
Last)
-イスラエルとアメリカの特別な関係が終わることが真の戦争終結のシグナルとなるだろう。
2025年10月15日
『フォーリン・ポリシー』誌
https://foreignpolicy.com/2025/10/15/peace-gaza-israel-us-trump-middle-east/
ガザ地区での虐殺が少なくとも一時的に停止し、イスラエル人の人質とパレスティナ人の囚人の交換が行われ、苦しむガザ住民への救援物資がより自由に届くようになったことは、誰もが感謝すべきことだ。当然のことながら、ドナルド・トランプ米大統領は勝利宣言を行い、停戦合意を「新たな中東の歴史的な夜明け(historic dawn of a new Middle East)」と称している。しかし、彼は以前にも同様のことを述べており、歴代大統領の中にもそうした人がいた。彼の言葉が正しいことを願うが、確信は持てない。
今回の合意後、2つの疑問が依然として残っている。1つ目は、言うまでもなく「この合意は維持されるのか?」という点だ。そして、2つ目は、イスラエルと世界の他の国々との関係、特にアメリカとの「特別な関係(special relationship)」が、ついに永続的な平和を実現できるような方向に変化しているかどうかという点である。この2つ目の疑問は、最初の疑問への答えを大きく左右する。
最初の疑問に関して言えば、楽観視するのは難しい。他の批評家も指摘しているように、この「和平案(peace plan)」は、パレスティナ側の参加が最小限に抑えられた、イスラエルを強く支持するアメリカの「仲介者(mediators)」(スティーヴ・ウィトコフとジャレッド・クシュナー)によって作成された。最終的な形は、交渉による解決というよりは、最後通牒(an ultimatum)に近いものだった。この合意は、イスラエルの極右勢力の極端な野望(ガザ地区の併合やパレスティナ住民の永久追放など)の一部を拒否するものの、パレスティナ側には、ハマスの完全武装解除、全てのトンネルの破壊、あらゆる政治活動からの排除、そしてパレスティナ自治政府の抜本的かつ具体的な内容が未定の改革など、困難かつ検証不可能な(impossible-to-verify)一連の調整を求めている。トランプ大統領自身が議長を務める「平和評議会(Board of Peace)」が監督する、まだ特定されていない外部監視機関が、合意の遵守状況を監視し、双方が合意を遵守しているかどうかを判断する。
さらに重要なのは、この合意が全ての困難な政治問題を将来の不特定の時点に先送りし、イスラエルによるヨルダン川西岸地区併合の継続的な試みについては全く触れていない点だ。これは、ルーシーとチャーリー・ブラウンとフットボールの古い物語と同じだ。イスラエルは、パレスティナ側の遵守が不十分だと宣言し、再び圧力を強める(あるいは暴力を再開する)機会をいくらでも得るだろう。
したがって、この計画が成功すると信じるには、国際社会、特にアメリカが、イスラエルに対し、現在の合意を維持し、パレスティナとの長年の紛争に対する公正かつ恒久的な解決策を最終的に交渉するよう、容赦ない圧力(relentless pressure)をかけ続けると信じなければならない。確かに、トランプ大統領はついにイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の引き延ばし戦術にうんざりし、この限定的な合意を受け入れさせたようだ。これは、米大統領が、もし行使する意思があれば、どれほどの影響力を持っているかを示す全てだ。
しかし、ネタニヤフ首相、彼の右派支持者、そしてイスラエル社会自体が、ハマスやその他のパレスティナ過激派が完全に排除されたと確信していたとしても、真の二国家解決案(a genuine two-state solution)や何らかの形の単一国家連邦制(some
form of one-state confederation)を受け入れる意思があるという証拠はどこにもない。トランプ大統領の極めて短い集中力、気まぐれな性格、そして細部への無関心さを考えると、一体誰が、この問題が継続的に実行されると真剣に考えているだろうか?
問題はトランプ大統領だけではない。外部勢力は、1956年、1967年、1973年の第四次中東戦争におけるアメリカとソ連の行動、そしてそれ以降のワシントンの幾度にもわたる行動のように、交戦当事者に一時的な停戦を促すことはしばしば行ってきた。しかし、公正かつ永続的な政治的解決を実現するために、十分な時間、注意、そして政治的資本を投入し、あらゆる影響力を行使する意思は決して示してこなかった。だからこそ、オスロ合意、2000年のキャンプ・デイヴィッド首脳会談、2007年のアナポリス会議、不運な結果に終わった中東カルテット(アメリカ、ロシア、ヨーロッパ連合、国際連合)、その他大々的に宣伝された和平構想は全て失敗に終わった。
もしアメリカによる継続的な圧力が必要なのであれば、私の2つ目の疑問が重要になる。トランプ大統領の個人的な意向に関わらず、アメリカとイスラエルの関係は和平の可能性を高めるような方向に変化しつつあるのだろうか?
2023年10月7日の攻撃は、国際社会の目から見てハマスに大きな打撃を与え、イスラエルのジェノサイド的対応も同様にイスラエルのイメージを損なった。イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、その他いくつかの国はパレスティナ国家を正式に承認した。これは確かに象徴的なジェスチャーであるが、人々の意識がどれほど変化したかを物語っている。イスラエルのアラブ世界との関係正常化に向けた努力は停滞している。ここアメリカでは、世論調査で支持の劇的な変化が示されており、イスラエルよりもパレスティナに同情的なアメリカ人が多く、イスラエルの行動はジェノサイド(あるいはそれに近い行為)に当たると考える人が41%、正当化できると考える人はわずか22%となっている。
イスラエルへの支持は民主党支持者と無党派層の間で最も急激に低下しているが、スティーヴ・バノン、タッカー・カールソン、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員といった著名な保守派も厳しい批判を表明している。民主党支持者は人権問題への懸念を強く訴えている一方、保守派は、ますます無法化するイスラエルへのアメリカの無条件の支援(unconditional U.S. support)は「アメリカ・ファースト(America
First)」の理念と相容れないと考えている。
特別な関係の直接的なコストは、長い間明らかだった。イスラエルはアメリカから最大の軍事援助を受けている外国であり、アメリカ政府は、イスラエルが一人当たりの所得で世界16位にランクインし、相当数の核兵器を保有する繁栄した国であるにもかかわらず、公式には「質的な軍事的優位性(qualitative military edge)」を維持することを約束している。年間約40億ドルの軍事援助は通常、イスラエル・ハマス戦争中に急増し、アメリカの納税者は約220億ドルを負担した。この無条件の支援こそが、中東諸国の指導者たちが武器、投資、市場アクセスを得るためにアメリカ政府に媚びへつらい続けているにもかかわらず、アメリカが中東諸国の大半で依然として非常に不人気である主な理由である。イスラエルへの無条件の支援は、ワシントンが人権の揺るぎない擁護者であり、したがってロシアや中国などの大国ライヴァルよりも道徳的に優れているという主張を損なうことで、アメリカのソフトパワー(America’s soft power)を低下させている。こうした偽善は、トランプ政権がこうした理想を軽視していることを考えると、彼らにとっては問題にならないかもしれないが、それでもアメリカのリベラルな理想とは相容れない。
また、特別な関係は、人口1000万人にも満たない小国が、世界で最も強力な国の政治生活において、不釣り合いなほど多くの時間を割かれていることを意味する。インド、日本、インドネシア、ナイジェリア、ブラジルといった、より規模が大きく戦略的に重要な国々が占める紙面や放送時間と比較して、この小国が受ける報道量を考えてみて欲しい。オーストリアはイスラエルとほぼ同じ人口とGDPを持ち、多くの国際機関の本部が置かれているにもかかわらず、アメリカ人はオーストリアについて散発的にしか耳にしない。あるいは、この小国に特化したシンクタンクやロビー団体の数、そしてアメリカの政治家がこの国の問題に費やす時間の量を見てみよう。
さらに、この小国に関連する問題は、アメリカのより広範な文化や知的活動に日常的に波及している。現在大学を攻撃している背景には多くの要因があるが、ガザ地区の虐殺と、それを支援したアメリカの役割に抗議する学生たち(その多くはユダヤ人)から生じた、誇張された反ユダヤ主義(antisemitism)の非難によって、その攻撃はさらに激化している。学問の自由、ひいては言論の自由全般に対する攻撃は、イスラエルを批判から守り、特別な関係を維持したいという誤った願望だけによって動機づけられているわけではないが、そうした目的も一部の人々にとっては、その要因の一つとなっている。
最後に、この小さな国にアメリカの大統領がどれほどの時間と注意を費やしているかを見てみよう。ジミー・カーター大統領は1978年のキャンプ・デイヴィッド合意の交渉にほぼ2週間を費やし、ビル・クリントン大統領も同様の試みを行った。しかも、これは首脳会談以外でこれらの問題に費やした時間は含まれていない。ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ジョー・バイデンの各大統領は、イスラエル関連の問題に数日、場合によっては数週間を費やした。アントニー・ブリンケン国務長官は在任4年間でイスラエルを16回訪問したが、アフリカ大陸全体への訪問はわずか4回だった。トランプ大統領でさえ、イスラエル問題から距離を置くこと、あるいはイスラエル政策を部下に完全に委任することは不可能だと悟った。大統領、上級顧問、その他の高官がこれらの問題に費やす時間は、アメリカの安全保障と繁栄にとってより直接的に重要な問題に取り組むことができない時間となる。
だからこそ、私をはじめとする多くの人々は、イスラエルの規模と戦略的重要性、そしてアメリカの国益との合致を考慮し、アメリカがイスラエルと正常な関係を築くべきだと繰り返し訴えてきた。正常な関係においては、ワシントンはもはやアメリカとイスラエルの国益が同一であるかのように装うことはなくなるだろう。イスラエルがアメリカにとって望ましい行動をとれば、アメリカはイスラエルを支持するだろう。もしイスラエルがアメリカの意向に反する行動、例えば占領地における入植地の拡大といった行動をとれば、アメリカはイスラエルに強く反対するだろう。
イスラエルは歴史的起源、キリスト教徒による長く悲劇的な反ユダヤ主義の歴史、ホロコーストの遺産、そして非常に紛争の多い地域に位置していることから、通常の国ではないため、通常の関係は意味がないと主張する専門家たちもいるかもしれない。おそらくそうだろうが、2025年においては、イスラエルが「正常(normal)」ではない点は、実際にはアメリカの支援を維持するのではなく、むしろ縮小する理由となる。イアン・ラスティックが最近指摘したように、イスラエルはイスラエルの政治学者イェヘズケル・ドロールの「狂った国家(crazy state)」の定義にますます当てはまるようになっている。狂った国家とは、(1)しばしば他者に害を及ぼす攻撃的な目標を追求する、(2)そのような目標に対して極めて過激な関与を示す、(3)不道徳な行為を厭わないにもかかわらず、道徳的優越感を広く示す、(4)そのような目標を追求するために論理的な手段を合理的に選択する能力を持つ、(5)それらを追求するのに十分な能力を持つ、というものである。ラスティックの見解では、イスラエルの現状を決定づける重要な要因の一つは、「アメリカ政権が歴代のイスラエル政府にほぼ無条件の支援を与えてきたこと()has been the nearly unconditional support which American
administrations have given to Israeli governments」であり、彼はその原因を「ワシントンにおけるイスラエルロビーの圧倒的な政治力(the Israel lobby’s super-abundant political power in Washington.)」にあると指摘する。
この立場は「反イスラエル(anti-Israel)」と言えるだろうか? 決してそうではない。無条件の支援はアメリカにとって有害であり、イスラエルにとっては災難である。イスラエルは海外からの支持を失い、国内では分裂が深まり、メシア的右派(the messianic right)への傾倒がますます強まり、高学歴で経済的に流動的なエリート層の国外流出に苦しんでいる。「寛容な正常化(benevolent normality)」政策は、たとえそれがAIPAC、アメリカ・シオニスト機構、イスラエルのためのキリスト教徒連合、その他、特別な関係を維持し、イスラエルを現在の窮状に陥れ、何百万人もの不本意なパレスティナ住民に多大な苦痛を与えることを可能にしてきた団体の利益にならないとしても、長期的にはアメリカにとってもイスラエルにとってもより良いものとなるだろう。要するに、永続的な平和を望むなら、イスラエルとのより正常な関係が必要だ。
※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.social、Xアカウント:@stephenwalt
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シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』














