古村治彦(ふるむらはるひこ)の政治情報紹介・分析ブログ

SNSI研究員の古村治彦(ふるむらはるひこ)のブログです。翻訳と評論の分野で活動しています。日常、考えたことを文章にして発表していきたいと思います。古村治彦の経歴などについては、お手数ですが、twitter accountかamazonの著者ページをご覧ください 連絡先は、harryfurumura@gmail.com です。X accountは、@Harryfurumura です。ブログ維持のために、著作のお買い上げもよろしくお願いします。

2026年04月

 古村治彦です。

 中東地域で起きている諸問題の多くはイスラエルが絡んでいる。イスラエル建国から拡大、占領という形で中東地域において不協和音を起こしている。現在でいえば、イラン戦争はイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が引き起こした戦争である。イスラエル側にも理屈がある。イスラエルが自衛行動を取ることは制限されない。問題は、彼らが自衛という名の下に過剰な攻撃を民間人に加えていることであり、イスラエルへの正当な批判までも「反ユダヤ主義」というレッテルを貼って圧殺、封殺をしようとすることだ。そして、イスラエルの傲慢な態度の源泉はアメリカからの支援がある。アメリカから数兆円の軍事支援を受け、最新の兵器を備えて、中東地域の近隣諸国を圧倒している。核兵器までも開発し保有している。興味深いのは、こうして中東地域最強になりながら、一向に安全が確保されていないことだ。矛と盾をどんなに最新最強にしても、建国以来、安全安心を確保することはできなかった。

 アメリカはイスラエルを支援することを「国是(national credo)」としてきた。第二次世界大戦中にユダヤ人の大規模虐殺を止めることができなかったことが原罪のように突き刺さっている。また、アメリカ国内のユダヤ系アメリカ人がイスラエルを支援するために、その資金力と影響力を行使してきた。彼らは、いくつかの親イスラエル組織を構築し、政治的な活動、ロビー活動を展開してきた。イスラエルに批判的な政治家に対して、落選運動に資金提供をしたり、ユダヤ系が多く住む大都市圏であれば、集団的に相手候補に投票したりすることで落選をさせるなどの行動を取って、影響力を保持し、イスラエルに有利になる政策をアメリカ政府が行うように働きかけてきた。このようなアメリカからの手厚い支援がイスラエルを増長させてきた。

 イスラエルの傲慢と増長が中東地域における諸問題の原因となっている。それであるならば、問題を解決するためには、こうした傲慢と増長を取り去ることが必要である。そのためには、アメリカとイスラエルの間の「特別な関係」を見直し、改善していくこと、他国との関係に近づけていくことが、アメリカとイスラエル両国にとって重要だ。そうしなければ、お互いが抱きつき合ったままで、世界から孤立し、衰退、滅亡の途を進むことになる。

(貼り付けはじめ)

ガザの平和は長続きしないだろう(The Peace in Gaza Won’t Last

-イスラエルとアメリカの特別な関係が終わることが真の戦争終結のシグナルとなるだろう。

スティーヴン・M・ウォルト

2025年10月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/10/15/peace-gaza-israel-us-trump-middle-east/

ガザ地区での虐殺が少なくとも一時的に停止し、イスラエル人の人質とパレスティナ人の囚人の交換が行われ、苦しむガザ住民への救援物資がより自由に届くようになったことは、誰もが感謝すべきことだ。当然のことながら、ドナルド・トランプ米大統領は勝利宣言を行い、停戦合意を「新たな中東の歴史的な夜明け(historic dawn of a new Middle East)」と称している。しかし、彼は以前にも同様のことを述べており、歴代大統領の中にもそうした人がいた。彼の言葉が正しいことを願うが、確信は持てない。

今回の合意後、2つの疑問が依然として残っている。1つ目は、言うまでもなく「この合意は維持されるのか?」という点だ。そして、2つ目は、イスラエルと世界の他の国々との関係、特にアメリカとの「特別な関係(special relationship)」が、ついに永続的な平和を実現できるような方向に変化しているかどうかという点である。この2つ目の疑問は、最初の疑問への答えを大きく左右する。

最初の疑問に関して言えば、楽観視するのは難しい。他の批評家も指摘しているように、この「和平案(peace plan)」は、パレスティナ側の参加が最小限に抑えられた、イスラエルを強く支持するアメリカの「仲介者(mediators)」(スティーヴ・ウィトコフとジャレッド・クシュナー)によって作成された。最終的な形は、交渉による解決というよりは、最後通牒(an ultimatum)に近いものだった。この合意は、イスラエルの極右勢力の極端な野望(ガザ地区の併合やパレスティナ住民の永久追放など)の一部を拒否するものの、パレスティナ側には、ハマスの完全武装解除、全てのトンネルの破壊、あらゆる政治活動からの排除、そしてパレスティナ自治政府の抜本的かつ具体的な内容が未定の改革など、困難かつ検証不可能な(impossible-to-verify)一連の調整を求めている。トランプ大統領自身が議長を務める「平和評議会(Board of Peace)」が監督する、まだ特定されていない外部監視機関が、合意の遵守状況を監視し、双方が合意を遵守しているかどうかを判断する。

さらに重要なのは、この合意が全ての困難な政治問題を将来の不特定の時点に先送りし、イスラエルによるヨルダン川西岸地区併合の継続的な試みについては全く触れていない点だ。これは、ルーシーとチャーリー・ブラウンとフットボールの古い物語と同じだ。イスラエルは、パレスティナ側の遵守が不十分だと宣言し、再び圧力を強める(あるいは暴力を再開する)機会をいくらでも得るだろう。

したがって、この計画が成功すると信じるには、国際社会、特にアメリカが、イスラエルに対し、現在の合意を維持し、パレスティナとの長年の紛争に対する公正かつ恒久的な解決策を最終的に交渉するよう、容赦ない圧力(relentless pressure)をかけ続けると信じなければならない。確かに、トランプ大統領はついにイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の引き延ばし戦術にうんざりし、この限定的な合意を受け入れさせたようだ。これは、米大統領が、もし行使する意思があれば、どれほどの影響力を持っているかを示す全てだ。

しかし、ネタニヤフ首相、彼の右派支持者、そしてイスラエル社会自体が、ハマスやその他のパレスティナ過激派が完全に排除されたと確信していたとしても、真の二国家解決案(a genuine two-state solution)や何らかの形の単一国家連邦制(some form of one-state confederation)を受け入れる意思があるという証拠はどこにもない。トランプ大統領の極めて短い集中力、気まぐれな性格、そして細部への無関心さを考えると、一体誰が、この問題が継続的に実行されると真剣に考えているだろうか?

問題はトランプ大統領だけではない。外部勢力は、1956年、1967年、1973年の第四次中東戦争におけるアメリカとソ連の行動、そしてそれ以降のワシントンの幾度にもわたる行動のように、交戦当事者に一時的な停戦を促すことはしばしば行ってきた。しかし、公正かつ永続的な政治的解決を実現するために、十分な時間、注意、そして政治的資本を投入し、あらゆる影響力を行使する意思は決して示してこなかった。だからこそ、オスロ合意、2000年のキャンプ・デイヴィッド首脳会談、2007年のアナポリス会議、不運な結果に終わった中東カルテット(アメリカ、ロシア、ヨーロッパ連合、国際連合)、その他大々的に宣伝された和平構想は全て失敗に終わった。

もしアメリカによる継続的な圧力が必要なのであれば、私の2つ目の疑問が重要になる。トランプ大統領の個人的な意向に関わらず、アメリカとイスラエルの関係は和平の可能性を高めるような方向に変化しつつあるのだろうか?

2023年10月7日の攻撃は、国際社会の目から見てハマスに大きな打撃を与え、イスラエルのジェノサイド的対応も同様にイスラエルのイメージを損なった。イギリス、フランス、カナダ、オーストラリア、その他いくつかの国はパレスティナ国家を正式に承認した。これは確かに象徴的なジェスチャーであるが、人々の意識がどれほど変化したかを物語っている。イスラエルのアラブ世界との関係正常化に向けた努力は停滞している。ここアメリカでは、世論調査で支持の劇的な変化が示されており、イスラエルよりもパレスティナに同情的なアメリカ人が多く、イスラエルの行動はジェノサイド(あるいはそれに近い行為)に当たると考える人が41%、正当化できると考える人はわずか22%となっている。

イスラエルへの支持は民主党支持者と無党派層の間で最も急激に低下しているが、スティーヴ・バノン、タッカー・カールソン、マージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員といった著名な保守派も厳しい批判を表明している。民主党支持者は人権問題への懸念を強く訴えている一方、保守派は、ますます無法化するイスラエルへのアメリカの無条件の支援(unconditional U.S. support)は「アメリカ・ファースト(America First)」の理念と相容れないと考えている。

特別な関係の直接的なコストは、長い間明らかだった。イスラエルはアメリカから最大の軍事援助を受けている外国であり、アメリカ政府は、イスラエルが一人当たりの所得で世界16位にランクインし、相当数の核兵器を保有する繁栄した国であるにもかかわらず、公式には「質的な軍事的優位性(qualitative military edge)」を維持することを約束している。年間約40億ドルの軍事援助は通常、イスラエル・ハマス戦争中に急増し、アメリカの納税者は約220億ドルを負担した。この無条件の支援こそが、中東諸国の指導者たちが武器、投資、市場アクセスを得るためにアメリカ政府に媚びへつらい続けているにもかかわらず、アメリカが中東諸国の大半で依然として非常に不人気である主な理由である。イスラエルへの無条件の支援は、ワシントンが人権の揺るぎない擁護者であり、したがってロシアや中国などの大国ライヴァルよりも道徳的に優れているという主張を損なうことで、アメリカのソフトパワー(America’s soft power)を低下させている。こうした偽善は、トランプ政権がこうした理想を軽視していることを考えると、彼らにとっては問題にならないかもしれないが、それでもアメリカのリベラルな理想とは相容れない。

また、特別な関係は、人口1000万人にも満たない小国が、世界で最も強力な国の政治生活において、不釣り合いなほど多くの時間を割かれていることを意味する。インド、日本、インドネシア、ナイジェリア、ブラジルといった、より規模が大きく戦略的に重要な国々が占める紙面や放送時間と比較して、この小国が受ける報道量を考えてみて欲しい。オーストリアはイスラエルとほぼ同じ人口とGDPを持ち、多くの国際機関の本部が置かれているにもかかわらず、アメリカ人はオーストリアについて散発的にしか耳にしない。あるいは、この小国に特化したシンクタンクやロビー団体の数、そしてアメリカの政治家がこの国の問題に費やす時間の量を見てみよう。

さらに、この小国に関連する問題は、アメリカのより広範な文化や知的活動に日常的に波及している。現在大学を攻撃している背景には多くの要因があるが、ガザ地区の虐殺と、それを支援したアメリカの役割に抗議する学生たち(その多くはユダヤ人)から生じた、誇張された反ユダヤ主義(antisemitism)の非難によって、その攻撃はさらに激化している。学問の自由、ひいては言論の自由全般に対する攻撃は、イスラエルを批判から守り、特別な関係を維持したいという誤った願望だけによって動機づけられているわけではないが、そうした目的も一部の人々にとっては、その要因の一つとなっている。

最後に、この小さな国にアメリカの大統領がどれほどの時間と注意を費やしているかを見てみよう。ジミー・カーター大統領は1978年のキャンプ・デイヴィッド合意の交渉にほぼ2週間を費やし、ビル・クリントン大統領も同様の試みを行った。しかも、これは首脳会談以外でこれらの問題に費やした時間は含まれていない。ジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ジョー・バイデンの各大統領は、イスラエル関連の問題に数日、場合によっては数週間を費やした。アントニー・ブリンケン国務長官は在任4年間でイスラエルを16回訪問したが、アフリカ大陸全体への訪問はわずか4回だった。トランプ大統領でさえ、イスラエル問題から距離を置くこと、あるいはイスラエル政策を部下に完全に委任することは不可能だと悟った。大統領、上級顧問、その他の高官がこれらの問題に費やす時間は、アメリカの安全保障と繁栄にとってより直接的に重要な問題に取り組むことができない時間となる。

だからこそ、私をはじめとする多くの人々は、イスラエルの規模と戦略的重要性、そしてアメリカの国益との合致を考慮し、アメリカがイスラエルと正常な関係を築くべきだと繰り返し訴えてきた。正常な関係においては、ワシントンはもはやアメリカとイスラエルの国益が同一であるかのように装うことはなくなるだろう。イスラエルがアメリカにとって望ましい行動をとれば、アメリカはイスラエルを支持するだろう。もしイスラエルがアメリカの意向に反する行動、例えば占領地における入植地の拡大といった行動をとれば、アメリカはイスラエルに強く反対するだろう。

イスラエルは歴史的起源、キリスト教徒による長く悲劇的な反ユダヤ主義の歴史、ホロコーストの遺産、そして非常に紛争の多い地域に位置していることから、通常の国ではないため、通常の関係は意味がないと主張する専門家たちもいるかもしれない。おそらくそうだろうが、2025年においては、イスラエルが「正常(normal)」ではない点は、実際にはアメリカの支援を維持するのではなく、むしろ縮小する理由となる。イアン・ラスティックが最近指摘したように、イスラエルはイスラエルの政治学者イェヘズケル・ドロールの「狂った国家(crazy state)」の定義にますます当てはまるようになっている。狂った国​​家とは、(1)しばしば他者に害を及ぼす攻撃的な目標を追求する、(2)そのような目標に対して極めて過激な関与を示す、(3)不道徳な行為を厭わないにもかかわらず、道徳的優越感を広く示す、(4)そのような目標を追求するために論理的な手段を合理的に選択する能力を持つ、(5)それらを追求するのに十分な能力を持つ、というものである。ラスティックの見解では、イスラエルの現状を決定づける重要な要因の一つは、「アメリカ政権が歴代のイスラエル政府にほぼ無条件の支援を与えてきたこと()has been the nearly unconditional support which American administrations have given to Israeli governments」であり、彼はその原因を「ワシントンにおけるイスラエルロビーの圧倒的な政治力(the Israel lobby’s super-abundant political power in Washington.)」にあると指摘する。

この立場は「反イスラエル(anti-Israel)」と言えるだろうか? 決してそうではない。無条件の支援はアメリカにとって有害で​​あり、イスラエルにとっては災難である。イスラエルは海外からの支持を失い、国内では分裂が深まり、メシア的右派(the messianic right)への傾倒がますます強まり、高学歴で経済的に流動的なエリート層の国外流出に苦しんでいる。「寛容な正常化(benevolent normality)」政策は、たとえそれがAIPAC、アメリカ・シオニスト機構、イスラエルのためのキリスト教徒連合、その他、特別な関係を維持し、イスラエルを現在の窮状に陥れ、何百万人もの不本意なパレスティナ住民に多大な苦痛を与えることを可能にしてきた団体の利益にならないとしても、長期的にはアメリカにとってもイスラエルにとってもより良いものとなるだろう。要するに、永続的な平和を望むなら、イスラエルとのより正常な関係が必要だ。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2026年2月28日に始まったイラン戦争について、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相がアメリカを巻き込む形で攻撃が始まったことは既にご紹介した。ネタニヤフ首相による「誘導(induction)」にドナルド・トランプ大統領が乗せられてしまったということになる。もちろん、トランプ大統領個人だけではなく、政権内部にもイラン攻撃に賛成する人物たちが揃っていたということはある。下記論稿では次のように書かれている。

(引用貼り付けはじめ)

第二次トランプ政権では、ワシントンは遠隔地での戦争を通じて莫大な富を蓄積するロビイストの巨大なネットワークと、アメリカの覇権維持のために戦争も辞さない新世代のネオコンによって支配されている(Under the second Trump administration, Washington has been gripped by a vast network of lobbyists accumulating immense wealth through remote wars and new neocons willing to go to war to maintain US hegemony

(引用貼り付け終わり)
mikewaltzmarcorubio001
マイク・ウォルツ国連大使(左)とマルコ・ルビオ国務長官
elliottabrams101
エリオット・エイブラムス

 下記論稿では、「ワイトハウス大統領次席補佐官スティーヴン・ミラー、国務長官マルコ・ルビオ、国連大使マイク・ウォルツ、元国家安全保障問題担当次席大統領補佐官アレックス・ウォン、そして政策担当国防次官エルブリッジ・コルビー」といった人々がネオコンとして名前が挙がっている。ネオコンとして、ジョージ・W・ブッシュ政権で国家安全保障問題担当大統領次席補佐官を務め、第一次ドナルド・トランプ政権では、ヴェネズエラとイラン問題の特別代表を務めたエリオット・エイブラムスが創設したシンクタンクのヴァンデンバーグ・コアリションの影響力についても下記論稿では言及されている。下記論稿ではさらに、「ロックブリッジ・ネットワーク(Rockbridge Network)」について軽く振られているが、この団体はかなり重要であるので、このブログで後ほど紹介する。
stephenmillerdonaldtrump101
ドナルド・トランプ大統領とスティーヴン・ミラー(右)

 第二次ドナルド・トランプ政権の内部で大きな力を持っているのは、スティーヴン・ミラーホワイトハウス大統領次席補佐官兼国土安全保障問題担当大統領補佐官である。第一次政権ではスピーチライターと特別顧問を務めた。強硬な国境政策や不法移民政策を策定し、実行しているのはミラーであるが、このミラーはイスラエルとのベンヤミン・ネタニヤフ首相ともユタ野人同士ということもあり昵懇の間柄だ。ミラーがトランプ大統領のイラン攻撃決定に影響を及ぼしたということは十分に考えられることだ。

 第二次ドナルド・トランプ政権の内部の動きについてはこれからも随時追いかけ、ご報告する。このブログを継続するためにも、定期的にブログを開きお読みいただきたい。また、著書についてもお買い上げいただきたい。

(貼り付けはじめ)

ドナルド・トランプの暴走を操る新世代のネオコンたち(The new class of neocons guiding Trump’s rampages

キム・ドンスク筆

2026年4月21日

『ハンギョレ』紙(韓国)

https://english.hani.co.kr/arti/english_edition/e_international/1255216.html

ドナルド・トランプはネオコンを敬遠していたが、トランプ2.0時代において、新世代のネオコンが相当な権力を握っている。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、どのようにしてドナルド・トランプ米大統領を説得し、イランとの戦争に踏み切らせることができたのだろうか?

ネタニヤフ首相は、この合意を一気に成立させたのではない。むしろ、それは綿密な計画の成果であり、保守的なシオニストやイスラエル企業の協力を得て、2024年の大統領選挙におけるトランプの立候補を支援するという戦略に基づいていた。この計画の中心は、イスラエルを支持する保守派の政治的影響力を行使し、第二次トランプ政権の外交・国家安全保障ティームに新たなネオコン層を送り込むことだった。

これらの人物は、保守系シンクタンクであるヘリテージ財団が2024年の大統領選挙前に作成した、第二次トランプ政権を想定した政策綱領「プロジェクト2025(Project 2025)」の執筆者の中にも含まれていた。

トランプが昨年(2025年)1月にホワイトハウスに復帰するとすぐに、ワシントンに拠点を置くシンクタンクであるヴァンデンバーグ・コアリションは、新たな外交政策を提唱する報告書を発表した。その報告書のタイトルは「世紀の取引:中東問題の解決(Deals of the Century: Solving the Middle East)」だった。

この報告書は、トランプの2期目に向けたネオコンのマニフェストとも言えるもので、アメリカはイスラエルへの軍事援助をさらに拡大し、イランに対して根本的に異なる姿勢を取るべきだと主張していた。

これは、トランプの選挙公約で掲げた「海外での軍事冒険はしない(o stay out of foreign military adventures)」というアイソレイショニスト(アメリカ国内問題解決最優先的)な姿勢から脱却させるための、まさに強硬なロードマップだった。

報告書は、アメリカの最優先事項は「イランの核兵器開発計画を抑止すること(deter Iran’s nuclear weapons ambitions)」だと述べ、中東地域における中国の影響力拡大への懸念を表明するとともに、中国をアメリカの主要な敵対国と位置づけるよう促した。要するに、ヴァンデンバーグ・コアリションは、イランと中国がトランプの2期目における主要な外交課題であると強調したのである。

ヴァンデンバーグ・コアリションの報告書は、過去1年間、アメリカ政府の最高レヴェルで繰り返し参照されてきた。特に、ホワイトハウス大統領次席補佐官スティーヴン・ミラー、国務長官マルコ・ルビオ、国連大使マイク・ウォルツ、元国家安全保障問題担当次席大統領補佐官アレックス・ウォン、そして政策担当国防次官エルブリッジ・コルビーなどが、ヴァンデンバーグ・コアリションの提案を実行するための具体的な措置を準備し、トランプ大統領に提示した。

結局のところ、ヴァンデンバーグ・コアリションの戦略的焦点は中国の封じ込め(containing China)にある。報告書の中で、ヴェネズエラ政府をアメリカの勢力圏(sphere of influence)に組み込むことで、ヴェネズエラが足がかりとなっていた西半球(the Western Hemisphere)における中国の影響力を弱めることができると主張している。

アメリカは、外交・軍事資源を他の分野に集中させれば、中東地域などの重要地域における中国の影響力拡大を効果的に抑制できると考えている。これは、中国の世界的な影響力を弱体化させるための多段階イニシアティヴの一環である。一部のアナリストは、トランプ大統領の対イラン攻撃は、北京訪問のための布石だったと考えている。

トランプ大統領の勢力志向の外交政策は、「破壊して取引する(destroy and deal)」という行動様式として体系化され、以前よりも攻撃的で予測不可能なものとなっている。

2021年に設立されたヴァンデンバーグ・コアリションは、介入主義的な外交政策と国防費の増額を提唱している。2025年、この組織はヴェネズエラとイランに関する多数の報告書を発表し、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領の逮捕を促し、イランを非難した。

著名なネオコンであるエリオット・エイブラムスは、ヴァンデンバーグ・コアリションの創設者兼会長だ。彼は介入主義(interventionism)の熱烈な支持者であり、中東地域にアメリカに友好的な政権を樹立することが、世界からテロリストを一掃する最善かつ最も確実な方法だと信じている。また、2003年のイラク侵攻を執拗に支持したネオコン運動の中核人物でもある。彼はイラン・コントラ事件への関与で有罪判決を受けた。

バラク・オバマ政権の8年間を通して、エイブラムスは外交問題評議会の上級研究員を務め、その間、オバマの「後ろから導く(leading from behind)」外交政策はアメリカの影響力を弱めていると主張した。

エイブラムスはオバマのキューバとイランとの関係正常化の試みを強く批判し、オバマが敵国に接近していると非難した。イラク戦争の反動が無視できないほど深刻化した後も、エイブラムスはシリア内戦とイスラエル・パレスティナ紛争について持論を展開し続け、イラク戦争後に散り散りになったネオコン勢力を再結集させた。

2019年、第一次トランプ政権に、エイブラムスはイラン・ヴェネズエラ担当米特別代表に任命され、公職に復帰した。エイブラムスはイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と特別な関係にある。

私はかつて2007年のAPEC首脳会議でエイブラムスに直接会う機会があった。私が韓国人だと知ると、エイブラムスは「中国、イラン、北朝鮮が連携している以上、アメリカ、イスラエル、韓国は国家安全保障に関して協力する必要がある」と述べた。

トランプが2024年の大統領選挙で孤立主義を唱え、「新たな戦争は起こさない(there would be no new wars)」と主張した際、エイブラムスはヴァンデンバーグ・コアリションに所属する複数のネオコン戦略家を招き入れ、ヘリテージ財団の「プロジェクト2025」計画ティームに加えた。

エイブラムスは第二次トランプ政権には公式な役職には就いていないものの、舞台裏のアドヴァイザー兼アナリストとして中東政策に関する理論的助言を提供し、影響力を行使している。何よりも、エイブラムスの指導の下、トランプ政権の要職に就く新世代のネオコンたちは、絶大な権力を振るっている。

トランプ大統領の側近の多くは、エイブラムスに同調するネオコンの中に名を連ねている。スティーヴン・ミラー、マイケル・ウォルツ、マルコ・ルビオなどがその例だ。連邦上院では、テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)、リンジー・グラハム連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)、トム・コットン連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)が、エイブラムスの政策を支持するネオコンである。

その他、注目すべきネオコンとしては、ジェイミソン・グリア米通商代表、ブライアン・キャバノー(国土安全保障次官候補)、アール・マシューズ(国防総省法律顧問)、モーガン・オルタガス(中東地域担当米国特使代理)、マイク・ハッカビー駐イスラエル米大使などが挙げられる。

ハッカビーの側近であり、イスラエルを熱烈に支持し、MAGA運動の柱としてホワイトハウスで影響力を持つデイヴィッド・ミルスタインは、トランプ大統領が揺るぎない信頼を寄せているFOXニューズの司会者で保守派コメンテーターのマーク・レヴェンの義理の息子でもある。さらに、韓国でよく知られたエルブリッジ・コルビーは、エイブラムスの義理の姉の息子である。

かつてネオコンはアメリカの外交政策に大きな影響力を持っていたが、イラク戦争の惨禍の後、ジョン・ボルトンを最後の生き残りとしてワシントンから姿を消したかに見えた。

しかしながら、彼らはイスラエル中心の中東政策という長年の戦略を擁護することで、トランプ政権の中枢に静かに深く入り込んできた。これらの新たなネオコンは、トランプ大統領の「アメリカ・ファースト(America First)」の原則と、介入主義への揺るぎない信念を融合させ、新たなタカ派政策を築き上げている。

彼らはもはや、旧来のネオコンが掲げていた民主政治体制の普及というスローガンを唱えていない。代わりに、圧倒的な武力による制圧と取引に焦点を当てることで、第二次トランプ政権の外交・安全保障政策を主導している。価値観(values)よりも実利主義(pragmatism)を優先することで、彼らは敵対国、つまり中国を効果的に無力化する(neutralizing)という目標を設定し、トランプの注目を集めている。

こうした新ネオコンと同盟を結んだネタニヤフ首相が用いているもう一つの戦略は、トランプ一族が経営する企業に巨額の資金を投入することだ。これらの企業の多くは、防衛、人工知能、航空宇宙、バイオテクノロジーといった分野の巨大企業である。

トランプがイランを攻撃し戦争を仕掛ける中、彼の2人の息子は防衛産業への投資で莫大な利益を上げている。次男のエリック・トランプは、イスラエルのドローンメーカーで米防総省の契約企業であるエクステンド社に投資し、この戦争においてドローンの能力がますます重要になるにつれて巨額の富を築いた。

トランプ大統領の長男であるドナルド・トランプ・ジュニアは、ドローン部品を製造するスタートアップ企業アンユージュアル・マシーンズの株主兼アドヴァイザーを務めている。アンユージュアル・マシーンズはドローン部品製造のため、米国防総省から6億2000万ドルの融資を受けた。これは国防総省戦略資本局が過去に行った融資の中で最大規模である。

トランプ・ジュニアはまた、「愛国的資本主義(patriotic capitalism)」を推進し、防衛技術系スタートアップ企業に投資するヴェンチャーキャピタル企業である1789キャピタルのパートナーでもある。1789キャピタルは、シリコンヴァレーのヴェンチャーキャピタリストの中でもトランプを支持する億万長者ネットワークであるロックブリッジ・ネットワーク(the Rockbridge Network)の億万長者たちが支援する投資運用会社である。

1789キャピタルは、トランプ大統領の再選直後にトランプ・ジュニアがパートナーとして加わって以来、爆発的な成長を遂げている。1789キャピタルは主に防衛・兵器産業分野に投資しており、アンドゥリル・インダストリーズ、ハドリアン・オートメーション、スペースX、そして米国防総省のパートナー企業である希土類磁石の新興メーカーであるバルカン・エレメンツなどが投資ポートフォリオに含まれている。

トランプ・ジュニアは、物議を醸している予測市場企業ポリマーケットのアドヴァイザーも務めており、主要な外交政策や国家安全保障に関する決定を事前に予測することで巨額の利益を得ていると疑われている。

第二次トランプ政権では、ワシントンは遠隔地での戦争を通じて莫大な富を蓄積するロビイストの巨大なネットワークと、アメリカの覇権維持のために戦争も辞さない新世代のネオコンによって支配されている(Under the second Trump administration, Washington has been gripped by a vast network of lobbyists accumulating immense wealth through remote wars and new neocons willing to go to war to maintain US hegemony)。

ネタニヤフ首相の影響力は、こうした新たな政治情勢の中で発揮されている。これらの人物は、中国、ロシア、イラン、北朝鮮をまとめて「CRINK」という新しい略語を作り出し、これらの国々を「新たな悪の枢軸(the new axis of evil)」と位置づけている。

韓国では、トランプ大統領の5月の中国訪問が、米朝関係の打開につながるのではないかと期待されている。個人的には、その見通しに不安を覚える。ペルシア湾が炎上している状況が、まるで他人事のように感じられないと言うのは、大げさな反応だろうか。

キム・ドンスク:韓国系アメリカ人グラスルーツ会議議長。

=====

ドナルド・トランプの熱狂者:スティーヴン・ミラーの恐怖政治の内幕(Trump’s ZealotInside Stephen Miller’s Reign of Terror

―ドナルド・トランプのアメリカについてあなたが嫌悪したり愛したりするもの全てはスティーヴン・ミラーの恐怖共和国についてあなたが憎んだり大切にしたりするものと全く同じだ。

アサウィン・スエブサエング、ニッキ・マカン・ラミレズ、アンドリュー・ぺレズ筆
2025年9月14日

『ローリングストーン』誌
https://www.rollingstone.com/politics/politics-features/stephen-miller-trump-terror-ice-immigration-military-1235426023/

昨年(2024年)11月6日午前3時過ぎ、ヒルトン・ウェストパームビーチ・ホテルの受付近くに立っていた、薄毛で痩せ型の男性ほど、この世で幸せそうな人はいなかっただろう。

ドナルド・トランプは、隣接するフロリダ・コンヴェンションセンターで2024年大統領選挙の開票速報パーティーを終えたばかりで、「史上最も素晴らしい政治的出来事(the most incredible political thing)」と雄弁に語る演説で勝利を宣言した。歓喜に沸く共和党の献金者、選挙スタッフ、将来の政府高官、そして出席者たち(もちろんジョン・ヴォイトも)が、祝賀のためにこの高級ホテルに押し寄せた。

ロビーの正面に立っていたのはスティーヴン・ミラー。トランプが間もなくホワイトハウスの政策決定と行政権限の絶対的な責任者として指名する人物だ。

ミラーは、トランプ政権初期の主要な政策立案者の一人であり、特に大統領による合法移民の抑制政策において重要な役割を果たした。ジョー・バイデン政権の高官たちは、トランプ政権1期目にミラーが移民政策に与えたダメージは今もなお国に重くのしかかっており、バイデン陣営は4年間の政権期間中にその多くを覆すことができなかった、あるいはそうしようとしなかったと語るだろう。

しかし、フロリダでのあの夜、当時39歳だったミラーにとって何かが違っていた。目の前に無限の可能性が広がっていたのだ。

祝賀ムードの中、ミラーはトランプ政権の高官たちと集まり、次々と祝福の言葉をかけてくる熱狂的な保守派有権者や共和党の大物たちに感謝の意を伝えた。彼らは皆、あの夜の勝利はトランプだけのものではなく、ミラー自身の勝利でもあることを理解しており、多くの人がトランプから贈られたミラーの指輪にキスをせざるを得ないと感じていた。

トランプの復権を目の当たりにした瞬間、ミラーの顔に浮かんだ抑えきれない喜びの表情は、未来を見通す者の目を見ていたかのようだった。トランプのトップ補佐官であり、最も忠実な信奉者であり、1期目のMAGA派幹部の度重なる粛清をどうにか生き延びた唯一の側近は、この国が今や自分のものになったことを悟っていた。

喜びにあふれた女性に語りかけるミラーは「素晴らしいことになるだろう」と言った。

トランプの2期目が始まって7カ月以上が経ち、スティーヴン・ミラーは、アメリカ、いや世界でも最も権力を持つ非選出官僚となった。トランプの承認を得て、ミラーは、その階級のアメリカ政府高官としては前例のないほど、国家を自由に運営し、再構築することを許されている。トランプ政権の悪名高い政策を思い浮かべてみてほしい。おそらく、それはスティーヴン・ミラーによって推進されたものだろう。

全てにトランプの署名があるものの、大統領が夜な夜な大統領令を書き、法理論を自らの意のままに操っている訳ではない。そのほとんど全てはミラーの著作(あるいは少なくとも共著)である。ドナルド・トランプのアメリカについてあなたが嫌悪したり愛したりするものはすべて、スティーヴン・ミラーの恐怖の共和国についてあなたが憎んだり大切にしたりするものと同じだ。

ミラーの指導の下、大統領が望めば、政府は適正な手続きを経ずに、あなたやあなたの配偶者を国外の強制収容所に強制送還(あるいは誘拐して身柄を引き渡す)することができる。ホワイトハウスは、人身保護令状(habeas corpus)のような最も基本的な憲法上の権利を剥奪すると繰り返し脅迫することができる。大統領は、最高司令官を苛立たせたか、選挙を盗むのに協力することを拒否した以外に何も悪いことをしていない敵に対して、司法省による刑事捜査を開始することができる。大統領とその側近は、たとえ犯罪歴がなくても、裁判所への定期的な出頭時、教会、子供の学校の前など、どこでもあなたを逮捕することができる。彼らは極めて厳格な移民逮捕「割り当て(quotas)」制度を導入し、大量強制送還ではなく、大量失踪と刑務所や新設された収容所での無期限拘留を主とする体制を確立した。

彼らは連邦法執行機関の大部分を、大統領とそのスタッフの気まぐれで活動する、覆面をした匿名で責任を問われない秘密警察(secret police)へと急速に変貌させた。大統領はいつでも、武装した州兵や海兵隊をアメリカの都市の街路に派遣し、そこを敵地とみなすことができる。政権は、ホワイトハウス西棟から連邦通信委員会に至るまで、言論の自由を抑圧する十字軍(an anti-free-speech crusade)を展開し、メディア、コメディアン、そして老齢のロックスターに対する検閲を政策の最優先事項としている。

「影の国防長官(Shadow Sec Def)」。

「ミラー総理大臣(Prime Minister Miller)」。

「本当の司法長官(The REAL Attorney General)」。

「国土安全保障省のボス(The DHS boss)」。

「ミラー大統領(President Miller)」。

トランプ政権の当局者や大統領およびホワイトハウスに近い他の共和党員は、ミラーがいつか陰で自分の悪口を言われるのではないかと疑心暗鬼になっているが、それでも彼らはホワイトハウス副首席補佐官に付けた非公式の肩書きやニックネームをささやき合っている。

ローリングストーン誌が、元FOXニューズのスターで国防長官を務めるピート​​・ヘグセスについてある政権高官に尋ねたところ、この情報源は自ら進んで「彼はスティーヴン(・ミラー)の言うことを聞いている」と答えた。

国防総省報道官のショーン・パーネルは、ヘグセス長官は「スティーヴン・ミラーと良好な協力関係を築いている。両者はトランプ大統領の『アメリカ・ファースト(America First)』政策の遂行において完全に一致している」と述べた。

●「とんでもない奴」(‘One Intense Motherfucker’

カリフォルニア州サンタモニカで十代だった頃、ミラーは学校で自分と関わりのないハンサムな少年たちを挑発することに何よりも熱中していた。

サンタモニカのリンカーン中学校でミラーと初めて出会ったジェイソン・イスラスは、自分とミラー、そしてもう一人の友人は仲の良いアウトサイダー集団で、中学時代はスタートレックの話をするなど、思春期の男の子らしいことをして過ごしたと語る(イスラスはミラーがカーク船長の大ファンだったことを覚えている)。しかし、1999年の夏、中学2年生から3年生になる頃、状況は一変した。イスラスによれば、ミラーは彼に「もう友達ではいられない」と告げたという。「彼が言ったことの一つは、僕がラテン系の血を引いていることが気に入らないということだった」とイスラスは回想する。

その後数十年、ミラーは成長するどころか、過激な思想をますます強固にしていった。バラク・オバマ政権時代にアラバマ州選出のジェフ・セッションズ連邦上院議員の事務所で広報担当補佐官として働いていた頃、彼は連邦議事堂の保守派の同僚たちから非常に嫌われていた。そのため、他の共和党議員事務所のスタッフは、ミラーが陶器の人形遊びが好きだといった悪意のある噂をでっち上げたり、広めたりしていた。(ホワイトハウス当局者は、彼の連邦議会での活動に関するそのような描写は「不正確で根拠のない噂話」だと主張している。)当時のスタッフは、彼が極右のヘイトサイトを読み過ぎてワシントンの最も過激な沼に足を踏み入れるとどうなるかという、単なる笑い話か、あるいはあまり知られていない教訓話以上の存在になるとは夢にも思っていなかった。

今日に至るまで、状況はほとんど変わっていない。トランプ大統領の政策立案者であり執行者でもあるスティーヴン・ミラーは、3人のトランプの補佐官によれば、いかなる犠牲を払ってでも、自らが「反白人憎悪(anti-white hatred)」「反白人人種差別(anti-white racism)」「反白人差別(anti-white discrimination)」とみなすものを根絶するために、政府の力を駆使することに執着している。

ミラー氏は、軍事戦闘(military combat)、永遠の戦争(forever war)、文化と国土への侵略(invasion against the culture and the homeland)といった、誇張された表現を用いた終末論的な単語(apocalyptic terms)ばかりを用いる。

彼は、収容と大量強制送還のための「キャンプ(camps)」と名付けた、巨大で超軍事化されたネットワークを構築することを切望している。このネットワークによって、アメリカの政治的・物理的な景観が永久に変わることを期待しているのだ。

ユダヤ人であるミラーは、自身のおじから、ユダヤ人の道徳的・政治的価値観を裏切った人物として非難されている。ミラーは長年、1924年移民法に深い敬意を抱いており、アメリカをあの時代に戻したいと願っている。この法律は、ナチスから逃れようとしたユダヤ人がアメリカへの安全な渡航を拒否されたことで、ホロコーストをより悲惨なものにしたことで悪名高い。

2024年の大統領選挙結果が確定した直後、人権団体や移民擁護派は、ミラーがこれから解き放とうとしている猛攻に全く備えができていないと痛感せざるを得なかった。トランプ政権の任命者の中で、彼らを夜も眠らせないほど心配させたのはミラーだった。トランプ政権の次期「国境警備責任者(border czar)」トム・ホーマンが大量強制送還について大々的に語っていたとしても、ミラーに比べれば取るに足らない存在だった。ホーマンの仕事ぶりを知る者にとって、元移民税関執行局(ICE)長官代行は、時折、規則や制限が多少なりとも存在することを認めていた。ミラーのような男にとって、重要な法律とは、彼とトランプが都合よく歪めることができる法律だけだった。

ミラーは、匿名の人種差別主義者のインターネット荒らしが苦痛に満ちた現実世界に具現化し、権力を授けられたような存在かもしれない。しかし、だからといって、彼は自らが唱えるイデオロギーの正当性を心から信じていない訳ではない。彼自身は、自らを勝利の英雄、軟弱なリベラリズムに対する唯一の解毒剤、そして、彼自身や仲間たちが多元的な現実によって不当な扱いを受けていると感じている、寛容な合法・非合法移民に対する聖戦士(a holy warrior against the permissive legal and illegal immigration)だと考えている。

トランプ政権の最高幹部である共和党員にミラーについて尋ねると、賞賛と不安が入り混じった独特の反応が返ってくる。「とんでもない奴だ(One intense motherfucker)」と長年トランプの顧問を務めてきた人物は言う。

友人たちが彼をより穏やかで、親切で、面白い人物に見せようと試みても、たいていは失敗に終わり、偏屈者(a crank)か、これまで出会った中で最も意地悪なオタク(the meanest dork)のように映ってしまう。例えば、ミラーの長年の側近数名によると、ホワイトハウスの最高補佐官である彼は、これまでに出会った中で最も「MAHA(アメリカを再び健康に、Make America Healthy Again)」(マナーの悪い、傲慢な)人物の一人であり、ロバート・F・ケネディ・ジュニア流の食と健康(あるいは反健康)に関するプロパガンダにどっぷり浸かっているという。彼の私生活に関する話を聞くと、控えめに言っても退屈な人物像が浮かび上がる。

ローリングストーン誌に、ミラーに言い寄られたある女性は、2017年頃、デュポンサークル近くのバーで、結婚前のミラーに口説かれた時のことを語っている。その話によると、彼女は服の襟にどこの国名が書いてあるのか(中国とは言わないように)と執拗に聞かれ、保守派の典型的なタイプではないという理由で「グローバリスト(globalist)」だと非難されたという。

ワシントンで彼を奇妙だと思うのは、見知らぬ女性だけではない。長年にわたる緊密な協力関係の中で、トランプ大統領は、まるで核兵器を携えたおしゃべりな意地悪女のように、ミラーの陰口を言うことをためらわなかった。この件を直接知る2人の情報筋によると、トランプは過去に、ミラーの強烈でぎこちなく、時には人を遠ざけるような態度について、他の人に話していたという。

しかし、トランプにとって、ミラーは頼りになる突破口(a useful battering ram)であり、「ロイ・コーンはどこにいるのか?」という長年の疑問に対する政策的な答えなのだ。

ホワイトハウス報道官キャロライン・リーヴィットは次のように述べている。「スティーヴン・ミラーは、トランプ大統領の最も長く仕え、最も信頼されている顧問の一人として、ほぼ10年間務めてきた。大統領がスティーヴンをどれほど尊敬しているかは、私自身が日々目の当たりにしているので、このように断言できる。だからこそ、スティーヴンは政策担当大統領次席補佐官兼国土安全保障担当大統領補佐官を務めている。大統領はスティーヴンと、その実績あるリーダーシップ能力に絶大な信頼を寄せているからだ。スティーヴンは職務を非常に効率的にこなすだけでなく、忠実な同僚であり友人でもある。これに反する意見は、彼をよく知らない人々の根拠のない噂話に過ぎない」。

報道官の声明に加え、トランプ政権はローリングストーン誌に対し、共和党所属の連邦議員たちからの長々とした推薦文リストを送付した。それはまるで、トランプ支持派のリンクトインの推薦欄を彷彿とさせるもので、スティーヴン・ミラーが個人的にも人々に好かれていることを証明するためだった。

例えば、ジョシュ・ホウリー連邦上院議員は、ミラーを「友人(a friend)」と呼べることを嬉しく思うと述べ、「彼はアメリカの家族が繁栄できる未来の実現に深く尽力している」と付け加えた。

スティーヴ・スカリス連邦下院多数党(共和党)院内総務は、「スティーヴン・ミラーは聡明で思慮深く、議員たちの意見や懸念に耳を傾ける時間を惜しまず、常に一緒に仕事がしやすい人物だ」と述べ、「スティーヴン・ミラー氏を親しい友人と呼べることを誇りに思う」と付け加えた。

ホワイトハウスは、トム・コットン連邦上院議員、マイク・リー連邦上院議員、ジム・ジョーダン連邦下院議員からも同様の声明を発表し、報道官は、これらの議員によるミラーへの称賛は全てこの記事に掲載される予定だと述べた。

●「やり遂げる」(‘Get It Done’

トランプ政権のホワイトハウス・ウエストウイングで働く複数の情報筋によると、現在、大統領の側近は形式上はホワイトハウス副首席補佐官だが、トランプ政権の政策責任者として、実際の首席補佐官であるスージー・ワイルズ(トランプの2024年大統領選共同責任者)をはるかに凌駕している。

ミラーは、事実上あらゆる政策と行政措置(特に国内政策関連)に関与し、事実上全ての文書、トランプ大統領の指示、憲法上疑わしい命令、メモに関わっている。ワシントンDC、ロサンゼルス、そしてあなたの街の民主党優勢都市にも迫りつつあるトランプ政権の軍事介入の構図は、ミラーが軽蔑するリベラル派の牙城を制圧するという彼の構想の産物でもある。

「スティーヴンにとっては最高に楽しい仕事だ」とトランプ氏の側近の一人は、アメリカ軍の国内展開を指揮しているミラーの役割について語る。

トランプ政権による多様性推進プログラム、高等教育、そしてトランプが好まない言論の自由に対する徹底的な締め付けは、ミラーの理念を如実に表しており、かつては粗野とみなされていた方法で保守派の「文化戦争(culture war)」を連邦政府の手に委ねるという長年の野望を実現させた。トランプの広範な移民・国境警備政策は、まさに「スティーヴン・ミラー・ショー」であり、スティーヴン・ミラー・プロダクションズLLCが制作し、スティーヴン・ミラー自身が演出を手がけている。

大統領がこれらの国内プログラムを開始するために署名する書類の一枚一枚を、トランプの側近であるミラーは精査し、時には修正を加え、連邦政府機関のあらゆる部署のトランプ政権関係者に、彼自身の言葉を借りれば「やり遂げる(get it done)」と圧力をかける。

彼が省庁や機関の職員を叱責する様子は、もはや悪夢とまではいかないまでも、伝説となっている。トランプ政権2期目が始まって以来、連邦政府で働き、ミラーと直接やり取りをしたことのある2人の情報筋がローリングストーン誌に語ったところによると、ミラーの叱責によって、それぞれ職場で泣いてしまったという。

省庁間の協議において、ミラーは日常的に相手を罵倒し、怒鳴りつけ、職員の職や党内での将来を脅し、同僚の前で屈辱を与えようとしてきた。移民逮捕者数が十分に水増しされていないと感じたり、トランプ大統領の国内政策が少しでも停滞していると感じたりすると、激怒する。彼は長時間労働と、新政権が打ち出す過酷な政策の細部にわたる管理で知られている。2017年以来、共和党上層部では、トランプ大統領のためなら何でも言い、何でもやり、ほとんど誰でも裏切ることを厭わない人物として、そして何よりも大統領との権力関係と近さを維持するために、そうした姿勢を貫いてきた人物として、長年にわたり悪評がつきまとっている。

トランプ政権の最高幹部レヴェルでは、パム・ボンディ司法長官が司法省を、クリスティ・ノーム国土安全保障長官が国土安全保障省を牛耳っているという考えは、あまりにも不完全である。名目上は独立している各省庁は、ホワイトハウスのウエストウイング、つまり実質的にはミラーによって運営されている。

政府関係者の中には、トランプ大統領は州兵や武装した海兵隊を民主党が統治する都市部に派遣できるものの、これらの部隊は従来の法執行活動を行うことはできないと指摘する者もいた。こうした状況に対し、ミラーは政権の弁護士やスタッフに対し、トランプ大統領は彼らにその法的制約を回避する方法を見つけ出し、得られた法的​​理論を報告するよう求めている。

ミラーは、トランプ政権発足当初の数カ月間、非常事態宣言ではなく国内政治目的のために、アメリカ国内へのアメリカ軍派遣を常態化させることを最優先事項としてきた。関係者によると、トランプ大統領とミラーは、これに反対する者を「弱者(weak)」「臆病者(cowards)」「犯罪擁護者(pro-crime)」と見なしているという。

●「私たちは命令に従うしかない」(‘We Just Have to Follow Orders’
トランプ大統領がロサンゼルスでの移民税関執行局(ICE)の作戦を支援するため、州兵と海兵隊を派遣した後、ミラーは、不法移民を市から一掃すれば、残された住民にとってユートピアが生まれると主張した。

「不法移民がいなくなれば、アメリカ国民のためにどれだけの資源が解放されるか、想像できるか?」とミラーはフォックスニューズに語った。「救急外来で列に並ぶ必要もなくなり、ロサンゼルスのひどい交通渋滞もなくなる。健康保険料は下がり、公立学校の教室の規模も縮小する。・・・そして、もし政府の支援が必要になったとしても、第三世界から来た何百万人もの不法移民の後ろに並ぶ必要はない。これは、一般のアメリカ国民の生活の質にとって、まさに大きな恩恵となるだろう」。

2025年7月、ホワイトハウス前で記者団の取材に応じた際、ミラーは「幼い子供を持つ母親(moms with young kids)」を標的にすることが政権の資源の最適な使い方なのかと問われた。それに対し、彼は記者に対し、不法移民のうち何パーセントを滞在させるべきかと問い詰めた。「どの不法移民がレイプや殺人を犯すかを、魔法の8ボールで予知できるとでも思っているのか?」。

ミラーには法律の専門知識はないが、トランプ政権関係者によると、ミラーはトランプが外国人敵対者法(AIEA)を利用して適正手続きを経ずに大量強制送還を行うという策略の首謀者だったという。この計画は、2023年に保守系ラジオパーソナリティのクレイ・トラビスとバック・セクストンとのインタヴューで詳細に語られたものだ。

ミラーはまた、国家による恣意的拘束からの保護という憲法上の基本的権利である人身保護令状の停止を公に示唆した最初の政権関係者でもある。2025年5月にホワイトハウスで記者団に対し、ミラーは「侵略時には人身保護令状の特権を停止することができる。したがって、我々はそれを積極的に検討している選択肢の一つだ」と述べた。もちろん、侵略など起きていない。

ミラーの遺産と、彼が現代社会で果たした役割の真髄を理解したいなら、ペンシルヴァニア通り1600番地(ホワイトハウス)の向こう側を見据える必要がある。トランプの主要な執行者であるミラーを理解するには、彼が全米各地で無数の人々に何をしているのかを理解する必要がある。そして、被害者の話を聞いた時の彼の個人的な、本能的な反応を理解しなければならない。

全米には、トランプとミラーの集団によって引き裂かれた何千もの家族がいる。そのほとんどは、世に出回ることもなく、おそらく耳にすることもないだろう。そのうちの一つが、今年初めにオハイオ州の移民弁護士からローリングストーン誌に伝えられた。ローリングストーン誌はこの話の詳細を確認し、妻、夫、そして3歳の娘には仮名を使用することに同意した。弁護士は、ミラーとトランプ政権が無償で移民支援を行う弁護士を標的にしていることを理由に、身元を明かさないよう求めた。

2020年、「リカルド」(ここではそう呼ぶ)は、ラテンアメリカの故郷を逃れ、アメリカに亡命を求めた。リカルド自身が語るように、彼は故郷で軍隊に所属していたが、汚職や強力な組織犯罪を理由に、もし故郷に留まれば自分に何が起こるか恐れるようになったという。

2025年までに、彼はすでにアメリカで生活基盤を築いていた。妻の「エレン」と幼い娘の「ジェシカ」と共に、オハイオ州コロンバスに暮らしていた。彼は家族を養うために働き、エレンはジェシカの世話をしていた。2人の間には、軽犯罪や暴力犯罪、その他の犯罪歴は一切なかった。しかし、2024年初頭、2人は予定されていた公聴会に出頭したものの、実際には出席せずに帰ってしまった。受付係が誤って、その日の公聴会の予定に入っていないと告げたためだった。このたった一つの不手際誰の言い分にも反するはずのない出来事だったが、トランプ政権2期目の下で、彼らの家族を破滅(doom)へと導くことになった。

今年の6月、リカルドはICE(移民税関執行局)から、地元のICE事務所に出頭するよう求めるテキストメッセージを受け取った。トランプ政権がミラーとトランプによって推進した数々の新政策や逮捕割り当てを前に、彼の弁護士は疑念を抱いた。それでも、リカルドはこの偉大な国を信じていた。彼は自分が犯罪者ではないこと、正しい方法でここに来たかったこと、そして隠すことは何もないことを示したかったのだ。

オハイオ州を拠点とする弁護士は、コロンバス郊外の連邦入国管理局の受付で、建物に入るために列に並んでいた3人家族と出会った。ジェシカとエレンはお揃いの服装で、ジェシカはリボンで結んだおさげ髪にピンクのワンピースを着ていた。弁護士は、ジェシカが父親の頬を触って遊んでいると、父親がフグのように頬を膨らませて笑っていたのを覚えている。

待合室を過ぎると、武装した移民税関執行局(ICE)職員2人が間もなく彼らの両脇に現れ、そのうちの1人が弁護士と家族に、職員には選択の余地がないと告げた。ICEは「ワシントンからの(from Wasington)」指示を受けていると職員は言った。その指示は1月のトランプ大統領就任後に出されたもので、ミラー長官が直接作成した、逮捕・強制送還件数の増加を求める新たな基準と要求(既存の犯罪歴の有無に関わらず)が含まれていた。

職員は、父親にその場で手錠をかけ、連行しなければならないと告げた。「私たちは命令に従うしかない」とICE職員は言った。

スペイン語を話す家族は、最初は何が起こっているのか理解できなかった。夫婦と弁護士はICE職員に家族全員で自主退去させてほしいと懇願し、弁護士が通訳を交えながら、何度もやり取りをしなければならなかった。そうすればアメリカの納税者の負担が軽減されるはずだと彼らは訴えた。

ICE職員は謝罪した。どうすることもできないようだった。

職員たちは、エレンとジェシカが部屋を出られるように配慮してくれた。ジェシカが父親に手錠をかけられる場面を見なくて済むようにするためだ。父親はしゃがみ込み、ジェシカを抱き上げて別れのハグをした。混乱して泣きじゃくるジェシカは、父親の首に腕を回し、体を抱きしめて離れようとしなかった。

2人のICE職員のうち1人が、手続きを進める必要があると家族に告げた。ちょうどその時、エレンはジェシカの腰に手を回し、最初は就学前の幼い娘を父親から引き離すことができなかった。ICE職員の1人は父親の肩に手を置き、もう1人は家族を見守っていた。

「パパ!」少女はスペイン語で叫んだ。「パパに会いたい!パパに会いたい!」。

エレンはついにヒステリックになっているジェシカを部屋から連れ出すことができた。ICE職員がリチャードを連れて行く間も、ジェシカは「パパ、パパ、いやだー!」と叫び続けた。待合室に戻る途中、弁護士は待合室に座っていた移民たちや他の人々の顔を見た。彼らはドアの向こうで何が待ち受けているのか、困惑と恐怖の表情で見つめていた。数カ月後、弁護士はローリングストーン誌にこう語っている。「今でもあの少女の叫び声が耳に残っている」。

エレンとジェシカは荷物をまとめてリチャードの故郷へ向かった。2人は数日中に彼と再会できると期待していた。ところが、トランプ政権はリチャードをルイジアナ州の拘留施設に約2カ月間も拘束し、2人の恐怖をよそに、2人は彼を行方不明にしてしまった。その後、2人は再会を果たしたが、心の傷はまだ癒えていない。弁護士によると、ジェシカは今でも夜中に目を覚まし、「パパ!」と叫ぶという。

現代のどの政権下でも、厳しい移民取り締まりが行われ、胸が張り裂けるような決断が下されてきた。しかし、この話が起こっているのは、トランプ政権とミラーが、ミラー自身が逮捕者数を水増しするためだけに、各州の機関に取り締まり強化を強要しているからだ。

あなたにとって、これは悲しい、あるいは恐ろしいことのように思えるかもしれない。しかし、ミラーにとって、あなたの怒りは実に滑稽なものだ。今年、トランプ政権の側近であるミラーは、非公式の会話の中で、移民家族の「悲しい話(sob stories)」を煽るリベラル派は、ミラーと政府が決して騙されない感情的な「脅迫(blackmail)」を行っていると述べている。彼はそれを笑い飛ばし、再びホラーストーリーの創作に取り掛かった。
(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 イラン戦争は開始から2カ月近くが経過しており、現在は停戦状態になっている。ホルム海峡封鎖をめぐり、アメリカとイラン両国は緊張関係にあるが、2回目の和平交渉に向けて、仲介国のパキスタンが動いている。その裏では中国もまたイランとの交渉を行っている。戦争はイランに有利な状況になっており、イランはそう簡単にアメリカに対して譲歩をすることはなく、かなり有利な条件での交渉を求めていると考えられる。それに対して、中国はあまり欲をかくと大きな失敗をするとイランを説得していると考えられる。
bricsmap201
BRICS加盟諸国の地図

 イランに対して、BRICSは積極的な支援をしていないように見える。また、国際的な問題に関して、足並みを揃えて行動していないように見える。しかし、それは当然のことだ。BRICSはもともとゴールドマンサックスが「21世紀において経済成長著しい国々」の総称として発表した言葉であって、それらの国々が自発的に集まったものではない。2009年になって初めて5カ国の首脳会談が開催された。その歴史はまだまだ浅い。これから枠組みを作っていく段階である。しかし、2010年代から、BRICSを中心とする西側以外の国々(the Rest、ザ・レスト)の経済成長や台頭が続き、世界の構造は大きく変わっている。G7よりもG20の枠組みが重要性を増しているのもその証拠である。

 BRICSは軍事同盟や集団安全保障の枠組みではない。それぞれの国家体制も違う。宗教や価値観も異なる。それでも協力できるところから協力し、問題が起きれば話し合いで解決を目指すという、ASEAN(東南アジア諸国連合)スタイルの枠組みである。一種の緩さこそが枠組みの柔軟性と多様性を担保している。これが、アメリカ主導、西側主導になれば、「非民主的な国家は入れない」「近代的、啓蒙主義的価値観を共有しない国家は入れない」という「排除の論理」が先に立つ。西側諸国では「多様性(diversity)」「平等(equity)」「包摂性(inclusiveness)」という「DEI」が尊重されるが、国際関係においてそれらは全く尊重されない。本音と建前の使い分け、西洋支配の継続性のみが重視される。

 建前だけの排除の論理がまかり通る国際秩序はこれから大きく変化していくだろう。西洋支配は終焉に進んでいくだろう。そうした中で柔軟性のある、包摂性の高い国際的な枠組みがこれから拡大していくだろう。BRICSはその中心となっていく。

(貼り付けはじめ)

BRICSはイラン問題で意見が分かれている。NATOG7も同様だ(BRICS Is Divided on Iran. So Are NATO and the G-7.

BRICSは地政学的な同盟ではなくそうであるべきでもない。

オリバー・シュトゥンケル筆

2026年3月18日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/18/iran-war-brics-nato-g7-economics-security/
写真

2025年7月6日にリオデジャネイロで開催されたBRICS首脳会議に出席したイランのアッバース・アラグチ外相とエジプトのモスタファ・マドブーリー首相

2月28日にアメリカとイスラエルがイランへの攻撃を開始して以来、多くのアナリストがBRICSは幻想に過ぎないと断言している。

イランは2024年に新規加盟国としてBRICSに加わった。しかし、BRICSは紛争に対する統一的な対応を示すことができていない。ブラジルや中国など一部の加盟国はアメリカとイスラエルの攻撃を非難したが、インドは非難していない。南アフリカは態度を保留している。こうしたBRICS批判者にとって、これらの意見の相違は、『ウォールストリート・ジャーナル』紙コラムニストであるサダナンド・ドゥームが先週主張したように、BRICSは一貫性を欠き、「全く無力(utterly ineffectual)」であるというおなじみの結論を裏付けるものとなっている。

しかし、この主張は誤った前提に基づいている。BRICSは安全保障に関する共通の立場を持つ正式な同盟のように振る舞うべきだという前提に立っている。実際には、BRICSは地政学的なブロックではないし、これまでもそうであったことはない。

BRICSは発足当初から、地政学的な優先事項が大きく異なる国々を結集させてきた。ブラジル、ロシア、インド、中国の首脳が初めて会合を開いたのは2009年で、その1年後に南アフリカが加わった。当時でさえ、加盟国は統一された世界観を共有していなかった。ロシア、そして程度は低いものの中国は、特に2014年のロシアによるクリミア侵攻以降、G7や西側諸国への対抗勢力としてBRICSを利用しようと長年努めてきた。一方、ブラジル、インド、南アフリカは、多国間連携戦略を追求してきた。

BRICSは発足当初から西側諸国の観察者から批判にさらされてきた。2011年、『フィナンシャル・タイムズ』紙のフィリップ・スティーヴンスは「モルタルなきBRICSに別れを告げる時が来た(“time to bid farewell” to the “Brics without mortar”)」と宣言した。ジャーナリストのマーティン・ウルフは2012年のインタヴューで、BRICSは「グループではない(not a group)」とし、加盟国には「共通点が全くない(nothing in common whatsoever)」と断言した。他の評論家もBRICSを「ばらばらの四人組(disparate quartet)」「奇妙なグループ(odd grouping)」「寄せ集め(motley crew)」「無作為な集団(random bunch)」と表現し、「やや滑稽な(faintly ridiculous)」構想に基づいていると評している。

中国とロシアが賛成し、ブラジル、インド、南アフリカが反対した近年のBRICS拡大は、こうした矛盾をより顕著にした。2024年にエジプト、エチオピア、イラン、アラブ首長国連邦が加盟したことで、このグループはさらに多様化し、分裂が激しくなった。イランのドローンがアラブ首長国連邦を攻撃する映像―BRICS加盟国同士の攻撃は、多くの新メンバーの加入によってもたらされた地政学的な対立を如実に物語っている。

『フォーリン・ポリシー』誌のC・ラジャ・モハンが指摘するように、BRICSの拡大はグループ内の結束を弱体化させた。グループが拡大する以前は、ロシアのウラジーミル・プーティン大統領やブラジルのジャイル・ボルソナーロ前大統領のように、西側諸国から経済的あるいは外交的に孤立する恐れのある加盟国にとって、BRICS諸国との関係は外交上の救命ボートとして頼りにできるという利点があった。2014年には、BRICS諸国はロシアのG20継続参加を支持した。5年後、アマゾン熱帯雨林の火災をめぐって西側諸国からブラジルへの圧力が高まる中、中国はボルソナーロ大統領の環境政策を称賛した。

BRICSの拡大は、特に国連安全保障理事会の改革問題において、グループ内の意思決定を麻痺させている。ブラジル、インド、南アフリカは長年、常任理事国入りを目指してきた。しかし、たとえ新たなBRICS加盟国が安保理改革を支持したとしても、その具体的な内容についてグループ内で合意は得られていない。エジプトやエチオピアを含むアフリカ諸国は、自国の議席獲得よりも南アフリカの議席獲得を優先しているように見える表現に抵抗している。

昨年開催されたBRICS外相会議では、参加国代表がグループ史上初めて共同声明で合意に至らず、緊張は頂点に達した。

BRICSは、過去にアメリカがイランに対する攻撃をエスカレートさせた際にも同様の優柔不断な態度を示してきた。昨年6月にアメリカがイランを攻撃した際、BRICSは比較的穏やかな声明を発表し、「深刻な懸念(grave concern)」を表明するとともに、攻撃を国際法違反と非難した。しかし、この声明はワシントンに言及しておらず、特にインドなど一部の加盟国がアメリカとのデリケートな関税交渉を行っていた時期に、ドナルド・トランプ米大統領との摩擦を避けることを意図したものとみられる。

イラン情勢の再燃をめぐるBRICSの分裂は、さほど驚くべきことではなく、特に何かを明らかにしているわけでもない。もし重大な軍事危機をめぐる意見の相違が、ある組織が無能であることの証拠だとすれば、西側諸国の多くの同盟も同じ試練に合格することはないだろう。

NATOG7は、イラン戦争をめぐって意見が分かれている。スペインは、NATOの主要加盟国であるアメリカによる攻撃を国際法違反だと非難している。マドリードはまた、アメリカ軍が共同運営基地を攻撃に使用することを拒否し、ワシントンとの公然とした対立を招き、トランプ大統領からは貿易報復の脅迫を受けている。他のヨーロッパ各国政府も介入に消極的だ。ドイツのボリス・ピストリウス国防相は月曜日、「これは私たちの戦争ではない(This is not our war)」と述べた。

アメリカがカナダやデンマーク領グリーンランドの併合または侵攻をちらつかせた際、NATOG7も統一的な対応を示すことができなかった。2003年にアメリカがイラクに侵攻した際、フランスやドイツを含む複数のヨーロッパ諸国は戦争に強く反対した。国連安全保障理事会の改革といったより根本的な問題についても同様である。ドイツは常任理事国入りを目指しているが、イタリアはこれに反対している。しかし、G7が無力であるとか、崩壊寸前であると考える人はほとんどいないだろう。

BRICSについても同様の分析基準が適用されるべきだ。BRICSは、あらゆる地政学的危機に対して統一的な立場を取るために設立された訳ではない。むしろ、その目的は異なる。BRICSは、主要な新興国が選択的に協調(coordinate selectively)し、地政学的不確実性に対するヘッジを行い(hedge against geopolitical uncertainty)、依然として西側諸国が支配する世界において影響力を高めるためのプラットフォームなのである。

例えば、BRICSは2022年のウクライナ侵攻後、西側諸国がロシアを経済的に孤立させるよう求めたにもかかわらずこれに抵抗した。これは、加盟国が、プーティン大統領が国際法に違反したという西側諸国の評価に異議を唱えたからではなく、ますます不安定化する世界において、経済的・地政学的な選択肢を確保しておきたかったからである。こうした現実的な判断は、グローバル・サウス(the global south)に限ったことではない。アメリカは最近、イラン戦争に関連した原油価格の高騰を受け、ロシアに対する石油関連の制裁を緩和した。

BRICSは設立以来、安全保障よりも経済・制度面の問題に重点を置いてきた。特に、国際通貨基金(IMF)と世界銀行の改革、新開発銀行(New Development Bank)を通じた開発金融の道筋の構築、そして米ドルへの依存度低減(reducing dependence on the U.S. dollar)といった点において顕著である。BRICS首脳は今年後半、インドで第18回首脳会議を開催し、デジタルインフラと人工知能(AI)分野における協力について協議する予定だ。

こうした取り組みはしばしば進展が遅いものの、多くの新興国が、自国の影響力の増大をより適切に反映するよう世界秩序を適応させようとする共通の関心を示している。さらに、ブラジルや南アフリカといった国々にとって、BRICSはアジアの意思決定者と直接対話できる貴重な場であり、経済的にますます統合が進むアジア地域において、その存在感は際立っている。

このように、BRICSは同盟(an alliance)というよりも外交的な場(a diplomatic space)、つまり、西側諸国の支配に対する懸念を共有する国々が、単一の戦略的アジェンダに縛られることなく、代替案を模索するためのフォーラム(a forum for countries that share concerns about Western dominance to explore alternatives without committing themselves to a single strategic agenda)として機能していると言えるだろう。イランをめぐる現在の対立は、BRICSの本質を改めて示すものに過ぎない。BRICSとは、利害が一致する部分では協力し、一致しない部分では対立する、緩やかでしばしば混乱した国家連合である。

むしろ、イラン戦争はBRICS諸国の多方面にわたる連携と、より大きな戦略的自律性の追求を改めて浮き彫りにしたと言えるだろう。一部の評論家がBRICSの解体を提唱しているのとは裏腹に、これまでBRICSから脱退を決めた国は一つもない。実際、BRICSは大きく成長を遂げている。最近では、トランプが主導する平和評議会(the Trump-led Board of Peace)に加盟したものの、その後参加を停止したインドネシアのような新興国も加わっている。

BRICSという枠組みを誤解しているだけでなく、BRICSに対する批判は、世界政治におけるより根本的な変化を見落としている。世界は、同盟関係によって形成される秩序から、場当たり的な連合、課題別協力、そして短期的な利益とニーズに基づくトランプ流の取引的な関係へと移行しつつある。

イラン核戦争の最初の数週間は、この新たな現実を如実に示している。アメリカがロシアへの制裁緩和を決定すると、つい最近ウクライナの領土保全を認める国連決議への支持を拒否したペルシア湾岸諸国は、イランのドローン攻撃から自国領土を守るため、キエフに軍事顧問の派遣を要請した。その後、トランプ大統領は中国に対しホルムズ海峡の防衛支援を要請したが、中国はこれを拒否した。これらの行動は、長年の原則や同盟関係に基づくものではなく、差し迫った戦略的・経済的ニーズに基づくものだった。

BRICSは決して統一されたブロックにはならないだろう。それは主に、加盟国の利益にならないからだ。ブラジルは、アメリカとの交渉においてBRICSという枠組みを利用して交渉力を高めるのと同様に、アメリカとの関係や、最近締結されたヨーロッパ連合とメルコスール間の貿易協定を利用して、中国との交渉における交渉力を強化している。BRICSは、多くの国が、より細分化され、激動する世界に備えている方法の一つに過ぎない。

※オリヴァー・ストゥエンケル:ワシントンDCにあるカーネギー国際平和財団の民主政治体制・紛争・ガヴァナンスプログラムの上級研究員であり、サンパウロにあるジェトゥリオ・ヴァルガス研究所の国際関係学准教授。Xアカウント:@OliverStuenkel

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 イラン戦争は停戦状態となって二週間以上が経過した。その間に和平交渉が行われたが、合意には至らなかった。現在は動きが見えない状況にある。アメリカのドナルド・トランプ大統領は暴言を発したり、引いてみたりと尻尾を掴ませないように、世界を煙に巻いている。和平交渉はいきなり代表同士が会って話すものではない。双方の事務当局、外務担当の職員たちが条件を話し合いながら、叩き台を作っていく。現在はその作業が進められているのだろうが、双方の最高幹部クラスの意向が全く嚙み合わなければ、叩き台作り作業も難航するだろう。

 アメリカとしてはイランの核兵器製造能力を完全に除去したいというところだ。イランは体制の継続保証が欲しいところだ。ここにイスラエルの意向も絡んでくるので、話が複雑になる。また、現状では、イランのほうが有利な立場を保持しているという感じになっている。総合格闘技の試合を見た人は多いだろうが、体格が大きくて強い選手が相手を打撃で倒して上から覆いかぶさったところで、倒された選手が下から関節技や首の絞め技(チョークスリーパーなど)でかえって相手からギヴアップを奪うということがあるが、現状はそれに近い。アメリカとイスラエルの大規模空爆で、イランは大きな被害を受けた(最高指導者アリ・ハメネイ師まで殺害された)が、世界にとって重要なチョークポイントであるホルムズ海峡を封鎖する(絞め上げる)ことで、世界経済とアメリカ経済に悪影響を与え、対抗している。アメリカは戦闘(battle)で勝っているが、戦争(war)には負けているという状態になっている。

このような状況で、イランは簡単に妥協しない。そして、アメリカに消耗を強いて、嫌気がさすまで長引かせることによって、かえってアメリカから妥協や良い条件を引き出すという目論見を持っている。これは、大国と小国の間や宗主国と植民地の間などの、非対称的な戦争において採用されてきた戦略である。事態を打開しようとして、更に強硬な作戦、核兵器の使用や地上軍の投入を行えば、泥沼(quagmire)にはまり、事態は悪化してしまう。そのこともヴェトナム戦争が示している。イラン戦争は開始されるべき戦争ではなかった。そのことはトランプ以外のトランプ政権とアメリカ政府の最高幹部クラスは分かっていたが止められなかった。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の懐柔策と操縦が見事にはまり、トランプ大統領はイラン攻撃を決定した。この経緯については、このブログでもすでにご紹介した。

 トランプは長所である、自分の言葉や過去の行動に縛られない、無反省と定見のなさで、ピート・へぐセス国防長官当たりに開戦の責任を押し付けて更迭し、和平合意にゴーを出すべきだ。そして、外交政策はJD・ヴァンス副大統領に任せるようになって欲しい。その代わり、アメリカと世界は、トランプをあやすために、最高の栄誉や賞賛を与えるということはやるべきかもしれない。ノーベル平和賞を与えるのもその一つの方策かもしれない。

(貼り付けはじめ)

今、イランが主導権を握っている(Iran Is Calling the Shots Now

―テヘランはヴェトナムにおけるホー・チ・ミンの戦略に従っている。

マイケル・ハーシュ筆

2026年4月23日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/04/23/iran-united-states-vietnam-trump-oil-war/

iranwarvietnamwar2026001

テヘランで行われた式典で、故アリ・ハメネイ師(左上)と新最高指導者モジタバ・ハメネイ師の肖像画の下で敬礼しているイランの男子生徒(2026年4月1日)

イランはまだ「もう一つのヴェトナム(another Vietnam)」ではない。アメリカ軍地上部隊が耐え難いほどの犠牲者を出している訳でもなく、週ごとの死者数を報じる見出しもなく、アメリカ国内の街頭で大規模な反戦デモが起きている訳でもない。そしてもちろん、打ちのめされたリンドン・ベインズ・ジョンソンではなく、現アメリカ大統領ドナルド・J・トランプは、この戦争に参戦してまだ数カ月しか経っていないと誇らしげに語っている。ちなみにヴェトナム戦争については「即座に(very quickly)」勝利できたはずだと豪語している。

しかし、テヘランがドナルド・トランプ大統領にかけている圧力は、ヴェトナム戦争でジョンソン大統領を困惑させた圧力と非常によく似ているように感じられる。具体的に言えば、それは北ヴェトナムの象徴的指導者ホー・チ・ミンが執拗に追求した勝利戦略(the winning strategy)に酷似している。

戦争の早期終結に向けた協議を拒否し、トランプ大統領に停戦を無期限に延長するよう迫ることで(大統領は数日前までは延長しないと断言していた)、イラン指導部(それが誰であれ)はホー・チ・ミンの戦略を踏襲しているように見える。

iranwarvietnamwar2026002

クアンチ省近郊のある地域で、ヴェトナム戦争でこの地域で戦死した兵士たちを追悼するアメリカ第一騎兵師団の兵士たちが礼拝を行う野外礼拝堂として利用されている

ホー・チ・ミンと、1960年代に彼の後継者となったレ・ズアンは、西側帝国主義国家であるフランス、そしてアメリカという二つの勢力を打ち破った。彼らは、テヘランが理解していると思われる事実、すなわち、どれほど強力な侵略者であっても、遠く離れた地からの侵略者は、自分たちよりもずっと早く戦争に飽きるということ(Aggressors from far away, no matter how powerful, will tire of war well before you do)を理解していた。ホーは1946年、フランスの植民地主義者たちにこう言い放った。「私たちがあなた方の兵士を一人殺すごとに、あなた方は私たちの兵士を一人殺すかもしれない。しかし、たとえそのような不利な状況でも、あなた方は負け、私たちは勝つだろう」。

そして、テヘランが今トランプ大統領を屈辱に陥れているように、ジョンソン大統領のますます切迫した交渉要請を繰り返し拒否したのも、ホーとレ・ズアンだった。 1967年にジョンソン大統領に宛てた書簡の中で、ホー・チ・ミンは「アメリカの爆撃およびその他のあらゆる戦争行為の無条件停止(the unconditional cessation of U.S. bombing raids and all other acts of war)」が実現するまで交渉に応じるつもりはないと明言し、「ヴェトナム国民は決して武力に屈服せず、爆撃の脅威の下での交渉も決して受け入れない(Vietnamese people will never submit to force, they will never accept talks under threat of bombs)」と付け加えた。

1960年代、ジョンソン大統領は軍事会議でハノイの頑固さを度々非難し、ローリングサンダー作戦から始まった空爆の強化と継続的な爆撃作戦がなぜ北ヴェトナム指導部を交渉のテーブルに着かせることができなかったのかと疑問を呈した。「彼らは決して諦めないだろう(I don’t believe they’re ever going to quit)」と、ある時、ロバート・マクナマラ国防長官に語った。

同様にイランでも、トランプ大統領が「深刻な分裂状態(seriously fractured)」と呼んだ指導部の兆候が見られるものの、モハマド・バゲル・ガリバフ国会議長は、テヘランは「脅迫の下での交渉は受け入れない(not accept negotiations under the shadow of threats)」と宣言した。今週、イランの交渉担当者はトランプ大統領とJD・ヴァンス副大統領をホワイトハウスで不安げに待たせたままだった。結局電話はかかってこなかった。さらに、イスラム革命防衛隊(IRGC)の指揮官たちよりも穏健派とされるガリバフは、テヘランは停戦を利用して「戦場で新たな切り札を見せる(to reveal new cards on the battlefield)」準備をしていると述べた。

トランプ大統領は4月21日、トゥルー・ソーシャル上で「イラン側からの提案が提出されるまで停戦を延長する(extend the Ceasefire until such time as their proposal is submitted)」と発表した。つまり、イランが主導権を握っているように見えるということだ(Iran now seems to be calling the shots)。

ハーヴァード大学ケネディ・スクールのグローバル・ヴェトナム戦争研究イニシアティヴの共同創設者兼ディレクターであるハイ・グエンは、「ヴェトナム戦争終結から50年、アメリカはイランとの戦争で再び同じ過ちを繰り返している」と述べた。

「ヴェトナム戦争時のヴェトナムと同様に、非対称戦争(an asymmetric war)において、イランはアメリカが想像もできないほどの優位性を持っている」とグエンは私に語った。彼は続けて次のように述べた。「イランは、アメリカが何千トンもの爆弾を投下することはできても、長期戦に耐えるだけの忍耐力がないことを理解している。ヴェトナムの革命家たちと同様に、イランは国家資源に関して多大な犠牲を払ってでも長期戦を戦う覚悟ができているようだ。言い換えれば、イランはアメリカにとってのアキレス腱を理解している(Iran, in other words, understands the Achilles’ heel of the U.S)」。

「これが降伏の姿だ」と元NATO米大使のイヴォ・ダールダーはブログ記事に書いた。「停戦を望んだのはトランプ大統領だった。さらなるエスカレーションをしてしまうと、イランが譲歩しないと悟り、戦争継続(長期化)による経済的・政治的な影響を恐れたからだ。もしトランプ大統領が停戦を無期限に延長するなら、イランはそれで構わない。現状では、あらゆる面で優位に立っているのはイランであり、トランプ大統領ではない。アメリカ大統領に残された唯一の切り札は、望まない戦争を再開することだけだ(The US president’s only card is restarting a war he doesn’t want)。一方、イランは残りの切り札を全て握っている(Meanwhile, Iran holds the rest of the cards)」。

指導部の大部分が壊滅したにもかかわらず、イラン・イスラム共和国はホルムズ海峡へのアクセスを掌握しており、そのコントロールをさらに強めているようだ。今週、複数の船舶を拿捕し、アメリカの海上封鎖をかいくぐって航行している。『フィナンシャル・タイムズ』紙は、貨物追跡会社ボルテクサの情報として、火曜日時点でイラン関連の石油タンカー約34隻が海上封鎖を通過したと報じている。

一方、米国防総省国防情報局長官ジェイムズ・H・アダムス海兵隊中将は、連邦議会証言の中で、イランが「数千発」のミサイルと無人攻撃機を保有していることを認めた。CBSは4月22日、4月8日の停戦開始時点で、イランの弾道ミサイルと発射システムの備蓄の約半分が依然として無傷であり、海峡の混乱に用いられるイスラム革命防衛隊(IRGC)海軍部隊の約60%も同様に無傷で残っていると報じた。

これらの数字は、停戦開始当日に「壮大な怒り作戦は戦場における歴史的かつ圧倒的な勝利だった」と宣言したピート・ヘグセス国防長官の発言と矛盾する。

iranwarvietnamwar2026003

左:1964年4月26日、ワシントンで行われた記者会見で発言するロバート・マクナマラ米国防長官。背後には、様々な軍事施設を示すヴェトナムの地図が掲げられている。

右:3月2日、ピート・ヘグセス米国防長官が、ワシントンのペンタゴンで行われたイランにおけるアメリカ軍の軍事行動に関する記者会見で発言している。

実際のところ、現在、ヴェトナム戦争を最も彷彿とさせるのは、ヘグセス長官による日々の戦場での勝利宣言だろう。彼は、ヴェトナム戦争でアメリカが勝利していると国民を繰り返し欺いた「ベスト・アンド・ブライティスト(best and brightest)」マクナマラ元国防長官の漫画版のような存在だ。マクナマラは「死者数(body counts)」などの戦場における消耗戦の統計的証拠を引用することで悪名高かった。同様に、ペンタゴン職員から「愚かなマクナマラ(Dumb McNamara)」というあだ名をつけられているヘグセス長官も、破壊したミサイル、発射装置、艦船の数、そして殺害した指導者の数を挙げることで、イランにおけるワシントンの「決定的な軍事的勝利(decisive military victory)」を数値化することに熱心だ。

しかし、それはもはや1、2カ月前ほど重要ではなくなっている。1969年のヴェトナム和平に関するパリ会談について、ヘンリー・キッシンジャー元米国務長官は次のように記している。「私たちは軍事戦争(a military war)を戦ったが、敵は政治戦争(a political one)を戦った。私たちは物理的な消耗戦(physical attrition)を狙い、敵は私たちの心理的な疲弊(psychological exhaustion)を狙った」。

ヴェトナムは、アメリカがヴェトナム国内で十分な消耗戦を成功させるずっと前に、ワシントンにおける敵の疲弊をすでに達成していた。その結果、会談開始時にハノイは妥協を許さない姿勢を取り、キッシンジャー自身も南ヴェトナム陥落前に「和平は間近だ(peace is at hand)」と誤った宣言をするに至った。

The Vietnamese achieved exhaustion of their enemy in Washington well before the Americans

現在、イランでも同様の力学が働いている可能性がある。おそらく主な違いは、イランがホルムズ海峡を封鎖することで、経済攻撃と政治戦争の両方でトランプ大統領を急速に疲弊させようとしている点だろう。特に中間選挙まであと6カ月という時期に、これはトランプ大統領と彼の党に深刻な打撃を与える可能性がある。

「テヘランはハノイと同じ計算をしている可能性が高い。つまり、アメリカの空爆による懲罰を耐え忍び、真剣な交渉を拒否すれば、長期化する決着のつかない戦争(protracted indecisive war)に対するアメリカ国民の支持は徐々に低下し、ワシントンは交渉でより多くの譲歩を迫られることになるだろう」と米海軍兵学校の歴史家ブライアン・ヴァンデマークは述べている。

ヴェトナム戦争は経済的にもジョンソン大統領に打撃を与えた。戦争支出はジョンソン大統領と彼が熱望した「偉大な社会(Great Society)」プログラムにとって財政危機を招き、最終的には高インフレと民主党の壊滅的な選挙敗北につながった。

しかし、イランが握っている支配力(the chokehold)は、かつてホー・チ・ミンが享受していたものよりもはるかに強固で、即座に効力を発揮し、世界中のエネルギー価格を高騰させている。国際通貨基金(IMF)によると、ホルムズ海峡の封鎖は既に史上最悪の石油供給途絶(oil supply disruption)であり、世界的な景気後退につながる可能性がある。

それでも、株式市場をはじめとする各種指数は堅調に推移しており、トランプ大統領は劣勢を示唆する様子を全く見せていない。まるで時間には余裕があるかのように振る舞っている。4月21日のCNBCのインタヴューで、トランプ大統領は第一次世界大戦以降のアメリカの過去の戦争への関与に関する疑わしい数字を羅列し、現在の紛争はまだ「5カ月」しか経っていないと主張した(実際には3カ月程度)。「ヴェトナム戦争はもっと早く勝てたはずだ。もし私が大統領だったら、イラク戦争も私たちが勝利したのと同じ期間で勝てたはずだ。なぜなら、私たちはここで実質的に勝利したのだから」と彼は述べた。

しかし、今のところ、勝利したと言えるものはほとんどないようだ。

iranwarvietnamwar2026004

テヘランでイスラエルとアメリカの共同攻撃現場を清掃する作業員たち(4月7日)

大国が小国に侵攻しすぎると、911以降、ワシントン自身も痛感したように、大国が犯す戦略的な過ちはあまりにもよくある。実際、トランプ政権は、地上部隊の派遣を可能な限り避けることで、イラクとアフガニスタンの泥沼化を回避しようとしてきたことを明確にしている。

アフガニスタンでは、アメリカが20年にわたる断続的な平和維持活動の末に撤退する前、タリバンは「あなたたちは時計を持っているが、私たちには時間がある(You have the watches, but we have the time)」とよく言っていた。ヴェトナム、イラク、アフガニスタンに共通するのは、ヴェトコン、イラクのジハード主義者、タリバンといった民族主義的な抵抗勢力は、強力な外国の占領者でさえも、その存続期間を凌駕することが多いという点だ。

前述のグエンが述べたように、「戦後、マクナマラは、アメリカがヴェトナムで敗北した理由の一つは、ヴェトナムが長年にわたり侵略と戦ってきた歴史を理解していなかったことだと述べた」。

昨年6月、トランプ大統領がイランの核施設に対するアメリカ・イスラエル共同作戦に関与した後、こうした紛争に懐疑的なことで知られるヴァンス副大統領は演説で次のように述べた。「私が『トランプ・ドクトリン(Trump Doctrine)』と呼ぶものは至って単純だ。第一に、明確なアメリカの国益を表明する。この場合、それはイランが核兵器を保有してはならないということだ。第二に、その問題を積極的に外交的に解決しようと試みる。そして第三に、外交的に解決できない場合は、圧倒的な軍事力を用いて解決し、長期戦に発展する前にさっさと撤退する」。

iranwarvietnamwar2026005

左:リンドン・B・ジョンソン米大統領はヴェトナム戦争に関する演説の準備のためホワイトハウス閣議室の机上の書類に目を通している

右:ドナルド・トランプ米大統領は3月16日、ワシントンDCのホワイトハウス大統領執務室で書類に署名する準備をしている

トランプ大統領は、この件に関して明確な目標について言及しておらず、もし最終的にイランを交渉のテーブルに着かせたとしても、アメリカはバラク・オバマ元大統領が2015年に締結した核合意と同様の妥協を受け入れざるを得なくなる可能性が高まっている。これには、イランが保有する核兵器開発寸前の濃縮核物質(Iran’s nearly-bomb-ready enriched nuclear material)をどう扱うかという問題も含まれる。トランプ大統領が破棄する前の合意では、イランは核物質の98%を国外に搬出することが義務付けられていた。現在、トランプ大統領はイランが核物質を引き渡すと主張し続けているが、テヘラン側はそのような譲歩(concession)は一切していないと述べている。

アトランティック・カウンシルのステラティジストC・アンソニー・プファフ退役米陸軍大佐は「強国の利益が限られている場合、弱い国が強い国に勝つケースはよくある。なぜなら、強い国の方が弱い国よりも先に撤退の限界点(its threshold to quit)に達するからだ」と述べた。

プファフは続けて「今回のやり取りもまさにそうだ。たとえ私たちがテヘランに対して、彼らの視点から見て妥当な要求を提示したとしても、彼らはさらなる譲歩を求めるだろう」と語った

※マイケル・ハーシュ:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。『資本攻勢:ワシントンの賢人たちはどのようにしてアメリカの未来をウォール街に渡し、我々自身と戦争を行ったのか(How Washington’s Wise Men Turned America’s Future Over to Wall Street and At War With Ourselves)』と『何故アメリカはより良い世界を築くチャンスを無駄にしているのか(Why America Is Squandering Its Chance to Build a Better World)』の2冊の本の著者でもある。Xアカウント:@michaelphirsh

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 今年2026年7月4日、アメリカは建国250周年を迎える。1776年7月4日、フィラデルフィアで建国の父(Founding Fathers)と呼ばれる人々が独立宣言(the Declaration of Independence)に署名した日、現在の状況を想像していただろうかという疑問を自らに問うとき、彼らの思い通りの国家にはなっていないであろうと私は考えてしまう。この250年の間、アメリカは国力を増進し、やがて世界最大、もっとも豊かな国になっていったが、

それと同時に世界最強の国家として多くの戦争を戦ってきた。そして、今も戦っている。

少なくとも、1992年の大統領選挙以降、新大統領になる人々は、自分は戦争をしないで、平和の構築者になると訴えて当選してきたが、その約束はことごとく破られてきた。下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトはアメリカについて戦争中毒(addicted to war)と指摘している。そして、戦争中毒になってしまった理由として次の5点を挙げている。番号を振って当該箇所を引用する。

(引用貼り付けはじめ)

(1)冷戦初期から進行し、対テロ戦争中にさらに拡大した、大統領権力の長期的な強化(the long-term consolidation of executive power)である。私たちは大統領に、戦争と平和に関する決定、外交の遂行、巨大な情報機関の活動、そして秘密工作能力に関して、途方もない裁量権(enormous latitude)を与えてきた。

(2)アメリカ大統領は戦争に踏み切る自由があるのは、国民に直接費用を負担させないことを学んだからだ。朝鮮戦争は、国民が直接増税して費用を賄った最後の戦争だった。それ以降、大統領は借金をして財政赤字をさらに膨らませ、将来の世代にそのツケを押し付けてきた。

(3)志願制軍隊は戦争の意思決定を容易にする側面もある。なぜなら、危険に身を投じる人々は皆、その可能性を承知の上で志願しており、無作為に徴兵された者よりも不満を漏らす可能性が低いからだ。

(4)軍産複合体(the military-industrial complex)を非難することはできる。ただし、ロッキード・マーティンやボーイングが誰かに戦争を働きかけたと言っている訳ではない。しかし、武器を売るビジネスをしている以上、不安を売るビジネスをしているのと同じなのだ。つまり、脅威が満ち溢れた世界(中には先制攻撃が必要な脅威もある)を描き、外交の価値を貶め、武力による解決策を過剰に推し進めるということだ。

(5)武力行使があまりにも容易になり、リスクがほとんどないように思えるようになったからだ。巡航ミサイル、ステルス機、精密誘導爆弾、ドローンのおかげで、アメリカ(およびその他数カ国)は地上部隊を派遣することなく、また直接的な報復を(少なくとも当初は)あまり心配することなく、大規模な空爆作戦を展開することが可能になった

(引用貼り付け終わり)

 アメリカは戦争をしやすい体制を作り上げてきたということが言える。それがアメリカを帝国に押し上げた。しかし、アメリカの最盛期はすでに過ぎ去った。その国力は低下し続け、世界支配は過重な負担になっている。アメリカは世界支配を止め、西半球に立てこもろうとしている。アメリカが世界支配を止め、帝国であることを止めるということは、戦争中毒からの脱却、回復を目指すということである。その過程は数十年単位ということになるだろうが、これからはそのリハビリ期間ということになる。

(貼り付けはじめ)

アメリカは今でもまだ戦争中毒だ(The United States Is Still Addicted to War

―なぜ歴代のアメリカ大統領全員が大規模な軍事作戦に巻き込まれるのか

スティーヴン・M・ウォルト筆

2026年3月2日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/02/trump-iran-war-united-states-addicted/

彼らが何を言おうと、戦争を避けることは不可能だ。1992年、ビル・クリントンは「問題は経済だ、馬鹿(it’s the economy, stupid)」と述べ、勢力政治(power politics)の時代は終わったと宣言して大統領選挙に勝利した。しかし、就任後、クリントンは複数の国へのミサイル攻撃を命じ、イラク上空に飛行禁止区域を設定し(時には爆撃も行った)、1999年にはセルビアに対する長期にわたる空爆作戦を展開した。

2000年、ジョージ・W・ブッシュはクリントンの過剰な外交政策を批判し、有権者に力強いが「謙虚な」(strong but “humble”)外交政策を約束してホワイトハウスを勝ち取った。その結果は皆さんがご存じの通りだ。8年後、バラク・オバマという若い連邦上院議員が大統領に就任したが、その大きな理由の一つは、彼が2003年のイラク侵攻に反対した数少ない民主党員の一人だったことだ。就任からわずか1年で、彼は何の功績もないにもかかわらずノーベル平和賞を受賞した。それは、人々が彼を真の平和構築者(peacemaker)だと信じたからに他ならない。オバマ大統領はいくつかの問題で努力を重ね、最終的にはイランの核開発計画を縮小する合意に達したが、同時にアフガニスタンへの無意味な「増派(surge)」を命じ、2011年にはリビア政権の転覆を支援し、様々な標的に対する標的攻撃やその他の暗殺をますます躊躇なく命じるようになった。2期目の任期が終わる頃には、アメリカは依然としてアフガニスタンで戦闘を続けており、勝利には全く近づいていなかった。

そして2016年、平凡な実業家でリアリティ番組スターのドナルド・トランプが大統領選挙に出馬し、「永久戦争(forever wars)」を公然と非難し、外交政策のエスタブリッシュメントを糾弾し、「アメリカ・ファースト(America First)」を掲げた。選挙での予想外の勝利の後、彼もまたアフガニスタンへの一時的な増派を発表し、対テロ戦争を全速力で継続させ、イラン高官のミサイル暗殺を命じ、軍事予算の着実な増加を主導した。トランプは最初の任期中に新たな戦争を始めなかったが、終結させた戦争もなかった。

ジョー・バイデンは、アメリカの無益なアフガニスタン侵攻作戦を中止することで戦争を終結させたが、前任者たちが無視してきた現実を認識したことで激しい非難を浴びた。バイデンは2022年のロシアによるウクライナ侵攻に対し、西側諸国の積極的な対応を主導したが、ウクライナを西側陣営に取り込もうとした彼の以前の努力が、戦争の可能性を高めたという事実を、多くの有機者が無視した。大統領就任後最初の2年間、パレスティナ問題を無視していたバイデンは、2023年10月のハマスによるイスラエル攻撃に対するイスラエルのジェノサイド的報復に対し、数十億ドル相当の武器供与と外交的保護を提供した。

バイデンの失策(そして再選を目指す彼の頑固な姿勢)は、トランプの大統領復帰を後押しし、トランプは再び平和の大統領となり、アメリカ国民に数兆ドルの損失と数千人の命を奪ってきた絶え間ない介入主義(interventionism)を終わらせると誓った。しかし、過去との決別どころか、トランプ2.0はかつて嘲笑していた歴代大統領よりもさらに好戦的な人物であることが判明した。アメリカはトランプ政権復帰後最初の1年間で少なくとも7カ国を爆撃し、カリブ海と太平洋では麻薬密輸の疑いだけで船舶乗組員を次々と殺害している。ヴェネズエラの石油資源を掌握するため、指導者を拉致し(その一方で、ヴェネズエラは新たな独裁者の手に委ねられた)、そして今、1年足らずで2度目のイランへの戦争を開始した。昨年夏にはイランの核インフラが「壊滅した(obliterated)」と世界に宣言していたにもかかわらず、今や「差し迫った脅威(imminent threats)」を阻止するために爆撃せざるを得なかったと主張している。

一体何が起こっているのだろうか? 1992年以来、民主、共和両党の歴代大統領は平和構築者(peacemaker)となり、前任者の行き過ぎた行為や過ちを繰り返さないと誓って選挙に立候補してきたが、就任すると遠い異国で軍事行動を起こす衝動を抗することができなかった。私たちは再び自問自答しなければならない。アメリカは戦争中毒になっているのだろうか?

トランプ大統領の2期目までは、この傾向は、軍事力をグローバルな自由主義秩序を推進するための有効な手段とみなしていた超党派の外交政策における「ブロブ(Blob エスタブリッシュメント)」の傲慢な考え方によって説明できたかもしれない。しかし、この説明ではトランプ大統領の2期目の行動をうまく説明できない。トランプ大統領は依然として既成勢力(いわゆる「ディープステート(the deep state)」)を憎み、1期目の失敗を彼らのせいにし、国家安全保障機関を骨抜きにし、自分の意のままに動く忠実な部下を要職に任命した。今回の戦争は、もはや「ブロブ」のせいにはできない。

こうした政策を擁護する人々は、アメリカには他に類を見ない世界的な責任があり、大統領は就任当初は武力行使を減らすという理想主義的な考えを抱いていても、すぐに世界中でアメリカの力を行使する必要性を痛感させられると主張するかもしれない。しかし、この説明の問題点は、これほど頻繁に爆撃を繰り返しても根本的な政治問題が解決されることはほとんどなく、アメリカの安全保障も向上せず、ましてや攻撃を受けているほとんどの国にとって良いことではないということだ。学習能力の低いアメリカでさえ、今頃はもうこのことを理解しているはずだ。だからこそ、疑問は残る。真の平和賞(FIFAから授与された偽りの賞ではなく)を熱望する大統領の下でさえ、なぜワシントンはこうした行為を続けるのか?

明白な理由の一つは、冷戦初期から進行し、対テロ戦争中にさらに拡大した、大統領権力の長期的な強化(the long-term consolidation of executive power)である。私たちは大統領に、戦争と平和に関する決定、外交の遂行、巨大な情報機関の活動、そして秘密工作能力に関して、途方もない裁量権(enormous latitude)を与えてきた。そして、行政府が必要に応じて嘘をつきやすくするような、ある程度の秘密主義を容認してきた。民主、共和両党の大統領は、この行動の自由を喜んで受け入れ、その権限を縮小しようとする試みを歓迎することはほとんどなかった。行政権の強化(the consolidation of executive power)は、連邦議会によって助長され、促進されてきた。連邦議会は、武力行使の決定に対して、意味のある監督を行うことにますます消極的になっている。そのため、オバマ政権が(テロとの戦いとイラク侵攻を承認した時代遅れの決議に代わる)新たな武力行使承認を積極的に求めた際、連邦議会は議員たちが記録に残ることを望まなかったため、承認を拒否した。そして今、彼らはトランプ政権がイランに対する無益な戦争を始める前に、自分たちの許可を求めなかったと不満を述べている。

第二に、サラ・クレプスとロゼラ・ジエリンスキーが指摘しているように、アメリカ大統領は戦争に踏み切る自由があるのは、国民に直接費用を負担させないことを学んだからだ。朝鮮戦争は、国民が直接増税して費用を賄った最後の戦争だった。それ以降、大統領は借金をして財政赤字をさらに膨らませ、将来の世代にそのツケを押し付けてきた。その結果、少なくとも5兆ドルもの費用がかかったイラク戦争やアフガニスタン戦争のような長期にわたる高額な戦争でさえ、ほとんどのアメリカ国民は経済的な影響を感じていない。

志願制軍隊は戦争の意思決定を容易にする側面もある。なぜなら、危険に身を投じる人々は皆、その可能性を承知の上で志願しており、無作為に徴兵された者よりも不満を漏らす可能性が低いからだ。また、トランプ(とその子供たち)のようなエリート層が兵役を完全に免れることを可能にし、富裕層や政治的コネを持つ人々がこうした決定によって個人的に影響を受ける度合いを低下させ、職業軍人を、本来守るべき社会との繋がりが希薄な、いわば「分離した階級(a separate caste)」へと徐々に変貌させている。しかし、こうした度重なる武力行使の決定を軍のせいにしてはならない。この流れを操っているのは非軍人の民間人なのだ。

しかしながら、軍産複合体(the military-industrial complex)を非難することはできる。ただし、ロッキード・マーティンやボーイングが誰かに戦争を働きかけたと言っている訳ではない。しかし、武器を売るビジネスをしている以上、不安を売るビジネスをしているのと同じなのだ。つまり、脅威が満ち溢れた世界(中には先制攻撃が必要な脅威もある)を描き、外交の価値を貶め、武力による解決策を過剰に推し進めるということだ。防衛企業が多くの外交政策シンクタンクの有力な支援者となっているのは偶然ではない。これらのシンクタンクは、脅威は至る所に潜んでおり、アメリカは地球上のどこで発生しようとも軍事行動を取らざるを得ない可能性があり、国防予算の増額こそが当然の解決策であると、アメリカ国民を説得しようと努めている。こうした能力を一度手に入れてしまえば、それを行使したいという誘惑に抵抗するのは難しい。AIPACやイスラエル・ロビーの強硬派といった特殊利益団体も存在し、大統領を説得して戦争に同意させたり、立場の弱い連邦議会指導者に反対させないように説得したりすることに成功することもある。

アメリカ大統領が戦争に中毒になった最後の理由がある。それは、武力行使があまりにも容易になり、リスクがほとんどないように思えるようになったからだ。巡航ミサイル、ステルス機、精密誘導爆弾、ドローンのおかげで、アメリカ(およびその他数カ国)は地上部隊を派遣することなく、また直接的な報復を(少なくとも当初は)あまり心配することなく、大規模な空爆作戦を展開することが可能になった。イランはアメリカや同盟諸国に対して様々な方法で報復するかもしれないが、アメリカがイランに与えることができるような規模の損害をアメリカ本土に与えることは期待できない。したがって、厄介な外交上の課題に直面したとき、あるいは国民の目を国内の問題やスキャンダル(ジェフリー・エプスタイン事件など)から逸らす方法を探しているとき、軍事的選択肢に頼りたくなる誘惑は非常に大きい。あるいは、決してハト派ではなかったリチャード・ラッセル連邦上院議員が1960年代に述べたように、「どこへでも行き、何でもできるのであれば、私たちは常にどこかへ行き、何かをするだろう」と考える理由がある。

私は時々これを「大きな赤いボタン(big red button)」の問題だと考えている。まるでどの大統領も机の上に大きな赤いボタンを置いていて、外交上の問題が発生すると(あるいは気を紛らわせる必要があると)、側近たちが大統領執務室にやって来て問題を説明するかのようだ。彼らは、ボタンを押せば決意を示すことができ、大統領が行動を起こしていることを示せる、そして良い結果が生まれるかもしれないと指摘する。彼らが正直であれば、ボタンを押す絶対的な必要性はなく、そうすることで事態が悪化する可能性もあると認めるかもしれない。しかし、リスクは小さく、コストも許容範囲内であり、ボタンを押さなければ問題はほぼ確実に悪化し、大統領は優柔不断に見えるだろうと彼らは大統領に念を押す。そして、彼らは厳粛な口調でこう締めくくる。「あなたの選択です、大統領閣下(It’s your choice, Mr. President.)」。このような甘言に一貫して抵抗できるのは、近年の大統領のほとんどよりも優れた判断力を持つ指導者だけだろう。

明確に言えば、今回の暴力の嵐は、2003年のイラク侵攻以来、アメリカ軍による最も不必要な流血行為と言えるだろう。しかし、この出来事がアメリカの戦争中毒(America’s addiction to war)について物語っていることは、現アメリカ大統領について語っていることと同じくらい重要だ。

骨棘の話は徴兵を逃れるための口実だったのではないか? そうだとすれば、トランプ自身は志願兵制の原則には当てはまらないということになるのだろうか?

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 第二次ドナルド・トランプ政権では、これまでにクリスティ・ノーム国土安全保障長官とパム・ボンディ司法長官、ロリ・チャベス=デレマー労働長官が更迭された。これまで更迭された閣僚は全員が女性である。クリスティ・ノーム国土安全保障長官とロリ・チャベス=デレマー労働長官に関しては、予算の不適切な執行が理由となっている。チャベス=デレマー長官に関してはそれ以外にも夫が労働省の女性職員に不適切な行為を行ったということも理由になっている。これらは極めて脇が甘い行動である。チャベス=デレマー長官とその周辺に関しては、労働省の監察官が調査を行っていたということもあり、さらに不適切な行為が認定されてしまうと、第二次政権に大きなダメージとなり、民主党側を勢いづかせるということもあり、更迭が実施されたようだ。
lorichavezderemer001
ロリ・チャベス=デレマー
pambondikristinoem001
パム・ボンディ(左)とクリスティ・ノーム

 パム・ボンディ司法長官に関しては、やはりジェフリー・エプスタインの性的虐待事件に関するファイルの取り扱いが最大の原因であろう。エプスタイン事件については、このブログでも詳しくまとめているので、キーワード検索で調べて、バックナンバー記事をお読みいただければと思う。エプスタイン・ファイルについては、トランプ大統領が選挙期間中に公開を公約にしていた。そして、いわゆる「顧客リスト」を公開するとも述べていた。性的搾取に参加していた「顧客リスト」というのは人々の興味関心を引くものだ。もっと言えば、どんな有名人が載っていて、どんな風に糾弾されて落ちぶれるかを見たいという人々の劣情に訴えるものだ。トランプ大統領としては、ウォール街の大物たちや民主党系の、リベラルの政治家たちが多数掲載されていて、彼らが失脚するのを目論んでいただろう。

 政権発足後、ボンディ司法長官は調査を行い、「顧客リスト」はないこと、エプスタイン・ファイルにドナルド・トランプの名前が出てくることを報告した。その結果、トランプ大統領は「いわゆる『顧客リスト』は存在せず、ファイルの公開もしない」という方針店を発表したために、支持基盤のMAGA派からも強い批判を浴びた。結局、連邦議会での立法化もあり、ファイルは一部を黒塗りで公開することになったが、ボンディ長官の対応にトランプ大統領が不満を持った。

 しかし、ボンディ長官としては精いっぱいできるだけのことをやったと私は考える。いくらなんでもファイルで都合の悪い部分を廃棄も隠蔽もできないだろう(日本の安倍晋三政権の森友学園問題の対応ではないのだから)。トランプとしてはそれくらいのことをして欲しかっただろうが、アメリカはそれでも近代国家である(日本とは違って)。ボンディ長官は気の毒な面がある。エプスタイン事件関連でいえば、ファイルに出てきたハワード・ラトニック商務長官の更迭論も出ている。エプスタイン事件は第二次トランプ政権をこれからも祟ることになるだろう。

(貼り付けはじめ)

ロリ・チャベス=デレマー労働長官が政権を離れる(Labor Secretary Lori Chavez-DeRemer to leave administration

マロニー・ウィルソン筆

2026年4月20日

『ザ・ヒル』誌

by Mallory Wilson - 04/20/26 5:23 PM ET

https://thehill.com/homenews/administration/5840049-labor-secretary-lori-chavez-dememer-exit/

ホワイトハウスは月曜夜、ロリ・チャベス=デレマー労働長官がドナルド・トランプ政権を離れ、民間企業に転身すると発表した。

デレマーのトランプ政権における将来については、数週間前から憶測が飛び交っていた。デレマーの辞任は、クリスティ・ノーム国土安全保障長官とパム・ボンディ司法長官の解任に続くものだ。

ホワイトハウス広報部長スティーヴン・チャンは、声明の中で「ロリ・チャベス=デレマー労働長官は民間企業に転身するため政権を離れる」と述べた。

チャンは、ワシントン州選出の元共和党所属連邦議員であるチャベス=デレマーについて、「彼女は、アメリカの労働者を保護し、公正な労働慣行を制定し、アメリカ国民が生活を向上させるためのスキル習得を支援するなど、その職務において素晴らしい功績を残した」と述べた。

チャン部長は「キース・ソンダーリングが労働長官代行に就任する」と付け加えた。

キース・ソンダーリングは労働副長官を務めてきた。

ニューズサイトNOTUSはチャベス=デレマーの辞任をいち早く報じていた。

彼女の辞任は、不正行為の疑惑に関する調査が行われている最中に起きた。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、アンソニー・デスポジートが率いる労働省監察官室は、チャベス=デレマーとその側近による不正行為の疑惑に関する数カ月にわたる調査を終えようとしている。

ニューヨーク・タイムズ紙は、告発内容には、チャベス=デレマーが部下と不倫関係にあったことや、私的な旅行に部署の資金を流用したことなどが含まれていると報じた。

ニューヨーク・タイムズ紙によると、労働省監察官は、チャベス=デレマー、彼女の側近、夫、父親が若い女性職員に送った複数のテキストメッセージを調査しており、それらのメッセージからは、彼女が勤務時間中に飲酒していたことも示唆されているという。

元労働長官の夫ショーン・デレマーは、職員2名から不適切な接触と性的暴行の疑いをかけられた後、労働省本部への立ち入りを禁止されていた。

ロリ・チャベス=デレマーは長文の声明の中で、今後の展望について次のように述べている。

チャベス=デレマーは、「この歴史的な政権で、そして私の人生で最も偉大な大統領のために働くことができたのは、光栄であり、大変恵まれたことであった」と記した。

「労働省では、トランプ大統領が掲げた、企業と労働の間の溝を埋め、常にアメリカの労働者を最優先するという使命を推進する上で、大きな進歩を遂げたことを誇りに思う。住宅ローンを返済できる仕事への新たな道筋を作り、AI時代に活躍できる人材を育成し、処方薬の価格引き下げに取り組み、退職後の生活保障を促進するなど、数多くの成果を上げてきた」と彼女は書いている。

「トランプ大統領閣下に感謝を申し上げる。政権での任期は終わりを迎えるが、アメリカの労働者のために闘うことを終えるつもりはない。民間企業に移るにあたり、今後の展開を楽しみにしている」と彼女は締めくくった。

チャベス=デレマーは、労働長官に任命される前は、オレゴン州第5選挙区選出の連邦下院議員を1期務めた経験を持つ。

彼女は昨年3月、67対32の賛成多数で閣僚に承認され、チャベス=デレマーの娘が所属する国際ティームスターズ組合を含む労働組合からの支持を得ていた。

労働組合が共和党を支持することは稀だが、2024年、ティームスターズ組合は異例の行動に出た。組合が特定の候補者を支持しないという決定を下していたにもかかわらず、ショーン・オブライエン労組委員長が共和党全国大会で演説を行った。

AP通信によると、彼女の在任中、労働省は60以上の「時代遅れ(obsolete)」の職場規則の見直しまたは撤廃を提案し、世界中の児童労働や奴隷労働撲滅を目的とした数百万ドル規模の国際補助金も打ち切った。

その後、月曜日にチャベス=デレマーはXの投稿で、「アメリカ史上最も親労働者の立場を取る大統領の下で働けたことを光栄に思う」と述べた。

さらに彼女は、「私、私の家族、そして私のティームに対する疑惑は、偏向報道を行うメディアと連携し、トランプ大統領の使命を阻害し続けている、高位のディープステート関係者によって広められている」と付け加えた。さらに、「今後も外部から正義のために戦い続け、常にアメリカの労働者のために尽力していきたいと思う」と続けた。

=====

米労働長官が辞任、トランプ第2次政権閣僚で3人目 私的問題相次ぐ

日本経済新聞 2026421 7:39 (2026421 9:44更新)

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2105E0R20C26A4000000/

【ワシントン=芦塚智子】米ホワイトハウスは20日、デレマー労働長官が辞任すると発表した。デレマー氏は私的な旅行を公務と偽ったり、警護関係者と不倫したりした疑いで調査を受けていると報じられていた。事実上の解任とみられる。

トランプ政権の閣僚の交代はノーム国土安全保障省長官、ボンディ司法長官に続き今年に入って3人目となる。3人は全て女性だ。11月の中間選挙を前に政権幹部の入れ替えが相次ぐ。

ホワイトハウスのチャン広報部長はX(旧ツイッター)への投稿で「デレマー氏は民間の職に就くために政権を離れる。彼女は素晴らしい仕事をしてきた」と説明した。ソンダリング労働副長官が当面、長官代行を務めるという。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、労働省の監察官がデレマー氏と側近を巡る疑惑を調査していた。

側近はデレマー氏が友人や家族と会うために公務をでっち上げたり、職員を威圧したりしていたと告発を受けていた。側近は辞任が報じられた。デレマー氏の夫も省内で女性にセクハラをしたとの訴えがあった。

米政治サイトのポリティコはラトニック商務長官も解任候補に浮上していると報じている。

これまでにノーム氏は不法移民対策を巡る不手際で批判を受け、3月に解任された。後任はマリン前上院議員が就いた。

ボンディ氏は今月初めに解任され、ブランチ副長官が長官代行を務めている。トランプ大統領は、少女買春などの罪で起訴され自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏の捜査資料公開を巡り、ボンディ氏の対応に不満を持っていたとされる。

=====

ドナルド・トランプ大統領がパム・ボンディを司法長官から解任(Trump ousts Bondi as attorney general

レベッカ・ベイッチ、ジュリア・マンチェスター筆

2026年4月2日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5813184-trump-fires-attorney-general/

ドナルド・トランプ大統領は木曜日、パム・ボンディ司法長官を解任したと発表した。

トランプ大統領は「トゥルース・ソーシャル」に「パム・ボンディは偉大なアメリカの愛国者であり忠実な友人だ。彼女は過去1年間、司法長官として忠実に職務を遂行してくれた。ボンディは全米で大規模な犯罪取り締まりを指揮し、殺人事件を1900年以来最低の水準にまで減少させるという素晴らしい仕事を成し遂げた」と投稿した。

「私たちはボンディを愛している。彼女は今後、民間部門で非常に必要とされている重要な新しい仕事に就く予定で、詳細は近日中に発表される。司法副長官であり、非常に有能で尊敬されている法律家であるトッド・ブランシュが司法長官代行を務める」。

司法省はコメントの要請に応じていないが、ブランシュは投稿の中でボンディの「リーダーシップと友情」に感謝しトランプ大統領にも感謝の意を表した。

トランプ大統領の発表直後、ブランシェはXに「トランプ大統領の信頼と司法長官代行を務める機会を与えてくださったことに感謝する。私たちは引き続き警察を支援し、法を執行し、アメリカの安全を守るために全力を尽くす」と書き込んだ。

ボンディは木曜日、Xに「今後1カ月間、ブランシュへの職務引き継ぎに全力で取り組む」と書き、すぐに辞任するつもりはないことを示唆した。

トランプ大統領の熱烈な擁護者であるボンディは、ジェフリー・エプスタイン事件の対応をめぐり、ますます厳しい批判にさらされている。

ボンディの指揮下で、司法省はトランプ大統領の政敵に対する訴訟で検察官が有罪判決を得られず、一連の不名誉な敗訴を喫している。

ボンディは司法長官就任当初、エプスタイン事件に関するホワイトハウスでの会合を主催し、共和党支持層の怒りを買った。会合では、既に一般に公開されている情報の大部分を公表した。

その後、ボンディはエプスタインのいわゆる顧客リスト(a so-called client list)を机の上に置いていると主張したが、司法省はすぐにこれを撤回した。司法省は、そのようなリストは存在しないとするメモを発表し、性犯罪者ジェフリー・エプスタインは自殺したことを示す証拠はないと主張した。

トランプ大統領の大統領首席補佐官スージー・ワイルズでさえ、昨年12月に掲載された『ヴァニティ・フェア』誌の一連のインタヴューで、ボンディの対応は失敗だったと述べている。

「彼女は、この問題に関心を寄せているのがまさにその特定のグループだったということを全く理解していなかったと思う」とワイルズは当時語った

この問題は連邦議員たちの注目を集め、超党派による調査が開始され、連邦議会で騒がれる事態となった。最近では、連邦下院監視・政府改革委員会がボンディへの召喚状発行を決定し、共和党所属連邦下院議員5人の支持を得た。

ボンディの解任が正式に発表される前から、解任を歓迎する声も上がっていた。

ボンディ解任を支持した共和党所属の連邦議員の1人であるナンシー・メイス連邦下院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)は「ボンディはエプスタイン事件の処理をひどく怠り、トランプ大統領の立場を著しく弱体化させた」と声明の中で述べた。

ボンディの司法長官在任中、司法省職員が多数解任された。その中には、トランプ大統領に対する捜査に携わった職員や、1月6日の暴動参加者の訴追を担当した職員も含まれている。

司法省の使命が完全に覆されたと主張して辞職した職員もいる。その中には、各部門の多数の弁護士や、俳優メル・ギブソンの銃所持権回復を迫られた元米恩赦担当弁護士のリズ・オイヤーも含まれる。

「パム・ボンディは司法省とその職員に大槌を振り下ろした。司法省の独立性、誠実性、そして職員の質は、彼女のリーダーシップの下で、155年の歴史の中でかつてないほど低下した。彼女がたった1年で破壊したものを再建するには、何十年もかかるだろう。しかし、大統領は彼女が十分な改革を行わなかったという理由でボンディを解任した」と元司法省職員のネットワークであるジャスティス・コネクションのエグゼクティブ・ディレクターであるステイシー・ヤングは声明で述べた。

「ボンディと同じように、唯一の顧客は国ではなく大統領だと考える、より有能な人物を後任に据えることは、事態をさらに悪化させるだけかもしれない。連邦上院は憲法上のチェック機能を行使し、そのような事態を防がなければならない」。

ブランシュが司法長官代行に就任したことで、司法省は依然として大統領の元弁護人が率いる体制となった。

ボンディ司法長官の下で、司法省はトランプ大統領の政敵と見なされた人物数名に対する有罪判決を目指したが、いずれも失敗に終わった。

これには、ジェイムズ・コミー元FBI長官とニューヨーク州司法長官レティシア・ジェームズ(民主党)に対する訴訟の複数回の失敗が含まれる。両者とも、トランプ大統領が任命した連邦検事が事件への懸念から辞任した後に訴訟が提起されたが、その後、裁判官は後任の連邦検事には適切な権限がなかったと判断した。連邦検事は連邦上院の承認を得なければならないためだ。また、検察は最近、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長に対する訴訟を取り下げざるを得なくなった。裁判官が、召喚状は圧力工作の一環として発行されたと判断したためだ。

司法省は現在もフロリダ州で捜査を続けており、2016年大統領選挙に関する過去の情報機関による調査と、トランプに対する2件の訴訟について調査している。

連邦上院情報特別委員会のマーク・ワーナー筆頭委員(ヴァージニア州選出、民主党)は、ボンディが「法の支配を覆し、司法省の公平な司法を実現する能力を損なう」不正行為を主導したと非難した。

ワーナー議員は、ボンディがトランプの側近数名、そして1月6日に連邦議事堂に押し寄せた1600人に対する恩赦や減刑の手続きを監督していたことも指摘した。

「これは一人の職員の問題にとどまらない。トランプ大統領は司法省を政治的な武器のように扱い、検察官に圧力をかけ、独立性よりも忠誠心を重んじ、連邦法執行機関の仕組みを利用して、敵とみなした人物への報復を行う一方で、側近を責任追及から守ってきた」とワーナー議員は声明で述べた。

「こうした一連の動きには、州の権限を不当に侵害しようとする試みとして広く異議を唱えられている大統領令による投票の全国化の試みや、2020年の選挙での敗北への大統領の執着に関連したフルトン郡の家宅捜索などが含まれる」。

しかしながら、共和党所属の連邦議員の多くは彼女の成功を祈った。

リック・スコット連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)は声明の中で「パム・ボンディは私の親友であり、これまで出会った中で最高の弁護士の1人だ。私がフロリダ州知事だった時、彼女はフロリダ州司法長官として素晴らしい仕事をしてくれたし、連邦司法長官としても素晴らしい働きをしている」と述べた。

他の議員は、ボンディが4月14日に予定されている証言録取で、今後も連邦議会で精査を受けることになるだろうと指摘した。

「司法省は依然としてエプスタイン文書透明性法を遵守していないため、私たちは彼女に召喚状を送る以外に選択肢がなかった。そして私たちの働きかけにより、彼女は2週間後に監視委員会に出席することになる」とメイス議員は述べた。

「単に答えを求めているだけの連邦議員の検索履歴をスパイしたり、重要な証拠を隠したまま全てのファイルを公開したと主張したり、有罪者を責任追及しようとするあらゆる努力を妨害したりするなど、アメリカ国民は透明性があり、真の責任を果たす司法長官を必要としている」。

連邦下院監視委員会の民主党側筆頭委員であるロバート・ガルシア連邦下院議員(カリフォルニア州選出)は、ボンディが「エプスタイン事件に関するホワイトハウスの隠蔽工作を主導した」と非難した。「彼女は司法省を悪用し、ドナルド・トランプを守り、被害者の身許を暴露することで彼らを危険に晒した」とガルシア議員は述べた。

「彼女は責任追及を逃れることはできず、委員会に宣誓供述書を提出する法的義務を負っている。エプスタイン事件の不適切な取り扱いと、ギレーヌ・マクスウェルへの特別扱いについて説明責任を負わなければならない」とガルシア議員は声明で述べた。マクスウェルはエプスタインの側近だった。

「監視委員会の民主党所属の議員はパム・ボンディ司法長官とクリスティ・ノーム国土安全保障長官に対する真剣な調査を主導してきた。両者が解任されたからといって、私たちが次の段階に進むと考えているなら、それは大きな間違いだ」

ボンディは、トランプ大統領によって解任された2人目の閣僚だ。トランプ大統領は先月、当時の国土安全保障長官だったクリスティ・ノームを解任したばかりだ。

=====

トランプ氏、ボンディ司法長官を解任 エプスタイン文書公開巡り不満

202643 2:27(202643 4:27更新) 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN02DL50S6A400C2000000/

【ワシントン=芦塚智子】トランプ米大統領は2日、ボンディ米司法長官を解任したとSNSで発表した。少女買春などの罪で起訴され自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏の捜査資料公開を巡り、ボンディ氏の対応に不満を募らせていると報じられていた。

当面はブランチ司法副長官が暫定長官を務める。後任候補には米環境保護局(EPA)のゼルディン長官らの名前が浮上している。3月のノーム国土安全保障省長官に続き、今年に入って2人目の閣僚の解任となる。

トランプ氏は投稿でボンディ氏を「素晴らしい米国の愛国者で忠実な友人」と呼び、犯罪対策で成果を上げたと称賛した。民間での「非常に必要とされている重要な新しい仕事」に就くと説明した。

ボンディ氏はX(旧ツイッター)に投稿した声明で「重要な民間の役割に移り、トランプ大統領と政権のために引き続き戦う」と語った。

ボンディ氏は第1次政権でトランプ氏が弾劾訴追を受けた際の弁護団の一員を務めるなど、トランプ氏の「忠臣」の一人とされてきた。司法長官として不法移民の取り締まりや犯罪対策などを推し進めた。

ボンディ氏は20252月にエプスタイン氏の「顧客リスト」が「いま私の机の上にある」と述べて資料公開の期待を高めたが、その後発言を訂正。同年7月には顧客リストの存在を否定し、さらなる資料公開を拒否する声明を出した。

こうした言動が政権による情報隠蔽疑惑を広げる一因になった。

2511月、エプスタイン氏に関する捜査資料の全面公開を義務付ける法律が成立。261月までに資料を公開した。

だが、黒塗りの非公開部分が多かったこともあり、隠蔽を疑うトランプ氏の岩盤支持層の一部や民主党などからボンディ氏の責任を問う声が上がっていた。414日には議会証言が予定されていた。

トランプ氏は、自身の政敵の捜査や訴追が思うように進んでいないことについても、ボンディ氏にいら立ちを強めていたとされる。

司法省はトランプ氏の捜査や起訴に関わったコミー元米連邦捜査局(FBI)長官や東部ニューヨーク州のジェームズ司法長官を起訴したが、裁判所が起訴を却下した。トランプ氏は他にも多数の政敵の捜査を求めている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは1月、トランプ氏がボンディ氏について「弱い」「無能」と側近に不満を漏らしていると報じていた。

ゼルディン氏はトランプ氏の熱心な支持者として知られる。1523年にニューヨーク州選出の下院議員を務め、トランプ氏の2度の弾劾決議やバイデン前大統領が勝利した20年大統領選の結果を承認する投票で反対票を投じた。

=====

クリスティ・ノームはどのように最終的にトランプの信頼を失ったか(How Kristi Noem finally lost Trump’s trust

アレクサンダー・ボルトン筆

2026年3月5日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/homenews/administration/5770493-kristi-noem-trump-advertising-scandal/

複数の共和党所属の連邦上院議員や事情に詳しい関係者によると、クリスティ・ノームが火曜日の連邦上院公聴会で、トランプ大統領がノームのリーダーシップを宣伝する2億2000万ドル規模の国土安全保障省(Department of Homeland SecurityDHS)の広告キャンペーンを承認したと主張したことが、木曜日にノームが国土安全保障長官の職を失う決定的な要因となった。

ドナルド・トランプ大統領は、1月にミネアポリスで連邦捜査官がデモ参加者2人を射殺した事件を受けてノームの解任を検討したが、民主党の辞任要求に屈したと見なされることを避けるために見送ったとトランプ大統領の検討内容に詳しいある関係者は述べている。

ジョン・スーン連邦上院多数党(共和党)院内総務(サウスダコタ州選出、共和党)は木曜日、ノームの将来に関する話し合いが「しばらく前から(a while)」行われていたことを認めた。

スーンは、「話し合いはしばらく前から行われていたと思う。私はその全てを把握していた訳ではないが、いくつかの議論については知っている」と述べた。

匿名を希望したある共和党所属の連邦上院議員は、ノームがトランプ大統領が問題の広告を個人的に承認したと主張したことは「最後の一押し(last straw)」であり、大統領を潜在的なスキャンダルに「巻き込む(dragging)」結果になったと述べた。

2億2000万ドルの税金が投入されたこの広告キャンペーンは、国土安全保障省が通常の競争入札手続きを省略し、ノームの政治活動と関係のあるストラテジー・グループ社に広告を委託したことから、厳しい批判にさらされている。

連邦上院司法委員会委員トム・ティリス連邦上院議員(ノースカロライナ州選出、共和党)は、ノームが友人や支持者に有利なビジネス機会を提供した可能性が浮上していることは憂慮すべき事態だと述べた。

「今後、解決しなければならない疑惑がある」とティリス議員は述べ、「ホワイトハウスの最終決定には、そうした要素が少なからず影響したはずだ」と付け加えた。

「確かに印象は悪い」とティリス議員は述べた。

ティリス議員は、ノームが契約締結に深く関与していなかったという説明には納得できないと述べた。なぜなら、ノームは国土安全保障省において、10万ドルを超える全ての契約を自ら審査するという方針を定めているからだ。

「問題は、ノームが全てを詳細に審査していると言いながら、2億ドルの取引については何も知らなかったと発言したことで、自らの信頼性を損なったことだ。この2つの矛盾をどう説明するのか」とティリス議員は述べた。

共和党所属の連邦議員たちによると、ノームが国土安全保障省監察官による調査に協力を拒否したとの情報が入り、共和党議員たちはさらに警戒感を強めたという。

「国土安全保障省監察官から、調査への協力が得られていないとの連絡を受けた」と、ある共和党所属連邦上院議員は『ザ・ヒル』誌に語り、ノームの広告キャンペーンが連邦議会議事堂の共和党所属の連邦上院議員の間で警鐘を鳴らし始めた理由を説明した。

この問題は火曜日、連邦上院司法委員会のジョン・ケネディ連邦上院議員(共和党、ルイジアナ州選出)がノームに対し、問題の広告について厳しく追及したことで一気に注目を集めた。ケネディ議員は、この広告は納税者の税金の無駄遣いだと非難し、トランプ大統領が承認したのかどうかを問いただした。

ノームが公聴会で、ラシュモア山の前で馬に乗るノームの姿をフィーチャーした大規模なキャンペーン広告をトランプ大統領が承認したと主張したことを受け、トランプ大統領の側近たちは後に、大統領が「激怒(livid)」し「憤慨(pissed)」していたと伝えた。

トランプ大統領は公聴会直後、共和党所属の連邦上院議員たちに電話をかけ、ノームの後任候補としてマークウェイン・マリン連邦上院議員(オクラホマ州選出、共和党)の名前を挙げた。トランプ大統領は木曜日、マリン議員を次期国土安全保障長官に指名すると発表した。

トランプ大統領は連邦上院共和党に対し、ノームのイメージアップを図るための広報活動と見なされていた、これほど巨額の税金を使ったキャンペーンには決して承認しなかったと非公式に保証した。

トランプ大統領はロイター通信のインタヴューでも「私は何も知らなかった」と述べている。

連邦議会共和党の中には、ノームが広告契約の締結において税金を不正に使用したり、契約規則に違反したりした場合、11月の選挙で民主党が連邦下院の過半数を奪還した際に、民主党の調査官にとって格好の材料となることを懸念する声もある。

ノームが、トランプ大統領が問題の契約を知っていて承認していたと主張しれば、連邦下院民主党は調査対象を大統領にまで拡大する口実を得ることになるだろう。

共和党連邦議員たちによると、トランプ大統領は、連邦捜査官に背後から複数回撃たれて死亡した37歳の集中治療室看護師アレックス・プレッティの事件へのノームの対応を巡り、知事への不満を非公式に示し始めたという。

ノームはプレッティを「国内テロリスト(domestic terrorist)」と呼び、「個人に最大限の損害を与え、法執行官を殺害しようとした」と主張したが、事件の映像は広く拡散しており、知事の主張と矛盾していた。

トランプ大統領は、ホワイトハウスの国境警備責任者であるトム・ホーマンをミネアポリスに派遣し、移民取締作戦の指揮を任せることで、ノームの権限を縮小し、事実上、国土安全保障長官を事実上排除した。

しかしながら、当時ホワイトハウスは、トランプ大統領が移民取り締まりに対する民主党の激しい批判に屈したという見方を強く否定した。

トランプ大統領は1月下旬、ノームは「非常に良い仕事をしている」と主張した。

当時、ノームが辞任するかどうかを問われた際、大統領は「ノー」とだけ答えた。

しかし、ミネアポリス銃乱射事件をめぐる世論の怒りが最高潮に達していた1月29日の閣議で、ノームが大統領の信頼を失ったことを示すかのように、彼女は沈黙を貫いた。ホワイトハウス関係者の中には、これを彼女の任期が残りわずかである兆候と捉える者もいた。

共和党のティリス連邦上院議員とリサ・マコウスキー連邦上院議員(アラスカ州選出、共和党)は、ノームに国土安全保障長官の辞任を求めた。

「ノームは手に負えない状況に陥っている。それは明らかだ。リーダーシップも、事態の沈静化もできない。ICE職員を危険な状況に晒し、アメリカ国民を命の危険に晒している」とティリス上院議員は1月下旬に記者団に語った。

昨年ノームの承認に賛成票を投じたマコウスキー連邦上院議員は、「私は彼女を二度と支持しない。辞任すべき時だと思う」と述べた。

「彼女は辞任すべきだ」とマコウスキー連邦上院議員は付け加え、ノームがプレッティを国内テロリストと呼んだ発言を指摘した。「そのような発言は事態を悪化させるだけだ。・・・彼女は状況改善に繋がらない方向へ進んでいる」。

民主党は2月14日に予算が失効して以来、国土安全保障省への予算配分を阻止しており、同省の再開と引き換えに、移民税関執行局(ICE)と税関国境警備局(CBP)の10項目にわたる改革を要求している。

スーンは木曜日、トランプ大統領がノームを交代させたことで、民主党が国土安全保障省予算案に同意する説得力のある理由が生まれることを期待していると述べた。

スーンは、「政権によるこの動きは大きな一歩となるはずだ。これは民主党がずっと求めてきたことの1つだ」とトランプ大統領にノームの解任を要求していた民主党の主張に言及しながら語った。

=====

トランプ氏、ノーム国土安保長官を解任 不法移民対策で不手際

202636 5:32 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN05CLI0V00C26A3000000/

【ワシントン=芦塚智子】トランプ米大統領は5日、米国土安全保障省のノーム長官を解任し、後任にマークウェイン・マリン上院議員(共和党)を充てる人事を発表した。ノーム氏は、不法移民対策を巡る不手際で与党・共和党内からも批判を受けていた。

トランプ氏はSNSへの投稿で、ノーム氏を新設する「西半球安全保障イニシアチブ」の特使に任命すると表明した。ノーム氏について「特に国境警備で多くの素晴らしい成果をあげてきた」と述べた。

トランプ氏は20255月に、軍事作戦の情報漏洩問題で批判を受けた閣僚級のウォルツ大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任し、国連大使に指名した。今回のノーム氏についても更迭の印象を和らげるため、政権内の他の職務に就かせる形にしたとみられる。

後任のマリン氏は南部オクラホマ州選出。下院議員などを経て2022年に上院議員に初当選した。国土安保長官の就任には上院の承認が必要になる。

ノーム氏は、1月に中西部ミネソタ州ミネアポリスで移民を取り締まる連邦捜査官が抗議デモの参加者を射殺する事件が2度起きた際に、犠牲者の米国市民2人が「国内テロ行為」に関与していたと決めつける発言をしたことで批判を受けた。

また自身を前面に出した不法移民対策の広告キャンペーンに22000万ドル(約347億円)を投じることについて、3日の上院司法委員会での公聴会でトランプ氏の承認を受けたと証言した。しかしトランプ氏はロイター通信の電話インタブビューで「何も知らなかった」と否定した。米メディアは、トランプ氏がこのことに激怒したと報じた。

トランプ氏は、ミネアポリスで大規模な移民取り締まり活動への抗議デモが広がった際、事態を鎮静化させるために国境対策を統括するトム・ホーマン氏を派遣した。これがノーム氏の指導力を疑問視する声を強める結果になった。ノーム氏はホーマン氏との不仲も報じられていた。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 今回は、イラン攻撃直前に発表された、ファリード・ザカリアの論考をご紹介する。2月末、27日の段階で発表された論稿だ。27日は攻撃の前日、攻撃命令はすでに下されていた。ザカリアはおそらくイラン攻撃命令が下されたことを掴んでいただろう。その前に、既に中東地域にアメリカ軍が展開していたこともあり、イラン攻撃については秒読み段階という手応えもあっただろう。

 ザカリアの主張は、「爆撃と願いは戦略ではない」ということだ。これは、アメリカが明確な戦略的目標を設定して、その実現のために攻撃をするならばいざ知らず、そのようなことがない状況で、攻撃をしても、「後は野となれ山となれ」の状態になって失敗するというものだ。アメリカがイランの核兵器開発能力を排除するということで攻撃するということならば、それは2025年6月の攻撃で成功している。また、イランの弱体化についても、経済制裁なども絡めて実施しており、その効果は出ている。アメリカの情報・諜報機関もイランは核兵器を開発していないという報告を出している。イランの政権転覆、体制転換を目標とするならば、空爆だけでは成功しない。地上軍の侵攻と占領が必要となるが、アメリカ軍は地上軍派遣を実施できない。アメリカ軍がイランに対して地上侵攻を行えば、双方に多大な犠牲者が出る。アメリカ軍は犠牲者が出ることを嫌う世論とも戦わねばならない。アメリカはイランの体制転換、政権転覆を短期的には望んでいなかった。

 アメリカのイラン攻撃は全く意味のないものということになる。イスラエルにとっては、自力ではできないことであるが、アメリカを利用してイラン攻撃をしてあわよくばうまくいってくれると嬉しいという博打としての攻撃で会って、それが今回失敗したことになる。イスラエルとしてはイランの政権転覆、体制転換が望ましいが、自力で行うことは不可能だ。イスラエルが地上軍を派遣することはできない。モサドがイラン国内、イラン政府内に張り巡らしたネットワークを利用して情報を取り、暗殺を実行することはできるが、それが政権転覆、体制転換にはつながらない。

 こうして、合理的に考えれば、イラン攻撃の判断は誤ったものということになる。アメリカのドナルド・トランプ大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はその責任を取る必要があるが、今のところは早期の停戦合意をしなければならない。そのためにJD・ヴァンス副大統領が事態の収拾にあたっている。イスラエルがその邪魔をしようとするという見方もあるが、そのようなことをすれば、イスラエルはアメリカ国民からの支持も失い、亡国の坂道を転げ落ちていくだけのことになってしまうだろう。

(貼り付けはじめ)

「爆撃と願い」は戦略ではない(‘Bomb and Hope’ Is Not a Strategy

―イラン政権が崩壊しなければならないなら、その後に起こる事態の責任はトランプ大統領が負うことになる。そして、それは決して穏やかなものではないだろう。

ファリード・ザカリア筆

2026年2月27日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/02/27/iran-united-states-trump-bomb-war/

ドナルド・トランプ大統領は、1時間47分に及ぶ一般教書演説(State of the Union address)の中で、イランについてわずか3分しか触れなかった。これは憂慮すべき事態である。なぜなら、アメリカはイランとの戦争の瀬戸際(the verge of a war)に立たされているにもかかわらず、そのことについて公の場でほとんど議論されていないからだ。トランプ政権は、イラク戦争以来最大規模のアメリカ軍をこの地域に集結させ、2つの空母打撃群と少なくとも150機の航空機を近隣に展開させている。この地域には最大4万人のアメリカ軍兵士が駐留している。それにもかかわらず、軍事作戦を成功させるための核心は、依然として不明確で定義されていない。戦争目的は一体何か?

トランプ大統領は一般教書演説の中で、基本的な目標は、イランに「私たちは決して核兵器を持たない」という秘密の言葉を言わせることだ(those secret words: ‘We will never have a nuclear weapon)と示唆したように思われる。しかし、イランは数十年にわたり、このことを繰り返し述べてきた。イスラム共和国の最高指導者は2003年に核兵器保有を禁じるファトワ(fatwa、宗教令)を発布し、その後も何度もそれを繰り返している。この主張は、バラク・オバマ政権とイラン政府が合意したイラン核合意の冒頭部分で改めて確認されている。トランプ大統領が望むのがこの立場の再確認だけなら、この危機はすぐに終結するはずだ。

しかし実際には、トランプ大統領はそれ以上のものを望んでいる。それは一体何なのか? トランプ政権内部には、イランのウラン濃縮計画の破壊を望むと述べる人物もいる。しかしながら、6月にアメリカがイランを爆撃した際、大統領はイランの核開発計画を「壊滅させた(obliterated)」と声高に繰り返し宣言した。彼は間違いをしてしまったのか? それとも私たちを欺いているのだろうか? もしそうでないとすれば、イランは制裁と禁輸措置の下で、わずか数カ月で核開発計画全体を再構築できたのだろうか? そのため、最初の爆撃よりもさらに大規模な2度目の爆撃が必要になったというのだろうか? そのような主張には到底信頼を置くことができない。

トランプ政権とイランの協議は、主に核問題に焦点を当ててきた。政権はレッドラインを何度も変更してきた。時には、イランのウラン濃縮を容認する可能性があると述べてきた。これは、核不拡散体制の下で全ての国が有する権利だと多くの人が主張している。一方で、マルコ・ルビオ国務長官のような政権高官は、いかなるウラン濃縮も容認できないと述べている。ルビオ長官はまた、イランが弾道ミサイル問題(これは別の問題である)について協議を拒否していることを「大きな問題(big problem)」と指摘した。トランプ政権高官たちは、ヒズボラやハマスといった同盟者へのイランの支援を制限する必要性について言及することもある。そしてトランプ大統領はここ数カ月、政権交代を目標としていることを示唆する発言を繰り返してきた。では、真の目的は何なのか?

イランの核能力を制限することは一つの目標であり、トランプ大統領がかつて指摘したように、昨夏の爆撃によってその目標はほぼ達成された。ヒズボラとハマスは、イスラエルによる壊滅的な攻撃によって、かつての面影を失っている。イラン軍は、空爆で多くの指導者が死亡し、弱体化している。それでは、真の目的は政権交代(体制転換、regime change)なのだろうか? もしそうだとすれば、空爆だけでそれが達成される可能性は極めて低い。地上部隊が実際に侵攻して政権転覆を行うことなしに、政権が崩壊した例は、これまで一つも思い当たらない。サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン王太子やアラブ首長国連邦のムハンマド・ビン・ザイード・アル・ナヒヤーン大統領など、長年イランの敵対国であった人々が、焦点の定まらない軍事力が制御不能に陥り、中東地域全体を不安定化させる恐れがあるとして、慎重な対応を促していることは、まさにそれを物語っている。

たとえアメリカがイランの最高指導者を含む多くの高官を殺害する壊滅的な攻撃を行ったとしても、最も可能性の高い結果は、イラン軍が社会に対する支配力をさらに強めることである。戦争は、兵士が支配する。聖職者たちは排除され、イランの現在の聖職者と軍人による混合政権は、より一般的な将校主導の政府に取って代わられるかもしれない。しかし、それは自由民主政治体制への道としてはありそうもない。もしイランの民主化(democratization)がトランプ政権の目標であるならば、それを明確に表明し、計画を立て、反体制派を支援し、指導者を探し出し、彼らに支援を提供するべきである。爆撃と願いは戦略ではない(Bomb and hope is not a strategy)。

戦争理論の巨匠カール・フォン・クラウゼヴィッツは、軍事力は明確な政治目標によって導かれなければならない(military might must be directed by a clear political objective)と主張した。明確な目標なしに戦うことは、戦争を目的のない暴力(aimless violence)に変え、その結果が偶然に左右される危険性があるとクラウゼヴィッツは説明した。ワシントンの政策立案者は、立ち止まって単純な問いに答えなければならない。私たちが目指す最終状態は一体何なのか、そして軍事行動はそれをどのように達成するのか? 漠然とした目標―「弱体化(degrade)」「抑止(deter)」「行動変容(change behavior)」―は、任務の拡大を招く。もしイランの核兵器開発を阻止することが目的なら、条件が満たされていることを確認するための査察(inspections)を伴う合意こそが目標となる(そう、まさにトランプ大統領が離脱した合意だ)。もし政権交代(体制転換)が目的なら、ワシントンは事後的な政治的責任を受け入れる包括的な戦略を準備する必要がある。これ以下の対応は、アメリカ軍と数百万人の人々の未来を賭けた賭けに他ならない。

※ファリード・ザカリア:CNN番組「ファリード・ザカリアGPS」司会者、著述家。最新作に『革命の時代(Age of Revolutions)』がある。『ワシントン・ポスト』紙に週に一度コラムを掲載し、『フォーリン・ポリシー』誌に転載されている。Xアカウント:@FareedZakaria

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 2026年2月28日にイスラエルとアメリカによるイランに対する大規模攻撃からイラン戦争は始まった。イランによる報復攻撃もあり、3月中は事態が深刻化する可能性について議論されていた。アメリカ軍によるイランへの地上侵攻作戦の可能性が語られていた。具体的には、ペルシア湾のイランの石油積み出し拠点であるカーグ島への侵攻などが語られていた。

 現在は、イランのイスラム革命防衛隊、アメリカ海軍によるホルム海峡封鎖という状況になっている。地上戦の可能性は低いままであるが、ゼロではない。アメリカ軍としては、イラン側への圧力のためにも、地上作戦の可能性については示唆する、匂わせるということになる。しかし、地上作戦ということになれば、アメリカ軍に大きな犠牲が出る。アメリカ軍は、世論の反対も考慮して、犠牲者を出さないようにしながら、相手を圧倒しなければならない、腕を縛った状態で、相手に圧勝しなければならないという状況にある。アメリカ軍は、犠牲者を出さないために、相手を慎重に選ぶ。アメリカ軍よりも圧倒的に弱体で、できれば内通者、協力者がいるような、そういう軍隊を持つ国を相手にしたい。2026年1月に攻撃したヴェネズエラは絶好の標的だった。イランに関しては、リスクがありながら、攻撃を選択し、失敗した。これ以上の失敗はできない。世論をこれ以上反対に振れさせる訳にはいかない。イランの国土は広大であり、海岸から山地まで多種多様で、小規模な地上軍派遣ではすぐに撃破されてしまう。

 ドナルド・トランプ大統領やイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が認知機能の衰えや狂気からイラン戦争を開始した訳ではない。彼らなりの使命感と成算があっての攻撃決定であった。そして、戦争がここまで長引くことは予想していなかった。これ以上の失策を重ねることはできない。地上戦という博打を打つ可能性は低い。アメリカ、そして、トランプ大統領は今回の失敗から早く抜け出したい。そのためには、和平交渉が最善の途である。そして、それが世界にとっても最善の途である。

(貼り付けはじめ)

イランに対するアメリカの地上戦の5つのシナリオ(Five Scenarios for a U.S. Ground War on Iran

―複雑な地理的条件により明確な進入地点は存在しない。

アラッシュ・レイシネジャッド筆

2026年3月31日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2026/03/31/scenarios-ground-war-iran-trump-israel-kharg-hormuz-oil/

数十年にわたり、アメリカによるイランへの地上侵攻は、エスカレーションの限界点(the outer limit of escalation)とみなされてきた。実行には多大なコストがかかり、継続するにはあまりにも不安定化を招くと考えられていたからだ。しかし、その前提は今、崩れつつある。アメリカとイスラエルによる対イラン戦争が激化する中で、かつては考えられなかったことが、ますます現実味を帯びてきている。もはや問題は、地上侵攻(a ground invasion)が可能かどうかではなく、どこから開始し、戦略的な成果を上げられるか、という点にある。

一見すると、イラン周辺地域はペルシア湾やオマーン湾から西部国境地帯に至るまで、複数の侵入経路を提供しているように見える。しかし、これは中心的な錯覚である。侵攻を可能にする地理的条件は、同時に戦略的に自滅的なものにもなり得る。イランの軍事地理(Iran’s military geography)は、外部勢力を狭い沿岸のチョークポイント(choke point)、エネルギー拠点、そして国境回廊へと誘導する。これらの地域は、成功への道筋というよりも、むしろより広範なエスカレーションの引き金となる。一見すると選択肢の羅列に見えるものは、実際には、結果の地図に過ぎないのだ。

この論理が最も明確に表れるのは、カーグ島、ホルムズ海峡、アブ・ムサ諸島、大トゥンブ諸島と小トゥンブ諸島、チャーバハル・コナラク回廊、そしてアバダーン・ホッラムシャフル軸という5つの拠点である。いずれもアクセス手段となる可能性を秘めているように見えるが、いずれも戦略的な成功への明確な道筋を示すものではない。
iranwargroudinvasionmap001

(1)カーグ島(1. Kharg Island

カーグ島は、見かけ上の優位性が戦略的な危険を生み出す最も明確な例と言えるだろう。イランの原油輸出のボトルネックであり、原油輸出量の約90%がここを通過するカーグ島は、まさに一点集中型の潜在的な弱点だ。イラン内陸部から比較的隔絶され、長さ約8キロ、幅約4~5キロのカーグ島は、コンパクトで、外部に晒されさており、重要なインフラが密集している。イラン経済の重心であり、国内で最も経済力が集中し、同時に脆弱性も高い場所だ。純粋に作戦上の観点から見ると、イラン領土への直接的な侵攻を伴わずに、最大限の混乱を引き起こす可能性を秘めている。

しかし、まさにそれがカーグ島を非常に危険なものにしている理由だ。カーグ島への攻撃は、局地的な軍事行動にとどまることはない。イランの石油輸出の要衝を攻撃することで、その影響は直ちに世界のエネルギー市場に波及し、ペルシア湾のインフラの安全保障に対する広範な懸念を引き起こすことになるだろう。さらに重要なのは、事態のエスカレーションを招き、イランが地域エネルギー施設への報復攻撃に踏み切る可能性が高くなる。

その矛盾は明白だ。カーグ島を魅力的なものにしているまさにその特徴、つまりイラン経済における中心的な役割こそが、カーグ島への攻撃が紛争を急速に国際化させることを確実にする。カーグ島は単なる攻撃目標ではなく、戦況を一変させる引き金となる。

(2)ホルムズ海峡(2. The Strait of Hormuz

ホルムズ海峡は、この紛争において依然として最も重要な戦場となる。世界の石油の約5分の1がこの狭い海峡を通過するため、世界で最も重要なエネルギーのチョークポイントとなっている。ホルムズ海峡は、計り知れない戦略的優位性をもたらす支配の要衝として捉えられることが多い。

しかし、この見方は誤解を招く。ホルムズ海峡は、単一の地点を占領できるようなものではなく、複雑な海域・領土システムとなっている。この海峡を効果的に支配するには、イラン最大の港湾都市であるバンダルアッバスと、イラン最大の島であるゲシュム島に対する作戦が必要となる。これらはペルシア湾におけるイランの防衛体制の中核を構成するものである。ホルムズ海峡を支配することは、事実上、領土をめぐる戦争に突入することに他ならない。

これは根本的なディレンマを生み出す。持続的な支配を維持するには、沿岸防衛を弱体化させ、ミサイル能力と非対称的な海軍力を抑制し、激しい争奪環境下で継続的な軍事プレゼンスを維持する必要がある。全面侵攻​​には至らないものの、影響力を行使できると思われる手段は、イランの領土防衛に直接結びついた、長期にわたる資源集約型の作戦へと発展する可能性が高く、世界のエネルギー市場とサプライチェイン全体に長期的な不安定をもたらすだろう。

(3)3つの島嶼(3. The Three Islands

アブ・ムサ諸島と大トゥンブ諸島、小トゥンブ諸島は、ホルムズ海峡への戦略的な西側の玄関口を形成している。カーグ島やホルムズ海峡とは異なり、これらの島々の経済的価値は限られているものの、象徴的かつ地政学的に非常に重要な意味を持つ。

これらの島々を占領しても、軍事バランスを決定的に変えることはなく、イラン内陸部への道を開くこともないだろう。しかし、これらの島々はイランの主権とアラブ首長国連邦(UAE)の長年の領有権主張が交錯する地点に位置しているため、これらの島々に対するいかなる作戦も、極めて大きな政治的影響を及ぼすことになる。

したがって、一見すると低コストで象徴的な行動に見えるものが、アメリカの戦略的立場を改善することなく、戦争を拡大させる可能性がある。これは、象徴的価値は高いが、決定的な戦略的成果が得られないという、より広範なパターンと一致する。標的が容易であればあるほど、戦略的成功への貢献度は低くなり、不利な条件で戦争を拡大させるリスクが高まる。

(4)チャーバハル・コナラク(4. Chabahar-Konarak

最も議論されていない侵入経路(entry point)は、イラン南東沿岸のチャーバハル・コナラク回廊である。ここは、これまでとは異なるタイプの侵入ルートに見える。厳重に軍事化されたペルシア湾岸地域と比べると、地理的に開けており、混雑も少なく、一見すると外部からの作戦行動にとってより容易な場所のように思える。

しかし、このアクセスの容易さには根本的な制約がある。チャーバハルは、影響力を行使できる拠点とはなり得ない。カーグ島とは異なり、イランの石油供給の生命線の中核をなす場所ではない。ホルムズ海峡とは異なり、世界の重要なチョークポイントを支配している訳でもない。ペルシア湾岸地域とは異なり、この地域は重要なインフラが集中していない一方で、自然の防衛障壁も存在する。

しかし、最大の問題は距離である。そこに足がかりを築いたとしても、侵攻部隊はイランの経済的・政治的中心地から遠く離れており、早期の侵入は長期にわたる、兵站コストのかかる作戦となるだろう。作戦上は侵入しやすいように見える場所だが、戦略的には脆弱なのである。

(5)アバダーン・ホッラムシャフル(5. Abadan-Khorramshahr

地上侵攻がより決定的な形をとる場合、最も可能性の高いルートは、イラン南西部の石油資源が豊富なアバダーン・ホラムシャフルだろう。ここはペルシア湾から戦略的に重要な地域へ至る最も直接的なルートである。

しかし、このルートを単独で攻略することはできない。進軍はクウェートを起点とし、イラク南部に入り、バスラを経由してフゼスタン州へと進む可能性が高い。これは、1980年にイラクがイランと戦争した際に当時のイラク大統領サダム・フセインが辿ったルートをなぞるものだ。

しかし、46年後の今日、イラクの領土はもはや受動的な回廊ではない。いかなる作戦も、アメリカ軍がイラン領土に到達する前から、イランと連携する民兵組織、特に人民動員部隊(ハシュド・アル・シャービ)からの圧力に直面する可能性が高い。戦場は、従来の国家間戦争にとどまらないだろう。それは、事実上、イラク南部からイラン南西部に広がる連続したシーア派地政学的空間における、断片的で多層的な闘争という様相を呈する可能性がある。

したがって、イランへの最も直接的なルートに見えるものは、同時に最も危険なルートでもあり、イランだけでなく、イラク全土に及ぶ大規模な戦争のリスクが存在する。この枢軸を作戦上実現可能にしているまさにその特性こそが、政治的、軍事的に危険なものにしている。ここでは、決断力があるという幻想が最も強く、同時にリスクも最も高い。

さらに考慮すべき点は、これら5つのシナリオのいずれにおいても、クルド人が果たす役割である。アメリカの侵攻は、イラン西部国境沿いでのクルド人の蜂起を伴う可能性がある。その結果、イランの防衛力は複数の戦線に分散されることになるだろう。

イラン西部国境地帯では、長年にわたりクルド人グループとの紛争が続いており、イラン・クルド民主党、クルディスタン自由党、クルディスタン自由生活党、ハバト、クルディスタン労働者コマラ、イラン・クルディスタン・コマラ党などが挙げられる。これらのグループは、テヘランに対峙する連携強化に向けて動き出していると報じられている。

しかし、この選択肢には大きな制約がある。これらのグループは分裂しており、能力も多種多様で、テヘランとの大規模な衝突に踏み切る意思があるかどうかは依然として不透明なままである。さらに、イラク・クルディスタン地域政府は報復のリスクを懸念し、事態のエスカレーションを避ける強い動機を持っている。一方、イラク国内のイラン系民兵組織は、この地域を二次的な戦場に変えてしまう可能性がある。トルコがクルド人の軍事化に反対していることも、もう一つの制約要因だ。さらに重要なのは、この戦略はイラン国内で逆効果となる可能性があるということだ。紛争が国家の弱体化ではなく、領土保全と愛国的結束の強化という構図に転換されてしまう恐れがある。

総合的に見ると、勝利のための戦略ではなく、エスカレーションの地図となる。それぞれが侵入経路を提供するものの、いずれも予測可能な結果を​​もたらす限定的な行動を可能にはしない。侵入を可能にする経路そのものが、成功の達成を困難にし、維持をさらに困難にする要因となる。効果的な圧力を生み出す標的は、より広範な経済的・地域的混乱を引き起こすリスクがあり、一方、封じ込めを図る努力は戦略的な効果を生み出せない。一見すると複数の選択肢に見えるものが、結局は一つのディレンマに集約される。すなわち、限定的な影響を受け入れるか、制御不能なエスカレーションを招くかのどちらかである。

このようなエスカレーションは、間違いなくペルシア湾のエネルギーシステム全体に影響を及ぼし、イランと連携するフーシ派が海上交通を妨害する能力を保持しているバブ・エル・マンデブ海峡での反撃圧力を引き起こすだろう。その結果、世界的な影響を及ぼす複数のチョークポイント危機が生じることになる。

もう一つの危険は、罠に陥る可能性だ。国家対テロセンター元所長ジョー・ケントが警告したように、ホルムズ海峡の島々を占領すれば、アメリカ軍は有利な立場に立つことはなく、標的となり、孤立して機雷、ミサイル、ドローン群による攻撃に脆弱な状態に置かれる可能性がある。

もちろん、アメリカはナタンズやフォルドゥといった場所への限定的なヘリコプター攻撃を選択することもできる。しかし、約400キログラムの濃縮ウランが既に未知の場所に分散している可能性があり、誤算や急速なエスカレーションのリスクが高まるため、このような作戦は特に危険だ。あるいは、テヘランに向けてヘリコプターまたは空挺部隊を投入する可能性もある。しかし、地理的な制約を回避し、紛争を圧縮しようとする試みは、こうしたシナリオに長年備えてきた体制に直面することになる。革命と数十年にわたる非対称戦争によって形成されたイラン・イスラム共和国は、圧力を吸収し、近接戦闘に特化している。迅速な作戦として始まったものが、たちまち長期化し、分散化し、さらには都市部を中心とする抵抗へと発展し、支配権の問題は解決するどころか、むしろ深刻化する可能性がある。

イランへの地上侵攻は、ますます現実味を帯びてきているように見えるかもしれない。しかし、それは地理に対する根本的な誤解に基づいている。イランは長年にわたり、単に地理的条件に適応してきたのではなく、むしろそれを武器として活用してきた。山岳地帯、砂漠、海岸線、島嶼、そして要衝は、戦場における受動的な要素ではなく、圧力を吸収し、戦力を分散させ、敵に損害を与えるために設計された防衛戦略の能動的な構成要素なのである。この意味で、イランの地理は単に軍事作戦の様相を形作るだけでなく、それを世界的な出来事へと変容させるのである。

※アラッシュ・レイシネジャッド:タフツ大学フレッチャー大学院非常勤講師。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス中東地域センター非常勤研究員。Xアカウント:@arashreisi

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ドナルド・トランプ大統領は132年ぶりの返り咲き(カムバック)で第二次政権をスタートさせた。第二次トランプ政権は変質した。「アメリカ・ファースト(America First)」は、国内問題解決優先、海外での戦争はしないということが本質である。ドナルド・トランプはアメリカ・ファーストを裏切った。この状況を何とかしようとしているのが、JD・ヴァンス副大統領である。

 それでも、ドナルド・トランプは第45代、第47代大統領として、アメリカ誌に名前を刻むことになる。それでは、ドナルド・トランプはどのような形で、名前を刻み、人々に記憶され、人口に膾炙することになるのだろうか。

 下記論稿の著者スティーヴン・M・ウォルトは、トランプについて「政策遂行」ではなく「常識破壊」の卓越した政治力の大統領として記憶されるだろうと述べている。以下に引用する。

(貼り付けはじめ)

大統領としてのトランプの最大の功績は、アメリカの民主政治体制秩序を形作ってきた多くの規範を打ち破り、多くの常識に挑戦したことだ。支持者たちにとっては、それはトランプの天才性(his genius)であり、批判者にとっては、それは彼の危険さの理由(why he’s so dangerous)だ。残念ながら、彼は効果的な改革を実行するために必要な細部を把握する能力も意欲も欠けており、経験豊富で強硬な外国の敵対勢力を出し抜く交渉力も持ち合わせていない。しかし、現実がどうであれ、自分が素晴らしいことを成し遂げていると人々に信じ込ませる能力がある限り、こうした欠点は問題にならないかもしれない(But these failings may not matter, given his ability to convince people that he’s doing great things no matter what the reality may be

(貼り付け終わり)

 決して褒めている訳ではないが、人々を惹きつける力があり、カリスマ的な能力を持つ人物であるということを述べている。そのような力がなければ、アメリカ大統領にはなれないだろう。ドナルド・トランプはこれまでも、そして、これからも人々の関心を引き、研究者たちによって研究されていく大統領であろう。

(貼り付けはじめ)

トランプはどのように記憶されるのか(How Trump Will Be Remembered

-これほどまでに在任期間を自分自身と自身の功績のためだけにあからさまに利用した大統領は他にいない。

スティーヴン・M・ウォルト筆

2025年6月30日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2025/06/30/trump-president-us-history/

アメリカ大統領は皆、強い自我・自尊心(egos)を持っていたし、持っている。そうでなければ、大統領執務室(the Oval Office)にたどり着くことすら難しいだろう。そして、彼らは死後、良い形で記憶されたいと願っている(they want to be remembered favorably after they are gone)。ジョージ・ワシントン、エイブラハム・リンカーン、フランクリン・D・ルーズヴェルトといった少数の大統領は、卓越した資質に加え、並外れたリーダーシップを必要とする困難な状況を克服したことで、崇高な地位を築いている。平穏な時代に政権を担った大統領、あるいは在任中の行動が明らかな失敗によって評判が傷ついた大統領は、歴代大統領をランキング形式で評価するようなリストで、最下位に沈まないことを祈るしかない。

他の多くの事柄と同様に、ドナルド・トランプの歴史における自身の地位への執着(obsession)は異例の程度である。これほどまでに露骨に自己中心的であり、アメリカ史上最も偉大な大統領の1人として記憶されたいと願う姿勢を、これほどまでに明白に示した大統領は他にいない。実際、彼はすでにその栄誉にふさわしいと信じているようだ。

トランプの個人的な栄光への熱望は、至るところに見られる。一期目の政権時、トランプは記者団に対し、重要なポストの補充が遅れていることは問題ではない、なぜなら重要なのは自分だけだからだと語った。彼はノーベル平和賞への希望を繰り返し表明しており、その一因は前任者のバラク・オバマが受賞したことだ。2024年の大統領選キャンペーン中、彼は自分がリンカーンやワシントンよりも優れた、史上最高の大統領であると明言した。トランプは自身の知性を自慢し、閣僚やその他の高官には公の場で媚びへつらうような儀式的な行為を行うことを期待している。カルト的なMAGA共和党員たちはすでにトランプを崇拝する活動を始めており、彼の顔をラシュモア山に加えることを提案する連邦議会法案まで提出されている。

しかしながら、トランプの問題は、在任中の実績が良くて平凡、最悪の場合は大失敗だったということだ。1期目には、新型コロナウイルス感染症のパンデミックへの対応を誤り、アメリカの債務を8兆ドル以上増加させ、アメリカの貿易赤字を悪化させ、アフガニスタン戦争を終結させることに失敗し、北朝鮮に核兵器削減を説得できず、長年の同盟諸国との関係を何の利益も生み出すことなく、逆に混乱させた。こうした実績だったので、有権者たちは当然ながらトランプを退任させた。2期目の政権を獲得できたのは、ジョー・バイデンがもっと早く選挙戦から撤退しなかったことが大きな理由であり、現在トランプはアメリカの国内政策と外交政策の根本的な変革を試みているが、これは景気後退への正当な懸念を引き起こし、アメリカが世界をリードする科学技術力と学術力を破壊する恐れがあり、支持率が過去80年間でどのアメリカ大統領よりも急速に低下する原因となっている。時代遅れと言われるかもしれないが、私にはラシュモア山に刻まれるような人物には見えない。

しかし、トランプをまだ見限ってはいけない。政治家になる前も後も、彼のキャリアは、事実がそうでない場合でも、あたかも成功しているかのような錯覚を作り出す驚くべき能力に基づいていたからだ。トランプは莫大な財産を相続してビジネスキャリアをスタートさせたが、その後、度重なる破産や事業の失敗、そして数々の詐欺行為に見舞われた。こうした平凡な実績にもかかわらず、執拗な自己宣伝(relentless self-promotion)、巧妙かつ恥知らずな嘘(adroit and shameless lying)、そしてリアリティ番組スターとしての幸運な仕事(a fortuitous gig as a reality TV star)が相まって、何百万人もの人々が彼をビジネスの天才(a business genius)であり、交渉の達人(a master dealmaker.)だと信じ込むようになった。

大統領としてのトランプの最大の功績は、アメリカの民主政治体制秩序を形作ってきた多くの規範を打ち破り、多くの常識に挑戦したことだ。支持者たちにとっては、それはトランプの天才性(his genius)であり、批判者にとっては、それは彼の危険さの理由(why he’s so dangerous)だ。残念ながら、彼は効果的な改革を実行するために必要な細部を把握する能力も意欲も欠けており、経験豊富で強硬な外国の敵対勢力を出し抜く交渉力も持ち合わせていない。しかし、現実がどうであれ、自分が素晴らしいことを成し遂げていると人々に信じ込ませる能力がある限り、こうした欠点は問題にならないかもしれない(But these failings may not matter, given his ability to convince people that he’s doing great things no matter what the reality may be)。

しかし、大統領が歴史に名を残そうと努力することに、何か問題があるのだろうか? 大統領には野心を持って欲しいものであり、単に現状を維持したり、細かい手直しをするだけで満足したりしてはいけないのではないだろうか? 答えは「イエス」だ。ただし、(1)国益(単に自身や最大の支援者を豊かにすることではなく)に資する、よく練られた構想を持っていること、そして、(2)それらの計画を効果的に実行する方法を知っていることが条件となる。野心(ambition)は、公共の利益を促進し、精力的かつ効果的に追求されるのであれば歓迎されるが、たまたまホワイトハウスに居座っている個人を称賛することだけが目的である場合は別だ。

 

 

 

 

 

 

 

指導者たちが公共の利益への真摯な貢献ではなく、個人的な栄光への欲求に突き動かされている場合、彼らはほとんど利益をもたらさない無意味な「実績(achievements)」(例えば、メキシコ湾の名称変更)を追求し、何百万人もの人々を助けるようなより困難な問題(インフラ整備や経済格差の是正など)を無視する可能性が高くなる。彼らは大きなリスクを冒し、極端な措置を正当化するために架空の緊急事態をでっち上げ、一般市民が最終的に負担することになる、壮大だが杜撰な計画を推し進める傾向がある。そして、見かけだけが全てだとすれば、野心的な指導者たちは、実際に統治するよりも、個人崇拝を築き上げ、批判を抑圧することに多くの時間を費やすだろう(And if appearances are all that matter, an ambitious leader will spend more time building up cults of personality and suppressing criticism than on actually governing)。以前にも聞いたことがあるような話ではないか?

トランプが繰り返し表明してきたグリーンランド併合の願望は、こうした傾向を如実に示している。グリーンランドを併合する説得力のある安全保障上の理由は存在しない。なぜなら、アメリカは既にグリーンランドの正当な主権者であるデンマークと条約を結んでおり、状況に応じてアメリカ軍の駐留を増強することを認めているからだ。また、グリーンランドの鉱物資源開発は商業的に採算が取れるとは限らず、アメリカ企業は望むなら自由にこれらの機会を追求できるため、グリーンランドを併合する説得力のある経済的理由もない。さらに厄介なことに、グリーンランドの住民はアメリカの一部になることを望んでいない。

グリーンランドを併合すれば、比較的穏健な大国としてのアメリカのイメージは損なわれ、かつて世界で最も親米的な国の1つであったデンマークとの関係も悪化し、領土拡大に反対する長年の規範もさらに揺らぐことになるだろう。簡潔に述べれば、愚かな考えだ。しかしトランプの考えでは、グリーンランドを奪取すること(あるいはカナダを51番目の州にすること)は、アメリカをより大きく、ひいては「より偉大(greater)」にすることになる。どんな結果や副次的被害があろうとも、そのような劇的な「医業」(a dramatic “achievement”)を成し遂げれば、歴史に名を刻むことができると確信している。

実際、歴史は、個人的な栄光に固執する指導者たちは、往々にして自国に甚大な損害を与えると警告を発している。ナポレオン・ボナパルトは疑問の余地なく傑物であり、世界史に名を残す偉人であったが、個人的な栄光への執着は、数百万人のヨーロッパ人(おそらく100万人のフランス国民を含む)の命を奪い、最終的にはセントヘレナ島で孤独な死を遂げた。アドルフ・ヒトラーは「千年帝国」(a “1,000-year Reich”)の建設を夢見た誇大妄想狂(a megalomaniac)だったが、彼の最大の「実績(achievement)」は数千万人のヨーロッパ人の死と、40年以上にも及ぶドイツの分裂だった。イランのシャー、フィデル・カストロ、ウゴ・チャベス、サダム・フセイン、毛沢東、ガマル・アブデル・ナセル、ヨシフ・スターリンなど、自らの歴史的使命を確信した野心的な指導者たちは、確かにいくつかの偉業を成し遂げたかもしれないが、最終的にはいずれも自国に利益よりも害をもたらした。

アメリカ建国の父たちは、過剰な個人的野心がもたらす害を理解していた。だからこそ彼らは君主制を否定し、憲法を制定し、アメリカ合衆国は法治国家(a nation ruled by laws)であるべきだと主張し、「野心は野心によって抑制されなければならない([a]mbition must be made to counteract ambition)」という統治体制を構築したのだ。ジェイムズ・マディソンが『フェデラリスト・ペーパーズ』第51篇の中で、「共和制政府においては、立法権が必然的に優位に立つ(republican government, the legislative authority necessarily predominates)」と述べたことは、大統領が権力を持ちすぎたり、国の利益よりも自身の名声や称賛を求めることに熱心になったりする場合に生じる危険性をマディソンが鋭く認識していたことを示している。

真実がますます希少資源となり、謙虚さが時代遅れとなり、露骨な自己宣伝が常態化している現代社会において、トランプはMAGA支持者たちに自分が真に偉大な大統領だと信じ込ませることに成功するかもしれない。しかし、最終的に彼の歴史的な評価は結果(results)によって決まるだろう。これまでの実績に基づけば、彼は非常に重要な大統領として評価される可能性が高い。なぜなら、彼が規範を打ち破り、その他の過激な行動を取ってきたことで、退任する頃には計り知れない影響を与えているはずだからだ。

しかし、アメリカ国民が、自国がより弱くなり、より病み、より貧しくなり、より知性が低下し、より借金が膨らみ、より尊敬されなくなり、より分断が深まり、ひいてはもはや真の民主主政治体制国家でさえなくなっても、それでもなお幸せだと決断しない限り、真の偉大さという栄光は、彼の手に永遠に届かないだろう。

※スティーヴン・M・ウォルト:『フォーリン・ポリシー』誌コラムニスト。ハーヴァード大学ロバート・アンド・レニー・ベルファー記念国際関係論教授。Blueskyアカウント:@stephenwalt.bsky.socialXアカウント:@stephenwalt
(貼り付け終わり)
(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

 古村治彦です。

 ピート・ヘグセス国防長官が陸軍人事に介入し、アメリカ陸軍制服組トップのランディ・ジョージ陸軍参謀総長を更迭した。へぐセス国防長官はこれ以外にも、陸軍の文民(civilian)トップダン・ドリスコル陸軍長官と何度か衝突を繰り返している。そうした中で、ドリスコルと親しいジョージが辞任と現役からの退役を求められたという報道がデイル。ドナルド・トランプ大統領とホワイトハウスは現状について静観する構えを見せている。

 ダン・ドリスコルについては拙著『シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体』(ビジネス社、2025年11月)で詳しく紹介した。ドリスコルは、JD・ヴァンス副大統領とはイェール大学法科大学院以来の友人であり、お互いに軍務経験を持ち、地方の州立大学出身という共通点を持つ。ヴァンスが連邦上院議員当選後は、ドリスコルが補佐官を務めた間柄でもある。ヴァンスと親しいということは、当然のことながら、ピーター・ティールとも親しいということになる。

ドリスコルは、陸軍長官就任に際しての、連邦議会での公聴会で、「これまでの軍産複合体を構成する巨大企業(primeと呼ばれる)の1つを倒産させることが私の責務だ」という過激な発言を行ったが、将兵の数でいえばアメリカ5軍(陸軍、海軍、空軍、海兵隊、沿岸警備隊)でも最大規模であり、武器や装備に関しても大規模である陸軍のトップとして、これまでの軍産複合体に喧嘩を売った。これはつまり、ヴァンスを通じて関係の深い、ピーター・ティールやイーロン・マスクが形成しようとしている、新・軍産複合体を使うという宣言である。実際に、ドリスコルは、ドローンの積極活用を進め、トランプ大統領から賞賛の言葉をかけられている。

 このように見ていくと、アメリカ政府内の小さな事件が大きな構造の中での動きを示していることが分かる。ドリスコルは、トランプの後継者となるヴァンスの側近として、これからさらに重要な役割を果たすようになっていくだろう。

(貼り付けはじめ)

ピート・ヘグセス国防長官と対立したダン・ドリスコル陸軍長官が「辞任や退任」の計画はないと述べる(Army secretary who clashed with Hegseth says he has no plans to ‘depart or resign’

フィリップ・ティモティジャ筆

2026年4月8日

『ザ・ヒル』誌

https://thehill.com/policy/defense/5821970-driscoll-army-secretary-future/

ダン・ドリスコル陸軍長官は、昨年からピート・ヘグセス国防長官との間で度々緊張関係が続いているものの、陸軍長官を辞任するつもりはないと述べた。

ドリスコル長官は、『ザ・ヒル』誌への声明の中で、「ドナルド・トランプ大統領の下で働くことは生涯最高の栄誉であり、私はアメリカに世界最強の地上戦闘部隊を提供することに引き続き全力を注いでいる。陸軍長官を辞任するつもりはない」と述べた。

ドリスコル長官の発言は、2025年2月から務めているドリスコルの陸軍長官としての将来について、ホワイトハウス関係者の間で議論が交わされていたと報じられている中でなされた。これは、ヘグセス国防長官が、ドリスコル長官と親しいヴェテラン軍人であるランディ・ジョージ陸軍参謀総長を解任した後のことだ。

ドリスコルはイラクに派遣された経験を持つ元陸軍将校であり、ヴァンス副大統領の親しい友人である。

ドリスコルの立場について問われたホワイトハウスは、ヘグセス、ドリスコル両政治任用者を称賛した。

ホワイトハウス報道官のアンナ・ケリーは水曜日、『ザ・ヒル』誌に対する声明の中で、「トランプ大統領は、ヘグセス長官やドリスコル長官のような指導者の尽力により、アメリカ軍全体の即応性と戦闘能力の向上に効果的に注力する姿勢を取り戻した」と述べた。

ケリー報道官は「壮大な怒り作戦(Operation Epic Fury)』を通じて、アメリカ陸軍と国防総省全体の並外れた能力が存分に発揮され、全ての軍事目標が達成され、イランの軍事力は低下した」と、ペンタゴンを指す政権の常用名称を用いて述べた。

ドリスコル長官の発言は、『ワシントン・ポスト』紙が最初に報じた。

ヘグセスとドリスコルは、軍将校の昇進問題を含め、複数の面で対立してきた。国防長官はまた、テネシー州にあるキッド・ロックの邸宅付近で軍用ヘリコプター2機を操縦した陸軍の乗組員に対する停職処分を解除し、軍による当該隊員への調査を中止させた。

トランプ大統領は、過去にアメリカのドローン能力強化におけるドリスコルの功績を称賛していたが、イランとの戦争の最中、ヘグセスにも賛辞を送った。

トランプ大統領は月曜日、国防長官について「私が言えるのは、彼は非常に不当な扱いを受けたということだ。そして今、彼を不当に扱い、彼に反対していた同じ人々が私に電話をかけてきて、彼がいかに素晴らしい人選だったかを語っている」と語った。

トランプ大統領は「彼に反対していた人たち―連邦上院議員や私の友人たち―が、『大統領、あなたは正しいことをしていると考えませんでした』と言って私に電話をかけてくるなんて、なんて人選だったことだろう」とホワイトハウスで記者団に語った。

(貼り付け終わり)

(終わり)

sillionvalleykarasekaishihaiwoneraugunsanfukugoutainoshoutai001
シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体 
trumpnodengekisakusencover001
『トランプの電撃作戦』
sekaihakenkokukoutaigekinoshinsouseishiki001
世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む

bidenwoayatsurumonotachigaamericateikokuwohoukaisaseru001

バイデンを操る者たちがアメリカ帝国を崩壊させる

akumanocybersensouwobidenseikengahajimeru001

 悪魔のサイバー戦争をバイデン政権が始める

このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

このページのトップヘ