古村治彦です。
アメリカ連邦下院で、イラン戦争終結を進める決議案が可決された。法的拘束力を持たせるためには連邦上院での可決が必要で、更にドナルド・トランプ大統領が拒否権を行使するということが考えられるため、実際にアメリカ連邦議会がイラン戦争を終結させるということはできない。これは象徴的な動きではあるが、アメリカ国内のイラン戦争反対の声を代表している動きでもある。
トランプ大統領の支持率、そして、イラン戦争に対する支持率はともに低下し、40%台ギリギリ、もしくは割り込む状態になっている。支持率の平均を見ると、何とか40パーセント台に乗っているが、いつ30%台に下がるか分からない。それでも、朝鮮戦争時にハリー・トルーマン、スキャンダルが発覚したリチャード・ニクソン、イラク戦争が長期化し人気が低迷したジョージ・W・ブッシュ(バカ息子)時代には20%台を記録したこともあり、トランプ大統領はまだ高いと言えるが、歴代最低に近い方に位置し、厳しいことに違いはない。

ドナルド・トランプ大統領の支持率
イラン戦争に対する支持率も時間の経過とともに低下している。開戦当初は不支持率が高いとは言いながら、まだ拮抗していた。それが時間の経過とともに差が大きくなっていった。トランプ大統領は開戦直後に数週間で終わると豪語していたが、その数週間後で戦争は終わっていないことから、不支持率は上昇のペースを速めた。ガソリンや食料の価格上昇の第一の原因がイラン戦争ということで、アメリカ国民の過半数は戦争を支持していない。また、トランプは海外での戦争を行わないということを公約していたために、「裏切られた」という反感も大きいだろう。大統領の支持率と不支持率、戦争への支持率と不支持率はどちらも差が大きくなり、グラフで見ると、よく言われる「ワ二の口」状態になっている。

イランに対する軍事行動の支持率
連邦議会では共和党が上下両院で過半数を握っている状態であり、彼らはトランプを支持することで選挙に勝とうという計算を持っている。しかし、トランプの任期がここまで下がれば、トランプの岩盤支持層がいるレッドステイト(共和党優勢州)以外の議員たちにとっては、トランプを支持し続けることは危険でもある。今年11月の中間選挙の予想は今のところ、民主党が有利となっている。
連邦下院共和党指導部は引き締めを図り、トランプ大統領の戦争権限を縛ることはイランを利することになるという論法を用いて、決議案の否決を目論んだがうまくいかなかった。連邦上院では決議案が可決する可能性は低いが、こうした動きが出て、採決にまで至り、実際に議案が可決されるというのはあまりないことで、イラン戦争に対するアメリカ全体の「嫌気」「拒否感」が大きいことが示されている。トランプ大統領にとっては国内からも停戦、和平に向けた圧力を受けていることになる。イラン攻撃失敗はトランプにとっては致命傷となる大失策であったということは間違いないところだ。
(貼り付けはじめ)
連邦下院はイラン戦争終結決議案を可決しドナルド・トランプ大統領に異議を唱える(House
passes resolution to end Iran War, challenging Trump)
マイク・リリス筆
2026年6月3日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/house/5908560-iran-war-resolution-house/
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アメリカ連邦下院は水曜日、ドナルド・トランプ大統領にイラン戦争の終結を強制する議案を可決した。これは、連邦議会の明確な承認なしには戦争は違法であると主張する民主党と憲法原理主義者(constitutional purists)にとっての勝利となった。
賛成215票、反対208票で議案は可決された。共和党議員4名、トーマス・マッシー議員(ケンタッキー州)、ブライアン・フィッツパトリック議員(ペンシルベニア州)、トム・バレット議員(ミシガン州)、ウォーレン・デビッドソン議員(オハイオ州)が、民主党議員全員とともに賛成票を投じた。
この法案は同時決議(a concurrent resolution)と呼ばれるもので、法的効力(the force of law)を持つかどうかについては依然として議論が続いているため、今回の可決は象徴的な意味合いが強い。また、たとえ連邦上院でも可決されたとしても、トランプ大統領は議案の正当性(the authority of the measure)を争うだろう。
それでも、今回の採決はイラン戦争をめぐる政治闘争において重要な進展であり、3カ月以上も続き、世界経済を揺るがし、終結の見通しが立たないこの戦争を連邦議会が公式に非難したことを意味する。
ジャレッド・ハフマン連邦下院議員(カリフォルニア州選出、民主党)は次のように語っている。「これは非常に力強い結果となった。連邦上下両院がこれを違法な戦争(an illegal war)と宣言する段階に近づいている。これは非常に大きなことだ」。
ハフマン議員は「彼(トランプ)のやっていることはますます容認できないものになっている」とも述べた。
今回の投票は、中間選挙が近づくにつれ、共和党連邦議員の間でトランプ大統領に主要な問題で反抗する姿勢が強まっていることも浮き彫りにした。すでに多くの共和党議員は、ホワイトハウスの舞踏場周辺の警備に10億ドルを投じるというトランプ大統領の要求に反発している。また、トランプ大統領が提案した18億ドルの「兵器化」基金(“weaponization” fund)に対する共和党の反対の波を受け、トランプ政権当局は今週、この計画を完全に撤回したと発表した。
戦争権限に関する議論も同様の様相を呈している。
連邦上下両院の戦争反対派は過去3カ月間、戦争終結決議案の可決を何度も試みたが、トランプ大統領派の共和党支持者によって阻止されてきた。しかし先月、状況は一変した。連邦上院は独自の戦争権限決議案を上程した。これは、トランプ大統領がルイジアナ州共和党予備選でビル・キャシディ連邦上院議員(ルイジアナ州選出、共和党)を破ることを支援したわずか数日後、キャシディ議員が賛成票に転じたことがきっかけとなった。連邦上院での最終採決がいつ行われるかは不明だ。
連邦下院では、水曜日の採決は戦争反対派が終結を目指した4度目の試みとなった。最初の3回の戦争権限決議案は共和党の一部の支持を得たものの、多数派を占める連邦下院でトランプ大統領の支持者の反対を覆すには至らなかった。マイク・ジョンソン連邦下院議長(ルイジアナ州選出、共和党)の背後では、ほとんどの共和党議員が、この紛争は戦争のレヴェルには達しておらず、したがって連邦議会の承認は必要ないと主張している。
共和党指導部は、紛争の最中にトランプ大統領の手足を縛ることは、アメリカの安全保障を犠牲にしてテヘランのイスラム政権を強化することになると警告している。
しかし、紛争が国内でますます不人気になるにつれ、共和党の防衛線は崩れつつある。この変化は、圧倒的に戦争を支持する共和党支持層の中では起きていない。しかし、無党派層は戦争が長引くにつれて紛争に幻滅しており、2026年11月の中間選挙で議席維持を目指す共和党連邦議員にとって、これは警告信号(a warning sign)となっている。
こうした世論の変化の大きな要因は経済的なものだ。戦争は直接的に世界的な貿易混乱を引き起こし、ガソリンや一部の食料品といった国内生活必需品の価格高騰を招き、あらゆる層の有権者に影響を与えている。(ガソリン価格は先週若干下落したものの、全米自動車協会によると、水曜日の1ガロンあたりの平均価格は4.26ドルで、1年前の3.14ドルから上昇している。)
こうした物価上昇は、連邦議会の民主党議員たちも見過ごしておらず、選挙運動中にトランプ大統領が掲げた2つの主要公約、すなわち海外紛争回避(to avoid conflicts overseas)と労働者階級の生活費削減(to
cut costs for working-class people)を放棄したとして、あらゆる機会にこの問題を取り上げ、トランプを攻撃してきた。
「ドナルド・トランプの無謀で費用のかかる選択戦争(war of choice)は、特にガソリン価格の上昇によって、一般市民に数百ドル、場合によっては数千ドルもの負担を強いている」と連邦下院少数党(民主党)院内総務ハキーム・ジェフリーズ連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は火曜日、連邦議事堂で記者団に語った。「この戦争、この無謀で費用のかかる選択戦争は、今日にも終わらせなければならない」。
共和党議員の中には、戦争終結を支持する決定の大きな要因として、戦争権限法そのものを挙げている者もいる。1973年のこの法律は、大統領に国防の名の下に、連邦議会の承認なしに軍事作戦を開始する権限を与えている。その期間は60日間で、さらに30日間延長できる。この期間は5月初旬に終了し、共和党議員の一部はトランプ大統領に対し、テヘランに対する軍事力行使の継続を連邦議会で承認するよう要求した。
連邦下院外交委員会の民主党筆頭委員であるグレッグ・ミークス連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)が提出したこの決議案は、戦争権限法に大きく依拠している。戦争権限法を引用し、トランプ大統領に対し、「宣戦布告またはイランに対する軍事力行使に関する連邦議会の明確な承認がない限り」、テヘランとの「敵対行為(hostilities)」から全てのアメリカ軍を撤退させるよう指示している。
この決議案は「同時執行(concurrent)」とされており、連邦上下両院の承認は必要だが、大統領の署名や拒否権行使のためにホワイトハウスに送られる必要はない。これは、連邦上院の戦争権限法案(「共同」決議[a “joint” resolution])とは対照的だ。この議案はトランプ大統領の署名を経て成立し、署名されれば法律としての効力を持つ。トランプ大統領は、もし議案が成立に至ったとしても拒否権を行使すると予想されている。
ホワイトハウスは、ミークス決議案を法的根拠に基づいて却下し、行政権限に対する「違憲な立法拒否権(unconstitutional legislative veto)」であると主張した。政権はまた、トランプ大統領が4月初旬に停戦を呼びかけたことで紛争は終結したとして、実務的な観点からもこの決議案に異議を唱えている。
ホワイトハウスは先月、ミークス法案に反対する公式文書(行政政策声明)の中で、「現在、アメリカ軍を撤退させるべき敵対行為は存在しない」と記した。「2026年2月28日に始まった敵対行為は、2026年4月7日に大統領が命じた停戦によって終結した」としている。
水曜日に行われた別の採決では、連邦下院はトランプ政権が反対する別の法案、すなわちロシアとの戦争が続くウクライナへの支援法案も可決した。その法案は、いわゆる「委員会審査省略動議(a discharge petition)」と呼ばれる、あまり知られていない手続き上の策略によって本会議に提出された。提出請願は、連邦議会を支配する共和党指導部が反対する法案を採決に付すために218人の署名を必要とする。
先月、カリフォルニア州選出の共和党員で現在は無所属のケヴィン・カイリー連邦下院議員が218人目の署名を提供し、連邦下院共和党議員団を二分するこの問題について、今週後半に採決が行われることになった。
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アメリカ連邦下院がトランプへの批判としてイラン戦争停止決議案を可決(US House
votes to halt Iran war, in rebuke to Trump)
2026年6月3日
クワシ・ギャムヒ・アシエドゥ(ワシントンDC発)筆
BBC
https://www.bbc.com/news/articles/cj6pldg39deo
アメリカ連邦下院は、ドナルド・トランプ大統領によるイランへの軍事行動の継続を阻止する議案を可決した。
賛成215票、反対208票で可決されたこの議案は、2月に始まったイラン戦争への反対を公然と表明した共和党議員4名が民主党議員側に加わったことで成立した。これは、連邦議会の承認を得ていないと批判されているトランプ大統領の戦争権限(war powers)を抑制しようとする連邦下院の4度目の試みとなる。
この連邦下院決議(the House resolution)は、共和党が多数を占める連邦上院の承認を得る必要がある。たとえ連邦上院で可決されたとしても、イランに対する軍事行動を完全に抑制できる可能性は低い。
トランプ大統領は議案に拒否権(veto)を行使できる。大統領の拒否権を無効化するには、連邦上下両院で3分の2以上の賛成が必要となる。
連邦上院は、過去7回の否決を経て、5月に同様の決議案を上程したが、本会議での採決には至っていない。
連邦下院では、共和党のトーマス・マッシー、ブライアン・フィッツパトリック、トム・バレット、ウォーレン・デビッドソンの各議員が、民主党議員側と連携し、水曜日の決議案を可決した。以前は同様の法案に反対票を投じていたメイン州選出の民主党所属の議員ジャレッド・ゴールデンは、今回は賛成票を投じた。
ミシガン州選出の共和党所属の連邦下院議員であるトム・バレットは、「連邦議会のみが宣戦布告を行い(declare war)、私たちはそれを厳重に守らなければならない」と述べた。トランプ大統領からの報復(retribution)を懸念しているかと問われると、バレット議員は「私は良心に従って正しいと思うことに投票し、その結果を受け入れる覚悟がある」と答えた。
水曜日のこの採決は、トランプ大統領が率いる共和党内の分裂を示す最新の兆候となった。数日前には、連邦議会の保守派議員の反発を受け、トランプ政権は政治的同盟者たちへの18億ドル規模の「反兵器化」基金("anti-weaponization" fund)の計画を撤回せざるを得なかった。
連邦下院外交委員会の民主党筆頭委員であるグレゴリー・ミークス議員は、今回の採決を「トランプ大統領によるイランでの違法かつ多大な犠牲を伴う戦争に対する、超党派による重要な非難であり、戦争を終結させるための第一歩だ(a significant bipartisan rebuke of President Trump's illegal and
costly war in Iran and the first step toward ending it once and for all)」と評した。
ミークス議員は、トランプ大統領は戦争の目的を達成できなかっただけでなく、国内の燃料価格を高騰させ、イランの核開発問題に対する外交的解決をさらに困難にしたと述べた。
「本日、この決議案が可決されたことは、重要な転換点(a significant
turning point)を示している。それは、中東で終わりなき戦争を望まない有権者の声に耳を傾ける共和党議員が増えているということだ」と決議案の共同提案者であるミークス議員は述べた。
アメリカとイスラエルは2月28日にイランへの攻撃を開始した。イランはこれに対し、イスラエルと湾岸のアメリカの同盟諸国を攻撃し、世界の海上輸送にとって重要な航路であるホルムズ海峡を事実上封鎖した。
4月、アメリカはイラン沿岸を行き来する船舶に対する海上封鎖を実施すると発表した。
アメリカとイランは4月8日に暫定的な停戦合意(an initial ceasefire
agreement)に達した。
しかし、この合意にもかかわらず、アメリカはここ数日イランを攻撃し、イランはアメリカの同盟国であるクウェートへの攻撃で報復した。トランプ大統領は採決を前に、戦争終結に向けた交渉は「非常に順調(going very well)」に進んでおり、早ければ今週末にも合意に至る可能性があると改めて主張した。
「私たちはこれまで、そして昨夜もイランをかなり強く攻撃した」とトランプ大統領は水曜日にホワイトハウスで記者団に対し、イランへの攻撃について言及した。「私たちが別の理由で強い行動をとったため、イランはやや挑発されたと言い、報復したのだろう」。
トランプ大統領はさらに、政権幹部のほとんどが「人々を殺害することなく」合意によって紛争を早期に終結させたいと考えていると付け加えた。
「理論的には、彼らは合意文書に署名する寸前だ。実際、私たちは彼らと非常に良好な関係を築いている」
(貼り付け終わり)
(終わり)

シリコンヴァレーから世界支配を狙う新・軍産複合体の正体

『トランプの電撃作戦』

『世界覇権国 交代劇の真相 インテリジェンス、宗教、政治学で読む』



