古村治彦です。
今回は都知事選挙について、私がここ数日考えたことを書きたいと思います。
2014年2月9日に投票が行われる東京都知事選挙は主要な候補者たちの立候補表明が終わり、いよいよ本格化してきました。細川護煕元首相が立候補を表明して、舛添要一元厚労相がかなり有利だと思われていた都知事選挙の構図が少し変化するかなという印象があります。宇都宮健児元日弁連会長・弁護士や田母神俊雄元空将・軍事評論家も活発な動きを見せています。
こうした中で、自民党と公明党が舛添要一氏の支援に本腰を入れるということになりました。最初は都連レベルでの支援を行い、党本部は直接関わらない(実質はそういう訳にはいかないと思いますが)ということになっていたようですが、党本部が動くということになりました。こういうことを書くと大変失礼ですが、宇都宮氏や田母神氏の出馬を受けても、「自公の組織票に舛添氏の個人の力があればそこまで本気にならなくても勝てるさ」という感じで動く気配を見せなかった自公が細川氏をターゲットにして動き始めてきました。
細川氏に出馬に対しては、全陣営が早速批判と非難を向けています。そして、宇都宮氏や田母神氏の支持者の皆さんの中にいる、細川氏にかなりの拒否反応を示す人たちがインターネット上で広範なテーマを取り上げて批判を展開しています。私はこうした動きは、結局のところ、主敵であるはずの舛添氏の当選に利するだけの行為であると私は考えます。マルクスは『資本論』の中で、「地獄への道は善き意図をもって舗装されている」という言葉を使っています。この言葉の意味については複数の解釈があるようなのですが、「良いと思ってやった行いが思いもよらず、全く意図しなかった悪い結果をもたらす」という意味で使われます。細川氏に対しての批判には正論があり、その通りだということがありますが、細川氏に対する批判を行ったからと言って、圧倒的に有利な舛添氏に打撃を与えられるかというとそれは難しい、ほぼ不可能ではないかと私は思います。
こういうことを書いて気分を害される方もおられると思いますが、近親憎悪や内ゲバという言葉があります。戦後の左翼陣営の歴史を見てみると、自分たちの主目的の達成よりも、自分たちと元々は仲間であったが分裂したグループに対する攻撃に終始する、そして弱体化していくということがありました。また、急進的な主張(それはそれで素晴らしい内容のものではありましたが)をするあまりにかえって広範な人々の支持を得られなかったということがありました。今回もまた同じような失敗をして、主敵を利することになるのだろうと、私はここ最近悲観的になっています。
ここで良く考えねばならないのは、自民党員、自民党から選挙に出ること(東京地区の地方自治体や国会議員の選挙)を考えていながら、元空将・軍事評論家の田母神俊雄氏を支援しようとしている皆さんです。自民党は最初、都連レベルで舛添要一氏を支援することにしていました。しかし、公明党が舛添氏の支援を決めたこともあり、また細川氏の出馬で危機感を覚えたのか、安倍晋三首相・自民党総裁が公明党の山口那津男代表と会見し、舛添要一氏の支援で一致しました。そして自民党は党本部を上げての支援ということになりました。
自民党が田母神氏を支援する可能性はなくなりました。複数の当選者が出るなら支援ができるかもしれませんが、都知事は一人しかなれません。そうなると、自民党員、もしくは自民党から選挙に出たいと考えている人が田母神氏を支援することは自民党総裁、もしくは自民党本部の意向に反することになります。自民党の歴史を見てみると、総裁や党本部に反抗しても許されてきたということもありますから大丈夫だとは思いますが、自民党東京都連や公明党のことを考えると、そういう人たちは今後選挙の際にそこまでの支援が受けられるのか、そして東京から選挙に出ようとしてどうだろうか、ということになります。
やはり今の自民党には公明党の組織票が必要なのでしょう。そして、田母神氏に共鳴してしまうような人たちは少し邪魔な存在なのかもしれません。しかし、そうした人たちをJ-NSCなどを通じて自民党支持者として陶冶してきたのは、自民党自身なのです。自民党にしてみれば、おとなしく、強い主張をすることなく、淡々といつもいつも自民党に無条件に投票してくれる人が重要であって、自分たちを強烈に支持してくれるが、時に大変批判的になり、党総裁や党本部の意向に反抗するような人はいらないということになります。
私は偉大な政治学者であった故チャルマーズ・ジョンソン(Chalmers Johnson)が提唱した「ブローバック(Blowback)」という言葉を思い出します。これは2001年9月11日の同時多発テロの1年前に出された本の題名でもありますが、アメリカが対ソ連用に育てたアルカイーダが、結局アメリカに攻撃を加えることになったということをいみじくも言い当てたものでした。
この都知事選が一つのポイントとなって、自民党が少し変化していくのではないかと思います。都知事選自体は、自民党と公明党の組織力やネットワーク力がフル回転ということになり、舛添要一氏が有利になったと思われます。反自公で統一戦線(United Front)、統一候補ができると面白い勝負になると私は考えていましたが、それも潰えました。安倍晋三首相に対する現実的な力を持つストッパーは国内勢力には存在しなくなるということになります。それでも、野党側からすれば、自民党と同じくここが一つのポイントとなって、野党再編や野党再建の動きが活発化することになると私は考えます。
ここ数日、私が考えたことを取り留めもなく書きました。乱文で申し訳ありません。最後まで読んでいただいてありがとうございます。
※2014年1月17日午後6時5分。加筆します。細川氏擁立には自民党内部にくさびを打ち込むということではないかという考えが浮かびました。それは、ある自民党員の方が細川氏に投票するという発言をSNSで行っていたのを見たからです。私は自民党内部が一枚岩であるという前提で考えてきました。しかし、もともと自民党は寄り合い所帯のように、様々な考えの人たちがいた(いる)政党です。穏健派の人たちは目立たないが、確かにいます。
谷垣禎一法相も穏健派というか、保守本流の宏池会の出身です。谷垣氏は自分が総裁の時に党を出た舛添氏に対して「個人的な思いはある」という発言をしています。これは「だけど党の決定に従う」と続くものですが、それなら「党の決定に従うこと」だけを述べればよいのです。ところがそうではないのはよほどの思いがあるし、もっと大きく言えば、安倍晋三首相に対しても含むところがあるのではないかと推測されます。
こうして考えると、自公が本部として引き締めにかかっているのも、意外に党内にまとまりが欠けるところが見え始めているのではないかと私は考えています。そして、それが細川氏陣営が仕掛けた揺さぶり、打ち込んだくさびのせいなのだろうと考えます。そしてこのようなことを考えたのは、小沢一郎氏なのだろうとも考えています。
(新聞記事転載貼り付けはじめ)
●「主張に現実性ない…自民、党挙げ「対細川氏」」
2014年1月17日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20140117-OYT1T00171.htm?from=top
自民党が東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)を巡り、党本部が前面に出る形で舛添要一元厚生労働相を支援する姿勢を鮮明にしている。
小泉元首相が支援する細川元首相の主張が政府の方針と異なるため、国政が混乱しかねないとの判断から主戦論が一気に強まった。
自民党の河村建夫選挙対策委員長は16日、党本部で開かれた東京都連幹部らの会合で「党本部を挙げた態勢の中で、勝利を目指して頑張っていこう」と呼びかけた。会合では、党として舛添氏を全面支援することを決めた。同党は16日、石破幹事長名で党所属の全国会議員に舛添氏への支援を呼びかけるメールを送った。今後は閣僚クラスを応援弁士として投入するほか、都議や区議、支持団体への働きかけを強める方針だ。
自民党は当初、都連を主体とした舛添氏の支援態勢を想定していた。無党派層がかぎを握る都知事選は、党本部が出過ぎない方がいいとの判断もあった。しかし、「原発の即時ゼロ」を主張する小泉氏が、「脱原発」を争点に細川氏を支援する考えを示しているほか、細川氏自身がかつて2020年の東京五輪・パラリンピックの「返上論」を唱えていたことも判明。「細川氏の主張は現実性がない。都知事になれば、日本全体に悪影響が広がる」(幹部)との懸念が広がった。
(2014年1月17日10時49分 読売新聞)
●「舛添氏支援で自公党首が一致」
2014年1月16日 共同通信
http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2014011601001946/1.htm
安倍晋三首相と公明党の山口那津男代表は16日、官邸で会談し、東京都知事選(23日告示、2月9日投開票)に立候補を表明した舛添要一元厚生労働相(65)を支援する方針で一致した。同じく出馬予定の細川護熙元首相(76)の陣営では、小泉純一郎元首相に続き、民主党の野田佳彦前首相や、脱原発を主張する菅直人元首相がブログで細川氏を支援する考えを相次いで表明した。
脱原発や2020年東京五輪への準備、防災対策強化を争点とする首都のリーダー選びは告示まで1週間となり、各陣営は選挙準備を加速した。
安倍首相は会談で山口氏に「協力して取り組もう」と呼び掛け、賛同を得た。
(新聞記事転載貼り付け終わり)
(終わり)


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