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ジョージ作・ジェブの外交政策(Jeb’s Foreign Policy, by George

 

―ジェブは41代と43代の大統領に仕えた専門家たちを混合させることで、共和党の強固な支持基盤を形成している人々を宥めようとしている

 

マイケル・ハーシュ(Michael Hirsh)筆

2015年2月18日

『ポリティコ』誌

http://www.politico.com/magazine/story/2015/02/jeb-bush-foreign-policy-115295.html#.VO0tJPmsW3c

 

ジェブ・ブッシュは「自分らしく」やるだろう。彼は大統領選挙の有力候補者として初めての外交政策に関する演説を水曜日に行った。しかし、共和党内のインサイダー情報によると、元フロリダ州知事であるジェブは彼の外交政策ティームをブッシュ家と関わり深い人々から選び出したということである。タカ派の兄ジョージ・Wの下で働いた専門家たちに加えて、穏健派の父ジョージ・HWの下で働いた人たちを混ぜた名簿を発表した。その目的は、ジェブを信用していない、現在でもまだタカ派的な共和党の支持者たちに合わせるためである。

 

 ブッシュの外交政策ティームは、2人の共和党主流派の外交政策専門家が選び出されている。彼らはそれぞれジェブの父親と兄に仕えた人々である。彼らの名前は、リチャード・ハース(Richard Haass)とロバート・ゼーリック(Robert Zoellick)だ。彼らは、共和党内の大物であるジェイムズ・ベイカー(James Baker)をティームに加えた。ベイカーはジェラルド・フォード(Gerald Ford)、ロナルド・レーガン(Ronald Reagan)に仕え、ジョージ・HW・ブッシュ(George H.W. Bush)政権下では国務長官として辣腕をふるった。更には、イラク戦争を主導したポール・ウォルフォビッツ(Paul Wolfowitz)と当時のディック・チェイニー(Dick Chaney)副大統領の国家安全保障問題担当補佐官であったジョン・ハンナ(John Hannah)といったネオコンの人々もティームに参加させている。

 

今回の外交政策ティームには参加していないが、ジェブから非公式に相談を受けている、共和党の外交政策のヴェテランによると、ネオコンの人々がティームに加えられたのは、ジェブについてほとんど知らない共和党の支持基盤に対して彼の信頼性を高めるためだということであった。ジェブの移民と教育に関する穏健な考えに対して、共和党の支持者たちは既に疑念を持っているというのである。

 

 「ジェブは現在、大口寄付者のネットワークと外交政策専門家のネットワーク形成を行っている」と前述の専門家は述べている。ブッシュは様々な考えを持つ有権者たちを満足させるために、幅広い専門家の登用を望んでいるというのである。

 

 前述の専門家は更に次のように述べている。「彼は熱心な支持者たちを熱狂させる演説を行った。彼の演説は過去15年間で最高のものだった。彼は基本的に長い時間を大口の献金者たちと過ごしてきたが、これから違うだろう」。

 

 ジョージ・W・ブッシュ政権下で大統領国家安全保障問題担当補佐官と国務長官を務め、人気が高かったコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)が入れば、共和党の予備選で有権者を惹きつける効果があるだろう。コリン・パウエル元国務長官の名前は名簿に入っていない。パウエルの広報担当のペギー・シフリノは、「パウエルは顧問になるように依頼されていないし、新聞で得た情報以上のことは何も知らない」と述べている。ジョージ・W・ブッシュの一期目に国務長官を務めたパウエルは裏切り者とみなされていた。そして、2008年の大統領選挙でパウエルは二度にわたりバラク・オバマへの支持を表明した。ジェブの外交顧問団に名前が入っていない人物として、ブレント・スコウクロフトもいる。彼はジョージ・HW・ブッシュ政権で国家安全保障問題担当大統領補佐官を務め、ジョージ・HW(父)の親友である。

 

 パウエルの顧問を務めたリチャード・N・ハース(Richard N. Haas)は、パウエルと同じく、イラク戦争に関しては懐疑的であった。ハースは保守派の間では中間的な立場にいたが、保守派から懐疑の目を向けられてきたので、ジェブに対して非公式に助言を行っている。ハースはまた、超党派の非営利団体である外交評議会(CFR)の会長を務めているので、ジェブの外交顧問団に正式に参加することはできないとみられている。ハースの広報担当リサ・シールズは「リチャードは、民主、共和両党の政治家や政府高官や候補者たちの多くに助言を行っている」と述べている。

 

 ゼーリックは、レーガン、ジョージ・HW・ブッシュ(ベイカー国務長官の下で国務次官)、ジョージ・W・ブッシュ(国務副長官、米通商代表部代表、世界銀行総裁)にそれぞれ仕えた。ゼーリックは『ポリティコ』誌の取材にEメールで回答を寄せた。その中で彼は、「私は経済と外交政策の面でジェブを支援したいと考えている。そして、彼を手助けしたいと望んでいる人々をジェブの陣営に参加させたいとも考えている。私が重要だと考えているのは、ジェブ・ブッシュが広範な考えに接することが出来るプロセスを作ることだ。率直に言って、時代は41代、43代(そして42代)とは変わっており、多くの人々の考えを一定の枠に当てはめることは出来なくなっている」。

 

 実際、ジェブの外交政策ティームは幅広い人々によって構成されている。この名簿は水曜日にシカゴでジェブが演説を行う前に発表された。この顔ぶれを見ると、私たちは混乱してしまう。少なくとも候補者として自分の考えを明らかにするものにはなっていない。共和党の外交政策分野におけるヴェテランの1人は「彼は全ての人を満足させようとしている」と述べた。

 

 混乱に加えて、ジェブはかなり限られた時間しかシカゴでの演説に割けなかったと言われている。演説の内容は一般論に終始し、共和党お得意の強い国防力と同盟諸国との関係強化を訴えるだけで、オバマ大統領に対してもほどほどの批判しかできなかったという評価がなされている。

 

 公式的には、ジェブは父や兄のようになるかどうかについて言及することを拒絶しているが、彼は家族に対する忠誠心を使って家族間の相違を埋めようとしている。ジェブは2月に次のように語った。「私は父を愛している。私の父は現在生きている人間の中で最も偉大な人物だ。そして、私は兄を愛している。私は彼が偉大な大統領であったと思っている」。

 

 ジェブ・ブッシュは、ハーヴァード大学のミーガン・オサリヴァン(Meghan O’Sullivan)のような主流派に属する顧問に依存している。オサリヴァンは前述のハースの下でキャリアをスタートさせ、ジョージ・W・ブッシュ政権ではイラクにおける行政を担った。オサリヴァンは穏健な考えをする人で、ベイカーとスコウクロフトに代表される父ジョージ・HW・ブッシュの外交政策ティームの人脈に連なると考えられている。『ウォースストリート・ジャーナル』紙は最近、ジェブ・ブッシュがオサリヴァンを自身の外交政策顧問の首席に据えたいと考えているようだと報じた。

 

 しかし、ジェブは、現在の共和党の支持基盤となっている保守派の人々は父に対して懐疑的だということを知っている。公平であるかどうかは別にして、父ブッシュは彼が1991年に行った「チキン・キエフ」演説によって人々の記憶に残っていると言える。父ブッシュは、この演説の中で、ウクライナの人々に対して、性急にソ連から離脱することのないように、「自殺的なナショナリズム」に陥らないようにと警告を発した。また、ソ連を構成した国々全体に対しても同様の警告を行った。また、第一次湾岸戦争の後にサダム・フセインを権力の座から追い落とさなかった。ジェブは現在、オバマ大統領の優柔不断さと対外政策の弱腰を攻撃している。水曜日の演説でもそうであった。しかし、予備選の間、ジェブに対しても父親の優柔不断さと弱腰に関して批判が向けられるだろう。

 

しかしながら、奇妙なことに、共和党の予備選を勝ち抜いた場合、ジェブは父ブッシュの外交政策に近づくように舵を切らねばならなくなるだろう。父ブッシュの業績は歴史家たちの間で急速に評価を高めており、多くの世論調査の結果では彼の外交政策は多くの人々に評価されているのである。一方、兄ジョージ・W・ブッシュが2009年1月に大統領の座から退いた時、不支持率は68%であった。NBCニュースとウォールストリート・ジャーナル紙が昨年共同で行った世論調査の結果によると、66%の人々がイラク戦争を「やる価値がなかった」と考えているということであった。

 

 ジョージ・W・ブッシュ政権で高官を務めたエリック・エデルマンは次のように語っている。「私は、父ブッシュの評価が高く、兄ブッシュの評価が低いというのはジェブにとって難しい前提となるだろう。父と兄の違いを誇大に宣伝することは簡単だが、二人とも基本的には、共和党の保守的な国際主義に属している点で一緒なのだ。彼らの政策の間に相違はあっただろうか?相違点は確かに会った。しかし、対ロシア政策とジョージ・Wとプーティンとの関係について見てみれば、41代大統領であったジョージ・HWのゴルバチェフに対するアプローチとそこまでの相違はないと考える人も出てくるだろう。対中政策について言えば、大きな相違点があったとは思われない。41代大統領であったジョージ・HWもまたイラクでの戦争を実行したのだ」。

 

 ジェブは演説の中で、「自分にとって、父と兄が大統領執務室でアメリカの外交政策を形成したというのは幸運であった」と語った。

 

 しかし、保守派の論客の中には、この歴史は、ジェブが共和党の大統領選起居候補者になったら二重の負担となるだろうと考えている。

 

 保守的な内容のブログ「レッドステイト・ドットコム」を運営しているエリク・エリクソンは次のように予想している。「ジェブの外交政策と父と兄の行ったことが共和党の予備選挙で大きな争点になることはないだろう。候補者たちは、ランド・ポール以外は多少の違いはあっても、外交政策に関して大きな隔たりは存在しない。ジェブが予備選挙を勝ち抜くには国内政策の方が重要だ。選挙における彼の弱点は、彼がブッシュ家から3人目の大統領になるという点だろう」。

 

(終わり)