アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23



 古村治彦です。

 

 今回は、アメリカ連邦上院の共和党の危険な動きについての記事をご紹介します。

 

 トム・コットン(Tom Cotton、1977年―、37歳)連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)が音頭を取って、47名の共和党所属の連邦上院議員たちが署名した公開書簡が発表されました。この書簡は「イラン・イスラム共和国の指導者たち宛て」となっており、アメリカ合衆国憲法システムについて説明した内容です。

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 トム・コットン

 

 この書簡の中で議員たちは、「現在のオバマ大統領と結んだ合意は、次の大統領の時には無効とすることもできるし、議会はいつでもその内容を修正することができる」と書いています。そして、「アメリカの大統領は4年間の任期を2回までしか務められないが、連邦上院議員は6年間の任期を無制限に務めることができる。オバマ大統領は2017年1月に退任するが、私たちはこれから数十年間議員であり続けられる」と書いています。外国との合意を簡単に反故にする、と自分たちで宣言してしまうのは外交儀礼としておかしいですし、何より、「アメリカと合意してもそれが反故にされてしまう」となると、アメリカと真剣に外交交渉をする国など出てこないでしょう(日本以外、但し日本の場合は交渉ではなく命令伝達のみ)。

 

共和党の政治家たちの劣化は先日のベンヤミン・ネタニヤフ・イスラエル首相の議会演説でも露呈しましたが、今回もそのことが明らかにされました。「政治家のレヴェルは国民のレヴェルより上に行くことはない」と言われますから、アメリカ国民がアホになっているとも言えるのでしょう。

 

 なんと馬鹿げた話でしょう。彼らは「自分たちアメリカの方から合意を破る」と宣言しているのです。また、この書簡に書かれた程度のアメリカ政治の知識は、どこの国の(日本の一部を除く)政治学専攻の学生でも常識です。それを慇懃無礼に書いているのは、失礼極まりないことです。挑発と言って良いでしょう。彼らは中東にまた一つ戦争を起こしたいのでしょうか?

 

 この疑問に対する答えは残念ながら「イエス」です。

 

 この書簡の音頭を取ったトム・コットンは危険極まりないネオコンのヤングスターであり、残念ながら共和党内でも未来の大統領ではないかといわれるほどの人物です。彼はアーカンソー州の片田舎に生まれ、ハーヴァード大学に進学しました。政治学で学士号を取得し(成績優秀者)、カリフォルニア州にある保守的な学校であるクレアモント大学院大学に進学しましたが、中退し、ハーヴァード大学法科大学院に進学し、弁護士資格を取得しました。学生時代は大学新聞『ハーヴァード・クリムゾン』紙の編集者となり、コラムを担当しました。また、大学内の共和党の学生組織に入っていました。ハーヴァード大学はリベラルな校風ですから、そこで保守的な態度を取るのは、「勇気のいる行動」であったと彼の学友は語っています。

 
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米陸軍では陸軍大尉まで昇進
 

 2001年9月11日に起きた同時多発テロ事件に衝撃を受け、米陸軍に志願し、将校教育学校に入り、2005年から2009年まで米陸軍の将校としてアフガニスタンとイラクでの戦争に参加しました(父親もヴェトナム戦争に従軍した経験あり)。2006年に保守系のブログに投稿した文章が話題となり、ネオコンの大物ビル・クリストル(ネオコンの雑誌『ウィークリー・スタンダート』誌発行人)と知り合いました。その後、アーカンソー州に戻り、家業の肉牛の牧場で働いていました。そして、2013年に連邦下院議員に当選し、そして、2014年の中間選挙で連邦上院議員に当選しました。

 

 トム・コットンは「タカ派のホープ」として、これから大物政治家として成長していくでしょう。しかし、彼はとても危険な人物です。私は2016年の大統領選挙でヒラリーが当選した場合、彼女が8年間やれたとして、2024年の米大統領選挙の共和党候補として、このトム・コットンが出てくるのではないか、そして大統領になってしまうのではないかと思います。その時の世界情勢がどうなっているか分かりませんが、彼が出馬できないような状況になっていることを祈るのみです。


※副島隆彦先生の最新刊『日本に恐ろしい大きな戦争が迫り来る』(講談社)が2015年3月17日に発売されます。最新のアメリカ研究の成果、お楽しみに!


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共和党所属の連邦上院議員たちがイランに警告:合意は「ペンを少し動かせば」無効にできる(GOP senators warn Iran: Deal could be revoked with 'stroke of the pen'

 

デイヴィッド・マカビー筆

2015年3月9日

『ザ・ヒル』誌

http://thehill.com/policy/international/235026-gop-senators-send-warning-on-iran-deal

 

共和党所属の連邦上院議員47名が、イランとホワイトハウスに対しての公開書簡を出し、その中で、イランの核開発プログラムに関する合意はオバマ大統領が退任すれば覆される可能性があると示唆した。

 

このニュースを最初に報じたブルームバーグは、議員たちは書簡の中で「我が国の政府との間で行われている核開発をめぐる交渉を見ていて、貴国は我が国の憲法システムについて完全に理解しておられないのではないかと懸念を持った。従って、私たちは、貴国に対して我が国の憲法システムの2つの特徴をお知らせして、それらに注目して頂きたいと考えている」と書いている、と報じた。

 

 書簡には、「連邦議会(Congress)で承認されないものは何であっても単なる行政府による合意でしかない」と書かれている。

 

 この公開書簡を主導したのは、トム・コットン(Tom Cotton)連邦上院議員(アーカンソー州選出、共和党)で、連邦上院多数党(共和党)院内総務のミッチ・マコネル(Mitch McConnell)連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)も署名している。書簡には、2016年の大統領選挙への出馬が有力視されているマルコ・ルビオ(Marco Rubio)連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)、ランド・ポール(Rand Paul)連邦上院議員(ケンタッキー州選出、共和党)、テッド・クルーズ(Ted Cruz)連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)、リンゼー・グラハム(Lindsey Graham)連邦上院議員(サウスカロライナ州選出、共和党)も署名している。

 

 書簡の中で議員たちは、イランの核開発をめぐる合意(少なくとも10年間は維持される)は、オバマ大統領が2017年にホワイトハウスを離れれば、無効にされる可能性があると警告を発している。

 

 書簡には、「次期大統領は、ペンを少し動かすだけで、このような行政府による合意を無効にすることはできる。また、連邦議会はいつでも合意内容を修正することができる」と書かれている。

 

 この公開書簡はイランの人々に宛てて書かれているが、この書簡は多くの議員たちがイランとの核開発プログラムをめぐる最終合意に関して自分たちも影響を与えたいと望んでいることを示している。議員の多くは、ホワイトハウスが十分に厳しい内容の合意を結ばないのではないかと懸念を持ち、合意はイランの核兵器を所有能力の開発を遅らせるだけのことではないかと考えている。

 

昨年、ホワイトハウスはイランとの間の合意に議会の承認を必要としない方法を模索していると報じられた。

 

 連邦議会はこれからの数週間でイランに対する新たな経済制裁について審議を行う。連邦議会で新たな経済制裁が可決される前に合意が達成されるかどうかは不透明な状況だ。

 

(終わり)

 

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<公開書簡の翻訳>

 

2015年3月9日

 

イラン・イスラム共和国の指導者たちへの公開書簡

 

 

 我が国の政府とあなた方との間の交渉を見ていると、あなた方は我が国の憲法システムについて完全には理解されていないのではないかと私たちは考えるようになった。従って、私たちは我が国憲法の2つの特徴にあなた方の注意を喚起するためにこの書簡を書いている。それは、国際的な合意を結ぶ力と連邦レヴェルの各機関の様々に異なる特徴についてである。あなた方は交渉の過程でこのことを真剣に考慮されるべきだ。

 

 第一に、我が国の憲法では、大統領は国際的な合意について交渉し、連邦議会はその合意を承認する際に重要な役割を果たす。条約の場合は、連邦上院で3分の2以上の賛成で批准される。いわゆる連邦議会による承認には連邦下院と連邦上院の両方で過半数の賛成が必要である(手続き上の規定で、連邦上院では5分の3以上の賛成が必要となる)。連邦議会の承認しないものはいかなるものも行政府による合意でしかない。

 

 第二に、我が国の憲法に規定されている各機関はそれぞれ異なった特徴を持っている。例えば、大統領は4年間の任期を2回までしか務められないが、連邦上院議員は6年間の任期を無制限に務めることができる。現在の状況に当てはめれば、オバマ大統領は2017年1月に大統領証を退くが、私たちのほとんどは2017年1月以降も上院議員の職にとどまる。おそらく数十年間とどまることになるだろう。

 

 私たちは、この書簡によってあなた方の我が国の憲法システムに関する知識が豊かになること、そして相互理解と核開発をめぐる交渉過程の明確化を促進することを希望する。

 

(終わり)