アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12




野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23

 

 古村治彦です。

 

 今朝、私は以下の新聞記事を読みました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに関しては、新国立競技場建設を巡る政府と東京都、具体的には森喜朗元首相(文教族のドン)と下村博文文部科学大臣(東京を地盤とする文教族で安倍晋三首相の側近)対舛添要一東京都知事の「500億円」を出すか出さないかの問題が大きくクローズアップされています。

 

 以下の新聞記事によると、2020年の東京オリンピック・パラリンピックで当初計画されていた東京のお台場を中心とする湾岸地域に集中しての各競技開催が放棄され、既存の施設を多く利用した開催に変更になるようです。地図で見れば分かりますが、お台場を中心とする湾岸地域での多くの新施設建設が放棄されることになります。

 

 私は「東京オリンピック・パラリンピックなどと言っているが、正確には何か裏事情がプンプンのお台場オリンピック・パラリンピックじゃないか。こんなものを開催する意味はない」と考えてきました。私は、このオリンピック・パラリンピック開催はお台場カジノ構想とセットであると考えていました。

 

(新聞記事転載貼り付けはじめ)

 

●「20年東京五輪:会場変更、戸惑いも」

 

毎日新聞 2015年06月10日 東京朝刊

http://sportsspecial.mainichi.jp/news/20150610ddm035050100000c.html

 

 国際オリンピック委員会(IOC)が8日に2020年東京五輪の会場計画で新たに7競技の会場見直しを承認したことを受け、対象となった競技団体の関係者からは理解を示す声が上がる一方、選手村(東京都中央区)から8キロ圏内というコンパクトな当初の計画が崩れたことを残念がるコメントも聞かれた。

 

 若洲オリンピックマリーナ(東京都江東区)から1964年東京五輪と同じ江の島ヨットハーバー(神奈川県藤沢市)に変更された日本セーリング連盟の鈴木修専務理事は「(当初の計画以外で)コンディションが一番いい所が選ばれた。市民の盛り上がりなどを総合した結果」と納得した様子だった。

 

 江東区に新設予定だった夢の島ユースプラザから武蔵野の森総合スポーツ施設(仮称、東京都調布市)に変わる日本バドミントン協会の能登則男事務局長は「決まったら仕方ない」と諦めの表情を浮かべ、「選手村から会場までの移動時間が長い。(道路の五輪関係車両)専用レーンもどれぐらいになるか分からないが、選手に負担のないようにしてほしい」と注文した。

 

 東京ビッグサイト(江東区)から幕張メッセ(千葉市)に移るテコンドーの関係者は「競技人口が少ないテコンドーは都心で開催して埋没するより、千葉で自治体の後押しなどで盛大にやれたら、良かったと言えるかもしれない」と前向きにとらえつつも、「東京五輪なのになぜ千葉で、と外国人選手には抵抗を感じる人が多いかも」と戸惑いをにじませた。【新井隆一、熊田明裕】

 

(新聞記事転載貼り付け終わり)

 

 ただ、お台場オリンピック・パラリンピックと言いながら、メインスタジアムは相も変わらずに新宿区霞町のあたりの旧国立競技場の場所にそのまま建てられるというのが気になっていました。「お台場に新たに建てれば良いのに」と考えていました。

 

 しかし、カジノ構想の見せかけの理由としてのオリンピック・パラリンピックで、政治的な影響力がまだまだ大きい森喜朗元首相(ラグビーにも深く食い込んでいる)に利権を食わせるために新国立競技場を建設することになったのだと思います。

 

 東京オリンピック・パラリンピックは石原慎太郎元都知事の独りよがりの悲願でした。石原慎太郎氏の長男は石原伸晃代議士で、父慎太郎氏の頼みを受けた森喜朗氏の支援を受けて、自民党総裁選挙に出馬したことがあります。また、石原慎太郎氏と森喜朗氏は若手代議士時代には、血判状で有名になった議員グループであった青嵐会に属していました。こうした点から、2人は親しい関係にあります。そして、国立競技場とその周辺の利権は森喜朗氏、お台場開発に関しては石原慎太郎氏の棲み分けができていたのだろうと思います。下村博文大臣は森氏の子分格でしかありません。

 

 しかし、お台場オリンピック・パラリンピックの様相が変わってきました。お台場での開発が縮小され、既存施設の利用、更には東京西部・調布市にある施設利用計画が浮上してきました。前回の都知事選挙で舛添要一氏は東京オリンピック・パラリンピックにおける東京西部地区の利用を公約に掲げていました。そして、カジノ構想には慎重な公明党の支援も受けて当選することが出来ました。今から思い返してみると、舛添都知事誕生は、お台場オリンピックの放棄とセットだったということになります。そして、舛添氏は、現在、新国立競技場建設について、「正論」の立場に立って、文教族を攻撃しています。私は、ここに、安倍政権内部の暗闘があると考えました。

 

 先日、私はSNSI・副島隆彦を囲む会の中田安彦研究員と雑談をしていました。彼は私がスポーツ好き(彼はスポーツ好きではありません)であることを知っているので、スポーツの話、特に横浜にあるプロ野球球団である横浜DeNAベイスターズの話をしてきました。私は彼がそんな話をしてくるのは珍しいと思ってその理由を尋ねたところ、カジノ構想絡みの話で、質問したと答え、以下のような記事がたくさん出ていることを教えてくれました。

 

(雑誌記事転載貼り付けはじめ)

 

●「有力視されたお台場カジノ開設 菅官房長官の地元横浜逆転か」

 

2015.04.25 16:00 NEWSポストセブン

http://www.news-postseven.com/archives/20150425_317893.html

 

 

 株価は上がり、統一地方選でも勝って、浮かれ放題の安倍晋三首相だが、実は足下は大揺れだ。

 

 現在、首相官邸で実権を握っているのが菅義偉・官房長官と世耕弘成・官房副長官のラインだ。官房長官はあらゆる政策で各省庁の調整を行なう役目であり、その権限は絶大だ。

 

 その菅氏のライバルがお友達大臣の筆頭格の下村博文・文部科学相だ。下村氏は長く首相と同じ細田派(清和会)に所属し、安倍氏とは家族ぐるみの付き合いで知られる。「いずれ官房長官として安倍総理を支えるのが悲願」(細田派中堅)というから菅氏は目障りな存在に映るだろう。

 

 その2人が安倍政権が力を入れる「カジノ特区」の招致合戦で激突した。東京選出の下村氏は、「東京・お台場の一角に国際観光産業としてのカジノを構えたい。お台場に行ったら歌舞伎も浄瑠璃もAKB48も見られる。その一角だけでも年間2000万人ぐらいの集客力があるようなものだ。これだけで東京はものすごく元気になる」と旗を振り、当初はお台場でのカジノ開設が有力視されていた。

 

 ところが、菅氏の地元・横浜に逆転されたという。

 

「政府は東京五輪までに全国2か所にカジノ特区を開設する方針だ。有力なのは横浜と大阪。お台場は東京都知事が慎重派の舛添要一氏に代わったことで後退し、その隙に菅さんが巻き返した。特区を指定する国家戦略特別区域諮問会議のメンバーには菅さんと甘利明・経済再生相の2人の神奈川選出議員がいるのに、下村氏ら東京選出議員が1人も入っていない」(カジノ議連の議員)

 

 菅vs下村の力関係に大きな影響を与えたのが下村氏の政治資金スキャンダルだ。下村氏を応援する教育関係者の団体が政治団体の届出をしないままパーティーや講演会を開催し、下村氏が寄付を受けていたことが政治資金規正法違反にあたると追及された。

 

 安倍首相はあくまで下村氏を庇(かば)ったが、「これで次の内閣改造でも下村氏の官房長官の目はまずなくなり、菅氏は漁夫の利を得た」(自民党幹部)格好なのだ。

 

※週刊ポスト2015年5月1日号

 

(雑誌記事転載貼り付け終わり)

 

 このように、お台場カジノ構想は頓挫しており、現在は横浜と大阪が有力な候補地となっているそうです。そして、安倍晋三首相の側近の座を巡り、菅義偉官房長官と下村博文文部科学大臣が争っているが、菅氏の方がリードしているということのようです。菅氏と大阪の橋下徹市長の関係などについては、中田安彦研究員がウェブサイト「副島隆彦の学問道場」(http://www.snsi.jp/)において、文章にして発表する予定となっていますので、そちらを是非お読みください。

 

 横浜DeNAベイスターズは今シーズン好調ですが、前身の大洋ホエールズ、横浜大洋ホエールズ、横浜ベイスターズから含めてあまり強くないティームであることはプロ野球ファンならば誰でも知っています。相手に白星ばかりを供給して、自分たちは借金(負け越し)を重ねる「横浜大洋銀行」などと揶揄されたこともありました。それでも1960年と1998年に2度セントラル・リーグを制覇し、日本シリーズでも勝利を収め日本一になっています(消滅した大阪近鉄バファローズは日本一になったことはありませんでしたし、人気球団阪神タイガースの日本一は1985年の1度きりです)。

 

 ベイスターズが本拠地としているのが横浜スタジアムで、1978年開場、この年にそれまで川崎球場を本拠地としていた大洋ホエールズが移ってきました。川崎球場には、東京下町にあった本拠地東京スタジアムを追われた当時ジプシー球団と呼ばれたロッテ・オリオンズが入りました。カジノ建設候補地である山下公園付近や中華街にもほど近い公園の中にある横浜スタジアムは絶好の場所にありますが、カジノ構想ではかえって邪魔になる可能性が大きいようです。別の場所に横浜ドームを建設、しかもそのドームは音楽コンサートなどメインになる可能性もあるということです。

 

 話を元に戻すと、お台場オリンピック・パラリンピックからカジノへという東京自民党と石原慎太郎氏の思惑は外れ、菅義偉官房長官のお膝元である横浜におけるカジノ構想が進んでいるということです。そして、このことが2020年の東京オリンピック・パラリンピックの計画の迷走の原因になっているのだろうと私は考えています。

 

(終わり)





ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29