ダニエル・シュルマン
講談社
2015-07-29



アメリカ政治の秘密
古村 治彦
PHP研究所
2012-05-12



 古村治彦です。

 

 今回はジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事の米大統領選挙共和党予備選挙への出馬表明を受けて書かれた記事を2本ご紹介します。ジェブ・ブッシュが今のところ共和党では最有力候補と言われていますが、やはり兄ジョージ・W・ブッシュ前大統領の外交政策の失敗が重荷になっているようです。また、人口が増えるにつれてアメリカ政治において力を増しつつあるヒスパニック系の有権者に向けアピールもしているようです。

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ジェブ・ブッシュと彼の家族とも言うべき外交政策ティームが正式に2016年の米大統領選挙に参加する(Jeb Bush and His Family’s Foreign Policy Officially Enter the 2016 Presidential Race

 

デイヴィッド・フランシス筆

2015年6月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

https://foreignpolicy.com/2015/06/15/jeb-bush-and-his-familys-foreign-policy-officially-enter-the-2016-presidential-race/?utm_content=bufferecb29&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 2015年6月15日にフロリダ州元知事ジェブ・ブッシュは正式に2016年の米大統領選挙共和党予備選への出馬を表明した。その少し前、彼は自分の選挙キャンペーンのロゴを発表した。それは以下の通りだ。

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 テキサス州知事リック・ペリー、マルコ・ルビオ連邦上院議員(フロリダ州選出、共和党)、テッド・クルーズ連邦上院議員(テキサス州選出、共和党)もそのようにしているが、ジェブのロゴは最低限のテーマを表現している。このロゴでは、選挙戦で彼に付きまとうであろう言葉「ブッシュ」が除外されている。

 

 ジェブ・ブッシュは共和党予備選挙で最も支持を集めている候補者であり、先頭を走っている。彼は以前にも似たようなロゴをいくつか使ったことがある。これらが示しているのは、ジェブにとって外交政策は鬼門になるということだ。父ジョージ・H・Wと兄ジョージ・Wの影は長く、深くジェブに付きまとい、ジェブは彼らと変わらないとする敵たちからの攻撃の材料となっている。

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左からジョージ・H、ジョージ・H・W、ジェブ
 
 

 マイアミ・デード短期大学で行われた出馬発表の場に父も兄も姿を見せなかった。しかし、彼は2人について次のように語った。「私は生まれた日に最初の大統領に会い、病院から家に連れ帰られた時に2番目の大統領に会ったのです」。

 

 ジェブは外交政策の概略だけを述べた。アメリカ軍の質の低下に警告を発し、イスラエルを支援することを約束し、オバマ大統領のキューバとの和解を批判した。

 

ジェブは「彼らの電話だけで事を済ます外交政策によって、オバマ・クリントン・ケリーティームは危機を封じ込めることに失敗し、暴力を辞めさせることもできず、敵を発見できず、友人たちを守ることもできず、同盟を解体寸前に追い込みました」と述べた。

 

 ジェブが出馬表明の演説の中で触れなかったいくつかの句帝の外交政策に関わる問題は、選挙戦において毎日取り上げられている。共和党の予備選挙には17名も立候補を表明している。彼らはバラク・オバマ政権と民主党の最有力候補のヒラリー・クリントン前国務長官に対して、大きく分けて2つの点から攻撃を加えている。1つ目のポイントは、オバマ大統領はシリアとイラクの多くの領域にまでイスラム国が拡大することに対して無策であったということだ。2つ目のポイントは、東ウクライナに干渉を続けるロシアのウラジミール・プーティン大統領に対しての姿勢が厳しさを欠くというものだ。

 

 共和党の立候補者たちは全員、1つ目のポイントの取り上げ方に苦慮している。イスラム国対等のそもそもの原因を辿れば、2003年のイラク戦争にまで行きつく。イラク戦争は諜報機関からの間違った情報によって引き起こされたものだが、候補者たちの多くは、ジョージ・W・ブッシュ前大統領の行動が誤りであったと認めようとはしていない。ジェブはイラク戦争について責任がある前大統領と血縁関係があるために、ジェブはこれに関する、民主党並びに共和党の同僚たちからの攻撃に対してどうしても弱くなってしまう。

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 ジェブがどうしても攻撃されてしまうのは、月曜日の正式な出馬表明の前に、彼がイラクに関して曖昧な言葉遣いを弄していたことに起因する。5月のある週、イラク戦争に関して彼は4度も立場を変えた。そして最終的には、「現在知られていることをその当時に知っていたとして、その時に私が大統領であったなら、私はイラクへの侵攻を命令しなかっただろう」と述べた。

 

 ジェブはイラクについて曖昧な態度に終始したが、同じことはロシアについても言える。彼の家族(父と兄)は大統領として、ロシアとかかわりを持ってきた。ジェブは彼独自の色を出そうとした。彼は最近行われたヨーロッパ訪問において、ロシアに対してより厳しい姿勢で臨むと述べた。しかし、ブッシュ家はこの冷静時代にはアメリカのライヴァルであったロシアと関わってきた歴史を持っている。

 

 ジョージ・H・W・ブッシュが大統領職にある時、ベルリンの壁崩壊を祝った。一方、ロシアはボリス・エリツィンの下、経済と政治は混乱の極に達した。この指導力の欠如した状態が続いたことが、プーティンの台頭と権力掌握にまでつながった。

 

 ジェブの兄もまたロシアに対する対処において複雑な歴史を持っている。第43代米大統領であったジョージ・W・ブッシュはかつてプーティンを「信頼できる男」と呼んだ。彼はロシアの独裁者の目をしっかりと見て、「彼の魂が感じていることを理解できる」と言っていた。しかし、ジョージ・Wは、2008年に発生したアメリカに同盟国ジョージアに対する侵攻を予想することが出来なかった。

 

ジェブは選挙運動のために1億ドルを集めている。そして、兄ジョージ・Wの移民政策とは距離を取っている。ジョージ・Wはアメリカとメキシコの国境にフェンスを増設し、南米からの不法移民の入国を阻止しようとした。この政策はアメリカのヒスパニック系市民たちの間で批判が巻き起こった。ジョージ・Wは、移民制度改革を実施できなかった。移民制度改革で市民権の付与をしたかったが連邦議会が反対した。

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 コルンバ夫人とジェブ

 

 ジェブがヒスパニック共同体から支持を得ようとしているのは明らかで、その意図は月曜日によく窺われた。彼は演説を始める前にスペイン語と英語の歌を流した。.彼の妻コルンバはメキシコ生まれで、夫妻はスペイン語を話し、ジェブは出馬発表の際にもところどころでスペイン語を使った。ジェブは移民法改正も約束したが、その詳細は明らかにしなかった。

 

ジェブは次のように語った。「どの言語で話そうとも、私のメッセージは楽天的なものとなります。それは、私たちがこれからの数十年間のアメリカを世界で最も偉大な国にすることが出来ると私は確信しているからです」。

 

(終わり)

 

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共和党は今回の米大統領選挙において外交政策の面で勝利を得ることはない(The GOP Is Not Going to Win This Election on Foreign Policy

―アメリカの有権者たちの間で共和党のタカ派的姿勢が信任を得られない理由

 

コーリ・シェイク筆

2015年6月15日

『フォーリン・ポリシー』誌

http://foreignpolicy.com/2015/06/15/gop-republican-foreign-policy-hawkishness-will-not-win-presidential-election/?utm_content=bufferf68e0&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer

 

 ジェブ・ブッシュが本日、ついに大統領選挙の共和党予備選への出馬を表明した。バラク・オバマ大統領の抑制的な関与とは対照的な積極的で攻撃的な外交政策を行うことでアメリカの有権者たちの支持を得ようとしている。実際、共和党は、アメリカが世界に対して積極的に関与することで、アメリカ国民はイラクとアフガニスタンでの戦争の影から回復することが出来ると強く主張している。共和党は積極的な外交政策の主張を再開することで、保守派の有権者たちの支持を得ようとしている。そして、来年の米大統領選挙の争点として外交問題を取り上げようとしている。共和党の予備選挙に立候補している候補者たちは選挙戦が進むにつれて、お互いを弱腰だと批判し合うようになっている。ランド・ポールを除いた全ての共和党の候補者たちはイランとの核開発を巡る合意に反対し、ロシアの侵攻についてより強硬に対処することを主張し、イランへの支援を増やし、イスラム国を殲滅することを訴えている。そして、ランド・ポールすらもアイソレーショニスト(孤立主義)的な姿勢をあまり前面に押し出さないようにしている。しかし、2016年の選挙に勝利するためということで、共和党側は外交政策での自党の強みを強調し過ぎている。そのように考えるのにはいくつかの理由が存在する。

 

 第一に、共和党側が外交政策を取り上げることが大統領選挙に勝利する道だと考えるのにはいくつかの根拠がある。ある世論調査の結果では、アメリカ国民の55%がバラク・オバマ大統領の外交姿勢は軟弱だと考えているということだ。共和党支持者に限定するとこの数字は9割近くにまで跳ね上がる。シリアにおける化学兵器の使用に対して最後の一線を越えるかどうかのオバマ大統領の苦慮は人々の支持を得ていない。民主国家において長く先が見えない戦争に対する人々の支持を維持することには、たとえ戦争がうまくいっていて、成果が上がっていても困難が伴う。アメリカでは、約半数の人々がイラクからアメリカ軍を全面撤退させたのは間違いであったと考え、3分の2の人々がイラク軍を訓練し、助言を与えるためにアメリカ軍の増派を支持している。

 

 アメリカ人たちは緊急的な脅威から目を背けてはいない。67%がイスラム国をアメリカにとって主要な脅威と見ている。アメリカ人たちはロシアの体質が変化しつつあることにも目を向けている。ウラジミール・プーティンの意図について懸念を持っている人の割合は2011年以降6倍に増加している。アメリカ国民は他国を助けたいと考えている。ロシアのウクライナ侵攻以降、60%のアメリカ人たちがウクライナをNATOに参加させるべきだと考えている。そして同じくらいの割合の人々はNATO加盟諸国を守るためにアメリカは軍事力を使うべきだと考えている。これは他のNATO加盟諸国に比べて高い割合である。

 

 しかしながら、オバマ大統領の抑制的な政策に対する人々の不満が、2016年の米大統領選挙において共和党に有利に働くと考えるのには疑義がある。

 

 第一に、オバマ大統領の外交政策に対する不満のレヴェルはそれほど上昇していない。7カ月前、不満を持っていたのは54%であった。共和党側にとってこれは大きな数字であると言える。しかし、共和党側にとって残念なのはこの数字が増えていないことである。アメリカ国民は外国に対して関与し過ぎることに対して今でも懸念を持っている。アメリカが世界の諸問題解決のために行っている努力は足りないと考えているのは31%である。この数字は昨年秋の51%から大きく低下している。そしてこの程度の数字で安定している。少なくともアメリカ国民の3分の1はより積極的な外国への関与を支持してはいないのだ。

 

 アメリカ国民は確かにオバマ大統領の政策に不満を持っているが、この不満がアメリカ人が懸念を持っている世界各地の諸問題を積極的な外交政策で解決できるという考えに変わる可能性はない。

 

 第二に、共和党の大統領選挙立候補者たちが訴える政策の中には人々のしっかりとした支持を得られるものもある。アメリカ国民の多くはイランとの核開発を巡る合意を承認している。しかし、共和党の候補者たちは全員、イラクとの合意を無効とすると主張している。63%のアメリカ人はキューバとの関係強化を支持しているが、共和党の候補者たちは人々とは違う姿勢を取っている。

 

 第三に、イラク戦争に対してアメリカ人は否定的な姿勢を保っているが、共和党はそれに責任を持っている。アメリカ人の59%がイラク戦争は間違いであったと考えている。55%はイラクに米軍の地上部隊を派遣することに反対している。アメリカ国民の半数は、アメリカが中東に過度に関わることに懸念を持っている。これが意味しているところは、保守派の主張する解決策の現実性について今でも懸念が残っているということである。保守派は実行可能な戦略を持っていることを示す必要がある。それをアメリカ人が国益に適うかどうか判断する。

 

 もっと重要なことは、共和党の候補者たちは攻撃を集中させている国家安全保障問題について自分自身の詳しい戦略の概略すらも明らかにしていないことである。候補者たちの多くは、軍隊を使って達成する政治目的、いかなる戦略も成功には非軍事的な要素が必要であること、この問題が国家全体の抱える問題のどこに位置付けられるべきかについて説明することなしに、イラクに対する米軍派遣部隊の規模を議論している。共和党はオバマ大統領が戦略を持っていないことを批判しているがこれは正しい。しかし、人々は共和党には戦略を持っていてほしいと期待しているのである。オバマ大統領の執政を批判することは共和党の候補者たちの演説の常套手段になっているが、アメリカのリーダーシップについてレーガン大統領時代を目指すといった陳腐な表現では人々を惹きつけることはできない。

 

 共和党の候補者たちの多くが現在取っている立場は大統領選挙に当選した後はそれを維持することはできないであろう。イランに対する経済制裁に関して言うと、制裁の中心となるべきヨーロッパ諸国はイランとの核開発を巡る合意を求めているのに、どのようにしてアメリカが経済制裁を維持できるというのだろうか?イスラム国の台頭を可能にしたイラク統治の失敗を明らかにすることなしに、どのようにしてイスラム国を殲滅できるというのか?国防予算の増額と財政赤字の解消をどのように両立するのか?イラク戦争に失敗した後の今日、共和党はただの鋭い批判者ではなく、意識を持った設計者にならねばならないのである。

 

 最後に、アメリカの有権者たちが外交政策を基にして実際に投票するかどうか分からない。伝統的には、外交政策は政治に関心を持つ入り口となる傾向にある。大統領選挙の候補者たちは、信頼に足る、能力の高い最高司令官として人々の信頼を勝ち取る必要がある。この基準を満足させるために、人々は民主政治に関する諸問題に基づいて投票を行う傾向にある。共和党は外交政策よりも経済政策をアピールすることで有権者を惹きつける可能性は高い。2016年になってもそうであろう。現状では、共和党の候補者たちは外交政策に言及し過ぎのように思われるし、2016年の米大統領選挙において積極的な外交政策がアピールポイントになるかを理解しているようである。

 

(終わり)





野望の中国近現代史
オーヴィル・シェル
ビジネス社
2014-05-23