古村治彦です。
今回は、『衝撃の「実録映画」大全』(洋泉社、映画秘宝COLLECTION、2016年7月9日)を皆様にご紹介いたします。「実録映画」と言うと、「仁義なき戦い」「県警対組織暴力」のような、深作欣二の「実録もの」を思い出しますが、ここでいう「実録映画」は、現実に起きた事件や歴史上の出来事を基にした映画です。
私は、第1章の「カトリック教会の束縛と偽善 スポットライト 世紀のスクープ」(12-27ページ)を担当しました。今年公開の映画『スポットライト 世紀のスクープ』を評論しました。この映画は日本では今年公開され、今年のアカデミー賞の作品賞と脚本賞を受賞した秀作です。
この映画は、2002年にアメリカで発覚し、国際的大事件となったカトリック教会の聖職者たちの虐待をスクープした『ボストン・グローブ』紙の特別取材ティームの物語です。
私は映画に詳しいと言うほどたくさんの映画を見ていませんが、今回の論稿では、映像がどうとか、俳優の演技がどうとか、そういうことではなくて、映画のテーマであるカトリック教会の聖職者による虐待事件やカトリック教会について書きました。
この映画はボストンという土地柄、事件の舞台を十分に描き出した映画です。論稿でもそのことには触れましたが、この点は強調してもしすぎることはないと思います。映画の中で、「バンビーノの呪い」という本が出てきたときには、なるほど、とちょっと苦笑いをしました。
バンビーノというのは、大リーグの伝説的大選手ベーブ・ルースのニックネームです。ベーブ・ルースはもともとボストンを本拠地とするボストン・レッドソックスに所属する若手の成長株でした。しかし、1920年に球団側と衝突して、宿敵ニューヨーク・ヤンキースに金銭トレードとなりました。レッドソックスはルース在籍中の1918年にワールドシリーズを制廃しましたが、それ以降、名選手を輩出するものの、ワールドシリーズ制覇は出来ませんでした。この状態を指して、ベーブ・ルースに呪われているとして、「バンビーノの呪い」という言葉が作られました。この呪いも2004年に解かれました。日本人の松坂大輔投手と岡島秀樹投手が活躍したことは記憶に残っています。
字幕だけではこうしたことを知ることはできません。落語では「くすぐり」といいますが、観客を笑わせたり、驚かせたりするちょっとした表現は、背景を分かっていなければ理解できず、それが理解できなければ、映画の面白さも減ってしまいます。
是非、手に取ってお読みいただき、その後に映画『スポットライト 世紀のスクープ』もご覧いただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
(終わり)
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