古村治彦です。
先日もご紹介しましたが、リベラルな映画監督して日本でも知られている(お笑い芸人のハリセンボンの顔が似ていることでも有名)、マイケル・ムーアが、ドナルド・トランプが11月の本選挙でヒラリー・クリントンに勝って大統領になるという予測を立てています。彼はその理由を5つ挙げており、今回はそれを紹介している記事を皆様にご紹介します。
マイケル・ムーアの理由をまとめると、「ラストベルト(アメリカの製造業の中心であったが今は衰退している)のミシガン、ウィスコンシン、ペンシルヴァニア、オハイオで怒れる白人男性たちがトランプを熱烈に支持している。彼らは自分たちが力を失っていると感じ、生活にも困っており、」
アメリカの製造業の復活のようなことをトランプもそしてヒラリーも主張していますが、とても現実的な話ではないと思います。アメリカ製の製品、軽工業の製品や重工業の製品などまず目にしたことはありません。戦前から戦後しばらくまでは、アメリカの鉄鋼(USスティール)や自動車(フォード、GM、クライスラー)、電化製品(GEやRCA)と言えば、輝かしい、あこがれの高級品でした。しかし、今は壊れやすくて、値段が高いだけの競争力ゼロの製品となりました。
アメリカで競争力がある製品と言えば、軍事関連のもので、それを民生用にしたものです。こうした製品は戦争がなければ買い替えや追加注文もないでしょうから、結局、戦争や内戦、対外的な緊張がどうしても必要となります。ヒラリーが大統領になろうが、トランプが大統領になろうが、アメリカが悪あがきをして、「お前たちは不公正な貿易をやっている」と難癖をつけて制裁金を取るか、制裁を科すか、武器を売りつけるしかありません。
次に、2012年の共和党大統領選挙候補者で、共和党内の反トランプの急先鋒だったミット・ロムニーの発言をご紹介します。ロムニーは、「トランプが勝つ場合は接戦、負ける場合は、ヒラリーが地滑り的な大勝利」という主張を行っています。この主張は、政治の玄人筋の予想と同じです。トランプが地滑り的勝利をするためには、今、民主党が強い州を取らねばなりませんが、これはかなり厳しい状況です。ですから、接戦でも勝てば大統領になれますから、激戦州、特に五大湖周辺のラストベルトに集中する戦略だと思われます。
私は現在の情勢では、7対3でヒラリーが優勢だと考えています。トランプが激戦州でヒラリーを圧倒するのかどうかが注目点ですが、トランプは、ロシアにヒラリーのEメールのハッキングを呼びかけたり、民主党大会で演説を行ったイスラム教徒の米軍将校の父親に対する発言で挑発をしたりで、墓穴を掘っている印象があります。
8月は直接の討論会はありませんので、メディアでどのように取り上げられるかが勝負となりますが、9月の直接対決まで小休止という感じです。
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マイケル・ムーア:「トランプが大統領になる5つの理由」(Michael Moore: 5 reasons Trump will be president)
レベッカ・サヴランスキー筆
2016年7月25日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/blogs/blog-briefing-room/news/donald-trump-michael-moore-hillary-clinton-prediction-victory-election-5-reasons-why
リベラル派の映画監督のマイケル・ムーアは、ドナルド・トランプが大統領に選ばれるだろうと考え、11月の大統領選挙でトランプが勝利する5つの理由を挙げている。
ムーアは、自身のウェブサイトで次のように書いている。「このみじめなで、傲慢、危険なピエロで反社会的な人物が私たちの次の大統領になるだろう。トランプ大統領。この言葉を繰り返そう。なぜなら、来年からの4年間、私たちは、トランプ大統領という言葉を何度も口にするだろうからだ」。
ムーアは、トランプが次のアメリカ大統領になるだろうという事実に直面する必要があると述べた。
ムーアは、トランプが、ミシガン、オハイオ、ペンシルヴァニア、ウィスコンシンというラストベルトの4つの民主党が強い州に力を注ぐだろうと述べた。2010年以降、これら4つの州では共和党の知事が選ばれている。トランプは支持率で、ペンシルヴァニア州では民主党のヒラリー・クリントンをリードし、オハイオ州では並んでいる。
「トランプはヒラリーをこの4つの州でやっつけるだろう。また彼女がTPPを支持していることもトランプに有利になる。彼女の通商政策によって4つの州の人々は傷つけられるだろう」と書き、TPPに対する反対を表明した。
「これら4つの州に住む市民は“傷つき、貧しい生活を強いられ、生きるだけで精いっぱい”なのだ」と書いている。
彼は2つ目の理由として、「怒れる白人男性の危機感」を挙げている。
彼は次のように書いている。「男性優位で240年続いてきたアメリカが終わりを迎えようとしている。女性が主導権を握ろうとしている。どうしてこんなことが起きたんだ?!なんてことだ!これまでに危険な予兆があったのに、俺たちはそれを無視してきた」。
ムーアは、男性たちが「自分たちの手から力が滑り落ちていき、自分たちのやり方が通らなくなっている」と感じているのだと書いている。
ムーアは、ヒラリーについても、彼女は正直ではなく、信頼できないと見られており、当選は難しいと書いている。
「ヒラリーを当選させたいという熱狂はない。今回の選挙は、一つのことに集約される。誰が多くの人々を投票所まで行かせて、自分の名前を書かせるかということだ。そして、トランプが現在のところ、有利な立場に立っている」。
ムーアはバーニー・サンダースの支持者たちに目を向けている。彼は、「サンダース支持者の中にはしぶしぶクリントンに投票する人も出てくるだろうが、その他の人は投票日には、選挙に行かないか、第三党の候補者に投票するだろう」と予想している。
ムーアは、トランプ勝利の最後の理由として、「多くの人々が彼に投票するのは、“それが可能だから(共和党の候補者になったから)”だ」と書いている。
ムーアは、「リンゴが詰まった手押し車をひっくり返して、両親を怒らせるという悪戯をすることが出来るようなものなのだ」と書いている。
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ロムニー:「トランプ勝利の可能性は非常に高い」(Romney: Trump victory 'very possible')
ジェシー・ヘルマン筆
2016年7月29日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/blogs/ballot-box/presidential-races/289853-romney-very-possible-trump-wins
2012年の共和党大統領選挙候補者ミット・ロムニーが、ドナルド・トランプは地滑り的な大勝利はないにしても、選挙に勝つ可能性が「非常に高い」と述べた。
2週間前に、ミット・ロムニーは共和党ラジオ・フリーというポドキャストに出演し、「率直に言って、私は、トランプが勝つ可能性が非常に高いと考えている」とバズフィードが報じた。
ロムニーは次のように発言した。「地滑り的な勝利はないと思うが、彼が勝つかもしれないと考えている。彼が負ける可能性ももちろんある。負ける場合には地滑り的な大敗になる可能性があると思う。しかし、どちらが起きるかは分からない。トランプが勝つか負けるかは、ヒラリー・クリントン次第だ。現在はシステムが溶け出しているのか、もしくは衝撃が起きているのか、分からない」
ロムニーはトランプもヒラリーも支持しないとこれまで表明してきた。しかし、ロムニーは、ラジオでのインタヴューで、トランプは、有権者の支持を取り付けて、共和党の予備選挙での勝利できたと述べた。
ロムニーは次のように語っている。「皆さんはドナルド・トランプを信用しなくてはならない。彼は自身のキャリアを通じて培った言葉遣いと行動様式を政治の分野に持ち込むことが出来る。そして、有権者の支持を取り付けて、共和党の候補者になることが出来た」。
彼は続けて次のように語った。「私と他の多くの人たちは理想的な候補者ではないと考えているが、彼は候補者になった。この段階では、甘受しなくてはならない。しかし、何が起きるかは分からない」。
ロムニーは民主党の候補者ヒラリーも攻撃した。ロムニーはヒラリーを「ひどい候補者」と呼んだ。彼女は夫であるビル・クリントン元大統領の物まねをしようとしすぎていると語った。
ロムニーは次のように語った。「ヒラリーも大統領選挙に出ていることを忘れてはいけない。彼女はひどい候補者だ。人々は彼女を信頼していない。私は、人々が彼女を信頼できないと考えていると思う。私は支持していない。彼女はこうあって欲しいと私が期待する行動をとっていないが、それがどうしてなのか理解できない。私はアンジェラ・メルケルやキャスリーン・セベリウスのようになって欲しいとヒラリーに対しては思っている」
ロムニーは続けて次のように述べた「真剣な女性のリーダーたちはたくさんいる。彼女たちは聴衆の中に入らないし、彼らの腕を取って大きく掲げながら笑顔で写真に収まるようなことはしない。彼女はビル・クリントンのように行動しているが、ビル・クリントンではない。彼女は何事もうまくこなしていない」。
(終わり)
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