古村治彦です。
アメリカ大統領選挙の特徴といえば、有権者の総得票数で結果を決めるのではなく、各州に割り当てられた選挙人を取り合う形になっていることです。2000年の大統領選挙では、民主党のアル・ゴアが全米の総得票数では勝っていましたが、最後、フロリダ州で僅差で共和党のジョージ・W・ブッシュに敗れたために、大統領の座を逃したことがありました。選挙人制度は、各州の人々が自分たちの代表を決めて、その代表たちがワシントンDCまで出向いて、大統領決定を行うというシステムの名残です。昔のことですと、アメリカを横断するだけでも相当な時間とお金がかかり、各州の名士たちしか選挙人になれませんでしたし、識字率も低かったので、こういう制度ができました。
今では各州の独自性を担保するという意味もあって選挙人を取り合う形で、しかも各州で1票でも多く勝った候補者が選挙人を総取りということになっています。「各州の代表」で、「我が●●州は共和党のドナルド・トランプ!」「我が●●州は民主党のヒラリー・クリントン!」ということになります。各州に割り当てられる選挙人の数は人口(下院議員の選挙区の数)に基づいて配分されていますので、各州で平等ではありません。
さて、今回の大統領選挙では、激戦州として11の州が挙げられています。これらの州では、ドナルド・トランプ、ヒラリー・クリントンどちらとも相手に5ポイント差以上をつけられない、大変な接戦となっています。10ポイント以上の差をつけていると優位な州といえますが、一けた台になり、それが5ポイントを切ると逆転される可能性も見えてきます。

この接戦州でもいくつかの州はトランプ優位、またはヒラリー優位となっていますが、全体の傾向として、ヒラリーの方がお金と人材を投入していると言えます。選挙のヴォランティアが集まる選挙事務所(campaign field offices)の数、後は各州のテレビCMの放送枠への投入資金の金額では、ヒラリーが圧倒しています。人材と資金の面で大差をつけているのに、支持率で接戦となっているということは、ヒラリーは本質的に脆弱な候補者と言えます。トランプはその点で、効率よく戦っていると言えます。
残り2カ月となり、これからラストスパートという時期、ますます目が離せなくなっています。
(貼り付けはじめ)
トランプが勝つか、クリントンが勝つか?11の州が選挙の帰趨を決める(Will
Trump or Clinton win? The 11 states deciding the race)
ニオール・ストレンジ筆
2016年9月7日
『ザ・ヒル』誌
http://thehill.com/homenews/campaign/294716-will-trump-or-clinton-win-the-11-states-deciding-the-race
投票日までの追い込みが始まり、ドナルド・トランプはヒラリーに付けられている差を縮めつつある。
最新のCNNとORCの共同世論調査が火曜日の朝に発表され、それでは全国規模でトランプがヒラリーに2ポイントリードしているという結果が出た。この結果に民主党幹部に衝撃を与えた。リアルクリアポリティクスが出している各種世論調査の平均では、ヒラリーが3.3ポイントの差をつけているが、この差は最大の時と比べて半分になっている。
しかしながら、民主党大統領選挙候補ヒラリー・クリントンは大統領選挙で優位な立場に立ち、勝利を収める可能性が高い。その理由の一つとして、選挙の結果を決める激戦州での強さが挙げられる。
ヒラリーは、ジョージア州とアリゾナ州のような共和党の牙城で接戦を演じている。しかし、今回の選挙もまた、最近の複数回の大統領選挙の帰趨を決めた州によって結果が決まるだろう。
本誌は、11の激戦州それぞれで何が起きているかを見ていく。
(1)オハイオ州
トランプは、他の激戦州に比べてオハイオで優位に立っていることに安堵していることだろう。
火曜日(9月6日)に発表された、ワシントン・ポスト紙とサーヴェイ・モンキーによる全米50州を対象にした共同世論調査の結果によると、トランプはアイオワ州で3ポイントの差をつけてリードしている。エマーソン大学の世論調査では、引き分けという結果が出た。火曜日の午後に出された、リアルクリアポリティックスによる各種世論調査の平均では、ヒラリーが3.3ポイントの差をつけてリードしている。
オハイオ州の人口構成によって選挙の激戦化の説明が可能だ。出口調査の結果によると、2012年の選挙では、オハイオ州の有権者のうちヒスパニックは3%に過ぎなかった。大学卒業は40%に留まった。この数字は11の激戦州の中で最も低い。
これらの数字から、トランプの中核となるアピールは白人のブルーカラーに受けが良いので、オハイオはトランプのアピールが有効な土地ということになる。
ヒラリー選対は、オハイオ州で勝つために伝統的な戦術を採用している。最近のPBSのニュースアワーの分析によると、ヒラリー選対は、8月末までにオハイオ州に36カ所の選挙事務所を開設しており、一方のトランプは16カ所だ、ということだ。TV画面の上では、ヒラリーはトランプに比べて多額の資金を投入している。クリントン陣営は、2200万ドルを投入して、9月から11月までの放送枠を確保している。一方、トランプと支持者たちの投入額は200万ドル以下だ。この数字は、「アド・エイジ」が「カンター・メディア」傘下の「キャンペーン・メディア・アナリシス・グループ」の発表したデータを分析して得られたものだ。
フロリダ州
フロリダ州は激戦州の中で最も多い選挙人を擁している州だ。その数は29名だ。最近行われた4つの主要な会社や組織の世論調査の結果では、いずれもヒラリーがトランプを2ポイントリードしているという結果が出た。フロリダ州では、どちらの候補がトップに立っても相手に対して2ポイント以上の差をつけられないという状況が続いている。
フロリダ州は、選挙戦を戦ううえで、お金がかかる州となっている。アド・エイジとカンター・メディアの分析によると、ヒラリーと支持者たちは、テレビの放送枠確保のために3400万ドルを投じている、ということだ。
2012年のフロリダ州の有権者のうち、17%がヒスパニックだった。また、フロリダ州に多く住むキューバ系アメリカ人たちは伝統的に共和党を支持してきたが、その伝統も薄れつつある。しかし、多くの専門家たちの予想よりも、トランプにとって情勢は有利に展開している。
しかし、トランプの選挙運動は不活発で、これが彼の勝利を不意にしてしまうことはないだろうか?PBSの調査によると、8月末の時点で、トランプは州内に選挙事務所を1カ所しか設置していない。一方、ヒラリーは34か所設置している。
ヴァージニア州
激戦州の中で、ヴァージニア州は、ヒラリーが最強の州だ。ヴァージニア州は、選挙情勢地図の大変化を示す第一の具体例となっている。
ヴァージニア州は2008年まで共和党の金城湯池だった。2008年にオバマ大統領がヴァージニア州で勝利を収めたが、これは1964年にリンドン・ジョンソンが勝利を収めて以来のことだった。しかし、選挙結果予測サイト「ファイヴサーティーエイト」は、ヒラリーの勝利の確率を80%以上としている。リアルクリアポリティックスの平均では、ヒラリーは5ポイントの差をつけてトランプをリードしている。
ここで注目すべき事実がある。それは、アド・エイジによると、ヒラリー陣営もトランプ陣営もヴァージニア州では選挙CMを大々的に流す計画を持っていないということだ。
2012年の有権者のうち、黒人が占める割合は20%だ。黒人はトランプをほとんど支持していないことは各種世論調査で明らかになっている。トランプを支持していないもう1つのグループである大卒者は、2012年の選挙で54%を占めている。これは11の激戦州の中で最も高い数字となっている。
ノースカロライナ州
ノースカロライナ州は南部の性質の変化を示す具体例となっている。ヒラリーはノースカロライナ州でトランプを僅差でリードしている。ヒラリーがノースカロライナ州で接戦を演じていることに関しては言うべきことがたくさんある。2008年、オバマ大統領は約30年ぶりにノースカロライナ州で民主党候補者として勝利を収めたが、2012年には敗北を喫した。
現在のところ、リアルクリアポリティックスの平均の数字では、ヒラリーは僅差でリードしているという状況だ。しかし、ヒラリーは州内に30カ所の選挙事務所を開設しているが、トランプは今のところ開設しているかどうか不明だ。ヒラリーと支持者たちは1600万ドルを投入して放送枠を確保しているが、トランプが投じているのはわずか100万ドルだ。
ヒラリーにとって心強いのは、11の激戦州の中で、ノースカロライナ州の有権者のうちで黒人が占める割合がいちばん高く、2012年背の選挙では23%であったということだ。
ペンシルヴァニア州
トランプ選対はこれまでペンシルヴァニア州での勝利について語ってきた。しかし、今のところ、その可能性は低い。リアルクリアポリティックスの平均では、ヒラリーは6ポイント以上の差をつけてリードしている。
1988年以降、共和党は、ペンシルヴァニア州をひっくり返して、共和党が勝利できるようにしようと努力してきたが、いつも今一歩のところで涙を呑んでいる。
2012年の総得票数において、約20%は非白人からの投票だった。共和党は、トランプが大都市フィラデルフィア郊外に住む穏健な有権者たちからの支持を得ることに苦労するだろうという懸念を持っている。
アド・エイジによると、ヒラリーとヒラリー支持の各グループは、9月から11月にかけて1800万ドル以上を投入して放送枠を確保している。一方、トランプはわずか100万ドルを投入しているだけだ。
コロラド州
コロラド州ではヒラリーが優勢だ。ヒラリーがコロラド州で優勢であるという事実は、人種多様性(白人の割合の低下)を増しつつあるアメリカの将来に対する共和党の一部の恐怖感を象徴している。
リアルクリアポリティックスの平均ではヒラリーが11ポイントの差をつけてリードしている。ファイヴサーティーエイトの「世論調査のみ」の予測では、ヒラリー勝利の確率は75%となっている。
この2つの数字はヒラリーの強さを説明する要素になっている。これらの数字以外にも、2012年の大統領選挙では有権者の14%がヒスパニックであったこと、49%が大卒者であったことも要素として挙げられる。これら2つの数字はアメリカ全体の平均よりも高く、これら2つのグループに対してトランプのアピールは奏功していない。
ウィスコンシン州
ウィスコンシン州を獲得することはトランプにとって大きな前進となるだろう。1984年にロナルド・レーガン大統領が地滑り的大勝利で再選を決め、その時に勝ってから、共和党は勝てないままできた。しかし、これまでと比べて、トランプはとてもよくやっている。最新のワシントン・ポスト紙の世論調査では、トランプはヒラリーを2ポイント差まで追い上げている。その他2つの最新の世論調査の結果では、ヒラリーのリードはそれぞれ3ポイントと5ポイントだった。トランプに有利な要素が1つある。それは、2012年の選挙でウィスコンシン州の有権者の86%を白人が占めたということだ。大卒者の割合は激戦州の中で最も低い42%だった。
ミシガン州
ミシガン州は、トランプの対ラストベルト戦略の限界を示している州だ。リアルクリアポリティックスの平均では、ヒラリーが7ポイント以上の差をつけてリードしている。ファイヴサーティーエイトの予測では、ヒラリー勝利の確率は約75%だ。それでもトランプにはまだ希望が残されている。最近のワシントン・ポスト紙の世論調査では、ヒラリーのリードは2ポイントに縮まっている。トランプと支持者たちは、選挙CMの放送枠に対して一定の資金を投入している。しかし、PBSによると、ヒラリー選対は23カ所の選挙事務所を設置しているが、トランプが選挙事務所を設置しているかどうかは不明だ。
ネヴァダ州
2012年の選挙ではネヴァダ州の有権者のうち、19%がヒスパニックだった。ヒスパニックの間でトランプの支持率は低いが、それでもトランプはネヴァダ州で接戦を演じている。リアルクリアポリティックスの平均では、ヒラリーは2.3ポイントという僅差でトランプをリードしている。特筆すべきは、トランプは選挙事務所の数でヒラリーと均衡しているということだ。PBSによると、両陣営共に6カ所の選挙事務所を設置している、ということだ。
アイオワ州
アイオワ州は、激戦州の中で唯一、リアルクリアポリティックスの平均で、トランプがリードしている州だ。火曜日の午後に出た最新の平均では、トランプが1ポイント弱リードしている。2012年の総得票数のうち、93%が白人からの投票であった。また、歴史的にヒラリーにとっては鬼門とも言える州である。2008年大統領選挙の民主党予備選挙で、アイオワ州の党員集会(予備選挙)でヒラリーは3番手に沈んだ。今年初めの党員集会(予備選挙)では、ヒラリーは、バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)を僅差で降した。
ニューハンプシャー州
ヒラリーは、ニューハンプシャーで強さを発揮している。有権者における白人の割合はアイオワ州と変わらないが、ニューハンプシャーではヒラリーが優位だ。ヒラリーはリアルクリアポリティックスの平均では9ポイントリードしている。アイオワ州との違いは、ニューハンプシャー州の社会の雰囲気が違うことが原因だ。ニューハンプシャー州の共和党は、アイオワ州の共和党に比べて、リバータリアンに近い。PBSによると、ヒラリーは17の選挙事務所を設置しているが、トランプは1カ所だ。アド・エイジによると、ヒラリーと支持者たちはボストンまで含めて、700万ドルを投じて放送枠を確保しているが、トランプは放送枠を買い取っていないということだ。
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