古村治彦です。
今回は、『ブルームバーグ』誌の森友学園・塚本幼稚園を巡るスキャンダルに関する記事をご紹介します。そして、この記事を書いた記者が昨年に行った安倍昭恵さんへのインタヴューを基にした記事を併せてご紹介します。
イザベル・レイノルズ記者は、安倍昭恵さんにインタヴューを行い、それが記事になったのが昨年の12月、そして、先週の金曜日に、森友学園スキャンダルについて記事を書いています。これまでご紹介した他の欧米の新聞や雑誌に比べて、ややトーンがやわらかく感じるのは、やはり記者自身が安倍昭恵さんと直接会って話をしているということが影響しているのだろうと思います。安倍昭恵さんは直接話せば、魅了されてしまうような魅力を持っている人なのだろうと推察されます。しかし、綺麗なバラにはとげがあるとも言います。
安倍昭恵さんのインタヴューを読むと、彼女の中に、「アメリカに占領されてしまって、アメリカ文化が入ってきたために、日本の良い部分が失われた」という考えが確固としてあることが分かります。明恵さんが大麻解禁に熱心なのは、戦後に大麻の栽培がアメリカによって禁止されて、それで神道の儀式で使う麻繊維が日本製ではなく、中国からの輸入に頼るようになったからだということが分かりますし、彼女が開いたレストランでは、日本で採れた食材のみを使っているのもその延長でしょう。彼女の中で、大麻解禁と瑞穂の國記念小學院の名誉校長になることは矛盾しないのはそのせいです。この点では、結局安倍昭恵さんと安倍晋三さんはぴったりのご夫婦であり、このご夫婦が分業して、「アメとムチ」をやって、人々の支持を惹きつけてきたことが現在の状況を生み出しています。ですから、「アメ」である昭恵さんの存在は厄介なものです。今回のスキャンダルでしかし、この危険性が明らかになっていくと思います。
彼女のインタヴュー記事を読んだ後で、スキャンダルをめぐる記事を読むと、やや擁護している感じがするなという印象を持ちます。
レイノルズ記者は、「安倍首相は今週、国会で「私は公人ですが、妻は民間人です。妻を犯罪者化のように取り扱うことは極めて不愉快です」と発言した」と書いています。これは確かにそのような発言はありましたが、質問者は誰も安倍昭恵さんを犯罪者であると発言していません。それどころか被害者ではないのかという懸念を示唆している人たちもいます。これは阿部首相自身の変な印象操作による、答弁逃れでしかありません。そうした文脈を無視して、この発言を特別に取り上げている点で、少し擁護しているんだろうと思われます。
安倍首相の支持率が高いこと、自民党の党大会で総裁任期が3年、3期までということで、戦後では最長の10年の首相在任と言うことも視野に入ってきました。安倍首相の人気を支えてきた一つの要素として、昭恵さんの行動と存在があるのは間違いないところです。しかし、森友学園の報道が続いていく中で、安倍首相の在任期間が10年に届くかどうか、少し心許なくなってきていると言えるでしょう。
(貼りつけはじめ)
●「党大会を前に幼稚園を巡るスキャンダルが安倍首相に付きまとう(Kindergarten
Scandal Dogs Abe Ahead of Party Meeting)」
イザベル・レイノルズ筆
ブルームバーグ
2017年3月3日
https://www.bloomberg.com/politics/articles/2017-03-02/nationalist-kindergarten-scandal-dogs-abe-ahead-of-party-meeting
●安倍首相は妻の学校との関係、更に土地取引の件で厳しく追及されている
●トランプとの会談で上がったが支持率が6ポイント下落と日経新聞が報道
日本の歴史上、最長の在任期間を誇る首相になるための段階に進む前のこの数日間、安倍晋三首相は妻と国家主義的な教育を行う幼稚園を巡るスキャンダルに対峙している。
安倍氏が首相になって4年間が過ぎた。この週末、与党である自由民主党の党員たちは、安倍首相が党の総裁に3期連続在任することができるようにするための規則の改定に無条件の賛成を示そうとしている。これによって、安倍氏の首相在任が10年に及ぶ可能性も出てきた。
安倍首相の支持率は概して安定している。世論調査の数字では、彼の支持率の李悠馬は良く分からないが、安倍首相の政権担当期間中に失業率が1990年代中盤の数字にまで下がっていること、野党第一党の民進党が2012年の総選挙での惨敗の後で再建に苦闘していることが考えられる。
それでも、今週末の彼の大勝利の瞬間が森友学園を巡るスキャンダルで怪我される危険が出てきている。森友学園は大阪で幼稚園を運営しており、この幼稚園は戦前の国家主義的な要素を含むカリキュラムでの教育を行い、安倍首相を支持しているということが明らかになった。
森友学園が、野党側が述べているように評価額よりもかなり低い値段で土地を購入できたことについて、いくつも疑問が浮上している。この土地取引は、森友学園が小学校を開校して業務を拡大しようとした計画の一部である。
●ゴミのある土地(Waste Site)
安倍首相や昭恵夫人(学校の名誉校長に就任させられた)が土地取引に関与したことを示す証拠は出てきていない。そして、学園の理事長である籠池泰典氏は土地の価格について政治家に働きかけを行ったことはないと述べた。籠池氏は産経新聞の取材に対して、敷地内から実際にゴミが見つかったと答えた。
安倍首相はこの問題から距離を取ろうと努めている。そして、土地取引に関して、自身もしくは昭恵夫人が関わっていることを示す証拠が出たら辞職すると述べた。そして、木曜日、いかなる調査にも協力すると表明した。野党の山本太郎議員は、証拠を出してもらうために、昭恵夫人に国会に出席してもらって質問を受けてもらうように求めた。
今回の問題は国家審議の多くの時間を占め、マスコミにとっては格好のテーマとなっている。月曜日に発表された日経新聞による世論調査では、安倍首相に対する支持率は6ポイント下がり、60%であった。2月に行われたドナルド・トランプ米大統領との首脳会談の後に上昇した支持率は少し低下した。それでも、政治アナリストであるスティーヴン・リードは、安倍首相は「各種のスキャンダルに上手に対処している」と述べている。
●中国の反応(China Reacts)
政治腐敗に関する著書もある東京にある中央大学の政治学教授スティーヴン・リードは、「大事なことは人々を素早く切り捨てること、そして、何も嘘はないと明らかにすることです。しかし、安倍首相は妻を切り捨てることはできませんし、野党側は、このことをニュースにすることに成功しています」と述べた。
中国の国営メディアもこの騒ぎを報道している。日中両国は現在、領土と安倍首相の軍隊の役割を拡大させようという努力を巡って緊張関係にある。新華社通信は木曜日、記事の中で、「火のないところに煙は立たないものだ」と書いた。
塚本幼稚園は、子供たちに天皇の写真に頭を下げさせること、19世紀に出された教育勅語を暗唱刺させることで知られている。こうした行為は第二次世界大戦での日本の敗戦後、行われなくなったものだ。先月、幼稚園は、「外国人の間で誤解を引き起こす可能性」を持つ表現を使ったことについて謝罪した。共同通信によると、籠池園長は韓国人と中国人に対する差別的な発言を行った疑いで調査が行われた。
昭恵夫人は予定されていた役職から身を引いたが、森友学園との妻との関係を巡って国会では安倍首相への追及が続いている。今週、フジテレビで放映された映像の中で、昭恵夫人が幼稚園を訪問し、園児たちが「日本と日本人のために働いている安倍晋三内閣総理大臣を献身的に支えている」ことに感謝するという言葉を大きな声で一斉に述べた時に、涙を流した様子が映っている。
安倍首相は今週、国会で「私は公人ですが、妻は民間人です。妻を犯罪者化のように取り扱うことは極めて不愉快です」と発言した。
昭恵夫人は昨年にブルームバーグが行ったインタヴューの中で、日本は、西洋文化を取り入れたことで、アイデンティティのいくつかの要素を失ったように感じていると述べた。
自民党所属の参議院議員で元防災大臣の鴻池祥肇は記者たちに、森友学園から献金は受けたが、土地取引に関しての助力を求められたが拒否したと述べた、と水曜日に読売新聞が報じた。
テンプル大学日本校の非常勤研究員であるマイケル・キューセクは、YouTubeにアップした動画の中で、幼稚園のカリキュラムよりも、学園を巡るお金の動きの方が安倍首相を傷つける可能性があると述べた。
今回の自民党大会は、「安倍氏にとっての戴冠式となるはずであったが、にわかに彼がこれまで経験したことのないスキャンダルが起きた」と、キューセクは述べている。
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●「日本のファースト・レディーは安倍氏への家庭内ホットラインで批判を行う(Japan’s
First Lady Offers Critics a Household Hotline to Abe)」
イザベル・レイノルズ、エミ・ノブヒロ筆
ブルームバーグ
2016年12月5日
https://www.bloomberg.com/news/articles/2016-12-04/japan-s-first-lady-offers-critics-a-household-hotline-to-abe
●安倍昭恵夫人は貿易、原子力発電、国防政策に反対している
●総理大臣夫人のフェイスブックのタイムラインには平和への願いがつづられる
高い支持率を誇る安倍晋三氏は、現代史において最長の在任期間を誇る首相となる可能性も囁かれている。そのような安倍首相にはひとりよがりになるリスクがある。そこで、29年間、安倍首相の妻をしている安倍昭恵氏の出番だ。
日本の大製菓会社の家に生まれ、現在54歳になる昭恵氏は、日本では、「家庭内野党(the
household opposition)」として有名だ。これは、昭恵氏が、TPP貿易協定、原子力技術の輸出の拡大、沖縄における米軍基地の拡大といった安倍氏の政策に反対を表明しているからだ。
先週、東京の中心部で4年前に彼女が開店したレストランでインタヴューを行った。昭恵氏は、「私の夫や近い人々には届かないような考えを取り上げて、伝えたいのです。これが野党のようだと思われたんだと思います」と語った。
昭恵氏は伝統的な首相夫人のイメージから離れようとしている。伝統的なイメージは、妻は夫に従い、裏で色々と助けるというものだ。更に驚くべきことは、安倍首相の政策に対する批判を表に出すことが、62歳の保守派の論客にとってアピールとなっているということだ。
元経済産業省の官僚で、現在は明治大学国際総合研究所客員研究員の奥村準は次のように語っている。「昭恵氏はこれまでの首相夫人の枠では捉えきれません。日本国内の誰も、アメリカのファースト・レディーでも、あの方のようには行動できないでしょうね。興味深いことは、昭恵氏の行動や言動が安倍首相を傷つけていないということです。実際には、安倍首相のイメージを和らげています。安倍首相は全く異なる考えや視点を許容できているという風にです」。
●ソーシャル・メディア(Social Media)
「Uzu」という名前のオーガニック食材を使う小さなレストランでインタヴューは続いた。昭恵氏は、人々から聞いた批判的な意見を夫に伝える時にはそれに適した時間とタイミングに行うようにしようとしていると述べた。
昭恵氏は、「毎日、野党の方々が批判されていて、私が家に帰ってきて批判を始めたら、夫は止めてくれと言うでしょうね」と語る。続けて、「妻として、夫をあまり攻撃したくないと思うときももちろんありますが、時には、どうしても言わなければならないことがあると思うときもありますよ」とも述べる。
昭恵氏は日本の総理大臣夫人では初めて積極的にソーシャル・メディアを活用している。彼女のフェイスブックのページには彼女の考えについて、多くの賞賛と批判の声が寄せられる。フェイスブックでは10万以上のフォロワーを持っている。彼女は口汚い書き込みをするフォロワー以外にはブロックすることはない。
彼女は今年11月にフェイスブックに書き込みを行いその中で、「世界平和について語る前に、私自身のタイムライン内での平和を達成したいのです」と書いた。
昼食をともにしながらのインタヴューの中で、「中には、私に大きな期待を寄せて下さる方もいます。夫とは逆の意見を持つ方で、私に対して夫にもっと強く言うようにと批判する方もいます。私たち夫婦の間で意見が異なるのにどうして一緒にいられるのかと質問する方や離婚しなさいと言う方までいるんですよ」と言って、昭恵氏は笑った。「ほっといてください、ですよね」。
●メディアの注目(Media Storms)
昭恵氏は、幼稚園から高校まで、上流の過程の子女が通うカトリック系の学校に通った。そして、女性だけの専門学校に進学した。彼女は卒業後、日本最大の広告会社である電通に入社した。電通の上司が安倍氏を紹介する算段をした。今年初めのある雑誌のインタヴューの中で、子供を授からなかったことについてあれこれ言われることに対して、苦言を呈した。
昭恵氏の行動はしばしば彼女の言葉よりも雄弁だ。今年8月、彼女は、警察による警備や秘書の同行もなく(without a police escort or secretaries)、予告なく沖縄を訪れた。彼女は沖縄本島北部のアメリカ軍のヘリパッド建設反対の人々の許を訪れた。彼女は、夫には反対される恐れがあったので、相談しないで訪問したと述べた。
メディアが注目したもう1つの行動が、8月の後半にハワイのパールハーバーで祈りをささげる姿であった。パールハーバーは日本が奇襲をかけた場所で、この攻撃によって、アメリカは第二次世界大戦に引きずり込まれることになった。彼女の弧の行動が、安倍首相の日本首相初のパールハーバー訪問を促したという見方も出たが、公式訪問がこのように急に決まるということはない。
安倍夫妻は合わないようで合っているカップルだ。そんな2人は1945年から1952年まで続いたアメリカの占領時代よりも前の日本の様々な側面を称賛する点では一致している。安倍首相はたびたび、「戦後レジーム」を批判し、軍隊の役割を拡大するためにアメリカが草案を作った憲法を書きなおそうという熱意を持っていることで知られている。昭恵氏は文化面に興味を持っており、言語と自然により集中している。
昭恵氏は自身でオーガニックの米を作っている。そして、日本で取れた食材だけを使った食事を提供する彼女のレストランでその米を出している。彼女はまた、首相公邸に設置しているミツバチの巣箱では日本のミツバチを飼っていると述べた。ヨーロッパのミツバチの方がより多くのハチミツを作るがそれでも日本のミツバチを飼っていると述べた。
「戦後、ヨーロッパとアメリカの文化が入ってきて、日本はもともと持っていたものを弱められてしまったと考えています」と昭恵は述べた。
昭恵氏は西洋においては自然をコントロールしようと試みると述べる。そして、これは、2011年の大震災の時に起きたレヴェルの大津波から地域を守るために東北地方で進められている巨大な堤防作りもそれと同じだと述べている。
●大麻関連産業(Hemp Industry)
昭恵氏はまた日本の大麻関連産業が失われたことを残念に思っている。アメリカが占領するまで、日本では大麻関連産業が栄えていたが、現在では、33の農家に栽培許可が与えられているだけだ。1954年には3万7000の農家が栽培していた。昭恵氏は、長い間、日本独自の宗教である神道の儀式で麻繊維が使われてきたが、今はその大部分を中国からの輸入に頼っていると語った。
昭恵氏は精神に作用しない大麻の栽培と医療目的でのマリファナの使用を主張している。医療用マリファナを支持した参議院議員が辞職したことから、ここ数か月、始まったばかりの医療用マリファナの合法化を目指す運動に対する批判が起こっている。
「私はこれまで大麻を吸ったことはありませんし、大麻吸引には賛成ではありません」と述べたが、大麻の産業目的、医療目的での使用まで全て禁止するのは正しくないと考えているとも述べた。
安倍氏は2006年に1年だけ首相を務めた。それ以降、昭恵氏はスポットライトを浴びる生活を送るようになった。昭恵氏は夫である安倍晋三氏が3期連続で自民党の総裁に留任し、首相を続けることは素晴らしいことだと考えている。特に、ドナルド・トランプが大統領選挙に当選して、アメリカの政策ははっきりしない時に、世界に強力な指導者として安倍晋三氏が存在することは素晴らしいことだと考えている。
昭恵氏は、「私の夫が再び総理大臣になれたのは、努力のせいではなく、運命というべきものです。日本は今、大きな役割を果たす時です」と語った。
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