古村治彦です。
以前、このブログでもご紹介しましたが、アレクサンドリア・オカシオ=コルテス(AOC)連邦下院議員(ニューヨーク州選出、民主党)は、大統領選挙民主党予備選挙で支持率トップを快調に走っているジョー・バイデン前副大統領について「ワクワク感がない」と切って捨てる発言をしたことをご紹介しました。
今回は、AOCがサンダース支持、バイデン批判を行ったという記事をご紹介します。AOCが連邦議会にエド・マーキー連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)と共同でグリーン・ニューディール法案を提出し、連邦下院では可決されましたが、連邦上院では討論に付される前に採決が行われ、否決されました。グリーン・ニューディールは、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、炭素排出量をゼロにする、そのために政府主導の大型インフラ整備を行う、その中で雇用保障プログラムを組み込むというものです。日本でも2009年頃に環境省で、「日本版グリーンニューディール」として議論が行われたということです。
このグリーン・ニューディールを推進しようという集会がワシントンにあるハワード大学で開催され、AOCとバーニー・サンダースが別々に登壇しました。AOCは演説を行い、その中で、「これまで何もしてこなかった政治家たちに期待できない、そんな人が中道的な、中途半端な政策を主張しながら帰ってこようとしている、」という発言を行いました。
これは名指しはしていませんが、バイデンを標的としたものです。これに対して、バイデンは自分のこれまでの行動をよく見て欲しいと反応しました。
バイデンは連邦上院議員を長く務めましたが、批判を受けそうな行動としては、イラク戦争開戦に賛成したというものがあります。サンダースやAOCはこれからその点を批判するでしょう。
しかし、バイデンの支持率は堅調で、平均で40%に迫る勢いで、二番手のサンダースは20%を維持するのが精一杯、その他の候補者たちは二桁の支持率にと届かないという状況です。3番手にはエリザベス・ウォーレンが上がってきています。ウォーレンは政策提言のペーパーをどんどん発表し、ペーパーの質と量では一番だという評価を受けていますが(ハーヴァード大学法科大学院教授でしたからペーパーは得意でしょう)、他のパフォーマンスが良くないという状況です。
カマラ・ハリスは私の見るところ、バイデンとの関係を深め、副大統領両候補狙いではないかと思います。ハリスはメリーランド州ボルティモア(ワシントンから拘束を使って車で1時間くらい)に選対本部を置いています。アムトラックというアメリカの鉄道を使って移動しているのですが、連邦上院議員時代にアムトラックで通勤したバイデンとアムトラックで遭遇して仲良く話すという様子を以前に撮影されて(させて)いました。バイデンとしても女性を副大統領候補として戦うのは悪くない選択肢になると思いますし、ハリスがリベラル派であるので、そこにもウイングを広げることが出来ると考えているでしょう。しかし、今のところはバイデンもハリスも有力候補なのですから、ハリスが下りるということはないでしょう。
ブティジェッジは頭打ちという状況です。非白人への浸透がうまくいっていないことと知名度の低さという弱点が見えてきました。しかし、そこまで悲観的ではないでしょう。今回、全国規模の政治にうまくデビューでき、将来もある身ですから、まずは選挙を頑張って、どの方向に進むかを決め、そして最終的にアメリカ大統領の座を狙うということになるでしょう。若さは特権であると改めて思います。
サンダースは頼みの若い有権者層での支持率が下がっていることがあきらかになりました。下がっているといっても、バイデンにはまだ一定のリードを保っていますが。サンダース躍進のエンジンとなったのは若い人たちですから、この人たちのあ台での支持率が下がるということは勢いを失うということになります。
AOCはまだ正式にサンダースへの支援を表明していません。サンダースとウォーレンを支持するという発言はしています。サンダースにしてみれば、AOCの支援はとっておきの最終兵器で、これを早めに使うと残りの切り札が亡くなってしまうことになるので使いたくないでしょう。何とか自分の力で勢いを取り戻したいところでしょうが、実態は既にAOCがバイデンを攻撃していることで、AOCの支援を受けているということになります。
(貼り付けはじめ)
バイデンとの戦いで、サンダースはオカシオ=コルテスの支援を受けている(Sanders gets assist from Ocasio-Cortez against Biden)
エイミー・パーネス筆
2019年5月14日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/443717-sanders-gets-assist-from-ocasio-cortez-against-biden
バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァ-モント州選出、無所属)は、アメリカ大統領選挙民主党予備選挙において、ジョー・バイデン前副大統領に対抗するための「新兵器」としてアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(ニューヨーク州選出、民主党)を利用している。
月曜日夜、サンダースはオカシオ=コルテスと一緒にワシントンにあるハワード大学を訪問した。オカシオ=コルテスが2018年の民主党予備選挙で当時の現職連邦下院議員ジョセフ・クローリーに挑戦する際に、勢いをつけたのがサンダースであった。
オカシオ=コルテスは正式にはサンダース支援を表明していない。しかし、オカシオ=コルテスは民主党予備選挙で支持率トップを続けているバイデンを攻撃することで、サンダースの恩に報いている。バイデンは3週間前に正式に大統領選挙に出馬して以降、各世論調査での支持率の数字を上げている。サンダースにとって新たな高い壁となっている。
月曜日夜、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスは気候変動に関する「中道的な(middle-of-the-road)」計画を批判したが、これはバイデンを標的にした攻撃であることは明白であった。バイデンの中道主義をサンダースのよりリベラルな政策と比べて際立たせようというものであった。
オカシオ=コルテスはハワード大学で開催されたグリーン・ニューディール計画の実施を訴える集会に出席し演説を行った。彼女は次のように演説を始めた。「私は驚いた。数十年にわたり行動することを拒絶してきた政治家が今になって帰ってこようとしている。そして、私たちの命を守るために中道的なアプローチを採用しなくてはならないなどと述べている」。
火曜日、バイデンは反撃を行い、オカシオ=コルテスに対して、「私のこれまでの行動に関する記録を見ろ」と述べた。
ニューハンプシャー州で選挙運動を行っている途中、バイデンは記者団に対して次のように語った。「私が中道的なことを述べたことなど聞いたことはないはずだ。環境問題について中道的な態度を取ったことはない。彼女に私の発言をチェックし、私の行動記録を見るように伝えて欲しい」。
オカシオ=コルテスは、正式な支援を表明している訳ではないが、77歳になるサンダースの有力な代理人となっている。
サンダースとアレクサンドリア・オカシオ=コルテスは共に民主社会主義者であり、若い有権者たちの間で人気が高い。若い有権者層の支持ではサンダースはバイデンを凌駕している。
オカシオ=コルテスは若い有権者の間でのサンダースの支持を高める力を持っている。そして、バイデンに追いつくために他の候補者たちと戦っているサンダースに人々とメディアの関心を集めさせることもできる。
サンダースの側近のある人物は「アレクサンドリアはより多くの支持者に主張を届けるための手助けとなる。彼女が話せば、皆が耳を傾ける」と述べた。
オカシオ=コルテスがサンダースを支援するかどうかは明確ではない。彼女はエリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出、民主党)に好意を持っていることを示唆している。
先月、オカシオ=コルテスはポッドキャストで「ヤフー」の取材に対して次のように述べた。「私はバーニーを心から支持している。また、エリザベス・ウォーレンが提案している内容を見てとても印象深いとも思う」。
民主党系のストラティジストたちは、オカシオ=コルテスの支持がどの候補者にとっても助けになると述べている。
民主党系のストラティジストであるアダム・パークホメンコは次のように語っている。「選挙に出ている人なら誰でも彼女の支持を欲しいはずだ。彼女は民主党のリーダーの一人であり、闘士でもある。彼女の支援を受けられることになれば、多くの候補者にとって、ゲームの状況を一変させることになる」。
最近になって、サンダースはバイデンに対してかけるプレッシャーを高めている。サンダースはバイデンが進歩主義的ではないことをハッキリさせようとして政策面でバイデンを批判している。
サンダースの側近は「バイデンは進歩主義的ではない、という点を明確にすることがバー
この人物は続けて次のように述べた。「バーニーは、バイデンが自身でそう主張しているように進歩主義的ではないということを明らかにし続けることに賭けている。バーニーもバイデンも長年にわたり連邦議会議員を務め、その時の記録が残っている。両社の採決の投票行動の結果は対照的な違いがある」。
バイデンが支持率を上げている中で、オカシオ=コルテスと一緒にイヴェントに出席することで勢いをつけようと考えている。
民主党系のストラティジストであるジム・マンリーは「サンダースは、オカシオ=コルテスがもたらしている政治状況を何とか利用しようとしている」と述べた。
月曜日、CNNの記者がオカシオ=コルテスの発言が民主党予備選挙にいかに重要であるかという質問をサンダースに対して行った。サンダースは「彼女は新しいグリーン・ニューディールに関わる気候変動の問題について大変に活発に活動しています」と答えた。
しかし、記者がサンダースに対してオカシオ=コルテスの支援を求める考えはあるかと質問した時に、インタヴューを打ち切ってしまった。
サンダースは記者に対して、「私たちは地球を救うことについて話しているのに、あなたは政治の話をしようとしていますね」と述べてインタヴューを打ち切った。
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世論調査:若い有権者の間でのサンダース支持が急激に下がっている(Poll: Sanders support among young voters drops sharply)
ジョナサン・イーズリー筆
2019年5月14日
『ザ・ヒル』誌
https://thehill.com/homenews/campaign/443547-poll-sanders-support-among-young-voters-drops-sharply
バーニー・サンダース連邦上院議員(ヴァーモント州選出、無所属)の若い有権者の間での支持率が急落していることが最新の世論調査の結果で明らかとなった。若い有権者の支持によってサンダースは民主党内で台頭してきたという背景がある。
モーニング・コンサルト社の世論調査の結果によると、18歳から29歳までの有権者の間でのサンダースの支持率が3月には45%だったものが5月には33%に下落していることが分かった。
2016年、サンダースは最も若い年齢層からの支持を受け、民主党予備選挙でヒラリー・クリントンに挑戦した。しかし、今年2月の支持率46%を記録して以降、数字は下がり続けている。
ジョー・バイデン前副大統領は民主党予備選挙において他の候補者たちに大きなリードを保っている。バイデンの支持率は39%で、それに続くのがサンダースの19%、エリザベス・ウォーレン連邦上院議員(マサチューセッツ州選出)とカマラ・ハリス連邦上院議員(カリフォルニア州選出)の8%、インディアナ州サウスベンド市長ピート・ブティジェッジの6%、ビトー・オローク前連邦下院議員(テキサス州選出、民主党)となっている。
若い有権者たちの間でのバイデンの支持率は、先月の調査では20%だったが、最新の世論調査では24%に上がっている。ウォーレンの支持率も上昇傾向にあり、こうしたことがサンダースの支持率の下落に結びついた。
バイデンは若者層以外の全ての年齢別グループにおいて支持率でトップを記録している。年齢層が高くなるほど、バイデンと他の候補者たちとの差は大きくなっている。
30歳から44歳のグループにおいては、バイデンはサンダースに7ポイントの差をつけている。45歳から54歳のグループでは23ポイント、55歳から64歳のグループでは31ポイント、65歳以上のグループでは54ポイントの差をつけている。
モーニング・コンサルト社のインターネットを利用した世論調査は2019年5月6日から12日まで民主党予備選挙に参加予定の15342名の有権者を対象に実施された。誤差は1ポイントである。
(貼り付け終わり)
(終わり)
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