古村治彦です。
今年秋の第20回中国共産党大会で習近平の任期延長が決定されると、中国共産党指導部第6世代が最高指導者となる芽がなくなってしまうことになる。習近平が2032年まで中国共産党総書記、2033年まで国家主席を務めるということになると、10年後には第7世代(1970年代生まれ)が最高指導部の適齢期となる。この10年で第7世代が人事面で抜擢、昇進していくだろう。その顔ぶれを見ておくことはこれからの10年にとって重要である。
1970年代生まれの第7世代は現在、地方の各省の最高幹部(常務委員や副省長など)を務めている。それぞれが金融(銀行)、港湾管理、鉄鋼などの専門分野を持ち、専門分野で成果を挙げて、行政部門へと異動となったのがだいたい2018年後半のようだ。既に、中央の最高指導部(政治局常務委員7名を含む政治局委員25名)もしくはそれらを含む中央委員(200名)に入る競争が始まっている。中国の人口を考えるとこうした最高指導部に入るのは至難の業である。
習近平体制になって、幹部抜擢の要素としては「政治的道徳性」が必要であるようだ。汚職に手を染めず、習近平体制に忠誠を誓うということが必要なようだ。これから下にある記事にある人物たちが中国政治の表舞台に出てくることになるということで、その顔と名前を今から見ておくことは有意義なこととなる。
(貼り付けはじめ)
中国政治
解説:共産党の台頭するスターたち:のちに最高指導部層に達するかもしれない中国の第7世代指導者たち(Explainer | Communist Party rising stars: China’s seventh-generation
leaders who may eventually reach the top)
・競争者たちの多くは観光振興、港湾管理、都市計画などの専門分野の経験者が多い。
・1960年代生まれのトップ指導者たちは、トップポストへの挑戦というより、定年まで習近平の下で働き続けることになりそうだ。
ウィリアム・ジェン筆
2021年6月26日
『サウス・チャイナ・モーニング・ポスト』紙
https://www.scmp.com/news/china/politics/article/3138537/communist-party-rising-stars-chinas-seventh-generation-leaders
中国は来年開催される5年に1度の全国代表大会で、次の大規模な指導部再編を発表する予定だ。そこでは、共産党の最高権力機関である中央委員会(200人)への昇格が、習近平国家主席の将来の後継者となり得るかどうかが注視されることになる。
中央委員会のメンバーになることは、25人の政治局、より排他的な政治局常務委員、さらには総書記のポストへと、党内でさらに昇進するための前提条件だ。
1970年代生まれは「第7世代」と呼ばれ、多くの幹部が定年を迎える中、権力中枢への進出が期待されている。
共産党研究の歴史家たちは、毛沢東、鄧小平、江沢民、胡錦濤、習近平と、歴代の最高幹部たちを特徴づけしてきた。しかし、習近平は2期目以降も留任するようで、第6世代を構成する1960年代生まれの幹部は、自らトップの座を狙うのではなく、定年まで習近平の下で働き続けることになりそうである。
第7世代の高官たちは、各省の事実上の意思決定機関である省レヴェルの党政治局常務委員を務めているか、党組織や政府でトップの地位に就いている。彼らには最高の地位まで上昇する機会がある。彼らの多くはまだ省レヴェルの党常任委員会の下位のポジションにいる。例えば秘書長(secretary general)といった地位だが、これは大抵の場合には常任委員会の中で一番下の地位となる。劉洪建、劉捷、時光輝といった少数の人物たちは治安部門や党の人材部門担当でより高い地位に就いている。これには彼らの個別の能力をテストしようという北京の思惑が見える。
第7世代は中国全土の出身であるが、いくつかの共通点を持っている。彼らは最低限でも大学の卒業生であり、将来の承認に備えて中国共産党中央党学校(party’s Central Party School)で学んだ経験を持つ。
彼らの多くはいくつかの専門分野を持っている。それらは観光振興、港湾管理、都市計画、ハイテク地区開発である。
私たちは第7世代の中で、既に省レヴェルの党常任委員となっている有望人物たちを年齢が若い順に紹介していく。
■劉洪建(Liu
Hongjian、1973年-、48歳)
今年5月、劉は雲南省政法委員会(Yunnan Political and Legal
Affairs Commission)書記に昇格し、中国で最年少の省レヴェルの党委常務委員となった。雲南省政法委員会は省内の治安と法執行部門を監督する組織である。
中国南東部の福建省寧徳市福鼎市に生まれ、福建省で最も貧しい地域の1つである寧徳市で20年以上を過ごした。習近平は1988年から1990年にかけて寧徳市党委書記を務めた。
2012年、劉は福建省の観光振興をリードする役職に昇進し、その後、2018年7月に南平市長に就任した。
劉は2020年7月に雲南省の副省長に就任するために福建省を離れた。
■呉浩(Wu Hao、1972年-、49歳)

第7世代で2番目に若い人物である。中国の南西部の江西省党政治局常務委員、省党委書記を務める。
彼の同僚たちと同様、呉は、キャリアのほとんどを故郷の河南省で過ごし、河南省の交通部門や住宅・都市農村開発部門の責任者にまで上り詰めた。
呉は河南省を離れ2020年3月に江西省副省長に就任し、2021年6月1日に現職に昇格した。
■費高雲(Fei Gaoyun、1971年-、49歳)

費高雲は1月に、江蘇省東部の党常務委員兼政法委員会書記に就任した。
中国で尊敬を集める初代首相の周恩来の故郷である江蘇省淮安市に生まれ、電子工学の学位を取得後、江蘇省でキャリアを積んできた。
2008年に江蘇省儀徴市の党委書記、2012年に南通市、2017年に常州市の党委書記を務めるなど、様々な指導的役割を担ってきた。
2018年に江蘇省副省長に就任した後、3年後に省党常務委員会に入り、3年後に現職に就いた。
■諸葛宇傑(Zhuge
Yujie、1971年-、50歳)
諸葛宇傑は2017年5月に上海市党常任委員と党委秘書長に昇進した。
諸葛は中国の金融部門の首都とも言うべき上海で生まれ育ち、キャリアの全てで過ごしてきた。上海の港でキャリアをスタートさせ、上海国際港務グループのCEOまで上り詰めた後、2013年に区長として上海市楊浦区のトップに赴任した。
2016年に副秘書長として上海市党委員会に昇格し、2017年に現職に昇格した。
■劉強(Liu Qiang、1971年-、50歳)

劉強は東部山東省の副省長から、2020年6月に省党常務委員、省党委員会秘書長に昇格した。
劉強は他の多くの同業者と異なり、1993年に国営の中国農業銀行(Agricultural
Bank of China 、ABC)でキャリアをスタートさせた。上海で中国農業銀行の業務責任者を務めた後、2016年に中国銀行の副頭取に転出した。
2018年に山東省副省長に転身し、昨年6月に現在の地位に昇格した。
■連茂君(Lian Maojun、1970年-、50歳)
連は2020年4月から天津自由貿易区の区長と天津市党常務委員を務めている。
遼寧省北部に生まれた連は、ITの学位を取得後、キャリアの大半を省都の瀋陽で過ごした。2016年に瀋陽市政府の秘書長に昇格するまでの10年以上、瀋陽の様々なハイテク区の発展をリードしてきた。
2019年11月に北京近郊の主要工業都市の副市長として天津に赴任し、その5カ月後に現職に昇格した。
■周紅波(Zhou
Hongbo、1970年-、50歳)
周紅波は2021年1月、南部の海南省にある有名な観光都市である三亜の党委書記、省党常務委員に任命された。
海南省に赴任する前は、主に出身地である広西チワン族自治区で仕事をしていた。農業の専門家であり、同自治区の農業部門を経て、広西チワン族自治区の州都である南寧市の副市長に昇進した。そして、2011年、南寧市長に就任した。
2020年12月に海南省に移動し、1か月後には現在の地位に就いた。
■李雲沢(Li Yunze、1970年-、50歳)

東部の山東省出身の李雲沢は、2021年5月に四川省の党常務委員と南西部地区担当の副省長に昇格した。
土木工学とマルクス主義理論の学位を持つ李雲沢は、山東省の劉強と同じく、国営の中国建設銀行で20年以上働いた。2016年、中国最大の国有銀行である中国工商銀行(Industrial and Commercial Bank of China、ICBC)の副頭取に転出した。
彼は銀行を離れ、2018年に四川省副省長に就任した。現在の党職への昇進はそれから20カ月後のことだった。
■夏林茂(Xia Linmao、1970年-、51歳)
夏林茂は、2021年2月に北京市教育委員会主任と北京市党常務委員に就任した。
清華大学を卒業し、建築を専攻した夏林茂は工学博士号を取得している。 北京の都市計画委員会で20年近く過ごし、2011年に北京市石景山区長に昇格した。
教育担当の前に、2017年に北京市美雲区、2018年に東城区の党委書記をそれぞれ務めた。
■劉捷(Liu Jie、51歳)
劉捷は2016年5月に東南部の江西省党常務委員会に入り、省党委員会秘書長を務めた。1970年代生まれの政府高官として初めて省党常務委員に就任したことになる。
2018年5月に南西部の貴州省に異動し、同省の常務委員と常務委員会秘書長に就任した。2020年7月には、貴州省の幹部人事を担当する省党組織部長に昇格した。
劉捷は北京科学技術大学冶金学科を卒業し、共産党創立者の毛沢東が生まれた湖南省中部の湘潭市の国有製鉄所で16年間勤務した。
2008年に湖南省商務庁長に昇進し、2011年に江西省新余市の市長に転出した。
時光輝は2018年11月、南西部貴州省の省政法委員会書記と省党常務委員に就任した。
東部の安徽省に生まれた時光輝は、上海の同済大学道路交通工学科を卒業後、上海市工程建設発展有限公司(Shanghai Municipal Engineering Construction Development Co., Ltd.)で15年間勤務した。2005年には上海市工程管理局副局長に就任した。
2006年から2011年まで上海市江南区と奉賢区で指導的立場を務め、2013年に上海市副市長に就任した。
2018年に貴州省に赴任し、現職に就任した。
その他の人々も見ていく。
以下のメンバーは、現在、地方の党常務委員ではないが、重要なポストを歴任しており、また、党内の出世競争で先頭走者であり、将来の指導者候補と目される人物である。
■郭寧寧(Guo Ningning、1970年-、50歳)

郭寧寧は2018年から東南部の福建省の副知事を務めている。1970年代に生まれた女性党員で唯一、地方の指導者階級に到達している。彼女は地方政権に入る前に、中国銀行と中国農業銀行で豊富な銀行経験を積んだ。
■覃偉中(Qin Weizhong、1971年-、50歳)
覃偉中は中国のハイテク産業の「首都」である深圳市の最年少市長に、2021年5月に正式に就任した。名門清華大学を卒業し、現在の中国共産党中央組織部長の陳希(Chen Xi、1953年-、68歳)の子飼いとして広く知られている。
■周亮(Zhou Liang、1971年-、50歳)
周亮はキャリアの最初で現在国家副主席を務める王岐山の筆頭秘書を務めていた。2018年3月には中国の金融部門の監督機関である中国銀行保険監督管理委員会(China Banking and Insurance Regulatory Commission、CBIRC)の副主席に就任した。
■李欣然(Li Xinran、1972年-、49歳)

李欣然は、そのキャリアのほとんどを中国共産党の反腐敗組織で過ごした。現在、中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)の懲戒部長を務めており、中国共産党の懲戒機関である中央紀律検査委員会を率いる最有力候補と目されている。
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北京の指導者「第7世代」が表舞台に登場しつつある(Beijing's
"seventh generation" of leaders emerges onto stage)
この記事では1970年代生まれの高官たちを取り上げる。彼らの中の1人が習近平から統治を引き継ぐことになるだろう。最高指導者である習近平は中国共産党総書記の座に2032年までとどまり、国家主席には2033年までとどまることが可能だ。10名の高官たちが党のトップの地位に就くために有利な位置にいる。将来の指導者たちに習近平がまず求めるのは「政治的道徳性(political morality)」である。
林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム)筆
『アジア・ニューズ』誌
2019年4月19日
https://www.asianews.it/news-en/Beijings-seventh-generation-of-leaders-emerges-onto-stage-46812.html


北京(アジア・ニュース)発。習近平が政権を去る決意をした時、誰にその遺産を渡すのだろうか。2018年3月、中国の「指導部の中枢(heart of the leadership)」は憲法を改正し、国家主席の任期の制限を撤廃した。 2020年半ばには、中国共産党「第6世代」の高官の多くが引退を始める。従って、中国の将来の多くは、1970年代生まれの「第7世代(7G)」に属する高官の手に委ねられる。これは、香港中文大学教授で、中国に関するいくつかのエッセイの著者である林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム)が支持するテーゼである。その中で、習近平の後継者として期待される新星たちを紹介している。
●導入-第7世代は次の権力者となりうるのか?
中国の将来のほとんどは1970年代生まれの幹部たちの手に握られている。彼らは中国共産党「第7世代(Seventh Generation、7G)」に所属している。2018年第4四半期、彼らの中から15名ほどが副省長、行政部の副部長、その他同等の地位といった主張な地域的な重職へと昇進した。習近平国家主席が2018年3月に憲法を改正し、国家主席の任期を撤廃したことで、習近平は健康状態が許す限り、80歳になる2032年まで党総書記を、2033年まで国家主席を務める可能性が出てきた(Asia.Nikkei.com:2019年3月15日、香港自由新聞:2018年2月25日)。このことは、習近平が中国共産党指導部のいわゆる「終身核心(eternal core)」として、いずれ第7世代にバトンタッチする可能性を提起している。
1980年代に「改革の偉大な設計者(Great Architect of Reform)」鄧小平(Deng Xiaoping、1904-1997年、92歳で死)が確立した継承方式に従い、「第3世代の核心」江沢民(Jiang Zemin、1926年-、95歳)元国家主席は2002年の第16回党大会で第4世代の胡錦濤(Hu Jintao、1942年-、79歳)に政権を譲り渡した。胡錦濤前主席は2期10年を務めた後、2012年の第18回党大会で第5世代代表の習近平に政権を委ねた。もし習近平が中国共産党の最近の慣例に従うなら、習近平と現在の政治局常務委員の大半は1950年代生まれであり、1960年代生まれの第6世代(sixth generation、6G)の幹部が後継者となるはずである。しかし、習近平が2032年の第22回党大会まで党の最高幹部を務めるとすれば、1960年生まれの新星は72歳であり、中国共産党政治局常務委員会の定年である68歳を4年過ぎていることになる[1]。従って、現在25人いる政治局員のうち、胡春華副総理(Hu Chunhua、1963年-、59歳)や陳敏爾重慶市党委書記(Chen Min’er、1960年-、61歳)など、第6世代の有力者は、習近平の後継者候補から既に外れたようである。
陳敏爾
第22回党大会はまだ13年先であり、第7世代の幹部たちは現在、次官級のポストにしかいないため、誰が次期総書記の政治的手腕と持続力を備えているかを推測するのは時期尚早だ。しかし、大臣クラスの幹部は通常65歳で引退することから、第6世代所属の幹部の多くは2020年代半ばには引退時期を迎えることになる。2018年7月に開催された党組織に関する全国会議で、習主席は「喫緊の要求と長期的な戦略的ニーズに基づき、指導者に関して全ての地域と部門で特定量の優れた若手幹部を育成すべきだ」と指摘した(中国新聞社:2018年7月10日、中国青年報:2018年7月10日)。最高指導者の指示は、その1週間前に開かれた、中国の特色ある社会主義の新時代に向けた「質の高い若手幹部の発掘、伝播、昇格」を目的とした政治局会議の後に出されたものである。政治局は、党指導部の若返りは「国家の長期統治と永続的な安定という目標だけでなく、党の事業に取り組む後継者を確保するための主要な戦略的任務」だと指摘した(新京報:2018年6月30日、新華社:2018年6月29日)。
●中国共産党第7世代の新進気鋭の人物は誰なのか?
1970年代前半に生まれた10人の官僚(図参照)は、その大半が2018年半ば以降に昇進しており、中国共産党の官僚競争の狡猾な回廊の特徴である地位争いで優位に立っているようだ。工業、工学、金融などの経歴を持つこれらのテクノクラート的な新進気鋭の官僚は、ほとんどが地方行政官として活躍している。この10人のうち、省・直轄市の常務委員(常委[changwei]、Member of the CCP Standing Committee、 MSC)に就任したのは3人だ。その3人とは
劉捷(1970年-)は貴州省党委員会の常務委員と秘書長、諸葛宇杰(1971年-)は上海市党委員会の常務委員と秘書長、時光輝(1971年-)は貴州省党委員会の常務委員で、「安定維持(stability
maintenance、weiwen、維穏)」の重要政策を含む政法業務担当をそれぞれ務めている。中国には、党委員会、特に党常務委員(changwei)が政策を決定し、それを同じレヴェルの政府組織が実行するという慣行が長く続いている。よって、ある地域の共産党委員会の常務委員(changwei)は、同じ省・市の副省長や副市長よりも上位に位置する。それは副省長や副市長は常務委員にはまだ就任していないかもしれないからだ(Apple Daily [Hong Kong]:2019年3月25日、サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:2019年1月5日、Jiangsu.sina.com:2019年1月2日、China Economics
Net:2018年12月10日)。
●チャート:中国共産党「第7世代」指導部の主要な台頭しつつある指導者たちChart:
2016年11月、劉捷は46歳で江西省の党常務委員に就任し、第7世代のリーダーとしての記録を打ち立てた。2000年、劉は30歳の若さで湘鋼第二製錬廠の董事長(社長)に就任し、湖南省の鉄鋼業で頭角を現した。2011年に江西省に赴任し、新余市長に就任した。その5年後、江西省委員会の常務委員と秘書長に就任し、劉は大ブレイクを果たした。2018年半ばには貴州省に赴任し、省委員会の常務委員と秘書長に就任した(『新聞[上海]』:2018年5月17日、『捜狐.com』:2018年5月17日)。諸葛宇杰も時光輝も、上海の国営企業でエンジニアとしてキャリアをスタートさせた後、地方の県や都道府県にほぼ相当する市区の行政官となった。諸葛は上海の海事技術部門を経て、楊浦区の党委員会のメンバーに昇進した。45歳で上海市党委員会弁公庁主任となり、昨年、秘書長に昇格した(『聯合早報』[シンガポール]:2018年11月21日、Baidu News:2018年11月20日)。時光輝は上海の名門同済大学を卒業後、15年間、市公共事業当局のさまざまな部署でエンジニアや管理職として働いてきた。上海市静安区の副区長になると、行政に転身した。2011年には奉賢区の党委書記に、2013年には上海市の複数の副市長の1人にまで上り詰めた。2018年末には貴州省の党常務委員に就任した(Phoenix TV :2017年4月24日、Caixin.com:2017年4月24日)。
第7世代の第2グループとしては、主要な省の5人の副知事で構成されている。郭寧寧(1970年-)は、次官相当まで上り詰めた数少ない40代女性の1人である。遼寧省出身で清華大学を卒業後、46歳で中国農業銀行副頭取に就任し、銀行業界でキャリアを積んだ。彼女は2018年末に福建省副省長に就任した。習近平主席が17年間地方行政官として過ごした福建省を担当しているということは、昇進の見込みという点では有利に働く可能性がある(新北京報:2018年11月23日)。今回の第7世代幹部の中で最も若い楊晋柏(Yang Jinbo、1973年-)は、エネルギー分野でその技術力と管理能力を証明した。陝西省出身の彼は、41歳で中国南方電網公司の副総経理に上り詰めた。昨年、広西チワン族自治区に赴任し、副主席(副省長相当)の1人に任命された。幹部が最高指導部を目指す場合、少数民族と働いた経験が大きなプラスになるとされることが多い(Caixin.com;2018年11月29日)。

楊晋柏
他に第7世代で副省長を務めるのは、李雲沢(1970年-)、劉強(1971年-)、費高雲(1971年-)で、それぞれ四川省、山東省、江蘇省にいる。劉強は、「金融の魔術師(financial wizard)」と呼ばれ、中国人民銀行、中国建設銀行、中国工商銀行を経て、2016年に世界最大の銀行である中国工商銀行(Industrial and Commercial Bank of China 、ICBC)の副頭取に就任した。その後、昨年になって、8人いる副省長の1人として四川省に異動した(『人民日報』:2018年9月30日)。福建省の郭と同じく、劉は中国農業銀行で革新的な経営者として頭角を現した。中国銀行の副総裁を短期間務めた後、2018年9月に山東省に移った(Caixin.com:2018年9月14日)。江蘇省出身の費高雲はキャリアのほぼ全てを地元江蘇省の草の根レヴェル、地域レヴェルの行政ポストで過ごした。彼は2017年に大都市常州市の党委書記に上り詰めた後、中国で最も豊かな省の1つである江蘇省の副知事に任命された(Caixin.com:2018年1月31日)。
国務院をはじめ、中央政府には第7世代のメンバーはほとんどいない。これは、習近平主席が国家より党の優位性を主張し、重要な政策は中央と地方の両方で中国共産党幹部が決定することを反映しているのだろう。これまで、第7世代のメンバーは2人確認されている。いずれも国務院の最重要監督機関の1つである中国銀行保険監督管理委員会(China Banking and Insurance Regulatory Commission 、CBIRC)に所属している。周亮(Zhou Liang、1971年-)は同委員会の6人の副主席の1人である。李欣然(Li Xinran、1972年-)は、CBIRCの規律検査部部長を務めている。周と李はともに、中国の最高レヴェルの反腐敗機関である党中央規律検査委員会(Central Commission for Disciplinary Inspection 、CCDI)を務めた経験がある(華夏時報:2018年11月19日、証券時報:2018年3月21日).
●第7世代のその他の有望な台頭する人物たち
第7世代指導者のうち、党内ヒエラルキーへの昇格を急ぐ人物たちとは別に、現在、大衆組織や統一戦線組織など、政治的に敏感でない分野で活躍している人物にも注目すべき点がある。共産主義青年団(Communist Youth League 、CYL)中央委員会常務書記の汪鴻雁(Wang Hongyan、1970年-)はその好例である。汪鴻雁は湖北省の地方行政で成果を挙げ、2008年に共青団の最高幹部となった。習近平国家主席が共青団を馬鹿にするような発言をしたことはありつつも、彼女が主に貢献するのは青年関連の仕事となるだろう(China-onway.com:2019年2月20日)。アメリカで学んだ弁護士の李波(Li Bo、1972年-)は、2004年に中国に帰国後、中国人民銀行法務部、金融政策部などで急成長を遂げ、昨年、中国人民銀行副総裁に就任した。昨年、華僑の間で中国のイメージを高めることなどを使命とする「中華全国帰国華僑連合会(All-China Federation of Returned Overseas Chinese、中华全国归国华侨联合会)」の副会長に就任した(Finance.caixin.com:2018年9月14日)。
汪鴻雁
●習近平が設定する必要条件は「政治的道徳性」
習近平は2012年末に中国共産党総書記に就任して以来、自らの権力拡大の過程で、習近平が個人的に知っている、最高指導者への無条件の忠誠を公言している幹部たちを最高幹部に登用してきた。いわゆる「習一族軍(Xi Family Army)」は、習近平が福建省(1985-2002年)、浙江省(2002―2007年)、上海(2007年)で地方統治を担当した際の部下や仲間で構成されている。その他の習近平の子飼いは、かつての同級生や故郷の陝西省に関係する官僚である(チャイナ・ブリーフ:2018年2月13日)。しかし、第7世代の新進リーダーたちは、党の「最高指揮官(zuigaotongshuai、最高统帅)」と個人的なつながりがあることが知られている者はほとんどいない。しかし、習近平が定めた2つの重要な昇格基準をクリアしていることは重要である。1つ目は、「専門能力と道徳を兼ね備え、道徳を優先すること(decai jianbei, yide weixian / 德才兼备以德为先)」である。習近平は最近、党の理論誌『真理探究』に発表した論文で、「忠誠心があり、道徳的に清潔で、責任を取れる質の高い幹部を育成する(nurture a corps of high-quality cadres who are loyal and [morally]
clean, and who can take up responsibilities)」と誓った。習近平は「道徳(morality)」の問題について、「政治道徳、職業道徳、社会道徳、家庭道徳(political
morality, professional morality, social morality and family morality)が含まれており、幹部たちはこれらの面で合格しなければならない」と述べた。最重要なのは、政治的道徳の面で合格しなければならないということだ」(人民日報:2019年1月16日付、人民日報:2019年1月6日)と述べている。
第7世代の幹部の大半は金融や工学などの専門資格を十分に有していることから、習近平の厳しい専門能力要件(stringent requirements on professional capability)を満たすのに最適な人材であると思われる。第7世代の幹部の多くが銀行経験者であることは、国家の社会負債総額がGDPの約3倍と推定される現在、習指導部が財政に慎重であることを反映していると思われる(サウス・チャイナ・モーニング・ポスト:2019年2月15日)。習近平は2016年の演説で、幹部たちに「新発展概念(new development concepts)」をしっかりと身につけるように促した。これらの概念は、「新発展概念には、時代の特徴が詰まった新しい知識、新しい経験、新しい情報、新しい要件が含まれるため、知的・専門的な要件を指す」と指摘した(人民日報:2016年1月3日)。中央党校の王東起教授によると、「幹部の専門的心構え、専門的達成度、専門的能力の能力とレヴェルを絶え間なく高める」ことは、幹部がより高い政治的地位を獲得し、より多くの政治的責任を負うことにもつながる(『人民日報』2018年9月7日)。
先月開催された全国人民代表大会と中国人民政治協商会議では、各級幹部は「習近平同志を核心として、党中央の下でさらに強固に団結する」よう求められた(チャイナ・ブリーフ:2019年3月22日)。習近平とその側近が「政治的道徳性(political morality)」と「党の核心(party core)」への忠誠を同一視しているとすれば、習近平への忠誠を表明することは、職業上の追求と行政の両方で最高のパフォーマンスを発揮することにも取って代わるかもしれない。つまり、習近平が「五湖四海(five lakes and the four seas)」の出身者たち、つまり、経験も派閥のつながりも多様でなければならないという公約を守るかどうかにかかっている(Youth.cn:2015年5月19日)。
※林和立(ウィリー・ウー=ラップ・ラム、Willy Wo-Lap Lam)博士:ジェイムズタウン・ファウンデイション上級研究員、『チャイナ・ブリーフ』定期寄稿者。香港中文大学歴史学部中国研究センター・国際政治経済プログラム修士課程非常勤教授。中国に関する5冊の著作があり、『習近平時代の中国政治』(2015年)がある。
脚注
[1] 中国共産党綱領には、総書記の在任期間に関する規定がない。また、国の最高統治機関である政治局常務委員会の委員の定年についても何も書かれていない。しかし、5年ごとの党大会の開催時に、68歳に達した幹部は政治局員になれないという慣例は、よく守られている。しかし、総書記については例外がある。1997年の第15回党大会では、当時71歳だった江沢民が5年間、党委員と総書記を兼任することを許可された。
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